| Character | 1話【メモリー1 過去での生活】 |
| | この物語はリコレクション本編7話以降の未来のお話です。 |
| コダマ | ただ~いまっと。はぁ、浮遊島に戻るとホッとするなぁ。 |
| アイリス | わかる ! 今回、鏡映点の人たちのところには長居しちゃったもんね。この景色を見ると帰ってきたーって感じ。 |
| セイリオス | いいねぇ、すっかり我が家だな。 |
| アイリス | ご、ごめん ! 気を引き締めないとだよね。私たちには、この世界でやらなきゃいけない大事な使命があるんだから。 |
| コダマ | アイリス、そうじゃないって。な、セイリオス。 |
| セイリオス | ああ。嫌味に聞こえちまったなら悪かった。どんな状況であれ、『帰った』と思える場所があるのはいいことだって言いたかったんだ。 |
| セイリオス | たまに荷物を降ろせる場所がないといつか心が擦り切れちまうからな。 |
| アイリス | それ、もしかしてセイリオス自身の……。 |
| セイリオス | 俺にはお前さんたちがいる。今じゃ荷物も降ろし放題さ。 |
| コダマ | アイリスはさ、使命とか「みんなのために」とかそういうのを背負いすぎっつーか気負いすぎなんだよ。 |
| アイリス | コダマだって人のこと言えないでしょ ! |
| コダマ | 俺 ? 俺は背負える荷物しか背負わない主義だし。 |
| セイリオス | ……だといいんだがね。 |
| リワンナ | みんな、お帰りなさい。 |
| コダマ | リワンナさん、遅くなってすみません。そっちの大陸はどうでした ? |
| リワンナ | 想珠の回収なら順調よ。あなたたちは ? |
| コダマ | こっちも順調です。鏡映点の人たちと想珠回収の合間に合同訓練でもしようかって話まで持ち上がりましたよ。 |
| リワンナ | まあ、いいわね。私の方も楽しいお話ができたわ。 |
| リワンナ | ……私たち、自分の世界を救うために……それにルグを止めるために過去の世界に来たでしょ ? |
| リワンナ | その経緯と目的は鏡映点の人たちも知っている筈よね。事と次第によっては敵対する可能性もあるのに驚くほど優しくしてもらえて……。 |
| バルド・M | そういう度量を持った方々だからこそ鏡映点なのですよ。ヘイズ様も感謝しておられました。 |
| アイリス | そのヘイズ様がいないけど……。一緒に帰ってきたんですよね ? |
| バルド・M | ええ。先ほど息抜きすると言って、ふらりと―― |
| アイリス | コダマ ? どこ行くの ! |
| コダマ | 思い当たる場所がある。報告がてら迎えに行ってくるよ。 |
| コダマ | やっぱり、花畑にいらしたんですね。 |
| ヘイズ | コダマ ? 帰っていたのか。 |
| コダマ | はい。つい今しがたです。帰還が遅くなって申し訳ありません。 |
| ヘイズ | なんの。ご苦労だった。よく私がここにいるとわかったな。リワンナたちには告げていなかったのに。 |
| コダマ | そりゃわかりますよ。浮遊島の花畑はヘイズ様のお気に入りの場所でしょ ?ちょくちょく世話をしにきてますもんね。 |
| ヘイズ | バレていたか。どれだけ見ていても飽きることがなくてな。本当に美しいよ。 |
| コダマ | 確かに。色んな種類が咲いていますからね。 |
| ヘイズ | なんでもイクスの話では以前ここで生活していた鏡映点たちが種をまいたり移植をしたりして、大切に育てていたそうだ。 |
| ヘイズ | きっと、この花たちには様々な想いが込められているのだろうな。そう思うとなおさら愛おしいよ。 |
| コダマ | じゃあ、俺もこの花畑を作った鏡映点の人たちにはお礼を言わないといけませんね。俺の大事な王様を笑顔にしてくれるんですから。 |
| ヘイズ | ふふっ、また調子のよいことを。ところで想珠の回収はどうだ ? |
| コダマ | ええ、順調です。ヘイズ様たちの方も問題なかったみたいですね。さっきリワンナさんから聞きました。 |
| ヘイズ | ああ。鏡映点たちが協力的で助かっているよ。これも鏡士イクスの協力があってこそ―― |
| カーリャ | あっ。ミリーナさま、イクスさまお二人を見つけましたよ ! あそこです。 |
| イクス | コダマ、ヘイズさん。ここにいたんですね。 |
| ヘイズ | おや、噂をすれば。 |
| コダマ | イクスさん、ミリーナさん。お世話になっています。 |
| コーキス | あちこち捜しちゃったじゃん。行き先言ってから飛び出せってアイリスたちが怒ってたぜ ? |
| 二人 | 「ごめん ! 」「すまん ! 」 |
| ミリーナ | もしかして、お花の面倒を見てくれていたんですか ?とてもきれいに咲いているわ。 |
| ヘイズ | 花には少々思い入れがあるからな。元より、ウォーデン殿たちが手入れをしている。私の力など微々たるものだ。 |
| コダマ | すみません、定期連絡が遅れて。さっき帰ってきたんでこれから報告を入れるつもりでした。 |
| イクス | 催促に来たんじゃないって。俺たちは物資を届けに来たんだ。中に運び込んであるから好きに使ってくれ。 |
| コダマ | マジっすか。ありがとうございます ! |
| ヘイズ | 心遣いに感謝する。そうだ、ついでと言ってはなんだがここまでの成果を報告してもかまわぬか ? |
| イクス | ええ、是非。俺のほうもデス・スターの件でヘイズさんに報告しようと思っていたところです。 |
| ヘイズ | そうか。イクスの想珠も改めて幻想灯に保管させてもらったからな。こちらもその後の様子が気になっていた。 |
| コダマ | ということはもしかしてイクスさんも使えるようになりました ?あのオリジン魔鏡ってやつ。修得早いっすね。 |
| イクス | でも訓練は必要だったよ。ミリーナや元キール研究室のメンバーが開発したあの魔鏡のおかげで、だいぶ制御できてるんだ。 |
| ミリーナ | 待って。ヘイズさん、このまま立ち話もなんですしお茶を飲みながらの報告会にしませんか ?物資のなかには美味しいお菓子も入っていますから。 |
