Character12話 想い出を巡る物語 part1
アグラードの介入により、コダマたちが仕掛けた陽動作戦から難を逃れたエルナトたち。
だが、自分たちの狙いを見破られていることを知ったエルナトたちは、今後の計画について改めて話し合うことにしたのだった。
アグラード――どうする、エルナト ?今回は上手く逃げることはできたが次もこうなるとは限らんぞ。
エルナト……ええ、このまま長寿の鏡映点たちを優先するのは危険かもしれません。
アグラードだが、数でカバーするには俺たち二人では想珠集めにも限界がある。ましてや、今以上に警戒されてはな。
エルナトわかっています。それに、既にこの世界でも【虹の夜】が起こってしまった可能性があります。
アグラードなにっ ! ?  どういうことだ ! ?
エルナトは、以前のバルド・ミストルテンとの接触によってこの世界でも【虹の夜】と似た現象が起こってしまっていることをアグラードに話した。
アグラード……つまり、この世界の鏡映点たちもいずれは幻影種になってしまうということか ?
エルナトええ。既に自分と同じ姿をした幻影種と出会っている鏡映点もいるかもしれません。
エルナトコダマたちが鏡映点にデス・スターの力を与えているおかげで被害は最小限に留まっているようですが、時間がないのは同じです。
エルナト(いざとなれば、今まで集めた想珠だけでアスガルドの破壊を……。いえ、それはあまりにもエネルギーが不足している……)
エルナト(せめて、私に『ルグ』としての力が残っていれば…… ! )
? ? ?……驚いたな。気配を辿ってみれば本当にこの私が存在していたとは。
エルナトなっ ! ?  今の声は…… ! ?
アグラードなんだ ?  どうしたんだ、エルナト ?
エルナトまさか、今、話し掛けてきているのはルグ……『私』なのですか ?
ルグそうだ。私はお前だ。それとも『この時代の私』と答えたほうが良いか ?
エルナト……こちらの事情は全て把握しているようですね。
ルグああ。お前が巫の力を持つ者に接触したときからな。少し様子を見ているつもりだったが、お前はバロール様とは完全に切り離されてしまっている。
ルグそれ故に、本来の力を取り戻すことができずルグの槍の暴走も止めることはできていない。
エルナト……その通りです。だから、私はこの世界の鏡映点たちの想珠を集めて、アスガルドを破壊します。
ルグそうか……ならば、再び『ルグ』の力を受け取れると言ったら、どうする ?
エルナト! ?  まさか…… ! ?
ルグそうだ。『今の私』とお前の存在を同化させる。そうすれば、お前は再びルグとしての力を手に入れることができるだろう。
エルナト同化……。ですが、そんなことをすれば私の意識が消えてしまう可能性があります。
ルグ問題ない。その辺りは私の力で維持できるようにする。少々負担にはなってしまうがな。
エルナト何故、そこまでして……。
ルグ愚問だな。お前もわかっているだろう。私たちはバロール様との約束を果たす。そのために、この世界で巫を生み出す必要がある。
ルグどうやら、『お前』はそれに失敗したようだからな。同じルグとして、それを正すのも私の役目だ。
エルナト……信じていいのですね、あなたを。
ルグああ、勿論だ。
エルナト……わかりました。では、あなたの指示に従いましょう。
ルグならば、『精霊の封印地』まで来い。そこならば、私と繋がることができるはずだ。
エルナト……もう一人の私、ですか。
アグラードおい、エルナト。一体何があったんだ ?
エルナトアグラード殿……すみません、これはあなたにもちゃんと説明をしておいたほうがいいですね。
エルナトは、先ほどのルグとの会話をアグラードに話し情報を共有した。
アグラード……ルグの力が復活する。それは本当なのか ?
エルナトええ、少なくとも私自身が言っていることですから同化は可能なはずです。
アグラードしかし……。
エルナトええ、私も危険であることに変わりはないと思っています。ですが、今の私たちの状況を打破できるかもしれない。
エルナト何より、このまま『今』のルグがあのバルドに接触をしてしまう可能性があります。
アグラードそれを避けるためにも、ルグの指示には従ったほうがいいと……そう判断したのだな ?
エルナトええ。なので、これから私たちは精霊の封印地へ向かいます。それと、あなたには一つお願いがあります。
アグラード……なんだ ?
エルナトもし、ルグと同化した私が妙な動きを取るようならそのときは遠慮せずに、私を殺してください。
アグラード! ?
エルナト頼みましたよ、アグラード殿。
その後、エルナトとアグラードはルグの指示に従い精霊の封印地まで足を運んだのだった。
アグラードこの場所に、ルグがいるのか ?
エルナトいえ、おそらくまだニーベルングにいるはず。この場所にルグが降り立つためには【虹の橋】を架ける必要があります。
エルナト……そして、その【虹の橋】を架けるために私にコンタクトを取ってきた。そうでしょう、ルグ ?
ルグそうだ。そのためにまずは意識を同化させてお前の中に眠っている力を解放させる。
エルナト……わかりました。では、やってください。
ルグ……いくぞ。
エルナトぐっ…… !
アグラードエルナト ! ?
エルナトへ、平気です…… !ですが…… !
