キャラクター | #N/A |
ミリーナ | ……クス。……イクス ? |
ミリーナ | イクス聞こえてる ? |
イクス | ……あ、ああ。聞こえてるよ。ごめん、ちょっと考え事してた。 |
ミリーナ | なーんだ。急にぼーっとするからびっくりしちゃった。積み荷。それで最後だよ。 |
イクス | ……これで全部、か。手伝ってくれてありがとな、ミリーナ。 |
イクス | 1人で遠くの海への漁に出るのは初めてだからどうも、勝手がわからなくて。 |
ミリーナ | ううん。全然 !──帰ってくるのは4日後だっけ。 |
イクス | ああ。その予定だ。でもどんなトラブルがあるかわからないもんな。準備しておくに越したことはないよ。 |
イクス | まずはやっぱり天候か……。大雨や嵐はずっと警戒しておくとして……。逆に、日照りにも注意しないと。 |
イクス | 水を多く積みたいけど、過積載は船の転覆に繋がる。そこをクラーケンにでも襲われたら全滅だ。クラーケン対策は何か用意していたっけ。 |
イクス | そうだ ! 暗記はしてるけど一応図鑑を持って行こう。生態を知れば、対策が立てられるからな。 |
ミリーナ | ふふっ。イクスったら相変わらず心配性なんだから。 |
ミリーナ | でも大丈夫よ。イクスがそれだけ考えて準備してるんだもの。 |
ミリーナ | ──自信もっていいんだよ。ね。頑張って ! |
イクス | ミリーナ、もう子供じゃないんだぜ。手とか、繋がなくていいよ。 |
ミリーナ | ふふっ。──ごめんごめん。イクスが不安がってるとつい、応援したくなっちゃうの。 |
ミリーナ | ……それに、4日も会えないと寂しいし。 |
イクス | 4日なんてすぐだろ ? |
ミリーナ | そうだけど……。漁、心配だなぁ。私も着いていけたらいいのに。 |
イクス | ──何の訓練もせずに乗るなんて、それこそ何が起こるかわからないからダメだよ。それに、ミリーナには鏡士の修行もあるだろ ? |
ミリーナ | ──あ ! そうだ !丁度この間、習った術があるの。 |
イクス | 術 ? |
イクス | ──わっ ! 何だそれ ! ? 具現化か ! ? |
ミリーナ | そうよ。鏡士にしか出来ない秘術──その中でも特別な奴♪ |
カーリャ | はじめまして、イクスさま。──私、ミリーナさまの鏡精のカーリャだよ ! |
イクス | あ、ああ……。 |
ミリーナ | ねぇ、カーリャ ?私の代わりに、イクスに付いていってくれないかな ? |
カーリャ | ミリーナさま。カーリャは、ミリーナさまから離れすぎると力が出なくなっちゃうんですよぅ。 |
ミリーナ | そっか……。そうよね……。 |
イクス | ──凄いな、ミリーナ。こんな事もできるようになったのか。 |
ミリーナ | イクスだって、もう1人で遠出できるなんて凄いじゃない。頑張ってる証拠だよ。お互い、順調だね ! |
イクス | ははっ。そうだな。……やっぱり俺は、父さんや母さんとは違って鏡士より、漁師の方が合ってるんだろうな。 |
イクス | ──あ。しまった。忘れ物したぞ。図鑑もとってこなきゃいけないし一度家に戻らなきゃ。 |
カーリャ | それじゃあ、カーリャも一旦さよ~なら~。また、いつでも気軽にお呼び出しを~♪ |
イクス | ……何だか騒がしいやつだな。 |
ミリーナ | ふふっ。元気な子なの。 |
| (──うん ? ) |
| (何だ…… ? 今の音──) |
キャラクター | #N/A |
? ? ? | ──そいつも、命はあるみたいだな。 |
男 | ……おい……──おい……。大丈夫か ! ? |
イクス | ………ミリー……ナ……。 |
? ? ? | ……お前が抱えてた女の事だな。そっちも無事だよ。 |
イクス | ミリーナ ! |
男 | さっきお前と同じように目を開けてイクス……って──そのまま寝ちまったよ。 |
イクス | ……良かっ………た……。 |
? ? ? | ──自分たちに何があったのかはわかるか ? |
イクス | えっと………………。 |
イクス | ………わから……ない……。 |
? ? ? | ……お前ら、オーデンセから流れてきたんじゃねぇかって思うんだが。 |
イクス | オーデンセは俺たちの住んでる島です……ってここはオーデンセじゃないんですか ? |
男 | マークさん、どうします ? |
マーク | 隠しても仕方ねぇだろ。話してやれ。 |
| ……遠くだったけど俺たち救世軍の船の上から見えたよ。――オーデンセに火の玉が降るのがな。 |
イクス | な、何だ……それ……。オーデンセはどうなったんです ! ? |
マーク | 消えちまったよ。跡形もなく、な。 |
イクス | そんな……馬鹿な ! ? |
マーク | 信じられねぇか ? だったら見に行ってみな。ここは王都のあるセールンド島だ。少し船を沖に出せばオーデンセが見える。 |
マーク | いや……見えた筈、だな。もう吹き飛んじまったんだから。 |
イクス | ………………。 |
イクス | 島の……他の人たちは……流されてきてないんですか ? |
男 | さてなぁ……。可哀想だがこの辺には死体しか流されてきてないぞ。 |
男 | お前たちはたまたま海の上を漂ってたのを俺らの船が見つけただけだからな。 |
男 | それよりマークさんに礼の一つでも言えよ、坊主。マークさんがお前らを見つけて荒れた海に飛び込んで引き上げてくれたんだぜ。 |
イクス | あ……すみません。俺、自分のことばっかりで……。あの……ありがとうございました。ミリーナのことも助けてくれて……。 |
マーク | 別に礼を言われたくて助けたんじゃねぇよ。気にすんな。 |
マーク | ルック、お前も余計なことを言うんじゃねぇよ恩着せがましい。 |
ルック | す、すみません……。 |
マーク | 生き残りがいないか気になるなら連れが目を覚ましてから王都へ行ってみればいいんじゃないか ? |
イクス | ……そうですね。すみません。ありがとうございます。 |
マーク | だったら話は決まりだ。お前はもう少し寝ておけ。何しろさっき目覚めたばかりなんだからな。 |
イクス | は……はい……。あの……マークさん。 |
マーク | ……マークさん、ねぇ。むずがゆい。呼び捨てで構わねぇよ。敬語もやめてくれ。 |
イクス | は、はい。えっと、マークたちは救世軍って言ってたけど……。 |
マーク | ああ、俺たちは救世軍。魔女からセールンド王国を守るための自警団……みたいなもんだ。 |
イクス | 魔女…… ? |
マーク | いずれ、その内にわかるさ。じゃあな、坊主。俺はヤボ用があるから失礼するぜ。ルック、後は頼むぞ。 |
ルック | わかりました、マークさん ! |
ルック | ほら、坊主も早いとこ横になれって。オーデンセのことが気になるのはわかるが……まずは自分の体を大事にするんだ。 |
イクス | はい……。わかりました。 |
イクス | (明日になったら……王都へ行ってみよう……) |
| 翌日 |
ルック | ……よかったな。嬢ちゃんの方も元気になって。 |
ミリーナ | はい。おかげさまで。色々と良くして下さってありがとうございました。 |
ルック | オーデンセのことショックだろうけど……気を落とすなよ。 |
ミリーナ | ……はい。 |
ルック | 王都までの道はわかるな ? |
イクス | はい。さっきしっかり地図を頭にたたき込んでおきました。念のため12回見直したんで大丈夫だと思います。 |
ミリーナ | そこの山道を抜ければ、見えてくるんですよね ? |
ルック | ああ。そうだ。だが、気を付けろよ。この付近には魔物が出るからな。 |
イクス | わざわざ忠告されるってことは──すごく危険な道だって事ですか ! ?それじゃあ、色々と対策していかないと。 |
イクス | どんな攻撃特性をもってるかわからないからな。まずは──解毒薬の準備をして。それと、麻痺対策に、睡眠対策、石化と── |
ルック | お、おいおい。心配しすぎだって。魔物は出るが、小物ばかりだよ。坊主がそんな心配性とは思わなかった。 |
ミリーナ | 普通の魔物なら大丈夫です。イクスってこう見えても、漁師の仕事で鍛えてるから意外と逞しいんですよ ! |
ルック | ……お前、漁師だったのか ?魔鏡をつけてるから、鏡士かと思ったんだがな。オーデンセは鏡士の島なんだろ。 |
イクス | ……はは。両親は鏡士だったんですけど祖父が鏡士嫌いで。これは、両親の形見だから持ってるだけなんです。 |
イクス | それに――俺には鏡士の才能は……ないんで。 |
ルック | 何か悪いこと聞いちまったな。――そうだ。こいつを持っていきな。 |
ルック | ちょっとした旅道具を入れてある。これも、マークさんが渡してやれってさ。 |
ミリーナ | 本当に、何から何まで……ありがとうございます。 |
ルック | 生き残り……見つかるといいな。デミトリアス陛下ならお力になってくれるはずだ。困ったら城に寄ってみろよ。 |
ルック | オーデンセの生き残りならきっと歓迎してくれる。いいか、謁見するのはデミトリアス様だぞ。今は陛下が一番信じられるお方なんだからな。 |
イクス | わかりました !それじゃあ失礼します ! |
ミリーナ | ありがとうございました ! ルックさん ! |
キャラクター | 5話 【ラクス山道】 |
イクス | やっと着いたぞ。ここが王都セールンドか。大きな街だな……。オーデンセとは大違いだ。 |
イクス | 父さんと母さんはこんな街で魔鏡の研究をしてたのか……。 |
イクス | (俺も【あんなこと】がなければここで魔鏡の勉強をしてたのかな……) |
ミリーナ | そこの広場の先に見える高い建物がお城……だよね ?すごく大きい……。オーデンセが全部入っちゃうんじゃないかしら……。 |
市場の男性 | ……あんたたち、オーデンセって言ったか ?まさかオーデンセから来たのかい ? |
イクス | え ? は、はい。 |
市場の男性 | ちょうどいい。オーデンセに炎の雨が落ちたって噂があるけど本当なのか ? |
ミリーナ | ……はい。 |
市場の男性 | だから港が封鎖されてるのか……。だったらデミトリアス陛下から何かお触れがあってもよさそうなものなのに……。 |
イクス | あ、あの ! オーデンセから脱出した人が王都に来ていませんか ? |
市場の男性 | さぁ……。炎の雨が海の方に落ちてから一週間になるけど、特にそんな人の話は聞かないな。 |
市場の男性 | そもそも急に港が封鎖されて、何が何だかわからないでいたら、オーデンセの島影が見えなくなったって噂が流れてきたんだ。 |
市場の男性 | ゲフィオン様が非常事態宣言を出されたから俺たちはろくに移動もできないんだよ。 |
ミリーナ | ……ゲフィオン様 ? |
市場の男性 | 知らないのかい ? 宰相のゲフィオン様だよ。ご病気のデミトリアス陛下に代わって政治を取り仕切っておられるんだ。 |
市場の男性 | ……でもここだけの話、ゲフィオン様は魔女だって―― |
セールンド王国軍兵士 | 何の騒ぎだ !不要不急の外出は控えるように言われているだろう。早く家に帰れ ! |
市場の男性 | す、すみません ! ちょっと食料の買い出しに……。失礼しました ! |
セールンド王国軍兵士 | お前たちも――ん ?ちょっと待て。お前たちは魔鏡を持っているな。 |
セールンド王国軍兵士 | まさか、イクス・ネーヴェとミリーナ・ヴァイスか ?オーデンセ島の生き残りの ! |
イクス | え ! ? どうして俺たちの名前を知ってるんですか ! ? |
セールンド王国軍兵士 | ゲフィオン様がお前たちを捜しておられたのだ。2人とも、今すぐ城に来なさい。 |
イクス | は、はい―― |
ミリーナ | ……待って、イクス。救世軍のルックさんが言ってたわよね。デミトリアス様に会えって。 |
イクス | そうだ……。それに……。 |
マーク | ああ、俺たちは救世軍。魔女からセールンド王国を守るための自警団……みたいなもんだ。 |
市場の男性 | ……でもここだけの話、ゲフィオン様は魔女だって―― |
セールンド王国軍兵士 | ……お前たち、救世軍と言ったな ?あの反乱分子と関係があるとは……まさかお前たちも救世軍の一員なのか ? |
イクス | いえ、俺たちは救世軍じゃありません。救世軍の人に助けられてセールンドに辿り着いたんです。 |
セールンド王国軍兵士 | ……まぁ、こんな田舎者が救世軍のシンパとも思えないか。 |
セールンド王国軍兵士 | しかし救世軍に関わりがあるとなるとますます野放しにはできない。城まで連行する ! |
二人 | ! ? |
イクス | ……まいったな。無理矢理連行されるとは思わなかった。ここは……どこなんだろう ? |
ミリーナ | お城の中なのよね ?中央に大きな機械があるけれど……。 |
ミリーナ | あら、この機械、魔鏡機器じゃないかしら。魔鏡を取り付けるソケットがあるわ。 |
イクス | え ! ? こんな大きな魔鏡機器初めてだ。何をする魔鏡機器なんだろう。 |
イクス | 魔鏡機器なんだから何かを具現化するんだよな、やっぱり。 |
ミリーナ | そうね。魔鏡術はキラル分子を使って色々なものを具現化して生み出す術だからこの大きな機械もきっと―― |
? ? ? | そう、その通り。それは魔鏡術を増幅し、具現化を安定させるための装置――カレイドスコープだ。 |
イクス | あ、あなたは……。 |
ゲフィオン | 私はゲフィオン。デミトリアス様から、宰相としてまたデミトリアス様の代理人としてこのセールンド王国の舵取りを任されている者だ。 |
ミリーナ | あなたが……ゲフィオン様……。 |
ゲフィオン | 部下が手荒な真似をしたようだな。すまない。 |
イクス | いえ……あの……。 |
ゲフィオン | イクス。ミリーナ。聞きたいことは山のようにあるだろう。だが、まずは私の話を聞いて欲しい。 |
ゲフィオン | 初めにオーデンセ島のことだ。残念だが――オーデンセ島は消滅した。炎の雨で跡形もなく、な。 |
二人 | ! ! |
ゲフィオン | セールンドにも被害が及ぶところであったが魔術障壁によって何とか事なきを得た。 |
ゲフィオン | 津波が落ち着いてから、調査船を出したが……近寄ることもかなわない状態だ。恐らく生き残りはいないだろう。お前たちを除いてな。 |
ミリーナ | そんな…… ! ? |
イクス | 全滅…… ? 本当に ! ? |
ミリーナ | 叔母様も……イクスのお祖父様も、村のみんなも…… ?本当に一人も生きていないんですか ! ? |
ゲフィオン | ――捜索を打ち切った訳ではない。だが……今のところ一人も見つかっていない。残念だが……諦めて欲しい。 |
ミリーナ | ……………… ! |
イクス | そんな…… ! 馬鹿な…… ! ! |
キャラクター | 5話 【ラクス山道】 |
ゲフィオン | ……少しは落ち着いたか ? |
イクス | ……はい。まだ……信じられない気分ですけど。 |
ゲフィオン | だろうな。だがお前たちの気持ちを慮ってはいられないのだ。話を続けさせてもらう。 |
ミリーナ | ………………。 |
ゲフィオン | 鏡士たちよ。どうかこの世界を救ってくれまいか。お前たちこそ、世界に残された希望なのだ。 |
イクス | それはどういうことですか ?急にそんなことを言われても……。 |
ゲフィオン | この世界――ティル・ナ・ノーグは今、滅びの危機にある。 |
ゲフィオン | 世界が限界を迎えているのだ。世界の寿命……と捉えてもらってもいい。 |
イクス | 世界の寿命…… ? 滅び…… ?どうしてそんなことが…… ? |
ゲフィオン | 宮廷学者たちの計測から導き出した予測だ。その計算式は――今説明しても仕方ないだろう。しかし世界が滅びを迎えているのは紛れもない事実だ。 |
ゲフィオン | この滅びを食い止めるために、王立研究所は世界を守る盾【アイギス】を造りだした。全てはこの世界を構成するアニマの流出を防ぐ為。 |
ゲフィオン | アニマが失われれば、世界を構成する物質は砂のような粒子となって消失する。しかしアイギスは……崩壊した。 |
ゲフィオン | 世界を守る防御壁である筈のアイギスは四散し破片が空から降り注ぐことになってしまった。それがオーデンセを滅ぼした炎の雨の正体だ。 |
ゲフィオン | そして防御壁であるアイギスが失われたことで滅びの進行は一気に早まり、世界は破壊し尽くされた。 |
ゲフィオン | 今やこの世界に残されたのはセールンド諸島と周辺海域の島々のみだ。他の大陸は全て消滅してしまったのだ。 |
二人 | ! ? |
ゲフィオン | 信じられぬのもの無理はない。だがこれは純然たる事実だ。 |
ゲフィオン | このままアイギスが失われたままではセールンド諸島も消滅してしまうだろう。 |
ゲフィオン | だが、アイギスを修復するためには鏡士の力と膨大なキラル分子が必要だ。 |
ゲフィオン | しかし……アイギスの消失によって宮廷鏡士のほとんどが命を落とした。鏡士の故郷オーデンセもまた……失われてしまった。 |
ゲフィオン | キラル分子を確保する方法はあるが、鏡士がいない。鏡士がいなければアイギスを修復できない。 |
ゲフィオン | そして――お前たちは鏡士だ。お前たちならば、アイギスを修復できる。 |
ミリーナ | む……無理です。私はまだ見習いだし、イクスは―― |
イクス | 俺は……鏡士じゃありません。 |
ゲフィオン | だが、鏡士の血を引いているだろう。鏡士の魔鏡術は血統に依存するもの。 |
イクス | ……無理……です。俺は……昔、魔鏡術を暴走させたことがあるんです。それでミリーナを傷つけてしまいました。 |
イクス | 俺には才能がないんです。 |
ゲフィオン | 御しきれぬ程の強い才能とも言える。 |
イクス | …………すみません。 |
ゲフィオン | ……ミリーナ。鏡士の修行をしているのならば鏡士の掟を学んでいるな ? |
ミリーナ | ……はい。尊き異能である、鏡士の力は我欲の為に振るうのではなく世の為にその力を振るえ──と。 |
ゲフィオン | 世の為──まさに今がその時なのだ。 |
イクス | (世の為……。だけど……俺は……) |
ミリーナ | ――ゲフィオン様 !私が――私がイクスの分も働きます。だからイクスを鏡士の道に追い込まないで下さい ! |
ゲフィオン | ……そなた一人が背負うにはあまりに荷が勝ちすぎる役目だぞ。命を失うやもしれぬ。それでも良いのだな。 |
イクス | ! ? |
ミリーナ | ……それでも、やります。ですからイクスは―― |
イクス | 待って下さい !そ、そんなに危険な事なんですか ?アイギスの修復っていうのは。 |
ゲフィオン | 正確にはアイギスの修復を行うのは我々宮廷の人間だ。ミリーナには、キラル分子の充填を頼みたい。 |
ゲフィオン | キラル分子がエネルギー粒子であることは知っているな ? |
ミリーナ | はい。魔鏡術の力の源でもあります。 |
ゲフィオン | そう。この世界は今キラル分子が大幅に不足している。それもまたアイギスが破壊されたためだ。 |
ゲフィオン | キラル分子はアニマから作られる。だがアイギスが失われた為、アニマが流出しキラル分子が作れなくなっているのだ。 |
ゲフィオン | これを補うために、異世界からの具現化を行う。 |
イクス | 異世界からの……具現化 ? 異世界って何ですか ? |
ゲフィオン | 文字通り、こことは違う世界のことだ。この部屋の中央にあるカレイドスコープは、異世界をこの世界の一部として具現化する力を持っている。 |
ゲフィオン | このカレイドスコープを使って異世界を具現化しそこからエネルギーを得ることでアイギスの修復が行えるという訳だ。 |
ゲフィオン | だが、一部とは言え、文字通り世界を具現化するのだ。それを行う鏡士にどのような負担が返ってくるかわからぬ。 |
ゲフィオン | ……一人よりは二人の方が負担も減り安定するだろうな。 |
イクス | ……それは……俺みたいな素人でも、ですか ? |
ミリーナ | イクス ! ? |
ゲフィオン | 素人であろうと、鏡士の血を引く者ならば変わらぬ。 |
イクス | だったら……俺も……やってみます。自信はないけど、でも世界がオーデンセみたいに消えるなんて……。そんなの……駄目だ。 |
ゲフィオン | ……ありがとう。若き鏡士たちよ。私も援助は惜しまぬ。だが事を成せるのはそなたたちだけなのだ。 |
ゲフィオン | どうか……世界を救って欲しい。 |
キャラクター | 5話 【ラクス山道】 |
ミリーナ | ねぇ、イクス。本当に良かったの ?鏡士の力、ずっと嫌だって……。 |
イクス | 昨日、ゲフィオン様の話を聞いている間ずっとこんな風に思ってた。 |
イクス | 「鏡士なんて、いきなり言われても俺にはよくわからないよ」 |
イクス | 「世界を救ってくれなんて想像もつかない程、大きな話……」って。 |
イクス | でも、何もしないでいて、オーデンセと同じ事が起きてしまうのは、絶対駄目だ。 |
イクス | それを止められる力が、自分の中にあるなら──やらなくちゃ、って思ったんだ。 |
イクス | ミリーナ一人で、危険な任務をしなきゃいけないなんてのも、嫌だからさ。──だから、俺、やってみるよ。 |
ミリーナ | ……イクス、ありがとう。──私、イクスがそう決めたのなら絶対にやれるって思う。 |
イクス | そう……だといいな。自信は全然無いんだけど。 |
ミリーナ | ふふっ。鏡士のことだったら、何でも聞いてね。ほら、私、ちょっとだけ先輩だし。 |
イクス | ありがとな。よろしく頼むよ。ミリーナ。 |
イクス | それじゃあ、出発前に準備が万全か確認しよう。これから行く場所は未知の場所だからどんな事が起こるかわからない。 |
イクス | 怖いのは、まずはやっぱり人を襲う魔物だよな。──武器の手入れは大丈夫か ? ミリーナ ? |
ミリーナ | もちろん。──イクスの剣も、昨日、磨いておいたよ。 |
イクス | ありがとう。……いや、待てよ。魔物よりも、その土地の性質の方が重大な危険をはらんでいるかもしれない。 |
イクス | 水はあるのか…… ?そもそも……空気だってあるのかどうか……。確証が無い以上、何か準備をしていくか。 |
カーリャ | さすがに空気はあるんじゃないですかー ? |
カーリャ | ミリーナさま。イクスさまってちょっと考えすぎじゃないですかー ? |
ミリーナ | ふふっ。でもイクスが色々考えるのはみんなを危険な目に遭わせたくないからなのよ。 |
ミリーナ | イクスはすごく優しくて一生懸命なの。だから、これでいいのよ。 |
イクス | いつだって、慎重に行動して損はないさ。 |
カーリャ | ふーむ。まぁ、そういうことにしておきます。 |
ガロウズ | おーい。お前ら、そろそろ行くぞー。急げよー ! |
カーリャ | ガロウズさまも呼んでますね。それじゃあ、出発しましょうか ! |
イクス | よし。俺にどれだけのことができるのかは、わからないけど──やってみるか。 |
ミリーナ | うん ! 一緒に頑張ろう ! |
イクス | ──それじゃあ、行こう !昨日、俺たちが具現化した新しい大陸……。【最初の鏡映点】のいる場所へ ! |
キャラクター | 1話 【1-1 デデッキ森林 入口】 |
マーク | ……地震か ? |
? ? ? | 鏡震だ。どうやら始まったようですね。 |
マーク | 異世界の魂――アニマをサーチしてこの世界に新大陸として具現化させる。本当にやりやがったのか、あの魔女は。 |
? ? ? | ……………………。 |
イクス | すごいな……。この船。空を飛ぶなんて……。 |
ミリーナ | 本当よね !世界に一機しかない飛空艇ケリュケイオン……。機体も白くて綺麗だよね。 |
ガロウズ | 気に入ってくれて嬉しいよ。これからはこいつを足としてどんどん使ってやってくれ。 |
イクス | ……落ちたりしないんでしょうか。 |
ガロウズ | ははは ! 今のところ無事故だぜ、安心しな。 |
ガロウズ | それと俺は単なる機械屋――魔鏡技師だ。そんな堅苦しい口の利き方はよしてくれ。ガロウズでいい。 |
イクス | は、はい。 |
ガロウズ | お、二人とも。見えてきたぞ。 |
イクス | あれが……俺とミリーナがカレイドスコープを使って具現化した、異世界の一部…… ! ? |
ミリーナ | すごい……。島……ううん、大陸 ! ?あんなものを具現化したの ! ? 私たち ! ? |
イクス | あの時は実感がなかったけど―― |
ゲフィオン | ――それではイクス、ミリーナ。早速、最初の異世界の具現化を行ってもらおう。手順は説明した通りだ。 |
二人 | はい ! |
イクス | ……え ! ? 地震 ! ? |
ゲフィオン | いや【鏡震】だ。本来この世界のものではない魂――アニマを、この世界に写し取って具現化した為に世界が驚いているのだ。 |
ミリーナ | それじゃあ、もうこれで異世界の具現化は終了したんですか ? |
ゲフィオン | そうだ。カレイドスコープの照準を異世界に向けその異世界で強きアニマを持つ鏡映点をサーチする。 |
ゲフィオン | 鏡映点はいわば具現化の起点だ。鏡映点を通じて異世界のアニマを複製し、呼び寄せる。 |
ゲフィオン | 実際に具現化されるのは異世界の一部でしかないがそれでも確かにこの世界の大陸として実体化した筈だ。 |
イクス | 大陸…… ?本当にそんなものが創り出されたんですか ? |
ゲフィオン | それは自分の目で確かめるがいい。 |
イクス | (わかってたつもりだったけど……やっぱり信じられない……) |
イクス | 近くに他の島や大陸はなかったのかな。巻き込んで潰したりとかしてないよな……。 |
イクス | この辺りは世界地図で言うとどの辺りなんです……じゃなくて、どの辺りなんだ、ガロウズ ? |
ガロウズ | ……アイギス計画がスタートしてから海図も地図もアイギス計画用に作り直されたんだ。何しろセールンド諸島以外は消えちまったからな。 |
ガロウズ | ここはポイント1001だ。セールンド諸島からは離れてるからな。この辺りにはもう大陸も島も何もなかったよ。 |
イクス | そう……ですか……。 |
ガロウズ | よし、あの具現化大陸に着陸するぞ。大陸と一緒に具現化された鏡映点って人間を捜すんだろ ?頑張れよ ! 二人とも ! |
カーリャ | 到着ー ! |
イクス | これが異世界を具現化した大陸……。すごい……。全然、普通だ……。 |
ミリーナ | 本当……。土の匂いも、緑も元から世界にあるものと何も変わらないね。 |
イクス | 空気もちゃんとある……。 |
カーリャ | そりゃ、ありますよ……。 |
イクス | 魔女……か。 |
ミリーナ | え ? どうしたの急に ? |
イクス | ……いや、何かちょっと怖くなってきた。でも……こうしないとこの世界を救えないんだよな。迷ってる場合じゃないんだ。 |
イクス | (迷ってたら……オーデンセみたいに……) |
イクス | よし、まずは鏡映点って人を捜すんだったな。 |
カーリャ | ミリーナさまの魔鏡に鏡映点さまのお顔を映しますねー。――ほいっと ! |
カーリャ | わー、イケメンじゃないですかー !カーリャはもう少し王子様みたいなタイプが好きですけど、これはこれで中々です。 |
ミリーナ | そうかしら ? イクスの方が可愛くて格好いいわ ! |
イクス | ……はいはい。二人ともふざけてないでこの黒髪の男の人を捜すぞ。 |
イクス | ところで……隣の犬は何だろう。この犬も鏡映点……なのかな ? |
カーリャ | ……多分。 |
イクス | そ、そうか。犬が鏡映点ってこともあるのか。駄目だな。鏡映点ってのは人間がなるんだと思い込んでた。常識を疑ってかからないとな。 |
イクス | よし、二人とも、行くぞ ! |
キャラクター | 2話 【1-2 デデッキ森林 東部】 |
イクス | すごいな……。この森。ちゃんと本当の森だ。これが具現化か……。 |
イクス | なぁ、ミリーナ。鏡士の具現化ってそもそも何なんだ ? |
イクス | あ、もちろん、何もないところから物を創り出すってことは知ってるけどどうしてそんなことができるんだろうな。 |
イクス | カーリャだってミリーナが具現化しただろ ? |
ミリーナ | 鏡士のことを勉強するのはいいことだと思う。じゃあ簡単に説明するね。 |
ミリーナ | 万物の全てには魂――アニマがあるの。万物に宿る、根源の力とも言えるかも。 |
ミリーナ | 鏡士の具現化というのは、魔鏡を媒介にしてそこに対象物のアニマを写し、複製して実体化する作業のことを言うの。 |
ミリーナ | そこからさらに力を発展させて、何もないところから作りたいものを想像して生み出したりもできるのよ。この辺りはちょっと高度な技術になるけれど。 |
ミリーナ | 今回の異世界の具現化もカレイドスコープを使っているけれど基本は同じ。 |
イクス | つまり……この大陸も鏡映点も、俺たちの世界に連れてきたんじゃなくて、そのアニマを複写して同じ物を作り出したってことだな。 |
ミリーナ | そうよ。魂の本体はあくまで元の世界にあるの。こっちに作られるのは、かりそめの存在よ。でも、記憶も経験も、そっくりそのまま。 |
ミリーナ | こちらに具現化した異世界の大陸と鏡映点は異世界のアニマを放出しているの。 |
ミリーナ | それがアニマが極端に少なくなってしまっているこの世界を満たしてくれる。 |
イクス | 異世界からのアニマはキラル分子に変換されてアイギスの修復に使われる……んだったな。 |
イクス | まだ今ひとつ良くわかってないけどこれから頑張って勉強していくよ。 |
ミリーナ | うん。一緒に頑張ろうね。ちなみに、カーリャは私の心の一部を具現化した存在なのよ。 |
イクス | ……ミリーナの心の一部――のわりに結構いい性格をしているような……。 |
カーリャ | どういう意味ですか、イクスさま ? |
ミリーナ | ふふ♪ 可愛いでしょ ? |
カーリャ | ねぇねぇ、ミリーナさま。鏡映点らしい人、全然いませんけどー ? |
ミリーナ | そうね……。確か、鏡映点の人はアニマを放出しているから特別な魔物に狙われやすいんだったよね。 |
イクス | 光魔……だっけ ?どんな魔物かわからないけど、危険な魔物だそうだから早く見つけないといけないんだけどな。 |
カーリャ | 二手に分かれたらどうですか ? |
イクス | それはダメだ。見知らぬ土地で、1人になるなんて危険すぎる。 |
カーリャ | でも、このままじゃ見つかる前に鏡映点が光魔に食べられちゃうかもですよ。 |
イクス | うーん……。確かにその方が効率はいいけど……。色々な可能性が考えられるから慎重に判断しないといけない。 |
イクス | (それでなくても……。こんな具現化なんて大それたこと、本当に引き受けてよかったのか迷ってるし……。それに……) |
イクス | ――駄目だ駄目だ。今はそんなことを考えてる時じゃない。ちゃんと状況を整理しろ。速度を取るか……安全を取るか……。 |
イクス | 確かに二手に分かれた方が……。でも……。 |
ミリーナ | イクス、もし私のことを心配してるなら気にしないで。イクスが決めたことならきっと大丈夫。ねぇ、やってみよう ? |
イクス | ……うん、わかった。でも、お互い無理はしないこと。 |
イクス | 俺はここから東の方を回ってみるからミリーナとカーリャは西の方を頼むよ。 |
イクス | 何かあったら、魔鏡の通信で知らせるってことで。 |
ミリーナ | うん。わかった。気を付けてね、イクス。 |
イクス | ミリーナもな。 |
魔物の声 | グルルルル……。 |
イクス | ――魔物か ! |
イクス | 異世界を具現化するのに魔物まで具現化されるって本当にとんでもない力だな。 |
イクス | ……待てよ。まさかカレイドスコープは鏡映点以外の【人間】も具現化してる……とか ? |
魔物の声 | グルルルル……。 |
イクス | あれ…… ? 別の方角からも魔物の声が……。 |
イクス | ──もしかして俺、囲まれてるのか ! ? |
キャラクター | 4話 【1-3 デデッキ森林 中央部】 |
ユーリ | よし、いっちょあがり ! |
イクス | はあはあはあ……や、やった !光魔を倒せたぞ ! |
ミリーナ | イクス ! すごい ! |
イクス | はぁはぁ……これで【鏡映点】の人たちは……護れた──って……凄い、息一つ乱れてない……。 |
カーリャ | さすがは、鏡映点さまですね。 |
カーリャ | ミリーナさまが言ってました。鏡映点になる人は、その世界の命運を握るような英雄だったり、世界にとって重要な方なんだって。 |
ユーリ | 悪いが何のことだかさっぱりだ。説明してもらえるか。色々と。 |
イクス | あ、はい。すみません。 |
イクス | 俺たち、あの、ゲフィオン様の命で【鏡映点】を捜していたんです。あ、【鏡映点】の人です。 |
ユーリ | ……だからわかんねえっての。 |
ミリーナ | す、すみません !あの、えっと……どこから説明すればいいのか……。 |
カーリャ | 二人とも、落ち着いて下さいよー !カーリャまで焦ってきちゃいます ! |
ユーリ | ま、そんな恐縮すんなって。妙な事続きで、ちと気が立ってた。きつい言い方して悪かったな。 |
ユーリ | オレはユーリ・ローウェル。こっちは相棒のラピードだ。 |
イクス | あ、俺は、イクス。イクス・ネーヴェです。 |
ミリーナ | ミリーナです。ミリーナ・ヴァイス。 |
カーリャ | カーリャです ! |
ユーリ | よろしくな。それじゃ早速教えてくれるか。お前らの知ってることを、な。 |
イクス | はい。ですが、ここで長話してるとさっきの魔物が来てしまいます。歩きながらお話しさせて下さい。 |
ユーリ | あん ? さっき親玉を倒したろ ?しばらく大丈夫だと思うぜ。 |
ミリーナ | いえ、来てしまうんです。あの魔物――光魔はあなたを追いかけてくるんです。そのことについても説明します。 |
ユーリ | ……長い話になりそうだな。わかったよ。順を追って説明してくれ。なるべく簡潔に、な。 |
イクス | はい。 |
キャラクター | 5話 【1-5 デデッキ森林 出口】 |
イクス | ――という訳で最初の異世界を具現化したところです。 |
ユーリ | ………………。 |
イクス | あの……突拍子もない話なんで嘘みたいなんですけど、でも本当なんです……。 |
ユーリ | ったく、お偉い連中が人の都合をお構いなしなのはどこの世界でも大差ないってか。 |
イクス | ユーリさん ? |
ユーリ | いや、なんでもねぇよ。 |
ユーリ | ここはテルカ・リュミレースじゃなく、今のオレとラピードはもともとのオレたちから一部を具現化させた存在、ね。 |
ミリーナ | はい。信じてもらえないかもしれないですけど……。 |
ユーリ | ま、今のとこ信じるしかないしな。実際、色々思い当たる事があった。 |
ユーリ | 急に目の前が白くなったと思ったら、ラピード以外、みんな消えちまった。 |
ユーリ | 一見、元いた場所っぽいがなんか違う。つまりあの時が、この世界にオレたちが具現化した瞬間ってわけだ。 |
イクス | しばらく具現化させてもらってこの世界の危機を回避できるだけのアニマが満ちれば元の世界に、きちんとお返しします。 |
ユーリ | そいつを聞いて安心したぜ。ケリつけたい事がまだあるんでね。お前らの言う異世界ってとこでな。 |
ラピード | ワン ! |
ユーリ | ま、オレたちの状況は大体わかった。けど、まだ腑に落ちねえことがある。 |
ユーリ | アニマってのが溜まって終わりなら具現化したオレとラピードを放っておいてもいいはずだ。 |
ユーリ | けど、わざわざ捜してた。それにも理由があるんだろ ? |
イクス | はい。鏡映点は、この大規模な具現化の術の核になっている存在なんです。 |
ミリーナ | カレイドスコープは、異世界の強い力の持ち主を起点にして、異世界をサーチします。そしてその人物の記憶や感情を元に異世界を具現化する。 |
ミリーナ | 鏡映点は、異世界をこの世界に具現化する為の楔のような存在なんです。 |
イクス | だから、この具現化大陸が安定するまでにあなたたちの身に、もしもの事が起きてしまうと具現化を保てなくなってしまうんです。 |
ユーリ | ふーん。んでそれに光魔とやらが絡んでる、と。 |
ミリーナ | はい。光魔は大きな具現化の術に対するひずみのような存在で具現化世界に現れる特殊な魔物だそうです。 |
ミリーナ | とても強いアニマに惹かれて現れる魔物で鏡映点のアニマを食べて自分の力に変えようと襲ってくるそうなんです。 |
ユーリ | なるほどな。だからさっき言ってた『光魔が追ってくる』になる訳だ。 |
イクス | はい。だから光魔の発生源だっていう【光魔の鏡】を見つけて破壊するまで俺たちの飛空艇に保護させてほしいんです。 |
ユーリ | ………………。 |
ユーリ | なぁ、気ぃ悪くしないでもらいたいんだがそんな世界の存亡にかかわる重要な事なんでお前らみたいなガキがやってんだ ? |
ユーリ | 大人はどうした ? |
ミリーナ | ……もうこの世界に、具現化を行える鏡士は私たちしかいないんです。 |
イクス | 何より、もう世界には王都のある島々とそこに暮らす人々しか残されていない……。今、俺たちが頑張らないといけないんです。 |
ユーリ | なるほどな……ひとつ安心したぜ。偉い連中が腐ってるワケじゃなさそうだってな。けど……。 |
ユーリ | 世界の運命ってヤツぁ、なんでこう若いもんの肩に乗っかるのが好きなのかね……ったく。 |
ユーリ | イクス、ミリーナ。悪ぃが飛空艇とやらで保護されてやることはできねえな。 |
イクス | え ! |
ユーリ | 光魔の鏡とやらちゃちゃっと壊したいんだろ ?手伝わせろよ。 |
ミリーナ | どんな危険があるかわからないんですよ ! |
ユーリ | 生憎、義をもって事を成せ、ってのがうちのモットーなんでね。断られても勝手にやらせてもらうぜ。 |
イクス | ……わかりました。ユーリさん。ありがとうございます。正直、凄く、心強いです。 |
ラピード | ワウ ! |
ユーリ | 任せろ、だとさ。 |
ミリーナ | ラピードさんも、ありがとうございます ! |
ユーリ | ……ラピード『さん』ときたか。調子狂うな、どうも。 |
キャラクター | 8話 【1-10 ハンクス遺跡 B1F】 |
ミリーナ | ふぅ、何とか倒せたみたい……。イクス、光魔の鏡を── |
イクス | ああ。やってみる。 |
カーリャ | やったぁ ! |
ミリーナ | さすがね ! イクス ! |
イクス | こ、壊しただけじゃないか。ユーリさんに笑われるだろ ! |
ユーリ | 別に笑いはしねぇけどな。光魔の鏡ってのは壊すだけで大丈夫なのか ? |
イクス | はい。そう聞いています。 |
ユーリ | ……ふーん。 |
イクス | ふぅ……。これで、まずは一つめの異世界の鏡映点――ユーリさんたちの安全は確保できたんだな。 |
ミリーナ | うん。ゲフィオン様に言われたことは全てやり遂げた筈よ。 |
ユーリ | 初仕事は大成功ってところか ?おめでとさん。 |
イクス | ありがとうございます !ユーリさんたちのおかげです ! |
ユーリ | オレたちはお前らに付いていっただけだよ。 |
ユーリ | んじゃ、これでアニマってのが満ちるまでオレたちはここらでブラブラしてればいい訳だな。 |
イクス | あ、あの、ユーリさん ! |
イクス | よかったら、俺たちの飛空挺に乗ってもらえませんか ? |
イクス | 俺、この世界を――ティル・ナ・ノーグを何としても救いたい。でも、まだ全然未熟です。 |
イクス | だから、力を貸してほしいんです。勝手に具現化して、アニマまでもらってるのに厚かましいと思うかもしれませんけど……。 |
イクス | 世界にアニマが満ちて、アイギスを修復できるまで俺たちと一緒に戦ってくれませんか ! |
ユーリ | ……そうこなくっちゃな。 |
ユーリ | 夜空にまたたく凛々の明星の名に賭けてその仕事、引き受けたぜ。 |
ラピード | ワン ! |
イクス | ありがとうございます ! |
ミリーナ | よかったね。イクス。 |
イクス | それじゃ、飛空艇に行きましょう ! |
ユーリ | ああ。 |
ユーリ | 無断で仕事受けちまったけど構わないよな、ラピード。 |
ラピード | ワウ ! |
ユーリ | こちとらじっとしてるのは性に合わないしな。正直、あいつらが誘ってくれて願ったりってとこだ。 |
イクス | ……これでまずは一つか。どうにか、うまくやれたかな。 |
ミリーナ | うん ! イクス、凄かったよ !鏡を壊して封印した時なんて、凄くかっこよかったもの。 |
イクス | でも、まだまだだよ。ユーリさんは、凶暴な光魔相手でも余裕みたいだったし。 |
イクス | 鏡映点に選ばれるぐらいの力……。きっと、色んな苦難を越えてきたんだろうな。 |
イクス | ユーリさんにしてみたら訳のわからない状況のはずなのに動じずに、状況を冷静に判断して……。 |
イクス | あの位の度胸が俺にもあればもっと自信を持って任務に立ち向かえるのに。 |
ミリーナ | イクスだったら、絶対大丈夫だよ。──うん。絶対。だって、昔から何でもできるもの。 |
イクス | そんなことないだろ……。ミリーナはいい加減な事を言うよなぁ。 |
イクス | ──そもそも、どんなに訓練したって戦闘では何が起こるかわからないんだ。 |
イクス | 目の前の敵と対峙している時に突然の不運が起きたら── |
イクス | 例えば、ずっと昔にしかけられた落とし穴をそうと気付かずに踏んだり……。 |
カーリャ | よくそれだけ無駄な想像ができますね、イクスさま。 |
イクス | 無駄ってことはないだろ ! |
ミリーナ | カーリャ ! そんなこと言わないの ! |
ガロウズ | 何だかとぼけた奴らだなぁ、お前らは。さぁ、最初の任務を終えたんだ。ゲフィオン様に報告に戻るぞ。 |
イクス | そうだな。ガロウズ、ケリュケイオンをセールンドへ。 |
ガロウズ | よしきた ! 任せとけ ! |
キャラクター | 8話 【1-10 ハンクス遺跡 B1F】 |
ミリーナ | ……ゲフィオン様、遅いね。 |
イクス | ………………。 |
ミリーナ | イクス ? どうしたの ? |
イクス | ――なぁ、ミリーナ。異世界の具現化のことなんだけどあそこには光魔だけじゃなくて魔物もいたよな ? |
イクス | ……ってことは、もしかして動物とか……人間も具現化されてたりするのかな。 |
ミリーナ | ………………。 |
ミリーナ | ……そうね。ユーリさんやラピードさんの記憶や心を通して、異世界を具現化しているから二人の記憶にある異世界の人たちも……。 |
イクス | これって……まるで天地創造じゃないか ?こんな大それたことをしていいのかな……。 |
ミリーナ | イクス……。 |
イクス | ずっと不安だったんだ。大丈夫なのかなって。ゲフィオン様は魔女だって噂もあるし―― |
カーリャ | イクスさま、ま、まずいですよっ ! |
イクス | ――え ! ? |
ゲフィオン | ……そうだ。私は一部の人間から魔女と呼ばれている。 |
イクス | ゲフィオン様 ! ? す、すみません ! |
ゲフィオン | いや、いい。イクスの懸念ももっともだ。これは人の身には大それた計画だ。それはよくわかっている。 |
ゲフィオン | しかし、我々は滅びる訳には行かない。全ての責めと咎は私が負う。お前たちが気にすることはない。 |
ゲフィオン | そうはいっても気にするのだろうがな。私は魔女だ。それでいい。 |
イクス | ……は、はい……。 |
ゲフィオン | さて、報告を受けようか。最初の異世界の具現化。首尾はどうであった ? |
イクス | 何とか上手くいきました。鏡映点のユーリさんとラピードさんに助けられたおかげでもあるんですけど……。 |
ゲフィオン | 最初は皆、力が及ばぬもの。異世界の戦士に学び、その力を借りられるのは僥倖だ。 |
イクス | あの……一つ伺いたいんですが光魔に対する策はないんでしょうか。 |
イクス | 今回は鏡映点の二人が戦いになれていましたけど今後もそうとは限りません。 |
ゲフィオン | ……残念だが、迅速に光魔の鏡を封じる以外は無い。 |
ゲフィオン | ただ……一つ思い当たることがある。具現化された大陸は、ある種、鏡映点によって生み出された小さな世界とも言える。 |
ゲフィオン | もし、そこで何か災害や事件が起きていればそれは鏡映点とは関係ないひずみ――つまり光魔の鏡が関係しているとみていいだろう。 |
ゲフィオン | 災いの芽を見つけ、それを摘むように追っていけばより早く、光魔の鏡を見つける事ができるかも知れぬ。 |
イクス | ありがとうございます。注意して、探索にあたります。 |
ゲフィオン | では、さっそく次の異世界を具現化してくれ。すでに四つの異世界をリストアップしそれぞれサーチ済だ。 |
ミリーナ | もう四つも…… ! |
ゲフィオン | あまり時間がない。多少無理をしてでも急いでこの世界にアニマを満たす必要があるのだ。四つの世界を具現化する順序はお前たちに任せる。 |
イクス | わかりました。頑張ります。 |
ゲフィオン | ……ところで、私のことを魔女だと言っていたのは救世軍の連中か ? |
イクス | え ! ? |
ゲフィオン | お前たちは救世軍に助けられたと聞いている。 |
イクス | あ……えっと……。はい。救世軍の人も……言っていたと思います。すみません。 |
ゲフィオン | いや、お前が謝ることはない。民たちが私を魔女と呼ぶのも問題はない。 |
ゲフィオン | だが、救世軍には気をつけるのだ。彼らは私のやることを快く思っていない。これまでも、世界中に混乱と不和の種を撒いてきた。 |
ゲフィオン | 彼らはわかっていないのだ。自分たちがどれほど愚かなことをしているか。 |
ゲフィオン | いや……それは人のことを言えた義理ではないな。とにかく、救世軍に心を許してはならぬ。しかと気をつけよ。 |
イクス | ………………。 |
ミリーナ | わかりました。ゲフィオン様。 |
ゲフィオン | 頼んだぞ、若き鏡士たちよ。 |
イクス | ………………。 |
ミリーナ | ……イクス。救世軍の人たちのこと気にしてるんでしょ ? |
イクス | ちぇ、ミリーナはお見通しか……。そうだよ。だって……助けてもらった人たちなのに気をつけろとか、心を許すなって……。 |
ミリーナ | うん。 |
イクス | そもそもあの人たちには「デミトリアス陛下に会え」って言われたんだぜ。 |
イクス | でも……ゲフィオン様に確認したら陛下はご病気で会えないって言われちゃったし……。 |
イクス | なんか……本当にこのまま進んでいいのか心配になって……。 |
ミリーナ | イクスのそういう慎重なところ、すごくいいと思う。私たち……わからないことだらけだけどだからこそ自分たちの目で見てきた物を信じていこう。 |
イクス | だけどさっきミリーナ、わかりましたって……。 |
ミリーナ | ふふ♪ それはそれ、これはこれ。偉い人を怒らせることもないじゃない。 |
ミリーナ | 今のところゲフィオン様にもよくしてもらっているし救世軍の人たちにも助けてもらったんだからどちらのことも悪く思う必要はないでしょ ? |
イクス | ……そう、だよな。俺、つい先回りして色々悪いことを想像しちゃうんだよな。 |
ミリーナ | 大丈夫。その分私が楽天的になるから ! |
カーリャ | ミリーナさまはイクスさまに甘すぎませんかぁ ? |
ミリーナ | ふふ♪ いいのよ。さあ、それよりカレイドスコープのところへ行きましょう。 |
キャラクター | 8話 【1-10 ハンクス遺跡 B1F】 |
マーク | 驚いたな。あんたが何もしないなんて。 |
? ? ? | まずはお手並み拝見というところですよ。世界にアニマが満ちる分にはこちらも助かりますからね。 |
マーク | ……俺は……ゲフィオンを許さねぇ。 |
? ? ? | そうでしょうね。まぁ、しばらくは静観していることです。それが――彼の為でもありますよ。 |
マーク | わかってるってーの。イクスとミリーナを殺すのは――もう少し先の話だ。 |
ガロウズ | よう。待ってたぜ。 |
ユーリ | よっ ! |
ラピード | ワフ ! |
イクス | ガロウズ ! ? それにユーリさんとラピードさん ! ?どうしてここに ! ? |
ガロウズ | 俺はゲフィオン様にカレイドスコープの整備を頼まれてな。 |
イクス | ガロウズはそんなこともできるのか ? |
ガロウズ | 王宮付きの魔鏡技師をなめんなよ。つまる所は飛空艇と同じ、キラル分子を操る魔鏡技術でできてる物だからな。 |
ガロウズ | ゲフィオン様に言われた四つの世界に関する設定は入れてあるぜ。 |
ユーリ | 俺はまぁ、野次馬根性って奴だ。自分がどうやって具現化されたのか見ておきたくてな。構わねぇだろ ? |
イクス | もちろんです。……ってゲフィオン様に怒られるかな ? |
ユーリ | バレなきゃ大丈夫だろ。 |
ミリーナ | ええ、みんなで内緒にしていれば ♪ |
ユーリ | そういうこった。 |
イクス | はは……。そうですね。それじゃあ始めます。 |
ミリーナ | じゃあ、前回と同じように異世界にある強いアニマをサーチしましょう。 |
イクス | ああ。今度も上手くやらないと……。 |
ミリーナ | 大丈夫 ! 意識を腕の魔鏡に集中させるの。そこからカレイドスコープに内蔵されている魔鏡に力が伝わるわ。 |
ミリーナ | そうすればあとはカレイドスコープがやってくれる。前もそうだったでしょう ?イクスなら、絶対できるよ ! |
イクス | ──よし。やろう、ミリーナ。 |
ガロウズ | じゃあ、カレイドスコープを起動するぞ。こいつをこうして……。 |
ガロウズ | さて――どの世界から具現化する ? |
イクス | 次は――この世界だ ! |
ルック | おわわわわわ ! ? 地震 ! ? |
マーク | 慌てんな。この間と同じ鏡震だ。 |
マーク | 次の具現化を始めやがったな、イクス……。 |
? ? ? | 次の大陸を何処に具現化したかはわかっています。早々に、尖兵たちを派遣して調査に当たらせましょう。 |
マーク | 動くのか ? 俺に静観しろって言っておきながら。 |
? ? ? | 情報を収集させるだけですよ。これからの為に、ね。 |
? ? ? | ミリーナとイクスに手をつけるのは……その後のお楽しみ、ということですよ。 |
| To be continued |
キャラクター | 1話 【2-1 ポアソン街道 1】 |
イクス | ………… ? |
ミリーナ | イクス、どうかしたの ? |
イクス | いや、なんだかこの大陸は空気が独特なような気がしてさ……。 |
カーリャ | イクスさま。どれだけ空気のこと気にしてるんですか。 |
ミリーナ | 独特なのは空気が澄んでるからじゃない ?ここの大陸って自然豊かだもの。 |
イクス | そういうことか。確かにあちこちに色々な花が咲いてるもんな。 |
イクス | もしかしてこの大陸を具現化するときに礎になった鏡映点と関係があったりするのかな。確か今回は小さな女の子だったけど……。 |
ミリーナ | もしかしたら、自然やお花が好きな女の子なのかもしれないわね !とっても可愛いかったし、今から会うのが楽しみ♪ |
イクス | けど鏡映点ってことは光魔に狙われやすいだろ。おちおち花も見てられないぐらい危ない目にあってるかもしれないぞ。 |
イクス | いや……待てよ。鏡映点になるくらいだから見た目は小さな女の子だけどユーリさん並に強かったりするのかも……。 |
イクス | けど普通に考えて小さな女の子がそこまで戦えるわけがないし……。ダメだ、不確定要素が多すぎるっ……。 |
カーリャ | あぁ。イクスさまがまた深みにハマろうと……。 |
ミリーナ | 今はとにかく鏡映点を捜すことに集中しましょう。どんな子かは会ってからのお楽しみ。ね ? |
イクス | そ、そうだな。剣も鏡士の力にも、少しだけ慣れてきたし……よし ! やるぞ ! |
ミリーナ | ふふっ。イクス、張り切ってるね。 |
イクス | どこまでできるか自信はないけど……こんな状況だしさ。自分に出来る限りの事はしたいんだ。 |
ミリーナ | うん ! すごく素敵だと思うよ。私たちも頑張ろうね、カーリャ。 |
ミリーナ | イクスがうまくできるように、私たちは、何でもするの。──そう……例え火の中……水の中 ! |
カーリャ | カーリャも頑張りますけど焦げたりびちょ濡れになったりはさすがにちょっと……。 |
イクス | ミリーナが火傷したり風邪を引いたりしないよう俺も更に頑張らないと……。 |
ミリーナ | ご、ごめんね、イクス !そんなにプレッシャー感じなくていいからね。さっきのは覚悟みたいなものだから気にしないで。 |
カーリャ | 覚悟にしたって重すぎますよ……っとうん ? いまわずかにプルッときたような。 |
ミリーナ | もしかして鏡映点じゃないかな ?レーダーでもこのあたりに反応があったもの。 |
カーリャ | かもですね !幸先いい感じです♪ |
光魔の声 | …ウゥ~…ハルルルルル ! |
カーリャ | って、そう喜んでもいられなかったですぅ ! |
イクス | ──光魔か ! ?近くで誰かが襲われてるんじゃ―― |
ミリーナ | 見て ! 商人の男性と……もう一人いる !光魔に囲まれててよく見えないけどあの背丈、まだ小さい女の子よ ! |
イクス | くそっ……取り返しがつかないことになる前に急いで助けないと ! ! |
商人 | な、なな……何でこんな所に、魔物が ! |
ソフィ | まだまだいる……この魔物何…… ? 不思議な感じがする…。 |
イクス | さがって ! ! |
ミリーナ | もう大丈夫だからね。 |
ソフィ | えっ ? |
イクス | くらえっ ! ! |
ミリーナ | 数が多い……。 |
イクス | ここは俺が引きつける ! |
光魔 | ……ウゥ~……ハルルルルル ! |
イクス | うっ……前に出たもののその次の手が―― |
ミリーナ | イクス ! 危ない ! |
イクス | ――えっ ! ? |
ソフィ | はぁぁぁっ ! |
光魔 | ギァァァァァッ…… ! |
イクス | そ、そんな……。 |
ミリーナ | い、一撃で……吹き飛ばしちゃった。 |
ソフィ | 大丈夫 ? |
イクス | あ、ああ……って、君 !鏡映点の女の子じゃないか ! ? |
ソフィ | 鏡映点 ? |
ミリーナ | 私たち、事情があってあなたを探してたの。 |
ソフィ | わたしを…… ? |
イクス | って、詳しい話はこいつらを倒してからだ ! |
ソフィ | 手伝ってくれるの ? |
イクス | ああ。もしかして……足手まといだったりするかな ? |
ソフィ | ううん、ありがとう。一緒に戦おう。 |
イクス | よかった ! じゃあいくぞっ ! |
キャラクター | 2話 【2-2 ポアソン街道 2】 |
イクス | ──ってことで……俺たちはソフィを鏡映点としてこの大陸を具現化させてもらったんだ。 |
ソフィ | 具現化……わたしが、鏡映点…… ?説明されても、よく、わからない。 |
ミリーナ | ……そうだよね。突然の事でどうしていいか戸惑っちゃうよね。 |
ソフィ | ううん。考えても、よくわからないときはとりあえず、できることから。 |
イクス | さっき助けた人をこの先の村まで送るんだよな ? |
ソフィ | うん。魔物が出てきたら危ないから。 |
ミリーナ | ……わぁ……小さいのになんてしっかりした子なの……。 |
カーリャ | ミリーナさま、顔が緩みきってますよ。 |
イクス | 相変わらず子どもが好きだよな。特に女の子……。村でもよく面倒をみてたけど。 |
ソフィ | ――じゃあ、わたし、行くね。 |
ミリーナ | ちょ、ちょっと待って。私たちもソフィと一緒に行くよ。 |
ソフィ | そうなの ? |
イクス | ああ。ソフィのことを放ってはおけないし俺たちも村に行って情報収集をしたいからさ。 |
ソフィ | 情報収集 ? |
イクス | 光魔の鏡っていう光魔の発生源についてだよ。これを封印――破壊しないと、光魔……さっきみたいな魔物が無限に湧いてきてしまうんだ。 |
ミリーナ | まずはどのあたりから光魔がやってくるか調査するの。それがわかれば光魔の鏡がどこにあるかもだいたい推測がつくから。 |
ソフィ | ……光魔の鏡。うん、わかった。それならわたしも協力する。 |
イクス | いいのか ? 確かにソフィはびっくりするくらい強いけど、危険な目に遭うかもしれないぞ ? |
ソフィ | さっきみたいにまた誰かが襲われるのはイヤだから。戦うことになっても、わたしは平気。 |
ミリーナ | ……ソフィ、なんていい子なの。ソフィ自身がいい子なのはもちろんだけれどきっとご両親の育て方もよかったのね。 |
ソフィ | ご両親って、アスベルとシェリアのこと ? |
イクス | アスベルさんとシェリアさんって言うのか。ソフィがこれだけしっかりしてるってことはそのお二人もすごい人格者なんだろうな。 |
商人 | ……人格者の二人か。 |
ソフィ | 何か知ってるの ! ? |
商人 | 実は、昨日の夜、えらく強い男女二人組に賊から助けてもらったんだ。 |
商人 | 夜だったから姿はよく見えなかったんだけどな。あの戦いぶりはそこのお嬢ちゃんにも引けを取らないぐらいだった。 |
ソフィ | もしかしてアスベルとシェリア ?二人もこの世界にいるかも知れないの ? |
イクス | いや、それは……どうなんだろう。 |
イクス | 今回はソフィを鏡映点として具現化したから他の人が鏡映点として具現化されているとしたらカレイドスコープに不具合があるってことだよな。 |
ミリーナ | イクス……。 |
イクス | (それか、元の世界の姿だけを借りて具現化されたこの世界の住人――だなんて言ったらこの子、悲しむだろうな……) |
イクス | (鏡映点は、本人の鏡像を異世界から具現化する。でも鏡映点以外の人間はこの世界の人間として具現化される) |
イクス | (ソフィの記憶を経由しているから、もしかしたらソフィのご両親も、姿だけ同じだけどソフィのことを知らない存在として、作られている可能性はある) |
イクス | (姿だけの借り物とはいえ……命を具現化する……。本当にこれでいいんだろうか……) |
ソフィ | ……………。 |
イクス | あっ……。 |
ソフィ | ……わたし、二人を捜したい。 |
イクス | ……うん、わかった。ソフィのご両親についても街で情報収集してみよう。 |
ミリーナ | そうだね。それまではソフィのこと私たちが責任をもって預かりましょう。 |
イクス | えっ……。あ、ああ……そう、だな……。 |
ソフィ | イクス ? どうかしたの ?顔色、少し悪いよ。 |
イクス | 実は俺……小さい子はちょっと……\nいや、ソフィみたいな大人しい子なら\nそこまでではないんだけど……。 |
ソフィ | ごめん。よく聞こえない。 |
イクス | な、なんでもないよ。とにかく俺は大丈夫だから !えっと……ソフィ、改めて、よろしくな。 |
ミリーナ | よろしくね、ソフィ。 |
ソフィ | うん。よろしく。それと、ありがとう。 |
イクス | ありがとう……って ? |
ソフィ | わたしのこと心配してくれて。 |
二人 | ソフィ……。 |
カーリャ | みなさーん ! ちょっと見てくださいよ !いいもの見つけました ! |
ソフィ | あっ。 |
ミリーナ | とっても綺麗 !紫色の花なんて珍しいね ! |
イクス | 図鑑でも見たことがない。なんて言う花なんだろう。 |
ソフィ | クロソフィ。 |
ミリーナ | クロソフィって言うんだ。花の印象も名前もなんだかソフィにぴったりだね。 |
ソフィ | うん。クロソフィはね、私の名前の由来になった花なんだ。 |
イクス | ソフィにとって大切な花なんだな。 |
カーリャ | ならソフィさまにあげますよ。カーリャはこの花を売ったお金で駄菓子を買おうと思ってただけですから。 |
イクス | 食べ物目当てだったのかよ……。 |
ソフィ | ありがとう。カーリャ。 |
イクス | あれ……でもこのクロソフィって花この辺りでは見かけなかったよな。カーリャ、どこに生えてたんだ ? |
カーリャ | 生えていたんじゃなくて落ちてたんです。 |
イクス | ……ってことは何かによって別の場所から運ばれてきたのか。 |
ソフィ | ……別の場所から。 |
イクス | 風か……あるいは動物か人か……。落ちていた時の状況を見ないと何とも……。 |
カーリャ | 別にどうでもいいじゃないですかー。とにかく村に行きましょうよ。 |
ソフィ | それじゃあ、行こう。村はこっち、ついてきて。 |
キャラクター | 3話 【2-5 畑のある村】 |
イクス | まさか村の周りにまで光魔がいるとは思わなかったな。まだまだ準備と予測が足りてないってことか……。 |
ミリーナ | なんとか村まで辿り着けてよかったよね。 |
イクス | これもソフィのおかげだな。すごく強くてまた助けられたよ。ありがたいけど……なんか、申し訳ないな。 |
ソフィ | どうして ?みんなの役に立てるの、嬉しいよ。 |
イクス | やっぱり世話になりっぱなしなのが気になるっていうか……。 |
イクス | いや、こう立ち止まってる暇はないな。早く光魔の鏡を破壊しないと。 |
ミリーナ | さっき助けた人も無事に送り届けたし情報収集、開始だね。 |
イクス | ああ。さっそく聞き込みを……って、あれ ?ソフィ、どこに行くんだ ? |
ソフィ | わたしも情報収集。 |
ミリーナ | ソフィも ? |
ソフィ | うん。 |
カーリャ | あ、行っちゃいました。手分けして聞き込みする感じですかね ? |
ミリーナ | かもしれないね。村の中は安全そうだしそっちの方が効率的だもん。ソフィ、自発的に行動できて偉いなぁ。 |
イクス | カーリャ。いちおうソフィを見ていてくれないか ?何かあったら俺たちに知らせてくれ。 |
カーリャ | この村の中くらいならカーリャも自由に動けますし大丈夫ですよ ! |
イクス | よし。それじゃあ手分けして聞き込み開始だ。 |
お姉さん | 私が最初に見たのは……あっちの方だったかな。 |
ミリーナ | ありがとうございます。 |
イクス | ミリーナ。俺の方は聞き込み終わったよ。 |
ミリーナ | 私も。これがまとめたメモだよ。 |
イクス | やっぱりアスベルさんとシェリアさんらしき人については、何も掴めずか……残念だな。 |
ミリーナ | そうだね……けど光魔の鏡についてはだいぶ絞れてきたよ。 |
イクス | ──村の人の情報を総合すると、あっちの方から、じわじわって感じだな。 |
ミリーナ | この方角に向かってみようよ。近づいていったら、カーリャが探知できるかもしれないし。 |
イクス | そうだな。それじゃあソフィとも合流を……あっ、ちょうどあそこにいた !聞き込み中みたいだな。 |
ソフィ | 【心が安らぐような場所】……知らない ? |
おじいさん | 【心が安らぐような場所】って……なんだいそれは ? |
ソフィ | この花が咲いている場所。 |
おじいさん | ああ。クロソフィだね。それならたぶん―― |
ソフィ | みんな。お待たせ。わたしも情報収集、終わったよ。 |
イクス | ソフィ。さっき話してるのが聞こえたんだけどその……クロソフィが咲いている場所に行きたいのか ? |
ソフィ | うん。【心が安らぐような場所】。光魔の鏡を壊したあと、行ってもいい ? |
イクス | あ、ああ。もちろんだけど……。 |
カーリャ | 光魔の鏡とソフィさまが行きたい場所は同じ方向にあるみたいでしたし、まさに一石二鳥 !はやく光魔の鏡をぶっ壊しちゃいましょう ! |
ソフィ | うん。イクスもカーリャもありがとう。じゃあ出発。 |
ミリーナ | クロソフィが咲いている場所かぁ……。とっても綺麗なんだろうな。 |
イクス | なあ、ミリーナ。【心が安らぐような場所】ってことはソフィは心を安らげたいってことだよな ? |
ミリーナ | なの……かな ?それがどうかしたの ? |
イクス | いや。ソフィってまだ小さいのにすごく落ち着いているというかちょっと淡々としているところがあるだろ。 |
イクス | もしかしたらソフィ、胸の中にすごい闇を抱えているんじゃないかと思って。俺、心配になってきて……。 |
カーリャ | 発想が飛躍しすぎですよ !イクスさまの方が闇を抱えているんじゃないですか ! ? |
イクス | 俺の話はいいだろ ! それよりソフィだ ! |
イクス | ……例えば……山賊に連れ去られて両親と離ればなれになってしまった。拳術を磨き山賊のアジトからなんとか脱出するも―― |
イクス | 行く先がなく、孤独と寒さに震え続け気がついたら心は傷つき凍りついてしまったんだ。そして人々につけられた名は『悲しみの格闘家』 |
イクス | くそ、そんな辛い過去を持つソフィに「すごく強い」なんて言って……俺、酷すぎだろ……。 |
カーリャ | 小説の読みすぎなんじゃないですか ? |
イクス | けどこう考えればソフィが【心が安らぐような場所】を探している理由も納得できるだろ。 |
イクス | そんな大変な思いを抱えている中俺たちが具現化したせいで余計に心が疲れてしまったのかも……。 |
ミリーナ | うーん。私も考えすぎだと思うけど……。心配なら歩きながら聞いてみようよ ! |
キャラクター | 4話 【2-6 ガウス森林】 |
カーリャ | ソフィさま。さっき【心が安らぐような場所】を探してるって言ってましたけどどうしてなんですか ? |
ソフィ | 大切な場所だから。 |
ミリーナ | クロソフィはソフィの名前の由来みたいだしその場所にも思い入れがあるのね ? |
ソフィ | うん。友情を誓った思い出の場所。 |
ソフィ | それに、アスベルたちと離れ離れになっちゃったけどそこでまた会うことができたから。この世界でも、そこに行けば、また会えるかなって。 |
ミリーナ | ……ソフィ。 |
イクス | 親御さんだけじゃなく友達との思い出の場所でもあったのか。 |
ソフィ | わたしにとってすごく大切な場所。だから、イクスたちにも見て欲しいな。 |
ミリーナ | ううっ……ソフィ ! ちょっと頭、撫でさせて。やっぱり、ソフィはいい子だね……。どうしてこんなにいい子なの。 |
ソフィ | きっと……友達の、みんなのおかげ。みんなと旅したから、だよ。 |
イクス | よし ! クロソフィの咲いている場所を一緒に見つけよう。俺たちも手伝うからな ! |
ソフィ | うん。ありがとう。 |
カーリャ | にしし。良かったねですね、イクスさま。ソフィさまのあの強さが、深い悲しみから生まれてなくて。 |
イクス | ほんとよかったよ……。ずっと胸がじくじくしてたんだ。 |
ミリーナ | でも……私よりずっと小さいのにあんなに強いの、とっても憧れちゃう。私も、ああいうの、やってみたいな。 |
カーリャ | あの身のこなしと戦い方はどちらかというとイクスさまの方が必要なんじゃないですか~ ? |
イクス | ……確かに……そうなんだよなぁ。 |
イクス | よし ! ソフィ、ちょっといいか ? |
ソフィ | 何 ? |
イクス | お願いがあるんだけど……。えっと、俺に戦い方を教えてくれないか ?できる範囲で、構わないから。 |
ソフィ | 戦い方 ? |
イクス | 俺、もっと上手く戦えるようになりたいんだ。 |
カーリャ | おお。イクスさまレベルアップ大作戦ですね ! |
イクス | ああ。戦い方だけじゃなくてソフィの強さの秘訣も知りたい。 |
イクス | 鏡映点に助けてもらえるのはありがたいことだけどやっぱりそのままじゃダメだと思うし少しでも成長していきたいから。 |
イクス | だから……いいかな、ソフィ ? |
ソフィ | ごめん。わたし、教えたことないから、わからない。……教えるのは、教官ならできたのかも。 |
イクス | そっか……いや、大丈夫だよ。まずはソフィを見習ってみることにする。こういうのは見て覚えるのが大切だって言うしさ。 |
ソフィ | 見習うってどういうこと ? |
イクス | えっと……ソフィの良いところを真似するって意味、かな。 |
ソフィ | わかった。いいよ、真似しても。わたしもアスベルやシェリアたちの真似、よくしてたから。 |
ミリーナ | ソフィも身近な人たちの背中を見て大きくなっていったのね。 |
ソフィ | うん。そうかもしれない。 |
イクス | これはいいことを聞いたな。よし、俺もソフィみたいに頑張るぞ ! |
ソフィ | わたしにも何かできることがあったらそのとき伝えるね。 |
イクス | ああ ! ありがとう、ソフィ ! |
ミリーナ | ふふっ。 |
カーリャ | ミリーナさま、どうかしました ? |
ミリーナ | ソフィもいい子で可愛いし張り切るイクスも可愛いなって思って。 |
イクス | そこは可愛いじゃなく頼もしいとか、格好いいだろ……まったく。子供扱いするなよな。 |
ミリーナ | うん。けど、何か困ったことがあったら昔みたいに遠慮なく頼っていいんだからね。喉が渇いたとか、お腹が空いたとか |
カーリャ | はいはーい ! カーリャはお腹すきました ! |
イクス | おいおい……さっき食べたばっかりだろ。このあたりは光魔も出て危険だし腹ごしらえはもう少し進んでからだ。 |
カーリャ | そんな……カーリャは今にもお腹と背中がくっついちゃいそうなのに。 |
ミリーナ | けどお腹が空くとご飯もより美味しくなるわよ。もう少し我慢してね。 |
カーリャ | くっ……わかりました。ミリーナさまたちにとってもここからは険しい道。カーリャもこの危機を乗り越えてみせます。 |
ミリーナ | ふふ、次の休憩場所についたらすぐ料理に取り掛かれるよう何を作るか考えておくわね。 |
ソフィ | 次の……ご飯……。 |
ミリーナ | ソフィは何か食べたいものはある ? |
ソフィ | カニタマ。 |
カーリャ | おっ、即答ですね。 |
イクス | ソフィのこんな表情はじめてみた。そんなに好きなんだな。 |
ミリーナ | それじゃあカニタマで決まり。ソフィに喜んでもらえるよう腕によりをかけて作るね。 |
ソフィ | ありがとう。楽しみ。 |
イクス | よし、それじゃあ先に進むとするか。 |
キャラクター | 5話 【2-7 オイゲン氷山地 麓】 |
イクス | 進んでも進んでも、あたり一面雪で真っ白だな……。 |
ミリーナ | ソフィ、寒くない ? |
ソフィ | わたしは大丈夫だよ。 |
カーリャ | さっきのカニタマのおかげかソフィさまは元気いっぱいって感じですね。 |
ソフィ | うん。とっても美味しかった。 |
ミリーナ | ありがとう。喜んでもらえて私も嬉しいよ。また食べたくなったら言ってね。 |
ソフィ | なら次もカニタマがいい。 |
イクス | 次もカニタマ ! ? それは栄養が偏るんじゃ……。いや、けどカニタマがソフィの強さの秘訣かも……。 |
イクス | なら……よし ! 俺もソフィを見習ってどんどんカニタマを食べるぞ ! |
カーリャ | 見習うところそこですか ! ?ただ好きなだけだと思いますけど ! |
ソフィ | けど……同じものばかり食べてるとシェリアに怒られる。だからミリーナに任せるね。 |
ミリーナ | ソフィ……もう本当にいい子なんだからっ。ええ、私に任せて ! 私、カニタマも食事の栄養バランスも両立できるようにがんばってみるね。 |
イクス | けど今は料理のことより雪原を越えることを一番に考えよう。 |
イクス | 雪原は同じ景色が続くから迷いやすいうえ寒さ、足場の悪さの影響も加わり体力の消耗も激しい。みんな、くれぐれも油断しないようにな。 |
ソフィ | わかった。 |
ミリーナ | カーリャ。光魔の鏡の反応は ? |
カーリャ | ちゃんと近づいてますよ。進路は間違っていないはずです。 |
ソフィ | なら……【心が安らぐような場所】にも……。ありがとう、カーリャ。 |
カーリャ | えへへ。ソフィさまに褒められちゃいました。 |
イクス | ……きっとまた強い光魔と戦うことになる。作戦を考えたり、武器を手入れしたりしっかり準備しておかないとな。 |
イクス | ソフィと出会ったときみたいにまた強い敵と正面からやりあわざるを得ないことになったら……。 |
ミリーナ | ……イクス。 |
カーリャ | むむっ ! この感じは ! ! |
ソフィ | ! みんな、構えて ! |
ミリーナ | 雪の中に潜んでいたのね。イクス、どうしよう ! ? |
イクス | くそ、囲まれてる…… ! ?こういう自分が不利なときの定石は陣形を崩さず防御に徹して―― |
光魔 | ……ウゥ……ハルルルル……。 |
カーリャ | ちょっ ! 後ろから来ますよ ! |
イクス | ――なっ ! ! |
ソフィ | ハァッッ ! ! |
ミリーナ | ソフィ ! ありがとう ! |
ソフィ | わたしが光魔を引きつける。 |
イクス | けどそれじゃあ―― |
ソフィ | 大丈夫。これくらいならどうってことない。 |
カーリャ | ソフィさま ! また他にも―― |
ソフィ | ――ヤァッッ ! |
カーリャ | って、心配無用でしたね !カニタマもチャージしたソフィさまは無敵です ! |
イクス | ……さすがソフィだな。俺も引き下がってる場合じゃない。ったく、何やってるんだ、俺は。 |
ミリーナ | イクス ? |
イクス | ミリーナ……援護は頼んだ !一体一体なら今の俺たちでも十分倒せるんだ !冷静に、確実に倒していこう ! |
ミリーナ | うん、わかった ! |
イクス | よしっ、俺たちもソフィに続くぞ ! |
キャラクター | 6話 【2-8 オイゲン氷山地 中腹】 |
光魔 | ……ウゥ~……ハルルルルル ! |
イクス | くっ……。 |
ソフィ | こっちは全部倒した ! |
ミリーナ | イクス ! この敵が最後だよ ! |
イクス | あ、ああ ! こっちは任せろ !こいつは……俺が―― ! ! |
イクス | なっ ! ! しまった ! ?剣が、弾かれ── |
ミリーナ | 危ない、イクス ! |
ソフィ | ──はぁぁっ ! |
ソフィ | しぶとい ! |
イクス | ……ソフィ ! ? |
ミリーナ | ソフィ ! 一度さがって ! |
ソフィ | 大丈夫 ! これで終わり ! |
イクス | ……さ、さすがだな。 |
ミリーナ | うん……。今、目で追えなかった。 |
ソフィ | 二人とも。大丈夫 ? |
イクス | ああ……。ソフィのおかげでな。ありがとう、助かった。 |
ミリーナ | ソフィこそ怪我はしてない ? |
ソフィ | うん。わたしも平気だよ。 |
カーリャ | みんなが無事でよかったです……。一瞬どうなるかと思っちゃいましたよ。 |
ミリーナ | うん……今のは私もさすがにヒヤッとしたよ。イクスだけじゃなくソフィにも。もちろんソフィは強いってわかってたけど……。 |
ソフィ | ミリーナ ? |
イクス | ……ソフィはすごいな。 |
ソフィ | わたしが ? |
イクス | 俺、頭では飛び出してやりたいって思っててもなかなか行動がついていかないんだ。だからやるべきことに真っ直ぐなソフィが羨ましい。 |
イクス | ソフィみたいにって思ってもどうしても自分の感情に振り回されちゃうんだよな。焦りとか不安とか恐怖とか……色んな気持ちにさ。 |
ソフィ | ごめん。わたしには、それがよくわからない。 |
イクス | えっ ? |
ソフィ | たぶん、わたしがプロトス1だから。ラムダを消すために生まれた戦闘用ヒューマノイドだからだと思う。 |
ミリーナ | ちょ、ちょっと待って。ラムダっていうのがよくわからないけどソフィが……戦闘用ヒューマノイドって……。 |
イクス | ウソ、だよな……。それ、ソフィが……兵器って意味にしか聞こえないけど……。 |
ソフィ | うん。対消滅……自分の命を引き換えにラムダを消し去ることがわたしの使命なの。 |
ミリーナ | そんな……そんなのあんまりだよ。酷すぎる……。 |
イクス | だから、ソフィは戦いの時でも……。 |
イクス | ――ごめんっ !俺、ソフィの事情を全然知らないくせに羨ましいとか言っちゃって ! ! |
イクス | ごめん……本当に、ごめんっ ! ソフィ ! |
ソフィ | 大丈夫だよ。ちゃんとわかってるから。イクスたちも、アスベルたちと同じ。わたしをわたしとして見てくれているって。 |
ミリーナ | もちろんだよ ! 何であろうとソフィが可愛い女の子であることには違いないもの。 |
カーリャ | カニタマやクロソフィが好きだったり意外と普通ですもんね。イクスさまの方がよっぽど変わってますもん。 |
イクス | それはソフィに対しても俺に対しても失礼だぞ。まあ、それはともかく―― |
イクス | 俺たちにとってソフィはソフィだ。今までも、そしてこれからも。 |
ソフィ | うん。 |
カーリャ | さあ ! お互い腹を割って話し合い絆も深まったってことで !いざ出発です ! |
ソフィ | 待って。 |
イクス | どうかしたのか ? |
ソフィ | イクス。わたしと戦ってみて。 |
イクス | えっ……ソフィと ? |
ソフィ | いまなら何か伝えられると思う。けど、わたし、上手く説明ができそうにないから。──これが今のわたしに出来る、一番の方法。 |
イクス | ソフィ……。 |
イクス | ……わかった !それじゃあ、よろしく頼む ! |
キャラクター | 7話 【2-8 オイゲン氷山地 中腹】 |
イクス | ……よ、よし。なんとか防ぎきった !これで勝負あったか―― |
ソフィ | ──そこっ ! |
イクス | なっ―― ! ? |
カーリャ | ソフィさまの勝ちです ! |
イクス | まいった……。 |
カーリャ | イクスさまは詰めが甘いですね。やっぱりソフィさまの方が数段上――。 |
ミリーナ | ……カーリャ ?イクスも、すごく、頑張ってたでしょ ? |
カーリャ | は…… ! そ、そうですね !イクスさまも、互角の戦いでしたよ ! |
イクス | そういう気遣いが一番傷つくんだけど……。 |
ソフィ | イクス、どうだった ? |
イクス | そうだな……。ソフィの強さを実感したよ。あの間合いから飛び込んでくるとは思わなかった。少なくともいまの俺にはできそうにない。 |
イクス | それと、俺ってさ、一歩下がるクセがあるのかもしれない。危ないかもって思ったときに。 |
イクス | 頭では攻め込んでも大丈夫なはずってわかってる。けど……胸のあたりが締め付けられるっていうか……やっぱり、感情に振り回されちゃってるんだ。 |
ソフィ | なら、わたしも感情に振り回されてる。 |
イクス | えっ……ソフィが ? |
ミリーナ | 全然そんなふうには見えないけど。 |
ソフィ | わたしも戦いながら、強さの秘訣を考えてみたの。そしたらアスベルたちみんなのことが思い浮かんで自然と胸のあたりが温かくなった。 |
ソフィ | 大切なのは気持ち。それがあるから、わたしは一歩踏み出せるんだと思う。何かを感じるのは、きっといいことだよ。 |
イクス | 何かを感じないからじゃなく感じるから強くなれる……か。 |
イクス | やっぱりソフィはすごいな。俺にはソフィが持っているようなそういう特別な気持ちがあるかどうか……。 |
ソフィ | 大丈夫。イクスにもきっとあるよ。だって、それは―― |
ソフィ | 大切なものを守りたいっていう想いだから。 |
イクス | 大切なものを……守りたい……。 |
イクス | そうか……だからソフィはそんなにも強くいられるのか……。 |
ソフィ | 伝わった ? |
イクス | ああ、ちゃんと伝わったよ。ありがとう、ソフィ。 |
ソフィ | うん。よかった。 |
イクス | よし、それじゃあ行くとするか。 |
ミリーナ | もう少しで雪原も越えられそうだよ。 |
カーリャ | そしたらきっと光魔の鏡ももうすぐです ! |
イクス | つまり……光魔の主もいるはずだ。きっと今まで戦った光魔よりもずっと強い。覚悟していかないと。 |
ミリーナ | あれ…… ? |
カーリャ | ミリーナさま。どうかしました ? |
ミリーナ | 何か落ちてるみたい。 |
ソフィ | それって……クロソフィ。どうしてここに落ちてるの。 |
イクス | 待て……そのクロソフィが落ちていたところって確かさっき光魔と戦った場所だよな。 |
カーリャ | あっ ! カーリャが拾った場所もそういえば光魔と戦った場所でしたよ ! |
イクス | ならクロソフィは光魔についていた可能性が高い……。となると【心が安らぐような場所】は……。 |
ソフィ | 大丈夫かな……。 |
イクス | ……とにかく急ごう。行けばきっとわかる筈だ。 |
キャラクター | 8話 【2-13 心が安らぐ場所 1】 |
ミリーナ | わぁ……とっても綺麗。もしかして、ここが── |
ソフィ | 【心が安らぐような場所】。 |
ソフィ | 花と、木と……。やっぱり、ラントの裏山によく似てる。 |
カーリャ | まさか光魔の鏡より先に見つかるとは !よかったですね、ソフィさま ! |
イクス | けど……誰もいないみたいだな。 |
ソフィ | わたしやイクスたちがいるよ ? |
イクス | えっと……そうじゃなくて……。 |
ソフィ | アスベルたちと会えなかったのは残念。だけど、イクスたちにこの場所を見てもらえて、わたしは嬉しい。 |
ミリーナ | ……ソフィ。 |
ソフィ | 光魔にも荒らされてなくてよかった。 |
イクス | ああ。ちょっと心配しすぎだったみたい―― |
カーリャ | ──ぶるぶるぶるぶる ! |
イクス | カーリャ ! その反応 !もしかして――光魔の鏡 ! |
ソフィ | ハアッ ! |
ソフィ | ……すごい数。 |
イクス | それに光魔の主まで。くそ、このまま暴れられたらこの場所が―― |
ミリーナ | イクス ! 構えて ! |
ソフィ | ! 間に合わない、クロソフィが―― |
イクス | うっ……大丈夫だ ! こっちは俺に任せろ ! ! |
イクス | (俺がこのまま動かなければクロソフィの花がメチャクチャにされてしまう。そんなの……絶対にダメだ) |
イクス | (この間合いならいけるはず……。けど……もし失敗したら――後ろにいるミリーナが危険に……) |
イクス | (いや──そうじゃない。俺はミリーナもソフィの大切な場所も守るんだ。だから……それ以外の小さな気持ちなんて――) |
イクス | 何だって構うもんかぁぁぁぁっ ! |
ミリーナ | イクス ! ? |
イクス | くそっ……初動が遅れたせいで切先が届かなかった……。このままじゃ……競り負け、そう―― |
ソフィ | ――たぁぁっ ! |
光魔の主 | ギャァァァァァッ ! ? |
イクス | ソフィ ! 助かった、ありがとう ! |
ソフィ | ううん。助けられたのはわたしの方。時間を稼いでくれてありがとう、イクス。 |
カーリャ | さあ ! この勢いに乗ってあいつにトドメを刺しちゃって下さい ! |
ソフィ | いこう、二人とも。 |
ミリーナ | うん ! |
イクス | 大切なものを守るために ! |
キャラクター | 9話 【2-14 心が安らぐ場所 2】 |
イクス | よし……どうにか倒せたぞ。 |
ミリーナ | あとは光魔の鏡だけ !イクス、お願い ! |
イクス | わかった。 |
イクス | 破壊完了 !これで、光魔の出現も止まるはずだ ! |
ミリーナ | うん ! やったね、イクス !お疲れさま ! ! |
ソフィ | この場所も……被害は少ないみたい。少しお手入れをすればすぐ元通りにできそう。本当に、よかった……。 |
ソフィ | イクス、ミリーナ。ありがとう。これも二人のおかげ。 |
ミリーナ | ううん。こっちこそお礼を言わないと。ソフィが助けてくれたからさっきの光魔の主も倒せたんだもの。 |
イクス | ああ。それに……俺も、今度はちゃんと一歩踏み出すことができた。ソフィのおかげだ、本当にありがとう。 |
ソフィ | ううん。それはイクスが頑張ったからだよ。 |
イクス | いやいや。頑張れたのもやっぱりソフィがいてくれたからこそで―― |
カーリャ | もう。なんですかその譲り合い。ちょっと他人行儀過ぎですよ。カーリャたちとソフィさまの仲じゃないですか。 |
ミリーナ | ふふっ。そうだね、カーリャ。お互い助け合ったってこと、だよね。 |
ソフィ | うん ! だってもうわたしたちは友達だから ! |
イクス | 友達……。 |
イクス | ……ああ、俺たちは友達だ !ありがとう、ソフィ !俺、ソフィと友達になれてとっても嬉しいよ。 |
ミリーナ | うん、私も ! |
カーリャ | カーリャもです ! |
ソフィ | わたしも。 |
ソフィ | アスベルたちにも言いたいな。友達が増えたよって。きっと喜んでくれると思うから……。 |
イクス | ああ。きっといつか、伝えられるときが来る。俺はそんな気がするよ。 |
カーリャ | いつもネガティブなイクスさまにしては珍しくポジティブな見解ですね。 |
イクス | うるさいなぁ。たまにはいいだろ。 |
ソフィ | イクスたちがこの場所を守ってくれたみたいにわたしもイクスたちの大切な場所を守りたい。 |
ソフィ | ……アスベルたちを見つけるまでイクスたちと一緒に戦いたい。 |
ミリーナ | ありがとう、ソフィ。私たちも、アスベルさんとシェリアさんのこと一緒に捜すね。 |
ソフィ | うん。よろしく、みんな。 |
イクス | ああ ! こちらこそ、よろしく、ソフィ ! |
イクス | よし。それじゃあさっそくこの場所の手入れを―― |
イクス | ! ? な、何だ……今の。 |
Msc_002_009_speaker01 | 殺されかかったってのにずいぶん呑気なセリフを吐くもんだな。 |
イクス | マーク…… ?どうしてこんなところに ?それに今の攻撃は…… ? |
ミリーナ | ――待って、イクス。あの人、『殺されかかった』って言ったわ。つまり―― |
マーク | はは、そう睨むなよ、怖い怖い。今回はついでだ。 |
マーク | ちょいと光魔が暴れまわってるって話を聞いてな。救世軍として討伐に来たところにお前らがいたんだ。 |
マーク | 光魔相手に勝つとはなぁ。鏡士の死体が二つ転がってても不思議じゃないと思ってたが……。 |
イクス | ……どういう意味ですか。 |
マーク | そんなこともわからねぇのか。案外察しが悪いんだな、イクス。簡単な話さ。俺はお前に死んでもらいたいんだわ。 |
