プロフィール
緋の夜、過ぎた幸せは指の間から零れ落ちた。命に代えても守ると誓った愛しいものたちは人の弱さと罪深さによって引き裂かれ、絶望の底で彼は彼であることをやめた。やがて人々は彼のことをこう呼ぶようになる――導師アルトリウス・コールブランド。彼が望むのは聖主カノヌシの復活によりもたらされる、穢れのない世界。そこには苦しみも悲しみも、かつて彼が手にした泡沫の幸せも存在しない。
ミリーナの一言
ベルベットたちからアルトリウスのことを聞いたわ。彼は彼のやり方で、世界を変えようとしたのね。残酷な世界から、誰も彼のような絶望を味わうことのない――けれど、喜びも笑顔も存在しない世界へ。彼の全てを否定することは、私にはできないわ。愛する人を失った苦しみは分かるような気がするから。でも彼の目指す世界は人には辛すぎるように思うの。行き過ぎた彼の善性がその選択をさせたのかも知れないわね。
イクスの一言
全ての人が苦しまずに生きられる世界……もし、そんなものがあったらどんなにいいかって思うよ。大切な人にはずっと笑顔でいてほしいから。でもアルトリウスの理想とする世界には、その笑顔も存在しないんだ。どちらがいいのかはそれぞれに答えがあると思うけど、俺は辛いことや悲しいことがあっても、この世界のままで守りたいって思うよ。これもアルトリウスには感情に振り回されているように見えるのかも知れないけどさ
Character | 再会 | |
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この世界で初めて、アルトリウスがベルベットたちと遭遇した直後のお話です。 | ||
ルキウスγ | アルトリウス様、ロミー様、転送完了です。 | |
ロミー | はいお疲れ。まったく、予定が狂いまくりで面倒にもほどがあるわよ。 | |
ロミー | で、どういうこと ?アルトリウス。 | |
アルトリウス | 何の話だ ? | |
ロミー | とぼけないでくれる ?随分と熱狂的なファンがいたじゃない。私たちにも紹介してよね。 | |
アルトリウス | ふ……。あいつらのことか。 | |
ロミー | 元の世界での知り合いなんでしょ ? | |
アルトリウス | ああ。浅からぬ縁、といったところか。理想の世界を作り上げるために力を貸してもらっていたのだよ。 | |
ロミー | ずいぶん含みがあるじゃない、その言い方。 | |
ルキウスγ | アルトリウス様は元の世界でも理想を掲げてらしたのですね。 | |
アルトリウス | そうだな。元の世界でも、この世界でも。私はきっとどの世界でも同じことをする。 | |
ロミー | 同じことって ?利用したり裏切ったり使い捨てたり殺したりすること ? | |
アルトリウス | 理想を実現するために必要なことならば、な。私は救いたいだけなのだよ。人間を、憎しみに満ちた世界から。 | |
ロミー | ふうん ? たしかに憎しみには満ちてたわね。あなたのファン御一行様。 | |
ルキウスγ | アルトリウス様は、その方々も含めて救うおつもりなのでしょう。 | |
ロミー | そんなの無理じゃない ?あの黒髪の女なんか視線だけで殺してやる、って感じだったもの。 | |
アルトリウス | ベルベットか……。具現化された新しい世界でも変わらぬとは。 | |
ロミー | なんだか嬉しそうね。 | |
アルトリウス | 嬉しい…… ? | |
ロミー | だって今、微笑んでるじゃない。気付いてないの ? | |
アルトリウス | いや。そうかもしれないな。ベルベットが具現化されていることが。変わることなく私を憎んでいることが……。 | |
ロミー | あらあら ? ちょっと情が湧いちゃってるとか ? | |
アルトリウス | そのようなものは、とうの昔に捨てている。だが、私のやろうとしていることは正しいと改めて確認することができた。 | |
アルトリウス | 元の世界での救済の結末がわからないのが残念だがこの世界は必ずこの手で救ってみせる。 | |
アルトリウス | 決意を強固なものにできたという意味ではあの者たちに感謝をせねばならないな。 | |
ロミー | ……そうだった。アルトリウスってこういうやつだったわ……。 |
Character | 世界が変わろうとも | |
メインシナリオ 4部 第13章の頃のお話です。 | ||
テレサ | アルトリウス様。 | |
アルトリウス | テレサか。デミトリアス帝の懐には入れたか ? | |
テレサ | はい。アルトリウス様のお望みのとおりに。デミトリアス帝より、この件は一任するというお言葉をいただきました。 | |
アルトリウス | そうか。よくやった。 | |
テレサ | お褒めに預かり光栄です。 | |
アルトリウス | だがデミトリアス帝はともかくグラスティンは腹の底まで信じてはいまい。用心は怠るな。 | |