ルグ……しぶといな。まだ抵抗するか。
エルナトルグ…… !やはり、初めから私の意識を奪うことが目的だったのですね…… !
ルグそうだ。バロール様の命に従えない『出来損ない』を利用してやろうというのだ。むしろ感謝してほしいくらいだぞ。
エルナト……確かに、私は巫を作ることに失敗しました。あなたの言う通り、私はバロール様の鏡精としては失格なのかもしれません。
エルナト……ですが、今の私には守りたい世界が…… !大切な方たちがいるのですっ !ルグ !  あなたの力は私が奪います ! !
ルグ馬鹿なっ…… !鏡精としての力を失っているお前が何故…… ! ?
エルナト……デス・スター。『今』のあなたにはない力です。
ルグまずい…… !このままでは私のほうが…… !
エルナト逃がしませんっ !はあああああああああっっっっっっ ! ! ! !

Character12話 想い出を巡る物語 part2
一方、エルナトがルグとの接触を果たしていた頃コダマたちも今後の計画についてイクスたちに相談を持ち掛けていた。
また、ヘイズはミトスから指摘されたことでもあるエルナトが想珠を未来へ持ち帰ってしまった場合の危険性を話す。
これはコダマたちへ想珠を渡すことへのリスクを伝える内容でもあったのだがイクスたちはそのまま彼らに想珠を預けるという。
イクス他の鏡映点の人たちには、今と同じようにそれぞれ個人の判断に任せると思うけど少なくとも、俺はコダマたちに任せるよ。
セイリオスお前さん、最初に会ったときから思っちゃいたがその歳でなかなか肝が据わっているな。
コーキス当たり前だろ。なんたって俺のマスターなんだからな !
ウォーデンだが、そうなると想珠を奪われた鏡映点たちの安否には目を向けておいたほうがいいだろう。
バルドはい、メルクリア様もディスト博士の容体を気にしているようでしたからね。
アイリスごめんなさい、私たちのせいで他の人たちも巻き込んじゃって……。
ミリーナ大丈夫よ。それに、アイリスたちが来てくれなかったら私たちも対策が打てなかったんだから。
カーリャはい、ミリーナさまの言う通りですよ。アイリスさまたちも、どーんとカーリャたちを頼ってくれていいんですからね。
ヘイズふふっ、ありがとう、カーリャ。その愛らしい姿、本当に昔のエルナトにそっくりだ。
ヘイズ……どうにか、もう一度エルナトと話す機会を作りたいものだが……。
リワンナ……申し訳ありません。私が油断してしまったせいで……。
ヘイズ……いや、アグラードのことを伝えなかったのは私の判断ミスだ。謝罪が必要だというのならむしろそれは私のほうだろう。
リワンナ……いえ、ヘイズ様の判断は正しかったと思います。現に、あの場で私は動揺してしまい、すぐに彼女たちを追いかけることができませんでした。
リワンナきっと、まだ私には覚悟が足りなかったんです。その甘さが、今回の失態を生むはめになってしまいました。
アイリスリワンナさん……。
コダマなぁ、イクスさん。俺たちが戻ってくるまでの間に鏡映点が襲われたって話は来てないですよね ?
イクスえっ ?  あ、うん……。まだそんな情報は届いてないよ。
コダマそっか。なら、今回の陽動作戦で一応は俺たちのことを警戒してくれたんじゃないか ?
バルド・M確かに、エルナトも当初の計画通りに効率的な鏡映点の襲撃は控える可能性が高いでしょうね。
セイリオスだが、それはこちらからの接触も難しくなったことを意味する。結局、振りだしに戻っちまったというわけさ。
コダマ手厳しいな、セイリオス先生は。けど、大丈夫。新しい作戦ならいくらでも思いつくって。
セイリオスそうかい。なら、期待して待っておくよ。
コダマおう、任せとけって !んじゃ、リワンナさんもまた俺が新しい作戦を思いついたら、手伝ってくださいね。
リワンナコダマ……。……ええ、わかったわ。ちゃんと準備しておくわね。
イクスそれじゃあ、情報共有はこれくらいにしてコダマたちはゆっくり休んでくれ。こういうときこそ、休息も大事だからな。
カーリャそうですよ !  カーリャとコーキスで料理に必要な食材もいっぱいお運びしていますのでどんどん食べちゃってください !
コーキスとか言って、パイセンは自分が腹減ったから食べたいだけだったりして。
カーリャそ、そんなことないですよぅ !カーリャはみなさんに元気を出してもらおうと――
イクスな、なんだ、この光は ! ?
バルド・Mまさか…… ! !
コダマおい、バルド !  どこ行くんだよ ! ?
ヘイズ追いかけるぞ。あのバルドの焦りよう……きっと何かあったに違いない。
イクスあれは…… !  光の柱…… ! ?いや、違う…… !  あの柱は…… !
ウォーデン【虹の橋】か !
バルド・M馬鹿な…… !  何故このタイミングで…… !
コーキスなぁ、マスター。俺、あの柱の中心からすげえ嫌な感じがする…… !
