プロフィール
その女性との出逢いはガラドにとって思いも寄らないものだったに違いない。人生という大きな尺度で見れば、背負った使命との天秤の目方は、あっけなくその出逢いに振れてしまった。新たな生活と新たな命を迎え入れ、幸せの中で過ごしていた。過去を振り返ることすら無駄に思えた。だが……妻と娘はこの世から旅立った。生きる目的を、二人を奪ったものを標的として、ガラドは青年たちと共に旅路を歩む。
ミリーナの一言
ガラドさんとお話してみたら、すごく優しくて、本当に子供が好きなんだってことがわかったの。……本人が話してくれたんだけど、奥様とお子さんを病気で亡くしたんですって。その時の思いから、苦しんでいたり、悩んでいたりする子供や若者を見過ごせないのかなって思ったわ。ガラドさんと旅をしていたシングたちも、いつも励まされて、心強かったって。イクスの相談にも乗って、優しくアドバイスしてくれたみたい。イクスも嬉しそうだったわ。
イクスの一言
ガラドさんが朝、美味しいコーヒーを飲みたいって言うから用意したんだ。そうしたら渋い顔をして、淹れ直してくれって。どうやら淹れ方が悪かったみたいで、優しく丁寧にコーヒーの淹れ方を教えてくれたよ。結局、ブラックは飲めなくてミルクをたくさん入れるのにはびっくりしたけど。でも驚いたよ、教えてもらった通りに淹れたコーヒーは本当に美味しかったんだ。明日の朝はミリーナにも淹れてあげようかな。きっと喜んでくれると思うんだ。
Character | 何よりも大切なもの | |
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ガラド | この世界も住めば都になりそうだな。思ってたより悪くはねえ。 | |
コンウェイ | まあ、どの世界もそんなものだろうけどね。気に入ってもらえたようでよかったよ。 | |
ガラド | 兄さんもすっかりこの世界に馴染んでるようだな。 | |
コンウェイ | あなたもすぐに慣れますよ。僕なんかより、はるかに長く『開かれし心の世界』にいたあなたならね。 | |
ガラド | 20数年か、あっという間だったさ。若造の頃にたった一人で取り残されてどうにもならなかっただけだ。 | |
コンウェイ | そうだとしても……他の世界へ行って、それだけの間生き延びた者はいなかったかもしれない。 | |
コンウェイ | 正直、ボクもあなたが同じ世界の住人だと知ったときは驚いたんですよ。もう長いこと、生還者はいないと聞いていたので。 | |
ガラド | へッ、ただの死にぞこないさ。国にだって帰れなかったんじゃない。帰らなかったんだ。 | |
コンウェイ | 帰らなかった、というと ? | |
ガラド | 向こうの世界で家族ができたんだ。美人のカミさんと、可愛い子供だったよ。 | |
ガラド | 幸せだったなぁ……。故郷では得られない穏やかな時間だったよ。 | |
ガラド | 家族を病気で亡くしても、俺は帰らなかった。その病を根絶するために、あっちの世界で戦い続けた。早い話、俺は国より家族を取ったんだ。 | |
コンウェイ | へぇ……意外だね。あなたの国の人々はみんな国への忠誠心が高いと思っていたけど。 | |
ガラド | みんな、貧しいのさ。何とか貧しさから這い出したくて、一丸となって同じ方向を向いてるだけだ。 | |
ガラド | ま、自分の幸福だけを選んであっさり国を捨てちまう俺は、元から薄情者ってこったな。 | |
コンウェイ | いいじゃないか。自分が幸福になって何が悪い。 | |
ガラド | ん ? | |
コンウェイ | 自分の人生だ。自分と自分の大切なもののために私利私欲を尽くしたいときがあっても罰は当たらない。ボクはそう思うよ。 | |
コンウェイ | ボクは、あなたやキュキュと違って自分の目的のために『無垢なる絆の世界』へ行ったんだ。 | |
コンウェイ | ボクと姉上の幸福のために……。 | |
コンウェイ | あなたは自分を薄情者と言うけど家族やシングくんのために必死になる姿は情熱家そのものだよ。 | |
コンウェイ | ありがとう、話が聞けて楽しかった。これからよろしく。 | |