テレサ | 承知いたしました。引き続きオスカーの分まで挺身いたします。 | |
アルトリウス | まあ、多少の時間稼ぎになればよい。運よく聖隷も手に入ったおかげでヘルダルフもようやく役に立ちそうだからな。 | |
テレサ | ……ヘルダルフ…………。 | |
アルトリウス | どうかしたのか ? | |
テレサ | も、申し訳ありません。ヘルダルフの名を聞き、オスカーが負傷した時のことを思い出してしまいました。 | |
テレサ | 敵に借りを作る失態、謝罪の言葉もございません。 | |
アルトリウス | お前のことだ。恥ずべきだと思いながらも恩義を感じていよう。 | |
テレサ | い、いえ……それは……。 | |
アルトリウス | 惑わされるなよ。 | |
テレサ | ! | |
アルトリウス | 一時の感謝も労りも人の本質には何ら影響を持たない。 | |
アルトリウス | どの世界でも同じだ。いつしか必ず醜く争い……憎しみを生み出すものなのだからな。 | |
テレサ | ……私は、まだ甘い。おっしゃるように、僅かながら惑わされていたのかもしれません。 | |
テレサ | この期に及んでもアルトリウス様の目指す世界に理解が及んでいない私をお許しください。 | |
アルトリウス | よい。報告は以上だな。切るぞ。 | |
テレサ | 失礼いたします。 | |
アルトリウス | 全てが人の心から生み出された若い世界。元の世界と比べればまだ穢れきってはいないが……しかし人は感情のままに生き、滅びに向かっている。 | |
アルトリウス | 具現化……か。 | |
アルトリウス | ……具現化の果てに別の未来が拓けたとしてもそれに何の意味がある ?過去が変わることはないというのに。 | |
アルトリウス | 元の世界に戻れぬというのなら仕方あるまい。今はこの世界でやるべきことを、ただやるだけだ。繰り返す滅びへの道行きを止めてみせる。 | |
アルトリウス | お前はこの世界でも、俺を否定するのだろうな。……ベルベット。 |
Character | 世界の変革 | |
メインシナリオ 4部 第1章の頃のお話です。 | ||
アルトリウス | ヘルダルフの業魔化は時間の問題だ。おそらく、災禍の顕主と同等かそれ以上の力を持つことになるだろう。 | |
アルトリウス | オスカー、何かあったらすぐに連絡せよ。警戒は怠らぬように。 | |
オスカー | はい、お任せください。アルトリウス様にご心配をおかけするようなことは決して起こさせません。 | |
オスカー | しかし、本当に一人でデミトリアス帝に反旗を翻すとは……。底知れぬ男です。 | |
アルトリウス | だが、こちらにとっては好都合だ。お前には大きな負担をかけることになるがこれも世界の理を正すため。 | |
オスカー | 承知しております。アルトリウス様も、どうかお気をつけ下さい。 | |
アルトリウス | ……ここまでは順調だ。あとは邪魔が入らぬようにしなければな。 | |
サレ | これはこれは、誰かと思えば反逆者を捕らえた導師様じゃないか。 | |
アルトリウス | サレか。エルレインの下に配属されたと聞いていたが。 | |
サレ | 僕だって、いつも聖女様に付いているわけじゃないさ。 | |
サレ | ところで、反逆者はキミたちのところで処分することになったのかい ? | |
アルトリウス | いや、私の管理下で拘束しているだけだ。殺しはしない。 | |
サレ | それは残念。あの傲慢な男の死に顔はなかなか絵になると思っていたんだけどね。 | |
アルトリウス | 確かに奴の野心は隠しきれるものではなかった。 | |
サレ | 僕はヒトらしくていいと思ったけど。少なくとも、導師様や聖女様のような偽善者たちに比べれば遥かにマシさ。 | |
アルトリウス | 偽善者か。 | |
サレ | ああ。あなたもあの聖女様と同じさ。特に、導師様はヒトの傲慢や憎悪を悪しきものだと考えているだろう ? | |
アルトリウス | まるであの男の方が正しいと言っているようだな。 | |
サレ | 少なくとも、僕はそう思うってだけさ。だって、怒りや憎しみを持たないヒトなんて見ていてもつまらないだろ ? | |
アルトリウス | 私とお前では、見ているものが違うのだ。 | |
サレ | アハハ、確かに崇高なる導師様の見解なんて下々の者にはわからないんだろうねぇ。 | |
サレ | さて、雑談はこれくらいにして僕はそろそろ失礼するよ。 | |
アルトリウス | ……揺さぶりでもかけたつもりか ?無意味な。 | |
アルトリウス | 私はヘルダルフのような者を人の業を認めることはない。 | |
アルトリウス | 業は新たな業を生み、もたらされるのは悲劇だ。世界はそのようなことを望んでいない。 | |
アルトリウス | 世界の痛みは私が止める。人の業は、全てこの手で消し去ってやろう。 |