キャラクター1話【回想】
聞こえる――マスターの悲鳴が。死の砂嵐から世界を守る砂防堤となった苦しみが。
俺は鏡精。鏡士の心が具現化して人格を与えられた、造られた存在。
俺は知っている。俺がこうして存在し続けられる限りマスターもまた生きているのだと――
イクス魔鏡技 !スタック・オーバーレイ ! !
イクスごめん、ミリーナ。みんな。コーキス、後は…頼むぞ…。
コーキス嫌だ ! 嫌だ嫌だ嫌だ !
ミリーナイクス――――っ ! !
カーリャあ ! ?イクスさまの周りに水晶みたいな鏡が… ! ?
ミリーナ……魔鏡結晶 ! ?――う…、何…アニマ酔いが…。
カーリャミリーナさま ! ?
コーキスカーリャ先輩、落ち着け !ミリーナ様は俺が運ぶ。この場所はもう保たない。逃げるぞ !
カーリャコーキス ! ? え ! ? なんで、そんな姿に――
コーキス話は後だ ! 行くぞ !
コーキス……セールンドの街は完全に魔鏡結晶で覆われちまったな。
カーリャコーキス……。どうなってるんですか ?
コーキスこの姿か ?
コーキス俺にもよく分からねぇけどマスターの力を感じるんだ。今までよりずっと強く。
カーリャでもイクスさまは……。
ミリーナ――イクスは ! ?
コーキスミリーナ様……。
ミリーナ――もしかして、コーキス ?
コーキスそ、そうです !
ミリーナ……ということは、イクスとゲフィオンを包み込んだあの魔鏡結晶は、やっぱりイクスの魔鏡暴走で生まれたものなのね。
カーリャどういうことですか ?
ミリーナイクスは……生きているんだわ……。イクスの力が魔鏡結晶で増幅されてそれでコーキスが大人の姿になったのよ。
コーキス……ミリーナ様。魔鏡結晶が広がり続けています。この島にいるのは危険です。
ミリーナわかったわ。ケリュケイオンに戻って――
コーキス駄目なんです。ケリュケイオンも魔鏡結晶に貫かれて動きません。
カーリャどうしましょう。船を探すにしてもかなりの人数を乗せられる船でないと……。
コーキス港は救世軍に抑えられているだろうな。くそっ……。
ミリーナ……鏡界を造るわ。
コーキス鏡界 ? それは一体何ですか ?
ミリーナ想像の魔鏡術の奥義の一つよ。鏡界という仮想空間を造り出して維持するの。そこへみんなで逃げ込みましょう。
ミリーナ私には制御が難しい術だけれど、今の私はゲフィオンの記憶も持っているからやり方はわかるわ。
ミリーナそれにイクスが暴走させた魔鏡の結晶が私の力を補佐してくれる。
ミリーナ仮想鏡界、展開――
――一ヶ月後
鏡界の拠点
カーリャコーキス。見つけましたよ。こんなところで油を売ってる場合ですか ! ?
コーキスうるさいなぁ、先輩は。
カーリャうるさいとはなんですか !カーリャだって頑張ってるんですよ !
カーリャこの鏡界を維持するのもカーリャの仕事だし、ガロウズさんの仕事も代わりにやらなきゃだし !
コーキス……ガロウズさんどこに行っちまったんだろうな。
カーリャですね……。一ヶ月前のあの日――鏡殻変動の時にはぐれたきりで……。
カーリャやっぱりアスガルド帝国か救世軍に捕まってるんでしょうか。
コーキスアスガルド帝国か……。何なんだよ、あれ。いきなりオーデンセのあった場所に新しい島を造ってさ。
コーキス古のアスガルド帝国の復活だとか言い出して――
ミリーナそうね。あのデミトリアス陛下が突然そんなことを言い出すなんて狐につままれた気分だわ。
コーキスミリーナ様 ! ? す、すみません……。掃除さぼって……。
ミリーナあら、さぼっていたの ?
コーキスあ、いや……えっと……。
カーリャミリーナさま……これから私たちどうなっちゃうんでしょう。
カーリャイクスさまの力が暴走してできた魔鏡結晶が世界中に広がってるし、光魔の鏡はないのに何故か光魔は湧き放題です。
カーリャアスガルド帝国は鏡殻変動をミリーナさまのせいだなんて言ってるし……。
ミリーナ私のせい――というのはある意味では正しいわね。
ミリーナゲフィオンの人体万華鏡が機能していればイクスに魔鏡暴走を引き起こさせることもなかった……。
カーリャそんなのミリーナさまのせいじゃありません !
ミリーナ……ありがとう、カーリャ。コーキス、さぼっちゃ駄目よ ?
カーリャミリーナさま、何か用だったんじゃ……。
ミリーナ二人の様子を見に来ただけよ。それじゃあね。
二人………………。

キャラクター1話【回想】
聞こえる――大地の軋む音が。人々の怨嗟の声が。
あの場所は永遠の鏡の檻。イクスと過去の私が死の砂嵐と共に眠る場所。
だけど私は決めている。たとえ世界の全てを敵に回しても必ずあの鏡の檻を打ち破ると。
アスガルド帝国首都イ・ラプセルエリジウム宮殿
ミトス…………。
ミトス(本当に、これで良かったの ? )
???ミトス、やっぱりここにいたんだ。マーテルさんが捜していたよ。
ミトス……ありがとう。フィリップ――じゃなくてジュニアって呼べばいいんだっけ ?
???うん。フィリップって奴が三人もいるから混乱するって、メルクリアが……。
ミトス一人目がフィリップ、二人目がファントム三人目がジュニアか。でもいいの ?自分の名前を変えられて。
ジュニアあはは、まぁ、仕方ないよ。それより体はもう大丈夫 ?幻影融合はアニマを傷つけるから……。
ミトスうん、大丈夫。うかつだったよ。魔鏡術には疎いから、ファントムの計画に気づくのが遅れちゃって。
ミトスこれじゃ、人のドジのことを笑えないね。
ジュニアでも、幻影化が解けた後、チェスターにアニマを分けてあげたんでしょ ? それでミトスたちは回復が遅れたんだし……。
ミトスアニマを ? ―ああ、マナを分ける作業をそう呼ぶのか……。エンコードって便利だけれど困ることも多いね。
ミトス正確にはアニマを分けた訳ではないと思うんだけど……どう説明したらいいのかな。生命力を分けたって感じかもね。
ジュニアそんなことができるなんてミトスの世界の技術はすごいね。
ジュニアそのおかげでチェスターはすぐに動けるようになって僕らに合図を送ってくれた。
ジュニアだからファントムを止められたんだ。本当にありがとう、ミトス。
ミトスううん……。でもあれから大変だったね。
ミトススタック・オーバーレイの余波に巻き込まれてみんなセールンドのお城から逃げ出すので精一杯だった。
ジュニアメルクリアの助けがなかったら危なかったね。
ミトス……メルクリア、か。
ジュニアミトスはメルクリアが嫌いなの ?
ミトス…………。
ミトス(自分を見ているようで……反吐が出るなんて言ったら、ボクはボクであることをやめることになる)
カイウスジュニア ! おっと、ミトスもいたのか。丁度いい。救世軍が動き出したらしい。オレとシングで様子を見てきていいか ?
ミトス――ボクも行こうか。
カイウスお前もかよ。リヒターもアステルが止めてくれなきゃ一緒に来るつもりだったし。
カイウスもう少し休んでた方がいいと思うぞ。ディストの奴を見習ってさ。
ミトスあいつ、一番ぴんぴんしてたのにまだ寝てるの ! ?
カイウス丈夫なんだかひ弱なんだか訳わからないよな。
ジュニア出撃のこと、フレンには伝えた ?
カイウスああ、伝えてある。オレ行くぞ。
ジュニア気をつけて。それから――なるべく相手を傷つけないで。
カイウスああ、わかってるよ。そっちも無理するなよ !
ミトスジュニア。この世界は、これからますます混乱するよ。
ジュニア……そうだね。でも僕は……僕らはメルクリアの元から離れられない。
ミトス……離れた方がもっと混乱を引き起こすから ?
ジュニア…………。
ミトスだから……鏡映点は殺すべきだった、のかも知れないね。
ミトス今考えると、そこまで計算してファントムとフィリップを利用していたのかも知れない。……デミトリアスは。
ジュニア……行こう、ミトス。何をするにしてもまずは傷を癒やさないと。
ジュニアマーテルさんも心配してるよ。それにノイシュもね。
ミトス……うん。

キャラクター1話【回想】
コーキスミリーナ様 !
ミリーナコーキス ! ? どうして……。
コーキスカーリャに言われたんです。ミリーナ様が何かを隠してるって。
コーキスこのところ、ミリーナ様は一人で情報収集に出て行くから今回もそうじゃないかと思って。
ミリーナ……カーリャは私の鏡精ですものね。何を考えているかまではわからなくても心が揺れていることはわかっちゃうのね。
コーキス単独行動はやめて下さい。
コーキスみんな心配してますよ。最近のミリーナ様は一人で思い詰めてるんじゃないかって。
ミリーナそんなことないわ。
ミリーナ……ただ、私たちがこれからどうしていくのかを決めるには情報が必要だと思って。
ミリーナそれに鏡映点の人たちがこの世界で暮らしていくための環境も整えてあげないと……。
コーキスだったらその話をみんなにしてみんなで問題を解決していけばいいじゃないですか !
ミリーナそうね……。でも駄目よ。今から私がやろうとしていることは私のエゴだから。
コーキスえ…… ?
ミリーナ救世軍が動き出したみたいなの。そのおかげでアスガルド帝国の目が救世軍に向いた。
ミリーナ今ならセールンドの守備が手薄になっている筈よ。
コーキスまさか……マスターを助けるつもりですか ! ?
コーキス今魔鏡結晶を破壊したら死の砂嵐が外に流れ出ますよ ! ?
ミリーナそうね……。でも構わないわ。イクスを助けるためなら。
コーキスそんなのミリーナ様じゃない !
ミリーナいいえ。イクスのためなら何でもできるの。イクスはいつだって私を守ろうとして私のせいで命を落としてきた。
ミリーナだから私は、イクスを救いたい。そのためには――
ミリーナ世界だって滅びても構わない。それが【私】だったのよ。
コーキス……嘘だ。それならあの時――マスターを助けるために魔鏡結晶を壊していた筈だ !
ミリーナそのつもりだったわ。でもその前に私は気を失ってあなたに外へ連れ出されてしまった。
ミリーナあれからセールンドはアスガルド帝国に封鎖されて、誰も立ち入ることができなくなってしまったわ。
ミリーナだから私は機会をうかがっていたのよ。
コーキス…………。
コーキスマスター。こんな夜中に何してるんだ ?
イクス……勉強だよ。魔鏡術のこととか、色々さ。
コーキスもしかして最近図書室に閉じこもってるのもその勉強のせいなのか ?
イクスまぁな。最近、ミリーナが何か隠してて……でも俺には話してくれなくてさ。俺じゃ頼りにならないのかなって。
コーキス心配かけたくないからじゃないのか ?
イクスうん、わかってる。だけどミリーナって何でも一人で解決しようとするところがあるんだ。
イクス俺にもそういう所があるけど、それって結局怖いからなんじゃないかなって思うようになって……。
コーキス怖い ? 何が ?
イクス信じることが、かな。信じるって凄いことだと思うんだよ、俺。
イクス誰かや何かを本当に信じることができたとき人は凄い力を出せるんじゃないかって鏡映点の人たちを見て思うようになってさ。
イクスでも誰かに信じて欲しいならまず自分が自分を信じられるようにならなきゃなって。
イクス俺、色々あったから、どうしても自分を素直に信じるのが怖いんだ。だからもっと強くなろうって思ったんだよ。
コーキスそれで勉強かよ ! ?マスターってズレてるな。剣とか練習した方がいいんじゃないか ?
イクスはは、強さにも色々あるんだって。俺は俺のできることをやってるんだ。いざというときのためにさ。
イクスあ、みんなには言うなよ。なんか恥ずかしい……。
コーキス(今になってマスターの言ってたことがわかる気がする。信じるって怖い。でも――)
コーキスミリーナ様。俺も一緒に行かせて下さい。
ミリーナ私の邪魔をするつもりなら……。
コーキス――邪魔はしません。でも、俺はマスターから託されたんです。この世界の未来とみんなを。
コーキスそれにミリーナ様のことも。だから、一緒に行かせて下さい。
ミリーナ……わかったわ。
聞こえる――大地の軋む音が。人々の怨嗟の声が。
ここは永遠の鏡の檻。死の砂嵐をここに【スタック】させるしか今は世界を守る術がない。
でも俺は信じている。【みんな】が未来をたぐり寄せてくれることを――

キャラクター2話【1-1 ひとけのない草原1】
コーキスここはセールンドのどのあたりになるんですか ?
ミリーナセールンドの街から北の街道よ。
ミリーナ街の中に転移できれば良かったんだけど魔鏡結晶の多いところには転移ゲートを作れないの。
コーキス帰る時も同じゲートを使わないといけないんですよね。
ミリーナ基本的にはね。
ミリーナ転移先の安全を確保しなければいけないから好きな場所から行き来する……という訳にはいかないのよ。
コーキス魔鏡通信も使えなくなったんですよね。
ミリーナそうね……。魔鏡結晶と魔鏡通信が干渉してノイズが発生してしまうみたいなの。
ミリーナただ私とカーリャは連絡が取れるからいざというときはそれを使っていくしかないわね。
コーキスカーリャ先輩がむくれてましたよ。自分もミリーナ様と一緒に行きたいって。
コーキス俺も気持ちはわかります。鏡精はマスターのそばにいるのが普通ですし。
ミリーナそうよね……。私もカーリャがいなくて寂しいわ。
ミリーナでも仮想鏡界を維持するためにはカーリャに残っていてもらわないと。
ミリーナコーキスも……イクスと離れていて寂しいわよね。
コーキス……はい。それに不思議な感じです。マスターがそばにいないのに自由に動けるなんて。
コーキスこれも世界中の魔鏡結晶からマスターの力があふれているからですよね。
コーキスマスターが守ってくれてるんだって思います。この世界も俺のことも。
ミリーナ……ええ。イクスの力のおかげよ。
コーキス――ミリーナ様、今の鳴き声は……。
ミリーナ光魔だわ。しかも数が多い……。
コーキスミリーナ様、下がってください。俺が――
ミリーナ大丈夫。戦えるわ。
ヴェイグ――だが、あれだけの数だ。オレたちも協力する。
コーキスヴェイグ様とジュード様それにキール様とメルディ様も ! ?
ジュード話は後だよ。まずは光魔を片付けよう !

キャラクター3話【1-1 ひとけのない草原1】
ミリーナみんな……。どうしてここに……。
ヴェイグオレたちもオレたちなりに鏡殻変動以後の世界情勢を調べていた。
キール情報を精査したところ、アスガルド帝国側にはぐれ鏡映点らしき存在が複数いる可能性が高くなった。
ジュード僕やユーリの仲間もアスガルド帝国にいる可能性が高いんだ。それでイ・ラプセルに潜入しようってことになったんだよ。
ジュードでも、カーリャに転移を頼もうとしたらカーリャの様子がおかしかったからちょっと……問い詰めたんだ。
メルディジェイドとリオン、カーリャ囲んだよ !
コーキスうぇ……。その二人じゃカーリャ先輩なんか太刀打ちできねぇや……。
ジュードア、アハハ……それで手分けすることにしたんだ。イ・ラプセル潜入組とミリーナたちを追いかける組にね。
キールぼくは来るつもりはなかったがメルディが……。
メルディミリーナ、思い詰めてた。みんなすごく心配してる。
ヴェイグああ。イクスの元に行くのなら何故みんなに知らせないんだ ?
ミリーナ……私が自分の我が儘でイクスに会いに行くだけだから。
ジュードミリーナ。君がそんな理由だけでセールンドに行くなんてみんな信じないよ。
ジュードミリーナは頭のいい人だから。
ミリーナ……みんなに迷惑はかけないわ。約束します。必ずいい結果を出すわ。だから……私を一人で行かせて。
キールイクスの代わりになるつもりか。
ミリーナ…………。
ジュードやっぱり……。イクスが自分の代わりに死の砂嵐を防いでくれたと思ってるんだね。
コーキス待ってくれ。ミリーナ様だってマスターがどうしてあの時スタック・オーバーレイを起こしたのかをわかってる筈だ。
ミリーナコーキス……。
メルディコーキスも知ってるか ?イクスがメルディたちに託したモノ。
ミリーナ……え ?
コーキス託したもの…… ?いや、俺はそのことはよく知らないよ。
コーキスでも俺はマスターの鏡精だから、マスターが何を願っていたかはわかる。マスターはミリーナ様を守りたいんだ。
コーキスだから俺もマスターと同じようにミリーナ様を守るし、ミリーナ様も自分を大事にしてくれるって信じてる。
ジュードそうか……。コーキスはイクスの心と繋がっているんだものね。
ジュード僕たちはイクスの心の中まではわからないけど、それでもイクスが何をしてきたのかは突き止めたよ。このメモを見て。
コーキスこれは…… ?難しそうな名前が書いてあるけど……。
ミリーナこれ……魔鏡術の関連書籍のタイトルだわ……。
キールそれはイクスが図書室で読んでいた本だ。
ジュード借りた本を貸し出しノートに記入するルールを作っておいてよかったよ。
ジュードおかげでカノンノがタイトルの関連性に気づいたんだ。
ミリーナこれは……スタック・オーバーレイの制御と統合を学ぼうとしていた…… ?
キールその通りだ。
キールここに書かれていた本を読んでいたならイクスはスタック・オーバーレイの制御と暴走の結果を熟知していた筈だ。
ミリーナそうだとしても――
ジュードイクスはミリーナの身代わりになった ?それは違うよ。
キールあの時、融合の性質を帯びた死の砂嵐を食い止められる可能性が最も高かったのは創造の魔鏡術の血筋であるイクスだった。
ミリーナそれでも私はイクスを魔鏡結晶の外に出してあげたい !今なら準備ができているわ。
ミリーナこの一ヶ月私が組み上げた人体万華鏡の補強術を使えば、死の砂嵐を食い止めてイクスを助け出せる !
コーキスそれは……ミリーナ様もゲフィオン様と同じように魔鏡化して生きながら死ぬってことですか ?
コーキスマスターが命がけでミリーナ様を守ろうとしたのに ?
コーキスゲフィオン様のことでカーリャ先輩がどんな思いをしているのかミリーナ様にも分かっている筈なのに ?
ミリーナ! !
ヴェイグ立場は違うが……ミリーナの気持ちはオレにも察することはできる。
ヴェイグどんなことをしてでも助けたいせめてそばにいたい――そんな気持ちなんじゃないか。
ヴェイグだがミリーナがやろうとしていることは同じ苦しみをイクスに背負わせることに繋がる……。
メルディカーリャも、つらい思いするよ。
ジュードミリーナ。思い出して。イクスは何て言ってた ?
ミリーナ「ごめん、ミリーナ。みんな」って……。
ジュードその後だよ。イクスはこう言ったんだよね。「コーキス、後は頼む」って。
ジュードコーキスはイクスの鏡精だよ。鏡精は鏡士が消えたら一緒に消える。それなのに「後は頼む」って言ったんだ。
ジュードイクスは全部計算していたんだよ。そしてあの場を救える一番成功率の高い方法をはじき出した。
キールイクスはスタック・オーバーレイで魔鏡術を人体が耐えうるギリギリまで重ね合わせた。
キールそして自分が魔鏡になるのではなく魔鏡――魔鏡結晶の中に自分が入ることで死の砂嵐の砂防堤になる選択をした。
キール永久に死の砂嵐を食い止めるならゲフィオンのように自分が魔鏡そのものになれば確実なのに、それを選択しなかった。
コーキス――そうか……。信じてたんだ。俺たちが死の砂嵐を無くす方法を見つけてマスターを助け出すって。
ミリーナ! !
ヴェイグ……だから「ごめん」なんだな。オレたちに面倒な課題を押しつけることになるから。
コーキスすみません、ミリーナ様。
コーキス俺マスターに託されたのに……マスターを信じてたのに、マスターに信じられてるって本当の意味ではわかっていなかった。
ミリーナどうして謝るの……。私……私が……いつまでもイクスのこと守らなきゃいけない存在だって思い込んでて……。
ミリーナ私が私がって……。私はただイクスを助けたいとしか思っていなかった。イクスの気持ちのこと後回しにしてた……。
ミリーナ――イクス……っ !
メルディミリーナとイクスが、本当に心繋がった ?
ミリーナメルディ……。うん……うん……。多分、私、やっとイクスと同じところに来られたんだと思う……。
ミリーナメルディたちと出会った時の私たちはまだ本当の意味でお互いのことをわかっていなかったんだって……。
ミリーナやっと……わかった。

キャラクター4話【1-2 ひとけのない草原2】
ヴェイグ……落ち着いたか ?
ミリーナ……ええ。ごめんなさい。私……涙が止まらなくて……。
ミリーナでももう大丈夫。ちゃんと冷静になってこれからのことを考えなくちゃね。どうやって死の砂嵐を食い止めるか。
ミリーナ私……この一ヶ月、ただイクスを助けることしか頭になかったから。
メルディみんなで考えればきっといい方法見つかる ! へーき !
ジュードうん、そうだね。それじゃあいったん仮想鏡界に戻ろうか。
コーキス…………。
メルディコーキス、どうかしたか ?
コーキスえ ? あ、いや、何でもないよ。俺、まだまだだなって。
コーキスもっとマスターの鏡精……として頑張らないとなって。
ミリーナコーキス。私のことを信じようとしてくれていたのに、騙すような真似をしてごめんなさい。
コーキスいや、そんなことありません。俺がまだまだ未熟なだけです。
コーキス(マスターも言ってた。信じるって難しいって)
コーキス(俺はとりあえずミリーナ様の判断を盲目的に信じて、きっとわかってくれるって簡単に思ってたんだ)
コーキス(違うんだ。信じるって……。でも――)
コーキス(カーリャ先輩もミリーナ様が何をしようとしていたのかはっきりとはわからなかった)
コーキス(ゲフィオン様とミリーナ様が同じ存在だってことも気づかなかった)
コーキス(鏡精はマスターの本当の心を感じ取れると思っていたけど……。マスターは鏡精を【謀れる】んじゃないのか…… ? )
ヴェイグ気をつけろ ! 新手だ !
???……無駄だ。
コーキス誰だ ! ?
???誰でもいい。それより君たちが黒衣の鏡士とそのしもべたちか。
キールおい、いつからぼくたちはしもべになったんだ ! ?
???呼び方など何でもいい。どうせここで潰える運命だ ! 行け、光魔 !
コーキスくそっ ! やらせるか !

キャラクター5話【1-5 草原での連戦3】
メルディなんで ! ?倒してもキリない ! 光魔が増えるよ ! ?
コーキスせめて転移ゲートまで戻れれば……。
ジュード待って !あの金髪の男が右手に持つ石…。あれが光る度に光魔が増えてるみたい。
ミリーナ魔鏡結晶を加工したものかも知れないわ。
ミリーナ光魔の性質上、光魔の鏡のような虚無とこの世界を結ぶ装置があればこちらに出てくるのは簡単な筈よ。
キール大晶霊がいれば…… !セルシウスの力で足止めできるのに。
ヴェイグセルシウスか。確か氷の精霊だったな。それならオレの氷のフォルスで敵を足止めしてみよう。その隙に――
コーキスあの男から光る石を奪うんだな。その役目、俺に任せてくれ !
ジュード僕もフォローする。頼むよ、コーキス。
ヴェイグ――行くぞ !
???――何 ! ?
コーキス今だ !
コーキスな――誰だ ! 邪魔をしたのは ! ?
イクス ?……隊列から離れて余計なことをするな。
コーキスえ…… ! ?
ミリーナイク……ス…… ? 嘘…… ?
イクス ?……退くぞ、チーグル。イリアの輸送隊と合流する。
チーグル黒衣の鏡士を殺さなくていいのかい ?
イクス ?放っておけ。それより行くぞ。
ヴェイグ待てっ !――くっ、光魔が邪魔で追いかけられない !
コーキスいったん光魔を殲滅しよう。あの男がいなければこれ以上光魔は増えない筈だ !

キャラクター6話【1-6 草原での連戦4】
キール何とか光魔を一掃できたな……。それにしても……。
ミリーナ……気を遣わないで。あの人は確かにイクス……にそっくりだったわ。
ヴェイグどういうことだ ? イクスは魔鏡結晶の中にいるんじゃないのか ?
メルディイクス大人っぽかったな ?
ジュードうん。大人びてた……と思う。雰囲気も……それになんとなく背も大きかったような……。
キール過去の具現化ではない……筈だ。イクスは三人目。過去から具現化できるのは二人まで――
キール……いや、待てよ。未来から具現化……したのか ?
ミリーナいえ、それはまだ理論として確立していない筈。
ミリーナ似たようなことはビフレスト皇国の鏡士が技術を開発していたけれど具現化するには至っていないわ。
ジュードねぇ、スレイとリフィル先生が話していたんだ。
ジュードアスガルド帝国はセールンド王国とビフレスト皇国を支配していたって。それは本当なの ?
キール遺跡マニアめ。異世界の歴史にまで興味があるのか。
メルディキール、もう異世界が歴史違うよ。メルディが世界で、キールが世界。
キールそういえばそうか……。まだ実感が沸かないが……。
キール……ん ? そうか、アスガルド帝国がビフレスト皇国の鏡士の技術を研究している可能性もあるってことか。
ジュードうん。もしこの推測が可能ならあのイクスは――。
ミリーナ……いえ、でもイクスじゃない。何か違う……ような気がする。
ヴェイグコーキスはどうなんだ ?
コーキス……わからない。マスターならわかる……のかも知れないけど、でもカーリャ先輩はゲフィオン様のことがわからなかったから。
全員………………。
ミリーナ――ごめんなさい。私、やっぱりセールンドのカレイドスコープの所へ行ってみるわ。イクスがどんな状態なのか調べたいの。
ジュードうん、そうだね。その方がいいと思う。僕たちも一緒に行くよ。また光魔が出ないとも限らないし。
ミリーナええ……。ありがとう。危険かも知れないけど、お願いします。
キールその前に、光魔について教えてくれ。
ミリーナ
キールお前、光魔について何か知ってるんだな ?
キール光魔の特性と言っていたが、誰もまだ光魔の生態や、何故光魔の鏡から現れるのか検証していない。
キールもしかしたらゲフィオンとしての記憶の中に光魔がどんな存在なのか答えがあったんじゃないか ?
ミリーナ……駄目ね。つい口を滑らせちゃった。
コーキスミリーナ様、まだ隠し事が…… ?
ミリーナそう言われても仕方ないわね。でも……死の砂嵐を封じてしまえば関係ないと思っていたから言わなかったの。
ミリーナ光魔は……私――ゲフィオンがカレイドスコープで消滅させたあらゆる生命体が元になって誕生した存在よ。
ミリーナ専門的に言うと難しくなってしまうけど……カレイドスコープでアニマを失った生物はアニムス粒子になって消えてしまうの。
ミリーナ死の砂嵐の金色の光砂はアニムス粒子の塊なのよ。光魔はアニムス粒子がキメラ結合した生物よ。
コーキスそれってつまり……光魔の元はティル・ナ・ノーグに昔存在していた人間や動物の幽霊――みたいなことですか ?
ミリーナええ。ゲフィオンとしての研究ではそうだった……。ごめんなさい。鏡映点を狙う光魔まで私のせいだったのよ。
メルディ違うよ。ミリーナとゲフィオン違う。
ミリーナ……頭ではわかってるの。でもゲフィオンの記憶が私にはある。私のあり得た過去――そして未来がゲフィオンなんだって……。
コーキスミリーナ様は何もかも自分で背負い込むところがあるってマスターも心配してました。
コーキスそういう考え方はやめましょう。
ミリーナ……そうね。ええ、努力する。すぐには無理かも知れないけれど頑張るわ。
キール……こんなところで聞き出して悪かった。ミリーナが大丈夫なら、注意しながらカレイドスコープの所へ急ごう。
キール魔鏡結晶が世界中に出現しているということは光魔が出やすいということだからな。
ミリーナええ。行きましょう。

キャラクター7話【1-15 カレイドスコープ前】
コーキス――マスター。魔鏡結晶の中にいるな。ゲフィオン様を守るみたいに抱き寄せてる……。
ヴェイグ……まるで氷の中に閉じ込められているみたいだ。
ジュードイクスがここにいるってことはさっきのイクスにそっくりな人は……。
メルディ…… ?
キールどうした、メルディ ?さっきから首をかしげて。
メルディイクス……髪伸びたのか ?
キールいや、そんな筈がないぞ。魔鏡結晶の中は――
キール中はどうなってるんだ ?普通に時間が経過するのか ?
キールもしそうだとしたら餓死したりする可能性もある。
キール――いや、内側は虚無と繋がっているんだから、生命活動は停止するのか。
ジュードえ ? でも髪が伸びているなら停止してないんじゃない ?
ミリーナ……違う。なんとなくイクスの姿がぼやけているわ。もしかしたら魔鏡結晶が内側にも何か影響を及ぼしているのかも。
ミリーナ髪は少し伸び始めているけど排泄が行われていない。単に時間が経過しているんじゃないと思う。
ヴェイグこのままにしておいていいのか ! ?
ジュードだけど無理矢理魔鏡結晶を壊せばイクスにも影響があるかも知れないし死の砂嵐も止められないよ。
ミリーナ上手く言えないけれど、この中のイクスに魔鏡に映された未来や過去のイクスが重なって見えているんだと思うわ。
ミリーナさっきも話したけれど、ビフレストの技術にそういうものがあったの。
ミリーナ魔鏡の性質が暴走しているから、イクスの過去と未来が反射して、ぼやけた像が私たちに見えている……のじゃないかしら。
キールなら、イクスは大丈夫なのか ?
ミリーナわからない。いつか鏡に映ったイクスが魔鏡結晶の中のイクスのアニマを喰ってしまうかも……。
ミリーナスタック・オーバーレイで魔鏡の力を高めるってことは、合わせ鏡という危険な手法を制御することだから。
ミリーナせめてガロウズさんかビフレストの魔鏡術に詳しい人がいれば――
???……へぇ、まさかこんな所に黒衣の鏡士がいるなんてね。
コーキス誰だ ! ?
???もう一人の鏡士のお墓参りかい ?
ミリーナイクスは生きているわ !
???あんな状態で生きてる ? 哀れだね。
コーキスてめぇっ ! ミリーナ様に謝れ !
???ギャアギャアとうるさいんだよ、眼帯坊や。海賊ごっこは海でやれば ?
コーキス黙れ !
???あはは、怒ってるの。怒りたいのはこっちの方なんだけどね。
???丁度良い。恨みを晴らさせてもらうよ傲慢な鏡士サマ !

キャラクター8話【1-15 カレイドスコープ前】
シンクこれで終わりだなんて思わないでよね。
コーキスまだ動けるのか ! ?
シンクアカシック――
マークシンク ! ストップだ !俺たちの目的を忘れたのか ! ?
シンク――アンタか。まだあの黒衣の鏡士に傍惚れしてるの ?
マーク傍惚れたぁ、ひでぇ言い種じゃねぇか。こっちにも色々事情があるんだよ。
コーキスマーク ! ?
マークおおっと、コーキスか。でかくなったって噂は本当かよ。
コーキスそのシンクって奴はお前の……救世軍の味方なのか ! ?それにこんなところで何をしてるんだ ! ?
マーク見りゃわかるだろ。仮面の客人を迎えに来たんだよ。
ミリーナマーク。フィルが近くにいるのよね ?会わせて。フィルならイクスの状態がどんなものなのかわかるでしょう ?
マーク悪いな、ミリーナ。こっちは先約があるんだ。フィルと三人のティータイムはまた今度な。
ジュード待って ! アルヴィンも一緒なの ! ?それともアルヴィンもアスガルド帝国に――
マークアルヴィンねぇ……。
マークあの三重スパイくんなら、出ていったぜ。まぁ、色々助けられもしたから恨みはねぇけどな。
ジュード三重スパイって…どういうこと ! ?
マーク別の所にご主人様がいるんだとよ。お前らも知ってるだろ。あの赤い髪のチャラチャラした……。
ミリーナゼロスさんね。
マークそういうこった。こっちも忙しいんでね。あいつらのことはそっちで捜して何とかしてくれ。じゃあな。
コーキスあ、待て ! その仮面の男は置いてけ !
コーキス――って行っちまったか。追いかけますか ?
ミリーナいいえ。あのシンクという人が私を狙ったことより今はイクスのことが心配だわ。
コーキス(何だ…… ? また左目の奥が痛い……)
コーキス(この姿になったときから眼帯がついてて外れないけど俺の左目はどうなってるんだ…… ? )
ミリーナ――そうだ。ユーリさんたちがアスガルド帝国へ向かったのよね ?何とか連絡を取れないかしら。
ミリーナビフレスト皇国の魔鏡技術に関する資料を見たいわ。
ヴェイグ一度仮想鏡界に戻るか ?
ジュードそうだね。それでユーリたちが開いた転移ゲートを確認すれば追いかけることができる。
ミリーナ待って。その前にカーリャに聞いてみるわ。ユーリさんたちがどこに転移ゲートを開いたのか。
カーリャミリーナさま……ごめんなさい。あの眼鏡とマントが怖かったから……。
ミリーナまぁ、カーリャ。それを二人に聞かれたらもっと怖い思いをするわよ。
カーリャはわわわわわ、それは嫌です ! ! ! !
ミリーナそれよりユーリさんたちのことを聞かせて欲しいの。
カーリャユーリさまたちと言えば、ユーリさまたちと一緒に転移したコンウェイさまたちがはぐれ鏡映点の方を連れて戻ってきました。
カーリャえっと……確かルカさまという方です。
ミリーナカーリャ。詳しい話を聞かせて。
カーリャ了解しました。えっとですね――……。
to be continued
キャラクター1話【囚われの少年】
アスガルド帝国首都イ・ラプセル戦士の館
ルカ……うん、起きていても辛くないし、ずいぶん動けるようになったな。
ルカ(あの時――、魔法陣の中で、動くことも声を出すこともできなくて、ただ苦しくて……)
ルカ(イリアも目の前で苦しんでいたのに、僕は何もできないまま気を失って、気が付いたらここに……)
ルカ(イリア……あれから一度も会えてないな。この館にいるのは分かっているのに……)
? ? ?食事を持ってきたの。ドアを開けて。
アスガルド兵ああ、どうぞルビアさん。ですが、今日こそは手みじかに願いますよ。
アスガルド兵中の者とは無駄な会話を避けるようにと、厳しく言われているんですからね。
ルビアわかってるわ。いつも大した話はしてないでしょ ?ご心配なく。
ルビアルカ、お待たせ。食事を持ってきたわ。今日のメインはお肉よ !
ルビアそれと、これはチーズスープ。前に好きだって言ってたでしょ ?お母様の味には、遠いかもしれないけど。
ルカ……ありがとうルビア。でも、あんまり食欲がなくて……。
ルビア何いってるの ! 体力回復には食べなくちゃ。そうじゃなくたって、ルカは危ない状態だったんだからね ?
ルカもうかなり良くなったよ。だから、ここから出してくれないかな。
ルビアそれは……何度お願いされても無理なの。
ルカ……どうしてって聞いても理由は教えてもらえないんだよね ?
ルビア……ごめんなさい。
ルカだったらせめて、イリアの様子だけでも教えてくれないかな。
ルビアイリアはこの館にいるわ。言えるのはそれだけ。
ルカそれはわかってるよ ! もう何度も聞いた !
ルビア……。
ルカご、ごめん。大きな声出して。でも、すごく心配で……。
ルカ僕でもようやく動けるようになったくらいひどい状態だったんだ。同じ目にあったイリアだって、きっと……。
ルカせめて無事かどうかだけでも教えて欲しい。いや、教えてください。お願いします !
ルビア……イリアは――
アスガルド兵ルビアさん、そろそろ。
ルビアえ、ええ。ちょっと待って。
ルビア――いい ? 無理しちゃ駄目よ。あなたの体、まだ本調子じゃないんだから。
ルビアほら、ルカの手、こんなに冷たいじゃない。
ルカ―― ?
ルビア……食事、冷めないうちに食べてね。食器はいつもどおり、後で下げに来るから。それじゃ。
アスガルド兵いいか、大人しく食うんだぞ。と言っても、お前はいつも大人しいか。
ルカ……。
ルカ(よし、誰もいなくなったな)
ルカ(ルビア、さっき僕の手に何を握らせて――……これ、メモ ? )
ルビアのメモ兵士たちが救世軍討伐に出ているため今この館は守りが手薄になっています。
ルビアのメモ食事を下げる時に、あたしを人質にして逃げて下さい。
ルカルビア…… !

キャラクター2話【2-1 イ・ラプセル 戦士の館】
ルビアルカ、入るわよ。食器を下げに――
ルビアキャッ !
ルカう、動くな !
アスガルド兵貴様っ、何を―― !
ルビアだめ、動かないで ! あたし刺されちゃう !
アスガルド兵食事用のナイフを―― ! ?チッ、いつも大人しいからと油断したか !
ルカえっと……、お、お前が動いたら、この子がどうなるか、わっ、わかって、わかって―― !
アスガルド兵や、やめろ小僧、落ち着くんだ !
ルビアお願い、ルカに逆らわないで !大丈夫、あたしが説得するから。あなたは下手に動いて刺激しないで !
アスガルド兵し、しかし――
ルビア――これでよし。部屋からの脱出は成功ね。見張りは閉じ込めちゃったからしばらく追って来られないはずよ。
ルカハァ……こういうのは苦手だよ……。
ルビアそんなことない。ルカの演技すごかったわ。『何をするかわからない』って感じがして、見張りの兵も怯んでたじゃない。
ルカあ、あはは……。何を言えばいいかわからなかっただけなんだけどね。
ルカありがとうルビア。助けてくれて。でもこれってどういうこと ?
ルビア詳しい話は後でね。こんな所でぐずぐずしてたらすぐに見つかっちゃう。さ、こっちよ。
ルカここって、物置部屋…… ?
ルビアそうよ。まずは簡単に踏み込まれないように荷物で扉をふさいでおかないとね。……よいしょっと !
ルカうわ、なんだか色んな物がたくさん置いてあるなあ。
ルビアだからこそ色々隠しておけるのよ。――はい、これ。
ルカこれ、僕の剣じゃないか…… !それにイリアの銃まで !
ルビアいい、ルカ。これからいうことを落ち着いて聞いて。
ルビアまず、イリアは無事よ。回復が早かったからあなたよりもずっと元気なくらい。
ルカ本当に ! ? 良かった……。イリア、無事だったんだ。
ルビアでも、今はこの館にはいないわ。
ルビア少し前に、四幻将の命令でこことは別の島――セールンドという場所へ連れていかれたの。
ルカどうして ! ?
ルビアアニマの観測実験のために必要だからって話だけど、詳しい事まではわからない。
ルビアただその実験では、未知のアニマの情報を調べると言ってたわ。ルカとイリアは、その持ち主だって……。
ルカ僕とイリアが…… ?
ルビアイリアを助けに行ってあげて。実験なんかで、またこの前のように、死にかけることにでもなったら……。
ルカそんなことさせるもんか。必ず助ける !
ルカでも、どうして協力してくれるの ?君はあいつらの仲間なんでしょ。
ルビア……。
ルカ……ねえルビア。もしも無理してここにいるんだったら、僕と一緒に逃げない ?
ルビアそれは、できないわ……。
ルカだって、すごく辛そうな顔してるよ。だったら――
ルビアあたしとカイウスは、ここに残らないと。ルキウスのために……。
ルカカイウスに、ルキウス ?
ルビア……とにかく、あたしのことはいいから。それよりも、ルカたちはメルクリアに気を付けて。
アスガルド兵――探せ ! まだ館の中にいるはずだ !
ルビアいけない、もう見つかっちゃった !ルカ、手伝って。ここの棚をずらせば、後ろにスイッチがあるはずなの。
ルカわ、わかった !
ルカこれ、隠し通路 ! ?
ルビア館の外に繋がっているわ。気をつけて進んでね。さ、行って !
ルカうん。でも、ルビアは――
アスガルド兵1……おい、この部屋から話し声がしなかったか ?
アスガルド兵2おかしいな、開かないぞ。何かつかえてるのか ?
ルカだめだ、追っ手が入ってくる !ルビアも早く一緒に !
ルビア大丈夫、ここはあたしに任せて。
ルビア……大事な人を失うのはとても辛いわ。まだ間に合うんだから、イリアを絶対に助けてあげて。
ルカルビア、扉を開けて ! ルビア !
ルカもう……戻れない、か。
ルカ(……ルビアは大丈夫って言った。今はそれを信じて進もう)
ルカこんな所にも魔物が ! ?――うわっ ! !
ルカだめだ、倒しきれない…… !天術さえ使えていれば……。
ルカ―― ! ? この力は !
ルカハアッ、ハアッ……。なんで僕、今でも天術が使えるんだ…… ?

キャラクター3話【2-6 隠し通路 広場】
ルカ(よし ! 体の調子もどんどん良くなってる気がする)
ルカ(無くなったはずの天術が使える理由はわからないけど、これなら十分に戦っていけるぞ)
? ? ?……けど……じゃないか。
ルカ(誰かいる ? )
ガイだからルーク、なるべく戦闘はさけろよ。俺たちは潜入中なんだからな。
ルークへいへい、それは何度も聞いてるって。でも魔物の方からかかってくるんだから仕方ないだろ。
ルークこんな所じゃ逃げ場ねえし。それに誰よりも喜んで戦ってる奴が他にいるぞ。なあ、戦闘狂 ?
ユーリおい、クレス。ルークがなんか言ってるぜ。
クレスえ、ルークは僕をそんな風に思ってたのか。僕……戦闘狂かなあ ?
ルークおいユーリ、お前なぁ !そういう返し、ジェイドっぽいぞ。
ルーククレス。違うって。クレスはまともじゃん。俺はユーリのことを――
リタあーもーあんたらうっさい ! !少しは静かにできないの ?
セネルお前が一番うるさくないか ?
リタ……なんか言った ?
ユーリおっと、そこまでな。それと――、おい、さっさと出て来い。いつまで隠れてるつもりだ ?
ルカ(も、もしも追っ手なら先に仕掛けないと……)
セネル――ルカ ! ?お前……、ルカだよな ? 無事だったのか !
ユーリルカ ?確かセネルたちの前でさらわれたっていうあいつか ?
ルカあなたたちはいったい…… ?
セネル覚えてないか ? お前、クレアと一緒に救世軍にさらわれただろう。俺はあの場にいたんだ。
ルカそう言えばあなたは……、僕たちを助けに入ってくれた人ですね !
ルカあの時はありがとうございます。僕、クレアさんとは地下牢で離れてしまって……。
セネル大丈夫だ。俺たちが助け出した。お前たち特異鏡映点が、連れていかれた後だったけどな。
セネルそれにしても何でこんな所にいる。あれから何があったんだ ?
ルカ(……信用していいのかな。クレアさんを助け出した人たちだし……)
ルカ……あの、話を聞いてもらえますか。
ルカ――それで僕、セールンドという島に行かなきゃならないんです。
リタ……面倒な話になってきたわね。何なのよ、未知のアニマって。
クレスそれにメルクリアって、マークを追ってる時に介入してきた奴らが口にしてたような……。
ユーリああ、オレの知り会いの名前と一緒にな。
ガイとにかく、このままじゃ進めない。ルカを入り口の待機組に預けよう。セールンド行きの件もその後だ。
セネルだったら俺が入り口まで連れていく。……あの時は助け出せなかったんだ。今度は無事に送り届けてやらないと。
リタ別に構わないけど、そいつ脱走して追われてるんでしょ ? 魔物も多いしもう何人かいた方が安全じゃない ?
クレスだったら一度、二手に分かれようか。ここにはユーリとルーク、それに僕が残るよ。
クレスセネル、リタ、ガイはルカを入り口に送っていってくれるかな。
ガイ了解だ。それじゃルカ、行こう。
ルカ……すみません。迷惑かけて。
ガイ迷惑なんかじゃないさ。あと、そんなにかしこまるなよ。もっと気楽に、な ?
リタそれじゃあ行ってくるけど、あんたたち、お目付役がいないからって派手に戦ってんじゃないわよ ?
ルークだから、喜んで戦ってるのは俺じゃねえし ! こいつの方が――
クレスいや、僕はそんなつもりじゃ……
ルークだーっ、ちげーって !ややこしいんだよクレス !
セネル……なあ、ガイ。本当にお前が抜けて大丈夫か ?
ガイハハ……しっかり者のクレスがいるしまあ、どうにかなるだろ。ユーリも、後は頼んだからな。
ユーリああ、おかげで退屈しなさそうだぜ。そんじゃルカ、気をつけて行けよ。
ルカはい、ありがとうございます !

キャラクター4話【2-7 隠し通路 出口】
スレイ……う~ん、どうなってるのかなあ。
ミクリオスレイ、隠し通路に興味が湧くのはわかるけど、この状況でそれはどうかと思うよ。
ミクリオ何かしら異常があったら、入り口待機組の僕らが対処しないといけないんだからね。もっと警戒して――
スレイ違うって。気になってるのはクレスたちの様子だよ。
スレイミクリオこそ、そんな風に思うなんて、この隠し通路に興味深々だからじゃないか ?
ミクリオそ、そんなことは…… !
コンウェイ別に否定することはないよ。いつだって好奇心は大事だからね。それに彼らなら、心配ないんじゃないかな。
カロルそうそう。ユーリもいるし、リタもいる。二人ともすごく頼りになるしね。……たまにおっかないけど。
コンウェイそうだね、彼らはとても強い。実際に目にすると驚くばかりだ。
ミクリオ……実際 ?
スレイあ、帰って来たぞ !
カロルお帰り、リタ !……あれ、ユーリは ?
リタあいつはまだ中。ちょっと事情が変わってね、あたしたちはこいつの護衛で戻ったの。
リタほら、早くこっち来て、もたもたしない !
ルカご、ごめん ! 今すぐ――
コンウェイ……ルカくん ?
ルカ……コンウェイ ! ?コンウェイもこの世界にいたんだ !
コンウェイああ。よく無事だったね。怪我はないかい ?
コンウェイセネルくんやヴェイグくんから、ルカくんのことは聞いていたけど、行方がしれなかったから……心配したよ。
ルカコンウェイこそ、あの時、黙っていなくなっちゃってさ。……お礼、言いたかったのに。
コンウェイ済まなかったね、あのときは急いでいたんだ。
コンウェイところで、キミはどうしてこんなところにいるんだい ?
ルカあ……そうだ、大変なんだよ !イリアを助け出すために、コンウェイも協力してくれない ?
コンウェイイリアさんを ?……彼女も具現化されているのか。
コンウェイわかった。込み入った話のようだし、一度、仮想鏡界に戻って、他のみんなにも聞いてもらおう。
ルカ仮想鏡界 ?
コンウェイボクたちのアジトみたいなものさ。ルカくんにも、こちらの事情を知ってもらわないとね。それに――
コンウェイほら、彼らも訳がわからなくて驚いてるだろう ?ちゃんと説明しないと。
三人お、お願いします……。
コンウェイ……ルカくんとイリアさんが未知のアニマの持ち主か。イリアさんはそれを理由に連れていかれたんだね。
コンウェイ二人に共通してるのは転生者という点だ。未知のアニマというのは、間違いなく転生者のことだろう。
ルカうん、僕もそう思う。
ジェイド転生者ですか。同じ魂が生まれ変わりを繰り返すとは……何とも興味深い。
リフィル話がそれて申し訳ないのだけれど生前の自分と今の自分に同一感というのはあるのかしら。
ルカそれほどありませんでした。昔の僕と今の僕では性格も全然違いましたし。
ルカだから、僕は僕――なんです。
クラースルカの話を聞いていると、転生者というのは一つの体に、同じ魂が分裂して存在しているようにも思えてくるよ。不思議な存在だな。
コンウェイだからこそ、この世界においてもルカくんたちのアニマは特殊なのかもしれない。
コンウェイだとすると、彼らがイリアさんにどんな実験をするのかが問題だな。アニマ――魂に触れる実験だとしたら……。
ルカ命に関わるってこと ! ?
コンウェイ……イリアさんが連れていかれたのはセールンドだったね。
スレイセールンド……そうだ、あっちにはミリーナたちがいる !
コンウェイまずは彼女に連絡をとって、合流したらどうだろう。何か情報を掴んでいるかもしれないよ。
クラースああ、それがいいだろうな。いざという時のためにも戦力は多い方がいい。
ルカ戦力って……みなさんもイリアの救出に協力してくれるんですか ?
リフィルええ。あちら側の思惑を知る必要もあるし転生者のアニマの件は私たちにとっても必要な情報だと思うわ。
ジェイドそうですね、私も異論はありません。
ルカありがとうございます !
ミクリオそれなら早速カーリャに連絡を頼まないと。……なんでここにいないんだ ?
ジェイドおかしいですねえ。少し前までは、一緒に楽しくおしゃべりをしていたのですが。
リフィル……ジェイドあなたミリーナの行き先を聞き出す時にやりすぎたのではなくて ?
ジェイドそうでしょうか。私は平和を愛するただの紳士です。やり過ぎたのはリオンの方だと思いますが。
リフィル随分ツッコミどころの多い発言ね……。
カーリャえ~と……ルカさま ?
ジェイドおや、カーリャ♪先程から姿が見えないので避けられているのかと思いましたよ。
カーリャ……鬼畜眼鏡。
カーリャ――あ、それどころじゃなかった。
カーリャルカさまの話ですけどカーリャにも詳しく説明してください。今、ミリーナさまと繋がっていて――
スレイすごいよカーリャ、ナイスタイミング !
カーリャはい ?
リフィルそれではルカ、みんなも気を付けて。ミリーナとの合流場所は大丈夫ね ?
ルカはい、色々とお世話になります。
リフィルいいえ、こちらも助かっているのよ。今の私達にとって、外の情報を知るのは大変な作業だから。
コンウェイではルカくん、セールンドへ向かおうか。
ルカうん、行こう !

キャラクター5話【2-10 セールンドへ3】
スレイえっと、ミリーナたちとの合流地点は、街はずれの小屋だったよな。こっちの方角か。
ルカあの、僕と一緒で大丈夫なんですか ?二人は他の役目があったんじゃ……。
スレイああ。入り口の見張り役は引き継ぎしたから問題ないよ。
スレイそれに、同行を申し出たのはオレたちの方だから、気にすることないって。な、ミクリオ。
ミクリオ僕たちっていうかスレイだろ。すぐに何にでも首をつっこむんだから。
ミクリオまあ、それがスレイの良いところでもあるんだけどね。
ルカ仲がいいんですね。スレイさんとミクリオさん。
スレイもっと気楽にしゃべってくれていいよ。オレもほら、こんなだし。
ルカえと、それじゃあ……一緒に来てくれてありがとう。スレイ、ミクリオ。
スレイうん、どういたしまして !
マルタルカ、私たちにもその感じでお願いね。キミの礼儀正しい所は好感度高いけど、ずっとそのままだと他人行儀だし。
マルタでも、そういう所、嫌いじゃないな。ちょっとエミルと似てるもん。
エミルえ、ええと……そういうわけだからよろしくね。ルカ。
ルカうん、よろしく。エミル、マルタ !
レイヴン若者はいいねえ。なんかこうキラッキラしてて。おっさん、疎外感~。
カロルじゃあなんでレイヴンはついて来たの ?
レイヴンそりゃまあ、飲み友に頼まれちゃったからよ。
カロルそれってクラースのこと ?
レイヴンそそ。協力してやりたいが、今の私では足手まといになるとかなんとか言ってたんで、この俺様がひと肌脱いでやったってわけ。
コンウェイレイヴンさんは仲間思いなんですね。それで取り引きの内容は ?
レイヴンあいつからミリーナちゃんに、大人のジュースの仕入れを頼んでもら――ヤバッ……。
カロルお酒だね……。もう、仕方ないなあ。やっぱりボクがしっかりしないと。
ルカこの声は…… ?
コンウェイ光魔だよ。気を付けてルカくん。彼らは通常の魔物よりも性質が悪い。
スレイルカ、危ないから下がっててくれ。
ルカ大丈夫、僕もやれるから !
コンウェイルカくん、まさかキミ……天術が ?
ルカ話は後だよ。今は敵を何とかしなくちゃ !

キャラクター6話【2-10 セールンドへ3】
コンウェイ驚いたよ。ルカくんは今も天術が使えるんだね。
ルカ言い忘れててごめん。僕も不思議なんだ。一度は失ったのに、なぜ天術が使えるようになったのか……コンウェイはわかる ?
コンウェイいや、ボクにもわからない。どういうことなんだろう。
コンウェイ具現化された際に、ルカくんに変化があったのか、それともこの世界の何かが関係しているのか……。
ルカそうか……コンウェイにもわからないんだ。でも、イリアを救うために戦えるんだから、悪いことじゃないよね。
コンウェイ……そうだね。
ルカそう言えばさ、僕、あの時コンウェイが言ってたこと、今ならちょっとだけわかる気がするよ。
コンウェイボクが ? 何を言ったんだっけ。
ルカほら、イリアにどう思われてるか悩んでた時だよ。他にも何度か話してくれたでしょ ?
ルカ人は失って初めて、自分の気持ちや何が大切だったか気づくって。
コンウェイ……そういえば、そんなことを言ったかな。
ルカイリアを失うなんて、あの時は思いもしなかったから、わからないって答えたけど。
ルカ実際に今、イリアに危険がせまってコンウェイの言葉を思い出したんだ。
コンウェイ……そう。
ルカ……あの時のコンウェイまるで自分のことみたいに言ってたけどそれって――
カロルルカ、強いんだね !すごいや !
ルカえ ? ああ、ありがとう。カロルも強いね。確かギルドのボスをやってるんだっけ ?
カロルえへへ、まあね。興味あるならいつでも言って !
レイヴン……少年、悪いけどスカウトは中断ね。
カロルどうしたの ?
レイヴンこりゃこっちに来るな……。みんな物陰へ隠れろ。そんでジッとしてて。
マルタあれは……アスガルド軍 ?よく気が付いたね。
レイヴン軍人が大勢で移動してりゃあね。しかしあの隊列の組み方……誰かを護衛いや、護送かな ?
コンウェイ―― !ルカくん、あれを見て。
ルカイリアだ !
レイヴンあの子が ? ……いや参ったね。ミリーナちゃんと会う前に当たり引いちゃったわよ。どうする ?
ミクリオ数で言えばこっちは不利だからな……。このまま後をつけて、様子を見るという手もあるけど。
ラタトスク……こうしてウダウダ言ってる間に、機会はどんどん無くなるぞ。いいのか ?
ルカエミル…… ? 何か雰囲気が……。
マルタその話はまた後で。今の彼はラタトスクって名前。
マルタで、ラタトスクの言う通りだと思う。ルカ、行くなら今だよ !
ルカ……うん。イリアのいる所だけに集中して一気に叩こう !

キャラクター7話【2-11 セールンドへ4】
ルカイリアー ! !
イリアルカ ! ? あんたなんで――
シング悪いけど邪魔させてもらうよ。
ルカ――くっ !
カイウス……お前、ルカか。どうしてここにいるんだよ。
ルカイリアを助けにきたんだ。そこをどいて !
カイウス……なんでこんな風になるんだろうな。
シング……仕方ないさ。どうしてもっていうなら、力ずくでも引いてもらう !
? ? ?――シング、カイウス。やめておけ。
シングなっ ! ?
イクス ?もういい。今は引け。
スレイ――イクス ! ?
レイヴンおいおい……なんの冗談よ…… !
カイウス何言ってんだ、オレたちは仕事を――
イクス ?……素直に戻った方がいいぞ、カイウス。ルビアのためにも。
カイウスなんでルビアが出てくるんだ。
イクス ?ルビアは投獄された。
ルカ―― !
カイウス投獄 ! ? なんで、なんでだよ !
イクス ?……自分で聞いてみればいい。
ルカ(ルビアが投獄って……僕のせい ? )
ルカ(それに、あのカイウスって人ルビアが言ってた……)
ルビアあたしとカイウスは、ここに残らないと。ルキウスのために……。
シング……退こう、カイウス。ルビアのこと、心配だろ。
カイウスあ、ああ。わかった。
アスガルド兵ナーザ将軍、特異鏡映点亜種02はどうしますか。
ナーザ……最低限のデータは採取した。放っておけ。それに03も確保済みだしな。
ナーザ……あいつがラタトスクか。――反吐が出るほどよく似てやがる。
アスガルド兵――全軍、撤収 !
カロル……見逃された ?
ラタトスクみたいだな。ちっ、暴れたりねぇ……。
スレイなあ、さっきのはイクス……なのか ?
ミクリオそんなわけない。だってイクスは……。
スレイ……だよな。それに少し大人びて見えた。
スレイでも、姿も声もイクスそのものだ。一体どうなってる。
コンウェイ……。

キャラクター8話【2-12 セールンドへ5】
イリアイタタタ、もうちょっと優しく解けないの ?この、おたんこルカ !
ルカご、ごめん……。でもイリアが動くから、縄が余計に絡んじゃうんだ。もうちょっと大人しくしててくれる ?
イリアわかったわよ。三つ数える間だけね。いーち、にー……
ルカあわわわわ、これで……よし !
イリアはーっ、やっと自由になったーっ !助けてくれてありがと。
ルカみんなが協力してくれたおかげだよ。
イリアそうみたいね。いや~どうも、みなさんお世話になっちゃって !
レイヴンどういたしまして !や~、こりゃまた元気なお嬢ちゃんで。
マルタ……でも、ルカとはもっとこう感動的な恋人同士の再会 ! みたいになるかと思ってたから……ちょっと意外。
イリアえ、なんでよ ?前世では恋人かもしれないけど今のあたしとルカはそんなんじゃないし。
マルタそうなの ? 誤解してごめん。ルカってばずっとイリア、イリアって心配してたからてっきりそういう関係なんだと思ってた。
イリアちょっとルカ !あんたのせいで妙な誤解うけてるじゃない。
ルカそ、そんな……。僕にとってはその……誤解じゃ……。
コンウェイフッ、相変わらずのようだね。イリアさんは。
イリアコンウェイもね。あんたって、いっつも突然なんだから。突然現れて、突然消えちゃってさ。
イリア出会った時だって、天術が通用しない敵にコンウェイが……って、そうだ !
イリアねえルカ、あんた天術使ってなかった ?どういうことよ。
ルカ突然使えるようになったんだ。もしかしたら、イリアも使えるかもしれないね。
イリアはぁ ? あんたそういうことはさっさと言いなさいよ ! だったらあたしの手であいつらボッコボコにしてやったのに !
マルタねえ、天術が使えるとか使えないとかってどういうこと ?
イリアああ、それはね――
ルカねえエミル。さっきから別人みたいだけどもしかしてエミル……じゃ、ないの ?まさか君も転生者 ?
ラタトスク……違う。だが、お前とは後でゆっくり話をしてみたいな。
ルカえ…… ?
ラタトスクじゃあな。
エミル……ん ?もしかして今の僕、別人みたいだった ?
ルカう、うん。
エミルそっか。混乱させてごめん。後で色々説明しないといけないね。
エミルとりあえず、マルタたちの所へ行こう。
ミクリオ……さっきのイクス――ナーザ将軍だけど、どう思う ?更なる具現化って可能性はあるのかな。
スレイう~ん、ミリーナなら、そのへん詳しいんだろうけど。
カロルすっごく似てるだけの人ってことは ?ほら、そっくりさんって世界で三人はいるってどっかで聞いたことあるよ。
スレイそれもあるかもね。でもなあ……。あれは、そっくりの域を越えてるよ。
スレイ何かが原因で、成長したイクス本人――いや、でも今のイクスは……。
コンウェイキミたち、それ以上の推測は無意味じゃないかな。色々と複雑な事情がありそうだし。
カロルそれってどういうこと ?コンウェイは何か知ってるの ?
コンウェイいや、この世界のことは全く知らないからね。単なる推測だよ。
コンウェイ魔鏡術に疎いボクらがいくらここで議論していても答えはでないってこと。
コンウェイだから今はミリーナさんとの合流地点へ向かおう。

キャラクター9話【2-15 セールンド 小屋】
ミリーナ……そう。そっちにも現れたの。ナーザ将軍って呼ばれていたのね……。
スレイああ、確かナーザというのはこの世界の神の名前と同じだよね。
ミリーナええ……。海の神――漁師の守り神の名前よ。本当の名前ではないのかも……。
スレイ具現化のことはよくわからないけどあいつはやっぱり、オレたちの知ってるイクスじゃないんだな ?
ミリーナイクスはまだ魔鏡結晶の中にいるわ。でも……そっくりな彼に関しては私もまだ何もわからなくて……。
スレイ何言ってるんだ。本当のイクスの様子がわかっただけでも十分だって。
コーキス本当のマスター……か。
エミルイクスのことも問題だけどミリーナの話だとマークの動きも探らないといけないよね。
マルタそれと、ルカがルビアって子から言われたメルクリアの話もあるわよ。
レイヴンハァ……あっちもこっちも問題が山積みと来た。こりゃ手分けしてやっつけないとだわ。
ミリーナでも、一つは解決よ。イリアさんを無事保護できたもの。大変だったわね、イリアさん。
イリア……え ? あ、ありがとう。
コンウェイどうしたんだい ?何か気になることでもあったかな。
イリア結局、あたしはこれから何をすればいいのかなって。ルカはどうする気 ?
ルカどうって……ええと……。
イリアあんた何も考えないで、この人たちに泣きついてたの ?相変わらずのんきねえ。
イリア話聞いてると、転生者が重要なんでしょ ?だったら、あたしとルカがこっち側に協力すれば、もう勝ったようなもんじゃない ?
ルカそこまで簡単な話じゃないと思うけど……。
イリア何言ってんの。こういうのは先手必勝 !動いたもん勝ちなの !
イリアそういうわけで、これからお世話になってもいい ?
ミリーナもちろんよ、ルカさん、イリアさん。
イリアあたしのことはイリアでいいってば。初対面で呼び捨てにされるとムカつくけど。あんたは礼儀正しいし。
ミリーナありがとう。じゃあ、私もミリーナって呼んで。これからもよろしくお願いね。
イリアラッキー、タダで寝床ゲット !\nいしししし……。
ルカイリア……君って人は。
コンウェイさすがイリアさん、逞しいね。それでルカくんは ?
ルカもちろん、僕も協力するよ。それに、ルビアのことも気になるんだ。
ルカ僕を逃がしたせいで投獄されたのかもしれないし……。どうにかしてあげられたらって思う。
ルカそれに03って呼ばれてた人も気になるよ。もし特異鏡映点亜種っていうのが転生者のことなら――
イリアあたしたちの知ってる誰かがまだ帝国に囚われてるのかも知れないのか……。
コーキス――ミリーナ様やることがたくさんありますけどここからどう動きましょうか ?
ミリーナそうね……今できることからやりましょう。
ミリーナ調べるのは、転生者のアニマを使ってアスガルド帝国が何を企んでいるのか。それとメルクリアについて。
ミリーナ……そうすることで、きっとイクスのことについても手掛かりが掴めると思うから。
コーキスユーリ様たちが帝都に潜入してるんですよね。
コーキス今からでも合流した方がいいかもしれません。

キャラクター10話【2-15 セールンド 小屋】
ルビア……ルカ。イリアと会えたかな。
アスガルド兵おい、これから四幻将様が直々に尋問する。正直に答えるように。
ルビア……。
アスガルド兵お待たせしました。魔弓のチェスター様。こちらへどうぞ。
チェスター――頼むからその呼び名はやめろ。ダサすぎるだろ !あと、お前はちょっと外に出てろ。
アスガルド兵了解であります !
チェスタールビア、事情を聞かせてもらいに来たぜ。
ルビアチェスター……。
チェスター率直に聞くぞ。何でルカを逃がしたんだ。あいつがどれだけ重要かわかってただろう。
ルビア……。
チェスター誰かの差し金か ? それとも脅されたのか ?
ルビア……。
チェスター……ルビアをこんな所に閉じ込めておきたくねえんだよ。正直に話せばオレがメルクリアにとりなしてやる。
ルビア別に、とりなしてもらう必要ないから。
チェスター……メルクリアと何かあったのか ?
ルビアメルクリア様には感謝してるわ。だけどリビングドール計画は間違ってる。
チェスター―― !
ルビアあれは正しいことなの ?チェスターはそれで幸せになれた ?
ルビア妹さんをあんな風にされて本当にいいの ! ?
チェスターそれ……は……。
ルビアあたしは納得できない…… !
チェスター…………。
to be continued
キャラクター1話【手紙】
ルドガーよし、これにしよう。……いや、こっちの方がみずみずしいな。でも量が確保できないと……。
ユリウスルドガー、そろそろ行かないと遅くなるぞ。買い物は他にもあるんだろう ?
エルエルもあきちゃった。べつのお店が見たいー ! ね、ルル。
ルルナァ~。
ルドガーでも、この店が一番品ぞろえがいいんだよ。それに今じゃ市場に買い出しなんてそう簡単にはこられないだろ。
ルドガーアジトで待ってるみんなのためにも、なるべく新鮮で、長持ちする食材を選びたいんだ。だから……。
ユリウス……仕方ないな。もう少しだけだぞ。
エルえ~、まだ見るの ? メガネのおじさん、あんまりルドガーのこと甘やかしちゃダメなんだからね。
ユリウスそんなつもりはないんだが……甘やかしてるかな ?
エルしてますー !
ユリウスそうか。それじゃルドガーと同じくらいエルのことも甘やかせば許してもらえるかな ?
エル大人はずるいなあ。そういうの、取り引きとか、コーカンジョーケンていうんでしょ ?でも、いいよ !
ユリウスよし、取り引き成立だ。このあとエルの好きなものを買おう。だからルドガーのこと、待ってやってくれ。
エルわかった !それとルルにも何か買って ?
ユリウスよしよし、ルルには奮発して高級ネコ缶だ。楽しみにしておけよ。
ルルナァ~♪
ルドガー悪いな。代わりに今日は特別に美味いものを作るよ。――あ、これもいいな。すごく新鮮だ。
エルえ……トマト ! ?
ユリウス確かにいいトマトだ。今夜はこれをスープにしてくれないか ?
エルダ、ダメだよ ! そんなことしたらロイドやコンウェイだってきっとウエッてなるし――
ルル――ナァ !
エルルル、どこ行くの ?
シング――いた !よかった……見つかって。
エル……だれ ?
シングえっと、きみ、黒衣の鏡士の仲間――だろ ?
エル―― !ルドガー、変な人がいる !
ユリウス誰だ ! !
ルドガーエルに何を…… !
シングな、何もしてないよ !なんでオレっていつもこうなんだ……。
エルあのね、この人、こくいのかがみしっていった。エルのこと、仲間だろって。
ユリウス……何のつもりで近づいた。場合によっては子どもとはいえ―――
シングそうじゃなくて ! いや、そうなのか…… ?でも、驚かせちゃったならごめんなさい。オレはこれを渡しに来ただけなんだ。
ルドガー……手紙 ?
シングこれをクレスに渡してほしいんだ。
ユリウス君が何者かもわからないのに受け取れるわけがないだろう。先に詳しい話を聞かせてもらおうか。
シング時間がないんだ。もう戻らないと……。手紙、ここに置くから。必ず届けて下さい。お願いします !
ユリウスおい、待て――
ルドガークレスに渡せって……知り合いなのか ?
ユリウス何かの罠かもしれない。ルドガー、エルを連れてアジトへ戻れ。俺は奴の後を追う。
ルドガー兄さん !
ユリウスすぐに戻る。目印を残していくから、万が一の時にはそれをたどれ。お前ならわかるだろう。
エル行っちゃった……。一人で大丈夫かな。
ルドガー兄さんのことだ。心配はいらないだろうけど……。
エルそうだよね ! メガネのおじさん、強いもん。それにエルたちは、ほかにやることあるんでしょ ?
ルルナァ~ !
ルドガーそうだな。こっちは兄さんに任せて、まずはこの手紙をクレスに届けよう。

キャラクター2話【3-1 静かな街】
クレス――その青年が僕に手紙を ?
ルドガーああ。悪いけどすぐに中身を確認してもらえないか ?兄さんが今、そいつを追っているんだ。
クレスわかった。ごめんロイド。手合わせはまた今度にしてもらえるかな。
ロイドかまわないぜ。それで、何て書いてあるんだ ?
クレスうん……えっと……。
クレス―― !
ロイドどうしたクレス、顔が怖いぞ。
クレスロイド、すぐミリーナを呼んでくれないか。この手紙の内容を説明しないと。ルドガーさんも一緒に聞いて下さい。
ルドガーあれ ? ミリーナは……。
ロイドどこ捜してもいねえんだよ。みんなにも声かけたんだけど、知らないみたいでさ。今もコレットに捜してもらってる。
リフィル時間もないことだし、ミリーナの代わりに私が話を聞くわ。クレスの事情も承知しているから問題なくてよ。
ルドガークレスの…… ?
クレス僕が説明します。……まずこの手紙だけど、差出人はチェスターなんです。
ロイドチェスター ! ?鏡殻変動の後にはぐれちまったんだよな ?居場所わかったのか !
クレスわかったんじゃなくて、わかっていたんだ。……嘘をついてごめん。
クレス実は、セールンドの王宮から脱出した時に――
チェスターなんとか脱出できたな……。大丈夫かクレス !
クレスああ。チェスターも無事で良かったよ。すぐにミリーナたちに合流しないと。さあ、行こう。
チェスター…………。オレはまだ、一緒には行けない。
クレス―― !どうして……。
チェスターファントムは特異鏡映点を捕らえてた。そいつらの行方を追わないと。それに……。
チェスターとにかく、オレはもう少し救世軍側に残って探るから、クレスは戻れ。何かおかしな動きがあったら必ず連絡する。
クレスそんなの危険だ ! この後だって何が起こるかわからないんだぞ。
チェスター心配すんなって。今までだってそこそこ上手くやれてただろ ?ま、お前にはバレちまってたみたいだけど。
クレス当たり前だろ。どれだけ一緒にいたと思ってるんだ。
チェスターハハッ、だよな。でも、そういうお前がいるから、オレは安心してフラフラできるんだけどさ。
クレスはぁ……、わかった。ただし絶対に無理するなよ。信じてるからな、チェスター。
チェスターすまねぇクレス。後で謝るなんて言って、またこんなこと……本当に――
クレスそれ以上はいいよ。無事に戻って来たら、全部ひっくるめてちゃんと謝ってもらうからな。
チェスターああ、覚悟しとくぜ !
ルドガー……そうだったのか。
リフィルこの話は、潜入しているチェスターの安全も考えて、クレスとごく一部の者だけに止めておいたのだけれど……。
リフィルあちらに何か動きがあったようね。
クレスはい。チェスターの情報では、鏡殻変動後、救世軍の半数以上が、アスガルド帝国に吸収されたそうです。
クレスチェスターは帝国側に入り、現在は四幻将という立場で、ビフレスト皇国の生き残りの皇女に仕えていると……。
ロイドすげえなチェスター。それならいろんな情報が仕入れられるな。
クレスああ。それで帝国側には特異鏡映点が複数いることがわかったらしい。その人たちを助けて欲しいって書いてあるんだ。
クレス地図も添えてあったよ。これが帝国側への侵入経路だって。
ルドガー隠し通路か。建物の内部にまで通じてるな。これなら――
クレスルドガーさん、そのことなんですけど、手紙には絶対に帝国に来てはならない人物の名前が書かれていて……。
クレスそれが「ルドガー、ユリウス、エル」の三人だったんです。
ルドガー俺たちが…… ? どうして。
クレス理由までは書かれていませんでした。でも、ユリウスさんが、この手紙を届けにきた人物を追っているってことは……。
リフィルチェスターの協力者が戻る場所――つまり帝国側に足を踏み入れる可能性が高いわね。
ルドガー―― !まだ間に合うはずだ。俺はすぐに兄さんを追いかける !
エルエルも行く !
ルドガーいや……エルはここで待っててくれ。
エルなんで ! ? エルとルドガーはアイボーでしょ。
ルドガー買い物に行くのとは違うんだ。どんな危険があるかわからないんだぞ。
エル今までだって、危ない所いっぱい一緒にいったよ !
エルエルだってメガネのおじさん心配だもん。それに……ルドガーまでどっかいっちゃったら……エルは……。
コレットねえロイド、やっぱりミリーナ見つからないよ。――あれ……何かあったの ?
ミラ=マクスウェルどうした。なぜ泣いているんだ、エル。
エル別に……泣いてないし !
ミラ=マクスウェルそうなのか ? 私には不安で泣いているように見えたのだが。
エルそ……そんなの……。あなたがエルの知ってるミラじゃないから、わかんないんだよ !
ミラ=マクスウェル……。
ルドガーごめんミラ。これから行く所は危険だから、エルは連れていけないって話をしてたんだ。だからちょっと気が立ってて……。
ミラ=マクスウェルそうか。……ならば、私が同行しよう。私がエルを守れば問題ないだろう ?
エル……え ?
ミラ=マクスウェル私がお前を守るといったのだ。それならルドガーも自由に動けるし、エルも安全だ。ダメか ?
エルダメ……じゃないけど。
ミラ=マクスウェルそれなら良かった。どうだルドガー。これでエルを連れて行けるんじゃないか ?
ルドガー……わかった。頼むよ。
エル……別にエルは、頼んでないからね。
ミラ=マクスウェルもちろん。私が私の意志で、お前を守りたいから行くだけだ。
エル……。
コレット……ねえ。私も一緒に行っていいかな。
ロイドそうだな。俺もルドガーについて行こうと思ってたんだ。人捜しは多い方がいいだろ ?
クレスじゃあ僕は帝国への侵入経路を調査するよ。場合によっては、そのまま建物内部にも潜入することになると思う。
リフィルそうね。もしものことを想定して、それ相応の戦力をそろえていった方がいいわ。
クレスはい。ユーリやセネルにも声をかけてみるつもりです。二人とも、あちら側に知り合いがいる可能性があるようなので。
リフィルわかりました。それでは各々準備を進めて。あなたたちのことはミリーナに伝えておきます。
ルドガーああ。それじゃ俺たちはすぐに出発するよ。エル、行こう。
エル……うん。

キャラクター3話【3-4 ひとけのない街道】
シングうわ……、間に合うかな……。
ユリウス(ここまでわき目もふらず一目散か。あいつ、時間がないと言っていたのは本当だったようだな)
シング……。
ユリウス(……止まった。まさか尾行がバレたか ? )
カイウスシング、こっち !
シングカイウス ! よかった。オレが抜け出したの、バレてないよな ?
カイウスああ、大丈夫だ。この後すぐに、救世軍のアジトに襲撃をかけるってさ。
シングギリギリか……危なかった……。
ユリウス(救世軍を襲撃……ということは、奴らはアスガルド帝国軍か)
カイウスそれで上手くいったのか ?
シングああ。もちろん ! ……というか多分だけど。
カイウスよし、すぐに本隊に戻ろう。怪しまれるとまずい。
ユリウス(彼らが戻った場所……なるほど、あそこにアスガルド軍が駐留しているのか)
ユリウスさて、どうするか……。
ユリウス(救世軍には俺自身利用されてしまったが、現時点で皆の敵ではない……)
ユリウス(かといってあの少年も敵とは思いがたい。さっきの様子だと、帝国の意向とは別の目的で動いているようにも見える)
ユリウス(ルドガーたちに手を出すなら容赦しないつもりだったが……)
ユリウス(ここは一度戻るとするか――)
ユリウス―― !
シンクにぶいね。くだらないこと考えてないで、もっと背中を気にした方がいいんじゃない ?
ユリウス(シンク ! ?……こいつ、気配がまるでなかった)
マークおいシンク。もっと普通に声かけろよ。なんでそんなケンカ腰なんだ。
シンクフン。軍が駐留する場所で背後をとられるなんて、殺して下さいって言ってるのと同じだろ。
シンク鈍くさくてイライラするんだよね。
ユリウス……とんだご挨拶だな。
マークいきなり悪かったな。ここは一つ、こいつなりの不器用な親切ってことで勘弁してくれ。
マーク実際、ここに来たのが帝国の人間だったら、間違いなくあんたはここで、ひと悶着起こしていたはずだからな。
ユリウス……救世軍のマークか。お前たちこそ、こんな所で油を売っていていいのか。これから帝国軍が――
シンク救世軍が潜伏するアジトに襲撃をかける――だろ ?ありがたいね。予定通りさ。
ユリウスそれはどういう意味だ。
マークこれは陽動作戦なんだよ。あっちで派手にやってもらって、帝国が手薄になっている隙に目的を果たす。
ユリウス……随分と口が軽いんだな。目的を聞いても教えてもらえそうだ。
マークかまわないぜ。さっき驚かせた詫びに教えてやるさ。帝国に捕らわれている魔鏡技師が俺たちの目的だ。
マークそいつはアスガルド帝国から、精霊クロノスの力を研究するように命じられている。そいつを救出して――
ユリウス精霊クロノスだと ! ?どういうことなんだ !この世界にもクロノスがいるのか ! ?
マーク食いつくねえ。だがそういうことは、素人に聞くより専門家に聞いた方がいいんじゃないか ?
ユリウス専門家……その魔鏡技師のことか。
マークああ。俺じゃ詳しく答えられないからな。一緒に来れば、救出した後にでもじっくり聞けると思うが……。
マークどうだ、俺たちと来るかい ?
ユリウス……ああ、行こう。