ミリーナ | どうして ! ?オーデンセの海で助けてくれたのはあなたなんでしょう ! ? |
マーク | あの時は、な。 |
イクス | ……もしかして !俺たちがゲフィオン様についたから ! ? |
マーク | 悪の宰相ゲフィオンが命じた使命──救世軍がそいつを止めんのは道理だろ ? |
ソフィ | イクス、ミリーナ ! 気を付けて !この人……凄く、強い ! |
マーク | おおっと。小さな鏡映点サマにお褒めの言葉を頂けるとは恐悦至極。 |
マーク | だが、悪いな。ここで全員、死にさらせ。 |
イクス | マーク ! やめてくれ ! まずは話を―― |
マーク | うるせぇ、この腰抜けがっ ! !てめぇのそのツラみてるとイライラすんだよ ! |
ソフィ | イクス ! 構えて ! |
ミリーナ | くるわ ! |
イクス | ――くっ ! ! |
キャラクター | 10話 【2-14 心が安らぐ場所 2】 |
イクス | ──でぇぇぇぇいっ ! ! ! |
マーク | ……へぇ、飛び込んでくるのか。 |
イクス | ──はぁはぁ……どうだ ! |
マーク | どうだ、ねぇ。──だが、いいのか ?俺に気を取られすぎてると……。 |
ミリーナ | ── ! ? |
マーク | あいつ、死ぬぜ ? |
イクス | ミリーナ ! |
ソフィ | ──させない ! |
マーク | ──おっと。 |
ミリーナ | ──ソフィ ! |
イクス | ありがとう ! 助かった ! |
マーク | よかったなぁ、イクス。大事な女のツラがグシャグシャにならなくてよ。 |
イクス | マーク、いい加減にしろ ! 冗談じゃすまないぞ ! |
マーク | いい加減にしろ、だ ? 戦場で女一人すら自分の力で護れないような奴が、ずいぶん偉そうじゃねぇか。 |
ソフィ | わたしたちは友達。助け合うことは普通のこと。あなたは……知らないの ? |
マーク | ああ、知ってるよ。あんたはいいな。まともなオトモダチがいるみたいで。まぁ、そうじゃない奴もいるってことさ。 |
イクス | ……マーク ? |
マーク | ……なーんか、冷めちまったな。今日のところは引き上げるか。 |
ミリーナ | 逃げるつもり ! ? |
マーク | バカが。俺がお前たちを逃してやるんだよ。光魔がいねぇなら俺がここにいる理由もねぇ。 |
マーク | それに……これ以上やりあえばうっかりお前を殺しちまうかもしれないからな。 |
イクス | 今は殺さない理由があるってことか ? |
マーク | こっちも色々と訳ありでね。またの機会を楽しみにしておいてくれや。 |
マーク | イクス、ミリーナ。それから鏡映点と鏡精も。次に会う時は、遠慮なく殺し合えることを祈ってるぜ。せいぜい腕を磨いておきな。 |
ミリーナ | マーク ! |
ソフィ | ダメ ! 深追いは危険 ! |
ミリーナ | そ、そうだね。今の私たちじゃ……。 |
イクス | ……凄い強さだったな。救世軍の……マーク。 |
ソフィ | あの人……イクスに対してすごく、怒ってるように見えたけど……。 |
イクス | 俺がゲフィオン様についたから ?でも、そんな理由だけで…… ? |
ソフィ | 人は悲しくても怒る。シェリアが言ってた。 |
イクス | ……悲しくても、か。 |
ミリーナ | イクス、セールンドに戻ったらゲフィオン様に相談してみよう。 |
イクス | ……そうだな。 |
イクス | けど王宮に向かう前に、この場所の手入れが先だ。 |
カーリャ | マークとの戦いは光魔以上に激しかったですからね。さっきより被害が広がってなきゃいいですけど。 |
ソフィ | あっ……。 |
カーリャ | ソフィさま ? どうかしました ? |
ソフィ | さっきの人……少し離れた場所で戦ってくれた。クロソフィ、無事みたいだよ。 |
ミリーナ | …………。 |
イクス | ……何なんだろうな、まったく。 |
キャラクター | 10話 【2-14 心が安らぐ場所 2】 |
イクス | ただ今、戻りました。ゲフィオン様。 |
ゲフィオン | ご苦労。して、状況は ? |
ミリーナ | 異世界エフィネアの具現化に成功しました。 |
イクス | 鏡映点も無事確保、光魔の鏡も封印ひとまず大陸の安定化も図れたと思われます。 |
ゲフィオン | 此度も、光魔に襲われた事であろう。二人とも怪我は無いか ? |
イクス | 光魔は、大丈夫だったのですが……。 |
ゲフィオン | …… ? |
ゲフィオン | ……救世軍――か。最近活動が活発になってきたとは思っていたが……。 |
ミリーナ | この任務のことを、どうやって知ったのでしょう ? |
ゲフィオン | この計画は、混乱を避ける為、ごく一部の人間しか真実を知らない筈なのだがな……。 |
イクス | どこからか、俺たちのことが漏れていたということですね……。 |
ゲフィオン | その可能性が高い。セールンドの城内であっても油断はできぬな。 |
ゲフィオン | お前たちにも甘言をもって近づく輩が現れるかもしれぬ。惑わされたり、かどわかされぬよう気をつけよ。 |
ミリーナ | はい、わかりました。 |
ゲフィオン | マークという男については私の部下に調べさせ、手を打っておく。心当たりも……ないではない。 |
ゲフィオン | ──お前たちは、使命に集中せよ。他の些末な問題は、私の方で対処しよう。案ずる必要はない。 |
イクス | ありがとうございます。ですが、まだ少し気になることが……。 |
ゲフィオン | 何だ ? |
イクス | その、マークなんですが……。何故か俺に対して怒りを抱いているような気がするんです。 |
ゲフィオン | 気がする……か。報告として受け取るには、いささか曖昧だな。 |
ミリーナ | ですがゲフィオン様 !イクスの命を狙ってくる相手なんです。何か、少しでも情報があれば── |
ゲフィオン | ――どうであれお前たちが案ずることではない。今は、お前たちにしかできない使命を果たせ。 |
ゲフィオン | では、謁見はここまでだ。イクス、ミリーナ、頼んだぞ。速やかに、次の世界を具現化させるのだ。 |
イクス | は、はい……わかりました。 |
ミリーナ | ……ゲフィオン様。途中からピリピリしてたね。 |
イクス | さっきのは俺たちが悪いよ。ただの感覚の話をされても……。ゲフィオン様だって困るよな。 |
イクス | そんなことより、世界の危機のことを考えてくれってそりゃあ、その通りだと思うよ。 |
イクス | ゲフィオン様が手を打ってくれるって言ってくれたし、この件はもうお任せしよう。 |
ミリーナ | ……うん。わかった。そうだね……。確かに今は目の前にある私たちにしかできない使命を果たさなくちゃ ! |
イクス | ああ、カレイドスコープに行こう。次の世界を具現化するぞ。 |
キャラクター | 1話 【3-1 ディン森林地帯 西部】 |
カーリャ | はい、到着っと。イヒヒ、イクスさま~ ?空気の心配はしなくてもいいんですかぁ ? |
イクス | ……まだそれ引っ張るのか ? |
ミリーナ | カーリャ。次に同じネタでイクスをからかったらおやつは抜きね。 |
カーリャ | それはカーリャにとって拷問ですぅ~。イクスさまと親交を深めようとしただけなのに~。 |
イクス | わかったわかった。とりあえず鏡映点を捜そう。確かこの辺りだったよな。 |
ミリーナ | うん、それと今回は二人だからね。同じ場所にいてくれればいいけど……。 |
イクス | うーん、偶然には期待しない方が無難だな。ケリュケイオンから見たら、街があったから立ち寄って、地道に聞き込みしてみよう。 |
イクス | (具現化した大陸に街があるっていうのも凄いよな。カレイドスコープの力……。考えれば考えるほど怖くなってくる……) |
カーリャ | いっそ向こうから出てきてくれれば捜す手間がはぶけるのになぁ。 |
カーリャ | 鏡映点になった人この指とーまれ~♪なーんて。 |
イクス | それで見つけられたら苦労しないって。 |
Msc_003_001_speaker01 | ――い……。お……。 |
ミリーナ | あら ?……何か、声みたいなものが聞こえない ? |
イクス | ああ、かすかにだけど……あっちの方だな。 |
カーリャ | はわわわわ !なんか赤いのがこっちに近づいてきます ! |
Msc_003_001_speaker01 | おーい ! そこの人たち ! |
ミリーナ | 赤い髪の……男の人 ?――って、あの人 ! 鏡映点じゃない ? |
イクス | そんなまさか !本当にカーリャの指に止まりに来た ! ? |
カーリャ | よっしゃー、カーリャちゃん天才 !探すどころか、あっちから来るなんて。今回は楽勝―― |
Msc_003_001_speaker01 | そこ、どいてくれ ! 早く逃げろーっ ! |
イクス | あれ……なんか……魔物に追われてるぞ ! ? |
カーリャ | ふぇぇ、全然楽勝じゃなかったですー !誰ですか、そんなこと言ったのは ! |
イクス | ツッコミは後でゆっくりやるから !今はあの人を助けに行こう ! |
Msc_003_001_speaker01 | あんたたち逃げろって言ったのに何してんだ ! |
イクス | 俺たちも加勢する ! |
Msc_003_001_speaker01 | え……マジかよ ! ? 戦えんのか ? |
イクス | 大丈夫、やれるさ ! |
ミリーナ | イクス、魔物が来るわ ! |
Msc_003_001_speaker01 | くそっ、こうなったらあてにするからな ! |
キャラクター | 2話 【3-2 ディン森林地帯 東部】 |
? ? ? | ありがとな ! おかげで助かったよ。変なバケモノに不意打ちくらってさ。ちょっと危なかったんだ。 |
? ? ? | それと悪かった。あんたたちを巻き込んじまって。 |
イクス | いや、そっちこそ無事でよかったよ。 |
カーリャ | ……じーっ。 |
? ? ? | ……ところでこのちっちゃいのさっきから俺に指つきつけてるけど…………何なんだ ? |
ミリーナ | カーリャ、その指に鏡映点さんは止まらないからね ? |
カーリャ | ですよね……。ちょっとだけ可能性があるんじゃないかと思ったんですけど……。残念です。 |
? ? ? | きょうえいてん…… ?なんだそりゃ ? |
ミリーナ | あ、ごめんなさい。鏡映点っていうのはあなたのことなんです。ちょっとお話をさせてもらってもいいですか ? |
ルーク | そりゃ、別に構わねーけど……だったらまず自己紹介しとかないとな。俺はルークだ。そっちは ? |
イクス | 俺はイクス。こっちはミリーナとカーリャ。ここからはちょっと込み入った話になるんだけど―― |
ルーク | へぇ……。 |
イクス | 突拍子もない話なのにルークは随分落ち着いているんだな。 |
カーリャ | さっすが鏡映点って感じですね。 |
ミリーナ | 鏡映点は『時代に影響を及ぼす人物』っていうくらいだからきっと大物なのね。 |
ルーク | ――って、まったくわかんねえ ! |
三人 | ! ? |
ルーク | ……悪い。俺の仲間ならこういう話が得意な頭のいい奴がいるんだけどさ。俺にはさっぱりだわ。はは……。 |
ルーク | きっとあいつがここにいれば―― |
ルーク | 「やれやれ。こんな事も理解できなくてどうやって今まで生きてきたんでしょうね」とかなんとか言ってさ。 |
ルーク | それでもきっと、知恵を貸してくれて……。――いや、くれねえかもな。ああいう奴だし…。 |
カーリャ | うはぁ……ルークさま、何だか疲れた顔してますよ。これは闇が深そうな予感です……。 |
ミリーナ | イクスは辛い事があったら私になんでも言ってね ?頼ってくれていいんだよ ? |
イクス | 俺は平気だからさ、ミリーナ。頭なでるの、やめてくれないかな……。 |
ルーク | なあ、光魔の鏡って言ったか ?さっき俺を追いかけてた魔物もその影響で湧いてるんだよな ? |
ルーク | なら、俺も一緒に探すよ。お前らが目的を達成できれば俺もこの世界も、元に戻るんだろ ? |
イクス | ああ。助かるよルーク ! ありがとう。 |
ルーク | いいっていいって。さっき助けてもらった恩もあるし。 |
ルーク | それにしても……俺も、今いるこの場所も【複製】だなんてなんか、皮肉だよな……。 |
ミリーナ | ルークさん、どうかしました ? |
ルーク | ん ? ……いや、なんでもないよ。それより、光魔の鏡ってのはどうやって見つけるんだ ? |
イクス | その前に、鏡映点がもう一人いるはずなんだ。まずはその人を捜したい。 |
ルーク | もう一人 ?もしかして俺の知ってる奴かな ! ?ガイとか――……ティ、ティアとか……。 |
ルーク | そういや、ミュウがいねぇからミュウか。いや、魔物はないか……。 |
イクス | 犬の鏡映点ならいるけど……。 |
ルーク | マジかよ ! ?まぁ、でも、ミュウよりはナタリアの方が可能性が高いか……。それかアニスってことも……。 |
ミリーナ | 顔、見てみますか ?魔鏡に姿が映っているから……。 |
カーリャ | じゃーん。こんな感じのイケメンです ! |
ルーク | ――げ。なんだ、こいつかよ。 |
イクス | え ? 嫌な人なのか ? |
ルーク | 嫌っつーか、面倒っつーか。……さっき話してた頭のいい奴だよ。ジェイドっていうんだ。 |
ルーク | まぁ、こういう状況だしジェイドなら頼りにはなる……かなぁ ? |
ルーク | ま、いいや。ジェイドを捜すんだな。それならもう少し先に街があったからそこで話を聞いてみようぜ ! |
キャラクター | 3話 【3-8 降雪の街】 |
イクス | さてと、街についたはいいけど……どこから聞き込みするかな。 |
ミリーナ | イクス、あれ見て。すごい人だかり。あそこで鏡映点の情報を聞けるんじゃない ? |
ルーク | あれ ? 中心にいるの、ジェイドじゃないか ! ? |
イクス | 鏡映点 ! よかった ! すぐに見つかって ! |
ルーク | つーか、あいつ、あんな大勢に囲まれて……なんかもめ事でも起こしたんじゃないだろうな。 |
子供 | ジェイドさん、行っちゃヤダ !もっと一緒にいてよぉ。 |
Msc_003_003_speaker02 | いや~、アンタに勉強見てもらったらすっかりなついちまったね。次も頼んでいいかい ? |
ジェイド | もちろんですよ。よろしければ他の子供たちにも声をかけて下さい。学問は大事ですからね。 |
Msc_003_003_speaker03 | ジェイドさん、先ほどはありがとう。畑を荒らす魔物を退治していただいて……。これは少しばかりのお礼です。 |
ジェイド | いいえ、それは受け取れません。皆さんの喜ぶ顔が見られただけで私は満足ですから。 |
Msc_003_004_speaker03 | ――ジェイド様 ! ジェイドさん ! ジェイドさーん ! ― |
カーリャ | すごーい ! 人気者じゃないですかぁ !今回こそさすが鏡映点って感じですねぇ ! |
ミリーナ | ルークさんだって鏡映点らしい素敵な人よ。優しくてとってもいい人。 |
カーリャ | それはわかってますけど。あのメガネの人は大物感もありつつ、キラキラして爽やかで乙女の理想って雰囲気ですよ。ね ? イクスさま。 |
イクス | なんで俺に話をふったんだよ……。一番乙女から遠いだろ、俺。 |
カーリャ | だって、ミリーナさまじゃ理想の相手が誰だかわかりすぎて話が終わっちゃうじゃないですか…… |
ミリーナ | ふふ♪ そうよ、カーリャ♪世界で一番格好良くて優しいのは私の目の前にいる銀髪の王子様だもの ! |
イクス | ……それはともかく。ジェイドさん、慕われてるな。本当にいい人なんだなぁ。俺もあんな風になりたいよ。 |
イクス | なぁ、ルーク……。 |
イクス | ――って、ルーク ! ? どうした ! ? |
カーリャ | ルークさま、大丈夫ですか ! ?足が生まれたての子鹿みたいにガックガクのふにゃんふにゃんですよぉ ! ? |
ルーク | あ……頭が……。頭が……。 |
イクス | おい、しっかりしろルーク !どこか具合が悪いのか ! ? |
ジェイド | おや ? あそこで騒いでいるのは……ルークじゃないですか。丁度良かっ―― |
ジェイド | おや、どうしたんですか ? 顔が引きつってますよ。 |
ルーク | お……お前、ジェイド、だよな ? |
ジェイド | いやですねえ。私以外の何に見えるというんです。ところで、こちらの方は ? |
イクス | ……あ、俺はイクスです。今はルークに旅の協力してもらっています。 |
ジェイド | そうですか。ルークは私の自慢の仲間ですからね。きっとお役に立つと保証しますよ。 |
ルーク | ! ? |
ジェイド | 彼は、私の仲間の中でも飛びぬけて秀でた才能の持ち主でしてね。何より義理堅く、信頼のおける人物です。 |
ルーク | ひいぃ……。かゆ……かゆいぃ……。 |
ジェイド | おや、じんましんですね。そんなに掻きむしったら肌が傷つきますよ。私が診て差し上げましょう。 |
ルーク | だーっ ! さわんなーっ !一体何なんだよジェイド。具合でも悪いのか ! ? |
ジェイド | 具合が悪そうなのはあなたでしょう。本当に大丈夫ですか ?しかしルークがこれでは……困りましたね。 |
イクス | あの……何かあるんですか ? |
ジェイド | ええまあ。先ほど、街の皆さんからこの辺りを荒らす盗賊を討伐して欲しいと頼まれましてね。 |
ミリーナ | そんな危険なことまで引き受けたんですか ? |
ジェイド | ええ。苦しむ人々の願いは断れませんから。 |
カーリャ | やだ、かっこいい…… ! |
ジェイド | ルークがいたので、協力を願おうと考えたのですが……。私だけで行くしかないようですね。 |
ミリーナ | そんな……危険です !今だって光魔があなたを狙っているのに ! |
ジェイド | 私を ? 何故でしょう。それに『こうま』とは…… ? |
イクス | それについて、あなたには色々と伝えなくちゃならないことがあるんです。少しだけでも時間をもらえませんか ? |
ジェイド | ……それは困りましたね。事は街の安全に関わります。一刻も早く出発したいと思ってましたので。 |
ジェイド | ――ですが、あなた方の案件も捨て置くという訳にはいかないようです。ですから、一つ提案しましょう。 |
ジェイド | 盗賊のアジトまで、ご一緒しませんか ? |
イクス | ……え ? |
ジェイド | 道すがら、そちらの事情をうかがいます。もちろん、戦わなくて結構です。民間人に危険な真似はさせられませんから。 |
イクス | そんな……。ジェイドさんにだけ戦わせて俺たちに、ただ見てろって言うんですか。 |
ジェイド | 民間人であると同時に、ルークの友人です。傷つく姿は見たくないのですよ。 |
イクス | 俺、戦えます !一緒に連れていって下さい ! |
ルーク | くそっ、じゃあ俺も行く !こんな変なジェイドと一緒にイクスたちだけを行かせられるかよ ! |
ミリーナ | イクスが行くなら、私だって ! |
カーリャ | ミリーナさまが行くならもちろんカーリャもご一緒しますよ。 |
ジェイド | わかりました。少々想定外のメンバーですが心強い仲間が増えて嬉しい限りです。 |
ジェイド | 目的地は盗賊のアジト。みなさん、心を一つに頑張りましょう ! |
ルーク | うぇぇぇ……。一体、どうなってるんだよ……。 |
キャラクター | 4話 【3-11 アスター砂漠 西部】 |
ジェイド | ――なるほど、そういう訳でしたか。皆さん大変な使命を帯びているんですねぇ。さぞかし大変でしょう。 |
イクス | いや大丈夫です。それに俺、もっと戦って経験を積んで強くならないといけないから……。 |
ジェイド | 頼もしいですね。その強さへの憧れ成長期の少年らしくて実にうらやましい。 |
イクス | でも、今の俺には憧れだけでどうにかなるほどの力がありません。それを以前、思い知ったんです。 |
ジェイド | ……確かに、個人の能力や経験、戦略など強くなるには様々な要素が必要です。けれどあなたは何より強い物を持っている。 |
ジェイド | 力を求めるその心ですよ。今は前だけ向いて進むといい。大丈夫、あなたは必ず強くなります。 |
イクス | ありがとうございます。ジェイドさん。 |
ミリーナ | イクス、なんだかいつになく……素直な感じ……だね……。ふぅ……。 |
カーリャ | ミリーナさま、もしかして疲れてるんじゃ……。 |
ジェイド | イクス、ちょっと休憩を取りませんか ?歳のせいか、少々疲れてしまいました。ミリーナさんも、ですよね ? |
イクス | あ、ごめんミリーナ !俺、自分のペースで進んじゃって。 |
ミリーナ | あ、大丈夫だよ !ちょっと立ち止まればすぐに……。 |
ジェイド | いえ、急いては事を仕損じます。軍用の携行食ですが、食べ物も飲み物もあります。皆さんも遠慮なくどうぞ。 |
ジェイド | さあ、ミリーナさん。これを食べると回復が段違いですよ。 |
カーリャ | ジェイドさまって中々優しいメガネですね !紳士って、ああいう人を言うんでしょうね~。 |
イクス | うん。その上強くて、うらやましいよ。 |
カーリャ | でも、少しミリーナさまに近づきすぎですね。ちょっと邪魔してきます。 |
イクス | やれやれ……。 |
ルーク | ――やっぱり納得いかねえ。 |
イクス | うわっ ! 何だよルーク。びっくりした。ジェイドさんのところに行かないのか ? |
ルーク | あんなジェイド初めてだ。逆に怖くて近寄る気になれねーよ。 |
イクス | 何が問題なんだ ? そもそも、俺たちには『いつものジェイドさん』ってのがどんな人なのかわからないんだけど……。 |
ルーク | いつものジェイドか ?説教、イヤミ、説教、悪い冗談をはさんでアドバイス、説教、イヤミ、とどめに皮肉……。 |
イクス | えっと……仲間、だよな…… ? |
ルーク | ああ、仲間だぜ ? だからこそさ。ジェイドは本当に大事なことを聞こえのいい言葉で流したりしない。 |
ルーク | さっきイクスに話していたことだってなんかアイツらしくないっつーか……。 |
ルーク | でもなー、頭のいい奴ってややこしいこと考えるだろ ?何かアイツなりの作戦って可能性も捨てきれないっていうか……。 |
ジェイド | イクスー ! 水分をとらないとバテますよ。ほら、ルークも一緒に。 |
ルーク | 俺はいいや。行ってこいよ、イクス。 |
ジェイド | 浮かない顔をしてますね。ルークと話をしていたようですが……私のことを何か言っていましたか ? |
イクス | いや、なんというか……。 |
ジェイド | おや、図星ですか ?でも、仕方のないことです。私の日頃の行いのせい、といいますか。 |
ジェイド | ルークと私は考え方や理念に違いが多い。でもそれは人として当然です。ですが、溝はやはりありましてね。 |
ジェイド | その溝を埋めようと思って色々と心を砕いたつもりなのですが……ごらんの通りです。 |
ジェイド | お互いのために良かれと思ってしたことがどうも受け入れてもらえなかったようで。……すみませんね。こんな話を。 |
イクス | そうだったんですか……。それならルークとはちょっと行き違っているだけかもしれませんね。 |
ジェイド | ええ、ここが頑張りどころですから。彼の不信感は必ず解消してみせますよ。 |
イクス | そうですね。ルークはジェイドさんの本質をちゃんとわかってるみたいだから。きっと大丈夫ですよ |
ジェイド | ……本質ですか ?ハハハッ、それはちょっと怖いですねぇ。 |
ジェイド | さて、そろそろ本格的に盗賊のアジトへ乗り込むとしましょうか ! |
キャラクター | 6話 【3-13 アスター砂漠 偽アジト】 |
イクス | ハアッ……ハアッ……。まずいな、囲まれた……。 |
ルーク | もう少しであいつをぶっ倒せるのに。こう雑魚が多くちゃ……。くそっ ! 何とかならねえのかよ ! |
Msc_003_006_speaker01 | 何とかして差し上げましょう。 |
ルーク | ……へ ? |
Msc_003_006_speaker01 | ――エナジーブラスト ! |
イクス | すごい。一撃で……魔物が全部……。 |
Msc_003_006_speaker01 | いやぁ、この状況なんだか懐かしいと思いませんか。……ルーク ? |
ルーク | ジェイド……。ジェイド――か ! ? |
イクス | あれが本物のジェイドさん…… ? |
ジェイド | 随分と苦戦していましたね。私の姿をした魔物につい手加減をしてしまったとか ? |
ルーク | んな訳あるか !いつも以上に気合い入ってたっつーの ! |
ジェイド | それは結構。私への日頃のうっぷんを晴らすいい機会だったようですからねぇ。存分に楽しめましたか ? |
ミリーナ | え ?気のせいか……オーラが黒い… ? |
カーリャ | あの……ルークさま。この人本当に本物ですか ?こっちも光魔なんじゃ……。 |
ルーク | いや、このひねくれた態度、本物のジェイドに間違いなさそうだ。でも、どうしてここに……。 |
ジェイド | 街で『親切なジェイドさん』とかいう愉快な噂を耳にしましてね。高みの見物をしていたんですよ。 |
ジェイド | そうしたら皆さんが『親切なジェイドさん』と街を出ていくじゃないですか。面白そうだったのでこっそり後をつけちゃいました♪ |
イクス | あとをつけちゃ……って、え ! ? |
ルーク | ――お前、まさかこの道のりの間ずっと……。 |
ジェイド | ええ、どうやらあなたは、私が優しくすると健康に害が及ぶようですね。後なんでしたっけ ? イヤミ説教イヤミ……。 |
ルーク | あ、あれはしょうがねえだろ ?大体お前な、ついて来てたんなら、すぐ出て来いよ !おかげであの偽物が調子にのって―― |
Msc_003_006_speaker02 | …… ! |
イクス | しまった ! まだ生きて―― |
ジェイド | おや、とどめを刺し損ねたみたいですね。ルーク、あなたが無駄なおしゃべりをしているからですよ ? |
ルーク | 俺 ! ? 俺が悪いのかよ ! ? |
ジェイド | まぁ、あの状態ではそう遠くまでは逃げられませんね。じわじわと追い詰めてやりましょう。 |
イクス | は、はい……。 |
キャラクター | 7話 【3-15 アスター砂漠 中心地】 |
ジェイド | ――なるほど。先ほどの道中で耳にしたあなたたちの会話も合わせて、ひと通りの事情は理解できました。 |
ジェイド | それともう一つ。街の人々の様子ですが老若男女の違いなく記憶にあいまいな部分があるようです。 |
ジェイド | 忘れているわけではないのに、自分の記憶が絶対だとは信じ切れていないようでした。まるで夢について話しているような……。 |
ジェイド | この現象もあなたたちに関係があるのでしょう ? |
ミリーナ | はい……。具現化の影響かもしれません。 |
ミリーナ | みんなの記憶も、術の力で生み出しているから……。まだそれが安定して馴染んでいないからそんな風になってしまうのかも……。 |
ミリーナ | でも、具現化が安定すれば問題はない筈です。 |
ジェイド | ない筈――ですか。まあ、信じるしかないのでしょうね。 |
ジェイド | それが真実かどうか今の私には確かめる手だてがありませんから。 |
ルーク | なんだよジェイド、ネチネチ問い詰めて。さっきの偽者の方がよっぽど紳士だったぜ。 |
ジェイド | そうですか。それならルークには特別に偽者同様の態度で接していきましょう。 |
ジェイド | そんな風に他人をかばえるところがあなたの美徳であり優しさですから。 |
ルーク | ――気持ち悪ぃ……けどこれもジェイドなりの嫌みだと思うとなんか今は心地いいぜ ! もっと来いよ ! |
ジェイド | やれやれ。どうやらおかしな方向にこじらせてしまったようですねえ。 |
ジェイド | ま、いいでしょう。せっかくの機会です。私もこの世界について研究してみます。 |
ジェイド | あなたたちのような鏡士や、その術の元となる魔鏡、私たちの世界の譜業にあたる仕組み。興味は尽きませんから。 |
カーリャ | うう……。なんだか雰囲気が違い過ぎて混乱しちゃいますよぅ……。むしろ偽者が懐かしいような……。 |
ジェイド | ああ、カーリャ――でしたよね ?あなたのことも色々と知りたいものです。その姿を見ると、胸の鼓動が止まりません…… ! |
カーリャ | え…… ? うそ…… ! カーリャに恋しちゃった…… ? |
ジェイド | はい。もう今すぐに解剖したいくらいですよ。 |
カーリャ | かい……ぼう……。 |
ジェイド | 鏡精――未知の存在への探求心で胸が高まりますねぇ。 |
ジェイド | そうだ。ミリーナ。彼女を少しお借りしてもいいですか ?今のうちに体組織の標本採取を―― |
ミリーナ | だ――め――っ ! !やめて ! やめて下さいっ ! |
カーリャ | ガタガタブルブルガタガタブルブル……。 |
イクス | ジェイドさん、さすがに冗談がキツいですよ。二人がおびえちゃってます。 |
ジェイド | おや、冗談ではなかったのですが仕方ありませんね。これはしまっておきましょう。 |
ミリーナ | い、今手に持ってたのって……。 |
イクス | なんかの瓶と小さな刃物…… ? |
カーリャ | 本気じゃない ! ?この人本気なんじゃないですかぁ ! ? |
ルーク | うんうん。みんなが本物のジェイドのこと理解してくれたみたいで良かったぜ ! |
キャラクター | 8話 【3-17 アスター砂漠 洞窟】 |
カーリャ | ううっ……。なんかぶるぶるっときた。ミリーナさま、この近くにありますよ !光魔の鏡 ! |
ミリーナ | 本当 ! ?もしかしたらさっきの偽者もそこにいるのかな。 |
ルーク | 光魔の鏡って魔物が湧くとか言ってた奴か ? |
ミリーナ | そう。光魔にとって鏡は巣――みたいなものかな。封印しないと無限に湧き続けるの。 |
ジェイド | 手負いの魔物が巣に戻る――というのはありえるかもしれませんね。しかも先ほどの場所からも近い。 |
カーリャ | う~ぶるぶるぶる……。こっちこっち、もうすぐです ! |
カーリャ | ……あった ! 光魔の鏡――と、予想通り、偽者もいますね。全然動かないですけど。 |
ルーク | よし、今のうちに一気に叩くか ! |
イクス | いや、ちょっと……待ってくれ。 |
ルーク | なんでだ ? 今が好機って奴だろ ? |
イクス | また騙されるかもしれない。罠とかさ。ジェイドさんにだって化けられるようなずる賢い奴だから、慎重に行かないと……。 |
ルーク | じゃあ、どうするんだ ? |
イクス | 俺が飛び込んで――いや、しばらく様子を見るっていう手もあるな……。でもその時間で回復されたら元も子もない……。 |
イクス | 戦っている間に鏡から光魔が発生する可能性だってあるし……。いっそ俺が忍び寄って鏡を封印してから……。 |
カーリャ | あー、出ましたね。イクスさまのいつものアレ……。 |
ミリーナ | ねえイクス、そんなに考えなくても―― |
イクス | ミリーナ、悪い。ちょっと待ってくれ。最善手を探すから……。 |
ルーク | ……なあ、さっきから「俺が俺が」ってなんでそんな作戦ばっかなんだ ? |
イクス | それは……一番いい方法をとるためだよ。みんなを守れるように誰も傷つかないようにってさ。 |
イクス | こういう場数だって、踏めば踏むほど次に役立つ。もっと強くなれるだろ。 |
ルーク | それはわかるけどさ、お前の作戦に俺たち、入ってないような気がするんだよ。 |
イクス | それは……。 |
ルーク | 強くなって自分が全部何とかしなきゃっていう気持ち俺にもよくわかる。 |
ルーク | けどさ、それは仲間のことや、周りの状況が見えないのと同じになっちまう時があって……ええっと……。 |
ジェイド | 説明の要領は得ませんが、そんなことが言えるようになったとは驚きです。ちゃんと頭も成長していたんですね。 |
ルーク | はいはい。ジェイドせんせーのおかげでーす。 |
ルーク | ――まあ、要はさ。仲間を頼りにしていいんだよ。ほら、ミリーナもカーリャもあんなに心配そうにお前のこと見てるしな。 |
ミリーナ | うん……。ルークさんの言う通りだよ。私の「頼りにして」って言葉、軽く聞こえるかもしれないけど、本気でそう思ってるよ。 |
イクス | ……そうか、そうだよな。みんなのこと考えているようで俺、自分のことだけを―― |
ルーク | そんな顔するなよイクス !一人でも頑張ろうって意気込み自体は悪いことじゃないんだしさ。 |
イクス | …………。 |
ルーク | だから、あんまり気負うなってことで……。――どうしようジェイド。これ伝わってるか ? |
ジェイド | やれやれ、人に説教など慣れないことをするからですよ。 |
イクス | いや……。ありがとうルーク !おかげで決心できた。 |
イクス | あらためて――頼むよ。一緒に光魔の所へ飛び込んでくれるか ? |
ルーク | おおい、いきなりそれかよ !でもまあ、いいぜ。お前の背中は、俺に任せとけ。 |
イクス | ミリーナ、援護をよろしく。 |
ミリーナ | うん、一緒に頑張ろう、イクス ! |
イクス | よし、行くぞ ! |
キャラクター | 9話 【3-17 アスター砂漠 洞窟】 |
ルーク | やったぜ !あばよ、綺麗な方のジェイド ! |
ミリーナ | イクス、鏡の封印を―― |
イクス | ああ、任せろ ! |
イクス | よしっ――封印完了 ! |
ルーク | よっしゃあ !無事終わり――で、いいんだよな ? |
イクス | ああ、この世界もじきに安定すると思う。それにルークやジェイドさんを狙う光魔はもう現れないよ。 |
ジェイド | それは良かった。これ以上、あんな光魔に私の真似をされるのも迷惑ですから。 |
ルーク | ははーん、さすがのジェイドも自分の偽者は気持ち悪かったか。 |
ジェイド | というよりも、偽者がむやみやたらに偽善を行ったおかげで、あの街は今空前のジェイドブームなんですよ。 |
イクス | ……ジェイドブーム ? |
ルーク | お前、よく真顔でそういうこと言えるな……。 |
ジェイド | 私が街を歩けばお年寄りはお菓子をくれ子供たちは歓声をあげて「ジェイドさん大好き」と抱きつきに来る。 |
ジェイド | ――いやあ、地獄ですね ! |
カーリャ | それが喜べないとか、どれだけ……。 |
ミリーナ | ルークさん、凄い人と仲間なのね……。尊敬するわ……。 |
ジェイド | 本当ですね。さすがルーク ! |
ルーク | いやあ、それほどでもあるけどな !それとジェイドはその紳士の笑顔をやめろ。 |
ルーク | ……で、イクスたちはこの後も別の世界の具現化っていうのをやるのか ? |
イクス | ああ。今はそれが、俺たちにできることだから……。 |
ルーク | そうか。――もしよければだけどさ。これからも俺に協力させてくれよ。 |
イクス | ……ルーク、いいのか ? |
ルーク | 俺なんかでもさ。世界を救う役に立つことができるなら――そう、したいんだ。 |
ジェイド | …………。 |
イクス | なんだよルーク。俺なんか、なんて。ルークが協力してくれるなら嬉しいに決まってるじゃないか。 |
イクス | さっきの助言どおり、頼らせてもらうよ。これからもよろしく、ルーク ! |
ルーク | ああ、どんどん頼ってくれよ。――ジェイド、お前もいいよな ? |
ジェイド | ご一緒するのはかまいませんが具現化のお手伝いとやらは遠慮します。 |
ルーク | ええっ ! 何でだよ。 |
ジェイド | 先だっても申し上げましたがまずはこの世界を調査したいんですよ。研究材料も山とありますからね。 |
ルーク | おいおい、マジか……。 |
ジェイド | それに、この具現化世界が安定したとはいえ長時間にわたり、鏡映点がこの島から出て何も影響がないのか、少々気になります。 |
ジェイド | ですから、私まで戦いに引っ張りだすような事態が起こらない限り調査に集中させてほしいんですよ。 |
イクス | あ、はい、それはもちろん……。 |
ルーク | お、よかったじゃないかイクス。 |
イクス | ……え、何で ? |
ルーク | だって要するにジェイドは、自分が出るほどのことがある時には助けるって言ってるんだし。 |
イクス | ……ルーク、本当にすごいな。あの言葉の裏から、よくそんな意図を……。 |
ルーク | いやあ、今回の偽ジェイド騒ぎで俺も色々学んだんだよ。 |
ルーク | ジェイドが皮肉や嫌みを言ってるうちがまだ平和なんだなーって……。 |
ミリーナ | ルークさん、もうなんか悟ってるって感じ……。 |
カーリャ | やっぱり、ルークさまも鏡映点なんですね。とんでもない大物です……。 |
イクス | はは、そうだな。まあ、光魔の鏡も封じたしセールンドに戻ろうか。 |
キャラクター | 9話 【3-17 アスター砂漠 洞窟】 |
カーリャ | は~、セールンドの空気です~。なんだか懐かしく感じちゃいます。 |
イクス | ルークたちとの時間が濃かったからな。特にジェイドさんは……凄かった。 |
ミリーナ | ふふ……。私たちの周りには中々いないタイプの人だったね。 |
イクス | それと、ルークのおかげでわかったよ。ミリーナやカーリャがどれだけ俺のことを思ってくれてるのかも。 |
イクス | 自分でもそれに気が付いていたはずなのに変に考えが固まっちゃってて……。俺、情けなかったよな。 |
ミリーナ | 何いってるのイクス。私は、強がってるイクスだって頑張ってて、格好いいって思ってたよ。 |
イクス | ミ、ミリーナ……。 |
ミリーナ | だけど、色んなことを知って、気が付いて私を素直に頼ってくれるイクスはもっと素敵に見える。 |
カーリャ | はいはい、よかったですねぇ……。 |
イクス | な、なんだよカーリャ。 |
カーリャ | 別にいいんですけどカーリャがいること忘れないでほしいです。 |
イクス | はは、わかったって。甘い物で許してくれるか ? |
カーリャ | 許しますー ! イクスさま大好きー ! |
イクス | 仕方ないな。ちょっとそこの店に―― |
Msc_003_010_speaker01 | ――もう信じられねえよ俺は ! |
Msc_003_010_speaker02 | アンタやめてよ ! そんな大声で……。飲みすぎだよ ! |
Msc_003_010_speaker01 | 俺は救世軍に入った奴に聞いたんだぜ ?ゲフィオンがセールンドを腐らせるってな ! |
Msc_003_010_speaker02 | そんなの、よその人が聞いたら……。 |
Msc_003_010_speaker01 | みんな言ってるだろうが ! 政治はガタガタ最近は地面までグラグラ揺れやがる。これなら酒飲んで目が回ってる方がましだ ! |
ミリーナ | …………。 |
イクス | ……ミリーナ、行こう。 |
ミリーナ | ……どうして具現化のこと、秘密にするのかな。みんなに話せば、鏡震の不安も落ち着くのに。 |
イクス | それは……。大陸が失われたこととか新しく大陸を作ってることとか、突然聞かされてもみんな不安になるだけだからだろ ? |
ミリーナ | そう……よね……。 |
イクス | ……わかるよ。ゲフィオン様って何か隠してるみたいな気がして心配になるよな……。 |
ミリーナ | でも、世界を救う方法がこれしかないなら……私たちはゲフィオン様を信じて具現化を頑張るしかないのよね。 |
イクス | ……今は俺たちにできることをやろう。一刻も早く具現化を成し遂げてアイギスを造り直してもらうんだ。 |
カーリャ | でもその前に、まずは甘い物ですよ、イクスさま。 |
イクス | わかってるわかってる。 |
Msc_003_010_speaker03 | あそこの旦那、また暴れてるのかい ? |
Msc_003_010_speaker04 | ああ、荒れるのもわかるがね。国がこんなに落ち着かないんだから。おかげで俺なんか、夢見まで悪い。 |
Msc_003_010_speaker03 | アンタもかい ? それ【滅びの夢】だろ。アタシも見るんだよ。みんな金色の砂になって死んじまう、嫌な夢をさ。 |
ミリーナ | 滅びの夢……。 |
イクス | ――どうしたミリーナ ? |
ミリーナ | ……ううん。何でもないの。 |
キャラクター | 1話 【4-1 バルトロ密林 奥地】 |
カーリャ | うわ~~ん。カーリャはこんな薄暗い森で死にたくないです~ ! |
ミリーナ | カーリャはおおげさね。ちょっと迷っただけだし大丈夫よ。きっとすぐ抜け出せるわ。 |
イクス | ごめん……。もっと俺が考えて行動していれば……。 |
ミリーナ | イクスは悪くないよ。あんな数の光魔と戦ってたら私たち、危なかったと思う。森に逃げようって判断してくれたイクスのおかげで助かったんだもの。 |
ミリーナ | あのときのイクスはすっごく頼もしかったなぁ……。まるで颯爽と現れた騎士様みたいだった。 |
カーリャ | ミリーナさま……現実に戻ってきて下さい。 |
イクス | ……ミリーナだってカーリャに負けないくらい大げさだぞ。 |
イクス | まぁ……とにかく今は先に進もう。周囲に生えている草花から考えるともう少しで森から抜け出せる筈だから。 |
イクス | 不安もあるけど……ジッとしていても何も始まらない。俺も少しは積極的に行動していかないと。 |
ミリーナ | ユーリさんみたいに、ね ? |
イクス | そういうこと。さぁ、行こう。 |
ミリーナ | ふふっ♪ |
カーリャ | ミリーナさま ? どうしたんですか ? |
ミリーナ | イクスってばどんどん逞しくなってるなって思って♪ |
カーリャ | あぁ……ミリーナさまがまた現実から離れていく。 |
イクス | おーい、二人とも置いていくぞ。 |
ミリーナ | はーい。すぐ追いつくわ。ほら、カーリャも行くわよ。 |
カーリャ | …………っ。 |
ミリーナ | カーリャ ? |
カーリャ | ぷるぷるぷるぷるっ ! ! |
ミリーナ | ちょっ。どうしちゃったの ! ? |
イクス | すごい震えてる……ってことは、まさか !ミリーナ、急ぐぞ ! こっちだ ! ! |
光魔 | ……ウゥ~……ハルルルルル。 |
イクス | はぁ……はぁ……。くそ、逃げ切れなかったか。 |
ミリーナ | 囲まれたわね……。 |
カーリャ | どうしましょう。逃げる場所もありませんよ。 |
イクス | どうするって……このままじゃまずいんだ。やるしかないだろ ! |
イクス | ――はぁぁぁっ ! ! |
光魔 | ギャウゥッ ! ! |
イクス | ミリーナ ! |
ミリーナ | うん ! |
Msc_004_001_speaker01 | ギァァァァァッ… ! |
Msc_004_001_speaker01 | ……ウゥ~……ハルルルルル。 |
イクス | ……やっぱりそう簡単にいかないよな。くそっ……。だけど俺だって……。 |
? ? ? | さがって ! ここはオレが ! |
イクス | えっ ? |
Msc_004_001_speaker02 | てやぁっ ! |
Msc_004_001_speaker01 | ギャウゥッ ! ! |
イクス | ! |
Msc_004_001_speaker02 | たたみ掛ける ! 天滝破 ! |
Msc_004_001_speaker01 | ギァァァァァッ… ! |
ミリーナ | イクス ! あの人、鏡映点よ ! |
イクス | 本当だ ! えっと、あのっ ! !俺は…… |
Msc_004_001_speaker02 | 自己紹介はあと !今は一気に蹴散らす ! ! |
イクス | ! はいっ !なら俺たちも協力します ! |
スレイ | ありがとう。けど、無茶はしないようにね ? |
一同 | はい ! |
キャラクター | 2話 【4-2 バルトロ密林 奥地】 |
ミリーナ | ――つまり話をまとめるとここは鏡映点であるスレイさんの心や記憶を元に具現化された大地。 |
カーリャ | スレイさまが暮らしてたっていう「グリーンウッド」を写したわけです。 |
スレイ | ……そっか。それで、さっきの魔物が光魔。本当に凄いことになってるんだな。 |
イクス | ごめん、混乱させちゃうよな。 |
スレイ | どうかな。自分でもよくわからないや。でも、イクスたちがやってることの意味はちゃんと理解できたと思う。 |
スレイ | みんなはこれから光魔の鏡を探すんだよね ? |
イクス | そうなるな。放っておくわけにはいかないし。 |
ミリーナ | 光魔は普通の人も襲うからなるべく早く封印しないといけないものね。 |
スレイ | だったら、光魔の鏡を封印するまでオレも一緒について行っちゃダメかな ? |
ミリーナ | スレイさんが来てくれたら私たちは助かりますけど……。 |
スレイ | これからどうするか決めるにはまずはこの土地がどうなってるかちゃんと知ることが先決だと思うんだ。 |
スレイ | 一人じゃないほうがオレも色々助かるしイクスたちの使命をオレも手伝いたい。 |
イクス | スレイ……。 |
スレイ | 森で迷っていたところを助けてくれたお礼もちゃんとしたいからね。 |
イクス | そんな、お礼だなんて。けど……ありがとう。よろしくお願いするよ。 |
ミリーナ | よろしくお願いします。 |
スレイ | うん ! 改めてよろしく ! !カーリャもね ! |
カーリャ | もちろんですよ ! |
イクス | それじゃあ光魔の鏡の捜索開始だな。カーリャ、何か反応はあるか ? |
カーリャ | この先からちょいぷるっと感じます。 |
イクス | 光魔がいるってことか。となると、光魔の発生源である光魔の鏡もこの先のはず。 |
ミリーナ | けど山の斜面が急すぎて登れないわ。別のルートを探してみる ? |
スレイ | ! いや、ちょっと待って。 |
イクス | スレイ、どうかしたのか ? |
スレイ | ここ。石像がある。ほら、あっちにも。 |
イクス | 本当だ。全然気付かなかった。 |
スレイ | わざとわかりにくい場所に置かれているんだと思う。きっと何かあるはずだ。 |
カーリャ | 何か、ですか ? |
スレイ | たぶん昔の人が使っていた秘密の通路、地下遺跡だね。まだ断定はできないけどうまくいけば山の反対側にでられるかもしれない。 |
イクス | 地下遺跡 ! ? 行ってみる価値はありそうだけど大丈夫かな……。 |
イクス | 俺、海や森で遭難したときの知識はあるけど遺跡でのサバイバル術は全然だし……。 |
スレイ | それならオレに任せて。 |
イクス | スレイ ? |
スレイ | さあ。出発だ。 |
キャラクター | 4話 【4-6 密林の大遺跡 通路】 |
ミリーナ | ……ここ、なんだか変わった造りね。他の場所とは違う印象だわ。 |
イクス | 言われてみれば。なにか特別な場所だったのかもな。 |
スレイ | 二人とも、気になるの ? |
ミリーナ | あ、はい。遺跡ってあまりじっくり見たことなかったけどここは特に大きいから。 |
カーリャ | 異世界のものだとしても「古代の神秘」を感じずにはいられませんね ! |
イクス | ちょっとおおげさだけど確かに知的好奇心はくすぐられるよな。俺ももっと遺跡について学んでおくべきだったよ。 |
スレイ | ……よし !みんな、ちょっとだけ待ってて。 |
ミリーナ | え ? スレイさん ? |
スレイ | この辺だけ……間違いないとして……繋ぎ目はしっかりして……。 |
スレイ | だとすると……かな……。意匠のモチーフは……。 |
カーリャ | なんかすごく熱心に、遺跡を調べてますね。 |
スレイ | お待たせ !この辺が他の場所とは違う理由大体わかったよ ! |
スレイ | ここは他より造られた時代が古いみたいなんだ。 |
イクス | ……ここだけ古い ?そんなふうには感じないけど。 |
スレイ | たとえば……そうだな。ここの壁を見てみて。 |
スレイ | 風化の度合いが他より強いんだよ。あと装飾の題材は同じ「花」なんだけど周りの方が繊細で状態も良いから。 |
イクス | ……うわぁ ! ホントだ !よくみたら全然違うな ! |
スレイ | 他にも、この辺に合わせて周りを造り足したような痕跡もあったし多分、間違いないんじゃないかな。 |
カーリャ | すごいですね、考古学者みたいですよ。 |
ミリーナ | スレイさんの遺跡の詳しさには驚かされっぱなしよね。 |
イクス | 遺跡に入ってからのスレイはちょっと楽しそうだしな。 |
スレイ | えっと、実はオレ……。 |
スレイ | こういう遺跡を探検するのがずっと好きだったんだ。 |
スレイ | 子供の頃から、いつも親友と二人で里の近くにあった遺跡で遊んだりしてた。 |
イクス | (スレイの親友……) |
ミリーナ | (どんな人かな……) |
スレイ | いつか世界中の遺跡を探検しようって話してたし、どっちがすごい発見をするかいつも競争してたから、それで自然とね。 |
イクス | 世界中の遺跡を……。 |
スレイ | オレの話はこんなとこだよ。それより時間取っちゃってごめん。早く先に進もう ! |
ミリーナ | スレイさんがあんなに遺跡好きだったなんてね。 |
カーリャ | どうりでこんなすごい遺跡が具現化されちゃうわけですよ。 |
イクス | 具現化……あっ。 |
ミリーナ | イクス ? どうかしたの ? |
イクス | ちょっと確認。遺跡の造りのことだけど、元の世界のものが完璧には具現化されていないなら異なる遺跡が混ざった形で具現化してたりもするのか ? |
ミリーナ | ええ。その可能性は、十分に……。 |
イクス | …………。 |
カーリャ | なんですか ? 急に黙っちゃって。 |
イクス | カーリャは自分の大好きなお菓子がへんてこな形に改造されて目の前に出されたらどう思う ? |
カーリャ | 穴がないドーナッツみたいなことですか ?カーリャは美味しかったら満足ですけどそんなのドーナッツじゃないって思いますね ! |
イクス | いまのスレイもそんな気持ちなんじゃないかって思ってさ。『元のもの』とは違うんだから。 |
ミリーナ | ……スレイさん、やっぱり気にしてるかな。さっき話してくれた遺跡探検や幼馴染みのこともスレイさんにとって凄く大切なことのように感じたし。 |
イクス | ……うん。スレイの気持ちは分からないけどでも……申し訳ない気持ちだよ。大切な物を土足で踏みにじったみたいでさ……。 |
キャラクター | 5話 【4-7 密林の大遺跡 大広間】 |
スレイ | これで決める ! 氷月翔閃ッ ! ! |
Msc_004_005_speaker01 | ギァァァァァッ…… ! |
イクス | ふう……。 |
ミリーナ | 終わったね。 |
スレイ | うん、みんなお疲れ !戦闘も続いたし、少し休まないか ? |
ミリーナ | そうですね、遺跡に入ってから歩きっぱなしだったし。 |
イクス | カーリャ、もう近くに光魔はいないよな ? |
カーリャ | はいー、大丈夫だと思いますー。 |
イクス | 光魔の鏡を見つけるまではもう少しかかりそうだな。 |
カーリャ | ちゃんと近づいてはいますよ。多分ですけど。 |
ミリーナ | みんな、おやつよ。また光魔と戦いになるかもしれないしいまのうちに食べちゃいましょう。 |
カーリャ | わーい ! おやつです~♪ |
イクス | ありがとう、ミリーナ。スレイも一緒に――あれ ? スレイは ? |
カーリャ | あっ ! あっちで一人本を読んでいますよ !おーい、スレイさま~ ! |
スレイ | ……うん ? |
イクス | スレイ。ミリーナがおやつを作ってくれたんだ。こっちにきて一緒に食べないか ? |
スレイ | えっ ? オレもいいの ? |
ミリーナ | もちろんですよ。 |
イクス | ごめん、本に集中していたかったかな ? |
スレイ | あ、いや。そうじゃなくてほら……光魔って鏡映点に集まってくるだろ。 |
スレイ | もしいきなり光魔が襲ってきたらオレの近くにいたイクスたちも巻き添えになっちゃうからさ。 |
イクス | スレイ、だから一人離れて……。 |
ミリーナ | ……スレイさん、ごめんなさい。 |
イクス | ごめん。俺たちの方がスレイを巻き込んでるのに。 |
スレイ | あっ。オレの方こそ気を遣わせちゃってごめん。そんなつもりじゃなかったんだ。 |
スレイ | イクスやミリーナが謝ることないよ。オレは全然気にしてないし元の世界でも似たような感じだったから。 |
イクス | 元の世界でも ? |
ミリーナ | どういうことですか ? |
スレイ | えーっと、オレがいた世界にも憑魔っていう危険な魔物がいたんだ。オレはその憑魔に狙われやすくて。 |
カーリャ | ひょうま…… ? |
イクス | ……スレイ、もしよければ詳しく聞かせてくれないか ? |
スレイ | うん。ちょっと長くなっちゃうけど―― |
イクス | なるほど。浄化の力を授かりし導師、か。 |
カーリャ | 人でもなんでも魔物になっちゃうなんて怖いですね。 |
ミリーナ | そんな世界でスレイさんは人々を救う旅をされてたんですね。 |
スレイ | はは、ちょっと大袈裟に言っちゃったかもしれないけどね。まあ、そんな感じなのかな。 |
イクス | 旅は、やっぱり大変だったよな ? |
スレイ | もちろん楽じゃなかったよ。導師は世界でオレ一人だったし。 |
イクス | スレイだけ ! ?責任重大じゃないか……。俺だったらきっと堪えられない……。 |
スレイ | 仲間がいてくれたから、全然辛くはなかったけどね。旅の途中に楽しいことも沢山あったよ。 |
イクス | ……戦いの腕前もそうだけどスレイには見習うことが多いな。 |
スレイ | はは、ありがとうイクス。でも、みんなだってすごく頑張ってるじゃないか。 |
スレイ | 「このままじゃ世界が消えてしまう」そんな危機に立ち向かうなんて誰にでもできることじゃないよ。 |
スレイ | だから、むしろオレの方がちゃんと手伝わないといけない。 |
スレイ | この島の光魔の鏡一刻も早く探し出さなきゃな ! |
カーリャ | 冒険再開ですか ? |
イクス | 休憩もおやつも十分取れたからな。出発しよう。 |
スレイ | うん ! |
キャラクター | 6話 【4-10 密林の大遺跡 最深部】 |
ミリーナ | かなり歩いてきたはずだけどなかなか出口が見えないね。 |
カーリャ | ほんとこの遺跡広すぎですー。 |
スレイ | うーん……。 |
スレイ | あと少しで抜けられると思うからもうひと踏ん張りだよ。 |
イクス | そんなことまでわかるのか。 |
スレイ | なんとなくだけど遺跡の通路と部屋の並び的にね。そろそろ一番奥まで来てるんじゃないかな。 |
ミリーナ | ふふ、スレイさんがそう言うなら頑張らないといけないですね。 |
カーリャ | はい ! 光魔の鏡まではまだちょっと距離がありそうなのでみなさんがんばりましょうー。 |
スレイ | …………。 |
イクス | スレイ ? どうかしたのか ? |
スレイ | あ、うん。大したことじゃないんだけど―― |
スレイ | やっぱりここはオレから生まれた場所なんだなって思って。 |
イクス | ……ああ。その通りだ。ごめん、スレイ。 |
ミリーナ | …………。 |
スレイ | あ、ごめん今変なこと言っちゃったかも !みんな気にしないで ! |
イクス | いや、でも―― |
スレイ | ほんと、大したことじゃないんだ。 |
スレイ | ……ここまで来る間にさ何カ所か「オレが見たかった遺跡」があるなって思ってて、それでちょっと。 |
イクス | スレイが見たかった遺跡 ? |
スレイ | えーっと、「元の世界のオレ」が文献を読んで、いつか見てみたいと思ってた珍しい遺跡のことだよ。 |
スレイ | さっき少し話したけど、オレ遺跡探検が好きなんだ。それで色々古い書物も読んだりしてて。 |
ミリーナ | じゃあスレイさん、この遺跡には―― |
スレイ | うん。いくつかの遺跡が混ざってるんだと思う。 |
スレイ | 元のオレが実際に行ったことのある遺跡。いつか見てみたいと思ってた遺跡。色々だね。 |
スレイ | そういうことが起こるんだよね ?鏡映点から具現化された大地には。 |
イクス | ……ああ。スレイの世界がそっくりそのまま具現化されるわけじゃないから。 |
スレイ | やっぱり。あ ! でもあそこはそうじゃないよ ? |
イクス | え ? |
スレイ | 最初にミリーナが気にしてた場所 !あっちは別に混ざってなくて本当にちゃんと年代が違ってたから ! |
ミリーナ | 遺跡に入ってすぐのところですよね。古い部分と、それよりは新しい部分で遺跡の造りが違っていたところ。 |
スレイ | そう ! あそこはちゃんと一つの遺跡でみんなに言ったことは間違いじゃないから。 |
イクス | ああ、うん。それは大丈夫なんだけど……。 |
イクス | スレイ、俺たちに気を遣って無理してないか ? |
スレイ | ? オレはなんにも !むしろちょっと楽しんじゃってたくらい。 |
イクス | そう、なのか ? |
スレイ | こんな体験、元の世界では絶対にできないからね。正直、遺跡に入ってからワクワクしっぱなしだった。 |
スレイ | それよりごめん、また時間取っちゃって。もうすぐ遺跡を抜けるはずだから。さあ、先へ進もう ! |
イクス | あ、ああ。 |
ミリーナ | ちょっと意外な反応だったね。 |
イクス | ……だよな。けど、すごく自然体だった。 |
イクス | スレイは「今の自分」をどう思ってるんだろな。……それだけじゃないんだ。こんな状況でもどうして、あんな風にいられるのか……。 |
スレイ | みんな ! 出口だ !外に出られるぞ ! ! |
カーリャ | やりましたね !ここまで長かったですよぉ ! |
ミリーナ | イクス、私たちも行きましょう。 |
イクス | ああ、そうだな。スレイに遅れないように。 |
キャラクター | 8話 【4-13 ゼンライ山道 頂上付近】 |
ミリーナ | スレイさんはまだまだ余裕そうだったわね。 |
イクス | すごいよな。強くて、博識で、おまけに優しくて。あれで俺とほとんど同い年なんだぜ ? |
イクス | あれこそが「世界を救う役目」を担うに相応しい人物だよなって思ったよ。 |
イクス | 俺も、スレイみたいになれるかな……。 |
ミリーナ | 今のイクスだって十分凄いよ。それこそ「世界を救う役目」を担うに相応しい人物。だからゲフィオン様だって任せてくれたんだと思うな。 |
イクス | 俺なんてまだまだだよ。なんていうんだろ……スレイは安定感があるだろ ? |
イクス | スレイを見てると思うんだ。「世界を救う役目」を持つ人間として俺は、器が小さいんじゃないかって―― |
スレイ | オレはそんなに大したヤツじゃないよ。 |
ミリーナ | スレイさん。 |
イクス | えっ……もしかして。 |
スレイ | ごめん、聞こえちゃった。 |
イクス | いや……別にいいんだ。ちょっと恥ずかしいけど。 |
スレイ | イクス、聞いて。イクスの器は小さくないよ。 |
スレイ | イクスはイクス、なんだし。 |
イクス | ……俺は俺 ? |
イクス | そういうものかな。正直俺は、そう簡単に割り切れ―― |
スレイ | うん、それならそれで良いと思う。 |
イクス | え ? けど、こういうのが器の大きさに関係してたりするんじゃ……。 |
スレイ | あんまり関係ないと思うな。極端な話、なんだっていいんだよ。 |
スレイ | イクスにとって、一番大切で好きなことが何なのかそれを忘れさえしなければ。 |
イクス | 一番大切で好きなこと…… ? |
スレイ | オレが導師になって旅に出ようって思ったのは―― |
スレイ | 里や仲間のみんなに、平和に仲良く暮らしてほしかったからなんだ。一言でぎゅっとまとめるとね。 |
イクス | ……。 |
スレイ | でもそのために「憑魔を浄化しよう」とか「もっと強くなろう」って目標に夢中になりすぎると―― |
スレイ | 本当に自分がしたかったことが何なのかいつの間にか薄れちゃうんだよね。 |
ミリーナ | 何となくですけど、わかります。あくまで手段だったことが目的にすり替わっちゃうってこと……。 |
スレイ | うん。そうなると、他にも色んなことが上手くいかなくなっていってすごく悩んで、苦しむことになる。 |
スレイ | オレ、そうなりかけたことがあってその時、親友と仲間が言ってくれたんだ。お前がしたいことは何なんだってさ。 |
ミリーナ | スレイさんにも、そんなことが……。 |
スレイ | イクスが本当にしたいことってさ「世界を救うこと」じゃないよね ?前に、オレもよく考えたらそうだった。 |
イクス | それはそう……だな。俺にとっての「一番大切で好きなこと」か……。 |
イクス | 俺はミリーナが心配で……それにセールンドの人たちも守りたくて普通の日々が失われて欲しくなくて……。 |
ミリーナ | ……イクス。 |
スレイ | 多分ほとんどの人がそうなんだ。一番大切なことって、大体は自分の身近にいる人のことだから。 |
二人 | ……身近にいる人。 |
スレイ | それを忘れたり、誤魔化したりしなければ性格とか物事の考え方とかは人それぞれで良いんだと思う。 |
スレイ | すっごくエラそうなこと言ってるけど……。 |
イクス | そんなことはない。ありがとう、スレイ。……って、ありがとうって言ってばかりだな。 |
ミリーナ | ふふ。そうだね。 |
イクス | よし ! 行こう、スレイ。時間を取らせてごめん。 |
スレイ | 全然だよ。オレたち、仲間じゃないか。 |
イクス | 仲間…… !ああ ! そうだな ! |
スレイ | さあ ! 光魔の鏡まであと少しだ ! |
キャラクター | 10話 【4-14 ゼンライ山道 頂上】 |
イクス | ……よし、終わったよ。 |
スレイ | よかった。これで光魔が出てくることはなくなるんだね。 |
ミリーナ | ありがとうございました。スレイさんのおかげです。 |
スレイ | そんなことないよ。みんなで頑張ったから勝てたんだし。 |
イクス | いや、スレイに一番キツイ役目を負ってもらったのは確かだ。 |
イクス | ここまでくる間にも、スレイに頼ってた面がかなり大きかったしさ。 |
カーリャ | スレイさま、かっこよかったですよね !さすが導師って感じですよ ! |
スレイ | えっと、そこまで言われるとちょっと照れ臭いけど―― |
スレイ | 役に立てたんならよかったよ。オレもみんなにはすっごく助けてもらったし少しは恩が返せたかな。 |
イクス | えっ……スレイが ? |
ミリーナ | 私たちは助けてもらったけど……。 |
スレイ | だって、何も知らなかったオレに色々教えてくれて、親切にしてくれたでしょ。 |
スレイ | 森で迷子になってるところも助けてくれたしオレの遺跡話にも付き合ってくれたしあと、おやつだってわけてくれた。 |
スレイ | ほら。こんなにたくさんある。 |
ミリーナ | 言われてみればそうだけど……。 |
イクス | うん。ちょっと変な気がする……。 |
スレイ | え、そうかな ?でも、実際にオレかなり助かったんだけど……。 |
イクス | ……ふふ。いや、きっとそういうところがスレイなんだろうな。いかにも導師らしいよ。 |
スレイ | む、それって全然褒めてないだろ、イクス。 |
イクス | そりゃあ、スレイが変わってるからね。元の世界でも言われなかったか ? |
スレイ | ………………。 |
ミリーナ | (言われてたんだ……) |
カーリャ | (言われてたんですね) |
スレイ | あーもう ! とにかく !お互い助かったんならよかったよ ! |
イクス | ははっ ! うん、スレイの言うとおりだ。 |
イクス | それでスレイ。できたらこれからも俺たちに力を貸してほしいんだ。 |
イクス | 一緒に来てくれないか ? |
スレイ | ……うん ! もちろん一緒に行くよ !このティル・ナ・ノーグを全部回ってみたいしね ! |
イクス | ありがとう。また一緒に冒険しよう ! |
スレイ | だな ! |
ミリーナ | よかったね、イクス。また、心強い仲間が増えて。 |
イクス | うん。スレイの傍で色々勉強したいよ。それで……いつか俺もスレイみたいになれるといいなって……。 |
イクス | (はっきりとした『自分の気持ち』を俺にとって『一番大切なもの』を迷いなく定められるように……) |
イクス | この旅が終わるまでには、きっと…… ! |
キャラクター | 10話 【4-14 ゼンライ山道 頂上】 |
ゲフィオン | 今回も無事具現化世界を安定化できたようだな。 |
イクス | はい。光魔との戦いは相変わらずですが何とか。 |
ゲフィオン | ふむ……慣れてきた様子ではあるが……やや、疲れがあるように見えるな。 |
イクス | いえ ! そんなことはありません。 |
ゲフィオン | 無理をするな。次の具現化の前に少しセールンドで養生していくといい。 |
ミリーナ | でも、時間が……。 |
ゲフィオン | 確かに猶予は無い。だが、お前たちに倒れられては元も子もない。 |
ゲフィオン | これも任務の内──そう思え。 |
イクス | ……わかりました。お心遣い、ありがとうございます。 |
イクス | ふぅ……。ゲフィオン様の言う通り……。確かに立て続けの具現化で落ち着く時間はなかったかもな……。 |
イクス | 具現化の旅……か。 |
イクス | 少しは鏡士として成長できてるのかな。もっと手ごわい光魔が出てきたとしても俺、うまく戦えるんだろうか……。 |
ミリーナ | きゃぁぁぁぁぁぁぁっ ! ! |
イクス | ! ? |
イクス | 今のは……ミリーナの悲鳴 ! ?ミリーナ ! |
イクス | ミリーナ ! ? どうした ! ? |
ミリーナ | ……あ、イクス……。 |
ミリーナ | ごめんね、起こしちゃった ?心配して来てくれたんだ……ありがとう。 |
イクス | 顔色が悪いけど大丈夫か ? |
ミリーナ | 大丈夫だよ。なんでもないの。ちょっとだけ、変な夢を……見ただけだから。 |
イクス | ……あんな悲鳴を聞いてちょっとした夢だなんて、思えないって。 |
ミリーナ | ……。 |
イクス | ちゃんと、話してくれよ。聞くからさ。 |
ミリーナ | イクス……ありがとう……。うん。聞いて……もらおうかな……。 |
ミリーナ | ……怖い夢を見たの。ティル・ナ・ノーグが滅びる夢。 |
ミリーナ | 大陸や島がキラキラ光って住んでいた人たちも一緒に光る砂になるの。 |
ミリーナ | さっきまで笑って話してた人たちが跡形も無く消えてしまって……。 |
カーリャ | ……それ【滅びの夢】じゃないですか ? |
イクス | 滅びの夢…… ?なんだ、それ ? |
カーリャ | 昼間、ミリーナさまと買い出しに出たときに市場で聞いたんです。最近みんな、世界が滅びる夢を見てるんだって。 |
ミリーナ | あれが……滅びの夢なのかわからないけどでも……悲惨な夢だった……。 |
ミリーナ | 触れていたものが砂になって消える感触がまだ手に残ってる……。 |
ミリーナ | ……何かの暗示なんじゃないかって凄く怖くて……。 |
イクス | ……………………。 |
イクス | ……あんまり気にしない方がいいよ。 |
イクス | 街の人たちが話してたことが、頭の中に残っててその影響で変な夢を見ただけって可能性もあるんだし。 |
イクス | それに、疲れも溜まってただろ ?誰だって疲れた時には変な夢を見るさ。 |
ミリーナ | そう、かな……。ただの夢だと思っていいのかな……。 |
イクス | そうそう、ただの夢だよ。ミリーナは、心配性だな。 |
ミリーナ | ふふ……イクスに心配性って言われるなんて思わなかった。 |
イクス | お、俺はそんなに心配性じゃないぞ。慎重に考えることは、そりゃあるけど……。 |
ミリーナ | ……イクス。本当は私の話を聞いたとき色々、不安なことを考えたでしょ ? |
イクス | えっと……それは……。 |
ミリーナ | でも、言わないでくれたんだよね。 |
イクス | ……そうだよ。……良くないことの暗示とか何かの前触れ、とか……色々考えた。 |
イクス | けど、確証もない話でミリーナを不安にさせてもしょうがないだろ。確かめようもないしさ。 |
ミリーナ | ──ありがとう。イクスのその気持ちで元気になれたよ。 |
ミリーナ | そうだよね──夢は、夢だよね。気にしすぎてもしょうがないよね ! |
イクス | そっか。それなら、よかったよ。──ゆっくり眠れそうか ? |
ミリーナ | うん。大丈夫。ごめんね。イクス。おやすみ。 |
イクス | ああ。おやすみ、ミリーナ。また明日から、頑張ろう。 |
イクス | みんなが見る……滅びの夢、か。一体、何なんだ…… ? |
キャラクター | 1話 【5-1 果樹園】 |
イクス | よし。光魔に気をつけつつ、先を急ごう。目的地の街までもうひと踏ん張りだ。 |
ミリーナ | その街に鏡映点がいる筈なのよね。今回は黒髪の男の子だったけど、どんな人なのかな。 |
イクス | 穏やかそうな印象だったし、本を持ってたから俺と同じで本が好きなのかもしれないぞ。街に着いたらまず図書館から捜してみよう。 |
ミリーナ | 見て ! 街が見えてきたわよ ! |
イクス | カーリャ、何か反応はあるか ? |
カーリャ | アァァァァ…………もう、ダメです……。 |
イクス | ど、どうしたんだよ。具合でも悪いのか ? |
イクス | ハッ……まさかこの大陸の空気は鏡精にとって毒だったり ! ? |
カーリャ | カーリャは……お腹と背中が……くっつきそうです……。 |
ミリーナ | ふふっ。お腹がすいただけみたいだね。 |
イクス | ……なんだよ。心配して損した。というか、さっきおやつ食べたばっかりだろ。 |
カーリャ | あはは~みてくださいよ~。地面にサラダが敷き詰められていますよ~。すごく美味しそうです~。 |
ミリーナ | ちょっとカーリャ ! それはただの芝生よ ! |
イクス | いくら腹が減っているからってそこらへんに生えているものは食べちゃダメだぞ !それこそ毒があるかもしれないんだからな ! |
カーリャ | 毒……ぷ、ぷ……ぷるっ ! ! |
イクス | お、おいおい。そんなに怖がることは―― |
カーリャ | ち、違いますよ……この反応 ! |
光魔 | …ウゥ~…ハルルルルル。 |
イクス | 光魔 ! ? |
ミリーナ | 見て ! あそこで誰かが囲まれてる ! |
イクス | あの人……鏡映点じゃないか !なんだか防戦一方で苦戦してるみたいだぞ !はやく助けないと ! |
ジュード | うん……やっぱり。だいぶわかってきた……。 |
イクス | さがって ! ここは俺たちが ! |
ジュード | あなたたちは……。あ、いや……かばってくれてありがとう。けど大丈夫、僕も戦えるから。 |
イクス | えっ……そうなのか ! ?だって武器も持っていないし―― |
ミリーナ | 二人とも ! 危ない ! ! |
イクス | ――なっ ! ! |
ジュード | ――ハッ ! ! |
イクス | す、すごい……。一瞬で光魔をまとめて……格闘術の使い手だったのか。 |
ジュード | あはは……えっと、これは護身術なんだけどね。 |
イクス | それが護身術 ! ?い、いや……それよりも今は光魔に集中だ ! |
ジュード | 光魔……か。うん、わかった。いまはとにかくこいつらを倒そう。 |
イクス | ああ ! いくぞ ! ! |
キャラクター | 2話 【5-2 果樹園の村】 |
ジュード | ……それにしても、消えてしまった大陸を具現化させて、世界を甦らせようとするなんて、大変な旅だね。 |
イクス | 具現化して終わりって訳でもないからさ。鏡映点であるジュードと無事に合流できてよかったよ。 |
ミリーナ | それにしてもビックリしたよね。ジュードさんがあんなに強かったなんて。 |
イクス | ああ。苦戦しているのかと思って助けに駆けつけたけどむしろ俺たちの方が助けられたもんな。 |
ジュード | 誤解させちゃったみたいだね。あれはあえて攻撃せず光魔を観察していたんだ。 |
イクス | 光魔を ? いったいどうして ? |
ジュード | 実は……この先の村でお世話になったんだけど自警団の人たちが謎の腹痛で倒れたんだ。 |
ジュード | みんなもう体調はよくなったけど……いまだに原因がわかっていない。 |
イクス | もしかしてその原因が光魔なのか ! ? |
ジュード | どうだろう。けど、事件が起こる数日前から村周辺に光魔がうろつきはじめたらしい。無関係だとも思えない。 |
ミリーナ | つまりジュードさんが光魔を観察していたのはその事件の原因を探るためだったのね。 |
ジュード | うん。まずは光魔の習性や特殊な能力普通の魔物との決定的な違いを分析するところから始めてみようと思ったんだ。 |
ジュード | 再発防止のためにも原因は突き止めておきたいからね。 |
イクス | 確かに……。もし他の街でも同じようなことが起きたら大変だ。そのうえ運悪く光魔が押し寄せてきたら街が壊滅しかねない ! |
イクス | ど、どうしよう……何とかしないと。光魔が関わっているなら俺たちにも責任があるわけだし……。 |
ミリーナ | イクス、焦らないで。まずは落ち着こう ? |
ジュード | ねぇ、さっきの話だと、イクスたちは光魔の発生源である\"光魔の鏡\"を発見し破壊する役目が残っているんだよね。 |
ジュード | よければ僕も手伝わせてくれない ? |
イクス | えっ……いいのか ? |
ジュード | もちろん。まずは光魔の増殖を防がないと。それに、光魔の鏡を探していれば何か手がかりが掴めるかもしれないからね。 |
ジュード | お互いに今やるべきことは一緒なんだ。せっかくだし協力し合っていこうよ。 |
イクス | ……ジュード、ありがとう。やっぱり、さすが鏡映点だな。強いし頼りになるし頭もいいし……尊敬するよ。 |
ジュード | そんな……なんだか照れちゃうな。僕はごく普通の医学生なんだけど。 |
カーリャ | さあ ! ! 雑談はそこまでにしてはやく光魔の鏡を探しに行きましょう !カーリャがぷるっと見つけてやりますよ ! ! |
ジュード | うん、頼りにしているね。この広い大陸で闇雲に探すのは得策じゃない。鏡精であるカーリャに光魔の鏡を感知する能力があってよかったよ。 |
ミリーナ | けどその前に一度、街に向かわない ?情報収集や買い物もしたいし。 |
ジュード | そうだね。僕が調べたことも共有するよ。食事を取りながら話そう。 |
イクス | 食事といえば……カーリャ、やけに元気だな。ついさっきまで腹ペコでへばってたのに。 |
カーリャ | ……ギクッ。 |
イクス | まさかそこらへんにあるものを勝手に食べたわけじゃないよな ? |
カーリャ | そ、そそ……そんなことするわけないじゃないですか !美味しそうな木の実が落ちていたからってカーリャは食べたりしませんよ ! |
ジュード | ……木の実、食べたんだね。 |
ミリーナ | 口の周りにも果肉がついてるよ。いまハンカチで綺麗にしてあげるね。 |
カーリャ | んんっ…………ぷはっ !ありがとうございます、ミリーナさま !あっ……けど木の実は食べてないですからね ! |
イクス | はぁ……ひとまず先に進むとするか。 |
カーリャ | はい ! 出発です♪ |
キャラクター | 2話 【5-2 果樹園の村】 |
イクス | ジュードってやっぱり強いよな。けっこう体もがっしりしてるし……。医学生って勉強漬けなのかと思ってたんだけど。 |
ジュード | 幼なじみと一緒に武術を教わっていたからだよ。あの頃はよくボコボコにされたなぁ……。 |
イクス | え ! ? ジュードをボコボコにするって相当な強さだな ! ? 筋肉ムキムキ系とか……。 |
ジュード | はは……女の子なんだけどね……。 |
イクス | 筋肉ムキムキの女の子 ! ? |
ミリーナ | ちょっと格好いいかも……。私、強い女の人に憧れてるから……。 |
ジュード | 二人とも何か誤解してない ! ? |
カーリャ | ム……。 |
ジュード | カーリャ ? |
カーリャ | ムグゥゥ……お、お腹が……。く、苦しい……です……。 |
ミリーナ | カーリャ ! ? 大丈夫 ! ?すごい汗……熱まであるじゃない ! |
ジュード | この症状……ちょっと診せて ! |
カーリャ | ……喉が……渇きました……。お、お水を……。 |
ミリーナ | 待ってて、今、飲ませてあげるからね。 |
ジュード | うん……やっぱりだ。この発熱と口渇……村で発生した腹痛の症状と完全に一致する ! |
イクス | そんな ! なんでカーリャが ! ? |
ジュード | ―― ! |
カーリャ | ム、ぐぐぅ…………うぅ……。 |
ジュード | よし。治癒術が効いてくれた。対症療法だけどこれで痛みは和らぐはず。 |
カーリャ | あ、ありがとう……ございます……。 |
ミリーナ | よかった……。けど……どうしてカーリャが。 |
イクス | もしかして……。カーリャ、怒らないから話して欲しい。さっき、本当は木の実を拾って食べたんだよな ? |
カーリャ | ……は、はい。 |
ジュード | どんな木の実だった ? |
カーリャ | に……虹色に……きらきらしてる…ブドウみたいな……。 |
イクス | その特徴だと……ダメンジの実だな。 |
ジュード | ダメンジの実 ?ごめん、聞いたことがないんだけど……。 |
ミリーナ | 私たちの世界にはあるんだけどジュードさんの世界にはないものなんだと思うな。これも恐らく、エンコードの影響。 |
ミリーナ | 異世界の物理法則なんかを、そのままこの世界に持ち込むと、色々な問題が発生する可能性が高いの。 |
ミリーナ | だから異世界の様々な法則は、この世界の法則に上書きされて具現化されるのよ。 |
イクス | それに、この大陸の構成要素中に俺たちの世界の構成要素が混ざることもある。ダメンジの実もその一つなんだろうな……。 |
ジュード | エンコードか……。うん、わかったよ。それでダメンジの実っていうのはどんな木の実なの ? |
イクス | ダメンジの実は、見た目は綺麗だし香りも味もいいんだけど毒があるのが特徴なんだ。 |
イクス | カーリャの症状と『絶対に食べてはならないモノ百科』に書いてあったダメンジの実の中毒症状にも一致している。 |
ジュード | ということは村の人たちもダメンジの実で腹痛になったのかな……。 |
イクス | あれ、けど……おかしいぞ。このあたりの自然環境でダメンジの実が育つ筈がないのに……。 |
ミリーナ | カーリャは落ちてたって言ってたよね。 |
ジュード | 何者かがダメンジの実を村の自警団に届けた。その道中に落としたものをカーリャが食べた。これなら説明がつく。 |
イクス | ダメンジの実はあまり一般的ではないんだ。普通の人なら毒があるなんて思いもしない筈。机に置かれていたら何の疑いもなく食べるだろうな。 |
イクス | もしこの推測が正しいとしたら一体誰が、何のためにこんなことを……。 |
ジュード | もしかして落ちていたダメンジの実も……。 |
イクス | ……ジュード ? どうかしたのか ? |
ジュード | いや、何でもないよ。それよりもダメンジの実の解毒方法は知ってる ? |
イクス | ごめん、そこまでは……。ただ、俺が読んだ本には書いてなかっただけで解毒方法は解明されている筈だけど……。 |
ミリーナ | 街までもう少しだし、きっと図書館もある筈よね。到着したらみんなで調べてみない ? |
ジュード | そうだね。はやくカーリャを治してあげないと。 |
キャラクター | 3話 【5-2 果樹園の村】 |
ジュード | 司書の人に事情を話したら図書館を開けてもらえることになったよ。 |
イクス | よかった。これでダメンジの実の解毒方法を調べられるな。 |
ミリーナ | それにしてもここの図書館は大きいね。蔵書もたくさんありそう。 |
イクス | オーデンセの図書館とは比較にならない規模だもんな。ここの図書館だったら蔵書を読み尽くすのも一筋縄ではいかなそうだよ。 |
ジュード | イクス、図書館の本を読み尽くしたことがあるの ! ?凄いじゃない ! |
イクス | そんなことないって。あそこは規模も小さかったし。鏡士の修行を禁止されて、一時期凄く退屈だったんだ。暇つぶしに読んでたら、読み尽くしてたってだけだよ。 |
イクス | それに、俺、本が好きでさ。文字を追ってるとなんだか落ち着くんだよな。 |
ジュード | あ、それ何だかわかる気がするよ。本を読んでいると知識が増えていくでしょ。その予備知識が安心感に繋がることも多いよね。 |
イクス | そう、そうなんだよ !知識はいくらあっても損することはないしさ。本はやっぱりいいよな。 |
ミリーナ | ふふっ。二人とも読書好きで気が合うみたいね。 |
ジュード | あっ……司書の人が入っていいって。それじゃあダメンジの実の解毒方法を調べようか。 |
イクス | ああ ! カーリャのために ! |
ミリーナ | うん、頑張ろう ! |
イクス | 見つけた ! ダメンジの実の解毒方法だ !薬草があれば簡単に作れそうだな。 |
ジュード | えっと……必要な薬草はホワイトベルベーヌイエローバジル、ホワイトラベンダーエーテルヴァイスの4つ……みたいだね。 |
ジュード | よし、次はそれぞれの自生地を調べよう。 |
ミリーナ | 薬草辞典を持ってきたよ ! |
イクス | どれどれ……ホワイトベルベーヌは寒冷地にあるらしいな。 |
ジュード | となると雪山の麓あたりなら自生してそうだね。 |
イクス | ホワイトラベンダーは、草原を好むみたいだ。この街に来る途中、見晴らしのいい場所があったけど、あの辺りに生えてるかな……。 |
ミリーナ | エーテルヴァイスは……山岳地帯で見られるって書いてあるわね。 |
ジュード | ――あとはイエローバジル……あった。湿原、それも、日の当たらない場所を好むみたいだね。 |
イクス | よし。これで大体の自生地に目星が付いたな。 |
ミリーナ | ええ。早く取りに行きましょう。……カーリャ。苦しいと思うけどもう少し辛抱してね。 |
カーリャ | はぁいぃ……。 |
キャラクター | 4話 【5-7 クルスニク雪山】 |
イクス | ……やっと雪山の麓まできたな。ホワイトベルベーヌはどこに生えてるんだろう……。 |
ミリーナ | ホワイトベルベーヌって白い草よね。雪に紛れてわかりにくいのかも……。 |
イクス | それらしきものは見当たらないな。ひょっとして、山に入らないとダメなのか ? |
ジュード | 待って、あれを見て ! |
ミリーナ | その青い草は ? |
イクス | ブルーベルベーヌだ。けど、ホワイトベルベーヌでしか解毒剤は調合できないはずだけど……。 |
ジュード | ホワイトベルベーヌっていうのはブルーベルベーヌの変異体でしょう ?だから、そのあたりにも生えているんじゃないかな。 |
ジュード | 自然に発生する変異体は野生種の群生する場所に紛れていることも多いし。 |
イクス | 確かにそうかもしれない !四つ葉のクローバーが一般的なクローバーと一緒に生えているのと同じ理屈だな ! |
イクス | さすがジュード !俺なんて、変異体のことまで頭が回らなかったよ。 |
ジュード | そんな……。たまたまだよ。 |
ミリーナ | ううん、本当に凄いよ。これでホワイトベルベーヌが見つかるといいんだけど。 |
ジュード | うん。ブルーベルベーヌの中にホワイトベルベーヌが紛れていないか探してみよう。 |
ミリーナ | ――あった !これがホワイトベルベーヌじゃない ? |
ジュード | うん ! 間違いないね ! |
ミリーナ | よかった…… !とりあえず1つ目の薬草は手に入れられたね。 |
イクス | ………… ? |
ミリーナ | イクス、どうかした ? |
イクス | いや……気のせいかな。誰もいない筈なのに何か気配がするような……。 |
ジュード | いや、僕も同じ気配を感じてる。魔物が近くにいるのかもしれないね。 |
イクス | ……俺たちが縄張りに入ったから警戒でもしてるのかな ? |
ミリーナ | 今は、一旦ここを離れて次の薬草を探しに行こうよ。 |
ミリーナ | 変な気配からは離れた方がいいと思う。 |
イクス | ああ、そうだな。カーリャのためにも急がないと。 |
カーリャ | よろしくお願いしますぅ……。 |
キャラクター | 5話 【5-9 ギルヴァート平原】 |
ジュード | ホワイトラベンダーがあるとしたらこの辺りの草原じゃないかな。 |
ミリーナ | ……なんだろう。遠くからかすかに甘い香りがする……バニラみたいな。 |
イクス | 甘い香り……そういえば薬草辞典には一般的なラベンダーより甘い香りがするって書いてあったな。 |
ジュード | なら香りを辿ってみよう ! |
イクス | ――あったぞ ! 白くて小さな花が付いてる甘い香りの植物。これがホワイトラベンダーで間違いないよ ! |
イクス | 確か神経系を沈静化する作用があるんだよな。魔物はこの甘い匂いが苦手で魔物よけにも使われるんだって。 |
イクス | 衝撃を与えると香りが強くなって拡散するらしいんだ。だから乾燥させてすりつぶして匂い袋にするといいんだってさ。 |
ジュード | イクス、ずいぶん詳しいね。 |
イクス | えっ……さっき読んだ図鑑に書いてあっただろ ?128ページのコラムのところに。 |
ミリーナ | さすがイクス ! 相変わらず凄いね !一度読んだだけでそこまで覚えちゃうんだもん ! |
イクス | あはは……。ミリーナはいつも大げさだな。こんなのみんな大体そうだろ ?……あれ、もしかして俺がおかしいのか ? |
ジュード | 落ち着いて、それは凄い才能だよ。その記憶力のよさは誇っていいと思うな。 |
イクス | そ、そう言ってもらえると嬉しいけど……。ジュード、本当に俺って大丈夫なのか ?頼む、医者としての意見を聞かせて欲しい。 |
ジュード | まだ医者じゃないんだけど……。 |
ジュード | えっと……もちろんデメリットもあるよ。記憶力がいいってことは忘却機能がうまく働いていないとも取れる。 |
ジュード | ネガティブな情報が忘却されずそれに振り回されてしまう、とかが記憶力のいい人によくみられる事例だね。 |
イクス | やっぱり……まさに俺じゃないか……。 |
ジュード | けど、人よりも多くの知識を持っているのはイクスの強みであることに間違いはないよ。 |
