キャラクター1話【1-1 ひとけのない街道】
ミリーナイクス、大丈夫 ?やっぱり私、手伝いましょうか ?
イクスえ ! ? こ、子供じゃないんだから、大丈夫だよ !それにもうすぐ着替え終わるから……。
コーキスへへっ。
カーリャどうしたんですか、コーキス。
コーキスだってさ、マスターとミリーナ様全然変わらねーからさ。
カーリャ確かに……。でもミリーナさまが幸せそうで本当によかったです。
イクス――よし、お待たせ。
カーリャあ、イクスさまのお着替え、終わったみたいですよ ?
ミリーナええ。それじゃあ、失礼します……。
イクスえっと……ど、どうかな ?
ミリーナイクス ! すごく似合ってるわ ! とっても格好いい !
コーキスおっ ! マスターの意見を取り入れてもらって黒い布使ってもらったんだな !
カーリャイクスさまって、意外とセンス、アレですよねー。
イクスアレってなんだよ ! カーリャは相変わらずだな……。
ミリーナ着心地はどう ?
イクスあ、大丈夫だよ。でも、なんか変な感じでさ……。
ミリーナえ ? やっぱりその服、気に入らない ?だったら作り直すわ。
イクスえ ! ? ち、違うよ ! 第一、この服具現化じゃなくてミリーナが手縫いしてくれたんだろ ?
イクスその気持ちが嬉しいし、デザインが嫌だとか着心地が変だとか、そういうことじゃないんだ。
イクスほら……俺、急に背が伸びただろ ?ミリーナの顔がいつもより下に見えて……なんか落ち着かなくて。
ミリーナそうよね……。魔鏡結晶の中でイクスの身体が成長したなんて……。
ミリーナううん、成長じゃないのよねきっと。まだこの現象が何なのかわからないからイクスの身体が心配だけど……。
イクス……確かに楽観視はできないよな。でも、今のところ変な自覚症状はないからさ。ただ、急に背とか髪が伸びて驚いたってだけだよ。
コーキスマスター……。
イクスあ、この髪の毛どうかな ?本当は長髪のままでもいいなって思ってたけど……。
ミリーナ――駄目。長髪は縁起が悪いから。
イクス何だよ、それ。まぁ、でも駄目だって言われたからさせめてちょっとセットを変えてみたんだ。
ミリーナうん。前の髪型もすっごく可愛くて格好良かったけど今回の髪型もすっごく可愛くて格好いいわ !
イクス可愛い……はちょっと嫌だけど気に入ってくれたならよかったよ。
コーキスへへっ。
イクスん ? どうした、コーキス。
コーキスえ、いや、何でもないよ。
カーリャコーキスはイクスさまが帰ってきてからずっとこんな風にニヤニヤしてるんですよ。
コーキスだってさ、マスターがちゃんと目の前にいてミリーナ様が笑ってて……。
コーキスやっと……俺がずっとこうなったらいいなって思ってたことが現実になったからさ。
イクスコーキス……。辛い思いをさせてごめんな。
コーキス辛かったのはマスターだろ。痛いのとか我慢してたんだから。
イクスみんな大変だったんだよな……。……っていうか、まだ大変なのか。うん。今日からは、俺もみんなと一緒に頑張るから。
ミリーナイクス……。
イクスでも頑張るって、何から手をつけたらいいんだろう。そもそも俺たち、何をしたらいいのかな。
イクス帝国が脅威だってことはわかってるけど相手が何をしようとしているのか、俺たちは何をしたらいいのか、全然整理できてないよな。
イクスまず目的をはっきりさせる必要があるのか。
ミリーナさすがイクス ! 頼りになるわ !
コーキスあー……懐かしいな。ミリーナ様のマスター全肯定。
カーリャミリーナさまはイクスさまの前に出ると駄目な感じになっちゃいますね。
ミリーナそんなことないわ。イクスが頼りになるのは本当だから否定することが何もないのよ。
コーキス鏡精だってそこまで全肯定できないけどなぁ。
カーリャですね。
イクスははは……。そういえばミリーナはどうして黒い服を着てるんだ ?
ミリーナえ ?
イクス前に着てた赤い服、似合ってたのに。あ、黒い服も格好いいけどさ。なんか大人っぽくて。
ミリーナ……うん、そうね。でも、イクスがこの服を格好いいって言ってくれたからこのままでいるわ。イクスはこういうテイスト、好きだものね ?
イクスえ、うん……まぁ……。
ミリーナそれじゃあ、そろそろ行きましょうか。フィルが待ってるわ。
イクス
イクス――わかった。行こう。

キャラクター2話【1-1 ひとけのない街道】
マークお、イクスが来たぜ。
フィリップ! !
キールイクス……久しぶりだな。元気そうで……よかった。
クレスみんな早くイクスに会いたいって思っていたんだ。何より、ミリーナとコーキスが苦しんでいたからね。
ミリーナとコーキス……………… !
イクスああ…… ! あの、改めて……待たせてごめん。それからありがとう。
キールああ、まったくだ。1年近く待たされたんだからな。
カーリャその間に、鏡映点さまも随分増えましたしね。
コーキス大丈夫だよ。マスター、頭はいいから、すぐに覚えられるって。
イクス頭『は』って……。ひどいな。
イクスそれと、フィル……さん。やっとちゃんと会えましたね。
フィリップイクス……やっぱりその姿……。
イクス
ミリーナフィル。イクスの変化に心当たりがあるの ?
フィリップあ、いや、違うんだ。ごめん。その……僕が知ってるイクスによく似ていたから……。
イクスフィルさんの知ってる俺…… ?『最初の俺』ってことですか ?
フィリップああ、そうだよ。それとイクス、僕のことはフィルでいい。
イクスあ……でも……。
マーク――なぁ、フィル。このイクスとミリーナは具現化されたもう一つの可能性でリアライザーなんだって言ってなかったか ?
マーク混同するなって言っておきながら、お前イクスに一人目と同じ対応してくれってのはおかしいんじゃねぇの ?
ミリーナ………………。
フィリップあ……ああ……。そうだね。僕が一番割り切れていなかったのか。すまない。
フィリップ君たちにしてみれば僕は単なる中年のおじさんだよね。わかっていた筈なのにな……。
コーキスフィリップ様……。
イクス……あの。俺も……フィルって呼んでいいです――いいかな ?年下だから生意気に聞こえたら悪いんだけど。
フィリップも、もちろん ! ……ありがとう、イクス。
キール……そろそろいいか ?話さなきゃならないことがたくさんあるんだ。
イクスあ、そうだよな。いいよ、進めてくれ。
キールそれじゃあ、まずは現状について報告しよう。
クレスリフィルさんに資料を纏めて貰ったんだ。イクスなら読んだ方が早いだろうって。
イクスわかった。読んでみるよ。
エドナ………………。
アイゼン……エドナ。
エドナそんな顔しなくても大丈夫よ。わかっていたことだもの。別れの時が近づいているって。
エドナそれより、ベルベットたちには話したの ?ケリュケイオンに移るって話。
アイゼンいや、まだだ。それにあいつらは、俺がここを離れようと気にしないだろう。
エドナ――そうね。単にケリュケイオンに行くだけですもの。会おうと思えばいつだって会えるわ。
アイゼンああ。好きなときにパルミエを届けてやれる。
エドナそれぐらい自分で持ってきたら ?
アイゼンそうだな。
エドナ………………。
エドナ……そうよ、自分で届けてちょうだい。必ずね。
アイゼンそうしよう。
エドナ気をつけて。
アイゼンああ。
ヴィクトル……助かった、のか ?
ヴィクトル(……せめてここでなら、救えると思ったのに)
ヴィクトル――待っていてくれ、ミラ。

キャラクター3話【1-2 アスガルド城1】
リヒター……メルクリアの様子はどうだ ?
ジュニアやっと眠ったところ……。無理もないよ。ナーザ将軍を――お兄さんを失ったんだから。
リヒターナーザはどうなったんだ ?虚無に引き戻されたのか ?
ジュニアうん……。また永遠の牢獄に閉じ込められたんだ。
リヒター……そうか。苦しみを伴わないだけこちらの方がマシだったのかも知れないな。
チーグル――鏡映点に何がわかる !虚無の絶望を ! 永遠の苦痛と生を !
チーグル死にながら生き続ける終わりのない地獄に私たちは閉じ込められていた。
チーグルナーザ……いや、ウォーデン様はまたそこへ戻されてしまったんだ !
リヒターああ、わからないさ。だが、大切な人を失った者の気持ちはわかる。
チーグル……メルクリア様のことか。
リヒター俺は……アステルのためにここに残ると決めていた。だが……。
チーグルメルクリア様のためにも残るというのかい。ならば自分がどこに『属す』つもりなのかはっきりさせるんだね。
チーグル所詮デミトリアスはセールンドの王族だ。ビフレスト皇国にとっては仇の一人。
チーグルメルクリア様を守ってきたからこそ従ってやってきたが、この後はわからない。
ローゲ随分と不穏な話をしているじゃないか。
ジュニア! !
ローゲ安心しろ、ジュニア。貴様は用済みだ。ファントムが黒衣の鏡士の元に落ちた今貴様は使い道のないゴミクズに過ぎん。
ジュニア………………。
チーグルローゲ。エルレインは落ち着いたのか ?
ローゲフン……。もとより取り乱してなどいなかったわ。肝の太い女だ。それにどうやらこの体の持ち主をよく知っているようでな。
チーグルきみもよくよく考えておくんだね、ローゲ。メルクリア様のご意向次第では我らは帝国を離れることになる。
ローゲ知ったことか。
チーグル何 ! ?
ローゲこの程度のことで心が折れるような小娘が我らがビフレスト皇国を率いるに値するものか。
ローゲそれに貴様の考えていることなどデミトリアス帝はとうに気付いているぞ。なぁ、デミトリアス帝 ?
チーグル精霊の封印地から戻っていたのか、デミトリアス帝。
デミトリアスああ。マクスウェルは捕らえられなかったがね。
デミトリアスところでチーグル――いや、ビフレストの黒き虎ドンナー卿とお呼びした方がいいかな。
チーグル……セールンドに敗北した私に気高きドンナー家の名は似合わないからね。チーグルで結構。
デミトリアス失礼した。あなたやビフレストの方々の気持ちはわかっているつもりだ。
デミトリアス故に、メルクリアにも自由を与えたしビフレストの皇国の復活も帝国の目的の一つとした。
デミトリアスだが……コーキスが誕生し、イクスが自由になった今あまり悠長なことも言ってはいられない。
デミトリアスティル・ナ・ノーグがニーベルングと同じ過ちを犯さぬように、あらゆる手を尽くす必要がある。それが非道であったとしても。
チーグル私たちの望みは、世界の救済を前にしては小さいとでも言いたげだね。
エルレイン神の救済の前では、全てが矮小な事柄に違いない。
チーグル何…… !
エルレインだが、亡国の復活がお前たちの救済に繋がるというなら否定するつもりはない。
エルレインむしろ叶えてあげたいとすら思う。だが、この世界で私の力は大きな制限を受けているようだ……。
チーグルきみは……ベルセリオス博士と一緒に具現化されたというエルレインか。
エルレイン具現化か……。私の奇跡の力が弱まっているのはその具現化とやらの影響のようだな。
エルレインこんなことは初めてだ。ここでの私の運命……私がここに作り出された意味は……一体……。
デミトリアスきみの存在の意味はこの世界に救いをもたらすことだよ。いずれわかる。
デミトリアスエルレインの奇跡の力に関しては新たに研究チームを立ち上げる。ジュニア、彼女を頼むよ。
ジュニア……は、はい。
デミトリアス精霊装に関してはレイカー博士とベルセリオス博士に一任した。メルクリアに預けていた四幻将とその配下は帝国で吸収しよう。
デミトリアス既に黒衣の鏡士の元へ走った者もいるし再編は不可欠だろう。
デミトリアス私もようやくこの体が馴染んできた。いや……本来の姿を取り戻したのに馴染んだというのもおかしな話だがね。
デミトリアスとにかく、これで私も自由に動けるようになった。やっとラグナロクに立ち向かえる。
デミトリアス詳しい話は作戦会議室で行おう。サレとハスタも呼んである。
メルクリア――お待ち下さい、義父上 !
ジュニアメルクリア ! ? 起きて大丈夫なの ! ?
メルクリア大丈夫じゃ。メイドたちが義父上のことを話していたからいても立ってもいられなくなって……。
デミトリアスメルクリア。無理はしない方がいい。
メルクリア義父上……。四幻将を取り上げないで下され。わらわには兵が必要です。兄上様を二度も殺したあの鏡士を倒すために !
チーグルメルクリア様……。
ローゲはーっはっはっはっ !それでこそビフレストの皇族よ !見直しましたぞ、メルクリア様 !
デミトリアス……わかった。悪いようにはしない。だが今は部屋で休んでいなさい。いいね、メルクリア。
メルクリア……きっと、きっとじゃぞ、義父上 !

キャラクター4話【1-7 ひとけのない森林3】
ガイ――さて、こちらキール研究室。俺は進行役のガイだ。各自部屋に待機してると思うけど魔鏡通信は届いているか ?
エルはーい ! こちらエルとルドガーの部屋。ちゃーんと届いてるよ。
カロルカロル調査室とセキレイの羽もばっちり。
クレス道場の方も大丈夫だ。
ファラファラ生活向上委員会もね。今、みんなで手分けしてお茶とお菓子配ってるから !
エドナあら、気が利くわね。さぁ、ティア、あなたも返事なさい。
ティアあ、はい ! エドナ様のお茶会の準備は万全よ。
ガイその謎の集団で集まってるのかよ……。
エドナ何か言ったかしら、給仕。
ガイ誰が給仕だ ! えっと後は――
エステルエステルの読書会も全員揃っています。
ガイそんなのまで出来てるのか……。ケリュケイオン組はどうだ ?
クラトス聞こえている。進めてくれ。
ガイわかった。それじゃあ、早速始めようか。まずはイクスが動けるようになったことの報告からだ。
イクスえっと、イクスです。初めましての人は初めまして。それから俺のために、みんな色々と力を尽くしてくれてありがとう。
イクスまだ直接顔を合わせられていない人もいるから今ここで、改めて言わせて下さい。
イクスえっと……。ミリーナ、コーキス……それに、みんな。――ただいま
ほぼ全員お帰り、イクス !
イクス! !
ガイ泣くな泣くな。キールが横で目をつり上げてるぞ。
キール泣くのはコーキスだけで十分だ。
コーキスうぅ……マスター……良かった……。
イクスご、ごめん ! ほら、コーキスも泣くなって !
コーキスうん……。悪い……。なんか嬉しくてさ……。
ミリーナコーキス……。そうよね……。
カーリャカーリャも涙が……うううう !
ガイわかったわかった。ミリーナ、鏡精たちを頼む。イクス、進めてくれ。
イクスわ、わかった。えっと……俺が魔鏡結晶の中に入ってからのことは、リフィル先生たちがまとめてくれた資料で把握した。
イクスみんな、本当にありがとう。
イクスそれで今日は、この先のことについてみんなと相談していきたいって思ってるんだ。
イクスただ、バルドさんやカロル調査室、それに帝国から来てくれた人たちが持ってきてくれた情報もある。
イクスだからまずは、これまでとこれからのことを新しい情報も交えて整理したいと思う。
イクス始めに、みんなが鏡映点としてティル・ナ・ノーグに来ることになってしまった原因から。
イクス知っていることもあると思うけど整理する意味で聞いて欲しい。
フィリップここからは僕から話そう。誰よりもこの世界の『終わり』について詳しいからね。
フィリップ今はこの世界の暦で3238年だ。
フィリップデミトリアス陛下が復興を宣下したアスガルド帝国というのは、今から約1200年前――2010年に成立したと言われる古の帝国だ。
スタンそんなに古い時代の国だったのか。
スレイもしかして今まで見つけた遺跡の中にはアスガルド帝国のものもあったかも知れないな。
ミクリオスレイ、やめろ。リフィル先生の目の色が変わった。
スレイあっ ! ?
ガイあー、遺跡マニアはそっちで上手く対応してくれ。フィリップ。続きを頼む。
フィリップああ。シャーリィの体を乗っ取っていたヨウ・ビクエはこのアスガルド帝国の初期に生まれた人物だ。
フィリップ彼女と関わりがあるアイフリードも同時期の人間ということになる。
ライラそんなに古い時代の人間がまだ生きているなんて……。天族や天使のようですわね。
ミトス人ならざる者になったのか人ならざる者の力を借りたのかってことだね。
フィリップデミトリアス陛下はアスガルド帝国を復活させヨウ・ビクエの体を確保しているらしい。この時代の何かを陛下は必要としていると言うことだ。
フィリップさて、時代はそれからさらに下る。アスガルド帝国が分裂、瓦解して、小国が乱立する時代があった。やがて残ったのがセールンド王国とビフレスト皇国だ。
フィリップ二国間で終戦協定が結ばれたのが、3113年。しばらく二国間の関係は平穏だった。
フィリップだが、キラル分子と呼ばれるエネルギーの発見と利用法を巡って対立するようになってしまった。
ミリーナキラル分子というのは私たちの世界のエネルギーの元になる粒子なの。鏡士も具現化の際にキラル分子を使用しているわ。
ミリーナ性質やあり方は違うけれど、ユーリさんたちの世界のエアルや、クレスさん、ロイド、ジュードさんたちの世界のマナ、ルークさんたちの世界の音素(フォニム)
ミリーナ……のようなものかしら。
フィリップそして魔鏡戦争が勃発した。きっかけはビフレスト皇国がセールンド王国のオーデンセ島を襲ったこと。
フィリップオーデンセは鏡士の故郷で、セールンドの鏡士と鏡精を忌み嫌っていたビフレストにとっては恰好の目標だった……と聞いている。
フィリップこの当時、僕もミリ……ゲフィオンもまだ若くて国の上層部で何が行われていたかは知らなかったんだ。
フィリップ……そしてこのオーデンセ襲撃で最初のイクスが命を落とした。
イクス……その時の俺―― 一人目のイクスの遺体を何故かビフレストは持ち帰り保管していた。それでナーザが使っていたんだな。
カイル……あれ ? 揺れてる ? 地震かな ?
ジューダスこのアジトで地震が起きる訳がない。アークからの呼び出しか ?
ミリーナ――いえ、違うわ。何かがおかしい……。私、ちょっとアジトの具現化に支障が出ていないか見てくるわ。
ミリーナイクス、コーキスを連れて行ってもいいかしら。
イクスああ、もちろん。俺も行こうか ?
ミリーナいえ、イクスはここで話を進めていて。カーリャもここに残って仮想鏡界を維持していて。
カーリャはい !
フィリップマーク。きみも一緒に行ってあげてくれ。鏡精の中では一番年長だろう ?
マーク人を幼稚園児みたいに言うのはやめてくれっつーの。まぁ、いいぜ。アジトの様子がおかしいのは確かだ。
ミトスボクも行くよ。ちょっと気になる。クラースならわかるよね。
クラース……ああ。精霊……の気配のようなものを感じる。しかしミトス、何故お前にそれがわかったんだ ?
ミトス……どうやらボクが具現化された時の状況が影響しているみたい。ボクはまだ【オリジン】と契約したままなんだよ。
ロイドそうか……。そういえばミトスは元の世界でオリジンにエターナルソードを作ってもらったって……。
ミラ=マクスウェル……四大からも妙な気配がすると言ってきている。私もミリーナと行こう。エミル、セルシウス、共に来てくれるか ?
エミルわ、わかったよ。
セルシウス……何だか嫌な予感がするわ。急ぎましょう。
ミトスクラースも来て。人間でも召喚士なんだから、役に立つでしょう。
クラース当然だ。
イクスわかった。それじゃあ、みんな、よろしくお願いします。コーキス、気をつけて行けよ。
コーキスああ、ミリーナ様もみんなもちゃんと守るからマスターは安心してそこで待ってろよ !

キャラクター5話【1-8 ひとけのない街道1】
エルダメルクリア。そなたはビフレスト皇国に生まれた知の象徴。ダーナの揺り籠を護るために生まれた知の乙女。
エルダセールンドの悪魔共に心を許してはならぬ。
メルクリア(……母上様…… ? )
エルダそなたはいずれビフレスト式魔鏡術を極めビフレスト皇国を繁栄させる筈じゃった……。それこそが知の乙女たるそなたの宿命じゃった……。
メルクリア(……で、でも、母上様。わらわは――)
エルダゲフィオンめ ! 我が皇国を辱め、滅ぼした悪魔 !カレイドスコープを生み出し、私の可愛いウォーデンもあの悪魔が殺した……。
エルダおぞましき鏡精を生み出す破戒者共。許さぬ……許さぬぞ…… !
メルクリア(母上様……わらわは嫌じゃ……。母上様とずっと一緒に……)
エルダ呪う……呪うてやる…… ! セールンドに滅びを !我が皇国に再び命の光を !
エルダ許さぬ……ふふ……許さぬ…… !死の砂嵐はダーナの天罰じゃ。わらわもこの身をダーナに捧げ、奴らに呪いを――
メルクリア……ゆ……め………… ?
ジュニア……大丈夫 ?
メルクリア……ジュニア、か。
ジュニアまた、あの夢を見たの ?
メルクリア……そうじゃ。母上様がわらわを置いて逝ってしまった日の夢じゃ。
メルクリアあの時はまだ母上様が仰ることを何一つ理解していなかったが……。
メルクリアもしも今ほどの知識があれば……。いや、結局母上様はわらわを置いて逝ってしまわれた。
メルクリアみんな……わらわを置いていく……。わらわを独りぼっちにする。ジュニアもそうであろう。そなたはビクエの三人目じゃ。
ジュニア僕は……――僕も捨てられちゃったから……。
メルクリア…………そうか。
メルクリア――――ん ? 何じゃ、この妙な空気の振動は……。
ジュニア仮想鏡界が揺らぎ始めてる…… ?
メルクリアファントムを連れて行かれたからか ?
ジュニアううん。僕がいるからそれはない筈だけど……。ちょっと仮想鏡界の様子を見てくる !
フィリップ――アジトのことは気になるけれどひとまずミリーナたちに任せて僕たちは話を進めようか。
フィリップ魔鏡戦争勃発後のことはみんなもそれなりに知っているね。
フィリップミリーナと僕は最初のイクスの仇を討つために王立魔鏡研究所に入り、イクスの亡くなったご両親の研究を引き継いで、カレイドスコープを開発した。
フィリップカレイドスコープは魔鏡戦争の切り札となってビフレスト皇国を壊滅。戦争はセールンド王国の勝利で終わった。
フィリップこの時終戦協定が結ばれて、ビフレスト皇国の皇后エルダと皇女メルクリアが人質としてセールンドに連れてこられたんだ。
カイウスメルクリアは人質だったのか ! ?そんな風には見えなかったけど……。
シングうん、すごく自由にしていたしデミトリアス陛下とも親しそうだったよ。
フィリップそれは……エルダ皇后が亡くなられた後デミトリアス陛下がメルクリアを義理の娘として育てると仰ったからかも知れないね。
リッド皇后が亡くなったって……病気か何かか ?
フィリップ……自害された。錯乱されて……メルクリアと無理心中をしようとしたんだ。
フィリップメルクリアは助かったけれどエルダ皇后はそのまま息を引き取った。
ルーティ……なんてことを。
フィリップ――きっかけは死の砂嵐だった。終戦後しばらくしてカレイドスコープによる消滅の反動から死の砂嵐が発生したんだ。
フィリップ世界の終焉を予測して絶望されたのか……エルダ皇后は自ら命を絶った。
フィリップ僕とゲフィオンは、世界の消滅を食い止めるためこの世界を護る防御壁であるアイギスを作ったんだ。
フィリップでもその段階で、既にこの世界はセールンドの周辺海域を除いて全てが消滅してしまった。
イクスそれで、大陸の具現化を始めたんだな。
フィリップああ。まずは過去から大陸や人々を具現化していった。少しずつね。世界に全ての大陸と人々を具現化するのに8年を費やしたよ。
フィリップただ過去へのアプローチといっても遡れるのはおよそ1年。範囲を狭めても10年が限界だった。
フィリップしかも現在との距離が離れれば離れるほど具現化は困難になる。だから僕らは死の砂嵐が発生する直前の過去から、世界を具現化することにしたんだ。
フィリップ世界の方はそれでどうにかなったけれど……。でも僕は――僕とゲフィオンはどうしてもイクスを甦らせたかった。
フィリップだから自分たちの記憶を経由する具現化を開発したんだ。これで10年の壁を突破した。
フィリップ僕とゲフィオンは3217年から二人目のイクスとミリーナを具現化して3237年のオーデンセに住まわせた。
フィリップこれが今のミリーナと二人目のイクスだ。
フィリップこの段階で島の人たちとイクスとミリーナの間に記憶のズレが発生してしまうはずだったけれどエンコードで調整を掛けることになっていた。
イクスその口ぶりだと……エンコードは出来なかったのか ?
フィリップ救世軍がアイギスを破壊してしまったからね。あとは……知っての通りだよ。
フィリップアイギスが破損して、オーデンセ島も過去から具現化した大陸も全て失ってしまった。二人目のイクスもね。
フィリップだから異世界からの具現化という手段に踏み切ったんだ。その為には……イクスの力が必要だった。
イクスどうしてだ ? これだけのことをゲフィオンとフィルがやってきたなら俺の力なんて必要なかったんじゃ……。
フィリップカレイドスコープもアイギスも全てはイクスのご両親が残した魔鏡を元に作られているんだ。
イクスこの……俺が今使っている魔鏡 ?
フィリップそう。それは三枚目だけれどね。不思議なことにその魔鏡は魔鏡だけを具現化して増やそうと思っても増やせないんだ。
フィリップイクスを具現化したときだけ一緒に具現化される。その魔鏡はイクスに合うように造られているんだよ。
フィリップそして異世界からの具現化を可能にするにはその魔鏡の力を最大限に引き出す必要があった。だからイクスの力が必要だったんだ。
イクスそれで三人目――今の俺が具現化された……。
フィリップああ。マークがミリーナと二人目のイクスを見つけたときには二人目のイクスは……亡くなっていた。
フィリップだからゲフィオンは三人目のイクスを二人目のイクスの遺体とすり替えたんだ。
イクス……それで俺はゲフィオンに会いにいって……。大陸の具現化を始めた。ユーリさんたち鏡映点のみんなに出会って……助けられて、ここまで来た。
ガイ……これが今俺たちが生きているティル・ナ・ノーグの再誕史って訳だ。

キャラクター6話【1-9 ひとけのない街道2】
キール――みんなにティル・ナ・ノーグのたどった歴史を共有したのには訳がある。
リオン帝国の目的が、ティル・ナ・ノーグの古代史に関わりがあるからだな。
イクス俺がスタック・オーバーレイで、魔鏡結晶を世界中に生み出した前後のことをまとめてみた。
イクスまずセールンド王国は、ゲフィオンの発案による異世界の力を借りた大陸の具現化を進めていた。
イクスこれを阻止しようとしていたのがファントムとあいつが支配していた救世軍だ。
イクスこの当時俺やミリーナは気付いていなかったけどセールンド王国と救世軍以外にさらに二つの勢力が存在していたことになる。
イクス一つはフィルやカノンノ――えっとイアハートが属していた勢力。仮にビクエ勢力とする。
イクスそしてもう一つはメルクリアの勢力だ。彼らはファントムを通して救世軍に通じていた。
シングああ。オレやコハクやカイウスたちはメルクリアに……助けられた。まぁ、騙されてたんだけど。
イクスみんなから聞いた話をとりまとめると、メルクリアは当初ファントムに協力していたのに途中からフィルの方へ鞍替えしたってことになる。
フィリップメルクリアにしてみれば、ファントムの目的である理想世界の具現化が、メルクリアの目的であるビフレスト皇国の復活に邪魔だったんだろうね。
フィリップただ、メルクリアとファントムを結びつけたのはデミトリアス陛下の筈なんだ。
フィリップつまりデミトリアス陛下も、どこかのタイミングでファントムと協力することをあきらめた。
フィリップあの人は、ファントムに同情的だった。それが翻ったのは、何故か――
ヒルダ――ナーザが甦ったから、ね。私がアスター様に拾われた頃、ナーザらしき男がセールンドの城に出入りしているって話を聞いたことがある。
ヒルダ私が具現化されたのは魔鏡結晶が出現する前だから時期的にほぼ間違いないと思うわ。
フィリップああ、僕もそう思う。ナーザからもたらされた情報によってデミトリアスは方針を転換した。
フィリップそれまではゲフィオンの大陸具現化に協力しつつもファントムの理想世界の具現化が成功するならそちらの方がいいと考えていたんだと思う。
フィリップあの人はゲフィオンが犠牲になる世界の具現化には消極的だった。何か別の方法があるならその方がいいと考えていたようだからね。
イクスゲフィオン様が犠牲になることを気にかけていたデミトリアス陛下が、突然リビングドールなんて非道なことを許すようになった。
イクスそれはつまり、ナーザからもたらされた情報が強硬的にならざるを得ないものだったからだと思う。
スタン具体的には何だったんだ ?
イクスまだはっきりとはわからない。でもヒントはある。ダーナの予言と精霊だ。
ゼロスどうよ、ケリュケイオンの状態は。
ガロウズ……おい、ミリーナたちとの会議に参加しなくていいのか ?
ゼロスそっちはクラトスとシンクが出てっから。難しい話はあの二人がまとめて教えてくれるだろ。
ガロウズ別に、俺に気をつかわなくてもいいぞ。
ゼロス俺さま女尊男卑をモットーにしてるからおっさんに気を遣う優しさは持ち合わせてねーけどな。
ガロウズ――シドニーはずっと死んでいた。今までのは、たまたま霊界と通信できちまってたってだけだ。
ゼロスなるほど。
ガロウズ……ああ。
ガロウズ――で、ケリュケイオンだが、何とか飛ばすことはできそうだ。まぁ、どこかで本格的なメンテが必要になりそうだけどな。
ゼロスなぁ、アイゼンの奴をこっちに引き込んでいいのか ?
ガロウズ……まぁな。仲間はミリーナ達の下に残るんだし悩ましいところだが本人が協力するって言ってるからなぁ。
ガロウズそれに海と空で勝手は違うだろうがでかい船の扱いに慣れてる奴が増えるのは助かる。
ゼロスアイフリードのことが気になってるのかねぇ、あいつ。
ガロウズ俺たちの世界のアイフリードとアイゼンの世界のアイフリードは別人だからな。
ガロウズそこにこだわってるとは思えないがもしかしたら興味はあるのかも知れないな。
ガロウズ或いは、アイフリードがどうこうより魔の空域にあったあの石碑の件とか……。
ゼロスその辺に興味示しそうなのってスレイ遺跡探検隊の連中ぐらいじゃねぇの ?
ガロウズ何だ、そんな集団までできたのか ?
ゼロスいや、俺さまが勝手に呼んでるだけ。遺跡マニア友の会でもいいけど。
? ? ?………………。
ガロウズ――ん ? 何か変な音がしないか ?
ゼロス……音っつーより、息か ?
? ? ?……うぅ……。
ゼロス――な、何だ ! ? お前、血まみれじゃねぇか ! ?
ガロウズお、おい……。あんた、大丈夫か ?
? ? ?――黒衣の……鏡士に……。
ゼロス――何 ?
? ? ?仮想鏡界が……危険だ……。
ゼロスうおっと ! ? 倒れちまった ! ?
ガロウズブリッジに知らせる !
ゼロスついでに担架と助っ人を寄越してくれ。頭を打ってるとまずい。

キャラクター7話【1-10 アスガルド城1】
ジュニア――これは……。鏡震…… ?
メルクリアどうなっておるのじゃ ?
ジュニア仮想鏡界は想像の力で鏡士の心の中を具現化する術だ。心は無意識で世界と繋がっている。
メルクリア集合的無意識じゃな。
ジュニアそう。意識の奥に仮想鏡界で具現化する無意識の領域があり、そのさらに奥に存在する場所だ。だから仮想鏡界は世界と繋がっている。
メルクリアつまり仮想鏡界はティル・ナ・ノーグの影響を受けやすいのじゃな。
ジュニアうん。ティル・ナ・ノーグを支えているのはダーナと精霊だと考えると仮想鏡界は精霊の力に影響を受けやすい。
メルクリア義父上が精霊の封印地からお戻りになったことと関係があるのか ?
ジュニアデミトリアス陛下は、精霊の封印地へ空のマクスウェルを捕獲しにいった。そこで何かがあったはずだ。
ジュニアそれが仮想鏡界の存在を揺らがせているんだと思う。
メルクリア……待て。こちらの仮想鏡界が揺らぎ始めているなら黒衣の鏡士の仮想鏡界も揺らいでいる筈じゃな。
ジュニア――メルクリア、駄目だ。
メルクリアそなたはフィリップの三人目じゃからな。だが、わらわは兄上様を苦しみの場所に追いやったあの者を決して許さぬ !
ジュニアミリーナは、そんなつもりじゃ――
メルクリアだまれ !
メルクリアここが崩壊すれば、そなたもただでは済むまい。そなたはここで仮想鏡界を安定させなければならぬ。
メルクリアわらわはわらわのしたいようにする。そなたはここで成り行きを見ているのじゃ !
ジュニアメルクリア…… !
ミリーナ……みんな、待って。
ミリーナこれ以上奥には行かない方がいいわ。見た目ではわからないかも知れないけれど仮想鏡界が消えかかってるみたい。
クラースどういうことだ ?ミリーナの具現化に何か問題でも起きたのか ?
ミリーナいえ……。私の力が衰えたとかそういうことじゃないみたい。
コーキス……なんか、寒気がする。
クラースセルシウスがいるから……という訳ではなさそうだな。
セルシウスわたしが普段からコントロールせずに冷気を発していたらこの仮想鏡界ごと氷漬けになってるわよ。
マークその寒気は、鏡精だけが感じてるものみたいだな。俺もさっきから震えが止まらねぇ。
マーク多分幼体の方がこの変化を感じ取りやすい筈だからカーリャパイセンが心配だな。
コーキスパイセンのことをパイセンってゆーな !っつーか、何なんだ、これ ! ?
マーク仮想鏡界のほころびから、何らかのアニマが流入してそいつに反応してるんじゃないかとは思うんだが……。
ミラ=マクスウェル……何だ ? 目眩がする……。
ミトスミラの顔色が真っ青だ。セルシウスはなんともないのに……。
ラタトスク……なるほど。わかったぞ。鏡精共がアニマだと言っているこの妙なエネルギー……。こいつは【マクスウェル】だ。
セルシウス――確かに。
セルシウスミラが傍にいるから区別が難しかったけれどこれはティル・ナ・ノーグのマクスウェルの……残滓ね。
コーキス仮想鏡界の綻びから、この世界のマクスウェルのアニマが流れてきているってことか ?
セルシウス正確に言うなら、死んだマクスウェルの欠片……のようなものかしら。
ミラ=マクスウェル……微精霊……のようなもの……だろうか。そういえば……この世界のマクスウェルは……既に……。
ミリーナミラ、ここはあなたにとって良くない場所なのかも知れないわ。みんなの下へ戻っていて。
ミラ=マクスウェルしかし……。
ラタトスク……いや、ミリーナの言う通りだ。
ラタトスクこの世界のマクスウェルが生きているならともかく死んでいるとなると、同じマクスウェルであるお前はどんな影響を受けるかわからない。
ミラ=マクスウェル……わかった。
? ? ?ラタトスク様 ! そこは危険です !
クラースな、何だ ! ? 今の声は ! ?
ラタトスクテネブラエか ! ?
ラタトスク――ミリーナ ! ゲートを開け !
ミリーナここで ! ?仮想鏡界の状態が不安定なのに危険だわ !
ラタトスクテネブラエがこの場所を危険だと言ってるんだ。いいから早くしろっ !
ミトス……ミリーナ。仮想鏡界を維持したままゲートを開くのはかなりの負担だと思うけれどやった方がいい。
ミトス外に出ればマクスウェルのアニマの正体もわかるかも知れない。それにテネブラエは信用できる。
ミリーナ――わかったわ。やってみる。でも、どこへ続くゲートを開けばいいの ?
ラタトスクテネブラエ ! どこだ !
テネブラエケリュケイオンなる船の近くです。
ミリーナ了解よ。今ケリュケイオンがある場所に一番近いところへゲートを開くわ。
クラースミラはイクスたちのところへ戻って状況を説明しておいてくれ。マーク、コーキス、君たちは――
マーク――ミラを送っていくんだろ ? 任せとけ。
コーキスええ ! ? 俺はミリーナ様を守らないと――
セルシウスそんなに震えている状態で何を言ってるの。あなたもみんなのところに戻るのよ。
ミリーナコーキス。イクスとカーリャをお願い。私はみんながいるから大丈夫よ。
コーキス……わかりました。
ミリーナさあ、ゲートを開くわ !
クラースここは……ケリュケイオンの着陸地点より南の街道かな。
セルシウスとりあえずケリュケイオンを目指せばいいのよね。行きましょう。

キャラクター8話【1-13 静かな街道1】
ミリーナここまで来る間、特に仮想鏡界に影響を与えていそうなものは見当たらなかったわね。
セルシウスマクスウェルの残滓も感じなかったわ。
ラタトスクとなると、あいつに聞くしかないな。
ラタトスク――おい、テネブラエ ! どこだ ! ?
テネブラエ――こちらです。ラタトスク様。
セルシウス……センチュリオン、ね。ミトスの世界に存在する、大樹の精霊の尖兵。
クラース精霊、ではないのか ?
テネブラエはい。我々はラタトスク様の手足となって魔物たちを統べ、マナを循環させる役割を持つ生命体です。
ラタトスクいつ具現化した ?
テネブラエラタトスク様と一緒に。ですが、力が極端に弱まっており、今まで眠りについておりました。
テネブラエある人物の協力で、ようやくラタトスク様の下に戻ることができた次第です。
テネブラエそれにしても……まさかミトスさんと一緒におられるとは。仲直りなさったのですね。良かったです。
テネブラエこのテネブラエ、お二人が仲違いされたことを心配して夜も10時間しか眠れぬ日々を過ごしておりました。
クラースしっかり寝ていたんだな……。
ミリーナふふ♪案外お茶目な性格なのね、テネブラエさんって。
テネブラエはい、イケてるお茶目とよく褒められます。いやーまいりますな。はっはっはっ !
ミトス相変わらずだね、テネブラエ。
テネブラエいえいえ、ミトスさんもお変わりなく。
ラタトスクそんなことはどうでもいい !さっきの話はどういうことだ。仮想鏡界が危険だとか何とか……。
ミリーナそうだわ。私の仮想鏡界は確かに不安定になっているけれど、原因を知っているの ?
テネブラエはい。この世界の始まりと終わりが混在する場所――精霊の封印地についてご存じでしょうか。
クラースいや……初耳だが……。
テネブラエそうですか。精霊の封印地とは、この世界を生み出した精霊たちが封印されている場所だそうです。
テネブラエそこにはこの世界の核であるダーナの心核が収められています。
ミトスダーナ……。女神の心核 ?女神の心が具現化されて置かれているってこと ?
テネブラエええ。その心核が破損しました。ダーナの心核はこの世界の心そのものです。
クラースそれはこの世界の心核が傷ついたということか。
ミリーナそれで世界と集合的無意識で繋がる私の心にも影響が出て、私の心の具現化でもある仮想鏡界に不具合が発生した…… ?
ミリーナ! ?
ミリーナう……うぅぅぅぅ……。
テネブラエまずい !この女性の心が軋んで悲鳴を上げています !
クラース仮想鏡界に何かあったのか ! ?
ミトス待って。今、アジトに連絡を取る。
ミトスクラース、ケリュケイオンの中に入ってクラトスたちにも話を聞いてみて。魔鏡通信で会議に参加していた筈だから。
クラース承知した !
カーリャさむぅぅぅぅぅ !
イクスカーリャ、どうしたんだ ?
カーリャなんか急に寒気が……。いつものぶるぶるとも違いますし、何なんでしょう。
ガイ風邪でもひいたのか ?
カーリャそうじゃなくて急にぞぞぞって……。
イクスミリーナに何かあったのかな ?
フィリップ連絡してみた方がいいかもしれないね。
キールまた揺れた…… ? 一体何が起きてるんだ……。
フィリップ……集合的無意識からの干渉かも知れない。
イクスえ ?
フィリップ心というのはね、無意識で世界中の人々や世界そのものと繋がっているんだ。
フィリップここはミリーナの無意識の一部を具現化した場所だからね。無意識で繋がった他の人や世界から干渉されやすい。
フィリップもっとも、人が人の心に干渉するというのはとても難しいことだから誰かがというより何かがというべきだと思う。
ミラ=マクスウェルその……通りだ。今回は……精霊の干渉があったらしい……。
イクスミラ ! ? 顔色が悪いけど、どうしたんだ ?
ミラ=マクスウェルいや、私のことはいい……。それより……この仮想鏡界そのものが危険な状況だ。
ガイどういうことだ ?
カーリャふぁ――っ ! ?
イクスカーリャ ! ?
コーキスカーリャ先輩、どうした ! ?
カーリャ仮想鏡界がほどけてますぅぅぅぅぅ ! ?
ジューダスどういうことだ ! ?
マーク物置の方の仮想鏡界が不安定になってたんだ。マクスウェルの影響じゃないかって話だったんだがまさかそこから仮想鏡界が消えかかってるのか ?
カーリャそ、そうです !しかも何かが侵入してきているようなんです !
カーリャカーリャはここを維持するのに集中します !侵入者を何とかして下さい ! !
フィリップまずい……。このままもし仮想鏡界が崩壊したら僕らはみんなミリーナの深層意識の中に閉じ込められてしまう。
フィリップそれだけじゃない。僕らという異物のせいで、ミリーナの心が崩壊するぞ。
イクスえっ ! ?だったら、みんな、アジトから一旦外に出ないと――
ミラ=マクスウェル――もう……遅い ! 何かが来る !

キャラクター9話【1-14 静かな街道2】
メルクリア……見つけたぞ。黒衣の鏡士の仮想鏡界を !
コーキスメルクリア ! ? どうやってここに ! ?
メルクリア世界の綻びが仮想鏡界を揺るがせているのじゃ。今ならば、黒衣の鏡士を生きる屍にしてやれる !
コーキスやらせるかっ !
コーキス消えた ! ?
イクスコーキス、そいつはまやかしだ !
コーキス! ?
メルクリア……そなたは冷静なのじゃな。確かにわらわは幻、本体は別の場所にいる。
フィリップむしろ、幻体であるからこそ綻びの生じた他人の仮想鏡界に侵入できたんだ。
メルクリア心を壊すには心をぶつけるしかない。わらわが内側から、黒衣の鏡士の息の根を止めてやる !
ガイ光魔かっ ! ?
キールしかもこの狭い場所に何匹も出してこられると戦うにも戦えないぞ !
マークこいつも幻なら、始末のしようがないな。
スタンおい、俺たちのところにも光魔が現れたぞ ! ?
クレアこちらにも光魔が ! ?
ミラ=マクスウェルアジト中に光魔が出現しているのか……っ !
メルクリアあははははっ ! 幻の光魔は、仮想鏡界を――黒衣の鏡士の心を傷つけ、破壊できる。しかしそなたたちは幻の光魔に傷一つつけられぬ !
メルクリアそこで黒衣の鏡士の精神が死ぬところを指をくわえてみているがいい !
シングみんな、持ちこたえて !オレたちのソーマなら光魔に攻撃が効くみたいだ。ヒスイとコハクと三人で光魔を片付ける !
メルクリア……ソーマか。確かにソーマなら幻の光魔を傷つけることができような。じゃが、無駄だ。たった三人でこれだけの数の光魔を始末できるものか !
メルクリアよしんばできたところで、倒し終わる頃には黒衣の鏡士の心は壊れているだろう !行け ! 光魔 !
コーキスくそっ ! こっちのダメージが効かない !どうすれば――
フィリップイクス ! 具現化だ !
イクスえ ! ?
フィリップ光魔の幻体に実体を与える。具現化するんだ !
イクスこ、こんなにたくさん ! ?しかもここからじゃ見えない場所にもいるのに ! ?
フィリップ僕も協力する。
フィリップ仮想鏡界は心の中であり、心の中は概念の世界だ。実体を与えることはそれほど難しくない。光魔が実体化すれば、みんなが光魔を倒してくれる !
イクス――わかった !
イクス(大丈夫。落ち着け。まずはオーバーレイで基礎魔鏡力を上げるっ ! )
メルクリアな……何じゃ ! ?
マークお、おい、フィル ! ?こいつはオーバーレイ暴走じゃないのか ! ?
フィリップいや……違う。暴走じゃない。これはイクスの力が無限増殖している――
メルクリア――なっ ! 体が……融ける……っ ! ?
ミトス駄目だ……。アジトと連絡が取れない。
クラース大変だぞ !アジトがメルクリアに襲撃されているらしい !
ガロウズクラトスたちの話だと、光魔に襲われたところで通信が完全に遮断されたらしい。
ガロウズまずいぞ。もしこのまま仮想鏡界が消滅するとアジトの連中はミリーナの心に閉じ込められたままになっちまう。
ミトスゲートに戻ったとしてもミリーナが気を失っていたらゲートは開かない……。シングたちもアジトの中か……。くそ !
テネブラエま、待って下さい。何か得体の知れないものが集まってくるような感覚が……。
クラースおい ! あれを見ろ ! 空に何かが見える !
ラタトスク蜃気楼…… ? いや、違うな。何かが具現化している ?
ガロウズ……大陸…… ?
セルシウスそうだわ……。空に大陸が出現している…… ! ?
ミリーナ……うぅ……。
セルシウスミリーナ ! 大丈夫 ?
ミリーナ……え、ええ……。あそこへ……あの大陸へ向かって。あれは……イクスとフィルが創り出した空中大陸よ。
ミリーナ私にはわかる。あれは……仮想鏡界のアジトに実体を与えた物なの…… !

キャラクター10話【1-15 静かな街道3】
キール……死ぬかと思ったが、何とか光魔を倒せたな。
マークああ、これで実体化した光魔共はあらかた片付けた。それにしてもこの状況は……。
マーク何がどうなってやがるんだ ?アジトに【外】ができてやがるじゃねぇか……。
フィリップ……イクス。大丈夫かい ?
イクス……あ、ああ。なんか、すごく疲れたけど……何とか大丈夫。
ファラねぇ、何がどうなってるの ?窓の外の景色が一変してて……。外に出られるなんて……。
リッドちょっと辺りを見て回ったんだがここは仮想鏡界じゃないよな ?この風の感じは外の世界と同じだ。
スタンここは空中にあるみたいだったぞ。
マーク空中 ! ?
ミラ=マクスウェル空に浮かぶ島という感じだろうか。少し先に行くと、崖があって、雲の下に海が見えた。四大もここが空中に浮かぶ島だと告げている。
スタンどうなってるんだ ? アジトがあったのは現実とは違う空間ってことだったよな。それがどうしてこんな空中に浮かぶ島になってるんだ ?
フィリップ……多分、イクスの創造の具現化の力の作用だ。力が強すぎて、光魔だけじゃなくてミリーナの仮想鏡界にまで実体を与えてしまったんだよ。
フィリップ本来ならカレイドスコープの力を借りないと成し得ない陸地の――島の具現化をイクスは行ったんだ。
イクス俺が……島を具現化した…… ?
フィリップもちろん、代償はあったけれどね。
コーキスうわぁぁぁぁ ! ? なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁ ! ?俺、縮んでる ! ?
カーリャど、どういうことですか ! ?
キールイクスの力が弱まったのか ! ?
フィリップさすがキール。その通りだよ。
フィリップイクスが光魔を――いや、実際には島を具現化したんだけれどその時に限界まで力を使い切ったんだ。
フィリップそれでコーキスを具現化する力が弱まったんだよ。大丈夫。少し休めばコーキスも眼帯姿に戻れる。
コーキスいや、眼帯は邪魔なんだけど……。
ミリーナイクス ! すごいわ ! ケリュケイオンでこの島の上空を飛んでみたの。この島の形……オーデンセにそっくりなのよ !
イクスえ ! ? じゃあ、俺、光魔を具現化しようとしてオーデンセを具現化したのか…… ?
フィリップいや、オーデンセをモチーフにアジトを具現化したんだと思う。仮想鏡界と違って、現実世界に建物を具現化しようとしたら大地が必要だからね。
フィリップ光魔を具現化しようとして、アジトまで具現化しアジトを置く場所が必要だから、オーデンセ島をモチーフに浮島を作りだしたんじゃないかな。
フィリップ……脱帽するよ。こんなこと……僕にもできない。
イクスえ、でもフィルが協力してくれたからじゃないのか ?俺一人の力でこんなことできる訳ないし。
フィリップいや、僕は少しフォローしただけだよ。
ファラ……ねぇ、ミリーナ。どうしたの、その服。泥だらけだよ。
ミリーナあ……。ちょっと外に出たときに……。――ごめんなさい、すぐ着替えるわ。
イクスあ !
ミリーナな、何 ?
コーキスあ、そうか。アレだな !
カーリャアレですね !
ミリーナ――ちょっと待って。コーキス、あなたどうしたの ! ?
コーキスまぁまぁ、俺のことは後で話すから。さ、マスター !
イクスうん。あ、あの、着替えるなら俺の用意した服に着替えてくれないかな。
ミリーナえ ?
カーリャじゃじゃーん。この服でーす !
イクスその……俺、微妙に背が伸びたりしてミリーナがわざわざこの服を仕立ててくれただろ。
イクス実はミリーナが服を仕立ててくれてるって少し前にカーリャたちから聞いててさ。俺も……なんかお返ししたいなって。
イクスその服、具現化じゃないんだ。ファラたちに協力してもらって、デザイン考えてさみんなで作ったんだよ。
イクス俺も下手だけど、ちょっとだけ縫ったりしたんだぜ。
ファラうん。みんなで話してたの。ミリーナ、そろそろその黒い服とお別れしてもいいんじゃないかなって。
ミリーナ……ありがとう。
イクス迷惑だったか ?
ミリーナ……ううん。そうよね。私……もうこの服にお別れした方がいいのかも知れない。
ミリーナイクスやみんなが作ってくれた服だもの。大事に着させてもらうわ !
テネブラエ……えー、大変いいお話のところ恐縮なのですが。
ミリーナ――あ、そうね。みんなに紹介したい人がいるの。
ミリーナ彼はテネブラエさん。そしてこちらに歩いてくるのが――ヴィクトルさん。
スタンあ、あんたはあの時の !……っていうか、どうしたんだ、その傷は ! ?
テネブラエ……ヴィクトルさんは私とミラさんを守るために怪我を負われたのです。
ヴィクトル私はバルドの協力者として、帝国の動きを調べていた。表に出てくるつもりはなかったが、事情が変わった。
クラトスヴィクトルは救世軍への合流と共闘を持ちかけてきた。私は受け入れようと思っている。フィリップ、構わないだろうか。
フィリップええ。あなたたちがそう判断したのなら、僕は構いません。
クラトス彼の話はお前たちも聞いておいた方がいい。
イクスわかりました。
イクス――コーキス、カーリャ。悪いけど、二人でアジトのみんながどうなっているか確認してきてくれ。
マーク俺も行くわ。ちびっ子二人じゃ心配だからな。
カーリャムムム ! ? 馬鹿にしないで下さい !
コーキス自分はでかいままだからって威張るなよな !
マークはいはい、悪かった悪かった。それじゃ、行くとしようぜ。
ファラわたしはクレアたちと一緒にアジトの片付けをしてくる。リッドも来てくれるよね。
リッドそう言われると思ったよ。まぁ、ややこしそうな話はキールの方が向いてるだろうしな。
キールああ。任されてやる。
クラトスヴィクトル、座るか。
ヴィクトルいや、このままでいい。
ヴィクトルどこから話せばいいか――
テネブラエここにいるミラさんとは違うもう一人のミラさんのお話からがいいのではないでしょうか。
ミラ=マクスウェル! ?
ヴィクトル……ああ、そうしよう。ミラが……自分の命と引き替えにこの世界を支えてくれているという話から、な。
to be continued
キャラクター1話【2-1 精霊の封印地への道のり1】
ヴィクトルルドガーと共にいる君たちなら今更説明するまでもないだろうが私の世界には正史と分史という概念がある。
ヴィクトルこの世界に具現化された私はまずこの世界が分史世界であることを疑った。
ヴィクトル調べを進めるうちにバルドと知り合いここが正史や分史とは何の関係もない別世界だと言うことを知った。
ヴィクトルここでは分史世界の人間であろうと正史と同じように存在できるのだと……。
ヴィクトルだが、アスガルド帝国はこの世界に分史世界という概念を生み出そうとしていると知り私はやむを得ずバルドと協力することにした。
イクス分史世界という概念…… ?分史世界というのは並行宇宙のような物なんですよね。
ヴィクトル単なる並行宇宙とは違う。ある一族の血を引く者が望み生み出した可能性の世界だ。
イクス………………。
イクス――ミリーナ。話の途中だけど、着替えてきたら ?
ミリーナえ ! ? こんな大切な話をしているときに ! ?
キールそうだぞ、イクス。何を空気の読めないことを言ってるんだ !
クラトス……いや、汚れた服のままでは居心地も悪かろう。行きなさい。
ミリーナ……は、はい。
テネブラエ私もお供しましよう。この島の様子を見にいったラタトスク様のことも気になります。お話はヴィクトルさんに任せます。
カーリャはわわ、待って下さい、ミリーナさま !
ヴィクトル……優しいな。
イクス……ごまかしだってことはわかってます。でも今はミリーナにこの話を聞かせたくない。後で、俺からちゃんと説明します。
イクスこの世界は……ゲフィオンの生み出した分史世界のようなものだから。
キールイクス……。
イクスヴィクトルさん。分史世界が誰かの願いによって生み出された並行世界なら、このティル・ナ・ノーグはどうして分史世界と定義されないんでしょうか。
イクス分史世界にあってこの世界にないもののために帝国は分史世界という概念を持ち込もうとしているんですよね。
ヴィクトルなるほど……。君は賢いな。だが、この具現化世界と分史世界は決定的に違うことがある。
ヴィクトルだがその前にここに至るまでの状況を話しておきたい。
イクスわかりました。先走ってすみません。
ヴィクトル――では話を戻そう。アスガルド帝国は分史世界という概念をこの世界に生み出すにあたって精霊の力が必要であることに気付いた。
ヴィクトルそして精霊を支配下に置こうとしてこの世界の精霊マクスウェルを殺してしまった。
ヴィクトルだが、マクスウェルは必要不可欠な精霊だ。彼らは代わりのマクスウェルとしてミラを具現化した。
ミラ=マクスウェルその『ミラ』というのは私ではない、もう一人のミラのことだな。
ヴィクトル……そうだ。今は……そうだな。分史世界のミラと呼んでおこう。
ヴィクトル分史世界のミラにこの世界のマクスウェルの残滓をキメラ結合させ、新たな精霊マクスウェルを作る。それがアスガルド帝国の目的だった。
ヴィクトル私はバルドに頼まれ、それを阻止するために分史世界のミラを移送していた馬車を襲撃した。
サレ……ま……さか……こんな……。
帝国軍兵士Aサレ様が負けた…… ! ?
帝国軍兵士Bど、どうする……。
ヴィクトル…………。
帝国軍兵士A来るぞ ! ?
ミラ待って !
ミラあなた……何者 ? それ、骸殻能力よね。
ヴィクトル私は――私はエルの父親だ。
ミラ! ?
キールエルの父親 ! ? あなたが ! ?
イクスだったら、今すぐエルをここへ――
ヴィクトル今はいい。こんな姿を見せて、エルを心配させたくない。
イクスでも――
クラトスイクス。ヴィクトルは怪我の治療を急ぐべきだ。今は最低限情報を共有させてやれ。
イクス……はい。
ヴィクトル私は分史世界のミラに何が起こっているのか説明をした。
ヴィクトルそして一足先に、【精霊の封印地】へ向かって欲しいと告げたのだ。

キャラクター2話【2-5 精霊の封印地3】
イクス【精霊の封印地】と言うのは一体何なんですか。
ヴィクトル世界の――君たちの世界の始まりの場所だと聞いている。それを帝国が精霊の封印地と名付けた。
イクス始まりって……どういう意味でしょう。文字通りですか ?
ヴィクトルああ。世界が生まれた場所、世界の始まりの場所だ。
コーキス世界ってどうやってできたんだ、マスター ?
イクスそれは宇宙に漂う塵やガスが集まって――いや、待ってくれ。【この世界】は一度滅んでる。だから最初にフィルたちが具現化で世界を造った。
イクスでもそれも壊されて、今度は俺とミリーナと鏡映点のみんなで少しずつ世界を具現化していった。だからこの世界の始まりは……。
コーキスん ?じゃあ、マスターとミリーナさまがこの世界の始まりか ?
キールいや、セールンドの周辺は死の砂嵐に飲み込まれずギリギリ残っていたんだよな。つまり、この世界の全てをイクスたちが具現化した訳じゃない。
ヴィクトルそう。【精霊の封印地】はセールンド海域の小さな島に存在する、今では数少ない【異世界のアニマを借りていない島】だ。
ヴィクトルそこは精霊が眠る場所、精霊の故郷だと言われている。そこでダーナと分史世界のミラを引き合わせるというのが、私とバルドが考えた帝国への対抗策だった。
ヴィクトル私はミラを助け出した後バルドとの約束を果たすためにセールンドへ向かった。
コーキスあ…… ! マスターを助け出したときのことだな。スタンさまとリオンさまとヴィクトル……さまと俺でカレイドスコープの魔術障壁を消したんだ。
ヴィクトルそうだ。その後のことは知っているな。君たちを逃がした後、私は精霊の封印地で分史世界のミラと合流した。
ミラ……遅かったわね。
ヴィクトル片付けなければならないことが多かったのでね。
ミラ………………。
ヴィクトルどうした ?
ミラ私たち、前にどこかで会ってる ?
ヴィクトルいや、君とは初めてだ。
ミラそう……。そうよね。私がエルのお父さんのことを知っている訳ないもの。変なことを聞いてごめんなさい。
ミラそれで、ダーナはどこにいるの ?
ヴィクトル――目の前に。
ミラまさか……この大きな結晶がダーナなの ! ?
ヴィクトル――敵か !
ヴィクトル何だ、こいつは…… ! ?
ミラテネブラエ !
ヴィクトルこいつを知っているのか ?
ミララタトスクとかいう精霊の眷属だと言っていたわ。私たちのように異世界から具現化されたって。
テネブラエ……二人とも、逃げて下さい。アスガルド帝国軍が来ています。
ヴィクトルその怪我は帝国にやられたのか。
テネブラエええ。この場所を守る精霊に封印を強化するように伝えました。あなた方も戦いに巻き込まれる前に――
? ? ?力を貸せ、マクスウェル !
テネブラエぐぅぅぅぅっ ! ?
ミラテネブラエ ! ?
デミトリアス一足遅かったね、センチュリオン・テネブラエ。
デミトリアス具現化されたのは確かだったのにどこへ姿をくらましたのかと思いきや精霊の封印地に身を隠していたとは。
ヴィクトル……デミトリアスか。
ミラこの世界の皇帝…… !
デミトリアスなるほど。仮面の君がサレを傷つけたのか。あのサレに膝をつかせるとは大した手練れだ。
デミトリアスだが、ミラは引き渡してもらうよ。この世界にはマクスウェルが必要だ。
ヴィクトルならば何故先ほどマクスウェルの力を使った ?
ヴィクトル――まさか、精霊装が完成したのか ! ?
デミトリアスそういうことだ !
ミラあの指輪は、ルビアが無理矢理つけさせられていたマクスウェルの指輪 !
テネブラエいけません !あの指輪は精霊の生命エネルギーの結晶。あの力をこの場所で解放されてはダーナの心核が壊れる !
デミトリアスそして、この精霊輪具の力をミラ=マクスウェルが取り込むことでこの世界の新しいマクスウェルが誕生する !

キャラクター3話【2-6 精霊の封印地4】
ミラく……。頭が……痺れる……。
? ? ?聞こえますか、異世界のマクスウェルであったものよ。
? ? ?私の力ではあなたを救い出すことは出来ません。ですが、あなたが力を貸してくれるならあなたを守ることはできます。
ミラどういうこと ! ?
? ? ?私は心の精霊。ミラ、どうかダーナの心を繋ぎ止める楔となって下さい。
? ? ?ダーナの心が壊れれば、この世界も崩壊する。
ミラ! ?
? ? ?私にはわかります。
? ? ?あなたはこの世界に具現化されてからずっとある人々のことを心にとめていることを。彼らとの再会を強く願っていたことを。
? ? ?ですが、このままでは世界そのものが――
テネブラエくっ……。
デミトリアス亜精霊が、マクスウェルを跳ね返した、だと ?
ミラど、どうしてそこまでして私を守るの !
テネブラエ同じ属性の精霊であろうとあなたとこの世界のマクスウェルは別の存在。それを一つにするなど、無礼にも程があります !
ミラ! !
デミトリアスセンチュリオンを排除せよ !
帝国兵たち御意 !
テネブラエ今の私にはこれが精一杯です。二人とも、早く逃げて下さい !
ヴィクトルあの程度の敵、私一人で充分だ。もう休んでいろ。
テネブラエこの音は、ダーナの心核の崩壊の音――
ミラ……この場はヴィクトルに任せていいわね。
ヴィクトル
ミラ私はダーナの心核とやらを引き受けるから。
デミトリアス――そうか ! 兵士たちよ !マクスウェルを捕らえろ !彼女はダーナの心核へ【逃げる】つもりだ !
ヴィクトルどういうことだ ! ? ミラ !
ミラダーナの心核を守るために、私が楔になる。
ミラヴィクトル、エルに伝えて。いつか必ず会いに行くって。そのときには私の作ったスープを飲んでねって。
ヴィクトル! !
テネブラエミラさん……。
ヴィクトル――テネブラエ。下がっていろ。ミラに伝言を頼まれた。すぐに奴らを片付けて、エルの元へ行く !
デミトリアスそれは――浄玻璃鏡の力か !何故貴様がそれを持っている ! ?
ヴィクトル私とエルが本物である世界を手に入れるために――貴様を排除する !
ヴィクトルデミトリアスをあと一歩のところまで追い詰めたが取り逃がしてしまった。私もこの有様だ。
ヴィクトル帝国の奴らを追い払った後、ダーナの心核を確認したが私もテネブラエも、ある距離から近づくことすらできなくなっていた。
ヴィクトルテネブラエの話では心の精霊ヴェリウスが守護を強めたのだそうだ。
イクスそれじゃあ、ダーナの心核には今分史世界のミラさんが融合した状態で崩壊を食い止めているんですね。
ミラ=マクスウェル私ではないマクスウェル……か。
キールん ? でもどうしてダーナの心核なんてものが精霊の封印地にあったんだ ?
キールダーナはこの世界の太陽神の筈だ。神の心が具現化されて抜き出されているってことか ?
キールこの世界における神というのは、【何】なんだ ?信仰の対象としての概念ではなく、実在するのだとして何故心だけが置かれているんだ。
ヴィクトルダーナは人神だ。
ミラ=マクスウェル元は人間、ということか。
イクス後世に神として崇められるようなことをした人……。
イクス待って下さい。世界の始まりの場所が精霊の封印地ならまさかこの世界を創造したのは神になる前のダーナってことですか ?
キール待て。話が合わない。世界の前にダーナが……人が存在していたのか ?だとしたら、人は【どこから】来たんだ ! ?
ミラ=マクスウェル……この世界の前に、世界があった、ということか。
イクス……あぁ……まさか、まさか……。
キール――馬鹿な。これを突き詰めて考えるとここは本当に死の世界になるぞ……。
ヴィクトルそうだ。ここは鏡士ダーナが生み出した箱庭の世界。ダーナの心が創造の力で生み出した理想郷だ。
ヴィクトルそしてダーナが暮らしていた世界ニーベルングは既に滅びた。ここはニーベルングの生き残りが世界の消滅から逃れるために生み出した閉じた箱庭だ。
イクスそれを……壊したり、具現化したりしてきたのか俺たちは……。最初の世界が消滅したことも知らないでこの世界が最初から具現化された世界とも知らないで。

キャラクター4話【2-7 ひとけのない森1】
クラトス……これで、今最低限共有するべきことは伝えられた。まだ話すべきことはあるがあとはヴィクトルを休ませてからにしよう。
クラトスヴィクトル、ひとまずケリュケイオンに戻るぞ。
ヴィクトルああ。
ヴィクトルイクス。少し状況が落ち着いてからこの手紙をエルに渡して欲しい。
イクス直接伝えないんですか ?
ヴィクトル……頼む。
イクス――わかりました。お預かりします。
クラトスこの島を具現化させたことで混乱している者も多かろう。そちらは情報収集にあたってくれ。
クラトス私はヴィクトルを休ませた後フィリップたちと状況を再整理する。
イクスそうですね。俺も、この話をミリーナに伝えないと。
クラトスでは失礼する。
コーキスなぁ、マスター。俺、よくわかってないんだけどこの世界の前に別の世界があったってことなのか ?
イクス……ああ。信じられないけどでもそれなら納得できることもあるんだ。
キールティル・ナ・ノーグの外――本来宇宙空間である場所すらも、虚無になっていることだな。
イクスああ。ゲフィオンの仕業なのかと思っていたけどカレイドスコープのせいで虚無が発生したのなら虚無はカレイドスコープから外へと広がっていく筈だ。
イクス真っ先に消滅するのはセールンドじゃなければおかしい。でも実際はセールンドは残ってるだろ。
イクス多分、虚無とはニーベルングという世界が消滅した跡地で、その中にティル・ナ・ノーグという世界が造られたんだ。
キールああ。ぼくもそう思う。本来は虚無に飲み込まれないための防御機構が備わっていたんだろう。
キール或いはそれが精霊の封印地だったのかも知れない。だが、カレイドスコープによって防御機構が消失しティル・ナ・ノーグは外側から虚無に浸食された。
キール外側から浸食された場合この世界が球状の星なら、世界の全ての場所が一瞬で虚無に飲み込まれるのが普通なんだが……。
イクス何らかの力が働いてセールンド周辺は消滅せずに済んだ。
キールああ。そしてカレイドスコープによって生み出された死の砂嵐は虚無に漂い続けることになった。
コーキス……ってことは人間は何回も世界を壊してるってことか ?
ミラ=マクスウェルそうだな。その時々、携わった人間も事情も違うがここでは同じようなことがくり返されてきたのだろう。
ジェイド――ふむ、なるほど。無機物は問題なさそうですね。
ユーリ……何やってるんだ、ジェイド。
ジェイドあなた……丈夫でしたよね。
ユーリは ?
ジェイドいえいえ、こちらの話です。ちょっと実験動物になってくれるとありがたいのですが。
ユーリ冗談は存在だけにしておいてくれ。
ジェイドやはり断られましたか。
ユーリ何をさせるつもりだったんだ。
ユーリ――ん ? 何だこの蜃気楼みたいな穴は。
ジェイドあなたの持っている魔鏡通信機で私の装置に繋いでもらえますか ?
ユーリ……はーん。そういうことか。
ユーリ――よし。通信、繋がったぜ。
ジェイド何が見えます ?
ユーリ木、だな。草と……空も。それに鳥がいる。
ジェイド危ない場所ではないようですね。少なくとも植物が自生できる場所なら危険度は下がる。あとは……。
ユーリ人間がここを通れるかってことか。そういうことなら試してみるか。
ジェイドいえ、少し待っていて下さい。ここにはもう少し遠慮せずに実験の協力をお願いできる存在がいますから。
カーリャ何なんです、ワル眼鏡大佐。人を魔鏡通信で呼び出しておきながら返事も返してこないなんて。
ジェイドあー、すみません。うっかり私の魔鏡通信機をそこの穴に落としてしまったものですから。
カーリャへ ? 穴 ?
ジェイドえい♪
ミリーナちょっ ! ? カーリャに何を ! ?
カーリャぎゃああああぁぁぁぁぁ――
ユーリおいおいマジかよ。そりゃないだろう !
テネブラエカーリャさんが消えました ! ?
カーリャミリーナさまぁぁぁぁぁ ! ここどこですかぁぁぁ ! ?
ミリーナカーリャ ! ? 大丈夫 ! ?
ジェイドふむ、存在が消えないということはこの島……仮にアジト島としますが、アジト島からさほど遠くない場所に繋がっているということですね。
ミリーナどういうつもりですか ! ?
ジェイドいえ、いくつかの実験で、この穴がどこかと繋がっていることが確認できたので生き物も通れるのかと思いまして。
ジェイドああ、ご安心を。昆虫や鳥などで何度か実験は済ませていますのである程度の確証はあったのですよ。
ミリーナ丁寧な説明をどうも ! それで、どうやってカーリャをここへ戻すんですか ! ?
ジェイドカーリャ。近くに今通った穴と同じようなものはありませんか ?
カーリャほぇぇぇ ? あ、ありましたー !
カーリャああああ ! ? 戻ってこられたー ! ? ! ?何すんだ、この性悪眼鏡 ! !
ジェイド元気そうで何よりです♪ ただ、ここがある種のゲートとして使えるのでしたら、この穴を通じて不審者が入り込んでくる可能性がありますね。
ジェイドミリーナ、あなたはこの話をイクスたちに共有しておいて頂けますか ?私は一旦この穴を使えないような手段を構築します。
ミリーナ……わかりました。でもその前に、カーリャに謝って下さい。
ジェイドそうですね。申し訳ありませんでした。実験へのご協力、感謝しますよ。
カーリャジェイドさまのばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁかっっっ ! !
ミリーナカーリャ。相手と同じ土俵に立ったら駄目よ。ほら、行きましょう。
テネブラエあの、ミリーナさん。私はもう少しここにいます。
ミリーナえ ? ええ、わかったわ。エミルたちを見かけたら連絡するわね。
ジェイドユーリ、それに……。
テネブラエテネブラエ。センチュリオン・テネブラエと申します。ラタトスク様の眷属のようなものです。
ジェイドなるほど。私はジェイド・カーティス。よろしければ名前の方で呼んで下さい。
ジェイドまぁ、それはそれとしてお二人は何故ここに残っているんです ?
ユーリ何、あんたがその穴を封じるところでも見せてもらおうかと思ってね。
テネブラエ奇遇ですねぇ。私もその点が非常に気になりまして。何しろあなたは、人間にしてはあまりに非情な心の持ち主です。
テネブラエその闇の心にシンパシーを感じます。ええ、私は闇属性なので。闇はいいものです。
ジェイド光属性の軍人を捕まえて、ひどい言い様ですねぇ。
ユーリ二人で漫談やってる場合か ?
ジェイド……なるほど。私の邪魔をしないというならついてきても構いませんよ。
テネブラエいえ、そこは。
ユーリ保証できねぇな。
テネブラエおお、呼吸がぴったりではありませんか。その衣装も闇っぽくて実にいい趣味です。あなたも闇属性とお見受けしました !
ユーリ頼むから一緒にしないでくれ。
テネブラエ何と ! 闇差別ですか ! ?
ジェイドユーリ、それはいけませんねぇ。あなたも相当に黒いのですから、受け入れて優しくしてあげればいいではありませんか。闇属性同士。
ユーリあんたにだけは言われたくねぇな……。

キャラクター5話【2-8 ひとけのない森2】
ミリーナイクス、みんな。ヴィクトルさんのお話、もう終わっちゃった ?
ミラ=マクスウェルああ。ヴィクトルの容体があまり良くないようだ。ケリュケイオンに戻った。それと、ヴィクトルのことだが――
イクスあ、いいよ、ミラ。俺から話す。ミリーナ、ヴィクトルさんから聞いた話を共有するよ。
ミリーナ………………。
カーリャあ、あの……。カーリャにはもう、何が何だか……。
コーキス駄目だな、パイセンは。要するに、アレだ。ニーベルングって世界があったけど、消滅しちゃうからティル・ナ・ノーグを造って引っ越ししたんだって。
コーキスそれが今のこの世界だ。
キールコーキス。お前だって、さっきまでよくわからないって言ってただろ。
カーリャなーんだ。コーキスだってカーリャと同じだったんじゃないですか。
ミリーナ……ヴィクトルさんはどうしてそんなことを知っているのかしら。
イクスバルドさんから聞いたんじゃないのか ?
ミリーナでも……。それならバルドさんが私たちにその話をしてくれても良さそうなものだったのに。
ミラ=マクスウェル確かに、少し不自然だな。
キールテネブラエなら情報源を知っているんじゃないか ?テネブラエはどうしたんだ ?
ミリーナあ、そうだったわ。ジェイドさんが、この島から別の場所へ出られるゲートのようなものを発見したの。
ミリーナ恐らくあれはこの島が具現化されるときに私とカーリャが維持していた仮想鏡界と現実を結ぶゲートを具現化したものじゃないかと思うんだけど。
イクスそうか。そんなものまで具現化してたのか……。自分でも信じられないや。
カーリャひどいんですよ ! あの性悪ロンゲスト眼鏡 !カーリャを実験台にしたんです !
ミリーナそうなの。カーリャを使って、具現化されたゲートが人間も通れることを確認したのよ。
ミリーナそれで、このままゲートを放置しておくと不審者が侵入する恐れがあるからゲートを閉じておくって言ってたわ。
ミラ=マクスウェル本当にゲートを閉じていいのか ?
ミリーナえ ?
イクスそうか。仮にここを今後の拠点にするとしてもいつまで浮いていられるのか、どうして浮いているのかわからない限りは不安だよな。
イクスすぐに避難できるゲートは、そのままにしておく方がいいのかも知れない。それに食料の買い出しなんかの時も便利だろうし……。
ラタトスクおい ! あの眼鏡、裏切ってるんじゃないのか ! ?
イクスまた眼鏡…… ? それってジェイドさんのことか ?
ラタトスク裏切りそうな眼鏡と言えばあいつしかいないだろうが !
ミラ=マクスウェルそうだろうか。意外と善人そうな描写をされている人間の方が、真犯人であることが多いと推理小説完全解剖にも書かれていたが。
カーリャジェイドさまはストレートに悪い奴ですよ !真犯人です ! 最初から疑わしい真犯人です !
アスベル裏切ってるかどうかはともかくジェイドさんがユーリとテネブラエさんという人と一緒に、この島を出たらしいんだ。
ミリーナ……やられた。私をイクスのところに行かせてその隙にゲートを使ったんだわ。自分が使うためにカーリャを利用して安全性を確かめたのね。
イクスでもユーリさんが一緒なんだから、変なことは――
アスベル……すまない。こんなことは言いたくないんだがユーリは単独行動を好むところがあるように思う。
アスベルそれにどうも帝国への再侵入を計画していたらしい節もあるんだ。
イクス――あ、じゃあテネブラエさんが……。
ラタトスクさんなんぞいらない。あのくそバカが。
ラタトスクあいつは手負いなんだ。使役する魔物もいない。そんな状態であの戦闘狂と真犯人に勝手な動きをされて止めることができるかってんだ。
コーキスアレ ? でもどうしてその三人が島を出たってわかったんだ ?
イクステネブラエさんの声がラタトスクに聞こえたとか ?
ラタトスクいや、あの時はミリーナの仮想鏡界が崩壊しかかって思念のようなものが届きやすい環境だったからだろう。普通は近くにでもいなけりゃ、奴の声は聞こえない。
アスベルどうもラピードとミュウが現場を見ていたらしい。テネブラエさんがミュウにこの状況を知らせるよう伝言したんだそうだ。
イクスその絵面は、なんか和むな……。
ラタトスクテネブラエのことが気になる。俺とアスベルとマルタで追いかけてみる。
イクスあ、俺も行くよ。
アスベルイクスはまだ病み上がりみたいなものだろ。
イクスいや、大丈夫。少しは体を動かさないと。
ミリーナだったら私も行くわ。
アスベル――わかった。でも無理は禁物だからな。
イクスうん、大丈夫だよ。
イクスじゃあミラとキールは、他のみんなの状況を確認しておいてもらえるかな。
イクスそれとヴィクトルさんのことも含めてさっきの話はまだ伏せておいてくれ。
キールそうだな。ぼくたちも状況を整理して飲み込んでからでないと説明が難しいし。救世軍側にもその旨知らせておこう。
ミラ=マクスウェル救援が必要ならすぐに連絡をくれ。
イクスああ、ありがとう !

キャラクター6話【2-12 ひとけのない森】
ユーリ生きてるみたいだな。
ジェイドまぁ、アジト島がイクスによるミリーナの仮想鏡界の具現化なら、先ほどの穴はミリーナとカーリャが創り出していたゲートの具現化と推測できます。
ジェイド概ね問題はないことは予測できてはいましたが試してみないことにはわかりませんからね。
テネブラエジェイドさん。そこに落ちている鏡はあなた用の通信装置なのでは ?
ジェイドおや、ありがとうございます。
ユーリしかし、ここはどこなんだ。見上げると少し先にアジト島が見えるってことはそんなに離れた場所じゃないだろうが……。
ジェイド地形と位置関係を確認すると……セールンドの外れではないでしょうか。
ユーリ……帝国へ行くには、ちっと遠いか。
ジェイドおや、まだ諦めていなかったのですか ?
ユーリデミトリアスってのに直接会った方が話が早いと思ってるだけさ。
ジェイドまぁ、その点は同意ですがアスガルド帝国というのは色々と得体が知れませんからもう少し慎重になって頂けるとありがたいですねぇ。
ユーリつっても、このまま奴らの動きに合わせてオタオタしてても仕方ねぇぜ ?
ジェイドええ、もちろんです。では、そろそろ移動しましょうか。
テネブラエやはり何かあるのですね。
ユーリ何するつもりかしらねぇが、ま、お手並み拝見といきますか。
テネブラエこの街は…… ? 随分寂れていますね。
ユーリセールンドか。ここにはまだ帝国の連中がウロウロしてるんじゃねぇのか ?
ジェイドええ、それでいいんです。
ユーリ――見つかったか !
帝国軍兵士しっ ! 大きな声を出すな。
テネブラエ……その声は ! ?
ジェイドおや、声で気付くとはさすがですね。
帝国軍兵士何でテネブラエが……。まぁ、とりあえず場所を変えよう。そこの建物の中が安全だ。ついてきてくれ。
テネブラエ……あのおかしな香水の匂いがしませんがあなたはデクスですね。
デクスぷはー。やっとあの汚い服を脱げたぜ。よう、テネブラエ。異世界ってところでも顔を合わせるとはな。
テネブラエアリスはどこです。何か企んでいるのではありませんか ?
デクス何だよ、何も説明してないのか ?
ジェイド元々連れてくるつもりはありませんでしたから。
ユーリで、こいつぁ誰なんだよ。……なんか見覚えある気もするけど。
ジェイドそうでしょうね。エミルたちが出していた鏡映点リストに入っていました。
ジェイド彼は私の間者です。バルドたちだけを信用するのも危険だと思っていましたので帝国に侵入してもらっていました。
デクス愛の使者デクスだ。よろしくな。
ユーリ……またこんなのか。
ジェイド仕方ありません。たまたま見つけた鏡映点がこのデクスだったので。
デクスいやぁ、ジェイドに「あなたの力が必要なんです」って頼み込まれちまってな。
デクス俺の愛する人を捜してくれるって条件で協力することにしたんだ。頼られたのに力を貸さないのは男が廃るからな。
テネブラエジェイドさん。彼は危険です。
ジェイドええ、アリス嬢が傍にいれば、ね。今のところ彼女は見つかっていません。帝国にいるという話も聞かない。
ジェイドまぁ、今のところは安全弁が効いている状態ですよ。それに情報も正確です。だからこそ私もイクスの救出作戦で、色々と無茶な予測を立てられました。
ユーリおい、これを他に知ってる奴は――
ジェイドいません。
ユーリだろうな。まったく、散々オレが単独行動をする危険分子だって喧伝しておいて自分が一番勝手なことをやってるじゃねぇか。
ジェイドありがとうございます。
ユーリ褒めてねぇけどな。
ジェイドデクス。帝国内の鏡映点の状況を聞かせてもらえますか。
デクス俺が新しく確認できたのはエルレイン、ハロルド、イオン、リチア。
ジェイド! ?
デクスそれに帝国に引き込むのに失敗したのがダオス。離反したのがザビーダってところだ。
ジェイド……全員鏡映点リストに名前が載っていますね。一つ確認したいのですが、イオンというのは……どのような人物でしたか ?
デクスいや、そっちは名前だけだ。なんか実験に関わってるみたいでハロルドと同じく姿が見えない。
ジェイド……そうですか。
デクスあと、ヨウ・ビクエって女の子の体は間違いなく帝国が回収してる。こっちは確認できた。
テネブラエヨウ・ビクエの体を帝国が回収したところは私も見ていました。まだ体が動かない状況でしたので阻止することはできませんでしたが……。
テネブラエもともとヨウ・ビクエの体は精霊の封印地で眠っていましたから。
ジェイドなるほど、テネブラエはヨウ・ビクエのことも知っているのですね。これは後で色々と話を聞かせてもらう必要がありそうです。
ジェイドそれはともかく、ありがとうございました、デクス。さすが私が見込んだ通り、有能ですね。
ユーリ棒読みじゃねぇか……。
ジェイドでは引き続き、潜入調査をお願いします。
デクスああ。このデクス様に任せておいてくれ。
ユーリ――待った。デミトリアスと顔を合わせられるようなチャンスはないか ?
デクスデミトリアスか……。わかった。奴のスケジュールも探ってみる。
テネブラエ………………。
デクスそれじゃあ、そろそろ行くぞ。
デクス……さっきリヒターとすれ違ってな。気付かれたかも知れないんで少し慎重に動きたいんだ。
ジェイドもしも捕まったら――わかっていますね。
デクスああ、そこはぬかりないぜ。じゃあな !
テネブラエいやぁ、予想していたよりまともな行動でしたね。ジェイドさん。
ユーリああ。てっきり帝国の連中に情報でも売るのかと思ってたけどな。
ジェイド嫌ですねぇ。売るほどの情報もないじゃないですか。それより、先ほどから何度も魔鏡通信の呼び出しが来ていますが、出ても構いませんよ。
ユーリんじゃ、心配してる連中に返事してやるか。

キャラクター7話【2-13 セールンドの街】
イクスここが……ゲートの先、か。
アスベルここはどこなんだ ?
イクス多分……セールンド島の外れだと思うんだけど……。
ラタトスク――くそっ !
マルタラタトスク、落ち着いて。
ミリーナどうしたの ?
ラタトスクジェイドとユーリの魔鏡を呼び出してるんだがあいつら一向に出ないんだ。何してやがる !
アスベルこの辺りにはいないみたいだな。
コーキスこの姿に戻ったから、鏡映点がいればチキン肌になるよな。
カーリャ一回知り合いになった鏡映点だと激しくぶるぶるはしないかもですけど反応はあると思いますよー。
アスベルそれだと、アジトにいるときはずっと震えっぱなしなんじゃないか ?
カーリャんー。いるなぁってことは何となくわかりますけど新入りの鏡映点の方を見つけた時ほど激しくないので慣れちゃうんでしょうね。
アスベルへぇ、不思議だな。
イクス――少しジェイドさんたちの動きを考えてみたんだけどセールンド島に来たなら、情報を仕入れに街の方へ行ったかも知れない。
イクス帝国の連中に見つからないように街の方へ向かってみよう。
ラタトスクわかった。
マルタねぇ、エミルに状況を話しておいた方がいいんじゃないかな ?
ラタトスク急いでるんだ。後で説明すればいい。
マルタ………………。
イクス……魔鏡結晶の柱、まだあるんだな。
ミリーナバルドさんとセシリィが魔鏡結晶の穴を塞いでくれたから死の砂嵐はあそこに封じ込められたまま……。
イクス……あの人たちを救えないのかな。
ラタトスクあいつらはもう死んでるんだろ ?
イクスそうだけど……。でも意識はあるんだ。俺はずっとその声を聞いてきたから……。
イクス最初は死の砂嵐を何とかして消せばこの世界は守られるんだって単純に考えてたけど本当にそれでいいのかなって。
ラタトスクん ? ユーリから魔鏡通信だ。
ラタトスクおい ! 今どこにいやがる !
ユーリセールンドだ。……って、お前らもセールンドに来てるのか。
アスベルユーリたちを追いかけてきたんだよ。どうしたんだ。アジトがあんなことになってみんなもバタバタしているときに、勝手に抜け出して。
ユーリ勝手なのはこいつ。
ジェイドはっはっはっ。同調圧力をかけられました。
テネブラエこれはドーチョーもないですな。はっはっはっ !
アスベルえ ! ? 何だ、この……猫のような……黒い……。
テネブラエセンチュリオン・テネブラエ。ラタトスク様のしもべです。
マルタテネブラエ ! ? ホントにテネブラエ ! ?
テネブラエこれは……マルタ様 !やっとこちらでもお顔を見ることができましたね。
マルタテネブラエ、早く会いたい。今どこにいるの ?
テネブラエアジト島に続くゲートに戻るところです。もう少しでマルタ様のいる区画に着きますよ。
マルタ本当 ! ? どっちから来る ! ?
イクスユーリさんたちがどこから来るのかわからないと方角までは……。
アスベル――待った。誰か来る。
マルタテネブラエ ! ?
テネブラエおや、私たちはまだそちらには――
コーキスじゃあ、帝国兵か ! ?
カーリャはわわ、隠れましょう !
マルタ――待って。あれって、リヒター ! ?
ラタトスク何 ! ?
テネブラエ! !
イクスあ、ラタトスク ! 駄目だ――
リヒターお前は…… !
ラタトスク丁度いいところに現れやがったな。ここでてめぇの息の根を止めてやる !
マルタ待って、ラタトスク !
ラタトスク止めるな、マルタ !
リヒター――いいだろう。貴様が仇であることは変わらない。どの世界であろうと、元の世界でアステルはお前に殺された !
ラタトスクああ、そうだ ! 人は世界を滅ぼす生き物だ。始末して当然だろう ! この世界だってそうだ !人は壊さずにはいられないんだよ !
リヒターだが、それでもアステルに罪はなかった !
ラタトスク知ったことかよ ! ひねり潰してやる !

キャラクター8話【2-13 セールンドの街】
リヒターここで終わらせてたまるか…… !
ラタトスクくそ ! しつこい奴だ !
テネブラエラタトスク様 !
ラタトスクテネブラエか !
テネブラエラタトスク様、武器を収めて下さい。リヒターと戦うことはエミルの本意ではありません。
ラタトスクエミルがどうした。あいつは俺の身代わりだっただけの人格だ。飾り物にどうして遠慮する !
マルタなら、どうしてリヒターが劣勢になったときにとどめを刺さなかったの ?
ラタトスク―― ! !
リヒター………………。
マルタねぇ、ラタトスク。この世界に具現化されて色々状況がわかってきたとき、私たち決めたよね。二人だけど三人で力を合わせていこうって。
ラタトスク――俺は……俺が譲ってやったんだ。エミルが俺を封じ込めようとしやがったのにマルタが頼むから、俺は飲み込んだんだぞ ! ?
イクスえ、何、どういうことだ ?
ユーリイクス。今は黙っとけ。
アスベル一つの体に二つの存在……。解決すべきことがあるのだとしたらそれは今行われるべきなんだろうと思う。
アスベル(……ラムダ。お前とも、いつかちゃんと話したいよ)
アステルリヒター !知り合いがいたって、どういうこと――
リヒターお前は来るな ! !
アステル……え ?
ラタトスク! ?
ミリーナ浄玻璃鏡が反応した ! ?
エミルやっと……同じところに浮上できたよ。
ラタトスク俺の意識が表に出ているときにお前は顔を出せないはずだ。
ラタトスクここにはヴェリウスもいない。俺を封じ込める奴は誰もいないはずだ !
エミルそうだよね。だけど、何でだろう。テネブラエがここに来たときにヴェリウスの気配を感じたんだ。
エミルそれから急に外の様子が見えて僕らと同じ姿の人が駆け込んでくるのがわかった。
ラタトスク……あ……あいつは……。
エミルラタトスクは知ってるんだよね。あれが……アステルさんなんだね。
ラタトスク………………。
エミルラタトスク。僕のあのときの選択が――君の存在を心の奥底に封じ込めてしまうことがどれだけひどいことかわかってた。
エミルわかってたけど、ああするしかないと思ってたんだ。でも少し、試してみてもいいかな。
ラタトスク何をだ……。
エミル君と話したい。ちゃんと。ここなら時間のリミットはない。
エミル僕は自分のことをラタトスクの良心や優しさだなんて思ってないよ。優しさは君にもあるんだって、僕は知ったから。
ラタトスクふざけるな ! 俺は――
エミルラタトスク、聞いて。僕は君、君は僕。本当は何も変わらないんだ。
エミル僕は以前、元の世界で、戦うことが怖くて嫌な役割を全部君に押しつけようとした。
エミル君はリヒターさんの復讐に取り憑かれた心を知って自分がしてしまったことを後悔した。
エミルそれで、僕が優しさそのものなの ?君が封じられるべき存在なの ?
ラタトスクお前は……俺を封じて、自分もギンヌンガ・ガップの扉に封じられるつもりだったんだろう。俺はそんな奴は認めない。
エミルあの時、元の世界の僕がやろうとしていたことがわかったなら、今僕が何を考えているかもわかるよね。
ラタトスク俺はお前みたいなひ弱な坊やじゃない。
エミル僕だって、君みたいな乱暴者じゃないよ。だけど君はただ乱暴なんじゃない。
エミル君の優しさがずっと踏みにじられてきたからそうならざるを得なかったんだ。
ラタトスク……で、お前は、自分の弱さを盾にして俺に迫るのか。決断を。
エミルねぇ、僕は思うんだよ。僕はラタトスクでもありエミルでもある。君はエミルでもありラタトスクでもある。
エミルただそれを――
ラタトスク――わかったよ。
エミルラタトスク ?
ラタトスク……お前を信じてみる。いや、自分を信じて、受け入れてやるさ。
エミルありがとう…… ! 君が僕でよかった。

キャラクター9話【2-14 ひとけのない森】
テネブラエ……エミル様。
リヒター……エミル、ラタトスクはどうした。
エミルここに。一緒にいます。本来あるべき姿に戻ったんだと思います。
マルタラタトスクを封じた訳じゃないよね ?
リヒターラタトスクを封じる ? どういうことだ。
エミル僕は元の世界でラタトスクを封じようとしたんです。心の精霊ヴェリウスの力を借りて。
エミルでも……この状態は違います。僕がこうしてみんなと話しているようにラタトスクも一緒に話を聞いてる。
エミル主人格が入れ替わってもこの状態は変わりません。今の僕は……エミルとラタトスクは対等なんです。
ラタトスクリヒター。さっきの勝負は一時中断だ。エミルは戦いたくないらしいからな。
エミル……って、こんな感じで。ややこしいですかね、はは……。
アステルすごい ! もしかしてあなたは精霊ラタトスク ! ?どうして僕と同じ姿なのかわからないけどあなたにずっと会いたかったんです !
エミルあ……あの……。僕……ごめんなさい。
アステルえ ? どうして謝るんですか ?
リヒターエミル。お前が謝る必要はない。それに……アステルは何も知らない。だから――
エミル……だったら、リヒターさんに謝らせて下さい。ラタトスクも本当は後悔してるから。
エミルあ、謝られても困るのはわかります。許して欲しいとは言いません。
エミルこれは、精霊ラタトスクのけじめです。僕もラタトスクだから。
ラタトスク……いや。エミルはこういってるが、俺は謝らないぞ。だから貴様は未来永劫ラタトスクを恨めばいい。それでいいんだ。
エミルあ……ラタトスク……。
リヒター……それでいい。
エミルえ ?
リヒター俺はラタトスクを憎み、恨み続ける。それでいいんだ。
アステル……ねぇ、やっぱり僕、ラタトスクに殺されたの ?
エミルえっ ! ? あ、あの……。
アステルみんなが噂してたよ。四幻将はみんな大切な人を甦らせたかったんだって。
アステル僕がリヒターの大切な人ってのは笑っちゃうけど。
マルタええ……。そんなこと言っちゃう…… ?
アステル僕はさ、リヒターに自分を大事にして欲しかったんだよね。まあ、その話は一旦置いとくけど……。
アステルだからリヒターは僕を具現化してもらったんでしょう ?
アステル今の僕には、フィールドワークしながら精霊ラタトスクを探していた頃の記憶までしか残ってないんだ。
アステルだからきっと、道中に何かあったんだろうな……とは気付いてた。
アスベルリヒター。この成り行きを見る限りお前と俺たちは戦う理由がないように思う。
アスベルさっきの言葉は「ラタトスクを憎むことはやめないけれど、殺すつもりもない」ってことだよな。
リヒター……いや。こちらの世界に来てからの事情もある。
リヒター俺は……チェスターやミトスのようにお前たちと合流することはない。俺の前に立ちはだかるなら、お前たちは俺の敵だ。
イクスリヒターさん。どうしてですか。あなたは話せばわかる人だと感じました。理由を聞かせて下さい。
リヒター理由、か。そうだな。俺はメルクリアを放っておけない。ただそれだけだ。
ジェイドなるほど、それは残念です。ではアステル――
ジェイド今からあなたは私たちの大切な人質です。せいぜい大人しくして下さい。
アステルええっ ! ? い、痛っ ! ?
リヒターな…… ! ? 貴様、アステルを放せ !
ジェイドご冗談を。敵の言うことを素直に聞く軍人がいると思いますか。
ジェイドさあ、リヒター。武器を捨てて、距離をとって下さい。隙を突こうとしても無駄ですよ。
ジェイドあなたがおかしな動きを見せた瞬間に、私はアステルの喉を掻き切って、あなたに譜術……そちら風に言えば魔術をお見舞いすることができます。
ジェイド本気だと言うことは……おわかりですよね ?
エミルジェイドさん ! やめて下さい !
マルタそ、そうだよ。なんか……おかしくない ?こういうのって悪い人がやることでしょ ?
ジェイドいいえ。手段を選ばない人間がやることですよ、マルタ。さあ、リヒター、武器を捨てなさい !
テネブラエいやぁ……悪どい。さすが闇属性です。
リヒター……くっ。
リヒター……武器を捨てたぞ。これでいいな。
ジェイドいい子ですね。イクス、ミリーナ。リヒターを牽制して下さい。私はこのままアステルをアジトへ連れて行きます。
リヒター……あの空に浮かぶ島か。とんでもないものを具現化したな。
イクスすみません。えっと、ジェイドさんの分もすみません。でも……ジェイドさんは理由もなくこんなことをする人じゃない。
イクス……ってルークが、えっと仲間が言ってました。俺もそう思います。アステルさんの安全は保証します。ここは退きましょう。お互いに。
ユーリま、そっちは一人、オレらはジェイドと鏡精コンビとテネブを除いても六人。おまけに人質もいる。あんたはバカじゃないだろ。
アスベル卑怯な真似をして済まない。イクスだけじゃなくて、俺も約束する。アステルを傷つけないし、傷つけさせたりしない。
ミリーナ私もよ。大切な人を失う悲しみは、私もよく知っているもの。
マルタリヒター……。ごめん。本当にごめんなさい。
リヒター……今は……退く。
リヒターだが、アステルは必ず返してもらう。もしアステルに何かあればあの島ごと、貴様たちを消滅させるからな !

