| Character | 10話 虹の宵 part1 |
| | コダマたちが浮遊島を拠点に活動を始めた一方未来のアスガルドでは、監視をつけられたアグラードが兵たちをイデアに避難させるために指揮を執っていた。 |
| | エルナトを止められなければアスガルドは消滅する。そんな万が一の事態を憂慮したヘイズの判断であった。 |
| アグラード | 砦の状況は ? |
| ギムレイ死神騎士 | 半数以上が惑星イデアへ移動しました。防衛線も転送ゲート付近まで後退させましたので残っている兵も即時撤退が可能です。 |
| アグラード | よくやってくれた。俺もクロノスの柱を確認したら合流する。 |
| タナトス隊監視兵A | お待ちください。ヘイズ様の命によりクロノスの柱へ近づくことは禁じられているのです。 |
| アグラード | 撤退前に確認するだけだ。ギムレイの者として役目を果たさせて欲しい。 |
| タナトス隊監視兵B | いいえ、我々と共にゲートへご同行を。これ以上、お立場を悪くするおつもりですか。 |
| | その時、石化したはずのクロノスの柱が光り出した。 |
| ギムレイ死神騎士 | 隊長、あの光は一体 ! ? |
| アグラード | ……済まない。砦の避難は任せたぞ。 |
| タナトス隊監視兵A | お、お待ちください ! あなたの立場が―― |
| | 部下から奪った閃光弾を放ち、光に紛れてアグラードはクロノスの柱に飛び込んで行った。 |
| アグラード | ここは……。 |
| エルナト | ようこそ、過去の世界、ティル・ナ・ノーグへ。 |
| アグラード | エルナト、やはり俺を呼んでいたのだな。 |
| エルナト | ええ。よく気づいてくれました。ありがとうございます、アグラード殿。 |
| アグラード | 労いは後回しだ。ヘイズ様がお前を追ってこちらの世界に来ているぞ。 |
| エルナト | 知っています。すでに鏡映点と出会い手を組むつもりでおられるようです。 |
| アグラード | なんだと ! ?ヘイズ様は過去改変を選んだというのか ! |
| エルナト | お心の内まではわかりません。ですが、想珠を集めるという私の目的を阻もうとしています。 |
| アグラード | 済まない。俺がしくじったせいだ。 |
| エルナト | いいえ。あなたには感謝しています。私の身勝手な計画につきあってくれて。 |
| エルナト | ですが、ヘイズ様たちの介入で、想定よりも時間の余裕がなくなったことは確かです。ですから今後は効率重視で想珠を回収することにしました。 |
| エルナト | これはエルレインという鏡映点の想珠ですが他のものと比べると比較にならないほどの高いエネルギーを秘めています。 |
| エルナト | 彼女のように人ならざる者や力が強く長命な鏡映点の想珠を集めることでアスガルド破壊に必要な量を迅速に確保するんです。 |
| アグラード | そのために俺を呼んだというわけか。話はわかったが、ひとつ聞かせてくれ。 |
| アグラード | お前は自分が鏡精ルグだと言っていたな。本来は使命があったとも。その使命を放り出して未来を救うことに迷いはないのか ? |
| エルナト | ……確かに私は『鏡精ルグ』ですがこの時代に来たのは『エルナト』としてです。 |
| エルナト | 私は未来の世界で、エルナトの名と共にたくさんの幸せをもらいました。あの世界に住む人たちを絶対に失いたくない。 |
| エルナト | 私に迷いなどありません。必ず、アスガルドは消滅させます。この命と共に。 |
| エルナト | ですから、今さら命が惜しいだなんて言いませんよ。それに、主の存在がある限り鏡精は何度でも甦る存在だと話したでしょう ? |
| アグラード | ……その決意に感謝する。改めて、俺も志を共にする者として協力させてくれ。 |
| エルナト | (でも、バロール様と繋がっている『ルグ』はすでにこの時代にいる。だとすると、きっと私は……) |
| アグラード | それで、これからどうする気だ。 |
| エルナト | より詳しい鏡映点の情報が必要です。まずは『元帝都』へ向かいましょう。鏡映点たちの資料が残されているはずです。 |
| | ――ルグと接触した場所へ向かう。そうコダマに告げたバルドはかつて帝都のあったイ・ラプセルを訪れていた。 |
| コダマ | ルグと会ったのって、この辺り ? |
| バルド・M | ええ、そのはずです。私が本物のバルドなら。 |
| コダマ | ……で、何を調べるって ? |
