| Character | 1話【バレンタイン1 姉の心配】 |
| | この物語は未来のお話です。 |
| オスカー | …………。 |
| テレサ | オスカー、起きていたのですね。 |
| オスカー | 姉上……。 |
| テレサ | 具合はどう ?まだ本調子とはいかないと思うけれど食べたいものがあったら言って。 |
| テレサ | ああ、そうだわ。もしも食欲があるようなら、あなたの好きなキッシュを作るけれど―― |
| オスカー | ありがとうございます、姉上。ですが、そんなに気を遣わなくても大丈夫ですよ。 |
| オスカー | 身体も、もうずいぶんよくなったんです。姉上が看病をしてくれたおかげですね。本当に迷惑をかけてしまって……。 |
| テレサ | 何を言っているのです。これくらい当たり前のことよ。 |
| テレサ | せっかくあなたとこうして一緒に暮らせるようになったのです。むしろ世話を焼かせて欲しいくらい。 |
| オスカー | いえ、いつまでも姉上の手を煩わせるわけにはいきません。 |
| オスカー | こうして共に過ごせるようになったのならなおのこと。姉上だけに全てを任せてはバチが当たります。 |
| オスカー | いつまでも寝てばかりはいられませんしそろそろ僕も姉上の手伝いを―― |
| オスカー | ッ ! |
| テレサ | オスカー、無理をしないで。まだ怪我が完治していないのよ。安静にしていないと。 |
| オスカー | しかし……。 |
| テレサ | 焦ってはいけません。無理に動いたりしたら、治りかけた傷口が開いてしまうでしょう ? |
| テレサ | 体力だって落ちているでしょうし……。美味しいものを食べて、ゆっくり眠って。そうすれば、少しずつ良くなっていくから。 |
| オスカー | ……わかりました。 |
| テレサ | …………。私は、街へ買い物に行ってきます。何か欲しいものはありますか ? |
| オスカー | いえ。先日姉上に買って来てもらった本がまだ途中ですから。 |
| オスカー | ……今日は、本を読んでのんびりと過ごすことにします。姉上も、ゆっくり買い物をしてきてください。 |
| テレサ | わかりました……。それでは、行ってきます。 |
| オスカー | はい。行ってらっしゃい。 |
| テレサ | ……オスカー。私のことは気にしないで、自分のことを優先で考えていいのに……。 |
| テレサ | 何か、あの子が穏やかな気持ちになれるようなものがあればいいのだけど。 |
| テレサ | ……街で少し探してみようかしら。 |
| テレサ | 薬は無事に手に入った。あとは、夕飯の買い物と、それから―― |
| チェルシー | むむ、むむむ……むぅ……。 |
| テレサ | あら ? あの子、確か……。 |
| チェルシー | ううん、ううーん、どうしましょう~ ! |
| テレサ | (確か、黒衣の鏡士の仲間、だったような。……どうしたのかしら、あの鬼気迫る様子……) |
| テレサ | …………。 |
| チェルシー | ……ッ ! |
| テレサ | あっ……。 |
| Character | 2話【バレンタイン2 乙女の悩み】 |
| チェルシー | ッ ! も、もしかして今の、見てました…… ? |
| テレサ | ごめんなさい、不躾に。ジロジロと見るつもりはなかったのですがなんだかその……かなり真剣な様子でしたから……。 |
| チェルシー | うう……そうなんです。私、もうどうしたらいいかわからなくって……。 |
| テレサ | そんなに真剣な悩みだったのですね……。本当にごめんなさい、興味本位で眺めるような真似をしてしまって。 |
| テレサ | ……あの、お詫びというわけではありませんが何か私に出来ることがあるようなら手伝いましょうか ? |
| チェルシー | あなたが…… ? |
| テレサ | あ……いえ。私はそのようなことを言える立場ではありませんね。今のは忘れて―― |
| チェルシー | いえ !あなたみたいな綺麗で大人っぽい人の意見ならすごく参考になる気がします ! |
| チェルシー | 私、チェルシーです。チェルシー・トーン。 |
| テレサ | あ……私は、テレサ。テレサ・リナレスです。 |
| チェルシー | テレサさん、ですね。……あれ ? どこかで聞いたことがあるようなお名前の気が……。 |
| カノンノ・G | チェルシー !そろそろどんなチョコレートにするか決まった ? |
| チェルシー | あ、皆さん。すみません、お待たせしてしまって。丁度、先ほどお知り合いになったテレサさんに相談してみようと思っていたところで……。 |
| テレサ | あ……あなたたちは―― |
| ミリーナ | テレサさん !久しぶりね、お買い物に来ていたの ? |
| テレサ | え、ええ……。お久しぶりです、ミリーナ。 |
| ミリーナ | 元気そうでよかったわ。今、オスカーさんと一緒に暮らしているのよね ?もう元気になったかしら……。 |
| テレサ | 怪我は、少しずつよくなっています。まだ本調子とはいかないけれど……。 |
| ミリーナ | そう、それならよかったわ。酷い状況だったから、あれからどうなったか気になっていたの。 |
| テレサ | ……ありがとう。 |
| テレサ | あとは回復を待つばかりなので何か栄養のあるものでも食べさせてあげようと思っていたのです。 |
| ミリーナ | ああ、それで買い物に来ていたのね。 |
| テレサ | ええ。まだ何を作ってあげたらいいか考えているところですが……。 |
| ミリーナ | そうだったのね……。でも、滋養がありそうな食材を使ったとしても好き嫌いがあるでしょうし……。 |
| テレサ | そうですね……。それに、家から出られないせいでストレスが貯まっているということもあるかもしれません。 |
| テレサ | ですので、何かリラックス出来るようなもの……たとえば、甘いものでもどうかと思っていたのです。 |
| ソフィ | だったら、テレサもチョコを作ったら ? |
| テレサ | え ? |
| カノンノ・G | 実は私たち、これからチョコを作ろうと思ってたんです。 |
| ミリーナ | バレンタインのチョコレートのことよ。今年はみんなで手作りして、思い思いの人に渡そうっていう話をしていたの。 |
| テレサ | ああ、そういうことだったのですね。 |
| ソフィ | 今、そのお買い物をしてたの。でも、チェルシーがまだ決まってないんだって。 |
