| Character | 1話【世界1 デクスを追って】 |
| フレン | 待つんだ、デクス ! |
| デクス | 待てと言われて待つ奴はいない !そして言ったはずだぞ !オレを止められるのはアリスちゃんだけだと ! |
| デクス | はははははは―――― ! |
| フレン | 身体能力は高いと聞いていたけれど…… !まずい、このままでは逃げられる ! |
| カーリャ・N | そうはいきません !たとえ地の果てであろうと必ず追いついてエステル様にお届けする品を返していただきます ! |
| カーリャ・N | はぁ、はぁ、はぁっ…… !そ、そん、なっ…… ! |
| ユーリ | くそっ、見失ったか…… !デクスの野郎、なんて逃げ足してやがる…… ! |
| フレン | でも、体力には限界があるはずだ。さすがの彼も、あの速さを維持したまま逃げ続けることは難しいんじゃないかな。 |
| ユーリ | だな。どっかでバテてるはずだ。となりゃ、なんとかして奴の足取りを追わねぇと。さて、この辺りにはっと……。 |
| カーリャ・N | ユーリ様 ?地面に触れて、何をされているんですか ? |
| ユーリ | デクスはあれだけなりふり構わず逃げてったんだ。足跡の一つや二つ、残っててもおかしくねぇだろ ? |
| フレン | あっちの方に逃げたと思うんだが、どうだい ? |
| ユーリ | だな。ついさっきできた足跡が続いてやがる。追いかけるぞ。 |
| カーリャ・N | ユーリ様、フレン様、申し訳ありません !すべては私の油断が招いた事態です…… ! |
| ユーリ | 何言ってんだ ?お前がオレたちに頭下げる理由なんてないだろ ?悪いのは他人の物を盗んだデクスだ。 |
| フレン | それに油断が招いた事態というなら何もできなかった僕やユーリも同じだよ。 |
| ユーリ | そういうこった。だからそんな泣きそうな顔すんなって。 |
| カーリャ・N | ……はい。ありがとうございます、ユーリ様、フレン様。 |
| フレン | でも、一つ腑に落ちない点がある。彼は何故ネヴァンの鞄を奪ったんだ ? |
| ユーリ | ……あの様子からしてそんな大層な理由はないんじゃねーか ? |
| ユーリ | それこそ、アリスのご機嫌を取る為、とかな。 |
| フレン | 一理ありそうだけど……。何が入っているのかもわからない鞄をそんな理由で強奪するだろうか ? |
| ユーリ | さあな。ネヴァンの後をずっとつけてたのかもしれねぇ。 |
| カーリャ・N | 尾行されている気配はなかったのですが……。 |
| ユーリ | ま、あいつの動機は重要じゃねえ。今は早いとこ追いかけようぜ。 |
| カーリャ・N | はい ! |
| ユーリ | ……ちっ、足跡が消えやがった。 |
| フレン | そしてこの先は分かれ道か。二手に分かれた方が良さそうだね。 |
| フレン | 魔鏡通信機で連絡を取り合いながら追跡しよう。ユーリはネヴァンと右へ、僕は左に向かうよ。 |
| カーリャ・N | いえ。左には私が向かいます。フレン様はユーリ様とご一緒にお願いします。 |
| ユーリ | 一人で大丈夫か ?さっきも言ったが、責任なんざ感じる必要ねぇぞ ? |
| カーリャ・N | ご心配ありがとうございます。ですが、そういう訳ではありません。 |
| カーリャ・N | 私自身、単独で動くのは慣れています。足跡の追跡もできますので、ご心配には及びません。 |
| フレン | 効率の面から、僕とユーリが組んだ方がいい訳か。わかった。何かあったらすぐに連絡を。 |
| ユーリ | 無理はするなよ。 |
| カーリャ・N | はい ! |
| しいな | ──すず。準備はいいかい ? |
| すず | はい。いつでも行けます。 |
| しいな | よし、行くよ ! |
| しいな | イガグリ流 ! |
| 二人 | 紅陽炎 ! ! |
| しいな | よ~し上手くいった~ !あたしたち、息ぴったりじゃないか ! |
| すず | 伊賀栗流とイガグリ流、やはり似ていますね。思ったよりも簡単に合わせられました。 |
| しいな | これならもっと難しい術もいけそうだよ。でも、すずがお互いの知識を合わせて新しい技を作ろうって言い出した時は驚いたねぇ。 |
| すず | 今の平和がずっと続くとは限りません。有事の備えは怠るべきではないと思います。 |
| しいな | ああ、わかってるよ。だからこうして研究を重ねて新技を編み出したのサ。 |
| しいな | さぁて。ここからは練度を上げる訓練になるけどすずは何か希望はあるかい ? |
| すず | 手強い魔物が相手なら不足はないか、と…… ? |
| カーリャ・N | っ…… ! |
| しいな | ……今の、ネヴァンかい ? |
| すず | はい、間違いありません。何かあったのでしょうか ? |
| しいな | 妙に慌ててたし、ちょいとキナ臭いね。ここは話を聞いてみようじゃないか。 |
| しいな | お~い ! ネヴァ~ン ! |
| Character | 2話【世界2 頼もしい助っ人】 |
| しいな | お~い ! ネヴァ~ン ! |
| カーリャ・N | っ ! ? し、しいな様 ! ? |
| すず | そのように急がれて何かあったのですか ? |
| カーリャ・N | すず様まで…… ! ?何故お二人がこのような場所に ! ? |
| しいな | すずの提案で、新しい技を試してたのサ。で、あんたはどうしたんだい ? |
| カーリャ・N | はい。実は── |
| カーリャ・N | ──ということでユーリ様、フレン様と二手に分かれて、デクス様を追跡していたんです。 |
| すず | そうでしたか。ネヴァンさんが険しい顔をされるのも無理はありません……。 |
| しいな | デクスの奴、相変わらずというかなんというか。ホントに困った奴だよ。 |
| すず | デクスさんを間諜として活動させていたジェイドさんはすごいですね。 |
| カーリャ・N | アリス様の存在を上手く活用していたようですが大胆な采配だったと思います…… ! |
| しいな | 何考えてるかわかんないあいつをよく手懐けたもんさ。だからって、あの陰険ロン毛メガネを褒める気にはなれないけどねぇ。 |
| しいな | まぁ、ジェイドのことはいいサ。問題はデクスだよ。 |
| すず | はい。そもそもどうしてネヴァンさんから鞄を奪ったのでしょう ? |
| カーリャ・N | あ、それなのですが── |
| しいな | 何か思い当たる節があるのかい ?あの馬鹿の背後にデカい事件が隠れてるとか ? |
| カーリャ・N | いえ。ユーリ様がおっしゃられていたのですがアリス様の機嫌を取る為ではないか、と。 |
| しいな | ……あー……。 |
| すず | なるほど……。 |
| カーリャ・N | これまでのデクス様の言動からしてその可能性がもっとも高いかと思われます……。 |
| しいな | はぁ……ホントにあいつらは……。せっかく世界が平和になってきてるってのに。大人しくできないもんなのかね ? |