キャラクター4話【3-6 危険な山岳 折返し】
ルルナァ~……。
コレットちょっと声に元気がないね。ルルちゃん、疲れちゃったのかな。
ルドガーエルも疲れてないか ?
エル……へーきだよ。それより、まだメガネのおじさん見つからない ?
ルドガー目印どおりにたどってるけど会えないな。兄さん、どこまで行ったんだろう。
ロイドかなり遠くまで追ってるみたいだな。お、また分かれ道。
ルドガーええと……ここを左だ。
ロイドすげえよな。地面の変な模様や石とかみて、すぐにわかっちまうんだから。
ロイドそれもエージェントっていうやつの知識なのか ?
ルドガーう~ん……半分くらいかな。これは俺たち兄弟だけに通じる目印なんだ。
ルドガー子どものころ、兄さんと山で迷子になったことがあってさ。随分と酷い目にあったんだけど……。
ルドガーその後で、もう迷わないようにっていろんな目印を決めたんだ。
ルドガー今思えば、基礎はエージェントの知識だったんだろうけど、子どもの俺でもわかるようにしてくれたんだろうな。
ロイドそっか。優しいんだな、ユリウスは。
ルドガー……ああ。
エル……ねえルドガー。エルにも目印のこと教えて ?そうすれば見つけるの手伝えると思うよ。
ルドガーエル……。
エルで、でもメガネのおじさんとのヒミツなら別にいーけど。
ルドガーそうだな。エルにも覚えてもらうか。俺とエルは相棒だもんな。頼むよ。
エルうん、手伝ってあげる !
ミラ=マクスウェル私にも教えてもらえるか ?四大の力を使えば、目印を見つけることも容易くなるかもしれない。
エルそれはダメですー。エルはアイボーだから教えてもらえるんだもん。……でも、どうしても知りたいなら――
ミラ=マクスウェルいや、無理にとはいわない。
エル……こんな時、きっとミラなら「教えて」っていうのに。
ミラ=マクスウェル……がっかりさせたようで済まないな。だが私はこうなんだ。エルの知っているミラと同じ反応はできない。
ミラ=マクスウェルこれからも私は、エルの望むミラにはなれないと思う。
エル…………。
ミラ=マクスウェルだからどうだろう。私はミラだが、ミラとは別人のミラとしてエルの新たな友人に加えてくれないか ?
エルミラだけどミラじゃないミラ…… ?なにそれ、ややこしーよ。
コレットそだね。確かにこんがらがっちゃうけど、これって、名前が同じお友達が増えたってことなんじゃないかな。
エル同じ名前……かぁ。でも……。
ロイドやっぱ悩むよなあ。俺はエルの気持ち、少しだけどわかるよ。
ロイド俺の村にいたポールって男の子がさ、この世界で会った時には、全然俺のこと知らない奴になってたんだ。
ロイドその頃は具現化のことなんてよくわかってなかったから、ちょっとショックだったなあ。
エルあ、そのちょっとショックっていうのエルと似てる !エルのこと知らないミラだったから……。
エルだから……あの時はごめんね。でもね、別にこっちのミラも嫌いじゃないんだよ。
ミラ=マクスウェルそうか。嫌いじゃなくて嬉しいよ。私もエルのことは嫌いじゃないからな。
コレットな~んだ。二人とも嫌いじゃないなんて、エルとミラは気が合うんだね。
エルま、まあね !それに別のミラがいるなら、いつか、本物のミラに会えるかもしれないし !
ミラ=マクスウェル本物……か。フフ、そうだな。私も、もう一人の私という存在に興味があるよ。
ミラ=マクスウェルどこが同じで、どこが違うのか。これもまた、本では得られない経験の一つだからな。
エルホント ? ねえねえ知りたい ? ミラのこと。
ミラ=マクスウェルそうだな。だが本人に会った時の楽しみというものもある。ミラの話は、ヒントくらいにしてもらえるとありがたいな。
エルわかった !楽しいのがへっちゃうのヤダもんね。
コレット心配でついてきちゃったけど、大丈夫だったみたいだね。
ルドガーああ。心配してくれてありがとう。
ロイドよし。早いとこユリウスを見つけようぜ。

キャラクター5話【3-7 危険な山岳 出口】
エルあ、目印またあった !
ルドガーもう覚えたみたいだな。
エルふふーん。このくらいヨユーだよ。
ミラ=マクスウェル―― !ルドガー、あれを見ろ。
ルドガー煙があがってる…… ?
コレット私、ちょっと見てくるね !
エルわ、飛んでる ! すごーい !
コレットこの先の建物から煙があがってる。救世軍と……アスガルド軍、なのかな。戦ってるよ !
ミラ=マクスウェルエル、目印はどちらを指している ?
エルえっとね、煙とおなじ方向 !
ルドガーまさか兄さん、巻き込まれたんじゃ…… !
ロイドこのままじゃ状況がわからねえ。近くまで行こう !
ロイドやっぱり救世軍とアスガルド軍だ。救世軍の方が押されてるな。
ルドガー……なんか変じゃないか ?帝国軍の方が押してるっていうより、救世軍がわざと戦線を後退させてる気がする。
ロイド押されたふりして戦ってるってことか ?
ルドガー――シッ、隠れて !
ルドガー(あれは……手紙を持ってきた奴だ。やっぱり、兄さんはこの戦場にいるのか ? )
シングリヒターの言った通りだ。これ、救世軍の陽動作戦かもしれない。
カイウスじゃあ、狙いはイリアか……それともセシリィ ?
シングどっちにしろナーザが近くにいる。状況を伝えた方がいいな。
ミラ=マクスウェル……行ったようだ。
ロイドえっと……なあルドガー結局これってどうなってんだ ?
ルドガー多分、この戦い自体が救世軍の陽動作戦で帝国側もそれに気が付いた、ってとこかな。
ロイドあ~……そういう変なかけ引きみたいなの苦手なんだよな。
エルエルにもよくわかんないよ。結局メガネのおじさんはどこにいるの ?
? ? ?僕なら答えてあげられるよ。
ルドガー―― ! ?
? ? ?そのためには、少しだけ君たちの時間をもらうけどいいかな ?
ロイドお前……ファントム ! ?
ミラ=マクスウェル生きていたのか !
? ? ?ファントム……、リーパのことか。君たちにはそう見えても仕方がないね。
ルドガーもしかして、あなたは……。
フィリップ初めまして。鏡映点の方々。僕は第103代目ビクエフィリップ・ビクエ・レストン。
フィリップ【最初】のフィリップだ。証は何もないけれど、ね。
ルドガー本物のフィリップ……ってことはゲフィオンと幼馴染の…… ?
フィリップ……ここで長話は危ない。戦場から離れた場所へ行こう。さあ、こっちへ。

キャラクター6話【3-9 喧噪渦巻く街道】
フィリップさて、この辺りなら大丈夫だろう。
ロイドなあ、あんたみたいな重要人物がなんでこんな所にいるんだ。今までどこで何をしてたんだよ。
フィリップすまないが、それを説明するには少し時間が足りないんだ。君たちにも急いでもらわないといけないからね。
フィリップ早速だが、ユリウスはマークたちと共にセールンドの城下町へ向かった。
ルドガーマークと ? なんでそんなことに。
フィリップ精霊クロノスを研究しているセシリィという魔鏡技師を帝国から救い出すためだ。
ルドガー精霊クロノス ! ? ここにもいるのか ?
フィリップああ。この世界のクロノスが君たちクルスニクの一族にどんな影響を及ぼすのかわからない。
フィリップ一刻も早く彼女と会ってすぐに調べた方がいい。
ルドガーそうか……。兄さんはそれを知ってマークと一緒に……。でもなんで今頃、精霊クロノスなんだ。
ミラ=マクスウェルクロノスではないが、以前から精霊の気配はあったんだ。私はその気配をたどって火の精霊イフリートと会っている。
コレットあ、それってクラースさんと出会った時だよね。
ミラ=マクスウェルそうだ。しかし今目覚めているのはイフリートのみのはずだが……。
ルドガー精霊が目覚める ?……いったいどういうことだ。
フィリップすでに知識のある者もいるだろうが一応、この世界の精霊について説明をしておこう。
フィリップかつて『太陽神ダーナ』は、ティル・ナ・ノーグの滅びを予言した。
フィリップその救済のために、来たるべき時に備えてダーナの巫女と精霊たちを眠りにつかせたという。
フィリップこの巫女が鏡士の始祖たるヨーランド。初代の鏡士と言われるヨウ・ビクエだ。
フィリップ精霊はヨーランドの目覚めと共に再び目覚めるはずだったのだが……。
フィリップヨーランドが未だ目覚めていないにもかかわらず、各地で精霊の目覚めの兆しが散見されている。
ミラ=マクスウェル確かに、私が会ったイフリートもそんなことを言っていたな。
ルドガーそれじゃ、クロノスも……。
フィリップ確実なことはわからない。兆しだからね。目覚めているかどうかは、セシリィが知っているはずだ。
フィリップ彼女は今、特異鏡映点亜種と呼ばれる特殊なアニマの持ち主を調べるためにセールンドに連れて来られている。
フィリップ帝国がアニマの調査に使用するのはカレイドスコープ跡、もしくはキラル純結晶精製所のどちらかだろう。
フィリップ今はカレイドスコープ側にマークら救世軍、精製所にはユリウスが向かっている。
フィリップ君たちは精製所に行って、ユリウスと合流するといい。もしもセシリィがそちらにいるのなら、助け出してやってくれ。
ルドガーわかった。……あなたには、聞きたいことも言いたいことも山ほどあるけど、情報をくれたことには感謝するよ。
フィリップこちらの利益も見込んでのことだ。
フィリップそれにマークがカレイドスコープの元へ向かっているから、僕もこれ以上カレイドスコープからは離れられない。
フィリップセシリィを捜して助けるには歴戦の勇士である鏡映点の皆さんに協力を仰ぐしかないんだ。
フィリップこちらは兵力を削がれてしまっているからね。期待していますよ。
エル話、終わった ? メガネのおじさんがどこにいるかわかったんでしょ ?急ごうよ !
ルドガーそうだな。行こう !

キャラクター7話【3-11 精製所近くの街道1】
ルドガー――あれがキラル純結晶の精製所か。
コレットうん。前にカレイドスコープが故障した時にあの精製所でリタが部品の修理をしたんだって。
ロイドあの時は大変だったんだぜ。みんなで手分けして材料集めてさ。俺なんて――っと、そんな話より、ユリウス探さなきゃな。
ルドガーもう建物内部に侵入してる可能性もある。その場合は内部潜入と外で待機の二手で――
エルねえ、ルルがいない !
ルドガーあれ…… ? さっきまでここにいたのに。おい、ルル ?
ルドガーそこにいるのか、ルル ? おいル――
ルルナァ~ !
ルドガールル……と、兄さん ! ?
ユリウス……鳴き声を聞いてまさかとは思ったが、お前、ルルを連れて来たのか。
ルドガー兄さん、無事でよかった !
ユリウスやはり追って来てしまったんだな。……ルドガー、実は少し面倒なことになりそうなんだ。お前は戻って――
エルあーっ、ルルいた !それにメガネのおじさんも !
ユリウスエルも一緒なのか ! ?
エルそうだよ。メガネのおじさんいつまでたっても帰ってこないんだもん。だからさがしに来たの。
ユリウスいや、それにしたってこんな所まで……。ルドガー、これはどういうことだ。
ルドガー説明するよ。その後でいいから、兄さんも何があったのかちゃんと話してくれ。
ユリウス……わかった。
ユリウス――なるほど。それで俺を連れ戻しにきたのか。
ルドガーああ。俺たちにアスガルドへくるなって手紙に書いてあったのは、クルスニクの件が絡んでいたからだったのかもしれない。
ユリウスやはり手紙を持ってきた少年は、敵ではないようだな。それと――君たちにも迷惑をかけた。
ロイド俺たちは好きでついてきたんだ。迷惑なんて思っちゃいないよ。
ルドガーで、今はどういう状況 ?セシリィっていう魔鏡技師はここにいるのか ?
ユリウス少し前に、少女を連れたアスガルド軍が施設に入っていった。だが彼女が技師なのかどうかはわからない。
ユリウス……それと、陣頭指揮を取っていたのは、イクスにそっくりな男だった。信じられないかもしれないがな。
ルドガーイクス ? だってイクスは……。
ロイドそうだぜ。あの魔鏡なんとかって奴の中にいるんじゃないのか ?
コレット魔鏡結晶だよ。だからミリーナ、あんなに悲しんでるんだもん。
ミラ=マクスウェル見間違いじゃないのか ?
ユリウス俺は今まで、似て非なる物を探す仕事を山ほどしてきた。姿だけなら、イクスに間違いないと断言できる。
ユリウスただ、あの男にはイクスのような穏やかさがなかった。
ユリウスここがティル・ナ・ノーグの分史世界なら、俺は間違いなく彼を『時歪の因子』だと思っただろうな。
ルドガー…………。
ユリウスどっちにしろ、中に入らなければ魔鏡技師の所在もその男の正体もわからないということだ。
ルドガーそうだな。よし、潜入しよう。とりあえず、ミラはエルと一緒に外で待機していてくれるか ?
ミラ=マクスウェルああ。エルは私が守ると言ったからな。責任は必ず果たそう。
エル……ねえ、すぐに帰ってくるよね ?
ルドガーもちろん帰ってくるさ。安心して待っていてくれ。
エルメガネのおじさんも、ちゃんと返事して。
ユリウスえ…… ?
エルだってエルたちは、メガネのおじさんが心配だから迎えにきたんだよ。だから……いっしょに帰ろ ?
ユリウス……そうだな。帰るよ。みんな一緒に、だ。
ルドガーそれじゃ、兄さんと俺、ロイドは中に――
ロイドなんだ、今の音。
ユリウス……精製所の裏口からだな。
コレット誰か来るよ !
少女ねえ、大丈夫 ? 辛くない ?
金髪の男へい……き……だ……。
少女無理しないで、私が支えるから。ほら、よりかかって ?
ルドガー……女の子 ?金髪の男は具合が悪そうだな。
ユリウス――あれは……さっき連れられて来た子だ !
アスガルド兵貴様ら止まれ !脱走はそれ相応の処罰が下るぞ !
金髪の男う……。
少女―― !しっかりしてっ !
アスガルド兵馬鹿が、無駄なことをするからだ。手間をかけさせやがって、この――
エルあぶない !
アスガルド兵――誰だ !
ミラ=マクスウェル――シルフ !
アスガルド兵うわああっ ! なんだっ、この風は !
ミラ=マクスウェルルドガー、すまないが、もう潜入は難しいかもしれないな。彼女たちを見捨てておけなかった。
エル違うよ ! エルが声出したからかばってくれたんでしょ ?ごめんなさい……。
ロイド気にすんな。ちょうどあの時、俺も飛び出そうと思ってたんだ。
ユリウス……仕方ない。行くぞ。この騒ぎだ、すぐに他の兵士が来る。
ルドガーわかってる。今のうちにあの子たちを助け出そう。

キャラクター8話【3-12 精製所近くの街道2】
ルドガーよし……ここまで来ればいいか。君、ケガは ?
少女はい、私は大丈夫です。でも彼が……。
金髪の男ハアッ……ハアッ……くる……し……
ユリウスこれ以上動かすのは危険かも知れないな。
ルドガーこんな時にジュードがいてくれれば……。
金髪の男うう……。
ルドガーおい、しっかりしろ !
ユリウスだめだ、意識がない。
コレット少しだけでも休ませてあげたいけど……。難しいよね。この人だけ運ぶのはできるけどみんなと離れるのは危険だと思うし……。
ロイド俺、追っ手がこないか様子を見てくるよ。その間だけでも休めるだろ。
ミラ=マクスウェル私も行こう。いざという時どちらかが足止めすれば、報せが滞ることもないからな。
ユリウスそう言えば君、先ほど軍に連行されてきたようだが、中の様子がわかるなら教えてくれないか ?
セシリィ……はい。それと私、セシリィっていいます。助けてくれてありがとうございました。
ルドガーセシリィ ! ?君が魔鏡技師のセシリィだったのか !
セシリィあの、あなたたちは…… ?
ルドガー俺はルドガー・ウィル・クルスニク。君には精霊クロノスについて聞きたいことがあるんだ。
セシリィじゃあ、あなたがクルスニクの一族…… !
金髪の男……うう……。
コレットあ、目が覚めたみたいだよ !
エルねえ大丈夫 ? どこか痛い ?
金髪の男き、みは……、…………。
エルなに ? 聞こえな――きゃあっ ! !
コレットど、どうしたの ! ? エルを離して !
ルドガーエル ! ?
セシリィリチャード……あなた !
エルはなして ! はーなーしーてーよーっ !
リチャード ?そう……きみは特異鏡映点だよね。確か『クルスニクの鍵』……だったかな。
ユリウス――貴様…… !
ルドガーエルを返せ !
リチャード ?断る。だが代わりにこれをくれてやろう。
ユリウス光魔だと ! ?コレット、セシリィを守れ !
コレットはい ! セシリィこっち !
リチャード ?それじゃあせいぜい楽しんでくれ。
エルルドガー ! ルドガー ! !
ルドガーエル !――くそっ、なんだこの大量の光魔は !後から後から……これじゃ追えない !
ロイドルドガー ! 一体どうなってるんだ !
ルドガーさっき助けた男にエルをさらわれた !
ミラ=マクスウェルなんだと ! ?エルは私が守ると約束したのに……。こんな所で足止めをくらうわけには――
マークそれならさっさと行って来な。
ユリウスマーク ! シンクもか !
マークここは引き受けた。あんたたちはエルを助けろ !
ユリウスすまない、恩に着る。
シンク言っとくけど好きでやってるわけじゃないからね。目障りだからさっさと消えな !
ユリウスルドガー、ここは彼らに任せろ。行くぞ !
ルドガーエル……絶対に助けるからな !

キャラクター9話【3-14 入組んだ街道2】
エル痛いよ、はなしてよ !こんなことして、あなたなんてすぐ捕まえられるんだからねっ !
エルルドガーだって、メガネのおじさんだってこっちのミラだって !みんなみんな――強いんだから !
リチャード ?うるさい ! これ以上騒ぐと――……ぐっ……。
リチャード ?……こん、な……とき……に……うっ………あああっ ! !
エル! ?
エルえ…… ?
リチャード ?………。
エルねえ、どうしたの ?さっきみたいにエルを騙そうとしてるんだよね ?
リチャード ?………。
エルえっと……誰か呼んでくる !
エル――あっ !
ミトスどこに行くの ?こんな場所、一人だと危ないよ。
エル……あなた、だれ ?
ミトスボクと一緒においで。安全な所へ連れていってあげる。
エルそれよりも、あの人見てあげてよ。具合悪いみたいなの。エルのことはいいから !
ミトスそう、優しいね。人間の割には。でもちょっと面倒だから――少し眠ってもらうよ。
エル……あ……あ、れ ?何だか……ねむ……――
ミトスさてと。面倒をかけてくれたね、チーグル。おかげで――
ロイドルドガー、本当にこっちだったのか ! ?
ルドガー間違いない。エルの声がした !
ルドガーエル ! ?
ミトスそれ以上近づかない方がいいよ。この子のためにもね。
ロイド―― ! お前……ミトス !
ミトス……やぁ、ロイド。久しぶり、かな ?異世界でも出会うなんてホント笑っちゃうね。
ロイドどういうことなんだ ?救世軍に協力していたんだよな ?今もそうなのか ?
ロイドお前は何をしようとしてるんだ ?ここにはハーフエルフへの差別はないんだろ ?
ミトス別に、お前に話すようなことじゃない。
ロイド俺は聞きたいんだ !お前に聞かなきゃならないことは元の世界にいたときからたくさんある。
ミトス――おっと。お前の仲間はそうじゃないみたいだけどね ?
ユリウス――チッ ! !
ミトス甘いよ。小賢しいメガネのおじさん ?
ユリウス小賢しかろうと何だろうと、手段を選んでいられない時があるんでな。その子を返せ !
ミラ=マクスウェル……ロイド、お前の知り合いだろうが、私は戦うぞ。エルとの約束を守らねばならない !
ロイド……わかってる。
ロイド――なぁ、ミトス !話してくれないか ?お前が何をしようとしているのか。
ミトス……輝く御名の下、地を這う穢れし魂に裁きの光を雨と降らせん。
ミラ=マクスウェル――来るぞ !
ミトス安息に眠れ、罪深き者よ。――ジャッジメント ! !
ルドガーうわあああっ !
ユリウス――ぐっ !
ミラ=マクスウェルくっ、なんだ……この威力は……。
ミトスさすがにこれ一発で沈むほど弱くはなかったね。続ける ? 異世界のマクスウェル ?
ミラ=マクスウェルああ、聞くまでもない !
ルドガー……くっ、この世界でも【骸殻能力】が使えれば――
セシリィ
コレット……セシリィ。ここに隠れてて。やっぱり私も行かないと――
セシリィ――ううん。私も……私が行かないと飛天のミトスには勝てない。
コレットセシリィ ! ? 待って ! ?
セシリィ――ルドガーさん、この魔鏡を試してみて !
ルドガーこれは…… ?
セシリィこの魔鏡はクロノスの力を帯びているの。うまくいけば、クルスニク一族の力を使うことができるはず !
ルドガークルスニクの……まさか ! ?
ミトスやぁ、セシリィ。きみはそっちに付くんだね。だったら――残念だけど、さよならだ。
セシリィ――ルドガーさん ! 試して !【骸殻】を !

キャラクター10話【3-14 入組んだ街道2】
ミトスへぇ、あれがクルスニクの力、か。
ルドガーまだ駄目か……。もっと、もっと力が引き出せれば――
ユリウス待てルドガー !
ミラ=マクスウェルルドガー、エルは取り返したぞ !君が奴を抑えてくれたおかげでな。
ミトス……うん、そうだね。きみたちはエルを、ボクは彼――チーグルを回収して手打ちにした方がいい。
ミトスきみも気づいたんじゃない ?クルスニクの力がボクに対しては上手く作用しないのを。
ルドガー…… !
ミトスその能力、エターナルソードの力に似ているね。時間にまつわる力のせいか互いの力を吸収し合ってしまう。
ミトスだからこそデミトリアスの興味を引いたのかな。
ルドガーデミトリアス……国王が ?
ミトス正しくは、お前たちクルスニクのアニマに刻まれた『分史』という概念にね。ボクは興味ないけど。
ロイドミトス、お前…… ?どうして俺たちにそんな話を――
ミトス痩せた野良犬を見たらエサの一つでもあげたくなるものでしょう ?
ミトス――さて、チーグルは連れて行くよ。
ロイドミトス……。
エルん……あ…… ?
コレットあ、エルが目を覚ましたよ !
エルルドガー…… ?あれ ? エル、どうなったの ?
ルドガーミラが助け出してくれたんだよ。みんなもここにいる。体、何ともないか ?
エルうん、大丈夫 !こっちのミラも…あ、ありがと。
ミラ=マクスウェル約束だからな。お前が無事でよかった。
ユリウス……エル、本当になんともないか ?体の痛みや、違和感や――
エルへーきだってば。メガネのおじさんはシンパイショーだね。
ユリウスルドガー、お前は ?
ルドガーだ、大丈夫だよ。どうしたんだ兄さん。
ユリウスいや、何ともないならいいんだ……。それにしても、どうして骸殻化できた ?
ルドガーああ、この魔鏡を使ったんだよ。――あれ ? 割れてる…… ?
セシリィミトス……さんの持つ剣の力を受けて割れちゃったのね。それは試作品だから。
セシリィその魔鏡は、精霊クロノスの力を帯びていたんです。
ユリウスやはりこの世界のクロノスは……。
セシリィはい。すでに封印から目覚めています。
セシリィこの世界の精霊が目覚めると、鏡映点によって持ち込まれた異世界の精霊は同種の存在と融合して、集合体になります。
セシリィそれでこの世界の精霊クロノスもクルスニク一族のあなたたちに影響を及ぼすものになっているの。
セシリィだからこそその力――骸殻が使える。
セシリィもし必要なら、ルドガーさん用にオーバーレイ魔鏡を造りますよ。
セシリィ今はその試作品と違って、もっと安定した加工技術を開発しましたから。あ、色々と材料は必要になっちゃうけど……。
ユリウスなぁ、この魔鏡を使って骸殻化することで使用者に影響はないのか ?力の限度や、その……代償のようなものは。
ルドガー代償 ?
セシリィああ……。はい、理論的には問題ないです。
セシリィエルさんは特異鏡映点なので時間の歪みエネルギーはエルさんの体からこの世界を取り巻く虚無へ吸い込まれる。
ユリウスそうか、問題はないのか。本当にそうなら、どうにか……。
セシリィただ、物事に100%はありません。だから今後もこの力を使うのなら、限定的な使い方をした方がいいと思います。
ルドガー――代償って何のことだ ?
セシリィ…………。
ユリウスあ、ああ。魔鏡での骸殻化だからな。俺たちの世界と、何か違う影響がでるんじゃないかと思っただけだ。
ルドガー……兄さん。
ユリウスルドガー、後でゆっくり話す。だから今は少し……時間をくれないか。
ルドガー……わかったよ。
フィリップ――セシリィ。よかった。無事だったようだね。
セシリィフィリップさん ! ?もしかしてフィリップさんが、私を助けるように頼んでくれたの ?
フィリップああ。でも彼らの助力がなければ到底かなわなかった。皆さん、ありがとうございます。
ルドガーいや、俺たちもセシリィに助けられたんだ。セシリィを迎えにきたんだろ ?
フィリップそのことだけど。セシリィ。彼ら鏡映点と共に、ミリーナを支えてやってくれないかな。
セシリィえっ、私が ?
フィリップ君ほどの技師ならば、ミリーナの大きな力になれる。それにルドガーたちクルスニク一族にも、君は必要だと思うよ。……嫌かな ?
セシリィまさか ! それどころか私、助けてもらったのに何もお礼をしてないから力になれるならすごく嬉しいけど……。
ルドガー俺は賛成だよ。ミリーナもきっと喜ぶ。
ミラ=マクスウェル私も異論なしだ。精霊の件も詳しく知りたいしな。
ロイド俺も賛成。ルドガーたちのためにもなるんだろ ?
コレットわあ~、仲間が増えたね !
エルなんかわかんないけど、エルもさんせー !
ルルナァ~ !
エルルルもだって !
フィリップそうか、よかったよ。受け入れてもらえそうだね。
セシリィありがとうございます !
ルドガーよし、帰ろうか。兄さんを迎えに来て随分寄り道したからな。
エルそーだね !メガネのおじさん、今度は一人でどっかいっちゃだめだよ。
ユリウスあ、ああ。それなんだが、エル。おじさんというのはそろそろやめてくれないか ?
ユリウス俺はまだ20代なんだが……。
ルドガー兄さん……。気にしてたんだな。
エルおじさんって、嫌だったの ?ごめんね ?
ユリウスいや、謝られると面はゆいんだが。
エルわかった ! これからはユリウスって呼ぶね。
エルユリウスは何かあったら、エルやルドガーにちゃんと話してからコウドウすること !はい、目を見て ! 約束 !
ユリウス……はは、エルにはかなわないな。わかった。約束するよ。

キャラクター11話【3-15 アジト近くの街道】
ロイドふぅ。やっぱりアジトは落ち着くな。
コレット……フィリップさんも一緒に来ればよかったのにね。
ロイドあの人、いつの間にかいなくなってたな。
ルドガー――エルを休ませてきたよ。
ロイド無事でよかったよな。そういや、ミリーナは ?
ルドガーああ、どうもセールンドに行ってるらしいんだ。俺たちがいない間になんだか色々起こってるみたいで……。
ルドガー他のみんなもかなり忙しそうだったよ。
ユリウスすぐにでもお前の魔鏡の件を相談したかったんだが……仕方ないな。俺たちはここでしばらく待とう。
ユリウスそれにしても驚いたよ。君がガロウズの弟子とは。
セシリィガロウズ師匠には色々と教えてもらいました。でも、行方不明だなんて……。
セシリィ手がかりとか全然ないんですか ?
ルドガー……まだ何も。
セシリィそうですか……。でも、ガロウズ師匠は絶対に帰ってきます !
セシリィそれまで私、魔鏡技師としてここで頑張りたいです。あ、師匠には及ばないかもですけど。
ルドガーそんな心配ないさ。それに優秀だから帝国もセシリィをさらったんだろうし。
セシリィ……私が捕まったのは、ビフレスト皇国の魔鏡技術を研究していたからじゃないかな。帝国がその技術を欲しがっていたから――
カーリャルドガーさま !ミリーナさまが帰ってきました !
ミリーナオーバーレイ魔鏡……。これは……ビフレストの魔鏡技術ね。
セシリィはい。アニマに宿る過去や未来の可能性を一時的に具現化して、使用者を包むことで潜在能力を引き出し、倍増させる魔鏡です。
ミリーナイクスのオーバーレイは今現在の力を持続的に重ね合わせる技だったけれどこれは過去や未来すらも重ねるなんて……。
コーキス確か異世界から具現化されたものはエンコードによって、この世界に合わせて情報が調整されているんですよね。
ミリーナええ、そうよ。でもそのせいで鏡映点の人たちの中には本来の能力が抑えられている可能性がある。
コーキスじゃあオーバーレイ魔鏡でそれを解放できるってことなんですね ! ?
ミリーナそういうことになるわね。
ミリーナしかも鏡士ではない人にオーバーレイを制御できるように加工するなんてとても高い技術だわ。
セシリィでも、その代わり時間的な制限があります。長時間は使えません。
ロイドはー、なんかよく分かんねーけどオーバーレイ魔鏡ってすげぇんだな ! ?俺も試してみてぇ !
セシリィその為にはロイドさんのアニマに秘められた力が、何を触媒にして目覚めるのかを見つけないといけませんね。
ロイドしょくばい ? 何だそれ ?――っていうか、敬語なんかで話さなくてもいいよ。
ロイド俺たちにもフィリップと話してた時みたいにしてくれていいんだぜ。
セシリィあ……う、うん。そうだね。これから仲間になるんだもんね。
セシリィえっと、それで触媒っていうのはきっかけみたいな物のこと。
セシリィルドガーさんの場合は精霊クロノスの力を帯びた魔鏡が、ルドガーさんのアニマから過去や未来に起こりえた力を引き出したの。
ロイド……んー ? つまり力を増幅するきっかけが何かわかれば、俺もオーバーレイしてすげぇ力が出せるんだな。
ロイドすげぇ ! イクスとかルドガーみたいに俺も格好良く変身してぇ !
ミリーナ…………。
ルドガー大丈夫か、ミリーナ。帰って来たばかりで疲れているのにごめんな。
ミリーナあ、違うんです。ルドガーさんたちの話には気になることがたくさんあって……。
ミリーナねえセシリィ。フィル……フィリップのことなんだけど――
カーリャミリーナさま。お話中ごめんなさい !
カーリャクレスさまたちが戻られたんですけどジュードさまを呼んでくれって…… !
ミリーナ皆さん、無事ですか ! ?誰か怪我でも――
クレスミリーナ、僕らは大丈夫だよ。――さあ、チェスター、こっちへ。
セシリィえ、チェスター ! ?
チェスターお前、セシリィか !なんでここに……いや、ちょうど良かった !
チェスターなあ、お前ならこいつを助けられるんじゃないか。
セシリィちょ、ちょっと待って。いきなりで頭が追いつかないよ !この子、誰なの ?
チェスターアミィ。オレの……妹だ。
ミリーナ妹さん ?妹さんも具現化されていたんですか ?
ミリーナ――あ、でもチェスターさんの妹さんは確か……。
クレスうん……。
チェスター頼む……とにかく診てやってくれよ。
セシリィええ ? 私は魔鏡技師でお医者様じゃないよ ?
チェスターんなこたぁわかってる !ジュードが来たらあいつにも診てもらうさ。けど、多分お前の方が適任だと思うんだよ !
アミィ…………。
セシリィ……わかった。アミィ、ちょっと触るね。痛いとか苦しいとか、何でも言って ?
アミィ…………。
セシリィうーん……。ずっと笑顔だから苦しいっていうわけじゃないのかな。外傷もみあたらないし……。
アミィ…………。
セシリィねえ、待って。……笑顔……だけ ?
チェスター……ああ、ずっとだ。ずっとこいつは――このままだ。具現化されたときからずっと……。
クレスチェスター……。
チェスター頼むよ……なんとかしてやってくれ。
to be continued
キャラクター1話【4-1 ひとけのない草原】
マーク……おい、シンク。そんなに腹を立てなくてもいいだろうよ。あの場でミリーナを殺させる訳には――
シンクアンタたちに協力してたのは、ボクをこんな馬鹿げた死者の国に呼びつけた鏡士たちを殺させてくれるって約束だったからだ。
フィリップそれはマークの独断だね。
マーク……悪かったよ。あんたにとってはそれが一番なんじゃないかって……あの時まで――いや、今だって……。
フィリップ………………。
フィリップ……シンク。全て話しただろう。全ての元凶はゲフィオンと僕だ。
フィリップこの世界を一度は滅ぼし具現化で甦らせようとして異世界の人々までをも巻き込んだ。
フィリップ恨むなら僕とゲフィオンだ。
シンク同じことさ。ゲフィオンとあの黒衣の鏡士はお仲間だろ。レプリカとオリジナルみたいなものだ。
フィリップ……シンク。具現化した存在は……似て非なる者だ。
フィリップ運命の分岐点から違う道を歩む自分の可能性……それが具現化された存在――リアライザーだと僕は思うよ。
シンク勝手に分岐点に放り出しておいてよくそんな上から目線で話せるね。さすが鏡士サマはお偉くていらっしゃる。
マークなぁ、シンク。お前の前にニンジンぶら下げたのも取り上げたのも俺だ。
マークフィルを責めないでくれ。
シンクご主人様には忠実なんだね。
マークそりゃそうだろ。俺はフィルの鏡精だ。
シンク…………。
フィリップその時が来たら、僕を殺せばいい。でも今は――
シンク偽善者だね。まぁ、いいさ。マークに免じてもう少しだけ救世軍に付き合ってやるよ。
シンクそれで、今はどうなってるのさ。
フィリップミリーナの仲間が魔鏡技師のセシリィを助け出したのは知っているね。
マーク……そうか。だったら、ガロウズも今度は大人しく言うことを聞きそうだな。
シンクセシリィがいるから帝国を出られないって言ってたんだっけ ?
フィリップああ。ガロウズが戻ってくれればケリュケイオンをもう一度動かすことができるだろう。
シンクへぇ、あの女のお古なら何でも欲しいんだ ?
フィリップミリーナとゲフィオンは違う人間だよ。
シンクでも、直接会うのが怖いんだろ ?口ではそんな風に言ってても同一視してるんだよ、アンタは。
ゼロス何だよ、またやり合ってんの ?つれないねぇ、シンくんは。
シンクその呼び方やめてくれない、バカ神子。
ゼロスせめてアホ神子にしといてくれよ。
フィリップゼロスさん。アルヴィンとシャーリィは ?
ゼロス俺さまたちのアジトに置いてきた。アルヴィンもシャーリィちゃんの護衛役なら丁度いいだろうと思ってな。
シンクへぇ。あの裏切り者、目を離して大丈夫なの ?
ゼロス……まぁ、心配するのもわかるが、あいつはあれでも罪悪感でいっぱいいっぱいになってるように見えるけどな。
ゼロス苦労はしたんだろうが根はお育ちがいい坊やなんだろ、きっと。
マーク元々あんたたちが雇ってこっちに送り込んできた傭兵なんだ。奴を信じようが信じまいが勝手にしてくれ。
マークフィルを助けてくれたことには感謝してるけどな。
ゼロスそれよか俺さま、どっちかっていうとシャーリィちゃんの方が気になるけどな。あからさまに何か隠してるし。
フィリップきみが女性を敬遠するのは珍しいね。
ゼロス嫌って訳じゃねぇよ。ただ、得体が知れねぇっつーの ?
ゼロスあれは鏡映点とかストレンジャーじゃなくてリビングドールなんじゃねぇか ?
フィリップどうかな。それとも違うように感じるが……。
フィリップそれよりゼロスさん丁度いいところに来てくれた。
フィリップシンクと一緒にアスガルド帝国の帝都に向かってくれないか。一時的にで構わない。手を貸して欲しい。
シンク冗談だろ ? バカ神子と一緒に動けっての ?
フィリップゼロスさんは僕の命の恩人だよ。そんな風に言うのは感心しないな。
フィリップそれに単独行動よりは安全だと思うけれどどうだろう。マークが無理なのはわかっているよね ?
ゼロス……首に縄つけられたワンコロだもんなぁ。
マーク悲しき鏡精の身ですから。ご主人様をおいて遠くへは行けませんってね。
フィリップシンクとゼロスさんには帝都にいるガロウズを連れてきて欲しい。
フィリップ確かクラトスさんがデミトリアス陛下の件で潜入している筈だから、合流するといい。
ゼロスまーたあのおっさんとかよ。あーあ。綺麗なおねーちゃんの仲間とかできねぇかな。
シンク――くだらないね。ボクは一人で行く。ゼロスがついてきたいなら勝手にすれば。
ゼロスへいへい、勝手にさせて頂きますとも。シンク坊や。
マーク大丈夫かね、あの二人は。
フィリップ――マーク……自由に動きたいか ?
マーク……言っても仕方ないことだろ。それが鏡精だ。
フィリップ……ごめんよ。
マーク何だよ、それ。そんなことより気弱な顔すんなって。ほら、笑えよ。
フィリップ………………。
マークやれやれ……。

キャラクター2話【4-2 地下通路 薄暗い道】
ルークルカたち、無事にアジトへ行けたかな。
クレススレイたちも一緒の筈だから大丈夫だと思うよ。
ユーリそれより自分たちの心配をした方がいいかもな。
ルークへ ? なんで ?
ユーリルカがどんな立場で戦士の館とやらにいたのか知らねぇが、単なるお客さんだったなんてことはねえだろ ?
クレス囚われの身だったなら、追っ手がこの通路にまで来ている可能性はあるね。
ルークあー、そりゃそうだな。今んとこ魔物以外、特に遭遇してねぇけど帝国の兵士が来る可能性もあるのか……。
クレスルークは人間を相手に戦うのはちょっと苦手みたいだね。
ルークん ? まぁな。……足引っ張らないようにしてるつもりだけど、やっぱわかっちまうのか。
クレスいや、足手まといなんてことはないよ。ただ、無理をする必要はないってことかな。
ユーリだな。人間にゃ向き不向きってもんがある。
ルークいや……大丈夫。
ルークそれにしてもアスガルド帝国ってはぐれ鏡映点を集めて何をするつもりなんだろうな。
ユーリさーてねぇ。セネルたちが集めてきたのははぐれ鏡映点らしき連中を、帝国が片っ端から捕まえてるって話だけだからな。
クレス同じタイミングでチェスターから届いた手紙には、何人かの特異鏡映点が帝都にある【戦士の館】に捕らえられているとあった。
ルーク……つまり帝国は、はぐれ鏡映点を集めてその中に特異鏡映点がいないか調べてるってことか ?
クレス今のところはそう考えるよりなさそうだね。チェスターの手紙にも詳しいことは書いていないし……。
クレスただ、本当にそれだけなのかは疑わしいよ。すぐに帝国に囚われた特異鏡映点を助けて欲しいなんて書いてくるなんて。
ユーリしかもルドガーたちを帝国に入れるな、ときた。
クレスルドガーたちは、同じ鏡映点でも何か僕たちとは違う部分があるのかもしれないね。
ルーク違う部分か……。この世界で言うところの【アニマ】ってのに違いがあるのかな。
ユーリ珍しく頭使ってるとこ悪いんだがこの辺じゃねえか ?
ユーリチェスターの手紙にあった秘密の出入り口っての。
クレス……そうみたい、だね。
クレス――うん。壁に偽装しているけど扉がある。開けてみよう。
ユーリ動かねぇみたいだな。
クレスルカのことがあってからこの出入り口を封じたのかも知れないね。
ルークマジかよ。どうする ?別の出入り口がないか探してみるか ?
ユーリまぁ、ここで引き返しても仕方ねぇしな。ちょっくらその辺探してみるか。
アスガルド帝国兵A特異鏡映点亜種01か ! ?
アスガルド帝国兵B――違うな。お前たちは何者だ ! ?
クレスまずい……。
アスガルド帝国兵A怪しい奴らめ ! 捕まえろ !

キャラクター3話【4-2 地下通路 薄暗い道】
ルークくそ ! いったん出直すか ?
クレスいや。チェスターがこのタイミングで来いと言っている以上出直すのはチェスターが危険になる。
ユーリだが帝国の連中がうろついてるとなると――
クレス誰だ !
クラトス――敵ではない。こちらへ来い。身を潜める場所がある。
ユーリついていったらブスリ……なんてことはないよな。
クラトスそのつもりがあれば声をかける前に斬っている。
ルークあれ……あんた……。
クレスルーク、知り合いか ?
ルークあ、いや……。そういう訳じゃないけどどこかで見たような……。
ユーリそれより増援が来るぞ。戦うってなら大歓迎だがそれでいいのか ?
クレスよし、ついていこう。
ユーリ……帝国の奴ら、いなくなったみたいだな。
クレスありがとうございました。おかげでやり過ごせました。あなたは一体――
クラトス私はクラトス。雇われの傭兵だ。
クラトス今は雇い主の希望で、アスガルド帝国の皇帝を自称するようになったデミトリアスについて調べている。
ルーククラトス ! ?そうか、クラトスってあんたのことか !
クレスやっぱり知り合いなのかい ?
ルークほら、ロイドが言ってた、前に北の監獄で助けてくれたロイドの仲間だよ。ロイドの親父さ――
ユーリ……ああそういやそんなことも聞いたかな。
クレスロイドのお父さんなら僕らと一緒に来ませんか ?
クラトスいや、私も仕事を請け負っているのでな。遠慮させてもらう。
クレスそうですか……。
ユーリそれにしても【傭兵】ね。傭兵って聞くとうさんくさい奴の顔が浮かんでくるけどお仲間かい ?
クラトス誰のことを言っているかわからぬが現時点ではお前たちと敵対するつもりはない。
ユーリへぇ……。だったら当然雇い主の名前も――
クラトス言えないな。
ユーリ鏡映点の傭兵を雇う奴なんてのは限られてるけどな。
クラトスお前たちの目的は、戦士の館に潜入することだろう。ならば私の雇い主が誰であろうと問題なかろう。
ユーリ随分こっちの情報に詳しいな。
クラトス戦士の館に続く隠し通路で騒いでいれば見当はつく。
ユーリそうか。そいつは失礼。てっきりこっちの様子が気になって遠回しに調べ回ってるのかと思ってね。
クラトス必要とあれば調べるが今はその必要性はない。
クレス……あの、デミトリアス陛下が皇帝を自称するようになったというのはどういうことですか。
クレスあの人はセールンド王国の国王ですよね。
クラトス……デミトリアスがアスガルド帝国を復活させると宣下したことは知っているな。しかしアスガルド帝国は滅びて久しい。
クラトスまた帝室に連なる一族は絶えていると聞く。そこでデミトリアス自身が皇帝に名乗りを上げたということだ。
クラトス幸か不幸かこの世界は具現化によって再生された。具現化された鏡映点ではない人々の記憶や意思は、曖昧模糊としている。
クラトス比較的たやすく帝国への帰属意識に目覚めたのだろう。
クラトスおそらくファントムによる最後の一斉具現化の際にも何か記憶の操作が行われただろうしな。
クラトスおかげで、今やこの世界の9割はアスガルド帝国の支配下にある。
ルーク鏡殻変動からまだ一ヶ月しか経ってないのにそんなことになってるのかよ ! ?
ユーリ帝国に皇帝ね……。やっぱりそういうのは好きになれねぇな。
クレスデミトリアスの目的は何なんだろう……。
クラトス私は具現化されたときからデミトリアスの動きが気になり、密かに調査を続けていた。
クラトスどうもデミトリアスはダーナの予言に関する資料を集めさせているようだ。
ルーク予言……って預言(スコア)みたいなもののことだろ……。
クラトス……案ずるな。ダーナの予言はお前の世界のように【絶対の未来】として存在するのではない。
クラトス可能性の未来視……とでも言えばいいか。それすら私には眉唾のように思えるがデミトリアスは深く傾倒しているらしいな。
クレスダーナの予言って確かこの世界の滅びについての予言ですよね。
クラトス魔鏡と鏡精が世界の滅亡に関わる……そういう内容のものであるらしい。
クラトス予言がどこまでの信憑性を持っているのかデミトリアスは予言をどうしたいのか――私はそれを調べている。
クレスそれが雇い主の目的でもあるんですね。
クラトス……そうだな。ところでお前たちの目指す戦士の館だが、この先の道を左に2回曲がるといい。
クラトス南棟の地下牢へ続くもう一つの出入り口がある。ではな。
ルークあ、ちょっと――って行っちゃったよ……。それにしてもどことなくロイドに似てたな。
ユーリそうか ?――それよりどうする ?この先にもう一つ入り口があるって奴。
クレス行ってみよう。このままだとチェスターが心配だ。

キャラクター4話【4-5 帝都イ・ラプセル 1】
帝都イ・ラプセル
ゼロス――なぁ、ここアレだろ ? もともとオーデンセがあったところだよな ?
ゼロス具現化ってのはおっそろしいねぇ。島だの建物だの、人まで造っちまうのか。
シンクファントムが開発していたもう一つのカレイドスコープの力だろうね。レプリカ以上のレプリカだよ。
シンク地獄さ、ここは。
ゼロスあー、そういやお前の世界にもこういう技術があるんだよな。
ゼロスミリーナちゃんのとこにいるジェイドってのが開発したんだろ ?何でもコピーするフォミクリーって技術を。
シンクあの死霊使いらしいね。鏡士のところに居候するなんて。不気味な力の開発者同士気が合うんだろ。
ゼロスシンくんは、何にでも当たり散らしたい年頃なんだねぇ。
シンクうるさいよ。文句があるならついてこなければいい。
ゼロスいやいや、文句なんてねーよ。むしろ面白い。ただ一つ注文があるとすれば――
シンク――何 ?
ゼロスその仮面はちょっとなー。悪目立ちするんじゃねーの ?
ゼロス俺さまもこの麗しい顔を隠すためのマスクは持ってるが、必要に迫られない限り付けやしないぜ。
シンク………………。
ゼロスうぉっと、仮面越しにも感じる冷たい視線。へいへい、顔も隠したい年頃なんだな。ま、いいけどよ。
ゼロスで、戦士の館とやらはどの辺りにあるんだ ?
シンク――一番警備の厳重な中央区画らしいね。元々帝室の離宮だった場所を改装して使ってるって話だ。
ゼロス帝室 ? この島はオーデンセのあった海域に新しく具現化された島だろ ?たかだか一ヶ月程度で離宮を手放したのか ?
ゼロス……いや、この街自体、新しく具現化されたものにしては作りが古めかしいな。使い込まれてるっていうか……。
シンクアンタ、バカなフリをしてるけど、意外とまともな脳みそ持ってるんだね。
シンクそうだよ。この島はかつてのアスガルド帝国の帝都をそのまま具現化した島なんだ。
シンクフィリップの話じゃ、古の時代オーデンセ島にはアスガルド帝国の帝都があったらしい。
ゼロスつまりここは大昔のオーデンセ島でもあるって訳か。
ゼロスだが、具現化で遡れる時間には限界があるんじゃなかったか ?
ゼロスそれに過去を具現化するってアプローチ自体は失敗したんだろ。
シンクそう。それは変わっていない筈だ。
シンクだから考えられるのは、ファントムが開発していたカレイドスコープは、奴が望んだ通りの機能が備わっていたって可能性さ。
ゼロス自分の理想を投影して具現化するカレイドスコープ、か。
ゼロス創造と想像の融合。フィリップとファントムが得意にしてる具現化技術だな。
シンク……バカ神子、兵士が来る。隠れるよ。
ゼロスわかってる。あとバカ神子呼ばわりはやめろっつーの。
帝国兵A――怪しい奴らがいたようだったが……。
帝国兵B背格好はどうだ ?脱走した特異鏡映点亜種01は銀髪に大剣を持った少年だと言うことだが。
帝国兵Aいや、赤い髪の男とおかしな仮面を付けた細身の奴の二人組だった。戦士の館の関係者ではなさそうだな。どうする ?
帝国兵B上にはあとで報告することにして巫女の隊列へ戻るぞ。
帝国兵B勝手に持ち場を離れたことがバレたら後で焔獄のリヒター様に叱られる。
帝国兵Aその呼び方もやめた方がいいぞ。お嫌いらしい。
帝国兵Bいや、しかし、ちゃんと二つ名付きで呼ばないと死神ディストにどやされるぞ。
ゼロス……行ったな。
シンク………………。
ゼロスどうやら戦士の館で脱走があったらしいな。こいつはやっかいだ。きっと戦士の館の守りが堅くなってるぜ。
シンク……神殿へ行く。
ゼロスああ……あいつら巫女の隊列に戻るって言ってたな。ってことは――
ゼロス帝国の連中、例の女神ダーナを巫女の体に宿す【神降ろし】とやらをまだ続けてるってことか。
シンクああ。巫女は鏡映点の中から適正のある女が選ばれるらしい。鏡映点なら戦士の館に囚われている筈だ。
シンク巫女の隊列を利用すれば館の中に入れるかも知れない。
ゼロス巫女に女神を降ろす……か。どこの世界も似たようなことをやってやがる。
ゼロスまぁ、ミトスが帝国側にいるならそういう発想にもなるか。
シンクああ、アンタの世界もそうだったね。あのミトスとか言うガキが、姉だか女神だかを神子の体に宿らせようとしてたとか。
シンクアンタの世界も中々いい地獄加減って訳だ。
ゼロス否定はしねぇよ。ただ俺さまはお前と違ってあの世界のことは割と嫌いじゃないけどな。
シンク……フン。行くよ、バカ神子。
ゼロスへいへい、烈風のシンク様。
シンク……言っておくけど気に入ってる訳じゃないよ、その呼び名。勝手に広められて、呼ばれ慣れただけでね。
ゼロスセンスの欠片もない仲間を持つと苦労するねぇ……。
シンク仲間 ? ボクらは共同体から外れたゴミクズ集団だよ。埃と埃がくっつくみたいに仕方なくつるんでただけだ。
シンクアンタも似たようなもんだったんでしょ ?
ゼロスはぁ~、きっついこと言うねぇ。
ゼロスま、いいわ。さっさとやることやっちまおうや。
シンク……ああ。

キャラクター5話【4-8 ダーナ神殿 1】
ダーナ神殿
ゼロス簡単に潜入できちまったなぁ。
ゼロス前に成り行きでシャーリィちゃんを助け出したことがあったからもっと警戒されてるのかと思ったけどな。
シンク代わりの器はいくらでもいるってことなんじゃない。
ゼロス嫌だねぇ、そういう考え。
ゼロス――おっ、あの祭壇で眠らされてる女の子超可愛いじゃねーの。綺麗な黒髪、綺麗なおみ足 !
シンク……静かにしろ。神官が来る。
神官……駄目だ。ダーナ神は降臨されなかったようだ。
帝国軍兵士また失敗か……。せっかくアニマを受け入れやすい鏡映点が見つかったのに中々上手くいかないな。
神官焔獄のリヒター様のお怒りを買わなければ良いのですが……。
帝国軍兵士あの方は大丈夫だろう。それより器の鏡映点を館に戻したい。
神官棺の中にお戻ししておきます。
シンク……よし、奴ら祭壇から離れていった。
ゼロス棺か……。あの黒髪の美少女を助け出して代わりに棺の中に収まれば戦士の館に入れそうだな。
シンク――待った。祭壇の後ろに誰かいる。
クラトス…………。
ゼロス! !
シンク……あいつ、アンタの仲間だっけ ?
ゼロスああ、クラトスだ。目配せしやがった。合流しろってことかよ、くそったれが。
シンクへぇ、アンタ、あの男が嫌いなんだ。
ゼロス――うるせぇな。それよりあいつと合流するぞ。
シンク――それで ? ボクたちを招き寄せて何をさせようってのさ。
クラトス祭壇にいるコハクという少女を助け出したい。手を貸して欲しい。
ゼロスへぇ、あの子コハクちゃんって言うのか。
ゼロスで、なんであんたがあの子を助けるんだよ。デミトリアスのことを調べてたんじゃないのか。
クラトスデミトリアスの動きを知るためにはあの少女が必要不可欠だ。
クラトスしかし今の状態では目を覚ますことはないだろう。助け出してフィリップに会わせる必要がある。
シンク――なるほどね。動けない空っぽの人形を抱えて戦うのは大変だから力を貸せってことか。
シンク丁度いい。ゼロス、アンタがクラトスと一緒にコハクを助けたら ?
シンクどうせアンタたちの体格じゃコハクが入っていた棺には入れないだろ。
クラトスお前たちは、戦士の館に潜入するつもりだったのか。
ゼロスガロウズを助けろって言われてるからな。
クラトス先ほど、黒衣の鏡士の仲間が、戦士の館へ侵入しようとしているところに出くわした。彼らを陽動に使えるだろう。
シンク誰が潜入してるのさ ?
クラトスクレス、ルーク、ユーリだ。おそらく館の中でチェスターと合流するのだろう。
シンクルークがいるのか……。ちょっと面倒だね。まぁ、いざとなったら利用させてもらうよ。
ゼロス俺らはコハクちゃんを助け出してから戦士の館に行って、シンクをキャッチアップすればいいんだな。
クラトス神子――ゼロスも私も空を飛べる。建物の外にさえ出てくれればお前とガロウズを助けられるだろう。
シンクへぇ、ホント便利だね、天使って。じゃあさっさとそこの女を連れてってよ。
ゼロス無理すんなよ、シンくん !
シンク殺すよ、バカ神子。
クラトス頼むぞ。

キャラクター6話【4-11 戦士の館 広間】
戦士の館
帝国兵よし、棺はそこに置け。
シンク(……上手く潜入できたみたいだな)
帝国兵A棺の中から器の鏡映点を出せ。
帝国兵B了解 !
シンク――残念だったね。器の鏡映点じゃなくてさ !
シンク(……この兵士たちは縛り上げておけばいいとしてガロウズの居所を見つけないとね)
シンク(……何だ、今の音は ? )
ルークやべ ! ツボ落としちまった !
ユーリおいおい、オレたちは敵のアジトに潜入してるっての、忘れないでくれよ。ルーク坊ちゃん。
クレスいったんそこの部屋に隠れよう !
三人! ?
シンク――随分間抜けな侵入者だね。
ルークシンク ! ? な、なんでお前がここに――
クレスルークの仲間かい ?
ユーリ……って訳じゃないみたいだぜ。見ろよ、ルークの顔。鏡映点ではあるんだろうがな。
シンク察しのいいのがいると助かるね。
ユーリ帝国の連中を縛り上げてるんだ。オレたちと立場は同じようなもんだろ ?
シンクああ。そっちはチェスターを捜してるところでしょ。
シンクこっちもこの館に詳しい人間を捜してるんだ。ここはいったん手を組むってのはどう ?
ルークシンク……お前の目的は何だ ?
シンク一応言っておくけど、今のところ総長が具現化されたって話は聞かないよ。
ルーク………………。
シンクボクは……そうだな、強いて言うなら救世軍の所属ってところさ。アンタたちとやり合うつもりはない。
クレスユーリ、ルーク、どう思う ?
ユーリ嘘をついてるって感じはしねぇな。もっとも信用できるかってのはまた別の話だ。
ルークシンクが俺たちをどうにかするつもりならこの部屋に入った段階で仕掛けてくると思う。
クレスうん、僕もそう思う。二人が問題ないなら今は彼と手を組むべきじゃないかな。
クレスこの先、どうしたって敵との戦いになる。戦力は多い方がいいからね。
ユーリだな。ただその前に一つ確認しておきたいことがある。
ユーリお前、クラトスと組んでるんだろ ?あいつはどうした ?
ルークえ ? そうなのか ?
シンク別に組んでるって訳じゃない。
ユーリでも雇い主は同じってことか。
シンクそれを知ってどうするのさ。
ユーリフィリップの動きが知りたかったんでね。まぁ、こっちの予想通りみたいだな。
ルークえ ? どういうことだよ ?
クレス僕たちが仮想鏡界に隠れている間の世界情勢に関することだね。
クレスジェイドさんたちが、ある程度予測をまとめていたみたいだけど……。
ユーリまぁな。詳しい話はチェスターの件を片付けてからだ。それにジュードやセネルからも人捜しを頼まれてるしな。
ルーク……そうだな。どうせ今話を聞いたって訳わかんねーだろうしまずはチェスターを捜そうぜ。
ルーク――あ、シンク。えっと、なんか知ってそうだけどこっちがユーリでこっちがクレス。
シンク知ってるよ。ボクはシンク。さっさと行くよ。
クレスよろしく、シンク。
シンク……はいはい、めんどくさ。

キャラクター7話【4-12 戦士の館 通路1】
アミィ………………。
チェスター……アミィ。ごめんな。オレが……オレが馬鹿なことを考えなけりゃ……。お前を巻き込むことはなかったのに……。
帝国兵大変です ! 魔弓のチェスター様 !
チェスター――この部屋にいるときは誰も近寄るなって言っただろうが ! あと変な二つ名もやめろ !
帝国兵し、失礼しました ! ですが――
帝国兵うっ ! ?
シンク――これで静かになった。
クレスチェスター ! !
チェスタークレス ! ! 来てくれたのか ! 色々あって抜け道が使えなくなっちまってたから会えないんじゃないかと思ってたぜ。
クレスああ、危ないところだったんだけど……あれ ? そこにいるのは――
チェスター……ああ。アミィだ。
クレスアミィちゃんも具現化されていたのか !でも僕たちと同じタイミングで具現化された訳じゃないよな。
チェスターああ……。アミィは……ファントムが後から具現化したんだ。
シンク……その子は、アンタの家族 ?
チェスターあ、ああ……。オレの……妹だ。
ユーリ――なぁ、気付いてるか ?その子、さっきからずっと表情が変わらない。
クレス! ?
シンクリビングドール。それも失敗作だね。
チェスターお前、知ってるのか ! ?
シンク救世軍でも調査していたからね。ファントムが具現化したって言ってたけどリビングドールにしたのはメルクリアだろ ?
ルークリビングドールってなんだよ ?メルクリアってのは ?
チェスターメルクリアはビフレスト皇国の生き残りの皇女だ。リビングドールは……。
シンク空っぽの人間に魂を入れるんだよ。アニマを失った人間に、別のアニマを注入してキメラ結合させるんだ。
シンクすると魂をもった人形が出来上がるって訳。
クレスアミィちゃんもアニマを失ってるっていうのか ?
シンクいや、アニマを消せなかったんだろ。だから心が壊れてこんな状態になってるんじゃないの。
チェスターこの世界の医者にはさじを投げられた。かといって、アミィを具現化した連中に任せれば、もっと酷い目に遭わされる。
チェスターだから異世界の知識でなんとかアミィを救えないかって……。
クレスチェスター……。
クレスわかった。すぐにアミィちゃんを連れてアジトへ戻ろう。
ユーリいいぜって言いたいとこだが……まだ特異鏡映点を助けられてねぇ。それにジュードたちの仲間も捜さねぇと。
チェスター特異鏡映点は牢屋に入れられてるんだ。
チェスターそれと亜種って呼ばれてる特異鏡映点もいるんだが、そっちは今帝国の連中に連れてかれちまった。
チェスター今回はあきらめるしかないかも知れない。
ルークなぁチェスター、ここにローエンって執事の爺さんとシャーリィって金髪の女の子が囚われてないか ?
チェスターシャーリィって名前には聞き覚えがないが、ローエンって爺さんだったら多分牢の中にいる特異鏡映点の一人に――
帝国兵大変です ! 侵入者がこちらの方へ――
ユーリおっと、悪いがお休みの時間だ。
ルークやばい、足音がこっちに近づいてくるぞ。ここにいるのがバレるのも時間の問題かも……。
シンク……チェスター。その牢屋の場所を教えてよ。ボクが捜してる奴もそこにいそうだ。
チェスターけど、この状況で牢屋に寄ってたらこの館から逃げられなくなるぞ。
シンクアンタたちはアミィをつれてさっさと逃げればいい。ボクが牢屋の方を引き受ける。
シンク特異鏡映点がいれば一緒に助ければいいんだろ ?
ルークでも、シンク一人で大丈夫なのか ?
シンクアンタたちが大立ち回りしながら逃げてくれれば、こっちは楽になるからね。
クレス……シンク。頼んだよ。
シンク乗りかかった船だからね。今回は貸しにしといてやるよ。
ユーリおい、チェスター。それにシンクも。フレンってやつ知らないか ?金髪で騎士っぽいナリの。
チェスターフレン ? お前、フレンを知ってるのか ?
ユーリここにいるのか ! ?
シンクフレンって、デミトリアスの側近の騎士団長でしょ ? ここにはいない筈だよ。
ユーリデミトリアスの側近だって ! ?ったく、あいつ……。
チェスター詳しい話は後でいいか ?
ユーリあ、悪ぃ。話しこむようなヒマなかったな。
チェスターシンク、特異鏡映点の牢屋は北棟の地下だ。気をつけろよ。
シンクはいはい。こっちのことはいいからさっさと消えな。
クレスありがとうシンク。また後で !
ルーク無理すんなよ !
ユーリ特異鏡映点のことは頼むぜ。
シンク……さて。こっちも行動開始と行くか。

キャラクター8話【4-14 戦士の館 北棟】
シンク(ルークたちが兵士を引きつけてくれたからここまでは楽に来られたけど……)
ガロウズ…………。
シンク――やっと見つけたよ。ガロウズ。
ガロウズ……あんたは確か――
シンクシンク。救世軍の使いだよ。
ガロウズ……前にも言った筈だ。セシリィが帝国に囚われた。あいつが帝国にいる限り俺は帝国に従うしかない。
シンクセシリィなら助け出したよ。
ガロウズ! ?
シンクこれでアンタを縛るものはなくなった筈だ。こっちはケリュケイオンを修理できる人材が必要なんだよ。
ガロウズ……そうか。ありがとう。だったらあんたたちに協力するしかねぇな。
シンクへぇ、簡単に信じるんだね。
ガロウズ――お、おい、どういう意味だ ! ?
シンクお人好し過ぎて呆れただけさ。別に嘘をついた訳じゃない。一応、助け出した証拠も持ってきたからね。
シンクほら、セシリィのスペアのメガネだってさ。
ガロウズ………… !
シンクそれから特異鏡映点がここに捕まってるって聞いてるんだけど……。
? ? ?特異鏡映点の人たちを助けてくれるの ?
シンク誰 ?
ガロウズ……ああ、ルビアだ。鏡映点で、昨日までは俺たちの世話係をしてくれていたんだが――
ルビア色々あって、あたしも牢屋に入れられちゃった。
シンク……どうする ? 逃げるなら鍵を開けるけど。
ルビアあたしはいいわ。ここにいなくちゃいけない理由があるの。でも特異鏡映点の人たちは助けてあげて。
ルビアどんどん衰弱してきているからこのままじゃ命を落としてしまうわ。
シンクガロウズ。鍵を開けるから特異鏡映点の牢まで案内してよ。
ガロウズありがとう。助かった。
ガロウズ……ルビア、本当にいいのか ?
ルビアええ、あたしは大丈夫。それよりローエンさんたちを、早く……。
ガロウズわかった。――シンクだったな。こっちだ。
ガロウズローエン、リーガル、ジョニー。助けに来たぞ !
リーガルガロウズか……。良かった。ローエンを頼む。
シンク……一人足りないんじゃない ?
リーガルジョニーはどこかへ連れて行かれた。今ここにいるのは私とローエンだけだ。
シンク二人とも随分衰弱してるね。
リーガル私はまだ大丈夫だ。しかしローエンはかなり厳しい状況にある……。もう長い間、意識を失ったままだ。
シンク……そう。それじゃ、鍵を開けるよ。
シンクガロウズ。ローエンを背負って。
ガロウズ了解だ。
シンクリーガル。アンタは歩けるでしょ。さっさと出てよ。
リーガル……いや、私はここに残る。
シンク……はぁ。アンタもかい ?
リーガルここの連中は死者を蘇らせようとしている。その中には私の大切な人もいるのだ。それだけは……阻止しなければならない。
シンクへぇ……。生き返らせたいとは思わないの。
リーガル……その誘惑がないと言えば嘘になるな。しかし奴らの計画は単なる死者の復活ではない。
リーガル私は……彼女を……アリシアをリビングドール計画に使わせる訳にはいかないのだ。
シンク……ああ。この地獄みたいな世界に復活を強要されるなんて哀れ過ぎて笑えるからね。
リーガル……そうだな。
シンクじゃあ、ローエンだけ連れて行くよ。いいね。
リーガル頼む。
ルビアローエンさんをお願いします。
シンクわかったよ。
シンク……はぁ、なんだってボクがこんなことをしなきゃいけないんだ。
ガロウズなんだ ? 意外と照れ屋なのか ?
シンクはぁ ! ?
ガロウズいや、仮面で顔を隠して照れ隠しみたいなことを言うから……。
シンク照れ隠し ? 冗談じゃない。心底嫌なんだよ。馬鹿なこと言ってないでさっさと歩いたら。
ガロウズおー、怖 ! わかったよ。仮面の坊や。
シンク殺すよ、死に損ない。
ガロウズははは、死に損ないとは上手いことを言うな。確かに俺は色んな意味で死に損ないだからなぁ……。
シンク(……死に損ないはボクも同じだけどね)

キャラクター9話【4-15 戦士の館 中庭】
ガロウズやけに人が少ないな……。
シンク警備の連中はルークたちを追いかけていったんじゃないかな。
シンク――っと、そう呑気なことも言ってられなくなりそうだ。
帝国兵Aまだ侵入者がいるぞ ! ?
帝国兵B捕まえろ !
シンクガロウズ ! 逃げるよ !
ガロウズはぁっ、はぁっ、ま、待ってくれ !こっちは人一人背負ってるんだぞ…… !
シンク……ボクがそのジジイを背負ったら敵を倒せないだろ。泣き言言わないでしっかり運んでよね。
ガロウズ人使いの荒い奴だな……。くそ……ここはどこだ ?
シンク……中庭みたいだね。
ディストはーっはっはっはっ ! 袋のネズミとはこのことですねぇ、シンク。
ディスト感謝しなさい。私が神降ろしの首尾を聞きに来たことを。異世界でも私に出会えるとは、あなたは幸せ者ですねぇ。
シンク……なんだ。目が腐ると思ったら鼻たれの死神じゃない。
シンク神降ろしはリヒターの担当かと思ってたけどアンタも首を突っ込んでたのか。
ディスト誰が鼻たれの死神ですか ! ?薔薇のディスト様だと言っているでしょう。
シンク薔薇っていうより腐ったバラ肉って感じだけど。
ディストキィィィィィ ! ! ! 六神将のよしみで優しくしていればつけあがって !
ディストいいでしょう。あなたがそういう態度ならまずそこの魔鏡技師と特異鏡映点から始末しましょうか !
ゼロスおーっと、腐ったバラ肉が人間様の邪魔をするんじゃねーよ !
クラトスシンク。ガロウズたちは我々が連れて行く。
ディストああっ ! 待ちなさい !空を飛ぶなんて非常識な !
シンク――アンタだって椅子で空を飛ぶ非常識なバラ肉だろ。
ディストきぃぃぃぃ、まだ言いますか ! !
シンクそれよりわかってるの ? 足を引っ張る連中がいなくなったら、アンタなんてボクの足下にも及ばないってこと。
ディスト失敗作が偉そうに !
シンクああ、ボクは失敗作さ。でも失敗したのはボクじゃない。ヴァンやモースやアンタだ。
シンクそうだろう、失敗ばかりのヘボ研究者さん。目障りだからさっさと死にな !