| チェルシー | うう、そうなんです。私の大切なウッドロウさまに贈ろうと思うんですがどんなチョコレートが相応しいかわからなくて……。 |
| チェルシー | さっき聞こうとしたのも、そのことなんです。せっかくなら、私の想いをギュッと詰め込んだ大人っぽいチョコレートにしたくって ! |
| テレサ | なるほど……。ふふ……そういう相手を想う気持ちが何よりも大切ですから、気取らなくてもいいと思いますよ。 |
| チェルシー | うぅ……やっぱり、大人です…… ! |
| テレサ | でも、これでは具体的なアドバイスにはなりませんね。 |
| テレサ | 私もそういう想いを込めたチョコレートというのは贈ったことがなくて……。お役に立てなくてごめんなさい。 |
| チェルシー | いえ、大丈夫です !もうちょっと考えてみます。 |
| チェルシー | ううぅん、特別なハーブを入れることは決まってるからあとは見た目でも特別感を出せればいいんですけど。 |
| テレサ | ああ、ハーブで香り付けをするのですね。 |
| カノンノ・G | はい ! 今年、街で流行ってるんです。美味しくて、身体にもいいハーブなんですよ。 |
| ソフィ | あなたのことが大事だよ、っていう気持ちも伝えて元気にもなってもらえるの。大切な人に贈るのにぴったりなんだって。 |
| ソフィ | だから、テレサも一緒に作ろう ?きっとオスカー、元気になるよ。 |
| ミリーナ | そうね、それがいいわ。一緒に作る人が増えるのは楽しいことだし私たちも大歓迎よ。 |
| テレサ | 身体にもいい、というなら、確かにオスカーにもぴったりだとは思います。 |
| テレサ | でも……。 |
| テレサ | (でも……彼女たちは、ベルベットの仲間。そんな子たちと私が一緒に行動していいものかしら……) |
| テレサ | (この子たちがいい子なのはわかる……。でも、だからこそ私がいるのは相応しくないような気がする) |
| テレサ | (申し出はありがたいけれど、やっぱり断ろう) |
| テレサ | あの、気持ちは嬉しいのだけど、私は―― |
| カノンノ・G | あれ ? ハーブが売ってたのって確かあのお店だったよね ? |
| ミリーナ | え ? ええ。今回のチョコレートのレシピを配布していたのもあそこのお店よ。 |
| カノンノ・G | やっぱりそうだよね ?でも、ハーブが並んでないの。 |
| チェルシー | えっ ! ? |
| ソフィ | もしかして、売り切れちゃった ? |
| ミリーナ | そうかもしれないわ……。ちょっとお店の人に聞いてみましょう。 |
| カノンノ・G | うん! |
| テレサ | あっ…… ! |
| テレサ | ……どうしましょう。断りそびれてしまったわ……。 |
| Character | 3話【バレンタイン3 話題のハーブ】 |
| ミリーナ | ――それじゃあ、ハーブは全て売り切れてしまったんですね。 |
| 店のおばさん | ええ、そうなのよ。まさかこんなに話題になるなんて思わなくってあまり仕入れてなくてねぇ。 |
| チェルシー | そんなあ……。 |
| ソフィ | 大切な人のための特別なチョコレートみんな作りたいって思ったんだね。 |
| カノンノ・G | うん、そうだね……。大切な人がいる人が、それだけたくさんいるってすごく素敵なことだと思う。 |
| カノンノ・G | でも、私たちも大切な人のために作れたらよかったな……。 |
| テレサ | …………。 |
| テレサ | あの……横からごめんなさい。そのハーブを改めて仕入れに行くということは出来ないのでしょうか ? |
| 店のおばさん | うーん、それが難しいんだよ。なにしろハーブが生えているのが山奥で道中には魔物もいるからねぇ。 |
| 店のおばさん | それなりに準備をして採りに行ってもらってるから気軽にまた行ってきてとも言えないんだ。 |
| ミリーナ | それじゃあ、バレンタインの日までに再入荷するということは……。 |
| 店のおばさん | 申し訳ないけど、ちょっと難しいだろうね。 |
| ミリーナ | そうですか……。 |
| チェルシー | うう、残念です……。 |
| カノンノ・G | 魔物がいるような危険な場所じゃすぐには難しいよね……。 |
| ソフィ | ……あ。 |
| チェルシー | ? どうしたんですか ? |
| ソフィ | 魔物がいるところでも、わたしたちなら採りに行けないかな ? |
| 三人 | ! ! |
| チェルシー | そうか……そうですよね !私たちだったら、魔物と戦うのにも慣れてます ! |
| カノンノ・G | 山道を旅するのだって慣れてるし、危険がないように帰って来ることも出来るはず ! |
| ミリーナ | あの、もしよかったらその仕入れのお仕事を私たちにやらせてもらえませんか ? |
| 店のおばさん | ええっ、あなたたちが ! ? |
| カノンノ・G | はい ! 私たち、こう見えても結構強いんです ! |
| 店のおばさん | まあ……確かに立派な武器も持ってるし無駄のない鍛え方をしているように見えるわね。 |
| チェルシー | はい、どんな魔物も一網打尽です !もちろんお店にご迷惑は掛けませんしハーブを採りすぎたりしないようにもします ! |
| 店のおばさん | そうだね。仕入れをお願い出来るんだったらこっちとしても助かるわけだし……。 |
| 店のおばさん | ちょっと待ってなさい。今、ハーブが生えている場所までの地図を描いてあげるから。 |
| 四人 | やったあ ! |
| テレサ | ……。 |
| テレサ | (一時はどうなることかと思ったけれどこの子たちの希望は叶いそうね。彼女たちの実力は知っているし……) |
| チェルシー | ふふ、みんなで山に行くなんてちょっとわくわくしちゃいますね ! |
| カノンノ・G | そういえば、このメンバーで冒険って初めてだね。 |
| ソフィ | うん。みんなと一緒に行けて、わたしもうれしい。 |
| ミリーナ | あ、そうだわ。出かける前におやつでも買って行きましょう。 |
| 三人 | 賛成~ ! |
| テレサ | …………。 |
| テレサ | あの、もし迷惑でなければ、私も一緒に行って構わないでしょうか ? |
| チェルシー | ! テレサさんも来てくれるんですか ! ? |
| カノンノ・G | 嬉しいな。私、テレサさんともっとお話してみたいなって思ってたんです ! |
| ソフィ | 一緒に冒険、楽しみだね。 |
