| Character | 1話【猛獣1 怪しい情報】 |
| ロウ | あぁ~……やっと戻ってきた……。やべぇ、ねみぃ……雪が布団に見える……。 |
| リンウェル | 帰りの船であれだけ寝てたのに……。ここで寝たら風邪ひくよ ? |
| キサラ | ロウ、これを渡しておこう。お前用の腹巻だ。 |
| テュオハリム | 『腹巻を 顔に巻いては 風邪ひかぬ』 |
| ロウ | いや、ちゃんと腹に巻くっつーの。キサラ、ありがとな。しかし、大将も随分とお疲れみたいだな……。 |
| キサラ | ティル・ナ・ノーグ全体は平和になっても具現化された各大陸での小競り合いは続いている。これらは今後の争いの火種だ。 |
| キサラ | 放置しては、やがて大火事になる。だから鏡映点たちと協力して、その鎮圧と対処を行っている訳だが── |
| リンウェル | なかなか減らないよね、火種。 |
| テュオハリム | ティル・ナ・ノーグ全体の問題と各大陸が抱えている諸問題は、また別にあるのだ。今は根気良く消火活動に精を出すしかあるまい。 |
| ロウ | つまり、しらみつぶしって訳か。にしてもアルフェンとシオン、遅いな。抵抗組織に俺たちの帰りを報告しに行っただけなのに。 |
| ロウ | ……あ。まさか、二人で買い食いでもしてんのか ? |
| リンウェル | もう。ロウじゃあるまいし、そんなこと── |
| ロウ | アルフェンだけならな。けど、シオンも一緒なんだぞ ? |
| リンウェル | そう言われると……確かに……。 |
| シオン | 私がどうかした ? |
| テュオハリム | 君の帰りが遅いことについてロウとリンウェルが少々推理をね。どこかで空腹を満たしているのでは、と。 |
| ロウ | おっ、おい ! ? |
| キサラ | ……テュオハリム。どうしてあなたは言わなくていいことを……。 |
| リンウェル | は、話を振ったのはロウだから。ね、フルル ! |
| フルル | フ、フルゥ~ ! |
| シオン | ……その話、詳しく聞きたいところだけれど―― |
| アルフェン | みんな。疲れているところすまないが抵抗組織の基地に来てくれ。 |
| テュオハリム | 何かあったのかね ? |
| アルフェン | ああ、詳しいことは着いたら話すよ。いい話じゃないけどな……。 |
| リンウェル | 帝国軍所属の装甲兵を火山地帯で見かけた…… ! ?それ、本当なの ! ? |
| 抵抗組織員 | ああ。斥候を何人か放って確認した情報だ。間違いない。 |
| ロウ | 帝国の残党か、ご苦労なこった。でもよ、火山地帯で何やってんだ ?観光……なんてことはねーよな ? |
| 抵抗組織員 | 探らせてはいるが、警備が厳重で詳細は掴めていない。装甲兵が目撃された地域には村や集落があって人や物の出入りはそれなりにあったんだが── |
| テュオハリム | 今はそれがない、と ? |
| 抵抗組織員 | ああ。あの辺り一帯は今、完全に孤立している。内部の状況を知るのも難しいんだ。 |
| キサラ | 斥候が近づけないほど強固な警備体制、か。村人たちが気がかりだな……。 |
| テュオハリム | 現状から察するに、帝国軍の残存部隊に武力制圧されたと見るのが妥当だろう。だが、少々気になる点がある。 |
| テュオハリム | 件の地域は火山活動が活発な山岳地帯だ。そして、大陸の中央からは離れている。そのような僻地を占拠する目的とは、一体なんだ ? |
| キサラ | 街道が整備されてはいますが、港町との距離も相当あります。籠城するには不向きな土地ですね。 |
| テュオハリム | つまり、兵糧攻めには極めて脆弱という訳だ。報告にある通りの部隊規模なら兵站の維持に難儀するだろう。賢い選択とは言えん。 |
| ロウ | なるほど…… !よくわかんねえけど、連中の親玉は馬鹿ってことだな ! |
| リンウェル | そんな単純な話じゃないと思うけど……。アルフェンとシオンはどう思う ? |
| シオン | ……確証はないけれど思い当たる節があるの。 |
| アルフェン | 実はイクスたちからの定期報告でちょっと気になる話を聞いていたんだ。 |
| ロウ | 気になる話 ? |
| アルフェン | 俺たちが大陸と共に具現化された時『集霊器』も具現化されていたんだ。帝国のロミーという女が管理していたらしいんだが── |
| シオン | 記録に残されていた『集霊器』の数とイクスたちが回収した『集霊器』の数が合わないって話なの。 |
| テュオハリム | 『集霊器』のいくつかが行方不明、か。確かに気になる話ではある。 |
| テュオハリム | ……アルフェン。君は『集霊器』の紛失と、今回の件が繋がっていると考えているのかね ? |
| アルフェン | 可能性はある、と思う。イクスの報告を受けてから、クレスたちにも協力してもらって『集霊器』を探していたんだ。 |
| アルフェン | だが、今のところ見つかっていない。それらしい情報すらない状況だ。 |
| テュオハリム | そして、影も見えなかった『集霊器』の情報を我々が掴んでしまったかもしれない、と。仮にそうであるなら因果なものだな……。 |
| シオン | そうなると、疑うべきことがもう一つあるわ。『集霊器』本来の使い方を知っている者がいて隠しているのかもしれない。 |
| テュオハリム | その者が件の地域を支配し、隔離……か。推測の域ではあるが、確認した方がいいかもしれんな。 |
| ロウ | ああ ! 俺たちで確かめに行こうぜ !今の話が本当なら、俺たちが解決する問題だ。だろ ? |
| リンウェル | うん ! やろうよ、みんな ! |
| キサラ | そうだな。帝国の残党に人々が支配されている可能性がある以上見過ごす訳にはいかない。 |
| テュオハリム | 無論だ。しかし、我々は征伐から戻ったばかり。返す刀で出発するのは少々強行軍が過ぎると思うが ? |
| アルフェン | ああ。今日は休んで明朝に出発しよう。シオンはそれでいいか ? |
| シオン | ええ、構わないわ。ロウとリンウェルが私について何を話していたのか詳しく聞きたいし。 |
| アルフェン | ほどほどにな……。 |
| Character | 2話【猛獣3 火山の支配者】 |
| ロウ | はぁ、はぁ、はぁ……あぁ~……マジであちぃ……。 |
| リンウェル | 暑いって、言わないでよぉ……。余計に、暑く、なるで、しょぉ~……。 |
| フルル | フルゥ~……フルゥゥ……。 |
| リンウェル | ほら、フルルも、暑いって言うなって怒って、る……。 |
| ロウ | そうは言うけどよぉ……。我慢してると余計に暑くなりそうじゃねぇか……。 |
| リンウェル | あぁ……。それはなんか、わかる、かも……。 |
| アルフェン | …………。 |
| シオン | アルフェン、どうかしたの ?さっきから落ち着かないようだけれど。 |
| アルフェン | ああ。気のせいかと思っていたんだが……。 |
| キサラ | 敵か ? 今のところ気配は感じられないぞ ? |
| アルフェン | いや、違うんだ。この辺りの景色というか地形というか……。何となくだが、見覚えがあるんだ。 |
| シオン | ……あなたも ? |
| アルフェン | まさか、シオンもか ? |
| シオン | ええ。アルフェン、ここってもしかして── |
| アルフェン | ……ああ。カラグリアだ。 |
| ロウ | 確かに、言われてみれば……岩の形っつーか雰囲気っつーか、似てるな……。それに、このクソ暑い空気も。 |
| キサラ | となると、ここはカラグリアを模して具現化されているのかもしれませんね。 |
| テュオハリム | 彼の地を知るアルフェンたちの言葉だ。その可能性は高いだろう。 |
