SPLIT568Character#N/A
リッピ職人の朝は早い――と、よく言われますが。
リッピそれすなわち、職人様ではない一介の妖精に過ぎぬ私はもっと努力せねばならぬということなのです。
リッピゆえ、本日のパーティの準備は明け方よりもさらに早く――日を跨ぎほどなくした頃から始めるのでございます。
リッピさて、仕込みを始めていきましょう !本日も、最高のおもてなしをするのでございます。
リッピ皆様に笑顔になって頂くこと。それは至上の喜び。そのためならば――いかなることも、苦ではなく幸福への礎というもの。
リッピそれではまず、漬け込んでおいた野菜を――
――コンコン
リッピおや ? ノックの音……こんな時間に一体どなたが――
カナえへへ、リッピ~ ♪
リッピこれは――アレン様、カナ様 !こんな夜分に、どうされたのですか ?
アレンちょっと寝つけなくて散歩してたらカナも同じだったみたいで。
カナ二人で月を見ながらお喋りしてたの。そうしたら、急に何かワクワクエネルギーを感じたの。
カナ――『ずももも~』って。それで、こっちに。
リッピ反応の擬音は独特でございますが、流石はカナ様。楽しいことに敏感でございますね。
アレンそうしたら、灯りが点いているのが見えたから……もしかして、リッピかな、って思ってきてみたんだ。――当たりだったみたいだね。
カナひょっとして、今日のパーティの準備 ?
リッピええ ! 最高に素敵な催しとするために少々、特別な料理をご用意しようと思いまして。その下ごしらえでございます。
アレンだと思ったよ。いつもありがとう、リッピ。――せっかくだし準備、手伝わせてくれないかな ?
カナ一緒にやったら、絶対に、もっと楽しいわ !
リッピむむ。なるほど…… ! これまでにお見せしていないサプライズなおもてなしもあるので、秘密裏に進めよう――という想いがあったのですが……。
リッピしかしお二人のご厚意――想いを無下にすることなど、できる筈ありません。それでは、少々お手伝いをお願いいたしましょう !
アレンうん、頑張るね。
カナえいえいおー、よ !
リッピそれではまず、そこに漬けてある食材の皮を剥きこちらに投げていただけますか ?
アレン投げる、でいいの ?
リッピはい。お渡しいただかずとも大丈夫です。時短テクみたいなものですね。
カナ分かったわ !しゃりしゃりしゃり~っと♪――それじゃあ、行くわよ ! ぽいっ !
リッピこの食材は鮮度が命――一瞬で切り刻み鍋に投下しなければ味の劣化は必至 !
リッピなればこそ―― !銀河よ輝け ! 秘技『乱れ流星みじん切り』 !
ずしゃしゃしゃしゃしゃしゃーー !――ぽとん
カナわぁ ! 凄い !材料が一瞬で細切れになったわ !
リッピ88Hitでございます。
アレンそんなことになってたんだ……すごいね。
リッピさぁ、どんどんこちらに投げてください。一つたりとも逃しはしません。
カナ戦ってる時みたいね。
リッピ私にとって、調理場は戦場なのでございます !行きますよー !
リッピこのぐらい切っておけばで十分でございます !
カナうふふっ♪ リッピの新技や秘密の調理道具がいっぱい見られてとっても楽しかったわ !
アレンうん。すごかったよ。『天空イヅナかつら剥き』、『瞬閃細断』『ミキサー・オブ・リサヲラ』……。
リッピ会得した技も、秘蔵お料理グッズもまだまだあるのですが――本日はこれにて、というところでございますね。
リッピそれでは、お二人ともお手伝いありがとうございました。
アレンここまでで、いいの ?
リッピはい。これ以上お手伝いいただいてしまうと私、恐縮のあまり心穏やかでおられません。――あとは、私の方で片付けまでしておきますので。
アレン……うーん。そっか。――分かったよ、リッピ。あまり、無理しないでね。
アレンねぇ、カナ……ちょっと相談があるんだけど。
カナそうよね。アレン……もちろんよ ♪

Character#N/A
リッピおもてなし――それは言わば、『大切な方にどれだけ尽くせるか ? 』という『こだわり』でございます。
リッピ皆様に、少しでも質の高いお料理をお出しする。そのために、食材は徹底的にこだわらねばなりません。
リッピゆえに――昼の時間は狩猟に出向くのです。
サラよーし、それじゃあ、冒険に出発だね !