| ミリーナ | ええ、本当だわ。協力してくれてありがとう。 |
| テレサ | いえ……。 |
| テレサ | (こんな、ピクニック気分でふわふわとしたまま山奥へ行くこの子たちが心配だなんて……) |
| テレサ | (……さすがに、本人たちには言わないほうが賢明ですね) |
| Character | 4話【バレンタイン4 森を歩きながら】 |
| カノンノ・G | えーっと、描いてもらった地図によると……こっちかな ? |
| テレサ | ……少し違います。こちらのほうですね。 |
| カノンノ・G | あ、そっか。向きが間違ってたんですね。 |
| チェルシー | テレサさんすごいです~ !この道、入り組んでるのによくわかりますね~ ! |
| ソフィ | 道が間違ってても教えてくれるからテレサがいてくれて安心だね。 |
| テレサ | ……地図、私が持っていてもよいでしょうか ? |
| ミリーナ | ええ、そうね。お願いしようかしら。 |
| カノンノ・G | よろしくお願いします、テレサさん。 |
| テレサ | (やっぱりついてきてよかった……放っておいたらこの子たち、すぐに迷子になりそう) |
| ミリーナ | そういえば、みんなは誰にチョコレートをあげるかもう決めたの ? |
| カノンノ・G | うん ! 私はパスカやイアハートと一緒にチョコレートを作ろうかなって思ってるんだ。それでお互いにプレゼントするの ! |
| ミリーナ | わぁ、素敵ね !ソフィは誰かと一緒に作るの ? |
| ソフィ | うん。リトルクイーンと一緒に作るの。アスベルと、シェリアと、ヒューバートと、パスカルとリチャードと、教官と、ラムダの分。 |
| ミリーナ | ふふ、たくさん作るのね。 |
| ソフィ | うん。みんなの似顔絵のチョコにするの。リトルクイーンが似顔絵を考えてくれてるんだよ。 |
| ミリーナ | いいわね、完成するのが楽しみだわ。チェルシーは、ウッドロウさんに贈るのよね ? |
| チェルシー | はい ! ウッドロウさまへ ! |
| チェルシー | なんですけど……うぅ……まだ、どんなチョコレートにするか決まってないんでした……。 |
| テレサ | ああ……そういえば、悩んでいると言っていましたね。 |
| チェルシー | そうなんです……。ウッドロウさまに渡すのは当然としてもそれに相応しいものにしたいですし。 |
| チェルシー | でもウッドロウさまのような素敵な大人の男性に相応しいチョコレートってどんなものなんだろうって考えると……。 |
| カノンノ・G | 大人の男性に相応しいチョコレートかぁ……。確かにちょっと難しいよね。 |
| ソフィ | 大人の男性……。わたしが教官にあげるのとは違うの ? |
| チェルシー | そうですね……。マリクさんは少し、その……大人すぎるというか……。 |
| カノンノ・G | 確かに、ソフィがマリクさんにプレゼントするのはお父さんにあげる感じに近いかもしれないね。 |
| チェルシー | そうなんです……。ウッドロウさまの心を射止めることが出来るようなカッコよくて素敵でキラキラしたのがいいんです ! |
| テレサ | チョコレートでキラキラ、というのは少し難しいような気がしますが……。 |
| テレサ | 街でも申しましたが、私はその想いさえあればいいのではないかと思います。 |
| チェルシー | え ? |
| テレサ | 手作りのお菓子というのは、それだけで価値があるものだと思うのです。 |
| テレサ | お菓子作りは、どうしても時間と手間がかかります。誰かにプレゼントするために作るのだとしたらその間ずっと大切な人のことを考えることになります。 |
| テレサ | そうやって、たくさんの想いが詰まったお菓子はどんな形をしていても素敵でキラキラ輝いているのではないでしょうか。 |
| チェルシー | ……そうかもしれません。私、すごいものにしないと、って考えてばかりで一番大事なことを見失っていたんですね。 |
| テレサ | それだけ相手のことを想っているのは確かですから気負いすぎることなく、思うままに作ってみてはどうでしょうか。 |
| テレサ | 真っ直ぐな気持ちというのは、時として毒にもなってしまうものだけれど……。 |
| ミリーナ | …………。 |
| テレサ | それでも、大切な想いは歪みません。あなたのような一途な気持ちはきっと届くはずです。 |
| ミリーナ | ……ええ、そうね。チェルシーの気持ちは伝わるわ。 |
| ミリーナ | たとえば、そうね……想いを形にするということでチェルシーの一番好きなものを作ってみるとか ? |
| テレサ | いいかもしれませんね。自分の好きなものなら、それだけ想いも込めやすいでしょうし。 |
| チェルシー | なるほど…… ! |
| ソフィ | 大きくするのはどうかな ?そしたら、おっきな気持ちが伝わると思う。 |
| カノンノ・G | いいと思う !単純かもしれないけど、わかりやすいのって大事だよね。 |
| チェルシー | なるほど、なるほど…… ! |
| チェルシー | うん……なんだか、イメージが湧いてきました !おっきくて、私が大好きなもの ! |
| テレサ | よかった。先ほどは具体的な助言が出来なかったので申し訳なく思っていたのです。 |
| テレサ | でも、一番大切なのはその笑顔だったのかもしれませんね。 |
| チェルシー | ふふ、そうかもしれません。ありがとうございます、テレサさん。 |
| テレサ | ……はい。 |
| テレサ | そろそろ目的地に着きます。この先にハーブがあると地図には書かれていますので……。 |
| テレサ | ……あら ? |
| ミリーナ | えっ ! ?これは…… ! |
| Character | 5話【バレンタイン5 ハーブの群生地】 |
| ミリーナ | なんなの、これ……。地面が掘り起こされてる ! ? |
| カノンノ・G | ここにハーブが生えてるはずなんだよね ? |
| テレサ | ええ、そのはずなのですが……。 |
| チェルシー | で、でも一本も生えてないです ! |
| ソフィ | 誰かが持って行ったの…… ? |
| テレサ | …………。 |
| テレサ | ……ソフィの言う通りだと思います。これは明らかに人の手で掘り起こされていますね。 |
| テレサ | ハーブの根と思われるものが土の底にかなり残っていますし、乱暴に扱われたと想定出来ます。 |
| カノンノ・G | そんな……。大切なハーブが……。 |