| すず | 平和になったからこそ策謀を巡らせる余裕が生まれたとも言えます。 |
| カーリャ・N | さ、策謀…… ! ?まさか、アリス様が何か良からぬことを計画されていると ! ? |
| すず | アリスさんはエクスフィアの入手に拘っていたとか。魔鏡技術の知識を得ることで妥協されたようですが今は── |
| しいな | いやいや、そりゃない。大体、盗まれちまった鞄に入ってたのはライラから預かった箱だけだろ ? |
| しいな | 箱に何が入ってるのかはネヴァンも知らされてない。仮に中身がエクスフィアだったら、事前にちゃんと伝えてるはずだ。重要品だからね。 |
| しいな | そもそも、その箱も、ローエンの仕込みの一環だろ ?だったら余計にエクスフィアなんて入れないサ。 |
| すず | ……確かに。箱の大本をたどると、そう考える方が自然ですね。 |
| しいな | どっちにしろアリスの為に盗んだのは間違いないサ。サッサと捕まえて、とっちめてやらないと ! |
| すず | はい、その通りです。 |
| カーリャ・N | ……しいな様、すず様 ? |
| しいな | ほら、ネヴァン。なにぼ~っとしてるんだい。サッサとデクスを追いかけるよ ! |
| すず | お聞きした情報から今もそう離れてはいないと思います。急ぎましょう。 |
| カーリャ・N | ですが……。お二人は新しい技の開発をされていたと。手伝っていただく訳には…… ! |
| しいな | それなら大丈夫サ。基本はできたからね。後は練度を上げるだけなんだ。 |
| すず | デクスさんに追いつき、戦闘になった場合もお力になれると思います。 |
| すず | それに、逃亡者の追跡は忍者の基礎技術ですから。 |
| しいな | そういうこと。いいから、あたしたちに任せときなって ! |
| カーリャ・N | すず様、しいな様…… !ありがとうございます ! |
| しいな | 困った時はお互い様ってね ? |
| すず | ではまず、デクスさんの居場所を探りましょう。 |
| しいな | だね。ネヴァンはデクスを追いかけてここに来たけどあたしたちはあいつを見ちゃいない。 |
| カーリャ・N | では、別の道に…… ! ? |
| すず | ネヴァンさん。ここに来るまで脇道はありましたか ? |
| カーリャ・N | いえ。ほぼ一本道でした。ただ、整備されていない獣道でしたのでもしかしたら見落としがあったかもしれません ! |
| しいな | デクスの工作員としての腕はそれなりだからね。自分の痕跡を消しながら逃げてるかもしれないよ。 |
| すず | 一度来た道を戻って不審な点がないか確認しましょう。ネヴァンさん、案内をお願いできますか ? |
| カーリャ・N | はい、もちろんです ! |
| しいな | デクスめ、絶対に逃がさないからね ! |
| Character | 3話【世界3 想いを込めて】 |
| カノンノ・E | ん~~~ ♪グラスバレーのバナナケーキ、ホントに美味しい !ライラさんにコツを教わっただけのことはあるね ! |
| カノンノ・G | えへへ、ありがとう。でもコニャックがなかなか手に入らなくてね。今回は別の材料で代用したんだ。上手くいってよかった~。 |
| カノンノ・E | コンニャク ?いつものバナナケーキは、コンニャクが入ってるの ? |
| P・カノンノ | コニャックだよ。ブランデーっていうお酒の一種。結構高いって聞いたんだけど、そうなの ? |
| カノンノ・G | 結構というか、かなり高い、かな ? |
| カノンノ・G | 前はアイゼンさんが、代金はいらないからバナナケーキをエドナさんに食べさせてほしい、って持ってきてくれてたの。 |
| カノンノ・E | だから時々エドナのお茶会にバナナケーキを持って来てたんだ。 |
| P・カノンノ | それでお菓子作りが上手になったんだね。もぐもぐ……うん、本当に美味しい。私も今度作ってみようかな ? |
| カノンノ・G | なら、私が教えてあげるよ。イアハートもどう ? |
| カノンノ・E | やるやる ! ね、その時はネヴァンも呼ばない ? |
| カノンノ・G | うん、それいいと思う。ネヴァン、お菓子が大好きだから。 |
| P・カノンノ | さて。グラスバレーのバナナケーキも食べたことだし。ローエンさんにお願いされてた『これ』を進めよう ? |
| カノンノ・G | うん。早く封筒にまとめて届けないと。 |
| カノンノ・E | ふふ、こういう準備って楽しいよね。秋祭りのお月見ライブを思い出しちゃうよ。 |
| P・カノンノ | あの時は色々あって大変だったって記憶の方が強いかな ? |
| カノンノ・G | そうだね。でも、ステージに立って、三人で歌ってさ。とっても楽しかった !またやりたいなぁ~……。 |
| カノンノ・E | なら来年の秋祭りに向けて、今から練習する ?準備会にも参加してさ、みんなを呼んで盛り上げるの ! |
| P・カノンノ | いいと思う。ジョニーさんやテュオハリムさんにもライブに出てもらうのはどうかな ? |
| カノンノ・G | そうだ ! ティアにも来てもらおうよ ! |
| カノンノ・E | ティアたちが参加したら、強力なライバルになるね。私たちも気合を入れないと。 |
| P・カノンノ | そういえば、イアハート。本の出版はどう ?ルーティさんと一緒にやるって言ってたよね ? |
| カノンノ・E | 今はローエンさんとヴィクトルさんのレシピ本を出した出版社とお話してるんだ。 |
| カノンノ・E | でも、肝心の執筆が、ちょっと苦戦してて……。みんなとの思い出を一冊の本にまとめるのがすごく大変でさ。 |
| P・カノンノ | この世界に来てから本当に色々なことがあったもんね。あれも入れたい、これも入れたいってなっちゃいそう。 |
| カノンノ・E | 実際に今そうなってる……。何冊かに分けて出版できないか聞いてみようかなぁ……。 |
| カノンノ・G | …………。 |
| カノンノ・E | ……グラスバレー ? どうかしたの ? |
| カノンノ・G | あぁ、うん。ちょっと考えごと。 |
| P・カノンノ | ……ラザリスのこと ? |
| カノンノ・G | ……うん。 |
| カノンノ・G | ラザリスは、今もジルディアの島で眠ってる。あの島に行くと、時々オリジナル・カノンノがラザリスのことを教えてくれるんだ。 |
| カノンノ・E | 私とパスカが行った時も教えてくれたよ。でも、いつ目を覚ますかわからないのは辛いね。ただ待ってるだけなんて……。 |
| カノンノ・G | でも、いつかまた会える。会って、お話ができる。 |
| カノンノ・G | それがわかってるから、大丈夫。ラザリスの目が覚めたら、私たちはこんな素敵な未来に辿り着けたよって、伝えたいな……。 |
| P・カノンノ | グラスバレー……。 |
| カノンノ・E | ……それならさ。ラザリスの為にも風景を絵に描いてみたらどうかな ? |
| カノンノ・G | 風景を…… ? |
| カノンノ・E | オリジナル・カノンノが言ってたんだよね ?ラザリスが、グラスバレーが描いたルミナシアとジルディアの未来の絵を何度も思い返してるって。 |