イクス俺もだ……。けど、多分俺たちはあの力の正体を知っている……バロールに近い力だ。
ヘイズまさか…… !あの光の柱を生み出しているのはエルナトか ! ?
バルド・M……おそらく、そうでしょう。そして、【虹の橋】が架かってしまったということは同時に【虹の夜】が発生するということ……。
バルド・Mまもなく、この世界は滅びに向かってしまいます。私が経験した、あのときのように――

Character12話 想い出を巡る物語 part3
バルド・ミストルテンの言葉通り、各大陸から幻影種が大量発生しているという報告を受け、イクスたちはその対策のために一度セールンドへ戻ることとなった。
だが、【虹の夜】を止めるためには光の柱を生み出している存在、つまりはエルナトとの戦いはもはや避けられないところまで来てしまっていた。
ヘイズバルドの言う通り【虹の夜】の進行が加速している。もはや一刻の猶予も許されない状況だ。
コダマ……つまり、エルナトを止めるにしても俺たちはどちらかを選ばなくちゃいけないんですね。
コダマ未来を生かすのか、過去を守るのか……。
ヘイズ……すまない。私の見込みが甘かった。この世界の鏡士や鏡映点たちの知恵を借りれば全てを救う方法もあると考えていたが……。
セイリオス仕方のないことです。それに、俺たちはそれを承知でここに来たのですから。
ヘイズああ、だからこそ、お前たちに今一度問うておきたいのだ。どうか、お前たちの意見を聞かせてほしい。
リワンナ……私は、防人としてアスガルドで生まれる幻影種の脅威からイデアを守るのが使命です。
リワンナならば、たとえ未来が変わってしまおうともイデアを守るという任務に変わりはありません。
リワンナたとえ、この命を繋ぎ止めてくれた義兄と対立しようと私は己に課せられた使命を果たします。
アイリス……私は、正直ちょっと怖いんです。自分が消えるのは勿論だけど、大好きなお祖父ちゃんの孫として生まれたことも消えるのが悲しい……。
アイリスみんなは怖くないの ?過去を変えちゃったら、今まで出会った人たちも大切な人も消えちゃうかもしれないんだよ ?
セイリオス……そうだな。だが、俺たちが生き残るということはここで出会った鏡映点たち、そしてこれから生まれる多くの人間の命を切り捨てるってことになる。
セイリオス犠牲だらけの醜い世界を踏み台にして自分だけ綺麗でいようなんて思わない。それは俺がもっとも許せない生き方だ。
アイリスセイリオス……。そっか。うん……セイリオスはカッコいいよ。こんなときでも、自分の生き方を貫けるんだから。
セイリオス別に恰好つけちゃいないさ。俺はただ……最後までお前さんの大好きなお祖父ちゃんの姿でいたいだけさ。
アイリス…………えっ ?セイリオス……それって、どういうこと ?
セイリオス悪いね、今まで黙っちゃいたが、おそらくお前さんの祖父ってのは俺なんだ。
アイリスええっ ! ?  ちょ、ちょっと待って !そんなわけないじゃん !だって、セイリオスは……。
セイリオス俺も最初は半信半疑だったさ。だが、お前さんが歌っていた子守歌があっただろ ?あの子守歌の歌詞は、俺しか知らないはずなんだ。
バルド・Mですが、そうなるとあなたが私たちと行動しているのが大きなタイムパラドックスになってしまうのではないですか ?
セイリオスさてね。それは俺にもわからんさ。だが、アイリスと祖父の話をもっと詳しく聞けば俺との共通点はもっと出て来るだろうな。
コダマ…………。
アイリスセイリオスが私のお祖父ちゃん……。ふふっ、可笑しいな。ビックリしたはずなのになんだか納得しちゃった。
セイリオス信じてくれるかい、可愛い孫よ。
アイリスもう、セイリオスってば。けど、そっか……。私の大切な人もこんな近くにいてくれたんだ。
アイリスそうだよね……今までも、私はたくさんの人たちを救いたかった。それがちゃんと、今の私たちにはできるんだよね。
アイリス……うん、私、決めたよ。この世界の人たちを救う。自分たちの思い出まで消えちゃうのは怖いけどきっと、それが正しい道だから……。
コダマなぁ、アイリス。だったらさ、せめて思い出としてアイリスの歌はこの世界に残していかないか ?
セイリオスそうだな。お前さんの歌声まで消えちまうのはもったいない。
バルド・Mならば、ミリーナさんに歌を継いでもらうというのはいかがでしょうか ?  彼女の歌声もそれは綺麗なものだと伺っています。
アイリスミリーナさんかぁ。そうだね、あの人なら私の歌も大切にしてくれると思う。次に会ったとき、頼んでみるよ。
ヘイズああ、是非そうしてくれ。これからも、この世界では多くの子が生まれる。お前の子守歌も必要になってくるだろう。
ヘイズでは、他の者はどうだ ?バルド、お前の目的はウォーデンたちの生存だったな。
バルド・Mはい、私はあなたたちが過去改変をしないのであればウォーデン様とメルクリア様を未来の世界へ連れて行くつもりでした。
バルド・Mですが、あなたたちが過去を変えると言うのなら私はあなたたちに最後まで力を貸します。たとえ、この身体が幻影種であろうと。
リワンナ幻影種…… !  バルド、あなたは人間ではなかったのですか ?