| チェルシー | この惨状は、お店の関係者の人が仕入れのためにやったわけではなさそうです。 |
| ミリーナ | ええ。仕入れのためだとしたら、全部掘り起こしていくことは考えづらいもの。 |
| テレサ | 根こそぎ採り尽くしてしまえば、ハーブが全滅して二度と収穫出来なくなる可能性もありますから。 |
| テレサ | 通常の仕入れのために来たのだとしたらそのような採り方は間違いなくしません。 |
| テレサ | ハーブを持ち去った者は、ただ儲けることしか頭になかったのでしょう。 |
| ソフィ | お金儲けのためにハーブを全部採っちゃったの ? |
| チェルシー | 独り占めっていうことですか ! ?そんなの酷いです…… ! |
| カノンノ・G | みんな、大切な人のためにチョコレートを作ろうとしてるのに……。 |
| ミリーナ | 酷いわ……。 |
| チェルシー | ここを荒らしていった人、もしかして他の場所でも同じことをしているんじゃないでしょうか ? |
| ミリーナ | そうかもしれないわね……。儲けられるならなんでもいいと思っている可能性は十分にあるわ。 |
| ソフィ | そんなの、許せない。 |
| カノンノ・G | うん、放っておけないよ。このままじゃ森が根こそぎ荒らされちゃう ! |
| チェルシー | ここを荒らした犯人を捕まえて、こんなことはしないでって言わないといけませんね ! |
| ソフィ | うん。みんなで分けようって、お話しよう。 |
| テレサ | …………。 |
| テレサ | (この子たち、もしかして話し合いで解決できると思っているのかしら…… ?) |
| カノンノ・G | 急いで追いかけなきゃ ! |
| ミリーナ | ええ、そうね。それじゃあ―― |
| ミリーナ | ……どこに向かえばいいのかしら ? |
| 三人 | あ……。 |
| カノンノ・G | どこに行ったのかな…… ? |
| チェルシー | ええーっと……ここに来るまでにはすれ違いませんでしたよね ? |
| ソフィ | うん。気配も感じなかった。 |
| ミリーナ | だとすると、少なくとも私たちが来た方向は探さなくていいことにはなるけれど……。 |
| カノンノ・G | うーん、まだ候補がありすぎてどこに向かうか決められないね……。 |
| チェルシー | 森は広いし、見通しも悪いからもしも道を間違えたら追いつけなくなっちゃうかもしれません。 |
| ミリーナ | ええ、そうね。どうしよう、せめてヒントになるものがあればいいのだけど……。 |
| 三人 | ううーん……。 |
| テレサ | …………。 |
| テレサ | (やっぱり、この子たちを放っておくわけにはいきませんね……) |
| Character | 6話【バレンタイン6 犯人捜し】 |
| テレサ | 少しいいでしょうか ? |
| ミリーナ | ? どうしたの、テレサ。 |
| テレサ | おそらく、犯人がどちらに向かったのかある程度絞り込めると思います。 |
| 四人 | ! ! |
| カノンノ・G | 本当ですか ! ? テレサさん ! |
| テレサ | はい。方向がわかる、というくらいの推定ではあるので、それを認識したうえで聞いて欲しいのですが……。 |
| テレサ | まず、この掘り起こされた土。乾燥しておらず、しっとりとしています。 |
| テレサ | これは底にあった部分が地表に出て間もないことを示している……つまり、掘り起こされてさほど時間が経っていないということになります。 |
| チェルシー | なるほど…… ! |
| テレサ | それから、これだけの範囲を掘り起こしたことにより犯人の足跡がくっきりと残っています。 |
| カノンノ・G | あ ! ここにも……こっちにもある ! |
| ソフィ | 足跡の大きさ、いろいろだね。犯人はたくさんいるのかな ? |
| テレサ | はい。靴底の形状や大きさから考えて、最低でも三人はいたと考えられます。 |
| テレサ | 掘り起こしたハーブは、乱暴に籠に入れて運んだのではないでしょうか。その証拠に、地面には土が点々と続いています。 |
| ミリーナ | 本当だわ ! 気づかなかった……。 |
| カノンノ・G | よく見ないとわからないけど、確かに落ちてるね。 |
| ソフィ | それじゃあ、これをたどれば犯人に追いつける ? |
| テレサ | そうではないかと推測しています。あとはこの土がどこまで続いているかにかかってきますが……。 |
| 三人 | すごーい ! |
| チェルシー | テレサさん、すごいです !まるで名探偵みたいでカッコイイです…… ! |
| カノンノ・G | ひとつずつ言われたらわかったけどそうじゃなかったら気づかなかった……。 |
| ソフィ | ありがとう、テレサ。これで追いかけられるね。 |
| ミリーナ | ええ、本当に !テレサが一緒に来てくれてよかったわ。 |
| テレサ | いえ、私は気づいたことを伝えただけです。それよりも早く追いかけましょう。今ならきっと間に合うはずです。 |
| ミリーナ | ええ、そうね。 |
| チェルシー | みんなで協力して、必ず犯人を捕まえましょう ! |
| カノンノ・G | うん、頑張ろうね ! |
| チェルシー | はぁ、はぁ……結構歩いて来ましたよね ?そろそろ追いつけるでしょうか……。 |
| ミリーナ | そうね……まだ土が落ちているから見失うことはないと思うのだけど。 |
| カノンノ・G | けど、だいぶ土の量が減ってきてるよね。完全になくなったら追いつけなくなっちゃうかな……。 |
| テレサ | ……その心配はなさそうですよ。 |
| チェルシー | え ? |
| ソフィ | 本当だ、見て。あそこに大きな籠を背負った人がいる。 |
| カノンノ・G | あそこ、って……あっ、いた ! |
| チェルシー | わぁ、まだ遠いのによく気づきましたね ! |
| ミリーナ | ソフィもテレサもさすがね !でも、無事に追いつけてよかったわ。 |
| カノンノ・G | うん !ちょっとそこの人たち、待って ! |
| テレサ | えっ ! ? あの、迂闊に近づくのは―― |
| テレサ | ああ、行ってしまいました……。 |
| ミリーナ | みんなあの人たちを放っておけないんだわ。私たちも急ぎましょう。 |
| テレサ | ええ、そうですね。 |
| 盗賊1 | ああん ? なんだお前ら ! |
