Character1話【メモリー1 過去での生活】
この物語はリコレクション本編7話以降の未来のお話です。
コダマただ~いまっと。はぁ、浮遊島に戻るとホッとするなぁ。
アイリスわかる !  今回、鏡映点の人たちのところには長居しちゃったもんね。この景色を見ると帰ってきたーって感じ。
セイリオスいいねぇ、すっかり我が家だな。
アイリスご、ごめん !  気を引き締めないとだよね。私たちには、この世界でやらなきゃいけない大事な使命があるんだから。
コダマアイリス、そうじゃないって。な、セイリオス。
セイリオスああ。嫌味に聞こえちまったなら悪かった。どんな状況であれ、『帰った』と思える場所があるのはいいことだって言いたかったんだ。
セイリオスたまに荷物を降ろせる場所がないといつか心が擦り切れちまうからな。
アイリスそれ、もしかしてセイリオス自身の……。
セイリオス俺にはお前さんたちがいる。今じゃ荷物も降ろし放題さ。
コダマアイリスはさ、使命とか「みんなのために」とかそういうのを背負いすぎっつーか気負いすぎなんだよ。
アイリスコダマだって人のこと言えないでしょ !
コダマ俺 ?  俺は背負える荷物しか背負わない主義だし。
セイリオス……だといいんだがね。
リワンナみんな、お帰りなさい。
コダマリワンナさん、遅くなってすみません。そっちの大陸はどうでした ?
リワンナ想珠の回収なら順調よ。あなたたちは ?
コダマこっちも順調です。鏡映点の人たちと想珠回収の合間に合同訓練でもしようかって話まで持ち上がりましたよ。
リワンナまあ、いいわね。私の方も楽しいお話ができたわ。
リワンナ……私たち、自分の世界を救うために……それにルグを止めるために過去の世界に来たでしょ ?
リワンナその経緯と目的は鏡映点の人たちも知っている筈よね。事と次第によっては敵対する可能性もあるのに驚くほど優しくしてもらえて……。
バルド・Mそういう度量を持った方々だからこそ鏡映点なのですよ。ヘイズ様も感謝しておられました。
アイリスそのヘイズ様がいないけど……。一緒に帰ってきたんですよね ?
バルド・Mええ。先ほど息抜きすると言って、ふらりと――
アイリスコダマ ?  どこ行くの !
コダマ思い当たる場所がある。報告がてら迎えに行ってくるよ。
コダマやっぱり、花畑にいらしたんですね。
ヘイズコダマ ?  帰っていたのか。
コダマはい。つい今しがたです。帰還が遅くなって申し訳ありません。
ヘイズなんの。ご苦労だった。よく私がここにいるとわかったな。リワンナたちには告げていなかったのに。
コダマそりゃわかりますよ。浮遊島の花畑はヘイズ様のお気に入りの場所でしょ ?ちょくちょく世話をしにきてますもんね。
ヘイズバレていたか。どれだけ見ていても飽きることがなくてな。本当に美しいよ。
コダマ確かに。色んな種類が咲いていますからね。
ヘイズなんでもイクスの話では以前ここで生活していた鏡映点たちが種をまいたり移植をしたりして、大切に育てていたそうだ。
ヘイズきっと、この花たちには様々な想いが込められているのだろうな。そう思うとなおさら愛おしいよ。
コダマじゃあ、俺もこの花畑を作った鏡映点の人たちにはお礼を言わないといけませんね。俺の大事な王様を笑顔にしてくれるんですから。
ヘイズふふっ、また調子のよいことを。ところで想珠の回収はどうだ ?
コダマええ、順調です。ヘイズ様たちの方も問題なかったみたいですね。さっきリワンナさんから聞きました。
ヘイズああ。鏡映点たちが協力的で助かっているよ。これも鏡士イクスの協力があってこそ――
カーリャあっ。ミリーナさま、イクスさまお二人を見つけましたよ !  あそこです。
イクスコダマ、ヘイズさん。ここにいたんですね。
ヘイズおや、噂をすれば。
コダマイクスさん、ミリーナさん。お世話になっています。
コーキスあちこち捜しちゃったじゃん。行き先言ってから飛び出せってアイリスたちが怒ってたぜ ?
二人「ごめん ! 」「すまん ! 」
ミリーナもしかして、お花の面倒を見てくれていたんですか ?とてもきれいに咲いているわ。
ヘイズ花には少々思い入れがあるからな。元より、ウォーデン殿たちが手入れをしている。私の力など微々たるものだ。
コダマすみません、定期連絡が遅れて。さっき帰ってきたんでこれから報告を入れるつもりでした。
イクス催促に来たんじゃないって。俺たちは物資を届けに来たんだ。中に運び込んであるから好きに使ってくれ。
コダママジっすか。ありがとうございます !
ヘイズ心遣いに感謝する。そうだ、ついでと言ってはなんだがここまでの成果を報告してもかまわぬか ?
イクスええ、是非。俺のほうもデス・スターの件でヘイズさんに報告しようと思っていたところです。
ヘイズそうか。イクスの想珠も改めて幻想灯に保管させてもらったからな。こちらもその後の様子が気になっていた。
コダマということはもしかしてイクスさんも使えるようになりました ?あのオリジン魔鏡ってやつ。修得早いっすね。
イクスでも訓練は必要だったよ。ミリーナや元キール研究室のメンバーが開発したあの魔鏡のおかげで、だいぶ制御できてるんだ。
ミリーナ待って。ヘイズさん、このまま立ち話もなんですしお茶を飲みながらの報告会にしませんか ?物資のなかには美味しいお菓子も入っていますから。
カーリャ甘い物 !  すぐに準備しましょう !コーキス、行きますよ !
