プロフィール
ランゲツ家当主にして、聖寮にその名を轟かす特等対魔士。純粋な強さのみを求める彼の前に、夜叉の業魔が現れる。彼の名はロクロウ・ランゲツ。兄である自身を斬りたいという業の果て、業魔と化した実の弟であった。だが斬られてやるほど甘くはない。かつてと同じように、弟の大太刀をへし折った。しかし弟の心は折れることなく、ついに究極の一振りを携えて現れる。面白い、ならば全力で応じるのみ。聖寮の特等対魔士としてではなく、本気の兄、シグレ・ランゲツとして。
ミリーナの一言
アジトでも度々熱い議論がかわされている、犬派か猫派か問題。せっかくだからアジト外の意見を取り入れようと思ったんだけど、シグレさんはどっち派なのかしら。確か、ムルジムさんっていう猫の聖隷を連れていたし、きっと猫派よね。そういえば確かロクロウさんは犬派だって言っていたような…… ?なんだか凄いわね。あの二人ったら、犬派か猫派かでも対立しているなんて ! やっぱり、この二人は闘いを避けられない運命なのかしら。ちなみに、私はもちろんイクスなら何でもいい派よ ♪
イクスの一言
シグレさんはランゲツ流の表芸である大太刀一刀流の使い手なんだけど、ロクロウさんが得意な裏芸の小太刀二刀流も扱えるんだってさ。1つの流派を極めるのも大変そうなのに、どっちも扱えるなんて凄いよな。監獄島でコーキスが世話になったみたいだし、いつか落ち着いて会うことができたら、何かお礼がしたいな。ロクロウさんにシグレさんの好物を聞いてみるか。
Character | ランゲツ家 | |
---|---|---|
シグレ | …………ここは。 | |
コーキス | シグレ様、目を覚ましたんだな ! | |
ムルジム | ここはコーキスが根城にしている場所よ。まだ傷は完全に閉じていないから寝てなさい。 | |
シグレ | いや、もう大丈夫だ。わりぃな、世話かけちまったみてぇでよ。 | |
ムルジム | 本当よ。なんとか生きていたからよかったけどさすがにあたしも、今回ばかりは肝が冷えたわ。 | |
シグレ | 俺も死んだと思ったぜ。あの三刀流には、正直驚いた。元の世界で俺が斬り殺されたのも無理はねぇ。 | |
コーキス | ……シグレ様、ごめん。戦いに割り込んで。けど、今の俺たちにはどうしてもシグレ様の力が必要で……。 | |
シグレ | そうビクつくな。俺は夜叉じゃねぇんだ。別に戦いを邪魔されてお前を斬り殺したりしねぇよ。もう済んだことだし、細けぇことはいいだろ。 | |
シグレ | それに、お前は俺の恩人だ。命より大切なもんを見つけてくれたしな。もうしばらく付き合ってやるよ。 | |
コーキス | ……シグレ様。 | |
ムルジム | だけど、コーキス。あまり期待しないでね。この人、気ままで自由な人だから。 | |
シグレ | がははっ ! 猫のお前に言われるとはな !まあ、否定はしねぇがよ。 | |
コーキス | 大丈夫。シグレ様のことはわかってるよ。俺たちの陣営についてくれるのは恩返しだけが理由じゃないってことも含めてさ。 | |
シグレ | 当たり前だ。俺も剣士だからな。どんな強え奴と戦えるのか楽しみだぜ。 | |
コーキス | ……だよな。本当、シグレ様もロクロウ様もよく似た兄弟だよ。 | |
シグレ | それも当然だ。俺たちはランゲツ家の男だからな。 |
Character | 武芸者の至る道 | |
シグレ | お前、リムルっつったか。さっきの業はなかなか面白かったぜ !もう少し反応が遅れてたら這いつくばってたぞ。 | |
リムル | ご冗談を。貴方のような大剣豪に名前を覚えていただけたのは光栄ですがやはり、まだまだ修行が足りません。 | |
シグレ | いい顔だ。お前にもいるのか ?どうしても斬りてぇ相手ってやつがよ。 | |
リムル | わたしは武芸者。目標は自分の武を極めることにあります。 | |
シグレ | それも本心だろうよ。だが、それとは別のお前自身の想いもある。正直になれよ。 | |
リムル | ……誤魔化しは通じませんね。ええ、勝ちたい相手がいます。一度は勝ちましたが、二戦目で敗れてしまいまして。 | |
シグレ | 一勝一敗か。そいつは面白えじゃねえか。斬りてぇと思える相手がいるのはいいことだぜ。 | |
リムル | わ、わたしは斬りたいのではなく……いえ勝つとはつまり、相手を斬り伏せること。……本質は同じことかもしれませんね。 | |
シグレ | お前も武を極めるうちに悟るだろうぜ。命のやり取りをしてるときが一番、本気で戦える時だってな。 | |
リムル | ……ええ、そうですね。そうなれば、もしかしたらいずれわたしはカイルと……。 | |
シグレ | その口ぶりだと、そいつとは親しい間柄みてえだな。 | |