| ソフィ | その背負ってる籠の中、ハーブだよね ? |
| 盗賊2 | だったらなんだってんだよ ! |
| チェルシー | そのハーブ、独り占めするのはダメですよ !みんなが欲しがっているものなんですから ! |
| 盗賊3 | そんなモン関係ねえだろ ?こっちは売り物の仕入れに来てるだけなんだからよ。正当なやり方をしてるだろうが。違うか ? |
| チェルシー | そ、それは……。 |
| カノンノ・G | でも、根こそぎ持って行ったら二度とハーブが生えなくなっちゃうかもしれないし。 |
| 盗賊1 | そうなるってわかったわけじゃねえんだろ ?また生えてくるかもしれないじゃねえか ! |
| 盗賊2 | そんな言いがかりを付けて俺たちからハーブを奪おうとでも言うのか ? ああん ? |
| チェルシー | そ、そんなつもりではなかったんですけど……。 |
| カノンノ・G | でも、やっぱりやり方がよくないって思うから……。 |
| テレサ | (あの子たち、もしかして説得するつもり ?話が通じる相手とは思えないし、今だって完全に言い負かされてしまっているけれど……) |
| テレサ | (でも……今から私が出てもかえって場を混乱させてしまうかもしれない……。しばらくは、様子を見ることにしましょう) |
| Character | 7話【バレンタイン7 少女の説得】 |
| ソフィ | ……やっぱり、ダメだよ。お店に置くのだって、みんなで分けないと。 |
| チェルシー | そうですよ !仕入れが大変なのはその通りですし商売をするために頑張っているのはわかります。 |
| チェルシー | それでも、いろんなことを考えなきゃいけないと思うんです。みんなで豊かになることとか生態系を人間の都合で崩さないこととか……。 |
| カノンノ・G | 私もそう思う。みんなで幸せになれる方法を考えよう ?きっとあるはずだよ。 |
| テレサ | ……やはり、あの子たちは甘すぎます。 |
| ミリーナ | ええ、そうかもしれないわ。でも……それが彼女たちのやり方なのよ。 |
| テレサ | …………。 |
| テレサ | 話が通じる相手だとも思えません。それでも……。 |
| テレサ | 彼女たちの真心が伝わることを信じたいですね。 |
| ミリーナ | ええ。私もそう思うわ。 |
| ソフィ | あのね、そのハーブは、バレンタインのチョコレートを作るために使いたいの。 |
| ソフィ | 大切な人にずっと元気でいてね、いっぱい幸せになってねって、そういう気持ちを込めて贈るんだよ。 |
| カノンノ・G | 全部ちょうだいなんて言わないよ。私たちが採りに来たのと同じようにあなたたちだってこんな山奥まで来たんだもん。 |
| カノンノ・G | でも、全部採ってっちゃうのはダメだと思うの。もうそのハーブが生えてこなくなったら森のバランスが崩れちゃう。 |
| チェルシー | この森を守るためにも、たくさんの笑顔を守るためにも私たちはそのハーブを分けてもらいたいんです ! |
| チェルシー | あなたたちにも、大切な人がいますよね ?だからお金を稼ぐ必要があって、こうやって森にハーブを採りに来たんですよね ? |
| チェルシー | だったら、その大切な人たちのためにも心ないことはしないで欲しいんです !お願いします…… ! |
| カノンノ・G | お願い…… ! |
| 盗賊たち | …………。 |
| 盗賊1 | ……泣かせること言うじゃねえか、嬢ちゃんたち。 |
| 三人 | ! ! |
| 盗賊2 | ああ。こんなこと言われちまって意地張るわけにはいかねぇよな。 |
| チェルシー | それじゃあ…… ! |
| 盗賊3 | あんたらの言う通りにするよ。このハーブ、分けてやってもいい。 |
| 三人 | よかった…… ! |
| 盗賊1 | ほら、この籠の中から好きなだけ持っていきな。遠慮はいらねぇぜ。 |
| チェルシー | ありがとうございます ! |
| テレサ | ! 待って、迂闊に近づいたりしたら…… ! |
| 盗賊1 | ……なんてな ! ハアッ ! |
| チェルシー | ! ! |
| テレサ | させません ! |
| 盗賊1 | ! チッ ! |
| チェルシー | テレサさん…… ! |
| テレサ | ……こうなると思っていました。あなたたちのような悪党はどこまでいっても悪党ですから。 |
| 盗賊2 | ハッ ! 頭がお花畑な嬢ちゃんだけじゃなかったってことかよ。 |
| テレサ | ええ。私に彼女たちのような純粋な気持ちはありません。人を疑い、最悪の可能性を想定しそれに対応出来るようにしておくまでです。 |
| テレサ | そもそも人の心があるのであれば生態系を崩しかねない採取の仕方はしないでしょうし。 |
| 盗賊1 | ハッ、ごもっとも。 |
| テレサ | ですので警戒はしていましたがこの子たちに危害を加えようとしたこと、そして純粋な想いを踏みにじったことは許せません。 |
| テレサ | 今すぐ償ってもらいます。手加減はしません。 |
| 盗賊1 | その細腕で、やれるもんならやってみなぁ ! |
| テレサ | ! ! |
| チェルシー | テレサさん ! |
| ミリーナ | 私たちも応戦しましょう !もう説得出来るような状況じゃないわ。 |
| カノンノ・G | うん、そうだね…… ! |
| ソフィ | テレサのこと、傷つけたら許さない ! |
| チェルシー | 乙女の思いを台なしにした罪はしっかり償ってもらいます ! |
| テレサ | ええ、覚悟しなさい ! |
| Character | 8話【バレンタイン8 ハーブのお礼】 |
| 盗賊1 | クッ……お、覚えてやがれ ! |
| チェルシー | いやですー ! すぐ忘れますから ! |
| カノンノ・G | 酷い人たちだったね……。 |
| ソフィ | でも、ハーブが守れてよかった。 |
| ミリーナ | そうね。なんとか取り戻せたわ。……このハーブ、さっきの場所に植えたら元通り元気になってくれるかしら ? |
| テレサ | そうですね……。 |
| テレサ | 全てを元の通りには出来ないと思います。ですが、根が十分に残っているものもありますしいくつかは植えれば定着するかと。 |
| ソフィ | 本当 ? よかった。 |
| チェルシー | はい ! これで森のハーブを守ることが出来ますね ! |
| カノンノ・G | じゃあ、すぐに生えていたところに戻ろう ! |
| ソフィ | これで、最後……。 |
