| Character | 12話 想い出を巡る物語 part1 |
| | アグラードの介入により、コダマたちが仕掛けた陽動作戦から難を逃れたエルナトたち。 |
| | だが、自分たちの狙いを見破られていることを知ったエルナトたちは、今後の計画について改めて話し合うことにしたのだった。 |
| アグラード | ――どうする、エルナト ?今回は上手く逃げることはできたが次もこうなるとは限らんぞ。 |
| エルナト | ……ええ、このまま長寿の鏡映点たちを優先するのは危険かもしれません。 |
| アグラード | だが、数でカバーするには俺たち二人では想珠集めにも限界がある。ましてや、今以上に警戒されてはな。 |
| エルナト | わかっています。それに、既にこの世界でも【虹の夜】が起こってしまった可能性があります。 |
| アグラード | なにっ ! ? どういうことだ ! ? |
| | エルナトは、以前のバルド・ミストルテンとの接触によってこの世界でも【虹の夜】と似た現象が起こってしまっていることをアグラードに話した。 |
| アグラード | ……つまり、この世界の鏡映点たちもいずれは幻影種になってしまうということか ? |
| エルナト | ええ。既に自分と同じ姿をした幻影種と出会っている鏡映点もいるかもしれません。 |
| エルナト | コダマたちが鏡映点にデス・スターの力を与えているおかげで被害は最小限に留まっているようですが、時間がないのは同じです。 |
| エルナト | (いざとなれば、今まで集めた想珠だけでアスガルドの破壊を……。いえ、それはあまりにもエネルギーが不足している……) |
| エルナト | (せめて、私に『ルグ』としての力が残っていれば…… ! ) |
| ? ? ? | ……驚いたな。気配を辿ってみれば本当にこの私が存在していたとは。 |
| エルナト | なっ ! ? 今の声は…… ! ? |
| アグラード | なんだ ? どうしたんだ、エルナト ? |
| エルナト | まさか、今、話し掛けてきているのはルグ……『私』なのですか ? |
| ルグ | そうだ。私はお前だ。それとも『この時代の私』と答えたほうが良いか ? |
| エルナト | ……こちらの事情は全て把握しているようですね。 |
| ルグ | ああ。お前が巫の力を持つ者に接触したときからな。少し様子を見ているつもりだったが、お前はバロール様とは完全に切り離されてしまっている。 |
| ルグ | それ故に、本来の力を取り戻すことができずルグの槍の暴走も止めることはできていない。 |
| エルナト | ……その通りです。だから、私はこの世界の鏡映点たちの想珠を集めて、アスガルドを破壊します。 |
| ルグ | そうか……ならば、再び『ルグ』の力を受け取れると言ったら、どうする ? |
| エルナト | ! ? まさか…… ! ? |
| ルグ | そうだ。『今の私』とお前の存在を同化させる。そうすれば、お前は再びルグとしての力を手に入れることができるだろう。 |
| エルナト | 同化……。ですが、そんなことをすれば私の意識が消えてしまう可能性があります。 |
| ルグ | 問題ない。その辺りは私の力で維持できるようにする。少々負担にはなってしまうがな。 |
| エルナト | 何故、そこまでして……。 |
| ルグ | 愚問だな。お前もわかっているだろう。私たちはバロール様との約束を果たす。そのために、この世界で巫を生み出す必要がある。 |
| ルグ | どうやら、『お前』はそれに失敗したようだからな。同じルグとして、それを正すのも私の役目だ。 |
| エルナト | ……信じていいのですね、あなたを。 |
| ルグ | ああ、勿論だ。 |
| エルナト | ……わかりました。では、あなたの指示に従いましょう。 |
| ルグ | ならば、『精霊の封印地』まで来い。そこならば、私と繋がることができるはずだ。 |
| エルナト | ……もう一人の私、ですか。 |
| アグラード | おい、エルナト。一体何があったんだ ? |
| エルナト | アグラード殿……すみません、これはあなたにもちゃんと説明をしておいたほうがいいですね。 |
| | エルナトは、先ほどのルグとの会話をアグラードに話し情報を共有した。 |
| アグラード | ……ルグの力が復活する。それは本当なのか ? |
| エルナト | ええ、少なくとも私自身が言っていることですから同化は可能なはずです。 |
| アグラード | しかし……。 |
| エルナト | ええ、私も危険であることに変わりはないと思っています。ですが、今の私たちの状況を打破できるかもしれない。 |
| エルナト | 何より、このまま『今』のルグがあのバルドに接触をしてしまう可能性があります。 |
| アグラード | それを避けるためにも、ルグの指示には従ったほうがいいと……そう判断したのだな ? |
| エルナト | ええ。なので、これから私たちは精霊の封印地へ向かいます。それと、あなたには一つお願いがあります。 |
| アグラード | ……なんだ ? |
| エルナト | もし、ルグと同化した私が妙な動きを取るようならそのときは遠慮せずに、私を殺してください。 |
| アグラード | ! ? |
| エルナト | 頼みましたよ、アグラード殿。 |
| | その後、エルナトとアグラードはルグの指示に従い精霊の封印地まで足を運んだのだった。 |
| アグラード | この場所に、ルグがいるのか ? |
| エルナト | いえ、おそらくまだニーベルングにいるはず。この場所にルグが降り立つためには【虹の橋】を架ける必要があります。 |