コーキスおう、お茶なら任せとけ !コダマもヘイズさんも早く来いよな。マスター、さっさと報告会始めようぜ !
イクス二人とも、お菓子が食べたいだけだろ……。
ヘイズふふっ。なんとも可愛らしいことだ。……エルナトも大好きだったな、甘い物が。
コダマそうでしたね。まったく、今頃なにしてるんだか。手のかかる先輩だぜ……。

Character2話【メモリー2 明日の予定】
ヘイズ――こちらの報告は以上だ。今回会えなかった鏡映点たちには折を見て再び交渉に向かおうと思う。
イクスわかりました。順調に想珠が集まっているようで何よりです。
コダマさっきもリワンナさんが話してましたけどこんなに協力してくれる鏡映点が多いなんて思いませんでしたよ。
リワンナええ。それに事前に聞いていたとはいえ未来から来た私たちの存在もあまり驚かずに受け入れてくださって。
カーリャ鏡映点の皆さまなら異常事態は日常茶飯事ですからねぇ。
二人はは、日常……。
イクスさすがに日常茶飯事は言い過ぎだけどさ。多分、改めてきちんと話をしたことで嘘をついていないことがわかったんじゃないかな。
ミリーナそうね。協力的なのもそうすることで、いい方向に向かうと信じたからよ。もちろん、あなたたちのことも。
アイリスそっか。私たちを信じて……。そういう心の持ち主だから鏡映点の想珠は強いエネルギーを秘めているんだね。
コーキスみんな、信じて協力しながら危機を乗り越えてきたからな。
セイリオスそれでも、そんな彼らがいてさえ【虹の夜】に発生した幻影種を止めることができずに俺たちのいる未来を迎えてしまう。
バルド・M…………。
セイリオスその事実は重く受け止めておいたほうがいい。鏡映点たちの安全のためにもな。
コダマわかってる。あいつよりも先にみんなの想珠を回収しないと。ったく、あの家出娘、どこにいるんだか……。
ヘイズ…………。
イクスエルナトについてはこちらでも情報を集めているけど今のところ動きはないみたいだな。
ヘイズすまぬな。我々も全力を尽くす。
コダマでも、向こうの動きがないなら好都合です。今のうちにできることを進めておきましょう。そうすれば鏡映点たちにも『力』をつけてもらえる。
イクスそうしてくれるとこっちも助かる。頼んだよ。
コダマ了解です。
イクスそれじゃ、報告会はこれで終了とします。みんな、お疲れ様でした。
コダマお疲れっした !  さて、明日の準備だ。予定では二か所だっけ ?
アイリスうん。次も二手に分かれて回収するんだって。
イクス俺たちも明日の支度をしなくちゃな。
ミリーナええ。忘れ物がないようにしないとね。
コダマイクスさんたちも忙しいっすね。なのに俺たちの面倒まで見てもらって。
イクスこのくらい何でもないよ。それに明日だって仕事ってわけじゃないんだ。
ミリーナ明日はね、前から交流のある学園の様子を見に行く予定なの。
ヘイズ学園 ! ?
コダマヘイズ様 ?
ヘイズこの世界の学園とはどのようなところだ ?どの程度の規模で、何を教えている ?子供たちはいるのか ?
イクスはい。年齢は幅広いですけど小さな子供たちもかなり多いですよ。
カーリャ勉強したり、運動したり絵を描いたり、歌を歌ったり。みんな色んなことを学んでいますよね !
ヘイズ歌に絵画も !  それで ! ?
コーキス王様、なんかすげえ食いついてるな……。
セイリオス『王様』だからだよ。毎日のように幻影種の襲撃に怯える世界でなけりゃそういった方面に力を入れたかったんだろうな。
アイリスそうだね。それでも首都で生まれた子なら最低限の教育は受けられる。でも棄民は……。
コダマ…………。
リワンナけれどね、ヘイズ様が即位して以降教育機関はかなり改善されたらしいわ。だからなおさら興味がおありなのよ。
コダマイクスさんその学園に、一緒にお邪魔できませんか ?
イクスもちろんいいよ。喜んで。
ヘイズ私たちが学園に…… !
ヘイズあ……いや、コダマ、それは無理だ。明日も鏡映点に会いに行かねばならぬ。
カーリャ学園にもいますよ。鏡映点。
コダマそうなんだ ?
ミリーナええ。特別講師として所属している鏡映点が何人もいるわ。
コダマなら鏡映点とも会えて学園の見学もできるってわけか。一石二鳥じゃん !  ですよね、ヘイズ様。
ヘイズそれは……そうだが……。
アイリスそれじゃコダマ、ヘイズ様のこと頼んだからね。こっちはこっちで予定通り想珠回収を進めておくから。
リワンナええ。ヘイズ様、是非行ってらしてください。明日のことは、どうか私たちにお任せを。
バルド・Mならば、私も麗しき花々と共にありましょう。これなら人数的にも問題はありません。
コダマみんな、俺が行っていいのか ?
