Character1話【交響曲1 抱えた不安】
ミトス……驚いたよ。まさか『アレ』がこっちの世界でも具現化されていたなんて。
クラトスああ、このまま放置しておくのは危険だ。だからこそ、オリジンは私を通してこの危機を知らせてきたのだろう。
ミトスだったら、早く処分しに行かなきゃね。
クラトスミトス、本当にこの件はマーテルとユアンには話さなくていいのか ?
ミトスうん。だって、ボクとクラトスがいれば十分でしょ ?わざわざ姉さまたちに伝えるようなことじゃないよ。
ミトス……それに、姉さまには見られたくないものがあるかもしれないからね。
クラトス……わかった。では、私たちだけで目的地へ向かおう。
ミトスうん。こんなこと、さっさと終わらせよう。
ロイドふぅ~~ !  よしっ !この部屋は大体片付いたか ?
コレットうん、あとは床にワックスをかけたらおしまいだよ。
ロイド了解。なんか、思ったより早く終わりそうだな。
コレットでも、アジトには今までお世話になった分しっかり綺麗にしなきゃ。
ロイドああ。けど、気を付けろよコレット。最後に転んで壁に穴でも開けたら修理する時間がないからな。
コレットそ、そだね……。
ロイドあ、でも、いざとなったらイクスたちに具現化してもらえばいいのか。そうだ、ジーニアス。イクスたちは――
ジーニアス…………。
ロイドって、おーい、ジーニアス ?本なんか読んで掃除はどうした、掃除は !
ジーニアスえっ ! ?  ああ、ごめん。
コレットジーニアス、その本どうしたの ?
ロイドお前、まさかずっと掃除サボってたんじゃないだろうな。
ジーニアス違うよ。それに、これは本じゃなくてアルバム。ミリーナが撮ってくれた写真を見返してたんだ。
コレットあっ、ホントだ !見て見て、ロイド !  私たちの写真もあるよ。
ロイドへぇ~、ミリーナのやつ、こんなに俺たちの写真撮ってたんだな。
コレットきっとミリーナはみんなのためにいっぱい思い出を残してくれたんだよ。
ロイドどれも懐かしいよなぁ。ほら、ジーニアスとプレセアが木彫りの熊を売ってる時の写真もあるぜ !
ジーニアスあの時はビックリしたよ。まさか、ロイドがお尋ね者になってるなんてさ。
ロイド仕方ないだろ。いつの間にかそうなっちまってたんだから。
ロイドけど、それも随分前な気がするよ。あっという間に時間が過ぎちまったよな。
ジーニアス……あっという間、か。
コレットどうしたの、ジーニアス ?
ジーニアスううん、なんでもない。それより、ロイドたちの掃除はもう終わりそう ?
ロイドああ !  残ってた荷物も回収したし赤点のテストもちゃんと全部捨てたから大丈夫だ。
ジーニアスえっ ?  それって処分してよかったの ?
ロイド平気だって !  終わったテストなんて持ってても仕方ねえだろ ?  結構溜まってたし、掃除したついでに捨てられてよかったぜ。
リフィルあら、それは聞き捨てならないわね、ロイド。
ロイドげっ !  先生 ! ?
リフィル「げっ !  」じゃありません。ロイド。あなた、テストで間違えたところはしっかり復習したんでしょうね ?
ロイドうっ !  そ、それは……。
リフィルはあ……。どうせ、そんなことだろうと思っていたけれど……。補習を追加しておくわよ。いいわね。
ロイドちょ !  待ってくれよ、先生 !ほらっ !  俺たち、このあとリーガルに呼ばれてアルタミラに行くんだろ ?
ロイドだからさ、補習はまた今度にしてくれないか ?頼むよ、先生 !  このとーり !
リフィルまったく……まあいいでしょう。代わりに課題を用意するからそれはちゃんと提出すること。よろしい ?
ロイドへへっ !  サンキュー、先生 !
ロイド……なあ、ジーニアス。あとで課題、手伝ってくれよ。
ジーニアス仕方ないなぁ。けど、答えは教えないからね。
ロイドさっすがジーニアス !  頼りになるぜ !
ジーニアス……本当、ロイドって変わらないよね。
ジーニアスだけど……いつかロイドだって……。
コレット………… ?
ロイドんじゃ、早く掃除を終わらせてリーガルのところへ行こうぜ !

Character2話【交響曲2 新たな出発】
ロイドよし、到着っと。みんなはもう来てんのかな ?
しいなロイド、あんたたちも今来たところかい ?
コレットしいな !  それにプレセアも一緒だったんだね。
プレセアはい、途中でしいなさんと合流したんです。
ジーニアスププ、プレ、プレセア…… !こここん…… !  きょうは……いい……き、だね !
プレセアこんにちは、ジーニアス。はい、今日はいい天気ですね。
しいなプレセア……あんたよくジーニアスの言ってることがわかったね……。
プレセアそうですか ?  普通だと思いますけど。
しいなまあ、あんたたちがちゃんと意思疎通できてればいんだけどサ。ところで、アホ神子を見なかったかい ?
ロイドゼロスか ?  まだ会ってないけど……。
しいなそうかい。あのアホ神子のことだから約束をすっぽかしてんじゃないかと思ってサ。
ゼロスおいおい、俺さまがてきとーなヤツみたいに言うなっての。
セレスそうです、お兄さまはそんな方ではありません !
リーガルみんな、よく来てくれた。忙しい中、呼び出してしまってすまない。
リフィルいえ、私たちの用事は済ませて来たから。それに、今一番忙しいのはあなたではなくて ?
プレセアはい、リーガルさんはアルタミラを中心にテセアラ大陸の交易をお手伝いしていると聞いています。
ロイドこっちでも『レザレノ・カンパニー』の会長になったんだろ ?  凄えよな !
リーガルなに、私自身が動きやすいように会社を立ち上げただけだ。結果的に以前と同じような立場になってしまったがな。
リーガル様々な事業に取り組んでいるがまだまだ誰かの手を借りることも多いのだ。
ゼロスつーわけで、リーガルがどうしてもって言うから俺さまも手伝ってやるのよ。
ジーニアスえっ、ゼロスがリーガルの手伝い ?そんなこと出来るの ?
ゼロスおい、ガキんちょ、なんだその疑いの目は !あのな、俺さまだって真面目な時はちゃんとやるっての !
セレスはい、お兄さまはこれから私と一緒に立派なアンバサダーを務めていくのですから。
ロイドあんばさだー ?  なんだ、それ ?