| エルナト | ……そして、その【虹の橋】を架けるために私にコンタクトを取ってきた。そうでしょう、ルグ ? |
| ルグ | そうだ。そのためにまずは意識を同化させてお前の中に眠っている力を解放させる。 |
| エルナト | ……わかりました。では、やってください。 |
| ルグ | ……いくぞ。 |
| エルナト | ぐっ…… ! |
| アグラード | エルナト ! ? |
| エルナト | へ、平気です…… !ですが…… ! |
| ルグ | ……しぶといな。まだ抵抗するか。 |
| エルナト | ルグ…… !やはり、初めから私の意識を奪うことが目的だったのですね…… ! |
| ルグ | そうだ。バロール様の命に従えない『出来損ない』を利用してやろうというのだ。むしろ感謝してほしいくらいだぞ。 |
| エルナト | ……確かに、私は巫を作ることに失敗しました。あなたの言う通り、私はバロール様の鏡精としては失格なのかもしれません。 |
| エルナト | ……ですが、今の私には守りたい世界が…… !大切な方たちがいるのですっ !ルグ ! あなたの力は私が奪います ! ! |
| ルグ | 馬鹿なっ…… !鏡精としての力を失っているお前が何故…… ! ? |
| エルナト | ……デス・スター。『今』のあなたにはない力です。 |
| ルグ | まずい…… !このままでは私のほうが…… ! |
| エルナト | 逃がしませんっ !はあああああああああっっっっっっ ! ! ! ! |
| Character | 12話 想い出を巡る物語 part2 |
| | 一方、エルナトがルグとの接触を果たしていた頃コダマたちも今後の計画についてイクスたちに相談を持ち掛けていた。 |
| | また、ヘイズはミトスから指摘されたことでもあるエルナトが想珠を未来へ持ち帰ってしまった場合の危険性を話す。 |
| | これはコダマたちへ想珠を渡すことへのリスクを伝える内容でもあったのだがイクスたちはそのまま彼らに想珠を預けるという。 |
| イクス | 他の鏡映点の人たちには、今と同じようにそれぞれ個人の判断に任せると思うけど少なくとも、俺はコダマたちに任せるよ。 |
| セイリオス | お前さん、最初に会ったときから思っちゃいたがその歳でなかなか肝が据わっているな。 |
| コーキス | 当たり前だろ。なんたって俺のマスターなんだからな ! |
| ウォーデン | だが、そうなると想珠を奪われた鏡映点たちの安否には目を向けておいたほうがいいだろう。 |
| バルド | はい、メルクリア様もディスト博士の容体を気にしているようでしたからね。 |
| アイリス | ごめんなさい、私たちのせいで他の人たちも巻き込んじゃって……。 |
| ミリーナ | 大丈夫よ。それに、アイリスたちが来てくれなかったら私たちも対策が打てなかったんだから。 |
| カーリャ | はい、ミリーナさまの言う通りですよ。アイリスさまたちも、どーんとカーリャたちを頼ってくれていいんですからね。 |
| ヘイズ | ふふっ、ありがとう、カーリャ。その愛らしい姿、本当に昔のエルナトにそっくりだ。 |
| ヘイズ | ……どうにか、もう一度エルナトと話す機会を作りたいものだが……。 |
| リワンナ | ……申し訳ありません。私が油断してしまったせいで……。 |
| ヘイズ | ……いや、アグラードのことを伝えなかったのは私の判断ミスだ。謝罪が必要だというのならむしろそれは私のほうだろう。 |
| リワンナ | ……いえ、ヘイズ様の判断は正しかったと思います。現に、あの場で私は動揺してしまい、すぐに彼女たちを追いかけることができませんでした。 |
| リワンナ | きっと、まだ私には覚悟が足りなかったんです。その甘さが、今回の失態を生むはめになってしまいました。 |
| アイリス | リワンナさん……。 |
| コダマ | なぁ、イクスさん。俺たちが戻ってくるまでの間に鏡映点が襲われたって話は来てないですよね ? |
| イクス | えっ ? あ、うん……。まだそんな情報は届いてないよ。 |
| コダマ | そっか。なら、今回の陽動作戦で一応は俺たちのことを警戒してくれたんじゃないか ? |
| バルド・M | 確かに、エルナトも当初の計画通りに効率的な鏡映点の襲撃は控える可能性が高いでしょうね。 |
| セイリオス | だが、それはこちらからの接触も難しくなったことを意味する。結局、振りだしに戻っちまったというわけさ。 |
| コダマ | 手厳しいな、セイリオス先生は。けど、大丈夫。新しい作戦ならいくらでも思いつくって。 |
| セイリオス | そうかい。なら、期待して待っておくよ。 |
| コダマ | おう、任せとけって !んじゃ、リワンナさんもまた俺が新しい作戦を思いついたら、手伝ってくださいね。 |
| リワンナ | コダマ……。……ええ、わかったわ。ちゃんと準備しておくわね。 |
| イクス | それじゃあ、情報共有はこれくらいにしてコダマたちはゆっくり休んでくれ。こういうときこそ、休息も大事だからな。 |
| カーリャ | そうですよ ! カーリャとコーキスで料理に必要な食材もいっぱいお運びしていますのでどんどん食べちゃってください ! |
| コーキス | とか言って、パイセンは自分が腹減ったから食べたいだけだったりして。 |
| カーリャ | そ、そんなことないですよぅ !カーリャはみなさんに元気を出してもらおうと―― |
| イクス | な、なんだ、この光は ! ? |
| バルド・M | まさか…… ! ! |
| コダマ | おい、バルド ! どこ行くんだよ ! ? |
| ヘイズ | 追いかけるぞ。あのバルドの焦りよう……きっと何かあったに違いない。 |