キャラクター10話【2-15 静かな街道】
マルタねぇ……本当に良かったの ?完全にリヒターのこと怒らせちゃったけど。
エミルだけど、ジェイドさんのこと誰が止めるの ?ルークたちかリフィル先生でも一緒だったらともかく……。
テネブラエいやぁ、リフィルさんはどうでしょうね。あの人は爆弾魔だったそうじゃないですか。
アステルあ、僕のことは気にしないで下さい。
アステル本気で腕を捻り上げられたときはヤバいって思ったけど冷静に考えれば皆さんのところには精霊がたくさんいるんですよね。
アステルむしろいいチャンスだと思うことにしました。
ジェイドそう言っていただけてほっとしました。善良な一小市民としては、あのような手段に出ることに罪悪感を抱いていたものですから。
ユーリよく言うぜ。だが、まぁ、この坊やは研究者なんだろ。キールやリタが大喜びするんじゃねぇの ?帝国の事情にも詳しそうだしな。
エルあ ! ルドガー !悪いメガネのおじさんたち戻ってきたよ。
カーリャふっふっふっ。完全に悪メガネで定着していますね。しめしめです。
ルドガーみんな、お帰り。……あれ ? エミルが……二人 ?え ? まさか、エミルとラタトスクが分離した ! ?
アステルあ、そっくりですけど、別人です。人質のアステルって言います。
アステルあなたは、確か骸殻っていう力を持っているルドガーさんですよね。なんか変身ヒーローみたいで格好いいなって思ってました !
ルドガーえ ? は、はぁ…… ? え ? 人質 ?
アスベルはは……。混乱することだらけだよな、この状況。
イクスルドガーにエル !この島の状態はどうかな ? 怪我人とかは……。
ルドガー光魔との戦いでかすり傷を負った人はいるけどみんな元気だったよ。
ルドガーアジトの建物も仮想鏡界の時と変わってないからいまはみんなそれぞれの部屋で待機してもらってる。
ルドガー一部の人はケリュケイオンにいるけどね。
エル今ね、ルドガーと島の探検してたんだ。
ルドガーみんなが見た島の情報をキールたちがまとめてくれたからそれを元に地図を作ろうと思って。
ミリーナさすがルドガーさん。助かるわ。
ルドガーそういえば、また一人鏡映点が来たらしいって聞いたけど、どこにいるんだ ?
イクスえっと……。あー……ちょっと怪我をしているんで今はケリュケイオンで休んでる……かな。
ルドガーそうか。じゃあ救世軍と行動を共にするのかな。だとしたら、食事の準備は今までのままで構わないか。
ミリーナあ、アステルさんが加わるから一人分追加してもらえると助かるわ。
ルドガーよし。ファラ生活向上委員会に共有しておくよ。
ジェイドさて、早速アステルの話を聞きたいですね。それと……イクス。何か隠していますよね。そのことも教えていただけますか ?
イクスえ ! ? な、何も……隠してなんて……。
エルあー ! イクス、嘘ついてる !
イクス(困ったな……。エルの前でヴィクトルさんの話はできないよ……)
ルーティイクス ! ミリーナ !
イクスルーティ ? あれ……目が赤い……。
ルーティあ……これは何でもないの !それより医務室に来てよ。
イクスまさか、誰か目を覚ましたのか ! ?
ルーティセシリィと……ジョニーが…… !とにかく早く来て ! なんかもう、帝国の奴ら本当に酷いことばかりしてきたみたいで……許せない。
アステル……すみません。
ルーティえ ? 何でエミルが謝るの――って、エミルが二人 ! ?ラタトスクと分離したの ! ?
ルドガー俺と同じこと言ってる。
ルーティえー、だってそう思うじゃない。精霊なんだからそれぐらいできそうだし。
ルーティあー、話がそれた。とにかく医務室に来て。ジョニーの話も聞いてやって。
イクスわかった。えっと……。
ユーリオレはキール研究室に顔を出してくる。アスベル、お前も来いよ。
アスベル…… ? 構わないよ。
エミルえっと僕は――
ラタトスク他の精霊組に話がある。テネブラエ、来い。
テネブラエはい、ラタトスク様。
マルタ私も一緒に行く。
アステル僕は……良ければ、僕も医務室にご一緒させて下さい。
ジェイド私も同行させていただきます。
コーキスん……。
カーリャどうしました、コーキス。
コーキスなんか、目の奥がかゆくて。……ゴミでも入ったかな。
ミリーナコーキス、大丈夫 ?
コーキスああ、うん。大丈夫です。
コーキスそれよりマスター、医務室に行くんだろ。急ごうぜ。
イクスああ。
to be continued
キャラクター1話【3-1 鬱蒼とした森林1】
アスベルルーティ……泣いていたみたいだね。ジョニーさんの容体が良くないんだろうか。
ユーリ話はできるようだから大丈夫なんだろう。
ユーリそれより、あのやっかいな軍人の情報をキール研究室とカロル調査室で共有しておいた方がいい。どうせ、自分から説明するつもりもないだろうしな。
アスベルやっかいな軍人ってジェイドさんのことか。
アスベル確かにアステルさんを人質に取ったときは驚いたけどよく見ていたら、アステルさんをつかむ腕をすぐに緩めたみたいだった。
アスベルあれならアステルさんも逃げようと思えば逃げられた筈だけど、わざと残ろうとしているように感じたから、止めるべきか悩んだよ。
ユーリ本気で逃げようとしたら本気で攻撃してたかも知れねぇけどな。
アスベルジェイドさんが ? まさか……。
ユーリオレはジェイドがある程度は本気だったと思ってるぜ。まぁ、アステルってのも、オレたちの側に来ることで何か利があると考えたんだろうよ。
ユーリ実際、本人もいいチャンスだって言ってたしな。……まぁ、あそこでジェイドを止めて奴とやり合うってのも面白そうだったがな。
アスベル……手合わせしたいなら、クレス道場でしてくれ。
パスカルあれー、アスベルにユーリ。いらっしゃい。珍しいね。二人がキール研究室に来るの。
リタねぇ、キール見かけなかった ?
リタちょっと前に青い顔して戻ってきたんだけど何があったのか説明もしないまま、アジトのみんなの様子を聞いてくるって飛び出しちゃって。
リタなーんか気になるのよね……。
リフィル状況の把握と共有をするつもりだったのに光魔に襲われて、仮想鏡界が具現化されて……。
リフィルまぁ、ショックを受けない方がおかしいけれどあの感じはそれとは違っていたわね……。
アスベルいや、キールの姿は見かけなかったよ。
リタそう……。
ユーリなぁ、ここに鏡映点リストあるだろ ?
リフィルあるわよ。――はい、どうぞ。またはぐれ鏡映点が見つかったの ?
ユーリまぁな。
ユーリ……あった。導師イオン。こいつか……。
パスカルへー、その子が新しいはぐれくんなの ?
リタそれ、ルークたちの仲間よね。
アスベルユーリ。ジェイドさんの話、共有しておくんだよな。
ユーリああ。
リフィル……呆れた。相変わらず勝手なことをしているのね。
ユーリへぇ、あんたはジェイドのやり方を理解してると思ってたけどね。
リフィルそれ、どういう意味かしら。私も情報源を複数用意することは賛成だけれどそのことを仲間に共有しないのは頂けないわ。
ユーリだよな。
ユーリ……にしても、このリストを見ただけじゃ、ジェイドが何を思ってアステルを人質に取ったのかわからねぇな。
ユーリイオンってのがやばい奴で急いでアジトに戻る必要があるのかと思ったが説明を読むと人畜無害って感じだ。
パスカルルークたちに聞いた方が早いんじゃない ?そういえば、さっき資料室でガイが倒れた本棚片付けてたよ。
アスベル聞いてみるか。
ユーリそうだな。
ミリーナねぇ、ルーティ……。もしかして、泣いてた ?
ルーティそんなんじゃないわよ。……ジョニーの話を聞いてたら悔しくなっちゃったの。もっと早く助けられたらあんなに衰弱しなかったんじゃないかって……。
ミリーナルーティ……。ジョニーさんの治療、みんなで協力しましょう。早く元気になるように。
ルーティそうね。ジョニーは特異鏡映点らしいからその辺も心配だしね。
イクスジョニーさんってどんな人なんだ ?
ルーティうるさい奴よ。まぁ、元気であればって話だけど。
ミリーナセシリィも目を覚ましたのよね。
ルーティええ。今はミントたちが相手をしてくれてるわ。ただ……あたしたちは、リビングドールだったセシリィを知ってるじゃない ?
ルーティ本当のセシリィとあのセシリィの印象が違い過ぎて……。
ジェイド姿が同じでも……別人ですからね。
コーキスそうか……。俺たちの知ってるセシリィさまはシドニーさんって人なんだよな……。
カーリャどっちのセシリィさまもおつらいですよね。アステルさまはセシリィさまのことをご存じなんですか ?
アステルここにいるみんなと同じだよ。僕が知っているのは……魔鏡技術に詳しいセシリィだけ。
アステル彼女がリビングドールだってこともつい最近まで知らなかったから。
ジェイド……アステル。あなたも帝国で研究をしていたのならイオンという名前の少年を知りませんか。
アステルああ……。ベルセリオス博士から話を聞いたことはあります。
ルーティベルセリオス博士 ! ?それってソーディアン・ベルセリオスの元の人格の ! ?
アステルえっと、ルーティさんでしたっけ。ベルセリオス博士をご存じなんですね。
アステルソーディアンのことは色々と教えてもらいましたけどルーティさんたちの世界にはすごい技術があるんですね。
アトワイト待って、ルーティ。この世界にはもう一人ベルセリオス博士がいる可能性があるのを忘れているわ。
ルーティあ、そうか。カイルたちの仲間のハロルド・ベルセリオスね。
ルーティでも、変わってるわよね。ハロルドって一般的には男の名前だけど、カイルたちの仲間は確か女の子なんでしょ?
アステルえ、ちょっと待って。ルーティさんの前に聞こえた声……。その剣から聞こえませんでしたか ! ?
アトワイトええ。私はソーディアン・アトワイトです。
アステル僕はアステルです。うわー ! 話に聞いていたアトワイトさんにお目にかかれて光栄です !
アステルあれ ? でもソーディアンの声は持ち主にしか聞こえないんじゃ……。
アステル――あ、そうか。エンコードの影響ですね。
ジェイド理解が早いですね。なるほど……。帝国で重宝される訳だ。
コーキスなぁ、アステルさま。アステルさまの知ってるベルセリオス博士って男か ? それとも女か ?
アステル女の人だったよ。
ルーティあ、それなら、カイルたちの仲間のハロルドなのね。
アトワイト……………………。

キャラクター2話【3-2 鬱蒼とした森林2】
ジュードおかえり、イクス、ミリーナ、コーキスにカーリャも。ジョニーさんがお待ちかねだよ。
ジョニーお前さんたちが鏡士ご一行様か。悪いね、ベッドの上からで。
ジョニー肋をやられているらしくてね。上半身を起こしているのが精一杯なんだ。
イクスそんな……。俺たちは大丈夫ですから、無理はしないで下さい。
ミリーナ横になった方が楽なら、そうして頂いても……。
ジョニーいや、大丈夫だ。お前さんたちが来るまでの間に大体のことは聞かせてもらったよ。
ルカ勝手に話しちゃったけど悪かったかな ?
イクスいや、助かるよ。ありがとう、ルカ。
スタンジョニーさん。俺たちの方からさっきの話をしましょうか ?
ジョニーいや、自分で話すよ。まず、自己紹介から。俺はジョニー・シデン。元の世界では訳あってスタンたちと一緒に旅をしていた。
イクスあ、俺はイクスです。イクス・ネーヴェ。こっちは俺の鏡精のコーキスです。
コーキスちっす。よろしく、ジョニーさま。
ミリーナ私はミリーナ・ヴァイスです。この子は私の鏡精のカーリャです。
カーリャよろしくお願いしまーす。
ジョニー奥の二人も鏡士かい ?
ジェイドいえいえ。しがない鏡映点兼軍人です。ジェイドとお呼び下さい。
アステルあ、僕もしがない鏡映点兼人質のアステルです。
ジョニー人質…… ?
イクスあ、その辺りはまた後で。無駄話も疲れさせてしまうでしょうからジョニーさんのお話を聞かせて頂けませんか。
ジョニー……悪いがそうさせてもらうよ。
ジョニーさて、と。俺が具現化されたのは1年近く前のことだった。
ジョニーファントムって男が特異鏡映点を集めていて俺も特異鏡映点だったってんで救世軍に捕まったんだ。ここまではOK ?
ミリーナはい。ルカやローエンさんたちと同じですね。
ジョニーああ、そこの坊やは、俺の牢屋仲間だった。魔鏡陣とやらで気を失ってから、姿を見なくなっちまったから心配していたが、無事で何よりだ。
ルカすみません。僕だけ先に逃げ出していて……。
ジョニーそれを言ったら、俺だってリーガルを残したままだからな。人のことは言えないさ。体を治したら、助け出してやらないとな。
リオンファントムは特異鏡映点を使って負の力を帯びたアニマを集め奴の理想の世界を造ろうとしていたんだな。
ジョニーああ。だが、ファントムって奴はしくじったらしいな。気付いたら今度はアスガルド帝国とやらに捕まっちまってた。
ジョニー牢屋から牢屋へ引っ越しなんてうんざりしたぜ。
イクス帝国はどうしてジョニーさんたちを捕らえていたんですか ?
ジョニーローエンから聞いてないのか ?
ルーティローエンはまだ本調子じゃないのよ。それにここにいる訳じゃないから話を聞きそびれちゃってるのよね。
ジョニーそうか。ローエンは衰弱が激しかったしな……。帝国の連中は俺たちが持つ負のアニマを使って過去の世界を具現化する為の研究をしたかったらしい。
ジョニーその為に取引の材料にされたのが【死者の復活】だ。俺の場合は――
スタンエレノアさんか……。
コーキスエレノアさま ? あ、名前が同じの別の人か……。
カーリャどういうご関係なんですか ?
リオンくだらないおしゃべりはやめろ、カトンボ。
カーリャカトンボォォォォ ! ?
コーキスリオンさま ! それはパイセンに失礼だろ !
ミリーナ二人とも、落ち着いて。カーリャ。あまりぶしつけなことを聞いては駄目よ。
ジョニーいや、構わないよ。彼女は大切な……幼なじみだ。奴らの申し出はもちろん断ったよ。
ジョニー異世界で彼女を甦らせたところでどうなるって言うんだ ?そんなものは死者への冒涜だ。
二人………………。
ジュードジョニーさんはひどい暴行を受けていたみたいなんだ。全身痣だらけで、骨にヒビが入っている箇所もある。
ジュードパスカルがレントゲン装置を作ってくれたのが役に立ったよ。
ジェイド……ではあなたは、無理矢理その過去の具現化研究に協力させられていたということですね ?
ジョニー途中まではね。ある時から精霊の研究とやらに引っ張り出されたのさ。
アステル精霊…… ? 精霊装研究ですか ?
ジョニーいや、詳しいことはよくわからないが俺には【音の精霊】とやらの力を引き出す能力があるって話でな。
ジェイド
アステル音の精霊…… ? 聞いたことがないな……。
ミリーナアステルさんって帝国で精霊の研究をしていたんでしょう ? そのアステルさんが知らない精霊なんているのかしら……。
コーキスクラースさまとかミラさまとかエミルさまに聞いてみたらいいんじゃないか ?セルシウスさまもいるし……。
ジェイド精霊たちに話を聞くのが手っ取り早いかも知れません。ただ……。
リオンジェイド。何か心当たりがあるのか。
ミリーナジェイドさん。確証が持てなくても構いません。教えて下さい。
ジェイド確証……とまでは行きませんが、ある程度の予測はついていますよ。
ジェイドそうですね。……ここはお話ししておいた方がいいのかも知れない。
ジェイドジョニー。その音の精霊の名前は【ローレライ】ではありませんか ?
ジョニーああ、確かそんな名前だった。お前さん、音の精霊を知ってるのかい ?
ジェイド……知っているのとは少々違いますね。私のいた世界には音素(フォニム)というエネルギーが存在しており、様々な属性を帯びています。
ジェイドそして音素(フォニム)は一定数以上集まると自我を持つ……と言われていました。
ジェイドその中で音の属性を持つ音素(フォニム)の意識集合体をローレライと読んでいたんですよ。
ジェイド我々の世界の意識集合体は精霊という概念に似ていると考えています。
ミリーナそうか……。音の意識集合体がエンコードされて精霊と認識された……と考えているんですね。
ジェイドはい。ここまでキール研究室では、様々な異世界のエネルギー法則などを学び、それがこの世界でどう定着していったのかを研究していました。
ジェイド異世界の様々なエネルギー物質――例えばマナや音素(フォニム)、レンズに宿るエネルギーなどはこの世界ではキラル分子に変換されています。
ジェイド厳密に言えば、全てがキラル分子として定義されている訳ではありませんがそれはまぁ、置いておきましょう。
ジェイドこの世界では、我々の世界のエネルギーはキラル分子化しているんです。そうすることでパッチワークのように様々な世界を一つの世界にまとめている。
ジェイドエンコードは異世界の法則をティル・ナ・ノーグの法則に書き換える為の処置ですから。
イクスだからエンコードが施された結果エネルギーだけでなく天族も精霊のように定義された。
イクスそれなら、音の意識集合体も精霊と定義された可能性がある……と言うことですね。
ジェイドええ。そしてローレライにはもう一つ星の記憶を持つという特性があります。
ジェイドこの特性がエンコードによって残されているかはわかりませんが、帝国好みだとは思いませんか ?
イクス過去の具現化……分史世界の概念……精霊……ダーナ……滅びた世界ニーベルング。それに星の記憶……。
イクスまさか帝国が甦らせようとしているのはビフレストじゃなくて――
ミリーナ……滅びた世界ニーベルング。
ジュードニーベルング ? それは何 ?
ジェイド……なるほど。イクスの隠し事はそのニーベルングに関わるものなんですね。
イクスそれだけじゃないんですけど……。ここにはエルもいませんから全てを話しておきますね。

キャラクター3話【3-5 鬱蒼とした森林5】
リヒター(デクスに似た男がいたような気がしたが……。捜させるべきか……)
アスガルド軍兵士焔獄のリヒター様 !
リヒターその呼び方はやめろと言った筈だ !ディストは眠ったままなんだ。義理立てする必要もないだろう。
アスガルド軍兵士は……。それが、サレ様が必ずそう呼びかけるように、と……。
リヒターちっ。あのイカレコンビの片割れか。……それで、何か用なのか ?
アスガルド軍兵士メルクリア様が焔……リヒター様を捜しておられます。
リヒター
リヒター……起きていていいのか、メルクリア。
メルクリア……話を聞いたのだな。そんな怖い顔をするな。アルヴィンはもっと優しかったぞ ?
リヒターこれでも怒鳴りつけたいのを我慢してやっているんだ。危険を顧みずに幻体を他人の心の中に送り込むなどお前はバカか。
メルクリア……わらわを叱るなど、100万年早いぞ !
リヒター黙れ ! 自分にやれることとやれないことの区別ができずに無鉄砲をするようなガキがいきがるな !
メルクリア……う………………。
ジュニアま、待って、リヒターさん。メルクリアは幻体を送り込んだせいで元々弱ってた体が――
リヒタージュニア。お前もメルクリアを甘やかすな。気持ちがわかるんだろうが……。
ジュニア………………。
リヒターメルクリア。泣きたいなら泣いてもいい。だが、自分がしたことには責任を取れ。
メルクリア……わ……わかった……。
ジュニア……リヒターさんって、昔のイクスに似てるね。
リヒター……俺はあんなに神経質じゃないぞ。
ジュニアああ、そういうところはね。そりゃ、イクスの方が穏やかだけど小さな頃のイクスは今とはちょっと違ってたんだよ。
メルクリア……あんなセールンドの鏡士のことはどうでもいい。それよりリヒター、アステルはどうした ?ハロルドが捜していたぞ。
リヒター……少し、散歩に出ている。その内に戻る。
メルクリア本当か ? そなたもわらわに隠し事をするのか…… ?
リヒター……ここだけの話にできるか ?
メルクリア無論じゃ。わらわは約束は守る。ジュニアもじゃな。
ジュニア……うん。
リヒターアステルは……イクスとミリーナたちに誘拐された。
ジュニアえ ! ?
メルクリアなんじゃと ! ? 黒衣の鏡士め !リヒターの莫逆の友になんという真似を ! !
メルクリアリヒターもリヒターじゃ ! アステルを奪われておめおめと逃げ戻ってきたのか ! ?それとも手勢を連れて、今一度鏡士たちを――
リヒター落ち着け ! あちらにはエミルがいる。……ラタトスクも、だが。
リヒターエミルなら……アステルを傷つけたりはしないだろう。それに今はアステルが帝国にいないことは好都合だ。
ジュニアどういう意味ですか、リヒターさん。
リヒタージュニアも知っているだろう。先だっての御前会議で精霊装の実用化計画がスタートすることになった。
リヒター武器に人格を投影するベルセリオス博士の理論とアステルの考案した精霊輪具を使って精霊装を汎用的に利用するつもりらしい。
リヒターだが俺は、精霊装を闇雲にばらまくのには反対だ。精霊を扱うにはそれなりの力がいる。アステルがいなければ、計画は一時的に止まるだろう。
リヒターその間に、精霊装の扱いを再考させたい。
ジュニアいいんですか、リヒターさん。メルクリアにその話をしても。
リヒターメルクリアを子供扱いして何も知らせないからメルクリアはこうなった。違うか ?
ジュニアそれは……。
メルクリアどういう意味じゃ ?
リヒターメルクリア。お前はデミトリアスが何をしようとしているのか知っているか ?
メルクリア義父上はビフレストを甦らせる手助けをして下さっている。そしてこの世界を滅ぼすセールンドの鏡士と鏡精を退治しようとしておられるのじゃ。
メルクリアセールンドの愚かしさの責任と向き合いビフレストとの戦争を止められなかった悔恨の気持ちを抱いておられる。
リヒター……間違ってはいない。だがデミトリアスはお前とお前の母の復讐心を利用している。
メルクリア母上様のことは言うでない !
リヒターメルクリアお前のその気持ちは本当に自分のものなのか ?
メルクリア黙れ ! 母上様は……母上様はわらわを知の乙女と認めて下さった !
メルクリアわらわがビフレストを甦らせれば母上様はきっと褒めて下さる。
ジュニアメルクリア……。エルダ皇后はもう亡くなったんだよ。
メルクリアそんなことはわかっている !じゃが母上様はビフレストの復活を望みセールンドを憎んでおられた。
メルクリアわらわはビフレストの民と国を甦らせ知の乙女としてダーナの力を宿し皆を幸せにするのじゃ !
メルクリアそれこそが母上様とわらわの望みじゃ !ビフレストの皆を甦らせるのじゃ ! !
リヒターメルクリア、それは間違っている。
メルクリア何故じゃ ! 何故死んだ者を甦らせてはならぬ !リヒターもアステルを甦らせたではないか。わらわだって皆を甦らせたい !
メルクリア兄上様も――母上様だって !今はその手段がなくとも、必ず――
リヒター違う。甦らせたいと思うのは、みんな同じだ。だがお前の望みとお前の母親の望みは同じではないだろう。
リヒターお前が本当にビフレストを甦らせたいのなら俺は何も言わん。だが、お前はビフレストのことを知らないだろう ?
リヒタービフレストはお前が今よりもっと幼い頃に滅びた。ビフレストのことを何一つ覚えてはいない筈だ。
メルクリア知らぬ ! 知らぬから甦らせたいのじゃ !母上様が愛し、兄上様が命をかけて守ろうとしたビフレストをわらわも見たいのじゃ !
メルクリアわらわは……わらわは……。
リヒター……わかった。この話はまたにしよう。
リヒターだが、メルクリア。デミトリアスが何をしようとしているのかは知っておいた方がいい。目的は同じでも手段は違うかも知れないぞ。
メルクリア………………。

キャラクター4話【3-7 閑散とした街道1】
ルカえ……。つまり、このティル・ナ・ノーグはニーベルングと言う世界の滅亡から逃れる為に造られた世界ってこと ?
ルーティ何なの、それ……。
クラース……今の話は本当なのか ?
ルークこの世界そのものがレプリカみたいなものってことか ?
イクスど、どこから聞いてたんですか ! ?
エミルす、すみません。あの……。ヴィクトルさんの話のあたりから……。
コーキスほぼ全部じゃん ! ?
カーリャ立ち聞きですよね、それ ! ?
ガイすまん。止めようとはしたんだが……。
マルタなんか、気になる話をしてたし……。
アーチェ深刻そうな雰囲気だったしさー。
テネブラエまぁ、途中でお話の腰を折るより全部聞いてしまおうと。いえいえ、けっして出歯亀根性ではなく。
リオンフン、しつけのなってない奴らだ。
クラースすまん。言葉もない……。
ジョニー何だか一気に人が増えたな。元気ならば一曲披露したいところだが……。
ルーティそれは元気だったとしても遠慮しておくわ。
ルーティで、あんたたち、何か用 ?まさか本当に立ち聞きしにきただけじゃないんでしょ。
アーチェじゃ、まずはあたしから。セシリィが落ち着いてきたから話を聞いてあげて欲しいと思って。
エミル僕たちは……。精霊たちが感じてる妙な気配のことを共有したくてきました。
クラース私もその話に興味があってな。一緒に来たと言う訳だ。
ガイ俺たちの要件は、もう想像がついてるだろ、ジェイド。
ジェイドおや。
ルークユーリたちから聞いたんだ。イオンのこと……。それでアニスが……。本人は平気だって言うんだけどどう見ても平気じゃねぇから……。
ジュード色々混線してるね。ただ、これ以上ここで話すのはジョニーさんの体に負担がかかる。
ジュード医務室を預かる身としては他の場所で話の続きをして欲しい。
ジョニーすまないね、迷惑をかけて。
ミリーナそれじゃあ、こうしましょう。私はセシリィの話を聞きに行くわ。ジェイドさんはルークさんたちと話をして、イクスは――
イクス精霊組の話を聞けばいいんだな。
アステルあ、僕も精霊の皆さんとお話しさせて下さい。
ジェイド……ルーク、ガイ。私はアステルから話を聞きたいと思っています。後で必ず皆さんのところに行きますから今はアニスをお願いします。
ルーク……わかった。俺も……気になるからさ。早く来てくれよな。
スタン俺たちはここでもう少しジョニーさんと話していくよ。いいだろ、ジュード、ルカ。
ジュードもちろん。
ルカ後でスパーダも挨拶したいって言ってました。
ジョニーそうか……。
イクスそれじゃあ、みんな、そろそろ失礼しよう。ジョニーさん。まずは体をしっかり治して下さい。
ジョニーすまない、恩に着るよ。
エミルとりあえず、みんな僕の部屋に集まってもらったよ。ミラさんだけはまだちょっと体調が心配だから休んでもらってるけど。
アステル……この世界のマクスウェルの影響ですね。
イクス妙な気配を感じてるって聞いたけど……。それって、この世界のマクスウェルの残滓のことか ?
セルシウスいえ、似ているけれど違うわ。わたしたちが今感じているのはアスカとシャドウの気配よ。ただ……妙なの。
エミルわかります。上手く言えないけど……存在が空気中に染みだしているって言うか……。
ジェイド……アステル。丁度いい頃合いです。あなたに聞きたいことがあります。帝国が精霊をどうしようとしているのか。
ジェイド確かアスカは光、シャドウは闇の精霊ですね。その気配がおかしいのは帝国に関わりがあるのでは ?
アステル……はい。そのことを伝えたくて僕もここに来ました。
アステルリヒターも多分、精霊を守りたいと思っているはずだから、ここで話しても許してくれると思います。
エミルリヒターさん……。精霊の研究をしていたんですよね。
アステルそうです。……って、なんか不思議だな。自分の顔を見ながら話すのって。
二人……………………。
アステル帝国はダーナの声を聞こうとしてるんです。その為に精霊の力を借りようとした。
アステルそれでアイフリードの残した宝具を使い最初に接触できたのがマクスウェル。
アステルでも、マクスウェルを目覚めさせることはできず逆にマクスウェルは命を落としたそうです。
アステル僕はそのマクスウェルを再生させる研究を請け負っていました。
アステルそしてマクスウェルの残滓を発見した。それを精霊輪具で集めて、マクスウェルの力だけは精霊輪具に宿すことができたんです。
コーキス前に聞いたぞ。精霊輪具は精霊と神依するための指輪だって。
アステルそう。神依の資料を読んで、精霊輪具を考えたんだ。
アステル何か依代があれば、精霊輪具に宿したマクスウェルの力と依代を神依化させてマクスウェルを助けられるんじゃないかって。
アステルでも……デミトリアス陛下は、単なる依代じゃなくて異世界のマクスウェルを呼び出して、そのマクスウェルと精霊輪具のマクスウェルの力を神依化させようとした。
アステルそのために、このアジトにいるミラ=マクスウェルとは違う、もう一人のミラ=マクスウェルを具現化した。
アステル僕は……そんな風にするために精霊輪具を開発した訳じゃないのに……。
クラース……もう一人のミラは、ヴィクトルによって帝国から助け出された。そして……今は精霊の封印地でダーナの心核の崩壊を防いでくれているのだな。
クラースしかしダーナの声を聞こうとしていた筈が何故ダーナの心核を壊すような真似をするんだ ?
アステルわかりません。その話を聞いて……僕もショックです。リヒターは僕が帝国の情報に触れることを嫌がって遠ざけようとするから、僕も知らないことが多くて。
ジェイド話を戻させてもらいますよ。ヴィクトルの話に出ていた【精霊装】というのは、精霊輪具を使った神依と考えていいのでしょうか。
アステルはい。もちろん完全な神依化はスレイさんと天族にしかできないと思います。
アステルただ、帝国は目覚めていない精霊のエネルギーすらも精霊輪具で取り込むことに成功してしまいました。これは……僕のせいでもありますが。
アステルそしてベルセリオス博士の考案した装置を使って精霊の力を武器に投射して使う【精霊装】が完成したんです。
アステル手始めにアスカとシャドウを精霊装に利用すると言っていました。僕は……それを阻止したい。だからここに来ました。
マルタ阻止って……どうするの ?クラースさんが契約するとか ?
マルタ精霊って一人の召喚士と契約すれば他の人とは契約できないんでしょう ?
セルシウスそれはあなたの世界の精霊との約束事ね。だからといって、全ての世界がそのルールというわけではないの。
セルシウスティル・ナ・ノーグはそのルールではないわ。それにアスカもシャドウもまだ目覚めていない。
テネブラエ私は闇のセンチュリオンです。シャドウの気配は他の精霊より強く感じます。
テネブラエシャドウが目覚めていないのは断言してもいい。クラースさんはまだ契約ができないでしょう。
アステルそれに契約したところで精霊輪具には関係がないんです。精霊の力を吸い取ってしまうから。
コーキスそういえばミクリオさまが精霊輪具をはめたとき疲れたって……。あれって力を奪われたってことだったのか ! ?
アステルそう。だから長時間つけては駄目だって言ったんだ。
ジェイド帝国の精霊装を阻止したいと言いましたね。アステル。何か策があるのですか ?
アステル万全とは言えないけど……あります。精霊の力を占有させない方法が。
アステルそれと精霊が精霊輪具に抵抗する方法も。これは既に目覚めている精霊を守るために役立つと思います。

キャラクター5話【3-7 閑散とした街道1】
ミリーナ初めまして、セシリィ。私はミリーナ、こっちの子はカーリャよ。
カーリャよろしくお願いします♪
セシリィ……は、はい。初めまして、ミリーナさん……。
ミリーナ何が起きたかわかる ?
セシリィ……うん。あの……クレアさんたちに、色々お話聞いたから……。
ミリーナそう。じゃあ、どうしようかしら。とりあえずガロウズを呼びましょうか ?
セシリィ駄目 ! ボスは駄目 ! 怒られちゃう !
クレアセシリィは……自分でリビングドールに志願したらしいの。
ミリーナえ ! ?
セシリィ……私、ボスみたいにもっと魔鏡に詳しくなって早く一人前の魔鏡技師になりたかったから。
セシリィビフレストの凄い鏡士が私の中に入ってきたら私も鏡士みたいに魔鏡に詳しくなれるのかなって……。それにメルクリア様にも協力したかった。
セシリィでも、ボスがこの話を聞いたら絶対怒ってハモンだって言うもん……。
ミントメルクリアさんとはお友達なんだそうです。
ミリーナそうなの……。ねぇ、セシリィメルクリアとはどうやって知り合ったの ?
セシリィゲフィオン様に頼まれたの。セールンドのお城に、メルクリア様と同じぐらいの年の子供がいないから、遊び相手になって欲しいって。
ミリーナ! ?
マリアンミリーナさん ? 何だか顔色が……。椅子に座った方がいいのでは……。
ミリーナあ……。大丈夫。ありがとう……。ちょっと驚いただけで……。
ミリーナ(ゲフィオンの記憶は滅びの夢として受け継いで来た筈なのに……)
ミリーナ(やっぱり私が受け継いだゲフィオンの記憶には欠落があるんだわ)
リヒタージュニア。メルクリアを頼む。早く体調を戻してデミトリアスから離れさせたい。芙蓉離宮が無理ならどこか別の場所でもいい。
ジュニアリヒターさん、どこへ行くんですか ?
リヒターハロルドと話をしてくる。アステルの件、適当にごまかしておかないとな。……そんな手段が通じる女ではないだろうが。
メルクリア……待ってくれ、リヒター。わらわが悪かった。母上様のことを出されると取り乱してしまうのじゃ。
メルクリアそれより聞かせて欲しい。義父上と何を話したのじゃ ?ジュニアは話してくれぬ。だから……。
リヒター……わかった。
デミトリアス全ての方針を見直すことにした。
チーグルどういうことだい。デミトリアス帝。まさか……ビフレスト復活の悲願をなかったことにするとでも言うのかな。
リヒターだとしたら迷走にも程があるな。最初は救世軍としてゲフィオンの具現化計画を止めるように言われた。
リヒターもっともあれは、ファントムの望む理想世界の構築の片棒を担がされた訳だが……。
リヒターその後に救世軍ごと帝国に吸収されビフレスト復活の為、リビングドール計画だのダーナの器探しだのと奔走させられた。
リヒターファントムにせよメルクリアにせよ貴様が後ろ盾だった。つまりは貴様の迷走だろう。
デミトリアスそうだね。その点は恥ずかしく思うよ。最初はフィルの願望を愚直に実行しようとするファントムに同情して、彼に力を貸しただけだった。
デミトリアスゲフィオンを犠牲にしなくても世界が救われるのならその方がいいと思ったからね。
デミトリアスしかしファントムとメルクリアが、ウォーデン――ナーザ将軍をリビングドールとして甦らせてから全てが変わってしまった。
ローゲ死の砂嵐こそが、死の季節【フィンブルヴェトル】だと知ったのだな。
デミトリアスそうだ。
デミトリアスこの世界はダーナが生み出した【ダーナの揺り籠】。滅びた世界ニーベルングの生き残りが避難してきた方舟のような世界だった。
デミトリアス具現化によって生まれた世界だからこそ鏡士の力があらゆるものを【想像】し、世界と【融合】させることで【創造】できた。
デミトリアスこの世界において鏡士は神にも等しい力を持っている。
チーグルダーナは予言を残した。
チーグル『揺り籠を揺らす手を操ろうとしてはならぬ。鏡写しの心は、アニマ無き人となり再びフィンブルヴェトルを招くだろう。
チーグルフィンブルヴェトルが揺り籠を飲み込むときダーナの巫女は目覚め精霊を従えてラグナロクへと立ち向かう。
チーグルフィンブルヴェトルは死の季節。世界の終末の始まりである』ダーナの黙示録の一節さ。
サレゲフィオンのカレイドスコープが死の砂嵐――いやフィンブルヴェトルとやらを生み出したんだろう ? 歴史は繰り返すんだねぇ。
サレニーベルングを滅ぼしたフィンブルヴェトルを避難先でご丁寧に再現するなんてこの世界の人間は脳みそがハムスター並だね。
サレ回し車の中で全力疾走して滅びから逃げたつもりになってるのかな ?
チーグル黙れ、血まみれのドブネズミが。
サレへぇ、ハムスターにもプライドがあるんだね。
チーグル
ローゲやめておけチーグル。所詮はどこぞの馬の骨に一撃で沈んだ三下よ。
サレ
ハスタフェスティバ――――ル。ハムスターで生ハム作りか ?ダ・レ・ニ・ミ・カ・タ・シ・ヨ・ウ・カ・ナ。よし、両方殺そう !
デミトリアスサレ、ハスタ。退屈の虫が騒ぐのなら別の機会を用意するよ。
デミトリアス特にハスタ。特異鏡映点亜種の二人には浅からぬ因縁があるのだろう ?
ハスタアス……なんとかとデュラなんたらさんだっけか……?俺さまにズタボロのボロキレにされるがいいわぁぁはははは !
リヒターハスタ、サレ。お前たちは――いや、俺も所詮はこの世界の異分子。その行く末に興味は無いはずだ。
リヒター今はわざわざこの世界の愚かな連中を煽ったところでこの下らん会議が長引くだけだぞ。
サレ……自分は賢者だとでも言いたげだね、リヒター。アステルのことが話題に上がれば自分もうるさく騒ぎ立てるくせに。
リヒター………………。
ジュニア――あの……。陛下。全てはダーナの声を聞いて確証を得てからではなかったんですか ?
ジュニア死の砂嵐がフィンブルヴェトルで間違いないのかもダーナの言葉を聞く必要があります。
ジュニアそれに、ダーナの巫女が完全に目覚める前に一部の精霊が目覚め始めているのも……。
デミトリアス……いや、もうダーナの言葉を待つつもりはない。もちろん、ビフレストの復活は約束する。だが、それがティル・ナ・ノーグであるとの保証はしない。
チーグル……どういうことだ ?
デミトリアス私はティル・ナ・ノーグを救うためにはこの世界ができた当時の姿に戻すことが最良と考えた。
デミトリアスしかしアスガルド帝国以前の十二王国時代のことは完全に文献が失われている。故にアスガルド帝国時代に回帰することを第一の目的とした。
デミトリアスあの頃はダーナの託宣を受ける巫女がいたからだ。
デミトリアスだが……仮に鏡精を殺し、セールンドの鏡士の力を封じたとしても、いずれまた同じ危機がやってくるのではないか。
デミトリアスならば目指すべきは抜本的変化。つまりダーナの揺り籠たるティル・ナ・ノーグを捨てニーベルングに回帰する。
ローゲ滅びた世界に回帰する、とな ? 面白いではないか !
チーグル馬鹿な……。そんなことができるものか !
デミトリアス誰ができぬと決めた ?ダーナがこの世界を生み出したときも同じように言われたのではないか ?
リヒター……ダーナにはニーベルングが救えなかった。だからこの世界を生み出したのではないか ?
デミトリアス今は、ダーナの時代になかったものがある。
ジュニア異世界のアニマと鏡映点……ですか ?
デミトリアスそうだ。我らはこの世界を捨て、ニーベルングを再誕させる !
メルクリアな……何…… ?それは……それではビフレストはニーベルングに甦らせるというのか ?
メルクリアそれは……それは本当にビフレストなのか ?
リヒター……さあな。メルクリア、お前はビフレストを『どんな形で甦らせたい』んだ ? よく考えろ。その答え次第で、デミトリアスは敵になる。
ジュニアリヒター。メルクリアはまだ子供なんだよ ?
メルクリアわ、わらわは子供ではない !
リヒター子供は子供であることを否定する。俺もメルクリアは子供だと思う。
リヒターだが、子供だからものが考えられない訳じゃない。勇気を持って真実を追究しろ。
リヒター勇気は……夢を叶える魔法だ。

キャラクター6話【3-9 イ・ラプセル城】
イクスとりあえず、アステルさんに言われた通りイ・ラプセル城の堀まできたけど……。ここで精霊の研究が行われてるんですか ?
アステルそんな、気を遣って喋らないでよ。見た感じ僕の方が年下みたいだし。
イクスあ、うん。わかった。ありがとう、アステル。
アステルで、精霊研究の件だけど、複数の施設があるんだ。ここはその一つ。精霊装研究を行ってるところ。
アステルさて、ここからどうやって忍び込もうかな。僕一人なら、なんてことなく入れるけど……。
コーキスミリーナさまがいれば、幻の霧で姿を隠せるのに……。
マルタミリーナはセシリィの話を聞いてから合流するって言ってたんだっけ。
クラース事を荒立てるのは良くないからな。
テネブラエいい方法があります。
テネブラエこういうのはいかがでしょう ?
エミルええええええ ! ?
マルタそういえば、テネブラエって色々変身できたもんね。釣り竿とか。
アステル凄い ! 僕も以前センチュリオンのアクアと旅したことがあるけどアクアにはこういう力はなかったなぁ。
テネブラエ所詮、アクアはジメジメしたカビ臭い水属性。高貴な闇に敵う筈もありません。
クラースウンディーネが聞いたら何を言われるかわからん発言だな……。
マルタシャーリィもミクリオも怒りそう。あ、シャーリィの場合はセネルが怒りそう……。
エミルだから陰険ジジブラエって言われるんだよ。
テネブラエ失敬な ! 私はジジイではありません !
コーキス陰険は否定しないんだな……。
クラースしかし、この変装――いや、変身なら、敵も偽物とは分からないだろう。テネブラエとアステルに見張りを遠ざけてもらって、城の中へ入ろう。
アステルわかった。それじゃあリヒブラエ、行こうか !
リヒブラエ承知しました。
エミルリ……リヒブラエ……。
イクス今度リヒターに会ったら、うっかりリヒブラエって言っちゃいそうだな……。はは……。
クラース何とか、内部に潜入できたな。
リヒブラエ私の手に掛かれば朝飯前――いえ、夜飯前ですよ。
クラース……センチュリオン……か。何というか、精霊の眷属にも色々あるのだな。
マルタねぇ、ここにシャドウとアスカがいるの ?
アステル正確には、シャドウとアスカの心核があるんだ。帝国は眠りについた精霊の心を具現化することで手元に保管しているんだ。
アステル今のところ、シャドウとアスカとクロノスの心核具現化に成功してる。
クラースどこにいるともわからない精霊の心を具現化した ! ?
アステルジュニア……えっと小さいフィリップがね。ファントムのカレイドスコープを使って精霊の力を見つけたんだ。
イクスフィル……。昔から頭が良かったからな。鏡士としても才能があって、すぐにセールンドの王立魔鏡科学研究所に推薦されたんだ。
イクス……って、これは、一人目のイクスの記憶なのかも知れないけど。
アステルうん。彼は凄いね。心核を……えっと別の世界の晶霊石というものに見立てて、クレーメルケイジに収めたんだ。
アステル精霊たちは眠っているけど、その力は既に世界中に広がり始めてる。でも心核があれば、そこを目指して精霊の力が戻ってくるみたいなんだ。
アステル帝国はそれを精霊輪具で吸収して精霊装に使おうとしてるんだよ。
クラース晶霊というのは、キール達の世界での精霊のような存在だったな。なるほど……。そうすれば目覚めていない精霊を先んじて支配下におけると言うことか。
ラタトスクけっ。人間如きが精霊を許可なく檻に閉じ込めるとはな。だから人は信用できねぇんだ。
エミル人間ってひとくくりにするのは駄目だよ、ラタトスク。精霊も色々、人も色々、でしょ ?
ラタトスクんなこたぁ、お前に言われなくてもわかってる。
イクスアステルの希望は、俺たちがシャドウとアスカのクレーメルケイジを回収してアジトに持ち帰ることなんだよな。
アステルそう。クロノスは別の場所に運ばれているから無理だけど、シャドウとアスカだけでも帝国の手から取り上げて欲しいんだ。
クラースそれで、敵の精霊装計画を阻止するのはわかった。だが精霊が精霊輪具に抵抗する方法というのはどうするんだ ?
クラースそれに何故帝国は精霊を武器として使用する ?
アステル精霊を武器にするのは、おそらく精霊の力でしか壊せないものを壊すためだと思います。
アステル異世界にある晶霊砲(クレーメルキャノン)や魔導砲という大型の兵器にすることも考えられているようですが今のところそれでは『被害が大きすぎる』んだとか。
アステルでも何を壊すつもりなのかは僕には知らされていなくて……。
リヒブラエその研究を止めよう……とはなさらないんですか。あなたは元の世界で、滅びを回避しようと命がけでラタトスク様の元へ出向いた筈だ。
アステル……その姿で言われると笑っていいのか反省すればいいのかわからなくなっちゃうけど。
アステルでも、そうだね。僕は止めたいと思ってる。でも……例えこの世界の僕らが影の存在でもこの世界のリヒターを殺すような真似はしたくない。
アステル僕が研究をやめれば、リヒターが危ないと思う。それに、僕の代わりの天才は異世界にいくらでもいるだろうからね。
アステルせいぜい研究しているフリで足を引っ張るのが関の山なんだ。
イクス……もしかして、それが理由でアステルは帝国から逃げだそうとしなかったのか ?
アステルそれも理由の一つ。あとはリヒターが……メルクリアを助けたいと思っているみたいだから。口は悪いけど、お人好しなんだよね。リヒターって。
エミル……はい。知ってます。リヒターさんは……いつも優しかった。
ラタトスクエミルには、な。
クラース……では、我々がシャドウとアスカのクレーメルケイジを回収すればアステルの心労も少しは軽くなるという事か。
クラース逆に刺激することにもなりかねないという危惧はあるがしかしここはアステルの言う通り、敵の精霊装研究を遅らせるべきなんだろうな。
クラースもう一つの精霊輪具への抵抗というのは――
アステルそれは研究室でお話しします。とりあえず行きましょう。リヒブラエの正体がばれないうちに。
リヒブラエはい。それがいいと思いますよ。
コーキスよし、俺、今の話を魔鏡通信でミリーナさまに連絡しとくよ。
イクス頼むよ、コーキス。

キャラクター7話【3-10 精霊研究所1】
アニス……い、嫌だなー。大佐まできちゃったんですかぁ ?アニスちゃん、めちゃくちゃ元気ですよ。だって……イオン様が……生きてるんだから……。
ティア……大佐。本当なんですか。導師イオンが帝国におられるというのは。
ガイどういうことだ。フローリアンの間違いじゃないのか ?
ジェイド我々とは具現化された時期が違うのでしょう。こういう可能性は十分考えられた。だからこそ鏡映点リストに加えていた訳ですが……。
ジェイドとりあえず本人がイオンを名乗っている以上フローリアンの可能性は限りなく低いでしょうね。
ナタリアもし本当にあの導師イオンなのだとしたら私たちが具現化された時より前の時間軸から具現化されたのですわね。
アッシュ……もし、それが可能なら。『それ』は本当に導師なのか ?
ルークは ? どういうことだ ?
アッシュお前はいい加減その脳みそを使うことを覚えろ !モノは俺と同じの筈だ !
ルーク俺のこと、劣化してるって言わないのか ! ?
アッシュ言って欲しいなら言ってやるぞ !
ガイ二人ともいい加減にしろ !
アッシュ……すまん、ガイ。
ルークちぇっ。ガイには素直なんだな。
アッシュ何――
ティアルーク。アッシュは被験者(オリジナル)のことを言っているのだと思うわ。
ルーク……え ?
アニス! !
ジェイドさすがアッシュ。私も同じことを考えました。イオンと名乗る可能性のある人物は過去へ遡れるなら、少なくとも二人いることになる。
ジェイドそして……我々の知らないイオン様であった場合少々面倒なことになります。彼は……自分のレプリカを作ろうとした人物ですからね。
ジェイドもしもディストが目を覚ましていたら……さらに面倒なことになる。
ルークここでもレプリカを作ろうとするってことか ?
ジェイドええ。可能性はあります。そもそもこの世界の具現化はレプリカと発想が似ている。
ジェイドいや、記憶を継承できるという点ではこちらのほうが遥かに上です。
ジェイドそれに……ローレライの具現化も予想されます。
アニスローレライって……第七音素(セブンスフォニム)の意識集合体…… !
ジェイド……ルーク、アッシュ。残念ですが、そろそろ本当のことを話す時期がきたのかも知れません。
ルークそれって、俺がレプリカだってことか ?
ナタリア確か、イクスとコーキス、それにヴェイグとセネルにはその話をしたそうですわね。
ルークみんな、察してくれて何も言わないでいてくれたけどな。
ガイイクスとコーキスはもちろんだがヴェイグもセネルもいい奴だもんなぁ……。
ジェイドみんなに導師イオンの存在を説明する為には……避けて通れません。
ジェイドそれに、恐らくこの先は、私たちだけではなく様々な異世界の人間が、抱え込んでいる秘密を語らざるを得なくなるでしょうね。
ジェイド先ほどミリーナたちがイクスたちを追いかけてアスガルド帝国へ向かいました。話は彼らが戻ってきてからにしましょう。
フィリップ………………。
マークこんなところにいたのかよ。ヴィクトルの話の途中で消えちまって……。
マークまた何か不安なことでもあったのか ?それとも……発作か ?
フィリップ……ごめん。ヴィクトルの話から……色々なことに思い当たってしまって……。
マークなぁ、フィル。一人で思い悩むなよ。一人で背負い込むのもナシだ。何を悩んでるんだよ。
フィリップ僕らの始まりの場所……。
マーク……ん ? それはチビフィルが言ってたことか ?
フィリップ……僕はずっと避けてきた。あの場所には行きたくなかったから。でも……行かなきゃいけないのかも知れない。
マーク何処なんだ、その始まりの場所って。
フィリップ水鏡の森。正確にはかつて水鏡の森から行くことができた聖域。……精霊の封印地のことだよ。
マーク水鏡の森って……オーデンセにあった森だろ ?あそこから精霊の封印地に行けたのか ! ?
フィリップ水鏡の森は、色々と特別な場所だったんだ。
フィリップ今考えれば、あの森で見られた不思議な現象は精霊の封印地へ通じる次元通路があったから引き起こされていたんじゃないかと思う。
マーク今すぐ行くのか ?
フィリップテネブラエの話では心の精霊が守りを強めたようだから……すぐにはたどり着けないかも知れないけれどね。
マークなぁ、そこには何があるんだ。
フィリップ――それは、行かないとわからない。
フィリップただ、どうしても気が乗らなくてね。フィリップ・レストンが『こう』なった場所だから。わかるだろ、マーク。
マーク……鏡精は鏡士と記憶を共有する訳じゃねぇからな。まぁ……何となく想像ついちまったけど。
マークわざわざ心抉りに行くのは感心しねぇけど必要なんだって言うなら仕方ねぇな。ヴィクトルが目を覚ましたら、相談してみようぜ。
フィリップああ。

キャラクター8話【3-11 精霊研究所2】
マルタ……ここが精霊研究所 ? なんか想像してたのと違う。
リヒブラエどんなものを想像していたのですか ?
マルタサイバック……元の世界の学問所みたいなところ。なんか得体の知れないものが得体の知れない液体に浮いてたり……。
エミル僕も同じこと考えてた。普通の建物なんだね。
アステルああ、確かにあそことは違うかもね。
アステルそれより、エミルとラタトスクは気をつけてね。他の精霊と違って君たちと同じ属性の精霊はこの世界に存在していなかったんだ。
アステルだからまだ帝国では研究が進んでいないけどもし捕まって研究対象にされたら……。
ラタトスク俺がそんなドジを踏むと思うか。それよりアスカとシャドウの気配がする。イクスの左だ。
クラースイクス。きみの横にある机の上に置いてあるのがクレーメルケイジではないか ?
イクスああ、これか。キールたちが持っている物とはちょっと違うんだな。
コーキスうわ ! ? マスター、光ったぞ ! ?
イクスな、何も変なことはしてない筈だぞ ! ?お、落ち着け……。ボタンらしきものはなかった。レバーらしきものもない。
イクスもしかして人体の熱に反応しているのか ?だとしたらうかつに触ったことで――
アステルお、落ち着いて、イクス。これは予想通りの反応だから。イクスの反応は予想外だったけど……。
コーキスいや、マスターはこーゆー奴だぞ。
イクスわ、悪かったな !でもアステル。どういうことなんだ ?
アステルそのクレーメルケイジの中にはアスカが入っているんだ。アスカは光の精霊。イクスは光の精霊との相性がいいんだよ。
アステルだからクレーメルケイジが反応したんだ。
クラースということは、私がそれを手にすれば……。
エミルクラースさんでも光ってるけど……。
リヒブラエそれはそうでしょう。クラースさんは召喚士ですよね。精霊全般と相性がいい筈です。
コーキスわ ! 俺も持ちたい !
アステル鏡精の場合はどうなのかなぁ……。
マルタそれじゃあ、私が持ってみるよ。
マルタ全然光らない……。つまり、私は光の精霊との相性が良くないんだね。
アステル相性が良くないんじゃなくて、普通なんだよ。でも、やっぱり僕の思っていた通りだった。
アステル……ナーザ将軍が、ここまでじゃないけれど光の精霊と相性が良かったんだ。
アステルもちろんナーザ将軍はリビングドールだからイクスが同じ結果を得られるとは限らなかったんだけどでも可能性は十分あった。
アステル同じようにゲフィオンさんのデータを使った実証実験もしたんだ。その結果によればシャドウとミリーナの相性もかなりいい筈だよ。
クラースその口ぶりでは、まるでイクスとミリーナに光と闇の精霊装を託そうとしているようだが……。
アステルその通りです。それが、精霊を帝国による精霊装と精霊輪具から、精霊を守ることになるから。
リヒブラエ……皆さん。気をつけて。誰かがこちらに来ます。
アステルベルセリオス博士 ?今はアスガルド城にいる筈だけど……。
イクスまずい。隠れる場所は――
リヒブラエ駄目です ! この部屋にきます !
チーグル……ここか。精霊の心核が置いてあるのは――
二人! ?
ラタトスクおっと ! 見つかっちまったか。
チーグル……どういうことだ ? レイカー博士が二人――いや片方は樹の精霊ラタトスクか !おい、リヒター ! これは一体どういうことだ。
イクス――ご苦労だったな、レイカー博士。
アステル! ?
イクス大人しく言うことを聞いてくれて助かった。シャドウとアスカは俺たちが頂いていく !
クラース
クラースしかし頭がいいと言っても所詮子供だな。
クラースこのリヒターを本物のリヒターと信じて助けようとしたその友情には感心したが肝心の友が偽者と気付かないとはな !
リヒブラエ! !
テネブラエはっはっはっ。リヒターと信じた馬鹿な小僧めっ !センチュリオンの力をもってすればリヒターの姿になるなど造作もないことだ !
チーグル貴様ら !レイカー博士を謀って、精霊装を奪いにきたか !
マルタざまーないね、レイカー博士 !
エミルおっと、ローゲにチーグルだったな。このラタトスク様が三下の名前を覚えてやったんだ感謝しろ !
エミルだが動くなよ。動けばレイカー博士の首をはねる。
ローゲ三下だとぉ ! ? そんな小僧の命など知ったことか !
チーグル待て、ローゲ。レイカー博士を失えば精霊装の計画が遅れることになる。
ローゲ構うものか !
チーグルなっ ! ? なんだこれは――
ローゲくっ ! 姿が見えなくとも気配で……
チーグルよせ ! レイカー博士に当たったらどうする !
コーキスマスター ! これはミリーナさまの !
イクスああ。みんな脱出するぞ !

キャラクター9話【3-15 鬱蒼とした森林】
ミリーナイクス ! みんな ! 大丈夫 ! ?
イクス助かったよ ! ありがとう、ミリーナ。
アーチェクラ~ス~♪ さっきの演技、中々だったじゃん♪
クラース大人をからかうのはやめなさい !
コーキスエミルさまも相変わらずチンピラの演技がうめーよな。
エミルラタトスクの真似しただけだよ。……っていうか、こういう時は出てこないんだからラタトスク……。
マルタラタトスク、呼んでるよ ?
ラタトスク演技なんてかったるいことエミルがやればいいだろうが。
テネブラエラタトスク様らしいと言うか……。それよりあの霧も長くは持たないでしょう。急いで脱出しましょう !
アステル………………。
イクスこの跳ね橋を渡れば、城の外に出られる。街に出られれば何とか逃げ切れるぞ。
アステル――ねぇ、みんなは急いで跳ね橋を渡って。僕はここに残って跳ね橋を上げておくよ。そうすればローゲたちを少しは足止めできるからさ。
エミルえ ! ? だけど……。
アステルさっきはみんな、僕が裏切り者にならないように気を遣ってくれたんでしょ ? 本当にありがとう。おかげで上手くやり過ごせそうだよ。
アステルほら、元々僕は人質だからね。ずっとそっちにいるのも楽しそうだけど……。やっぱりリヒターのことを一人にはできないし。
イクスアステル……。ありがとう。でも、くれぐれも無理はしないでくれよ。
アステルうん、大丈夫。それから精霊装について教えておくね。クレーメルケイジの横についてるのは精霊輪具。それ、精霊はうかつに触らないように。
アステル多分一回ぐらいは精霊装を纏えるぐらいの力がたまってると思う。
アステルスレイたちの神依の時とは違ってイクスとミリーナがその指輪をつければそこから精霊の力が武器に宿るから。
アステル武器と精霊との神依だと思って。恒久的に使うには、スレイの時みたいに魔鏡に映すのがいいと思う。
アステルあと、これを天族に応用すればスレイは全属性の神依が可能になると思うって伝えて。
アステルそれとできればシャドウとアスカだけじゃなくて他の精霊もそっちの仲間で精霊装にして欲しいんだ。
ミリーナ霧が消えるわ !
アステル他にも色々教えたかったんだけど、時間がない。後のことは精霊輪具を調べてみて。君たちのところには天才がたくさんいるでしょう ?
テネブラエローゲたちがきます !
アステル行って ! 少しの間だけど楽しかった。できれば君たちと道が一つに繋がることを祈ってる !
イクス俺もだ ! だから、さよならは言わないよ ! またな !
アステルうん ! また、ね !
ミリーナ……ここまで来れば、少しは休んでも平気かしら。
カーリャさすがにカーリャも飛びっぱなしでへろへろですぅ……。
コーキスはぁ……はぁ……。だ、だらしねぇな、パイセン……。
カーリャコーキスだって息が上がってるじゃないですか !
エミルアステルさん……大丈夫かな。
マルタ私たちの味方だと思われてないといいんだけど……。
アーチェそこはアステルの立ち回りのうまさを信じるしかないよね。
クラース我々の方もまだ安心はできないぞ。とにかく急いで帝国領を出なければ――
テネブラエ……おかしい。
イクステネブラエ ?
テネブラエ魔物たちが静かです。
ラタトスク――敵さんが追いついてきたってことか。
アーチェちょっと待って。上から見てくる。
アーチェまずいかも。ローゲとチーグルが馬でこっちに向かってきてる。ローゲは手強いしチーグルは光魔を呼ぶんだよね。
クラース光魔を無限に呼ばれたらやっかいだな。それに馬が相手では逃げ切れないぞ。
ミリーナ無限には呼べないんじゃないかしら……。今はイクスも魔鏡結晶の外にいるし、ナーザもいない。
ミリーナバルドさんたちが人体万華鏡の穴を塞いでくれたから一時的に死の砂嵐の流出が止まっている状態よ。
ミリーナ死の砂嵐にアクセスできなければリビングドールも作れないし光魔も無限には生み出せない筈。
イクス……ってことは、ローゲたちを何とかできればこの場をやり過ごせるんだな。
ラタトスク……イクス、ミリーナ。精霊装を使え。
二人え ! ?
ラタトスク俺たちが精霊装を使ったのを見れば奴らは報告のために撤退するだろうよ。
ラタトスク雑魚は俺たちが引き受ける。二人はローゲを徹底的に叩け。
ミリーナ精霊装……。本当にできるのかしら……。
イクスアステルはできるって言ってた。試してみよう。
テネブラエ……どうやら追いついてきたようですよ。
チーグルレイカー博士をどう言いくるめたか知らないが逃げられると思ったら大間違いだよ。
ローゲシャドウとアスカを返してもらうぞ !

キャラクター10話【3-15 鬱蒼とした森林】
イクス精霊よ輝け !
ミリーナ精霊よ織りなせ !
イクス陽剣・至白刃 ! !
ミリーナ月鏡・継黒陣 ! !
ローゲぐぉぉぉぉぉぉぉぉっ ! ?
チーグルローゲ ! ?
ローゲくっ……これが精霊装……。だが、この程度――
チーグル待て ! ローゲ ! アニムス粒子が乖離しかけている !
ローゲぐぬぅ……――
チーグル退くぞ ! このままではお前が危険だ !
クラース……転送魔法陣で消えた、か。しかし今の状況は……使えるかも知れないな。
イクス……はい。精霊装による攻撃は、リビングドールのあり方に影響を与えるみたいでした。これならリチャードさんを救えるかも知れません。
マルタキール研究室のみんなに精霊輪具を見せたらアステルが言ってたみたいにもっと色々なことがわかるのかも知れないね。
ミリーナええ。急いで調べてもらう必要がありそうね。
アーチェそれじゃあ、さっさと帰ろう。また追っ手がきたら大変だもん。
エミルそうだね。けど……アステルさんを置いてきたこと……ジェイドさん怒るかな。
テネブラエ大丈夫ですよ。あの人のことはよくわかりませんが闇属性に悪い人はいませんから。
エミルジェイドさん、闇属性なの ?
テネブラエ色合い的には水っぽい気もしますがあのユーモアセンスは闇でしょう。
テネブラエあ、ですが、ユーリさんの方がもっと闇属性ですよ。何しろ真っ黒ですから。ええ。実にセンスがいい。
マルタええ…… ? 色基準なの…… ?
テネブラエそうですよ。ミリーナさんも精霊装の時にお召し物が漆黒の闇色に変わりました。やはり闇属性ですね。
ミリーナふふ、テネブラエさんと一緒で嬉しいわ。
テネブラエそうでしょうとも。
クラースなんと頭の痛い会話だ……。
ベルベットアイゼン。あんた何してるの。
アイゼン――ああ。引っ越しだ。アジトの荷物をケリュケイオンにな。
ベルベット……そういうこと。
ライフィセットえ ? まさかアイゼンケリュケイオンに行っちゃうの ?
アイゼンああ。人手が足りないらしくてな。死神の呪いのことも話したが、今でも地獄みたいなメンツだから今更どうでもいいとさ。
アイゼン異世界にもおかしな連中がいるんだな。ま、アイフリード海賊団には敵わないが。
ライフィセットこのこと、エドナは知ってるの ?
アイゼン別れは済ませた。それにこの世界なら、いつでも会えるだろう。
ベルベット……そんな風に言って結局帰れなくなるなんてのは笑えないわよ。
アイゼンああ、そうだな。
ベルベットそれじゃ、気をつけて。
アイゼンそっちもな。
コーキスはぁ……やっと帰ってこられた……。
カーリャカーリャも外で冒険するのが久々で疲れました~。
ベルベットあら、おかえりなさい。
イクスベルベットにライフィセット。何してるんだ ?
ベルベット食事の準備よ。何だか立て続けに色々起きたけど食事をしない訳にはいかないでしょ。
アーチェああ……。そう聞いたらお腹すいてきちゃった。
ベルベット色々込み入ったことになってるらしいわね。さっきジェイドたちから聞いたわ。
ベルベット珍しく懇切丁寧に説明して回ってるからすぐにみんな情報が共有されると思うわよ。
テネブラエさすが、闇属性は働き者ですね。そういえば、ベルベットさん……でしたか。あなたも闇属性とお見受けしました !
ベルベットな……何よ、この大きなネコ。
ライフィセット何だか不思議な気配がするね……。
マルタえ ! ?今空に飛んでいったのって、ケリュケイオン ! ?
ミリーナえ ! ? フィルたち、出発しちゃったの ! ?
イクスそんな……。精霊装のことフィルの意見も聞きたかったのに……。
ベルベット精霊装…… ? それって、前にスレイとミクリオが話してた帝国の研究 ?
クラースああ。これがあれば、リビングドールにされた人間を元に戻せるかも知れないんだ。
ライフィセットそうなの ! ? だったら、アスベルたちが喜ぶね !
イクスうん。まず当面は、この精霊装を安定して使えるようにしていかないといけないな。
ミリーナその間に、この島のこともきちんと調べて生活の環境を整えないとね。ルドガーさんたちが地図を作ってくれていた筈だし……。
クラース幸い、この世界で空を飛べる乗り物はケリュケイオンだけだ。ここにいる限り帝国から襲われることもないな。
イクスええ。そしていずれは……死の砂嵐に囚われた人たちを助け出して、虚無から世界を救いたい。
イクスティル・ナ・ノーグをニーベルングの二の舞にはしないよ。絶対に。
イクスここが嘘の世界だとしても、俺にとっては真実なんだ。守ってみせる。
ミリーナふふ、イクスったら♪
イクスちぇっ。決まらないな。……そういえば、中々食事する時間も取れなかった。
ベルベットじゃあ、すぐに準備に取りかかりましょう。みんな手伝ってちょうだい。
二人もちろん !
エミルあ、マルタとアーチェさんはいいよ。
二人ちょっと、それどういう意味 ! ?
ベルベットあ、そうだ。アイゼンがケリュケイオンに移籍するらしいわよ。
イクスへぇ……――って、ええ ! ?アイゼンさんだけですか ! ?い、いいんですか、それで ! ?
ライフィセット僕らも今さっき聞いたばっかりなんだ。
ベルベットアイゼンがそうするって決めたんだからあたしたちがとやかく言うことじゃないわ。
ベルベットそれに、今は救世軍とは敵対している訳じゃないんだし。向こうに居てくれた方が何かと便利かもしれない。
ミリーナアイゼンさんのこと、信頼してるんですね。
ベルベットそんなんじゃないわよ。ただ、舵は自分で取るってだけ。
イクス……そうですね。いつも一緒にいることだけが仲間でいるってことじゃないですよね。
ライフィセットちょっと寂しくなるけどね。
コーキスけど、俺たちにもやることはたくさんあるからさ。すぐにそんなこと言ってられなくなるって。
イクスああ。頑張らないとな。……未来を作るために。
to be continued
キャラクター1話【4-1 閑散とした街道1】
ルカカイウス、ルビアの調子はどう ?ケリュケイオンから移って、何か困ってることはない ?
カイウス今は大丈夫。でも…………なあルビア、もう少しどうだ ?ほとんど食べてないだろ。
ルビアうん……でも、もういい……。
カイウスだったら、他に何か欲しいものあるか ?
ルビア……いらないって言ってるでしょ。もう……食べたくない……。
カイウス……そうか。
ルカルビア、無理しなくてもいいよ。でも、以前僕を看病してくれてる時に言ってたよね ?「体力回復には食べなくちゃ」って。
ルビア……そうよね。立場が反対になっちゃった。
ルカあの時、僕の好きなチーズスープを作ってくれたの、すごく嬉しかったんだ。だから食べたい物があったら、いつでも言って ?
カイウスああ、オレが必ず手に入れてくるよ。ルビアが早く元気になるようにさ !そうじゃないと、オレ……
ルビア……ねえ、カイウス。あたしもう少し、食べてみようかな……。
カイウス本当か ! よし、ほらルビア。あーん。
ルビア…………。
ルカえ、えっと、じゃあ僕、ジュードの手伝いしてくるよ !
ジュード食事は終わった ? もう少ししたら薬を――
ルカジュード、丁度良かった !ちょっと質問があるんだけどいい ?
ジュードいいけど……じゃあ部屋の外で話そうか。
ルカルビアの回復、遅すぎないかな。目が覚めたからアジトに移ってもらったけど、未だに一人で起きあがることもできないなんて……。
ジュード僕も気になってるんだ。あの衰弱の仕方は特異鏡映点とも違うみたいだからね。
ジュードアプローチを変えて治療しようにも原因がわからないままじゃ下手な処置はできない。
ルカそうなんだ……。
ジュード今のところ、ルビアの体力に頼るしかないのがもどかしいよ。何か手がかりでもあれば……
シングねえ、ルビアは起きてる ! ?
リタ今すぐに聞きたいことがあるんだけど話はできそう ?
ルカ起きてるけど、もう少し体調が戻ってからの方がゆっくり話せると思うよ。
リタ無理にとは言わないわ。けど話によっちゃ回復の手掛かりになるかもしれないの。
ジュードわかった。二人とも、中に入って。
シングルビア、帝国でつけられてた指輪って、これと同じもの ?
ルビア……宝石の色は違うけど、同じような作りだったわ。
リタやっぱりね。シング、あんたの予想どおりよ。
カイウスそれ、何なんだ ?オレたちが帝国にいたころ、そんなの見たっけ ?
シングこれは、さっきイクスたちが持ち帰って来た精霊輪具だよ。
シングオレは、ミラ――空のマクスウェルからルビアが指輪をはめてたって話を聞いてたんだ。それでもしかしたらって思って。
カイウスあっ、牢から脱出した時の話か !でも、あの時には指輪がはずされてたから――
リタその話はあと。長引くとルビアが疲れるでしょ。――ねえルビア、もう少し話せるなら、指輪をはめた経緯を教えてくれない ?
ルビアええ。……空のマクスウェルは、帝国が捕獲した時に、ひどい傷を負ってしまったらしいの。あたしが見た時には、命を落としかけていたわ。
ルビアだから、どうしてこんな酷いことになったのか、立ちあってたアステルに聞いてみたの。そうしたら――
ルビア「ティル・ナ・ノーグのマクスウェルの残滓を、空のマクスウェルが取り込んだこと」が原因だって言ってた。
ジュードまたマクスウェルの残滓か……。ミラはそのせいで、たまに体調が良くないんだよ。もう一人のミラも、そのせいで……。
リタもしかして、異なるマクスウェル同士が互いを異物とみなして反応したのかしら…… ?でも、エンコードされていれば、そんなこと……。
リタう~ん、とりあえずこの辺はキールやクラースの分野ね。それで ?
ルビアアステルは対策を考えるって、その場を離れたわ。他の研究者たちは、「またマクスウェルに死なれては困る」って騒いでた。
ルビアそしてあたしに、指輪をはめるように言って来たの。その指輪――精霊輪具は精霊の力を吸収する力があるんですってね。
ルビアそれを使えばマクスウェルを助けられるって言われて……。
カイウスバカ ! それで言われるまま使ったのか ! ?怪しいと思わなかったのかよ !
ルビア思ったわよ。……元々、反逆罪であの研究所に送られてたんだもの。きっとあたしは、何かの実験台なんだって。
ルビアでも……目の前で苦しんでるあの人をそのままになんか出来なかった……。
カイウスルビア……。
ルビアだからあたし、精霊装を纏って、この世界のマクスウェルの『残滓』っていうのを……自分を通して、吸収した……の……ハァ……。
リタえっ、ちょっと、大丈夫 ?
ルビア大丈夫……少し……疲れただけ。
シングごめん。体が辛い時に無理させて。でもおかげで色々わかったよ。
リタそうね。今の話でなんとなく見当はついたわ。ルビアの体調がずっと戻らないのは精霊との相性が原因の一つかもね。
ルビア相性…… ?
リタそう。ちなみにイクスは光、ミリーナは闇との相性がいいそうよ。この精霊輪具で、二人ともすごい力を引き出したらしいわ。
リタつまりあんたは、相性の悪いマクスウェルを無理やりに纏って、マクスウェルの力を吸収してしまった。多分、不調はそのせいじゃない ?
リタとにかく、この推測が当たっていれば精霊輪具の研究を進めることでルビアの体を元に戻せる可能性が高くなるはずよ。
カイウス本当か ! ? 良かったな、ルビア !
ルカそれなら、リタたちの研究結果が出るまで、これ以上体力を落とさないように治療方針を考えよう。
ジュードルカも医者の顔になってきたね。
ルカそんな……。でも本当にそうなれるように、ジュードにはもっと色々教わらないと。
シングルビアが元気になったら、きっとミラも喜ぶだろうな。命がけでルビアとオレを逃がしてくれたんだから。
カイウス……ルビアはあの人の命を救ったけど、オレたちだって、あの人に救われたんだよな。
ジュード……助けなくちゃね。もう一人のミラを。

キャラクター2話【4-2 閑散とした街道2】
テネブラエ――なるほど。私の知る姿とは違いますが、その姿もまた、お美しくていらっしゃる。
セルシウスなによ。見慣れた姿でなければ落ち着かないとでも ?
テネブラエいえいえ、どうぞそのままで。また変身する際の参考にもなりますから
セルシウスまたって……、まさか、わたしに変身したことが――
カーリャお待たせしましたー……って、みんなもう集まってますよ !
コーキスやべっ、俺たちが最後みたいだぞ、マスター !
イクスミリーナ、早く早く !
ミリーナ少しゆっくりしすぎたみたいね。ごめんなさい。
リフィルいいのよ。休める時には、しっかり休まないと。
ユリウス精霊装を使ったらしいな。その後、なにか問題は出ていないか ?
イクス大丈夫です。仮眠もとったからむしろ調子がいいくらいですよ。
ジェイドでしたら、早速始めましょう。ここに来て、だいぶ事情が込み入ってますからね。
ジェイドさて――我々が今後とるべき方針についてですが、まずは現在の課題を、ひとつずつ整理していきましょう。
ジェイド手始めに、精霊研究所から持ち帰って来たクレーメルケイジとそれに付属していた精霊輪具ですがこれらの研究と解析を早急に進めねばなりません。
キールそれはもちろん、キール研究室メンバーが請け負う。特にクレーメルケイジなら、ぼくの専門分野だ。
セルシウスそうね。わたしもクレーメルケイジの差異が気になるわ。この世界のものは造りが少し違うようだから、中にいる精霊にどんな影響があるか知っておきたい。
クラース付け加えると、今回イクスたちが精霊装を纏ったことで精霊装による攻撃が、リビングドールに影響を与えることも分かっている。
クラースこれを突き詰めていけば、アスベルたちの仲間のリチャードを元に戻せる可能性もあるんだ。そのあたりも考慮に入れて研究を進めるといいだろう。
ユリウスところで、その精霊輪具の実物は今どこに ?
キールクレーメルケイジはここにあるけど、精霊輪具はリタが無理やり持っていったんだ。会議で使うかもしれないから少し待てって言ったのに !
カロルそれって、ボクがキールを呼びに行った時でしょ ?研究室からリタが飛び出してきたからびっくりしたよ。
カロルどこ行くのって聞いたら、マクスウェルがどうとか、ルビアの回復が何とか……って。で、その後をシングが慌ててついて行ったんだ。
ミラ=マクスウェルマクスウェル ? そう言えば、ルビアという娘は精霊装を纏ったことがあるという話だったな。もう一人の私が、それを気に病んでいたとか……。
ユリウスまあ、リタからは後で話を聞こう。その報告次第では、精霊装の危険性も考慮に入れないとならないからな。
リフィル……精霊関係だけでも、やることは山積みね。
カロルそれじゃあ、ボクたちカロル調査室も、精霊のことを調査する ?
ジェイドいいえ、カロルたちには、帝国の目的について調査してもらおうと思っています。
ジェイドここにいる皆さんには先ほど一通り説明しましたが帝国の目的は相変わらず謎のままですからね。
ミリーナ目的……。ヴィクトルさんの話ではデミトリアスは、ダーナの心核がある精霊の封印地で精霊装の力を解放しようとしたのよね。
テネブラエええ。まるで心核が壊れることなど構わないかのような行いでした。そして実際に、心核の崩壊は始まってしまった。
イクスそれを、もう一人のミラさんが心核に融合して食い止めているんだよな。
ミラ=マクスウェル…………。
ミリーナダーナの心核の崩壊は世界の崩壊と同じなのに、それを厭わないということは、帝国にとって、この世界は滅びても構わないということになるけれど……
ユリウス構わないどころか、むしろ積極的にさえ感じるな。まあ……その情報が本当であればの話だが。
ユリウスその、ヴィクトルという鏡映点は、本当に信用できるのか ?
キール信用できるさ。だってあの男は――
イクスそ、そう ! あの男はバルドさんと行動を共にしてたんですから !
キールそ、そうだ ! そうだぞー !
ユリウスしかし、どこの世界から具現化された人物かくらいわからないと――
ジェイド残念ですが、彼は重症なので、必要な情報以外は引き出すことができなかったようです。何しろ鏡映点リストにも載っていない人物ですからねぇ。
クラースまあ、その辺りの調査は引き取った救世軍の方にまかせればいいさ。
テネブラエユリウスさん、私はその現場の当事者です。情報の正確さは私が保証いたしますよ。
テネブラエどんな嘘にも塗りつぶされぬのが黒き闇。私の言葉は真実のみです。どうぞご安心を。
ユリウス………。そうだな。少し引っかかるが……まあいい。
イクス(……はぁ、みんな上手くごまかしてくれたな。ヴィクトルさんの正体を知らせるならもう少し落ち着いてからじゃないと……)
ユリウス話の腰を折って済まなかった。とにかく、帝国のやろうとしていることは自ら積極的に滅びに行くも同義ということだ。
ジェイド……そうなのかもしれません。それを踏まえると、帝国はこの世界を滅ぼして新世界を作ろうとしているように思えます。
ミリーナジェイドさん、まさかそれってニーベルングと同じ……。
ジェイドティル・ナ・ノーグは、まさに世界が滅びたからこそ生み出された箱庭です。彼らが同じことを考えても、おかしくありませんよ。
ジェイド帝国が分史世界の概念を生み出そうとしているという情報も、別の世界を作り出すためとも聞こえますしね。
ジェイドそれに、帝国にはディストがいますから。ありえないとは言えないのですよ。
カロルなんでディストが関係あるの ?
ジェイド私の世界では、レプリカというあらゆるものを複製する技術があったんです。
ミラ=マクスウェルレプリカ……まるで具現化のようだな。
ジェイドええ。そして私たちの敵であった人物は、人間すべてをレプリカに置き換えようとしていたのです。
ジェイド人と世界、複製を作ろうとしている物に違いはありますが、その発想はよく似ています。
ジェイドディストが帝国にいたのですから、この答えにたどりつく可能性は十分に考えられる。
リフィル……ちょっといいかしら。
リフィルあなたが言うように、一度世界を壊して、具現化なり、分史世界なり、レプリカなり、何らかの手で帝国が新世界を生み出すことが目的だと仮定するわね。
リフィル過去に、ニーベルングは具現化で新たな世界を造った。そしてティル・ナ・ノーグとして発展し、現在また、死の砂嵐で世界は再び滅びかけている。
リフィルもしも、帝国が新たな世界を作り、その世界のおかげで、いま滅びかけているティル・ナ・ノーグの人々が救われるのだとしたら――
ミラ=マクスウェル帝国が考えていることは、あながち悪とは決めつけられない、とでも ?
リフィル現状を考えれば、精霊やそれに属する人たちには面白くない話かもしれない。でも、そういう考え方を見落としてはいけないというだけよ。
イクス……帝国の考え方……か。

キャラクター3話【4-3 閑散とした街道3】
コーキス帝国のやっていることが結果的には正しいかもしれないなんて……。
カーリャ何だか納得できないですよぉ……。
ミリーナそれが答えって訳じゃないわ。リフィル先生は、帝国の目的や考えを見極めなければならないって言ってるだけよ。
リフィルええ。一方的な物の見方は危険だから。
イクスわかっています。……でもやっぱり俺もコーキスやカーリャと同じように思えるんです。
リフィル理由を聞かせてもらえる ?
イクス本当に新世界を作ることで救われるなら帝国は、俺たちと対立せずに、協力を持ちかけてもいいはずじゃないですか ?
リフィルそうね。真の救済をかかげて協力を申し出る方が都合がいいかもしれない。
ミリーナ以前は、ファントムやナーザのように私たちを敵視する人物がいたけど、今なら手を結ぶことも難しくないわね。
イクスああ。だけど協定を申し出るような動きは見えないだろう ?
イクスだからその上でもしかして俺たちを憎むビフレスト勢が異議を唱えて手を組めないんじゃないかって考えた。
イクスでもそれ以前に、メルクリアたちビフレスト勢が今の帝国のやりかたに賛同してるとは、とても思えなくて……。
ミリーナ……ナーザは、この世界の存続と未来のために私たちを殺そうとしていたんだものね。
イクスああ。そのナーザがいなくなったからって、いきなり世界を滅ぼして、新世界にしますなんて計画にビフレスト勢が納得するかな。
ユリウスだとすると、帝国側も一枚岩ではないかもしれないな。
リフィル考えてみれば、当初から帝国が行ってきたリビングドール計画や、神降ろしに精霊装――どれも目的がちぐはぐな印象ね。
リフィルその全てが、そもそも一つの目的に向けた計画ではなかったとしたら……。
ジェイドええ。イクスが言ったようにそれぞれの派閥の思惑や方針の変更などがあったのかもしれません。
ジェイドまずリビングドール計画ですが、これはビフレスト復活のためであることは想像がつきますね。
ジェイドそして神降ろしは、アステルの話から鑑みるに、ダーナ本人の声を聞こうと、もともと帝国が進めていたものでしょう。
ジェイド精霊との接触もその一環かと思われます。
キールヴィクトルは、精霊が分史世界の概念を生み出す為に必要なんだと話していたぞ。
ジェイドそうですね。帝国にとって精霊は複合的に利用価値があるのでしょう。
ジェイドマクスウェルへのこだわりといい、精霊こそが帝国のあらゆる計画の鍵を握る存在と言ってもいい。
カロルそれなら、精霊からもっと話を聞けないかな。ミラやセルシウスは何か知らないの ?
ミラ=マクスウェル済まないが、特に情報はない。私はこの世界のマクスウェルではないからな。
クラースセルシウス、君はエンコードの影響でこの世界の精霊と融合している。何かわかることはないか ?
セルシウス残念だけど、この世界の精霊としての記憶は封じられた状態よ。
ミリーナ……ということは、アイフリードによる精霊の封印はまだ有効ってことなのかしら。
クラース……なるほど。そこで精霊装の登場というわけか。封印された状態でも、精霊の力を取り込んで利用するために編み出されたのかも知れんな。
クラースそれにアステルの話では、帝国は精霊装を『精霊の力でしか壊せないものを壊す道具』として想定しているそうだ。
キールだったら悪用されないうちに、早く精霊たちを味方にしておかないと !
クラースそうだな。では私が精霊の捜索と保護を担当しよう。やれやれ、体力勝負になりそうだな。キールも一緒にどうだ ?
キールぼ、ぼくは……その……。
クラース冗談だよ。精霊輪具やクレーメルケイジの研究を進めておいてくれ。フィールドワークなら私の出番だ。
キールああ、わかった。こっちは任せてくれ !
コーキスあからさまにホッとした顔してるな、キールさま……。
カーリャカーリャは、なに考えてるかわからない人より、よっぽど素直でいいと思いますよ。
ジェイドおや、何か熱い視線を感じますねぇ♪
テネブラエ確かに、メラメラと燃えるような熱視線。カーリャさんはジェイドさんがお好みですか。闇属性を選ぶとは、なかなかにお目が高い。
カーリャ怒りで燃えているんですぅ !
カロルえーっと……精霊輪具の研究はキール研究室で、精霊捜索がクラース精霊研究室っと……。ボクたちは帝国の目的調査と、内部分裂の可能性を……
コーキスカロルさま、ちゃんと今までの話、整理してるのか。
カロルうん、でもかなり難しくて……。コーキスはわかった ?
コーキス俺は……えーっと、つまりその……帝国はこの世界を壊して、新世界を作ろうとしていて、それで俺たちはこの世界を守ればよくて……
コーキスそのために精霊を捜したり、とにかくなんか色々やるんだろ ?
カロルざっくりだね……。
カーリャざっくりすぎます。薄味にもほどがありますよ。
ジェイドいえいえ、上出来上出来。わかりやすくて良い説明ですよ。
コーキスジェイドさま、棒読みじゃねーか !
イクスアハハ、でも本当にわかりやすかったよ。説明ありがとうな、コーキス !
コーキスへへっ、どういたしまして、マスター !
リフィルでは、一度解散ね。それぞれの仕事を始めましょう。
クラースイクス、ミリーナ、セルシウス。この後、クラース精霊研究室へ集まってくれ。精霊関係者たちと、今後について話しておきたいんだ。
二人わかりました。
クラースそれと、ミラはミュゼと一緒に。テネブラエも、エミルとラタトスクに声をかけて欲しいんだが、頼まれてくれるか ?
テネブラエ承りましょう。
ミラ=マクスウェルミュゼもか。確かガイアスのところにいたな。すぐに連れてこよう。

キャラクター4話【4-4 閑散とした街道4】
テネブラエおや、これはこれは…… !
ラタトスクミトス…… ? どうしてお前がいるんだよ。今回は精霊関係者だけじゃなかったのか。
ミトスいいじゃない。見学だよ。
ラタトスク……何か余計なこと考えてるわけじゃねえよな。
ミトス余計なことってなに ?ボクがまた、精霊を裏切るかもしれないって ?
ラタトスクそうじゃねえよ。お前が妙な動きをする理由なんて見当が付くって言ってんだ。
ミトスへぇ……さすがだね。
ミトス――あれ、テネブラエも一緒なの ?ジーニアスやリフィルさんには会った ?
テネブラエええ。先程リフィルさんにご挨拶させて頂きましたよ。残念ながら私のことは知らないようでしたが。
ラタトスクチッ、ごまかしやがって……。
エミルテネブラエ、すごく嬉しそうだね。
ラタトスクあいつは昔からそうなんだよ。ミトスには妙になつきやがって。何をそんなに気に入ったんだか。
ミトス何、ラタトスク、やきもち ?
ラタトスクそんなわけあるか !
テネブラエモテるセンチュリオンは辛いですねえ。ですがご心配なく。私はラタトスク様の忠実な眷属。ラタトスク様が一番です。
テネブラエそれに、ミトスさんが我が主を裏切ったこと私は許していませんから。
ミトス……うん、良かった。それでいいよ。やっぱりテネブラエは面白いね。
テネブラエありがとうございます。ミトスさんなら、そうおっしゃると思っていました。
クラース――さて、挨拶もすんだようだ。そろそろ始めてもいいかね ?
ラタトスクこっちはまだ話が終わってねえ !おい、ミトス。お前がこんな所に来たのはマーテルのことで――
ミラ=マクスウェルラタトスク、その話は後でもいいんじゃないか ?
ミュゼそうよね~。ミラの言うとおりよ。だいたい、部外者云々でミトスのことを言うならそこにいる天族はどうなるの ?
ライラど、どうも~、お邪魔してま~す。
クラースライラは天族代表として私が招いたんだ。ティル・ナ・ノーグでは、元の世界で精霊ではなかった存在も、精霊としてエンコードされているからな。
テネブラエほう、天族で精霊ですか。そうなると、精霊くくりの者があなた以外にもまだいるのですね。
ライラはい。ぞくぞく出てきますよ ! 天「族」だけに !
テネブラエ……どういう方か理解しました。ですがそのセンス、嫌いではありません !
クラース……ともかく、現時点で精霊と定義されている天族も、精霊捜索と保護には重要な存在だと考えているんだ。――ライラ、よろしく頼むよ。
ライラこちらこそ、是非ご一緒させて下さい。この計画に参加することは、私たち天族にとっても有意義なことですから。
ミリーナ張り切ってるわね、ライラ。
ライラはい。アステルさんという方の伝言によるとスレイさんの神依化が、元の世界のように全ての属性の天族とできるようになる可能性があると。
ライラ天族のみんながスレイさんと神依化できれば、同じようにロゼさんとの神依化もできるかも知れません。きっと戦局でお役に立つことも多いかと思います。
ライラミクリオさんに先を越されてしまいましたが、ようやく主神としての務めを果たせそうですわ !
イクス火の天族……か。見た目より熱い人なんだな……。
ミリーナフフッ、そこがとっても可愛いでしょ ?
ミラ=マクスウェルクラース、聖隷は呼ばないのか ?彼らも元の世界では似たような存在だと聞いているが。
クラース天族が精霊と定義されているのは、ほぼ確実なんだがこの世界での聖隷はまだわからなくてね。だから今回は保留としておく。
ミラ=マクスウェルなるほど、ティル・ナ・ノーグでは元の世界そのままというわけにもいかないからな。
ミュゼ私は元の世界そのまま、ミラのことが大好きよ ?
ミラ=マクスウェル私にとってのミュゼはそのままではないが、今のミュゼは好きだぞ。
ミュゼミラーー !
ミラ=マクスウェルではクラース、進めてくれ。
クラースようやくだな……。さて、これから我々のやるべきことは二つだ。
クラース一つ目は、このアジトでの精霊たちと、精霊装を進める。そのためには、精霊輪具の解析が必要になるが、そう簡単ではないから、これは一旦後回しだ。
クラース二つ目は、未発見、未契約の精霊たちを捜し出して保護すること。しかし、この世界にどれだけの精霊がいるかは現在わかっていない。
クラース私も、自分の世界の全ての精霊を把握していたわけではないんだ。そこに加えて、天族の例もある。
セルシウス具現化のせいで、この世界にはいなかったはずの異世界の精霊も増えているわ。全てを把握するのは途方もない作業になるわね。
ミラ=マクスウェルミトスは帝国にいたのだろう ?あちらでは精霊について何か聞いたことはないのか ?
ミトスそうだね。ボクが帝国にいた頃、この世界で認知された精霊なら教えてあげられるよ。
ミトス君の従える四大とマクスウェル、セルシウス、シャドウ、アスカ、クロノス、ヴェリウス、ヴォルト、そしてオリジン。
ミトスあとはジェイドの報告だと、他にもローレライや他の天族が具現化されているんだったよね。
ミラ=マクスウェルこれは助かる情報だ。ありがとう、ミトス。
ミトスどういたしまして。
ラタトスク……お前、ずいぶんと素直じゃねえか。
ミトスマクスウェルには、元の世界で恩があるから、この程度ならね。でも、これで精霊が全てかはわからないよ。
ミュゼそれじゃやっぱり地道に捜すしかないの ?いやだわ、気が遠くなっちゃう。
イクス手がかりはあるよ。アステルの話じゃフィル……ジュニアが、ファントムのカレイドスコープで精霊の力をみつけて、心核を具現化したって。
ミラ=マクスウェルそれを使えば精霊を捜すことも可能ということか。だが、カレイドスコープは確か、ジュニアとファントムの仮想鏡界の中ではなかったか ?
ミトスもしもジュニアが仮想鏡界を維持できていれば、眠ってるファントムを通じて侵入できるんじゃない ?体はこっちで確保してるんだし、すぐ実行できるよ。
ミラ=マクスウェルなるほど。シングの力を借りて、ファントムの心の中に入るんだな。
クラース心の中か……。これは少々勝手が変わってきたな。まあいい。新たな精霊を発見できるなら、どこにでも行ってやるさ。

