| Character | 1話【第1章 異世界の魔法使い】 |
| コレット | ふふっ ♪ |
| ミリーナ | あら、コレット。なんだかご機嫌ね。何か良いことでもあったの ? |
| コレット | ロイドがね、一緒に出掛けようって誘ってくれたの。 |
| ミリーナ | まあ、それは素敵ね !後で詳しくお話聞かせてもらおうかしら。楽しんできてね。 |
| コレット | うん。ありがとうミリーナ ! |
| コレット | ロイドとお買い物、楽しみだなあ。 |
| ロイド | へえ、新しく見つかった遺跡かー。 |
| コレット | この声……ロイドだ。そうだ、お出掛けの前にいろいろ相談しておこうっと。 |
| リフィル | カロル調査室からの報告によると、変わった仕掛けの多い遺跡みたいなの。たとえば二人同時にスイッチを押さないと扉が開かないとか。 |
| リフィル | そういうわけで、ロイドにも来てほしいのよ。 |
| ロイド | ああ、いいよ。その変わった仕掛けってのに俺もちょっと興味あるし。 |
| コレット | え……。 |
| リフィル | 助かるわ。それじゃあ出発は明日の朝ね。 |
| ロイド | わかった。さっそく準備にとりかかるよ。 |
| コレット | ロイド、リフィル先生と出かけるって……。約束、忘れちゃったのかな……。 |
| コレット | え……これって…… ! ? |
| コレット | ここ……アーク ? |
| ? ? ? | あのぉ……。 |
| コレット | きゃっ ! ? び、びっくりしたぁ……。 |
| ? ? ? | あ、急に話しかけてごめんね。なんだか困ってたみたいだから。 |
| コレット | う、ううん、だいじょぶ。たぶん、知ってる場所だから。 |
| コレット | ……えっと、はじめまして。 |
| ククリ | はじめまして ! あたし、ククリ。あなたのお名前は ? |
| コレット | 私はコレット。 |
| ククリ | コレットちゃん ! かわいい名前だね ! |
| コレット | あ、ありがとう……。 |
| ククリ | どうしたの ?やっぱり元気ないみたい。 |
| コレット | そ、そんなことないよ。……たぶん。 |
| ククリ | ねえ、よかったら話してみて。 |
| コレット | う、うん……。 |
| ククリ | ……そっか。幼馴染みの男の子が約束を忘れちゃったんじゃないかって不安なんだね。 |
| コレット | 考えすぎだと思うんだけど……でも……。 |
| ククリ | まかせて ! あたしがなんとかしてあげる ! |
| コレット | なんとかって…… ? |
| ククリ | ふふっ、これでもあたしは魔法使いなのです。見てて、あたしの魔法でコレットちゃんの悩みを解決してあげる ! |
| コレット | すごい、魔法ってそんなこともできちゃうの ? |
| ククリ | さあ、いくわよー ! |
| コレット | わあ……光る模様、きれい……。 |
| ククリ | できた ! これでコレットちゃんの悩みを……あれ ? |
| コレット | ク、ククリ……なんだか様子が変だよ ? |
| ククリ | あう……し、失敗しちゃった……かも。 |
| コレット | ええーっ ! ? |
| Character | 2話【第2章 異世界の勇者】 |
| ロイド | や……やっと帰って来られた……。 |
| リフィル | 思ったより難儀な遺跡だったな。 |
| ロイド | あんなに罠だらけなんて聞いてねえよ !何回死ぬと思ったか ! |
| リフィル | うむ。あれほど侵入者に対して殺意の高い造りになっているとは。実に興味深い。 |
| リフィル | もしや、それ事態が目的か…… ?こうしてはいられない !さっそく持ち帰った物を調べなければ ! |
| ロイド | もう好きにしてくれ……。俺は少し休むことにするよ。 |
| ゼロス | あ~っ、やっと帰ってきたか !どこ行ってたんだよハニー ! |
| ロイド | ゼロス……悪いけど、めちゃくちゃ疲れてるんだ。お前の相手をしてる余裕は……。 |
| ゼロス | そうじゃねぇって ! コレットちゃんが大変なんだよ ! |
| ロイド | コレットが ! ? |
| ゼロス | いいから急げ !詳しい話はアークに着いてからだ。 |
| ロイド | アークに…… ? |
| ワイズマン | ロイドさん、ゼロスさん、よく来てくださいました。 |
| ロイド | ワイズマン !コレットは ! ? 無事なのか ? |
| ワイズマン | あの状態を無事と言ってよいものか……。 |
| ? ? ? | ある意味、二倍元気になってるかもな。 |
| ロイド | お前は…… ? |
| ニケ | オレはニケ。ま、よろしくな。 |
| ワイズマン | ニケさんは今回の祭りのためにお呼びしたゲストです。そして、こちらがお連れのククリさんで……。 |
| ククリ | ごめんなさい ! |
| ククリ | コレットちゃんがあんなことになったのはあたしのせいなの ! |
| ロイド | あんなことって……コレットに何があったんだ ! ? |
| コレット | ロイド……。 |
| ロイド | コレット ! ……あれ ? 無事、なのか…… ?大変なことになったってゼロスが……。 |
| ゼロス | ハニー、よーく見てみろ。 |
| ロイド | ん…… ? |
| ロイド | コレットが二人いる ! ? |
| ククリ | ……というわけで、あたしの魔法が失敗してコレットちゃんが二人になっちゃったの。 |
| ロイド | なるほど。原因はわかったよ。それはそれとして── |
| ニケ | だあああっ !いつの間にかオレの短剣がゴボウに ! ? |
| もう一人のコレット | あははっ。 |
| ゼロス | ぶはははっ ! しかも泥つき !やるなあコレットちゃん。 |
| ニケ | のんきに笑ってるけどお前も肩になんか落書きされてるぞ。 |
| ゼロス | なにい ! ?『アホ神子』……って、ひでーよコレットちゃん ! |
| コレット | ち、違うよお。やってるのは私じゃなくて、もう一人の……。 |
| もう一人のコレット | えへへっ ! やーい、アホ神子〜。ゴボウ勇者〜。 |
| ニケ | 誰がゴボウ勇者だ ! |
| ゼロス | この落書き、全然消えねえ……。 |
| ロイド | まったく、これじゃ落ち着いて話もできな――おわあっ ! ? |
| ゼロス | おいおい、大丈夫かハニー。 |
| ロイド | いてて……なんだこりゃ ! ?いつの間にか靴が紐で結ばれてる ! ? |
| もう一人のコレット | んべーっだ。 |
| ロイド | コレット ! 頼むから大人しくしててくれよ。 |
| コレット | だから私じゃないってばあ。 |
| ロイド | はぁ……もう一人のコレットはどうしてこんなにイタズラばかりするんだ ? |
