プロフィール
智将オリフィエルの転生者。彼女は夢の中で美しい金色の髪を持つ少年、ヒンメルと言葉を交わす。天空神でありながら籠の中に囚われ、自由を奪われた彼は自分が守るべき存在のはずだった。敵将アスラとの間に芽生えた友情。彼の協力でヒンメルを救い出そうと画策するが、身勝手な元老院達の強行によりその願いが叶えられることはついになかった。もう二度と、大切な人を失うような悲劇は繰り返さない。そう誓う彼女は、同じ転生者の仲間たちと共に、世界を守る戦いに旅立つのだった。
ミリーナの一言
アンジュはファラ生活向上委員会に参加して、意欲的に活動しているの。ただ、おやつをガマンしている光景もよく見るのよ。彼女が何を気にしているのかはわかっていたから、クレス道場に誘ってみたんだけど、すぐに息が上がっちゃって「動かず痩せられる方法を探してみせる !」って言っていたの。それ以前に今のままで十分素敵なのに……。
イクスの一言
この前、アンジュがみんなに募金をお願いしているところを見かけたんだ。どうやらアジトの財政状況を察して寄付金を募っていたみたいなんだ。集まったお金はファラ生活向上委員会やジュードたち医療班に割り当てる予定なんだってさ。みんなの為にすぐに行動するところは俺も見習わないといけないよな。よし、今度は俺もアンジュの募金活動に参加してみることにするよ。
Character | ダイエット | |
---|---|---|
アンジュ | うー……。 | |
エル | どしたの、アンジュ ?なんかすっごくフキゲンそうにみえるよ ? | |
アンジュ | そ、そんなことないわ。気のせいよ、気のせい。 | |
エル | えー、そーかな ? | |
ミラ=マクスウェル | ふむ、私にも少し顔色が悪いように見えたのだが……。 | |
ルドガー | お待たせ、二人とも。新作のクッキーが焼けたぞ。 | |
エル | うわーっ、おいしそーっ ! | |
ミラ=マクスウェル | じゅる……このかぐわしい香り !……ルドガー、今すぐ食べてしまっても構わないだろうか ? | |
ルドガー | もちろんだとも、遠慮しないで。 | |
エル | わーい、いっただきまーす ! | |
アンジュ | う、ううっ……。 | |
ルドガー | アンジュもよかったら食べてくれ。いっぱい作ってあるからさ。 | |
アンジュ | や、やめてっ !絶対に……絶対にっ、ダメよっ ! | |
ルドガー | えっ…… ? | |
アンジュ | いいから、これ以上私を誘惑しないでちょうだい ! | |
ルドガー | 誘惑 ! ? そっ、そんなつもりは……。 | |
コンウェイ | ルドガーくん、それ以上彼女に聞くのは野暮ってものだよ。いらないと言っているんだからそっとしておいてあげよう。 | |
コンウェイ | クッキーは彼女の代わりにボクが頂くよ。いいだろう ? | |
ルドガー | あ……ああ。俺は別に構わないけど……。 | |
アンジュ | ありがとう、コンウェイさん。そ……それじゃ、私はこれで。 | |
エル | こんなにおいしいクッキーを食べないなんてアンジュってば、どうしちゃったんだろうね ? | |
ルカ | ああ……そうか。あれってつまり、そういうことだよね……。 | |
イリア | ええ、そうね。また太っちゃったからダイエットに血眼になってんでしょ、きっと。 |
Character | 軍略家同士 | |
イリア | ……あら、何だろ ?あそこ、盛り上がってるみたいだけど。 | |
イリア | あ、ちょっと、ルカ ! | |
ルカ | え、何 ? | |
イリア | 何、じゃないでしょ。あんたたち、いったい何を取り囲んで、大騒ぎしてんのよ ? | |
ルカ | ああ、うん。ほら、見てよ。アンジュとローエンさんが、チェス勝負をしてるんだ。 | |
アンジュ | ……ふふっ、本当に恐れ入りました。まさかローエンさんがこんなにお強いだなんて。 | |
ローエン | ……ほほほ。アンジュさんのようなチャーミングな方がここまで巧みな手を指すとは夢にも思わず私も驚きに打たれていますよ。 | |
アンジュ | ……そう言えばローエンさんは、詩をたしなまれると聞きました。なんでも、詩集を出しただとか。 | |
ローエン | ……そんなこともありましたな。まあ、若気の至りというヤツですよ。 | |
ローエン | ……ああ、そうそう。ふと思い出したのですが最近、アジトで食費が嵩むようになってきたとロゼさんがこぼしておりました。 | |
アンジュ | ……そうですか。ここは大所帯ですし、たまにはそういうこともあるんじゃないかと。 | |
アンジュ | ……それより、ローエンさんの詩集――「くるおしき愛の叫び」と言いましたでしょうか。何とか読む方法はありませんか ? | |
ローエン | ……ほほほ。いやあ、あんな駄文を読むより、もっと優先して読むべき良書がいくらでもあるはずですよ。 | |
アンジュ | ……いえいえ、そんなご謙遜を ! | |
イリア | す、すごいわ……。二人とも、世間話を続けながら、休みなく指し続けてるし ! | |
ルカ | う、うん……。僕たちから見れば離れ技だよね……。 | |
ガイアス | 一見なんでもない世間話を交わしているだけだがその実、無形の剣で斬り結んでいるに等しい。 | |
