| Character | 1話【大荷物】 |
| シング | よし、大陸班リーダーの会議も終わりっと。これで── |
| コハク | シング、お疲れ様。 |
| シング | コハク ! うん、お疲れ様。もしかして、食堂の手伝いをしてたの ?コハクも頑張ってるんだね。 |
| コハク | 頑張ってるのはシングの方だよ ?最近は朝早くから夜遅くまで、ずっとお仕事してて。ちょっと頑張りすぎで心配なくらい。 |
| シング | これくらいへっちゃらだよ。それに、今日の予定はさっきの会議でおしまいだから。これからひと休みするつもりさ。 |
| コハク | あ、それなら―― |
| ヒスイ | はぁ、ひぃっ…… ! お、おもてぇっ…… ! |
| シング | ヒスイ ! ?どうしたの、そんな大荷物背負って ! |
| ヒスイ | イネスの、運び屋の、手伝いだよチクショウ…… !なんで、別の世界まで来て、『日々寧日』なんざ…… !肩がもげるぅ~~~~ ! ! ! |
| イネス | はーい文句は引っ込めてキリキリ働く。あなたにはソーマの借金が残ってるんだから ♪ |
| ヒスイ | それならシングもだろ ! ? なんで俺だけ ! ?大体こんだけの荷物を今日中にそれぞれの依頼主に届けるなんざ無理だろ ! ? |
| シング | この量を今日中に ! ?え。もしかして、ヒスイとイネスだけで ! ? |
| イネス | ええ、ヒスイ以外に手の空いてる子が見つからなくて。 |
| シング | なら、オレも手伝うよ。さっきヒスイが言った通りオレもイネスに借金してるからさ。 |
| イネス | そう ? 手伝ってくれるのは大歓迎だけど……。 |
| コハク | …………。 |
| シング | ? コハク ? どうかした ? |
| コハク | え ? あ、その……。 |
| シング | さっき、何か言おうとしてたし。相談事なら、オレ、なんでも聞くよ ! |
| コハク | ……ううん、なんでもない。ね、食堂のお仕事が終わったらわたしもイネスのお手伝いしてもいいかな ? |
| イネス | ありがとう。助かるわ。人手はいくらあっても困らないもの。 |
| イネス | そうねぇ、それじゃ──コハクはシングとペアを組んで配達をお願いするわ。荷物、重いものが多いのよ。 |
| コハク | え ! ? う、うん。もちろん、大丈夫……。 |
| ヒスイ | おいイネス ! てめぇなんて提案しやがる !駄目だ ! コハクがシングと二人きりなんざ…… !俺がコハクと一緒に── |
| イネス | 聞き分けのないこと言わないの。じゃシング、コハク。二人はこの荷物をお願いね。届け先は中に入ってる納品書を見ればわかるから。 |
| ヒスイ | おいイネス離せこの…… !くそぉ~~~~おいシング !コハクに変なことすんじゃねぇぞ、わかったなぁ ! ? |
| シング | へ、変なことってなんだよ ! ?そんなのしないって ! |
| コハク | そ、そうだよ ! お兄ちゃんのバカ…… ! |
| シング | あ。え、えっと……。オ、オレたちも配達、行こう、か ? |
| コハク | う、うん。そうだね。食堂のお仕事、すぐ終わらせてくるから。 |
| Character | 2話【意外な出会い】 |
| シング | 最初の配達先はこの学園か。でも、ここって確か── |
| コハク | うん。ベリルがわたしたちと会う前にお世話になってた学園だね。 |
| ベリル | あれ ? シングにコハクじゃん ! |
| リチア | シング、コハク、こんにちは。そのような大荷物を背負ってどうしたのです ? |
| シング | イネスの配達の仕事を手伝ってるところさ。この荷物を届けに来たんだ。 |
| コハク | ベリルたちはここで何をしているの ? |
| ベリル | 美術の特別講師だよ !『ベリル先生』って生徒から大人気なんだ~ ♪すごいでしょ~ ! ? |
| シング | ベリルが先生 ! ? ……ホントに ? |
| ベリル | なんだよその反応 ! ?ボクのゲージュツカと才能を理解してくれた生徒たちの絵の具の洗い残しを煎じて飲ませてやる ! |
| クンツァイト | 訂正。正しくは「爪の垢を煎じて飲ませる」だ。ベリル、芸術家としての能力は評価に値するが一般知識にやや偏りが見られる。 |
| クンツァイト | よって、速やかにリフィルの特別授業の受講を提案する。 |