キャラクター5話【4-5 閑散とした街道5】
ジュード――ファントムの心に入るの ?確かに、今のファントムは眠っているけど彼の精神状態がどうなっているか、わからないんだよ ?
イクスああ。かなり危険だと思う。それでもソーマ使いの力が必要なんだ。頼むよ、シング。
シングもちろん引き受けるよ。当たり前だろ !それに……。
ミラ=マクスウェル…… ?どうしたシング。私の顔に何かついているか ?
シング……ううん、何でもない。オレさ、ジィちゃんから胸の大きな美人が困ってたら、死んでも助けろって言われてるんだ。だから喜んで協力するよ !
ミラ=マクスウェル胸か。なるほど……。シングにとって胸の大きさとは、命をかけるに値するのだな。覚えておこう。
シング……やっぱり、オレの会ったミラとは違うんだね。分史世界と正史世界って不思議だな。
ミュゼでも、どの世界のミラも魅力的なのは変わらないでしょ ?
シングうん。オレもそう思うよ !ところで、今回スピルリンクするメンバーは ?
イクス俺とミリーナ、それにクラースさんとミトスだ。
コーキス俺たちもいくからな、マスター !
カーリャ忘れないでくださいよ !
シングコーキスとカーリャもだね。了解 !ミラやミュゼは行かないの ?
ミュゼ残念だけど、私たちはお留守番なの。
ミリーナファントムの仮想鏡界に入るということは敵の懐に飛び込むのと同じだから、今回は安全策を取ることにしたのよ。
クラース精霊たちを連れて行って、逆に捕獲される可能性もあるからな。
ジュードそれじゃみんな、行こうか。ファントムはこっちの部屋に――
カイウスミラさん、ミュゼさん、ルビアが起きたよ。
ミラ=マクスウェルそうか。今いく。
カーリャミラさま、もしかしてここに来たのって見送りの他に、ルビアさまのお見舞いのためですか ?
ミラ=マクスウェル目を覚ましているなら会ってみようかと思ってな。そうだ、みんなも会ってから出発したらどうだ ?
ミリーナあんまり人数が多いと、ルビアが疲れてしまうんじゃ……
カイウス大丈夫だよ。最近オレの顔ばっかりで飽きてるだろうしルビアもきっと喜ぶと思う。
カイウスルビア、みんながお見舞いに来てくれたぞ !
ミラ=マクスウェル……っ ?
ミュゼミラ、どうしたの ?
ミラ=マクスウェル……いや、なんでもない。
ルビアあなたが……もう一人のマクスウェル ?驚いたわ。本当にそっくりなのね。
ミラ=マクスウェル私が礼を言うのもおかしいだろうが、もう一人の私を助けてくれて感謝するよ。ルビア。
ルビアいいえ、こっちこそ助けてもらったわ。ここで「ありがとう」って言いたいけど、これはあたしを助けたマクスウェルのために取っておくわね。
ミラ=マクスウェルああ。是非そうしてくれ。彼女を助け出した時には、……改めて……話を……
ジュードミラ ! ?
ミラ=マクスウェル……すまない、軽い目眩だ。どうということはない。
ミリーナ以前受けた、マクスウェルの残滓の影響が残っているのかしら。
ジュード(残滓……まさか、ルビアの中のマクスウェルの残滓が……)
ルビアねえ、あなた大丈夫なの ?
ミラ=マクスウェルすまない、ルビア。見舞うはずの相手に、心配させてしまったな。――もう問題ない。
クラースだが……。
ミラ=マクスウェル私は今回留守番だ。その間に休ませてもらうよ。みんなはファントムの所へ行ってくれ。
イクスわかった。ジュード、ミラのことを頼む。ファントムはこっちの部屋だったよな ?
ジュードうん。くれぐれも気をつけて。
シング――よし、スピルリンク成功だ !みんな、ファントムのスピリアに入ったぞ。
クラースこれが人の心の中なのか。クレスたちから聞いてはいたが……。
シングここはまだ、ほんの入り口なんだ。もっと奥へ進んで、仮想鏡界の入り口っていうのを――
ジュードみんな聞こえる ! ?
イクスジュード、どうしたんだ ?
ジュードミラが倒れたんだ !みんながスピルリンクした後、すぐに……
ミリーナやっぱり具合が悪いのね ! 症状は目眩 ?
ジュードうん。さっきはふらつく程度だったけど、今は立てないくらい辛そうなんだ。どんどん悪くなってる。
ジュードミュゼの話では、みんながスピルリンクした直後からマクスウェルの残滓が流れ込んできてるって。
ジュードとにかく、一度そこから戻ってきてくれないかな。もしかしたら、症状の悪化を止められるかもしれない。
シングわかったよ。すぐに解除する。戻ってもいいよね、イクス !
イクスああ、頼む !
シング戻ったよ、ジュード !
コーキスうっ……なんか気持ち悪ッ !出発前は、こんな空気じゃなかったよな ! ?
カーリャ前にマクスウェルの残滓を感じた時と同じですよ。ゾゾゾッていう感じ !
コーキス体がでかかった時は寒気くらいだったけど小さいとこんな感じなんだな。う~……。
ミュゼミラ……ミラ ! しっかりして !
イクスミラの容体は ! ?
ミラ=マクスウェル……すまない……みんなの邪魔をしてしまって……。
ジュードよかった……話せるみたいだね。さっきよりは落ち着いたかな。
ミトス顔色が悪いね。仮想鏡界がほどけた、あの時と同じだ。
ミリーナやっぱり、ミュゼさんの言うとおりマクスウェルの残滓が影響して……。
シングオレ、何か失敗したのかな……。ファントムにスピルリンクしただけで、マクスウェルの残滓が流れ込むなんて。
ミリーナスピリアは心の中だから、集合的無意識と繋がる場所になるわ。そしてその場所はティル・ナ・ノーグの影響を受けやすいから……
イクスティル・ナ・ノーグを支えているダーナの心核が傷ついた影響かもしれない。
イクスヴィクトルさんの話では、もう一人のミラさんが戦った場所は精霊の封印地で、ダーナの心核の近くだったはずだ。
イクスそれで、精霊の封印地に溢れたマクスウェルの残滓が心の世界に流れ込んだ……ってことはないかな。それがファントムの心から流れ込んできてるとか。
クラースもしそうなら、スピルリンクをするたびに、スピルメイズを通じてマクスウェルの残滓が流れてくることに……。
ミュゼそんなのダメよ、ミラが死んじゃうわ !スピルリンク禁止 !
クラース落ち着くんだ。まだ仮定の話だよ。
ルビア……倒れたのは、あたしにも原因があるかも……。
カイウスなに言ってんだよ。
ルビアだって、この部屋に入って来た時から、具合が悪そうだったでしょ ?
ルビア精霊装で吸収したマクスウェルの残滓が原因でこんなことになってるのかもしれないわ。
カイウス……でも、それはルビアのせいじゃ……。
クラース確かにルビアの所に来てから、ミラは具合が悪かった。だがそれはルビアのせいというわけではなく、精霊の力の特性によるものだろうな。
イクスそうか ! アステルが言ってましたよね。広がった精霊の力は、その力の源である心核を目指して戻ってくるらしいって。
クラースマクスウェルの力は、マクスウェルの心核に集うということだろう。
クラースだからルビアが吸収したものも、ファントムから流れて来たものも、ミラの心核に惹かれて流れ込もうとしているんだ。
ミュゼじゃあ、マクスウェルの残滓を取り除けるようになればいいのよね ?
クラースそれは……キールたちの研究が進まないと難しいだろう。
シングやっぱりミュゼの言うとおり、スピルリンクは禁止するしかないのか……。
ミラ=マクスウェルそれでは私のせいでみんなの足を引っ張ることになる。私はまだ耐えられるから大丈夫だ。
ジュード危険だよ、ミラ。
イクス……精霊輪具のようにマクスウェルの残滓を集められる方法があれば……。

キャラクター6話【4-9 迷いの森4】
イクスルビアがもう一人のミラさんを助けられたのも、無理に精霊輪具を使った精霊装をさせられたからだよな。今更だけどアステルがこっちにいてくれれば――
クラースしかし精霊輪具の精霊を吸収する力が解明できてもミラの心核以上の吸引力を担保できるだろうか ?世界は違えど、ミラもマクスウェルだからな。
ミュゼ集めるのも取り除くのも難しいなら捨てちゃえばいいのよ。
コーキス捨てるってミュゼさま、そんなゴミみたいに……。
カーリャその辺のゴミ箱にポイってわけにはいきませんよ ?
ミュゼわかってるわ。私が言ってるのは、マクスウェルの残滓を次元の彼方に飛ばせばいいってこと。
ジュードそうか ! 時空を切り裂く剣だね !
イクス時空を切り裂くって、どういうことなんだ ?
ジュードミュゼの力だよ。それを持つ剣を使えば別の次元への入り口を切り開くことができるんだ。
ミュゼ一度折れてるから、まずは剣を作るところから始めないといけないけれど試してみる価値はあるでしょう ?
ジュードえっ、あの剣、折れちゃったの ! ?
ミュゼそうよ ? 誰かさんのせいでね。待ってて。今から作ってみるから。
ミュゼ…… ?おかしいわ。力が上手くまとまらない。
クラースまさか、エンコードの影響か ?
ミリーナそうですね……。もしかしたら次元に干渉できるようなものは作らせないというこの世界の法則があるのかも知れません。
ミリーナミュゼさん自身が、この世界から別次元へ移動することが不可能な状態だと思うから、きっとその力を使う剣も……。
ミュゼ……そう。
ミトス時空を切り裂く……か。ボクのエターナルソードによく似ているね。
クラースエターナルソード ! 時間の剣か。
ミトスへえ、知ってるんだ。
クラースああ。敵のダオスを倒すためにオリジンに頼んで作ってもらったんだ。だが、その剣は少々違うようだな。
ミトスそうだね。この剣は、ボクのために、ボクの世界のオリジンが生み出した、時空を切り裂く剣なんだ。
ミュゼミトスのその剣はどうしてこの世界に存在できるの ?エンコードの影響は ?
ミトスボクがエターナルソードを手にしているタイミングで具現化されたから――じゃない ?
ミトスもちろん、機能は制限されているよ。元の世界のようには使えない。
ミトスでも、マクスウェルの残滓を、別の次元に集めることくらいはできるはずだ。
イクス本当か ! ?
シングそれじゃ、スピルリンクも可能になるんだな !
ミトスそう簡単な話じゃないけどね。まず、ファントムのスピリアに侵入しないと。そこで残滓を集めて、エターナルソードで封じるんだ。
シング……あれ ? それだと結局スピルリンクはしないといけないってことだよな ?
ミュゼまた、ミラが倒れちゃうじゃない !
ミトスそれ以上に過酷だよ。ファントムの中で残滓を集めるには、その残滓が集まる目標が必要だから。
イクス……それは、ミラを『おとり』にするってことか。
ミトス……そうなるね。
ミュゼダメよ ! 絶対に反対だわ !
ジュード……ごめん、ミトス。提案はありがたいけど、僕も賛成できない。
ミトス別に強要はしないよ。好きにすればいいさ。ボクもマクスウェルが苦しむところをわざわざ見たくはないからね。
ミラ=マクスウェル待ってくれ……。私はこのまま、皆の足手まといになるつもりはない。
ミラ=マクスウェルミトス、その提案を受け入れよう。私がおとりになればいいんだな ?
ミュゼミラ ! !
ミトス……わかった。でも、無理はしなくていいからね。
ミラ=マクスウェルジュード、ミュゼ。私は平気だ。ミトスがうまくやってくれるよ。
ジュード……でも、今のミラの状態で、そんな賭けみたいなことは……。
イクス俺もそう思う。ぶっつけ本番じゃ危険すぎるよ。だからその方法を、ここで試してみないか ?
ミラ=マクスウェルここで…… ?
イクスまず、ルビアの中のマクスウェルの残滓を取り出してみるんだよ。ミラはルビアの中の残滓に反応していただろ ?
ルビア……えっ ?
イクスそれで、ミトスの提案した方法が成功するかミラの体への負担がどうか、確かめてみればいい。危険な事には変わりないけど、どうかな ?
ミラ=マクスウェルそれはいい考えだ。是非やらせてくれ。
カイウスそんなことして平気なのか ?そりゃ、ルビアが元気になるのは嬉しいけど……。
ミラ=マクスウェル君が気に病む必要はない。私が、苦しむ人を救ってやりたいだけだ。
ジュード…………。
ミラ=マクスウェルジュード、ミュゼ。私の身を案じてくれているのはわかる。でもどうか――
ジュードわかってるよ。ミラがそう言うなら、僕は全力で支える。
ミュゼ私もそばにいるわ。
ミラ=マクスウェルああ。頼りにしている。――ミトス、手順は ?
ミトスそうだね。ルビアと接触して、より明確にマクスウェルの残滓に目標はここだとわからせてあげればいいんじゃないかな。
ルビア……無理はしないでね。苦しかったら、すぐにあたしから離れて。
ミラ=マクスウェル安心しろ。私はかなり頑丈で強いんだ。な、ジュード。
ジュードうん。僕の世界の仲間全員が保証するよ。
ミラ=マクスウェルではルビア、手を。
ミラ=マクスウェル――っ…… !(……来い。私は……マクスウェルはここだ)
コーキスルビアさまから光が……うっ ! ? なんかゾゾッと……
カーリャはい、この部屋全体からもマクスウェルの残滓の気配が集まって来ましたね……。
ミトス――今だ !
シングうわっ、空中に小さな穴 ! ?
ミュゼあれは次元に開けた穴ね。でもとても小さいわ。
カイウス光があっという間に吸い込まれた……。
ミトスさあ――終わったよ。
二人ミラ、大丈夫 ! ?
ミラ=マクスウェル……ああ。今ので疲労感は増してるが、ルビアの中の残滓が消えたせいか、体に力が戻って来た気がする。
カイウスルビアはどうだ ?
ルビアあたしも……体が軽いわ。
クラースどうやら、成功のようだな。
シング良かったな、ルビア ! カイウス !
カイウスな、なんでオレまで。
ルビアそうよ、別にあたしたち……
ジュードルビア、まだ安静にね。でもきっと、回復は早いと思うよ。
ルビアありがとう。みんな。それと――これは正真正銘、あなたへのお礼の言葉よ。助けてくれてありがとう、ミラ !
ミラ=マクスウェルああ。喜んで受け取ろう。
イクスミトス、助かったよ。ありがとう !これならきっと スピルリンクもうまく行くと思う。
ミトス……そうだといいんだけどね。

キャラクター7話【4-10 ファントムのスピルメイズ1】
シング――よし、ファントムにスピルリンクできたぞ。
ジュードミラ、具合はどう ?
ミラ=マクスウェルああ、まだ平気だよ。マクスウェルの残滓も感じないな。
クラースこの入り口付近に漂ってたマクスウェルの残滓がアジトに流れ込んでいたのかもしれないな。
クラースさっきのミトスの処置で、アジトに漂ってたものも一緒に封じられたから今はまだ影響が少ないんだろう。
イクスそうすると、もっと奥へ進まないと、マクスウェルの残滓が集まらないのか。
ミリーナ早めにミラさんを帰さないと、ミュゼさんが大変なことになっちゃうわ。
カーリャスピルリンクギリギリまでミラさまにくっついてましたからね。
コーキス最終的に、カイウスさまが無理やり引きはがしてたもんなぁ。
ミトス最初から留守番は決まってたんだから、仕方ないよ。それに妹を大切に思う気持ちは、ボクにもわかる。結局留守番をしているだけ偉いんじゃない ?
ミリーナそうよね、私が同じ立場でも絶対ついていきたいもの。
二人でしょうね……。
ミトスそれにしても……、あのファントムの心に入るとはね。
クラーススピリアは迷路のようだと聞いていたが……心の中とは、みんなこうなのか ?この辺りなんて崩れ落ちてるぞ。
シングスピルメイズは人それぞれだけどでも、こんな風になってるのはきっとファントムのスピリアが壊れかけてるから……。
イクスファントム……。野望のために世界を歪めようとした敵だったけど、あいつだって具現化されたもう一人のフィルなんだよな……。
ミリーナ……その具現化に関わったのはゲフィオンよ。失われたものを甦らせるというエゴのためにファントムは生み出されて、犠牲になった……。
ミリーナ私はゲフィオンとは違う。でも、そう考えてても、やっぱり……。
ミラ=マクスウェルミリーナ、これからの君が何を選び、何をするかが問題なんじゃないか ?
ミリーナ……そうよね。
シングあのさ、こうしてファントムのスピリアに入れたんだから、もしかしたらファントムの心を取り戻してやることも出来るんじゃないかな。
シングスピルーン……じゃなくて、心核をとられてたコハクの時とは違うけど、ファントムがデスピル病ならオレたちソーマ使いが治してあげられるかもしれない。
コーキスデスピル病 ?
シングオレたちの世界で広がっていた、感情が暴走する病気っていえばいいのかな。それで暴れたり、無気力になっちゃったりするんだ。
シングフィリップさんはあんなに穏やかなんだしファントムだって、もしかしたら――
ミトス全てを救おうとして、全てを失うこともある。余計なことはしないほうがいいよ。
シング……余計なこと、か。
イクス………………。
ミラ=マクスウェル……うっ !
ジュードミラ、僕につかまって。マクスウェルの残滓が近くにあるんだね ?
ミラ=マクスウェルああ……呼びかけてみる。ミトス、用意しておいてくれ。
ミトスいつでもいいよ。
ミラ=マクスウェル(この世界のマクスウェルの残滓よ……。私のもとへ……)
カーリャひぃーーゾゾゾっと来ましたよ !
コーキスやっぱ慣れねー !
ミトス集まって来たね。それじゃ行くよ !
ミトス…………え ?
イクス……どうしたんだミトス ?
ミトスエターナルソードが発動しない……… !
シングなんで――うっ、うわあ !ソーマが光って……震えてる ! ?
クラースシング ! ? 何が起こってるんだ !
シングオレにもわからないんだ ! ソーマが勝手に力を――
イクスなんでこんなことに…… !
ミリーナまさか、ここがスピリアだから ?
イクスミリーナ、何か気が付いたのか ?
ミリーナここは心の中、ある意味仮想鏡界と近い特殊な空間よ。だからエターナルソードの次元を切り裂く力が、正しく作用していないのかもしれない !
イクスそれじゃミラが……ジュード !
ジュードわかってる !ミラ、呼ぶのをやめて !マクスウェルの残滓を集めちゃ駄目だ !
ミラ=マクスウェル駄目なんだ……ジュード……。呼びかけをやめたのに……次々に……集まって……。
ジュードミラ――――っ ! !

キャラクター8話【4-14 ファントムのスピルメイズ5】
イクスミラ、無事か ! ? 返事をしてくれ !
ミラ=マクスウェル…………。
クラースミラの体が光ってるぞ……。ルビアの時のように、マクスウェルの残滓が集まって取り囲んでいるのか。
ミトスこのままじゃミラが危険だ。シング、すぐにここから脱出して !
シングそれが……出来ないんだよ !さっきからソーマが変なんだ。今までこんなこと無かったのに……。
ミリーナソーマを持たない私たちがスピルリンクするために、シングのソーマの力を魔鏡術で増幅して補ってるわ。
ミリーナその二つの力と、エターナルソードが干渉しあって力が上手く使えないのかもしれない。
シングでも、ミトスは今までだってエターナルソードを使ってたよな。
ミリーナ現実世界ならエンコードで力を弱められてるけど、スピリアの中で、エンコードそのものが危うくなってるとしたら……。
イクスだから力の制御が効かずに、干渉しあって不安定になってるのか。
シングくそっ、ミラだけでも、ここから出してあげたいのに !
ジュードミラ……しっかりして、ミラ !
ミラ=マクスウェル…………。
ジュード――うわっ ! !
コーキス大丈夫か、ジュードさま !なんでいきなり吹っ飛んだんだ ?
ジュード今のは…… ?
カーリャ見て下さい ! ミラさまを取り囲む光がまるで防御壁みたいになってます !
ミトスマクスウェルの残滓が実体化してる…… ! ?
クラースこれでは近づくことが出来ないぞ。実体化した残滓を破壊しないと。
ジュードあんなもの―― !
ジュード待っててミラ、今助ける !
ミラ=マクスウェルここはどこだ……。
? ? ?『世界を守る ! 』
ミラ=マクスウェル世界を…… ? 誰だ…… ?
? ? ?『――虹の橋を守る』
ミラ=マクスウェルおまえは誰だ……
? ? ?『…………』
ミラ=マクスウェル私は……誰だ…… ?
謎の声――こちらへ。
ミラ! !
? ? ?私は心の精霊ヴェリウス。
ミラ=マクスウェル…… ?
ヴェリウススピリアと呼ばれている世界は、心の世界です。私が担う場所であるからこそ、この異変に気づくことができました。
ヴェリウス今は、もう一人のあなたの姿を借りて、ここにいます。
ミラ=マクスウェル……姿…… ?
ヴェリウスそう、この姿はあなたと同じミラ=マクスウェルのもの。
ミラ=マクスウェル……私……
ヴェリウスそうです。あなたは――
ジュード――ラ ! 必ず―― !
ミラ=マクスウェル誰だ……。
ミラ=マクスウェル……あれは……。
ヴェリウスあなたが覚えていなくともその心には、『彼』や仲間との旅路で得たものが残されているはずですよ。
ジュードその先は研究所だよね。君は一体――
アルヴィンおいおい、こんなイイ男と、女、子どもが重罪人に見える ?
エリーゼあ、あの……え、えと…………なにしてる……んですか ?
ローエンほっほっほ、面白いですね。四大精霊をまるで知人のように。
レイアさあ、まだまだだよ ! 行けー !
ミラ=マクスウェル私は彼らと一緒に――
ガイアス我が字はアジュール王、ガイアス。よく来たな、マクスウェル
ミュゼ私はあなたの姉です。
ミラ=マクスウェル共に旅をして、戦い、人の強さや弱さを知った。私は――
ジュード必ず助ける ! ――待ってて、ミラ ! !
ミラ=マクスウェルそうだ。私は――ミラ !
ジュードうおおおおっ ! !
ミラ=マクスウェル君は――
ジュードうおおおおっ ! !
イクス空破裂光塵 !
ミリーナだめ、まだ壁が壊れない !
シングコハクやヒスイにも応援を頼んでみる !魔鏡通信が上手く繋がればいいけど……
クラース私は精霊たちに、ミラ救出の協力を頼んでみよう。――イフリート、ウンディーネ、シルフ、ノーム !
シングなんだ ? 壁の内側が光ってるぞ !
ミリーナこれは……浄玻璃鏡の光よ !
ミラ――ジュード ! !
ジュード! !
ミラ四大よ ! こい !
イクス精霊たちが、マクスウェルの残滓を突き抜けていったぞ !
クラースまさか、精霊たちは……。
シング内側から壁が壊れた !
カーリャあれは、ミラさまです !
クラースやはり、君が命じていたんだな。
ジュードミ……。
ミラ=マクスウェルミトス、エターナルソードを !
ミトスうん。……マクスウェルの残滓、これでもう終わりにしよう。
コーキスマクスウェルの残滓が消えた……成功だ !
ジュードミラ……。
ミラ=マクスウェル……ジュード。

キャラクター9話【4-15 ファントムの仮想鏡界】
イクス無事でよかったよ、ミラ。
ミリーナ体はなんともない ? 目眩も ?
ミラ=マクスウェルああ。すまない、心配をかけたな。
シングどうして、マクスウェルの残滓をはねのけられたんだ ?オレたちじゃ歯が立たなかった、あの壁まで壊すなんて。
ミラ=マクスウェルヴェリウスの助力があったんだ。
クラースヴェリウス……心の精霊だな。そうか、スピリアは心の世界だから干渉できたということか。
ミラ=マクスウェルさすがクラース、そのとおりだ。そして何より、ジュードや、元の世界の仲間たちが私を助けてくれたんだよ。
ジュード僕たちが ?
ミラ=マクスウェルどうやら私は、この世界のマクスウェルに侵食されかかっていたらしい。
ミラ=マクスウェル自分が何者かもわからなくなった時、私の中に、ジュードたちとの記憶がよみがえったんだ。
ミラ=マクスウェルあれは走馬燈とでもいうべきか……皆と出会った時の記憶が、鮮やかに思い出された。
ジュードミラと出会った時か。衝撃だったなぁ……。
コーキスへえ、衝撃って、どんな ?
カーリャヤボですねぇ、コーキスは。ジュードさまとミラさまの、大事な思い出なんですよ ?
ミラ=マクスウェル大事な思い出……か。そのとおりだよ。
ミラ=マクスウェル私を、私たらしめてくれた、その大事な記憶が、マクスウェルの残滓の侵入をはねのける防御壁になってくれたんだ。
シングミラたちのスピリアが、それだけ強く繋がってたって証拠だね。
ミリーナええ。きっとそれが、オーバーレイの切っ掛けよ。マクスウェルの残滓が作った壁の向こうから、浄玻璃鏡の光が見えたわ。
ミラ=マクスウェル確かに、今思えば、あの走馬燈は浄玻璃鏡が映し出したものだったんだろう。
ミトス……その浄玻璃鏡の力がスピリアに影響してエターナルソードも安定したのかな。シングのソーマはどう ?
シング平気そうだ。元の状態に戻ってるよ。
クラース絡み合った力が、ミラのオーバーレイで打ち消されたとか、仮説は色々と考えられるが……。
ミトスその辺りは研究好きの連中に任せるよ。ミラが無事ならそれでいいから。
シングそうだね ! 今まで通り元気そうでよかったよ。
ミラ=マクスウェルふむ……。今まで通りかというと少々違う気もするが……。
ジュードどこか違和感があるの ?
ミラ=マクスウェル違和感といえばそうなのだろう。浄玻璃鏡には、元の世界で君と旅をしていた時とは明らかに違う景色が見えたんだ。
ミラ=マクスウェル君をはじめ、皆、今とは違う、まるでエレンピオス人のような服装だったし、ミュゼは……そう、今のミュゼのように穏やかだったよ。
ジュードそれは……もしかして……。
ミラ=マクスウェルああ。恐らく未来の私たちの姿だろう。ルドガーたちの世界なのかもしれない。
ミリーナ浄玻璃鏡は、その人の過去だけじゃなくて未来の可能性も映し出すわ。だから未来という推測は正しいんじゃないかしら。
ミラ=マクスウェル……そうか。すると、異世界の精霊と融合している四大はルドガーたちの時代の記憶も持っているんだな。
ミラ=マクスウェル私たちは鏡映点としてここに呼ばれ、リアライザーとなって元の世界とは違う道を歩き始めてしまったが……
ミラ=マクスウェル……なるほど。私たちには、あんな未来がありえたんだな。
ジュード僕は……どんな風になって、どんな道を選んだのかな。ルドガーたちに聞けばわかるんだろうけど……。
ミラ=マクスウェル聞かなくても問題はない。ジュードはジュードだ。何も変わっていなかったぞ。ああ、髪型は変わっていたが。
ジュードそ、そうなんだ。へえ……。
コーキスイメチェンってやつか、ジュードさま !
イクスうん、わかる。髪型で印象って変わるもんな。俺もそれに気がついてから、日々勉強中だよ。
ミリーナふふ♪ 何だって似合うわよ、イクスなら。
クラースさあ、おしゃべりはそれまでだ。本来の目的を忘れるなよ ?
ミトスマクスウェルの残滓の脅威はひとまず落ち着いたからね。ただ、ミラは精霊だから――
ミラ=マクスウェルいや、ここまで来たんだ。私も共に行かせてくれ。
クラースわかった。今回は同行してもらおう。だが、ミラは精霊……しかもマクスウェルだ。くれぐれも気を付けてくれよ。
シングそれじゃあ、スピルメイズのどこかにある、仮想鏡界への入り口を探そう。
シングここ……なんか変だ。これが仮想鏡界の入り口じゃないか ?
ミリーナええ。間違いないわ。何があるかわからないから、慎重に入って。
シングこれは―― !
イクス魔物が、こんなに…… !
ミトスやっぱり、そう簡単には行かなかったね。こっちの侵入を予期してたんだ。
カーリャこの魔物だらけの中を抜けていくんですか ?
コーキスカレイドスコープだって、とっくに運び出されてるかも……。
ジュードだけど、ここで引き下がっても状況は何も変わらないよ。
ミラ=マクスウェルそうだな。カレイドスコープが見つからなかったとしてもその所在くらいは掴まないと、次につながらない。
イクス……その通りだ。とにかく進んでみよう。みんな、気を付けて !

キャラクター10話【4-15 ファントムの仮想鏡界】
イクス広いんだな。下手したら迷いそうだよ。
ミリーナええ。仮想鏡界の規模が大きい。さすがフィル……。いえ、ジュニアとファントムよね。
シングミトス、確かこっちに大きな部屋がなかったっけ ?
ミトスそっちは封鎖されてるみたいだね。ボクたちがいた頃とは、だいぶ造りも変わってるからあまり当てにはしない方がいいよ。
ミリーナそれでも、予想がつくのはありがたいわ。
コーキス――あれ ? あっちの通路、広くて大きいな。
イクス本当だ。何か大きいものの搬入口とか……。行ってみよう。
イクスあった…… ! カレイドスコープだ !
ミリーナ見た目はセールンドのものと似てるけど……。
イクスファントムが作ったものだから、よく調べないとな。ミリーナ、手伝ってくれ。
ミリーナええ !
カーリャイクスさま、頼もしくなりましたね。魔鏡術はミリーナさまの方が詳しかったのに、あんな風に調べられるまでになるなんて。
コーキスうん。その代わりすげえ努力してるよ。本読んで調べたり、みんなから話を聞いたり……。
クラースああ。まだ魔鏡結晶から出たばかりだというのにキール研究室にもよく顔を出しているようだ。
ジュードイクス、ミリーナ、どんな感じ ?
イクスお持たせ。だいたい分かったよ。ファントムのカレイドスコープは、セールンドのものと内部構造がかなり違うんだ。
ミリーナ前にチェスターが持ってきた設計図と比べても、さらに改良されてるわね。
クラースそれで、動かせそうなのか ?
イクスはい。精霊の心核がサーチできるか試しにやってみます。
ミリーナ待ってイクス、どの精霊をサーチするの ?手掛かりになるものが何もないわ。
クラースそれなら、ヴォルトをサーチしてみよう。私が契約したことのある精霊だ。
クラースこの世界でも同じ形態をとっているかはわからないが何もないよりはマシだろう ?
ミラ=マクスウェルヴォルトか……。私たちの世界では、雷を操る精霊だったな。
クラース我々の世界でも雷の精霊だった。
ミトスどの世界でもヴォルトは雷の精霊なんだね。だったら、ボクたちが知っている限りのヴォルトの情報もインプットしてみたら ?
イクスそうだな。みんな、それぞれの世界のヴォルトの特徴を教えてくれ。
ミリーナこれでデータは全部ですね。
クラースああ。それで試してみてくれ。……まあ、上手くサーチできて会えたとしても、まともに会話が成り立つかはわからん奴だがな。
ミトスああ、そっちのヴォルトも話が通じないんだね。でもボクとリフィルさんはヴォルトと会話できたんだ。もしかしたらこの世界でも会話できるかも知れないよ。
ミリーナ――準備、整ったわ。始めましょうか。
イクスカレイドスコープを使うなんて久しぶりだ。なんだか緊張するよ。――それじゃ、サーチ開始。
イクス……何も、見つからなかったな。
クラースやはり駄目か。もっと具体的に、精霊と繋がっているものでサーチできれば結果は違うのかもしれないが……。
ミラ=マクスウェルだったら、ヴォルトではなく、オリジンを捜してみたらどうだ。
ミラ=マクスウェル異世界の物だが、ミトスのエターナルソードはオリジンが作った剣なのだろう ?この世界のオリジン捜しに役立つかもしれない。
クラースあーーっ ! そうだ、それがあったじゃないか……。
ミラ=マクスウェルオリジンについては、他にも気になることがあるんだ。ミトスがマクスウェルの残滓を封じた直後、私の心に、ヴェリウスが話しかけてきたんだが――
ヴェリウスミラ……、ミトスのエターナルソードによってマクスウェルの残滓は、次元の穴に封じられました。
ヴェリウスですが、今後も気を付けなければなりません。帝国が、マクスウェルを精霊装として利用するたびにマクスウェルの残滓は、心の世界に四散します。
ヴェリウスですが、この四散した残滓が、再び精霊輪具に還る前に回収できれば帝国の精霊装の力を削げるでしょう。
ヴェリウスそして、覚えておいてください。マクスウェルの残滓は、あなたにとっては危険ですがこの世界を存続させるためには大切なものです。
ヴェリウスこの世界のマクスウェルは、ニーベルングとティル・ナ・ノーグを繋ぐ虹の橋をオリジンから託された守護者なのです。
ミラ=マクスウェル――私にはいまひとつ、理解できなかったんだが君たちは何か知っているか ?
イクス虹の橋だって…… ! ?それが本当にあるっていうのか !
ミリーナ伝説だとばかり思ってたわ……。私たちが知ってるものと同じなのかしら。
シング伝説って、どんな ?
ミリーナ虹の橋っていうのは、オーデンセに伝わる伝説のひとつなの。水鏡の森の奥で見られる、幻影だっていわれているわ。
ミリーナヴェリウスが言う虹の橋が、それと同じものだとしたら――
? ? ?――なるほど。ヴェリウスと接触していたか。
全員! !
シング敵か ! ? 今の、どこから聞こえた ?
ミトスボクにもわからない。
カーリャ誰もいないのに、声が聞こえるなんてまるで魔鏡通信みたいですね。
ミリーナまさか、私たちのほかにも、似た仕組みを開発して――
帝国軍兵士グラスティン様、いました ! 鏡士の一団です !
グラスティンよし、捕らえろ ! マクスウェル以外は――いや、その黒髪の坊やはコレクションに加えよう。
グラスティン坊やとマクスウェル以外は殺しても構わん。
ジュード! !
ミラ=マクスウェル貴様……何を ! !
シング兵士が集まってきてる !これじゃもう、戦って突破するしかないよ。
クラースああ。こうなるのは覚悟の上だ。ミラ、絶対に捕まるなよ !
イクス行くぞ、みんな !
コーキス……いっ……。
カーリャコーキス ?
コーキスう……うああっ ! 目が、目の奥が……痛っ…… ! ?
イクスコーキス、どうしたんだ ! コーキス ! !
to be continued
キャラクター1話【5-1 カレイドスコープ1】
カイウス……ミラさんとジュード、遅くないか ?何かあったのかな。
ミュゼやっぱり私がついていけば良かったわ。ああ、ミラ……。
ルビアカイウス ! どうしてそういうこと言うの ?デリカシーがないわね。
カイウスチェッ、ちょっと良くなったかと思ったらすぐこれだ。
ルビアなによ、あたしが元気になるのがそんなに嫌 ! ?
カイウス嫌なわけないだろう ?どれだけ心配したと思ってるんだ。
ルビアそ、そう。ふーん。
ミュゼ……はぁ、みんな早く帰ってこないかしら。
エルもしもーし、ルビア、入ってもいい ?
ミュゼあら、エルじゃない。それにエリーゼたちも。どうぞ、遠慮せずに入って。
ティポエラそー、ミュゼの部屋じゃないのにさー。
エリーゼルビア、体は大丈夫ですか ?少しだけ元気になったって聞いてお見舞いに来たんですけど……。
カイウス少しどころか、うるさいくらいだよ。
ルビア……カイウス ?
アミィあ、あの、ケンカはやめましょう、ね ?
エルそうだよ。ルル抱っこすれば ? 落ちつくよ。
ルルナァ~ !
クレアフフ、二人とも。これはケンカじゃないから大丈夫。ね、カイウス、ルビア ?
二人……はい。
クレア私たち、さっきまでセシリィのお見舞いに行ってたのよ。部屋にいたルカから聞いたけど色々と大変だったわね。
ルビアええ。おかげで体が楽になったわ。でも、ミラは具合が悪いままスピルリンクしているからそれが心配で……。
エリーゼジュードとミラ、まだ帰って来ないんですか ?ルカは、二人は先に戻るはずだって話してたのに。
リタルビア、ちょっといい ? ……あっ。
ルルナァ~。
リタニャー……じゃなくて、あんたの場合は……ナァ~、ナァ~。
ルルナァ~ !
エル前から思ってたけど、リタってルルとなに話してるの ?
リタ別に話してないけど ?それにしても何 ? こんなに集まって。
ルビアみんなお見舞いに来てくれたのよ。もしかしてリタも ?
リタあたしはマクスウェルの件が気になっただけで別にお見舞いっていうか……まあ、それでもいいわ。元気になってよかったわね。
ルビアありがとう。リタが手掛かりを掴んでくれたおかげよ。
リタマクスウェルの残滓の除去については大まかにルカから聞いたわ。けど、もう少し詳しく聞かせてほしいのよね。
ルビアいいわよ。ミラがあたしの部屋に来た時にね――
リタミラに残滓が集まる……精霊輪具も力を集める……。装備者の適合、不適合の判断……。
リタ指輪という人工的に作ったものに集まるなら精霊輪具自体に、特定の情報を解析したり蓄積する機能が備わってる…… ?
? ? ?―――― ! !
ミュゼ――っ、なに、今の ! ?
リタちょっと、静かにして ! 今、考えて――
エリーゼ……何か聞こえましたよね ?ファントムの部屋の方からです。
ミュゼ今のは四大の声よ。助けを求めてるわ !
クレア四大って、四大精霊のことよね ?私には何も聞こえないけれど……。
ミュゼミラがファントムの中にいるから近くにいる私に強く感じられるのかもしれないわ。
エリーゼ四大の声がわたしに聞こえたのも精霊術を使うからでしょうか ?
ミュゼわからないけど、とにかくミラが危ないの !すぐに助けに行かないと !
リタオロオロすんじゃないの。イクスかミリーナに魔鏡通信で確かめればいいでしょ。
カイウスそうだよ。精霊は危険だから留守番してるんだろ ?これでミュゼさんに何かあったらミラさんが悲しむぞ。
ミュゼでも…… !
エリーゼミュゼ、わたしが行きます。ミラやジュード……みんなを連れて帰ります !
ティポぼくら精霊じゃないもんねー。止めてもムダだよー !
リタ……しょうがないなぁ。んじゃ、あたしも行く。気になることもあるし小さいのだけじゃ行かせられないし。
ティポリタだってちっちゃいくせに。
リタそこ、うっさい !
カイウスミュゼ、ここはエリーゼとリタたちに任せよう。いいよな ?
ミュゼ……わかったわ。
クレア私は、コハクかヒスイさんを呼んでくる。それと他の人たちにも、この状況を伝えてくるわ。エル、アミィも手伝ってもらえる ?
エル・アミィはーい !
コーキスう……うああっ ! 目が、目の奥が……痛っ…… ! ?
イクスコーキス、どうしたんだ ! コーキス ! !
シングイクス、コーキスを連れて下がってて。ここはオレが食い止める !
ミラ=マクスウェルこれだけの敵を防ぐのは難しいだろう。私も前線を預かる。
ミトスミラは後ろにいて。ついでにジュードもね。
ジュード僕も戦うよ。ここはみんなで協力しないと無理だ。
クラース君たちには下がっていて欲しいが戦力的には仕方ないか。
コーキスマスター……マスターは大丈夫なのか…… ?この痛みは……俺だけ…… ?
イクスああ。こっちには何の影響もないよ。
コーキスだったら戦ってくれ……。俺はいいから……みんなを……。
カーリャコーキスのことは任せてください !
ミリーナ……イクス、私たちも戦いましょう。早くこの囲みを突破しないとコーキスをちゃんと看てあげられないわ。
イクス……そうだな。――シング、ミトス、俺と一緒に切り込むぞ !みんなは援護を頼む !

キャラクター2話【5-2 カレイドスコープ2】
イクスはぁ……はぁ……。こっちが押してるぞ !今なら突破して逃げられる !
グラスティンそれはどうかな ?
シング兵士の増援 ! ? こんなにたくさん !
ミトスさすが雑魚だね。無駄に数ばかり多い。
帝国軍兵士1おい、マクスウェルとそこの少年。大人しくすればお前たちは傷つけない。投降しろ !
ジュードはぁ……はぁ……ミラは絶対に渡さない !
グラスティンヒヒッ、いいぞ坊や……。活きがよくて興奮するなぁ。もっとその黒髪を振り乱して、抵抗してみせてくれ !
? ? ?ヘ、ヘンタイだ―― ! !
グラスティン! ?
? ? ?どこから話しかけてるのか知らないけどキモイのよアンタ !――ファイアボール !
帝国軍兵士たちうわああああっ ! !
コハクみんな、大丈夫 ! ?
シングコハク ! ?
ミラ=マクスウェルリタとエリーゼも一緒か !
エリーゼミラ、ジュード、間にあって良かったです !
グラスティンああ……せっかくのショーが台無しだ。……しかし、そこの黒髪のお嬢さんはイイね。実にイイ !
コハクな、何なの……気持ち悪い !姿を隠してないで、堂々と出てきなさいよ !
シングコハク、気を付けて !あいつ黒髪がなんとかって変なことばっかり言うんだ !
ティポタイヘンなヘンタイ ! タイホされちゃえー !
グラスティン変態か……。フフ、それで ?お前達が俺にどんなレッテルを貼ろうと俺の邪魔はできないさ。
リタあっそ。コハク、エリーゼ、いける ?
エリーゼバッチリです !
コハクボコメキョにしてやるから !
リタじゃあね、ヘンタイ。タイダルウェイブ !
エリーゼフラッターズ・ディム !
帝国軍兵士たちぎゃああああっ ! !
グラスティン騒ぐな、次の詠唱に入る前に奴らを潰せ !
コハクそう来ると思った !エクスプロード !
帝国軍兵士1時間差だと ! ?グラスティン様 ! このままでは――うわあああっ !
グラスティン……肉が増えたな。フフ、こいつはめでたい。とはいえ、マクスウェルと黒髪の子供達は捕まえないとな。もっと兵を集めろ !
ミリーナまだ諦めるつもりはないみたいね。
イクスとはいえ、何とか時間を稼げそうだな。助かったよ。リタ、コハク、エリーゼ。でも、どうしてここに ?
コハクエリーゼとミュゼに四大の助けが聞こえたの。それを頼りにたどりついたんだよ。それに、ここからシングのスピリアを感じたから……。
リタ話はあと。ミラたちをさっさと逃がして。ミリーナ、あの子は使える ?
ミリーナあの子って、カレイドスコープ ?
リタええ。今のうちにどうしても抜き出したいデータがあるの。すぐに終わらせるから手伝って。
ミリーナ……わかったわ。みんな、先に行って。
イクスだったら、俺とシングがここに残る。クラースさん、みんなを連れて逃げて下さい。
クラース二手にわけるなら私もこちらに残ろう。シングと二人だけではデータを抜き出す時間を稼ぐのは難しいぞ。
イクスいいえ、ミラたち側に戦力を固めた方がいい。……そちら側の方が負担が大きくなると思うので。
クラース――そういうことか……承知した。
イクスすみません。こちらでもなるべく敵を引き付けます。
クラースいや、敵はできうる限りこちらで請け負う。
コハクシング、信じてるから……またね !
シングああ、みんなを頼んだよ、コハク !
ミトス―― !もうそろそろ来るよ。追加の雑魚が。
ミラ=マクスウェルわかった。行くぞ !
ジュードイクス、ミリーナ、シング、リタ、気を付けて !
グラスティンなんだ、追いかけっこかい、坊や ?いいねぇ、捕まえてやるよぉ !
グラスティンお前たち、マクスウェルを逃がすな。最優先だぞ。黒髪の二人は俺のところに必ず連れて来い !残った肉どもの処理も忘れるなよ。
帝国軍兵士2承知しました !マクスウェル捕獲に人員を投入しろ !
シングくそっ、兵士がミラたちの方へ !
イクスまだ増援の兵士は集まりきってない。あのままなら逃げ切れると思う。
イクスミラたちに追っ手の人数が割かれることを想定の上でクラースさんたちに頼んだんだ。この方が全員生き残る可能性が高い。
シング……わかった。だったら、オレたちはここでできるだけ敵を食い止めよう !

キャラクター3話【5-6 カレイドスコープ6】
イクスミリーナ、リタ、データはまだか !
ミリーナもう少しよ ! カーリャ、コーキスはどう ?
カーリャ我慢してるけど、ずっと痛がってます……。
コーキスへいき……だって、パイセン……。
リタ終わったわ。とっとと逃げるわよ !
シング……さっきからグラスティンの声がしないな。もしかしたらミラたちの方に気を取られてるのかも。
イクスそれならこっちに兵を追加されることもなさそうだな。今のうちに突破だ !
帝国軍兵士1くそっ、こんなはずでは…… !
ローゲなんの騒ぎかと思えば、また貴様らか。グラスティンは何をしている !
帝国軍兵士1ローゲ様 !
ローゲまあ、今回は良しとするか。これで以前の礼ができるからなぁ ?盗人の鏡士どもよ。
イクスローゲ…… !
シングイクス、オレがこいつを引きつける !その隙に兵の囲みを破ってくれ !
イクスシング、ローゲ相手に一人は無理だ !
ローゲシング ? そうか、お前が裏切者のシングか。メルクリア様がたいそう心を痛めていたぞ ?
シング裏切られたのはこっちだ !お前たちが騙してコハクに酷いことをしたからだろう !
ローゲ聞く耳もたん。貴様も鏡士同様、ここで死ね !
リタシング、離れて ! ブラッディハウリング !
帝国軍兵士たちぎゃああああっ !
帝国軍兵士2あ……あの女……いつの間に詠唱を……。
リタあんたらの上司がグダグダしゃべってる間にね。みんな、こっちから突破よ !
イクスコーキス、俺の手に乗れ。
コーキス……うっ、マス……タ……。
ローゲチッ、逃がすか ! !
イクスくそっ、ローゲを足止めしないと駄目か !シング、コーキスを連れて下がってくれ。ミリーナ、精霊装だ !
ミリーナわかったわ !
イクス精霊よ輝け ! 陽剣・至白刃 ! !
ローゲぐおおおおおおっ !やはり精霊装は……我らにとって……。だが、まだだ。俺はまだ…… !
ミリーナ精霊よ織りなせ ! 月鏡・継黒陣 ! !
ローゲ体が……動か……くっ…… ! !
イクスよし、今のうちだ !
リタイクス、ミリーナ、早く !こっちにゲートを見つけたわ。
シングゲートなら、現実世界に出られるかもしれない。行先はわからないけど……。
ミリーナいいわ、そのまま飛び込んで !
カーリャだ、大丈夫なんですか ! ?ミラさまたちの後を追うって選択も……。
イクスここから脱出するのが優先だよ。考えるのは後でいい。
カーリャふぇぇ……。まさか、イクスさまがそんなこと言うなんて !
リタほら、いいからさっさと入る !
ローゲしまった ! あのゲートは――

キャラクター4話【5-7 地下室1】
イクスここは…… ?
ミリーナ何かの研究所みたいね……。しかも大慌てで出てったみたいに機材も何もかもそのままだわ。
シングあっ、そうか ! ここセールンドだよ。セールンドのカレイドスコープの間の地下だ。
リタセールンド ? なんで帝国の仮想鏡界のゲートがこんな所に繋がってるわけ ?
シング帝国は精製所の他にここでもリビングドールの研究をしていたんだ。
シングカイウスから聞いたけど、マーテルさん救出の時に心核がカレイドスコープの間の地下にあるって情報が流れたんだろう ?
シングカイウスたちが、その情報を否定できなかったのはこの施設の話を知ってたからだと思う。
リタふうん。ここでもリビングドールをね。誰もいないけど放棄されたのかしら。
ミリーナイクス奪還作戦で私たちが乗り込んだから……。
リタ確かに、あの騒ぎじゃ研究どころじゃないか。……ってことは、もしかして !
シングあっ、どこにいくんだよ。リタ !
リタまさかとは思うけど……もしかしたら……。やっぱりあった !
ミリーナ心核 ! ? それもかなりの数よ。
リタミトスはここでコハクの心核を手に入れたんでしょ ?だから他にもあるんじゃないかって。
リタ……正直、予想としてはあんま当たって欲しくなかったけど心核を置いて逃げてったみたいね。
シングじゃあ、奴らが回収に来るかもしれない ?
リタどうだろう……。放置しつづけてるってことは、回収の必要がなくなったからかも。
シングそんな……心核は人の命なのに。これじゃ捨てられてるのと同じじゃないか !
ミリーナ考えられなくもないわ。リビングドールの中には本体の心核が邪魔だと考える人がいるかも……。
シングこんなの可哀想だよ。
イクス……だよな。この心核、俺たちで持って帰ろう。
ミリーナそうね。それに、まだ会っていない鏡映点の心核がこの中に入ってる可能性もあるから。
リタ付け加えると、この心核を調べることでリチャードの心核を正常に戻す手掛かりが見つかるかもしれないわ。
シングだといいな。アスベルたちが喜ぶよ。
ミリーナそうね。でも、リビングドールを生み出すには色々な方法があるみたいだから――
コーキスううっ…… !
イクスコーキス、大丈夫か ?
コーキスごめ……話の……邪魔して……。
イクスいいんだよ。我慢するな。
カーリャそうですよ。もっとギャーギャー叫んだっていいんですから。
コーキスへへ……かっこ悪ぃ……。
カーリャミリーナさま。ジェイドさまの方法は試せませんか ?痛みを抑えるためにコーキスを気絶させてましたよね ?
ミリーナあれは医学的な知識が必要な危険な処置なの。もしできたとしても、今のコーキスの小さな体にあんなことできないわ。
イクスジェイドさんがそんなことを ?
ミリーナええ。魔鏡結晶の中にいたイクスはもっとひどい痛みに襲われていたはずよ。
イクス魔鏡結晶の……。そうだ !ゲフィオンなら何か知ってるかもしれない。
ミリーナゲフィオンが ?
イクスコーキスに伝えた魔眼の話はゲフィオンから聞いたものなんだよ。
イクス【その目はイクスと繋がっている。自分のアニマとイクスのアニマを重ねて合わせて、死を放て。それこそが鏡精に与えられた禁断の魔眼だ】――って。
イクスでも、魔鏡結晶の中にいたゲフィオンも俺と同じように、ひどい痛みに苦しんでいて……それ以上の話はできなかったんだ。
ミリーナ…………。
イクスできるかどうかわからないけどもう一度ゲフィオンと話をしてみるよ。幸い、この上はカレイドスコープの間だしな。
ミリーナ……わかったわ。ゲフィオンの魔鏡結晶へ行ってみましょう。

キャラクター5話【5-9 地下室3】
セールンド カレイドスコープの間
カーリャゲフィオンさま……。ずっとこの魔鏡結晶の中で死の砂嵐を封じているんですね……。
ミリーナ……今はシドニーがゲフィオンにキメラ結合して一緒に死の砂嵐を封じてくれてるわ。
イクス……シドニーを身代わりにして、俺だけが――
ミリーナ違うわ !……お願いだから、そんな風に思わないで。シドニーだってそんな風には思ってない筈よ。
イクス……ごめん。
シングミリーナの言うとおりだよイクス。それに自分のために命をかけてくれた人がいるならなおさら前に進まないといけないんだ。そうだろ ?
イクスシング……。
シングほら、コーキスのためにも早くゲフィオンに話を聞こう。――ゲフィオン ! 聞こえてる ?
………………
リタ返事どころか物音一つなしね。ま、そう簡単にいくとは思わないけど。カーリャやミリーナは聞こえた ?
ミリーナいいえ、何も。
カーリャカーリャもです……。魔鏡結晶で覆われる前なら、ゲフィオンさまの心の苦しみとかが伝わってたんですけど……。
イクス……俺の力が結晶化したのがこの魔鏡結晶なんだよな ?
ミリーナええ。
イクスもしかすると、俺なら巨大魔鏡結晶を通じてゲフィオンに――……うわっ ! !
ミリーナイクス ! ?
リタなっ、なにが起こってんの ! ? 何かした ! ?
シングイクスが魔鏡結晶に触れただけだよ !どうなってるんだ、ミリーナ。
ミリーナこれは急激なオーバーレイ現象だわ。どうしてこんな……… ?
イクス……あれ ?この場所、前にコーキスと……。
ゲフィオン久しぶりだな、イクス。
イクスゲフィオン……様…… ?
ゲフィオン魔鏡結晶に触れただろう。あれはお前の力を具現化したもの。触れたことで体が急速に力を取り戻そうとしているようだな。
ゲフィオンそのせいで現実の世界のお前はオーバーレイ現象を起こしている。
イクス現実ってことは、やっぱりここは俺の心の中なんですね。どうりで見覚えがあるはずだ。
ゲフィオンよく聞きなさい、イクス。今後、不用意に魔鏡結晶に触れてはならぬ。
ゲフィオンたとえ触れずとも、今も魔鏡結晶を通じて虚無の痛みが、お前の内側を蝕んでいるのだから。
イクス今もだなんて……気づかなかった。
ゲフィオンコーキスが痛みを引き受けているからな。
イクスそれじゃ、コーキスは俺の身代わりで……。
ゲフィオン……そうだ。だが、コーキスを救う方法はある。
ゲフィオンお前の体は、あの浮遊島を作ったせいで、一旦、力を使いきってしまい、コーキスも幼体となった。だが今は魔鏡結晶に触れたことで、急速な充填状態にある。
ゲフィオン力が回復すれば、コーキスも再び成体に戻るだろう。そうなれば、コーキスにリンクしている痛覚を切り離してやることができる。
イクス切り離す…… ?もしかしてそれは鏡精を――
ゲフィオンそうだ。鏡精を独立させるための技法、その応用となる。だが、ともすれば、これにより虚無の痛みをお前が……。
イクス教えて下さい。一刻も早くコーキスを救ってやりたいんです。
コーキス――いっ……ああああああっ ! !
カーリャコーキス !どうしましょうミリーナさま。今までで一番苦しそうです !
ミリーナシング、イクスをお願い。コーキス、私の声が聞こえる ?
コーキスミリーナさま……頼む……俺の目……取って……
カーリャな、何を言ってるんですか !
コーキス苦しいんだ……痛くて……痛くてもう……お願いだよ先輩……駄目なら自分でやるから―― ! !
カーリャやめなさい、コーキス !
ミリーナ駄目よ !
コーキス離してくれ ! うああああっ ! !
ミリーナごめんなさいコーキス……。私、あなたにこれくらいしか……。
リタちょっ、ミリーナ !そんな暴れてるコーキスを抱いてたらあんたが怪我するわ !
ミリーナ大丈夫……大丈夫よコーキス……。いい子だから落ち着いて……。
コーキスくうっ ! ! はぁ……はぁ……。…………。
ミリーナコーキス……、コーキス…… ?――きゃああっ !
カーリャコ、コーキスの体が……大きくなった ! ?
リタ何でいきなり――
イクス――っ ! !
シング危ない !
リタなっ、何 ! ?
カーリャそ、そっちはどーなってるんですか ! ?
シングいてて……イクスが魔鏡結晶からふっ飛ばされたんだ。なんとか受け止めたけど……。
ミリーナイクス、コーキス……。あなたたちに何が起こってるの…… ?

キャラクター6話【5-10 セールンド】
ゲフィオン――イクス、痛覚の切り離しはうまくいったようだな。
イクスありがとうございます。おかげで、これ以上コーキスに苦しい思いをさせずに済みました。
ゲフィオンお前も意識を戻した方がいい。そして私には二度と話しかけに来てはならない。
イクスそんな……俺たちはまだ聞きたいことがあるんです !
ゲフィオン私は心と記憶の一部を切り離した。故に、お前たちの疑問に正確な答えを与えることはできないのだ。
ゲフィオンお前に教えたコーキスの魔眼のことも今の私の持っていた知識ではない。……だから、私と話しても無駄なのだ。
ゲフィオン私の正しい記憶は【カーリャ】が持っている。必要だと思うのなら、カーリャを捜せ。
イクスカーリャなら、今もミリーナと一緒にいますよ ?
ゲフィオン捜すのは私の……ゲフィオンの【カーリャ】だ。
イクス! !……そうか。そうだよな。【ミリーナ】には【カーリャ】だもんな。
ゲフィオン…………。
ゲフィオンフィルならば、私が忘れようとしたことも知っているはずだ。
イクスゲフィオ――……ミリーナ……。
コーキス……ん…… ?
カーリャコーキス ! 気が付いたんですね !
ミリーナ目はどう ? 痛みはない ?
コーキスはい……嘘みたいに無くなって……って……あれ ?
コーキス俺、大きくなってる ! ?
コーキス――ってか、何だこのカッコ ! ?ダサッ ! ? え、これ、またマスターの趣味か ! ?
リタ……その様子なら、ひとまず大丈夫そうね。一時はどうなるかと思ったわ。シング、コーキスが目を覚ましたわよ。
シングコーキス ! よかった、動けるんだな。けど、無理はするなよ。
コーキス大丈夫。すぐ戦えるくらい元気だって。ありがとな、シング様。……ところで、マスターは ?
シングあっちで寝てるよ。突然オーバーレイ化したあと魔鏡結晶からはじき飛ばされて、気を失ったんだ。
コーキスえっ ? マスター、大丈夫か ! ?
リタコーキス、ストップ !……誰か来る !
ローゲここにいたか、盗っ人ども。
全員ローゲ !
ローゲほう、呑気に昼寝とはな。大した度胸だ。
シングしまった、イクスが…… !
コーキスマスター ! 起きろよ、マスター !
ミリーナまだ意識が戻らないんだわ……イクス !
ローゲ貴様ら、地下にあった心核を盗んだな。返してもらおうか。でなければ、こいつの首をかっ切る。
ローゲそれとそこの小娘。貴様が動いてもこいつを殺す。
リタ……くっ。
ミリーナ(どうしよう……私一人の精霊装でどこまでローゲの動きを止められるか……。失敗したらイクスは……)
シング……ミリーナ、一瞬だけでもローゲをひるませられる ?
ミリーナわからない。けど……。
コーキス信じてください、ミリーナ様 !マスターは必ず俺が――
ローゲ返事は無しか。ならば死ぬのは、こいつからだ !
カーリャイクスさま !
ミリーナ――精霊よ織りなせ ! 月鏡・継黒陣 ! !
ローゲぐっ……やはり体が……だがこの程度…… !
シング行くぞ、コーキス !
コーキスマスターから離れろ――っ ! !
ローゲぐおおおおおっ ! !
コーキスマスターを傷つける奴は許さない !
バルバトス鏡精……この悪魔が……。
シングやった……。精霊装で隙が作れなかったら危なかったな。
ミリーナイクス !
コーキスマスターに怪我はなさそうだ。よかった……。
リタローゲも完全に気絶してるわ。まあ、あんだけ攻撃くらったしね。
シング……ん ? イクスの持ってる心核……光ってないか ?
カーリャあ、これですね。この一つだけピカピカしてます。
ミリーナ心核が光るなんて、コハクの時みたい。
シングうん。あの時はオレのソーマに反応してたんだ。
リタってことは……これはローゲ――じゃなくてえっとバルバトスだっけ ? その心核なんじゃない。
ミリーナだとすると、さっき倒れた時にイクスが持っている心核に触れたのかもしれないわね。
リタこの心核を今のうちに戻したらどう ?そうすればこいつ、追って来られなくなるでしょ。
ミリーナでも、バルバトスはカイルの敵だって言ってたわ。元の世界では、かなり暴力的な人物だとも聞いているし……。
リタなんもしないで追いつめられるよりマシよ。
シングバルバトスが敵になるとしてもオレは本人に体を返す方がいいと思う。こんな状態はおかしいんだからさ。
ミリーナ……そうね。カーリャ、私たちはローゲにスピルリンクするからイクスをお願い。
カーリャ任せてください。いいですかコーキス、ミリーナさまのことちゃんとお守りするんですよ !
コーキスへへっ、そんなふうにパイセンに頼まれるのは久しぶりだぜ。なんか嬉しいな。
コーキスそれじゃ行きましょう、ミリーナ様。必ず俺が守ります !

キャラクター7話【5-10 セールンド】
シング――ここだよ。きっとあれがローゲのスピルーン……人工心核だ。
ミリーナシング、コハクの時とは少し違うけど基本的にはスピルーンの扱いと同じだと思うからお願いしてもいい ?
シングああ、いいよ。人工心核を外してバルバトスの心核をおさめれば……よし、完了っと。
シングはい、これが人工心核だ。
ミリーナありがとう。これでバルバトスに戻るはずよ。
コーキスさっきまであんなにしつこかったローゲが今はこの人工心核の中ってわけか。
ミリーナ改めて考えると、シングたちのソーマってすごい力なのよね。
リタねえ、その人工心核見せて。
ミリーナええ、いいわよ。
リタ……ふうん。これが魂を定着させてるのね。……ってことは、応用も……。うん、わかったわ。ありがとう。
ミリーナ何か考え付いたの ?
リタまあね。とりあえずここを出ましょ。ローゲの他に追っ手が来ないとも限らないし。
コーキスよし !早くマスターとパイセンのところへ帰ろう。
カーリャあっ、お帰りなさい !
ミリーナただいま、カーリャ。イクスはどう ?
カーリャまだ目が覚めないんです。さすがに心配になってきましたよぉ……。
コーキス大丈夫だよ、パイセン。マスターに何かあったらきっと俺にも伝わると思う。思うんだけど……。
コーキス……マスター、大丈夫だよな ?そろそろ起きろって。なあ、起きてくれよ !
ミリーナコーキス、そんなに揺すったら……
イクス……うん、あれ ? なんか良く寝たな。
コーキスはぁ――……ったく、のんきだな。
ミリーナよかった…… ! おはよう、イクス。起き抜けの顔も素敵だわ。
イクスは、はは……。心配させてごめん。みんなには迷惑かけちゃったな。コーキスも無事に大きくなれてよかった。
イクスそれに、相変わらず格好いいな、その服。
コーキスやっぱりそうか。俺が大きくなったのも痛みがなくなったのも、服がダセーのもマスターのおかげだったんだな。
イクスえ ! ? その服格好いいだろ ! ?
リタねえ、服のことより、何があったの ?
シングそうだよ、イクスは突然オーバーレイ状態になるしコーキスは大きくなるしさ。
イクスええと……そのへんは落ち着いてから話すよ。
ミリーナじゃあ一つだけ。ゲフィオンには……会ったの ?
イクスああ。俺の心の中で話を聞いたよ。それでコーキスに痛みが伝わらないようにしたんだ。
ミリーナ痛み…… ? どういうこと ?
イクスとりあえず、ミラたちと連絡をとろう。コーキスが治ったことも伝えて安心させないとな。
イクスこっちでも色々あったんだろう ?コーキス、教えてくれ。
コーキスあ、ああ。マスターが倒れたあと、ローゲが来てさ――
ミリーナ…………。
デミトリアス――もう芙蓉離宮に戻るのか。もうしばらくここで療養しても良かったんだよ。メルクリア。
メルクリアご心配には及びませぬ。体も癒えておりますゆえ。
デミトリアスそうか。二人とも、メルクリアをよろしく頼む。
ジュニアはい。
リヒターメルクリア、挨拶はこれで終わりか ?
メルクリア…………。
リヒターそうか……ではこれで――
メルクリアち、義父上 ! お聞きしたい事があります。
デミトリアス言ってみなさい。
メルクリア義父上の言うビフレストの復活とはなんじゃ ?
デミトリアス……どういうことかな。
メルクリアわらわが望むのは、過去に失われたビフレストとそこに住んでいた人々の復活じゃ。それ以外の形を、わらわは認めぬ。
デミトリアスもちろん、わかっているよ。
メルクリア義父上にもお考えがあるのは知っておる。じゃが今一度、約束してくだされ。――必ず【わらわのビフレスト】を復活させると。
デミトリアス……できる限りね。
メルクリアできる限りではない ! 絶対じゃ !
帝国軍兵士ご報告申し上げます。陛下、グラスティン様が至急お目通り願いたいと。
デミトリアスわかった。すぐに通せ。――メルクリア、名残惜しいが話はここまでだ。気を付けて帰るんだよ。
メルクリア……はい。
グラスティンおや、皇女様もおいでだったとは。邪魔をしてしまったようだな。
メルクリア気安く話しかけるでない。帰るぞ。リヒター、ジュニア。
ジュニアう、うん。
グラスティン! !……ヒヒッ……ヒヒヒヒ……ヒャーッハハハハ !フィリップ ! フィリップじゃないか ! !
ジュニアえっ、な、なに…… ?
グラスティン幼くて瑞々しいその姿も新鮮でいいなぁ。髪も肌も柔らかそうだ。その潤んだ目もいい……とてもいいぞ……ヒヒヒ。
ジュニアや、やめ……。
リヒター子供を脅かすのが趣味のようだが貴様の冗談に付き合うほど暇ではないんだ。ジュニア、メルクリア、行くぞ。
デミトリアス……相変わらずだな。グラスティン。それで、至急の要件とはなんだい ?
グラスティン仮想鏡界に奴らが来たぞ。あの女、つくづく俺の邪魔をするのが好きなようだ。
デミトリアス君が【あの女】呼ばわりするならミリーナたちか。……まあいい。計画に変更はないからね。

キャラクター8話【5-11 イ・ラプセル城1】
ミラ=マクスウェルみんな、いるか ?
コハク大丈夫。全員ゲートから出たから。追っ手も来てないみたい。
ジュード手近なゲートに飛び込んじゃったけど……ここはどこだろう ?
ミトス多分、イ・ラプセル城だよ。この様子だと研究棟の方だね。
クラースなるほど、だとすれば多少は見当がつくか……。
エリーゼクラースは、ここを知ってるんですか ?
クラースああ。この前、潜入したばかりだよ。といっても、基本アステル頼みだったんだが……。
ミトスボクも研究棟の方までは詳しくないんだ。ここはクラースの記憶を頼りに進もう。
クラースやれやれ、責任重大だ。
ティポボケて忘れてないといいねー。
クラースそんな歳じゃない !いいだろう。私についてきなさい !
ミラ=マクスウェルクラース、ここはどの辺りなんだ ?
クラース出口に向かって進んでいる。……はずだ。
エリーゼはずってことは……。
クラース……少々迷ったかもしれん。すまん。
ティポクラースのバホー ! ! 自信満々で迷ってたー !
コハククラースさん、ミソを食べるといいですよ。ミソは老化を防止するから。
クラースコハク、これは歳のせいではないと――
ミラ=マクスウェルなるほど。コハクはミソについて詳しいんだな。
コハクうん ! 今度ミラにもミソ料理作ってあげるね。オススメはやっぱりサクランボミソ焼きおにぎりかな。
ミラ=マクスウェルじゅる……。なるほど、是非お願いしよう。クラース、その時はお前も来るといい。
クラース……ああ、うん。気づかい感謝する。
ミトス気にすることないよ、クラース。どうせニンゲン如きの記憶力なんてたかが知れてるんだから。それで次はどっち ?
クラースこの先を真っ直ぐだ。……はぁ、アステルがいればなぁ……。
クラース――ん ? 通路への扉かと思ったがここは研究室のようだな。壁に標本が……
クラース――っ ! ! なんだここは…… ?
ジュードどうしたんですか、クラースさん !うわっ――この部屋 ! ?
ミラ=マクスウェル……壁一面に人の遺体がびっしりと並んでいる。しかもこれは恐らく……。
ミトスうん。人形でも悪趣味すぎるけどこれは全て本物だよ。
ジュード壁のものは防腐処理されてる……。でもなんだろう……死臭が……。このにおい、奥からだ。
ミラ=マクスウェル待てジュード。もしかしたらそこには……。
ジュード…… ! ! ……これ、人の……。
ミトスこの臓物の量、一人分どころじゃない。しかもきれいに並べてある。きっとコレクションのつもりなんだ。
クラースおい君たち、そこに何が……うっ……これは……。
エリーゼみんな、何を見つけたんですか ?
クラースコハク ! エリーゼを近づけるな !君も来ない方がいい。
コハクは、はい ! エリーゼ、こっち。
ヨウ・ビクエ本当、悪趣味よねぇ。この部屋の主は。
エリーゼえっ ! ?
コハクあ、あなた誰 ! ?
ヨウ・ビクエ私はヨウ・ビクエ。ヨーランドって呼んでもいいわ。あなたの体、少しだけ貸してもらえない ?出口まで案内するから。
コハク体を…… ?
ヨウ・ビクエ精神体じゃすぐ消えちゃうの。あなたならもう一人を宿すくらいのキャパを備えてるし迷惑はかけないから……ね ?
コハク……わかったわ。必ずみんなを助けてよね。
エリーゼコハク、大丈夫ですか ! ? コハク !
ジュードエリーゼ、コハクがどうかしたの ?
ヨウ・ビクエ私はヨーランド・ビクエ・オーデンセ。……ごめんなさいね。この子の体を借りたわ。あ、ちゃんと合意の上よ。
クラースヨーランド…… ! ヨウ・ビクエか ! ?
ヨウ・ビクエとにかくこの部屋を出るわよ。ここにはろくな物はないし、吐き気を催すだけだから。出口まで案内するついでに、私とお話ししましょ ?
クラースあの部屋の近くに、こんな隠し通路があったんだな。
ヨウ・ビクエええ。そしてここを抜ければ裏口へ出られるの。あなたの案内、あながち間違いじゃなかったってこと。いい勘してるわよ ?
クラースいやまあ、なんというか、ハハハ……。
ティポおみそれしましたー。
ヨウ・ビクエそれとさっきの部屋は、グラスティンっていうデミトリアスが新しく雇った魔鏡学者の部屋よ。嫌なものを見ちゃったわね。
ミラ=マクスウェルあのグラスティンか。奴はジュードをコレクションしたいと言っていたがもしかしたら……。
ジュードやめてよ。想像したくない……。
ヨウ・ビクエよかったわね。可愛い坊や。あいつの部屋に飾られずに済んで。さあ、あそこが出口。
エリーゼありがとうございます。ヨウ・ビクエ !
ヨウ・ビクエフフ、どういたしまして。そうだ、シャーリィは元気 ?
ジュード元気ですよ。そういえばあなたがシャーリィの心核を直したと聞きました。
ヨウ・ビクエええ。あの子を気にかけておいて欲しいの。シャーリィはウンディーネとの親和性が極めて高いわ。精霊や天族と同じような属性をもつのかもしれない。
クラースシャーリィとウンディーネが……わかった。
ヨウ・ビクエそれと、この子……コハクに伝えて。あなたの心の中にいた人を知っていると。
ジュードコハクの心の中 ? どういうことですか ?
ヨウ・ビクエごめんなさい、そろそろ時間切れみたい。私からの連絡を待っていて。お願いよ……必ず…………。
コハク…………あれ ? もしかして、ここ出口 ?
ミトス……消えたようだね。
クラースもっと色々と話を聞きたかったが……まあ、仕方がないか。
イクスミラ、聞こえるか ? こっちはみんな無事だよ。
ミラ=マクスウェルイクスから魔鏡通信だ。あちらも無事逃げきったようだな。
ジュードうん。お互いの状況を確認して合流しよう。

キャラクター9話【5-14 イ・ラプセル城4】
メルクリアローゲは何をしておる。いつまでわらわを待たせるのじゃ。
チーグルローゲは最後のリビングドールの様子を見るために仮想鏡界へ赴いているのです。もう戻ってくるかと思いますが……。
メルクリアまったく、あやつは勝手がすぎるのう。
リヒターだったら我々だけでも先に芙蓉離宮へ出発するか ?
メルクリアいやじゃ。わらわは皆と共に帰る。ローゲも一緒じゃ !……一人は寂しいからな。
ジュニア僕、マークに確認してみるよ。ローゲがどこにいるかわかれば――
帝国軍兵士1なんだと……どうしてそんなことに ! ?
帝国軍兵士2わかりません ! とにかく陛下にお伝えしないと !
ジュニアなんだか慌ててる……どうしたんだろう ?
リヒターおい、何があった。
帝国軍兵士1リヒター様 !ローゲ様が城下で暴れているとの報せが入ったのです。
メルクリアなんじゃと ! ?あやつは仮想鏡界に行ったのではなかったのか ?
チーグルその筈ですが……。
メルクリアええい、ここで考えていても仕方ない。わらわが城下へ参り、直接確かめてくれる。
メルクリアいたぞ、ローゲじゃ !
帝国軍兵士3おやめ下さい ! どうか……ローゲ様 !ぐあああっ !
バルバトス誰がローゲだ !俺の名はバルバトス !バルバトス・ゲーティアだ ! !
メルクリア! ?なんじゃと…… ?
チーグルまさかローゲは……。
リヒター……あいつはもうローゲではない。本来の体の持ち主、バルバトスなのだろう。
メルクリアそんな……。ローゲ、何があったというのじゃ…… !お前まで虚無に帰ったというのか ! ?
メルクリアあやつは誰よりも強くて、ふてぶてしくてそれゆえに兄上を失った時にはわらわを躊躇なく鼓舞してくれた猛者じゃった……。
メルクリアなのに……またわらわは失うのか……。ううっ……うう……。
ジュニア泣かないで、メルクリア……。
バルバトスうおおおおおっ ! !
帝国軍兵士4お静まりください。王宮までお連れいたします !謁見が許可されれば、すぐにでも――
バルバトス謁見 ? 許可 ? ふざけたことをぬかすなっ !俺はここを動かんぞ。皇帝とやらをここへ連れて来い !貴様らをなぶり殺しながら待ってやる。
帝国軍兵士4ひ、ひいいいいっ ! どうか、お許しを !
メルクリアあの男、なんと凶暴な…… !じゃがなにゆえ兵士たちはローゲではないと気づかぬのだ。
リヒターお前も知っているだろう。リビングドールは比較的親和性の高い者同士をキメラ結合させる。しかも見た目が同じであれば、わかるわけがない。
チーグル……荒れ狂ったローゲも手段を選ばない奴だったからね。事情を知らなければ私だってあれをローゲだと思うだろう。
帝国軍兵士5一時撤退だ ! 撤退しろ !
バルバトス撤退だと ? この腰抜けどもがっ !貴様らが逃げるなら、この街の奴らが身代わりだ !
リヒター……兵士ではもう無理だな。俺が行く。ジュニア、メルクリアを見ていろ。
チーグル私も行こう。あの下劣さは見るに堪えん。
バルバトスさあ、死にたい奴は逃げるがいい !殺されたい奴はかかってこいっ !
バルバトスぬうっ、誰だ !
リヒターいい加減にしろ。言葉が通じないわけではないだろう。
チーグル共に来る気がなければ、ここで討つ。
バルバトスああ、やってみろ。貴様らが俺を倒す前にこの街の人間を皆殺しにしてやるっ !
バルバトス雑魚はどけええぃ !
帝国軍兵士6ぎゃああっ !
帝国軍兵士7しまった、あっちには一般人の避難所が ! !
リヒターチッ、あの男、本気で街の人間を…… !
メルクリアインディグネイション ! !
バルバトスぐああああっ !
メルクリアリヒター、チーグル、今じゃ !
チーグル身の程をわきまえろ !
リヒター貴様はやりすぎだ。
バルバトスくそ……どもが………。
チーグルメルクリア様が自らお手を下す必要など……。ジュニア、なぜ止めなかったんだ。
ジュニアすみません……。
メルクリアこれはわらわの意志じゃ。このような下衆をのさばらせたのもある意味ローゲを失った、わらわの不始末じゃからな。
チーグルメルクリア様……。
バルバトスメル……ク……………………………。
リヒターようやく静かになったか。
チーグルとどめを刺しますか ?
メルクリアいや、再びローゲを呼び戻すためにもこやつは手元に置いておく必要がある。
メルクリアこの者を監獄へ運べ。厳重に閉じ込めておくのじゃ !

キャラクター10話【5-15 浮遊島】
コーキスただいま、みんな !
カイウスコーキス ! 本当にでっかくなったんだな !
ミュゼお帰りなさい、ミラ ! 心配したのよ。体はどう ? 辛くないの ?
ミラ=マクスウェル帰還連絡の際に伝えただろう ? もう問題ない。ミュゼには随分と心配をかけたな。
カイウス魔鏡通信をもらった後でも確認するまで安心できないって大変だったんだぜ ?
ルビアミラは優しいお姉さんがいて羨ましいわ。
ミラ=マクスウェルルビアには兄弟はいないのか ?
ルビアいないわ。あ、でもお兄様って呼んでた人なら……とても素敵な人よ !
コハクお兄様かぁ。そうだ、シング。わたし、お兄ちゃんのところに行ってくるよ。
コハクあの人が言ってた【わたしの心の中にいた人】ってきっとリチアのことだと思う。
シングそうだね。それにシャーリィのことも聞いたんだろう ?セネルたちに伝えないと。
コハクうん。それじゃルビア。また来るね !
ルビア……確か、コハクもずっと眠らされていて大変だったんでしょ ?
ジュードうん。でも今はあんなに元気だよ。ルビアだって、すぐに動けるようになるさ。
ルビアええ。これから少しずつリハビリして必ずみんなの役に立ってみせるわ。
ミリーナ頼もしいわね。でも焦らないで、きちんと回復させましょう。
イクス…………。
ミリーナどうしたのイクス。
イクスバルバトス……大丈夫だったかなって。……結局置いていくことになっちゃっただろ。
ミリーナ仕方ないわ。見張りの兵士達が来てしまって連れて帰る余裕がなくなってしまったんだもの。
ミリーナただ……いくら元の世界でカイルたちと敵対していた人とはいえひどい選択をしたことは間違いないわよね。
ミリーナいつか、ちゃんと話をして、協力を――
イクス……協力、か。それは虫が良すぎる気がするな。
ミリーナイクス…… ?
イクスどんな状況であれ、俺たち――いや、俺は俺自身の判断で、バルバトスを助けないという選択をしたんだ。
イクスこの件に関して俺は謝罪することしかできないよ。その先はバルバトス……さんの判断だ。
二人………………。
イクスカイルたちには話を共有しておこう。この先どうなるにしても、カイルたちにとっては因縁の相手だからさ。
ミリーナ……ええ。そうね。でも忘れないで。バルバトスのことは私も同罪よ。
ミリーナバルバトスを気にしていたシングたちに急いで逃げるように促したのも私。
ミリーナだからバルバトスのことも、私とイクス二人の責任にして。一人で背負い込まないでね。
二人………………。
リタ――ねえ、あんたたち。この後、キール研究室へ来てくんない ?人工心核と精霊輪具について話があるの。
ミリーナ何かわかったの ?
リタまあ色々とね。あたしは先に行ってるから。
ミリーナこのまま私たちも行きましょうか。イクス。
イクスみんな、先に行っててくれ。俺は後から行くから。
コーキスマスター ?
イクスちょっと疲れたから部屋で一息いれたいんだよ。少しの間だけ、いいかな。
カーリャイクスさまも色々大変でしたもんね……。
ミリーナ……無理してないわよね ?
イクスああ。ちゃんとこうして疲れたから休みたいって言ってるだろう ?
ミリーナわかったわ。それじゃ行きましょう、コーキス。
コーキスあ…………はい……。
イクス…………。
フィリップどうだい ? 難しいかな。
マークやっぱ駄目だ。何度やっても近づけねえ。
フィリップそうか……。ヴィクトルの話では心の精霊ヴェリウスが守護を強めたらしいからね。精霊の封印地そのものに近づけないんだろうな。
フィリップ昔のオーデンセには精霊の封印地へ移動する入り口があったんだけど、オーデンセが失われた今では直接、封印地に降り立つしかない。
マーク召喚士の力を頼ってみるか……それとも……。
イクスフィル、聞こえるか ?二人で話をしたいんだけどいいかな。
フィリップ……イクス ? ちょっと待ってくれ。マーク、しばらく頼むよ。
マーク……了解。面倒事なら断れよ。
フィリップ待たせたね。どうしたんだい ?
イクス……さっきゲフィオンと会ってきたよ。それでフィルに聞きたいことがあって連絡したんだ。
フィリップゲフィオン…… ?詳しく聞かせてくれ。
フィリップ――鏡精を切り離す、か。確かに鏡精は、ある術式を施すことで主人から独立することが可能になる。
フィリップゲフィオンはその術を使って自分の【カーリャ】を切り離しその際に一部の記憶と心をカーリャに渡したんだ。
イクス……そうか。ゲフィオンの話は本当だったんだ。
フィリップイクス、なぜ僕と二人だけでこの話をしようと思ったんだい ?
イクス今の話をゲフィオンから聞いたのは俺だけだから。それに、ずっと違和感があったんだ。……ミリーナに。
フィリップ…………。
イクスあのさ、真面目に変なこと言うぞ ?ミリーナって、俺のことあんなに好きだったかな……。
イクス俺自身の記憶にあるミリーナは、俺を年下扱いするような感じでさ。でもきっと……そういう意味の好意を持ってくれてるんだろうなって雰囲気だった。
イクスそれが、まだオーデンセがあった頃俺がじいちゃんと長期の漁に出るって決まった辺りから……なんか、ちょっと変わってきて。
イクス俺の作られたタイミングを考えるとマークに助けられる前までの記憶は一人目と二人目の俺の記憶なんだよな。
イクスだから、俺の知ってるミリーナって言葉はちょっと違うのかも知れないけどでも今みたいな愛情を示すミリーナは、なんか……。
フィリップイクスの知ってるミリーナとは違う ?
イクス……うん。
イクス俺は【フィルとゲフィオンの記憶】を経由して作られた三人目のイクスだ。
イクスなあ、フィル、俺はどこまで本来の【俺】なんだ ?今の二人目のミリーナは ?
イクス俺たちはどこまで【一人目】と一緒でどこから違うんだろう。……教えてくれ。
フィリップ……それは……。
イクスフィル !
フィリップ……さすがだね。三人目だろうと、イクスは凄いや。
フィリップでも……少しだけ待ってくれないか。僕たちが精霊の封印地に行くことができたら全て……話すから。
フィリップだからそれまで猶予が欲しい。……頼む。
イクス……わかったよ。困らせてごめんな、フィル。

キャラクター11話【5-15 浮遊島】
イクス(……早くキール研究室に行かなきゃな)
コーキス…………。
イクスコーキス…… ! お前、今の話……。
コーキスごめん……立ち聞きした。マスターのことが気になって後を追ったら話し声が聞こえちゃって……。
イクス……いいよ。でも今の話は誰にも言わないでくれ。
コーキスああ。絶対に言わない。マスターを裏切ったりしないよ !
イクスわかってるって。ありがとな。
コーキスあのさ、マスターがあの時に言ってた「痛みが伝わらないようにした」って話は鏡精を切り離す術の応用だったんだろう ?
イクスそうだよ。もうコーキスの目が痛むことはないから安心してくれ。
コーキスそうじゃなくて……。その術がきっかけで俺のことを完全に切り離したりしないよな ?
イクスハハッ、なんだよ急に。そんなことしないよ。
コーキス俺はマスターといたいんだ。ずっと一緒に……。マスターの痛みだと思えば耐えられるから痛覚を元どおりに繋いでくれ。
コーキスなんか今までと変わっちゃうみたいで……嫌なんだよ。魔鏡結晶を出てからのマスターは上手く言えないけど……前と違う感じがするから。
イクス……そうか ? 自分ではそんな感じしないけど。
コーキス俺の気にしすぎかもだけどでも……何となく心配なんだよ。それにもしマスターに負担が行くことがあるなら……。
イクス馬鹿なこというなって。それに俺はコーキスみたいな痛みを感じてないぞ。
イクス多分、コーキスたち鏡精は俺たち鏡士の心から生まれた存在だからマスターよりも痛みを鋭敏に感じるんじゃないかな。
コーキスでも……。
イクス俺は痛みもないし、コーキスも苦しまないならこの状態が一番だろう ? このままでいいんだよ。
コーキス本当に苦しくないんだな ?俺のこと、切り離したりしないよな ?
イクスああ、大丈夫。ほら、キール研究室へ行こう。ミリーナたちが待ってるぞ !
カーリャあ、コーキスたち、やっと来ましたよ。
ミリーナイクス、もう大丈夫なの ?
イクスああ、十分休んだよ。
リフィル失礼するわ。あら、みんな集まってるのね。
ミリーナリフィル先生。キール研究室にご用ですか ?
リフィルさっきクラースから仮想鏡界潜入の件で報告を受けたのよ。それであなたたちからも話を聞こうと思って。お邪魔だった ?
イクス丁度よかったです。よければリフィル先生も一緒に聞いてください。――それでリタ、話はどこまで進んでるんだ ?
リタ話どころか図面まで引き終わっちゃったわ。
コーキス図面って……なんだこれ ? リタ様こんな複雑なもの、帰ってきてから書いたのか ?
パスカルあたしたちが手伝ったからね~。こんなのシャシャーっでズバーンでドッカーンだよ !
カーリャなんか最後バクハツしてましたけど……。
イクスで、結局なんなんだ ?
キールこれは精霊片吸引器。精霊輪具の力を元に作り出した装置だ。
パスカル図面のここ見て。ここに現在契約している精霊たちのデータを読みこむことで、この世界に飛び散っている各属性の精霊片を呼び集めることができるんだよ~。
リタこれなら精霊輪具みたいに、特定の精霊や人物に装備させる手間がかからないし精霊たちを傷つける心配もないわ。
リタそのかわり精霊を呼びよせる力は弱いし時間もかかる。ま、その辺は精霊への負担を減らす効果もあるからしかたないわね。
パスカルそして~、テッテレ―― !今回の目玉は――――これっ !
ミリーナこの部分の図……ローゲの人工心核に似てるわ。
リタそう、これは人工心核をモデルにした【人工精霊核】よ。
イクス人工って、もしかしてそこに精霊を ?そうか……なるほどな。
コーキス全然わかんねー !俺にもわかるように説明してくれよ。
キール仕方ない。順番に教えるからよく聞くんだ。精霊は個体でありながらこの世界に息づく存在でもある。
キールだから世界中に、精霊の欠片のようなものが微精霊のように散ってるんだ。
キールそれを集めるのがこの装置。集めたものを固着させる媒体が人工精霊核ってわけだ。ここまではわかるか ?
コーキスうん、ぎりぎり……。
キールなら後は簡単だ。つまりこれがあれば個としての精霊の心核を具現化しなくても精霊片を集めることで、ある程度の精霊の力が集まる。
キール行方のわからない精霊の力もな。
コーキスあ……なるほど ! 確かにすげー便利だ。
リタカレイドスコープを調べたら、帝国がオリジンやヴォルトの心核を具現化しようとした形跡があったの。あたしはそのデータを抽出してきたってわけ。
パスカルリタが持ち帰ったデータと、人工心核に精霊輪具全部がそろって初めて可能になった装置だよ~。いや~久々に面白いものが作れそう !
キールおい ! 話はまだ終わってないぞ !
キール……まあいい。まずはこれを完成させて精霊片を集めてみよう。それに、このアジトも改良していかないとな。
イクスそうだな。ジェイドさんたちが調べてくれたけどよくわからないゲートとか、まだありそうだし。
カーリャ何よりこのアジト、浮いちゃってますからね。みなさん出入りが大変そうです。
リフィルそれに関しては、ジェイドが帝国の転送魔法陣を解析しているわ。完成すればこの空中のアジトでも移動が便利になるはずよ。
リフィルでも、完成にはもう少し時間がかかりそうだったからその間に、以前具現化された大陸の状況を調べた方がいいんじゃないかしら。
コーキス大陸の状況って、帝国だけじゃなくて ?
リフィルええ。具現化された市井の人々はあやふやな記憶から、徐々にこの世界の住人として存在を確立していくのでしょう ?
リフィルだとしたら、そろそろどの大陸の人たちも自分たちがティル・ナ・ノーグの人間だとはっきり自覚している頃なんじゃないかしら。
リフィル自分を存在する【個】として認識し、意識が固まれば必ずしも帝国に従属するという人間ばかりではなくなると思うの。
リフィルその一番いい例としてはアスターのような人物ね。
コーキスヒルダ様を助けてくれた商人か。ルーク様たちの話じゃ怪しいけどいい人だって言ってたな。
ミリーナ鏡映点だけではなく、この世界の人間を味方につけるということですね。
リフィルそういうこと。巨大な相手と戦うには必ず必要な存在になってくるはずだから。
リフィルそれと、あなたたちも少し休みなさい。ずっと落ち着かないままでしょう。
ミリーナそう言えばもうすぐ年末だわ。本当だったら、みんな仕事を一段落させて年を越す準備をする時期よね。
イクスそうか……色々あり過ぎて忘れてたよ。
イクスよし、ここからしばらく俺たちはアジトの拡充に重点を置くか。
カーリャそれと年越し準備もですよ !お正月はみんなで初詣とかもいいですよね。今のうちから計画たてておかなくちゃ !
コーキスパイセン、嬉しそうだな。
ミリーナ私たちも少しの間、落ち着いて過ごしましょう。そんな日があってもいいわよね、イクス ?
イクス……そうだな。これからはもっと大変になるだろうしみんなの鋭気を養うために必要だよ。
イクス(きっとそれは、俺自身も――)
to be continued
キャラクター1話【6-1 閑散とした街道】
帝都・アスガルド城
帝国軍兵士陛下、グラスティン様がお見えです。
デミトリアス通してくれ。お前たちは下がっていい。
帝国軍兵士はっ。
グラスティンこれはデミトリアス陛下におかれましてはご機嫌麗しゅう……。
デミトリアスそんな他人行儀な言い方はやめてくれ。それより、よく来てくれた。最近、体調はどうだい ?
グラスティン目覚めた時と変わらないな。すこぶる好調だよ。おかげで毎日新鮮な【肉】に囲まれて楽しい研究三昧さ。フフフフ……。
デミトリアス……そうか。君が、アニマ汚染による長い植物状態から復帰してすでに三ヶ月が経つ。
デミトリアス私と同じ治療を施して、ようやく目覚めはしたがその後の経過が心配だったんだ。何もないようで安心したよ。
デミトリアスそれで、研究の進捗はどうだ ?
グラスティンすでに具現化世界の技術には全て目を通してある。その中でも、特に有用な物を特定した。
グラスティンまずは、我々がリーゼ・マクシアと名付けた大陸【リーゼ・マクシア領】。その元となった世界に存在する【分史概念】
グラスティン同じく、オールドラント領の【レプリカ】レグヌム領の【前世】そしてファンダリア領の【ソーディアン】
グラスティンこの四つを組み合わせることで、お前の悲願を果たすことができるだろう。
グラスティンこれが具体的な案をまとめた計画書だ。目を通してくれ。
デミトリアスなるほど……よくぞここまで。さすがグラスティン、セールンド一の魔鏡技師だ。君を友人に持った私は幸運だよ !
デミトリアス……だが、この計画を実行すればメルクリアは絶望するかもしれないな。
デミトリアスあれほどまでに故郷を望んでいるあの子を……私は……。
グラスティンこの期に及んで敵国の娘の心配か ?その甘さがお前の弱さだ。デミトリアス。
デミトリアス……弱さ、か。
グラスティンそれと、その計画について提案がある。ディストを目覚めさせたい。
デミトリアスディスト ? そういえば治療を終えた後も眠らせていたが、彼が必要かね ?
グラスティン俺もレプリカ技術に関して独自に研究を進めている。そのための人員も、ジュニアに何度か具現化させた。
グラスティンだが、レプリカがオリジナルよりも劣化する点において奴からも意見を聞かねばならない。
デミトリアスそうか。彼は色々とトラブルが多かったから覚醒を先延ばしにするようメルクリアに指示していたんだが……。
デミトリアスわかった、許可しよう。
デミトリアスそれにしても、君が目覚めてからの成果は素晴らしいよ。何か褒美を取らせたいところだが、望みはあるか ?
グラスティン望み ? ヒヒッ……そんなもの決まっているだろ。フィリップだよ…… !フィリップ・ビクエ・レストンが欲しい !
グラスティンこの間やっとフィリップに会えたんだ……。テセアラ領でね……。彼は変わらず完璧で美しかったよ。ヒヒ……ヒヒヒ……。
デミトリアス……私の答えは分かっているだろう、グラスティン。せめて私の手の届く範囲にしてくれないか。
グラスティン……だったらジュニアとファントムならどうだ。あれは帝国に所属しているだろう。
デミトリアス済まないが、それも難しいな。ファントムはミリーナたちに奪われているしジュニアはメルクリアが気に入っているんだ。
グラスティンメルクリア ? まだそんなことを……。だったらジュニアを奪うのを黙認してくれるだけでいい。
グラスティンジュニアさえ手に入れば現在は封じている仮想鏡界を再び開かせてファントムを奪い返すことも出来る。
デミトリアスファントムを奪還……か。しかしファントムは……。
グラスティン……そういえば、俺が植物状態だった間お前はファントムに肩入れしてアレを救おうとしていたそうだな。
グラスティンフィリップという、完璧な存在が近くにいたのにどうして不完全な具現化によるフィリップのなれの果てを救おうとした ?
デミトリアスそんな言い方はやめてくれ。彼は……可哀想な生まれ方をした。救えるなら救ってやりたかったんだよ……。
グラスティンふ……ふふ……。そうか。少しガタが来ている方がお好みなのか。ならばいいさ。俺はジュニアで手を打つ。
グラスティンまぁ、待っていろ。いずれファントムも取り返してやるさ。ヒヒ……ヒヒヒ……。
グラスティンだが、ジュニアを手に入れるにはリヒターが邪魔だな。いつもジュニアの周りをチョロチョロしやがって……。
グラスティンなあ、デミトリアス奴を処分してもいいだろう ?
デミトリアスリヒターは精霊研究者としての能力も高い。彼を失うのはかなりの痛手だ。何よりリヒターとアステルの関係を考えると同意はできん。
グラスティンリヒターがいなければ、アステルが帝国を離れる可能性を危惧しているのか ?それなら問題ない。
グラスティンリヒターは【リビングドールβ】として生かしておく。ちょうど被験者を増やしたいと思っていたからな。
デミトリアスあれをリヒターに施すのか ? それは……。
デミトリアス――……いや、わかった。好きにしていい。
グラスティンヒヒ……感謝するよデミトリアス。

キャラクター2話【6-1 閑散とした街道】
イクス――それじゃ、そろそろ班長会議を始めるけどもう全員そろってるかな。
ミリーナええ。具現元となった各世界からの代表者を一人班長として選出してもらったわ。一応、名簿も作ってあるけど……。
カーリャカーリャが確認しますね !チェスターさま、ジョニーさま、リッドさま、ジューダスさま、ジーニアスさま、ヴェイグさま
カーリャセネルさま、ガイさま、カイウスさま、スパーダさまマルタさま、フレンさま、シングさま、アスベルさま
カーリャレイアさま、ガイアスさま、スレイさまベルベットさま、最後は救世軍のクラトスさま !……ぜーはー……全員そろってますぅ……。
コーキスやるじゃんパイセン、ひと息で読み上げた !あんま意味はねぇけどな……。
イクスよし、じゃあ始めよう。これからみんなに報告するのはカロル調査室のみんなが、ここ数カ月間に渡ってティル・ナ・ノーグを調査した結果だ。
イクスまず、具現化大陸全体の状況だけど具現化当初のような違和感を持つ住人はもういないみたいだな。
ミリーナみんな、自分は元からティル・ナ・ノーグの人間だと思いこんでいるのね。
イクスああ。ゲフィオンの思い描いていたアイギス計画の大陸具現化に関する部分はほぼ完成したとみていい状態だと思う。
イクスそして帝国は具現化した各大陸に異世界由来の名前をつけて領土化しているらしいんだ。
カーリャじゃあ、一番最初に具現化したユーリさまやラピードさまがいた所は ?
イクスその大陸は今【テルカ・リュミレース領】と呼ばれているよ。
フレンテルカ・リュミレースは、僕たちの世界を表す名称だ。話には聞いていたけどそうか……帝国は正式に命名したのか。
チェスターフレンはもう知ってると思ってたぜ。カロル調査室と一緒に動いているんじゃないのか ?
フレンユーリやカロルたちの調査は、臨機応変が過ぎてね。だから僕は待機しつつ、彼らのバックアップが多いんだよ。
ジーニアスそういえば、カロルたちって調査に出るとなかなか予定通りに帰って来ないよね。フレンも大変でしょ ?
フレンあれがカロルたちのやり方だからね。そもそもユーリが昔からあんな感じだから、慣れているんだ。
フレンそれに自由だからこそ思いがけない成果を得ることもある。
フレンむしろカロル調査室がよりよく機能するために僕ができることをしているだけなんだ。こういう場に出るのも含めてね。
レイアま、真面目……。班長選出で、そこまで考えてんだ。
リッドオレなんか「イケる、イケる ! 」っつってわけわからないうちに班長にされてたのにさ。
チェスターなあイクス、その資料、見せてくれないか。オレたちの世界が元になってる大陸ってのは……
イクスチェスターと会った大陸はここ、【アセリア領】だ。みんなも確認してくれ。
チェスターアセリア……アセリア歴からか。なるほどね。
ジョニーどれどれ、俺たちは【ファンダリア領】だな。ウッドロウがいたらどんな顔をしただろうな。ジューダス、お前さんのところも同じでいいんだろ ?
ジューダス……そうだ。だからこそ班長会議には僕が代表して出ると言ったのに。だいたい、今のおまえは戦えないだろう。
ジョニー確かに、特異鏡映点用のブレスレットが上手く働かないから、まだ、みんなと行動はできない。せいぜい応援がてら、歌う程度が関の山さ。
ジョニーだからこそ、こういう所で役に立っておきたいんだよ。
スパーダいいじゃねえか。ジョニーのその心意気 !好きにさせてやれって、お面野郎ォ。
ジューダスお面じゃない ! 仮面だ !
スパーダ細けぇヤツだな。で、オレんとこはどこだ ?あー……【レグヌム領】ね。王都レグヌムか。ルカとオレの地元の名だな。
リッドこの【オルバース領】っていうのは、オレの世界が元になってる大陸か ? オルバース界面……。インフェリアでもセレスティアでもないのか。へえ……。
セネル【ウェルテス領】……灯台の街ウェルテスか……。懐かしいな。ヴェイグのところは ?
ヴェイグオレのところは【カレギア領】だ。元の世界では王国名だった。覚えやすくていい。
カイウスオレのところもわかりやすいぜ !この【アレウーラ領】って名前はオレの世界の大陸の名前だったんだ。
ガイさて、ウチは……【オールドラント領】ね。ま、惑星名だし妥当な命名だな。マルクトなんて名付けられてたら、どんな奴が出てくるか……。
アスベルガイのところも惑星名か。俺のところも同じだよ。【エフィネア領】の、エフィネアっていうのは俺たちが住んでいた星の名前なんだ。
シングオレの世界が元になった大陸は【原界(セルランド)領】か。もう一つの世界の要素って、この大陸に含まれてるのかな……。
ジーニアスもう一つの世界 ? シングの世界も複雑そうだね。ボクたちの世界も、シルヴァラントとテセアラの二つだったけど、名前はどうなってるんだろう。
クラトス我々の世界は……【テセアラ領】だ。
マルタじゃあ、私やエミルたちもそこなんだね。未来とはいえ、同じ世界だし。
レイア未来かぁ。だったら、わたしたちの未来だっていうルドガーたちの世界も含めてこの【リーゼ・マクシア領】になるのかな。
ガイアスエレンピオスと思われる名称のついた大陸は見当たらないな。だとすれば同じだろう。
スレイ……あれ ? おかしいな。オレの世界は、この【グリンウッド領】だけど……ベルベットは ?
ベルベットあたしのところは【ミッドガンド領】よ。別におかしいところなんて見当たらないけど。
スレイだって、オレたちって過去と未来の関係なんだろう ?マルタや、ガイアスさんたちは同じ大陸なのに何でオレたち分けられてるんだろう。
ベルベットそれはファントムが、あんたの世界とは別にあたしたちを具現化したからでしょ。
スレイそうか。そのせいで別の大陸名になってるんだな。スッキリしたよ !
イクスよし。現時点で他の世界の具現化大陸はないようだな。今、みんなに確認してもらった各大陸には帝国から領主の派遣が進んでいるらしいんだ。
イクスこの状況を継続して調査するためにもカロル調査室メンバーの他に、各大陸の元の世界の関係者にも手伝ってもらいたいと思ってる。
ガイアスそれでは各地に戦力を分散させることになるぞ。ここの守りはもちろん現地に赴く者も危険ではないか ?
セネル確かに、簡単に行き来ができるわけじゃないんだ。いざという時にも集まりにくいぞ。
ミリーナそれは大丈夫。ジェイドさんが、帝国の転送魔法陣と仮想鏡界の時からあったゲートを解析して組み合わせた新たな転送ゲートを完成させたの。
ガイああ。俺も転送ゲートを維持する装置を作るのを色々と手伝わされたよ。音機関……機械いじりは好きだからいいんだけどな。
ミリーナガイさん、エドナ様のお茶会も休んで頑張ってくれたのよ。この転送ゲートを使えばアジトからの移動も比較的自由になるわ。
イクス実は、みんなに各地の調査をお願いするのは他にも気になる点があるからなんだ。
イクス最近、【聖アタモニ教団】という宗教組織が台頭してきたって報告があったんだよ。
ジューダスアタモニだと ?まさか、エルレインが動き出したのか ! ?