リフィル簡単に言えば、企業や会社から依頼を受けて商品の宣伝や普及活動を行う人のことよ。
リフィル今回の場合だと、リーガルがゼロスとセレスに依頼をしたってことなのかしら ?
リーガルああ、二人には主にアパレル事業の展開に一役買ってもらおうと思っている。
リーガル今日の懇親会では、その新ブランド発表と同時にゼロスたちにモデルを務めてもらう手筈となっているのだ。
セレスはい、私でもお役に立てるのなら嬉しいですし何よりお兄さまと一緒にお仕事ができるなんて……。
コレットそっか、セレスはゼロスと一緒にいられるのが嬉しいんだね。
セレスそ、それは…… !  私はただ可愛いお洋服が着られると思って引き受けただけですっ !
ゼロスでひゃひゃひゃ。服より俺さまの美貌に惚れちまうハニーがいないか心配だけどな。
ジーニアスうわあ、やっぱり人選ミスなんじゃない……。
コレットそうかな ?  私はゼロスやセレスにぴったりなお仕事だと思うよ。
ロイドま、ゼロスは黙ってれば害はないしな。
ゼロスちょっとロイドくん ! ?今、結構酷いこと言ったからね ! ?
しいなでも、さすがはレザレノ・カンパニーの会長だよ。こんな短期間に会社を立ち上げて成功させるなんてサ。
リーガル私は自分のやりたいようにやらせてもらっているだけだ。
リーガル元の世界のレザレノ・カンパニーは祖父の代から受け継いできたものだが、こちらでは何事も一から立ち上げねばならん。
リーガルなかなか大変だが、やりがいを感じることも多い。なにより、この世界の人たちの生活が豊かになっていくなら、私にとっても喜ばしいことだ。
プレセアリーガルさんは、とても立派ですね。
ロイドああ、やりたいことがあるってのはやっぱりいいことだよな。
ジーニアスやりたいこと……。
リーガルそうだな、それを見つけられた私は幸運なのかもしれん。
ゼロスはいはい、そういうイイ感じの話はこれくらいにしとこうぜ。長話をしてっと、大事な懇親会に遅れちまうぞ。
リーガル神子の言う通りだな。では、ロイド。お前たちもこのまま一緒に来てくれ。私の関係者として招待してある。
しいないいのかい ?  会社絡みの懇親会ってことはお偉いさんもいっぱい来るんだろ ?あたしたち、正装なんか用意しちゃいないよ ?
リーガル衣装はこちらで用意している。お前たちにも我が社の服を着てもらえるいい機会だからな。
リフィルでは、お言葉に甘えようかしら。
ロイドやったな、ジーニアス。きっと美味い飯もいっぱいあるぞ !
ジーニアス……もう、ロイドってば。恥ずかしいから一人ではしゃがないでよ。
ロイドへへっ、わかってるって。でも、せっかくだから楽しませてもらおうぜ。

Character3話【交響曲3 やりたいこと】
ロイドはぁ~、食った食った。けど、やっぱああいう場所って肩こるんだよなぁ。
しいなジジくさいこと言ってんじゃないよ。ま、気持ちはわかるけどサ。
ロイドだよな。今日はもう寝るか。部屋もリーガルが用意してくれてんだろ ?
リフィルええ、あなたはジーニアスと同じ部屋よ。
ロイドそっか。じゃあ行こうぜ、ジーニアス……って、あれ ?  あいつ、どこ行ったんだ ?
プレセア先ほどまで一緒だったと思いますが……。
しいなああ、ジーニアスなら、ちょっと風に当たってから戻るって言ってたよ。
ロイドそうなのか。じゃあ、先に部屋で待ってるかな。
コレットあっ、待ってロイド。えっとね、ジーニアスのことなんだけど少し気になることがあるんだ。
ロイド気になること ?
コレットうん、アジトのお掃除をしてた時からちょっとジーニアスの様子が変だった気がするの。
コレットずっと考え込んでるような……ロイドは心当たりない ?
ロイドうーん ?  俺は特に……。
コレットそっか。ごめん、私の勘違いかも……。
ロイドいや、コレットが言うなら多分そうなんじゃないか ?お前、みんなのことよく見てるし。
リフィルそうね、あの子も一人で抱え込むところがあるから……。
ロイドわかった。ちょっと様子を見てくるよ。あいつも俺なら話しやすいだろうしさ。
コレットうん、私もそう思う。ロイド、ジーニアスのことお願い。
ロイドおう、任せとけ。
ロイドおっ、いたいた。
ジーニアスロイド ?  どうしたの、こんなところに。
ロイドお前を捜してたんだよ。部屋に戻ってもすることないしな。
ジーニアス先に寝ててよかったのに。もしかして、一人で寂しかったとか ?
ロイドはいはい、それでいいよ。で、お前は何してるんだ ?
ジーニアス別に……ただ風に当たりたかっただけだよ。
ロイド……コレットが心配してたぜ。なんだか悩んでるみたいだってさ。
ジーニアスコレットが ?そっか……バレちゃってたんだ。
ロイド何かあるなら話してみろよ。そのほうがスッキリすると思うぜ。
ジーニアスありがとう、ロイド。でも、本当に大したことじゃないんだ。
ジーニアスただ、ボクはこの先どうしていくのかなって考えていただけだから。
ロイドこの先…… ?
ジーニアスアジトでアルバムの写真を見たでしょ ?ボクたちって色々なことをしてきたんだなって思い出してさ。
ジーニアスその時、ふと考えちゃったんだ。これからボクがやりたいことって何なんだろう、って……。
ジーニアスほら、他のみんなはちゃんと自分のやりたいことをやってるし、リーガルやあのゼロスだって見つけてる……。
ロイド……かもな。そのために今日だって頑張ってたし。
ジーニアスねえ、ロイドは何かやりたいことってないの ?
ロイド俺か ?  うーん、どうだろうな。まだはっきりとした目標とかはないけど世界を旅したいとは思ってるぜ。
ジーニアス旅か……なんか、ロイドらしいね。
ロイドだろ ?  その間に自分のやりたいことを考えるさ。だから、お前もゆっくり考えればいいんじゃないか。
ジーニアスうん……。
ロイドあっ !  なんなら俺と一緒に来るか ?
ジーニアスえっ、いいの ?
ロイド当たり前だろ。お前とはイセリアの村からずっと一緒だったんだし、世界再生の旅やこのティル・ナ・ノーグでも色々やってきただろ ?