| ソフィ | 綺麗に植えられたね。 |
| チェルシー | はい ! あとはまた元気になってくれるのを祈るだけですね。 |
| カノンノ・G | ちゃんと元通りになるかな…… ? |
| ミリーナ | きっと大丈夫よ。根が残っているものも多かったから。そうよね、テレサ。 |
| テレサ | はい。私も植物にさほど詳しいわけではないので断言は出来ませんが……。 |
| テレサ | 元気になったハーブが種子を残して、植物が豊かな森が守られると……そう、信じています。 |
| ソフィ | うん、そうだね。 |
| チェルシー | それじゃあ、この植えられなかったハーブはお店の人に届けるということでいいでしょうか ? |
| ミリーナ | ええ。欲しい人みんなに渡るくらいの量はあるし約束通り届けることにしましょう。 |
| 店のおばさん | あなたたち !なかなか帰って来ないから心配したのよ。大丈夫だった ? |
| カノンノ・G | 遅くなってごめんなさい。色々あって。実は―― |
| 店のおばさん | あらあら、そうだったの !大変だったわねぇ……でも無事に帰ってきてくれてよかったわ ! |
| ソフィ | 森のハーブもちゃんと元通りになると思う。ほかのは、採ってきたから。はい、これ。 |
| 店のおばさん | あらあら、本当に助かるわ !これなら欲しがっていた人の分は十分あるだろうし……仕入れ代を払わないとね ! |
| ミリーナ | いえ、気にしないでください。これだけたくさん採れたのはたまたまですから。 |
| チェルシー | はい ! 私たちが使う分だけ分けてもらえたらそれで十分です。 |
| 店のおばさん | んー、でもねぇ。さすがに何もお礼をしないというのは……。 |
| 店のおばさん | ああ、そうだわ !ちょうどいいものがあるの。よかったらこれをもらってくれないかしら ? |
| テレサ | えっ、これって……服 ? |
| カノンノ・G | わぁ、可愛い !すごく素敵 ! |
| チェルシー | はい ! 色もデザインもとってもお洒落です !でもこんなに可愛いお洋服、もらっていいんですか ? |
| 店のおばさん | ええ、もちろん !今すぐ用意出来るのは4着しかないけどもうちょっとしたら他にも届くからね。 |
| テレサ | そういうことなら、私は―― |
| ミリーナ | 私は今じゃなくていいから、みんなで着て欲しいわ。テレサも一緒にね。 |
| テレサ | えっ…… ? でも……。 |
| ソフィ | わたし、テレサとおそろいの服着たい。 |
| テレサ | …………。 |
| カノンノ・G | 私も ! 私もテレサさんとおそろいだったら嬉しい。こうやって一緒にいろんなことが出来るのって初めてだから。 |
| チェルシー | 私もです !テレサさんにはたくさんお世話になりましたしもっと仲良くなりたいです ! |
| テレサ | あなたたち……。 |
| ミリーナ | みんなもこう言っているし、どうかしら ?素敵な服を着て帰ったら、オスカーさんも喜ぶと思うの。 |
| テレサ | ……そこでオスカーを持ち出すのは卑怯じゃないですか ? |
| ミリーナ | ふふっ。そうかもね。 |
| テレサ | もう……ふふ。わかりました。私もおそろいの服を着させていただきますね。 |
| 三人 | やったー ! |
| 店のおばさん | 誰が着るのか決まったみたいね !さ、店の奥で着替えていらっしゃい。 |
| 三人 | はーい ! |
| テレサ | ……お言葉に甘えさせていただきます。 |
| ソフィ | ミリーナ、着替え終わったよ。 |
| ミリーナ | あ、お帰りなさい。わあ…… ! |
| チェルシー | 見てください、ミリーナさん !このお洋服、とっても可愛いんです~ ! |
| カノンノ・G | 色違いだったから、みんなそれぞれが似合う色を話し合って決めたんだ ! |
| ソフィ | 髪はテレサがやってくれたの。こっちのほうがきっと可愛いからって。 |
| ミリーナ | 三人とも素敵よ !服もそうだけど、髪飾りもそれぞれ凝っていてとってもよく似合っているわ。 |
| ミリーナ | ……あら ? テレサは ? |
| テレサ | ……着替えは、終わりましたけど。 |
| テレサ | 私には、その……少し可愛すぎるデザインのような気がしてやっぱりミリーナが着たほうが……。 |
| ミリーナ | そんなことないわ !ああ、思った通りとっても素敵よ、テレサ !髪型も少しアレンジしてきたのね。 |
| ミリーナ | いつもの服装も素敵だと思っていたけれどこういう可愛らしい感じもよく似合うのね !新しい魅力が知れて本当によかったわ。 |
| テレサ | そ、それは少し、大げさなのでは……。 |
| カノンノ・G | 大げさなんかじゃないですよ。テレサさん、本当にすごく可愛いもん ! |
| チェルシー | テレサさんみたいな大人の雰囲気の人もこういうお洋服が似合うんだな~って思ったらなんだかドキドキしちゃいます ! |
| ソフィ | わたし、こういう服のテレサも好き。 |
| カノンノ・G | 私も ! |
| チェルシー | 私もです~ ! |
| テレサ | ……ありがとう。 |
| ミリーナ | ふふ、よかった。 |
| ミリーナ | そうそう、みんなが着替えている間にチョコレート作りの材料を用意しておいたの。 |
| ミリーナ | 一緒に作る約束をしていた子たちもそろそろ到着するんじゃなかったかしら ? |
| カノンノ・G | うん ! このお洋服、また入荷されるって言ってたしそうしたらパスカやイアハートにも着てもらおう。 |
| ソフィ | わたしも、リトルクイーンと一緒に着たいな。 |
| チェルシー | 私はウッドロウさまにあげるチョコを作るのに時間がかかると思うので、早速調理に取りかかりますね ! |
| ミリーナ | ええ。準備が出来た人から作り始めるといいわ。テレサは、よかったら私と一緒に作らない ? |
| テレサ | ……そうですね。ここまできたらせっかくですし、一緒に作りましょう。 |
| ミリーナ | ええ !それじゃあ、早速キッチンに行きましょう ! |
| Character | 9話【バレンタイン9 いざクッキング】 |
| ミリーナ | ふぅ……チョコレート、無事に完成ね。 |
| テレサ | ええ。その……ありがとうございます、ミリーナ。こんな経験をすることになるなんて想像もしていなかったけれど。 |
| ミリーナ | 私もよ。でも、あなたと一緒にチョコレートを作れてとっても嬉しかった。 |