イクス | ああ……今俺はその強みを活かせてるんだよな。知識を活かす知恵が大切だっていうのは本によく書かれているからわかってるんだけど……。 |
イクス | ジュード。どうしたらいいと思う ? |
ジュード | それは僕には答えられない。最終的にイクス自身がどうしたいかに関わることだからね。 |
ジュード | ただアドバイスできることがあるとすれば……自分の意志を大切にすること、かな。 |
イクス | 自分の意志……か。いつもやるべきことを見定めてるジュードが言うとその言葉にも重みを感じるな。 |
ジュード | 僕の言葉っていうより僕の大切な人の言葉なんだけどね。 |
ミリーナ | 大切な人 ? |
ジュード | 実は、その人に出会えたから僕も自分の意志の大切さに気づけたんだ。 |
ジュード | イクスは僕のことを尊敬してくれるけど僕ってそんな凄い人間じゃないんだよ。 |
ジュード | 医学生になったのも親が医者だったからだし。旅に出たのも事件に巻き込まれたから。つい最近まで周りに流されてばかりだったからね。 |
イクス | えっ、ジュードもそうだったのか ! ? |
ジュード | 僕もってことは……イクスも ? |
イクス | えっと、俺さ……鏡士になるって決める前は祖父ちゃんや周りの人たちと同じように漁師になろうって考えてたんだ。 |
イクス | 俺に鏡士は向いてない。みんなと同じ漁師でいい。俺は、それでいいんだって……。 |
ジュード | 波風が立たない生き方を選んでた ? |
イクス | …………うん。 |
イクス | けど、故郷の島が消えたり、世界が危ないって知ったり鏡士の力が必要だってゲフィオン様から言われたり避けられない現実を前にして、気付いたんだ……。 |
イクス | 俺には――やらなきゃいけない使命があるって。 |
ジュード | うん。僕も似たような感じだった。 |
イクス | 俺も……ジュードみたいになれるかな ? |
ジュード | 意志を貫こうとすれば対立は避けられない。相手や周りと違うことが怖くなるときもあると思う。 |
ジュード | そのときは僕がイクスの力になるよ。僕も仲間に助けられてきたからね。 |
イクス | ジュード……。 |
ジュード | さあ、先に進もう。 |
キャラクター | 6話 【5-12 大湿原(水洞内)】 |
イクス | このあたりにイエローバジルがある筈なんだけど……。 |
ミリーナ | なかなか見つからないね。 |
ジュード | ……二人とも。 |
イクス | ジュード、どうかしたのか ? |
ジュード | 気配を感じない ? |
イクス | ! ああ、後ろからだよな。また魔物の縄張りに入ったのか……。 |
ジュード | いや……どうもおかしい。足音や気配の数から考えてさっきと同じ魔物の群れだ。 |
ジュード | それに僕たちの様子を伺っているけどずっと襲ってこないのも気になる……。 |
イクス | 何か狙いがあるのかもしれないな。やっぱりただの魔物じゃなさそうだ。なんだか不気味だな……。 |
ジュード | はやく薬草を取ってここを去ろう。ソグド湿原を元に具現化された土地だからかところどころぬかるんでいて足場が悪い。 |
イクス | 戦いになるとマズいことになりそうだな……。 |
ミリーナ | 二人とも ! あれを見て !イエローバジルじゃない ! ? |
イクス | ああ ! そのとおりだ !さっそく採取して―― |
ジュード | 待って ! 魔物がくる !二手に分かれて挟み撃ちする気なんじゃ―― |
イクス | こんな時に……って、この魔物、光魔じゃないか ! |
ミリーナ | それに……どういうこと ! ?挟み撃ちが狙いなのかと思ったけど一方の光魔の群れは反対の方向に―― |
ジュード | ……まさか。 |
イクス | イエローバジルを踏みつけ始めたぞ ! ? |
ジュード | これが狙いだったみたいだね……。 |
イクス | ど、どうしよう……このままじゃ薬草が……。けど今イエローバジルの方に行けば挟み撃ちにされてしまうし……。 |
イクス | あっ……。 |
ミリーナ | イクス ? 何か思い浮かんだの ? |
イクス | えっと……いや、何でもない。それよりこの状況、どうすれば……。 |
ジュード | 今は目の前の光魔を倒そう !イエローバジルは後回しだ ! |
ミリーナ | ジュードさん、何か考えがあるのね ! ? |
ジュード | 説明はあと !急ぐ必要はあるからね ! |
イクス | もしかして……。 |
イクス | ――ああ、俺もジュードに賛成だ。よし、いくぞ。 |
キャラクター | 7話 【5-13 大湿原(水洞深部)】 |
イクス | はぁ……はぁ……。なんとか光魔は全部倒せたな。 |
ミリーナ | けど、酷い……。薬草がみんな泥まみれになってちぎれてる……。 |
イクス | いや、全部じゃない筈だ。 |
ミリーナ | えっ……あ、本当だ。このあたりのイエローバジルは無事みたい。 |
ジュード | イエローバジルは葉肉がしっかりしてるのが特徴だからね。全てダメにされることはないと思ったんだ。 |
ミリーナ | もしかして……その知識があったからジュードさんは目の前の光魔を優先したの ? |
ジュード | うん。足場の悪い湿原で挟み撃ちになるリスクの方が高いと思ったからね。賭けの部分もあったから完璧な策ではなかったけど。 |
イクス | いや、それでも凄いよ。俺……実は同じことを思いついたんだけど言い出せなかったんだ。 |
イクス | 間違っていたり的はずれな意見だったらどうしようって……。 |
イクス | さっきジュードの話を聞いて俺も頑張ろうって決めたのにやっぱりそう簡単にはいかないな。 |
ジュード | 意志を貫くにあたり対立するのは敵だけじゃない。仲間や、仲間になりうる人とも対立することはある。 |
ジュード | けどお互いに悪いことをしているわけじゃない。自分が正しいと思ったから行動してるんだしね。 |
ジュード | 仲間なんだから……いや、仲間だからこそちゃんと自分自身に責任を持って意見をぶつけ合うことも大切だと思うな。 |
イクス | ……ジュードは強いな。ありがとう。俺、今度からはちゃんと言うようにする。 |
ジュード | うん。イクスも僕が間違っていると思ったら遠慮なく言ってね。 |
ジュード | そして、もし対立することになったときはお互い遠慮なく、精一杯、戦おう。 |
イクス | ああ。約束だ。 |
ジュード | うん ! |
ミリーナ | あれ……。 |
イクス | ミリーナ、どうかしたのか ? |
ミリーナ | これを見て。もしかしてダメンジの実じゃない ? |
イクス | なっ ! どうしてこんなところに ! ? |
ジュード | ねぇ……自警団にダメンジの実を届けたのもお腹が空いているカーリャの前にダメンジの実を落としたのも光魔なんじゃないかな ? |
イクス | 確かに、自警団がやられれば、その村に滞在していた鏡映点であるジュードを襲いやすくなる。 |
イクス | そしてカーリャがやられれば光魔の鏡の発見が遅れ光魔は自分たちの勢力を増やすことができる。 |
イクス | まさか、さっきの薬草集めの妨害も……。 |
ミリーナ | けど、光魔にそんなことができるの ! ?だって……もしできるなら……。 |
ジュード | うん、これは立派な謀だ。普通の動物や魔物にはそこまでの知能はない。 |
ジュード | 全ての光魔がそうとは限らないけどもしこの仮定が正しければ、光魔には知能があるということになる。 |
ジュード | それも……僕たち人間と、同じレベルの。 |
イクス | 待てよ……だったら最後の薬草も狙われるかもしれないぞ ! ? |
ジュード | 僕もそう思う。エーテルヴァイスは希少だし外的刺激にはすごく弱いのが特徴だ。急いだ方がよさそうだね。 |
イクス | ああ ! 行こう ! |
キャラクター | 8話 【5-16 バラン岩場 中心部】 |
イクス | 随分険しい道だったな。思ったより時間がかかっちゃったけどエーテルヴァイスは大丈夫かな……。 |
ジュード | 見て。あそこに生えているのがエーテルヴァイスじゃない ? |
イクス | ああ、そうみたいだ。よかった、無事だったみたいだな。さっそく取りに―― |
カーリャ | ……ふ、ふぇぇぇぇぇぇ ! |
ミリーナ | カーリャ ! ? どうしたの ! ?凄く震えてるけどまさか毒が回ったんじゃ…… ! ? |
ミリーナ | カーリャをこんなに苦しめるなんて絶対に許さない……。光魔……呪うわ…… ! |
ジュード | ま、待って ! 落ち着いて。まだ毒が回ったわけではなさそうだよ ? |
イクス | ――あ、もしかして光魔の鏡が近いんじゃないか ! ? |
ミリーナ | まさか、そんな都合のいいことが……。 |
ジュード | 静かに。隠れて。 |
光魔 | …ウゥ~…ハルルルルル。 |
ジュード | やっぱり。光魔がいる。それに奥で光っているのはもしかして……。 |
イクス | 光魔の鏡だ。ここで鏡を封印できれば薬草もジュードも守れて一石二鳥だぞ。 |
ミリーナ | けど、このまま戦ったら薬草が駄目になっちゃいそう。なんとか薬草を確保できたとしてもあの数の光魔に囲まれたら……。 |
ジュード | エーテルヴァイスは罠だね。光魔は、薬草を取りに来た僕たちをここで始末する策なんだと思うよ。 |
イクス | 薬草を取りに行く前に気づけてよかったけどどう対処すればいいんだろう……。 |
イクス | 薬草を取りに行ったら光魔に囲まれてしまう。光魔の鏡や光魔を倒すことを優先すれば薬草が駄目になってしまうし……。 |
ミリーナ | 何か手はないかしら……。 |
イクス | ――待てよ、いや……けど。 |
ジュード | イクス。何か閃いたんだよね。よければ教えてくれない ? |
イクス | ……わかった。 |
イクス | 魔物はホワイトラベンダーの匂いが嫌いだろ。だったら光魔にも効き目がある可能性が高い。 |
イクス | ホワイトラベンダーが生えていた場所の近くに光魔は近寄ろうとしなかったのが、その証拠だ。 |
ミリーナ | つまり……ホワイトラベンダーを使ってエーテルヴァイスから光魔を遠ざければ……その隙に必要な分だけ摘み取ることができる ! |
イクス | ただ……上手くいっても光魔は鏡映点であるジュードを襲ってくる筈なんだ。 |
イクス | 一人がエーテルヴァイスを摘むとなると二人だけで一斉に襲いかかってくるであろう光魔を撃退しなくちゃいけない。 |
イクス | そのうえ、エーテルヴァイスを摘んだらすぐその場から離れられるように経路を確保しておく必要もあるんだ。 |
ミリーナ | 確かに、ホワイトラベンダーの効果が切れれば採取していた人が光魔に取り囲まれてしまうものね……。 |
イクス | その中でも最善策を考えるとすれば接近戦ができる俺とジュードが戦う役でミリーナがエーテルヴァイスを採取する役が合理的だ。 |
ミリーナ | うん。私もそう思う。 |
イクス | ただ……二人だけで光魔を防ぎきれるかわからない。そのうえ、ほとんどの光魔は鏡映点であるジュードに襲いかかってくる筈だ。 |
イクス | いくらジュードが強くても危険過ぎる。せめてホワイトラベンダーがもう少しあればジュードを守れるんだけど……。 |
イクス | ごめん……。やっぱり俺の作戦じゃうまくいきそうにない。 |
ジュード | ……いや、なんとかなるかもしれないよ。 |
イクス | えっ ? |
ジュード | 相手は光魔。普通の魔物と違って知能がある。そこを利用すればいいんだ。 |
ミリーナ | どういうこと ? |
ジュード | まずホワイトラベンダーを投げて、光魔を遠ざけミリーナがエーテルヴァイスを採取する。ここまではイクスの作戦通り進める。 |
ジュード | そうしたら光魔が僕をめがけて襲ってくるはずだ。その光魔に対してホワイトベルベーヌを投げる。 |
イクス | えっ……けど、ホワイトベルベーヌの香りにはホワイトラベンダーと同じような魔物を遠ざける効果はないぞ。 |
ジュード | 大丈夫。同じ白い薬草を投げつければ知能のある光魔は、また僕たちがホワイトラベンダーを投げつけたと思って引き下がるはずだ。 |
イクス | そうか…… ! 知能があるってことは人間と同じように学習をする !それを逆手に取るんだな ! |
ジュード | その通り。すぐにバレると思うけどミリーナが採取を終えて戻ってくる程度の時間は稼げるはずだ。二人とも、この作戦はどう思う ? |
ミリーナ | いいと思う ! |
イクス | ああ ! 勝算はあると思う。凄いよ、ジュード ! |
ジュード | これもイクスが元となるアイディアを提案してくれたおかげだよ。 |
イクス | よし、善は急げだ。ミリーナは薬草を頼んだぞ。 |
ミリーナ | うん ! そっちは二人に任せるね ! |
ジュード | よし、ホワイトラベンダーの束を石に巻き付けて……と。投げるよ ! |
ミリーナ | じゃあ、私も行ってくるね ! |
イクス | ジュード、光魔が気づいたみたいだ !こっちに来るぞ ! |
ジュード | 次はホワイトベルベーヌを……っと。イクス、投げるよ ! |
イクス | ど、どうだ……。 |
ジュード | よし ! うまくいったみたいだ ! |
ミリーナ | お待たせ ! 薬草を集めたわ ! |
光魔 | …ウゥ~…ハルルルルル ! ! |
ジュード | 丁度こっちにも、光魔が戻ってきた。 |
イクス | よし、みんなで迎え撃とう ! |
キャラクター | 9話 【5-16 バラン岩場 中心部】 |
ジュード | これで光魔の鏡を封印できた……んだよね ? |
ミリーナ | はい。これで今後ここから光魔は出現しない……筈です。 |
ジュード | よかった。それじゃあ、ここでダメンジの解毒薬を作っちゃおう。 |
ジュード | ――はい、カーリャ。これを飲んでみて。 |
カーリャ | ふぁい……。 |
カーリャ | ――……う、うぎゃぁぁぁあああああ ! ?にっが――――――いいいいいいい ! ? |
カーリャ | 何なんです、これ ! ? まるでピーマンとコーヒー豆とカカオをすりつぶして、フライパンで真っ黒にしたような味がっ ! ? |
ミリーナ | カーリャ ! 元気になったのね ! ?よかった ! ! |
カーリャ | にゃあ~……ミリーナさまいい匂い ! |
ジュード | 体が小さいから、解毒薬の効きも早かったみたいだね。これだけ元気ならもう大丈夫だよ。 |
ミリーナ | ありがとう、ジュードさん ! |
イクス | ジュードがいなかったらカーリャを助けることができなかったよ。本当にありがとう、ジュード。 |
ジュード | ちょ、ちょっと、やめてよ。そんなの気にしないで。みんなでカーリャを助けたんだよ。 |
ミリーナ | カーリャ。あなたもお礼を言って ? |
カーリャ | ……ありがとうございました。このご恩は一生忘れません。 |
カーリャ | けど……うぅ……苦すぎですよぉ。 |
ミリーナ | 良薬は口に苦し、だよ ?それもジュードさんが作ってくれた薬がよかった証拠なんだから。 |
イクス | これに懲りたら、拾い食いはやめるんだな。 |
カーリャ | 拾い食い、ダメ絶対……。はい……ちゃんと覚えておきます。 |
ミリーナ | カーリャにとっても今回の冒険はいい経験になったみたい。 |
イクス | ああ……もちろん、俺にとっても。知識も大切だけど、それと同じくらい知恵や意志も大切なんだって学べたよ。 |
ミリーナ | 私もだよ。やっぱり鏡映点からは学ぶことが多いよね。 |
ジュード | ねぇ、二人とも。今後のことについて相談があるんだけど話を聞いてもらってもいい ? |
イクス | もちろん。それで、相談っていうのは ? |
ジュード | 僕は村の人たちに今回の事件の真相を伝えればひとまずこの大陸でやるべきことは全て成し遂げたことになる。 |
ジュード | だから、その後はイクスたちの旅の手伝いをさせて欲しいんだ。 |
イクス | えっ…… ! むしろお願いしたいくらいだしありがたいけど……すごく危険だぞ。 |
ジュード | 鏡映点を保護するのが二人の役目なのはわかってる。でも、ずっと保護されているだけってのも悪いし危険だからこそ戦える人間は貴重だと思うんだ。 |
ジュード | 今回のことだけじゃなく今後も、お互いに助け合っていこうよ。 |
イクス | ジュード……わかった、ありがとう。それならよろしく頼むよ。こちらからもよろしくな。 |
ミリーナ | ええ、よろしくね、ジュードさん。 |
ジュード | うん。よろしく ! |
キャラクター | 9話 【5-16 バラン岩場 中心部】 |
イクス | ゲフィオン様。報告は以上です。 |
ゲフィオン | 2人とも、ご苦労だった。 |
ゲフィオン | この世界から失われた大地が形を変えながらも甦っているのはそなたたちのおかげだ。感謝しているぞ。 |
イクス | いえ、俺は……俺たちは未熟だと痛感させられています。これからも頑張ります。 |
ゲフィオン | そうか……。だが焦るな。そして無理はするな。 |
ゲフィオン | カレイドスコープと魔鏡を扱える鏡士はもはや全滅したに等しい。お前たちが生き続けることも大事な使命なのだ。 |
イクス | ありがとうございます。肝に銘じます。 |
ゲフィオン | 先ほど報告された光魔の妙な動きに関してはこちらも調査してみよう。 |
ゲフィオン | それから救世軍が色々と動いているようだ。セールンド軍の重要拠点を次々と攻撃している。 |
二人 | ! ? |
ゲフィオン | それにしても困った。具現化した大陸と交流し新たに生まれた住民たちを守るためには軍の力が不可欠だったのだが……。 |
ゲフィオン | お前たちも救世軍には気を付けるように。 |
イクス | ………………。 |
ゲフィオン | ……そういえば、その後カーリャは無事か ? |
ミリーナ | は、はい。おかげさまで、今はすっかり……。あの……ここへ呼びましょうか ? |
ゲフィオン | ――いや、結構だ。息災なら何より。 |
ゲフィオン | 鏡士と鏡精は特別な繋がりをもつ。カーリャが苦しむことでミリーナに悪影響があっては困る。 |
ゲフィオン | 先ほども話した通り、お前たちは替えの利かない存在。くれぐれも自分たちの命を大事にな。 |
ミリーナ | わかりました、ゲフィオン様。 |
イクス | お気遣い、ありがとうございます。これからも頑張ります。 |
ゲフィオン | ふふ……。期待しているぞ。次の大陸具現化もよろしく頼む。 |
キャラクター | 1話 【6-1 雪山の村】 |
ミリーナ | だいぶ歩き回ったけど鏡映点も光魔の鏡もなかなか見つからないね。 |
イクス | 鏡映点は人や動物の筈だからすれ違っているだけなのかもしれないけど光魔の出現地域が点在的なのは気になるな。 |
ミリーナ | 光魔は光魔の鏡から出現する。つまり光魔の鏡を中心とした同心円的分布になる筈なのにね。 |
カーリャ | 難しいことはよくわかんないですけどなんかいつもと違う感じですよね。 |
イクス | ああ。俺もそう―― ! ? |
小さな男の子 | うわーん……おうち、帰りたいよぉ……。 |
ミリーナ | あぶない ! 屋台の積み荷が崩れるわ ! |
イクス | このままじゃ下敷きに――くっ ! 間に合えっ ! ! |
小さな男の子 | えっ ! ? |
イクス | ――ッ ! ! |
ミリーナ | 二人とも大丈夫 ! ? |
小さな男の子 | ボ、ボクは平気。 |
イクス | ふぅ……お、俺もなんとか。――いたっ。 |
小さな男の子 | お、お兄ちゃん。大丈夫 ? |
イクス | えっ……あ、あぁ……。ちょっと積み荷がぶつかっただけ……だよ。へ、へっちゃら……さ。 |
小さな男の子 | よかった !ありがとう、お兄ちゃん !すっごく格好良かったよ ! |
イクス | そ、そんな……。俺なんてたいしたこと……いててっ。積み荷の木箱が腕をかすめたみたいだな。 |
? ? ? | あんたも、なかなかのお人好しね。 |
イクス | えっ ? |
ルーティ | ファーストエイド ! |
イクス | あっ……傷が……。えっと……あ、ありがとうございます。 |
ルーティ | それじゃあ、まいど。100万ガルドね。 |
イクス | ひゃ、100万ガルド ! ?そんな大金、俺もってな――って、あぁっ ! |
ルーティ | な、何よ。ただの冗談じゃない。 |
ミリーナ | イクス ! この人って ! |
二人 | 鏡映点 ! ! |
ルーティ | きょ、きょうえい……えっ ? |
イクス | ――というわけなんだ。 |
ルーティ | なるほどねぇ。具現化やあんたたちの使命についてはだいたい理解したわ。けど―― |
小さな男の子 | …………すぅすぅ。 |
ルーティ | まず、あんたの背中で眠ってるそのチビ助をなんとかしないとね。 |
イクス | …………うぅ。そ、そうだな……。 |
カーリャ | イクスさま、さっきからちょっと顔色が悪いですけどどうかしたんですか ? |
イクス | えっと……俺実はちょっと子供が苦手というか……。 |
イクス | も、もちろん嫌いなわけじゃ―― ! ! |
二人 | しーーーっ。お、き、ちゃ、う……。 |
イクス | ご、ごめん……。 |
ルーティ | とりあえず、あたしとミリーナでその子について聞き込みしてくるわ。あんたはここで待ってて。 |
イクス | ……わかった。 |
ミリーナ | カーリャ、一緒にいてあげて。私もそんなに遠くには行かないようにするから。 |
カーリャ | それならカーリャが消えちゃう心配もないですね。了解です。 |
ルーティ | それじゃあ行くわよ。 |
ミリーナ | イクス、すぐ戻るから頑張ってね ?困ったらカーリャを頼ってね ?それから無理はしないようにね ? |
イクス | ミリーナ、俺の方が子供みたいじゃないか。とりあえず……大人しく待ってるよ。聞き込み、よろしくな。 |
イクス | ……ミリーナたち、遅いな。聞き込みに手間取ってるのか ? |
小さな男の子 | う~ん、よくねたぁ !お兄ちゃん、遊ぼうよ ! |
イクス | ……い、今、仲間がいないからもうちょっとだけ大人しく待ってて。 |
小さな男の子 | お願い ! ちょっとだけでいいから !ボク、楽しい遊び知ってるんだ !お兄ちゃんもきっと楽しいよ ! |
イクス | ……カーリャ、遊んであげてくれ。 |
カーリャ | ええ ! ? イクスさま子供のお願いをそんな風にごまかしてたら将来、立派なイクメンになれないですよ ! |
イクス | そんな予定はないぞ……。──どうしたらいいかわからないんだよ。島でも接する機会を避けてたから。 |
小さな男の子 | ……イヤ、なの ? |
イクス | あぁぁっ……ち、違うんだ。えっと、イヤじゃないんだって。別にそういうわけじゃなくて―― |
カーリャ | 遊んであげましょうよ。お兄ちゃん、にしし~♪ |
イクス | カーリャ……。お前、楽しんでるだろ。 |
イクス | それじゃあ……ミリーナたちが戻るまでなら。えっと、じゃんけん……とかする ? |
小さな男の子 | するっ ! |
ミリーナ | お待たせ。──ふふっ。イクス、遠くから見てたらこの子のパパみたいだったよ。 |
ルーティ | イクス、チビ助の相手、ありがとね。おかげで大分、聞き込みができたわ。 |
小さな男の子 | あーあ。もう戻ってきちゃった。 |
イクス | 二人ともおかえり !いやぁ、戻って来てくれてよかったよ。何かこの子の情報はわかったか ? |
ルーティ | あんた……そんなせっぱ詰まった顔しなくても。まぁ、それは置いといて。その子の住んでる場所、検討ついたわよ。 |
ミリーナ | この辺りの子じゃないみたいでちょっと遠い場所みたいなの。歩きながら、話すね。 |
ルーティ | というわけで光魔の鏡を捜すのも、あんたたちの船に乗るのもまずはこの子を無事に家に返してから、ね。 |
イクス | もちろん ! じゃあさっそく出発だ ! |
小さな男の子 | あっ。まてー ! お兄ちゃーん ! |
ルーティ | あ、二人とも。そっちじゃないわよ !逆 ! 逆の方向よ ! |
ルーティ | ……あれじゃあ鬼ごっこね。チビは楽しそうだからいいけど。 |
カーリャ | ミリーナさま。イクスさまってどうして子供が苦手なんですか ? |
ミリーナ | どう接したらいいかわからなくて緊張しちゃうんだって。 |
ミリーナ | 何気ない言葉で泣かせちゃうかもとか子供だけがかかる病気をうつしちゃったらどうしようとか、色々考えちゃうのよ。 |
カーリャ | なんだか納得しました。イクスさまらしいというか……。相変わらず心配性なんですね。 |
ミリーナ | ……それか、私のせいかも。 |
カーリャ | ? |
イクス | ……あれ ? そういえば。 |
ミリーナ | イクス、どうしたの ?何か街で買うものでもある ? |
イクス | いや……違うんだ。どうしてこの子こんな場所にいるのかなって思って。 |
イクス | この街に住んでる訳でもないのにこんなところに一人でいるなんて。 |
小さな男の子 | ……わかんない。ボク、気付いたらここにいたから。 |
イクス | ……うーん。これって実は具現化された瞬間からこの子だけがここにいたってことかな ?今までそんなことあったかな ? |
イクス | 単に俺たちが今までこういうケースに気付かなかっただけだとしたら今後の具現化の時に、もっと色々配慮して―― |
ミリーナ | ……待って、イクス。 |
イクス | 心当たりがあるのか ? |
ミリーナ | ……うん。これも歩きながら話すね。 |
キャラクター | 2話 【6-2 バーンハルト街道 1】 |
イクス | ――つまり、俺が具現化作業に迷いがあってその影響で、安全な場所に具現化される筈の人や物がおかしな場所に、ずれて具現化された……ってことか。 |
イクス | (確かに……。このところずっと考えてた。こんな人の手に余る力を使っていいのかって。その迷いがあの子を危険な目に……) |
ミリーナ | あくまで想像だけどね。魔鏡を使った具現化でも心の迷いは厳禁なの。だから……。 |
ルーティ | へぇ……。具現化って色々と大変そうね。まぁ、でも原因がわかってよかったじゃない。あんたが気を付ければ大丈夫なんでしょ ? |
イクス | はは……。う、うん。そうかな……。 |
ミリーナ | イクス。一人で悩まないでね。私も一緒に考えるから。 |
ルーティ | それにしても、雪原が続くわね。──寒くない ? 大丈夫 ? |
小さな男の子 | うん。大丈夫。 |
ルーティ | そう。あんた、強いわね。なかなかやるじゃない。 |
小さな男の子 | ううん。お兄ちゃんの方が強いよ。 |
イクス | あ、あはは…………。 |
カーリャ | イクスさま。そろそろ慣れたらどうです ? |
イクス | いや、だって……。とにかくルーティが相手してくれて助かるよ。 |
ルーティ | あんたもしっかりしなさいよ。さっきの話を聞いた限り、チビの具現化位置がずれたのって、あんたの責任でもあるんだから。 |
イクス | うっ。そうだよな。俺が鏡士として未熟だから……こんなことに。 |
ミリーナ | これだけ大規模な具現化の術だもの。たまにうまく行かない部分が出るのも仕方がないよ。 |
イクス | 大規模な具現化か……。本当にとてつもないよな。物質だけじゃなくて沢山の命を写し出すんだから。 |
イクス | 実は、たまに、怖くなるんだ……。カレイドスコープによる具現化のこと。あの装置も元は軍事兵器だったらしいし。 |
カーリャ | ってことは、今回はこれくらいですんでよかったってことですかね ? |
イクス | 不吉なこと言うなよ ! |
ミリーナ | でも、イクスの不安だけで狂いが生じるなんてあの規模の魔鏡機器としては不自然でもあるのよね。 |
イクス | つまり整備不良か、構造的欠陥か何らかの問題があるのかもしれないのか。これはゲフィオン様に報告しないとな……。 |
ルーティ | なんにせよ、そのせいでさっきまで家にいたっていう小さな子供が街の真ん中にほっぽり出された事実に変わりないわ。 |
ルーティ | だからまずは……忘れてないわよね ? |
イクス | ああ。この子を教会の孤児院まで送り届ける。ちゃんとわかってるよ。 |
カーリャ | あとどれくらいで着きそうです ? |
ルーティ | 街の人から聞いた感じだとまだまだ先ね。 |
イクス | ならそろそろ休憩を取った方がいいか ? |
小さな男の子 | ボクは大丈夫 ! |
イクス | げ、元気いいな……。 |
ミリーナ | ふふっ。なんだかんだその子、イクスに懐いてるよね。ぴったり二人くっついてて可愛い。 |
イクス | そうかなぁ……。 |
ルーティ | ………イクス。ちょっといい ? |
イクス | えっ ? |
ルーティ | いつ光魔に襲われるかわからない。もちろん、あたしたちも気をつけるけど―― |
ルーティ | そのチビ、あんたにべったりみたいだしあんた……しっかり守りなさいよ。 |
イクス | ……っ。 |
ルーティ | できる ? |
イクス | ああ……俺だって昔に比べればちょっとは成長したんだ。子供を守りながら戦うことだってできる。 |
イクス | いざとなれば……オーバーレイだって……。いまの俺なら、きっと……。 |
ミリーナ | ! |
ルーティ | オーバーレイ ? |
イクス | ……あ、いや、何でもない。とにかく先に進もう。 |
キャラクター | 3話 【6-6 バティスタ雪山 5合目】 |
ルーティ | 山道に入ってきたわね。──周囲に何か見えるかしら……。 |
イクス | あ ! 山の尾根に見える建物……。あれって教会じゃないか ! ? |
小さな男の子 | おうち ! ボクのおうちだよ ! |
イクス | お、おい。あんまり離れると危ないだろ。 |
小さな男の子 | じゃあ、お兄ちゃんの側にいるね。 |
イクス | うっ、それはそれで……。 |
ルーティ | とにかく、あの教会が孤児院で当たりみたいね。 |
カーリャ | 今までもけっこう歩きましたけど教会までまだまだありますねぇ。 |
イクス | よし、急ごう !この子を早く帰してあげないとだからな ! |
ミリーナ | ──あ、イクス。……速足で行っちゃった。 |
小さな男の子 | お兄ちゃん、鬼ごっこ好きなんだ !ボクもやるよ ! まて~ ! ! |
ルーティ | まったく。子供が二人いるみたいね。それも、一人はかなり大きい子供。まぁ……そういうのには慣れっこだけど。 |
ミリーナ | えっ。どういう意味 ? |
ルーティ | あたしの周りにいた連中の話。 |
ルーティ | 年の割にみんなうちのチビたちみたいにきゃんきゃんしてさー。 |
ミリーナ | えっ……ちょっと待って。うちのチビたちって ! ?ルーティ、まさかもう子供が……。 |
ルーティ | ち、違うわよ ! 別に相手だっていないし……ってそういう話でもないから ! うちのチビたちってのはあたしが育った孤児院の子供たち ! |
ミリーナ | あっ。だからルーティは子供の相手に慣れていたのね。 |
ルーティ | あれくらい、大きな子供を相手にするのに比べたら全然ラクなものよ。あんたもわかるだろうけど。 |
ミリーナ | う~ん。確かにイクスって少し子供っぽい所もあるかも……。 |
ミリーナ | でも、いつもしっかりしてるのにそういう一面があるのがまたたまらないのよね♪ |
ルーティ | ……まぁ、あんたがそれでいいならいいけど。しめる所はしめなさいね。……って、さすがにお節介だったかしら。 |
ミリーナ | ううん。アドバイス、ありがとう !私、島で同年代の女の子がいなかったからルーティと念願だったガールズトークができて嬉しい ! |
ルーティ | ガ、ガールズトーク ! ? |
イクス | おーい ! 何やってるんだ ?早くしないと日が暮れちゃうぞ ! |
ミリーナ | うん ! 行こう、ルーティ。 |
ルーティ | はぁ……はいはい。行きましょう──ん ? |
ルーティ | 何よ──……まぁ、あたしにしちゃあ珍しいお節介だったかもね。 |
ルーティ | ──あのバカたちと旅してあたしも、少し変わったんだろうな……。 |
イクス | …… ? あれ ?ルーティ、どうしたんだろう……。ひとり言か ? |
ミリーナ | それにしてはずいぶんはっきり喋ってたような……。 |
カーリャ | あのぉ……カーリャ、見ちゃったんですけどルーティさま、一人でいるときとか結構あんな感じで話してますよ……。 |
イクス | そうだったのか ! ?ルーティ……って、ひとり言を言う癖があるのかな ? |
ミリーナ | ちょっと聞きづらいよね……。 |
ルーティ | あんたたち、どうかしたの ? |
二人 | ! ? |
ミリーナ | ――いいえ。何でもないの。気にしないで。 |
ルーティ | ? そう。なら口だけじゃなく足も動かしなさいね。 |
イクス | あ、あぁ。教会を目指して進もう。 |
キャラクター | 4話 【6-7 バティスタ雪山 8合目】 |
ミリーナ | ふぅ……結構歩いてきたね……。 |
ルーティ | そう言えば、さっき山の上に見えた建物……。 |
イクス | ? |
ルーティ | 大神殿っぽいと思ったのよね…… ?でも、場所は全然違う……。 |
ルーティ | ──ああ。そうよね。子供の具現化する場所がずれちゃうって話だもの。 |
ルーティ | あんなでっかい建物なんてきっともっと難しくって位置ぐらいずれるわよね。 |
イクス | ルーティ、あの……。だ、大丈夫か ? |
ルーティ | あ、えっ ! ?単なるひとり言よ、ひとり言。気にしないで ! |
ミリーナ | そ、そう……わかったわ。ただのひとり言よね、うん、大丈夫よ。 |
カーリャ | カーリャたち、ルーティさまが悩んでるなら相談に乗りますよ ? |
ルーティ | ? いったい何の話よ。 |
ルーティ | えっ ? ……う~ん。まあ、そうね。あんたたちになら隠さなくてもいいかな。紹介してあげるわ。 |
ルーティ | この剣と話してたのよ。名前は、\"アトワイト\"。 |
イクス | 剣と、話す…… ? |
アトワイト | 初めまして、アトワイトよ。皆さん、よろしく。 |
イクス | ! ? よくみたらいま……剣が、光った ? |
ルーティ | アトワイトが「よろしく」だってさ。 |
イクス | えっ……あ、ああ。よろしくお願いします……で、いいのか ? |
ミリーナ | それじゃあ私も。アトワイトさん、よろしくお願いします。 |
アトワイト | ふふっ。律儀な子たちね。 |
イクス | あ。また光った。 |
ルーティ | けど、やっぱアトワイト――ソーディアンの声は聞こえてないみたいね。 |
ミリーナ | ソーディアン ? |
ルーティ | アトワイトのように意思を持ってる剣のこと。ソーディアンマスターだけが使いこなせ、声も聞こえる。で、あたしはソーディアンマスターの一人。 |
ミリーナ | 喋れる剣…… ? あ、そう言われてみると確かにさっき光ったのって意思表示をしているみたいだったわね。 |
イクス | 意思を持つ剣、ソーディアンか !かっこいいな ! 異世界にはそんなものがあるのか !よければもっと詳しく話を聞かせてくれないか ! ? |
ルーティ | そういうの、あんま慣れてないのよね。こういうのはあたしの役目じゃなかったし。 |
ルーティ | まぁ、簡単に言うと千年前の\"天地戦争\"って大きな戦争に終止符を打つ為に造られた最終兵器……だったっけな。 |
ルーティ | ちなみにソーディアンは全部で六本あってどれも凄い力を秘めてるの。で、あたしの仲間もソーディアンを持ってるわ。 |
カーリャ | おお ! なんか燃えますね ! ! |
ミリーナ | ふふっ。興味津々みたいね。 |
イクス | 当たり前だろ !だって凄い力を秘めた最終兵器なんだろ !ソーディアン、知れば知るほど憧れるな ! |
ルーティ | 興味があるなら触ってみる ? |
イクス | いいのか ! ? |
ルーティ | あ、でも注意してね。気に入らない人間が触るとガブって噛み付いちゃうから ! |
三人 | ええっ ! ? |
アトワイト | ルーティ、悪ふざけはよくないわよ。みんな怖がってるじゃないの ! |
ルーティ | あはは、ごめんごめん。冗談よ。怖がらせるなってアトワイトに叱られちゃったわ。 |
ミリーナ | ……そ、そうよね。冗談よね……良かった。 |
カーリャ | イクスさま、心臓は動いてますか~ ? |
イクス | あ、あぁ……なんとか。 |
イクス | けど……本当に凄いな……。 |
ミリーナ | ? |
イクス | ご、ごめん。夢中になりすぎた。そろそろ先に進もう。 |
キャラクター | 5話 【6-8 バティスタ雪山 出口付近】 |
イクス | …………はぁ。 |
ミリーナ | イクス、何か考え事 ? |
イクス | ……あ、うん。さっきルーティからソーディアンのこと聞いて俺にもそんな凄い力があったらなって思っちゃって。 |
イクス | マークみたいな強い奴がまた現れたらって考えたらソーディアンみたいな凄い力……武器とかがあればより安心して旅が続けられるかもなぁってさ。 |
ルーティ | ……凄い力、ねぇ。まぁ確かにそうなんだけど……。 |
アトワイト | ルーティ。思うところがあるんでしょう ?あなたの言葉で良いから、伝えてあげて。きっと、とても大事なことよ。 |
ルーティ | こういうの柄じゃないけどねぇ。まぁ、わかったわ。 |
ルーティ | イクス。えっといまあんたたちが話してたことなんだけど……。 |
イクス | えっ ? |
ルーティ | 確かにソーディアンは凄い剣……凄い力を持ってる。けど、力を悪用する奴がいたからそれに対抗して造られた物なのよ。 |
カーリャ | 『悪い奴を倒す、正義の剣』ってことですかっ ! |
ルーティ | うーん、ちょっと違うわね。どんなに強い力でも使い方が悪ければ、そうなっちゃうってこと。 |
ルーティ | ──あたしだって、全然偉そうに言えたもんじゃないわ。 |
ルーティ | 他のソーディアンマスターにも、バカなスタンとか変にスレちゃってるリオンとかもいるけど。それでもみんな、どこかでわかってると思う。 |
ルーティ | ソーディアンみたいな力を手に入れることができたなら大切なのは、使う人自身なんだって。 |
イクス | ──強い力をただ手に入れるだけじゃ足元を見失うこともある、ってことか……。 |
ルーティ | イクス自身の強い心こそがどんな武器よりも大事なんじゃないかってあたしは思うわ。 |
ルーティ | それに、あんたたち鏡士の力だってあたしからみたら十分すぎるほど、凄い力よ。 |
イクス | !確かにそうだよな……。──肝に銘じておくよ。 |
アトワイト | ──ありがとう、ルーティ。うまく伝わったと思うわ。 |
ルーティ | ふぅ。こういう話、ほんと柄じゃないわ。さぁ、ちょっと休憩しましょ。休んだら出発ね。 |
ミリーナ | ……イクス。 |
イクス | ミリーナ、ごめん。ちょっと今は……一人にさせてくれ。すぐ戻るから。 |
小さな男の子 | ……お兄ちゃん。 |
キャラクター | 6話 【6-9 グレバム森林 中央】 |
イクス | ……力そのものより使う人の方が大事、か。わかってたつもりなんだけどな。俺はやっぱりまだまだだ。人間としても……鏡士としても……。 |
小さな男の子 | そんなことないよ……。自分のこと悪く言わないで。お兄ちゃんはボクの英雄なんだから。 |
イクス | そんな……俺が英雄だなんて大げさだよ。けど、慰めてくれてありがとう。 |
小さな男の子 | ……慰めた訳じゃないよ。 |
イクス | えっ ? |
小さな男の子 | ううん……何でも無い。それじゃあもう……ボク、あっち行くね。 |
イクス | あっ……ちょっと待って !森には魔物が潜んでいるかも―― |
イクス | !さがって ! ! |
イクス | ミリーナもルーティもいない……。俺一人でなんとかしないと……。 |
イクス | (けどこの数……この子をかばいながらじゃ今の俺に勝ち目がない……。もう……あれに頼るしかないのか) |
イクス | (でも……また【暴走】したら……) |
イクス | よーし ! やってやる、見てろよ、ミリーナ。凄い術を使ってみせてやる。 |
イクス | それで、凄い鏡士になって祖父ちゃんを少しでも楽させてやるんだ。 |
ミリーナ | うん。──イクスならきっとできるよ ! |
イクス | ―― ! |
ミリーナ | わぁ…… !凄く強い光…… ! |
イクス | ……よし ! いいぞ……。それじゃあ、これを……。 |
イクス | ……え……うわぁぁぁぁぁ ! ? |
ミリーナ | イクス ! 危ない…… ! |
ミリーナ | ……イクス。無事、だね……。よかっ……た……。 |
イクス | ミリーナッ ! ! |
イクス | ! !こ、ここは……。 |
ミリーナ | イクス ! 目を覚ましたのね !よかった……。二人が倒れていたときは何が起こったのかと思った。 |
イクス | 倒れていたって……あれ、あの子は……。ミリーナ ! あの子は無事なのか ! ?もしかして魔物に襲われて―― |
ミリーナ | 大丈夫、無事よ。魔物も私たちが倒したから。強い魔鏡の輝きを感じたから、心配になってイクスたちを追いかけたの。間に合ってよかったわ。 |
イクス | ……そう、だったのか。ありがとう、ミリーナ…………。またミリーナに助けられちゃったな……。 |
ミリーナ | ……イクス。またってことはやっぱりあの魔鏡の輝きは、秘伝魔鏡術だったのね。 |
ミリーナ | ネーヴェ家の鏡士だけが扱える特殊な魔鏡術オーバーレイ……。魔鏡の光を纏って、一時的に力を増幅させる技……。 |
イクス | ……うん。俺さ、ルーティの話を聞いてまずは自分自身が強くならなきゃって思ったんだ。いつまでも……目を背けてちゃダメだって。 |
イクス | 色々旅をしてきて、ちょっとは成長したと思ってた。けど……またダメでさ……。凄く焦るし不安になる。……情けないよ。こんな風に考えちゃうことも。 |
ミリーナ | ううん。そう感じるのは悪いことじゃないよ。むしろいいことだと思う。 |
イクス | えっ…… ? |
ミリーナ | それは自分の理想に向かって頑張ってる証拠だよ。成し遂げたい。だけど成し遂げられるかわからない。だから不安になるんだと思う。 |
ミリーナ | まだ自分の理想には届いてないってことなんだろうけど安心して。ちゃんとイクスは成長してる。誰よりも隣でイクスのことを見てきた私が保証する。 |
イクス | ……ミリーナ。 |
イクス | ああ──俺、頑張るよ。凄い鏡士になるなんて漠然としてるけど……この気持ちは本気だから。 |
ミリーナ | ……うん。 |
ミリーナ | ──うん ! 大丈夫 ! 絶対に !イクスがなりたいって思ったなら絶対になれるよ ! |
イクス | ……大げさだな、ミリーナ。けど、ありがとう。 |
ルーティ | まったく。あんたは心配かけて。あたしたちが駆けつけるのがもう少し遅かったらどうなってたかわかってるの ? |
イクス | ごめん、ルーティ。それから……助けてくれてありがとう。俺だけじゃなく、その子のことも。 |
小さな男の子 | ……お兄ちゃん。 |
ルーティ | まぁいいわ。チビ、行くわよ。あたしについてきなさい。 |
小さな男の子 | あっ……う、うん。 |
イクス | ルーティ。待ってくれ。 |
ルーティ | ……何 ? |
イクス | 俺、ちゃんと最後までその子を、送り届けたいんだ。俺に任せてもらえないかな ? |
ルーティ | できる保証は ? |
イクス | うっ……。 |
アトワイト | ルーティ、言い方があるんじゃないの ? |
ルーティ | ……わ、わかってるわよ。 |
ルーティ | その……悪かったわ。別に信用してないわけじゃないのよ。 |
イクス | いや……いいんだ。はっきり言えない俺が悪いんだし。 |
イクス | けど……やらなきゃいけないと思うから。だって俺、その子を助けたんだ。ちゃんと最後まで、その責任を果たしたい。 |
ルーティ | ……。 |
イクス | 本当にちゃんとできるかはわかんないけど……。 |
ルーティ | ふっ……もう、あんたは。微妙にしまらないんだから。 |
ルーティ | けど、わかったわ。イクス、そのチビは任せる。 |
イクス | ああ。ありがとう、ルーティ。 |
小さな男の子 | ………。 |
イクス | ……おいで。俺と一緒に行こう。 |
小さな男の子 | うっ……うんっ ! ! ありがとう ! |
イクス | ちょ、ちょっと。どうして涙ぐむんだよっ ! ? |
ルーティ | さあ。教会までもう少しよ。最後まで気を引き締めて行きましょう。 |
キャラクター | 7話 【6-14 草原の教会】 |
イクス | えっと、そんなわけで──迷子になっていたので連れてきました。 |
Msc_006_007_speaker01 | ありがとうございます !どこに行ってしまったのか心配していたんです……。 |
ミリーナ | いえ !無事に送り届けられて良かったです。 |
イクス | ……迷子……っていうのはちょっと嘘だけど……。 |
Msc_006_007_speaker01 | え ? |
ルーティ | ──ううん、何でもないわ ! |
ルーティ | イクス ! 説明してもわからないだろうし結果オーライなんだから。ここは、ごまかしときましょ。 |
イクス | ──あ。そっか……そうだよな。 |
カーリャ | さすがルーティさま !初対面のときから思ってましたけどかなりの世渡り上手ですよね ! |
ルーティ | カーリャ ? それどういう意味かしらぁ ? |
カーリャ | な、なんでもありませーん ! |
ルーティ | あっ。こら、待ちなさい ! |
ミリーナ | ふふっ。二人もすっかり仲良しね。 |
イクス | ……ちゃんと帰れてよかったな。 |
小さな男の子 | うん。お兄ちゃん、ありがとうね。あと……えっと……もし、時間があったら |
イクス | ああ……一緒に遊ぼう。そのときは、オススメの遊びを教えてくれ。 |
小さな男の子 | うん ! 約束 !またね ! 格好いいお兄ちゃん ! |
イクス | な、なんだよそれ……。けど……約束だ !それじゃあ、またな ! |
カーリャ | ──さて、とにかくこれで子供の件は無事、解決ですね !あとは、光魔の鏡です ! |
イクス | 結構いろんな場所に行ったのにやっぱり全然見あたらなかったな。 |
ミリーナ | カーリャ、ここまでの道中でも何も感じなかったのよね ? |
カーリャ | はい……。お役に立てなくてごめんなさい……。 |
カーリャ | ──けど、何て言うんでしょう。この辺り、何となく違和感があるんですよね。 |
ミリーナ | 違和感 ? |
カーリャ | はい。ちょっとだけですが。ぶるぶる、じゃなくて、ぴりぴりみたいな感じだったから、勘違いかも── |
Msc_006_007_speaker02 | ……ウゥ~……ハルルルルル ! |
イクス | ── ! ? |
ミリーナ | 今の──魔物の声 ! ?教会の外から…… ! ? |
カーリャ | ──な、な、な、な、何で ! ? |
イクス | カーリャ!? ──その震え……! |
カーリャ | と、と、突、然 ! 来、ま、し、た !ぴりぴりから、ぶるぶるに ! ! !さっき、まで、無かっ、たのに ! |
イクス | 何だって ! ?そんなことって……。 |
ルーティ | どう考えても、やばい感じね !外に出るわよ ! |
イクス | こ、これは…… ! |
ミリーナ | 光魔の鏡 ! ?さっきまで何もなかったのに ! ? |
イクス | これじゃまるで待ちかまえていたみたいじゃないか ! |
ルーティ | 考えるのは後にしましょ。 |
ルーティ | あんたらにしてみたら探していたお宝が向こうから来てくれた。ラッキーってことでいいじゃない。 |
ルーティ | けど、お宝を前にしたときが一番危険でもあるわ。──あの中から光魔が無限に湧いてくるっていうならさっさと光魔の鏡を破壊しないと。 |
ミリーナ | ええ。教会の孤児院だってあるものね。 |
イクス | ……確かに。今は、目の前の戦いに集中しなきゃ。 |
イクス | よし。みんな、教会を護りながら戦おう ! |
ルーティ | 当たり前でしょ ! 中には随分チビたちもいる !あの子らには、指一本触れさせないわよ !そうでしょ、イクス ! ! |
イクス | ああ ! その通りだっ ! ! |
キャラクター | 8話 【6-15 草原の教会 外れ】 |
イクス | はぁ……はぁ……──よし !光魔の主を倒したぞ…… ! |
ルーティ | 教会も無事みたいね……よかった。 |
ミリーナ | イクス、後は光魔の鏡を── |
イクス | ああ ! |
ルーティ | 待って ! ? イクス、危ない ! |
イクス | ! ? |
マーク | ──また、鏡映点サマに助けられたな。イクス。 |
イクス | マーク ! ! |
マーク | 俺がセールンド軍の方を相手してる間に随分調子に乗ってくれたみたいだが……そいつもここで終わりだ。 |
ミリーナ | こっちの事情は聞く耳なしなの ! ? |
マーク | 当たり前だろ ? |
ミリーナ | イクス ! ? 光魔が ! |
ルーティ | くっ ! これじゃあまた教会が…… ! |
イクス | ルーティ、そっちを頼む ! |
ルーティ | わかったわ ! |
マーク | ふっ……そうすると思ったぜ。 |
イクス | ── !まさか、これを狙って… ! ? |
マーク | これで、面倒な邪魔は入らないだろっ ! |
イクス | ぐあっ ! ? |
ミリーナ | イクス ! |
イクス | ……気を付けろ ! ミリーナ !やっぱりマークは俺たちよりずっと強い。 |
マーク | 逃げたっていいんだぜ ?代わりにその女が死ぬだけだ。 |
イクス | 何っ ! ? |
マーク | イクス、俺が何も知らないと思ってるのか ?お前が過去に何をやらかしたのかを。 |
イクス | ……っ ! ! |
マーク | なぁ、ビビりくん ? |
イクス | …………それは。 |
小さな男の子 | お兄ちゃんを悪く言うなっ ! |
イクス | ―― ! ? |
マーク | なんだ ? |
ルーティ | バカッ ! なんで出てきたの ! !戻りなさい ! はやくっ ! ! |
ミリーナ | ルーティ ! その子をお願い ! |
ルーティ | 言われなくてもわかってるわ ! |
イクス | こんなときでも、俺のこと……。 |
マーク | よかったなぁ、イクス。あのガキには無様な姿を見せずにすんで ! |
イクス | ――ぐっ ! ! |
ミリーナ | イクス ! ! |
マーク | まぁ、ミリーナには見せちまったがな。無様なのは今に始まったことじゃねぇから構いはしねぇか。 |
イクス | ……黙れ。 |
マーク | あ ? |
イクス | 俺は……確かにビビりでお前よりもまだまだ弱い。何もかも中途半端な……半人前だ。 |
イクス | けど ! 俺は鏡士として生きると決めた ! !もう自分の持つ力にもそして過去にも目を背けはしない ! ! |
イクス | ここにいる全員に誓ってやる !俺はマーク……お前にだけは負けない !どんなにお前が強くても ! ! |
マーク | そこまで言うなら―― |
マーク | やってみせな ! |
イクス | うおぉぉぉっっ ! ! ! ! |
キャラクター | 9話 【6-15 草原の教会 外れ】 |
イクス | もうミリーナは狙わせない ! |
マーク | はは、頑張るじゃねぇか。 |
マーク | なら、こいつはどうだ ! |
イクス | ──遅い ! |
イクス | よし、かわせた ! |
マーク | ああ。かわしちまったな。 |
イクス | なんだと ? |
マーク | また前と同じだぜ ?俺に気を取られすぎると、ってな。 |
カーリャ | イクスさま ! 後ろ ! |
イクス | ミリーナ ! ! |
ミリーナ | ! ? |
ルーティ | くっ ! ? あたしじゃ間に合わない ! |
イクス | (くそっ……またかよっ ! !また……ミリーナが怖い思いをしてる。俺がよけたから……俺のせいでっ) |
イクス | (何とかしたい……。いや……何とか、するんだ ! ! ) |
イクス | (いつも俺を信じてくれているミリーナを守る為に俺も自分を信じる ! だから俺は、今度こそ―― ! ! ) |
イクス | ──やってみせる ! ! |
マーク | ──何っ ! ? その光は ! ? |
イクス | オーバーレイ ! ! |
マーク | ……っ。 |
イクス | ミリーナ、大丈夫か ? |
ミリーナ | イクス……その魔鏡術って……。 |
イクス | ああ。やっとミリーナに見せることができた。よかったよ……今度は、うまくできて。 |
イクス | ……ミリーナを守れて。 |
ミリーナ | イクス…… ! |
イクス | 俺、ちょっとは前に進めたかな。 |
ミリーナ | ううん。ちょっとじゃない。その秘伝魔鏡術はイクスにとって―― |
ミリーナ | とっても、とっても大きな一歩だよ。 |
マーク | ……その程度の力で守った気になるなよ ? |
イクス | これなら──どうだっ ! |
Msc_006_009_speaker01 | ── ! |
イクス | ――誰だ ! ? |
ルーティ | あ、あんた……。 |
マーク | 何で止めた ? |
Msc_006_009_speaker01 | ──わざと受けるつもりだったろう。……今の貴様に万に一つの事態も許されない。 |
マーク | ははっ。ずいぶん優しいな。あの程度の力どうってことは無かったんだぜ。 |
Msc_006_009_speaker01 | ……まだ、くだらん茶番を続けるつもりか。手伝えというのは、こんなことか ? |
マーク | わかったわかった。ここは一度、退いてやるよ。 |
Msc_006_009_speaker01 | ……。 |
ルーティ | ──リオン…… !あんた、一体何やってんの ! ? |
リオン | ふん……僕に構うな。 |
イクス | リオンって……ルーティの仲間のソーディアンマスターだよな ! ? |
マーク | この鏡映点は──俺たちが抑えさせてもらった。 |
イクス | 何だと ! ? |
マーク | ここは、お前らだけの庭じゃねぇってことだ。 |
ミリーナ | ……そんな ! ?救世軍がその人を具現化したっていうの…… ? |
イクス | それじゃあまさか救世軍にも鏡士が ! ? |
マーク | ……ゲフィオンにでも聞いてみたらどうだ ?きっと、いい答えをくれるぜ。お前たちにとって、都合のいい答えをな。 |
光魔 | ……ウゥ~……ハルルルルル ! |
イクス | くそっ……また光魔が ! |
マーク | じゃあ、また会おうぜ。イクス。 |
リオン | ふんっ……。 |
ルーティ | ──あんた ! 待ちなさいよ !どうしてなのよ !どうしてあんたは――このバカッ ! |
キャラクター | 9話 【6-15 草原の教会 外れ】 |
イクス | ……鏡の封印はできたけど。 |
カーリャ | さっきの話……救世軍にも鏡士がいてこっちの邪魔をしてきてるってことですよね ? |
ミリーナ | もしかして……うまく具現化できなかったり光魔が私たちに都合の悪い場所に現れるのは相手の鏡士が干渉してるせいだったのかも。 |
イクス | 鏡士はオーデンセ出身のはずだから……。俺たちの知ってる人かもしれない……。何だか混乱してきたよ……。 |
ルーティ | こらこら、あんたたち。そんな暗い顔して考え込んでてもしょうがないでしょ。 |
ルーティ | とにかくこれで、ここでやることは終わったんでしょ ?──光魔ってのも、もう出ないのよね。 |
イクス | ……ああ。この島はもう大丈夫だ。 |
ルーティ | それなら約束通りあたしはあんたたちの飛空艇に乗ることにするわ。 |
ルーティ | 一緒に行かなきゃいけない理由もできたしね。 |
ミリーナ | あのリオンって人……ルーティと同じソーディアンマスターなのよね ?……仲間、なのよね ? |
イクス | どうして、俺たちを問答無用で殺そうとしてくる奴らなんかの方に……。 |
ルーティ | わからない……。 |
ルーティ | でもね。あいつ、ちょっとヒネてるけどスタンに言わせると根はそんなに悪い奴じゃないらしいのよ。 |
ルーティ | ──きっと何か、事情があるんだろうってスタンなら言うだろうから。追いかけてみるわ。仲間、だしね。 |
ルーティ | ──まぁ、それはそれとしてこれからも、何かあったら声かけてよ。 |
ルーティ | あんたら、まだまだ頼りないからさ。──あんたらの旅、手伝ってあげるわ。 |
ミリーナ | うん…… ! ありがとう、ルーティ。すごく、心強いわ。これからもよろしくね ! |
カーリャ | ──さて、それじゃあどうします ?イクスさま。 |
イクス | 次の島の具現化だけど……その前に一度、城に寄ってこの件をゲフィオン様に相談しよう。 |
イクス | 今のままじゃ、これから先どんな形で具現化を邪魔されるか想像もつかないし……。 |
イクス | 相手がどんな方法でこっちの具現化に干渉しているのかがわかれば何か対策ができるかもしれない。 |
ミリーナ | まずは、相手を知ることから、よね ?私もそれがいいと思うわ。 |
イクス | ……知ること、か。 |
イクス | ゲフィオン様……。信じていいんだよな……。 |
キャラクター | #N/A |
Msc_007_001_speaker03 | そんな……うそ……。 |
Msc_007_001_speaker03 | イクス……うそ、だよね……。 |
Msc_007_001_speaker03 | イクス……目をあけてよ……。お願い……お願いだからっ ! ! |
Msc_007_001_speaker03 | ……やだよ……。 |
Msc_007_001_speaker03 | いや……。 |
Msc_007_001_speaker03 | いや―――― ! ! ! ! |
ミリーナ | ――――ッ ! ! |
Msc_007_001_speaker02 | ミリーナ、大丈夫か ?すごいうなされてたぞ。 |
ミリーナ | ………………。 |
Msc_007_001_speaker02 | ……ミリーナ ? |
ミリーナ | ……あっ、あぁ。大丈夫よ。なんともないから気にしないで。 |
イクス | ミリーナ…もしかして、また、【滅びの夢】か ? |
ミリーナ | ……ええ。 |
ミリーナ | あっ、でも本当に平気だからね。ちょっと驚いただけ。 |
ミリーナ | そうだ。イクスは大丈夫 ? |
イクス | 俺はなんともないよ。それに俺、まだ一度も滅びの夢を見たことがないんだ。 |
ミリーナ | よかった……。あまり目覚めのいいものじゃないし見たことがないならその方がいいわ。 |
イクス | けど、なんで俺だけ見ないんだろう……。聞いた話だと、セールンドの人たちもほぼ全員が見てるっていうのに。 |
イクス | それに、どんどん\"滅びの夢\"が鮮明になってきてるんだろ ? |
イクス | これってどういう意味なんだ……。やっぱり……滅びの夢は何かを暗示してるのかな……。 |
ミリーナ | どうなのかしら……。 |
ミリーナ | けど、イクスが滅びの夢を見ない理由はイクスが強いからだと思うわ。 |
イクス | いや、それはないだろ。俺はようやく鏡士の力を制御できるようになったばかりだし。 |
ミリーナ | ふふ♪ そうじゃなくて……心がってこと。 |
ミリーナ | きっと、みんな不安なのよ。鏡の盾アイギスの破片が降ってきたり突然、大陸が現れたりしてるから。 |
イクス | もしかして……ミリーナもそうなのか ? |
ミリーナ | ……不安が全くない訳じゃないけど私はそこまでじゃないかな。だってイクスと一緒だもの。 |
ミリーナ | 二人で力を合わせて、大地の具現化を進めて鏡の盾アイギスを修復していく。 |
ミリーナ | そうやって、滅びから世界を救えばきっと滅びの夢も見なくなるんじゃないかしら。 |
イクス | そうかもしれないけど……。 |
イクス | ……うん。夢のことも含めてゲフィオン様に相談しなくちゃいけないな。 |
ガロウズ | ――おーい。お前たち。入ってもいいか ? |
イクス | ガロウズ ?ああ、どうぞ。 |
ガロウズ | ゲフィオン様からだ。これからしばらく王宮を離れるってよ。 |
イクス | ゲフィオン様が ! ?どうして ! ? |
ガロウズ | 詳しくはわからねぇけど急用ができたらしいぜ。 |
ガロウズ | なんだ ? 焦った顔して。もしかして、ゲフィオン様に用だったのか ? |
ガロウズ | だったら今から急いで王宮へ行けばもしかしたら出かける前のゲフィオン様を捕まえられるかも知れないぜ ? |
ミリーナ | イクス、どうする ? |
イクス | 滅びの夢や救世軍の動向それに敵側に鏡士がいる可能性……。相談したいことがたくさんある。 |
イクス | 今後、何が起こるかわからないし対策をたてるためにも少しでも話をしておくべきだ。すぐに王宮へ向かおう。 |
ミリーナ | わかったわ。 |
イクス | すいません ! |
イクス | ゲフィオン様はどちらにおいでですか ! ? |
Msc_007_001_speaker01 | ゲフィオン様ですか ?つい先ほどお出かけになりましたよ。 |
イクス | えっ ? もうですか ! ? |
Msc_007_001_speaker01 | 全ての予定をキャンセルなさって急ぎ出発されましたので。 |
イクス | えっと……それじゃあいつ戻ってくるかわかりますか ? |
Msc_007_001_speaker01 | いえ、申し訳ないのですが詳しいことは存じ上げません。しばらく、としか伺っていないものですから。 |
イクス | それなら、行き先を教えてもらえませんか ? |
Msc_007_001_speaker01 | すみませんが……それもわからないんです。 |
イクス | そう……ですか……。 |
Msc_007_001_speaker01 | すみません。仕事に戻らないといけないのでこれで失礼致します。 |
ミリーナ | ゲフィオン様、どうしたのかしら。随分慌ただしく出かけていったみたいだけれどたぶん、何かあったのよね。 |
イクス | ああ……。そうだな。何があったのかはさっぱり見当もつかないけど……。 |
ミリーナ | イクス、これからどうする ? |
イクス | ……こうして、ただ待ってる間にもまた救世軍が、鏡映点を仲間に引き入れようとするかもしれない。 |
イクス | 俺たちは、今できることをしよう。 |
ミリーナ | 次の大陸に向かうのね。 |
イクス | ああ、急いで出発だ。 |
キャラクター | #N/A |
イクス | ここが新しい大陸か……。よし。それじゃあ鏡映点を捜しに―― |
ミリーナ | イクス ! 見て ! あそこで小さな動物が光魔に襲われてるわ ! ? |
カーリャ | はわわわわ ! ? 大変です ! ? |
イクス | 助けよう ! |
イクス | ……ふぅ、何とか光魔を追い払えたな。 |
ミリーナ | よかった……。襲われていた仔も怪我はないみたい。 |
クィッキー | クィッキー ! |
イクス | ――あははっ…… !くすぐったいって !どうしたんだ、急に…… ! ? |
ミリーナ | ふふ。その仔、光魔から助けてくれたイクスに、感謝してるんだと思うな。 |
イクス | あははっ……そういうことか。なら、どういたしましてだな。 |
クィッキー | クィッ、クィッキー ! |
カーリャ | なんだか楽しそうでいいですねぇー !カーリャも混ぜてくださーい ! |
ミリーナ | あっ、カーリャ。いきなり近づいたらその仔が驚いちゃう―― |
Msc_007_002_speaker01 | Oh KOKO!! |
カーリャ | ほわわっ !驚かせてごめんなさ……えっ ? |
イクス | 今の、女の子の声……だったか ? |
ミリーナ | えっ ? どこへいくの ? |
イクス | おーい !一人じゃ危ないぞ ! |
Msc_007_002_speaker01 | KOKO! |
イクス | えっ ! ?あの人、この大陸の鏡映点……だよな ! ? |
ミリーナ | もしかして、あの仔を捜していたのかしら ? |
メルディ | You two ・・・!Found the KOKO for us aren't you?!Thanks!! |
イクス | ……えっ ? |
メルディ | Monster's been attacked・・・ Separated・・・Was worried・・・You've save it. |
ミリーナ | あ、あれ ! ? |
イクス | あ、あの……待ってください。えっと……その……。 |
メルディ | Oops sorry!I am NALR! |
メルディ | This is KOKO!NALR is KOKO's friend.! |
ミリーナ | ねぇ……イクス。何て言ってるかわかる ? |
イクス | いや……。全然わからないよ……。 |
メルディ | Humm・・・!?You don't understand NALVOKS・・・ do you? |
イクス | えぇっ ! ? ごご、ごめん !なにか変なこと言ったかな ! ? |
ミリーナ | ち、違うの !私たちは怪しい者じゃないのよ ! ? |
カーリャ | そうです ! このイクスさまとミリーナさまは世界を救う使命を持った正義の味方で―― |
イクス | ややこしくなるからカーリャは少し黙っててくれーっ ! |
メルディ | Cool!We're all friends now. |
イクス | ……え ? |
メルディ | You are both incredible!You saved KOKO. I am so grateful. |
イクス | と、とりあえず、怪しまれてはいない……のかな ? |
イクス | ふぅ……。よかった。 |
ミリーナ | ……ねぇ。イクス。これからどうする ? |
イクス | そうだな……。言葉が通じないのは想定外だったし一度、状況を整理したいよな。 |
ミリーナ | それじゃあ街に向かいましょうよ。確かこの先にあったわよね。 |
メルディ | To the town?I know the direction.That way! |
ミリーナ | もしかして……街、どこかわかるの ? |
イクス | ……よかった。助かるよ。案内、頼めるかな。 |
メルディ | Follow me! |
イクス | ありがとう。よし。それじゃあ、ついて行こうか。 |
キャラクター | #N/A |
ミリーナ | あなた、もしかして……メルディっていうの ? |
メルディ | Yes I am NALR!NA L R. NALR! |
メルディ | This is KOKO.KOKO! |
ミリーナ | あっ。わかった !あなたがメルディ !で、この仔がクィッキーね ! |
ミリーナ | イクス。聞いて !名前がわかったよ―― |
ミリーナ | ……なんでそんな後ろにいるの ! ? |
イクス | いや。光魔がどこに潜んでるかわからないし。俺は後ろで周囲を警戒してるだけだよ。 |
メルディ | Thank you OKS butWe can coordinate betterIf we move closer! |
イクス | えっ…… ?その……何、かな ? |
メルディ | We should go together! |
イクス | えっと……なんだろ。あっ……あはは……。 |
カーリャ | もしかして、イクスさまメルディさまのことが苦手なんですか ? |
メルディ | You What? |
イクス | いやいや ! 違うから !メルディ、それは誤解だよ ! ? |
メルディ | What's wrong with you? |
イクス | そ、そんな不安そうな顔しないでくれよ……。 |
イクス | 俺はメルディのこと苦手とかそういうのじゃなくて……。 |
イクス | ど、どうしよう。ミリーナ。 |
ミリーナ | うーん。イクスが思ってたことそのまま伝えればいいんじゃないかしら ?きっとメルディにも伝わるわよ。 |
イクス | その……。メルディに間違った受け答えをして誤解させたり、不安にさせてしまったら悪いと思ってさ……。 |
イクス | 伝わってる……かな ? |
メルディ | Don't worry.I don't understand your word butI sense what you mean. |
メルディ | Please continue talking to me. |
イクス | うーん…。ごめん。なんて言ってるか、わからないや。 |
ミリーナ | そうねぇ……多分『気にしすぎないで』……じゃないかしら ? |
イクス | あぁ、そういうこと……なの、かな ?えっと、気を使わせてごめん。メルディ。 |
イクス | 俺、気にしすぎてたかも―― |
Msc_007_003_speaker01 | な、何なんだこいつら !というより、ここはどこだっ ! ? |
イクス | なんだこの声 ! ?もしかして、誰か襲われてる ! ? |
メルディ | What's this voice KOL?I'll go check! |
イクス | 待てよ ! メルディ ! ! |
カーリャ | イクスさま ! ミリーナさま !こ、この反応 !光魔 ! それに、鏡映点です ! ! |
ミリーナ | 鏡映点も ! ?ケリュケイオンで観測したときは一人だけだったのに ! |
イクス | とにかく、メルディを追いかけよう ! ! |
メルディ | KOL! Are you OK? |
キール | メルディ ! ?お前、こんなとこで何やってるんだ ! ? |
イクス | 俺たちも加勢する ! |
キール | お前たち、何者だ ! ?見たところ……インフェリア人でもセレスティア人でもないな ! ? |
ミリーナ | インフェリア人 ? セレスティア人 ?私たちは―― |
メルディ | They are with us!Let's fight together fornow!! |
キール | ……お前がそういうなら。だが、ぼくはまだ信頼した訳じゃないからな ! |
キール | おいっ、加勢するんだろ ! ?ちゃんと活躍してくれよ ! |
イクス | あぁ ! 任せてくれ ! ! |
キャラクター | #N/A |
イクス | ――大体、説明できたかな ?この世界のこと……。 |
メルディ | OK understand.Thanks for a brief. |
キール | ぼくも、この世界、及び具現化の諸原理光魔の鏡と、その封印の必要性など諸々、理解した。 |
イクス | キール。メルディ。二人を巻き込んでしまってごめん……。 |
キール | まったくだ。せっかく晶霊術に関する新説を閃いて論文にまとめていたのに。もう少しで完成だったんだぞ。 |
ミリーナ | キールさん、私からも。迷惑かけてごめんなさい……。 |
キール | あぁ。本当にいい迷惑だね。論文だけじゃなく具現化されたと思ったらいきなり光魔とかいう魔物に襲われるし―― |
メルディ | KOL! Don't accuse them.OKS and NOLOVH they are samewith us. |
キール | な、なんだよ。別にぼくは、二人を責めてる訳じゃない。ただ事実を言ってるだけで……。 |
メルディ | OKS! NOLOVH! Its not your fault!I am with you! |
イクス | えっ…… ? もしかしてメルディも怒って……るのか ? |
キール | 違う。こいつは『自分が協力する』って言いたいんだよ。 |
イクス | 本当に ! ?ありがとう ! メルディ !すごく助かるよ ! |
メルディ | When the times are tough we should help each other.Let me help you. |
ミリーナ | よかったわね。イクスメルディ、協力してくれるみたいで。 |
イクス | キールは……手伝ってもらえるか ?もちろん無理にとは言えないけど……。 |
キール | ――不可知なるものを学ぶこと。大学時代の恩師。マゼット博士の言葉だ。 |
キール | お前たちの旅に同行することはぼくの学ぶべきものに通じている気がする。 |
キール | それに……メルディも行くんだろ。……付き合うしかないじゃないか。 |
イクス | えっ、いいのか ! ?ありがとう、キール ! 心強いよ ! |
キール | 勘違いするなよ。別にお前たちを助けるためについて行く訳じゃ―― |
メルディ | Thank you KOL!I am glad... I'm glad to be with you KOL! |
キール | な、なんでお前まで喜んでるんだよ ! ? |
メルディ | Don't be shy.Don't you want to be together? |
キール | い、いや……それは……。というより、ぼくはお前と一緒なのが嫌な訳じゃ―― |
キール | と、とにかく光魔の鏡を封印するんだろ。さっさと片付けるぞ。 |
イクス | それもそうだな。カーリャ。光魔の鏡の反応は ? |
カーリャ | う、うーん。どっちでしょう……。 |
ミリーナ | 距離が離れてて方角までまだよくわからない ? |
カーリャ | それもあるんですけど……。うーん……この街の先……ですね。 |
イクス | わかった。それじゃあいってみよう。 |
キャラクター | #N/A |
ミリーナ | カーリャ。光魔の鏡の反応はどう ? |
カーリャ | もうすぐですよ。ぶるぶる~って感じます~。 |
イクス | そろそろ光魔に出くわすかもしれない。キールとメルディも気をつけてくれ。 |
キール | 言われなくてもわかってる。ぼくたち鏡映点はただでさえ狙われやすいんだからな。 |
キール | メルディ。戦闘中、危ないと思ったらすぐ後ろにさがれ。ぼくが囮になり、立て直す時間を稼ぐ。 |
メルディ | You are getting the timefor KLANAL ARTEUnderstood butDon't strains yourself too far. |
キール | ふん。お前は自分の心配だけしてろ。余計なことを考え、判断に迷ったあげく光魔に囲まれたりしたら面倒だ。 |
メルディ | YES! I do mind about you!We are the friends! |
キール | お前なんかに気遣われなくてもぼくは自分の力でなんとかする。 |
メルディ | What do you mean by your own business?I can help. |
キール | どうだか。そもそもお前は―― |
カーリャ | キールさまぁ。メルディさまのことが心配でしょうがないのはわかるけどそろそろ先に進みません ? |
キール | ぼ、ぼくは心配なんてしてないっ !どう解釈したらそんな結論になる ! ?理解不能だっ ! ! |
イクス | いや……。見たままの解釈だと思うけど……。 |
ミリーナ | ずっと一緒に旅してきた仲間だもの。それだけ大切なのよね。 |
キール | か、勘違いはやめてくれ。むしろ、ぼくはこいつのことなんてどうでも―― |
メルディ | I don't care about you KOL.I am going. |
キール | あっ。メルディ ! 待てよ ! |
イクス | メルディ、行っちゃったぞ。追いかけないと……。 |
キール | …………。 |
イクス | キール……。大丈夫か ? |
ミリーナ | 落ち込まないで、キールさん。気をしっかり持って ! |
キール | ……お、落ち込んでなんかない。ほら。先に進むぞ……。ぼくは大丈夫だ……。 |
イクス | いや、全然そうは見えないんだけど―― |
メルディ | Everyone! Quick! |
キール | メルディ ! ? どうした ! |
イクス | なにかあったのか ! ? |
イクス | メルディ ! 大丈夫か ! ? |
メルディ | YES. Prof. NHXAZMU too.He is just fainted. |
キール | マゼット博士 ! ?なんでこんなところに ! ? |
ミリーナ | 確かキールさんの恩師だっていう…… ! ?大丈夫なの ! ? |
キール | あぁ、気絶しているだけらしい。 |
イクス | なら、まず光魔の主を倒すぞ !そして光魔の鏡も封印する ! ! |
キャラクター | #N/A |
メルディ | Wow! |
キール | おい。そっちは終わったか ? |
イクス | あぁ。これでもう光魔は発生しない。キール、メルディ。協力ありがとう。 |
ミリーナ | マゼット博士は ?大丈夫だった ? |
キール | 何も問題ない。街からしばらく出ないようと伝えておいた。 |
イクス | なぁ、キール。マゼット博士は……その、鏡映点だったのか ? |
キール | ……いや、恐らく違うと思う。微妙に会話がかみ合わなかった。 |
キール | ぼくらの記憶を通して具現化されたこの世界の住人としてのマゼット博士と思っていいだろうな。 |
ミリーナ | ……ごめんなさい。 |
キール | いや、そういうものだと聞いていたから問題はない。それに博士が異世界に連れてこられたんじゃなくてよかったと思ってる。 |
キール | 研究者にしてみればいい迷惑だからな。 |
イクス | そうだよな……。ごめん、キール。 |
ミリーナ | あ、あの、キールさん。マゼット博士は、こんなところで何をしていたの ? |
キール | 立証できていないからと詳しくは語ってくれなかった。 |
キール | だが……察するに。別世界の観測を試みていたんだろうな。 |
イクス | 別世界 ? どういうことだ ? |
キール | まず、晶霊学的存在論を応用しアイギスの盾の存在の可能性をマゼット博士は導き出したんだろう。 |
キール | けど、アイギスの盾がオルバース界面簡単にいうと、世界を分かつ境界だと誤った結論に至ったんだろうと思う。 |
イクス | つまり、アイギスを世界の境界だと思った。だから外側に別世界があると考えてその観測をしようとしてたのか。 |
キール | おそらくな。 |
ミリーナ | 別の世界か……。考えたこともなかった。さすが学者さん、すごい発想ね。 |
キール | ぼくたちの元いた世界は二つの世界で構成されていたからある意味、自然な発想とも言えるな。 |
キール | まぁ、お前たちの話を聞いている限りアイギスの外に別の世界なんて存在するとは思えないけど。 |
イクス | (アイギスの外か……。滅びの危機が迫っているようにゲフィオン様は言ってたけど……) |
マーク | ……ゲフィオンにでも聞いてみたらどうだ ?きっと、いい答えをくれるぜ。お前たちにとって、都合のいい答えをな。 |
ミリーナ | イクス、どうかしたの ? |
イクス | ……いや。なんでもないよ。 |
キール | そうだ。二人とも。マゼット博士から『オージェのピアス』を預かってきた。 |
キール | これをつければメルディと会話できるようになる。 |
イクス | メルディの言葉がわかるようになるのか ! ? |
ミリーナ | よかったわ。これでメルディのことがもっとわかるようになるのね。 |
キール | だが、ひとつ問題がある。 |
キール | オージェのピアスは心の波長が合わさったときにしか機能しないんだ。 |
イクス | 心の波長 ? |
キール | とりあえず、ピアスをつけてみてくれ。 |
イクス | ああ、わかった。……これで、いいかな。ミリーナはつけたか ? |
ミリーナ | つけたわよ。いつでも大丈夫。 |
イクス | えっと……メルディ。俺の言葉、わかる ? |
メルディ | I am sorry. I still don't understand.Do you understand my word? |
イクス | ダメだ。俺にはメルディの言葉わからないや……。 |
ミリーナ | 私もわからないわ。どうしたら【心の波長】が合うのかしら。 |
イクス | 心の波長か……。なかなか難しそうだな……。 |
キール | ぼくや他の仲間も最初はわからなかった。少しずつメルディのことを知っていけば心の波長も合っていく筈さ。 |
クィッキー | クィッキー ! |
キール | うん ? どうしたんだ、クィッキー ? |
メルディ | I am worry that it's the directionfor the town. |
イクス | キール。メルディは何て言ってるんだ ? |
キール | 街の方から魔物の気配がするらしい。まだ光魔が残っていたのかもな。 |
ミリーナ | イクス、倒しておいた方がよさそうね。 |
イクス | そうだな。二人は飛空艇に戻っていてくれ。あとは俺たちが片付ける。 |
キール | いや、ぼくも手伝う。 |
メルディ | I am with you for the battle. |
イクス | 二人とも協力してくれるのか ? |
キール | 街にはマゼット博士もいるからな。昔より体力もついたみたいだしまだまだ戦える。 |
メルディ | KOKO and I am fine..KOKO will guide us thereLets follow! |
キール | 案内するってさ。 |
イクス | すまない。助かるよ。それじゃあ、さっそく向かおう。 |
キャラクター | #N/A |
イクス | クィッキー、大丈夫か ? |
クィッキー | クィッキー ! |
ミリーナ | よかった。ケガはないみたい。 |
メルディ | KOKO are you OK? |
メルディ | Thank you!You've saved KOKO again. |
イクス | えっと……感謝されてるんだよな ?ミリーナ、言葉わかるようになったか ? |
ミリーナ | ううん。けど、わかるわ。 |
イクス | そう……だな。メルディ、どういたしまして。 |
メルディ | ・・・!! |
イクス | えっ ?ど、どうしたんだ ? |
イクス | な、なんだろ……。俺、何かしちゃったのか…… ? |
メルディ | your hand OKS! |
ミリーナ | あっ、イクス。手、ケガしてるわよ。大丈夫 ? |
イクス | ……ホントだ。けど、全然平気だよ。かすり傷で気づかなかったぐらいだし。 |
メルディ | Sorry for this OKS.Are you OK? |
ミリーナ | メルディ、優しいわね。イクスのことも心配してくれて。 |
イクス | ……あぁ。そうだな。それに、俺にも何となくわかったよ。 |
イクス | メルディ、聞いてくれ。俺は大丈夫だよ。それより、クィッキーが無事でよかった。 |
ミリーナ | メルディの大切なお友達だものね。 |
メルディ | OKS・・・. NOLOVH・・・. |
メルディ | ありがとな ! |
イクス | ……えっ ! ? 今 ! ? |
ミリーナ | 聞こえたわよね ! ? |
メルディ | バイバ ! 二人が言葉わかるよ !メルディが言葉もわかるか ! ? |
イクス | あっ、あぁ ! わかるよ ! !ちゃんと伝わってる ! ! |
ミリーナ | 私も ! メルディの言葉わかるわよ ! ! |
メルディ | ワイール ! よかったよ !メルディ、二人と話せるの嬉しいよ ! ! |
メルディ | それに、二人にやっとちゃんとお礼も言える ! |
イクス | お礼なんて……。むしろ俺たち言葉がわからなくてメルディに迷惑かけたと思うし……。 |
メルディ | ううん。イクスとミリーナ。二度もクィッキー助けてくれた。それに、二人がおかげで、キールにも会えた。 |
メルディ | 二人にはずっと感謝してたよ。本当に、ありがとな。 |
イクス | メルディ……。 |
ミリーナ | よかったわね。イクス。メルディの気持ち、ちゃんとわかって。 |
イクス | あぁ。俺たちの方こそ感謝の気持ちでいっぱいだよ。 |
キール | イクス。ミリーナ。メルディと話せるようになったのか ! ? |
イクス | キール ! ああ、そうだよ !ちゃんとメルディの言葉がわかる !これもキールのおかげだ ! |
ミリーナ | キールさんが言っていた【心の波長】のこと少しだけ理解できたわよね。 |
イクス | キール、ありがとう。 |
キール | な、なんだよ急に。ぼくは特に何もしてない。感謝される筋合いはないね。 |
キール | 逆に……ぼくは助けられた身だ。お前たちのおかげでメルディとも再会できたわけだしな。 |
キール | 遅くなったが……。一応……礼は言っておく。 |
メルディ | キールがそんなこと言うなんて珍しい。どうしよ、雪降るかもしれないよ。 |
キール | う、うるさい ! 雪なんて降るか ! |
カーリャ | ぶるっ……ぶるっ…… ! |
キール | 鏡精 ! 想像して鳥肌を立てるな ! |
カーリャ | 違いますよぅ !光魔の鏡を封印したのにまだ反応を感じるんです ! |
ミリーナ | えっ ! ? まだ他に光魔の鏡があるの ! ? |
イクス | ……救世軍による干渉かな ?それとも鏡映点が2人だから光魔の鏡も2つあるとか。 |
ミリーナ | でも、ルークさんとジェイドさんの時はそんな事なかったわよね。 |
キール | ……2つの光魔の鏡。いや……これは仮説だが二つの世界を具現化したなら……。 |
メルディ | キール、そうかもしれない。 |
ミリーナ | 二人とも、何かわかったの ? |
キール | あくまで仮説だ。だが、可能性は高い。 |
メルディ | 向かいながら説明するよ。反応があるとこまで行こう。 |
イクス | わかった。二人ともよろしく頼む。 |
キャラクター | #N/A |
イクス | つまり、実は今回、二つの世界がひとつの島として具現化されていた。だから光魔の鏡も二つあるってことか。 |
ミリーナ | キールさんとメルディのいた世界はインフェリアとセレスティア、二つの世界から成り立ってたのよね。 |
イクス | ああ。そう聞くと、ありえない話じゃないのかもな。 |
メルディ | さっき封印したのは、インフェリア側が光魔の鏡。この先、セレスティア側にもある筈だよ。 |
カーリャ | カーリャもこの先から光魔の鏡の反応を感じますよぉ。離れてるから、まだちょびっとですけど。 |
キール | はぁはぁ……休憩は……終わり……だ……。は、早く……ぜぇ……はぁ……。封印しに……はぁ、はぁ……いくぞ……。 |
イクス | 息絶え絶えだぞ ! ?まだ休んでていいから ! |
メルディ | キール。体力ないのしょうがないこと。無理するのよくないよ。 |
キール | はぁ……ぼくの……どこが……無理してるって……言うのか……はぁはぁ……さっぱり、わからないね。 |
ミリーナ | メルディの言う通りよ。呼吸が乱れてすごく苦しそう……。 |