ロイドジーニアスがいれば頼りになるしなにより俺が楽しいからさ。
ジーニアスロイド……。うん、ボクも同じだよ。ロイドと一緒にいるのはすごく楽しい。けど……最後はボクも、一人になっちゃうんだよね。
ジーニアスボクは、ハーフエルフだから……。ロイドやコレットたちとは同じ時間を歩めない。
ロイド……でも、俺たちだけじゃないだろ ?お前には、先生やミトスだっているじゃないか。
ジーニアスうん、わかってるよ。でも、時々考えちゃうんだ。ロイドたちがいなくなるってことをさ。
ロイド……だったら、ジーニアスは俺のことをずっと覚えていてくれよ。
ロイドそうしたら、ジーニアスの思い出の中に俺はずっと残るし、寂しくならないんじゃないか ?
ジーニアスボクの中に……。
ロイドだから、これからもみんなで色々やろうぜ。お前が、みんなのことを忘れないようにさ。
ジーニアス……ありがとう、ロイド。ふふっ、でも、ロイドみたいな変な人は簡単に忘れられないよ。
ロイド変ってなんだよ !せっかく励ましてやろうと思ったのに !
ジーニアスごめんごめん。
ジーニアス……そういえばボク、昔から星の位置を覚えておくように姉さんから言われていたんだ。
ロイドああ、俺の家でもよく見てたよな。
ジーニアスそれは、いつ村を追い出されても安全に旅ができるようにするためだったんだ。
ジーニアス……でも、今度は逃げるためじゃなくて前へ進むために星の位置を覚えるよ。また一緒に、ロイドと旅をするんだからね。
ロイド……ああ、頼んだぜ、親友。
ジーニアス……あれ ?  今のって……。
ロイドん ?  どうしたんだ ?
ジーニアスいや……今、誰かが建物の屋上に降りたような……。
ロイド俺は見てなかったけど……。
ジーニアスボクの見間違いかな ?でも、ミトスやクラトスさんみたいだった……。
ロイドあいつらが ?じゃあ、ちょっと行ってみるか ?本当にあの二人なら俺も気になるし。
ジーニアスうん、また付き合わせちゃってごめんね。
ロイド別にいいって。でも、先生に怒られるからあんま遅くならないようにしようぜ。

Character4話【交響曲5 二つの影】
ミトス――あったよ、クラトス。まさか、アルタミラの博物館で保管されてたなんてね。
クラトス展示前に気付けたのは幸いだな。管理者には申し訳ないが、これは我々が回収しておこう。
? ? ?――やはり、お前たちの目的はこの『魔界の書』だったのだな。
マーテルごめんなさい。ユアンから話を聞いて、先回りさせてもらったわ。
ミトス……ユアン、どういうこと ?
ユアンそれはこちらの台詞だ。お前たちの様子がおかしいとマーテルに相談されて調べさせてもらった。
ミトスへえ、相変わらずこそこそ動くのが上手だね。隠してたつもりだったんだけど。
マーテルミトス、ユアンを悪く言わないで。全部私が頼んだことなの。
ユアンお前たちのことだ。マーテルが首を突っ込む前に自分たちで解決しようとしたのだろう。
ユアンだが、私たちも『魔界の書』の存在を知ってしまった以上、退くつもりはない。今回ばかりは首を突っ込ませてもらうぞ。
クラトス……そうだな。ならば、我々が持っている情報を共有しておこう。
ミトスクラトス…… !
クラトスミトス、これ以上二人に隠しておくのはかえって逆効果だ。
マーテルありがとう、クラトス。だけど、私たちを仲間外れにした理由はあとでたっぷり聞かせてもらうわね。
クラトスうっ……あ、ああ……覚悟はしている。
ユアンこほんっ。一度、話を戻すぞ。この『魔界の書』だが私たちが知っているもので間違いないのだな ?
クラトスそうだ。これはかつて我々が封印した禁書であり放っておくと人々の心に危害が加えられやがては世界に影響を及ぼすかもしれん。
ユアン魔界ニブルヘイムの再現か……。だが、何故この世界にも魔界の書が存在しているのだ ?
ミトスここはボクたちの記憶が具現化された世界だよ ?魔界の書があっても別に不思議じゃないさ。エクスフィアや世界樹があるようにね。
クラトスだが、それらはこの世界の法則に従いエンコードの力が働いている。この魔界の書も例外ではない。
クラトスそのため今まで目立った被害は出ていなかったのではないかというのが我々の見解だ。
ミトスこの博物館に展示されることになったのは前の持ち主に災いが降りかかって手放したからみたいだけどね。
マーテルその人は大丈夫だったの ?
クラトスああ。本を手放してからは、夜中に謎のうめき声が聞こえることもなくなったらしい。
ユアン逆に言えば、原因はその本で間違いなかったというわけだな。
クラトスそうだ。だから私とミトスが動き処分することにした。
ユアンだが、完全に処分するには『封魔の石』が必要なはずだ。その問題はどう解決する ?
ミトスさっきも言ったでしょ ?エンコードの力が働いているなら、完全な処分はできなくても、力は抑えられるかもしれない。
ミトスまずはそれを調べて、あとはマークたちにでも預けて無害にしてもらうつもりだよ。まあ、ボクたちで処分できるならそうするけど。
クラトス……お前たちに相談しなかったのは最終的には私の判断だ。ミトスのことは責めないでやってくれ。
ユアンふん、お前は相変わらずミトスに甘いな。
ミトスユアン、クラトスを悪く言うのはボクが許さないよ。
ユアンお前もお前だ。クラトスにばかり頼りおって……。少しは私のことも頼ったらどうなんだ ?
ユアン……これでも、私はお前の義兄になったのだからな。
ミトス……ねえ、そんなに恥ずかしそうにするなら言わないほうがよかったんじゃない ?
ユアンなっ !  わ、私はお前のことを考えて…… !
マーテルそうよ。こんなに顔を真っ赤にして頑張ったユアンの気持ちも汲み取ってあげて !
ユアンうっ…… !
クラトス……マーテル。フォローに入ったつもりだろうが今のは逆効果だぞ。
マーテルえっ ?  そうなの ?ユアン、ごめんなさい……。
ユアンいや、君のせいではない……。
ミトス……はぁ。わかったよ。姉さまに免じてユアンの気持ちは受け取ってあげる。
ユアン……まあいい。それで、これからどうするつもりだ ?
クラトスまずはオリジンの力を借りて本の中に入り、調査を行う。
マーテルそれじゃあ、私たちもついていけばいいのね。
ミトス…………。
クラトス……そうだ。では、急ぐぞ。

Character5話【交響曲6 禁じられた書物】
ロイドジーニアス、この辺りで間違いないか ?