| バルド・M | 私が何故未来へ行くことになったのか。【虹の夜】はどのように起きたのか。その二つは同時なのか。私の記憶は、まだはっきりとしていません。 |
| バルド・M | 何か思い出せればと……。 |
| エルナト | あなたたち ! ? |
| コダマ | エルナト先輩、はともかく、アグラードさんまで来ているとは計算外だったな。 |
| エルナト | この場所であなたたちと会うなんて……。バルドさんがここにいるということは全て……思い出したんですか ? |
| バルド・M | ルグ……。 |
| エルナト | 思い出したみたいですね。何にせよバルドさんは私に付いた方が賢明ですよ。ご自身のために。 |
| バルド・M | 私自身 ? |
| エルナト | そうです。『今』ではなく未来を守るべきです !そうしなければ、あなたは―― |
| バルド・M | また勝手に私の運命を決める気ですか ! |
| バルド・M | ……来る。コダマ、幻影種が近くにいます ! |
| 二人 | 「幻影種 ! ? 」「何っ ! ? 」 |
| バルド・M | ! !危ない、エルナトさんっ ! |
| バルド・M | ぐうっ ! ! |
| エルナト | バルドさん ! ? |
| アグラード | 俺としたことが…… !コダマ、奴を倒す。合わせろ ! |
| コダマ | はい ! |
| 二人 | 「はああああっ ! 」「うおおおおっ ! 」 |
| アグラード | 倒したか……。やはり、バルドには幻影種を引き寄せる要素があるようだ。 |
| コダマ | (アグラードさんが驚いてないってことは普通の幻影種に見えていたのか。今のは明らかに人型だったのに……) |
| エルナト | バルドさん ! 私の声が聞こえますか、バルドさん ! |
| | エルナトをかばったバルドは深手を負って動けずにいた。その傍らに『もや』のようなものが集まりだす。 |
| コダマ | あれは…… ! ? |
| | コダマの脳裏に、ある光景が浮かんだ。心身共に弱った父、突然その傍らに現れた幻影種。つまり、それは―― |
| コダマ | エルナト、バルドから離れろ !幻影種が『生まれる』ぞ ! |
| アグラード | 幻影種がなんだって ! ? |
| | コダマはイヤホンを外すと形を成しつつある『もや』に意識を集中する。 |
| ? ? ? | シネ……ナイ……ワタシハ……わが、主を……ウォーデン……様を……救わねば……。 |
| | いつも聞こえる鳴き声のような音が明確な声としてコダマの耳に響く。 |
| コダマ | ……こんなにはっきり聞こえるってことはこの幻影種の想いが強いのかな。アグラードさんにも姿が見えるかもね。 |
| アグラード | 姿 ? どういう意味だ ? |
| アグラード | もやが人の姿に……、あれは、バルド ! ? |
| コダマ | ――の、姿をした幻影種です。倒しましょう、アグラードさん ! |
| Character | 10話 虹の宵 part2 |
| アグラード | やったか……。これがお前たちの言っていた人型の幻影種なんだな。俺にも見えるとは……。 |
| コダマ | 言ったでしょ。それだけあいつの力が強いのかもって。 |
| エルナト | (確かにそれもある。けれど、コダマが「見える」と言ってから、アグラード殿にも人型としての幻影種が見えるようになった) |
| エルナト | (本来有るべき姿を、有るように存在させたのならばそれは『想像の鏡士』の力……) |
| コダマ | エルナト、バルドの様子は ! ? |
| エルナト | 危険です。傷は何とか塞ぎましたがバルドさんから分離した幻影種が消滅したことで心が弱って生命力が減り続けています。 |
| コダマ | そうか。あの幻影種はバルドの想珠にあたる存在なんだな。けど幻影種を倒さずに捕獲する方法なんてないし……。 |
| エルナト | 助ける方法ならあります。バルドさんの心の奥にある『心核』というものを治療できれば……。 |
| エルナト | コダマ、私に協力してください。二人でバルドさんの心に触れるんです。 |
| コダマ | 俺 ! ? |
| エルナト | ええ。どういうわけか知りませんけどあなたから鏡士の力を感じるんです。その力と、私の力があれば助けられる可能性が高い。 |
| エルナト | 私の主のバロール様は、この世界の構築に関わったお一人です。その心から生まれた鏡精の私には主以外の心にも触れる力があります。 |