リッピいやはや――こっそりと行くつもりが……昨晩のアレン様、カナ様に続いてお二人に見つかってしまうとは。
リッピこれは不覚でございますね……。秘蔵レシピの料理でパーティに驚きを―― ! という私のサプライズ力の詰めの甘さを恥じるばかり。
サラそんなに思いつめなくても……。――私たちにも手伝わせてよ、リッピ !
ゼファーそうだぞリッピ。気にするな。
ゼファーお前の場合、隠さなくてもやることなすこと、だいたいサプライズだからな。まったく気にしなくていい。
リッピそう言っていただけますならば――みんなで一緒に食材集めと参りましょう !
サラそれで、何を採りにいくの ?
リッピ肉、魚、山菜でございますね。この辺りを調査した結果、伝説級のかなり特別な食材が色々ありましたので、それらを !
リッピ――皆様、装備は十分に整っておられますね ?
ゼファー嫌な予感しかしねぇ言い草だな。
リッピまずは山菜――キノコからいきましょう !
ひゅんひゅんひゅん――
ゼファーサラ ! 左に飛んでるぞ !
サラはい ! ――てぇぇぇぇいっ !捕まえた !
リッピありがとうございます !サラ様の俊敏さのおかげでかなり楽に採ることができました。
ゼファー……で。なんなんだ ?この高速で飛び回るキノコは……。
リッピトビマイタケ――とても新鮮で活きが良いため飛翔するように跳ねる、特別なキノコでございます。
ゼファー特別を通り越して、異常といえる代物だな……。
リッピ味は抜群でございますよ。さぁ、次は海に出向きましょう !
サラ海 ! やったぁ !
ゼファーとなると、サラの出番じゃないか ?
サラそうですね ! 故郷では色々やってましたから。釣りかな ? 網かな ?
リッピいえいえ、サラ様 ! 特別な食材ですから !
リッピ――そのようなものでは太刀打ちできませんよ。
ゼファーああ……なるほど。そうか――
巨大エビビッグ・ウェンズデー
ゼファー俺の出番かぁぁぁぁぁぁぁっ !
リッピさすがですゼファー様 ! 伝説の存在八枚羽根の巨大エビ『ビッグ・ウェンズデー』を相手にあそこまで複雑な関節技をキメるとは !
サラ一体どうやっているのか全然わかりませんがなんだかすごいです ! ゼファーさん !
巨大エビビッグ・ウェンズデー
ゼファーよし……おとなしくなったな。――それにしてもどうして俺はこう珍獣の相手ばかりさせられるのか……。
ゼファーもうそろそろ珍獣ハンターの称号が得られそうだぜ。
リッピ最後は、メインディッシュとなる牛を捕りにいきましょう。非常に特別な牛でございます。
サラ特別な……牛。
特別な雄牛――ぴょん ! ぴょん !ぴょぉぉぉぉぉん ♪
ゼファーだからよ ! 目をギラつかせて―― !楽しげにスキップしながら突進する雄牛ってのは―― !特別どころか異常だって言ってんだよ !
リッピ天下無双の雄牛―― ! ここ一帯の牛の首領 !音速のスキップで幾多の牛を跳ね飛ばしてきたと言われる、伝説の雄牛ですから !
サラ何にしても、変な牛だよー ! !
リッピ変な雄牛でも、その実力は本物 !これぐらいの困難は必至 ! しかし !――私の、全力でぇぇぇぇ ! ! !
特別な雄牛きゅうぅぅぅ……。
リッピさぁ ! これで材料は集まりました !あとはおいしく調理して食卓に並べるだけでございます !
ゼファーふぅ……とりあえずこっちの用は終わったか。――さてと。……サラ、『裏の用事』は大丈夫か…… ?
サラ……はい、ばっちり集めました !大丈夫です…… !