ジーニアスうん。ここって博物館だよね。本当にミトスたちだったんならどうしてこんなところに来たんだろう ?
ロイドそんなの会ってから聞けばいいって。けど、勝手に入るわけにはいかないよなぁ。
ジーニアスそうだね。警備の人もいるみたいだけど話したところで入れてくれないだろうし……。
しいなやっと見つけたよ !こんなところまで来てたのかい。
ロイドしいな !  それにリーガルも、どうしたんだ ?
リーガルお前たちがホテルに戻ってこないと聞いてな。一緒に捜していたのだ。
しいなロイドにジーニアスの事を話したのはあたしだしね。それで、ここで何してたんだい ?
ロイドああ、それなんだけど――
リーガル――そうか。では、警備の者には私から説明して、館内に入らせてもらおう。
ジーニアスそんなこと頼めるの ?
リーガル私もアルタミラではそれなりに顔が広くなったからな。事情を説明すれば通してくれるだろう。
しいなさすがリーガルだね。こっそり侵入、なんてことにならなくてよかったよ。
リーガルでは、すぐに話をしてこよう。
しいなうーん、誰かいそうな気配はないね。
ジーニアスごめん……やっぱりボクの見間違いだったのかも。
ロイドまだ入ったばっかりだろ。それに、ミトスやクラトスなら気配くらい簡単に消せそうだし。
しいな鋭いとこをつくじゃないか。確かに、その線はあるかもしれないね。
ロイドへへっ、だろ ?だから、もうちょっと調べてみようぜ。
リーガルん……あれは…… ?
しいな何か床に落ちてるね。……本 ?
ジーニアス待って !  あの本の背表紙についてるのって……。
ロイドエクスフィアだ !けど、どうして本なんかに……。
しいな気を付けな、ロイド。この本……なんだか嫌な感じがするよ。
? ? ?――気が付いたか、召喚の力を持つ者よ。これは、かつてミトスとその仲間たちが封印した魔界の書だ。
しいなえっ ! ?  今のは……。
ロイド俺にも聞こえたぞ。誰だ ! ?
オリジン私はオリジン。お前たちに警告するため声を届けている。
しいなオリジンだって ! ?  あんたがなんで……。
オリジンこの本には、禍々しき力が宿っている。今はミトスたちが本の中へ入り力を止めようとしているところだ。
ジーニアスミトスたちが…… ! ?じゃあ……ボクの見間違いじゃなかったんだ……。
リーガルしかし、本の中に入っているとはどういうことだ ?彼らは無事なのか ?
オリジン今はまだな。無事に戻ってくるという保証はない。
ロイドよくわからねぇけど、このままだとミトスたちも危険だってことなんだな ?
オリジンお前たちも巻き込まれたくなければすぐにここから立ち去るがいい。
ロイドそんな話を聞いて黙ってられるかよ。なあ、オリジン。俺たちもその中に入れないのか ?
オリジン私の力を使えば可能だ。
ロイドよし、なら俺も行かせてくれ。
ジーニアスボクも一緒に行くよ。ミトスのこと、心配だし。
しいないいのかい ?  オリジンの話からすると相当危険な感じだよ。
ロイドそれなら尚更だろ ?ミトスには嫌な顔されるだろうけどさ。
しいなまあ、あんたならそうするだろうね。わかった、あたしも行くよ。
リーガル待て、お前たち。これは私たちだけの問題ではない。皆にも話しておくべきだろう。
ロイドそうだな。じゃあ俺から連絡するよ。
ゼロス魔界の書、ね……。ったく、そんな物騒なもんまでこっちの世界で再現しなくていいってのによ。
リフィル本当はもう少し情報が欲しいところだけどミトスたちが先行している以上ゆっくりしてはいられないわね。
ロイドああ。だから、みんなにも協力してほしいんだ。一緒に来てくれるか ?
コレットもちろんだよ。ドワーフの誓い、第2番「困っている人を見かけたら必ず力を貸そう」だね !
ゼロスコレットちゃんは優しいねぇ。まあ、ハニーたちのことは俺さまが守るから安心してくれて構わないぜ。
ゼロスあとセレス、お前もあまり俺から離れるなよ。フォローできなくなっちまうからな。
セレスえっ ?  は、はい……。あの、お兄さま。私もついていっていいのでしょうか ?
ゼロスはぁ ?  お前、自分でここまで来たんだろ ?
セレスですから !  その……いつもなら「お前は来るな」などと仰るから……。
ゼロス……あー、はいはい、そういうことね。けど、俺さまが言ったところでお前は勝手に首を突っ込んでくるだろ ?
ゼロスおまけに毎回毎回、突拍子もないことばっかするからな。
セレスそ、そんなことはありません !た、多分……ですけど……。
ゼロス……だから、いっそのこと目に見えるところに置いといたほうがいいって思っただけだよ。これで満足したか ?
セレスお兄さま……。
コレットセレス。あのね、ゼロスはきっとセレスのことが心配だから、無理をしてほしくないんだよ。
プレセアはい、ゼロスくんは自分の気持ちを伝えるのは不器用ですが、セレスさんを本当に大切にしているんだと思います。
ゼロスちょ、コレットちゃんにプレセアちゃん ! ?俺さまは別に……。
セレス……はい、私もわかってはいるんです。ですが、身体が弱いせいでお兄さまのお役に立てないのが悔しくて……。
ゼロス……はぁー。あのな、セレス。身体が弱いのは、お前のせいじゃねえだろ。それに、誰が役に立ってないなんて言ったんだよ ?
セレスえっ ?
ゼロスお前は……いつも頑張ってくれてるよ。だから……今回も無理しない程度にな。
セレスお兄さま…… !  はい、もちろんです !
ロイドなんだ、ゼロス。お前、やろうと思えばちゃんと正直になれるんだな。
ゼロスひでぇ言い方 ! ?へいへい、俺さまはどうせ捻くれてますよ。
ロイドんじゃ、みんなでミトスたちのところへ行こうぜ。
ジーニアスうん !  待っててね、ミトス。ボクたちもすぐに追いつくから。

Character6話【交響曲7 力を合わせて】
ロイドうわっ ! ?  俺たち、本の中に入ったのか ! ?
プレセアそうみたいです。周りの景色もですが雰囲気が一変しました。
リフィル――素晴らしい ! !本の中にこのような遺跡が広がっているとは ! !これは大発見だ ! !
