| Character | 1話【行先1 外出の理由1】 |
| カイル | 今日はいい天気だなぁ……。ふわぁ……まだちょっと眠いや。 |
| リアラ | もうお昼過ぎよ、カイル。目が覚めないなら少し散歩でもしてきたら ? |
| カイル | うーん、そうしようかな。今日はアジトを出る用事もなさそうだし。 |
| ジューダス | …………。 |
| リアラ | あら ? ジューダス。どこかに出かけるの ? |
| ジューダス | ……ああ。少しアジトの外に出てくる。 |
| カイル | 一人で、どこに行くのさ ?戦いに行くって感じには見えないけど。 |
| ジューダス | 別に、何か用事があるわけじゃない。ただ外の空気が吸いたくなったんだ。 |
| カイル | ここも外っていえば外だけど……。そういえば、ジューダスって普段からアジトを留守にしてることが多いよね。 |
| リアラ | 言われてみれば……帝国との戦い以外でも頻繁に出かけている気がするわ。 |
| カイル | そうそう !この前も、稽古に付き合って欲しかったのに捜してもどこにもいなくってさ。 |
| ジューダス | どこにいようが、僕の勝手だろう。お前たちにいちいち報告する必要はない。 |
| カイル | それはそうだけど……あっ。もしかしてアジトにいたくない理由でもあるとか ? |
| ジューダス | ハァ……。いつも馬鹿なことばかり言ってるかと思えば変なところで勘がいい奴だ。 |
| カイル | えっ、当たり…… ? でも、どうしてさ。空の上が落ち着かないとか ? |
| ジューダス | 勘だけじゃなく、もう少し頭も使って考えろ。ここには、僕がなるべく顔を合わせたくない相手がいるってことだ。 |
| リアラ | それって……リオンさんのこと ? |
| ジューダス | ……あいつにとって、僕はあり得た未来の姿だ。そんなものが自分やマリアンの近くをうろついていたらいい気分はしないだろう。 |
| カイル | そっか……だから、外に出かけてたんだ。リオンさんのために……。 |
| ジューダス | 別にあいつのためだけじゃない。僕だって、過去の自分を見て楽しくはないからな。 |
| ジューダス | なるべく顔を合わせない方が、誰にとっても面倒がなくていいってことさ……。 |
| リアラ | ジューダス……マリアンさんとも、堂々と顔を合わせられるわけじゃないんだものね……。 |
| ジューダス | ……もういいだろう。話は終わりだ。夜には戻る。 |
| カイル | 待って、ジューダス ! |
| ジューダス | なんだ ? |
| カイル | だったら、オレも一緒に行かせてよ。ちょうど散歩に行こうかなって思ってたんだ。 |
| ジューダス | 余計な気を回さなくていい。僕は別に一人でも―― |
| カイル | いいから、いいから !それじゃ行ってくるね、リアラ。 |
| リアラ | ええ、行ってらっしゃい。リリスさんたちと晩御飯を作って待ってるから。 |
| ジューダス | おい、二人で勝手に決めるな !まったく、お前たちは……。 |
| Character | 2話【行先3 散策する二人1】 |
| カイル | この世界のダリルシェイドって、賑やかでいいなぁ。活気があるっていうか。 |
| ジューダス | 僕たちの時代では神の眼の騒乱で荒れ果てていたな。もっとも、この世界ではそれ以外も大分違っているようだが……。 |
| カイル | なんとなく面影はあるけど、新しい街って感じでちょっと新鮮だよね。 |
| カイル | ジューダスはいつも何をして過ごすの ?こんな風に一人でアジトを出てる時ってさ。 |
| ジューダス | 別に……これといって何をするわけでもない。ただ街の様子を見てるだけだ。 |
| カイル | どこかに遊びに行ったりは ?何か美味しい物食べたりとか。 |
| ジューダス | 別に目的があって来ているわけじゃないからな。あちこちの街を回って眺めるぐらいだ。時間さえ潰せればそれでいい。 |
| ジューダス | ……まぁ、お前みたいに落ち着きのない奴にはつまらない過ごし方だろうな。 |
| カイル | 別にそんなことないよ。こうやってのんびり散歩するのもオレ、結構好きだしさ。 |
| カイル | ここなんて、オレが育ったクレスタと比べたら都会で賑やかだろ。見てると面白いよ。いろんな人がいて、いろんな風景があって。 |
