Character1話【行先1 外出の理由1】
カイル今日はいい天気だなぁ……。ふわぁ……まだちょっと眠いや。
リアラもうお昼過ぎよ、カイル。目が覚めないなら少し散歩でもしてきたら ?
カイルうーん、そうしようかな。今日はアジトを出る用事もなさそうだし。
ジューダス…………。
リアラあら ? ジューダス。どこかに出かけるの ?
ジューダス……ああ。少しアジトの外に出てくる。
カイル一人で、どこに行くのさ ?戦いに行くって感じには見えないけど。
ジューダス別に、何か用事があるわけじゃない。ただ外の空気が吸いたくなったんだ。
カイルここも外っていえば外だけど……。そういえば、ジューダスって普段からアジトを留守にしてることが多いよね。
リアラ言われてみれば……帝国との戦い以外でも頻繁に出かけている気がするわ。
カイルそうそう !この前も、稽古に付き合って欲しかったのに捜してもどこにもいなくってさ。
ジューダスどこにいようが、僕の勝手だろう。お前たちにいちいち報告する必要はない。
カイルそれはそうだけど……あっ。もしかしてアジトにいたくない理由でもあるとか ?
ジューダスハァ……。いつも馬鹿なことばかり言ってるかと思えば変なところで勘がいい奴だ。
カイルえっ、当たり…… ? でも、どうしてさ。空の上が落ち着かないとか ?
ジューダス勘だけじゃなく、もう少し頭も使って考えろ。ここには、僕がなるべく顔を合わせたくない相手がいるってことだ。
リアラそれって……リオンさんのこと ?
ジューダス……あいつにとって、僕はあり得た未来の姿だ。そんなものが自分やマリアンの近くをうろついていたらいい気分はしないだろう。
カイルそっか……だから、外に出かけてたんだ。リオンさんのために……。
ジューダス別にあいつのためだけじゃない。僕だって、過去の自分を見て楽しくはないからな。
ジューダスなるべく顔を合わせない方が、誰にとっても面倒がなくていいってことさ……。
リアラジューダス……マリアンさんとも、堂々と顔を合わせられるわけじゃないんだものね……。
ジューダス……もういいだろう。話は終わりだ。夜には戻る。
カイル待って、ジューダス !
ジューダスなんだ ?
カイルだったら、オレも一緒に行かせてよ。ちょうど散歩に行こうかなって思ってたんだ。
ジューダス余計な気を回さなくていい。僕は別に一人でも――
カイルいいから、いいから !それじゃ行ってくるね、リアラ。
リアラええ、行ってらっしゃい。リリスさんたちと晩御飯を作って待ってるから。
ジューダスおい、二人で勝手に決めるな !まったく、お前たちは……。

Character2話【行先3 散策する二人1】
カイルこの世界のダリルシェイドって、賑やかでいいなぁ。活気があるっていうか。
ジューダス僕たちの時代では神の眼の騒乱で荒れ果てていたな。もっとも、この世界ではそれ以外も大分違っているようだが……。
カイルなんとなく面影はあるけど、新しい街って感じでちょっと新鮮だよね。
カイルジューダスはいつも何をして過ごすの ?こんな風に一人でアジトを出てる時ってさ。
ジューダス別に……これといって何をするわけでもない。ただ街の様子を見てるだけだ。
カイルどこかに遊びに行ったりは ?何か美味しい物食べたりとか。
ジューダス別に目的があって来ているわけじゃないからな。あちこちの街を回って眺めるぐらいだ。時間さえ潰せればそれでいい。
ジューダス……まぁ、お前みたいに落ち着きのない奴にはつまらない過ごし方だろうな。
カイル別にそんなことないよ。こうやってのんびり散歩するのもオレ、結構好きだしさ。
カイルここなんて、オレが育ったクレスタと比べたら都会で賑やかだろ。見てると面白いよ。いろんな人がいて、いろんな風景があって。
ジューダスそれはそうだな……。その感覚は、僕にも少しわかる。
カイルだよね ! みんなで旅してた頃はあんまり街をゆっくり見てる時間なかったし。
ジューダスフッ……確かに、ダリルシェイドの地下牢で英雄になると息巻いていた頃のお前には周りを見る余裕はなさそうだったな。
カイルうっ……いいだろ、昔のことは。今は成長したってことなんだからさ。
ジューダスまぁ、少しはな。
カイルちぇっ、厳しいなぁ。技もたくさん覚えたし、力だってついただろ。それに、えーっと……勉強も少しは……。
ジューダスわかっているさ、冗談だ。……それに、僕も人のことを言えるほどいつも余裕があったわけじゃない。
カイルえっ、ジューダスが ?