キャラクター10話【4-15 戦士の館 中庭】
フィリップシンク、ありがとう。おかげで救世軍はケリュケイオンという足を手に入れることができた。
フィリップこれで帝国から逃れることができるしいずれ時が来れば、このケリュケイオンをミリーナたちに返すこともできる。
シンクアンタはどこまでも【あの女】に尽くすんだね。
マークまぁまぁ、そう言ってやるなよ。それがフィルのいいところなんだ。
シンク……アンタも大変だね。ご主人様に気を遣ってさ。
フィリップシンクは手厳しいね。
シンク……フン。
アルヴィンで、この後はどうするんだ ?俺としては、早いところジュードたちのところに連れて行って欲しいんだけどな。
マーク今ゼロスとクラトスが、帝国へ再調査に行ってるんだ。あいつらが戻ってきたらミリーナたちのところへ送らせるよ。
アルヴィンまだしばらくかかりそうだな……。
フィリップシンク。きみはどうする ? きみさえ良ければこのまま救世軍の力になって欲しいと思っているんだけれど……。
シンク救世軍は何をするつもりなのさ。
フィリップそれはずっと変わっていないよ。このティル・ナ・ノーグを守り甦らせたい。
フィリップ世界の具現化は完了したものの死の砂嵐の問題は残ったままだ。
フィリップデミトリアス陛下がこの世界をどう導こうとしているのかも気になる。
フィリップ異世界からの具現化を続けているのは何故なのかもわからないしね。
フィリップ異世界からの具現化が危険であることは陛下もわかっている筈なのに……。
シンクその目的を果たしたら鏡士を殺させてくれるのかい ?
フィリップ鏡士を殺したいというなら全てが終わった後に僕を殺せばいい。
シンク――へぇ、言ったね。これで二度目だ。だったら構わないよ。アンタたちに協力してやるさ。
? ? ?何だか怖いお話をしてるわね。
マークシャーリィか。どうだ、客人の様子は。
シャーリィ ?コハクさんもローエンさんも眠ったままよ。
アルヴィンおい、フィリップ。ローエンの奴、本当に大丈夫なんだろうな ?
フィリップああ。快復には時間がかかると思うけれど命に別状はないよ。
フィリップコハクの方も意識を取り戻せるようこちらで手を打つつもりだ。
フィリップ彼女が知っているというデミトリアス陛下の話を知りたいしね。
シャーリィ ?そうだ。ガロウズさんにコーヒーを頼まれたの。皆さんの分も淹れましょうか ?
マークお、気が利くねぇ。
シャーリィ ?ふふ♪そうでしょ ?あ、アルヴィン、手伝ってくれる ?
アルヴィンわかったよ。
シンク当面はデミトリアスの動きを調べることになると思うけど、リビングドール計画の方はどうするの。放っておくには不気味すぎる。
マーク帝国の連中、なんでリビングドールなんて生み出してるんだろうな。単なる死者の復活とは違うんだろ ?
フィリップもちろんそちらも調べるつもりではいるけれど、僕はダーナの予言の方が気になるんだ。
フィリップそれにリビングドールの方は、おそらくミリーナたちが調査に取りかかると思うからあちらに任せた方がいいと思っている。
シンクそこまで言うなら手を組めばいいのに。
シンク現実に向き合うのが怖くてあしながおじさんよろしく陰から助けますって ?
フィリップ……恥ずかしながらその通りだ。
マークもうその辺でいいだろ、シンク。あんまりフィルをいじめるなって。
シンク……わかったよ。じゃあ予言とやらの話をしよう。
シンクこの世界の予言は確定した未来を予知するのとは違うんでしょ。
フィリップそうだね。確定の未来……ではない筈だ。でも、どうやら本当に精霊はアイフリードによって封じられていた。
フィリップ予言が真実かどうかはともかく精霊を封じる必要性はあった訳だ。僕はその点がどうしても気になるんだよ。
フィリップ精霊が封じられていたのが事実ならダーナの巫女もどこかで長い眠りについていると考えるべきだろう。
シンク了解だ。そこまで言うなら、ダーナの予言とデミトリアスの動きを中心に調べていこう。
シンクただ、どこかであの黒衣の鏡士と顔をつきあわせて話す必要が出てくるってこと忘れないでよね。
フィリップ……ああ。
ガロウズ待たせたな。エンジンが動きそうだ。
マークよーし、出発するか。新生救世軍の門出だ !
シンク新生……ね。
マークなんだよ、渋い顔して。おかしいか ? 新生救世軍って。
シンク……別にいいんじゃないの。
to be continued
キャラクター1話【アジト】
ミリーナ皆さん、集まってくれてありがとうございます。
ミリーナ今日は今までに集めた情報の共有と、この前ゼロスさんから聞いた救世軍の情報の精査。
ミリーナあと今後の方針についてご相談できればと思っています。
リフィルそれじゃあ、少し前のことから振り返りましょうか。
リフィルこの世界は死の砂嵐によって消滅の危機に瀕しています。
リフィル一度はゲフィオンが自分の体を魔鏡にする【人体万華鏡】という方法で、死の砂嵐を自分の中に取り込もうとしたわ。
リフィルでもそれは叶わなかった。
リフィルだからゲフィオンの体から溢れる死の砂嵐を食い止めようと、イクスが自分の力を意図的に暴走させた。
リフィルその結果、彼の力が魔鏡結晶という鏡の石に変質して、この世界全体へと広がったの。これが魔鏡結晶。
リフィル今あちこちの地面から露出している水晶のような石よ。この水晶の中に死の砂嵐を封じている訳ね。
ミリーナそしてイクスも魔鏡結晶の中に閉じ込められてしまった……。
ジェイドこれが所謂【鏡殻変動】です。鏡震を伴った現象でもあったため各地で被害が出ています。
ジェイドアスガルド帝国が救済の手を伸ばしているようですが、追いついていないのが実情のようですね。
ジェイド――ここまでで、何か質問はありますか ?
エルよく分かんないけど、イクスが鏡の石をいっぱい作って、みんなを守ったってことでしょ ?
ジェイドさすがエル。賢いですねー。エルが理解しているのだから次に進んでもいいでしょう。
キール次はぼくだな。キール研究室では、魔鏡結晶の性質について調査を進めた。
キールその結果わかったのは、今世界中に露出している魔鏡結晶が、地下深くで繋がっている一つの巨大な塊だということ。
キールもちろんイクスが閉じ込められている石にも繋がっている筈だ。そしてその石は今も広がり続けている。
キールこれはイクスが今も魔鏡術を魔鏡結晶に変質させているということだ。
キールこれを放置すると、イクスは自分の生命エネルギーであるアニマを使い尽くしてしまう恐れがある。
ジュードもしアニマを使い尽くしたら……。
ミリーナ……ええ。命を落とすかも知れない。
ミリーナでも魔鏡結晶に包まれている限りアニマを使い尽くしても息絶えることはないの。
ミリーナ魔鏡結晶はイクスの命であり力でもある。
ミリーナイクスを助け出すときに魔鏡結晶からアニマを取り戻すことができればきっと大丈夫。
クラースつまり、今はあの魔鏡結晶の檻がイクスを守る防御壁でもある訳だな。
リタその通りよ。だからまだ時間はある。イクスを助け出すための確実な方法を見つけることができればね。
コーキス俺が必ず見つけ出します。マスターの力が鏡の石になって世界中に広がってるから俺はどこへでも行くことができる。
コーキスマスターのためなら俺、何でもやれるから。
ミリーナコーキス。一緒に頑張りましょう。
リフィル次に現在の状況よ。
リフィルセールンドの国王デミトリアスは1200年以上前の古代国家アスガルド帝国の復活を宣言したわ。
リフィルこれはおそらく彼がセールンド王国の敵対国家であったビフレスト皇国を甦らせようとしているからだと推察できる。
リフィルかつてはセールンドもビフレストもアスガルド帝国の支配下にあったから古代のそれに倣ったのでしょうね。
スレイわざわざアスガルド帝国を甦らせるってことは、そこに伝わる儀式や風習を甦らせたいとも考えられるな。
スレイゼロスさんからの話では、デミトリアスが【神降ろし】という儀式を行っているという話でしたよね。
リフィルええ。太陽神ダーナを巫女の体に降ろし託宣を受ける……という儀式のようね。
スレイアスガルド帝国時代の資料には【神降ろし】という単語こそ残っていないけど、託宣を受ける巫女の話は頻繁に出てくるんです。
スレイもしかしたらここにもアスガルド帝国を甦らせる意味があったのかも知れない。
コレット巫女の体に……神様を降ろす……。まるで私たちの世界のお話みたいですね。
リフィルそうね……。ミトスの発案か……或いは彼の話を聞いたデミトリアスの命令なのかも知れないわね。
ミリーナこれに関しては、フィリップの方でも調査を進めているみたい。
ミリーナ何もかもに手を広げるのは無理だからあちらからの情報を待ちましょう。
ユリウスフィリップの話題が出たところで帝国以外の勢力の話もしておこう。
ユリウスまずアスガルド帝国は、この世界のほぼ全土を手中にしていると考えて間違いないな。
ユリウス敵対しているのは俺たちと救世軍だけのようだ。
カノンノ・Eファントムが亡くなってからの救世軍はフィリップとマークが指揮権を取り戻したみたいなの。
カノンノ・E今は救世軍がケリュケイオンを使ってるわ。
カノンノ・Eただ兵士さんたちの半数以上は帝国に付いていったみたいだから昔ほどの力はないかも……。
リフィルそうそう。救世軍からアルヴィンがこちらに合流したのは、みんな覚えているわよね。
リフィル一応他にも新しい仲間を紹介しておいた方がいいかしら。
ミリーナそうしましょうか。もう、みんなすっかり馴染んでいるけれど……。
ミリーナ――まずロゼとデゼルさん。
ミリーナアニスとセルシウス。
ミリーナヒューバートさんとパスカル。
ミリーナパスカとカナとロディ。
ミリーナ他にも何人かの鏡映点の人たちが救世軍にいるわ。
アルヴィンああ。まずは鏡映点じゃないけどガロウズ。それにローエンって俺たちの連れもあっちにいる。
アルヴィン帝国に捕まってたのを助けたはいいがまだ眠ったままだ。命には別状がないけどな。
アルヴィンあとゼロスとクラトス、シンクに、コハクそれにやっぱり鏡映点じゃないけどシャーリィって――
セネルシャーリィ ! ? おい、アルヴィン !今シャーリィって言ったな ! ?
アルヴィンえ……な、何だよ、そんな怖い顔で……。
ミリーナ確か……セネルさんの仲間にもシャーリィさんって方いましたよね。
アルヴィンいや、でも、あの子自分で鏡映点じゃないって言ってたぞ ?
セネル……な……何だよ……。名前が同じだけの他人か……。
ジェイド決めつけるのはどうかと思いますがね。
セネル俺の知っているシャーリィかも知れない、ってことか…… ?
ジェイド直接会ってみるのが一番でしょう。近々救世軍側にコンタクトを取ろうと思っています。
ジェイドセネル、あなたがその役を請け負ってくれますね。
セネルああ、もちろんだ !
リフィルとはいえ、こちらは救世軍が今どこにいるかもわからないの。しばらく待つことになってしまうわ。
セネルそんなこと言ってられるか――と言いたいところだが……。今はそうするしかないんだろうな。
リフィルありがとう、セネル。でもあちらにいるシャーリィという少女が、本当にあなたの仲間なのかは気になるでしょう。
リフィルアルヴィンと少し話をして確認してみるといいわ。
リフィル判断がつけば何よりだしそうでなかったとしても彼女の状況は知っておきたいでしょう。
セネルああ。そうさせてもらう。
リフィルその間、私たちは少し休憩を取りましょう。
リフィルクレス、チェスターを連れてきて。次はリビングドールの話をすることになるから。
クレス……わかりました。

キャラクター2話【5-1 ひとけのない街道 1】
ジェイドさて、再開といきましょうか。
カーリャはー……。お話の続きですね。カーリャには難しすぎます。パッと行くとかスキップ~とかできればいいのに。
カイルぱっといく ? すきっぷ ?
カーリャあわわわ、何でもないです !
クラースここからはさらに深刻な話になる。――チェスター、つらいだろうがわかっていることを話してくれないか。
チェスターああ……。リビングドール計画のことだな。
チェスター……そもそもこの計画を発案したのはビフレスト皇国の皇族の生き残りであるメルクリア皇女だ。
ミリーナ…………。
リオンビフレストは魔鏡戦争でセールンドに負けて滅びたんだったな。
ミリーナええ……。ゲフィオンの記憶によればカレイドスコープによってセールンドは戦争に勝利、ビフレストは征服された筈よ。
チェスターオレが聞いた話だと、メルクリアは終戦の時に人質としてセールンドに連れてこられたらしいな。
チェスターそれでデミトリアスが親代わりに育てていたって話だ。
ミリーナ……デミトリアス様が ?
チェスターメルクリアはそう言ってた。救世軍はファントムを通じてメルクリアと知り合ったらしい。
チェスター最初はビフレストの生き残りとは知らなかったから、反ゲフィオン派の貴族の娘だって認識だったみたいだな。
チェスターそれがいつの間にか救世軍を取り込んじまった。
チェスター鏡殻変動のとき、オレが城の中に潜入できたのも、メルクリア派の連中の手引きがあったからだ。
チェスターあの段階でメルクリアはファントムを切り捨ててフィリップと手を組もうとしていたみたいだぜ。
リフィル整理させてちょうだい。メルクリアはファントムの仲間として救世軍に接触した。
リフィルその後、何らかの理由でファントムを切り捨てると決めて、救世軍を掌握し『ファントム封印計画』に荷担した。
チェスターああ。その後、メルクリアと後見人のデミトリアスが帝国の復活だのビフレストの再興だの言い出してな。
チェスター救世軍をメルクリアの親衛隊として召し抱えるって話になったんだ。
チェスターその時にフィリップとマークは帝国と対立したって流れだな。帝国を出た後でゼロスたちとつるむようになったんだろう。
チェスターその辺りはアルヴィンの方が詳しいだろうが今はセネルと話し込んでるみたいだな。
ジュードフィリップたちが帝国と対立したのはリビングドール計画のせいなの ?
チェスターそいつはわからねぇ……。そうかも知れないし何か別の理由かも知れない。
チェスターどっちにしてもわかってるのはリビングドールってのが、アニマを――
チェスター魂を失った人間に、別の人間の魂を入れるなんて、ひでぇものだってことだけだ。その理由が何なのかすらわからねぇ……。
リフィル……ありがとう、チェスター。つらいことを話してくれて。もういいわ。アミィの傍にいてあげて。
チェスター……ああ。すまない。
ジェイドアミィは今、鎮静処置をして眠っています。今は安定していますが、まだ治すための手段は見つかっていません。
ユリウス総括すると、俺たちは大きく三つの問題を抱えている。
ユリウス一つはオーバーレイ暴走を起こしているイクスの救出。これには死の砂嵐という問題も付随する。
ユリウス二つ目はリビングドール計画について。皇女メルクリアが何故こんなことをしているのかを突き止める必要がある。
ユリウス無論、アミィの治療方法も探さなければならないだろう。
ユリウス三つ目はアスガルド帝国そのものだ。彼らはミリーナやルドガーを狙っているしルカやイリアたちのことも捕らえていた。
ユリウス鏡映点が持つ異世界のアニマを利用しようとしているのは間違いない。
ジェイドそこで我々も勢力を分散して問題を解決しようと思います。――ガイ、説明を。
ガイここまで来て俺に振るかね…… ?仕方がないな……。
ガイまず、情報収集のための専門部署を立ち上げることになった。ここはロゼとカロルに頼みたい。
ロゼそう来ると思ってた !
カロルえ、ボクも ! ?
ガイボクも、じゃなくてカロルが中心になってやるんだよ。【カロル調査室】の室長としてな。
カロル室長 ! ? ボクが ! ?
ガイリフィル先生の見立てだ。期待に応えないとな。
カロル……へ……へへ。ま、まぁ、そう言われちゃったら引き受けるしかないよね。
ロゼフンフン、いいんじゃない ?リフィルだっけ ? いいチョイスだと思うよ。
ロゼで、メンバーはあたしとデゼルと凛々の明星の連中でいいの ?
リフィル察しが早くて助かるわ。あなたたちは遊撃隊のような立場の方が向いていると思うの。
ジェイドカロル室長にはそこの癖の強い皆さんをまとめて頂いて、情報収集につとめていただきます。
ジェイド必要な人員は適宜補充して下さい。人選はお任せします。
カロル責任重大だな……。でも任せてよ。
ユリウスキール研究室では、異世界の知識を集めてイクスの救出に必要な手段とステップを構築する。
ユリウス戦える人員は、はぐれ鏡映点の捜索と救出を進めよう。
ユリウスただし、ミリーナとルカとイリアそれにルドガーとエルは――
クラースきみもだ、ユリウス。
ユリウス――俺もだが、とにかくこのメンバーは単独行動を避けてくれ。
リフィル話は以上よ。みんな、お疲れ様。
ミリーナあ、あの、ちょっといいですか ?
リフィルミリーナ、どうしたの ?
ミリーナ後でちょっとお話があるんです。ジェイドさんにも……。あの……ナーザ将軍のことで。
リフィル……わかったわ。後で作戦会議室へ来てちょうだい。

キャラクター3話【5-2 ひとけのない街道 2】
ロイドわりぃ。待たせたな !
カロルリオン、ロイド、いらっしゃい !好きな所に座って。
リオン……おい、本当にあいつが仕切るのか ?子供だぞ。
ユーリおいおい、オレたち凛々の明星の首領をなめてもらっちゃ困るな。それに今やあいつはカロル室長さまだぜ ?
レイヴンそうそう。あとね、おっさんからすれば、リオンくんだって、いたいけで可愛い、立派なお子様だから。
リオン……チッ。さっさと始めろ。
カロルそれじゃ、第一回カロル調査室会合を始めます !
カロルえっと、それでまずは……何を調べる ?
デゼルおい、そこからなのか……。
カロルだって、イクスのことや、死の砂嵐とかリビングドールとか……。全部いっぺんに調べるのは無理でしょ ?
ユーリだったら、今確実にわかってる情報を深掘りしてくのが手っ取り早いんじゃねぇの ?
カロルそっか。いま確実にだと……ゼロスの報告書にあった、帝国にいる特異鏡映点かな。確かリーガルとジョニー。
ロゼなるほどね。それでユーリは、ロイドとリオンを呼んだんだ。
ユーリまずは捕まってるお仲間の人となりを聞きたくてな。特にリーガルってのは、自分の意思で残ったって話だろ ?
カロルうん。リーガルが残ったのは大事な人を甦らせないために――だよね ?絶対に阻止するって言ってたみたいだけど。
ユーリらしいな。捕まってるとはいえ、リーガルがあっちでどんな動きをするのかオレたちじゃ予測がつかねぇ。
ユーリで、ロイド。どんな奴なんだ ?
ロイドリーガルは、すげえ強くて優しくて、大きい会社の会長で、落ちついてて、手錠してて――
リオンなんだその薄っぺらい話は。もっと有益な情報はないのか。
ロイドこ、これから色々話そうと思ったんだって !だったら、リオンの仲間だっていうジョニーのこと聞かせてくれないか ?
リオンジョニーか ? そうだな……。ジョニーは…………歌を歌う。
デゼル………。
ロゼデゼル、肩震えてるけどどうかした ?
デゼルな、なんでもねえ ! 放っておけ !
レイヴンあのさあリオンくん、おっさんもーちょっと有益な情報が聞きたいわ。
リオンわ、わかっている !歌のイメージが強烈すぎるんだ、あいつは !
リオンまあ……能天気に歌っている印象が強いがそれはあの男の一面だ。冷静だし統率力もそれなりにある。
リオンそして……重い過去もな。
カロル重いってどんな ?
リオンジョニーにはエレノアという片思いの女性がいた。だが、過去に卑劣な男のせいで命を落としている。
リオンそして、国がらみの争いで僕たちと出会い、結局奴は、その仇を討った。愛する人のために。
リオン……少なくとも僕はそう思っている。スタンは違う見方をするかもしれないけどな。
ロイドそうか……。ジョニーもリーガルと一緒で、大事な人を亡くしてたんだな。
ロゼもしかしたら、ジョニーもリーガルと同じかもしれないね。
ロゼ愛した人をリビングドール計画に使わせないために、何か考えてるのかも。
デゼルだがそいつは、牢から連れ出されて行方知れずって話だろう ?
デゼル何を考えてるかまだわからねえ。信用しすぎると痛い目をみるぜ。誰がどっちについてるかも曖昧だからな。
レイヴン確かに、慎重に見分けないとね。帝国側についてる鏡映点にも、こっちに協力的なのがいるって話だし。
ロイドチェスターの手紙を届けにきたシングとカイウスだろ ?確かルビアって子も捕まってるはずだ。
ユーリ……ま、中には目的がわからないままあっちに付いてる奴もいるけどな。
レイヴン……フレンちゃんね。デミトリアスの側近やってるっていうけど何か考えてんのかな。
ユーリああ、それも確かめなきゃなんねえ。ってことで――、
ユーリカロル先生 ! 情報収集のため、帝国再潜入の許可を願いまーす !
カロルえ ! ? 許可したいけど、潜入しちゃうと他の調査が……。
ユーリ心配ねぇよ。その辺は――
ロゼこっちで商売のルートたどって、巷の細かい情報さらうんでしょ。セキレイの羽の本領発揮って感じ ?
ユーリご明察。あんたらが面倒起こして後々商売に支障がでるのは、オレたちにとっても痛手だからな。
ロゼうん、お互いにその方が良さそう。最近は商工ギルドへの出入りも多いしそっちの情報網からもたどってみるわ。
ロゼそれと、帝都に信頼できる商人がいるから紹介状書いとくよ。
ロゼあたしたちと通じるくらいだから、それなりに裏はあるんだけどさ。多分色々と便宜を図ってくれると思う。
ユーリそんな大サービスされたんじゃ、それなりのネタ掴んで帰らないといけねぇな。
ロゼへへ~、お土産よろしく !
カロルじゃあカロル調査室の方針はこれで決定 !それと、ボクとレイヴンは潜入班でいいとして……
カロルあとはリタ――は、キール研究室の方で忙しいし、エステルに声かけてくるよ。
ユーリ待った。確かあいつ、アミィをどうにかしてやりたいって言って今も張りついてんだろ ?
カロルうん。ミントやエステルみたいな治癒術を使う人たちが集まって、アミィを治す方法を相談してた。
ユーリならあっちを任せようぜ。適材適所ってことで。
カロルわかった。それじゃ他の誰かを誘ってみる !
ユーリ今回も荒事は避けられねえだろうし、血の気の多そうなのと抑え役、頼むわ。
セシリィあれ、会合終わっちゃった ?ごめんなさい。誘われてたのに顔を出せなくて……。
ロゼ大丈夫。やることは決まったから。ねえ、そのいっぱい抱えてるのなに ?
セシリィこれね、みんなに渡そうと思ってたら量産に時間がかかっちゃった。
セシリィこれは新しい魔鏡、【浄玻璃鏡】っていうんだけど是非、みんなに持っていってもらいたいの !
一同………… ?

キャラクター4話【5-3 静かな街道 1】
ライフィセットあ、あの虫、珍しいよ !カロルは名前知ってる ?
カロルむ、虫 ! ? ボクはよくわからないから。ルークに聞いたら ?
ルーク俺もちょっとなー。こういうの得意なヤツっていないか ?
ライフィセットアイゼンやデゼルだったら知ってるかも……持って帰って見せてみるよ。カロル、カバンに入れてもらっても――
カロルうわーダメダメダメダメダメ !
ライフィセットカロル、虫嫌いなの ?こんなにカッコいいのに……ほら !
カロルうわー ! こっち持ってきちゃイヤーッ !
ベルベットフィー、遊びに来てるわけじゃないでしょ。カロルも大事な手紙落とさないように気を付けなさい。
カロルだ、大丈夫だよ。ロゼにもらった紹介状ならちゃんとカバンに入れてるから。ほら !
レイヴンほほ~う ? そのカバンの隙間、この虫くらいなら入るんじゃない ?
ルーク本当だな !ここなら安全に連れて帰れそうじゃん。
カロルちょ、レイヴン、ルークまで !
ベルベットまったく……、言っても聞きやしないんだから。
ラピードワフ~ン……。
ガイハハッ、けど子供が騒いでるのってなごむじゃないか。
ユーリああ。おっさんが一人混じってるけどな。
ユーリところで、カロルはガイとベルベットに声かけたっつってたけどずいぶんおまけが増えてんのな。
ガイあいつ、自分は帝都潜入経験者だっていって駄々こねてさ。それになんか、自分も慣れなきゃいけないとかなんとか。
ユーリ……まだそんなこと考えてんのか、あのお坊ちゃんは。向き不向きがあるって言ってんのに。
ガイなんのことだ ?
ユーリいや、なんでもねえよ。こりゃ多分お前さんの領分だ。んで、フィーは ?
ベルベット潜入の件とこの魔鏡の話をしたら、突然いっしょに行くって言いだしたのよ。どういうつもりなんだか……。
ユーリ魔鏡ってセシリィにもらった、この【浄玻璃鏡】のことか。
ユーリ浄玻璃鏡……これを持ってけって ?
セシリィええ。ルドガーさんのように、元の世界では備わっていた能力が、この世界では使えないっていう人がいるみたいで……。
ロゼそうそう ! あたしもスレイもこの世界に来てからは神依が使えなくてさ。
セシリィやっぱりね。
セシリィ骸殻や神依のようなわかりやすい技じゃなくても、元の世界で使えていた術や技が使えないってことがあるんじゃないかな ?
ユーリ確かにな。魔導器の問題かとも思ったがオレたちとは違う世界の連中も似たようなことは言ってた。
セシリィエンコードの影響を考えれば当然のことなの。
セシリィ鏡映点は特殊な存在だから元の世界と全く同じように具現化すると不具合が出てしまう可能性がある。
セシリィでもそれはカレイドスコープの照準が大雑把だったせいなの。一人一人のパターンを考慮して馴染ませれば問題はないわ。
セシリィこの魔鏡はね、鏡映点の中にある能力の滞留をサーチして、力を解放するきっかけとなる触媒を見つけてくれるの。
セシリィそして鏡映点のアニマに刻まれた過去や起こりうる未来から、鏡映点の本来の力をふさわしい形に構築してくれる。
セシリィルドガーさんの時みたいに触媒となる事象に出会うと、輝きだしてオーバーレイ状態を引き起こすわ。
セシリィその時には、一時的にだけど鏡によって構築された力を引き出して放出することができるの。
セシリィ要は、この魔鏡で触媒を見つけられれば鏡士じゃなくてもオーバーレイが使える。元の世界と同じ力を取り戻せる。
セシリィこれって絶対役に立つと思うんだ。
セシリィだから念のため、みんなに持ってもらって、何か変化があったら報告して欲しいの。お願いね。
ユーリフィーは何か力の制限を強く感じてるのかもな。
ベルベットそうね。あの子は聖隷だし、あたしとは違う何かがあるのかも……。
ユーリ……いや、案外逆かも知れないな。
ベルベット……え ?
ライフィセットねえ魔鏡の話 ?もしかしてベルベット、魔鏡が光ったの ! ?
ベルベット何 ? そんなに慌てて。違うわよ。
ライフィセットそう、よかった……。
ベルベットよかったって、何よそれ。
ライフィセットだってその魔鏡、前と同じ能力が戻るって。もしかしたらベルベットも……その……具現化前みたいに……。
ベルベット―― ! あんたまさか、あたしの穢れや味覚のことが心配でそれでついてきたの ?
ライフィセット…………。
ベルベット……大丈夫よ。それにもしそうなったとしても、あたしは――
カロル――エミル ! ?おーいエミルーッ !
ユーリどうしたカロル。エミルがなんだって ?
カロル今、エミルがいたんだよ。あの道を曲がってった。
レイヴンエミル ? 見間違いじゃないの ?今回のメンバーに入ってないでしょが。
カロルううん、この目でちゃんと見たんだ。どうしてもボクたちと行きたくて黙ってついてきちゃったのかも。
ガイそ、それは考えにくいと思うけどな……。
ユーリま、とにかく探してみるか。ラピード、エミルのにおい覚えてるか ?
ラピードワン !
ユーリよし、それじゃ頼むぜ。オレたちもその辺見てまわるぞ。

キャラクター5話【5-4 静かな街道 2】
ベルベット……やっぱりいないわね。そっちはどう ?
ユーリ駄目だな。ラピードも追えてねぇ。珍しいこともあるもんだ。
ラピードクゥ~ン……。
ユーリつか、どうやらにおい自体が見つからねえって感じだな。
カロル……でもボク、本当に見たんだけどなあ。
ラピード―― !ワンワンッ !
ユーリどうした、見つけたか ?
ラピードグルルルルゥ……。
ユーリ―― !隠れろ ! なんか来るぞ !
ディスト結果から申し上げましょう。やはりアレに決定しました。すぐに連れてきて下さい。
神官よろしいのですか ?
ディスト仕方がないでしょう。今の手持ちには、器となり得る鏡映点がいないのですから。
神官ですが、リヒター様は………。
ディスト焔獄をつけなさい !私のつけた美しき二つ名を無下にするとは。あなた……すりつぶしますよ !
神官も、申し訳ありません !焔獄のリヒター様はご存じなのですか ?
ディスト奴は反対しています。ですがそんなことを言っていたら永遠に事は進みませんよ。
神官……承知しました。それでは至急用意いたします。
ディストそれから連れてくる時には、くれぐれもあの天使の坊やに見つからないように。いいですね !
ルーク……なんだよディストの奴、どこにでも現れやがって。1匹見たら100匹いるってか ?
ガイゴキブリかよ。まぁ、似たようなもんか。
ガイ――それよりもあいつ器の鏡映点がどうとか言ってたな。
ベルベット気分のいい話じゃなさそうね。で、どうすんの。聞き出すなら今のうちだけど。
ライフィセットでもここで襲ったら、帝都全部が警戒体制に入っちゃうかもしれないよ。
ベルベットそ、それもそうね。
カロルエミルも気になるけど……。これ以上探すのは難しいよね。寄り道させちゃってごめん。
カロルディストたちに気づかれる前に帝都内に入ろう。ロゼの紹介状、無駄にできないからね。
ベルベット……まさか、フィーにいさめられるなんてね。
レイヴンカロル君といい、少年の成長ってのはあっという間だからさ。おっさんが年とっちゃうわけだわ。
ユーリなにおっさん通り越してじいさんみたいなこと言ってんだよ。老けこむには、まだ早いぜ ?
レイヴンおっさんの老化もあっという間なの !だから大事にして !
ベルベット……本当、男の子っていつの間にか自分で色々考えて、動いて……
ベルベット……ラフィ……。

キャラクター6話【5-6 帝都イ・ラプセル 1】
ルークマジかよ……。
ガイ驚いたな……。
アスターようこそいらっしゃいました。ロゼさんの手紙、拝見しましたよ。
アスター私も最近帝都に移動してきたもので、セキレイの羽とは持ちつ持たれつやらせてもらってます。イヒヒヒヒ。
ルーク名前を聞いてまさかとは思ったけど、ケセドニアの商人のアスターじゃないか。笑いかたまで一緒だぜ。
ルーク……でもこの様子だと、俺たちのことは覚えてないみたいだな。
ガイああ、鏡映点じゃない。ロイドの知り合いのポールって子と同じ、俺たちの記憶をもとに具現化された、この世界の住人だ。
ルークやっぱこういうのって……複雑だな。
カロルね、ねぇ……この人、信用して大丈夫 ?
ユーリルーク、ガイ。大丈夫なんだろ ?
ルークあ、うん。いい人だよ。しゃべり方は怪しいけど。
アスターそれで宮殿内の事情が知りたいそうですね。確かに当方、ありがたいことに、宮殿からの取引を頂いてますよ。なにしろこれから――
? ? ?アスター様、少々よろしいでしょうか。
アスターおや、丁度いい。私の用心棒が戻ったようですね。ヒヒヒ。――どうぞ、お入りなさい。
レイヴン―― ! ! これはまたっ ! !
? ? ?失礼します。ただいま戻りました。………彼らはいったい ?
アスターセキレイの羽の紹介でいらっしゃったんですよ。
アスター彼女はヒルダ。私の用心棒をお願いしているんです。大した腕でしてね。ヒヒヒヒヒ。
レイヴンなんちゅーうらやましい……。あんな美人が用心棒だなんて。
レイヴン――よろしくヒルダさん。私の名はレイヴン。どうぞお見知りおきを。
ユーリ伸びてんぞ。鼻の下。
ヒルダ……セキレイの羽。新たな市場の開拓ルートにもひと役買ってるっていう、あの ?
アスターええ。おかげで仕入れが楽になってます。そのほかにも色々な面でね。ヒヒヒ。それで、その市場の方はどうでした ?
ヒルダはい。帝国と救世軍との衝突の影響で足止めされた商人たちが多数出ています。
ヒルダ新たな輸送路の安全を確保して欲しいと騎士団のフレンに願い出ている商人もいるようです。
ユーリフレンだと ? おい、あんた。フレンのことで知ってることがあったら教えてくんねえか。
ヒルダ知ってることって言っても、兵士や商人たちの間での評判程度よ。
ユーリかまわねえ。なんでもいい。
ヒルダフレンは騎士団長という地位にもかかわらず民にも気さくで優しい。だからさっきの話の商人たちも、フレンを名指しで願い出てる。
ヒルダもちろん騎士としても有能。再建された帝国内の混乱を抑えて指揮をとってるのも彼のようね。
カロルなんか、どこにいてもフレンはフレンだね。
ユーリ……他には ?
ヒルダそうね……。兵士たちの話だと、ナーザ将軍とは親友なんですって。二人そろうと阿吽の呼吸だって話よ。
ユーリ……へぇ。
ヒルダしかも皇女メルクリア様のお気に入りで、暇さえあれば呼び出されてるとか……、
ヒルダまあ何にしろ、今の帝国には欠かせない重要人物ってことね。もうこれくらいでいい ?
ユーリ……ああ、十分だ。
ヒルダそれでアスター様。本日の芙蓉離宮への納品ですが、自ら出向くのですか ?でしたら私もお供しますが。
カロル芙蓉離宮って ?
アスターメルクリア様のいらっしゃる離宮ですよ。これから伺う予定になっておりまして。
ユーリ……なあ、その仕事にオレたちを連れてっちゃくれねえか。
ヒルダ連れてくって、いきなりなんなの ?
ユーリなに、ちょいと騎士団長様に会いたくてね。あいつ、離宮にもしょっちゅう出入りしてんだろ ?
ヒルダ……あんた、それはアスター様に手引きをしろってこと ?
アスターかまいません。協力しましょう。もともとロゼさんの手紙にも、便宜を図ってくれと書いてありましたから。
ベルベットずいぶん親切ね。セキレイの羽とどうこうだけで、負えるリスクじゃないと思うけど。何かあんたたちに得でもあるわけ ?
アスターまあ実の所、今回あなた方に協力するのは、我々としても帝国中枢の動きが気になるからでしてね。
アスター後でロゼさんを通じてでも情報を頂くつもりでいます。
ベルベットなるほどね。手引きする代わりに、危ない橋はこっちが渡るってこと。ちゃっかりしてるわ。
アスター私は商人です。時勢を見極め、いくつもの道を用意しなければ、大きな仕事はできませんからね。イヒヒヒ。
アスターそういうわけですから、ヒルダ、彼らを荷運びの使用人として一緒に離宮へ連れていって下さい。
ヒルダわかりました。それじゃあんたたち、すぐに準備してちょうだい。
ユーリ悪いな、無理言って。代わりといっちゃなんだが、相応の情報はつかんでくるからさ。
ヒルダ……雇い主であるアスター様に従ってるだけよ。慣れあう気はないからそのつもりでいて。

キャラクター7話【5-8 芙蓉離宮 1】
兵士――いいぞ、通れ !
ヒルダどうも、毎度ご贔屓に。
ヒルダ――ここならひと息つけるわよ。とりあえず離宮内に入るだけは入ったから。
カロル確かに通用門は通れたけど……ここはどこ ?
ヒルダ離れの貯蔵庫。離宮の内殿は向かいの建物よ。
ベルベット……やっぱり、あっちは見張りがいる。騒がれるとやっかいね。
レイヴンあ~あ、女の子だったら、おっさんのテクでメロンメロンの一発通過なのに。
カロルレイヴンが女の人に近寄ったら余計騒がれちゃうんじゃない ?見るからに怪しいし。
レイヴンにゃにおう ! ?俺様の魅力にかかればだなあ !
ヒルダ……まったく、マオとティトレイを見てるみたい。
ヒルダ仕方ないわね。私が何とかするから、合図したら向かいの建物に走って。
ユーリあんたは大丈夫なのか ?
ヒルダ適当にやるわよ。それよりも、あんたらがこんな所で騒ぎを起こしたら、アスター様に迷惑がかかる。だからさっさと行って。
ユーリそうか、恩に着るよ。頼んだぜ。
ヒルダ――ねえ、そこの兵士さん。納品予定のこのカードなんだけど、注文票の数と――あっ、ああぁ !
兵士おい、こんな所に変なカードをばらまくな。さっさと拾え。
ヒルダこれはメルクリア様へのお届けものよ ?一枚でもなくしたら、一緒にいたあんただって責任が――
兵士チッ……仕方ない。
ヒルダ――― !
ユーリ今だ、行くぞ !
兵士ほら、これで全部か ?
ヒルダええ。ありがとう。……あら、一枚足りない。
兵士ああ、ここにもう一枚あったぞ。……まったく世話かけさせてくれる。納品のことなら担当の奴に聞いてくれ。
ヒルダ―― !このカード……月の正位置……。
兵士なにか言ったか ?
ヒルダいえ、なんでもないわ……。
ガイで、ここからどう探りを入れるんだ ?
ベルベット手っ取り早く、そこらの奴を捕まえて――
? ? ?まだ見つからないのか ! ?
ルークヤベェ ! もうバレたのか ! ?隠れる所は――
カロルみんな、この部屋入れるよ !誰もいない !
兵士申し訳ありません、リヒター様 !いまだ行方が知れないままです。
リヒターもっと人数を増やして捜せ !カレイドスコープに配備されてる騎士団もアステル捜索に参加するよう伝えろ !
カロル……ここの兵士、ボクたちじゃなくてアステルって人を探してるみたいだね。
ルークそれよりもさ、今の話だとこの離宮にカレイドスコープがあるってことになるんじゃねえか ?
ガイカレイドスコープ……。セールンドで壊れたものとは別ってことだよな。っていうと……。
ガイファントムの残したカレイドスコープか !チェスターが持ってきた設計図の。
ライフィセットそうだよ ! ファントムと戦ってる時に、新たな世界は、自分のカレイドスコープで作るって言ってたから。
レイヴンそうだったそうだった !しかも、俺様たちにはわからない場所にあるって得意気にさ。
カロルその隠し場所がここだったのか。偶然わかっちゃってボクたちラッキーだね !
ベルベット……なによ。何で今さらファントムの……冗談じゃないわ !
ベルベットそんなものが出て来たら、またあの復讐鬼と出会う可能性だって……。
ライフィセットベルベット……大丈夫。どんな時だって、僕は一緒にいるから。
ベルベット……フィー。
ユーリま、何にしろこれで土産ができた。それに騎士団がいるってのもわかったしな。後の情報は――やるか ? ベルベット。
ベルベットあたしは最初からそう言ってるけど。
カロルえ……一体なんのこと ?
ユーリそこらの兵士をとっ捕まえて、騎士団やカレイドスコープの場所を聞き出すんだよ。ほら、行くぜ !

キャラクター8話【5-10 地下研究所 1】
ジェイドどうしました、ミリーナ。ナーザ将軍の件で、私たちに話があるとのことですが。
リフィルイクスとそっくりの彼のことね。何か手がかりでもあった ?
ミリーナはい……。ずっと気になっていたんです。ナーザの……イクスが少し大人びたようなあの顔立ち、どこか懐かしい気がするって。
ミリーナそれで私の中にある、ゲフィオンの記憶をたどってみました。
ミリーナ思い当たったのは、最初のイクスが亡くなった日のことです。
リフィル最初のイクス……。一人目、とでも呼べばいいのかしらね。
ミリーナイクスは私――ゲフィオンをビフレストの兵士から守って命を落としました。当時のイクスは22才です。
ミリーナその時のイクスの顔だちは、ナーザ将軍と……とても良く似ています。
ジェイド22才のイクスですか。そう言えば、ナーザ将軍と会った者はみな口々に、イクスよりも少々大人びて見えたと言ってますね。
ミリーナはい。私もそう見えました。
リフィルイクスは既に二回、具現化されているわ。現時点での理論上、三度目の具現化は難しいはず。
リフィル……まさかとは思うけど、過去からではなく不確定な未来をアニマサーチして具現化したなんてことは……。
ミリーナごめんなさい。言い遅れました。そのことなんですけど……。
ミリーナゲフィオンを守って死んだイクスはその時に右腕を負傷しました。
ミリーナ私の見間違いでなければ、ナーザ将軍の右腕は……義手なんです。
ジェイド22才のイクスが、腕に負傷した状態……。
ジェイドつまり、あのナーザという男は一人目のイクスが死んだ瞬間の状態とほぼ同じである――と。
ミリーナ……はい。
ジェイドならば可能性として高いのはナーザ将軍は一人目のイクスその人、ということでしょうね。
ジェイドしかし理論上、具現化ではあり得ない。ならば――
ジェイド当時のイクスの遺体を、何らかの理由でビフレストが保存しており、今利用している……そんなところでしょうか。
ミリーナ……死体を保存、ですか。
リフィルミリーナ、どうかした ?
ミリーナいえ、その……少し引っかかって……。
ミリーナイクスが亡くなった直後のゲフィオンの記憶が、とても曖昧で……。
ミリーナ何度思い返しても、イクスの体がまるでカレイドスコープのせいで光の砂になって消えたように見えるんです。
ミリーナあの時点で、カレイドスコープは開発されていません。そんなことはありえない。なのに……。
リフィル心理的な衝撃が、ゲフィオンの記憶を混乱させてしまったのかしら。
リフィル自分をかばったせいで亡くなったイクスと自分が開発したカレイドスコープで多くの人々を殺めた自責の念。
リフィルそれが交錯してしまった結果――というのは考えすぎかしらね。
ミリーナ……すみません。大事なことなのにはっきりしなくて。
ジェイド……まだ再考の余地があるようですね。ですが、ナーザの件はイクスの死体であることを前提に考えていきましょう。
ジェイド正直な所、結論が出ないうちにこういったことを口にするのは少々不本意ですが……。
ジェイドあなたにとっても、私たちにとってもイクスとナーザの関係に対して心構えはしておかねばなりませんから。
リフィルああ……そういうことなのね。可能性の段階で言葉にするなんて珍しいと思ったのだけれど、少し見直したわ。
ジェイドおやおや、なんのことでしょう。
セシリィミリーナ、ここにいたのね。相談したい事があるんだけど――……お話し中 ?
ミリーナあ、大丈夫だけど、ちょっとだけ待っててもらえる ?
ジェイドいえ、セシリィにも聞いてもらいましょう。彼女はビフレストの魔鏡技術を研究していたのですから。
セシリィえ…… ?
セシリィそう。ナーザ将軍はイクスの……。
リフィルええ。現状とミリーナの記憶を比較すると可能性は高いわ。
セシリィ……遺体を保存していたことはあり得るかも知れない。
ミリーナえ ! ? どうしてそう思うの ?
セシリィビフレストがオーデンセに攻め入ったのはセールンドにしかない魔鏡技術を奪うためと聞いているから……。
ミリーナそうだったの ? ……ごめんなさい。私、ゲフィオンとしての記憶が所々曖昧で。
ミリーナゲフィオンはビフレストが攻め入った理由を知っていそうだと思って、記憶を探ってみたんだけど、よくわからなくて……。
セシリィあ、ううん。あの、えっと、私も帝国で研究させられてたときにそんな話をちょっと……。
ジェイド………………。
リフィル……セシリィが言いたいのは、ビフレストがセールンド側の魔鏡技術を探る手がかりに鏡士であるイクスの遺体を持ち帰った――
リフィルそういうことよね。
セシリィはい。もしイクスの遺体であることが間違いないなら、ナーザはリビングドールの最初の被験者なんじゃないかな。
セシリィメルクリアなら……やりそうな気がする。
ミリーナリビングドール……。空の体に別のアニマを入れる……。
ジェイドなるほど。一人目のイクスの死体に別のアニマが入りこんだ存在。それがナーザの正体と見るべきでしょうね。
リフィルそういえば、あなたは確かメルクリアに会ったことがあるのよね。
セシリィはい……。あの方――あの人はとても無邪気な人で、無邪気だから残酷で。それに鏡士のことがとても好きなんです。
セシリィビフレストの皇族はみんな鏡士だし……。
ジェイド確か終戦後、死の砂嵐が発生してから二人目のイクスとミリーナを具現化するまで10年ほどの時間を費やしたそうですね。
ジェイドということは、メルクリアは現在12、3歳ぐらいでしょうか ?
セシリィそれぐらいだと思います……。
ジェイドその年齢ではいくら早熟でも、大人を従えるのは難しい。メルクリアの背後にはデミトリアスがいるのは間違いないですね。
ミリーナ……メルクリア。終戦後に人質としてセールンドに来たなら、ゲフィオンは知っている筈ですよね。
ミリーナでもそれに関しても記憶がないんです。どうしてなのかしら。
リフィルあなたの中のゲフィオンの記憶に関しても調査が必要なのかも知れないわね。
ミリーナ……はい。

キャラクター9話【5-12 地下研究室 1】
ユーリ――おし、ここだな。確かにでけえ研究施設がある。
ベルベットあの兵士、嘘は言ってなかったみたいね。
ルークそりゃこの二人にあの勢いで凄まれたら誰だって……。
ガイ……なあ、少し静かすぎないか ?アステルって奴の捜索でここは手薄になってると考えても……。
ユーリだな。カレイドスコープらしきものも見当たらねえし……ちと探ってみるか。できるだけ静かにな。
――ッ !
ユーリどうした、あっちが気になるか ?
? ? ?――ない――それでも――。
ユーリ話し声……、この奥だ。
ガイ行ってみよう。みんな、見つからないように気を付けろよ。
ユーリ―― ! !
カロルフレンだ…… !
ベルベット話をしているのがナーザみたいね。聞いたとおり、イクスそっくり。
ライフィセットうん。やっぱり少し大人っぽいね。
ナーザ――今のままリビングドールを増やしても死んだビフレスト国民を甦らせることは難しいだろうな。
フレン ?はい。私もそれを懸念しています。
フレン ?確かにリチャードとラムダはいいひらめきをくれましたが、ラムダのような特性をアニムス粒子に持たせるのは難しい。
フレン ?私はこの鏡映点の体を使うことでしかアニムス粒子を取り込めませんでしたから。
ユーリこの体…… ?
ナーザ……俺など、すでに死んだ体だからな。
フレン ?わかっています。だからこそ、この鏡映点のアニマは――
ユーリなるほどね。……ざけやがって。
レイヴン……落ち着け青年。らしくないよ。
ユーリ……わりぃな、おっさん。そいつぁ無理ってもんだ !
レイヴンおい、ユーリ !チッ――仕方ねえなぁ、あのあんちゃんは !
ワウッ ! !
カロルちょ、待ってよ !
ガイまずい、俺たちも出るぞ !
ルークあいつ、なにやってんだよ !
ライフィセットユーリ、いつも冷静そうなのにあんなに怒って……。
ベルベット……大事な人が踏みにじられれば、ああなるわよ。
ナーザ――貴様はっ ! ?
フレン ?あなたは後ろへ―― !
フレン ?何者だ ! どこから入った !
ユーリてめえこそ何者だよ。少なくともオレのダチのフレンじゃねえな。
フレン ?……そうか、お前はこの体の……。
ユーリてめえらがなに企んでんのかは後でじっくり教えてもらうが……今はこっちのが先だ。
ユーリお前、フレンに取り憑いてんだろ ?とっとと出ていけ。
フレン ?取り憑いている ?それは訂正させて欲しいな。私は――
ユーリどうでもいいんだよ、んなことは !嫌なら力づくで返してもらうぜ !
フレン ?くっ…… !
ユーリ他人の体乗っ取って好き勝手か ?どんだけ偉いんだよてめえらは。
ユーリそいつなら……その体の持ち主ならな、自分の傲慢な鼻っ柱へし折って止めてくれっていうはずだぜ !
フレン ?何を…… !
カロルユーリの魔鏡が光ってる ! !
ルークセシリィが言ってたのってこれのことか ! ?
ナーザなんだこの異様なアニマは…… !おい、下がれバルド !
バルド―― ! !
レイヴン……おいおい、なによこの光魔、でかすぎでしょ ! ?んなサービスいらないっての !
ナーザ貴様らの相手はこいつだ !

キャラクター10話【5-12 地下研究室 1】
カロルユーリのあれって、オーバーレイだよね ?
ルークみたいだな。フレン ? と剣を合わせたらすげえ光が出やがった。
ナーザあの力……やはり浄玻璃鏡か。
ユーリ……おい、もう一度言うぜ。その体、返せ。
バルド……返すことはできない。
バルドこの鏡映点のアニマは渡せない。メルクリア様とウォーデン様をお守りするためにも――
ナーザバルド !ウォーデンは死んだ ! その名を呼ぶな !
バルド…………。
レイヴン……へえ、フレンちゃんの皮かぶってるのはバルドさんか。んでそっちがウォーデン様ってことかな ? まーお偉そうなこと。
レイヴンその割には光魔の後ろにコソコソ隠れて卑怯な戦いかたしてるじゃない。いやはや、ご身分の程が知れるねぇ。
バルド不敬な ! ビフレスト皇国皇太子にむかってその口のきき方は―― !
ナーザバルド、これは挑発だ。乗るな。
バルド……申し訳ありません。
レイヴンなるほど。そしてお前さんは皇子様の忠実な部下ってわけね。どおりで動きも騎士然としてるわけだわ。
ナーザ貴様……大した口の回りようだが、過ぎれば災いを呼ぶぞ。
ユーリそりゃ自分らのことだろ ?素直にベラベラしゃべってくれてよ。その調子でフレンのことも――
兵士ナーザ様 ! フレン様 !いったいこの騒ぎは ! ?
ナーザこいつらは侵入者だ。後は任せる。
兵士はっ ! 貴様ら、大人しくしろ !
ユーリおい、てめえ待ちやがれ !話はまだ終わってねぇ !
ナーザ来いフレン。ゲートを閉じるぞ。
ルークあいつ逃げるぞ !早く――くそっ、お前ら邪魔すんなっての !
ベルベットこの程度、すぐに―― !
ナーザ……雑兵では足止めには弱いか。ならば。
カロルまた光魔 !
ナーザ物足りないようだからな。置き土産だ。――早くしろ、フレン。
バルドわかったよナーザ。今行く。
ユーリクソッ、逃がすか !さっさと片付けんぞ !

キャラクター11話【5-15 地下研究室 4】
兵士もっと援軍を呼べ !
ユーリチッ、次から次へと……。てめえら、どきやがれっ !
ガイユーリ、ライフィセットが術で援護する !無茶しないで一旦下がれ !
ユーリ無茶なんかしてねえよ。すぐに終わらせるさ !
ガイユーリ !
ユーリこいつで――最後だ !
ライフィセットすごい、本当にすぐ終わっちゃった !……だけど……。
カロル……ユーリ、今のは駄目だよ。
ユーリ何がだ ?そんなことより、さっさと――
カロルそんなことよりって……ユーリのバカッ !
ユーリカロル…… ?
カロルさっきユーリが飛び出した時、レイヴンは止めたんだよ ! ?
カロル今だってガイが戦況を見てくれてた。なのに……。ユーリ、なんで一人で戦ってるのさ !
カロル一人はギルドのために、ギルドは一人のために――でしょ ?ユーリは今、一人じゃないんだ !
ユーリ―――― !
カロルフレンのことが心配なのもわかってる。でもさ……でも、こんなユーリ……。
ユーリ……ったく、情けねぇ。
カロル……え ?
ユーリすまねぇ。頭に血がのぼってた。おかげで目が覚めたぜ。
ユーリありがとな、首領。
カロルユーリ…… !
レイヴン首領の面目躍如だな。少年 !……ホント、おっさん増々年とっちゃうよ。
ルーク……。
ガイルーク、どうした ?
ルーク俺、イクスと会ったばっかの時に、似たようなこと言ったことがあってさ。
ルーク「一人じゃない。仲間を信じろ」って。それ思い出して……少し懐かしくなった。
ガイお前が ?そうか……。なんかちょっと感慨深いな。
ルークなんだよ、それ。
ガイなら、その言葉を裏切らないためにも、早くイクスを助けないとな !――ユーリ、行けるか ?
ユーリああ。みんなにも迷惑かけたな。もう大丈夫だ。ラピード、奴らを追ってくれ !
ラピードワンッ ! !
ユーリ……しかしあの二人、思ったよりもヤバいこと考えてんな。死んだビフレスト国民を甦らせるだとよ。
レイヴンったく、お国の再興どころか、過去のビフレスト丸ごとって感じだね。ありゃ。
ガイ死者を復活させて、滅びた国を甦らせるか。……バカげてる。
ルーク……ガイ。
ユーリしかもあいつら、その計画に生きてる人間を使いやがって。……くそっ !
カロル……フレン、元にもどるよね ?
ユーリたりめーだ ! ここでフレンに戻せねえならあいつを捕まえてアジトに連れ帰る。
ユーリそこでゆっくり、バルドってのを追い出してやるさ。
レイヴン追い出す、か。……なあ青年、あいつらフレンのアニマがどうとか言ってたよね。ちょいと気にならない ?
ユーリフレンのアニマ……。
ラピード―― !グルルルルッ……。
ミトス……へぇ、なんでこんな所にいるの ?お前たちが入ってきていい場所じゃないんだけど。
ベルベットなによあんた。そこどきなさい。怪我してもしらないわよ。
ユーリ待て、こいつ……。そうかお前、ミトスだろ ?金髪の妙に落ち着いたガキ。
ミトス――だから何 ?黒髪の短気な劣悪種。
ユーリナーザたちはどこに行った。こっちに来たはずだぜ。
ミトス追いかけたって無駄だよ。どうせ会えない場所にいるから。それじゃあね。
ルークじゃあねって……おい !ナーザの居場所を言ってけよ !
ミトス――うるさいよ。出来損ないのお人形さん。こっちは急いでるんだ。見逃してあげるから、後は好きにすれば。
ディストおやおやおやおや~ ?今なんと言いましたか ? 飛天のミトス。
ミトス空飛ぶゾウリムシか。
ディストキィィィィィィィ ! !何なんですか、その言い種は !
ディスト大体、忍び込んだ汚らしいドブネズミに、後は好きにしろですって ?偉大なる四幻将の言葉とは思えませんねえ。
ディストこのことは早速、メルクリアに報告をしなければ。さて、どんなお仕置きが下るでしょうねぇ。
ディストあなたの姉上に。
ミトス――劣悪種にネズミ退治を命じられるとはね。
ユーリ――来るぞ !

キャラクター12話【5-15 地下研究室 4】
ミトス……あーあ、負けちゃった。強いね君たち。これじゃボクは引き下がるしかないな。
ディストお待ちなさい ! あなた手を抜きましたね ?
ミトス文句があるなら自分でやれば。
ディストそういう問題じゃありません !
ミトス――そんなことよりさっきお前、劣悪種の分際で姉さまのことを口にしたな。
ディスト……はぁ ?
ミトスさっきのが手抜きかどうか――自分で確かめたら。
ディストえ、ちょ、ミトス――あなた ! !
ミトス――次元斬 ! !
ディストピギャアアアアアッ ! !
ミトス何なら、永遠に寝てればいいよゾウリムシさん。
ベルベットどうなってるのよ。仲間割れ ?
ミトス仲間 ? 冗談でしょ。一緒にしないでくれる ?
ユーリ仲間じゃないってのは、このイカれた博士のことか ?それともナーザのほうかね。
ユーリ……お前もビフレスト国民を甦らせようとしているのか ?
ミトスビフレストね。興味はないけど邪魔するつもりもなかったよ。……少なくとも今までは。
ユーリおまえ……。
ミトスボクは急いでるんだって言ったよね。これ以上時間をとるなら今度は――本気でやるよ ?
ユーリ……わかった、ここで手打ちだ。
カロル行っちゃった……。でもこれで自由に捜せるんじゃない ?
ユーリいや、やめとこう。ミトスの奴、ナーザたちは会えない場所にいるって言ってたからな。
ユーリ手がかりは手に入れたんだ。これ以上は無駄足になる。
カロル手がかりって、何かあった ?
ユーリおいおい、カロル先生、ナーザは立ち去る時に「ゲートを閉じる」って言ってたじゃねえか。
ユーリ最近のオレたちも、しょっちゅうつかってるよな ?『ゲート』を。
カロル――あ !
ライフィセット仮想鏡界 !いつもカーリャがゲートを開いてくれてる !
ガイそうか。もしも奴らが仮想鏡界を作っていたとしたら、簡単には出入りできない。
カロルボクたちがミリーナの仮想鏡界の中で守られてるのと同じことだね。会えない場所にいるってそういう意味か。
ユーリま、そんなとこだろ。
レイヴン合点がいったわ。ここまで奴ら追ってきて、どこにもカレイドスコープがないってのはなーんかおかしいと思ってたのよ。
ベルベットってことは、カレイドスコープも仮想鏡界の中なのね ?
ユーリ仮定の話だけどな。とにかく、こうなったらオレたちじゃ手も足も出ねえ。
ルークだから撤退……か。
ガイ仕方ないさ。今回わかった情報をミリーナたちと共有しないと。ユーリの浄玻璃鏡の報告もあるしな。
カロルでも、ここのどこかにフレンがいるのに、帰らなきゃいけないなんて……やっぱり悔しいね。
レイヴンなに、こんだけ情報が集まったんだ。これを元手に、倍増しで取り返してやればいいだけよ。
ユーリおっさんにしちゃ謙虚だな。倍程度で満足するとは。
ユーリ……オレは倍じゃ足りねぇよ。その何倍、何十倍で取り返してやる。
ミリーナ…………。
セシリィミリーナ、大丈夫 ?イクスの話は辛かったよね。
ミリーナありがとう。でも大丈夫よ。それよりセシリィも相談があったのよね ?私の話を優先させちゃってごめんなさい。
セシリィううん、ナーザのことも気になるから、話が聞けて良かった。
セシリィ私の相談っていうのはね、アミィのこと。なんとか治してあげたくて……。
ミリーナ……そうね。
セシリィだから、私の分野からも色々考えてみて、それである方法を思いついたの。
ミリーナセシリィ、それって…… !
セシリィええ。もしかしたら、アミィの心を取り戻せるかもしれないわ !
to be continued
キャラクター1話【6-1 精霊研究所 1】
クラトス(ここは……精霊の研究施設か ? )
クラトス(帝都の芙蓉離宮の近くにこんな研究室を作っていたとは……。)
クラトス(どうりでアスガルド城でデミトリアスの姿を見かけない訳だ)
デミトリアス特異鏡映点亜種03のアニマの調査はどうなっているのかな ?
ジュニア……確かにスパーダさんのアニマには武器として生きていた痕跡が残っていました。
ジュニア前世のアニマが具現化の時のエンコードで現在のアニマと混濁しているみたいです。
リヒターもしかしたらスパーダの前世というのはリオンという奴が持っていたシャルティエと言う剣と似た存在だったのかもしれない。
リヒター正確には違うことはわかっているが武器であり人のような意思を持つという点は近いものとして扱ってもいいだろう。
ジュニアリオンさんたちの世界から、該当の技術を持っている専門家を具現化するという計画が持ち上がっています……。
クラトス(シャルティエと言うのはゼロスが話していた喋る剣のことか。何故命を持つ武器に固執するのだ……)
デミトリアスそうか……。ではリヒターとアステルが進めている精霊の研究の方を報告してもらおうか。
リヒターアステルをここへ連れてくるつもりはない。報告は俺がする。
デミトリアス警戒されているようだが私はアステルに何もしないよ。
デミトリアスどうにかするつもりならとっくに捕らえている。機会はいくらでもあるからね。
デミトリアス何しろ彼はきみの目を盗んでよく出歩いているそうじゃないか。
デミトリアスこの間も大変な剣幕でアステルを捜していたらしいね。
リヒター……お前はそうでもメルクリアは違う。貴様はメルクリアに甘すぎる。
リヒター俺はアステルをアミィのようにしたくはない。
デミトリアスそれを言われると心が痛むよ。まぁ、その話は別の機会にしようか。
デミトリアス虚無の保護のためには太陽神ダーナと精霊の力が必要だ。君たちの研究には期待をしているんだよ。
デミトリアスダーナを降ろす計画にも悉く失敗している。ディストは妙なこだわりも強い。ダーナの巫女を見つけた方が早いと思うんだよ。
デミトリアスダーナの巫女こそダーナの器にもっとも適する筈だからね。
リヒター俺とアステルが見つけた文献にはこう書かれていた。
リヒターアイフリードが精霊の封印地なる場所でオリジンと共にダーナの巫女を守っているのだと。
リヒター場所の特定はまだだが簡単に行ける場所ではないだろう。死の砂嵐で消滅している可能性もある。
デミトリアスいや、精霊のいる場所に限ってそれはない。精霊住まう場所が崩壊すれば、この世界は完全に虚無に飲まれているだろう。
リヒターもしまだ精霊の封印地が存在しているなら貴様がサレとハスタに命じて回収に行かせた例の鏡映点が役に立つだろう。
サレ呼んだかな、リヒター君。
ハスタ見つけたポン。空っぽのマクスウェルちん !
クラトス(空のマクスウェル…… ? この世界のマクスウェルはまだ目覚めていないがロイドたちの元にいたミラのことか ? )
クラトス(いや、しかし『空』というのは……)
リヒター……こいつらが戻ったなら、俺は失礼する。
サレ嫌われたもんだね。僕はジェイドジェイドとうるさいあの鼻たれトカゲよりキミの方がマシだけれど。
アスガルド兵士大変です ! 四幻将のミトス様が死神ディストの研究所で暴れて、手がつけられません !
アスガルド兵士ディストは重傷、シング様も負傷しカイウス様ですら近づけない状態です !
クラトス(――ミトスが暴れている ! ? )
ハスタ何ィ ! 血沸き肉躍る饗宴の宴だと……オレっちも参加させろぃ !
サレ僕が殺してこようか ?
デミトリアスやめておく方がいいね。それに君たちにはマクスウェルの抜け殻の件を聞きたい。リヒターならミトスを止められるだろう ?
リヒター……分からんが、ここにいるよりはマシだ。俺が行く。
クラトス(そろそろマークたちと落ち合う時間だがミトスを放っておくことはできぬな。……リヒターを追跡させてもらおう)

キャラクター2話【6-2 精霊研究所 2】
ゼロスあのおっさんまだ合流地点に戻ってこないのかよ ! ?
マークおいおい、ゼロスさんよ。あんた、クラトスにはあたりがきついな。あの人、いい人じゃねぇか。
ゼロスはー。お前もか、マーくんよ。あいつホント受けがいいな、むかつくわー。
ゼロスク~ル~とか言われてるけどありゃただの人でなしだっつーの !
シンクへぇ……。
ゼロスあ、シンク ! ? てめぇ、笑ったな ! ?
シンクそりゃ嗤うでしょ。アンタのそれは単なる甘えだからね。パパが恋しいのかい、赤毛の神子様。
ゼロス………………。
マークシンク。そうやって的確に人の傷抉っていくのもほどほどにしてくれや。
マークゼロス、悪かったな。子供は加減をしらねぇんだよ。
ゼロス……いや、俺さまもまだまだだわ。殆ど面識のないがきんちょに痛いとこ突かれてマジになっちまうとは。
フィリップ楽しそうなところ失礼するよ。
ゼロス楽しい ! ?俺さまフィル君の感覚疑ってもいい ?
フィリップごめんごめん。病人の経過を共有しようと思って。
シンク死に損ないのジジイとぴくりとも動かない眠り姫のことか。
フィリップジジイなんて言葉は良くないよ、シンク。ローエンさんはだいぶ安定してきた。
フィリップもうすぐ起きられると思うけれど何しろ特異鏡映点だからね。慎重に経過を見る必要がある。
フィリップそれからコハクは……正直かなり危険だね。
ゼロスおいおいおいおい、じーさんはともかく女の子は助けてやってくれよ~ !
マークお前ら、お年寄りは大事にしろって……。で、フィル。どういうことなんだよ。容体は安定してるように見えたけどな。
フィリップ彼女の症状は鏡士にまれに起こるある疾患に似ていてね。気になったから魔鏡学の方向からアプローチしてみたんだ。
フィリップその結果、彼女のアニマとアニムスをつなぐコア――つまり心を失っていることがわかった。
マーク心核喪失状態か !
シンク何それ。心なんてあやふやなものどうやって観測するのさ。
マーク鏡士ってのは、心を魔鏡に映して具現化を行うんだ。そのときに一瞬心を具現化している……らしい。
マークそのあたりの原理は俺もよく分からないが……。
フィリップ鏡士が鏡精を具現化するときも心の一部を魔鏡に映して行ういわば心の具現化だからね。
フィリップでもコハクにはその心に当たる部分が存在しないんだ。
フィリップコアが存在しなければアニマとアニムス……つまり魂と記憶が分離し体が保てなくなる。非常に危険だ。
フィリップ神降ろしには心を消し去る作業が必要なのかもしれないね。
ゼロス……心が消える、か。コレットちゃんのことを思い出すな。
ゼロスマーテルを宿すために人としての感覚を失って、心まで無くしちまったらしくてな。まるで人形みたいで見てられなかったぜ。
シンク――ねぇ、神降ろしはミトスの発案の可能性があるんだったよね。
ゼロスあ ? まぁ、可能性はあるな。発想がマーテル復活にそっくりだ。
シンク――クラトスと合流しよう。次の器の鏡映点が誰かわかった。
マークどういうことだ ?
シンク前に聞いた話だと、コレットってのはミトスの姉のマーテルに近い存在だったんだろ。
ゼロスまさかマーテルが次の器だって言うのか ! ?そりゃ、ファントムが生前マーテルを具現化したらしいとは聞いてるけどよ。
ゼロスただコレットちゃんとマーテルは近い存在かもしれないがマーテルは心を失った訳じゃねぇぞ。
ゼロスむしろ心だけになっちまったからミトスが体を作ろうとしてた訳で……。
フィリップ……いや、なるほど。さすがシンクは目の付け所がいいね。
フィリップマーテルは体を失い、心だけの存在になったことがある……という事実が重要だ。
フィリップかつてのビフレストには、アニマに刻まれた過去や未来――あらゆる可能性を呼び出す浄玻璃鏡という魔鏡があったそうだ。
フィリップつまりマーテルがどの時代から具現化されていたにせよ、体と心が分離しやすい性質を内包していることになる。
フィリップ分離できるなら、話は簡単だ。
ゼロスマジかよ……。念のためクラトスに伝えるか。
ゼロスあいつから聞いた、天使の羽の痕跡を辿る方法ってのを使えば、奴が空を飛んだ時に居所がわかる筈だ。
マーク悪いな。あんたは客分なのに、こき使っちまって。
ゼロスしゃーねぇな。あの我が儘天使がロイド君に合流するのを嫌がるんだもんよ。
シンクでも文句を言いながら、アルヴィンみたいに一人であっちに合流はしないんだね。
マークそりゃ、ゼロスが意外と善人な上に意外と卑怯者だからだな。
ゼロスでひゃひゃ、よくわかってるじゃねーの。
マークとはいえ、あんたが客分なのは変わらないからな。シンク、一緒に行ってくれ。
シンク……はいはい、めんどくさ。
ゼロス何だよ、シンくん冷たいじゃん。
シンク殺すよ、バカ神子。

キャラクター3話【6-3 芙蓉離宮】
ミトス良かった。姉さまのオゼット風邪が快復に向かってて。……姉さまがいなくなったらボク、本当にひとりぼっちになっちゃうから。
クラトス……お前は一人ではない。私もユアンもいる。
ミトスユアンは別にどうでもいいけど……。クラトスは……人間じゃない。人間はボクよりずっと早く死んじゃうんだよ ?
クラトスそうだな。確かに私はお前よりは早く死ぬだろう。だが……私が死んでも私の魂はお前に託すつもりだ。
ミトス魂 ? あはは、それって、クラトスが幽霊になってボクのそばにいてくれるってこと ?
クラトスいや、そうではない。できるものならそうしてやりたいが死後のことなど私にはわからぬ。
クラトスだが、どう生きるのかという指針を……。いや、言葉にすると陳腐だな。やめておこう。
ミトス……ううん。わかったよ。ボクの心にクラトスの生き方が残るってことだよね。
ミトスそんな風にボクを導いてくれるってことでしょ ? そうしたらボクも少しは寂しくなくなるね。
クラトスそのように導けるのかはわからぬが……。
ミトスふふ、期待してます。クラトス先生 !
クラトス(結局私はミトスを導けなかった。だが、せめてこの世界では――)
ゼロスおい、クラトス ! やっと見つけたぞ !なんでこんなところを飛んでたんだよ。捜すの大変だったんだぞ。
シンク迷子のパパを見つけられて良かったねバカ神子。
クラトス……私は神子の父親になった記憶はないが。
ゼロス奇遇だな。俺さまも息子になったおぞましい記憶はねーよ。で、何してんだよ。
クラトスすまない。少し時間をくれ。行かねばならないところがあるのだ。
ミトスそこをどけ ! !
カイウスミトス ! どうしちまったんだよ !いつものお前らしくないぞ !
ミトスいつものボク ?お前にボクの何がわかるって言うんだ !
シング……くっ。カイウス、お前だけでも逃げろ。オレは……足が……。
カイウス逃げられる訳ないだろ !
カイウスなぁ、ミトス。この世界でオレのレイモーン……獣人の姿を認めてくれたのはお前とメルクリアが最初だっただろ ! ?
カイウスそれで十分だ ! 他のことなんか知らないけどお前はいい奴だ !
ミトスいい奴だって言われて喜ぶほど子供じゃない。どかないなら殺す ! !
クラトスやめろ、ミトス !
カイウスえ…… ?
ミトス! ?
クラトスそれは無意味な剣だ。
ミトス――よくも……よくもボクの前に顔を出せたな。裏切り者の薄汚い人間 ! !
クラトスその通りだ。だが、どれだけ恨まれ憎まれても、これ以上お前にこのような愚かな剣を振るわせるつもりはない。
ミトス今更、偉そうに師匠ヅラするな !一度は見逃してあげたのに二回もボクを裏切って !
クラトスそれでも私はやり直すと決めた。それはこの異世界でも変わらぬ。
クラトス私がやるべきだったのは、お前の望みを叶えるために共に墜ちることでもお前を裏切り追い詰めることでもなかった。
クラトスお前を苦しみから救う努力をすることを私は怠っていた。
ミトス………………。
クラトス時を巻き戻せるならと何度も思った。しかしそれはできぬ。そしてここでは私もお前も単なる影にすぎぬ。
クラトスそれでも――いや、だからこそ過ちを正す機会をくれ。
ミトス……ボクは、間違ってなんていない。他人に害を与えた者は、その報いを受ける覚悟をするべきだ。
ミトスクラトスもわかってる筈だよ。自分だって仇を討った。クヴァルを殺したんだから。ロイドと一緒に。
クラトス……そうだな。私は妻を殺された復讐心を抑えられなかった。その結果、私に生まれたのは一瞬の高揚感と達成感だった。
クラトスしかしそれはすぐに消える。消えた後に残るのはむなしさだ。どれだけ手を尽くしてもアンナは……妻は戻らぬ。
ミトス……それで ? 復讐は何も生まないなんて綺麗事を言うの ?
クラトスそうだな。自らの欲望を果たした私には復讐そのものを否定することはできない。
クラトスだが、ミトス。もし復讐が許されるとしてもお前がその気持ちを向けるべき者はすでに死んだ。
クラトスお前は憎しみという感情を、マーテルを救うための免罪符にしてしまった。私もそれを認めてしまった。
クラトスすまなかった。私が間違っていた。
クラトス…………。
二人…………。
ミトス……もういい。気がそがれた。クラトス、シングを回復して。それぐらいはやってくれるでしょう。
ミトスあとゼロス、そこの仮面の奴をつれて飛んで。ボクはカイウスをクラトスはシングをつれて飛ぶ。
ミトス少し先に、帝国の連中が滅多に来ない丘があるからそこへ行く。
シンクへぇ……。案外やるね。アンタたちの痴話喧嘩の間に、帝国の伝令兵がここへ来てたこと、気づいてたんだ。
二人! ?
ゼロスまぁ、気配を消すのが下手くそな兵士だったしな。
クラトスあれはどこの部隊の兵士なのだ ?
ミトス腕章からしてリヒターだ。見逃してくれそうな気もするけど色々面倒だからね。逃げるよ。
カイウスなぁ、兵士なんてきてたか ?
シングいや、突然訳のわからない喧嘩が始まったから、全然気づかなかったよ……。

キャラクター4話【6-3 芙蓉離宮】
シングまず、色々事情を聞く前に――ミトス。さっきのことみんなに謝れよ。
ミトス人間がボクの邪魔をするからいけないんだよ。
シング何だよその態度は !オレだけじゃなく、カイウスも大怪我するところだったんだぞ !
ミトスカイウスには、まだ手を出していなかったけどね。
ミトスそんなに腹が立つなら、その傷が癒えてから特別にボクを殴らせてあげるよ。人間がボクを殴れるなんてありがたく思ってよね。
シングふざけるな !
カイウスミトス……人間人間って差別するような言い方するなよ !
ミトス差別してるんだからいいでしょ。
ゼロスはいはい、また揉めるからそこまでにしようや。で、何があったのよ。
ミトス裏切り者のアホ神子は黙ってて。
シンクフフ……。
ゼロスそこ、笑うとこかよ、シンク ! ?
クラトス話が進まぬな。私はミトスが暴れていると聞いた。何故そんなことになった ?
シングそれはこっちが聞きたいよ。アステル――リヒターの友達にディストの様子を見るように頼まれたんだ。
シングで、カイウスと二人で来てみたらミトスがディストをボコボコに……。
ミトスお前たちが止めに入らなければあいつにとどめを刺せるところだったのに。
シンクへぇ、それは惜しいことをしたな。で、なんであの死神を殺したいのさ。まぁ、殺したくなる気持ちはわかるけど。
ミトス……あのウジ虫が姉さまに手を出したからだ。
ゼロスディストってのは、確か色々やばい研究をしてるイカレ野郎だったよな。……おい、嫌な予感がしてきたぞ。
クラトスミトス、神降ろしはお前の発案か ?
ミトス確かにボクが元の世界で進めていたことは話したよ。でも神降ろしを実行しているのはリヒターとディストだ。
ミトスボクが関わっているならマーテル姉さまを関わらせる訳がない !
シンクおっと、一足遅かったか。こっちもマーテルを次の神降ろしに使う可能性に思い当たったんだけどね。
ミトスあいつはボクを足止めしている間に姉さまを攫ったんだ。だから殺してやろうとしたのに……。
シング……ん ? 神降ろしはコハクの治療のために行ってたんだろ ? どうしてマーテルさんが巻き込まれるの ?
ミトスああ……そうだったね。もう隠すのも馬鹿馬鹿しいから話してあげるよ。シングは騙されてるんだ。
シングど、どういうことだよ。だって神降ろしは虚無に飛ばされたコハクの心を取り戻す儀式なんだろ ! ?
クラトスお前はコハクの知り合いか !
シングコハクを知ってるの ! ?コハクはオレの仲間だ !
シングメルクリアがコハクを助けてくれるって言ったから、オレは気が乗らないことも必死で我慢してきたのに……。
シングメルクリアの言ってたことは全部嘘だったのか…… ?
ミトス全部嘘……とはいえないかもね。あの通りのお嬢様だから。でも隠していることはある。
ミトス……もっともボクも同じことをされた訳だけどね。姉さまには手を出させないって約束だったのに……。
クラトスシングと言ったか。コハクは救世軍が預かっている。彼女は心を失って危険な状態にあると聞いている。
シングスピリアを失って……。そこの部分は本当なの ! ?
カイウスメルクリアの奴、どうしてこんなことを。フレンをリビングドールにしたのも信じられなかったし……。
カイウスあいつ、変わっちまったのかな。
クラトス少し整理しよう。マーテルはディストが攫ったのだったな。ディストはミトスの攻撃を受けて、その後どうした ?
ミトスあいつはカイウスたちに止められている間に変なロボットに運ばれていったよ。追いかけようとしたらこの有様だけどね。
クラトスよし、そちらは救世軍にも応援を要請して捜索にあたろう。シング、コハクは何故心を失うことになったのだ ?
シングリチャードって人が苦しんでたから助けようとしたんだ。
シングソーマでスピルリンクして、ゼロムみたいな奴を倒そうとしたんだけど、スピルリンクに問題があったのか、コハクが突然倒れて――
ゼロスなるほどなるほど……ってその説明訳わかんねーよっ !
ゼロス何も知らない人間にもわかるように説明してくれっかなー。
シングえっと、つまりオレたちはこの武器で人のスピリア――心の中に入れるんだ。
シングリチャードのスピリアの中に魔物みたいな奴がいたから、それを退治しようと思ってコハクと中に入ったんだ。
シングでも、何かがいつもと違っててコハクが倒れちゃったんだよ。
シングそのときにメルクリアが助けてくれてコハクのスピリアを取り戻してくれるって言ったんだ。
シングでもコハクはもう帝国にいないし騙されてたのなら今更ここにとどまる理由はないよ。
クラトス……もし帝国を離れるつもりがあるなら我らと協力しないか ? そしてしばらくの間帝国に留まったままで力を貸してほしい。
シンク敵の懐にいる奴は利用できるからね。
シングお前らまでオレを利用するつもりなのか ! ?
ミトスチェスターの代わりにスパイをしろってことでしょ ?
ゼロスまぁ、チェスターは俺たちじゃなくてミリーナちゃんたちからのスパイだったけどな。
カイウスオレは……力を貸すことはできないけどシングはいいんじゃないか ? シングがスパイとして動くなら、オレも協力するぞ。
カイウスルキウスとルビアのことがあるからばれない範囲でになるけど。
シング本当は今すぐコハクの傍に行きたいんだ。だから……少し考えさせてくれ。
クラトス構わぬ。無理強いするつもりはない。ただ、帝国の内情を知る人間は我らにとって大きな戦力になる。
クラトスだから利用するのではない。お互い同等の立場として協力して欲しい。
シングわかった。その言葉が信じられるのかちゃんと考えてみる。もうメルクリアの時みたいに慌てて飛びつくのは懲りたからさ。
クラトスそれから――カイウス、だったな。立場もあるだろうが、我らのことを見逃してくれるとありがたい。
クラトスそしてもしも我らで力になれることがあれば言ってくれ。どうやらお前も理由があって帝国に従わされているようだ。
カイウス……ありがとう。オレも何もしてない訳じゃないんだ。知り合いと一緒にどうにかしようって動いてる。
カイウス何かの時には……頼むよ。
クラトス……ミトス。我らのところに来ないか ?
ミトス…… !
クラトスマーテルを助けるために協力しよう。今度こそ、私もマーテルを救いたい。
ミトス――そうやっていろんな人の話を聞いて色々指示出して……。そういうとこ、昔と変わらないね。
クラトスそうだろうか……。人は成長する生き物でありながら、凝り固まった自分を捨てられぬ生き物だからな。
ミトスそうだね。だから……ボクは行けない。ボクはクラトスと一緒にはいられない。
ミトスもうクラトスはボクの師匠じゃない。部下でもない。ここは異世界だ。ボクはクラトスの支配者であることをやめたんだ。
ミトスボクに捧げられた騎士の誓いはとっくに無効だよ。それにボクももう昔のボクには戻れない。
ミトスだからボクはボクで姉さまを捜して助ける。もちろん協力はしてもいいよ。