| カーリャ | 甘い物 ! すぐに準備しましょう !コーキス、行きますよ ! |
| コーキス | おう、お茶なら任せとけ !コダマもヘイズさんも早く来いよな。マスター、さっさと報告会始めようぜ ! |
| イクス | 二人とも、お菓子が食べたいだけだろ……。 |
| ヘイズ | ふふっ。なんとも可愛らしいことだ。……エルナトも大好きだったな、甘い物が。 |
| コダマ | そうでしたね。まったく、今頃なにしてるんだか。手のかかる先輩だぜ……。 |
| Character | 2話【メモリー2 明日の予定】 |
| ヘイズ | ――こちらの報告は以上だ。今回会えなかった鏡映点たちには折を見て再び交渉に向かおうと思う。 |
| イクス | わかりました。順調に想珠が集まっているようで何よりです。 |
| コダマ | さっきもリワンナさんが話してましたけどこんなに協力してくれる鏡映点が多いなんて思いませんでしたよ。 |
| リワンナ | ええ。それに事前に聞いていたとはいえ未来から来た私たちの存在もあまり驚かずに受け入れてくださって。 |
| カーリャ | 鏡映点の皆さまなら異常事態は日常茶飯事ですからねぇ。 |
| 二人 | はは、日常……。 |
| イクス | さすがに日常茶飯事は言い過ぎだけどさ。多分、改めてきちんと話をしたことで嘘をついていないことがわかったんじゃないかな。 |
| ミリーナ | そうね。協力的なのもそうすることで、いい方向に向かうと信じたからよ。もちろん、あなたたちのことも。 |
| アイリス | そっか。私たちを信じて……。そういう心の持ち主だから鏡映点の想珠は強いエネルギーを秘めているんだね。 |
| コーキス | みんな、信じて協力しながら危機を乗り越えてきたからな。 |
| セイリオス | それでも、そんな彼らがいてさえ【虹の夜】に発生した幻影種を止めることができずに俺たちのいる未来を迎えてしまう。 |
| バルド・M | …………。 |
| セイリオス | その事実は重く受け止めておいたほうがいい。鏡映点たちの安全のためにもな。 |
| コダマ | わかってる。あいつよりも先にみんなの想珠を回収しないと。ったく、あの家出娘、どこにいるんだか……。 |
| ヘイズ | …………。 |
| イクス | エルナトについてはこちらでも情報を集めているけど今のところ動きはないみたいだな。 |
| ヘイズ | すまぬな。我々も全力を尽くす。 |
| コダマ | でも、向こうの動きがないなら好都合です。今のうちにできることを進めておきましょう。そうすれば鏡映点たちにも『力』をつけてもらえる。 |
| イクス | そうしてくれるとこっちも助かる。頼んだよ。 |
| コダマ | 了解です。 |
| イクス | それじゃ、報告会はこれで終了とします。みんな、お疲れ様でした。 |
| コダマ | お疲れっした ! さて、明日の準備だ。予定では二か所だっけ ? |
| アイリス | うん。次も二手に分かれて回収するんだって。 |
| イクス | 俺たちも明日の支度をしなくちゃな。 |
| ミリーナ | ええ。忘れ物がないようにしないとね。 |
| コダマ | イクスさんたちも忙しいっすね。なのに俺たちの面倒まで見てもらって。 |
| イクス | このくらい何でもないよ。それに明日だって仕事ってわけじゃないんだ。 |
| ミリーナ | 明日はね、前から交流のある学園の様子を見に行く予定なの。 |
| ヘイズ | 学園 ! ? |
| コダマ | ヘイズ様 ? |
| ヘイズ | この世界の学園とはどのようなところだ ?どの程度の規模で、何を教えている ?子供たちはいるのか ? |
| イクス | はい。年齢は幅広いですけど小さな子供たちもかなり多いですよ。 |
| カーリャ | 勉強したり、運動したり絵を描いたり、歌を歌ったり。みんな色んなことを学んでいますよね ! |
| ヘイズ | 歌に絵画も ! それで ! ? |
| コーキス | 王様、なんかすげえ食いついてるな……。 |
| セイリオス | 『王様』だからだよ。毎日のように幻影種の襲撃に怯える世界でなけりゃそういった方面に力を入れたかったんだろうな。 |
| アイリス | そうだね。それでも首都で生まれた子なら最低限の教育は受けられる。でも棄民は……。 |
| コダマ | …………。 |
| リワンナ | けれどね、ヘイズ様が即位して以降教育機関はかなり改善されたらしいわ。だからなおさら興味がおありなのよ。 |
| コダマ | イクスさんその学園に、一緒にお邪魔できませんか ? |
| イクス | もちろんいいよ。喜んで。 |
| ヘイズ | 私たちが学園に…… ! |
| ヘイズ | あ……いや、コダマ、それは無理だ。明日も鏡映点に会いに行かねばならぬ。 |
| カーリャ | 学園にもいますよ。鏡映点。 |
| コダマ | そうなんだ ? |
| ミリーナ | ええ。特別講師として所属している鏡映点が何人もいるわ。 |
| コダマ | なら鏡映点とも会えて学園の見学もできるってわけか。一石二鳥じゃん ! ですよね、ヘイズ様。 |
| ヘイズ | それは……そうだが……。 |
| アイリス | それじゃコダマ、ヘイズ様のこと頼んだからね。こっちはこっちで予定通り想珠回収を進めておくから。 |
| リワンナ | ええ。ヘイズ様、是非行ってらしてください。明日のことは、どうか私たちにお任せを。 |
| バルド・M | ならば、私も麗しき花々と共にありましょう。これなら人数的にも問題はありません。 |
| コダマ | みんな、俺が行っていいのか ? |
| セイリオス | 言い出したのはお前さんだろう ?二人で行ってきな。 |
| コダマ | 悪いな、俺のわがままで。 |
| セイリオス | 気にするな。わがままを言わないお前さんじゃ、張り合いがない。 |
| ヘイズ | ……感謝するぞ。皆の気持ち、ありがたく受け取らせてもらう。ではイクス、頼めるだろうか。 |