セイリオス言い出したのはお前さんだろう ?二人で行ってきな。
コダマ悪いな、俺のわがままで。
セイリオス気にするな。わがままを言わないお前さんじゃ、張り合いがない。
ヘイズ……感謝するぞ。皆の気持ち、ありがたく受け取らせてもらう。ではイクス、頼めるだろうか。
イクスはい。それじゃ明日の朝、迎えに来ますね。ミリーナ、少し早めの出発になるけどいいかな。
ミリーナええ。明日の服も準備してあるし大丈夫。少し冷えるみたいだから、イクスの分も上着を出しておくわ。
コダマ服 ?
ミリーナ学園には様子を見に行くだけだからこの恰好だとちょっと物々しいでしょう ?あまり目立たない格好をするつもりなの。
カーリャ目立たない ?  ミリーナさま久しぶりの私的なお出かけだから少しおめかしするって言ってませんでした ?
ミリーナカーリャ !  しーっ !
ヘイズなるほど。学園内では目立たずかつさりげなく装う、か。そういう嗜みもあるのだな。
コダマ俺たちはどうします ?
ヘイズここは鏡士殿たちに倣うがよかろうなぁ。となると……。
二人セイリオス !
セイリオスそりゃ、張り合いがないとは言ったが……。
コダマなあなあ、明日までに何とかなる ?
セイリオス無論。陛下と我が友のためなら喜んで。目立たず、かつ自然に装うんだろう ?オーダー通りに用意するよ。
コダマさすがセイリオス先生、愛してる !
ヘイズ明日が楽しみだな。胸が高鳴るよ !

Character3話【メモリー3 いざ学び舎へ】
コーキスマスター、コダマたちはまだみたいだぜ ?
イクスだろうな。約束の時間より少し早いし。
カーリャ張り切って早く来すぎちゃいましたからね。
ミリーナそのうち来るわよ。のんびり待ちましょう。
コダマすみません、待たせちゃいましたか。
イクス俺たちも今来たんだ。楽しみで早く着きすぎちゃったよ。
コダマいえいえ。しかしなんていうか二人とも……驚いたな。服だけでこんなに雰囲気が変わるもんなんですね。
ミリーナ変……かしら。
コダマなに言ってんですか。めちゃくちゃ似合ってますよ !  最高っす !
ミリーナふふっ、ありがとう。
コダマイクスさんのそれって誰が選んでます ?凄くいい感じですけど。
イクスこれもミリーナだよ。そうか、やっぱりいいよな !
カーリャ要所要所にイクスさまの好みを取り入れつつそれでいて抑えめに仕上げる。さすがミリーナさま、技ありです !
コダマイクスさん、めちゃくちゃ嬉しそうだな。
コーキスマスターは黒っぽい色が入った服が好きだからな。どういうわけか俺とは好みが違うんだけど。
コダマそのわりにはコーキスも嬉しそうじゃん。
コーキス当然だろ ?マスターの喜ぶ顔が見られるんだから嬉しいに決まってる。
ミリーナコダマも素敵よ。髪型も少し変えているのね。
コダマあざっす !  なんかセイリオスの奴が服と髪は切り離せないとか何とか言って。起き抜けからいじられました。
イクスそういや、あのセイリオスさんの服も斬新でいいよなぁ。
コーキス絶対真似すんなよ……。マスターだと事故るから。
ヘイズ皆、もう集まっていたか !すまない、着替えるのに手間取ってしまった。
コダマ来た !  ヘイズさ――
コダマ……………………。
ヘイズどうした、コダマ。
コダマ先生ーーーーっ !  ありがとうございまーーーーすっ !
ヘイズび、びっくりした……。
コダマ俺もびっくりしました、神かと思った、いや神っ !ヘイズ様の私服は初めて見たけどセイリオスの見立てで良かった !  あいつの目に間違いはない !  心の友っ !
コーキスコダマが壊れた……。
ミリーナ仕方がないわよ。だって本当に素敵だもの !コダマの気持ちがわかるわ。すごく可愛い ! !神カワよ ! ! !
カーリャあ、ミリーナさまもヤバそげです。
ヘイズふふっ、ありがとう。私もこういった服を着る機会がないから新鮮だよ。
イクスよし、これで全員集合だな。それじゃ学園に向かおうか。
アイリスコダマたち、もう学園に着いてるかな……。
バルド・Mそうですね。到着した頃でしょう。
アイリスそっか。楽しめてるといいな。
セイリオス本当はアイリスも行きたかったんじゃないか ?
アイリスまあ、ちょっと興味はあったかな。
アイリスでもさ、学ぶ環境から一番遠かったコダマにはどうしても行かせてあげたかったんだよね。
バルド・Mヘイズ様のために見学を申し出たコダマ。コダマのために想珠集めを引き受けたあなた方。……羨ましい関係です。
セイリオスお前さんだってその一員だろう ?ありがとうな。
リワンナアイリス、私たちもいつか学園を覗かせてもらいましょう。みんな一緒に、ね。
アイリスはい !  その時は音楽を学んでいるところが見てみたいなぁ。
リワンナそうね……。私たちの時代では難しいことだもの。憧れるわよね。
リワンナ豊かな学びの場が存在するということはそれだけ平和であるという証拠だわ。でも、このままだともうすぐこの世界も……。
アイリス想像つきませんよね。ここが、あの荒れ果てたアスガルドみたいになるなんて。そして私たちの世界もいずれ……。
セイリオスそうならないように俺たちが止めるんだろう ?
アイリス……うん、だよね。よし、今日も頑張ろう !
コダマイクスさーん、お待たせしました !アンジュさんたちから想珠を受け取ってきましたよ。
イクスお疲れ様。断った人は ?