ロイドあっ、やべ。先生も変わっちまった……。
? ? ?……また新たな侵入者だと ?やはり、我らを消滅させようというのか。
ジーニアス何、この声 ?
? ? ?……我らは次なる魔界の王。お前たちごとき矮小なる者に我らが消せると思うのなら命を天秤に乗せ試してみるがいい !
リフィル魔界の王だと ! ?ならば、貴様がこの遺跡の所有者か ! ?
? ? ?この空間は幻想に過ぎん。だが、我らが生み出した世界でお前たちを排除することなど造作もない !
魔物シャアアアアアッッッッ ! ! ! !
ゼロスおいおい、随分と派手な挨拶じゃねえか。
? ? ?ここで屍となるがいい ! !
ゼロスそっちがその気なら付き合ってやるよ ! !決めるぜ !  魔神閃空破 !
ゼロスどうよっ !  この俺さまの華麗な剣さばき !
リーガル! ?  神子よ、まだ油断するな ! !
魔物――シャアアアアアッッッッ ! ! ! !
ゼロスなにっ !  こいつら増えんのかよ ! ?
セレス危ない、お兄さま ! !くらいなさい !  スターキャノン !
セレス平気ですか、お兄さま ! ?
ゼロスサンキュー、セレス。こいつら、思った以上に厄介だぞ。
プレセアはい、倒しても倒しても次が現れます。全部を相手にしていては私たちの体力がもちません。
リーガルなるべく力を温存して突破したいところだが……。
ロイドよし、そういうことなら……ジーニアス !
ジーニアス……うん、いいよ、ロイド !
ロイド行くぜ !  うおおおおおおおっっっっ ! !
しいなロイド ! ?  話を聞いてなかったのかい ! ?そんな考えもなしに突っ込んだら…… ! !
コレットううん、違うよ、しいな。ロイドはきっと――
魔物たちシャアアッッッッ ! ! ! !
プレセアいけません !  ロイドさんの周りに魔物が…… !
ロイド――よし ! !  今だ、ジーニアス ! !
ジーニアス了解 !  いくよ !  サイクロン ! !
ロイドへへっ、上手くいったぜ !サンキュー、ジーニアス !
リーガルなるほど、ロイドが魔物を集めてジーニアスの術で一掃する作戦だったのか。
しいなけど、そんなことは一言も話してなかったじゃないか ?
ジーニアスわざわざ聞かなくてもロイドの考えてることなんてわかるよ。
ゼロスやるじゃねえの、ガキんちょ。
ジーニアスそれじゃあ、ロイド。今の感じでもう一回いくよ !
ロイドおう !  頼んだぜ、ジーニアス !
ユアン――サンダーブレード !
ユアン……ひとまず、辺りの魔物はこれで全部か。
ミトスその調子だよ、ユアン。雑魚たちの相手は任せたから。
ユアンお前も少しは加勢しろ !まったく、私ばかり働かせおって……。
マーテルお疲れ様、ユアン。ふふっ。こうしていると四人で一緒に旅をしていた頃を思い出すわね。
ミトス……あの頃とは違うよ、姉さま。ボクたちは天使になったし元の世界だったら姉さまだって……。
マーテルミトス……。
ミトス……変わらないのは世界がボクたちハーフエルフの存在を認めなかったことくらいだよ。
ミトス結局、ボクたちがしてきたことなんて何の意味もなかったんだ。
クラトスそれは違う。確かに世界は残酷だった。そして、お前を間違った道に進ませてしまったのは私たちの責任だろう。
クラトスその結果、多くの者たちを苦しめたのも事実だ。だが、それでお前の今までの行い全てが否定されるわけではない。
クラトスこの魔界の書についてもそうだ。お前が封印をしたことで多くの命が救われ世界の危機を回避できた。
クラトスそして、お前は私から話を聞いてすぐに動いた。少しずつだが、お前はクルシスの首領であった頃から変わろうとしているのではないか ?
ミトス……ボクは変わらないよ。今回の件だって、ボクは自分の後始末をしようと思っただけさ。
クラトス……少し説教くさくなってしまったな。
マーテルいいえ、そんなことないわ。あなたの気持ちは、きっとあの子にも届いているから。
マーテルそれに、私もクラトスの言う通りだと思うわ。この世界で、あの子にも大事な友達や仲間ができて守りたいと思っているんじゃないかしら。
ユアン……それならそうと素直に言えばよかろう。
マーテルそうね……。昔のあの子なら話してくれたでしょうけどきっと今のあの子には、これが精一杯だと思うの。
マーテルごめんなさい、ユアン。ミトスのことであなたにも負担をかけてしまって……。
ユアン……君が謝る必要はない。それに、あいつの言動にはもう慣れている。
ユアンなにより、君やクラトスが言ったように本当にあいつが変わりたいと思っているのなら私だって協力は惜しまないつもりだ。
ユアンくっ……また魔物か ! ?
ミトスしつこいね。ほら、ユアン、出番だよ。
ユアンまた私にやらせるつもりか ! ?
ミトス頼れって言ったのは自分でしょ ?任せたよ、ユアン義兄さん。
ユアンお前というやつは…… !
マーテルユアン、私も力を貸すわ。一緒に頑張りましょう。
ユアン仕方ない……いくぞ、マーテル !
マーテルええ !
二人ここに誓う !脅かすものを、共に退けん…… !
二人永遠の絆よ !エンゲージソーサリー ! !
マーテルユアン、このまま全てやっつけましょう。
ユアンああ !  何度襲ってこようが私たちに敵わぬことを身をもって教えてやろう !

Character7話【交響曲8 英雄の心】
しいな随分奥まで来たけど、まだ先があるみたいだね。
リーガル気を付けろ。敵の力も強くなっている。この先はさらなる強敵が待ち受けているかもしれん。
リフィルそうね、今まで以上に警戒していきましょう。
プレセア……これほど強大な力を、かつてのミトスたちは封印したのですね。
ロイドああ。そう考えると、やっぱあいつってすごい奴なんだよな。
コレットそだね。こんなに怖い力からミトスは世界を守ってくれたんだ……。
ジーニアス……だけど、ミトスは変わった。人間の心が、優しいミトスの心を歪ませたんだ……。
ロイドジーニアス……。
ジーニアスごめん。だからって、ミトスがしてきたこと全部を許すつもりじゃないよ。
ジーニアスだけど、ボクも同じハーフエルフだから……。ミトスの気持ちが痛い程わかるんだ。
リーガル……人は時に他人の痛みを理解できぬまま非道を行うことがある。ミトスもまた、そのような人の行いに苦しめられてきたのだろう。
プレセア……そうですね。そんな不条理こそが、世界から差別や争いが消えない理由なのかもしれません……。
ゼロス……だからこそ、あいつは人の心をなくそうとした。千年王国なんて馬鹿げた話だったが\tあいつは本気で世界を変えようとしたんだ。\t
ロイドけど、やっぱりそれは間違ったやり方なんだ。俺たちは心があるから相手を理解しようとしたり歩み寄って支え合うことができる。
ロイド苦しくて悲しくて、一人じゃどうしようもないって思う時もあるけど、誰かがそばにいてくれるだけで救われるからさ。
セレス……はい。私も、その気持ちはよくわかります。私にとって、お兄さまがそうでしたから……。
ジーニアスだけど……そんな相手をミトスは人間から奪われて変わっちゃったのなら……。
ロイド大丈夫さ。今のあいつにはマーテルさんたちがいるし友達のお前だっているだろ ?