キャラクター5話【6-4 帝都イ・ラプセル】
キールそれじゃあ聞かせて貰おうか。セシリィが思いついたアミィを救う方法について。
セシリィ魔鏡学の方向からアプローチしてみたの。ミリーナも知ってるわよね。鏡士に起きる心核喪失現象のこと。
ミリーナええ。一応習ったことはあるわ。魔鏡によって心がエネルギー不足になって機能しなくなる現象よね。
セシリィええ。心核喪失状態になると鏡士は心の一部に変調を来すんだけど時に感情の一部を喪失したようになるの。
ジュードもしかしたら、アミィの場合は笑顔になるような感情だけが残っているってこと ?
セシリィええ。私は……魔鏡技師でしかないから鏡士のように心を覗き込むことはできないけれど、ミリーナなら……。
ミリーナ心を覗く……。それは私では無理だわ。やり方は知っているけれど人の心を覗くのは、とても高度な技なの。
ミリーナ私は今仮想鏡界を維持するので精一杯でそこまで繊細な力の制御はできないと思う。
セシリィそう……。だったらフィリップさんに協力して貰うのがいいかもしれない。
チェスターフィリップに頼めばアミィは元に戻るのか ! ?
セシリィううん。それはアミィの症状を確認する為の手段なの。治療にはソーマっていう異世界の武器が必要になると思う。
リタ何、ソーマって。武器で治療なんてできんの ?
セシリィ私も聞いた話だけど、ソーマは心の中に入れる機能があるみたいなの。
リタ何それ ! ? どういう理屈な訳 ! ?
チェスター……待てよ。ソーマって確かシングの武器じゃなかったか ?
セシリィうん。だからアミィを助けるためにはシングの力が必要不可欠なのよ。
チェスターだったらオレがシングを連れてくる !ミリーナたちは何とかして救世軍と連絡を取ってくれ。
チェスターセネルもシャーリィのことでジリジリしてるしな。
コーキスけど、救世軍と連絡を取る方法はないんですよね……。
ミリーナええ。世界中に魔鏡結晶があるから魔鏡通信が干渉を受けてしまうのよね……。
リタ通信強度を上げるように改造はしてるんだけど中々上手くいかないのよねー。
キールパスカルとリタが二人がかりでも糸口をつかめないんだ。
リタ悔しいけど、心っていうつかみ所のないものを相手にしてるから勝手が違うのよ。
カーリャミリーナさま ! 大変です !フィリップさまから魔鏡通信が来てますっ !
一同! ?
マーク――OK。ミリーナたちと落ち合う約束を付けたぞ。向こうもこっちに用事があったみたいだから丁度良かった。
フィリップ……ありがとう、マーク。これでコレットや他の鏡映点の器の素養がありそうな人たちに警告することができる。
ガロウズビクエ様……。
フィリップわかってるよ、ガロウズ。僕も気になっている。これは確認しないといけないだろうね。
マークだとよ、シャーリィ。あんた……何者なんだ ?
マークフィルもガロウズも手を焼いていた魔鏡通信の送受信機を直しちまうなんて普通の人間じゃねぇよな ?
シャーリィ ?あー……。やっぱりそうなっちゃうわよね。うん。
マークどうも不自然だったんだよな。
マーク器の鏡映点として、神降ろしの器にされていた筈なのに、自分は鏡映点じゃないなんて言い出すし。
ゼロスおーっと、俺さまたち絶妙なタイミングで戻ってきたみたいね。
ゼロス俺さまも気になってたんだよなぁ。あんた……普通じゃない。
シンクへぇ……。じゃあやっぱりリビングドールなの ? だとしたら帝国側の間者って可能性もあるよね。
クラトスシャーリィ。ここは空の上、逃げ場はない。全て話してはくれぬか ?
シャーリィ ?……色々お世話になったから恩返ししたかったんだけどそれが仇になっちゃったわね。
シャーリィ ?本当はちゃんと説明してあげたいんだけど――ちょっと無理みたい。
ゼロスどういうことだ ?
シャーリィ ?招かれざる客が来ちゃったみたいなの。ちょっと忙しくなるからこれで失礼するわね、お兄様たち♪
マークお、おい ! ? 気を失ったのか ! ?
シンク待って。シャーリィの隣に誰かいる。
? ? ?ごめんなさい。その子の体、ちょっと借りていたわ。
? ? ?心核をいじられていたから治療もしておいたわよ。これは出血大サービス。
フィリップ心核を治療した ! ?
クラトス何者だ ?
? ? ?私はヨウ・ビクエ。まだビクエ制度が続いていたのには驚いちゃったけど当代ビクエはまあまあ優秀ね。
ヨウ・ビクエこれからも頑張って。それじゃあね。
ガロウズ消えた ! ?
シンク……気配もない。転送 ?
クラトスいや、先ほどの姿は何らかの精神体だったのだろう。
クラトス存在を保つため、心をいじられていたシャーリィの体を利用していた……のではないか ?
マーク……もしそうだとしたらえらいことになるんじゃないか ?
ゼロスうん ? どういうことだ ?
フィリップヨウ・ビクエは鏡士の始祖の名前だ。正確にはヨーランド・ビクエ・オーデンセ。
フィリップつまり彼女は精霊が目覚めるためのきっかけである「ダーナの巫女」だ。
シンク……だったら、この世界はもうすぐ滅びるってことだね。
シンクダーナの巫女は、世界が滅びに直面したときに目を覚ますんだろ ?
ガロウズしかし本物……なのか ?
クラトスわからんな。大昔の人間が生きているという事例は……少なくとも私の世界ではあり得たことだ。
シャーリィ……ん……。
ゼロスおっと、シャーリィが目を覚ますぜ。
シャーリィ………… ?
ゼロスお、シャーリィちゃん、おはよう♪
シャーリィ……お、おはよう……ございます。……え ? あの……皆さんはセールンドの方ですか ?
クラトスセールンド、か。この娘が具現化され心核をいじられたのは鏡殻変動の前のことなのかも知れぬな。
シャーリィ………… ?
フィリップ僕から状況を説明しよう。きみの仲間がきみを捜しているそうだからね。

キャラクター6話【6-6 ひとけのない草原】
ゼロス……なぁ、お前のご主人様頭はいいのに、ちょっと腰抜け過ぎない ?
ゼロスミリーナちゃんとの通信だってお前に任せてこの待ち合わせの場所でも姿を隠してよ。
ゼロスガロウズだって気まずいだろうにちゃんとここにいるんだぜ。
ガロウズそりゃまぁ気まずいが……あの時ゲフィオン様を連れ出したのはゲフィオン様との約束だったからな。
ガロウズまぁ、ビクエ様もそろそろミリーナと会った方がいいとは思うけどな。
ゼロスほれ、ガロウズもこう言ってるぜ。
マークじゃあ聞くが、あんたには逃げたくなるものが一つもないのか ?
ゼロスそりゃ逃げたいものだらけよ、俺さまは。けど、ここでミリーナちゃんと対面しないでいつ会うんだよ。
ゼロスその点見てみろクラトスをよ。
ゼロス色々気に入らねぇが、こういう時にロイドを避けないところだけは認めてやってもいいぜ。
クラトス………… !
シンク今度はパパを庇うんだね、バカ神子。
ゼロスはぁ ! ? お前大概にしとけよ ! ?
シャーリィ……あの。わたし……少しだけわかります。会わなければいけない人から逃げてしまう気持ち。
シャーリィフィリップさんもきっと本当はわかっているんじゃないでしょうか。あと少しの勇気さえあれば、きっと……。
クラトス……少しの勇気か。
ゼロスはぁ…… ! シャーリィちゃん、可愛い !健気 ! 一生懸命 !俺さま守ってあげたくなっちゃう !
マークシャーリィ、こっちに来てな。飢えた野獣の近くにいるのは危ないからよ。
ゼロス俺さまが危険な男だって ?フッ、わかってるじゃないの、マーク君。そう、俺さまは危険と色香を――
クラトス――ミリーナたちが来たようだ。
ゼロスえー ! ?俺さまこのメンバーでもこういう扱い ! ?
ミリーナマーク ! ! フィリップは ! ?
マーク察してくれると嬉しいねぇ……。
ミリーナ……そう。
マークで、話の前にこの子を引き渡す。
セネルシャーリィ ! !
シャーリィ……お兄ちゃん !
セネル良かった……無事だったんだな !
シャーリィこの人たちが助けてくれたの。
セネルありがとう。
ゼロスいいってことよ。
ロイド……クラトス。本当にクラトスなんだな。
クラトス……壮健なようだな。
ロイド……そう……け…… ?あ、いや、それよりどうして救世軍にいるんだ ?
クラトス……色々とな。
ロイド…………。
クラトス…………。
クラトス……ところでアミィを預からせてくれ。フィリップに見せる。
チェスターだったらオレも一緒に行く。アミィを一人にはさせられない。
クレス僕も行かせてもらいます。
チェスタークレス……。
クラトス構わぬだろう、マーク。
マークああ、心配するのは当然だろうからな。
ミリーナあら、そういえばセシリィは ?
ガロウズセシリィも来てるのか ! ?
コーキス――あ、隠れてる。ほら、セシリィ何恥ずかしがってるんだよ !
セシリィ……あ……。
ガロウズセシリィ ! 悪かったな、俺のせいで帝国に酷い目に遭わされたみたいで……。
セシリィ……ん、ううん。あの……お久しぶり、師匠。
ガロウズ師匠 ! ? お前いつから俺のことそんな風に呼ぶようになったんだ ! ?
セシリィえ ? あ、だ、だって師匠だから……。でも……ふふ……。ガロウズ……師匠、老けたね。
ガロウズはぁぁぁ ! ?
セシリィご、ごめんなさい。あの、これ、通信でミリーナが話していた、ソーマを利用した心核へのアプローチをまとめたもの。
セシリィ確認してね、師匠。
ガロウズ…… ? お、おう……。
マークそれじゃあ、そろそろ行くか。アミィのことがわかったら魔鏡通信で連絡する。
ロイドあ、ま、待ってくれ。と……クラトス、あの――
クラトス――元気でな、ロイド。
ロイドクラトス ! ! ちゃんと話をさせてくれ !あんた、俺の親父なんだろ ! ?
クラトス……行くぞ。
ゼロス……ハニー。そんなしょげた顔するなって。あのおっさんは俺さまが見張っとくからよ。
ロイド……うん。ゼロス、ありがとう。

キャラクター7話【6-8 帝都イ・ラプセル】
マークどうだ、ガロウズ。セシリィからの資料は。
ガロウズ……シングの持つソーマにセシリィが言うような機能があるなら心核へのアプローチと修復は可能だ。
ガロウズただ――
マークただ ? 何だよ、妙な顔して。
ガロウズ何でセシリィがこんなに魔鏡や魔鏡術に詳しいのかと思ってな。それもビフレストの魔鏡術に……。
マーク何でって、あんたが教えたんじゃないのか ?
ガロウズ弟子にしてくれと押しかけられはしたがまだ子供だぞ。基本的な技術しか教えてない。
ガロウズこんなレベルの研究ができるような奴じゃないんだ。
マークおっと、フィル。アミィはどうだった ?
フィリップ確認できたよ。確かに心核が傷ついていた。何らかの形で心核に接触したんだろう。
フィリップ僕の魔鏡術でも修復可能かも知れないがここは安全第一にチェスターの帰りを待つつもりだ。
クレスチェスターたちは大丈夫でしょうか。
マークいま帝国にあいつが潜入するのは危険かもしれないな。だがシンクもいるしクラトスもゼロスもかなり腕が立つ。
マークきっとシングに接触してくれる筈だ。
クレスそうだね……。チェスター、頑張れ…… !
チェスター……はぁぁぁ。
クラトス……フフッ。
チェスター笑うな ! !
シンクそりゃ、笑うでしょ。野太い悲鳴上げてクラトスにしがみついてたんだから。
チェスターいきなり背負われたと思ったらケリュケイオンのハッチから空にダイブされたんだぞ ! ? 驚くのは当たり前だろ ! ?
ゼロスわりぃなぁ。顔が割れてる奴を連れてるから正面から帝都に入る訳には行かなかったんだよ。四幻将・魔弓のチェスター様。
チェスターその名前で呼ぶな馬鹿野郎っ !
アスター随分と賑やかでございますなぁイヒヒヒヒ !
チェスターあ、悪い……。突然庭に侵入して匿って貰ったのに、騒いだりして。
アスターいえいえ、全てはセキレイの羽の方からご連絡をいただいております。
アスター帝国軍のシング・メテオライト様とつなぎを取りたいとのことでしたね。
クラトスその通りだ。しかし、我らに荷担して大丈夫なのか ?
アスター私どもも慈善事業ではございませんからそれなりの対価を求めるつもりではおりますよ。
クラトス我らに資金がないことは想像が付いていると思うがそれ以外のものを求めると言うことか。
アスター救世軍の方々も補給無しでは苦しゅうございましょう。少なくともその為の資金は残しておられる筈。
アスター私どもはその補給のお手伝いをさせて頂ければと思う次第でございます。イヒヒヒヒヒヒ。
シンク……この世界でもアスターは商魂たくましいってことか。
ヒルダ……この、世界 ?
シンク……何でもないよ。で、シングはどこにいるのさ。
アスターシング様とはヒルダが親しくしております。全てはヒルダにお任せ下さい。私は所用にてこれで失礼致します。
アスターでは、ヒルダ。後は頼みますよ。
ヒルダ……セキレイの羽ってのはアスター様を何だと思ってるのよ。
チェスター悪い。前回はカロルたちが力を借りたんだったな。
ヒルダで、どうしてシングに会いたいのか説明してくれるかしら。それによって引き合わせ方も違ってくるから。
ヒルダ……そう。だとしたら、アステルからミトスに当てた伝言も、あんたたちに伝えておいた方がよさそうね。
シンクアステル ? 確かそれって四幻将のリヒターの知り合いじゃなかった ?
チェスターああ。リヒターが元の世界で亡くしたダチだって言ってたな。
ヒルダええ。色々と自由な子でね。
ヒルダ帝国で精霊の研究をしてるんだけどしょっちゅう抜け出して帝都をふらふらしてるのよ。
ヒルダミトスにマーテルが攫われたことを知らせたのもアステルなの。
クラトス……ヒルダ。アステルからミトスへの伝言というのは ?
ヒルダ――マーテルの居場所よ。
ゼロスマジかよ ! ? どうやって調べたんだ ! ?
ヒルダさぁ。確率がどうとか心理的距離がどうとか色々言ってたけれど……。
ヒルダそれよりあんたたちの話を聞く限りミトスを放っておくのは危険でしょう。
クラトス……そうだな。あれは元の世界でもマーテルを失って、怒りと悲しみが理性を押し流した。
クラトスこの世界でもマーテルを失えばもう誰もミトスを止められぬ。
クラトスそれに私もマーテルを守れなかった。この世界では救ってやりたい。たとえここが影の国であってもな。
ヒルダハーフなんでしょう、あの子。エルフと人間の。
クラトスああ、その為に何度も傷つけられてきた。
ヒルダ……そう。不思議ね。何故か私の周りにはハーフの子たちが集まってくるみたい。
シンクミトスの他にもハーフエルフがいるの ?
ヒルダ……エルフじゃないけどね。異世界のヒトが色々集まると妙なこともあるもんだわ。
ヒルダさて、それじゃあ行きましょうか。シングはいまイ・ラプセル城にいるのよ。
ヒルダ地下通路が使えれば良かったんだけど今は警備が厳しくなってるから多少危険でも街を抜けていくわ。
ヒルダ城にさえ着けば、中に入るのは簡単よ。
シンク城の警備が手薄ってこと ?
ヒルダ警備担当の人間がアスター様の手の者なのよ。
ゼロスよっしゃ、それじゃあ行くとするか。俺さまの華麗な活躍を見て惚れるなよヒルダちゃん !
ヒルダ――ヒルダ、ちゃん…… ?
ゼロスあー、その冷たい目がたまらない。俺さまもだえちゃう !
ヒルダこれといい、前のレイヴンとか言う奴といいあんたたちのところは深刻な人材不足みたいね。
シンクむしろ人材が豊富なんじゃない ?悪い意味で。
クラトス……す、すまぬ。

キャラクター8話【6-10 芙蓉離宮 2】
イ・ラプセル城内武器庫
ゼロスヒルダちゃん、大丈夫かね。やっぱ俺さまも一緒に行ってあげたかったぜ~。
チェスターそりゃ無理だろ。ヒルダは出入りの商人の使いだって顔ができるけど、オレたちは単なる侵入者だぞ。
シンクしかも裏切り者がいるしね。
三人………………。
ヒルダお待たせ――って、何 ?みんな妙な顔してるけど。
シンクさぁね。それよりそこにいるのはシングじゃなくてカイウスだよね ?
カイウスシングならメルクリアに呼び出されたから当分会えないと思う。
チェスターどういうことだ ! ?
カイウスミトスの件で、メルクリアが怒ってるんだ。
カイウスオレは事情を聞かれてすぐに解放されたけどシングはコハクの件で色々文句を言っちまったから……。あの馬鹿……。
チェスターくそっ ! シングがいなきゃアミィはどうなっちまうんだよ !
カイウス確かヒルダの話だとソーマが必要なんだろ ?シングはいないけど、代わりにコハクのソーマを持ってきた。
カイウス勝手に持ってきたから、あとでシングに怒られるかも知れないけど、役に立つか ?
クラトスきっと参考になるだろう。預からせて貰えるだろうか。
カイウスもちろん。壊したりしないでくれよ。
クラトス約束する。
カイウスそれと……前に言ってた力を貸してくれるかも知れないって話。あれ、本気か ?
ゼロスん ? 何かあったのか ?
カイウスまだ何とも……。でもそうなりそうな気がしてる。
ヒルダルビア――この子の仲間が反逆者として戦士の館から連行されちゃったのよ。
ヒルダ何処に収容されているのか私の方で調べてたんだけどようやくいくつか候補が挙がってきたの。
チェスタールビアが……。くそっ !
クラトス……まだルビアの居場所は特定できぬのだな。
ヒルダええ。絞り込みにはもう少しだけ時間がかかりそうなのよ。
クラトスならばカイウス、これを持っておけ。
カイウスこの鏡は…… ?
クラトス通信装置だ。鏡殻変動以降使い物にならなくなっていたがまた使えるようになった。
クラトス必要があればそれを使って我らに声を掛けてくれ。
カイウス……ああ。ありがとう !
シンク……はぁ、お人好しだね。ほんとゴクロウサマ。
カイウスそうだ !みんな、そろそろ城を出た方がいい。ナーザとチーグルがこっちに来るって話だ。
シンクチーグル ?……ああ、あの金髪の妙な男か。ブサイクな魔物のことかと思った。
チェスターナーザと鉢合わせすると面倒だぞ。
ゼロスそうだな。さくっと脱出するか。ヒルダちゃんはどうすんのよ。
ヒルダ――その呼び方、いい加減やめてくれない ?
ゼロスええ~ ! ? じゃあヒルダ様~ !
ヒルダぶつよ !
ゼロスぶつ前に言ってくれるなんて優しすぎるぜ、ヒルダ様~ !
ヒルダあー……。この馬鹿何とかしてくれない ?
クラトスすまぬな。神子……ゼロスはあなたとじゃれ合いたいだけなのだ。
ゼロス真面目な顔でそーゆーこというのやめてくれねーかな ! ?
ヒルダ――とにかく !私はカイウスとルビアの捜索についてもう少し打ち合わせしていくわ。
ヒルダあんたたちは先に逃げなさい。
クラトス……カイウス。ミトスはどこにいる ?
カイウスミトス ? ……多分近くの森に作った避難所にいると思う。
シンク避難所って何。
カイウス……マーテルさんを匿うために準備してたらしいんだ。その前に攫われちゃったけどさ。
クラトス詳しい場所を教えてくれ。
カイウス……まぁ、あんたたちなら大丈夫か。今、地図を書くよ。
クラトスヒルダ。アステルからの伝言は私から伝えておく。それでいいか ?
ヒルダそうね。そうしてくれると助かるわ。
チェスター待った。オレはミトスに会いに行ってる暇なんてないぞ !
シンクだったら、ゼロスがチェスターをケリュケイオンへ送ってやればいい。
クラトスシンクは私と共にくるのか ?
シンクアンタ一人残して帰ったらマークが怒るからね。
シンクまぁ、それでもいいけどしつこくくどくど言われるのも面倒だ。アンタに付き合えば義理は果たせるだろ。
クラトス……フッ。
シンク……チッ。何もかもわかってますって澄まし顔か。ゼロスがアンタを嫌う理由がわかったよ。
ゼロスでひゃひゃひゃひゃ。だろー ? 仲間になれて嬉しいよ、シンくん。
シンクアンタと仲間になるのもお断りだねバカ神子。
チェスター……何でもいいから急ぐぞ !アミィが待ってるんだ。

キャラクター9話【6-12 森にある避難所】
シンク……カイウスの地図によるとこの辺りにミトスの避難所があるんだろ ?それらしいものが見当たらないけど。
クラトス……すんなりと見つかるようには作らないだろう。ミトスと私たちはかつての旅の間ずっと敵に追われていた。
クラトスどのようにすれば身を隠せるかはよく心得ている。
シンク――待った。何かいるよ。
クラトスこの気配は……。
シンク魔物…… ! ?
クラトスノイシュ…… ! ?
ノイシュワォーン……。
シンク……何、この変な生き物。アンタのペット ?
クラトスまぁ……そんなようなものだ。
クラトスノイシュ、お前も具現化されていたのか。何故ここにいる ?ロイドと一緒ではないのか ?
ノイシュキュウーンキュンキュン……。
クラトス……まさか、ミトスと一緒にいるのか ?
シンクは…… ? 何、この変なのと会話できる訳 ?
クラトスノイシュは高度な知能を持つ知的生命体だ。
クラトス付いてこいと言っているようだ。
シンクまぁ、アリエッタみたいなものか……。
ノイシュワォーン !
ミトスノイシュ、大きな声で鳴いちゃ駄目だよ ?
クラトスミトス……。
ミトス……ノイシュが連れてきたのか。お前はお節介だね。
ノイシュワフ !
ミトス何か用 ? 偶然なんてことはないでしょう ?
クラトスアステルという人物からの伝言を預かってきた。マーテルは海鳴りの神殿にいるとのことだ。
ミトス! ?
クラトスお前は海鳴りの神殿の場所を知っているか。
ミトス……知ってるよ。メルクリアの離宮から繋がる神殿だ。
シンク行って暴れてくるつもり ?
ミトス姉さまに何かしていればね。
クラトス私も共に行こう。
ミトス………………。
クラトス戦力が増えて困ることはあるまい。
シンクねぇ、アンタが行くってことは自動的にボクも行かなきゃいけないんだけど。
ミトスこいつも来るの ? 足手まといなんじゃない ?
シンク言ってくれるね。何なら試してみる ?
ミトス身の程知らずも大概にしたら ?お前なんか剣を使わなくてもすぐ殺せるよ。
シンクだったら殺してみせてよ、シスコン坊や。
クラトス――いい加減にしないか。ミトス、シンクは手練れだ。それがわからぬお前ではないだろう。
ミトスボクの力も見誤るような雑魚は邪魔だと思っただけだよ。
シンク――貴様っ !
クラトスミトス ! シンク ! やめなさい。本当に力を持つ者は、むやみにそれを振り回したりはしないものだ。
クラトスそういう意味ではお前たちは二人とも弱者だ。
二人………………。
クラトス――ミトス。一つ尋ねて構わぬか ?ここには随分古い書物も集めているようだが何か調べているのか ?
ミトス精霊について、ちょっとね。
クラトス精霊 ? やはりデミトリアスの計画に関することなのか ?
ミトスあんな死に損ないの考える計画なんてどうでもいい。ただボクは心配してるだけ。精霊マーテルの存在の可能性について。
クラトス精霊マーテル ? 何を言っている。マーテルは精霊ではないだろう。
ミトス――クラトスは知らないんだね。うん……そうだったね。だったら知る必要はないよ。今のところはね。
ミトスそれより海鳴りの神殿へ行こう。ボクが案内する。
シンクこのノイシュとか言う変なのはどうするのさ。
クラトスノイシュは魔物が苦手だ。この家にいた方がいい。あるいは……。
クラトス――いや、いい。ここでミトスの帰りを待っていてくれ。
ノイシュキューン……。
ミトスノイシュ、いい子にしているんだよ。
シンク……変な顔。知恵があるようには見えないな。
ノイシュワフン……。

キャラクター10話【6-15 海鳴りの神殿 3】
シンク……嫌なところだな。じめじめして。
ミトス姉さまは……。
チーグル待っていたよ、ミトス。
ミトスリチャードか……。
チーグルそれはこの体の持ち主の名前だ。僕はチーグル。高貴な北方の虎だよ。いい加減名前で呼んで欲しいなぁ。
チーグルきみだって元の世界でこうやって魂を違う体に移そうとしていたんだろう ?だったら僕は待望の成功例じゃないか。
チーグル仲良くしようよ。
ミトス……姉さまはどこだ。
? ? ?――聞こえるか、ミトス。
クラトス子供の声…… ?
ミトスメルクリアだ。
メルクリアそうじゃ。あはは ! わらわの声忘れたわけではないのだな ! よかったぞ。
ミトスメルクリア ! どこにいる ! ?
メルクリア捜しているのはわらわではないだろう ?
ミトスふざけるなっ !
メルクリアミトス……。わらわを失望させてくれるな。そなたはわらわと同じじゃ。だからこそマーテルを具現化してやったのではないか。
ミトスお前たちのくだらない計画に姉さまを巻き込むなと言っただろう !
メルクリアチーグル。説明してやれ。
チーグルはい、メルクリア様。ミトス、神降ろしはデミトリアス陛下の大願なんだよ。
チーグル何、全て終われば、神はまたいずこかへお戻りになる。
ミトス神降ろしだろうと何だろうとやることはリビングドールと変わらない。姉さまの心を消すなんて許さない !
チーグル消さないよ、ミトス。心核――心の物質化に成功したんだ。壊さずに取り出す。
チーグルでも、もしもここでメルクリア様の意思に背くなら、メルクリア様は今すぐ心核を取り出して壊す……と仰っている。
ミトス! !
シンク……そういうことか。
クラトスミトス……。
チーグル僕が見届けてあげるよ。反逆の意思がないことを見せてくれ。
ミトス――クラトス。
クラトスお前がそうせねばならぬと言うならそれでもいい。だが、それでも私は今度こそお前たち姉弟を守りたい。
ミトス………………っ !
シンクアンタ、馬鹿か ! ?少しは攻撃を避けてよね !
ミトス……邪魔をするな。
シンクこの馬鹿に死なれるとこっちが困るんだよ。
シンククラトス。アンタがここで死んだらロイドはどうすると思う。
クラトスロイドはものの道理がわかる男だ。
シンク歪んだ情報に触れなきゃそうかもね。ボク、そういう操作は得意なんだけど。
シンクこいつとロイドを戦わせたくなかったらしっかり戦ってくれない ?
シンク客分傷つけてうるさく言われるのはボクなんだ。死ぬなら勝手にのたれ死んでよ。
ミトス……クラトスはあの女の子供に弱いからね。いいよ。ボクも本気で殺しにいくから !

キャラクター11話【6-15 海鳴りの神殿 3】
シンク……やったか。
ミトス――残念だったね。
シンク傷が癒えていく…… ! ?
クラトス天使とはそういう体の構造をしている。体につけた輝石を壊さぬ限り死ぬことはない。
シンクちっ。面倒な奴らだ。
チーグルミトス。もっとだよ。きみの本気はこんなものじゃないよね ?
ミトス………………っ !
ゼロス見て行きな !俺の全力 !ディバイン・インペイル ! !
チーグルぐぉぉぉぉぉぉっ ! ?
ゼロス……横から茶々入れて煽ってんじゃねぇよ。
マークお、ゼロス。ナイス働きだな。おい、クラトス、シンク。無事か ?
シンク来るのが遅いね、マーク、ゼロス。
ゼロスお前、もう少し感謝の気持ちを持てない訳 ?
メルクリア……何じゃ。興ざめじゃな。
ゼロス何だ、この声は……。
メルクリアまあいい。ディストからの報告と違ってちゃんと戦ってくれたようじゃな。わらわは満足したぞ。
ミトス姉さまは何処だ。
メルクリアジュニア、ミトスを連れて戻ってまいれ。チーグル、撤退じゃ。よいな。
チーグル……承知しました、メルクリア様。
シンク消えた……。転送か ?
ゼロスそんなものあるのかよ。チートじゃねぇか !
マーク……おっと、小さいフィリップじゃねぇか。何でこんなに可愛かったのにあんなになっちまったかねぇ……。
ジュニアマーク……。
ミトスやぁ、ジュニア。メルクリアの狗になった気分はどう ?
ジュニア……あの、ミトス。ごめん。
ミトス――別に劣悪種の人間には何も期待してない。
クラトスミトス、行くのか。
ミトス………………。
ミトス――……期待してないけど今度は……信じていいの ?
クラトス
ゼロス――そういうときはよ、ミトス。「信じてる」って言うんじゃねぇの ?
ミトスボクはもう……動けない。だから……姉さまを助けて……。
クラトスもちろんだ。約束する。必ずお前たちを救う。
ジュニアあの、フィルに伝えて下さい。「僕らの始まりの場所に行って」って。それでわかるから。
マーク……なぁ、クラトス、ゼロス。この際、はっきりさせないか。
クラトスどういうことだ。
マークあんたたちは、俺たち救世軍の客分だ。
マークだが、本格的に帝国と対立するならいつまでも二人だけで独立部隊気取るのも厳しいだろ。
マークかといって、ミリーナたちのところへ合流する気はない。
ゼロス俺さまは別に合流してもいいんだぜ。つーか、むしろ合流したい。あっち、美人がわんさかいるんだもんよ。
シンクバカ神子、黙って。
マーク正式に救世軍へ来いよ。ミトスの姉ちゃんを助けるなら人手が必要だろ。
マークフィルもそうして欲しいって願ってる。あんたらは頼りになるとさ。
マーク俺はフィルから離れて活動できないから救世軍の指揮を執る人間が必要だ。
シンク……クラトスが指揮官か。現場に出られる分、マークよりは助かるね。
マークだろ ?
ゼロス俺さまは ?
マーク美女手当をつけてやるよ。雑兵には美人もいるぜ。
ゼロス……ま、しゃーねぇかなぁ。
ゼロス冗談はともかく、実際のところ、俺さまロイドたちのところには居づらいんでね。色々影でやらかしてきたからな。
ゼロス今の状態じゃ謝ることもできやしねぇ……。
クラトス……ミトスは現在の新生救世軍にとって裏切り者だ。それを助けるのに協力してくれるというのか。
マークんなこと言ってたら俺はミリーナを殺そうとしてたんだぜ ?昨日の敵は今日の友。ま、そんな感じかね。
クラトスわかった。世話になろう。貴公らには色々と助けられた。私で力になるなら共に戦おう。
ゼロス三食昼寝美女手当尽きで手を打っておくわ。頼むぜ、マーくん。
ゼロスおっと、フィリップから通信だ。どうした ?
フィリップアミィが……――
? ? ?暗くて……冷たい……。虚無が近づいてくる……。
フィリップ――……だ。
クラトス何だ、今のは ?
シンク混線…… ? そんなことってある ?
ゼロス今の……イクスの声じゃないか ?
フィリップ……てるのかい ?アミィが意識を取り戻したんだ !
三人! !
to be continued
キャラクター1話【7-1 ひとけのない雪山1】
コーキスアミィ様の治療、進んでるのかな……。
ミリーナソーマ……という装置 ? があるのは帝国側だからまずはそれを奪ってくることに成功しないとね。
ジェイドその点は大丈夫でしょう。セシリィの言葉を信じるならソーマとやらを持っているシングという人物は、何らかの理由があって帝国に留まっているだけのようです。
ジェイド彼の目的が死者の復活でないならこちらに協力してくれる可能性は十二分にある。
セシリィシングは、仲間のコハクさんという鏡映点を助けたいだけだと言ってたわ。だから、救世軍がコハクさんを預かっていることを知れば、きっと力を貸してくれる。
ジェイド………………。
カーリャでもチェスターさまとクレスさまが、アミィさまとケリュケイオンに向かってから結構時間が経ちますよね。やっぱり心配ですよぅ……。
コーキスそうだな……。やっぱ俺も一緒に行くべきだったかも。そうしたら、魔鏡通信で状況を知らせられたのに。
ミリーナ大丈夫よ。何かあればフィルたちが連絡をくれるわ。
ジェイド……セシリィ。ちょっと伺いたいことがあるのですがよろしいですか ?
セシリィ何でしょうか ? 浄玻璃鏡のことですか ?
ジェイドああ、そちらも興味深いですが、今はカロルたちが持ち帰った情報のことについてお尋ねしたい。
ジェイドカロルたちが言っていた、もう一つのカレイドスコープとそれを隠している仮想鏡界のことについて。
セシリィ……ああ、はい。
ジェイド我々のアジトであるこの仮想鏡界は、ミリーナが創りカーリャと二人で維持している特殊な空間です。
ジェイドあー、まぁ、このような曖昧な定義しかできないことをお許し下さい。原理は理解しましたが、説明が大変なのでね。
ジェイド帝国側の仮想鏡界も誰かが創っている空間であることは間違いない。しかしこれは非常に難しい魔鏡術の筈です。
ジェイドミリーナもゲフィオンとしての記憶を共有することで初めて成し得たことだと言っていました。
ジェイドつまり帝国にもゲフィオンクラスの鏡士がいると判断して差し支えないでしょう。それは誰だと思いますか ?
コーキスは ? そんなことセシリィに聞いてわかるのか ?
セシリィ……わからない。ナーザ将軍がメルクリア様の兄君――ウォーデン様なのだとしたらウォーデン様が鏡士であることは間違いないわ。
セシリィでも、イクスさんのご遺体を奪っているのなら本来の力は出せない筈。メルクリア様はまだ仮想鏡界を作れるほどではないと思うし……。
ミリーナこの世界で生き残っている鏡士の中で仮想鏡界を使えるクラスの人物となると私はフィリップしか思い当たらないわ。
ミリーナあとは……シャーリィに宿っていたというヨウ・ビクエが本当にあのヨーランド様なのだとしたら……彼女には簡単なことでしょうね。
ジェイドやはりそうか……。
コーキスえ ? ま、まさかジェイド様帝国の仮想鏡界を作った人間に心当たりがある……とか ?
ジェイドええ、まぁ。カロルの報告書を読んだ限りでは一人――いえ、二人の顔が思い浮かびました。
ジェイドただ、私は帝国の内部には明るくありません。ですから、二人以外の可能性があるのか排除する必要があったんですよ。
セシリィあ、でも、私も帝国のこと何でも知ってる訳じゃないですよ ?
セシリィ私も突然メルクリア様に呼び出されてビフレスト式の魔鏡術を復活させるように言われただけで……。
ジェイドつまり、メルクリアはあなた以上の鏡士を知らないと言うことですね。
セシリィ……それは、そうかも知れません。
ミリーナ――待って。セシリィ、あなた鏡士じゃないわよね ?魔鏡技師でしょう ?
セシリィ! !
ジェイドああ、失礼。言葉のあやですよ。メルクリアは魔鏡技師であるセシリィに頼らざるを得ないぐらい、鏡士のあてがないという意味です。
ジェイドいやぁ、失礼しました。
コーキス――え……、な、何だ、そういうことかよ。びっくりしたぜ !
セシリィ………… !
ジェイド………………。
カーリャうおおおおお、ブルってきたぁ ! ?魔鏡通信です、ミリーナさま !
マークカーリャ先輩、邪魔するぜ。
カーリャはぁ ! ?私はマークの先輩になった覚えはありませんよ !
コーキスそうだぞ ! パイセンは俺のパイセンだからな !
マークつれないこというなよ。それよりウチの繊細なご主人様がミリーナに助けを求めてるぜ。
ミリーナフィルが ? どういうこと ?まさかアミィちゃんに何かあったの ! ?
マークそういうことだ。あんたの助けが欲しいとさ。魔弓のチェスターくんの為にも一つ力を貸してやってくれ。
ミリーナ当然だわ。今、どこにいるの ?
マークとりあえず、帝国の目を避けるために人気のない雪山で落ち合いたい。詳しい座標は――
ミリーナ――ケリュケイオンと落ち合う場所がわかったわ。私、行ってきます。
コーキスミリーナ様、俺も行きます。連れて行って下さい。
ミリーナええ、もちろんそのつもりよ。
カーリャカーリャも……と言いたいところですが私はここを離れられません。コーキス、ミリーナさまをちゃんとお守りするんですよ !
コーキス任せとけって !
ジェイド腕の立つのと、頭の回るのを何人か連れていくといいでしょう。それと……セシリィ。あなたも行った方がいい。
セシリィえ……。でも私はここで、みなさんの武器のお手入れを手伝ったり、キール研究室のお手伝いをしたり……。
ジェイド私は……あなたとガロウズの関係を察することしかできません。もしかしたら彼は知らない方が幸せなのかも知れない。
ジェイドですが、アミィの症状がリビングドール化の失敗によるものなのだとしたらあなたのことも話しておいた方がいい。
ジェイド二人にとってつらい話になるかも知れませんがそれがアミィや他のリビングドール化された人々への救いになる。
ミリーナ……ジェイドさん。どういうことですか ?何を知っているんですか ?
ジェイド知っているのではなく、推察したのです。おそらく正しい……と思いますがセシリィの口から話した方がいい。
ジェイドミリーナ、あなたがゲフィオンであったことをリフィルがぎりぎりまで隠したようにね。
ジェイド人には暴かれるのではなく自ら告白した方がいいこともある。
セシリィ……そうですね。でも……ジェイドさん。あなたは怖い人ですね。
ジェイドそうでしょうか ?
セシリィいつからご存じだったんですか ?
ジェイド……あー、いえ、そういうのはやめておきましょう。さぁ、急いでケリュケイオンに向かって下さい。
ジェイド雪山は年寄りには応えますので私はここでお待ちしていますよ。

キャラクター2話【7-2 ひとけのない雪山2】
フィリップ……久しぶり、だね。
ミリーナ……フィル。どうしてずっと会ってくれなかったの ?
フィリップ今のきみがゲフィオンだった頃の記憶を共有しているミリーナだから、かな。
フィリップ見た目は僕が子供の頃と何も変わらないのに、きみは僕がどれだけひどいことをしてきたのか知っている。……正直なところ、それがつらかった。
ミリーナフィル……ううん、本当に酷いことをしたのは私よ。この世界を滅ぼしたのは私なの。あなたじゃない。
フィリップいや、違うよ。ゲフィオンと僕がやったことだ。きみはあのミリーナとは違うんだ。違う道を歩んで欲しい。
ミリーナ……そう思えれば……いいんだけれど……。
ユリウス俺たちの世界で言う、分史世界の自分の記憶を内包しているようなものか。
ルドガーそれは……苦しいな。
アーチェんー、まぁ、でもそれって、この先を生きていくことで薄れていくんじゃないの ?すごくリアルな夢みたいなもんだって。
アーチェ囚われすぎない方がいいんじゃない ?
コーキスミリーナ様……。アーチェ様の言う通りですよ。
ミリーナ――ああ、ごめんなさい。私のことはいいのよ。アーチェの言う通りかも知れないし。そんなことよりアミィちゃんのことよね。何があったの ?
フィリップそれが……あの子は沈静化させたのにずっと涙を流しているんだ。
セシリィ感情が一部戻ってきているってこと ! ?
フィリップ……そうなるね。しかも暴走しているんだと思う。何が原因か突き止めて、早急に対処した方がいい。
エル原因……。ずっと涙を流してるって悲しいからじゃないかな ?つらい夢を見てるのかも……。
ルドガー大丈夫だ、エル。アミィを助けるためにみんなここに来たんだから。
コーキスだけど、アミィ様の治療にはソーマってのが必要なんだろ ?チェスター様たちが取りに行ってるんじゃないのか ?
フィリップああ。だが、待っている方が危険だと判断した。僕の魔鏡術で心核にアプローチする。
フィリップだからミリーナの……ゲフィオンの記憶を持つミリーナに頼る必要があったんだ。
ミント……アミィちゃんを助けましょう。ミリーナさん、お願いします !
ミリーナええ。必ずアミィちゃんを助け出してみせるわ。
ガロウズ――お、セシリィも来たのか。
セシリィ師匠……じゃなくてボスって呼んだ方がいいんだっけ ?
ガロウズそりゃ、どっちでもいいんだが……。
ユリウスセシリィ。状況はジェイドから聞いている。まずはアミィを助けてからにしよう。
セシリィはい。師匠、アミィちゃんは ?
クレスアミィちゃんはここだよ。さっき医務室のベッドをここに運んできたんだ。
コーキスホントだ、涙がずっと溢れてる……。どうして……。
ミント……アミィちゃん。
アーチェそっか。クレスがアミィちゃんを守ってチェスターが帝国に向かったんだ。
クレスうん。だけど今このことをチェスターに伝えるとチェスターが動揺する。ここは僕たちでアミィちゃんを助けよう。
フィリップ僕が魔鏡術でアミィちゃんの心核を鏡に映す。ミリーナはそれをつなぎ止めて維持してくれ。
ミリーナフィリップが鏡越しにアミィちゃんの心核の傷ついた部分を修復するのね。
フィリップ繊細な作業になる。治癒の力を持つミントにはここに残ってサポートをお願いしたい。
フィリップそれと、アミィちゃんのことをよく知っているクレスにもサポートを頼む。
ミントわかりました。
クレス何でもやります。アミィちゃんとチェスターのためにも……。
フィリップ他のメンバーは待機していてくれ。
コーキスわかった。
ユリウス……だったら、少し外で話をしないか。セシリィがガロウズに話があるそうだ。
ガロウズ! !
フィリップ……そうか。やっぱりセシリィもビフレストの関係者なんだね。
ルドガーえ ? どういうことだ ?
ユリウスとにかく場所を移そう。ケリュケイオンの中には救世軍の一般兵がたくさんいる。デリケートな話は外の方がいいだろう。
ユリウス少しだけケリュケイオンから離れるがすぐ戻れる場所にいる。何かあったら魔鏡通信をくれ。
フィリップ何もないことを祈っていてくれ。

キャラクター3話【7-3 ひとけのない雪山3】
ガロウズ……それで、俺に話ってのはなんだ ?
ガロウズ――いや、セシリィ。俺からも聞かせてくれ。お前、いつの間にあんな研究ができるほど魔鏡と魔鏡術に詳しくなったんだ ?
セシリィ……まず、最初に謝らなければいけません。これは師匠……ガロウズだけじゃなくて他の皆さんにも……。
セシリィ私はセシリィではありません。
エルえ ! ? どういうこと ?
コーキス――も、もしかして、フレン様って人と同じリビングドール……。
セシリィはい。リビングドールは、心核を取り外し、そこに人工心核を取り付けて、虚無に漂うアニムス粒子を閉じ込めることでキメラ結合させた存在。
セシリィ私はセシリィの体を借りている死者です。
ガロウズじゃ、じゃあ、セシリィは ! ?あの子の心核は何処にあるんだ ! ? 無事なのか ! ?
セシリィ……無事だと思います。心核が壊れたら体は存在を保てない。だからきっと無事です。
ユリウス君は誰なんだ、セシリィ。
ユリウスジェイドからは敵ではないと言われている。あの男が言うのだから、君が敵である可能性は極めて低いのだろう。だが、もしも敵なのだとしたら――
セシリィ……私はビフレスト皇国魔鏡庁の正階鏡士シドニー・ミラー。
ガロウズ――う、嘘だ……。
シドニー……ごめんなさい、ガロウズ。言えなかった。言えばあなたを苦しめると思ったから。何も言わずにミリーナさんたちに協力すれば、事態は収拾できるって――
ガロウズやめろ ! やめてくれ ! どうしてこんな……。
コーキスな、何だよ ? ガロウズの知り合いなのか ?
シドニー私とガロウズは結婚の約束をしていたの。もうずっと昔のことだけど……。
一同! ?
シドニーガロウズの両親は商人で、ビフレストにも家を持っていたんです。その家が私の家のすぐ近くで……。
シドニーその頃はまだ戦争も始まっていなかったから敵同士になるなんて思ってもいなかった。
ガロウズ……しばらくして魔鏡戦争が始まってな。シドニーは俺との関わりからスパイだと疑われて前線に送り込まれたんだ。
ガロウズその時俺はセールンドの志願兵として前線に出ていた。驚いたよ。敵にシドニーがいたんだ。俺はシドニーとは戦えなくてな……。
シドニーガロウズは私を助けようとして、腕を失ったの。
ガロウズ……でも、助けられなかった。自暴自棄になったところをゲフィオン様に拾われたんだ。
シドニー……カレイドスコープに粉々にされた私は虚無をずっと漂っていた。もう何を考えていたのかも思い出せない。
シドニーでもある時、何かの力に引き寄せられて、気付いたらセシリィの中にいた。リビングドールにされたのよ。……メルクリア様によって。
コーキス(この場にミリーナ様がいなくてよかった。でも、いずれは説明しないといけないんだよな……。くそ、ミリーナ様がまた傷つくじゃねーかよ ! )
ユリウスきみはビフレストの人間なんだな。なら、どうして自国の王子や王女のいる帝国側に協力しないんだ。
シドニーこの私の状態……自然なものと言える ? この子はメルクリア様の遊び相手として城に呼ばれていたらしいの。
シドニーそんな子の体を使って……。その理由が、鏡士が好きだから鏡士の力を学びたいから。ただそれだけ……。
ルドガー……前から気になっていたんだが、リビングドールにするための……その……死者の魂みたいなものはどうやって選別して呼び寄せているんだ ?
ルドガー聞いていると、都合よく、欲しい人材をリビングドールとして復活させているみたいだ。
シドニーそれは……。
チェスターうおおおおおおおお ! ?
アーチェちょっと、何よ、今の野太い悲鳴は ! ?
ゼロスいよっ、アーチェちゃん ! 今日も可愛いねー !ポニーテールがキュート ! うなじがセクシー !
チェスターお……お前なぁ…… ! ? 急降下するときは声をかけろって……え…… ? アーチェ…… ?
アーチェお姫様抱っこ ! ? あはははは、随分ふっとい声のお姫様じゃん ! そんなに空を飛ぶのが怖いんだー ?
チェスターち、違うぞ !こいつが前置きもなく急降下するから――
ゼロスはいはいはいはい。じゃれ合いは後にしてくれ。俺さま、またクラトスたちのところへ戻るわ。シンクとクラトスだけってのもなーんか心配なんでな。
ゼロスマーク借りてくぞ。戦力が欲しいからな。
コーキスマークを借りてくって……フィリップ様は今、動ける状況じゃないぞ ! ?
ゼロス大丈夫だよ。鏡精が動ける範囲内だ。
ゼロスそれじゃあね、アーチェちゃんとエルちゃんとセシリィちゃんとその他大勢共 !
コーキスあ……相変わらずやかましい人だな……。
エルなに、エルちゃんって。エルのこと、子供扱いしないでよね。
ユリウスあれは危険だ。気をつけろ、ルドガー。
ルドガーいや、さすがにエルぐらいの歳の子にまで色目を使うってことは……。
チェスター――そうだ。そんなことより、ソーマを持ってきたぞ。これでアミィを助けられるんだろ ! ?
アーチェあー、それなら、もう始まってるよ。クレスたちがアミィちゃんの治療を手伝っててあたしたちは待機中。
シドニーでも、ソーマがあるならフィリップさんたちの助けになると思う。ケリュケイオンに戻りましょう。
コーキスでもシドニーの話の続きは…… ?
チェスターシドニー ?
セシリィ……後にしましょう。今はアミィちゃんが最優先よ。それから、私のことはセシリィって呼んで。その方が……色々と混乱しないと思うから。

キャラクター4話【7-3 ひとけのない雪山3】
救世軍兵士――チェスター様 ! !
チェスターおい、こいつらに聞いたぞ。アミィは大丈夫なのか ! ?
救世軍兵士丁度よかった ! フィリップ様がチェスター様と連絡を取るように仰っていたんです。こちらへ来て下さい !
ミリーナチェスター ! よかった……。アミィちゃんの心があなたとクレスさんを捜しているの。
チェスターアミィがオレたちを…… ?
クレスアミィちゃんは、チェスターが帝国へ行ったことがわかって、心が不安定になってしまったんだ。それで先に治療を始めるしかなかったんだけど……。
ミント……あの、今アミィちゃんの心は、トーティス村が襲われたときのことを思い出しているそうなんです。
チェスターマルスがオレたちの村を襲ったときの…… !
フィリップ僕は詳しいことを知らないが、アミィちゃんは村を襲われたときに亡くなったんだね ?
チェスター……ああ。だけどファントムの奴が具現化したのはまだ村が襲われる前の時間のアミィだった筈だ。
フィリップ……ファントムは恐らく、チェスターの心を通じてカレイドスコープの照準を絞ったんだろう。
フィリップこれは推測だけれど、彼は無断でアミィちゃんを具現化したんじゃないのかな ?
チェスターどうしてそれを ! ?
フィリップ……やっぱりね。ファントムは勝手にチェスターの心をサーチしてアミィちゃんを見つけ出し具現化したんだよ。
フィリップだからチェスターの中の不安が残ってしまって照準を甘くしたんだと思う。
フィリップアミィちゃんは知らない筈の感情に戸惑っているんだ。村が襲撃されたことは知らないのにその時の不安や恐怖だけが心に残っている。
フィリップここで彼女の心を救わないと、彼女は戻ってこない。
チェスターどうすればいいんだ ! ?
ミリーナ私がサポートするわ。チェスター、鏡を通じて悪夢から目を覚ますようにアミィちゃんに伝えてあげて。
チェスターわ、わかった。
チェスター(アミィ……。帰ろう。オレと一緒に……。オレがお前をこんな目に遭わせちまった)
チェスター(でも……今度こそ、救わせてくれ。影の世界でもいい。お前を守らせてくれ…… ! )
ユリウス――おい、ソーマが何か反応しているようだぞ。微かだが光ったような……。
ガロウズ魔鏡に反応してる…… ?いや、ビクエ様の魔鏡術に反応してるのか ?
シドニーこれは……確かコハクさんのソーマよね。コハクさんにつけてみる。持ち主が身につけることで何か変わるかも知れない。
コーキスうわ ! ? ソーマがコハク様に触れただけでビカビカ光り出したぞ ! ?
ミリーナ待って。そのソーマという装置からすごいエネルギーを感じる。これは私たちの魔鏡術がソーマに増幅されている…… ?
フィリップソーマというのは魔鏡による具現化に似た機構があるようだ。これなら一気に心核を修復できるぞ !
チェスターアミィ ! 戻ってこい ! !
アミィ……お兄ちゃん…… ? そこにいたの ?
アミィ――……お兄ちゃん ?
チェスターアミィッ ! !
メルクリア……なんじゃ、ミトスの奴め。わらわがこれほどまでに可愛がってやったというのに。
バルドお言葉ですが、メルクリア様。メルクリア様も兄君を同じようにされたら、お怒りになるのでは ?
メルクリア何を言うか。心は取り出すのじゃ。そしてよき器をあてがう。
メルクリア何、神降ろしとやらが終われば、また体を返して貰えばよいではないか。ミトスも元の世界でそのようなことをしてきたのであろう ?
メルクリアわらわが同じことをして何故怒るのじゃ。体があるだけマシじゃぞ。兄上様は滅びの鏡士の体を間借りしておるのじゃからな。
メルクリアわらわの力が至らぬばかりに兄上様には申し訳ない限りじゃ……。
バルドメルクリア様……。
メルクリアバルド。そなたは、兄上様のために甦らせたのじゃ。兄上様のことを頼むぞ。
メルクリアさて、わらわはミトスと話をつけねばならぬ。出迎えの準備をするぞ。
メルクリアミトスはお気に入りなのじゃ。やっと大人しくなったのだし丁重に迎えてやらぬとな。
バルド(……やはり、幼い。何故このように歪んでしまわれたのか)
バルド(我々の誰かが生きてお側に仕えることができていれば……このようなことには……)
? ? ?(それでも、できることはあるんじゃないか)
バルド(……そうですね。あなたの言う通りなのでしょうね)

キャラクター5話【7-5 ひとけのない雪山5】
ジュード……うん。大丈夫。救世軍の医療スタッフと一緒に簡単な検査をしたけれど、アミィちゃんは健康だよ。
ミリーナごめんなさいね、ジュードさん。うちにも医療スタッフがいればジュードさんの負担を少しは減らせるのに……。
ジュードううん。みんなができることをやってるだけでしょ。気にしないで。
エルねぇ、アミィは ?
ルドガーチェスターとクレスと三人で話してるよ。
ミントここは元の世界とは違う場所ですから色々お話ししなければならないこともありますし。
アーチェ村が襲われたって事も……話すことになるんだよね。
ミント……そうですね。
エルアミィ、猫好きかな ?ルルのことぎゅっとしたらきっと元気出るのに。
ルドガー後で聞いてみよう。
エルうん。
フィリップよし、クラトスさんたちに連絡しておこう。クラトスさんも、アミィちゃんのことを気にしていたみたいだからね。
フィリップクラトスさん、ゼロスさん、聞こえるかな ?
ゼロスどうした ?
フィリップアミィが目を覚ましました。治療が上手くいったんです。
フィリップ……あれ ?急に通信の状態が……。
フィリップ聞こえるかな、ゼロスさん。アミィの治療が上手くいったんだ。
フィリップうーん。聞こえてるのかい ?アミィが意識を取り戻したんだ !
? ? ?暗くて……冷たい……。虚無が近づいてくる……。
フィリップ! ?
ミリーナイクス ! ?
? ? ?万華鏡の裂け目を塞がないと……。……でも、力がどんどん拡散して……。
コーキスマスター ! ? なぁ、マスターなのか ! ?
ジュードこれは……どういうことなの ?どうしてイクスが魔鏡通信に……。
アーチェもしかして、イクスの心と繋がっちゃってるとか ?
フィリップ……ああ、そのようだね。通信が混線してるんだ。魔鏡通信は心と魔鏡を繋いで映像を送る。
フィリップヨウ・ビクエに直してもらうまで使えなかったのはこの世界にイクスの力と心が拡散しきって魔鏡通信の力を遮断していたからなんだ。
フィリップでもそこをヨウ・ビクエは、その強烈な力で強引に突き抜けるように改良したんだろう。その結果……イクスの心をキャッチしたんじゃないかな。
ミリーナ……待って。だとしたら、コーキスならイクスと会話ができるんじゃないかしら。コーキスはイクスの心の一部なんだもの。
フィリップ理論的にはそうなるね。
コーキス俺、やってみます !
コーキスマスター ! 俺です、コーキスです !聞こえたら、返事をして下さい ! マスター ! !
ルドガー……駄目か。
コーキス何でだよ……。
ガロウズなぁ、このコハクのソーマだけど魔鏡器具で解析して見ようと思うんだが――
コーキスマスターってば ! 返事してくれよ ! 会いたいよ ! !
セシリィソーマがまた光り出したわ ! ?
コーキスな……何だ ! ? 左目の奥が刺すように痛い――
ミリーナコーキスが ! ?
ジュード誰か、担架を ! !頭を打ってはいないみたいだけどすぐに医務室へ運ぼう。
コーキス……あれ ? ここはどこだ ?ミリーナ様は…… ?
コーキスミリーナ様 ! カーリャ先輩 !
ミリーナコーキス。落ち着いて聞いてね。ここはあなたとイクスの心の世界。そして私はあなたが生み出したミリーナの影。
コーキスえ ? え ?
ミリーナ現実のあなたは倒れてしまったの。でもそれは、あなたがイクスの心と繋がったから。
ミリーナさぁ、行きましょう。この先にきっとイクスがいるわ。
カーリャコーキス。しっかり頑張るんですよ !

キャラクター6話【7-6 ひとけのない草原1】
コーキスこれが俺とマスターの心の中…… ?何だか不思議なところだな。
コーキスミリーナ様、これはどういう原理なんでしょう ?俺も心の具現化で、この場所も心が具現化したようなものなんでしょう ?
ミリーナふふ、それを私に聞かれても困るわ。私はあなたが造り出した幻のミリーナなのよ。あなたが知らないことは私も知らないわ。
コーキス……そうか。俺が馬鹿だからこのミリーナ様も頭が悪くなっちゃってるのか……。
コーキスあれ……ミリーナ様と先輩が…… ! ?
? ? ?……あははははっ !
コーキス――だ、誰だ ! ?
コーキスマ……マスター ! ?
イクスコーキスは馬鹿じゃないよ。おかしな奴だなぁ。
コーキス本当に……マスターなのか ?俺が造り出した幻とかじゃなくて ?
イクスああ、大丈夫。本物だよ。……って、でも証明する方法がないな。どうすればいいんだろう……。
イクス俺とコーキスしか知らない秘密……ってそんなのコーキスが造り出した幻なら当然知ってるもんな。
イクス弱ったな……。身分証明書……なんて持ってないし本物である証明って案外難しいな。
イクス綺麗なジェイドさんの時はルークが見破ってくれたけどベルベットさんの時はどちらもベルベットさんだったし……。
イクスそもそも何をもって本物というかって定義も曖昧だ。この場合の本物は心だけの存在ではなく――
コーキス……あー、もういいや。そのめんどくささ、本物のマスターだわ。
イクスえ ! ?
コーキスでも……よかった。マスター、ちゃんと生きてるんだな。
コーキス俺が消えてないから大丈夫だとはわかっていたけど……寂しかったよ……。
イクスうん、ごめんな。色々任せきりにしちゃって。それにしても……大きくなったなぁ。
イクス最初に見たときは、本当にコーキスなのかちょっと不安だったよ。
イクスでも格好いいな。俺、そういう服とか眼帯とかちょっと憧れてるんだよなぁ。
コーキスマジかよ ! ? マスターの趣味、微妙だな ! ?この眼帯、超うぜーのに !
イクスあはは……ごめん……。それで……えっと……ミリーナたちは元気か ? 鏡映点のみんなは ?俺、迷惑かけちゃったから……。
コーキス……はぁ。そういうとこ相変わらずだな。みんな、元気にやってるしマスターを助けようと頑張ってるよ。
コーキスまぁ……ミリーナ様は元気なふりしてるだけだけどさ。
イクス……そうだよな。ごめんな。
コーキスあああ、そうだった。マスターはこういう奴だった。なんでそんな、いちいち謝るんだよ、もー !
イクスごめ……じゃなくて、気をつける。そういえばどうして急にコーキスが俺の心の中に現れたんだ ?何が起きてるのか教えてくれないか。
イクスここでは、ずっと虚無から届く悲鳴しか聞こえなかったんだ。
コーキスえっと……上手く伝えられるかわからないけど今までのことを全部話すよ。
イクス……そうか。魔鏡通信の出力が上がったのか……。それで……。
コーキスなぁ、みんなのことばっか気にしてるけどマスターの方は大丈夫なのかよ ?
コーキスマスターの力がどんどん魔鏡結晶になってるって聞いてるぞ。このままだと……。
イクスあーうん……。そうみたいだな。俺、干からびちゃうかも、あはは……。
コーキスはぁぁぁぁぁ ! ?そんな呑気なこと言ってる場合かよ ! ?
イクスでもゲフィオン……様の人体万華鏡から溢れる死の砂嵐を食い止める方法が見つからないんだ。俺もずっと考えてるんだけど……。
イクス――いや、もしかしたらこれならって思うことはあるにはあるんだけど……。
コーキスえ ! ? ど、どうすればいいんだ ! ?
イクスいや、まだわからないことが多いんだ。何とかして調べることができればいいんだけど石の中にいるようなものだからなぁ……。
コーキス何を調べるんだ ? 俺、マスターの代わりに調べるよ !本読むのは苦手だけど……。
イクス……コーキスが読む…… ?そうか……もしかしたら……。
イクス――なぁ、コーキス。現実の俺のところへ来てくれないか。俺に考えがあるんだ。
コーキス壊れたカレイドスコープのところに行けばいいのか ?
イクスああ。頼む。そこならソーマって言う機械がなくてもきっと――
コーキス――え ! ? マスター ! ?
ミリーナ――コーキス ! ! よかった……。大丈夫 ?どこか痛いところはない ?
コーキス……夢……じゃないよな。うん……。あれは夢じゃない。
アーチェちょっと……コーキス、あんた大丈夫 ?やっぱ倒れたときに頭打ったんじゃないの ?
コーキスだ、大丈夫だよ ! それよりマスターが呼んでるんだ !マスターのところへ連れていってくれ !

キャラクター7話【7-7 ひとけのない草原2】
メルクリアよくぞ戻ったな、ミトス。ディストの報告ほどの反抗の意思はないようで安心したぞ。
ミトス……出来損ないの食虫植物の話はどうでもいい。
メルクリア酷いことを言うな。お前のせいで、あのトカゲ男は死ぬのだぞ。
ミトスまだ生きてるの。図々しい。
メルクリア生命維持装置がなければとうに死んでおる。あれは必要なコマじゃ。ファントム同様、死なれては困る。
ミトス………………。
メルクリア何じゃ……。そんな顔をするでない。わらわが何をした ? そなたが望むものは何でも与えてきたではないか。
メルクリアマーテルも取り上げようというのではない。父上もダーナ神の言葉が聞ければすぐに解放してくれようぞ ?
ミトス姉さまをモノ扱いするな !
メルクリア――あまり意地を張るとシングやルビアのようになるぞ。
ミトス……逆らいはしないさ。それでいいんだろう ?
メルクリアそなたも自分が住む土地を追われた同志じゃ。
メルクリアわらわはビフレストを……そこに住む人々を甦らせそなたが異世界で造り出そうとした千年王国をこのティル・ナ・ノーグに興す。
メルクリアそなたの力が必要なのじゃ。決して裏切ってはならぬぞ。よいな ?
ミトス………………。
メルクリア……わらわより年上であろうに子供のような振る舞いじゃな。
メルクリアもうよい。わらわはこれからラムダの様子を見に行くがそなたも来るか ?
ミトス――ルキウスに会うの ?
メルクリアうむ。カイウスも誘ったのじゃがカイウスは渋りおってな。あれもルキウスの扱いが気に入らぬようじゃ。
メルクリアわからぬのぅ……。命を取った訳でなし。生きているなら問題なかろうに。
ミトス……可哀想だね。
メルクリアうむ。生きていることに価値を見い出せぬとは哀れじゃ。
カイウス……ミトス、メルクリアに会ったんだろ ?
ミトスああ……。ルキウスのこと、大丈夫なの ?
カイウス大丈夫なもんか !
カイウスでも……メルクリアには言葉が通じないんだ。何を話しても、穴のあいたバケツに水を汲むみたいで……。
ミトス……潮時じゃない ?カイウスまで縛られることはない。
ミトス血に縛られて、世界に縛られて言葉の通じないお姫様に縛られるの ?
カイウスオレは血に縛られてなんかいない。これがオレだ。ミトスこそ、このままだと本当に言いなりになるしかないだろ。
カイウスもし……助けを求めるなら、オレが時間を作る。ルキウスのところに一緒に行くふりをしてメルクリアたちを引きつけておく。
ミトス姉さまの居場所がわからないと動けない……。クラトスたちが見つけてくれるなら話は別だけど……。
カイウスそれなんだけどさ……。ヒルダとアステルから情報を貰ったんだ。マーテルさんの居場所について。
ミトス! !
カイウス確証はない。罠かも知れない。それぐらい精度は低いって、二人は言ってた。でも、知らせた方がいいと思って。
ミトス……ありがとう。
カイウスクラトスさんたちにもオレから連絡しておく。気をつけて行けよ。
ミトスうん。カイウスもね。

キャラクター8話【7-10 カレイドスコープ前】
ロイド何とかここまで来られたな。
コーキスロイド様、ありがとう。わざわざ一緒に来てくれて……。
ロイドそりゃ、一緒に行くさ。イクスが呼んでるんだろ ?しかもずっと虚無から聞こえる悲鳴を聞いてたって……。
コーキスうん……。
ロイド俺、イクスを助けようとして、虚無に近づいたことがあるけど、あの時聞こえた声はすげぇ嫌な感じだった。呪われるって言うか……。
ロイドあの人たちはティル・ナ・ノーグの人間だったんだから嫌な感じとか言っちゃ可哀想なんだけどさ。でも……鳥肌が立ったよ。
ロイドあんな声をずっと聞いてるんだとしたら……やっぱり心配だよ。
ミリーナ……その声を聞くのは【私たち】の仕事だったのに。イクス……ごめんなさい……。
ロイドそんな仕事誰もしなくていい。イクスだってきっとそう思ってる筈だぜ。
ミリーナそうね……。イクスならそうよね。
ロイドところで、イクスはまだあの鏡の石の中にいるみたいだけど、ここに来てどうやって話をするんだ ?イクスが石の中から声をかけてくるのか ?
コーキスそれは……わからないけど……。
ミトス――そんなあやふやな情報を元に、ここへ来たの。
ロイドミトス ! ?
コーキスミリーナ様、下がって下さい。
ミリーナ大丈夫。コーキスはイクスの声に集中して。ここは私とロイドで――
ミトス見くびられたものだね。まだ世界を滅ぼす力を持つ前の鏡士風情が偉そうに。
ミリーナ
ロイドミトス……。どうしてここに……。
ミトスそれはどっちの意味かな ? この場所に ?それとも、この世界に ?
ロイドお前……この世界でもマーテルを甦らせるために動いてたんだよな。
ミトス――姉さまは生きてる ! !
ロイドこの世界に具現化したんだろ。生きてた頃のマーテルを。本当によかったのか ! ?
ミトス本当に絶望を知らないお前らしい台詞だねロイド・アーヴィング。
ミトスお前は傲慢だ。ボクらはこんな影の国ですら居場所を求めちゃいけないとでもいうのか !
ロイドそんなことは言ってないだろ !
ロイドここに具現化されるって事は、マーテルはお前以外の大切な人がいない世界に放り出されたって事だぞ ! ?しかもそれを望んだのが弟のお前だなんて。
ミトスそれがなんだ。ボクはもう四千年以上それを望んできたんだ !大体、ボクと姉さまにはお互いしか――
ミトス……少なくとも、元の世界にはもうお互いしか残っていなかった。だからここに具現化されたって何も変わらない。それぐらいボクらは孤独だった。
ロイド……俺たちといたときも、孤独だったのかよ。ほんの少しだったけど、お前、俺たちと一緒に旅をしただろ ?ジーニアスやリフィル先生と話してたときも ?
ロイド俺は確かに人間だし、強すぎるって言われることもあるけど、先生たちはお前に寄り添っていたんじゃないのか ?
ミトス……ジーニアスなんてどうでもいい。リフィルだって、ボクの邪魔をするなら始末するだけだ。
ロイドお前……まだそんなことを言うのか ! ?ジーニアスは……俺の親友はお前のことでものすごく傷ついたんだぞ ! !
ロイド……お前が俺たちの世界でやったこと俺は許しちゃいけないって思ってる。でも……やり直す機会があってもいい。
ロイド元の世界でだって、俺たちと一緒にいていいんだ。居場所なんて何処にでもある。
ロイドもし本当にないって言うなら、俺たちが作る。俺やジーニアスが居場所になるよ。
ミトスお前が作る居場所なんて反吐が出る。
ミトスそれにそんなこと、ここで論じても無駄だよ。ボクらは帰れない。ボクよりも手ひどく世界を滅ぼした鏡士のせいでね。
ミリーナ………………。
ロイドわからないだろ ! ……本当に帰れなかったとしてもそれでも何か伝わるかも知れない。ここと向こうは繋がっているのかも知れない。俺は希望を捨てない。
ミトス帰れたとしても……ボクの結論は変わらない。お前とは永遠に交わらない。
ロイドお前が交わる気がなくても、俺は違うぞ !絶対にあきらめない。
ロイドなぁ、ミトス。世界は変わらなくても自分は変えられるんだぜ ?自分が変われば、世界は変わるんだ !
ナーザ……なるほど。これが鏡映点か。強いな。そして傲慢だ。ミトスのいったようにな。
コーキスお前は……っ !
ミトス! !
ナーザこの場所に侵入者がいると聞いてきてみれば……またお前たちか。それにミトス。メルクリアが悲しんでいたぞ。
ナーザ……やはり裏切るのか、と。
ミトス……そう。もうバレたんだ。
ミリーナナーザ、あなたのその姿……。それはイクスの体なのよね。
ナーザそうだ。災いを呼ぶ滅びの鏡士の体を借りるとはな。本末転倒な話だ。
コーキスマスターの体を返せ ! !
ナーザ――甘いな、鏡精。なるほど、確かに人のような姿をしているが所詮はまがい物か。
ミトス…………っ !
コーキス何だとっ !
? ? ?『やめるんだ、コーキス ! 』
コーキス………… ! ?
コーキス(い、今の声は……マスターか ! ? )
ナーザ……来ないのか ? まぁいい。ならばこちらから行くぞ。セールンドの鏡士は生きていてはならないのだ。
ナーザ鏡精を生み出すおぞましき悪鬼たち。やはりあの戦いは何としても勝たねばならなかった。父上たちがし損じたセールンドの鏡士を、俺が仕留める !

キャラクター9話【7-10 カレイドスコープ前】
コーキス……やったか ?
ナーザ……まだ体が上手く動かないな。だが――準備運動としては十分だった。次は本気で行く !
コーキスしまった……っ ! ?
ロイドコーキス ! 危ない !
ナーザ貰った !
ミトス空間翔転移 !
ナーザ……くっ ! ?
? ? ?魔鏡転送陣 !
ミトス転送術――メルクリアか !
ミリーナメルクリア ! ? ビフレストの ! ?
メルクリアおお ! バルド ! わらわにもできるようになったぞ ?
バルドはい。お見事です。メルクリア様には鏡士としての才がございますね。
メルクリアうむ。わらわはビフレストの皇女じゃからな。
コーキスあいつがメルクリア……。
イクス『コーキス。先走るな。ゲフィオンが言ってる。メルクリアは危険だって』
コーキス……えっ ! ?
メルクリア……ん ? 何じゃ ? 鏡精というのは一人で百面相をする生き物か ?
メルクリアまぁ、いい。兄上様を危険な目に遭わせるのは許さぬ。それにミトス。――わらわは裏切るなと言ったぞ ?
ミトス……お前は、姉さまに手を出した。姉さまの心を抜き出したな ! ! 人間の皇女風情が !
ミトス現実を歪んだ像でしか捕らえられない哀れなお姫様。せいぜい死者の国でも妄想して果てるんだな !
メルクリア――もう貴様はわらわの人形ではないわ ! !自分がしでかしたことの末路を知って悔やむがいい !
ロイド……あいつら、何をしにここへ来たんだ ?
ミトス……ボクを追ってきたんだ。くそっ !
イクス『コーキス、ミトスを引き留めよう ! 』
ロイドおい、何処に行くんだ、ミトス !
ミトス……ボクが何処に行こうと勝手でしょ。
コーキスか、勝手かも知れねーけどもう帝国にも戻れないんだろ。マスターが……俺たちと来た方がいいって……。
ミリーナ――え ! ? イクスの声が聞こえるの ! ?
コーキスはい。さっきから俺の中でマスターの声がするんです。マスターが、ミトス……様は帝国の中枢にいた人だから協力をお願いするべきだって。
ロイド俺もそう思う。ミトス、俺たちと来いよ。
ミトス断る。
ミリーナだったら、せめて話を聞かせて。私たちにはわからないことだらけなの。話をする時間ぐらいは与えてくれてもいいでしょう ?
ミトス………………。
ロイドさっきマーテルの心を抜き出したって言ってたよな ?マーテルは神降ろしの器にされちまったのか ! ?
ミトス…………姉さま…………。
ロイド……ミトス、教えてくれ。クラトスだって、きっと心配してる。
ミトス…………姉さまを――……姉さまの体を取り戻すまでだ。
ミリーナそれでもいいわ。ありがとう。ひとまず私たちのアジトへ行きましょう。
ミトス……待って。その前に寄って欲しいところがあるんだ。
ミリーナもちろん構わないわ。
ロイドどこへ行くんだ ?
ミトスノイシュのところ。
ロイドノイシュ ! ? あいつもこの世界にいるのか ! ?……っていうか、何でミトスとノイシュが一緒にいるんだ ! ?
ミトス……別にいいでしょ、そんなことどうだって。
リフィルミリーナ。聞こえるかしら。救世軍から連絡が入ったの。至急アジトへ戻ってもらえないかしら。
ミリーナ――あ……。でも……。
ミトス……いいよ。だったら一度お前たちのアジトに寄ろう。
リフィル――ミトス ! ?
ミトス………………。
ミリーナえっと……詳しいことは戻って説明しますね。
リフィル……ええ、わかったわ。気をつけてね。
ロイドよし、それじゃあ引き上げるか。早くノイシュにも会いたいしさ。
コーキス(俺……何もできなかった)
コーキス(ミトスに助けられて、どうしてマスターの声が届いたかもわからない。ロイド様みたいに強い信念もないしミリーナ様みたいに冷静でもない……)
コーキス(じゃあ、俺は何をすればいい ?どうしたら……役に立てるんだろう)
コーキス(考えろ、俺。馬鹿でもまがい物でもマスターの鏡精として、恥ずかしくないようにもっと頑張るんだ……)

キャラクター10話【7-11 ひとけのない草原】
ミリーナ――お待たせ。救世軍からソーマの解析に人が欲しいと言われたわ。私も、もう一度ケリュケイオンへ行った方がよさそう。
ミリーナコーキスが聞いているイクスの声のことをちゃんと知ってからだけれどね。それに、ミトスのこともあるし……。
ミリーナそうそう。リフィルさんたちにも事情を説明したわ。ミトスはリフィルさんと話があるから少し待ってくれって。
ロイドミトスか……。何か、不思議な気分だよ。あのミトスが……俺たちと一緒にいるなんて。
ロイドこの気持ちってクレスの世界の話を聞いたときとも似てるな。
ミリーナああ……。とても似ているんですってねロイドの世界とクレスさんの世界って。
ロイドそうなんだよな。エターナルソードとか、精霊とか、世界樹とか。
ロイドあとデリスエンブレムも、だな。ミリーナ、覚えてるか ?
ミリーナええ。クレスさんたちが元の世界で持っていた物よね。ダオスという人のところに行くのに必要だったとか。チェスターと出会ったときに教えて貰ったわよね。
ミリーナカレイドスコープの封印にも使われていたわ。
ロイドそれが俺たちの世界にもあるらしいんだ。ラタトスクの話だと、あいつが作ったものなんだって。
ミリーナラタトスクはロイドたちの世界の未来から来た精霊なんですものね。だったらロイドの世界にもあるってことよね。
ミリーナそう……そんなに共通する物が……。
ロイドデリスエンブレムの話を聞いたとき、なんか……胸がざわっとしたっていうか……。リフィル先生もまずいコーヒー飲んだみたいな顔してたしなぁ……。
コーキスでもざわっとするのは当然じゃないのか ?確かミトス様って、ロイド様の世界をぐちゃぐちゃにした張本人なんだろ ?
ロイドぐちゃぐちゃか……。うん……。そうだな。酷いことをたくさんした奴だってことは間違いない。
ロイドだけど、大昔は勇者って呼ばれてた奴なんだ。俺たちの世界には差別があって……。ミトスはずっと迫害されてきた側だった。
ミリーナリフィルさんに聞いたことがあるわ。ハーフエルフが差別されている世界なんだって。
ロイド……うん。だからミトスもつらい思いをしてきたんだと思う。
ロイド俺には……想像することしかできないけどでもつらかったんだろうなってことはわかる。
ロイドそれでも……やっぱりあいつのやったことは間違ってる……とも思うんだ。
ミリーナ……ミトスはわかっているんじゃないかしら。私は――正確には私ではないけれどゲフィオンがしてきたことを知っているわ。
ミリーナこの世界を滅ぼしてしまった。その時のとてつもない後悔が、ゲフィオンを突き動かしていた。
ミリーナその後にやろうとしたことも……褒められたことではないと思うの。間違っていると言われれば否定はできない。
ミリーナでも、ゲフィオンは気付いていて飲み込んでいたんじゃないかしら。そうするしかないと。
ミリーナミトスも……まったく同じとは言わないけれど似た感情はあるんじゃないかしら。
ロイド……そうだな。あいつさ、コーキスを庇っただろ ?
コーキスああ……。ミトス様が助けてくれなきゃ、俺……危なかった。
ロイドあいつ、多分ナーザに怒ったんだ。コーキスのこと、まがい物って言っただろ。そういうとこ……あるんだなって。
ロイドだから、あいつは平行線だって言ったしきっとそうなんだろうけど……。
ロイドでも……ここが異世界だからこそ、万に一つの可能性を信じてもいいんじゃないかって思うんだ。
リフィル――みんな、ミトスを知らない ?
ミリーナえ ! ? リフィルさんとお話ししていたんじゃないんですか ?
リフィルそれが……私が飲み物を取りに行っている間にいなくなってしまったの。
イクス『コーキス。ミトスはアジトを抜け出した。――あれは……どこだ ?魔物とカーリャと一緒に森の奥にいるのが見える』
コーキス大変です ! マスターがミトス様を見つけました。カーリャ先輩と何かの魔物も一緒みたいです !
ミリーナカーリャに無理矢理出口を作らせたのね。
ミリーナ……私は追いかけられないわ。カーリャがいないなら私が残らないと、この仮想鏡界は維持できないの。コーキス、追いかけて !
コーキスもちろんです。
ロイド――いや、俺が行く。俺が行かなきゃいけないと思うんだ。

キャラクター11話【7-13 森の奥の草原】
マーテル……ミトス。
ミトス姉さま……。ごめんね、つらい思いをさせて。でももう大丈夫だよ。今度こそ、姉さまを守るから。
マーテルミトス……。つらい思いをしたのはあなたでしょう ?ごめんなさいね、ずっと一人にして……。
ノイシュワォーーーン……。
ミトス(ノイシュの声……。どうしてノイシュの声が…… ?)
ミトス……あれ ? ここは一体……。
ノイシュきゅーん……。ワフッワフッ。
ミトスふふ、そうか。お前の不思議な力のせいだね、ノイシュ。
ミトスお前のプロトゾーンの力が、ボクを一時的に未来に追いやったんだ。違う ?
ノイシュワフッワフッ !
ロイド……ミトス、それにノイシュも。ここにいたのか。
ミトス………………。
ロイドアジトからいなくなったからみんな心配してるぞ。
ミトス……そう。もう少ししたら戻るよ。
ロイド……ミトス。
ロイドお前がマーテルさんを助けるために命を削る覚悟で俺たちのところに来たのはわかってる。
ロイドでも……俺は、お前の本心が聞きたい。
ミトスロイド……。
ミトス(ああ……そうだ。姉さまを助けるためにボクはまたボクであることをやめようとしたんだ)
ミトス(いや、ボクらしい選択なのか……)
ミトス(どこまでも無駄なあがきをしてあきらめきれない……)
ミトス(あの時だってそうだった。もう四千年以上も前まだ姉さまもクラトスも一緒だった頃……)
ミトス……どうして。ボクたちの言葉にほんの少しでも耳を貸してくれていればこんなことにはならなかったのに。
マーテルミトス……。
ミトスヘイムダールでもそうだった。ボクらとは関わり合いのない事件も全部ボクらの責任にされて
ミトスハーフエルフが厄災の原因だって村を追われて…… !
クラトスミトス……。
ミトスシルヴァラントはハーフエルフを重用していると聞いて行ってみたけど、奴隷同然の扱い…… !
ミトステセアラだって、他の国だって、みんなハーフエルフを追い立てる !
クラトスミトス……泣くな……。
ミトスそれならボクたちはどこへ行けばいいの ! ?
ミトス(あの時からボクはあきらめないことを選んだ)
ミトス(選んで選んで、選び続けて、いつの間にか――こんなところまで来てしまったんだ)
ロイドなぁ、ミトス。元の世界で俺たちを監視するつもりで近づいたんだよな。
ロイドだとしても、ジーニアスのことは本当に友達だと思ってたんだろ ?そうだよな ?
ミトス……さあね。
ロイド――ふざけろっ ! 本当にあいつの気持ちを踏みにじったっていうなら俺はお前を許さない ! 許せない !
ミトスだったら、ボクを追い出すの ?
ミトスメルクリアのことやリビングドールのことお前たちが今一番知りたいであろう情報を持っているのはボクだよ ?
ミトスそれとも感情を優先するの ?アハハ、だとしたらとんだ大馬鹿野郎だね。父親そっくりの大馬鹿野郎だ。
ロイド――……許さないし、許せない。
ロイドでも……俺はお前が助けを求めてきたことを知ってる。だからここにいればいい。
ミトス………………。
ロイド元の世界でお前がしてきたこと俺には理解できない。
ロイドでも――お前が本心を話してくれれば……。どうしてそうするしかなかったのか話してくれれば……。そうしたら……。
ミトスボクが許しを請うと……思っているの ?馬鹿馬鹿しい。
ロイド誰もそんなこといってない。
ロイドお前がやるべきなのはもう一度やり直すことだ。信じることだ。それが償うことになるって俺は思う。
ミトス……っ !
ロイドこの世界でお前がやり直しても、元の世界では何も変わらないのかも知れない。
ロイドでも、この世界でお前がやり直せたら今のお前の未来だって変わるだろ。
ミトスボクは……変わらない。
ロイドだったら変わらなくてもいい。やり直すんだ。
ロイド俺は元の世界で勇者ミトスの話を聞いてきた。墜ちた英雄ミトス・ユグドラシルって。
ロイドでもさ、墜ちたらまた飛べばいいだろ。お前がそうすると決めればまた飛べる。
ミトス……そういう綺麗事は大嫌いなんだよ !正義ごっこはうんざりだ。知ってる ?綺麗過ぎる水に魚は棲めないんだ。
ロイド忘れるなよ。俺はお前を許さないって言ってるんだ。
ロイド俺は正義なんかじゃないし正義って言葉は一番嫌いだ。第一、俺は俺自身が濁ってるって知ってる。
ロイドでもそれだからお前の言う綺麗事を口にするんだ。
ミトス――平行線だね。いいよ、ならこうしよう。ボクを倒して見せてよ。どれだけ魂が薄汚いのか、ボクに見せてよね。
ミトスそれでお前を――お前たちを見定めてやるよ。

キャラクター12話【7-13 森の奥の草原】
ミトス……フ……フフ……。
ロイドミトス…… ?
ミトス……不思議だね。元の世界でボクたちはこんな風に――戦うのかもしれない。
ミトスそしてその結果は――
ミトス(……そうだ。ボクは知ってしまった。遠い故郷でボクが敗れたことを……)
ミトス(その後、ロイドがどう生きようとしたのかを)
ミトス(もし、この世界の記憶を持ってあの大地に戻れるのなら――)
ミトス(ああ……それでもボクは自分を曲げはしないだろう。やり直すには、あまりに遅すぎた)
ミトス(そしてきっとあの世界でもロイドはボクに言うんだろう。やり直せると)
ミトス……お前は、ボクの影だ。
ロイドえ ?
ミトスあきらめず前を向いて馬鹿みたいにひたすら歩いていく。ボクの選ばなかった道の最果てにいる存在。
ロイドだったら、ここでは選ばなかった道を選んでみろよ。
ロイド一緒に歩こうぜ。
ミトス………………はぁ。
ロイドな、何だよ。
ミトス……そういうだろうと思ったよ。お前、つまらないよ。想像通りの言葉しか吐き出さない。
ロイドな、何だよ ! 仕方ないだろ !俺国語苦手なんだし……。
ロイド! !
ミトス許してもらおうとは思わない。でもお前なら、メルクリアを止められるかも知れない。
ロイド一緒に飛ぶ気になったんだな。
ミトス羽根も生えてないくせに偉そうに言わないでよね。
ロイド仕方ないだろ。俺は天使じゃないんだから。
ミトス……それは、お前が母親の形見の輝石を使いこなせていないだけだよ。何かきっかけがあればきっと飛べる。
ミトス……いや、天使になんてならない方がいいのかもね。天使は裏切り者が多いから。
ロイドえ ?
ミトス――ボクは見ているから。お前が本当に自分が信じる生き方を貫けるのか。
ロイドああ、見てろ。俺はあきらめないからな。
ノイシュワフッ !
? ? ?むぎゅゅゅゅゅ ! ! ! ! !
ロイド……何だ、今の声 ? ノイシュか ?
ミトスああ……忘れてた。今さるぐつわをほどくよ。
カーリャ何なんですか ! ? いくらカーリャが美少女だからって誘拐するのは駄目ですよ ! ?
カーリャも~ ! ! せっかく外に出られたと思ったらこんなの酷いです~っ ! !
ミトス……フフ。ごめんね。
カーリャぐぅぅぅ、素直に謝られると怒れないじゃないですか !それにロイドさまも酷いです !カーリャのこと、心配じゃなかったんですか ! ?
ロイドいや、だって、カーリャは無事だってイクスが言ってたらしいから。
ミトス……待って。この場所、どうやって見つけたの ?コーキスを通じてあのイクスって奴が教えたの ?
ロイドああ、そうだ。何か、世界中の魔鏡結晶を通じて見えるとか感じるとか……。
ミトス――ロイド、アジトに戻ろう。イクスに姉さまの体がある場所を見つけてもらう。
ロイドえ ! ? ちょ、ちょっと待ってくれ。一体どういうことだよ。
ミトスボクは姉さまがいると聞いてセールンドの城へ行ったんだ。
ミトスでもそこにいたのは姉さまじゃなくて姉さまの心――心核だった。
ミトスだから心核は回収したけれど、体を取り戻さないとボクはお前たちを裏切ることになる。
ロイドそんな正面から裏切るって言われるの裏切りじゃなくて表切りだろ……。
ロイドそれに魔鏡結晶がないところにマーテルさんの体が隠されてたら、イクスでもわからないんじゃ……。
ミトスどうでもいいことで頭が回るね、お前は。でも、そのどうでもいいことの後の指摘は正しいよ。
ミトスただ、魔鏡術や魔鏡技術は、魔鏡結晶の近くで行う方が効率がいいらしい。それに心核を失った体は時間が経つと消滅してしまうそうだ。
ミトスだから心核を奪った姉さまには、何らかの処置が施してあるはずだし、安全に隠すなら魔鏡結晶の傍に置くはずだ。
カーリャ今の話、ミリーナさまにも伝えました !
ミトスいい子だね、カーリャ。よし、イクスに場所をサーチさせて、ボクらは直接そこへ向かおう。カーリャはノイシュと一緒にアジトに戻って。
カーリャりょ、了解です !
ミトスロイド、少しは役に立ってくれるんだろうね。
ロイド当たり前だ !