メルディ | 山登るのすごい体力使う。疲れ取れるまで待つよ。 |
キール | 休んでる暇なんか……いたっ ! |
イクス | キール、大丈夫か ! ? |
キール | くっ……無論だ。 |
メルディ | 本当か ?キール、ケガしてないか ? |
キール | どこもケガはしてない。ちょっとつまづいただけでいちいち騒がないでくれ。 |
メルディ | けど……。 |
キール | いいから先に進むぞ。無駄話している方がよっぽど体力を消耗する。 |
メルディ | あっ、待って。オージェのピアス落としたよ。 |
キール | うん ? どこだ ? |
メルディ | 後ろだよ。メルディが拾うよ。 |
キール | 自分で拾える。無駄に動き回って体力消費するようなことするな。 |
イクス | ……あれ ? キールとメルディはオージェのピアスがなくても互いに言葉がわかるのか ? |
メルディ | キールが言葉は少ししかわからないな。 |
キール | ぼくもメルディの言葉はわからない。メルニクス語は複雑な言語だからな。 |
メルディ | インフェリアでメルニクス語は古代語の扱いだからな。 |
キール | こいつとはじめて会ったときは辞書を引きながらなんとか言葉を理解しようとしたものさ。 |
メルディ | なんだか懐かしいよ。キール、辞書引いても全然、メルニクス語わかってなかった。 |
キール | しょ、しょうがないだろ。メルニクス語は解明されてないことが多過ぎるんだ。 |
キール | それよりオージェのピアスはどこだ ?片側が見当たらない。 |
メルディ | 服に引っかかってるよ。 |
キール | あぁ、袖に引っかかってたか。 |
ミリーナ | ねぇ、イクス。やっぱりキールさんとメルディ普通に会話してるわよね ? |
イクス | 言葉がわかってるようにしか見えないな。 |
キール | ……よし、これで大丈夫だ。ピアスをつけたぞ。 |
カーリャ | ピアスといえば【心の波長】が関係してましたよね。 |
カーリャ | もしかして、キールさまとメルディさまは心の波長が完全に一致してるから言葉がわかるんでしょうか。 |
メルディ | うーん……。そうなのかもな。 |
キール | そんなわけないだろ !変なこというな ! |
イクス | けど、それじゃあどうして ? |
キール | そ、そんなこと知るか……。 |
キール | ただ……言葉はわからなくてもなんとなく、こいつの考えてることはわかるというか……。 |
メルディ | キールもか ?メルディも同じだよ。 |
キール | い、一緒にするな。お前は思考が単純だからわかるだけだ。 |
メルディ | メルディ、そんな単純じゃないよ ?色々いーっぱい考えてるよ。もちろんキールがことも。 |
イクス | だから、なのか…… ? |
キール | まぁ……そうかもな。相手の気持ちを考えること。知ろうとすること。 |
キール | 学問と同じで、そういう姿勢が大切なのかもしれないな。 |
ミリーナ | キールさんはそれだけメルディのことを考えて知ろうとしてきたのね。 |
キール | お、おい。変な誤解はするなよ。とにかく、今は光魔の鏡を封印しに行くぞ。 |
メルディ | あっ。キール、待ってよ~。 |
ミリーナ | なんだかキールさん少し元気になったみたいね。 |
イクス | そうだな。俺たちも行こう。 |
キャラクター | #N/A |
イクス | ミリーナ。もう準備は終わったのか ? |
ミリーナ | 私は大丈夫。キールさんとメルディもすぐ来るみたいよ。 |
カーリャ | あとはみんなで光魔をやっつけてパパッと光魔の鏡を封印するだけですね ! |
イクス | けど、そう簡単にはいかないと思うぞ。たぶん光魔の群れが待ち構えている筈だから。 |
ミリーナ | 光魔の鏡が出現して時間がけっこう経ってるから光魔の数も増えてそう……。 |
イクス | それに、二つの世界が具現化するなんて想定外のことも起きてる。 |
イクス | 何が起こるかわからないわけだしいつも以上に慎重に行動しないと。 |
ミリーナ | 今は私たちの力で解決していかないとだものね。さらに気を引き締めていかなきゃ。 |
イクス | (……そうだな。今はゲフィオン様もいない。まず、俺がしっかりしないと……) |
イクス | ミリーナ。何かあっても俺がなんとかするよ。 |
ミリーナ | イクス ? |
イクス | どこまでできるかわからないけど。俺、もっと頑張るからさ。 |
ミリーナ | なら、私も頑張るわ。しっかりイクスをサポートする。 |
ミリーナ | 私、イクスよりお姉さんなのよ。むしろどんどん頼ってくれていいんだから ! |
ミリーナ | ……だから、ひとりで抱え込みすぎないで。私もイクスと同じ気持ちでいるから。 |
イクス | 俺と同じ ? それってどういう―― |
キール | 待たせた。クレーメルケイジの中の晶霊をフリンジしようとしたんだがどうも勝手が違っていて、時間がかかった。 |
キール | ……もしかすると、晶霊がいないのかも知れない。これがお前たちの言っていたエンコードの影響なのかも知れないな。 |
キール | まぁ、術は使えるから問題はない。あとでじっくり調べるさ。 |
メルディ | もう準備はばっちり !いつでも出発できる。 |
ミリーナ | イクス。みんな集まったしさっそく行きましょう。 |
イクス | ……あ、ああ。そうだな。それじゃあ光魔の鏡を探しに行こう。 |
イクス | (ミリーナも、俺と同じ気持ち……。やっぱり、不安なのかな……) |
キャラクター | #N/A |
イクス | 見つけたぞ ! 光魔の鏡だ ! |
光魔の主 | ……ウゥ~……ハルルルルル ! |
ミリーナ | 光魔の主……。それに、光魔も……。 |
メルディ | まだこんなに残ってたか……。 |
キール | さすがに一度にまとめて相手にするのは厳しそうだぞ。 |
イクス | (くそっ……またかよっ ! !また……ミリーナが怖い思いをしてる。俺がよけたから……俺のせいでっ) |
イクス | (何とかしたい……。いや……何とか、するんだ ! ! ) |
イクス | (いつも俺を信じてくれているミリーナを守る為に俺も自分を信じる ! だから俺は、今度こそ―― ! ! ) |
イクス | (そうだ……俺が、やれば ! !やらなくちゃ ! ! ) |
ミリーナ | イクス、どうしたの ? |
イクス | 俺が光魔の主を引きつける !みんなは光魔を倒してくれ ! |
ミリーナ | イクスひとりで ! ?それは危険よ ! |
キール | 同感だ。連携を取りやすいミリーナと二人で戦うべきだろ。 |
メルディ | そうだよ。まわりの光魔はキールとメルディでなんとかできる。 |
イクス | あくまで引きつけるだけだから大丈夫だ。 |
イクス | 光魔の主を倒すとき、まわりの光魔に邪魔されないよう数を減らしておいてほしい。 |
ミリーナ | そういう作戦もわかるけど……でもイクスだけ危険な目に―― |
イクス | それに、ミリーナまで光魔の主に狙われたら危ないから。 |
ミリーナ | イクス……。 |
イクス | 頼んだぞ ! |
ミリーナ | あっ ! 待って ! ! |
ミリーナ | くっ…… ! |
イクス | (なかなか素早いな。だけど、時間稼ぎぐらいなら俺ひとりでなんとかなりそうだ) |
イクス | (よし、だいぶ攻撃パターンもわかってきた――) |
イクス | (加速した ! ?くっ――完全には避けきれないか ! ? ) |
ミリーナ | イクス ! ? 大丈夫 ! ? |
イクス | ミリーナ……。あ、ありがとう。 |
ミリーナ | やっぱり私も協力するね。 |
イクス | えっ ! ? 危ないぞ !ミリーナが標的になるかもしれ―― |
ミリーナ | イクス ! すごく嬉しかったよ !私のこと、守ってくれて ! |
ミリーナ | でも、私だってイクスを守りたい。私はイクスに怖い思いをさせたくない。 |
ミリーナ | だから、自分ができること、力になれることはちゃんとやりたいの。 |
イクス | ミリーナ……。 |
ミリーナ | それに、ほら。私、少しだけ先輩だから。 |
イクス | ミリーナ。 |
ミリーナ | 何 ? |
イクス | 俺と一緒に、戦ってくれ。 |
ミリーナ | もちろん ! |
イクス | よしっ、じゃあいくぞっ ! !一緒に ! ! |
キャラクター | #N/A |
ミリーナ | イクス ! お願い ! ! |
イクス | ありがとう ! ミリーナ ! ! |
イクス | うおぉぉぉおっ ! ! ! ! |
イクス | はぁ……はぁ……。た、倒した……。 |
キール | あとは光魔の鏡を壊して、封印するだけだな。 |
メルディ | イクス、頼んだよ。 |
イクス | あぁ。任せてくれ。これで―― |
イクス | よしっ、もう大丈夫だ。 |
メルディ | これでセレスティア側も安心だな。イクス、ありがとな。 |
イクス | いや、お礼をいうのはこっちだよ。メルディ、キール。二人ともありがとう。 |
キール | 感謝される筋合いはない。はじめに言ったように、ぼくが同行したのは不可知なるものを学ぶためだからな。 |
カーリャ | メルディさまが行くならとも言ってたよーな ? |
キール | そ、それは別に重要なことじゃない ! |
ミリーナ | イクスもお疲れさま。ずっと前衛で、戦いっぱなしだったけど大丈夫 ? |
イクス | あぁ。ミリーナにも、助けてもらったからな。ありがとう。 |
ミリーナ | どうしたの、改まって。 |
イクス | いや……謝りたいことがあってさ。 |
イクス | 俺……ミリーナに怖い思いさせたくないとか心配かけたくないとかでいっぱいで……。 |
イクス | ちゃんとミリーナの気持ち、わかってなかったから……ごめん。 |
ミリーナ | ああ……ううん……。私こそ、ごめんね。 |
ミリーナ | イクスがどんどん強くなって背中を見ることが多くなって勝手にそのことを悩んでたのかも。 |
ミリーナ | ちゃんと、イクスを助けられているのかなって。 |
イクス | 何言ってるんだよ。今までだって何度ミリーナに助けられてきたか……。 |
カーリャ | お二人ともかみ合ってるようでかみ合ってなかったんですねぇ ! |
イクス | ずっと一緒にいる幼なじみが相手でも人の気持ちを考えるのって難しいんだな。 |
ミリーナ | そうよね。あらためてキールさんとメルディってすごいと思うわ。 |
キール | な、なんだよ、いきなり。 |
カーリャ | 二人は本当にただの旅の仲間ですかぁ ?幼なじみ以上の深~い絆があるようにしか見えないですよぅ。 |
カーリャ | たとえば~……そう !こ・い・び―― |
キール | だ、断じて違う ! !このぼくがこんなやつの恋人なわけないだろっ ! ! |
キール | こんな変なしゃべり方で味覚が常人離れしてるこんなやつのっ ! ! |
メルディ | それどういう意味か ! ?メルディ、もう知らない !先に飛空艇いくよ ! |
キール | あっ、おい ! 待てよ ! ! |
イクス | あはは……。仲が良いんだか悪いんだか。本当にどういう関係なんだろうな。 |
ミリーナ | けど、お互いに相手のことを考えて信頼し合ってるのよね。二人は。 |
イクス | 自分で考えること、知ろうとすること。これって無条件で相手を信頼することより大切なことなのかもしれないな。 |
イクス | 間違うこともあるかもしれないけど―― |
イクス | こうして、ちゃんと。もっと、わかり合えるって思うから。 |
ミリーナ | ……イクス。ええ、私もそう思うわ。 |
イクス | ……なぁ、俺たち、わからないことだらけだろ。 |
イクス | アイギスはティル・ナ・ノーグを滅びの危機から守ってくれる盾だってゲフィオン様は言っていた。 |
イクス | けど、そもそも【滅びの危機】って何なんだ。アイギスの外側はどうなっているのかも俺たちはよく知らない。 |
ミリーナ | そうね。多分ゲフィオン様はそのことをちゃんとわかっているんでしょうけれど……。 |
イクス | ゲフィオン様は今どこで何をしているのかな……。 |
イクス | そもそも、あの人がどういう人かも俺たちはよくわかってないんだ。 |
イクス | それに……正直に言うと―― |
マーク | ……ゲフィオンにでも聞いてみたらどうだ ?きっと、いい答えをくれるぜ。お前たちにとって、都合のいい答えをな。 |
ミリーナ | ……イクス。マークの言葉が気になってるのよね ? |
イクス | ……ああ。 |
イクス | だから、ゲフィオン様のこと少し調べてみようと思う。どうかな ? |
ミリーナ | ええ。いいと思う。ゲフィオン様のことだけじゃなくて他にも何かわかるかもしれないし。 |
イクス | 王宮の書庫なら何か手がかりがあるかもしれない。 |
ミリーナ | そうね。一般の図書館には置いてない文献もある筈だもの。 |
イクス | セールンドに戻ったら、早速調査開始だ。 |
キャラクター | #N/A |
ミリーナ | イクス、お疲れさま。お茶いれてきたわよ。ここに置いておくわね。 |
イクス | ありがとう、ミリーナ。助かるよ。 |
ミリーナ | ゲフィオン様のこと何かわかった ? |
イクス | いや……。まったくわからない。最近の、宰相になってからの記録しか残っていないんだ。 |
イクス | 宰相になった経緯もそれ以前に何をしていたのかもどの文献にも載っていない。 |
ミリーナ | えっ、そんなことってありえるの ! ? |
イクス | いや。普通は考えられないよな。あまりにも不自然だよ……。 |
イクス | ゲフィオン様……。一体、何者なんだ……。 |
ガロウズ | お前ら。何やってんのかと思えばゲフィオン様のことを調べてたのか。 |
イクス | ガロウズ ! ? |
ミリーナ | えっ……あの、これは……。 |
ガロウズ | 何。俺は別に気にしてねぇよ。 |
ガロウズ | なんせ、俺もよく知らねぇからな。 |
イクス | えっ、ガロウズも ! ? |
ガロウズ | ああ。知ってるのは、昔、魔鏡兵器の開発に携わっていたらしいってことぐらいだな。 |
ミリーナ | 魔鏡兵器の開発……。確か、魔鏡戦争のとき盛んだった研究よね。 |
イクス | 魔鏡兵器の研究者はほぼ全員が鏡士だった筈だ……。俺の父さんも母さんもそうだったから。 |
イクス | それじゃあ、まさかゲフィオン様には鏡士の力があるのか ! ? |
ガロウズ | いや。そこまではわからねぇ。魔鏡技師ってだけなら俺と同じく鏡士である必要はないしな。 |
ガロウズ | けど、俺の命の恩人ってことは確かだぜ。 |
イクス | 命の恩人 ? |
ガロウズ | この魔鏡義肢がその証さ。 |
ガロウズ | 俺は魔鏡戦争で死にかけたことがあるんだ。まぁ、なんとか助かったけど左腕を失っちまってな。 |
ガロウズ | もう兵士として満足に戦うこともできねぇ。家族もみんな死んじまった。 |
ガロウズ | 今後どうすればいいかわからなくて人生に絶望したよ。 |
ガロウズ | そんな俺を見て、ゲフィオン様が特別にこの魔鏡義肢を作って下さった。 |
イクス | ゲフィオン様が、その魔鏡義肢を……。 |
ガロウズ | それで、俺はゲフィオン様に恩を返そうと魔鏡技術の勉強して、魔鏡機器の整備や運用を担当するようになった訳だ。 |
ガロウズ | まぁ、親が魔鏡技師だったから予備知識はあったしな。 |
ミリーナ | そうだったの……。ゲフィオン様って優しい方なのね。 |
ガロウズ | 今どこで何をしてるかわからねぇけどきっとお前らのことを助けようとしてるって俺は思ってるぜ。 |
イクス | ……俺たちのことを、か。 |
ガロウズ | けど、まだ気になるんだろ。少し時間も経ったことだし一度王宮を見てきたらどうだ ? |
イクス | ……そうだな。 |
ミリーナ | やっぱりまだゲフィオン様は戻られていないみたいね。 |
イクス | ああ。それに行方だけじゃなくて素性も経歴も、結局全てわからずじまいだ……。 |
ミリーナ | けど、それもイクスがちゃんと調べたからわからないってところまでたどり着けたのよ。 |
イクス | それはそうかもしれないけど……。 |
ミリーナ | それに、ガロウズさんから話を聞いて少しだけゲフィオン様のことを知ることができたじゃない。 |
ミリーナ | ガロウズさんのときのように私たちを助けようと動いてくれてるって考えることもできるでしょう ? |
デミトリアス | その通りだ。それは私が保証するよ。 |
イクス | えっ……あなたは ? |
デミトリアス | ……私はこのセールンドの国王デミトリアスだ。君たちのことは、ゲフィオンから聞いているよ。 |
イクス | 国王陛下 ! ? し、失礼しました…。 |
デミトリアス | いや、気にしないでくれ。むしろ謝らなければならないのは私の方だ。 |
デミトリアス | ゲフィオンのことで不安にさせてしまったようだね。 |
デミトリアス | 彼女には今、極秘任務にあたってもらっているんだよ。 |
デミトリアス | 詳しくは言えないが……ゴホッゴホッ。 |
イクス | 陛下 ! ? 大丈夫ですか ! ? |
デミトリアス | すまない……こんな頼りない王で……。生まれつき身体が弱くてね……。 |
デミトリアス | 物心つく頃には随分持ち直したんだが結局こんな有様だ……。ゲフィオンには負担を強いるばかりだよ。 |
デミトリアス | だが、彼女が留守の間は、私が君たちの旅の責任を持つよ。それとも私の補佐では不満かな ? |
イクス | 陛下御自らですか ! ? |
デミトリアス | ……この通り身体は弱いがカレイドスコープのことは理解している。安心してくれ。 |
イクス | は、はい。わかりました。 |
デミトリアス | それじゃあ、すぐにでも次の作業に取りかかろうか。二人とも、ついてきてくれ。 |
デミトリアス | カレイドスコープを起動する。……イクス、魔鏡をこちらに。 |
イクス | どうぞ。 |
デミトリアス | ありがとう。こちらの準備は整った。 |
ミリーナ | 私はいつでも大丈夫です。 |
イクス | 俺もいけます。 |
デミトリアス | では、鏡士の力を―― |
二人 | はい ! |
二人 | ―― |
デミトリアス | ――よし。これでレイヤード処理は成功だ。 |
イクス | レイヤード処理…… ! ?今のは具現化ではなかったんですか ? |
デミトリアス | え ! ?ゲフィオンから何も聞いていないのか ? |
ミリーナ | 何のことですか ? |
デミトリアス | 実は六つ目の大陸が具現化された直後からアニマの上昇率に異常が生じたんだ。 |
イクス | 六つ目……。ルーティと出会った大陸か。 |
デミトリアス | そこで既に具現化した大陸に再具現化を行うレイヤード処理を施して大陸を安定させる必要があったんだよ。 |
ミリーナ | あそこには街や孤児院が……すでに大勢の人たちがいます。大陸の人たちに影響はないんですか ? |
デミトリアス | 具現化を安定状態にしただけだ。理論上は何も問題ない。 |
イクス | その理論というのは一体 ? |
デミトリアス | そうだね……。君たちは、魔鏡工学や魔鏡機器の知識全般を身に付けているかな ? |
ミリーナ | ……いえ。 |
イクス | 俺も魔鏡技術の触りぐらいしか……。 |
デミトリアス | ならどこから説明したものか……。すまない、人に物事を解説するのはあまり慣れていなくてね。 |
デミトリアス | 時間をくれれば資料を用意できると思うんだけれど……。 |
イクス | それなら、その資料を待つ間に、レイヤード処理が本当に問題を引き起こしていないか調べに行っても構わないでしょうか。 |
ミリーナ | イクス…… !そうよね。ちゃんと自分たちの目で確かめておきたいものね。 |
デミトリアス | ……フフ !君たちは本当に仲がいいんだね。 |
デミトリアス | もちろん、問題はないよ。むしろ是非確認に行ってほしい。 |
デミトリアス | 二人にばかり仕事をさせて申し訳ないけれどどうか、よろしく頼むよ。 |
ミリーナ | 大丈夫です。お任せ下さい。 |
デミトリアス | ……そうだ、イクス。君の持つ魔鏡はカレイドスコープによる具現化の際に核となる唯一無二の特別な魔鏡だ。 |
デミトリアス | それは知っていたかな ? |
イクス | カレイドスコープを動かす時に必要だというのはゲフィオン様から聞いていましたがそこまでのものとは……。 |
デミトリアス | そうか……。ゲフィオンが君の性格を慮ってあまりプレッシャーを与えないようにしていたのかもしれないな。 |
デミトリアス | その魔鏡は、この世界を守るためには欠かせない重要なものだ。 |
デミトリアス | 君にとっても両親の形見だとも聞いている。くれぐれも大切にしてほしい。 |
イクス | は、はい。わかりました。 |
キャラクター | 1話 【孤児院付近】 |
イクス | レイヤード処理の影響の調査……。次は孤児院だな。 |
カーリャ | 大陸の主要な街や村を見回りましたけど何も影響はなかったじゃないですか。心配し過ぎですよ。 |
ミリーナ | これでいいのよ。こうやって自分たちの目で確かめることが大切なんだから。 |
イクス | カーリャ、光魔の鏡の気配は感じるか ? |
カーリャ | いいえ。これっぽっちもぶるぶるしません。やっぱり光魔の鏡は発生してないっぽいですよ。 |
イクス | そうか。少なくともレイヤード処理による光魔の発生や被害は心配なさそうだな。 |
ルーティ | おっ、イクスにミリーナじゃない。 |
ミリーナ | ルーティ、もしかして孤児院に行ってたの。 |
ルーティ | そうよ。久しぶりにね。あんたたちはレイヤード処理の調査 ? |
イクス | そうだよ。ところで、孤児院はどうだった ? |
ルーティ | それがもうびっくりよ。いやぁ、ホント具現化って凄いわ。 |
ミリーナ | えっと、どうしたの ? |
ルーティ | それがね、少し前から具現化された各大陸間で交易が行われるようになったらしくてさ。 |
ルーティ | 孤児院の食糧、日用品不足なんかもだいぶ解消されてたみたいなのよ。 |
ルーティ | これもあんたたちが地道に具現化の旅を進めてきたおかげね。 |
イクス | それじゃあ、孤児院ではレイヤード処理による問題や悪影響は何も発生していなかったんだな ? |
ルーティ | ないない。むしろチビども全員以前にも増してピンピンしてたわよ。 |
イクス | そうか……。それならよかった……。 |
ルーティ | ただ、少しだけ気になる情報があって……。 |
イクス | 気になる情報 ? |
ルーティ | レイヤード処理が完了してすぐに救世軍があちこち嗅ぎまわりはじめたみたいなのよ。 |
ミリーナ | そうなの ! ? |
イクス | 救世軍の動向……。タイミング的に怪しすぎるな。 |
ルーティ | 孤児院にも尋ねてきたんですって。金髪の少年を見かけなかったかって。 |
イクス | 救世軍が行方を追っているってことはもしかして、その人は鏡映点なんじゃ……。 |
ルーティ | あんたもそう思うのね。それなら……多分……。いや……きっと、あいつだわ。 |
ミリーナ | ルーティ、心当たりがあるのね ? |
ルーティ | ええ。金髪っていったらスタンよ。あたしと同じソーディアンマスターのね。 |
ルーティ | あいつホントにバカで世間知らずでさ。だから、トラブルに巻き込まれてなきゃいいんだけど……。 |
ルーティ | それに……あいつまで救世軍に押さえられたら……。 |
ミリーナ | ……ルーティ。 |
イクス | ひとまず救世軍より先にその人を保護しなくちゃいけないな。 |
ミリーナ | そうね。救世軍の動向を考えるとレイヤード処理の影響と無関係には思えないわ。 |
ルーティ | ありがと。正直助かるわ。さすがにあたし一人じゃ手に余ると思ってたのよ。 |
イクス | えっ。ルーティ、もしかして一人で行こうとしてたのか ? |
ルーティ | ま、確かな情報じゃないからね。無駄足になる確率も高いし付き合わせるのも悪いと思って。 |
イクス | けど、それでもルーティが行こうと思ったのは仲間のことが心配だったからだろ ? |
ミリーナ | それなら私たちも協力するのは当然よね。 |
ルーティ | まったく……。何も手に入らないかもしれないのによくそんなこと言えるわね。 |
ミリーナ | うーん。じゃあ、こう考えるのはどう ? |
ミリーナ | 私たちはルーティが協力してくれてとっても助かってる。だから、ルーティにも協力する。 |
イクス | ルーティの言うところのこれで『チャラ』ってやつだな ! |
ミリーナ | そうそう、それ !これで貸し借りなしよね ! |
カーリャ | お二人とも !むしろ利子つけて返さなきゃですよ ! |
ルーティ | ちょ、ちょっと。そんな育ちの悪い言葉使うもんじゃないわよ……。 |
アトワイト | ふふっ……。この子たちもなかなかのお人好しみたいね。 |
ルーティ | まったく……。 |
イクス | ……うん ? |
ミリーナ | イクス、どうかした ? |
イクス | ……いや。何でもない。たぶん、気のせいだ。 |
ミリーナ | 気のせい ? それって―― |
ルーティ | よしっ ! あんたたち、しっかり言質取ったから覚悟しなさい ! |
イクス | ああ。望むところだよ。 |
ルーティ | そうと決まればさっそく出発よ !行商人から目撃情報を仕入れてきたわ !ついて来なさい ! |
キャラクター | 2話 【8-1 バーンハルト街道 1】 |
スタン | はぁ……はぁ……。なんなんだ、さっきの兵士たちは……。いきなり襲いかかってきて……。 |
ディムロス | 理由はわからんがお前を狙っていることは確かなようだな。 |
スタン | 起きたら知らない場所に飛ばされてるし変な奴らに追いかけ回されるし悪い夢でも見ている気分だよ。 |
ディムロス | だが、これは夢ではないようだぞ。我らがいた世界を礎とした別世界と考えるのが妥当だろう。 |
スタン | そうだな。もし夢だったらそろそろリリスが起こしてくれる頃だし。 |
ディムロス | スタン、その発言だけは夢であってほしいと思ってしまったぞ……。 |
ルーティ | ホント、何バカなこと言ってるのよ。 |
スタン | ルーティ ! |
アトワイト | よかった。ディムロスも一緒みたいね。 |
ディムロス | アトワイト ! ? |
イクス | ルーティ、見つかったのか ! ? |
ルーティ | ええ。スタンよ。あたしの勘どおりこいつも具現化されてたみたいね。 |
スタン | えっと、ルーティ。この人たちは ?それに……ぐ、具現化 ? |
ルーティ | あたしが説明するよりイクスたちの方が早いわ。二人とも、頼んだわよ。 |
イクス | ああ。わかった。 |
イクス | ――ということなんです。 |
スタン | うーん、なるほど。 |
ルーティ | だいたい事情はわかった ? |
スタン | いや、全然。俺には難しすぎてさっぱりだよ。 |
ルーティ | はぁ……だと思ったわ……。 |
ルーティ | とにかく、あんたもこの世界を救うためこの二人に協力しなさい。 |
スタン | それはもちろん。 |
ミリーナ | えっ ! ? スタンさん、いいんですか ! ? |
イクス | ちょ、ちょっと待ってください。えっと……協力してくれるのは嬉しいです……。 |
イクス | だけど、もう少しちゃんと説明させてください……。今のままだと……申し訳ないです……。 |
スタン | そうかなぁ……。よくわからないけど、二人は困っててだから今ここに俺がいるんだろ ? |
イクス | そうですけど……。他にも色々事情があって……。 |
スタン | いいや。俺にとってはそれだけで十分だよ。二人を放っておくことはできない。 |
スタン | それに、困っている人を見過ごすなってのがエルロン家の家訓だからな。 |
イクス | ……スタンさん。 |
スタン | イクス、これからよろしく。 |
イクス | スタンさん、ありがとうございます ! |
スタン | ミリーナもよろしく。 |
ミリーナ | ええ。スタンさん。こちらこそよろしくお願いします。 |
カーリャ | ルーティさまもスタンさまもとってもいい人ですね。 |
イクス | そうだな。ルーティも俺たちが事情を説明し終わる前に是非協力させてくれって言ってくれたしな。 |
スタン | えっ、ルーティが ? |
ルーティ | ちょっと、スタン。なによその反応は。あたしだって人助けぐらいするわよ。 |
スタン | ご、ごめん。ちょっと意外だったから。 |
ディムロス | だが立派な心がけだぞ。いついかなるときも世界のために行動する。それがソーディアンマスターだ。 |
ルーティ | そうそう !これもソーディアンマスターの使命よ ! |
ルーティ | そ、それに……二人は王宮に仕えてるからうまいこといけば国家予算の数割ぐらいもらえたりするかもだし…………。 |
スタン | あっ、よかった。いつものルーティだ。 |
ディムロス | すまないが先ほどの発言は撤回させてくれ。 |
アトワイト | なんだか二人に申し訳なくなってきたわね……。 |
イクス | ……やっぱり。 |
ルーティ | あっ ! ちょ、ちょっと !今のは冗談よ ! ? |
イクス | やっぱり……聞こえる。 |
ルーティ | えっ…… ? |
イクス | ミリーナも聞こえるだろ ! ?男の人と女の人の声が ! ? |
ミリーナ | ええ、聞こえてるわ !もしかして、ディムロスさんとアトワイトさん ! ? |
ディムロス | 我の声が聞こえるのか ! ? |
アトワイト | 私の声も ! ? |
イクス | はい ! しっかりと ! |
ルーティ | ちょ、ちょっと待って !なんであんたたち、ソーディアンの声が聞こえるようになってるわけ ! ? |
ミリーナ | もしかして、具現化のレイヤード処理の影響かしら ! ? |
イクス | ……たぶん、その可能性は高いと思う。 |
イクス | ほら、この前、ミクリオとエドナ様と出会っただろ。 |
イクス | あの時はスレイの認知する世界像が反映されて本来、俺たちには認識できない天族を認識できるようになった。 |
イクス | あれと同じ理屈だよ。 |
イクス | ルーティの認知する世界像から別の誰かの認知する世界像に上書きされたんだと思う。 |
ミリーナ | 別の誰かって……スタンさん ? |
イクス | そうなると、スタンさんにとって剣が生きてることは当たり前だったのか ? |
スタン | いや、普通剣は生きてないし。 |
ディムロス | その台詞……なんだか出会った当初のことを思い出すな……。 |
ミリーナ | スタンさんの世界像じゃないみたいね。でも、それじゃあ……いったい誰の……。 |
ミリーナ | レイヤード処理の際に具現化された鏡映点が他にいるのかしら。 |
イクス | それはわからない……。けど、一つだけわかったことがある。 |
イクス | それはレイヤード処理による影響は具現化大陸の安定化以外にも確かにあったってことだ。 |
イクス | 俺たちがソーディアンの声を認識できるようになっただけなら問題はないのかもしれない。 |
イクス | だけど……それ以外にまだ気づいていない悪影響が発生しているかも……。 |
救世軍兵士 | 見つけたぞ ! あの男だ ! ! |
スタン | あいつら、こんなところまで追いかけてきたのか ! ?どれだけしつこいんだよ ! |
イクス | 救世軍 ! ? |
ディムロス | イクス、あやつらが敵対勢力なのだな。 |
イクス | そうです。鏡映点であるスタンさんを捕らえようとしてるんだと思います。 |
ディムロス | スタン、わかっているな ? |
スタン | ああ ! いくぞ、ディムロス ! |
ルーティ | アトワイト ! |
アトワイト | いつでもいいわよ。 |
イクス | ミリーナ、俺たちもいくぞ ! |
ミリーナ | ええ ! |
キャラクター | 4話 【8-2 バーンハルト街道 2】 |
ミリーナ | リオンさん……。どうして救世軍に協力してるのかしら……。 |
イクス | わからない……。 |
ルーティ | だけど、今。あいつが敵であることは間違いないわ。 |
スタン | いや……リオンは敵じゃない。 |
ルーティ | あんた、自分が斬られたこと忘れたの ! ?少しは人を疑うことを覚えなさいよ ! |
スタン | それでも、リオンは敵じゃない !俺の仲間だ ! ! そして、友達だ ! ! |
イクス | ……そうなんですね。 |
スタン | リオンはすごく強くて、俺よりもずっと頭が良くて責任感もあってとっても良い奴なんだよ。 |
スタン | きっと何か事情があるんだ。救世軍と一緒になって世界を滅ぼそうとする奴じゃない。 |
ルーティ | そりゃ、そうかもしれないけど……。 |
イクス | スタンさん、ルーティ。ごめん……こんな争いに巻き込んで……。 |
ミリーナ | 私たちのせいで……仲間と……敵対することになって……。 |
ルーティ | あたしはもう……覚悟は決まってる。あんたたちは気にすることないわよ。 |
スタン | そうだよ。それに、イクスとミリーナは何も悪いことはしていないじゃないか。 |
イクス | でも、俺たちと一緒にいたらきっと……リオンさんと戦うことに……。 |
スタン | 確かに……俺は……リオンと戦いたくない……。 |
ディムロス | スタン ! ?もしや救世軍につくつもりか ! ? |
スタン | 違うって !もちろんイクスとミリーナに協力はする ! |
イクス | だけど……それじゃあ……。 |
スタン | リオンと戦うことになるかもしれないって言ったよな ? |
スタン | それってつまり、リオンとまた会うことができるかもしれないってことだろ ? |
スタン | そのとき、ちゃんとお互い話し合えばきっとなんとかなる。何か事情があるなら助けることもできる。 |
スタン | そうしたらイクスとミリーナも助けられてリオンも助けられる。 |
スタン | だから、二人は気に病むことないよ。そのまままっすぐに自分が正しいと思ったことをすればいい。 |
イクス | ……スタンさん。 |
ルーティ | まったく……あんたらしいわ。 |
ディムロス | 相変わらず考えが甘い。だが、進むべき道は間違っていないぞ。 |
アトワイト | ひとまず、今後の方針が固まったみたいね。 |
イクス | はい。俺たちがまずやるべきなのは救世軍の動向の調査です。 |
ミリーナ | そうね。救世軍のことを調べていけばリオンさんのこと、レイヤード処理の影響もわかってくる筈よ。 |
ルーティ | それなら街へ向かうわよ。手分けして聞き込みね。 |
イクス | 情報収集なら港町が最適だ。この大陸の交易の中心となってるからな。 |
スタン | わかった。さっそく向かおう。 |
キャラクター | 5話 【8-5 水路に囲まれた港街 1】 |
イクス | みんな、救世軍について何かわかったか ? |
スタン | ああ。街で聞き込みしてきた。少しだけど情報も手に入ったよ。 |
ルーティ | だけど……なーんか釈然としないのよね。 |
ミリーナ | スタンさんとルーティもそうだったのね……。 |
イクス | まさか、悪い噂や怪しい話どころかいい奴らだって評価しかないんだもんな……。 |
スタン | 街の人たちの安全のために魔物を討伐したり、自警団を組織して街の治安を守ったりとかしてたんだな。 |
ルーティ | あたしが仕入れた情報じゃ、交易も実は救世軍が主導になって進めてたみたいなのよね。 |
ミリーナ | そうだったの ! ? |
イクス | 救世軍……調べれば調べるほどよくわからないな……。 |
スタン | なんだか……俺もわからなくなってきたよ。 |
ディムロス | スタン ! 惑わされるな !襲われたことを忘れたか ! |
ルーティ | そうよ。そういう奴らに限って裏でかなり悪いことやってるに決まってるんだから。 |
アトワイト | 確かに、私たちを妨害し、鏡映点を押さえ世界を滅びへと誘おうとしているのは紛れもない事実なのだから。 |
スタン | まあ、それはわかってるけど。 |
イクス | 肝心の救世軍が何をしようとしてるのか、とかリオンさんの行方、レイヤード処理の影響もわからずじまいだったな……。 |
ミリーナ | 大丈夫よ。まだ聞き込みをしていない街や村だってあるじゃない。 |
ルーティ | けど、今日のところはこれぐらいにしましょ。さすがに疲れたわ。 |
スタン | そうだな……腹も減ったし……。 |
イクス | それじゃあ宿に向かおう。さっき予約しておいたから。 |
ルーティ | おっ、さすがイクス ! 気が利くわね !行きましょ行きましょ ! |
? ? ? | …………。 |
ミリーナ | …… ! |
イクス | ミリーナ ? |
ミリーナ | イクス、ちょっと先に行っててくれる ? |
イクス | あ、あぁ。けど、どうかしたのか ? |
ミリーナ | ううん。何でもないの。かわいい雑貨屋さんがあったから。 |
ミリーナ | 無駄遣いはしないから安心して。少し見てくるだけ。 |
イクス | 無駄遣いの心配はしてないよ。ミリーナは買い物上手だからな。 |
イクス | この前もミリーナが買っておいてくれた物のおかげで助かったし。 |
ミリーナ | ふふっ。そう言ってもらえると嬉しいわ。 |
イクス | 少し気分転換でもしてくるといいよ。けど、あまり遅くならないようにな。 |
ミリーナ | ええ。わかったわ。 |
イクス | それじゃあ、先に行ってるよ。 |
ミリーナ | うん。 |
ミリーナ | ……カーリャ、行くわよ。 |
カーリャ | いいですけど、雑貨屋さんなんてありましたっけ ? |
ミリーナ | そうじゃないわ。カーリャは気づかなかったの ? |
カーリャ | えっ、何がです ? |
ミリーナ | ここに来てからずっとイクスをつけ回してる奴がいるわ。 |
キャラクター | 6話 【8-6 水路に囲まれた港街 2】 |
| イクスを尾行していた謎の男。ミリーナはその正体を探るべく男の後を追い人気のない街外れの一角にたどり着く―― |
ミリーナ | イクスをつけ回してた男……どこに向かってるのかしら……。 |
カーリャ | ミリーナさま。これマジでヤバいですって。イクスさまたちも呼んで来ましょうよ。 |
ミリーナ | ダメよ。今戻ったら見失っちゃうし一人で行動した方が尾行にも気づかれにくいわ。 |
ミリーナ | それに、まだあっちは私に気づいてない。情報を手に入れる絶好のチャンスなのよ。 |
カーリャ | ですけど……んんんっ~~。 |
ミリーナ | 静かに。誰かと接触を始めたわ。 |
救世軍兵士 | ……つけられてはいないな ? |
男 | ああ。大丈夫だ。俺の監視にも気づいてないさ。 |
ミリーナ | (あれは……救世軍の兵士 ! ?ということは……あの男も………… ! ) |
救世軍兵士 | それで、あいつらは ? |
男 | 今は宿だ。俺たち救世軍について調べているようだがまだ何もバレてはいない。 |
救世軍兵士 | 今後の予想しうる行動は ? |
男 | しばらく俺たちについての情報収集だろうな。別の街や村に向かう可能性が高い。 |
救世軍兵士 | 今この大陸を動き回られると厄介だ。別の大陸に向かわせることはできないか ? |
男 | そうだな……偽の情報を流せば可能な筈だ。やってみる。 |
救世軍兵士 | 頼んだぞ。これで【特異鏡映点】の確保に人員を総動員できる。 |
ミリーナ | (特異鏡映点 ! ? ) |
男 | なあ。その特異鏡映点ってのは一体何なんだよ ? |
救世軍兵士 | マークさんによるとこの世界を救うことができる存在らしい。 |
男 | っていうと ? |
救世軍兵士 | 俺も小耳に挟んだ程度なんだがなんでも特異鏡映点ってのは―― |
救世軍兵士 | っていう存在なんだと。 |
男 | なるほどな……。そりゃ、意地でもあいつらに渡すわけにはいかないな。 |
ミリーナ | (うそ……。特異鏡映点なんて存在が具現化されてたなんて……。しかも、そんな力が……) |
ミリーナ | (すぐイクスに知らせないと ! ) |
マーク | 盗み聞きたぁ、お育ちがいいことで。 |
ミリーナ | マーク ! ? |
男 | ん ! ? |
救世軍兵士 | 何者だ ! ? |
ミリーナ | くっ……気づかれたわね……。 |
マーク | ったく、面倒なことになったぜ。まさか特異鏡映点について知られちまうとはな。 |
マーク | お嬢ちゃん、さすがに今回ばかりは跳ねっ返りが過ぎてるぜ。ま、らしいと言えばらしいけどな。 |
ミリーナ | ……私を始末する気 ? |
マーク | 大切な駒を殺すわけねぇだろ ? |
ミリーナ | ……どういう意味 ? |
マーク | 知りたがりは命を縮めるぜ ? |
ミリーナ | それじゃあ、失礼させてもらっていいかしら ?イクスが帰りを待ってるから。 |
マーク | アハハハッ ! こりゃ傑作だなっ !こんなときでもイクスかよっ ! ! |
マーク | じゃじゃ馬もその辺にしときな。 |
ミリーナ | ! ! |
マーク | 人質を取るなんざ、ホントだせぇがこっちも背に腹は代えられない状況だ。 |
マーク | 今、あいつらに特異鏡映点の存在を知られると厄介だからな。 |
マーク | 一緒に来てもらうぜ。 |
ミリーナ | ………………。 |
イクス | ……ミリーナ、遅いな。買い物に時間がかかるタイプなのはわかってるけど……遅すぎる。 |
イクス | ……もしかして、何かあったんじゃ。不安になってきたな……。 |
カーリャ | イクスさま ! ! |
イクス | カーリャ ! ? なんで一人なんだ ! ?ミリーナはどうした ! ? |
カーリャ | ミリーナさまが……救世軍にさらわれてしまいました ! ! |
イクス | なん、だって……。 |
イクス | カ、カーリャ。冗談……だよな ?心配性な俺を……からかってるだけだよな…… ? |
カーリャ | 冗談じゃないですってば ! !ガチなやつですよっ ! ! |
イクス | なっ……何があったんだっ ! ?なんでミリーナはさらわれたっ ! ?無事なのかっ ! ? 今どこにいるっ ! ? |
カーリャ | そ、そんないっぺんには答えられないですってば ! ! |
イクス | わかってるからっ !いいから早く教えてくれっ ! ! |
カーリャ | イクスさまを尾行してた奴に気づいて情報を探っていたら、マークが現れてミリーナさまを連れ去ったんです ! |
カーリャ | なんでも特異鏡映点っていう存在がいるらしくてイクスさまたちにそのことを知られるとマズいとかで ! |
イクス | 特異鏡映点 ! ? なんだそれは ! ?いや、それよりミリーナは ! ? |
カーリャ | ミリーナさまは無事だと思いますがどこに連れ去られたかはカーリャもわからなくて―― |
イクス | カーリャ ! ! |
カーリャ | あああっ ! !ミリーナさまと離れすぎて力が…… ! ! |
イクス | カーリャ ! 待ってくれ ! !何か、何か他にないか ! ?なんでもいい、教えてくれ ! ! |
カーリャ | とにかくミリーナさまは生きてます ! !だから早くミリーナさまを―― |
イクス | カーリャ ! ! |
ルーティ | なによ。騒がしいわね。どうかしたの……って、イクス ! ? |
スタン | イクス ! 何があった ! ? |
イクス | どうしよう……どうすればいい……。 |
ルーティ | 落ち着きなさい !どうしたの ! ? 何があったの ! ?ちゃんと話して ! |
イクス | ……ミリーナがさらわれた。 |
スタン | ミリーナが ! ? 一体誰に ! ? |
イクス | ……………………。 |
スタン | おいっ ! イクス ! !誰にさらわれたんだよ ! ! |
ルーティ | バカ ! 状況からみて救世軍に決まってるでしょ ! ! |
ルーティ | くっ……まだ遠くには行ってない筈。あたりを探すわよ。 |
スタン | そうだな ! イクス、行くぞ ! ! |
キャラクター | 7話 【8-9 バーンハルト街道 7】 |
| 静寂に包まれた一室。そこには気を失いぐったりと横になっている鏡士の少女。そして救世軍の指示により彼女を見張るリオン・マグナスの姿があった―― |
シャルティエ | まさかスタンさんとディムロスまで具現化されてるとは思いませんでしたね。 |
リオン | シャル……付き合わせてすまないな。 |
シャルティエ | 何言ってるんですか。坊ちゃんは僕のマスターなんです。どこまでもお供しますよ。 |
シャルティエ | たとえ、スタンさんたちと敵対しようと。 |
リオン | だが、とんだお笑いぐさだな。今度は救世軍に従ってこうして、女の見張りをしている始末だ。 |
ミリーナ | ………………。 |
リオン | これではあの時と何も変わっていない……。 |
シャルティエ | そんなことはありませんよ。必ず好機はやって来ます。 |
シャルティエ | それに、この世界でも僕たちは一緒じゃないですか。 |
シャルティエ | 僕たち二人がいればできないことはない。坊ちゃん、そうでしょう ? |
リオン | ……ああ、そうだな。そして……今度こそ助けるんだ。 |
シャルティエ | はい ! その意気ですよ ! ! |
リオン | シャル……。ありがとう。 |
シャルティエ | いえいえ。坊ちゃんが元気になってくれてよかったです。 |
シャルティエ | それにしても彼女……ミリーナさんでしたっけ ?悪い人には見えませんよね。 |
シャルティエ | 救世軍の奴らが言うにはこの世界を滅ぼそうとしている鏡士の一人って話でしたけど。 |
リオン | 誰が何を考えてるなどわかったものではない。信じられるのは自分だけだ。 |
シャルティエ | それは……そうですけど……。 |
ミリーナ | うっ……ここは……。 |
シャルティエ | あっ、目を覚ましたみたいですね。 |
リオン | …………。 |
ミリーナ | ……あなた、リオンさん ?どうして……ここに……。 |
リオン | お前が勝手な行動をしないよう監視するためだ。 |
ミリーナ | そうじゃないわ。どうして救世軍と一緒にいるのかって聞いてるのよ。 |
リオン | お前には関係のないことだ。黙れ。 |
ミリーナ | スタンさんもルーティもあなたのこと心配してたわよ。 |
リオン | 聞こえなかったか。僕は黙れと言ったんだ。 |
ミリーナ | それに、スタンさんは言ってたわ。リオンさんは仲間だって。友達なんだって。救世軍に協力するような人じゃないって。 |
リオン | 黙れと言っている ! ! |
ミリーナ | …………。 |
ミリーナ | 何か事情があるのでしょう ? |
リオン | 人の心配をするより少しは自分の心配をしたらどうだ。 |
ミリーナ | いいえ。私は、心配も不安も何一つないもの。 |
ミリーナ | 今、イクスは必死になって私を助けようとしてくれているから。 |
リオン | ただ助けを待っているだけの奴は能天気なものだな。 |
ミリーナ | 助けられる側が能天気でいられるなんて本当は思ってないでしょう ? |
リオン | …………。 |
ミリーナ | イクスと私は一緒に戦おう、頑張ろうって約束した。そして今、イクスは頑張ってる。 |
ミリーナ | だから、私はくじけたりしない。私も頑張って、この状況を打破しようと必死に考えているのよ。 |
ミリーナ | ねぇ、リオンさん。あなたは誰を助けようとしているの ? |
リオン | ……貴様。先ほどの話を聞いていたな ? |
シャルティエ | もしかして、僕の声も聞こえてたりして。 |
ミリーナ | ええ。聞こえてるわよ。ソーディアンのシャルティエさんよね ? |
シャルティエ | ええええっ ! ?まさか本当に聞こえてるなんて―― |
リオン | シャル ! |
シャルティエ | あっ……す、すいません……。 |
リオン | 貴様が何を考えていようが僕には関係ない。 |
リオン | ここから逃がすつもりもない。おとなしくしていろ。 |
ミリーナ | リオンさんの覚悟はわかってる。大切な仲間と敵になっても助けたい人がいるんでしょう ? |
ミリーナ | でも、本当に私たちは敵対しなくちゃいけないの ?協力することはできないかしら ? |
ミリーナ | 事情だけでも話してみない ? |
リオン | ……敵に語ることなどない。 |
シャルティエ | 坊ちゃん……。 |
マーク | ははっ。ちょっと見ない間にずいぶんと仲良くなったみたいじゃねぇか。 |
ミリーナ | マーク ! |
マーク | 俺は構わねぇぜ。いつでも鏡士どもの元に行けばいい。 |
リオン | 貴様…… ! よくもぬけぬけと…… ! ! |
リオン | マリアンはどこにいる ! ! |
ミリーナ | (……マリアンさん ! ? ) |
マーク | まあ、落ち着け。あのメイドなら今は俺たちが預かっている。どこにいるかは悪いが教えられねぇな。 |
ミリーナ | リオンさん…… !マリアンさんって人が人質になってるのね ! |
ミリーナ | マーク ! どうしてそんな酷いことするの ! ? |
マーク | ……ははっ ! 聞いてた通りの女だな。どうして酷いことをするのかって ? |
マーク | 強いて言うなら、あいにくと酷いことってのは効果的だからだな。 |
ミリーナ | 酷いことだとはわかってるのね ?だったら―― |
マーク | おい、お前。この女を例の場所に連れていってくれ。 |
救世軍兵士 | 了解であります ! |
? ? ? | ――待ちなさい。 |
? ? ? | 肉体労働は私の仕事ではありませんがあなたでは、彼女に不釣り合いです。私がエスコートしましょう。 |
マーク | ……ファントム ! ? |
ファントム | さあ、来てもらいましょうか。麗しのミリーナ様。 |
ミリーナ | くっ…… ! |
リオン | …………。 |
ファントム | ……リオン、あなたはこう考えていますね。 |
ファントム | 「コイツは彼女の居場所を知っている。コイツを脅せば何か手がかりが掴めるかもしれない」と。 |
ファントム | あなたの考えている通りだ。私は、彼女の居場所を知っています。 |
リオン | ほう。そのことを僕に言うのか。 |
マーク | はぁ……余計なことを……。 |
ファントム | ですが、きみなら私がどんな人間かも見抜いているんじゃありませんか ?フフ……私の口は堅いですよ ? |
ファントム | そう……彼女を助けるためにも今は救世軍に従うしかない。それが彼女を救う唯一の道です。 |
ファントム | 頭の切れるあなたになら理解できると思いますがねぇ ? |
リオン | ずいぶんとおしゃべりが好きなようだな。ならば口の堅さを試してやろう。 |
リオン | 貴様が消えても聞き出す手段は他にもある。 |
マーク | やめろ。時間の無駄だ。あんたも斬られる前にさっさと行け。 |
ファントム | アハハハハ、怖い怖い。では失礼しますよ。 |
マーク | さて。お前にはやってもらうことができた。 |
リオン | いつまでこんな茶番に付き合わせる気だ。はやくマリアンを解放しろ。 |
マーク | 次が最後だ。そうしたら解放する。約束だ。 |
リオン | 偽れば命で償ってもらう。 |
マーク | 男に二言はねぇよ。詳しく話す。ついて来な。 |
キャラクター | 8話 【8-10 グレバム森林 1】 |
ルーティ | チッ……ここもダメか。なんで何の情報もないのよ。 |
スタン | まだ探していないところはある。次はあっちの方に行ってみよう。 |
イクス | ………………。 |
スタン | イクス、元気出せよ。カーリャが無事だって言ってただろ。 |
イクス | だけど、それはさらわれた時の話だ。今がどうなのかはわからない……。 |
イクス | それに……マークはミリーナを殺そうとしたんだ……。今……本当に生きてるのかも……。 |
ルーティ | けど、本気で殺そうと思ってんならその場で始末しちゃってる筈でしょうが。あたしは生きてると思うわよ。 |
イクス | だけど、酷い目にあってるかもしれないだろ……。 |
ルーティ | ……あのさ。心配してる暇があったらちょっとは捜すのに集中してくれない ? |
ルーティ | さらわれちゃったもんは仕方ないでしょ。今のあんた、相当役立たずだわ。 |
スタン | ルーティ、そこまで言うことないだろ。ずっと一緒だった幼馴染みがさらわれたんだぞ。 |
イクス | いや……いいんだ。ルーティの言う通りだよ……。俺が……役立たずだから……ミリーナはさらわれたんだし……。 |
イクス | そう……俺が……俺があのとき一緒に行ってたら……ミリーナはさらわれたりしなかったんだ……。 |
イクス | それに……ミリーナの居場所がわかっても救世軍にはマーク、それにリオンさんまでいる……。 |
イクス | 少し鏡士の力が使えるようになっただけの、今の俺じゃミリーナを助けられるか……わからない……。 |
ルーティ | あんたね……。 |
ルーティ | いい加減にしなさいよ ! ! |
イクス | えっ……。 |
ルーティ | あんたっていつもそうよね ! |
ルーティ | ソーディアンの力があったらとかあのとき一緒に行ってればとかないものねだりや仮定の話ばっか ! ! |
ルーティ | 今のあんたは役立たず以下 ! !なんの価値もないゴミクズよ ! |
イクス | …………ごめん。 |
アトワイト | ちょっと。ルーティ、落ち着きなさいよ。 |
スタン | そうだ。さすがに言い過ぎだぞ。 |
ルーティ | 何 ! ? あたしが悪いっての ! ? |
ルーティ | ディムロスだって今のこいつ見て何も思わないわけ ! ?心配するだけで何もしないこいつを ! ! |
ディムロス | ……ルーティの考えは間違っていない。 |
スタン | ディムロス !イクスの気持ちだって考えろよ ! |
スタン | 心配で不安になるのは当然のことだ !だから今は俺たちがイクスを支えなきゃなんだろ ! |
イクス | スタンさん……。いいんだ……俺は心も弱いから……。 |
ルーティ | だからそういうところだって言ってんのよ !孤児院の子たちだって自分の境遇を嘆いたりはしない ! ! |
ルーティ | 何かを手に入れたかったら必死こいて頑張るしかないのよ ! !少なくともあたしはそうしてきた ! ! |
ルーティ | あんたが今しなくちゃいけない本当のことはなんなのっ ! ?ちっとは根性見せなさいよっ ! ! |
イクス | 俺が今しなくちゃいけないことは……。 |
イクス | ミリーナを……助けること……。 |
ルーティ | わかったでしょ。ったく、こうして話してる時間も惜しいってのに。 |
イクス | ……ルーティ。ありがとう……そうだよな……。 |
イクス | 俺は今、ミリーナを助けるために頑張らなくちゃいけないんだ……。 |
イクス | それに……ミリーナと約束した。一緒に戦おう、頑張ろうって……。 |
イクス | きっとミリーナは、捕まってる今でもなんとかしようって頑張ってる……。 |
イクス | 頑張らなきゃ……いけないよな……。 |
スタン | イクス、そうだよ。頑張ろう。ミリーナだけじゃなく俺もルーティもディムロスもアトワイトもみんなついてる。 |
スタン | みんなで頑張ってミリーナを助けるんだ ! ! |
ルーティ | 当たり前でしょうが。ほら、さっさと行くわよ。まだ何も掴めてないんだから。 |
イクス | いや……ちょっと待ってくれ……。他の場所を調べても何もわからない可能性が高い……。 |
ルーティ | あんたねぇ……。まだそういうこと言うの……。 |
イクス | ルーティ、違うんだ。もう俺たちはこんなに調べた。なのに何もわからないのはおかしいんだ。 |
イクス | ミリーナが言ってた。何もわからないってことも調べたからわかったことだって……。 |
イクス | そう……何も目撃情報がないのはあきらかに不自然だ……。 |
イクス | 待てよ…… ? カーリャが消えたとき消失の仕方が一定ペースではなく加速度的だった……。 |
イクス | つまり……移動手段は……少なくとも徒歩や馬車じゃない……。 |
イクス | ……海路 !そうだ ! あの時点での風向きと風速からこれしか考えられない ! |
スタン | けど、港町での目撃情報もなかったよな。 |
イクス | 救世軍は交易を主導していた。人目に付かないようミリーナを貨物内に閉じ込めて船に運ぶことも容易な筈。 |
ルーティ | 確かに……そうかもしれないわ。急いで街に戻ってミリーナが乗せられた船を調べましょ。 |
イクス | いや、その必要はない。船の出入港のスケジュールと仕向港は全部頭に入ってる。 |
ルーティ | えっ。どうしてあんたそんなこと知ってるのよ ? |
イクス | 港に着いたら港湾事務所に立ち寄るのが癖になっていてさ。そのときスケジュール表を読んだんだ。 |
スタン | それを一発で覚えたって言うのか ! ? |
ルーティ | 本だけじゃなくスケジュール表まで一度読んだらすべて記憶できるってわけね。なんて記憶力なのよ……。 |
イクス | あの時刻から、ミリーナが乗せられたと思われる船は一つしか考えられない。 |
イクス | そしてその船が向かった先もちゃんと覚えてる。 |
スタン | ってことは、ミリーナがいる場所がだいたいはわかったってことか。 |
イクス | たぶんそこまでいけばミリーナの居場所も特定できる。 |
ルーティ | どういうこと ? |
イクス | はじめて具現化の旅に出るときミリーナとはぐれたりしないか不安でガロウズに頼んだことがあったんだ。 |
イクス | 俺はここから東の方を回ってみるからミリーナとカーリャは西の方を頼むよ。 |
イクス | 何かあったら魔鏡の通信で知らせるってことで。 |
イクス | ミリーナに近づければ、魔鏡で通信が取れる筈だ。結局、全然使ってはいなかったけどミリーナならきっと覚えてる。 |
イクス | 俺はミリーナを信じる。 |
ルーティ | よし。そうときたらすぐに向かうわよ。 |
スタン | イクス、案内よろしくな。 |
イクス | ああ。任せてくれ。 |
キャラクター | 9話 【8-13 ロベルト洞窟 1】 |
| リオンはマークから最後の命令を受ける。救世軍に捕らわれた最愛の人を救うため成し遂げねばならない命令とは―― |
リオン | 足止めだと ? |
マーク | そうだ。あいつらはあの女を助けにこっちにやって来る。 |
マーク | だが、今うろうろされると厄介だ。特異鏡映点を先に押さえられちまうかもしれねぇからな。 |
マーク | まっ、キツそうなら断ってくれや。ソーディアンマスター二人に鏡士が一人。返り討ちになるかもしれねぇだろ ? |
リオン | ずいぶんと舐められたものだな。 |
マーク | ははっ。さすが鏡映点様だ。こっちは人手不足だから助かるぜ。 |
リオン | そんなことよりマリアンは無事なんだろうな ? |
マーク | 殺すわけねぇだろ。もちろん生きてるぜ。お前も知っての通りあのメイドは特異鏡映点。 |
マーク | この世界を救うことができる存在を殺したりなんてしねぇよ。 |
リオン | ……マリアンをいつ解放するんだ ? |
マーク | このゴタゴタが片付いた後ちゃんと解放する。ただし、条件付きになるが。 |
リオン | ……条件 ? |
マーク | 救世軍の監視下でならって意味だ。悪いが特異鏡映点は手元に置いておく必要があるからな。 |
マーク | だが、救世軍の監視下でなら女の自由、身の安全は保証する。もちろんお前との接触も認める。 |
マーク | お前ももう俺たちに協力する必要はない。どこにでもいけばいいさ。 |
マーク | これが最大限の譲歩だ。この条件が飲めるか ? |
リオン | …………。 |
マーク | ……交渉は成立ってことでよさそうだな。つまりあとはお前の腕次第だ。 |
マーク | 俺はさっそく特異鏡映点を押さえに向かう。うっかり死ぬんじゃねぇぞ ? |
シャルティエ | 坊ちゃん、あの条件でよかったんですか ?あれでは結局囚われの身に変わりはありませんよ。 |
リオン | あんな条件に従うつもりはない。マリアンと会えればこっちのものだ。救世軍を倒し、共に逃げる。 |
シャルティエ | まあ、普通そうしますよね。あのマークって男もそれぐらい想像付く筈なのに何考えてるんだか。 |
リオン | 知ったことか。だが……ようやくここまできた。 |
シャルティエ | ……ええ。そうですね。 |
リオン | ……あと少し。あともう少しで……助けられるんだ…………。 |
シャルティエ | 坊ちゃん。 |
リオン | 行くぞ、シャル。 |
シャルティエ | はい ! |
リオン | ……マリアン。待っていてくれ。 |
キャラクター | 10話 【8-15 ロベルト洞窟 3】 |
| とある場所に閉じ込められるミリーナ。そこで思わぬ人物と出くわすことになる―― |
ミリーナ | …………。 |
救世軍兵士 | ここでおとなしくしていろ。 |
救世軍兵士 | じゃあ、俺たちも向かうか。 |
救世軍兵士 | ああ。 |
ミリーナ | ………………。 |
ミリーナ | よし。行ったみたいね。それなら―― |
カーリャ | うわ~~っ ! ミリーナさま~~っ ! !ご無事だったんですね~~っ ! ! |
ミリーナ | 静かに。 |
カーリャ | あ、ああぁ。す、すいません…………。 |
ミリーナ | ふふっ。けど、心配してくれてありがと。 |
カーリャ | 当然ですよぉ……。 |
ミリーナ | カーリャ、あなたの身体ならここから抜け出せるわよね ? |
カーリャ | はい。あの隙間からなら。 |
ミリーナ | あたりの様子を見てきて欲しいの。兵の数と配置、脱出経路、地形的特徴とか。 |
カーリャ | そんなに遠くには行けないですけど大丈夫ですか ? |
ミリーナ | もちろんよ。カーリャができる範囲で。それだけでもすごく助かるわ。 |
カーリャ | わかりました。では行ってきますね。 |
ミリーナ | 気をつけてね。 |
ミリーナ | ……それにしても寒いわね。ずっといたら体調を崩しそう……。 |
ミリーナ | けど、カーリャを待っている間にも私ができることをやらないと。 |
ミリーナ | まずはイクスに魔鏡の通信を送らなきゃ。届くといいんだけど。 |
? ? ? | こほっ……。 |
ミリーナ | そこに誰かいるの ! ? |
? ? ? | ごめんなさい。驚かせてしまったわね。 |
ミリーナ | えっ…… ! ? |
ミリーナ | なんで王宮のメイドさんがここに ! ? |
? ? ? | あなたは……あの時の。確か……鏡士さまでしたね ? |
ミリーナ | はい。鏡士のミリーナ・ヴァイスです。それより、どうしてあなたが……。 |
ミリーナ | 待って……救世軍に捕らわれているってことはもしかして……マリアンさん ! ? |
マリアン | どうして私の名前を ? |
ミリーナ | やっぱりマリアンさんですね !無事でよかった !リオンさんから聞きましたよ ! |
マリアン | エミリオから……。 |
ミリーナ | えっ ? |
マリアン | いいえ。なんでもありません……。 |
ミリーナ | マリアンさん、安心してください。今脱出方法はないか探してるところです。 |
ミリーナ | それに私の仲間も必ず助けに来てくれます。だからもう大丈夫ですよ。 |
マリアン | そうなのですね……よかった……。ありがとうございます。 |
マリアン | あと……。リオン様は……無事でしょうか……。まだ救世軍に……。 |
ミリーナ | ……マリアンさん。 |
ミリーナ | リオンさんは……無事です。ちゃんと自分の意思で行動しています。 |
ミリーナ | だから、今はリオンさんを信じましょう ? |
マリアン | ですが、また……私のせいで…………こほっ……。 |
ミリーナ | マリアンさん ? 大丈夫ですか ! ? |
マリアン | こほっ……えぇ………。ここに……連れてこられてから……少し……体調が…………悪く、て―― |
ミリーナ | マリアンさん ! ? |
マリアン | はぁ……はぁ………………。 |
ミリーナ | すごい熱…… !マリアンさん、しっかりしてください !すぐ治療しますから ! |
ミリーナ | マリアンさん ! マリアンさん ! ? |
キャラクター | 11話 【8-16 ロベルト洞窟】 |
スタン | イクス、魔鏡の通信はつながったか ? |
イクス | ミリーナからの通信を受け取った !とにかく無事みたいだ ! |
ルーティ | ふぅ……これで一安心ね。 |
イクス | けど、王宮にいたメイドさんも何故か捕らえられてるみたいなんだ。 |
イクス | ミリーナによると、体調があまり良くないみたいで……。 |
スタン | それならその人を助けるためにも早く行かないとな。 |
ルーティ | それで、ミリーナたちが閉じ込められている場所はどこなの ? |
イクス | 具体的な場所はわからないけどこれだけ情報があれば特定できそうだ。いま考えるから待っててくれ。 |
アトワイト | ディムロス。彼、だいぶいい目つきになったわね。 |
ディムロス | ああ。そうだな。 |
アトワイト | 地上軍最高司令官リトラーとまではいかないけれど、なかなかの切れ者なんじゃないかしら ? |
ディムロス | だが、まだ未熟すぎる。己への自信のなさ、迷いが強すぎせっかくの知恵を活かしきれていない。 |
ディムロス | それに、剣の腕もまだまだだ。型から外れることを無意識に恐れている。あれでは地上軍ではやっていけん。 |
アトワイト | ふふっ。あなたは相変わらずね。それだけ口うるさく言うってことは少しは見どころがあるって事かしら。 |
ディムロス | 素質はある……とだけ言っておこう。我にはスタンがいるからな。これ以上、面倒は見切れん。 |
ルーティ | あんたたち、静かにしてなさいよ。イクスが集中してるんだから。 |
イクス | ……これはジュードから教えてもらった薬剤としても使える花……。日陰かつ風のあまりない場所で咲く……。 |
イクス | そして、この廃墟……特徴的にスレイなら神殿だったと考えるはず……。次に考えるのは紋様……いや劣化と風化度合いで……。 |
イクス | ……巡礼者のために建造されたなら現存する神殿との距離がわかって……そして雪の堆積状態から……方角も……。 |
イクス | ……見つけた。 |
スタン | イクス、すごいじゃないか ! |
ルーティ | ええ ! よくやったわ ! ! |
イクス | これも二人のおかげだよ。 |
スタン | えっ。ルーティ、俺たち何かしたか ? |
ルーティ | ただ黙って見てただけよね。 |
イクス | そうじゃないよ。ルーティはあの時今の俺は何をすべきかって気づかせてくれた。 |
イクス | ルーティがちゃんと言ってくれなかったらきっと……俺はあのまま何もできずにいた……。 |
ルーティ | …………。 |
イクス | それに、スタンさんはずっと俺を励ましてくれただろ。 |
イクス | あのとき……もういいんだ、なんて言っちゃったけど……本当は……すごく嬉しかったんだ……。 |
イクス | ちゃんと……自分の気持ちをわかってくれる人がいて……。 |
スタン | ……イクス。 |
イクス | だから、ここまで来られたのは二人がいてくれたからなんだ。本当にありがとう。 |
ルーティ | まったく、何言ってんのよ。あんたもいなかったらここまで来られなかったでしょうが。 |
スタン | 俺とルーティがいたからじゃない。イクスも入れて全員――俺たちがいたからなんだよ。 |
イクス | ……俺たちか。 |
スタン | そうだよ。俺たち仲間が。 |
ルーティ | さっ、とっとと行くわよ !場所まで突き止めたんだからあともうひとふんばり ! |
イクス | みんな、こっちだ !ついて来てくれ ! |
スタン | わかった ! 今はとにかく前に進むぞ ! ! |
イクス | よしっ ! ミリーナの目印も見つけた !きっとこの先に、ミリーナはいる ! ! |
リオン | ……この先にはいかせん。 |
イクス | リオンさん…… ! |
ルーティ | チッ……こんなときにあんたなのね……。 |
スタン | リオン ! やっと会えた ! ! |
リオン | 目障りだ、さっさと消えろ。 |
スタン | まずはちゃんと話そう !リオン、何があったんだよ !なんで救世軍に協力してるんだ ! ! |
リオン | ……黙れ。 |
ルーティ | 話す気はないって訳ね……。 |
イクス | リオンさん……そこをどいてくれ。 |
スタン | イクス ! 待て !まだ話は終わってない ! ! |
イクス | スタンさん……ごめん !けど、いま足を止めるわけにはいかない ! |
ルーティ | バカ ! さがりなさい ! !相手はソーディアンマスターなのよ ! |
ディムロス | いまのお前で適う相手ではない !自分でもわかっているだろう ! ! |
イクス | …………。 |
リオン | ふんっ……手が震えているぞ。まったく話にならんな。怖いなら引っ込んでいろ。 |
イクス | ……怖い……ああ、そうだよ !怖いに決まってるだろ ! ! |
イクス | けど、俺はミリーナを助けるんだ !そのためには何がなんでも前に進まなきゃいけない ! ! |
イクス | だから……そこをどいてくれ ! !リオンさん……いや、リオン ! ! |
リオン | 誰に何を言われようが知ったことか。大切なものを守るためこの先には行かせん ! |
リオン | 絶対に……何があってもだっ ! ! |
ルーティ | スタン ! 来るわよ ! ! |
スタン | くそっ ! ! |
キャラクター | 12話 【8-16 ロベルト洞窟】 |
イクス | くはっ―― ! ! |
スタン | イクス ! |
リオン | くっ……。 |
シャルティエ | 坊ちゃん ! |
リオン | シャル……まだだ…… !まだ……僕は、負けてないっ ! |
ルーティ | あんた……まだやるつもりなの ! ? |
イクス | くっ……はぁ……はぁ……。 |
スタン | イクス、無理するな。ボロボロじゃないか。 |
イクス | いいや……まだだ……。スタンさん、ルーティ……ミリーナだって……頑張ってるんだ……。 |
イクス | 俺だって諦めるわけにはいかないっ ! |
イクス | だから……そこをどいてくれぇぇっ ! ! ! ! |
リオン | 目障りだっ ! ! 消え失せろっ ! ! ! ! |
スタン | ……やめろ。 |
二人 | ――ハァァッ ! ! ! ! |
スタン | やめろぉぉぉっっ―― ! ! |
スタン | くっ―― ! ! |
イクス | スタンさん ! ? |
リオン | 邪魔をするな ! ! |
スタン | 頼む……リオン ! !もうやめてくれっ ! ! |
スタン | なんで仲間同士で戦わなくちゃいけないんだよっ ! ! |
スタン | どうして仲間同士で傷つけ合わなくちゃいけないんだよ ! ! |
スタン | 仲間ってのは困ったときに助け合うものだろっ ! ! |
スタン | 俺たち仲間だろ ! 友達だろ ! !まずはちゃんと話してくれよっ ! ! |
リオン | スタン……。この期に及んでまだ僕を……友と呼ぶのか……。 |
スタン | 当たり前だっ ! ! |
ルーティ | あたしたちはミリーナを助けるためこの先に進まなきゃいけないの。 |
イクス | お願いだ……そこを通してくれ。 |
リオン | ……くっ。 |
ディムロス | 貴様、自分のやってることがわかっているのか ! ? |
アトワイト | ソーディアンマスターの力はそんなことのためにあるんじゃないのよ。 |
シャルティエ | みなさん……坊ちゃんを責めないでください ! |
ディムロス | シャルティエ ! ? |
シャルティエ | みなさんの事情はわかってます !ミリーナさんが人質に取られていることも ! |
シャルティエ | けど、坊ちゃんも同じなんです !マリアンを人質に取られているんです ! |
リオン | シャル ! |
スタン | マリアンさん……。確か屋敷でディムロスを持ってきてくれたメイドの人か……。 |
イクス | メイド……。待て。もしかして、ミリーナと一緒に閉じ込められてる人か ! ? |
リオン | マリアンを知っているのか ! ? |
イクス | ミリーナの通信にメイドさんと一緒に閉じ込められているという情報があった。 |
イクス | そして、俺たちは二人の居場所を知ってる。これから助けに行くところだ。 |
シャルティエ | 坊ちゃん ! 聞きましたか ! ?スタンたちと一緒にいけばきっとマリアンを助けられますよ ! |
リオン | ……だが、罠の可能性もある。 |
リオン | それに、この世界を滅ぼそうとしている鏡士の言うことなど信じるに値しない。 |
ルーティ | あんた、何言ってるの ?世界を滅ぼそうとしてるのは救世軍の方でしょうが。 |
リオン | ……どういう意味だ ? |
リオン | なん……だと…… ? |
イクス | この世界にアニマを満たしアイギス計画を完遂することで滅びの危機から世界を救う。 |
イクス | これが真実だ。 |
リオン | …………。 |
シャルティエ | 坊ちゃん、この話が本当かどうかは置いておくとしても……この話をマリアンが聞いたら……。 |
リオン | マリアンは……自ら命を絶つことを選ぶだろう……。 |
リオン | 何故だ……何故こうなるんだ…… !今度こそ……僕の手で救えると思ったのにっ ! ! |
ルーティ | ちょっと、落ち着きなさいよ。いったいどういうことなの ? |
リオン | そうか……お前たちは何も知らないのか……。あの後、何が起こったのか……。 |
スタン | リオン ? どうしたんだ ?何かあったのか ? |
リオン | ……この世界では関係のないことだ。 |
イクス | けど、少なくとも今マリアンさんは生きている。 |
イクス | 少し体調がよくないみたいだけどミリーナが回復魔法で治療してるから心配はない。 |
スタン | リオン、お前は頭がいいからさきっと色々考えてて、色々知ってるからこそまだ信じられないとこもあるんだと思う。 |
スタン | だけど、マリアンさんを人質に取るような救世軍なんかより俺たち仲間を信じてくれよ ! |
スタン | そして一緒に、マリアンさんを助けよう ! ! |
リオン | ……スタン。 |
スタン | ほら、まずは仲直りの握手だ。イクスもルーティも、みんなで。 |
ルーティ | まったく、仕方ないわね。 |
イクス | 一緒に、大切な人を助けよう。 |
リオン | ……お前たちも。 |
救世軍兵士 | 貴様 ! 寝返ったな ! |
イクス | 救世軍 ! ? |
リオン | チッ……思っていたより早かったな。 |
ルーティ | こりゃ、厄介なことになったわね。 |
スタン | 倒しながら進むぞ ! |
イクス | わかった ! みんな、こっちだ ! ! |
キャラクター | 13話 【8-21 ティベリウス雪原 5】 |
スタン | くっ……。救世軍の奴ら、本当にしつこいな。 |
イクス | スタンさん、大丈夫か ? |
スタン | ああ、平気平気。 |
ルーティ | ……スタン。あんた。 |
スタン | それにしてもどうすりゃいいんだ。相手にしてたらきりがないぞ。 |
リオン | 状況から判断すると、僕が敵対したことマリアンの居場所を特定したことをすでに救世軍は気づいている。 |
イクス | つまり、早く助けに向かわないと二人が別の場所に移動されてしまう可能性が高いってことか。 |
リオン | それだけではない。たとえ救出しても脱出経路を塞がれてしまっては元も子もないぞ。 |
イクス | ……いったい、どうすればいいんだ。 |
リオン | 簡単なことだ。 |
スタン | リオン ! どこに行く気だ ! ? |
リオン | 僕が囮になる。 |
スタン | 無茶だ ! 危険すぎる ! !お前を置いてはいけない ! ! |
リオン | 僕が決めた事だ。さっさと行け ! |
スタン | けど―― ! |
リオン | スタン、お前は僕を友達呼ばわりするがそんなもの受け入れた覚えはない。 |
リオン | 僕はお前のように、能天気で、図々しくて、馴れ馴れしい奴が大嫌いだ。 |
リオン | だから……後は任せた。 |
イクス | ……そんな。 |
ルーティ | あんたって奴は……。 |
スタン | リオン……。 |
スタン | バカ野郎 ! ! |
リオン | …… ! |
スタン | お前はまたそうやって一人で抱え込もうとしてさ、本当にバカ野郎だよ ! ! |
スタン | リオンはずっと一人で頑張ってきたんだろ !もういいんだよ !お前をもう一人にはさせない ! ! |
スタン | だから、俺が残る ! ! |
リオン | ……なんだと ? |
ルーティ | スタン、あんた正気なの ! ?いまのあんたじゃそれこそ無茶よ ! ! |
ルーティ | そうよ……だったらあたしも残る ! |
スタン | ダメだ ! ルーティは潜入に慣れてる !イクスたちと一緒にいくべきだ ! |
ルーティ | いい加減にしなさいよ !あたしが気づいてないとでも―― |
スタン | ルーティ ! 俺を信じてくれ ! |
ルーティ | ……スタン。 |
ルーティ | あんた、頑丈なのよね ? |
スタン | あははっ。それぐらいが取り柄だからな。 |
ルーティ | わかったわ……。 |
リオン | お前一人で大丈夫なのか ? |
スタン | リオン、お前は一人で頑張ってきた。だから次は俺の番だ。 |
スタン | それに、マリアンさんが待ってるんだろ。きっとリオンのことを心配してる。行って、安心させてやれよ。 |
リオン | ……ここは任せたぞ。 |
救世軍兵士 | 見つけたぞ ! |
イクス | くっ……気づかれた ! |
スタン | イクス ! お前も頼んだぞ ! |
イクス | ああ ! ミリーナ、マリアンさん、ルーティ、リオン、俺……全員で必ずここに戻ってくる ! ! |
ルーティ | だから、やられんじゃないわよ !約束破ったりしたら承知しないんだから ! |
スタン | わかってる ! 約束だ !俺は、お前たち全員を待ってる ! ! |
スタン | だから、ここは俺に任せろっ ! ! |
ルーティ | ほら、あんたたち !はやく行くわよ ! |
イクス | ああ ! 先に進むぞ ! ! |
リオン | ……っ ! |
スタン | さて、行くとするか。 |
スタン | ぐ ! いててて……。 |
ディムロス | スタン ! ?お前、もしや足を…… ! ? |
スタン | へへ……ルーティはすごいな……。黙ってたのになんで気づいたんだろ。 |
ディムロス | まったく……お前というやつは。大丈夫なんだろうな ? |
スタン | ちょっと捻ったくらいだよ。これぐらいたいしたことない。 |
ディムロス | ふっ……そうか。 |
スタン | なんだよ、ディムロス。珍しく口うるさくないな。 |
ディムロス | 何も言うことはない。あのような輩がどれだけ束になろうとお前と我を倒すことはできんのだから。 |
スタン | ディムロス……ああ、そうだな ! |
ディムロス | いくぞっ ! スタン ! ! |
スタン | 俺とディムロスの力、見せつけてやるっ ! ! |
キャラクター | 14話 【8-24 雪積り積る遺跡 廊下】 |
イクス | くっ……なんて頑丈な扉なんだ。 |
リオン | どけ。シャル、いくぞっ ! |
シャルティエ | はいっ ! |
リオン | ――ハアアァッ ! ! |
ルーティ | よしっ、扉が壊れたわ。 |
イクス | ミリーナたちはこの先だ ! |
ミリーナ | どうして……どうしてなのっ ! ! |
イクス | ミリーナ ! 無事か ! ? |
ミリーナ | イクス ! ? よかった !来てくれるって信じてたわ ! |
ルーティ | あたしたちも一緒よ !ここまでは計画どおりね。 |
ミリーナ | ルーティ ! それにリオンさんも ! ? |
リオン | マリアン ! ? |
マリアン | ……はぁ……はぁ。 |
リオン | 女 ! 治癒術はどうした ! ? |
ミリーナ | そんなの……ずっとやってるわよ……。けど……。 |
ミリーナ | けど、治癒術が効かないの !何度やっても……何度やっても全然、効いてくれないの ! ! |
リオン | 何……っ ! ? |
ルーティ | アトワイト ! |
アトワイト | ええ ! |
マリアン | はぁ……はぁ……ぐっ……。 |
ルーティ | うそ……どうして……。 |
アトワイト | まったく効いてないわね。何かにすべて吸収されてしまってるように感じるわ。 |
ミリーナ | たぶん原因は……このブレスレットよ。これは特別な魔鏡機器だから簡単には外せないの……。 |
イクス | 王宮の禁書庫の本で読んだ……。これは【アンチ・ミラージュブレス】。魔鏡戦争時代に開発された魔鏡機器だ。 |
イクス | 鏡士の人体実験の際に、被験者への鏡術による肉体と精神に及ぼす影響を緩和するために使用されていたらしい。 |
イクス | なんでマリアンさんがこんなものを……。 |
リオン | そんなことはどうでもいい !外せないなら破壊しろ ! |
イクス | ダメだ……。無理に外したり破壊したりしたらマリアンさんは……。 |
リオン | ……っ。 |
アトワイト | 彼女、酷く衰弱してるわ。はやく治療しないと助からないわよ。 |
リオン | そんなことは見ればわかる !その魔鏡機器とやらを外す方法はないのか ? |
イクス | ……魔鏡機器。ガロウズなら取り外せるはずだ ! |
ルーティ | スタンが脱出経路を確保してる。合流して、ケリュケイオンに向かうわよ。 |
リオン | ケリュケイオンまで……どれだけの距離があると思っている……。 |
シャルティエ | ……坊ちゃん。 |
ルーティ | 何弱気になってるのよ !今はとにかく、前に進むしかないのよ ! ! |
ミリーナ | リオンさん !私たちでマリアンさんを助けましょう ! |
イクス | まだ助かる可能性はある !だから、今すべきことをするんだ ! |
リオン | …………。 |
リオン | お前たちに言われるまでもない。今はそれしか手段がないんだ。はやく行くぞ ! |
イクス | ああ ! |
キャラクター | 15話 【8-26 雪積り積る遺跡 入口】 |
ルーティ | マズいわね。救世軍に追いつかれてるわ。 |
イクス | 戦闘はできるだけ避けたい。あと少しでスタンさんとも合流できるから逃げ切れるといいんだけど……。 |
ミリーナ | マリアンさんは ? |
アトワイト | 危険な状態よ。ぐずぐずしていられないわ。 |
リオン | …………。 |
マリアン | ……っ……ここは……。 |
リオン | マリアン !意識を取り戻したのか ! |
マリアン | リオン、様…… ?よかった……ご無事でしたか……。 |
リオン | ああ……心配をかけたな。 |
マリアン | ここは……いったい……。霧が濃くて……お顔が……見えません……。 |
リオン | ……何を言ってるんだ……。霧なんて……。 |
アトワイト | ……衰弱、及び過度のストレス状態に晒された心因性の突発性視覚障害のようね。いまの彼女には何も見えていないわ。 |
リオン | …………っ。 |
マリアン | ……大丈夫です。そばに……いるのでしょう ?声はちゃんと……聞こえています。 |
ミリーナ | マリアンさん……きっとすぐに良くなります。ほら、さっきより少しだけ手も温かい……。 |
マリアン | そう……なのですね……。 |
ミリーナ | ……もしかして感覚も……。 |
マリアン | ごめんなさい……。何も……感じません……。 |
リオン | そんな……。 |
マリアン | ……もう、私は……ダメみたいです。だから……ここに置いていってください……。みなさん……だけでも、逃げて……。 |
イクス | そんなことできません ! |
マリアン | 鏡士様……。私は、この世界に……いてはならない……存在なのです……。 |
マリアン | 私は……特異鏡映点……だから……。 |
リオン | ……マリアン、そのことを……知っていたのか。 |
ミリーナ | マリアンさんが……そうだったの……。 |
ルーティ | ちょ、ちょっと待ちなさいよ。 |
イクス | 特異鏡映点って……何なんだ ? |
ミリーナ | 特異鏡映点は……。アニマを逆流させる存在よ。 |
イクス | アニマを……逆流……。 |
ルーティ | ウソでしょ……。 |
リオン | くっ……。 |
マリアン | 鏡士様……申し訳、ありません……。私がいては…………この世界が……滅んでしまうのですよね。 |
ミリーナ | けど、特異鏡映点の力を抑えることだってできるかもしれません ! |
イクス | 俺たちが方法を探します !だから……だから―― ! ! |
マリアン | たとえ……力を抑えても……きっと……私は……救世軍に狙われ続けます……。 |
ルーティ | あんた……だからって……。 |
アトワイト | ルーティ。やめなさい。彼女の決意の固さ。わかるでしょ ? |
ルーティ | わからないわ !まったく納得できない ! |
ルーティ | あたしたちはあんたを助けるためにここに来たの。リオンだってそうよ。 |
ルーティ | 問題があるなら、みんなで解決すればいいだけの話。あんた一人で解決しようとしないで。 |
ルーティ | それに、これはあんただけの問題じゃない。あたしたちにも関係することなの。勝手に決められる筋合いはないわ ! |
マリアン | ですが……。 |
イクス | ルーティの言うとおりです。希望を……捨てないで下さい ! |
ミリーナ | マリアンさん、一緒に困難を乗り越えましょう。私たちもいますから。 |
マリアン | …………。 |
リオン | マリアン……僕は……君に生きていて欲しい。 |
マリアン | …………。 |
マリアン | ……あなたが……それを望むなら……。 |
イクス | マリアンさん ! |
マリアン | ご迷惑を……おかけしますが……私も、連れて行って……いただけますか ? |
ミリーナ | もちろんですよ。最初からそのつもりです。 |
イクス | 俺たちで絶対にあなたを助けます。 |
キャラクター | 16話 【8-29 ティベリウス雪原 8】 |
ルーティ | よっしゃ。なんとか追っ手を振り切れたわね。 |
ミリーナ | スタンさんが脱出経路を確保してくれてるのよね ? |
イクス | ああ。もうすぐだ。スタンさんも無事だといいんだけど。 |
ルーティ | あいつなら大丈夫よ。心配することないわ。ディムロスだっているんだしさ。 |
マリアン | …………。 |
リオン | …………。 |
ルーティ | 見えてきたわ !あの先でスタンが待ってるわよ ! |
イクス | いや……ちょっと……待ってくれ……。 |
ミリーナ | イクス、どうしたの ? |
イクス | そんな……ウソだろ……。 |
ルーティ | 何があったの ? |
イクス | ……脱出経路が、封鎖されてる。 |