コダマ話していいのか、バルド ?
バルド・Mええ、もう隠す必要もないでしょう。私はウォーデン様たちを助けたいという想珠から生まれた存在。それをただ、今ここで叶えるだけです。
ヘイズ……わかった。では、最後はコダマ。お前の意見を聞こう。
コダマ俺はみんなと同じですよ。エルナト一人を犠牲になんてしない。この世界を守って、幻影種のいない世界を作る。
コダマそれに、ヘイズ様もそう決めてたんですよね ?この世界に来たときから、ずっと。
ヘイズコダマ……気付いていたのか ?
コダマへへっ、そりゃあ気付きますって。だから、ずっと俺に『責任』を持つことを説いてくれてたんですよね ?
ヘイズ……そうだ。私は誰かが苦しむ世界を生み出したくはなかった。だが、それは同時にお前たちの存在を失うことになるかもしれない。
ヘイズ果たして、そんな私を許してくれるのか不安だったのだ。
コダマ……大丈夫ですよ。ヘイズ様はいつも俺たちを守ってくれてたんですから。だから、俺も必ずヘイズ様の望みを叶えますよ。
ヘイズコダマ…… ?
コダマよしっ !  んじゃ、全員一致ってことでいいよな。早くイクスさんたちにも連絡して、俺たちでエルナトを止めに行こうぜ。
アイリスかるっ !  コダマ、あんたにはもうちょっと緊張感ってものがないの ?
コダマいいじゃん、なんかこっちのほうが俺たちっぽいし変に気負ったって仕方ないだろ。
ヘイズ……すまない、コダマ。私からお前に少し話があるのだが他の者は席を外してくれないか ?
アイリスえっ、でも、ヘイズ様。私たちもすぐに出発したほうが……。
セイリオスなら、俺たちも準備があるだろ。ヘイズ様、その間にコダマから話を聞き出しておいてください。
ヘイズああ、任せておけ。
コダマあの、ヘイズ様。俺だけに話って、一体なんですか ?
ヘイズ単刀直入に聞く。コダマよ、何か策を考えているな ?
コダマあー、やっぱりバレてました ?多分、セイリオスも気付いてるんだろうなぁ。
コダマけど、すみません。今はまだ話せないんです。俺もまだちゃんと頭の整理がついてないというか上手く説明できそうにないですから。
ヘイズ……そうか。だが、これだけは言っておくぞ。お前も……エルナトのように自分一人が犠牲になるような道は取ってくれるなよ。
ヘイズお前たちは、私の可愛い子供たちなのだからな。
コダマはい、ちゃんとわかっています。それに、ヘイズ様のことを悲しませるような真似は絶対にしませんよ。
コダマ……ただ、俺はエルナトと違って欲張りなんです。大事なものをどちらか選べって言われても俺は諦めるつもりはありません。
コダマどっちも大事なものなら、どっちも救えばいい。ヘイズ様もそれを望んでいるんですよね ?
コダマだったら、俺はあなたの願いを叶えます。そのために、俺は死神騎士になったんですから。
ヘイズコダマ……。
コダマ行きましょう。みんなが苦しんだ物語を終わらせるために。そして……俺たちの物語を終わらせないために。

Character12話 想い出を巡る物語 part4
【虹の橋】が発生したことにより、一刻の猶予もない状況に追い込まれてしまったコダマたちは一度イクスたちがいるセールンドに集まっていた。
フィリップ彼女たちがいる場所は精霊の封印地と呼ばれる場所だ。そこまではケリュケイオンを使って君たちを送り届けるよ。
イクスごめん……本当は俺たちも力になれればよかったんだけど……。
コーキス仕方ねえよ。俺やマスターはバロールの力をもろに受けちまうんだろ ?
フィリップああ。今、精霊の封印地に近づけばイクスたちの身体にも影響が出てしまう可能性がある。
イクスはい、わかってはいるつもりです。でも、俺たちの世界で起こっていることなのに何もできないことが悔しくて……。
ヘイズそんなことはない。お前たちには随分と力を貸してもらっている。
ヘイズ現に【虹の夜】が進んでいる状況だというのにお前たち鏡士や鏡映点たちが幻影種から世界を守ってくれているのだからな。
セイリオス何事も適材適所ってもんがある。それに、この状況を作り出しているのがエルナトだというのなら、止めるのも俺たちの役目さ。
バルド・Mですが、もし本当にエルナトがこの【虹の夜】を引き起こしているのなら、おそらく鏡精ルグとしての力を取り戻したのでしょう。
リワンナそれに、きっとアグラードも同行しているはず……。一筋縄ではいかないでしょう。
コダマだったら、俺たちのデス・スターの力をもっと強くすることとかってできたりしない ?まだ預かってない鏡映点の想珠をもらうとか。
コダマ前にバルドがナーザ……ウォーデンの想珠を使ったとき、凄い力を使えてただろ ?みんなの想珠の力を借りられたら――
アイリス無理だよ。ここにいる人たちの想珠はもう私たちが預かってるし、他の鏡映点の人たちに会いに行くにも時間が……。
イクス想珠を集める……。それって、俺たちにもできたりしないかな ?
