| Character | 1話【強き想い1 辺境にて】 |
| イリア | ……確認するけど、あたしたちオリジン魔鏡を使いこなすための修行に来たのよね ? |
| アスベル | ああ、だから思う存分動けるうってつけの場所をリチャードにオススメされたんだけど……。 |
| イリア | どこがオススメなのよ !なーんにもないじゃない ! |
| イリア | あるのは真っ直ぐな道に、乾いた風と転がってる草 ! 周りに砂しかないどっかの村とどっこいどっこいじゃない ! |
| リチャード | だからこそ、修行に最適だと判断したんだよ。それにこうとも言えるんじゃないかな。 |
| リチャード | 『なにもない』がある、と。 |
| イリア | な~に、うまいこと言った風な空気出してんのよ。戦う魔物すらいないんだけど。 |
| アスベル | まあまあ。リチャードのことだからその辺りも何か考えがあるんだろう。 |
| リチャード | もちろんさ。直にいい修行相手が見つかるよ。 |
| リチャード | ……多分ね。 |
| イリア | 多分 ! ?今、多分って言ったッ ! ? |
| アスベル | はは……とにかくリチャードを信じよう。 |
| イリア | ……ま、ここまで来たら乗りかかった船よね。早くオリジン魔鏡を試してみたいんだけど。 |
| アスベル | ああ、幻影種に対抗できるだけじゃなくて道具も素早く使えるんだったな ? |
| イリア | そーそー。あっ ! 立て札あるじゃん。なになに ? |
| リチャード | この立て札によると……。もう少し先に酒場があるみたいだね。 |
| リチャード | 宿屋も兼ねてるだろうしそこを修行の拠点にするのはどうかな。 |
| イリア | そうね、ここまで歩きっぱなしで疲れたし。 |
| アスベル | じゃあ、その酒場に行ってみようか。 |
| 看板娘 | いらっしゃい……あー、あんたたち来てくれたのはありがたいけどちょっとタイミングが悪かったね。 |
| アスベル | 何か問題が ? |
| 看板娘 | ほら、あいつだよ。 |
| ゴロツキ | おー姉ちゃんよう、そんな奴らいいからお酌してくれよォ。 |
| イリア | げっ、何アレ ? 昼間っから酔っ払い ?うわぁ……。 |
| 看板娘 | そういう訳だからさ、一旦出直して……。 |
| ゴロツキ | おら、チンタラしてんじゃねェよ。お客様が呼んでんだろォ ! ? |
| 看板娘 | や、やめろ、触んなッ…… ! |
| アスベル | やめるんだ、困ってるじゃないか。 |
| ゴロツキ | あァん ? んだよテメェ……。部外者はすっこんでなッ ! |
| アスベル | おっと。 |
| イリア | あはは…… ! すっこんでろとか言って自分がすっころんでやんの ! |
| アスベル | イリア……あまり挑発するようなことは……。 |
| ゴロツキ | く、クソ、覚えてやがれッ ! ! |
| イリア | あースッキリした !あんた、大丈夫 ? |
| 看板娘 | あ、ありがとう。おかげで助かったよ。でも……。 |
| アスベル | 他にも心配事が ? |
| 看板娘 | ああ……あんたらマズい奴に手を出しちゃったねぇ……。 |
| リチャード | ……先ほどの酔客は近くに根城がある盗賊団の一員かい ? |
| 看板娘 | そ、そうなんだよ。もしかして知ってたの ? |
| リチャード | いや、ただの推測だよ。この辺りの治安が悪いのはわかっていたからね。 |
| 看板娘 | あいつ、きっと仲間を呼んで仕返しにくるよ。あんたらは早く逃げた方が……。 |
| リチャード | まさか。僕たちのせいでそちらに迷惑を掛けるわけにはいかないよ。 |
| アスベル | リチャード……。さては最初からこうするつもりだったな ? |
| リチャード | 修行ついでに世直しもできる。悪くないだろう ? |
| イリア | あんたも食えないボンボンねえ。 |
| リチャード | ふふ、お褒めに預かり光栄だよ。 |
| アスベル | やれやれ……。すみません店員さん、できるだけお店には被害が出ないようにしますので……。 |
| 看板娘 | いやいや、元から隙間風が入るオンボロ酒場さ。あいつらをとっちめるってんなら気にせず思いっきりやっておくれよ。 |
| イリア | 連中をぶっ飛ばしたらホットドッグでもおごってくんない ? |
| 看板娘 | もちろん、マスタードたっぷりで提供するよ。 |