リオン | なんだと……スタンは何をやっている ! ? |
ルーティ | ……スタン。あいつ……まさか……。 |
ルーティ | じょ、冗談じゃ……ないわよ……。 |
アトワイト | ルーティ ! しっかりしなさい ! |
ルーティ | だって……脱出経路が……。 |
アトワイト | スタンさんが倒されるわけないじゃない !それはあなたが一番わかってることでしょ ! |
ルーティ | ……そ、そうね。うん……スタンがやられるわけない。 |
ルーティ | そうだわ。あいつなら絶対に大丈夫。アトワイト、ありがとね。 |
アトワイト | もう……ひやひやさせないでちょうだい。 |
ルーティ | イクス ! 他に脱出経路はないの ! ? |
イクス | ……ひとつだけある。けど……。 |
ルーティ | いいから教えなさい !グズグズしてる暇ないんだから ! |
イクス | …………山越えだ。 |
リオン | ……あの雪山を越えるというのか。 |
イクス | それしか……道はない……。 |
ルーティ | ……行くしかないわ。 |
ミリーナ | それが、全員が助かる可能性のあるたった一つの道なら。 |
リオン | ……病人を抱えたまま山越えができると思っているのか ? |
ファントム | フフ……その通りです。山越えは無理でしょうね。 |
イクス | 救世軍 ! ? |
ミリーナ | どうしてここに ! ? |
ルーティ | どうでもいいわ !邪魔するなら倒すだけよ ! ! |
ファントム | 剣を収めて頂けますか ?我々は戦いに来たのではありません。交渉に来たのですから。 |
リオン | ……交渉だと ? |
ファントム | 我々も予想を遙かに超える犠牲がでました。これ以上の争いはこちら側としても避けたいのです。 |
ファントム | そこで一時休戦を申し入れようかと。 |
ファントム | 条件は、特異鏡映点の即時返還。 |
ルーティ | バカ言ってんじゃないわよ !そんなの交渉でも何でもないわ !あんたたちにしか得がないじゃない ! |
ファントム | 特異鏡映点の【アンチ・ミラージュブレス】。これをすぐにでも解除し彼女の治療を約束する。 |
ファントム | つまり特異鏡映点の命を保証する。悪い話ではないと思いますがねぇ。 |
リオン | ……マリアンの。 |
ファントム | あなたも救世軍に戻ってきますか ?こちらは歓迎しますよ。 |
ファントム | もっともまた裏切られる恐れがありますからしばらく特異鏡映点との面会は認められませんがね。 |
ファントム | それでも、特異鏡映点の命は保証しますよ ? |
リオン | …………。 |
ルーティ | ちょ、ちょっと。あんた、何考えてるの ? |
ミリーナ | リオンさん…… ? |
イクス | 救世軍に……従うつもりなのか…… ? |
ファントム | 私にはあなたの考えていることがわかる。状況から鑑みてどうするべきかもう気づいているはずですよ。 |
リオン | 僕は……。 |
ルーティ | あんた……ふざけんじゃないわよ……。 |
ルーティ | あたしたちはスタンと約束した。必ず、全員揃って戻ってくるって ! |
ルーティ | あいつは絶対に生きてる !あたしたちが戻るのをたった一人で戦いながら待ってるわ ! ! |
ルーティ | あたしたちを信じたからあいつは……本当は足をケガしてるの黙ってそれでも一人で残ったのよ ! ! |
ルーティ | スタンのことなんだと思ってんのよっ ! ! |
ミリーナ | リオンさん、マリアンさんとの約束あなたは覚えているでしょう ? |
ミリーナ | マリアンさんは私たちと一緒に行くとそう、約束したのよ。 |
イクス | 確かに山越えは厳しいかも知れない……。けど、俺は……俺たちはマリアンさんを信じてる ! ! |
シャルティエ | 坊ちゃん ! 僕は坊ちゃんが選んだ道ならどんな道でもついていきます ! ! |
シャルティエ | けど……けどですよっ !絶対に後悔する道は選んで欲しくない ! !それだけはわかってください ! ! |
リオン | ……黙れ。お前たちに指図されるいわれはない。 |
ルーティ | あんた……。 |
ファントム | …………。 |
リオン | 確かに……貴様の言うことはもっともだ。 |
リオン | 状況から判断するに……スタンは……もうやられたかもしれない。 |
リオン | マリアンは……山越えに耐えられないかも知れない……。 |
リオン | そう……いまは救世軍に従うべきだ。これがもっとも賢い道だ……。 |
イクス | ……そんな。 |
ミリーナ | リオンさん……。 |
ルーティ | あんた……ここまできて……。 |
シャルティエ | ……。 |
ファントム | ……わかっていただけましたか。 |
リオン | ああ……貴様に言われるまでもない。 |
リオン | ……だからどうしたっ ! ! |
ファントム | ―― ! |
リオン | 僕はマリアンを、スタンを……こいつたちが信じる道を選ぶ ! |
リオン | 僕はもう決して迷わない……。 |
シャルティエ | 坊ちゃん ! ! |
ルーティ | よしっ ! そうこなくっちゃ ! |
ミリーナ | 私たちもその道を進むわ ! |
イクス | みんなで一緒に進むんだ ! ! |
ファントム | フフフ、交渉は決裂ですか !そうだろうと思っていました ! |
イクス | 魔物を生みだした ! ? |
キャラクター | 18話 【8-30 ティベリウス雪原 9】 |
イクス | ガロウズが【アンチ・ミラージュブレス】を外してくれてから数日経ったけど……。マリアンさん……まだ目を覚まさないな。 |
ミリーナ | リオンさんも一睡もせずにずっと看病してるし……。あれじゃ身体が持たないわよ……。 |
イクス | 二人とも……心配だな……。 |
ルーティ | イクス、ミリーナ !あんたたちここにいたのね ! |
イクス | ルーティ、スタンさん。どうしたんだ ? |
スタン | マリアンさんが意識を取り戻したんだ ! |
ミリーナ | 本当に ! ? マリアンさんは無事なの ! ? |
ルーティ | ええ。感覚も戻ったわ。しばらく休養する必要はあるけど。 |
イクス | よかった……。一時はどうなることかと……。 |
ミリーナ | いまマリアンさんはどうしてるの ? |
スタン | リオンと話してるところ。 |
ルーティ | それでさ……あんたらに、ちょっと頼みがあるのよ。 |
イクス | 頼み ? |
スタン | いまだけ、少しだけでいいんだ。リオンとマリアンさん二人きりにしてもらえないか ? |
ルーティ | あんたたちが二人に聞きたいこと山ほどあるのはわかってるんだけどさ……。 |
イクス | ああ。もちろんだよ。 |
イクス | 二人が具現化されてからの経緯とか特異鏡映点についてや、救世軍のこと。確かに二人には色々聞いておきたいけど……。 |
イクス | でも、二人はずっと前に進み続けてたくさん傷ついて、いまようやく少しだけ休むことができてるんだと思うから……。 |
ミリーナ | そうね……。だから今だけはあの二人のために私たちは待つべきだわ。 |
スタン | イクス、ミリーナ。ありがとう……。 |
マーク | ……特異鏡映点を失ったのか。 |
救世軍幹部 | 失ったところで問題ないでしょう ?彼らにアレを扱える人間がいるとは思えませんし。 |
マーク | ……それはどうかな。 |
救世軍幹部 | 含みのある物言いですねぇ。 |
マーク | まぁ、気にするなよ。それに俺たちの本当の目的は無事達成してるわけだしな。 |
マーク | あいつらが気づいてないだけで。 |
キャラクター | 1話 【ケリュケイオンブリッジ】 |
ジェイド | ――さて。そろそろ我々はわからないことだらけのこの世界と具現化について知らなければなりません。 |
ジェイド | とりあえず、現時点での問題点を整理しましょう。キール、説明を。 |
キール | 任せてくれ ! |
キール | ブリッジに全員は入れないから艦内通信でみんなに話を聞いてもらう。簡単な概要は渡した資料のとおりだ。 |
キール | まず、今回の具現化の術式と構造から説明しよう。これはぼくらの世界では―― |
イクス | ……ご、ごめん。話が難しくて何を言っているのかよくわからなかったんだけど。 |
キール | な、何故だ ! ?表まで用意して簡潔に伝えたのに ! |
ジェイド | 私としたことが、人選を間違えたようです。要するに、我々は何も知らないということを知るべきだという話です。 |
ミリーナ | はしょりすぎじゃありませんか ?せっかくキールが魔鏡技術のことを詳細に話してくれたのに……。 |
ジェイド | そんなレベルで話しても仕方のないことだと思いますよ。 |
ジェイド | 問題なのは、現時点で、誰が敵か味方かすらわからないということです。 |
ジェイド | そしてこの具現化が本当に正しいことなのかどうか――ということもね。 |
ジェイド | ですから、まずゲフィオン様とやらをここにご招待しましょう。 |
イクス | え ! ? 宰相の立場にある方をケリュケイオンに ! ? |
ジェイド | 私にしてみれば知らない世界の宰相です。 |
ジェイド | 我々を勝手に具現化するぐらい横暴なのですから、それぐらい譲歩してほしいものですよ。 |
リオン | ……その点は僕も同意だ。勝手な真似をしてくれる。 |
イクス | す、すみません……。 |
リオン | ……例のマークという男は王宮ともつながりがある。ゲフィオンも無条件に信じられる存在じゃない。 |
ジェイド | マリアン――おっと、私が彼女を呼び捨ててもかまいませんか、リオン ? |
リオン | やめろ。 |
ジェイド | やめません。単なる確認です。 |
リオン | ――き、貴様…… ! |
カーリャ | なんてたちの悪い眼鏡……。 |
ジェイド | リオンが話を脱線させてしまいましたがマリアンに向こう三ヶ月のゲフィオンのスケジュールを思い出してもらいました。 |
ジェイド | 行方不明の時期も多いですがちょうど今頃は鏡士の神殿というところにおられるようですよ。 |
ミリーナ | ……イクス、みんな。ゲフィオン様に会いましょう。それが一番だと思うから。 |
イクス | ああ、そうするしかないな。ガロウズ。鏡士の神殿というところへ連れて行ってくれ。 |
ガロウズ | ……あそこか。気は進まねぇが、仕方ないか。 |
ジェイド | ゲフィオンの元へは私とキールも同行させてもらいます。 |
ジェイド | ――ああ、別に無理して戦闘メンバーに入れていただかなくて結構ですよ。 |
ジェイド | 老人ともやし学者はのんびり後ろをついていってもいい訳ですし。 |
キール | バカにするな ! ぼくだって戦える !イクス、頼ってかまわないぞ ! |
イクス | …………。 |
ミリーナ | イクス…… ? |
イクス | あ、いや、何でもないよ。キールもありがとう。頼りにしてるよ。 |
ジェイド | …………。 |
キャラクター | 2話 【9-1 鏡士の神殿】 |
ゲフィオン | イクス、ミリーナ ! それに鏡映点の方々。何故ここに……。 |
イクス | ゲフィオン様にお願いがあってきたんです。ゲフィオン様こそ、ここで何を ? |
ゲフィオン | ……占いに使う魔鏡を作ろうと思ってな。ここにある古い魔鏡のかけらを集めていた。 |
ミリーナ | では、やはりゲフィオン様も鏡士なんですね ! ? |
ゲフィオン | そうか……。その話を聞きたかったのか。 |
ジェイド | ええ。是非とも詳しく聞かせていただきたいですね。 |
ジェイド | それにアイギス計画の真の目的や救世軍のこと。それに特異鏡映点についても。 |
ゲフィオン | 特異鏡映点 ! ?まさか特異鏡映点が現れたのか ! ?マリアン以外にも ! ? |
キール | マリアンのことを知っているんですか ! ? |
ゲフィオン | もちろんだ。特異鏡映点を放置するわけにはいかないので王宮で保護していた筈だが……。 |
ミリーナ | ……それを救世軍が連れ去ったってこと ? |
ゲフィオン | ! ? |
ジェイド | 特異鏡映点とは何なのです ?アニマを逆流させることで世界を消滅させる可能性を持つとは聞いていますが……。 |
ゲフィオン | 特異鏡映点はカレイドスコープの構造が生み出すバグだ。 |
ゲフィオン | カレイドスコープは元々戦争用に開発された大量破壊兵器。あらゆる物質のアニマを抜き取り消滅させる。 |
ゲフィオン | その機能を反転させて具現化に使っていることを考えれば、普通の鏡映点の方がバグなのかも知れないが。 |
ジェイド | そのような構造的欠陥を承知でアイギス計画を進めたと ?これはこれは、中々大胆ですねぇ。 |
ゲフィオン | それだけこの世界が危険で不安定な状態にあるということだ。 |
ゲフィオン | それに因果律に抵触さえしなければこのバグは発生しないことがわかっていた。 |
ジェイド | 因果律……ですか。嫌な予感がしてきました。 |
ミリーナ | どういうことですか ? |
キール | 因果とは『結果と原因には必ず何らかの関係がある』ということだ。 |
キール | しかしこの文脈では時間の流れに干渉する……ということだろうな。 |
ゲフィオン | そうだ。六回目の具現化の際にスキャンした世界には、因果律をねじ曲げる要素つまり時の流れに干渉する力が存在していた。 |
ゲフィオン | そのためにマリアンが特異鏡映点として具現化されたのだ。 |
ミリーナ | そんなものがあるなんて、スタンさんたちは言ってなかったけれど……。 |
ゲフィオン | 彼らの知らない場所あるいは過去か未来にそのような力が発生していたのかも知れぬな。 |
イクス | ……ゲフィオン様。俺は―― |
ミリーナ | カーリャ ? どうしたの ? 震えてるわ。近くに新しい鏡映点か光魔の鏡でも……。 |
カーリャ | ……来る。……何か凄いものが来ます。アニマがぐちゃぐちゃで……吐きそう……。 |
ミリーナ | カーリャ ! ? 大丈夫 ! ? |
ゲフィオン | 気絶しているだけのようだな。しかし―― |
イクス | 鏡震 ! ? |
キール | 大きいぞ ! ?ここの耐震構造は大丈夫なのか ! ? |
ゲフィオン | ここが潰れるなら世界中が壊滅する。しかしこの揺れの激しさは―― |
イクス | ……まずい。ここは海から近いぞ。津波が起きるかも知れない。揺れが収まったらすぐにここを出よう ! |
キャラクター | 3話 【9-1 鏡士の神殿】 |
ガロウズ | ――みんな、大変なことになったぞ。 |
ゲフィオン | 何が起きたというのだ。 |
ガロウズ | ……島が……オーデンセ海域に新しい島ができたんです。 |
ミリーナ | どうして ! ? 具現化はイクスと私にしかできない筈よね。ゲフィオン様も鏡士だけどここにおられるのに……。 |
ゲフィオン | ……宮廷には、私以外にあと数人鏡士の力を持つ者がいる。 |
ゲフィオン | しかし具現化を行えるほどの力を持つ者は今は一人しかいない。 |
ゲフィオン | 鏡士の中の鏡士である『ビクエ』の称号を与えられた第103代ビクエならば……。 |
ジェイド | しかし具現化はイクスの魔鏡がなければ行えないのですよね。 |
ゲフィオン | その筈だ。しかしビクエならあるいは――。 |
ミリーナ | 犯人捜しも重要だけど今は新しい島のことが気になるわ。 |
ミリーナ | 具現化でできた島なら、光魔も光魔の鏡もそれに鏡映点だっている筈だもの。 |
イクス | ………………。 |
ジェイド | ……ガロウズ。モニターに新しい島というのを映せますか ? |
ガロウズ | ……いや……そいつは……。 |
イクス | ? |
ジェイド | ――なるほど。そういうことですか。ですが、今イクスやミリーナの心情を慮っている暇はありません。 |
イクス | ……え ? |
ガロウズ | ……わかった。 |
ジェイド | なるほど。新しい島はかなり大きい。島というより大陸だ。それにずいぶん大きな樹がありますねぇ。 |
リオン | おい、お前。それより他に気にするべきものがあるだろう ! |
キール | 何だ……あの海に空いた穴は……。まるであそこだけ宇宙につながっているようだぞ。 |
ミリーナ | あれが……オーデンセのあった場所…… ?アイギスの破片で吹き飛んだとは聞いていたけれど……。 |
ミリーナ | あれは……生き残りがいるかもとかそんなレベルじゃ……。 |
ガロウズ | ……今オーデンセ海域周辺は進入禁止だ。島どころか周辺の海域があった空間全てが【消失】した。 |
ガロウズ | これが俺たちが食い止めようとしている世界の滅びの姿って訳だ。 |
ゲフィオン | ガロウズを責めないでくれ。 |
ゲフィオン | お前たちを不安にさせないようオーデンセの情報は極力耳に入れないようにしてきたのだ。 |
リオン | ……フン。よく言う。イクスたちを都合良く働かせるために、故郷の顛末を知らせなかっただけだろう。 |
ゲフィオン | 否定はしない。アイギスの修復は全てにおいて最優先させねばならぬ。 |
ゲフィオン | 具現化によるアニマの流入がアイギスの修復には必要不可欠なのだ。 |
ジェイド | ……イクス。心ここにあらずといった様子ですがそれでも具現化に関してはあなたが指揮を執る必要があります。 |
ジェイド | どうしますか ? あの大陸に行きますか ? |
ジェイド | 変則的に誕生した土地ですから危険が皆無とは言いませんが調査する必要はあるでしょう。 |
イクス | ……行きます。 |
ジェイド | 結構。では調査隊を組んで下さい。 |
ゲフィオン | 私はカレイドスコープを確認してこよう。誰かがあれを私の許可なく動かしたのなら痕跡が残っている筈だ。 |
ミリーナ | ……ゲフィオン様。失礼かと思いますが信じていいのですか ? |
ゲフィオン | その判断はお前たちに任せるしかない。しかし私は嘘はつかぬ。 |
イクス | ………………。 |
キャラクター | 4話 【9-2 ダイク街道 1】 |
ミリーナ | ……イクス。オーデンセのことショックだったよね。 |
ミリーナ | いくらアイギスの破片が降ってきたっていっても、どこかにまだ生き残りがいるんじゃないかって思ってたから……。 |
ミリーナ | あんな……本当に何も……空間ごと消失してるなんて……。私たちが助かったことの方が奇跡だったのね。 |
イクス | ………………。 |
カーリャ | うう……。ここにいるとアニマ酔いしそうです。何かおかしいですよぉ、この……島 ? 大陸 ? |
ミリーナ | イクス…… ? |
カーリャ | ……あれ ? イクスさま、ミリーナさま。な、何か、ぶるぶる来てます。来てます。来てますよ ! ? |
ロイド | くそっ ! ? こんな時にどこ行っちまったんだ、あいつは…… ! |
カーリャ | 来ーたー ! 鏡映点ですよ ! ? |
ロイド | うわっ ! ? 天使 ! ? |
カーリャ | ええ ! ? 初対面からそんな褒め殺し ! ?カーリャ、この人のこと好きになっちゃったかも知れません ! |
ロイド | ずいぶん小さい天使だなぁ……。 |
イクス | あ、あの。カーリャは天使じゃなくて鏡精ですよ。 |
ロイド | きょうせい ? なんだそれ ? |
イクス | えっと……。あの、待って下さい。カーリャ、この人が鏡映点で間違いないんだな ? |
カーリャ | カーリャのことを天使って言ってくれるんですから間違いないです。ぶるぶるするし。 |
カーリャ | これって……恋 ! ? |
ミリーナ | それはセンサーのせいでしょ ? |
ミリーナ | あの、私はミリーナ、彼はイクス。この子はカーリャです。 |
イクス | ――というわけで、おそらく具現化したと思われるこの島……大陸にやってきたんです。鏡映点を捜して。 |
ロイド | ………………。 |
イクス | あ、突然で驚かれるのも無理はないんですけど……。 |
ロイド | 悪い。何言ってるんだかさっぱりだ。 |
ミリーナ | え ? あの……えっと……。 |
ロイド | よくわかんないけど俺を捜してたんだよな ? |
ロイド | じゃあ悪いけど一緒に来てくれないか ?俺も今、人を捜してるんだ。 |
イクス | あ、はい。えっと――。 |
ロイド | あ、そっか。俺はロイド、ロイド・アーヴィング。迷子の子供を捜してるんだ。 |
ロイド | この辺にいると思うから一緒に捜してもらえないかな ? |
イクス | もちろんです、ロイドさん。 |
ロイド | あー、何かそういう堅苦しい呼び方しなくていいよ。ロイドでいい。イクス、ミリーナ、カーリャ。よろしくな ! |
イクス | あ、ああ。よろしく、ロイド。 |
キャラクター | 5話 【9-5 ケイト森林 林道】 |
ミリーナ | ロイドが捜してる子供って、どんな子なの ? |
ロイド | ポールって名前の男の子だよ。まだ四つか五つぐらいだけど、生意気でさ。 |
ロイド | 大樹の根が暴れ出したのを見て退治しに行くって町を出て行ったらしいんだ。 |
イクス | 大樹の根が暴れる ? 大樹ってこの大陸に来るときに見えた大きな樹のことかな ? |
イクス | その根が暴れるってどういうことなんだ ? |
ロイド | それが、俺にもよくわからないんだよ。ここって、えっと異世界……って奴なんだろ ?ここにも大樹があったのか ? |
ミリーナ | あんな大きな樹は私たちの世界にはないわ。 |
ミリーナ | あの樹もこの大陸もここに住む人たちすらも全てはロイドや……もしかしたら他の鏡映点の人たちの「記憶や想い」から創られた物よ。 |
ロイド | 俺の記憶や想い……。だからポールはイセリアのポールにそっくりなのに俺のことを全然知らないのか ? |
イクス | うん……そうだと思うよ。 |
イクス | 鏡映点以外の人たちは、ここに生まれた時に元の世界の記憶を引き継がない『この世界の住人』になるんだ。 |
イクス | ロイドにとってはショックだと思うけど……。 |
ロイド | …………。 |
イクス | ロイド ? どうしたんだ ? |
ロイド | ……あ、いや。この世界が消滅の危機だから具現化っていうのをやってるって言ってたよな。 |
イクス | ああ。その証拠に俺たちの故郷は……完全に消滅してたよ。ちり一つも残ってなかった……。 |
ロイド | 今やってる具現化で、イクスたちの故郷を造ることはできないのか ? |
ミリーナ | 異世界の力を借りないとこの規模の具現化ができないの。 |
ミリーナ | でも異世界の力を借りるとどうしても元々あった島と同じ物は造れないみたい。 |
イクス | 今は鏡映点の人たちの力を借りるしかできないんだ。 |
ロイド | …………。 |
カーリャ | あわわわ、待って下さい。何かぶるぶる来ましたよ ?近くに光魔の気配です ! |
? ? ? | う、うわぁぁぁぁ ! ? |
ロイド | ポールの声だ ! ? |
イクス | 奥から聞こえたぞ !光魔に襲われてるのかも知れない ! 急ごう ! |
ミリーナ | 子供を襲うなんて許さない ! |
ロイド | ポール ! 今助けるからな ! |
イクス | 行くぞ ! |
キャラクター | 6話 【9-5 ケイト森林 林道】 |
ポール | ロイド ! 遅いじゃないか ! |
ロイド | あのなー ! お前が勝手に町の外に出るからだろ !お父さんもお母さんも心配してるぞ ! |
ミリーナ | 一人で不安だったんだよね ?でもロイドが見つけてくれたんだからお礼は言わないとね。 |
ポール | ……あ、ありがとう。でもおいら、大樹の化け物を倒そうと思って……。 |
イクス | 大樹の化け物 ? そういえばさっきも大樹の根が暴れたって……。 |
ロイド | ああ。大樹の根が暴れて、町を襲ったんだ。町は壊滅状態で……。今、仲間の一人が町に残って、住民の手当てをしてる。 |
ミリーナ | 大変だわ ! 私たちも行きましょう。できる限り協力しないと ! |
イクス | ああ。ケリュケイオンに連絡して治癒術を使える仲間を、町に降ろしてもらおう ! |
ロイド | 治癒術を使える仲間がいるのか ! ? 助かる ! |
ポール | おいらに感謝しろよ、ロイド !おいらがここに来たからちゆじゅつってのを使える人が見つかったんだぞ ! |
ロイド | 生意気言うな !リフィル先生に言いつけるぞ ! |
ポール | や、やめろよ……。お尻叩かれるだろ……。 |
ミリーナ | リフィル先生 ? 町の学校の人 ? |
ポール | 鬼だよ。 |
ロイド | バカ ! 聞かれたら殺されるぞ。 |
イクス | え ! ? 暴力教師…… ! ? |
カーリャ | 教育の闇って奴ですかね ? |
ロイド | ……えっと、まぁそんな感じかな。でも美人だし、優しいところもあるんだぜ。俺の学校の先生で旅の仲間なんだ。 |
イクス | 暴力教師が仲間…… ! ? だ、大丈夫なのか ! ?竹刀で叩かれたりするんだろ ! ? |
ロイド | いや……リフィル先生に武器はいらないから……。まぁ、いいや。会えばわかるよ。 |
ロイド | すっげぇ頭がいい人だからさっき俺にしてくれた話も、先生ならすぐわかると思うよ。町へ戻ろうぜ。 |
ミリーナ | そうね。さ、ポール。手をつなごう ? |
ポール | しょうがねぇな。つないでやるよ。 |
ミリーナ | ふふ、ありがとう ! |
キャラクター | 7話 【9-8 ケイト森林 湿地部 】 |
イクス | 建物が潰れて町のあちこちに大穴が空いてる……。 |
ミリーナ | これが大樹の根が暴れた跡なの…… ? |
ポール | うわぁ、リフィル先生だ ! |
リフィル | ロイド ! お帰りなさい !ポールを連れ戻してくれたのね。 |
ポール | せ、先生、さいならー ! |
リフィル | まぁ、呆れた。あの子、逃げ方がロイドにそっくりだわ。 |
リフィル | ――さて、と。ロイド、隣にいるのはどなたかしら ? |
ロイド | あ、紹介するよ。イクスとミリーナとカーリャ。三人ともポールを捜すのを手伝ってくれたんだ。 |
リフィル | そうだったの。みんなありがとう。私はリフィル。教師をしています。あなたたちは……この土地の人 ? |
イクス | あ、いえ。この土地っていうかこの世界の人間です。あの―― |
リフィル | ――この世界、ね。そう、やっぱりそういうことなのね。 |
ミリーナ | え ? ここが異世界だってことがわかるんですか ? |
リフィル | そうね。マナの感じが違うから。それに――いえ、まずはあなたたちの話を聞きましょうか。 |
イクス | は、はい。説明します。 |
リフィル | ……そう。これはやっかいね。 |
ミリーナ | ……すみません。私たち、自分の世界の都合でロイドやリフィルさんたちにご迷惑をおかけしてしまって……。 |
リフィル | 全くだわ。 |
ロイド | 先生 ! ? 何を言い出すんだよ ! |
ロイド | 俺たちだってシルヴァラントを助けたいからコレットを助けたいからって自分の都合を優先してきただろ ! |
リフィル | そうよ。私たちのしていることと彼らがしていることは本質的には変わらない。 |
リフィル | でもね、彼らは『これが犠牲を伴って行われている』ということを知らないのよ。 |
リフィル | いえ、知っていても理解できていないのね。旅を始めたばかりのあなたや私のように。 |
イクス | あの、この具現化はリフィルさんたちの世界には影響はありません。 |
リフィル | どうして ? どうしてないと言い切れるの ?イクスだったかしら。あなた、私たちの世界へ行って、影響がないか調べたの ? |
イクス | そ、それは……ゲフィオン様が……そう言っていたから……。調べてはいないです。 |
リフィル | それに仮に私たちの世界に影響がなかったとしてもすでにこの世界には私やロイドの記憶を触媒にした新しい生命が誕生した。 |
リフィル | 世界をクリエイトするということはそこに責任が伴うの。私たちは勝手に鏡映点として選ばれ、責任を負わされた。 |
リフィル | しかも今回の具現化は何故起きたのかあなたたちすらわかっていないという。無責任だとは思わなくて ? |
ミリーナ | ――……それは……。それは……その通りです。……申し訳ありません。 |
リフィル | 本当にこれしか世界を救う道がないのなら……あなたたちがそう決意したのなら。 |
リフィル | 自分たちがやろうとしていることが本当はどういうことなのかよく理解なさい。 |
リフィル | それもできないで、協力を求めたり一人前に人助けをしている気持ちになるのは危険よ。 |
イクス | ……そう……か。そうだったんだ。 |
ミリーナ | イクス…… ? どうしたの ? |
イクス | マリアンさんのことがあって俺の中にもやもやした気持ちがずっと燻ってて……。 |
イクス | その正体が何だかわからなくてずっと考えてたけど多分これが答えなんだ。 |
イクス | 俺……何も知らないんだって。本当の本当に知らなかったんだって。 |
イクス | 何が正しくて何が間違ってるのか。そもそも自分の故郷のことすら怖くて本当の状況を見にいけなかった。 |
イクス | 前を向いているつもりだったけど目の前に起きたことから逃げ続けてたんだ。 |
ジュード | イクス ! 治癒術を使える仲間を集めて連れてきたんだけど……。――何か、あったの ? |
ミリーナ | あ、ええ。大丈夫。あの、リフィルさん。私たちもこの町の人たちを助けたいんです。あの……だから……。 |
リフィル | ……ええ。今は人命救助を優先しましょう。そこのあなた。 |
ジュード | あ、ああ、はい ! |
リフィル | 町の広場にこの町の町長がいるからその人に指示を仰いで。 |
ジュード | わかりました ! |
リフィル | 私たちも行きましょうか。まずは町の人たちを助けましょう。 |
ロイド | そうだな。 |
ロイド | イクス、ミリーナ。気にするなよ。先生は二人のことを心配してあんなことを言ってるだけなんだからさ。 |
ロイド | 俺は二人がやっていること凄いと思うぜ。世界を造ってまで、誰かや何かを救いたいって気持ち、わかる気がする。 |
ロイド | 俺の知ってる奴にもそういう奴がいるから。 |
イクス | あ……ありがとう、ロイド。 |
カーリャ | ロイドさま……性格イケメン過ぎませんか…… !カーリャ……ゲキカンです ! |
ミリーナ | …………。 |
キャラクター | 8話 【9-9 素朴な町】 |
? ? ? | う……うぅ……。 |
イクス | だ、大丈夫ですか ! ? |
カーリャ | あわわわわ、ひ、ひどい怪我ですよ ? |
ミリーナ | イクス。私が治療するわ。 |
ミリーナ | ……これで傷は治ったけれどまだ何だか苦しそう。 |
カーリャ | 何ですか ?この首の下あたりについてる石は ? |
ロイド | エクスフィアだ ! ? |
ミリーナ | エクスフィア ? |
ロイド | 俺が手につけてる石と同じだよ。エクスフィアをつけられてるってことはまさかこの人は人間牧場の人なのか ! ? |
イクス | に、人間牧場 ! ? な、何だそれ ! ?人間を飼ってる牧場 ! ?ま、まさか、ロイドたちの世界では人肉を…… ! ? |
ロイド | すっげー想像力だなぁ、イクス……。 |
リフィル | どうしたの ? |
ジェイド | ずいぶん騒がしいようですが何かありましたか ? |
カーリャ | はわわ、眼鏡大佐も来てたんですか。 |
ジェイド | 私も死体専門とはいえ、医学の道を志したこともありましたので。 |
ジェイド | まぁ、ジュードとティアに無理矢理連れてこられただけですが。 |
ロイド | 先生、この人、人間牧場から来たみたいなんだ。 |
リフィル | 人間牧場 ! ?ここにも人間牧場があるなんて……。 |
ジェイド | 人間牧場とは……また興味をそそられる単語ですねぇ。 |
リフィル | あなたは少し黙っていて。 |
ジェイド | これは失礼。 |
カーリャ | 出会ったばかりで眼鏡を御すとは……さすが鬼教師です。 |
ミリーナ | こら、カーリャ ! あなたも少し黙りなさい ! |
リフィル | 大丈夫 ? 話せるかしら ?あなたは人間牧場から逃げてきたの ? |
脱走者 | ……あ……ああ。木の根みたいな奴が建物を壊してくれたんで、なんとか……。 |
ロイド | 他の人は ? 他にも牧場に捕らわれてた人がいるんだろう ? |
脱走者 | そ、そうだ…… ! 仲間を助けてくれ !ほとんど逃げ出すことができたんだが怪我がひどくて動けない奴らもいるんだ。 |
ロイド | わかった。任せてくれ。先生、行こう ! |
リフィル | ……いえ。ここにもこの後、牧場から逃げてきた人が押し寄せてくるでしょうしまだ人手が足りないわ。 |
リフィル | 私はこの町に残ってトリアージと治療を続けます。 |
リフィル | ロイド、イクス、ミリーナ、カーリャ。あなたたちで牧場の様子を見てきてくれるかしら。 |
リフィル | そちらの様子次第で救援隊を向かわせるわ。連絡はケリュケイオンに入れてちょうだい。 |
リフィル | 魔鏡の通信……というのでケリュケイオンには連絡できるのでしょう ? |
ロイド | 先生……何かあったのか ? |
リフィル | え ? ああ、ちょっと疲れただけよ。大丈夫。あなたはまだ大丈夫よね。 |
ロイド | ああ、俺はまだまだ動けるぜ。でも無理するなよ。先生が倒れたら元も子もないんだからな。 |
リフィル | フフ、そうね。気をつけるわ。 |
ロイド | イクス、ミリーナ、カーリャ。人間牧場へ行こうぜ。頼めるか ? |
イクス | もちろんだよ。 |
ミリーナ | 私の治癒術でみんなを助けられるならやれるだけのことをやらないと。 |
カーリャ | ロイドさまの頼みならカーリャも頑張っちゃいますよ。 |
ロイド | よし、みんな行こう ! |
ジェイド | おつむの程度はともかく、中々鋭いですねぇあなたの教え子は。で、リフィル。何を隠しているのですか ? |
リフィル | ロイドを褒めるように見せかけてさりげなく自分の観察力を誇るのはやめてくれるかしら。 |
リフィル | それに今は治療に専念する方が大事なのではなくて ? |
リフィル | こちらも後であなたに聞いておきたいことがあるから、話ならそのときでいいでしょう。 |
ジェイド | これはこれは…… ! 世界の枠を飛び越えればあなたのような人もいるのですね……。 |
リフィル | どういうこと ? |
ジェイド | いえ、何でもありません。広場へ戻りましょうか、先生。 |
リフィル | 私、自分より年上の生徒を持った覚えはなくてよ。 |
リフィル | それに生徒になるつもりならもっと可愛げを持ってほしいものね。 |
ジェイド | はい、リフィル先生 ! |
リフィル | ……もういいわ。黙っててちょうだい。 |
キャラクター | 9話 【9-13 半壊した人間牧場 入口】 |
イクス | ここが人間牧場か……。えっと、確かエクスフィアっていう石を物理変化させるための場所だっけ ? |
ロイド | ぶつりへんか ? それはよくわかんねーけど人間でエクスフィアを目覚めさせる実験を行ってた場所だよ。 |
ミリーナ | そんな恐ろしい場所まで具現化してしまうなんて……。 |
ロイド | ……俺のせいかもしれないな。 |
カーリャ | え ! ? どうしてそうなるんですか ? |
ロイド | だって具現化ってのは俺の心とか記憶が影響するんだろ ? |
ロイド | 俺が人間牧場のこと気にしてたから具現化しちまったんじゃないかな。 |
ロイド | 大樹の根にしてもさ、俺たちの世界で大樹が暴走しちまったことがあって……。 |
ロイド | その時のことがこの具現化にも影響してるんじゃないかって思うんだよ。 |
イクス | リフィルさんの言ってた通りなんだな。俺……本当に何もわかってなかったよ。 |
イクス | ゲフィオン様の言う通り、アニマサーチした異世界にはなんの影響もないって言葉を信じて。 |
イクス | でもよく考えてみれば、勝手にここに具現化されて、いろいろな枷を背負わせてしまってるんだなって。 |
イクス | 今まで出会った人たちがみんな好意的だったから深く考えてみようともしなかった……。 |
ロイド | だったらもういいんじゃないか。気づいたんだろ ?気づいたあと、どうしていくかってことが大事なんだと思うぜ。 |
ロイド | それにさ、俺にもイクスたちの気持ちがわかるんだ。 |
イクス | え ? |
ロイド | 俺の世界も色々やばいことになっててさ。 |
ロイド | 再生の神子って存在が世界を救ってくれるんだって、俺もみんなも……多分世界中がそう思ってた。 |
ロイド | でもさ、違ったんだよ。何かをしたいと思うなら、自分が自分の力で立ち向かわなきゃいけないんだ。 |
ロイド | そうやって初めてつかみ取れる物があるって俺、ある人に教えられて気づいたんだ。 |
イクス | 自分の力で立ち向かう……。 |
ロイド | 俺にもそういう瞬間があった。イクスたちは今がそのときなんだと思うぜ。 |
ロイド | イクスたちがこの世界を救うために立ち向かうなら、俺も協力するよ。 |
イクス | ロイド……。うん、そうだな。俺……今度は目の前のことから目を背けないよ。 |
イクス | 知らなくてもいいってごまかし続けてきたことをきちんと知ろうと思う。 |
イクス | もう【あの時】みたいなことは嫌だ。 |
ミリーナ | イクス、あれは…… ! |
カーリャ | んん ? 何のことです、ミリーナさま。 |
イクス | ……俺が魔鏡術を暴走させた時のことだよ。多分、俺の逃げ癖ってあそこから始まってるんだ。 |
ロイド | ……イクス。その話、後にしよう。誰か来る。 |
イクス | 牧場の人かな。 |
ロイド | いや、殺気がする。ひとまず奥へ進もう。 |
ミリーナ | そうね。今は牧場の人を捜しましょう。困っているはずだもの。 |
キャラクター | 11話 【9-15 半壊した人間牧場 深部】 |
ファントム | まだ終わりではありませんよ。 |
ロイド | また魔物の召喚を ! ? |
ミリーナ | きりがないわ。どこか隙を見てファントムの首を取らないと ! |
ファントム | ミリーナ……。その冷徹な判断力……私はそういうところに惹かれるのですよ……。 |
イクス | ミリーナに近づくな ! |
リフィル | 待ちなさい。 |
ロイド | リフィル先生 ! ? どうしてここに ! ? |
ファントム | リフィル殿。こんなところに足を運んで下さるとは気が変わったと考えてよろしいかな ? |
リフィル | あなたたちの狙いはわかっているわ。ロイドたちの後ろにあるエクスフィアね。 |
ロイド | こんなところにエクスフィアが ! ?俺の知ってる牧場とは雰囲気が違いすぎてわからなかった……。 |
リフィル | 具現化にあなたの記憶や感情が混ざっているから正確に再現されていないのね……。 |
ロイド | ……なんか馬鹿にされたよーな気がするぞ ? |
ファントム | リフィル殿。我らの下に来て下さるのですな。 |
イクス | え ! ? |
ロイド | ど、どういうことだよ、先生 ! |
リフィル | ……条件は2つ。ロイドたちをこのまま見逃すこと。そして、ここにあるエクスフィアはあきらめること。 |
ファントム | ……結構。あなたという素晴らしい特異鏡映点が手に入るなら我々にはエクスフィア以上の価値がある。 |
ミリーナ | 特異鏡映点 ! ? リフィルさんが ! ? |
ロイド | リフィル先生 ! |
ファントム | ――おっと、動かないでいただきたい。今はリフィル殿に敬意を表し黙って引き下がります。 |
ファントム | ただし少しでも我らの邪魔をすれば私のペットたちを牧場の人間に向かわせますよ。 |
イクス | くそっ ! |
ロイド | リフィル先生……。どうしてこんなまねを……。それに前からファントムを知っていたのか ? |
ミリーナ | こうしてはいられないわ。ロイドはリフィルさんを追って !私たちは―― |
イクス | 牧場の人たちを町に送り届けてからみんなでリフィルさんを取り戻す、だろ ? |
ロイド | わかった ! 牧場の人たちを頼む ! |
? ? ? | これは困ったな。リフィルさんを巻き込むのはボクが許さないよ。大切な同族だしね。 |
マーク | やれやれ、奴に逆らえってのかよ。 |
? ? ? | そうだね。どうなるかはリフィルさん次第かな。もう少し見学しておくことにするよ。 |
? ? ? | 使えそうな手駒も集めないといけないし。 |
マーク | あの頭のおかしな博士だけじゃ足りないか ? |
? ? ? | あいつ……雑魚臭がするしね。少しはボクに選ばせてよ。 |
マーク | やれやれ。子供のお守りは大変だわ。 |
キャラクター | 12話 【9-16 半壊した人間牧場 深部】 |
ロイド | くそ…… ! あいつら先生をどこへ連れて行ったんだ ! ? |
ロイド | ――ん ? 今、何か踏んだぞ ? |
ロイド | これはエクスフィアの欠片だ。どうしてこんなところに……。 |
ロイド | あっちにも落ちてる……。そうか ! もしかしたらこれは――。 |
イクス | よし。なんとか人間牧場の人たちを助けられたな。 |
ミリーナ | 次はリフィルさんの行方を捜しましょう。 |
イクス | そうだな。まずはロイドと合流しよう。こんな時、魔鏡を使った通信が使えればな……。 |
ジェイド | なるほど。確かにそれは便利です。ガロウズとキールに話して通信装置を開発してもらいましょう。 |
イクス | え ! ? ジェイドさん随分簡単に言いますけど魔鏡の通信は鏡士しか……。 |
ジェイド | だからこそ、普通の人間にも使える通信装置があればいい――という話ですよね。 |
ジェイド | キールは魔鏡技術を独学で学んでいました。彼が原理を考案しガロウズが作ればできるでしょう。 |
ジェイド | 足りないところはあなたたちが助ければいい。いやぁ、持つべきものは才能ある仲間ですねぇ。 |
ミリーナ | 人を便利に使う軍人さんも、ですね ? |
ユーリ | その人使いの荒い軍人さんに頼まれてこいつを見つけたぜ。 |
イクス | それは……何かの宝石、ですか ? |
ユーリ | 見たことがない物だからなんとも。だがラピードがこの宝石の欠片からあのリフィルって先生の匂いをかぎとった。 |
ラピード | ワフン ! |
ユーリ | この宝石の欠片が一定の間隔で落ちてたんだよ。 |
ユーリ | パンくずならぬ石くずを落としていったってことだろうな。 |
ミリーナ | ということはこの宝石の欠片を拾っていけばリフィルさんがどこに行ったかわかるってことね。凄いわラピードさん ! |
ラピード | ワン ! |
イクス | よし。リフィルさんを捜す班とこの街に残って救護を続ける班に分かれよう。 |
ジェイド | 私はここに残ります。リフィルがいない今町長だけでは住民の混乱を治められない。私が指揮を執りましょう。 |
ミリーナ | ジェイドさんなら安心ですね。イクス、私たちは急いでリフィルさんを捜しましょう ! |
イクス | ああ、そうだな ! |
キャラクター | #N/A |
ロイド | くそ… ! あいつら先生をどこへ連れて行ったんだ ! ? |
ロイド | ――ん ? 今、何か踏んだぞ ? |
ロイド | これはエクスフィアの欠片だ。どうしてこんなところに…。 |
ロイド | あっちにも落ちてる…。そうか ! もしかしたらこれは――。 |
イクス | よし。なんとか人間牧場の人たちを助けられたな。 |
ミリーナ | 次はリフィルさんの行方を捜しましょう。 |
イクス | そうだな。まずはロイドと合流しよう。こんな時魔鏡を使った通信が使えればな…。 |
ジェイド | なるほど。確かにそれは便利です。ガロウズとキールに話して通信装置を開発してもらいましょう。 |
イクス | え ! ? ジェイドさん随分簡単に言いますけど…。 |
ジェイド | キールは魔鏡技術を独学で学んでいました。彼が原理を考案しガロウズが作ればできるでしょう。 |
ジェイド | 足りないところはあなたたちが助ければいい。いやぁ、持つべきものは才能ある仲間ですねぇ。 |
ミリーナ | 人を便利に使う軍人さんも、ですね ? |
ユーリ | その人使いの荒い軍人さんに頼まれてこいつを見つけたぜ。 |
イクス | それは…何かの宝石、ですか ? |
ユーリ | 見たことがない物だからなんとも。だがラピードがこの宝石の欠片からあのリフィルって先生の匂いをかぎとった。 |
ラピード | ワフン ! |
ユーリ | この宝石の欠片が一定の間隔で落ちてたんだよ。 |
ユーリ | パンくずならぬ石くずを落としていったってことだろうな。 |
ミリーナ | という事はこの宝石の欠片を拾っていけばリフィルさんがどこに行ったかわかるってことね。凄いわラピード ! |
ラピード | ワン ! |
イクス | よし。リフィルさんを捜す班とこの街に残って救護を続ける班に分かれよう。 |
ジェイド | 私はここに残ります。リフィルがいない今町長だけでは住民の混乱を納められない。私が指揮を執りましょう。 |
ミリーナ | ジェイドさんなら安心ですね。イクス、私たちは急いでリフィルさんを捜しましょう ! |
イクス | ああ、そうだな ! |
キャラクター | 13話 【9-17 レミエル街道 1】 |
カーリャ | むぅぅ。宝石の欠片どこにも見当たりませんね。 |
ミリーナ | リフィルさんはこの辺りにいるってことかしら ?でも建物も何もない場所だけど……。 |
イクス | あ ! あそこにいるのはロイドだ !おーい ! ロイド ! |
ロイド | イクス ! みんな !ちょうどみんなを呼びに街へ戻ろうと思ってたところなんだ。 |
イクス | リフィルさん見つかったのか ! ? |
ロイド | いや、その逆だ。先生がエクスフィアの欠片を落として目印にしてくれてたみたいなんだけどここで途切れちまってるんだ。 |
ミリーナ | 私たちもその宝石の欠片を拾ってここまで来たの。 |
イクス | ……ここで匂いが途切れるってことは何か乗り物に乗せられたのかも知れないな。 |
ガロウズ | おい、イクス。ゲフィオン様から連絡だ。カレイドスコープに異変があったらしい。大至急、城に来てくれとのことだ。 |
ロイド | イクス。カレイドスコープってのはこの世界に重要な物なんだろ。だったら、ここは俺たちに任せてくれていいんだぜ。 |
ミリーナ | でもイクス。リフィルさんは私たちや牧場の人を助けるために救世軍についていったのよ ? |
ミリーナ | それにリフィルさんが本当に特異鏡映点ならあいつらに何をされるか……。 |
イクス | ……ガロウズ。俺たちはこのままリフィルさんを助ける。 |
ガロウズ | おい !じゃあゲフィオン様の方はどうするんだ。 |
イクス | ジェイドさんとキールがいる。多分魔鏡術の知識はミリーナと同じぐらいある筈だ。 |
イクス | 持つべきものは才能ある仲間だからな ! |
ガロウズ | ――わかったよ。こっちのことは任せとけ。何かあれば連絡する。 |
イクス | 頼む、ガロウズ。 |
ガロウズ | イクス。お前、中々いい面構えになってきたぞ。腹、くくったな ? |
イクス | ……あ、ありがとう。 |
ロイド | イクス……ありがとう !お前って最高だぜ ! |
イクス | そ、そんなことないよ……。 |
ロイド | そんなことあるよ !リフィル先生を助けたら絶対恩返しするからな。 |
イクス | 何か照れるな。えっと……この後だけどケリュケイオンみたいな飛空艇はそうそうない筈なんだ。 |
イクス | 地上を走る乗り物なら荒れ地を避ける筈だからある程度方角が絞れると思う。 |
ロイド | 頭いいなー、イクス !じゃあ、行こうぜ ! |
キャラクター | 14話 【9-19 レミエル街道 3】 |
ファントム | こんな物を落としてくるとは。可愛らしい真似をしてくれますねぇ ? |
リフィル | あら……何のことかしら。 |
ファントム | あなたが道すがら落としてきたエクスフィアの欠片は回収させています。助けが来るなどとは思わないことですね。 |
リフィル | 雄弁さは焦りの証かしら ?それとも怖いの ? |
ファントム | ……私は頭のいい女性は好きですが土足で踏み込んでくる輩は嫌いなんですよ。 |
ファントム | 小利口なあなたならそのアンチ・ミラージュブレスが体にどんな作用を引き起こすかわかるでしょう。 |
ファントム | せいぜい楽しんで下さい。 |
ロイド | ……やっぱりな。 |
ミリーナ | どうしたの ? |
ロイド | 何か、しっくりこないと思ってたんだけどこの辺りには大樹の根が暴れた形跡がないんだ。 |
イクス | 言われてみれば、地面に穴も空いてないし枯れた樹の根も転がってないな……。 |
カーリャ | 街から離れてるからじゃないですか ? |
ミリーナ | そうかしら。そんなに遠くないような気もするけど……。 |
ロイド | 上手く言えないんだけどこの辺りの風景が何かピンとこないんだ。 |
ロイド | 具現化されたからって、俺たちの世界がそのまま写される訳じゃないんだろ ? |
ロイド | 俺の記憶とか感情とかが何か関係してるんだよな。 |
ロイド | だから人間牧場も、俺の知ってるところとは全然雰囲気が違ってた……。 |
ミリーナ | そうね。私たちは【エンコード】って呼んでるわ。 |
ミリーナ | 異世界には異世界の化学や物理や魔術法則があるけれど、それをそのまま私たちの世界に持ってきたら |
ミリーナ | 異質なエネルギーがぶつかって世界が壊れてしまう可能性があるの。 |
ミリーナ | だから鏡映点の人たちを通すことで一度全ての法則をリセットして、私たちの世界に馴染むように変換しているのよ。 |
ロイド | あー、そういう難しいことは本当によくわからないんだよ。 |
ロイド | 要するに、この世界には俺の記憶とか気持ちが混じってるんだよな。 |
ロイド | だとしたら、何か懐かしいとか、怖いとか見覚えがあるとか何かしら心に引っかかる物があると思うんだ。 |
イクス | そうだな。他の鏡映点のみんなもそんな感じのことを言ってた。見覚えがあるようなないような、不思議な感覚だって。 |
ロイド | だけどこの辺りは俺、何も感じない。俺の心からは凄く遠い気がする。 |
ミリーナ | まさか……キメラ化…… ? |
イクス | それは ? 俺は初めて聞く言葉だけど……。 |
ミリーナ | ――ええ、多分そうよ。だからカーリャもアニマ酔いしてしまったんだわ ! |
ミリーナ | 凄いわ、ロイド !本当に具現化のこと、よくわかってないの ? |
ロイド | え ? へ……へへ、まぁな ! 全然わからないぜ ! |
イクス | そこは自慢するところじゃないような……。でもミリーナ、キメラ化ってどういうことなんだ ? |
救世軍 | ――あ ! ? お前たちは ! ? |
ロイド | ちょうどいいぞ ! あいつらを捕まえてリフィル先生の居場所を聞こう ! |
キャラクター | 16話 【9-21 フォシテス砂漠 中央】 |
ジェイド | ――キメラ化、ですか。複数の異世界が混ざり合って具現化したのですね。 |
キール | 具現汚染の一種だな。ミリーナから教えてもらった現代魔鏡論に書いてあった。 |
ゲフィオン | カレイドスコープを解析したが具現化の使用履歴が削除されていた。だが代わりに、割れた魔鏡の欠片を見つけたのだ。 |
ゲフィオン | おそらくイクスの魔鏡を何らかの手段で入手、解析して似た力を持つ魔鏡を作ったのだろう。 |
ゲフィオン | それができるのはビクエしかいない。 |
キール | ビクエというのは鏡士の最高位に与えられる称号だったな。 |
キール | そんなに凄いならイクスとミリーナをアイギス計画に巻き込む必要はなかったんじゃないか。 |
ガロウズ | 当代ビクエ様は、以前から病気で倒れて寝たきりの筈だ。 |
ジェイド | ……だからイクスたちを巻き込まざるを得なかった。 |
ジェイド | それなのにビクエを犯人と考えるとはまだ何か隠しておられるようですねぇ。 |
ゲフィオン | 動けない筈のビクエを見たという者がいる。今までは気にもとめていなかったがこうなってくると疑わざるを得ない。 |
ゲフィオン | 調査をしてみるが――。 |
ジェイド | いえ。その調査は我々で行います。この王宮には敵が多すぎる。内通者が複数いると考えるべきでしょう。 |
ゲフィオン | ……ではこの件の調査はジェイド殿に一任しよう。 |
ガロウズ | キメラ化した大陸はどうしたらいいんでしょうか。多少の汚染なら問題ないでしょうが、あの規模じゃ……。 |
ゲフィオン | ああ、非常に危険だ。しかもこの魔鏡の破片をサーチすると、意図的に時の因果律が存在する世界を選んだことが見て取れる。 |
キール | 今具現化しているロイドたちの世界にも時間に干渉する何かがあるってことか。 |
ジェイド | だからリフィルが特異鏡映点として現れることになった……。ふむ……。一つ確認してよろしいでしょうか。 |
ゲフィオン | 何が気になっているのだ ? |
ジェイド | 簡単な話です。 |
ジェイド | カレイドスコープと魔鏡が、異世界の因果律に干渉できるということは、恐らく時間の流れを観測して任意の時代を具現化することもできる筈だ。 |
ジェイド | そもそも異世界は並行世界の一種でもある。時間移動は並行世界移動だという説もありますね。 |
ゲフィオン | 何が言いたい。 |
ジェイド | この世界を蘇らせようと思うなら異質な異世界をサーチするより、同じ世界の過去をサーチする方が良かったのでは ? |
ガロウズ | 過去 ! ? そんなことができるのか ! ? |
ゲフィオン | そのアプローチはすでに検討実行され――失敗した。 |
ゲフィオン | だから危険を承知で異世界を頼るしかなかったのだ。 |
ゲフィオン | この世界を救うためには手段を選んではいられない。 |
ジェイド | …………そう、でしたか。 |
キャラクター | 17話 【9-24 アルテスタ街道 2】 |
マーク | よう、イクス ! また鏡映点をナンパか。毎度毎度上手いことやるな。 |
イクス | マーク…… ! |
ロイド | 敵か ! ? |
マーク | 敵と言えば敵だな。俺は救世軍だから。 |
ロイド | だったら何をしにここへ現れた !リフィル先生をどこへ連れていったんだ ! |
マーク | まあまあ、落ち着いてくれよ。取引をしないか。 |
ミリーナ | ……どういうこと ? 何を企んでいるの ? |
マーク | お前たちが捕まえた救世軍は俺の部下だ。返してくれないか。もちろんタダとは言わない。 |
マーク | リフィルが閉じ込められている場所の地図とアンチ・ミラージュブレスを外す鍵を渡す。 |
イクス | リフィルさんにアンチ・ミラージュブレスを ! ? |
ロイド | なんだ ? そのあんち……何とかって ? |
イクス | 人体実験の被験者につける機器なんだ。 |
ロイド | そんなものを先生につけたのか ! ? |
マーク | どうする ? アンチ・ミラージュブレスは健康な人間がつけていても害が及ぶ。早く助けてやりたいだろう ? |
ミリーナ | 罠、じゃないの ? |
マーク | だとしたらどうする ?仲間を見捨てるのか ? |
ロイド | イクス、ミリーナ。取引しよう。罠だとしても、そんなもの壊しちまえばいいんだ。 |
マーク | 単純明快だな。そういうの、意外と嫌いじゃないぜ。ほらよ、鍵と城の地図だ。 |
イクス | この地図が…… ? |
マーク | ……ああ、見ての通りリフィルが捕らわれている古城の見取り図だ。 |
マーク | リー……じゃねぇやファントムか。あいつがその城を実験場として使うつもりらしい。 |
マーク | まだ準備が整ってないから助け出すなら今のうちだぜ。 |
ロイド | よし、みんな、急ごう ! |
マーク | おっと、仲間は返してもらうぞ |
イクス | もちろんだ。 |
マーク | いいねぇ、反吐が出るほど青くてまっすぐで。せいぜい頑張れよ。 |
イクス | マークの奴、いったいどういうつもりだ。 |
ロイド | 悪いが、今は奴のことよりリフィル先生を助けないと。 |
ミリーナ | ええ。リフィルさんきっと苦しんでいる筈だわ。急ぎましょう ! |
キャラクター | 18話 【9-26 封鎖された古城 地下】 |
ロイド | リフィル先生 ! |
リフィル | ロイド ! それにイクスたちまで…… !よくここがわかったわね。 |
イクス | リフィルさんが『パンくず』を落としてくれたので……。 |
ミリーナ | 待って下さい。今、アンチ・ミラージュブレスを外しますね。 |
リフィル | みんな、助けに来てくれてありがとう。だけどこの城を出る前にもう少し協力してほしいことがあるの。 |
ロイド | 先生……まさかここを自爆させようって言い出すんじゃ……。 |
イクス | え ! ? この城、自爆装置なんてついてるんですか ! ? |
ミリーナ | なるほど。敵の戦力は徹底的に叩くってことですね。 |
カーリャ | か、過激です…… ! |
リフィル | ちょっと待ちなさい !誰もそんなこと言っていないでしょう。 |
リフィル | それは……壊せるならその方がいいけれど見たところ自爆装置があるような場所とは思えないわ。 |
リフィル | そうじゃなくて、この城の奥に救世軍が集めてきたエクスフィアがあるの。あれは悪用されると危険だわ。回収したいのよ。 |
イクス | エクスフィアって一体何なんですか ?確かロイドもつけてるんですよね。 |
リフィル | そうね……。人間の能力を極限まで高める作用がある宝石とでも言えばいいかしら。 |
リフィル | ただし、誤った使い方をすれば人体に様々な悪影響を与えるの。 |
リフィル | 素晴らしい力がある石だから悪用させるわけにはいかないのよ。保管場所なら私が案内できるわ。 |
ミリーナ | わかりました。すぐにエクスフィアを回収しましょう。 |
ロイド | 先生が加わってくれるから回復は万全だな ! |
リフィル | ごめんなさい。私は戦闘には参加できないの。治癒術もあてにしないで。 |
イクス | え ? まさかアンチ・ミラージュブレスの影響ですか ? |
リフィル | ……いえ。私が特異鏡映点だからよ。ファントムは特異鏡映点には世界を滅ぼす力があると言っていたわ。 |
ロイド | そういえば、先生。ファントムと知り合いだったのか ? |
リフィル | ロイドがポールを捜しに行った後にあの男が私を訪ねてきたの。すぐに追い払ったのだけれど……。 |
イクス | リフィルさんが特異鏡映点だから連れて行こうとしたのか……。 |
イクス | マリアンさんといいどうして特異鏡映点がいるってわかったんだ ? |
リフィル | それは彼らが特異鏡映点の具現化に関わっているから……かも知れないわね。 |
ミリーナ | それって王宮に救世軍の味方がいるってことですよね。 |
イクス | …………。 |
リフィル | ……話がそれたわね。とにかく私が通常とは違う存在である以上、今後力を使うことは避けるべきだと思うの。 |
リフィル | 少なくとも特異鏡映点について正確なことが分かるまでは魔術も治癒術も封印するしかないわ。 |
ミリーナ | ……すみません。私たちの考えが至らなくて。 |
ロイド | そのことならもう気にするなよ。リフィル先生だっていつまでもそのことを責めるつもりはないと思うぜ。 |
ロイド | それより救世軍の連中に気づかれる前にエクスフィアを回収しよう。 |
リフィル | そうね。まだこの城は敵のベースとしては機能していないようだから今がチャンスよ。 |
イクス | はい ! 行きましょう ! |
キャラクター | 19話 【9-28 封鎖された古城 隠し部屋】 |
ロイド | もしかして……これ全部エクスフィアか ? |
リフィル | こんなに集めていたのね。これじゃあ全部運ぶのは難しいかしら。 |
イクス | 待って下さい。ケリュケイオンに連絡を取って、みんなに手伝ってもらえば運び出せると思います。 |
ロイド | イクスの魔鏡ってそんなこともできるのか。すげぇ ! なぁなぁ ! 俺にも使わせてくれよ。 |
イクス | いや、これは鏡士でないと無理だと思うよ。 |
ロイド | そうなのか。鏡士ってすげぇな ! |
イクス | そ、そんなことないよ。 |
ミリーナ | ロイドって感心したり、何でも褒めたり……何だかちょっと照れちゃうね。 |
イクス | そ、そうだな。どうしていいのかわからなくなっちゃうよ。 |
ロイド | なんでだ ? 凄いのを凄いって言うのは当たり前だろ ? |
リフィル | フフ……。ロイドは本当に素直でバカ正直ないい子なの。普通の人間にはちょっとまぶしいぐらいにね。 |
ロイド | バカ正直ってなんだよ、先生。 |
リフィル | ごめんなさい。これでも褒めてるのよ。 |
ミリーナ | ……何だかロイドがうらやましいな。 |
イクス | うん、俺も……。 |
ロイド | 何がだ ? |
イクス | ロイド自身にも憧れるし、それにリフィルさんみたいな大人が傍にいてくれて色々教えてくれたら心強いんだろうなって。 |
ミリーナ | 私たちの島には学校がなかったから……。 |
ロイド | なんだ。だったらイクスたちも今からリフィル先生の生徒になればいいじゃん。 |
イクス | え ! ? |
リフィル | あら、二人が望むなら喜んで教えるわよ。 |
ミリーナ | は、はい ! リフィル先生 ! |
イクス | お、俺もリフィル先生って呼んでもいいですか ? |
ロイド | そりゃ、先生なんだから先生でいいだろ ! |
イクス | り……リフィル……せ、せんせい……。は、恥ずかしい…… ! |
カーリャ | イクスさま何を照れてるんでしょう。 |
ミリーナ | 言い慣れない言葉だしリフィルさんが美人だからよ。イクスったら可愛い ! |
イクス | う、う、うるさぁいっ !と、とにかくガロウズに連絡取るよ ! |
キャラクター | 20話 【9-29 封印されし森 入口】 |
ガロウズ | エクスフィアの積み込み、完了したぜ。 |
リフィル | ありがとう。助かったわ。 |
ジェイド | さて、ではそろそろ今回の具現化における最大の問題点に触れてもよろしいでしょうか ? |
イクス | さっき報告してくれた「キメラ具現化」の問題ですね。 |
ジェイド | 調査の結果、現在この大陸は三つの異世界が混ざり合って具現化しています。 |
ジェイド | 原因は本来の使うべきではない魔鏡を使用したこと。そして時の因果律に干渉したこと。 |
ジェイド | これらはおそらく意図的なものだったのでしょう。 |
リフィル | 私――特異鏡映点を生み出すためね。 |
ジェイド | ええ。キメラ具現化はあの巨大な樹の暴走を引き起こしています。 |
ジェイド | 樹に向かってアニマが集められその結果、樹の根が大地を引き裂こうとしている。 |
ジェイド | このままでは、あの樹はますます力をつけてやがて他の島々へ根を伸ばすでしょう。 |
ロイド | 俺たちの世界と同じことが起きるのか……。何か回避する方法はないのか ? |
イクス | 暴走の原因は、樹がアニマを集めていることなんですよね。どうしてアニマを集めているんでしょうか。 |
ジェイド | ロイドたちの世界を構成するアニマとは違う別世界のアニマが流入しているせいでしょう。 |
ロイド | もっとわかりやすく説明してくれよ。あんた、頭いいんだろ ? |
ジェイド | そうですね……。血に血液型があるようにアニマにも型があり、違うアニマが混じると病気になる……といったところでしょうか。 |
ロイド | だったら血を分離すればいいだけだろ。 |
ジェイド | 簡単に言いますねぇ。 |
ロイド | 三つの異世界が混じり合ってるのが原因ならテセアラとシルヴァラントみたいに分離すればいいんじゃないかな。 |
ロイド | 精霊の楔を抜いたときみたいに……ってあれは失敗したからだめか。 |
リフィル | ――待って。悪くないアイデアだわ。 |
リフィル | 異なるアニマが流入しあっている場所は何らかの異変が起きている筈。魔鏡で調べることはできないの ? |
ジェイド | なるほど。複数のアニマが混在している場所が世界が混ざり合っている場所。 |
ジェイド | コンタミネーションの起きている場所が特定できれば、魔鏡でアニマを動かして分離させることができる。 |
ジェイド | まぁ、あくまで予測ではありますが。 |
ミリーナ | 鏡士はアニマを意図的に動かすことに長けています。 |
ミリーナ | アニマの混ざり合う境界線上を、キラル分子で切り離せば、キメラ具現化した対象物を分離させることができるんじゃないかしら。 |
ロイド | だめだ。何言ってるのかさっぱりわかんねーよ。人間の言葉でしゃべってくれ ! |
イクス | 人間の言葉だったと思うけど俺にもよくわからなかった。 |
イクス | ……要するに魔鏡でロイドたちの大陸を三つの異世界に切り分けるってことですか ? |
ジェイド | それだけわかっていれば十分です。キメラ具現化の切り分け方法について考えがあります。 |
ジェイド | リフィル、キール、ガロウズ力を貸して下さい。イクスはこの大陸の光魔の鏡を探して下さい。 |
イクス | 光魔の鏡、ですか ? |
ジェイド | ええ。見つけたら封印せずに待機するように。光魔が襲ってきて危険ですから、戦力を整えていって下さい。 |
ロイド | あーもう、何だか訳わかんねーけどイクスの方の仕事は俺にもできそうだな。イクス、協力するぜ ! |
イクス | ありがとうロイド。俺も何だかよくわからないけど……とりあえず光魔の鏡を探してきます。 |
ミリーナ | もちろん私も一緒よね、イクス。 |
カーリャ | カーリャもお供しますよ。 |
イクス | うん、みんな頼むよ ! |
キャラクター | 21話 【9-30 封印されし森 深部】 |
カーリャ | ぶるぶるします。光魔の鏡が近いですよ ! |
ミリーナ | 見て、あの奥のところ ! |
ロイド | あれが光魔の鏡か……。 |
ガロウズ | イクス。光魔の鏡は見つかったか ? |
イクス | ああ。今光魔の鏡の前にいる。 |
ジェイド | 結構。では周囲の光魔を片付けてからイクス一人で光魔の鏡の中に入ってもらいます。 |
イクス | えっ ! ? |
リフィル | 光魔の鏡というのは、異世界のアニマがティル・ナ・ノーグへやってくる時のゲートになっているの。 |
リフィル | 光魔の鏡を通してこの大陸を見ればアニマが結合して混ざり合っているのが見える筈よ。 |
リフィル | それを、腕の魔鏡からキラル分子を照射することで切り離すの。 |
キール | ただし光魔の鏡の中に入れば、そのままティル・ナ・ノーグと他の異世界の間にあると思われる【虚無】に引きずり込まれる。 |
キール | カーリャを連れて行け。カーリャを通じてティル・ナ・ノーグのミリーナとつながることでこちらの世界にイクスをつなぎ止める。 |
ミリーナ | そんな危険なこと、イクスにさせられません !私が代わりに―― |
ガロウズ | いや、光魔の鏡の中でアニマを分離するにはイクスの魔鏡が必要なんだ。だからこれはイクスにしかできない。 |
ミリーナ | でも…… ! |
ロイド | ミリーナ。ミリーナは自分を信じられないのか ? |
ミリーナ | え ? 自分を信じる…… ? イクスじゃなくて…… ? |
ロイド | ああ。今まで一緒にいたんだから俺にもわかるよ。ミリーナがイクスのことを信頼してるのは。 |
ロイド | でもミリーナはイクスを大切に思いすぎて自分の中の不安までイクスに重ねてるんじゃないかな。 |
ロイド | ミリーナは自分がイクスをこちらの世界にとどめておけないんじゃないかって心配してるんだと思うんだよ。 |
ミリーナ | あ…… ! |
ロイド | 大丈夫。ミリーナならできる。そうだろ、イクス。 |
イクス | ああ、ミリーナはいつだって俺を助けてくれるから。 |
ミリーナ | イクス……。だけど【あの時】私のせいで……。 |
イクス | ミリーナ。違う。【あの時】無理に力を使おうとした俺を助けてくれたのはミリーナとフィルだった。 |
ミリーナ | …………。 |
ロイド | 俺には【あの時】のことはわからないけど……お互いが自分の中の不安に囚われてるだけなんじゃないかな。 |
ロイド | その不安を埋める手伝いを俺にもさせてくれよ。俺だって二人の仲間だろ ? |
ロイド | いざとなったら俺も鏡の中に飛び込んでイクスを連れ戻すさ ! |
ミリーナ | わかったわ。私も自分を信じる。私……ここでイクスを守るわ。 |
ジェイド | 結構。では光魔を片付けたら作戦開始です。頼みましたよ。 |
キャラクター | 22話 【9-30 封印されし森 深部】 |
イクス | よし、行くぞ ! |
カーリャ | はわわ……。綺麗な光です。 |
リフィル | イクス、聞こえていて ? |
イクス | は、はい ! |
リフィル | アニマの色が違う箇所にキラル分子を照射するの。やってみて ! |
イクス | (ここで失敗したら……具現化した世界はどうなるんだ……) |
イクス | ――いや、今は目の前のアニマに集中する ! |
ロイド | 随分時間がたったけどイクスはどうだ ? 何かわかるか ? |
ミリーナ | 大丈夫。カーリャを通じてイクスを感じるわ。 |
ロイド | …… ! ? おい、光魔の鏡が光り出したぞ ! ? |
イクス | ――よし。これでアニマが混ざり合っているところは全部分離できた筈だぞ。 |
カーリャ | さすがです、イクスさま !これで帰れますね。 |
イクス | ……あれ ? カーリャの姿が……。 |
イクス | カーリャ ! ? どうなってるんだ ! ?ミリーナ ! ガロウズ ! ロイド !リフィル先生 ! キール ! ジェイドさん ! ? |
イクス | な、何だ ? 金色の光の砂が……俺の周りに……。 |
? ? ? | 苦シイ……ココハドコダ……。 |
? ? ? | 助ケテ……助ケテ……ドウナッテシマッタノ ? |
イクス | な、何だ ! ? 人の声がする ! ? |
? ? ? | タスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテ |
? ? ? | アニマヲヨコセオマエノアニマヲ !アニマヲアニマヲアニマヲアニマヲアニマヲアニマヲアニマヲアニマヲアニマヲアニマヲ |
イクス | や、やめろ……俺の中に入ってくるな ! ?消えろ ! ? 消えてくれ ! ? |
ロイド | イクス ! ! |
ロイド | イクス ! 手を伸ばせ !それ以上そっちに行くと【虚無】に飲まれるぞ ! |
イクス | ロイド ! |
ミリーナ | イクス ! 大丈夫 ! ? |
イクス | 俺……一体どうなったんだ…… ? |
ミリーナ | カーリャが鏡の中からはじき飛ばされてきたのっ ! |
ミリーナ | それで、私が助けに飛び込もうとしたらロイドがカーリャと一緒に……っ ! |
イクス | ミリーナ……泣いてる ? |
ミリーナ | ごめんなさい。私がちゃんとつなぎ止めておけなかったから。 |
ロイド | そんなことないだろ。カーリャは金色の砂にはじき飛ばされたって言ってたんだ。ミリーナのせいじゃない。 |
カーリャ | そうですよ。それにロイドさまに助けてもらってちゃんとイクスさまを連れ戻せましたからね。 |
イクス | うん。ありがとう、ロイド。何があるかわからない鏡の中まで助けに来てくれて。 |
ロイド | 仲間だろ。そんなのお互い様だ。 |
イクス | ミリーナもありが――。 |
イクス | ! ? |
ミリーナ | イクスが……無事で良かった…… ! |
カーリャ | お二人とも、喜び合うのはいいんですけれど光魔の鏡の封印も忘れないで下さいね。 |
イクス | (光魔の鏡の中で聞こえたあの声は何だったんだ……。それにあの何もない空間……。虚無……。) |
イクス | (消失したオーデンセ海域の空間とも似ていた……) |
イクス | (俺たちの世界に迫っている滅びってのはあの【虚無】のことなのか…… ? ) |
キャラクター | 22話 【9-30 封印されし森 深部】 |
ゲフィオン | イクス、ミリーナ。そして鏡映点の方々。そなたたちの活躍で、キメラ具現化していた大陸は、二つの島に分離した。 |
ゲフィオン | あの巨大な樹も動かなくなったようだ。感謝する。 |
イクス | 二つ…… ? 三つの異世界が混じり合っていたと聞いていましたが……。 |
ゲフィオン | 三つのうちの二つはほぼ同質の世界であったために分離できない状態にあったようだ。 |
ゲフィオン | おそらく同じ世界の過去と未来であったのだろう。 |
ゲフィオン | 分離したもう一つの異世界もかなり近い性質を持っていたようだな。 |
ゲフィオン | 何かしら関わりのある異世界同士だったが故に混濁したのだと考えられる。 |
リフィル | ゲフィオン様。鏡映点は存在するだけでアニマをこの世界に満たすことができると聞いています。 |
リフィル | では逆の性質を持つ特異鏡映点はこの世界にとって邪魔な存在なのではありませんか ? |
ミリーナ | リフィルさん…… ! |
ゲフィオン | アニマの点だけ捉えればそうかも知れぬ。だが同時に鏡映点として、具現化に関与している存在であることは間違いない。 |
ゲフィオン | 具現化が安定し、アイギスが完成する前に鏡映点が消えては、具現化した島に悪影響が出ることも考えられる。 |
リフィル | ですがジェイドの調査では、光魔の鏡と特異鏡映点はほぼ同じ性質を持つそうです。 |
リフィル | 光魔を発生させることこそなくても放置すれば特異鏡映点からアニマが失われ世界が消失するのではありませんか ? |
ゲフィオン | ……否定はできぬ。 |
イクス | ゲフィオン様。しばらく具現化を中止しませんか。 |
イクス | 俺は……あなたを信じていいのかわからなくなってきた。 |
ミリーナ | イクス…… ! |
ゲフィオン | …………。 |
イクス | 先生――リフィルさんに言われて気づきました。俺たちがどれだけ安易に世界を生み出してしまったのか。 |
イクス | ティル・ナ・ノーグの為に必要なことだったのだと思います。 |
イクス | けれど俺たちは何も知らなすぎた。そしてあなたは隠しごとが多すぎる。 |
イクス | 俺は……何も知らないままこの計画を進めたくない。自分たちのしたことに責任を持っていきたいんです。 |
ゲフィオン | ……そうだな。どちらにしてもカレイドスコープは壊れていて具現化ができない状態だ。 |
ゲフィオン | 特異鏡映点の件も何らかの解決策を見いださねばならぬ。 |
ゲフィオン | まずは修理を進める間に、お前たちにアイギス計画を知ってもらうための資料をそろえよう。 |
ゲフィオン | デミトリアス陛下もお前たちに渡したい資料があると言っておられた。全ては陛下の前で話をすることとしよう。 |
リフィル | 私も独自に調査をするようにジェイドから依頼されています。権限をいただけますか ? |
ゲフィオン | 承知した。 |
イクス | ではカレイドスコープの修理が完成してゲフィオン様の準備が整ったらお話を聞かせて下さい。 |
イクス | 俺たちに隠しているアイギス計画の詳細を。 |
マーク | やれやれ。奴らエクスフィアまで盗んでいくとはなぁ。 |
ミトス | さすがリフィルさん。 |
マーク | リーパが苛ついてたぜ。 |
ミトス | 鏡映点殺しに協力してやるんだから文句は言わせないよ。それより約束は守れるの ? |
リヒター | ……失われた命の復活。本当に可能なんだろうな。 |
マーク | 具現化の力を見ただろう ?しっかり頼むぜ、反鏡映点サマ ? |
ディスト | 反鏡映点、では面白くありませんね。何か呼び名を考えましょう。 |
チェスター | ……そんなものはどうでもいい。俺は……アミィを取り戻す。ただ、それだけだ。 |
キャラクター | 1話【ケリュケイオンブリッジ】 |
イクス | 新しい大陸が発見された ! ? |
ジェイド | ええ。ですから調査を頼みます。 |
イクス | ちょ、ちょっと待ってください。俺たちは具現化していませんよ ? |
ジェイド | わかっています。あなたたちではない何者かの仕業。そう考えて間違いないでしょう。 |
ミリーナ | ゲフィオン様の話だと、私たち以外に具現化を行えるほどの力を持っている鏡士は一人しかいないんでしたよね ? |
イクス | 第103代ビクエ……。 |
ジェイド | 可能性はあります。ですが断定はできない。王宮内部については現在探っているところですので。 |
ジェイド | まぁ、敵ではないといいですがね。鏡士の力において、あなたたちではビクエの足下にも及びませんから。 |
イクス | それは……ビクエに比べたらそうでしょうけど……。 |
ミリーナ | イクス。ジェイドさんが言いたいのは精進なさいってことだと思うわよ。 |
ミリーナ | ジェイドさん。そうですよね ? |
ジェイド | さあ。どうでしょうね。 |
イクス | ……精進か。そうだな。俺だって鏡士になるって決めたんだから。 |
ジェイド | 意気込みすぎてこじらせないでくださいよ。 |
イクス | はい。大丈夫です。それで、調査っていうのは ? |
ジェイド | いつも通りですよ。鏡映点を保護し光魔の鏡を封印してきてください。 |
ミリーナ | それだけですか ? |
ジェイド | はい。他には特にありません。何が起こるかもわかりませんが。 |
イクス | 具現化を中止したにもかかわらず具現化の旅は続く……か。 |
ジェイド | 皮肉なものですねぇ。 |
ミリーナ | けど立ち止まってはいられないわよね。 |
イクス | ああ。そうだな。もちろん用心はしつつだけど。 |
ジェイド | では旅の餞別に資料を贈ります。調査に向かってもらう大陸の情報を簡単にですがまとめましたので。 |
イクス | ありがとうございます。 |
ミリーナ | この子が鏡映点なのね。女の子かしら ? 可愛いっ。 |
イクス | 男の子のようにも思えるけど…………って、待てよ。これは…… ! ? |
ジェイド | 後はあなたの判断に任せます。私は遺跡オタクではありませんので。それでは、調査頼みましたよ。 |
ミリーナ | あっ ! ジェイドさん ! |
イクス | ……やっぱりこの遺跡や街並みは。 |
ミリーナ | ……イクス ? どうしたの ? |
イクス | スレイとミクリオ、エドナ様にも一緒に来てもらおう。 |
イクス | これは俺よりもスレイたちの意見を聞いた方がよさそうだ。 |
キャラクター | 2話【10-1 ダイル街道 1】 |
スレイ | イクス。お待たせ。街の様子を見てきたよ。 |
イクス | それで……どう思った ? |
スレイ | オレもイクスと同じ見解だよ。 |
イクス | そうか……。建造物の様式や装飾モチーフが天遺見聞録に記載されていたものに酷似しているからまさかとは思ったけど……。 |
スレイ | この大陸はオレたちの世界……それも遙か昔の時代の世界が具現化されたと考えて間違いないと思う。 |
イクス | 遙か昔か。アスガード王家の末流の一つ……ペン=ドラゴニア伯が台頭したと伝えられるアスガード時代の隆盛期ぐらいか ? |
スレイ | もっと昔だと思うな。過剰な彫刻や動植物を自由に組み合わせたモチーフの建造物もあったし。 |
イクス | となると少なくとも1000年以上前……。ミクリオはどう思う ? |
ミクリオ | そうだな……。まず主要な建造物の様式は実用的かつシンプルなデザインだった。それから街の人の服装などからも考えて……。 |
ミクリオ | アスガード時代の統一期だと思うな。 |
イクス | グレイトフル・アスガード。100年の平和が続いたのち突然、大規模な地殻変動が発生した時代か。 |
スレイ | 確かに、そう考えたらアスガード時代初期の文化的特徴が垣間見られるのも納得だ。 |
イクス | さすがミクリオだな。建造物だけじゃなく文化的な側面も見落とさずに判断できてすごいよ。 |
ミクリオ | それほどでもないさ。それにイクスだって歴史の流れをしっかり覚えててすごいじゃないか。 |
スレイ | オレたちで歴史や天遺見聞録の話をしてるとイクスがグリンウッドの考古学者に思えてくるからな。 |
イクス | いやいや。そんなことないよ。二人に比べたらまだまだだしさ。 |
エドナ | ちょっと。いつまで歴史座談会してるつもり。 |
スレイ | あはは……ごめん。具現化された世界とはいえまさか過去の世界に来ることになるとは思ってなかったから夢中になっちゃって。 |
ミクリオ | うん ? もしここが本当に統一期の世界ならすでにエドナは――いたっ ! ! |
エドナ | まったく。そんなに刺されたいの ? |
ミクリオ | もう刺してるじゃないか ! |
エドナ | 乙女の年齢を考古学的知識を用いて探ろうとした罰よ。 |
スレイ | こ、この件は触れない方がよさそうだな。 |
ミリーナ | そうね。それにエドナ様が何歳であろうとこんなに可愛いことに変わりはないもの。 |
エドナ | そうやって隙あらばワタシを撫でるのね……。もう慣れたから、どうでもいいけど……。 |
イクス | それじゃあ、ひとまず鏡映点を捜さないと。 |
カーリャ | おぉっ ! さっそくぶるぶる来ましたよ !あっちです ! |
イクス | わかった。行ってみよう。 |
ライフィセット | ジッとしてて。もうすぐ終わるから。 |
商人 | ……凄いな。みるみる傷が癒えていく。 |
イクス | 見つけた。あの子が鏡映点だ。 |
スレイ | 待って。あれって……天響術 ? |
ミクリオ | どうやら天族みたいだね。 |
エドナ | いえ、あれは……。 |
ライフィセット | はい。これでもう大丈夫だよ。 |
商人 | すまないね。助かったよ。 |
ライフィセット | 気にしないで。それじゃあ僕はもう行かなきゃ。 |
商人 | 待ってくれ。 |
ライフィセット | ……どうしたの ? |
商人 | その不思議な力は金になる。俺の商売に協力してくれ。もちろん、報酬は弾むし―― |
ライフィセット | イヤだ。 |
商人 | なっ……少しは考えてくれてもいいだろ。 |
ライフィセット | イヤだ。僕は商売道具のモノじゃない。それじゃあもう行くから。 |
商人 | 待て ! 逃がしはしないぞ ! |
ライフィセット | 何 ! ? 放してよ ! ! |
商人 | うるさい !お前は黙って従っていれば――ッ ! |
スレイ | ごめん。話に割って入って。けど、イヤだって言ってるんだ。本人の意思も尊重してあげてよ。 |
ライフィセット | ……。 |
商人 | チッ……なんだお前たちは。もしかしてお前たちもこいつを利用して金儲けを―― |
スレイ | するわけない。天族はモノじゃないんだ。人間と同じようにそれぞれ思いや夢や情熱が……心があるんだから。 |
ミクリオ | ……スレイ。 |
ライフィセット | 天族…… ? |
ミリーナ | さがってて。もう大丈夫だからね。 |
ライフィセット | あ、ありがとう。 |
商人 | 忌々しい…… !何だかわからんが横取りはさせんぞ ! |
エドナ | スレイ。こいつら……。 |
スレイ | ああ。穢れを感じる !けど、穢れが増える感じもなければ憑魔化もしない…… ! ? |
ミクリオ | 考えるのは後だ !みんな ! 構えろ ! |
イクス | くるぞ ! ! |
キャラクター | 3話【10-1 ダイル街道 1】 |
ライフィセット | ……うん。ここが別の世界だっていうのも僕が鏡映点って存在なのもわかった。 |
ライフィセット | けど、ごめん。僕は保護されるつもりも二人の旅に協力するつもりもないよ。 |
イクス | ……もちろん無理強いはしないよ。俺たちの都合で迷惑をかけてるわけだし信用できないと思われても仕方がない。 |
イクス | けど……光魔に襲われたり救世軍に狙われるかもしれないから……。 |
ライフィセット | わかってる。だけど僕にはやらなきゃいけないことがあるんだ。 |
ライフィセット | それに、ようやく……僕の大切な人が平和な暮らしを手に入れることができそうだから……。 |
ミリーナ | 大切な人 ? |
ライフィセット | うん。ベルベットって言うんだ。僕が守ると決めた人だから悪いけど二人には―― |
ミリーナ | そうだったのね !もしかして女の子かしら ? |
ライフィセット | 女の子 ! ? 確かにベルベットは女の子だけど年齢はミリーナと同じくらいだよ ! ? |
ミリーナ | ……そうなの ?ライフィセットと同い年くらいのかわいい女の子じゃなくて ? |
ライフィセット | ベルベットは……綺麗な人だよ……。 |
カーリャ | あれれ ? ライフィセットさまってば顔が赤くないですか ? |
ライフィセット | そ、そんなんじゃないってば。 |
イクス | えっと。ベルベットさんは今どうしてるんだ ? |
ライフィセット | 街の外であった廃屋で僕の帰りを待ってる筈だよ。 |
ミリーナ | 年上の綺麗なお姉さんかぁ……。 |
イクス | その人もきっと鏡映点の筈だ。ジェイドさんの資料に、顔が判別不明の鏡映点がもう一人いるって書いてあったし。 |
ミリーナ | ええ、そうよね。 |
イクス | ライフィセット、事情を説明したいから会わせてもらえないかな ? |
ライフィセット | ベルベットに ? だ、大丈夫かなぁ……。 |
イクス | 何か問題でもあるのか ? |
ライフィセット | えーと…………ううん。何でもない。 |
ライフィセット | 昔のベルベットが具現化のことを聞いたら大変なことになってたかもしれない。 |
ライフィセット | だけど……きっと今のベルベットなら大丈夫。二人のことを紹介するね。 |
イクス | ああ。ありがとう。 |
スレイ | お待たせ。こっちはもう大丈夫だよ。商人たちには帰ってもらったから。 |
イクス | スレイ、ありがとう。ちょうど俺たちもライフィセットと話が終わったところだ。 |
エドナ | ……。 |
スレイ | 天族の力を利用しようとする商人か……。人間が天族を知覚できる世界だとこういうことも起こってしまうんだな……。 |
ミクリオ | だがイクスとミリーナのような人間もいる。これは事実だろう。だから……。 |
スレイ | ありがとう、ミクリオ。オレは大丈夫。 |
スレイ | 人間と天族の共存する世界……。それがオレの夢。だから、それを諦めたりはしないよ。 |
ライフィセット | 人間と天族の共存……。 |
ミクリオ | えっと……ライフィセット。さっき天響術を使っていたようだったが君も天族なのかい ? |
ライフィセット | あ、あの……天響術と天族ってなに ?あの回復魔法は聖隷術。僕は聖隷だよ。 |
スレイ | 聖隷術 ? 聖隷 ? 聞いたことがないな。天響術と天族を昔はそう呼んでいたのか ? |