キャラクター3話【6-2 閑散とした街道】
ジューダスエルレインが具現化されたと聞いたときから嫌な予感はしていたが……。
ヴェイグ確か、現在帝国にいる鏡映点の一人だったな。聖アタモニ教団というのはエルレインに関係しているのか。
ジューダスああ。僕たちの世界にも、アタモニ神団という似た名前の組織があった。エルレインはその組織で聖女と呼ばれていた女……僕たちの敵だ。
ジューダスもし、この世界でも奴が教団の指導者だとしたらやっかいなことになるぞ。
イクスジューダスの言う通りだ。こういうケースを想定して元の世界での経験を元に、みんなにも――あっ……ちょっとごめん、魔鏡通信だ。
シャルティエイクスくんかい ?
イクスえっ、シャルティエさん ?
シャルティエこの魔鏡通信って便利だね。この世界に来てから連絡手段が不便で仕方なかったから助かったよ。今、話してもよかったかな ?
イクスええ。大丈夫ですけど、何かあったんですか ?
セネルなあ、シャルティエって誰だ ?リオンのしゃべる剣と同じ名前だけど……。
ジューダス聞いていないか ?最近、対帝国部隊と同盟の協定を結んだだろう。そこに所属している、鏡映点の一人だ。
アスベルソーディアンの人格の元となった人物か。鏡映点として具現化されていたって話だったな。
ガイアスその中でも、ディムロスという男は有能な指揮官であり、部下からの信頼も厚いと聞いている。
コーキスそうそう、マスターが言ってたぜ。そのディムロス様のところの人だよな ?
シャルティエはいはい。ディムロスのところのシャルティエですよ。どうせ僕だけじゃ印象が薄いですよー……。
イクスいや、シャルティエさんの印象が薄いんじゃなくてディムロスさんの印象が強いだけで……。
シャルティエそれ、全然フォローになってないからね ! ?……はぁ、もう用件を伝えてもいいかな。
イクスあっ、すみません。どうぞ !
シャルティエ別の街を拠点にしているレジスタンスから「同盟を結びたい」っていう手紙が届いたんだよ。差出人は、ナナリー・フレッチ。
ジューダスナナリー…… !
シャルティエあ、ジューダスくんもそこにいたんだね。君たちの仲間に、同じ名前の子がいた筈だよね。それで連絡をとったんだよ。
シャルティエレジスタンスと会う前に、カイルくんたちに確認をとれって、ディムロスに言われてさ……。なんで僕がこんなこと……。
ジューダスよく知らせてくれた、シャル、……ティエ。イクス、僕はカイルたちを連れてファンダリア領へ向かう。構わないな ?
イクスもちろん。俺とミリーナも一緒に行くよ。
シャルティエ了解。それじゃ、こっちに合流してくれ。
イクスみんな、すまないけど、ここはひとまず解散しよう。各地の調査に関しては、ユリウスさんとリフィル先生に方針を聞いてくれ。きっと俺より説明上手いし……。
コーキスあー、マスターは話が長いからなぁ。
イクスそ、そんなことないよ !コーキスが単純化しすぎなんだよ。
ミリーナあら♪ イクスの説明は丁寧でわかりやすいしコーキスも端的でイクスの次にわかりやすいわよ。
イクスはは……。
カーリャそれじゃあ、皆さま。ひとまずお疲れ様でした~ !
イクス――あの、待ってください、クラトスさん。ヴィクトルさんの容体はどうですか ?
クラトスヴィクトルか。安心しろ。かなり回復してきた。最近では、精霊の封印地に近づくための調査にも協力してもらっている。
イクスそうですか。だったら、もうそろそろ平気かな……。
イクスクラトスさんは、以前、俺がヴィクトルさんから手紙を預かったのを覚えていますか ?
クラトスああ。エルへの手紙だな。
イクスあの手紙、まだ渡していなかったんです。タイミングを見ているうちに先延ばしになっちゃって……。
イクスだから、今回の件が落ち着いたらエルに手紙を渡して話をするつもりだとヴィクトルさんに伝えてもらいたいんです。
クラトスエルに……。そうか、わかった。
イクスあと……あの……フィルにも……。
クラトス……どうした ? 言いにくいことか ?
イクス……いえ、あの……。フィルにそろそろ話を聞かせて欲しい……と。
クラトス伝えておこう。……私からも、構わないか ?
イクスは、はい。もちろんです。
クラトスロイドは……壮健だろうか。
イクスはい。あの……直接話をしていったらどうですか ?
クラトスそう……なのだろうが。どう振る舞ったらいいのか……よくわからないのだ。
クラトス父親として向き合う、とは決めたものの私がロイドと別れたのはあれが三つの時だ。知らない時間が多すぎる。
クラトスロイドはそんなことなど気にしないともわかってはいるのだが……。妻が生きていれば……また違ったのだろうな。
イクス若輩者が、何を言うと思われるかも知れませんけどヴィクトルさんなら何かヒントをくれるんじゃないでしょうか。
クラトス……かも知れぬな。ありがとう、イクス。

キャラクター4話【6-3 対帝国部隊の村】
ディムロス――皆、よく来てくれた。先日は世話になったな。
カイルこちらこそ、また会えて嬉しいです !
リアラカイルったら、またディムロスさんたちに会えるってすごく喜んでいたんですよ。
ディムロスそれは光栄だな。今回はジューダスくんも一緒か。よろしく頼む。
ジューダスああ。……シャルティエの姿が見えないようだが……。
シャルティエみなさん、お待たせしました。まずはお茶をどうぞ。
ディムロスシャルティエ、気が利くじゃないか。
シャルティエこういう役回りも、なんか慣れちゃいましたから。
ジューダスふっ……。
シャルティエ……何だい、ジューダスくん。
ジューダスいや、なんだかんだ言いつつ世話焼きな奴だと思っただけだ。
シャルティエどうせ僕は、こういう目立たない仕事がお似合いですよ。
コーキスなぁパイセンジューダス様、ちょっと笑ってなかったか ?
カーリャええ。珍しいですねぇ。
イクスディムロスさん。早速ですけど手紙の件を聞かせてもらえますか。
ディムロスそうだな。これがレジスタンスから送られてきた手紙だ。
カイル本当だ……。ナナリー・フレッチって署名してある。やっぱりナナリーもこの世界にいるんだよ !
ジューダスまだ名前が一致しただけだろう。もっとも同姓同名の別人の可能性は極めて低いと思うが……。
リアラそうね。他に特定できそうなことが書いてあればいいんだけど……。
ミリーナこの手紙だと、ファンダリア領の領都と定められたダリルシェイドってところで面会することになってるわね。
カイルダリルシェイドが都って、なんか変な感じだな。領土名はファンダリアなのに。
カーリャ変って、何がですか ?
ジューダス元の世界では、ファンダリアの首都はハイデルベルグでセインガルド王国の首都がダリルシェイドだったんだ。カイルが違和感を覚えても仕方ない。
カイルこの世界って、見覚えのある景色や名前があってもやっぱり偽物なんだよな……。
カイル――あ、ご、ごめん !
ミリーナいいえ、いいのよ。本当のことだもの。
ジューダスそれよりも、都というくらいだからダリルシェイドはこの村よりも発展しているんだろう ?
ジューダス反体制派であるレジスタンスと、対帝国部隊がそんな大都市で会うなどと危険な計画を立てるとは……いったいどういうつもりだ。
ディムロスその懸念はもっともだがこれはレジスタンス側の提案だ。
ディムロスナナリーくんのこともある。まずは確認のためにもあちらの要望を飲むことにした。もちろん、重々警戒はしている。
ディムロスとはいえ、君たちの安全が保障できないのも事実だ。危険と判断するならば、君たちは戻って我々の報告を待ってくれてもいい。
リアラわたしたちも一緒に行きましょう。ナナリーのこともあるし、大都市なら聖アタモニ教団の情報が手に入るかもしれないわ。
イクスダリルシェイドで聞き込みをするのか。人が多いのなら、何かしら教団の話が聞けるかもしれないな。
シャルティエ聖アタモニ教団って……。
ディムロスああ。我々も探りを入れている宗教団体だな。最近では、ストレイライズ大神殿を建設してさらに勢力を拡大している。
3人えっ ! ?
カイルストレイライズ大神殿ってこっちの世界でも建ててるんだ。それって、どこにあるんですか ?
シャルティエ君たちは運がいいよね。これから行くところ、ダリルシェイドだよ。
ジューダスどうやら、このファンダリア大陸に聖アタモニ教団の中枢勢力が集められているようだな。
リアラだったら、もう決まりよね、カイル !
カイルああ。みんなでダリルシェイドへ行こう !

キャラクター5話【6-4 ダリルシェイドへ続く道】
コーキス領都ダリルシェイドかぁ。カイル様たちの世界でも首都だったって話だからやっぱり賑やかな所なんだろうな !
カイルいや、オレが知ってるダリルシェイドはものすごく寂れた街だったんだよ。
ジューダス首都として機能していたのはカイルたちが生まれる前の話だからな。
シャルティエ僕たちはわからないけど、今の領都はそのカイルくんたちが生まれる前のダリルシェイドっていうのに近いのかもしれないね。
ジューダス…………。
ディムロスむ……あれは…… ? 皆、身を隠せ。シャルティエ、彼らを安全な所へ誘導をしろ !
シャルティエ了解。みんな、こっちの繁みへ。
帝国軍兵士1早くしろ ! 急げ !
イクス……帝国兵たちだ。
ミリーナこの方向だと、ダリルシェイドよね。
帝国軍兵士1まずいぞ……。少しでも遅れたらサレ様にどんなお叱りを受けるか。
帝国軍兵士2いや、エルレイン様が一緒におられるんだ。サレ様も、そう酷いことはなさるまい。――とにかく、一刻も早くダリルシェイドに入るぞ。
コーキス……行ったみたいだな。
コーキス……あれ ? サレって……聞き覚えが……。
イクスヴェイグたちの敵だった男だ。割と綺麗な顔の……。鏡映点リストにもあったしコーキスはスパーダを助けるときに会ってるよ。
コーキスさすがマスター ! 細かいことよく覚えてるよな !
リアラそれに……エルレインって言ってたわよね。やっぱり、ダリルシェイドにいるんだわ。
ジューダスすぐに出発したいところだが……このままだと、今の奴らの後を追うことになる。下手をすると見つかるぞ。
カーリャだったら街道へ出ないでこの森を進んだらどうですか ?ほらこっち、少し開けたところがありますよ。
ディムロス待て ! そこは獣道――
オウルベアグルルルルルッ…… !
カーリャキャアーーーッ !
ミリーナカーリャ ! ?
カイル危ないカーリャ !
カーリャあわわわ……た、助かりました、カイルさま……。
カイルいや、まだだ……。色んなところからオウルベアの気配がする !
コーキスうわっ、こっちにも ! 何匹出てくんだよ !
ジューダスまさか……ここはオウルベアの巣か ! ?
ディムロス私とシャルティエがここを預かる。カイルくんたちは、そのまま森を抜けろ !
カイルでも…… !
カーリャカイルさま、後ろ !
カイル! !
? ? ?お前ら、危ないところだったな――って……お前、カイル…… ? カイルじゃねえか ! ?
カイルロニ ! ? なんで ! ?
ロニ……話はあとだまずはこいつらをなんとかするぞ !

キャラクター6話【6-4 ダリルシェイドへ続く道】
イクスはぁ……どうにか逃げ切ったな。
ミリーナねえ、イクス。あの人って……。
ロニカイル ! 俺の可愛いカイル~ !大丈夫か ! ? 怪我してねえか ! ?
カイルうん、何ともないよ。本当にロニなんだね !
ロニそうだぜ、よく見ろ。こんないい男ほかにいるか ?ロニ=デュナミス、ただいま参上……ってな !
ジューダスこの頭の悪い発言、間違いないようだ。
リアラ良かった。ロニが何も変わってなくて。
ロニどういう意味だよ !
カイルでも驚いた。もう会えないかもって思ってたからさ。
ロニそりゃこっちのセリフだぜ。俺とナナリーが、どんだけお前らを捜したか !ったく、心配させやがって……。
カイルよかった、ナナリーも一緒なんだね。
ロニああ。毎日うるせーのなんの。そんなことより、ディムロスさんたちまでいるのかよ。ナナリーの予想が当たってたって訳か。
ロニしかしまあ、どこの時代に飛ばされたか知んねえがリアラがいるならもう安心だぜ。それとも、戻るにはまたレンズが足りないとか ?
カイルえっと……イクス、ロニに説明してもらえる ?
イクスああ。……ロニさん。俺はイクス・ネーヴェといいます。この世界のことなんですが――
ロニ……はぁ。めちゃくちゃだな。なんつーことしてくれてんだよ。こんな話、あいつが聞いたら……。
イクスすみません……。何を言われても仕方ないと思ってます。
ロニああ。正直、言いたいことは山ほどあるぜ。けどな、今はカイルに免じて引き下がってやるよ。何より――
ロニミリーナが美人だからなあ。特別サービスだ !
ミリーナえ ? あ、ありがとうございます。ロニさん。
ロニそれに今はここでやらなきゃならねえことがあるしな。
ディムロスレジスタンスの指揮、か ?
ロニそりゃナナリーの仕事だよ。俺はあいつの補佐だ。帝国の進出に反対するレジスタンスと会ってたらいつの間にかそうなっちまってね。
リアラなんとなく想像がつくわ。ナナリーって面倒見がいいから。
ロニここに居合わせたのも、ナナリーが対帝国部隊と会うってんで、前もって様子を見に来たからさ。ま、おかげでこうして出会えた訳だけど。
ロニそうだ。カイル、あとでいいからミリーナやイクス以外の仲間も紹介してくれよ。どんな奴らと一緒にいたのか会ってみてえし。
カイルあ……うん。そのことだけど……。ロニ、ちょっとこっちで話さない ?リアラとジューダスも来て。
ロニなんだよ。こういう所で内緒話ってのは感じ悪くみえるぞ ?
イクスそれぞれの世界ごとに事情があるのはわかってますから。気にしないで下さい。
カイルあのさ……オレたちは今若い頃の父さんや母さんと一緒にいるんだ。それに、リオンさんも。
ロニ……スタンさんや、ルーティさんと ! ?リオンってことは、ジューダスお前……。
ジューダスそうだ。もう一人の僕が同時に存在している。
カイルでもオレたちのことは、みんなに詳しく話してない。オレが二人の子供だってことも知らないんだ。だからロニも……。
ロニ言うな……ってか。スタンさんのことも何もかも……知らないふりをしろって ?
リアラずっとじゃないわ。今はまだ様子を見てるだけ。何より、スタンさんやルーティさんやリオンさんを考えてのことだから。
ロニ……わかったよ。俺だってスタンさんたちを悩ませたくないからな。
シャルティエ戻ってきたね。存分に内緒話はできたかい ?
ロニああ、おかげ様で。こっちは、したくてしてるわけじゃねぇけどな。
ディムロスそのことだが、我々はもうこの世界からは逃れらないのだろう ? ならば、話せる範囲のことは話した方がいいのではないか ?
シャルティエ確かに、何がきっかけで不信を招くかわかりませんからね。僕たちと会った時のリオンくんのように。
カイルでも……どうしようジューダス……。
ジューダス……以前からジェイドには出来るだけ情報は開示していく方向へシフトしたいと話をされているんだ。
ジューダスあの秘密主義の男がそう切り出すんだからそれだけの事態が起きている……という事なんだろう。
ジューダスだが、「それ」を告げることが本当に正しいのかは……僕にはまだわからない。
ロニ……その話、今は置いとこうぜ。それより帝国兵の少ないルートを知ってるからそこを使ってダリルシェイドへ行くぞ。

キャラクター7話【6-6 ダリルシェイド】
イクスへえ…… ! 賑やかな街だな。以前のセールンドみたいに人が多いよ。
ミリーナディムロスさんが言っていた通り活気があるわね。これって、帝国が介入しているせいもあるのかしら。
街の女ねえ、見た ? エルレイン様の騎士 !
街の女2見た見た ! 素敵よねぇ、サレ様 !きれいな顔してるし、理想の騎士様って感じ !
カイルサレって、さっき話してた帝国の奴だよね。
ロニお前ら、サレを知ってるのか。あいつ、最近この辺りでよく見かけるようになったんだ。
ロニしっかしまあ、あんなキザったらしい男のどこがいいのかねぇ。俺の方がよっぽど――
? ? ?いた ! どこでアブラ売ってたんだい。このスカタン !
ロニナナリー ! なんでここにいるんだよ。お前は隠れ家で待ってる筈だろうが。
ナナリー状況が変わったんだよ。それにみんな、あんたのこと心配して――
ロニまあまあ、俺に文句言う前に周りをみろよ。ほら、ほらほら !
カイルナナリー ! やっと会えたね !
ナナリーウソ……カイルじゃない ! リアラにジューダスも ! ?あ、やっぱりディムロスさんたちもいたね。こっちは予想通りだ。
ディムロスどういうことだ ?
ナナリー話はあと。もうすぐエルレインがここを通るんだ。このままじゃ鉢合わせだよ。
ナナリーとりあえずこっちに隠れて。……ほら、もう来たよ ! 早く !
サレ――それで、今日はこれからどちらに ?
エルレイン監獄塔へ。バルバトスに会いに行く。
サレでは、お供いたしますよ。
エルレインここを空けてもよいのか ?
サレええ。この後は【β(ベータ)】が来ることになっていますから。もう、こちらが領都に目配りをする必要はありません。
サレそれに、グラスティンからも新しい【肉】の調達をと急かされてまして。いや、困ったものですよ。
エルレインそうか ? さして困ったようには聞こえぬがな。
サレフフフ……。さあ、参りましょうか。
コーキス……なにを話してたかは、わかんねえけど顔はバッチリ確認できたぜ。サレって、やっぱりあのサレだったな !
リアラエルレイン……本当に具現化されてたのね。わかってはいたけど……。
ナナリー具現化って何 ? エルレインも時間を移動してここにいるんじゃないの ?
リアラあのね、ナナリー……。
ロニいいか、ナナリー。落ちついて聞けよ。凶暴なお前はす~ぐ口や手や足や関節技が出る……
ロニぎゃーーーーっ !
コーキスす、すげえ、ナナリー様 !流れるようなサブミッション !
カーリャこれは完全にキマってますよぉ !
ナナリーあんたたち、なんか訳ありなんだね。まずはそっちの話を聞かせてよ。
イクスえ、えっと……このままで ?
ナナリーこのままで。ほら、早く。
ロニて、手短に……頼むぅぅ……。
ナナリー――いいかい。今はとりあえず飲みこむよ。けど、完全に納得したわけじゃない。あんたらのこれからの行い次第ってことで、いいね ?
ミリーナはい、わかりました。ナナリーさん。
ナナリーあとそれ、やめてくんない ?そんな他人行儀じゃ、ますます溝が深まっちまうよ。
ミリーナ……それじゃあ。――ありがとう、ナナリー !
カイル……よかった。ナナリーが怒り出した時はどうなるかと思ったよ。ロニもお疲れ様。
ロニ……技かけられ過ぎて、手足が伸びた気がするぜ……。
ジューダス良かったじゃないか。随分と見てくれもよくなっただろう。モテるぞ。
ロニやったぜ ! ……とでも言うと思ったか !
リアラでも、ナナリーは本当に大丈夫かしら。
カイルそうだね……。エルレインが世界を作り変えようとしたときだってすごく怒ってたし。
ジューダス弟を失うとわかっても、神の力に頼らず自分たちの力で生きて行くと決めた奴だからな。
リアラなのに、このティル・ナ・ノーグは具現化や、世界の創造に、死者の復活が行われていてしかも、もう帰れないなんて……。
ロニ平気だよ。あいつは強い。それに、いざと言う時は……。
ナナリーねえ、ロニ !カイルたちも、こっち来てくれる ?
カイルロニ、いざと言う時は、何 ?
ロニあ ? 俺があいつを支えるってだけさ。今の俺はナナリーの補佐だからな。仕事じゃ仕方ねぇ。――ほら、行くぞ。
ロニ待たせたな。
ナナリーもう、こっちは大事な話してんのに。
ロニはいはい。で、ディムロスさんにはこっちの状況を伝えたのか ?
ディムロス今、報告を受けていたところだ。レジスタンスも、最近の帝国にはかなり苦慮しているようだな。
ナナリーあんたたちが来てくれて心強いよ。やっぱり、ディムロスさんたちが西の対帝国部隊をまとめてたんだね。
シャルティエよく僕たちのことがわかったね。
ナナリー最近、あっちの活動が活発になったって話だったから色々さぐりを入れてたんだ。
ナナリーそうしたら、新しく来たディムロスって優秀な奴が指揮を取ってるっていうじゃないか。それで手紙を出したのさ。
シャルティエ……ああ、そう。やっぱり凄いですね。ディムロスは。ははは。
ロニなあ、こんな所で立ち話もねえだろ。とりあえず俺たちの隠れ家に行こうぜ。
ナナリー待って。状況が変わったって言ったろ ?ついさっき報せがあったんだよ。もうすぐ【領主】が街に入るって。
ロニ本当か ! ? 予定よりも早いじゃねえか。
ナナリーそうなんだ。だから今すぐ領主の館へ行かないと。
コーキスそれって偵察ってことか ?
ナナリー……まぁ、それもあるんだけどね。
ディムロス…………。
カイルはぁ……せっかくナナリーと会えたのに、ゆっくり話もできないのか。
ナナリーごめんよ。けど、後でたっぷり時間をとるからさ。あたしの手料理つきでね !さ、行くよ。

キャラクター8話【6-9 ダリルシェイド】
カーリャうわっ、なんですかこれ。すごい人だかりですよ !
ジューダス新しい領主を見にきた野次馬だな。
警備兵おい、そこ、道を開けてくれ。領主様の馬車が通るんだ。
ミリーナ警備の兵士も多いわね。
イクスダリルシェイドに来るときに見た兵士はこのために駆り出されたのかもしれないな。――おっと、コーキス、はぐれるなよ !
コーキス危ねぇ……うっかりしてたら迷子だぜ。こんなんで偵察なんてできんのか ? ナナリー様。
ナナリーむしろ好都合さ。これなら人込みに紛れて安全に領主の顔を拝めるだろ ?
リアラあっ、馬車が来たわよ。
警備兵長旅、お疲れ様でございました !
領主…………。
? ? ?…………。
ジューダスあれは……ウッドロウ !
カイルえ、ウッドロウさん ! ?
ディムロスアトワイト…… ! ?
シャルティエ一体、どうなってるんだ……。
イクスあの二人と知り合いなのか ?
カイルうん。ウッドロウさんは俺の知ってる姿とちょっと違うけどね。でも、どうして帝国の領主なんて……。
ロニなあ……あの二人、様子が変じゃないか ?
警備兵すぐにお部屋へご案内いたします。広間には宴の準備も整っておりますので――
領主余計なことはするな。私はすぐに休む。
警備兵も、申し訳ありません。ではご案内します。そちらの奥様のお部屋ですが……
護衛騎士訂正を求める。私は彼の護衛騎士だ。
警備兵これは失礼いたしました ! では、こちらへ。
ディムロス……あれはアトワイトではない。私にはわかる。
カイルウッドロウさんも雰囲気が全然違う。もしかしたら……。
ミリーナええ。リビングドールにされているのかもしれないわ。
ロニ魂だか心だかを入れ替えるって言うアレか !
ナナリー……一旦引き上げだね。あたしたちの隠れ家へ行こう。
ジョニーそいつ、本当にウッドロウだったのか ?
イクスはい。リビングドールにされてるようでここの領主になっています。
ジョニーダリルシェイドの領主がウッドロウねえ……。帝国もセンスがないな。完全に配置ミスだぜ ?
カイルですよね ! ウッドロウさんにはハイデルベルグですよ !
イクスえっと……とにかく、こういう状況なのでファンダリア領の元となった世界のスタンさんたちにも応援を要請したいんです。
ジョニーわかった。すぐにそっちへ派遣するよ。しばらく待っててくれ。
ロニスタンさんたちが来るのか !すげえな ! いや、やっぱりどうしよう……。
ナナリー喜ぶのか動揺するのか、どっちかにしなって。
ディムロス……ナナリーくん。君たちの様子から察するにウッドロウが領主としてここに来ることを知っていたのではないか ?
ナナリー……まあね。情報だけだったから実際に顔を見るまでは確信できなかったんだよ。
ナナリーでも、本当に本人だと確認できたらどうにか繋ぎをつけて、レジスタンスの活動を助けてもらおうと思ってたんだ。
ロニけど、中身が別人じゃなぁ……。
? ? ?おい、開けろ。
一同! !
ナナリーシッ……。あんたたちは黙って。――誰だい ?
? ? ?愛の使者だ。
ナナリー間に合ってます。帰んな。
? ? ?おかしい……ジェイドやカロルにはこれで通じてるのに……。
イクスあっ、もしかしてデクス……さん、ですか ?ジェイドさんに協力してるっていう。
デクスそうだよ。早く入れろ。見つかったらオレだって危ないんだ。
ナナリー知り合いかい。悪かったね。ほら、入っとくれ。
デクスまったく……。領主の護衛をしてるときにお前たちを見かけたから苦労して後をつけて来たってのに。
ミリーナありがとうございます。ところでさっき、カロルって言ってましたよね ?
デクスジェイドからの指示で繋ぎが変わったんだよ。カロルたちの方が連絡とりやすいだろうってな。
コーキスそっか。カロル様たちは外回りが多いもんな。
イクスそれで、何か情報があるんですか ?
デクスああ。手短に言うぞ。帝国では、人工知能を人工心核に宿したβ(ベータ)版の【リビングドールβ】が投入された。
デクスその第一弾となる四名の【β】のうちの二名がさっき着任した領主、ウッドロウとその護衛騎士となったアトワイトなんだ。
イクス人工知能……ってことはあの二人は、誰かの人格でも魂でもないってことか ?
デクスさあな。オレも詳しいことは知らないが魔鏡結晶から死の砂嵐にアクセスできなくなったから代替えだとか何とか……。
デクスデミトリアス付きの宮廷学者たちが開発したらしい。
ミリーナでも、リビングドールであることには変わりがないのよね ? それなら、心核さえあれば今までの方法で二人を戻せるはずだわ。
カーリャ前に、たくさん心核を持って帰りましたよね。あの中にお二人の心核があるかもしれませんよ !
イクスそうなると、二人をアジトに連れていかないとな。でも、どうすれば……。
ディムロス潜入し、あわよくば制圧、といったところか。かなり無理のある作戦だな。……デクスくんこれには君の協力が不可欠となるが、どうだろう?
デクスアリスちゃんを見つけるまでは協力すると約束したからな。愛の使者、デクス様に任せておけ !

キャラクター9話【6-10 芙蓉離宮】
アスガルド帝国 芙蓉離宮
メルクリア……さても頭の痛い……。
チーグルご気分がすぐれませんか ?でしたら、お休みになられてはいかがでしょう。
メルクリアいや、わらわの配下の戦力のことじゃ。
メルクリア四幻将も今や、お前たち二人のみ。ディストは義父上の言いつけで眠らせたまま。ローゲは消え、器だったバルバトスは監獄塔の中じゃ。
メルクリアシドニーも兄上もバルドもいなくなった。セシリィはあの憎い鏡士に連れ去られたまま……。
メルクリアこうして、側近くに仕える臣下はもうお前たちしかおらぬ。……寂しくなった。
リヒター…………。
衛兵メルクリア様。デミトリアス陛下の使者がお着きです。お通ししてもよろしいでしょうか。
メルクリア義父上の ? よい、通せ。
? ? ?お目通りをお許し頂き感謝する。
メルクリアそなた……ティルキスか ?
ティルキス ?そうだ。私はティルキスだ。
メルクリア…… ? まあよい。それで用向きはなんじゃ。
ティルキス ?グラスティンがディストを所望している。すぐに引き取りの準備を進めてもらいたい。
メルクリアなんじゃと ! ?あれは四幻将、わらわの臣下じゃぞ !それを差し出せとは無礼にもほどがある !
ティルキス ?これはデミトリアス陛下直々の命である。あなたに拒否権はない。
メルクリア義父上が…… ? そんなはず――
衛兵お待ちください !今、メルクリア様は使者と謁見を――
? ? ?その使者に用があると言っているんだ。通してもらう !
リヒターどうしたんだルキウス、お前はまだ療養中だろう。
ルキウスティルキスと名乗る使者が来たと聞いたんだ。だから――
ティルキス ?ティルキスは私だ。何か用か ?
ルキウスティルキス…… ! 無事だったのか。ボクだ、ルキウスだ !
ティルキス ?誰だ、お前は。
ルキウスえっ…… ?
ティルキス ?こちらの話はまだ終わっていない。出て行け。
ルキウス……そうか。これが噂のリビングドールか。君はティルキスまで、こんな風にしてしまったんだな。メルクリア !
メルクリアわ、わらわは知らぬ ! 確かにティルキスは兄上様が具現化した。だが、リビングドールにする前に兄上様はお倒れになったのじゃぞ !
メルクリアその時に、全ての計画は中断しているはずじゃ。リビングドールである訳が……。
ティルキス ?私が問題なのか ?ならば早急に解決して話を進めよう。
ティルキスβ私は【リビングドールβ】クンツァイトという機械人を解析して生み出された人工心核型リビングドールだ。
メルクリア新しいリビングドールじゃと…… ! ?
チーグルデミトリアスは我々の技術を盗んだというのか !……なんと狡猾な !
ティルキスβ解決したようだな。ならば次の話にうつる。
ルキウスこっちの話はまだ――
ティルキスβリヒター、アステルのことでサレが話したいことがあるらしい。一緒に来てくれ。
リヒターアステルだと ? サレの奴、一体何を……。
ティルキスβ表で待っている。なんでもリヒターだけに伝えねばならない話だそうだ。
リヒター……メルクリア、俺が戻ったらディストの件も含めて、今後の方針を考えるぞ。
メルクリアリ、リヒター……。
リヒターすぐ戻る。待っていろ。
ティルキスβディストは生命維持装置ごと運び出す。
ティルキスβ用件は以上だ。これで失礼する。行くぞ、リヒター。
ルキウスティルキス ! 待って――あっ !
メルクリアルキウス ! 大事ないか ? 無茶をするから――
ルキウス触るなっ !
メルクリアっ ! ! 何をする。ティルキスのことは知らぬと――
ルキウス君は、ボクを利用しただろう……。兄さんを繋ぎ止めるために……自分のためだけに !
メルクリア………………。
チーグルルキウス、言葉が過ぎるぞ !
メルクリア――いや…………その通りじゃ。わらわは…………。
ティルキスβリヒター、こっちだ。
リヒター(アステルに何かあったら、今度こそ――)
ティルキスβ連れて来ました。――グラスティン様。
リヒターグラスティン ?
グラスティンご苦労。
リヒターなっ ! ? ――うっ !
グラスティンアステルは本当にいいエサだな。こんな簡単に釣れるとは。
リヒター貴様……何をした……。
グラスティンお前は働き過ぎだ。ゆっくり眠るといい。これで俺も安心してジュニアに近づける。ヒヒヒ……ッ。
リヒターくっ…………意識…………が…………。
グラスティン……やっと静かになったか。さて、リヒターを運ぶぞ。
ティルキスβ承知しました。グラスティン様。

キャラクター10話【6-11 領主の館】
イクス――スタンさんとルーティが到着したよ。
ルーティおっつかれー !
スタン待たせたな、みんな !
ロニ……スタンさん。それにルーティさん…… ?……はは……すげえ。俺より年下かよ……。
ルーティあんたたちが、カイルの元の世界のお仲間 ?
ロニはい、そうです……ルーティさん……。俺、ロニです……。
スタン俺はスタンだ。カイルたちを助けてくれてたんだって ?俺がいうのも変だけど、ありがとう、ロニさん。
ロニロ、ロニでいいです! 俺のほうこそ……スタンさんには……スタンさんには……っ……。
スタンどうしたんだロニ ?……泣いてんのか ?
ロニい、いやいやいや ! ルーティさんが美人だからさ !きっと将来はきれいな花嫁になるんだろうなーなんて想像したら色々こみあげて ? みたいな――
ルーティは ! ? ちょっと、こいつなに言ってんの ! ?
ナナリー済まないね。なんか悪い物でも食べたみたいで。あたしはナナリー。こいつにはよーく言って聞かせるから。
ロニいででででででっ !お前、言ってることと、やってることがーーーーっ ! !
スタンカイルの仲間は賑やかだな !けど、ロニってなんか俺たちのこと……。
カイルあー、スタンさん !リオンさんは来ないんですか ?
スタンああ。リオンのやつ、ジューダスがいるなら自分は行く必要ないって言って、来なかったんだよ。
ルーティまったくあいつったら……。いくらジューダスとそっくりだからって片っぽがいりゃいいって訳じゃないのにさ。
一同! !
カイルまさか、リオンさんは全部……。
リアラええ、多分。……いいえ、きっとそうよ。
ロニおいジューダス。このままでいいのか ?
ナナリー……ジューダスに言ったって仕方ないだろ。気づいちまったもんはさ。それともあんたたち、もしかしてお互い、もう……。
ジューダス…………。
リアラ……そう、だったの。
イクス……ごめん。俺も何となくそうじゃないかと思ってたんだ……。ってことはカイルは……。
ミリーナええ。今までも言葉の端々から感じてはいたけど……。どうりで似ているはずよね。髪も、目の色も……。
ルーティ……何よ、この空気。カイルが何 ? リオンとジューダスがなんだって――
ルーティというか……あの剣捌き……。何もかもが……あいつに似すぎてるわよ……。
ルーティ! !
ルーティ……ジューダス、まさかあんたは……。
ジューダス…………。
ルーティえ……何、なんで否定しないのよ……。
ルーティそれって、つまりコレットとマルタの世界とかベルベットとロゼの世界とか……。ミラとエルの世界とかみたいな……。
ルーティ――嘘。待って。じゃあ、カイルが似てるってのは……。
スタン…… ?
カイルウソでしょ ! ? 母さんまで ! ?
ルーティ誰があんたの母さんよ。失礼しちゃうわね。
ルーティ…………まさか。
スタンなんだよ、ルーティ。そんなに俺の事を睨みつけて。
ルーティちょっと待って、来ないで !ああああああああっ ! ちょっと待ってーーーー !
ソーディアン・アトワイトルーティ、落ち着いて。理由はわかるけど。
ルーティわからないでいいわよ !うう、胸が……頭がクラクラする……。
スタン大丈夫か、ルーティ。顔が真っ赤だぞ !
ルーティダメ、あんたが来たら悪化する !
スタンなんだよ、心配してやってるのに……。
ソーディアン・ディムロススタンよ、今は逆効果だ。
ミリーナルーティ、落ち着いて ?多分、デリケートな問題だし今の勢いで話したら、色々と誤解が生じるわ。
ルーティそ、そうよね。誤解って線もあるじゃない !あたしったら。アッハハハ !気のせいよ、気のせい。気のせいだから。
ソーディアン・アトワイト……道のりは長そうね。
ミリーナこの件は後日、改めて話し合いましょう ?みんな、それでいいですよね。
ジューダス……ああ。そうしてくれ。
ディムロスはっきりさせた方がいいと思うが……。この後の作戦に影響を及ぼすようなら致し方あるまい。
コーキスなんか俺たち……色々とおいてけぼりな感じだな。カイル様たちとスタン様たち、何かあったのか ?
イクスはは……。いいんだよ。それはまたその内にな。
シャルティエその内に、か。僕なんて、ディムロスたちといるときはいつもこうやって蚊帳の外で……。
カーリャシャルティエさま、頑張ってたんですねぇ……。
イクス――いけない、そろそろ時間だ。みんな、出発の準備をしよう。
イクス……ええと、デクスさんが見張りを担当している通用門っていうのは……。
デクスおいこっちだ ! 今のうちに通れ。
イクスデクスさん ! ありがとうございます。
デクス領主の部屋の場所は知らせた通りだ。オレが出来るのはここまでだからな。後は自分たちでなんとかしてくれよ。
ディムロス君の尽力に感謝する。では、これより作戦開始だ。――全員、必ず生きて帰るぞ !
デクス格好いい台詞だな ! それ !いずれ、アリスちゃんと再会したらオレも言いたいぞ。
デクス――アリスちゃん、必ず生きて帰るぞ !……なんて――あ、もう誰もいない……。

キャラクター11話【6-15 領主の館】
ディムロス……この部屋だ。私が中を確認する。シャルティエはもう一名と扉の周囲を警戒。他の者は私が合図をしたら踏み込め。
シャルティエ了解。えっと……。
ジューダス僕が残る。行くぞシャルティエ。
カイル……中はどうですか、ディムロスさん。
ディムロス……鏡士の二人、来てくれ。あの装置はなんだ ?
ミリーナあれは魔鏡装置だわ。でも何のための……。
イクス装置に繋がってるの……ウッドロウさんだ…… !
ミリーナアトワイトさんはウッドロウさんの治療をしているのかしら。あの装置で脈を診ているみたいだけど……。
アトワイトβ……誰だ。
ディムロス気づかれた、行くぞ !
アトワイトβなんだ、お前たちは。
ディムロスアトワイト……。
ルーティあれがアトワイト……。あんたの姿なのね。
ソーディアン・アトワイトええ。でも肉体だけよ。「私」じゃない。ディムロスも、わかってるわね。
ディムロスくっ…… !
カイルウッドロウさん !
ウッドロウβ…………。
リアラなんの反応もないわ……。
ナナリーなんだいありゃ、まるで抜け殻じゃないか。あんな風にしちまうなんて !
アトワイトβ出ていけ。心核のメンテナンス中だ。
ルーティ……アトワイト、あたし本気で行くけど、いいわね。
ソーディアン・アトワイトええ、ルーティ。全力でやりなさい。ディムロス、あなたたちもよ !
ディムロス & ソーディアン・ディムロス承知した !
ソーディアン・ディムロス行くぞ、スタン !
スタンうおぉぉぉおっ !
アトワイトβ……これが多勢に無勢というものか。なるほど。
ロニなんだよ、観念したか ?
アトワイトああ。
ロニマジかよ ! ? ま、まあこっちだってこれ以上その体を傷つけるつもりは――
アトワイト……人工心核データ抽出完了。撤退する。
コーキス窓の向こうに……消えた ! ?
イクスしまった、窓の下に転送魔法陣を仕込んでたのか…… !
ウッドロウβうっ………。
スタンウッドロウさん ! しっかり !
ミリーナこのままじゃ危ないわ。早く心核の治療をしないと。
イクスみんな集まってくれ。転送ゲートで、一旦アジトへ戻るぞ !
ジュニア――リヒターは、僕のところには来ていないよ。
ルキウスボクも、あれから見ていない。
メルクリアそんな……本当にリヒターはどこにもおらぬのか ! ?すぐに戻ると言うたのに……。
チーグル……やはり、ティルキスがそのままデミトリアス帝の元へ連れていったのかと。
メルクリア義父上……。わらわからリヒターまで取りあげるのか !
ジュニアメルクリア……。
メルクリア……嫌じゃ。渡さぬぞ。今よりわらわは、ティルキスを追う !
チーグルでは、私もお供いたします。
ジュニア僕も一緒に行くよ。メルクリア。
メルクリアチーグル、ジュニア……。わらわは義父上に利用されているだけかもしれぬのにこうも尽くしてくれるのか。
メルクリアならば、尽くされる者は応えねばならぬな。……わらわの臣下は、この手で守る。
ルキウスメルクリア……ボクは……。
メルクリア……ルキウス。お前にはだまし討ちのようにしてラムダを背負わせ、苦しめた。……本当に済まなかった。
メルクリアわらわはまだわかっていなかった。道具として使われることがどれほど心を傷つけるのか。義父上は……恐らくわらわを……。
メルクリア………………。
メルクリア……自らが体験せねばわからぬのは愚か者。なれど、愚かと知って振る舞いを変えられぬは恥知らず故、そなたにも頭を下げねばならぬ。
メルクリアカイウスの元へ行くのなら止めはしない。二人が共にあるのが、本来の姿じゃ。……お前にも……寂しい思いをさせたな。
ルキウスかつてのボクも、そうだった……。ただ盲目に信じ続けて道を誤った……。
メルクリアルキウス……?
ルキウス行き倒れていたボクやカイウス兄さんやルビアを助けてくれたのはきみだ。その分の恩は返しておく。
ルキウスだから、必ずリヒターを取り戻すんだ。……ボクも協力する。
メルクリアルキウス………… !………………ありがとう。
イクス……光った ! これがウッドロウさんの心核だ !
ミリーナよかった……手持ちの中にあって。
カイルさすが王様、運が強いなぁ。
シングそれじゃオレ、スピルリンクで心核を戻してくるよ。あと三人入れるけど、誰が来る ?
スタンそれじゃ、俺とカイルとルーティで――
ルーティあ、あたし、ちょっと用があったんだ !そっちで何とかしてくんない ? じゃあね !
ミリーナルーティったら……。
イクスそれじゃ、スタンさんとカイルとシングでお願いできるかな。
ロニ待ってくれ、俺が行く ! 絶対行く ! 死んでも行く !
イクスロ、ロニさん…… ?
ロニなあ、いいだろう ? カイル、スタンさん。
スタン別に、駄目なんて言ってないさ。一緒に行こうぜ、ロニ !

キャラクター12話【6-15 領主の館】
ロニ……驚いたぜ。人の心に入れるなんてよ。でもどうせだったら、美女の心の中に入ってみたかったぜ。さぞかし綺麗なんだろうなぁ。
シング美人だからスピリアがきれいってわけじゃないよ。あ、でもコハクは、スピルーンも綺麗だったなぁ。
ロニなに ! ? コハクさんという美女がいるのか !なるほどなるほどぉ ? 後で紹介しろよ !
カイルロニ、ダメだよ。コハクにはシングがいるんだから。
ロニなんだ、タダの彼女自慢か……。お幸せそうで何よりだな。
シングありがとう、ロニ !
ロニくっ……まっすぐな目で見やがって……。
スタンシング、あそこに見えるのが人工心核か ?
シングそうだよ。あの人工心核とこのウッドロウさんの心核を入れ替えるんだ。
シングこれで完了っと。……このスピルメイズかなり狭くなって荒れてる感じがするな。
スタンウッドロウさんの精神にかなり負担がかかってたってことか……。
カイルアトワイトさんも同じなんですよね。早く元に戻してあげないと……。
ロニなあシング、疑うわけじゃねえけどさこれで本当にウッドロウさんは元に戻るのか ?
シングバルバトスの時も成功してるし大丈夫さ。
ロニバルバトス ! ? あいつもこの世界にいるのかよ ! ?……こんな所まで、くそっ…… !
ロニシング ! なんであんな奴、助けたんだ !
シングそれが正しいと思ったからだよ。
ロニお前は知らないからだ !あいつはな ! あいつのせいで…… !
スタンロニ ! シングが悪いわけじゃないだろう。その場にいた、みんなが選んだことだ。
ロニ……悪かったな、シング。つい……。
シングいいんだ。ロニたちの敵なんだろう ?それを助けちゃったら、怒るのは当然だ。
カイル大丈夫だよ、ロニ。確かにこの世界でもバルバトスが暴れたって話も聞いた。
カイルけど、あいつが次に何かしようとした時にはオレが全力で倒す ! 絶対に !
カイルそのために、スタンさんにも稽古をつけてもらってるんだ。
スタンああ。すごいぞカイルは。どんどん強くなるんだぜ !そのうち俺が相手じゃ、もの足りなくなるかもな。
カイルそんなことないです ! でも……へへへ。スタンさんにそう言ってもらえると嬉しいなぁ。
ロニ……そうか。良かったな、カイル。俺はずっと、お前とスタンさんのこんな姿を……。
カイルロ、ロニ ! スタンさん、あのね――
スタンもういいって、カイル。
カイル……え ?
スタン二人はさ、俺たちの世界の未来から来たんだろう ?
二人! !
スタンあの時ルーティも言ってたけど、ロイドやエミルとかスレイとベルベットとか、ジュードとルドガーたちも。あんなのが周りにゴロゴロいるんだぜ ?
スタンだから……カイルたちを見ててもしかしたらって、ずっと思ってたんだ。
シングスタンって、勘がいいんだな。そういうの気にしてないと思ってたからちょっと意外だったよ。
スタン俺だってバカじゃないって。これだけ色々と重なったら、そりゃ気がつくよ !
スタンそれにさ……ジューダスだって……。…………………。
カイルスタンさん……。
スタンいや……、今日はここまでにしよう。
スタンもうちょっと聞きたいこともあったんだけどさ。それについてはルーティが嫌がってるみたいだし今はやめとくよ。――さ、戻ろうぜ !
カイルスタンさん……もしかして……。
ロニカイル、このまま帰っちまっていいのかよ。
カイル……スタンさん !
スタン何だ、カイル ?
カイルいつか……ロイドがクラトスさんのことを呼ぶみたいにスタンさんのことも呼んでいいですか ?
ミリーナお帰りなさい。みんな !
カイルただいま ! ウッドロウさんの心核、戻してきたよ。
イクス良かった。後は、ウッドロウさんの回復を待つばかりだな。
ナナリーご苦労さん ! どうだった ? 心の中ってやつは。
ロニいやあ、中々衝撃的な経験ができたぜ。な !
カイルうん !
ナナリーなんだい、嬉しそうだね。こっちもいい報せがあるよ。ね、ディムロスさん !
ディムロスああ。我々、対帝国部隊とレジスタンスは正式に同盟を結ぶことになった。
カイルそうなんだ ! これでナナリーたちの活動も、やりやすくなったね !
ナナリーそれなんだけどさ、レジスタンスも含めた総指揮をディムロスさんが引き受けてくれることになったんだよ。
ロニすげえじゃねえか。天地戦争の英雄が指揮をとるなんてよ !
ディムロスその代わりといってはなんだが君たちは、イクスくんたちに協力をしてやって欲しい。カイルくんのためにもな。
ロニ元からそのつもりだぜ。だろ、ナナリー。
ナナリー奇遇だね。あんたと気が合うとは。ま、そんなわけだからさ。これからもよろしく頼むよ、イクス、ミリーナ。
イクスああ、大歓迎だよ。改めてよろしく、ロニさん、ナナリー !
ミリーナナナリーみたいな可愛い人が力を貸してくれるなんて心強いわ !

キャラクター12話【6-15 領主の館】
カーリャルドガーさま、エルさま、いらっしゃいますかー ?
エルあ、カーリャ、いらっしゃい !ルドガー、イクスたちが来たよ。
ルドガーどうぞ入ってくれ。今、お茶をいれるから。
ミリーナいえ、気を使わないでください。
イクスはい、これ。エルに渡してくれって頼まれたんだ。
エル手紙…… ? 開けていいよね ?えっと……「エルへ。元気ですか。パパは……」これ、パパ ! ? パパからの手紙 ! ?
ルドガーエルの父親 ! ? この世界にいるのか ! ?
イクスそうです。その手紙は、救世軍にいるヴィクトルという人から預かりました。
ルドガーヴィクトル……。エル、俺も一緒に読んでいいか ?
エルうん。ルドガーはアイボーだから、特別 !
ルドガー…………。
エルねえルドガー、これ、本当かな。パパ、本当に来てくれるかな ?
コーキスエル様、手紙には何て書いてあったんだ ?
カーリャコーキス、それ聞いちゃうんですか ?確かに気になりますけど。
エルいいよ。教えてあげる。
エルあのね、パパは、エルの大切なともだちを助けたりエルと【本物の家族】として暮らすために頑張ってるから、まだ会えないんだって。
エルでも、今は離れていても必ず迎えに来るって、書いてあったんだ。
コーキスそうか。良かったな、エル様。
エルうん。……でも、本当はすぐに会いたい。ねえ、ちょっとだけでも会いにいっちゃダメかな。キューセーグンにいるんでしょ ?
カーリャそれは……。
ミリーナエルのお父さんが助けようとしている「エルの友達」はエルの知ってるミラさんのことなんですって。二人が会えるようにって、頑張ってるのよ ?
エル本当 ! ? だったら待ってる !パパとミラが、いつ帰ってきてもいいように。
イクスああ。エルがここで待ってるってだけでヴィクトルさんは心強いと思うよ。
エルうん ! でもさー、パパももう少しわかりやすく書けばいいのに。そしたらエルも会いに行くなんていわなかったよ。
エルここの「本物の家族として暮らす」っていうのも訳わかんない。これじゃエルとパパが本物じゃないみたいだし。
ルドガー…………。
イクスどうしたんですか、ルドガーさん。
ルドガーあ、いや……。ちょっと、びっくりしたんだ。いきなりエルの父親が出てきたから……。
エル大丈夫。パパはすっごく優しいから。パパが来たら、ルドガーのことショーカイするね。エルのアイボーですって。
ルドガーああ、楽しみにしてるよ。
ルドガー(【本物の家族】……本物として暮らす…… ?まさかエルは、分史世界の……)
? ? ?――あ、タルロウ ! そこ汚れてるから拭いておいて。それからお茶をお願い。あと洗濯とトイレ掃除と……。
? ? ?ハロルド、そんな一気に命令したらタルロウが混乱しますよ。
ハロルドへーきへーき ! 私が改造したのよ ?この程度、ちゃちゃっとやってくれるわよ。ほら、もうお茶が出て来たわ。
? ? ?本当だ。ありがとうございます。あ、美味しい……。
ハロルドそのタルロウにはね、クンツァイトっていう機械人の機能の一部をコピーして組み込んであるの。あれはすごいわよ ? 家事全般において万能だから。
ティルキスβハロルド、グラスティン様から支給された次のリビングドールβの被験者、リヒターだ。
? ? ?……また犠牲者を増やすつもりですか ?こんなことはもうやめるべきです。
ハロルドはいはい。イオンは黙ってて。ティルキス、そいつ、そこに寝かせておいて。
イオンハロルド……この実験を続ければ悲しむ人が増えるだけですよ ?
ハロルドふうん……レプリカと言っても性格はあの被験者イオンの方と全然違うんだ。不思議よねぇ……。
イオン…………。
セールンド カレイドスコープの間
? ? ?ゲフィオン……。この状態では話をすることもままならぬか。
? ? ?これは……魔鏡の護符か ?
? ? ?…………そこの人ならざる者よ。封印が弱まっている。この世界に残された時間は、あまりないぞ。
? ? ?やはり、そうですか……。
? ? ?貴様は知っているか。この閉じた世界から脱出する術を。
? ? ?それは……どれだけ足掻こうとも不可能です。人体万華鏡となったミリーナ様なら何かご存じだったかも知れませんが。
? ? ?人ならざる者。貴様の名は ?
? ? ?……カーリャ。ミリーナ様の鏡精だった者、です。
to be continued
キャラクター1話【7-1 閑散とした街道】
ティア……それじゃあ、まだ、ルークの体に悪い影響は出ていないんですね。
ミュウみゅうぅぅ ! ご主人様大丈夫ですの ?よかったですの !
ジェイドええ。ですが――
ルーク……うん。わかってる。ローレライがこの世界に具現化されたなら、第七音素も具現化されてる可能性があるもんな。
ジェイドやれやれ。あれほど説明したのに相変わらずその程度の理解ですか。第七音素そのものが具現化されることは、ほぼありません。
ジェイドエンコードの性質上、この世界の法則に合うよう置き換えられる筈です。
ジェイドそして、あなたがこの世界に具現化されている以上第七音素はすでに何らかのエンコードを施された上でこの世界に具現化されているんです。
ルーク……またわからなくなってきたぞ。要するに俺が第七音素で構成されたレプリカだから、第七音素的な奴が具現化されてる事は確か……ってことだっけ。
ティア……大佐。
ジェイド……ええ。
ジェイドルーク。この話はまた――
ルークわかってるよ。どうせ俺はバカだから、また今度説明するって言うんだろ。
ルークでもローレライが具現化されたから、すぐ俺の音素が乖離する……って訳じゃないのは、ちょっと安心した。俺……まだ消えないんだって……。
ティアルーク ! 後ろ…… !
ガイ……へぇ。やっぱりそういうことか。
ルークうぇ ! ? みんな ! ?
アニス……嘘でしょ ? ルークも消えちゃうの…… ?
ルークあ……あの……。
ナタリア隠そうとしても無駄ですわ。ローレライが具現化されたと聞いてから、ルークはずっとふさぎ込んでいるようでしたもの。
ナタリア何かあったんだと……すぐわかりましたのよ。
アッシュジェイド。話せ。
ルークま、待ってくれ。俺が……話す。ちゃんと話すから。
アッシュつまり貴様は、元の世界で音素乖離を引き起こし消えかけていた。それがこの世界に具現化された時環境の変化によって止まっていた。そういうことだな。
ルーク……うん。まぁ、そういうこと……だよな ?ジェイド ?
ジェイドええ。ですが、今は違います。ローレライが具現化されたのなら、ティル・ナ・ノーグの環境はオールドラントに近づいた。
ジェイドまだ音素乖離は始まっていませんが注意深く観察する必要があります。
アッシュ……ちっ。どこまでも手のかかるレプリカだ。
ルーク……ごめん。
アッシュ誰が謝れと言った !
ナタリアアッシュ ! あなたもおかしいですわよ。ローレライの具現化のことを聞いてから、この世界に具現化されたばかりの頃のあなたに戻ってしまったみたいで……。
アッシュ………… !
ジェイドそれはそうでしょうねぇ。アッシュはアッシュで自分が消えると思い込んでいるようですから。
アッシュ………………。
ナタリアえ ? どういうことですの、アッシュ ! ?
アッシュ――死霊使い(ネクロマンサー)、俺は消えるのか。
ジェイドこの世界はオールドラントの条件とあまりに違います。まして未来のことは、何も断定出来ません。
ジェイドですが、現時点において、被験者であるあなたの生命が脅かされることはないでしょう。
ジェイドローレライは精霊として具現化された。もはやオールドラントでの第七音素研究は参考資料でしかなくなりました。
ジェイドあなたが元の世界で抱いた焦りは少なくともここでは杞憂と言える。
ジェイド詳しい説明は省いて構いませんね ?どうせ話したところで私以上にフォミクリーに詳しくはなれないのですから。
アッシュ相変わらず、いちいち癪に障る言い方をする奴だな。だが、まだ生きられるというならそれでいい。お前が俺を安心させるために嘘をつくとも思えないしな。
ガイなぁ、ルークが消えることを心配していたのはわかったが、アッシュはどうして自分が消えると思ったんだ ?
アッシュ……話せば長くなる。現状が変わらないなら説明しなくてもいいだろう。
ナタリアアッシュ……。
アッシュ大丈夫だ、ナタリア。苛ついてすまなかった。……ルークも。
ルークえぇ…… ? 槍でも降ってくるんじゃないか ?
アッシュ……フン。それより、ジェイドの口ぶりだとルークの方は楽観視できない、という風に聞こえたが。
ジェイドええ。否定はしません。だからこそ何とかして精霊ローレライと接触したい。
ジェイドこの世界では、音素はキラル分子に置き換えられたと考えられます。これは譜術が魔術として定義されたことからも明らかだ。
ジェイド問題は音素――特に第七音素が持っていた性質や属性はどうなったのか……ということです。
アニス第七音素はこの世界だと治癒術の性質に似てますよね ?
ジェイドええ。ですが、音素の性質はそれだけではない。キラル分子が持つ属性の一つとなったのかこの世界独特の概念であるアニマに取り込まれたのか。
ティアローレライが精霊として具現化されたと言うことはその際にレイヤード処理がされて、今までの法則が変わっている可能性があるらしいの。
ガイレイヤード処理って言うのは、具現化の上書き処理……だったか。ややこしい……。
ガイつまり、ルークの今後を調べるためには第七音素の性質がどう変わったか調べる必要があってその為にはローレライに会うのが手っ取り早いのか。
イクスルーク ! あの……大変なんだ。すぐに作戦会議室に来てくれ。
ルークイクス。大変って……何があったんだ ?
イクスオールドラント領に領主が到着したってカロルたちから報告があって。それが、はぐれ鏡映点リストに名前のある人なんだ。
イクス【イオン】って名前の……。
アニス! ?

キャラクター2話【7-1 閑散とした街道】
メルクリア――遅い !義父上はいつまで待たせるおつもりなのじゃ !
チーグルメルクリア様。このままデミトリアス帝を信じてよいものでしょうか。
メルクリアわかっている。確かに近頃の義父上はわらわへの隠し事が多い……。
二人………………。
メルクリアしかし、生死の境をさまよっていたわらわを助けたのは義父上じゃ。それはわらわも覚えている。
メルクリアわらわの傷口を押さえながら、死んではならぬと何度も声を張り上げておられた。義父上は心優しき方だ。ビフレスト皇国にとって仇には違いないが……。
チーグルいえ、その優しさが問題です。確かにデミトリアス帝が優しさを持ち合わせていることは事実なのでしょう。ですが、優しい人間が善人であるとは限りません。
チーグルナーザ様も、デミトリアス帝を「優しい毒」と仰っていました。
メルクリア優しい……毒 ? どういう意味じゃ。
アスガルド兵失礼致します。デミトリアス陛下がお呼びです。謁見の間へどうぞ。
メルクリア
デミトリアス待たせたね、メルクリア。急ぎの用だと言っていたが……。
メルクリアリヒターをわらわに返して下され。
デミトリアス……やはりその話か。
メルクリア何故じゃ。四幻将はわらわの元に残して下さる約束じゃ !ディストを連れて行くなら、せめてリヒターは……。
デミトリアスすまない。テセアラ領へ領主を派遣するにあたって付き人を用意する必要があったんだよ。
デミトリアス必ずしも同じ世界の人間を……と決まっている訳ではないんだが……。
メルクリアならば、リヒターでなくてもいいではありませぬか !
リヒター ?私を呼んだか ?
メルクリアおお、リヒター ! 無事であったか !
リーガル ?知り合いか、リヒター。
リヒター ?いや、初めて会う子供だ。
メルクリアリヒター…… ?
ジュニア――まさか、リヒターさんをリビングドールβに ! ?
メルクリア! ?
チーグル………………。
リヒターβそうだ。私は領主として調整されたリーガルの付き人として調整されたリビングドールβだ。
メルクリア……な……。
リヒターβどうした ? 何か問題でもあるか ?お前の後ろにいるのも旧式だがリビングドールだろう ?
メルクリア……あ。……チーグル……。
チーグル……メルクリア様。その者の言う通りです。私は――
グラスティン――失礼。やはりデミトリアス陛下は甘すぎるようだ。
デミトリアスグラスティン ! 私は……。
グラスティンチーグルとジュニアを確保しろ !
メルクリア何をする ! ?
リヒターβ動くな、子供よ。
リーガルβグラスティンの指示だ。
メルクリアリヒター !
ルキウスメルクリア。無駄だ。ティルキスと同じなんだとしたらどんな言葉もあいつには届かない。
メルクリア義父上 ! チーグルとジュニアまでわらわから奪うおつもりか !
グラスティンヒヒヒ……。大義のためだ、皇女よ。チーグルはエフィネア領の領主の体として使う。
グラスティン心配しなくても、チーグルはリチャードの心核に寄生しているから、心核を保管しておけば消えることはないさ。
グラスティンそれにジュニアは元から帝国のために具現化を請け負っていたんだ。政治の中心であるアスガルド城にいるのが道理だろう ?
グラスティン連れて行け !
メルクリアチーグル ! ジュニア ! !
チーグルメルクリア様 ! 私のことはご心配なく !必ず、メルクリア様の元に戻ります !
ジュニア僕も ! メルクリア、待ってて !
デミトリアスグラスティン……。もっと違うやり方はなかったのか ?メルクリアはいい子だ。話せばきっとわかってくれる。それをわざわざこんな風に傷つけるような……。
メルクリア……優しい……毒。
デミトリアス……ん ? どうしたんだい ? メルクリア。
メルクリア………………。
ルキウスメルクリア。ひとまずここを出よう。いいな ?
グラスティン……おやぁ ! これは驚いた。ここにもこんなに綺麗な黒髪の坊やが……。ヒヒヒヒ !
メルクリア貴様……。その汚らわしい目をこの者に向けるな !ルキウスにまで手を出すというなら、わらわが――
デミトリアスグラスティン ! 欲しいものは与えたはずだ。
グラスティンヒヒ……。ああ、限りなく本物に近いフィリップを手に入れたんだ……。他の代用品はいらないよ。今は、ね……。
メルクリア――義父上。わらわはこれで失礼致します。
デミトリアスメルクリア、すまない。この埋め合わせは必ずするよ。
メルクリア結構じゃ。義父上がそのおつもりなら……わらわも自由にやらせてもらう。帰るぞ、ルキウス。
ルキウスメルクリア。どうするつもりだ。
メルクリア……リビングドールは、ビフレスト復活のための技術研究に過ぎないのじゃ。そのことは義父上もご存じない。
メルクリア知っているのはわらわとシドニーと……。
メルクリア………………。
ルキウスメルクリア ?
メルクリア……わらわは知らなかった。親しい者がわらわを忘れ別人となる事が、これほど悲しいものだと。度し難い未熟さよ。
メルクリアなれど、未熟故にできることもあると気付いた。
メルクリアリヒター、ジュニア、チーグルとリチャードそれにティルキスとあのリーガルなる者も。わらわが必ず取り戻す。どんな手段を用いてもな。
ルキウス何をするつもりなんだ ?
メルクリアリビングドールならぬリビングシティじゃ。具現化した街に……ビフレストを宿らせる。
メルクリアさすればビフレストの兵力が甦り、義父上やあの忌々しいグラスティンとやらに対抗できよう。
ルキウスまさか、この帝都をリビングシティにするつもりか ?だとしたら、それは間違っている。大規模なリビングドールを作ってどうするんだ。
メルクリア……うむ。帝都や既に存在する街を使ってはリチャードやティルキス、リヒターらの尊厳を奪ったことと何も変わらぬ。
メルクリアそこまで愚かなことはせぬつもりじゃ。ひとまず芙蓉離宮で計画を話す。共に来てくれるか ?
ルキウスそうだな。……君は誰かがみていないと暴走するかも知れないからね。
メルクリアうむ。わらわは未熟じゃからな。世話をかける。

キャラクター3話【7-2 ダアト1】
コーキスおっ。なんか、遠くに見えてきた。あそこにダアトって街があるのかな ?
ティア何だか不思議な気分ね。ダアトという名前の街がオールドラント領の領都だなんて……。
ミリーナ確かダアトというのはティアたちの世界の宗教都市……だったわよね ?
ティアええ。私やアニスが所属しているローレライ教団の総本山がある街なの。ここでは違うのでしょうけど。
ガイついこの間のウッドロウのことといい今回のことといい、帝国は領土の支配力を強めることに躍起になってるみたいだな。
ナタリアウッドロウさん……まだ目が覚めないそうですわ。ルーティたち、心配でしょうね。
アッシュスピルメイズの中がかなり荒れていたらしいからな。悪い影響がないといいんだが……。
コーキスつーか、マスターもルーク様もさっきから、何をきょろきょろしてるんだ ?
イクスいや……。俺の記憶が確かなら、今からいくダアトってジェイドさんの偽者が出た街じゃないかなって。
ルークあ ! やっぱりそうか !だからさっき通った道に覚えがあったんだ !
カーリャ懐かしいですね。優しくて紳士なジェイドさま……。どうしてあっちが本物じゃなかったんでしょう……。
ジェイド悲しいですねぇ。私は心からカーリャを大切に思っているというのに♪
カーリャひぃぃぃぃ……。心がこもってなさ過ぎて怖いですぅぅぅぅ。
ルーク……アニス。大丈夫か ?
アニス――な、何が ?
ルーク何がって……。イオンのことだよ。
イクスなぁ、みんなそのイオンさんの名前を出す時すごく悲しそうだけど……何があったのか聞いてもいいかな ?
イクスもちろん、俺たちが知らなくていいことだとルークたちが判断したなら強制はできないんだけど……。
ジェイドいえ、強制してでも情報はとりまとめるべきですよ。あなたとミリーナはね。自分の世界の存続が掛かっているのですから。
ミリーナジェイドさん……。
カーリャ――ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃ ! ? ! ? ! ?
ミリーナカーリャ ! ? どうしたの ! ?ひきつけでも起こしたみたいな声を出して ! ?
カーリャあ、あれ…… ! あの街の中心……。なんか背の高い建物があると思ったら……。
カーリャジェイドさまの銅像ですぅぅぅぅぅぅ ! ? ! ? ! ?
コーキスうわ……。どういうことだ、これ……。
アッシュ何でこいつの銅像がこんなところに……。
アニスマ、マジか……。
ガイこいつは傑作だな、旦那 !ミリーナに記念写真でも撮ってもらうか !
ジェイド殺しますよ、ガイ。
街の住人お、あんたたち。ダアトは初めてかい ?
街の住人この銅像は聖人ジェイド様。以前ジェイド様ってお方がこの広場で、人に優しさを分け与えることの尊さを街のみんなに教え、導いて下さったんだ。
街の住人それ以来、ここはジェイド広場と呼ばれていてね。この街では一年中ジェイド様ブームが……って、あれ ?
街の住人――あ、あなたはまさかジェイド様では ! ?
ジェイド違います。よく似ていると言われますが、赤の他人です。
街の住人そ、そうかい ? ……まぁ、以前ジェイド様の悪質な偽者が出たこともあるらしいからまぁ似ている人もいるんだろうけど……。
? ? ?えぇい ! 責任者を呼びなさい ! 責任者を !
イクス……え ? もしかして、この声は……。
ジェイドおや ? イクスの知り合いですか ?
イクスえ ! ? いや、だって、あの声は――
街の住人おっと、死神ディストだ。あんたたちもさっさと逃げた方がいい。
街の住人あいつ、昨日この街に来たばかりなんだがどうもジェイド様に張り合ってるらしくてくだらない自慢話を聞かされるんだよ。
ルークあー……。最近姿が見えなくて安心してたのに。
アッシュ………………。
ナタリアアッシュ…… ?
ミリーナみんな、ディストさんには悪いけどそこの植え込みに隠れてやり過ごしましょう。面倒だわ。
ジェイド遠慮することはありません。誰だって壊れた下水管からは距離をとるものですよ。
ディスト何なんです、この街は !さっきまで大勢人がいたのにもう誰もいないじゃありませんか !
帝国兵Aしにが……薔薇のディスト様。銅像の件ですがイオン様に願い出てはいかがでしょうか。
ディストふん。機械仕掛けのつまらない心核を入れられたリビングドールに、美しい私の銅像の価値がわかる筈もありませんよ。
ディストこのジェイド像の隣にはディスト像が並んでこそ――いえ、もうこの際、ジェイドの銅像を壊して私の銅像に置き換えましょう。その方が喜ばれます。
コーキスあんなこと言われてる。いいのかよ、ジェイド様 !
ジェイド珍しくディストと意見が一致しそうです。是非あの銅像は壊して頂きたい。虫酸が走ります。
帝国兵B――イオン様がお戻りです !
アニス! !
イオンβ死神ディスト。また騒いでいるのか。
ディストこれはこれは領主様。お元気そうで何より。
アッシュ……おい、ジェイド。仕掛けるぞ。
ジェイドおや……。
ルークイオンを連れてくるのか ? ウッドロウみたいに。
ナタリア先ほどの話を聞く限り、イオンもリビングドールβにされている様子でしたわね。
ティアだとしたら、このまま放置しておけば導師イオンの心身に悪影響が出かねないわ。
ジェイド……アッシュがねぇ。まぁ、いいでしょう。イクス、何が起きるかわかりませんが、構いませんか ?
イクスわかりました。一気に飛び出して、イオンさんを助け出しましょう !

キャラクター4話【7-3 ダアト2】
ガイ……勝負あったな。領主様を渡してもらおうか。
イオンβ死神ディスト。どうするのだ ?お前自ら、私の付き人に志願してきたのだ。何とかして見せろ。
アニスイオン……様……。
ディストなるほど……。導師イオンが領主になるという噂を聞きつけてきたのですね。フフフフ……。
ディストですが、ここで導師イオンを連れ帰っても彼の心核はあなた方の元にはありませんよ。
アニスこっちが取り囲んでるのに随分余裕ぶっこいてるじゃん、ディスト。
ディストあなたは平静を保とうと必死ですねぇ、アニス。どうです ? 自分が殺したご主人様と再会する気分は ?
コーキスえ…… ! ?
アニスその程度で揺れるアニスちゃんだと思わないでよね。でも……ぶっ潰す ! !
アッシュ――そうはさせるか !
アニスちょっ ! ? アッシュ ! ?攻撃する方間違えてるんだけど ! ?
アッシュ間違えてなどいない。
ルークアッシュ ! ?
ディストどういうつもりです、アッシュ。
アッシュローレライが具現化されたと聞いた。俺は奴に用がある。
ディストローレライに会うためにジェイドたちを裏切る、という事ですか。
アッシュ裏切る…… ? 面白いことを言うな、鼻たれ。お前のお得意の奴だろう。自分の目的のために全ての物を利用するってのはな。
ディスト誰が鼻たれですか ! ? ですが、まぁ、いいでしょう。私も別に帝国のことなどどうでもいいんですから。
ディストそれよりアッシュ、あなたが来るならこの世界でのフォミクリー研究が捗ります。
ジェイド………………。
ナタリアアッシュ ! ? 本気ですの ! ?
ティア……待って。何の音 ?
ガイ駆動音……。それも大量だ。
ジェイドなるほど。街の外にタルロウを伏せていたようですね。
ディストフッフッフッ。その通り。あなたたちは袋のネズミですよ。
イクス……みんな、撤退する !
ミリーナイクスの傍へ !
ディスト何を……――
アッシュおい、鼻たれの死神 ! 奴らを止めろ !
ディストえ ! ? な、何なんですさっきから人のことを鼻たれ鼻たれって――
イクス転送ゲート、展開 !
ディストキィィィィィ ! どういうことです、アッシュ !
アッシュ転送魔法陣とやらの改造版だ。それより俺をローレライのところへ連れて行け。
ディストどうして私があなたに命令されなければならないんですか ! そもそも、どうしてあなたまで私のことを鼻たれと呼ぶんです !
アッシュ鼻たれでも死神でもひしゃげたダンゴムシでも構わん。早くローレライの元へ案内しろ !
ディストそうはいきませんよ。あなたが本当にジェイドたちを裏切ったのか確かめなければいけませんからねぇ……。
イクス……く……。
コーキスマ、マスター ! ? どうしたんだ ! ?
ジェイド……これは……。転送ゲート展開の際の副作用か……。
ミリーナえ ! ? どういうことですか、ジェイドさん !
ジェイド医務室で説明します。ガイ、イクスを運ぶのを手伝って下さい。
ルーク俺も手伝う !
ジェイドティア、カーリャ。ナタリアとアニスを頼みましたよ。落ち着かせてから、医務室へ連れてきて下さい。
ティア了解です。
カーリャが、頑張ります !

キャラクター5話【7-4 静寂の森1】
マーク今日、みんなに集まってもらったのは配置換えを行うためだ。
ルック配置換え……ですか ?
マークイクス救出作戦の時に、多くの同志が負傷した。他にも帝国との小競り合いやら病気やらで前線で戦うのは厳しい状況の奴も多い。
マークフィルとも相談したんだがテセアラ領のアルタミラ近郊の地上基地を本格的に運用しようと思っている。
救世軍Aまさか、俺たちをそこに厄介払いしようって言うんですか ! ?
救世軍Bそりゃないぜ、マークさん !ビクエ様に掛け合ってくれよ ! 俺たちはまだ戦える !
救世軍B相手が魔女だろうと帝国だろうとセールンドを取り戻して守るのが俺たちの使命なんだ !
救世軍Aそうですよ。アルタミラの地上基地なんて使命を捨てて帝国に日和った裏切り者たちが、今更助けてくれって駆け込んできて、集まってる場所じゃないですか !
救世軍B俺らはまだ戦える !手足を失っても、捨て石ぐらいにはなれるんだ !
マーク馬鹿野郎 ! そんな使い方できる訳ねぇだろ !
マークそれに、勘違いすんなよ。お前らを降ろすと決めたのはフィルじゃねぇ。このマーク様だ。
マークそれにこの方針に従えねぇって奴は捨て石にする価値もねぇよ。出て行ってくれても構わないんだぜ。
ルックマークさん、待って下さい !みんなの気持ちがわからないあなたじゃないでしょう。それにケリュケイオンにも後方支援の人員が必要だ。
ルックここに集まってる同志の中には、バックアップなら十分できるって連中も大勢います。
マークルック。他人事みたいにいってるんじゃねぇぞ。今回の配置換えで、お前も地上任務になるんだからな。
ルック! ?
マーク――とにかく、荷物をまとめておけ。いいな !
フィリップ……マーク。大丈夫だったかい ?みんな、ショックを受けていたんじゃ……。
マークまぁ、不満は色々あるみたいだが……大丈夫だよ。
シンク足手まといだから降ろすなんて言われればまぁ、不満も出るでしょ。
フィリップそんなつもりじゃないんだ。本当に……。この先は、ケリュケイオンにいる方が危険になる。なるべくみんなを巻き込みたくないんだよ。
フィリップ……やっぱり、僕からみんなに説明を――
マーク駄目だ。フィルじゃ、奴らの剣幕に押されて結局ケリュケイオンへの残留を許しちまう。
フィリップば、馬鹿にするなよ。僕だってビクエとして王宮の狐や狸相手に渡り合ってきたんだ。はっきり言わなきゃいけない時には、僕だって……。
シンクだったら、さっさとイクスに真実を話したら ?クラトスにも言われてたでしょ ?先延ばしにすればするほどつらくなるって。
シンクまぁ、こっちはその方が面白いけど。
フィリップ……それは…………精霊の封印地に……入れたら……。
マークはぁ……。じゃあ、フィルは引き続き精霊の封印地へのアプローチ方法を探してくれ。俺とシンクは負傷兵達を地上の拠点まで送ってくる。
シンクせいぜい頑張ってね、ビクエ様。
ルック……マークさん。せめて自分には本当の事を聞かせて下さい。
ルック今までビクエ様とマークさんに付いてきた連中は自分も含めて、最期の瞬間まで行動を共にしたいと願っている奴らばかりです。
ルック確かに、酷い怪我を負った奴もいる。俺だって、この間の戦いで片足を失いました。それでもちゃんとやれていたでしょう ?
ルックどうして今になってケリュケイオンから降ろすんですか。
マーク……希望の芽ってのは潰えちゃいけねぇんだよ。それだけだ。
ルック………………。
シンクちょっと ! 隊列止めて。
マークどうした ?
シンクそこに、人間が倒れてる。あいつ、バルバトスって奴じゃない ?帝国に捕まってリビングドールにされてたマヌケのさ。
マーク……マジかよ。血まみれじゃねぇか。なんでこんなところに……。
ルックこの先の北の岬に、帝国が監獄を作ったらしいんです。そこから逃げてきたんじゃないですかね。
救世軍Aマークさん、どうするんですか。この人。移動の『足手まといになる』からここに置いていくんですか ?
ルックおい、その言い方はないだろ !
マーク……しっ。大声出すな。ルック、荷物の軽い連中集めて、あの男を運べ。俺とシンクは――
救世軍A帝国兵 ! ?
帝国兵――くっ、バルバトスの奴ここで仲間と合流するつもりで脱獄したのか。
マークおいおい、仲間扱いかよ。こっちは通りすがりだっての。
帝国兵何でもいい ! バルバトスを――その大男を渡せ !
マークルック、みんなを連れて逃げろ !ここは俺とシンクで片付ける !
ルックわ、わかりました !

キャラクター6話【7-6 ダアト付近の平原】
ミリーナ……どう、イクス ? 少しは落ち着いた ?
イクスああ……。ごめん。何か急に全身の力が抜けて……。痛いとか苦しいとかじゃなくて、だるいって言うか。
イクス前に使った時は、少し疲れたなって感じたぐらいだったんだけど。
コーキス本当か ! ? また痛いの隠してるとかそういうことないか ! ?
イクスコーキス、心配性なのは俺一人で十分だよ。ありがとう。大丈夫だから。
ジェイド転送ゲートは、ミリーナの仮想鏡界のゲートが具現化した物を転用していますから、イクスが使うと適性の問題で負担が大きいのかも知れません。
ジェイド前回の使用からそう間も空いていませんし実験データも足りないままの運用ですので頻繁に利用することは避けた方がよさそうですね。
ミリーナ私なら、イクスほどのダメージはないんですよね ?転送ゲートは鏡士にしか使えない……。だったらこれから緊急避難として使う場合は、私がやります。
ジェイド……ふむ。あなたが自ら実験に参加してくれるというなら止めはしませんが、それでも回数は制限した方がいいと思いますよ。
ジェイドあなたとイクスでは魔鏡術の潜在能力に隔たりがある。イクスでこの負担なら、たとえ適性のあるミリーナでも危険であることには変わりありません。
イクスあの……俺のことより、アッシュさんのことは……。アッシュさん、どうして急にディストさんの方へ付いたんでしょうか ?
ナタリア……やはり、まだ焦りがあったのでしょうか。その……ローレライが具現化されたことで……。
ミリーナローレライが具現化されたことがそんなに問題なんですか ?
ルーク――なぁ、みんな。イクスたちに俺とアッシュの話をしてもいいか ? イクスには前に少し話したことがあるけど、俺の体のこととか、全部。
ガイルークが話すと決めたなら、誰も反対はしないさ。そうだろ ?
アニスだったら、私のことも一緒に話していい ?イオン様が具現化されたなら話さなきゃいけないでしょ ?
ルークアニス……。うん、一緒に話そう。
イクスつまり、ルークはアッシュのレプリカ――同一人物の具現化みたいな存在なんだな。記憶は受け継がないけど。
イクスそれで、ローレライが具現化されたことでルークと……もしかしたらアッシュにも音素乖離……細胞崩壊みたいなことが起きるかも知れない。
ミリーナそしてリビングドールβにされたイオンさんは……ルークさんたちの世界では既に亡くなっているのね。
ミリーナイオンさんが具現化されたのは、恐らくルークさんたちの時間より前の時間から。
カーリャコーキス……。何泣いてるんです !
コーキスパイセンこそ鼻水出てるぞ !
カーリャで、出てませんよ ! グスン……。
ルーク……ごめん。コーキス、カーリャ。そんな顔させちゃって。
コーキス謝るなよ、ルーク様 ! ずっと怖かっただろ……。消えるかもって思うの。
ミリーナ……そうよね。ごめんなさい。私たち、何も知らなかった。具現化の力……複雑だったでしょう ?
ルーク大丈夫だよ。そんな風に気を遣わないでくれ。イクスには話したけど、俺、感謝してるんだ。命の猶予をもらったから。
ルークそれに、どっちかっていうとジェイドの方がつらいのかなって。
ルークだって……レプリカを作る技術はジェイドが考えた物で……ジェイド、後悔してるみたいだったから。
アニスそれは違うよ、ルーク。大佐は……もう一度ちゃんとフォミクリーと向き合おうって決めてるんだよ。
ジェイドアニス。おしゃべりな口は縫い付けますよ ?
コーキスアニス様だって……。
アニスそれもいいの。大丈夫。私は……酷いことをした。それはずっと消えない。それでいいんだよ。この気持ちと責任は、私が背負わなきゃいけないんだ。
ミリーナ……アニス。
ガイルークの話で、俺たちの状況は何となくわかってもらえたと思う。アッシュのことも……。
ガイだけど、アッシュの体に関しては、ジェイドが問題ないって伝えたんだがなぁ。普段のあいつならその辺りはちゃんと理解できてる筈なんだが……。
イクス何か考えがあるんじゃないかな。
ジェイド……アッシュの話はいったん置いておきましょう。私としては、一刻も早くリビングドール化したイオンをこちらに連れていきたいと考えています。
ミリーナ………………。
ティアでも、仮に助け出せたとして、イオン様の心核が――
ルークあ……いっ……痛ぇ…… ! ? 頭が……。
ティアルーク ! ?
ガイおい、まさか……その頭痛は !
ローレライルーク……アッシュ……。私の声が……るか……。ダアトの……森の……。急いで来て……しい……。導師の……――
ナタリアルーク ! 凄い汗ですわ。大丈夫ですの ?
ルーク……ああ、大丈夫。痛みは引いてきたよ。具現化されてから初めての例のアレだったからちょっと驚いたけど。
ジェイド連絡してきたのはアッシュですか ?それともローレライですか ?
ルークローレライだ。ダアトの……森がどうとかって。で、急いで来てくれって。
コーキスえ ! ? 精霊の声が聞こえたのか ! ?
ルークうん。元の世界では、ローレライの声とアッシュの声が聞こえることがあったんだよ。こっちからは連絡を取れなかったけど……。
ミュウ便利連絡網ですの !
コーキスマスターの声が聞こえたみたいな奴だな。確かに便利だったよな、アレ !魔鏡通信機無しで話ができるんだもんな。
ジェイドダアトの森……ですか。
ティアミュウが巨大化したあの森かも知れません。
ジェイドええ、可能性はありますね。向かってみましょう。
イクスわかりました。
ミリーナ駄目よ、イクス。あなたはここに残って、体を休めて。私とコーキスとカーリャで向かうわ。
イクスえ、だけど――
ジェイドイクス、そうして下さい。ミリーナに暴走されたくありませんから。
イクスえ……。はは……。えっと……。
ルークいいからいいから。何かあったら連絡するよ。
アニスモテる男はつらいね、イクス♪
ミリーナあの……ジェイドさん。もしかしてリビングドールβにされたイオンさんは被験者のイオンさんだと思っているんですか ?
ジェイド……どうしてそう思ったんです ?
ミリーナ仲間のイオンさんの事を話す時はイオン様と呼んでいたのに、さっきはイオンと……。
ジェイドなるほど。これはうっかりしました。
ミリーナだとしたら、アニスに先に伝えてあげた方がいいんじゃないでしょうか。
ミリーナレプリカというのは記憶を継承しない。なら、姿は同じでも、アニスの知っているイオンさんではないんですよね。
ジェイドミリーナ。記憶を継承していてもゲフィオンとあなたは違いますよね。
ミリーナあ……。ええ、それはそうですけど……。
ジェイド混同してしまう気持ちは……まぁ、察することはできますよ。でもアニスを案ずる前にあなたが覚悟をしておいた方がいい。
ジェイドイクスのことも、自分自身のことも、ね。
ミリーナ……………… !

キャラクター7話【7-10 イオンのいる森】
アニスそれにしても、ローレライも毎度唐突だよね。
アニスいつ具現化されたのか知らないけどこっちがローレライに気付いた途端また一方的に連絡してきた訳でしょ。
アニス面倒な彼氏みたいじゃん ?性別知らないけどさ。
ガイお、アニス。調子出てきたじゃないか。
アニスアニスちゃんはいつでも絶好調でーす。ガイこそ、ルークのこと心配して取り乱してたじゃん。
ガイえ ! ?
ルークそうなのか ?
ナタリアそうですわよ。
ティアガイはルークの親友ですものね。
ミリーナふふ、ガイさん。顔が赤いわ。
ガイはは……。それより、奥の方から何か聞こえないか ?
ジェイドよかったですね、ガイ。都合のいいことに、本当にあちらに魔物が集まっているようです。
ガイあのな ! 俺が気を逸らそうとしてるみたいな言い方はやめてくれ !
ミュウみゅみゅみゅ ! !
ルークミュウ ! ? 気を付けろそっちは魔物がいるかも知れないんだぞ ! ?
ティア待って、ルーク。一人じゃ危ないわ !
ルークえ ! ? イオン ! ?
ティア危ない…… !
イオン………… !
ミュウイオン様ですの ! イオン様ですの !
ルークおい、大丈夫か ! ? 今のダアト式譜術だろ ! ?倒れちまうんじゃ……。
イオン……ちょっと疲れましたけど、大丈夫です。ルーク、久しぶりですね。ティアもミュウも……。
ルークイオン……。本当にイオンなんだよな…… ?俺の知ってる……。
ジェイドええ、ルーク。どうやら、我々の知るイオン様で間違いないようですよ。
コーキスこの人がイオン……様 ?あれ ? でもあのリビングドールβの人は ?あの人もイオン様なんだろ ?
ナタリアあら、そうですわよね。何かのきっかけで心を取り戻したのでしょうか ?
イオンそれは……――
イオン――あ ! アニス ! !
アニス
イオンあなたもこちらに具現化されていたんですね。心強いです !
アニス……イオン……様……。
イオンアニス…… ? どうかしたんですか ?
アニス――っ !
アニス何でも……――何でもないです。イオン様にまた会えて……会えると思ってなくて……嬉しくて……。
イオンアニス。泣かないで下さい。何だかいつものアニスではないみたいですね。こちらでつらいことでもあったのでしょうか……。
アニス違います。……違います。イオン様……会いたかった…… !
イオンアニス……。ええ、僕もあなたに会いたかったですよ。
ルーク……なぁ、ここで話すのも何だし俺たちのアジトで話さないか ?
ミリーナええ。そうしましょう。イオンさん、私は鏡士のミリーナ・ヴァイスです。よかったら――
イオンありがとうございます。でも……僕にはやることがあるんです。
イオンその為に精霊のローレライの力を借りてルークに連絡を取ってもらいました。
ルークじゃあ、あのローレライの声はイオンが ! ?
イオンはい。僕……僕らは、こちらの世界風に言うと精霊ローレライに対してだけの召喚……のようなことができるそうなんです。
イオンそれでローレライに頼みました。
コーキス召喚……。クラース様とかしいな様みたいなことができるのか。
イオン研究者によると、召喚とはちょっと違うようですがその辺りのことはよくわかりません。ある装置を使うと声が聞こえることがある……という感じです。
アニスオールドラントでも理論上は意識集合体を操れるって勉強はしたけど……。
ジェイド今のお話を聞く限りでは、操れるというところまでは達していないようですね。それではローレライに質問するのは難しいか……。
ガイなぁ、イオン。やることっていうのは一体何なんだ ?
ルークあ、そうだよ。俺を呼び出したって事は、俺に関わることなのか ?
イオンいえ……。ルークに、というより黒衣の鏡士の陣営にいる皆さんへのお願いです。
イオンアステルが来ると言っていたのですが今、彼はちょっと色々あって動けないので僕が代わりにここへ来ました。
ミリーナお話、聞かせて下さい。
イオンはい。今、僕ら――帝国の中で、様々な実験に関わっている鏡映点は、内部から少しずつ帝国を切り崩せないかと動いています。
イオンその為の作戦を実行するためにアトワイトさんの心核を必要としています。
ルークアトワイトって確かディムロスさんたちの仲間だよな。
ミリーナええ。ウッドロウさんと一緒にいた女の人よね。リビングドールβにされていた……。
イオンはい。彼女の心核は皆さんのところにある筈なんです。それを僕に預けて頂けませんか。アトワイトさんを元に戻してあげたいんです。
カーリャ本当ですか ! ?
コーキスアトワイト様を助けてくれるなら問題ありませんよねミリーナ様 !
ジェイドいえ、イオン様。あなたを信用しない訳ではありませんが、そう簡単に頷くこともできません。おわかりですよね。
ルークジェイド ! どうしてだよ !
イオンルーク、ジェイドは正しいですよ。
イオン僕はいま帝国に属する立場です。もし仮に僕が本気でアトワイトさんを助けようとしていてもその先で邪魔をされるだけかも知れません。
イオン大切な心核を預かるのならその見返りを求めることがあってもおかしくはありません。
ルークそ、それはそうかも知れないけれど……。
イオンジェイド。僕はあなたと交渉するためにいくつかの情報と、ある人物の心核を持ってきました。取引ではいかがでしょう。
イオンこの書類をお渡しします。この世界における第七音素のあり方の考察がまとめられています。被験者のイオンと帝国の研究者がまとめ、ディストが確認した物です。
イオンまだ研究途中の段階ですが、参考になると思いますよ。カレイドスコープを使って観測した情報ですから。
ティア被験者の導師イオン……。そちらのイオン様も具現化されていたんですね。
ジェイドなるほど、それは確かに有益な情報です。ところで、一つ質問をさせて下さい。
ジェイドイオン様が持ってきた別の人物の心核……というのはリビングドールβにされたイオンの心核でしょうか。
イオンはい、その通りです。領主として派遣されたあのイオンも、僕とは別のイオンなんです。
ルークそれって誰だ ! ? フローリアン ?それとも被験者か ! ?
ジェイド研究に関わっている以上、被験者をリビングドールにはしないでしょう。第七音素のあり方の考察が進みローレライも具現化している。
ジェイドその上でアレがリビングドールβの側にいるのですからあの領主は、フローリアンや被験者ではなく導師イオンの新しいレプリカだ。違いますか ?
一同! ?
イオン……さすがジェイドですね。帝国はローレライを使ってこの世界でのフォミクリーに成功しました。彼は八番目のイオンです。
イオン僕は彼を助けたい。生まれてすぐ、全ての自由を奪われ本当に代用品として扱われてしまったあのイオンに心を戻してあげたいんです。
アニスルーク、大佐、ミリーナ !イオン様の願いを叶えて ! お願い !
ルークジェイド ! この世界でもジェイドの技術が悪用されるのは嫌だろ ! ?
ミリーナジェイドさん。アトワイトさんの心核を渡します。そして私たちの手でもう一人のイオンさんを助けましょう。
ジェイド――これも因果なのでしょうかね。元々そのつもりでしたし、領主のイオンを助けましょう。
ティアでも、どの心核がアトワイトさんの心核なのかわからないですよね……。
ジェイドイオン様は判別の手段をご存じの筈です。そうでなければわざわざここへは来ない筈だ。
イオン相変わらず何でもお見通しですね、ジェイド。
イオンこの魔鏡を使って下さい。ミリーナさん。鏡士の方なら心核の主が判別できるそうです。
ミリーナわかりました。私が、一度アジトに戻ってアトワイトさんの心核をとってきます。カーリャ、いらっしゃい。
カーリャはい !
ミリーナコーキス。みんなをお願いね。
コーキス任せて下さい !