ロイドアジトで仲良くしてた奴らもきっとミトスのことをわかってくれる。
ロイドだから、俺たちの世界でやってきたようなあんな酷いことは、もうしないって俺は信じてる。
ジーニアスロイド……。
ロイドそれに、またジーニアスを裏切るようなことをしたら俺が許さないからな !
ジーニアス……うん、ありがとう、ロイド。
しいな……本当、あんたらしいよ、ロイド。
プレセアはい、ロイドさんはとても真っ直ぐで素敵な人です。
コレットうん、ロイドの言葉はいつもみんなに勇気や元気をくれるんだよ。
リフィルそうね。きっとこの子のような人間が世界を変えてくれるのだと思うわ。
ゼロスまーたロイドくんばっかモテやがって !俺さまのポジションを奪うんじゃねえっての !
ロイド何怒ってんだよ、ゼロス ?
ゼロス怒ってなんかねえよ。さ、立ち話はこれくらいにして先へ進もうぜ。
セレスお兄さま !  あちらに光が集まっています !
リフィルあれが次のワープ装置のようね。行きましょう。
ゼロスさーてと、次はどんなやつがお出ましだ ?
リーガル! ?  あれは…… ! !
? ? ?ここから先には進ませぬ。我は封じられた本の中で力を蓄え、やがて人の世に、その心に悪が蔓延した時この檻から解き放たれるのだ。
ミトスさすがに、こいつが相手だとユアン一人の手には余るね。
クラトスいくぞ、ミトス !まだ完全に力を取り戻していない今が好機だ。
ジーニアスミトス !
ミトスジーニアス…… !
ユアンお前たち、どうしてここに……。
ロイド説明は後だ !それより、ずっと俺たちの邪魔をしてきたやつはこいつなんだな ! ?
クラトス……そうだ。この魔物は私たちが封印したなかでも強力な一体だった。
ミトス姿は違っているけれど、それもエンコードの影響かもしれないね。もしくは、まだ力が戻っていない証拠かも。
マーテルそれでも、感じる力は強大です !
ロイド俺たちも加勢するぞ !そのために来たんだからな !
ミトスふうん。勝手にしていいけど足手まといにならないでよ。
ロイドほんっと嫌味なやつだな !そっちこそ、油断してやられても知らねぇからな !

Character8話【交響曲9 英雄の記憶】
? ? ?……ありえぬ !やはり、まだ我の力が完全ではないというのか……。
ミトス最後まで言い訳なんて見苦しいね。でも、そうだね……今度こそちゃんとトドメは差してあげるよ。
クラトス油断するな、ミトス。まだ戦いは終わっていないぞ。
ミトスボクが手を抜くと思う ?やるなら徹底的にやるつもりだよ。
クラトスフッ、そうだな。では、いくぞ !
二人詠華空破衝 ! !
? ? ?……我が消えても……ニブルヘイムは……必ず……復活……す……。
ロイド……勝ったのか ?
リーガルそのようだな。
ジーニアス……ミトス、大丈夫だった ?ごめん……ボク、ミトスのことが心配で……。
ミトス……ありがとう、ジーニアス。ボクたちを助けに来てくれたんだね。
マーテルあなたたちにも迷惑をかけてしまったみたいね。ごめんなさい……話くらいはしておくべきだったわ。
ゼロスマーテル様が謝ることじゃないでしょ ?野郎共はともかく、マーテル様に何かあったら俺さま泣いちゃうし。
プレセアはい、私たちがそうしたいから来たんです。
しいなけど、これで本当に終わりなのかい ?また魔物が出てきたりなんかは……。
ユアンいや、封印されていた魔物は奴で最後のはずだ。だが、この本が存在する限り奴らは何度でも復活してしまう。
セレスそんな…… ! ?  では、一体どうしたら…… !
クラトス本来の方法での処分は難しいが、ビクエたちならば何か打開策を出してくれるだろう。
クラトスその前に、まずは溜まっていた悪しき力を我々の手で削っておきたかったのだ。この世界に何かしらの影響が出る前にな。
ミトスもういいでしょ ?  ボクたちの役目はこれで終わり。あとはオリジンに頼んで本の外へ帰れば――
コレットなに ?  また光が…… !
ゼロスおいおい !  さっきので最後じゃなかったのかよ ! ?
ユアンそんなはずは…… !いや……これは…… ! !
ユアン ?……我々だけではない……ようだな ?
ロイドユアンが二人になった ! ?
プレセア……いえ、ユアンさんだけではありません。ミトスさんやクラトスさんも一緒です。
ロイドなんなんだ、一体……。
マーテルもしかして、あなたたちは……。
ミトス…………。
ミトス ?ごめん、驚かせちゃったみたいだね。でも、そっちのボクはわかってるでしょ ?この人たちにも説明してあげたら ?
ミトス……そんな必要はないよ。ボクの用事は終わったんだ。あとは勝手にやればいいさ。
クラトス……いいのか、ミトス ?
ミトスうん……でも、姉さまには問い詰められるだろうね。
クラトス……そうだな。
ユアン……マーテル、私たちも戻ろう。事情は、私からも説明する。
マーテル……わかったわ。ちゃんと話してくれるのなら今はあなたたちの判断に従います。
クラトスロイド。ここはお前たちに任せてもいいか ?
ロイドあ、ああ……別にいいけど……。
クラトス……すまないな。何かあればオリジンが私に伝えてくれるはずだ。では、頼んだぞ。
ゼロスあいつら !  本当に行っちまいやがった……。
ユアン ?ミトスめ……太々しい態度は何も変わっていないな。
クラトス ?何か事情があるのだろう。それに、我々が聞きたいことは彼らが教えてくれるはずだ。
リフィル少しいいかしら ?先に質問をする形になるけれどあなたたちはどういった存在なの ?
