プロフィール
世界最高の鏡士でありビクエの称号を受け継ぐ彼は、世界の滅びへ続く扉を開いてしまった。子供の頃から憧れ続けた大切な幼なじみ――イクスとミリーナのために。彼らとの時間はフィリップにとってかけがえのないものでもあった。それ故に彼は取り返しの付かない罪を犯してしまう。亡くした人を都合のいい形で甦らせようとする禁忌、それがこの物語の始まりでもあった。
ミリーナの一言
正直なところを言えば……フィルと私の関係はとても難しいわ。フィルと呼び続けることも本当のところは良くないのかも知れない。厳密に言えば、幼なじみのフィルと過ごしたという私の思い出は、私が体験したことではないから。年上の弟で、大切な仲間で、頼れる先輩で、そして大切な幼なじみ。それが私にとってのフィルよ。
イクスの一言
フィルさんには本気で腹を立てたことも、感謝したこともあるよ。最近よく思うのは、自分の性格が何となくフィルさんに似てるってことかな。フィルさんが俺の性格を弄ったから、疑似親子みたいになって似てるところがあるのかなとも考えたけど、こんなことを言ったら、フィルさん顔を青くして謝ってくるんだろうな。うん、黙っておこう。
Character | 本と食事の美味しい関係 | |
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ヴィクトル | フィリップ。食事の時間だ。 | |
フィリップ | …………。 | |
ヴィクトル | フィリップ。 | |
フィリップ | …………。 | |
マーク | 無駄だぜ、ヴィクトル。フィルが本や研究に没頭してるときは周りの声なんざ聞いてねえからな。 | |
ヴィクトル | まあ、そうだろうとは思ったが……しかしまともに食事もとらないのは問題だろう ? | |
マーク | それなんだよなぁ。せめて研究の片手間でもいいから食ってくれりゃ安心なんだが。 | |
ヴィクトル | ……まあ、こうなることは予測できたので片手間で食べられるものを用意しておいた。 | |
マーク | ――おお、サンドイッチか !あんたの料理は単なるサンドイッチですら美味そうだな ! | |
ヴィクトル | 中に挟むものも吟味した。肉、野菜、パン、全てがバランスよく食べられる。彼には必要なものだろうからな。 | |
マーク | はは、さすがだぜ。あんたのおかげで食が充実して助かるよ。 | |
マーク | ってわけで……おーい、フィル。フィル ! | |
フィリップ | …………。 | |
マーク | フィル ! ! | |
フィリップ | うわぁ ! ! | |
フィリップ | ……って、え ? マークに、ヴィクトル ?いつからそこに……。 | |
マーク | 結構前からここにいたけどな。それより、ヴィクトルがお前にコレを作ってくれたぜ。 | |
フィリップ | これ、って……わあ、美味しそうなサンドイッチだね。……もしかして、僕に ? | |
マーク | ああ。本を読みながらでも食えるんだ。いくらなんでも断らないよな ? | |
フィリップ | う……ご、ごめん。集中すると中々お腹がすくのも忘れちゃうんだ……。 | |
ヴィクトル | 研究に没頭するなとは言わないが食事はきちんととるべきだ……ということはわざわざ説明するまでもないな ? | |
フィリップ | ああ、わかってる。すまない……。 | |
ヴィクトル | フッ……。今後そういったことを避けるためにも一つルールを設けよう。 | |
ヴィクトル | 一度食事を抜く度にフィリップの蔵書を一冊売り飛ばす。 | |
マーク | お、そりゃいいな。食事を抜いてくる度に救世軍の財政が潤うって訳だ。ヴィクトル、協力するぜ。 | |
フィリップ | そ、そんな ! ? それは困るよ !今後は気を付けるから ! | |
フィリップ | はあ……なんだか保護者が増えたみたいで複雑な気持ちだよ……。 |
Character | 同じ姿の違う影 | |
フィリップ | カーリャ。ちょっといいかな。カーリャはイクスのことが好きかな ? | |
カーリャ | はあ……。それはまあ、ミリーナさまの大切な人ですから。 | |
フィリップ | でも、憧れるとか恋をしているって感じじゃないね。 | |
カーリャ | それはないですね。ていうかフィルさま、そういう質問はセクハラですよ。 | |
フィリップ | あ、……そ、そうだよね。ごめんよ、不愉快にさせて。 | |
カーリャ | いえ、カーリャはいいんですけど他の人には気を付けて下さいね。 | |
カーリャ | ちなみにカーリャは、ユリウスさまとかフレンさまとかロイドさまとかが好きです ♪ | |
フィリップ | き、聞いてないけど、ありがとう……。 | |
ミリーナ | ……見ーたーわーよー ? | |
フィリップ | ミリーナ ! ? ち、違うんだ。これは変な意味じゃなくて。あ、変な意味っていうか……。好奇心――いや、それは言葉が良くない。学術的興味というか……いやそれ―― | |
ミリーナ | ご、ごめんなさい !そんなに動揺するとは思わなかったわ。冗談だったの。 | |
ミリーナ | もしかして、フィルも気になっているの ?カーリャとネヴァンの違い。 | |
フィリップ | あ、ああ。うん……。鏡精は色々な意味でマスターの好悪の感情に気持ちが引っ張られるみたいなのにカーリャもジュニアのマークも違うようだから……。 | |
フィリップ | きみやジュニアは、同一人物を過去から同一時空に具現化する為、一般的な具現化とは違う手法が用いられた。 | |
フィリップ | イクスも……記憶を改ざんするために同じ手法を使っているんだ。だから、それが原因であろうとは思うんだけれど……。 | |