| カノンノ・G | う、うん。ラザリスが目を覚ました時、また見せてあげてって言われてるけど……。 |
| カノンノ・E | その時にこの世界の風景の絵も一緒に見せるの。私たちが辿り着いた世界は、こんなに素敵な景色が溢れる素晴らしい世界だって、教えてあげよう ! |
| カノンノ・G | それいいかも !でも、上手く描けるかな ? |
| P・カノンノ | グラスバレーなら出来るよ。ね、イアハート。 |
| カノンノ・E | うん ! 私たちも手伝うから ! |
| カノンノ・G | 二人とも、ありがとう !そうだ ! ネヴァンへの贈り物をエステルさんに届けに行く時に色々と描いて練習しよう。 |
| P・カノンノ | 絵を描く時は周りに気をつけてね ?集中してる時に魔物や盗賊に襲われたら大変だから。 |
| カノンノ・E | 一緒に行ってあげられなくてごめん。私もパスカも外せない用事が入ってて……。 |
| カノンノ・G | いいの、気にしないで。それに、二人の気持ちはちゃんとこの封筒に入るはずだから。 |
| カノンノ・G | さ。出掛ける時間も迫ってるから、早く仕上げちゃお ! |
| 二人 | うん ! |
| Character | 4話【世界4 見つからないデクス】 |
| しいな | ……駄目だ。デクスの痕跡が綺麗サッパリ消えちまってる。こいつは完全に撒かれたね……。 |
| すず | やはり間諜として優れた技術をお持ちですね。この状況でデクスさんの行方を探るのは難しいかと。 |
| しいな | ネヴァン、ユーリとフレンに連絡を取ってくれるかい ?何か情報を掴んでるかもしれないからさ。 |
| カーリャ・N | わかりました。少々お待ち下さい。 |
| ユーリ | よう、ネヴァン。って、どうしてしいなとすずが一緒なんだ ? |
| しいな | 偶然バッタリって奴サ。事情を聞いたら放っとけなくってね。すずと手を貸してるところだよ。 |
| カーリャ・N | こちらはしいな様とすず様のご協力を得ているのですがデクス様の行方に繋がる有力な情報がなく……。ユーリ様とフレン様の方はいかがでしょうか ? |
| フレン | すまない、こちらも特に進展がない状況だ。こうなってくると、僕たちで捜索できる範囲から離脱していると考えていいかもしれないね。 |
| ユーリ | 俺とフレンは一度街に戻って情報を集めるつもりだ。あいつは目立つからな。仮に街に寄ったんなら誰かしら見てるはずだ。 |
| カーリャ・N | わかりました。私たちはこのままデクス様の捜索を続けてみます。 |
| フレン | 何か見つけたら連絡を。僕たちも有益な情報があったらすぐに伝えるよ。 |
| カーリャ・N | はい。よろしくお願いします…… ! |
| すず | ネヴァンさん、しいなさん。ここからは分かれて捜索しませんか ? |
| しいな | それがいいね。あいつの足取りは完全に途絶えちまってる。バラけて探した方が効率的だ。 |
| カーリャ・N | 私も異存ありません。少しでもデクス様を発見できる可能性があるのなら手段は選ばずに動くべきです。 |
| すず | では、デクスさんを発見した場合は速やかに魔鏡通信で連絡を。単独では接触しないようにしましょう。合流して、三人で確実に捕縛すべきです。 |
| カーリャ・N | わかりました…… ! |
| リグレット | よし。閣下のご依頼はこれで完了だ。ティア、協力に感謝する。 |
| ティア | …………。 |
| リグレット | …… ? 呆けた顔をしてどうした ? |
| ティア | あの、教官。これ、本当に兄さんから買ってくるよう頼まれた品物なんですか…… ? |
| リグレット | 無論だ。閣下はこの街の特産品である卵を大変気に入られている。たまご丼の材料としていくつかストックしておきたいと仰ったのだ。 |
| リグレット | だが、卵を買えるのは一人1パックまで。複数購入はルール違反となる。そこでお前に援護を頼んだという訳だ。 |
| ティア | それは聞いていましたが……。まさか教官が卵を買う為だけに遠出するとは思わなくて。 |
| リグレット | ここまで来たのは他にも理由があるが……。そんなにおかしいことか ? |
| ティア | いえ、そういう訳では……。ただ、卵を抱えて嬉しそうにしている教官が、その。新鮮というか、意外というか。 |
| リグレット | ……自分でもそう感じてはいる。だが、こうして平穏に食料品を買い歩くのも悪くない。閣下の為ならばなおのことだ。 |
| ティア | 教官……。 |
| リグレット | 私はこの後、ローエン主催の茶会に参加したアリエッタを迎えに行くが、お前はどうする ? |
| ティア | 教官がよろしければご一緒します。この後、特に予定はありませんから。 |
| リグレット | いいだろう。では──と、魔鏡通信か。 |
| ローエン | 突然のご連絡、失礼いたします。リグレットさん、少々よろしいでしょうか ? |
| リグレット | どうした ? |
| ローエン | ネヴァンさんへの贈り物とアリエッタさんについてです。 |
| ローエン | 皆さんからお預かりした贈り物を持ってエリーゼさん、アリエッタさんと一緒にエステルさんの所へ参ろうかと思いまして―― |
| ローエン | アリエッタさんのお迎えはそちらで、という形でもよろしいでしょうか ? |
| リグレット | 承知した。では私もエステルの下へ向かおう。アリエッタを頼むぞ。 |
| ローエン | 心得ております。それではよろしくお願いいたします。 |
| リグレット | という訳だ。ティア、エステルが住む街へ向かうぞ。 |
| ティア | はい、教官。 |
| リグレット | ……何故笑う ? |
| ティア | いえ。お忙しそうだなと思いまして。 |
| リグレット | 以前のような慌ただしさはない。だが……そうだな── |
| リグレット | 最近は人のことばかり考えてるわね。このゆっくりとした時間は心地がいいのよ。元の世界にはなかった穏やかさがあるもの。 |
| リグレット | もちろん、この平和がずっと続くとは限らないわ。不測の事態に備えはしておく必要がある。何かあった時、閣下やアリエッタを守れないから。 |
| ティア | はい。私もそう思います。でも、たとえ仮初の平和だったとしても……。 |
| ティア | 教官や兄さん、アリエッタたちがこうして静かに暮らしていることが……私は嬉しいです。本当に、とても嬉しく思います。 |
| リグレット | ……そう。 |
| ティア | でも、教官がネヴァンへの贈り物の件に参加していたのは意外でした。 |
| リグレット | 以前、アリエッタが世話になっていたのよ。お礼の一つくらいはしないとね。 |
| ? ? ? | …………。 |
| リグレット | ──ねぇ、ティア。あそこに座っているのは……。 |
| Character | 5話【世界5 お使いの三人】 |
| モーゼス | クカカ ! ようやくここまで来たかぁ !エッちゃんの街までもう少しじゃの ! |