| ベリル | 今のはゲージュツカっぽく表現を変~え~た~の~ !比喩表現みたいなヤツだよ、もう ! |
| シング | どっちも飲まされたらお腹壊しそうだから遠慮するよ。リチアとクンツァイトはベリルの付き添い ? |
| リチア | いえ、違います。ベリルの先生としての活動に興味が湧きまして授業を見学させていただこうかと。 |
| リチア | ……それに、ここは少し不思議な場所ですから。少しの間だけでも、ここで過ごしたかったのです。 |
| コハク | 不思議な場所 ?普通の学校のように見えるけれど…… ? |
| リチア | 沢山の学生たちが集い、大切な友を得て、共に学び二度とない貴重な時間を過ごす……。それが新鮮でもあり、どこか懐かしくも感じるのです。 |
| クンツァイト | ……それは、かつてリチアさまがフローラさまやクリードと共に過ごした状況と類似しているからだと推測します。 |
| リチア | ……あぁ……確かにそうかもしれません。 |
| クンツァイト | 二度と体験できない貴重な時間が子供たちの未来として紡がれ、礎となる。不特定多数の人間たちとの関係構築こそが── |
| クンツァイト | 『学び』となり、スピリアの成長を促進する。リチアさまが今感じておられる感情は、人間にとって重要かつ必要不可欠なものであると推察します。 |
| コハク | クンツァイト……わたしもそう思う。人と人との出会いは、スピリアを強くしてくれる。ね、シング。 |
| シング | うん。今まで本当に沢山の人たちと出会って色々なことがあって、スピリアが繋がってきたからこそオレたちはこうしていられる。 |
| シング | 大切な誰かと一緒に過ごす時間ってホントに大事なんだって、改めてそう思うよ。 |
| ベリル | ね、シング、コハク。せっかくだから二人ともボクの授業受けてかない ?そろそろ授業が始まる時間なんだ。 |
| シング | ごめん、ベリル。すごく、すごく受けたいんだけど…… ! |
| コハク | わたしたち、イネスの配達のお仕事があるから……。 |
| ベリル | あぁ、ごめん。二人とも仕事で来てたんだった。そういうことなら仕方ないなぁ。 |
| コハク | 次は必ず参加するから !その時、絵のことを沢山教えてね、ベリル。 |
| ベリル | うん、約束だからね ! |
| Character | 3話【島への届け物】 |
| シング | これで配達終わり !カル、ガラド、手伝ってくれてありがとう !ホントに助かったよ ! |
| ガラド | これくらいなんてことねぇよ。この島にはちょくちょく来てて土地勘もある。農業で鍛えた足腰の見せどころにもなる。今後も頼りな。 |
| カルセドニー | ふむ。ガラドの体幹の強さの秘訣はそれか。……虫さえ出なければ、僕も農業をやってみてもいいのだが……。 |
| コハク | (カルセドニーが、農業……。クワを握って畑を耕すカルセドニー……。ちょっと想像しづらいかも) |
| ガラド | はは、そいつは悪くない考えだ。だが、羽の兄さんには島の連中に剣術を教える大事な役割があるだろ ? |
| シング | その話、ヒスイから聞いてるよ !島のみんなからすごく慕われてるって ! |
| コハク | ソーマで空を飛ぶ姿がカッコイイって子供たちからは特に人気だって話だよね ? |
| ガラド | ああ。結晶騎士として鳴らしてた羽の兄さんが子供に囲まれてたじろぐ姿はなかなか新鮮だったぜ。 |
| カルセドニー | あ、ああいう経験はほとんどないんだ !どう接すればいいのか、わからない……。 |
| シング | う~ん、そこは素直に喜べばいいんじゃない ? |
| カルセドニー | そ、そうかもしれないが……。ガラドは慣れた様子で子供たちの相手をしていたな。あれは見事だった。 |
| ガラド | 俺には娘がいたからな。まぁ、随分昔のことになっちまったが……。色褪せちゃいない。 |
| ガラド | 子育ては大変なことも多いが、子供はどんな苦労だってなんてことないって思わせてくれる本当に大切な存在なのさ。 |
| カルセドニー | (……父上……) |
| コハク | (……お母さん……) |
| シング | (母さん……ジィちゃん……) |
| ガラド | っと。今のはよくなかったな。この手の話は若者から嫌われちまう。注意しなくちゃな。 |
| シング | ……ううん、そんなことない。とっても大切な話だよ。 |