| ニケ | ククリ、いったいどんな魔法をかけようとしたんだよ。 |
| ククリ | コレットちゃんの悩みが解決するように気持ちをこめてみたんだけど……失敗しちゃった。 |
| ククリ | ごめんね、コレットちゃん……。 |
| コレット | ううん、気にしないで。私もよく失敗しちゃうから。それにククリは私のためにがんばってくれたんだもの。 |
| ククリ | コレットちゃん……。 |
| ロイド | とにかく、コレットたちをこのままにはできない。ワイズマン、どうすればいいんだ ? |
| ワイズマン | もう一人のコレットさんが具現化やシャドウのような複製された存在なのか、それともご本人から切り離されたものなのか、わかっておりません。 |
| ワイズマン | 前者なら、少々強引に消してしまうこともできますが後者であればコレットさんご自身にどれほどの影響が出るか……。 |
| ロイド | それを調べる方法はないのか ? |
| ワイズマン | 残念ですがすぐに確証を得ることはできません。ククリさんの魔法は私でも解き明かせない部分が多いのです。 |
| ニケ | いつもなら、ほっとけばそのうち消えるんだけどなー。 |
| ロイド | そうか……なら、しばらく様子を見るしかないか。幸いイタズラも大したことない……いだだだっ ! |
| ロイド | コレット ! なんでつねるんだよ ! |
| もう一人のコレット | べーっ…… ! ロイドのばーか、ばーか。 |
| コレット | もう、ロイドにいじわるしないで ! |
| ゼロス | なーんか、ハニーにだけ微妙にあたりが強いな。 |
| ニケ | 嫌われるようなことしたんじゃないのか ? |
| ロイド | そんなことしてねぇよ ! |
| ワイズマン | もしかすると、そこに分裂の原因があるのかもしれませんね。コレットさん、何か心当たりは ? |
| コレット | え…… ! あの、えっと、その……。 |
| ロイド | 様子を見るにしても、もう一人の方はどこかでおとなしくしてもらっていた方が……。 |
| もう一人のコレット | …… ! |
| ニケ | あ、逃げた。 |
| ゼロス | ハニーが変なこと言うからだぞ。 |
| ロイド | いや、俺はただイタズラの被害が広がったらまずいと思って。 |
| もう一人のコレット | ロイドなんて、嫌い ! |
| コレット | あ、待って ! |
| ククリ | たいへん ! もう一人のコレットちゃんがあっちの世界に逃げちゃった ! |
| ゼロス | あっちの世界 ? なんだそりゃ。 |
| ワイズマン | 今回の祭りのために用意した別空間です。ただ……。 |
| ロイド | ただ……なんだよ ? |
| ククリ | あたしの魔法が失敗したせいでちょっと変になっちゃってるの。 |
| ニケ | こりゃ、連れ戻さないと危ないかもな。 |
| ロイド | わかった。じゃあ俺が行ってくるよ。 |
| コレット | ロイド……ごめんね。私も行くから。 |
| ロイド | コレットが謝る必要ないだろ。気にすんなって。 |
| コレット | うん……。 |
| ゼロス | もちろん俺さまも行くぜ、ハニー。なにせコレットちゃんのピンチだからな。 |
| ニケ | オレも行くぞ。ククリの失敗はオレがカバーする。それがパーティってもんだからな。 |
| ククリ | 勇者様……ステキ ! |
| ゼロス | 腰にゴボウが刺さってなきゃもっとよかったな。 |
| ニケ | うるせー、アホ神子 ! |
| ワイズマン | では、どうか皆さんお気を付けて。私はコレットさんを元に戻す方法を探ってみます。 |
| Character | 3話【第3章 冒険の始まり】 |
| ロイド | ここがワイズマンの作った世界か。 |
| ゼロス | 大変なことになってるって聞いたけど案外普通じゃねえの。 |
| ワイズマン | 元々、リアルな『勇者体験』ができる場所として作ったので、皆さんの世界に似せてあるのです。 |
| コレット | 勇者体験 ? |
| ワイズマン | 世界を救う使命を帯びた者が旅を経て巨悪を倒す。多くの伝承や創作物に描かれる物語を、その身で味わえるというゲームです。まだテスト段階ですが。 |
| ワイズマン | そのためのアドバイザーとして実際に『勇者』であるニケさんをお呼びしたのです。 |
| ニケ | そう、オレが勇者だ ! |
| ゼロス | これが『勇者』だぁ ? |
| ニケ | これとはなんだこれとは。 |
| ククリ | そうよ ! 勇者様は勇者様なんだから ! |
| ゼロス | 悪かったって。ほら、機嫌直してよククリちゃん。怒った顔もかわいいけど、キミには笑顔が一番だよ。 |
| ククリ | え、かわいい…… ? そうかしら……。 |
| | ククリはモジモジしている。 |
| ニケ | おいこら、ククリに変なちょっかい出すなよ。 |
| ゼロス | お、ヤキモチか ? |
| ククリ | そんな、勇者様がヤキモチだなんて……どうしよう ! |
| | ククリは舞い上がっている! |
| ロイド | ちょっと待った !さっきから何か変なのが出てるぞ。 |
| ワイズマン | それはゲームの進行を助けるメッセージです。皆さんの状況に合わせて表示される仕組みです。 |
| ニケ | そのわりには関係ないことばっか書いてある気がするぞ……。 |
| ワイズマン | おかしいですね。そのような機能は持たせていないはずですが……。 |
| ニケ | これもグルグルが失敗したせいじゃないのか ?まあ害はないみたいだし、ほっとくか。役には立たないけど。 |
| | ニケは称号『ひと言多い少年』を手に入れた。 |
| ニケ | やかましいわ ! やっぱ邪魔だこれ ! |
| ロイド | この調子じゃこの先も妙なことが起きそうだな……。ワイズマン、俺たちはどこに向かえばいい ? |
| ワイズマン | 道沿いに進むと最初の街があります。まずはそこまで行って情報を集めるとよいでしょう。 |
| ワイズマン | 残念ながら、そこから先は今のように私と話すことができなくなります。 |
| ロイド | なんでだ ? |
| ワイズマン | ゲームの世界観にひたれるよう、外からの干渉は極力出来ない作りにしております。 |
| ゼロス | またそういう余計なこだわりを……。 |
| ワイズマン | ゲームの目的は旅をして成長し、『勇者』と認められ最後に『魔王』を倒すことです。 |
| ワイズマン | ゲームを進めることがコレットさんを元に戻すことに繋がるかもしれません。このような状況ですが皆さんがんばってください。 |
| ゼロス | 城下町か。名前はないのかね。 |
| ニケ | ワイズマンが考え中なんだろ。 |
| ロイド | 街もそれほど変わったところはないな。 |