| リチャード | 盗賊団にも教えてあげよう。世の中それほど甘くないってことをね。 |
| アスベル | よし……みんなで盗賊団を迎え撃とう ! |
| Character | 2話【強き想い2 荒野の決闘】 |
| イリア | 盗賊団が仕返しに来るんなら今のうちに罠でも仕掛けとく ? |
| リチャード | いや、それには及ばないよ。酒場の周りを調べてみたけど……。 |
| リチャード | 罠よりも効果的な戦法があるんだ。それは―― |
| 盗賊団ボス | 邪魔するぜ。 |
| 看板娘 | 来たよ、あいつさ…… ! |
| 盗賊団ボス | ウチの若いのが世話になったらしくてな。俺のメンツに泥を塗ったのはテメェらか ? |
| アスベル | そうだ。嫌がる人に無理矢理絡んでいたからな。 |
| 盗賊団ボス | ……落とし前、つけてもらうぜ。一対一の決闘だ。 |
| 盗賊団ボス | 相手は、そうだな……。 |
| 盗賊団ボス | そこの赤毛のガキ、お前だ。 |
| イリア | へぇ~、あんたにはそんなにあたしが弱そうに見えたのね。 |
| イリア | だったら、後悔させてあげるわ。 |
| 盗賊団ボス | ……お前も銃の使い手だからだ。決闘は早撃ち。表に出な。 |
| 盗賊団ボス | ルールは簡単だ。背中合わせに立ち、三歩進んだら振り向いて撃つ。 |
| イリア | カウントより先に撃つんじゃないわよ。それこそ恥の上塗りだから。 |
| 看板娘 | だ、大丈夫なの ? こんな勝負受けて……。 |
| イリア | へーきへーき !ま、大船に乗ったつもりで見てなさいよ。 |
| 盗賊団ボス | それじゃあ行くぜ。 |
| 盗賊団ボス | 1―― |
| イリア | 2―― |
| 盗賊団ボス | 3 ! !かかったな馬鹿めッ ! ! |
| 盗賊 | へへ、盗賊が正々堂々と一対一で戦うかよ !手助けしますぜ、ボス ! |
| イリア | あ~ゾロゾロと。でも残念でした ♪ |
| アスベル | 手出しはさせない ! |
| 盗賊団ボス | なっ…… ! 向こうも伏兵だと ! ? |
| リチャード | 小悪党ならここに兵を置いておくと思ってね。 |
| 盗賊 | ど、どうしますボス ! ? |
| 盗賊団ボス | チィッ…… !あいつだ ! 酒場のアマを人質にしろ ! |
| リチャード | それも想定済だよ。彼女に手出しはさせない。 |
| 盗賊団ボス | うろたえンな、数ならこっちが上だ !一気にかかれッ ! ! |
| アスベル | 卑怯な真似は……させない ! |
| イリア | アスベル……あんた、その目 ! ? |
| アスベル | 守ってみせる ! ! |
| 盗賊達 | う、うわあぁぁぁッ ! ! ? |
| 看板娘 | す、すごい…… ! |
| リチャード | どうやら会得したみたいだね。 |
| イリア | さて、決闘に茶々入れてきた子分どもはおネンネしたみたいだし……。 |
| イリア | あんたもいい加減眠くなってきたんじゃない ? |
| 盗賊団ボス | い、いや、待て ! |
| イリア | 待てと言われて素直に待つのはどっかのお人好しくらいよッ ! |
| イリア | なにが俺のメンツに泥を塗った、よ。不意打ち、人質……最初から泥だらけじゃない ! |
| 盗賊団ボス | そ、それは……わ、悪かった !許してくれ ! ! |
| イリア | ……許す。 |
| 盗賊団ボス | えっ…… ! |
| イリア | って、アスベルなら言うんでしょうけどね。お生憎様、謝ったって―― |
| イリア | 許してあげない ! |
| 盗賊団ボス | うぎゃああぁッ ! ! |
| リチャード | 希望を抱かせてから絶望に叩き落とす、か。 |
| アスベル | 容赦がないな……。流石に盗賊たちも懲りただろう。 |
| リチャード | ……だといいけどね。 |
| イリア | あー、スッキリした !なんかオリジン魔鏡もいい感じに使えたし !今夜はパーッとやるわよ ! |
| 看板娘 | 本当にありがとうね !祝勝会なら任せて。とっておきのごちそうを作っちゃうから ! |
| アスベル | とっておきか。楽しみだな。 |
| リチャード | ……ああ、そうだね。 |
| Character | 3話【強き想い3 月下の剣】 |
| 看板娘 | お待たせ ! 今夜はアタシのおごりだよ !じゃんじゃん食べておくれ ! |