ヘイズ全員が協力してくれた。本当に助かるよ。
イクスそれは良かったです。でも、そうなると……。
コダマはい。約束通り想珠と引き換えに俺たち全員で学園の仕事を手伝うことになりました。
コーキスザビーダ様、さっき通りがかった時にニヤニヤしてたもんなあ。絶対面白がってるぜ ?
カーリャこれじゃ学園を見学するヒマもありませんよねえ。二人とも残念でしょう。
コダマいやいや、むしろ得しちゃったよ。働けば学園のことをより深く知れるだろ ?
ヘイズああ。我々への遠回しな気遣いなのだろうな。ありがたいことだ。
カーリャでも、お仕事って何をすればいいんでしょうね。
ヘイズアンジュから言付かっている。まず私とミリーナとカーリャだが、初等部の子供たちを預かって課外授業の引率をすることになった。
ミリーナわあ、楽しそうですね !
コダマ俺とイクスさんとコーキスは体育の授業の手伝いだそうですよ。
コーキスいいじゃん。体を動かすなら大歓迎だ !
ヘイズうむ。ではミリーナ、生徒たちに会いに行こう。コダマも全力で臨むようにな。
コダマはい、ヘイズ様も !

Character4話【メモリー4 課外授業】
初等部生徒Aヘイズ先生、あの花、ほかのと色がちがうよ。
ヘイズほう、よく見つけたな !おそらく土の質が違うのだろう。同じ種類でも、育つ環境で差が出る種のようだな。
初等部生徒Bミリーナ先生、その虫は何をたべるの ?
カーリャカーリャは虫じゃありません !ちなみに好きなものは甘いものですがなんでも食べられます。
初等部生徒Bわかった。じゃあ、お昼のお弁当わけてあげるね !
カーリャやった !  約束ですよ。
ミリーナもう、カーリャったら。
ヘイズふふっ、良いなぁ。子供たちが元気に駆け回って、笑い声をあげて。
ミリーナええ。幸せな気持ちになれますよね。
ヘイズああ。久しくこんな風景を見ることはなかった。長らく戦と研究ばかりだったからな。こうして草花を愛でたり遊んだり、実に新鮮だ。
カーリャ王様って、遊びに行くのも大変そうですもんねぇ。みんなの目もありますし。
初等部生徒Aヘイズ先生、王様なの ?
初等部生徒Bすごい !  どこの ?  ねえ、どこの王様 ?
初等部生徒Cセールンドかビフレストでしょ ?今の国はそれしかないって、本で読んだもん。
ミリーナみんな、少し静かにね。ヘイズ先生も困っちゃうわ。
ヘイズよし、それでは皆にだけ秘密の話をしよう。私はな、その二つ以外の国の王様なのだ。お前たちが知らない遠い遠い場所から光に乗ってやってきた !
生徒たち「え~本当~ ? 」「なにしに来たの ? 」「どんなところー ? 」
ヘイズお前たちみたいな元気で可愛い子供がいっぱいいるぞ。喧嘩もするがお互いを守ろうと頑張るいい子たちだ。
ヘイズ……だがな私の国はもうすぐ消えてしまうかもしれない。
生徒たちえ……。
カーリャちょ、ちょっと、そんなストレートな……。
ミリーナカーリャ、任せましょう。
初等部生徒B消えたらどうなるの ?その子たち、みんな死んじゃう ?
ヘイズ……大丈夫。そうならないように世界を救う手段を求めて、私はここに来たんだ。
ヘイズそれがヘイズ先生の正体 !王様である私の役目なのだー !
生徒たちわあああ !  王様ー !
初等部生徒Cもっと聞かせてよ !
生徒たち「わたしも ! 」「おれも ! 」「ぼくも ! 」
ミリーナみんな、待ってちょうだい。まだ授業中だから先に今日の課題を終わらせちゃいましょう。
ミリーナそれでお弁当の時間になったら、たくさん話してもらうといいわ。美味しいご飯を食べながら聞いたらきっともっと楽しいわよ。
生徒たちはーい !
カーリャさすがミリーナさま !
ヘイズふふっ、皆良い子だな。
ヘイズ私の時代も、このように子供が笑える世界であれば良かったのだが……。
ミリーナヘイズさん……。
ヘイズここより遥か未来では、学ぶ場所など限られるどころか明日を生きることさえ不安を抱かせる有様だ。
ヘイズ国を失い流れ着いた棄民など、日々死の恐怖にさらされ続けている。なのに私は、長き統治を経ても自国さえ救えてはいない……。
ミリーナ…………。
ヘイズ……すまぬ。つまらぬことを聞かせた。子供たちの笑顔を見て気が緩んだかな。
ミリーナでも、そんな風に気を緩ませてしまう世界がヘイズさんの理想なんですよね。
ヘイズミリーナ……。
ミリーナ想像しましょう。そんな世界が来ることを。そうなるように私たちが協力します。
ヘイズありがとう。鏡士殿は皆、実に頼もしいな。
学園の警備員初等部のみなさん、すぐに避難を !近くに魔物が出現しました !建物内に移動してください !
ミリーナ魔物って…… !この辺りは安全が確保されてましたよね。
学園の警備員はい。今までこんな近場に現れることなど、めったにありませんでした。ですが学園の周囲を巡回していた警備員からの報告では、突然現れたようで。
ミリーナまさか……。
ヘイズああ、不自然だ。幻影種かもしれぬ。
学園の警備員対応に向かっている警備員もいますが彼らだけではどれだけもつかわかりません。ですから早く――
ヘイズ無理だ。幻影種なら普通の人間では太刀打ちできぬ。私が行こう !