| テレサ | ……ええ。 |
| ミリーナ | みんなもチョコレート作りは順調かしら ?ちょっと様子を見に行こうと思うんだけど……テレサも、一緒に行かない ? |
| テレサ | ……そうですね。一緒に行きます。 |
| ミリーナ | ええ !じゃあ、まずはソフィのところからね。 |
| ソフィ | リトルクイーン、見ててね。わたしが最初にやってみるから。 |
| リトルクイーン | ええ。 |
| ソフィ | こうやって……目を大きくすると可愛くなるからちょっと大きめにして……。 |
| ソフィ | どうかな ? |
| リトルクイーン | これが、可愛い似顔絵 ? |
| ソフィ | そう。アスベルの顔。似てる ? |
| リトルクイーン | ……こっちのほうが、可愛い。 |
| ミリーナ | ふふ、順調に作れているみたいね。 |
| ソフィ | あ、ミリーナとテレサ。 |
| ミリーナ | ソフィがリトルクイーンにお手本を見せてあげているのね。 |
| ソフィ | うん。みんなの似顔絵、一緒に描けたら嬉しいから。 |
| ミリーナ | そうね。リトルクイーンも、楽しい ? |
| リトルクイーン | ……楽しい。とても。 |
| ミリーナ | それならよかった。 |
| ミリーナ | ああ、テレサ。ソフィとリトルクイーンは姉妹みたいなものなの。ソフィのほうがお姉ちゃんよ。ね ? |
| ソフィ | うん、わたしがお姉ちゃんだからリトルクイーンに楽しいことを教えられたらいいなって、思ってたの。 |
| テレサ | そう……だから一緒にチョコレートを作ろうと思ったのですね。 |
| ソフィ | そうだよ。大切な人と、大切な思い出を作るの。 |
| テレサ | ……ソフィは、とてもいいお姉さんなのですね。 |
| ソフィ | テレサもおんなじだよ。オスカー、喜んでくれるといいね。 |
| テレサ | ええ……喜んでもらえたら、嬉しいです。 |
| ミリーナ | ……次は、グラスバレーたちのところに行きましょう。 |
| カノンノ・G | パスカ、そっちのチョコはちゃんと固まった ? |
| P・カノンノ | うん ! 形も崩れなかったしとても可愛く出来たと思うわ。 |
| カノンノ・G | よかった !イアハートは ? 飾り付け進んでる ? |
| カノンノ・E | うん、進んでるよ !ちょっと潰れちゃったけど……。 |
| カノンノ・G | 大丈夫だよ。可愛いかわいい !いっぱい作って、いつもお世話になってるみんなに渡そうね ! |
| 二人 | うん ! |
| ミリーナ | ずいぶんたくさんのチョコレートを作っているのね。 |
| カノンノ・G | あ、ミリーナとテレサさん。せっかくだからたくさん作って、みんなの所に遊びに行こうかなって相談してたんだ。 |
| カノンノ・E | ミリーナたちに会うのも久しぶりだったでしょ ?それで、他の人たちはどうしてるかなって三人で話をしてて……。 |
| P・カノンノ | 全員に会いに行くのは難しいかもしれないけど近くの人には連絡して会えるんじゃないかなってことになったの。 |
| ミリーナ | そうだったのね !きっとみんな喜ぶと思うわ。 |
| テレサ | ……やはり、共に戦ってきた仲間とは離れた後でも親しいのですね。 |
| P・カノンノ | うん、この世界に来てから、みんな色々なことがあったけど……それでも、せっかく出会えたんだもの。 |
| カノンノ・E | 今まで大変だったね、だけじゃなくって最近はどうしてる ? って声を掛け合ってまた笑い合えたり出来るのは、嬉しいもん ! |
| テレサ | そうなのですね……。やはりあなたたちは、心優しい人たちですね。 |
| カノンノ・G | そんな風に言ってもらえて嬉しいけど私は、テレサさんともそういう関係になりたいです。 |
| テレサ | ……私とも ? |
| カノンノ・G | はい ! だって、今日はテレサさんのおかげで無事にハーブを手に入れることが出来たから。 |
| カノンノ・G | だから私たち、もう仲間だと思うの。……それとも、さすがにまだ早いですか ? |
| テレサ | ……いえ。そう言ってもらえて、嬉しいです。 |
| カノンノ・G | よかった !これからも、私だけじゃなくてパスカやイアハートとも仲良くしてください。 |
| テレサ | ええ。ありがとうございます。 |
| ミリーナ | 最後はチェルシーね。 |
| テレサ | 彼女、一人で作っていましたよね ?苦労していないでしょうか……。 |
| ミリーナ | そうね。時間がかかるとも言っていたし……大変そうだったら手伝いましょう。 |
| テレサ | そうですね。 |
| ミリーナ | チェルシー、入るわね。チョコレート作りは進んでいるかしら ? |
| チェルシー | ふふっ、あともう少しで完成です !私の想いを詰め込んだ、ウッドロウさまへのチョコレート ! |
| テレサ | これは……すごい、ですね。 |
| ミリーナ | 本当に…… !なんて立派なチョコレートなのかしら。 |
| テレサ | 立派な……というか……。いえ、立派なのはその通りですが……。 |
| チェルシー | あ、ミリーナさん、テレサさん !見てください、あともう少しで完成するんです。ウッドロウさまの等身大チョコレート ! |
| テレサ | 等身大……やっぱり、そうなのですね……。 |
| ミリーナ | 本当にすごいわ、チェルシー !ウッドロウさんにそっくりよ。 |
| チェルシー | えへへ。ウッドロウさまのことはいつも穴が空くほど見つめていますからね ! |
| チェルシー | 今回はその成果を思う存分発揮するつもりで頑張って作ったんです~ ! |
| テレサ | 本当に……これは力作です。頑張りましたね。 |
| チェルシー | えへへ。でもこれを作ろうって思ったのはミリーナさんやテレサさんのおかげなんですよ。 |
| テレサ | もしかして、森の中で話したときに…… ? |
| チェルシー | はい !テレサさんが想いを込めればいいと言ってくれたこととミリーナさんが想いを形にすると提案してくれたこと。 |
| チェルシー | それでハッと思いついたんです。私のウッドロウさまへの想いを形にするとしたらウッドロウさまを作るしかないって ! |
| テレサ | 若干思考の飛躍が見られる気もしますが……あながち間違ってはいない……のかも ? |
| ミリーナ | ふふ。チェルシーの熱い想いが溢れていてとってもいいと思うわ !きっとウッドロウさんにも伝わるはずよ。 |