ジューダス僕自身というより、過去の僕だな。リオン・マグナスとして生きていた頃……僕は自分のことで必死だった。
カイルそうだったの…… ?アジトのリオンさんはジューダスと同じぐらいいつも冷静に見えるけどな。
ジューダス今のあいつのことは知らないが少なくとも、僕は内心焦っていた。
ジューダス……だが、こうして落ち着いて過ごせる時間があるのも悪いことじゃないのかもしれないな。
カイルそうだね。それだけ、今のジューダスもオレみたいに成長できたってことかも !……なんちゃって。
ジューダス……まぁ、実際どこまで自分が変われたかなんて本当にわかるわけではないがな……。
カイルジューダス…… ?
ジューダスなんでもない。しばらく黙って歩くとするか。街並みでも眺めて――
カイル……あっ、ほら、ジューダス !あそこの屋台で美味しそうなアイスクリームが売ってるよ !
ジューダスフッ……やっぱりお前には、落ち着いて静かに過ごすなど無理な話か。
カイル食べたいもの食べるのも散歩の醍醐味だろ。いいから、行ってみようよ。
ジューダスわかったから、はしゃぐんじゃない。子供じゃあるまいし……。

Character3話【行先5 かつての記憶1】
ジューダス……カイル。そろそろ帰るぞ。
カイルえっ、もう ?まだ日も暮れてないよ。
ジューダスもう街は十分見ただろう。これ以上ここにいても仕方ない。
カイルあ、うん……わかった。でも、アジトから離れて過ごすために来たんならもう少しゆっくりするつもりかと思ってた。
ジューダスそれは、そうだが……。
ジューダス……この街は、僕にとって見覚えのあるものが多すぎる。
カイルう~ん……。ダリルシェイドはもう見飽きちゃったってこと ?
ジューダス……まぁ、そんなところだ。元の世界とそっくり同じでないとはいえここは、僕が育った街だからな。
カイルあっ、そっか。リオンだった頃に暮らしていたんだよね。
ジューダスああ。見知った建物、見知った顔……普通の人間ならそういうものは心の安らぎになるんだろう。
ジューダスだが僕にとっては違う。全部、捨てた過去の名残なんだ……。
カイル『見知った顔』か……。……ねえ、ジューダス。
ジューダスなんだ。
カイルアジトには顔を合わせたくない相手がいるって言ってたよね。リオンさんのことだと思ってたけど……もしかして、スタンさんたちも入ってる ?
ジューダス……なぜ、そう思う ?
カイルだって、いつも避けてるみたいだし……。この街の風景みたいに、一緒にいた頃を思い出して辛くなったりするのかなって。
ジューダス辛い……というのは違うな。僕は自分のしたことに一切後悔はしていない。
ジューダス僕は最後まで、自分の信念を貫いた。だからスタンたちに対しても恥じることは何もない。
カイルそれじゃ、なんで…… ?