ミリーナ私も行きます。警備員さん、子供たちをお願いできますか ?
学園の警備員は、はい !  お任せください !
ヘイズ行くぞ、ミリーナ。この学園を戦場になどさせぬ !

Character5話【メモリー5 体育の時間】
コダマっしゃーーーー !  勝利の味サイコー- !
コーキスマジかよ、スリーポイントで逆転勝ち !すげえよコダマ !
イクスギリギリのいい勝負だったな。生徒チームにはハンデをあげすぎかと思ったけど丁度良かったみたいだ。
コダマですね。バスケって初めてやったけど楽しいっす !
コーキス最後のシュートはよく決められたよな。絶対に外すと思ったぜ。
コダマやっぱそう思った ?
コーキス思った !  本当にヒヤヒヤしたんだぜ ?コダマはすっげえ下手くそなのに、マスターってば最後の大事な場面でパスしちまうからさ。
イクスコーキス、それはコダマの作戦だよ。
コーキスえっ ?
コダマやっぱりイクスさんは気づいていましたか。ま、じゃなきゃあのタイミングでパスは来ないもんなぁ。
コーキスえ ?  え ?
イクスコダマはわざと下手に見せていたんだ。自分からディフェンスを外しておくためにな。
コダマその通り。で、いざという時にボールをかすめ取って大逆転 !  って寸法。
コダマけど、かすめ取るとかしなくても途中からイクスさんが俺の意図に気づいてくれたみたいだったから。すげえやりやすかったですよ。
コーキスじゃあ、俺だけ最後まで気づかなかった…… ?
イクスむしろ俺しかわからなかったんだよ。コダマって騙すのがうまいからさ。
コダマえ~もっとカッコよく言ってくださいよ。策士とか。
コーキスだったらちゃんと作戦だって教えてくれよ !
コダマ敵を騙すならまず味方からって言うだろう ?
コーキスじゃあ初心者ってのも嘘だったのか……。
コダマそれは本当。
コーキスはあ ?
コダマ嘘には真実を混ぜるのが美味しく仕上げるコツってね。
イクスはははっ、コーキスみたいに素直だとコダマとの騙し合いには不利だよなぁ。
コーキスくっそ~……。悔しいけど、コダマって頭いいんだなあ。うん、確かにいい作戦だったよ。
コダマ……今さらだけどさなんでコーキスは俺と普通に話してくれんの ?
コーキスは ?  突然何だよ。
コダマだって俺、イクスさんとは敵として接触しただろ。コーキスからは絶対に嫌われてるって思ってたんだけど。
イクス確かに、コーキスも最初はピリピリしてたからなぁ。
コーキス当たり前だろ ?  大事なマスターを傷つけられて怒らない鏡精がいるもんかよ。
コーキスでも、コダマたちの話もたくさん聞いたし理解もできた。
コーキス何よりマスターが許しているからさ。つべこべ言うのはやめたんだよ。今はコダマのことも仲間だと思ってる。
コダマそうか。マジありがとな。
コーキスお礼を言うほどのことか ?
コダマ世間じゃ筋の通った話をしたって理解してもらえないことなんて山ほどあるんだぜ ?
コダマ価値観の違いや、感情が先走って理解することを拒否しちまうような奴もたくさんいる。
コダマだからさ、話を聞いてくれてそのうえ、理解してくれるっていうのは本当にありがたいことなんだよ。
コーキス……コダマはわかってもらえないことがたくさんあったのか。
コダマまあね。けど、おかげでたくましく小狡く育ったわ。今じゃ俺の武器だよ。
コダマコーキスの思ってることが聞けてよかった。これからもよろしく !
コーキスああ。じゃあ、改めて仲直りの握手な。
イクスうんうん。コーキスも成長したよなぁ。友達が増えてよかったなぁ。
コーキスあ、けどさっきみたいに騙すのはナシだからな !それと、マスターを裏切ったら許さねえ。
コダマわかったわかった。今度作戦を立てる時はちゃんとイクスさんやコーキスにも話を通すよ。はあ、これでスッキリした !
イクスああ。色んな意味で充実した試合になったな。
コダマけど……、さっきの俺の活躍ヘイズ様にも見てほしかったな。今頃何してるんだろ。
ミリーナイクス、聞こえる ?幻影種が現れたかもしれないの !私とヘイズさんで現場に向かっているわ。
イクスわかった。出現位置を送ってくれ。こっちもすぐに向かう。
コーキス幻影種ってこの近くでか ! ?
イクスみたいだ。とにかく急ごう。ここの生徒たちはアンジュたちに連絡して守ってもらう。コダマ、装備は ?
コダマ準備してあります !
イクスよし、行くぞ !

Character6話【メモリー6 幻影種撃退】
ヘイズバナライズ !
コダマいたぞ、ヘイズ様たちだ !  幻影種と戦ってる !
イクス…… ?  様子が変だな。
学園の警備員Aひっ !  こっちにも出た !
ミリーナ私の後ろへ下がって !  そっちは駄目 !
学園の警備員Bひいいっ !
コーキス警備員たちをかばってるから二人とも威力の大きい術が使えないんだ !
イクスあれじゃ下手に介入できない。せめてミリーナたちだけなら…… !
コダマくそっ、しかも増えていきやがる !こうやって世界は幻影種に浸食されていったのか !
イクス冗談じゃない…… !