Character#N/A
リッピ夜、いよいよ本番。祝賀の時間とあいなります。
リッピ仕込んだもの、集めた食材を使い――最高の料理をお出しすることに、心血を注ぎ込む。
リッピ皆様に、笑顔をお届けすること――それぞ私の至上の喜びでございますから。
リッピゆえ、私は、己にできるすべての技術を駆使し料理を作り、テ─ブルに並べるのでございます。
リッピさぁ、それでは始めましょう !――本日も、美味しいお料理を用意いたしました !8品目のフルコ─スでございます !
サラわぁ、美味しそう !テ─ブルいっぱいだね !
アレンこっちはサラダで……――このソ─スのかかっている白身は何だろう ?
リッピエビでございます !
ゼファーと、呼んで良いのか悩むところだが……エビっぽい何かでは確かにあったな。
ゼファーいや待てよ……背中に生えていた翼――まさか古くに堕天した神性を持つ甲殻類という可能性も……
ゼファーとなると、あの雄牛もその影響で……いや、まさか……まさかな。
カナゼファ─、どうしたのかしら ?何だかとっても考え込んじゃってるわ。
アレン後で聞いてみるけど――多分、ゼファーなりに色々と思うところがあったんじゃないかな ?
リッピさぁ、それではそろそろデザ─トもご用意いたしましょう。極上の卵を使ったぷるぷるのプリンをお持ち――
サラちょっと待って、リッピ。えっと、それも、もちろん美味しく食べるけど――
リッピ―― ?
カナえへへ、こっちも食べてみない ?
リッピこれは、フル─ツタルト…… !おおお、さくらんぼも一杯入って…… !いったいこれは…… ?
カナふっふ─ん ! 私たちからのサプライズよ !リッピを驚かせようって、みんなで相談したの ♪
アレンキッチンで仕込みを一緒にしてて、思ったんだよ。いつも、リッピにいっぱい準備してもらっちゃってるなぁって。
リッピいえいえ ! 皆様にもたくさんお手伝いいただいておりますよ ! 今回はたまたま秘密で作りたい新料理が多かっただけでございます !
サラ――ふふっ。そう言うだろうな、って思ってた。けど、リッピに比べると、私たちができてることなんていつも、ちょっとしたことなんだよ。
ゼファーもの凄い勢いで一人でやっちまうから手、入れる隙がほとんど無ぇんだよな。
アレンだから、今日は僕たちからもリッピに何かを届けようって思ったんだ。
カナアレンと相談して。その後、ゼファ─と、サラともこっそり ♪
サラリッピと冒険に行きながらちょっとずつ、果物とか、他の材料も拾ってたの。
ゼファーで、お前をこっちで相手してる間にアレンとカナがキッチンで準備を進めて――最後に合わせた、ってわけだな。
リッピなるほど。これはこれは……見事な連携。おみそれいたしました。
アレンリッピ、いつもありがとう。今日は、僕たちからもサプライズだよ。みんなで作ったから、きっと美味しいと思うんだ。
リッピ……ありがとうございます !まことに驚かされました !私、感激でございます !
アレンははっ。喜んでもらえて嬉しいよ。それじゃあ、食べようか。
サラリッピの分、取り分けるね !5つに切り分けて――と。
リッピありがとうございます !それではお返しに、こちらのプリンも皆様に――
カナぱくっ ! ――わぁ〜 ! すごく美味しいわ !口の中がとってもしあわせ !
ゼファーやれやれ、苦労はあったが……みんな楽しそうで良かったよ。
リッピいやいや、本当に。皆様が笑顔で過ごされている様は心がぽかぽかいたしますねぇ。
リッピ(ああ――なるほど。やはりでございますね――)
リッピ(皆様の暖かな想いに包まれて――私は本当に幸せものであると確信いたしました)
リッピ(皆様に笑顔になっていただくことが至上の喜び。それは、私のものだけではなく――皆様の想いでもあること)
リッピ(私たちは、分け合っているのです。何気なく5つに切り分けられたタルトを見て……――そう想うのです)
リッピ(何もかもを、手を取り合って――――繋がり合って、分け合っていると)
アレン――リッピ、どうかな ?そのタルト ?
リッピ――はい !大変美味しゅうございます !
リッピいやいや、本当に今日も、素晴らしい一日でございます !