プロフィール
優しかった姉は変わってしまった。最愛の人物に虐げられる孤独な日々。だが彼女はさらなる地獄に突き落とされる。そこは断界殻のない黒匣に溢れた俄には信じがたい世界。マクスウェルとして大勢の人々を犠牲にしてでも使命を果たしたかつての自分、その全てを否定する正史世界であった。世界のためとはいえ、死ぬのは怖い。だが目の前にいる少女のためならば……。死の淵に立たされた、彼女の選択は――
ミリーナの一言
ティポによるとミラさんは優しさでできているらしいわ。確かにいつもはクールなお姉さんって感じだけど、こっそりルルやクィッキーにご飯を作ってあげたり、世話好きなところがあるわよね。ちょっと納得しちゃった。それに面と向かって褒めると、すぐ恥ずかしがって赤くなるところなんてとっても可愛いのよね。これからも色々なミラさんの一面を発見していきたいわ。
イクスの一言
ミラさんは、ルドガーたちが暮らしていた正史世界の人じゃないらしいんだ。分史世界の人だってことなんだけど、分史世界って普通の並行世界とはちょっと違うみたいで難しいよ。けどエルやルドガーたちとふざけ合ったりしているミラさんはすごく表情豊かで生き生きしているように見えるんだ。うらやましいぐらいに。分史世界だろうと正史世界だろうと、ミラさんは一生懸命生きてきた素敵な人なんだろうなって思うよ。
Character | 呼び名 | |
---|---|---|
ミラ | なにそれ ! ? 買い出し担当だったのは私じゃなくてこっちのミラだったってこと ? | |
ミラ=マクスウェル | なるほど。そういうことだったか。 | |
コレット | ごめんなさい。名前が同じだから間違えちゃって……。 | |
エレノア | 私も確認を怠りました。まさかこんなことになるなんて。 | |
エドナ | 紛らわしいことこのうえないわね。 | |
ミラ=マクスウェル | ああ。これは由々しき問題だな。何か対策を打たねばまた同じことが発生しかねない。 | |
エレノア | 対策……というと二人とも同じミラという名前ですしまずは呼び名を区別するところからでしょうか。 | |
ノーマ | なら、みんなもあたしと同じようにあだ名で呼ぶようにしてみたら ? | |
ミラ=マクスウェル | ノーマは私をミラ姉さんと呼んでいるな。 | |
ノーマ | うん。ミラ姉さんはミラ姉さんでミラっちはミラっち。 | |
エドナ | ならそれでいいんじゃないの。 | |
ミラ | というか、私は「ミラっち」なんて馴れ馴れしいあだ名で呼ばれるのイヤなんだけど。 | |
コレット | えっとね、それなら「ミーちゃん」はどうかな ? | |
エレノア | あっ、いいですね。なんだか可愛らしいですし。アジトメンバー公用のあだ名で「ミーちゃん」これでどうでしょうか ? | |
ミラ | た、確かに可愛いけど……それじゃあネコみたいじゃない。却下よ。 | |
エドナ | ワガママな子ね。 | |
ミラ=マクスウェル | では、彼女ではなく私にあだ名をつけるというのはどうだろう。 | |
ミラ | あんたに ? | |
ミラ=マクスウェル | まずは私と君の相違点を探すのがいいだろう。髪のピョンのあるなしがまず一つ。他には……ん ? よく見るとここが―― | |
ミラ | ちょ、ちょっと ! どこ触ってんのよ ! | |
ミラ=マクスウェル | いや。すまない。君の方が一回り小さいような気がしてな。 | |
ミラ | なによ、そのさりげない自慢は !もう信じられない ! | |
ノーマ | けど、確かにミラ姉さんの方がバリボーかも ! | |
エドナ | バリボーな方のミラ。略してバミね。 | |
ミラ=マクスウェル | バミ……か……。よし、いいだろう。シンプルでわかりやすい。 | |
ミラ | よくないわよ !それに……なんだか私が負け……とっ、とにかく ! それはダメ ! ! | |
エレノア | これは長引きそうな問題ですね……。 |
Character | はじめての料理当番 | |
ミラ | こっちの食材の下ごしらえは終わったわよ。 | |
ベルベット | わかったわ。次はこれをお願い。 | |
ミラ | まだあったの ! ? 本当にすごい食材の量ね……。しかも、これがたった1食分だなんて信じられないわ。 | |
ナナリー | 今日はクレス道場で特別稽古がある日だからいつもよりたくさん用意してあるんだ。みんなお腹を空かせて帰ってくるからね。 | |
ベルベット | あんたには同情するわ。はじめての料理当番が今日だなんて。 | |
ミラ | どういう意味よ。 | |
ベルベット | もし夕食の時間に間に合わなかったら大変なことになるわよ。 | |
ナナリー | ああ。腹ペコのカイルたちを待たせようものなら食堂で「お腹が空いた」の大合唱だからね。あんたの鼓膜も無事じゃあすまないよ。 | |
ベルベット | それだけじゃないわ。夕食の時間に間に合ってもすぐさま「おかわり」の嵐がやってくる。 | |
ミラ | そうなの ! ? | |
ナナリー | まったく。あれは勘弁して欲しいもんだよ。 | |
ベルベット | ふふっ。そうね。 | |