| ゼロス | いたって普通の街だなー。ちょっと期待してたのにつまんねーの。 |
| ニケ | お前ら、油断するな ! |
| ロイド | な、なんだよ急に。 |
| ニケ | ククリの魔法『グルグル』は失敗した時こそが恐ろしいんだ…… ! |
| コレット | 見て、ククリ。おっきなお城があるよ。 |
| ククリ | わぁ……きっとすごく背の高い人が住んでるのね。 |
| コレット | そっか、だからお城ってあんなに上に長いんだ。 |
| ロイド | いや、違うだろ……。 |
| ニケ | わかったぞ。もう一人のコレットはあの城にいる ! |
| ゼロス | おいおい、なんでそんなことがわかるんだよ。 |
| ククリ | きっと勇者様の勇者的直観ね ! |
| ニケ | いや、そこの立て札に書いてあったから。 |
| 立て札 | この先『魔王コレット』の城。 |
| ゼロス | 魔王…… ! ? |
| ロイド | コレット ! ? |
| コレット | 大変だよロイド !私、魔王になっちゃった ! |
| ロイド | いや、落ち着けって。魔王になったのはもう一人の方だろ。 |
| コレット | あ、そっか。 |
| ニケ | 案外あっさりわかったなー。 |
| ククリ | きっとすぐ元通りになれるよコレットちゃん ! |
| コレット | うん、ありがとうククリ。 |
| ゼロス | わざわざ立て札があるなんてどうにも怪しいけどな。 |
| ロイド | それでもあの城はもう一人のコレットと何か関係あるはずだ。行ってみよう。 |
| ゼロス | 城の門は閉じてる、か。まあ、そう簡単にはいかないよな。さーて、どうするよハニー。 |
| ロイド | いったん街に戻って、この城の情報を集めよう。ワイズマンもそうしろって言ってたからな。 |
| ククリ | 城下町かぁ……ステキなお店があるかな ? |
| コレット | 私、美味しいケーキ屋さんがいいな。ククリは ? |
| ククリ | あたしは服屋さん ! |
| ロイド | 二人とも、目的を忘れないでくれよ。 |
| コレット | も、もちろんだよ。 |
| ククリ | そうそう。これはちょーさなんだから。 |
| ロイド | なんだかのんびりしてるな……。ニケ、ゼロス、俺たちだけでもしっかりと……。 |
| ニケ | 城下町かぁ……。カッコイイ装備とセクシーなお姉さん……。 |
| ゼロス | いいねえ。パーティに可愛い女の子が二人もいて。 |
| ロイド | だ、大丈夫か、このパーティ……。 |
| Character | 4話【第4章 不思議な街】 |
| コレット | ねえ、気のせいかな ?この街、見たことのある人が多い気がする。 |
| イヌ1 | ワン ! ワン ! |
| イヌ2 | クゥ〜ン、クゥ〜ン。 |
| ニケ | それにイヌ、多くね ? |
| 街の人1 | ネコ〜、ネコ〜、こっちへおいで〜。 |
| イヌ1 | クゥ〜ン。 |
| 街の人2 | ろっくん、お散歩行くよー。 |
| イヌ2 | ワンワン ! |
| ニケ | しかも名前が独特すぎる。 |
| ロイド | うーん、このセンスどこかで……。 |
| ククリ | 見て、コレットちゃん。あのお店、入り口の隣に大きな穴が空いてるよ。 |
| コレット | ほんとだ。変な形の穴だね〜。 |
| ロイド | この形……そ、そうか ! ? |
| ニケ | なにぃ ! ? 知っているのかロイド ! |
| ロイド | ……なんでそんな大げさに言うんだ。 |
| ニケ | いや、そろそろ盛り上がりがほしいかなと思って。 |
| | ニケは気を回した。 |
| ロイド | ……まあいいや。とにかくこの穴。これはコレットが転んでぶつかった時にできるやつだ ! |
| ニケ | いや、どんだけの勢いでぶつかったらこんな風に穴が空くんだよ ! |
| コレット | えへへ……。 |
| ロイド | この街って、どれもこれもコレットのセンスで出来てるんだよ ! |
| ゼロス | なるほどね。俺たちにとって見知った顔が多いのはコレットちゃんの知ってる顔ってわけか……。 |
| イヌ3 | ウ〜、グルルル……。 |
| ゼロス | うおっ ! ? なんだこのイヌ !俺さまの服の裾を噛むな ! |
| 街娘 | こらっ、やめなさい !うちの子がすみません ! |
| ゼロス | ……いや、いいんだ。ところで、名前を聞かせてくれるかな ? |
| 街娘 | はい、カメウチっていいます。 |
| ゼロス | カメ…… ! ? あ、いや、実に個性的ですね。そしてどこか愛らしさを感じさせる……。お嬢さん、キミにピッタリだ。 |
| 街娘 | 私じゃなくてこの子の名前なんですが……。 |
| ゼロス | え ! ? あ、もちろんそうだよな !ちょっとした冗談だよ。じょーだん。 |
| ニケ | ナンパ失敗だな。 |
| ゼロス | うるせー、情報収集だ。 |
| ククリ | カメウチだって。かわいい〜。 |
| カメウチ | クゥ〜ン。 |
| コレット | カメウチちゃん、尻尾がかわいいなぁ〜。 |
| ニケ | なぜカメ……。 |
| ロイド | あまり深く考えない方がいいぞ。コレットのセンスは独特だから。 |
| コレット | そうなのかな。 |
| ククリ | あたしはかわいいと思うよ。そうだ ! コレットちゃん、あたしたちにもあだ名つけて ! |
| ニケ | げっ……。 |
| ククリ | なぁにぃ ? その反応。 |
| ニケ | い、いや……なんでもないです。 |
| コレット | えっとね、ククリは……クークー ! |
| ククリ | かわいい〜。 |
| コレット | ニケはヒョイヒョイって身軽だから……オヒョイ。 |
| ニケ | お、オヒョイ……。 |
| コレット | ロイドはね〜。 |
| ロイド | お、俺も ? いや、今さらあだ名なんて……。 |
| コレット | あ、そうだね。ずっと一緒だったから今さらあだ名なんて変だよね。 |
| ククリ | そんなことないよ !ロイドくんだって、嬉しいよね ! |
| ロイド | え……いや、どうかな……。 |
| ククリ | 嬉しいよねっ ! |
| ロイド | お、おう、嬉しいぞ ! |
| コレット | じゃ、じゃあ……ロイロイ。 |
| ロイド | あ、うん……。 |
| | ロイドは照れている。 |
| ゼロス | ずっるーい。俺も俺も !コレットちゃん、俺にもあだ名つけてよ ! |
| コレット | えっとね、ゼロスは……。 |
| ニケ | 『ナンパ奉行』。 |
| ゼロス | 誰がナンパ奉行だ !俺はコレットちゃんにつけてもらいたいの ! |
| ロイド | いいんじゃないか。ナンパ奉行。 |
| ククリ | ピッタリよね。ナンパ奉行。 |
| コレット | じゃあ、ナンパ奉行で。 |
| ゼロス | そんなあ……。 |