| モーゼス | お~い、セの字 ! ワの字 !いつまで辛気臭い顔してトロトロ歩いちょる ! ?はよう来んかぁ~い ! |
| セネル | ここまでそれなりに歩いてきたのに。モーゼスの奴、元気だな。 |
| ワルター | …………。 |
| セネル | 俺たちも行こう、ワルター。 |
| ワルター | 何度言わせるつもりだ。貴様らと馴れ合うつもりはない。 |
| ワルター | 物資の配達など、俺一人で十分だ。俺に関わるな。 |
| セネル | おい、ワルター ! |
| モーゼス | まったくワの字は変わらんの。いつまでツンツンしとるんじゃ ? |
| セネル | それ、お前が言うか ?お前も昔、ワルターと同じこと言ってたぞ ? |
| モーゼス | クカカ ! そんなこともあったか !なんじゃ懐かしいわい ! |
| モーゼス | 本当、懐かしいの。あの頃はまさか別の世界に来てこんな風に過ごすなんぞ思いもせんかったわい。 |
| セネル | ……そうだな。俺も、ワルターと一緒にシャーリィのお使いをするなんて思わなかった。 |
| モーゼス | そういや、ワの字が嬢ちゃんから預かった運びもんって、なんなんじゃ ? |
| セネル | お前、知らないで一緒に来てたのか……。ローエンの呼びかけで、ネヴァンの為に用意した物だ。 |
| モーゼス | あぁ ! ローの字が音頭を取っとったアレか !あの爺さんらしい、粋な計らいじゃのう !ワイもやらせてもらったわ ! |
| セネル | 協力してくれて助かったよ、モーゼス。ローエンはあちこちに連絡してたんだがさすがに全員は難しいようだったから。 |
| セネル | でも、こういうのを楽しんでやりそうな連中はほとんど参加したみたいだな。 |
| モーゼス | 嬢ちゃんがシャボン娘と二人ではしゃいどったなぁ。クッちゃんにも戻ったらやってもらうとか言っとったの。 |
| モーゼス | じゃが、なしてワレとワの字が『アレ』を運んどる ?嬢ちゃんはどうしたんじゃ ? |
| セネル | 最初はシャーリィが持って行くはずだったんだが外せない用事ができてな。ワルターが配達を引き受けたんだ。 |
| セネル | で、一人だけじゃ寂しいだろうからってシャーリィに言われて、俺もこうしてる。 |
| セネル | まさかお前までついてくるとは思わなかったけどな。 |
| モーゼス | ウィの字の魔物調査の手伝いも終わってしもォた。特にやることもなあで、別にええじゃろ ? |
| セネル | それはまぁ……── ! ?おい、ワルターの奴、もうあんなに行ってるぞ ! ?走るぞ、モーゼス ! |
| モーゼス | ええい ! 勝手な奴じゃあ ! |
| ワルター | …………。 |
| セネル | 待て、ワルター ! お前── ! |
| モーゼス | おい、セの字。こっから先は分かれ道じゃ。どっちでもエッちゃんの街には行けそうじゃがどうするかの ? |
| 二人 | 「右だ」「左だ」 |
| 二人 | …………。 |
| セネル | 右の街道の方が明らかに整備されてる。見通しもいいし、魔物や盗賊に襲われる心配も少ない。進むなら右だ。 |
| ワルター | 左の森を抜けるルートの方が目的の街まで近い。襲撃者など取るに足らん。 |
| モーゼス | はぁ……。ほんならその辺の枝使って倒れた方に行けばええじゃろ。 |
| セネル | いや、俺たちが運んでいるものは替えが利かない。道は慎重に選ぶべきだ。 |
| ワルター | 貴様の意見などどうでもいい。俺は左へ行く。 |
| モーゼス | 間を取って真ん中を突き進むのはどうじゃ ! ? |
| セネル | 却下だ ! 道がないだろ、道が ! |
| デクス | どけどけ ! そこをどけ~~~~~~~ ! |
| モーゼス | ……今の、なんぞ見覚えある顔じゃったぞ ? |
| セネル | デクスだ。あんなに急いでどうしたんだ…… ? |
| すず | しいなさん、ネヴァンさん ! 再び分岐点です ! |
| しいな | ちっ、またかい !せっかくあの馬鹿を見つけたってのに ! |
| カーリャ・N | ここは冷静にいきましょう !まずは足跡を探して── |
| セネル | ……お前たち、何してるんだ ? |
| カーリャ・N | セ、セネル様 ! ?モーゼス様に、ワルター様も…… ! ? |
| モーゼス | 今日は色んな奴が走ってくる日じゃの。そがあな特訓でもしちょるんか ? |
| セネル | そんなはずないだろ……。よかったら話を聞かせてくれ。 |
| しいな | あーちょいと色々あってねぇ── |
| しいな | という訳で、あたしたちはデクスを追ってたのサ。 |
| カーリャ・N | 皆さんはデクス様について何かご存じありませんか ! ? |
| セネル | あいつなら、さっきここを走って行ったぞ。かなり急いでいたようだったが……。 |
| すず | どちらに行きましたか ? |
| セネル | ……左、だが。 |
| カーリャ・N | 参りましょう、すず様、しいな様 ! |
| モーゼス | よっしゃあ ! ワイらも行くぞ、セの字、ワの字 !ネッちゃんの大事なモンを奪った落とし前をデの字につけさせるんじゃ ! |
| セネル | ああ、このままにはしておけないな ! |
| ワルター | 俺には関係ない。 |
| セネル | っ……ワルター ! |
| しいな | ……そうかい。空を飛べるあんたがいたら助かったんだけどね。まぁ仕方ないサ。 |
| しいな | その分、セネルを頼りにさせてもらうよ !腕っ節は強いし ! いや~心強いねぇ ! |
| ワルター | ……俺の行き先も左の道だ。もののついでに、少しは付き合ってやる。 |
| しいな | 本当かい ! ? そいつは助かるよ !じゃあ空に上がって周りの様子を見てきておくれ ! |
| ワルター | いいだろう。奴を見つけたら教える。 |
| モーゼス | ……見事なもんじゃの、しいっちゃん。 |
| しいな | 前にノーマがワルターについて話しててね。ああいう時はセネルを引き合いに出すといいって教えてもらったんだ。 |
| セネル | …………まあ、いいか。よし、俺たちも行くぞ ! |
| カーリャ・N | 皆さん、ありがとうございます…… ! |
| Character | 6話【世界6 集う仲間たち】 |
| リグレット | ──ねぇ、ティア。あそこに座っているのは……。 |
| カノンノ・G | …………。 |
| ティア | あれはグラスバレー ?あんな所で何をしているのかしら…… ? |
| カノンノ・G | ……よし、こんなところかな。 |
| ティア | グラスバレー、久しぶりね。 |
| カノンノ・G | ティア !こんな所でどうしたの ? |
| ティア | 教官とちょっと用事があってね。グラスバレーこそ、ここで何をしていたの ? |
| カノンノ・G | あぁ、これはね── |
| ティア | なるほど。ラザリスの為に……。 |
| カノンノ・G | うん。いつかラザリスと一緒に過ごせるようになった時に見てもらいたいんだ。 |
