Character1話 死神来たる part1
ミリーナすっかり日が暮れちゃったわね。
カーリャカーリャはお腹がすいてきました。
イクス辛抱してくれよ。これまでの事件から考えると今日はこの辺りにバルドさんが現れる筈なんだ……。
バルド正確には私の『偽者』ですね。まあ、過去からの具現化やレプリカであった場合は偽者と言ってしまっていいのかわかりませんが。
ミリーナ今はいったん『偽者』としておきましょう。
ミリーナ確かその、偽のバルドさんが鏡映点のみんなを襲っているのよね。
イクスああ。そう聞いてる。前後の記憶が曖昧みたいで皆の言うことがバラバラなんだけど共通しているのは――
バルド私に襲われたという話、ですか。もちろん私に鏡映点の皆さんを襲う理由などありません。アリバイもありますしね。
バルドミリーナさん、この霧は……。
ミリーナ自然のものでも、魔鏡術でもないわ。気を付けて !
イクス誰か……いる ?
ミリーナバルド……さん ! ?
バルド馬鹿な…… !
? ? ?どうして、ここに……。
? ? ?ターゲットを変更しましょう。彼らはこの世界の要たる鏡士です。
? ? ?構いませんよね、ヘイズ様。
ヘイズああ。好機かも知れぬ。頼むぞ、コダマ。
イクスえっ ! ?  な、何だ ! ?
ミリーナイクスの体が浮いてる…… ! ?
バルドイクスさん !
? ? ?邪魔しないで !
バルドくっ !
ミリーナイクス ! !
ヘイズすまぬな、娘。お前をイクスとやらに近づけるわけには行かぬ。
イクス何を……する……つもりだ…… ?
コダマこうするのさ。
イクスう……うわあああああっ !
? ? ?苦しませてしまってすみません、イクスさん。ですが、ほんの一瞬のことです。
バルド虹色の宝石…… ?
ミリーナイクスに何をしたの ! ?
コダマおっ、こいつはいいな。ビターな想い出の味がする。
バルドイクスさんに何をした ! ?  貴様たちは何者だ !
コダマ俺たちか ?  俺たちは【死神】さ。あんたたちの物語を終わらせに来た【死神】だよ。
コダマ……待ってろよ。
これは想い出を巡る物語。全てが失われても、心に刻み込まれた想い出だけは消えないことを証明する、あなたの物語。
ヘイズ――もう泣くな。私は誓う。二度とお前たちを悲しませることはさせぬと。私はお前たちを守る王なのだから。
ヘイズだから、もう泣くな。
? ? ?……うん。もうなかない。
ヘイズ良い子だ。
? ? ?へへ……あのね、おうさま。おれもおうさまをまもっていい ?
? ? ?おれが……俺が……王様を……。
エルナト起きなさいってば !  コダマ !
コダマあいててててっ ! ?
コダマ……おいおい、痛ぇな、エルナト。もうちょっと優しく起こしてくれよ。
エルナトまた詰め所で居眠りですか。夜番が終わったら真っ直ぐ寮に帰って下さい。
コダマ悪かったよ。ちょっと休んでただけだって。
エルナトその言い訳は聞き飽きました。セイリオス、あなたからも何か言って下さい。コダマの教育係でしょう ?
セイリオスん ?  ああ、コダマ。派手に寝ぐせがついてるぞ。
コダマセイリオス、いたのか。
セイリオス朝飯でも一緒に食おうと思ってな。けどその頭じゃこっちが恥ずかしい。来いよ、直してやる。
コダマ髪なんてどうでもいいだろ。
セイリオスそりゃ、お前さんが気にしないってなら俺が目を瞑ればいいだけだが死神騎士の行動はシーザリオ陛下の――
コダマおっと、そうだった。陛下に恥はかかせられないもんな。
コダマセイリオス先生~♪いつもの感じでちょちょっと魔法を掛けてくれよ。
セイリオスはいよ、コダマ坊ちゃん。
エルナトあなたたち……神聖な死神騎士の仕事場を何だと思っているんです ?  ここは仮眠室でも更衣室でもないんですよ !  詰め所なんです !
コダマエルナト先輩、固いこと言わないで♪可愛い後輩が身支度済ませる猶予ぐらいはくれるでしょ ?
エルナト……大した新人が来たものですね。
コダマだろ ?  大物になること間違いなし !
エルナト誉めてません !支度をしたら、さっさと出て行きなさい !

Character1話 死神来たる part2
ネオイデア王国――それは人類最後の国家でありここ王都イザヴェルは、人類最後の砦と言える場所であった。
セイリオスさて、どこに食べに行くかな。
コダマいつもの店にしようぜ。あそこのシチュー好きなんだよな。
セイリオスいいのか ?  死神騎士の溜まり場だぞ。つい最近もお前さん絡まれたって話を聞いたが。
コダマああ。俺が『棄民』なのに、死神騎士になったのが気に入らないって因縁ふっかけられた。けど平気だよ。
コダマ勉強代ですって酒おごったら酔って同僚の愚痴こぼして、ご機嫌で帰ってった。また絡まれたら、聞いた話を盾にして脅すつもり。
セイリオスははっ、コダマらしい切り抜け方だな。ほどよく小賢しい。
コダマだろ ?