| Character | 5話【第5章 情報集め】 |
| 街娘 | ところで、ナンパ奉行さんとそのお連れさんは旅の方ですか ? |
| ゼロス | さっそく言われるのかよ……。 |
| ロイド | ああ。あの城に入りたいんだけどどうすればいいか知ってるか ? |
| 街娘 | 魔王様のお城ですか。ごめんなさい。私にはちょっと……。でも、誰か他の人なら知っているかもしれません。 |
| ロイド | そうか。ありがとう。他の人にも聞いてみるよ。 |
| ロイド | 魔王『様』か……。 |
| ニケ | ここじゃ、魔王が受け入れられてるんだな。 |
| ゼロス | 魔王っていってもコレットちゃんだろ ?それなら気持ちわかるなー。 |
| ククリ | あたしたちの世界の魔王もコレットちゃんみたいならいいのに。そしたら仲良くなれると思うの ! |
| ニケ | ほう、魔王が可愛い女の子か……。 |
| ゼロス | ああ。悪くない、だろ…… ? |
| ロイド | 変なこと考えてないで、街の人に話を聞くぞ。 |
| 四人 | はーい。 |
| ククリ | あ、見て見てコレットちゃん !あのお店、可愛い……じゃなくて、とっても怪しいよ ! |
| コレット | ほんとだ。すごくイイ匂い……じゃなくて、危険な香りが漂ってるね ! |
| ニケ | 見たまえ、ゼロスくん。あのボンッ、キュッ、ボンッなお姉さんを。きっと何か重要なことを知っているに違いない。 |
| ゼロス | ニケくんの言う通りだ。きっと俺たちがまだ知らないステキなことを手取足取り教えてくれるはず。 |
| ロイド | お、お前ら……。 |
| ククリ | さっそくちょーさよ、コレットちゃん ! |
| ニケ | そこのおねーさん、ちょっとお話を ! |
| ロイド | まったく……こんな調子で大丈夫かな。 |
| コレット | ロイド……。 |
| ロイド | コレット、どうしたんだ ? |
| コレット | えっと……ロイドも一緒に行かない ? |
| ロイド | 俺も ? いや、情報収集なら手分けした方が……。 |
| ククリ | (ロイドくん、ロイドくん ! ) |
| ロイド | え ? |
| ゼロス | (バカ ! そこはむしろハニーから誘うんだよ ! ) |
| ククリ | (そうよ、ロイドくんのどんかん ! ) |
| ニケ | (そんなことよりめちゃくちゃトイレに行きたい ! ) |
| | 全員が何かを訴えている ! |
| ロイド | なんだよ、みんな。言いたいことがあるならちゃんと声に出せよ ! |
| コレット | ごめんね、ロイド。なんでもないの。あ、見て。酒場って書いてあるよ。情報収集ならあそこがいいんじゃないかな。 |
| ロイド | あ、ああ……そうだな。行ってみるか。 |
| 二人 | はぁ……。 |
| ニケ | (あの店でトイレを借りられなければ……終わる ! ) |
| ニケ | おっちゃんトイレ貸して ! |
| 店主 | え ? あ、ああ……そこの奥だよ。 |
| ニケ | さんきゅー ! |
| ロイド | ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いいか ? |
| 店主 | おっと、ここは酒場だ。まずは注文をしな。 |
| ロイド | そうだな。えーと……。 |
| 店主 | それで、何が聞きたいんだ ? |
| ロイド | 街の外れにある城に入る方法を知りたいんだ。 |
| 店主 | なら、『証』を探すんだな。 |
| ロイド | 『証』…… ? |
| 店主 | 魔王様の城に入れるのは認められた者だけだ。その『証』を持っていけば門は自然に開くらしい。 |
| ゼロス | なんか曖昧な話だな。認められるって、いったい誰にだよ。 |
| 店主 | そりゃあもちろん── |
| ニケ | ふー、さっぱりした。一時はどうなることかと思ったぜ。 |
| ククリ | もう、勇者様ったらいきなりトイレだなんて。みんな注文すませちゃったわよ。 |
| ニケ | 悪い悪い。おっちゃん、オレも注文を── |
| 店主 | 待て。あんた今、『勇者』って言ったか ? |
| ククリ | そうよ、勇者様は勇者様なんだから ! |
| ニケ | どうも。何を隠そうオレが勇者です。 |
| 店主 | ……とっとと出てってくれ ! |
| ロイド | なっ ! ? 急にどうしたんだよ ! |
| 店主 | うるせえ !うちには勇者に食わせるフルーツポンチはねえ ! |
| ククリ | いった〜い、お尻ぶつけちゃった。 |
| ニケ | なんなんだ、あのおっちゃん。急に怒りだして。 |
| ゼロス | あーあ。フルーツポンチ食いそこねちまった。 |
| ロイド | やっぱり、ここが魔王の街だからか ?勇者は歓迎されないのかもな。 |
| ニケ | あの様子じゃ、どこ行っても門前払いっぽいぞ。 |
| ゼロス | こうなったら、別の方法で城に入るしかないぜ。俺さま、他の入り口でもないか調べてくるわ。 |
| ロイド | あ、待てよゼロス。勝手に── |
| ニケ | 行っちまったな。 |
| ロイド | まあ、いつものことだけどな。それじゃあ、俺たちはどうするかな……。 |
| 兵士 | お前たちか ! 勇者とその一味というのは ! |
| ロイド | なんだ、あんたたち ? |
| 兵士 | 我々は魔王様に仕える者。勇者とその仲間は捕らえて処刑せよとのご命令だ。 |
| ククリ | しょ、処刑 ! ? |
| ロイド | とにかく逃げるぞ ! |
| 兵士 | 逃がさん ! |
| | しかし回り込まれてしまった ! |
| コレット | ど、どうしようロイド……。 |
| ロイド | くっ…… ! このままじゃ……。 |
| ニケ | オレに……まかせろー ! |
| ニケ | 光魔法『カッコいいポーズ』 ! |
| ロイド | か、カッコいいポーズって……。 |
| コレット | でも見て、兵士さんたちが……。 |
| 兵士1 | うおおおお ! なぜか目が離せないいいいい ! |
| 兵士2 | 鼻がむずむずするのに動けない ! |
| 兵士3 | くそー ! このままじゃ逃げられてしまう ! |
| ニケ | 今だロイド !オレが引き付けているうちに逃げるんだ ! |
| ロイド | ニケ…… ! |
| ククリ | そんな、勇者様 !勇者様を置いてなんていけないわ ! |
| ニケ | ロイド……ククリを頼んだぜ。 |
| ロイド | すまない ! 必ず助けに戻る ! |
| ククリ | いやー ! 勇者様ー ! |
| 兵士 | 勇者の仲間を探せー !近くに潜んでいるはずだ ! |
| ロイド | くっ……ニケのおかげで脱出できたけどこのままじゃ見つかるのは時間の問題だな。 |
| ククリ | うう……勇者様ぁ……。 |
| コレット | 元気出してククリ。ニケはきっと無事だから。 |
