| Character | 1話【意外な出会い】 |
| ユーリ | 美味いメシ屋見つけたからみんなで行こうって……おっさんは相変わらず、言い出すことが唐突だな。 |
| フレン | きっと気を遣ってくれているんだよ。みんな忙しくて、なかなか集まる機会がないからね。 |
| ユーリ | どうだかな。おっさんが寂しがってるだけなんじゃねえの。 |
| ユーリ | ――しかし、ちょいと早く来ちまったか。これならもう少し稽古しててもよかったな。 |
| ラピード | ……クゥーン ?ウー……ワン ! ワンワン ! |
| ユーリ | どうした、ラピード ? |
| デューク | …………。 |
| ユーリ | デューク…… ! ?珍しいな、こんな街中であんたを見かけるなんて。 |
| デューク | 預けていたものを受け取りに来ただけだ。あの魔導士の娘から。 |
| フレン | 魔導士――リタのことですね。彼女に預けていたものって、まさか……。 |
| デューク | ……我が友の聖核だ。 |
| ユーリ | そうか……話、聞いたぜ。キメラ結合、やっと解けたんだってな。リタとフィリップが相当苦労してたみたいだが。 |
| デューク | 彼らには大きな借りができた。ようやく、友の歪な姿を戻せたのだから。 |
| ユーリ | よかったな、親友が元通りになって。 |
| デューク | …………。 |
| ユーリ | ……デューク ? |
| ラピード | ワン ? |
| デューク | これ以上、私から語ることはない。さらばだ。 |
| ユーリ | ……相変わらず、何考えてるんだか読めねえな。 |
| フレン | あの聖核は、彼の盟友エルシフルの形見であり命そのもの……それが手元に戻ったというのにあまり嬉しそうな顔ではなかったね。 |
| ユーリ | やっぱ妙だよな。さて、どうすっか……。 |
| フレン | 行くのかい ? |
| ユーリ | ……悪い。みんなには遅れるって言っといてくれ。 |
| ユーリ | さっきの様子もそうだが……前から一度、あいつとは正面切って話したいと思ってたんだ。 |
| フレン | わかった、伝えておくよ。 |
| ラピード | ワン ! ワンワン ! |
| ユーリ | ラピードもフレンと行ってくれ。今回はサシで話してえんだ。 |
| ラピード | ウー……ワン ! |
| ユーリ | 別に喧嘩しに行くわけじゃねえって。じゃ、また後でな。 |
| Character | 2話【VSミクトラン】 |
| デューク | …………。 |
| ユーリ | 邪魔するぜ、デューク。――おっ ! ? |
| ユーリ | ……悪い、動物たちが逃げちまったな。嫌われるタイプじゃないと思ってたんだが。 |
| デューク | 好悪の感情ではない。彼らは見知らぬ存在を恐れているだけだ。 |
| デューク | ……何用だ ?ここはお前が生きる場所ではないはず。 |
| ユーリ | 用ってほどじゃねえが……さっきのあんたの顔が気になったんでな。 |
| デューク | 何のことだ ? |
| ユーリ | とぼけてんのか、自覚してねえのかわからねえけど……。 |
| ユーリ | あんたの友達――エルシフルの聖核がやっと本来の形に戻ったんだろ。そんで、無事にあんたの手元にある。 |
| ユーリ | なのに、喜ぶどころかお通夜みたいな顔してたぜ。さすがに変だと思うさ。 |
| デューク | ……不思議なものだ。 |
| デューク | 考え得る最善の道を選んだつもりでも表情に出てしまうほどの感傷が残るのか。 |
| ユーリ | それが人間ってもんだろ。あんたは嫌がる言い方かもしれねえけど。 |
| デューク | …………。 |
| ユーリ | 壊すつもりなんだな。その聖核。 |
| デューク | ……他に道はない。友の亡骸といえど、聖核の力はこの世界でもやはり混乱を招いてしまった。 |
| デューク | ならば、再び不遜な輩に利用される前にこうして純粋な姿のまま、自然に還してやりたい。 |
| デューク | この大気に満ちるものがエアルではないにせよ……それに準じる形で還元されてゆくのだろうから。 |
| ユーリ | ……やっぱ、そうか。 |
| デューク | 異論があるか ? |
| ユーリ | いや、何も言えねえよ。エルシフルが何を望むかなんて、会ったこともないオレたちにはわからねえからな。 |
| デューク | エルシフルの望み……。 |
| デューク | お前がここを訪れたのも、あるいは巡り合わせかもしれぬな。 |
| ユーリ | どういうことだ ? |
| デューク | 今から、この近くの丘で聖核を砕く。お前にも立ち会ってもらうとしよう。 |
| ユーリ | ……いいのか ?部外者のオレが立ち会って。 |
| デューク | 構わん。見届ける者がいても、友は苦に思うまい。来るかどうかはお前の意志に委ねるが。 |
| ユーリ | ……わかった。あんたがそう言うなら、同行させてもらうぜ。 |
| デューク | では、ついてくるがいい。 |
| Character | 3話【さらば友よ】 |
| デューク | ……ここが良いだろう。 |
| ユーリ | 気持ちいい風が吹いてんな。景色も最高だ。エフミドの丘みてえに。 |
| デューク | …………。 |
| ユーリ | ……聞くまでもねえとは思うが、一応確かめておく。本当に、いいんだな ? |