| イクス | はい。それじゃ明日の朝、迎えに来ますね。ミリーナ、少し早めの出発になるけどいいかな。 |
| ミリーナ | ええ。明日の服も準備してあるし大丈夫。少し冷えるみたいだから、イクスの分も上着を出しておくわ。 |
| コダマ | 服 ? |
| ミリーナ | 学園には様子を見に行くだけだからこの恰好だとちょっと物々しいでしょう ?あまり目立たない格好をするつもりなの。 |
| カーリャ | 目立たない ? ミリーナさま久しぶりの私的なお出かけだから少しおめかしするって言ってませんでした ? |
| ミリーナ | カーリャ ! しーっ ! |
| ヘイズ | なるほど。学園内では目立たずかつさりげなく装う、か。そういう嗜みもあるのだな。 |
| コダマ | 俺たちはどうします ? |
| ヘイズ | ここは鏡士殿たちに倣うがよかろうなぁ。となると……。 |
| 二人 | セイリオス ! |
| セイリオス | そりゃ、張り合いがないとは言ったが……。 |
| コダマ | なあなあ、明日までに何とかなる ? |
| セイリオス | 無論。陛下と我が友のためなら喜んで。目立たず、かつ自然に装うんだろう ?オーダー通りに用意するよ。 |
| コダマ | さすがセイリオス先生、愛してる ! |
| ヘイズ | 明日が楽しみだな。胸が高鳴るよ ! |
| Character | 3話【メモリー3 いざ学び舎へ】 |
| コーキス | マスター、コダマたちはまだみたいだぜ ? |
| イクス | だろうな。約束の時間より少し早いし。 |
| カーリャ | 張り切って早く来すぎちゃいましたからね。 |
| ミリーナ | そのうち来るわよ。のんびり待ちましょう。 |
| コダマ | すみません、待たせちゃいましたか。 |
| イクス | 俺たちも今来たんだ。楽しみで早く着きすぎちゃったよ。 |
| コダマ | いえいえ。しかしなんていうか二人とも……驚いたな。服だけでこんなに雰囲気が変わるもんなんですね。 |
| ミリーナ | 変……かしら。 |
| コダマ | なに言ってんですか。めちゃくちゃ似合ってますよ ! 最高っす ! |
| ミリーナ | ふふっ、ありがとう。 |
| コダマ | イクスさんのそれって誰が選んでます ?凄くいい感じですけど。 |
| イクス | これもミリーナだよ。そうか、やっぱりいいよな ! |
| カーリャ | 要所要所にイクスさまの好みを取り入れつつそれでいて抑えめに仕上げる。さすがミリーナさま、技ありです ! |
| コダマ | イクスさん、めちゃくちゃ嬉しそうだな。 |
| コーキス | マスターは黒っぽい色が入った服が好きだからな。どういうわけか俺とは好みが違うんだけど。 |
| コダマ | そのわりにはコーキスも嬉しそうじゃん。 |
| コーキス | 当然だろ ?マスターの喜ぶ顔が見られるんだから嬉しいに決まってる。 |
| ミリーナ | コダマも素敵よ。髪型も少し変えているのね。 |
| コダマ | あざっす ! なんかセイリオスの奴が服と髪は切り離せないとか何とか言って。起き抜けからいじられました。 |
| イクス | そういや、あのセイリオスさんの服も斬新でいいよなぁ。 |
| コーキス | 絶対真似すんなよ……。マスターだと事故るから。 |
| ヘイズ | 皆、もう集まっていたか !すまない、着替えるのに手間取ってしまった。 |
| コダマ | 来た ! ヘイズさ―― |
| コダマ | ……………………。 |
| ヘイズ | どうした、コダマ。 |
| コダマ | 先生ーーーーっ ! ありがとうございまーーーーすっ ! |
| ヘイズ | び、びっくりした……。 |
| コダマ | 俺もびっくりしました、神かと思った、いや神っ !ヘイズ様の私服は初めて見たけどセイリオスの見立てで良かった ! あいつの目に間違いはない ! 心の友っ ! |
| コーキス | コダマが壊れた……。 |
| ミリーナ | 仕方がないわよ。だって本当に素敵だもの !コダマの気持ちがわかるわ。すごく可愛い ! !神カワよ ! ! ! |
| カーリャ | あ、ミリーナさまもヤバそげです。 |
| ヘイズ | ふふっ、ありがとう。私もこういった服を着る機会がないから新鮮だよ。 |
| イクス | よし、これで全員集合だな。それじゃ学園に向かおうか。 |
| アイリス | コダマたち、もう学園に着いてるかな……。 |
| バルド・M | そうですね。到着した頃でしょう。 |
| アイリス | そっか。楽しめてるといいな。 |
| セイリオス | 本当はアイリスも行きたかったんじゃないか ? |
| アイリス | まあ、ちょっと興味はあったかな。 |
| アイリス | でもさ、学ぶ環境から一番遠かったコダマにはどうしても行かせてあげたかったんだよね。 |
| バルド・M | ヘイズ様のために見学を申し出たコダマ。コダマのために想珠集めを引き受けたあなた方。……羨ましい関係です。 |
| セイリオス | お前さんだってその一員だろう ?ありがとうな。 |
| リワンナ | アイリス、私たちもいつか学園を覗かせてもらいましょう。みんな一緒に、ね。 |
| アイリス | はい ! その時は音楽を学んでいるところが見てみたいなぁ。 |
| リワンナ | そうね……。私たちの時代では難しいことだもの。憧れるわよね。 |
| リワンナ | 豊かな学びの場が存在するということはそれだけ平和であるという証拠だわ。でも、このままだともうすぐこの世界も……。 |
| アイリス | 想像つきませんよね。ここが、あの荒れ果てたアスガルドみたいになるなんて。そして私たちの世界もいずれ……。 |
| セイリオス | そうならないように俺たちが止めるんだろう ? |
| アイリス | ……うん、だよね。よし、今日も頑張ろう ! |
| コダマ | イクスさーん、お待たせしました !アンジュさんたちから想珠を受け取ってきましたよ。 |
| イクス | お疲れ様。断った人は ? |
| ヘイズ | 全員が協力してくれた。本当に助かるよ。 |
| イクス | それは良かったです。でも、そうなると……。 |