ミリーナ | 私……最近何となく理由がわかってきたような気がしているの。 | |
フィリップ | すごいな。良かったらミリーナの考えを僕にも聞かせてくれないか ? | |
ミリーナ | そんな大したことじゃないのよ。やっぱり私とゲフィオン、フィルとジュニアは別人なんだということだと思うの。 | |
ミリーナ | アニムスが、つまり見た目や記憶は元の存在と同じだとしても、アニマが……心が違う。ある意味具現化に介入したからそうなったのかも知れないわね。 | |
フィリップ | 心は具現化された記憶に基づいて、元の存在と同じ感情を抱いている――と思って生活をする。 | |
フィリップ | 例えばジュニアなら……その……ミリーナが……す、好き、だと記憶で理解してそう振る舞うけど心は違うから記憶通りの感情にならない…… ? | |
ミリーナ | イクスが『自分はどこまでを作られたのか』ってことを気にしているって知ったとき私も自分のことを考えたの。 | |
ミリーナ | それで、自分の気持ちが『イクスを守りたいというゲフィオンによる操作』だと思った。 | |
フィリップ | カーリャがイクスに特別な感情を持っていないのはきみが作られた当初は、ゲフィオンの記憶の影響でイクスへの恋愛感情があると錯覚していたから……か。 | |
ミリーナ | ええ。でも今の私の中には、明確に今のイクスを好きだという気持ちがあるの。だからこの気持ちは私の中から生まれた、私だけの感情なんだと思う。 | |
ミリーナ | まあ、本当のところはわからないけれど……。でも、だから、フィル。私は、平気よ。 | |
フィリップ | え ? | |
ミリーナ | 私を造ってくれて三人目のイクスに出会わせてくれてありがとう。 | |
フィリップ | ……きみは……ゲフィオンとは違うね。似ているけれど、違う……。彼女より強くて、そして同じくらい優しいよ。 | |
フィリップ | ありがとう、僕に赦しを与えてくれて……。 |
Character | こういう景色を見るために | |
マーク | おーい、フィル。本当にここであってんのか ? | |
フィリップ | うん、そんなに深い場所ではないという話だからあと少しなんじゃないかな。 | |
マーク | そうかよ。ってか、なんだったんだ ?デクスの奴、いきなり連絡してきたと思ったらこの森周辺をしばらく立ち入り禁止にしろって……。 | |
フィリップ | 今でもたまにあるんだ。世界が落ち着いてきたといっても、やっぱり異変は起こってしまうものだし……。 | |
フィリップ | だったら早めに突き止めて、大事になる前に対応する。……っていう名目で救世軍にいた皆にも手伝ってもらっているけど……。 | |
マーク | けど ? | |
フィリップ | たぶん、趣味で世界中を飛び回っては調べ物をしているメンバーが多いんじゃないかな、って。 | |
マーク | ははっ、なるほどな。その通りかもしれねーな。 | |
マーク | デクスは大体アリス絡みで関わってくるけどな。んで、そのアリスはまだ俺たちに手を貸してたほうが何かと都合がいいと判断してるって感じか。 | |
フィリップ | そうだろうね。善意だけで協力しているわけじゃないのはわかっているし、助かっているのも事実だよ。 | |
フィリップ | 今回のデクスの報告だって大きな事件になる前に、僕たちが解決できるかもしれないからね。 | |
マーク | まー、もうちょっと具体的な内容を伝えてくれりゃあ完璧だったんだが。 | |
フィリップ | 結局、最後まで詳しいことは言ってくれなかったね。 | |
マーク | ありゃあ完全に何か隠してるぜ ?そのせいでわざわざ自分の目で確かめることになっちまったが……。 | |
マーク | 立ち入り禁止にすべき理由どころかどんな現象が起きているのかすら教えてもらえなかったからな。 | |
マーク | とりあえず、誰も近づけさせたくないってことは確かなんだろうが……。 | |
フィリップ | まだ手掛かりになるようなものは見つからないね。 | |
フィリップ | もう少し歩いてみて、やっぱり何もなかったら一度街に戻ろうか。 | |
マーク | だな。それじゃあ――ん ? | |
フィリップ | ッ ! ! これは…… ! | |
マーク | な、なんだこりゃ ! ?綿毛か何かなのか…… ?七色に光りながら宙を舞ってる…… ! | |
フィリップ | ……わずかに精霊の気配が感じられる。これは、精霊が絡んだ現象なのか !美しい光景だな……。 | |
マーク | ああ、こんな幻想的な景色が見られるなんてな。そりゃあデクスが独り占めしたくなるわけだぜ。見せたい相手が素直に喜んでくれりゃあいいが―― | |
マーク | 少なくとも、おっさんと二人で見るような景色じゃねぇよな。 | |
フィリップ | はは。それなら今度、ネヴァンを誘って来てみたらどうだい ? | |
マーク | へっ、言うようになったじゃねえか。自分の鏡精をからかって楽しむなんて趣味が悪いマスターだぜ。 | |
フィリップ | あはは、ごめんごめん。まあ、おじさんが相手なのは不本意かもしれないけど僕としてはマークと一緒に見られてよかったよ。 | |
フィリップ | この世界には、そういう気持ちになる風景がまだまだたくさんあるんだ。 | |
マーク | ……まあ、そうだな。そのためにも、お前には長生きしてもらわなきゃ困るんだけどな ! | |
フィリップ | わかってるよ。ちゃんとそのための努力をする。こういう景色を、マークと一緒に見たいからね。これからも、ずっと。 |