ガラド | なんだぁ、あの兄さん。一人でしゃべって行っちまった。 | |
ガラド | まあでも、ただスカしてるだけの野郎かと思ったがそうでもないみたいだな。 | |
ガラド | 案外、仲良くやれそうだ。 |
Character | 二人の故郷 | |
キュキュ | ガラド、あれから話できてなかた。キュキュ、話したい。 | |
ガラド | 単刀直入だな。 | |
ガラド | アハビタテ、アモ、アダテハ、ガボトク ? | |
キュキュ | キュキュ、言葉上手ない。でも、平気。お前の話わかる。 | |
ガラド | まあ、それでいいってんなら。俺も久々だから、考えないと言葉が出てきやしねぇしな。 | |
キュキュ | お前の質問、キュキュの立場。准士官になたばかり。 | |
ガラド | (動きから軍関係者とは思っていたがそのわりには言葉が下手だな……。きちんと教育を受けてねえのか……。) | |
ガラド | 歳はいくつだ ? | |
キュキュ | キュキュは、18。 | |
ガラド | やっぱりか。若すぎる。正式な配属前ってところじゃねえか……。 | |
ガラド | 国はこの20余年でお前みたいな若い者を送り出すほど追い詰められたってわけか。 | |
キュキュ | 戦争で大人たち、減った。キュキュと同じくらいの同志、たくさん志願した。みんな、『無垢なる絆の世界』、旅立った。 | |
キュキュ | でも、帰れたのはキュキュだけ。たくさんの同志、みんな帰ってこなかた。 | |
ガラド | そうか……大変だったな。 | |
キュキュ | そんなことない、キュキュ、嬉しかた !国のため、自分の任務、仕事できる ! | |
ガラド | おめえさんは国想いだな。だから任務を果たせたのかもしれねぇな。 | |
キュキュ | はい ! ルカたちと旅をして、国にたくさんの知識持って帰った。国のみんな喜んだ。すごくすごく褒められて、キュキュ偉くなた ! | |
ガラド | なるほどな。それで一気に准士官に昇進したってわけか。 | |
ガラド | じゃあ、俺についてはどうだ ?俺の名前、ガラド・グリナスって名を聞いたことはあるか ? | |
キュキュ | ん~……知らない。でも、何十年か前、キュキュたちみたいに旅立った人たちいたことは、知てる。 | |
キュキュ | でも、その人たちも一人も帰って来なかた。だから、ガラドと会えたの、すごいこと !ガラド、キュキュのセンパイ ! | |
ガラド | 先輩なんて、俺はそんな大したもんじゃねえさ。あっちの世界に行ったままもうずっと帰ってねえ。 | |
キュキュ | それは、仕方のないこと。外の世界行くの危険。たどり着けるだけでもキセキ。 | |
キュキュ | ガラドの肩のそれ。シングの世界のモノ。それがあるってことは、ガラドは使命ちゃんと果たそうとしたアカシ ! | |
ガラド | ま、まあ……そうだな。 | |
キュキュ | 元の世界へ帰り道、どこにあるか見つけるの大変。帰れなかったのはそれが見つからなかたから。でしょ ? | |
ガラド | 別に、それだけとも限らねぇ。向こうでいろんな出会いもあったしな。 | |
キュキュ | ……ん ?まさかガラド、遊んでたか…… ?国を放っておいて、ひとりだけ楽しんでたのか ? | |
キュキュ | 外の世界、無事にたどり着けたのに……帰り道、探さなかたのか ! ? ! ? | |
ガラド | い、いや、ちげえよ !あれだ、向こうでちぃと重い病気にかかっちまってよそれで何年も動けなかったんだよ ! | |
キュキュ | そうだたのか。それならしかたない。病気ないなら帰れたのに……。ガラド、大変だたな。 | |
ガラド | お、おう。俺も帰れるもんなら帰りたかったぜ。いや、情けねえ。 | |
キュキュ | やっぱり、ガラドはキュキュのセンパイ !これから仲良くする ! よろしく ! | |
ガラド | ふぅ、あぶねぇ……なんだあの殺気は。この俺を動揺させるたぁ、あの娘ただ者じゃねえな。 | |
ガラド | うっかり家族のことを話せば国賊扱いされそうだ。まさか異世界でもこんなしがらみがあるとはやっぱり故郷は捨てられないってことなのかね。 |