| ロイド | ニケを助けにいくためにも、準備を整えないと……。 |
| ? ? ? | ……お前たちが勇者の仲間だな。 |
| ロイド | 誰だ ! ? |
| ? ? ? | 安心しろ。私は敵じゃない。お前たちを逃がしてやる。ついてこい。 |
| コレット | ロイド、どうする? |
| ロイド | ……行ってみよう。今はそれしか方法がない。 |
| Character | 6話【第6章 城の主】 |
| ? ? ? | 私の隠れ家はこの先だ。そこなら安全だろう。 |
| ロイド | 助けてくれたことには感謝する。だけど、あんたは何者なんだ。 |
| ? ? ? | 私は……。 |
| ロイド | ユアン ! ? |
| ? ? ? | ユアン ? 誰だそれは。 |
| ロイド | そうか。ここの人たちはコレットが知ってる顔をしているだけで同じ人間じゃないんだっけ。 |
| ? ? ? | いったい何を言っている。まったく、このような状況でなければお前らの相手などせんものを。 |
| ロイド | ……別人だとわかってるんだけどなんか腹立つな。 |
| ククリ | ねえ、どうして助けてくれたの ? |
| ? ? ? | それは……お前たちにやってもらいたいことがあるからだ。 |
| ロイド | やってもらいたいこと ? |
| ? ? ? | 着いたぞ。ここが我が家だ。詳しい話は中でしよう。 |
| コレット | こんな地下道に立派な部屋だね。 |
| ククリ | すっごくぜーたくしてる……。 |
| ロイド | で、あんたはいったい何者なんだ ? |
| 元魔王 | 私は元魔王。……いや、今もまだ魔王だ。 |
| ロイド | 元、魔王 ! ? |
| 元魔王 | そうだ。突然現れた小娘が私の城を乗っ取り勝手に魔王を名乗ったのだ。 |
| 元魔王 | おかげで私はこのような地下に追いやられ不自由極まりない暮らしをしている。 |
| ククリ | じゃあ、あのお城はもともとあなたのものだったの ? |
| 元魔王 | そうだ。まあ、適当に座れ。座布団なんかないからな。 |
| ロイド | あ、はい……。 |
| 元魔王 | 久しぶりに出掛けたから疲れたな。飲み物とお菓子を用意してっと。はー、やはり我が家が一番落ち着く……。 |
| ロイド | どこが不自由なんだ……。 |
| 元魔王 | で ? どこまで話したっけ ? |
| ロイド | あんたが城を奪われたって。 |
| 元魔王 | ああ、そうだった。まったくひどい話だ。人の城を勝手に……。 |
| ロイド | それにしては、街の人たちはコレット……新しい魔王を受け入れてたみたいだけど。 |
| 元魔王 | ふん。下々の者どものことなんぞ知るか。やつら、あっさり私を裏切りおって。 |
| 元魔王 | だいたい、常日頃から税金が高いだの私が贅沢しすぎだの文句ばかり。 |
| ククリ | 裏切られたのって、それが原因なんじゃ……。 |
| ロイド | 自業自得だな。 |
| 元魔王 | そんなことはどうでもいい !お前たち、助けてやったからには礼をしろ !私の城を取り戻せ ! |
| ククリ | なーんか、すごくいやーな感じ。 |
| コレット | うん、うん。 |
| ロイド | 帰るか。 |
| 元魔王 | ああっ ! 待って帰らないで !どうか助けてください !本当に困ってるんです ! |
| ククリ | 最初からそう言えばいいのに。 |
| コレット | うん、うん。 |
| ロイド | 俺たちは城に入れなくて困ってるんだ。元魔王なら何か知ってるんじゃないか ? |
| 元魔王 | ほう……城に入る方法か。それには『勇者の証』が必要だ。 |
| ククリ | あ、立ち直った。 |
| 元魔王 | 魔王に挑む資格を得たという『証』。そして勇者だけが持てる『最強の武器』を手に入れる必要がある。 |
| 元魔王 | その二つが揃わなければ魔王に勝つことできない。ゲームのルールがそうなってるからな。 |
| ロイド | 自分でゲームって言うのかよ。 |
| ククリ | もしかして、コレットちゃんを元に戻すにはその『最強の武器』で魔王を倒してゲームを終わらせないといけないんじゃないかな。 |
| ロイド | コレットを元に戻すのにコレットを倒すのか ?……複雑な気分だな。 |
| コレット | ロイド、私はだいじょぶ。みんなに迷惑をかけることの方が嫌だもん。 |
| 元魔王 | 話は決まったようだな。では『勇者の証』と『最強の武器』について── |
| ? ? ? | もけもけさ〜 ! |
| 元魔王 | ぐああああああああっ ! |
| コレット | 元魔王さん ! ? |
| ロイド | 誰だ ! |
| ゼロス | ふっふっふ……ようやく見つけたぜ、ハニー。 |
| ロイド | ゼロス…… ? どうしてこんなことを ! |
| ゼロス | 悪いな、俺は魔王なコレットちゃんにつくことにした。 |
| コレット | もう一人の、私に…… ! ? |
| ロイド | どうしてだ、ゼロス ! |
| ゼロス | 理由……理由か。それは自分に聞いてみな、ハニー。 |
| ロイド | 俺に…… ? |
| ゼロス | さてと、魔王様からお前たちに伝言がある。ぶっちゃけ元魔王はそのついでだ。 |
| ゼロス | 「これから街の広場で勇者を騙る少年を処刑します。皆さま誘い合わせのうえ、ご参加ください」……だそうだ。 |
| ククリ | そんな、勇者様が……処刑…… ! ? |
| ゼロス | というわけで、さらばだ !うははははははっ ! |
| Character | 7話【第7章 勇者救出】 |
| ククリ | 勇者様を助けにいかなくちゃ ! |
| ロイド | 待ってくれ、ククリ !このまま行っても捕まっちまうだけだ ! |
| ククリ | でも ! |
| ロイド | それに、勇者じゃなければ魔王を倒せないって元魔王も言ってただろ。 |
| コレット | せめて元魔王さんから『勇者の証』と『最強の武器』について聞けていれば……。 |
| 元魔王 | ああ、話すぞ ? |
| ロイド | うわ ! 無事だったのか ! ? |
| 元魔王 | 私とて魔王。あの程度でやられるものか。あれ以上痛い思いをするのは嫌なので少々死んだふりをしていただけだ。 |
| ククリ | そんなことより『最強の武器』について教えて !それがあれば勇者様を助けられるんでしょう ! |
| 元魔王 | 『最強の武器』か……。それはお前たちの心の中にある。そう……『勇気』だ ! |
| ククリ | ……冗談を聞いてるヒマはないのよ !勇者様がピンチなんだから ! |
| 元魔王 | すみませんすみません !ちょっとカッコいいこと言いたかっただけなんです ! |
| ククリ | いいからさっさと最強の武器を出しなさい〜 ! |
| 元魔王 | ぐ、ぐえええええっ…… ! |