| イクス | あれは…… ! 光の柱…… ! ?いや、違う…… ! あの柱は…… ! |
| ウォーデン | 【虹の橋】か ! |
| バルド・M | 馬鹿な…… ! 何故このタイミングで…… ! |
| コーキス | なぁ、マスター。俺、あの柱の中心からすげえ嫌な感じがする…… ! |
| イクス | 俺もだ……。けど、多分俺たちはあの力の正体を知っている……バロールに近い力だ。 |
| ヘイズ | まさか…… !あの光の柱を生み出しているのはエルナトか ! ? |
| バルド・M | ……おそらく、そうでしょう。そして、【虹の橋】が架かってしまったということは同時に【虹の夜】が発生するということ……。 |
| バルド・M | まもなく、この世界は滅びに向かってしまいます。私が経験した、あのときのように―― |
| Character | 12話 想い出を巡る物語 part3 |
| | バルド・ミストルテンの言葉通り、各大陸から幻影種が大量発生しているという報告を受け、イクスたちはその対策のために一度セールンドへ戻ることとなった。 |
| | だが、【虹の夜】を止めるためには光の柱を生み出している存在、つまりはエルナトとの戦いはもはや避けられないところまで来てしまっていた。 |
| ヘイズ | バルドの言う通り【虹の夜】の進行が加速している。もはや一刻の猶予も許されない状況だ。 |
| コダマ | ……つまり、エルナトを止めるにしても俺たちはどちらかを選ばなくちゃいけないんですね。 |
| コダマ | 未来を生かすのか、過去を守るのか……。 |
| ヘイズ | ……すまない。私の見込みが甘かった。この世界の鏡士や鏡映点たちの知恵を借りれば全てを救う方法もあると考えていたが……。 |
| セイリオス | 仕方のないことです。それに、俺たちはそれを承知でここに来たのですから。 |
| ヘイズ | ああ、だからこそ、お前たちに今一度問うておきたいのだ。どうか、お前たちの意見を聞かせてほしい。 |
| リワンナ | ……私は、防人としてアスガルドで生まれる幻影種の脅威からイデアを守るのが使命です。 |
| リワンナ | ならば、たとえ未来が変わってしまおうともイデアを守るという任務に変わりはありません。 |
| リワンナ | たとえ、この命を繋ぎ止めてくれた義兄と対立しようと私は己に課せられた使命を果たします。 |
| アイリス | ……私は、正直ちょっと怖いんです。自分が消えるのは勿論だけど、大好きなお祖父ちゃんの孫として生まれたことも消えるのが悲しい……。 |
| アイリス | みんなは怖くないの ?過去を変えちゃったら、今まで出会った人たちも大切な人も消えちゃうかもしれないんだよ ? |
| セイリオス | ……そうだな。だが、俺たちが生き残るということはここで出会った鏡映点たち、そしてこれから生まれる多くの人間の命を切り捨てるってことになる。 |
| セイリオス | 犠牲だらけの醜い世界を踏み台にして自分だけ綺麗でいようなんて思わない。それは俺がもっとも許せない生き方だ。 |
| アイリス | セイリオス……。そっか。うん……セイリオスはカッコいいよ。こんなときでも、自分の生き方を貫けるんだから。 |
| セイリオス | 別に恰好つけちゃいないさ。俺はただ……最後までお前さんの大好きなお祖父ちゃんの姿でいたいだけさ。 |
| アイリス | …………えっ ?セイリオス……それって、どういうこと ? |
| セイリオス | 悪いね、今まで黙っちゃいたが、おそらくお前さんの祖父ってのは俺なんだ。 |
| アイリス | ええっ ! ? ちょ、ちょっと待って !そんなわけないじゃん !だって、セイリオスは……。 |
| セイリオス | 俺も最初は半信半疑だったさ。だが、お前さんが歌っていた子守歌があっただろ ?あの子守歌の歌詞は、俺しか知らないはずなんだ。 |
| バルド・M | ですが、そうなるとあなたが私たちと行動しているのが大きなタイムパラドックスになってしまうのではないですか ? |
| セイリオス | さてね。それは俺にもわからんさ。だが、アイリスと祖父の話をもっと詳しく聞けば俺との共通点はもっと出て来るだろうな。 |
| コダマ | …………。 |
| アイリス | セイリオスが私のお祖父ちゃん……。ふふっ、可笑しいな。ビックリしたはずなのになんだか納得しちゃった。 |
| セイリオス | 信じてくれるかい、可愛い孫よ。 |
| アイリス | もう、セイリオスってば。けど、そっか……。私の大切な人もこんな近くにいてくれたんだ。 |
| アイリス | そうだよね……今までも、私はたくさんの人たちを救いたかった。それがちゃんと、今の私たちにはできるんだよね。 |
| アイリス | ……うん、私、決めたよ。この世界の人たちを救う。自分たちの思い出まで消えちゃうのは怖いけどきっと、それが正しい道だから……。 |
| コダマ | なぁ、アイリス。だったらさ、せめて思い出としてアイリスの歌はこの世界に残していかないか ? |
| セイリオス | そうだな。お前さんの歌声まで消えちまうのはもったいない。 |
| バルド・M | ならば、ミリーナさんに歌を継いでもらうというのはいかがでしょうか ? 彼女の歌声もそれは綺麗なものだと伺っています。 |
| アイリス | ミリーナさんかぁ。そうだね、あの人なら私の歌も大切にしてくれると思う。次に会ったとき、頼んでみるよ。 |
| ヘイズ | ああ、是非そうしてくれ。これからも、この世界では多くの子が生まれる。お前の子守歌も必要になってくるだろう。 |
| ヘイズ | では、他の者はどうだ ?バルド、お前の目的はウォーデンたちの生存だったな。 |