キャラクター13話【7-15 キラル純結晶精製所】
チェスター……おい。本当にここだって、イクスは言ってるのか ?
コーキスああ。ミトス様から聞いたマーテル様の特徴によく似た人がここにいるってマスターが……。
コレットマーテル様と会えるんだ……。ドキドキしてきちゃった。私、マーテル様になるかもしれなかったから……。
リフィルそうね……。信仰の対象だった――神だとされてきた女性に、まさか会うことになるなんてね。
クレスそちらでは女神と呼ばれていたんですよね。僕らの世界の精霊と同じ名前の女の人か……。
クレスロイドたちの世界は僕たちの世界の鏡写しみたいだ。完全に一致する訳じゃないけど、限りなく近い……。
ミント不思議ですね。まさか異世界でこんな気持ちになるなんて思いませんでした。
チェスターそれによ。似てるだけに、他人事には思えねぇんだよな。
チェスターロイドの世界の奴が困ってるなら助けてやらねぇとってさ。
リフィル……ありがとう。そうね。私たちの世界とあなたたちの世界は一種の並行宇宙なのだと思うわ。
リフィルこれだけ様々な世界があるなら、並行宇宙の人々と接触するなんてたいしたことじゃないように思えてしまうもの。
コーキスでもチェスター様、アミィ様はいいのか ?
チェスターまぁ……アーチェとクラースが見ててくれるって言うしエルも気にかけてくれてるしな。
チェスターそれにアミィをあんな目に遭わせた奴らに一矢報いてやらねぇと気が済まねぇ。
チェスターミトスも……まぁ、四幻将としては一応、仲間、だったしよ……。
チェスターま、つまりこういうことだ。勇敢にも敵に立ち向かわんとする流浪の戦士たちが今一同に――
ミトス……相変わらずその変なナレーション癖が抜けないんだ。
コーキスうおっ、ミトス様とロイド様。
ロイドお待たせ、みんな。
コーキスよし、これで全員そろったな。
イクス『――コーキス、気をつけろ。俺……ナーザがいる。なんか、変な気分だよ。あれ……最初の俺の体なんだよな』
イクス『自分の死体を見るだけでもあり得ないのに、死体が動いてるって……』
コーキスマスターが……中にナーザがいるって言ってる。メルクリアに転送された筈なのにまた戻ってきたのかな。
コーキスもしかして、メルクリアも近くに……。
イクス『いや、他に人はいないみたいだよ』
コーキス……いや、他に人はいないって、マスターは言ってる。マーテル様とナーザだけみたいだ。
ミトス……カレイドスコープの間で、ナーザがタイミングよく現れたのが気にかかるけど。
リフィル逆かしら……。ナーザの目的はこちらだった、とか ?だとしたら、転送されようが負傷しようがすぐに引き返して、ここに来るでしょう。
イクス『それにしても、あの服と髪型ちょっと格好いいな。俺もあんな格好してみたいよ。顔が同じだからああいう格好も、似合うかも知れないよな』
コーキスあー、駄目だ。マスター、全然緊張感ねーわ……。
クレスえ ? イクスは何を言ってるんだい ?
コーキスいや、聞いたらみんな怒りそうだから俺の胸の中に留めておく。
イクス『ごめん……コーキス。でも今ならいける。マーテルさんを助けてあげてくれ』
コーキスわかったよ、マスター。
コーキス――みんな、行こう !
ナーザ……チッ。お前たちか。どうしてここがわかった。
コーキス答える義理はない。それよりマーテル様を返せ !
ナーザ……返すも何も、元々マーテルはこちらが具現化した鏡映点だ。お前たちに渡す義理はない。それにマーテルに生きていられると迷惑でな。
ミトス何…… ! ?
ナーザ俺がデミトリアスと同じ意思で動いていると思い込んでいたようだな。だがあいにくと俺はセールンド王国の連中に与するつもりはない。
コーキスお前の目的は何なんだ ! ?ビフレストを甦らせたいんじゃないのか ! ?
ナーザそれは愚かなメルクリアの世迷い言。デミトリアスもそんな戯言を真に受ける愚か者に過ぎない。俺にとっては呆れた大罪人だ。
ナーザ多少の遊びには付き合ってもやるが奴らがダーナのゆりかごを壊すなら奴らは俺の敵になる。
リフィルダーナのゆりかご ? それは何 ?何を指している言葉なの ?
イクス『気をつけろ ! ナーザの義手がマーテルさんの方を狙ってるぞ ! 』
コーキス――マーテル様が危ない !
ナーザ俺の動きを読んだ ! ? お前、一体――
ミトスやらせるか ! !

キャラクター14話【7-15 キラル純結晶精製所】
コーキスこの前と同じだ。あと一歩、攻撃が届かない !
ミトス……くっ、これだけ叩けば、普通は崩れる筈なのに――
ナーザ死体の便利なところはな。物理的な痛みが鈍く感じられることと力をいくらでもチャージできることだ。
ナーザその点はこの体に感謝する。
イクス『コーキス。ゲフィオンから伝言だ。俺にはわからないこともあるから、そのまま伝えるぞ』
イクス『その目はイクスと繋がっている。自分のアニマとイクスのアニマを重ねて合わせて、死を放て。それこそが鏡精に与えられた禁断の魔眼だ』
コーキス(俺は……知ってる。魔眼……。俺のアニマがその言葉に反応した。死の魔眼……。決して使ってはいけない力。でも――)
ナーザここで、マーテル共々死滅しろ ! !
コーキス俺は……みんなを守る !
コーキスこの力を使ってでも !お前を倒す !
ナーザ魔眼 ! ? それは――
コーキス瞬撃・幻魔真眼 ! !
ナーザぐぉぉぉぉおおおおおっ ! ?
コーキス……ぐぅ…… !
コレットコーキス ! ? しっかり ! !
ミントいけない…… ! セイントエンブレイス !
リフィル駄目だわ、まだ足りない。ものすごい勢いで体力が減っていくわ !
リフィルリカバー !
ロイドナーザは――
ナーザ……せめて……鏡精を道連れに !
ミトスボクがとどめを刺す !
ナーザ邪魔だぁっ ! ! !
? ? ?ミトス、危ない ! !
? ? ?あぁ―――――― ! !
ミトス姉さ……ま…… ?うそ……だって……姉さまの心核はボクが……。だから姉さまが動けるはずが……。
ナーザく……くく……。メルクリアの言葉を忘れたか……。貴様が盗み出した心核は……前回の器の鏡映点の物……
ナーザこの【現実】こそが……貴様の末路だ――
マーテル……ミトス……。ごめんなさ……い……。あなたを……また一人にしてしま……
ミトス嘘……嘘だ……。嫌だよ姉さま……。どうして……こんな……【二度】もこんな…… ! ?
マーテルさよな……――
ミトス姉さまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ ! ?
to be continued
キャラクター1話【8-1 ひとけのない草原1】
ゼロス…………。
クラトス疲れたか ?
ゼロスちげーよ。アミィちゃんが目覚めたって聞いても俺たちはイクスの混線騒ぎからそのままセールンド行きだぜ ?
ゼロス一目アミィちゃんに会いたかった~って思ったらため息も出るでしょーよ。
シンクふーん。女好きが高じるとあんな子供にも手を出したくなるんだ。変態だね。
ゼロスはぁ~ ? シンくんはわかってねぇなぁ。俺さま、がきんちょには興味ねーのよ。10年後のロマンチックな再会に期待してるの。
シンク期待って裏切られるために存在するものだよね。ご愁傷サマ。
ゼロス……色々言いたいことはあるが今は空を飛んでる最中だから、胸に秘めとくわ。
マーク大人だねぇ、ゼロスくんは。――それにしても、なんでそんなにアミィを気にするんだ ?
ゼロス……さーて、何でだろーな。チェスターがアミィちゃんのために必死なのを見て思い入れができちまった……ってところかな。
ゼロス……チェスターみたいな兄貴を持った妹は幸せなんだろうな。
クラトス………。
ゼロスま、可愛いアミィちゃんとのご対面は帰ってからのお楽しみってことで我慢するわ。イクスの呼び出しを放っておくわけにもいかねぇし。
マークそうしてくれ。フィルからの通信じゃ、コーキスたちもセールンドへ出発したって話だ。俺たちも早いとこ合流した方がいい。
マークただでさえ魔鏡通信の混線だの、コーキスがぶっ倒れただの、妙なことが続いてる。イクスにも何が起こるかわからないしな。
? ? ?……るか ? ……さん !
ゼロスおいおい、このタイミングで魔鏡通信って !混線じゃねえよな ?
クラトスいや、これは……。
カイウスあ、クラトスさん ! これ、繋がってるか ?オレ、使い方間違ってないよな ?
クラトスカイウスか。大丈夫だ。ちゃんと通信できている。
カイウス良かった。この鏡すごいな !――っと、そんな場合じゃなかった。
カイウスマーテルさんについて、新しい情報がある。それと……ミトスを助けて欲しい。
クラトスミトスだと ? 何があった。
カイウスマーテルさんがセールンドにいるってわかったんだ。それでさっきミトスが向かった。
ゼロスマジかよ ! ? 俺さまたちも今セールンドへ向かってるところだぜ。
カイウスそうか ! それならミトスと合流できるな。
カイウスあ、でも……もしかしたら、マーテルさんは心核を抜き出されているかもしれなくて……。
クラトス―― !どういうことだ。詳しく聞かせてくれ。
カイウスあ、ごめん。ちゃんと報告しないとな。
カイウス情報だと、セールンドにいるマーテルさんはもう心核を抜きとられているかもしれない。
カイウスだとしたら、心核は城のカレイドスコープの間にある地下の保管庫に収められてるだろうって話だった。
カイウスでも、この情報をくれたアステルやヒルダは、情報の精度も低いし、裏付けも弱いから、罠かもしれないって。
ゼロスおいおいおい、何だよそれは。めちゃめちゃヤバそうじゃねーのよ。
カイウスうん……正直、オレも罠じゃないかって疑ってる。
マーク確かに、海鳴りの神殿で待ち伏せされてたって前例もあるからな。
シンクああ。いけ好かない『高貴な虎』サマにね。
クラトスカイウス、ミトスは罠である可能性を知っているのか ?
カイウスもちろん、ちゃんと話したよ。それをわかってて、あいつはセールンドへ向かった。
カイウスだから……頼む。助けてやって欲しい。ミトスは、オレがこの世界に来て、最初にできた友達なんだ。
カイウス友達が苦しむ姿なんて、これ以上見たくないよ。
クラトス……そうだな。ミトスのことは任せてくれ。それで、お前はこれからどうするつもりだ ?
カイウスオレは、ミトスのことがバレないようになるべく時間を稼いでみる。
カイウスあいつが裏切ろうとしているのは、遅かれ早かれメルクリアに伝わっちまうだろうしさ。
クラトスそうか、くれぐれも気をつけろ。必要があれば、いつでも連絡をくれ。
カイウスああ、ありがとう !
クラトスそれと……、ミトスを友人と言ってくれて感謝する。
カイウスそんなの当たり前だろ !じゃあ、クラトスさんたちも気を付けて。
カイウス(……さて、メルクリアはルキウスの所だったな)
カイウス(……ルキウス。いつか絶対に、お前のことも……)

キャラクター2話【8-2 ひとけのない草原2】
マークまずいことになったな。早いとこフィルやミリーナにミトスのことを知らせないと――
クラトス……いや、少し待ってもらえるだろうか。考えをまとめたい。
マーク考えるって何をだよ。
クラトス……セールンドにマーテルの心核があるという話が罠だとしたら、それを仕掛けた奴の意図はなんだ。何故、そのようなことをする必要があるのか――と。
ゼロスそりゃ……ミトスが裏切ってるか確認するためのエサなんでねーの ?あの、海鳴りの神殿の時と同じでさ。
マークああ。ミトスを試してるってことだな。
クラトス試す……。そもそも、そこから腑に落ちない。
マークなんだよ、引っかかってることがあるならはっきり言ってくれ。
クラトス……一時的とはいえ、何故、ミトスはメルクリアに力を貸したのだろう。
ゼロスああん ? どういうことだ ?
クラトス力を貸すということは、ミトスなりの好意や同情があったはずだ。逆に言えば、そういったものがなければミトスは相手を信じない。
クラトスましてや、信じぬ相手が仕掛けた罠に、それと知って飛び込むほど無鉄砲でもない。
クラトスマーテルを使って自分を試し、更には陥れようと企む相手など、はなから信じて受け入れる筈がないのだ。
ゼロスあ~……つまり、ミトスが好意だか同情だかを寄せたメルクリアと、今のメルクリアの行動には、矛盾があるっていいたい訳 ?
クラトス矛盾、というよりは違和感だな。故に、今思いつくのは二つ。
クラトスメルクリア自身が、ミトスをも懐柔し手のひらで転がすほどの手腕を持っていたか。
クラトスもしくは幼いメルクリアを、今現在のような行動へと駆り立てる第三者の存在があったか。
ゼロスまあ、メルクリアの年齢を考えると第三者の方がしっくりくるわな。
クラトスここで最初の疑問に戻るぞ。もし第三者の場合、何故マーテルを使ってミトスを罠にはめる必要があったのか、その意図だ。
クラトスミトスを裏切らせたいのか。それとも狙いは別に………。
クラトス……まさか、な。
ゼロスどうした、クラトス。
クラトスいや、考え過ぎかもしれないが、狙いはミトスではなく、マーテルの方なのでは、と……。
マークマーテル ? それって何の意味があるんだ ?
ゼロスマーテルは帝国が捕まえてるんだぜ ?なのに、マーテルを狙うためにミトスを裏切らせるって意味わかんねーでしょーよ。
クラトスそうなのだが……。
マーク……よし、わかった。どうしても引っかかるなら、ミリーナたちとは合流しないで独自に動いてみるか。
マークただし、フィルにだけは情報を共有してもらう。その上で、セールンドに潜入して帝国の動きを確認するっていうのはどうだ ?
クラトスああ。すまないがそうさせてくれ。
ゼロスとすると、もうしばらくはケリュケイオンに帰れねぇのかよ……。ますますアミィちゃんの笑顔が遠のくぜ。
シンクあの子にとっては幸せなんじゃない ? 病み上がりに、バカ神子のバカ面を見なくて済んでさ。
ゼロスかもな。代わりにシンくんのカワイイお顔でも見せてあげたらいいんじゃねーの ?その『謎の美少年拳士』の仮面を外してよ。
シンク……いいねぇ。ボクが仮面を外したらボクと同じ世界から来た連中がどんな顔をするか楽しみすぎてゾクゾクするよ。
マークシンク、ゼロス。その辺にしておこうぜ。クラトスに雷落とされるのは嫌だろ ?
二人…………。
クラトス別に雷など落とすつもりはない。これ以上遊びが過ぎるのなら置いていくだけだ。
マーク……だとよ。クラトスを単独行動させたらフィルに怒られるからな。シンクもゼロスもお口チャックで頼むぜ ?

キャラクター3話【8-4 ひとけのない草原4】
カイウスおーい、メルクリア !
メルクリアおお、カイウスではないか。
カイウスフレ――じゃない、バルドも一緒なのか。
バルド表向きはフレンで通っているんだ。フレンで構わない。
カイウス……オレが構うんだよ。
メルクリアどうした、カイウス。ここには来ないのではなかったか ?
カイウスあ、いや、そのな……。
メルクリアうむうむ、言わぬでもよい。やはり弟のことは気になるか。美しき兄弟愛じゃの。なあ、バルド。
バルドはい。カイウスは情に厚く、メルクリア様にとっても良き臣下かと。
カイウス…………。
メルクリアなんじゃ、うつむきおって。照れておるのか ?賛辞は惜しみなく受け取るがよい。それだけの価値が、そなたにはあるのじゃからな。
カイウスオレに ?
メルクリアうむ。そなたや、ルキウスにミトス。リチャードやラムダにも。
メルクリアそなたらの存在があったからこそ、リビングドール計画は生まれた。
メルクリアこれが成功すれば、皆が幸せになれる。故に、わらわはそなたらに感謝しておるのじゃ !
メルクリアまぁ、そなたはルキウスの扱いに思うところがあるようじゃが。
カイウス……やっぱり、ルキウスは今も眠らされたままなのか。
メルクリア仕方なかろう。そうでなければ、ラムダが暴れて手が付けられぬ。
メルクリアゆくゆくはラムダが望む体を用意してやるつもりじゃが父上様はラムダを解き放つことに反対しておるでな。今はルキウスごと封じておかねば。
メルクリアことが成就したあかつきには、そなたの大事なルキウスと共に、わらわの下で仲良く暮らすがよい。
カイウス――ルビアも一緒に……って訳にはいかないか ?
メルクリアルビア ?……裏切り者のことなど知らぬわ。
カイウス―― !
メルクリアあやつのせいで、一時的とはいえ大事な計画が滞ってしまったのじゃぞ !
メルクリアせっかくわらわが良くしてやったのに、勝手な振る舞いをして……。
カイウスそりゃ、ルビアはじゃじゃ馬だし突っ走りがちなとこがあるけどさ、あいつは、メルクリアやみんなのことを考えて――
メルクリア知らぬ、知らぬ !あーあー聞こえんのじゃ !
バルドメルクリア様……。
メルクリア酷いぞカイウス ! 先ほど、わらわの後を追いかけてきた時は、子犬のように愛らしかったのに、いきなり噛みつくようなことを……。
バルドメルクリア様、カイウスも悪気があったわけではありません。心優しいだけなのですよ。
バルドですが、カイウスの話からすると、ルビアはずいぶんと気性が荒い娘のようですね。
バルドまた何かしでかしていなければよいのですが……。
メルクリア安心せよ。リヒターからは何の報告もない。ちゃんと研究所に囲っておるわ。
カイウス――え ? 研究所って……リヒターがいる精霊研究所か ?
メルクリア――あ ! ? こら、バルド !余計なことを言うてしまったではないか。
バルド申し訳ありません。
カイウス……そうか。ルビアはそこにいるんだな。
メルクリアそうじゃ、もう満足したであろう ?わらわはルキウスの所へ行くぞ !
アスガルド兵――こちらでしたか、メルクリア様。ご報告が !
カイウス(まさか、もうミトスのことが…… ? )
カイウスメ、メルクリア ! 早くルキウスの様子を見に行こう。せっかくメルクリアが誘ってくれたんだ。オレ、一緒に行きたい !
メルクリアわらわと一緒に ?まったく、最初から素直にそう言えば良いものを。
メルクリアバルド、その兵を下がらせよ。カイウス、ついて参れ。
アスガルド兵ご無礼ながら ! 報告は飛天のミトスのことでして―
カイウス! !
メルクリアミトスじゃと ?――聞かせよ。何があった。
アスガルド兵飛天のミトスが離宮より抜け出しました。セールンド方面へ向かった模様です。
カイウス(くそっ……もうバレちまった ! )
メルクリアセールンド……。そうか、エサに喰いついたか。兄上様の仰った通りじゃ。
カイウス兄上様 ? それにエサって……。どういうことだよ。ミトスが出てったことと関係あるのか ?
メルクリアふむ、そうじゃな。そなたに理解できるかわからんが教えてやろう。今の素直なカイウスにご褒美じゃ。
メルクリアおそらくミトスは方々を嗅ぎまわり、心核を抜かれたマーテルの話を仕入れたのじゃろう。
メルクリアじゃがな、まだマーテルの心核は抜いておらぬのじゃ。
カイウス……心核を抜くとか、抜いてないとか、結局それって何が目的なんだよ。
メルクリアそなたにわからぬのも無理はない。兄上様には深いお考えがあるのじゃ。
カイウス何言ってるかわからないよ。オレにも詳しく説明してくれ。
メルクリアすまぬが、今は時間が惜しい。
カイウスメルクリア ! もう少しでいいから――
メルクリアこれよりミトスに引導を渡す。行くぞ !
アスガルド兵はっ !
カイウス引導 ! ? 待ってくれ、メルクリア ! !
カイウス(……ごめんミトス。時間、かせげなくて……)
バルドカイウス、きみも宮殿に戻ったほうがいい。
カイウス(……待てよ、もしかしてこの隙に、ルキウスを助けられるんじゃないか ? )
バルド――やめたほうがいいね、カイウス。
カイウス―― !な……何のことだよ。
バルド今、ルキウスを目覚めさせるのは危険だ。
カイウスオレは別に、そんなこと考えて――
バルドフレンのようにはしたくないだろう。
カイウス! !
バルド眠らせておいた方がいいんだ。ルキウスのためにも、今はこのまま……いいね ?
カイウス…………。

キャラクター4話【8-6 精霊研究所 牢屋】
シング……ハァ、腹へったなぁ……。食事抜かれて、どれくらいたつんだろう……。
シング(結局、何を話しても、メルクリアにはわかってもらえなかったな。オレも熱くなって、言い過ぎたかもしれないけど……)
シング(カイウスは無事かな。オレみたいに牢に入れられてないよな。ミトスはどうなったんだろう……それに……)
シング(オレが側にいたのに、コハクにまた辛い思いをさせてしまった……。ゴメンよ、コハク……)
ぐうぅ~……
シングハァ……。このまま何も食べさせてもらえないと、本当にヤバイかも……。
シング(……いや、弱気になってちゃダメだ。何とかここを抜け出して、コハクを助けなくちゃ ! )
シング(でも、ここを出る方法、か。……病気にでもなれば出してもらえるかな)
シング(――誰かくる ! ? ……よし、イチかバチか ! )
シングあいたたたたたーー ! !
? ? ?な、なにっ ! ?
シングそこのひとー、おなかがいたくて……いたくて…… ?……あれ ?
? ? ?ちょっと、おなかが何 ? 痛いの ?
シング……きみ……どこかでオレと会った ?
? ? ?はぁ ? ないわよ。人をからかって、囚人はヒマなのね。
シングどこだったかなぁ……でもその特徴的な髪型は見た覚えがあるんだよなぁ……。
? ? ?見たって……、ねえ、まさかあなた、もう一人の私を知ってるの ?
シングもう一人 ? ごめん、よくわからないけど。でも見たことあるんだよ……。待ってて、思い出すから。
シング……………………………。
? ? ?……長い ! いい加減に――
シングあ、手配書だ ! 空のマクスウェルだろ ?軍の捜索命令で回って来たんだっけ。きみ、ここにいたのか。
? ? ?軍の……。はぁ、期待して損した。
? ? ?しかも何よ、あの下手くそな似顔絵の手配書で、よく私だってわかったわね。
シングはは、ありがとう !
? ? ?褒めてない……。まったく、素直なんだか抜けてるんだか。脳ミソがプリンで出来てるんじゃない ?
? ? ?でも、……そうね。さっきの感じだと、あなた、脱獄したいんでしょ。仮病で外に連れ出された隙に――とでも考えてた ?
シングうん……。オレ、どうしてもここを出て仲間を助けなくちゃいけないんだ。だから……。
? ? ?わかった。ここから逃がしてあげる。
シング本当に ! ?
? ? ?ええ。その代わり私にも協力して。
シング協力 ? 言っとくけどオレ、人を苦しめたり、悲しませることには力を貸さないよ。
? ? ?そんなことじゃなくて、私も助けたい人がいるの。……傷ついた私を回復させるために犠牲になった子。ルビアっていうんだけど。
シングルビアだって ! ?
? ? ?知ってるの ?
シングああ。オレの友達の大事な仲間なんだ。でも、なんでそんなことに……。
? ? ?……さっき言ったでしょ。私のために犠牲になったって。
? ? ?ルビアは、この世界のマクスウェルを『纏わされて』しまったの。
シングマクスウェル ? きみの名前と同じだね。そういえば、リヒターから精霊にもそんな名前のがいるって聞いたけど。
? ? ?後で詳しく説明してあげる。とにかく、ルビアは傷ついていた私を見て、帝国が施した『精霊装』を使って治療してくれたの。
? ? ?でも、あれは危険な技術みたいなのよ。あの子、みるみるうちに衰弱して……。
? ? ?だから、ルビアをここから助け出したい。
シング……わかった。協力するよ。放っておけないもんな。
シング(コハク……もう少しだけ待っててくれ。必ず助けるから)
? ? ?それじゃ契約成立ね。待ってて。鍵を壊すわ。
? ? ?ほら、開いたわよ。ここを出たら、この先は見張りが……、って、ちょっとあなた、フラフラじゃない !
シングうん……、しばらく食べてなくてさ……。逃げようとして、食事の時に何度か暴れたんだよ。そうしたら何も持ってきてくれなくなって……。
? ? ?馬鹿ね。動ける ?
シングああ、なんとか。気合いでガンドコ行くよ !
? ? ?ガンドコ…… ? まあいいわ。脱出できたら、何か作って食べさせてあげるから。
シングありがとう、えっと……きみのことはマクスウェルって呼べばいいのかな ?オレはシング。
ミラシングね。私のことは……、今は……ミラって呼んでもらえる ?

キャラクター5話【8-7 セールンドの街】
ゼロス遅いな、マークたち。何かあったんじゃねぇの ?
クラトスここから見る限り、兵士たちに動きはない。偵察はうまくいっていると見ていい。
クラトス何かあったとしても、共にいるのはシンクだ。うまく立ち回ってくれるだろう。シンクはマークによく懐いているようだからな。
ゼロス……それ、シンくんの前では絶対に言わない方がいいぜ ?
カイウスクラトスさん ! ミトスと合流できたか ?
クラトスカイウスか。済まぬがまだだ。そちらはどうなった ?
カイウスあまり時間は引き延ばせなかったよ。ミトスのことは、もうばれてる。
カイウスでも、新しい情報があるぞ。マーテルさんの話、やっぱりあれは罠だったんだ。
クラトス何だと ?
カイウス――で、メルクリアは「兄上様の仰った通り」って。
クラトス……なるほど。メルクリアを動かした第三者はナーザか。
ゼロス当たりだな、クラトス。嬉しくもねぇだろうが。
カイウス当たりって ?
ゼロスこのおっさん、ミトスを罠にはめようとしているのはメルクリアの裏にいる奴じゃねえかって言ってたんだ。
ゼロスその罠も、本当の狙いはマーテルの可能性があるってんで俺さまたちは現在進行形で調査中な訳。
カイウスマーテルさんを…… ?――そうか !なぁ、クラトスさんはリヒターを知ってるか ?
クラトスああ。精霊の研究施設にいたな。
カイウスオレ、リヒターから聞いたことがあるんだよ。ナーザは神降ろしの計画に否定的なんだって。
二人―― !
カイウスマーテルさんは、その神降ろしの器になるんだろ ?これって……。
ゼロスああ、やだねぇ。俺さまわかっちゃった気がするわ。
クラトス……ナーザはマーテルを始末する気なのかもしれん。
クラトス器がなければ神降ろしはできない。阻止したければ、一番確実な方法だ。
カイウスやっぱりマーテルさん、危険なんだな。ミトスが知ったら……。
ゼロスそれにしたって、ナーザはなんでこんな面倒くさい方法とってるんだか。
クラトスデミトリアスを筆頭に、帝国は神降ろしに積極的だ。ナーザにとってはやりにくい状況なのだろうな。
カイウスうん。神の器に決まってから、マーテルさんの居場所はわからなくなったし、話も聞かない。オレだってアステルやヒルダがいなきゃ情報も手に入らないんだ。
カイウスマーテルさんを……えっと……始末するなら、その厳重な警備をなんとかしないといけないだろうな。
ゼロスそれでナーザは、ミトスへの制裁だのなんだのでメルクリアを上手く言いくるめて、マーテルを引きずり出すための計画を練ったのか。
クラトスそれもまだ仮説の域だがな。これからはマーテルの安全の確保、それと心核の有無の真偽についても念頭に入れて動かねばなるまい。
マーク悪い、待たせたな !――っと、カイウスと通信中だったか。
シンクいつにもまして辛気くさい顔してるね。あんまりいい報せじゃないってことか。
クラトスカイウスからの情報については後で説明する。先にお前たちの報告を聞かせてくれ。
マーク了解。セールンド城にはナーザの奴がいたぜ。ミトスを待ち伏せしてるのかもな。つまり罠の確率が高くなったってことだ。
ゼロスああ。こっちも今カイウスの話でミトスが罠にはめられたってのがわかったところだ。ナーザが黒幕じゃねぇかってのも予想が付いてる。
ゼロスで、ナーザは何をしてたのよ。
シンク部下にキラル純結晶精製所での研究について聞いてたよ。しつこいくらいにね。
ゼロス精製所って、セシリィが脱出してきた所だな。
マークああ。あのゴタゴタの後でも帝国の研究施設として稼働してるらしいぜ。
クラトスナーザが精製所の研究を気にかけている……。あそこはリビングドールとも関係がありそうだったがもしやマーテルもあそこに囚われているのでは……。
ゼロス行ってみる価値はありそうだな。万が一、精製所にマーテルがいたら儲けもんだろ。
クラトスならば精製所へは私が向かおう。もしもこちらでナーザが動いたときには連絡をくれ。それと、ミトスを見つけたら手助けを頼む。
ゼロス一人で大丈夫か ?
クラトスああ。一刻も早く向かうには、一人で身軽な方がいい。神子はマークとシンクの機動力として残ってくれ。
クラトスではマーク、この場は任せたぞ。カイウスも自分の身を案じて動いてくれ。
カイウスわかった。
ゼロスそれじゃあ、授業に遅れたマーくんとシンくんにこの俺さまが今までの話を分かりやすく説明し――
シンクカイウス、説明して。
ゼロス俺さま、やっぱりそういう扱いな訳 ! ?
マーク――なるほど。バルドって奴も何考えてるかわかんねえし。もう帝国はヤバそうなニオイしかしないな。
マークなあカイウス、これ以上は危険だ。お前もこっちに来いよ。
マーク救世軍じゃなくてもいい。ミリーナたちの所だったらチェスターもいる。どうだ ?
カイウス…………。
ゼロス――ルキウスのことが心配なんだろ ?けど、目覚めさせない方がいいってのが本当なら、一旦引いて、他の方法を探すのも手だと思うぜ。
カイウス……でも、仲間の――ルビアのいる場所がもっと詳しく絞り込めそうなんだ。
ゼロス精霊研究所にいるんだっけか。
カイウスうん。それに研究所の中にはシングもいるはずだ。メルクリアとやりあった後、そこへ送られたって聞いたから。
カイウスオレは二人を助けたら、そっちに合流するよ !
ゼロス麗しい友情だねぇ……。ま、無理だけはするなよ。

キャラクター6話【8-8 精霊研究所 牢屋】
ミラこの辺りに閉じ込められてるはずなんだけど……。ねえ、そっちはどう ?
シングいや、この部屋にはいなかった。
ミラ……もう時間がない。急いで見つけて !
シングあとはこの一番奥の牢――……いた !いたよ、ミラ !
シングルビア、大丈夫 ! ? 返事してくれ !
ミラどいて、鍵を壊す !
シング開いたぞ ! ルビア !
ルビアシ……グ…… ?
シングおい、しっかり ! ここから出よう !
ルビア…………。
シングどうしよう、こんなにぐったりして……。
ミラルビア、ちょっとごめんなさい。
シングミラ、なにを――
ミラない……。マクスウェルの指輪が外されてる……。
シングマクスウェルの指輪……って何 ?無いとまずいの ?
ミラ……ルビアを連れて逃げましょう。これ以上ここにいたら危ない。もうすぐ面倒な奴らが戻ってくる頃だから。
シングえ、指輪はいいの ?それに面倒な奴って――
ミラ指輪はもういい。面倒な奴らっていうのは嫌味なしゃべり方する奴と、まともな会話ができない変人。これでいい ?
ミラあいつらに捕まったら本気でまずいのよ !
シングサレとハスタか…… ! わかった、すぐに出よう。ルビアはオレが背負っていくよ。
ミラ私が背負うわ。あなただって体が……。
シング平気だよ。それにジィちゃんに言われたんだ。「胸の大きな美人が困ってたら、死んでも助けろ」ってさ。ミラみたいな人なら、なおさら助けなきゃ。
ミラむ、胸 ! ? あなた一体どこ見て――
シングほら、ルビア。背中に乗って。辛いかもしれないけど、一緒に頑張ろう。
ミラ……シング。
シングよし、準備できた。逃げよう、ミラ。力を合わせれば、絶対にここから脱出できるよ !
ミラ絶対――ね。その言葉、信じるわよ ?
ミラ追っ手はないようね。
シングうん。サレもハスタもいないみたいだ。このまま一気に――
ミラ待って、シング !
シングリヒター…… !
ミラ知り合い ? 見逃してくれる感じじゃないけど。
リヒター……我ながらつくづく因果だな。また精霊と戦うとは。
ミラ―― !
シング戦うって……、やめてくれリヒター !
ミラいいから、この男の相手は私に任せて。ルビアを連れて先に行きなさい。
シング何言ってんだ。ミラを置いていけるもんか !
ミラシング、あなた絶対脱出するって言ったでしょ。あれは嘘 ?
シングでも !
ミラルビアまで危険にさらす気 ?どうせフラフラでろくに戦えないんだから早く行って !
リヒターその通りだ。邪魔をするなシング。空のマクスウェルだけは逃がす訳に行かない。
シングえ……、リヒター…… ?
リヒターお前たちはさっさと行け !
シング――っ、わかったよ !ごめん、ミラ !
シング――やった、出口だ !
? ? ?その声……シングか ! ?
シング――誰だ ! !
カイウスシング、無事だったか !
シングカイウス ! なんでここに ?
カイウスリヒターが連れてきてくれたんだ。上手くいけば、シングたちがいるかもしれないって。
シングリヒターが……。
カイウスシング、もしかして背負ってるのは――。
シングああ、ルビアだよ。かなり弱ってるんだ……。早くどこかで治療しないと !
カイウスルビア、ルビア !……クソッ、こんなことって……。
カイウス……ルビアはオレが背負う。シングもかなり辛そうだからな。さあ行こう。こっちだ。
ヒルダカイウス、シング、ここよ !
シングヒルダも来てたのか !
ヒルダ来たわよ。本当にあんたたち、人使いが荒いんだから !ほら、ぐずぐずしないで、この馬車に乗りなさい。
シングありがとう、ヒルダ !
ヒルダみんな……、気を付けて。

キャラクター7話【8-9 キラル純結晶精製所1】
キラル純結晶精製所
クラトス(稼働中の研究施設だけあって、やはり人が多いな)
クラトス(仕方がない、まずは人気のない所から見て回り、徐々に捜索場所を狭めていこう)
クラトス(なんだ……この部屋は……)
クラトス(……たくさんの宝石……。こんな場所になんとも不似合いなものを並べて……)
クラトス(一つずつ丁寧にラベリングされている。名前に、身体的特徴 ? まるで人間のように……)
クラトス(―― ! ! まさか、これが心核か ? )
クラトス(この様々な色や形をした石の全てが、人の心を物質化したものだと…… ? )
クラトス(……だとすると、もしマーテルの心核が抜かれているのならば、ここにあるはずだが……)
クラトス(……見当たらない。やはりメルクリアの言うとおり、マーテルはまだ心核を抜かれては――)
兵士早く避難しろ !身の周りの物など気にするな !
クラトス(――何だ ? )
研究者A待って下さい ! この資料を揃えたら避難しますから !
兵士後にしろ ! 諸君らの避難と、安全の確保を優先せよとナーザ将軍のご命令だ !――あ、お前、戻るな !
研究者Bこの奥には、器の鏡映点が置き去りのままなんです。連れて出ないと !
兵士そのままでいい !一刻も早く、全員この施設から退避だ !
クラトス(器の鏡映点……。やはりマーテルはここにいたか ! )
クラトス(…………静かになったな。研究者たちもいなくなったと見える。今のうちに……)
クラトス(マーテルは確か、施設の奥の方に――)
クラトス(誰もいない……。全員避難したのか。ナーザの命令と言っていたが……)
クラトス(……もしや、邪魔な研究者たちを排除して、マーテルに近づくための画策か ? )
クラトス! !
クラトス――そこにいるのは誰だ。退避命令が出ているはずだが ?
? ? ?ククク……こそこそと忍び込んでおいてその態度とは。厚顔無恥にも程があるぞ、侵入者。
クラトス――っ ! !
? ? ?ほう、我が一撃と渡りあうか。久しぶりに面白い戦いが出来そうだ ! !
クラトス(この男――強い ! !だがこんな所で、足止めを食らっている場合では――)
? ? ?――っ、誰だ !
シンクなに遊んでんのさ、こっちに面倒押し付けて !
クラトスお前たち―― !
ゼロスあんたに報告があるんだよ。こいつ、さっさと倒しちまおうぜ !
? ? ?さっさと、だと ?貴様ら――――――っ ! !

キャラクター8話【8-9 キラル純結晶精製所1】
? ? ?くっ、この程度の輩に……やはりまだ馴染まぬのか。――貴様ら、この屈辱は忘れんぞ ! !
シンクフン、お約束の捨て台詞。脳がないね。アイツのとどめはどうする ?
ゼロス深追いは面倒だ。クラトスも無事だったしな。
クラトスああ、助かった。ところで、そちらは何が起きたんだ ?
ゼロスコーキスたちがここに来ている。ミトスも一緒だ。
クラトスミトスがここに ?
ゼロスああ。あんたが精製所に向かった後、ミトスはセールンドでコーキスたちと合流したんだ。
ゼロス今は詳細を省くが、コーキスたちはここにマーテルがいると知って来てるぜ。うまくいきゃ、姉弟の感動のご対面になるかもな。
シンク……ところでさ、なんでここには誰もいないの ?研究施設になってるって聞いたけど。
クラトスまずい…… !急ぐぞ、マーテルを保護せねば !
シングここでフィリップさんと待ち合わせなのか。
カイウスああ。マークたちを通じて色々助けてくれたんだ。
シングすごいなカイウス。オレが牢に入ってる間に……。協力できなくてごめん。
カイウスなに言ってるんだよ。シングが連れ出してくれなかったら、ルビアはどうなってたかわからないよ。ありがとな。
シング脱出できたのは、オレだけの力じゃないんだ。ミラっていう協力者がいてさ。それにリヒターも。
シングあいつ、オレとルビアを見逃がしてくれたんだよ。でもミラとリヒターは戦うことになっちゃって……。もっと話す時間があれば、わかってもらえたのかな。
カイウス……今回の作戦、リヒターも誘ったんだ。アステルを連れて帝国を出ようって。
カイウスでもあいつ、「鏡士たちの所へ行くことは絶対にできない」って言って、オレたちに協力だけしてくれた。
カイウスリヒターはいい奴だから、あのままじゃ辛いと思うんだけどな……。
フィリップやあ、シング、カイウス。無事に脱出できて良かった。
カイウスフィリップさん !
シングフィリップさん。ありがとうございます。あのままだったらオレ、飢え死にしちゃってたかも。
フィリップいや、お礼を言うのは僕のほうだ。改めて――あの時、マークを助けてくれてありがとう。
シングあの時…… ?あ ! マークがチェスターを連れて逃げ出した時か。
カイウスメルクリアからもらった鏡で切り抜けたっけ。……あの頃はまだ、あいつの所を離れるなんて考えてもいなかったな。
シングうん。メルクリアの所にいればコハクだって元気になると思ってた。なのに、オレたちを騙すなんて…… !
カイウス……フィリップさんの言う通りだったよ。メルクリアは歪んでいるんだ。オレたちの言葉が、気持ちが届かない。
カイウス結局、ルキウスどころか、ルビアもこんな風にされちまって……。
カイウス……頼む。フィリップさん。ルビアを助けてくれ。
フィリップもちろん、そのつもりだよ。安心して欲しい。こちらで預かってるコハクも早く治してあげたいと思っているんだ。
シングやっぱり、コハクはスピリアを失ったまま ?
フィリップああ、まだ眠っている。それでシング、君に頼みがあるんだ。マーテルの件は知っているね。
シングカイウスに聞いたよ。心核の話とか、色々と大変なことになってるんだろ。
フィリップああ。だが今の段階では、本当にマーテルが心核を外されているかは不明で、マークたちが調査中なんだよ。
フィリップそして、もしも本当に外されているとしたらセールンド側の鏡士ではどうにもできない。我々は心核を外す技術をもっていないからね。
フィリップけれど、君にならできる。心に入り込むソーマという武器、それを操る力があれば恐らくは心核を戻すことも可能だろう。
フィリップどうか、協力をお願いできないだろうか。
シング……心核っていうのはスピルーンみたいなものなんだよな。みんなが言う『心』がスピリア……。
シングつまり、これってコハクの時と状況が似てるんだな……。
シング――わかった。オレにできることなら、やらせてくれ !

キャラクター9話【8-10 キラル純結晶精製所2】
ゼロス今の音……コーキスたち戦ってんのか ?何が始まったってんだよ !
クラトス(頼む……間にあってくれ ! )
クラトス―― ! !
ナーザこの【現実】こそが……貴様の末路だ――
マーテル……ミトス……。ごめんなさ……い……。あなたを……また一人にしてしま……
ミトス嘘……嘘だ……。嫌だよ姉さま……。どうして……こんな……【二度】もこんな…… ! ?
マーテルさよな……――
ミトス姉さまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ ! ?
クラトスマーテル ! !
ロイド――クラトス ! ?
ミトスクラ……トス ?
クラトス……まだだ、諦めるな。私のマナをマーテルに分け与える…… !
ミトスな……何してるの……。クラトスは人間なんだよ ! ?
ミトスハーフエルフだって危険が伴うのに人間がそんなことをしたら死ぬってわかってるでしょ ! ?
ロイド! ?
クラトス……救うと約束した。今度こそ……お前たち姉弟を……。
マーテル――う………ん……。
コレットマーテルさんが…… !
ミント……信じられません。回復術でも間に合わないほど、あの怪我は致命傷でした。命の灯はほとんど消えていたのに、それを――……。
クレスあれが、マナを分け与えるってことなのか。
リフィル……でも、それは代わりに……。
クラトス――よか……った……。
ミトス―――― !
ロイドクラトス ! !
ロイド嘘だろクラトス ! ? 俺はまだあんたのこと――
チーグルナーザ…… !……君たち、これはどういうことかな。
ミトス……お前…… !
チーグルミトス、メルクリア様のご寵愛を足蹴にするだけじゃ気が済まないようだね。
チーグル……この方への無礼は死をもって償ってもらう。
コレットあの人……前にエルをさらおうとした人 !
チェスターやばいぞ !あいつが呼ぶ光魔はキリがねぇって話だ。
シンクあのスカした顔をみたらドジ神子たちの後始末をさせられたってことまで思い出したよ。
コレットド……ドジ神子……って私のこと、だよね ?ご、ごめんね、シンク。
チーグルん ? ……そこの弓兵、見たことがあるな。
チーグルああ、メルクリア様のもとを脱走した――確か魔弓のチェスターだったか。どいつもこいつも不敬な奴らだ。
チーグル丁度いい。まとめて光魔共に一掃させよう !
クレス――なっ、こんな大量の光魔を…… ! ?
チーグルそれじゃ、ナーザは返してもらうよ。本来ならば、こんな地べたに寝かせていいお方じゃないんだ。
ミリーナこのままじゃ囲まれるわ !コーキスもダメージを負って動けないし布陣を組んで、負傷したみんなを守らないと !
クレスロイド、クラトスさんは無事か ! ?
ロイド息はしてる……と思う……。
クレスよし、そのままクラトスさんの側にいてくれ !ミトスは、マーテルさんをミリーナはコーキスを頼む !
クレスゼロスとシンクはクラトスさんとミトスを守ってくれ !リフィルさんたちは後方支援をお願いします !チェスターはミリーナとコーキスについててくれ !
チェスターでもクレス、斬り込み役がいなきゃ防戦一方だぜ !
クレスわかってる……。それは僕が―― !
マーク本当にクレスは勇者様って感じだな。けど一人で――なんて格好いい役はこっちにもまわしてくれなきゃな。
ミリーナマーク、それにフィリップも !どうしてここに ! ?
ゼロスようやく追いついたか、遅刻魔のマーくんめ !
マーク悪いな。主役は遅れて現れるもんだろ ?それにこっちは、ちゃんと戦力補充してきてるぜ。
カイウス久しぶり、チェスター !
チェスターお前ら、こっちに来たのか !よく無事だったな。
シングチェスターも――って、挨拶してる状況じゃなさそうだな。
シングでも、マーテルさんが見つかって良かった。な、ミトス !
ミトスシング、カイウス……ボクは……。
カイウスいいから、一緒に戦うぞ !みんなを……マーテルさんを守り抜くんだ !
ミトス――うん。
フィリップすまなかった、ミリーナ。後でちゃんと話をするよ。
ミリーナわかったわ。今はここを乗り切りましょう !
フィリップでは、僕は光魔の増殖を抑えてみよう。クレス、シング、カイウス、マークを先陣にして、この光魔を全て掃討する !

キャラクター10話【8-13 キラル純結晶精製所5】
シングこれがソーマの力だ !
カイウス楽勝、楽勝 !
クレス強いな、二人とも。
チェスターだろ ? だからこそ、シングたちにお前への連絡を託せたって訳さ。
チェスターあの時はオレも立場的に微妙だったからさ、本当に助けられたよ。
カイウスミトス。マーテルさん、気を失っているのか ?
ミトス……ああ。一瞬目を覚ましたんだけど、今は眠ってる。
カイウス心核、やっぱり抜かれてなかったのか。
シングもしもの場合はオレが戻すことになってたんだ。それでフィリップさんたちと、ここに来たんだよ。
ミトス心核……、そう言えばこれ――え ?
ミリーナ――シングさんに反応してる…… !そうだったのね……。その心核コハクさんのものだったんだわ !
シングコハクの…… ! ?
ミリーナナーザはこれを、前回の器のものだと言ってたでしょ。だとしたら……。
シンクボクたちがコハクってのを連れ帰ってから神降ろしが行われてないならまぁ、間違いないんじゃない ?
シング……フィリップさんの話が本当なら、オレはコハクを助けられるはずだ !
シング頼む。コハクの所へ連れてってくれ !
ミリーナもちろんよ。それにコーキスも、クラトスさんもすぐに治療が必要だわ。マーテルさんも休ませなくちゃいけないし。
ロイドリフィル先生、クラトスはどうなんだ !
リフィルわからない……治癒術をかけ続けることで何とか命をつなぎ止めている状態よ。
ロイドそんな…… !
リフィル大丈夫。治癒術を扱えるメンバーで交代しながら、治療を続けるわ。ただ、それでは根本的な解決にならないけれど……。
ミトス……クラトスは人間だけど、天使化しているから最悪……体を失っても生き続けることはできる。
ミトスクルシスの輝石……クラトスがつけているその宝石みたいな石に心を宿してね。
ロイドそんなの……生きてるって言えるのか ! ?
ミトス……わかってるよ ! お前に言われなくたってその状況がどれほど苦しいものなのかボクは嫌と言うほど知ってるさ !
コレットクラトスさんを助ける方法はないの ?
チェスターそうだ !たしかミトスもマナをわけるってのができたよな。それでオレも助けてもらったんだから……。
チェスターあ、でも、その後倒れちまったんだっけ。やっばり危険を伴うやり方なんだな……。
ミトス……試してみてもいいよ。でも……多分……。
ロイドな、何だよ。多分……何なんだよっ ! ?
ミトスとにかく一度試してみるよ。どこか落ち着ける場所の方がいい。
フィリップよし、それじゃあケリュケイオンに行こう。ミリーナも一緒に来てくれ。これまでの救世軍側の動きを説明するよ。
シング……コハク、やっと会えたね。絶対にオレが助けるから。
ミリーナはい。これがコハクさんの心核。
シング心核って……本当にスピルーンみたいだ。これをコハクのスピリアに置いて来ればいいんだね。
ミリーナそう。コハクさんの心――シングさんたちの世界で言うスピリアの、一番奥に。
ミリーナそれ以上の助言ができなくてごめんなさい。今回は、全てシングさんの経験頼りになるわ。
シングスピルメイズの奥ってことかな。エンコードで勝手が違ってると困るけど――やってみる。
フィリップそれと、スピリア――いや、スピルメイズかな。とにかく心を具現化したその内部には魔物のようなものがでるみたいだね。
フィリップ君一人では危険だ。他にも誰かいた方がいい。
シングでも、ソーマがないとスピルリンクはできないんだ。
ミリーナそのことだけど、アミィちゃんの時には、コハクさんのソーマが魔鏡術の力を増幅してくれたの。
ミリーナどちらも心に働きかける力だから影響を与えているんだと思うわ。だから、今回もそれを利用するの。
フィリップ今度は僕たちの魔鏡術でシングのソーマの力を増幅し、ソーマを持たない者も一緒に行動できるようにする。
ミリーナでも数名が限度よ。特に今回は初めてだし、予測不可能なことが多いわ。絶対に安全とは言いきれない。
シングそんな危険に、みんなを巻き込めないよ !オレ一人で大丈夫だから。
カイウス……オレ、行くよ。ルビアは治療中で、オレは何もしてやれない。じっとしてるのが、もどかしいんだ。
チェスターだったらオレも行く。二人には世話になったし、一歩間違えば、アミィだってコハクと同じだったかもしれない。協力させてくれ。
クレス僕も。アミィちゃんが回復したのはコハクのソーマのおかげなんだ。今度は僕たちが力になる番だよ。
シング……みんな、ありがとう !
ミリーナそれじゃみんな、お願いね。シングさん、準備はいい ?
シングうん。あとさ、ミリーナ、今度からはシングってよんで。コハクのことも「コハクさん」じゃなくてさ。
ミリーナ……わかったわ、シング。それにコハクが目覚めるのがとても楽しみ。頑張ってね。
シングああ。それじゃ行ってくる。みんな、スピルリンクするぞ !
三人ああ !
クレスこれが人の心の中……。きれいだけど、まるで迷路だ。
シングうん。オレたちはスピルメイズって言ってる。
シングさあ、進もう。スピリアの――コハクの心の一番奥深くへ。

キャラクター11話【8-15 スピルメイズ2】
カイウスここで行き止まりだ。……ここには敵が出てこないな。
クレスああ。敵どころか何の気配もない。
チェスター……それにしても心の具現化した場所に敵が出てくるってどういう理屈なんだろうな。シングの世界でもそうだったのか ?
チェスター――シング ?
シング……きっと、ここだ。コハクの心核は、ここにあったんだ。
カイウスわかるのか ?
シングなんとなくだけどね。それに、前にコハクの中に入った時とスピルメイズの形が似てるし。
シングそれじゃ心核を置くよ。
シング――ようやく戻ってこれたね、コハク。……お帰り。
カイウス心核が…… !すげえ、でかい花が咲いたみたいだ !
クレスなんてきれいなんだろう……。これが、コハクのスピリアなんだね。
チェスターこれ、成功だよな ? な ! ?こんな花咲いたら、そうに決まってる !
シングまだわからない。でも……。
シング(……オレは信じてるよ、コハク目を覚ますのを信じて……待ってるから ! )
カイウスうわ、オレたち、戻って来た…… ! ?
チェスターなんか、すげえ体験したぜ……。
ミリーナみんな、無事でよかったわ !心核は置いてきたの ?
カイウスああ、でかくて立派な花が咲いて――あれ ? もしかしてコハクは……。
フィリップ……まだ目覚めないんだよ。
クレス……そんな。
シング……目覚めるよ。今じゃなくても。
シングそうさ。コハクは絶対に戻る ! オレは諦めない !
コハクシン……グ……。
シング……コハク ? コハク ! !
ミリーナ意識が戻った…… !
チェスターやっぱり成功してたじゃねぇか !ほら、オレの言った通りだろ ?
クレスああ、本当だった !
シングコハク……良かった…… !
シングでもオレ、またコハクを辛い目に合わせて……なんて言っていいか……本当に……ごめ――
コハク……たの。
シング……え ?
コハク……聞こえたの。心の中で……。シングが、「お帰り」って……。
コハクすごく嬉しくて……安心した……。だから……わたし……それが聞きたい。
コハクねえ、もう一度、言って ?
シング……ああ、何度だって言うよ !お帰り ! コハク !
コハクうん。ただいま……、シング。
ミリーナどう、コハク ? 体に異常はない ?
コハクずっと寝てたから体は痛いけど、動けば平気だよ。それよりも、わたしのことで色んな人に迷惑かけて……ごめんなさい。
シングなに言ってるんだよ。コハクは悪い事をした訳じゃないんだ。リチャードを助けようとしただけなんだからさ。
ミリーナリチャード……。みんなからの話を総合すると、チーグルと名乗っている、あの人のことよね ?
シングああ。リチャードもリビングドールにされたんだよ。
フィリップ……確か、クラトスさんたちからの報告では、リチャードへのスピルリンクの途中で、意識を失ったという話だったね。
コハクはい……。
ミリーナそのことも含めて、色々と話を聞かせてもらえるかしら。もちろん、ちゃんと体が戻ってからでいいわ。
コハク大丈夫。みんなにとって大事な話かもしれないんでしょ ?だったら――
マーテル……お取込み中の所、失礼します。
ミトス…………。
二人マーテルさん !
シング一時はどうなるかと思ったよ。傷は平気 ?
カイウスそんな風に歩いてさ、まだ寝てたほうがいいって。
マーテル大丈夫よ。相変わらず優しいのね。二人とも。
ミリーナマーテルさん。無理はしないで下さいね。それで、どうしてここに――
ロイドミリーナ ! またミトスがいないんだ !マーテルさんも――
ロイド……なんだここにいたのか。びっくりしたよ。マーテルさんの部屋に行ったら誰もいないからさ。
マーテルあなたが、ロイド……。クラトスの子供……なのよね。
ロイド……あ、ああ。この世界に具現化される直前に聞いた話だから正直……まだピンと来てないけど……。
マーテルごめんなさい。あなたにも辛い思いをさせて。……私を助けるためにクラトスが払った代償は大きすぎました。
ロイドえ…… ?
ミトス……クラトスはボクのマナを拒絶したんだ。このままじゃ助からない……。
ロイド何だよ、それ……。
ミトスクラトスは、ボクと姉さまを必ず救うといった。そして約束を守ってくれた。……自分の命と引き換えに……。
ミトスボクはもう嫌だよ。大事な人たちを失いたくない。姉さまを……そして、クラトスを……。
ミトスだから、シングのところへ来たんだ。
シングえ、オレ ! ?
ミトスまず、謝らせて。……この間はごめんなさい。怪我をさせて、危険な目に遭わせたこと。
ミトスボクのことはシングの気が済むようにして構わない。ボクはどうなってもいいから……お願いだよ、クラトスを助けて !
マーテル私からもお願いします。シング。
シングちょ、ちょっと待って !
ミトスクラトスは死のうとしてるんだ。だから……マナを受け付けない。
ミトス今のクラトスを救えるのはシングとロイドだけなんだ。
ロイド俺も ! ?
ミトスだから……お願い……お願い……します……。
to be continued
キャラクター1話【9-1 帝国への道1】
カーリャお帰りなさい、ミリーナさま。ロイドさまはお元気でしたか ?
カーリャもう長いことケリュケイオンに行きっぱなしでカーリャ心配です。
ミリーナ明るく振る舞っていたけれど、内心は不安だと思うわ。でもコレットも傍にいるし、ケリュケイオンにはゼロスくんもいるから、きっと大丈夫よ。
ミリーナコーキスの方は ? もうすっかり元気になったとは思うけれど、毒が抜けるまで時間がかかったから……。
コーキス俺なら大丈夫です。ただ、むやみに眼帯を外さないようにって――。
イクス……まだゲフィオンからその力のことを詳しく聞けてないんだ。だから眼帯は絶対外しちゃ駄目だぞ。
コーキス……主にマスターから、今も言われてます。
ミリーナイクス……。そう、イクスらしいわね。自分も大変なのに、人の心配ばっかりしちゃって……。
ミリーナでも、イクスはあの時どうして私たちを呼び寄せたのかしら。
イクスその説明はもう少し待ってくれ。ちゃんと成功したら報告するから。
コーキス何か、理由はあるみたいですけど成功するまで待ってくれって言ってます。
ミリーナそう……。無理はしないでね、イクス……。
コーキスそれで……クラトス様の治療はまだできないんですか ?
ミリーナ今、フィルがソーマを使って安定的にソーマ使い以外もスピルリンクできる魔鏡を造っているの。私も確認してきたけれど、あと少しで完成すると思うわ。
コーキスそうすれば今は眠らせておくしかないクラトス様を治療できるようになるんですね。
コーキス……でもどうしてクラトス様は死のうとしてるんだろう。そんな感じの人には見えなかったけどな。
ユーリそうか ? オレにはいかにもらしいと思ったけどな。
コーキスえ ? 何で ?
ユーリ何でって……まぁ、逃げてるからじゃねぇの ?
コーキス何から ?
ユーリ何で何でってガキじゃあるまいし……。実際のとこはミトスかリフィルにでも聞いてくれ。同じ世界から来たヤツの方がわかってるだろうよ。
ユーリそれよりミリーナカロルが例の準備終わったって言ってたぜ。
ミリーナありがとう。じゃあ早速みんなを集めましょう。
コーキス例の準備って何ですか、ミリーナ様。
ミリーナみんなを集めたら説明するわね。
ミリーナみんな、忙しいところ集まってくれてありがとう。今日集まってもらったのは鏡映点候補のリストを確認してもらうためなの。
ルカ鏡映点候補って、カロルが聞き込みに来た僕たちの元の世界での仲間のこと ?
ミリーナええ、そうよ。カロル調査室とキール研究室で鏡映点として具現化された可能性のありそうな人たちを聞き込みしてリストにしたの。
ミリーナさっき渡したリストには名前と特徴と写真を並べてあるわ。
ルドガー写真って言っても、かなりぼやけてるな。これだと本人を知ってる人間じゃないとわからないかも……。
キールこれが精一杯なんだよ。
キールそれぞれが心に思い浮かべた鏡映点候補の顔を、魔鏡を通じてミリーナのカメラに転写する装置を作ったんだが人の心はあやふやでどうしても像がぶれてしまうんだ。
パスカルもっと焦点をシュンってできればパキッとなるんだけどね。
リタそれでも、ないよりは全然マシよ。
コーキスそれにしても随分たくさん候補がいるんだな。この資料の厚さ、武器になりそうだよ。
ミリーナ念のため、敵対していた人たちもリストに加えてもらったから……。ちょっと大変だと思うけど目を通しておいて欲しいの。
ミリーナファントムは死ぬ前にかなりの数の鏡映点を具現化していたようだし、帝国も具現化を続けているみたいだから、こちらでも鏡映点を捜して助けたいわ。
カロル敵対してる相手が、ボクたちの誰かの仲間の体だってこともあり得るもんね。
ユーリ…………。
エル……ねぇ、ルドガー。これってエルのことユーカイしようとした人に似てる。
ルドガーえ ? このリチャードって人か ? あ、そういえばセシリィがリチャードって言っていたような……。
一同! ?
ソフィリチャードもこの世界にいるの ?
エルわかんないけど、似てるよね ?
カイウスリチャードって、あのリチャードのことか ?
アスベルカイウス ! リチャードのことを知ってるのか ! ?
カイウスリチャード……って、金髪のちょっと……えっと、変わってる人だよな ?
アスベル変わってる……かな ?ええっと、その人は鏡映点なのか ?
カイウスどうだろう……。シングが倒れていたリチャードを助けたのは知ってるけど、オレも詳しくはないんだ。多分セシリィなら知ってるんじゃないかな。
ルカセシリィもまだケリュケイオンだよね……。
カーリャあ、エミルさまとマルタさまとロゼさまが戻られましたよ。
カイウスえ……。ロゼはともかく、残りの名前は初めて聞くな。まだ他にも仲間がいたのか。
コーキスそういえば、エミル様たちはしばらく闘技場の方に詰めてたんだったな。
ミリーナ随分大所帯になったから顔と名前を一致させるのが大変よね。
ロゼただいまー。はー疲れたー。
エミル闘技場の方、何とか上手くいってるみたいだったよ。
カイウス――えっ ! ?
エミル……な、何 ! ? 僕の顔に何か付いてる ?
カイウスあ、いや、ごめん。知り合いにそっくりで……。いや、アステルがこっちにいる訳ないよな……。あれ、もしかして、あんたはアステルの双子の兄弟か ?
エミルアス……テル…… ! ?
カロルえ ? エミルって双子だったの ? あ、もしかしてボクが帝都に行ったとき見かけたエミルってそのアステルって人だったのかな ?
エミルア、アステル……さんが具現化されてるの ?
マルタ嘘……。だってアステルさんって、確か……。
エミルえっと……。詳細は置いておくけど、その……僕は精霊で、人間の姿になるときに参考にしたのがアステルさんなんだ。
コーキス……この調子だと、まだまだ他にも気付いていない鏡映点がいるかも知れないな。
ミリーナええ、そうね……。
ミリーナそれじゃあ、みんなリストを読んでもらって鏡映点として具現化された仲間がいる可能性のある人たちは残ってちょうだい。
ミリーナ残ったのは――
エミルアステルさんは仲間だった訳じゃないけど……でも、もし会えるなら話したいことがあるんだ。
ソフィリチャード……。
アスベルまずはリチャード本人か確認する必要がありそうだな。
ヴェイグカイウスやユーリたちの話を聞く限り、アスターの下にいたヒルダというのは、オレの仲間のヒルダ・ランブリングで間違いないと思う。
ルカ特異鏡映点亜種03っていうのは僕の仲間のスパーダのことじゃないかなって……。
カイウスオレはリストとは関係ないけど、帝国に長くいたから何か役に立てるかも知れないからさ。
ユーリまずはこんなところか。
ミリーナそれじゃあ、このメンバーでアスターさんに会いに行きましょう。ヒルダさんがそこにいるそうだしアステルさんもよく出入りしているんでしょう ?
カロルボクも行くよ。室長だからね。
コーキスさすがに帝都の警備が厳重になってる可能性があるな。慎重に行こうぜ。

キャラクター2話【9-3 アスガルド帝国】
ルカうわ……。街の入り口に兵士がたくさんいる。やっぱり警戒されてるのかな。
ユーリいや、警備にしちゃ数が多すぎる。何かあったのか ?
アスベルもしかしたら、どこかに進軍する予定があるのかもしれない。
ヴェイグ進軍といってもこの世界に帝国と敵対する国はない筈だ。
ヴェイグとなると救世軍か ?全員がケリュケイオンにいる訳じゃないだろう。
イリアねぇ、どっかから侵入できないの ?
ユーリさすがに地下はもう使えねぇだろうしな。
イクスあ、フィルがこっちに気付いた。
コーキスえ ? フィル様がこっちに気付いた ?マスター、どういうことですか ?
カイウスあ、ホントだ。ジュニアが街から出て、こっちに走ってくる。
エミルえ ! ? ちゃんと隠れてたのに……。
ジュニア……ミリーナ ? いるんでしょ ?
ミリーナ………………。
ジュニア誰にも言わないよ。ミリーナが近くにいるって僕の持ってる守護魔鏡の欠片が教えてくれたからそれでここに来たんだ。
ミリーナ……フィル。
ジュニア……その名前で呼ばれるのは久しぶり。今はみんなジュニアって呼ぶから。
ミリーナフィル、どうして帝国にいるの ?
ジュニア……その話をする前にミリーナに会わせたい人がいるんだ。よければ仲間の人たちも一緒に。
ミリーナそれは誰 ?
ジュニアバルドだよ。フレンさんって鏡映点の体を使ってリビングドールとして復活したビフレストの騎士なんだ。
ユーリ……案内してもらおうじゃねーか。
ジュニア確か、ユーリさん、ですよね。バルドから聞いています。フレンさんの親友だって。
ジュニア大切な人をリビングドールにされて腹が立つのはわかります。でも、まずはバルドの話を聞いてあげて下さい。
コーキスなぁ、ユーリ様、話を聞いてみないか?
ユーリこいつが罠じゃないって保証があるならな。
ジュニア罠にはめるより、ここで兵士たちを呼んだ方が簡単じゃありませんか。
ユーリ――だろうな。まぁ、念のため確認しただけだ。
ジュニアはい。そういう性分だろうなと思いました。
ユーリナリは子供でも、おっさんのフィリップと同じだな。いい性格してるぜ。まぁ、とりあえず、話ぐらいは聞いてやるよ。
ミリーナ………………。
カロル……ユーリはいつもそうだよね。
カロル本当はすごく悔しい筈なのに、それでもフレンの尊厳を奪った奴と手を組むってことを平気な顔して飲み込もうとするんだ。
カロルボクにはわかるよ。だからボクも今回のこと飲み込んでみせる。
ミリーナ……二人ともありがとう。それじゃあ、バルドさんに会いましょう。他の鏡映点の情報も聞き出せるかも知れないわ。
バルドご足労頂き、ありがとうございます。
ユーリ…………。
コーキスミリーナ様に会ってどうするつもりだ。
バルド……鏡精、ですね。ビフレストでは、鏡精は悪しきモノとして伝えられてきました。あなたを見ていると、とても信じられませんが。
コーキス悪しきモノ…… ? 俺が…… ?
イクス悪しきモノ…… ? そんなの聞いたことがないな。
ミリーナどうして鏡精が悪しきモノなの ?
バルド世界を滅ぼすのは鏡精だと、ビフレストでは伝えられていたんですよ。あなたはご存じかと思いましたが……。
ミリーナ私 ? いいえ……。ゲフィオンから受け継いだ記憶が不完全みたいで……。
バルドそうでしたか。――失礼、話がそれましたね。本題に入りましょう。
バルド私が信頼する人物が、次々帝国からあなた方の下へ降っています。そしてあなた方はリビングドールという存在を否定している。
ルカだって、体を奪っているってことですよね。元の持ち主の存在を無視して……。
バルドええ。体を奪われた側からすれば尊厳を奪われるも同然です。
バルドそして……リビングドールとして生き返らされた側からしても、また同じなのです。
ミリーナ生き返ったことが嬉しくはないんですか ?
バルドそれが自分の体と共にであれば……喜ばしいことだったでしょうね。
バルド勿論リビングドールとして復活して喜んでいる者もいます。ですが、私は……今のこの状態に疑問を抱いている。
バルドだから、皆さんに協力をお願いしたいんです。メルクリア様のリビングドール計画を止めるために。
ソフィバルドもわたしたちの仲間になるの ?
バルドそちらの陣営には行けません。どちらかというとカイウスたちの代わりに、私が帝国側の情報を流す役割を受け持つという感じになりますね。
ユーリ都合のいい話だな……。
ミリーナそれを信じると思う ?
バルドジュニアから聞いていた通りだ。あなたは簡単にはこちらを信じてくれないだろうと。
バルドですから私を信じてもらえるようある情報を持ってきました。
エミル情報って ?帝国への侵入方法だと助かるんだけど……。
バルド特異鏡映点亜種03――スパーダという鏡映点の居場所です。
二人! ?