| テュオハリム | となると、ふむ……興味深いな……。 |
| シオン | ここが仮にカラグリアを元にした場所だとしてもあなたの好きな歴史を感じさせるものがあるとは限らないわよ ? |
| テュオハリム | そうではない。いや、それはそれで気になるがね。私が興味を引かれているのは、我々の世界の再現についてだ。 |
| テュオハリム | シスロディアだけではなくカラグリアまでもが再現されているとなればそこで終わるとは思えん。 |
| キサラ | では、メナンシアやミハグサールも ? |
| テュオハリム | このように現れていると考える方が自然だろう。仮に他の地域も再現されていた場合相応の混乱が起こるのは明白だ。 |
| テュオハリム | 今後の為にも、星霊力や主霊石がこの世界ではどのように認識されているか、詳しく調べる必要があるやもしれん。 |
| アルフェン | そうだな。これまでは帝国軍の相手や魔物退治で大変だったが、それもこの先、落ち着いていくはずだ。 |
| アルフェン | この世界における俺たちの世界の再現性について調査をする時間も作れると思う。 |
| シオン | ならそうすべきね。問題が起こってから動くなんて後手に回るのは避けたいところだし。 |
| ロウ | あぁちくしょう…… !暑さと大将たちの難しい話のせいで頭痛くなってきた ! |
| リンウェル | 難しい話が苦手なのはいつものことでしょ。でも、本当に暑い~……もぉ~アイスクリームが食べた~~い ! ! |
| キサラ | 帰ったら好きなだけ作ってやる。だからもう少し頑張れ、リンウェル。ほら、私の水を分けてやろう。 |
| リンウェル | ありがと~キサラ~♪ ほら、フルルも ! |
| フルル | フッフルゥ~ ! |
| ロウ | 俺の分もちゃんと残しとけよ~……。 |
| リンウェル | ロウは自分のを飲めばいいでしょー ? |
| ロウ | 俺も飲み干しちまったに決まってんだろ !んで、飲んだ分は全部汗で出てったぜ……。 |
| リンウェル | もう、その言い方、なんか気持ち悪いからやめてよ。 |
| アルフェン | ! ? 二人とも、静かに ! |
| リンウェル | ご、ごめん !ロウのせいで怒られちゃったじゃない……。 |
| ロウ | 今のはどう考えてもお前のせいだろ ! ? |
| キサラ | はぁ……二人ともいい加減にしないか。喧嘩しないでちゃんと話を聞くんだ。いいな ? |
| 二人 | はい……。 |
| シオン | ふふ、まるで母親ね。 |
| キサラ | ま、待てシオン。その言い方は── |
| アルフェン | ……続けてもいいか ? |
| テュオハリム | 無論だ。何があったのかね ? |
| アルフェン | 装甲兵を見つけた。あの岩場の影だ。 |
| ロウ | おしっ ! 早速ぶっ飛ばそうぜ ! |
| シオン | 暑さのせいでいつも以上に短絡的ね……。どきなさい。私が撃ち抜くわ。 |
| リンウェル | シオンも暑さで参ってるんだね……。 |
| アルフェン | 二人とも、頼むから落ち着いてくれ。様子からして見回りをしているようだからこのまま後をつけた方がいいと思うんだ。 |
| キサラ | 根城まで案内させる、という訳か。私は賛成だ。 |
| テュオハリム | 同じく。抵抗組織の報告では装甲兵の目撃証言は一つや二つではない。彼らの活動拠点は発見すべきだろう。 |
| アルフェン | よし、行こう…… ! |
| リンウェル | ここは……関所、かな ?門番がたくさんいる……。 |
| キサラ | 孤立しているという村はこの先にあるはずだ。この道を封じることで人の出入りを掌握しているのだろう。 |
| ロウ | ……さっきの装甲兵、門番と話し込んでるな。 |
| アルフェン | …………。 |
| 門番 | 魔物の調達はどうだい ? |
| 装甲兵 | 難航中さ。ここらのは環境のせいで獰猛な上に恐ろしく強い。魔物の捕獲も命懸けだよ。 |
| 門番 | 捕まえた魔物を管理してる奴も同じこと言ってたな。『ビエゾ閣下』の憂さ晴らしに付き合うのは大変だ。 |
| 装甲兵 | まったくだ。しかし、その手強い魔物たちをああも容易く殺してしまうビエゾ閣下の強さ……恐ろしいものだ。 |
| アルフェン | ! ? |
| シオン | アルフェン、今…… ! |
| アルフェン | ああ、聞き間違えじゃない !あいつが……ビエゾがここにいるのか ! ? |
| キサラ | ビエゾ…… ? |
| テュオハリム | エルウォルゼ・テルディリス。カラグリアを治めていた領将で、部下たちには自らを『猛獣(ビエゾ)』と呼ばせていた男だ。 |
| テュオハリム | カラグリアが再現されているのならあの男の出現は道理と言えるやもしれん。 |
| ロウ | 親父が戦っていた領将、か……。 |
| リンウェル | アルフェン、どうするの ? |
| アルフェン | 事実を確かめる。もし本当に奴がいるのなら見過ごせない…… ! |
| シオン | あの装甲兵と門番たちから情報を聞き出しましょう。他にもいるようだけど、私たちなら援軍を呼ばれる前に片をつけられるわ。 |
| ロウ | よし、じゃあさっさとやっちまおうぜ…… ! |
| Character | 3話【猛獣4 かつて見た光景】 |
| 装甲兵 | ぐっ、お、お前たちは、一体…… ! |
| アルフェン | 教えてくれ。あの男は、ビエゾはいるのか…… ! ? |
| 装甲兵 | あ、あぁ、ビ、ビエゾ、閣下なら、この先に……。集落や、村から、労働力を、集めて、いらっしゃる── |
| 装甲兵 | …………。 |
| ロウ | 気を失っちまったか……。 |
| アルフェン | くっ…… !あの男、ティル・ナ・ノーグでもカラグリアと同じ事をしているというのか…… ! ? |
| シオン | ……ここは私たちの世界じゃないわ。領戦王争(スルドブリガ)も行われていない。それなのに、どうしてそんなことを ? |
| テュオハリム | その件についても、直接問いただす必要があるやもしれんな。 |
| リンウェル | とりあえず、増援が来る前にやっつけられたけど……この兵士たち、このままにしておくのはまずいよね ? |
| キサラ | 無論だ。ロウ、こいつらを岩陰に隠すぞ。手を貸せ。 |
| ロウ | 俺たちの侵入を気取られないように、だな。任せとけ。 |
| アルフェン | …………。 |
| テュオハリム | 何か気になることでも ? |
| アルフェン | ……何でもない。さぁ、俺たちもキサラとロウを手伝おう。早くこの門の先を調べたい。 |
| シオン | …………。 |
| 装甲兵A | 何をチンタラしている ! さっさと岩を運べ ! |
| 村民の男性 | は、はいっ…… ! |
| 村民の老人 | お、おい、待ってくれ。そいつは足を怪我しとるんじゃ。休ませてやって── |
| 装甲兵A | 黙れっ ! |
| 村民の老人 | うぐぅっ ! |
| 装甲兵A | 生意気なジジイめ。俺に口答えするって事はなぁ !ビエゾ閣下に盾突くも同じなんだよ ! |
| 村民の老人 | あぐぅっ、う、うぅっ ! |
| 装甲兵A | 寝るな ! 立て、立ちやがれクソジジイ !ちっ、使えねぇ。おい、そこの。こいつの分までお前が運べ。いいな ? |
| 村民の男性 | は、は、い…… ! |
| 村民の老人 | …………。 |
| リンウェル | ひどい……。 |
| ロウ | くそ、あいつら…… ! |
| キサラ | ……先ほどの装甲兵の話、事実でしたね。 |
| テュオハリム | どこからか現れたビエゾが近辺の村や集落を襲撃し人々を労働力として拉致、奴隷化し、強制労働を強いる── |