リムル | はい。従姉弟にあたる人物です。 | |
シグレ | そうか。なら年齢も近えだろ。生涯斬り亘れる、いい相手だ。 | |
リムル | 悪い顔をなさいますね。 | |
シグレ | おうよ。いい悪い顔だろ。 | |
リムル | ええ。まさにそれが剣士の顔なのでしょうね。まだわたしは貴方のように笑うことはできませんが。 | |
シグレ | 馬鹿、考えすぎだ。俺のようになるのだけが答えじゃねぇ。てめぇはてめぇなりの答えを出せばいいんだよ。 | |
リムル | 剣の道を極める武芸者としてではなくわたしとしての答えを……。 | |
シグレ | 剣鬼になろうが、猫みたいに自由に生きようがあるいは業魔になろうが、お前の自由だ。 | |
リムル | ……わかりました。そのお言葉、心に留めておきます。 | |
リムル | 先ほどは、いきなり勝負を挑んでしまい失礼しました。シグレ殿にお手合わせ頂き感謝します。とても勉強になりました。 | |
シグレ | 堅苦しい野郎だな。礼なんざいらねぇよ。 | |
シグレ | そんなもんより、更に磨かれたお前の業が見てぇ。もっと修行して、もっと業を磨け。そうしたら、またやりあおうぜ。 | |
リムル | もちろん。その時は貴方を負かしてみせます。 | |
シグレ | ふっ……そのツラも覚えとくぜ。お前という武芸者がよくわかる、いい顔だってな。 |
Character | 夜桜の味わい | |
シグレ | …………。 | |
コーキス | ……シグレ様、何をしてるんだ ?こんなところに一人で。 | |
シグレ | 俺に客が来てるみたいだからな。出迎えてやろうと思ってよ。 | |
コーキス | 客…… ? | |
シグレ | ああ。……いつまでそこに突っ立ってんだ ?来ないなら、こっちから――行くぜ ! | |
ロクロウ | …… !体はもう万全らしいな、シグレ。一撃受けただけで腕がしびれやがる。 | |
シグレ | はっはっ、当たり前ぇだろ !真っ二つになってねぇお前の方も鈍っちゃいないようだな。 | |
コーキス | ……ロクロウ様、どうしてここに ?シグレ様を斬るためだったら、俺は―― | |
シグレ | 落ち着けよ、そんな気迫は感じねぇ。こそこそ近づいて来るってことは何か別の用なんだろ ? | |
ロクロウ | ああ、その時は正面から来るさ。今日は土産を持って来ただけだ。受け取れ、コーキス。 | |
コーキス | おっ、と……。何だこれ ? 甘い匂いがするけど。 | |
ロクロウ | 『夜桜あんみつ』という甘味だ。故郷の名物なんだが、最近無性に食いたくなってな。こっちでも店を探して手に入れてきた。 | |
シグレ | おっ、懐かしいじゃねぇか !随分気が利くようになったな。早速いただくぜ……ん ? こりゃあ―― | |
ロクロウ | やはり、そうだよな。『違う』んだろう ? | |
シグレ | 応、確かに違ぇ。 | |
コーキス | 二人で通じ合ってるみたいだけど一体どうしたんだ ? 違うって、何が……。 | |
シグレ | この『夜桜あんみつ』は俺たちが昔食ってた味とちょいと違ぇんだ。見た目はそっくり同じなんだがな。 | |
ロクロウ | 店の名もそっくり同じだった。具現化された世界だからなのかもしれんし職人が引退でもしたのかもしれん……。 | |
コーキス | そうか……、残念だな。二人の思い出の味がもう味わえないなんて。 | |
ロクロウ | まぁ、仕方ないさ。それを確かめられただけで用は済んだ。 | |
シグレ | 待てよ。俺は『違う』って褒めたんだぜ ?確かに前ほど美味くはねぇが……なんつーか、面白ぇ味だ ! | |
ロクロウ | そうか ? 俺にはどうも物足りない。昔あった風味が欠けているというか……。 | |
シグレ | 足りねぇからこそ、これからどうなるかわからなくて面白ぇんだろ。甘味屋だって人生懸けて美味いモン作ってんだ。 | |
シグレ | お前みたいに諦めの悪い甘味屋なら十年後にはもっともっと美味いあんみつを作ってるかもしれないぜ。ワクワクするじゃねぇか ! | |
コーキス | シグレ様、前向きだな……。 | |
ロクロウ | ……なるほど。俺みたいに、か。 | |
シグレ | 応。影打ちで真打ちに挑む身の程知らずもてめぇの刀で俺を斬る程になれると知ったからな。甘味屋だってそうなれねぇ道理はねぇだろ。 | |
ロクロウ | そうだな。俺も、こっちの甘味屋があの『夜桜あんみつ』を超える日を待ってみよう。邪魔をしたな、二人とも。 | |
シグレ | 応。あんみつの借りは、イモケンピで返してやるよ。――斬られた借りも、いずれな。 | |
ロクロウ | ああ、楽しみにしておくぜ。――両方な。 |