ミトス ?ボクたちは昔の記憶の存在なんだ。この禁書を焼き尽くす人が現れた時にその実力を試す必要があるからね。
クラトス ?だが、どうやら私たちが知っている状況とは随分と変化しているようだ。その経緯を知るためにお前たちの話を聞かせてほしい。
ミトス ?できれば、君たちがボクと一緒にいた理由も教えてくれると嬉しいんだけど。
ロイド……わかった。ちょっと長い話になるかもしれないけどいいか ?
ミトス ?うん、もちろん構わないよ。それに、少し興味があるんだ。
ミトス ?君みたいな人間が、どうしてハーフエルフであるボクと一緒にいたのか、ね。

Character9話【交響曲10 英雄との別れ】
マーテル……ミトス、先ほど見たあなたたちは昔の記憶のあなたたちで間違いないかしら ?
ユアンマーテル、君は気付いていたのか ?
マーテルええ、なんとなくだけれど雰囲気が昔のあなたたちと似ていたから。
クラトス……そうだ。あれは私たちが魔界の書に残した記憶であり、一種のセーフティネットだと思ってくれて構わない。
マーテルそうだったのね。だけど、どうして逃げるようにあの場から立ち去ったの ?
クラトスそれは……。
ミトスたとえ記憶だとしても、自分の昔の姿なんて姉さまに見せたくなかったからだよ。
ミトスあの頃のボクは、本気でハーフエルフが差別されることのない世界を創ろうとしていた……。そんなことなんて、どうやってもできないのに……。
クラトス…………。
ミトスボクはもう、あの頃のボクじゃない。だけど、姉さまはあの頃のボクに戻ってほしいって思ってるんじゃないの ?
マーテルミトス……。
ミトス……ずっと怖かったんだよ。今のボクを姉さまに否定されるんじゃないかって……。
マーテル…………そうね。あなたが元の世界でしてきたことは決して許されることじゃなかった。
マーテルもし、私が声を届けられたのならきっとあなたの行いを否定したでしょう。
ミトス…………ッ !
マーテルそれほどのことを、あなたはしてしまったのです。だけど――
ミトスね、姉さま…… ! ?
マーテルたとえあなたの行いを否定することがあっても愛していないわけじゃないわ。
マーテルあなたは私にとってたった一人の弟。愛しているからこそ、間違った道に進ませるわけにはいかないの。
マーテルそれに、あなたがまだ優しい心を持っていることを私は知っているわ。その気持ちを少しずつでもいいから広げていってほしいの。
ミトス……そんなの無理だよ。ボクはもう……。
マーテル大丈夫、今のあなたには私たちが一緒だから。
クラトス……ああ、たとえ過ちを犯したとしてもやり直すことができる。私もお前もそれをロイドから教えてもらったはずだ。
ユアンミトス、私はこれからもお前を支えていくつもりだ。たとえ、どれだけ鬱陶しがられてもな。
ミトス…………なんだよ、ユアンのくせに恰好つけて。
マーテルみんな、あなたのことが大切なのよ。それをわかってくれると嬉しいわ。
ミトス…………うん。
マーテルそれじゃあ、この話はもうお終いね。今はロイドたちが無事に帰ってくるのを待ちましょう。
ミトス……ごめんなさい。ボクは少し風に当たってくる。なにかあったら魔鏡通信で連絡して。
ユアンミトス……。
クラトス私が追いかけよう。お前たちは、引き続きここを頼む。
マーテルええ、わかったわ。あの子のこと、よろしくね。
ユアン……マーテル。こんな時にしか言えないが数千年間、何度も考えることがあったんだ。君が生きていてさえくれれば……と。
ユアンそれでも、私は現実から目を背けまいと決めた。目的のためとはいえ……多くの神子を苦しめ、時には手にかけた。
ユアンそこまでして、ミトスの計画を止めようとしたのに結局、最後はロイドたちに任せることになってしまったがな。
ユアン……私は、最後までミトスを救うことはできなかった。ミトスが堕ちた勇者となってしまった責任は私にもある……本当にすまなかった。
マーテル……顔を上げて、ユアン。あなただけの責任ではないわ。
マーテルそれに、あなたがしてきたことも今は私の中にいる神子たちが教えてくれたの。悪いことも……良いことも。
ユアン世界樹に残っていた歴代の神子たちの残滓か。そうか、あの者たちが君に私のことを……。
マーテルええ、あなたはずっとミトスが過った道を進むのを止めようとしてくれた。
マーテルありがとう、ユアン。私の大事な弟を、ずっと守ってくれて。
ユアン……ふっ。やはり、君には敵わないな。
英雄ミトス――そっか。外の世界はボクたちの知っている世界とは違うんだね。
英雄ユアンつまり異世界ということか。にわかには信じられんな。
英雄クラトスどちらにしても、この禁書が与える影響を考えれば一刻も早く処分するのが賢明だ。
英雄ミトスボクたちの役目もここまでだね。ありがとう、君たちの話はとても面白かったよ。
英雄ミトス今のボクには新しい友達もできてるみたいだしね。
ゼロスなあ、話はもうこれくらいでいいだろ。俺さまたちも、そろそろ帰りてえんだけど ?
英雄ミトスそうだね。でも、ひとつ我が儘を言っていいかな ?君たち、ボクと戦ってみないかい ?
ゼロスはぁ ! ?  なんでそうなるんだよ ! ?
英雄ミトスさっきも言ったでしょ ?本来、ボクたちはこの禁書を本当に処分できる者か試すために存在していたんだ。
英雄ミトス話を聞いた限り、禁書はきっと今のボクや君たちがなんとかしてくれるだろうけれど、君たちの実力がどれほどのものか知りたくなったんだ。
リフィルつまり、あなたたちは本来の役目を果たそうということね。
ロイドわかった。それでお前たちが納得するってんなら相手になるぜ。
英雄ミトスありがとう。それじゃあ、始めようか。言っておくけど、ボクたち、結構強いよ ?
ロイドそんなの嫌になるくらい知ってるっての。んじゃ、いくぜ ! !

Character10話【交響曲10 英雄との別れ】
英雄ミトスうん、やっぱり君たちならこの本のことを任せてよさそうだ。
英雄ミトス最後に、教えてもらっていいかな ?ボクは……ボクたちはちゃんと大樹カーラーンを再生できた ?