| アルフェン | ……これじゃあまるで、解放される前のカラグリアと同じじゃないか ! |
| シオン | 落ち着きなさい、アルフェン。ここの警備はさっきの関所とは訳が違うわ。装備も人数も段違いよ。 |
| シオン | 飛び出して戦闘になれば損耗は避けられない。ビエゾと戦うつもりなら、無駄な戦闘は控えるべきよ。 |
| アルフェン | それは…… !それは、わかるが…… ! |
| 子供 | うああああっ ! ! ! |
| アルフェン | ! ? |
| 装甲兵A | ガキが ! いつまで休んでいる !さっきのジジイの真似か ! ? さっさと立て ! |
| 子供 | や、やめて、うぅっ、あぅっ…… ! |
| 装甲兵A | ふん ! よほど痛い目に遭いたいらしいな。だったら望み通りにしてやる ! |
| アルフェン | やめろぉおおおおおおおっ ! ! ! |
| 装甲兵A | な、なんだ貴様は…… ! ? |
| アルフェン | うおおおおっ ! 飛天翔駆 ! ! ! |
| 装甲兵A | ぎゃああぁ ! ? |
| 装甲兵B | 貴様、何をする ! ? |
| 装甲兵C | 反乱か…… ! ? 早く取り押さえろ ! |
| アルフェン | 無抵抗の人たちを……子供まで !お前たち、覚悟しろ ! |
| 装甲兵B | ふん、威勢のいい奴め !たった一人で何をほざ── |
| シオン | マグナレイ ! |
| 装甲兵B | があぁっ ! ? |
| アルフェン | シオン ! |
| シオン | すぐに敵が殺到するわ !囲まれないよう走って ! |
| アルフェン | ああ、すまない ! |
| シオン | 結局こうなるのね、まったく…… ! |
| ロウ | よし ! 俺たちも行くぞっ ! |
| キサラ | リンウェル ! シオンと共に援護と頼む ! |
| リンウェル | うん、任せて ! |
| テュオハリム | 現状での戦闘は避けたかったが……仕方あるまい ! |
| Character | 4話【猛獣5 押し寄せる敵】 |
| キサラ | はああああああっ ! ! ! |
| 装甲兵 | ぐわああっ ! |
| キサラ | まったく、せめて涼しいところで戦いたいものだな !もはや何人倒したのかわからないぞ…… ! |
| フルル | フルゥ ! フルルルゥ~ ! |
| リンウェル | また増援が来るって ! |
| シオン | 予想以上に大規模な組織を作っているようね…… ! |
| アルフェン | シオン ! リンウェル、キサラ ! |
| ロウ | お前ら、無事か ! ? |
| リンウェル | 何とか ! そっちは ! ? |
| テュオハリム | 大事ない。しかし敵が多すぎる。このままでは遠からず包囲されるのは明白だ。ここは一時撤退すべきだろう。 |
| シオン | アルフェン、いいわね ! ? |
| アルフェン | っ…… ! わかった ! |
| 装甲兵A | くそっ、あいつらどこに行きやがった…… !逃げ足の速いネズミどもめ ! |
| 装甲兵B | 今、各関所の警備体制強化を伝達しているところだ。そのうち、足取りも掴めるだろう。 |
| 装甲兵A | 絶対に逃がすなよ。これだけの騒ぎだ、ビエゾ閣下へのご報告は避けられない……。 |
| 装甲兵A | そうなったら俺たちもどうなるか…… ! |
| 装甲兵B | 怯えていてもどうにもならん。早急に捜し出すんだ ! |
| キサラ | ……行ったようだな。 |
| ロウ | けど、これからどうするんだよ ?今の話からすると、来る時に通った関所に行くのは無茶っぽいぜ ? |
| テュオハリム | 既存の出入口はすべて封鎖されていると見ていいだろう。好ましい状況ではないな。 |
| 傷だらけの男 | おい、あんたたち…… ! |
| シオン | 誰 ! ? |
| 傷だらけの男 | こっちに逃げ道がある ! 来い ! |
| ロウ | お、おい待てよ !ああ、行っちまったぜ……。 |
| リンウェル | 連れて来られた村の人、だったのかな…… ? |
| アルフェン | …………。 |
| アルフェン | 彼についていこう。 |
| シオン | 罠の可能性は ? |
| アルフェン | ……敵の数は凄まじいものだった。奴らは正面から俺たちを潰せるほどの戦力を持っている。 |
| アルフェン | 俺たちを見つけた時点で増援を呼べばいい。わざわざ罠を仕掛ける理由はないはずだ。 |
| テュオハリム | 同感だ。ここで手を拱いていても事態は好転しない。ならば危険を承知の上でできることをすべきだろう。 |
| シオン | ……わかったわ。あの人を追いかけましょう。 |
| 傷だらけの男 | ふぅ……ここまで来れば大丈夫だろう。この辺りは、まだ連中にも知られちゃいないからな。 |
| キサラ | すまない、助かった。だが、何故私たちを助けてくれたのだ ?下手をすればあなたにも危険が及ぶというのに。 |
| 傷だらけの男 | そっちの仮面の兄さんを見て、な。噂の抵抗組織の英雄かと思って助けたのさ。 |
| リンウェル | 仮面の兄さんって、アルフェンのこと……だよね ? |
| ロウ | 他に誰がいるんだよ ?抵抗組織で仮面つけてるっていえばアルフェンだろ。 |
| アルフェン | ちょっと待ってくれ。俺は英雄なんかじゃない。 |
| 傷だらけの男 | 黒い鎧を身に纏った仮面の剣士……。抵抗組織に加わって帝国軍の侵略に立ち向かい大陸を救った英雄、って話はこの辺りじゃ有名だぞ ? |
| アルフェン | ……なんだか大げさな気がするんだが……。 |
| テュオハリム | 人は英雄の物語を好むものだ。特にこうした状況下では様々な尾ひれがつき脚色されるのは珍しくない。 |
| テュオハリム | 君にとっては窮屈極まりないかもしれないが君の存在は、この地の者たちにとって過酷な現実に立ち向かう精神的な柱なのであろう。 |
| アルフェン | ……それでも、俺は英雄じゃない。そんなもの……俺は求めてない。 |
| シオン | ……カラグリアを出てから、あなたは変わらないわね。 |
| アルフェン | ……シオン ? |
| 傷だらけの男 | ……なんか、悪かったな。勝手に重荷を背負わせちまったみたいで……。 |
| アルフェン | いや……俺の方こそ、期待に沿えなくてすまない。 |
| 傷だらけの男 | 謝らないでくれ。手前勝手なのは俺たちの方さ。帝国が侵略してきた時もさ、割と他人事だったんだよ。この辺りまでは連中の手も伸びなかったから。 |
| 傷だらけの男 | 被害が出てた港町とか、色々と情報は流れてきたけど我関せずっていうかな……そんな感じだった。 |
| ロウ | ここからはかなり離れてるからな。そうなっちまっても仕方ねぇさ。 |
| 傷だらけの男 | ……だけど、あのビエゾって奴が現れてあっという間にあいつの支配が始まった。今じゃ奴隷同然の生活だ。 |
| アルフェン | 奴隷……。 |
| 傷だらけの男 | この先は今の俺たちの現実……。奴隷生活の最たる例さ。 |
| アルフェン | …………。 |
| 傷だらけの男 | ……ついてきな。 |
| キサラ | こ、ここは…… ! ? |
| 横たわっている男 | う、うぅ……。 |
| 痣だらけの老人 | げほ、ごほっ…… ! |
| ボロ布を巻いた子供 | 痛い、痛い、よぉ…… ! |
| ロウ | 怪我人だらけ……いや、怪我人しかいねぇぞ…… ! ? |
| アルフェン | ここは……一体、なんなんだ…… ! ? |
| 傷だらけの男 | 俺たち奴隷の避難所だよ。 |
| アルフェン | ……っ ! |
| Character | 5話【猛獣6 救いの手】 |
| リンウェル | ここが、避難所…… ?こんな、何もない洞窟が…… ! ? |