| エルナト | それでも想珠に触れるのが精一杯。心の奥に入り込んで心核を治療するにはやはり鏡士の力が必要なんです。 |
| コダマ | 鏡士の力って……あー、でも訓練したことないとか言ってる場合じゃないな。了解。で、方法は ? |
| エルナト | コダマは無意識に力を使っているようですから暴走しないように心を落ち着けることが大切です。そうですね……。 |
| エルナト | 私の手を握って、一緒に水に潜る『想像』をしてみてください。私はその力を利用しながらバルドさんの想珠を経由して更に心の奥へ入ります。 |
| エルナト | その際、バルドさんの想珠の記憶がコダマにも見えると思いますが……。……見た後の判断は任せます。 |
| コダマ | 判断…… ?まあいいや。頼むぜ、エルナト先輩。アグラードさん、周囲の警戒よろしく。 |
| アグラード | 承知した。 |
| | 二人の繫いだ手がバルドに触れる。すると、コダマの脳裏にバルドの思い出が流れ込んできた。 |
| バルド | 主が主なら、鏡精も鏡精ですね。私には守るべき方がいる。私の邪魔をするのなら、全力で刃向かうまで ! |
| ルグ | すでに決まったこと。巫の力、その身に受け取るがいい。 |
| バルド | くっ……あああああっ ! |
| ルグ | 抗うな。受け入れれば楽になる。それ以上の抵抗は魂が傷つくぞ。 |
| バルド | こと……わる…… ! |
| ルグ | 強情な尖兵め。バロール様の力を受けたお前は鏡精も同じ。主人に逆らうなどもっての他 ! |
| バルド | 私の主は……あの方だけだ……っ ! |
| ルグ | 受け入れよ !このままでは本当に命がないのだぞ ! |
| バルド | ウォーデ……さ……ま………。 |
| ルグ | っ ! ! 愚か者め !――我が槍よ ! |
| | ルグの声と同時に、空には虹が漂い地面を突き刺すように光の柱が立つ。その中から小さな影が現れた。 |
| ルグ | 尖兵バルドよ、その身はバロール様のもの。死を迎える前に、私自らの手で巫の力を植え付ける ! |
| バルド | 来る……な……。 |
| バルド、バルド・M | やめろぉおおおっ ! |
| ルグ | きゃああっ ! ! |
| | 爆発したかのような衝撃が収まるとそこには苦し気にうずくまるバルドとその様子を見つめる、もう一人のバルドがいた。 |
| ルグ | ……バルドが、二人 ? |
| バルド・M | ……ワタ、ワタしは……カエる……。帰る……私は……あの方のために……。 |
| | もう一人のバルドから漂う異様な気配にルグの表情が凍り付く。 |
| | バルドの生命力が落ちていくのに連れてもう一人のバルドの意識が段々と明確になっていくのが見てとれた。 |
| ルグ | あれは『良くないもの』だ。私の力と尖兵の力が干渉して生まれてしまった…… ? |
| ルグ | 動物たちの悲鳴…… !他の生物にも影響が出てるのか。あれを……消さ……ないと……。 |
| ルグ | くっ、こんな時に巫の力の譲渡と槍を使った負荷が……。このままでは……。 |
| ルグ | クロノス ! 聞こえますか ! ? お願いがあります ! |
| ルグ | バルドとこの化け物を、未来に飛ばして !あれを今の世界に存在させれば、大変なことになる ! |
| ルグ | バロール様が眠りについている今この化け物には対抗できない。でも、いつかお目覚めになれば……。 |
| ルグ | 私のルグの槍の力を時間移動のエネルギーに変換します。あなたは未来に道を繋げてくれればいい ! |
| Character | 10話 虹の宵 part3 |
| | ルグの声に答えるように光の柱が出現した。 |
| ルグ | ありがとう、クロノス……。後は私が……槍の力で……起動する ! |
| | ルグの声と共に、柱から光が噴きあがる。 |
| バルド・M | (嫌だ……) |
| バルド・M | (『私』は……ウォーデン様のそばにいなければ……) |
| | もう一人のバルドは、倒れたバルドを掴んで柱の光の届かない場所まで放り投げた。 |
| ルグ | なにを ! ? |
| | バルド一人を残しもう一人のバルドとルグは光の中に消えた。 |
| エルナト | ……ダマ、コダマ……。 |
| コダマ | ……ん ? あれ ? |
| エルナト | 大丈夫ですか ? 気分はどうです ? |
| コダマ | 目が回ってる……けど平気。もしかして心核の治療ってやつ終わった ? |