| カノンノ・G | 私たちが生きるこの世界は素敵な場所なんだよって。この世界──ティル・ナ・ノーグの、色々な景色の絵を見せて、知ってもらいたいの。 |
| ティア | あなたたちらしくて、とても素敵なやり方だと思うわ。オールドラント領にも見晴らしのいい場所があるの。きっとラザリスも気に入ってくれるはずよ。 |
| カノンノ・G | ホント ! ? ティア、後でその場所教えて ! |
| ティア | ええ。今度一緒に行きましょ。 |
| リグレット | ……グラスバレー。目覚めたラザリスがお前たちの声に応えない時はどうするつもりだ ? |
| カノンノ・G | ……応えてくれるまで、できることをやるつもりです。私たちには、もう争う理由はないはずですから。 |
| リグレット | 互いに譲れないものの為に戦った以上すぐに肩を並べ、共に歩むのは難しいだろう。多くの感情を重ね過ぎて割り切れない者もいる。 |
| ティア | 教官……。 |
| リグレット | 私は無理に割り切る必要はないと思っている。争う理由がなくなったとしても、わかりあう理由ができる訳でもない。 |
| カノンノ・G | …………。 |
| リグレット | だが、お前たちにはわかりあう余地があるはずだ。ラザリスが目覚めた時、お前が描いた風景を共に楽しめることを、私も願っている。 |
| カノンノ・G | ……はい ! ありがとございます、リグレットさん ! |
| カノンノ・G | あぁ、そうだ。二人にはローエンさんからネヴァンへの贈り物の件で連絡来てますか ? |
| リグレット | 話は聞いている。だが、所用で出掛けていたところでな。まだ手をつけていない。 |
| ティア | 私もよ。ローエンさんたちとエステルの所で合流した時にやろうかと。グラスバレーはもう仕上げたの ? |
| カノンノ・G | うん。来られないイアハートとパスカの分もあるよ。ね、エステルさんの所に行くなら私も一緒に行っていい ? |
| ティア | 構わないけれど、スケッチの方はもういいのかしら ? |
| カノンノ・G | ほとんど出来上がってるから大丈夫。ラザリスに見せたい風景は、思いと一緒に描けたから ! |
| リグレット | そうか。ならば向かうとしよう。遅れるとアリエッタにヘソを曲げられそうだからな。 |
| ? ? ? | お~い ! |
| カノンノ・G | あっ、あれは……。 |
| リッド | やっぱりティアたちだったか。 |
| レイス | 久しぶりだね、みんな。 |
| ティア | ええ。二人とも元気そうね。ひょっとして……。 |
| レイス | ローエンの依頼でエステルの元へ向かうところさ。君たちもかな ? |
| ティア | ええ。ファラたちは一緒じゃないの ? |
| リッド | みんな予定が入っててな。来られたのは俺とレイスだけなんだ。 |
| レイス | ところでティア。エステルやユーリから何か連絡はなかったかい ? |
| ティア | いえ、特に何もないけれど……。どうかしたの ? |
| リッド | ああ。さっきエステルにそろそろ着くぞって連絡したんだけどよ。 |
| レイス | 一緒にいたユーリとフレンが緊張感を帯びた声で話し込んでいてね。少し気になったんだ。 |
| カノンノ・G | どんな話だったの ? |
| レイス | いや、そこまでは聞き取れなかった。再度連絡しようと思ったんだが、今は繋がらないんだ。 |
| リグレット | ……何か起きているのかもしれんな。エステルたちの所へ急ぐぞ。 |
| ティア | はい…… ! |
| ワルター | 周辺を確認したが、それらしい人影はなかった。 |
| カーリャ・N | そうですか……。ありがとうございます、ワルター様。 |
| モーゼス | こんくらい気にせんでええ ! |
| セネル | なんでお前が得意げに答えるんだよ……。 |
| すず | 見失ってしまったようですね。また手分けして捜しますか ? |
| しいな | そうだね、この人数なら── |
| エミル | あれ ? しいな ? |
| しいな | あぁ、エミルじゃないか ! それに…… ! |
| リヒター | ……お前たち、こんな所で一体何をしているんだ ? |
| Character | 7話【世界7 首謀者は?】 |
| カーリャ・N | エミル様、リヒター様 ! ?何故ここに…… ! ? |
| エミル | あぁ、うん。ローエンさんからの呼びかけでね。ネヴァンに贈るものを── |
| カーリャ・N | ? 私に贈るもの ? |
| エミル | あ。あぁ ! な、何でもない ! 何でもないから ! |
| リヒター | それより質問に答えてもらおう。お前たち、ここで何をしている ? 一体何の騒ぎだ ? |
| しいな | デクスの馬鹿がやらかしてくれてね。今、あいつを追いかけてるところなのサ。 |
| エミル | え。デクスがまた何かやらかしたんですか…… ? |
| すず | デクスさんがネヴァンさんから鞄を強奪しました。目的は不明。私たちはネヴァンさんに協力しデクスさんを捕らえるべく追っているところです。 |
| リヒター | ……端的な説明で助かる。デクスめ、何を考えている…… ? |
| エミル | アリスのことしか考えてないと思います……。多分、アリスがネヴァンの鞄を欲しがったとかそういうのじゃないでしょうか ? |
| しいな | やっぱりそういう結論になっちまうよね……。 |
| エミル | むしろそういう結論しかないと思います。せっかく平和な世界になったのに……。アリスもみんなと仲良くできないのかな…… ? |
| モーゼス | そうじゃそうじゃ !せめて他人に迷惑かけんようにして欲しいの ! |
| セネル | モーゼス。お前、あまり人のことは言えないぞ ?元の世界じゃシャーリィをさらったり、グランゲートに戦いを挑んだり、色々やらかしていただろ ? |
| ワルター | …………。 |
| モーゼス | む、昔のことじゃろうが ! ワの字、待て !殺気を放つなぁ ! |
| エミル | ネヴァン。デクスを捕まえるの、僕も手伝うよ。盗まれた鞄を取り戻さなくちゃ ! |
| リヒター | 同感だ、俺も手を貸してやる。 |
| カーリャ・N | ありがとうございます、エミル様、リヒター様 ! |
| しいな | それじゃデクス追跡再開だね ! |
| アリス | まったく、デクスったら。出かけたまま戻ってこないなんて。しもべの癖にホント生意気。 |
| アリス | おかげでアリスちゃんのお腹がペコペコじゃない。私をほっとくなんて許さないんだから。 |
| アリス | というか ! 魔鏡通信機くらい持ち歩きなさいよ !あぁもう、どこにいるのよ、あのばか。 |
| リヒター | おい、本当にこの方向で間違いないのか ? |
| しいな | ああ ! あいつの足跡は確かに捉えてる !足取りからしてバテてきてるみたいだね ! |
| カーリャ・N | しかし、私たちも走りっ放し、です…… !そろそろ、体力的に、厳しいものが…… ! |
| モーゼス | ネッちゃん ! 辛くなったらすぐに言うんじゃぞ !ワの字の背中で運んじゃる ! |