| デューク | 葛藤がないわけではない。友との離別を再び味わうのだからな。 |
| デューク | だが、以前とは違う。激情も失意もなく、静かに別れを言える。……だから、これで良いのだ。 |
| ユーリ | そうか。なら、黙って見届けるぜ。 |
| デューク | …………。 |
| デューク | さらばだ、エルシフル。私の、無二の友よ。 |
| ユーリ | …………。本当に変わったな、あんた。 |
| デューク | 何故、そう思う。 |
| ユーリ | オレは、帝国に聖核を散々利用されちまったことであんたが今まで以上に人間を見限ってもおかしくねえと思ってた。 |
| ユーリ | だけど、あんたは穏やかな顔で友達を見送った。愚かな人間どもに恨みを言うわけでもなく、さ。 |
| デューク | …………。 |
| ユーリ | 今のあんたは、少しぐらい人間に希望を持ってくれてると思っていいのか ? |
| デューク | 勘違いをするな。私は決して人間の側に立ったわけではない。 |
| デューク | 今はお前たちと対立する理由がない……しかし、もしまた摂理を無視した横暴を人間が繰り返すならば、身命を賭してそれに立ち向かうであろう。 |
| デューク | ……そんな日が来ないのなら、それも良いがな。 |
| ユーリ | ――ってことは、やっぱり少しはチャンスがあるわけだ。 |
| デューク | どう解釈するかはお前の勝手だ。 |
| ユーリ | だったら都合のいいように解釈しとくぜ。どうだ、今度はちっとばかしこっちに付き合ってくれねえか ? |
| デューク | ……何 ? |
| ユーリ | 前からあんたに見せたかったもんがあるんだよ。なかなか機会がなかったけどな。 |
| デューク | また訳のわからぬ事を……読めぬ男だ。 |
| ユーリ | お互い様だろ。無理にとは言わねえよ。静かに過ごしたいんなら邪魔はしたくないからな。 |
| デューク | ……いいだろう。お前の真意を確かめさせてもらう。 |
| ユーリ | そう来なくっちゃな !それじゃ、ついてきてもらうぜ。 |
| デューク | ……時間の無駄にならねば良いが。 |
| Character | 4話【生きとし生ける者】 |
| ユーリ | ……やっぱ、この時間帯が一番活気あるな。飯の準備でいい匂いがしてくるし仕事帰りの職人とか、色んな人間が歩いてる。 |
| デューク | いったいどこへ行くつもりだ。見せたいものがあると言っていたが。 |
| ユーリ | まだ、わかんねえかな。 |
| デューク | 謎解きをするつもりはない。お前は先ほどから、どこへ向かうでもなく変哲もない街中を歩いているだけだ。 |
| ユーリ | 『変哲もない街』か……。オレが見せたかったのは、まさにそれだよ。 |
| デューク | 街の風景を、か ? |
| ユーリ | 風景じゃねえ。そこに住んでる人間をだ。変哲もないただの街で、毎日必死に生きてる奴らをあんたにもっと見て欲しかったんだ。 |
| デューク | …………。 |
| ユーリ | あんたが人間を見限った理由はわかる。でもオレはあんたの言う人間ってのが、ふんぞり返った軍人だのお偉いさんばっかりに思えてならねえんだ。 |
| ユーリ | 人間ってのはそれだけじゃねえ。世界の行く末とか戦争とか、そんなもんとは無縁にただ毎日を必死に生きてる連中だっている。 |
| ユーリ | オレにとっちゃ、そういう奴らこそが一番よく知ってる『人間』なんだ。 |
| デューク | ……知らずにいるから罪がない、とは言えぬ。無知に甘んじることもまた傲慢の表れだ。 |
| ユーリ | そうなのかもな。別に、あんたの考えを根っから変えたいわけじゃない。 |
| ユーリ | だけど、もう人間の悪い部分はたっぷり見てきたんだ。いい部分も少しは見なきゃ公平じゃないだろ ?心ある人間もちょっとはいるってことをさ。 |
| デューク | …………。 |
| デューク | 生きとし生ける者、心ある者の安寧……か。 |
| ユーリ | ……何だって ? |
| デューク | 友の言葉を思い出していた。その真意は聞けぬままだったがな。 |
| ユーリ | そりゃ……残念だったな。聞けなかったことは、残された奴が考えるしかねえさ。 |
| デューク | ……そうだな。考え続けなければならない。 |
| デューク | お前の言い分をそのまま受け入れはしない。だが、少しは考慮に入れておくとしよう。 |
| ユーリ | ありがとよ。今回は剣を使わずに話が通じてよかったぜ。 |
| ユーリ | 話が通じたついでに聞いてみるが他の連中とメシ食う約束してるんだ。せっかくだし、あんたも来ねえか ? |
| デューク | ……やめておこう。人の世に馴れ合い、溶け込むつもりはない。 |
| ユーリ | そりゃ残念だな。美味いメシも、人間のいい部分の一つだと思うが。 |
| デューク | ……私は一歩離れて、見ていよう。お前たち人間の行く道を。 |
| デューク | かつてエルシフルが、人間という存在に希望を見たことが正しかったのかどうか――それを見極めるために。 |
| ユーリ | ああ、見ててくれ。失望はさせねえよ。 |
| デューク | フ……さらばだ。 |
| ユーリ | ひとまず、一歩離れたとこまでは歩み寄ってくれたと思っとくか。……またな、デューク。 |