世界が【幻影種】と呼ばれる謎の生命体の襲撃を受けて200年。人々の生活の場は限りなく狭まっている。
【幻影種】が普通の人間には傷一つ与えられない存在であるためだ。
しかし、唯一彼らに対抗しうる存在がある。それが【死神騎士】と呼ばれる騎士たちだった。
コダマおっと……。今日はアイリスが広場で歌う日か。
セイリオスあれ ?  そうだったかな ?
死神騎士たちアイリス !  アイリス !  アイリス !
アイリスみんな、ありがとう。次のステージも楽しみにしてて !……あっ。
アイリスセイリオス、コダマ、来てたんだ。
コダマよお。毎度すげえ人気だな。
セイリオス本来なら、もっと大きなステージに立つはずの歌手だからな。
アイリスまあ、そんな未来もあったかもね。でも、今の私は死神騎士だしたまに頼まれて歌うぐらいが気楽でいいんだ。
セイリオスそれにしてもお前さん今日はステージの日じゃなかっただろう ?
アイリスセイリオス、よく知ってるね。この間のステージ、おじいちゃんのお墓参りで休んだから、今日はその埋め合わせ。
セイリオスそうか……。きっとじいさんも喜んでいるだろうな。
コダマアイリスって暇さえあればおじいちゃんの墓参りに行ってるよな。好きすぎだろ。
アイリスコダマだってシーザリオ様大好きでしょ。で、もう会えたわけ ?  新人のコダマくん。
コダマう……まだだけど。でも絶対に諦めない。いつかシーザリオ様にお目見えして子供の頃に助けてもらったお礼を言うんだ。
アイリスはいはい、耳タコ。でも応援はしてるからね。お礼を言いたいって気持ちはわかるし。
アイリス私だって――
通信機緊急指令。緊急指令。幻影種の出現を確認。現在、防衛ラインへ接近中とのこと。全死神騎士に出動を要請する。
アイリスまた ?  最近多すぎ。
コダマ俺、メシまだなのに !
セイリオス残念だったな。文句は幻影種に言ってくれ。さあ、行くぞ。
【死神騎士】は対【幻影種】戦の切り札であったが戦況を覆せるほどの数ではなかった。
【死神騎士】とは『存在が人から離れている者』だ。すなわち人間のエネルギー指数である【イデア値】が極端に低いことが求められる。
そうした人間は数が少ないため【幻影種】の大侵攻が観測された際は全兵力を持って戦わざるを得ないのだった。

Character1話 死神来たる part3
アイリスなにこれ……すごい数の幻影種。全死神騎士が動員されるわけね。
コダマ街の防衛機構は持つのかよ……。
セイリオスこの王都イザヴェルはアイギスで守られている。陥落することはない。
セイリオスだが、このまま襲撃が続けば、各コロニーへの補給線が途絶える。アイギスに守られていない棄民たちのコロニーは危険だろうな。
コダマ冗談じゃない !  棄民はただでさえ苦しんでるんだぞ !セイリオス、アイリス、ここで全部ぶっ倒そう。
アイリス当然でしょ。私の家族と、私の『声』を奪った奴らよ。手加減なんかするわけない。
セイリオス二人とも、気持ちはわかるが気負い過ぎだ。冷静にな。
コダマくっ…… !  こいつだけ妙に……強い !
セイリオス一旦離れろ !  そいつは三人で――
コダマおい、見たか ! ?  あいつ一瞬、人の姿に――
? ? ?そこの三人、伏せろ !
ヘイズお前は……。
コダマあっ…… !
コダマ危ない !
ヘイズよくやった。
ヘイズ死神たちよ !幻影種は残りわずかだ。この場で一掃するぞ !
リワンナ街の防衛は辺境伯たる私にお任せ下さい !
アグラード者ども !  陛下や辺境伯の手を煩わせるな !幻影種を駆逐しろ !
死神騎士たちうおおおおおおおお ! ! !
セイリオスはぁ……何とか今回も食い止められたか。
アイリスうん。まさかシーザリオ様が救けてくださるなんてね。コダマも驚いたでしょ ?……あれ、コダマ ?
アグラード王都の防衛ラインは死守しております。周辺地区への被害もありませんでした。
リワンナお聞きのとおりです。陛下の出陣に感謝いたします。
ヘイズギムレイ辺境伯も大儀であった。此度の幻影種の出現パターンもデータとして使えそうだな。
コダマお願いします、国王陛下 !  どうかお目通りを !
死神騎士Aお前、棄民上がりの…… !  気安く近寄るな !
コダマぐはっ !
ヘイズやめよ。共に戦う同胞だろう。タナトス隊の一員ならば、私の気持ちを汲んでおくれ。
ヘイズさあ、掴まれ。大事ないか、コダマ。
コダマ俺の名前…… !覚えていて下さったんですか ! ?
ヘイズ…………そなたは、いつぞや助けた子供だろう ?ふふっ、大きくなったな。
コダマシーザリオ様…… !俺、ずっとあなたにお礼が言いたかったんです。ありがとうございます !
ヘイズヘイズでよい。私の方こそ礼を言う。先ほどは助けられた。
コダマおれが……俺が……王様を…………王様を守る !
ヘイズコダマは約束どおり私を守ってくれたのだな。良い子だ。
コダマへ…… ?
リワンナまあ、あの子の顔、真っ赤だわ。
アグラード頬を撫でられた程度で、ウブですなぁ。
ヘイズあははは、お前は本当に可愛いな、コダマ。これからもよろしく頼む。期待しているぞ。
コダマお、俺、いつかあなたの右腕になりますから !