コダマイクスさんたちが ?いや……想珠を取り出すことができるのは俺たちみたいな死神騎士じゃないと……。
ヘイズ…………いや、可能かもしれんぞ !なにせ、鏡士は『心』を具現化することに長けた者たちだ。
バルド・M成程、想珠がその者たちの『想い』を形にしたものだというのなら、鏡士たちでも扱える可能性がありますね。
ヘイズああ、実際、イクスは我々のデス・スターの力を使いこなせている。やり方さえ覚えてもらえればすぐにコツは掴めよう。
リワンナですが、例え想珠の回収ができたとしてもそのときにはもう我々はこの場に残ってはいません。
イクスそのことなんだけど……フィリップさん。想珠のエネルギーをカレイドスコープで投射できたりしないですか ?
フィリップカレイドスコープに……そうか !想珠のエネルギーを代用して投射することができれば…… !
イクスはい。俺たちがこの場に残っていても精霊の封印地にいるコダマたちに集めた想珠を届けることができるかもしれません。
ヘイズならば、私もそのカレイドスコープとやらを確認させてくれ。もし改良が必要な場合でも私の持つ知識が役に立つかもしれない。
フィリップわかりました。では、僕とヘイズさんは一度カレイドスコープの間へ向かいましょう。
その後、ヘイズとフィリップはカレイドスコープの改良に成功し、想珠の投射を可能にした。
一方、イクスはコダマたちからの助言を受けた結果想珠を取り出す方法を習得したのだった。
コダマよし、これで俺たちの準備は整ったな。イクスさん、それに他のみなさんも後のことはよろしくお願いします。
ミリーナええ。私たちもみんなを待ってるわ。それに、アイリスから素敵な歌を教えてもらったお礼がまだできていないもの。
アイリスミリーナさん……うん、ありがとう。
コダマじゃあ、なんか美味いご飯を用意しといてください。そしたら、喜んで帰ってきますから。
イクスコダマ……その言葉、信じていいんだな ?
コダマ……はい。任せてください !

Character12話 想い出を巡る物語 part5
ケリュケイオンで精霊の封印地に上陸したコダマたち。【虹の橋】が生み出されたとされる場所まで向かうと辺りは異様な空気に包まれていた。
バルド・M感じます……気を付けてください。間違いなくエルナトは近くにいます。
アイリス! ?  見て !  あそこにいるのって…… !
コダマエルナト ! ?
セイリオス……反応がない。こちらには気付いていないのか ?
アグラードああ、今のエルナトはルグとの同化を果たすために外部からの干渉を遮断しているんだ。
リワンナ……アグラード。同化するとは一体どういうことですか ?
アグラード言葉通りだ。エルナトは今の時代のルグ……つまり自分自身と同化することによって本来の力を取り戻そうとしている。
バルド・M……その結果、【虹の夜】の影響が広がってしまったのですね。
アグラードそうだ。だが、ルグの力をエルナトが手に入れればもう想珠は必要ない。彼女の力だけでアスガルドを破壊し、クロノスの柱も制御することができる。
アイリス駄目だよ !  それじゃあ、この世界の人たちを見捨てることになっちゃう !
アグラードだが、俺たちの世界は助かる !俺は……これ以上、自分の大切な者たちを失いたくはない。
リワンナ……アグラード、それがあなたの答えなの ?
アグラードああ、たとえ、お前から失望されようとな。
リワンナ……失望などしないわ。それが、あなたの覚悟だというのなら。
リワンナだけど、私も覚悟を持ってここに来たのです。アグラード、これが最後の忠告よ。そこを退きなさい。
アグラード従えません。
リワンナそう……だったら……無理にでも押し通るわ !
アグラード……なかなかいい攻撃だ。だが……まだ遅いっ !
リワンナくっ…… ! !
アグラードリワンナ、お前に戦い方を教えたのは俺だ。その程度では、何度やっても結果は同じだぞ。
リワンナ確かにその通りです。私はあなたから多くのことを学びました。戦い方も……私自身の生きる道も……。
リワンナだからこそ、あなたにだけは負けるわけにはいかないのです !  あなたが繋ぎ止めてくれたこの命を使ってでも !
アグラード真正面からだと ! ?
リワンナはああああああああっっっっ ! ! ! !
アグラード……馬鹿者。そんな力任せな攻撃を避けられないとでも思ったか ! ?
アイリスリワンナさん !  危ない !
アグラードリワンナ !  何度も言ったはずだ !
リワンナ & アグラード「左後方にできる隙を直せとな !」
アグラード! ?  しまっ―― ! !
リワンナこれで終わりよ、アグラード ! !
アグラード……かはっ !
バルド・M勝負あり、ですね。
アグラード……図ったな、リワンナ。いつからそんな器用な戦い方ができるようになった ?
リワンナ……あなたならこうすると信じただけよ。私だって、あなたの戦いをずっと見て来たのだから。
リワンナごめんなさい、お義兄様……。本当は戦うようなことはしたくなかった……。だけど、これが私の選んだ道だから……。
アグラード気にするな。ただ、お前の意志が俺よりも強かったということさ。
アグラード成長したな、リワンナ。お前はお前の信じた道を行け。俺にはもう、それを止める力はない……。
リワンナ……お義兄様。
コダマくっ……今度はなんだ ! ?