ライフィセット | 昔 ? どういうこと ? |
スレイ | 実は、オレたちの元いた世界って―― |
エドナ | それについてはワタシが後でボーヤにもわかりやすく説明してあげるわ。楽しみにしておきなさい。 |
ライフィセット | う、うん。 |
エドナ | スレイ、ミボ。ということでこの件はワタシが預かるわ。 |
ミクリオ | どうしたんだ ?やけに積極的じゃないか。 |
スレイ | 普段なら説明なんてメンドクサイって言いそうなのにな。 |
エドナ | あなたたちに任せた方がメンドクサイことになりそうだからよ。 |
エドナ | ……知らない方が互いに幸せなこともあるの。あなたたちにはわからないかもしれないけど。 |
ミクリオ | ……何か知ってるのか ? |
エドナ | さあ。どうかしら。 |
スレイ | けど……わかった。オレたちから歴史や時代の話はしないようにする。 |
ミクリオ | そうだね。聞かれたとしても原則として互いに話さないようにした方がよさそうだ。 |
スレイ | エドナ、頼んだよ。 |
エドナ | ……ええ。 |
イクス | えっと……もう大丈夫そうか ?そろそろ出発しようと思うんだけど。 |
スレイ | ああ。もう話は終わったよ。どこかに向かうの ? |
イクス | アニマサーチから漏れたはぐれ鏡映点の可能性が高い人をライフィセットが知っているみたいなんだ。 |
ミリーナ | 一度会って事情を説明しようと思うの。 |
カーリャ | ついでに光魔の鏡も探さなきゃですよ !みなさま、お忘れなく ! |
スレイ | わかった。それならオレたちは後から合流でもいいかな ?街で少し気になる噂を聞いたんだ。 |
イクス | 噂 ? |
スレイ | 鏡士……たぶんイクスとミリーナを血眼になって捜している人物がいるらしいんだ。 |
イクス | そうなのか ! ? |
カーリャ | イクスさまとミリーナさまの命が狙われている感じですか ! ? |
スレイ | あくまで噂だけど火のない所に煙は立たないとも言うからさ。一応、オレたちはこの件を調べてみるよ。 |
イクス | けど、深追いしてスレイたちまで狙われることになったら……。 |
ミクリオ | 大丈夫さ。スレイが無茶しそうになったら僕が止めるよ。 |
スレイ | なんだよ。オレは大丈夫だって。 |
ミクリオ | どうだか。 |
ミリーナ | ふふっ。ミクリオさんがスレイさんについているなら安心ね。 |
スレイ | ミリーナも ?オレそんなそそっかしくないよ ? |
ミクリオ | ほら。スレイ、行くよ。 |
エドナ | ワタシはあなたたちについて行くわ。ちょっと話もあるから。 |
イクス | そうなのか ? |
エドナ | 後で話す。 |
ライフィセット | それじゃあ出発しようか。ベルベットのところに案内するよ。 |
エドナ | ……ベルベットね。 |
ライフィセット | …………。 |
エドナ | なにをジロジロ見ているのかしら。見た目によらずだいぶお盛んなようね。 |
ライフィセット | ご、ごめん !けどそういうのじゃないって ! |
ライフィセット | どこかで見かけたような気がしたから……。 |
ミリーナ | エドナ様を ? |
ライフィセット | エドナ ! ? 今エドナって言った ! ? |
ミリーナ | え……、ええ。 |
ライフィセット | そう……だったんだ……。 |
エドナ | ワタシのことを知っているのね ? |
ライフィセット | うん。アイゼンから……。あと手紙でも……。 |
エドナ | ……そう。わかったわ。とにかくまずベルベットのところまで案内なさい。 |
ライフィセット | うん。ついてきて。 |
キャラクター | 4話【10-4 クロガネの森 出口】 |
ベルベット | …………まだかしら。 |
ライフィセット | ベルベット。ただいま。 |
ベルベット | フィー、遅いわよ。何かあったのかもって心配したじゃ―― |
イクス | ど、どうも。 |
ミリーナ | 初めまして。 |
ベルベット | ……誰 ? |
ライフィセット | イクスとミリーナだよ。街で悪い商人に襲われそうになったところをイクスたちが助けてくれたんだ。 |
ベルベット | そうだったのね。どうりで遅いと思った。 |
ライフィセット | ちょっと調べたいことがあったんだ。すぐ帰るつもりだったんだけど心配させちゃってごめん。 |
ベルベット | 謝ることはないわよ。……まぁ、とにかく無事ならよかったわ。 |
ベルベット | イクスとミリーナって言ったわね。ライフィセットを助けてくれたことには感謝する。 |
ベルベット | けど……他に何か用があるんでしょ ?ただライフィセットをここまで送って来たようには思えない。 |
イクス | はい。ライフィセットには説明しましたがこの世界についてベルベットさんにも話さなきゃいけないことがあるんです。 |
ベルベット | ……この世界。 |
エドナ | ワタシもあなたたちに話があるわ。 |
ベルベット | ……あんたは ? |
ライフィセット | イクスたちと一緒にいたんだ。名前は……エドナ。 |
ベルベット | エドナって……。まさかアイゼンの妹……。 |
エドナ | お兄ちゃんの手紙に書かれていたベルベットとライフィセットっていうのはやっぱり、あなたたちなのね。 |
エドナ | まさかこんな形で会うことになるとは……。 |
エドナ | それにしても……。あなた……その穢れ……。 |
ベルベット | 仕方ないでしょ。喰魔になってから穢れごと業魔を喰らっていたんだから……。 |
ミリーナ | 喰魔 ? |
エドナ | 特殊な業魔よ。珍しい憑魔みたいなものと思っておきなさい。 |
イクス | 憑魔……。スレイの話だと穢れに侵された存在だったよな……。 |
イクス | ……待ってくれ。それってつまりベルベットさんからも穢れが……。 |
ベルベット | あたしはもう、穢れを抑えられないのよ……。 |
ミリーナ | 穢れって……天族にとっては毒みたいなものなのよね ?エドナ様、大丈夫なの ? |
エドナ | ええ。苦しくもなんともないわ。やっぱり、この世界の穢れは……元の世界の穢れとは違うみたいね。 |
エドナ | 増加もしなければ人も天族も蝕むことはないわ。 |
ミリーナ | 穢れもエンコードされていたのね。よかった……。 |
ライフィセット | そうだね。聖隷が穢れに侵されたら……。 |
エドナ | ……同感ね。 |
ベルベット | ……穢れの性質が違うことも含め薄々感づいていたけどやっぱりここは別の世界のようね。 |
イクス | はい。今からお話しします。 |
エドナ | ワタシのことも話すわ。ありがたく聞きなさい。 |
キャラクター | 5話【10-5 クロガネの森 奥地】 |
ベルベット | ……この世界のことや具現化あたしが鏡映点っていうのはわかったわ。 |
エドナ | ワタシとあなたたちが具現化された時間差についてはどうかしら ? |
ベルベット | そっちも理解したわよ。あんたが同じ世界の遠い未来から具現化されたなんて、また途方もない話ね。 |
エドナ | それはこっちの台詞よ。 |
ベルベット | あと言っておくことがあるわ。互いの時代についてや知っている歴史については―― |
エドナ | 話すつもりはない。お互いにこの話はしない。言うまでもないわね。 |
ベルベット | ……助かるわ。あたしはまだ……成し遂げていないことがあるから……。 |
ベルベット | あんたの口からあたしがどうなったのかを知るなんてまっぴらごめんよ。 |
エドナ | ……そうね。 |
イクス | やっぱり、ベルベットさんにも使命があったんですね……。すいません、巻き込んでしまって……。 |
ベルベット | ……使命なんて大層なものじゃないわ。あんたたちと違ってね。 |
ミリーナ | けど、とても大切なことだったんでしょう ? |
ベルベット | ……ええ。 |
ベルベット | けど、この世界にあいつはいない。あいつが存在しない世界……。 |
ベルベット | 復讐を果たしたら今みたいな気持ちになるのかもね……。 |
ライフィセット | ベルベット、相談があるんだけど。 |
ベルベット | ……フィー ? どうかしたの ? |
ライフィセット | よければ、あの村で一緒に暮らさない ? |
ライフィセット | そうしたらベルベットはやらなくちゃいけないことがいっぱいだよ。 |
ライフィセット | 買い物をしたり、狩りをしたり裁縫をしたり、掃除をしたり料理をしたり、洗濯したり。 |
ライフィセット | これからベルベットはもっともっと忙しくなるんだ。 |
ベルベット | ……。 |
ライフィセット | どうかな ? |
ベルベット | ……あの村で。 |
ミリーナ | あの村っていうのは ? |
ライフィセット | ベルベットの故郷にそっくりな村がこの世界にもあるんだ。 |
ベルベット | あたしたちが具現化された場所よ。本当に……そっくりだったわね……。昔のアバルの村に……。 |
イクス | ……故郷か。そこで暮らしたいならそうした方がいいと思います。 |
ベルベット | ……どうして ? |
ミリーナ | 私たちの故郷は……もうなくなっちゃったから。 |
ベルベット | ……あんたたちも。 |
イクス | 本物ではないかもしれない……。けど故郷に戻れるものなら戻りたいって気持ちはわかりますから。 |
ライフィセット | ベルベット。イクスたちもいいって言ってるんだよ。 |
ベルベット | ……戻っていいのかしら。 |
ミリーナ | 迷っているならもう一度行ってから決めてみてもいいんじゃないかしら。 |
エドナ | くすぶっているより……ずっとマシよ。 |
イクス | それにベルベットさんの故郷も俺たち見てみたいですし。 |
ライフィセット | ベルベットの故郷はすっごくいいところだよ !自然が豊かでとっても落ち着くんだ ! |
ベルベット | もう……なんでフィーが得意げなのよ。 |
ベルベット | けど、もう一度行ってみるのも悪くはないかもしれないわね。 |
ミリーナ | それじゃあ決定ね ! |
イクス | スレイとミクリオとも合流してみんなで向かおうか。 |
カーリャ | ついでに光魔の鏡も探せますからね。 |
お腹の音 | ぐ~~ |
ライフィセット | あっ……。 |
ベルベット | ふふっ……フィーったら。その前に腹ごしらえが必要のようね。 |
ライフィセット | うん。 |
ベルベット | それじゃあウリボアを狩ってくるわ。なんだか湿っぽい話しちゃったから気分転換もかねてね。 |
イクス | 俺も手伝いますよ。 |
ベルベット | あたし一人で十分なんだけど……。 |
イクス | 猟師の仲間に狩りのコツを教わったんです。ちょっとは役に立てると思うので。 |
ミリーナ | うん。イクスなら大丈夫よ。なにかあっても私が守ってあげるからね。 |
イクス | ミリーナはもう……。俺は子供じゃないんだぞ。 |
ライフィセット | イクス。わかるよ。どうして女の人って男心がわからないんだろうね。 |
イクス | ああ。まったくだ。 |
二人 | なんでこっちを見るの ? |
エドナ | ボーヤたちは放っておきなさい。駄々こねてるだけよ。 |
ライフィセット | むっ……そんなんじゃないのに。 |
ベルベット | ふっ……それじゃあ頼りになる男のフィーには荷物の整理をお願いしようかしら。 |
ライフィセット | う、うん ! 出発に備えてまとめておくね ! |
イクス | ベルベットさん。それで、俺たちはついていってもいいんですか ? |
ベルベット | ……好きにすれば。 |
イクス | はい ! それじゃあ好きにします ! |
ミリーナ | イクス、頑張ろうね。それにエドナ様も。 |
エドナ | ワタシも行くのは確定なのね……。 |
ライフィセット | それじゃあ、いってらっしゃい。 |
ベルベット | ええ。いってきます。 |
キャラクター | 6話【10-6 商人が集う街】 |
スレイ | 鏡士を狙っている謎の人物……。噂は本当だったみたいだな。 |
ミクリオ | 聞き込みをした限りだとその人物は黒髪で長髪の女性……。しかもだいぶ殺気立っていたようだね。 |
スレイ | そして捜していたのは銀髪で男の鏡士……。狙いはイクスとみて間違いないな。 |
ミクリオ | 実際、イクスと外見的特徴が似ている人が襲われていたという情報もあった。イクスの命を狙っている可能性が高い。 |
スレイ | もうちょっと情報があれば対策も立てられそうなんだけどな……。 |
ミクリオ | スレイ。深追いは禁物だって言っただろ。まずはこのことをイクスたちに伝えるのが先決だ。 |
スレイ | そうだな。調査はこれぐらいにして合流予定の場所に行こうか。 |
ミクリオ | ああ。まずは街を出て――ッ ! ! |
スレイ | なんだ……この感じは…… ! ? |
ミクリオ | ち、近づいて……きている ! ? |
? ? ? | ……鏡士の居場所を知っているな ? |
ミクリオ | これは……穢れ、なのか…… ? |
スレイ | ミクリオ ! ? 大丈夫か ! ? |
ミクリオ | ああ、この世界の穢れは影響がないようだ。だが……どうしてあの女性は……こんなにも穢れを……。 |
スレイ | あなたは……いったい…… ? |
? ? ? | 鏡士はどこだ ! ?はやく質問に答えろっ ! ! |
スレイ | ……ああ。居場所は知ってるよ。 |
ミクリオ | スレイ ! |
スレイ | 大丈夫。オレに任せて。 |
? ? ? | どこにいる。 |
スレイ | あなたには教えられない。 |
? ? ? | なんだと…… ? |
スレイ | イクスの命を狙っているのはあなたなんだよね ? |
? ? ? | ……そうか。あたしのことを嗅ぎ回っていたのはあんたたちか……。 |
スレイ | どうしてイクスの命を狙うの ? |
? ? ? | 黙れ。いいからそいつの居場所を吐け。 |
スレイ | それはできない。理由はわからないけどいまオレがイクスの居場所を言ったらきっとあなたはイクスを殺そうとするだろ。 |
スレイ | あなたにも事情があるんだと思う。けどその事情は……本当にイクスを殺さないと解決できないのか ? |
スレイ | 他にもまだ解決の道があるかもしれない。オレも一緒に探すからまずは理由を教えてほしい。 |
? ? ? | そんな道はない ! |
スレイ | えっ……。 |
? ? ? | あたしは鏡士を殺す ! !そして必ず……アルトリウスを殺すんだ ! ! |
? ? ? | お前が居場所を吐かないならあたしがこの手で吐かせるまでだ ! ! |
ミクリオ | な、なんだその腕は ! ? |
スレイ | 待ってくれ ! ここは街中だ !無関係な人を巻き込むことになる ! |
? ? ? | だからどうした ! ! |
スレイ | クッ―― ! |
ミクリオ | スレイ ! 集中しろ ! |
スレイ | けど……街の人たちが ! |
ミクリオ | 応戦して引きつけつつ街の外に出ていったん態勢を立て直そう。そうすれば街の人も巻き込まずにすむ。 |
スレイ | ああ。わかった ! |
キャラクター | 8話【10-7 ベンウィックの森】 |
ベルベット | 一口サイズにしたウリボアの肉をホウレンソウや他の食材と軽く炒めてっと。これでキッシュの下ごしらえはばっちりね。 |
ミリーナ | ベルベットは料理が得意なのね。とっても手際がよくて尊敬しちゃうわ。 |
ベルベット | 昔はよく作ってたから……。 |
ミリーナ | そうだったのね。ずいぶんと慣れた手つきだから料理の名人なのかと思っちゃった。 |
ベルベット | あたしなんてまだまだよ……。 |
ミリーナ | そんなことないわ。ベルベットの料理の技は完璧よ。 |
ベルベット | あたしの技じゃないけどね……。これは教わったものだから。 |
ミリーナ | それでもベルベットはすごいわよ !強くて綺麗で格好良くてしかも家庭的 !なんだか憧れちゃうわ ! |
ベルベット | な、何 ? 褒めたって何もでないわよ。 |
ミリーナ | ちょっと照れてるベルベットも可愛い…… ! |
ベルベット | なんなのもう……。 |
ベルベット | けど、あんただって料理はできるみたいじゃない。しれっと前菜は作り終わってるし。 |
ミリーナ | ベルベットに比べたら全然よ。よければその料理の技教わりたいくらいだもの。 |
ベルベット | 教わる……ね……。 |
ミリーナ | どうかしたの ? |
ベルベット | 昔はあたしも教わる側だったから……。こうして台所に並んではセリカ姉さんに料理の技を教わっていたのよ……。 |
ミリーナ | ベルベットはお姉さんに家事を習ったのね。 |
ベルベット | ……とっても厳しかったけどね。だけど、おかげで血肉になってる。 |
ベルベット | だからあたしも厳しいわよ。 |
ミリーナ | もしかして教えてくれるの ! ? |
ベルベット | ……気が向いたときにはね。 |
ミリーナ | やった ! ありがとう !ベルベットって優しいのね ! |
ベルベット | ちょっと。抱きつかないでよ。 |
エドナ | ……ミリーナ。目を離しているとシフォンケーキが黒焦げになるわよ。 |
ミリーナ | あっ……そろそろ焼き上がる頃ね。エドナ様、教えてくれてありがとう。 |
エドナ | それじゃあワタシは心置きなくドラゴ鍋風スープの最終仕上げに取りかかるとするわ。 |
ミリーナ | エドナ様のスープかぁ。私、すごく楽しみ。 |
エドナ | ヤバい美味しさだから覚悟しておきなさい。 |
ベルベット | ……うん ? 何この骨 ? |
ベルベット | ちょっと、エドナ。待ちなさい。 |
ライフィセット | なんだかあっちは盛り上がってるみたいだね。 |
イクス | えっ…… ? あぁ……そうなのか。本に夢中で気づかなかったよ。 |
イクス | 手伝いに行った方がいいかな。でもミリーナに追い出されるだろうしな……。 |
ライフィセット | ねぇ、それってどんな本なの ? |
イクス | 魔鏡術についての本だよ。これは魔鏡術の中でも想像の力について書かれているんだ。 |
ライフィセット | 想像の力 ? |
イクス | たとえばこのリンゴに……想像の力の魔鏡術を使えば……。 |
イクス | ――。 |
ライフィセット | リンゴが増えた ! |
イクス | 実体のない幻だけどね。それにミリーナからしたらこんなの基礎中の基礎だろうし。 |
ライフィセット | けどすごいよ !想像の力の魔鏡術はこんなこともできるんだね ! |
ライフィセット | あれ ? もしかして魔鏡術には他の種類の力があるの ? |
イクス | そうだよ。そして鏡士はその家系ごとに得意とする力が違うんだ。 |
イクス | たとえば俺の家系は無から有を具現する【創造の力】。 |
イクス | ミリーナの家系は有から有を具現する想像の力が得意な魔鏡術なんだよ。 |
ライフィセット | そうなんだ。聖隷と鏡士聖隷術と魔鏡術は似てるところがあるね。 |
ライフィセット | けど、どうして【想像の力】の本を読んでたの ?イクスは得意なのは【創造の力】なんだよね。 |
イクス | 鏡士として上を目指そうと思ったからかな。苦手な【想像の力】とも向き合うことでもっと力がつくと思うんだ。 |
ライフィセット | そうなんだ。進むべき道が決まったんだね。 |
イクス | ああ。鏡士の最高位ビクエの称号を持つ者はすべての魔鏡術の力を自在に操ると言われているんだ。 |
イクス | 俺も少しでも近づけたらなって。 |
ライフィセット | そういう自分の意思すごく大切だと思うよ。 |
イクス | 力の暴走も考えられるからまだ実戦では使えないんだけどね。 |
イクス | あっ……それと、このことミリーナには秘密にしてくれないか ?……色々、変に心配させたくないから。 |
ライフィセット | うん。わかった。男同士の約束だ。 |
ベルベット | 何話してるの ? |
ライフィセット | なんでもないよ。 |
イクス | あっ……えっと。気にしないで下さい。 |
ベルベット | ……そう。まぁいいけど。もうすぐ料理ができるからテーブル片付けておいて。 |
ライフィセット | わかったよ。はやく食べたいな。イクス、行こうか。 |
イクス | ああ。そうだな。 |
キャラクター | 9話【10-8 のどかな村】 |
ベルベット | それじゃあ……。 |
一同 | いただきます ! |
ライフィセット | う~んっ ! おいしい ! !やっぱりベルベットのキッシュは最高だよ ! |
ベルベット | クラウ家特製キッシュだからね。これなら味見どころか目をつぶってでも作れるわ。 |
イクス | ミリーナのサラダも美味しいな。このドレッシング好きなんだよ。 |
ミリーナ | ふふっ……知ってるわよ。 |
エドナ | あなたたち。いいからワタシのドラゴ鍋風スープをはやく食べなさい。 |
ベルベット | いや……まずそのスープの中身を教えなさいよ。 |
ライフィセット | どうしたの ?スープも美味しいよ ? |
ベルベット | フィー ! 食べたの ! ? |
エドナ | ふふふっ……。 |
ベルベット | もういいわ。気にしないことにする。 |
ミリーナ | ベルベット。ウリボアのミートボールもよかったら食べてね。 |
イクス | ミリーナが作ったのか ? |
ミリーナ | ええ。ベルベットからレシピを教わったの。だから一番初めにベルベットの感想が欲しくて。 |
ベルベット | …………。 |
ライフィセット | ベルベット……。 |
ミリーナ | どうかしたの ? |
イクス | そういえば、まだ何も手をつけてないけど。もしかして体調が悪いとかですか ? |
ベルベット | 違うのよ……。いまのあたしが……この料理を食べてもきっと……何も―― |
エドナ | えいっ。 |
ベルベット | ――はむっ ! ? |
エドナ | いいから食べなさい。食事は全員でとらないと。 |
ベルベット | …………。 |
ミリーナ | どうかな ? ちょっと甘過ぎたかもって思ったんだけど。 |
ベルベット | …………うっ……うそ。 |
ミリーナ | ベルベット ! ? どうしたの ! ?そんなに口に合わなかった ! ? |
ベルベット | ……いいえ。そんな……こと……。 |
ベルベット | おいしいわ……。ちょっと……甘いけど。 |
ミリーナ | よかったわ。けどやっぱり甘いわよね。次作るときは気をつけなきゃ―― |
ライフィセット | ベルベット ! ? 味がわかるの ! ? |
ベルベット | …………。 |
イクス | 味…… ? どういうことだ ? |
ベルベット | ……味覚が……味覚が戻ってるの。 |
ミリーナ | ベルベット、味がわからなかったの ! ? |
ベルベット | ……どうして。 |
ライフィセット | ベルベット。 |
ベルベット | ……フィー。 |
ライフィセット | あの村に戻ろう。 |
ベルベット | ……。 |
ライフィセット | 僕はあの村で一緒に暮らしたい。ベルベットはどうなの ? |
ベルベット | あたしは……。 |
ライフィセット | 決めよう。この世界での生き方を。 |
ベルベット | あたしは……フィーと一緒に、あの村で―― |
カーリャ | うわわっ ! ! 鐘の音 ! ? 何事ですか ! ? |
エドナ | この先にある街で何かあったようね。 |
イクス | ごめん。ちょっと外の様子を見てくる。 |
ミリーナ | ……大丈夫かしら。 |
ベルベット | …………。 |
ライフィセット | 何があったんだろう。 |
ベルベット | 嫌な予感がするわ。 |
イクス | みんな ! 街で火事があったみたいだ ! |
ベルベット | 火事ですって ? |
エドナ | 出火の原因は何かしらね。 |
イクス | 誰かが火を放ったらしい……。俺は街を見てくるよ。 |
ベルベット | あたしも行くわ。 |
ライフィセット | ベルベット……待って。さっきの答え……。 |
ベルベット | 安心して。ちゃんと後で答えるから。 |
ライフィセット | ……わかった。 |
ミリーナ | 行きましょう。 |
キャラクター | 10話【10-9 のどかな村】 |
イクス | このあたりは……もう大丈夫そうだな。消火も終わってるみたいだ。 |
スレイ | イクス ! |
イクス | スレイ ! ミクリオ !どうしてここに ! ? |
ミクリオ | これでも水の天族だからね。消火活動の手伝いさ。 |
スレイ | このあたりの街の人は全員避難した。安心してくれ。 |
ミクリオ | エドナたちは一緒じゃないのか ? |
イクス | ミリーナ、ライフィセット、エドナ様はけが人を治療しているところだ。全員無事だよ。 |
スレイ | それならよかった。イクスも襲われていないか心配で―― |
ミクリオ | スレイ ! この……感じは…… ! ?あの時の……。 |
スレイ | ……ああ。やっぱり来たか。 |
イクス | ……二人とも ? |
ベルベット | イクス。住宅街を見てきたわ。逃げ遅れた人はいないみたい。 |
イクス | あっ、ベルベットさん。ありがとうございます。こっちも避難は―― |
スレイ | イクス ! 下がって ! ! |
イクス | えっ ? |
ベルベット | あんたたち……どういうつもり ? |
ミクリオ | それはこちらの台詞だ。どうしてイクスの命を狙う ?なぜ街に火を放った ? |
ベルベット | あたしが ? |
イクス | 二人とも、待ってくれ。ベルベットさんがそんなことする筈ない。 |
スレイ | ……イクス。けど、オレたちは実際に……。 |
ミクリオ | ああ。人違いである筈がない。 |
スレイ | 今度こそ、浄化してみせる !それが導師であるオレの使命だから ! |
ベルベット | ……導師だと ! ? |
イクス | ベルベットさん ! ? |
ベルベット | だいたい理解したわ……。穢れを感じているってことはあんたたち対魔士と使役聖隷ね。 |
ベルベット | しかも導師を名乗るなんて……アルトリウスの狂信者といったところかしら。 |
ベルベット | 災禍の顕主を退治に来たってことね……。 |
スレイ | なん……だって……。 |
ミクリオ | あなたが災禍の顕主だって言うのか ? |
ベルベット | そのとおりよ。この世界もあんたたちの好きにはさせない。立ちふさがるなら容赦しないわ ! |
イクス | ちょ、ちょっと !みんな落ち着いてくれ ! |
ベルベット | 下がってないと怪我するわよ ! |
ミクリオ | スレイ ! くるぞ ! ! |
スレイ | くっ……あなたが災禍の顕主ならオレは負けるわけにはいかない…… ! |
ベルベット | 望むところだ ! ! |
エドナ | ――はいはい、そこまでよ ! |
二人 | エドナ ! ? |
エドナ | まったく。最悪な出会い方してくれたものね。 |
ライフィセット | ベルベット ! 大丈夫 ! ? |
ベルベット | ……ええ。 |
ミリーナ | イクス、いったい何があったの ? |
イクス | ……それが俺にもさっぱりで。 |
エドナ | ベルベット。この二人がさっき話したスレイとミボよ。 |
ベルベット | こいつらが……。 |
エドナ | スレイも熱くなりすぎよ。ミボはただのバカなんだろうけど。 |
ミクリオ | ……どうして僕だけ。 |
イクス | スレイ、ミクリオ。聞いてくれ。俺たちはずっとベルベットさんと一緒にいたんだ。 |
イクス | ベルベットさんが……少なくとも街に火を放ったなんてことは絶対にありえない。 |
エドナ | そうね、それは確かよ。 |
スレイ | ……じゃあオレたちが見たのは……。 |
ミクリオ | 僕らはこの目で実際に目撃した。彼女が街の倉庫に火を放ったのを。 |
? ? ? | それは……こっちのあたしよ。 |
ベルベット | なっ…… ! あんた何者よ ! ? |
? ? ? | ……あんたが未来のあたしか。まぁ、たとえ自分であろうと邪魔するなら殺すだけだ。 |
ベルベット | 未来 ? |
ライフィセット | つまりあのベルベットは過去のベルベットってこと ? |
イクス | ……そんなこと、ありえるのか。 |
? ? ? | あんたが鏡士イクス・ネーヴェ……。ようやく見つけた……。騒ぎを起こして正解だったわ。 |
? ? ? | よくも……よくもこんな世界にあたしを具現化してくれたな ! ?こんな牢獄のような世界に ! ! |
イクス | 牢獄…… ? この世界が…… ? |
? ? ? | そうよ ! 牢獄よ ! !地下の特別牢と何も変わらないわ ! ! |
? ? ? | あたしの大切なものを奪った……あの憎きアルトリウスに復讐したくてもすることができない……。 |
? ? ? | よくも……あたしの生きる意味を奪ってくれたな ! ! |
イクス | ……ベルベットさん。そう、だったのか…… ? |
ベルベット | ……そうかもね。 |
ライフィセット | ベルベット……。 |
ミリーナ | どんな理由があろうと誰であろうとイクスは殺させない。それだけは許さないわ。 |
イクス | ……ミリーナ ? |
? ? ? | こんな世界に用はない !必ずお前を殺して……あたしは元の世界に戻るんだ ! |
イクス | 元の世界に戻る ?それは俺を殺したところで―― |
? ? ? | 黙れぇっ ! ! ! ! |
キャラクター | 11話【10-9 のどかな村】 |
? ? ? | その力……。お前は何者だ ! ? |
スレイ | オレは導師、スレイ。この世界の災厄を鎮めたいって思ってる。 |
ベルベット | 世界の災厄、ね……。 |
? ? ? | ファントムの言っていた鏡士の力とはまた違う力か……。 |
イクス | ファントムだって ! ? |
? ? ? | 鏡士。あたしは必ずあんたを殺す……。そして左手首の魔鏡も奪う。……覚えていろ。 |
スレイ | 待ってくれ !一度ちゃんと話を―― ! ! |
ベルベット | 無駄よ。やめておきなさい。それに……あたしはバカじゃない。深追いすれば痛い目見るわよ。 |
スレイ | ……わかったよ。 |
イクス | 本当に……あのベルベットさんは過去のベルベットさんなのか……。 |
ミリーナ | 外見は同じだけど……ベルベットとはなんだか違うように感じられて私……信じられないわ……。 |
ベルベット | あいつは過去のあたし。間違いないわ。フィーもそう思うでしょ ? |
ライフィセット | ……うん。きっと……真実を知ったときの……。 |
ベルベット | しかも、あれはもう手遅れね。完全に【絶望】と【憎悪】に支配されているわ。 |
ミクリオ | 街中でスレイと僕に襲いかかり街を放火し、イクスを殺そうとしているのは過去のあなただったっていうのか……。 |
ベルベット | あたしならそれぐらいやる。 |
エドナ | けど、どうして過去のあなたがいるわけ ?ワタシたちの過去の世界が具現化されたと思ったら、さらに過去の存在が現れるなんて。 |
スレイ | 特殊な光魔や鏡映点みたいなものなのか ? |
カーリャ | たぶん違いますよ。カーリャ、全然ぶるぶるきませんでしたし。 |
イクス | いまわかっていることを整理すると……。まず、この大陸は俺たちではなく何者かによって具現化された。 |
イクス | そしてあのベルベットさんは……ファントムの名を口にした……。 |
ミリーナ | ファントムは具現化に関する研究もおこなっていたわよね。 |
イクス | ああ。その研究はすでに鏡魔という鏡映点を元にした意思を持たない魔物を具現化するまでに至っている。 |
ライフィセット | そのファントムってやつが関係してる可能性が高いんだね ? |
イクス | 俺の命、そしてこの魔鏡を狙っていることも含めてそう考えるのが妥当だな。 |
イクス | けど……どういうことなんだ……。俺を殺しても元の世界に戻るのは不可能な筈なのに……。 |
ミリーナ | 元の世界に戻るということはこの世界から元の世界に影響を及ぼすということだものね……。 |
ミリーナ | イクスを殺しても元の世界に影響なんて及ぼせないのに……。 |
イクス | ファントムが何か研究してるのかもしれないけど……。具現化の仕組み的にそんなことはできない筈……。 |
イクス | けど、もし本当にそれができるならリフィル先生が言っていたように元の世界に悪影響がでることも…… ? |
ベルベット | 幻のニンジンを吊されて利用されてるようにも思えるけどね。 |
ベルベット | とにかく、今は目の前のことを片付けるわよ。やるべきことは―― |
カーリャ | ……ぷるっ……ぷるっ ! ! |
ミリーナ | カーリャ ? どうしたの ? |
カーリャ | この先に……たぶん光魔の鏡があります。 |
ミクリオ | 光魔の鏡か……。そこから光魔が発生するんだったな。 |
ベルベット | 光魔は鏡映点を襲う習性があるんでしょ ?溢れかえった光魔に群がられるなんてごめん被りたいわ。 |
イクス | 放置しておくわけにはいかないな。 |
ライフィセット | だけど、この先って……。ベルベットの故郷の村じゃないか……。 |
ベルベット | ……向かうわよ。 |
ミリーナ | でも、過去のベルベットはどうしたら―― |
ベルベット | 復讐鬼。 |
ミリーナ | えっ ? |
ベルベット | 紛らわしいから。あいつのことは今後、復讐鬼と呼ぶ。 |
ミリーナ | けど……過去のベルベットなんでしょ。そんな呼び方は……。 |
ベルベット | 復讐鬼よ。いいわね。 |
ミリーナ | ……わかったわ。 |
ミリーナ | えっと……その……復讐鬼はどうするの ?こっちも無視してはおけないわよね ? |
イクス | ……確かにそうだな。 |
ベルベット | 放っておいても追っかけてくる筈よ。だからまずは急ぎ、光魔の鏡を封印する。そしてその後に―― |
ベルベット | 復讐鬼を殺す。 |
スレイ | ……殺すだって ! ?なんでそうなるんだ ! ? |
ベルベット | こっちにまで被害が出そうなんだから当然でしょ。 |
ベルベット | それに、【個】よりも【全】。【感情】よりも【理】。導師の思想にも合ってると思うけど。 |
スレイ | ……導師の思想 ? |
ベルベット | ……早く行くわよ。 |
ライフィセット | ベルベット ! 待ってよ ! ! |
スレイ | ……ベルベット。 |
ミクリオ | ベルベットは導師についてどう思っているんだろうな……。 |
エドナ | 時代によっても色々あるのよ。 |
イクス | 導師と災禍の顕主……。スレイたちの世界では両者は互いに敵対する存在……なんだよな。 |
スレイ | あぁ。けどベルベットとはそういう関係になりたくないな……。 |
エドナ | スレイらしくしていればどうとでもなる筈よ。 |
スレイ | オレらしく……。 |
エドナ | さぁ。光魔の鏡を封印しに向かうわよ。 |
キャラクター | 12話【10-11 ニコ街道 2】 |
スレイ | ベルベット。ちょっといいかな ? |
ベルベット | …………。 |
スレイ | あの……話したいことがあるんだけど……。 |
ベルベット | あたしはない。しつこいわね。 |
スレイ | ご、ごめん。 |
ベルベット | …………。 |
ミクリオ | ……スレイ。 |
ライフィセット | スレイ。あの……ベルベットも悪気があるわけじゃないんだ……。だから……その……。 |
スレイ | 大丈夫だよ。導師が嫌いだって言う人にも出会ってきたからさ。 |
ベルベット | フィー ! 何してるの。 |
ライフィセット | ……ベルベット。聞いて。スレイは……違うと思うよ……。 |
ベルベット | 何が違うっていうの。 |
ライフィセット | ……聖隷の力を利用しようとする商人から真っ先に僕を守ってくれたのはスレイだったんだ。 |
ライフィセット | それに……人と天族の共存する世界スレイはそれが夢だって……言っていたから……。 |
スレイ | ああ。それがオレの夢でだからオレは導師になったんだ。 |
ベルベット | ……。 |
ライフィセット | だから……話ぐらいは……。 |
ベルベット | ……わかったわよ。で、話って何 ? |
スレイ | さっきは……剣を向けてごめん。 |
ベルベット | 導師が災禍の顕主に剣を向ける。何も間違ってないじゃない。 |
スレイ | そうじゃない。オレは……ベルベットに剣を向けたことを謝りたかったんだ……。 |
ベルベット | ……あたしに ? |
スレイ | ごめん……。 |
ミクリオ | 僕も……すまなかった……。 |
ベルベット | …………いいわよ。気にしてないから。 |
ライフィセット | ベルベット。スレイってちょっと変わった導師だね。 |
ベルベット | そうね。 |
エドナ | うちの導師は相当変人だから覚悟なさい。油断してると遺跡オタクにされるわよ。 |
ベルベット | ……遺跡オタク ? |
スレイ | ちょ、ちょっと……エドナ。ベルベットとライフィセットに変な奴って思われちゃうだろ。 |
エドナ | けど、遺跡オタクは事実じゃない。 |
ミクリオ | 待ってくれ。遺跡オタクは変じゃない。 |
スレイ | アリーシャだけじゃなくルーティやリフィル先生も遺跡オタクだもんな。 |
エドナ | いや、ルーティは違うでしょ。 |
ベルベット | ふっ……確かに相当変人みたいね。 |
イクス | みんな。お待たせ。光魔の鏡がある場所がわかったよ。 |
ベルベット | じゃあ、そこに向かうわよ。 |
スレイ | だな ! |
イクス | …… ? |
ミリーナ | ふふっ……よかった。 |
ミクリオ | ライフィセット。ありがとう。 |
ライフィセット | 気にしないで。 |
エドナ | どうしてワタシに対しての感謝がないのかしら。 |
スレイ | そうだ !エドナもありがとう。 |
エドナ | まったく。手のかかる子たちね。 |
ベルベット | 光魔の鏡があるのはあたしの故郷か……。 |
イクス | ……光魔に襲われてないといいんですが。 |
ベルベット | 心配してもしょうがないわ。光魔の主ってのも控えてるんでしょ。油断せずに行くわよ。 |
キャラクター | 13話【10-14 クローディン山岳】 |
イクス | 光魔の鏡は封印完了。村も無事なようでよかったよ。 |
ベルベット | 業魔対策のバリケードがこんな形で役に立つとはね……。 |
ミリーナ | ここがベルベットの故郷……。とってもいい場所じゃない。 |
スレイ | それに村の人もいい人ばっかりだった。おさげの女の人が親切に村を案内してくれたんだよ。 |
ミクリオ | 村にいた二匹の犬もおとなしかった。 |
エドナ | 犬の方がビビってたわよね。もっと吠えまくってくれたらよかったのに。 |
エドナ | まぁ、ミボのビビる姿が見られなかった点を除けば特に不満はないけれど。 |
ライフィセット | 本当に……いい村だよ……。 |
ベルベット | まったく。何浸ってるのよ。復讐鬼の始末がまだ残ってるでしょ。 |
イクス | そのことなんだけど。俺たちだけで何とかしようと思う。 |
ベルベット | ……どういうこと ? |
ミリーナ | そろそろ決めるときよ。 |
ライフィセット | ベルベット。ここで一緒に暮らそうよ。 |
ベルベット | ……まだ返事していなかったわね。 |
ライフィセット | ベルベットはどうしたいの ? |
ベルベット | そうね……。戻ってきて思ったわ。それも悪くないかもって。 |
ライフィセット | それじゃあ答えは ! ? |
ベルベット | できないわ。 |
ライフィセット | えっ……。 |
ベルベット | ごめんね。フィー。 |
ライフィセット | どうして ! ? |
ベルベット | ……もうすぐわかるわ。 |
スレイ | っ ! この穢れは ! ? |
ベルベット | 復讐鬼がこっちに向かってる。 |
ライフィセット | それもイクスたちが何とかしてくれるって言ってるんだよ ! |
イクス | ああ。狙いは俺だ。すぐに村をでる。 |
ベルベット | ダメよ。この村を離れたらさっきの街の二の舞になるわ。 |
スレイ | けどそれじゃあこの村で戦うことになる。村の人たちを巻き込んでしまうじゃないか。 |
ミクリオ | 今から事情を説明して全員を避難させる時間もないぞ。 |
ベルベット | ……説明なんて必要ないわ。 |
スレイ | えっ……。 |
村人 | あの女……隣街に火を放った放火魔の特徴にそっくりじゃないか……。 |
村人 | き、きっと別人よ……。 |
村人 | けど……万が一ってことも……。 |
エドナ | あら。有名人じゃない。 |
ベルベット | まぁね。 |
ライフィセット | けどベルベットはやっていない ! |
ベルベット | そうよ。復讐鬼がやった。過去のあたしがやったのよ。 |
ライフィセット | それは……けど……。 |
ベルベット | あんたたちは村の人たちの避難誘導を任せたわ。 |
イクス | ベルベットさん…… ? |
ベルベット | 導師 ! わかったわね ! ? |
スレイ | あ、ああ……。わかった。けど……どうするつもりなの ? |
ベルベット | 決まってるでしょ……。 |
ライフィセット | まさか……。 |
ライフィセット | ベルベット ! 待って ! |
ベルベット | …………。 |
村人 | な、なんだあの左腕は ! ? |
村人 | や、やっぱり……あいつが放火魔だ ! |
ベルベット | 今からこの村はあたしのものだ ! !逆らう奴が一人でもいれば村を燃やして全員殺す ! ! |
村人 | な、なんでそんなことを…… ! |
ベルベット | 黙れ ! ! |
村人 | ――うわっ !み、みんな逃げろ ! ! |
ベルベット | 全員出て行け ! !あたしの前から消え失せろ ! |
ベルベット | 我が名は災禍 !災禍の顕主ベルベットだ ! ! |
ライフィセット | ……ベルベット。なんで……どうしてだよ……。 |
ライフィセット | せっかく戻れると思ったのに ! ! |
エドナ | ……決まってるでしょ。この村を、守るためよ。 |
ライフィセット | そんなことわかってるよ ! ! |
エドナ | だったら今すべきことを果たしなさい ! |
ライフィセット | そんなこと……わかってるってば。 |
ベルベット | 導師 ! |
スレイ | ……わかった。 |
ミクリオ | …………スレイ。 |
スレイ | みなさん ! こっちに避難を ! !オレについてきて ! |
ミリーナ | イクス……。私たちも……。 |
イクス | ああ……。まずは村人の避難誘導。安全のため村周辺の光魔の排除だな。 |
スレイ | イクス……。こんなことになっちゃったけどオレはまだ……復讐鬼を……いや、過去のベルベットを……。 |
イクス | ああ。わかってる。俺がちゃんとうまくできるか……まだわからないけど……。 |
イクス | やってみるよ。作戦通り。 |
キャラクター | 14話【10-15 故郷によく似た村】 |
イクス | ……これで準備は完了だな。 |
ベルベット | …………ここにいたのね。 |
イクス | ベルベットさん……。 |
ベルベット | どうかした ? |
イクス | 本当に……あれでよかったのかと思って……。 |
ベルベット | ……いいのよ。 |
イクス | けど……。 |
ベルベット | そうだ。あんたに言いたいことがあったの。ちょっと耳貸して。 |
イクス | なんですか ? |
ベルベット | いいから。一度しか言わないわよ。聞き逃したりしないように。 |
イクス | はい。わかりました。 |
ベルベット | 死ね。 |
イクス | うぐっ……。 |
復讐鬼 | はっ……あははは…… !ほんっとうにバカな奴ね ! !まんまと引っかかったわ ! ! |
復讐鬼 | ざまあみろ ! !あたしの生きがいを奪ったんだ ! !これは当然の報いだ ! ! |
イクス | …………。 |
復讐鬼 | ……本当にバカな奴。 |
復讐鬼 | けどこれであたしは戻れるんだ。この魔鏡があれば―― |
復讐鬼 | 何 ! ? |
スレイ | それは幻だよ。 |
復讐鬼 | ……お前たち。 |
イクス | はぁ……はぁ……。想像の力の魔鏡術だ……。 |
イクス | なんとか……力の暴走も……回避できた……。 |
スレイ | 聞いて。あなたは元の世界に戻ることはできないんだ。 |
復讐鬼 | …………。 |
スレイ | もう……わかったと思う。だから終わりにしよう。そしてこの世界での生き方を見つけようよ。 |
スレイ | オレがちゃんと手伝うから。 |
イクス | 俺も……できることがあれば……。 |
復讐鬼 | …………そうか。あんたたち……。 |
復讐鬼 | よくも……よくも騙したな ! ! |
スレイ | ……。 |
復讐鬼 | 殺されたと思ったラフィは……自分の意思で死んだとか……本当は元の世界に戻れないだとか……。 |
復讐鬼 | 殺したと思ったお前はただの幻だとか……。 |
復讐鬼 | ふざけるなっ ! ! 何が幻だっ ! !どいつもこいつも……どれだけあたしを踏みにじれば気が済むんだっ ! ! |
スレイ | そうじゃ、ないよ……。 |
ベルベット | だから言ったでしょ。もう説得なんて無理な状態だって。殺すしかないのよ。 |
スレイ | …………ベルベット。 |
復讐鬼 | なにが未来のあたしだ ! おまえも幻だ ! !あんたがあたしの筈がない ! ! |
ベルベット | いいえ。あたしは未来のあんたよ。だから……あんたの苦しみだってわかる。 |
復讐鬼 | 嘘をつくな ! ! 生きる意味を失ったこの痛みがどれほどのものかお前は何もわかっていないっ ! ! |
ベルベット | ……痛みなら感じている。【絶望】も【憎悪】もした。 |
ベルベット | けれどあたしは全てを喰らい前に進むと心に決めた ! |
ベルベット | たとえ過去の自分であってもその歩みの邪魔はさせない ! |
復讐鬼 | ライフィセット !あんたはあたしにつきなさい !そいつこそが幻なのよ ! ! |
ライフィセット | ……。 |
復讐鬼 | 聞こえないの ! ? ライフィセット ! ! |
ベルベット | フィー、選んでいいわよ。どっちも……あたしなんだから。 |
復讐鬼 | あたしにつくのよ ! ! |
ライフィセット | ……僕には僕の意思がある。それを認めてくれるベルベットに……僕は災禍の顕主についていく。 |
ベルベット | ……フィー。 |
復讐鬼 | この裏切り者っ ! ! |
ベルベット | フィー、下がってなさい。今度はあんたの力は借りない。 |
ベルベット | あたし自身がこの手で自分の過去に決着をつける。 |
ライフィセット | ……わかった。 |
スレイ | 悪いけどオレはまだ諦められない。だから戦わせてもらうよ。 |
ベルベット | 勝手にしなさい。あんたの力は役に立つ。利用させてもらうだけよ。 |
ミクリオ | スレイがいくなら。 |
エドナ | ワタシたちも混ぜてもらうわ。 |
イクス | ミリーナ。 |
ミリーナ | イクスは殺させない。 |
ベルベット | さぁ。かかってきなさい復讐鬼。災禍の顕主が相手になるわ。 |
キャラクター | 15話【10-15 故郷によく似た村】 |
イクス | くっ……強い……。 |
スレイ | はぁ……はぁ……。やっぱり……浄化しきれない……。 |
スレイ | けど……オレはまだ諦めたくないんだっ ! ! |
ベルベット | 邪魔よ ! ! |
スレイ | ――くっ ! |
ミクリオ | スレイ ! |
復讐鬼 | ぐっ……。 |
ベルベット | ……捕まえた。 |
復讐鬼 | くそっ……。おまえ、なんかに……。 |
ベルベット | もう……大丈夫だから。ちゃんとあたしはわかってるわ。 |
復讐鬼 | ……なんだと。 |
ベルベット | あんたをなかったことにはしない。あたしはすべてを喰らうから。 |
ベルベット | だから今は……あたしの中で眠っていて。 |
復讐鬼 | …………。 |
イクス | 金色の砂が……ベルベットさんの中に……。 |
エドナ | あれはなんなの ? |
ミリーナ | 何、かしらね……。 |
ベルベット | さて。これで諸々片がついたわね。 |
スレイ | ベルベット……ごめん。オレ……結局……。 |
ベルベット | 気にすることないわ。ちゃんとあいつはあたしの中にいるんだから。 |
イクス | けど……。 |
ベルベット | はぁ……。それよりはやくケリュケイオンに案内してもらえないかしら。 |
イクス | ……いいんですか ? |
ベルベット | しょうがないでしょ。もうあの村には戻れないんだから。 |
ベルベット | やっぱり、この世界にあたしの居場所はない。 |
ベルベット | だから、はやくあんたたちの面倒ごとを全部片付けて、あたしは消える。そのために協力するわ。 |
イクス | ベルベットさんは……強いですね。どんなこともちゃんと受け止めて前に進んでいけて。 |
ベルベット | あたしは自分の意思で行動しているだけ。 |
ベルベット | それに……支えてくれる人がいるから。 |
ライフィセット | ……ベルベット。 |
ベルベット | ありがとう。フィー。あんなときでもずっと側にいてくれて。 |
ライフィセット | ううん。僕も自分の意思で行動しているだけだから。 |
イクス | 支えてくれる人か……。 |
イクス | ミリーナ。 |
ミリーナ | 何 ? |
イクス | 俺、もっと魔鏡術を極めようと思う。【あの時】のこととかあるけどそれでも頑張ろうと思うんだ。 |
イクス | けど、まだ吹っ切れてはいなくて……だから、もし俺が迷いそうになったら―― |
ミリーナ | 私がイクスの支えになるわ。それが私の意思でもあるから。 |
イクス | ありがとう。ミリーナ。 |
ミリーナ | ふふっ。イクスなら絶対にもっとすごい鏡士になれるって私、信じてるわ。 |
ベルベット | また……この村ともお別れね。 |
スレイ | ベルベット……。オレ、事情を説明してくる。 |
ベルベット | もう、いいのよ。 |
ミクリオ | だけど……ベルベットはあの村で暮らしたかったんだろう…… ? |
スレイ | このままじゃ……。ベルベットが救われないじゃないか……。 |
ベルベット | ……一つ聞かせて。あんたは【全】か【個】か。どっちを取る ? |
スレイ | どういう意味 ? |
ベルベット | いいから。思ったことを答えなさい。 |
スレイ | 思ったことか……。 |
スレイ | すべての【個】を取れば【全】になる……かな。 |
ベルベット | はぁ ? 何それ ? |
スレイ | あっ……思ったことって言われたから。これじゃあダメかな ? |
ベルベット | ……いいえ。 |
ミクリオ | スレイらしいと僕は思うよ。 |
ライフィセット | やっぱり相当の変人だね。 |
エドナ | だから言ったでしょ。 |
スレイ | な、何 ? みんなして。そりゃ、無茶なのかもしれないけど。 |
ベルベット | けど……あたしはいい答えだと思うわ。 |
ベルベット | スレイみたいな導師と出会えてよかった……。 |
スレイ | オレもベルベットと出会えてよかったよ。 |
イクス | それじゃあ、ベルベットさんをケリュケイオンまで案内するよ。 |
ベルベット | あたしは行くけど、フィーはどうするの ? |
ライフィセット | ……僕はまだやることがあるんだ。だからこの大陸にもうしばらく残る。 |
ベルベット | ……一人で平気なの ? |
ライフィセット | 大丈夫だよ。それにケリュケイオンにも顔出すようにするからさ。 |
ベルベット | ……わかったわ。せっかく味覚も戻ったことだし料理を用意して待ってるわね。 |
ライフィセット | うん ! |
エドナ | ……で、何を隠してるの ? |
ライフィセット | ベルベットにはできるだけ普通の生活を送ってほしかったから黙ってたけどエドナには話しておくね。 |
ライフィセット | 僕は……アイゼンを探してるんだ。 |
エドナ | …… ! ? |
ライフィセット | この手袋、拾ったんだ。アイゼンのだよね ? |
エドナ | ……間違いないわ。これは……お兄ちゃんの……。 |
ライフィセット | だとしたらたぶんこの大陸にいる筈なんだ。 |
エドナ | ……わかったわ。ワタシは旅に同行するついでに他の大陸を当たってみる。何か手がかりを見つけたら共有するわ。 |
ライフィセット | うん。頼んだよ。 |
エドナ | ……お兄ちゃん。 |
キャラクター | 1話【救世軍アジト】 |
マーク | ――お前、何考えてるんだ。俺たちの目的が何かわかってるのかよ。 |
ファントム | 彼らの計画を邪魔すること。つまり具現化の阻止でしょう ? あなたごときに言われなくても、重々承知していますよ。 |
マーク | なら、何でお前は勝手に予定外の具現化なんかしてやがるんだ ! |
ファントム | 計画をより良い方向に進めるためです。それ以上でも以下でもありません。 |
マーク | それが勝手だって言ってんだよ。そもそもあいつの目的は―― |
ファントム | こんなくだらない論争をするために私を呼び出したんですか ?あなたは本当に暇なんですねぇ。 |
ファントム | 私にはやらなければならないことが山ほどあるんです。これで失礼しますよ。 |
マーク | ……チッ、こうなりゃ決行するしかねえな。 |
マーク | ――それじゃあフィルの件調査を進めてくれ。ファントムには絶対に気取られるなよ。 |
? ? ? | 大丈夫大丈夫、信用しろって。俺はできる男だぜ ?んじゃ、行ってくるわ。 |
マーク | チェスター。お前には『あっち』を任せるからな。 |
チェスター | ……。 |
マーク | なんだよ、不満そうだな。そんなに嫌かね、この仕事は。 |
チェスター | ……喜んでやるような仕事じゃねえだろ。 |
マーク | ま、お前の性格じゃそうなるか。曲がったことは嫌いってツラだ。 |
チェスター | ああ、そうだな。こんな任務、嫌になって途中で放り出すかもしれないぜ ? |
マーク | 任務を放り出す、ねぇ。そういう無責任なことも嫌がるタイプに見えるけどな。 |
チェスター | ……うるせぇよ。 |
マーク | ハハッ、お前のそういう性格を見込んで頼んでるんだ。 |
マーク | それに、さっきのアイツみたいに「信用しろ」なんて主張する奴よりはよっぽど信用できる。 |
チェスター | ……こんな面倒な手を使わないでお前が直接やりあったらどうなんだよ ? |
マーク | それができりゃ……苦労はしねぇんだよな……。 |
チェスター | …… ? |
マーク | とにかく、俺たちの計画が上手くいけばお前の望みが叶うのもそう遠い話じゃなくなると思うぜ ? |
マーク | 会いたいんだろ、妹のアミィに。そのためにここにいる。――違うか ? |
チェスター | ……約束は守ってくれるんだろうな。 |
マーク | 当然だ。そもそも俺たちの目的は『そこ』にあるんだからな。 |
キャラクター | 2話【11-1 モリスン街道1】 |
リフィル | ――古城……って私が連れていかれた、あの場所 ? |
イクス | はい。もう一度、あの古城に行ってみるべきだと思うんです。 |
イクス | マークは、ファントムがあの場所を実験場として使うつもりだと言ってました。 |
イクス | これ以上、無茶な具現化をさせないためにも手がかりがありそうな場所なら徹底的に探るべきじゃないかと……。 |
ジェイド | 確かに、救世軍の動きを止めるためにも実験施設となりうる地点を叩くのは有効な手段です。 |
ジェイド | ですが、すでに私たちに踏み込まれた場所をそのまま呑気に使っていると思いますか ? |
イクス | ……そうですよね。やっぱり……。 |
ジェイド | おや、そこで引いてしまうんですね。もっと食いついてくれなくては。 |
ジェイド | 熱血で押すのか、口八丁で引っかけるのか泣き落としでもするのか、色々と期待していたのですが……いやぁ、残念です。 |
イクス | ……え ? |
リフィル | ジェイド、真面目な提案を面白半分に茶化すのは頂けないわね。 |
ジェイド | 茶化すだなんて。誠実だけが取り柄だった押しの弱いイクスがどれだけ成長したのか見てみたかっただけですよ。 |
ジェイド | しかしやはり、こういったことは本職にお任せするべきでしたね。申し訳ありません、リフィル先生。 |
リフィル | ジェイド……その笑顔はなんなのかしら。何をたくらんでるの ? |
ジェイド | たくらむだなんてとんでもない。やはり『先生』でいるあなたの方が私の精神衛生上良いようでしてね。 |
リフィル | …… ? |
イクス | (あ~……遺跡モードのリフィル先生に面くらってたもんな、ジェイドさん……) |
イクス | あの、それで古城の件は―― |
ジェイド | ああ、これは失礼。もちろん、調べる価値はあると思います。今は少しでもあちらの動きが知りたい。 |
ジェイド | 多少は内部を把握している分あの時に城へ踏み込んだメンバーで再度偵察する方が効率が良いでしょう。 |
リフィル | そうね。あまり大人数でも動きにくいもの。という訳だから――聞いてるかしらロイド ! そしてコレット ! |
ロイド | うわっ、なんでバレた ! ? |
コレット | はあ~見つかっちゃった……。 |
リフィル | 二人とも、立ち聞きなんてお行儀が悪いわよ。 |
ロイド | だって、さっきイクスが難しい顔でリフィル先生を捜し回ってたからさ。なんか放っとけなくて付いてきちまった。 |
イクス | そっか。心配してくれたんだな。ありがとうロイド、コレット ! |
コレット | 邪魔してごめんなさい。リフィル先生。 |
リフィル | まあ、説明の手間も省けたし今回はよしとしましょう。それじゃロイドはイクスと一緒に出発の準備をしておいて。 |
リフィル | 何かあったらすぐに援護を送れるようこちらでも態勢を整えておきます。連絡はこまめに入れるのよ。 |
ロイド | ああ、任せとけって。行こうぜイクス ! |
コレット | 待ってロイド !……あのリフィル先生私も行っていいですか ? |
リフィル | コレットも ?そうねえ……コレットが偵察……。 |
コレット | 私飛べるし、高い壁の向こうを調べたり高い所の荷物とかとったり、後は、後はえっと……とにかく役に立ちます ! だから―― |
ロイド | 先生、コレットのことは俺が見てるから。いいだろ ? |
リフィル | ……わかったわ。ロイド、コレットをお願い。コレット、ロイドが無茶しないように見張っておくのよ ? |
二人 | はい、先生 ! |
ジェイド | ――イクス。あなたはもっと自信を持っていいと思いますよ。 |
イクス | え…… ? |
ジェイド | 過去に大きな失敗をした人間は、往々にしてそれを取り返そうと焦ったり、あるいは次の一歩を踏み出すことにおびえるものです。 |
ジェイド | あなたもその迷宮に入り込もうとしている。私はかつて、同じように迷った人間を複数知っています。 |
ジェイド | 時には手を差し伸べず突き放したりもしました。 |
ジェイド | まあ、ここであなたに手を差し伸べたからといって過去が変わる訳ではありませんがたまには人助けぐらいしてもいいでしょう。 |
ロイド | 間違えたら、やり直せばいいもんな !何だ。ジェイドのこと、みんな怖い怖いって言うけど、一言多いだけでいい奴じゃん ! |
コレット | 私もジェイドさんってやさしいなって思う。だって、誰かが嫌なことを言わないと前に進めないことってあるもの。 |
ジェイド | はぁ……。人間性がまともなピオニーとサフィールを相手にしているようで疲れますね……。 |
リフィル | あら、ロイドとコレットみたいな子を知っているの ? |
ジェイド | 私の幼馴染みと下僕のことです。お気になさらず。こちらの二人の方がよほどしっかりしていますから。 |
ジェイド | では、イクス。お土産話を期待していますよ ? |
イクス | は、はい !ありがとうございます、ジェイドさん ! |
キャラクター | 3話【11-2 モリスン街道2】 |
カーリャ | お城はこっちの方角ですね。うひゃ~、これは結構歩きそうですよ~。 |
イクス | 仕方ないさ。ケリュケイオンで近場まで乗りつけたら救世軍に見つかるかもしれないだろ。 |
コレット | ノイシュがいればよかったのにね。 |
ロイド | そうだなあ。あいつならこのくらいの距離なんてことないだろうな。 |
イクス | ノイシュって ? |
ロイド | 俺の昔っからの相棒でさ風みたいに早く走って―― |
? ? ? | ギャアアアアアアッ ! ! |
イクス | 今のは――魔物の声 ! ? |
ロイド | 声っていうより、ありゃ断末魔だぜ !誰か戦ってるんだ ! |
ミリーナ | この先よ、行きましょう ! |
イクス | あの人、強い…… ! |
ロイド | すっげえ……あっという間に片付けちまった。 |
クレス | ――っ、まだいるのかっ ! |
イクス | うわっ、ち、違います !俺たちは助けに入ろうと―― ! |
クレス | 人 ! ? ……だったのか。てっきりまだ魔物が残っていたのかと……。 |
イクス | あ……驚かせてしまってすみません。 |
クレス | 僕のほうこそ、助けに来てくれた人に剣をむけるなんて……。本当にすまない。 |
イクス | そんな、謝らないで下さい。それに俺、結局助けも何もしてないし……。 |
クレス | いや、そんなことは ! |
イクス | いやいやそんな ! |
ミリーナ | うふふ、二人とも真面目なのね。 |
ロイド | 状況がわからなかったんだしここはお互い様ってことでいいんじゃないか ? |
クレス | そうだね。それにお礼がまだだった。心配して来てくれてありがとう。 |
クレス | 僕はクレス・アルベイン。君たちはこの辺りの人 ? |
イクス | いや、旅の途中……かな。俺はイクス。こっちはロイドとコレット。それとミリーナとカーリャ。 |
クレス | 旅の人……。それじゃ城のことは知らないか……。 |
イクス | 城って、この先にある古い城のことか ? |
クレス | 知ってるのか ! ? もしかして君たちはそこの関係者じゃ―― |
ロイド | いや、えっと……関係者じゃないんだけど関係あるっていうか……。 |
コレット | 私たち、お城の様子を調べに行くの。 |
イクス | コレット ! ? |
ロイド | 駄目だろ、コレット !もしクレスが敵だったらどうするんだよ ! |
コレット | そうかもだけど謝りあいっこしてすごくいい人みたいだよ ? |
イクス | それはまぁ、そうかも知れないけど……。 |
カーリャ | いい人か悪い人かはともかくカーリャはぶるぶる来てますよ ! |
ミリーナ | あ……もしかしてクレスさんも鏡映点ってこと ! ? |
ロイド | へ ! ? じゃあまたどこかで島が具現化されたのか ! ? |
イクス | いや、そういう話は聞かないからはぐれ鏡映点かもしれない。 |
クレス | はぐれ……きょうえい……え ? |
クレス | ちょっと待ってくれ。僕には、きょうえいてんとか……よくわからないよ。 |
クレス | 君たちはあの城と敵対する立場なのかい ?だとしたら少なくとも敵ではないと思うよ。 |
クレス | 僕があの城に行くのはさらわれたのかもしれない親友がいる可能性があるからなんだ。 |
イクス | さらわれた ? 詳しく話してくれないか。 |
クレス | いいけど……今は少しでも早く先に進みたい。目的地が同じなら歩きながら説明してもいいかな。 |
クレス | それと、君たちの話も聞かせて欲しい。変に思われるかもしれないけど、正直僕はここがどこかもよくわかってないんだ。 |
クレス | 今の自分の状況を、ちゃんと知りたい。 |
イクス | ……わかった。俺もクレスに説明――いや言わなきゃいけないことがある。一緒に行こう。 |
キャラクター | 4話【11-3 モリスン街道3】 |
クレス | ……異世界か。どうりで、今がアセリア歴何年か街の人に聞いてもわからない訳だ。 |
クレス | また過去か未来に飛ばされたのかと思ってたけどそうじゃなかったんだな……。 |
カーリャ | 過去とか未来とか……なんかさらっとすごいこと言ってますね。クレスさま。 |
ミリーナ | ええ。時間を跳躍して旅をしていたってことだもんね。 |
クレス | なあイクス、本来の世界での僕は今どうなってるんだろう。 |
クレス | 僕は仲間と敵の本拠地に乗り込んでいた。でも、その辺りから記憶が曖昧で……。 |
イクス | 無責任だけど、断定したことはいえない。でも『クレス』は今も仲間たちと戦い続けていると思う。 |
クレス | そうか……みんなと一緒なんだな。そうだ ! ダオスは――僕の敵もこの世界に来ている可能性はあるのか ? |
イクス | それもはっきりとはわからないんだ……。今はまだ、それらしい奴はいないとしか……。 |
クレス | …………。 |
イクス | ごめん……クレス。不本意だよな。自分の世界を救うために戦っていたのに俺たちの都合で巻き込まれたんだから。 |
イクス | 俺たちがどんなに傲慢なことをしているか分かってる。具現化された人たちの気持ちやその立場が、とても複雑だってことも。 |
イクス | そんな当たり前のことに、最近ようやく気が付いたんだ。クレスと同じように具現化された人に諭されてさ。 |
ロイド | ……。 |
イクス | その上、協力してくれなんて言われても納得できないかもしれないけど―― |
クレス | ……イクスたちの具現化は避けられないことなんだろう ? |
イクス | うん……今は訳あって止めているけど実質的にはこれしかない状況なんだ。 |
イクス | それに、最初はこの役目を義務みたいに感じてたけど、今は俺自身も世界を救いたいって、強く望んでる。 |
イクス | クレスや、鏡映点の人たちの想いや存在を無駄にしないためにも、……絶対に成し遂げたいんだ。 |
クレス | そうか。じゃあ、これからもよろしく ! |
イクス | え、そんな簡単に……クレス、いいのか ? |
クレス | うん、イクスの決意が聞けたからね。僕たちがここに具現化されたことが無駄じゃないって思えた。 |
クレス | それにさ……『――生きてるうちは色々あるさ。あんまり気にすんなよ』 |
ロイド | お、なんか急にくだけたな。 |
クレス | 今のは、僕の親友の受け売りなんだ。 |
イクス | 親友って、もしかしてさっき、さらわれたって言ってた ? |
クレス | ああ。チェスターって言って同じ村で育った幼馴染みでさ。 |
クレス | 僕たちの村が襲われて身を寄せた叔父にも裏切られて……そんな時、そう言って慰めてくれた。 |
ロイド | 村の襲撃に、身内の裏切り……か。それって……辛いよな。 |
コレット | ……ロイド。うん……そだね。 |
クレス | ……ロイドもコレットも、色々あったんだね。 |
ロイド | ……生きてるうちは色々ある、か。うん、なんてことない言葉だけどいいこと言うよな、そいつ ! |
クレス | ああ。そして、その色々の末に僕はダオスを追い詰める所まで来られた。 |
クレス | だからさ、気にして立ち止まっているよりは前に進んで、やれることをやらないと。 |
イクス | ……クレスは本当に強いんだな。力だけじゃなく心も。 |
ロイド | ああ、色々って……口にするのは簡単だけどそうやって自分で納得できるところまで消化するのって、本当はキツいもんな。 |
ロイド | それができてるクレスはすげー格好いいし決意したイクスもすげー格好いいぜ。俺も負けてられないな。 |
イクス | あ、ありがとう……ロイド。 |
クレス | まいったな。そんな風に言われるとは思わなかったよ。 |
コレット | ふふ、ロイドっていつもこうなの。 |
コレット | あ、でも、ロイドだって格好いいよ ? |
ロイド | へへ、ありがとな、コレット。でもこれからは、いい人だからってすぐ作戦のこと喋っちゃ駄目だぞ。 |
クレス | なあ、ロイド、イクス。コレットのことあまり怒らないであげてほしい。 |
クレス | 彼女の言葉がなかったら詳しい話をしないまま君たちと別れていたかも知れない。 |
イクス | そういえばそうだな。コレット、ありがとう。 |
コレット | ううん。私こそごめんなさい。これからは気をつけるね ! |
カーリャ | うっ、まぶしい…… ! ロイドさまもクレスさまもイクスさまもコレットさまも善人オーラがビカビカ出てますよ ! ? |
ミリーナ | 本当ね。きっとチェスターさんって人も凄くいい人なんでしょうね ! |
クレス | ああ、チェスターはいい奴だよ。僕が保証する。 |
カーリャ | 俄然やる気が出てきましたよ。必ずチェスターさまを見つけましょう ! |
キャラクター | 5話【11-4 モリスン街道4】 |
イクス | ――金髪の少年と怪し気な男たち……か。そいつらがチェスターさんを連れ去ったっていうのは確かなのか ? |
クレス | ああ。街の人の話では、長い髪を一つに束ねた弓使いが、そいつらに絡まれてたらしい。……チェスターの特徴と似てるんだ。 |
クレス | もっともイクスたちの話を聞く限りだとチェスターが具現化されているとは限らないんだよね。 |
イクス | いや、世界を変える力がある人たちが鏡映点になるんだから、クレスの仲間なら鏡映点として具現化されている可能性は高い筈だよ。 |
イクス | 特にこの大陸が具現化された時は色々と問題があったからいつもと違うことが起きていたんだ。 |
イクス | ロイドたちと一緒に、他の世界の鏡映点が具現化されていた可能性は十分考えられる。 |
ミリーナ | ……ねぇ、チェスターさんがさらわれた後クレスさんも狙われたりしなかったの ? |
クレス | うーん、ないな。魔物と戦ったくらいだよ。 |
イクス | 同じ鏡映点であるクレスの存在に気が付かなかったのかそれともチェスターさんを最優先で確保する理由があったのか……。 |
ミリーナ | とすると、チェスターさんは特異鏡映点なのかもしれないわね。だから有無を言わさずに連れていかれたのかも。 |
ミリーナ | クレスさんたちは時空転移をしていたみたいだから可能性は高いと思う。 |
ロイド | もしそうなら、あの妙なのをくっつけられちまうんじゃないか ?アン……ドーナツ、みたいな……。 |
ミリーナ | ふふ、アンチ・ミラージュブレスよ。だったら確かに急がないといけないわね。 |
クレス | アンチ・ミラージュブレスっていうのは何かまずいものなのか ? |
イクス | ……うん、長く身につけていると体に害が及ぶらしい。 |
クレス | なんだって ?くそっ、チェスターにそんなものつけさせてたまるか ! ! |
カーリャ | びっ、びっくりしたっ !クレスさまでも、そんな風に怒鳴るんですね。 |
クレス | あ……ごめんよカーリャ。驚かせちゃって。 |
ロイド | クレスが熱くなるのも仕方ねえよ。友達がピンチなんだからな。しかも親友で幼馴染みだろ ? |
コレット | そだね。私もロイドやジーニアスに何かあったらって思うといてもたってもいられないもん。 |
クレス | ロイドとコレットも幼馴染みなのか。もしかして、イクスとミリーナも ? |
イクス | ああ。それとフィルって奴を加えて三人で遊んだよな。 |
ミリーナ | ええ、懐かしいわ。 |
イクス | フィルは遠くに引っ越したから、一年に一度くらいしか会えなかったけど、大事な幼馴染みなんだ。 |
イクス | あいつには迷惑もかけたけどまた、みんなで会えたらなって思うよ……。 |
ミリーナ | ……そうね。 |
ロイド | みんなで会えたら――か。ジーニアスもどうしてんのかなあ。向こうの俺に、美味い飯作ってくれてるのかな。 |
コレット | 料理上手だもんね、ジーニアス。誕生日にジーニアスからもらったクッキーもすっごく美味しかったもん。 |
イクス | へえ、幼馴染みのジーニアスってそんなに器用なのか。 |
ロイド | ああ、リフィル先生の弟でさ。俺より年下だけど、頭もすげえいいんだぜ。 |
ミリーナ | リフィルさんに弟 ?うわあ、可愛いんだろうなあ。 |
カーリャ | ミリーナさま、想像だけでうっとりして……。そういえばクレスさまは、ご兄弟っているんですか ? |
クレス | 僕はひとりっ子なんだ。けどチェスターにはアミィちゃんっていう妹がいてさ。料理上手で可愛い子だった。 |
イクス | 【だった】って…… ? |
クレス | あ……いや、僕の村が襲われた時に……ね……。 |
イクス | ……そうか。 |
クレス | あいつの家族は妹だけだったから大事にしてたよ。僕と一緒に戦ってたのもアミィちゃんの仇を討つためだったんだ。 |
クレス | だから、この世界ではダオスがいないかもしれないと知ったら……そう思うと心配なんだよな。 |
イクス | ……だとすると、チェスターさんに俺たちの話受け入れてもらえるかな。 |
クレス | 大丈夫だよ。僕に説明してくれたようにきちんと話せばわかってくれるさ。 |
ロイド | そうそう。クレスの親友ならチェスターもきっと真面目でいい奴だって ! |
クレス | ……う~ん真面目……真面目なのかなあ ?あいつ、女風呂を覗こうとしたことあるしそういう所は違うような……。 |
ロイド | ――え……。 |
コレット | お風呂を…………。……………………。 |
ロイド | な、何でこっちを見るんだよ !何度も言うけど、俺のは誤解なんだからな。 |
クレス | ロイドも覗こうとしてたのか ?チェスターと気が合いそうだな。 |
コレット | ……ロイド、本当に違うんだよね ? |
ロイド | 頼むクレス、話題を変えてくれ ! |
クレス | え、話題っていわれても……よし。もうすぐ城も近いしイクス、張り切ってイクッスよ ! |
イクス | えっ ? |
ロイド | ……。 |
クレス | ……あ、はは。その…… |
カーリャ | ……やはりクレスさまもただの真面目系爽やか鏡映点じゃなかったんですね……。 |
ミリーナ | イクス……イクッス……行くっす ? |
カーリャ | ミリーナさま、まさか今気が付いた…… ? |
ミリーナ | なるほど ! 凄いわ、クレスさん !もっと言ってクレッス ?な~んちゃって♪ |
コレット | すごいよ、ミリーナ !そういうのを白いわんちゃんって言うんだよね ? |
三人 | 尾も白い ! |
クレス | 二人ともさすがだね !これは僕も腕を磨かなくちゃ ! |
カーリャ | も、盛り上がってる…… ?時代は今、親父ギャグウェーブなんですか ? |
イクス | いや、あれはないと思う……。 |
ロイド | だよなぁ……。 |
カーリャ | せっかくの善人オーラがしおしおですよぉ。 |
キャラクター | 6話【11-7 デミテル洞窟 入口】 |
コレット | あれが目的地のお城 ?見張りっぽい人がたくさんいるね。 |
イクス | ……前とは比べものにならないくらい警戒度合が増してるな。やっぱりジェイドさんが言った通りか……。 |
ロイド | こりゃ偵察するどころか近づくのもヤバそうだぜ。 |
イクス | チェスターさんのことも捜さなきゃいけないのにこれじゃ……。 |
クレス | ……やっぱり似てる。 |
イクス | クレス、どうしたんだ ? |
クレス | この城、僕たちが踏み込んだ敵の城に似てるんだ。まったく同じって訳じゃないけどね。 |
イクス | 確か……ダオス城って言ってたっけ ? |
クレス | ああ。隠し通路があったり鏡の中に入れたり……迷路みたいな所さ。 |
クレス | もし見た目だけじゃなくて城の造りまで似てるとしたら、隠し通路みたいなものもあるのかもしれない。 |
イクス | それならこの辺りを探してみよう。目立たないようにな。 |
イクス | ……はぁ、やっぱ簡単には見つからないか。 |
ロイド | 前みたいに、コレットのドジで道が開けて……みたいなことないかなぁ。 |
コレット | 好きで失敗しちゃう訳じゃないんだよ ? |
ミリーナ | でもその失敗が幸運を呼ぶなんてコレットってきっと幸運の女神様に愛されてるのね。私も愛しちゃう ! |
コレット | ううん。今日はちゃんと自分の力で役に立ちたいの ! |
コレット | あ、高いところから見渡したら何かわからないかな ?私、ちょっとやってみるね ! |
イクス | あ、コレット待っ―― |
コレット | どこかに……抜け道は……。 |
警備兵 | ――おい、あれ ! 人が浮かんでるぞ ! ? |
警備兵 | はぁ ? 何言って――あ ! |
ロイド | やべっ ! コレット下りて来い ! |
コレット | 待って ! 何かあそこ……岩の隙間に……洞窟――かな ? |
クレス | 洞窟 ? ……コレット ! どっちの方角だ ! ? |
コレット | この先まっすぐ ! 大きい岩に突き当たったら右に回り込んで ! |
イクス | クレス、その洞窟って―― |
クレス | 見張りがこない内に行くぞ。 |
イクス | 本当だ、こんな所に洞窟が……。 |
ミリーナ | 草も茂ってるし、私たちの目線からじゃ穴があるなんてわからないわね。 |
クレス | それにしてもすごいな。羽なんて……。 |
コレット | えへへ、役に立ったかな ? |
ロイド | コレット、ごめんな。幸運とかそんなの関係ないよな。自分ができることをやらなきゃだよな。 |
コレット | だいじょぶ。ロイドもみんなもいつだってそうやってると思うし、だから私も頑張りたかっただけだから。 |
カーリャ | おおお、またビッカビカの善人オーラが ! |
クレス | うん。ありがとう、コレット。僕もチェスターを見つけるために頑張るよ。 |
イクス | なあクレス、この洞窟が抜け道なのか ? |
クレス | ……見た感じは違うけどダオスの城に行くときにも、洞窟を通って行ったんだ。もしかしたらと思って。 |
ロイド | どうせ他に手掛かりはないんだ。行ってみようぜ ! |
キャラクター | 7話【11-9 デミテル洞窟 深部】 |
カーリャ | 結構深い洞窟ですねぇ……。そろそろ城の入口的なモノが欲しいところですけど。 |
ミリーナ | 気をぬいちゃだめよ。それとカーリャは鏡映点――チェスターさんの気配を感じたら教えて。 |
カーリャ | う~ん、鏡映点の気配っていってもあんまり遠くじゃわからないかもですよ。 |
カーリャ | まだ鏡映点と光魔の感じ方もそれほど区別できてないですし……。 |
ミリーナ | そっか……。カーリャも――いえ私もまだまだ修行をしなきゃいけないわね。 |
カーリャ | そうですね。イクスさまを見習わないと。 |
イクス | え、なんで…… ? |
カーリャ | 知ってますよ~ ? 夜な夜な一人で【創造の魔鏡術】を練習していること。 |
イクス | カーリャが知ってるってことは……ミリーナも ? |
ミリーナ | のぞき見するつもりじゃなかったんだけどごめんね ? |
イクス | 謝ることじゃないよ。なかなか上手くいかなくて、人前で修行するのが恥ずかしかっただけだから。 |
クレス | イクス、創造の魔鏡術ってなんだい ? |
イクス | 色んな物をゼロから実体化させる術って言えばいいかな。俺の家系が得意とする術なんだ。 |
イクス | 鏡士として成長するなら使いこなせなきゃいけないんだけど…… |
イクス | 昔……、術を暴走させたあげくミリーナを傷つけたんだ……それ以来、使うのが怖くなって……。 |
クレス | それを今、練習してるのか ? |
イクス | ああ。このままじゃ、大事な人も守れなくなる。実際に戦うようになって思い知ったよ。 |
イクス | それにさ、鏡映点の人たちと出会って大事なことをたくさん教えられたから。 |
イクス | だから今、必死で修行してるんだ。ようやく少しだけ使えるようになったよ。まだまだだけどさ。 |
クレス | 必死に修行か……。イクスのそういう所なんかチェスターと似てるな。 |
イクス | 俺とチェスターさんが ? |
クレス | ああ、僕は時間を超えて旅をしたって言っただろ ?その時、チェスターとの力の差が開いてしまったことがあったんだ。 |
クレス | それを仲間のアーチェって子がズバっと言っちゃってさ。まあ、アーチェとしてはからかっただけなんだろうけどね。 |
クレス | そうしたらあいつ、夜中に一人で必死に訓練してて。さっきのイクスの話と似てるだろ ? |
クレス | ……まあ、あいつが夜中に起きてたのは別の理由もあったんだけどさ。とにかく、みるみるうちに強くなった。 |
クレス | 僕が過去で積み重ねた時間がなければ追い越されてたかもしれないって思うよ。それくらい努力家なんだ、あいつ。 |
イクス | すごいな。俺もそんな風に、強くなれるといいんだけど。 |
ロイド | それにしても、すげぇな。クレスの剣――エターナルソード。本当に時間を跳べるんだな。 |
コレット | でも不思議だね。私たちの世界にも同じ名前の剣があるんだよ。 |
クレス | え ? ロイドたちの世界のエターナルソードって言うのは…… ? |
ロイド | 俺たちの世界には精霊がいてオリジンって精霊がハーフエルフのために作った剣なんだよ。 |
クレス | 僕たちの世界とはちょっと違うんだね。オリジンが作ったって言うのはこっちも同じだけど。 |
ミリーナ | もしかしたらカレイドスコープが具現化する世界は異世界同士の時空の距離が比較的近いところなのかも知れないわね。 |
ミリーナ | 確かアイフリードって人も、色んな世界に存在しているみたいだったし。 |
クレス | アイフリード ? アイフリードなら僕たちの世界にもいるよ ! |
ロイド | ええ ! ?なんかすげぇな、アイフリードって。 |
ロイド | 今度クレスたちの世界の話も色々聞かせてくれよ。他にも俺たちの世界と似てるところがあるかも知れないし。 |
クレス | そうだね。僕もロイドたちの世界のことを聞いてみたいよ。 |
イクス | ――シッ、静かに。みんな、あれを見てくれ。 |
クレス | 魔物か……。ダオス城にいた奴とは違うけどでもあいつの後ろに見えるのは……。 |
ロイド | ああ。城への入り口っぽいよな ! |
イクス | ……入るためには戦うしかないな。 |
クレス | ああ。みんな、行こう ! |
キャラクター | 8話【11-9 デミテル洞窟 深部】 |
イクス | ハァ……ハァ……。結構やっかいだったな。 |
ロイド | クレスって見た目よりずっとタフだよな。全然疲れた感じがしねえし。 |
イクス | そういうロイドもな。 |
クレス | イクス、聞いてもいいかい ?この城は僕の世界のダオス城を模したものなんだろう ? |
イクス | クレスが見覚えあるっていうならそうなんだと思う。鏡映点の記憶や感情が具現化に影響するから。 |
クレス | ……さっきも話した通りダオス城には色んな仕掛けがあるんだ。 |
クレス | もしここにも同じような仕掛けがあるなら全員で先に進むのは難しいかもしれない。 |
イクス | なんだよそれ……そんなにやっかいなのか ? |
クレス | ああ。ダオスの城では、デリスエンブレムがないと踏み込んだ途端、別の場所に転送されて城の奥に入れないんだ。 |
コレット | 待って。奥から人の声がする。 |
? ? ? | 貴様っ、大人しくそれを渡せ ! |
? ? ? | 抵抗するなら容赦はしないぞ ! |
ミリーナ | 本当だわ。この声……城の中からよね ? |
? ? ? | 抵抗なんてするに決まってんだろ。黙って捕まるなら最初から逃げねえっての ! |
クレス | 今の声、チェスターだ ! |
イクス | 何だって ! ?それじゃやっぱりここに―― |
? ? ? | 援軍を呼べ ! 裏切者を取り押さえろ ! |
チェスター | くそっ、そこどけよ !お前らに用はねえんだ ! |
クレス | ……僕はチェスターを助けに行く。イクスたちは城の偵察の方に集中してくれ ! |
イクス | 待ってくれクレス ! |
ロイド | ……なあイクス偵察はいったん置いといていいよな。あいつ一人で行かせられねぇよ。 |
イクス | ああ、俺たちも行こう。クレスとチェスターさんを助けないと ! |
ロイド | ヘヘ、そうこなくっちゃ。 |
クレス | チェスター ! |
チェスター | ――クレス ! ? |
クレス | 大丈夫か、チェスター ! |
チェスター | お前、なんでここに ! ? |
クレス | お前を助けに来たに決まってるだろう ! |
兵士 | ……面倒だ、一緒にくたばれ ! |
チェスター | クレス、かがめ ! |
兵士 | 何っ ! ? |
チェスター | いまだ ! |
クレス | はあああっ ! |
クレス | チェスター、無事でよかった ! |
チェスター | それより、どうしてお前がこの世界に…… ! |
クレス | 僕も具現化されてたんだ。それよりチェスター、さらわれたんだろ ? |
チェスター | あ……ああ……そ、そうなんだ。もしかして……オレを助けにここへ…… ? |
クレス | あ……そうだ !変なもの付けられてないか ?アンチ・ミラージュブレスとかいう…… |
チェスター | ……クレス、お前何いって…… ? |
イクス | おーい、クレス ! |
チェスター | ――あいつらは…… ! |
クレス | イクス、来てくれたのか。僕もチェスターも無事だ ! |
クレス | チェスター、お前を助けるために協力してくれた人たちだよ。 |
イクス | よかった。チェスターさんと会えたん―― |
イクス | ――何だ ! ? |
クレス | この光はまさか ! ?イクス逃げろ、それは転移の―― ! |
キャラクター | 9話【11-10 怪しげな古城 通路】 |
ミリーナ | う……ここは…… ? |
イクス | ミリーナ、大丈夫か ? カーリャは ? |
カーリャ | うう……ここにいますよ~。っていうか、何ですか、さっきのぐにゃ~っとした感じ。……目が回りそうでした。 |
イクス | 光に包まれる直前クレスが転移って言ってた気がするけど……。 |
ミリーナ | じゃあ、クレスさんが話していた踏み込むと別の場所に転送される仕掛けっていうのがこれなのね。 |
イクス | ああ、俺たちはまんまと引っかかったって訳だ。あれほどクレスに注意されてたのに……。 |
ミリーナ | ここには私たちしかいないのね。ロイドさんたちは――他のみんなはどうしたのかしら。 |
イクス | 他の場所に転移してるのかもな。すぐにでも確かめたいけどこの部屋じゃ……。 |
カーリャ | 前後左右、どこを見ても壁ですね。出口も入口も隙間もありません。 |
イクス | 剣でどうにか壊せないかな。 |
ミリーナ | 私も術でやってみるわ。 |
イクス | ……駄目か。 |
カーリャ | え~そんな ! それじゃこの密室でカーリャたちは一生……。 |
イクス | ……創造の魔鏡術なら出入り口を創り出せるよな。 |
ミリーナ | それは……そうだけど。でも空間を歪める程の魔鏡術は、今の私たちじゃ難しすぎるわ。 |