| エルナト | はい。おかげで成功しました。コダマは本当に鏡士の血を引いていたんですね。バルドの記憶は見えましたか ? |
| コダマ | ……ああ。バルドは ? |
| エルナト | じきに目が覚めるでしょう。それじゃ。 |
| コダマ | 待てよ、行かせると思う……。 |
| コダマ | っと……あれ ? |
| エルナト | まだ休んでいたほうがいいですよ。鏡士の力を無理やり引き出された状態ですから。 |
| コダマ | こっちが戦えないのも計算のうちってか。俺のことずる賢いとか言えないね、先輩。 |
| エルナト | ……大人しくしていてください。私が目的を達成すれば未来は救われます。 |
| コダマ | 待てって ! エルナト、一人で全部背負う気かよ ! |
| エルナト | 原因は私ですから。それに私はヘイズ様を……あなたたちを失いたくない。 |
| エルナト | 行きましょう、アグラード殿。 |
| アグラード | ああ。――コダマ、リワンナ様を頼んだぞ。 |
| バルド・M | ……っ。 |
| コダマ | よお、気が付いた ? |
| バルド・M | コダマ……、エルナトさんたちは ? |
| コダマ | 逃げられた。 |
| バルド・M | あなたは逃げなくていいんですか、『私』から。 |
| コダマ | ……バルドが、幻影種だから ? |
| コダマ | 全部思い出したんだな。 |
| バルド・M | ……心核の治療を受けたことで失った記憶が戻ったのかも知れませんね。 |
| バルド・M | もっと早く知っていれば……。世界の……主の未来を奪う元凶が私なら己で始末を…… ! |
| コダマ | バルドは幻影種なのに、普通の人間みたいだな。 |
| コダマ | 俺の父さんも幻影種になったんだ。自分自身と母さんを……大勢の人を殺したよ。 |
| コダマ | でも、想珠の記憶で見たバルドは本物のバルドを助けてたろ ?普通の幻影種とは違うように思える。 |
| コダマ | だから今は、バルドのこと俺の胸に留めておこうと思う。 |
| バルド・M | コダマ……。存外、甘いですね。あれは「私は主のそばにいるべきだ」という身勝手な欲望から起きた行動なんです。 |
| バルド・M | 本体をこの時代に残したせいであのバルドが次々と幻影種を生んで、周囲にも影響を及ぼし、世界は滅びに向かったのでしょう。 |
| バルド・M | 私の記憶はどこまで見えました ? |
| コダマ | 光に包まれて、未来に飛ばされた所までかな。 |
| バルド・M | そうですか。私はあの後、時間を移動するルグから脱走したんです。そして見知らぬ世界に放り出された。 |
| バルド・M | 途端、幻影種に襲われました。次々と群がる見知った影と、息次ぐ間もなく戦った。 |
| バルド・M | 幻影種は思い出の暴走です。偏った思いのみが凝縮されて現れ欠けた思いを求めて人を襲う。 |
| バルド・M | 私は……恐らく幻影種の始祖です。いえ、私が生まれる前に幻影種が生まれているのだからもう一人のバルドが……なのかも知れません。 |
| バルド・M | ……とにかく人と変わらぬ程の濃い思い出の塊である私は彼らの始祖であると同時に、餌ともなりうる。 |
| バルド・M | 仲間の面影のある幻影種を殺して、殺して、殺して……この顔の傷は、一番大事な方の影を斬ると同時についたものです。そして私は心身共に限界を迎えた。 |
| コダマ | それをギムレイ家が見つけたってわけか。 |
| バルド・M | この話でもわかるでしょう ?私は主への想いを暴走させた幻影種。危険な存在です。自分でもわかっているのに……。 |
| バルド・M | ウォーデン様たちを救いたいという思いの前では自死も選べない。 |
| コダマ | 俺たちだってそうだよ。未来を救う気持ちはみんな同じなのに自分たちがどうするべきか決めかねてる。 |
| コダマ | その結論が出るまであんたへの結論もお預けってことでいいよ。 |
| バルド・M | ……わかりました。 |
| Character | 10話 虹の宵 part4 |
| | 一方、ヘイズたちはファンダリア領でカイルたちに話を聞いていた。 |
| アイリス | じゃあ、あなたたちは本当に時間を飛んで歴史の改変を経験しているんだね……。 |
| ヘイズ | カイルもリアラも、辛く難しい決断をしたのだな。神を倒してしまったら、自分たちの生きた歴史とは違う未知の世界になるかも知れないだろうに。 |