ガイアス | 二人とも互いに相手の心に綻びを生もうとして常に隙を窺い合っているといったところか。 | |
二人 | へええっ…… ! ? | |
ガイアス | 指揮者(コンダクター)イルベルトの采配をもってしても、二十五勝二十五敗五十引き分け……。 | |
ガイアス | まさか『風霊盛節(オラージュ)の奇跡』を起こしたローエンの用兵術に対抗できる者が、こんな身近なところにいるとは……。 | |
ルカ | ふふっ。アンジュの前世はラティオの軍師、オリフィエルですからね。戦術にかけてはローエンさんにだって負けませんよ ! | |
アンジュ | はぁっ、はぁっ……。 | |
ローエン | ふぅ、ふぅ……。 | |
ルカ | ふううっ……。アンジュもローエンさんも一歩も譲らないまま、白熱の大接戦の末に引き分け、か……。 | |
イリア | いや~、見てるだけで息が詰まっちゃったわ。どっと疲れたわね……。 | |
アンジュ | 今回のところは勝敗つかずということで、どうでしょうか ? | |
ローエン | ええ、そうですね。決着は後日に持ち越しということにできればと思います。 | |
アンジュ | ええ、ぜひまたお手合わせお願いします。 | |
ローエン | はい、いつでもお相手しますよ。 | |
ガイアス | 知略の限りを尽くして戦い抜いた軍略家同士健闘を称え合っての握手か……。 | |
ガイアス | ……お前たちのような者が指揮を執る戦場にはできれば立ち合いたくないものだ。 | |
アンジュ | ありがとうございます、ガイアスさん。それ、私にとって最高の褒め言葉ですから ! |
Character | 遥かなる対話 | |
アリーシャ | ローエン殿、やはり解せません。この局面でこの陣形は最適と言えるのでしょうか ? | |
ローエン | ふむ……陣形だけ見れば中央が手薄に見えますがこの状況下なら最適と言えずとも、有効かと。 | |
アリーシャ | 何故でしょう ? 敵は後方にも陣を構えています。前進に気を取られている間に隙を突かれたらひとたまりもないように思えるのですが……。 | |
ローエン | アリーシャさんの言うとおりです。ただ、この陣形の目的は――……。 | |
アンジュ | あら ? 珍しい組み合わせですね。 | |
ローエン | おや、アンジュさん。いいところにいらっしゃいました。 | |
アンジュ | 二人で何を読んでいたんですか ? | |
アリーシャ | 他の世界の、昔の戦国史だ。古いとはいえ興味深い戦術が多く記されている。 | |
アンジュ | へぇ……。なるほど、この陣形……。こっちの軍は兵力が心許なかったんですね。 | |
ローエン | その通りです。目的はハッタリ。実際の兵力よりも大きく見せ、相手の士気を削ぐための陣形です。 | |
アリーシャ | そうだったのか。このまま突撃しても力では敵わないから陣形で惑わすのだな。 | |
アンジュ | でも、相当追い詰められたときの策ですよ。この軍、結局負けたんじゃないかしら ? | |
アリーシャ | ああ。敗退している。不利な局面での打開策について学びたいのだが……現実はそう簡単ではなさそうだな。 | |
アンジュ | うーん、私だったらまずこの状況下で陣形を組んで突撃するようなことはさせませんね。 | |
ローエン | 同意見ですな。 | |
アンジュ | 戦局を揺るがすには布陣の前にやるべきことがあります。昔とはいえ、手段はいくらでもありますから。 | |
アリーシャ | すまない、どういうことだろうか ?二人の意見が抽象的すぎて理解できないのだが……。 | |
アンジュ | 兵力が足りない、かつ交戦まで猶予がある場合はまず情報を操作するんです。 | |
アンジュ | 現に敵はすでにこちらの兵力減の情報を得ています。ということは味方陣営に密偵が紛れている。 | |
ローエン | 正しい情報が漏れ出るということは誤った情報も同じく、ですからね。 | |
アンジュ | ええ。兵力差でねじ伏せられると思って敵は油断しているはず。そこで敵軍の密偵を利用して、二つの情報を流すんです。 | |
アンジュ | 一つは別拠点での交戦情報。もう一つは援軍の進行情報。 | |
アリーシャ | 陽動作戦か…… ! | |
ローエン | 敵は分断を余儀なくされ、誰もいない先に急いで進軍。同等の兵力になった敵軍をこちらは追いかけて背後から奇襲をかける……と。 | |
アンジュ | さすがローエンさん。とは言ってもきっと……本に記されている情報がすべてではないはず。 | |
アンジュ | 日の傾きに、戦地の具合……兵士たちの士気。それらを含めて当時の軍師はこの戦術が最適と判断したのでしょう。 | |
ローエン | そうですね。後世を生きる我々がこうして議論を交わすのを見て彼らはどう思うのでしょうな。 | |
アリーシャ | 苦笑いをしているかもしれないな。だがこうやって言葉を重ねることで私たちの知見も広がっていく。 | |
アンジュ | ふふっ、学ぶことで育まれるものもありますね。この図書室には他にも戦国史や戦術書があるんじゃないかしら ? | |
ローエン | ええ、ございますよ。では、本を通してさらに先人と対話してみましょうか。 |