ジューダス…………。僕自身に後悔はなくても『リオン』にはあったのさ。
ジューダス最後の瞬間、心の片隅で思ってしまった。あいつらに……すまない、と。
カイルジューダス……。
ジューダスそれはもう、僕の中には存在しない感情――いや、僕がジューダスであるために存在してはいけない感情なんだ。
ジューダス……なのに、あいつらの顔を見るとその気持ちがかすかに蘇る。
ジューダス僕はそれが嫌なんだ。今の自分が揺らぐような気がして……。顔を合わせたくないのはそれだけの理由さ。
カイル……ジューダス。オレ、なんて言えばいいかわからないけど――
ジューダス別に、何も言う必要はないさ。情けない話を聞かせたな。
カイルそんなことないよ !情けなくなんかない。話してくれて、ありがとう。
カイルそれじゃ、街を出ようか。アジトに戻るまでのんびり森でも歩いてさ。
ジューダスああ、わかった。……お前に気を遣われるとは、僕も焼きが回ったな。

Character4話【行先7 居場所】
ジューダス……ここからゲートまではまだ距離があるな。今日はこの辺りで野宿するしかなさそうだ。
カイル早めに街を出たのに、怪しい洞窟とか色んなとこに寄り道してたら遅くなっちゃったね。
ジューダスお前が「せっかくだから冒険して行こう」なんて言い出すからだろう。まったく……。
カイル…………あのさ、ジューダス。今日は、無理についてきちゃってごめん。
ジューダスなんだ、急に真面目な顔で。
カイルいや、一人になりたいのかもと思ったんだけどさ……。なんとなく心配になったんだ。もしかしたら自分の居場所がないって感じてるんじゃないかって。
ジューダス……本当に、お節介な奴だな。僕はお前に心配されるほどヤワじゃない。
カイルそれはまぁ、わかってるけどさ……。
ジューダスだが……そうだな。全く孤独を感じないと言えばそれは嘘になるのかもしれない。
カイル……そうなの ?
ジューダス長い間、僕のそばにはいつもシャルがいた。お前たちと旅をしている間もずっとな。
カイルあ……そういえば、そうだったんだよね。オレたちには声は聞こえなかったけど。
カイル世界を救うためだからって、ずっと一緒だった一番の親友と別れなくちゃならなかったなんて……辛いよね。
ジューダスそれが最善のことだったんだ。後悔はない。僕もシャルも、自分で選んだ道だからな。
ジューダスだが、すぐ隣で小言やお節介を言う奴がいなくなってから、随分静かに感じるのは確かだ。
ジューダスだから、つまり……今日はお前がいて話し相手になったおかげで、少し気が楽だった。……僕が言いたいのはそれだけだ。
カイルへへっ、それなら良かった。話し相手が欲しかったらいつでも呼んでよ !シャルティエさんほど聞き上手じゃないかもだけど。
ジューダスまぁ、気が向いたらな。
カイルあのさ、ジューダス……オレ、さっきダリルシェイドでしてくれた話を聞いてから、ずっと考えてたんだ。オレに何かできることないかなって。
カイルそれで、思いついたんだ。過去の後悔を気にせずにいられるようにするには新しい思い出を作ればいいんじゃないかって。
ジューダス思い出…… ?
カイルうん ! きっと、ジューダスとしての思い出がもっと増えたら、昔のことより今のことで頭がいっぱいになると思ってさ。
ジューダスフッ……なるほどな。一理あるのかもしれん。
ジューダス実際、お前たちのお守りをしていると余計なことを考える暇もないからな。
カイルそうそう……って、ちょっと待ってよ !なんだよ、お守りって !
リアラカイルー ! ジューダス !二人とも、こんなところで野宿してたの ?夜には戻るって言ってたのに全然帰らないんだもの。
カイルえっ ? ……あ !そういえば今日は野宿するって魔鏡通信で伝えるの忘れてた !
リアラもう、カイルったら……。そもそも通信機を持っていくの忘れてたでしょ。連絡が取れないから、ロニも捜しに来てるのよ。
ジューダスやれやれ、あいつの方が迷子になっていそうだな。先に捜しに行ってやるとするか。
カイルうん、みんなで迎えに行こうよ。これも新しい思い出、だよね !