| バルド・M | はい、私はあなたたちが過去改変をしないのであればウォーデン様とメルクリア様を未来の世界へ連れて行くつもりでした。 |
| バルド・M | ですが、あなたたちが過去を変えると言うのなら私はあなたたちに最後まで力を貸します。たとえ、この身体が幻影種であろうと。 |
| リワンナ | 幻影種…… ! バルド、あなたは人間ではなかったのですか ? |
| コダマ | 話していいのか、バルド ? |
| バルド・M | ええ、もう隠す必要もないでしょう。私はウォーデン様たちを助けたいという想珠から生まれた存在。それをただ、今ここで叶えるだけです。 |
| ヘイズ | ……わかった。では、最後はコダマ。お前の意見を聞こう。 |
| コダマ | 俺はみんなと同じですよ。エルナト一人を犠牲になんてしない。この世界を守って、幻影種のいない世界を作る。 |
| コダマ | それに、ヘイズ様もそう決めてたんですよね ?この世界に来たときから、ずっと。 |
| ヘイズ | コダマ……気付いていたのか ? |
| コダマ | へへっ、そりゃあ気付きますって。だから、ずっと俺に『責任』を持つことを説いてくれてたんですよね ? |
| ヘイズ | ……そうだ。私は誰かが苦しむ世界を生み出したくはなかった。だが、それは同時にお前たちの存在を失うことになるかもしれない。 |
| ヘイズ | 果たして、そんな私を許してくれるのか不安だったのだ。 |
| コダマ | ……大丈夫ですよ。ヘイズ様はいつも俺たちを守ってくれてたんですから。だから、俺も必ずヘイズ様の望みを叶えますよ。 |
| ヘイズ | コダマ…… ? |
| コダマ | よしっ ! んじゃ、全員一致ってことでいいよな。早くイクスさんたちにも連絡して、俺たちでエルナトを止めに行こうぜ。 |
| アイリス | かるっ ! コダマ、あんたにはもうちょっと緊張感ってものがないの ? |
| コダマ | いいじゃん、なんかこっちのほうが俺たちっぽいし変に気負ったって仕方ないだろ。 |
| ヘイズ | ……すまない、コダマ。私からお前に少し話があるのだが他の者は席を外してくれないか ? |
| アイリス | えっ、でも、ヘイズ様。私たちもすぐに出発したほうが……。 |
| セイリオス | なら、俺たちも準備があるだろ。ヘイズ様、その間にコダマから話を聞き出しておいてください。 |
| ヘイズ | ああ、任せておけ。 |
| コダマ | あの、ヘイズ様。俺だけに話って、一体なんですか ? |
| ヘイズ | 単刀直入に聞く。コダマよ、何か策を考えているな ? |
| コダマ | あー、やっぱりバレてました ?多分、セイリオスも気付いてるんだろうなぁ。 |
| コダマ | けど、すみません。今はまだ話せないんです。俺もまだちゃんと頭の整理がついてないというか上手く説明できそうにないですから。 |
| ヘイズ | ……そうか。だが、これだけは言っておくぞ。お前も……エルナトのように自分一人が犠牲になるような道は取ってくれるなよ。 |
| ヘイズ | お前たちは、私の可愛い子供たちなのだからな。 |
| コダマ | はい、ちゃんとわかっています。それに、ヘイズ様のことを悲しませるような真似は絶対にしませんよ。 |
| コダマ | ……ただ、俺はエルナトと違って欲張りなんです。大事なものをどちらか選べって言われても俺は諦めるつもりはありません。 |
| コダマ | どっちも大事なものなら、どっちも救えばいい。ヘイズ様もそれを望んでいるんですよね ? |
| コダマ | だったら、俺はあなたの願いを叶えます。そのために、俺は死神騎士になったんですから。 |
| ヘイズ | コダマ……。 |
| コダマ | 行きましょう。みんなが苦しんだ物語を終わらせるために。そして……俺たちの物語を終わらせないために。 |
| Character | 12話 想い出を巡る物語 part4 |
| | 【虹の橋】が発生したことにより、一刻の猶予もない状況に追い込まれてしまったコダマたちは一度イクスたちがいるセールンドに集まっていた。 |
| フィリップ | 彼女たちがいる場所は精霊の封印地と呼ばれる場所だ。そこまではケリュケイオンを使って君たちを送り届けるよ。 |
| イクス | ごめん……本当は俺たちも力になれればよかったんだけど……。 |
| コーキス | 仕方ねえよ。俺やマスターはバロールの力をもろに受けちまうんだろ ? |
| フィリップ | ああ。今、精霊の封印地に近づけばイクスたちの身体にも影響が出てしまう可能性がある。 |
| イクス | はい、わかってはいるつもりです。でも、俺たちの世界で起こっていることなのに何もできないことが悔しくて……。 |
| ヘイズ | そんなことはない。お前たちには随分と力を貸してもらっている。 |
| ヘイズ | 現に【虹の夜】が進んでいる状況だというのにお前たち鏡士や鏡映点たちが幻影種から世界を守ってくれているのだからな。 |
| セイリオス | 何事も適材適所ってもんがある。それに、この状況を作り出しているのがエルナトだというのなら、止めるのも俺たちの役目さ。 |
| バルド・M | ですが、もし本当にエルナトがこの【虹の夜】を引き起こしているのなら、おそらく鏡精ルグとしての力を取り戻したのでしょう。 |
| リワンナ | それに、きっとアグラードも同行しているはず……。一筋縄ではいかないでしょう。 |
| コダマ | だったら、俺たちのデス・スターの力をもっと強くすることとかってできたりしない ?まだ預かってない鏡映点の想珠をもらうとか。 |
| コダマ | 前にバルドがナーザ……ウォーデンの想珠を使ったとき、凄い力を使えてただろ ?みんなの想珠の力を借りられたら―― |