キャラクター3話【9-5 アジトへの道2】
ミクリオ遅いな、ライラ。
スレイきっとまた誰かと話こんでるんだよ。この前なんか、クレスと盛り上がってたし。内容はよく聞こえなかったけどさ。
ミクリオそう言えば僕も見たよ。その時は、二人の間に火花が散ってるようにも見えたけど……。
スレイえ、ケンカしてたのか ! ?
ミクリオいや、クレスもライラもすごく楽しそうだった。
スレイなら良かった ! ライラは、オレたちと合流するまでこの世界では人と会うことがなかったみたいだし。馴染めるか、ちょっと心配だったんだ。
ミクリオあの時、かめにんを追いかけてなかったら、会うのはもっと先、いや、出会えていなかったかもしれないね。
スレイ本当、かめにんには感謝だよ。ライラみたいに、誰にも知られていない鏡映点がまだ世界にはたくさんいるんだろうな……。
ミクリオそうだね。そんな鏡映点を帝国はリビングドールとして利用している。
スレイ……力を取り戻さなくちゃ。みんなを救うためにも。
ベルベットそれじゃ、頼んだわよ。
ライラええ、おまかせ下さい。
ライラ――お待たせしてすみません。スレイさん、ミクリオさん。
スレイライラ、もしかしてベルベットと用事でもあった ?だったらオレたちの方は後でもいいけど。
ライラ大丈夫ですよ。今すぐというわけではありませんから。後で焼き菓子のコツを教えて欲しいといわれたんです。……ふふふ。
ミクリオ何がおかしいんだ ?
ライラだって、災禍の顕主と一緒に料理だなんて、思いもしませんでしたもの。しかもあんなに上手なんですよ ?
スレイうん、ベルベットの料理って美味いよな !なんだっけ、あのシチュー。えっと……
ライラウリボアの肉たっぷり、なのにさっぱりシチュー。ですよね ? お姉さんの直伝だそうですよ。
スレイそうそう ! あれを食べた後に、ミクリオのバニラソフトクリームがまた最高なんだ。
ミクリオ言っとくけど今日は作らないぞ。
スレイじゃあ、明日ならいいってことだよな ?
ミクリオ……まったくもう。
ライラふふっ。スレイさんもミクリオさんもどこにいてもお二人は変わりませんね。
スレイライラもね。このアジトにも馴染んだみたいで良かったよ。
ライラええ、おかげさまで。最初は、私たち天族の姿が普通の方々にも見えるということに、少し戸惑いましたけれど、それもだいぶ慣れました。
ライラ今はライバルもできて、日々充実しています !
二人ライバル ?
ライラい、いえ、こちらの話ですわ。それよりも本題に戻りましょう。
ミクリオそうだな。他のみんなもそれぞれ出来ることを探って動いている。僕たちもやらないと。
スレイああ !――それじゃライラ、行くよ !
ライラはい !
スレイフォエス=メイマ ! !
スレイ――くっ……、やっぱり何度やっても駄目か。
ミクリオ陪神の僕はともかく、主神のライラだったら神依も可能かと思ったけど……。
ライラ私の力が足りないのでしょうか……。
スレイオレの方に原因があるのかも。
ミクリオいや、これだけ試してもできないんだ。やっぱりエンコードの影響なんじゃないかな。
ライラエンコード、ですか。そのおかげで、私たち天族が皆さんに見えるようになったのは良いことのようにも思えていましたが……
ライラこんな形で妨げになるなんて……。
スレイ帝国には強力な光魔を呼び出す奴もいるっていうし、神依ができれば対抗手段も増えると思ったんだけどな。
セシリィ――ただいま帰りました !……あら、スレイさんたち、随分疲れた顔をしているけど大丈夫 ?
スレイセシリィか。神依ができるか試してたんだよ。だけど……。
セシリィ……駄目だった ?
ライラはい……。セシリィさん、この浄玻璃鏡をもってしてもやはり神依は難しいのでしょうか。
セシリィ以前、スレイさんたちの世界のことを聞いたとき浄玻璃鏡の力があっても、神依がこの世界で成功する確率はゼロに近いと思ったの。
セシリィそれは、この世界に主神であるライラさんがいないことが大きかった。
セシリィ今なら浄玻璃鏡がスレイさんだけでなく、ミクリオさんやライラさんの現在過去未来、あらゆる可能性を映すことで神依が使えるようになるかも知れない。
セシリィただ、それにはきっかけが必要なの。ユーリさんやルドガーさんのように、何か皆さんの心を動かすものがあればきっと……。
スレイきっかけかあ。それって何なんだろうな。
ミクリオどっちにしろ、諦めるのはまだ早いってことだろ。
スレイだよな。もっと色々試してみるか !
ミクリオそうだ、スレイ。また息でも止めてみるかい ?アリーシャに初めて僕たちの声を聞かせた時みたいに。
ライラいいですね ! まずは初心に戻って、感覚を研ぎ澄ませましょう。それではスレイさん、今から息をしちゃ駄目ですよ ? 目も閉じて下さいね。
スレイええ ! ? 待って待って !
ルーティあ、いたいた !ちょっとあんたたち、一緒に来てくんない ?
スレイルーティ、どうしたの ?
ルーティさっきエミルたちが戻って来たんだけど、なんか妙な話になってるみたいでさ。すぐに動けそうな奴らに集まってもらってんの。
ルーティ他にも声かけてくるから、先にミリーナたちの所に行っててもらえる ?
スレイわかった、すぐに行くよ !

キャラクター4話【9-6 アジトへの道3】
スレイ話は聞いたよ。ルカの仲間の居場所がわかったんだって ?
ミリーナええ。まだ信じていいのかわからないけれど……。
セシリィバルドさんなら……信頼できるわ。
ルカセシリィはバルドのこと詳しいの ?
セシリィ……生前、お世話になったから。
イリアそっか、セシリィは確か本当はシドニーっていう名前の鏡士なんだっけ。
セシリィええ。私……ガロウズと親しかったからセールンドとの戦争が始まったとき内通を疑われてしまったの。
セシリィでもその時、私の言葉を信じて庇ってくれたのがバルドさんだった。
セシリィ結局は、陛下の命令で前線に送られてしまったけれどバルドさんもナーザ将軍――ウォーデン殿下も私を気遣ってくれたわ。
ソフィナーザもいい人なの ?
セシリィ厳しい方だったけれど、ビフレストのことを思う素晴らしい皇太子殿下だったわ。
セシリィあの方が、今リビングドールとして、何をしようとしているのかはわからないけれど、メルクリア様のリビングドール計画には乗り気ではない筈よ。
スレイだったら協力し合えるといいよね。戦わなくてすむなら、それが一番だよ。
ミリーナええ。私たちも協力できるならそうしたい。その方がフレンさんを助ける道にも繋がるんじゃないかと思うの……。
ミリーナだからまずはバルドさんのくれた情報が本当かどうか確認しないとね。
コーキスヴェイグ様はユーリ様やエミル様たちとヒルダ様に会いに行ったから、スレイ様たちが一緒に来てくれると助かるよ。
スレイオレたちもライラと会えたときすごく嬉しかったからルカのためにも是非協力させてよ。
ルカありがとう、スレイ…… !
ルーティちょっと、ルカ。あたしたちのこと忘れてない ?
ミラ=マクスウェルわざわざ主張しなくても構わないと思うのだが。
クレスうん。それに僕らの気持ちはスレイと同じだからね。僕も仲間と再会できたときは嬉しかった。
ミントええ。私も合流できて安心しました。スパーダさんにも安心してもらいたいです。
イリアまぁ、スパーダがそう簡単に弱るってことはないと思うけど、酷い扱い受けてるなら助けないとね。
ミリーナそれじゃあ、急ぎましょう。どうやらスパーダさんは精霊研究所から、別の施設へ運ばれるそうなの。
ミリーナ輸送の時はどうしても隙ができるわ。イリアの時と同じように助けられる筈よ。
セシリィあ、待って。私ミリーナを呼びに来たの。魔鏡通信でもよかったんだけど私も荷物を取りに来る必要があったから……。
ミリーナえ ? 私 ?
セシリィフィリップさんがスピルリンクに共鳴する魔鏡を完成させたの。
セシリィクラトスさんの治療のためにミリーナとできれば治癒術を使える人たちに来て欲しいって。
ミリーナあ、でもスパーダさんを連れた輸送隊がもうすぐ出発するって……。
コーキスミリーナ様。こっちは俺たちに任せて下さい。ルカ様にイリア様、アスベル様とソフィ様それにスレイ様やクレス様たちもいます。
イクス俺もコーキスのサポートをするよ。
コーキスマスターもサポートしてくれるって。
アスベル俺たちもさっきヒューバートに声をかけたんだ。ミリーナはクラトスさんの方へ行ってくれ。
ルーティ確か回復役が必要なのよね。あたしとミントもミリーナと一緒に行きましょう。
ミントええ、そうですね。
クレスその方がいいね。こちらは十分戦力が整ってる。
アスベル確かシェリアも残ってる筈だ。声をかければ同じような治癒術を使えるメンバーを集めてくれると思う。
ミリーナ……そうね。そうさせてもらうわ。
ライラあちらも大変だと思います。頑張って下さい。
ミリーナありがとう、ライラ。それとスパーダさんはかなり特殊な存在として、帝国でも厳重な警備をされているらしいの。だから、ライラも気をつけてね。
ライラ承知しました。しっかり役目を果たしますわ。
コーキスよし、俺たちはスパーダ様を取り戻そう。
ミリーナ私たちはクラトスさんの命をつなぎ止めましょう。

キャラクター5話【9-7 スピルメイズ 入口】
フィリップミリーナ。それにミントさん、ルーティさんシェリアさん、リフィルさん。ご協力感謝します。
ルーティ勿論、お礼の方はもらえるのよね ?
フィリップお金……ですか ?
ミントルーティさん ! ?
ルーティウソウソ、ジョーダンよ。こっちの世界でそこまで必死にお金集めたところでね……。
ルーティそれにみんな深刻そうな顔してるからちょっと和ませようと思っただけ。硬くなってちゃ上手くいくものもしくじるわよ。
シェリアルーティらしいわね。で、私たちは何をすればいいの ?
マーテル皆さんには私と一緒にクラトスの治療をお願いしたいんです。
リフィルマーテル……。
マーテルクラトスは今、生命維持装置の中にいます。ここから出すと、死へのカウントダウンが始まる。これを遅らせるために、ミトスがマナを分け与えます。
マーテルその間、治癒術を施すことで肉体の崩壊を食い止めるのが私たちの役目です。
ミトスクラトスはボクのマナを受け付けない。それはもう自分は役目を終えて死ぬとクラトスが心の奥底で決めてしまっているからだ。
ミトスクラトスはずっと死に場所を探していた。姉さまを助けたことで、クラトスはもう自分の役目は終わったと思ってるんだ。
ミトスそうじゃないってことを教えられるのは……ロイドだけだ。ロイドがクラトスを説得する間ボクらでクラトスの命を繋ぎ止める。
ロイド………………。
フィリップミトスと皆さんがクラトスさんの命を繋ぐ間シングとロイドとミリーナにクラトスさんのスピルメイズに入ってもらいます。
フィリップミトスの言う通り、クラトスさんの心に呼びかけて生きる気持ちを取り戻してもらう。
ミリーナ私も ?
フィリップ僕が作ったスピルリンク魔鏡は、これが最初の稼働になるからね。何か起きたときのための安全弁として鏡士の同行は不可欠だ。
フィリップシングはソーマがあるから問題ないけれどロイドの存在はスピルリンク魔鏡でしか保てない。
ミリーナ何かあったときに、ロイドの存在をクラトスさんの心の中で具現化させ続けるのが私の役目なのね。
フィリップスピルリンク魔鏡を使っても、ソーマのない人間が心――いや、スピリアと呼ぼうか。
フィリップソーマの無い人間がスピリアの中に入れるのは三人まで。あと一人の人選はロイドに任せるよ。
ロイド……でも、クラトスを説得するのに誰がいいかなんてよくわからないよ。
ゼロスクラトスを説得する為のメンバーじゃなくてロイドくんの心を支える仲間を選べばいいんでねーの。コレットちゃんとか。
ロイドコレットか……。そういえば……コレットも、あの時見てたもんな。
コレットあの時 ? 何のこと ?
ロイド元の世界にいた頃、クラトスが親父だってわかったとき、あいつ俺を庇っただろ。コレットが「ロイドはロイドだ」って言ってくれた。
ミトス………………。
コレット……うん。だってロイドがいつも言ってくれたでしょ。神子だろうと天使だろうとコレットはコレットだって。同じだよ。
ロイドうん。もしまた俺が取り乱したら、ガツンと言ってくれよな。
コレットまかせて !
ミトスロイド・アーヴィング。
ロイドえ ? な、何だよ、急に……。
ミトスクラトスをお願い。古代大戦の英雄や天使なんかじゃなくて一人の人間として生きていいんだって教えてあげて。
ロイド――わかった。けど、それはお前も同じだと思うぜ、ミトス。
ミトス……ボクはいいんだ。ボクは許されなくていい。とにかくクラトスを助けて。
ロイド助けるさ、必ず !
フィリップそれじゃあ、シング、ロイド、コレット、ミリーナでクラトスさんのスピルメイズへ向かってもらおう。
マーテルただし、私たちの治癒術には限界があります。時間は余り多くない。魔鏡通信用の鏡が光ったら限界が来たと思って下さい。
シングその時はスピルメイズから出るんだよな。
フィリップええ、その通りです。――ローエンさん、準備は ?
ローエン万全です。
シングよし、始めよう。

キャラクター6話【9-12 スピルメイズ 第5層】
ロイドここがクラトスの心の中か……。
コレット何か不思議な場所だね。綺麗で……清らかな感じ。聖域って感じがする。
シングうーん……。確かに、何だかちょっと普通のスピルメイズとは違うな。なんでこんな雰囲気なんだろう。
ミリーナ気のせいかしら。上手く言えないけどミラやエミルや天族のみんなから感じる感覚に近いような気がするわ。
コレットあ、確かにそうかも……。
ロイド……もしかしてオリジン ? 確か元の世界でクラトスはオリジンの封印に関係してたよな。その影響なのかも。
シング待った ! 誰かいるぞ。きっと……。
クラトス何故お前たちがここにいる。ここは私の心の中だ。今すぐ出ていけ。どうせこの場所も朽ち果てる。私という存在と共にな。
ロイドどうしてだ。ミトスのマナを分けてもらえばまだ生きられるんだぞ。
クラトス……何故、これ以上私に生きろと望むのだ。私はもう四千年以上生き存えてきた。もう十分だ。
シング四千年…… ! ?クラトスさんってそんなに長く生きてきたの ! ?
ミリーナこの場所に精霊や天族と同じものを感じたのはクラトスさんが彼らと同じくらい長く生きてきた人だからなのかしら……。
ロイド何で……。何でそんな風に言えるんだよ。
ロイド俺はたった17年しか生きてないからわかんねぇけどでも誰かが生きていて欲しいって思ってくれるなら何としても生き続けたいよ。
クラトス……ロイド。お前は若い。私もかつては若かった。マーテルとミトスを救う――それが私が旅に出た最初の動機であり願いだった。
クラトス元の世界では決して叶うことのなかった願いが果たされたのだ。影の存在であってもな。
ロイド願いが叶ったならミトスたちのその後を見届けてやれよ !
クラトスしかし元の世界では、私はマーテルもミトスも最愛の妻すらも救えなかった。
クラトスどのような形であれ、世界が救われるならそれを見届け、朽ちる――それが私の死ぬときだとそう思っていたのだ。
クラトスしかし異世界に具現化された身では元の世界を救うことも見届けることも叶わぬ。
クラトスそれでも若かりし頃の大願は成就した。もう私にやるべきことはない。
ロイドあんたにはなくても俺にはある。
ロイド俺は……俺はまだ何も知らない。父親がどんな人間だったか母さんがどんな人だったのか。
ロイドあんた……父さんがどうして元の世界でミトスの千年王国計画に荷担したのか !
ロイド俺は、父さんから何も聞いてない !目の前にいるのに、話す機会もあったのに父さんは何も言わないで死ぬのか ! ?
クラトス………… !
ロイドあんたは確かに願いを叶えたのかも知れない。
ロイドでも、本当にミトスやマーテルを救いたいなら自分たちが生きてることに負い目を感じさせるような死に方はするなよ !
ロイド死にたいなら、自分のやったことに始末をつけてからにしろ !
シングロイドの言う通りだ。本当に誰かを救おうと思ったら命だけじゃなくてスピリアも守らなきゃ。
ミリーナ…………。
クラトス……死に場所を得たいと思うことは、罪なのか。
コレット違います。そうじゃない。ロイドはただクラトスさんに生きていて欲しいんです。だってお父様だもん。
ロイドあんたはどうして生きることが苦しいと思うんだ ?長く生きてきたからか ? だったら――
ミリーナロイド ! ? どうして武器を構えるの ! ?
ロイド戦うんだ。過去の英雄クラトスを倒す。これは息子である俺の役目だ。
クラトス……よかろう。これが最期の戦いだ。お前がどれほどの腕前になったのか見せてもらおう。

キャラクター7話【9-12 スピルメイズ 第5層】
クラトス……強く、なったな。さあ、とどめを刺せ。
ロイド……とどめなら刺したよ。今、あんたの心に。スピリアにさ。
ロイドあんたはクラトスの心だろ。俺はクラトスの心を――いや、過去の英雄クラトスの心を倒した。
ロイドだから、いまスピリアに残っているのは俺たちの旅を導いてくれた傭兵クラトスの心だけだ。
クラトス何……。
ロイド屁理屈だなんて言うなよ。屁理屈だって理屈のうちだ。
ロイド後悔して苦しんできた英雄クラトスには、生きる希望が見つからなかったのかも知れない。だから生きることが苦しかったのかも知れない。
ロイドでも、本当は希望なんてどこにでも転がってるんだと俺は思う。
クラトス……その希望が見つからないから苦しいのだと思わないか ?
ロイド希望が見つかれば苦しくないんだろ ?
ロイドそれって要するに希望が見つからないから苦しくて死にたいって思うだけで要するに苦しいことから逃げたいんだろ。
ロイド苦しくなければ逃げないんだから結局死にたくないんじゃないのか ?
クラトスお前は……本当に……。
ロイド馬鹿だって言うんだろ。みんなそう言うし、それでいいよ。あんたが生きる気になるのなら。
ロイド大体難しく考えすぎなんだよ、クラトスは。生きるって単純なんだぜ。息を吸って吐いてればいいんだ。
ロイド後は笑って何とかなると思ってればそれでいい。もしどうしてもそんな風に思えないならあんたの苦しさを俺も背負うよ。
ロイド一人で背負うよりはマシだぜ、きっと。
ミリーナ……クラトスさん。私はかつて世界を滅ぼしました。生きている時間こそ、クラトスさんとは違うけれど大切な人を亡くした記憶もあります。
ミリーナそれでも私は何とかやり直そうとしている。クラトスさんにだってきっとできると思います。だって大切な息子さんが一緒にいるんですもの。
クラトス……四千年生きてきても私は何も知らないのだと思い知らされる。
シング知らないなら、これから知ればいいですよね。
クラトスそうだな。……私ももう一度向き合わねばならぬのかもしれぬな。スピリアに。
ミトスクラトスが……マナを受け入れた !
ファントムそれじゃあ、ロイドたちは成功したんだね。
ミトス……うん。だから後は……お願い……。
ルーティちょ、ちょっと ! ? ミトスが倒れちゃったけど ! ?
マーテル大丈夫。マナを分け与えて衰弱していますがこの子は無事です。
マーテルマナを人に譲るという行為は命を削り取るようなもの。この子は二度目ですから負担も大きいのでしょう。
ミントそれでも……クラトスさんを助けたかったんですね。
マーテル……しばらくは安静が必要ですが、大丈夫。あとはクラトスが目を覚ませば――
リフィルみんな ! お帰りなさい。クラトスがマナを受け入れたわよ。
シングやったね、ロイド !
コレットクラトスさんもう一回生きるって決めてくれたんだね。
ゼロスはぁ……。手の掛かる天使様だぜ。
ミリーナあら、もうクラトスさんは天使じゃないのよ、ゼロスくん。
ゼロスは ? どういうことよ。
ファントムクラトスさんが目を覚ましたようだ。
ロイドクラトス !
クラトス……ロイド。それに神子にミリーナに……シングだったな。世話をかけたようだ。すまない。
ロイド俺たちだけじゃないぜ。マーテルさんもミトスもルーティもミントもシェリアも、救世軍のみんなももう、あんた色んな人に迷惑かけたんだからな !
クラトスそのようだ。すまなかった。
マーテルクラトス。気にしないで。むしろ私が謝らなければ。四千年前、私があなたを言葉の呪いで縛ってしまった。
マーテルミトスを守って欲しいという私の願いを、あなたはこんなにも長い間守ろうとしてくれた。ごめんなさい。そして……ありがとう。
マーテルあなたはもう私たち姉弟の呪縛から解き放たれるべきだわ。ロイドのためにも。
クラトス……そうだな。だが、あれは呪縛ではない。騎士としての契約だ。それぐらいの矜持は残っている。強がらせて欲しい。
マーテルありがとう、クラトス。あなたは昔から優しいままね。
クラトスロイド……。改めて私に時間をくれ。私には……まだお前に伝えねばならないことがたくさんある。
クラトス父親としてはすでに失格しているがそれでもまだ間に合うこともあるだろう。
ロイド誰が失格だなんて決めたんだよ。そんなの誰にも決められないし俺は失格だなんて思ったことはないぜ。
クラトスそうか……。
ロイドそうだよ。だから……生きててくれてありがとう……。父さん。

キャラクター8話【9-14 静かな平原2】
コーキスバルドの話だと、スパーダ様の輸送隊はこの辺りを通る予定なんだよな。
ソフィリチャードも輸送隊の中にいるのかな ?
アスベルもしリチャード本人だとしてリビングドールにされているんだとしたら……ラムダはどうなってるんだろう。
スレイラムダって ?
アスベルラムダは俺たちの住んでいた星とは違う星から来た生命体、っていうのかな。リチャードの中に取り憑くような形で融合していた。
ミクリオ……取り憑く、か。リビングドールに通じるものがあるね。偶然なのかな。
スレイ帝国は鏡映点の世界の技術を学んで応用しているところがあるみたいだからもしかしたらヒントになっているのかも知れない……。
コーキスその辺りはバルドが教えてくれるんじゃないか ?
ヒューバート……ところで布陣はどうしますか ?
ヒューバートこの辺りの地形を考えると、左の丘側から側面を突く形で輸送隊を襲うのが適切のようですが。街道を通ってくる輸送隊側からは死角になります。
クレスそうだね。もしかしたらバルドもその辺りを考慮してこのポイントを知らせてきたのかも知れない。
ヒューバート……それはどうでしょう。バルドを信じすぎるのは危険です。
ヒューバートミリーナさんもユーリも気にしていたようにぼくたちを罠にかけるには襲撃ポイントを指定する方が簡単ですから。
コーキス一応、周辺を見て回ったけど伏兵とかはいなかったよな。
ヒューバートこちらに知られないように伏せているのかもしれません。ここは慎重になりすぎて困ることはないと思います。
ルカでも、バルドも言ってた通り今更罠にはめるぐらいなら、ジュニアに見つかった時に僕たちを捕まえるなり倒すなりできたと思うんだけど。
イリア前から思ってたけど、ヒューバートって慎重通り越して石橋を壊すタイプってことない ?
イリアスパーダを助け出せるかどうかって瀬戸際なんだしガチガチに疑ってかかって救出のタイミングを無くすなんてのは勘弁してよね。
ヒューバート敵対していた相手と手を組むかも知れないんですよ。今慎重にならないで、いつなるのか教えて頂きたいぐらいです。
スレイまぁまぁ。どっちの言い分もわかるよ、オレ。
スレイ相手の言うことを全て鵜呑みにすることと信じるってことは違うんだろうし相手を信じることで始まる関係もあるんじゃないかな。
スレイそれに今回の作戦は、オレたちがバルドを見極めるだけじゃなくて、バルドもオレたちを見極めようとしてるような気がするんだ。
ヒューバート……それは、確かにそうかも知れませんね。全ての出来事には当事者の数だけ視点がある。
ミラ=マクスウェルバルドがこちらを見極めようとしているのならこちらが罠の可能性を考慮して、周辺の調査を入念に済ませたことは好意的に取られるのではないか ?
ミラ=マクスウェル手を取り合う相手に、相応の技量と知性を求めるのはおかしなことではない。
アスベルなら、俺たち全員が、スパーダを助けるためにそれぞれ正しい方向を見ていたってことだな。
ミクリオそれぞれ違う個性が集まっていいチームになっているってことか。
コーキスそりゃ、最高のチームだって !みんな自分の世界のことじゃないのに命がけでマスターたちを助けてくれるんだからさ。
イクスああ、そうだよ。みんな本当にありがとう。
イクスそれに俺も魔鏡結晶を通じて敵のおかしな動きは見張れると思う。
イクスだからみんなはバルドの思惑にあまり囚われずにそれぞれが出来ることを真摯にやっていけばきっと大丈夫だよ。
イクス心配性なのは俺だけでいいからさ。
コーキスえっと……。マスターが長々色々言ってたけど要するに、みんなありがとうだって。
コーキスあと、敵のことはマスターも見張るからあんまバルドが何考えてるかとか気にしないでやってくれって。
イクスお、大雑把になってる……。
ライラそうですわね。仮にバルドという人が何か害を成すようなことをしたらしばるといいと思います♪
クレス! 『バルド』だけに !
ソフィ? ? ?
イリアうわぁぁ……サッッムイ……。
ミラ=マクスウェル――待て。四大が教えてくれた。輸送隊が近くまで来ているようだ。ソフィたちが気にしていたリチャードもいるようだな。
三人! !
イクス俺も輸送隊を確認した。
コーキスマスターも輸送隊が来るって !
クレスよし。ヒューバートの作戦通り、あの丘から攻め込むぞ !
クレス可能ならリチャードは捕虜という形で連れて帰ろう。それでいいかな ?
ソフィ……わかった。
帝国軍兵士チーグル様 ! 敵襲です !数は多くありませんがとてつもなく強い連中でしかも【マクスウェル】が向こうについています !
チーグル何 ! ? 急いでケージを確認しろ !
ソフィいた…… ! リチャード !
チーグル――この体の知り合いか。
ソフィラムダを、感じない……。
ソフィあなたは誰なの ?リチャードを返して ! !
チーグルお前たちの相手は僕がするまでもない。光魔と戯れていろ !

キャラクター9話【9-15 静かな平原3】
クレス……くっ ! 倒しても倒しても光魔が現れる。
イクス急げ ! リチャードが馬車に乗り込んだ !きっとスパーダを連れて離脱するつもりだ !
コーキスリチャードがスパーダ様を連れて逃げようとしてるって !
ルカスパーダが――
コーキスルカ様、イリア様、アスベル様もソフィ様もヒューバート様も、一緒にリチャードを追いかけて下さい。
コーキスここは俺が引き受けます !
イクスコーキス ! 魔眼は駄目だぞ !またコーキスの体に負担が――
コーキスここで使わないでいつ使うんだ !俺だってマスターがさらわれたら全力で取り返しに行く ! みんなだってそうだろ !
アスベル――行こう。ここで二人を取り逃がしたらバルドの情報も無駄になる。
ルカうん。コーキス、後はお願い。
ミラ=マクスウェルコーキス。魔眼の解放はぎりぎりまで待て。まだ私もクレスもスレイもミクリオも十分戦える。
クレスああ。焦らずに行こう !
スレイ……ミクリオ。
ミクリオわかってる。コーキスの言葉じゃないがここで使わないで、いつ使うんだ。
ライラお二人とも ! 浄玻璃鏡が !
スレイ光り出した…… !
ミクリオスレイ、今だ !
コーキスな、何だ ! ? スレイ様とミクリオ様が合体した ! ?
スレイ――ぐっ…… ! ?
ライラいけない…… !
二人うわぁぁぁぁぁぁぁ ! ?
ライラ神依が強制的に解除された ! ? そんなことが…… ! ?
? ? ?え ! ? 今のって……精霊装…… ! ?
クレス……光魔はスレイとミクリオが殲滅してくれたけど一体何が起こったんだろう。
ライラあれは【神依】ですわ。天族と導師が融合して戦う術です。エンコードの影響で使えなくなっていたのですが……。
ミクリオ……いや、今のはいつもの神依じゃなかった。
スレイああ。途中で神依を保てなくなって強引に解除されちゃったんだよ。
? ? ?……それって、多分天族の存在が、元の世界とは少し違うものとして定義されたからだと思うよ。
コーキス誰だ――って、エミル様 ! ?アスターのところに行ったんじゃないのか ! ?
ミラ=マクスウェル……いや、待て。あれはエミルではない。姿形は同じだが、少なくとも精霊ではない。
? ? ?精霊 ? あはは、僕は精霊を研究する側の人間だよ。アステル・レイカーです。よろしく。
コーキスアステルって、確かエミル様たちが捜していた鏡映点の名前じゃ……。
アステルえ ? そっちに僕を捜している人がいるとは思わなかったな。
ライラそっちとおっしゃいましたわね。私たちが何者でどこに属しているのかご存じなのですか ?
アステルそりゃ、精霊マクスウェルを抱えてるのは黒衣の鏡士の人たちでしょ ?
アステルあ、気にしないで。僕、帝国の側にいるけど君たちのことをどうこうしようとか思ってないから。
アステルさっきの輸送隊の馬車に乗ってたんだけど戦闘のどさくさで馬車から落ちちゃって……あははは。
コーキス軽…… ! ?
スレイねぇ、さっき天族の定義がどうとか言ってなかった ?
アステルあ、そうそう。その話だった。エンコードは外部の情報をこの世界の法則に馴染ませることが目的の機構だからね。
アステル天族の存在は限りなく精霊に近しいものとして定義されているんじゃないかな。
ミクリオどうして君が天族の定義が変わったと言えるんだ。それが言えるのは天族の存在を理解している人間だけだが、君はエミルの世界の人間なんだろう ?
アステルそれは僕にもわからないよ。天族のデータは帝国から提供されたんだ。だから知っているってだけ。
アステルで、話を戻すけど、天族が疑似的精霊――もしくは精霊亜種のように定義された結果、その神依という融合術の仕組みにそぐわなくなっているんだ。
アステルそのままだと神依を制御するのは難しいと思うよ。
スレイそんな……。この力があれば、みんなを守れると思ったのに……。
アステル……んー、バレなきゃ怒られないよね。
アステルえっと、この指輪をはめて、もう一度神依してみて。浄玻璃鏡があるから、神依をオーバーレイ能力と定義しなおして、浄玻璃鏡に記録できると思う。
コーキスえ ?何か難しいこと言っててよくわかんねーんだけど……。
アステルつまり、本来の神依は難しいけれど魔鏡に神依化能力をコピーすれば、その魔鏡を使うことで神依できるようになるよってこと。
アステルただ、魔鏡に神依化能力をコピーするためには完全な神依を実行して魔鏡に映さないといけないんだ。
アステルだから完璧な神依を実行するためにこの指輪をつけてみてって言ってるんだよ。
クレスどうしてその指輪をはめると神依ができるようになるんだ ?
クレス天族が精霊と同じような存在と定義されている事実は変わらない筈だけど。
アステルこれは……簡単に言うと、精霊と神依するための指輪なんだ。精霊輪具っていうんだけどね。
アステル天族の定義が精霊と近しいものとして定義されているなら、これが役に立つと思うんだ。
イクスそれは危険な物じゃないのか ?
コーキスそれ、危ねーんじゃねぇの ?
アステル長時間身につけると危険だけど神依を魔鏡に映す間だけなら大丈夫だよ。まぁ、無理にとは言わないけど。
スレイ……ミクリオ、やってみないか。
ミラ=マクスウェルいいのか ? アステルは帝国の人間だぞ。
スレイでも、オレたちを陥れるのが目的ならこんなやり方はしないと思うんだ。
スレイそれに、これからの戦いで神依が必要になる局面がきっと出てくると思う。
ミクリオそうだな……。何も出来ないまま手をこまねくのはもうごめんだ。
コーキスでも浄玻璃鏡が光らないと駄目なんじゃないか ?
ライラ……それには心当たりがあります。
ライラスレイさんとミクリオさんが神依で戦うという意思を固めるのが条件として重要なのだと思います。
ライラですから、必要なのは神依したお二人と戦ってくれる存在ですわ。
アステルあ、僕は無理。運動オンチなんだ。
ミラ=マクスウェルそういうことなら、ここでクレス道場を開けばいいのではないか。私も協力するぞ。
クレスそうだね。僕も構わないよ。
コーキスあ、俺も、俺も !
アステルえー。同士討ちさせて弱らせてから伏兵どーんみたいな展開があるかも知れないでしょ。こういう時は、戦力を残しておくのが重要だと思うよ。
コーキスちぇ……。つまんねーの。俺もスレイ様とミクリオ様の神依と手合わせしたかったなー。
スレイ神依をちゃんと取り戻せたらいつでも手合わせするよ。
ミラ=マクスウェルでは、本気で行くぞ !
スレイこっちこそ !
ライラまた浄玻璃鏡が輝き出しましたわ。今です !
ミクリオスレイ !
スレイああ ! 今度こそ成功させる !
二人『ルズローシヴ=レレイ』 !

キャラクター10話【9-15 静かな平原3】
コーキス上手くいった……のか ?
ライラええ !
スレイやったな、ミクリオ !
ミクリオああ……。でも、何だかいつもより疲れた……。
アステルあ、精霊輪具の影響だと思う。急いで外して !
ミクリオわ、わかった……。
アステルうん。上手くいったみたいでよかった。精霊輪具は返してもらうね。これを無くすと怒られちゃうからさ。
クレス神依……。すさまじい力だったよ。僕ももっと修行しないとな。
ミラ=マクスウェルああ、スレイとミクリオが頼もしい力を得て私も嬉しいよ。
バルド皆さん ! よかった……ご無事でしたか。
アステルあれ、バルドさん ?
バルドレイカー博士 !
コーキス博士 ! ?
アステルやだなー。アステルでいいって言ってるのに。
バルドは、はい。アステルさん。まさかあなたがこちらにいらっしゃるとは思わなかったものですから……。
アステル急に【空のマクスウェル】を運べって言われて輸送隊に混ぜられちゃったんだよ。
バルド…… ?あの輸送隊は特異鏡映点亜種03の物ではなかったのですか ?
ミラ=マクスウェル待て。空のマクスウェルとは何だ ?
スレイそれに、今の話だと、あの輸送隊の馬車にはスパーダがいなかったってことになるけど……。
アステルスパーダの輸送なら後回しになったんだ。……って、ああ、そうか。マクスウェルじゃなくてスパーダが狙いだったんだ。
ミラ=マクスウェルマクスウェル ?この世界の精霊マクスウェルのことか ?
アステル……バルドさん、話していいの ?
バルドアステルさんは関わらない方がいい。リヒターの立場もあるでしょう。
クレスリヒターって、たしか四幻将の……。
アステル四幻将 ! それ ! ダサいよねー。リヒターに会う度に『焔獄さん』って指さして笑っちゃう。
コーキスうーわー……。いい性格してるぜ。エミル様とえらい違いだな。
ミラ=マクスウェル話をそらすな。空のマクスウェルとはなんだ ?
バルド帝国は限りなくあなたに似たマクスウェルを異世界からサーチして具現化したのです。
ミクリオ何のために、そんなことを。
バルド……この世界の精霊マクスウェルを殺したからです。
ミラ=マクスウェル! ?
アステル……デミトリアス陛下は、ダーナの巫女と精霊の力を利用しようとしているみたいなんだ。
アステル詳しい事情はわからないけれど僕もその為の研究を命じられてる。だから忠告しておくよ、精霊マクスウェル。
アステルクルスニクの鍵だけじゃなくてあなたも帝国には近づかない方がいい。きっと精霊装の道具にされる。
バルド特異鏡映点亜種03の行方はこちらで再度確認しておきます。これは私の不手際だ。次は必ず彼を――スパーダを皆さんの下に戻します。
クレスあ、仲間が輸送隊を追いかけていってるんです。僕らもこの後追いかけるつもりですがもしできるなら、そちらからも助けてもらえませんか。
バルド承知しました。手配します。
アステルけど、バルドさんも気をつけた方がいいよ。
アステル空のマクスウェルの輸送はあまりに急過ぎた。きっとサレ辺りの横やりだと思う。バルドさんの動きを知られているのかもしれない。
コーキスバルドが裏切ろうとしてるってことアステルも知ってるのか ! ?
アステルうん、知ってるよ。僕はややバルドよりの中立。秘密は守るから安心して。
バルドアステルさん、お送りします。あなたがはぐれたことをリヒターが知ったら……。
アステルなーんか、こっちの世界に来てからリヒターが妙に過保護なんだよね。まぁ、仕方ないのかな。
アステルそれじゃあ、僕はこれで。スレイ、ミクリオ、おめでとう。これからも頑張ってね。
アステルあ、あとマクスウェル、頼みがあるんだけど。
ミラ=マクスウェル何だ ?
アステル握手してもらえるかな。
ミラ=マクスウェル構わないぞ。
アステルやったー !しばらくこの手を洗わないでおきたい…… !
バルドでは、改めてご連絡致します。
コーキスよし、ミクリオ様が元気になったら俺たちもアスベル様たちを追いかけよう !
ミクリオ見くびるなよ。もうすっかり大丈夫だ。
スレイまた強がってる。
ミクリオ強がりなんかじゃない !
イクスアスベルたちはここから北の方角にいるみたいだ。
コーキスマスターがアスベル様たちを見つけてくれたぞ。行こう !
to be continued
キャラクター1話【10-1 帝都へ続く街道1】
セシリィ……よしっと。こっちの探し物も見つかったしそろそろ私もまたケリュケイオンへ行ってくるね。
カーリャはい。ゲートはいつでもオッケーですよ。
カーリャあっと……。魔鏡通信です。ちょっと待って下さい。これはコーキスですね。
カーリャこちらアジトで待ちぼうけのカーリャちゃんです。どーぞ ?
コーキス――カーリャ先輩か ?スパーダ様を助けるのに、色々と問題が発生してさ。一旦情報を共有しようと思って。
カーリャい、色々 ! ? 何があったんですか ! ?まさか、また誰かが怪我とか ! ?
コーキスいや、トラブルとか行き違いはあったけど負傷者はいないよ。
カーリャそうですか……良かった。
コーキスちょっと動揺しすぎだろ、パイセン。それじゃ、後輩に示しがつかねえぜ ?
カーリャだって、この前はクラトスさまやマーテルさま、それにコーキスだって倒れたじゃないですか !帰ってくるたびに、誰かが命を落としかけて……。
コーキス……そっか。そうだよな。先輩はアジトから出られないから、余計心配だよな。ごめん……からかったりして……。
カーリャいいんですよ。この仮想鏡界を維持して守るのがカーリャのお仕事ですから。
カーリャ……確かに、コーキスみたいに、もっと力があればって思う時もありますけどね。
セシリィ…………。
カーリャそれで、そちらはどうなったんですか ?
コーキスああ、こっちの状況が変わったんだ。スレイ様たちも神依化できたから――
セシリィえ、スレイさんたち、神依化できたの ! ?
スレイセシリィもそこにいるのか ?丁度よかった。聞きたいことがあるんだ !
ミクリオスレイ、報告が先だろ。セシリィ、神依のことは順を追って話すよ。まずは今回の目的、スパーダの奪還なんだけど――
カーリャ――そうですか。輸送隊はスパーダさまのものじゃなかったんですね。
カーリャそれに、やっぱりチーグルがリチャードさまだったなんて……。アスベルさまたち……複雑でしょうね。
セシリィ……私、アスベルさんたちに謝らないと。チーグルとリチャードの関係をわかってたのにリチャードの仲間を探そうとまでは考えなかった……。
セシリィそこに思い当たっていればもっと早くリチャードのことも解決できたかもしれないのに……。
スレイ仕方ないさ。誰が誰の知り合いだとか、今まではわからなかったんだから。リストだって、ここ最近でようやく作ったくらいだし。
セシリィ……でも、やっぱり責任はあると思う。だから私も、全力でリチャードを助けるために動くわ。
ミラ=マクスウェルそうだな。後悔よりも、その方が彼らのためになる。
セシリィよし、しっかりしないと !それで、アスベルさんたちはルカさんたちと一緒にリチャードを追っていったのね。
コーキスああ。スパーダ様のことはバルドに任せてあるから、俺たちはこれから合流するつもりだ。
スレイそれでセシリィ、ミクリオとの神依だけどどう思う ? 成功したけど、精霊輪具がないままじゃ他の天族とは神依はできないってことだよな。
セシリィそうね。そうなると思う。それに……そもそもその精霊輪具、かなり危険なもののような気がする。
セシリィ精霊輪具さえあれば他の天族とも神依化できる可能性は高まると思うけれど慎重に調べた方がいいんじゃないかしら。
ライラでは私とスレイさんが神依できるようになるのにもまだしばらく時間が掛かると言うことですわね……。
セシリィ気を落とさないで、ライラさん。精霊装のことを調べてみればきっと神依化への手がかりも見つかると思うから。
セシリィ――それとミクリオさん、体の調子はどう ?
ミクリオああ、今は平気だよ。神依化直後は疲労が激しかったけどね。
スレイ……ミクリオ、無理してないよな ?
ミクリオしてないよ、スレイじゃあるまいし。僕がここで強がったら、精霊輪具の正確な情報をセシリィに伝えられなくなるだろ。
セシリィさすがミクリオさん。その通りよ。
セシリィ精霊輪具を実際に体験したミクリオさんの感想はとても重要だわ。だから正直な話が聞きたいの。落ち着いたら話を聞かせてね。
カーリャカーリャは精霊を殺したって話も気になりますよぅ……。
ミラ=マクスウェルああ……。バルドたちは、この世界のマクスウェルが殺されたと言っていた……。そして私にも「精霊装の道具になるから帝国には近づくな」と。
クレスあの指輪は、精霊が犠牲になるような危険な技術が使われているってことだね。あの時は、アステルがいたからアドバイスをくれたけど……。
セシリィもし精霊輪具が手に入っても、知識のない私じゃ何かあったときに対処できないでしょうね。
セシリィそのためにも精霊装のことをもっと知る必要がある。大体、この技術が「どこ」の「誰」からもたらされたものかってことさえ、わからないんだから。
ミラ=マクスウェル元々、ティル・ナ・ノーグにあった技術ではないのか。
セシリィうーん……。精霊と同化するなんて技術私は初めて聞いたわ……。私の死後に開発されたものかも知れないけれど……。
セシリィ私はクロノスの力を魔鏡に落とし込む研究をさせられていたから、そんな技術があればとっくに教えられている筈よ。
セシリィ帝国はクルスニク一族を研究対象にしていたし精霊装も、異世界の技術を利用して開発している可能性が高いと思う。
セシリィ神依に似た技術だから、スレイさんの世界から来た神依を知る人物の情報が元じゃないかな。
スレイオレたち以外に神依を知る人物って……まさか……ザビーダ…… ?
ライラ……ええ、こちらも調べてみないと。
セシリィとりあえず、帝国内部に詳しそうなミトスやシングたちに話を聞いてみるね。
セシリィいつかスレイさんが完全な神依を取り戻せるように私の方でも調査を進めておくから。
スレイありがとう。頼んだよ。
コーキスえーっと……とりあえずこれで報告終了、だよな ?
カーリャ……コーキス、話についてきてました ?
コーキスも、もちろん !……ってゆーか、カーリャパイセンはどうなんだよ !
カーリャ……あーっと、この話をミリーナさまにも伝えないと。それじゃあコーキス、しっかり頑張るんですよ !
コーキスあー、パイセンも全然わかってねー――
セシリィ……あはは、カーリャったら。
カーリャこ、これは先輩としての威厳を保つためですから !

キャラクター2話【10-2 帝都へ続く街道2】
ヴェイグ……ヒルダはこの屋敷で雇われていたのか。
カロルうん。もっと早く教えてあげられれば良かったね。ボクたち、ヒルダとは前に会ってたのに。
ラピードクゥ~ン……。
ヴェイグ……いいんだ。気にするな。
エミルさっきから浮かない顔だね、ヴェイグさん。何か気になることでもあるの ?
ヴェイグいや、そんなことはない……が……。
マルタほら、男ならはっきりする !もしかしてヒルダさんのこと ?
ヴェイグ……ああ。ヒルダがここで酷い仕打ちを受けていないか、気になっていた。
エミル酷いって ?
ヴェイグ利用されてたり、何か従わざるを得ない条件を出されて無理に仕えているんじゃないかと……。
ユーリ別に、いやいやアスターに従ってたようには見えなかったぜ。
カロルうん。むしろボクたちが潜入するときに、「アスター様に迷惑かけるな」って言われちゃったくらいだよ。ね ?
ラピードワン !
ヴェイグヒルダがそんなことを…… ! ?
マルタそれって驚くようなこと ?雇われてるなら、雇用主に敬意を払うのは普通でしょ。それになんで虐げられてるなんて思ったの ?
ユーリ前例があったってことだろ。ヒルダには。
ヴェイグ……ああ。器用な奴じゃないから……その分、辛い思いをたくさんしている。
ヴェイグそれでも、オレたちの世界では、やっと新しい一歩を踏み出すところだったんだ。……なのにここに来て、また同じような苦しみを繰り返していたら……。
カロル大丈夫だよ !ヒルダが仕えてるアスターって、結構いい人だから !……うさんくさいけどね。
アスター皆さまお待たせしました。ヒルダと、アステル様のことでご用だとか。
エミル……はい。
アスターなるほど……本当にアステル様にそっくりでいらっしゃいますねえ。ヒヒヒ。まずはヒルダのことから参りましょう。
アスター大変申し訳ございませんがヒルダはここにはおりません。
ヴェイグいない ? それならいつ戻るんだ。
アスターいえ、もう戻らないかもしれませんよ。場合によってはね。イヒヒヒヒ。
ユーリ……そりゃ一体どういうこった。
アスターご存じでしょうが、ヒルダは帝国幹部のシング様やカイウス様と親しくしておりました。
アスターその繋がりが帝国への反乱に関わるものだとわかっても、私は今まで目をつぶってきたのですよ。
アスターですが、ここ最近での相次ぐ幹部たちの脱走以降、その周囲にいたヒルダも監視対象になりつつあると情報が入ってまいりました。ですから――
カロルだから、ヒルダを追い出したの ! ?
ヴェイグおまえも、やはり…… !
アスターまあまあ、慌てる何とかは貰いが少ないと申しますよ ?そのような情報がありましたので、ヒルダを遠方へ避難させました。
ヴェイグ避難……。
アスターはい。表向きには仕事と称し、ヒルダに新たな仕入れ先を見つけてきて欲しいと伝え遠方の街に向かってもらいました。
ユーリなるほどね。ヒルダは帝国の目から逃れられるし上手く行けば本当に新たな仕入れ先を確保できるって寸法か。ほんと、抜け目のないことで。
アスター動くならば相応の利益がありませんと。イヒヒヒヒ。
アスターほとぼりが冷めた頃に、こちらに呼び戻すつもりでおりましたが……。お仲間の方が迎えに来たのであれば後はそちらにお任せするとしましょう。
アスターその方が彼女も幸せでしょうからね。
ヴェイグ……ヒルダを、大事にしてくれていたんだな。
アスター雇用主ならば、当たり前のことでございます。ヒヒヒ。
ヴェイグありがとう……アスター。
マルタ良かったね、ヴェイグ ! それにしてもアスターの説明の仕方、少し意地悪じゃない ?
カロルそうだよ ! ヒルダのこと追い出したのかと思ったじゃないか。
アスターこれは失礼しました。ですがこちらも優秀な人材を放出する以上、少々の意趣返しを、と。イヒヒヒヒヒ。
ラピードワフ~……。
アスターそれとアステル様の件ですが、最近はお見えになっていません。
アスターヒルダであれば、アステル様とはどこかしらで会っていたかもしれませんがね。
エミル……そう、ですか。
アスターエミル様とおっしゃいましたか。アステル様とはご兄弟ですか ?
エミルえ ? ……その……。
ヴェイグエミル、ヒルダはアステルの情報を持っているかもしれない。一緒にヒルダの所へ行かないか ?
エミルあ……うん ! そうさせて !
ヴェイグわかった。それなら、すぐにでも出発しよう。道中でヒルダに追いつけるかもしれない。
アスターでは、ヴェイグ様たちにはヒルダへの言伝をお願いします。あちらで頼んだ仕事も引き継ぎをしないといけませんのでね。
アスター用意してまいりますので、少々お待ちを。
エミル……助かったよ、ヴェイグさん。アステルさんとのこと、なんて言っていいか、わからなかったから……。
ヴェイグいいんだ。でもアステルに会えなくて残念だったな。
エミルえ ? ……うん。
ユーリおい、ヴェイグ。もしこのままヒルダを追うなら、一度アジトに連絡入れとかねえと。
ヴェイグああ、そうだな。
マルタ……エミル。もしかして少しほっとしてる ?アステルさんと会わなくて。
エミルそんなこと……。
マルタあのね……私もエミルと同じだよ。だからお願い、無理しないで。
エミル……ありがとう、マルタ。
エミルうん、そうだね。ちょっと怖かった。衝動だけで来ちゃったけど……何を言えばいいのかわからなくて。
マルタ……うん、そうだよね。私もエミルも……ラタトスクも心の準備をしておかないとね。

キャラクター3話【10-3 ひとけのない山岳1】
カーリャ――なるほど。ヒルダさまは安全のために違う街へ行かれたんですね。連絡ありがとうございます、ヴェイグさま。
ヴェイグいや……。こっちも他のみんなの状況が聞けてよかった。クラトスが助かったのは吉報だ。
ヴェイグそれで……ミリーナたちはまだ救世軍にいるのか ?
カーリャいえ、今こちらに向かってます。
カーリャ代わりにジュードさまが向こうに残っているルビアさまやローエンさまの容態を確認しに向かいましたけど……。
ユーリ何だかみんなバタバタしてるな。
カーリャですねー。スパーダさまの奪還もグダグダになってますし……。
カロルチー……じゃなくて、リチャードや、それにアステルまであっちにいたんでしょ ?コーキスたちも大変だよね。
カーリャでもコーキスは私の後輩ですから !最終的にはちゃんとスパーダさまを連れて戻ってくる筈です。
カーリャで――えっと、皆さんはこのままヒルダさまの捜索に向かうんですよね ?
ユーリ……カーリャ、悪いが少し待ってくれるか。
カロルどうしたの、ユーリ ?
ユーリ……なんか気持ち悪いんだよな。
カロル具合悪いの ! ?
ユーリ違うって。あいつの持ってきた計画がだよ。自信満々で持ち込んだもんが、こんな頭っから崩れるもんかね。
カロルあいつの計画って……バルドの ?
ユーリああ。信じてくれとかほざいてたわりに随分とお粗末だと思わないか ?……不自然なくらいにさ。
カロルってことはやっぱり、バルドの計画は罠ってこと ?
ヴェイグ罠だったら、もっと大きな戦力でコーキスたちを潰しに来てたんじゃないか ?
エミルそうだよね。おとりを使うにしてもあっちで重要視されている空のマクスウェルを使うなんて危険だし……。
エミルでも、もしそれがバルドの計画を台無しにすることが目的なら……。
ユーリだよな……。あんまり認めたくねえがやっぱりここは素直にバルド自身が見張られていたと考えるべきか。
カーリャ確かに、コーキスたちもそれっぽいことを話していましたが……。
ユーリ……よし !ヴェイグ、悪いがオレはここで別れる。もう少し帝都周りを調べたいんでね。
マルタ調べるって、バルドのために ?
ユーリ別に、あいつがどうとかじゃねえよ。このまま偽情報ばっかり掴まされたらこっちが危険だろ ?
カロルそうだね。それにバルドに何かあったらフレンだって……。
マルタ……そっか。
ユーリま、稽古相手が減っちまうのは困るからな。
エミルでも、ユーリさん一人で行くつもり ?それはちょっと危ないよ。
ラピードワオン ! !
エミルあ、ごめん。頼もしい相棒がいるんだったね。
カロルボクも行くからね !ボスとして、ちゃんとメンバーをサポートしないと。
ユーリおう、頼むぜ。首領 !
カーリャそれじゃあ、ユーリさまとカロルさま、ラピードさまは帝都周辺の調査。
カーリャヴェイグさま、エミルさま、マルタさまはヒルダさまの捜索ということで。ミリーナさまに伝えておきますね !

キャラクター4話【10-5 ひとけのない山岳3】
ミリーナただいま !
カーリャミリーナさま ! ロイドさま !それにシングさまにマーテルさま !お疲れ様です ! ミトスさまは大丈夫ですか ?
マーテルありがとう、カーリャ。大丈夫よ。しばらくは安静が必要だけれど、命には別状がないわ。天使体は生命維持機構がしっかりしているの。
カーリャよかったです…… !えっと、ミントさまとシェリアさまとルーティさまは……。
ロイドジュードが働き過ぎで倒れたら困るから手伝っていくってさ。
カーリャははぁ……。確かにジュードさまの労働環境はブラックですもんねぇ……。
カーリャ――あ、そうだ !ヴェイグさまたちの報告をしなきゃ !
ミリーナ――そう。ヴェイグさんとユーリさんは、二手に分かれたのね。
カーリャはい。ミリーナさまたちのことやコーキスたちの動きも知らせてあります。
マーテルカーリャは本当に働きものなのね。このアジトも、ミリーナと二人で維持してるんでしょう ? すごいわ。
カーリャふわあ……お褒めの言葉と癒しのオーラがしみわたりますぅ。そういえば、クラトスさまはこちらに来ないんですか ?
シングクラトスさんはケリュケイオンに残ってるんだよ。自分は救世軍の指揮官だからって言ってさ。
シングロイドだって、クラトスさんとゆっくり話がしたかっただろ ?もう少しあっちにいてもよかったのに。
ロイドありがとなシング。でも俺には俺のやることがあるからさ。クラトスだって同じだ。
マーテルやっぱり似てるわね、あなたたち親子は。
ロイドそうかな。俺、あんなに頑固じゃないと思うけど。
マーテルふふふ。そういうことにしておきましょう。それでミリーナさん。私やシングに聞きたいのは精霊装のことでしたよね。
ミリーナはい。それと空のマクスウェルのことも。
シングあれ ? マクスウェルって……。もしかしてミラのことかな。
ミリーナミラ…… ? このアジトにいるミラのこと ?
シングミラがここにいるの ! ? 無事なんだね !良かったぁ……。リヒターに捕まったんじゃないかと思ってたからさ。
ミリーナちょっと待ってシング。話が見えないんだけど――
エルみんなー、お茶持ってきたよ !
アミィエル、もう少しそっと入ろうね。お話の邪魔になっちゃうから。
エルは~い。
ミリーナありがとう、二人とも。私も手伝うわ。
アミィあ、いいんです。そのまま続けてください。
ミリーナそれじゃお願いするわね。――それでシング、ミラとはどこで会ったの ?
エル――……ミラ ?
シング帝国の研究所から脱出する時だよ。オレと同じ場所に捕まってたルビアを助けに来たんだ。
シングあ、もしかして、あれもミリーナたちの作戦だったの ?
ミリーナ……いえ、ミラはもちろん、私たちもそんな作戦は知らないわ。研究所って所にも行ってないけれど……。
シング変だな……それじゃまるでミラが二人いるみたいじゃないか。
エルねえ、ミラが二人って言った ! ?
ミリーナ――そう言えばエルたちの世界には分史という概念が…… !
ミリーナシング、見て欲しいものがあるの !今、鏡映点リストを――
アミィ私、持ってきます !
ミリーナありがとうアミィ。それと悪いんだけれどクラースさんも呼んできてもらえると嬉しいわ。
アミィわかりました !
ミリーナカーリャ、セシリィはまだこっちに残っているかしら ?
カーリャは、はい。出がけにコーキスたちから連絡があったのでそこで思いついたらしい資料を追加で荷物に入れていらっしゃいます。
ミリーナよかった。それじゃあセシリィも大至急ここへ呼んでちょうだい。
カーリャはい ! ミリーナさま !
ミリーナシング、この写真を見てくれる ?あと、こっちのリストに書いてあるもう一人のミラの特徴も……。
シングこのアジトにいるっていうミラの写真は確かにオレが会ったミラにそっくりだよ。でも……何か足りないって言うか……。
エルねえねえ、この辺の髪のピョンっていうのあった ?
シングいや、なかったと思うよ。でも優しくて強い人だったな。腹ペコだったオレに後でなんか作ってあげるって言ってさ。
エルエルの知ってるミラかも…… !
シングそういう意味では、このリストの方に書いてあるミラの特徴の方が似てるような気がするなぁ。
セシリィその人は確かに、空のマクスウェルって呼ばれてたのね ?
シングああ。間違いないよ。それに帝国軍内ではミラの似顔絵が出回って、捜索対象になってたんだ。ミラはその似顔絵、下手くそだって怒ってたけど。
エルうんうん、ますますミラっぽい !
ミリーナそうなると、コーキスたちが追ってるのはシングが出会ったミラさんってことになるわね。
セシリィでも、いま輸送されている空のマクスウェル――もう一人のミラさんって……。
クラースこの世界のマクスウェルが本当に殺されているならその代わりということだろうな。
クラース帝国は、異世界をサーチして、マクスウェルに値する存在をさらっているのかもしれない。だとしたら、なんて冒涜だ…… !
シング大変だ、ミラを助けないと !あ、こっちのミラ ? も危ないよな。
セシリィどうするミリーナ。今もコーキスたちは空のマクスウェルを追い続けてるわ。
セシリィ上手くいけば、空のマクスウェルも、リチャードも助け出せるかもしれない。だけど、もしものことがあったら……。
ミリーナ……呼び戻す方がいいわよね。ミラと、精霊輪具を使ったミクリオさんは。
クラースだが、この状況で、コーキスたちから更に戦力を分散させるとなると……。
コンウェイそうだね。今から二人だけを呼び戻すのは逆に危険かもしれない。彼らを守るならあちらに戦力を増やす方が得策じゃないかな。
ミリーナコンウェイさん !鏡映点の調査から帰ってたんですね。
コンウェイああ。ボクと一緒に戻ったスタンくんやカイルくんも待機している。すぐに出発できるけど……どうかな ?
ミリーナ……わかりました。その方向で、ミラたちに連絡をとってみます。

キャラクター5話【10-7 静かな森林 中央】
兵士今日はここまでだ。さっさと入れ !
ジョニー……ううっ……。
スパーダジョニー !……てめェ、人を物みたいに投げ込みやがって !
兵士うるさいぞ。これ以上騒ぐ気なら――
スパーダああ ? やんのかコラ !上等だよ、秒で潰してやるぜ !
兵士好きなだけほざけ。牢の中では何もできまい。
スパーダ……クソみてえなそのツラ、覚えたからな。次ここに顔見せた時には――
ジョニーよせ、スパーダ……俺は大丈夫だ。
兵士……フン。お前もそろそろ素直にならないと次はこの牢に戻って来られないかもしれないぞ。
スパーダ……行ったか。ったく、ひでェ扱いだぜ。しかし、あんたも頑張るな。道化のジョニーさんよ。
ジョニー……まあな。俺は……絶対に……奴らに屈するわけには……いかないんでね。
スパーダわかってるよ。大事な人のため、ってやつだろ。
ジョニーゴホゴホッ……ああ。俺の心が折れれば……あいつは具現化されて……人質として使われるだろう……。
ジョニーそんなことになったら……俺は俺を許せない……。あいつだけは……もう……辛い思いを……ゴホッ……。
スパーダあんたの方が辛そうだぜ。無理しないでもう休めって。
ジョニー無理じゃないさ……。おまえさんとこうして話している時が……唯一、気がまぎれるんだよ。
スパーダけどよ……。
ジョニー……スパーダも……俺と同じなのか ?誰かを具現化させないように……。
スパーダいや、オレはちょっと違うんだ。
スパーダ……オレには前世ってやつがあってさそれが、剣だったんだ。人間みたいに意思を持った剣さ。
スパーダんで、奴らはその前世のオレを、具現化したいらしい。会話を聞いてると、魂を切り分けるだのなんだの……。オレは肉や野菜じゃねーってんだよ。
スパーダ多分、前世のオレみたいに意思を持った武器とか人間そのものを武器にするとか……あいつらの研究って、そんなところじゃねェのか。
ジョニー驚いたな……。まるでソーディアンだ。
スパーダソーディアン ?
ジョニー意思を持つ剣……おまえさんの前世みたいな剣が俺の世界にもあったんだよ。
ジョニー俺の仲間は、その剣の使い手だったんだ。
スパーダマジか ! ! 会ってみたいぜ。
ジョニーはは……具現化されていれば是非会ってもらいたいよ。でもそれはきっと……彼らにとっては不幸だ……。
スパーダ……だな。こんな世界にダチが勝手に連れて来られるなんて冗談じゃねェよ。
ジョニーでも、なんだか懐かしいぜ……。スタ……、ルー……、リ……オ……みんな……元の世界で元気に……して…………。
スパーダ……おい、ジョニー…… ?
ジョニー……………………。
スパーダジョニー ! しっかりしろって、おい !
スパーダんだよ、眠っただけか。驚かせやがって。……しっかし、ひでェ熱だな。
スパーダ(こいつ、このブレスレットをはめられてから、どんどん弱っていく……。もしかしてこれが原因なのか ? )
スパーダ(早くここから出してやらねえとマジで死んじまう)
スパーダ(けど脱出なんて、オレ一人だってチャンスがなかったのにこんなボロボロのジョニーを連れていくとなると……)
スパーダクソッ ! ルカやアンジュがいればなんかいいアイディアを――
? ? ?良かった、まだここにいた……。別棟にでも移されてしまったかと心配していました。
スパーダ―― !……誰だよ、お前。
バルド……彼はかなり弱っているようですね。急がないと命が危ない。
スパーダ誰だって聞いてんだよ ! 答えろ ! !
バルド私はバルド。あなたを迎えにきました。急いでここを出ましょう。
スパーダは ? 何言ってんだ ?
バルドあなたの仲間が待っているんです。さあ、脱出しますよ。
スパーダ仲間…… ?

キャラクター6話【10-8 静かな森林 道沿い1】
ルカ随分スピードが落ちてるみたいだけど……。
ヒューバートこんな脇道に入れば、どうしても馬車のスピードは落ちる。我々を巻くために選んだんでしょうが、悪手ですよ。
イリアあいつら、随分と手間取らせてくれたじゃない。跡形もなくぶっつぶしてやるわ ! !
ソフィイリア、リチャードは潰しちゃダメ。
イリアう…… !
ルカそうだよ。アスベルたちの仲間なんだから。それに馬車にはスパーダがいるんだよ ?
イリアそ、そんなのわかってるわよ !そのくらいの勢いでやればいいって言ってんの。さっさと行くわよ !
ヒューバート待って下さい。また大量の光魔でも出されたら、戦力的にはこちらが不利だ。コーキスたちを待つべきです。
イリアもう、いちいち水差すんだから !真面目な方々は気にすることが多くてほーんと大変でございますわね~。
アスベル……そうだな。イリアの言うとおり、今行こう。
ヒューバートなにを言ってるんですか、兄さん !
アスベルヒューバート。リチャードが光魔を呼ぶところを見たか ?
ヒューバートええ。ミリーナたちの話では、チーグル――リチャード陛下は、魔鏡結晶のような石で光魔たちを召喚していると。
アスベル今までリチャードと戦う時には、あっちからの不意打ちが多かったらしいな。だけど、今は状況が違う。
ヒューバート……そうか !こちらがリチャード陛下を標的にできるなら、最初からその石を狙えばいい。
ヒューバートですが、チャンスは光魔を呼び出そうとする一瞬だ。近づく間もないでしょう。小さな石を狙えるくらい、緻密で的確な遠距離攻撃が必要です。
ヒューバート石を彼の手から排除、その後ならば近接攻撃へと持ち込むことも可能ですが……。
全員遠距離攻撃……。
イリア……ま、待ってよ。その視線、もしかして……。
ヒューバートぼくも銃を扱いますからわかります。ここは狙撃に慣れたイリアさんが適任でしょうね。
ルカ大丈夫だよイリア。君なら必ずできるよ !
イリアなに無責任なこと言ってんのよ !
ルカご、ごめん……でも……。
イリアあたしが失敗したら、また山ほど光魔呼ばれて逃げられちゃうのよ ! ? もしかしたら、リチャードに当てちゃうかもしれないし !
イリアそれにあたしの銃だと、それほど距離はとれない。場合によっては、敵の真っただ中まで入りこまないと……。
ルカだったら、イリアが狙える位置まで行けばいいよ。僕が側にいるから。光魔を出すタイミングも僕が見る。命に代えても……君を……その……
イリア……バカ。あんたの命に代えていいものなんてどこにもないんだからね !
イリアけどまぁ……よっしゃわかった ! やってやろうじゃないの !
ソフィイリア、頑張って !
イリアはあー……。狙撃のコツ、リカルドに教わっとくんだったわ。
ヒューバートそれでは、改めて確認します。
ヒューバートぼくとソフィで撹乱し、馬車の周囲の敵を封じます。イリアさんは狙える位置にきたら石を撃ってください。ルカさんはイリアさんの援護をお願いします。
ヒューバート光魔の召喚を封じたら、兄さんは陛下を確保。ルカさんたちは馬車にいる、スパーダさんを救出。いいですね。
ヒューバート言っておきますが、これは酷くおざなりな計画です。誰かが負傷、もしくは大量に光魔を呼ばれた時点で中止、撤退します。……いいですね ?
アスベルわかった。ルカ、イリア、ソフィ、行くぞ !

キャラクター7話【10-11 静かな森林 道沿い4】
帝国軍兵士敵襲 ! 先ほどの奴らが追ってきたようです !
チーグルチッ、だからこんな悪路じゃスピードが落ちると言っただろう !誰がこのルートへの指示を出したんだ !
帝国軍兵士それは……フレン様からの伝令で……。
チーグルフレン ! ? バルドにしては酷い命令だな。仕方ない。ここで始末をつける。
ルカ――リチャードが馬車から出て来た !
ヒューバートここはぼくたちに任せて下さい !二人はそのまま駆け抜けて !
二人了解 !
ルカリチャードとの距離は ?
イリアオッケー、ここからならイケる !
帝国軍兵士くたばれっ !
イリア―― ! !
ルカこっちは気にしないで ! そのまま狙って !
イリア……敵は任せたわよ !
チーグルすでに兵士もほとんどが使いものにならないか。ならば光魔で――
ルカ今だ、イリア !
イリアこの……当たれーーーーっ ! !
チーグル――痛っ ! 石が !
イリアやりぃ ! あたしって天才 !
チーグルクッ、これでは光魔が…… !
ソフィたあっ ! !
チーグルなめるな ! 小娘一人くらい―― !
ソフィアスベル !
アスベルすまない、リチャード !
チーグルうっ……。
ソフィリチャード、大丈夫かな。
アスベルああ。当て身は上手くいった。しばらく目は覚まさないと思う。あとは、光魔を呼んでいた石を見つけないと……。
ソフィ…………。
ソフィ(やっぱり、リチャードの中にラムダがいない……)
アスベル……あった、この石だな。リチャードと魔鏡結晶は確保したぞ !ルカ、馬車へ !
ルカわかった !
ルカ――スパーダ、助けに来たよ !
サレ頑張ってるねえ。好きだよ、そういう人。
ルカ――っ ! ?
イリア何よあんた、邪魔 !
アスベル新手か ! ?
ソフィアスベルは、リチャードの側にいて。わたしが―― !
サレああ、いいねえ。みんな必死でさ。そういうの大好きだけど、その顔が絶望に変わるのは……もっと好きなんだ !
コーキスソフィ様、みんな ! !
ヒューバートコーキスたち、追いついてくれましたか……!
サレ……チッ、せっかくの楽しみを……。仕方ないね。
クレス―― ! 馬車が走り出したぞ !
アスベルあいつ、いつの間に !
ルカまだスパーダが中にいるのに !スパーダーーーーッ ! !
イリアそんな……、あともう少しだったのに……。
ルカ……ごめん……スパーダ……僕……。
ミラ=マクスウェル落ち着くんだ、ルカ。あの馬車にスパーダは乗っていない。
ルカ……え ?
コーキス説明するよ。あの馬車には――
? ? ?――……ス、コーキス。
コーキスなんだよこのタイミングで魔鏡通信――ってバルド ! ?
バルドはい。皆さんに頂いた魔鏡通信装置はきちんと機能しているようですね。
コーキスそっか、あの時ミリーナ様が渡してたんだっけ。
バルド手短に報告します。特異鏡映……いえ、スパーダの救出に成功しました。それと、ジョニーという人物も一緒です。
ルカスパーダを救出って…… ?
バルド彼らを引き渡します。落ち合う場所は――
ルカ――それじゃ、あの馬車にはミラさんに似た人……【空のマクスウェル】って人が乗ってたんだね。
ミラ=マクスウェルそうだ。……助け出したかったが、この状況では仕方がない。
クレスとにかく今は、スパーダとジョニーさんを迎えに行こう。あ、でもリチャードは……。
アスベル俺がアジトに連れて行くよ。ヒューバート、一緒に頼めるか。
ヒューバートもちろん。途中で目を覚ましたら大変なことになるでしょうからね。
ソフィわたしも行く。もしリチャードが暴れてもみんなのことはわたしが守るから。
クレス頼むよソフィ。アスベルもヒューバートも気を付けて。
コーキスそれじゃ、オレたちはこのまま待ち合わせ場所に行こう。
イリアったく、本当に手間かけさせてくれるわね、あいつ。でも、今度は絶対に……。
ルカうん。スパーダを助けよう !

キャラクター8話【10-13 ひとけのない街道2】
バルド――スパーダとジョニーは先に指定の地点へ向かっています。そちらもどうかご無事で。では後ほど。
バルド(よし、連絡はついた。私も早くスパーダたちに追いつかないと)
? ? ?そこにいるのは誰だ。
バルド―― !
ナーザ……バルド ?
バルドナーザ……様……。
ナーザ何故お前がここにいる。
バルドナーザ様こそ、なぜこのような場所に……。お怪我の具合はよろしいのですか ?
ナーザ仕方ないだろう。空のマクスウェルの輸送隊が襲われたとの連絡が入ったからな。念のため、こちらで確保している鏡映点の所在を確認していた。
ナーザ……ところで、これはどういうことなんだ。ここにいた特異鏡映点、特異鏡映点亜種03ともにいなくなっているようだが。
バルド彼らは、私が逃がしました。
リヒター逃がした…… ? お前、何を考えている。
ナーザ話は俺が聞く。リヒターはすぐに逃げた奴らを追え。俺はまだ、思うように動けないからな。
リヒター……わかった。
ナーザ……さあ、話せ。
バルド(さすがにまだ、チーグルが捕まったとの報告は上がっていないようだな。ならば……)
バルド輸送隊襲撃の件は私も報告を受けました。このままでは、空のマクスウェルやチーグルまでも敵の手に落ちる可能性があります。
バルドですから、奴らの仲間を一時的に解放することを持ちかけ、今のうちに味方として入り込み後に鏡映点たちを奪還する計画を立てました。
ナーザ――……そうか、わかった。正攻法を好むお前らしくない方法に思えるがな。
バルド買いかぶり過ぎです。私はそれほど、正しい性根の持ち主ではありません。
バルド……何もかも生前と同じという訳ではないのですから。
ナーザ………………。
ジョニーハァ……ハァ……。
スパーダジョニー、辛れェだろうが、もうひと踏ん張り頼むぜ。合流場所に着きゃ、仲間ってのがいるはずだ。
スパーダ(……仲間、バルドって奴はオレたちの仲間と言ってた。まさか……)
ジョニー悪いが……お前さん、先に行ってくれ……。俺は……少し、休んでからにする。
スパーダハァ ? ふざけてんのかよ。そう言われて「はい、そーですか」ってわけに行くか !
スパーダオラ、背負ってやるから乗れ。
ジョニー……こんなでかい荷物背負ってたら、助かるものも助からないぞ。
スパーダうッせーなー ! 引きずられて皮ズルムケになりたくなきゃさっさとしろ !
ジョニー強引な男だね、お前さんも……。
帝国軍兵士いました ! 特異鏡映点、特異鏡映点亜種03を確認 !
スパーダクソッ、見つかっちまったか。バルドの野郎は何してんだよ !
ジョニースパーダ……走れ。俺が奴らの気を引く。今なら、お前だけならきっと……
スパーダハッ、残念ながら染みついちまってんだよなァ。「心に剣を持ち、誰かの楯となれ」って家訓がよ。
リヒター追え ! 生かして捕らえろ !
スパーダあんな生き地獄、戻ってたまるかよ !絶対に逃げのびて――うわっ !
帝国軍兵士馬鹿め。人ひとり担いで、逃げきれるものか !
スパーダここまでかよ、っきしょーーーー ! !
帝国軍兵士なんだ ! ?
? ? ?うおおおおおっ ! !
スパーダ―― ! !
帝国軍兵士うっ…… ! きさ……ま……は……
スパーダ(この太刀筋……忘れねえ、忘れるわけがねえ…… ! )
スパーダ(あれは……オレの魂に刻み込まれたモノ。オレが守るべき使い手――)
ルカスパーダ ! 助けに来たよ !
スパーダマジでおまえかよ……、ルカ ! !
イリア寝ぼけてんじゃないわよ。ホラ、しっかりして !
スパーダイリアもか ! ?
リヒター……黒衣の鏡士側の鏡映点か。その二人を返してもらおう。
スパーダざけんな ! オレはてめェらの持ち物じゃねえ !
コンウェイそうだよ、無粋な人。久しぶりの友との再会を邪魔するならボクが相手だ。
スパーダコンウェイ ! ?
スタンジョニーさん ! しっかりして下さい !
ジョニーはは、夢……じゃないよな……スタン。
カイルこの人がジョニーさん……。英雄たちの仲間……。
スタンああ、絶対に助けるぞ !
カイルはい !
リヒター……再会の挨拶とやらは終わったか ?ならば『無粋な敵』と手合わせしてもらおう !