| ワルター | 俺を馬扱いするつもりか ? ふざけるな…… ! |
| セネル | 落ち着け、ワルター。ただの冗談だ。 |
| アリス | ……なに、あんたたち。そんな必死な顔してどこに行くの ? |
| エミル | っ ! ? アリス ! ? |
| アリス | あら ? ペットちゃんもいるんだ。でもマルタちゃんはいないのね。なに ? お使いの途中かしら ? |
| リヒター | アリス、何を考えている。 |
| アリス | ? 直球すぎて質問の意味がわからないんだけど ? |
| リヒター | とぼけるな。デクスはどこにいる ? |
| アリス | ……ホントに意味わかんない。デクスがどこに行ったか知りたいのはアリスちゃんの方よ ! |
| エミル | アリス、正直に話して欲しいんだ。今度はデクスに何をやらせようとしてるの ? |
| しいな | どうせろくでもないことだろうけどね。いいかい ? あんたたちが盗んだネヴァンの鞄はね。本当に大事なものなんだよ。 |
| すず | その通りです。返してもらえませんか。 |
| アリス | はぁ ! ? 知らないわよそんなの ! |
| アリス | 私はデクスにあんたたちから鞄を盗めなんて言ってないし ! あいつが今どこにいるのかも 知らないわ ! |
| モーゼス | ……おい、セの字。この嬢ちゃん、ホントのこと言っちょると思うか ? |
| セネル | 嘘を言っているようには見えないが……あいつがこれまでやってきたことはマルタたちから色々と聞いている。 |
| セネル | エミルやリヒターの様子からしても鵜呑みにするのは危険だと思う。 |
| ワルター | おい。この茶番をいつまで続けるつもりだ ? |
| カーリャ・N | アリス様。どうかあの鞄を返してください。中に入っているものを、エステル様に届けなければならないのです…… ! |
| アリス | あ~~~~~もぉっ !だから知らないって言ってるでしょ ! ?知ーらーなーいーわー ! |
| リヒター | いつにも増して強情だな……。 |
| エミル | そんなにネヴァンの鞄が欲しかったのかな…… ? |
| アリス | 人の話を聞きなさいよぉっ ! ? |
| Character | 8話【世界8 思わぬ遭遇】 |
| ティア | そろそろエステルがいる街ね。レイス、魔鏡通信の方はどう ? |
| レイス | エステルやユーリたちとは繋がらないままだ。急いだ方がいいだろう。 |
| リッド | ……ん ?あそこにいるのは── |
| デクス | はぁ、はぁ、はぁっ…… ! |
| カノンノ・G | デクスさんだね。なんだか疲れてるみたい。どうしたのかな ? |
| デクス | ! ? くそ…… !まさかお前たちもオレを追ってきたのか ! ? |
| リグレット | ……追ってきたのかだと ? |
| デクス | くそ ! なんであっちこっちから集まってくるんだ ! ?まさかユーリたちが手を回したのか…… ! ? |
| ティア | ……教官。 |
| リグレット | 視線は定まらず、呼吸が荒い。高強度の運動直後のようだがそれを考慮したとしても明らかに挙動不審だ。 |
| ティア | はい。それに彼は今、ユーリたちがと言いました。レイスが言っていたユーリたちの緊迫した様子と関係があるのかもしれません。 |
| レイス | この状況では、そう考えるのが妥当だね。 |
| カノンノ・G | そういえば、前にイアハートが言ってました。デクスさんやアリスさんが来てからマークがより一層苦労してるって。 |
| リッド | おいデクス。お前、何をやらかしたんだ ? |
| デクス | べ、別に何もやっちゃいないぞ ! ?つ、疲れているのは自主トレをしていたからだ !これ以上ない健全な理由だろう ! ? |
| デクス | お前たちの周りで何か起ころうとオレは関係ない !何でもオレに結び付けて疑うなんていくらなんでも酷いじゃないか ! |
| ティア | それは……確かにそうかもしれないけど……。 |
| カノンノ・G | う、うん……確かに決めつけはよくないね。ちょっと一方的過ぎたかも……。 |
| デクス | そ、そうだろ ? 反省しろ、反省。 |
| カノンノ・G | 私、イアハートから聞いた話だけでデクスさんが怪しいって思っちゃった……。 |
| カノンノ・G | 本当にごめんなさい、デクスさん…… ! |
| デクス | わ、わかればいい、わかれば── |
| カノンノ・G | こんなことじゃ、ラザリスからも怒られちゃう。デクスさん、私に何かできることないかな ? |
| デクス | ……案ずる必要はない。デクスさまにはアリスちゃんがいるからな。 |
| デクス | この程度の心の傷、アリスちゃんの笑顔があれば !たちどころに癒えてしまうだろう !お前が気に病む必要などないさ ! |
| カノンノ・G | でも…… ! |
| リッド | ……デクスでもさすがに罪悪感を覚えるみたいだな。 |
| レイス | 素直でまっすぐな子を騙すのは辛いものさ。 |
| レイス | さて、デクス。私たちもグラスバレーのように君が何もしていないと信じたい。 |
| レイス | だから、いくつか確認させてもらえないだろうか。その回答次第で、私たちも君の言葉を受け入れよう。 |
| デクス | あ、ああ、構わないがそれが終わったら俺は行かせてもらうからな ? |
| レイス | もちろんさ。では一つ。先ほどから背中に隠しているものは何かな ?やましくないなら見せて欲しいんだが。 |
| デクス | こ、これは…… ! ぐっ、いいだろう !いいか、見せるだけだぞ ! ? |
| ティア | あら、可愛い鞄。でも、それは女性向けよね ?あなたの持ち物とは思えないのだけど ? |
| デクス | と、当然だ !これはアリスちゃんにプレゼントする為に買ったものなんだからな ! |
| リグレット | それにしては使い込まれているな。そういう加工がされている、という訳ではなさそうだ。 |
| デクス | そ、それは…… !アリスちゃんがアンティーク風のものがいいと言ってだな…… ! |
| リッド | じゃあアリスに連絡して確認させてくれよ。今言ったことがほんとなら構わねぇだろ ? |
| デクス | だ、駄目だ駄目だ ! 今アリスちゃんは、その…… !か、風邪を引いて寝込んでいるんだ ! |
| リッド | お前、アリスが何より大事なんだろ ?そんなお前がアリスの看病を放り出すとは思えねぇ。 |
| ティア | 薬や食料を買いに行っていたならわかるわ。でも、そういう物も持っていないわよね ? |
| デクス | ぐ、ぐぅぅぅっ…… ! |
| カノンノ・G | デクスさん…… ? |
| デクス | お前たちに話すことなど何もなぁぁぁぁぁぁい~~っ ! |
| リッド | 野郎、逃がすかよ ! |
| リグレット | 待て ! あの男、地面に何か仕込んだぞ ! |
| レイス | これは…… ! ? |
| 魔物の群れ | グルルルゥゥゥゥ…… ! |
| カノンノ・G | ま、魔物が地面から生えてきたよ ! ? |