| | ククリは元魔王を倒した ! |
| ロイド | いや、倒しちゃダメだろ ! |
| コレット | だいじょぶ。気絶してるだけみたい。 |
| ロイド | それならよかった……いや、そうでもないか。結局、なんにもわからないままだ。 |
| ククリ | こうなったら、あたし一人でも勇者様を助けにいくわ ! |
| ロイド | わかった、俺たちも一緒に行くよ。作戦も武器もないけどこのままじゃニケが危ないからな。 |
| コレット | 街の広場って言ってたよね。 |
| ククリ | 見て ! あそこ ! |
| ククリ | 勇者様がはりつけにされてる ! |
| コレット | もう一人の私もいる……。 |
| ゼロス | はっはっは、いいざまだなニケ。 |
| ニケ | くっそー ! どういうつもりだ、ゼロス ! |
| ゼロス | どういうも何も、こういうつもりさ。さあマダムたち ! よろしく ! |
| マダム1 | ちょっと、あなた聞いてくださる ! ?うちの息子の嫁ったらほんとひどいのよ ! |
| マダム2 | うちなんてお友達と外でランチですって。あたしは昨日の残り物だっていうのに ! |
| マダム3 | 息子も嫁の味方ばっかりして。親の心子知らずってこのことよね〜。 |
| ニケ | ぐああああ〜 ! や、やめろぉ〜 ! |
| ククリ | 勇者様が、苦しんでるわ ! |
| コレット | よそのお家の愚痴を聞かされてる……。 |
| ロイド | まあ、ある意味地獄……なのか ? |
| ゼロス | ふはははっ ! 苦しめ苦しめ ! |
| ニケ | くっそー ! 実はあだ名のこと根に持ってるだろ !人間がちっちゃいぞ、ナンパ奉行 ! |
| ゼロス | いやいや、全然根に持ってなんかないって。あ、マダムのみなさ~ん ! まだまだお話聞きますからね~ ! |
| ニケ | ぐあああああ〜 !やっぱ根に持ってるじゃねーかあああ ! |
| ククリ | もうやめて ! 勇者様を離して ! |
| ロイド | 望み通り来たぞ ! ゼロス、コレット ! |
| ゼロス | やっと来たか。 |
| もう一人のコレット | …………ロイド。 |
| コレット | ねえ、あなたも私なんでしょう。みんなと一緒に帰ろ ? |
| もう一人のコレット | いや ! |
| ロイド | どうしてそんな悪いことをするんだ ? |
| もう一人のコレット | う〜……嫌い嫌い ! みんな嫌い !ゼロス、やっつけて ! |
| ゼロス | 仰せのままに……。 |
| ゼロス | というわけだロイド。魔王なコレットちゃんから授かった力を見せてやるぜ。 |
| ロイド | 魔王の力…… ! ? |
| ゼロス | いくぞ ! |
| ゼロス | もんちゃらへっぴ〜もけもけさ〜 ! |
| 二人 | …………。 |
| ロイド | えーと……なんだこれ。 |
| ニケ | こ、この呪文は ! |
| ロイド | ニケ ! 何か知っているのか ! ? |
| ニケ | いや、何度聞いてもカッコ悪いなと思って。 |
| ゼロス | やかましい ! 俺だって嫌だよ !だけど魔王なコレットちゃんがくれた力だし使わないってわけにも……。 |
| もう一人のコレット | ……ぷぷぷ。 |
| ゼロス | コレットちゃん ! ? |
| ロイド | よくわからないけど、ゼロスが打ちのめされてるうちにニケを助けるぞ ! |
| ククリ | あたしにまかせて ! |
| ゼロス | まさか、力をくれた本人に笑われるとは……。けど、いじわるなコレットちゃんも嫌いじゃないぜ。 |
| ゼロス | 今度は俺さま自身が改良した魔法を見せてやる。 |
| ゼロス | 幻惑と恐れの神よ──そして嘲笑と侮辱の神よ── |
| ロイド | コレット、下がってろ。ゼロスは俺が相手をする。 |
| コレット | う、うん……気をつけてねロイド。 |
| ゼロス | コレットちゃんの前でかっこつけていられるのも今のうちだぜ、ロイド。なぜなら…… ! |
| ゼロス | 右より出でよ美の神、俺 ! |
| ゼロス | 左より出でよ知の神、俺 ! |
| ゼロス | そして真ん中より……全知全能の神、俺 ! |
| | 自己主張の激しい魔法だった。 |
| ロイド | な、なんだこれ ! ? |
| ゼロス | カッコいい俺さまによるカッコいい俺さまの魔法だ。さあ、ロイド、お前のカッコいいところを見せてみろ ! |
| ロイド | こんなバカバカしい魔法に負けるかよ !くらえ ! 魔神剣── |
| ゼロス | 遅い ! |
| ロイド | ぐあ ! |
| コレット | ロイド ! ? |
| ロイド | くっ……なんだこの力は……。 |
| ゼロス | 言ったろ ? カッコいいところを見せろって。今のお前じゃ俺さまには勝てないぜ。 |
| ロイド | くそっ……このままじゃ…… ! |
| ククリ | 長い声のネコ ! |
| 長い声のネコ | オア〜〜〜〜〜〜。 |
| ゼロス | な、なんだこの気の抜けた鳴き声は…… ! ? |
| ククリ | 勇者様は助けたわ ! |
| コレット | ククリ ! |
| ロイド | ナイスタイミングだ ! |
| ゼロス | くそっ、いつの間に ! |
| ニケ | マダムのみなさ〜ん !後はこのゼロスが聞いてくれるってよ ! |
| マダム1 | あらやだイケメンね。 |
| マダム2 | うちの息子と良い勝負だわ。 |
| ゼロス | うわああああっ ! |
| ロイド | みんな、今のうちに逃げるぞ ! |
| コレット | …………。 |
| もう一人のコレット | …………んべーっだ。 |
| ククリ | コレットちゃん、はやく逃げないと。 |
| コレット | う、うん。そうだね。 |
| Character | 8話【第8章 勇者の証】 |
| ロイド | ゼロスがあんな魔法を使えるなんてな……。 |
| ニケ | 見た目はアホっぽいけど、強さは本物だ。何か対策をしないとな……ムシャムシャ。 |
| ククリ | 勇者様、あたしにもそっちのクッキーちょうだい。 |
| ニケ | ほらよ。……おーい、元魔王。クッキーなくなったぞー。 |
| 元魔王 | 勝手に私の家のものを食べるな !だいたい、なんでまた戻ってきている ! |
| ニケ | 仕方ないだろ。ここしか行くとこないんだから。それにけっこう居心地いいし。 |
| 元魔王 | 人の家でくつろぐな ! |
| ニケ | 城を取り返すのやめよっかなー。 |
| 元魔王 | あ、どうぞどうぞ、いくらでも食べてください。お茶のおかわり持ってきますね。あと、お風呂も沸かしときますんで。 |
| コレット | …………。 |
| ククリ | コレットちゃん、クッキー食べないの ? |
| コレット | ……うん、今はいいや。 |
