プロフィール
迫害され、地下施設での研究に従事させられていた日々。人という存在そのものに期待しなくなっていた彼を変えたのは、勇気は夢を叶える魔法だと教えてくれた親友だった。しかし唯一無二の友は、眠りから目覚めた精霊に殺される。絶望に苛まれ、復讐に駆り立てられたリヒターは、精霊殺しを決意した。力を手に入れるため、魔族の力を借り、世界をも巻き込んで。仇はかつての樹の精霊、その名はラタトスク。
ミリーナの一言
リヒターさんってとってもいい人なの。私たちの味方というわけではないけれど、たまに協力し合うことがあると、すごく面倒見がいいのよ。きっと困っている人を放っておけない優しさを持っている人なのね。元の世界では色々と酷いこともしたという話だけれど、話をしていると全然そんな感じがしないから不思議よね。うちのアジトにもリヒターさんを慕っている人がいるから、たまには顔を見せて欲しいわ。
イクスの一言
この間、街で買い物をしていたら押し売りにあっちゃって、中々断れないでいたんだ。そうしたら、たまたま通りかかったリヒターさんが助けてくれたんだけど、その後ですごく怒られたんだよ。しっかりしろだの、甘い顔を見せるなだの、挙げ句の果てには豚呼ばわりまでされちゃって……。けど、その後で買い物を手伝ってくれて、アジトの近くまで荷物を運んでくれたんだ。いい人なんだけど誤解されやすい人でもあるんだよな。
Character | 同窓会 | |
---|---|---|
ミトス | あれ…… ? あそこにいるの、リヒター ? | |
チェスター | お、本当だ。おーい ! リヒター ! | |
リヒター | ……何だ。魔弓の。 | |
チェスター | その呼び方やめろって言ってるだろ ! ? | |
ミトス | 焔獄も買い物 ? 人間もハーフエルフも食べなきゃ生きていけないからそういうところは不便だよね。 | |
リヒター | ミトス。貴様もその呼び方はやめろ……。それにしてもお前たちが二人で買い物というのも珍しいな。ミトスは人間が嫌いだろう。 | |
チェスター | それがオレは別らしいんだな。 | |
チェスター | 心に傷を負い、異世界に集った誇り高き三人の戦士たち。その出自は違えど―― | |
ミトス | はい、ナレーションはそこまで。魔弓はニンゲンだけど、一応仲間だったからね。……裏切られたけど。 | |
チェスター | だから魔弓って言うなって !それに、裏切りの話をほじくり返すとオレたち全員裏切り者だろうが。 | |
リヒター | フ……そうだな。そういえばアミィは……元気か ? | |
チェスター | ――ああ。元気にやってるよ。オレのせいでこんな世界に連れてこられちまって申し訳なかったと思うこともあるけどな。 | |
チェスター | それでもオレは……あいつの笑顔を見られるのが嬉しいんだ。 | |
リヒター | ……そうか。アミィは無理矢理に具現化されてしまったからな。大変な状態だったが元気になって良かった。 | |
チェスター | お……おう……。しかしリヒターは……元の世界でやってることと性格にギャップがありすぎるな。 | |
ミトス | リヒターは善人だからね。世界を滅ぼす側にいるのがおかしいんだよ。 | |
リヒター | いや、俺は文字通り悪魔に魂を売り渡した男だ。本来なら俺は、チェスターのような男とは交わるはずのない道を歩いてきた。 | |
リヒター | 元の世界に帰れば、俺は、チェスターが仇と狙うあの男のように、誰かの恨みを買っている。 | |
チェスター | まあ、そうなんだろうけどな。だが、お前らはアミィやトーティス村のみんなの仇って訳じゃねえ。 | |
チェスター | やり合ったこともあったが助けてもらったこともある。恨みはないぜ。 | |
ミトス | さすが魔弓のチェスター。格好いいね。 | |
チェスター | お前、馬鹿にしてるだろ ! ?お前だって飛天なんだからな ! ? | |
リヒター | ……相変わらずだな、お前たちは。 | |
リヒター | ああ、そうだ。この街で薬を買うならそこの露店はやめておいた方がいい。質が悪い。 | |
リヒター | 奥の路地の突き当たりに、珍しい品を集めている店がある。そこは珍しい菓子などもあったからアミィやマーテルのような女たちが喜ぶだろう。 | |
二人 | ………………。 | |
リヒター | ではな。次に会う時は戦う時かも知れないが。 | |
チェスター | ……いや、マジで人がいいよな、あいつ。 |
Character | 自由の星 | |
リヒター | ……休憩にするぞ。 | |
コーキス | は ! ? 俺、まだ全然動けるぞ ! ? | |
リヒター | 俺も戦うことに関しては素人だ。だが、理論は頭の中に入っている。動けることと、正しい動きができることは別の話だ。 | |
コーキス | ……そっか。 | |
リヒター | ……何故、俺に教えを請う ?強い奴は他にいくらでもいるだろう。 | |
コーキス | リヒター様って魔族と契約したんだろ ?魔族ってイマイチよくわかんねーけどなんか強そうな気がしたんだよ。 | |