| ティア | 足止めのつもりね !すぐに倒してデクスを追いましょう ! |
| Character | 9話【世界9 ついに確保?】 |
| アリス | あんたたち、いい加減にしてくれる ! ?私は ! 何も ! 知らないのっ !何度言わせるつもりよっ ! ? |
| リヒター | ……エミル、しいな。お前たちはどう見る ? |
| エミル | そう、ですね。いつもの余裕がまったくありません。僕たちを騙そうとしているなら、もう少しそれらしく振る舞うと思うんですが……。 |
| しいな | 人を小馬鹿にした態度もないねぇ。質問の答えも知らないの一辺倒だ。 |
| カーリャ・N | ……ということはアリス様は今回のデクス様の件には── |
| アリス | 一切 ! 関係ないわっ !それどころか私を置いてどこかへ行っちゃったあいつを探してるところだったの ! |
| リヒター | ……先入観だけで疑ってかかってしまったようだな。悪かった。 |
| エミル | ごめん、アリス。その、つい……。 |
| モーゼス | ……日頃の行いって、大事なんじゃのう。 |
| セネル | そう思うならノーマと騒ぎを起こすのを自重しろ。リヒターたちのアリスを見る目、ウィルやジェイがお前に向けるのと同じだぞ ? |
| アリス | ……なぁに、それ。人を犯人だって糾弾しておいてごめんで済むと思ってるの ? ふざけるのも大概にしてくれる ? |
| しいな | い、いや~虫のいい話だとは思うけどサ……。 |
| カーリャ・N | 申し訳ありません、アリス様 !このお詫びは必ず後日させていただきます ! |
| アリス | イ・ヤ ♪ そう言って逃げるつもりでしょ ?アリスちゃんにこんな不愉快な思いをさせた責任は絶対に取ってもらうんだから…… ! |
| デクス | ア~~~リ~~~~ス~~~~ちゃぁぁぁぁぁん ! |
| カーリャ・N | ! ? デ── |
| アリス | デクス ! ?あんた、今までどこに行ってたのよ ! ? |
| デクス | もちろん ! 君が欲しいと言ったモノを探して !それを手に入れていたのさ ! |
| デクス | さぁ、アリスちゃん ! これこそ君が欲しがっていたモノ──のはずだ ! |
| アリス | はぁ ? な、なによ、この鞄。中に何か入ってるみたいだけど……。 |
| しいな | あぁ ! ? ちょっとネヴァン、あれ ! |
| カーリャ・N | はい ! ライラ様からお預かりした鞄です ! |
| エミル | デクス、その鞄を返して ! |
| デクス | しょ、少年 ! ? 何故少年がアリスちゃんと一緒に ! ? |
| カーリャ・N | デクス様 ! 今度こそ、その鞄を返してください !返していただかなければ地の果てまで追いかけてデクス様を始末してでも取り戻します…… ! |
| デクス | なっ…… ! ? くそ、アリスちゃん !ここは危険だ ! いったん逃げよう ! |
| アリス | どうしてアリスちゃんが逃げなくちゃいけないの ?逃げるならあんた一人で逃げてくれる ? |
| アリス | アリスちゃんはこいつらと大事なお話があるの ♪ |
| デクス | そ、そんな ! くっ、こうなったら…… ! |
| セネル | 逃がすか ! 強岩炸落撃 ! |
| デクス | ぐぁあああああああああ ! ?こ、このっ…… ! ? |
| ワルター | 茶番もいい加減にしろ !アイシクルボルト ! |
| デクス | うおおお ! ? おおおおおおおおお ! ? |
| モーゼス | おいおい ! ? セの字もワの字もあいつを殺す気か ! ? |
| デクス | ふ、ふん ! この程度でデクスさまがやられるか ! |
| ティア | 追いついた…… ! |
| リッド | デクス ! 大人しくしやがれ ! |
| カーリャ・N | ティア様、リッド様 ! ?グラスバレー様にレイス様、リグレット様まで…… ! ? |
| カノンノ・G | え、ネヴァン ! ? しいなさんたちまでいる ! ?どうしてここに ! ? |
| レイス | デクスとアリスを追い詰めている──というほど単純ではないようだね。 |
| リグレット | 似たようなものだろう。デクス、まだ鬼ごっこを続けるか ? |
| デクス | ぐ、ぐぅぅぅぅぅ~~~~ ! |
| アリス | ……なんなの、これ。こいつら全員あんたを追いかけてきたの ?その鞄を取り返す為に ? |
| デクス | そ、それ、はっ…… ! |
| エミル | アリス ! アリスからもデクスに鞄を返すように言ってくれないかな ! ? |
| リヒター | お前の言うことなら、デクスも聞き入れるはずだ。それでこの件は丸く収まる。 |
| しいな | あんたを疑っちまったのは悪かったよ…… !だから ! この通りだ ! |
| アリス | ふ~ん……だったらお・こ・と・わ・り ♪そんなにこの鞄が大切なら力ずくで奪ったら ? |
| アリス | そもそも、どうしてアリスちゃんがあなたたちのお願いを聞かなくちゃいけないの ? 頭を下げて謝れば許してもらえるとでも ? おめでた~い ♪ |
| デクス | ア、アリスちゃん…… !もしかしてオレを守ろうとして…… ! ? |
| アリス | はぁ ? キモい顔でキモいこと言わないでくれる ?あいつらに言いがかりをつけられてムカついてたの !それだけなんだからね ! ? |
| デクス | それで十分さ !これでオレは誰にも負けない強さを得られたのだから !さぁ、勝負だ少年たち ! |
| エミル | 勝負だって……た、戦うの ! ? |
| すず | 思うところはありますがもはや戦闘は避けられないかと。 |
| カーリャ・N | アリス様には大変申し訳なく思います !でも、その鞄だけは絶対に返していただきますっ ! |
| Character | 10話【世界10 贈り物】 |
| アリス | う、ううぅぅぅぅぅ~~~~~~~~~~…… ! |
| デクス | ご、ごめ、んよ、アリス、ちゃんっ…… ! |
| エミル | ま、巻き込んじゃって本当にごめん、アリス……。 |
| すず | ネヴァンさん、鞄を回収しました。中身を確認してください。 |
| カーリャ・N | ありがとうございます、すず様 ! |
| しいな | デクス、一応聞いておくけどサ。あんた、なんでコレを盗んだんだい ? |
| デクス | ……ロ、ロウが、その鞄の中身を『すごいもん』と言っていたのを聞いたんだ。持って帰ったらアリスちゃんが喜んでくれるかと、思って……。 |
| しいな | やっぱりその程度の理由だったか……。というか、ロウの奴そんなこと言ってたのかい ? |
| カーリャ・N | はい。鞄は重くないかなど気を遣ってくれまして。リンウェル様とお話している時にそういうものが入っていると言っていました。 |
| ティア | うっかりさんの言葉を、うっかりさんが聞いてそのまま暴走しちゃったという訳ね……。 |
| カーリャ・N | ……デクス様。この度は誤解をさせてしまい、申し訳ありません。 |