| ククリ | ……悩んでることがあったら、話してみて。あたしでよかったら相談にのるよ。 |
| コレット | ありがとう、ククリ……。 |
| コレット | あのね。もう一人の私が「みんな嫌い」って言ったの。 |
| コレット | それって、私の中にそんなことを口にしちゃうような悪い気持ちがあったってことなのかな、と思って……。 |
| ククリ | 『嫌い』って言葉は、本当は別の意味かもしれないよ。 |
| コレット | 別の意味…… ? |
| ククリ | あたし、前に悪魔になっちゃったことがあるの。 |
| ククリ | 勇者様をとられそうになって悪い気持ちで胸がいっぱいになっちゃったの。 |
| ククリ | 勇者様を困らせるようなことばかりして「きらい」なんて書いた手紙を矢につけて飛ばしたり……。 |
| ククリ | でもね、そんなことしてても勇者様と仲良くなりたいって思ってた。 |
| ククリ | おかしいよね。 |
| ククリ | だから、もう一人のコレットちゃんが「みんな嫌い」って言ったのは、何かほかに言いたいことがあったんじゃないかな。 |
| コレット | もう一人の私が言いたいこと……。 |
| ククリ | ごめんね。あたしがグルグルに失敗しちゃったせいでコレットちゃんをこんなに悩ませて。 |
| コレット | ううん、ククリのせいじゃないよ。きっと私に何か……。 |
| ニケ | ……ククリのグルグル失敗したわけじゃないのかもな。 |
| ククリ | 勇者様…… ? |
| ロイド | どういうことだ ? ニケ。 |
| ニケ | ずっと思ってたんだ。グルグルが失敗したら、もっとおかしなことになる。それにしちゃこの世界はなんていうか……。 |
| ククリ | ちゃんとしてる ? |
| ニケ | そう ! |
| ロイド | 確かに、街の人はコレットの知ってる顔ばかりだ。イメージ通りになってるってことか。 |
| ニケ | それにさ、ゼロスのあの格好に魔法。オレとククリの知ってるやつのなんだよ。 |
| ニケ | なんだかククリとコレットのイメージがちょうどよく合わさってる気がするんだ。 |
| ロイド | だとしたらククリはどんな魔法をかけようとしたんだ ?それが手がかりになるかもしれない。 |
| ククリ | えっと……それは……。 |
| ロイド | …… ? どうしたんだ ? |
| ククリ | あたしはコレットちゃんの悩みを解決したくて……。 |
| ロイド | コレットの悩みって ? |
| コレット | それは……私にもよくわからないの。 |
| コレット | ロイド、リフィル先生と遺跡探索に行ったでしょ ?それからずっとモヤモヤしてたの。一緒にお出掛けする約束、忘れちゃったのかなって。 |
| ロイド | いや、忘れてなんか── |
| コレット | わかってる。日にちだって決めてなかったしロイドは悪くない。 |
| コレット | でも、それでも、すごくモヤモヤして……。そんな自分がすごく嫌で……あ。 |
| ロイド | ど、どうした ? |
| コレット | そっか、もしかしたら私……。 |
| ククリ | 何かわかったのね、コレットちゃん。 |
| コレット | うん。私、会わなきゃ ! もう一人の私に。 |
| ニケ | だけど、そのためにはゼロスをなんとかしないとな。あの様子だと、また邪魔してくるぜ。 |
| ロイド | それなら俺に考えがある。 |
| ニケ | お、なんか作戦を思いついたのか ? |
| ロイド | そんな大げさなものじゃないけどな。ニケ、俺に……『カッコいいポーズ』を教えてくれ ! |
| ニケ | ほう……『カッコいいポーズ』を習得したいと申すか。じゃが、修行は厳しいぞ。 |
| ロイド | ああ、望むところだ。 |
| 元魔王 | よくぞ言った ! |
| ニケ | うわっ、いきなりなんだよ ! |
| 元魔王 | 仲間を想う心、己と向き合う覚悟 ! それこそ勇気 !そなたたちはついに『勇者』となったのだ ! |
| 元魔王 | ついにこれを渡す時が来た……。さあ、受け取るがいい。これこそが『勇者の証』だ。 |
| ニケ | いや、なんでそんなもん持ってんだよ。あんた、元とはいえ魔王だろ。 |
| 元魔王 | 私は魔王のほかに勇者を導く賢者の役もやっている。一人二役というやつだな。 |
| ニケ | ワイズマン、費用ケチったな……。 |
| | 予算の都合だった ! |
| ロイド | とにかく、これでやることは決まったな。 |
| コレット | うん ! あとは準備をして魔王の城に乗り込むだけだね。 |
| Character | 9話【第9章 魔王の城へ】 |
| ククリ | わぁ…… ! すごく似合ってるよコレットちゃん。 |
| コレット | ありがとう、ククリ。 |
| ロイド | ニケとククリの服が『勇者の証』だったんだな ! |
| ニケ | そう言われるとなんか照れるけどな。ぶっちゃけ普段着だし ? |
| コレット | 私は嬉しいよ。ククリとおそろいで。 |
| ククリ | うんうん、コレットちゃんとおそろい ! ステキ ! |
| ニケ | オレはなんかちょっと恥ずかしいんだけど……。 |
| ロイド | そうか ? 動きやすくて、俺も気に入ったぜ。 |
| ロイド | さあ、元魔王の言う通りならこの『勇者の証』で城の扉が開くはずだ…… ! |
| ニケ | おお ! ほんとに開いた ! |
| ククリ | 勇者様、疑ってたのね……。 |
| ロイド | いくぞ、みんな。今度こそ決着をつけよう。 |
| コレット | うん。私、もう逃げないよ…… ! |
| ゼロス | やっと来たかロイド、ニケ……いや、勇者たち。 |
| ニケ | ゼロス ! 裏切りの名がお前の悪夢になる。そして闇を祓う光が、世界を呼び覚ます目覚めの鶏だ ! |
| ゼロス | ふっ……愚かな。闇があるからこそ光が存在するというのに。 |
| | 二人は意味不明な会話をしている ! |
| コレット | もう一人の私……。 |
| もう一人のコレット | …………。 |
| コレット | ねえ、一緒に帰ろう ? |
| もう一人のコレット | やだ ! あなたなんか嫌い ! |
| コレット | っ ! ? |
| ゼロス | おっと、魔王なコレットちゃんと話したいなら俺さまを倒してからにしてもらおう ! |
| ゼロス | 幻惑と恐れの神よ──そして嘲笑と侮辱の神よ── |
| ニケ | 来るぞ、ロイド ! 準備はいいか ! ? |
| ロイド | ああ、いつでもいける ! |
| ゼロス | その威勢がいつまで続くかな。以下省略 ! 出でよ―― |
| ゼロス | 全部、俺 ! |
| ニケ | くっ ! 相変わらずなんてナルシストな魔法だ !慎みってもんがないのか ! |
| ロイド | だが、そこに突破口があるんだ !いくぞニケ ! |