| イリア | わぁ ! どれも美味しそうじゃない ! |
| アスベル | そうだな。それじゃ、いただきます。 |
| アスベル | ! ! ! ! |
| イリア | うん ? どしたの ? |
| アスベル | ああ、い、いや…… !そ、その、刺激的な味、だな…… ! |
| リチャード | この辺りの料理は辛いのが特徴なんだ。水、いるかい ? |
| アスベル | 知ってたのなら教えてくれ…… !赤くないから油断してた…… ! |
| イリア | 世の中には緑色のトウガラシもあるらしいわよ。にしても、アスベルがそんなに辛さに弱いとはね~。 |
| リチャード | ふふ、だから料理のことは黙っておこうかとね。 |
| イリア | あんたもなかなか腹黒いわね。……それじゃあ、ちょっと口直しでも作ってあげる。 |
| イリア | ちょっとキッチン借りるわよ。 |
| 看板娘 | え ? うん、いいけど……。 |
| イリア | お待たせ。辛さがすっ飛ぶ特製ジュースよ。 |
| アスベル | これは……赤い、な……。 |
| 看板娘 | 激辛ジュースなんじゃないの ? |
| イリア | そんなベタな真似しないわよ。ま、騙されたと思って飲んでみなさいって。 |
| アスベル | わ、わかった……。 |
| リチャード | ……どうだい ? |
| アスベル | ……う、うまい ! |
| イリア | でしょー ? |
| アスベル | スッキリとした甘さで、口に残った辛さが洗い流されていくような……。 |
| 看板娘 | 本当……これ美味しいわ !ちょっと、どうやって作ったの ? |
| イリア | 別に特別なモンは使ってないわよ。キッチンにあった果物で……。 |
| アスベル | あの、おかわりもらえるかな ? |
| イリア | あーはいはい、もちろんいいわよ。作ってあるから。はい、これ。 |
| アスベル | ありがとう。あ、リチャードも飲むか ? 本当にうまいぞ。 |
| リチャード | ……ああ、僕は後でいただくとするよ。 |
| アスベル | そうか ? じゃあ遠慮なく―― |
| アスベル | ! ! ! ! ! ! |
| イリア | イシシシシ !引っかかったわね ! |
| アスベル | か、辛~っ ! ! |
| イリア | ベタなのもたまにはいいわね !油断は禁物よ ! |
| リチャード | …………。 |
| 盗賊団ボス | ケッ……見てろよ、俺様をコケにした恨み……。 |
| リチャード | イリアの言う通り、油断は禁物だな。 |
| 盗賊団ボス | ッ ! ! |
| リチャード | その火をどうするつもりだい ?まさか腹いせに酒場を燃やすわけじゃないだろうね ? |
| 盗賊団ボス | うっ……こ、これは……。 |
| リチャード | ……君のような手合いの行動は決まっている。予想が外れてくれたら良かったんだが。 |
| 盗賊団ボス | て、てめえ…… !上から目線で何様のつもりだ ! ! |
| リチャード | 何様…… ? |
| 盗賊団ボス | な、なんだこいつ…… !右腕が、光って…… ! ? |
| リチャード | 僕は何様でもないよ。 |
| リチャード | 強いていえば……アスベルの友さ ! ! |
| 盗賊団ボス | う、うわあああぁぁッ ! ! ! |
| リチャード | 双葬 ! 朧十六夜 ! ! |
| アスベル | リチャード ! ? |
| リチャード | ああ、ちょうど今終わったところだよ。 |
| 盗賊団ボス | 悪かった……許し、て……。 |
| イリア | あ~あ、ボコボコにやられちゃって。ま、自業自得でしょ。もう悪さすんじゃないわよ。 |
| アスベル | リチャードも使えるようになったんだなオリジン魔鏡を……。 |
| リチャード | ああ。おかげさまでね。 |
| イリア | よっし、今度こそ邪魔者も片付いたし食べ直しましょ ! |
| アスベル | そうだな、修行が上手くいったお祝いも兼ねて ! |
| 看板娘 | 昨日はありがとう !また来ておくれよ ! |
| アスベル | 料理、美味しかったです。俺でも食べられる味付けに変えてくれてとても助かりました。 |
| イリア | あたしの特製ジュース『イリアスペシャル』看板メニューにしなさいよ ! |
| リチャード | 次に来るときは、治安もずっと良くなっているだろうね。では、また会う日まで。 |
| 看板娘 | バイバーイ ! ! |