コーキスマスター ! ?
イクス俺は絶対に守り抜く !  真実に変えたこの世界を !
コダマ空中からの急襲 ! ?
イクス聖翼陣舞天翔 ! !
コーキスやった !  すげえよ、マスター !
イクスみんな無事か ! ?
ミリーナイクス…… !  助かったわ、ありがとう。
コダマ今のが、イクスさんのオリジン魔鏡技か。
コーキスああ。カッコいいだろ ?
ヘイズコダマ、来てくれたんだな。
カーリャコーキスも。ありがとうございます。
コダマいやあ、実は俺たち何にもしてなくてですね……。
コダマでも、ヘイズ様がご無事で何よりです。カーリャ先輩もな。
コーキスコダマ……パイセンを先輩扱いしていいのは俺だけだぞ。
コダマはははっ、冗談に決まって――
コーキスどうした ?
コダマまだ妙な気配が残っている気がする……。
カーリャ本当ですか ! ?
コダマバルドみたいに正確じゃないけどさ死神騎士としての勘かな。
ヘイズふむ……先ほどのイクスの力に警戒して逃げ出したものがいるやもしれぬな。
コーキス警戒って、あいつらそういうこともするのか ?
ヘイズティル・ナ・ノーグの幻影種は調査を進めている段階だ。そういうものが現れても不思議ではない。
ミリーナそれなら、さっきの幻影種よりももっと手ごわい可能性があるんですね。
イクスこれだけ学園から近い場所だ。野放しにはできない。見つけ出して一掃しよう。
ミリーナでも、どこに現れるのかも予測できないのに捜し回るのは危険よ。
コーキスちっ、幻影種の奴らめ。襲うなら襲ってこいってんだよ。そしたら追いつめて一気に叩いてやるのに。
コダマ……いいね、それ採用。
コーキス採用 ?
コダマとりあえずこっちから打って出る。手分けして幻影種を捜そう。
カーリャですから、それは危ないってミリーナさまが言ってるんですよ ?
コダマまあまあ。ちゃんと説明するから。と、その前に――
コダマとりあえず、警備員たちを学園に送り届けちゃいましょうか。

Character7話【メモリー7 幻影種追跡】
コダマ……霧が出てきたな。
コダマヘイズ様、視界が悪いから気を付けてくださいね。
コダマコーキス ?  そっちにいるのはコーキスか ?はぐれんなよ !
コダマはいはい……はぐれたのは俺でしたー……っと。イクスさんに連絡しとくか。ええと、魔鏡通信機はどこにしまったっけ――
コダマうおっ、あっぶね !
コダマ幻影種ヒット !しかも予想以上に釣れたな。さて……ここからだ !
コダマくっ !  まだ増えんのかよ !
コダマ(もっと……、もう少し…… ! )
コダマうっ ! !
コダマはぁ……、はぁ……。もう……いいか……。
コダマ今だ !
イクス & コーキスうおおおおおっ ! !
ヘイズ冷徹なる輪廻に座せ、レストリュート !
コダマおー、みんなさすがのタイミング !ばっちりだ。幻影種がボッコボコじゃん !
カーリャまったく、無茶をする人ですね。
コダマははっ、エルナトに怒られてるみたい。
コダマまあ、俺の無茶で被害が防げるなら安いもんだよ。幻影種なんかの好きにされてたまるか。
ミリーナええ、そうよ。
カーリャミリーナさま !
ミリーナみんなの想いが繫いだ世界……二度と消させはしないわ !
イクスミリーナ、一気にトドメだ !
ミリーナ雪神楽 ! !
カーリャやりましたね、ミリーナさま !
ヘイズあれがミリーナのオリジン魔鏡技か。目を見張る威力だな。
ミリーナコダマが引き付けた幻影種は倒せたみたいね。
イクスああ。トドメは警戒されている俺じゃなくてミリーナのオリジン魔鏡技でっていうのがうまくいったな。
コーキスおい、コダマ !いつまでたっても合図を出さないからヒヤヒヤしたじゃないか !
コダマ作戦通りだろ ?ミリーナさんの術で霧を出したら俺はコーキスとヘイズ様からわざと離れて一人になる。
コダマうまく幻影種が釣れた場合は、なるべく多く引きつけていい頃合いで合図を出す。で、霧に隠れていたみんなが一気に倒す。……だよな ?
コダマそれに「襲うなら襲え。そしたら一気に叩く」ってコーキスが言ったから思いついた作戦だぞ ?その通りになってると思うけど。
コーキスそりゃそうだけどさ。囮がマジでやられたら意味ないだろ。……怪我は平気なのかよ。
コダマだからあれは演技だって。まあ、確かに結構ギリだったけど。優しいな、コーキスは。
コーキスうるせー。
イクス正直、俺たち別働隊もヒヤっとしたけどさコダマが必ず合図を出すって言ってたから我慢してたんだよ。な、ミリーナ。
ミリーナええ。あまり無茶はしないでね。
コダマ本当に全然平気だったんですけどね。もしかして俺、演技力ありすぎ ?
ヘイズそうだな。コダマの言葉は信じているが見ていて心臓に悪かったぞ ?ほどほどにしておくれ。
コダマう……、善処します。
ヘイズ……どうやら今の戦いでさらに引き寄せられたようだ。
イクスコダマ、次は演技なしだ。思いっきりやってくれていいぞ。
コダマ了解です。さっきはそこそこボコられたんで実はストレス溜まってたんですよね。
コダマじゃ、ここからは反撃開始ってことで !