| コダマ | はい。約束通り想珠と引き換えに俺たち全員で学園の仕事を手伝うことになりました。 |
| コーキス | ザビーダ様、さっき通りがかった時にニヤニヤしてたもんなあ。絶対面白がってるぜ ? |
| カーリャ | これじゃ学園を見学するヒマもありませんよねえ。二人とも残念でしょう。 |
| コダマ | いやいや、むしろ得しちゃったよ。働けば学園のことをより深く知れるだろ ? |
| ヘイズ | ああ。我々への遠回しな気遣いなのだろうな。ありがたいことだ。 |
| カーリャ | でも、お仕事って何をすればいいんでしょうね。 |
| ヘイズ | アンジュから言付かっている。まず私とミリーナとカーリャだが、初等部の子供たちを預かって課外授業の引率をすることになった。 |
| ミリーナ | わあ、楽しそうですね ! |
| コダマ | 俺とイクスさんとコーキスは体育の授業の手伝いだそうですよ。 |
| コーキス | いいじゃん。体を動かすなら大歓迎だ ! |
| ヘイズ | うむ。ではミリーナ、生徒たちに会いに行こう。コダマも全力で臨むようにな。 |
| コダマ | はい、ヘイズ様も ! |
| Character | 4話【メモリー4 課外授業】 |
| 初等部生徒A | ヘイズ先生、あの花、ほかのと色がちがうよ。 |
| ヘイズ | ほう、よく見つけたな !おそらく土の質が違うのだろう。同じ種類でも、育つ環境で差が出る種のようだな。 |
| 初等部生徒B | ミリーナ先生、その虫は何をたべるの ? |
| カーリャ | カーリャは虫じゃありません !ちなみに好きなものは甘いものですがなんでも食べられます。 |
| 初等部生徒B | わかった。じゃあ、お昼のお弁当わけてあげるね ! |
| カーリャ | やった ! 約束ですよ。 |
| ミリーナ | もう、カーリャったら。 |
| ヘイズ | ふふっ、良いなぁ。子供たちが元気に駆け回って、笑い声をあげて。 |
| ミリーナ | ええ。幸せな気持ちになれますよね。 |
| ヘイズ | ああ。久しくこんな風景を見ることはなかった。長らく戦と研究ばかりだったからな。こうして草花を愛でたり遊んだり、実に新鮮だ。 |
| カーリャ | 王様って、遊びに行くのも大変そうですもんねぇ。みんなの目もありますし。 |
| 初等部生徒A | ヘイズ先生、王様なの ? |
| 初等部生徒B | すごい ! どこの ? ねえ、どこの王様 ? |
| 初等部生徒C | セールンドかビフレストでしょ ?今の国はそれしかないって、本で読んだもん。 |
| ミリーナ | みんな、少し静かにね。ヘイズ先生も困っちゃうわ。 |
| ヘイズ | よし、それでは皆にだけ秘密の話をしよう。私はな、その二つ以外の国の王様なのだ。お前たちが知らない遠い遠い場所から光に乗ってやってきた ! |
| 生徒たち | 「え~本当~ ? 」「なにしに来たの ? 」「どんなところー ? 」 |
| ヘイズ | お前たちみたいな元気で可愛い子供がいっぱいいるぞ。喧嘩もするがお互いを守ろうと頑張るいい子たちだ。 |
| ヘイズ | ……だがな私の国はもうすぐ消えてしまうかもしれない。 |
| 生徒たち | え……。 |
| カーリャ | ちょ、ちょっと、そんなストレートな……。 |
| ミリーナ | カーリャ、任せましょう。 |
| 初等部生徒B | 消えたらどうなるの ?その子たち、みんな死んじゃう ? |
| ヘイズ | ……大丈夫。そうならないように世界を救う手段を求めて、私はここに来たんだ。 |
| ヘイズ | それがヘイズ先生の正体 !王様である私の役目なのだー ! |
| 生徒たち | わあああ ! 王様ー ! |
| 初等部生徒C | もっと聞かせてよ ! |
| 生徒たち | 「わたしも ! 」「おれも ! 」「ぼくも ! 」 |
| ミリーナ | みんな、待ってちょうだい。まだ授業中だから先に今日の課題を終わらせちゃいましょう。 |
| ミリーナ | それでお弁当の時間になったら、たくさん話してもらうといいわ。美味しいご飯を食べながら聞いたらきっともっと楽しいわよ。 |
| 生徒たち | はーい ! |
| カーリャ | さすがミリーナさま ! |
| ヘイズ | ふふっ、皆良い子だな。 |
| ヘイズ | 私の時代も、このように子供が笑える世界であれば良かったのだが……。 |
| ミリーナ | ヘイズさん……。 |
| ヘイズ | ここより遥か未来では、学ぶ場所など限られるどころか明日を生きることさえ不安を抱かせる有様だ。 |
| ヘイズ | 国を失い流れ着いた棄民など、日々死の恐怖にさらされ続けている。なのに私は、長き統治を経ても自国さえ救えてはいない……。 |
| ミリーナ | …………。 |
| ヘイズ | ……すまぬ。つまらぬことを聞かせた。子供たちの笑顔を見て気が緩んだかな。 |
| ミリーナ | でも、そんな風に気を緩ませてしまう世界がヘイズさんの理想なんですよね。 |
| ヘイズ | ミリーナ……。 |
| ミリーナ | 想像しましょう。そんな世界が来ることを。そうなるように私たちが協力します。 |
| ヘイズ | ありがとう。鏡士殿は皆、実に頼もしいな。 |
| 学園の警備員 | 初等部のみなさん、すぐに避難を !近くに魔物が出現しました !建物内に移動してください ! |
| ミリーナ | 魔物って…… !この辺りは安全が確保されてましたよね。 |
| 学園の警備員 | はい。今までこんな近場に現れることなど、めったにありませんでした。ですが学園の周囲を巡回していた警備員からの報告では、突然現れたようで。 |
| ミリーナ | まさか……。 |
| ヘイズ | ああ、不自然だ。幻影種かもしれぬ。 |
| 学園の警備員 | 対応に向かっている警備員もいますが彼らだけではどれだけもつかわかりません。ですから早く―― |
| ヘイズ | 無理だ。幻影種なら普通の人間では太刀打ちできぬ。私が行こう ! |
| ミリーナ | 私も行きます。警備員さん、子供たちをお願いできますか ? |