キャラクター9話【10-13 ひとけのない街道2】
リヒター……多勢に無勢か……。やむを得ん。――全員、引くぞ ! !
コーキスこれだけの鏡映点相手に……なんて強さだよ、あいつ。
ルカスパーダ ! !
スパーダおいおい、なんだよ。また泣き虫ルカに逆戻りかぁ ?
ルカだって、やっと……やっとスパーダを助けられたんだ。何度も失敗して……だから……。
スパーダそうだったのか。オレがおまえを守るって言ったのに、逆になっちまったな。まったく情けねェぜ。けどよ……。
スパーダ……久しぶり。会えて嬉しいぜ、ルカ。
ルカうん……僕もだよ。
イリアうわ~……、また暑っ苦しいもの見せつけて。うっとうしいったらないわ、もう !
スパーダおめェも相変わらずの口の悪さじゃねーか、イリア。安心したぜ。
イリア口が悪いのは、お互いさまじゃございませんこと~ ?おほほのほ~。
コンウェイ二人とも似た物同士ってことだね。口の悪さも、ルカくんが大切なのも。
ルカえっ ?
イリアちょ、ちょっと、いい加減なこと言わないでよね !
スパーダコンウェイまで具現化かよ。この調子じゃ、他に知った顔がゾロゾロ出てきてももう驚かねえぜ。
コンウェイ残念、これで打ち止めだよ。今後どうなるかはわからないけどね。とりあえず大きな怪我がないようで良かったよ。
スパーダ怪我……そうだ ! ジョニーは……ジョニーはどうした !
スタンああ、気を失ってるけど大丈夫。でも……顔色がすごく悪いんだ。
スパーダなんかその腕輪つけてから、どんどん弱ってんだよ。外してみたらどうだ ?
スタン腕輪…… ?これ、マリアンさんが付けられていたアンチ・ミラージュブレスじゃないか !
スパーダなんだそりゃ ?
カイルこれを付けてると、どんどん体が弱っちゃうんだよ。
スパーダだったら早く外してやれって !
スタン駄目なんだ。下手に外したらジョニーさんは死んでしまう。何か方法は……。
コーキスすぐにミリーナ様に連絡とるよ !
カイル――ミリーナ、どうすればいいって ?
コーキスやっぱり、この場でどうにかするのは無理みたいだ。すぐにケリュケイオンの停泊地へ向かって欲しいってさ。
スタンわかった。合流地点の待機組にも知らせてケリュケイオンに行こう。
スパーダ待機組 ? そういや合流地点はもっと先だったな。なんでこんな場所にいたんだよ。
ルカ僕たちは斥候だよ。待ち合わせ場所で二手に分かれたんだ。
スパーダなるほどな ! おかげで助かったぜ。
スタンそうだ。こっちもお礼が遅くなった。ジョニーさんを助けてくれて、ありがとう。スパーダ。
スパーダ同じ牢に入ったよしみってヤツさ。気にすんなよ。
ルカスパーダ、なんか優しいね。初対面の人には、ナメられないようにガツンといくって言ってなかった ?
スパーダあいつ、ジョニーのお仲間だろ ?んな必要ねーよ。いいヤツっぽいしな。
ルカそれって、初対面の僕がいいヤツに見えなかったってことにならない…… ?
コンウェイフッ、ルカくん、言うじゃないか。
スパーダいやおまえ……あの時は……。あ ! そういやおまえ、天術みたいなの使ってたよな。
ルカみたいな、じゃなくて天術だよ。スパーダもきっと使えるよ。
スパーダマジか ! それ知ってたらおまえを守って戦ったのによ。
イリアそうそう、ルカってばあたしの時もそうだったのよ。全部終わってから「知らなかったの ? 使えるよ~」って !
イリアならさっさと言いなさいっての !ほんっとに気が利かないんだから。だからあんたはおたんこルカなのよ !
ルカそ、そんなぁ。八つ当たりしないでよ……。それに僕、そんな言い方してないし……。
スパーダあ~、お前らのこの感じ……。なんか懐かしくてホッとするわ。
コンウェイふふふ……。夫婦喧嘩は犬も食わないってね。

キャラクター10話【10-14 ひとけのない街道3】
レイア……ルビアの治療はまだかかりそうだね。カイウス、心配してるだろうな。
ジュードうん……。でも運ばれてきた時よりはだいぶ落ち着いてるよ。今は時間が必要なんだと思う。
レイアしばらくは定期的にこっちに通うの ?
ジュードそのつもり。もしもルビアがアジトに来た場合は僕が責任をもって診ないといけないし患者の状態は把握しておきたいんだ。
レイアホント真面目だね、ジュードは。後は、フィリップさんにローエンの様子を確認するだけ ?
ジュードうん。えっと、フィリップさんの部屋は確かこっち……。
ローエン――それと、資料等はまとめてありますので、後ほどフィリップさんのお部屋にお持ちします。
二人ロ、ローエン ! ?
ローエンおや、ジュードさんにレイアさん。いやはや、早々に見つかってしまいましたか。ほっほっほ。
ジュード目が覚めていたの ! ?
フィリップフフ、驚いたかい?
ジュードあ、当たり前じゃないですか !
レイアどういうこと ! ? いつから ! ?
フィリップ実は、ローエンさんには少し前に無理をして目を覚ましてもらったんだ。
ジュード無理って…… ?
フィリップクラトスさんの治療のためにローエンさんが使っていた重症者用の治療ベッドを空ける必要があったんだよ。
フィリップそれで、ローエンさんの状態がだいぶ安定していたから覚醒を促してみたら上手くいってね。
ローエンはい。おかげさまでこのとおりピンシャンしております。
ローエンしかもフィリップさんが懇切丁寧に説明をして下さったおかげで、すぐに状況も把握できました。具現化とは、実に興味深い現象ですね。
ジュードさ、さすがローエン……。すごい順応力だね。
フィリップそうなんだ。しかも各方面への理解も早い。クラトスさんへのスピルリンクを開始する頃には治療のサポートができるほどでね。驚いたよ。
ローエンいえ、私の手伝いなど初歩の初歩。フィリップさんの話と、用意してあった資料で彼への施術の段取りを確認したまでです。
フィリップいや、それは謙遜ですよ。ミリーナにローエンさんがサポートに入ると知らせた時は、本当に驚いていましたから。
レイアあ、それならミリーナたちは、ローエンと会ってたんだよね。だったらなんで教えてくれなかったんだろ。
ローエン私が頼んだのです。皆さんには、しばらく伏せておいて欲しいと。
レイアえ、なんで ! ?
フィリップ……実は、ローエンさんの体はまだ回復しきっていないんだ。これは無理に目覚めさせた僕のせいでもある。
フィリップ今はこうしていられても、容体によってはまた意識を失うことがあるかもしれない。
ローエンようやく目覚めたかと、皆さんにご足労頂いても結局、つまらない老人の寝顔しかみられなかったでは申し訳ありませんからね。
レイア……そっか。わたしたちをがっかりさせないように完全に回復するまでは伏せておいたんだね。
ローエンぶっちゃけますと、情けない姿を晒したくはないというジジイのワガママなのですよ。ほほほ。
ジュードねえローエン、フィリップさんにローエンの治療法を教えてもらうからさこのまま一緒に、アジトへ帰らない ?
ローエンお気持ちは嬉しいのですが……。
フィリップジュード。ローエンさんが特異鏡映点だということは知っているね。
ジュードええ、もちろん。でも、ガロウズたちが開発したキラル分子の流出を反転させるブレスレットでその影響を抑えられるんですよね ?
フィリップいや……。今のローエンさんの体ではそのブレスレットの負荷に耐えられない。
フィリップそして君たちのアジトは、ミリーナの作り出した仮想鏡界の中だ。アニマを逆流させる特異鏡映点が及ぼす影響力は未知数なんだよ。
フィリップわずかな期間の滞在であれば可能かもしれないがブレスレット無しで長期となると不安があってね。
フィリップ今は治療を続けながら、ブレスレットをつけられる状態まで、根気よく待つしか無いんだ。力不足で申し訳ない。
ローエン……ケリュケイオンでしたらこのままの状態でおりましても、さほどの影響はないとのことですので、お世話になることにしました。
ジュードそうだったのか……。無理を言ってごめん、ローエン、フィリップさん。
ローエンいいえ、そのお気持ちは嬉しいのですよ。ジュードさん。
ローエンまあ、そんなわけでして、しばらくはリハビリがてら救世軍で執事まがいのことをさせて頂いてました。
フィリップゆっくり休んで欲しいんだけど、聞いてくれないんだ。ジュードやレイアからも説得して――
ミリーナフィル !
フィリップすまない、ミリーナから通信だ。――どうしたんだ、ミリーナ。
ミリーナルーティとミントとシェリアはまだ残ってる ?
フィリップああ、いるよ。もうすぐ帰るようだけど。
ミリーナそのままそこで待つように言って。治癒術を使える人が必要なの。
フィリップ何があったんだい ?
ミリーナコーキスたちが、特異鏡映点のジョニーさんを救出したんだけど、アンチ・ミラージュブレスをつけられているわ。
ミリーナこれからケリュケイオンに運び込むから解除をお願い !
ミントそれでは、交代で治癒術をかける方がいいですね。
シェリアええ。強い術よりは弱い術をゆっくり長くかけた方が、体への負担も――
スタンジョニーさん、大丈夫かな……。
ルーティガロウズに任せておけば大丈夫よ。マリアンの時だって、ちゃんと外してくれたでしょ。
スタンでも、あんな弱った姿を見るとさ。もっと早く助け出せたらって……。
ルーティあんたは自分のやれることをやった。それでいいじゃない。
ガロウズ待たせたな、アンチ・ミラージュブレスは外れたぜ。すぐに治療を始めてくれ。
二人はい !
ルーティさ、ここからはあたしたちの出番。自分のやれることをやってくるわ !
スタンああ、ジョニーさんのことを頼んだぜ !

キャラクター11話【10-15 ひとけのない街道4】
ミリーナフィル ! ジョニーさんはどう ?
フィリップアンチ・ミラージュブレスが解除できたからミントたちが治療に入ったよ。こちらに来ていたジュードも診てくれている。
ミリーナ良かった。あれは一刻を争うから……。他のみんなは ?
フィリップクレスとミラさん、スタンは、ジョニーのところだ。後はみんな、あちらの部屋で待機してるよ。
ミリーナそう、待たせちゃったみたいね。それじゃスパーダさんの話を聞きにいきましょう。
スパーダ――だから、帝国が興味持ってるのはオレの前世ってわけ。
スパーダあの胸クソ悪ィ実験じゃ、魂の分離だの融合だの憑依だの、そんな話ばっかしてたぜ。
スパーダ研究者の野郎ども、オレに聞こえないようにコソコソ話してたからそれ以上、詳しいことはわかんねェな。
ルカ大変だったんだね。スパーダ。
スパーダまあな。けど、おまえやイリアだってヤバかったって話じゃねぇか。
ルカうん、危ない状態だったって言われたよ。
スパーダチッ、あいつらマジで許せねェ……。
ミリーナ剣である前世の具現化……。魂の分離、融合、憑依……。
フィリップ意思を持った武器や、武器に意思を宿らせる実験じゃないかというスパーダの予想は確かにありえる話だね。
フィリップ事実、異世界にはソーディアンという例もある。ただ気になるのは、『魂』に固執している点だ。
ミリーナそうね。あくまでソーディアンは人の記憶や人格を武器に投射したものだから。
ミリーナ一つの体、一つの物質に複数の魂を内包している状態を目指しているのかしら。
スレイ……なんかそれって、神依に似てるよな。
ミリーナ……それよ、スレイさん !
ミリーナルカが転生者の話をしてくれた時にクラースさんが言ってたの。一つの体に、魂が分裂して存在しているみたいだって。
ミリーナこれって、見方を変えれば、神依と似た状態じゃない ?
ミクリオそうだね。天族である僕たちは器であるスレイの体なら融合することができる。
ライラはい。しかも、個たる意識はきちんとありますから神依に近い形と言えますわ。
ミリーナ精霊と融合するなんて神依と似た発想を帝国はどこから得たのか、セシリィも気にしてたけれど……。
ミリーナもしかしたら、ルカたち転生者がそのヒントになったのかもしれないわね。
スレイう~ん……。単純に、オレたちと同じ世界からきた鏡映点の知識って可能性の方が高くないかな ?
スレイほら、古代語の解読なんかでよくあるだろ ?ひっかかったところを裏読みや深読みして結局書いてあるままでしたってことがさ。
ミクリオああ。でも、そうだとすると帝国に僕たちの世界の知識が流れてるっていうのがね……。
ライラええ。つまりそれは、その「誰か」は捕まっているか、敵になっているということですから。
スレイ……うん。
ミリーナもしかしたらスレイさんたちは、帝国側にも天族がいると考えているの ?
スレイ……ああ。リストにも載せたザビーダって仲間が捕まってるんじゃないかって……。でも……。
ミリーナ――確かザビーダさんって……ベルベットたちが出したリストにも……。
ライラ……まぁ、その話は一旦置いておきましょう。
ライラあくまで可能性ですが、私たちがこうして具現化されている以上、他の仲間も……と考えるのはおかしくないですよね ?
ミリーナ確かにそうですね……。
イリア……ねえ、この人たち何言ってんの ?
スパーダバカ、オレに聞くんじゃねェよ !なあル――
ルカ話を聞いてて思ったんだけど帝国にいる鏡映点が――とかじゃなくて、こっちの情報が漏れてるってことはない ?
二人(参加してる ! ? )
コンウェイつまりルカくんはこちらにスパイがいると思うのかい ?
ルカううん、そういうわけじゃなくて、わざとじゃなくても、知らず知らずに相手に情報を渡しちゃってることもあるのかなって。
フィリップ……そうだね。こちらが帝国側に内通者を置いていたように、こちらの情報も――
コーキスあ、ちょっと待った、魔鏡通信が……。ミリーナ様、バルドからの通信です !
スパーダバルド ! ? あいつ何してんだよ。後から追うって言って、それっきりだったんだぜ ?
ミリーナバルドさん、今どこにいるの ?
バルド――お話があります。どこかで落ち合えませんか ?
ミリーナわかったわ。こちらも聞きたいことがあるし今からそちらに向かいます。

キャラクター12話【10-15 ひとけのない街道4】
コーキス……なぁ、さっきの話じゃないけどユーリ様たちもスパイの可能性を気にしてたしこれからバルドに会うのも見られてたりしねぇかな。
イクス『少なくとも、俺が見える範囲には怪しい奴の姿は無いみたいだけど……』
コーキス心配性のマスターがそう言うなら平気か……。
マークあ ? イクスの奴なんだって ?
コーキス周りに怪しい奴はいないって……。
フィリップイクスがそう言うならひとまず信じていいとは思うが……。
ミリーナ情報漏れが内通者の場合は……ってことね。
マークその為に鏡映点サマにはケリュケイオンに残ってもらったんだ。ひとまずは大丈夫だろう。
マークこれで情報が漏れるなら、鏡士かバルドかセシリィが裏切り者ってこったな。
セシリィそうね……。私は一番怪しい立場だから……。
コーキスおい、マーク。お前、感じ悪いぞ。
マーク仕方ねぇだろ。用心するに越したことはないんだから。
バルド……お待たせしました。
ミリーナ今回は無事に会えたわね。スパーダさんが心配していたわよ。
バルドそうですか……。私の不手際で落ち合えなかったことを謝っておいて下さい。
ミリーナ何があったの ?
バルド……スパーダさんたちを逃がしたことをウォーデン……ナーザ様に知られてしまいました。それで少々事態の収拾に手間取ってしまったんです。
フィリップ今回の救出劇は不測の事態が起きすぎではありませんか ?
バルド……ええ。私自身も帝国の誰かに疑われているのかも知れません。それでも……私はあなた方に協力するつもりです。
コーキスリビングドール計画を止めるために、か ?
バルドええ。リビングドール計画とは、カレイドスコープによって光る砂となって失われたビフレストの民を甦らせるための計画。
バルドもしもこれが、亡くなった世界中の人々を甦らせる計画だというのなら、私も……もしかしたらメルクリア様にお仕えし続けたかもしれません。
バルド現状のリビングドールは酷いものですが研究次第で、犠牲を強いることなく死者の甦りを可能にできるかも知れない。
バルドでもメルクリア様が救いたいのはビフレストの民だけです。そしてその為の手段としてリビングドールの手段について見直すつもりもない。
フィリップ……ああ、そういうことか。彼女に感じた違和感は。これはメルクリア皇女なりの、セールンド――いや、僕やゲフィオンへの復讐でもあるんだね。
バルドええ。自分の国を奪った女性が、自分のために世界を甦らせようとして、自分の願いを叶える為だけにもう一人の自分すらも生み出した。
バルドゲフィオンがしたことをメルクリアは自分もしようとしているのです。
ミリーナ………………。
イクス『それは違う ! ミリーナ……いやゲフィオンは贖罪の気持ちから世界を救おうと思った。最初からエゴだけのメルクリアとは違う』
コーキスマスターが言ってます。贖罪の気持ちから世界を救おうとしたゲフィオンとエゴだけのメルクリアは違うって。
マークそいつはどうかな。結局はどっちもエゴなんだと俺は思うぜ。だが、リビングドールって手段は気に入らねぇ。
マーク――今はそういうことにしておこうや。
コーキス………………。
バルドリビングドール計画の阻止には、カレイドスコープで光る砂――アニムス粒子となったビフレストの人々に接触できないようにするしかありません。
バルド現状、ゲフィオンとイクスさんが、死の砂嵐の流出を止めていますが、こちら側からアプローチしてアニムス粒子を取り出すことはできるのです。
ミリーナつまり、死の砂嵐の完全な消滅――もしくは封印が必要ということね。でもその前にイクスを助け出さないと……。
バルドええ。仮に完全に消滅させたり封じることができてもあの場にイクスさんがいる限りイクスさんを失うことになってしまう。
バルド何より、そろそろイクスさんがもたないのでは……と考えています。
ミリーナ! !
バルドどうやらコーキスさんはイクスさんと繋がっているようですが……イクスさんは苦しんでいませんか ?
コーキスえ ! ? いや、何も……。なぁ、マスター。どこか痛かったり苦しかったりするのか ?
イクス『い、いや ? 別に特に何も……』
コーキス――いてぇっ ! ? 何だ……また左目が……。
バルド……やはり。その目の痛みは、イクスさんが感じている痛みをコーキスさんが感じ取っているのだと思います。
フィリップ鏡精のリンク機能か !僕も古い書物でしかその理論を確認していないが……。そういえばあれはビフレスト側の禁書だった。
バルドビフレストでは鏡精が世界を滅ぼすと信じられていた。ですから、鏡精の研究は禁忌であると同時に皇室の課題でもあったのです。
バルド今のコーキスさんは、イクスさんの力が暴走しているために、マスター側で本来独立しているはずの感覚がリンクしてしまっている。
バルドだから、コーキスさんの目や耳がイクスさんの目や耳ともなり得ている訳です。
バルド恐らくイクスさんがここまで自在にコーキスさんの目と耳を利用できるのは、このリンクを意識的に強化したはずですが……。
ミリーナイクス ! 本当なの ! ? まさかコーキスをカレイドスコープの間に呼び出したのもリンクを強めるため ! ?
イクス『……ああ。まだ完全じゃないけど、最終的には俺の力をコーキスに送り込めるようにしようと思って。上手くいくまで黙ってるつもりだったんだ』
コーキスはぁ ! ? つーか、そっちより体が痛むってのは本当なのかよ ! ?
イクス『い、痛むこともあるよ。確かにさ。でも今は……我慢できてるんだ。大丈夫だよ』
コーキスじゃあやっぱり実はずっと痛かったってのか ! ?何でそういうこと隠すんだよ ! !
イクス『お、怒るなよコーキス。心配……かけたくなかったんだ』
セシリィ……コーキスの様子を見ているとバルドさんの指摘は全てあっているみたいね。だったら一刻も早くイクスさんを助け出さないと。
ミリーナ魔鏡結晶に穴をあけてイクスを助け出すという計画を今キール研究室がまとめてくれているわ。
ミリーナでも、イクスがいなくなることによって死の砂嵐は外に漏れてしまう。その点だけが、どうしても解決できないの。
バルド……私にアイディアがあります。ですが、その為にはいくつかやらなければならないことがある。
バルドまずは……私をフレンさんから分離すること。
コーキスフレン様を解放してくれるのか ! ?
バルド……解放……というか……。実は、私はフレンさんにこの体を借りているのです。
マークん ? 結局は同じことだろう ?
バルド……いえ、この体の中には、今もフレンさんがいます。私やチーグルは初期のリビングドールなので心核を取り外すというアプローチがなかったんです。
バルドそしてフレンさんは……敢えて私を受け入れてくれました。
コーキス今の話……ユーリ様に聞かせるのが怖いぞ……。
フィリップでもどうして今フレンと離れる必要があるのかな ?
ミリーナ……もしかして、スパイの目を欺くため ?
バルド仰る通りです。フレンさんと二人で考えました。
バルドフレンさんはバルドとして帝国に残り私は別の体を一時的に借りてイクスさん救出のための準備を行います。
バルドそれにはセシリィ――いえ、シドニーの力が必要です。
セシリィえ ?
バルド危険は承知の上で、私と共に帝国へ来てくれませんか ?
フィリップしかしそれではガロウズが納得しないだろう。
セシリィ……いえ。行きます。
ミリーナセシリィ ! ? 危険なのよ ! ?
セシリィでも、私はもう死んでいますから。
セシリィそれに私が帝国へ行けば、きっと精霊装の詳しい情報を見ることができます。スレイさんたちの力にもなれるし精霊たちの命を守ることにも繋がる。
セシリィだから――行きます。
フィリップ……そう、か。
バルドありがとう、シドニー。あなたにはいつもつらい思いばかりさせてしまいますね。
セシリィ……いえ、いいんです。
ミリーナ……一ついいかしら。あなたのしていることはナーザへの裏切りよね。本当に構わないの ?
バルドナーザ様は……メルクリア様と目指すものが違います。ナーザ様はこの世界を――ダーナの揺り籠を守るために動いておられる。
バルドビフレストの復活には否定的です。
フィリップ……ダーナの揺り籠。それは創世神話の言葉だね。
フィリップこの世界はダーナの揺り籠である。罪を背負った人々は、罪を贖い、浄化しダーナの揺り籠に生まれ落ちた。
フィリップ……………… !
フィリップ(ジュニアからの伝言の『僕らの始まりの場所』というのは……あの【石碑】のことか ! )
バルドあなた方を……特にコーキスさんあなたを見ていると信じられない。
バルドでもダーナは予言しています。鏡精がこの世界を滅ぼす、と。
バルドだからビフレストの鏡士は鏡精を復活させたセールンドの鏡士を憎んだ。その行いを止めようとした。
バルドそれが……魔鏡戦争の始まりです。
ミリーナそして……オーデンセを襲ってイクスを手にかけた…… !
バルド……そうです。世界を滅びから守るため、鏡精と鏡精を生み出す鏡士を殺すこと――それが今も昔もナーザ……いえウォーデン殿下のご意思なのです。
to be continued
キャラクター1話【11-1 ひとけのない街道1】
アスガルド帝国 芙蓉離宮
バルドシドニー、協力を願っておいて今更ですが、本当にいいんですね ?
セシリィもちろんです。そのために色々と準備を進めてきたんですから。……もしかして私、怖気づいてるように見えました ?
バルドいいえ。ただ、ケリュケイオンにはあなたの大切な人がいるでしょう。
バルドこれは危険な作戦です。ちゃんとガロウズと話はしてきましたか ?
セシリィ……姿は変わっても、優しい所は変わりませんね。生前、私をかばってくれたバルドさんのまま。
バルドそんなことは……。
セシリィガロウズとのことは気にしないでください。私自身が決めたことですから。
セシリィそれに、私は『体』を粗末にするつもりはありません。この体の持ち主である、セシリィのためにも。
バルド……わかりました。では、行きましょう。
メルクリアよくセシリィを連れ戻してくれたな。さすがバルドじゃ !
バルド私の力だけではありません。彼女自身も帝国に戻りたいと望んでおりましたので。
バルドただ、チーグルも一緒に連れ戻せなかったのは私の不徳の致すところです。
メルクリアそなたは十分やってくれたぞ、バルド。確かにチーグルがいないのは残念じゃが今は良しとしよう。
メルクリアさて……黒衣の鏡士どもにさらわれたと聞いて心配しておったのだぞ ?セシリィ――いや、シドニーよ。
セシリィご心配をおかけして申し訳ありませんでした。
メルクリア無事ならば良い。良いが……さらわれる直前に、そなたはチーグルを連れて精製所からの脱走騒ぎを起こしたそうじゃな。
セシリィ――っ ! ! それは……。
メルクリア隠さなくてもよい。全部知っておる。
メルクリアあんなことをするくらいなら素直に申せば良かったのじゃ。「チーグルを連れて、この離宮へ戻りたかった」と。
セシリィえ ?
メルクリアあの頃のそなたは、不安定なチーグルの容体も見ながらクロノスの研究を進めていた。
メルクリアそこへ特異鏡映点亜種の調査のために離宮から慣れぬ施設に移されて、ずいぶんと参っていたそうではないか。
セシリィ私は……その……。
バルドシドニー。遠慮をせずに「そうだ」と頷いてよいのですよ。メルクリア様は寛容な方ですから。
セシリィ(バルドさん…… ! 嘘の報告を――)
セシリィは、はい。恐れながら……。
メルクリアバルドから、シドニーが思い詰めていたとの報告を受けた。それゆえ、チーグルの容体が悪化した際に、この離宮に戻るため暴挙に走ったのだと。
メルクリアそなたに無理をさせてしまったのじゃな。……わらわのことが嫌いになったか ?
セシリィいいえ、そのようなことはありません。
メルクリア本当か ? ならば今までどおり、魔鏡術について話を聞かせてくれるのじゃな !
セシリィもちろんです。この体――セシリィと同様、メルクリア様のお話相手として頂けるのならばこれ以上の喜びはありません。
メルクリアうむ ! ならば我がビフレストの民を救うため再びこの離宮での研究に励むがよいぞ !
セシリィはい、ありがとうございます。
メルクリアこれで一安心じゃ。シドニーが戻ってきたことでバルドが裏切っていないことも証明されたからの !
バルド裏切りなど、一体どこからそのような話を ?
メルクリアなんといったかのう……。すこし前にリビングドールとして甦らせた、浅黒い肌で、屈強な男の体を使っておる……
バルドローゲ、ですか ?
メルクリアそう、ローゲじゃ。バルドの動きに不審な点がみられるゆえくれぐれも気をつけろ、とな。
バルド彼がそのようなことを……。
メルクリアい、言っておくが、わらわはそんなはずはないと突っぱねたぞ ! じゃが……。
メルクリア……わらわが気に入った者は、ことごとく離れて行く。チェスター、ミトス、シング、カイウス、ルビア……。皆、わらわを裏切った。
メルクリアだからその……ローゲの言ったことを気にしているのは用心のためなのじゃ。わかるな ?
バルド…………。もちろん、承知しております。
メルクリアならば良い ! バルド、そなたは下がって休め。シドニーはわらわと共に来るのじゃ。久しぶりに魔鏡術の話を聞かせてくれ。
メルクリアそなたがいなくなって寂しくて仕方がなかったのだ。セシリィとシドニーを同時に失ったのじゃからな……。でも、今日からは共に過ごせる !
メルクリア落ち着いたら、またぱじゃまぱーてぃーとやらを開こうぞ !
バルド(まずはひとつ、関門を突破した――か)
ナーザメルクリアとの謁見はすんだのか。
バルドはい。メルクリア様も大変お喜びでした。
ナーザそうか。お前の立てた策が成功して何よりだ。メルクリアに良からぬ噂を持ち込んだ奴がいたようだからな。
バルドローゲのことでしょうか。私の行動を疑っているとメルクリア様からうかがいました。
バルドですが、あれは仕方がありません。彼は生前から私を恨んでいました。
バルドこの世に舞い戻っても、その気持ちに変わりはなかった……それだけのことです。
ナーザローゲは才気溢れる臣下だった。そして簡単に獲物をあきらめるような男ではない。
ナーザそれに、あのローゲに鏡士の情報を渡しているものがいるようだ。恐らくその者から情報が筒抜けになっている。
バルド! !
ナーザ……色々と策を弄するのも結構だが、足をすくわれぬよう、気をつけて事を進めた方がいい。
ナーザお前のやっていることは、間違ってはいないのだからな。
バルド―― !ナーザ様……、あなたは……。
ナーザ……もはや死者である我々が何をしてもすべては理から外れた行為。ダーナの意思に背くに違いない。
バルドわかっておられるのでしたら、もう――
ナーザだがな、世界を救うために戦い死んでいったビフレストの民はどうなる。その志を、犠牲を、無駄にすることなど俺にはできぬ !
ナーザせめて我らビフレストの本懐だけでも遂げずして我が民たちに顔向けができようか。
ナーザ……バルド。お前がどう動こうと構わない。だが、これだけは言っておくぞ。
ナーザ俺は必ず鏡精を滅ぼす。それを生み出すセールンドの鏡士もな。
バルド…………。

キャラクター2話【11-1 ひとけのない街道1】
カロル待って、ユーリ !
ユーリまだ休んでろって。今回はあっちこっち連れまわしちまったからな。
カロルそんなに疲れてないし平気だよ。それにボクは室長だから、責任もってミリーナに報告しないと。
ユーリへえ、すっかり室長が板についてきたな。頼もしいこった。
ラピードワオン !
カロルミリーナお待たせ !報告に来た――って、あれ、みんな ! ?
エステルユーリ、カロル、ラピード、お帰りなさい !無事で何よりです !
リタずいぶん遅かったじゃない。どこ寄り道してたのよ。
レイヴンいいじゃないの、寄り道結構。で、お土産は ?
ユーリなんだよ、勢ぞろいでお出迎えか。どうした ?
コーキスえっと……、ユーリ様に色々と伝えることがあって……。
ジェイドまあまあコーキス、それは後にしましょう。まずは彼らの報告を聞いてからです。
ユーリふうん……。あんたとコーキスの顔みてたらろくでもねえ話だってことは分かったぜ。
ミリーナとりあえず座って、ユーリさん。カロルもラピードさんもお疲れ様。ヴェイグさんたちと別れたあと、どうしたか気になってたの。
ユーリ悪いな。方々回ってたんで時間がかかっちまった。そういやヴェイグたちは ?
ミリーナヒルダさんと一緒に、こっちに戻ってるわ。
カロルよかった、ちゃんと会えたんだね !ヴェイグ、すごく心配してたから。
ミリーナそうね。クレアさんも喜んでたわ。それで何かわかった ?
カロルうん。精製所とか出入りの商人とか、色々と調べたよ。ユーリなんか、酒場で衛兵や研究所関係者とうまく飲み仲間になってさ。そこで――
ユーリ経緯はいいから、結論が先な。コーキスたちもオレに話があるみたいだし。
カロルそうだね。えっと、フレン――バルドの事を調べたんだ。そしたら兵士の間でも評判がいいフレンを悪く言う男がいるって話を聞いたんだ。
カロルローゲって名乗ってるらしいけど最近いきなり幹部になったんだって。どこから来たのかは、みんな知らないみたい。
カロル今まで幹部クラスになったのって鏡映点が多かったでしょ ?だから怪しいってユーリと話してたんだけど……。
ミリーナリストは用意してあるわ。特徴を教えてもらえる ?
カロル髪が長くてうねうねしてて、いかつくて、背はユーリよりも高いって言ってたよね ?
ユーリああ。それに肌や髪の色と――聞いた限りだと、こいつに近いな。
ミリーナ……バルバトス。カイルの敵ね。そう言えば、クラトスさんが精製所で戦ったのも似た特徴の男だったって報告を受けてるわ。
ジェイド精製所には、様々な心核が保管されていたと聞いています。名を偽っていないのだとしたら、彼はリビングドールにされている可能性が高いですね。
ミリーナそうすると、バルドさんかフレンさんが、ローゲという人に敵意を持たれていることになるけど……。
ユーリバルドがらみって線が濃厚だろ。こいつが表に出て来た頃には、フレンはもう乗っ取られていたはずだ。
コーキス……乗っ取られたっていうか……。
ユーリなんだ ? 何か――
ジェイドわかりました。帝国内部でバルドを妨害している人物は彼である可能性が高いということですね。他には ?
カロル精霊の話もあるよ。帝国は精霊を小さな入れ物にいれて持ち運べるんだって。
カロルなんとかケイジって名前の入れ物らしいんだけど、詳しいことまでは調べきれなかった。
リタ待って、それってクレーメルケイジじゃない ?キールから聞いたことがある。あっちの世界では精霊じゃなくて晶霊ってのを入れてたらしいけど。
ジェイドティル・ナ・ノーグ仕様に開発されているのかもしれません。後でキールを呼んで、詳しい仕組みを聞くとしましょう。
ジェイドですがそうなると、捕まっている空のマクスウェルにはそのクレーメルケイジが使われていることも考えなければいけませんね。
エステル人ひとり捜すのも大変なのに、ますます捜索がしにくくなりますね……。
レイヴンったく、厄介な上に、人様の世界の技術をよくもまあいいように利用するもんだ。その技術もどこから仕入れたんだか。
ミリーナ神依、クレーメルケイジ、転生者にソーディアン……。帝国はどれだけ情報を持ってるのかしら。
カロルそこまでわかれば良かったんだけど、今回報告できるのはこれくらいなんだ。
ミリーナいいえ、ありがとう。大きな手がかりよ !
ユーリそれで、そっちの話ってのはなんだ ?
三人…………。
ユーリなるほど、まあ検討はつくさ。フレンのことだろ。で、なんだって ?
ミリーナレイヴンさんたちには、すでに話してありますが、これから言う話も、作戦内容も、今ここにいる人たちだけに止めておいて欲しいんです。
ミリーナ私たち、あれからまたバルドさんに会ってきたんです。そこで新たな作戦の話になったんですが――……。

キャラクター3話【11-2 ひとけのない街道2】
ミリーナ――それで、フレンさんはバルドさんと入れかわりに帝国に残る手筈になっています。
ユーリ………………。
コーキスカ、カロル様、ちょっといいか ?
カロルな、なに ?
コーキスユーリ様、大丈夫か ?なんか声かけてやった方がいいんじゃ……。
カロルえっと……リ、リタ、ちょっと来て !
カロルユーリになんて声をかけてあげればいいかな。
リタ何の反応もないのにどうしろってのよ !あんた考えなさい。ほら、頭使え !
カロルボクだってフレンの話にびっくりしてるんだよ ! ?きっとユーリだって……。
エステルリタもカロルもコーキスも、どうしたんです ?
リタちょ、エステル ! あのユーリ見てよく普通で……。
エステルユーリですか ? 笑ってますけど。
三人え ?
ユーリ…………くくっ、…………はははははっ !まいったね、ったく !
レイヴンだよねえ。さすがの青年もそりゃ笑うしかねえわなあ。
ユーリああ。あいつはそういうヤツだったぜ。なに簡単に乗っ取られてんだと思ったけど異世界ボケしてたのはオレの方だったわ。
ユーリ抵抗するどころか受け入れて、乗っ取った奴と協力ね。どこまで正攻法が好きなんだよ。
エステルでも、とてもフレンらしいと思います。
レイヴン不利な状況の中で対処していくってのはフレンにとっちゃ慣れたことだろうからな。あの手のタイプは案外したたかよ ?
ユーリ知ってるよ。嫌ってくらいさ。ったく、慣れない心配なんざするもんじゃねえな。
ジェイド楽観視するには早いですよ。フレンはバルドとして帝国に残らねばなりません。万が一彼の正体がばれた場合は……。
レイヴンちょっと大将、あんまウチの子いじめないでくれる ?
ユーリ構わねえよ。どうせそのことも含めて、色々と策をこねくり回してんだろ ?
ジェイドさてどうでしょう。ともかく、バルドが無事に我々の下に来て、そこからようやくイクスの救出計画が実行に移せるわけですからね。
ジェイドまずはバルドが別の体を手に入れなければ始まりません。
ユーリ別の体ね……。その作戦、大丈夫なのか ?『ファントム』の体を使うだなんてよ。
カロルあいつ、本当にまだ生きてるの ?
ジェイドバルドからも聞きましたから、間違いありません。それに以前、帝国に潜入したあなたたちの報告を受けた時から予想はしていました。
ジェイドカレイドスコープを隠した仮想鏡界の存在は、ファントムの生存を意味しているだろう、と。
ジェイドあの戦いで倒れた後は彼と同じ存在であるジュニアがサポートをして仮想鏡界を維持しているのだと思われます。
ユーリちと気になったんだが、仮想鏡界は、作った鏡士か鏡精が中に残らないと維持できないんじゃなかったっけ ?
リタそれ、あたしも引っかかってたの。ファントムの存在で仮想鏡界を維持してるとしたらその体を奪って出て来るなんて無謀よ。
リタジュニアがサポートしてるだろうとか言ってたけど、下手したら鏡界が維持できなくなって帝国にばれるんじゃないの ?
ミリーナ私がカーリャを置いてるのは、まだ未熟だからなの。この仮想鏡界はゲフィオンの知識によるものだから、今の力じゃ制御が難しくて……。
ミリーナでもビクエであるフィル――ファントムがつくった仮想鏡界なら、そんな必要はないはずよ。変わらずに場を保つことも可能だと思う。
ユーリなるほどね。んじゃその辺は解決か。それで、セシリィはもう出発したんだな ?
ミリーナええ。今頃は帝国内に入っているはずです。バルドさんが手引きをしてくれてるから、大丈夫だと思います。
リタそこまでバルドってのに任せきりで平気 ?フレンと協力してるって話も、あいつが言ってるだけなんでしょ ? 警戒しといた方がいいわよ。
カロルでも、リビングドール計画を止めたいって言ったあの時のバルドは本気にみえたけどな。それに生き返っても、こんなんじゃ嬉しくないって。
レイヴンそうねえ。リタっちの言うとおり警戒はしないといけないけど、その言葉だけは、信じてやりたいね。
レイヴン……だいたい、勝手に死んだ人間甦らせて、それが当人の幸せだと思ってんならとんだお門違いってやつさ。
カロルレイヴン……。
レイヴンしかしバルドくんはぜーたくだわ !あのモテモテフレンちゃんの顔で嬉しくないとか !俺様なら即ナンパに行くね !
リタ人が真面目に話してるのに……あんたは結局そこか !
レイヴンひっ ! ?
エステルリタ、ここで術はだめですよ ?
リタわ、わかってるわよ……。
レイヴンあー嬢ちゃんがいて助かったわ……。フレンちゃんと会う前に死ぬところだった……。
エステル死なれては困ります。みんなでフレンを出迎えてあげないと。ね、ユーリ !
ユーリ出迎えなんて、こいつで十分さ。
リタ剣 ? またあんたらは……。
ラピードワフ~。
ジェイド……やれやれ、騒がしい。フレンが関わることだからと彼らに話を通したのですが、うかつでしたか。
ミリーナいいえ、ジェイドさんの判断は間違っていません。表には出さなくても、今までみんなフレンさんのことで不安だったでしょうし。
ジェイド士気が下がるのは避けねばなりませんので、相応の対処をしたまでですよ。
ミリーナふふ、そうですね。
コーキスでも、ユーリ様が案外普通でよかったですね。フレン様が帝国に残ってバルドの身代わりになるなんてもっと何か言われるかと思った。
ミリーナそうね。フレンさんを信じているんでしょうけど、でも、きっと……。

キャラクター4話【11-4 静かな山岳2】
ソフィあ、アイゼン。
アイゼンなんだ。お前たちも船の改造にかりだされたのか。
アスベル船 ? いいえ。俺たちは仲間の様子を見にきたんです。アイゼンさんは、フィリップさんに呼ばれたんですか ?
アイゼンまあな。……ところで、エドナは元気にしているか ?
シェリアもちろんです。今は大変な時だけど、たまにエドナの主催でお茶会を開いたりしてて、みんなのいい息抜きになってますよ。
ソフィお茶会、楽しかった。エドナはパルミエが食べたいって言ってたよ。
アイゼンフッ、そうか。
フィリップわざわざ来てもらって済まないね。アイゼン。ケリュケイオンのこと、よろしく頼むよ。
アイゼン物好きな奴らだ。死神の呪いを背負った俺に頼むとは。何が起こっても知らんぞ。
ガロウズ起こってほしいくらいだぜ。ちょいと行き詰まってるんだよ。
ガロウズ船乗りとしての意見とか、魔鏡技師とは別方面からのアプローチが欲しいんだ。早速頼むぜ。
フィリップさて、こちらはリチャードのことだね。
アスベル……はい。
フィリップ君たちには聞きたいことがある。一緒に行こう。
シェリア陛下……眠ってる顔は穏やかなのに……。
アスベルリチャードは、このまま眠らせておくしかないんですか ?
フィリップ……そうだね。彼の場合、リビングドールとはいっても、本人の心核をとりはずしている訳じゃない。
フィリップ心核をいじられていて、リチャードとチーグルが、一つの体に存在している状態なんだよ。
シェリアクラトスさんの時のようにスピルメイズに入れば、どうにかなりませんか ?
フィリップそれはもちろん考えている。ただ、少し時間をかけて検証したいことがあるんだ。
フィリップ(バルドとフレン、彼らの結果を見てみないと……)
アスベル結局リチャードの状況は、ラムダがいた時と変わってないってことか。
シェリアそうね。ラムダの代わりに、チーグルが取りついただけだもの……。
フィリップその『ラムダ』のことだけど、カイウスから話は聞いたね ?
ソフィ今はルキウスって人の中に入ってるんだよね ?ラムダが暴れるから、ずっと眠ったままだって。
フィリップ少しラムダについて説明してもらえるかい。何故、リチャードにとりついているのか。彼はどういう存在で、肉体はどうなっているのか。
アスベル元々ラムダに肉体はありません。他人に取りつくことで存在していたんです。そしてラムダは……人間を憎んでいます。
アスベルリチャードはそんなラムダを受け入れてしまった……。
フィリップ彼らは、望んで共存していたわけだね。
シェリア確かに、陛下は一度は離れかけたラムダを呼び戻したことがあります。望んで一緒にいるといえばそうなのかもしれないけど……。
シェリアだけど、あんなの悲しすぎるわ……。
アスベル……ああ。俺たちはまだリチャードのこともラムダのこともわかっていない。
アスベルただ、俺たちの世界を滅ぼそうとしていたラムダも、そしてリチャードも、人に虐げられていた。それだけは確かです。
フィリップ……なるほど。そして今、リチャードと引きはなされたラムダは、この世界で再び、勝手な実験にさらされている。
フィリップこれはかなり危険な状態だね。ルキウスが目覚めてしまったら大変なことになるかもしれない。
ソフィ……その時は、わたしが消す。
アスベルソフィ ! お前またそんなことを !
ソフィでも、ラムダが暴れたらきっとこの世界も滅ぶ。そんなの絶対にダメ。だから、わたしがやらなきゃ。
フィリップどういうことだい ?
シェリアラムダは、ソフィにしか消すことはできません。そしてその方法は……対消滅です。
フィリップ対消滅……ということは……。
ソフィラムダを消して、わたしも消える。わたしはそのために作られたの。

キャラクター5話【11-6 静かな山岳4】
メルクリアなるほどのう。未来におこりえる可能性までも現在の力にすることができるのか。
メルクリアその鏡、わらわも作りたい !未来のわらわはきっと強いぞ !
セシリィそうですね。ですが、この魔鏡の作成には高度な技術が必要なんです。
メルクリアそうか。ならばどれくらい修行が必要かの ?
セシリィ力を持っている鏡士でも技術の習得には相当かかりますので――
バルド失礼します、メルクリア様。
メルクリアバルドか、入れ。何の用じゃ ?
バルドセシリィをそろそろ下がらせてもよいでしょうか。
メルクリアなんでじゃ。もっとゆっくりしておればよい。なんならバルドも一緒にどうじゃ ?お茶もお菓子も用意してあるぞ。
バルドお誘いは大変ありがたいことですが、セシリィには仕事がありますので。
セシリィ申し訳ありません。メルクリア様。国のための研究なのです。ご理解ください。
メルクリアいやじゃ ! わらわに話を聞かせる方がよっぽど国のためになる !
セシリィまた、お部屋に伺いますから――
メルクリアいーーやーーじゃーー ! !
ナーザ外まで声が響いているぞ。はしたない。
メルクリアあ、兄上様 !
ナーザまた駄々をこねているのか。
メルクリア駄々ではございませぬ !シドニーがわらわを置いて研究に戻るというから……。
セシリィ申し訳ありません。ですが……。
メルクリアわらわは無理を言っているか ?そなたの魔鏡術の話を聞いてもっと鏡士としての知識を深めたいだけじゃぞ ?
ナーザお前は少し我慢というものを知るといい。度が過ぎると相手にされなくなるぞ。
メルクリア……わらわは早く一人前の鏡士になって、ビフレスト皇国を甦らせたいのです。だから……。
ナーザ何故、そこまでこだわる。ビフレストのことなど何も覚えていないだろう。
メルクリア覚えていないから !だからこそ、我が故郷をこの目で見たいのです。
メルクリア亡くなった母上とて、心の底からビフレストの復活を願っておりました。
ナーザそれは母上の望みだ。お前自身ではあるまい。
メルクリアいいえ、わらわの望みです。あの憎きゲフィオンが、魔鏡術で大陸を生み出したと聞いた時に決意しました。
メルクリアあの女よりも優れた鏡士となり、わらわもビフレストを復活させてみせると。これは母上の望みで、わらわの夢なのです。
メルクリア兄上様は違うのですか ?もしや、ビフレストはもう過去のものと ?
ナーザそうは言っていない。俺には俺の目的がある。ただ、お前はこの世界の『生者』だ。死人の俺たちとは違うだろう。
二人…………。
ナーザビフレストに囚われることはない。望むまま、普通に生きて、普通に暮らせ。
メルクリア普通…… ? よくわかりませぬが、これがわらわの普通です。兄上様。
ナーザ…………。
メルクリア兄上様……なぜそのようなお顔をなさいます ?怒っておいでなのですか ?
ナーザ……違う。
メルクリアそ、そうじゃ、聞いて下され、兄上様 !確かに今は、カレイドスコープで光る砂になった者しかリビングドール化できませぬ。
メルクリアですが、いずれはゲフィオンのように、過去からビフレストの民を甦らせて見せますゆえ !
メルクリアそうすれば、全ては元通りじゃ !きっと、兄上様にもお喜び頂けます。
メルクリア……ん。その時のために研究は必要じゃな。わらわも我慢する。シドニー、研究に戻ってよいぞ !バルドも下がってよい。
セシリィ……ありがとうございます。
メルクリアこれでよいでしょう ? 兄上様。
ナーザ……ああ。
ナーザ……お前たちは、あれをどう思う。
セシリィ……根はお優しい方です。それだけは間違いありません。
バルド……ええ。そしてウォーデン様と故郷を一途に慕っております。
ナーザわかっている。だからこそ……哀れだ。何故こうなったのか……。デミトリアスの仕業か……。
ナーザメルクリアが生まれたとき、誰もが夢見た未来はこのような姿ではなかった筈だ……。……それが口惜しい。

キャラクター6話【11-7 静かな山岳5】
アスガルド帝国 仮想鏡界内
セシリィここがファントムの仮想鏡界……。
バルドそういえば、あなたは初めてでしたね。
セシリィええ。私は知らされていませんでしたから。ところで、ジュニアは ?
バルド打ち合わせ通りなら、そろそろ来るはずです。
ジュニアバルド、セシリィ !
バルドジュニア、ここです。
ジュニア今なら安置室には誰もいないよ。すぐに行って処置を始めよう。
セシリィあそこで眠っているのがファントムなのね。他にもケースに入れられている人たちがいるけど、もしかして……。
バルドええ。こちらはルキウス、そしてリーガル。彼らは鏡映点です。
セシリィこの人がカイウスの……。鏡映点がこんなにもたくさん眠っていたなんて。この人も……。
ジュニア彼女は違うよ。ヨーランドだ。
セシリィヨーランドって、まさか、ヨーランド・ビクエ・オーデンセ ?初代ビクエの ! ?
ジュニアそう。ダーナの巫女だよ。
セシリィそんな人までここに……。一体どうなってるの ?
ジュニア……ごめんセシリィ。今はバルドを移すことを優先して。
セシリィ……わかったわ。
セシリィ――バルドさん。ファントムの側に。
バルドはい。
ジュニアそれじゃ、ファントムを覚醒させるね。
セシリィ本当に目覚めさせても大丈夫なの ?
ジュニア……見ていればわかるよ。
セシリィ……ファントムが目を開けたわ。
ファントム……。
セシリィ……ファントム ?
ファントム……。
ジュニア……このとおり、ファントムの人格はひどく希薄になってしまったんだ。今は何もできない。ただ、生きているだけ。
セシリィ……そう。
ジュニアでもね、この状態だからこそ心核への侵入がしやすいと思う。
セシリィそうね。やってみる。
ジュニア頼むね。ビフレストの鏡士。これは君たちの国の技術だから任せるよ。手順は大丈夫 ?
セシリィええ。ちゃんと確認済みよ。まずファントムの心核を解放して、その後に、バルドさんを移動させるわ。
セシリィでは――行きます !
? ? ?おい、こんな辛気臭い部屋で何をしている。
セシリィ―― ! !
ジュニア――セシリィ、彼は僕が相手をするから、バルドが無事か確認して。
ジュニアどうしたの、ローゲ。なんでこんなところに ?
ローゲコソコソと動き回っているネズミを見かけたのでな。追って来たまでよ。
ジュニアネズミってなんのこと ? 詳しく聞かせてもらえる ?
セシリィ……バルドさん。
バルド大丈夫、私はまだフレンさんの中にいます。
セシリィ良かった、中断しちゃったから何かあったらと思って……。
バルドあれはローゲですね。恐らく私の後をつけて来たのでしょう。
ローゲどけ。今は小僧に用はない。――おい、いるんだろう ? バルド !
バルドここにいるよ、ローゲ。いったい何の騒ぎだ ?
ローゲバルド、貴様ここで何をしていた。
バルド鏡映点の安否を確認していたんだ。ここのところ、鏡映点の流出が激しかったからね。
ローゲハン、貴様が言うか。この前は作戦などと言って、鏡映点を二人も逃がしただろう。
バルドああ。それが功をそうして、セシリィを取り戻せた。そのうちチーグルも救出するつもりだよ。
ローゲぬけぬけと……。その物言い、死ぬ前よりも癇に触る。
バルドそれは済まなかったね。だがここは貴重な鏡映点が眠る場所だ。話なら別の場所でしよう。
ローゲフン、鏡映点などいくらでも具現化すればいい。実験さえ終われば、我らが器でしかないわ !……いや、そう言えばこいつは違ったか ?
ローゲルキウス……。確かこいつの中にはラムダとかいう寄生生命体がいるらしいな。強大な力があると聞いて興味があった。
ローゲこんな所で眠らせておくとは、もったいないことをする。
バルド――っ ! !ローゲ。ルキウスのケースには不用意に触れない方がいい。
ローゲほう ? 珍しいな。お前がそれほど焦るとは。こいつを起こせば、随分と面白い物が見られそうだ。クククッ。
ローゲならば目覚めてみるか ? ルキウス。そして……ラムダよ !
バルド何を…… ! やめろ、ローゲ ! !
セシリィそんな……ルキウスのケースが開いて……。
ジュニアまだだ ! ルキウスの意識があればラムダは少しの間おさえられるはず !その間に、僕とセシリィで強制的に眠らせれば…… !
バルドならば私はローゲを !
セシリィ待って ! ルキウスの体から、何か黒いもやのような物が……。
? ? ?声なき声の叫び……生にしがみつく者……
バルドこれは…… ?
? ? ?そうか……声の主は……お前だな……。
バルド霧が、ファントムに吸い込まれた ?
ファントム……………………。死に……たくない……。
セシリィファントム……意識がないはずなのに ! ?
ジュニア違う……これは…… !
ファントム……死にたくない……。私は……我は……。
ローゲ……お前、ラムダとか言う奴か ?そうか、さっきの黒い霧がお前だったか !ハッハッハッ ! 随分と滑稽だな !
ラムダ……貴様ごときが、我を笑うか ! !
ローゲぐああああああっッ !
セシリィキャアアッ !
ジュニアうわああっ !
バルドグッ…… !
ラムダなるほど……。この体、使い勝手はいいが……。死にたくないという意思以外、ほとんど残っていない。
ラムダだが、それでいい。我はお前の体で復讐を果たそう。
ラムダ実験と称して我を貶め、冒涜したこの世界にな !

キャラクター7話【11-7 静かな山岳5】
フィリップ――ソフィとラムダの対消滅か。確かにそれは、到底納得の行く方法ではないだろうね。
シェリア……はい。それにソフィだって、私たちの気持ちはわかってくれたはずでしょう。あの花畑でのこと覚えてる ?
アスベルそうだ。あの時にマリク教官も言っただろう。二度とソフィが、犠牲になろうと考えないように、みんなで全力を尽くすと。
アスベル俺の考えだって変わっていない。たとえこの世界でも、お前一人を犠牲にする気はないからな。もちろんリチャードだって救う。
アスベル約束したよな ? 最後まで俺たちは一緒だって。
ソフィ……そう、だよね。……ごめんなさい。
フィリップラムダの件はこちらでも対策を考えてみよう。ソフィのためにもね。
ソフィ……うん。
フィリップ――さて、そろそろリチャードに次の鎮静剤を投与する時間だ。
シェリアそれじゃ、私たちは帰りましょうか。
アスベルそうだな。フィリップさん、リチャードのことをよろしくお願いします。
フィリップああ、任せてくれ。
ヒューバート失礼します。こちらにフィリップさんはいらっしゃいますか ?
パスカルも~、いるって聞いたから来たんでしょ ?ほ~ら入っちゃえ !
ヒューバートちょっ、どうしてあなたはそう――ああっ !
パスカルちわーっす ! お届けものだよ~ん。
ヒューバート失礼します。騒がしくてすみません。
アスベルヒューバート、パスカル。どうしてここに ?
ヒューバートミリーナさんに届け物を頼まれたんですよ。
ヒューバートフィリップさん、確認をお願いできますか ?陛下が――いえ、チーグルが使っていた魔鏡結晶です。
フィリップああ、ご苦労様。わざわざ悪かったね。
アスベル確か、その光魔を呼ぶ石はキールの研究室で調べるはずじゃなかったのか ?
パスカル一応、こっちでも出来る限りの解析はしたよ ?けどケリュケイオンの方が解析装置の種類も多いしさ。
パスカルだからミリーナとも相談した結果、こっちに預けてチャッチャカ終わらせちゃおってことになったんだ !急いで持って来たんだよ~。
シェリア急いでいたのはわかるけど、ここには陛下が休んでらっしゃるのよ ?もう少し静かにしないと。
パスカルごめんごめん。でもこの魔鏡結晶の波長と、それを使ってたリチャー……じゃなくてチーグルの波長を調べれば、二人の分離の手がかりになるかなって。
パスカルいつまでもリチャードを、こんな風にしておけないもんね。
シェリアそう……。急いでいたのはリチャード陛下の為なのね。
シェリアでも、それとこれとは話が別 !
パスカルひえ~~~っ !シェリアが怖いよ~ソフィ~ !
ソフィパスカル、静かにしないと――
ソフィあれ ? アスベル、ミリーナから通信が来てるよ。
ミリーナアスベルさん、緊急事態よ。今から説明するから落ち着いて聞いて。
アスベル何があったんだ ! ?
ミリーナラムダが目を覚ましたわ。
全員ラムダ ! ?
ミリーナ覚醒直後に暴走状態になって、帝国を脱走したって報告が入ったの。
アスベルそれじゃラムダはルキウスを操っているのか ! ?
ミリーナ……いいえ。今のラムダはファントムの体に乗り移っているわ。
シェリアファントムですって ?みんなで倒したはずでしょ ! ?
ミリーナファントム自身の意識はほとんどないようだけど、……死んではいなかったの。
フィリップリーパ……。
ミリーナシェリアたちが疑問に思うのはわかるわ。でも今は詳しい説明はできない。勝手なことを言ってごめんなさい。
アスベル何かあるんだろう。わかった。無理に話さなくていい。俺たちはすぐにラムダを追う。
ミリーナありがとう、アスベルさん。
ミリーナラムダは、この世界に復讐すると言い残して出ていったそうよ。今はセールンドに向かってる。
ヒューバートなぜラムダはセールンドへ ?
ミリーナイクスのいる、巨大魔鏡結晶が目的だと思う。多分ラムダは、死の砂嵐を呼びこむ気なのよ。
シェリア死の砂嵐って、イクスが命がけで封じてるのよね ?それを解放したらこの世界は…… !
ソフィそんなことさせない。絶対に止める !
ミリーナお願い。私たちもすぐに追いかけるわ。
アスベルフィリップさん ! ケリュケイオンでセールンドへ先回りさせてもらえますか ?
フィリップもちろんだ。ブリッジに行こう。すぐに進路を変更する。
ローエン失礼します。リチャードさんのお薬をお持ちしました。
フィリップ丁度よかった。ローエンさん、リチャードを見ていてもらえますか ?
ローエン承知しました。お任せください。
フィリップそれとこの荷物も頼みます。魔鏡結晶ですので、扱いには気をつけてください。
ローエン確かにお預かりしました。……どうやら何かあったようですね。くれぐれもご用心を。
ローエンさて、何事もなければよいのですが……。
リチャード……。
ローエン(何か……気配が…… ? )
リチャード…………。
ローエンリチャードさん…… ! ?

キャラクター8話【11-12 セールンドへ続く街道2】
アスガルド兵Aこんなはずじゃ……。やめろ、来るな…… !
ラムダ来るなだと ? 先程までは我を捕らえにきたとほざいていたようだが。
アスガルド兵Bくそっ、総員、突撃――
アスベル今の音―― !
シェリアこの先よ !
ヒューバートあれがラムダの仕業なら、まだ魔鏡結晶にはたどり着いてはいないはずです !急ぎましょう !
パスカルうわ、何これ !この倒れてる人たち、みんなアスガルド兵じゃない ! ?
シェリア……だめだわ。もう、息がない。こっちの人も……。
ヒューバート全滅ですか……。
ソフィ―― ! みんな気を付けて、あそこにいる !
ファントムまた追っ手か。何度でも打ちのめしてくれる !
アスベルファントム……いやラムダ ! !
ソフィこれ以上は、進ませない。
ラムダ貴様は……。……そうか。貴様たちも具現化されていたか。この世界でも我の邪魔をするというのだな。
ラムダ何度我の前に立ちふさがれば気が済む !プロトス1 !
ソフィ―― !
アスベル待てソフィ !……お前、ファントムか ? それともラムダなのか ?
ラムダ……リチャードと違い、この男の自我はほとんどない。残ったのは生きる意思のみ。ゆえに我は我だ。
パスカルやっぱり、普通に話できるんだ !ほらね、あの時あたしが言ったとおりだったでしょ ?ラムダとは意思の疎通が可能かもって !
ファントム可能かもだと ?フォドラでも、エフィネアでも、この世界でも我の声に耳を傾けなかったのは貴様たち人間の方だ !
アスベル聞いてくれラムダ、俺はお前と話がしたい !
ラムダその言葉を信じられると思うか ?異なる世界に来てさえ、人間という生き物は変わらなかったのだぞ。
ラムダひとたび異端と断じれば非道な行いさえ辞さぬ。我欲のために他者を利用し、必要なければ排除する。争い、憎しみ、平和を望むといいながらまた争う。
ラムダリチャードは我と同じ思いを持つ者だった。そのリチャードでさえ、奴らは我から奪った !
ファントム……許せるわけがない !
アスベル――うっ ! なんだ……この力はっ !
ヒューバート体が……っ、押しつぶされそうです !
ソフィラムダ~~~~ッ ! !
ラムダ――っ !
ソフィみんな、大丈夫 ! ?
シェリアっ、はあ……はあ……、ソフィのおかげで、なんとか……ね。
パスカル今の……原素(エレス) ? この世界ならアニマ ?とにかくすごいエネルギーだよ。ラムダとファントムの力が混ざってるのかも……。
アスベルそれでも、俺たちはラムダを止めなきゃいけない !
ラムダやってみるがいい。我は必ず目的を果たす。
ファントム人を滅ぼし、我は生きる ! !
ソフィさせない……。この世界も、みんなも、絶対に守る !

キャラクター9話【11-13 セールンドへ続く街道3】
アスベル倒した……のか ?
ラムダこの体滅ぼそうとも……我に勝つことなど……出来はしない……。
ラムダ我は必ず……我の望む世界……を……「私」が望む世界を……。
ラムダ……フィル。
アスベル―― ! ? ラムダ、お前…… ?
ラムダこの男……自我が…… ! ?……ミリーナ……ゲフィ……オン……。
ヒューバートまさか、ファントムの意識が覚醒しつつあるというのですか ! ?
パスカル魔物を生み出すラムダの力が、ファントムの回復力や生命力に変換されちゃってる……とか ?
シェリアそれって、二人がお互いの力を奪いあってるってこと ?
パスカルわかんない。今わかるのは、どっちが主導権をとってもこのままじゃまずいってことだけ !
アスベルラムダ、ファントムから離れろ !
ラムダ貴様らの……言葉など……。この程度、支配下に…… ! イ……クス…… !ぐああああああああっ !
アスベルくそっ、どうすれば…… !
ソフィ……アスベル、シェリア、ヒューバート、パスカル。今までありがとう。
全員ソフィ ! ?
ソフィファントムから離れてもラムダは消えない。長い眠りを経た後、再び力を取り戻す。
ソフィファントムだって、ラムダの力を取り入れてたとしたら、どんな脅威になるかわからない。
ソフィだから、ファントムごとわたしが消さなきゃ。……約束、守れなくてごめんね。
アスベル駄目だ ! ソフィもリチャードも犠牲にはしないと言っただろう !
アスベルラムダ、お前もだ ! 生きるんじゃないのか ! ?
ラムダ貴様などに、言われずとも…… ! !
シェリアなに、あの黒い霧……。ファントムの体から湧き上がってる ?
アスベルあれが……ラムダなのか ?
ソフィそう。でも、ファントムの体から離れきれてない。もしかして、わたしたちと戦って弱ってるから…… ?
アスベルそれなら、他に寄生する体があれば引っ張り出せるかもしれないよな。
ヒューバート何を言ってるんですか ! ?
アスベル――こっちへ来い、ラムダ !
ラムダ……我の器になろうというのか ?この得体の知れない鏡士ならばともかく、貴様の自我程度ならば、簡単にねじ伏せるぞ。
シェリアアスベル、陛下のようになったらどうするの ! ?
アスベル乗っ取られるつもりはない。それに俺も確かめたいんだ。
アスベル……ラムダ、俺たちは元の世界であるものを見た。酷い実験にさらされ続けた中で、お前に唯一「生きろ」と言ってくれた人がいたな。
ラムダ貴様、何を……。
アスベル俺はその人の言葉を信じて、この先の可能性にかける。お前が来ないなら、俺が迎えに行くぞ !
ソフィアスベル ! ?
ヒューバートやめて下さい ! 兄さん !
パスカルラムダに直接触れるなんて…… !
シェリアアスベル…… ! 嫌ああああああっ ! !
アスベルここは……どこだ ?
ラムダお前でもなく、我でもない。我とお前が共有する領域。
アスベルラムダ…… !
ラムダ我はお前をこの領域から排除して、お前の領域を圧迫する。最終的にお前の肉体を我が支配下に置く。
ラムダお前ごときが、二度とコーネルの言葉を口にしないように。
アスベルやっぱりあれは、お前の心だったんだな。
ラムダ……他者の不幸な過去は、さぞ楽しかったことだろう。……満足したか ?
アスベルそんなわけないだろう。
ラムダ……だがな、今はお前も我と同じだ。身勝手な鏡士に勝手に具現化され、二度と己の世界に戻ることの叶わぬ、哀れな異端者だ。
ラムダ憎いだろう ? 簡単に納得などできたはずがない。
アスベル確かに、一人だったらこの状況には耐えられなかったかもしれない。だけど、俺には仲間がいたからな。
アスベルそれに、鏡士のイクスもミリーナも精一杯その責任をとろうとしてくれている。
アスベルお前はリチャードから引き離され、帝国に実験材料として扱われていた。だから、それを知ることができなかっただけだ。
ラムダ鏡士とて同じだ。全ては利用するための方便だとしたらどうする。人間など、いくらでも嘘はつく。
アスベルそんな人間だけじゃないことを、お前はよく知ってるはずだろう。
ラムダ……。
アスベルラムダ、俺と一緒に生きよう。そして確かめればいい。
アスベル人間という存在や、なぜコーネルさんがお前に生きろといったのか、その答えを一緒に探そう。この世界を見てみるんだ。
ラムダもの好きな……。そんなことをしている間に、我はお前を乗っ取るぞ。
アスベル悪いが、簡単にそうなるつもりはないさ。こっちも必死だ。だから――
アスベルさあ、手を取れ。
ラムダ……断る。
アスベルだったら、「うん」というまで、とことん付き合う。
ラムダ要領の悪い奴だ。具現化されて愚かさが増したか ?
アスベルそうかもしれない。元の世界ではもっと上手くお前の手を取れているかもしれないな。だけど、今はこれが精一杯なんだ。
ラムダ……ならば話はここまでだ。お前の手は取らぬ。だが、限界が近い……。今はここで……しばし眠る。
アスベルわかった。俺は待つよ、お前が目覚めるのを。ラムダ――……。
アスベルう……。
三人アスベル ! !
ヒューバート良かった、気がつきましたか !
ソフィアスベル、片目だけ色が違う…… ?
シェリア大丈夫 ? 体はなんともない ! ?
アスベルああ。みんな……、今、ラムダと……。
ヒューバート兄さんとラムダの話は聞こえていました。ソフィの力のせいかもしれません。
ソフィラムダ、すごく静かになってるよ。すごいね、アスベル。
アスベル分かり合うとまではいかなかったけどな。でも、俺は諦めない。必ず――
パスカルあれ ? アスベル、なんかピカピカしてない ! ?
アスベル浄玻璃鏡が光ってる…… ! ?

キャラクター10話【11-14 ひとけのない街道1】
コーキスマスター、ファントムはマスターの所まで辿りついてないよな ! ?
イクス『大丈夫だ。アスベルたちはこの草原をもっと進んだ先にいると思う。ただ詳しい様子まではわからない』
コーキスアスベル様たち、無事かな……。魔鏡通信ができればいいのに。
ミリーナ今は我慢よ。もしもラムダと戦っている最中なら邪魔することになる。小さな隙が、命とりになるかもしれないもの。
ルドガーそんな危険な奴を追うのに本当に俺たちの他には、知らせなくていいのか ?
ミリーナ……ええ。
ユリウスもしかして、俺やルドガーを選んだのは今現在、帝国に近寄れない人物だから、かな ?
ミリーナ……さすがですね。
ユリウスやはり情報漏えいを恐れてか。それなら納得だ。
ミリーナなるべく今の作戦は、明確にしないでおきたいんです。ユリウスさんとルドガーさんには協力をお願いします。
ルドガーそれはわかったけど……、なあミリーナ、あっちで何か光ってないか ?
ミリーナ―― !あの輝き、まさか誰かの浄玻璃鏡が発動してる…… ?
ルドガーアスベルたちが戦っているのかもしれない。急ごう !
ミリーナアスベルさん、みんな !
アスベルミリーナ、いい所に来てくれたな !
コーキスあそこで倒れてるの……ファントムだ !いや、それともラムダかな ?
ユリウスどちらにしろアスベルたちが倒したのか。念のため、俺たちは近寄らない方がいいな。
セシリィやっぱり、あれは浄玻璃鏡の光だったのね !
ミリーナセシリィ、バルドさん !二人とも、大きな怪我はないようね。吹き飛ばされたって聞いて心配したわ。
バルドええ。フレンさんの鍛えあげられた体には感謝するばかりです。
セシリィ私は、バルドさんがかばってくれたから。それでアスベルさん。ラムダとファントムはどうなったの ?
アスベルラムダは今、俺の中で眠ってる。ファントムは――
ミリーナ……そう。それで、ラムダはこのままで大丈夫なの ?
ソフィ……ラムダ、今までみたいな反応じゃないの。今は消す必要がないラムダ。でも、ずっとこのままかはわからない。
コーキスそれじゃいつか、また暴れ出すかもしれないのか。
アスベル……あいつはまだ、俺を信用したわけじゃない。差し出した手は握ってもらえなかったからな。
ミリーナでもラムダがアスベルさんに入った後で、浄玻璃鏡が光ったのよね ?
アスベルああ。どういうことだろう。
セシリィ……やっぱり、可能性かな。もしかしたら未来、もしくは元の世界で起こりえることが、浄玻璃鏡を反応させたんだと思う。
パスカルあ~なるほどね。ラムダがアスベルを好きになっちゃうってことか。
シェリアす、好きって、どういうこと ! ?
パスカルだから~、ラムダがアスベルと仲良くなって力を貸してくれるかもってことだよ。でしょ ?
セシリィええ。アスベルさんの可能性の中に、『ラムダの力を使って戦う』という未来が存在してるのね。
ヒューバートそんなことが……、信じられません。
パスカル何言ってんの。可能性なんてその人次第で無限だよ ?明日のことなんてわかんないんだから。
シェリアそうね。いつかパスカルが、お風呂が面倒だなんて言わなくなるかもしれないし。
パスカルそれはどうかな~。そんなのより、弟くんと一緒にお風呂に入る方が可能性は高いかも ?
ヒューバートそっ、そんなこと、あるわけがないでしょう !
セシリィとにかく、アスベルさんは、ラムダに関する力が使えるはずよ。
ミリーナオーバーレイは一時的なものだけど、本当にラムダとわかりあった時には、もっとすごいことになりそうね。
ソフィそうすれば、ずっと消さなくていいラムダになる ?
アスベルああ。いつか必ず――
イクス『コーキス ! 大量の光魔がここへ押し寄せてる ! 』
コーキスなんだって ! ?みんな、すごい量の光魔が来るって !
ミリーナいつの間に集まったの ! ? そんな気配なかったのに !
イクス『突然、湧いて出て来たんだ。ほら、もう来る ! 』
アスベルみんな、構えろ !
シェリアアスベル、あなたはさっきまで倒れてたのよ。無茶しないで !
アスベル大丈夫。それに俺は確かめなくちゃならないんだ。ラムダの力を。
アスベル(この力が前借りなのはわかってる。だが、この可能性をいつか本物にするため、お前を理解するために――)
アスベル行こう、ラムダ ! !