| アイリス | 無理だよ。ここにいる人たちの想珠はもう私たちが預かってるし、他の鏡映点の人たちに会いに行くにも時間が……。 |
| イクス | 想珠を集める……。それって、俺たちにもできたりしないかな ? |
| コダマ | イクスさんたちが ?いや……想珠を取り出すことができるのは俺たちみたいな死神騎士じゃないと……。 |
| ヘイズ | …………いや、可能かもしれんぞ !なにせ、鏡士は『心』を具現化することに長けた者たちだ。 |
| バルド・M | 成程、想珠がその者たちの『想い』を形にしたものだというのなら、鏡士たちでも扱える可能性がありますね。 |
| ヘイズ | ああ、実際、イクスは我々のデス・スターの力を使いこなせている。やり方さえ覚えてもらえればすぐにコツは掴めよう。 |
| リワンナ | ですが、例え想珠の回収ができたとしてもそのときにはもう我々はこの場に残ってはいません。 |
| イクス | そのことなんだけど……フィリップさん。想珠のエネルギーをカレイドスコープで投射できたりしないですか ? |
| フィリップ | カレイドスコープに……そうか !想珠のエネルギーを代用して投射することができれば…… ! |
| イクス | はい。俺たちがこの場に残っていても精霊の封印地にいるコダマたちに集めた想珠を届けることができるかもしれません。 |
| ヘイズ | ならば、私もそのカレイドスコープとやらを確認させてくれ。もし改良が必要な場合でも私の持つ知識が役に立つかもしれない。 |
| フィリップ | わかりました。では、僕とヘイズさんは一度カレイドスコープの間へ向かいましょう。 |
| | その後、ヘイズとフィリップはカレイドスコープの改良に成功し、想珠の投射を可能にした。 |
| | 一方、イクスはコダマたちからの助言を受けた結果想珠を取り出す方法を習得したのだった。 |
| コダマ | よし、これで俺たちの準備は整ったな。イクスさん、それに他のみなさんも後のことはよろしくお願いします。 |
| ミリーナ | ええ。私たちもみんなを待ってるわ。それに、アイリスから素敵な歌を教えてもらったお礼がまだできていないもの。 |
| アイリス | ミリーナさん……うん、ありがとう。 |
| コダマ | じゃあ、なんか美味いご飯を用意しといてください。そしたら、喜んで帰ってきますから。 |
| イクス | コダマ……その言葉、信じていいんだな ? |
| コダマ | ……はい。任せてください ! |
| Character | 12話 想い出を巡る物語 part5 |
| | ケリュケイオンで精霊の封印地に上陸したコダマたち。【虹の橋】が生み出されたとされる場所まで向かうと辺りは異様な空気に包まれていた。 |
| バルド・M | 感じます……気を付けてください。間違いなくエルナトは近くにいます。 |
| アイリス | ! ? 見て ! あそこにいるのって…… ! |
| コダマ | エルナト ! ? |
| セイリオス | ……反応がない。こちらには気付いていないのか ? |
| アグラード | ああ、今のエルナトはルグとの同化を果たすために外部からの干渉を遮断しているんだ。 |
| リワンナ | ……アグラード。同化するとは一体どういうことですか ? |
| アグラード | 言葉通りだ。エルナトは今の時代のルグ……つまり自分自身と同化することによって本来の力を取り戻そうとしている。 |
| バルド・M | ……その結果、【虹の夜】の影響が広がってしまったのですね。 |
| アグラード | そうだ。だが、ルグの力をエルナトが手に入れればもう想珠は必要ない。彼女の力だけでアスガルドを破壊し、クロノスの柱も制御することができる。 |
| アイリス | 駄目だよ ! それじゃあ、この世界の人たちを見捨てることになっちゃう ! |
| アグラード | だが、俺たちの世界は助かる !俺は……これ以上、自分の大切な者たちを失いたくはない。 |
| リワンナ | ……アグラード、それがあなたの答えなの ? |
| アグラード | ああ、たとえ、お前から失望されようとな。 |
| リワンナ | ……失望などしないわ。それが、あなたの覚悟だというのなら。 |
| リワンナ | だけど、私も覚悟を持ってここに来たのです。アグラード、これが最後の忠告よ。そこを退きなさい。 |
| アグラード | 従えません。 |
| リワンナ | そう……だったら……無理にでも押し通るわ ! |
| アグラード | ……なかなかいい攻撃だ。だが……まだ遅いっ ! |
| リワンナ | くっ…… ! ! |
| アグラード | リワンナ、お前に戦い方を教えたのは俺だ。その程度では、何度やっても結果は同じだぞ。 |
| リワンナ | 確かにその通りです。私はあなたから多くのことを学びました。戦い方も……私自身の生きる道も……。 |
| リワンナ | だからこそ、あなたにだけは負けるわけにはいかないのです ! あなたが繋ぎ止めてくれたこの命を使ってでも ! |
| アグラード | 真正面からだと ! ? |
| リワンナ | はああああああああっっっっ ! ! ! ! |
| アグラード | ……馬鹿者。そんな力任せな攻撃を避けられないとでも思ったか ! ? |
| アイリス | リワンナさん ! 危ない ! |
| アグラード | リワンナ ! 何度も言ったはずだ ! |
| リワンナ & アグラード | 「左後方にできる隙を直せとな !」 |
| アグラード | ! ? しまっ―― ! ! |
| リワンナ | これで終わりよ、アグラード ! ! |
| アグラード | ……かはっ ! |
| バルド・M | 勝負あり、ですね。 |