| 傷だらけの男 | 怪我を診られる医者はいないし、薬の類もない。ここに集まってるのは、作業中に怪我したり病気を患ってて満足に動けない奴らさ。 |
| 傷だらけの男 | 兵隊どもは俺たちがどうなろうと知らん顔だ。むしろ使い潰す気で鞭を打ってきやがる。 |
| 傷だらけの男 | 作業場にいたら死ぬまで働かされる。だから隙を見つけてここに逃げ込んでるんだよ。 |
| アルフェン | ……同じだ、何もかも。最悪な環境も、暴力で人を従えようとする者たちも傷つき死んでゆく人たちも…… ! |
| アルフェン | カラグリアと、同じだ…… ! |
| リンウェル | ここの人たちが何をしたっていうの…… ?許せないよ、こんなの……。 |
| フルル | フルゥ……。 |
| テュオハリム | ……死ぬまで働かされる、か。 |
| シオン | まさか、とは思うけど……。行方不明になっている『集霊器』をビエゾが回収してこの世界の人たちから星霊力を集めている…… ? |
| テュオハリム | 状況からしてその可能性は高い。だが、奴が集めているのは、正確には星霊力ではない。この世界で星霊力が変換された別の力だろう。 |
| ロウ | 細かいことはどうだっていい。要はビエゾがこの世界でもダナと同じことをやってる。そういうことだろ…… ! ? |
| リンウェル | どうして……世界も、何もかも違うのに…… ! |
| 痣だらけの老人 | う、ぐぅっ、げほ、ごほごほっ…… !はぁ、はぁ、はぁ── |
| アルフェン | っ…… ! 大丈夫か、しっかりしろ ! |
| リンウェル | 酷い怪我…… ! 治療は── |
| 傷だらけの男 | さっき言った通り、ここに薬なんてものはない。あるのはベッド代わりの藁だけだ。 |
| 傷だらけの男 | それでも人はここに集まってくる。酷い怪我を負った奴が転がり込んでくることもある。 |
| 傷だらけの男 | 死ぬならせめて落ち着ける場所で、ってな……。 |
| アルフェン | (カラグリアにはドクがいてくれた……。怪我をすれば診てくれて、薬を塗ってくれた。酷い環境だったが、助け合うこともできた) |
| アルフェン | (ここでは、それすらもできないのか…… !) |
| シオン | アルフェン、そこをどいてくれる ? |
| アルフェン | シオン…… ? |
| 痣だらけの老人 | げほっ、あ、あんた、は……。 |
| シオン | 楽にしてて。 |
| 痣だらけの老人 | あ、あぁ……痛みが、引いて、ゆく…… ? |
| シオン | これでしばらくは大丈夫よ。 |
| 傷だらけの男 | あんた、治癒術が使えるのか ! ? |
| シオン | ええ。他に治療が必要な人は ? |
| 傷だらけの男 | あ、ああ。こっちだ ! |
| アルフェン | …………。 |
| キサラ | 我々もシオンに倣おう。今回は不測の事態に備えて応急処置の道具や薬の類を多めに持ち込んでいる。 |
| テュオハリム | 私も治癒術に関しては多少の心得がある。シオンと共に出来る限りのことはさせてもらおう。 |
| キサラ | 助かります。では、重傷者から優先して治療を。リンウェルは星霊術で明かりの確保を。アルフェンとロウは皆の怪我の具合を診てくれ。 |
| テュオハリム | 承知した。 |
| リンウェル | う、うん ! |
| ロウ | 俺は奥の連中から診てくるぜ。アルフェンはこの辺りから頼む。 |
| アルフェン | ああ…… ! |
| シオン | …………。 |
| ボロ布を巻いた子供 | あ、れ……痛いの、なくなった…… ? |
| シオン | これでもう大丈夫。怪我のせいで出ていた熱もすぐに下がるわ。さ、安心して眠りなさい。 |
| ボロ布を巻いた子供 | う……ん……。 |
| シオン | 重傷者はこの子で最後ね。次は── |
| アルフェン | …………。 |
| シオン | ……どうしたの ?私の顔に、何かついてる ? |
| アルフェン | いや、すまない。礼を言いたかっただけだ。 |
| シオン | 礼 ? 何の ? |
| アルフェン | ここの人たちを治療してくれたことさ。体力の方は大丈夫か ? 無理をしているのなら少し休んだ方がいい。 |
| シオン | これくらい平気よ。それに無理というならあなたもでしょう ?まぁ、あなたの場合は無茶かしら ? |
| シオン | 敵の数もまともに把握していない状況で子供を助けに飛び出すなんて……。 |
| シオン | 本当に冷や冷やさせられるわ。 |
| アルフェン | ……怒ってないのか ? |
| シオン | いつものことでしょう ?あれくらいで怒っていたらきりがないもの。付き合わされるのも、もう慣れたわ。 |
| アルフェン | ちょ、ちょっと待ってくれ。俺はそんなしょっちゅう無茶はしていない……はずだ。 |
| シオン | こういうのは自覚症状がないものなの。まぁ、少しでも思い当たる節があるのなら自重することも覚えなさい。 |
| アルフェン | 思い当たる節、か……。わかった、気をつけるよ。 |
| シオン | ええ── |
| シオン | (でも、そういうあなただからレナ人の私のことも助けてくれて……) |
| シオン | (私に……触れてくれた……。本当に変わった人……) |
| アルフェン | シオン ? どうかしたか ? |
| シオン | 何でもないわ。ほら、キサラの手伝いに行くわよ。 |
| Character | 6話【猛獣7 猛る領将】 |
| 装甲兵A | ……報告は以上となります。 |
| ビエゾ | ふん。奴隷集めも満足にできんとはな。どいつもこいつも屑ばかりよ。 |
| 装甲兵A | も、申し訳ありません…… ! |
| ビエゾ | 役立たずどもが。おい、魔物を何匹か連れて来い。憂さ晴らしだ…… ! |
| 装甲兵B | し、失礼します !ビエゾ閣下、至急報告させていただきたいことが ! |
| ビエゾ | 何事だ ? |
| 装甲兵B | 第二採掘場が武装した正体不明の勢力に襲撃されました ! 現在、敵は逃亡 !総動員で捜索、追跡中です ! |
| ビエゾ | 正体不明の勢力だと ?抵抗組織などというネズミどもか ? |
| 装甲兵B | しょ、詳細は確認中です !ただ、仮面の剣士がいたとの情報があります。恐らく奴隷の解放を目指して侵入したのかと…… ! |
| ビエゾ | 仮面の剣士……。以前の報告にあった英雄とやらか。 |
| ビエゾ | ふん。そんなネズミどもにしてやられる貴様らも含めて忌々しい限りだ。 |
| 装甲兵B | 申し訳、ありません…… !て、敵は六名とそう多くはありません !必ずや見つけ出し、討ち取ってご覧に入れます ! |
| ビエゾ | その六匹のネズミを取り逃がした屑がよく吠える。仮面の剣士とやら以外に腕の立つ者でもいたのか ? |
| 装甲兵B | そ、それが全員非常に手強く…… !治癒術使いの女など、厄介な能力を持った者を複数確認しております ! |
| ビエゾ | 治癒術を使う女…… ? |
| 装甲兵B | は ! 長身の銃を巧みに操り、兵を次々と── |
| ビエゾ | その女の名は ? |
| 装甲兵B | な、名前までは……。薄紅色の長い髪が特徴的な女でしたが……。 |
| ビエゾ | ……くっくっくっ……そうか、そうかそうか……。はは、ははははははははははははっ ! ! ! |
| 装甲兵B | ビ、ビエゾ、閣下…… ? |
| ビエゾ | シオン ! まさか貴様もこの世界にいるとはなぁ !しかも出向いてくるとは手間が省ける…… ! |
| ビエゾ | 仮面の剣士ども……いや。薄紅色の髪の女、シオンを早急に捜し出せ !そして俺の前に連れて来い ! いいな ! ? |
| 装甲兵B | はは ! しょ、承知致しました ! |