| 学園の警備員 | は、はい ! お任せください ! |
| ヘイズ | 行くぞ、ミリーナ。この学園を戦場になどさせぬ ! |
| Character | 5話【メモリー5 体育の時間】 |
| コダマ | っしゃーーーー ! 勝利の味サイコー- ! |
| コーキス | マジかよ、スリーポイントで逆転勝ち !すげえよコダマ ! |
| イクス | ギリギリのいい勝負だったな。生徒チームにはハンデをあげすぎかと思ったけど丁度良かったみたいだ。 |
| コダマ | ですね。バスケって初めてやったけど楽しいっす ! |
| コーキス | 最後のシュートはよく決められたよな。絶対に外すと思ったぜ。 |
| コダマ | やっぱそう思った ? |
| コーキス | 思った ! 本当にヒヤヒヤしたんだぜ ?コダマはすっげえ下手くそなのに、マスターってば最後の大事な場面でパスしちまうからさ。 |
| イクス | コーキス、それはコダマの作戦だよ。 |
| コーキス | えっ ? |
| コダマ | やっぱりイクスさんは気づいていましたか。ま、じゃなきゃあのタイミングでパスは来ないもんなぁ。 |
| コーキス | え ? え ? |
| イクス | コダマはわざと下手に見せていたんだ。自分からディフェンスを外しておくためにな。 |
| コダマ | その通り。で、いざという時にボールをかすめ取って大逆転 ! って寸法。 |
| コダマ | けど、かすめ取るとかしなくても途中からイクスさんが俺の意図に気づいてくれたみたいだったから。すげえやりやすかったですよ。 |
| コーキス | じゃあ、俺だけ最後まで気づかなかった…… ? |
| イクス | むしろ俺しかわからなかったんだよ。コダマって騙すのがうまいからさ。 |
| コダマ | え~もっとカッコよく言ってくださいよ。策士とか。 |
| コーキス | だったらちゃんと作戦だって教えてくれよ ! |
| コダマ | 敵を騙すならまず味方からって言うだろう ? |
| コーキス | じゃあ初心者ってのも嘘だったのか……。 |
| コダマ | それは本当。 |
| コーキス | はあ ? |
| コダマ | 嘘には真実を混ぜるのが美味しく仕上げるコツってね。 |
| イクス | はははっ、コーキスみたいに素直だとコダマとの騙し合いには不利だよなぁ。 |
| コーキス | くっそ~……。悔しいけど、コダマって頭いいんだなあ。うん、確かにいい作戦だったよ。 |
| コダマ | ……今さらだけどさなんでコーキスは俺と普通に話してくれんの ? |
| コーキス | は ? 突然何だよ。 |
| コダマ | だって俺、イクスさんとは敵として接触しただろ。コーキスからは絶対に嫌われてるって思ってたんだけど。 |
| イクス | 確かに、コーキスも最初はピリピリしてたからなぁ。 |
| コーキス | 当たり前だろ ? 大事なマスターを傷つけられて怒らない鏡精がいるもんかよ。 |
| コーキス | でも、コダマたちの話もたくさん聞いたし理解もできた。 |
| コーキス | 何よりマスターが許しているからさ。つべこべ言うのはやめたんだよ。今はコダマのことも仲間だと思ってる。 |
| コダマ | そうか。マジありがとな。 |
| コーキス | お礼を言うほどのことか ? |
| コダマ | 世間じゃ筋の通った話をしたって理解してもらえないことなんて山ほどあるんだぜ ? |
| コダマ | 価値観の違いや、感情が先走って理解することを拒否しちまうような奴もたくさんいる。 |
| コダマ | だからさ、話を聞いてくれてそのうえ、理解してくれるっていうのは本当にありがたいことなんだよ。 |
| コーキス | ……コダマはわかってもらえないことがたくさんあったのか。 |
| コダマ | まあね。けど、おかげでたくましく小狡く育ったわ。今じゃ俺の武器だよ。 |
| コダマ | コーキスの思ってることが聞けてよかった。これからもよろしく ! |
| コーキス | ああ。じゃあ、改めて仲直りの握手な。 |
| イクス | うんうん。コーキスも成長したよなぁ。友達が増えてよかったなぁ。 |
| コーキス | あ、けどさっきみたいに騙すのはナシだからな !それと、マスターを裏切ったら許さねえ。 |
| コダマ | わかったわかった。今度作戦を立てる時はちゃんとイクスさんやコーキスにも話を通すよ。はあ、これでスッキリした ! |
| イクス | ああ。色んな意味で充実した試合になったな。 |
| コダマ | けど……、さっきの俺の活躍ヘイズ様にも見てほしかったな。今頃何してるんだろ。 |
| ミリーナ | イクス、聞こえる ?幻影種が現れたかもしれないの !私とヘイズさんで現場に向かっているわ。 |
| イクス | わかった。出現位置を送ってくれ。こっちもすぐに向かう。 |
| コーキス | 幻影種ってこの近くでか ! ? |
| イクス | みたいだ。とにかく急ごう。ここの生徒たちはアンジュたちに連絡して守ってもらう。コダマ、装備は ? |
| コダマ | 準備してあります ! |
| イクス | よし、行くぞ ! |
| Character | 6話【メモリー6 幻影種撃退】 |
| ヘイズ | バナライズ ! |
| コダマ | いたぞ、ヘイズ様たちだ ! 幻影種と戦ってる ! |
| イクス | …… ? 様子が変だな。 |
| 学園の警備員A | ひっ ! こっちにも出た ! |
| ミリーナ | 私の後ろへ下がって ! そっちは駄目 ! |
| 学園の警備員B | ひいいっ ! |
| コーキス | 警備員たちをかばってるから二人とも威力の大きい術が使えないんだ ! |
| イクス | あれじゃ下手に介入できない。せめてミリーナたちだけなら…… ! |
| コダマ | くそっ、しかも増えていきやがる !こうやって世界は幻影種に浸食されていったのか ! |
| イクス | 冗談じゃない…… ! |
| コーキス | マスター ! ? |
| イクス | 俺は絶対に守り抜く ! 真実に変えたこの世界を ! |