キャラクター11話【11-14 ひとけのない街道1】
アスベルこれが、ラムダの力なのか。
ミリーナすごいわね。あれだけ大量の光魔だったからもっと手こずるかと思ったわ。
ルドガーあの光魔……。
ユリウスお前も気が付いたか。湧くように押し寄せるあの様子、チーグルがエルをさらった状況と似ていた。
シェリア待って下さい。陛下はケリュケイオンにいるんですよ ?それにまだ眠ったままです。
ミリーナ……念のためフィルに連絡をとるわ。リチャードさんの様子を確認してもらいましょう。
セシリィそれなら今のうちにバルドさんを移してもいいかしら。
バルドラムダの時のように、何が起こるかわかりません。早い方がいいと思います。
ミリーナそうね。コーキス、周囲を警戒してもらえる ?
コーキスわかりました。絶対に二人の邪魔はさせません !
パスカルなになに ? 何が始まるの ?
ヒューバートぼくたちは下がっていましょう。そうじゃなくても、あなたは何かと騒がしいんですから。
セシリィファントムの状態は問題ないし、ラムダの影響もない。アスベルさんがラムダの全てを引き受けてくれたおかげね。
バルド強いですね、彼は。私は寄生するというラムダの特性を知っていましたがあの時は対処のしようがなかった。
セシリィ仕方ありませんよ。それにあれは、私がバルドさんを移すために行った、心核解放作業の影響です。
セシリィ解放されたファントムの心を、ラムダが読み取ってしまったようですから。
バルド生きるという意思、ですね。
セシリィええ。――さあ、準備ができました。バルドさん、始めてもいいですか ?
バルドはい。お願いします。
ソフィ何の術かな、まぶしい…… !
パスカルね、今の見た ! ? バルドの体からファントムの中に光が移動したよ !
ヒューバートええ。どことなく、ラムダの寄生を思わせる光景ですね。
アスベルまさか…… !
セシリィ……終わったわ。バルドさん、どう ?
バルド……はい。私の方は問題ないようです。フレンさんは ?
ヒューバートファントムが起きあがりましたよ ! ?
アスベルいや、あれはきっと…… !
セシリィ……フレンさん ?
フレン…………。
バルドフレンさん ? そんなまさか……フレンさん !
フレン大丈夫、起きてるよ。
バルド良かった……。あなたを失うことだけは絶対にできませんから。
フレン心配をかけたね。けど大丈夫。僕の頑丈さは君が身をもって知った通りだ。
バルドええ。随分と助けられました。
フレン……バルド、こうして向かい合って話すのはなんだか新鮮だよ。
バルド……ええ。
コーキスよかった。ミリーナ様、セシリィたち成功しましたよ !……ミリーナ様、どうしたんですか ?
ミリーナ変なの……。ケリュケイオンに通信が繋がらない。さっきから何度もためしているのに……。
イクス『コーキス、みんなを連れて隠れろ ! 今すぐに ! 』
コーキスえ ! ? えっと、みんなすぐに隠れろ !
全員! ?
ミリーナもしかして、イクスの警告 ?
コーキスはい。すごく焦ってたみたいです。……あれ ? 向こうから来るのって…… ?
アスベルリチャード ! ?
コーキスなんでこんな所に、すぐに捕まえないと !
バルド動かないで下さい。ここは――
フレン僕たちに任せてくれ。行こう、セシリィ。
セシリィはい !
フレンチーグル……無事だったんだな。
チーグルバルド ! シドニーまで。お前たちもファントムを追ってきたのか。
フレン……なぜ、それを知っているんだ ?
チーグルフン、ただ捕まっていたわけじゃないさ。奴ら、この体の心核を調査するために半覚醒状態にしたんだ。その時に、術で鎮静剤の分解を速めた。
チーグルおかげで、ラムダを宿したファントムのことも知れたよ。僕が起きているとも知らずにベラベラとよくしゃべってくれた。
チーグルところで、僕が呼んだ光魔はどうした。それにラムダは ?
フレン……光魔は黒衣の鏡士たちが倒した。ラムダは、彼らの妨害もあって……。
チーグルチッ、何をしてるんだ !マクスウェルの輸送の時といい、最近のお前は失態が多いんじゃないか ?
フレン済まない。確かにあの指示は私のミスだ。結果、助けにもいけず、君を一人で救世軍から脱出させることになってしまった。
セシリィバルドさんは、私と一緒にチーグルさんを助けるために力を尽くしていました。だから責めないで下さい……。
チーグル……まあ、いいさ。おかげで救世軍を壊滅させることもできたんだ。
フレン壊滅……だって ? いったい何を ?
チーグル奴らの航行データをいじってやったんだ。『魔の空域』に飛び込むように設定してある。恐らくもう、戻ってこれないはずさ。くっはははは !
セシリィ……な……なんてこと――
フレン――さ……すがだね。捕らわれの身で、そこまでやってのけるとは。
チーグルああ、おかげでクタクタだよ。
フレンなら、早く帝国へ戻ろう。少し休んだ方がいい。――シドニーも……いいね ?
セシリィは、はい……。
コーキスフレン様、行っちまった……。
バルドそれでいいんです。フレンさんが戻るのは予定どおりですから。
コーキスそうだ、ミリーナ様、結局ケリュケイオンはどうなってるんですか ?
ミリーナ通信が繋がらなかったのは魔の空域のせいなのね……。どうしよう……。どうやったらみんなを助けられるのかしら……。
コーキスミリーナ様……。

キャラクター12話【11-15 ひとけのない街道2】
アスベルリチャード……。せっかく助けだせたのに、また振り出しか。
ヒューバート陛下の居場所がわかっただけでも良しとしましょう。それに今は救世軍が心配です。
ソフィ魔の空域ってなに ? 怖い所なの ?
ミリーナ……一度入ってしまったら、永遠に迷い続ける場所だと言われているわ。
ミリーナガロウズさんが言っていたの。空を飛ぶときは絶対に避ける空域なんだって。
ソフィ帰って来た人はいないの ?
ミリーナ……いないそうよ。
ミリーナそもそも、空を飛べる乗り物は一般的ではないから魔の空域のこともあまりよくわかっていないみたいで……。
シェリアミリーナ、大丈夫 ?あなた一人じゃないんだからみんなで考えましょう。ね ?
ミリーナ……ありがとう、シェリア。
コーキス(ミリーナ様、珍しくうろたえてる……)
イクス『俺のことで大変な時に、ミリーナを影から支えてたのはフィルだからさ。動揺するのも仕方ないよ』
バルド……救世軍のことは確かに心配です。ですが、ここで立ち止まるわけには行きません。
ミリーナバルドさん……。
パスカルなんだか変な感じだね。ファントムで、ラムダで、今はバルドだなんて。
バルドそうですね。こんなことは異常だ。リビングドール計画は早く止めなければならない。
バルドミリーナさん、冷たいことを言うようですが、すぐにでも次の行動に移さないといけません。わかってくれますね。
ミリーナ……そうね。アスベルさんたちにお願いがあるの。大変だとは思うけど、アジトに帰って全員の所在を確認してもらえる ?
ミリーナもしかしたら、こちらからケリュケイオンに行ったままの人がいるかもしれないから。
アスベルわかった。みんな行こう !
ユリウス君たちの様子だと、この計画は、随分と切羽詰まってるようだな。
バルドはい。もう時間がありません。帝国はさらなる鏡映点の具現化と、リビングドールの作成を行うために、死の砂嵐を利用しようとしています。
バルド救世軍の助けを得られないのは痛手ですが、早急にイクスさんを助け出さなければなりません。
ミリーナわかっているわ。……でも、ケリュケイオンを放っておくことはできない。何か手は打っておかないと……。
ルドガー……わかった。ミリーナ、ケリュケイオンの調査は俺たちに任せてくれないか ?
ユリウスいい判断だ、ルドガー。どうせ俺たちは帝国には近づけない。だったら救世軍捜索に当たった方がいいだろう。
ミリーナルドガーさん、ユリウスさん……。ありがとうございます。よろしくお願いします。
バルドお二人だけで大丈夫ですか ?
ミリーナユーリさんたちは、この計画を知っています。カロル調査室と組んで捜索してください。
ルドガーああ、任せてくれ !
ミリーナそれからバルドさん、イクスを助け出す手順を教えてもらえるかしら。この間、アイディアがあるとだけは聞いたけど……。
バルドイクスさんがいなくなることで、死の砂嵐が外に漏れだすのを、どう食い止めるかという話でしたね。
バルド簡単に言うと、私とセシリィがビフレスト式の封印強化術を知っているので、イクスさんの救出後、それを発動させるつもりです。
バルド詳しい話は、あなたたちのアジトでしましょう。準備が整い次第、すぐに作戦を開始できるように。
ミリーナわかったわ。行きましょう、みんな。
リヒターバルド、チーグルを救出してきたそうだな。
チーグルリヒター、何か誤解があるようだけど僕は自分で脱出してきたんだ。バルドとは偶然、行き会っただけだよ。そうだろう ? バルド。
フレンああ、その通りだ。それに私はラムダも取り逃がしてしまった。メルクリア様のお叱りを受けなくては。
リヒターそのラムダの件で、ローゲとジュニアが謹慎をくらったぞ。
フレンなぜ ?ローゲはともかく、ジュニアは関係ないじゃないか。
リヒター俺に言われても困る。不満なら自分で上にかけあえ。
リヒターそれとチーグル、メルクリアが呼んでいる。一緒に来い。
チーグル相変わらずぶっきらぼうだな。もっと愛想よく誘ってくれないか ?君の可愛いアステル博士のようにさ。
リヒターお前に振りまく愛想などない。アステルのことも構わないでもらおうか。
チーグルわかったよ。帰って早々、面倒に巻き込まれたくないからね。じゃあね。バルド。
フレンああ。お疲れ様、チーグル。
リヒター…………。
フレンどうしたリヒター、まだ何かあるのかい ?
リヒター……お前……。
リヒター――いや、何でもない。セシリィを早く休ませてやれ。顔色が悪い。
セシリィあ、ありがとうございます……。
フレン………。大丈夫かい ? セシリィ。
セシリィえ、ええ。ごめんなさい、少し気分が悪くて。
フレンケリュケイオンのことだね。君の恋人だった人が乗ってるんだろう ?
セシリィ………それだけじゃありません。鏡映点の人や、大勢の救世軍が乗ってます。その人たちが……みんな……。
フレンバルドやミリーナたちを信じよう。それに、あっちには僕の仲間もいる。あいつならきっと――……。
フレン……そこにいるんだな ?
セシリィフレンさん ?
? ? ?ああ。
セシリィだ……誰 ! ?
フレン大丈夫、落ち着いて。――ヴィクトル。ミラは ?
ヴィクトル安心しろ。もう助け出してある。
フレンわかった。それじゃ、セシリィのことを頼む。
セシリィフレンさん、どういうことですか…… ?この人は…… ?
to be continued
キャラクター1話【12-1 ひとけのない街道】
ナーザ(……これで、できることはした。あとは――)
? ? ?ナーザ将軍か。驚いたな。イ・ラプセル城に立ち寄るとは珍しい。
ナーザ! ?
? ? ?ああ……。この姿に戻ってからは、初めての顔合わせかな。
ナーザ……デミトリアス帝、か。アニマ汚染の治療はマクスウェルでもできなかったと聞いていたがどうやって治療を施した ?
デミトリアスアプローチを変えることにした。マクスウェルの力と共に、クロノスの力を加えることでアニマ汚染された細胞の時間を逆行させたんだよ。
ナーザ精霊を殺し、利用してまで生にしがみつくか。
デミトリアスその通り。私は生きる。生きてこの世界を存続させる。真実を知った以上セールンドの過ちを正さねばならない。
ナーザ皮肉なものだな。祖国ビフレストが滅びてから意見の一致を見るとは……。
ナーザこの世界がダーナの揺り籠であることは魔鏡戦争の前から知らせていたことだ。鏡精の危険についてもな。
デミトリアス……しかし父――先代のセールンド王も私もダーナの揺り籠など、単なるおとぎ話としかとらえていなかった。
デミトリアスセールンドは鏡士と鏡精の力に大きく依存していたからね。オーデンセの鏡士を見殺しにすることはできなかった。
ナーザ【死の砂嵐】こそが【フィンブルヴェトル】だと知ってようやく考えを改めたという訳か。
デミトリアスそう……。鏡士がもたらす死の季節【フィンブルヴェトル】。よもやセールンドが引き起こすとは思いもしなかった。
ナーザ……笑えないな。我らもダーナの予言の全てを理解していた訳ではない。
ナーザただ伝承を守ることが、ダーナに仕える祭司の末裔である我ら皇族の使命だと考えていただけだ。
デミトリアスしかしナーザ将軍は私の計画には反発しておいでのようだ。
ナーザそうだな。世界を救えるなら過程はどうでもいいのかも知れない。だが貴殿のやり方は好きにはなれない。
ナーザメルクリアを巻き込んだことも、な。
デミトリアスその批判は甘んじて受けることとしよう。
デミトリアス……ところでなぜこの城に ?
ナーザ――別れを告げに。貴殿が精霊の封印地へ向かう前に。
デミトリアスゲフィオン――いや、ミリーナと鏡精を殺すのか。
ナーザ我が一族に与えられた使命は、鏡精を生み出した鏡士への粛正だ。鏡士と鏡精を消滅させれば予言は覆される。ダーナもそれを望んでいるだろう。
ナーザそれとも邪魔立てするつもりか ?
デミトリアス――ナーザ……いや、ウォーデン殿。私はあなたが事を成し得なかったときの安全弁と心得ている。
デミトリアス騎士として前線で指揮を執る貴殿を私は敵ながら尊敬していた。
デミトリアスあの当時、私は既に研究によるアニマ汚染で起き上がることもままならなかったからね。
ナーザ……デミトリアス王子は文武両道の智者だとは俺も聞き及んでいた。同じ年に生まれた王子だからな。噂は気になったものだ。
ナーザ俺の邪魔をしないというなら結構だが俺にはオーデンセの鏡士を思いやる理由がない。
ナーザ黒衣の鏡士に真実を告げるかも知れないがそれも構わないのか。
デミトリアス真実を知れば、苦しむのはミリーナだ。できればこれ以上苦しませたくはない。
デミトリアス彼女は――一人目の彼女はセールンドのために尽くしてくれたからね。
ナーザ……真実を知る方が本人のためだと思うがな。
デミトリアスウォーデン殿。
ナーザ……ナーザと呼べ。ウォーデンは死んだ。
デミトリアスナーザ将軍。――ご武運お祈り申し上げる。
ナーザそちらこそ。

キャラクター2話【12-1 ひとけのない街道】
コーキス……ミリーナ様、少し休んだ方がいいと思います。
ミリーナでも、フィルたちのことが心配で……。
ミリーナ魔鏡通信も繋がらないし、コーキスが鏡士の神殿からフィルの魔鏡を追いかけようとしても途中で痕跡が消えちゃうみたいだし……。
コーキスすみません……。俺の力不足です。
ミリーナ違うわ。コーキスのせいじゃない。きっと魔の空域というのがそれだけ特殊な場所なのよ……。
イクス『コーキス。ミリーナに伝えてくれ。いつものミリーナに戻れって。やたらと心配するのは俺のほうだった筈だろって』
イクス『救世軍はルドガーさんたちが捜してくれてるんだろ。仲間を信じるんだってこと俺たちは学んできたんだからさ』
コーキスミリーナ様。マスターが……えっと……。いつものミリーナ様に戻れって。
コーキスんーと、心配性なのはマスターだけで十分でルドガー様たちが捜してるから、仲間を信じろって。大体そんな感じのことを伝えてくれって言ってます。
カーリャコーキス。もしかしてイクスさまの言葉を適当に省略して伝えてるんじゃないですか ?
コーキスだ、だって、マスターの言葉長いんだぜ ! ?ちょいちょい難しいこと言うし !
ミリーナ………………ふふっ。
二人ミリーナさま…… ?
ミリーナごめんなさい、二人とも。そうよね……。私が心配していても状況は変わらないんだもの。
ミリーナバルドさんがイクス救出の準備を済ませるまで私は私で自分にできることをしないとね。
イクス『それが、今は休むことなんじゃ――』
イクス『――っっ ! ? 』
コーキスマスター ? どうしたんだ ?
イクス『ぐぅ…………なん……だ…… ?痛みが……どんどん強く…… ! ? 』
コーキス―――― ! ?
コーキスう、うぅぅぅぅぅっ ! ?いてぇ……。左目の奥がっ ! ?裂けるみたいに……っ !
カーリャコーキス ! ? しっかり !
コーキスこれ……。確か、マスターの痛みが……俺にまでリンクしてるんだったよな……。
コーキスマスター ! ? マスターは……ぐぅ……。
バルドお待たせしました――どうしたんです ?
ミリーナコーキスがイクスの痛みに反応して苦しんでいるんです !
バルドリンクはこちらでは断ち切れない。せめてコーキスの痛覚を抑えられれば……。
ジェイド痛みの神経経路をブロックすればいいのですね。目の奥……群発頭痛のようなものか。――失礼。
カーリャコーキスの首を絞めてどうするんですかっ ! ?
ルカ待って、カーリャ。違うよ。多分ジェイドさんは星状神経節ブロックみたいなことをしようとしているんじゃないかな。
カーリャふぁ ? それは一体…… ?
コーキスうわぁっ ! ?
ミリーナコーキス ! ?
カーリャた、た、倒れちゃいましたけど大丈夫ですか ! ?
ジェイド気絶しているだけです。ジュードがケリュケイオンに行ったままで、医療行為がまともにできる人間がいませんからね。乱暴な手段を執らせて頂きました。
ジェイド譜術でコーキスの交感神経節の一部をマヒさせました。薬物を使う処置と違って強制的な遮断を行いましたから副作用があるかも知れませんが、痛みは治まります。
ジェイドルカ、後は頼みます。あなたも医者の卵でしたよね。
ルカわ、わかりました。ジュードみたいに勉強はしてないけど……。
リフィル手伝うわ。コーキスをあちらのソファーに運びましょう。
ミリーナコーキス……。
バルドコーキスがあそこまで痛みに苦しんでいると言うことはイクスさんはもっとひどい痛みに襲われている筈です。
ミリーナ! ?
リオンコーキスは時々左目の奥が痛むと言っていたがそれはイクスとリンクして、イクスの痛みを感じ取っているからだったな。
リオンどうしてイクスはそんな痛みに襲われているんだ ?
バルドどういった仕組みかは私も把握していませんが虚無では痛覚が過敏に反応するようです。
リオンそれはお前の体験談か。
バルド……ええ。私はカレイドスコープによってアニマを抜かれ、アニムス粒子に分解されました。アニムス粒子になっても感覚は残っています。
バルド真っ暗な闇の中で、同じようにアニムス粒子となった人々の怨嗟の声を聞き続け、飢餓感と激しい痛みに苛まれながら、消えることもできず漂っている。
バルドアニムス粒子と化した人々は虚無で皆同じ体験をしています。恐らく、今も。
ミリーナ……イクスもアニムス粒子たちと同じ体験をしている ?
バルドええ。彼はアニマを有して身体を保っていますから私たちとはまた違う感じ方かも知れませんが……。魔鏡結晶の中は虚無と繋がっていますから。
リオン地獄だな。
ミリーナ………………。
ルカ何とかしてあげられないのかな。イクスだけじゃなくてアニムス粒子になってしまった人たちも可哀想だよ。
バルド……少なくとも、今は何もできません。ただコーキスにここまで痛みが伝わるということはイクスさんには耐えがたい痛みが伝わっている筈です。
バルド原因は……恐らく帝国が死の砂嵐にアクセスしているからでしょう。
バルド私がフレンさんの体にリビングドールとして移された時も、耐えがたい痛みに襲われました。
リオン帝国が外部から、魔鏡結晶の中のイクスにアクセスしているということか。
ジェイドでは、全てはバルドの予測通りに進んでいるようですね。
ミリーナどういうことですか ?
ジェイド説明しましょう。
ジェイドカーリャ、すみませんがカロル調査室のメンバーを呼び出して下さい。

キャラクター3話【12-2 ひとけのない海岸1】
カロルお待たせ。ユーリも連れてきたよ。
カーリャあれ ? カロルさまとユーリさまだけですか ?
カロルリタはキール研究室の方の準備があるから動けないしレイヴンにはたまたまアジトに来てた救世軍の様子を見てもらってるから。
ミリーナそうよね……。突然自分たちの仲間が乗っている船が行方知れずになったなんて、パニックになるわよね。
ミリーナきちんと状況を説明したくてもこちらも何もわかっていないし。
カロルクラースが何とか落ち着かせてたんだけど調査室の情報をすぐに共有できるようにレイヴンにもついていてもらおうと思って。
リオンふん。今慌てて騒いだところで状況が変わる訳でもないだろう。
シャルティエそんな風に割り切って考えられるもんじゃないですよ。ケリュケイオンに仲間が乗り込んだままという人も多いですし、浮き足立つのは当然だと思いますよ。
ユーリとはいえ、リオンの言う通り、こっちでああだのこうだの言ってても何も始まらないからな。
ユーリ調査室で調べた情報はルドガーたちに預けた。後はあいつらに任せるしかないだろ。
ユーリで、オレたちの方は何から手をつける ?イクスを取り戻しに行くって話はまとまったのか ?
ジェイドええ。すぐに動き出す必要があります。バルド、説明を。
バルドはい。まずはイクスさんの救出を急ぐ理由から説明させて下さい。ご存じの通り、アスガルド帝国ではリビングドールを生み出し続けています。
バルド目的はビフレスト皇国の国民を甦らせ皇国を再興することです。その為に使われているのがイクスさんが世界中に作り出した魔鏡結晶です。
カロル魔鏡結晶でどうやってリビングドールを作るの ?
バルド正確には、魔鏡結晶に封じられた死の砂嵐――アニムス粒子を利用している、ということになります。
バルド私や他のリビングドールたちは、カレイドスコープによってアニマを失い、アニムス粒子となりました。
バルド死者を生者の中に宿らせるためには、死者の粒子であるアニムス粒子を選別し、死の砂嵐から取り出して生者にキメラ結合させる必要があります。
ジェイドまぁ、細かな技法については今は置いておきましょうか。
ジェイド要するに魔鏡結晶の中から、ビフレスト皇国の亡くなった人々の欠片を取り出すことがリビングドールには必要不可欠なんですよ。
ジェイドただ魔鏡結晶は、あくまでイクスの暴走による力の具現化に過ぎません。死の砂嵐と虚無そのものはゲフィオンとイクスによって封じられています。
ジェイド仮に魔鏡結晶を全て破壊し尽くしたところで死の砂嵐に触れることはできない。
ユーリあのどでかい魔鏡結晶が死の砂嵐を閉じ込めてるって訳じゃないんだな。
ユーリ死の砂嵐そのものはイクスとゲフィオンが封じていて魔鏡結晶は単に力が具現化しただけの代物ってことか。じゃあどうやってリビングドールは作り出されたんだ ?
バルドイクスさんにアプローチしていると聞いています。
ミリーナどういうこと ?
ミリーナ――まさか、イクスの放出している魔鏡術の力を外部から操っているってこと ! ?
カロルえ ! ? そんなことできるの ! ?
ミリーナ……イクスは三人目だから。帝国には最初のイクスの体があるでしょう。
ミリーナ本来過去から具現化された人間は、同一人物からの具現化でも意識を共有することはないの。
ミリーナでもフィルとファントムは手法を誤ってしまって意識を共有してしまっていたわ。
ミリーナそれがどの程度の共有なのかはわからないけれど自分の考えが漏れるからこそ、フィルは三人目のジュニアを作り出した訳だし……。
ミリーナだから後天的に最初のイクスと三人目のイクスをリンクさせることもできるんじゃないかって……。
ジューダス…………。
バルドええ、まさにその発想です。ビクエとファントムから着想を得て、ナーザ様――最初のイクスさんの体と魔鏡結晶の中のイクスさんを繋ぎました。
バルドその結果、意識の共有まではできなかったもののわずかですが、イクスさんの魔鏡術を外部から操れるようになりました。
バルドただ、それを行うと、イクスさんの防御機構が弱まるようで虚無からもたらされる苦痛がダイレクトにイクスさんに伝わるようなのです。
ミリーナ! !
コーキス――じゃあ、マスターが苦しがってたのはお前らがマスターを操って死者の欠片を死の砂嵐から抜き出してたせいなのか ! ?
カーリャコーキス ! 目が覚めてたんですか ! ?
コーキス答えろ、バルド ! !
バルドその通りです。
コーキスくそっ ! 何なんだよお前ら ! !
ユーリビフレストってのは下衆の集団か ?人の体を好き勝手にいじり回しやがって !
リオン下衆であることには同意だが、余計な口を挟むな。時間がないんだ。バルド、続けろ。
バルドはい。先ほどコーキスが感じていた痛みの様子からして帝国はリビングドールの大量生産計画を実行に移したのだと考えられます。
ミリーナだからイクスの激しい痛みがコーキスに伝わった……。
バルドセシリィが帝国へ戻ったことで計画の目処がついたのでしょう。これは予測していたことです。
バルド今帝国はイクスさんにアプローチしている。これは好機です。イクスさんはこの世界と虚無との間で存在が曖昧になっている。
バルドですが、ナーザ様の体とリンクすることで一時的にこの世界の方に存在が固着する。
バルドその瞬間なら、魔鏡結晶を物理的に破壊することでイクスさんを助け出すことができるでしょう。
バルド逆にこのまま放置すれば、イクスさんは痛みによって廃人と化すかも知れない。
ミリーナ物理的に破壊といっても、セールンドのあの魔鏡結晶はあまりにも大きすぎて、簡単には壊せないわ。
ミリーナあの魔鏡結晶はイクスの力の具現化であり命でもあるのよ。ただ壊して取り出すだけではイクスを助けることはできない……。
ミリーナそれにイクスがいなくなることでゲフィオンから漏れる死の砂嵐を止められなくなってしまう……。
バルド前にアイデアがあると言いましたよね。ビフレスト皇国に伝わる魔鏡術が役に立つ筈です。幸い、ファントムには魔鏡術の力がある。
バルドキール研究室で開発していた、イクスさんを魔鏡結晶から取り出すための装置と、私とセシリィが持つ技術があれば、問題の大部分はクリアになります。
ジェイドただ、それでも問題が一つ。アスガルド帝国がセールンドの魔鏡結晶の守りを固めています。まぁ、当然だとは思いますが。
ジェイドリビングドールを作り出すためには、イクスにアプローチしなければならないのですから、当然セールンドには相当数の帝国軍が駐留している筈です。
ジューダス……陽動作戦をとるのか ? それは危険だろう。
リオン――どうだ、ジェイド。こいつも僕と同じ意見だ。僕たちの情報は何らかの形で帝国に流れている。陽動作戦そのものが成り立たない。
ジェイドそれは同じ意見でしょうねぇ。あなた方はよく似ていますから。
ジェイド――まぁ、その話は置いておきましょうか。陽動作戦だと看破されたところで構わないんですよ。セールンドの戦力を少しでも減らせればね。
ジェイドこちらが帝都へ攻め入ると知ればあちらも戦力の一部を帝都に戻すことになる。
ユーリそのごたごたの隙に、セールンドへ潜入するってか。そう簡単にいくとも思えねぇが、それでもごり押しするってことは、何か勝算があるんだろ ?
リフィルあら、ユーリ。それは愚問でしょう。詳しいことを口に出すと――
ユーリ情報漏れ、か。ややこしいな。まぁ、そこら辺はあんたら頭脳労働組に任せておくさ。
ユーリで、陽動組か救出組か、どっちに加わるかは選ばせてくれるんだろうな。
ジェイド話が早くて結構。ですが、あなたなら救出組を選んでくれると思っています。そちらの方が危険ですから。
ミリーナ私も行きます !
コーキス俺も !
ジェイドミリーナには是非とも。コーキス。あなたは陽動部隊に回ってもらいます。
コーキス何でだよ ! ?
ジェイドまたイクスからの連絡が届く可能性があるからです。陽動部隊側に救出部隊の状況がわかる人間がいた方がいい。
コーキス………………。
ジェイド救出部隊はリオン、ミリーナ、ユーリ、バルドの四名。バックアップはしますが基本この四人でお願いします。後はリオンの指示に従って下さい。
リフィル他は陽動作戦の実行とバックアップに回ってもらうわ。カロル、あなたに仕切りを任せてもいいかしら ?
カロルそれでここに呼ばれたんだね。わかったよ。
リオン救出部隊はついてこい。計画を伝える。
リフィルコーキス、動けるようならカロルと一緒に陽動部隊の人選をしてくれるかしら。
カロルコーキス、行ける ?
コーキス……ああ。こんな時に俺だけ寝てるなんて嫌だしさ。
カロルそれじゃあ、ボクの部屋に行こう。
ミリーナジェイドさんたちは…… ?
ジェイド若い者に仕事を振りましたから後は高みの見物ですよ。
リフィルそういう言い方はやめなさい。それと、ジューダスとルカにはもう少し話があるの。ここに残って頂戴ね。
ユーリミリーナ、行くぞ。
ミリーナえ……。ええ……。
ジェイドそれじゃあ、皆さん、よろしくお願いします♪

キャラクター4話【12-3 ひとけのない海岸2】
ルドガー……ケリュケイオンが消失したのはあの空域か。
エルねぇ、魔のクウイキってどんなところなの ?
ルドガー詳しいことはわからないんだよ。
ユリウス――ルドガー。あの大きな雲の端を見てみろ。
ルドガー……何だ ? 蜃気楼…… ?
エルホントだ。なんか白いものがゆらゆらしてる……。
? ? ?……か……。……け……て…… !
エルマキョーツーシン !
ルドガージュードの声……じゃないか ?
ルドガージュード ! ジュードか ! ? どこにいるんだ ! ?
? ? ?ル…… ! ? ……ケ……くう……――
エル切れちゃった……。
ユリウス……空の蜃気楼も消えた。
ルドガー何だったんだ…… ?
ユリウス……魔の空域に関して、いくつかの仮説がある。
ユリウス精霊界に通じるゲートだとか何らかの影響で計器が狂ってしまい、正しい方角がわからなくなってしまう空間だとか。
ユリウス過去と繋がるワープゾーンだという話もあるそうだ。この世界は具現化で造られた世界だから、空間のひずみのようなものが発生していても不思議ではないな。
ルドガー空間のひずみにケリュケイオンが飛び込んでしまった……のだとしたら、さっきの蜃気楼がケリュケイオンって可能性もあるのか。
ユリウスあの蜃気楼のようなものが現れた途端ケリュケイオンにいるはずのジュードと魔鏡通信が繋がった。
ユリウスアレがケリュケイオンと関わりがある可能性は高い。
エル助けられないの ?
ルドガーうかつに近づくのは危険だ。せめて魔鏡通信が繋がれば……。
ユリウス受信感度を上げてみよう。
エル………………。
エル……雑音しか聞こえないね。
? ? ?……来る……な……。みん……な……。
エルあ ! ? なんか聞こえてきた !
ユリウスイクス……の声か ?
ルドガーそうか……。出力を上げるとイクスの声が混線するのか……。
ユリウス……様子が変だな。
? ? ?情報……が……。お……れと……フ……。
ユリウス! !
ユリウスルドガー。アジトに連絡だ !ミリーナたちは根本的に間違っていた。情報漏れは誰かの裏切りじゃない。
ルドガー……まさか !
エル何 ? どういうこと ?
ルドガーコーキスとフィリップか !
ルカあの、僕とジューダスに用って……。
ジェイドすみません。ミリーナたちには聞かれたくなかったものですから。
ジューダスどういうことだ ?
ジェイド情報漏洩のことですよ。誰しも自分から情報が漏れてるとは思わないものですからね。
ルカえ ! ?ミリーナたちが敵に情報を伝えてるんですか ! ?
リフィル意図せずにね。
リフィルさっきミリーナたちが話していたでしょう ?ファントムとフィルは繋がっている。そしてイクスとナーザも繋がっている。
ルカでもイクスとコーキスが繋がったのは最近の話ですよね。それにファントムは確かずっと植物状態だったって……。
ジューダス……ジュニアか。
ジェイドその通りです。恐らく帝国への情報漏れはフィリップからファントムを経由してジュニアへ。ナーザへの情報漏れはコーキスからイクスを通じて。
ジェイド幸か不幸か、帝国とナーザは互いの情報を秘匿しているようなので、それぞれに伝わっている情報と伝わっていない情報があるのではと考えています。
ジューダス今はバルドがファントムの体を使っている。結局陽動作戦の件は敵に伝わっているということだろう。何故計画を実行させようとする ?
ジェイドせっかく情報が筒抜けなので裏の裏をかこうと思いまして。
ジューダス……だからコーキスは救出部隊に入れなかったんだな。
ジェイドええ。こちらの情報漏洩をコントロールしたい。あなたには陽動部隊についてもらいたいんです。それと、リオンの動きを読んでもらうためにも。
ジューダス――どういう意味だ ?
ジェイド実はリオンたちにもこの話はしていないんですよ。
ジェイド可能性は低いと思っていますが、例えば敵がミリーナを具現化したら……ミリーナからも情報が漏れるでしょう。私ならそうします。
ジューダスつまり、リオンはこの計画がずさんなものだと知っている状態で敵地に飛び込むのか。
ジェイドええ。そんな時リオンならどう動くか。あなたにはよくわかるのではないかと愚考しました。
ジューダス………………。
リフィルそして、ルカ。あなたは帝国に狙われている。だからアジトに残って救出部隊のバックアップをお願いしたいの。
ルカでも、リフィルさんやジェイドさんは――
リフィル陽動部隊の手が足りないから、出撃することになるわ。ここには負傷者を含めたごく少数しか残せない。何よりカーリャにも情報を知られたくないの。
リフィルここに残るメンバーの中で、状況を一番冷静に見られるのはあなただと思うわ。だから全てを話しておきたかったのよ。
リフィルあら……。私宛に魔鏡通信が……。
ルドガーリフィル。話しておきたいことがあるんだ。
リフィル

キャラクター5話【12-5 セールンドへ続く森林1】
メルクリア――兄上様もセシリィも大丈夫であろうか。
メルクリア今までは1人ずつのリビングドール化だったが今度は一度に12人じゃ……。お体に負担などなければよいのじゃが……。
チーグルご安心を。ナーザ将軍は素晴らしい魔鏡術の持ち主。
チーグルそれより喜ぶべきことではありませんか ? あれほどリビングドールの大量製造に反対しておいでだったのに今回は受け入れて下さったのですから。
メルクリアそうじゃな……。
リヒターそれより、黒衣の鏡士の部隊が帝都に向かっているという話はどうする ?
リヒター進路を見る限り、この芙蓉離宮を目指していると思った方がいい。数はそう多くないが恐ろしく腕の立つ連中ばかりだ。
ローゲ失礼しますぞ、メルクリア殿下。
メルクリアローゲか。どうした、ジュニアの腕を引っ張って。痛そうにしておるではないか。放してやれ。
ローゲお優しいことで……。そら、ジュニア。報告しろ。
ジュニア……あ、あの。
フレン――ジュニア。その手に持っている鏡は魔鏡かい ?
ジュニア……ファントムの心核とリンクさせた魔鏡です。
フレン! ?
ローゲその魔鏡はジュニアにしか使えないがファントムを通じてビクエの考えを読むことができる。
ジュニア全てじゃないよ。あくまで断片だから……。
フレンなるほど……。きみはなかなか『情報通』のようだね。
ジュニア……す……すみま……せん……。
メルクリア何を謝ることがある。フィリップを通じて黒衣の鏡士の動向がわかるのなら、我らの役に立つ。誇るべきことじゃ。
ジュニア………………。
ローゲ報告はどうした、ジュニア。
ジュニア……ミリ……黒衣の鏡士の進軍は……陽動作戦、だそうです。本当の目的はセールンドのイクスを奪還すること……。
ローゲ――だ、そうだ。
メルクリア兄上様が危ないではないか !
フレン大丈夫です。第一連隊がセールンドを防衛しています。それにナーザ将軍は腕が立ちますから。
チーグルナーザ将軍に知らせよう。――伝令兵 !
ジュニア(ミリーナ……イクス……。ごめん……。僕は……僕は――)
ローゲジュニア。お前は見所があるぞ。これからも俺のために役に立て。いいな。
ジュニア…………はい。
ナーザ――なるほど。伝令ご苦労だった。ここへは転送魔法陣で来たのか ?
伝令兵その通りであります !
ナーザならば、メルクリアに伝えよ。こちらに考えがある。黒衣の鏡士たちを討つために俺の計画に協力するようにとな。
伝令兵はっ !
ナーザ詳しい作戦は、別途こちらから連絡する。まずは敵の陽動作戦に気付かぬふりをして敵を迎え撃つように伝えろ。
伝令兵了解であります !
セシリィあの……ナーザ将軍。リビングドールの新たな製造は一時停止しますか ?
ナーザ……そうだな。そうしよう。これ以上犠牲者を増やすこともない。
ナーザシドニー――いや、今はセシリィか。お前も同じ思いだろう。
セシリィは、はい……。
ナーザ……お前も、バルドと同じ事をしようとしているのか。
セシリィ! !
ナーザお前たちは……愚かだな。だが、潔い。俺は好ましいと思う。
セシリィナーザ将軍、考え直してもらえませんか。ミリーナたちと話せばきっと――
ナーザ――いや、皆まで言うな。俺が生きていて、国がまだ残っていたなら、そんな選択肢もあったかも知れない。だが、もう遅い。
ナーザそれに俺は死者だ。死者が現世に介入すること自体間違っている。間違っているものが、異議を唱えるなど笑えぬ話だ。
ナーザ俺は世界を破滅に導く黒衣の鏡士たちを憎んでいる。だから殺す。それでいい。
ナーザセシリィ。ここはいい。お前はお前のなすべきことをしろ。だが、俺はお前たちに手は貸さないぞ。
セシリィ……わかりました。ありがとうございます、ウォーデン殿下。今までもこれからも尊敬しています。
ナーザ――早く行け。
セシリィ失礼します。

キャラクター6話【12-8 セールンドへ続く山岳2】
ジュード駄目だ……。さっき魔鏡通信でルドガーの声が聞こえたような気がしたんだけどすぐ途切れちゃって……。
フィリップでも、外と連絡がついたということはまだ希望があるということだよ。
ゼロス希望ねぇ……。どう見ても絶体絶命な感じだけど。見ろよ、ブリッジの外。空間がうねうねしてるっつーかヤバい匂いしかしねぇぞ。
シンク絶体絶命と思っている割には口調が軽いね、バカ神子。
ゼロスそういうシンくんも、随分落ち着いてるじゃねぇか。
シンク元々地獄みたいな世界だったんだ。地獄から地獄に移動したところで大したことはないでしょ。
マークあー、まいった。慌ててた連中もようやく落ち着いてきたぜ。――お、ジュード。ローエンの怪我はどうだった ?
ジュードうん、かなり血が出ていたけど、大丈夫。ルビアも他の負傷者も今のところみんな安定してるよ。
マークそいつはよかった。
フィリップすまない……。僕が気を抜いていたせいでチーグルにつけいる隙を与えてしまって……。まったく情けないよ。
マークまぁ、起きちまったことを悔やんでも仕方ねぇしなぁ。――ん ? クラトスはどうした ?
ジュードガロウズさんのところ。アイゼンと3人でこの妙な空間から脱出する手段がないか考えてみるって。
シンクアイゼンね。あいつのせいでしょケリュケイオンがこんなことになったの。
シンク死神の呪いだか何だか知らないけど他人まで巻き込むのはカンベンして欲しいね。
マークでもこれって呪いのせいじゃねぇだろ ?本人はちょっと気にしてたけど、あの呪いってアイゼンを成長させるための障害的なやつなんだろ ?
シンク逆だろ。奴の周りの連中を成長させるとか何とか上から目線のお節介な呪いだよ。
マークでもこの状況が続くと、魔の空域に閉じ込められたままになっちまうからなぁ。障害なんてレベルじゃねぇし。
マークやらかしたのはフィルだしな。
フィリップ……そうだね。僕のせいだよ。
ジュードはは……。な、なんか、みんな落ち着いてるね。
ゼロスまぁ、慌てたってどうにもなんねぇしなぁ……。
シンクここは死にたがりの集まりだからね。別にどうなってもいいんだろ。
ゼロスお前と一緒にするなっつーの。
マーク……いや、あながち間違いじゃないかもな。死にたがりっつーか自分の命を大事にしてない奴が多いだろ。
フィリップど、どうして僕を見るんだ、マーク。
マーク……別に。それより、フィル。この場所は何なんだ ?ガロウズは魔の空域だって言ってたけど。
フィリップ魔の空域のことは本当によくわかっていないんだよ。世界の具現化によるひずみじゃないかと仮定したことはあるんだけれど……。
クラトス――なるほど。ならば調査が必要かも知れぬな。
ゼロス調査って……。おい、クラトス、まさか外に出るつもりか ! ?
クラトス天使体なら、多少の状況は耐えられるだろう。天使としての力の使い方は、神子より私の方が上だ。
ジュード何言ってるんですか ! ?クラトスさんは本調子じゃないんですよ ! ?
マークじゃあ、俺が行こうか ? 俺は鏡精だから最悪致命的ダメージ食らってもフィルが何とかしてくれるだろ。
アイゼン待て。これが死神の呪いなら俺が外を調べに出れば何か様子の変化が起きるだろう。その時は――
ジュード――ねぇ、みんなもう少し命を大切にしようよ。
ジュードそれに、これどう考えても死神の呪いがどうとかじゃなくて、リチャードさんの中に入ってるチーグルって人のせいだよね ?
ガロウズまぁまぁ、ジュード。こいつらの軽口に本気で付き合ってると神経すり減っちまうぞ。
ガロウズそれより、こっちも話があってブリッジまで来たんだ。
フィリップ何か、ここを抜け出す手がかりが見つかったのか ?
ガロウズ船窓から一瞬見えたんですが、どうも魔の空域に島みたいな物が浮いてるみたいなんです。
フィリップ島…… ? 計器が死んでるからこちらでは把握できていないが……。
ガロウズちょっと降りてみませんか ? このまま飛び続けていると、燃料が切れる可能性もあります。ケリュケイオンの自動操縦も挙動が怪しいし……。
ガロウズだから、俺がエンジンの調整をして、クラトスに目視で距離を測ってもらって、アイゼンがケリュケイオンを着陸させるって形でチャレンジしてみてもいいですか ?
フィリップそうだね。危険かも知れないけれど何もしないよりいい。お願いするよ。
アイゼンよし、始めるぞ ! どうなるかわからねえからな。みんな、体を船にくくりつけとけよ !
シンクはぁ……サイアクだよ……。
ジュード待って、他の人にも知らせてくる !
ゼロスしゃあねぇな。マーク、俺らも手分けして胴体着陸のこと知らせに行くぞ。
マーク了解だ。胴体着陸で怪我でもされたら大変だからな。
アイゼンお前ら、何胴体着陸だって決めつけてんだ !ぶん殴るぞ !
クラトス胴体着陸を安全に行えるというのは操縦士の技術の高さの証明でもある。褒められたと思っておくといい。
アイゼン……あんた、意外と天然だな。

キャラクター7話【12-9 セールンドへ続く街道】
アイゼン……無事に着陸できたな。
ゼロスやっぱり胴体着陸だったじゃねーか ! ?
アイゼン死人が出なかったんだ。文句ないだろう。
ゼロスああ……もう、俺さまつらい……。こんなデリカシーのない連中と、訳のわからない空間に閉じ込められて。女の子……女の子に会いたい……。
フィリップ申し訳ないです、ゼロスさん。僕が至らないばかりに……。
ゼロスあ、いや、マジなトーンで返されると余計に辛いんだけど……。
シンクバカ神子のことはどうでもいいけどこの島は一体何なのさ。得体の知れない空間に浮く島なんて胡散臭い。
ジュード…… ?島の中央に、何かあるような……。双眼鏡とかありますか ?
マーククラトス。あんたなら遠くのものでもよく見えるんだろ ?
クラトス――石だな。石碑……いや、墓か ?【アイフリードここに眠る。揺り籠を守るために……】と書いてある。
アイゼンアイフリードだと ! ?……いや、この世界にもアイフリードという名の海賊がいるんだったな。そいつの墓なのか ?
? ? ?『――フィル ! 』
フィリップ! ?
マークどうした、フィル。ぎょっとした顔で。
フィリップい、いや……。今誰かに……。
? ? ?『僕、三人目のフィリップだよ』
フィリップフィル ! ?
アイゼンフィルは自分だろうが……。
クラトス―― ! !
ジュニア『よかった……。やっと声が届いた。ごめんなさい。ファントムを通じて勝手にあなたの心を繋いでたんだ……』
フィリップ……そうか。僕だったのか。帝国に情報を漏らしていたのは。
ジュニア『ごめんなさい。でも、おかげで今度はあなたを助けられる』
ジュニア『魔の空域はビフレストの伝承に伝わる【この世の果て】に相当するらしいんだ。この世の果てを守っているのはアイフリードで――』
フィリップ(――そうか。今、きみの心を読んだ。脱出する方法がわかったよ)
ジュニア『 ! ? 』
フィリップ(驚いているのかい ? そちらが心を繋いだんだよ。そちらにできることが僕にできないとでも ? )
フィリップ(きみと僕は同じ潜在能力を持っているが使える力は僕の方が上だ)
ジュニア(体が……勝手に…… ! ? )
フィリップ『その魔鏡……きみの手で壊してもらう。例え自分でも、ミリーナを裏切るなら僕の敵だ』
ジュニア! !
ジュニア(僕だって、本当は――)
フィリップ『さようなら、フィリップ』
ジュニア待って ! あの場所へ行って !わかるでしょう ! ?
ジュニア――あ ! ?
ジュニア(僕を操って……魔鏡を壊した……)
マークおい、フィル ! どうした ? 顔が真っ青だぞ。またいつもの発作か ? 薬飲むか ! ?
ジュードえ ? フィリップさん、どこか悪いんですか ?
フィリップ……いや、大丈夫。
フィリップそれよりここから脱出する方法がわかった。アイフリードの墓が目印だ。あの場所に向けてケリュケイオンを飛ばしてみてくれ。
シンク根拠は ?ちゃんと話しておいてくれないと困るんだけど。
クラトスジュニアに心を読まれていたか。
マーク! !
フィリップ……ええ。その通りです。でももう大丈夫。逆にこちらからジュニアの心を読んで彼を一時的に乗っ取りました。
フィリップ僕の心とリンクさせていた魔鏡は壊しておきましたし、同じような魔鏡を作られる前に、防衛手段を講じます。
フィリップそれに、ジュニアがこの場所からの脱出方法を知っていました。
アイゼンそれがアイフリードの墓に突っ込むってことなのか ?
フィリップええ。あの場所が魔の空域とティル・ナ・ノーグを結ぶゲートなんです。
ゼロスよし、こんな辛気くさい場所とはおさらばしようぜ。
ガロウズわかった。エンジン動かすぞ !
マーク……フィル。大丈夫か ?
フィリップ自分に裏切られるのは二回目だからね。さすがに堪えたよ。でも、いいんだ。そういう弱さも僕らしい。
マーク馬鹿野郎。お前は弱くなんかねぇよ。
アイゼンお前ら、位置につけ !
アイゼンさっき無理をさせた船だからな。ガタが来てるかも知れねえ。しっかり掴まってないと怪我するぞ !
ガロウズエンジン再始動完了だ !
アイゼン行くぞっ ! !

キャラクター8話【12-10 カレイドスコープの間】
ミリーナ………………。
ユーリそんな風に硬くなってちゃ上手くいくものも行かなくなるぜ、ミリーナ。
ミリーナ……そう、ですね。気合いが入りすぎるのも空回っちゃいますね。
バルド――そろそろ時間ですね。行きましょう。
リオンその前に、一つだけ取り決めておきたいことがある。僕たちの計画が敵に漏れていて窮地に陥った場合の優先順位だ。
ユーリそんなもの今決めるのかよ。
リオンここでは僕がリーダーだ。僕の指示に従ってもらう。まず第一に優先するのはイクスの救出だ。これが計画の目的である以上、異論はないな。
バルドもちろんです。彼を残していてはリビングドールを次々と生み出されてしまいます。
リオンミリーナはアジトの維持を考えるとどうしても生かして帰す必要がある。だからイクスの次に命を保証するのはミリーナだ。
リオンそれから戦闘狂。
ユーリなんだよその呼び方は。
リオン返事をしておいて文句を言うな。
リオンお前はミリーナとイクスを必ずアジトへ連れ帰れ。お前の腕は信用できる。頭もそれなりにマシなようだしな。
ユーリそりゃどうも。素直じゃないね、この坊やは。で、お前とバルドはどうするんだよ。
リオンバルドと僕は、生きて帰れなかったとしても問題はない。
ミリーナそんな…… !
シャルティエ坊ちゃん……。
リオン勘違いするな。もとより死ぬつもりはない。僕に勝てるような敵がいるとも思えないしな。
リオンだが何が起こるかわからないのも事実だ。最悪のことを考えておくのは当然だろう。
ミリーナ………………。
バルド――では、そろそろ行きましょうか。
ミリーナ……はい。コーキスたちに突入を知らせますね。
コーキス(マスター……。ミリーナ様……。どうか無事で……)
スタンそんな顔するなって、コーキス。
コーキススタン様……。
スタン大丈夫。上手くいくって。ここだけじゃなくて海岸線はカロルたちの部隊が準備してるし街の方はアスベルたちが待機してる。
エドナそうね。珍しく大佐のボーヤも前線に出てきているから危険な状況ではあるみたいだけれど。
スタンエドナ~。せっかくコーキスを元気づけてるのにそれはないだろ~。
エドナあら、現実を知っておいた方がいいんじゃないかしら。この陽動作戦自体、敵にバレているのかも知れないのよね。
エドナまぁ、それを承知でしかけるってことは……何か策があるんでしょうけれど。
コーキスエドナ様……。あの、エドナ様はここに来てよかったのか ?アイゼン様がケリュケイオンにいるのに……。
エドナ……別に大したことじゃないわ。ドラゴンになっているよりよっぽどね。
コーキスえ ?
エドナスタンだって、向こうには仲間がいるのよ。ロイドもカイウスもミラも。あっちはあっちで何とかしてもらわないと。
スタンケリュケイオンのみんなを信じてるってことだよな。
コーキスそうか……。やっぱ鏡映点ってすげーなぁ……。うん。俺も腹を決めた。
コーキスマスターのこともミリーナ様のことも信じてる。だからきっと大丈夫だし、俺たちがここでしくじったら救出部隊に迷惑がかかるってことだもんな。
コーキスよし、気合い入ったぜ !
エドナ単純ね、眼帯ボーヤ。
コーキス眼帯ボーヤ ! ?
エドナあら、魔鏡通信だわ。
ミリーナこちら救出部隊です。準備完了です !
スタンあっちも準備が整ったみたいだな。
コーキスよし、俺たちも始めよう !みんなに合図だ。芙蓉離宮に攻め込むぞ !
ユーリ……見張りの兵たちがばたつき始めたな。
リオン陽動部隊が動き出したんだろう。行くぞ。
ミリーナ……上手く忍び込めたみたい。
バルド――いや、待って下さい。
リオンなんだこの音は ?
バルド魔術障壁の起動音です。恐らくこの建物の周囲を魔術による壁で囲んだのでしょう。
ユーリ袋のネズミって訳かよ。壁を壊す方法はないのか ?
バルド魔鏡術の一種ですからどこかにこれを仕掛けた魔鏡装置がある筈です。
リオンなら、それは僕が見つけて壊す。ミリーナたちはイクスを助けろ。
ミリーナ――はい。
リオンこういう場合のお前は、話が早くて助かるな。
バルド陽動部隊やバックアップ部隊に状況を知らせなくていいんですか ?
リオン余計なことをするな。知らせたところで何もできないんだ。それより早く行け。僕も装置を探す。
ユーリ……リオンは行ったな ?
ミリーナえ ? ええ……。もう姿は見えないわ。
ユーリよし。ミリーナとバルドは先に行ってセシリィと合流してくれ。俺はちょっと野暮用を済ませてから追いかける。
バルドまさか、こちらの状況を連絡するんですか ?リオンさんは連絡しないようにと言っていましたが。
ユーリ陽動部隊に直接知らせるのは俺も反対だ。だが、バックアップの連中には話をしておかないといざというときの連携が取れないだろ。
ミリーナ……わかったわ。お願いします、ユーリさん。
ミリーナバルドさん、行きましょう。掘削装置のセットに時間がかかることを考えると、急いだ方がいいわ。
バルドわかりました。

キャラクター9話【12-11 芙蓉離宮】
帝国軍兵士A急げ ! 海岸線と帝都西門にそれぞれ敵の隊が攻め込んできている !迎撃しろ !
帝国軍兵士B――お、おい、お前の後ろに転送魔法陣が ! ?
帝国軍兵士Aな、何――
コーキス――隙あり !
帝国軍兵士Aうわぁぁぁぁぁっ ! ?
スタン――悪いな。こっちもだ !
帝国軍兵士Bぐふ……っ !
エドナ便利ね。この転送魔法陣って。
コーキスバルドに設置の仕方を教わって助かったな。いつでもどこへでもって訳じゃないのは残念だけど出口さえ設定できればすぐワープできるなんてさ。
スタン他の隊もどんどん来るぞ。これなら撹乱には十分だな。
カロル敵の圧力が弱まったような……。
スレイうん、今なら芙蓉離宮の裏門へたどり着ける。
ミクリオこのまま押し切ろう !たどり着くのが遅れると、コーキスたちが危険だ。
スレイミクリオ、一緒に行こう !
ミクリオああ !
二人ルズローシヴ=レレイ !
カロル何度見ても神依って不思議だよね。
レイヴン元の世界じゃ女の子とも合体できるんでしょ。ああ~うらやましい~ !
アスベル芙蓉離宮にコーキスたちが攻め込んだみたいだな。
ヒューバートではこちらも前進しましょう。少しでも敵の数をこちらに引きつけないとコーキスたちが撤退できなくなりますよ。
アスベルよし、少し派手に動くぞ !
ラムダ『アスガルド帝国と……戦っているのか…… ?』
アスベルラムダ ! ?
ソフィラムダが目を覚ましたの…… ! ?
アスベル(ああ。彼らがやっている非道なことを許してはいけないから)
ラムダ『……それなら――我の力を使うといい。今までも勝手に使っていたようだがな』
アスベル――ご、ごめん。でもありがとう、ラムダ !
ルカ――え ! ? ルドガーさん、それは本当ですか ! ?
ルドガーああ、本当だ。ケリュケイオンが魔の空域から脱出した。通信器機がやられているらしくて俺が代わりに連絡したんだ。
ルカジェイドさんって……予知能力でもあるんですか…… ?
ルドガーえ ? どういうことだ ?
イリアあのイヤミ眼鏡、もうすぐケリュケイオンが見つかるから、空を飛べるメンバーをケリュケイオンに集めろって言ってきたのよ。
ユリウス……困った男だが、味方でいる内は頼もしいな。
スパーダああ、くそっ ! オレもこんなところでくすぶってないで戦いたいぜ。守られるなんてのは性に合わねェからな。
ユリウス気持ちはわかるが、俺たちが不測の事態で帝国に囚われたら、余計に場を混乱させる。今は我慢してくれ。
スパーダわかってる ! だから余計イライラすんだろ !
エルねぇ、空を飛べる人ってアーチェとコレット ?
ルカうん。アーチェにチェスター、コレットにロイドを組ませて、そっちに向かってもらったから。三人はこっちに戻ってきて。
ルドガーああ。アーチェたちが救世軍と合流したらすぐ戻るよ。
カイルよし、上手くいってるな !
ジューダス気を抜くな。まだ作戦は始まったばかりなんだぞ。
ラタトスクはっ ! こんな歯ごたえのない連中が相手じゃ退屈であくびが出るぜ。
マルタもう……。そんなこと言ってもっと強い敵が出てきちゃったらどうするの。
コーキスカイル様たちにエミル様たち !
ラタトスク俺はエミルじゃねぇ !
コーキスあ、ラタトスク様の方か。ややこしいなぁ。
ラタトスク何だと ! ?
エドナ――待ちなさい。何か聞こえるわ。
リアラ見て。離宮の上 !
スタンホークの集団に……ドラゴンパピーか !
ラタトスクフン。あんな奴ら、単なる雑魚だろ。
ジューダスいや……待て ! あの人影は――
カイルバルバトス ! ?
ラタトスクそれにリヒターかよ、面白い。
リアラ……待って。あの二人、何かが変だわ。
マルタそういえば……。リヒターがラタトスクを見て顔色一つ変えないなんて……。
ラタトスク構うもんかよ。さっさと叩きつぶすぞ。
ジューダスまったく……血の気の多い連中だ。スタン、コーキス、エドナ。そっちはドラゴンパピーを頼む。
ジューダス僕とカイルとリアラはバルバトスをマルタとラタトスクはリヒターを迎え撃つ。それでいいな。
コーキスよし ! 行くぞ、みんな !

キャラクター10話【12-14 芙蓉離宮】
コーキスこれで !
二人終わりだ ! !
カイルな、何 ! ?
ラタトスクあいつら、幻だったのか……。くそっ !
メルクリア――ぬぅっ。これまでか。
ローゲくだらんな。影など送り込まなくても俺が乗り込んでいけば、鏡精やら鏡映点など軽くねじ伏せてやったものを。
メルクリアまあ、そう言うな。チーグルがわらわのことを案じてバルドだけでなく、そなたとリヒターを側に残すように懇願したのじゃ。
メルクリアそなた、チーグルとは親しいのであろう ?友の言うことは聞き入れてやらねば。
メルクリアそれにわらわの影捌きは中々上手であろう ?ローゲもリヒターも元の力が優れている故幻を生み出して操るのも楽しかった。
リヒター――頃合いだな。伝令 ! 増援を出せ !奴らもそろそろ疲れてくる頃だ。
伝令兵了解 !
メルクリア兄上様の方は大丈夫か ? 黒衣の鏡士を閉じ込めてなぶり殺しにする策じゃぞ。なのに、こちらからの増援を拒まれるなど、兄上様はどうかしておられる。
メルクリアやはりバルドを送り出してやった方がいいのではないか。
フレンお許し頂けるのなら、すぐにでも向かいますが。
リヒター……俺は賛成できんな。
ローゲ俺もだ。バルドなどどこにいても役には立たぬ。
メルクリアしかしセシリィもあちらにいったままじゃ。巻き込まれて怪我でもしたら可哀想ではないか。バルドだけを行かせるのが不安なら、わらわも共に――
伝令兵失礼します ! チーグル様から黒衣の鏡士の増援が現れたとの知らせにございます !
フレン! !
リヒター奴らの戦力は限界まで引き出している筈だぞ ! ?
伝令兵それが……救世軍が東の空から現れたとのことで……。
リヒターチーグルが魔の空域に追いやったんじゃなかったのか ! ?
ローゲフン。しぶといゴキブリ共だ。砲台を東に向けろ ! 打ち落とせ !
伝令兵了解 !
メルクリア――バルコニーに出る。
フレンそれは危険です。
メルクリア一騎当千の騎士が三人もわらわの側にいるのじゃ。それよりここに攻め入った間抜け共の顔を見ておきたい。行くぞ。
ジューダスくっ ! また増援か !
リアラフレンさんが増援を止めてくれる筈なんじゃ……。
ジューダス……敵の中枢に近すぎるからな。逆に思ったようには動けないんだろう。
ジューダスコーキス、スタン、エドナ。一緒に来い !フレンを捜す。カイルたちは他の隊と合流して持ちこたえてくれ !
カイルわかった !
ラタトスクしくじるなよ !
ジューダス見くびるな。僕を誰だと思ってる。行くぞ !
コーキス……なんか変だな。戦ってても手応えがない。
エドナやはりこちらの作戦が漏れているのかしら。時間を稼がれている感じね。
スタンでも、異変があったら連絡が来る手筈だろ。向こうにはリオンもいるしむざむざやられる訳がない。
ジューダス……どうかな。
スタンジューダス……。お前がそんなことを言うなんて……。
コーキスとにかく早くフレン様を見つけないと。……くそ ! これ以上建物には近づけないか。こうなったら魔眼で――
ジューダスバカか、お前は ! 切り札は最後までとっておけ。
エドナ――三人とも。あそこのバルコニーを見て。
メルクリアどうした、黒衣の鏡士の手先よ。わらわはここじゃ。殺せるものなら殺してみよ !
フレン……メルクリア様。東の空を。
メルクリアケリュケイオン…… !
リヒター救世軍を足止めしきれなかったか。
エドナ……見て。フレンがこっちに合図しているわよ。
ジューダス――どうやらこちらの悪い予測が当たっていたな。
コーキスそれじゃあ、ミリーナ様たちが危険なんじゃ…… ! ?
ジューダスそうだろうな。僕たちをここで潰すよりミリーナを始末した方が後々楽になるからな。
スタンだったらどうしてリオンたちは連絡してこないんだ。
ジューダスこちらの戦力を本隊の救出に割かせないため敢えて何も知らせてこないんだろう。僕ならそうする。あいつもきっとそうすると思う。
スタン……なら、俺の方からリオンを助けに行く。
コーキス俺もだ。ミリーナ様を守るってマスターと約束したんだから。
ジューダスそれは駄目だ。お前たちが抜けると、ここの戦線を維持できない。リオンが危惧した通りになる。
エドナ――結局、大佐のボーヤの掌の上って訳ね。
コーキスえ ? それは一体どういう――
アイゼンフン。くだらねぇな。死神がお前らに味方してるんだ。計画なんざ、崩壊して当たり前だろう。
エドナ――お帰りなさい、お兄ちゃん。
アイゼン待たせたな。
コーキスえ ! ? アイゼン様 ! ?でも救世軍は動けない筈じゃ……。
アイゼン計画計画って、そんなものがそんなに大事か ?守りたいものも守れなくて、何のために生きてるんだ。
スタン見ろ ! ケリュケイオンだ ! !
アイゼン行くぜ ! 野郎共 ! 救世軍の殴り込みだ !
メルクリアこちらが出し抜いているはずなのに何故こうも計算違いが起き続けるのじゃ ! ?
リヒター……こちらにも内通者がいるのだろう。
フレン………………。
メルクリア兄上様が心配じゃ。わらわはセールンドへ向かう。
フレンメルクリア様、向こうは危険です !
メルクリアだからこそじゃ ! バルド、ローゲ、リヒター。そなたらもついてまいれ。この場はチーグルに任せておけばよい。
リヒター――メルクリアの足止めには失敗したようだな。この先は……もうお前の裏切りを見逃してはやれないぞ。
フレン……君は相変わらずだね。でも、ありがとう。
フレン(――コーキスたちは……)
エドナ――フレンだわ。
コーキス合図してる…… ?
スタンフレンが魔法陣に入って……消えた !
ジューダス転送魔法陣だ。――そうか、あれはセールンドに通じているんだ。
エドナ行きなさい。ここの戦力はもう十分よ。救世軍が来てから、形勢は逆転したわ。
コーキスよし、スタン様、行こう !
スタンああ ! リオンたちを助けるんだ !
ジューダス――僕が転送魔法陣までの最短ルートを切り開く。そこから先はお前たちに任せるぞ。

キャラクター11話【12-15 カレイドスコープの間】
セシリィ――ミリーナさん、バルドさん。こっち !
ミリーナセシリィ。ありがとう。色々協力してくれて。ガロウズのことも心配だと思うのに……。
セシリィ……だからこそ、ミリーナさんの気持ちがわかるから。
バルドそれじゃあ、ここから先の手順を確認しておこう。
バルドこの先は、敵に発見されても逃げる訳には行かない。作業はセシリィに任せる。僕とミリーナさん、それと後から合流してくるユーリさんとで敵を蹴散らすしかない。
ミリーナこれが、ビフレスト式の魔鏡術を組み込んだ掘削装置よ。
セシリィ掌サイズまで小さくしてくれたんだ。さすがキールさんたち。
ミリーナこの装置が魔鏡結晶を分解しながらその中に凝縮されているイクスのアニマを吸収してくれる。
ミリーナイクスが体を保てる最低限のアニマを補充したら――
セシリィ装置を取り外して、イクスさんを確保。この装置をイクスさんの体に取り付ける。
バルドその後は、僕とセシリィで、イクスさんが抜けた後の人体万華鏡の穴を外部から修復します。
バルド少し時間がかかりますからミリーナさんたちは先に脱出して下さい。
セシリィでも、この建物の周りには魔術障壁が――
バルドそこはリオンさんが対処してくれている。彼を信じよう。
ミリーナでも二人は本当に逃げられるの ?
セシリィ……転送魔法陣を用意してあります。
セシリィ本当はミリーナさんたちをそれで脱出させてあげられればいいんですけどイクスさんの体に負担がかかるから。
ミリーナわかったわ。それじゃあ、一気に魔鏡結晶の側へ行きましょう。
フレン(――……間に合ってくれ)
? ? ?はぁぁぁぁぁぁっ !
フレン! ?
フレンユーリ ! ?どうしていきなり斬りかかってくるんだ ! ?
ユーリわからねぇのか ? 自分の顔を鏡で見てみたらどうだ。
フレン……ああ、そうだな。確かに僕は自分のふがいなさに自分で呆れているよ。
フレンせっかくバルドと入れ替わったのにその好機を生かせなかった。
ユーリ自分のことをそんなに器用なタイプだと思ってたのか。
フレンできると思った訳じゃない。でも――そうだな。柄にもないことをしたのかも知れないね。
ユーリまだ目が覚めないみたいだな。へこむのは全部終わってからにしな。
ユーリそれとももう一度『こいつ』で喝を入れてやろうか。一勝負すれば、そのしけたツラも変わるだろ。
フレンそうか……そうだったな。君はいつもそうだ。
フレン………………。
フレン……いや、それこそ全部終わってからだ。イクスを助け出さないと今までやってきたことが無駄になる。
フレンそういえば、君はどうして一人でここにいるんだ。
ユーリここでナーザを片付けても問題は片付かねぇだろ。
ユーリ本当なら陽動部隊の方に入って、デミトリアスに接触するチャンスを狙いたかったんだがジェイドの奴がオレの動きを察したみたいでな。
ユーリこっちに回されちまった。
フレンまさかミリーナたちを置いて帝都へ潜入するつもりだったのか ?
ユーリそこまで無責任だと思ってるのかよ。ナーザを片付けたら、すぐ帝都へ行けるように準備しておこうと思ったんだよ。
ユーリ……にしても、この様子じゃ帝都への転送魔法陣は無いみたいだな。
フレンああ。入り口はあっても出口はない。
ユーリ……ちっ。それじゃあ仕方ねぇな。ミリーナたちを追いかけるか。
フレンああ。急いだ方がいい。ここにはメルクリアたちと来たんだ。リヒターとローゲも一緒にね。
ユーリ
フレン彼らがナーザと合流すると分が悪い。その前にイクスを助け出さないと。
ユーリ――よし、行くぞ !
バルドセシリィ、装置を !
セシリィはい !
ミリーナイクス……。待ってて。今助けるわ。
ナーザ――そうはいかない。
ミリーナナーザ !……いえ、ウォーデン・ロート・ニーベルング。
ナーザでは、俺はお前のことをゲフィオンと呼べばいいか。ミリーナ・ヴァイス。
ナーザ本当にこんな少数で飛び込んでくるとはな。その度胸には感心する。
ミリーナゲフィオンは私の未来であり過去の残像よ。彼女と私は違う。違う道を進む。
ナーザ違わないさ。お前はイクスの為なら世界すら滅ぼせる女だ。
ミリーナではあなたは何なの ?滅びたビフレストの復讐のために私を殺すの ?
ナーザそうだ。そして――この世界の未来を守るために貴様を……いや、セールンドの鏡士を根絶やしにする !
ミリーナ何故……。魔鏡戦争の発端も、あなたたちが私たちセールンドの鏡士を皆殺しにしようとしたことだったのに !
ナーザ違うな。セールンドが再三の忠告を無視して鏡精を生み出し続けていたからだ。
ナーザセールンド王もオーデンセの長も鏡精が禁忌の魔鏡術と知りながら使い続けた。鏡精はキラル分子を大量に生み出せるからな。
ミリーナキラル分子を…… ?そんなの初めて聞いたけれど……。
ナーザ……そうか。お前の側にカーリャがいないことを不審に思っていたが、【切り離した】か。記憶と共に。
ミリーナな、何 ? カーリャなら今も一緒にいるわ。
ナーザ二人目にはわからぬことか。だが構わん。お前は――いや、ゲフィオンは二度目の世界を滅ぼした。ダーナとヨウ・ビクエが案じた未来を招き寄せた。
ミリーナ二度目……の世界 ?
ファントムウォーデン様 !今の彼女にそれを伝えるのはあまりに――
ナーザ甘いな、バルド。お前は昔から女に甘い。それにこの女の肝は中々どうして図太いぞ。
ナーザだが、こうして話している間にもセシリィがイクスを助け出してしまうな。
ナーザイクスこそ、最終的な世界の破滅をもたらす鏡士。ここで永遠に眠っていてもらわねばならない。
ナーザバルド、手を出すなよ。どのみち、死にかけた男の体では、ろくに戦えまい。ミリーナはここで排除する。
ユーリ――おっと、美味しいところで追いついたみたいだな。
フレンバルド。君はセシリィをサポートしてくれ。ここは僕とユーリで十分だ。
ミリーナフレンさん ! ?
ナーザ……フレンか。バルドをそそのかすとは大した奴だ。
ユーリだろ ? オレも話を聞いたときは呆れて笑いしか出なかったぜ。
フレンナーザ将軍。例えセールンドに非があったにせよ最初にオーデンセを攻めたのはあなた方ビフレストだ。道理をねじ曲げるのはおかしい。
ユーリつーか、こっちはお前らの事情なんか知ったことじゃねぇ。
ユーリろくな説明もなしで、やってることと言えば人の体を奪うだの滅んだ国を甦らせるだの手前勝手にもほどがあるだろうがよ !
ミリーナ――私は私の勝手を通させてもらうわ。イクスを助け出す。その邪魔をするならこちらこそ、あなたを排除するだけよ !

キャラクター12話【12-15 カレイドスコープの間】
ナーザう……ぐぅ……っ
ナーザ……まだだ。まだ戦える――
メルクリア兄上様―― ! ?
メルクリア兄上様 ! ? これは一体…… ! ?
ナーザ来るな、メルクリア !
メルクリアですが――
ナーザローゲ ! !
バルバトス……ちっ。嫌な役を命じる。
メルクリアは、放せ、ローゲ ! !
バルバトス無駄だ。皇女よ、ウォーデン殿下のアニムス粒子が乖離し始めている。
メルクリア! ?
ナーザイクスが……目覚めた、か。死の砂嵐へのゲートが開いた……。
リヒターイクスが目覚め、死の砂嵐が漏れ始めた。今のナーザでは……キメラ結合していたアニムス粒子が分離するのを抑えられない……。
メルクリア兄上様が……消えるのか ! ?
ミリーナな、何…… ?バルドさんとセシリィも光り出した…… ! ?
ユーリおい、魔鏡結晶にヒビが入ったぞ。このままじゃ魔鏡結晶の欠片がこの辺りに降ってくる !
リヒターローゲ、後退しろ !
ローゲわかっている !
フレンミリーナ ! 君もそこを離れろ !
ユーリバルド ! セシリィ ! お前らもだ !
バルド――いえ。私たちはこのまま人体万華鏡の損傷を修復します。
セシリィ私たちは大丈夫。この体は、傷つけたりしませんから。
ミリーナ二人が消えた…… ! ?
バルドさぁ、イクスを――
ミリーナ――今行くわ、イクス ! !
ユーリおい ! 無茶するな ! 当たり所が悪けりゃ――
ミリーナイクスっ !
イクス……ミリーナ……。ごめ……ん……。
ユーリ無茶しやがって。
ユーリイクスはオレが運ぶ。――フレン !
フレンわかってる。ミリーナ、脱出しよう !
メルクリア……兄上……様…… ?
メルクリア……放せ……放せ、ローゲッ ! !
メルクリア兄上様……大丈夫ですか、兄上様…… ?
ナーザ……メルクリア……。すまない……。
メルクリア……嫌じゃ。それは母上が亡くなられたときと同じ言葉じゃ……。
ナーザ……母上が……お前に呪いを……かけた……。だが、それは……本心では、ない……。母上もお前の幸せを祈っていた筈だ……。
ナーザビフレストは滅んだ……。それでいい……。死したものを甦らせるなど……やめろ……。
メルクリア嫌じゃ、兄上様 ! わらわを置いていかないで !母上はわらわを連れていこうとして失敗したのじゃ !兄上様、今度はわらわも連れていって !
ナーザ駄目だ……。生きろ……。俺が行くのは……虚無……。永遠の絶望と苦しみが巣くう死の砂嵐の中だ。お前は……生き……ろ……。
メルクリア兄上様 ! ?……嫌じゃ……嫌じゃっ !わらわはもう独りになりとうない ! ! 兄上様ぁっ ! !
リヒター……メルクリア。
メルクリア………………。
ローゲ泣いて、その場に座り込んでいるだけか、皇女よ。
メルクリア……………………。
メルクリア…………………………許さぬ。
メルクリアわらわから兄上様を奪った鏡士もバルドのふりをしていたあの男も……。
メルクリア許さぬ……許さぬぞ…… !

キャラクター12話【12-15 カレイドスコープの間】
ユーリバルドとセシリィはどうなったんだ ?姿が消えちまったがあれは転送魔法陣か何かのせいなのか ?
フレンわからない。バルドからは体を傷つけるような真似だけはしないとしか聞いていないんだ。
ミリーナセシリィも言っていたわ。体を傷つけたりはしないって……。
ユーリ……あいつら、まさか。
フレン………………。
ミリーナコーキスにスタンさん ! ? どうしてここに ! ?
ミリーナ――待って。コーキス、あなたまた魔眼を使ったのね ! ?
コーキスあ……えっと……すみません。それより……マスターは ! ?
ユーリ後ろでぐっすり眠ってるのが見えねぇか ?
コーキスそれじゃあ…… !
リオンそんな話は後にしろ。早くここを出るんだ。
フレン――ヴィクトル。魔術障壁は ?
ヴィクトル三人が無効化した。今なら脱出できる。
ユーリフレン、こいつは誰だ ?
フレンヴィクトルだ。イクスの救出計画をサポートしてくれた。バルドが雇った鏡映点だよ。
コーキス……誰か来るぞ !
ミリーナメルクリアだわ……。
メルクリア……よくも兄上様を殺したな ! 黒衣の鏡士 !
メルクリアそれにフレン ! わらわを裏切るとは万死に値するぞ !
フレン……メルクリア。君は間違っている。
メルクリアわらわに意見するな、裏切り者 !今ここで、お前たちを八つ裂きにしてくれるわ ! !
リヒター……悪いが、命はもらい受けるぞ。
ローゲこの俺さまの手にかかって死ねることを光栄に思え !
ヴィクトル――ここは引き受ける。行け !
スタン俺も残る !
ヴィクトルむしろ足手まといだ。一人でやらせてもらう。早く行け !
メルクリア仲間割れか ? ならば全員始末してやろうぞ !
メルクリア――ビッグバン ! !
ヴィクトル……くっ !
ローゲ中々やるじゃないか。だが――これで終わりだ !
スタンさせるか !
リオン――フン。力任せの無駄な攻撃だ。
ローゲ貴様らぁっ !
リオン――最初に取り決めたことを忘れるなよ、ミリーナ。優先するべき事は何か。
ミリーナイクスの救出、ね。
スタン俺とリオンが残れば、三対三。いい勝負だろ。
スタンコーキスは手負いだ。ミリーナたちと逃げろ !
ヴィクトル勝手なことを……。
リオンむしろ僕の足手まといにならないようにするんだなヴィクトル。
ユーリ――一緒に暴れたいところだが、ここは任せるぜ。
ミリーナどうか無事で…… !
フレンコーキス、大丈夫かい ?
コーキスあ……ああ。大丈夫 !
ミリーナ見て ! 魔術障壁が消えてるわ !
コーキスよかった…… !
コーキスあれ ? ミリーナ様、魔鏡通信が……。
ミリーナ…… ?光っているだけで、何も映っていないけれど……。
? ? ?――……リーナ……ん……。ミリーナ……さ……。
コーキス…… ? 女の人の声 ?
? ? ?……よかった……。最後に言葉を……届けられる。
セシリィこの声で話しかけるのは初めてだからわからないかも知れないけれど私は……セシリィの体を借りていたシドニーです。
ミリーナシドニー ! ? どういうこと ! ?
シドニーすみません。計画の全容を伝えていなくて。人体万華鏡を封じるには魔鏡術を使う必要があります。
シドニーでも……私が魔鏡術を使うためにはセシリィの体から離れないといけなかった。
シドニー私は……ゲフィオンさんとキメラ結合する形でここに残ります。そしてゲフィオンさんの中から死の砂嵐を封じます。
ミリーナそんな―― ! ?
シドニー私は……もう死んでいる人間です。でも、せめて私が生きた世界を守るお手伝いはさせて下さい。
シドニーできることなら……いつか死の砂嵐を……カレイドスコープに砕かれた人々の魂を解放して欲しい……。
シドニー彼らを永遠の牢獄から解き放ってくれれば……。
ミリーナ待って ! 他に方法はないの ! ?
シドニー……今は……。でも……きっとミリーナさんなら……見つけ……ら……れ……。
ミリーナ待って、セシ……シドニー ! 行かないで !ねぇ、バルドさんは ?バルドさんもゲフィオンとキメラ結合するの ?
シドニーバルドさんは……鏡士では……ありませんから。あの方は……ウォーデン様と共に……死の砂嵐に戻りました……。
シドニー私たちの……体は……そちら……に……。
シドニーこれで……いい……。
シドニーガロウズに……会えたら……しあわ……せに……と……――
ミリーナ………………。
コーキス………………。
ユーリ……帰るぞ、二人とも。
コーキスけど、ユーリ様……。
ユーリシドニーの言葉を思い出せ。体をこっちに送ったって言ってただろうが。きっとアジトだろうよ。
ミリーナ……そうね。目が覚めたセシリィに話をしないといけないわね。それにファントムをどうするか考えないと。
フレンコーキス。泣いてばかりはいられないよ。まだやるべきことはたくさんあるんだから。
コーキスわかってるよっ !けど、なんか涙が止まんねぇんだよ !
コーキスバルドなんか……さよならも言えなかった……。
コーキス二人がこうするつもりだって最初から言ってくれれば何か考えてあげられたかも知れねーのに。
ユーリわからねぇのか ? だから言わなかったんだよ。
ミリーナ時間が無かったから……。それに……二人とも自分たちは死者だから、ここにいるべきではないとずっと思っていたんだわ。
ミリーナ(……二人を殺して、世界を奪ったのは……私なのに)
ユーリ今度こそ行くぞ。もしここで敵に捕まったらスタンたちが壁になってくれてる意味がねぇからな。
コーキス……うん。

キャラクター12話【12-15 カレイドスコープの間】
ルカ――ジェイドさん。ミリーナたちが戻りました。イクスも無事です。スタンとリオンはまだセールンドにいるらしくて、連絡がありません。
ジェイド了解しました。それでは陽動部隊には撤退命令を出しましょう。
ルカ……あの、一つ聞いてもいいですか ?
ジェイド何でしょう ?
ルカどうしてケリュケイオンが魔の空域から脱出するタイミングがわかったんですか ?
ジェイド話すと長くなりそうですが……。
ルークあ、俺もそれ聞きたいぞ !なんかエドナの話だと、色々裏で動いてたんだろ。
ジェイド……情報漏れの片方がフィリップからだとわかったからですよ。
ジェイドファントムは活動停止状態なのだから、盗聴の真似事をしていたのはジュニアだと当たりがつきます。
ジェイドジュニアもフィリップと同じような性格ならフィリップを裏切るような行為には後ろめたさがある筈です。
ジェイドそこに自分の情報を元に、ミリーナたちを罠にはめる計画が持ち上がる。ミリーナ想いのジュニアなら何とかして助けたいと思うでしょうねぇ。
ルカつまり……ジュニアの心の動きを読んだって事ですか。でもジュニアが魔の空域の脱出方法を知っているって確証はなかったですよね。
ジェイドいえ、可能性は高いと思っていましたよ。チーグルが何故魔の空域にケリュケイオンを飛ばしたのか。
ジェイド帝国は恐らく魔の空域という場所がどんな場所なのか知っているんですよ。
ジェイドそうでなければ、確実にケリュケイオンをその場所へ導くことはできませんから。
ルーク駄目だ……。説明されてもよくわかんねー。だって全部想像だろ ?
スパーダルーク、気が合うな。オレもだ !
イリアあたしも !
エドナ大佐のボーヤ。どや顔で自分の計画の成功をひけらかしている暇があったら撤退の準備を手伝いなさい。
エドナこっちの戦いはまだ終わっていないのよ。
ジェイドおや、これはこれは。相変わらずあなたは小姑のように香ばしい発言をなさいますねぇ。
エドナ香ばしいのはどちらの方かしら。大人になるのが怖くて道化のように振る舞っているけれど、実は自分が本当に道化だとは気付いていないようね。
ルカ……は……はは……。それじゃあ、僕色々やることがあるから……失礼します !
イリアちょっと ! 何で通信を切っちゃうのよ。今から面白くなるとこだったのに !
ルカええ ! ? あの二人の言い合いとてもじゃないけど聞いていられないよ……。
スパーダそうか ? あれはあれで楽しそうにやってるみたいだけどな。
ルカそうなのかなぁ……。……あ、そうだ。セシリィとファントムの様子は ?
イリア二人とも眠ったままよ。マーテルが見てくれてるしミトスもいるから大丈夫でしょ。
ルカそう……。
イリア何情けない顔してんのよ。ちゃんと処置したんでしょ ?
ルカけどジュードみたいに慣れてる訳じゃないから……。イクスだって……点滴ぐらいしかしてあげられなかったし。
カーリャルカさま ! ここにいたんですか !
ルカカーリャ、どうしたの ? まさか、イクスに何か――
カーリャそうじゃないですけどそうなんです !とにかく来て下さい !
ルカえ ! ? 何、どういうこと ! ?
カーリャイクスさまが目覚めそうなんです ! !
イクス……ん…………。
ミリーナイクス…… ! お願い……目を覚まして…… !
コーキスマスター……。
イクス…………やめろ……くるな……っ !
コーキスマスター ! しっかり !
ユーリうなされてるな。
ミリーナイクス……夢の中でも死の砂嵐に苦しめられているんだわ……。
コーキスカーリャ先輩、何してるんだよ。俺もルカ様を捜しに――
カーリャルカさまを連れてきました !
ルカイクスが目を覚ましそうなんだって ?
コーキスルカ様 ! マスターが苦しそうなんだ !
ルカ待って。今、脈を診るから……。
イクス――や、やめろっ ! ?
ルカわぁっ ! ? な、何 ! ?
イクス…………え………… ?
フレン急に腕に触れられて、驚いたのかも知れないね。
ルカ……目が……覚めた…… ! よかった…… !
ユーリおい、カーリャ。魔鏡通信じゃないか ?
カーリャホントだ ! ? こんな時に誰ですか、もー ! !
イクス……何……だ…… ?俺……どうしたんだ…… ?
ミリーナ――イクスッ ! !
イクス……ここは…… ?
コーキスマスター ! ! !
イクスな……何…… ?二人とも……抱きついて……。く、苦しい……。
イクス(……そう……か……。俺……魔鏡結晶から出られた、のか)
イクス(もう……あの声を聞かなくてすむんだ……)
イクス(カレイドスコープで命を落とした人たちの……苦しみの声……。それに……全身が引き裂かれそうな……あの、痛み……)
イクス(俺……助かったんだ……。生きてるんだ……)
カーリャ――通信、スタンさまとリオンさまでした !お二人とも無事だそうです !
ユーリだろうと思った。あんなところでくたばるような連中じゃないしな。
イクス(そうか……。みんな……俺を助けるために、命がけで……)
ミリーナイクス……。本当によかった……。
イクスミリーナ……。
ミリーナお帰りなさい、イクス !
イクス――うん。ただいま !