ミリーナ | 大地の具現化はカレイドスコープがあるから私たちでもできるけど……。 |
イクス | ……確かに、まだ空間を歪めるような物は創れないけど、でも例えば爆薬とかなら……。 |
ミリーナ | 爆薬……。それは内部構造を知らないと難しいわ。それに私の血筋だと創る方の魔鏡術に関しては、まだ簡単な物しか―― |
イクス | 俺は創る方――創造の血筋だ。 |
ミリーナ | ……イクス。今、魔鏡術のステップは何段階目 ? |
イクス | ……第二段階だ。 |
ミリーナ | …………。 |
チェスター | ――こっちだ ! この辺から音がしてたぜ。 |
イクス | ……なあ、今の聞こえたか ? |
ミリーナ | ええ、壁の向こうから音がしたわ ! |
クレス | おい ! 誰かそこにいるか ! ? |
イクス | クレス……それにチェスターさんか ! ?俺だよ、イクスだ !壁のこっち側にいる ! |
クレス | イクスか !ここに転送されていたんだな。どうだ、出られそうか ? |
イクス | 無理なんだ。四方が壁で囲まれて壊すこともできない。クレスたちは無事なのか ? |
クレス | 僕たちはデリスエンブレムを持ってるから大丈夫だ。壁を壊すから、ちょっと待っていてくれ。 |
チェスター | チッ、なんだよこれ、堅すぎんだろ ! |
クレス | クッ……びくともしない。何か仕掛けがあるのか ? |
ミリーナ | ……イクス、一か八かやってみない ?創造の魔鏡術。イクスの最初の提案――この壁に出口を創るのよ。 |
クレス | 創造の魔鏡術ってイクスが修行しているやつか。そうか、使う決心がついたんだな ! |
イクス | いや、その……。簡単なものならともかく今の状況じゃ難しいと思う。 |
イクス | 安全かつ確実に具現化するには、魔鏡の力を増幅する装置や準備が必要なんだ。もしくは魔鏡が複数あればどうにかなるけど……。 |
イクス | 今、手元には魔鏡が一枚。この状態で術を使うと、著しく体力を消耗する。そうすると……制御できない。 |
クレス | それは、前に話してた暴走が起きるってことか。 |
イクス | ……ああ。こんな逃げ場のない所で暴走させたら、あの時以上に大変なことになるかもしれない。それだけは……。 |
ミリーナ | ……ねえイクス、考えたんだけど私が制御のサポートをしつつ、術でイクスの体力を回復し続ければどうかな ? |
イクス | それは……。確かに一人でやるよりは安定するだろうけど……。それで暴走しないとは限らないよ。 |
ミリーナ | でも、他に手はないと思う。 |
イクス | …………。 |
クレス | ……イクス。ずっと術の修行していたんだろう ?コツコツ努力をして。 |
クレス | チェスターも同じことをしてたって話したらそんな風に強くなりたいって話してくれた。 |
チェスター | オ、オレと同じ ?お前、何を話したんだよ |
クレス | 何って、事実をね。チェスターは努力家で強いっていうことさ。 |
チェスター | ……事実か。そう言われちゃな。――おい ! イクスっていったっけ。 |
チェスター | もしも力不足で二の足踏んでるならさオレが保証してやるよ。 |
チェスター | 訓練した分だけ力はついてる。昔のお前とは違うってさ。 |
クレス | その通りだよ。イクスは必ずできる !それともチェスターの保証だけじゃやっぱりもの足りないか ? |
チェスター | そりゃねえだろ。オレの保証だけでも十分、確実に、必ずや、間違いなく、成功するっての ! |
チェスター | おい聞いてるか、イクス。努力の証、ガツンと見せてやれ !ついでにオレの保証の確かさもな。 |
イクス | ……そうだな。そこまで言ってもらってやらなかったら修行した意味がないよな ! |
ミリーナ | イクス、それじゃ……。 |
イクス | ああ、やるよ。 |
イクス | それにさ、俺が修行を始めたのもベルベットさんと会って、全てを受け入れる強さを目の当たりにしたからだった。 |
イクス | 俺も不安や恐怖にとらわれずやるべきことをやらないとな。 |
ミリーナ | ええ。私がサポートするから、安心して術を使って。あの時約束したでしょ。イクスの支えになるって。 |
イクス | ああ、頼んだよミリーナ。 |
イクス | クレス、チェスターさん今から術を行使する !念のため壁から離れててくれ ! |
イクス | (呼吸を整えて……冷静に……。体が辛くても大丈夫だ。ミリーナが癒してくれる……) |
イクス | (絶対に――成功する ! ) |
イクス | ……や、やった……か ? |
ミリーナ | やったのよ、成功したのよイクス !しかも壁だけが崩れて――他に被害もないわ ! |
クレス | すごいよイクス !完璧に制御できてるじゃないか ! |
チェスター | ほら見ろ、オレの保証は完璧なんだって !よくやったな、イクス。 |
イクス | ありがとう。二人の言葉に励まされたよ。 |
クレス | 早速だけどすぐに動けるかい ?ロイドたちを捜さないと。 |
チェスター | 多分、イクスたちと同じようにこの辺りに転送されてるんじゃねえか ?壁の中の音に気を付けながら進もうぜ。 |
キャラクター | 10話【11-12 怪しげな古城 隠し部屋】 |
イクス | ――それじゃ、今度も頼んだよミリーナ。 |
ミリーナ | ええ、任せて ! |
ロイド | イクス、助かったぜ ! |
コレット | すごいね ! 私も頑張って壁に体当たりしてみたんだけど、全然壊れなくて……。転んだときと何が違うのかなぁ ? |
ロイド | いきなり壁に突っ込んでいくから止める間もなかったよ……。 |
ミリーナ | 体当たりって……怪我してない ?コレットみたいな華奢な体でそんな無茶したらだめだからね。 |
コレット | うん、心配してくれてありがとミリーナ。なるべく気を付けるね ! |
ロイド | ……なるべくってところがコレットだよなぁ。 |
ミリーナ | 限りなく心配だわ……。 |
クレス | ロイド、コレット、無事でよかった。怪我はないか ? |
ロイド | ああ、ピンピンしてるぜ !えっと……そっちがチェスターだよな。 |
チェスター | ああ、クレスが世話に――っていうかオレのことを助けるのに、協力してくれたんだって ? ありがとな。 |
ロイド | いいっていいって。それにしてもよくあいつらの所から逃げられたな。 |
クレス | さっき聞いたんだけどチェスターはしばらく救世軍側にいたんだってさ。 |
チェスター | ああ、無理やりつれてこられて世界を救うから協力しろとか言われてさ。 |
チェスター | だからこの世界のことや具現化の話も大体は聞いてるよ。ダオスがいないかもってこともな。 |
チェスター | けどやっぱりなんか……納得できなくてさ。――んで、奴らの目を盗んで逃げて来たって訳だ。 |
ロイド | だからあいつらに裏切者って言われてたのか。 |
チェスター | まあ、それもあるけどな。あいつらへの意趣返しってことでこいつを持って来たらバレちまった。 |
クレス | 何かの……設計図 ? |
ロイド | うわ~……見てるだけで目が回りそうな細かさだな。 |
ミリーナ | ちょっと待って、これ……ところどころに具現化の術式が書かれてる。すごい……。 |
チェスター | なんだよ、そんなに大したもんなのか ?適当に失敬してきただけだぜ ? |
ミリーナ | イクス、見て。この辺りとか……ほら ! |
イクス | ……ああ、本当だ。もしかしたら……ファントムが研究してる装置……かも……。 |
ミリーナ | ……イクス、立て続けの具現化で体力の回復が追いつかないんじゃない ? |
イクス | いや、少し休めば大丈夫だ。この程度で済んでるのは、ミリーナのおかげだよ。 |
クレス | ……イクス、一度この城を出よう。どっちにしろ、デリスエンブレムは僕とチェスターしか持ってない。 |
クレス | あの転移装置が起動している以上、残念だけどイクスたちは城の奥へ入れないよ。 |
イクス | ……わかった。一旦ケリュケイオンに戻ろう。 |
イクス | デリス・エンブレムの対策も練りたいしクレスとチェスターさんも、一緒に来てもらっていいかな ? |
クレス | もちろん !いいよな、チェスター。 |
チェスター | あ、ああ……。世話になるぜ。 |
クレス | ………… ? |
キャラクター | 11話【11-15 デミテル洞窟 深部】 |
クレス | イクス、体はどうだい ? |
イクス | ああ、もう大丈夫だ。帰ったらすぐにでも修行したいよ。ミリーナの助けがなくても制御できるようにならないとな。 |
チェスター | ハハッ、修行大好きかよ。クレスみたいだな。 |
イクス | クレスには、チェスターさんみたいだって言われたけど。 |
チェスター | じゃあ、オレとクレスのいいとこ取りってことにしておけ。……そうだな。オレ的にそのいい所ってのを説明すると…… |
チェスター | ――過去、現代、未来を渡り、勇者はついに異世界へと降り立った。その名はクレス !彼はこの地に至っても未だ努力を怠らない。 |
チェスター | その英雄の傍らに立つのは、厳しい特訓の末に大いなる弓の力を手に入れた親友。彼の放つ矢は、研鑽の煌めきをまとうのだった ! |
チェスター | そんな彼らに憧憬のまなざしを送る鏡士の少年は―― |
クレス | チェスター……その大げさなナレーションまだやってるのか……。イクスが固まってるぞ。 |
チェスター | なんだよ、せっかく乗って来たのに。 |
ロイド | ……チェスター、お前すげえ難しい話し方するんだな。途中から何言ってるかわかんなかったぜ……。 |
チェスター | そうか ? じゃあ、もっとわかりやすく―― |
ミリーナ | ふふ、一気に賑やかになったわね。でももうすぐ出口よ。そろそろ外の警備兵にも気を付けないと。 |
? ? ? | 忠告が遅かったようだな。 |
イクス | ――誰だ ! |
リヒター | 今はお前に用はない。……チェスター、人の物をとってはいけないと教育されなかったか ? |
チェスター | ……チッ。リヒターかよ……。 |
リヒター | 設計図を返してもらおう。 |
ロイド | おっと、そうはいかないぜ。お前らがこの設計図でヤバイことしてるならなおさらな ! |
リヒター | ……ロイド・アーヴィング。それに……神子も一緒か。またお前たちが俺の邪魔をするんだな。 |
ロイド | 何のことだ ? |
リヒター | ……別に。未来のお前に借りがあるだけだ。 |
ロイド | 未来の……俺 ? それは一体……。 |
リヒター | 鏡映点であるお前たちには関係のない話だ。ましてや、ラタトスクがいないこの世界ではお前と争うこともないと思っていたが……。 |
チェスター | 隙ありだぜ ! |
リヒター | くっ…… ! |
ミリーナ | 今よ ! |
クレス | くっ ! 待ち伏せされていたのか ! |
カーリャ | これじゃあ挟み撃ちですよ ! ? |
イクス | ミリーナ ! 想いの……想像の魔鏡術であの男を―― |
ミリーナ | 幻で足を止めるのね。任せて ! |
ロイド | 俺たちは目の前の連中を叩くぞ ! |
キャラクター | 12話【11-15 デミテル洞窟 深部】 |
リタ | ……で、この術式を組みこんで……。魔鏡はここに……か。ふ~ん……。 |
ジェイド | ガロウズにも先ほど見てもらいましたがリタ、あなたはどう思います ? |
リタ | うっさいな、黙ってて !めんどくさい仕組みと設計なんだから ! |
ジェイド | これは失礼。どうにも天才の扱いにはなれなくて。 |
リタ | 決めた。いつかその眼鏡割るわ。――まあ、それはともかく。間違いなく具現化装置の一種だとは思う。 |
リタ | けど、これを設計した奴、妙なこだわりっていうか趣味みたいなもんが溢れてて……読み解くの……ホント面倒。 |
ジェイド | そこは同感ですね。その設計図には、どこか執着心さえ感じる。 |
リタ | ねえこれ、しばらく借りられない ?ていうか借りるから。 |
ジェイド | ええ、構いませんよ。ただし、他の皆さんの意見も必要ですからちゃんと返して下さいね。 |
リタ | わかってるっての。集中したいから一人で静かに見たいだけ。 |
ジェイド | 改めて皆さん、ご苦労様でした。期待以上のお土産でしたよ。やればできる子ですね、イクス ! |
イクス | いや、それはチェスターさんのおかげですから。 |
チェスター | ずっと気になってたんだけどよ。そのチェスターさんってのはやめてくれチェスターでいいよ。 |
イクス | わかった。ありがとう、チェスター ! |
リフィル | クレス、チェスターあなたたちの協力に感謝します。おかげで重要な情報が手に入ったわ。 |
クレス | いえ僕の方こそ、イクスたちには友人を助ける手伝いをしてもらったんです。お礼をいうのは僕たちですよ。 |
リフィル | お互いに助け合えたのなら何よりね。それで、あなたたちはこれからどうするの ? |
クレス | 鏡映点の人たちはみんな、この世界のために協力してるんですよね。 |
リフィル | そうだけど、協力するかしないか選ぶのはあなたたちの自由よ。イクスたちも強要はしない筈だわ。 |
イクス | ああ。もちろんできればお願いしたいけどそれぞれの考え方があるからそれを尊重したいと思ってる。 |
クレス | ならもう決まってるよ。僕はイクスたちに協力する。 |
チェスター | ……おいクレス、そんなすぐに決めなくてもいいんじゃないか ? |
チェスター | 一旦、どこかに落ち着いてさそれからでも遅くないって。 |
クレス | そういうチェスターはどうするんだよ。 |
チェスター | 俺はほら、救世軍ともめたわけだし……ここで協力しながら世話になるのがいいかなって考えてるけど……。 |
チェスター | お前は違うだろ ?俺のせいで巻き込んじまっただけでさ。だから―― |
クレス | お前がイクスたちに協力する意思があるなら僕だってそうするよ。これからも一緒に戦おう、チェスター ! |
チェスター | ――そうか。わかったよ。 |
クレス | イクス、これからもよろしくな。 |
イクス | ああ、頼りにしてるよ。 |
リフィル | それじゃイクス二人のことは頼んだわね。 |
ミリーナ | そういえばうっかり聞きそびれてたんだけど結局チェスターさんは特異鏡映点じゃなかったのよね ? |
チェスター | え ? ああ、そうらしいな。最初は特異鏡映点だと思われてたみたいだけど、よく調べたら違ってたって言われたからな。 |
チェスター | まあ、だからこそ監視の目もなかったし簡単にあそこからおさらばできたってわけだ。 |
ミリーナ | そうだったのね。アンチ・ミラージュブレスのことでクレスさんには余計な心配させちゃったわ。 |
チェスター | みたいだな。とりあえず何の問題もなしだ。これからもよろしく頼むぜ。イクス、ミリーナ ! |
イクス | ああ ! よし、それじゃ後で艦内を案内するよ。ここで少し待っててくれ。 |
チェスター | わかった。楽しみにしてるぜ ! |
チェスター | ……。 |
クレス | なあチェスター……。何か悩んでることがあるならちゃんと相談してくれよ。 |
チェスター | なんだよ、藪から棒に。 |
クレス | いつもなら率先して「一緒に戦おう」って言ってくれるはずだろ ?さっきのといい、チェスターらしくない。 |
チェスター | それは……その、ほら、お前があんまりにも簡単に決めたように見えたからさ。ちゃんと考えろって促してやったんだよ。 |
クレス | ……それだけか ? |
チェスター | そうだよ。お前って結構、貧乏クジ引くタイプだからな。……ったく、人が心配してやってんのに「らしくない」とはなあ。 |
クレス | いやだって、お前こそ思い詰めるタイプだからさ……何かあるのかって思ったんだよ。ほら、あの時だってそうだったろ。 |
クレス | 村の人たちやアミィちゃん村が襲われた時のことを考えると眠れなくなるって……。 |
チェスター | ……あれは、仕方ないだろ。簡単に忘れられるもんじゃねぇんだし。でも、今は平気だぜ ? 毎晩グッスリだ。 |
クレス | とにかく、もし何かあるならちゃんと言えよ。 |
チェスター | はいはい、わかったわかった。 |
イクス | 待たせたな ! それじゃ部屋のことも含めて艦内を案内するよ。 |
チェスター | ほら、行こうぜ !さあて、風呂はあるかなぁ ?どんな感じなんだろうな ! |
クレス | お前、またのぞく気じゃないだろうな……。 |
チェスター | (すまねぇ、クレス……。お前もこの世界にいるなんて思わなかったんだ……。) |
チェスター | ――くそっ ! |
キャラクター | 12話【11-15 デミテル洞窟 深部】 |
ファントム | 納得のいく説明をして下さい。……それとも言い訳といった方がいいでしょうかね。 |
マーク | だから何度も言ってるだろ ?あれが今一番有効な作戦なんだって。 |
ファントム | 私に黙って計画し、私の実験場に潜入させあまつさえ私の設計図を持ちだしたことがですか ? |
ファントム | あれがどれだけ価値のあるものかあなたはわかっていないようだ。 |
マーク | ああ、そうみたいだな。すまないね。あんたよりも頭が悪いもんで。 |
マーク | でもおかげで、手土産つきのチェスターは大歓迎されてるみたいじゃねえか。 |
マーク | これからはあっちの情報がまるわかりだ。あんたの望んだ通りだろ。 |
ファントム | ……あんな雑な計画で本当に怪しまれずに送り込めたとでも ? |
ファントム | ……まあ、あなたにとってはそれでよいのでしょうね。他にも何やら考えておいでのようですから。 |
マーク | ……。 |
ファントム | 何にしろ、ことが動いたなら仕方がない。チェスターがどれだけやれるか私も楽しみに待つことにします。 |
ファントム | 大事な戦力であるリヒターをわざと負傷させてまで奴らの信頼を勝ち取ったのですからね。 |
ファントム | さぞかしよい情報を流してくれることでしょう。 |
マーク | ……その情報があんたに行くかはまだわからねえけどな。 |
ファントム | はぁ……いけませんよマーク。反抗的な態度もほどほどにしないと。あなたもフリーセルのようになってしまう。 |
マーク | ……どういうことだよ。なんでフリーセルの名前が出てくる。 |
ファントム | フリーセル……救世軍の創始者にして初代リーダー。有能と言ってもいい人物でしたねえ。 |
ファントム | その有能さが少々邪魔でしたので始末しましたけど。 |
マーク | お前が――やったのかよ…… ! |
ファントム | ええ。トップを挿げ替えるにはこれが一番簡単ですから。 |
マーク | ……。 |
ファントム | わかって頂けましたか ? ご自分の立場を。それでは改めて申し上げましょう。 |
ファントム | ――お前はお飾りの救世軍リーダーだ。そのことを忘れるなよ。 |
マーク | ……っ。 |
ファントム | それでは、私は仕事があるのでこれで。あなたのせいで新たな設計図を用意しないといけなくなりましたから。 |
マーク | くそっ……頼むぜチェスター……。ファントムを追い詰めるためにもお前が働いてくれなきゃ困るんだ……。 |
キャラクター | 2話【12-1 いざないの森】 |
ミリーナ | あれがビフレストの魔鏡兵器……。あの時と同じだわ。許さない……絶対に……。 |
シェリア | ……ミリーナ ? ミリーナ、大丈夫 ? |
ミリーナ | ―― ! ?ゆ、夢…… ? |
シェリア | ごめんなさい。うなされていたみたいだから起こしちゃったんだけれど……。 |
ミリーナ | ――や、やだ。私寝ちゃってたのね。ごめんなさい。 |
シェリア | 魔鏡科学……っていうのを調べてるのよね ?大事なのはわかるけれど少し休んだ方がいいわ。 |
リタ | そうそう。無理して寝ぼけた頭を動かそうとしてもろくなことにならないしね。 |
キール | 残りの調べ物はぼくがやる。ミリーナのおかげで魔鏡科学にも随分詳しくなったしな。 |
ミリーナ | みんな……ありがとう。でも大丈夫。寝落ちしちゃった分今は気力充実してるもの。 |
ファラ | だったらミリーナも夜食を食べて。シェリアと二人でたくさん作ってきたから。 |
シェリア | キール研究室が頑張ってるならファラ生活向上委員会も負けないように頑張らないと ! |
リタ | その名前、ほんとバカっぽいんだけど。 |
キール | ぼくの名前のついた研究室が不満だって言うのか ? |
リタ | そっちの話じゃないわよ。まぁ、キール研究室っていうのも微妙な気がするけど。 |
ミリーナ | ふふ、ディベートが盛んなところもキール研究室のいいところよね。リタもキールも楽しそうで良かった ! |
二人 | …… ! ? |
ミリーナ | せっかくシェリアとファラが夜食を準備してくれたんだし私、イクスたちを呼んでくるわね。 |
リタ | ……ねぇ。 |
キール | 研究室の名前の件なら、単にぼくがみんなより早くケリュケイオンに合流したからで―― |
リタ | うっさい。その話じゃなくてミリーナのことよ。 |
リタ | 何か……大丈夫なの ?凄くつらそうに見えたけど……。 |
ファラ | 滅びの夢……っていうのを見てたのかな ? |
キール | おかしな話だよな。世界中の人間が同じような夢を見るなんて。 |
シェリア | 何だか気になるわ。調べてみた方がいいんじゃないかしら。 |
リタ | ……そうね。こっちはこっちでチェスターが救世軍から奪ってきた設計図の解析があるし別に調査隊を出した方がいいかもしれない。 |
ファラ | 決まりだね。私、ミリーナに話してくる ! |
ガイ | ――これがチェスターの記憶を元に起こしたファントムの城の見取り図だ。 |
チェスター | あの城は魔術的な仕掛けが多い。正面から攻めるのは難しいぜ。 |
ミリーナ | イクス、みんな。ファラたちがお夜食を作ってくれたわよ。 |
ガロウズ | お、ありがたいな。ちょうど腹が減ってたんだ。 |
ガイ | さすが、ファラたちは気が利くな――ってミリーナ。何だか顔色が悪いけど大丈夫か ? |
イクス | 本当だ。このところキールたちと調べ物が続いてるから……。 |
ミリーナ | 大丈夫よ。 |
ファラ | 大丈夫じゃないでしょ、ミリーナ。 |
ミリーナ | ファラ ! |
ファラ | ミリーナ。さっき滅びの夢を見てうなされていたんでしょ ? |
イクス | え ! ? そうなのか ! ? |
ガロウズ | ……滅びの夢、か。 |
イクス | そういえば、ガロウズは見ないのか ?滅びの夢。 |
ガロウズ | あ、ああ。俺は、な。 |
イクス | 俺もそんな夢は見ないからミリーナの苦しさをわかってやれないんだけど……。 |
ファラ | それそれ。わたしたちも鏡映点だからなのかそういう夢は見ないでしょう ? |
ファラ | この際、滅びの夢が何なのか調べてみたらどうかと思うの。 |
イクス | 今はジェイドさんもリフィル先生も出かけてるから、勝手に動いていいのかわからないけど……。 |
チェスター | 何言ってるんだ。別にあの二人がリーダーって訳じゃない。 |
チェスター | それにここはイクスとミリーナが生まれた世界だろ。遠慮する方がおかしいんじゃないか。 |
ガイ | チェスターの言う通りだ。イクス。誰かの力を借りるのは悪いことじゃない。でも最後に決断するのは自分だ。そうだろう ? |
イクス | そうですね。チェスター、ガイさん、ありがとう。俺、仲間に恵まれてるなって思います。 |
チェスター | お、おう……。 |
ガイ | …………。 |
イクス | それじゃあ、ファラの提案通り滅びの夢の調査をしよう。 |
ファラ | あ、でも、せっかくだから夜食を食べていってね。 |
イクス | もちろん、そうさせてもらうよ。それに出かけるのは朝になってからの方がいいし。 |
ミリーナ | イクス……。ありがとう……。――私、カーリャを起こしてくるわね。 |
ガロウズ | ケリュケイオンはどこにつける ? |
イクス | とりあえずセールンドに頼むよ。 |
ガロウズ | よしきた。任せときな ! |
キャラクター | 3話【12-2 静かな街道】 |
カーリャ | ふわわわ……。眠いです。 |
イクス | ごめんな、カーリャ。一応朝になるまで待ったんだけどまだ眠いか ? |
ミリーナ | 鏡精は具現化した鏡士の力に依存するから、私の力が足りないせいかもしれない……。 |
カーリャ | あわわわ、そんなことないですよぅ。ミリーナさまはちゃんと安定した力を供給して下さってます。 |
ミリーナ | ありがとう、カーリャ。私も疲れをためないように気をつけるわね。 |
ファラ | さて、これからどうするの ? |
イクス | 滅びの夢を見たことがある人に話を聞いてみよう。朝だから、夢の記憶も鮮明だと思うし。 |
リッド | 手分けして聞き込むか ? |
カーリャ | ん ? あそこにいるのって救世軍じゃありませんか ? |
リッド | おい、あんた。こんなところで何してるんだ ? |
救世軍兵士 | あんたたちか !ちょうどよかった、捜してたんだ ! |
ミリーナ | ……あら ? あなたは救世軍のルックさん ? |
イクス | ! ? |
ファラ | 知り合いなの ? |
イクス | 俺とミリーナが、オーデンセの消失に巻き込まれた時に助けてくれた人なんだけど……。でも、あなたはマークの部下ですよね ? |
ルック | ……ああ、そいつは否定しない。ただ、今はあんたたちの敵じゃないんだ。 |
ルック | あんたたちを捜していたのは引き合わせたい女の子がいるからなんだよ。 |
イクス | 引き合わせたい女の子 ?それは一体―― |
ミリーナ | 待って、イクス。罠かもしれない。 |
ルック | 俺が救世軍の人間だから信用できないって言うなら、安心してくれ。俺は救世軍を辞めた人間だ。 |
ルック | 指揮官が立て続けに消えちまう集団ってのが薄気味悪くなってきてな。 |
ファラ | 指揮官が立て続けに消える ?じゃあ今の救世軍は誰が指揮してるの ? |
ルック | 数日前にマークさんが消えちまってからは四幻将のリヒターさんが代理で指揮を執ってるがどうなっちまってるのかねぇ……。 |
イクス | マークが消えた ! ?一体何が起こってるんだ ? |
ルック | それがわからねぇから俺は逃げ出してきたんだよ。 |
ルック | とにかく宿屋まで一緒に来てくれ。救世軍に追われてる子を保護してほしいんだ。 |
ファラ | イクス、ミリーナ。行ってみよう。 |
ファラ | 滅びの夢のことも気になるけど救世軍に追われている人が助けを求めてるなら放っておけないよ。 |
イクス | そうだな。 |
キャラクター | 4話【12-3 発展途中の街】 |
ルック | おい、カノンノ。例の鏡士を見つけてきたぞ。 |
カノンノ・E | ……あれ ? リッドとファラ ! ? どうして ! ?二人ともどうやってティル・ナ・ノーグに来たの ? |
ファラ | え ! ? リッド……知ってる ? |
リッド | いや……覚えがねぇな。オレたちどこかで会ってたか ? |
カノンノ・E | ――あ、何だ、そうか。リヒターさんと同じ別の世界の人たちなんだ。 |
カノンノ・E | ごめんなさい、二人が知ってる人にそっくりだったから……。 |
カーリャ | そっくりって……。顔が似ていて名前まで同じって、それって本当に別人なんですか ? |
カノンノ・E | 異世界同士の距離が近いとそういうこともあるんだって教えてもらったの。あなたは、鏡精さん ? |
カーリャ | え、はい、そうですけど……。 |
カノンノ・E | それじゃあ、横にいる二人がイクスさんとミリーナさんですね。マークとフィリップから話は聞いています。 |
イクス | フィリップ ! ? フィリップってまさかフィル――フィリップ・レストンのことか ! ? |
カノンノ・E | そうです。 |
ミリーナ | フィルが……救世軍に ! ? |
リッド | フィルって、確かイクスたちの幼なじみだったよな。ええっと……― |
カノンノ・E | 私はカノンノ・イアハートです。 |
リッド | カノンノか……あんたは何者なんだ ?フィルって人とはどういう関係なんだ ? |
ファラ | 待って。宿の外が騒がしいよ。 |
ルック | ――くそ。追っ手に見つかっちまったな。俺が奴らを引きつけておくからあんたたちは逃げてくれ。 |
イクス | それじゃあ、あなたが危険なんじゃ……。 |
ルック | マークさんには恩があるんだ。そのカノンノって子はマークさんの妹だっていうし助けるのは当然だろ。 |
ルック | まぁ、こちとら逃げるのは上手いんだ。気にせず行ってくれ。 |
ミリーナ | わかりました。カノンノ、一緒に来てもらえる ? |
カノンノ・E | もちろんです。マークからミリーナさんを頼るように言われてますから。どうかよろしくお願いします。 |
イクス | あの―― |
ルック | 何だよ、ぐずぐずしてると捕まっちまうぞ。 |
イクス | オーデンセの時といい、今回といい本当にありがとうございます。ルックさん。どうか、気を付けて。 |
ルック | ……あんたたち、どうみてもビフレストの亡霊と手を組んだ破壊者には見えないな。 |
ルック | まぁ、いい。早く行け。 |
リッド | 裏口は廊下を出て左だ、急ぐぞ ! |
キャラクター | 5話【12-4 静かな街道】 |
リッド | 追っ手は振り切ったみたいだな。 |
カノンノ・E | ごめんなさい。皆さんに迷惑をかけてしまって。 |
イクス | カノンノ。きみはどうして救世軍に追われているんだ ? |
イクス | マークの妹って、どういうことなんだ ?それにフィルとは一体どういう関係なんだ ? |
カノンノ・E | わからないことばかりですよね。順を追って説明させて下さい。 |
カノンノ・E | まず私は、このティル・ナ・ノーグの人間ではありません。 |
ミリーナ | あなたも鏡映点ってこと ? |
カノンノ・E | いえ……ストレンジャー、だとフィルは言っていました。 |
カノンノ・E | 具現化されたことには違いないけれど私は他の鏡映点の方とは違って大陸の具現化には関わっていないんです。 |
ファラ | つまりカノンノは、カノンノの世界からカノンノの存在だけが具現化したってこと ? |
リッド | でも具現化っていうのは鏡士じゃないとできないんだろ ? |
リッド | 異世界からの具現化ができるのはイクスたちぐらいだって聞いてるけどな。 |
カノンノ・E | 私を具現化したのはフィルです。 |
カノンノ・E | 私、グラニデ――自分の世界以外の世界も見てみたくて、異世界を旅して回っていたんです。 |
カノンノ・E | でもこの前の転送の時に妙な力に足を取られてしまって……。 |
カノンノ・E | 気づいたら真っ暗で何もないところに放り出されていました。 |
カノンノ・E | 体が金色に光って、苦しくなったときに手が差し伸べられたんです。 |
カノンノ・E | その手をつかんで、必死に逃げ出した先がこのティル・ナ・ノーグでした。 |
イクス | 真っ暗な世界……。金色の光……。それってまさか……虚無 ? |
カノンノ・E | はい。後から、私のいた場所が虚無と呼ばれる滅びの世界だと聞きました。 |
カノンノ・E | フィルは私を虚無から助け出すために私をスキャンして具現化したんです。 |
カノンノ・E | そのとき発生したエネルギーのおかげでもう一人の私――元の私は虚無から元いた世界へ引き戻されました。 |
カノンノ・E | 具現化された私は、こうしてティル・ナ・ノーグに……。 |
ミリーナ | フィルが、カノンノを具現化した……。カレイドスコープも無しで異世界にアクセスしたなんて……。 |
カノンノ・E | フィルは滅びから世界を救うための研究をしていると言っていました。 |
カノンノ・E | それで虚無を観察しているときに私を見つけてくれたんです。 |
カノンノ・E | 私、行くところもなかったからフィルのお手伝いをすることにしたんです。 |
カノンノ・E | マークともフィルの研究室で知り合いました。 |
イクス | でもカノンノはマークの妹なんだよな。 |
カノンノ・E | あの……マークの妹分ということで救世軍の皆さんに紹介されていたのでいつの間にか間違えられてしまって。 |
カノンノ・E | 本当の妹って訳ではないんです。ごめんなさい。 |
ミリーナ | でもその救世軍から今は追われているのよね。何があったの ? |
カノンノ・E | 私も詳しいことはわからないんです。私はずっとフィルの傍にいたから救世軍のことはあまり詳しくなくて。 |
カノンノ・E | でも救世軍に何かあったことは間違いありません。 |
カノンノ・E | そのせいでフィルは救世軍に捕まって私はマークをおびき出すために利用されました。 |
イクス | え ? フィルは救世軍って訳じゃないのか ? |
カノンノ・E | 元々救世軍は、フィルとフィルのお友達のフリーセルさんで結成した義勇軍だったそうなんです。 |
カノンノ・E | フィルは救世軍としての活動をマークに任せて、一人で滅びを食い止める研究をしていたらしいです。 |
カノンノ・E | でも、突然フリーセルさんが暗殺されてしまったそうで……。 |
カーリャ | あわわわ……。暗殺……。 |
リッド | きな臭い話になってきたな。 |
カノンノ・E | それでマークがフリーセルさんの代わりに指揮を執るようになったと聞いています。 |
カノンノ・E | でも突然救世軍がフィルの研究室にやってきて、フィルも私も連れさられてしまいました。 |
カノンノ・E | 私はフィルと引き離されてしまって……。お願いです。フィルとマークを救世軍から助けて下さい ! |
カノンノ・E | 私、二人を助けるためならどんなことでもします。二人は私の命の恩人なんです。 |
イクス | わかった。 |
ミリーナ | イクス ! ? |
イクス | ミリーナ。マークは俺たちにとっても命の恩人じゃないか。それにフィルは幼なじみだろ。 |
ミリーナ | ええ……。でも今までのことを考えると……。 |
イクス | わかってる。だから、決断する前にみんなの話を聞いておきたい。 |
リッド | ……でも、もう自分の中では決めてるんだろう、イクス。どこかの誰かと同じ目をしてるからな。 |
ファラ | イクス、わたしは間違ってないと思う。助けを求めて伸ばしてきた手を振り払うなんてできないよ。 |
ファラ | 例え敵対していた人でも、話せばわかることだってあるんじゃないかな。 |
カノンノ・E | マークが皆さんと敵対していたのは救世軍に追われるようになってから初めて知りました。 |
カノンノ・E | でも少なくとも私の前では、マークは二人のことを「いい奴らだ」って笑って話してくれたから……。だから、お願いします ! |
ミリーナ | ……カノンノ。そんなに頭を下げないで。ごめんなさい。私も警戒しすぎたのかも知れない。 |
ミリーナ | でも私たちには協力してくれる仲間がいるの。みんなの話も聞かないと。少しだけ時間をちょうだい。 |
カノンノ・E | もちろんです。困らせてごめんなさい。 |
イクス | よし、ケリュケイオンとの合流地点に向かおう。 |
キャラクター | 6話【12-5 とこしえの森】 |
リフィル | そう……。こちらへの報告ありがとう。判断はイクスに任せるわ。 |
リフィル | ただ助けに行くというなら決して無理はしないこと。そして気を抜かないこと。 |
リフィル | 全てが罠かも知れない。人を信じるのと同じぐらい、情報を精査することも大事よ。 |
イクス | はい、リフィル先生。そちらの調査はどれくらいかかりそうですか。 |
リフィル | まだかなりかかりそうなの。後のことはよろしく頼むわね。 |
リフィル | それからロイドとルークとカイルに宿題を忘れないように伝えてちょうだい。 |
リフィル | あとそろそろジェイドがそっちに着く頃だからろくでもないことをしないように見張っておいてね。 |
カイル | えー ! ? もしかして宿題出されたのってオレとルークとロイドだけなの ! ? |
ロイド | やっべー。先生がいない隙にと思ってクレス道場に入り浸ってた……。 |
ルーク | てか、何で俺がカイルとロイドと同じ扱いなんだよ ! |
カノンノ・E | フフ…… ! |
ミリーナ | どうしたの、カノンノ。 |
カノンノ・E | ごめんなさい。私の世界にもカイルたちにそっくりな人たちがいるんです。 |
カノンノ・E | まるで同じ人みたいな反応だから何だか懐かしくて……。 |
イクス | よし。みんなの意見も大体俺と同じだったしリフィル先生も任せてくれるそうだから……。 |
ロイド | マークとフィリップって人を助け出すんだな。任せとけ ! |
カイル | オレ、必ず二人を助け出してみせるよ ! |
ルーク | まずは二人のいそうな場所のあたりをつけないとな。 |
ユーリ | おいおい、お前たちは宿題やっとけって釘刺されたばかりだろ。ここはオレに任せて三人はさっさとお勉強に戻るんだな。 |
ジェイド | そうやって体よく子守から抜け出そうという訳ですか。 |
ユーリ | 一番の問題児が帰ってきたな……。 |
ジェイド | 話は聞かせてもらいました。マークにしてもフィリップにしても重要な情報を握っていることには違いない。 |
ジェイド | カノンノ。二人が囚われている場所に心当たりはありますか ? |
カノンノ・E | はい。何ヵ所か、救世軍が拠点にしている場所を知っています。 |
イクス | 手分けして捜すしかないな。カノンノも手伝ってくれるか ? |
カノンノ・E | もちろんです ! |
ロイド | そうだ !チェスターなら救世軍のことも詳しいよな。俺、ちょっと捜してくる ! |
ルーク | あ、俺も行く ! カイルも来いよ。 |
カイル | うん。ユーリ、抜け駆けは駄目だからな ! |
カノンノ・E | チェスターさんがここにいるんですか ? |
ジェイド | ああ、チェスターも救世軍にいましたからねぇ。顔見知りですか ? |
カノンノ・E | は、はい……。 |
ジェイド | …………。 |
ジェイド | 失礼。私もクレスに話があるので後のことはよろしくお願いします。 |
ユーリ | …………。 |
イクス | わかりました。それじゃあ、カノンノ。拠点の場所を教えてくれ。 |
イクス | ユーリさんの意見も聞きたいんでこっちに来てもらえますか。 |
ユーリ | ……ん ? ああ、わかった。 |
キャラクター | 7話【12-6 とこしえの森 奥地】 |
イクス | こちらイクス。A地点が見えてきた。これから潜入する。 |
マリアン | 了解しました。BからDまでの救世軍拠点に向かった皆さんも、潜入に成功したようです。 |
イクス | ありがとう。また連絡します。 |
チェスター | こういうとき、人数が多いのは助かるな。 |
カーリャ | 数は力ですからね。 |
カノンノ・E | でも一番可能性が高いのはこの先のA地点にある拠点です。 |
カノンノ・E | 一番古くから救世軍が使っている拠点なので……。 |
ミリーナ | ねぇ、カノンノ。よかったら、もっとフランクに話さない ?女の子同士、仲良くしましょう。 |
カノンノ・E | うん……でも、色々無茶なお願いをしているから……。 |
ミリーナ | 私……これでも悪かったなって思っているの。イクスみたいにすぐにカノンノの申し出を受けてあげられなかったから。 |
ミリーナ | 親しい人を案じる気持ちはみんな同じなのに色々なことを考え過ぎちゃって……。 |
ミリーナ | しかもマークはカノンノに私を頼れって言っていたんでしょう ?せっかく信じて頼ってくれたのに……。 |
カノンノ・E | ミリーナさん……。 |
ミリーナ | ミリーナって呼んで。私、カノンノともっと仲良くなりたいわ。 |
カノンノ・E | ありがとう……ミリーナ ! |
チェスター | カノンノはイクスとも気が合うと思うぜ。 |
イクス | 俺と ? |
カーリャ | カノンノさまも変態的に心配性なんですか ? |
イクス | ど、どういう意味だよ ! ? |
チェスター | いや、イクスって読書が趣味なんだろ ? |
カノンノ・E | え ? イクスさんも本が好きなんですか ? |
イクス | ああ。本って俺の知らないことがたくさん詰まってるからさ。 |
イクス | 寝る前に本を読み始めて気づいたら朝だったなんてこともあるよ。 |
カノンノ・E | わかります。私も本を読んでいるとつい夢中になっちゃうから。 |
ミリーナ | ふふ、よかったね、イクス。読書友達が増えて ! |
イクス | うん。カノンノにケリュケイオンの書庫を見せたいよ。 |
カノンノ・E | うわぁ ! 見てみたい ! |
ミリーナ | 状況が落ち着いたら、必ず案内するわ。まずはフィルとマークを助けましょう ! |
カノンノ・E | うん、私も頑張るね ! |
キャラクター | 8話【12-7 A地点のアジト 入口】 |
イクス | ……あんまり人がいないな。おかげで侵入するのは簡単だったけど。 |
チェスター | ここにはいないのかもしれないな。マークなりフィリップなりが捕まってるなら警備が厳重になるんじゃないか ? |
ミリーナ | そうね。でも、もしもってこともあるし他の班が見つけたって連絡をもらうまではしっかり捜しましょう。 |
マーク | ――誰だ ? 誰かいるのか ? |
カノンノ・E | マーク ! ? |
マーク | カノンノ ! ? どうしてここに ! ? |
カノンノ・E | 助けに来たの。ミリーナたちも一緒だよ。 |
マーク | ! ? |
チェスター | …………。 |
マーク | ……なんだよ、このメンツは。 |
チェスター | 悪かったな。【裏切り者】がこんなところにいてよ。 |
イクス | マーク。今助けるから。 |
マーク | ……へぇ、この牢の鍵を持ってるってのか ? |
ミリーナ | イクスは鏡士なのよ ? |
イクス | 錠前を元に、鍵の形を思い描いて――。 |
チェスター | はー…… ! 鏡士ってのは便利だな !こんなに簡単に鍵が作れるのか。やりたい放題だな ! |
イクス | はは……。あんまり複雑だと俺にはまだ無理だけどね。 |
イクス | ……マーク。早く行こう。 |
マーク | はっ、かっこわりぃな。でも――ありがとな。 |
イクス | 前に助けてもらっただろ。そのお礼だよ。 |
マーク | …………。 |
カノンノ・E | マーク。フィルはどこ ? |
マーク | あ、ああ。この拠点にいないなら別の場所だとは思うが……。 |
カノンノ・E | 場所、わからない ? |
マーク | わりぃな。どうにもぼやけちまっててよくわからねぇんだ。 |
ミリーナ | 何 ? どういうこと ? |
マーク | ……何でもねぇよ。助けてもらったことは感謝してるが俺はフィルを捜す。 |
イクス | フィルなら俺たちも捜す――いや、もう捜してる。 |
マーク | は ? |
カノンノ・E | 今、鏡映点のみんなが手分けして救世軍の拠点を回ってるの。 |
マーク | ――いや、それは……どうかな。 |
イクス | どういうことだ ? |
マーク | フィルは特別なんだ。俺みたいに、こんな辺境の拠点に放置していい存在じゃない。 |
マーク | 救世軍のアジトを回ったところであいつはいないと思うぜ。 |
ミリーナ | でもマークを見つけることはできたわ。とりあえずケリュケイオンに行きましょう。 |
マーク | お前らを殺そうとしていた俺を連れて行くのか ?とんだお人好しだな。 |
ミリーナ | 殺そうとしていた相手に妹分を任せようとするあなたも相当お人好しだと思うけど ? |
マーク | ……そりゃそうだ。だせぇが仕方ないか。わかった。一緒に行かせてもらう。 |
チェスター | …………。 |
キャラクター | 9話【12-9 A地点のアジト 出口】 |
イクス | どうした、マーク。 |
マーク | ……わりぃ。前言撤回だ。俺はここに残る。 |
チェスター | はぁ ? 今更何言ってるんだお前 ! ? |
イクス | フィルを捜すなら協力し合った方がいいだろ ? |
マーク | お前みたいな坊やと協力して何になるって言うんだよ。 |
イクス | 坊やって言いぐさはないだろ。どうして急にそんなこと言い出すんだよ。 |
マーク | なんだっていいだろ。とにかく俺はお前らと一緒に行く気はない。戻らせてもらう。 |
カノンノ・E | 待って、マーク。ちゃんと話した方がいいよ。本当のこと。 |
マーク | …………。 |
カノンノ・E | 私、マークがミリーナとイクスにどんなことをしてきたのかよく知らないけど……。 |
カノンノ・E | でも今は協力してるんだから隠しごとはやめようよ。 |
イクス | マーク。何か理由があるなら話してくれよ。それに俺たち、フィルのことも聞きたいんだ。 |
マーク | ……わかったよ。どっちにしても俺はこれ以上お前らと一緒にはいけないんだ。【物理的】にな。 |
チェスター | どういうことだ ?もっとわかるように話せよ。 |
マーク | 俺は……フィリップの鏡精なんだ。 |
カーリャ | え ! ? 私と同じ…… ? |
イクス | 鏡精 ! ?でもカーリャとマークはまるで違うけど―― |
ミリーナ | カーリャが小さな妖精の姿をしているのは私の具現化の力がまだこの程度だからなの。 |
ミリーナ | もしもフィルがカレイドスコープなしで異世界から人を具現化できるほどの力を持っているなら、鏡精だって当然もっと……。 |
マーク | まぁ、そういうことだ。鏡精はご主人様の傍を離れて行動することができない。 |
マーク | フィルほどの鏡士になれば俺の行動範囲もかなり広いが、それでも限界はある。 |
マーク | 感じるんだよ。これ以上進むと俺の存在が保てなくなって消えちまうって。 |
ミリーナ | つまりフィルはここからかなり離れたところにいて、この拠点のある場所は限界ぎりぎりのところにあるのね。 |
マーク | ああ。どうりで監視も緩いしろくに飯も出てこない訳だぜ。 |
マーク | 俺がここから出られないことを計算して閉じ込めてたんだ。 |
イクス | あ、でも、前にカーリャがミリーナから離れすぎて消えたときはすぐにまた復活できてたけど……。 |
マーク | フィルの生死がわからないからな。今ここで俺が消えたら二度と復活できるかわからない。 |
マーク | 仮に復活できたとしてももう姿も記憶も変わっちまってるかも……。 |
ミリーナ | え ? おかしくない ?フィルが死んでいたらマークだって消えてしまう筈でしょう ? |
マーク | それは―― |
救世軍 | いたぞ ! イクスとミリーナだ ! |
チェスター | くそ、見つかっちまったか。 |
マーク | ここは俺が食い止める。お前たちは逃げろ。 |
カノンノ・E | でも、マークが―― |
マーク | どうせ鏡精だ。これ以上進めないならせめて壁になってやるさ。早く行け ! |
イクス | ――わかった。無理するなよ、マーク。 |
マーク | ふん。馬鹿にするなよ ?鎖に繋がれちゃいるが、雑魚に負けるようなマーク様じゃねぇよ。 |
ミリーナ | 鏡精は鏡士の心の分身なのよ。フィルのためにも……無茶はしないで。 |
マーク | はいはい、早く行けって !チェスター、後は頼むぞ ! |
チェスター | ――わかったよ !行くぞ、イクス、ミリーナ ! |
キャラクター | 10話【12-10 鏡士の神殿 入口】 |
リオン | 待っていたぞ、イクス。 |
クレス | フィリップ・レストンのことで情報が手に入ったんだ。 |
イクス | フィルの居場所がわかったのか ! ? |
リオン | いや、各地に調査に出た連中もフィリップの居場所に関する情報は得られなかったようだ。 |
リオン | これ以上救世軍の拠点を洗っても手がかりは得られないだろう。 |
カノンノ・E | マークの言ってた通りなのかも。 |
カノンノ・E | フィルは簡単には見つからないような場所に閉じ込められてるんだって言ってたから。フィルは重要な存在だからって。 |
クレス | 確かに、重要な存在なんだと思う。僕たちが聞いてきた話が事実なら。 |
ミリーナ | フィルの情報っていうのは―― |
リオン | フィリップ・レストンは、第103代――当代ビクエの真名だ。 |
リオン | つまり、僕たちのあずかり知らないところで大地を具現化していた犯人がフィリップということだな。 |
イクス | フィルが当代ビクエ ! ? 鏡士の中の鏡士 ! ?そんな馬鹿な ! あいつはまだ15歳ですよ !鏡士としては半人前だって言ってたのに ! |
リオン | それを僕に言うな。僕は救世軍から聞き出した情報を伝えただけだ。 |
リオン | フィリップのことを聞きたいならそこの女に聞けばいいんじゃないか ? |
カノンノ・E | …………。 |
イクス | カノンノ。教えてくれ、フィルは……俺たちの幼なじみのフィリップ・レストンはビクエの鏡士なのか ? |
カノンノ・E | そう、だと思う。このティル・ナ・ノーグで最高の鏡士だって言ってたから。 |
イクス | だとしたら、どうしてフィルはゲフィオン様の意向を無視して勝手に大地の具現化をしたんだ。 |
リオン | それよりも、フィリップは何故病気だなどと偽っていたんだ。 |
リオン | 奴がいれば、イクスやミリーナが具現化をおこなう必要などなかったんじゃないか ? |
リオン | 城の連中も、救世軍も、フィリップも何をしようとしていたんだ ? |
リオン | 大地の具現化の目的は、本当にこの世界を救うためだったのか ?この状態では何も信じることはできないぞ。 |
ミリーナ | …………。 |
クレス | 勝手な具現化の犯人がフィリップという人だと決めつけるのは早計かも知れない。 |
クレス | でも、僕たちは少し慎重に動いた方がいいのかも知れないね。 |
イクス | ……フィルを見つけよう。マークを助けるためにも、こんがらがった状況をはっきりさせるためにも。 |
ミリーナ | …………。 |
イクス | ミリーナ ? 顔色が真っ青だぞ。大丈夫か ? |
ミリーナ | ……え ? ああ、ええ、そうね。 |
ミリーナ | それよりイクス、私アイデアがあるの。フィルの魔鏡の軌跡をたどればフィルの居場所がわかるんじゃないかしら。 |
ミリーナ | 鏡士は死ぬまで魔鏡を手放さない。魔鏡の場所がわかればフィルの居場所もきっとわかるわ。 |
イクス | 本当にそんなことができるなら……。でもミリーナ少し休んだ方がいいんじゃないか ? |
ミリーナ | ううん。急ぎましょう。今の状況でのんびりする訳にはいかないわ。 |
リオン | ミリーナの言う通りだ。多少体に負担がかかろうが、フィリップを見つけられるなら無理をしてもらう。 |
クレス | ……ミリーナ、本当にいいのかい ?休んでもいいんだよ。ここで倒れる方が大変なんだから。 |
ミリーナ | いえ、私もリオンさんの意見に賛成です。今無理をしてでもフィルを見つけるのは重要なことだと思うから。 |
クレス | ……わかったよ。イクス、ミリーナを見ていてあげてくれよ。 |
イクス | もちろんです。 |
ミリーナ | 魔鏡の軌跡をたどるには集中しなくちゃいけないの。 |
ミリーナ | 以前ゲフィオン様がいた鏡士の神殿に向かいましょう。 |
キャラクター | 11話【12-11 鏡士の神殿 最深部】 |
カーリャ | あの時の鏡震の影響はなかったみたいですね。 |
カノンノ・E | ここに来たってことはこの場所に何か意味があるんだよね ? |
ミリーナ | 鏡士の魔鏡はこの神殿で作られることが多いの。フィルの魔鏡もきっとここで作られたものの筈よ。 |
ミリーナ | だからここでフィルの魔鏡の痕跡を見つけてそれをたどるのよ。 |
カノンノ・E | 魔鏡の痕跡……。どんなものなのかな。 |
ミリーナ | 人間には見えないわ。鏡精だけが見える虹色の光なのよ。 |
イクス | 鏡精しか見えないのか ! じゃあ、俺は……。 |
カノンノ・E | イクスも鏡精を呼べば ? |
イクス | え ! ? |
カノンノ・E | え ? なんで驚くの ?イクスにも鏡精がいるでしょ ? |
イクス | いや、俺……鏡士としての正式な訓練は受けてないから……。 |
カノンノ・E | でもイクス、鍵を具現化したよね。あれだけのことができるなら鏡精も呼べるんじゃないかな。 |
イクス | 俺なんか―― |
イクス | …………。 |
ミリーナ | イクス。もしイクスが鏡精を呼びたいなら私手伝うわ。 |
カノンノ・E | イクスの力、凄く強いよ。フィルだってイクスは凄い才能の持ち主だって褒めてたもの。できるよ、絶対 ! |
イクス | ……逃げてばかりはいられないよな。俺、やってみる。ミリーナ、教えてくれ。 |
イクス | アニマを感じろ。俺の中にいるもう一人の自分を。俺の心の現し身―― |
イクス | 現世に姿を見せろ ! 鏡精コーキス ! |
コーキス | いやっほーぅっ !ようやく俺の出番って訳か !マスター、ありがとな ! |
カノンノ・E | す、すごい ! すごいよ、イクス ! 鏡精だよ ! |
イクス | 俺の鏡精……。コーキス…… ? |
コーキス | おう、マスター ! |
イクス | ま、マスター…… ? |
ミリーナ | ふふ。鏡精の性格は人それぞれだから。 |
ミリーナ | 心の中の理想とか、抑圧している感情とか色々な物が干渉して鏡精の性格が作られるの。心の半身よ。 |
イクス | 俺の心の半身……。 |
カーリャ | むむ、カーリャの後輩爆誕ですね ! |
コーキス | ちーっす ! カーリャパイセン、よろしく ! |
イクス | 俺の心の半身と思うとちょっと複雑だな……。 |
ミリーナ | ふふふ、可愛いじゃない。それじゃあ二人とも、フィルの魔鏡の痕跡を捜してくれるかしら。 |
ミリーナ | 二人は私たちの心から生まれた鏡精だから私たちの記憶の中にある【フィルの魔鏡】を知っている筈よ。それを追いかけるの。 |
二人 | 了解 ! |
カノンノ・E | 待って ! 魔物の気配がする。 |
ミリーナ | そんな……。この最深部は神聖な場所の筈なのに。 |
イクス | 地震で環境が変わったのかも知れない。コーキス、カーリャ。二人はフィルの魔鏡の痕跡を捜してくれ。 |
イクス | 俺たちは魔物を迎え撃つ。 |
キャラクター | 12話【12-11 鏡士の神殿 最深部】 |
イクス | コーキス、カーリャ ! どうだ ? |
ミリーナ | 二人とも集中してるわ。きっともうすぐ―― |
カーリャ | 見えました ! |
コーキス | 俺にも見えたぜ ! |
二人 | こっちだ ! |
カノンノ・E | ……え、えっと。二人とも正反対の方を指さしてるけど。 |
カーリャ | こっちですよ。こっちからフィルさまの魔鏡の気配をギラギラ感じました ! |
コーキス | いや、マスター ! こっちだ。こっちにフィルの魔鏡がキラキラしてるのが見えたぜ。 |
カーリャ | ちょっと、コーキス。何先輩に逆らってくれちゃってるんですか ! |
コーキス | はぁ ? ちょっと先に生まれたからって先輩風ふかすなよ、ベイビー。 |
ミリーナ | 二人とも、喧嘩は駄目よ ! |
カーリャ | だけど、ミリーナさま。本当にこっちに魔鏡の軌跡が見えたんです。 |
コーキス | マスター。俺、嘘なんか言ってないぞ。 |
カノンノ・E | もしかしてフィルの魔鏡が二つあるとか割れて二箇所にあるとか ? |
イクス | うん。俺も同じことを考えてた。俺たちの鏡精が嘘をつく訳ない。二手に分かれて、両方とも確認してみよう。 |
ミリーナ | 私はカーリャの見つけた軌跡を追うわね。 |
イクス | 俺はコーキスの軌跡を追う。お互い魔鏡で連絡を取り合おう。 |
ミリーナ | カノンノはどうする ? ケリュケイオンに戻っていてもいいけれど、もしよかったらイクスと一緒に行ってくれると嬉しいな。 |
イクス | え ? どうして俺と ? |
ミリーナ | イクス一人じゃ心配だもの。カノンノは明るくて元気できっとイクスを励ましてくれると思うから。 |
イクス | ば、馬鹿にするな。俺は一人だって大丈夫だよ。 |
イクス | それよりミリーナは最近無理してるからカノンノについていってもらって―― |
カノンノ・E | ふふふ ! 二人とも本当にお互いのことを思い合ってて優しいね。 |
カノンノ・E | でも今回はミリーナの提案が早かったから私はイクスについていく。それでいいかな ? |
ミリーナ | んー、もう ! カノンノったらなんて素直で可愛いのかしら。イクスのことお願いね。 |
イクス | ちぇっ。じゃあカノンノ、よろしく頼むな。 |
カノンノ・E | ううん。フィルを見つけるためなんだし私、もっともっと頑張るね ! |
イクス | それじゃあ、行こう |
キャラクター | 13話【12-12 ビクエの陵】 |
カノンノ・E | この遺跡、何だか不思議な場所だね。凄く静かで、空気が凛としてる。 |
イクス | ここは……ビクエの陵、だと思う。本でしか見たことがないけど。 |
カノンノ・E | ビクエの陵…… ? お墓ってこと ? |
イクス | うん。歴代のビクエが眠っている場所だって聞いてるけど、こんなところにフィルの魔鏡があるなんて、何だか嫌な予感がするな……。 |
カノンノ・E | お墓だからって怖いこと考えなくてもいいと思うな。 |
カノンノ・E | お墓って、亡くしてしまった大切な人に語りかけたりする場所でもあるでしょ ? |
コーキス | そうそう。マスターは悪い方向に考え過ぎなんだよ。 |
コーキス | ミリーナさまの心配した通りだったな。カノンノさまに感謝しろよー。 |
イクス | 本当だな。うん、きっと大丈夫だ。コーキス。フィルの魔鏡はどこだ ? |
コーキス | こっちだ。この奥だよ。 |
コーキス | これだ ! マスター、これがフィルさまの魔鏡だ。 |
イクス | うん、間違いない。フィルが使ってた魔鏡だ。でも……もう一つある魔鏡はなんだろう。 |
カノンノ・E | そっちはフィルが最近使ってた魔鏡じゃないかな。歴代ビクエが代々受け継いできた古い魔鏡だって教えてくれたことがあるの。 |
イクス | じゃあどっちもフィルの物で間違いないな。でも肝心のフィルはどこに……。 |
コーキス | もしかして、ここに鏡をおいてどこかに行ったんじゃないか ? |
イクス | 鏡士が魔鏡を手放すなんて……。 |
コーキス | あ、でもマスター。その鏡があればマークって奴も助けられるかも。 |
イクス | え ? そんなことできるのか ? |
コーキス | 魔鏡は鏡士のもう一つの心だからな。 |
コーキス | もしマークって奴がこの魔鏡のどっちかを使って呼び出された鏡精なら、鏡を持っている限り存在が消えちまうことはなくなるよ。 |
コーキス | もっとも鏡士からのアニマの供給がないから存在を保つのがやっとだと思うけど。 |
イクス | でもマークをケリュケイオンに連れ帰ることはできるな。 |
カノンノ・E | うん。すぐにマークのところに行こう。 |
イクス | よし、ミリーナに連絡しておくよ。 |
キャラクター | 14話【12-13 王宮への道】 |
ミリーナ | ……ねぇ、カーリャ。ここ、お城よ ?本当にここにフィルの魔鏡があるの ? |
カーリャ | ありますよ ! 多分……。 |
ミリーナ | フィルがここに来てるってことなのかしら……。 |
カーリャ | ミリーナさま。何だかあんまりフィルさまに会いたくなさそうですね ? |
チェスター | ん ? 幼なじみなんだろ ? |
ミリーナ | ええ。イクスとは違って、手の掛からない真面目ないい子よ。凄く可愛い子なの。 |
チェスター | ……かわ……いい ? そうなのか ?マークから聞いてる話と随分違うな。 |
カーリャ | ほえ ? どう違うんですか ? |
チェスター | ええっと……なんて言ってたかな。確か、研究大好きな偏執狂で友達も作らないで研究室に籠ってるって。 |
チェスター | オレも直接会ったことがある訳じゃないから本当のところはわからないけどな。 |
ミリーナ | ……そう。 |
? ? ? | それは誰の話ですか ? |
チェスター | ファントム ! ? |
ミリーナ | ! ? |
カーリャ | はわわわわ ! ?ミ、ミリーナさま、大変です !あ、あいつの魔鏡がフィルさまの魔鏡で―― |
ゲフィオン | ビクエ ! ? そこで何をしている ! ? |
チェスター | な……なんだと ? |
ファントム? | これはこれはゲフィオン様。ご無沙汰しております。 |
ファントム? | 国王陛下がこの第103代ビクエをお呼びだと伺いましたので病を押して登城いたしました。 |
ゲフィオン | ――では、早く陛下の元へ向かうがいい。 |
ファントム? | それでは失礼致します。 |
ファントム? | チェスター、ミリーナ。それに小さな鏡精。お話はまたの機会と致しましょう。失礼しますよ。 |
ミリーナ | …………。 |
チェスター | おい、ゲフィオンだったな。あんた、あいつの正体を知ってるのか ! ? |
ゲフィオン | 正体 ? あれは我が国の鏡士の最高位であるビクエ。……フィリップ・ビクエ・レストンだ。 |
チェスター | あいつは救世軍の幹部のファントムなんだよ ! |
ゲフィオン | 救世軍だと ! ? |
ゲフィオン | ――そうか、あのフィルが救世軍なのか……。 |
ミリーナ | ――ゲフィオン様。あの【夢】は真実なのですか ? |
チェスター | ミリーナ ? 一体何の話だ ? |
ゲフィオン | ……夢の記憶はそこまで進んだのか。ならば今更尋ねるまでもなかろう。全て真実だ。 |
カーリャ | ミリーナさま…… ? |
ミリーナ | ――わかりました。もう、迷いません。悩みません。苦しみません。私は――今度こそイクスを守ります。 |
ゲフィオン | ……それでいい。 |
イクス | ミリーナ。マークを助けられそうな方法がわかったんだ。カノンノともう一度例の拠点に向かってみる。 |
ミリーナ | こちらも報告したいことがあるの。拠点で合流しましょう。 |
ミリーナ | ゲフィオン様。私たちもこれで失礼します。 |
ゲフィオン | ――待て。戻るのならイクスに伝えてくれ。私も陛下も全てを話す準備ができた、と。 |
ミリーナ | ! |
ミリーナ | ――わかりました。 |
キャラクター | 15話【12-14 A地点のアジト 中核】 |
マーク | ……おい。性懲りもなくまた来たのか。お前らは。 |
イクス | お前だって、また捕まってるじゃないか。 |
マーク | あのなぁ。よく考えてみな。ここに来るまで救世軍の連中には襲われなかっただろう ? |
マーク | この牢にも鍵は掛かってねぇよ。この拠点は俺が制圧した。まぁ、そのうち救世軍の援軍が来るだろうけどな。 |
カノンノ・E | じゃあ、どうして牢屋にいたの ? |
マーク | 暗くて静かなんでな。寝るのにはちょうどいい。どうせこの拠点からは出られないんだしな。 |
カノンノ・E | ねぇ、マーク。私たち、フィルの魔鏡を見つけたの。 |
カノンノ・E | これがあればマークもフィルの傍を離れて動けるんでしょう ? |
マーク | こいつは……確かにフィルが俺を呼び出したときの魔鏡だ。でも何でこれがあって、フィルがいないんだ ? |
イクス | わからない。ビクエの陵に置いてあったんだ。 |
マーク | 何…… ! ? この魔鏡、二つともビクエの陵にあったのか ! ? |
イクス | え ? あ、ああ……。 |
マーク | ……そんな……馬鹿な……。 |
カノンノ・E | 何 ? 何か意味があることなの ?マーク、フィルに何か起きたって事 ? |
マーク | ……いや、それは―― |
ミリーナ | イクス ! みんな、大変よ !救世軍らしき兵士たちがこの拠点に向かってるの。 |
チェスター | ちらっと見えた限りじゃ奴らを率いてるのは、ミトス・ユグドラシルだった。 |
マーク | あの坊やか、こんな時に……。 |
イクス | ミトス ? ロイドから聞いたことがある。確か、ロイドたちの世界の人で凄く強いって……。 |
チェスター | ああ。あいつはやばい。大体ハーフエルフってのは色んな意味で規格外の奴が多くてな。 |
チェスター | ミトスも相当なやり手だ。急いで逃げるぞ。 |
イクス | よし、マーク。しっかり魔鏡を持ってろよ。 |
マーク | ああ。わかった。 |
キャラクター | 16話【12-15 A地点のアジト 出口】 |
ミトス | お疲れ様。チェスター、カノンノ、マーク。 |
ミトス | あ、マークはもう返事するどころじゃないみたいだね。鏡精って案外不便なんだ。 |
マーク | …………っ。 |
ミトス | こっちに来るとは運がいいね。正面なら100人規模の救世軍兵士が相手だったんだよ ? |
イクス | ……え ?お前……きみが、ミトス ? |
ミトス | うん。初めましてだね、イクス。それにミリーナも。噂は色々聞いてるよ。ファントムから。 |
ミリーナ | ! |
ミトス | 本音を言うとね僕はマークの方に付きたいんだよ。 |
ミトス | でも……現時点で僕の願いを叶えてくれるのはファントムの方だから。 |
カーリャ | ぶるぶるぶる……光魔ですぅ ! |
コーキス | うわっ、チキン肌になった !これが光魔の感触かよ。気持ち悪い……。 |
カノンノ・E | 待って ! ミトス。私は――私のことは助けてくれるよね。 |
コーキス | えぇ ! ? まさかの裏切りフラグ ! ? |
カノンノ・E | 鏡精さんは黙ってて。 |
マーク | カノンノ……。お前、まさか……。 |
カノンノ・E | 私、もっと色んな世界を見てみたい。こんなところで終わりたくないから。 |
ミトス | カノンノ、本当にいいの ? |
カノンノ・E | ……ごめんね ! |
カーリャ | はわわ、カノンノさまのポーチから剣が ! ? |
コーキス | 仕込み杖ならぬ仕込みポーチかよ ! ? |
カノンノ・E | 今のうちに逃げよう ! |
ミトス | ――光魔。こっちの用件は終わった。あとは任せるよ ! |
イクス | くそっ、光魔たちに追いつかれる。 |
マーク | 俺を棄てていけ。俺を抱えてなけりゃもっと速く走れるだろう。 |
ミリーナ | 立っているのもやっとのくせに何言ってるの。そんなことできる訳ないでしょう。 |
チェスター | ミトスの奴、追ってこないぞ。ここで光魔を片付けちまおう。 |
イクス | 了解だ ! |
キャラクター | 17話【12-15 A地点のアジト 出口】 |
イクス | 何とか帰ってこれたな。 |
マーク | ……ここがお前たちの船か。 |
スタン | ……マーク ! |
リオン | スタン、よせ。イクスがカノンノの頼みを聞き入れて助けると決めたんだ。お前も納得しただろう。 |
スタン | 納得した訳じゃない。ただ、イクスがそう決めたのならその判断を尊重してやりたかっただけだ。 |
リオン | だったら我慢しろ。恐らくあいつは黒幕であるファントムに繋がっている。 |
カノンノ・E | ごめんなさい。みんながマークによくない感情を持っていることはわかっています。 |
カノンノ・E | いずれ必ずお詫びをしてマークと一緒に出て行きますから。 |
スタン | いや……。俺の方こそ、かっとなってすまなかった。それに、出て行くなんていうなよ。 |
リオン | そうだ。お前たちは救世軍とファントムの情報を持っている。だから――目の届く場所にいてもらうぞ。 |
カノンノ・E | ……ありがとう。リオンさん、スタンさん。これで後はフィルの行方さえわかれば……。 |
チェスター | そのことなんだが報告しなけりゃならないことが色々あってな。 |
チェスター | ただ長い話になりそうなんだ。とりあえずマークを休ませてからにしないか。 |
イクス | ああ、わかった。 |
ミリーナ | それにしても、カノンノナイス不意打ちだったわよ ! |
ミリーナ | おかげで本当に助かったわ。ありがとう。いいこいいこ♪ |
カノンノ・E | ミリーナに頭をなでてもらうとほっとする。 |
マーク | お前、頭をなでられるの好きだからな。 |
ミリーナ | もう、それならそうと言ってくれれば !私、いくらでもなでてあげるのに。可愛いなぁ ! |
カノンノ・E | でも私、謝らないといけないことがあるの。ミトスに不意打ちしたときにビクエの魔鏡を落としたみたい……。 |
マーク | いや、あれは落としたんじゃない。ミトスはカノンノの不意打ちを見抜いていた。 |
マーク | カノンノの剣が飛び出してくるのをわかっていて、ぎりぎりまでカノンノを引き寄せて、ビクエの魔鏡を奪ったんだ。 |
チェスター | じゃああいつの目的はオレたちをどうこうすることじゃなくてビクエの魔鏡を奪うことだったのか。 |
チェスター | くそっ、してやられたって訳かよ。 |
ミリーナ | ビクエの魔鏡をどうするつもりなのかしら……。 |
イクス | 敵の動きが、わからないことばかりで混乱するな。 |
ミリーナ | そうだわ、イクス。ゲフィオン様が、全てを話すって。 |
イクス | ! |
マーク | 全てをねぇ。面白い。俺も同席させてもらいたいな。 |
ミリーナ | マークはそんな強がりを言っている場合じゃないでしょ。あなたは医務室へ行くの。 |
マーク | ……はぁ、ホント締まらねぇなぁ。ダサすぎるだろ、俺。 |
ミリーナ | あなたは病人みたいなものなんだからダサいも何もないでしょ。 |
マーク | はいはい。――ありがとな、ミリーナ。 |
イクス | じゃあ、今後のことを話す前にみんないったん休憩にしよう。リタたちの設計図解析がどうなったかも知りたいし。 |
チェスター | ああ、そいつはいいな。ひとっ風呂浴びて、さっぱりしてぇや。 |
クレス | チェスター、ちょっといいかな。 |
チェスター | ん ? どうした、クレス。 |
クレス | チェスター。僕に隠していることはないか ? |
チェスター | ……っ ! |
クレス | もし何かあるなら、話してくれ。 |
チェスター | はは、何もないって。何でもない。お前、この間から変に勘ぐりすぎだぞ。さーて、少し休ませてもらうぜ。 |
クレス | ……チェスター。 |
ガイ | ――やっぱり口を割りそうにないな。 |
クレス | もう少し時間を下さい。 |
クレス | チェスターが何をしようとしているのか何を悩んでいるのか、必ず聞き出してあいつを助けたいんです。 |
キャラクター | 2話【13-1 最北端の島へ続く道】 |
? ? ? | ミリーナ。お願いがあるんだけど、いい ? |
ミリーナ | もちろんいいわよ。何、フィルのお願いって。 |
フィリップ | えっと……。今から一緒に水鏡の森に行ってほしいんだ。 |
ミリーナ | 水鏡の森 ? 素敵ね。 だったらお弁当を持って行きましょうよ !簡単なもので良ければ、すぐに作るわ。 |
フィリップ | うん ! ありがとうミリーナ。 |
ミリーナ | そうだ !せっかくだからイクスも誘いましょう !三人でピクニックなんて、久々だもの ! |
フィリップ | え ! ? あ……う、うん。――そうだね。それがいいね。 |
フィリップ | イクス、きっと港だよね。後で誘いに行こうよ。 |
ミリーナ | ええ、それじゃあ急いでお弁当を作っちゃうわね。 |
イクス | ……ミリーナ ?ミリーナってば ! |
ミリーナ | え、あ、な、何 ? |
イクス | 大丈夫か、ミリーナ。やっぱり疲れてるんじゃないのか ? |
ミリーナ | う、ううん。違うの。フィルのこととか……色々思い出していただけ。大丈夫よ。 |
イクス | ……そうか ?うーん、じゃあその言葉を信じるけど。 |
ミリーナ | それより、どうかしたの ? |
イクス | リフィル先生が言ってた最北端の島に着いたんだ。 |
ミリーナ | あ、そうか、そこでリフィルさんと合流するのよね。急いで迎えに行きましょう。 |
コーキス | マスター、ミリーナさま。何とかしてくれよ。 |
カーリャ | マークが俺も連れて行けってうるさくて。 |
コーキス | カノンノさまが駄目だって止めてるんだけどもー大変だっつーの。 |
コーキス | どんだけ首突っ込みたがりなんだよ。動けないのに。マジヤバいぜあいつ。 |
カーリャ | うんうん、マジヤバです。 |
ミリーナ | もう、しょうがないわね。私、ちょっと叱ってくる。 |
ミリーナ | ついでにカノンノに、マークが勝手に出歩かないよう見張ってもらうわね。イクス、先に準備して待ってて。 |
イクス | はは……まるでだだっ子だな。わかった。頼むよミリーナ。 |
チェスター | ミリーナ。丁度いい。オレもマークに用があるんだ。一緒に行く。 |
ミリーナ | ええ、わかったわ。 |
キャラクター | 4話【13-2 最北端の島】 |
ミリーナ | リフィルさん、身体は大丈夫ですか ? |
リフィル | ええ。大丈夫よ。 |
リフィル | 特異鏡映点としての力は、キールたちが考案してくれた例のブレスレットである程度抑えられているの。 |
リフィル | 魔術を使った場合の暴走の可能性も考慮して何度か実験も済ませたから安心して。 |
ミリーナ | リフィルさん……。まさか……自分の身体で実験を…… ? |
リフィル | ええ。人を巻き込むよりその方が気が楽だわ。 |
ゼロス | 何々 ? リフィル様で実験 ?そのキーワード超そそる !魅惑の女教師、放課後の実験―― |
リフィル | だまりなさい ! |
イクス | あ、あの……。ありがとうございました。 |
ゼロス | いやいや、少年。もっと盛大に感謝してくれてもいいんだぜ。えっと、横にいる可愛いお嬢さんが…… ? |
ミリーナ | ミリーナです。あの、あなたは……。 |
ゼロス | ミリーナちゃんね !俺さまはゼロス・ワイルダー。気軽にゼロスくんって呼んでくれ。 |
ゼロス | いやぁ、ミリーナちゃんはこの世界の太陽だね。笑顔がまぶしいよ。 |
ミリーナ | ふふ、ありがとうございます。ゼロスくん。 |
ゼロス | ひゃー、素直素直 ! 俺さまのことくん付けで呼んでくれるの二人目よ ? |
ロイド | お前……相変わらずだな。 |
ゼロス | ハニー ! まさかこの訳のわからない世界でもハニーに会えるとは、やっぱ俺さまとハニーは運命の親友なのかなー ? |
リフィル | あら……ここが異世界だということは知っているのね。 |
ゼロス | だって、俺さま、ここに来てから結構時間経ってるし。 |
ゼロス | 最初は一人でシルヴァラントにでも飛ばされたのかと思ったけどレアバードもないしな。 |
ゼロス | なんか変だと思って色々調べてたのよ。そしたらリフィル様らしき人がいるって聞いてここまで追いかけてきたって訳。 |
ロイド | へー。 |
ゼロス | ――ってロイドくん ! ?その反応冷たすぎじゃない ! ? |
ゼロス | 何だかよくわからない世界で一人流浪して時には魔物に襲われ、時には飢えに苦しみながらやっとここに辿り着いたんだぜ ! ? |
ゼロス | もっとこうねぎらいってもんがあってもいいでしょーよ ! ? |
カーリャ | えっと……。怒濤の展開でわやくちゃですけどこの人鏡映点ですよ。カーリャぶるぶるしてます。 |
リフィル | そう……。私たちと同じタイミングで具現化されたはぐれ鏡映点なのね ? |
ゼロス | はぐれ鏡映点 ? 何だそりゃ ? |
イクス | それは、色々長い話があって―― |
ゼロス | あ、野郎はパス。ミリーナちゃんリフィル様、それにカーリャちゃん !俺さまにおせーて ? |
イクス | な、な、な……。 |
コーキス | うおおおおおい !マスターのこと馬鹿にすんなオラァァァ ! ? |
ロイド | イクス、コーキス。あきらめろ。あいつはこういう奴だから。説明はリフィル先生たちに任せておこうぜ。 |
リフィル | しょうがないわね。それじゃあ歩きながら説明しましょうか。目的地はこの先の森よ。 |
ゼロス | お~け~お~け~。盛り上がっていこうぜぇ ! |
キャラクター | 5話【13-5 静かな森 奥地】 |
リフィル | ――ついたわ。ここよ。 |
イクス | え ? ここに何があるんですか ? |
リフィル | 何もない空間が【ある】のよ。ほら、この先に手を伸ばしてみて。 |
イクス | ――え ! ? 何か……ある。何だ、これ ? |
コーキス | マジかよ、マスター ! ? |
コーキス | いたたた ! ? ホントだ ! ? やべぇ ! ?ここに何かある ! ? |
リフィル | そう。その見えない何かこそこの世界の【果て】。この世界を囲む見えない壁よ。 |
リフィル | この壁が虚無から世界を護っているの。つまりこの見えない壁こそ、アイギス計画の柱であるアイギスの盾なのよ。 |
イクス | 虚無……。あの光魔の鏡の向こうにあった何もない空間……。 |
ロイド | ……ん ?この壁、思ってたよりは柔らかいな。力一杯押したら、突き抜けそうだぞ。 |
リフィル | ええ。だから気をつけてね。簡単に虚無の方へ抜けてしまうわよ。 |
ゼロス | しかし、何だって世界を護る盾がそんなに柔らかいんだ ?衝撃を吸収するためか ? |
リフィル | そうね。それにこの壁は今も広がり続けているからよ。 |
カーリャ | 壁が広がってる ? どうしてですか ? |
リフィル | それはイクスとミリーナが、具現化で異世界からアニマを吸収しているから。具現化の度に世界は拡張し続けたの。 |
リフィル | そうしてここまでの広さになった。今は具現化を止めているからほとんど壁は動いていないけれどね。 |
イクス | ――待って下さい。つまり、俺たちが具現化を始める前までは、この壁はもっとずっと狭かったって事ですか ! ? |
リフィル | ええ、そういうことね。私とジェイドでかつてアイギスが存在していたと思われる痕跡を探っていったの。 |
リフィル | その結果、一番古いものはセールンド付近の小さな島に点在していたわ。 |
リフィル | つまりセールンド周辺以外の世界は既に消滅していた。 |
リフィル | それをイクスたちが具現化によってここまで造り直した、という事になるわね。 |
ロイド | すげー ! ? イクスたち頑張ったんだな ! ? |
ミリーナ | ………………。 |
イクス | ――あの、そのセールンド周辺っていうのはオーデンセまで含まれるんでしょうか ? |
リフィル | ……そうね。オーデンセはセールンドに近い島だったから、含まれていた……とも考えられるわね。 |
リフィル | 残念ながら深海にまで痕跡を探りに行くことはできないしオーデンセも消失しているから―― |
イクス | 確証は、ない。 |
ロイド | ん ? 何か引っかかってるのか ? |
イクス | 世界に滅びの危機――虚無が迫っていたからアイギスが造られた。だけどそのアイギスが壊れたからオーデンセ島を含めた世界中が消失した。 |
イクス | 俺とミリーナは奇跡的に消失に巻き込まれずにすんで助かった。――本当にそれならいいんだ。 |
ロイド | それ以外に何があるんだ ?イクスたちが生き残ったから、異世界からの具現化でこの世界がここまで広がったってことだろ ? |
ゼロス | ……ああ、そういうことか。 |
カーリャ | 何ですか、ゼロスさま ? |
ゼロス | ロイドくんの言った通り、そもそもミリーナちゃんたちが奇跡的に生き残ったから世界はここまで広がりを取り戻した訳だ。 |
ゼロス | でも、もしも、その奇跡が仕組まれた奇跡だったとしたら ? |
ゼロス | オーデンセの消滅の時に、ミリーナちゃんたちも亡くなっていたのだとしたら ? |
ロイド | ! ? |
ゼロス | もっと言えば、イクスはそれ以上のことを心配してるんじゃないのか ? |
ゼロス | そもそも消失したオーデンセは、本当にこの世界に存在していた島なのか。イクスたちがしてきたように誰かがオーデンセという島を具現化したんじゃないか。 |
ゼロス | リフィル様たちの調査によればこの世界に最初から存在する島――オリジナルの島はセールンド島とその周辺だけだ。 |
ゼロス | そこにオーデンセが入っていたのかいないのかで話は大きく変わってくる。 |
ゼロス | ま、つまり、イクスもミリーナちゃんも具現化された人間なんじゃないか……ってことだよな。 |
ロイド | だけど具現化はイクスたちにしか―― |
ロイド | ……あ。 |
リフィル | そうよ。イクスたちにしかできない【筈】だった。 |
リフィル | でも、ビクエ――あなたたちの報告によるところのファントムにもできる可能性がある。 |
イクス | ファントムだけじゃない。フィルがいる。カノンノはフィルがビクエだと言っていた。 |
イクス | もしフィルが本当にビクエならフィルにも具現化ができる。 |
イクス | まぁ……そうなるとなんでゲフィオン様がファントムのことをビクエって呼ぶのかはわからないけど……。 |
ミリーナ | ………………。 |
リフィル | そうね。ビクエが誰なのかという点は一旦置いておきましょう。 |
リフィル | ただ最初の大陸の具現化が、イクスたちではなくビクエによるオーデンセ具現化であった可能性を否定はできないわ。 |
イクス | ………………。 |
ゼロス | まぁまぁ、そんな深刻な顔するなって。 |
ゼロス | オーデンセは昔から残っていてミリーナちゃんたちが具現化を始めたんだって可能性も十分あるんだからさ。 |
ロイド | ああ、そうだよ。それに詳しい話はゲフィオンが教えてくれるんだろ。そういうのは『きゅう』っていうんだぜ ! |
リフィル | き・ゆ・う、です。まぁ、使い方は正しいわ。ロイドにしては珍しく。 |
ロイド | 珍しいって何だよ ! ? |
ミリーナ | ……ふふっ。そうですね。とりあえずこのことをみんなに報告しましょう。イクス、ケリュケイオンに戻ろう。ね ? |
イクス | あ、ああ……。うん、そうだな。 |
キャラクター | 6話【13-7 入り組んだ街道1】 |
ロイド | ……イクス。そんな顔するなよ。 |
イクス | あ……ごめん。つい、色々考えちゃって。 |
ロイド | イクスが具現化された存在かもって話か ? |
ロイド | 俺、馬鹿だからよくわかんねぇけど仮にもしイクスが誰かに造られた存在だとしてそれが何か問題なのか ? |
イクス | え…… ? |
ロイド | 俺たちと同じだろ。俺たちもこの世界に具現化された。でも俺は俺だし、先生は先生だしゼロスはゼロスだぜ。 |
ロイド | イクスはイクス、ミリーナはミリーナ。そうだろ ? |
イクス | ……そうだけど、でも、元の俺は――俺たちはもう死んでるってことなんじゃないか ? |
ロイド | それは……そうだな。その場合は多分そうなんだと思う。 |
ロイド | でも元のイクスって何だ ?どんな奴で、何をしていたんだ ? |
イクス | え ? ええっと、どうなんだろう。具現化は本人をそのままコピーするから多分、俺と同じで漁師をしてて心配性で……。 |
ロイド | でも、そのイクスは俺たちのことを知らないんだろ ? |
イクス | そりゃそうだよ。元の俺は具現化してた訳じゃないから。 |
ロイド | じゃあ、別人みたいなもんじゃん。 |
ミリーナ | ………… ! |
イクス | 別人じゃないよ、俺の元だから……うーん、昔の俺、かな ? |
ロイド | 昔のイクスか。うん、ならそれでいいよ。昔のイクスは死んだのかもしれない。もしそうなら、そのことはつらいし残念だよ。 |
ロイド | でも俺は今ここにお前が――イクスがいて嬉しいぜ。イクスと友達になれてよかったって思う。 |
ロイド | もし昔の自分が死んで自分が具現化されたことが後ろめたいなら俺のせいにしていいぜ。 |
ロイド | 俺のために具現化されたんだってさ。 |
イクス | ロイド……。 |
ミリーナ | あら、イクスは私のために具現化されたのかも知れないわよ。私と再会するために。 |
イクス | ミリーナまで……。ミリーナだって俺と同じ立場なのに……。何か気を遣わせちゃってごめん。 |
イクス | そうだよな。ロイドの言う通り俺、後ろめたかったのかも知れない。元の俺は死んでるのに、具現化されて……。 |
ゼロス | おいおいおい、それが杞憂って奴だろ ?俺さまたちだって、元の俺さまがどうなってるかなんてわからねぇんだ。 |
ゼロス | 具現化された直後に死んでるかも知れない。自分の手の届かないところまで気にしてもしゃーないだろ。 |
イクス | ――はい。くそっ、しっかりしないとな。俺……腹をくくるって決めたのに。 |
イクス | (そうだ……。馬鹿か俺は。俺なんかより、みんなの方に酷い運命を強いてしまっているのに……) |
イクス | (早くはっきりさせないと。異世界からの具現化の真実を……) |
リフィル | それにしても、ゼロス。あなた、さっきこの世界のことを聞いたのに随分と理解が早いのね ? |
ゼロス | 俺さま、王立学問所の主席よ~ ?地頭がいいんだなぁ、俺さまってば。 |
ゼロス | 頭も良くて顔も良くて性格も良くて非の打ち所がなさ過ぎるぜ~ ! |
ミリーナ | ふふ♪ ゼロスくんって本当に頭がいいんですね。 |
ゼロス | いや~照れるな~ ! でひゃひゃひゃ ! |
リフィル | ……まぁいいわ。先を急ぎましょうか。 |
キャラクター | 7話【13-9 入り組んだ街道3】 |
キール | リフィル先生 !……無事でよかった。 |
キール | 計算は間違っていなかったしカイルから得られたデータでも、暴走を引き起こす可能性は限りなく低かったが……。 |
リフィル | ええ。あなたとガロウズが検証してくれたブレスレットですもの。安心して使えたわ。 |
リフィル | これで今後特異鏡映点が現れてもこのペンダントでこの世界への悪い影響をほぼ打ち消せるわね。 |
キール | 完璧に、といかないのが悔しいな。でもアニマが逃げる隙は用意しておかないと特異鏡映点に負荷が掛かりすぎる……。 |
リオン | だが、特異鏡映点とは何なんだ ? |
リオン | ファントムが人為的に作り上げたなら目的がある筈だ。いっそマークかチェスターに吐かせるか。 |
チェスター | オレがそんな複雑なこと知ってるわけないだろう ? |
アーチェ | ちょっと !それ自分で言ってて恥ずかしくない訳 ? |
リフィル | あら、新顔ね。 |
イクス | リフィル先生が調査に出ている間に合流したはぐれ鏡映点のアーチェです。クレスやチェスターの仲間だそうですよ。 |
リフィル | ……あら、あなた、ハーフエルフ、なの ? |
アーチェ | そうだけど、その言い方だとそっちもハーフエルフってこと ? |
リフィル | おかしなものね。異世界にもハーフエルフがいてしかもそれに気づくなんて。もしかしたら私たちの世界は―― |
リフィル | いえ、検証は後にしましょう。 |