| ビエゾ | シオン……俺の主霊石を返してもらうぞ…… ! |
| テュオハリム | …………。 |
| キサラ | テュオハリム、外の様子はいかがですか ? |
| テュオハリム | 何度か危うい場面はあったが幸い見つからずに済んでいる。ここは身を隠すには最適なようだ。 |
| テュオハリム | そちらはどうかね ? |
| キサラ | ひと通りの手当は完了しました。持ち込んだ応急物資は底をついてしまいましたが。 |
| テュオハリム | 今の我々よりも彼らの方が必要としていたのだ。仕方あるまい。 |
| テュオハリム | キサラ、君も疲れているだろう。見張りは私一人で充分だ、少し休むといい。 |
| キサラ | この程度でへばるほど、柔な鍛え方はしていませんよ。見張りを交代しますので、テュオハリムこそ一度休息を取ってください。 |
| テュオハリム | ……これは頼もしい限りだ。 |
| テュオハリム | …………。 |
| キサラ | ……テュオハリム ? |
| テュオハリム | 本来の『ダナ』の姿は──ここまで酷いものだったのだな……。 |
| テュオハリム | レナがダナに対してどのような行いをしてきたのか知っているつもりではあった。 |
| テュオハリム | だが、改めて目の当たりにすると痛感する。あまりにも痛ましい、と。 |
| キサラ | ……メナンシアも、かつてはここと同じ光景がそこかしこで広がっていました。それが私にとっての現実でした。 |
| キサラ | その現実を変えたのは、テュオハリム。あなたです。あなたがメナンシアの領将となった時からすべてが変わった。 |
| テュオハリム | いや、そうではない。私はビエゾたち他の領将がこのような暴力による支配を行っていても、見て見ぬフリをしていた。 |
| テュオハリム | 目の届く範囲だけが自分の都合の良い世界であればそれでいい……私はそう考える人間なのだ。 |
| テュオハリム | そういう意味では、私はやはりビエゾたちと同じレナ側の人間なのだろう。 |
| キサラ | ……テュオハリム。その考えは間違っています。 |
| キサラ | あなたは他の領将とは違う。その証拠に、あなたはここの現状を見て心を痛めているではありませんか。 |
| テュオハリム | …………。 |
| キサラ | そして、ここにいる人たちを救いたいとも思っている。 |
| キサラ | ならば、私のやることは一つです。 |
| テュオハリム | ……こんな私に力を貸すというのかね ?君はもはや私の近衛ではないというのに……。 |
| キサラ | 立場など関係ありません。私が、あなたに力を貸したいのです、テュオハリム。 |
| テュオハリム | …………。 |
| テュオハリム | ありがとう、キサラ。君の力、頼りにさせてもらおう。 |
| キサラ | はい ! |
| 装甲兵 | …… ! ……っ ! ! |
| キサラ | テュオハリム、外の様子が……。 |
| テュオハリム | ああ、いささか騒がしくなっているな。探ってみるとしよう。 |
| Character | 7話【猛獣8 攻勢】 |
| キサラ | みんな !よし、全員揃っているな…… ! |
| アルフェン | どうしたんだ ? まさか、ここがバレたのか ! ? |
| テュオハリム | いや、まだその気配はない。だが、装甲兵たちの動きが活発になっている。 |
| テュオハリム | 村人たちも作業を中断させ私たちの捜索に回しているようだ。 |
| ロウ | 総動員って訳か。連中、よっぽど俺たちが怖いみたいだな。 |
| テュオハリム | いや。ことはそれほど単純ではないように思える。 |
| アルフェン | どういうことだ ? |
| テュオハリム | 軍隊とは訓練された兵によって構成された戦闘集団だ。昨日までクワを握って畑を耕していた農民を武装させたところで、それは軍隊にはならない。 |
| テュオハリム | ビエゾが率いている装甲兵たちの練度はそれなりだ。つまり相応の訓練を受け、部隊として行動することを叩き込まれている戦闘の専門家と言えるだろう。 |
| テュオハリム | そんな彼らの部隊に村民を入れて行動させるなどいくら我々の捜索の為でも腑に落ちん。 |
| キサラ | 熟練の兵士たちの部隊は阿吽の呼吸で動くものだ。必要に迫られたとはいえ、そこへ素人を編入しては足並みが乱れるのは避けられない。 |
| キサラ | 近衛時代、新人が編入されるたびに部隊全体で動きを合わせる訓練を行ったものだ。訓練を受けた者でも新人は異物に等しく、足を引っ張る存在となる。 |
| シオン | ……戦闘部隊としての機能を損ねてでも私たちを捜す理由がある……ということかしら ? |
| テュオハリム | そう考えるのが妥当だろう。 |
| アルフェン | ……敵の動きは気になるところだが俺はすぐにここから離れるべきだと思う。 |
| アルフェン | ここが奴らにバレてしまえば、俺たちを匿ってくれた人たちに迷惑をかけてしまう。 |
| リンウェル | そうだね。見つかる前に移動しよう ! |
| ロウ | だな。ちょいと疲れも溜まってきてるが四の五の言ってらんねえ。 |
| キサラ | 私とテュオハリムは元よりその意見だ。それに籠城したところで退路がない。敵の状況を把握する為にも出るべきだろう。 |
| テュオハリム | 周囲の地形について情報も得られた。今なら敵の目を掻い潜り、動くこともできよう。 |
| アルフェン | シオンも、それでいいか ? |
| シオン | ええ。これ以上怪我人が出ては困るもの。 |
| アルフェン | よし、決まりだな。 |
| 傷だらけの男 | ……おい、あんたたち、どうするつもりだ ?まさか、また奴らと戦うつもりなのか…… ! ? |
| アルフェン | 力で自由を奪い、従わせようとする奴は俺たちの敵だ。このまま黙って見過ごす訳にはいかない。 |
| アルフェン | それに、頭目はあのビエゾだ。今討たなければ、ここで起こっている悲劇が大陸全体に広がるかもしれない。 |
| 傷だらけの男 | だ、だけど、奴は恐ろしく強い…… !あんたたちが強いのはわかっちゃいるが勝てる保証なんて…… ! |
| アルフェン | 不安なのはわかる。だが、恐怖に負けて何もしなければそれこそ奴らの思い通りになってしまう。 |
| アルフェン | 自由を奪われ、言われるがままにしか生きられない──そんなこと、俺は認めない。 |
| 傷だらけの男 | だから……戦うのか ? |
| アルフェン | どれほど恐ろしくても、自分から動かなければ壁は壊せないからな。 |
| 傷だらけの男 | ……あんたは、強いな。 |
| アルフェン | そんなことはない。あの状況で危険を顧みずに俺たちを助けてくれたあんたこそ強いさ。 |
| アルフェン | ここの人たちを頼む。ビエゾは俺たちが必ず倒す…… ! |
| 傷だらけの男 | ああ…… ! |
| シオン | さ、行くわよ。 |
| ボロ布を巻いた子供 | あ、あの……。 |
| シオン | …… ? なに ? |
| 痣だらけの老人 | 怪我を、治してくださって……助かりました…… ! |
| ボロ布を巻いた子供 | うん……ありがとう、お姉ちゃん。 |
| シオン | ……別に大したことはしていないわ。お礼なんていいから寝てなさい。治ったのは傷だけ。体力までは戻らないんだから。 |
| ボロ布を巻いた子供 | う、うん…… ! |
| 痣だらけの老人 | どうか、お気をつけて……。 |
| シオン | …………。 |
| リンウェル | シオンの態度は相変わらずだね。 |
| アルフェン | ……そうでもないさ。少しずつだが、シオンも変わってきている。 |