キャラクター8話【7-14 ダアトへ続く道4】
イクスなぁ、ルカ ? もう起きてもいいかな。俺すっかり元気だよ。
ルカ……うん。点滴も終わったみたいだし大丈夫じゃないかな。今、念のためジュードに聞いてくるよ。
ジュードルカ ! 急いでスタンたちを呼んで !
ルカえ ! ? どうしたのジュード。そんな驚いた様子で。
ジュードウッドロウさんが目を覚ましたんだ !
二人! !
ウッドロウ……色々と迷惑をかけてしまったようだ。イクスくん、だったかな。私の心を取り戻してくれて感謝する。
イクスいえ、俺の力じゃないです。スタンさんやみんながウッドロウさんを助けてくれたんですよ。
イクスそれに目覚めるなり、色々とお話してしまって……。きっと混乱したと思うんですけど……。
ウッドロウありがとう。しかし、具現化されてしばらくはアスガルド帝国に囚われていたので予備知識はあった。今の状況を確認できてよかったよ。
スタンウッドロウさん !
リオン目が覚めたそうだな。
ウッドロウスタン君、……それにリオン君も。心配をかけてすまない。
スタンそんな……。よかったです、無事に目が覚めて……。
イクスあれ、ルーティとジョニーさんは ?
スタンカイルたちを捜してもらってる。カイルたちも心配してたからさ。
イクスああ……。そうだよな。
ウッドロウスタン君、それにイクス君にジュード君にルカ君も。すまないが、リオン君と二人で話をさせてもらえないか。何、すぐに終わる。
スタンは、はぁ……。
ジュードわかりました。僕たちは廊下に出ていますから何かあれば呼んで下さい。
リオン話というのは何だ。
ウッドロウリオン君は……元の世界では何をしているところで具現化されたんだ ?
リオン
リオン………………。
ウッドロウどうやらイクス君の話を聞くと私は……スタン君たちより少し先の時間から具現化されたようだ。
ウッドロウリオン君が私を知っているということは神の眼を回収して以降であることは間違いなさそうだが……。
リオン………………。
ウッドロウ……そうか。いや、答えたくなければ構わない。
リオン……イクティノスはどうしたんだ。
ウッドロウ帝国に取り上げられてしまってね。何とか回収できればいいんだが……。この体では、私もしばらくは動けないだろうな。
イクスあれ ? 魔鏡通信だ。
マークイクスか。妙なことになっちまったぞ。
イクスマーク ? どうしたんだ ?
マークバルバトスを拾っちまった……。
スタンバルバトス ? それって――
ジュードカイルたちを呼んだ方がいいかな。
マークあ、いや。そっちとは色々因縁がある奴なんだろ。大怪我してるんで、とりあえずうちで回収しておく。ただ、情報は共有した方がいいと思ってな。
ミリーナイクス ! 起きていて大丈夫なの ! ?
イクスミリーナ ! ? ルークたちとローレライを捜しに行ったんじゃないのか ! ?
シンクローレライ ! ? 第七音素の意識集合体の ! ?
イクスあ、うん。精霊として具現化されたってことはそっちにも共有していたと思うけどルークがローレライの声を聞いたんだ。
イクス導師を助けて欲しいとか何とか……。
シンク! ?
ミリーナイオンさんには会えたのよ。だけど、八番目……八人目……とにかく、新しくイオンさんのレプリカが作られたらしくて――
シンク……鏡士。何が起きてるのさ。詳しい話を聞かせてもらいたいね。

キャラクター9話【7-15 ダアト】
ジュニアアスガルド城にカレイドスコープを移したのか……。
グラスティンいや、ここは仮の置き場だよ、小さなフィリップ。
ジュニア……仮の ?
グラスティンヒヒヒ。仮想鏡界を閉じた以上、別の安全な場所に隠さなければいけないからな。
グラスティンただ、急いで鏡映点を具現化してもらう必要があるから一時的にここに置いているんだ。
ジュニアまだ具現化をするの ! ? もう十分でしょう ?
グラスティン仕方ないだろう。俺も無駄なことだと思っているがデミトリアスはあの性格だ。ティル・ナ・ノーグを正しく治めたいのさ。どうせ最後には捨てるのに。
ジュニア捨てる ? 何、どういうこと ?
グラスティンヒヒ……。興味があるのか。小さなフィリップも好奇心が強いんだなぁ。ヒヒヒ……。
ジュニア………………。
帝国兵グラスティン様 !
グラスティンどうした ? 俺はこの小さなフィリップと大事な話をしているところだ。くだらない用事なら、ミンチにするぞ ?
帝国兵はっ ! それがイ・ラプセル城からの伝令でリビングドールβへの処理中に鏡映点が一人逃げ出したとのことです !
グラスティン……まったく、無能な奴らだ。大方、ディストの奴が管理をしくじったんだろう。
帝国兵は……。その死神ディストなのですが勝手に、領主として派遣したイオンβの付き人になって一緒にダアトへ向かったようで……。
グラスティンヒヒヒ、なるほど。目覚めてすぐに俺の作品を見て刺激されたのかも知れないな。しかしそこまで自分の欲望に忠実とは…… ! 面白いじゃないか !
グラスティンいいよ、実にいい……。奴がいればますますフォミクリーの完成度は高まる。無限にフィリップの代用品を増やせるようになるぞ !
ジュニア! ?
グラスティンヒヒヒ、練習が捗るよ……。限りなくフィリップに近い玩具だなんて…… !最高じゃないかぁ ! ! イヒヒヒヒヒ !
グラスティンああ……楽しみだよ ! 興奮が収まらない !早くフィリップのレプリカを作って綺麗に並べたいなぁ…… !
帝国兵あ……あの、グラスティン様……。逃げ出した鏡映点はどうしますか。
グラスティンもちろん捕まえる。一度具現化したモノは大切に使わないとなぁ。で、誰が逃げ出した ?
帝国兵マリク・シザースであります !
グラスティンそいつは厄介だ。リチャードとセットで使うつもりだったのに計算が狂うな。
グラスティンよし、小さなフィリップ。ここで待っていろよ。仕事を済ませたらすぐに戻ってくる。
グラスティン逃げようとしても無駄だぞ。その綺麗な体に刻み込んでやった呪いのことを忘れるなよ……。お前は俺のコレクションになるんだ。ヒヒヒヒヒ !
ジュニア………………。
ジュニア(鏡映点が逃げ出したなら、少し時間がかかるな。……カレイドスコープがここにあるならナーザの体もきっとこの部屋にある筈だ)
ジュニア(待ってて、メルクリア。僕が今できるのは……目を覚まそうとしている君の味方を増やすこと。例え大人の僕やミリーナに……軽蔑されたとしても ! )
ミリーナみんな、お待たせ。
カーリャアトワイトさまの心核、持ってきましたよ。
ガイ二人とも、お疲れ様。
イオンありがとうございます。ミリーナさん。
ルーク領主の方のイオンの心核はジェイドに預かってもらってる。
ミリーナ了解よ。ところで、ルークさんのところにローレライから連絡が来たって本当 ?
アニスうん、便利連絡網でね。
ルーク相変わらず、いまいち何言ってるのかわかんねー感じだったけど、どうも領主のイオンがどこかに出かけるみたいなんだ。
イオンふふ、僕も何度かローレライと話しましたが確かに、少し回りくどいしゃべり方をしますよね。
ジェイドうらやましいですね。私もローレライと話してみたいものです。
ジェイド意識集合体――いや、ここでは精霊ですか。とにかく第七音素と話せる機会なんてそうはありませんから。
ルーク……ん ? あれ、雨が降ってきたぞ。
ガイ……結構強いな。これじゃあすぐびしょ濡れになるぞ。雨宿りしたいところだが、いつ領主の方のイオンが出てくるかわからないか……。
ナタリア仕方ありませんわ。今はここを離れる訳にはいきませんもの。
ティア……しっ ! 街から馬車が出てくるわ。
ミリーナ霧を出すわね。それで馬車のスピードが止まるはず。
ジェイドなるほど。それなら馬車が止まったら馬を放して下さい。それから霧を解いて――
ルーク襲撃するんだな。
ガイ……襲撃ねぇ。毎度の事ながら俺たちろくな事をしてないよなぁ。
アニスイオン様。危険ですから、私の側を離れないで下さいね。
イオンはい !……何だか懐かしいです。こういうの。
アニス………そう、ですね……。
イオン……………… ?
ミリーナ馬車が来る…… ! 行くわよ !
御者な、何だ ! ? 急に霧が…… ! ?くそ、前が全く見えない ! ?
ティア馬車が止まったわ !
コーキスよし ! 馬を放したぞ !
アッシュ何だ…… ! ? 急に霧が晴れた…… ! ?
イオンβ馬がいない……。どうなっている ?
ルークそのイオンを渡せ――っ !
アッシュ
アッシュお前か !
ルークアッシュ ! どうして――
二人何 ! ?
ミリーナルークさんとアッシュさんの浄玻璃鏡が……同時に輝いた ! ?
ルークこれがオーバーレイ ! ?
アッシュお前と同時に反応するとはな。面白い。どちらの力が上か、勝負だ !

キャラクター10話【7-15 ダアト】
ルークよし ! これでイオンを――
? ? ?みんな ! ニセモノを捕まえて !
アッシュ……アリエッタか。
アニス! ?
アリエッタ……アッシュ ? どうして ?アッシュのことも……イオン様が呼んだの ?
アッシュ後で説明してやる。どうせディストに言われてお前を迎えに行くところだった。
アリエッタううん。もう、ダアトに行く必要……ないから。アリエッタが捜してたニセモノ……見つけた。
アリエッタアリエッタ、イオン様に頼まれて、イオン様のニセモノを連れ戻しに来ただけだから。
アニスアリエッタ……。あんたも……ここに……。
アリエッタアニスまでここにいるなんて……。ニセモノがアニスを呼んだんでしょ !
イオンアリエッタ。僕は偽者ではありません。あなたのイオンではありませんが僕もイオンなんです。
アリエッタ違うもん ! レプリカはニセモノだもん !
アニスイオン様を偽者なんて言うな !
アリエッタニセモノはニセモノだもん !アニスの馬鹿 ! アリエッタが導師守護役に戻ったから意地悪して、ニセモノの味方をするんでしょ !
アニスアリエッタ ! 違うよ !イオン様のこと……私のイオン様のこと偽者なんて言ったら――
シンクあー、うるさい。うるさいから、撤退してくれる ?アリエッタ。
アリエッタうっ、い、痛い……。シンク…… ?シンクもいたの ? 痛いぃぃっ ! ?
シンクオトモダチの魔物を撤退させるんだ。さもないと、この腕、そのままへし折るよ。
アリエッタうぅ……。で、でも……。
シンクやるんだよ !
アリエッタ……みんな……。離れて……。
コーキスすげぇ……。魔物があんな小さな子の言うことを聞くなんて……。
イオン……シンク。アリエッタを放してあげて下さい。
シンクへぇ……。本当にいいの ?ボクがアリエッタを解放したらまた魔物を使って取り囲んで来ると思うけど。
イオンアリエッタは、僕を帝都へ連れて帰るためにここへ来たんですよね。だったら、僕はアリエッタと一緒に帝都へ戻ります。
ルークイオン ! ?
イオン元からそのつもりだったんです。その代わり、リビングドール化されたイオンはルークたちに預けてもらえませんか。
アッシュ何を勝手なことを言ってやがる。
イオン被験者なら構わないと言う筈ですよ。……彼は、代用品ならまた作ればいいという考え方ですからね。
シンク……反吐が出るね。
アッシュ――アリエッタ。それでいいな。ディストには俺から説明しておく。
アリエッタ……わかった、です。
イオンルーク、アニス……。それに皆さん。すみません。でも久々にお目にかかれて嬉しかったです。
アニスイオン様……。
イオンアニス。そちらのイオンを……よろしくお願いします。僕らの弟みたいなものですから。
シンク……フン。代用品同士の傷の舐め合いなんて、惨めだね。
イオンシンク……。いつか、あなたともちゃんと話をさせて下さい。……あなたがこの世界にいると聞いて、僕は――
シンクうるさいよ。さっさと行けば、ニセモノイオンサマ。
シンク……で ?こっちの裏切り者はどうするの ? 始末する ?
アッシュ面白い。やるってのか、シンク。
シンクレプリカに負けたくせに、随分強気じゃない。傷だらけだよ。見逃してやるからさっさとしっぽを巻いて逃げるんだね。
シンクあの鼻たれのドクダミ博士のところにサ !
アッシュ………………。
ナタリアアッシュ ! どうしてですの ! ?訳があるなら教えて下さいませ !
アッシュ……その指輪。無くすなよ。
ナタリア
ガイそれにしても、どうしてシンクがここに ?
ミリーナ私たちがアジトに戻った時に丁度マークたちから連絡が来ていたの。
ミリーナそれでイオンさんのことを話したらシンクがこっちに来るって……。
シンク……ギリギリだったけどね。何とか間に合った。
ルークやっぱりイオンが具現化されてたこと気になったのか ?
シンクはぁ ? 馬鹿じゃないの ?ボクはディストを殺しに来たんだよ。
ジェイド……この世界でもレプリカを作ったから、ですか。だとしたら、待った方がいい。恐らくこのイオンを作ったのはディストではないでしょうから。
全員! ?
シンク………………。
ルーク……何か、いっぺんに色んな事があって凄く疲れたよ。ローレライ、ディスト、イオンにアリエッタアッシュが裏切って、最後はシンクまで出てきてさ。
ナタリアルーク。アッシュは裏切ってなどいませんわ。
ルークへ ? だってあいつ、ディストについていっただろ。
ナタリアそれは……。でも違います。あの方は、指輪を無くさないように仰いましたわ。ホワイトデーに私のために作って下さった指輪を……。
ミリーナそうね。アッシュさん、きっと何か考えがあるのよ。でなければ、ナタリアを置いていったりしないわ。
ティア……アニスたちは大丈夫かしら。
ミリーナきっと領主の方のイオンさんの心核を元に戻してくれるわ。シングも一緒だし。
ガイそれにしても、アニスとジェイドはともかくまさかシンクまでスピルメイズに入るなんて言い出すとはねぇ……。
ティア……そうね。やっぱり心配なのかしら。領主のイオンのことが……。
ガイよせよせ。その言葉シンクに聞かれたら、面倒なことになるぞ。
ルーク痛ぇ……。また……ローレライ、かよ……。
アッシュ誰がローレライだ。
ルークあ……アッシュ ! ?
アッシュ……お前がうまく騙されてくれたおかげでディストの目をごまかすことができた。
ルークは ! ?
アッシュローレライの声は俺にも届いていた。ということは俺からお前にも連絡ができる筈だと思っていたがやはり正解だったな。
ルークおい、アッシュ ! どういうことなんだ !
アッシュ俺はこのまま帝国の懐に潜り込み、内部の様子を調べる。何かあればこの回線を使ってお前に報告するつもりだ。
ルーク間者になるって事か ! ?だったらどうしてそれを先に言わないんだよ !
アッシュお前が演技をできないからだ。ジェイド辺りは俺の思惑に気付いている筈だぞ。何か言ってなかったのか ?
ルークいや、何も……。
アッシュちっ。死霊使い(ネクロマンサー)め。面倒がって説明しなかったな。
ルークだけど、大丈夫なのかよ。帝国で何かあったら……。
アッシュお前じゃあるまいし、大丈夫だ。
ルーク一言多いな ! ? ジェイドかよ ! ?
アッシュあいつと一緒にするな。
アッシュ……とにかく、デクス……だったか。あのくねくねした変な奴と接触して情報を集めるつもりでいる。
アッシュお前は……ナタリアのことを頼む。
ルーク――ああ、わかった。でも助けが必要なら、すぐ連絡してくれよ。
アッシュ……フン。……その言葉、まぁ、覚えておいてやるさ。
to be continued
キャラクター1話【8-1 閑散とした街道】
ミリーナイクス、領主のイオンさんはどう ?
イクス大丈夫、落ち着いてるよ。今のところスピルリンクも上手くいってるみたいだ。
ミリーナよかった。でも、リビングドールβは精神への負担が大きいみたいだからこの後の処置に気を付けないとね。
イクスウッドロウさんも危険な状態だったもんな。
マークイクス、そっちはどうだ。シンクは迷惑かけてねぇか ?
イクスマークか。シンクは大丈夫……だと思う。今、領主のイオンのスピルメイズに入ってるよ。
マークそうか。あいつ、出て行く時に少し様子がおかしかったからさ。気になってたんだ。
コーキスシンク様のことが心配で連絡してきたのか ?
カーリャマークは面倒見がいいですねぇ。
マーク嫌でもよくなるさ。手のかかるおっさんに加えて救世軍って大所帯抱えてるんだからな。それに、シンクのことだけで連絡したわけじゃねえよ。
マークついさっき情報が入った。ここ――救世軍地上施設の近くにある帝国の監獄にチーグルが運ばれて来るらしい。
イクスチーグル……リチャードさんか !
ミリーナでも、あの人は幹部よね ?監獄に入れられるなんて何かあったのかしら。
マークさてな。その辺のことはよくわからねぇ。テセアラ監獄の方も、立て続けのトラブルで混乱していて、情報が錯綜してるんだよ。
コーキストラブルって……もしかしてバルバトスが脱獄したことか ?
マークああ。あいつ、チーグルの移送で大わらわになった隙をついて脱獄してきたらしい。
マークおかげで監獄は蜂の巣を突いたような騒ぎだぜ。兵どもが必死の形相で駆けずり回ってるらしい。
カーリャうわぁ、なんか面倒なことになってますねぇ。
イクスでも裏を返せば、混乱している上に捜索に人手も割かれてるってことだ。だったら――
コーキスあっ ! この騒ぎに乗じてリチャード様を取り戻せるかもしれないってことだろ ?な、マスター !
イクスああ。その通り。後は、この状況を長引かせるためにもバルバトスさんが見つからないようにしないと。
マークあいつの傷を見たが結構な深手だった。しばらくは大人しくしてる……と思うんだがなぁ。
ミリーナだったら、マークが保護してくれている間に行動を起こした方がいいわね。
イクスそれに、リチャードさんを取り戻すならアスベルたちの協力が不可欠だ。その上で作戦をたてないと。
マークその辺は任せる。こっちもゴタついてるんでな。俺はこのままテセアラ領の救世軍施設に待機する。何かあったら連絡してくれ。
イクスありがとう。とりあえず、俺たちもリチャードさんの救出部隊を組んでそっちへ向かうよ。
マークわかった。気を付けて来いよ。帝国の連中がウロウロしてるからな。
カーリャマークも大変そうですね。何か甘い物でも差し入れてあげましょうか。
ミリーナカーリャ、それはコーキスたちに頼みましょう。私たちは残らないと。
カーリャあ……そうでした。領主のイオンさまを放ってはおけませんよね。
イクススピルリンク後に何があるかわからないし鏡士がついていた方がいいからな。ミリーナ、カーリャ、頼むよ。
ミリーナええ、任せて。コーキス、帰って来たばかりで大変だけどイクスをお願いね。
コーキスはい。マスターが無理しないようミリーナ様の代わりに見張ります !
イクス見張られるほど無茶なんてしてないのに……。
コーキス自覚ねぇのかよ、マスターは……。まぁ、いいや。それじゃ俺、アスベル様たちを呼んでくる。
イクス頼むな。打ち合わせをしたらすぐに出発だ。

キャラクター2話【8-1 閑散とした街道】
マーク――大丈夫だって。バルバトスのことは、こっちで何とかするさ。
フィリップだけど、シンクもいないんだろう ?今だけでも僕がそっちにいた方がいいんじゃないか ?
マーク人の心配より自分の心配しろっての。じゃあな、また後で連絡する。
マーク(イクスもこっちに来るって言ってんのに。顔合わせて困るのは誰だって話だよ。まったく……)
ルックマークさん。今しがた、一部の負傷兵が独断で出撃したと報告が入りました !
マーク出撃 ? どういうことだ。
ルックチーグルが監獄に運ばれたとの情報を受けて出ていったようです。
ルック功績をあげれば、ケリュケイオンに戻してもらえるかもしれないと言っていたそうで……。
マーク馬鹿野郎共が !無駄死にさせるために連れて来たわけじゃねぇぞ。これじゃ何のために……。
マーク……いや、わかった。俺が連れ戻す。留守はお前に任せて――
救世軍兵士マークさん ! バルバトスが……くっ……。
マークおい、どうした ! ?
救世軍兵士バルバトスが目覚めたんですがすぐに暴れはじめて……俺たちではとても抑えきれません !
マークくそっ、なんだってこんな時に !
ルックマークさん、負傷兵の捜索には自分が出ます。
マークそれはお前の仕事じゃねぇよ。この辺だってバルバトスの捜索で帝国兵がうろついてんだぞ。もしもの時にその足で逃げ切れるのかよ。
ルック…………。
マークあいつらの捜索には別部隊を派遣する。荷運びと警備の奴らを回せば何とかなるだろう。
マーク――おい、すぐに隊を組んで捜索に出るように伝えろ。バルバトスのところへは俺が行く。
救世軍兵士は、はい !
マークルック、お前も俺と来い。
ルックえっ ?
マークお前の仕事をしてもらうんだよ。万が一、俺がバルバトスにやられた時には命乞いしてもらわねぇとな。
ルック命乞いって……。
マーク負傷兵の捜索よりも危険だが、頼まれてくれるな ?それとも俺の命を預かるのは嫌か ?
ルックいいえ、喜んで ! 行きましょう。
救世軍兵士ひいいっ ! こ、ここを通すわけには……。
バルバトス帝国の犬が !雑兵の分際で邪魔をするんじゃねぇっ !潰れろぉぉぉぉぉっ !
マーク――おっと。いててて……。馬鹿力だな、アンタ。
バルバトス俺の拳を……貴様っ…… !
マーク俺はマーク・グランプ。それと、ここは帝国じゃなくて救世軍だ。
バルバトスだったら尚更こんな所にいられるかっ !今すぐ俺を帝国に連れて行け。あいつらを八つ裂きにして……くっ……。
マーク……傷が開いたな。それ、結構な深手だったぜ。その体で帝国を相手に喧嘩売る気かよ。
バルバトスこれしきの傷で後れなど取らぬわ !怪我を理由に引きこもるなど弱さを言い訳にした負け犬の所業よ。
バルバトス貴様の後ろで縮こまっている、その雑魚のようにな !
ルックくっ……。
マークそういっても、『傷ごとき』で行き倒れてたのを治療したのは俺たちだぜ ?ちなみに、あんたの言う雑魚がここまで運んだんだ。
バルバトスだからどうした。貴様らが勝手にやったことなど知るか !
マークそうだな。だからこそ、勝手に治療した責任は最後まで取らせてもらう。
マーク暴れて開いた傷を手当てさせてくれ。その間だけでいいから、俺の話を聞いちゃくれねぇか。
バルバトス貴様の話だと ?
マークああ。帝国のこと、この世界のこと具現化された後、あんたに何が起きたのか全部説明する。俺の知る範囲で、だがな。
バルバトス! !
マークどうだ、悪い取引じゃないだろ ?
バルバトス……くくくっ、いいだろう。だが役に立たぬ話ならば、その首へし折るぞ。

キャラクター3話【8-2 テセアラ領の森1】
イオン……アリエッタ。僕の話を聞いてはくれませんか ?
アリエッタニセモノの話なんて、聞きたくない、です。どうせアニスみたいに……意地悪する気でしょ ?
イオンアリエッタ、アニスは――
アリエッタイオン様 ! イオン様のニセモノ、連れてきました。
ハロルドあ、おかえり~。イオンを連れ戻してくれたんだ。
アリエッタ……ち、違うもん。これはイオン様のニセモノだもん。イオン様は、イオン様だけ……だから。あれ……イオン様、どこ ?
ハロルド散歩でもいってるんじゃない ?アリエッタ、捜してきてよ。
アリエッタでも……ニセモノは…… ?
ハロルドこっちで預かっておくわ。あんただってイオン様に早く会いたいでしょ。
アリエッタうん、行ってくる ! ハロルド、ありがとう !
ハロルドふっふっふ、時間稼ぎ成功♪で、首尾はどう ?
イオンええ。手に入れてきました。これがアトワイトの心核です。
ハロルドご苦労様。これでようやくアトワイトを戻せるわ。まったく、鏡士たちに心核が持ち去られたって聞いた時は、さすがに焦ったわよ。
イオン仕方ありません。彼らだってこんなことになるとは思っていなかったでしょうからね。
イオン帝国にいる僕でさえあなたが何を考えて行動しているのか理解していませんでしたから。
ハロルドそうねー。イオンってば口を開けば、実験をやめろやめろってうるさかったもん。
イオンすみません。あなたが帝国の技術と目的を探るために協力していたことは承知していましたがやはり非道な実験を見過ごすのは心苦しくて……。
ハロルドそれで正解よ。おかげで奴らも、私があんたと繋がってるとは全く気付いてないんだから。
ハロルドあいつらに気付かれたら胸糞悪い実験を続けた甲斐がなくなっちゃう。
ハロルドさあ、すぐにアトワイトの心核を戻すわよ。
ハロルド――クンツァイト、ちょっと来て。この心核を確認してちょうだい。
クンツァイトデータ照合。アトワイトの心核と確認。
ハロルドこれからアトワイトにこの心核を戻したいんだけどスピルリンクって、すぐに始められる ?
クンツァイトハロルドには惜しみなく協力するようリチア様から申し付けられている。即刻開始しよう。
ハロルドそれじゃ、アトワイトを連れて――
クンツァイト警告。何者かの接近を確認。この部屋に向かっているようだ。
二人! !
帝国兵ハロルド様、いらっしゃいますか !
ハロルド今、実験中だから入らないで。用件は何 ?
帝国兵グラスティン様がこちらにおいでになりますので一応、ご報告をと。
ハロルドグラスティン ?あいつ、しばらくはアスガルド城にいるんじゃなかったの ?
帝国兵鏡映点の一人がこの城から脱走しまして。その件でこちらに向かっているとか。
ハロルド脱走って、誰が ?
帝国兵マリク・シザースです。
ハロルドそう。実験材料が減っちゃったわね。わかったわ。グラスティンが着いたらすぐに報告して。
帝国兵はっ。
イオンハロルド…… !
ハロルドもうバレちゃった。想定より早かったわね。
イオンどうしましょう……。逃がすタイミングが悪かったでしょうか。このままでは彼が危ない。
ハロルドこうなったら、あいつの腕を信じるしかないでしょ。それに想定外ってのは悪いことばかりじゃないわ。
イオン……そうですね。いい方向に結果が出ることを願いましょう。
グラスティン鏡映点が逃げたというのにハロルドは何をしているんだ。
帝国兵相変わらず研究に没頭しておられます。それ以外のことには、あまり関心がないようで。鏡映点の脱走もご存じないようでした。
グラスティン……なるほど。色々とやることがありそうだなぁ……。
グラスティン俺も本気を出すとするかぁ…… !ヒヒヒッ ! !
グラスティンさっさと仕事を終わらせて帰らないと小さいフィリップが寂しがるからなぁ !ヒヒヒヒヒヒッ !
イクス……行ったか ?
コーキスああ。もう隠れなくても大丈夫そうだぜ。
シェリアさっきから帝国兵が多いわね。やっぱりバルバトスの脱獄のせいかしら。
ソフィ隠れてばっかりで、あんまり進まないね。救世軍の地上施設ってまだ先なんでしょ ?
アスベルくそっ、一刻も早くリチャードを助けないといけないのに……。
ヒューバート焦る気持ちはわかりますがこちらの動きが知られるのは危険です。今回は陛下を取り戻す千載一遇のチャンスですからね。
イクスうん。敵との遭遇はなるべく避けた方がいいだろうな。
パスカルねえねえ、それじゃアレはどうする ?放っておくの ?
コーキスアレって……あっ、救世軍の兵士 ! ?帝国兵に追われてるぞ ! ?どうする ! ?
アスベルみんなはここにいてくれ。俺が助けに行ってくる !
ソフィ待って、アスベル。わたしも行く。
パスカルソフィが行くなら、あたしも~ !
シェリアもう、見つからないようにって言ったばかりなのに……仕方ないわね。待って、怪我人がいたら真っ先に保護するのよ !
ヒューバートこうなったら早急に事態を沈静化する方が得策です。イクス、コーキス、兄さんたちの援護をお願いできますか ?
イクスわかった。任せてくれ。
コーキスアスベル様たち、みんな好き勝手に動いてるようで実は息ぴったりだよな。
イクスああ、そうだな。俺たちも行くぞ、コーキス !

キャラクター4話【8-3 テセアラ領の森2】
アスベルこれで、終わりだ ! イクス、そっちは ?
イクスああ。こっちも片がついた。――みなさん、無事ですか ?
救世軍兵士Aありがとうございました。まさか、鏡士の一行に助けてもらえるとは……。
ソフィ大丈夫 ? その腕、ブラブラしてるよ。
シェリア怪我したんですね。見せてください。すぐに治療しますから。
シェリアあ……これ……。
救世軍兵士Aこの傷は以前負ったものなんだ。もう……無理だろ ?
シェリアごめんなさい。力になれなくて……。
コーキスマスター、この人たち、みんな……。
イクスうん……負傷した兵士ばかりだ。マークに連絡して救助にきてもらおう。
救世軍兵士A連絡 ! ? やめてくれ、頼む !
イクスえっ ! ? でも……。
救世軍兵士Aまだ帰るわけにいかないんだ。このままじゃ俺たちはただの足手まといになっちまう !
救世軍兵士Bああ。帰るのは目的を果たしてからだ。
ヒューバート冷静に考えてください。あなた方の目的が何であれその体で遂行するのは難しいでしょう。撤退すべきではありませんか ?
救世軍兵士C馬鹿にするな ! 俺たちはまだやれる。チーグルの野郎を捕らえて連れ帰ればそれを証明できるんだ !
アスベルチーグルって…… !それじゃあなたたちは、彼を捕らえるために独断で動いてるんですか ! ?
救世軍兵士Dああそうさ。だから邪魔をしないでくれ。俺たちの存在意義を示す、最後のチャンスなんだよ !
帝国兵……くっ !
コーキスあの帝国兵、まだ動けたのか !
帝国兵はぁ、はぁ……近寄るな !
アスベルしまった、警笛を !
帝国兵ぐああっ―― !
パスカルひゃあ、今の何 ! ? 何か飛んできた !
アスベルあの武器は…… !
? ? ?物事は完全に終わるまで油断してはならない。オレはそう教えていた筈だ。
マリク詰めが甘いぞ。前にもこんなことがあったな、アスベル。
アスベルあなたは……マリク教官 ! ?
シェリア教官もこの世界に ! ?
ソフィ教官、久しぶり。
ヒューバート皆さん待って下さい !……あなたは本当にマリク・シザース本人ですか ?
パスカルもしかして弟くん教官がリビングドールかもって疑ってる ?
マリクふっ、さすがヒューバートだ。アスベル、お前は真っ直ぐすぎる。時にはこのくらいの疑り深さは必要だぞ。
アスベルは、はい ! ご助言頂きありがとうございます !
ヒューバートまったく……。兄さん、あなたという人は……。
ソフィねえ、教官は教官でいいの ? もう近寄ってもいい ?
パスカルいいよ~。ついでにあたしもソフィに近寄っちゃお~っと♪
ソフィパスカルはだめ。
マリク相変わらずだな、お前たちは。元気そうで安心したぞ。
イクスアスベル、よければ俺にも紹介してくれないか ?
アスベルああ、すまないイクス。この人は俺の騎士学校時代の恩師なんだ。具現化されてたんだよ。
マリクマリク・シザースだ。そうか……君が鏡士のイクスか。
イクス俺のことを知っているんですか ?
マリク帝国に囚われていた間にそこそこの情報は仕入れてある。この世界のことも、自分自身の状況もな。
シェリア囚われてって……それじゃ教官は脱走してきたんですか ! ?
マリクああ。イ・ラプセルという城にいたんだがハロルドという研究者の手引きで逃げられた。
コーキスマスター、ハロルドって人は確かカイル様の仲間だったよな。
イクスうん。デクスさんの情報では具現化後の所在は確認が取れてないって話だったけどイ・ラプセル城で研究していたのか。
コーキスってことは、ハロルド様は帝国側の鏡映点……なんでマリク様を逃がしてくれたんだ ?
マリクこの先は別の場所で話そう。今の小競り合いで帝国兵が集まってくるかもしれん。
イクスあ、お礼が遅れましたけど先程はありがとうございました。警笛を鳴らされていたら、今頃どうなっていたか。
マリク礼には及ばん。仲間を呼ばれて困るのはオレも同じだからな。
ヒューバートなるほど。この付近の兵士の多さはあなたへの追っ手も含まれていたわけですね。
マリクそういうことだ。オレは今、この森の奥にある猟師小屋を根城にしてる。そこなら少しは落ち着けるはずだ。
マリクおい、そこの救世軍。お前たちも一緒に来い。今はまだ戻れんのだろう ?
救世軍兵士Aすまない、世話になる……。
マリクアスベル、お前にはしんがりを任せる。他の者は負傷兵を守りつつ周囲を警戒しろ。すぐに出発だ。
アスベルはい、よろしくお願いします !
イクスさすが、アスベルを指導した人だな。こっちまで背筋が伸びる気がするよ。
コーキス俺もマリク様に教わりたいぜ。戦闘での立ち回りとかさ。
ソフィじゃあ今度、コーキスも一緒に教官の話聞く ?教官は、色んなことを知ってるよ。
コーキス聞く聞く ! ソフィ様はどんなこと教わったんだ ?
ソフィえっと、パスカルは魚類でエラ呼吸、とか。
コーキスマ、マジか ! ? どう見ても人間なのに ! ?
シェリア落ち着いて、コーキス。見た目通り、パスカルは人間よ。教官のあの見た目と雰囲気に流されたら駄目。
イクスははは……。なるほど。マリクさんがどういう人かちょっとわかった気がするよ……。

キャラクター5話【8-5 テセアラ領の森4】
アスベルそれでは、教官はリチャード救出のために動いておられたのですか。
マリクああ。帝国を探っているハロルドが報せてくれた。
イクス……ということは、ハロルドさんって人は獅子身中の虫……ってことかな ?
コーキスえ ! ? ハロルドって人も人じゃなくて虫なのか ! ?
マリクああ、丁度、幼虫からさなぎに変態したところだったな。
コーキスヘンタイ ! ? 虫でヘンタイ ! ?
イクスマリクさん ! 真顔で冗談を言うのはやめて下さい ! ?コーキスも、もう少し勉強しような、色々と。
アスベルコーキス。イクスはハロルドさんがわざと味方の振りをして帝国の情報を集めているって言っているんだよ。
ヒューバートそう断定するのは早計ですよ。教官はどうお考えですか ?
マリクそうだな。今のところは疑う理由はない。だが、気を付けた方がいいのは確かだ。
イクスそう……ですね。
マリクハロルドの話によれば、帝国は陛下をエフィネア領主に据える気のようだ。そのためにチーグルを分離しようと考えているらしい。
ヒューバート陛下をリビングドールβにするつもりですね。
シェリア酷いわ。陛下の心や身体を、まるで道具のように……。
イクスでもそれなら、どうしてチーグルを監獄へ連れてきたんだろう。帝国でリビングドールβにすればいいのに。
マリク陛下は初期型だから……どうとか言っていたな。陛下とチーグルは心を共有しているそうだ。
コーキスそういえばそうか。リチャード様もフレン様と同じタイプだったよな。
アスベルああ、だから前に助け出せた時はリチャードを眠らせておくしかできなかった。
マリクだが心を分離する技術を持つ者が亡くなったとかで心に入る力を持ったリチアという鏡映点を使って分離を行う計画を立てたようだ。
シェリアリチアって、コハクがいつも話してる人だわ。
ソフィ大事な友達だって言ってた。教官、リチアがどこにいるか知ってるの ?
マリクテセアラ領の監獄だ。彼女の力でバルバトスを大人しくさせるために派遣されている。
アスベルだからリチャードも監獄に送られることになったんですね。それで教官もこちらへ。
マリクああ。だがバルバトスが脱獄してこの騒ぎだ。さらにオレ自身にも追っ手が迫って動きづらくなっていたところに、だ。
パスカルあたしたちが登場 ! って感じ ?
マリクいいタイミングだったぞ。思っていたよりも、オレは運がいいらしい。
マリクそれでだ。運がいいついでにお前たちの計画にオレを加えてはもらえないだろうか ?
アスベル教官のお力を貸して頂けるのですか !
マリク貸すも貸さないもないだろう。むしろこの場合は、オレが助けてもらう方だ。
マリクイクス、どうだろう。オレの知る限りではあるが情報も提供する。
イクスもちろんです。こちらこそお願いします !
救世軍兵士A待ってくれ。俺たちも協力させてもらえないか。
イクスえっ、でも……。
救世軍兵士A俺たちが役に立つってことをマークさんに証明したいんだ。
救世軍兵士B無力だと思われてる俺たちがどう挽回すればいいのかこれ以上思いつかないんだよ……頼む !
コーキス一体、救世軍はどうなってんだ ?マークは上手くやってると思ってたのに。
アスベル……なあイクス、コーキス。彼らが望むなら加えてやったらどうだろう。
イクスアスベル ?
アスベル……俺にも覚えがあるんだ。この人たちは今、自分の無力感で押しつぶされそうなんじゃないかな。
アスベルこういう時には、誰かの役に立つことで救われることもあると思う。だから……。
イクスアスベル……。わかった。彼らにも一緒に来てもらおう。みんなもいいよな。
救世軍兵士Aありがとう ! この恩は必ず返す。
マリクだがな、いつまでもそのままではいられんぞ。己の価値は、己で見出すしかない。それだけは忘れるな。
救世軍兵士A……わかっているさ。
イクス俺、マークに連絡しておくよ。救世軍の拠点でマークたちと合流するつもりだったけどこの敵の多さじゃ、時間的ロスが大きすぎる。
イクスこのままマリクさんと一緒にリチャードさんを救出する。
イクス救世軍の人たちも一緒だから、当然連携作戦になるし向こうに話は通しておかないと。……皆さんも、それでいいですね ?
救世軍兵士Aああ。よろしく頼む。
テセアラ領 救世軍施設
マーク俺の話は聞いただろう ?なのにここを出て行こうってのかよ。
バルバトス俺に指図するんじゃねぇ !今、貴様らが生きていられるのは俺なりの情けだということを忘れるなよ !
マークはいはい。で ? 出ていってどうするつもりだ。
バルバトス知れたこと。メルクリアを殺す。
マークはぁ……。あんた、今の状況がわかってて――
ルックあの、マークさん、魔鏡通信が……。
イクスマーク ! 大至急伝えたいことがあるんだ。
マーク悪いが取り込み中だ。手短に頼む。
イクス了解。そっちに向かう途中に救世軍の負傷兵と会ったんだ。それで、彼らと一緒にチーグル奪還作戦を進めることになった。
バルバトスチーグル…… ?
ルックあいつら ! 何をやって……。
マーク……今更連れ戻すわけにもいかねぇだろう。イクス、そのまま計画を続行してくれ。
イクスわかった。それと、チーグルの移送に関する新たな情報が入ったんだ。
イクスチーグルは船で監獄へ入る予定だったけどバルバトスさんの脱走騒ぎで変更になって別の港から陸路を使って監獄へ向かっているらしい。
マークそうか。こっちでも対応を検討する。手間かけるが、あいつらのことよろしく頼むな。
イクスああ、任せてくれ。
ルック今の件、負傷兵の捜索に出た者にも連絡しておきます。しかしまさか、こんなことになるとは。
マークあいつらが単独で行動するよりはイクスたちと一緒の方がマシだろう。
バルバトス……ふっ、はははははっ !
マークバルバトス ?
バルバトスそうだ、思い出したぞ !チーグル……あの小娘の一味だったな。
マーク(しまった、こいつチーグルを知ってたのか !)
バルバトスくくく……メルクリアをおびき出すいいエサになる。マーク、貴様にはつくづく感謝するぞ !
ルックか、勝手にここを出ることは許さ――
バルバトス退けぇい ! !
ルックうあああっ !
マークルック ! 大丈夫か ! ?
マークおい、待てバルバトス ! バルバトス ! !……くそっ ! 何で俺の周りにはこう面倒な奴らばかり集まってくるんだ !

キャラクター6話【8-9 テセアラ領の森8】
イクス街道か、もしくは森側のルート、ですか。
マリクああ。港から監獄までの陸路は複数あるがハロルドの話では、この二つが有力だ。現場を確認したがオレも同感だ。
マリク街道はオレたちで押さえる。アスベル、イクス、ソフィ、用意をしておけ。
ヒューバートでは、ぼくたちはこちらの森側で陛下の輸送隊を待ち伏せます。何かあったらすぐに連絡をください。
アスベル頼んだぞ、ヒューバート。シェリアとパスカルをよろしくな。イクス、他に気になることはあるか ?
イクスいえ、特には。変更後の方針もすぐに決まってマリクさんに指揮をお願いしてよかったです。
コーキスそれじゃ行ってくるぜ、マスター。
イクスああ。コーキスも気を付けろよ。
コーキスそりゃこっちのセリフだぜ。アスベル様、マスターが無理しそうな時は強引にでも止めてくれよな。
アスベルわかった。でも、どうして俺なんだ ?
コーキスだって、ラムダ様を説き伏せたアスベル様ならマスターのことも上手く説得してくれそうだしさ。んじゃ、頼みます !
アスベルラムダ様……か。コーキス、今はラムダのことを俺たちと同じように考えてくれてるんだな。
イクスああ。アスベルと同じ具現化された存在だし今はもう俺たちと一緒にいるんだからあいつにとって様づけは当然なんだと思うよ。
アスベル……ありがとう。よし、俺もコーキスの期待に応えるぞ !イクス、無茶はほどほどにしてくれよ ?
イクスわかってる。けど、もしかしたら逆になるかもしれないぞ ? アスベルだってラムダの時には相当無茶したって聞いてるし。
マリク……おい、アスベル。さっきから気になってたんだが、ラムダがどうした ?リチャードから引き離されたとは聞いているが……。
アスベル教官、ご存じなかったんですか ?でしたら報告が遅れてすみません。ラムダは今、俺の中にいるんです。
マリク何だと ! ? お前、ラムダに寄生されているのか ! ?
アスベル寄生というよりは、同居というか……。
マリクとにかく詳しく話してくれ。
アスベルはい。少々長くなりますが……。
マリク本当にそんなことが可能だとは……驚いた。
アスベルただしコーキスが言ったようないい関係ではなく俺はまだ拒絶されたまま……だと思います。
アスベル一度だけ、ラムダの意思で力を貸してくれましたがそれ以降は反応がないんです。
マリクなるほど。今はその目以外に異常は出ていないか ?ラムダの浸食を感じることは ?
アスベルいいえ。何の問題もありません。
ソフィ今のラムダ、大人しいよ。
マリクそうか。だが解決には至っていないのだろう。どうするつもりだ。
アスベル本当はもっとラムダと話したいのですが――
イクスあっ、ごめんアスベル。連絡が来た。――どうした、コーキス。
コーキスマスター、こっちが当たりみたいだぜ !帝国の部隊が近づいてる。
パスカル兵士がいっぱいでさ~。全部相手にしてたら肝心のターゲットに逃げられちゃうかも。
ヒューバート陛下は馬車で運ばれているようです。馬車を隊列から分断させれば奪還の成功率も上がると思います。
マリクそうか。だったら分断後に馬車を別のルートへ追い込めばより確実だ。そこで待ち伏せよう。
マリクただし、そこへ誘導する者が必要になるが……。
救世軍兵士A俺たちを使ってくれ。戦闘では足手まといだがバックアップならできる。
救世軍兵士Bああ。襲撃で混乱した隊列を分断し目標の馬車を誘導すればいいんだろう。
マリクバックアップと言っても危険な仕事だぞ。本当にいいのか。
救世軍兵士C承知の上だ。やらせてくれ !
マリクわかった。だが命を捨てるような真似はするなよ。逃げるのも戦術のうちだ。
マリクでは襲撃はヒューバートたちが担当。ターゲットの分断と誘導を救世軍。オレたちは先回りをしてチーグルを捕獲する !
ソフィ――教官、馬車が来た !
アスベルヒューバートたち、上手くやったみたいだな。
イクスああ。誘導場所も計画どおり。救世軍との連携は大成功だよ。
マリク喜ぶのはまだ早いぞ。あいつらが繋げたチャンスを活かすも殺すもオレたち次第なのだからな。
三人はい !
マリク最後まで油断するなよ。――行くぞ !

キャラクター7話【8-10 テセアラ領の森9】
イクスアスベル ! チーグルを確保してくれ !
アスベルわかった !――大人しく出て来い ! チーグル !
チーグル……以前と同じ状況か。あの時もお前たちが襲撃者だったな。
チーグルおおかた影に小娘でも仕込んで不意打ちを狙ってるんだろう ?
マリク大人しく投降しろ。お前の味方はいない。
チーグルだろうね。そうさせてもらうよ。
アスベルえ…… ?
チーグル何を呆けた顔をしてるんだい ?連れていけと言っているんだ。
チーグルああ。抵抗する気はない。
イクスマリクさん、本気だと思いますか ?
マリク……確かに、罠の可能性も捨てきれん。
マリクチーグル、後ろを向け。拘束するが構わんな ?
チーグル野蛮だな。だが、正しい判断だ。好きにすればいい。
アスベルチーグル……お前は一体……。
シェリアさあ、みんな早く ! 急いで !
救世軍兵士はぁ、はぁ……。
アスベルどうしたんだ、シェリア。向こうで何かあったのか ?
シェリアアスベル、陛下は確保したのね ! ?だったらすぐに逃げて !
シェリア分断した隊列にバルバトスが攻めてきたの。チーグルを捜して追って来てるわ !
イクスバルバトスさんは救世軍にいる筈じゃないのか ! ?
パスカルそんなのわかんないよー !今は弟くんやコーキスが足止めしてるけど――
ソフィコーキスたち、来たよ !
ヒューバート皆さん、早くここを離れてください !すぐにバルバトスが来ます !
コーキスあいつ、全然ひるまないんだ !本当に大怪我してんのかよ !ゴリラみたいに馬鹿力だし、うぜーよ !
イクス……時間がないな。転送ゲートを使おう。
コーキスなっ、何言ってんだよ ! それは駄目だ !
イクス死ぬ訳じゃないさ。それにアスベルたちのためにもリチャードさんを守らなきゃいけない。
アスベルイクス、待ってくれ ! 他に方法を――
バルバトス見つけたぞ…… !こんなところに隠れていやがったか !チーーーーグルゥウウウウッ ! !
救世軍兵士早く逃げてくれ ! ここは俺たちが防ぐ !
バルバトスなんだと ?ろくに戦えもしないゴミ共が何をほざきやがる !
アスベルあなた達も逃げるんだ ! このままじゃ――
救世軍兵士たち戦えなくても壁くらいにはなる !俺たちだって……戦士なんだ !
バルバトスほぅ。思い上がりも甚だしいが、その意気やよし。――望みどおり皆殺しにしてやるぜ !
マーク待て、バルバトス ! そこまでだ !
バルバトス貴様……。
イクスマーク ! どうなってるんだ ! ?
マークいいから行け ! 俺を信じて、ここは任せろ !
イクスわかった ! 転送ゲート……
アスベルイクス !
コーキスマスター、やめて――
イクス――展開 ! !
バルバトス消えただと…… ?このクソがぁあああああああああっ ! !
救世軍兵士うわああああっ !
バルバトスこの虫けら共が !俺の復讐を邪魔しやがって ! 死ねぇええ ! !
マーク――待った ! !
マークそんなにメルクリアが憎いならあの小娘がいる帝国へ向かう、簡単な方法があるぜ。知りたくはないか ?
マークだがそれ以上、俺の部下に手を出したら俺も本気であんたとやりあわなくちゃならねぇ。
マークそれよりは、俺の話を聞いてとっとと帝国へ向かった方がいいだろう ?英雄バルバトス殿 ?
バルバトスははははっ ! 面白い奴だ。気に入った。貴様はいつか、このバルバトス様が殺してやる。メルクリアを八つ裂きにした後でな !
マーク……また殺されリストに追加されたのかよ。もう好きにしてくれ。それじゃあ交渉成立でいいな。
マーク……ルック、負傷兵の奴らを回収して手当してくれ。
ルックはい !

キャラクター8話【8-14 閑散とした街道2】
マリク……ここはどこだ ?
ヒューバートぼくたちの拠点です。無事に戻ってこられたようですね。
マリクあの一瞬でここまで来たのか……驚いたな。さっきまでの騒ぎが嘘のようだ。
シェリア……アスベル、どうしたの ?
アスベル救世軍の負傷兵は無事だろうかと……。
イクスそうだな……。でも、何かあればマークが連絡をくれるさ。今はまずリチャードさん……を……。
コーキスマスター ! やっぱフラフラじゃねえか !
アスベル済まない。イクスがこんなことになるのを止められなくて……。
コーキスアスベル様のせいじゃないって。俺も、今のは仕方なかったって思うし……。
コーキスとにかく休まないとな。ほらマスター、部屋に行くぞ。
イクス俺のことはいいって。それよりもリチャードさんを助けないと……。
チーグル……鏡士。ここにビフレストの魔鏡術を受け継いだ者はいるのか ?
イクス……いや、いない。
チーグルそうか。僕は初期型リビングドールだ。バルドとフレン同様に僕はリチャードの心核と共にある。
チーグルお前たちは、ローゲの心核を何らかの方法でバルバトスから取り除いたようだが同じようにはいかないよ。
コーキスだからって、リチャード様を返さない気か ! ?
イクス……いや、精霊装なら分離を促すことができるかもしれない。スピルリンクしてから精霊装を使えば、あるいは……。
コーキスマスター、まさか行く気じゃないだろうな。
イクスさすがにこの状態じゃ無理だってわかってるよ。他の誰かに頼んで、スピルリンクしてもらう。
イクス今、俺やミリーナ以外で精霊装を使えるのは確か、スタンさんとリオンとヴェイグか……。
イクスコーキス、誰か精霊装を使える人とスピルリンクできる人を呼んできてくれないか ?
コーキスよし、任せとけ !
チーグル精霊装か。お前たちが使った後心核からローゲのアニムス粒子が乖離しかけていたな。なるほど……。
チーグル理屈はまだよくわからないが確かにあれならばいけるかも知れないな。
アスベル……どういうつもりだ ?
チーグル何がだ ?
マリクまるで陛下から分離されることを望んでいるような口ぶりだ。何を企んでいる ?
チーグル……別に企んでなどいないよ。
チーグルそれよりも、この体のことを話しておこう。今は僕がリチャードという存在を封じている状態だ。
チーグルもう長い間、彼の声は聞こえない。リチャードとやらを助けたければ――僕を、殺せ。

キャラクター9話【8-15 リチャード】
アスベルこれがリチャードの心の中なのか。
ソフィねえアスベル、さっき教官から何かもらってた ?
アスベルああ。疑似心核だってさ。今回は必要ないだろうけど自分は入れないから、念のために持ってけって。
ソフィそう。みんなで来られたらよかったね。
ヴェイグすまない。他の仲間も来たかっただろうにオレが枠を取ってしまって。
アスベル何いってるんだ。精霊装を使えるヴェイグがいないとリチャードは助けられないんだ。来てくれて感謝してるよ。
ソフィうん。本当にありがとう、ヴェイグ。お礼に、ご飯を全部ピーチパイにしてもらうようにクレアに頼んでおくね。
ヴェイグいや、それは……気持ちだけで十分だ……。
アスベルコハク、リチャードの心核っていうのはどこにあるんだ ?
コハクもっと奥の方だと思うよ。
ソフィチーグルも、そこにいるんだよね。
コハク多分ね。でもどんな形でチーグルが存在しているのかはわからないから用心はしておいて。
アスベル(チーグル……。一体何を考えているんだ。本当にリチャードを解放する気なのか ? )
コハク多分、この辺……あっ、誰かいるよ !
ソフィえ ? リチャードが二人 ?
チーグルようやく来たか。お前たちを待っていたよ。さあ、リチャードを心の檻から解き放ってくれ。
アスベルお前は……チーグルだな。それじゃ、そっちが…… !
二人リチャード ! !
アスベルリチャード、俺だ ! わかるか ?
ソフィリチャード、ねぇ、リチャード ?……どうしたの ?
ヴェイグおかしい……。何の反応もないぞ。
チーグル……駄目か。
コハクリチャードさんに何したの ! ?
チーグル僕は今までずっとこの者を無理やり封じ込めていたからね。そんな僕の声では彼に届かない。
チーグル仲間の声であればと思ったんだが……。このままではリチャードの意識は薄まり消えるかもしれない。
アスベルリチャード……。リチャード !お前、このまま消えるつもりか ! ?
ラムダ……消えるだと ?
アスベルラムダ ! ?お前、リチャードのために目覚めてくれたのか !
ヴェイグアスベルは誰と話しているんだ。
ソフィアスベルの中のラムダ。目を覚ましたみたい。
ラムダリチャード、お前は生きたいのではなかったのか。
リチャード……ラム、ダ…… ?
コハクリチャードさん、反応した !
リチャードラムダ……どこに……。
アスベルリチャード、ここだ。ラムダは俺の中にいる。
リチャードラムダ……アスベル…… ?アスベル、君なのか……。
アスベルリチャード、しっかりするんだ ! 戻ってこい !
リチャード嫌だ……。ラムダは僕の希望だったのに……。奴らは僕から希望を奪ったんだ……。
チーグル…………。
リチャード僕は、僕であることさえも奪われた……。どこの世界にいても同じだ……。争い……裏切り……世界は汚れきっている……。
リチャード僕は……裏切られるくらいなら、誰とも関わらない……みんな消えてなくなればいい……。僕も……消えてなくなって……。
アスベルお前は消えないよ、リチャード。
リチャードアスベル…… ?
アスベル長い間待たせてしまってすまない。俺は、お前を助けに来たんだ。
アスベルさあ行こう、リチャード。
リチャード助ける…… ? 何故そんな風に手を差し伸べるんだ。僕は元の世界で人間を滅ぼそうとした。この世界でも、君の敵だったんだろう !
リチャードそれなのに……。
アスベル元の世界でも、この世界でもリチャードは敵なんかじゃなかった。
アスベル俺とお前は友達だ。だから助けるのなんて当然だろう。
ソフィそうだよ。リチャードはそんなことも忘れちゃったの ?
リチャード……そうだった。君はいつだって僕の……。
アスベルほら。何やってんだ。早く手を。
コハク……もう、大丈夫だよね。リチャードさん。
ヴェイグ……ああ。
チーグル――ようやく自我を取り戻したようだな、リチャード。これで僕が心核から分離しても体が崩壊することはあるまい。
チーグルでは、最後の仕上げといこうか。精霊装で、この僕を討て。
ヴェイグ! !
チーグル何を今更驚くんだい。そうしなければ僕はいつまでもリチャードの心に住み着いたままになるぞ。いいのか ?
アスベルチーグル…… !
チーグルさあ、剣を抜け。そしてリチャードを解放するんだ。

キャラクター10話【8-15 リチャード】
ソフィ……倒した、の ?
チーグル……フフ……。偽りの生き返しとも……これでお別れ、か。さあ、精霊装で僕にとどめを刺せ !
ヴェイグ……アスベル。いいんだな。
アスベル………………。
アスベル……ああ。頼む。
ヴェイグ――氷霊よ全てを砕け ! 砕気凍絶斬 !
チーグルぐああああっ !……くっ……これで……いい……。
コハクチーグルの姿が薄れてる……。
リチャードチーグル……。
チーグルリチャード、君にこの体を返す……。もう二度と……失わぬようにしたまえ。
アスベルチーグル、何故自ら消えるような真似をしたんだ。
チーグルメルクリア様が、そう望む筈だからだ。今のあの方なら……きっと。
アスベルチーグル、まだ逝くな。お前の話を聞かせてくれ。
チーグル無茶を言う……。今更何を……。
アスベルこのまま何もわからずにお前を消してはいけない気がするんだ。頼む。
チーグルふっ……どうせ消えるなら恨み言の一つも聞いてもらおうか。
チーグル僕は……ビフレスト皇国の皇族に仕える騎士だった。しかしセールンドとの戦いでは主たるウォーデン殿下や故国を守れず戦死した。
チーグル死の砂嵐の中、ただひたすら苦痛に耐えながら僕は自らの無力を嘆き、恥じた。それが永遠に続く筈だったんだ。
ヴェイグ虚無……。そこにお前もいたんだな。
チーグルああ。それが思いがけず生き返しの機会を得た。僕はダーナに誓った。汚名をそそぎ祖国復興を望むメルクリア様を守る、とね。
チーグルビフレストを甦らせることが出来るのならばどんな悪辣非道なことさえも成してみせる。そう決めて、お前たちとも戦った。
チーグルその意志は、こうして消える今でも変わらない。オーデンセの鏡士たちは怨敵、お前たちも同様だ。
アスベル…………。
チーグル当初はメルクリア様もそうだった。手段を問わず、ただ無邪気にビフレスト復興のみを目指していた。
チーグルけれど……何も知らない子供だったメルクリア様が今、様々なものに触れて変わろうとしている。
チーグル今のメルクリア様なら、きっとリチャードをリビングドールから解放することを選ぶだろう。
ソフィだから、あなたは自分から消えるの ?
チーグル……そうだよ。それに……こんな命令を下すのはメルクリア様にとって心の痛むことだろうからね。
チーグルメルクリア様のため、ビフレストの未来のため……これで……僕の役目は……。
アスベル駄目だ !だったら尚更、お前は消えるべきじゃない !
ヴェイグアスベル ! ? どうするつもりだ ?何かできることがあるのか ?
アスベルああ、いざというときはこれが使えると思っていた。
ソフィあ、教官がくれた疑似心核 !
アスベルチーグル、この中に移れないか ?
チーグル何だと…… ?
アスベルお前の仲間のローゲは人工心核のままで俺たちが預かってる。
チーグルローゲは虚無に戻ってはいないのか…… ?
アスベルそうだ。そしてうまくいけばお前も虚無には戻らずにこの世界に留まれるはずだ。だから、この心核に移ってくれ。
チーグル……安い同情だね。
アスベル同情……かもしれない。だけど、俺と同じように考えている仲間だっている。
アスベルシングを知っているだろう。シングは、虚無に閉じ込められた人々の魂も救いたいと言っていた。
チーグルだからと言って、この程度の話で友人を苦しめた存在を、お前は許せるのか ?
チーグルそうやって、自己満足で僕たちを助けてこの先どうするつもりだ。
アスベルリチャードやラムダにした非道な行いは許せない。その先をどうすればいいかもわからない。だけど……それでも……。
アスベル(……ごめん、リチャード、ラムダ)
アスベル俺は、お前たちを救いたいんだ !
チーグル……君の名を教えてくれないか。
アスベルアスベル・ラントだ。
チーグルそうか。僕はトルステン・ドンナー。チーグルは僕の幼い頃の名だ。……それと、アスベル。ひとつ、頼みがある。
チーグルいつかローゲの心核と共に僕をメルクリア様のもとへ届けて欲しい。
アスベルわかった。約束する。
チーグル……感謝する。すまなかったね、リチャード。
コハク一瞬、疑似心核が光った……。チーグルが入ったってことだよね。
リチャードチーグル……。
アスベルこれで、ようやく本当のリチャードに会えるな。さあ、行くぞ。
リチャード行くってどこに ?
ソフィあのね、シェリアも、ヒューバートも、パスカルも、教官も、みんなリチャードに会いたがってるんだよ。だから……。
アスベル & ソフィ一緒に帰ろう。リチャード。
リチャードあ……。
アスベルリチャード、目が覚めたか !
ソフィおはよう。リチャード。
ヒューバート陛下、ご無事で何よりです !
パスカルお帰り~ ! そんでもって久しぶり !
マリクこれでようやく全員そろったな。待ちわびておりました。陛下。
シェリア順番で言えば、教官が一番最後ですからね。陛下、お体の具合はいかがですか ?
コーキス俺、ミリーナ様たちを呼んでくるよ。きっと大喜びするぜ !
イクス俺はジュードに知らせてくる。リチャードさんの体調をみてもらわないとな。
アスベル(信じ続けてよかった。こんな風にリチャードと向き合える日を……)
ラムダ信じる……か。
アスベル(ラムダ !)
ラムダお前は、我を利用しリチャードを貶め仲間に刃をむける敵にさえも歩み寄るのか。なるほど。
アスベル(…………)
ラムダ人間は強欲で、残忍で、傲慢。我にとって、その認識は変わらない。
ラムダだが……お前やコーネルが見せたかったものが今は少しだけ理解できる気がする。
アスベル(ラムダ……。今なら俺の手を取ってくれるか ?)
ラムダお前が我の手を取るというのなら――
アスベル(手……この手、は……)
リチャード心の中では、君がこうして僕の手を取ってくれたね。
アスベルリチャード……。
リチャード本当はずっと君に助けて欲しいと願っていた。……ありがとう、アスベル。
アスベルああ。いつだって助けにいくさ !この世界でも俺たちは……。そうだ ! ソフィ、こっちに来てくれ。
ソフィなに ?
アスベル俺たちの手に、お前の手を重ねるんだ。
ソフィあ…… ! わかった !
アスベル……たとえこの先何があっても。
リチャード僕たちは友達でいよう。
ソフィ友達でいよう。
アスベルよし、これで俺たちはこの世界でもずっと友達だ !
ソフィうん。ずっと一緒だね。アスベル、リチャード。
リチャードああ。新たな世界での、新たな友情の誓いだ。忘れないよ。絶対に。
to be continued
キャラクター1話【9-1スピルメイズ】
アニスここが、あの八番目のイオン様の心の中、なんだよね。スピルメイズだっけ ?人の心の中に入るって、おとぎ話もびっくりだよ。
シングオレにとっては当たり前のことだけど他の世界の人から見たらそう感じるんだろうね。
シング……っていうか、八番目のイオン様ってどういう意味 ?
アニス……あ。えっと、それは……。
ジェイド我々の世界にはイオンという名前の人物が複数いましてね。まぁ、便宜上の呼び方だとでも思って下さい。
ジェイドさて、このスピルメイズの奥に、心核がある訳ですね。今回は、帝国が八番目のイオンを領主にするために人工心核が植え付けられている筈ですが……。
シンク――そんな話、時間の無駄だね。先に行くよ。
ジェイドおっと。ここは普通の場所ではありません。和を乱すような行動はいただけませんねぇ。シンくん ?
シンク! ?
アニスさっすが大佐 ! 呼び方に悪意を感じますね !
ジェイド悪意だなんてとんでもない。同じ世界から具現化された者同士是非親交を深めたいと思いましてね。
シンク虫酸が走るね。
ジェイドそれは良かった。では、今後は『烈風のシンくん』と名乗ってみてはいかがでしょう ?
アニス烈風のシンくん♪
シンク……くだらないね。それともボクに殺されたい訳 ?
ジェイドまたまたご冗談を。アニスはともかく私があなたに負けるとでもお思いですか ?
シンク面白い。八番目の生ゴミのスピルメイズをお前の墓穴にしてやるよ !
シングやめなよ三人とも !今は喧嘩なんてしてる場合じゃないだろ ?
アニスえ ! ? 今の流れでアニスちゃんまで被弾 ! ?
シングシンくんって呼ばれるの、シンクが嫌がってたのにアニスも一緒になってからかっただろ。そういうのは良くないと思う。
ジェイドおや、怒られてしまいましたね、アニス。反省して下さい。
アニスいっときますけど、大佐も怒られてますからね !
シンク時間が惜しいって言ったよね。さっさと行くよ。
シングあっ、待ってよシンク !ジェイドさんの言い方はともかく単独行動が危険なのは確かだよ。
シングそれに、一緒にスピルリンクしたんだからもっと仲良くやっていこうよ。
シンク……うるさいな。アンタまでボクに構ってくる気 ?
シングう~ん、構うっていうか単にシンクと仲良くなりたいって思ったんだけど。
シングそれにほら ! オレとシンクって名前も似てるし。二人合わせて『シンシンコンビ』なんてどうかな !
シンク馬鹿じゃないの ?
シングええっ、いいコンビ名だと思ったんだけどな……。
シンクどうでもいいからさっさと人工心核の場所まで案内してよね。
ジェイド――だ、そうですよ。素直な方のシンくん♪
ジェイドどうやら、ここが最深部のようですね。
アニスうわぁ……。なんかここ……荒れてる ?
シングうん。こんなにボロボロになってるスピルメイズを見るのはオレも初めてだよ……。
ジェイドこれは、報告に上がっていたウッドロウやファントムのケースと同じですね。
ジェイド心核の取り外しの際、被験体の精神に深刻な負担が掛かっており、それがこのようなスピルメイズの破損に繋がっているのでしょう
ジェイド帝国ではかなり強引な心核へのアプローチが行われているとみて間違いありません。
シンク生ゴミにふさわしい扱いって訳だ。
シングくそっ ! 帝国軍の奴ら……。人を何だと思ってるんだ ! !
ジェイド使い捨ての駒、といったところでしょうね。
アニスそんなの……酷すぎるよ……。
シンクそう ? これぞ正しいレプリカの使われ方でしょ ?
アニスそんな言い方…… !
シンク何感情的になってるのさ。このイオンのことは何も知らない筈だろ ? アンタはこのイオンと導師のイオンを混同してるんだよ。
アニス……違うよ ! 何も知らなくても勝手に心を奪われることが酷いことだって思うのは当たり前でしょ !
アニスあんただって、この八番目のイオン様のことを心配して、ここまで一緒に来たんじゃないの ! ?
シンクおめでたいね。ボクはただ、この世界で作られたレプリカのなれの果てを見たかっただけさ。
シング……ねえ、さっきからシンクが言ってるレプリカって何のこと ?
シンクへぇ……。話してないの、死霊使い。
ジェイドええ。必要の無い情報でしたから。――今までは。
シンクレプリカはレプリカ。ニセモノの複製品のことさ。
シンクフォミクリーっていう、あらゆるモノの複製を作る技術があってね。レプリカってのはその技術で作られた複製品のこと。
シンクこの八番目のイオンも、ボクも、ルークも被験者(オリジナル)から作られた複製品――レプリカなんだよ。
シング複製って……コピーってこと ?人間をコピーして作るなんて……。
シング――あ、待って。じゃあ、もしかしてルークとアッシュって双子じゃなくて……。
シンク詳しいことは、そこのメガネにでも聞いてよね。フォミクリーを開発したのはそいつなんだから。
シングえ ! ?
ジェイドええ。その通りです。ルークの件については……そろそろ皆さんにご説明するつもりでいました。
ジェイド詳細はスピルメイズを出てからにしましょう。
シング……あの、シンク。ごめん、オレ、何も知らなくて……。
シンク知ってたらどうだっていうのさ。どうでもいいだろ。
シングどうでもよくないよ !それに、オレはシンクがレプリカだからって偽者だなんて思わない。
シンクはぁ ?
シングだってシンクにもちゃんとスピリアがあるじゃないか。そのスピリアは、コピーでも偽物でもないシンク本人だけのものだと……オレは思う。
アニス……シングの言う通りだよ。シンクの心は、シンクだけのものだよ。それは、この八番目のイオン様も一緒だから……。
シンク安い同情だね。ゴシンセツニドウモ。それとも、いつかみたいにこの仮面を取ってお礼を言ってあげようか ?
シンクありがとう、アニス――ってさ。ああ、この世界の導師イオンは生きてるからボクがあいつの真似をしても意味は無かったね。
アニスシンク……。
ジェイドシンク。ことさらに自分とイオン様を重ねることで自分を代用品ではないと主張するのも結構ですが時間が惜しいと言ったのはあなたでしたよね。
シンク何…… !
ジェイド死にたかろうと殺したかろうと結構ですから全てはスピルメイズを出てからにして下さい。
ジェイドシング。心核を元に戻してもらえますか ?
シング……わかった。

キャラクター2話【9-2 閑散とした街道】
カーリャあっ、皆さま ! ! 無事に帰って来たんですね ! !
ミリーナおかえりなさい。その……彼の容態はどうですか ?
シングそれが、心核は元に戻したんだけどまだ目を覚まさなくて……。
ジェイド八番目のイオンの心の中――スピルメイズはファントムたちと同じようにかなり荒れていました。まして、彼は色々と特殊な生まれですから。
ジェイド目を覚ますまでにはまだしばらく時間がかかると思いますよ。
ミリーナそうですか……。早く元気になってくれればいいんですけど。
ジェイドところで八番目のイオンが目を覚ます前に彼をどう呼ぶのか決めておきたいのですが。
ミリーナああ……。そうですよね。まさか本人に『八番目のイオン』さんなんて呼びかける訳にはいきませんよね。
カーリャう~ん、でも、どんな名前がいいんですかね ?こういう時にパッと名前を付けられるカイルさまやコレットさまがいたらよかったんですけど……。
ジェイドでは、ここはアニスに任せましょう。
アニスえっ ? 私ですか ?
ジェイドええ。あなたなら彼にぴったりの名前を思いついてくれるはずです。
アニス……大佐って人の心が読めるんじゃないですか ?
ジェイドとんでもない。顔に書いてあっただけですよ。それで、どう呼ぶつもりなのですか ?
アニス……えっと。あの人のこと【リベラ】って呼んであげたいなって思ってます……。
シンク…………。
ミリーナリベラ……。それって、どういう意味なの ?
ジェイド古代イスパニア語――私たちの世界の古い言葉で【自由】という意味です。
アニス……自由でいて欲しいんだ。しがらみとか縛り付けるものなんかはねのけて。
シング自由かぁ。うん ! ぴったりだと思うよ !きっと喜んでくれるんじゃないかな !
アニスえへへ、そうだと嬉しいんだけどね……。
ヒスイおい、シング ! ! ここにいたのか ! ?
シングヒスイ ? どうしたのさ、そんなに慌てて ?
ヒスイどうしたもこうしたもあるか ! !あいつが……リチアが帝国軍の奴らのところにいるってわかったんだよ ! !
シングえっ ! ? リチアが ! ?
ミリーナリチアさんって……鏡映点リストにもあったシングたちの仲間よね。
ヒスイああ、さっきアスベルたちが戻ってきたときに言ってやがったんだ。リチアはテセアラ領の監獄にいるらしい。
ジェイドヒスイ、それは間違いありませんか ?
ヒスイマリクっつう、帝国軍から逃げて来た奴からの情報だ。帝国内部の動きも相当詳しかったぜ。
ジェイド……マリクという名前は鏡映点リストにあったアスベルたちの仲間ですね。
ジェイド無条件に信じていいかはともかく話を聞いておく必要はありそうだ。そちらはシングとヒスイにお任せしていいですか ?
ヒスイお任せされなくても聞きに行くぜ !おい、行くぞ ! シング !
シングああ、わかった !
カーリャあわわ、何だか慌ただしくなってきましたね。
ミリーナそうね。みんな、無理をしないといいんだけど……。
ジーニアスねぇ、シングは戻ってきた ?
ミトス……ジェイドとアニスとシンクがいてシングがいないってことは入れ違いになったみたいだね。
ミリーナええ。シングたちの仲間の居場所がわかったの。今はヒスイさんと一緒に対処してもらっているわ。
エミルそうなると、こっちの調査に協力してもらうのは難しそうだね。
ジェイドミトスやエミルが関わっているということは世界樹の調査……でしょうか。
ジェイドしかもシングを連れていこうと考えるとは……中々面白い。目の付け所がいいですね。
ミトス人間に褒められてもちっとも嬉しくないけどね。
ミリーナえ ? どういうことですか ?
ジーニアスえっとね、簡単に言うと世界樹と精霊は繋がっている可能性が高いんだ。
ラタトスク……元の世界と同じなら、大樹――世界樹は俺のモノだからな。
ラタトスクミトスが、ソーマ使いなら、樹を通じて精霊の心にアクセスできるかも知れないと言い出してな。
ミトステセアラ領の大樹カーラーンとアセリア領の世界樹ユグドラシルを調べればこの世界の精霊のことも分かるんじゃないかと思って。
ミリーナ確かに、それは面白い着眼点だわ……。ありがとう、みんな。
ミトス別におま……君たちのためじゃないけどね。そうだ、ミリーナ。君が撮った写真の中に世界樹が写っているものはあるかな ?
ミリーナうーん、どうだったかしら…… ?でも、写真は部屋で保管してあるから探しておくわ。
ミトス……ありがとう。それじゃあボクたちはテセアラ領の世界樹の調査に行ってくる。
ミトスそっちならソーマ使いはいなくてもラタトスクがいるから。
エミル待って、ミトス。戦力的にも、もう一人欲しいって言ってたけど、どうするの ?
ミトスああ、それはもう見つけたから平気。
シンク………なんでこっちを見るのさ。
ミトス話は聞いてたでしょ ?ボクは君の友達になってあげたんだから友達のことは助けてくれないと。
ジェイドおや ? あの烈風のシンクにお友達……。それはそれは…… !
アニスなんとなんと…… !
カーリャよかったですねぇぇぇぇぇぇ ! ! !
シンク――シークレット……
エミル待って待って ! ?魔鏡技は待って ! ?
ジーニアスそうだよ。いい機会だからシンクも一緒に行こうよ。ボク、ミトスの新しい友達がどんな人なのかずっと気になってたんだ。
ラタトスクああ、俺もだ。さあ、ぐだぐた言ってないでさっさとこい。
シンクおいやめろ ! 服を引っ張るな ! !
ジェイドいやぁ、これは面白いものを見せて頂きました。当分はいじって遊べますね。

キャラクター3話【9-3 閑散とした街道】
マリクすでにイクスたちには伝えたが、ハロルドは内部から帝国を崩すために情報を集めている。
マリクだが、彼女自身が動きにくくなっているのが現状だ。下手に動けば、こっちの計画がバレてしまうからな。
イクスそれで……マリクさんやリチアさんのような何らかの理由で帝国にいる鏡映点に協力してもらっている状況らしいんだ。
ヒスイ俺が知りてえのはそんなことじゃねぇ !あいつは……リチアはちゃんと無事なんだろうな ! !
マリクすまないが無事だと断言はできん。帝国側もリチアの力を必要としている以上手荒な真似はしていないと思うが……。
ヒスイクソッ ! ! だったら早く助けに行くぞ ! !
シングイクス、テセアラ領の監獄にはオレたちが行ってくるよ。
シングコハクも一緒に行きたいだろうけど、今はリチャードの心核を治してる途中だからさ。コハクには戻ってきたらリチアのことを伝えてくれないかな ?
イクスわかった。俺も一緒に行ければいいんだけど……今の状態だと足手まといに……なるから…………コーキスに…………。
コーキスマスター ! ? 大丈夫か ! ?真っ青だぞ ! ?
イクスはは……ごめ……ん……。ちょっと眩暈がしただけだよ。大したことは……。
コーキスそんなわけないだろ !
コーキス(やっぱり、マスターの様子がおかしい。いくらゲートを何度も使ったからってこんなになっちまうもんなのかよ…… ? )
コーキスごめん、シング様、ヒスイ様。俺も一緒には行けないよ。こんな状態のマスターをほっとけないし。
コーキスそれに、鏡精はマスターの影響を受けるんだ。世界中にある魔鏡結晶のおかげで俺はあんまり制限はないけど……。
シングううん、気にしないでコーキス。それにイクスも。今回はオレたちでちゃんとリチアを助けてくるよ。ね、ヒスイ。
ヒスイ当たり前だ !帝国軍の連中なんざぁ、俺が一発で仕留めてやんよ。
イクス……うん。ありがとう、二人とも。
マリクだが、そうなると監獄に向かうための戦力に少し不安が出てくるか……。
マリク俺が行ってやれればいいんだが情報共有のために残る必要があってな。
レイアねえねえ、しいな。白米が好きならサイダー飯も食べてみなよ !絶対美味しいからさ !
しいな本当に美味しいのかい、その料理 ?そんなヘンテコな組み合わせ、聞いたこともないよ。
レイア大丈夫大丈夫♪って、あれ ? みんな、どうしたの ?なんか、深刻そうな感じだけど……。
しいなそれにイクス。あんた随分顔色が悪いね。知らない顔も増えてるみたいだし……。
コーキスえっと、色々あってメチャクチャ人手が足りないんだ。
イクスコーキス……。相変わらず説明が雑すぎるぞ……。
シングえっと、これからヒスイとテセアラ領の監獄に行こうとしてたんだけど、戦力が足りなくてさ。誰か探しにいこうかと思ってたんだ。
レイアえっ、そうなの ? だったら任せて !事情はよくわかってないけど、助っ人が欲しいならわたしがシングたちと一緒に行くよっ !
シングホントに ! ? 助かるよ、レイア !
レイアあっ !でもしいなにサイダー飯作ってあげる約束が……。
しいな何言ってんだい。そんなのいつでもいいだろ。それより、あたしも一緒に連れてっとくれよ。
しいな大人しくしてるっていうのはどうも性に合わなくてね。それに潜入調査ってのはあたしの育った里の得意分野サ。
ヒスイへっ、頼もしいじゃねーか !なら、俺たちで監獄に乗り込むぞ !
ミリーナう~ん、やっぱりないわね。
カーリャミリーナさま~。只今戻りました~。
ミリーナおかえりなさい、カーリャ。リベラの様子はどうだった ?
カーリャはい、顔色もよくなっていましたよ。リベラさま、早く目を覚ますといいですね。
ミリーナジュードたちに任せておけば安心だと思うわ。それに、アニスも傍にいてくれてるし。
カーリャそうですね ! それじゃあ、カーリャはリベラさまが目を覚ましたときの為にいっぱいお菓子を用意しておきます !
ミリーナふふっ、カーリャらしいわね。医療チームの許可が出たら差し入れしてあげましょう。
カーリャはい ! ところでミリーナさま。写真なんか並べてどうしたんですか ?
ミリーナさっきミトスが言ってたでしょ ?世界樹の写真があれば渡してほしいって。
カーリャなるほど ! それで早速ミトスさまの為に写真を探しているんですね。
ミリーナええ。最近はミトスもコレットやアーチェと一緒に物資の調達を手伝ってくれてるの。だから、私も力になってあげたかったんだけど……。
ミリーナ駄目ね。やっぱりアセリア領の世界樹の写真は撮ってなかったみたい。
カーリャう~ん、写真を撮れるのはミリーナさまだけですし他の人が持ってることもないですよね、きっと。
ミリーナ……ねえ、カーリャ。私、今からアセリア領へ行ってみようと思うの。
カーリャええっ ! ? 今からですか ?
ミリーナ善は急げって言うじゃない。それに、私もみんなの為に何かしたいの。
カーリャそれならカーリャも一緒に行きます !そこまで離れちゃうと存在が保てるとも思えないですし……。
ミリーナありがとう、カーリャ。それじゃあ、準備をしてから向かいましょう。
ロンドリーネあれ ? ミリーナ。どこかに出掛けるの ?
ミリーナロディ !ええ、ちょっとやることができちゃって。でもすぐに戻るわ。
ミリーナあっ、それと、このことはみんなに内緒にしててね。特にミトスには、絶対よ。ちょっとしたサプライズの仕込みだから。
ロンドリーネうん、わかった。気を付けて行ってきてね。
カーリャご安心を ! ミリーナさまはカーリャが全力でお守りしますので !
ロンドリーネあはは、それは頼もしいね。それじゃあ、ミリーナのことは頼んだよ、カーリャ。
カーリャはい ! では、行ってきますね !

キャラクター4話【9-4 イ・ラプセル城】
クンツァイト――スピルリンク終了。戦闘モードを解除する。
ハロルドあら、思ったよりも早かったわね。どう、予定通り上手くいった ?
クンツァイト肯定。対象者アトワイトの心核の入れ替えは成功。これで目を覚ますはずだ。
アトワイト――ん、んん……。
ハロルドおや、言ってるそばからお目覚めみたいね。
アトワイト……驚いたわ。本当にあなたのおかげだったのね、ハロルド。
ハロルドその様子だと、事情はもうわかってるって感じかしら?
アトワイトええ、私のスピルメイズ――心の中で聞いたわ。そこにいるクンツァイトさんそれに、ヨーランドさんからもね。
アトワイト改めて、助けてもらったことを感謝するわ。自分の身体を勝手に使われるなんてあまり気分がいいものじゃないもの。
ハロルドお礼なんてお門違いもいいとこよ。あんたの心核と人工心核を入れ替えたのはこの私。恨み言ならたっぷり聞いてあげるわ。
イオンすみません、アトワイトさん。お叱りなら僕も一緒にお願いします。僕たちはどうしても帝国の目を欺く必要があったんです。
アトワイトわかってるわ。ハロルドのことはよく知ってるし私も軍に所属していた人間だもの。ちゃんと理解はしているつもりよ。
ハロルドところでアトワイト。あんた、違和感とかない ?シドニーが残していった心核除去装置には副作用があった筈なんだけど。
アトワイト大丈夫よ。ヨーランドさんが修復してくれたわ。それに、彼女はちゃんと私の心の中に宿っていて今も私たちの話を一緒に聞いているわよ。
クンツァイトアトワイトのスピルメイズの破損状況は自分でも修復不可能であった。だが、全て彼女が元に戻してみせたのだ。
イオンヨーランドさんは、鏡士の始祖――初代ビクエ、でしたよね。とてつもない力を持っているんですね。
ヨウ・ビクエ(あら、照れちゃうわね。でもこれは別に私が特別優れている……というのとは違うの。詳しい話はいずれするけれど)
ヨウ・ビクエ(アトワイト。申し訳ないけどしばらく心の中にお邪魔させてもらうわね)
アトワイトヨーランドさんが、力のことはいずれ説明してくれると言っているわ。暫くは一緒に私と行動してくれるみたい。
ハロルドここまでは、私たちの計画通りね。他にも色々話したいところなんだけどそうのんびりもしていられないわ。
ハロルドいい、アトワイト。あんたはこの後、クンツァイトと一緒にここから脱出しなさい。
アトワイト脱出って……いきなり突拍子もない話ね。
ハロルドそれがさ、グラスティンとかいう帝国側に厄介な奴がいんのよ。
ハロルドそいつにあんたを利用されないためにもヨーランドのことを隠すためにもここにいない方がいいの。
アトワイト大事なカードはこっちで取っておくってところかしら。
ハロルドそういうこと。あと、念のために聞いておくんだけどヨーランドから何か言ってきたりしてる?
ヨウ・ビクエ(私もハロルドに賛成よ。あの趣味の悪い男には会いたくないわ)
アトワイトヨーランドさんも賛成だそうよ。でも不思議ね、自分の中に別の人の意識があるなんて。
クンツァイト意識と体を分離した存在。今のヨーランドはリチアさまがコハクの中にスピリアを宿していた状態と酷似している。
ヨウ・ビクエ(だって、こうしていないとこの世界が崩壊しちゃうきっかけを与えちゃうもの)
アトワイトヨーランドさんが意識だけになっているのもこの世界の崩壊と関係があるようね。
イオン確か、帝国が精霊の力を利用しているせいでヨーランドの封印が解けそうになってしまったので心を分離した、と言っていましたよね ?
ヨウ・ビクエ(その通りよ。歪められた目覚めは世界に悪影響を起こすの)
ヨウ・ビクエ(だから、ハロルドたちに協力してもらって私と相性のいい鏡映点を捜してもらってたのよね。まぁ、本人は色々実験できて楽しそうだったけど)
アトワイト……その様子がはっきりと目に浮かぶわ。でも、その寄生しやすい鏡映点っていうのが私だったってことでいいのかしら ?
イオンええ。おかげで今後はヨーランドが自由に動けます。誰かの心に寄生していないと、自分の体から遠くへは行けないということでしたから……。
帝国軍兵士——ハロルド様。只今グラスティン様がお見えになられました。至急お話を伺いたいとのことですが……。
ハロルドはいはい、ほんっとせっかちな奴ね。部屋で待ってるって伝えなさい。
イオン……時間稼ぎは難しそうですね。
ハロルドクンツァイト。予定通りアトワイトと一緒に精霊の封印地へ向かいなさい。そこでヨーランドにダーナの意志っていうのを聞いてもらうのよ。
クンツァイト了承。これより作戦を実行する。行くぞ、アトワイト。
アトワイトええ。ハロルド、あなたも気を付けてね。
ハロルドこの私がヘマなんてすると思う ?人の心配より自分の心配をしなさい。
アトワイトふふっ、あなたらしい返答ね。

キャラクター5話【9-7 テセアラ領の森】
ヒスイやっと見えたぜ。監獄だ !
シングうん、マリクが教えてくれたルートのおかげで帝国兵とも鉢合わせにならずに済んだね。
レイアよ~し ! みんな、このままガンドコ行くよっ ! !
シングああっ、レイア ! オレのセリフ取らないでよ ! ?
レイアいいじゃん♪ 一回言ってみたかったんだよね~。
しいなあんたたち、もうちょっと緊張感ってのを持ったらどうなんだい ?ここからは見張りも厳しくなってるはずサ。
ヒスイ…………。
しいな――ヒスイ、大丈夫かい ?
ヒスイあっ ? ああ、わりぃ。ちっと考え事をしてただけだ。
レイアやっぱりリチアさんのこと、心配だよね……。
ヒスイああ。あいつ、たまにとんでもねぇ無茶しやがる時があるからよ。厄介なことに巻き込まれてなきゃいいんだが……。
しいな……だったら尚更、あたしたちが迎えにいってあげなきゃいけないね。
ヒスイ……だな。待ってろよ、リチア……。俺が必ず助けてやるからなッ ! !
シングう~ん、やっぱり変だよね……。
レイアん ? どうしたのシング ?
シングなんかさ、この監獄の周りって他の場所と比べて魔鏡結晶がいっぱいあると思わない ?
レイアそういわれてみれば……。ここまで来る間もかなり沢山あったよね。
しいな確か魔鏡結晶ってのは、イクスがでっかい魔鏡結晶に閉じ込められたんだか閉じこもったんだかの時世界中にできたものなんだろ ?
しいなたまたまこの辺に多かったってだけじゃないのかい ?
シングでも、この監獄、結構最近建てられたものだと思うよ。
シングもしこの監獄が、イクスがスタックオーバーレイした後に建てられたなら、監獄の建物にまで結晶が侵蝕してるのはおかしくない ?
ヒスイ……確か魔鏡結晶ってのはイクスの力の具現化だったか ?
ヒスイよくわからないがイクスの様子がおかしいのはこの魔鏡結晶が原因……かもしれねぇな。
しいなはぁ……。こういうときにリフィルがいれば何か意見が聞けたんだけど……――
しいな――っと、誰かいるね。
レイアあれは、帝国兵 ! ?
ヒスイこんなところで見つかったら厄介だ。おめぇら、一旦隠れるぞ。
帝国軍兵士Aおい ! お前たちも早く来い ! !
帝国軍兵士Bなんだ ? 中で何かあったのか ?
帝国軍兵士Aリチア様が急に倒れたんだ !その後すぐに監獄の中にまで魔鏡結晶が発生して囚人たちを捕えていた檻も壊れちまった ! !
シングそんな ! リチアが倒れただって ! ?
帝国軍兵士A待てっ ! そこに誰かいるのか ! ?
しいなマズい。気づかれちまったよ !
ヒスイ――槍鴎ッ ! !
帝国軍兵士A・Bぐはああっ ! !
レイア凄いよヒスイ !離れてる見張りを一瞬で倒しちゃった !
シングありがとう、ヒスイ。……ごめん。オレのせいで見つかっちゃって。
ヒスイんなことはいいんだよ !それよりお前も聞いたろ ! ? リチアが倒れたって !コソコソ潜入なんざしてられっか ! !
ヒスイ警備兵が何人いようが俺が全員ぶっ倒す ! !行くぞ、おめぇら ! !
レイアあっ ! ? ちょっとヒスイ ! ?一人で先に行ったら危ないよ ! !
しいないや、場が混乱している今なら……。シング、レイア !あたしたちもヒスイの後に続くよ !
クンツァイト……ここは ?
アトワイトヨーランドの話だと、精霊の封印地への転送魔法陣を展開した筈なんだけど……。
ヨウ・ビクエ(いえ、どうやら私たちは……アイフリードのお墓がある場所に飛ばされちゃったみたいね)
アトワイトアイフリード ?
クンツァイト警告。前方に生体反応を確認。何者かがこちらに近づいてきている。
ヴィクトル――誰だ、お前たちは ?まさか、帝国の人間なのか ?
クンツァイト対象、敵対行動に移る可能性あり。こちらも戦闘モードに移行する。
アトワイト待って。私たちは……。
ヨウ・ビクエ(アトワイト、よかったら代わってもらえないかしら?私、この人のこと、少しだけ知っているのよ)
アトワイトそうなの ? だったらここはあなたに任せたほうがいいみたいね。
ヴィクトルん ? 女、今なにか言ったか ?
ヨウ・ビクエ――ヴィクトル、元気そうで何よりだわ。
ヴィクトル……何を言っている ?
ヨウ・ビクエごめんなさい。この体の持ち主――アトワイトに頼んで意識を譲ってもらったの。
ヨウ・ビクエあなたも、もう一度精霊の封印地に向かおうとしてここへ来てしまった……んじゃないかしら ?
ヴィクトル貴様、何者だ ?
ヨウ・ビクエ私はヨーランド。ダーナの巫女よ。ヨウ・ビクエの方が通りがいいかしら。
ヴィクトルダーナの巫女、だと ?
ヴィクトル……そうか、お前がバルドの言っていた【眠りの巫女】というわけか。

キャラクター6話【9-8 テセアラ領の森】
ゼロスったくよー ! なんで俺さま、毎回毎回こいつと組まされなきゃいけないわけ ! ?
クラトスここは帝国領の上空だ。その上で我々が呼ばれたのだから空からの奇襲を考えているのだろう。
ゼロスんなことたぁ、言われなくてもわかってるっつーの !はぁ~、いいよなあんたは。班長会議だとかいってアジトの美女軍団に会えるんだからよ……。
マークよう。相変わらず仲良しこよしってとこか?
ゼロス本気でそう見えるなら早いとこ目医者でも紹介してもらえよな。
ゼロス……で、なんだ ? その後ろにいる大男は。また性懲りも無く男の仲間を増やしたのかよ。
マーク仲間、ねぇ……。ま、色々訳ありでな。こちらの『偉丈夫』はバルバトス『さん』だ。
マークこれからクラトスと二人でこいつを芙蓉離宮に下ろしてやってくれないか。
ゼロス芙蓉離宮 ? 何でそんなとこに……。
バルバトスごちゃごちゃ言ってないで、さっさと俺を運べ。文句がある奴は、顎を切り落としてやる。
ゼロスちょ ! ? 何だよこいつ ! ?完全にやべー奴でしょーよ !
マーク頼むぜ、バルバトスの旦那。ここでやり合ったところでお前の目的が果たせなくなっちまうだけだぞ。
バルバトス……フンッ。
ゼロスなぁ、マーくんよ。俺さまが言うのもなんだが仲良くする相手は選んだほうがいいぜ ?
マーク俺もそろそろ自分で呆れてるところだよ。ともかく、今回は手伝ってやってくれ。
ゼロスへいへい、わーったよ。
クラトスでは、行くぞ。上空とはいえ、敵地に長居するのは得策ではないからな。
バルバトス急げ ! 飛ばせ !俺はいつまでも紳士的じゃないぞ ! !……待っていろよメルクリア。くくく……。
マーク……やれやれ。ようやく厄介払いができたな。これで少しは落ち着けそうだ。
ローエンマークさん、ここにいましたか。
マーク……っと、そうでもなかったか。ローエン、どうかしたか ?
ローエン先ほど、精霊の封印地へ向かったヴィクトルさんから連絡がありました。何でも、ヨウ・ビクエという人物と遭遇したとか……。
マークヨウ・ビクエ ! ? シャーリィに取り憑いてたいかにもフィル好みのあの姐さんか。
ローエンほっほっほ。それを聞いたらフィリップさんがどんな顔をすることか。
マーク顔を真っ赤にして全否定する様が目に浮かぶぜ。
ローエンその、バリボーな美女が好きなフィリップさんがマークさんを呼んでいますよ。ヨウ・ビクエとの通信に同席して欲しいそうです。
ヨウ・ビクエ久しぶりね、フィリップ。マーク。それに、知らない顔が増えてるみたい。
ヨウ・ビクエ私の隣にいるイケメンはクンツァイト。帝国にいた鏡映点よ。
ローエン確かシングさんたちのお仲間でしたね。
クンツァイトシングを知っているのか ?帝国を離反したとは聞いていたが。
マークああ。黒衣の鏡士達のところで元気にやってるぜ。
フィリップ――あの、一つ確認ですがあなたは本当に初代ビクエなんですか ?
ヨウ・ビクエええ。今はアトワイトの体を一瞬借りているのよ。もちろん同意の上でね。
ヨウ・ビクエまぁ、だから初代ビクエだと信じろと言われても難しいでしょうけれど、今は信じたフリだけでいいから話を聞いてもらえると助かるわ。
フィリップは、はぁ……。でも、イクスたちからは初代ビクエがイ・ラプセル城にいたと報告受けていましたが……。
ヨウ・ビクエダーナの心核がある精霊の封印地へ行こうとしたらここ――魔の空域に飛ばされちゃったみたいなの。
ヴィクトル私も同じだ。バルドから聞いていた精霊の封印地へ続く転移の呪文を用いたが、何度転送魔法陣を作り出しても魔法陣の先には精霊の封印地とは違う景色が見えた。
ヴィクトルそのたびに転移をキャンセルしたが結果は同じ——。だが、転移の呪文以外で封印地に辿り着く方法はない。そこで、調査のためにも飛び込んでみたのだが……。
マーク魔の空域の島に辿り着いて初代ビクエと鉢合わせって訳か。
フィリップ待って下さい。そこが魔の空域だというのなら魔鏡通信が使えない筈では――。
フィリップ……いや、これも初代ビクエの力か。
ヨウ・ビクエええ。私、ティル・ナ・ノーグではとっても便利な存在なの。
ヨウ・ビクエだから、自分を卑下しないでちょうだいね。私は特別。不自然な存在。そこにはそれなりの理由がある。
ヨウ・ビクエでも、そんな私でもこの場所にいるのはちょっと厄介でね。
ローエンまるで神の如き力を持つあなたでもそこからは抜け出せないと ?
ヨウ・ビクエご明察よ。素敵なおじいちゃま。ヴィクトルから聞いたけれど、心の精霊の封印の影響で転移の呪文が通じなくなってしまったのだと思うわ。
ヨウ・ビクエ端的に言えば、私たちは今この島に閉じ込められている状態なの。
マークそいつは笑えない話だな。何とかならないのか ?
ヨウ・ビクエ『私だけ』の力じゃ無理ね。だから、当代ビクエの力を貸してほしいの。
フィリップ僕の力 ?
ヨウ・ビクエええ、ひとまずここを脱出するために魔鏡通信機を利用して、あなたの心にスピルリンクするわ。
フィリップスピルリンク ! ?ですが、それはソーマを使わなくては……。
クンツァイト問題ない。自分の腕型ソーマ「ヴェックス」とヨーランドの力を合わせれば、この場にいる全員でのスピルリンクは可能だ。
ヨウ・ビクエそこから、私の力であなたがいる飛空艇……ケリュケイオンって言ったかしら ?そっちに皆で行くことにするわ。
フィリップ僕の心を通じてここへ移動するというのか ! ?
フィリップヨウ・ビクエ……。同じビクエだというのに僕とはレベルが違いすぎる……。
ヨウ・ビクエだから言ったでしょ。私は不自然な存在だって。私がこんなことをできるのは私が【ダーナの巫女】だから。
ヨウ・ビクエ人間にこんなことをできる方が――おかしいのよ。

キャラクター7話【9-10 テセアラ領の森】
レイアうわ……脱走した囚人と兵士たちでメチャクチャだね……。
シングうん。巻き込まれないようにオレたちも早くリチアを見つけてここを出よう。
ヒスイリチア……どこにいるッ ! ?
しいなヒスイ、落ち着きなって。聞いた話だとリチアは帝国の客人として迎えられている筈だろ。監獄にいるってことはないはずサ。
ヒスイあぁ ? ここじゃないならどこにいるっつーんだよ ! !
しいな怒鳴ってないで頭使っとくれよ !あたしゃ、そういうのは苦手なんだ !
ヒスイ俺だって――
ヒスイ……そうか。リチアが客分扱いならあいつがいるのはこんな檻の近くじゃねぇ。お前ら、ついてこい !
シングここが看守棟か。こっちも魔鏡結晶の被害が酷いみたいだね……。
ヒスイああ。だが客分なら応接室とかそういうところに案内するだろ。だからきっとリチアも――
レイアねえ ! あそこの壊れた扉の先 !誰か倒れてない ! ?
ヒスイあれは……リチアッ ! ! おいっ、リチアッ ! !
リチア…………その、声は。
ヒスイリチアッ ! ! 俺だ ! !待ってろよ ! ! すぐに助けてやっからな ! !
リチアヒ……スイ……。
ヒスイリチアッ ! ? クソッ ! !魔鏡結晶が邪魔で先に進めねぇ ! !
レイアマズいよ ! リチア、すっごく苦しそうだよ ! ?
ヒスイ何で壊れねえんだよ、この結晶 ! !オラッ ! ! オラァッ ! !
しいなちょっと、ヒスイ ! ?そんなに術を使ったらあんたの身体が持たないよ ! ?
ヒスイ俺の身体なんてどうだっていい ! !あいつが苦しんでる姿はもう見たくねぇんだよ ! !
ヒスイ俺が……俺があいつを守るって決めたんだ ! !
シングくっ、リチアが目の前にいるのに、どうしたら……。
? ? ?――ま、すか ?――マを、――し、者たちよ。
シングえっ ? な、何だ ? この声……。
ヒスイまさか、ソーマから聞こえてきてんのか ! ?
? ? ?――はい、あなたたちのソーマを通じて私の声を届けています。
ヴェリウス私は心の精霊ヴェリウスです。シング、ヒスイ。あなたたちのソーマの力でリチアのスピリアを守って下さい。
レイアちょっと、どうしたの二人とも ?
シングヴェリウスって精霊がオレたちに話し掛けてきてるんだ。オレたちの力でリチアを守れって……。
ヴェリウス魔鏡結晶に宿るイクスの力が彼女に干渉しデスピル病を発症しています。事態は急を要する。早くリチアにスピルリンクを !
ヒスイ――シング ! リチアにスピルリンクするぞッ ! !
レイア――え ! ? 何 ! ? ここ、どこ ! ?
しいなど、どうなってるんだい ! ?
シングえ ! ? レイアとしいなもスピルメイズに来てるの ! ?どうして ! ? スピルリンクする魔鏡もないのに……。
しいなスピルメイズって……。それじゃあ、ここはリチアって人の心の中なのかい ! ?
ヴェリウス――しいな。今のあなたは知らないでしょうけれどあなたと私には確かな繋がりがあります。それを使って、私があなたとレイアを招きました。
ヴェリウスソーマ使いの二人を助けてあげて下さい。
レイアうわ ! ? わたしにも声が聞こえた……。今のがヴェリウスの声…… ?
しいな………………。
しいなヴェリウスの声が聞こえなくなっちまった……。
レイアヴェリウスは心の精霊だって言ってたんだよね ?わたしの世界では聞いたことがない精霊だけど……。
しいな……そいつはあたしもサ。まあ、会ったことがないだけであたしの世界にいたのかも知れないけどね。
レイアミラなら何か知ってたかも……。
ヒスイだが、今はヴェリウスのことよりリチアのことだ。デスピル病になったってのが本当ならすぐに何とかしないとッ !
レイアデスピル病って何 ?
シングゼロムっていう思念体が、スピリア――こっちで言う心に取り憑く病気、かな。そうなるとスピルーン――心核を喰い尽くされて……。
ヒスイ……死んじまう。そんなことさせてたまるかッ !
アトワイトあら ? あなたたちは……。
クンツァイトシング ! それにヒスイか ! ?
ヒスイクンツァイト ! ?お前、何でリチアのスピルメイズの中にいるんだ ! ?
クンツァイトリチアさまの…… ?ヒスイ、一体何のことだ ?ここはフィリップという人物のスピルメイズだ。
シングそんな筈ないよ。オレたち、ヴェリウスっていう心の精霊にリチアがデスピル病だって言われてスピルリンクした――筈だから……。
クンツァイトリチアさまがデスピル病だと ! ?シング、それは本当なのか ! ?
ヴィクトルヨウ・ビクエ。これはどういうことだ ?
ヨウ・ビクエ……そうね。おそらくイクスの魔鏡結晶を通じてフィリップの心とリチアの心が混ざりあっている状態なんだわ。
ヨウ・ビクエねえ、イクスがリチアから物理的に近い場所で転移術のようなものを発動させたってことはない ?
シング……あっ。そういえば、リチャードを助ける時に転送ゲートを使ったって言ってた。
ヨウ・ビクエやっぱりね。それが心――スピルメイズが混ざった原因よ。
レイアごめん。全然わからないんだけど……。
ヨウ・ビクエああ、だったら、これだけ理解してちょうだい。あなたたちはこのままリチアの心核を目指せば大丈夫ってこと。
ヨウ・ビクエあとは――クンツァイト。あなたはシングたちと一緒にいったほうがいいわね。あなたにとってもリチアは大切なんでしょう ?
クンツァイトしかし、自分が離れてしまうとヴィクトルがこのスピルメイズ内から出られなくなるのではないか ?
ヨウ・ビクエその点は問題ないわ。スピルリンクの解除だけならソーマがなくても私の力だけで可能よ。いざとなったら、優秀な当代ビクエもいるしね。
クンツァイトならば、シングたちと行かせてもらう。自分はリチアさまの守護機士。我が主の窮地となれば、動かないわけにはいかない。
しいなちょっと待っとくれよ。あんたたちはどうするんだい ?
ヨウ・ビクエ私とヴィクトルはフィリップのところへ向かうわ。残念だけど、あなたたちとはここでお別れね。
ヨウ・ビクエそうだ。もしここまであなたたちを導いたっていう心の精霊が、もう一度コンタクトを取ってきたら精霊の封印地の状況を聞いておいてくれないかしら ?
ヨウ・ビクエそれじゃあ、またね。
レイア行っちゃった……。
クンツァイト彼女たちならば問題はないだろう。シング、ヒスイ。自分はこれよりリチアさまの救出を最優先とする。力を貸して欲しい。
ヒスイんなもん当たり前だッ !頼むぜ、クンツァイト ! !
シングよし、リチアのスピリアがある場所まで行こう !