| テレサ | ……そうですね。これを見ても気持ちが伝わらないとしたらさすがに鈍感すぎるでしょうし。 |
| テレサ | チェルシー、あなたの想いが伝わることを心から祈っています。 |
| チェルシー | はい、ありがとうございます !よーっし、あともうちょっと、頑張りますよ~ ! |
| Character | 10話【バレンタイン10 弟の心配】 |
| ミリーナ | みんなとても素敵なチョコレートを作っていたわね。 |
| テレサ | はい。少し驚くようなものもありましたけど……でも、なんだか楽しかったです。 |
| ミリーナ | ……よかった。テレサが笑ってくれて。 |
| テレサ | ミリーナ…… ? |
| ミリーナ | 最初はあまり乗り気でないようにも見えたから……。テレサのこと、無理矢理付き合わせてしまったかもって心配していたの。 |
| テレサ | ……ええ。確かに、最初は気乗りしませんでした。でもそれはあなたたちが嫌だったというわけではなくて……。 |
| テレサ | ……ふさわしくないと思ったのです。あのような純粋な子たちと私が一緒に行動するなど。 |
| ミリーナ | ……でも、来てくれたのね。 |
| テレサ | ええ。だって、あんなにのんびりした子たち放っておくなんて出来ないでしょう ? |
| ミリーナ | ふふ、なんだかわかるわ。 |
| テレサ | ……今は、行って良かったと思っています。あの子たちの笑顔をそばで見られたことで少し心が安らぎましたし。 |
| ミリーナ | ええ……。 |
| ミリーナ | 無理にとは言わないけれど……これからも、こういう機会が持てたら嬉しいわ。 |
| テレサ | そうですね……考えておきます。 |
| テレサ | ……次は、オスカーも一緒に。 |
| ミリーナ | ……ええ ! |
| テレサ | ただいま。遅くなってごめんなさい。 |
| オスカー | いえ。お帰りなさい姉上――あれ ? |
| テレサ | え ? |
| オスカー | 街で新しい洋服に着替えてきたんですね。 |
| テレサ | あっ……そうでした。その、ごめんなさい。こんな浮かれた格好をしてしまって……。 |
| オスカー | 謝ることなど何もありませんよ、姉上。むしろ嬉しいくらいです。 |
| テレサ | 嬉しい…… ? |
| オスカー | ああ……いえ、この言い方は少しおかしいかな。だけど、僕にとってはやっぱり嬉しいことなんです。 |
| オスカー | 街で何かあったんじゃないですか ? |
| テレサ | ええ……。今までに出会ったことがないような子たちに会いました。 |
| テレサ | ……少し、長くなるかもしれないのだけど聞いてもらえるかしら ? |
| オスカー | はい、もちろんです。 |
| テレサ | ありがとう。あのね―― |
| オスカー | ……そうでしたか。それはまた、今までにない体験でしたね。 |
| テレサ | ええ。あんなに人が良い子たち、見たこともなかったから驚きました。 |
| テレサ | だって、盗賊相手に本気で説得しようとしていたのですよ ? |
| オスカー | それは、僕でも驚くかもしれません。説得など通用しない者がほとんどでしたから。 |
| テレサ | そうね。私たちの常識からは考えられません。 |
| テレサ | それでも、あの子たちにとっては説得しようと思うことのほうが常識だったのです……。 |
| テレサ | ……敵対していたことがあった私にも話をしてみたい、一緒に何かをしたいと躊躇わずに声をかけてくれるのよ。 |
| テレサ | そんなこと、信じられますか ? |
| オスカー | 信じられません……と、今までなら言っていたと思います。 |
| オスカー | ですが、姉上は既にそういう人たちと出会い交流をしてきたんですよね ? |
| テレサ | ええ、そうです。 |
| オスカー | それなら、それが真実なのでしょう。 |
| オスカー | 生きていれば、自分たちの想像の及ばないことが起こるものなのでしょうね。 |
| テレサ | そうかもしれないわ。すでに、予想もしなかったことがたくさん起こっているのだもの。 |
| テレサ | 今日出会った子たちのこともそうだけれど……こうして、あなたと穏やかに過ごす時間があるということ自体が、奇跡のようです。 |
| オスカー | ……はい。僕も、そう思います。 |
| テレサ | それでね……あの子たちと一緒に、チョコレートを作ったの。あなたのために。 |
| オスカー | 僕に、ですか ? |
| テレサ | ええ。さっき話したハーブを使ったチョコレートよ。受け取ってもらえるかしら ? |
| オスカー | もちろんです !ありがとうございます、姉上。 |
| オスカー | …………。 |
| テレサ | オスカー ? |
| オスカー | ああ……すみません。本当によかったと思ったんです。 |
| テレサ | …… ? |
| オスカー | 僕の怪我がなかなか治らないことで姉上を縛り付けてしまっているような気がしていたので……。 |
| テレサ | そんなことはありません !私は私の意志で―― |
| オスカー | ええ、もちろんわかっています。姉上は昔から僕に優しかったですから。 |
| オスカー | ですが、もっと自由に時間を過ごしてもらいたいとも思っていました。気軽に遊びに行ったりも……。 |
| オスカー | ですから、姉上に友人が出来たことが本当に嬉しいんです。 |
| テレサ | 友人……と、呼んでいいのかはわからないけれど……。 |
| テレサ | でも……そうね。またこういう機会が持てたら嬉しいと言われました。 |
| オスカー | でしたら、友人と言っていいと思います。 |
| オスカー | この世界では、きっと、僕たちが今までに出来なかったことが出来るはずです。 |
| オスカー | ですから、姉上。あなたの心からの笑顔が見られて、僕は幸せです。 |
| テレサ | ……ありがとう、オスカー。 |
| テレサ | 次は、あなたも一緒に行きましょう。あの子たちに、あなたを紹介したいわ。 |
| オスカー | はい、是非 ! |
| オスカー | もっとお話を聞かせてください、姉上。その子たちが、どんな子だったのか。 |
| テレサ | もちろん話しますよ。このチョコレートを一緒に食べながら。 |
| オスカー | はい !いただきます、姉上。 |
| テレサ | ええ。いただきます。 |