| ジューダス | それはそうだな……。その感覚は、僕にも少しわかる。 |
| カイル | だよね ! みんなで旅してた頃はあんまり街をゆっくり見てる時間なかったし。 |
| ジューダス | フッ……確かに、ダリルシェイドの地下牢で英雄になると息巻いていた頃のお前には周りを見る余裕はなさそうだったな。 |
| カイル | うっ……いいだろ、昔のことは。今は成長したってことなんだからさ。 |
| ジューダス | まぁ、少しはな。 |
| カイル | ちぇっ、厳しいなぁ。技もたくさん覚えたし、力だってついただろ。それに、えーっと……勉強も少しは……。 |
| ジューダス | わかっているさ、冗談だ。……それに、僕も人のことを言えるほどいつも余裕があったわけじゃない。 |
| カイル | えっ、ジューダスが ? |
| ジューダス | 僕自身というより、過去の僕だな。リオン・マグナスとして生きていた頃……僕は自分のことで必死だった。 |
| カイル | そうだったの…… ?アジトのリオンさんはジューダスと同じぐらいいつも冷静に見えるけどな。 |
| ジューダス | 今のあいつのことは知らないが少なくとも、僕は内心焦っていた。 |
| ジューダス | ……だが、こうして落ち着いて過ごせる時間があるのも悪いことじゃないのかもしれないな。 |
| カイル | そうだね。それだけ、今のジューダスもオレみたいに成長できたってことかも !……なんちゃって。 |
| ジューダス | ……まぁ、実際どこまで自分が変われたかなんて本当にわかるわけではないがな……。 |
| カイル | ジューダス…… ? |
| ジューダス | なんでもない。しばらく黙って歩くとするか。街並みでも眺めて―― |
| カイル | ……あっ、ほら、ジューダス !あそこの屋台で美味しそうなアイスクリームが売ってるよ ! |
| ジューダス | フッ……やっぱりお前には、落ち着いて静かに過ごすなど無理な話か。 |
| カイル | 食べたいもの食べるのも散歩の醍醐味だろ。いいから、行ってみようよ。 |
| ジューダス | わかったから、はしゃぐんじゃない。子供じゃあるまいし……。 |
| Character | 3話【行先5 かつての記憶1】 |
| ジューダス | ……カイル。そろそろ帰るぞ。 |
| カイル | えっ、もう ?まだ日も暮れてないよ。 |
| ジューダス | もう街は十分見ただろう。これ以上ここにいても仕方ない。 |
| カイル | あ、うん……わかった。でも、アジトから離れて過ごすために来たんならもう少しゆっくりするつもりかと思ってた。 |
| ジューダス | それは、そうだが……。 |
| ジューダス | ……この街は、僕にとって見覚えのあるものが多すぎる。 |
| カイル | う~ん……。ダリルシェイドはもう見飽きちゃったってこと ? |
| ジューダス | ……まぁ、そんなところだ。元の世界とそっくり同じでないとはいえここは、僕が育った街だからな。 |
| カイル | あっ、そっか。リオンだった頃に暮らしていたんだよね。 |
| ジューダス | ああ。見知った建物、見知った顔……普通の人間ならそういうものは心の安らぎになるんだろう。 |
| ジューダス | だが僕にとっては違う。全部、捨てた過去の名残なんだ……。 |
| カイル | 『見知った顔』か……。……ねえ、ジューダス。 |
| ジューダス | なんだ。 |
| カイル | アジトには顔を合わせたくない相手がいるって言ってたよね。リオンさんのことだと思ってたけど……もしかして、スタンさんたちも入ってる ? |
| ジューダス | ……なぜ、そう思う ? |
| カイル | だって、いつも避けてるみたいだし……。この街の風景みたいに、一緒にいた頃を思い出して辛くなったりするのかなって。 |
| ジューダス | 辛い……というのは違うな。僕は自分のしたことに一切後悔はしていない。 |
| ジューダス | 僕は最後まで、自分の信念を貫いた。だからスタンたちに対しても恥じることは何もない。 |
| カイル | それじゃ、なんで…… ? |
| ジューダス | …………。僕自身に後悔はなくても『リオン』にはあったのさ。 |
| ジューダス | 最後の瞬間、心の片隅で思ってしまった。あいつらに……すまない、と。 |
| カイル | ジューダス……。 |