キャラクター8話【9-13 スピルメイズ】
シングみんな、もうすぐ最深部のはずだよ。きっとリチアのスピリアもここに…… ! !
ヒスイこいつはッ…… ! !
クンツァイト間違いない。これは我が主のスピリアの反応だ。
レイアじゃあ、リチアは近くにいるんだね ! ?
しいなみんな ! あっちに見える人影って……。
ヒスイあの髪の色……間違いねぇっ ! !おい、リチア ! !
リチアその声は……ヒスイなのですか ! ?
シングよかった ! 無事だったんだね、リチア。
リチアシング……それにクンツァイトまで……。
ヒスイお前、大丈夫なのか ! ?そうだ ! デスピル病は ! ? 帝国の奴らに何かひでぇことされたんじゃねえだろうな ! !
しいなヒスイ、そんないっぺんに聞いたら答えられるもんも答えられないだろ ?一旦落ち着きなよ。
ヒスイお、おう……そうだな、わりぃ。
リチアいえ、わたくしを助けるために来てくれたのですよね ?ありがとう、ヒスイ。
リチアですが、またわたくしはあなたたちを危険な目に遭わせてしまったのですね……。
ヒスイああ ? 何言ってやがんだおめぇは ?
リチア……えっ ?
ヒスイお前はな、そうやっていっつも自分だけで背負いこみすぎなんだよ。
ヒスイお前はずっと、俺たちを守ってくれてたじゃねえか。それに、俺にはお前に返しきれねぇ程の借りがあるんだよ。
ヒスイ……だからよ、リチア。俺は、お前がどこにいようが絶対に助けに行く。これからも、ずっと一緒にいるためにな。
リチアヒスイ……。
ヒスイあっ、いや ! ? へっ、変な勘違いすんなよっ ! !お前はずっとコハクと一緒だから家族みてぇな存在って言いたかっただけだからな ! !
レイアもう、ほんっと男の子って素直じゃないよね。
しいなはは……。まぁ、男ばかりとは限らないけどね。素直になれないのは……。
レイア………………。
シングリチア、一体何があったの。オレたちが駆け付けたときにはリチアが急に倒れたって聞いたんだけど……。
リチアここへはリチャードという人物のスピリアからチーグルという人物のスピリアを分離するように言われてきたのです。
リチアですが、何か騒ぎがあったようでしばらくこの看守棟で待つように命じられました。
リチアしばらく待っていると突然、何者かの不安が、わたくしのスピリアの中に紛れ込んできたのです。
リチアそれを退けようとしているうちに、わたくしと不安を生み出す何者かのスピリアが同調して制御不能となってしまいました。
クンツァイトリチアさまが気を失われるほどの力……。
シングまさかそれがゼロムなんじゃあ……。
クンツァイト――警告 ! ! 前方からの攻撃反応を確認 ! !
ヒスイ早速現れやがったな ! !リチアのスピリアに勝手に混ざりやがって ! !痛ぇじゃすまさねぇぞ、ゼロムッ ! !
しいな――いや、ちょっと待っとくれよ ! !あれは……。
ゼロム ?………………。
レイアイクス ! ? 何でイクスがここにいるの ?
リチアいえ、あれは人の形を模したゼロムです。そして、わたくしのスピリアに入ってきた不安の正体でもあります !
イクス型ゼロム——全部、嘘だったんだ。
シング嘘 ?
イクス型ゼロムそうさ……。俺も、ミリーナも、この世界さえも全て作り物だ。
ヒスイ作り物だぁ ?こいつ、何言ってやがる ?
リチアこのゼロムは彼――イクスという人の不安そのもの。ずっと押し込もうとした想いがゼロムとなってしまったのでしょう。
しいなそれじゃあ、こいつの言ってることはイクスが抱えている感情だっていうのかい ?
クンツァイト肯定。魔鏡結晶を通じてイクス・ネーヴェの思念がゼロム化したと推測。排除対象と判断する。
シングこれが……イクスの思念……。
イクス型ゼロム俺は……偽物なんだ……。ただの、代用品でしかないんだ……。
シング! ?
シンクレプリカはレプリカ。ニセモノの複製品のことさ。
シンクフォミクリーっていう、あらゆるモノの複製を作る技術があってね。レプリカってのはその技術で作られた複製品のこと。
シンクこの八番目のイオンも、ボクも、ルークも被験者(オリジナル)から作られた複製品――レプリカなんだよ。
シング……違う……そんなはずない ! !
シング誰かに造られた存在でも ! !世界に生まれた瞬間、イクスはイクスじゃないか ! !そのスピリアもイクスだけのものなんだ ! !
イクス型ゼロムそのスピリア——心だって嘘かもしれないんだぞ !俺から生まれる感情がクリエイトされてないって誰が証明してくれるんだ ?
イクス型ゼロム世界を守りたい気持ちも、ミリーナを守りたい気持ちもそれに、ミリーナから向けられた信頼や愛情すらも作り物だったとしたら、俺は何を信じればいい ?
イクス型ゼロム一体……俺は【誰】なんだ……。
レイアイクス……。
ヒスイ……んなこと知ったことかよッ ! !
イクス型ゼロム! ?
ヒスイ感情が造られたものとかんなもん誰にもわかる訳ねぇだろうがッ ! !そんなものは俺だって知らねえよ ! !
ヒスイだがな ! そんなことより肝心なのはてめぇの覚悟だろうがッ ! !
ゼロム型イクス俺の、覚悟…… ?
ヒスイお前は今まで何の為に戦って来たんだ ! !世界を……ミリーナたちを守るために戦ってきたんだろうがッ ! !
ヒスイその感情まで疑っちまうっていうのかよ ! !てめぇにはもう、一番大事なもんが自分のスピリアにあるだろう ! !
ヒスイお前がいつ造られたとか、んなこたぁ知らねぇが今この瞬間、お前の守りたいもんが壊されようとしたらそいつを守りたいとは思わねぇのか ! ?
ヒスイそれが覚悟ってもんだろうがよッ !
イクス型ゼロムそうだ。俺は……俺は……。
ヴェリウス——ソーマを受け継ぎし者たちよ。ゼロムの力が弱まっています。
シングこの声は、ヴェリウス ?
ヴェリウスシング、今ならこのゼロムをリチアの心から追い払うことが可能です。
クンツァイトシング ? これは……。
シングヴェリウスの声だ。みんな ! ゼロムを倒してリチアのスピリアを守るんだ ! !

キャラクター9話【9-14 閑散とした街道】
ルカあれ…… ? イクス、どうしたの ?なんだか顔色が……。
イクス……あ、ああ。ごめん。大丈夫だよ。それより、今さっきリチャードさんが目を覚ましたんだ。アスベルたちが心核を戻してくれて……。
イクスだから念のため、医療班に診てもらおうと思って。お願いできるかな ?
ルカもちろんだよ。――ジュード、ちょっといいかな !
イクスごめんな。医療班のみんなは働きづめだから…………うぅ……ぐっ…… ! ?
ルカイクス ! ? イクス、大丈夫 ! ?
イクスはぁ……はぁ……。胸が……くるしい…… ! !
ジュード――イクス ! ?待ってて、すぐに原因を突き止めるから。まずは呼吸をゆっくりすることを意識して。
イクス……はぁはぁ、うぅ…… !
ルカイクス ! ?
ジュードルカ、イクスをベッドまで運ぶのを手伝って。アニーは鎮痛剤の準備をお願い !
アニーわかりました !
クンツァイト――魔鏡結晶の破壊に成功。リチアさまの生命反応に異常がないことを確認。
ヒスイリチア ! ! おい、聞こえるかリチア ! !
リチア……ちゃんと聞こえていますわ、ヒスイ。
ヒスイ……ったく、心配かけさせんじゃねぇよ。
リチアごめんなさい。ですが、あなたが助けに来てくれたときわたくしは、本当に嬉しかったのです。
リチア愛おしい、わたくしの大切な『家族』にこの世界でも出会えたのですから……。
ヒスイ……ああ、また一緒だな。
リチア……ええ。
クンツァイトリチアさま、申し訳ございません。シングたちがいなければ、自分はリチアさまの危機に駆け付けることができませんでした。
リチアいいえ。貴方はこの世界でもわたくしを守ろうとしてくれました。――ですから今度は、わたくしがみんなを守ります。
ヒスイお前、また無茶しようとしてんじゃねぇだろうな ?今は大人しくしてろ。それに、思念術を使っちまったらお前は……。
クンツァイトヒスイ、その点に関しては問題ない。驚くべきことだが、この世界に来てからリチアさまの白化の進行は停止している。
ヒスイなんだとッ ! ?
レイア白化……って何のこと ?
クンツァイトゼロムによるスピリアの消失、または精神が寿命に達することにより、肉体が白い結晶へと変化してしまう現象のことだ。
クンツァイトリチアさまの肉体は思念術を使用すると白化の進行を促進させてしまっていたが現在その傾向は感知されていない。
クンツァイトハロルドによれば、この世界のエンコードという力がリチアさまの肉体にも影響を与えていると言っていた。
ヒスイそれじゃあ、おめぇ……。
リチアええ、わたくしもみんなと一緒に戦います。ここから立ち去るくらいの余力も残っています。
ヒスイバカ野郎……俺は……そんな心配をしてんじゃねぇ。白化が止まってるってことは、これからもお前は……。
シング……よかったね、ヒスイ。それに、リチアも。コハクもきっと喜ぶよ !
クンツァイトシング、ヒスイ。こちらの情報も共有したいところだがリチアさまの仰った通り、まずはこの場所からの撤退を推奨する。
ヒスイこの足音……マズいな。帝国軍かもしれねぇ。ひとまず、適当なところに隠れんぞ。
帝国軍兵士Aくそっ、囚人たちどころか妙な連中まで攻め込んで来やがって。何者だ、あいつらは ?
帝国軍兵士B救世軍の奴らだ。このタイミングで襲撃……。まさか、この変な結晶が異常繁殖したのもそいつらの仕業じゃねえだろうな。
帝国軍兵士Aともかく、周辺の陸路は封鎖したらしいからあとは袋のネズミだ。俺たちはこの看守棟にいるリチア様の保護を優先するんだ。
レイアまずいよ ! 陸路が塞がれちゃったらわたしたちが使うゲートまで行けなくなっちゃう ! ?
リチア……では、船を使ってはどうでしょうか ?この監獄と直結している港にいけばまだ残っている船が見つかるかもしれません。
レイアなるほど ! そこで密航して脱出するんだね !任せて ! わたし、経験者だから皆にもやり方教えてあげる !
ヒスイおい、自慢げに言うことじゃねぇぞ、それ……。
シングとにかく、港を目指せばいいってことだね。
クンツァイト――シング。複数の生命反応を感知。この看守棟を目指して来ていると予測する。急いでここを離れた方がいい。
しいなさっきの奴らが言ってたように、狙いはリチアだね。よし、港へ急ぐよ !
リチアありましたわ ! 船です !
レイアでも、あの一隻しか残ってないみたいだよ。
リチアヒスイ、大丈夫ですか ?確か、あなたは船が苦手では……。
ヒスイんなこと気にしてられる場面じゃねぇだろ。気合いで何とかしてやるよ ! !
救世軍待ちな ! ! この船は俺たちが使わせてもらう。
シングお前たちは、救世軍 ! ?
救世軍囚人のくせによく知ってるじゃないか。帝国に向かうためにこの船が必要なんだ。お前たちは大人しく牢屋に戻ってろ !
クンツァイト敵か ?必要とあれば自分は戦闘モードへと移行するが ?
しいな救世軍ってゼロスのいるとこだろ ?戦う必要は無いんじゃないのか ?
レイアちょ、ちょっと、誤解しないでよ。わたしたち囚人じゃなくて――
ルックやめろ ! その人たちは俺たちの敵じゃない !
救世軍ルックさん……。
ルックすまないな。こっちも色々訳ありで気が立っててさ。実は俺たち、バルバトスさんを追って帝都へ向かうつもりだったんだ。
シングバルバトス…… ?なんか、よくわからないけどケリュケイオンで行けばいいんじゃないの ?
ルック……いや、そいつはちょっと難しくてな。
救世軍ルックさん ! マズいですよ ! !監獄から本物の囚人連中が港に集まってきてます ! !
しいなあー、まぁ、考えることはみんな同じか。
ルック悪いが一旦話は中断だ。まずはここに来る囚人たちを迎え撃つ。お前たちも手を貸してくれ。
リチアわかりました。いきますわよ、クンツァイト。
クンツァイトリチアさまの命によりこれより敵対する勢力の完全排除を実行する。

キャラクター10話【9-15 リチア】
リチア――先ほどの人たちが最後だったようですね。
ルック……結果的に、あんたたちに助けられちまったな。
しいな結局どうするんだい。囚人たちは追い返したけど船が一隻しかない状況は変わんないよ。
ルックあんたたちの目的はアジトに帰ることだろ ?だったら確か、セールンドにもゲートは存在してるってマークさんが言ってたが……。
シングうん、イクスも班長会議で言ってたよ。ゲートは色んな場所にあるって。
ルックなら、まずはお前たちと一緒にセールンドへ向かってその後に俺たちは帝都を目指す。――これでどうだ ?
レイアあっ、それならわたしたちが船を取り合う必要もないね。
ルック決まりだな。よし、船出の準備は俺たちでやっておく。あんたたちは先に乗っててくれ。
シングわかったよ。ありがとうルックさん !
カーリャふえええ ! ? 近くで見るとますます大きく見えますね、この樹。
ミリーナええ。こっちはアセリア大陸――クレスさんたちの世界のアニマを元に具現化した大陸にある方の世界樹だから確か……ユグドラシルと言う名前だそうよ。
カーリャミリーナさま。写真、撮り終わりましたか ?
ミリーナええ、ばっちり♪
カーリャミトスさまはどうしてこの樹の写真が欲しいんですかね ?
ミリーナ名前が同じだからかも知れないわね。
ミリーナミトスには色々お願いしてしまっているからちょっと遠出して写真撮るくらいは私たちでやってあげないと。
カーリャサプライズですもんね !ミトスさま喜んでくれるといいですね !
? ? ?貴様が黒衣の鏡士、か。
ミリーナえ…… ?
カーリャミリーナさまっ ! ? ミリーナさまーっ ! ?
イクス――あれ……ここは ?
ジュードイクス ! ? よかった、目を覚ましたんだね。
イクス俺、どうしちゃったんだ……。
アニー胸を押さえて、うなされていたんです。顔色はよくなってきていますがどこか身体に違和感はありませんか ?
イクスいや……もう何ともないよ。胸の痛みも……なくなってる。
ルカ僕、ミリーナを呼んでくるよ。さっきは何処かに行ってたみたいだけどもしかしたら、もう帰って来てるかもしれないし。
ジュードそうだね。ミリーナもイクスの体調を気にしていたから……――イクス ?
イクス……えっ……ああ、ごめん。まだ少し寝ぼけてるのかな、ははっ……。
イクス(……あの光景は、本当に夢だったのか ? )
ヒスイ……んなこと知ったことかよッ ! !
イクス型ゼロム! ?
ヒスイ感情が造られたものとかんなもん誰にもわかるわけねぇだろうがッ ! !そんなものは俺だって知らねえよ ! !
ヒスイだがな ! そんなことより肝心なのはてめぇの覚悟だろうがッ ! !
ゼロム型イクス俺の、覚悟…… ?
ヒスイお前は今まで何の為に戦って来たんだ ! !世界を……ミリーナたちを守るために戦ってきたんだろうがッ ! !
ヒスイその感情まで疑っちまうっていうのかよ ! !てめぇにはもう、一番大事なもんが自分のスピリアにあるだろう ! !
ヒスイお前がいつ造られたとか、んなこたぁ知らねぇが今この瞬間、お前の守りたいもんが壊されようとしたらそいつを守りたいとは思わねぇのか ! ?
ヒスイそれが覚悟ってもんだろうがよッ !
イクス(覚悟……か……。覚悟ならしてきたつもりだったよ。)
イクス(でも……俺の予想が正しければ感情すら……心すら造れるんだ。鏡士の望む通りに。だからファントムだって――)
イクス……ん ? これは、魔鏡通信 ?
フィリップ……イクス。きみに大切な話があるんだ。
イクス―― !
フィリップ今、君たちのアジトがある浮遊島に向かっているところだ。……きみとの約束を果たすためにね。
イクス……やっと話してくれるんだな。
フィリップああ。待たせてごめん。今がその時だと思うんだ。だから――直接会って二人だけで話がしたい。
イクスわかった。待ってるよ、フィル。正直……ちょっと怖いけどでも、俺、ずっと知りたかったんだ。
イクス俺やミリーナは『誰』なのか。
to be continued
キャラクター1話【10-1 イ・ラプセル城】
グラスティンマリク・シザースを逃がしたそうだなぁ ?ベルセリオス博士。
ハロルドああ、報告は受けたけど、それって私のせい ?リビングドールβの体の管理はあのトカゲみたいな男に任せたじゃない。
ハロルド文句があるなら、あのディストって奴に任せた自分の無能さを恨んだら ?
グラスティン俺は、ディストには『導師イオンのレプリカを見せるな』と伝えた筈だ。
ハロルド見せてないわよ。
グラスティンだったら、何故奴はイオンのレプリカと一緒にオールドラント領へ向かった ?
ハロルド知るわけないでしょ……って言いたいところだけどこっちも妙な資料を見つけたのよね。
ハロルドほら、見て。ティル・ナ・ノーグ各領の領都の住民の詳細な調査票。
ハロルド名前、性別、身長、体重、髪の色……。あらら、よく見たら黒髪ばっかり。
グラスティン………………。
ハロルドま、このリストの中身はどうでもいいのよ。問題は領都の横に書かれてる領主の名前。
ハロルド今見せてるこれはアレウーラ領のものだけど領主としてティルキスって名前が書かれてるわよね。
ハロルドもしこれと同じような資料がオールドラント領の分もあったなら当然イオンって名前は書かれてるでしょうね。
グラスティン何が言いたい ?
ハロルド説明しなきゃわからない ?要は私の管理してない情報を見ている可能性があるってこと。
グラスティンヒヒヒヒヒ……確かに。頭ごなしに疑って悪かったなぁ……ベルセリオス博士。
ハロルドわかってくれればいいのよ。
グラスティンそれじゃあ、俺は別の角度からマリク・シザースの件を調べることにしよう。
グラスティンそうそう後でベルセリオス博士の研究室を見学させて欲しい。構わんよなぁ…… ?
ハロルド……もちろん。ただしノックは忘れないでよ。乙女の秘密が詰まってるんだから。
グラスティンヒヒヒ……心しておこう。そうそう、アトワイトの調整はどうなっている ?
ハロルドあんたがこうして邪魔しなければ早く終わると思うけど。
グラスティンファンダリア領にリビングドールβを送り直す必要があるんでなぁ。頼んだぞぉ ? 間違っても逃がしたりしないようにな ? ヒヒヒヒヒ……。
グラスティン――リビングドールβ用の肉だがしばらくベルセリオス博士の下へ送り込むのは止めておけ。
帝国兵Aしかし、それでは領主の派遣が――
グラスティンそんなものは後回しでいい。所詮デミトリアス――皇帝陛下の甘っちょろい理想を叶えるだけでこの世界の未来にはなんの益もない。
グラスティンそれよりあの女、思った通り鏡映点を逃がしていたようだ。
グラスティンディストが勝手に動くことは予想の範疇だったがそれに便乗する形で、鏡映点共を解放するとはな。ヒヒヒ……面白い。
グラスティンマリクを逃がしたなら、アトワイトやクンツァイトも逃がすつもりだろう。アトワイトとクンツァイトのデータを回せ。
帝国兵Aはっ ! 急いで執務室に回します。
グラスティンいや、俺はいったんアスガルド城へ帰る。あの女がダーナの巫女について調べていた形跡があった。ダーナの巫女の体を調べたい。
グラスティン資料は直接俺のところへ届けろ。
領都ジャンナ・領主の館
ティルキスβオールドラント領の領主が来ている、だと ?
アレウーラ領兵はい。オールドラント領で暴れる黒衣の鏡士たちから逃げてきたと申しております。
ティルキスβ……計画に支障が生じたということか。わかった。通せ。
ティルキスβ同志よ。何があった ?我らは定められた領内で、領民を導きつつ滅びの時を迎えねばならない。
イオン ?黒衣の鏡士が、領都を占拠しようと攻め入ってきた。
ティルキスβそれでおめおめと逃げ出したのか ?従者はどうした。その時のための従者だろう。
イオン ?従者ディストは我々を裏切った。
ティルキスβディストはリビングドールβではなかったのか。
イオン ?その通りだ。それが災いした。あの男は我らの疑似心核に妙な仕掛けを施していったらしい。除去作業を行う必要がある。
ティルキスβ除去作業 ? どういうことだ。
イオン ?まずはこれを見てくれ。
ティルキスβ! ?
ティルキスβき……さま……は…………。
イオンここまでは上手くいきました……。次は心核の入れ替えを……。
ハロルドこれは帝国の心核除去装置の改良版よ。被験者へのダメージを取り除くことはできなかったけど心核と疑似心核の入れ替えはできる。
ハロルドこれをつかって、こっちの手元に心核がある領主候補たちを助けるの。
ハロルド私がリビングドールβにした人たちはわざと心核を外しやすくしてあるからこの簡易装置でもいける筈よ。
ハロルド私がグラスティンの相手をしている間に転送魔法陣でリビングドールβのところへ向かって。頼んだわよ。
イオン(彼女は僕を信頼して送り出してくれました。帝国に残る方が危険だと言うのに……。その期待には応えたい)
イオン(装置を設置するのは額の上……。慎重に……)
イオン(……よし。あとは装置を起動させて――)
イオン――誰です ! ?
? ? ?……ティルキス ?
イオンえ…… ?
? ? ?あなた……誰 ?ティルキスに何をしたの ! ?
イオンあ……。いえ、待って下さい。これは違うんです。僕は彼を救おうと――
ハスタはいは~い、そこまでだワン ! 痴話喧嘩はワンコも食べないって知ってた ?
イオン! ?
アーリアな……何…… ?
ハスタ肉を探して三千里。ハスタくんの登場です !キミの血肉が、悲鳴が、今 ! ボクちんに必要とされているんだ……デザイア ! !
イオンハスタ……。どうしてここに……。
ハスタオレっち「あなたの心のマリーゴールド」だからいつでもどこでも側にいるんだポン !
ハスタあの日……母上とした約束のためにもあんさんらのお命、わっちがいただくでありんす !さあ、流血大会はっじまっるよー !
イオン――この男は話が通じない。ここは僕が食い止めます。あなたはティルキスさんを連れて逃げて下さい !できるだけ遠くへ !
アーリア! ?
イオンさぁ、早く !
アーリア――わかったわ !
ハスタかっけ~ッ ! 見せつけられちゃいました !でも、その足も首も切り刻むでごじゃるよ !

キャラクター2話【10-2 アスガルド城】
ジュニア………………。
グラスティン大人しくしていたか、小さいフィリップ。
ジュニア……案外早かったね。
グラスティンどうした ? 何故こちらを見ない ? 俺の醜さが恐ろしいか ?
ジュニア……あなたに、興味なんて無い。
グラスティン……ヒヒヒヒヒ、なるほどなぁ。小さいといえどもフィリップだ。融合の魔鏡術はお手の物かぁ ?
ジュニア
グラスティンここに『影』を置いて、どこへ逃げた ?
ジュニア………………。
グラスティン……まあいい。俺は寛大だからなぁ。夜明けまでに戻ってくればお前の可愛い鏡精へのお仕置きは免除してやろう。
グラスティンもしも朝日が昇っても帰ってこなかったらあの鏡精は腑分けする。ヒヒヒ……鏡精の腑分けか……。楽しみだよぉ。
ジュニアマークを傷つけたら許さない !
グラスティンだったら早く帰ってくるんだなぁ ?俺は忙しいんでな。話はこれで切り上げだ。せいぜい急ぐんだなぁ、小さいフィリップ。
ジュニア(……グラスティンの奴こんなに早く帰ってくるなんて)
ジュニア(夜明け前までに、このセールンドからアスガルド城に戻るには、あまり時間が無い)
ジュニア(最初のイクスの体から、ナーザのアニムス粒子にアクセスできればよかったんだけどそれはできなかったから……)
ジュニア最初のミリーナ。あなたに関するフィリップの記憶はあなたと二人目のイクスが死の砂嵐を封じる前に滅びの夢で少しだけ見ました。
ジュニアせっかく死の砂嵐を封じたのに……ごめんなさい。僕はどうしても死の砂嵐の中に漂っている、ナーザのアニムス粒子を回収しなくちゃいけないんです。
ジュニア(……あれ ? セシリィ――シドニーとバルドさんが封じたはずの人体万華鏡の穴に、傷が付けられてる ?)
ジュニア(僕以外にも、誰かここに来て死の砂嵐にアクセスしようとしたのかな ?)
ジュニア(でもこの傷のおかげで、アニムス粒子を取り出すことはできなくても虚無に声を届けることはできそうだ)
ジュニアここに持ってきたナーザの指輪をつかって残留アニマに反応するアニムスを呼び寄せる……。
ジュニアナーザ将軍――いえ、ビフレスト皇国皇太子ウォーデン・ロート・ニーベルング殿下。僕の声に応えて下さい。
ジュニアメルクリアを……あなたの妹を助けたいんです !
デミトリアスどうした、グラスティン。急ぎの話があるそうだがこちらはエルレインを待たせている。手短に頼むよ。
グラスティンつれないことを言うなよ。精霊の封印地へ向かう方法を思いついたんだぞ ?
デミトリアスどういうことだ ! ?
グラスティンヒントは精霊の封印地で見つけたダーナの巫女だ。あの女、様々な手段を施したが目覚めようとしなかったな。
デミトリアスああ。やはり巫女の目覚めには条件があるのだろう。神降ろしの儀式にも反応しなかった。
グラスティンだが精霊どもは目覚め始めている。という事は、実はあの巫女は目覚めているのではないか ?
デミトリアス何…… ?
グラスティンフフフフ、ダーナの巫女は鏡士の始祖。ならば魔鏡術もお手の物だろう。心を切り離すぐらいのことはやってのけるんじゃないかってなぁ。
デミトリアス確証はあるのか ?
グラスティンもちろんだ。ベルセリオス博士の研究データをちょいと拝借してきた。
グラスティンヒヒヒヒ、あの女が見つけていたよ。最初の神降ろし――シャーリィとか言う娘の時に心核が妙な反応を見せていたことをな。
デミトリアスつまり、あの時神降ろしは成功していた ?いや、シャーリィに宿ったのがダーナの巫女ならば巫女降ろしか。
グラスティンそこが分かれば後は簡単だ。俺たちがダーナの巫女の体を回収した時心核にアニムス粒子の反応はあった。
グラスティンつまり、心はダーナの巫女に宿っていた。時系列を考えれば、シャーリィに取り憑いたダーナの巫女は、一度自分の体に戻ったということだ。
グラスティンそして先程ダーナの巫女の体を調べたところ今度は心核にアニムス粒子の反応はなかった。
デミトリアスまた、誰かの心に寄生している……ということか。
グラスティン心が離れているなら丁度いい。心の精霊の精霊片を纏わせて、疑似精霊化しよう。そうすれば心の精霊の守護など無力だ。
デミトリアスさすがだ、グラスティン。では早速出撃準備に掛かろう。今度こそダーナの心核を破壊し、持ち帰らねばならぬ。

キャラクター3話【10-3 ケリュケイオン】
ゼロス驚いたな。本当に人の心の中を渡って物理的にこっちに来ちまうなんて。どういう仕組みなんだ ?
ヨウ・ビクエ簡単に言うと、人の心というのは無意識の奥深くで世界中の人々と繋がっているの。だから私の心を無意識の奥からフィリップの心へと繋いだのよ。
アイゼンなるほど。言わんとすることはわかるが理解したかと言われるとさっぱりだな。
ゼロス俺さまもー。
ヴィクトル途中、リチアとか言う別の人間の心に繋がってしまったようだがあれはどういうことなんだ ?
ヨウ・ビクエあれは、リチアって子の心にまつわる力が規格外だったせいよ。あの子は異世界の人間なのにダーナの巫女である私に近い能力を持っているみたい。
ヨウ・ビクエそれに今はイクスも規格外の力を持っている状態なの。世界中に出現している魔鏡結晶は彼の力そのもの。つまり心が外に露出してしまっている状態なの。
ヨウ・ビクエ人の心に自由に入れるリチアの傍で心が露出しているイクスが、魔鏡術をつかった。それで心の境界線が曖昧になった……ということね。
ヨウ・ビクエま、わからなくても大勢に影響はないわよ。
ヴィクトル『心』か……。
アイゼンそういえば、お前たちも魔の空域に行ったんだったな。アイフリードの墓はまだあったのか ?
ヴィクトルああ。
ヨウ・ビクエ無かったら困るわよ。あそこは、ティル・ナ・ノーグと既に滅びたニーベルングを繋ぐターミナルのような場所だから。
アイゼンああ……。この世界はニーベルングとやらが滅びた後に造られた世界だったな。
アイゼンだがどうして滅びた世界と、このティル・ナ・ノーグを繋いでおく必要があるんだ ? その上そんな場所にアイフリードの墓があるなんて、妙な話だろうが。
ヨウ・ビクエあの場所で繋がっていないと、ティル・ナ・ノーグは虚無に飲み込まれるらしいの。それを避けるための楔なのよ。あの島とお墓はね。
ヨウ・ビクエアイフリードはあそこで精霊の封印を受け持っているの。彼は召喚士だから。
ローエン確かにアイフリードが召喚士だとは聞いていましたがその説明の仕方ですと、まるでアイフリードがまだ生きているかのようですね。
ヨウ・ビクエ生きてはいないわよ。さすがにね。
ヨウ・ビクエ……ところで、みんな、浮遊島には降りないの ?
アイゼンフィリップだっていい大人だろう。ゾロゾロついて行くのは野暮ってもんだ。
ローエンええ、マークさんが一緒に下りましたから我々はここで待ちましょう。フィリップさんが抱えていた秘密をイクスさんに打ち明けるまで。
ヨウ・ビクエそうね……。それじゃあ、私も引っ込むわ。アトワイト、ありがとう。
アトワイトいいえ。お疲れ様、ヨーランド。
フィリップイクス……待たせてすまなかった。
イクスやっと……話してくれるんだな。
フィリップああ……。ようやく精霊の封印地へ向かう方法が見つかったんだ。
フィリップここから先は何が起こるかわからない。だからその前にイクスに全てを伝えようと思っていた。……そうやって先延ばしにしていたとも言えるけどね。
フィリップそういえば、ミリーナはどうしたんだい ?
イクスそれが……どこにもいないんだ。ミリーナもこのところハードだったからどこかで休んでるのかも……。捜してこようか ?
フィリップいや、まずはイクスに話をするよ。ミリーナは後でいい。
イクスわかった。
イクスそれで……フィル。俺は何なんだ ?イクス・ネーヴェの三人目だってことはわかってる。だけど、俺は何処まで最初のイクスと同じなんだ ?
フィリップ……イクス。きみは頭がいいから多分おおよそのことがわかっているんだと思う。だから焦っているし不安に思っている。
フィリップゆっくり話そう。きみが造り出された経緯について。
イクスああ……。
フィリップまずはっきりさせておこうか。イクス、きみは三人目に具現化された存在。そしてきみを造ったのは僕だ。
イクスそれは知ってる。ゲフィオン……最初のミリーナとフィルが俺を造ったんだろう ?
フィリップいや、ゲフィオンはイクスの具現化には関与していない。
イクス……え ?
フィリップ事情は後で説明する。とにかくイクスを造ったのは僕だ。そしてきみは――僕にとって都合のいいイクスなんだ。
イクス! ?

キャラクター4話【10-4 アジト1】
フィリップさて、何から話そうか。
フィリップ僕は……幼い頃からずっとミリーナが――いや、ゲフィオンが好きだった。イクスが気付いていたかはわからないけれどね。
フィルミリーナ。お願いがあるんだけど、いい ?
ミリーナもちろんいいわよ。何、フィルのお願いって。
フィルえっと……。今から一緒に水鏡の森に行って欲しいんだ。
ミリーナ水鏡の森 ? 素敵ね。だったらお弁当を持って行きましょうよ !簡単なもので良ければ、すぐに作るわ。
フィルうん ! ありがとうミリーナ。
ミリーナあ、イクス !
イクスミリーナ、フィル、どこに行くんだ ?
ミリーナ水鏡の森までピクニックに行くの。イクスも一緒に行かない ?
フィル
イクスいや、俺は港に行かないと……。
イクスそういえば、このところ水鏡の森には物騒な魔物が出てるみたいだぞ。
ミリーナフィルも一緒だから大丈夫。イクスもお仕事が終わったら合流して ! ね ?
イクスだったら俺の仕事が終わるまで待っててくれないか。二人だけじゃ心配だから一緒に行くよ。
ミリーナ……そう ?
フィル大丈夫だよ。イクスは心配性だね。僕もミリーナも鏡士なんだよ ?先に行って準備してるよ。
ミリーナ……そうよね。うん、大丈夫 !私お姉さんなんだしちゃんとフィルのこと守れるわ。
イクスわかった。でも危ないところには行くなよ。二人とも案外抜けてるんだから。
ミリーナ失礼ね、大丈夫だってば。さ、行きましょう、フィル !
イクスそれ、月見の丘にピクニックに行った時の話だよな ?あれ ? 水鏡の森だったか ?
フィリップ水鏡の森だったんだ。覚えていて欲しくなかったから月見の丘へのピクニックに記憶を挿げ替えた。
イクス! ?
フィリップそう、そうなんだ。イクスたちを具現化するのに時間の壁を突破したと言ったよね。その際に僕やゲフィオンの記憶を経由すると。
フィリップ記憶を経由して具現させると、具現化対象者の記憶も操作できることがわかったんだ。ファントムでそれを試して……イクスにも適用した。
イクスじゃあ、俺のこの記憶は……全部嘘なのか ?
フィリップ全てではないよ。どうしても覚えていて欲しくないことだけ僕が書き換えたんだ。
フィリップ秘伝魔鏡術の暴走にまつわる一連の出来事について。それだけはイクスに忘れて欲しかった。
イクスけど、俺覚えてるよ。
イクス港で仕事をしてたら、ミリーナが呼びに来たんだ。それで祖父ちゃんを楽させてやるために鏡士になりたいってって……。
フィリップそれは『いつ』のことだった ?
イクスいつって……ピクニックに誘われた日だよ……。
イクス……あれ ? 港に行く道でフィルたちに会って……。二人は月見の丘に行って、俺は港に行って……それでまたミリーナたちが……戻ってきた ?
フィリップあの日、本当に起きたことを話すよ。
フィリップ僕とミリーナは水鏡の森へ向かったんだ。あの森の奥にある湖には、時々不思議な光が立ち上る。それをミリーナに見せたかった。でも――
フィル――水鏡の森に、魔物 ! ?
ミリーナイクスの言ってた物騒な魔物って、これ…… ! ?
フィル逃げよう !
フィルはぁっ、はぁっ、はぁっ……。
ミリーナフィル ! 立ち止まっちゃ駄目 !
フィル駄目だよ……僕、もう走れない……。ミリーナだけでも逃げて !
ミリーナフィル ! ? 危ない ! ?
イクスやらせるかっ ! !
ミリーナイクス ! ? どうしてここに――
イクス祖父ちゃんたちに話を聞いたら魔物が相当ヤバそうだってわかったからな。こいつは俺が何とかする。
イクス二人は――って、まずいな。囲まれちゃってるのか。
ミリーナ私も戦う !
フィルぼ、僕も !
イクスいや、大丈夫だ。二人は隙を見て、大人を呼んで来てくれ !
イクス――秘伝魔鏡術 !
二人! ?
イクスオーバーレイ !
フィリップイクスは密かに魔鏡術の訓練をしていたんだ。鏡士になる事を諦めてなかった。あの日、水鏡の森でイクスは魔鏡術で魔物の集団を蹴散らしてくれた。
フィリップでも敵の数が多すぎたこともあって、制御しきれずオーバーレイ暴走を引き起こしてしまったんだ。
ミリーナイクスの力が暴走して……止まらない !私が、私がイクスの言うことを聞いてもっと気を付けていれば…… !
ミリーナ私が……イクスのことをちゃんと待ってれば……。
フィル大丈夫、ミリーナ。僕の守護魔鏡を使えば止められる !
ミリーナえっ ! ?
フィル僕の鏡士としての力を弱める封印なんだ。これを使えばきっと――
ミリーナ駄目よ、フィルは体が弱いからわざと力を弱めているんでしょう ?
フィルでもこのままじゃイクスが死んじゃうよ !
ミリーナ――わかった。でも、私にやらせて。バックファイアを受けるのは私だけでいいから !
フィルミリーナ ! ?
フィルイクスの暴走が……止まった……。
フィルミリーナは ! ?
フィルよかった……。息はある……。イクスは――
フィリップイクスも生きていた。ひどい傷だったけれど……。そして思い知った。ミリーナはイクスしか見てない。イクスがうらやましかったよ。
フィリップミリーナに大切にされて、自己流の訓練だけでオーバーレイを成功させて……。
フィリップ鏡士としてのとんでもない才能、友達の危機に命がけで駆けつけてくれる勇気、頭がよくて、運動神経もよくて家族想いで……みんなイクスを慕っていた。
フィリップ僕もイクスみたいに――いやイクスになりたかったんだ。
フィル今なら……誰も見てない……。イクスが死んでも……魔物のせいだと思われる。今なら――
フィリップそして、僕はイクスを刺したんだ。鏡の破片で。

キャラクター5話【10-7 精霊の封印地】
イクス……ぐぅっ……。
フィル……あ……ぁ……。
イクス……フィ……ル…… ?
フィル……イクス……ごめ……ごめ……んなさい……。
イクス……フィル……。この……馬鹿……。
フィルイクス……僕……あの……。
イクス俺に……文句があるなら……刺す前に話せ……って……。
フィルあ、駄目だよ ! ? 鏡の破片を抜いたら血が……。
イクス抜いたら……止血してくれ。魔鏡術で。それぐらいできるだろ ?
イクスこいつが刺さったままじゃ……村のみんなにバレちゃうから、さ。
フィル僕が……止血しなかったら ?
イクスハハ……。化けてでるよ。だから……そうならないように頼む。あとは……俺とお前の秘密だ。いいな ?
フィリップイクスは本当に何も言わなかった。水鏡の森で何があったのか……。そして僕は……セールンドに逃げたんだ。
フィリップそれから魔鏡戦争が始まって……色々あって……二人目のイクスを具現化することになった時こう思った。
フィリップ僕の罪を消せるんじゃないかって。オーバーレイ暴走を違う形で引き起こしたことにしようって。
イクス……ゲフィオンもそれを知ってたのか ?
フィリップ僕がイクスを刺したことを知っているかはわからない。でも彼女もオーバーレイ暴走の日のことを悔やんでいたんだ。
フィリップいつも三人で行動していたのにあの時だけ僕と二人で出かけたことイクスの心配を軽くとっていたこと。
フィリップそのせいで……イクスがオーバーレイ暴走を引き起こしたことを。
フィリップだから僕が誘導した。イクスを守るためにオーバーレイ暴走を利用しようと。
フィリップそれで臆病なイクスが生まれればイクスは危険な事に近寄らない。オーバーレイ暴走に関する記憶を改ざんしてしまおうって。
イクス……一人目はこんなに心配性じゃなかったのか。
フィリップ慎重ではあったけど、決して臆病でも心配性でもなかったよ。みんな、イクスがオーデンセを率いていくリーダーになると思っていた。
フィリップ僕は自分が理想としていたイクスを穢そうとして二人目を作り、そのデータを元に今のきみが具現化されたんだ。
フィリップもっとも二人目もきみも、肝心なところでは一人目と同じように行動するけれど……。
イクスミリーナも、フィルが記憶を改ざんしてるのか ?記憶だけじゃない。感情も。だってミリーナはあんなに俺のことを好きじゃなかった。
フィリップ彼女を造ったのはゲフィオンだ。少なくともオーバーレイ暴走に関しては改ざんしている筈だよ。
フィリップ……それ以外も、かな。自分が守れなかったイクスを今度こそ守る……という思いがミリーナには植え付けられているみたいだから。
イクスやっぱり感情も操作されてるんだな。……ファントムも、ジュニアも ?
フィリップ記憶は改ざんしている。ファントムの場合は初期型ということもあって、感情部分は上手く制御できなかったけれど、ジュニアは――
イクス……はは……ははは……。
フィリップイクス ?
イクス……予想通りだったし、ある意味予想以上だったよ。
フィリップ軽蔑したかい ?
イクスああ。でもそれは一人目を殺そうとしたからじゃない。
イクスそんなくだらないことのために、記憶と感情すら俺やミリーナたちから奪って平然としているその面の皮の厚さをだ。
フィリップ………………。
マーク――おい、取り込み中に悪いんだが、話は打ち切りだ。ヨウ・ビクエが倒れた。
二人! ?
アトワイトごめんなさい。大切な話があったみたいなのに……。
フィリップい、いえ……――
イクス――大丈夫です。一番聞きたかった話は聞けました。続きは後で構いません。
マーク………………。
イクスそれで、ヨウ・ビクエが倒れたって言うのは…… ?
アトワイト倒れたというのが正確かどうかはわからないけれど突然悲鳴が聞こえて、それからなんの反応もなくなってしまったの。
アトワイト多分心核の中には宿っていると思うのだけれど……。
ローエンどなたかソーマを持っている方に調べて頂くというのはどうでしょう。
イクスええっと……今は……コハクが残ってる筈だけど……。
アイゼン――こんな時に通信か。誰だ ?
ヒスイおい、そっちのブリッジにイクスがいるって話だが……お、いたな。
イクス(……ヒスイさん)
イクスどうしたんですか ?
ヒスイリチアが、この世界のスピルーン――ええい、クンツァイト、頼む。
クンツァイト承知した。リチアさまがこの世界のスピルーンの異変を感じ取っている。
ヴィクトルこの世界のスピルーンとは精霊の封印地にあるダーナの心核のことか ?
クンツァイトそうだ。この世界の――ダーナのスピルーンが崩壊しかかっているらしい。
クンツァイトリチアさまがダーナのスピルーンと共鳴しスピルリンクに近い状態となっている。
ヴィクトルダーナの心核が崩壊…… ! ? ミラに影響は――
クンツァイト今リチアさまが、ダーナのスピルーンの中にいる人物を補佐している。しばらくは持つだろうが危険な状態だ。
イクスヨウ・ビクエが反応しないことと関係があるのかな……。
フィリップ精霊の封印地へ行こう。
フィリップヨウ・ビクエが言っていた筈だ。心の精霊がイクスたちの陣営に力を貸しているなら彼らと一緒に封印地まで行けば、封印は解ける筈だと。
レイア心の精霊 ! 確かにわたしたちに話しかけてきたよ !
シングよし、だったらこっちも精霊の封印地へ行くよ。海からも行けるんだろ ?
アイゼン封印地のある島は肉眼じゃ見えないぞ。座標を教えてやるが接近しすぎて岸壁にぶつけるなよ ?
シングわかった ! 気を付ける !
マーク俺たちも向かうか。イクス、お前も来るか ?
イクスもちろん。あとダーナの心核の中にいるミラさんと関わりのある人たちも連れて行こう。何があるかわからないから。
ローエン私が呼んでまいりましょう。
デミトリアス心の精霊ヴェリウスよ。道を拓け。
ヴェリウス痴れ者め。どうやって外界から封じたこの島に立ち入った。早々に立ち去りなさい。
デミトリアス……我らの言葉に耳を貸さぬなら、それでもいい。心の精霊の代わりはこの者が果たす。
ヴェリウスそのものはダーナの巫女 ! ?そしてその力は私の――
ヨウ・ビクエ滅せよ。
グラスティンヒヒヒ……。思った通りだ。ダーナの巫女は心の精霊との相性がすこぶるいい。このまま心の精霊として代用できるぞぉ ?
デミトリアスこれでもう一度ダーナの心核の元に近づけるな。
グラスティン進め ! デミトリアス陛下のために道を拓け !
帝国兵たちおおっ !
デミトリアスダーナの巫女――いや、次代の心の精霊となるものよ。共に参ろうか。偽りの世界を破壊するために。
ヨウ・ビクエ………………。

キャラクター6話【10-10 街道】
カイウス本当なのかな。ティルキスがアレウーラ領の領主になったって噂。
ロゼ聞いた話だと、背格好なんかの特徴はティルキスで間違いなさそうなんだよね。
ロゼあと従者だか付き人だか護衛だかが、今は領都を離れてるみたいなんだけど、鏡映点リストにあったフォレストってのに似てるみたい。
ロゼまぁ、会ってみればわかるよ。
ルビアもし本当に二人があたしたちの仲間の二人ならリビングドールβにされてるのよね。許せない……。
ユリウス気持ちはわかるが、怒りや焦りは判断を狂わせる。落ち着いていこう。
ロゼ調査室の手が足りなくてユリウスさんまで巻き込んでごめん !でも助かる !
カイウスユリウスさんは博識だし、頼りにしてます。ここまで来る間も、手際よく街で情報を集めてくれたし……。
ユリウス何だか照れるな……。
ユリウスそれにしても気になるのはさっきの村で聞いた領兵の存在だな。人を捜している様子だったと言うが……。
ロゼえっと二組だったよね。片方が怪我した男と女の二人連れで、もう片方が怪我した男を連れた帝国兵ってことだったけど……。
ロゼ領兵だって帝国兵だよね ?これって鏡映点関係なんじゃないかな。
ルビア単なる仲間割れじゃなくて ?
ユリウスああ、俺もそう思う。カイウスやルビアも元は帝国側にいたんだ。
ユリウスそういう鏡映点が反旗を翻して逃走それを帝国が追っているという可能性がある。
カイウスそれ、ルキウスだったりしないかな……。
ルビア……ええ。
ロゼそれってカイウスの弟だっけ ?
ユリウス……兄弟が敵に捕まっているのはつらいな。
カイウスルキウス……どうしてるんだろう……。
ロゼ――ユリウスさん。
ユリウスああ。みんな、気を付けろ。何者かがこっちに向かってくる。
二人
ユリウス――何者だ !
帝国兵待った !ロゼがいるってことはお前ら黒衣の鏡士の仲間だろ ! ?
ロゼ……その声。もしかしてデクス ?
デクスその通り ! 助かった !ちょっとヤバい奴に襲われてな。傷の手当てをしてやりたいんだ。
デクスけど街という街は警戒が厳重で薬一つ手に入れられなくてな。
ルビア私でよければ治療するけど……怪我人は何処 ?
デクスあそこの草むらに寝かせてる。
イオンはぁ……はぁ……あなた方は……。
ロゼこの子、もしかしてアニスの世界の導師…… ?
イオンアニスを……ご存じなんですね……。
ルビアひどい怪我 ! 今、治療しますね。
ユリウスデクス……だったか。これは一体どういうことだ ?お前はたしかティルキスの動向を見張っているんじゃなかったか ?
デクスその筈だったんだが――
カイウス……ってことはティルキスはその金髪の女の人が連れて逃げたんだな。
ルビアそれってアーリアよね、きっと。
カイウスああ、オレもそう思う。
ロゼなるほどね。これは方針転換した方がよさそうだね。
ユリウスああ。しかし人手がいる。カロルに連絡を取ろう
カロルはい、カロル調査室――あ、ユリウス !
ユリウスアレウーラ領の領都及び領主の調査だが手が足りなくなりそうだ。
カロルええ ! ? そっちもトラブル ! ?
ロゼそっちも……って、またアジトで何かあったの ?
カロルロゼたちがアレウーラ領に行ってから色々あって……。今、一番まずいのは、精霊の封印地にあるダーナの心核が壊れそうってことかな。
ユリウスダーナの心核にはもう一人のミラが入っていると聞いていたが……。
カロルうん。それでさっきイクスたちと一緒にルドガーとエルも精霊の封印地へ向かったんだ。
ユリウス何 ! ?
カロルだから、そっちにどれだけ人手を割けるか……。
ユリウスルドガー……エル……。
カイウス……ユリウスさんも精霊の封印地へ向かった方がいいんじゃないか ?
ユリウス
カイウスオレがルキウスのことを心配なのと同じようにユリウスさんだってルドガーさんのことが心配だろ。
カイウスこっちはルビアとロゼがいるしデクスって人もいるし。
デクスおお、少年 ! 存分に俺を頼っていいぞ !
ロゼうん。その方がいい。ねぇ、カロル。イリアたちをこっちの助っ人に回してもらえないかな ?
ロゼイリアたちと因縁のあるヤバい奴が出てきてるみたいなんだよね。
カロルオッケー。そっちの動きが決まったらまた連絡して。こっちはこれからルカたちに話をしてくるから。
ロゼよし、まずはこの導師をどこか安全な場所に連れていこう。
ロゼ助っ人と合流したら、あたしはハスタを捜してみる。カイウスとルビアはティルキスたちの足取りを追って。
カイウスわかった。
ルビアユリウスさんは急いで精霊の封印地へ行かないと。
デクス精霊の封印地か……。一番手っ取り早いのは帝国の港から船で向かう方法かな。
デクス俺の制服をつかって変装してくれ。そっちのが少し背が高いが、まぁ、問題ないだろ。帝国の港までは、転送魔法陣を出すよ。
ユリウス助かる。
カイウスユリウスさん、気を付けて。
ユリウスああ、大丈夫だ。これでもエージェントとしては優秀な方だったからな。

キャラクター7話【10-12 セールンド城】
ジュニアウォーデン殿下 ! 応えて下さい ! お願いです !
ジュニア………………。
ジュニア……駄目、なのかな。
ジュニア――え ! ?ゲフィオンに……人体万華鏡にヒビが ! ?どうして…… ?
? ? ?世界が……壊れかけている……。
ジュニアだ、誰…… ! ?
? ? ?この声に聞き覚えがないか……。そうだろうな。俺はオーデンセの鏡士の体に宿っていた死人だ。
ジュニアウォーデン殿下ですか ! ?
ナーザ貴様にそのように呼ばれる筋合いはない。
ジュニアでは、ナーザ将軍とお呼びします。ナーザ将軍。何が起きているんですか ?
ナーザ正確なところはわからぬ。だが……虚無が――いや、虚無に漂う死の砂嵐が突然大きくうねり暴れ出した。
ナーザ恐らくティル・ナ・ノーグに何らかの異変が起きているのだろう。
ジュニアセールンドの人体万華鏡にヒビが入っています。このままだと死の砂嵐が溢れてきてしまう…… !
ナーザそれをどうにかして欲しくて俺の名を呼び続けたのか ?
ジュニアそれは……。
ナーザ魔鏡結晶を通じて断片的に状況はわかっている。……貴様はそうまでしてメルクリアを救いたいというのか ?
ジュニアメルクリアは変わろうとしています。彼女には支えが必要です。僕の力だけでは……及びそうもなくて……。
ナーザ……今なら、外に出ることができる。疑似心核はいくつある ?
ジュニアえ ! ? えっと……三つ……あります。
ナーザ案外欲深いな、貴様は。三人は無理だ。一人は内側から人体万華鏡の穴を塞ぐ役目がある。
ジュニア……え ?
ナーザ私とバルドは疑似心核に移ろう。今を逃しては、虚無からでることは叶うまい。
ナーザこれはシドニーの意見でもある。シドニーに感謝するのだな、小僧。俺は永遠に貴様に応えるつもりはなかった。
ジュニアあ、ありがとうございます !
バルド……ジュニア。私もウォーデン様も疑似心核に移動しました。次は人体万華鏡の崩壊を防がねばなりません。
ナーザそれならば――そこにいる鏡精が適任だろう。
ジュニア――え ?
? ? ?……ええ。力を貸して下さい、フィリップ。
ジュニアあなたは……。
イクスおかしい……。封印地のある島は心の精霊の力で見えなくなっていた筈ですよね。でも肉眼でこの島を見ることができた。
ヴィクトル封印が解けた――もしくは解かれたということだろう。
ルドガー……あの、ヴィクトルさん。
ヴィクトルルドガーくん、だったかな。今はダーナの心核のことを優先しよう。きみが何かに気付いたのだとしても、ね。
ルドガー! !
マークヴィクトルの推測通りなら先客がいるのは間違いない。
マークダーナの心核を傷つけようなんて奴は帝国の連中ぐらいのもんだろうけどな。
ローエン念のため、上空はケリュケイオンでアイゼンさんが島の周辺はクラトスさんたちが警戒してくれています。何かあれば連絡が来る手筈です。
フィリップわかりました。ありがとうローエンさん。アトワイトさん、ヨウ・ビクエは ?
アトワイト相変わらず、何の反応もないわ。
ガイアスならば急くぞ。
デミトリアス――マクスウェルの力よ !この世界の楔たるダーナの心核を破壊せよ !
ミラく……っ。このままじゃ……本当に……。
リチア諦めないで下さい。今わたくしもそちらに向かっています。ダーナのスピルーンを崩壊させはしません。
ミラリチア……だっけ ? もう限界よ。氷が溶ける時みたいな音が聞こえるの。パチパチって。
ミラ外側からだけじゃない。内側からも壊れかけてるんだわ。
リチア大丈夫。もうすぐきっと――
イクスお前たちは――
デミトリアスやぁ、イクス。久しぶりだね。ミリーナは一緒じゃないのかい ?
イクスだ、誰だ ?
フィリップ……デミトリアス陛下。そのお姿は……。
イクスデミトリアス陛下 ! ? え ! ?
マークどういうこった。
マークアニマ汚染でくたばりそうなツラしてたのにまるでフィルと一緒に研究してた頃と変わらない姿になってるじゃねぇか。
デミトリアスアニマ汚染で弱った体をどうにかしたくてね……。異世界の技術をつかってアニマ汚染を無効化したんだよ。
フィリップそんなことができる筈が……。
グラスティンおおお、フィリップ…… ! ?
グラスティンああ……。すまない、フィリップ。お前の美しい眼にこの醜い姿を映してしまった……。完璧なお前が穢れてしまうよ……。
マークち、変態野郎も一緒か。
ガイアス姿形などどうでもいい。これ以上ダーナの心核を傷つけさせはせん !
コーキス――マスター ! 見えない壁があるみたいだぞ ! ?
ルドガー……ああ。これ以上は近づくこともできないみたいだ。どうする ?
アトワイト……あぁ……ううぅ……。
イクスアトワイトさん ! ?
アトワイト……ヨウ・ビクエが……。彼女の体が偽りの心の精霊に……。
グラスティンほぅ、アトワイト。やっぱりお前がダーナの巫女の心を宿していたのか。ヒヒヒ……なるほどなぁ……。
フィリップ偽りの心の精霊……まさか、精霊装による疑似精霊化か ! ?
デミトリアスああ。ダーナの巫女には心の精霊になってもらいヴェリウスを封じてもらった。
デミトリアスきみたちはそこでダーナの心核が壊れるところを見学しているといい。

キャラクター8話【10-13 精霊の封印地1】
ヒスイおい ! ?何そんなところでボーッと突っ立ってるんだ ! ?
コーキスヒスイ様たち ! ?
ルドガーいや、俺たちの前に見えない壁があってこれ以上進めないんだ。
フィリップ恐らく帝国の心の精霊が生み出している壁なんだと思う。
レイア帝国の心の精霊 ?
しいなヴェリウスって精霊とは別の心の精霊かい ?
ガイアスいや、精霊装によって精霊の力を与えられた……というようなことを言っていた。
リチア……心の精霊の生み出したものならソーマを持つ者や鏡士なら超えられる筈。見えない壁の内側へ入りましょう。
クンツァイトつまり、リチアさまと自分とヒスイそれにイクスですか ?
リチア……隣の眼帯をしている方と赤い髪の大剣持ちの方からもその力を感じます。それに、こちらのお二人も。
二人! ?
イクスコーキスは鏡精だからとしてもルドガーさんとヴィクトルさんはどうして ?
リチアわかりません。世界の壁を越える力……のようなものがあるようです。追求はともかく急ぎましょう。
リチアダーナの心核の中にいるミラに限界が迫っています。
ルドガー――わかった。どうすればいいんだ ?
リチアこの壁の向こうへ【スピルリンク】して入り口をこじ開けます。
イクス瞬間移動した ! ?
フィリップイクス ! ヨウ・ビクエから精霊輪具を外そう !それで疑似精霊化を止められる筈だ !
イクスあ、ああ、わかった !
グラスティンクックックッ。いいのかぁ ? 分断して…… ?
ルドガーガイアスたちが ! ?
ガイアス人の心配をしている場合か ?こちらの雑魚はこちらで片付ける。お前たちは自分の成すべきことをしろ。
グラスティンいいか、お前ら ! 壁の外のそっちにいる黒髪の二人は生け捕りにしろよぉ ?中に入ってきた黒髪の男の方は、俺が捕まえる。
ヒスイって、なんで俺を見てるんだ ! ? きめぇ奴だな ! ?そっちの仮面野郎も黒髪だろ !
マークまあ、気にすんなって、ヒスイ。で、どうする。全員でデミトリアスたちを叩くのか ?
デミトリアスそう簡単にいくかな ?
グラスティン――デミトリアス。お前はマクスウェルの力で引き続きダーナの心核を攻撃しろ。
グラスティンフィリップと周りの肉は俺の獲物だぁ……。ヒヒヒヒヒ !
デミトリアス……わかった。きみに任せよう。
リチアわたくしとソーマ使いの三人は、ダーナの心核にスピルリンクして、ミラを助けます。彼女が力尽きた時、ダーナの心核も崩壊する。
イクスなら、残りのメンバーでダーナの心核を守りつつヨウ・ビクエから精霊輪具を取り上げるんだな。
ヴィクトル……グラスティンは私とルドガーくんイクスとコーキスで引きつける。フィリップとマークはヨウ・ビクエを頼む。
フィリップ了解だよ。
グラスティンヒヒヒヒヒ……。フィリップが相手じゃないのは残念だが邪魔なフードを脱ぐことができるなぁ……。
グラスティンさぁて、お前ら全員、ミンチジュースにしてやるよぉ !

キャラクター9話【10-14 精霊の封印地2】
ルドガーヨウ・ビクエは ! ?
マーク――今、指輪を外した !
レイア何、今の音 ! ?
アトワイト……くぅ……。
しいなちょっとあんた、どうしたんだい ! ?
フィリップヨウ・ビクエ…… ! ?
ヨウ・ビクエ――体に戻るわね。こんな風に体を使われるんじゃ心を切り離している方が不利になるから。
ローエンですが、見えざる壁が、まだ――
ヨウ・ビクエ私は今、心だけの存在。心の生み出す壁なんて意味はないわ。大丈夫。
ヨウ・ビクエ……ふぅ……。この体で動くのは……ものすごく久しぶり……。
ルドガーよし、後はデミトリアスを止めればダーナの心核を守り切れる !
デミトリアス――上手くいったようだな。
イクス何…… ?
グラスティン引っかかったなぁ……鏡士の諸君。
ヴィクトル――そうか。狙いはダーナの巫女の覚醒、か。
グラスティンヒヒヒヒヒ……。偽物の黒髪の癖によくわかってるじゃないかぁ。
グラスティンダーナの巫女が目覚めれば、アイフリードが残した精霊の封印は完全に解ける。そして【ダーナの揺り籠】であるこの世界も滅びを迎える。
イクス……本気か ! ?世界を滅ぼせばお前たちだって死ぬんだぞ !
グラスティン死なないさぁ。俺たちはなぁ ?
ヨウ・ビクエはき違えないでちょうだい。
ヨウ・ビクエ私が目覚める時は、世界が滅びの危機を迎える時。けれど、私が目覚めるから世界が滅ぶわけじゃない。ダーナ様の造ったこの世界を壊させはしないわ !
デミトリアスダーナの巫女。ならばそのダーナに問うてもらえないか ?何故いびつな楽園を造り出したのか。
デミトリアス緊急避難などという理由が単なるおためごかしであることはわかっているのだ。
ヨウ・ビクエあれだけダーナ様の心核を破壊しておいて話が聞ける状態だとでも思っているの ?
デミトリアスまだ足りない。ダーナの心は徹底的に破壊する。
ヨウ・ビクエやらせないわ。
グラスティンそうはいかないなぁ、ダーナの巫女。あんたにはまだまだ色々とやってもらうことがある。
ヨウ・ビクエ……そこをどきなさい !
グラスティン嫌なこった。
イクスヨウ・ビクエ ! 今――
デミトリアス光魔 ! お前たちの復活を阻止する悪魔共を滅ぼせ !
コーキスどうして…… ? マスターもここにいて死の砂嵐も封じているのにどうしてこんなに光魔を呼べるんだよ ! ?
フィリップダーナの心核が崩壊しかけている影響かもしれない。
イクスくそ !とにかく光魔を倒して、ヨウ・ビクエを守ろう !
フィリップ一体一体倒していてはキリがない。僕が魔鏡術で広範囲に攻撃する。
マークそれで散らせなかった分を俺たちでフォローするんだな !けど無理するなよ、フィル。お前の体は――
フィリップ……まだ、大丈夫。
コーキスマスター ! 魔眼を使おう !
ヴィクトル……いや。それは最終手段にとっておけ。
ヴィクトルルドガーくん、フルで行けるか ?
ルドガーフルって、骸殻のことですか ?いえ、スリークォーターまでです。
ヴィクトルならばそれでいい。『一緒に』蹴散らすぞ。
ルドガー! ?
エルほら、やっぱりユリウスだ !
ユリウスエル ! ? どうしてここにいるんだ !
ゼロスどうしてもルドガーやヴィクトルと一緒にいたいっていうからケリュケイオンに乗せたんだよ。
エルエル、おぺれーたーっていうのやってたんだ。そしたらユリウスがこっちに来るのが見えたから迎えにきたんだよ。
ゼロスルドガーたちへの助太刀か ?だが、ダーナの心核の周辺は、ソーマ使いやら鏡士やらじゃないと近づけないらしいぜ。
ゼロスこっちも困ってるんだ。
ユリウスなら、ルドガーもダーナの心核には近づけていないのか ?
エルううん。ルドガーとパパはバリアの中に入れたみたい。
ユリウス! ?
エルゼロス ! ユリウスを追いかけよう !
ゼロスエルちゃん。危ないからケリュケイオンに戻っててくれって。
エルゼロスが一緒に行かないならエル一人で行くからいい。
ゼロス……あちゃー。そうなるわな。へいへい、お供しますよお姫様。
エルそれアルヴィンっぽいよ。
ゼロスええ ! ? 心外だわー。
ガイアスユリウスか。
ユリウスルドガーは ! ?
ルドガー・ヴィクトルゼロディバイド ! !
ユリウス……あの動きは……。まさか……。
ガイアスユリウス。お前ならこの見えざる壁の向こうに行けるんじゃないのか ?
ガイアスルドガーとヴィクトルが、何故向こうに行けたのかよくわからなかったのだが、もし骸殻化できることが理由の一つなら、お前にも行けると考えられるが。
ユリウスいや、エンコードで力を制限されている。俺はここでは骸殻化できない……。
エルユリウス ! ルドガーとパパを助けて !
ユリウスエル……。
ユリウス………………。
ユリウス……ああ、そうだな。骸殻が使えなくても、中には入れるなら !
レイア――壁を……抜けた…… ?
ローエンまるで壁が存在していないかのようにあっさり走っていかれましたね。
エルねぇ、本当に壁なんてあるの ? 何にも見えないよ ?
ゼロスあっと、エルちゃん、ストップ――って……うおおおい ! ?エルちゃんも向こう側にいっちまったぞ ! ?
アトワイト……壁はまだあります。少なくとも私は中には入れない。
しいなまずいよ ! エルが戦いに巻き込まれちまう !
イクスよし、だいぶ光魔の数が減ってきたぞ。
フィリップヨウ・ビクエ ! 今ならダーナの心核に近づける !
ヨウ・ビクエええ !
グラスティンヒヒヒ……。動かないでもらおうか。
ルドガー・ヴィクトルエル ! ?
エルパパ……ルドガー……。
ルドガーエルを放せ !
グラスティンどっちの立場が上かわかってないみたいだなぁ ?
エル痛いっ ! ?
グラスティンさぁ、ヨウ・ビクエを捕まえて引き渡してもらおうか ?
ユリウス――やらせるか !
ヴィクトル! !
ルドガー兄さん !
ユリウスエルもルドガーも……傷つけさせはしない !
ユリウスこの光は……浄玻璃鏡か ?
ヴィクトル……ユリウス。今なら骸殻化できる筈だ。
ユリウス――ルドガー。ヴィクトル。共にエルを守ろう。
ユリウスエルに――ルドガーの……相棒に手をかけようとした罪、償ってもらうぞ !

キャラクター10話【10-14 精霊の封印地2】
グラスティン……フゥゥ……。心地のいい痛みだった……。
グラスティンなるほどなぁ。こいつらが分史世界の……。ヒヒヒ……そしてあのガキがクルスニクの鍵か……。
二人! !
ヴィクトル私の娘を薄汚れた目で見るな。
デミトリアスグラスティン。ご苦労。やるべき事は終わった。必要な物も手に入れたしね。
デミトリアスダーナの声が聞けなかったのは残念だがダーナの巫女が目覚めれば十分だ。引き上げよう。
イクス待て !
グラスティンそう言って待つ馬鹿はいないよなぁ……。フィリップ……次に会う時はお前を綺麗な標本にしてやるからなぁ…… !
コーキス転送魔法陣か……。
マークフィル、ヨウ・ビクエはどうした ?
フィリップダーナの心核の中に入っていった。
ミラ……もう駄目……。手足の感覚が……。
リチアミラ、もう大丈夫。仲間を連れてきました。
シングミラ ! やっぱりあの時のミラだ !
ミラシング…… ?
シングあの時は助けてくれてありがとう。今度はオレがミラを助ける番だよ。
ミラそれでわざわざこんなところへ来てくれたの ?
シング何処にだって行くよ。ミラを助ける為なら。
ミラおかしな子……。
リチアクンツァイト。内側からできるだけの修復を施して下さい。わたくしも協力します。
クンツァイト了解。スピルーンの損傷度合の測定を開始します。
ヒスイ俺たちは何をすればいいんだ ?
リチア……ミラはもう限界です。彼女を外に連れ出して下さい。
ミラけど、私がいなくなったらダーナの心が壊れるんじゃないの ?
リチアわたくしとクンツァイトがいます。
ヒスイまさか、お前が残るって言うんじゃないだろうな ! ?
クンツァイトリチアさま。それならば自分が一人でここに残ります。
? ? ?お待ちなさい……。今、ダーナの巫女がそちらに向かっています。彼女がこの場に残って修復作業を行ってくれる。
? ? ?異世界から強引に招かれたあなたたちにこれ以上の迷惑はかけられません。
ミラその声は……ヴェリウスね ?
ヴェリウスええ。不覚にも敵に後れをとり存在が消えかかっていましたが今は自分を取り戻しました。
ヴェリウスミラ、長い間ダーナの心を守ってくれてありがとう。
ヨウ・ビクエ……はぁ、やっと来られたわ。ミラ、苦しい思いをさせてごめんなさい。今外に、あなたの仲間が来ているわよ。
ミラ私の……仲間……。それってルドガーとエルのこと ! ?
ヨウ・ビクエええ、そう。早く戻ってあげて。この先は私が引き受けるわ。
ヨウ・ビクエここは……私のご先祖様が生まれた場所。故郷みたいなものだからご先祖のためにも綺麗に修復してあげないとね。
シングえっと……あなたは確か……。
ヨウ・ビクエ私はヨウ・ビクエ。ヨーランド・ビクエ・オーデンセよ。
ヨウ・ビクエシングとヒスイにはリチアのスピルメイズで会ってるわよね。
ヒスイああ。あの時はバタバタしていたけどな。
ヨウ・ビクエ今もバタバタしてるわよ。急がないと、ダーナ様の心が完全に崩壊してしまうもの。
ヨウ・ビクエあのデミトリアスとか言う男心核を思いっきり攻撃してくれたから……。
ヴェリウスヨーランド。急ぎましょう。
ヨウ・ビクエええ。それじゃあ、ヒスイとシングはミラを連れて外へ出て。
ヨウ・ビクエリチアとクンツァイトは、ギリギリまで心核――そちら風に言うとスピルーンの修復を手伝ってくれないかしら。
ヨウ・ビクエもちろん後できちんとアジトまで送っていくわ。
リチアもちろんです。スピルーンが壊れるところは……もう二度と見たくありませんから。
クンツァイト自分はリチアさまに従います。
ヨウ・ビクエありがとう。それと、外に出たら鏡士たちに伝えて。ダーナの心核は魔の空域に移動させて封印を施すって。
ヨウ・ビクエそうすれば帝国も簡単には近づけなくなるわ。その代わり……世界が少し不安定になる。
ヨウ・ビクエ死の砂嵐こそ侵入してこないけれど虚無との境が危うくなって光魔が現れやすくなるわ。気を付けて。
シングわかった。他には ?
ヨウ・ビクエ私が目覚めたことで、精霊たちが目を覚まし始めるわ。彼らを味方に付けて。それがティル・ナ・ノーグを守るための第一歩よ。
シング必ず伝えるよ。
シングさあ、ミラ、オレに掴まって。ヒスイも肩を貸してあげて。
ヒスイあ、ああ……。
ミラありがとう……。
ミラねぇ、あなた、誰 ?先祖がここで生まれたってどういうこと ?
ヨウ・ビクエああ、その話が途中だったわね。私のご先祖様はね、太陽神ダーナの鏡精だったのよ。私は鏡精の子孫ってこと。

キャラクター11話【10-15 ミラ】
? ? ?ミラ……まだ目を覚まさないのかな……。
? ? ?随分衰弱していたから、ゆっくり休ませてあげないと。
ミラ……ん…………。
エルミラ ! ! エルのミラ ! !
ミラ……え…… ?
ルドガーミラ……。よかった、気がついて。
ミラえ…… ? ここは……どこ ? シングは ?
エルシングとヒスイが、ミラを大きな宝石の中から連れてきてくれたんだよ。
ルドガーその時には、ミラはもう気を失っていたんだ。それでケリュケイオン……ここの医務室に連れてきた。
エル……ミラは、エルのことちゃんと覚えてる ?
ミラえ ? 何言ってるのよ。当たり前じゃない。
エルよかった…… !ジュードたちはエルのこと覚えてなかったから……。
ミラジュードたちもここにいる……のよね。
ルドガーああ。
ルドガー……と言っても、俺たちに出会う前のジュードたちだけどね。俺たちの知ってる姿より少し若いから驚くと思うよ。
ミラ……もう一人の私も……いるのよね。
ルドガー………………。
エルねぇ、ミラ。パパから伝言聞いたよ。スープ作ってくれるんでしょ ?
ルドガーこら、エル。ミラはまだ病み上がりみたいなものなんだぞ。
ミラふふ……。いいわよ。動けるようになったら、作ってあげるわ。
ミラ……ううん、作らせて欲しい。やっと二人に会えたんだもの。
ユリウスきみは……行かなくていいのか。ミラのところに。
ヴィクトルバルドに頼まれて、成り行きでミラを精霊の封印地へ連れて行っただけだ。別に会って話すようなこともない。
ユリウス……そうか。
ヴィクトル………………。
ユリウスヴィクトルと言う名前は、本名か ?
ヴィクトルまるで尋問だな。
ユリウスそうだな。……単刀直入に聞こう。きみは分史世界のルドガーなんじゃないか ?
ヴィクトルこの世界で、正史も分史もないだろう。ここは全てが正史であり、同時に分史のようなものだ。
ユリウスああ。確かにこの世界でなら俺は生きてルドガーと共に歩める。クルスニクの呪縛はここには存在しないからな。
ユリウスエルを守ってやることもできる。この世界でなら。
ユリウス――お前はどう生きるつもりなんだ、ルドガー。
ヴィクトル………………。
フィリップゲホッ……ゲホッ……くふぅ……。
マーク……大丈夫か、フィル。
フィリップああ……。さっき発作を抑える……薬を飲んだから……コホッ……。
マーク前よりひどくなってるじゃねぇか。
フィリップ……歳のせいかな。
マーク馬鹿なこと言ってるんじゃねぇよ。それで……わかったのか ? チビフィルが言ってた『始まりの場所』に行けってやつの意味。
フィリップ……うん。バタバタしていたけど、わかったと思う。あれは……ゲホッゴホッ…… !
マークまた血を吐いたな……。
マークなぁ、このままじゃ本当に死ぬぞ。どうしてそこまでしてイクスたちに尽くすんだ。罪滅ぼしのつもりか ?
フィリップ……はは。聞いてたのか。イクスとの話。
マーク扉の外で見張りをしてたからな。聞こえちまったんだよ。
マークそんなこったろうと思ってたから驚きはしなかったけどな。
マークいくら歪んでいようがファントムはもう一人のお前だ。
マークそいつがイクスとミリーナを殺せなんて言い出すんだ。お前の中にも……多少なりともそういう感情があるだろうとは予想が付くさ。
マークうちのマスターはクズの大馬鹿野郎だからな。
フィリップ耳が痛いよ……。でもその通りだ。
マークフィル……。死ぬつもりなんだろう ?
フィリップ………………。
マーク鏡士が自分の魔鏡を手放すのは、自決する時だけ。お前、一度魔鏡を手放してるよな。
フィリップ……まだ死なないよ。イクスとミリーナのために、やることが沢山ある。
マークまったく……。『どの』イクスとミリーナのためなんだよ……。
イクス何だかこの数日、立て続けに色々なことが起きて正直頭がパンクしそうだよ。
コーキスなあ、マスター。フィリップ様と何を話したんだ ?
イクス………………。
コーキス……え ? 何でそんな怖い顔するんだ ?
イクス……いや、何でもない。コーキスは知らなくていい。
コーキスけどマスター――
イクスコーキス ! !
コーキス! ?
イクス……悪い。大声出して。この話はいいんだ。俺が……消化しなくちゃいけないことだから。それにまだ話の続きがあるみたいだったし……。
クラトスアジトから魔鏡通信だ。スクリーンに映すぞ。
コンウェイ失礼するよ。そっちにミリーナさんはいるかな ?
イクスえ ? ミリーナ ? アジトに残ってる筈だけど……。
コンウェイそれが……彼女どこにもいないんだ。
イクス……え ?
コンウェイもう夜も遅い。買い物に出たんだとしてもこんな時間まで連絡が無いというのはおかしいってルカくんが心配していてね。
コンウェイこちらも心当たりをあたってみるから急いで戻ってきてくれないか。
イクスあ、ああ。わかった。今向かってるから。
イクス(ミリーナ……。何かあったのか…… ?)
to be continued
キャラクター1話【11-1 アセリア領の世界樹1】
? ? ?(ごめんなさい、イクス……。あなたまで、この無間地獄に引きずり込んでしまった)
? ? ?(きっとあなたも虚無の痛みと苦しみを感じているでしょう。私も同じ……。意識を保つのがやっとだわ……)
ミリーナ(これは……夢…… ? )
イクスクッ…… !
ミリーナ(イクス…… ! ?もしかしてこれは滅びの夢の続き…… ?ゲフィオンの記憶なの ! ? )
ゲフィオン(今の私は人型のカレイドスコープ。声を発することもできない)
ゲフィオン(イクスを……私のエゴで生み出された三人目のイクスを、慰めることも勇気づけることも彼に謝ることすらもできない。もどかしい……)
ミリーナ(辺りは虚無と死の砂嵐とイクスだけ……。これが人体万華鏡になったゲフィオンの見ているもの……)
ゲフィオン(事態は悪い方へ進むばかり……。どうすればいいの……。何か知っている筈なのに思い出せない……)
ゲフィオン(私は……記憶を切り離してしまったの ?わからない……)
ミリーナ(ゲフィオンが人体万華鏡になってから記憶の共有は途切れていたのに……。どうして今になって……)
ミリーナ(いえ、詮索は後だわ。ここはどこかしら。カーリャはどこ ?確か私たちは森で――)
? ? ?目が覚めたか。黒衣の鏡士。
ミリーナあなたは私たちを襲った……。
? ? ?貴様に話がある。
ミリーナいきなり襲いかかっておいて話をしろなんて随分図々しいのね。
? ? ?世界を滅ぼした女ほどではない。お前はその分霊に過ぎぬようだが……それでも記憶を共有していると聞いた。
ミリーナあなたは何者なの ?どこかで見覚えがあるわ。きっと鏡映点……よね。
ダオス我が名はダオス。
ミリーナ! !
ミリーナ(クレスさんたちの世界の――魔王 !物理攻撃は効かない……と聞いたことがあるわ。魔鏡術なら少しは――)
ダオス……また、か。
ミリーナ(来る ! ? )
ミリーナな、何 ? 魔物 ! ?
ダオス伏せろ、鏡士。
ダオス――
ダオスここにまで現れるとは……。この森が奴らに寄生されつつあるというのか。
ミリーナあ……あの、ダオス……。ありがとう……ございます。今の……魔物、のようなものから助けて下さって。
ミリーナもしかして世界樹の前で私たちを襲ったのも本当は――
ダオスお前たちを襲ったつもりはない。あの得体の知れない『アヤカシ』共に邪魔をされたくなかっただけだ。
ダオス奴らに見つかる前に世界樹の側を離れるつもりであったが小さな鏡精が騒ぎ立てたせいで面倒なことになった。
ミリーナ……あの、カーリャは無事なんでしょうか。
ダオスあのアヤカシは、鏡精には攻撃を加えぬようだ。うるさく抵抗するから気絶させたが、問題なかろう。
ミリーナそんな言い方……。
ダオス……またアヤカシ共が来るぞ。時間がない。鏡士よ、答えるのだ。
ダオスこの世界から離れる術はないのか ?ここは愚かな人間どもに造られた、閉じた箱庭。しかし最初から閉じていた訳ではないだろう。
ミリーナない筈……です。ゲフィオンの記憶に該当するものはありません。でも……ゲフィオンは自分の記憶に空白があると言っていました。
ダオス――時間切れのようだ。
ミリーナ! !
? ? ?シネ カガミシ。
ミリーナきゃあああっ ! ?