| コダマ | 空中からの急襲 ! ? |
| イクス | 聖翼陣舞天翔 ! ! |
| コーキス | やった ! すげえよ、マスター ! |
| イクス | みんな無事か ! ? |
| ミリーナ | イクス…… ! 助かったわ、ありがとう。 |
| コダマ | 今のが、イクスさんのオリジン魔鏡技か。 |
| コーキス | ああ。カッコいいだろ ? |
| ヘイズ | コダマ、来てくれたんだな。 |
| カーリャ | コーキスも。ありがとうございます。 |
| コダマ | いやあ、実は俺たち何にもしてなくてですね……。 |
| コダマ | でも、ヘイズ様がご無事で何よりです。カーリャ先輩もな。 |
| コーキス | コダマ……パイセンを先輩扱いしていいのは俺だけだぞ。 |
| コダマ | はははっ、冗談に決まって―― |
| コーキス | どうした ? |
| コダマ | まだ妙な気配が残っている気がする……。 |
| カーリャ | 本当ですか ! ? |
| コダマ | バルドみたいに正確じゃないけどさ死神騎士としての勘かな。 |
| ヘイズ | ふむ……先ほどのイクスの力に警戒して逃げ出したものがいるやもしれぬな。 |
| コーキス | 警戒って、あいつらそういうこともするのか ? |
| ヘイズ | ティル・ナ・ノーグの幻影種は調査を進めている段階だ。そういうものが現れても不思議ではない。 |
| ミリーナ | それなら、さっきの幻影種よりももっと手ごわい可能性があるんですね。 |
| イクス | これだけ学園から近い場所だ。野放しにはできない。見つけ出して一掃しよう。 |
| ミリーナ | でも、どこに現れるのかも予測できないのに捜し回るのは危険よ。 |
| コーキス | ちっ、幻影種の奴らめ。襲うなら襲ってこいってんだよ。そしたら追いつめて一気に叩いてやるのに。 |
| コダマ | ……いいね、それ採用。 |
| コーキス | 採用 ? |
| コダマ | とりあえずこっちから打って出る。手分けして幻影種を捜そう。 |
| カーリャ | ですから、それは危ないってミリーナさまが言ってるんですよ ? |
| コダマ | まあまあ。ちゃんと説明するから。と、その前に―― |
| コダマ | とりあえず、警備員たちを学園に送り届けちゃいましょうか。 |
| Character | 7話【メモリー7 幻影種追跡】 |
| コダマ | ……霧が出てきたな。 |
| コダマ | ヘイズ様、視界が悪いから気を付けてくださいね。 |
| コダマ | コーキス ? そっちにいるのはコーキスか ?はぐれんなよ ! |
| コダマ | はいはい……はぐれたのは俺でしたー……っと。イクスさんに連絡しとくか。ええと、魔鏡通信機はどこにしまったっけ―― |
| コダマ | うおっ、あっぶね ! |
| コダマ | 幻影種ヒット !しかも予想以上に釣れたな。さて……ここからだ ! |
| コダマ | くっ ! まだ増えんのかよ ! |
| コダマ | (もっと……、もう少し…… ! ) |
| コダマ | うっ ! ! |
| コダマ | はぁ……、はぁ……。もう……いいか……。 |
| コダマ | 今だ ! |
| イクス & コーキス | うおおおおおっ ! ! |
| ヘイズ | 冷徹なる輪廻に座せ、レストリュート ! |
| コダマ | おー、みんなさすがのタイミング !ばっちりだ。幻影種がボッコボコじゃん ! |
| カーリャ | まったく、無茶をする人ですね。 |
| コダマ | ははっ、エルナトに怒られてるみたい。 |
| コダマ | まあ、俺の無茶で被害が防げるなら安いもんだよ。幻影種なんかの好きにされてたまるか。 |
| ミリーナ | ええ、そうよ。 |
| カーリャ | ミリーナさま ! |
| ミリーナ | みんなの想いが繫いだ世界……二度と消させはしないわ ! |
| イクス | ミリーナ、一気にトドメだ ! |
| ミリーナ | 雪神楽 ! ! |
| カーリャ | やりましたね、ミリーナさま ! |
| ヘイズ | あれがミリーナのオリジン魔鏡技か。目を見張る威力だな。 |
| ミリーナ | コダマが引き付けた幻影種は倒せたみたいね。 |
| イクス | ああ。トドメは警戒されている俺じゃなくてミリーナのオリジン魔鏡技でっていうのがうまくいったな。 |
| コーキス | おい、コダマ !いつまでたっても合図を出さないからヒヤヒヤしたじゃないか ! |
| コダマ | 作戦通りだろ ?ミリーナさんの術で霧を出したら俺はコーキスとヘイズ様からわざと離れて一人になる。 |
| コダマ | うまく幻影種が釣れた場合は、なるべく多く引きつけていい頃合いで合図を出す。で、霧に隠れていたみんなが一気に倒す。……だよな ? |
| コダマ | それに「襲うなら襲え。そしたら一気に叩く」ってコーキスが言ったから思いついた作戦だぞ ?その通りになってると思うけど。 |
| コーキス | そりゃそうだけどさ。囮がマジでやられたら意味ないだろ。……怪我は平気なのかよ。 |
| コダマ | だからあれは演技だって。まあ、確かに結構ギリだったけど。優しいな、コーキスは。 |
| コーキス | うるせー。 |
| イクス | 正直、俺たち別働隊もヒヤっとしたけどさコダマが必ず合図を出すって言ってたから我慢してたんだよ。な、ミリーナ。 |
| ミリーナ | ええ。あまり無茶はしないでね。 |
| コダマ | 本当に全然平気だったんですけどね。もしかして俺、演技力ありすぎ ? |
| ヘイズ | そうだな。コダマの言葉は信じているが見ていて心臓に悪かったぞ ?ほどほどにしておくれ。 |
| コダマ | う……、善処します。 |
| ヘイズ | ……どうやら今の戦いでさらに引き寄せられたようだ。 |
| イクス | コダマ、次は演技なしだ。思いっきりやってくれていいぞ。 |
| コダマ | 了解です。さっきはそこそこボコられたんで実はストレス溜まってたんですよね。 |
| コダマ | じゃ、ここからは反撃開始ってことで ! |