エルナト……ヘイズ様。やはり来てしまったのですね。
ヘイズエルナト ! ?  目を覚ましたのか ! ?いや……お前は私たちの知っているエルナトなのか ?
エルナト……ええ。どうやらこの時代のルグは私を意識ごと支配しようとしたようでしたが、デス・スターの力で逆に彼女の意識を取り込むことに成功しました。
エルナトなので、もう私の邪魔をしないでください。このまま未来へ帰り、アスガルドを破壊します。
コダマ駄目だ !  それじゃあ結局お前が死んじまうんだろ !俺たちはそれを止めるために来たんだ !
エルナトまだわからないのですか !私たちの世界を守るためにはもうその方法しかないんです !
エルナト私一人の犠牲で救われるならそれでいいじゃないですか !どうしてそれがわからないのですか !
コダマいいわけないだろ ! !誰がそんなこと頼んだんだよ ! !
エルナト! ?
コダマもし、お前が世界を救ったとしても俺たちはずっとお前を失ったことを思い出して生きなきゃならないんだぞ ?
セイリオス俺たちはそんな醜い生き方をするつもりはないんだよ、エルナト。
バルド・Mエルナト、あなたが大切な人たちを守りたいという想いは私も理解できます。ですが、それを許さない者たちがいることも忘れてはなりません。
アイリスそうだよ、私たちは誰も失わないために戦ってきたんでしょ ?
リワンナその中に、あなた自身も含まれているんです。
ヘイズエルナト……もう止めるんだ。私のところへ戻ってこい。
エルナト嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ ! !私が……私が助けないと駄目なんですっ !あなたたちが存在する世界を…… ! !
コダマ先輩、ちょっと我が儘が過ぎるぜ。そこまで駄々をこねるなら、俺たちを倒してから好きにしてくれよ !
エルナトわかりました。ならば、もう容赦はしません !コダマ……覚悟してくださいっ !

Character12話 想い出を巡る物語 part6
エルナト……くっ !
コダマ先輩、そろそろ諦める気になってくれましたか ?
エルナト……まだです !  まだ、私は…… !
バルド・M皆さん、気を付けてくださいっ !エルナトがルグの力を解放するつもりです !
アイリス嘘っ ! ?  じゃあ、今まで本気じゃなかったってこと ?
エルナト今度こそ……あなたたちには諦めてもらいます ! !
ヘイズエルナト……お前の力がどれほどであろうと私たちが止めてみせる !

Character12話 想い出を巡る物語 part7
ヘイズエルナト、もう終わりにしよう。
エルナト駄目です…… !  私は……私は…… ! ?
エルナトう、ううっ ! ?  ああああああああっっっっっ ! ! ! !
ヘイズエルナト ! ?  どうしたんだ ! ?
エルナト ?くっ、はははははっ。油断したわ。まさか、出来損ないの『私』に意識を奪われてしまうとはな。
バルド・Mお前は、まさか…… ! ?
エルナト ?ほう、我がバロール様の巫……。いや、違うな。そうか、お前は『幻影種』と呼ばれる存在だったか ?
コダマお前……エルナトじゃないな ?
ルグ我が名はルグ。バロール様より生み出されし鏡精だ。
ルグお前たちが『エルナト』と呼ぶ者の意識は私が取り込んだ。もう二度と表に姿を出すことはない。
ヘイズなんだと ! ?
ルグだが、安心しろ。私が今から本物のバロール様の巫を生み出しにいく。そうすれば【虹の夜】も止まりこの世界から幻影種も消えてなくなるはずだ。
バルド・M待ちなさい !  あなたがバロールの巫を生み出せるという保証はどこにもない。それどころか、また同じことを繰り返すだけです。
ルグそのような失敗をするものか。それに、今はこの『エルナト』の力も手に入れている。私はバロール様の望みを叶えなければならない。
バルド・M……相変わらず、こちらの話に聞く耳を持ちませんか。
ルグお前たちの話など知ったことか。私はバロール様の命に従うのみ !
コダマくそっ !  こっちの先輩は全然可愛げがねえな !
セイリオス先ほどまでより明らかに力は上だ。こりゃあ一筋縄ではいかないぞ。
コダマわかってるさ。けど、多分もうすぐ――
イクスコダマ !  遅くなってごめん !こっちの準備は終わったぞ !
コダマ待ってましたよ、イクスさん !悪いんですけど、今俺たち超ピンチなのですぐにやっちゃってください !
イクスわかった !  それじゃあ、いくぞ。――照準、完了。カレイドスコープ、起動 ! !
ルグなんだ ! ?  この力の流れは…… !
コダマありがとう、みんな…… ! !あなたたちの想いは……ちゃんと俺たちが受け取る !
コダマへへっ、この味は今までで一番いいや。どこか温かくて、なんだか懐かしい感じもする。
ルグ想珠か……。だが、その程度ではまだ私の力には及ばないな。
コダマそうか ?  俺にはあんたが強がっているようにしか見えないぜ ?