| アルフェン | これまでは、あんな風に感謝されても突き放すような態度だったが……今は満更でもないって顔をしていた。 |
| リンウェル | ふふ。アルフェンってシオンのこと、よく見てるね ? |
| アルフェン | そ、そうでもないぞ。さぁ、俺たちも行こう。ここの人たちの為にも必ずビエゾを倒すんだ…… ! |
| 装甲兵A | どこに行った、あのネズミども…… ! |
| 装甲兵B | おい ! そっちはどうだ ! ? いたか ! ? |
| 装甲兵A | 痕跡一つない ! 貴様のところはどうだ ! ? |
| 装甲兵B | こちらも駄目だ !さっさと見つけないとまずいぞ…… ! |
| 装甲兵A | くそ…… ! おい奴隷ども !魔物に食われたくなければ絶対に奴らを見つけろ !わかったな ! ? |
| 奴隷 | は、はいっ…… ! |
| ロウ | くそ、あの野郎…… ! |
| リンウェル | ロウ、落ち着いて。ここで暴れたら装甲兵たちが押し寄せてくるよ…… ! |
| シオン | テュオハリム。ビエゾの根城があるのは本当にこの方向なの ? |
| テュオハリム | それなりの警備体制が敷かれている。これまでの兵たちの話から推察しても間違いなかろう。 |
| アルフェン | ……この状況、カラグリアでビエゾの城へ潜入した時を思い出すな。 |
| シオン | そうね。状況も含めて、あの時とよく似ているわ。 |
| テュオハリム | 君たちは過去にビエゾを打倒しているのだったな。その時はどのような戦術を用いたのかね ? |
| アルフェン | 大がかりな陽動だ。ジルファたち〈紅の鴉〉が真正面からビエゾの城に攻め込んで、派手に暴れている間に── |
| シオン | 私とアルフェンが城内に潜入してビエゾを炎の剣で討ったわ。 |
| テュオハリム | ふむ……単純だが、良い戦術だ。〈紅の鴉〉がどれほどの戦力を保有していたかはわからないが── |
| テュオハリム | 領将であるビエゾと戦える力はなかっただろう。故に炎の剣を携えたアルフェンとシオンを奴の下へ送り届けることを第一とした訳か。 |
| アルフェン | ああ。俺たちのことを気取られないように指導者のジルファも陽動部隊に入っていた。 |
| アルフェン | お陰で大部分の敵が出払っていて俺たちはビエゾの下へ辿り着けたんだ。 |
| キサラ | 組織の指導者が自らを囮にしたことで陽動部隊を本命と誤認させたのか……。 |
| キサラ | 合理的な判断だが、簡単には実行できない作戦だ。ジルファという人は優れた指導者だったのだな。 |
| ロウ | ……じゃあ、やることは決まりだな。やろうぜ、陽動作戦。囮は俺がやる。 |
| リンウェル | ロウ ! ? |
| ロウ | このまま全員で動いてたら小回りが利かねぇ。潜入行動は少人数の方が見つかる可能性も下がるしな。 |
| ロウ | 親父がやったように陽動をかけた方が敵の警備体制を崩せるし、ビエゾの野郎に殴り込む方も動きやすくなるだろ ? |
| ロウ | 親父がやったんだ。俺だってやってやるさ…… ! |
| アルフェン | 駄目だ、危険すぎる !カラグリアの時は〈紅の鴉〉が総出だったんだぞ ! ?お前一人で囮なんて無茶だ ! |
| ロウ | 無茶なのはわかってる。でもよ、さっきの人たちを見ただろ ! ? |
| ロウ | 普通に、静かに暮らしてただけの……何の罪も無い人たちが奴隷みたいに…… !あんなの今すぐやめさせねぇと駄目だろ ! ? |
| アルフェン | ロウ……しかし…… ! |
| リンウェル | ……ホント、ロウって馬鹿だよね。 |
| ロウ | な、なんだよ !んなこと言ったってしょうがねえだろ。 |
| リンウェル | ううん、しょうがなくない。陽動をするなら派手に暴れて敵の目を引きつけないといけないでしょ ? |
| リンウェル | ロウが暴れるのが得意なのはわかってるけど一人じゃすぐに囮だってバレちゃうよ。 |
| アルフェン | そうだ。だから囮なら俺も── |
| リンウェル | ううん。アルフェンは本隊にいなくちゃ駄目。一度ビエゾを倒してるんだから。敵の戦い方とか、そういうの知ってるよね ? |
| アルフェン | それは……確かにそうだが……。 |
| リンウェル | だから、私がロウと一緒に囮役になる。アルフェンたちはビエゾをやっつけてきて。 |
| ロウ | 馬鹿 ! 何言ってんだ ! ?ヤベェ数の装甲兵を相手にするんだぞ ! ? |
| リンウェル | それはロウも一緒でしょ ?それに、ロウ一人だけじゃヘマしないか不安だもん。ね ? |
| ロウ | ね、ってお前…… ! |
| リンウェル | ロウと一緒に戦うのは慣れてるし。星霊術なら援護もしやすいし、派手で目立つ。いいこと尽くめでしょ ? |
| フルル | フルゥ ! フルルゥ~ ! |
| リンウェル | フルルも一緒だしね ! |
| アルフェン | リンウェル……。わかった。ロウ、頼めるか ? |
| ロウ | ……当たり前だ。リンウェルがいりゃ……まぁ、何とかなるさ。 |
| ロウ | そっちこそ、しっかり頼むぜ。俺たちの分までビエゾをぶっ飛ばしてくれ。 |
| アルフェン | ああ、必ず…… ! |
| Character | 8話【猛獣9 支配者との対峙】 |
| ロウ | リンウェル ! ! ! |
| リンウェル | うん ! ! ! |
| 装甲兵A | ! ? いた、いたぞ ! 奴らだ ! |
| リンウェル | 超魔 ! ! ! |
| ロウ | 閃光牙っ ! ! ! |
| 装甲兵B | くっ……お、応援だ ! 応援を呼べ ! |
| ロウ | そうだ、どんどん来やがれ ! |
| フルル | フルルゥ~ ! |
| リンウェル | ロウ、突っ込み過ぎないようにね !援護が間に合わないかもしれないから ! |
| ロウ | そっちもな ! 俺から離れるんじゃねぇぞ ! |
| リンウェル | うん ! |
| アルフェン | はぁああああああ ! ! ! |
| 装甲兵 | ぐああっ ! |
| アルフェン | よし、これで最後か…… ! ? |
| シオン | ええ、撃ち漏らしは無いわ。ロウとリンウェル、上手くやってくれているようね。 |
| キサラ | ああ、目に見えて警備が薄くなっている。だが、その分あの二人に負担がかかっているはず。私たちも急がねば…… ! |
| テュオハリム | 内部の構造や兵の配置からしてビエゾが座しているのはこの奥と思われる。 |
| アルフェン | 行くぞ…… ! |
| ビエゾ | …………。 |
| アルフェン | ビエゾ ! ! |
| ビエゾ | ふん。ようやく来たか、ネズミども。待ちわびたぞ ? |
| アルフェン | なに…… ! ? |
| シオン | 待ちわびた、ね……。随分嬉しそうだけどそんなに私たちに討たれたかったのかしら ? |
| ビエゾ | 我が主霊石をわざわざ運んできてくれたのだ。顔が綻んでも無理はなかろう ? |
| ビエゾ | しかし、本当にネズミの中にシオンがいるとは。ふふ……はははは ! さぁ、返してもらおうか ?俺の主霊石を ! |
| テュオハリム | ビエゾ……いや、エルウォルゼ・テルディリスよ。ここはカラグリアではない。それどころか我々が知るレナとダナの世界でもない。 |
| テュオハリム | もはや領戦王争に拘る意味は無いはずだ。主霊石を得て、お前は何を望むというのだ ? |
| ビエゾ | 貴様……テュオハリム・イルルケリスか ?領将ともあろう者が、民と家を捨てそんなところで何をしている ! ? |
| ビエゾ | 酔狂な男だとは耳にしていたが『奴隷』どもを引き連れレナに仇なすとはいよいよ気が触れたようだな ! ! |
| アルフェン | ふざけるな ! 俺たちは…… ! ! |