| ニケ | 任せろ ! 光魔法『カッコいいポーズ』 ! |
| ククリ | 勇者様ステキ ! |
| ゼロス | ふん、いくら女の子の応援があろうと無駄だ !その程度で俺さまは揺らがねえ ! |
| ニケ | ふっ……んなことわかってるよ。ロイド ! 今だ ! |
| ゼロス | な、なにい ! ? |
| ロイド | おう ! いくぞ ! 『カッコいいポーズ』 ! |
| | ロイドはやりきった ! |
| ニケ | 光魔法『カッコいいポーズ』とは──自然と一体化し己のカッコよさを極限まで高めて解き放つ奥義である。 |
| ロイド | ゼロス、お前の魔法は自分への揺るぎない自信が力の源なんだろう。だからこそ、その自信の上をいけば打ち砕ける ! |
| ニケ | ついでに言えば、そっちは一人のカッコよさだがこっちは二人がかりだ ! |
| ゼロス | ぐああああ〜 ! |
| ゼロス | ……負けだよ、ハニー。この俺さまが、つい見とれてしまった。 |
| ロイド | 俺からやっといてなんだけどこんな勝負でよかったのか……。 |
| ニケ | いいんだよ、勝ちさえすれば。 |
| ゼロス | なんでもいいさ。俺は負けた。あとはコレットちゃん、キミの戦いだ。 |
| コレット | うん……。 |
| もう一人のコレット | っ…… ! |
| コレット | ……ごめんね。 |
| もう一人のコレット | え……。 |
| コレット | ロイドとリフィル先生が話してるのを見て私、ちょっとだけ不安になったの。ロイドが約束を忘れちゃったんじゃないかって。 |
| コレット | そんな風にロイドのことを疑ったり、リフィル先生を羨ましいなんて思った自分が嫌で、モヤモヤした。あなたはそんな私の『自己嫌悪』から生まれたんだね。 |
| コレット | ククリの魔法は私が自分と向き合えるようあなたを作り出したのに、私はそれを拒んでしまった。 |
| コレット | 突き放されたみたいで悲しかったよね。自分もほかの人も、みんな『嫌い』ってそう言うしか方法を知らなかったんだよね。 |
| コレット | 私はあなたのこと嫌わないよ。だって、大事な大事な私の一部だから。だから……戻って来て。 |
| もう一人のコレット | ……うん ! |
| コレット | ……おかえりなさい。 |
| ククリ | コレットちゃん……よかったね。 |
| コレット | うん。ククリのおかげだよ。グルグルって、ステキな魔法だね。 |
| ククリ | うん ! |
| Character | 10話【第10章 冒険は続く】 |
| ワイズマン | 無事にコレットさんを元に戻せたようですね。 |
| ロイド | ああ、なんとかな。 |
| ゼロス | いや~、なかなか骨の折れる冒険だったぜ。 |
| ニケ | おいこらナンパ奉行。大変にしてたのは主にお前だろ。 |
| ゼロス | あれ ? そうだっけ ? |
| コレット | ごめんね、みんな。私のせいで迷惑かけちゃって。 |
| ククリ | それを言うなら、あたしがグルグルに失敗したと思いこんじゃったせいだよ。ごめんねコレットちゃん。 |
| コレット | ううん、ククリは私のためにがんばってくれたんだもの。 |
| ククリ | コレットちゃん…… ! |
| コレット | ククリ ! |
| ニケ | はいはい、そのくらいにしとけって。ロイドがなんか言いたそうにしてるからさ。 |
| ロイド | お、おい、ニケ ! |
| ゼロス | 今さら逃げるなよ、ハニー。 |
| ロイド | 逃げたりなんかしないって !けど、そんな言われると照れくさいっていうか……。 |
| コレット | ロイド ? どうしたの ? |
| ロイド | あー……えーと……これ、コレットに。 |
| コレット | これ……髪飾り ? |
| ロイド | 約束、忘れてたわけじゃないんだ。こっちに来てからちゃんと誕生日を祝ってあげられなかったからさ。 |
| ロイド | リフィル先生と行った遺跡に変わった鉱石があるって聞いてたから、それを使った髪飾りをプレゼントしようと思ってて……。 |
| コレット | ロイドのプレゼント……ありがとう。すごく嬉しい。 |
| 二人 | ひゅーひゅー。 |
| | 古風な冷やかしだった。 |
| ロイド | ふ、二人ともやめろって !……いや、待った。なんでまだメッセージが出るんだ ? |
| ワイズマン | 良い場面でしたので私も少し参加したくなりまして。 |
| ロイド | そんな気の利かせ方しなくていいよ……。 |
| ククリ | よかったね、コレットちゃん ! |
| コレット | うん ! |
| ニケ | さーて、これでオレたちの仕事も終わりかな。 |
| ククリ | えー、勇者様もう帰るの ? |
| ニケ | 仕方ないだろ、オレたちはあっちの世界じゃまだ魔王を倒してないんだし。 |
| ククリ | そっか……そうだよね。あたしたちまだ旅の途中だった。 |
| ゼロス | ククリちゃんがいなくなると寂しくなるなあ。あ、ニケは別にいいぞ。先帰ってても。ククリちゃんのことは俺さまに任せてくれ。 |
| ニケ | お前なんかに任せてたまるか ! ナンパ奉行 !ククリはオレの仲間だ ! |
| ククリ | そんな、勇者様ったら。『ククリはオレのだ』なんて。 |
| ロイド | いや、そうは言ってないだろ。 |
| コレット | やっぱりちょっと寂しいな。せっかくお友達になれたのに。 |
| ククリ | あたしも寂しい !ねえ、勇者様もうちょっとだけ……。 |
| ニケ | うーん……だけどなあ……。 |
| ワイズマン | でしたら、シャドウを残していかれては ? |
| ニケ | シャドウ ? なんだそりゃ ? |
| ワイズマン | 今回のコレットさんの分裂とは違う完全なもう一人の自分といったところです。 |
| ワイズマン | コレットさんと別れたくないというククリさんのその想いがあれば可能です。 |
| ククリ | じゃあ、それやって ! |
| ニケ | 決断はやっ ! |
| ククリ | ねえ、勇者様もやろうよ ! |
| ロイド | 俺からも頼むぜ。『カッコいいポーズ』の修行がまだまだ中途半端だからな。 |
| ニケ | ……ったく、しょうがねえなあ。そこまで言われたら断れないだろ。 |
| ゼロス | 素直に、俺さまにククリちゃんをとられないか心配だって言えばいいのに。 |
| ニケ | う、うるさいな !ていうか、お前とも決着をつけないとな ! |
| ゼロス | いいぜ、どっちがよりカッコいいか勝負だ。今度はハニーと二人がかりなんてナシでな。 |
| ニケ | 望むところだ ! |
| ワイズマン | どうやら、ニケさんの想いも十分なようですね。 |
| ククリ | やったぁ !勇者様、こっちの世界でも冒険しよーね ! |
| ニケ | おう ! |