| ジューダス | それはもう、僕の中には存在しない感情――いや、僕がジューダスであるために存在してはいけない感情なんだ。 |
| ジューダス | ……なのに、あいつらの顔を見るとその気持ちがかすかに蘇る。 |
| ジューダス | 僕はそれが嫌なんだ。今の自分が揺らぐような気がして……。顔を合わせたくないのはそれだけの理由さ。 |
| カイル | ……ジューダス。オレ、なんて言えばいいかわからないけど―― |
| ジューダス | 別に、何も言う必要はないさ。情けない話を聞かせたな。 |
| カイル | そんなことないよ !情けなくなんかない。話してくれて、ありがとう。 |
| カイル | それじゃ、街を出ようか。アジトに戻るまでのんびり森でも歩いてさ。 |
| ジューダス | ああ、わかった。……お前に気を遣われるとは、僕も焼きが回ったな。 |
| Character | 4話【行先7 居場所】 |
| ジューダス | ……ここからゲートまではまだ距離があるな。今日はこの辺りで野宿するしかなさそうだ。 |
| カイル | 早めに街を出たのに、怪しい洞窟とか色んなとこに寄り道してたら遅くなっちゃったね。 |
| ジューダス | お前が「せっかくだから冒険して行こう」なんて言い出すからだろう。まったく……。 |
| カイル | …………あのさ、ジューダス。今日は、無理についてきちゃってごめん。 |
| ジューダス | なんだ、急に真面目な顔で。 |
| カイル | いや、一人になりたいのかもと思ったんだけどさ……。なんとなく心配になったんだ。もしかしたら自分の居場所がないって感じてるんじゃないかって。 |
| ジューダス | ……本当に、お節介な奴だな。僕はお前に心配されるほどヤワじゃない。 |
| カイル | それはまぁ、わかってるけどさ……。 |
| ジューダス | だが……そうだな。全く孤独を感じないと言えばそれは嘘になるのかもしれない。 |
| カイル | ……そうなの ? |
| ジューダス | 長い間、僕のそばにはいつもシャルがいた。お前たちと旅をしている間もずっとな。 |
| カイル | あ……そういえば、そうだったんだよね。オレたちには声は聞こえなかったけど。 |
| カイル | 世界を救うためだからって、ずっと一緒だった一番の親友と別れなくちゃならなかったなんて……辛いよね。 |
| ジューダス | それが最善のことだったんだ。後悔はない。僕もシャルも、自分で選んだ道だからな。 |
| ジューダス | だが、すぐ隣で小言やお節介を言う奴がいなくなってから、随分静かに感じるのは確かだ。 |
| ジューダス | だから、つまり……今日はお前がいて話し相手になったおかげで、少し気が楽だった。……僕が言いたいのはそれだけだ。 |
| カイル | へへっ、それなら良かった。話し相手が欲しかったらいつでも呼んでよ !シャルティエさんほど聞き上手じゃないかもだけど。 |
| ジューダス | まぁ、気が向いたらな。 |
| カイル | あのさ、ジューダス……オレ、さっきダリルシェイドでしてくれた話を聞いてから、ずっと考えてたんだ。オレに何かできることないかなって。 |
| カイル | それで、思いついたんだ。過去の後悔を気にせずにいられるようにするには新しい思い出を作ればいいんじゃないかって。 |
| ジューダス | 思い出…… ? |
| カイル | うん ! きっと、ジューダスとしての思い出がもっと増えたら、昔のことより今のことで頭がいっぱいになると思ってさ。 |
| ジューダス | フッ……なるほどな。一理あるのかもしれん。 |
| ジューダス | 実際、お前たちのお守りをしていると余計なことを考える暇もないからな。 |
| カイル | そうそう……って、ちょっと待ってよ !なんだよ、お守りって ! |
| リアラ | カイルー ! ジューダス !二人とも、こんなところで野宿してたの ?夜には戻るって言ってたのに全然帰らないんだもの。 |
| カイル | えっ ? ……あ !そういえば今日は野宿するって魔鏡通信で伝えるの忘れてた ! |
| リアラ | もう、カイルったら……。そもそも通信機を持っていくの忘れてたでしょ。連絡が取れないから、ロニも捜しに来てるのよ。 |
| ジューダス | やれやれ、あいつの方が迷子になっていそうだな。先に捜しに行ってやるとするか。 |
| カイル | うん、みんなで迎えに行こうよ。これも新しい思い出、だよね ! |