| キサラ | ああ ! 奴隷ではない ! ! |
| アルフェン | 俺たちは俺たちの意志でここにいる !ダナやレナだからという物差しでしか人を見ないお前とは違う ! ! |
| ビエゾ | ふざけているのは貴様らの方だ !いいか ! この世は力こそがすべてだ !支配の象徴なのだ ! ! |
| ビエゾ | 力無き者は、力ある者の為に生きて死ぬ定めだ !そんなこともわからぬ貴様らはネズミ以下の存在よ ! |
| アルフェン | なんだとっ…… ! |
| テュオハリム | ……今一度訊ねよう。ビエゾ、主霊石を求めるお前の目的はなんだ ? |
| ビエゾ | 単純なことよ。この世界を手中に収める為だ。 |
| アルフェン | 世界を…… ! ? |
| ビエゾ | まずはこの大陸を我が支配下として力を蓄える。そして機が熟したところで近隣の大陸へ侵攻し力で支配する── |
| ビエゾ | 〈王〉を決める領戦王争がなかろうとやることは変わらん。その為にこれまで手筈を整えてきたのだ。 |
| ビエゾ | だが、最後に一つだけどうしても欠けているものがあった。それが…… ! |
| アルフェン | シオンの主霊石か…… ! ? |
| ビエゾ | そういうことだ。だが、一つだけでもなくなった。ここには火の主霊石に加え、テュオハリム貴様が持つ地の主霊石もある ! |
| ビエゾ | 二つの主霊石が揃えば世界を従えるなど造作もなかろう ! ! |
| テュオハリム | ……この主霊石は我が罪の証。そう易々と渡せるものではない…… ! |
| シオン | その通りよ。素直に返すとでも ? |
| ビエゾ | 貴様たちの意志など関係無い。今、ここで死ぬのだからなぁ ! ! |
| キサラ | 来るぞ ! アルフェン ! ! |
| アルフェン | 奴の怪力は凄まじい !キサラでも正面から受け止めるのは危険だ ! |
| アルフェン | 俺とテュオハリムで前に出る !シオンは援護を、キサラはシオンを守ってくれ ! |
| テュオハリム | 承知した ! |
| キサラ | 了解だ ! |
| シオン | アルフェン ! 二度目だからって油断しないで ! |
| アルフェン | わかってる ! 行くぞ、ビエゾ ! ! |
| ビエゾ | 群れたところで屑は屑であることを教えてやる ! ! |
| Character | 9話【猛獣10 二度目の決戦】 |
| ビエゾ | ぐぅっ、おおおぉぉっ…… ! |
| キサラ | よし、押しているぞ ! |
| シオン | 油断しないで ! 一気に畳みかけるわよ ! |
| ビエゾ | くっ、おのれっ…… ! |
| キサラ | 隠し扉から魔物、だと ! ?何故こんな所に ! ? |
| アルフェン | 兵士たちが言っていたビエゾの憂さ晴らし用か…… ! ? |
| テュオハリム | 来るぞ ! |
| ビエゾ | っ…… ! |
| シオン | いけない ! ビエゾが逃げるわ !隠し扉の奥よ ! |
| アルフェン | くそっ…… ! また逃げるのか !人を見下し、組織を率いる者が ! ! |
| 装甲兵A | ビエゾ様 ! 例の侵入者たちですが── |
| 装甲兵B | な、なんだ貴様らは ! ? |
| キサラ | こんな時に…… ! まずい !これではビエゾを追いかけるどころではないぞ ! |
| テュオハリム | アルフェン ! シオン !君たちだけでもビエゾを追うのだ !ここは私とキサラで押さえる ! |
| アルフェン | 駄目だ ! これだけの魔物と兵士を相手に二人を残して行く訳にはいかない ! |
| シオン | これ以上の分散は各個撃破の危険が高いわ !ここを片付けて全員で追いかけましょう ! |
| キサラ | しかし ! |
| ロウ | 無影掌 ! ! ! |
| 魔物 | グァァァッ ! ? |
| ロウ | どうだ、この野郎 ! |
| アルフェン | ロウ ! ? 無事だったか ! |
| ロウ | おう ! わりぃな、遅れちまって ! |
| リンウェル | 天雷の裁き…… ! サンダーブレード ! ! |
| 装甲兵A | ぐああぁぁあぁぁっ ! ? |
| リンウェル | 私もいるよ ! |
| フルル | フッフルゥ~ ! |
| シオン | リンウェル !でも、どうやってここまで…… ! ? |
| リンウェル | えへへ ! 『みんな』に手伝ってもらったんだ ! |
| アルフェン | みんな…… ? |
| ロウ | ああ。ここに来たのは俺とリンウェルだけじゃないぜ ? |
| 武器を持った村人A | お、俺たちも一緒に、た、戦うぞ…… ! |
| 武器を持った村人B | このまま働かされて死ぬくらいならいっそ戦って死んでやる ! |
| 武器を持った村人C | ま、魔物は足を狙え ! いいな ! ? |
| キサラ | 彼らは……強制労働させられていた村人たちか ! ? |
| テュオハリム | 蜂起した、というのか…… ? |
| 傷だらけの男 | あんたたち ! 大丈夫か ! ? |
| アルフェン | あんたは…… ! ?まさか、この人たちは── |
| 傷だらけの男 | ……あんたたちが出ていったあとあちこち走り回って、色々な人に声をかけたのさ。 |
| 傷だらけの男 | 暴力を振りかざされて、虐げられて。ただ言われるまま働かされる……。そんな奴隷のままでいいのかって。 |
| 傷だらけの男 | 俺たちの為に戦っている人たちがいるのに俺たちが何もしなくていい訳がない…… !俺たちこそが自由の為に立ち上がって、戦わないと ! |
| ロウ | で、村人たちを説得して反乱を起こしたんだとさ。お陰で俺たちもここまで来れたってわけだ。 |
| アルフェン | そうだったのか……。ありがとう。助かった ! |
| 傷だらけの男 | それはこっちのセリフさ。あんたたちのおかげで俺たちは奴隷にならずに済んだ。立ち上がることができたんだ ! |
| ロウ | 頼もしい限りだぜ !さあ、このまま魔物と装甲兵をぶちのめして── |
| アルフェン | ああ ! ビエゾを追いかけるぞ ! ! |
| キサラ | くっ、見失ったか…… ! ?あの巨体で身軽な男だ…… ! |
| テュオハリム | だが、ここまで脇道は無かった。ここは恐らく緊急用の脱出路なのだろう。 |
| リンウェル | ! ? みんな、あそこっ ! |
| ロウ | おいおい ! あれってもしかして『集霊器』かよ ! ? |
| シオン | ええ、間違いない !凄まじい力を感じるわ…… !やっぱりビエゾは『集霊器』を回収していたのね…… ! |
| アルフェン | 奴は…… ! ? |
| シオン | 『集霊器』の下よ ! |
| ビエゾ | ぬぅ、ぐぅぅぅっ…… ! |
| アルフェン | 諦めろ、ビエゾ ! お前の負けだ ! |
| ビエゾ | 誰が、誰に、負けるだと…… ! ?いい気になるなよ、ダナ風情がぁ ! |
| ビエゾ | シオン ! テュオハリム !貴様らの主霊石を寄越せぇ…… ! |
| ビエゾ | 主霊石があれば…… !俺は〈王〉になれるのだぁ ! ! |
| アルフェン | お前を〈王〉になどさせない…… !お前はここで俺たちが倒す ! |
| Character | 10話【VSビエゾ】 |
| ビエゾ | ぬぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ ! ! !まだ、だぁ ! この、程度では、俺はっ…… ! |
| テュオハリム | いや、ここまでだ !味わうがいい、大地の鼓動 !インミネイティエクシティオ ! ! ! |
| ビエゾ | ぐぅっ、お、おぉぉぉぉっ…… ! |