ミラ | あ、あんたたち……よく笑っていられるわね。 | |
ナナリー | あたしもベルベットもこういうのには慣れてるからね。それに、大変ってだけじゃないよ。 | |
ベルベット | 自分が作った料理を大切な人……親しい人たちにたくさん食べてもらえる。大変だけど……とても幸せなこと。 | |
ミラ | …………自分が作った料理を。 | |
ベルベット | あんたもそうでしょう ? | |
ミラ | 私も ? | |
ナナリー | あんただって料理やってたんだろう ?手付きを見ればわかるよ。 | |
ミラ | ……ええ。作ってた。けど……。 | |
ベルベット | けど ? | |
ミラ | 私の料理は……みんな、食べてくれなかったから……。姉さんにも、そんな人間みたいなことするなって……。 | |
ナナリー | あんた……そんなことが……。 | |
ミラ | な、なんて。昔の話よ。エルは私のスープを食べてくれたしね。 | |
ミラ | だから、あんたたちほどじゃないかもしれないけど私にも……その喜びは、ちょっとわかる……。 | |
ベルベット | ……やっぱり、今日があんたの初の料理当番でよかったのかもしれないわね。 | |
ミラ | えっ ? | |
ナナリー | 腹ペコってことは一番食べさせがいがあるタイミングってことだろ。 | |
ベルベット | エルもルドガーと一緒にお腹を空かせて帰ってくるわ。もちろんミュゼたちもね。 | |
ナナリー | あんたの料理を楽しみに待っている奴らがここには大勢いるんだ。あんたはただ、思う存分に作ればいい、それだけさ。 | |
ミラ | ふっ……ええ、単純な話よね。 | |
ベルベット | もちろん、疲れたなら休んでいてもいいけど。 | |
ミラ | ちょっと私より慣れてるからって偉そうにしないでくれる。これくらいへっちゃらよ。 | |
ベルベット | それじゃあ頼んだわよ。 | |
ミラ | ええ。みんなに私の美味しい料理を食べさせてやるんだから。 |
Character | 料理を始めた理由 | |
ミラ | ――もう ! 何回言ったらわかるのよ !いい加減にして ! | |
ミュゼ | だって、仕方ないでしょ ?我慢できなかったんだから。 | |
ミラ=マクスウェル | どうした、二人とも。廊下まで声が聴こえてきたぞ。一体何があった ? | |
ミュゼ | あら、ミラ。別に、大したことじゃないのよ ?私がちょっと先にご飯を食べただけだから。 | |
ミラ | だから、それが駄目だって何度も注意してるでしょ ! ? | |
ミラ=マクスウェル | ふむ、事情は大方把握した。ミュゼ、それはお前が悪い。 | |
ミュゼ | そんなぁ。ミラは私の味方をしてくれないの ? | |
ミラ=マクスウェル | 当然だ。食事の時間は決められているだろう。準備が終わるまで待つのがマナーだ。 | |
ミュゼ | もう……人間って面倒ね。いいわ。ミラがそう言うんだったらこれからは気を付けるわよ。それじゃあね。 | |
ミラ=マクスウェル | すまない。ミュゼが迷惑をかけた。 | |
ミラ | ……本当よ。やっぱり……姉さんとは大違いだわ。 | |
ミラ=マクスウェル | 姉さん…… ? ああ、そうか。君には君の姉がいるのだな。 | |
ミラ | ええ。彼女と違って、人間の食べ物には興味なんて持っていなかったけどね。 | |
ミラ | それどころか……私が作った食事は一度も食べてくれなかったわ……。 | |
ミラ=マクスウェル | それは、残念だったな。 | |
ミラ | ……別に同情なんてしなくていいわよ。第一、私が勝手にやってたことだし……。 | |
ミラ=マクスウェル | そうではない。私が残念だと言ったのは君にではなく君の姉に対してだ。 | |
ミラ=マクスウェル | いや、違うな……。この場合、適切な言葉は「惜しいことをしたな」だろうか ? | |
ミラ | 何 ? 全然意味が分からないんだけど ? | |
ミラ=マクスウェル | つまり、私が言いたかったのは君の美味しい料理を食べなかった君の姉は食事の楽しさを知る機会を自ら放棄したということだ。 | |
ミラ=マクスウェル | だから、私は「残念」だと思い「惜しいことをしたな」と、君の姉に対して、そのような感想を抱いたんだ。 | |
ミラ=マクスウェル | 君も、食事の楽しさや喜びを伝える為に姉に料理を振る舞おうとしたのではないか ? | |
ミラ | それは…… ! | |
ミラ=マクスウェル | 私は、その気持ちこそが大事なものであり価値があるものだと思うぞ。 | |
ミラ | ……やっぱり、嫌な女。 | |
ミラ=マクスウェル | すまない、事情も知らずに少し口を挟みすぎたな。では、私も立ち去ることにするよ。 | |
ミラ | ま、待ちなさいよ ! | |
ミラ=マクスウェル | どうした ? | |
ミラ | そ、その……ありがとう……。あなたが言ってくれたこと……悔しいけどちょっと嬉しかったわ……。 | |
ミラ=マクスウェル | ああ、また今度、ゆっくりと話を聞かせてくれ。君の姉のことも、君自身のこともな。 |