| アグラード | ……図ったな、リワンナ。いつからそんな器用な戦い方ができるようになった ? |
| リワンナ | ……あなたならこうすると信じただけよ。私だって、あなたの戦いをずっと見て来たのだから。 |
| リワンナ | ごめんなさい、お義兄様……。本当は戦うようなことはしたくなかった……。だけど、これが私の選んだ道だから……。 |
| アグラード | 気にするな。ただ、お前の意志が俺よりも強かったということさ。 |
| アグラード | 成長したな、リワンナ。お前はお前の信じた道を行け。俺にはもう、それを止める力はない……。 |
| リワンナ | ……お義兄様。 |
| コダマ | くっ……今度はなんだ ! ? |
| エルナト | ……ヘイズ様。やはり来てしまったのですね。 |
| ヘイズ | エルナト ! ? 目を覚ましたのか ! ?いや……お前は私たちの知っているエルナトなのか ? |
| エルナト | ……ええ。どうやらこの時代のルグは私を意識ごと支配しようとしたようでしたが、デス・スターの力で逆に彼女の意識を取り込むことに成功しました。 |
| エルナト | なので、もう私の邪魔をしないでください。このまま未来へ帰り、アスガルドを破壊します。 |
| コダマ | 駄目だ ! それじゃあ結局お前が死んじまうんだろ !俺たちはそれを止めるために来たんだ ! |
| エルナト | まだわからないのですか !私たちの世界を守るためにはもうその方法しかないんです ! |
| エルナト | 私一人の犠牲で救われるならそれでいいじゃないですか !どうしてそれがわからないのですか ! |
| コダマ | いいわけないだろ ! !誰がそんなこと頼んだんだよ ! ! |
| エルナト | ! ? |
| コダマ | もし、お前が世界を救ったとしても俺たちはずっとお前を失ったことを思い出して生きなきゃならないんだぞ ? |
| セイリオス | 俺たちはそんな醜い生き方をするつもりはないんだよ、エルナト。 |
| バルド・M | エルナト、あなたが大切な人たちを守りたいという想いは私も理解できます。ですが、それを許さない者たちがいることも忘れてはなりません。 |
| アイリス | そうだよ、私たちは誰も失わないために戦ってきたんでしょ ? |
| リワンナ | その中に、あなた自身も含まれているんです。 |
| ヘイズ | エルナト……もう止めるんだ。私のところへ戻ってこい。 |
| エルナト | 嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ ! !私が……私が助けないと駄目なんですっ !あなたたちが存在する世界を…… ! ! |
| コダマ | 先輩、ちょっと我が儘が過ぎるぜ。そこまで駄々をこねるなら、俺たちを倒してから好きにしてくれよ ! |
| エルナト | わかりました。ならば、もう容赦はしません !コダマ……覚悟してくださいっ ! |
| Character | 12話 想い出を巡る物語 part7 |
| ヘイズ | エルナト、もう終わりにしよう。 |
| エルナト | 駄目です…… ! 私は……私は…… ! ? |
| エルナト | う、ううっ ! ? ああああああああっっっっっ ! ! ! ! |
| ヘイズ | エルナト ! ? どうしたんだ ! ? |
| エルナト ? | くっ、はははははっ。油断したわ。まさか、出来損ないの『私』に意識を奪われてしまうとはな。 |
| バルド・M | お前は、まさか…… ! ? |
| エルナト ? | ほう、我がバロール様の巫……。いや、違うな。そうか、お前は『幻影種』と呼ばれる存在だったか ? |
| コダマ | お前……エルナトじゃないな ? |
| ルグ | 我が名はルグ。バロール様より生み出されし鏡精だ。 |
| ルグ | お前たちが『エルナト』と呼ぶ者の意識は私が取り込んだ。もう二度と表に姿を出すことはない。 |
| ヘイズ | なんだと ! ? |
| ルグ | だが、安心しろ。私が今から本物のバロール様の巫を生み出しにいく。そうすれば【虹の夜】も止まりこの世界から幻影種も消えてなくなるはずだ。 |
| バルド・M | 待ちなさい ! あなたがバロールの巫を生み出せるという保証はどこにもない。それどころか、また同じことを繰り返すだけです。 |
| ルグ | そのような失敗をするものか。それに、今はこの『エルナト』の力も手に入れている。私はバロール様の望みを叶えなければならない。 |
| バルド・M | ……相変わらず、こちらの話に聞く耳を持ちませんか。 |
| ルグ | お前たちの話など知ったことか。私はバロール様の命に従うのみ ! |
| コダマ | くそっ ! こっちの先輩は全然可愛げがねえな ! |
| セイリオス | 先ほどまでより明らかに力は上だ。こりゃあ一筋縄ではいかないぞ。 |
| コダマ | わかってるさ。けど、多分もうすぐ―― |
| イクス | コダマ ! 遅くなってごめん !こっちの準備は終わったぞ ! |
| コダマ | 待ってましたよ、イクスさん !悪いんですけど、今俺たち超ピンチなのですぐにやっちゃってください ! |
| イクス | わかった ! それじゃあ、いくぞ。――照準、完了。カレイドスコープ、起動 ! ! |
| ルグ | なんだ ! ? この力の流れは…… ! |
| コダマ | ありがとう、みんな…… ! !あなたたちの想いは……ちゃんと俺たちが受け取る ! |
| コダマ | へへっ、この味は今までで一番いいや。どこか温かくて、なんだか懐かしい感じもする。 |
| ルグ | 想珠か……。だが、その程度ではまだ私の力には及ばないな。 |