| シング | ベリルのおばあさんもおじいさんも……。コハクとヒスイのお母さんも……。カルの……お父さんも。 |
| シング | きっと……今ガラドが話してくれたように……。みんなのことを本当に大切に思ってくれていた筈だよ。 |
| シング | オレは、そう思いたい。 |
| コハク | シング……。 |
| カルセドニー | …………。 |
| ガラド | ……そうか。ああ、そうだな。まぁ、いずれお前たちにもわかる時が来るさ。 |
| 二人 | ? ? ? |
| ガラド | よし、じゃあぼちぼちアジトへ帰るか。お前たち、イネスの配達依頼はもう終わったんだろ ?俺と羽の兄さんも今日はこれで上がりだ。 |
| シング | そうなんだ ! じゃあ一緒に帰ろっか ! |
| コハク | あ、あの、シング ! |
| シング | コハク ? |
| コハク | えっとね……。帰り、少しだけ……寄り道、付き合ってくれないかな ? |
| Character | 4話【この空を共に】 |
| シング | コハク、あの……。目隠しをされたままだと歩きづらいというか砂の坂を登ってるような感じがして危ないというか。 |
| シング | 寄りたい場所って、一体どこなの ? |
| コハク | ん。ここならいい感じかな ?ごめんね、シング。今見せてあげるから── |
| シング | ここ、は…… ! ? 砂漠…… ?す、すごい ! 空が……星で埋め尽くされてる…… !星ってこんなに明るいんだね…… ! |
| コハク | すごいよね。本だって読めちゃいそうなくらい明るい。それに……とっても綺麗。 |
| コハク | ……今日は、ね。シングと一緒に……この星空を見たかったの。 |
| コハク | ここは……なんだかすごく、懐かしいから。シングにも、その……そう、感じて欲しくて。 |
| シング | 懐かしい…… ?もしかして、シェヘラ砂漠の ? |
| コハク | あ……覚えててくれたんだ…… ? |
| シング | コハクとの思い出を忘れる訳ないよ !あの時のことは特によく覚えてる。 |
| シング | デッカいサンドワームに襲われてさ。ヒスイたちとは散り散りになっちゃってコハクを一人きりにさせて、怖い思いを── |
| コハク | ふふ、あの時言ったよね ?不安もなかったし、寂しくもなかった。怖くも……なかった。 |
| コハク | シングとスピリアが繋がっていたから。どんな時だって助けに来てくれるって、信じてたから。だからわたしはあの時、平気だったんだよ。 |
| シング | コハク……。 |
| シング | …………。 |
| コハク | ? シング ? |
| シング | あ、いや、その……。コハクの話を聞いてたら自分が情けなくなっちゃって……。 |
| コハク | え、どうして ?シングは情けなくなんてないよ ? |
| シング | ……オレ、さ。この世界に……ティル・ナ・ノーグに来た時最初は一人で……。 |
| シング | すごく不安で、怖かったんだ。コハクのようには……考えられなかった……。 |
| コハク | それは当たり前だよ。知らない世界に一人で放り出されちゃったら誰だって怖いに決まってる。 |
| コハク | シェヘラ砂漠の時はわたしはシングとスピリアで繋がっていたから。だから大丈夫だったけど……。 |
| コハク | もし、スピリアの繋がりがなかったら……。きっとすごく不安で、怖かったと思うの。 |
| シング | コハク……ありがとう。……『仲間』ってさ、本当にすごいね。 |
| シング | 仲間がいるから不安もない、恐怖もない。お互いに支え合うからこそ、どんな困難にだって立ち向かっていける。戦える── |
| シング | コハクやヒスイたちと再会できてイクスやミリーナたち、他の仲間たちとも出会って。そのことを強く実感できたよ。 |
| コハク | わたしもそう思う。シングやお兄ちゃんたちと一緒にいられて同じ時間を過ごせて本当によかった。 |
| シング | うん ! それにオレこうしてコハクが傍にいてくれることがなにより嬉しいんだ ! |
| コハク | シ、シング……。うん……わたしも、そう。シングと一緒にいられて……嬉しい、よ ? |
| シング | コハク。今日みたいにさ、また二人でここに来て星空を見よう。 |
| コハク | うん ! 約束だよ、シング。 |
| シング | ああ ! |