| カイル | はい……。でも、答えを出せたのはいろんな人に教えられたからです。 |
| カイル | ひたすら考え抜くこと出した答えに責任を持ち、貫くこと。後悔しないこと。それに……。 |
| カイル、リアラ | 信じること。 |
| リアラ | わたしたちは、もう一度会えるってカイルが一緒に信じてくれたから。難しい決断でも前に進むことができた。 |
| カイル | まあ、その結果を知る前にオレたちはティル・ナ・ノーグに来ちゃったけどね。 |
| リワンナ | きっと元の世界でも出会えているわ。異世界でも、こうして一緒なんだもの。 |
| リアラ | ありがとう。……だからこそ、あなたたちも自分たちの決断を後悔しないで。 |
| リアラ | わたしたちは様々な歴史改変を見たから知っているわ。過去に介入すれば未来は変わる。いい意味でも、悪い意味でも。 |
| ヘイズ | そうだな……。我らが過去に介入し幻影種に対抗しうる方法をもたらせば鏡映点は今の世界を守る選択をするだろうな。 |
| カイル | ……はい。 |
| ヘイズ | ……よくわかった。ひとまず、鏡映点には死神の力を授けようと思う。これで幻影種に対抗できるはずだ。 |
| リアラ | ……本当にいいの ? |
| ヘイズ | ああ。そのためには想珠を預からねばならないがな。元々、エルナトより先に想珠を回収するのが我々の目的なんだ。こちらとしてもありがたい。 |
| カイル | わかった。さあ、持ってって ! |
| ヘイズ | 気前がいいな。だが、その前に説明を聞いておくれ。死神の力となるデス・スターを宿すには幻想灯に想珠を収める必要がある。 |
| ヘイズ | これは、デス・スターが人の『何か』を代償に得る力だからだ。 |
| ヘイズ | そなたたち鏡映点の場合は思い出の力である想珠を幻想灯に収めることで一時的な対価にする。 |
| カイル | つまり、想珠を返してもらうとデス・スターの力もなくなっちゃうのか。 |
| セイリオス | (つまり、こちらの任意でデス・スターを取り上げることもできる、と……) |
| ヘイズ | それと、幻想灯に収める際にそなたたちの記憶の一部が外に漏れるのだ。我々にも見えてしまうが、容赦願いたい。 |
| カイル | 記憶 ?そういやリアラ、オレの夢とか記憶を見たことあるよね。あんな感じかな。 |
| リアラ | だったら経験済みよね。 |
| ヘイズ | まったく、頼もしい限りだ。 |
| | カイルたちにデス・スターを与えその過酷な旅路の記憶を見たヘイズたち。 |
| | そこに、イクスやフィリップを乗せたケリュケイオンが訪れた。 |
| | 事態を聞いたフィリップが、このまま幻影種が増え続けた場合、憂慮すべきことがあるとして急ぎヘイズたちを追ってきたのだった。 |
| フィリップ | ティル・ナ・ノーグはダーナの心の具現化です。心を侵食する幻影種の性質上世界ごと食われる可能性があるのではありませんか ? |
| ヘイズ | ……ビクエ殿のおっしゃるとおりだ。 |
| ヘイズ | 我らの時代でも、まだ世界は存在している。しかし今のまま対抗するだけでは崩壊は確実だろう。故に、幻影種の殲滅は絶対なのだ。 |
| ヘイズ | これまでその方法を探しては行き詰まっていたが過去に来たことで状況も変わりつつある。 |
| ヘイズ | だが……、もし有効な方法が見つかったとしてそれを我らの時代で行うかこの時代で行うか……いまだ決めかねている。 |
| ヘイズ | もう、わかっているのだろう ?この時代で幻影種を殲滅すれば私たちの存在は消滅する可能性が高い。 |
| ヘイズ | 先ほど、カイルやリアラの話を聞いた。記憶も見た。それでも「自分たちの存在が消えても良い」とそう思うところまでは、まだ至れぬ。 |
| ヘイズ | 私は、必死に生き抜いている、未来の我が子たちを守りたい。そのために今まで戦ってきたのだから。 |
| ヘイズ | あなた方にとって残酷なことを言っている自覚はある。見苦しく命にしがみつく我らは醜悪にも映るだろう。だが……。 |
| フィリップ | いいえ、王であれば当然でしょう。ですが、それは敵対すると宣言するようなものだ。 |
| カイル | それでも、ヘイズさんはオレたちに幻影種への対抗手段をくれましたよね。 |
| カイル | 本当は、オレたちの時代も助けたいって考えてくれてるんだ。オレがリアラのこと、ものすごく考えたみたいに。 |
| ヘイズ | ……そなたは真の英雄だな、カイル。 |