リフィル | それよりこの調子だと、具現化でこちらに現れたはぐれ鏡映点はかなりの数いるのかも知れないわね。 |
ジェイド | 世界もすっかり広くなりましたからね。意識して捜していかないと出会うのは難しいかも知れません。 |
アーチェ | あ、眼鏡大佐 ! |
ジェイド | はい、眼鏡です♪お帰りなさい、リフィル先生。 |
ジェイド | それから、リオン。特異鏡映点に関しては考察がすんでいます。 |
ジェイド | おそらく特異鏡映点は、アニマを自在に操り一箇所に集中させるためのゲートとして造り出されたのでしょう。 |
リオン | アニマを集める、だと ? こんな回りくどいことをしなくても、この世界にはアニマを集約する装置があるんじゃないか ? |
ジェイド | いえ、鏡映点であることが重要なのです。特異鏡映点の共通点は、何らかの原因で時の因果律が歪められる要素があるということ。 |
ジェイド | おそらく特異鏡映点の放出するアニマは時間の壁を破ることができる筈です。 |
リオン | 時間の壁を破るアニマ……。そうか、この世界は過去の具現化を試みて失敗したとゲフィオンが言ったらしいな。 |
リオン | この世界の過去、ないしは未来を具現化する為に、特異鏡映点を造り出したのか。 |
リフィル | おそらくね。さぁ、リオン。このブレスレットをマリアンさんに渡してあげて。 |
リフィル | これで彼女はこの世界に害を与えることもないしおそらく今後ファントムにアニマの反転の力を使われることもないわ。 |
リフィル | 人体に悪影響がないことは確認済みよ。 |
リオン | ――わかった。 |
イクス | 今の話を総合すると、ファントムの目的は特異鏡映点を利用して世界を消滅させる……みたいなことじゃないのか ? |
ジェイド | ええ。おそらく全く別のものでしょう。 |
ジェイド | そして――歪んでいると言っても差し支えありませんが、その目的のためなら世界が滅んでもいいとさえ思っている。 |
ミリーナ | そんな……。自分の目的を叶えても世界が滅んだら意味がないじゃないですか ! |
ジェイド | ええ。だから歪んでいるんですよ。 |
カーリャ | じゃあファントムの目的って何なんでしょう。それにマークがミリーナさまたちを狙っていたこともうやむやのままですし……。 |
ジェイド | 救世軍とマークとファントム。全ては切り離して考えた方がいい。同じ考えで動いていると思うから混乱するんです。 |
ジェイド | ――さて、そろそろセールンドに着く頃ではありませんか ? |
アーチェ | んーと、そうみたい。 |
ジェイド | 皆さん詳しい話を聞きたいだろうとは思いますが、色々と心配なこともあるのでケリュケイオンに人員を残して下さい。 |
イクス | 心配なこと ? |
ジェイド | まぁ、色々とよからぬ輩が乗り込んできていますからね。 |
イクス | マークならカノンノが見ていてくれますよ。それにマークがあの状態で動けるとは思えないですし。 |
ジェイド | カノンノが信用できるとも限りません。それに……あのゼロスという男もかなり疑わしい。 |
ジェイド | そう思いませんか、チェスター。 |
チェスター | し、知るかよ。元の世界の知り合いだっていうリフィルとロイドに聞けばいいだろ。 |
リフィル | ――ジェイド。やめなさい。 |
ジェイド | 怒られてしまいました♪とにかくイクス、半数は船に残して下さい。私が残っても構いません。頼みます。 |
イクス | わ、わかりました……。 |
キャラクター | 8話【13-10 セールンドの街1】 |
リフィル | ……いよいよ、ゲフィオン様との面会ね。イクス、心の準備はいい ? |
イクス | は、はい ! |
リフィル | ミリーナも……大丈夫ね ? |
ミリーナ | ……はい。 |
リフィル | ……ミリーナ。最後に忠告させてちょうだい。全て自分で抱え込む必要はないのよ。もし助けが必要なら、遠慮せずに手を伸ばして。 |
ミリーナ | ――大丈夫です。 |
リフィル | ……そう。そうね。あなたはそういう子だものね。 |
イクス | ……え ? リフィル先生もミリーナもどういうことですか ? |
イクス | まさか二人とも、これからゲフィオン様が何を話そうとしているのかわかってるんですか ! ? |
リフィル | ……少なくとも私とジェイドはある程度の事実をわかっているつもりよ。それにキールとリタにも情報を共有してあるわ。 |
イクス | え ! ? |
リタ | そ、そんな顔しないでよ。一緒にこの世界の仕組みなんかを調べてたんだから当たり前でしょ ! |
キール | ぼくは……正直、まだ整理がついていない。知っていることと理解していることは違うからな。 |
ゼロス | うーわー。知らぬはイクスくんばかりってか ? |
リフィル | そうね。その点は申し訳ないと思っています。私がキール研究室のみんなにお願いしたの。 |
リフィル | ゲフィオン様から……或いはミリーナから語られるまでは、イクスを含めた他のみんなには秘密にして欲しいって。 |
ミリーナ | リフィルさん…… ! |
イクス | じゃあ、今俺がここで説明を求めても―― |
リフィル | 今は、語るつもりはないわ。まずはゲフィオン様に会いましょう。 |
救世軍兵士 | おっと。ここから先には行かせないぜ。 |
イクス | 救世軍か ! ? |
ディスト | ジェイドがきていないではありませんか ! ?こんな肝心なときにジェイドは何をしているんです ! ? |
ゼロス | 何だぁ ? あのぶっさいくなロボットは ? |
ディスト | ムキー ! ! 芸術の分からない奴ですね !この四幻将、薔薇のディスト様がこてんぱんにしてやりますよ ! |
キャラクター | 9話【13-11 セールンドの街2】 |
ディスト | ええいっ ! お前たち ! そのアホどもを逃がすんじゃありませんよ ! |
イクス | くそ ! ディストさんを倒してもこれじゃあ―― |
救世軍兵士 | あがいても無駄だ。伏せてある兵はまだまだいるんだからな ! |
リフィル | 待ち伏せしていたという訳ね。 |
救世軍兵士 | イクス・ネーヴェの魔鏡を出せば命だけは助けてやる。 |
リタ | 冗談じゃないわよ ! イクス、あんたの魔鏡は絶対渡しちゃ駄目だからね ! |
イクス | だけど……。 |
キール | だけどじゃない !今ケリュケイオンを呼び出してる !味方が来るまでもたせるんだ ! |
救世軍兵士 | 味方……ねぇ。ケリュケイオンに連絡がつけばいいがな ! |
ミリーナ | みんなに何かしたの ! ?――まさか、本当にケリュケイオンの中にスパイが ? |
イクス | だから……待ち伏せされたってことか ? |
ジェイド | まぁ、色々とよからぬ輩が乗り込んできていますからね。 |
イクス | マークならカノンノが見ていてくれますよ。 |
ジェイド | カノンノが信用できるとも限りません。それに……あのゼロスという男もかなり疑わしい。 |
ジェイド | そう思いませんか、チェスター。 |
イクス | (まさか……本当に…… ? だけど……) |
救世軍兵士 | さぁ、どうする ? 魔鏡一つでこの場が切り抜けられるなら安いもんだろう ? |
イクス | 魔鏡を……―― |
ゼロス | あーあ。がっかりだぜ。ロイドくんも見る目がないねぇ。 |
イクス | ゼロスさん…… ? |
ゼロス | 何なのよ、お前ら。ただでっかい船に乗り合わせてるお客様同士って訳か ? |
ゼロス | それでよくもまぁ、友達だの仲間だの言ってられるぜ。 |
ゼロス | ホント、お前らの旅は随分適当なもんだったんだな。薄っぺらいお仲間だことで。 |
リタ | はぁ ?新入りが勝手なこと言わないでくれる ?あんたに何が分かるのよ ! |
キール | 確かに気に入らない奴だっている。それでも、ぼくたちはお互いの力を――仲間を信じている。そうだろ、イクス ! |
イクス | ……そうだ。確かにみんながみんな全てを話してはいないかも知れない。でもここまでの旅は嘘じゃない。 |
イクス | 嘘が混ざっていたとしてもそれでも俺はみんなに助けられた。だから……魔鏡は渡さない ! |
救世軍兵士 | 何だと ? |
イクス | ジェイドさんたちがこの状況に気づかない筈はない。 |
イクス | たとえ情報が漏れていてもそんなの関係ない ! |
イクス | 俺はケリュケイオンのみんなを信じる !今はこの場をもたせよう ! |
ゼロス | よく言った ! そういう気持ちがいい台詞を聞きたかったのよね。よっしゃ、もう一働きするぜぇっ ! |
キャラクター | 11話【13-12 セールンドの街3】 |
キール | はぁ……っはぁ……っ。ここまで来れば大丈夫か ? |
リタ | ねぇ、ゲフィオンが狙われてるってどういうこと ? |
リフィル | イクス。さっきマークから受け取ったのは手紙ではなくて ? |
イクス | あ、はい。そうみたいです。――ミリーナ。手紙を読む間追っ手をごまかしてくれないか ? |
ミリーナ | わかったわ。最近覚えた幻の霧が使えると思う。これからみんなの姿を隠すわね。 |
ミリーナ | 声は隠せないから人が近づいてきたら知らせるわ。 |
キール | ……この霧も魔鏡の作りだした幻か。 |
リフィル | ただの霧ではないわね。光の屈折を利用して、私たちの姿を捕捉できないようにしている……。 |
リタ | これ、面白いわね。何かに転用できそう。 |
ゼロス | はいはいはーい ! 魔鏡術の考察は後回しにしてマークの手紙とやらをチェックしようぜ。イクスくん、頼むわ。 |
イクス | あ、はい。読みますね。……えっと―― |
マーク | イクス。ミリーナ。すまない。ケリュケイオンが襲われた。俺のせいだ。 |
マーク | 俺の部下に鏡映点のアルヴィンって奴がいるんだがそいつが俺が伝えたイクスたちの情報を流したらしい。 |
マーク | ファントムのスパイとして使っていたんだが奴に正体がばれそうになって俺やイクスの情報を流すしかなくなったと言っていた。 |
マーク | アルヴィンの話だと、ゲフィオンを捕らえて北の監獄に送る計画があるらしい。 |
マーク | ゲフィオンからお前たちに情報が伝わらないようにするためだろうって話だ。急いでゲフィオンを確保した方がいい。 |
マーク | それから、ケリュケイオンは無事だ。だが、こうなった以上、お前たちの世話になる訳にはいかない。今までありがとうな。 |
ゼロス | ……救世軍の仲間割れってことか。 |
イクス | ゲフィオン様が北の監獄に連れて行かれる前に助け出さないと……。 |
ミリーナ | ――待って。誰か来るわ。声を出さないで。 |
救世軍A | マークさんが戻ってきたって本当か ! ? |
救世軍B | 相変わらずめちゃくちゃ強くて手が付けられないらしいぜ。 |
救世軍A | ……俺、マークさんには世話になってるし戦いたくねぇな。死神ディストより断然マークさんだろ。 |
救世軍B | わかるわー。俺も。ゲフィオンは確保したんだし俺らがサボっても大丈夫だろ。 |
コーキス | ゲフィオンさま捕まっちゃったのかよ ! ? |
救世軍A | え ! ? どこから声が…… ! ? |
イクス | 馬鹿っ ! 気づかれたぞ ! ? |
リフィル | 丁度いいわ。あの二人を捕まえてゲフィオン様がどうなったのか聞きましょう。 |
ミリーナ | じゃあ、霧を払います ! |
救世軍AB | ! ? |
ゼロス | 美青年剣士ゼロス・ワイルダー参上ってな。さぁ、俺さま以上におしゃべり上手になってもらうぜ ! |
キャラクター | 12話【13-12 セールンドの街3】 |
リフィル | リオンとジェイドが、さっき捕まえた救世軍から情報を聞き出してくれたわ。 |
リフィル | やはりゲフィオン様は既に北の監獄へ連れて行かれたようね。 |
ロイド | ……そうか。じゃあ、急いで北の監獄に向かわなきゃな。 |
ロイド | ところでマークとカノンノは ?一緒じゃなかったのか ?イクスたちを助けに行ってくれたんだけど。 |
イクス | ああ、助けに来てくれたよ。でも……ケリュケイオンを降りるって……。 |
ロイド | 何だよ、それ ! |
ロイド | ――あ、そうか。ジェイドの奴それに気づいてて、わざとマークとカノンノだけをイクスたちの救援に向かわせたのか ! |
ロイド | ……くそ。話を聞きたいときに限ってブリッジにいないのかよ。後で見つけたらとっちめてやらないと。 |
イクス | そういえばケリュケイオンも襲われたんだろう ?みんな大丈夫だったか ? |
ロイド | ああ。こっちは大所帯だからな。みんなで戦ったんですぐに救世軍を追い払えたよ。 |
ロイド | ミリーナの方は大丈夫だったか ? |
ミリーナ | え ? 私 ? |
ロイド | 救世軍の奴ら、ミリーナを捜してたみたいだったぞ。ミリーナがいなかったのもあってすぐに追い払えたんだ。 |
ミリーナ | ………………。 |
イクス | ミリーナ、何か心当たりがあるのか ? |
ミリーナ | ……いえ、ただちょっと心配になって。 |
リタ | ねぇ、ミリーナ、何か隠してない ? |
ミリーナ | ………………。 |
キール | ミリーナ。みんな随分前から、お前のことを心配してるんだ。 |
キール | こういうのがお節介だってことはぼくにもわかるが、もしも話せることがあるなら話してみたらどうだ。 |
ミリーナ | ――そう、ね。黙っていることはあるわ。ごめんなさい。 |
リタ | 別に謝らなくてもいいけどそれってイクスにも言えないことなの ? |
ミリーナ | 今は……。でもゲフィオン様を助け出したら話せる……筈よ。 |
イクス | ミリーナ……。 |
ゼロス | ………………。 |
ロイド | イクス、ミリーナのことを信じて待っていようぜ。ゲフィオンを助け出したら話してくれるって言ってるんだからさ。 |
イクス | ……わかった。ミリーナ、後で必ず話してくれよな。 |
ロイド | なぁ、今度は俺も一緒に行くよ。今回はゲフィオンを助け出すだけなんだろ ? |
ゼロス | ハニーは現金だな~。難しい話がなさそうだとわかった途端にこれかよ。 |
ロイド | べ、別にそんなんじゃ……。まぁ、そうなんだけど……。 |
リフィル | まったく、しょうがない子ね。 |
ミリーナ | ………………。 |
キャラクター | 13話【13-14 北の監獄2】 |
デミトリアス | ……ケリュケイオンは北の監獄に向かったようだよ。アルヴィンが首尾よくやってくれたようだね。 |
ファントム | では、もうアルヴィンは用済みですね。 |
デミトリアス | リーパ、もうやめたらどうだい。ゲフィオンも悲しむ。 |
デミトリアス | それにアルヴィンだってメルクリアによくしてくれていたし。 |
ファントム | 黙っていて下さい。フィルのやり方は甘い。自分の本心を押し殺すからこんなことになるんです。 |
ファントム | 私はあの時のフィルの感情を鮮明に覚えています。 |
? ? ? | ミリーナ ! 無事で良かった ! |
ミリーナ | ………………。 |
? ? ? | ……あれ ? イクスは ? |
? ? ? | ――まさか……イクスは……。 |
ミリーナ | ビフレストの……軍人が……オーデンセを襲撃して……。 |
? ? ? | ! ? |
ミリーナ | みんな……みんな殺されたわ……。 |
? ? ? | ミリーナ……。ミリーナ、泣かないで。僕がいるよ。僕がイクスの代わりにミリーナを守るから。 |
ミリーナ | ……許せない……ビフレスト……。私……絶対にビフレストを滅ぼすわ。この魔鏡の力で。 |
? ? ? | ……だったら、僕も協力する。イクスは僕たちの……大事な仲間だったんだから。 |
ファントム | ……そうして【お前】は何を手に入れた ? |
ファントム | ――何も手に入れられなかった。お前は負け犬なのだよ、フィル。私は――そうはならない ! |
ファントム | まずはこの地にアニマを集中させる ! |
イクス | いたぞ ! あの牢屋だ ! |
ゲフィオン | ――イクス ! ? 何故ここに……。 |
イクス | ゲフィオン様が攫われたと聞いて助けに来たんです ! |
キール | この鉄格子、どうする ?何とかして壊さないと―― |
ロイド | いや、この程度の鍵なら多分開けられると思う。ちょっと待っててくれ。 |
リタ | へぇ、意外な才能。ロイドって盗賊になったらいいんじゃない ? |
ロイド | 嫌だよ、そんなみみっちいの ! |
ゼロス | スケールのでかい盗賊になればいいじゃないのよ。世界中の宝石を盗むジュエルハンターとか。 |
ロイド | ジュエルハンターって響きは何か格好いいな。 |
ゲフィオン | みんな……すまない。これはきっと罠だ。急いでカレイドスコープの元へ向かわねば世界を護るアイギスの盾が崩壊する。 |
ミリーナ | え ! ? |
リフィル | ――やっぱりね。 |
リタ | ホント。気にくわない奴らだけど、こういう推理させたら、あの眼鏡軍人とマントの坊ちゃんは役に立つわよね。 |
ロイド | な、何だよ ? どういうことだ ! ? |
リフィル | マークとカノンノを監視も付けずに放り出す訳ないでしょう ? |
カーリャ | ま、待って下さい。アニマが……ぐるぐるして…… ! ? |
コーキス | ……うぇ、吐きそう……。マスター……。苦しい…… ! |
ガロウズ | た、大変だ !大陸が――大陸が次々具現化されてるぞ ! ? |
キャラクター | 14話【13-15 北の監獄3】 |
ガロウズ | 何なんだこれは ! ? |
ジュード | 大陸がどんどん増えていく…… ! ? |
カイウス | うわっ ! ? な、何だ、地震か ! ? |
シング | ……揺れてる ! ?――というか、なんでオレこんなところに ! ? |
セネル | な、何だ ! ? ここは―― |
ルカ | え ! ? ここ、どこ ? みんなは―― |
ヴェイグ | ――っ ! ? |
コーキス | カーリャ ! ? |
ミリーナ | …………うぅ……。 |
イクス | ミリーナ ! ? ゲフィオン様 ! ? |
イクス | ミリーナ ! しっかりしろ ! |
リタ | 駄目だわ。気を失ってる。 |
ロイド | イクスは大丈夫なのか ? |
イクス | かなり気持ち悪いけどまだ気を失うほどじゃない。 |
リタ | とはいえ、本調子じゃないのね。だったらロイドあんたがミリーナを運ぶのよ。 |
リタ | いったんケリュケイオンに戻らないと。 |
イクス | ゲフィオン様は―― |
キール | ――え ! ? あ、いや……。 |
ゼロス | あー。そういうことか。そりゃ、わかってても動揺するわな。ゲフィオン様は俺さまが運ぶわ。 |
リフィル | ――ありがとう。助かるわ。キール、それでいいわね。 |
キール | あ、ああ……。そうだな。ゼロスに任せよう。 |
リオン | ――聞こえるか。思っていたとおりマークとチェスターが合流した。このままクレスと追跡する。 |
ジェイド | 私はカレイドスコープのところへ潜入して暴走が起きていないか確認してきます。 |
ジェイド | それとカノンノがそちらに向かった筈です。後は任せましたよ。 |
イクス | どういうことです ? |
リフィル | マークとカノンノにはジェイドとリオンがチェスターにはクレスが付いて動きを探っていたの。 |
イクス | チェスターが……。 |
ゼロス | まぁ、待てよ、イクス。二人が何かを隠していることは間違いない。 |
ゼロス | だが、それが裏切りだとは限らない。まだ何もわかっちゃいないんだ。 |
ゼロス | お前、ケリュケイオンのみんなを信じるって決めたんだろ ? だったら焦るなよ。ドシッと構えてな。 |
イクス | ……はい。俺、未熟者だからちょっと揺れかけましたけど、でも大丈夫です。 |
リタ | どうでもいいけど、いつまでもここにいるのはまずいんじゃない ?建物が崩れてきたらおしまいなんだけど。 |
リフィル | イクス。リタの言う通りまずはここを離れましょう。急ぐわよ。 |
イクス | はいっ ! |
キャラクター | 15話【13-15 北の監獄3】 |
イクス | 外に出る扉が閉まってるぞ ! ?くそっ ! 押しても――開かない ! ? |
コーキス | マスター。上の方に小さな明かり取りの窓がある。俺なら抜けられそうだから見てくるよ。 |
コーキス | 駄目だ、マスター !瓦礫が扉のとこに落ちててふさいじまってる ! |
キール | ケリュケイオンに助けを求めるか……。 |
? ? ? | そこをどけ。 |
コーキス | へ ? あんたたちは―― |
? ? ? | 聖なる鎖に抗ってみせろ !シャイニング・バインド ! |
ロイド | ――この声は ! ? |
イクス | コーキス ! 誰かいるのか ? |
? ? ? | 後は任せたぞ。 |
イクス | カノンノ ! ?――そうか、そういえばさっきこっちに向かってるって言ってたな。 |
カノンノ・E | え ? どういうこと ? |
ロイド | ――なぁ、カノンノ、コーキス !今もう一人いただろう ! ? |
カノンノ・E | あ、うん……。コレットと同じような羽が生えてる人が……。 |
ロイド | やっぱり……クラトス ! ? |
カノンノ・E | うん……。多分クラトスさんだと思う。私の世界にもそっくりな姿のクラトスさんって人がいたから。 |
カノンノ・E | ロイドの世界でも、ロイドとクラトスさんは親子……なんだよね ? |
ロイド | えっ ! ?あ、ああ――あの……それは……。 |
ゼロス | ――あーっと、その辺は、まあ色々とあるのよ、カノンノちゃん。 |
ゼロス | ほれ、秀才くん。バトンタッチ !ゲフィオン様のこと抱っこしてあげな♪落とすなよ~ ? |
キール | な、何だよ、急に……。ぐっ、お、落とすもんか…… ! |
ゼロス | クラトスがいたんだろ ?俺さまちょっくらその辺りを捜してみるわ。通信機借りてくぞ。 |
イクス | え、ゼロスさん ! ? |
ゼロス | そっちは大所帯だ。俺さま一人いなくても大丈夫だろ ?クラトスは色々と因縁のある相手でね。 |
ゼロス | ロイド君も会いたいだろうししばらくクラトスを捜すために単独行動させてもらうぜ。 |
ロイド | あ、おい、ちょっと待てよ ! ゼロス ! |
リフィル | ロイド。今は好きなようにさせてあげなさい。 |
ロイド | ゼロス……。 |
リフィル | カノンノ。あなたはどうしてここに ? |
カノンノ・E | マークに言われたんです。イクスたちを助けてくれって。 |
カノンノ・E | 北の監獄に向かったのはわかっていたから私もゲフィオン様を助ける手助けをしたくて……。 |
リフィル | そう……。つまり、あなたはこれが罠であることを知らなかったのね。 |
カノンノ・E | 罠 ! ? どういうことですか ? |
リフィル | やっかいね。誰が何をどこまで知っているのか……。 |
リフィル | いえ、そうでもないのかも知れないわね。ゲフィオン様はここにいる……。 |
コーキス | そういや、ゲフィオンさまは大丈夫かな ? |
キール | あ、おい ! ゲフィオンの顔の周りを飛ぶな ! |
コーキス | やば ! ? 手が仮面に引っかかっちまった ! ? |
コーキス | ――って、ゲフィオンさまの顔ミリーナさまにそっくりじゃん ! ? |
三人 | ! ? |
コーキス | マスター ! ?ゲフィオンさまとミリーナさまって親戚なのか ! ? |
イクス | そんな筈は……。 |
リタ | ……もう話した方がいいんじゃない ? |
イクス | 何を知ってるんですか ?もしかして――もしかしてゲフィオン様は……ミリーナなんですか ! ? |
リフィル | そうね。ケリュケイオンでみんなに説明するわ。ゲフィオンとミリーナの関係について。 |
リフィル | イクス。あなたには辛い話になるかも知れない。覚悟はできていて ? |
イクス | ――大丈夫です、とは正直言い切れません。でも、俺は逃げたくない。聞かせて下さい。全てを。 |
キャラクター | 1話【ケリュケイオン】 |
イクス | ミリーナとゲフィオン様はまだ目を覚まさないのか ? |
ジュード | うん。鏡士特有のアニマ酔いのせいで昏睡状態に陥ってるみたい。 |
ジュード | 僕だけじゃ心許ないからガロウズさんの伝手でお医者さんを連れてきてもらったんだ。 |
ジュード | でもやっぱり目が覚めるにはもう少し時間が掛かるって。 |
コーキス | もう少しって……あれからもう三日だぞ。カーリャ先輩も消えちまったままだしどうなっちまうんだよ、マスター。 |
イクス | ……今は俺たちにできることをしないと。 |
キール | ――それならぼくたちの話を聞いてくれ。 |
リタ | 以前チェスターが持ってきたファントムの設計図なんだかわかったわよ。 |
イクス | 何をする装置だったんだ ? |
キール | あれは時間の流れの不可逆性を無効化したアニマ――つまり負の属性を持つアニマを人為的に操作するものなんだ。 |
キール | 特異鏡映点が生み出す負のアニマとキラル分子を使って、具現化情報そのものを変質させるための計算装置なんだよ ! |
イクス | えっと……。言葉はわかるけど意味がよくわからない……。 |
ガイ | 要約すると、過去の世界から何かを具現化する時に、具現化する対象の情報を自分好みに変えられるってことだ。 |
イクス | そ、そんなことができるんですか ! ? |
ガイ | そうみたいだな。相当なエネルギーを必要とするから何でも無制限にという訳じゃないみたいだが。 |
リタ | どれだけ情報に手を入れるかで必要なエネルギーが違ってくるわね。 |
リタ | これは仮説だけど、ファントムの奴アイギスで守る世界の範囲を狭める代わりに自分の楽園を作りたいんじゃないの ? |
イクス | もしそれが本当なら今まで具現化してきた大陸は……。 |
キール | 見捨てられる。おそらく虚無に飲み込まれるな。 |
シェリア | 重要なお話のところをごめんなさい。そろそろ食料を補給できないかしら。 |
シェリア | もう三日もオーデンセ海域の上にいるでしょう ?備蓄が減ってきているの。 |
イクス | 補給か……。確かにそれは無視できないな。 |
ガイ | だが、どの大陸の街にも救世軍が待ち構えてるって報告だぞ。 |
リタ | オーデンセ海域の上空にいるのも救世軍がオーデンセ海域に近づけないからだもんね。 |
キール | オーデンセ海域はアイギスの盾の効果が弱いからな。薄皮一枚隔てれば虚無だ。どうしてアイギスの修復機能が鈍るのか……。 |
マギルゥ | おお ! ? レーダーを見るのじゃ !哀れな枯れ葉の小舟が波間に飲み込まれておるぞ ? |
クラース | あれは魔物――いや光魔に追われているのか ? |
コーキス | 距離が遠すぎるせいかな。チキン肌にならないぞ。 |
イクス | クラースさん、マギルゥ船に合図を送れないか ?近くの島に上陸してくれれば助けるって。 |
マギルゥ | よしよし、任せておけ。伝わるかどうかは知らぬがまぁどうにかなるじゃろう。 |
ガイ | おいおい、大丈夫なのかよ……。 |
クラース | イクス。この辺りの小島にはケリュケイオンが着陸できる場所がないがどうするつもりだ ? |
イクス | 救出隊を組んで、コレットとアーチェに運んでもらいます。 |
イクス | ジュード、誰か手の空いている人を呼んできてくれ。船の人たちを助けるんだ ! |
ジュード | わかった ! |
キャラクター | 2話【14-1 外れにある砂浜】 |
イクス | ――大丈夫ですか ! ? |
セネル | ああ。あんたたちのおかげで助かった。 |
ヴェイグ | 突然、あの大きな乗り物から女の声が聞こえたときは何かと思ったがな。 |
イクス | (マギルゥマイクで直接呼びかけたのか ! ?すごいな ! ? ) |
ユーリ | で、あんたたちは何で、大穴があいて見るからにやばい海域をあんな小さな船で横切ろうとしていたんだ ? |
ヴェイグ | ――その前に一応聞きたい。お前たちは救世軍か ? |
イクス | 違います。救世軍を捜しているんですか ? |
ヴェイグ | いや――少し込み入っているんだ。 |
セネル | 俺はセネル。そっちはヴェイグ。訳あってセールンドって島を目指している。 |
セネル | だが、安全そうなルートは救世軍って連中が押さえていてさっきの海域を抜けるしかなかった。 |
コーキス | マスター ! めっちゃチキン肌来てるぜ。この人たちも鏡映点で間違いない。 |
ヴェイグ | 鏡映点…… ?救世軍も同じことを言っていたが一体何のことなんだ ? |
セネル | あんたたちは世界がどうなっているかわかってるのか ? |
イクス | あ、俺に説明させて下さい。少し長い話ですけど、お二人が疑問に思っていることには答えられると思います。 |
ヴェイグ | ……なるほど。つまりここはオレの世界でもセネルの世界でもなかったんだな。どうりで話がかみ合わない訳だ。 |
セネル | イクスたちが救世軍と対立しているなら話は早い。 |
セネル | 俺たちは救世軍に攫われたクレアっていう女性を取り戻すためにセールンドに向かってるんだ。 |
ヴェイグ | オレたちは具現化されたなんて事情はわからなかったからな。 |
ヴェイグ | クレアと街に出てみたんだがそこで救世軍に追われていた少年を保護したんだ。 |
ヴェイグ | だが途中で敵に囲まれてクレアは少年と一緒に―― |
セネル | 俺も知り合いを捜して客船に密航したんだが最初の寄港地でヴェイグたちの起こした騒ぎに気づいたんだよ。 |
セネル | それで助太刀したんだが、クレアたちを取り返すことはできなかった。 |
セネル | だから救世軍が集まっているっていうセールンドに向かうことにしたんだ。 |
ジュード | ねぇイクス。攫われたクレアさんと少年ってもしかしたら特異鏡映点なんじゃない ? |
ヴェイグ | 特異鏡映点 ? 確かあのルカ……とか言う少年がそんな風に呼ばれていたな。 |
ユーリ | 嫌な感じがするな。救世軍の奴らこっちが把握している以上の特異鏡映点を確保してるんじゃねぇか ? |
イクス | 俺もそう思います。だとしたら放置しておくのは危険だ。 |
イクス | セネルさん、ヴェイグさん。よかったら俺たちにもクレアさんたちを助け出す手伝いをさせて貰えませんか ? |
ヴェイグ | ……ヴェイグだ。ヴェイグでいい。 |
イクス | え ? |
セネル | これから一緒に戦うんだ。変に気を遣うなってことだろう。 |
イクス | ――わかった。よろしく頼むよ。 |
キャラクター | 3話【14-2 開けた街道】 |
二人 | …………。 |
イクス | 二人とも、どうかしたのか ? |
ヴェイグ | いや、異世界にはほうきに乗った魔女が実在するんだな……。 |
セネル | それに羽根が生えた……コレット、だったか ?両腕に俺とヴェイグを抱えて飛ぶなんてどれだけ力持ちなんだ……。 |
イクス | はは……。ですよね……。 |
ユーリ | けど、あの二人のおかげでケリュケイオンが着陸できないとこでも俺たちは降りられてんだ。 |
ユーリ | ここんとこ船の中にこもってたんで体がなまってたとこだ。救世軍相手に暴れてやろうぜ。 |
? ? ? | そいつは丁度いい。 |
ジュード | ――アルヴィン ! ? |
アルヴィン | よう、優等生♪ |
イクス | え ! ? アルヴィンってマークの手紙に書いてあった―― |
コーキス | マスター。この人も鏡映点だ。新しい鏡映点が見つかる度にぞわっとするのカンベンして欲しいぜー。 |
ジュード | ……アルヴィンは救世軍に関わりがあるんだよね。 |
ジュード | 確かマークのスパイとしてファントムの元にいたのに、僕たちの情報をファントムに流したって聞いたよ。 |
ユーリ | で、リフィルの見立てじゃ俺たちを北の監獄に遠ざけたのもあんただって話だったな。 |
アルヴィン | おっと。武器に手をかけるのはやめてくれ。悪かったよ。こっちにも色々と事情があったんだ。 |
アルヴィン | 急に具現化なんかされて、知らない世界に放り出されたんだぜ。生き延びるために救世軍にしがみつくしかなかったんだよ。 |
アルヴィン | もっと早くお前らに出会えていれば――なーんて言ってもこうなっちまったことはどうにもならないけどな。 |
アルヴィン | でも……悪かったよ。 |
ジュード | だったら、僕たちに力を貸してよ。 |
アルヴィン | そのつもりでここに来たんだぜ。もっともマークとの約束があるから一緒には行けないけどな。 |
ジュード | アルヴィン ! ? |
ユーリ | こりゃまたうさんくさいことで……。 |
アルヴィン | だよなー ! 自分でもそう思うわ。……それでもな。異世界に来てまで仲間を裏切るのはもう終わりにしたいんだよ。 |
アルヴィン | ……ってな訳で、これを受け取ってくれ。 |
イクス | この地図は……何ですか ? |
アルヴィン | ファントムが集めた特異鏡映点が城の地下牢に移されてきた。その地図は地下牢へ通じる隠しルートだ。 |
アルヴィン | 今度こそ信用してくれて大丈夫だぜ ? |
アルヴィン | ……ここに来てジュードたちを裏切ったら俺は本当に居場所を失っちまうからな。 |
ヴェイグ | アルヴィンと言ったな。クレアは――クレアとルカもここにいるのか ? |
アルヴィン | 少なくとも俺が得た情報では特異鏡映点がそこに集められているのは間違いない。 |
アルヴィン | 個々の名前まではさすがに把握できてないんだ。悪いな。 |
ジュード | ……わかった。アルヴィンを信じるよ。レイアも言ってた。自分を救世軍から逃がしてくれたのはアルヴィンだって。 |
アルヴィン | ……そうか。じゃあ、俺はここで失礼するぜ。 |
アルヴィン | そうだ、ジュード。確証はないがローエンが救世軍に囚われたって情報があった。もし地下牢にいるなら―― |
ジュード | ――助けるよ、必ず。 |
アルヴィン | さっすが優等生。後は頼むな ! |
ユーリ | 信用していいもんかねぇ。 |
セネル | 確かにうさんくさい奴だが人を騙した後ろめたさも感じているようだった。 |
セネル | その気持ちがあるなら信じてみていいんじゃないか ? |
ヴェイグ | どのみち他に情報もない。信じて地下牢に向かうしかないだろう。 |
イクス | ロイドが言ってた。罠なんて壊せばいいって。 |
ユーリ | ロイドらしいな。だが気に入った。行って一暴れしてやろうぜ。 |
キャラクター | 4話【14-4 地下の深部】 |
セネル | あの地図、本物だったみたいだな。 |
イクス | ああ。でも牢の中には誰も―― |
? ? ? | 誰かいるんですか ? |
ヴェイグ | クレアか ! ? |
ジュード | こっちだ ! |
ヴェイグ | クレア ! 待っていろ、今助ける ! |
クレア | ヴェイグ、それに皆さんありがとうございます。 |
ヴェイグ | 無事で良かった……。ルカはどうした ?一緒じゃなかったのか ? |
クレア | それがルカや他に閉じ込められていた人はみんな連れて行かれてしまったの。 |
クレア | 魔女に壊された世界を取り戻す……とか何とか言っていたわ。 |
ヴェイグ | 魔女 ? |
イクス | ゲフィオン様のことか…… ? |
コーキス | ゲフィオンさまってミリーナさまのことか ? |
イクス | それは……。 |
ジュード | その話はいったん置いておこうよ。それより壊された世界を取り戻すって世界の再具現化ってことなんじゃない ? |
ユーリ | ファントムの目的は、自分の望み通りに造り替えた世界じゃないかって話だったな。 |
ユーリ | だったら連れて行かれた連中は特異鏡映点だっていう可能性が高い訳か。 |
イクス | だとしたら、連れて行かれた人たちはカレイドスコープのところにいるんじゃないか ? |
セネル | 待て。俺はまだこの世界のことがよく把握できてないんだが―― |
セネル | 特異鏡映点というのが世界の再具現化に使われるのだとしたら、今具現化している俺たちはどうなるんだ ? |
セネル | それに今既に具現化されている大陸は……。 |
イクス | ……消えてしまうと思う。 |
セネル | ――っ ! ? |
ヴェイグ | ……イクス、このまま敵のところに向かうつもりか ? |
ヴェイグ | だがクレアには戦う力はない。クレアを連れて行くことはできないぞ。 |
リフィル | イクス、聞こえていて ?ミリーナとゲフィオン様が目を覚ましたわ。 |
イクス | ! ? |
ユーリ | イクス。ヴェイグとクレアを連れてケリュケイオンに戻れ。 |
イクス | でも―― |
ユーリ | あっちはあっちで聞かなきゃいけないことは山ほどあるだろうよ。その代わり特異鏡映点の方は俺たちで引き受ける。 |
ユーリ | 忘れたのか ? イクス。こっちはお前らに力貸すって仕事を引き受けてんだぜ ? |
ユーリ | 夜空にまたたく凛々の明星の名にかけてな。こういう時こそ俺の出番ってヤツさ。 |
ジュード | そうだよ。それに僕の方もこの先に仲間がいるかも知れないんだ。 |
セネル | 俺もだ。 |
セネル | 特異鏡映点だか何だか知らないが救世軍が具現化した連中を集めているならこの先に俺の仲間もいるかもしれない。 |
ユーリ | 確かクレスたちも城に潜入してる筈だな。連絡を取って合流する。そっちはミリーナから【真実】を聞け。いいな ? |
イクス | わかりました。ヴェイグ、行こう。 |
ヴェイグ | ああ。 |
キャラクター | 5話【14-5 城へ続く街道1】 |
ゲフィオン | 全ての始まりは十五年前のビフレスト皇国によるオーデンセ侵攻だった。 |
イクス | ……くそ。雨か。 |
ビフレスト皇国軍 | ――見つけたぞ ! 鏡士だ ! |
ミリーナ | ! ? |
イクス | ミリーナ、走れ !港まで行けばセールンドへ逃げられる ! |
ミリーナ | イクス、だけど―― |
イクス | ミリーナに手を出すな ! |
ビフレスト皇国軍 | どけ ! |
ミリーナ | イクス ! ? |
ビフレスト皇国軍 | 邪魔だー ! ! |
イクス | ミリーナは俺が守る ! ! |
イクス | ぐぅ……やらせ……ない……っ !スタック・オーバーレイ ! ! ! |
ミリーナ | そんな……うそ…… |
ミリーナ | イクス……うそ、だよね…… |
ミリーナ | イクス……目をあけてよ……お願い……お願いだからっ ! ! |
ミリーナ | やだよ…… |
ミリーナ | いや…… |
ミリーナ | いやーーーー ! ! ! ! |
イクス | ! ? |
ミリーナ | …………。 |
ゲフィオン | その後セールンドに逃げたミリーナは幼なじみのフィリップと共に王立魔鏡科学研究所に入った。 |
ゲフィオン | ビフレストに復讐するために亡くなったイクスの両親がおこなっていた魔鏡兵器の研究を受け継いだのだ。 |
ゲフィオン | そしてカレイドスコープが誕生した。カレイドスコープの力は絶大だった。 |
ゲフィオン | ビフレストの大地や人々のアニマを抜き取り残された物質としての存在――アニムスを光の砂へと変えて消滅させた。 |
ゲフィオン | その力がセールンド王国を勝利に導き同時に、世界を破滅へと追い込んでしまったのだ。 |
ゲフィオン | かつて世界が存在していた場所に何もない空間――虚無が生まれてしまった。 |
ゲフィオン | 虚無と世界の欠片である光の砂は暴走し瞬く間に世界を飲み込み、消滅させていった。 |
ゲフィオン | これがミリーナが――私が魔女と呼ばれる所以だ。 |
イクス | じゃあ、あなたは本当に……。 |
ゲフィオン | 私の名はミリーナ・ヴァイス。世界を破滅させた女だ。 |
イクス | ………… ! |
リフィル | ――そしてあなたは、アイギスという世界を守る盾を造り出して残されたわずかな世界を守ったのね。 |
ゲフィオン | そうだ……。しかし世界は既にセールンドとオーデンセの周囲しか残っていなかった。 |
ゲフィオン | 私は――私とフィリップはカレイドスコープを改良して、過去の時代から世界を具現化しようと考えたのだ。 |
キャラクター | 6話【14-6 城へ続く街道2】 |
フィリップ | ……ミリーナ。あきらめてくれ。 |
フィリップ | イクスの形見の魔鏡に、古のビクエの魔鏡を重ねても一年前が限界だ。これ以上過去へは遡れない。 |
フィリップ | 仮にできたとしても、現在との距離が遠いほど具現化のダメージが酷くなる。残されたこの世界まで引き裂かれるぞ。 |
ミリーナ | ――そう……よね。それにこれ以上時間をかけていたら、死の砂嵐で世界は虚無になる。それは避けなくちゃね……。 |
フィリップ | ……ミリーナ。試してみたいことがあるんだ。過去の【僕】を具現化してみたい。 |
ミリーナ | フィル ! ? |
フィリップ | 範囲を狭めれば、十年前からでも具現化できると思うんだ。まずは僕で試して、成功したらイクスとミリーナを…… ! |
ミリーナ | 駄目よ……。それは……。 |
フィリップ | 世界は一年前から、オーデンセの住民だけは十年前から具現化すればいい。それにイクスの傍にはミリーナが必要だろう ? |
ミリーナ | 駄目よ。同一時間に同一存在を具現化すれば、自震で双方のアニマとアニムスがダメージを受けるわ。 |
フィリップ | 僕の家系は融合の魔鏡術だ。いくつか回避策を考えてある。ミリーナ、やらせて欲しい。 |
ミリーナ | ……でもそれは、私のエゴなのよ。だから―― |
フィリップ | だったらこれは僕のエゴだ。僕はミリーナの願いを叶えたい。 |
フィリップ | イクスを甦らせてあげたいし、その横にはミリーナがいなければ駄目なんだよ。 |
ミリーナ | …………。 |
ゲフィオン | いくつかの実験の後私は……私の歪んだ思いを現実にした。 |
ゲフィオン | その頃には、過去からの具現化も研究が進み個人レベルまで焦点を絞ればある程度の過去から具現化する手段が見つかっていた。 |
ゲフィオン | 私は、過去から甦らせた新生ティル・ナ・ノーグに十年前――今現在からはおよそ二十年前の時間軸からイクスやオーデンセの人々を甦らせたのだ。 |
イクス | それが俺……。 |
ゲフィオン | ――いや、正確には違う。 |
イクス | え ! ? |
ミリーナ | ……違うの、イクス。私は二人目のミリーナだけど、あなたは―― |
ゲフィオン | 救世軍がアイギスシステムを破壊したのだ。 |
ゲフィオン | その結果、システムを置いていたオーデンセ上空にアイギスの破片が降り注ぎ具現化したオーデンセも消失してしまった。 |
イクス | ! ! |
ゲフィオン | 全ては虚無に漂う死の砂嵐の影響だ。あれは世界の――人々のアニムスの欠片だ。アニムスには人々の記憶が残されている。 |
ゲフィオン | それが具現化した人々に【滅びの夢】という形で影響してしまった。 |
ゲフィオン | 彼らはかつて存在していた自分たちの滅びの記憶を夢として見ることになりそれが不安を生んでしまった。 |
ミリーナ | ゲフィオンは――いえ、私は、オーデンセを守るために、航行権を制限したの。 |
ミリーナ | 特にオーデンセ海域への立ち入りは厳しくしていた。 |
ミリーナ | それをビフレストと通じているからではと怪しんだ救世軍が、オーデンセのアイギス装置を破壊してしまったのよ。 |
イクス | あの時……具現化された俺は死んだのか ! ? |
ゲフィオン | ミリーナを庇って……命を落とした。それだけではない。過去から具現化した世界も死の砂嵐に飲み込まれてしまった。 |
ゲフィオン | 全ては水泡に帰した。もはや悠長に過去からの具現化をしていては世界が滅びてしまう。 |
ゲフィオン | それに過去から具現化した人々は死の砂嵐の存在によって、必ず滅びの夢を見る。過去の記憶がもたらす不安は、また破壊を招くだろう。 |
ゲフィオン | だから私は最後の手段を講じた。それが異世界からの具現化だ。 |
ゲフィオン | ティル・ナ・ノーグそのものを甦らせることはできぬが異世界の力を借りることでこの世界を別の形で残すことはできる。 |
ゲフィオン | どれだけ憎まれようと私はこの世界を残したかった。そうしなければならなかった。 |
ゲフィオン | ただそのためには、どうしてもイクスの力ともう一枚のイクスの魔鏡が必要だったのだ。 |
キール | ……一つ、わからないことがある。救世軍を作ったのはフリーセルとフィリップだったと聞いている。 |
キール | どうしてフィリップは、自らの計画を壊すような真似をしたんだ。 |
ゲフィオン | それは、私には想像することしかできない。 |
ゲフィオン | おそらくフィリップは、滅びの夢で動揺する人々の反乱の芽を潰すため、あえて反乱勢力を一つにまとめようとしたのだろう。 |
ゲフィオン | だが、救世軍の動きを抑えきれなかったのではないか。 |
カノンノ・E | それは……ファントムのせいですか ? |
ゲフィオン | そうだろうな。 |
ゲフィオン | お前たちがファントムと呼んでいるのはフィリップが最初に自らを実験台にして生み出したもう一人のフィルだ。 |
ゲフィオン | フィリップはリーパと呼んでいた。 |
ゲフィオン | だがリーパを具現化した影響でリーパもフィリップも肉体と精神にダメージを負ってしまった。 |
ゲフィオン | フィルは子どもの頃のように病気がちになり城にも登城しなくなってしまった。 |
ミント | あの……。ユーリさんたちから連絡が入っています。 |
リタ | あたしが聞いてくる。 |
リタ | ――イクス、あんた酷い顔色よ。いったん休憩にしましょ。少し休んだ方がいいわ。 |
イクス | …………。 |
キャラクター | 7話【14-7 城へ続く街道3】 |
チェスター | ……どうするんだ ? つけられてるぞ。 |
マーク | ミリーナから預かった例の魔鏡は持ってるな ? |
チェスター | 当たり前だ。何のためにケリュケイオンに入り込んだと思ってる。 |
マーク | いいんだな ? ファントムを消しても。妹を具現化することができなくなるぞ。 |
チェスター | ……揺れることを言うんじゃねぇよ。迷ってねぇって言ったら嘘になる。もう一度会えるなら……。 |
チェスター | でもファントムがやろうとしていることは今まで具現化された存在も消し去っちまうんだろう ? |
チェスター | 勝手に具現化されて勝手に殺されて……そんなのは許せねぇ。 |
マーク | あんたを選んだ俺の目は正しかったな。――行け、チェスター ! |
クレス | チェスター ! 待ってくれ ! |
マーク | おっと。悪いがここから先には行かせないぜ。 |
リオン | 面白い。ここでお前を消してやる ! |
クレス | ――リオン、後ろだ ! |
リオン | ! ? |
カイウス | お前がマークか。ここは任せろ ! |
マーク | ――何者だ ? |
シング | オレはシング。そっちはカイウス。フィリップって人から頼まれたんだ。 |
マーク | あいつ、やっぱり近くにいるのか ! ? |
カイウス | 急げ ! こっちにはメルクリアから預かった鏡がある。 |
マーク | 恩に着る ! |
クレス | 待て ! ! |
シング | 2対2か。なら片付けられそうだな。 |
リオン | ほざくな、雑魚が。 |
カイウス | 何 ! ? |
ユーリ | おっと、俺たちも数に入れてもらおうか。 |
クレス | ユーリ ! ジュード ! |
リオン | ――それに新入りか。別に助けはいらなかったが合流したからには働いてもらおうか。 |
セネル | 言われなくてもそうするさ。 |
カイウス | 数が多いな……。やっぱりメルクリアの鏡を使おう、シング。 |
シング | ああ。ここでもたついてたらメルクリアとフレンに合流できなくなる。 |
ユーリ | フレン、だと ? おい、お前ら―― |
カイウス | 悪いな !縁があったらまた会おうぜ ! |
セネル | くっ、目くらましか ! ? |
ユーリ | ちっ ! 逃げ足の速い ! |
ジェイド | ――今の光は何かと思えば皆さんでしたか。 |
セネル | ……お前、何者だ。血の匂いがするな。 |
ジェイド | あー、これは失礼。道中、色々とありまして。 |
ジェイド | 返り血はなるべく浴びないようにしてきたのですがね。 |
ユーリ | セネル。こいつは善人面した悪人だが一応俺たちの味方だ。 |
ジェイド | 傷つきますねぇ。そちらこそ善人の仮面をつけている【だけ】で、こちら寄りの人種だと思っていましたが。 |
リオン | フン、お前たちはどっちもどっちだろう。それより、どうしてここにいる。カレイドスコープの方はどうした ? |
ジェイド | 近くまではいけましたが、いくつかあるルートのどれも完全に封鎖されています。 |
ジェイド | あの封印はパスコードを知っていないと解けないたぐいのものです。 |
ジェイド | 鏡士なら出入り口を具現化してしまえるのかも知れませんがね。 |
クレス | こちらもチェスターたちを見失ってしまいました。どうしますか。 |
セネル | せっかくここまで来たんだ。このまま戻るのは惜しい。 |
リオン | ジェイド、一番マシな潜入ルートを教えろ。警備体制を確認しておきたい。 |
ジュード | 待って。一度ケリュケイオンと連絡を取っておいた方がいいと思う。 |
ジュード | イクスたちが戻っている筈だしゲフィオンから何か聞いているかも知れないよ。 |
ジュード | それとユーリ、大丈夫 ?何だか浮かない顔してるけど……。 |
セネル | あの眼鏡の軽口に傷ついた訳でもないだろう ? |
ユーリ | まさか。――さっきの連中が知り合いと同じ名前を口にしたんでな。ちょっと気になっただけだ。 |
ユーリ | それよりケリュケイオンに連絡するんだろう。俺がやる。 |
キャラクター | 8話【14-7 城へ続く街道3】 |
イクス | ………………。 |
コーキス | マスター……。つらいんだな。俺すげぇ、胸が苦しい。マスターが苦しいからだろ。 |
イクス | ……ごめんな。コーキス。わかってるんだ。俺が過去から具現化された存在だから何なんだって。 |
イクス | 鏡映点のみんなだって具現化された存在だから何も変わらない筈なんだけど……。 |
イクス | でも……ロイドが言ってたみたいに俺……後ろめたいんだ。きっと。 |
ヴェイグ | ――イクス。ここにいたか。 |
イクス | ヴェイグ。何かあったのか ? |
ヴェイグ | いや……。オレには具現化やこの世界に起きたことに関してまだ簡単な知識しかない。 |
ヴェイグ | だがそれでも、イクスがイクスとしてこの世界に生まれたことを悔やむ必要はないんじゃないかと思う。 |
イクス | ……ヴェイグ。 |
ヴェイグ | イクスがどんな存在であっても楽しい時は笑い悲しい時は涙を流すだろう。 |
ヴェイグ | 人の心とはそういうものだ。それは具現化された人間でも変わらないと思う。 |
コーキス | ヴェイグさま……。すげぇよ。そうだよ、その通りだよ。 |
ヴェイグ | ――いや、これはクレアの受け売りなんだ。だが、オレもクレアと同じように考えている。 |
ルーク | ――心は同じ、か。そうだな。俺もそう思うよ。 |
イクス | ルーク……。 |
ルーク | さっき、カノンノからイクスの話を聞いた。えっと、今までお前にちゃんと話したことなかったと思うけど……。 |
ルーク | 俺さ、普通の人間じゃない。レプリカなんだ。 |
ルーク | 被験者(オリジナル)のルークって奴が別にいて、俺はそいつのコピーみたいな感じ……って言えばいいかな。 |
ルーク | 最初にその話を知ったときはすげぇ混乱して、認めたくなくてさ。でも……今は俺は俺なんだって思える。 |
ルーク | 色んなことがあって、その体験は俺だけのものなんだって。……って、これはティアの受け売りだけどな。 |
イクス | ルーク……。ごめん。そんな話をさせて……。 |
ルーク | いいんだよ。要するに、俺もヴェイグもイクスに言いたいことは同じだと思うんだ。 |
ヴェイグ | ああ。ここにいるイクスも具現化された他の存在も、みんな同じように心を持つ誰にも代えがたい大切な存在だ。 |
イクス | ――ありがとう、二人とも。それにコーキスも。 |
イクス | だけど俺、二人にもみんなにもまだ伝えてないことがあるんだ。――でも、腹は決まった。 |
イクス | みんなをブリッジに集めて欲しい。 |
ルーク | わかった。全員は無理だから各部屋に通信が繋がるようにしておくよ。 |
イクス | みんな、ごめん。こんな時だけど――こんな時だから話を聞いて欲しい。 |
イクス | 俺はティル・ナ・ノーグを救うために異世界を具現化してきた。 |
イクス | 最初は何もわからなかったけど、俺なりに魔鏡技術を調べていくうちに、俺が最初に聞いてた話が矛盾してるって気づいたんだ。 |
イクス | 結論から先に言う。鏡映点として具現化されたみんなは――もう二度と元の世界には戻れない。 |
イクス | 一生ティル・ナ・ノーグで生きていくしか選択肢がないんだ。 |
ミリーナ | ! ? |
カイル | ――……え ? どういうこと ?確かこの世界の具現化が落ち着くまでいて欲しいってことじゃなかったの ? |
イクス | ゲフィオン……様、俺たちの具現化は異世界に影響しないと言っていましたね。 |
イクス | ということは、この世界で具現化された鏡映点は戻れないと言っているのと同じですよね ? |
リッド | そうか……。この世界の記憶を持って元の世界に戻るってことは元の世界に干渉することになるのか。 |
ミリーナ | ゲフィオン。本当なの ! ? |
ゲフィオン | ――事実だ。 |
ガロウズ | 今、ティル・ナ・ノーグはアイギスに守られているがその外には虚無が広がっている。 |
ガロウズ | 虚無はティル・ナ・ノーグからあらゆるエネルギーが流れ出ることを妨げているんだ。 |
キール | だから観測者効果を無視して、異世界からの具現化を実現できていたんだな。 |
ガロウズ | ああ。異世界から具現化することはできても具現化した人々を元の世界に戻すことはできない。 |
ガロウズ | もしも虚無がなくなれば、そもそも存在する次元の壁によって、具現化の力そのものが跳ね返されちまう。 |
ミリーナ | それを知っていてイクスに具現化をさせたの ! ? |
ミリーナ | 鏡映点のみんなをこの世界に閉じ込めるとわかっていて ! ? |
ゲフィオン | ガロウズを責めるな。決めたのは私だ。私がそういう人間だと言うことはお前が一番よくわかっている筈。 |
ゲフィオン | 今はまだこの判断をしたときの記憶が共有されていないようだがいずれ全てわかる。 |
ジェイド | 失礼。カレイドスコープの元へ再潜入する為の手勢が欲しいのですがケリュケイオンを着陸させて貰えますか。 |
クレス | この辺りの救世軍は追い払った。今なら着陸しても安全だ。 |
イクス | ……わかりました。ケリュケイオンを降ろします。 |
キャラクター | 9話【14-8 デレク山 麓】 |
イクス | みんな、無事で良かった。 |
リオン | 無事で当然だ。それよりゲフィオンから話は聞けたんだろうな ? |
イクス | ああ……。ゲフィオンは……その……。 |
ユーリ | ――おい、ちょっと待った。ゲフィオンはどこだ ?今までゲフィオンと話してたんじゃないのか ? |
二人 | ! ? |
イクス | そういえばガロウズもいなくなってる…… ! ? |
カーリャ | …………。 |
ミリーナ | カーリャ ! カーリャならわかるわよね。私とあの人は同じ存在だもの。 |
ミリーナ | 私の心から生まれたカーリャにはゲフィオンがどこにいるかわかる筈よ。 |
カーリャ | ……ごめんなさい、ミリーナさま。 |
カーリャ | ケリュケイオンが着陸したときにゲフィオンさまとガロウズさまがセールンドの街の方へ出ていきました。 |
ミリーナ | ゲフィオンに口止めされたのね。 |
カーリャ | はい……。だって、あの人もミリーナさまなんです……。 |
ベルベット | 何、何の音 ! ? |
スレイ | 見てくれ ! 空の色が―― |
イクス | オーロラ、なのか ?それにしては随分毒々しい虹色だけど……。 |
ミリーナ | 嘘……。 |
イクス | どうした、ミリーナ ? |
ミリーナ | あれは【私】がカレイドスコープで世界を滅ぼしかけたときと同じキラル分子の異常収縮現象……。 |
ミリーナ | きっとカレイドスコープを暴走させようとしているんだわ。 |
イクス | ――みんな、この世界に呼び寄せて巻き込んでごめん。でもみんなを消させはしないから。 |
ミリーナ | 待って、イクス ! どこに行くの ! |
イクス | カレイドスコープのところへ行く。これは俺たちの世界の問題だ。だから俺が解決しないと。 |
ミリーナ | 私も行くわ ! 私だってこの世界の人間よ。 |
ベルベット | ――いい加減にしてちょうだい。 |
ベルベット | 勝手に具現化して、勝手に牢獄みたいなこの世界に閉じ込めて、これは俺たちの世界の問題ってふざけたことを言わないでよ。 |
イクス | ベルベットさん……。 |
ベルベット | それにあたしを具現化したのはあんたじゃないわよ。あのファントムとかいうおかしな男じゃない。 |
ベルベット | だったら奴にあたしの怒りをぶつけてやらなきゃ気が済まないわよ。――だから、あたしを連れて行きなさい。 |
スレイ | そうだよ、イクス。ミリーナ。オレたちがもう自分の世界に帰れないならここが具現化されたオレたちの世界になる。 |
スレイ | だったらオレたちもこの世界の人間だろ ?解決に協力したいと思うのは当然じゃないか。 |
ジュード | それに、カレイドスコープへの潜入ルートをイクスは知ってるの ?それを調べてルートを確保したのは僕たちだよ。 |
カノンノ・E | 私も連れていってくれるよね。私の知っているフィルはこの世界を壊そうなんてしてなかった。 |
カノンノ・E | イクスとミリーナが知ってるフィルだってそうでしょう ? |
メルディ | メルディな、戻れないのたぶんわかってた。寂しいけど、へーき !ここ、みんながいるから。 |
キール | ぼくも予想はしていた。キール研究室の人間はもちろんそうだろうし、他にもそうだろうと気づいてた奴はいる。馬鹿にするなよ。 |
リオン | 気づいてなかった奴もいるがな。 |
ルーティ | 何で私を見るのよ。ここはスタンの方を見る流れでしょ ! |
スタン | えぇっ ! ? 俺 ! ? |
スタン | それは……確かに帰れないとまでは考えなかったけど、でもこうなったことはイクスたちのせいじゃないよな。 |
ルーティ | そうよ。それなのにどうしてイクスとミリーナだけで片をつけようとするの。 |
リフィル | ごめんなさい。私はイクスたちに責任がないとは言えないわ。でもね、私たちは仲間でしょう ? |
リフィル | 責任がどうとかじゃなくて仲間なら支えたいって思うのは当然じゃないかしら。 |
ロイド | そうだよ。二人とも変なところで責任感が強いんだな。もっと頼ってくれていいんだぜ。 |
ロイド | 間違いは正せるって俺は信じてる。本当はどうにもならないことがあるのもわかってるぜ。 |
ロイド | それでも希望は捨てたくないし仲間が希望を捨てようとしてるなら拾ってでも押しつけてやるさ。 |
ルーク | 希望か……。そうだよな。俺はさ希望と可能性をもらったんだって思ってる。イクスたちは俺に未来をくれたんだって。 |
ルーク | だからさ、感謝してるんだよ。助けさせてくれるよな ? |
ヴェイグ | オレはクレアを助けるために力を貸してくれたお前たちに協力したい。……ただ、それだけだ。 |
ソフィ | わたしも。わたしも、イクスとミリーナの力になりたい。それだけじゃ駄目かな ? |
セネル | ……いい連中じゃないか。みんな抱え込んでることはあるだろうが、それでもお前らを助けたいって言ってるんだ。 |
セネル | 甘えてもいいんじゃないか ? |
イクス | みんな……。俺を……俺とミリーナを憎んでないのか ? |
ラピード | ワフッ ! ワフッ ! ! |
ユーリ | 今の話を聞いてまだそんなことを言うかねぇ。ラピードも呆れてるぜ。 |
ユーリ | イクスとミリーナはどうしてこの旅を始めたんだ ? |
ミリーナ | ……この世界を―― |
イクス | ――救いたいから。 |
クレス | それなら、もう何も言う必要はないね。行こう、イクス、ミリーナ。【みんな】でこの世界を守るんだ。 |
キャラクター | 10話【14-10 デレク山 山頂】 |
マーク | よぅ、イクス、ミリーナ。 |
イクス | マーク…… ! ?お前、今までどこに行ってたんだ ! ? |
マーク | それはわかってるだろ ? 俺とチェスターの後をつけさせてたんだから。まぁ、途中で上手いこと引き剥がせたけどな。 |
ミリーナ | またそうやって強がって本当のことを隠すのね。 |
マーク | ミリーナ……。本当にお前は……人の心をえぐってくるな。フィルの奴、ドMだったのかねぇ……。 |
ミリーナ | イクス……。隠していてごめんなさい。チェスターとマークから取引を持ちかけられていたの。 |
イクス | え ! ? |
コーキス | マスター、ミリーナさま。何とかしてくれよ。 |
カーリャ | マークが俺も連れて行けってうるさくて。 |
ミリーナ | もう、しょうがないわね。私、ちょっと叱ってくる。 |
チェスター | ミリーナ。丁度いい。オレもマークに用があるんだ。一緒に行く。 |
ミリーナ | フィルから預かった鏡片のお守り…… ?どうしてそれをチェスターさんが知ってるの ? |
チェスター | マークから聞いた。それがあればファントムの動きを封じられるかも知れないんだ。 |
ミリーナ | ……待って。チェスターさん。あなた、何者なの ? まさか―― |
チェスター | 違う ! いや、違わないけど、でも違う。俺はクレスがいるこのケリュケイオンを裏切ったりはしない。 |
チェスター | スパイみたいな真似をするつもりもない。 |
ミリーナ | 私が、それを信じると思う ?イクスを陥れる可能性があるものは何だって排除できるのよ。 |
チェスター | 信じざるを得ないさ。ゲフィオンとの面会の時の会話で、合点がいった。ミリーナ。お前はゲフィオンの―― |
ミリーナ | ――まさか、チェスターさんがそんな手を使ってくるなんてね。まるでジェイドさんかリフィルさんだわ。 |
チェスター | あの枠と一緒にするな。こっちも必死なんだ。まぁ……マークに入れ知恵されたんだけどな。 |
イクス | フィルの鏡片 ? それは何だ ? |
マーク | イクスがオーバーレイ暴走を起こした日……あのピクニックの日にフィルがミリーナに渡していたものだよ。 |
マーク | お前の知らない話――知らなくていい話だ。 |
ミリーナ | ファントムを倒すつもりなら私たち、同じ目的の筈よね。 |
マーク | そいつは違うな。俺たちは違う目的で動いてるんだ。 |
マーク | さぁーて、話は終わりだ。そろそろ、片付けちまおうぜ。 |
イクス | 戦うつもりか ! ? |
マーク | おいおい。そんな意外そうな顔するんじゃねぇよ。俺はお前らや鏡映点の命を狙ってたんだぜ。 |
マーク | 当たり前の流れだろ。 |
コーキス | てめぇ、フィルさまの鏡精なんだろ ! ?こんなことしてフィルさまが許すと思ってるのか ! ? |
カーリャ | そうですよ ! ミリーナさまたちはフィルさまの幼なじみなんですよ ! ? |
マーク | 知ったことかよ。俺はフィルのためにお前たちを殺すと決めていたんだ。フィルのためにここで消えてくれや。 |
イクス | …………。 |
マーク | ……どうしたイクス ?早く構えろよ。 |
イクス | ……マーク。一体どうして…… ! ?何で、こんな風に戦う必要があるんだよ ! ? |
マーク | 俺とお前は、敵同士。ずっと、そうだったろ ? |
ミリーナ | ……だったらどうしてこの間は一緒に戦ってくれたの ? |
マーク | ただ、気まぐれに道が重なっただけだ。──深い理由なんか、ないさ。 |
マーク | 構えねぇならそれでもいいぜ。そのまま、死にな。 |
イクス | ……そういうわけには行かない。俺はこの世界を救ってみせるって誓ったんだ。 |
イクス | あんたを倒して、この先へ進んで見せる ! |
ミリーナ | うん……私も──イクスの進む道を、信じてる ! |
| (俺も、あの人達みたいな強さが欲しい) |
| そうならなきゃ、いけないんだっ ! |
キャラクター | 11話【14-10 デレク山 山頂】 |
マーク | ……マジかよ。俺はお前らをここに留めておくことすらできねぇのか。 |
イクス | ――留めておく ?殺すつもりじゃなかったのか ? |
マーク | ……負け犬に根掘り葉掘り聞くなよ。恥ずかしい。 |
ミリーナ | 今更じゃない ?全て話した方がきっと楽になるわ。 |
マーク | ……最初はフィルと一緒に救世軍をコントロールする筈だった。世界を虚無から守るためにな。 |
マーク | だが……フィルが倒れてファントムが実権を握ってから救世軍は制御不能になっちまった。 |
マーク | ファントムはフィルの願いである世界とミリーナの幸せのためにはゲフィオンを信じるなと言い出したんだ。 |
マーク | そして俺にこう言った。フィルの本当の幸せの為には何が邪魔だと思うか――ってな。 |
ミリーナ | それが私とイクスの命……。 |
マーク | 言っておくが、ファントムに命令されたから命を狙ったんじゃない。俺の意思だ。フィルが苦しむのを見ていられなかった。 |
マーク | イクスに憧れて、嫉妬して、ミリーナの願いを無条件で叶えようとして……。あいつは望んで奴隷になってたからな。 |
イクス | もしかして、フィルは―― |
マーク | ――俺はフィルの鏡精だ。フィルの想いは知ってるし俺の感情はフィルの想いに影響される。 |
マーク | だから俺はお前たちが憎くて……でも――いや、まぁ、それはいい。 |
マーク | それより、イクス。カレイドスコープの元に行くなら、これだけは約束しろ。ミリーナを守れ。彼女をサーチさせるな。 |
イクス | ミリーナも具現化された存在だろ ?具現化された存在をサーチなんてできるのか ? |
カーリャ | もしかしてゲフィオンさまのことですか ? |
マーク | ――その内わかる。それともう一つ。イクス、絶対に死ぬな。お前は三人目なんだからな。 |
ミリーナ | …………。 |
イクス | え…… ! ?三人目ってことに意味があるのか ? |
マーク | 具現化には制限がある。アニマサーチは三回を超えるとそれ以上は検出不能になるんだ。 |
イクス | つまり……俺が死ねば、もう俺という存在は二度と具現化できないってことか。 |
マーク | ――さすがに察しがいいな。お前が消えればゲフィオンもミリーナも悲しむ。それを見れば傷つくのはフィルだ。 |
マーク | だから――絶対に死ぬなよ。 |
イクス | ――わかった。 |
マーク | それじゃあ、こいつを持っていけ。 |
ミリーナ | この紋章は、何…… ? |
三人 | デリス・エンブレム ! ? |
マーク | そういう名前らしいな。構造を解析して似た性質のものを作った。それがあればカレイドスコープの封印を突破できる。 |
セネル | なるほど。その紋章がパスコード代わりなのか。 |
イクス | マーク。一緒に行ってくれないのか ? |
マーク | 行けると思うか ? お前らにやられた傷で動けねぇよ。ここで吉報を待つとするさ。……ファントムの好きにさせるなよ。 |
ヴェイグ | マーク。本当に全てを語ったのか ?これ以上話すことはないのか ? |
マーク | ――……ねぇよ。 |
チェスター | (デリス・エンブレムのおかげでカレイドスコープの間には入れたが……。ファントムはどこだ) |
ファントム | ――計算通りだ。特異鏡映点がアニマを集めている ! |
チェスター | (特異鏡映点があんなに ! ? ) |
チェスター | (クソ、どうする。連絡はまだ来ねぇが、止めるべきか……) |
チェスター | (アミィ ! ?どうしてアミィがここに―― ! ? ) |
キャラクター | 12話【14-13 セールンド城内3】 |
フィリップ | ……やっぱり駄目か。 |
デミトリアス | フィル……。その症状はアニマ汚染だ。これ以上続けては私のようになってしまうぞ。 |
フィリップ | ……はい。これ以上は難しい。【狂化止め】の術式を変更する必要があります。 |
デミトリアス | まだ続けるのか ! ? |
フィリップ | いえ、その前に、リーパを止めなければなりません。リーパのアニマとアニムスを繋ぐ部分が歪みを引き起こしています。 |
ファントム | (私を捨てようというのか――。勝手に生み出しておいて感情を与えておいて――) |
ファントム | (私が歪んでいるから――) |
ファントム | この数日で、必要なアニマとキラル分子はここに集めました。後は、特異鏡映点たちに働いてもらうだけです。 |
ルカ | …………。 |
ファントム | 何を言っても無駄です。その魔鏡陣の中にいる限り動くことも、声をあげることもできないのですから。 |
ファントム | さぁ、新たな世界を生み出しますよ。歪んだ私の望む、私と彼女のためだけの真に正しく歪んだ新世界を―― |
ファントム | ――計算通りだ。特異鏡映点がアニマを集めている ! |
ファントム | ――ですから、もう何をしても無駄ですよチェスター・バークライト ! |
チェスター | くっ ! |
ファントム | あなたが何をしに来たのか当ててあげましょう。 |
ファントム | 大方マークとフィルに荷担して鏡片をもって私のアニマをフィルに戻すつもりなのでしょう。 |
ファントム | チェスターを捕らえなさい ! |
チェスター | 大人しく捕まると思ってるのか ! |
ファントム | 捕まりますよ。あなたは具現化された妹を裏切れない。 |
チェスター | ! ! |
救世軍兵士 | ファントム様。この男、鏡片を持っていません ! |
ファントム | 何 ! ? |
伝令 | ファントム様 ! イクス・ネーヴェらが城内に侵入してきました ! |
ディスト | なるほど。謁見の間からのカレイドスコープへ繋がる通路に出るつもりですね。 |
ミトス | それで、どうするつもり。 |
ミトス | 僕らをイクスと戦わせるなら当然どこかに配置している筈なのにここに集めるなんて。 |
リヒター | お前は人を信じない。俺やミトスと同じ生き方をしている。 |
リヒター | ならばお前は俺たちのことも信じていないだろう。 |
ファントム | それは心外です。 |
ファントム | ところで私がミトスに取り戻させたビクエの魔鏡を覚えていますか ? |
ミトス | ――まさか ! |
ファントム | ええ、気づくのが遅かったようですね。 |
ファントム | 魔鏡よ ! ビクエの名の下に四つのアニマを幻体として彼のモノと融合させよ ! ! |
救世軍兵士 | ファントム様、四幻将の皆様は―― |
ファントム | 幻影魔獣と化して、イクスたちを足止めしてくれるでしょう。お前たちも配置につきなさい。 |
救世軍兵士 | はっ ! |
ヴェイグ | ――城内がやけに静かだな。 |
カーリャ | ……何だかぶるぶるします。 |
コーキス | 俺もだ。チキン肌がすげぇ……。 |
ミリーナ | まさか光魔 ! ? |
カーリャ | 違います……。何だかもっと怖くて悲しい感じがします。 |
セネル | イクス、気をつけろ。こういう時はこの先に何かとてつもなく強い敵が待ち構えている筈だ。 |
イクス | そうだな……。 |
コレット | ……聞こえる。魔物みたいな声。多分四匹。 |
リッド | イクス、覚悟はいいな。 |
イクス | ああ。どんな敵が待ち受けていても必ず突破してみせるっ ! |
キャラクター | 1話【14-15 カレイドスコープ前1】 |
イクス | え、今から三人でピクニック ! ?俺、ついさっき漁から帰ってきたところだよ。 |
イクス | 海にとんでもない魔物が出てさ何とか逃げてきたんだ。 |
ミリーナ | え ! ? イクス、大丈夫 ! ? 怪我は ! ? |
イクス | いや、俺は平気。でも祖父ちゃんがちょっと足をやられてさ。俺が鏡士の力を使えれば祖父ちゃんに怪我させなくてすんだのに……。 |
イクス | なんで祖父ちゃん鏡士の仕事を嫌うんだろう……。 |
ミリーナ | イクスなら素質があるからすぐ鏡士の力を使えると思うってフィルも言ってたわ。 |
イクス | ……ちょっと試してみようかな ?魔鏡が使えたら、漁に出るのも楽になるし。 |
イクス | 魔鏡の力を使えるのを見たら祖父ちゃんも鏡士になるのを認めてくれるかも……。 |
フィリップ | ――二人ともお待たせ……――ミリーナ ! ?イクス ! ? どうしたの ! ? |
ミリーナ | イクスの力が暴走して……止められないの !私が、私が余計なことを言ったから―― |
フィリップ | 大丈夫、ミリーナ。僕の守護魔鏡を使えば止められる ! |
ミリーナ | えっ ! ? |
フィリップ | 僕の鏡士としての力を弱める封印なんだ。これを使えばきっと―― |
ミリーナ | 駄目よ、フィルは体が弱いからわざと力を弱めているんでしょう ? |
フィリップ | でもこのままじゃイクスが死んじゃうよ ! |
ミリーナ | ――わかった。でも、私にやらせて。バックファイアを受けるのは私だけでいいから ! |
フィリップ | ミリーナ ! ? |
ファントム | ……あの時割れた守護魔鏡を使ってくると思っていたがまだミリーナが持っているのか ? |
イクス | ――やっぱりここにいたか、ファントム ! |
ファントム | ……遅かったですね、イクス。もう少し頑張るかと思っていましたよ。 |
ミリーナ | 遅くなんかないわ。ここであなたを仕留めて世界の造り直しを止めてみせる。 |
ファントム | カレイドスコープがあの状態で ? |
カーリャ | ミリーナさま ! ?カレイドスコープが壊れてます ! ? |
ファントム | カレイドスコープにはアニマをかき集めるために無理をしてもらいました。 |
ファントム | 私が造る新たな世界は私が研究して生み出した新たなカレイドスコープを使います。 |
イクス | チェスターが持ってきたあの図面の……。 |
ファントム | 新たなカレイドスコープがどこにあるかあなた方には永遠にわからないでしょう。――ミリーナを捕らえろ ! |
ミリーナ | ! ? |
イクス | ――やらせるかっ ! |
チェスター | ――イクスッ ! どけっ ! |
救世軍兵士 | ぐぉっ ! ? |
クレス | チェスター ! ? |
ファントム | ――何 ! ?幻影魔獣化されて、まだ動けるのか ! ? |
チェスター | 色々あったんだよ。お前に説明する義理はねぇがな ! |
チェスター | クレス、悪かった。後でちゃんと謝らせてくれ。 |
クレス | 当然だ。でも今は―― |
チェスター | ああ ! ファントムを仕留めるぞ ! |
ファントム | くだらないことを !お前たちが守ろうとしているのはつぎはぎの幻。 |
ファントム | 私と同じ――いやそれより下劣な女の嘘で造り出された砂上の楼閣だ !そんな虚飾を何故守ろうとする ! ? |
ファントム | 嘘にまみれた世界に無理矢理生み出されたことを憎いとは思わないのか ! ? |
アスベル | それでも俺たちはここに存在している。存在した以上消えても構わないなんて思えないさ。 |
エミル | たとえ嘘の存在でもここまで旅をしてきた事実は覆らないよ。 |
マルタ | そうだよ。あんた、ちょっと女々しいんじゃない ! ? |
アーチェ | ホントホント。つぎはぎでも何でもいいじゃない。何もかも消えちゃうよりさ。 |
スタン | 自分が生み出されたことが憎いならどうしてさらに世界を造り替えようなんて考えるんだ。 |
ファントム | 私は――私は私を私として受け入れる世界を造るだけだ。 |
ファラ | どうして ? あなたが嘘だと言ったこの世界を壊そうとしなければ誰もあなたを拒絶しないんじゃないの ? |
ファントム | 異世界の人間に何がわかるか。 |
エドナ | その態度がいけないんじゃない ?受け入れて欲しいくせに、他人にばかり望みをかけるなんて単なる甘えね。 |
ファントム | 他人になど期待してはいない。だからこそ私は私の望む世界を造る。 |
ファントム | どうせこの世界はとうの昔に滅び具現化ではない元の世界などほんの一握りしか残っていない。 |
ファントム | 幻と幻を重ね合わせたところでミリーナが嘘で覆った世界の本質は何も変わりはしない。 |
ミリーナ | …………。 |
イクス | 確かにこの世界はミリーナが造り出したものかも知れない。でもそれはミリーナの贖罪の気持ちだ。 |
イクス | どんな手段を使ってでもこの世界を残したいと思ったミリーナの気持ちが俺にはわかる。 |
イクス | 俺のためにミリーナが追い詰められてしまったことも……。 |
イクス | だから、憎むなら俺を憎め !俺がその嘘を真実に変える ! |
キャラクター | 2話【14-16 カレイドスコープ前2】 |
ファントム | ……は……はは。それで勝ったつもりか ! ?同一存在が共有するものが記憶と鏡精だけだとでも思ったか ! ? |
二人 | ! ? |
ミクリオ | まさか、命そのものすら共有するのか ! ? |
コンウェイ | だとしたらやっかいだね。 |
エリーゼ | この人を倒すためにもう一人のフィリップさんも倒さなければいけないんですか ? |
リアラ | ……そうなのかも知れない。同じ魂が同じ時間に存在しているのなら―― |
リオン | …………。 |
ジューダス | いや、そんな筈はない。なら【僕】は―― |
ファントム | 貴様らと私は違う。私は特別なのだ。 |
ファントム | そして今度こそ、フィルだけを受け入れるゲフィオンと彼女が望む世界をここに―― |
? ? ? | そうはいかないよ。 |
ファントム | ――き、貴様は…… ! ? |
フィル | 歪みがもたらした副作用―― |
フィル | ファーストサンプルであるフィリップとリーパの間でだけ起きたアニマ結合現象を断ち切りに来たんだ。 |
ファントム | そうか、守護魔鏡はお前たちが―― |
フィル | さよならだよ、二人目の僕 ! |
二人 | アニマ・デコード ! |
ファントム | ぐぅぁあああああああっ ! ? |
ライフィセット | え ! ? だ、誰 ? 何が起きたの ! ? |
ユリウス | 今のは魔鏡術か ? |
フィル | ちょっと予定とは違ったけど何とか上手くいったよ、チェスター。 |
チェスター | そうみたいだな。オレが鏡片を持っているふりをしてファントムを引きつける手はずだったが……。 |
イクス | フィル…… ? どういうことだ ?俺が死んでから15年経ってるんだろ ?だったらフィルは35歳の筈なのに……。 |
フィル | そうだね、イクス。でも僕は三人目だから。 |
イクス | ! ? |
ゲフィオン | 同一時間に同一存在を具現化すると具現元と具現化体の間で記憶が共有される。 |
ゲフィオン | だからビクエ――いやフィリップはファントムと記憶を共有しないもう一人の自分を造り出した。 |
ゲフィオン | アニマの力を弱める守護魔鏡を使ってファントムのアニマの力を弱めるために。 |
フィル | これで、ファントムはビクエとのアニマ共有能力が弱まった。もうアニマを回復することはできないよ。 |
イクス | フィリップは――ビクエの方のフィリップはどこにいるんだ ? |
フィル | アルヴィンとアルヴィンの仲間が匿ってくれてる。 |
レイア | アルヴィン ! ? 仲間 ! ?アルヴィンってば、どこで何をしてるの ! ? |
アリーシャ | ――いや、待て ! ファントムが ! ? |
ファントム | ……死ぬ……私が…… ?ふ……ふははははは……。 |
ファントム | 認めてたまるものか !絶望を味わうのは貴様らだ ! ! |
ファントム | お前たちが守ろうとした嘘の世界は……私が死の砂嵐の向こうに……連れて……行く……。 |
ティア | カレイドスコープの様子が変だわ ! |
ミラ=マクスウェル | この世界に満ちるエネルギーがカレイドスコープの元に集まっているのを感じるぞ。 |
イクス | ファントムが壊れたカレイドスコープに何かしたのか…… ? |
アイゼン | ――簡単に事が片付く訳がないってことか。死神の呪いは健在だな。 |
ゲフィオン | ……いや、ここから先は私に任せよ。 |
ゲフィオン | 確かに手順は狂ったがファントムは結果的に世界中のアニマを集めてくれた。私の望んだ通りに。 |
ゲフィオン | ――ガロウズ、頼む。 |
ゲフィオン | 見たところ、壊れて暴走し始めているがまだサーチは可能な筈だ。サーチさえできれば後は私が―― |
ガロウズ | ――ゲフィオン様……。……わかりました。 |
ガロウズ | 照準ロック完了。対象ゲフィオン……いや、ミリーナ・ヴァイス。アニマ・サーチ開始 ! |
二人 | ! ? |
エル | 大変だよ、みんな ! ! |
マリアン | オーデンセ跡から金色の光の粒がそちらに向かって行きます ! |
クレア | あれは死の砂嵐と呼ばれているものじゃないでしょうか ! ? |
デミトリアス | ――間に合わなかったか ! |
イクス | な、何ですか ! ? 陛下 ! ? |
デミトリアス | 彼女は……世界を虚無から救うために虚無を広げる原因である死の砂嵐を体内に取り込もうとしているのだ。 |
イクス | そんなことが可能なんですか ! ? |
ゲフィオン | う……うぅ……ウォォオオォォォ ! ? |
ルドガー | ゲフィオンの体が変質していく…… ! ? |
レイヴン | ちょっとちょっとこれはまずいんじゃないの ! ? |
フィル | イクス ! ミリーナ ! ゲフィオンを……もう一人のミリーナを助けて ! |
フィル | 死の砂嵐の正体はアニマを失った世界や人々の欠片なんだ。みんな全ての原因であるミリーナを恨んで狂わせようとしている。 |
フィル | ミリーナのアニマを奪って壊そうとしているんだ ! |
イクス | 助けるって、どうすれば ! ? |
フィル | 今のゲフィオンは光魔と同じなんだ。光魔も滅びた世界と人々の欠片がアニマを求めて変質したもの。 |
フィル | だから暴れる彼らを鎮めればゲフィオンのアニマが力を取り戻す ! |
ジェイド | つまり、戦えと言うことですね。 |
イクス | わかった ! |
キャラクター | 3話【14-16 カレイドスコープ前2】 |
ミリーナ | ……虚無は消し去りようがありません。虚無こそが二つの島しか残らなかったこの世界をかろうじて守っている鎧です。 |
デミトリアス | しかしミリーナ。虚無は世界を消滅させようとしているのだろう。 |
ミリーナ | 正確には、カレイドスコープによって滅びた存在たちの欠片――死の砂嵐が世界を解体し、虚無へ変えているのです。 |
デミトリアス | あの光る砂のような粒子たちか……。 |
ミリーナ | ですから、あの死の砂嵐をアイギスの中に閉じ込めようと思います。 |
デミトリアス | アイギス…… ? 今、虚無から世界を守っている防衛システムのことか ? |
ミリーナ | ええ。ですがあれは仮の盾に過ぎません。死の砂嵐はアニマに引き寄せられる。 |
ミリーナ | ですから人の体を魔鏡化してその中に死の砂嵐を閉じ込めます。 |
ミリーナ | その人体万華鏡こそが真に世界を守るアイギスです。 |
フィリップ | ――まさか、ミリーナがアイギスになるつもりか ! ? |
デミトリアス | ! ? |
ミリーナ | 私は世界を滅ぼした悪魔です。人々と世界の怨嗟を受け入れるのは私の仕事。これをアイギス計画とします。 |
フィリップ | そんなことは認めない ! |
ミリーナ | 認めてもらわなくてもいいわ。 |
フィリップ | 第一アニマもキラル分子も足りないぞ。仮に人間を魔鏡化するとしてもそれなりのエネルギーが必要だ。 |
ミリーナ | 異世界からの具現化で世界に新しい大陸と命を生み出す。そしてその異世界からの力をカレイドスコープを使って変換する。 |
フィリップ | それには魔鏡が足りない。イクスの形見の魔鏡と同じ物がもう一枚―― |
フィリップ | まさか……。 |
ミリーナ | 巻き込みたくはなかったけれどイクスの力を借りるわ。 |
フィリップ | 三人目だぞ。 |
ミリーナ | もう一人の私はまだ生きている。私と記憶を共有する彼女がイクスを守るわ。 |
ミリーナ | ……今……ゲフィオンの記憶が……。イクス、ゲフィオンは生きながらアイギスになるつもりなのよ……。 |
イクス | ! ? |
ゲフィオン | ようやく終わる。これでアイギス計画は完了するのだ。 |
ゲフィオン | ――さようなら……。大好きだった……イクス……。 |
イクス | ミリーナ ! ? |
カーリャ | くぅ……う……。苦しい……。ゲフィオンさまの心が……悲鳴を……上げています……。 |
セネル | おい、ゲフィオンの体からこぼれてるのは死の砂嵐じゃないのか…… ! ? |
フィル | ――そうか。ファントムが必要以上の具現化を繰り返したから、死の砂嵐に融合の魔鏡術の性質が付加されてるんだ。 |
ミリーナ | 私の魔鏡術は想像……。融合の魔鏡術には弱いわ。このままじゃ……。 |
ヴェイグ | さっきファントムの力を弱めた守護魔鏡なら力を弱められるんじゃないか ? |
フィル | これを使うとミリーナの力まで弱めてしまうから……。 |
デミトリアス | 死の砂嵐が封じきれなければ、世界は―― |
ミリーナ | だったら私がゲフィオンに力を貸すわ ! |
イクス | いや、ミリーナ。もっといい方法がある。 |
ミリーナ | え ! ? |
ミリーナ | ! ? |
イクス | 俺が、ミリーナの嘘を真実に変える。創造の魔鏡術で。 |
フィル | 創造の魔鏡術は融合術に勝る……。だけど……。 |
ミリーナ | 駄目よ ! 私……私たちはイクスとイクスの世界を守りたかったのにそんなの―― |
イクス | (――あの時暴走させたオーバーレイ。あれを敢えて引き起こす) |
イクス | (その暴走の力で、魔鏡の檻を造って俺とミリーナごと死の砂嵐を閉じ込める) |
イクス | 魔鏡技 !スタック・オーバーレイ ! ! |
イクス | ごめん、ミリーナ。ごめん、みんな。コーキス、後は……頼むぞ……。 |
コーキス | 嫌だ ! 嫌だ嫌だ嫌だ ! |
ミリーナ | イクス――――っ ! ! |
| その日ティル・ナ・ノーグ全土に広がった魔鏡暴走は鏡殻変動と呼ばれ世界の姿を大きく変えてしまったのだった。 |