| Character | 8話【メモリー8 守りたい世界】 |
| コダマ | 滞刻裂竜針 ! |
| コダマ | ふぅ……。イクスさん、こっちは片付きました ! |
| イクス | こっちもだ。とりあえず一安心、かな。 |
| ヘイズ | ふむ……。敵の様子をうかがうような幻影種ならもう少し手こずるかと思ったが、杞憂であったか。 |
| コーキス | けど、それでもかなり厄介な奴らだったぜ。結局、コダマたちみたいな力やオリジン魔鏡技じゃないと対抗するのも難しいし。 |
| コーキス | こんなのが世界中で湧き上がるようになったら対処しきれないよな……。 |
| カーリャ | だから、ティル・ナ・ノーグは滅んで……。 |
| ヘイズ | ……させぬ。 |
| イクス | ヘイズさん ? |
| コダマ | ……うん。俺もティル・ナ・ノーグが好きだな。特に今日はそう感じた。 |
| コダマ | もし、幻影種がいない世界があるならこういう日常がいいなって思えた。いい体験だったよ。 |
| コダマ | あの学園みたいな生活が、きっと『普通』なんだ。あれを特別に感じるような世界にしちゃいけない。 |
| ヘイズ | そうだな。私にとっても夢のようなひとときだった。皆が笑い合い、子らが遊び、駆け回る世界。私の理想がそこにあった。 |
| ヘイズ | それらを必死で守ってきたお前たちの努力と想いも決して無駄にはしたくないと思った。 |
| ミリーナ | コダマ、ヘイズさん……。 |
| ヘイズ | ……これよりは何が起きるやもわからぬがその事実だけは胸に刻みつけておこう。 |
| ヘイズ | 約束する。そなたたちと手を携えている間は我々も全力をもってこの世界を守る。 |
| イクス | ヘイズさん……。ありがとうござい―― |
| コーキス | なっ、幻影種 ! ? でけえぞ ! |
| イクス | もしかして、コダマやヘイズさんが気にしていた奴か ! ? |
| コダマ | みたいです。人がいい話してる時に邪魔するなんて趣味が悪い幻影種だぜ。 |
| コダマ | あいつを倒して、今度こそ終わらせる ! |
| Character | 9話【メモリー9 決着】 |
| コダマ | 今のでまだ倒れないか…… !やっぱさっきまでの奴らと段違いだな。 |
| ヘイズ | だが、確実に消耗している。これが最後の一押しだ。コダマ、力を貸しておくれ ! |
| コダマ | 御意に ! |
| コダマ | 時を翔け―― |
| ヘイズ | 紡いだ記録―― |
| コダマ、ヘイズ | ここに具現せよ !結刻・万象刃 ! ! |
| コダマ | これで本当に終わりだぜ !やりましたね、ヘイズ様。 |
| ヘイズ | うむ。良い騎士になったな、コダマ。 |
| コダマ | ヘイズ様のおかげですよ。 |
| コーキス | なんだよ今の技、すごかったな ! |
| ヘイズ | ふふっ、そう言ってもらえて嬉しいぞ。私とコダマの絆がもたらした技だ。 |
| カーリャ | これで幻影種は一掃できましたかね ? |
| コダマ | 今のところはって感じかな。妙な気配もなくなったしこの辺はさっきので最後だと思う。 |
| ミリーナ | それなら、ひとまず学園に戻りましょうか。 |
| イクス | ああ。みんなに報告しなくちゃな。 |
| コダマ | ……イクスさんたち、遅いな。理事長と話し合うって言ってたけど。 |
| ヘイズ | 見ろ、戻ってきたようだ。 |
| コーキス | お帰り、マスター。……何かあったんだな。 |
| イクス | ああ。結論から言うとしばらくの間、学園は休校することになった。 |
| コーキス | 休校 ! ? |
| コダマ | そうか……。仕方ないよな。 |
| ヘイズ | いくら学園周辺を一掃したといえ奴らが二度と出ないと保証はできぬ故な。 |
| イクス | その通りです。理事長も生徒たちの安全を優先するために休校を決定しました。 |
| ミリーナ | 休校の話は生徒のみんなにも伝えられたけどとても残念そうだったわ。 |
| ミリーナ | 特に私とヘイズさんが担当していた初等部の子供たち……。課外授業まで中止になってショックを受けている子も多いそうです。 |
| ヘイズ | なんと……。 |
| ミリーナ | この学園の課外授業は遠足のような側面もありましたから。みんなとても楽しみにしていたそうです。 |
| カーリャ | 外でみんなでお弁当を食べたりなんてすっごく楽しいですもんね。カーリャも本当に残念です……。 |
| イクス | だよなあ……。でも安全が第一だ。こればかりはどうしようもないよ。 |
| ヘイズ | そうだな。学園の判断は正しい。しかし、子供たちが気落ちしているかと思うとなんともやるせないな。 |
| ヘイズ | あんなに楽しそうに学んでいたのに……。 |
| コダマ | その課外授業って、どんなことをしてたんですか ? |
| ヘイズ | 森の近くを探索して植物の観察を行う授業だった。どれだけたくさんの草花を見つけられるか競争したり……楽しかったよ。 |
| コダマ | なるほど、たくさんの種類の草花……。 |
| カーリャ | どうかしました ? |
| コダマ | 実はさ、めちゃくちゃ安全でしかも授業にピッタリの場所があるんだよね。 |
| カーリャ | 本当ですか ! ? |
| コダマ | うん。『浮遊島』っていうんだけど。 |
| ヘイズ | あ…… ! |
| コダマ | もちろん、俺たちは借りている身なのでイクスさんたちの許可が必要ですけどね。 |
| イクス | 反対するわけないだろう。すごくいいアイディアだよ ! |
| ミリーナ | ええ、みんなきっと喜ぶわ。 |
| コーキス | ずるいなぁ、コダマ。あんな話聞いた後じゃマスターたちは絶対に断れないじゃん。 |
| コダマ | コーキスは反対なんだ ? |
| コーキス | いや、大賛成 ! |
| ミリーナ | 学園側に許可を取ってくるわ。楽しみですね、ヘイズさん ! |
| ヘイズ | ああ。浮遊島で今日の続きをしよう ! |