| カノンノ・G | ええっ ! ?どうしてネヴァンが謝るの ? |
| リッド | だな。悪いのはデクスだ。 |
| アリス | な、何よ。何よ何よ何なのよ !私、本当に巻き込まれ損じゃないっ ! ? |
| デクス | ごめんっ ! ごめんよっ、アリスちゃん…… ! |
| アリス | しもべの不手際はご主人様の責任だけど…… !今回のはあんたが勝手に動いたことじゃない !もうアリスちゃん知らない ! 帰るっ ! |
| デクス | あぁ ! 待って ! 待ってよアリスちゃん !アリスちゃ―――――――――――――――んっ ! |
| エミル | ……アリスには本当に可哀想なことしちゃいましたね。ちゃんとお詫びをしないと……。 |
| レイス | 先入観に捉われた行動は危険だね。受け取ってくれるかはわからないが彼女への謝罪の品は私が用意しよう。 |
| リグレット | ところでネヴァン、鞄の中身は無事だったのか ? |
| カーリャ・N | はい ! 箱には目立った損傷もありません !皆さん、お力添えいただき本当にありがとうございました ! |
| カノンノ・G | ……ねぇ、みんな。ここでネヴァンに渡しちゃおうと思うんだけど。どうかな ? |
| しいな | そうだねぇ。デクスのせいで色々とグダグダになっちまったし。ネヴァンも、箱の中に何が入ってるか気になるだろ ? |
| カーリャ・N | はい、それはもう。ロウ様が言っていた『すごいもん』が何なのかとても気になっています。 |
| カーリャ・N | ただ、グラスバレー様の言う私に渡しちゃおう、というのは一体…… ? |
| カノンノ・G | それは見ればわかるよ。まずは私から !はい、どうぞ ! パスカとイアハートの分も預かってるから三人分だね ! |
| カーリャ・N | あ、ありがとうございます。これは……封筒 ? |
| リッド | じゃあ次は俺とレイスだな。 |
| レイス | ファラやメルディ、キールたちからも託されている。こちらも受け取ってほしい。 |
| セネル | ワルター。シャーリィから預かっていたものをネヴァンに渡してくれ。元々それはエステルから彼女に渡してもらう予定だったしな。 |
| ワルター | ……いいだろう。 |
| モーゼス | ワイやセの字たちの分が入っちょるぞ !クッちゃんは遅れて書くことになっちょるから少し待っとってくれや ! |
| ティア | 私もまだ書けていないの。用事を済ませてから書くつもりだったんだけどこんなことになるなら用意しておけばよかったわ。 |
| リグレット | 計画を明かしてから書くことになるとはな。これは少々こそばゆい。 |
| カーリャ・N | す、すごいです、封筒がこんなに…… !中身を見てもよいでしょうか ? |
| カノンノ・G | この場で読まれるのはちょっと恥ずかしいかな…… ?先に箱の中を見てもらった方がいいかも。 |
| カーリャ・N | わかりました。では── |
| カーリャ・N | 便箋がたくさん…… ! これは──日記 ?でも、筆跡も内容もバラバラです ! こちらはライラ様ガイ様やシオン様のものもあります ! |
| しいな | ネヴァンと一緒に戦ってきたあたしたち鏡映点の日記だよ。はい、これはあたしの分だ。 |
| すず | このような書き物は得意ではありませんが精一杯したためました。どうかお納めください。 |
| エミル | 書きたがらない人もいたから、淡泊な内容もあればすごく凝ったのもあるよ。マルタはかなり頑張って書いてたから、楽しみにしてて。 |
| リヒター | あの娘らしいな。これはエミルと俺からだ。 |
| カーリャ・N | 私の、為に……こんな……皆さんが……。 |
| カノンノ・G | ローエンさんからね。みんなに連絡が来てたんだ。ネヴァンが思い詰めてるみたいだって。 |
| カーリャ・N | ローエン様が…… ? |
| カノンノ・G | うん。それで、私たちがこの世界で毎日楽しく暮らしてることを教えたらどうかって話になったの。 |
| リッド | それで、みんなから日記の1ページを集めて渡すことになったんだ。 |
| カーリャ・N | ……ローエン様たちが何かをされているのは気づいていましたが、そういうことだったんですね。 |
| カーリャ・N | でも……まさか、こんな素敵なものだったなんて……。本当に……ええ、本当に……思いもしませんでした。 |
| カーリャ・N | あ……、ユーリ様から魔鏡通信が ! |
| ユーリ | ネヴァン、しばらく連絡できなくて悪かった。デクスの野郎は捕まえられたか ? |
| カーリャ・N | はい ! デクス様を確保して無事鞄を取り戻せました ! 今、箱の中身についてグラスバレー様たちからお聞きしています ! |
| ユーリ | なんだ、そこで種明かししちまったのか。こっちにはローエンとエリーゼ、アリエッタが来てる。他の連中から集めた日記を届けてくれたんだ。 |
| ユーリ | エステルも張り切って首を長くして待ってるぜ。つーか、そっちはすごい人数だな。どうなってんだ ? |
| セネル | まぁ、色々あったんだよ。せっかくここまで来たんだし俺たちもそっちへ行っていいか ? |
| エミル | 久しぶりにユーリたちにも会いたいし。 |
| ユーリ | ああ、もちろんだ。あいつらも喜ぶだろうし。んじゃ、諸々伝えとくぜ。 |
| カーリャ・N | はい ! よろしくお願いします ! |
| カノンノ・G | …………。 |
| カーリャ・N | グラスバレー様、どうかされましたか ? |
| カノンノ・G | こうしてみんなと仲良くできてることが嬉しくて今この瞬間をラザリスに見せたいなぁって思ってたの。 |
| カノンノ・G | そしたら、ラザリスもきっと……この世界も悪くないって認めてくれるかなって。 |
| カーリャ・N | ……はい。きっとそう感じていただけると思います。 |
| ティア | なら、ラザリスの為にも日記を書きましょうか。みんな、喜んで協力してくれると思うわ。 |
| カノンノ・G | うん ! ネヴァンも手伝ってくれる ? |
| カーリャ・N | もちろんです。皆さんからいただいたこの素晴らしい想いを私も誰かに贈りたいです……。 |
| カーリャ・N | ……日記一枚一枚に、皆さんの日常が見えます。この世界で生きる『今』を感じます。 |
| カーリャ・N | 面白くて、楽しい日々を過ごされている……。この感情を、気持ちを、ラザリス様にも感じて欲しいです……。 |
| カノンノ・G | ネヴァン……。 |
| カーリャ・N | ……皆さんにご迷惑をかけてしまったことは深く反省しなければなりません。 |
| カーリャ・N | でも、それ以上に……。私を想って、こんなに素敵なことをしてくれる人がこんなにたくさんいる……そのことが、嬉しいです。 |
| カーリャ・N | 本当に私は素晴らしい方々と出会えました。だから……私はもう大丈夫です。 |
| しいな | お~い、ネヴァ~ン ! グラスバレ~ !エステルたちの所に行くよ~ ! |
| カノンノ・G | はい ! |
| カーリャ・N | 今行きます ! |