キャラクター2話【11-3 アレウーラ領】
ルビア……どう ? 治癒術効いてる ?
イオンはい……。ありがとうございます。
ロゼ……うん。顔色もよくなってきたしこれなら大丈夫みたいだね。さすが、ルビア。
ルビアそんなことないわよ。それにあたしもアジトのみんなに助けてもらったから、これぐらいは当然だもの。
カイウスなぁ、イオンって帝国にいるんだろ ?今あっちはどうなってるんだ ?メルクリアはどうしてるんだ ?
イオン皇女メルクリアですね。残念ながら僕はお会いしたことがないんです。
イオン僕は具現化されてからずっと……その、僕の双子の兄……のような存在に預けられていましたから。
カイウスイオンも双子なのか ! ?
ルビアカイウスとルキウスもそうだしルークとアッシュもそうだし、何だか双子だらけね。
二人………………。
ロゼ――あ、誰か来る。この足音はスパーダ、かな ?
スパーダよぉ、大丈夫か ?
カイウススパーダ !
ルビアあら、スパーダ一人なの ?
スパーダああ ? オレ一人じゃ不満か ?
ルビアそんなこと言ってないでしょ。
ルビアこれからアレウーラ領を調査したり、ハスタって奴を追いかけたりするんだから、てっきりイリアとルカも来てくれるんだと思ってたのよ。
スパーダハスタ、ねぇ……。まったく異世界にまで来てあいつと関わるとは思わなかったぜ。
スパーダま、そいつはともかく、計画は一旦中止になった。
ロゼどういうこと ? ユリウスさんが向かった精霊の封印地で何かまずいことがあったの ?
スパーダいや、そっちは一旦片付いたらしいんだが今度はアジトの方で問題が発生したんだよ。
スパーダで、色々情報も整理しなきゃならないってんで各地に散らばってる調査隊も全員引き上げようってことになったらしいぜ。
カイウスそれで、アジトで何が起きたんだ ?
スパーダミリーナがいなくなっちまったんだよ。
三人! !
ロゼいなくなったって、どういうこと ?攫われたの ? あのアジトで ?
スパーダそこら辺は、今調べてるところだ。
ロゼなるほどね。確かに色々立て続けに事件が起きすぎてる。
ロゼこっちもハスタの捜索は適当なところで切り上げた方がよさそう。
カイウスだったらアジトに戻りがてらこの辺りの情報を集めていこう。いいだろ、スパーダ。
スパーダおう。そのつもりでこのスパーダ様が来てやったんだからな。ルビアにはルカも世話になったしよ。
ルビアそんなのお互い様よ。でも……イオンを連れ回すのはよくないわよね。あたし、先にイオンを連れてアジトに戻るわね。
イオン………………。
デクスじゃあ、俺もそろそろ持ち場に戻るとするか。制服無くした言い訳は考えておかないとなぁ……。
イオンあの……デクスさん。帝国へ戻るなら、僕も一緒に連れて行ってもらえませんか ?
ルビアえ ! ? その体で帝国へ帰るの ! ? 無茶よ !
イオン……はい、確かにその通りだと思います。ですが、僕はまだハロルドとの約束を果たしていません。
イオン彼女は自分の身に危険が及ぶことを承知の上で僕を送り出してくれました。彼女の信に答えなければ僕がここにいる意味がありません。
ロゼ……約束って、何 ?
イオン各地に派遣されている領主――リビングドールβを救うことです。
スパーダ『心に剣を持ち、誰かの楯になれ』『右手に規律を、左手に誇りを』『己を殺し、永久の礎にせよ』
スパーダ『正しき道を正しく歩め』『個よりも全に仕えよ』
デクスなんだ、そりゃ ?
スパーダ騎士の心得だ。オレの中に叩き込まれて、裏切れねェもんなんだ。こいつもそうなんだろうと思ってよ。
イオン――はい。僕はこの世界ではあまりに無力だ。それでも……託された信頼を……思いをそして苦しむ人々を放っておくことはできません。
ロゼ導師、か……。世界は違っても、導師って呼ばれる人は何となく似てるとこがあるんだね。
ロゼいいんじゃない。魔鏡通信機は持ってるんでしょ ?何かあったらこっちに連絡をくれればいい。きっと誰かが助けに行く。
イオンありがとうございます。
ルビアでも、イオン。ルークたちはきっとイオンのこと心配してるわよ。だから自分を大事にすることは忘れないでね。
イオンはい。僕の代わりは……いませんから。

キャラクター3話【11-4 テセアラの世界樹】
ミトス毒気に当てられたって顔してるね。どうだった ? シングって毒は ?
シンク別に。何かわめいていたけど、もう忘れたよ。そっちこそ帝国にいた頃にあの毒を浴びてたんじゃないの ?
ミトス知らなかった ?ボク、ああいうタイプの毒には耐性があるんだよ。墜ちた勇者だからね。
シンク……フン。
ジーニアスどうしたの、二人とも。凄く怖い顔してるよ。……ってシンクの顔は見えないけど。
ラタトスクやめとけ、ジーニアス。どうせろくな話じゃない。
ジーニアス……そう ? でも、まあ、無理に聞き出すことじゃないよね。誰だって触れて欲しくないことってあるもん。
ミトスところで、ジーニアスこそどうしたの ?エミルとラタトスクと三人で何か真剣に話していたでしょう ?
ジーニアスあ、そうそう。大樹カーラーンのことだよ。えっと……ミトス、ボクたちの世界の大樹のこと覚えてる……よね?
ジーニアスボクの知ってる大樹は、一度急激に大きくなって暴走して……枯れたんだけど……。
ミトス……うん、知ってる。多分、ボクとジーニアスは同じような時期に具現化されたんだね。
ミトスごめんなさい、言いにくいことを言わせて。
ミトス元の世界での大樹の暴走は、ボクが君たちを利用して引き起こしたようなものだからジーニアスが気にすることはないよ。
シンク何があったのか知らないけど相変わらず同族には甘いね、墜ちた勇者サマ。
ジーニアスそんな言い方しないでよ !
ミトスいいんだよ、ジーニアス。事実なんだから。それより、まだ続きがあるんでしょう ?
エミル(ミトスのシンクとジーニアスへの態度の差が……)
ラタトスク(っていうか、ジーニアスとリフィルに甘いんだよ。あいつは……)
エミル(そ、そうかも……)
ジーニアスあ、うん。えっと、僕らの知ってる大樹は枯れた状態でエミルの知ってる大樹は、芽が出たばかりの小さな木だったんだって。
ジーニアスエミルはボクたちより未来の世界の人だから樹の状態が一致してなくてもおかしくはない。
ジーニアスでも、どちらの世界が影響したにせよ僕らの世界を具現化したのならこんな立派な大樹は存在していないと思うんだ。
シンク具現化ってのは、鏡映点を通すから鏡映点の記憶とか感情が影響するんだろ ?
シンクこの大陸を具現化した時一番の核になったのはクラトスの息子なんだからあいつの影響じゃないの ?
ジーニアスロイドだって、枯れた樹しか知らない筈だよ。
ミトスラタトスクの影響じゃない ?ラタトスクは知ってるでしょ大樹カーラーンが元気だった頃の姿。
エミル……ああ。だが、あの樹は俺が知っているカーラーンの姿とも違う。デカすぎる。
ミトスどういうこと ?
シンク……成長しているってことだろ。しかもラタトスクの口ぶりだと、異常なほどにさ。
ミトスボクが若かった頃には、大樹もかなり弱っていたから元の姿はわからないけど……。
シンクこうなると、やっぱりソーマ使いを無理矢理連れてきた方がよかったんじゃない ?
ジーニアスでも本当に植物にスピルリンクできるかどうかは賭けみたいなものだったから……。
エミル……とりあえず俺がこの樹にアクセスできるかどうか試してみる。
ラタトスク――……応えろ、大樹カーラーン !
ラタトスク……なん……だ……これは…… ?
ジーニアスどうしたの、ラタトスク ! ? 顔が真っ青だよ !
ラタトスク……………………。
ミトスアクセスできなかったの ?それとも『他の精霊』が見えた ?
ラタトスク……わからない。
シンクはぁ ?
ラタトスク何かが……いた。この樹は俺の樹だ。だが……俺だけの樹じゃなくなっていやがる。
ミトスロイドたちが……未来の世界で大樹の種子――大いなる実りから大樹を芽吹かせた。その時大樹には新しい精霊が誕生した……って聞いた。
ラタトスク……それでも、これは俺の樹だ !
シンク所有権はどうでもいい。後で勝手に主張してよね。
シンクそれより、アンタだけの樹じゃなくなってるってのはその新しい精霊とやらもこの世界に具現化されてこの樹に取り憑いてるっていうこと ?
ラタトスクいや、新しい精霊……は痕跡しか残っていない。どこかに立ち去ったのか、帝国が捕まえたのか定かじゃねぇ。
エミルさっきこの樹にいたのは精霊じゃないよ。あれは……呪いの塊のようなものだった……。
エミルそれがマナ――ここではキラル分子だっけ。とにかくそれを集めている……ように感じたけど。
ジーニアスキラル分子を集めているから樹が異常発達してるってことなんじゃない ?確かにこの辺りはマナが異常に濃いもん。
ミトス………………。
シンク――ちっ。死霊使い(ネクロマンサー)から呼び出しだ。
ジーニアスジェイドさん ? 嫌なら代わろうか ?ボク、意外とあの人嫌いじゃないよ。ちょっと面倒くさいけど。
シンク……だったら任せるよ。顔を見ると今すぐ殺しにいきたくなるからさ。
ジーニアス怖…… !
ラタトスク……おい。どういうことだ。
ミトス何のこと ?
ラタトスクおかしいと思ったんだ。お前が人間共に協力して精霊の調査だのと言い出すなんて。
ラタトスクあの得体の知れない呪いの塊はともかく何なんだ、あの新しい樹の精霊は。なんで精霊の名前が『マーテル』なんだ ?
ミトスさぁ、ね。アセリア大陸の影響じゃないの ?元々この大陸は、あっちとキメラ結合していたし。
ミトスクラースたちの世界にはいるんでしょ。マーテルって精霊が。
ラタトスク……そっちの精霊のことは知らねぇが俺がカーラーンの中で見た精霊の痕跡……あの新しい精霊は、マーテルと同じ顔をしていたぞ。
ミトス……そう。やっぱり、そうなんだ。

キャラクター4話【11-5 アジト】
ルカおかえり、スパーダ !ロゼさんもカイウスもルビアもお疲れ様 !
イリアで、どうだったの ? ハスタの奴は ?
スパーダ実際に遭遇することはなかったんだがよ。ああいう奴だから目撃証言も痕跡も腐るほどあってな。
スパーダ大体の足取りは掴めたぜ。
カイウスハスタの奴、イオンがオレたちに匿われた辺りでイオンの足取りを見失ったみたいで、近くの町や村を順番に……襲っていったらしいんだ。
ルカそんな……。
ルビアどこもひどい有様だったわ。人捜しのために襲ったなんてレベルじゃなかったもの。
イリアそれ、ほっといて大丈夫なの ! ?何かした方がいいんじゃない ?
ロゼとりあえずセキレイの羽には、被害に遭った村や町を回るように伝えた。こんな時だけど、アジトからも救護の手を出したいから、ちょっと話をまとめてくる。
ロゼ………………。
ルビアあたしも行くわ。あたしたちの世界が元になっている大陸で起きたことだもの。他人事とは思えない。カイウス、報告は任せたわよ !
ルカそれで……ハスタはどうしたの ?まだアレウーラ領で暴れてるの ?
スパーダいや、それが、途中で駐留兵を残して引き上げちまったらしいんだ。どうも船で帝都に向かったらしい。
カイウスイオンがデクスと帝都へ向かってるからそれに感づいた……とかじゃないといいんだけど。
スパーダまあな。ただ、お前の仲間の――
カイウスティルキスとアーリア ?
スパーダ――そう、そいつらは上手いこと逃げ切れるんじゃねェか。ハスタの意識はイオンの方に向いてるみたいだからよ。
ルカイオン……さん、か……。
スパーダあ ? なんか気になることがあるのか ?
ルカうん……。後で話すよ。ミリーナのことも心配だし、色々ばたついてるから。
ルカそうだ、カイウスの仲間の件はカロル調査室にも共有した方がいいね。
カイウスそうだな。オレ、カロルに話してくるよ。それにイオンたちやハロルドさんのことも心配だしさ。
ミクリオ――この浮遊島で、誰かに攫われるなんてことは考えにくい。やっぱりミリーナは自発的にどこかへ出かけたんじゃないか。
エドナだとしても、自分が帝国に追われている立場だってことぐらいわかっている筈よ。帝都や領都のような人目に付く場所には行かないんじゃないかしら。
ロンドリーネねぇ、ミリーナが帰ってこないってホント ! ?
ジェイドおや、まるでミリーナが出掛けたことをご存じのような口ぶりですねぇ。
ロンドリーネ……ごめん。こんなに大事になるなんて思ってなかったから……。
ジョニーロディ、何があったんだ ?
ロンドリーネ実は――
ロンドリーネあれ ? ミリーナ。どこかに出掛けるの ?
ミリーナロディ !ええ、ちょっとやることができちゃって。でもすぐに戻るわ。
ミリーナあっ、それと、このことはみんなに内緒にしててね。特にミトスには、絶対よ。ちょっとしたサプライズの仕込みだから。
ロンドリーネこれが昼間の話。軽い感じだったからパーティーか何かの買い出しかなって。そういうこと、みんなよくやるでしょう ?
スレイミトスには絶対内緒……ってことはミトスには何か心当たりがあるかも知れないね。
エドナ大佐のボーヤ。
ジェイドもうやっていますよ。不本意ながらね。
ジェイド――おや、シンクにかけたつもりでしたがそこまで嫌われていましたか。いやぁ、残念です。
ジーニアスもー、そういうこと言うから嫌われるんだよジェイドさん。それで、何の用 ?
ジェイド単刀直入に言いますが、ミリーナが外出したまま連絡がなく、魔鏡通信にもでません。ミトスなら心当たりがあるのではないかと思うのですが。
ミトス……もしかして、アセリア領の世界樹、かな。写真があったら欲しいとは言ったよ。
ジェイド――なるほど。ありがとう。もう夜も遅い。そちらも気を付けて戻ってきて下さい。
ミトス……いや、ボクたちはこのままアセリア領に向かうよ。丁度あっちの世界樹も見たいと思ってたんだ。
ジェイドそれはそれは……。
ミトス――何 ?
ジェイドいえ、謎が解けるといいですね。お気を付けて。
ジェイドジーニアス、そのメンバーではあなたとエミルが一番常識的だ。他のメンバーの手綱をしっかり握っていて下さい。
ジーニアス了解 !
スレイミリーナはアセリア領の世界樹に向かったのかな。それで……何か不測の事態が起きた。
ミクリオあの辺りは帝国の監視も薄いし安全な場所だと思っていたが……。
ジョニーアセリア領、か。カロル調査室の報告じゃ最近ダオスとかいう奴があの辺りをうろついてる……って言ってなかったか ?
コンウェイミリーナさんのことケリュケイオンに連絡してきたよ。
コンウェイところで、面白そうな話をしているね。
エドナ面白い ? 何が ?
コンウェイアセリア領に魔王と呼ばれたダオスがいるってところが、さ。やっぱりクレスくんたちを呼ぶのかい ?
ジェイド……そうですね。アセリア領を調査するなら彼らの方が適任でしょう。
ジェイドイクスが戻り次第出発できるようクレスたちに協力を仰ぎましょう。
コンウェイなら、ボクも同行させてもらおうかな。
ジェイドおや、これはまた珍しい。
コンウェイこんな機会は滅多にないからね。
スレイオレたちも一緒に行った方がいいんじゃないか。人手は少しでも多い方がいいだろ ?
ジェイドええ。ただ、世界樹の傍にいない可能性もあります。念のため、世界樹を中心に、アセリア領全土にも捜索範囲を広げておきましょう。
ジェイドスレイ、ミクリオ。他に協力してもらえそうなメンバーを集めてきて下さい。それと――
エドナもう一度ケリュケイオンに連絡、ね。

キャラクター6話【11-6 アトワイト】
イクスミリーナの奴……。朝になってもアジトに帰ってこないなんて……。全然連絡も取れないし……。
ロンドリーネ本当にごめん……。すぐに帰ってくるから誰にも言わないでって頼まれてて……。
ロンドリーネでも……まさか連絡が取れなくなっちゃうなんて思わなかったから……。
イクスいや、ロディは悪くないよ。それより秘密だったのに話してくれてありがとう。
コンウェイ世界樹ユグドラシルの写真を撮りに行くなんて素敵だよね。ボクも誘って欲しかったな。
クラース……もしや世界樹を見たくてミリーナの捜索に来たのか ?
コンウェイまさか。ミリーナさんの身を案じてついて来たに決まってるじゃないか。……それにしても本物の世界樹は素晴らしいね。想像以上だよ。
アーチェ本物っていうか、具現化した世界樹だけどね。
クレスイクス ! あそこにいるのはカーリャじゃないか ! ?
イクス本当だ ! ? カーリャ ! ? どうしたんだ ! ?
カーリャイクス……さま……。ミリーナさまが……。連れていかれて……。
イクス何 ! ?
すず周りに敵がいないか、確認してきます。
ミント今、法術で怪我を癒やします。そうすれば、少しはカーリャさんも楽になるはずですから。
チェスターおい、カーリャ。少しは楽になったか ?
カーリャはい……。ありがとうございます……。
クラース一体何があったんだ。帝国軍が現れたのか ?
すず――いえ、周囲の草は踏み固められていません。足跡もほとんどない。軍隊ではないと思います。
すずただ、少し先の狩猟小屋が半壊していました。そこで何者かが戦った形跡があります。
カーリャきっと……あのイケメンですぅ……。
アーチェえ ! ? ちょっとカーリャ、頭でも強く打ったの ! ?
コンウェイ……まさか、とは思うけど。そのイケメンっていうのは金髪で長身のマントの男かい…… ?
二人! !
カーリャそうです。黒衣の鏡士かって……確認して……ミリーナさまをさらって……。
コンウェイ……確か、カロル調査室が出してきた最新のはぐれ鏡映点リストに、ダオスの名前があったよね。
すずだとしたら、あの狩猟小屋で戦っていたのはミリーナさんとダオスということになりますね。
イクスそれで……連れていかれたのか。
ロンドリーネどうして……そんなことを……。
チェスターあいつならやるだろ !オレたちの村だってそもそもあいつのせいで……。
クレスこうしてはいられない。ミリーナの行方を捜そう。そこにダオスもいるなら、元の世界で途中だったダオスとの決着を、ここでつける !
イクスま、待ってくれ !ダオスはなんでクレスたちと敵対していたんだ ?
イクスミリーナを殺さずにさらおうとしたのは、元の世界でやろうとしていたことに関係があるんじゃないかな。
イクス具現化された人は、みんな元の世界を強制的に捨てさせられた。それって果たしたかった願いとか目的も取り上げられてしまうってことだと思う。
チェスター関係あるかよ ! ? ミリーナがさらわれたんだぞ ! ?
すずカーリャさんも……こんな目に……。
クレスああ。ダオスが僕たちの世界でしてきたことを考えればティル・ナ・ノーグでも何かを企んでいるに違いない。
コンウェイ……クレスくんってダオスのことになるといつもと雰囲気が変わるんだね。
クレス――ダオスは倒すべき敵だ !
ロンドリーネ………………。
クラース――そう、私たちの倒すべき敵だ。だがこの世界においては、イクスの言うこともわかる。
クレスクラースさん ! ?
クラースこうしよう。ダオスを追いかけ、ミリーナを取り戻す。それは当然のことだ。だが……ダオスの目的について彼に問いかけてみてはどうだ。
クレス………………。
チェスター奴と話して、何をしようとしていたのかがわかったところでどうなる ! ?
チェスターいくらこの世界にアミィを具現化されていても元の世界のアミィが辛い思いをしたのは変わらない !トーティス村だって…… !
ミント………………。
コンウェイでも、ダオスがこの世界に何かを仕掛けていた場合。ダオスを殺すことで、この世界に解けない呪いを放つことになるかも知れないよね。
アーチェんー、だから、ダオスの目的を知っておけってことか。
すず確かに、戦いにおいて敵を知ることは大事です。敵を知り己を知れば百戦危うからずといいます。
クレス……わかった。でも、ダオスが何も答えないまま攻撃してきたら――その時は元の世界で果たせなかった決着をつけることになる。それでいいかな、イクス。
イクス……ごめん。でもありがとう。
すず狩猟小屋から血の跡が続いていました。少量でしたから、致命傷による出血というよりはパンくずと同じではないでしょうか。
イクスミリーナがわざと残したメッセージか。リフィル先生の時と同じだな……。
クレスそれはどっちの方角に続いているんだい ?
すず……あちらです。このまま森を抜けるとまっすぐ先にダオス城があります。
チェスターダオス城…… ! あそこか !
コンウェイなら、提案があるんだ。ボクとイクスくん、ロディさん、カーリャは別働隊として動いたらどうかな ?
コンウェイクレスくんたちはダオスに向き合うために正面から。ボクたちはミリーナさんを捜索するために別ルートから侵入する。
コンウェイクレスくんたちがダオスを引きつけて、ボクたちがミリーナさんを救出するための時間を確保してもらいたい。
コンウェイミリーナさんさえ救出すれば、ゆっくりダオスの真意を聞けるだろう ?
コンウェイ……まぁ、元の世界とは違うから干渉したことにはならないだろうし。
イクス
ロンドリーネダオスの真意……。
イクス……えっと、うん。俺はそれでいいと思う。ただクレスたちはそれで構わないかな ?
クレスみんな――いいね。
チェスターああ。あいつを叩けるならな。
アーチェこんな形でダオスと戦うことになるなんてね。
すず私の覚悟は決まっています。
クラース無論、私もだ。
ミントクレスさん、行きましょう。
クレスああ。そして僕たちは今度こそ、ダオスを――倒す !

キャラクター5話【11-6 アトワイト】
早朝。
イクス遅くなってすみません ! ミリーナから連絡は ?
リフィルお帰りなさい、イクス。残念ながらまだ連絡はないわ。すでにスレイたちを中心にして、アセリア領の外周部から順次捜索を開始してもらっているところよ。
フィリップこちらも救世軍の地上部隊をアセリア領での捜索にあたらせています。捜索地図を共有しましょう。
リフィルええ、お願いするわ。
クレスイクス、僕らは世界樹ユグドラシルからミリーナを捜そう。
ミント私たちも協力します。
イクスごめん、みんな……。ミリーナのことでこんな迷惑をかけてしまって……。
クラースイクスが謝ることじゃない。何でも背負いすぎるのは感心しないな。
ロンドリーネそうよ。謝りたいのは私の方。今回の件は、私の責任でもあると思うから……。だからそんな顔しないでよ。
コーキス………………。
チェスターところでイクス、お前大丈夫か ? 顔色が悪いぞ。
アーチェこの数日ろくに寝てないでしょ。あたしたちだけで行こうか ?
すず極度の疲労は判断力を鈍らせます。無理は禁物です。
コーキス……そうだよ、マスター。ケリュケイオンの中でも結局ほとんど寝てなかったし、ミリーナ様は俺が代わりに見つけるから、マスターは少し休めよ。
イクスいや、大丈夫。一緒に行かせてくれ。
コーキス……大丈夫じゃないよ。
イクスそんなことないよ、大丈夫――
コーキス大丈夫じゃねぇっつってんだろ !
一同! !
コーキスマスターは俺が鏡精だってこと忘れてるんじゃねーのか ! ?
コーキス俺はマスターが何を考えてるかはわかんねーけど感じてることは何となくわかるんだよ !
コーキスなんか超苦しんでるだろ ! ? つらいんだろ ! ?何で隠すんだよ ! ? 大丈夫大丈夫って全然大丈夫じゃねーじゃん ! !
イクス………………。
コーキスマスターは休んでてくれよ。俺、ちゃんとミリーナ様を見つけるから。な ?
イクス……いや、俺も行く。
コーキスはあ ! ? 俺が信じられねぇのかよ ! ?
イクスそうじゃない。俺は……一応ミリーナの幼なじみだから。俺ならわかる手がかりがあるかも知れないだろ。
コーキスんなもの、魔鏡通信で見てもらえばいいだろ ! ?
イクス俺が行く。そう決めてるんだ。
コーキス……あー、そうかよ。勝手にしろ、石頭のクソマスター ! !俺はもう知らねーからなっ !
クレスコーキス !
クレス――イクス、いいのかい ?コーキスの言うことももっともだと思うけれど。
イクス……コーキスの気持ちはありがたいけど今は時間が惜しい。
フィリップイクス、待ってくれ。コーキスとちゃんと話した方がいい。
イクスあなたの知っているイクスならそうしたかも知れませんね。
フィリップ! !
イクス――とにかく、これ以上事態を放置してみんなに迷惑をかけることは避けたい。
イクス行こう、クレス。クラースさんも、チェスターもミントたちも……よろしくお願いします。
マーク……自分から空気悪くしといてそりゃねぇだろ、イクス。
イクス………………。
リフィル――はい、そこまで。
リフィルマーク、煽るのはよくないわ。イクス、あなたも少しいつもの冷静さを取り戻した方がいいわね。
リフィルとにかく、時間が惜しいと思うのなら協力して最善を尽くしましょう。
イクス……そう、ですね。すみません。今のは俺が悪かったです。
アトワイトイクスさん、コーキスさんのことは任せてもらえるかしら。あの子の気持ち、わかるような気がするの。後であなたと仲直りできるよう、少し話をしてみるわ。
イクス……すみません。アトワイトさんにもご迷惑をおかけして。
アトワイトいいのよ。それより体調が万全でないのは明らかだから気を付けてちょうだいね。
イクスはい、わかりました。
アトワイトここにいたのね、コーキスさん。
コーキス……マスターは ?
アトワイトミリーナさんを捜しに行ったわ。
コーキス………………。
アトワイトコーキスさん。あなたの言っていたことは正しいわ。イクスさんは明らかに無理をしている。彼を戦力に数えるのは愚策よ。
コーキスだったらどうしてマスターを止めてくれなかったんだよ ! ?
アトワイトあなたならどうかしら。
コーキスえ ?
アトワイトもしもイクスさんが行方不明なら、あなたは自分の体がどんな状態であろうと、イクスさんを捜しに行くでしょう?
コーキスそれは……俺はマスターの鏡精だから……。
アトワイト違うわ。鏡精だからじゃないの。大切な人に危機が迫れば、人は冷静ではいられない。イクスさんもそうなのよ。
アトワイトただ、私が彼を止めなかったのはそれだけが理由ではないけれど……。
コーキスえ ?
アトワイト一つは能力の問題。彼、かなりの記憶力の持ち主だそうね。
アトワイトそれに鏡士同士は、魔鏡通信機がなくても魔鏡で連絡が取れるとも聞いたわ。ミリーナさんを捜すのに、イクスさんの能力はとても有益よ。
コーキスそりゃ……マスターは頭いいし……強いし……。
アトワイトそしてもう一つ。イクスさんは明らかに何かを悩んでいる。あなたが指摘した通り。それは……恐らく自身に関わる何か重大なことなのでしょうね。
アトワイトだから、何かをせずにはいられない。動いていないと、余計なことを考えてしまう……そんなところじゃないかしら。
アトワイトそんな彼を止められるのは彼をよく知る人物だけだと思うの。
コーキスミリーナ様……。
アトワイトええ、そうよ。そしてコーキスさんあなたもイクスさんの理解者なの。近いからこそ、わかるからこそ、ぶつかってしまう。
コーキス…………うん。
アトワイト私もフィリップさんたちとミリーナさんを捜すつもりよ。いわば、イクスさんたちの後方支援ね。
アトワイトコーキスさん、あなたも一緒にどうかしら。あなたが手伝ってくれたら、イクスさんもきっと喜ぶわ。
コーキス……そうかな。
アトワイトええ、きっと。

キャラクター7話【11-9 ケリュケイオン】
アトワイトイクスさんたちは、何かミリーナさんの手がかりをつかんだのかしら。
マーク何かありゃ、連絡してくるとは思うが……。
コーキス……なぁ。
マーク……ああ、お前も感じてるのか。
コーキスやっぱ、なんかいるよな ? 昔、鏡映点が近くにいる時に感じたチキン肌みたいな……。うーん、もっと気持ち悪い感じの……。
マークああ。何なんだ、こいつは……。
アトワイトそれは、鏡精独特の感覚なのかしら。フィリップさん、何か思い当たることはある ?
フィリップいや……。鏡精が反応するとしたらキラル分子に関わるもの……ぐらいかな。それも幼体でないと、さほどではないと思う。
クラトス――マークとコーキスが察しているものかはわからぬがここから北東の方角で、何者かが戦っているようだ。
ゼロスおっと、天使様はさすがお耳の具合がよろしくていらっしゃる。いや、それとも視力の方かな ?
クラトス神子も天使化すれば、すぐにわかる筈だが ?
ゼロス必要に迫られなきゃ、あんなものはご免だってーの。
コーキスクラトス様、誰が戦ってるかわかるか ?まさかマスターたちってことは……。
クラトス……いや、私の記憶が確かならあれはダオス、という者に似ているようだ。
マークおっと……そう来たか。
アトワイト行ってみましょう。ミリーナさんの姿を見ているかも知れない。
ダオス――テトラシャドウ。
アトワイトな、何…… ! ? あれは魔物なの ?
フィリップま……さか…… ?
マーク……うちの大将に思い当たる節がありそうだが今はあのイケメンのフォローが先だ。各自、宜しく頼むぜ !
ゼロス……何だったんだ。今の敵は。なんつーか……手応えがまるで感じられなかったぞ。
コーキスあいつらだ……。俺が感じてた、あの嫌な感じを発してたのは。
フィリップ(やっぱりアレは……)
ダオス……鏡精が二人。お前たちも鏡士か ?
コーキスえ ! ? 俺たちが鏡精って、どうしてわかるんだ ! ?
ダオス質問しているのは私だ。
コーキスな、何 ! ?
アトワイトコーキスさん。怒りに身を任せてはいけないわ。冷静に。
コーキス……うぅ。
アトワイト確かに鏡士も一緒にいるわ。あなたは……ダオス、よね ?
ダオス何故、私を知っている。黒衣の鏡士の仲間か ?
コーキスミリーナ様を知ってるんだな ! ?
ダオスそうか……。あの女を捜しに来たのだな。
コーキスもう、何なんだよ ! 人の話を聞けよ !ミリーナ様はどこにいるんだ ! ?
ダオス――招かれざる客が来たようだ。どうせお前たちの仲間だろう。あの女もいずれ見つかる。
フィリップ招かれざる客 ? イクスたちか…… ?
ダオス……そのモノクルは魔鏡だな。貴様が鏡士か。
フィリップ
ダオスお前なら知っているか ?この地獄から抜け出す方法を。
フィリップない。ここは閉じた世界だ。外側からは観測することすらできない。……本来なら。
ダオス――やはりあるのだな ! この世界から逃れる方法が !
全員! ?
フィリップ期待をさせたなら謝る。鏡映点が元の世界に戻る確率は限りなくゼロに近い。
フィリップだが、ゼロだとは言い切れない。
フィリップこの世界には壁がある。外からの干渉を防ぐ次元の壁――ティル・ナ・ノーグの内側から見れば外へ出るために超えなければならない壁だ。
フィリップだが、この壁は何度か崩壊しかけている。
クラトスその壁というのはアイギスのことか。
フィリップそう、虚無から世界を守る壁だ。今、この壁には小さな傷がある。それを塞いで守っているのがゲフィオンだ。
フィリップ壁がなければ、この世界は滅ぶ。その時なら――鏡映点も異世界に帰れるかもしれない。
ダオスこの世界を壊せばいいということか。
コーキスそんな ! ?
フィリップただし、この世界が滅ぶ時には当然、この世界の人間も、鏡映点も共に滅ぶ。
ダオス滅びる前に脱出すればいい。
フィリップ賭けてみるかい ?たった一度の命を賭けたチャンスに。
フィリップ成功しても必ず戻れるという保証はない。よしんば戻れたとして、具現化された存在が元の存在と融合することはできない。
フィリップ具現化はこの世界の仕組みによって成り立っている。違う世界に行けば、消えるか、自壊するか或いは異物となって元の世界をも消滅させるかだ。
フィリップそれより何より、学術的にゼロと言い切れないだけで計算上はこの世界の終わりと共に鏡映点も終わる。故に、戻ることは不可能だ。
ダオスそれでも万一望みがあるなら、私はこの世界を滅ぼす !そうすればこの世界に具現化された世界樹から大いなる実りを運び出せる…… !
マークどうやって ?
ダオス何 ?
マークどうやって世界を滅ぼして、どうやって滅びきる前に次元の壁の穴を見つけ、どうやって死の砂嵐や虚無を超えて、どうやって元の世界を見つけるんだ。
マークその方法が見つからなけりゃ世界を滅ぼす意味がない。あんたは意味のないことをする馬鹿には見えないがねぇ。
ダオス………………。
マーク戻りたきゃ――世界を滅ぼしたきゃ今は鏡士とこの世界を守っておいた方がいい。あんたの疑問に答えを出せるのは鏡士だけだ。違うか ?
ダオス――よく喋る男だ。
コーキスあ、おい ! ミリーナ様は――
コーキス……って、いなくなっちまった。どうする ? あいつ、ミリーナ様の行方を知ってるみたいだったけど……。
アトワイトダオスが言っていたわね。招かれざる客が来たって。
クラトスああ。それが本当に我々の仲間なら、捜索隊の誰かがダオス城に侵入したのだろう。
クラトスダオス城の仕掛けのことを考えればそれはデリス・エンブレムを持つ者でしかあり得ない。
アトワイト確かクレスさんたちはデリス・エンブレムを持っているんだったわね。
クラトスあとは私とマーテルとミトスも持っている。クレスたちの物とは違うが、構造はよく似ており同等の働きをするだろうとジェイドが言っていた。
クラトスそれにラタトスクならデリス・エンブレムは必要がないとも聞いている。
マーク確かミトスたちも、こっちの大陸に来てるんだったな。シンクに連絡を取ってみるか。
フィリップ………………。
マークおい、フィル ? 聞いてたか ?
フィリップ――え ? あ、ああ……。うん、そうだね。頼むよ。マーク。
フィリップ(ダオスにはああ言ったけどもしさっき戦ったのが本当に【死鏡精】ならダオスがどうこうする前に世界は消滅しかねない……)
フィリップ(でも【死鏡精】に関してはミリーナの方が詳しかった。どうすれば――)
コーキス……なぁ、凄い怖い顔してるけど、何かあったのか ?
フィリップあ……ああ……。すまない、大丈夫だよ。
コーキス鏡士はみんなそんな風に言うんだな。
フィリップコーキス……。ごめんよ。イクスが悩んでいるのは僕のせいだ。僕があまりに……自分本位だったから。
フィリップ償いはする。だからコーキス、どうかイクスを支えてあげてくれ。
フィリップ僕の知っている最初のイクスに鏡精はいなかった。君だけが――今のイクスが、唯一無二のイクスであるという証なんだよ。
コーキス……はぁ ? 鏡士はみんな難しいこと言うなぁ。俺、馬鹿なんだからもっとわかりやすく言ってくれよ。
マーク――馬鹿自慢してるところだが、朗報だぞ。丁度向こうから連絡が来た。ミリーナが見つかったそうだ。
全員! !

キャラクター8話【11-11 ダオス城2】
イクス暗くて……冷たい……。虚無が近づいてくる……。
イクス万華鏡の裂け目を塞がないと……。……でも、力がどんどん拡散して……。
ゲフィオン(イクス……。イクス、無理をしてはダメ。そのままではあなたの力が虚無に吸い取られてしまう…… !)
イクスく……っ。死の砂嵐からの悲鳴がうるさくて……集中できない……。それにこの痛み……。
ゲフィオン(届かない……。イクスに私の声が……。どうすればいいの。イクス、気付いて !)
ミリーナ(これはゲフィオンの記憶……。私……また夢を見ているのね……)
? ? ?こっちです ! ミリーナさまはこっちにいます !
? ? ?いたよ ! イクスくん !
? ? ?気を失ってる……。でも怪我はしてないみたい……。
? ? ?ミリーナ ! ? 大丈夫か ! ?
ミリーナ(この声は…………)
ミリーナ――イクス ! ?
イクスミリーナ ! よかった……目が覚めたんだな !
ミリーナイクス…… ! カーリャ !それに……コンウェイさんとロディも…… ?ここは……。
コンウェイここはダオス城だよ。何があったのか聞きたいのはこちらの方なんだけれど、覚えているかな ?
ミリーナあ……そうだわ。あの人が……ダオスが助けてくれたのよ。
イクスえ ? ダオスにさらわれたんじゃないのか ?
カーリャそうですよ ! あのイケメンカーリャに魔術を使ってきましたよ ! ?ミリーナさま、洗脳されてるんじゃないですか ! ?
ロンドリーネちょっと、カーリャ ! ?ダオスはそんなことしないよ ! ?
ミリーナ確かにダオスは私とカーリャを襲ってきたけれど……あれは、妙な魔物から逃げるためだったらしいの。
イクス……ダオスは元の世界に戻る方法を探してミリーナに接触してきたのか。
ミリーナええ。その後で、またダオスが『アヤカシ』と呼んだ敵が襲ってきて……。私も戦ったんだけれど襲われて気を失ってしまったの。
カーリャ……あれ ? でも気絶してたならあの血の跡はどうやって残したんですか ?
ミリーナ血の跡 ? 私、怪我なんてしていないけれど……。
ロンドリーネえ ?だったら森の狩猟小屋から続いてた、あの血痕は…… ?
コンウェイミリーナさんでないなら残るはダオスってことになるね。
イクス……もしかして、カーリャが捜しに来られるように目印を残してくれたのかな ?
カーリャええ ! ? そんな親切な人なんですか ! ?
イクス親切な人かどうかはわからないけどでもそうとしか考えられないよ。
ロンドリーネダオス……。
コンウェイイクスくんの言った通りダオスにはミリーナさんをさらう理由があった……ということだね。
ミリーナ……あの、ごめんなさい。私が軽率だったからアジトのみんなにも迷惑をかけてしまって……。
コンウェイああ、それはそうだね。安全な場所だったとはいえ、少し軽はずみだった。
ミリーナええ。反省します。
ロンドリーネあんまりミリーナをせめないでよ。悪気があった訳じゃないし……。軽率って意味では、私も同罪だからさ。
ロンドリーネそれよりミリーナも見つかったし早くクレスたちに連絡を取った方がいいと思うんだけど。
イクスそうだな。ちょっと待ってくれ――
イクス……ダメだ。クレスたちからの応答がない。
ロンドリーネ……もしかしたらクレスたちもうダオスと戦ってるのかも。
イクスだったら、直接知らせに行こう !ミリーナの件は誤解だったんだしもしかしたら話し合えるかも知れな……――
イクスあ……れ…… ?
カーリャイクスさま ! ? ふらついてますよ ! ?
ラタトスクフン……。大方、ミリーナが見つかったんで気が抜けたんだろうよ。
ミトス人間のくせに不眠不休で動くからこういうことになるんだよ。
イクスラタトスクとミトス ! ?それにジーニアスとシンクも……。どうしてここに…… ?
ジーニアスジェイドさんから聞いてない ?テセアラ領から直接ミリーナを捜しに来たんだ。
ミリーナえ ! ? 私を…… ! ?
ミトス……ボクのせいで死なれたら迷惑だからね。見つかったならそれでいいよ。
ミトスねぇ、クレスたちに知らせに行くんでしょう ?イクスとミリーナとカーリャはこっちで引き受けるけど ?
ミトス幸い救世軍もこっちに混じってるし、戦力は十分だよ。
コンウェイ墜ちた勇者が魔王の城にいる……か。面白いね。まさかこんな場面に遭遇するなんて。
ミトス……何 ?
コンウェイいいや。異世界も捨てた物じゃないと思ってね。ロディさん、行こうか。
ロンドリーネうん、急ごう。ミトス、シンクジーニアス、ラタトスク、ありがとう !
ミトス――さて、弱った人間を二人も運ぶのは面倒だね。救世軍さん。
シンクうるさいよ。今、マークに連絡してるところだ。
マークおっと、こっちから連絡しようと思ってたところだ。ナイスタイミングだぜ、シンク。
シンクそっちの用事はどうでもいい。人騒がせな鏡士が見つかったよ。殺す ? それとも殺してから死体を持って帰る ?
マークおいおい、そういう冗談はやめてくれよ。生かして連れ帰るに決まってるだろ。ちょっと待っててくれ。
マーク――馬鹿自慢してるところだが、朗報だぞ。丁度向こうから連絡が来た。ミリーナが見つかったそうだ。
マークシンクたちが見つけてくれたらしい。
コーキス本当か ! ?
イクスコーキス ! ?
コーキスマスター ! ? え ! ?なんでシンク様たちとマスターが一緒に…… ?
コーキス……っていうか、マスターなんで座り込んでるんだ ! ?まさか倒れたのか ! ?
カーリャコーキス ! うるさいですよ ! !もうちょっと落ち着きなさい。まだまだ子供ですね、コーキスは。
イクスカーリャ、その辺にしてやってくれ。俺が悪いんだ。コーキスに心配かけちゃってあんなに忠告されたのに、このザマだからな。
ミリーナどうしたの ?イクスもコーキスも……何かあったの ?
コーキスそれは……その……。
イクスコーキス。俺が悪かったよ。意地を張りすぎた。お前に甘えちゃったんだな。
コーキスマスター……。
アトワイトコーキスさん、あなたも一緒にどうかしら。あなたが手伝ってくれたら、イクスさんもきっと喜ぶわ。
フィリップ償いはする。だからコーキス、どうかイクスを支えてあげてくれ。
フィリップ僕の知っている最初のイクスに鏡精はいなかった。君だけが――今のイクスが、唯一無二のイクスであるという証なんだよ。
コーキスしょ……しょうがねぇな。今回だけだからな、許してやるのは。
イクスありがとう、コーキス。
シンクそろそろいい ?ケリュケイオンを城の近くまで寄せて欲しいんだけど。
コーキスあ、悪い……。マーク、聞こえたか ?
マークはいはい、聞こえてるよ。こっちも城の前まで行くから、そこで落ち合おう。頼むぞ、シンク。
ミントダオスの姿が見えませんね……。
すずここにはいないのでしょうか。
クレスダオス ! !
ダオス勝手に忍び込んでおいて、図々しいものだな。
クレスやっぱりお前もこの世界に具現化されていたんだな。
ダオスふふふ……それはこちらの台詞だ。この世界でもお前たちと顔を合わせることになるとはな。
アーチェミリーナは一緒じゃないんだね。
ダオスあの女か……。
ミントダオス、どうしてミリーナさんをさらったのですか ?
ダオスそんなことを聞いてどうする。この異世界に殉じるつもりの貴様たちには意味のないことよ。
チェスターはぐらかすな !元の世界でお前がやってきたことを考えればどうせろくでもない理由に決まってる !
クレス……ミリーナが何をしたっていうんだ。何故罪のない人々を苦しめようとするんだ !この世界でも、元の世界でも !
ダオス――罪のない、だと ?
チェスターそうだ ! アミィには……何の罪もなかった !
チェスターアミィだけじゃねぇ !みんな、虫けらみたいに殺された !俺はお前を許さねぇ ! !
ダオス貴様らに許される筋合いなどない !愚かな下等生命体め ! !その非礼、その命を持って贖うがいい ! !
クラース――クレス !これ以上は無理だ。戦わざるを得まい !
チェスター構うもんかよ ! ここで決着を付けるんだ !
アーチェ馬鹿! イクスたちとの約束はどうすんのよ !
すず――来ます !

キャラクター9話【11-12 ダオス城3】
クレスや、やったのか ?
クラースいや、まだだ !
ダオスふはははは……。下等な生命体がここまでやるとは思わなんだぞ。
ダオスこの世界においてもはや貴様たちが私に刃向かう意味はないだろうに。それほどまでに死にたいか。
クレス意味ならある !僕は――トーティス村のみんなやミッドガルズのみんなのためにお前を倒す !
ダオス……良かろう。ならば私も全身全霊を賭して戦おうではないか ! !
クレスて、手加減していたっていうのか ! ?
ミント――待って下さい !
ダオス……この期に及んで命乞いか ?
ミントあなたに、聞きたいことがあります。前にあなたは、私たちとは戦う理由がないと言いました……。
ミント何故、ですか ?
クレスミント ! ?
アーチェクレス、これ以上続けたらもう最後まで行くしかなくなっちゃう。それじゃあ、イクスたちとの話が無駄になるじゃん。
ダオス……………………。
ダオスそれは……お前たちが魔科学に関わる者ではないからだ。
ミント何故、魔科学はいけないのですか ?
ダオス魔科学はマナの力をことごとく使い果たしてしまうからだ ! ! 私は、魔科学を使う人間を抹殺しなければならなかった !
クラース何故、そうまでして魔科学を否定する ?確かに魔科学の力はすさまじいものだ……。
クラースだが、人間も愚かではない !もう世界樹が枯れるようなことはしない !
ダオス本当にそう思うのか ?私がミッドガルズをほろぼさねばお前たちの星の世界樹はなかったのだぞ。
クレスそうまでして、何故ユグドラシルを守る ! ?この世界では、ユグドラシルの写真を撮っていただけのミリーナまでさらって、カーリャを傷つけた。
クレスお前の望みは何なんだ ?
ダオス私にはマナが必要なのだ。だが、その理由を貴様らに話したところで理解できまい。
チェスター分かりたくもねぇ !いまさら、言い訳なんか聞かねえぜ !
ダオスははははは !なぜ私が弁解せねばならぬのだ ?
ロンドリーネ待って、ダオス !
ダオス………………。
ロンドリーネダオス、もうこんなこと止めよう。私たちが戦う理由なんてないんだ。
ダオス……誰だ、貴様は ?
ロンドリーネ……そうか。あんたもクレスたちと同じで私のことを知らないダオスなんだね……。
ロンドリーネでも、私は知ってるんだよ、ダオス。故郷の星を救おうとした、あんたのことをね。
クレス故郷の星 ? 一体なにを言っているんだ、ロディ ?
コンウェイ何とか間に合ったみたいだね。ミリーナさんはイクスくんと救世軍で外へ運び出したよ。
ダオス黒衣の鏡士を連れ戻しに来たのか。……だが、あの者の知識の中には欠落があった。私にはもう、用がない。好きにするがいい。
コンウェイダオス。この世界のユグドラシルが、大いなる実りを生み出すかどうかわからない。生み出したところでそれを持ち帰る術がわからない。
コンウェイミリーナさんの中のゲフィオンの知識を求めたのはその為じゃないのかな ?
クレス大いなる実り…… ?それはロイドの世界の大樹の種子のことか ?マナの塊だっていう……。
ダオス何故貴様らが大いなる実りのことを知っている ! ?
コンウェイそこはさして重要なことじゃない。ここにいるクレスくんは、あなたが元の世界で戦っていたクレスくんより、さらに知識があるんだ。
コンウェイそして、あなたのやろうとしてきたことの真意を知る人もいる。
ロンドリーネユグドラシルが大いなる実りを生み出してくれればダオスはそれをデリス・カーラーン――故郷の星に持ち帰ることができる。
ロンドリーネそうすればダオスの故郷は救われるんだ。ダオスはずっと、ユグドラシルを守るために戦っていたんだよ。
ロンドリーネそれが、多くの命を救いたかったダオスの願いであり使命だったんだ。
クレス命を救う……ダオスが……。
ミントだから、私たちとは戦う理由がないと……。
ダオス私を待ち望んでいる民のためにも……私は大いなる実りを手に入れこの閉ざされた牢獄から逃れねばならぬのだ !
ダオス絶対に邪魔はさせぬぞ !
チェスター何してんだ、クレス ! 武器を構えろ !
チェスターあいつが自分の故郷を救うためだったとしてどうしてオレたちの村が――世界が蹂躙されなきゃいけねぇんだよ !
クラースそうだ。クレス。私たちは間違ってなどいない。奴だって多くの人間を犠牲にしているんだ。
クラースダオスは、己の信じる正義のために戦っている。だが、私たちにも譲れないものがある。守るべき人々がいる。
クラース……違うか ?
クレス………………。
クレスダオスは倒すべき敵だ。何を聞いても、どこまで行っても、それは変わらない。
クレスただ、僕らとダオスはもっと違う時間で、違う形で出会っていれば、もしかしたら協力し合うことができたんじゃないかって……。
チェスタークレス……。
クレス……ここでダオスを倒したら、僕たちこそがダオスの故郷の魔王になってしまうんじゃないか。
クレスできることなら、僕は僕たちの星も、ダオスの故郷もこのティル・ナ・ノーグも救いたい。それが……僕の旅の進む道だと思えるんだ。
ダオス母なる星を……デリス・カーラーンを救うだと ?下等生命体である貴様らが ?
ロンドリーネでもダオスはその下等生命体の星に――そこにある世界樹ユグドラシルに救いを求めにきたんだよね。
ロンドリーネクレスたちはわかってるよ。ユグドラシルをきっと守ってくれる ! あんたが大いなる実りを持ち帰ることも邪魔はしないはずさ。
コンウェイ……そうだね。その点は、ボクも保証するよ。まぁ、初対面の人間が保証したところで気高い王には何の意味もないだろうけれど。
コンウェイでも王の器の持ち主なら……相手の器もわかるんじゃないかな ?
ダオス………………。
ダオス――去れ。少なくとも我が目的を邪魔立てしない限りは貴様たちと争うつもりはない。
クレス――ダオス、一つだけ約束しろ。この世界では、もう誰も傷つけないと。
クレスそして、いつか全てを救う道筋を見つけ出したときはお前と決着をつける。
ダオス……好きにしろ。
クレス――行こう、みんな。
ロンドリーネ……ダオス。あんたが私を知っている世界のあんたじゃなくて、少し残念だよ。でも……これ以上敵対しなくていいのは……すごく嬉しいんだ。
ロンドリーネおかしな女だと思うだろうけどまた会えるのを楽しみにしてるから。
ロンドリーネだから覚えておいて。私……このロンドリーネのことを。
コンウェイ……やれやれ、なんとか危機は脱したようだね。
ロンドリーネクレスたちは ?
ミリーナ先にケリュケイオンに乗ったわ。
ミリーナクレスさんたちには伝えたけれど改めて二人にもお礼を言わないとね。助けてくれて本当にありがとう。
ロンドリーネ私は何もしてないよ。気にしないで。
イクス……なぁ、コンウェイ。さっき教えてくれたダオスの話が本当だとしてどうして、それを知ってるんだ ?
コンウェイイクスくん、悪いけど、今はこれ以上のことを話すつもりはないよ。いずれ、その内に、ね。
ミリーナクレスさんたちとダオス……。大丈夫かしら。フィルがマークなら上手く取りなしてくれるって言っていたけれど。
コンウェイ……そうだね。まぁ、大丈夫じゃないかな。クレスくんが伝説の勇者になって魔王を退治するのは――違う世界の物語さ。
コンウェイこの世界の人の心に潜む『悪』が芽を出さない限り彼が『魔王』になることはないからね。
イクス何だかまるでコンウェイはクレスの世界のことを知ってるみたいな口ぶりだな。
イクス……なぁ、俺、余計なことを言ったのかな ?ダオスの真意は何か……なんて。
イクスクレスたちに余計なことを言わなければクレスたちが何も知らなければ……ダオスを……。
イクス(何も知らなければ……。俺も何も知らないままだったら……こんな気持ちには……)
ミリーナそうね。何も知らなければ復讐を果たすことができた。でも私……いえ、ゲフィオンがそうだったようにその後で、また別の悩みを背負っていたかも知れない。
ミリーナそれにロディは止めたいと思っていたんでしょう?何が正解かはわからない。でも人は……それでも前に進むしかないのよ。
ロンドリーネ……うん。
イクス………………。
カーリャイクスさま ?
イクス……ごめん。何だかひどく疲れて……。
コンウェイイクスくんはいい加減休んだほうがいいね。コーキスくんがまた怒り出すよ。
イクスああ、そうさせてもらうよ。ごめん……。限界だから先に戻らせてもらう……。
ミリーナイクス……本当に疲れているだけかしら……。心配だわ……。
ロンドリーネそれはミリーナもだよ。アヤカシとやらに襲われたから念のため精密検査をした方がいいってフィリップが言ってた。
ミリーナ私は平気なのに……。
カーリャミリーナさまもイクスさまももう少し自分を大事にしないといけませんね。
コンウェイフフ、ミリーナさんとイクスくんは無茶なところがそっくりだね。
ミリーナ……ごめんなさい。反省します。

キャラクター10話【11-13 ダオス城4】
ダオス……鏡精か。貴様の仲間は帰ったぞ。今更何をしに来た。
マーク黒衣の鏡士からの伝言。一人目の自分が原因でデリス・カーラーンを滅ぼす罪まで背負うのは寝覚めが悪いから、協力させて欲しい、とさ。
ダオス……元の世界にいる本当の私が大いなる実りを持ち帰る筈だ。私はそれを確認できればいい。ただ――
マーク何かの時のためのスペアは確保しておきたいんだろ。わかるさ。
マークところでうちの親分は、ゲフィオンと一緒に異世界からの具現化技術を完成させた人間だ。
マークこっちにつけ、とは言わない。普段はこの城にいてもいい。でもまぁ、よければ救世軍の方にも顔出してくれよ。別荘感覚でな。
ダオス……何故ことさらに軽薄を取り繕うのだ、鏡精。
マークこんなこといかれてるって思うからだよ。それでもうちの親分は、ゲフィオンのためにこの世界を救いたいんだ。
マークだったらいかれてようが望みを叶えてやるしかねぇだろ。
マークあんたは誇り高い一匹狼だ。鎖に繋ぐつもりはない。
マークだがこっちにも、デリス・カーラーンの関係者やら大いなる実りに詳しい奴やらがいる。利用してくれて構わないんだぜ。
ダオス……お前も去れ、鏡精。必要とあらば、立ち寄ってやらぬこともない。
マークそいつはよかった。……救われてるといいな……あんたの故郷。
ダオスいらぬ気遣いだ。
マークだな。それじゃあ、失礼するぜ、ダオス陛下。
マーク………… ?
? ? ?久しぶりですね、マーク……。
マーク……な……何で…… ?
? ? ?相変わらずの間抜け顔ですね。
マークパイセン…… ! ?
? ? ?そういう軽薄な呼び方はやめなさい。本当に、いつまでも子供なんですから。
マークマジかよ……カーリャ先輩 ! 何でこんなところに ! ?
カーリャ・Nこんなところというのは失礼ですよ、マーク。
カーリャ・N小さなミリーナ様を助けて下さってありがとうございます。
ダオス別に助けたつもりはない。聞くべきことを聞くまで生きていてもらう必要があっただけだ。
ダオス……無駄であったがな。
カーリャ・N小さなミリーナ様に記憶の共有はなかったのですね。
ダオスあの者の記憶は欠落している。
カーリャ・Nミリーナ様が私を切り離したから……ですね。
マーク……それだけじゃないみたいだけどな。パイセンは知らねぇだろ。二人目のミリーナがどうやって具現化されたのか。
カーリャ・Nどうやって…… ? それはどう言う意味ですか ?
マーク……フィルに聞いてくれ。パイセンになら、フィルも話すだろ。
カーリャ・N………………。
ダオス……貴様は何故ここに来た ?
カーリャ・Nセールンドの人体万華鏡が崩壊しかかっています。魔鏡の護符によって一時的に食い止めましたが……。
ダオス私が訪れた時に反応していた、あの鏡か。
カーリャ・Nあれはミリーナ様――人体万華鏡を護ろうと、侵入者を検知するために設置したものですが、小さいフィル様にご協力頂いて、封印強化に転用したんです。
マーク小さいフィル……ってジュニアのことか ! ?何であいつがセールンドに……。
カーリャ・Nマーク。人の話に割り込んではいけません。
マーク……はいはい、すみませんね。パイセン。
カーリャ・N――話を戻します。
カーリャ・N原因はまだわかりませんが、虚無に漂う死の砂嵐がうねりだしたと聞いています。それが人体万華鏡に何か影響を及ぼしたのかも知れません。
ダオスカーリャ。そこの鏡精が何か知っているようだぞ。
マーク――思い当たる節が二つほど。一つはテセアラ領の世界樹――大樹カーラーンの異常発達。
ダオスあの世界樹が異常発達している、だと ?
マークアセリア領の世界樹ユグドラシルにはその兆候がないみたいだな。それとも、この後何か起きるのか……。
ダオス………………。
カーリャ・Nもう一つというのは ?
マークちょっと長い話になるがこの場を借りて説明して構わないかい、ダオス陛下。帰れって言われたのに、長居することになっちまうが。
ダオス構わぬ。その軽口は気に入らぬがな。
マークこいつは失礼。今後は気を付ける。
マークさてと……それじゃあ始めようか。ダーナの心核と、この世界の成り立ちの話を。

キャラクター11話【11-14 ケリュケイオン1】
ミリーナもう、みんな大げさよ。私、本当に元気なのよ。私のことよりイクスの方が心配だわ……。
ミリーナそれに軽い気持ちで動いてみんなに迷惑をかけてしまったことが心苦しいの。ねぇ、何か私にできることはない ?
カーリャ駄目ですよぅ、ミリーナさま !今は大人しく寝ていて下さい。
フィリップああ、そうだよ、ミリーナ。それにきみがしっかり休まないとカーリャにも影響が出てしまう。違うかい ?
ミリーナ……それは……そうだけれど……。
コーキス申し訳ないって気持ちがあるなら、今は休んでそれから働いてくれればいい……ってマスターなら言うと思う。
コーキス……そういうマスターも、全然休んでくれないけどさ。
ミリーナコーキス。イクスとは仲直りしたんでしょう ?そんな顔しないで。
ミリーナイクスだってコーキスが心配してくれてることちゃんとわかっているわよ。ね ?
マーク――失礼するぜ……っておいおい、どうしたコーキス ?しょぼくれた顔して。
コーキスう、うるさいな ! マークには関係な――
コーキス……誰だ、その人 ?
フィリップカーリャ ! ?
カーリャな、なんですか ! ?カーリャはここにいますよ ! ?
カーリャ・N………… !
カーリャ・Nミリーナ様…… !
ミリーナ
カーリャ・Nフィル様……。本当に……成功させてしまったんですね……。
コーキスえ ? マスターたちの知り合いなのか ?
フィリップ彼女は――
カーリャ・N――いえ、フィル様。自分で説明します。初めまして、小さなミリーナ様。それに……イクス様の鏡精コーキスも。
カーリャ・N私はカーリャ。カーリャ・ネヴァン。最初のミリーナ様――ゲフィオン様の鏡精だった者です。
三人! ?
マークダオスに話をしにいったら、ばったり会っちまった。
カーリャ・Nそれはこちらの台詞です。
ミリーナカーリャ…… ? あなたが…… ?
カーリャ・Nよければ、私のことはネヴァンと呼んで下さい。ミリーナ――いえ、ゲフィオン様から切り離された後に自分で付けたファミリーネームです。
カーリャ・N小さなカーリャと混乱してしまいますから。
カーリャカーリャが成長するとこうなるんですか…… ?
カーリャ・Nええ、おそらくは。
カーリャ・Nダオス様のところで、マークからこれまでの話を聞かせてもらいました。そして、今世界がとてつもない危機に陥っていることを知った。
カーリャ・N私はなんとしてもこの世界を護らなければなりません。ですから、小さいミリーナ様とイクス様に協力したいのです。
コーキスそれは……。あなたが本当にゲフィオンの鏡精なら俺たちの知らないことをアドバイスしてくれるだろうし、きっとありがたいんだろうけど……。
ミリーナコーキス。大丈夫よ。マークが言うんだからこの人は確かにゲフィオンの鏡精なんだと思うわ。
フィリップああ。その点は僕も保証するよ。でもカーリャ……いや、ネヴァン。今まできみはどこで何をしていたんだい ?
カーリャ・Nゲフィオン様のお側に。人体万華鏡となったゲフィオン様を護りながら……助け出す手段を捜していました。
カーリャ・Nそれと、一つ訂正を。私はもう鏡精ではありません。鏡精であった者、です。
ミリーナどういうこと ?
カーリャ・N――ずるいですね、フィル様。それにマークも。ミリーナ様たちに何も教えていないなんて。
マーク……その話、今しちまうのか。
コーキスな、何で俺を見るんだよ ! ?
カーリャ・N鏡精は、マスターである鏡士から切り離されて独立することができます。
カーリャ・N成体となった鏡精は、マスターとの繋がりを断たれると人間という存在とほぼ同じになります。
三人! ?
コーキスだから……俺……あんなに切り離されるのが怖かった、のか ?
カーリャ・N切り離されるのが……怖い ?成体であるあなたにそんな感覚はない筈ですが……。もしかしたらまだ幼いのかも知れませんね。
コーキスな…… ! 馬鹿にするなよな !
カーリャ・Nふふ、ムキになるところがまだ幼い所以ですね。でも鏡精は本質的にマスターから切り離されることを嫌うものなので、気持ちはわかりますよ。
ミリーナねぇ、ネヴァン。あなた、ゲフィオンを助け出す手段を探していた……と言ったわよね。それは人体万華鏡から解放するってこと ?
カーリャ・Nはい。私はゲフィオン様とフィル様の計画に反対していました。だから……切り離されてしまったのですが……。
カーリャ・Nもちろんこうなった今でも反対しています。特にゲフィオン様があんな風に犠牲になることは。自己犠牲は罪を犯した者の自己満足に過ぎない。
カーリャ・N気持ちは痛いほどわかりますがそれでもとるべき手段ではない、と私は考えています。
カーリャ・Nゲフィオン様はもっと別の形で償う方法を考えられた筈ですから。イクス様が生きていたらきっと同じように仰ったと思います。
フィリップ………………。
カーリャ・N……すみません。つい、偉そうなことを言ってしまいました。
カーリャ・Nそれより、ゲフィオン様の人体万華鏡が崩壊の危機にあります。それを食い止めるためにも皆さんの力が必要なのです。
一同! ?
コーキス――ええっと、つまり、今は虚無に戻ったシドニー様が内側から封印を護りつつ、外側はネヴァンとジュニア様の二人で崩壊を食い止めているんだな。
コーキスでもジュニア様は何でセールンドにいたんだ ?
マークその辺りは、パイセン――ネヴァンパイセンが何も話しちゃくれないんだよ。ジュニアとの約束だって。
カーリャ・Nそれがゲフィオン様を救うことに繋がるのであれば……私は手段を選びませんから。
フィリップ……………………。
フィリップ――じゃあ、その話はいったん置いておこう。
フィリップマークは人体万華鏡の急激な変化――つまり虚無に漂う死の砂嵐の活性化は、大樹カーラーンの異常発達と関係があると思っているんだね。
マーク実際、タイミングが同じなんだから可能性は高いだろ ?それとダーナの心核が傷つけられたことも大きいな。
コーキス……そうか。今、ダーナの心核は魔の空域に移されてるんだよな。本来の場所から動かしてる上に壊れてて、ダーナの巫女も目を覚ましちゃって……。
コーキス全てが関係していてもおかしくない……のかも。
カーリャ・N大樹カーラーンというのは、異世界から具現化された樹ですよね。何か際立った特徴などはないのですか ?
ミリーナエミルとラタトスクから聞いた話だと本来はマナっていうエネルギーを生み出して世界中に循環させる機能があるらしいの。
ミリーナでも一度樹が枯れて、種子だけになったのをロイドたちが芽吹かせたんだそうよ。
ミリーナその辺りがロイドたちとエミルたちの間で認識がずれてるから、なんとも言えないんだけれど。
ミリーナエミルの世界とロイドの世界は同じ世界の過去と未来らしいの。それがキメラ結合して具現化されてしまったから……。
フィリップエネルギーの生産と循環……。
カーリャ・N――まるでキラル分子の生成と循環に似ていますね。
マーク確かに……。
フィリップ……やはり【死鏡精】か ?
コーキス【死鏡精】 ? なんだそれ ?
カーリャなんか凄く不吉なワードに聞こえるんですけど……。
カーリャ・N……小さなカーリャとコーキスには酷な話かも知れません。でも話さずには進められませんから、お伝えします。
フィリップカーリャ !
カーリャ・N【死鏡精】は文字通り死んだ鏡精の残滓。キラル分子生成の過程で犠牲になった鏡精の怨嗟が形となったものです。

キャラクター12話【11-15 ケリュケイオン2】
コーキス……は ? つまり……それって……。
カーリャ鏡精を殺してキラル分子を造ってるってことですか ! ?
ミリーナ嘘……。そんなの聞いてない……。
フィリップ……ああ、ミリーナはまだそこまで習っていない筈だよ。それに恐らく鏡精に関わる記憶はゲフィオンが切り離した筈だ。
フィリップカーリャ……ネヴァンを切り離した時にね。
カーリャ・N鏡士は鏡精を切り離す時に、鏡精に関する記憶も一緒に切り離します。そうしないと……何度も鏡精を生み出しては殺すことに耐えられませんから。
カーリャ・Nゲフィオン様はそれ以外にも、いくつかの記憶を私に預けていってしまいましたが……。
コーキス何度も生み出して、殺す…… ?
カーリャ・Nそれがセールンド王国のエネルギーシステムです。キラル分子を生み出す魔鏡機器はいくつか存在していましたが、鏡精を使ったシステムには勝てなかった。
カーリャ・N鏡精はキラル分子を大量に生み出す力がある。それを殺して取り出したキラル分子は、魔鏡機器が生み出す量の何百倍もあります。
カーリャ・Nこれでセールンド王国はエネルギー問題から開放されました。
コーキスそんな……それじゃあ俺たち鏡精は……ただの道具じゃないか。
ミリーナコーキス……。それは違うわ。コーキスは道具なんかじゃない。
ミリーナイクスがどれだけあなたを大切に思っているか……。あなたにもわかる筈よ。
コーキス…………うん。
ミリーナカーリャもよ。道具だなんて思わないで。あなたは私の大切な親友よ。あなたに何度救われたかわからないわ。
カーリャミリーナさまぁ…… ! !
ミリーナ……カーリャ。あなたを殺させはしない。あなたは私の大切な親友で、私の心の護り手なんだもの。あなたを殺すことは私が死ぬことだわ。
カーリャ・Nミリーナさま…… !
カーリャ・Nやっぱり小さいミリーナ様も同じようなことを言うんですね。少し……うらやましいです。
カーリャ・Nコーキスとカーリャにはつらい話をしてしまいました。すみません。でも【死鏡精】の問題はとても重要です。
カーリャ・N【死鏡精】は鏡精の墓場から生まれます。鏡精の墓場もまた、カレイドスコープによる世界の消滅で滅びた筈です。
カーリャ・Nということは、死の砂嵐の中に死鏡精の残滓も含まれている。そして死の砂嵐は、今活性化している。
フィリップデミトリアス陛下――いや、デミトリアスは光魔を呼びだしていた。きっと何らかの形で死の砂嵐にアクセスする方法を見つけたんだ。
フィリップ死鏡精の残滓……というのもそこから漏れ出ているんじゃないだろうか。
ミリーナそして【死鏡精】は、自らの生成システムに近い大樹カーラーンを住処にしている ?
フィリップ住処にしているだけならまだいいがそこで自己増殖している可能性もある。
フィリップそれがさらに世界に悪影響を及ぼしているのかもしれない。実際、【死鏡精】はセールンド王国でも駆除対象だった。ひどい話だけれどね。
コーキス……なぁ、フィル様。フィル様はビクエでえらかったんだろ ?
コーキスもしかして鏡精を殺してキラル分子を作るように命令してた側なんじゃないのか ?
マークだったら、俺がここにいる訳ねぇだろ。こいつは馬鹿でドジで救いようのないクズだが鏡精の敵じゃない。
マークカレイドスコープの研究は、鏡精システムを止める為でもあったんだ。――まぁ、兵器としてってところはフォローしきれないけどな。
ミリーナそう……だわ。カレイドスコープは対象物のアニマを抜き出し、カレイドスコープの中で反射を繰り返すことで消滅させる兵器。
ミリーナその際にキラル分子が生み出される。そもそもはイクスのご両親が遺した魔鏡とキラル分子の生成機がヒントになったのよ。
フィリップこれは伝聞だけれど、イクスのご両親も鏡精システムを嫌っていて、何とかそれに変わる物を生み出そうと研究していたそうだよ。
カーリャ・N【死鏡精】のことはもっと調べる必要がありますね。皆さんは浮遊島とかいうアジトに戻って下さい。私はもう少し【死鏡精】について――
カーリャ・N! !
マークお ? 今の荒々しい腹の虫は、でっかいパイセンか ?食いしん坊なところ全然変わってな――
カーリャ・Nだ、黙りなさい !後輩のくせに生意気ですよ、マーク !
カーリャ・N人間はお腹がすくんです !別に私が特別食いしん坊な訳じゃありませんから !
コーキスなーんだ。そういうとこやっぱカーリャパイセンのパイセンなんだな。
カーリャなんですか、そのパイセンのパイセンってのは ! ?
コーキスだって、パイセンより先に生まれてるんだからパイセンのパイセンじゃん。
カーリャむむ……。それはそうですね……。じゃあ先輩、カーリャのとっておきの飴玉を分けてあげますよ。先輩後輩のよしみで !
カーリャ・Nそ、それは……無碍にするのも悪いですから……頂いておきましょう。ありがとうございます。
カーリャ・Nべ、別にそこまでお腹はすいていませんが厚意はありがたく頂かなくては。
ミリーナそれだけじゃ足りないでしょう ?【死鏡精】のことを調べるのだとしてもいったん食事をとってからの方がいいわ。
マークそうだな。ネヴァンパイセン。食堂に案内する。ちっこいパイセンの飴はデザートにとっときな。
ミリーナコーキスも、何か食べた方がいいわ。あなただって疲れているでしょう ?
カーリャそうですよ。ミリーナ様にはカーリャもついてますし。
コーキスはい、わかりました。ミリーナ様。
マークおい、フィル。お前は ?
フィリップ僕は……いいよ。その……まだイクスに色々と伝えなきゃ行けないことがあるからちょっと図書室で頭を整理しておく。
フィリップイクスに……これ以上嘘はつきたくないから。
ミリーナ………嘘 ?
フィリップ……うん。この話は込み入っているからまた今度きちんと話すよ。今は体を休めることを優先してくれ。
ミリーナえ、ええ……。
マーク安心しろって。俺がちゃんと話をさせるさ。隠し事はさせねぇよ。
カーリャ・N……マークも案外信用なりませんけれど。
マークう……。痛いとこ突くなぁ、パイセン。
ミリーナねぇ、ネヴァン。食事の後でまたお話ししましょう ?色々聞かせて欲しいわ。ゲフィオンのこととか……。
カーリャ・N……いえ、食事を頂いた後は、すぐに出発します。やはり【死鏡精】のことは気になるので……。
ミリーナそう……。残念だわ……。
カーリャ・Nでも、調査が終わりしだいすぐに小さいミリーナ様の元にはせ参じます。その時には、どうかよろしくお願いします。
コーキス(【死鏡精】か……。なぁ、マスター。本当に……大丈夫なんだよな。俺、マスターのこと信頼してていいんだよな ? )
コーキス(マスターはゲフィオン様みたいに俺を……切り捨てないよな……)
キャラクター1話【12-1 アジト】
コーキスマスター ! 聞いたか ! ?パイセンのパイセンが戻ってくるらしいぜ !
イクスパイセンのパイセンって……ネヴァンか !
イクスそうか、やっとちゃんと会えるんだな……。俺、ネヴァンとは彼女が【死鏡精】の調査に出かける前、少し挨拶しただけだったからさ。
コーキスあの時のマスター……ボロボロだったからな。今は無理してねぇだろうな ?
イクスはは……。ごめんな、コーキス。大丈夫だよ。あれからゆっくり眠ったし、少し時間ができた時に海に行ったり、花火を楽しんだり……。
イクスけっこうリフレッシュしたからさ。
コーキス……なら、いいんだ。
コーキス(また、嘘だ。マスター、夜も寝てないことが多いしネヴァンパイセンがいなくなった後、フィル様と何か話してたのに、そのことも隠してるし……)
アトワイトそしてもう一つ。イクスさんは明らかに何かを悩んでいる。あなたが指摘した通り。それは……恐らく自身に関わる何か重大なことなのでしょうね。
アトワイトだから、何かをせずにはいられない。動いていないと、余計なことを考えてしまう……そんなところじゃないかしら。
アトワイトそんな彼を止められるのは彼をよく知る人物だけだと思うの。
コーキスミリーナ様……。
アトワイトええ、そうよ。そしてコーキスさんあなたもイクスさんの理解者なの。近いからこそ、わかるからこそ、ぶつかってしまう。
コーキス(アトワイト様……。俺、マスターがわかんねぇよ……)
イクスコーキス、どうした ?元気がないけど……。
コーキスな、何でもないよ。それより、早くパイセンのパイセンを迎えに行ってやろうぜ。
カーリャ・Nただいま戻りました。小さいミリーナ様。
ミリーナカーリャ……じゃなくて、ネヴァン !お帰りなさい ! 無事で何よりだわ !
カーリャ先輩、お帰りなさい !おやつを用意して待ってましたよ !
カーリャ・Nおやつ…… !
カーリャ・N――コホン。おやつはともかく……。【死鏡精】に関しての調査は今できる範囲のことを行なってきました。
カーリャ・Nただ……その、世界の殆どが消えた状態で中々手がかりを得られず、行き詰まっている状態です。
カーリャ・Nできれば小さいミリーナ様やイクス様のお知恵も拝借したいと思っています。
イクスもちろんだよ、ネヴァン !
カーリャ・Nイ……イクス様 ! ?
イクスお帰り、ネヴァン。君が帰ってくるのを待ってたよ。
カーリャ・N! !
カーリャ・Nあ、ありがとう……ございます。
イクス死鏡精の話も重要だけど、まずはカーリャの用意してくれたおやつを食べながら休んだ方がいいよ。
カーリャそうですよ !
カーリャ・Nは、はい……。イクス様がそう仰るなら……。
ミリーナふふ♪そうと決まったら、みんなでお茶にしましょう !
コーキス俺、ネヴァンパイセンの荷物を持つよ。
カーリャ・Nあ、ありがとうございます、コーキス。
コーキスパイセンのパイセンは俺のパイセンでもあるからな。
カーリャ・Nパイセン……。はぁ……ここにもマークの良くない影響が出ているんですね……。

キャラクター2話【12-2 アスガルド城1】
ジュニアお願い、今度こそ成功しますように…… !
ジュニアっ ! ! 今のは…… !
ジュニアナーザ将軍、聞こえますか ?イクスの体には入れたんですか ?
ナーザ……駄目だ。まだ人工心核の中にいる。
ジュニアまた失敗……。どうして……。
ナーザ俺にもわからぬ。前回は何も知らぬままリビングドールになっていたからな。
ジュニア……そうでしたね。
ジュニア(前回と違うのは、ナーザ将軍の意識がはっきりしているということだけど……)
ジュニア(もしかしたら無意識下で、イクスの体を使うことに抵抗しているのかもしれない)
ジュニア(……もともとナーザ将軍は死者が生者の世界に関与することに否定的な人だった)
ジュニア(メルクリアのためだと理解していても心が受け入れられないのだとしたら肉体への移動なんて上手くいく筈がない)
ジュニア(ナーザ将軍、あなたの高潔さが裏目に出てしまうなんて……)
グラスティン小さなフィリーップ、ご主人様のお帰りだぞ。
ジュニア! !(この心核だけは見つからないようにしなくちゃ……)
グラスティンヒヒヒ、どうした ?早く顔を見せてくれよぉ。
ジュニア待って、すぐに行くから。
グラスティン小さなフィリップ、今日もいい子で待っていたな。
デミトリアスやあ、ジュニア。息災かね。
ジュニア……はい。
グラスティンククッ、そりゃ息災だろうよ。ここしばらくは俺の下で大人しくしているからなぁ ?
デミトリアスなるほど。どうりできみの機嫌がいいわけだ。
グラスティンああ。毎日楽しくてたまらないよぉ。好きな時に好きなだけこいつを眺めていられる。そして想像するんだ。
グラスティンどうやってフィリップの体を切り開いてやろうかってなぁ ! ヒヒヒッ !
ジュニア…………。
デミトリアス……ジュニア、奇跡の力の研究はどうなっている ?
ジュニアはい。今のところですが……。
ジュニア(奇跡の力……そうだ ! )
ジュニアあの、その件について陛下にお願いがあるんです。
グラスティン願い ? そんなことは後で俺に言え。今は研究の成果を聞いているんだ。
デミトリアス構わないよ。言ってごらん、ジュニア。
ジュニア奇跡の力の研究ですが当初の計画よりも進みが遅いように思えます。優秀な人材が不足していることも否めません。
デミトリアスそういえば、しばらく前に、エルレインの元から神官――研究員が逃亡したと報告があったな。確か鏡映点のフィリアだったか。
ジュニアはい。彼女にあの仕事を頼んだのは僕でしたからとても残念で……。
ジュニア有能な人員を失ったのは痛手です。その穴を埋めるためにも、研究の陣頭指揮を僕に任せて頂きたいんです。
デミトリアスつまり、自由に動ける権限が欲しいと ?
グラスティン自由 ? まさか俺から離れようとでも言うのか ?そいつはダメだ。お前は俺のペットなんだからなぁ !
ジュニア違うよ。今までどおり、あなたの下でいい。ただ、思ったような成果を得られないのがもどかしいんだ。
デミトリアスなるほど。やはり小さくてもフィリップだな。確かに今の状況ではきみという天才の足を引っ張るだけかもしれない。
ジュニア僕は天才なんかじゃ……。
デミトリアス謙遜することはないさ。わかった。今後の研究指針はきみが決めるといい。相応の地位を約束しよう。
ジュニアあ、ありがとうございます、デミトリアス陛下 !
グラスティン――おい、デミトリアス。
デミトリアスそれとジュニア、ひとつ付け加えておくがきみがグラスティン付きだということを忘れてはならない。
デミトリアス彼の命には従うように。いいね。
ジュニア……はい。
グラスティンフン……まあいい。お優しい陛下でよかったなぁ、小さなフィリップ。恩を仇で返すような真似はするなよ。
ジュニア……わかってるよ。
ジュニア(これでいい。我慢なんていくらでもしてやる)
ジュニア(エルレインの奇跡の力。あの異世界の神の力が使えるようになればナーザ将軍をイクスの体に移せるかもしれない)
ジュニア(いや、もしかしたらナーザ将軍やバルドさんたちに体を作ってあげられるかも……)
ジュニア(そうすればこれ以上イクスの体を使わなくても済む)
デミトリアスところで、ベルセリオス博士の行方は聞いていないか ?
ジュニアいいえ。突然いなくなったそうですね。
グラスティンああ、それなら今さっき、ようやく尻尾を掴んだぞ。
デミトリアスそうか ! さすがグラスティンだな。それで彼女はどこにいる ?
グラスティンまあ焦るな。なかなか面白いことになっているようだからなぁ。ヒヒヒ……。

キャラクター3話【12-3 アスガルド 戦士の館】
ハロルド……う……。
アリエッタあ……目、覚めた…… ?
ハロルドアリ……エ……。
アリエッタ動かないほうがいい……です。体中、傷だらけだから。
ハロルド……あいつは ?
アリエッタイオン様は……いません。
ハロルド休憩タイムってわけ……痛っ……。酷くやってくれたわね……。けどまあ……痛覚のいいデータに……なる……かしら。
アリエッタ今のうちにハロルドも休んだ方がいい、です。
ハロルドもちろん……そうさせてもらうわよ。あ~、口の中血だらけ。気持ち悪ぅ……。
アリエッタ……お水、飲む ?
ハロルド飲む飲む。しみるから優しく飲ませてよ ?
アリエッタはい……。
ハロルドふぅ……ありがと。じゃあついでに拘束を解いてここから逃がしてくれる ?
アリエッタダ、ダメ ! ハロルドの監視はイオン様に任された大事な仕事だもん !
ハロルドあ~はいはい……言ってみただけよ。あんたにとってイオン様は絶対……っ……。
アリエッタ苦しい……よね ?
ハロルドへ~きへ~き♪って、言いたいところだけどね……。
アリエッタイオン様は、ハロルドが言うことを聞かないからこうするしかないって……。
アリエッタイオン様のお願い……聞いて欲しい、です。そうすれば――
ハロルドあんた……そのお願いが何か、わかって言ってるの ?
アリエッタううん……。アリエッタは知る必要ないって。イオン様が……。
ハロルド知る必要がない、か。それとも知られたくないのかしらね……。
ハロルド(まあ、この子には言えないか……。イオンの心核とシンクってレプリカの心核を入れ替えろ……だなんてね)
ハロルド(他人と心核を入れ替えようとすると拒絶反応が出るから、相手を十分に選ぶ必要がある。でもレプリカなら――)
アリエッタ――ハロルド ? 大丈夫…… ?
ハロルド……あ、ごめんごめん。ちょっと考え事。
アリエッタ……このままだと、ハロルド……死んじゃう、です。
ハロルドそうなったら、この体を解剖……って自分で自分は無理ね……。あ~あ、もったいない……。
ハロルド……レプリカが欲しいって気持ちちょっとわかるかも。
アリエッタハロルド、イオン様と仲直りする、です。
ハロルドアリエッタは、どうしてイオンに従ってるの ?
アリエッタアリエッタは導師守護役だから。
ハロルドそれだけ ?
アリエッタそれだけじゃない、です。イオン様は……アリエッタを助けてくれたから。
アリエッタ言葉を教えてくれて……食べ物や、寝る所や居場所も……全部くれた。
ハロルドふうん、あのイオンがねぇ……。
アリエッタアリエッタは、イオン様の側にいられるだけで幸せだった。なのに……。
アリエッタアリエッタはイオン様を守れなくて……。
アリエッタでも、イオン様は生きてた。この世界で会えた。だから今度こそイオン様を守るの !……絶対に !
ハロルドなるほどね。あいつがあんたに何も話さない理由何となくわかった気がする。
アリエッタどういうこと、です ?ハロルドの言うこと……よくわからない。イオン様のお願い、聞いてくれるの ?
ハロルドそうね……。じゃあ、わかりやすく言うわ。
ハロルド――絶対に、嫌。
アリエッタハロルドの馬鹿っ ! 死んでも知らないから !

キャラクター4話【12-4 アスガルド城2】
アスガルド城 カレイドスコープの間
メルクリアあったぞルキウス ! カレイドスコープじゃ !
ルキウスしっ、気づかれたらどうする。
メルクリア大丈夫じゃ。先ほど兵士たちも話していたであろう ?どこぞの騒ぎで兵が駆り出されているからしばらくこの場所に人を寄せ付けるな、と。
メルクリアとはいえ、ここまで調べ上げたルキウスの苦労を無駄にするところであったな。すまなかった。
ルキウスボクだけの力じゃないさ。アスガルド城に潜入できたのは君のおかげだ。あの抜け道は、君じゃなきゃ探しだせなかったよ。
メルクリアここは芙蓉離宮に次ぐ我が居城じゃ。この程度は造作もない。……と言っても今となっては客分同様だがな。
メルクリア……いや、わらわは最初からこの国の客であったか。義父上にとっても……。
ルキウス……そこまでだよ、メルクリア。調査を始めよう。
メルクリア……そうであったな。まずはイクスの体を探すぞ。カレイドスコープと共に保管されていると聞いたが……。
ルキウスメルクリア、こっちに来てくれ。これがイクスの遺体じゃないか ?
メルクリア! !
メルクリアああ、間違いない。あの時の姿のままじゃ……。
ルキウスあの時 ?
メルクリアそうか。ルキウスは会っていなかったな。イクスとも、兄上とも……。
メルクリアよく見つけてくれた。これでようやく、わらわの計画も動き出す。
ルキウスその計画、詳しく教えてくれないか ?イクスの遺体を見つけたら話すって言ってただろう。
メルクリアそうであったな。事に移る前に説明しておこう。
メルクリアルキウスは、アニマとアニムスについてどこまで知っている ?
ルキウス大まかにしかわからないよ。ボクの世界とは命の概念が違うみたいだから。
メルクリアでは、わらわがシドニーから学んだことをそのまま教えよう。
メルクリアこの世界の命は、アニマとアニムスで成り立っている。アニマは魂――命の光アニムスは魄――命の設計図。
メルクリアアニマがなければ体を保てずアニムスがなければ、体を失ってしまうのじゃ。
ルキウスアニマが魂っていうのはわかるけどアニムスが命の設計図っていうのは ?
メルクリアアニムスは命の器を構成するものじゃ。体や記憶、遺伝的要素はアニムスに属する。
ルキウスアニマは生命エネルギー、アニムスはそれを保つ器……肉体って考えればいいのかな。
メルクリア厳密にはもっと色々あるのじゃが今はその認識で構わぬ。
メルクリアこのイクスの遺体はアニマを失っている。つまり『死んで』いる状態じゃ。
メルクリアだが、特殊な保存により体は保たれている。命の設計図に含まれる『記憶』もこの体に残っているというわけじゃ。
ルキウス君の計画には、イクスの記憶が必要だってこと ?
メルクリアそのとおりじゃ。まずはイクスの記憶から【無垢なるオーデンセ】を生み出す。
メルクリアその後、そこにビフレストを具現化してキメラ結合させるのじゃ。
ルキウスオーデンセをリビングドール化するのか ?それは前に言っていた、リビングシティ構想と同じじゃないか !
メルクリアあくまでオーデンセという島だけじゃ。そこに新たな命は具現化しない。
メルクリアわらわはもう命を弄ぶ気はない。そうしてはならぬとルキウスたちが教えてくれたであろう ?
ルキウスでも、このリビングシティ構想は予測不能だ。何が起きるかわからない。君にとっても危険だよ。
ルキウスそれに、この遺体……この人の思い出を利用することにもなるんじゃ……。
メルクリア
メルクリアか、鏡士どもの思い出がなんじゃ !わらわには思い出さえなかった。ゲフィオンは、わらわの国を滅ぼしたのじゃぞ ! ?
メルクリアオーデンセは、その元凶たるゲフィオンの故郷じゃ。利用して何が悪い !
ルキウス……少しでも思う所があるなら一度立ち止まってみたら ?
ルキウスそして答えが出るまで考えるんだ。自分がしていることは本当に正しいのかって。
メルクリア何故、今更そのようなことを !
ルキウス答えがないまま突き進むのは自分だけじゃなくて周りの人も不幸にする。ボクはそれを知っているから。
メルクリア……答えなら、とうに出ている。
メルクリア作業を始めるぞ。イクスの記憶からオーデンセのデータを抽出するのじゃ。
ルキウスメルクリア……。

キャラクター5話【12-5 芙蓉離宮】
芙蓉離宮
バルバトスメルクリアの居場所を吐け。そうすれば楽に殺してやる。
帝国兵お、お許しを ! 我々は何も知らされておりません。ただ、しばらく留守にするとだけしか……。
バルバトス……フン。おい、救世軍ども !メルクリア捜索隊の進捗を聞かせろ !
バルバトスあれからもう二週間以上たつのにまだしっぽも掴めないのか弱い上に無能な奴らめ。
救世軍申し訳ありません……。誰もメルクリアの姿を見た者がいないのです。恐らく転送魔法陣を使ったのではないかと……。
救世軍館から出た形跡も見られないため現在、地下や隠し部屋などの調査も進めていますが踏み込むのに難航しているようです。
バルバトスなら壊せ。そしてどんな手を使ってでもメルクリアを捜しだし生かした状態で俺の前に連れて来い !
帝国兵お待ちください !これ以上、宮殿を破壊されては……。
バルバトスなら代わりに貴様が壊されるか ?ここは誰の城だと思っているんだ ?
帝国兵バ、バルバトス様です !
バルバトスわかっているなら俺に逆らうな !貴様らは俺に負けた。この芙蓉離宮は陥落し、すでに俺の城となった。
バルバトスよって何を壊すも自由 !この宮殿の奴らの命も全て俺の掌の中よ !
帝国兵……我々はバルバトス様のしもべです。ですから、捕虜となった者たちも含めどうか命だけは……。
バルバトスでは貴様らも捜せ !追っ手を放ち、死ぬ気でメルクリアを狩り出せ !
帝国兵はい、仰せのままに……。
ルック(バルバトスさん……ここまでやらなくても……)
救世軍Aルック、止血薬あるか ?こいつ、さっきの地下捜索でヘマしちまった。
ルックおい、大丈夫か ? 少し休んだ方が……。
救世軍Bいや、手当をすれば、まだ作戦に参加できる。バルバトスさんからの命令は ?
ルック今は気にするな。無理しないで休息を取れって。
救世軍Bそんなこと言わないでくれよ。今はあの人について行きたいんだよ。
救世軍Aああ。バルバトスさんと合流してなきゃはみ出し者の俺たちが帝国の離宮を落とすなんて夢のまた夢だったもんな。
救世軍Aマークさんに黙ってでもバルバトスさんを追ってきて良かったぜ。
救世軍Bもう、俺たちアルタミラ移動組を手負いの役立たずだの用済みだのなんて言わせねえよ !
ルック……そうだな。
救世軍Bなんだ、浮かない顔して。ルックだって自分の価値を認めさせたくて俺たちと来てくれたんだろ ?
ルック…………。
バルバトスおい、マークの腰巾着。さっさとそいつらもメルクリア捜索に回せ。
ルックこいつらは外してくれませんか。
救世軍B何言ってんだルック ! 俺たちはまだ――
ルック最近は魔物だって増えているんだ。無駄死にさせるわけにはいかねぇだろ !
バルバトス俺の命令に無駄もクソもねぇ !メルクリアを捜すには数がいる。動ける奴は全員働かせろ !
ルックそんな…… !
バルバトスフン、貴様もマークと同じか ?聞けば、貴様らのような戦えぬ連中を飼い殺しているそうじゃないか。
ルック…………。
バルバトス俺はあんな腰抜けとは違うぞ。生きている限りは、貴様ら傷病兵共も一兵士だ。俺の手足として死ぬまで働け。
救世軍B俺たちを足手まといだとは思わないんですか ?
バルバトス貴様ら虫ケラが、俺の足を引っ張れるとでも ?ハッ、笑わせてくれる !
バルバトス戦いたい奴は戦え !蔑む奴には己の価値を見せつけろ !力でねじ伏せ、叩き潰せ !
救世軍Aバルバトスさん……。
救世軍B……ルック。俺はバルバトスさんに付いていく。この人は、俺たちに生きる意味をくれる人だ。
救世軍B俺は戦うことしかできねえ。それが憐みの目でみられて……役立たずのまま生きるなんて御免だ !
救世軍A俺もだ。必要だと言ってくれる人の所に行くよ。
ルック…………。
バルバトスそうだ、その意気だ。さあ行け、メルクリアを引きずり出せ !
バルバトス俺を貶めた小娘……ひと思いには殺さんぞ。少しずつ引き裂いて思い知らせてやる。クックックッ…… !
ルック(……凶暴で残忍な男だ。俺たちのことなんてきっと道具としか見ていない。それはよくわかってる。でも……)
ルック(あの人の背中を追うことで救われる奴もいる。多分、俺もその一人だ)
ルック(だが、このまま突き進んでいいのか ?マークさんに知らせないまま……)
救世軍Cバルバトスさん !お探しのリビングドールと鏡映点に関する研究資料を入手しました。
バルバトスよこせ !下らぬ研究に俺を利用しやがって……。
バルバトス――なんだこれは…… ?
バルバトスおい、腰巾着 !この資料にある名前を知っているか ?こいつらだ !
ルックああ、この人なら対帝国部隊のリーダーです。俺たちクラスじゃ噂程度しか知らないですけど英雄だなんて言う人もいるくらいで……。
バルバトス英雄……クククッ……ハーッハハハハァ ! !そうか、この世界でも英雄か !
バルバトスおい、メルクリアと平行してこいつらについても調査しろ。
ルックその人はメルクリアと関わりがない――
バルバトスしのごの言わずにさっさと行け !
バルバトス……クソみたいな世界だと思っていたがようやく面白くなってきたぜ。なあ、ディムロス、アトワイト ! !

キャラクター6話【12-6 帝都へ向かう船】
リアラ見て、カイル。港が見えてきたわ !
カイルやった ! ようやく帝国入りだ。船だと時間がかかるなぁ。
リアラそうね。浮遊島アジトのゲートが帝国に繋がっていればもっと早く来られたのに。
ナナリー二人ともせっかちだね。まあ、気持ちはわかるけどさ。
ロニこういう時こそ余裕を持てよ。今日の俺たちは運がいいんだ。
ロニ首尾よく帝国行きの船に乗れたし天気は上々、航路は順調。言うことなしだろ !
ロニ……あとはハロルドさえ無事ならな。
カイルハロルド……大丈夫かな。行方不明だなんて。
ナナリーカロル調査室の報告には驚いたよ。アトワイトさんの話じゃあっちで上手く立ち回ってるって聞いてたのにさ。
ロニこれが帝国から無事脱出してましたってオチなら万々歳なんだけどな。
リアラでも、帝国兵にはベルセリオス博士を見つけ次第保護しろって通達されているんでしょう ?
リアラそれって、逃亡者とか罪人とは別の扱いってことじゃない ?
ナナリー本当のトラブルって線が濃厚か……。それが一番怖いんだけどね。
カイルきっとハロルドの研究室に潜入できれば何か手がかりがあるはずだよ。
カイルああもう、早く帝国に入らないかなあ !
ロニまあまあ、港はすぐそこだから……つーかこの船、心なしかスピード落ちてないか ?
ナナリー落ちてるどころか、止まろうとしてるよ !
ジューダスおい、まずいことになったぞ。
カイルジューダス、どこ行ってたんだ ?
ジューダスど、どこだっていいだろう。考えごとをする時は一人になりたいんだ。
カイル前に船に乗った時もそんなこと言ってたよね。
ジューダスいいから聞け ! この船はこれ以上港には近づけない。
四人えっ ! ?
ジューダスどこかの帝国の船がシージャックされたそうだ。そのせいで港を封鎖しているらしい。
カイルシージャック……って誰かが船を乗っ取ったってこと ?
ジューダスああ。船長たちが大騒ぎしている。このままでは帝国に入るどころか海上で足止めだ。
カイルそんな……。早くハロルドを助け出さないといけないのに。どうしよう、泳ぐ ! ?
ジューダス泳ぎきれるような距離か ! 却下だ !
ロニくそっ、運が良かったのは船に乗るまでかよ……。
リアラわたしの力がエンコードされてなければ……。無理にでも船を動かせたかもしれないのに。
ナナリー誰だい、まったく !シージャックなんて迷惑な真似した奴は。時と場合を考えろってんだ !
ロニそれだと時と場合がよけりゃやっても構わないって聞こえるぞ。
ナナリーこんな時に余計な口を挟むんじゃないよ !
ロニんぎゃーーーー ! 悪かった ! 悪かったって !
ジューダス悪かったと思うなら打開策を出せ。その頭では無理だと思うがな。
ロニ頭……頭……ボーっとして、それどころ……じゃ……ボーット……ボー……ト……。
カイルあ ! もしかしてロニ、ボートって言おうとしてる ! ?
ジューダス救命ボートか ! なるほど。これだけの大型船なら数隻は用意されているはずだ。
ナナリーへえ。命の危険を感じると頭が回るんだね。
ロニし……死ぬかと思った……。よくわからんが、このロニ様に感謝しろよ !
カイルじゃあオレ、船長に交渉して――
ジューダスやめておけ。たとえ交渉が上手くいったにしろ無断上陸がバレた時に責任が問われるのはこの船だ。
ジューダス船長たちに迷惑をかけたくなければボートを盗まれた被害者にしておいてやれ。
ロニへえ、この船の乗組員のことまで考えるなんていいところあるじゃねえか。
ジューダスまあ、強奪の方が手っ取り早いしな。
ロニはは……前言撤回。
ジューダス――さて、うまく港に上陸できたはいいがここからどう帝都の中心部に潜入するかだな。
リアラちょっと待って。……何か聞こえない ?
カイル魔物の声だ ! 一体どこから――
ナナリー……あっちだね。ほら、あの大きな排水溝からだよ。
ロニこんなところに魔物が棲み着いてんのかよ。どれどれ……かなり深そうだな。まるで迷路だぜ。
ジューダス迷路のような通路に魔物か……。もしかして、以前ユーリたちが潜入したという地下通路と繋がっているんじゃないか ?
カイル戦士の館ってところに通じているんだっけ ?行ってみよう !
ロニみんな、気を付けろよ。どこから魔物が襲ってくるか――
グルァアアアアア ! !
カイル危ないロニ ! 後ろ !
ロニえっ ! うわあああっ…… ! ……って……あれ ?
カイルあの魔物、ロニのこと無視して行っちゃった。
ナナリーよっぽど不味そうだったのかね。食われないでよかったじゃないか。
ロニうるせー ! けど、なんか変じゃねえか ?って、また魔物 ! ……あれ ?
カイル……今度も無視 ?
リアラねえ、どんどん魔物の数が増えてる…… !なのに、わたしたちには見向きもしないなんて。おかしいわ !
ジューダス一様に同じ方向へ走っているようだ。何か起きてるのかもしれない。追うぞ !

キャラクター7話【12-9 アスガルド 戦士の館】
カイル――ここは…… !
ジューダスおそらく例の戦士の館とか言うところだろうな。この帝都の中枢部にあたるはずだが……。
ナナリー酷い有様だね。館の中を魔物が走っていくよ。しかもこの臭い……。
リアラこの床の汚れって……血……よね。
ロニああ。一人二人が怪我したって量じゃねえぜ。魔物はこの臭いにつられて館に入り込んだのかもしれないな。
ジューダスそれにしたって異常だ。魔物が暴走するような何かがこの館で起こったとしか思えん。
ナナリー誰かの襲撃とか ?
ジューダスわからん。だが恐らく原因はこの先にある。血の跡をたどっていけばわかるだろう。
カイル――こんなに魔物がいて館の人たちは無事なのかな。
ロニおい ! あの床に転がってるのって……人……だよな……。
ジューダス魔物に食い散らかされてバラバラになったのかそれとも戦いで……。
ナナリー……しばらく肉料理ができなくなりそうだよ。
リアラ……ねえ、待って ! ……嘘 ! !
カイルどうしたのリアラ ?
リアラあれ……あそこに落ちてる手……。あの手が握っているのは……。
ジューダスこれか ? 確かに何か握ってるな。
ナナリー細いね……子供の手だよ。可哀想に……。ごめんよ、ちょっと見せてもらうね。
ロニ妙な形のペンダントだな。それと……なんだこりゃ。イヤリング――
全員! !
カイルこれ……ハロルドのイヤリングじゃ…… !
リアラやっぱり見間違いじゃなかったのね……。ねぇ、まさかハロルドもこんな風にされてるなんてことは――
ナナリー馬鹿言うんじゃないよ。きっと大丈夫さ。
カイルああ、ハロルドは必ず生きてここにいる。早く見つけてあげなきゃ !
ロニ待ってくれ、カイル。……なあ、ジューダス。この右手の持ち主生きていると思うか ?
ジューダスいや。さっき落ちていた臓物がこいつの物ならもう無理だろう。
ロニ……だよな。……悪いな。このペンダント、もらってくぞ。仲間の大事な手掛かりになるかもしれねぇ。
ロニ――よし、ハロルドを捜そうぜ。もし生きている奴がいたらこのペンダントも見せて聞き込みだ !
カイルジューダス、そっちの部屋はどう ?
ジューダスいや、誰もいない。
ナナリーこっちもだよ。どの部屋ももぬけの空さ。みんな避難した後ならいいんだけど。
ロニこれじゃハロルドを見つけるどころか聞き込みもできやしないぜ。俺たち、捜す場所を間違えてんじゃねえか ?
リアラでも、血の跡はこっちに続いているわ。さっきのペンダントの持ち主もこっちの方から来たみたいだし。
カイルねえ、この扉、外から鍵がかけられてる。壊しちゃってもいいよね。
ロニその大きさじゃ物置かなんかだろ ?どっか別のところを――
ジューダスいや、念のために確認しろ。
カイルよし、じゃあ……とりゃっ !
カイル開いた ! 中は――うわあああっ ! !
四人! !
ジューダスカイル……そいつは…… !
カイルいてて、なんか転がり出て来た……って…………ハロルド ! !
リアラハロルド、しっかりして ! 酷い傷……。
ジューダスこれは……戦ってついた傷じゃないな。
ナナリーなら何だってんだい。
ジューダスおそらく拷問だろう。
ロニ……くそっ ! 俺たちがもっと早く来ていれば……。
? ? ?――いやぁああああああっっ !
ロニ今の悲鳴……女か ?
ハロルド……アリ、エ……。
リアラハロルド ! ? 気が付いた ?
ハロルドって……。イ……危な……。
ナナリー無理してしゃべるんじゃないよ。
ハロルド行って……。イオンが……危な……。
カイルイオンって、ルークさんたちの仲間の ?
ジューダス悲鳴はその先から聞こえた。行くぞ。
リアラハロルドはまだ動かせないわ。
ハロルドいいから……行けって……の。
ナナリーロニ、あんたはハロルドを背負いな。リアラ、移動しながら治療を続けられる ?
リアラできるけど、途中で魔物たちが襲ってきたら……。
カイル大丈夫。オレたちを信じて。ハロルドはこれ以上傷つけさせない。
リアラ……わかったわ。みんな、お願い !