英雄ミトスハーフエルフは、少しは受け入れてもらえるようになった ?
リフィルそうね……今の私たちには、もう元の世界がどうなったのか知ることはできないわ。
リフィルだけど、私たちの仲間には未来から来た人もいて彼らの話では世界樹は復活したと聞いているわ。
英雄ミトスそっか……よかった。
英雄ユアン待て、肝心なことに答えていないぞ。未来ではハーフエルフは迫害を受けなくなったのか ?
ジーニアス……それは……今の時点では……。
英雄ユアンフン……まだ迫害されているようだな。人間共め !
英雄クラトス落ち着けユアン。今の時点では、という話だ。彼らはハーフエルフと共にいる。少しは変わったのかも知れぬ。
英雄ユアン……そうなのか ?
ロイドああ、俺はみんなと一緒にいたいと思ったから一緒にいる。そして、ジーニアスは俺の親友でリフィル先生は俺の先生だ。
ロイドハーフエルフとか人間とか、そんなの関係ねえよ。俺はジーニアスだから友達になってリフィル先生だから尊敬してる。
ジーニアスロイド……。
英雄ミトス君は優しい人間なんだね。ジーニアス、君も同じなの ?
ジーニアス……うん。ロイドは馬鹿で勉強もできないし姉さんに怒られてばっかりだけど……。
ジーニアスボクを『ボク』として見てくれた人は姉さん以外で初めてだったから……。だから、ボクはロイドと友達になれたんだ。
英雄クラトスユアン、彼のような人間もいるのだ。彼らの存在が、人とハーフエルフを繋ぐ架け橋となってくれるだろう。
英雄ミトスロイド……だったよね ?君はどこかボクと似ている気がする。
ロイドそれ、本当によく言われるんだよな……。マーテルさんにも言われたことがあるし。
英雄ミトス姉さまが ?  ふふっ、だったらボクの見立ては間違いないかもね。
ロイドな、なんか調子狂うな……。いつものお前なら、俺に似てるなんて言われたらすげー怒るのに。
しいなな、なんだい ! ?あたしたちの身体が透けてきたよ…… ! ?
英雄ミトスもう時間みたい。君たちとはここでお別れだね。
英雄ミトス……ねえ、ジーニアス。最後にお願いがあるんだけど今のボクとずっと友達でいてあげて。
ジーニアスうん、わかった。約束するよ。
英雄ミトスありがとう。それじゃあ……あとはよろしくね。
ミリーナ遅くなってごめんなさい。みんな、大変だったみたいね。
ゼロス平気平気 !ミリーナちゃんが来てくれただけで俺さま超テンション上がるから !
イクスえっと……一応俺もいるんだけど……。
カーリャゼロスさまですから仕方ありませんよ。それより、いわくつきのこわ~い本はどこにあるんですか ?
リフィルこれよ。今は力が抑えられているようだけれど放っておいたら復活する可能性があるわ。それで、あなたたちに処分をお願いしたいの。
イクスわかりました、任せてください。フィルさんとも相談して、処分できるまではセールンドで厳重に管理してもらいます。
クラトスああ、フィリップたちには私からも話してある。彼らならば、適切に処分してくれるはずだ。
ロイドさてと、これでひとまず一件落着かな。
ゼロスそんじゃあ、俺さまはこれから可愛いハニーたちと遊んじゃおっかな~ !
セレスいけません、お兄さま !私たちには、大事なお仕事が残っているじゃないですか !
リーガル神子よ、すまないがこれからレザレノ・カンパニーのプロモーションショーの予定がある。
ゼロス……あー、すっかり忘れてたぜ。帰って早々に仕事かよ……。
ミリーナ頑張って、ゼロスくん。私もカメラを持ってきたからばっちり撮らせてもらうわ。\tもちろん、セレスの可愛い姿もね。\t
プレセアはい、私もゼロスくんを応援します。
ゼロスおおっ !  貴重なゼロスくん呼びをしてくれるハニーたちの声援 ! !俺さま、ちょっと本気出しちゃうかも。
しいなはぁー、アホ神子はどこまでいってもアホ神子だね。
コレットでも、ゼロスもセレスも楽しそうだからいいと思うな。私たちも応援しよう、ね ?
ユアン……もういいか ?話が済んだのなら、私たちは帰らせてもらうぞ。
ミトス今回ばかりはボクもユアンに同意するよ。もうここに用はないし。
ジーニアスあっ !  待って、ミトス !
ミトスどうしたの、ジーニアス ?
ジーニアスいや、えっと……。ねえ、ミリーナ。さっき、カメラを持ってきてるって言ってたよね ?それで、ボクたちの写真を撮ってくれないかな ?
ミリーナもちろんいいわよ。せっかくならみんなで撮りましょう。
マーテルあら、私たちも一緒でいいのかしら ?
ジーニアスうん、ここにいるみんなで撮りたいんだ。ミトスもいいでしょ ?
ミトス……ジーニアスの頼みなら断れないね。今回だけだよ。
ジーニアスへへっ、ありがとう、ミトス。
ミリーナそれじゃあ、カメラをセットするからみんな集まってね。
ロイドなあ、どうしたんだ急に ?
ジーニアスうん、なんだか今の光景がミトスが目指していた世界なんだろうなって思ってさ。
ジーニアスここにはボクたちハーフエルフを差別する人はいない。だから、その光景を残しておきたかったんだ。ただの思い付きだけど。
ロイド……そういうことか。けど、差別をしない人間はなにも俺たちだけじゃないだろ ?
ロイドこの世界にはハーフエルフのほかにも色々な奴らが暮らしていて、良い奴もいたけど悪い奴だっていた。
ロイドだけど、最後は手を取り合ってこの世界を救った。誰か一人じゃなくて、みんながいたからできたんだ。
ロイドもう、誰かが誰かを差別する世界なんて生み出しちゃいけない。それを実現できるかはこれからの俺たち次第さ。
ジーニアス……うん。ボクも昔は人間が嫌いだったしエルフだって嫌いだった。
ジーニアスきっと、ボクの心にも差別を生み出す『何か』があったんだ。けど、ロイドやみんなのおかげでその『何か』はどんどん小さくなっていった……。
ジーニアスボクが変われたのは、ロイドのおかげだよ。だから、ロイド。ロイドはずっと……ボクの友達だからね。
ロイドああ、もちろんだ !これからも頼むぜ、親友 !
カーリャみなさーん、写真の準備ができましたよー !ちゃんと笑ってくださいね~、せーの―― !
カーリャ――はい、チーズ !