Character8話【メモリー8 守りたい世界】
コダマ滞刻裂竜針 !
コダマふぅ……。イクスさん、こっちは片付きました !
イクスこっちもだ。とりあえず一安心、かな。
ヘイズふむ……。敵の様子をうかがうような幻影種ならもう少し手こずるかと思ったが、杞憂であったか。
コーキスけど、それでもかなり厄介な奴らだったぜ。結局、コダマたちみたいな力やオリジン魔鏡技じゃないと対抗するのも難しいし。
コーキスこんなのが世界中で湧き上がるようになったら対処しきれないよな……。
カーリャだから、ティル・ナ・ノーグは滅んで……。
ヘイズ……させぬ。
イクスヘイズさん ?
コダマ……うん。俺もティル・ナ・ノーグが好きだな。特に今日はそう感じた。
コダマもし、幻影種がいない世界があるならこういう日常がいいなって思えた。いい体験だったよ。
コダマあの学園みたいな生活が、きっと『普通』なんだ。あれを特別に感じるような世界にしちゃいけない。
ヘイズそうだな。私にとっても夢のようなひとときだった。皆が笑い合い、子らが遊び、駆け回る世界。私の理想がそこにあった。
ヘイズそれらを必死で守ってきたお前たちの努力と想いも決して無駄にはしたくないと思った。
ミリーナコダマ、ヘイズさん……。
ヘイズ……これよりは何が起きるやもわからぬがその事実だけは胸に刻みつけておこう。
ヘイズ約束する。そなたたちと手を携えている間は我々も全力をもってこの世界を守る。
イクスヘイズさん……。ありがとうござい――
コーキスなっ、幻影種 ! ?  でけえぞ !
イクスもしかして、コダマやヘイズさんが気にしていた奴か ! ?
コダマみたいです。人がいい話してる時に邪魔するなんて趣味が悪い幻影種だぜ。
コダマあいつを倒して、今度こそ終わらせる !

Character9話【メモリー9 決着】
コダマ今のでまだ倒れないか…… !やっぱさっきまでの奴らと段違いだな。
ヘイズだが、確実に消耗している。これが最後の一押しだ。コダマ、力を貸しておくれ !
コダマ御意に !
コダマ時を翔け――
ヘイズ紡いだ記録――
コダマ、ヘイズここに具現せよ !結刻・万象刃 ! !
コダマこれで本当に終わりだぜ !やりましたね、ヘイズ様。
ヘイズうむ。良い騎士になったな、コダマ。
コダマヘイズ様のおかげですよ。
コーキスなんだよ今の技、すごかったな !
ヘイズふふっ、そう言ってもらえて嬉しいぞ。私とコダマの絆がもたらした技だ。
カーリャこれで幻影種は一掃できましたかね ?
コダマ今のところはって感じかな。妙な気配もなくなったしこの辺はさっきので最後だと思う。
ミリーナそれなら、ひとまず学園に戻りましょうか。
イクスああ。みんなに報告しなくちゃな。
コダマ……イクスさんたち、遅いな。理事長と話し合うって言ってたけど。
ヘイズ見ろ、戻ってきたようだ。
コーキスお帰り、マスター。……何かあったんだな。
イクスああ。結論から言うとしばらくの間、学園は休校することになった。
コーキス休校 ! ?
コダマそうか……。仕方ないよな。
ヘイズいくら学園周辺を一掃したといえ奴らが二度と出ないと保証はできぬ故な。
イクスその通りです。理事長も生徒たちの安全を優先するために休校を決定しました。
ミリーナ休校の話は生徒のみんなにも伝えられたけどとても残念そうだったわ。
ミリーナ特に私とヘイズさんが担当していた初等部の子供たち……。課外授業まで中止になってショックを受けている子も多いそうです。
ヘイズなんと……。
ミリーナこの学園の課外授業は遠足のような側面もありましたから。みんなとても楽しみにしていたそうです。
カーリャ外でみんなでお弁当を食べたりなんてすっごく楽しいですもんね。カーリャも本当に残念です……。
イクスだよなあ……。でも安全が第一だ。こればかりはどうしようもないよ。
ヘイズそうだな。学園の判断は正しい。しかし、子供たちが気落ちしているかと思うとなんともやるせないな。
ヘイズあんなに楽しそうに学んでいたのに……。
コダマその課外授業って、どんなことをしてたんですか ?
ヘイズ森の近くを探索して植物の観察を行う授業だった。どれだけたくさんの草花を見つけられるか競争したり……楽しかったよ。
コダマなるほど、たくさんの種類の草花……。
カーリャどうかしました ?
コダマ実はさ、めちゃくちゃ安全でしかも授業にピッタリの場所があるんだよね。
カーリャ本当ですか ! ?
コダマうん。『浮遊島』っていうんだけど。
ヘイズあ…… !
コダマもちろん、俺たちは借りている身なのでイクスさんたちの許可が必要ですけどね。
イクス反対するわけないだろう。すごくいいアイディアだよ !
ミリーナええ、みんなきっと喜ぶわ。
コーキスずるいなぁ、コダマ。あんな話聞いた後じゃマスターたちは絶対に断れないじゃん。
コダマコーキスは反対なんだ ?
コーキスいや、大賛成 !
ミリーナ学園側に許可を取ってくるわ。楽しみですね、ヘイズさん !
ヘイズああ。浮遊島で今日の続きをしよう !