ルグ小癪な…… !ならば、すぐに証明してやろう !
リワンナみんな !  下がって !私の後ろに隠れて ! !
リワンナぐっ…… !
ルグふっ !  随分と頑丈な身体だな。だが、いつまで持ちこたえられるかな !
ヘイズリワンナ !
リワンナ私は、問題ありません…… !あなたたちのことは、私が必ず守ります !
アイリスでも、このままじゃあ……。
コダマ大丈夫だ、俺に考えがある。きっと、この方法なら『エルナト』を止めることができると思うんだ。
セイリオスお前さん、また何か閃いたんだな。
コダマああ。けど、ぶっちゃけ成功率はそんなに高くないかも。五割……いや、四割くらいかな ?
アイリスええっ、なんかすっごい微妙……。
セイリオスだが、俺の命を預けるには十分な数字だ。俺はお前を信じるぜ、親友。
コダマサンキュー、セイリオス先生。
アイリスそうだね、今までもなんだかんだコダマの作戦って上手くいってきたし私も乗ってあげる。
ヘイズコダマ、お前の言う通りにすれば彼女を……エルナトを救えるのだな ?
コダマはい。俺を信じてください、ヘイズ様。
ヘイズわかった。では、私もコダマの言う通りにしよう。頼んだぞ、コダマ。私の可愛い子供を助けてやってくれ。
ルグ助けるだと ?  そのような必要はない。何故なら、もう『エルナト』などという者は存在しないのだからなっ !
バルド・Mそうですか。ですが、私はあなたがいる以上主を守るために戦わねばなりませんっ !
セイリオスアイリス、俺たちもバルドに続くぞ !
アイリスうんっ !
ルグ無駄だと何度言えばわかるっ !お前たちの攻撃など…… !
アグラードはああああああっっ ! ! ! !
ルグなにっ ! ?  何故お前まで…… ! ?
アグラード生憎、エルナトから何かあれば俺がお前を止めるように頼まれていてな !  その約束を果たしているだけだ !
ルグくっ、また邪魔者が…… !
コダマヘイズ様、今です !
ヘイズああ、しっかり掴まっていろよ、コダマ !
ルグまさか、この者たちは囮…… !本当の狙いは…… !
コダマやっと近づけたぜ、ルグ !
ルグお前、何を…… ! ?
コダマどうやら、俺には鏡士の力があるみたいでさ。前もバルドの心核ってやつに触れたんだよ。
コダマだから、今からあんたの中に残っているはずのエルナトの意識を無理やり叩き起こす。そうすれば、あんたの意識はどうなるんだろうな ?
ルグやっ、やめろ !  そんなことをすれば私が…… ! !
コダマおっ、当たりか。なら、遠慮なくやらせてもらうぜ。
コダマ聞こえるか、エルナト ! !意地張ってないで、いい加減帰ってこい ! !
ルグやめろおおおおおおおっっっっっっ ! ! ! !

Character12話 想い出を巡る物語 part8
エルナトううっ、痛い……痛いよぅ…… !嫌だ……死にたくない……消えたくない…… !
エルナト誰か……誰か……助けて………… !
? ? ?――エルナト、大丈夫だ。
エルナト…………だれ ?
ヘイズひとりでよく頑張ったな、エルナト。
エルナト……ヘイズ、さま ?
ヘイズだが、もういいんだ。後のことは、私たちに任せろ。
エルナト待って、ください…… !だめ……です…… !私は……あなたを…… !
エルナトヘイズ……さまっ ! !
ヘイズエルナト…… !  良かった、目を覚ましたのだな。コダマがお前とルグの意識を切り離してくれたのだ。
コダマ感謝してくれよ、先輩。そうやってヘイズ様に膝枕してもらってるのも俺のおかげなんだからな。
エルナトコダマ…… !  なんてことを…… !私がルグの力を失ったということは……。
バルド・Mええ、この世界での【虹の夜】は止まりこれ以上、幻影種が生み出されることはない。今いる幻影種もいずれ駆逐される。つまり――
コダマあー、やっぱこうなるのか。
エルナトそんな…… !  みんなが……ヘイズ様が消えてしまう…… !
ヘイズ……安心しろ、エルナト。たとえ、ここで私たちが消えてもお前たちと過ごした日々を、私は決して忘れはせぬ。
ヘイズそして、この想いがある限り私たちが完全に消えることはない。そうだろ、コダマ ?
コダマはい、後は俺に任せてください。アグラードさん、ちょっといいですか ?
アグラードなんだ ?
コダマその、アグラードさんが持ってるイクスさんの魔鏡を貸してもらえないですか ?それで、ちょっと試してみたいことがあるんです。
アグラードあの祭壇にあった鏡のことか ?だが、こんなものを何に使うんだ。
コダマ実は、気になっていたことがあるんです。俺、祭壇で誰かの声が聞こえて、その声ってずっとイクスさんなのかなって思ってたんですけど……。
コダマでも、多分違うんです。あれって、もしかしたらバロールって奴の声なんじゃないかと思って。
エルナトバロール様 ! ?  ですが、どうしてコダマが……。
コダマさあな。けど、これも俺が鏡士の血を引いてることに関係してるのなら、その魔鏡を使えばちょっと神様に頼み事できると思ってさ。
コダマで、目を覚ましたところ悪いんだけどエルナトも手伝ってくれね ?多分、そのほうが確実だと思うからさ。
エルナトまさか……切れてしまった私とバロール様のラインを再び繋げようというのですか ?