| Character | 10話【メモリー10 またみんなで】 |
| セイリオス | ヘイズ様、準備は整っていますから少しお座りになってはいかがです ? |
| アイリス | ふふっ、ヘイズ様ってば子供たちが来るのが楽しみで仕方ないんだ。 |
| リワンナ | なんだか昔の自分を見ているみたいで懐かしいわ。私も小さい頃、ヘイズ様が当家にお越しになる時にはああしてそわそわしていたもの。 |
| アイリス | そうなんですね。そう思うとヘイズ様が小さな女の子に見えてきちゃう。 |
| リワンナ | 今の話、ヘイズ様には内緒よ ? |
| バルド・M | ……こんな穏やかな空気の中にいると平和な時代と錯覚してしまいそうですね。 |
| リワンナ | あなたも今だけは楽しんでいいんじゃないかしら。子供たちと一緒に学んだり、お弁当を食べたりして。 |
| アイリス | そうですよね。それに、さすがに子供たちばっかりならバルドさん周りでの厄介事はないだろうし。 |
| バルド・M | 厄介事……とはなんでしょうか ? |
| アイリス | うわ、自覚なしだ……。この前、鏡映点に会いにいった時だって街の女の人たちに―― |
| コダマ | みんな、イクスさんたち着いたぞ。子供たちも一緒だ。 |
| ヘイズ | 来たか ! |
| イクス | ほら、みんな。ヘイズ先生が来たぞ ! |
| 初等部の生徒たち | こんにちはーー ! |
| ヘイズ | 皆、よく来たな ! 今日は存分に楽しんで―― |
| ミリーナ | ヘイズさん、一応、課外授業だから……。 |
| ヘイズ | う、うむ。楽しく学んでいこうな ! |
| 初等部生徒A | ヘイズ先生、そっちの人たちも先生なんですか ? |
| ヘイズ | あー……うむ、そうだな。よし ! |
| ヘイズ | 音楽のアイリス先生、算数のリワンナ先生教養のバルド先生、何でもいけるセイリオス先生だ ! |
| セイリオス | はは、俺だけ雑だな。 |
| コダマ | マジで何でもいけるだろ。ヘイズ様は間違っていない。 |
| ミリーナ | それじゃみんな、この島を案内するわね。まずはこっちよ。 |
| ヘイズ | さあ、皆も行くぞ。 |
| コダマ | あれ ? そういや……。 |
| コダマ | イクスさん、コーキスは来てないんですか ? |
| イクス | ああ、コーキスか。ウォーデンさんたちの手伝いがあって今日は来られなかったんだ。 |
| イクス | 本人もすごく残念がってたけど頼まれた仕事を放り出すことはできないってそっちに行ってるよ。 |
| バルド・M | そうですか。コーキスは今もウォーデン様の力に……なんと義理堅い。 |
| バルド・M | イクスさん、『今の私』の立場で言うべきことではないかもしれませんが……。 |
| バルド・M | ビフレストの御方々のために力を貸して頂けることを心から感謝申し上げます。 |
| コダマ | バルド……。 |
| ヘイズ | ――さあ、そして今日一番の目玉が……この花畑だ ! |
| 初等部の生徒たち | わあっ、きれーーい ! |
| ミリーナ | ふふっ、こんなに花畑を喜んでもらえるなんて。ソフィたちにも見せたかったわ。 |
| ヘイズ | さて、島の案内だけでもいい時間になってしまったな。今からここで昼食を取るとしよう。花畑の観察をするのはその後だ。 |
| 初等部の生徒たち | はーい ! |
| 初等部生徒B | ミリーナ先生、カーリャは ? |
| カーリャ | カーリャならここですよー。 |
| 初等部生徒B | はい、これ。お弁当、分けてあげる。前に約束してたよね。 |
| カーリャ | いい子…… !約束を忘れてないなんて、カーリャ感激です ! |
| コダマ | 俺たちも色々作ってきたんだ。多めにあるから、よければイクスさんたちも。 |
| イクス | ありがとう。実は俺たちも……。 |
| ミリーナ | ええ。サンドウィッチなんだけどたくさん作ってきたの。みんなに食べてもらおうと思って。 |
| セイリオス | こりゃきれいな色どりだ。 |
| コダマ | んじゃ、早速ひとつ――……なんだこれ、うまっ ! |
| アイリス | 私もいい ?……ホント、すっごく美味しい。ミリーナさんって料理上手 ! |
| ミリーナ | 嬉しいわ、ありがとう。どんどん食べてね。 |
| イクス | 俺もミリーナの作るサンドウィッチが大好きなんだ。つい食べすぎちゃうんだよ。もぐもぐ……。 |
| カーリャ | カーリャの分を ! カーリャの分を確保してください ! |
| バルド・M | ふふっ、変わらないですね、カーリャは。たくさん食べるあなたは本当に愛らしい。 |
| リワンナ | 出ているわよ。悪い癖が。 |
| ヘイズ | ……。 |
| ミリーナ | ヘイズさん、どうしました ? |
| ヘイズ | ミリーナ、よければこのサンドウィッチの作り方を教えてもらえないだろうか。 |
| ミリーナ | いいですよ。お気に召していただけたんですね。 |
| ヘイズ | ああ、本当に美味しい。これをエルナトにも食べさせてやりたいのだ。 |
| コダマ | ヘイズ様……。 |
| ヘイズ | 帰ってきた時には、ひどくお腹を空かせているだろう。美味しいものをたくさん食べさせてやりたい。 |
| ミリーナ | ……そうですね。ヘイズさんが作ってくれるならきっと何よりのご馳走になる筈です。 |
| ミリーナ | それじゃ今度、まとめてレシピを書いてきますね。 |
| ヘイズ | ありがとう、ミリーナ。こういう約束があるとどんなことでも頑張れそうだな ! |
| コダマ | (エルナト……お前、めちゃくちゃ幸せもんだぞ。だから早く……) |
| コダマ | ヘイズ様、あいつを連れ戻したらここでまた、みんなで飯を食いましょう。 |
| ヘイズ | それはいい ! またひとつ嬉しい約束が増えた。その日が来るのが楽しみだな。 |
| ヘイズ | 美味しい食事に、皆の笑顔に、そして―― |
| ヘイズ | いつか皆で、一緒に花畑を見よう。 |