Character10話【メモリー10 またみんなで】
セイリオスヘイズ様、準備は整っていますから少しお座りになってはいかがです ?
アイリスふふっ、ヘイズ様ってば子供たちが来るのが楽しみで仕方ないんだ。
リワンナなんだか昔の自分を見ているみたいで懐かしいわ。私も小さい頃、ヘイズ様が当家にお越しになる時にはああしてそわそわしていたもの。
アイリスそうなんですね。そう思うとヘイズ様が小さな女の子に見えてきちゃう。
リワンナ今の話、ヘイズ様には内緒よ ?
バルド・M……こんな穏やかな空気の中にいると平和な時代と錯覚してしまいそうですね。
リワンナあなたも今だけは楽しんでいいんじゃないかしら。子供たちと一緒に学んだり、お弁当を食べたりして。
アイリスそうですよね。それに、さすがに子供たちばっかりならバルドさん周りでの厄介事はないだろうし。
バルド・M厄介事……とはなんでしょうか ?
アイリスうわ、自覚なしだ……。この前、鏡映点に会いにいった時だって街の女の人たちに――
コダマみんな、イクスさんたち着いたぞ。子供たちも一緒だ。
ヘイズ来たか !
イクスほら、みんな。ヘイズ先生が来たぞ !
初等部の生徒たちこんにちはーー !
ヘイズ皆、よく来たな !  今日は存分に楽しんで――
ミリーナヘイズさん、一応、課外授業だから……。
ヘイズう、うむ。楽しく学んでいこうな !
初等部生徒Aヘイズ先生、そっちの人たちも先生なんですか ?
ヘイズあー……うむ、そうだな。よし !
ヘイズ音楽のアイリス先生、算数のリワンナ先生教養のバルド先生、何でもいけるセイリオス先生だ !
セイリオスはは、俺だけ雑だな。
コダママジで何でもいけるだろ。ヘイズ様は間違っていない。
ミリーナそれじゃみんな、この島を案内するわね。まずはこっちよ。
ヘイズさあ、皆も行くぞ。
コダマあれ ?  そういや……。
コダマイクスさん、コーキスは来てないんですか ?
イクスああ、コーキスか。ウォーデンさんたちの手伝いがあって今日は来られなかったんだ。
イクス本人もすごく残念がってたけど頼まれた仕事を放り出すことはできないってそっちに行ってるよ。
バルド・Mそうですか。コーキスは今もウォーデン様の力に……なんと義理堅い。
バルド・Mイクスさん、『今の私』の立場で言うべきことではないかもしれませんが……。
バルド・Mビフレストの御方々のために力を貸して頂けることを心から感謝申し上げます。
コダマバルド……。
ヘイズ――さあ、そして今日一番の目玉が……この花畑だ !
初等部の生徒たちわあっ、きれーーい !
ミリーナふふっ、こんなに花畑を喜んでもらえるなんて。ソフィたちにも見せたかったわ。
ヘイズさて、島の案内だけでもいい時間になってしまったな。今からここで昼食を取るとしよう。花畑の観察をするのはその後だ。
初等部の生徒たちはーい !
初等部生徒Bミリーナ先生、カーリャは ?
カーリャカーリャならここですよー。
初等部生徒Bはい、これ。お弁当、分けてあげる。前に約束してたよね。
カーリャいい子…… !約束を忘れてないなんて、カーリャ感激です !
コダマ俺たちも色々作ってきたんだ。多めにあるから、よければイクスさんたちも。
イクスありがとう。実は俺たちも……。
ミリーナええ。サンドウィッチなんだけどたくさん作ってきたの。みんなに食べてもらおうと思って。
セイリオスこりゃきれいな色どりだ。
コダマんじゃ、早速ひとつ――……なんだこれ、うまっ !
アイリス私もいい ?……ホント、すっごく美味しい。ミリーナさんって料理上手 !
ミリーナ嬉しいわ、ありがとう。どんどん食べてね。
イクス俺もミリーナの作るサンドウィッチが大好きなんだ。つい食べすぎちゃうんだよ。もぐもぐ……。
カーリャカーリャの分を !  カーリャの分を確保してください !
バルド・Mふふっ、変わらないですね、カーリャは。たくさん食べるあなたは本当に愛らしい。
リワンナ出ているわよ。悪い癖が。
ヘイズ……。
ミリーナヘイズさん、どうしました ?
ヘイズミリーナ、よければこのサンドウィッチの作り方を教えてもらえないだろうか。
ミリーナいいですよ。お気に召していただけたんですね。
ヘイズああ、本当に美味しい。これをエルナトにも食べさせてやりたいのだ。
コダマヘイズ様……。
ヘイズ帰ってきた時には、ひどくお腹を空かせているだろう。美味しいものをたくさん食べさせてやりたい。
ミリーナ……そうですね。ヘイズさんが作ってくれるならきっと何よりのご馳走になる筈です。
ミリーナそれじゃ今度、まとめてレシピを書いてきますね。
ヘイズありがとう、ミリーナ。こういう約束があるとどんなことでも頑張れそうだな !
コダマ(エルナト……お前、めちゃくちゃ幸せもんだぞ。だから早く……)
コダマヘイズ様、あいつを連れ戻したらここでまた、みんなで飯を食いましょう。
ヘイズそれはいい !  またひとつ嬉しい約束が増えた。その日が来るのが楽しみだな。
ヘイズ美味しい食事に、皆の笑顔に、そして――
ヘイズいつか皆で、一緒に花畑を見よう。