| コダマ | そうか ? 俺にはあんたが強がっているようにしか見えないぜ ? |
| ルグ | 小癪な…… !ならば、すぐに証明してやろう ! |
| リワンナ | みんな ! 下がって !私の後ろに隠れて ! ! |
| リワンナ | ぐっ…… ! |
| ルグ | ふっ ! 随分と頑丈な身体だな。だが、いつまで持ちこたえられるかな ! |
| ヘイズ | リワンナ ! |
| リワンナ | 私は、問題ありません…… !あなたたちのことは、私が必ず守ります ! |
| アイリス | でも、このままじゃあ……。 |
| コダマ | 大丈夫だ、俺に考えがある。きっと、この方法なら『エルナト』を止めることができると思うんだ。 |
| セイリオス | お前さん、また何か閃いたんだな。 |
| コダマ | ああ。けど、ぶっちゃけ成功率はそんなに高くないかも。五割……いや、四割くらいかな ? |
| アイリス | ええっ、なんかすっごい微妙……。 |
| セイリオス | だが、俺の命を預けるには十分な数字だ。俺はお前を信じるぜ、親友。 |
| コダマ | サンキュー、セイリオス先生。 |
| アイリス | そうだね、今までもなんだかんだコダマの作戦って上手くいってきたし私も乗ってあげる。 |
| ヘイズ | コダマ、お前の言う通りにすれば彼女を……エルナトを救えるのだな ? |
| コダマ | はい。俺を信じてください、ヘイズ様。 |
| ヘイズ | わかった。では、私もコダマの言う通りにしよう。頼んだぞ、コダマ。私の可愛い子供を助けてやってくれ。 |
| ルグ | 助けるだと ? そのような必要はない。何故なら、もう『エルナト』などという者は存在しないのだからなっ ! |
| バルド・M | そうですか。ですが、私はあなたがいる以上主を守るために戦わねばなりませんっ ! |
| セイリオス | アイリス、俺たちもバルドに続くぞ ! |
| アイリス | うんっ ! |
| ルグ | 無駄だと何度言えばわかるっ !お前たちの攻撃など…… ! |
| アグラード | はああああああっっ ! ! ! ! |
| ルグ | なにっ ! ? 何故お前まで…… ! ? |
| アグラード | 生憎、エルナトから何かあれば俺がお前を止めるように頼まれていてな ! その約束を果たしているだけだ ! |
| ルグ | くっ、また邪魔者が…… ! |
| コダマ | ヘイズ様、今です ! |
| ヘイズ | ああ、しっかり掴まっていろよ、コダマ ! |
| ルグ | まさか、この者たちは囮…… !本当の狙いは…… ! |
| コダマ | やっと近づけたぜ、ルグ ! |
| ルグ | お前、何を…… ! ? |
| コダマ | どうやら、俺には鏡士の力があるみたいでさ。前もバルドの心核ってやつに触れたんだよ。 |
| コダマ | だから、今からあんたの中に残っているはずのエルナトの意識を無理やり叩き起こす。そうすれば、あんたの意識はどうなるんだろうな ? |
| ルグ | やっ、やめろ ! そんなことをすれば私が…… ! ! |
| コダマ | おっ、当たりか。なら、遠慮なくやらせてもらうぜ。 |
| コダマ | 聞こえるか、エルナト ! !意地張ってないで、いい加減帰ってこい ! ! |
| ルグ | やめろおおおおおおおっっっっっっ ! ! ! ! |
| Character | 12話 想い出を巡る物語 part8 |
| エルナト | ううっ、痛い……痛いよぅ…… !嫌だ……死にたくない……消えたくない…… ! |
| エルナト | 誰か……誰か……助けて………… ! |
| ? ? ? | ――エルナト、大丈夫だ。 |
| エルナト | …………だれ ? |
| ヘイズ | ひとりでよく頑張ったな、エルナト。 |
| エルナト | ……ヘイズ、さま ? |
| ヘイズ | だが、もういいんだ。後のことは、私たちに任せろ。 |
| エルナト | 待って、ください…… !だめ……です…… !私は……あなたを…… ! |
| エルナト | ヘイズ……さまっ ! ! |
| ヘイズ | エルナト…… ! 良かった、目を覚ましたのだな。コダマがお前とルグの意識を切り離してくれたのだ。 |
| コダマ | 感謝してくれよ、先輩。そうやってヘイズ様に膝枕してもらってるのも俺のおかげなんだからな。 |
| エルナト | コダマ…… ! なんてことを…… !私がルグの力を失ったということは……。 |
| バルド・M | ええ、この世界での【虹の夜】は止まりこれ以上、幻影種が生み出されることはない。今いる幻影種もいずれ駆逐される。つまり―― |
| コダマ | あー、やっぱこうなるのか。 |
| エルナト | そんな…… ! みんなが……ヘイズ様が消えてしまう…… ! |
| ヘイズ | ……安心しろ、エルナト。たとえ、ここで私たちが消えてもお前たちと過ごした日々を、私は決して忘れはせぬ。 |
| ヘイズ | そして、この想いがある限り私たちが完全に消えることはない。そうだろ、コダマ ? |
| コダマ | はい、後は俺に任せてください。アグラードさん、ちょっといいですか ? |
| アグラード | なんだ ? |
| コダマ | その、アグラードさんが持ってるイクスさんの魔鏡を貸してもらえないですか ?それで、ちょっと試してみたいことがあるんです。 |
| アグラード | あの祭壇にあった鏡のことか ?だが、こんなものを何に使うんだ。 |
| コダマ | 実は、気になっていたことがあるんです。俺、祭壇で誰かの声が聞こえて、その声ってずっとイクスさんなのかなって思ってたんですけど……。 |