コダマ駄目かな ?  ぶっちゃけ、今のエルナトって意識が戻っただけで、身体自体の力はルグのままだと思うんだけど……。
エルナト……確かに、この時代のルグの意識はまだ私の中に存在しています。もしかしたら私たちの声もバロール様に届くかもしれません。
コダマよし、ならやってみようぜ !魔鏡の力とエルナトの意識……そして、俺の鏡士の力を使って…… !
コダマ――おーい、聞こえるか、バロール !悪いけど、時間がないから手短に話すぞ !
コダマ俺は、ヘイズ様たちが !みんながいた世界を『想像』するっ !だから、あんたがその世界を『創造』してくれ !
セイリオス……コダマ、まさかお前が考えていたことはこのことなのか ?
コダマああ、バロールってのは神様でこの世界を創ったんだろ ?だったら、俺たちがいた世界も創ってもらおうぜ。
ヘイズふ、ふははははははははっ !コダマ、お前は本当に突拍子もないことを考えるやつだ。
エルナトですが……バロール様にもう世界を創る力は……。
コダマだから、俺の力も魔鏡を通して残そうとしたんだけどやっぱ無理かなぁ。
セイリオスいいんじゃないか ?少しでも可能性があるのなら、抗うのがお前らしいよ。
アイリスそうだね。諦めが悪いのがコダマのいい所だから。
リワンナ……ですが、ここではそろそろ別れの時間のようですね。
コダマリワンナさん……ありがとう。最後までリワンナさんが俺たちを守ってくれて心強かったよ。
リワンナ私こそ、感謝しているわ。それに、私をそんな風にしてくれたのはアグラード……お義兄様のおかげです。
アグラード……ふっ、最後まで義兄らしいことはできなかったがお前を救えたのなら本望だ。
リワンナええ、また会いましょう、お義兄様……。
アイリス……ねえ、セイリオス。もし、本当に私たちがまた会えるのなら今度はどっちのセイリオスと会うのかな ?
セイリオスさあ、どうだろうな ?  だが、どっちにしても俺はお前の自慢の祖父さんでいるつもりだ。
アイリス……うん、セイリオスならきっと大丈夫だよ。だから、また素敵な歌を教えてね、約束だよ。
セイリオスやれやれ、これは責任重大だな。可愛い孫にも会いたいところだが、そうなるとコダマの指導係の席が空いちまうのは心配だ。
コダマだったら、どっちもやってくれよ。お祖父ちゃんになったセイリオスが上司でも俺は大歓迎だぜ。
セイリオスおいおい、あまり老人を働かせるもんじゃないぞ。……だが、それも悪くないな。コダマ、お前と出会えて、本当に楽しかったぜ。
バルド・M私は……たとえ世界が新しくなったとしても再び生まれることはないでしょう。正真正銘、ここでお別れです。
コダマうん……だけど、バルドさんのことは俺たちがちゃんと覚えてるよ。それに、この世界の人たちもさ。
バルド・Mと、言いますと ?
コダマあのさ、バルドさんの持ってる幻想灯だけど預かってたみんなの想珠を返すときに俺たちの想珠も少しずつ、みんなに与えてほしいんだ。
バルド・M……成程、そうすれば彼らにも私たちの想いは残る。わかりました。では、これが最後の私の役目です。――幻想灯を掲げます !
バルド・M……本当に、ありがとうございました。主たちを助けられたのは、あなた方のお陰です。どうか、この先もあなたたちに幸あらんことを――
ヘイズ……最後に残ったのは私たちか。
エルナトヘイズ様……ごめんなさい……。私のせいで…… !
ヘイズ謝るな。それに、コダマも言っていただろう。私たちは、きっとまた会える。お前たちが、私を想ってくれる限りな。
ヘイズよく頑張ってくれた。流石は私の自慢の子供たちだ。最後に、お前たちの顔をよく見せておくれ。
コダマヘイズ様……俺、ヘイズ様に会えて本当に幸せでした。だから、また必ず会いに行きます。たとえ、この先にどんな未来が待ってたとしても。
ヘイズああ、楽しみにしていよう。それと、これは私からお前たちへの贈り物だ。
ヘイズ私からの祝福のキスだ。では、待っているぞ。私の可愛い子供たち――
その日、ティル・ナ・ノーグの空に光が降り注ぎ以後、世界中で起きていた幻影種の発生は報告されなくなった。
そしてその後、コダマたちの行方を知る者は誰もいなかったという。
だが、コダマやヘイズら未来から来た死神騎士たちが確かに存在していた証は、鏡映点の心に残った。彼らの思い出は『刻み込まれた』のだ。
未来のことは誰にもわからない。だが――
そう、これは想い出を巡る物語。全てが失われても、心に刻み込まれた想い出だけは消えないことを証明する、あなたの物語。