コーキス | なあ、魔族との契約ってこの世界でも有効なのか ? | |
リヒター | 有効……なのだろうな。異世界の化け物じみた英雄たちと遜色なく戦えるぐらいだ。 | |
リヒター | もっとも魔族が具現化されたと言う話も聞かないからエンコードによって、何かが書き換えられている可能性はあるな。 | |
リヒター | ――そうか。魔族による力のみの具現化。これはマナがキラル分子に置き換えられていることに近いのかも知れないな。とすると……。 | |
コーキス | おーい、リヒター様。 | |
リヒター | ―― !……ああ、悪い。少し考え込んでしまったようだな。 | |
コーキス | ……そういうとこ見るとリヒター様も学者なんだなって思うよ。やっぱ、勉強とか好きなのか ? | |
リヒター | いや。単に研究以外してこなかっただけで好きでも嫌いでもないな。 | |
コーキス | え ? じゃあ、リヒター様の好きなものって何だ ? | |
リヒター | ……………… ? | |
コーキス | えええ ! ? なんかないのかよ ! ?この際食べ物とかでもいいから。 | |
リヒター | ……ハーブは、まあ好きな方かも知れない。 | |
リヒター | ………………。 | |
コーキス | ――それだけかよ ! ? | |
リヒター | ……そうだな。何かを望んで得られるような環境ではなかった。強いて言えば……自由には憧れていたのかも知れない。 | |
コーキス | え ! ? リヒター様どんな環境で育ったんだよ。 | |
リヒター | どんな……といわれても。地下施設で軟禁されて、精霊の研究をさせられていた。 | |
コーキス | ………………。 | |
リヒター | 俺はハーフエルフだったからな。自由はなかった。時代が変わって、自由が与えられるようになっても何をしていいかわからなかった。 | |
リヒター | アステルがいなければ、自由だと言われても地下施設にとどまっていたかも知れない。 | |
コーキス | そうか。リヒター様にとってアステル様は『自由』の象徴みたいなもんなんだな。 | |
リヒター | ……あいつは、生き様が自由すぎるからな。 | |
リヒター | ――さて、そろそろ稽古を再開するか。 | |
コーキス | ああ。俺は強くならなきゃいけないんだ。本気で頼むぜ、リヒター様 ! |
Character | 訓練のための訓練 | |
リヒター | ……。…………。 | |
リグレット | そう落ち込むな。見込みがないと思っていたが意外と悪くないぞ。 | |
リヒター | ……そうだろうか。 | |
アステル | リヒター、捜したんだよ。あれ ? リグレットもいたんだ。二人で何してるの ? | |
リグレット | ああ、リヒターたっての願いでたまご丼の―― | |
リヒター | なんでもない。気にするな、アステル。それより何か用か ? | |
アステル | たまご丼 ? 今たまご丼って言ったよね ?それに今リヒターの拳でぐしゃぐしゃにつぶれてるのはたまごの殻だよね ? | |
リヒター | ……ちっ。 | |
リグレット | すまない、秘密にすべきだったか。 | |
リヒター | いや、構わない。……そうだ。ヴァンのたまご丼の作り方をリグレットから教わっているところだ。 | |
アステル | え……でもリヒター、君の料理って……。 | |
リヒター | む……すまない。魔鏡通信だ。 | |
エミル | すみません、リヒターさん。今大丈夫ですか ? | |
リヒター | ああ。どうした ? | |
エミル | あの……新しい技の訓練、次はいつやるかまだ決めていなかったと思って……それで……。 | |
リヒター | 日程はこちらからまた連絡する。……そんなことより、お前はちゃんと食べているのか ? | |
エミル | え ? えっと、それってどういう…… ? | |
リヒター | 前回の訓練の時、動きにキレがなかった。健康管理ができていなければ訓練どころではない。 | |
エミル | す……すみません。 | |
リヒター | いや……いい。次の訓練は午前中に行おう。昼前に終わらせるぞ。 | |
エミル | は、はい !それじゃあ、連絡待ってます。 | |
アステル | ふーん……なるほどね。 | |
リヒター | ……なんだ。 | |
アステル | まったく、素直じゃないんだから。たしかにたまごは栄養あるし、いいかもね。 | |
リグレット | 閣下のたまご丼は栄養があるだけでなく美味だからな。作り方を覚えておいて損はないぞ。 | |
リグレット | エミルに食べさせたいのなら持ち運び用の容器も用意しないとな。 | |
リヒター | ああ。……気遣い感謝する、リグレット。 | |
リグレット | 感謝するのは早いぞ。お前の作るたまご丼は、まだまだ食えたもんじゃないからな。 | |
アステル | あちゃー。新しい技の訓練の前にリヒターがたまご丼作りの訓練に励まなくちゃね。 | |
リヒター | ……うるさい。 |