| テュオハリム | ……勝敗は決した。エルウォルゼ・テルディリス。 |
| ビエゾ | お……おの、れぇっ…… !何故、この俺がっ、膝をつかねばならぬっ…… ! |
| ビエゾ | ダナや、裏切り者だけではなく…… !領将でありながらレナを否定する貴様に屈する訳にはいかんのだ、テュオハリムゥ ! ! ! |
| テュオハリム | ……確かに私はレナとしては異端だ。領将に選ばれながら領戦王争への意欲は無く〈王〉になることなど考えもしなかった。 |
| テュオハリム | そう。かつての私はすべてがどうでもよかったのだ。すべてに対して興味が無かった。自らの意志を放棄していたとも言えるだろう。 |
| キサラ | テュオハリム……。 |
| テュオハリム | 結果、私は大きな罪を犯した。その罪と向かい合い、償わなければならない。そしてそれは、世界が違おうとも変わらない。 |
| テュオハリム | 例えどれほど遠く隔てられた世界にいようとも私も、私が為してきた過去も、何も変わらないのだ。 |
| テュオハリム | この世界に未だ満ちる悲鳴を止める為……。お前が苦しめる民を救う為。そして仲間たちの為 ! |
| ビエゾ | ぬ、うぅっ…… ! |
| テュオハリム | 私は己の意志でお前を倒そう ! 領将ビエゾ ! ! |
| キサラ | ! ? 火山、活動 ! ? こんな時に…… ! |
| テュオハリム | っ…… ! |
| ビエゾ | ふん、運の無い男だ…… !燃えろぉおおおおおおおお ! ! |
| キサラ | テュオハリム ! !はぁああああああああああああああ ! ! |
| ビエゾ | な……にっ…… ! ? |
| ロウ | す……すげぇ……。あの馬鹿でけえ斧を── |
| リンウェル | う、うん。盾で弾き飛ばしちゃった……。 |
| キサラ | 無事ですか、テュオハリム ! ? |
| テュオハリム | ……ああ。君のお陰で、こうして傷一つ無い。また助けられたな、キサラ。 |
| キサラ | お気になさらず。『仲間』を守ることが私の使命ですから。 |
| テュオハリム | ……ありがとう。 |
| ビエゾ | ぐっ…… ! おのれぇっ !ダナ人如きがどこまでも俺の邪魔を…… ! |
| アルフェン | お前が力で人々を支配しようとする限り俺たちは何度でも戦う…… ! |
| ロウ | ああ ! 親父の思いをこの拳に込めてなっ…… ! |
| リンウェル | 誰もあんたの思い通りになんてならない ! |
| シオン | 終わりよ、ビエゾ。 |
| ビエゾ | ふざけるなぁ ! こんな所でこの俺が…… ! |
| リンウェル | え ! ? な、なに ! ? |
| ロウ | 見ろ ! !『集霊器』にビエゾの斧が突き刺さってるぞ ! ? |
| シオン | いけない ! みんな、下がって !『集霊器』に集められていた力が溢れるわ ! |
| アルフェン | これ、は…… ! |
| シオン | あの時と同じ、星霊力の顕現…… ! ? |
| テュオハリム | なんという大きさ、そして威圧感…… !さしずめ、炎の化身といったところか…… ! |
| ロウ | 感心してる場合じゃねぇって ! 燃やされちまうぞ ! ? |
| ビエゾ | 『集霊器』が…… ! 俺が集めた、俺が手にするはずだった力がっ…… !貴様ら ! なんということをしてくれたのだ ! ! |
| ビエゾ | っ ! ? |
| ビエゾ | ぎゃあああああああああああああああああああ ! ! |
| キサラ | ビエゾが、炎の化身に…… ! |
| リンウェル | 呑み込まれ、ちゃった……。 |
| テュオハリム | あれでは骨も残るまい…… ! |
| ロウ | くそ ! あの化け物、こっち見てるぞ !ビエゾの次は俺たちってか ! ?どうする ! ? 戦うのか ! ? |
| リンウェル | で、でも、こんなのどうやって倒すの ! ? |
| テュオハリム | これほどの存在だ。放置すればこの活火山にどれほどの影響を与えるかわからん。ここで討つべきだが…… ! |
| キサラ | 最悪、このまま噴火してしまう可能性も…… !しかしリンウェルの言う通り、こんなものをどうやって…… ! ? |
| アルフェン | ……シオン。こいつは星霊力に似た力の塊なんだよな ? |
| シオン | え、ええ。そうだけど── |
| シオン | あなた、まさか ! ? |
| アルフェン | ああ。星霊力と似たものならあの時と同じように…… ! |
| シオン | 駄目よ ! ! あの後死にかけたことを忘れたの ! ? |
| アルフェン | でも、シオンのおかげで死ななかった。そして、今もシオンは俺の隣にいてくれる。 |
| アルフェン | こいつは俺が…… !……おおおおおおおおおっ ! ! |
| シオン | アルフェン ! ! ! ! |
| リンウェル | 炎の剣が…… ! |
| テュオハリム | 炎の化身の力を吸収している…… ! ? |
| ロウ | 見ろよ ! あの怪物どんどん小さくなってくぜ ! |
| キサラ | いや、小さいどころではないぞ。消えてゆく…… !だが、代わりに炎の剣が…… ! |
| シオン | アルフェン…… ! ! |
| アルフェン | ぐっ、ぅっ…… ! 大丈夫だ、このまま…… ! |
| テュオハリム | いかん、この揺れ方は…… !天井が崩落するぞ ! |
| アルフェン | っ…… ! うおおおおおおおおおおおおおおおお ! ! |
| ロウ | はぁ~~~……マジで死ぬかと思ったぜ……。いや、アルフェンがあの馬鹿でかい炎の剣で天井をぶち抜いてくれなかったら死んでたな……。 |
| キサラ | アルフェン。腕の方は本当に大丈夫なのか ?いつも以上に酷い火傷を負っていたが……。 |
| アルフェン | ああ、大丈夫だ。シオンの治癒術のおかげで何ともない。 |
| シオン | 治るからってああいう無茶はもうやめなさい。治癒術にだって限界があるんだから。 |
| シオン | ……もう少し、自分の体を労わって。 |
| アルフェン | ……ああ、そうするよ。いつもありがとう、シオン。 |
| シオン | わかればいいわ、わかれば……。 |
| リンウェル | ところで、あの『集霊器』、どうするの ?イクスたちにお願いして回収してもらった方がいいと思うんだけど。 |
| テュオハリム | そうするのが賢明だろう。かなり損傷しているが、あのまま放置しては良からぬことに使おうとする者が現れるかもしれん。 |
| テュオハリム | 信頼に足る者の手に委ね、管理した方がいい。 |
| ロウ | 行方知れずの『集霊器』は見つかったしビエゾの野郎をぶっ飛ばして村の人たちも助けた。これでこの件は終わりか ? |
| リンウェル | でも、村を焼かれたって言う人たちもいたよ。あの人たちは……。 |
| キサラ | テュオハリムと私が世話になっていた村に頼み受け入れてもらおうと考えている。 |
| シオン | かなりの人数だけど、大丈夫なの ? |
| テュオハリム | あの村の者たちならば心良く迎え入れてくれるだろう。私もしばし滞在し、落ち着くまで見守るつもりだ。 |
| ロウ | ビエゾがいなくなって装甲兵たちもどっか行っちまったし。これで一安心だな ! |
| シオン | ひとまずは、ね。ビエゾがいた以上、他の領将たちがいないという保証はどこにもないわ。 |
| シオン | 今この瞬間にだって、ビエゾのように世界を掌握する為動いているかもしれない……。 |
| アルフェン | もしそうだとしても、俺たちで止めればいい。 |
| アルフェン | 領将たちが壁を作り、世界を分断しまた力で人々を従えようとするのなら―― |
| アルフェン | 俺は何度でも、その壁を壊すだけだ ! |