| コダマ | でも、多分違うんです。あれって、もしかしたらバロールって奴の声なんじゃないかと思って。 |
| エルナト | バロール様 ! ? ですが、どうしてコダマが……。 |
| コダマ | さあな。けど、これも俺が鏡士の血を引いてることに関係してるのなら、その魔鏡を使えばちょっと神様に頼み事できると思ってさ。 |
| コダマ | で、目を覚ましたところ悪いんだけどエルナトも手伝ってくれね ?多分、そのほうが確実だと思うからさ。 |
| エルナト | まさか……切れてしまった私とバロール様のラインを再び繋げようというのですか ? |
| コダマ | 駄目かな ? ぶっちゃけ、今のエルナトって意識が戻っただけで、身体自体の力はルグのままだと思うんだけど……。 |
| エルナト | ……確かに、この時代のルグの意識はまだ私の中に存在しています。もしかしたら私たちの声もバロール様に届くかもしれません。 |
| コダマ | よし、ならやってみようぜ !魔鏡の力とエルナトの意識……そして、俺の鏡士の力を使って…… ! |
| コダマ | ――おーい、聞こえるか、バロール !悪いけど、時間がないから手短に話すぞ ! |
| コダマ | 俺は、ヘイズ様たちが !みんながいた世界を『想像』するっ !だから、あんたがその世界を『創造』してくれ ! |
| セイリオス | ……コダマ、まさかお前が考えていたことはこのことなのか ? |
| コダマ | ああ、バロールってのは神様でこの世界を創ったんだろ ?だったら、俺たちがいた世界も創ってもらおうぜ。 |
| ヘイズ | ふ、ふははははははははっ !コダマ、お前は本当に突拍子もないことを考えるやつだ。 |
| エルナト | ですが……バロール様にもう世界を創る力は……。 |
| コダマ | だから、俺の力も魔鏡を通して残そうとしたんだけどやっぱ無理かなぁ。 |
| セイリオス | いいんじゃないか ?少しでも可能性があるのなら、抗うのがお前らしいよ。 |
| アイリス | そうだね。諦めが悪いのがコダマのいい所だから。 |
| リワンナ | ……ですが、ここではそろそろ別れの時間のようですね。 |
| コダマ | リワンナさん……ありがとう。最後までリワンナさんが俺たちを守ってくれて心強かったよ。 |
| リワンナ | 私こそ、感謝しているわ。それに、私をそんな風にしてくれたのはアグラード……お義兄様のおかげです。 |
| アグラード | ……ふっ、最後まで義兄らしいことはできなかったがお前を救えたのなら本望だ。 |
| リワンナ | ええ、また会いましょう、お義兄様……。 |
| アイリス | ……ねえ、セイリオス。もし、本当に私たちがまた会えるのなら今度はどっちのセイリオスと会うのかな ? |
| セイリオス | さあ、どうだろうな ? だが、どっちにしても俺はお前の自慢の祖父さんでいるつもりだ。 |
| アイリス | ……うん、セイリオスならきっと大丈夫だよ。だから、また素敵な歌を教えてね、約束だよ。 |
| セイリオス | やれやれ、これは責任重大だな。可愛い孫にも会いたいところだが、そうなるとコダマの指導係の席が空いちまうのは心配だ。 |
| コダマ | だったら、どっちもやってくれよ。お祖父ちゃんになったセイリオスが上司でも俺は大歓迎だぜ。 |
| セイリオス | おいおい、あまり老人を働かせるもんじゃないぞ。……だが、それも悪くないな。コダマ、お前と出会えて、本当に楽しかったぜ。 |
| バルド・M | 私は……たとえ世界が新しくなったとしても再び生まれることはないでしょう。正真正銘、ここでお別れです。 |
| コダマ | うん……だけど、バルドさんのことは俺たちがちゃんと覚えてるよ。それに、この世界の人たちもさ。 |
| バルド・M | と、言いますと ? |
| コダマ | あのさ、バルドさんの持ってる幻想灯だけど預かってたみんなの想珠を返すときに俺たちの想珠も少しずつ、みんなに与えてほしいんだ。 |
| バルド・M | ……成程、そうすれば彼らにも私たちの想いは残る。わかりました。では、これが最後の私の役目です。――幻想灯を掲げます ! |
| バルド・M | ……本当に、ありがとうございました。主たちを助けられたのは、あなた方のお陰です。どうか、この先もあなたたちに幸あらんことを―― |
| ヘイズ | ……最後に残ったのは私たちか。 |
| エルナト | ヘイズ様……ごめんなさい……。私のせいで…… ! |
| ヘイズ | 謝るな。それに、コダマも言っていただろう。私たちは、きっとまた会える。お前たちが、私を想ってくれる限りな。 |
| ヘイズ | よく頑張ってくれた。流石は私の自慢の子供たちだ。最後に、お前たちの顔をよく見せておくれ。 |
| コダマ | ヘイズ様……俺、ヘイズ様に会えて本当に幸せでした。だから、また必ず会いに行きます。たとえ、この先にどんな未来が待ってたとしても。 |
| ヘイズ | ああ、楽しみにしていよう。それと、これは私からお前たちへの贈り物だ。 |
| ヘイズ | 私からの祝福のキスだ。では、待っているぞ。私の可愛い子供たち―― |
| | その日、ティル・ナ・ノーグの空に光が降り注ぎ以後、世界中で起きていた幻影種の発生は報告されなくなった。 |
| | そしてその後、コダマたちの行方を知る者は誰もいなかったという。 |
| | だが、コダマやヘイズら未来から来た死神騎士たちが確かに存在していた証は、鏡映点の心に残った。彼らの思い出は『刻み込まれた』のだ。 |
| | 未来のことは誰にもわからない。だが―― |
| | そう、これは想い出を巡る物語。全てが失われても、心に刻み込まれた想い出だけは消えないことを証明する、あなたの物語。 |