キャラクター8話【12-12 戦士の館 中庭】
カイルこっちだ ! ……ここは中庭かな ?
カイルっ ! ! なんだ、これ……。
ジューダスどうした。なにがあった。
全員! !
ロニ見渡す限り死体って……悪夢かよ……。魔物と……こいつらは帝国兵だな。
ナナリー誰か ! 生きているなら返事しな ! いないのかい ! ?
ジューダス無駄だ。全員死んでいる。
ハロルド遅かったみたいね……。
カイルハロルド、しゃべれるの ?
ハロルド何とか……。世話かけちゃったわ。
リアラ良かった。でも無理はしないで。
カイルハロルド、どうしてこんなことになったんだ。
ハロルド順を追って話すから、しばらく黙って聞いといて。
ハロルドまず、私を監禁してたのはイオンよ。と言っても私の協力者のイオンとは別人だけど。
ハロルドややこしいから、協力者の方はイオン。私をここに監禁した奴を【被験者イオン】としときましょ。
ハロルド被験者イオンが私を攫ったのは下らない理由だから省略。見解の相違ってことでよろしく。
ハロルドで、私の捜索にあたったのがグラスティンらしいけどあいつ、突然ここを襲ってきたみたいね。
ハロルド襲撃を知った被験者イオンは、私を物置に閉じ込めて魔物使いのアリエッタと出ていったわ。あんたたち、どこかで二人を見なかった ?
ナナリーいや、それらしいのはいなかったね。
ハロルド……そう。話はこれで終わり。なんか質問ある ?
カイルこの魔物はアリエッタが呼んだのかな。
ハロルドでしょうね。それにさっきの悲鳴もアリエッタだと思ったんだけど……。
ロニそうだ。このペンダントに見覚えないか ?おまえの服の切れ端と一緒にあったんだよ。
ハロルドペンダント ?……それって――
グラスティンおや ? ベルセリオス博士 !こんなところにいたのか。
全員! !
グラスティン手間をかけさせやがって。お前を捜すためにこんなにたくさん、肉共を捌く羽目になったぞ ?……さあ、こっちに来い。
ハロルド自分で帰るから結構よ。
グラスティンヒヒヒ、昔のお仲間がお迎えに来てくれたって訳だ。どっちに帰るつもりなのかなぁ、ベルセリオス博士。
カイルハロルドが帰るのはオレたちの所だ !ハロルドは今もオレたちの仲間なんだからな !
グラスティン……どけ、肉小僧。お前が邪魔で後ろの綺麗な黒髪が見えないだろうが。
ジューダス…………ウジ虫が。
グラスティンなんとでも言ってくれ。これは滾るよ……。極上の黒髪だぁ…… !ヒヒヒヒヒ !
ナナリー噂には聞いてたけど、こいつ…… !
ロニ実際に見ると鳥肌もんだぜ……。
ジューダス無駄口を叩く暇があるならハロルドを避難させろ !
グラスティンなぁ、そんな醜い仮面を外してお前の美しい黒髪をみせてくれよぉ……。それともはがしてもらう方がお好みかぁ ?
ジューダスカイル、こいつを黙らせるぞ。
カイルグラスティン…… !ハロルドも、ジューダスも誰も渡さない !

キャラクター9話【12-12 戦士の館 中庭】
グラスティンがあああっ…………くそっ……。
カイル……どうだ !今度こそもう立ちあがれないだろ !
ジューダスしぶとい奴だったな。すぐにここを出るぞ !
グラスティン――なんてな。まだまだ遊んでもらうぜぇ ?
ロニまたかよ ! さっきから何度も何度も !
ナナリー今のは致命傷だったのに……。あいつ、不死身だってのかい ?
グラスティンヒヒヒ、そうさ。この程度の傷、全て無かったことにできるんだよ。
ハロルド無かったって……なるほど、そういうことね。あいつ、精霊装を使ってるんだわ。
カイル精霊装 ! ? 精霊装であんなことできるの ?
ハロルドあれはクロノスの精霊装だからよ。時の精霊クロノスの力を使ってバケモノじみた復活を繰り返してるってわけ。
カイルそんな……。それじゃいくら倒してもキリがないよ !
グラスティンヒヒヒ、肉共の頭でも理解できたみたいだなぁ ?だったらそろそろ諦めてくれよぉ、ベルセリオス博士 !
カイルさせるか !
ロニハロルド、何か作戦はねえのかよ ! ?
ハロルド作戦ね。じゃあ、みんな頑張れ !
ナナリーなんだいそりゃ !
ハロルドいいから、キリキリ戦って。ほらジューダス、カイルだけ戦わせておく気 ?
ジューダス言われなくても !
グラスティンヒヒ、黒髪仮面くんかぁ !俺に仮面をはぎ取って欲しいんだろう ?今願いを叶えてやるよ。それから解体だぁ !
ハロルド……ふぅ……まったく……。
リアラハロルド、大丈夫なの ?本当は話すのも辛いでしょ。
ハロルド平気。……どうせ、あと少しだから。
リアラどういうこと ?
グラスティンヒャーッハハハハ……ハ………… ?………………ガハッ ! !
カイルえ、なんで急に…… ?
ハロルドはい来たーー ! 時間切れーー♪
グラスティン何を………した……… ?
ハロルドアホね。単純にバテたのよ。あれだけ力を使って、まだ耐えられると思ってた ?
ハロルド精霊輪具を使った精霊装はそんな甘い物じゃない。そうそう長く持つわけないでしょ。
ハロルドなのに黒髪ちゃんに煽られちゃって。執着が過ぎて引き際を誤ったわね。
グラスティンくくっ……そうか。これは改良の余地ありだなぁ……。
ジューダスその必要はない。お前はここで――
帝国兵グラスティン様 ! 大至急ご報告があります !グラスティン様はどちらに !
ロニ帝国兵 ! こんな時にかよ ! ?
グラスティンヒヒヒ……。黒髪仮面くんに切り刻まれるのも楽しそうだが、まだ本命に手をつけていないんでなぁ。
グラスティン――お前ら、あの肉共を殺せ !おっと、黒髪の仮面のガキは生かしておけよ。
カイルくっ、帝国兵の数が多すぎる……。
ナナリー雑魚は放っときな ! ハロルドは確保したんだ。あたしらは逃げるよ。
ハロルド待って ! どうせ逃げるなら――
帝国兵グラスティン様、皇帝陛下からの勅命です。新たな島の具現化が確認されたため急ぎ、アスガルド城へ戻るようにとのことであります。
グラスティン島…… ? 何故そんなものを具現化している ?黒衣の鏡士共の仕業か ?
帝国兵残念ながら、詳細は不明です。
グラスティン……肉ネズミ共の退治は一時中断か。
グラスティンこの場は引き上げる。具現化された島の調査を優先しろ。
リアラハロルドの言う通り、逃げたフリをして隠れていて正解だったわね……。
カイルうん。それにしても……島の具現化だって ?
ハロルドさっきの様子だと、グラスティンたちも知らなかったみたいね。あんたたちの鏡士がやったって線は ?
カイルイクスたちじゃないよ。絶対に。
ハロルドそう。でも色んな可能性を……考えないと…………いけないんだけど…………ちょっと……きゅーけー…………。
カイルハロルド ! ?
リアラ大丈夫、寝てるだけ。このままにしておきましょう。かなり無理をしていたはずだから。
カイル……そうだね。じゃあオレ、イクスたちに具現化のこと知らせておくよ。
カーリャ・N美味しいです……。このチョコレートケーキ…… !
カーリャやりましたね、ミリーナさま !
ミリーナええ。ネヴァンに喜んで欲しくて一生懸命焼いたのよ♪
カーリャ・N小さいミリーナ様……。
クレアイクス、ミリーナ、大変よ !通信室で新しい島の具現化を確認したわ !
一同! ?
コーキスあれ ? マスター、カイル様とフィル様からも魔鏡通信が来てるぞ ?
カイルイクス ! 色々報告があるんだけど新しい島が具現化されたって話は本当 ?
フィリップイクス、ミリーナ、見たかい ! ?かつてビフレストのあった海域にオーデンセ島が具現化されているんだ !
イクスな……何だ ? 何が起きてるんだ ?
ミリーナ順番に話を聞きましょう。まずカイルたちから――
イクス――状況はわかったよ。ありがとうカイル。気を付けて帰ってきてくれ。
カイルうん。具現化された島のこと、よろしくね。
イクス……そういうわけだ。今の話、そっちにも聞こえてたよな。
フィリップ……ああ。帝国の仕業ではないなら具現化可能なのは、オーデンセをよく知るジュニアくらいのものだけど……。
フィリップここで考えていても仕方ない。僕たちはすぐに現地に向かうよ。君たちはどうする ?
ミリーナもちろん私たちも行くわ。ね、イクス。
イクス……あ、ああ。そうだな。
フィリップ……わかった。すぐに迎えに行くよ。来てくれてありがとう……イクス。
イクス………………。
ミリーナ驚いたわね、イクス。魔鏡通信で見た限りでは私たちが暮らしていたあのオーデンセそのものに見えたわ。
イクスアスガルド帝国の帝都もこの浮遊島もオーデンセをモチーフに具現化されているみたいだけど今回は……正真正銘オーデンセ、なのかな。
イクス(正真正銘のオーデンセって何なんだろう。俺もこの世界もオーデンセも……全てがまやかしみたいなものじゃないか……)

キャラクター10話【12-13 オーデンセ港】
コーキスここがオーデンセか。マスターやミリーナ様が生まれた場所なんだな。
ミリーナええ、そうよ。懐かしいわ。この景色……。
カーリャカーリャも覚えていますよ。イクスさまとの初対面もこの港でした。ね、イクスさま !
イクスえ ? ああ、そうだったよな。
カーリャありゃ、違いましたっけ ?
イクスいや、間違いないよ。俺は三人目でカーリャと出会った後に具現化されたみたいだけどちゃんとカーリャと会った記憶は残ってるからさ。
カーリャあ…… ! あの、ええと……。
ミリーナイクス、ごめんなさい。カーリャは変な意味で言ったんじゃないの。
イクス! !
イクスち、違うんだ。ごめん。俺もそんな当てつけとかじゃなくて……。
イクス突然オーデンセが現れて思ったより混乱してるみたいだ。……ごめんな、カーリャ。
フィリップ…………。
マーク――さ、仕切り直しだ。俺たちは調査に来たんだろ ?さっさと始めようぜ。
コーキスそっ、そうだよ !なあマスター、色々と案内してくれよ。俺はこの島のこと何もわからねえし。
コーキスそういや、アトワイト様とネヴァンパイセンは ?まだケリュケイオンから降りてこないのか ?
カーリャ・Nすみません。お待たせしました。
アトワイト何が起こるかわからないからネヴァンさんに手伝ってもらって色々と準備をしていたの。
コーキスアトワイト様がついてきてくれて安心したよ。最近のマスター、やっぱり変だからさ……。
アトワイトコーキスさんが安心してくれるなら何よりだわ。それに私もイクスさんの体調は気になってたの。
アトワイト特に鏡士は無茶をする傾向があるみたいだから医療面でのサポートには念を入れないとね。
三人わかる……。
カーリャ・N…………。
マークどうしたネヴァンパイセン。あさっての方を見て。
カーリャなにか美味しそうなものでも見つけました ?……もしも~し。先輩 ? 先輩ってば~ !
カーリャ・Nここは、私たちのオーデンセです……。
コーキスパイセンのパイセンもそれかよ。みんなもう驚き飽きたとこだぜ ?
コーキスあっ、どこ行くんだよ。ネヴァンパイセン !
マーク俺には何だかんだうるさいくせに、自分はこれだよ。おーい、勝手な行動は慎めっての。パイセーン。
カーリャ・Nやっぱり……。ミリーナ様、イクス様……。
ミリーナネヴァン、その樹がどうかしたの ?
カーリャ・N……これを見て確信しました。
カーリャ・Nここは、初代のイクス様とミリーナ様だけが知るオーデンセです。間違いありません。
三人! !
イクスなんでそんなことがわかるんだ。
カーリャ・Nこの木がその証明です。
イクス俺と、ミリーナの名前が彫ってある……。それに日付も……。
イクス……え ! ?……ってことは……。
ミリーナイクス……。それじゃ、私たち…… !
フィリップ…………そう、だったんだ。はは……。
マーク………………。
コーキスどうしたんだ、みんな。
アトワイトこれに何か重要な意味があるの ?
カーリャ・Nオーデンセでは、結婚を決めた二人が木の幹に名前と日付を彫る習慣があります。
カーリャ・Nこの日付は、イクス様がミリーナ様に結婚を申し込んだ日……です。
コーキスけっ、結婚 ! ?
カーリャミリーナさまとイクスさまが ! ?
カーリャ・Nはい。当時、イクス様は十七歳でした。初めて長期の漁に出ることになった時にミリーナ様にプロポーズなさったんです。
カーリャ・Nイクス様は、お祖父様から鏡士になることを反対されていました。でも、必ず説得するから鏡士になれたら結婚して欲しいと仰って……。
カーリャ・N私は物陰から見ていましたがお二人とも、本当に、本当に、幸せそうでした……。
二人…………。
イクス(それって……二人目の俺がカーリャと初めて出会ったあの日……だよな ? でも二人目の俺はプロポーズする気配なんてなかった)
イクス(二人目と俺は……性格を変えられてしまったからか ?それにカーリャが生まれた時期もゲフィオンとミリーナで違うみたいだし……)
カーリャ・N……この話を知る者は、もう私以外にはいません。フィル様も知らないはずです。この頃にはもう、オーデンセにはいませんでしたから。
フィリップ……そうだね。初耳だよ。
イクス待ってくれ。だったら、このオーデンセは誰が具現化したんだ ! ?
イクスフィルもジュニアも知らないんだろう ?ゲフィオンは人体万華鏡になったままだ。それなら後は……。
コーキス最初のイクス様か ! ?
ミリーナまさか、生きているの ! ?
フィリップそんなはず―― !
帝国兵お待ちください ! このままでは、我々は反逆者になってしまいます。どうか一度帝都へ戻り船の正式な出港許可を得てください !
メルクリアなにを言う ! わらわは皇女じゃ。わらわの命で船を動かして何の問題がある !
帝国兵ですが、帝国では恐らくこの船を奪われたものとして捜索しているはずです。ですから――
全員! !
ミリーナメルクリア…… ? どうしてここに…… !
メルクリアお前たちは……黒衣の鏡士の郎党共 ! !
イクス先に島へ乗り込んでいたのか !
メルクリア……兄上様の仇 !よくもその顔をわらわの前にさらしてくれたな !
ミリーナ待って ! あなたとは――
メルクリア黙れ ! 消し炭にしてくれるわ !

キャラクター11話【12-14 オーデンセ港】
ルキウスやめるんだ、メルクリア !
メルクリアルキウス ! しかし…… !
イクスルキウスって、確かカイウスの……。
ミリーナええ、弟さんだわ。カイウスにそっくり。
ルキウスメルクリア、こんなことをしている時間はないんだ。はやくこの島を出ないと。
メルクリアくっ……、行くぞ ! 全員、船に乗り込め !
ルキウス君たちも早くこの島を離れた方がいい。もうすぐビフレストがこの場所に復活する。
イクスビフレストが復活って……どういうことなんだ !
ルキウス島に残ればキメラ結合に巻き込まれる。そうなれば命はない。……きっと、メルクリアもそれは望まないから。
メルクリアルキウス、早く乗るのじゃ !
ルキウス忠告はしたよ。イクス。
イクス待ってくれ ! 君はカイウスの弟だろう。カイウスはずっと君を心配して――
コーキス駄目だ、船が出ちまう ! 追うか、マスター !
イクスいや、オーデンセをこのままにはしておけない。ビフレストの具現化を止めないと !
カーリャ・N追跡は私に任せてください。
アトワイトネヴァン、一緒に行くわ。あなたたちは鏡士として事態の収束を優先して。
イクス無茶だ ! ネヴァン、アトワイトさん !
カーリャあわわ……、二人とも船に乗っちゃいましたよ !どうしましょう……見つかっちゃったら……。
マークいや……。騒ぎが起こらねえ。ってことは上手く密航できたってことだろ。さすが軍人さん……と、俺のパイセンだな。
イクス……アトワイトさんたちの方は信じて任せよう。俺たちは具現化を阻止しないと。
イクス――フィル、見通しはどうだ ?
フィリップ……大がかりな具現化にキメラ結合だ。これには仕掛けが必要なはずだよ。解除すれば具現化は阻止できる。
ミリーナこの島のことは隅々まで知っているわ。仕掛けるための最適な場所も検討はつくから大丈夫。
コーキスでもあいつら、時間がないって言ってたぞ。間に合うのか ?
イクス大丈夫。まだ具現化は始まらないよ。
イクスメルクリアだって、自分たちが巻き込まれないようにこの海域から離れる時間を考慮しているはずだ。その時間内で処理できる。
イクスそれに最悪の事態になったら俺がみんなを転送ゲートでアジトに連れ帰る。
イクスまずは既存の島に新たな島をキメラ結合させる場合に想定される魔鏡装置とその設置場所の洗い出しだ。始めるぞ。ミリーナ、フィル !
ミリーナええ !
フィリップあ、ああ……。
マークどうしたフィル。呆けたツラして。
フィリップ……なんだかまるで僕の知るイクスが甦ったように思えたんだ。
フィリップ三人目のイクスは僕のせいで苦しんでいるのにそれでも、もがいて前に進もうとしている。それに比べて僕は……何をしているんだろう……。
マーク何もしてないなら、何かすればいいんじゃねぇの ?何もしないより遥かに酷いことをしてるけどな。それでも、やれることはあるだろ ?
マーク頼むから、俺を切り離して死のう……ってのはやめてくれよ ?
フィリップ……そうできたら、どんなにか楽だろうね。その前に、僕の命の方が尽きそうだけれど。
マーク………………。
コーキス――おーい、フィル様 !フィル様が知恵を出してくれないと話が進まないぞ !
フィリップ――ああ、わかってるよ。この計画がメルクリアの手によるものならこの具現化はビフレスト式だろう。
フィリップそれにメルクリアはビフレストを知らない。恐らく彼女の想像のビフレストを具現化させるつもりだろう。
フィリップそれなら、手段は限られる筈だ。オーデンセの地図を魔鏡に映してくれ。それで指示するよ。

キャラクター12話【12-15 ハロルド】
ハロルド――へえ、ゲートねえ。そんなものまであるんだ~。このアジト、調べ甲斐がありそう。
リアラしばらくは大人しくしてて。傷が全部治ったわけじゃないんだから。
ナナリーそうだよ。さっきまで死んだみたいに眠ってたんだ。少しは自重しな。
カイルねえハロルド。話の続きだけど罠って帝国の中に仕掛けたの ?
ハロルドあ、そうそう。あっちこっちにね。結構苦労したのよ ?
ハロルドけど、それも私が帝国を離反したことでバレちゃったかもしれないなーって。
カイル……悔しいな。ハロルドは敵の中でこんなに頑張ってくれてたのに。
ハロルドまあ、そうは言っても全部は見つけられないはずよ。
ハロルドこの私が全身全霊心を込めて組んだ罠だもん。名づけるなら、帝国切り崩しネットワークってとこかしら。
ハロルドこれは役に立つはずよ。今すぐじゃなくても、じわじわと必ずね。グフフフフ……。
ロニ言い方が怖いんだよ……。まるで帝国に毒盛ってやったみたいな口振りだぜ。
ジューダスおまえにしては言い得て妙だ。ハロルドのように、腹に一物ある奴が帝国内には多く潜んでいるようだからな。
ハロルドそうそう。敵だと思っていても、ある日突然仲間に !なんて展開があるかもしれないわよ ?
リアラ敵……。もしかしたらエルレインも……なんてことは。
ロニいやいや、あの聖女様が味方になんてありえねえって。もしそうなったら裸でアジトを走りまわってやるよ !
ナナリー誰も見たかないよ、そんなお粗末な物 !
ロニ誰が粗末だ ! いつ粗末って知った !
ジェイドおや、ずいぶんと賑やかだと思ったら無事に戻っていたんですね。
カイルただいま、ジェイドさん。ええと、こっちが――
ジェイドハロルドですね。お噂はかねがね。私のことはジェイドと呼んで下さい。
ハロルドああ、あんたが『あの』ジェイドね。その名前、ディストの口からやたら聞いたわ。
ジェイドそれはおそらく幻聴でしょう。もしくは、我々には感知しえない何かの声……なのかもしれません。
ロニゆ、幽霊とかの話じゃねえよな ?
カイルロニ、びびってるー !
ジェイドはっはっはっ。幽霊などとアレを一緒にしては幽霊に失礼ですよ。幽霊にも矜持はあるでしょうから。会ったことはありませんが。
ジェイドさて、冗談はさておき、後ほどあなた方の報告を聞かせて頂けるとありがたいのですがね。
ジェイドハロルド救出の経緯と帝国の状況も把握しておきたいので。
カイルあ……そうだ !このペンダントのことも調べなきゃ。
ジェイド! !
ロニそれか……。そいつを使ってハロルドの居場所を聞き込もうと思ってたのにな。死体だらけで、それどころじゃなかったぜ。
ジェイド随分と凄惨な現場だったようですね。そのペンダントの持ち主も亡くなっていたのですか ?
ナナリー……酷い有様だったよ。
ジェイドなるほど。一応、確認のために預からせて頂けますか ?
カイルはい。どうぞ。
ハロルド……………。
ジェイド……………。
ハロルドは~、それにしても疲れたわ。なんかお腹もへった気がするし。あんたたちは平気なの ?
カイルそういえばへってる !
ナナリーじゃあ、あたしが何か作るよ。ハロルドの分はここに持ってくるかい ?
ハロルドひと眠りしてからにするわ。あんたたちは先に食べてきて。
リアラじゃあ、お先に。ゆっくり休んでね。
カイルあ、ジェイドさんも一緒にどうですか ?
ジューダス……そいつが人間の食べるものを食べるとでも思っているのか ?放っておけ。
カイルええっ ! ?
ジェイドさすがの察しの良さですね。まあ、ひどい言われように傷つきましたが。
ハロルド……それ、イオンのペンダントでしょ。
ジェイドええ。
ハロルドさっき聞いたとおりよ。そのペンダントの持ち主は内臓の一部と手だけしか残っていなかった。
ジェイドあなたは、どちらのイオンだと思いますか ?
ハロルド何とも言えないわね。
ハロルドそもそも私が捕まったのは被験者イオンを、レプリカイオンだと思ってのこのこついて行ったからよ。
ジェイド本気で成りすまされたら見分けはつきませんよ。双子ではなく、同一人物ですからね。
ハロルド同情はお断り。凡ミスなのは自分でわかってるから。
ハロルドあの時、現場にいたのは被験者イオンよ。でもレプリカイオンが私を助けにきていたとしたら ?レプリカイオンならありえるでしょ。
ジェイド………………。
アスガルド帝国 近海
救世軍バルバトス派すげぇ……。バルバトスさん、相手の船にこっちの船首を突撃させるなんて。
バルバトス出て来い、メルクリア ! どこに隠れていやがる !
バルバトスおい、救世軍の役立たずども !メルクリアは本当にこの船に乗っているんだろうな ?
救世軍バルバトス派ま、間違いありません !皇女がこの帝国船で帰ってくると報せがあったんです !
バルバトスならメルクリアが出てくるまでの間この船の兵を一人づつ海に捨てる !無論、手足は縛ったままでな ! !
バルバトス聞こえているか、メルクリア !
アトワイト(一体なにが起きてるの ? 誰がこんなことを……)
バルバトス貴様はアトワイト…… ?
アトワイトバルバトス……なぜあなたがここに ! ?
バルバトスくくく……これはこれは……。思わぬところで巡り合ったものだ。
アトワイト……バルバトス、まずは武器を納めなさい。これ以上の暴挙は許さないわ。
バルバトス久しぶりに会ったというのにつれないことを言う。戦を共にする同士ではないか。
アトワイト…… ? あなたはもしかして……。
バルバトス共に再会を喜び会おう。……なあ ? アトワイトオオオオッ !
アトワイト―――― ! !
to be continued
キャラクター1話【13-1 船上】
バルバトスどうしたアトワイト ?先ほどまでの威勢が嘘のようではないか ?
アトワイト……くっ、何とでも言いなさい。あなたが聞きたかったことは全部話したつもりよ。
バルバトス派救世軍兵士あの、バルバトスさん……。この女の人、誰なんですか…… ?バルバトスさんは知り合いだったみたいですけど……。
バルバトス貴様らのような死にぞこないが知ってどうするっ !つべこべ言わずに、この女をどこかの部屋に閉じこめておけ !
バルバトス派救世軍兵士はっ、はい !
バルバトスマークの腰巾着 ! この女の話は聞いていただろう。すぐにメルクリアたちが逃げた大陸に船を向かわせろ ! 今すぐだ !
ルックわ、わかりました。ただ、ここからメルクリアたちが逃げたっていうファンダリア領まで向かうとなるとそれなりに時間がかかります……。
バルバトスふん、まあよかろう。
バルバトス転送魔法陣なぞ使って船から逃げ出したようだがディムロスたちがいる大陸を選ぶとはなかなか気が利くではないか。
バルバトスメルクリア ! ! そしてディムロスっ ! !待っていろ、すぐにまとめて俺が殺してやる ! !
バルバトスクク、クククククッ !アーッハッハッハッハッ ! !
カーリャ・N――お待たせしました。見回りの兵たちはここから離れたようですが念のため、しばらくは大人しくしていてください。
ルキウスありがとう。きみが手を貸してくれなければボクたちも今頃、乗っていた船と一緒に海の底に沈んでいたかもしれない。
ルキウスでも、ボクたちをかばって戦った兵たちの中には……。
カーリャ・N……今は考えないことです。まずは現在の状況をお伝えしておきます。
カーリャ・Nこの船は、アトワイト様が流した嘘の情報によりあなた方が逃げたことになっているファンダリア大陸に向かっています。
カーリャ・Nなので私たちは港に着き次第タイミングを見計らって次の行動に移ります。いいですね ?
ルキウスああ。今はきみの指示に従うよ。
メルクリア……何故じゃ。
ルキウスメルクリア ?
メルクリア何故わらわたちを助けるような真似をするッ ! !貴様らにとって、わらわは敵ではなかったのか ! !
カーリャ・Nそれは……。
メルクリア答えろっ ! ! さもなくば、わらわはすぐにでも貴様をここで八つ裂きにしてくれるぞ ! !
カーリャ・N……そうですね。私には、あなたを助ける義理などありません。
メルクリア! ?
カーリャ・Nですが、あなたを助けることはミ……ゲフィオン様の望みなのです。
メルクリアゲフィオン……じゃと ?
ルキウスゲフィオン……ビフレストを滅ぼした鏡士……。
メルクリア戯言を抜かすでないッ ! ! ゲフィオンがビフレストの皇女であるわらわを助けようなどと思うはずがなかろう ! !
メルクリアあやつはわらわの大切なものを全て奪っていったのだ !故郷も、民も、母上様や兄上様さえも…… !そのような者に慈悲の心があるとでも言うのかっ !
カーリャ・Nあなたに話しても理解してもらえるとは思いませんしゲフィオン様も理解されたいとは思わないでしょう。
メルクリア何じゃと…ッ ! ?
ルキウス落ち着くんだ、メルクリア。こんなところで争っている場合じゃない。
ルキウスボクたちの置かれている状況がわからないメルクリアじゃないだろう ?
メルクリア……う……しかし……。
カーリャ・Nそれに、今回あなたを助けようと決めたのは私だけではありません。
カーリャ・N捕まったアトワイト様は、私のように私情ではなく人としてあなたたちを見捨てるわけにはいかないと自ら囮となってくださいました。
カーリャ・Nあなたは、そのアトワイト様の行動さえ無駄にしようというのですか ?
メルクリア…………ッ !
カーリャ・Nそれでも私に刃を向けたいというのならあなたもそれまでの人間ということ。私も全力で相手をしましょう。
メルクリア…………今回だけじゃ。今回だけは、貴様らに従ってやる……。

キャラクター2話【13-1 船上】
イクス水鏡の森……。具現化に必要な仕掛けがありそうな場所で調べていないのは、ここだけだ。
ミリーナ当たり前だけど、やっぱりこの森の景色も同じなのね。歩いてるとイクスやフィルと一緒にピクニックへ行ったりしたことを思い出すわ。
フィリップあ、ああ……懐かしいね……。
ミリーナ確か、魔物が出るからって言われて、それ以来あまり水鏡の森には近づかなくなったのよね ?
フィリップミリーナ、それは……。
イクス……ミリーナ、その話は後でゆっくりしよう。今は一刻も早く仕掛けを見つけるんだ。
ミリーナそうね。ごめんなさい、懐かしくてつい……。
コーキスん ? なぁマスター。あっちのほう、何かチカチカ光ってないか ?
イクスあれは……魔鏡が反射する光だ !ということは……。
マークようやく見つかったか。
フィリップああ、間違いない。ここに設置された魔鏡は具現化の魔鏡陣の力を増幅させるためのものだ。
カーリャやりましたね ! では、ちゃちゃっとこの魔鏡陣を何とかしちゃいましょう !
フィリップ……いや、どうやらそう簡単にはいかないみたいだ。
コーキスまさか、フィル様でも解除できない術式なのか ! ?
フィリップいや、正確には術式自体はなんとかできると思う。ただ、それを実行するために必要な段取りが少々厄介なんだ。
イクス教えてくれ、フィル。どうすればビフレストの具現化を止められるんだ ?
フィリップまず、この魔鏡陣を書き換えたり消しただけではビフレストの具現化とキメラ結合は止まらない。
フィリップ魔鏡陣の構成を考えるに、オーデンセの具現化とビフレストとのキメラ結合は各具現化大陸からキラル分子を吸い上げて行われている。
フィリップおそらく、ビフレストの具現化を止めるには各具現化大陸に仕掛けられた魔鏡を破壊する必要がある。
フィリップそれも、一つだけじゃない。各大陸に数ヵ所、必要な数の魔鏡を設置しているはずだ。
マーク面倒くせえやり方しやがって。こりゃ人海戦術で挑むしかねえな。
イクスフィル、ビフレストの具現化が完了するまで、あとどれくらいなんだ ?
フィリップ……時間的猶予はない。具現化は今も少しずつ進行しているんだ。すぐにでも各大陸とのリンクを切らないと……。
コーキスなるはや……って奴だな !
ミリーナイクス、急いでアジトのみんなに連絡して協力してもらいましょう !
イクスああ !
ユリウスわかった。すぐに人員を手配する。何かあればこちらからも連絡をするようみんなには伝えておこう。
イクスありがとうございます。俺たちは具現化を止める準備をしておきますからみんなによろしく伝えてください。
リッド大陸ごとにある魔鏡の破壊ねえ。こりゃあ、骨が折れそうな仕事だぜ。
ガイアス魔鏡があると思われる場所は既にイクスたちが見当をつけてくれている。だが……。
セネル問題は時間だな。この浮遊島からケリュケイオンとゲートを使うにしても全部の場所を回るとなると、かなり厳しいぞ。
リッドああ、ゲートで各大陸に行けたとしてもそっから魔鏡の場所まで遠いとこだってあるしな。
ガイアス俺だけならミュゼに運んでもらうという方法も可能かもしれんが、それだけでは足りんだろう。
リッドあんたが運ばれてるとこ想像するとすげーシュールだな。
フィリップいや、もっといい方法がある。
リッドフィリップにマーク ! ?お前ら、イクスたちと一緒じゃなかったのかよ ?
フィリップついさっきまではね。きみたちがイクスから連絡を受けている間に僕たちは鏡士が使う転送ゲートでここに来たんだ。
セネルそれって……かなり体力を消耗するから緊急時以外は使うなって言われてるやつだろ。大丈夫……なのか ?
フィリップ緊急事態だからね。それにこれでも僕はこの世界で一番の鏡士だよ。大丈夫さ。
マーク…………。
フィリップ時間が惜しいから手短に話すよ。きみたちをこれから、僕の転送魔鏡術で各地の魔鏡設置ポイントに送り込む。
セネル帝国の連中が使ってる魔鏡術か。確かに、それなら時間はかなり短縮できるな。あんたがそれを使えるとは思わなかった。
フィリップあれはビフレスト式の魔鏡術でね。本来は事前準備が必要なんだが今回はそれを飛ばして行う。
フィリップだから片道切符になってしまうしもしかしたら危険な場所に転送されるかも知れない。それに、帰りは自力で帰ってきてもらうことになる。
リッドいや、十分だぜフィリップ。それなら何とかなるんじゃねえか ?
ガイアス……お前は、本当にそれでいいのだな ?
フィリップこれでもビクエだからね。たまには年配者の威厳ってものを見せておかないと。
ガイアス……わかった。では俺たちも仲間を集めて準備に取り掛かろう。
ガイアスユリウス、お前はアジトに残り全体の指揮を頼む。ジェイドは色々と忙しそうだからな。
ユリウス了解だ。では、各大陸への転送は五分後。その間に出来る限りアジトのみんなに情報を共有しておこう。
フィリップ――マーク。
マーク……何だよ。
フィリップありがとう、何も言わないでいてくれて。
マーク…………この馬鹿マスターが。

キャラクター3話【13-2 テセアラ領 領主の館1】
テセアラ領・領都アルタミラ
イオン ?リヒター、なぜ僕が領主と面談が許されないのか詳しく教えてもらえないかな ?
リヒターβ現在、各大陸の領主が次々と襲われていると報告を受けている。同時に、帝都で保管されていた心核もいくつか持ち去られたという話だ。
イオン ?その犯人が僕だとでも言いたげな態度だね。そんなことをするのは、出来損ないの【レプリカ】のほうじゃないのかな。
リヒターβああ、我々もその線で動いている。だからこそお前が『あの』イオンだと証明できない限り領主であるリーガルの元へは行かせられん。
イオン ?……つまり、この僕が【被験者】ではない、と言いたいのか。
リヒターβその通りだ。
イオン ?困ったね。信じてもらえないとなるとお前を力尽くでどかすしかないってことだから。
イオン ?まあ、どうせ、リビングドールβなんて汎用型のオモチャだし、壊してもかまわないか。
リヒターβ……待て。わかった。俺から話をつけてこよう。
イオン ?ふうん。出来損ないのオモチャでも恐怖心があるんだ。面白いね。
リヒターβ……但し、一つ聞いておくことがある。お前は自分がいつ頃この世界に具現化されたか覚えているか ?
イオン ?……おかしなことを聞くね。僕が具現化されたのはハロルドと同じ頃だったはずだけど。
リヒターβ……そうか。
イオン ?無駄口を叩いている暇があったら早く領主であるリーガルに――
リヒターβ――はああっ !
イオン ?なっ ! ?
リヒターβ……上手く避けるじゃないか。身体が弱いと聞いていたのだがな。レプリカイオン。
イオンどうして……僕が【被験者】じゃないとわかったのですか ?
リヒターβお前たちに伝わっていた情報には齟齬がある。被験者と呼ばれた方は、もっと前に具現化された。あのディストによってな。
イオン……なるほど、迂闊でした。
リヒターβさて、大人しく捕まってもらおうか。
イオン……そうはさせません !
リヒターβなにっ ! ? これは…… ! !ぐううううっっ…… ! !
イオン――ダアト式譜術。万が一の為あなたが来るまでの間に準備をしておきました。少しの間だけ、眠っていてもらいますよ。
イオン(……心核を入れ替えて……)
イオン――よし、これで大丈夫なはずです。あとは……。
帝国軍兵士おい、どうした ! ?物騒な物音がしたようだが……。
イオン! !
リーガルβ貴様……リヒターに何をした ?
イオン(……この人数相手にもう一度ダアト式譜術を使う……か ?)
リーガルβそいつを捕らえろ。詳しい話を聞く必要がある。
イオン(上手くいけばリーガルの心核も戻せるかもしれない。でも僕の体力が持つか……)
? ? ?助けが来る……。
イオン……なるほど、そうですか。
リーガルβお前、何を笑っている ?
イオンいえ。どうやら助けが来てくれるようなので。
ロイドうおっ ! ? すげーな ! !本当にパッとついちまったぜ ! ?
帝国軍兵士なっ、なんだ ! ?転送魔法陣 ! ? こんな所に ! ?
マルタちょっと ! 周りが帝国兵だらけじゃない ! ?
エミルな、なんでこんな状況になってるの ! ?
リーガルβなるほど、仲間がいたのか。
エミル――え ! ? リーガルさん ! ?
ロイドリーガル ! ! どうしてこんな所に……ってそもそもここはどこなんだ ?アルタミラ付近に飛ばすって話だったけど。
ミトス領主の館……じゃないかな。だとしたら、テセアラ領の領主はリーガルでリビングドールβにされてるってことになるけど。
ロイド……そういうことかよ。だったらここでとっ捕まえてアジトに連れて帰ればリーガルを助けられるってことだな !
帝国軍兵士リーガル様 ! ここは我々が !
リーガルβわかった。後は任せるぞ !
ロイドあっ、おい ! ! 待てよ ! !
ミトスロイド、深追いは禁物だよ。ボクらの目的は――
ロイド……ビフレストの具現化を食い止める。分かってるさ。
帝国軍兵士侵入者共が何をガタガタと !みんな、かかれ !

キャラクター4話【13-5 テセアラ領 領主の館4】
ロイドよし、これで片付いたな。
ラタトスク……ちっ。数が多すぎて時間がかかっちまった。
ミトス――ねぇ、その顔……。もしかしてイオン ?鏡映点リストで見たよ。被験者かレプリカの方かは分からないけど。
イオンああ……。はい、レプリカの方……です。証明できるものはありませんが……。
ロイドレプリカ…… ?てか、お前、顔が青いの通り越して白いぞ ! ?大丈夫か ! ?
イオン……すみま……せん。少し休めば大丈夫……。それより、あちらの彼を……。
マルタエミル、見て ! ? あそこで倒れてる人って ! ?
エミルリヒターさん ! ? どうして ! ?
イオン彼は……気を失っているだけです。リビングドールβに……されていたので心核を……戻しま……
マルタちょっと ! 全然大丈夫じゃないじゃない ! ?顔も真っ青だよ ! ?待ってて、すぐに治癒術を……。
イオンはぁはぁ……申し訳、ありません……。少し無理をしてしまったようです。
イオンあなた方は……ジェイドたちの……仲間ですよね。どうか、リヒターをあなたたちのアジトまで送り届けてくだ……さ――
ロイドおい ! しっかりしろ ! !
ミトス気絶しただけだよ。命に別状はない。とはいえ、このままって訳にもいかないね。
エミル魔鏡陣の仕掛けを壊すんだよね。でもリヒターさんが……。
ラタトスクリヒターなんざ、どうでもいいだろ。
二人よくないだろ !
エミル――え ? ミトス ?
ミトス……何 ? リヒターはハーフエルフなんだから心配して当然でしょ。それにイオンもボクらと似たようなものだし。
ロイド………………。
ラタトスクだが、どうする ? アジトに帰るゲートは魔鏡が設置されている場所とは逆方向だぞ。
マルタ手分けしたらどうかな。リヒターたちをアジトに連れて帰る組と魔鏡陣の仕掛けを壊す組と。
ロイドミトス。お前がエミルとマルタと一緒にこのイオンって人とリヒターを運んでやってくれよ。
エミルそれじゃあロイドが一人になっちゃうよ ! ?
ミトス……本当に、嫌なやつ。
ロイドな、なんだよ ? 俺、そんな嫌なこと言ったか ?だってミトスはイオンのことなんかわかってるみたいだったし。
ロイドリヒターのことはエミルとマルタが知ってるだろうし。それに、この二人を運びながら戦うとなると人数は多い方がいいだろ。
ラタトスク――テネブラエ。
テネブラエはい、お側に。
ラタトスクお前、ロイドについていってサポートしてやれ。俺たちは急いでこの足手まとい共をアジトに運ぶ。
ロイドよし、決まりだな。テネブラエ、頼むぜ !
テネブラエノイシュさんからいつもロイドさんのことは聞いていますからね。おまかせ下さい。
マルタじゃあ私、ジーニアスたちにも一応連絡しておくね。いざという時にロイドのサポートができないか確認してみる。
ロイドああ、頼む。それじゃあ、俺は例の仕掛けってやつを探しにいくか !
ミトスロイド……。
ロイドん ? 何だ ?
ミトス……せいぜい必死であがくといいよ。疲れ切って帰ってくるのを楽しみにしてるから。
ロイドおう。あがくのは得意だからな。
バルバトスようやく着いたか。もうすぐだ、もうすぐでお前に会えるぞ……。
バルバトスおいっ ! お前たち ! ! ディムロスだ ! !まずはディムロスという男がどこにいるのか捜し出せ ! !
バルバトス派救世軍はいっ !
バルバトスおっと、あの女も連れてくることを忘れるなよ ?ディムロスへの大切な手土産だからな。
ルック(いいのか……俺は本当にこのままバルバトスさんに従い続けて……)
バルバトスどうした、マークの腰巾着。まさか、今さら怖気づいた……などということはあるまいな ?
バルバトス派救世軍そんなことはありません !なあ、ルック ! 俺たちは戦うためにバルバトスさんに付いてきたんですから !
バルバトスならば、最後まで俺のためにその命を使え。戦場で死ぬのがお前たちの本望だろう ?
バルバトス派救世軍はい、その通りです ! !
バルバトスクックックッ、それでこそ戦士の証だ。救世軍から捨てられたお前たちでも死に場所くらいはこの俺が与えてやろう。
ルック………………。
カーリャ・N船が停泊したようですね。では、私たちも行動を開始しましょう。
カーリャ・N帝国軍の主力が上陸したら、船を奪取します。捕まった帝国兵を解放してそのまま沖へ出てください。
ルキウスきみはどうするつもりなんだ ?
カーリャ・N私はあなたたちの乗った船が沖に出たのを見届けたのち、アトワイト様の救出に向かいます。
ルキウスそれじゃあ、ここからは別行動だね。色々とありがとう。でも……。
カーリャ・Nはい、私たちは敵同士です。次に会うときは戦いの場かもしれません。
ルキウス……残念だね。
メルクリア…………。
カーリャ・Nでは、私は船に残っている見張り兵を一掃しますのであとは、あなたたちにお任せします。
ルキウスああ、こっちは上手くやってみせるよ。
カーリャ・Nそれでは、ご武運を。
ルキウスメルクリア、ボクたちもいつでも動けるようにしておこう。
メルクリアルキウスよ……わらわは、本当にこのままでよいと思うか ? 何もせず、鏡士たちの仲間に助けられるだけでよいのか ?
ルキウス……それは、きみの中にしか答えがない問いかけだよ。
メルクリアわらわは……。
ルキウスメルクリア。きみはどうしたいんだい ?
メルクリアわらわは……本当は……。

キャラクター5話【13-6 ファンダリア領 村】
スタンお待たせ、ディムロス !
ディムロスよく来てくれた、スタン。すまない、我々も協力は惜しまないが、こちらも日夜帝国軍との戦闘で動かせる兵が限られていてな。
スタンいや、ディムロスたちが協力してくれて本当に助かったよ。この大陸の地形なら俺たちより対帝国軍部隊の人たちのほうが詳しいだろうし。
シャルティエそれで、大陸のキラル分子を吸収してるっていう魔鏡はどこにあるんですか ?
スタンイクスたちが言うにはこのファンダリア大陸には全部で三つの魔鏡が設置されているそうなんだ。
ソーディアン・ディムロス二つの魔鏡は、それぞれリオンとルーティウッドロウとフィリアが破壊に向かってくれている。
ディムロスなるほど、つまり、残る一つを我々が破壊すればよいのだな。
ソーディアン・ディムロスただ、一つ問題があってな。その魔鏡が集めたキラル分子を求めて、魔物まで集まってくるのだ。
シャルティエ危険が伴う任務ってことですね。
スタンカイルたちも手伝うって言ってくれたけどハロルドさんを助けにいったばかりで無理をさせるわけにはいかなくて……。
ディムロスそれで、我々に白羽の矢が立ったというわけか。
スタンごめん、俺たちだけでなんとかしたかったんだけど。
ディムロス何を言っている ? こういう不測の事態の時こそ互いに協力する為の同盟ではなかったのか ?そうだろう、シャルティエ ?
シャルティエええ、ええ、わかってますよ。ディムロスが引き受けたのなら初めから僕に拒否権なんてありませんからね。
スタン二人とも……ありがとう !
ディムロスよし、では早速その魔鏡がある場所へ向かおう。シャルティエ、念のため我々の本部にはピエール部隊を待機させておいてくれ。
シャルティエええ~、あいつらですか ?別にいいですけど、大丈夫ですかね……。ちゃんとみんなに指揮とかできるかな……。
ソーディアン・ディムロス大丈夫か、スタン ?
スタンえっ ! ? な、なんだよ急に……。
ソーディアン・ディムロスなに、珍しく考え事をしているような顔をしていたのでな。
スタン……なんか馬鹿にされたような気がするぞ。でも、やっぱりディムロスにはバレてたのか。
ソーディアン・ディムロスルーティのことか ?
スタン……ああ。ルーティ、ずっと様子が変だろ ?俺やカイルとのこともあったし色々悩んでいるんだと思う。
スタンだから、そんな状態で魔物に襲われたりでもしたらって考えちゃってさ……。
ソーディアン・ディムロスこればかりは、お前たちの問題だからな。
ソーディアン・ディムロスしかし、だからといって目の前の問題を蔑ろにしていいわけではない。ルーティもそれがわからぬ未熟者ではあるまい。
スタン……そうだな。それに、リオンも一緒だし、きっと大丈夫だよな。
フィリップ――これで……全員の転送は……完了だ。
ユリウスあとは、みんなからの報告を待つだけか。フィリップ、きみはゆっくり休んでいてくれ。
フィリップああ……、そうさせてもらうよ。
カノンノ・Gあの、私、何か飲み物持ってきましょうか ?
フィリップそう……だね。少しだけ水を貰えるかな ?
マークおい、フィル。身体は……。
フィリップ……大丈夫。ただ、やっぱり歳……かな。つか……れ……。
マークフィル ! ?
カノンノ・Eフィリップ ! ? そんな、すごい熱…… ! !
P・カノンノわ、私、すぐ医療班の人たちを呼んでくる ! !
ユリウスマーク、これは一体どういうことだ ?
マーク……まあ、見ての通りだ。転送魔鏡術ってのは負担が大きすぎる術式でな。だから事前に仕掛けをしておかないとヤバいんだ。
マークなのにこの馬鹿は、緊急事態だからって……。ビクエだろうと、こんなにポンポン飛ばしてりゃ倒れるに決まってんだよ !
マークああっ ! ! 誰だ、こんなときに魔鏡通信なんぞかけてくる奴はっ ! !
ルック…………マークさん、俺です。
マークルック ! ? お前、今どこにいるんだ ! ?
ルックすみません。今はバルバトスさんと一緒にファンダリア領にいます……。
マークバルバトスだと ! ?あいつ、なんでファンダリア領なんかに……。
ルックメルクリアがファンダリア領にいるって情報を手に入れて……それに、ディムロスって人も捜してるみたいなんです。
ルックでも、途中で帝国軍の艦隊も追いついてきて……。バルバトスさんが帝国の船を奪ったんで追われてるんです。
ルックで、その帝国軍を押しやるために動けない仲間を使って足止めしろって命令されて……。
マークちょっと待て ! ? そんなことしたらあいつらは確実に……。
ルックマークさん ! ! こんなこと頼めた義理じゃないのは百も承知です ! ! でも、このままじゃあいつら全員、死んじまう……っ ! !
ルックおねがいです、マークさん。俺、何とかあがいて時間を稼いでみますからあいつらを助けて下さい !
マーク……くっ。
カノンノ・Eマーク ! どうして黙ってるの ! ?このままじゃ本当にルックさんたちが ! !
マークわかってる ! だが、ビフレストの具現化を阻止するのに、救世軍の兵力も割いてるんだ。
マーク俺が兵力かき集めて行くにしてもアジトからファンダリア領じゃ距離がありすぎて、存在が消えちまう……。
フィリップ僕も一緒に行けばその点は解消されるね。ルック。僕らが行くよ。だから、それまで何とか耐えてくれ……。
マークフィル ! ? お前……。
フィリップマーク……ケリュケイオンのみんなに連絡だ。僕たちを迎えに来たあと、すぐにファンダリア領へ向かう旨を伝えてくれ。
マーク何言ってんだ ! ?こんな状態のお前を連れていくことなんて……。
フィリップ頼む、行かせてくれ……。イクスなら……例えどんなときでも……大切な仲間のために戦うはずだ。
マークこんなときでもイクスかよ。久々にあいつにムカついてきたぜ。
マーク……くそっ、どうなっても知らねえからな ! !おい、ルック ! !俺たちが行くまで、絶対死ぬんじゃねえぞ。
ルックはっ、はい ! !

キャラクター6話【13-7 ファンダリア領 平原1】
リオン魔鏡の仕掛けがあるというのはこの辺りで間違いないんだな。
ルーティそのはずよ。だから、ここからは一層気を引き締めていかないとね。
リオンそれは僕に言ってるのか ?
ルーティ誰もあんたなんかの心配なんてしてないわよ。魔鏡につられて、魔物が集まるって話だったのを思い出しただけ。
リオンなら、僕の足手まといにならないように。気を付けるんだな。
ルーティわかってるわよ、いちいちうるさいわね !大体、あんたはいっつもそうやって偉そうに――
リオン……ふっ、やっと調子が出てきたようだな。
ルーティ……はあ ?
ソーディアン・アトワイトルーティ。リオンさんはあなたのことを心配してくれて言ってくれてるんじゃないかしら ?
リオンおいっ ! 勝手なことを言うのは止めろ !
ソーディアン・シャルティエすみません、坊ちゃんは誰かを励ましたりするのが絶望的に苦手ですから。
リオンシャル ! お前まで…… ! ?
リオン――待て、あれは何だ ?
ルーティあんたねぇ、話を逸らしたいからってそんな古典的な方法で誤魔化さなくても……。
リオン違う ! よく見ろ !
帝国軍兵士ウオオオオオオオッ ! !
バルバトス派救世軍兵士――まだだぁ ! ! 俺たちはまだ戦えるんだッ ! !
ルーティちょっと……何なの、あの兵士の数…… ! !
リオン戦っているのは帝国軍と救世軍の兵士か。
ソーディアン・アトワイト……まるで戦争だわ。
ソーディアン・シャルティエどうしますか、坊ちゃん。魔鏡がある場所はこの先ですよ ?
リオン……巻き込まれると面倒だ。時間は掛かるが迂回するぞ。
バルバトス派救世軍兵士バルバトスさん ! このままではすぐに帝国軍の連中に追いつかれます ! !
バルバトス帝国の虫ケラ共め…… !この俺の邪魔をしたことを後悔させてやる ! !来い、アトワイト ! !
アトワイト……ッッ ! !
ルーティアトワイト ! !
アトワイトルーティさん ! ? どうしてここに……。
バルバトス――何だ ?貴様ら、この女のことを知っているのか ?
バルバトス……ククク、そうか。アトワイトを知っているということは、さては貴様ら、ディムロスが率いる対帝国軍部隊の兵か ! !
アトワイトまずいわ…… ! 二人とも、すぐに逃げるのよ !
バルバトスいけぇぇぇ、救世軍どもよ ! !あいつらを捕らえてディムロスの居場所を吐かせろおぉぉ ! !
バルバトス派救世軍兵士――うおおおおおっ ! !
リオンマズい ! 退け ! ルーティ ! !
ルーティ……くっ、こいつら、なんて気迫なのっ ! ?
ソーディアン・シャルティエど、どうしましょう ! 坊ちゃん ! ?
リオン……くそっ、兵の数が多すぎる。このままでは僕たちが……。
ルーティ……仕方ないわね。
ルーティリオン ! あんただけでも逃げなさいッ !こいつらはあたしが足止めするわ !その代わり、あんたは絶対に魔鏡を壊してきなさいよ !
リオン馬鹿を言うな !それじゃあお前が――。
ルーティあたしがこんなところでくたばる訳ないでしょ !その代わり、あんたにはでっかい貸しを作るんだから覚悟しときなさいよ !
ソーディアン・シャルティエ……坊ちゃん。
リオン……シャル、僕たちは魔鏡がある目的地まで向かう。一気に切り抜けるぞ !
ソーディアン・シャルティエりょ、了解です ! !
ルーティ……ほんと、世話が焼けるんだから。それじゃあ、アトワイト……って今二人この場にいるからややこしいわね。
ソーディアン・アトワイトそうね。でも、あなたをマスターに選んだアトワイトは私一人だけよ、ルーティ。
ルーティあー、そういう話は、この場を切り抜けてから聞きたかったわ。でも、ちょっとだけやる気は出たかも。
ルーティさあ、来なさい !あんたたちの相手はこのあたしよ !
フィリア……遅いですね、ルーティさんたち。
スタン駄目だ。さっきから魔鏡通信で連絡してるけど二人とも出てくれない……。
ウッドロウ何か問題が発生したのかもしれない。私たちも動く準備をしておいたほうがいいのかもしれないね。
シャルティエで、でも。あのリオン君たちに限って……。
対帝国軍部隊伝令ディムロスさん ! 先ほど、伝令部隊から緊急の報告が上がってきました !
ディムロス何があった ?
対帝国軍部隊伝令それが、近くで大規模な戦闘が始まったと……。これが詳しい場所が記載された報告書です。
フィリアこれは…… ! ?
スタンルーティたちが向かった場所じゃないか ! ?
ウッドロウとなると、二人がこの戦闘に巻き込まれている可能性もある。どうする、スタン君 ?
スタン決まってます !ルーティとリオンを助けに行かなきゃ !
ディムロススタン、私たちも同行しよう。何やら嫌な予感がする……。

キャラクター7話【13-10 ファンダリア領 街道3】
ロイドイクス ! 設置されてた魔鏡は壊したぜ !
イクスありがとう、ロイド。テセアラ領の魔鏡はこれで全部破壊完了だ。
ロイド了解。それじゃあ、あとはよろしく頼むぜ。
ミリーナこれで残りの魔鏡の仕掛けはファンダリア領だけね。
カーリャはわわ……待ってるだけっていうのは落ち着かないですね。
コーキスマスター……。フィル様が言ってた時間もそろそろじゃないか ?このままじゃ……。
イクス……一度、アジトにいるユリウスさんに連絡してみる。何か報告が入っているかもしれない。
ユリウスイクスか。すまない、色々あってこちらの連絡が滞ってしまっていた。
イクス色々って、もしかして何か問題が起こったんですか ?
ユリウスいや、少し話が入り組んでいてな。この作戦が終わってから報告しようと思ったのだがそちらも何かあったのか ?
ミリーナそれが、魔鏡の破壊は順調に進んでいるんですがファンダリア領のキラル分子リンクだけまだ切れていないんです。
ユリウスファンダリア領だと ? まさか……。
イクスユリウスさん ?
ユリウスイクス、こちらにファンダリア領で救世軍を巻き込んだ大規模な戦闘が発生したという報告があったんだ。もしかしたら、それが影響しているのかもしれない。
コーキス救世軍が ! ? ユリウス様、そっちにフィル様とマークがいるだろ ? 二人は何て言ってんだ ?
ユリウス……いや、二人は事態の収拾のため現場に向かった。そのあとの報告は、我々のところにも届いていない。
ユリウスともかく、何か動きがあればすぐに報告する。不安だろうが、イクスたちはそのまま現場で待機しておいてくれ。
コーキスどうするんだよ。マスター !もし、ファンダリア領の魔鏡が壊せなかったらここにいる俺たちも具現化に巻き込まれちまうんだろ ! ?
カーリャあわわ !これって大ピンチってやつじゃないですか ! ?
ミリーナいざとなったらキラル分子リンクを解除しないまま具現化停止処理を行う方法もあるけど……。
カーリャ駄目ですよ、ミリーナさま !フィリップさまがその方法は危険だって仰ってたじゃないですか ! ?
ミリーナそうだけど……。イクスはどう思う ?
イクス…………。
ミリーナイクス ?
イクスえっ ? あ、ああ……。ごめん、もう一回言ってくれないか ?
カーリャもう、しっかりしてくださいよイクスさま !いつもならここでイクスさまの心配性が出て色々言ってくれるところじゃないですか ! ?
イクスさ、最近はそうでもないだろ !でも、そうだよな……。この状況でどう行動するのが最適か考えないと……。
ミリーナ……イクス、ちょっと二人だけで話をしない ?
イクスミリーナ…… ?
ミリーナイクス、単刀直入に聞くわ。フィルと何があったのか教えて。
イクス! ? ど、どうしたんだよ急に……。
ミリーナ急なんかじゃないわ。フィルと何かあったんでしょう ?
ミリーナ私、イクスから話してくれるのを待っていたの。でも、ここに来てからのイクス……なんだかいつもとは違っていたから……。
イクス俺は……いつも通りだよ。
ミリーナううん。普段のイクスならフィルが危険を承知で転送ゲートを使おうとしたときに止めたはずよ。
ミリーナだから、フィルを止めなかったイクスを見てきちんと話を聞くべきだと思ったの。
ミリーナお願い、イクス。私にもちゃんと話して。一体、フィルと何があったの ?
イクス……ミリーナ。ミリーナは、自分の感情を疑ったことはないか ?
ミリーナ……自分の、感情を ?
イクスああ。答えてくれ、ミリーナ。
ミリーナ――あるわ。
イクス! ?
ミリーナ私にはゲフィオンの記憶が受け継がれているから。『最初の私』と『今の私』の記憶と感情が同居しているんだもの。
ミリーナ影響だって……受けているでしょうね。
イクスあ……。なら……ミリーナはどうやって自分の気持ちが自分だけのものだって……。
ミリーナ……感情って何なのかしらね。
イクスえ ?
ミリーナ全然興味のなかったもの――そうね、例えばハーブがあまり好きじゃなかったとして、でも好きな人がハーブが好きだから、一生懸命好きになろうとする。
ミリーナそして気付いたら嫌いじゃなくなってる……なんてこともあるかも知れないわよね。
イクスそういうことも……あるかもな。
ミリーナそれは私の感情なのかしら?好きな人に影響された感情は私だけの感情?
イクスそれは……自分の感情だよ。だって自分でハーブを好きになろうとして選んだんだから。
ミリーナええ。誰かに影響を受けたとしても、選ぶのは私。
ミリーナゲフィオンの記憶や感情に影響を受けても私は今目の前にいるイクスを見てイクスを好きになることを選んだの。
イクス! !
イクスけ、けど……それが、そうなるようにあらかじめインプットされていたものだとしたら……。或いは暗示をかけられているとしたら……。
ミリーナゲフィオンが、私を造る時にそうなるように仕向けていたらってことよね。ありそうな話だわ。だって、ゲフィオンはイクスを守りたかったんだから。
イクスミリーナ……。気付いてたのか?
ミリーナ気付いていた ? どういうこと ?私は……単に私が二人目を造るならそうすると思ったの。酷い女だもの、私。
イクス(ゲフィオンから受け継いだ記憶に具現化された時のことはないのか……)
ミリーナでも……もしイクスが私を傷つけたり、幻滅させることがあったら、きっとインプットされた気持ちだって消えていってしまうと思う。
ミリーナ暗示だってそう。どんなに強固なものでも打ち破れるものだと思うわ。人の心は脆くて崩れやすいから。
ミリーナ私たちが具現化されてもう二年以上経ってるのよ ?もう具現化前のイクスより目の前のイクスの方がずっと鮮やかだわ。
ミリーナイクスは違うの? 記憶の中のミリーナと『私』とどっちの方が鮮明?
イクスそれは目の前のミリーナだよ。記憶は……風化していくから。
ミリーナ感情もよ。時間はかかるかも知れないけれど。
イクス感情も……風化する……。
ミリーナ私は、ずっと『今』のイクスの傍にいた。みんなと出会って、ゲフィオンが抱えてきた嘘を真実にしようと戦ってくれたイクスを見てきた。
ミリーナ私は、色んなことに怯えて、悩んで、それでも最終的には前を向いて頑張ってるイクスが好き。今のあなたが好き。
ミリーナそれはゲフィオンの感情じゃない。私が自分で生みだした感情。
イクスミリーナ……。
ミリーナ私は、イクスのことが大好きよ。

キャラクター8話【13-11 アジト】
イオン……うっ……。ここ、は…… ?
イオンそうだ、彼は…… !
リヒター…………。
イオンよかった……。
ジェイドお目覚めのようですね、イオン様。
イオンジェイド ! それにハロルドも !では、ここは皆さんのアジトなんですね ?
ハロルドまあね。ってことで、早速だけどちょ~っとあんたの身体を見させてもらうわよ。
マルタええっ ! ? 何やってるのハロルド ! ?いきなり男の子の服を捲し上げるなんて ! ?
ミトス……胸に何か埋め込まれている。あれは、鏡……魔鏡の破片 ?
ハロルドおっ、あったあった。ってことはあんたは正真正銘レプリカイオンの方ってことね。
マルタえっと、どういうこと ?
ハロルドそっか。まだあんたたちには言ってなかったわね。まぁ、ちゃちゃっと説明すると、この鏡の破片がこの子がレプリカイオンである証拠なの。
イオン僕たちの計画を進めるには、僕の身体が虚弱すぎました。いざというとき、ハロルドの足手まといにならないよう僕は自分で自分の身を守れなければなりませんでした。
ハロルドそう。元々身体の弱いイオンの体力を補うためには親和性の高い精霊ローレライとキメラ結合させてローレライのアニマを共有させる必要があったって訳。
ハロルドそこで、レプリカイオンには鏡の破片を埋め込んだのよ。どう ? これで少しはわかってきたでしょ ?
ジェイドなるほど……。イオン様にローレライの第七音素――ここではアニマとキラル分子ですが、とにかくそれを供給する形で、体力を底上げしているわけですか。
マルタえっと……私は全然わからなかったんだけど……。
ミトス精霊輪具を使った精霊装の応用だよ。ボクたちの世界のエクスフィア、他には天族と人間が融合する神依とかも参考にしたんだろうね。
ミトスそれらを複合させ、魔鏡片を使ってイオンと精霊ローレライを擬似的に結合させた。
ミトス要するに、イオンは常時精霊ローレライとごく微弱な精霊装状態にあって、ローレライのマナ――生命エネルギーを借り受けているんだ。
イオンはい……。そこまでしてもらっても少し戦うとこの通りですが……。
ジェイドハロルド、念のためにお聞きしますが精霊装状態によるイオン様への悪影響は ?
ハロルドないわね。精霊輪具の使用だと負担も大きいけどこの魔鏡片はエネルギーの吸収を弱めているわ。
ハロルド何よりイオンはレプリカだからローレライとは構成が驚く程似ているの。他の人間じゃ拒絶反応で倒れるでしょうね。
ジェイド………………。
マルタ要するに、イオンは体が弱くて戦える体じゃないのにハロルドが戦えるようにしたってことだよね ?
マルタレプリカってのがよく分からないけど……でも、なんだか凄いね。
ハロルド当たり前でしょ。なんたって私、天才だから。
ジェイドイオン様……相変わらずあなたは無茶をしますね。こんなことをハロルドが勝手にやるとは思えない。あなたが頼んだのですね?
イオン……ええ。僕たちには味方がいなかったんです。僕も戦わざるを得なかった。
イオンどんな手段でもかまわないから、足手まといにならない最低限の力が欲しいとハロルドにお願いしました。元の世界で、僕は守られるばかりで無力でしたから。
イオン……今も無力なのは変わらないかも知れません。僕はリーガルをリビングドール状態から救うことができませんでした。申し訳ありません。
ハロルド仕方ないわよ。むしろ、リヒターだけでもリビングドール状態から解放できたんだから上出来よ。
ハロルドそれにあんたは無力なんかじゃないわよ。ちゃんと約束を果たそうとしてくれたんだもの。ありがとう、イオン。
ジェイド……色々と言いたいことはありますが今はこれだけにしておきます。元の世界でもあなたは無力ではなかった。
ジェイド無力などと言ったら、ルークもアニスも悲しみますよ。
イオン……ありがとう、ジェイド。
ジェイドさて、イオン様。今、あなたが把握している各大陸の領主の状況を教えていただけませんか ?
イオンはい、そのことなのですが——
イオン! ?これ、は……。
ジェイドイオン様 ? どうされたのですか ?
イオンローレライの、声です……。
ジェイド……やはりそうか。イオン様はローレライを召喚できると言っていましたね。それは魔鏡片を埋め込まれる前からですか ?
ハロルドそうよ。被験者にはできなかったけどイオンとこの世界で造られた新しいレプリカイオン――リベラだっけ ? その二人はローレライを呼べた。
ジェイドだとすれば、今のイオン様は常にローレライを召喚しているのと同じだ。
イオンそうです。さすがジェイドですね。魔鏡片を埋め込まれてから、僕は折に触れてローレライの声を受け取っています。
ジェイドそれは預言(スコア)ですか?
イオンいえ、この世界に預言(スコア)は存在しないようです。
イオンその代わりローレライは時の流れの音を聞くことができるそうなのです。
ハロルドそのせいで、イオンも自分の意志とは関係なく過去や未来の音を聞いてしまうそうよ。
ハロルドこれから起きるかも知れないことやかつて起きてしまったことなんかをね。
ハロルドでも、イオンだけズルいわよね。私だって精霊と話してみたいのに !
マルタハロルドさんって、やっぱ変……。
イオン…… ! ? そんな……。
ジェイドイオン様、ローレライは何と ?
イオンジェイド、イクスたちに一刻も早く今いる島から離れるように伝えてください。
イオンローレライが言うには、このままでは【バロールの眼】が開いてしまうと……。
ミトス【バロールの眼】 ?それは、一体何のこと ?
イオン僕にもそれがどういうものなのかまではわかりませんが、危険なものであることは間違いないとローレライは言っています。

キャラクター9話【13-12 ファンダリア領 平原2】
シャルティエ……酷い状況ですね、これは。あちこちに死体が……。
ウッドロウ大規模な抗争だと聞いてはいたがまさか、ここまでのものだったとは。それに、この戦いは……。
フィリアええ……帝国軍に立ち向かっている救世軍の方々は殆どが負傷兵です。
ディムロス自軍の負傷兵すら戦わせようとするなどこの軍の指揮官は何を考えているんだ !
バルバトス派救世軍兵士……ううっ !
フィリア大丈夫ですか ! ? しっかりしてください ! !今手当てを !
バルバトス派救世軍兵士——どけっ ! !
フィリアきゃぁ ! !
スタンフィリア ! ! お前、何するんだ ! ?フィリアに謝れ ! !
バルバトス派救世軍兵士俺たちは——俺たちは戦えるっ ! !たとえ手足が失われようともっ ! !
スタンおいっ ! 待て ! !
ソーディアン・ディムロス止めろ、スタン !あの者には、すでに我らの声は届いていない。
フィリアあの人の眼……何かにとり憑かれているようでした……。
スタン……こんな戦い、絶対に間違ってる ! !早く止めないと ! !
ディムロス方法なら一つだけある。この部隊を指揮する者を討ち倒すのだ ! !
シャルティエで、でも僕たちは魔鏡を壊しに行かないといけませんしルーティさんやリオンくんも捜さないといけないんですよ ! ?
シャルティエせめて、両軍を相手にできる兵がいないと……。
ローエンでは、私たちが助太刀致しましょう。
スタンローエンさんにヴィクトルさん ! ?二人がどうしてここに ?
ローエンフィリップさんからの指示です。一刻も早く、この戦いを止めるために我々が派遣されました。
ディムロスしかし、何故このような場所で救世軍と帝国軍が争っているのだ ?
ローエン帝国軍の目的はバルバトスさんです。どうやら帝国軍籍の艦を奪ってこの地にやってきたという情報がありました。
ディムロスバルバトスだと ! ?奴もこの世界に来ていたのか ! ?
シャルティエどおりで戦い方が無茶苦茶な訳だ。無理やりこんなことをやらされている兵たちもたまったもんじゃないですよ。
ヴィクトルいや、厄介なことに救世軍の兵たちはバルバトスに心酔してしまっている。
ヴィクトル彼らは自ら志願して肉の壁となり帝国軍の侵攻を妨害しているのだ。
ローエンこのままでは犠牲者が増える一方です。しかし、すぐにでも魔鏡を破壊しなくてはイクスさんたちが危険なのも事実。
ローエンそこで、皆さんには今から二手に分かれて行動して頂きます。
ローエン一方は救世軍の鎮静化。もう一方は魔鏡の破壊へと向かいましょう。
ウッドロウ戦力が分散されるのは痛いが時間がない以上それが得策か。
ディムロスでは、私とスタンは当初の予定通り魔鏡の破壊に向かう。シャルティエ、お前は対帝国軍部隊と共に、この戦いを止めるのだ。
シャルティエはい、わかりました。
ディムロススタン、お前も異論はないな。
スタンああ、魔鏡は俺とディムロスで何とかします。
フィリアスタンさん……気を付けてくださいね。
スタンありがとう、フィリア。それじゃあ、行ってくる !
ディムロススタン、魔鏡がある場所まではもうすぐだ。ここからは魔物の気配にも気を配っておこう。
スタンああ。それにルーティたちも近くにいるかもしれない。合流できたらいいんだけど……。
ソーディアン・ディムロススタン、気持ちはわかるが今は集中するんだ。なに、彼らならば機転を利かせて行動しているはずだ。
スタン……そうだよな。リオンは俺なんかよりよっぽど頭がいいし、ルーティだって……。
バルバトスみつけたぞぉぉぉぉぉぉぉ ! ! ! !ディィィィィィムロォォォォスッッッッ ! ! ! !
ディムロスなにっ ! ? 後ろか ! ?
スタンディムロス ! ! 危ない ! ?
バルバトスぶるるるるああああっっっっ ! !
スタン——くっ、うわああああっ ! !
ディムロススタン ! !
バルバトス俺の邪魔をしおって……。まあいい。これで貴様とゆっくり殺し合いができるというものだ。そうだろう、ディムロス !
ディムロスバルバトス ! お前の目的はなんだ ?なぜ、兵たちにあのような真似をさせる ! ?
バルバトスふっはっはっ ! !決まっているだろ、貴様をこの手で殺すためだ ! !
バルバトス俺がどれほど、この日を待ち望んでいたか……。それを貴様の身体を切り刻んで味合わせてやるっ ! !
ディムロス……ならば、望み通り相手をしてやろう。但し、地に伏せるのは貴様のほうだ ! !
バルバトスほほぅ、では、これを見ても同じことが吐けるか ?
アトワイトディムロス ! !
ディムロスアトワイト ! ?……バルバトス、貴様はまた同じ過ちを繰り返そうというのか ! !
バルバトス……過ちだと ?俺はずっとこの日を待ち望んでいたのだ ! !
バルバトス英雄と呼ばれた貴様をこの手で殺す瞬間を味わう日をなぁぁ ! !

キャラクター10話【13-13 ファンダリア領 森】
バルバトスふはははっ……たまらんな !貴様の女の命は今この俺が握っている。
バルバトスどうだ ? ディムロス中将。今の心中を教えてはくれまいか。憎いか ? 俺を殺したいか ?
ディムロス……貴様っ。
アトワイトディムロス。挑発に乗ってはいけないわ。
バルバトスつまらん。なら手始めに……おいっ。あの女を連れてこい。
バルバトス派救世軍兵士ハッ ! こちらに !
ルーティ……くっ。
二人ルーティ ! ?
スタンルーティ……だと。
ディムロススタン ! 目を覚ましたのか ! ?
スタンあぁ……なんとかっ。それより、ルーティを助けなくちゃ。
バルバトスほう。死にぞこないの分際で。まだ俺とやり合おうというのか。
バルバトス面白い。やはりこの女から殺すとしよう。腕か脚か……どこから切り落とすべきか。
ルーティやれるものならやってみなさ――
ルーティぐっ !
スタンルーティ ! ! やめろっ、バルバトス ! !
バルバトスその目だ。貴様のような目をした輩がいつも俺の邪魔をするために群がってくるのだ……。
バルバトスアトワイト、スタン・エルロン。それにディムロス。貴様ら全員、同じ目をしやがる ! !
バルバトスその目を潰し、舌を切り裂きじっくり苦しみ悶えながら殺してやるっ ! !まずは、この女からだっ !
リオンそうはさせるかっ !
バルバトスなにっ ! ?
バルバトス——うぐっ。
リオン僕の手を煩わすな。
アトワイトありがとう。おかげで助かったわ。
ルーティまったく。遅いわよ。
リオンふん。お前まで助けたつもりはない。
シャルティエ二人とも無事救出完了ですね。
バルバトスちっ ! ……シャルティエか !小虫ごときが俺の視界に入るんじゃねえ !
シャルティエ正直、貴方とは関わりたくありませんでしたがそうも言ってられない状況だったもので。
ディムロスバルバトス。今すぐ部下と共に戦場から撤退しろ。
バルバトス黙れ ! 軟弱が ! !すぐに引き裂いてやる ! !
ディムロス今貴様らが勝手な行動を取ればイクス率いる先行部隊の作戦遂行に多大なる支障が発生する。
ディムロス我らに争ってる時間はない。今にも皇女メルクリアは亡国ビフレストを復活させようとしてい──
バルバトスその名を口にするな ! !あの女も貴様らも皆殺しにしてやる ! !
バルバトスメルクリアは俺をリビングドールに……操り人形にしやがった !俺の尊厳を踏みにじりやがった !
バルバトスあのガキめ ! 今殺す ! すぐ殺す ! !抹殺してやる ! 貴様らはそれを見ていろ ! !殺した後に全員すり潰してやる ! !
ディムロス私怨か。相変わらず貴様の戦いには信念も大義もないようだな。
アトワイト部下を道具としか思わない残虐なところもね。
バルバトスメルクリアを殺すまで屍の山を築いてやる !みんな使い捨ての駒どもだ ! !どうなろうと知ったことか ! !
ディムロス貴様とてかつては軍人のはず。大義と、部下を生かして帰してこその誇り。それを失った貴様はただの狂犬だ !
バルバトス俺に向かってしゃべってんじゃねえ !何が大義だ、何が部下を生かしてだ ! ?てめえはいつも偉そうにぬかしやがるっ !
バルバトスまずは力で示せっ ! この腰抜け野郎がっ ! !
ディムロス何を話そうと貴様には届かぬか。ならば仕方がない。憎しみに囚われた愚か者――
ディムロス我が誇りに懸けて貴様をとめるっ ! !
バルバトス足掻き苦しめ ! 俺を楽しませろっ ! !俺の餓えを満たせ ! ! ディムロスっ ! !

キャラクター11話【13-13 ファンダリア領 森】
バルバトス——まだだ、まだ俺の飢えは満たされん ! !こいっ ! ディムロス ! !
ルーティはぁはぁ……まだ戦おうっての ?勘弁しなさいよ……。
リオンこいつ……本当に人間か ?
ディムロスいや、奴も限界が近いはずだ。スタン ! !
スタンああ ! このまま一気に決めるぞ !
バルバトス無駄だ ! その程度でこの俺を止めようなどと—— ! !
? ? ?天光満つる処に我は在り黄泉の門開く処に汝在り出でよ神の雷 !
リオンこの声は—— ! ?
メルクリアこれで終わりじゃ !インディグネイション ! !
バルバトスぐあああああああああっっっっ ! !
メルクリアわらわの術を受けて、まだ意識があるとは噂通りの化け物ぶりじゃな、バルバトスよ。
バルバトスな……、き……さまは…… ! ?
メルクリアわらわがメルクリアじゃ。ローゲ程の品格もない男に名乗るのも口惜しいがの。
メルクリアじゃが、貴様が場をかき回してくれたお陰でビフレストを復活させるという我が悲願が成就する。化け物も人の役に立つとは驚きじゃ。
バルバトス黙れ…… !きさ、まは……ここで俺が……ころ、して……。
メルクリア……わらわを猪のように追い回すだけしか能のない単細胞では何もできぬ。頭の足りぬ力任せの単細胞など恐るるに足らぬわ。
バルバトス……ころ……し……。
スタンバルバトスが、止まった……。
メルクリア——わらわの用は済んだ。その男の処理は貴様らに任せる。好きにするがよい。
リオン待て。どういうつもりだ。キラル分子を送り込む最後の魔鏡は、僕が破壊した。ビフレストの具現化も失敗したはずだ。
メルクリアそんなことはわかっておる。わらわはただあの猪のような大男に、狙うは貴様らではなくわらわであると教え直してやったまでのことじゃ。
リオンその行動に何の意味がある ?下手をすれば、本当にバルバトスに殺されていたかもしれないんだぞ ?
メルクリア……この程度では借りを返すにもあたらぬが命の恩人を見捨てるような外道ではない。
アトワイトメルクリア、あなた……。
帝国兵メルクリア様 ! ここは危険です !すぐに我々と共に避難を !
メルクリアわかっておる。
メルクリア――黒衣の鏡士の仲間共よ !わらわはまだ諦めてなどおらぬぞ。次は必ず我がビフレストを復活させてみせる !
ルーティ何だったわけ ?まさか、あたしたちを助けてくれたの ?
リオン理由などどうでもいい。このままメルクリアを野放しにするのは危険だ。僕たちも追いかけるぞ。
カーリャ・Nお待ち下さい。メルクリアの追跡は引き続き私に任せて頂けませんか ?
アトワイトネヴァンさん。メルクリアを尾行していたのね。
カーリャ・Nはい。彼女が皆様に危害を加えるようなことがあれば出て来ざるを得ませんでしたが……。
ディムロス結果的に、我々は彼女に助けられたという訳か。
アトワイトリオンさん。ネヴァンさんの言う通りメルクリアの追跡は彼女に任せましょう。私たちもさっきの戦いで、かなり疲弊しているわ。
リオン……ネヴァン、何かあったらすぐに連絡しろ。僕たちも動けるように待機しておく。
カーリャ・Nありがとうございます。では、皆様もお気をつけて。
イクス——よし ! 各大陸とのリンクは全部切れたぞ !
ミリーナイクス、すぐに私たちも始めましょう !
イクスああ、フィルが書き換えた魔鏡陣を作動してビフレストの具現化を止めるっ !
コーキスマスター、頼んだぜ !
イクス————いくぞ ! !
カーリャな、なんですか ! ?急に目の前が真っ白になりましたよっ ! !
ミリーナこれは……光がオーデンセ中を包み込んでいるんだわ !
コーキスマスター ! ! ミリーナ様 ! !くそっ、前が……見えない…… ! !
ミリーナイクス ! ?
コーキスマスター ! 大丈夫か ! ?身体とかどこか痛かったりしないか ! ?
イクス……大丈夫、俺は何ともないよ。それに、ビフレストの具現化も止まったみたいだ。
カーリャということは、無事成功したんですねっ !
コーキスやったな、マスター !
イクス……ただ、魔鏡陣を作動させたことでキラル分子の供給がなくなったから——
カーリャはわわわわわっ ! !凄い揺れです~~ ! !
コーキスどうなってるんだ、マスター !
イクス島が消滅しようとしてるんだ !すぐに転送ゲートを使ってアジトに戻るぞ !

キャラクター12話【13-14 ファンダリア領 街道4】
救世軍兵士マークさん、帝国軍の兵が撤退しているとの報告が上がってきました。
マークローエンの作戦通りだな。お前たちもよくやった。すぐに引き上げる準備をしておけ。
救世軍兵士了解です !
マークはぁ。今度こそマジでヤバイかと思ったが何とかなるもんだな。
フィリップお疲れ様、マーク。見事だったよ。
マークいや、指示を出していたのは殆どローエンだよ。あの爺さん、普段は飄々としてる癖してなかなかの策士だぜ。
フィリップヴィクトルが言うには、元の世界では「指揮者(コンダクター)イルベルト」として名を馳せていたそうだよ。
マーク人は見かけに寄らねえってことか。それで、イクスたちの方はどうなったんだ ?
フィリップ無事、ビフレストの具現化は阻止されて具現化したオーデンセも消失した。
フィリップキラル分子のリンクを切ったことでオーゼンセは存在を保てなくなったんだと思う。
マークそうか……。
マークそれにしてもあの島のおかげで残酷な真実ってやつを知っちまったな。
フィリップ……あの島は、僕が目を背けていた現実だったんだよ。本当はもっと早く向き合わなきゃいけなかったんだ。
フィリップイクスを刺したあの日から僕はオーデンセへの里帰りもやめてしまったしイクスからの手紙も読もうとはしなかった。
フィリップそうして逃げ続けて、果ての果てまで来てしまった。僕にはもう逃げるところがない。全て壊してしまったからね。
フィリップだったら、いい加減向き合うしかない。現実と。
マーク……命の期限と競争だな。
フィリップ……ああ、それまでに、必ず決着は付けるよ。今度こそ世界の為、イクスやミリーナの為それから……僕自身の為にも。
マーク自分の為にと言えるようになったならちったあマシだな。
フィリップマーク。僕はね、いつだって本当は自分自身のためだけにしか動いてなかったんだよ。
マーク誰だってそんなもんだろ。ただ、そうだと認められずに言い訳ばかりするやつは駄目だってだけさ。
フィリップそうだね……。
マークんじゃ、まずは目先の問題から片付けるとしようぜ。バルバトスの奴はどうする ?放っておいたらまた暴れだすぜ、あいつ。
フィリップそうだね、厄介者を引き取るのは厄介者が一番だろう。
マークはあ……。厄介者、ねえ。まあ、否定はしねぇが……。
フィリップバルバトスに付いていったみんなのことも本人たちの希望を聞かずに地上軍へ追いやった僕の責任だ。
フィリップ傷つけないように守るつもりがもっとひどい傷をつけることになってしまった。
フィリップ僕は昔からそうなんだ。守るつもりで傷つけて、守るつもりで壊してしまう。もうこれ以上、彼らを傷つけるわけにはいかない。
フィリップバルバトスがこちらにつけば彼に付いていった救世軍も戻ってきてくれるんじゃないかな ?
マーク……言ってることはさぞ立派だが説得するのは俺なんだよなあ、ったく。
救世軍兵士失礼します ! マークさん、バルバトスの下で働いていた兵たちのことですが、想像以上に負傷者が多く、現場も混乱しているようです。
マークはいはい、わかったわかった。すぐに行くから、まずは重症の奴から手当てしろと伝えておけ。そのあとのことは直接指示を出す。
フィリップマーク。きみは先に救世軍のみんなのところへ行ってくれ。僕は先にバルバトスが向かったという場所まで行っておく。
マークおいおい、だからバルバトスの説得は俺が……。
フィリップいや、事情を話さないといけないのはバルバトスだけじゃない。
フィリップ彼の処遇については鏡映点の人たちにも納得してもらうつもりさ。
マーク……わかったよ。その代わり、バルバトスと話すときは絶対一人になるなよ。
フィリップそこまで無茶をするつもりはないよ。マーク、救世軍のことは頼んだよ。出来るだけ彼らのことは優しく迎えてやってくれ。
マーク……優しくねぇ。悪いな、フィル。あいつらにはキツめのお灸を据えてやるつもりだよ。

キャラクター13話【13-15 イオン】
リオンさて、僕たちも戻るぞ。ビフレストの具現化を阻止した以上もうここに用はない。
スタンリオン、遅くなったけど、さっきはありがとう。リオンがいなきゃ、ルーティもアトワイトさんも助けれられなかったかもしれない。
リオン……ふん、僕はただ借りを作らせたままにしておくのが嫌だっただけさ。
ルーティちょ、あんた ! ?まさかさっきので、あたしがあんたを逃がしたのをチャラにしようって訳じゃないわよね ?
リオンそのつもりだが ?
ルーティ何言ってんのよ ! こっちは人質にまでなったのよ !すこ~しいいところで出てきたからってそれで済むと思ったら——。
リオン……それで、この男はどうするつもりなんだ ?
ルーティこら ! 無視すんじゃないわよ !
アトワイトルーティさん……悪いけれどその話は後にしましょう……。
ソーディアン・アトワイトそうね、人間の私が言う通りよルーティ。今はバルバトスの処遇を決めるほうが先よ。
ルーティうっ。わ、わかったわよ……。
スタンそっか、さすがのルーティも二人のアトワイトさんの意見ならちゃんと言うこと聞くんだな。
ルーティスタン、あんた今なんか言った ?
スタンい、いや ! 何にも言ってないって !あはは……。
ソーディアン・ディムロススタン……お前はルーティ一人でも充分そうだな。
アトワイトディムロス、あなたの意見を聞かせて頂戴。
ディムロスバルバトス……やはりあいつを自由にしておくのは危険だ。今ここで捕らえておかねばなるまい。
フィリップ——待ってくれ。彼のことは僕たちに任せて欲しい。
ディムロスフィリップ ! ?
フィリップ君たちは先に行ってくれ。帝国側が動き始めた。
ディムロスだがお前たちだけでバルバトスをとめられるのか ?
フィリップ僕では無理かも知れないね。だが、君たちよりは僕らの方が奴に近い。——色々な意味で、ね。
フィリップそれにマークがいる。マークを信じて欲しい。
ディムロス……いいだろう。では、奴の処遇はお前に委ねる。みんな、それでいいな ?
スタンああ、ディムロスが決めたことなら誰も文句は言わないさ。
フィリップありがとう。必ず、悪い方向へ事が進まないようにしてみせるよ。
マークあいつらがいないってことは上手く説得できたみたいだな。
フィリップああ。だけど、肝心のバルバトスはまだ目を覚ましていない。
マーク丁度いい、フィル。お前は戻ってろ。あとは俺が何とかする。元々、そういう手筈だっただろ ?
フィリップマーク……だけど……。
マークいいから、お前は戻ってバルバトスに付いていった連中に何か言ってやってくれ。あいつら、俺の顔を見た途端、謝るばかりで話にすらならねえんだわ。
フィリップ……わかった。それじゃあ、後は頼んだよ、マーク。
マークはいよ。このマーク様に任せときな。
マークさて、大見得切ったのはいいがどうしたもんかねえ。まぁ、暫くは様子見でもさせてもらうか。
バルバトス——ぐううっ……。メルクリアめ……。小癪な真似をしおって……。
バルバトス奴らはどこだ ?まさか、俺を置いて立ち去ったとでもいうのか……。
バルバトス——いや、命知らずの馬鹿がまだ残っているようだな。
バルバトスこそこそ隠れてんじゃねぇ。出てきやがれ。
マーク久しぶりだな。
バルバトスマーク・グランプ……か。
マークディムロスじゃなくて悪かったな。けど名前を覚えてもらえてたのは光栄だ。
バルバトス貴様の差し金か。
マークそんなところだ。
バルバトスふんっ。
マークおっと。どこに行く気だ ?
バルバトスわかっているだろう。
マークメルクリアのところだよな。だったらやめとけ。
バルバトス……邪魔する気か ?ならば——
マーク殺すってか。いいぜ、好きにしろよ。お前なら俺を殺すくらい楽勝だろ。
マークだが、『事情』が変わったと言ったら ?
バルバトスなにっ。
マークバルバトス。俺たちと来いよ。
バルバトス雑魚と群れるつもりはない。それに——
バルバトス俺は貴様の手下であってもためらいなく殺すぜ ?今までも、これからも。
マークあんたが俺のどうしても奪われたくない物に手をかけるってんなら、その時は全力で阻止するさ。
マークあんた同様『どんな手』を使ってでもな。それに——
マークあいつらはお前を慕って救世軍を辞め自分の意思でお前についていった。ただそれだけのことだ。
バルバトスあんなゴミくず共に意志があったとは驚きだ。
マークあんたらしい、クソみたいな言い草だな。
マークだが、あいつらがなぜディムロスじゃなくお前を選んだのかわかったぜ。
バルバトスなんだと ?
マーク——あんた、気づいてたんだろ ?あいつらは全員、怪我や病気でまともに戦える奴らじゃなかった。
マーク本当は戦いたくても腹の中に恨み辛みを押し込めてずっと生きてきたんだ。
マークだが、理屈も現実も全部受け止めて自分の醜い気持ちも自分のものとして逆境にも挑んでいくお前に希望を見た。
バルバトスそして犬死にしていったと。欺瞞に満ちた美談には反吐がでる。あいつらは俺に利用されただけだ。
マークそれでもだ。きっとお前は世界いや自分自身すら救うことはできない奴だ。けどな——
マークあんたは間違いなくあいつらを救った。
マーク手段を選ばないという手段を選ぶこと。是非はともかく、中々できることじゃない。
マーク実際、俺もそこまで割り切るのは難しいだろうな。
マークだから、死んでいったあいつらにとってはディムロスよりもあんたこそが英雄なんだ。
マーク……俺から見てもその傲慢さはある意味で英雄的かもな。
バルバトス……英雄だと ?
マークああ。
バルバトスふっ、ふははははっ ! !その言葉、よくぞ俺に吐いたわ ! !
マークさて、そろそろ返事を聞かせてくれよ。
バルバトスメルクリアは俺が殺す。そのために救世軍を利用させてもらうぜ。
マーク十分だ。
バルバトスメルクリア、待っていろよ。そしてディムロス……貴様も。

キャラクター14話【13-15 イオン】
イクス俺たちは無事帰ってこられたけど他の人たちは、もうアジトに戻ってきてるのかな ?
ミリーナそうね、先に魔鏡通信で連絡を取り合ったほうがいいかもしれないわね。
イクスあっ、待ってくれ。丁度ジェイドさんから連絡だ。
カーリャげっ、ジェイドさまからですか……。カーリャは近くにいないとお伝えください……。
コーキスパイセン……ジェイド様に対する反応が他の鏡映点の人たちと違いすぎねーか ?
ミリーナ大丈夫よ、カーリャ。いくらジェイドさんでも、魔鏡通信越しで酷いことなんてできっこないわ。
ジェイドおや~、でしたら試してみましょうか ?面白い実験になりそうです♪
カーリャギャー ! ! でたー ! !
ミリーナジェイドさん !これ以上カーリャを怖がらせないでください !私、本気で怒りますよ !
ジェイドこれは失礼。その様子だとビフレストの具現化は無事止められたようですね。それで、今はどちらにいますか ?
イクスえっと、もう浮遊島に戻って来ていますけど……。
ジェイドそれは結構。でしたら、そのままアジトの医務室に来てください。イオン様があなたたちにお話したいことがあるそうです。
ミリーナイオンさん ! ? 帝国から戻ってきたのね。
イクスわかりました、すぐに向かいます。
イオン——これが、ローレライが僕に伝えてきたことの全てです。
イクス【バロールの眼】……、一体何のことなんだ……。ミリーナは聞いたことがあるか ?
ミリーナ……いいえ。私も今初めて聞いたわ。
イクスそうか……けど、眼と言えばコーキスが使う【魔眼】が関係してるのかもしれない。それに、何だか嫌な予感がするんだ。
ジェイドローレライは、この【バロールの眼】が危険なものだと言ったそうです。詳しい情報を集めておいたほうがいいでしょうね。
コーキス(もしかして、俺のこの【魔眼】のせいでマスターたちが危険な目に遭うんじゃ……。いや、そんなことは絶対に……)
ジェイドしかし、今は一旦置いておきましょう。少ない情報だけで憶測を立てるのは危険です。
ジェイドイオン様には引き続きローレライとの接触を行ってもらいます。
ジェイド次に、そのイオン様のことについてお話があります。
ハロルドその点については私から話すわ。あんたたちも知ってると思うけどこの世界には三人のイオンが存在してる。
ミリーナ今、目の前にいるイオンさんと私たちが保護している【リベラ】そして、【被験者】と呼ばれているイオンね。
ハロルドその通り。そして、私が助けられた戦士の館には『イオンの死体』があった……。
ハロルド——これ以上は、何も言わなくてもわかるわね ?
イクス……死んだのは『被験者のイオン』さんなんですね。
イオン……そういうことになりますね。
ジェイド念のためにお聞きしますが他のレプリカを製作、もしくは新たに具現化したという可能性はありませんか ?
ハロルドありえないわね。帝国を出るときに被験者のデータはきれいサッパリ消去しておいたからもう一度レプリカを作るには時間が足りないわ。
ハロルドもう一つ、具現化の線だけど、こっちも無理ね。異世界からの再度の具現化は、過去からの具現化以上に厳しい制約があるみたいだから。
ハロルド帝国は既にローレライを確保してる。他のレプリカイオンを具現化することに意味はない。だから新たに具現化をしたとは考えにくいわね。
ハロルド以上のことから、あれが被験者のイオンでない可能性は限りなくゼロに近いってこと。この天才科学者の名に懸けてね。
イオン僕が具現化されたのも、あくまでフォミクリーというレプリカ技術をこの異世界で完成させるための実験だったに過ぎません。
ミリーナフォミクリー……。まるで鏡士の具現化みたい……。
ジェイド………………。
イクスごめん……イオン。俺たちのせいで、こんなことに巻き込まれて……。
イオンいいえ、あなたたちが謝ることではありません。ですが、これ以上帝国軍の思い通りにさせない為に協力していただけませんか ?
イオン――いえ、違いますね。僕を皆さんの仲間に加えて下さい。僕も協力したいんです。
ジェイドイオン様。あなたはローレライと接触できる。それで十分役に立っていますし協力してくれていますよ。
イオンジェイド。僕は元の世界の僕より少しだけ……ほんの少しだけ体力があります。より導師としての力を発揮できる。
イオンそれに……僕、何となく分かっているんです。前にアニスたちに会った時に気付いてしまいました。僕はみんなと具現化された時間が違う。それは――
ジェイド――イオン様。
イオン止めないで下さい、ジェイド。
イオン僕が初めてあなたと会った時もあなたは僕を諫めることはあっても頭ごなしに言うことを聞かせようとはしなかった。
イオンここでなら、僕のやりたかったことができる。そして、元の世界でやり残したこともできると思うんです。
イオン無理はしません。約束します。みんなより弱いことは分かっていますから。
ジェイド……いいえ。あなたは十分に強いですよ。初めて出会った時からあなたは唯一無二の導師でした。
ルークおいっ ! イオンがいるって本当なのか ! ?
ティア導師イオン ! 良かった、ご無事だったのですね……。
ナタリア何やら大変な目に遭ったとお聞きしたのですがお元気そうで安心しましたわ。
ミュウイオン様が来てくれてボクも嬉しいですのっ !
ジェイドやれやれ。皆さん、ここは医務室ですよ。お静かに願います。
ガイまあまあ、固いこと言うなよ。こっちは一仕事終えて急いで駆けつけて来たんだぜ。なあ、アニス ?
アニスえっ ! ? あ、えっと……。
イオン……アニス ?
アニス…………てへっ !いやぁ~、もう ! イオン様ってば無茶しすぎですよ !すっごく心配したんですからね ! ?
アニスあっ、いっけな~い !アニスちゃん大事な用事を思い出しちゃった !それじゃあイオン様、今はゆっくり休んでください~。
ルークはぁ ! ? おいっ、どこ行くんだよ、アニス ! !
イオン待ってください、アニス !
アニスはうわっ ! な、何ですか ?
イオン……アニス、僕の傍に来てくれませんか ?
アニスど、どうしたんですか急に……。
イオンお願いします。さあ、アニス、こちらへ。
アニス……もう、イオン様ってば本当にどうしちゃったんですか ?
アニスあっ ! わかっちゃいましたよ~。さてはさっきまで大佐に虐められてましたね ?もう、駄目ですよ大佐、イオン様を虐めちゃ——。
イオンアニス……泣かないでください。
アニス……えっ ? や、やだなぁ、イオン様。私、泣いてなんかいませんよ ?
イオンでも、涙が……。
アニス……えっ ? あれ ? ホントだ……。なんで……私……。
イオン僕のせいで、アニスが悲しい思いをしているのですね。
アニスち、違いますっ ! !イオン様は、何も悪くありませんっ…… ! !悪いのは、私……なんですっ ! !
イオン……アニス。僕から一つ、あなたにお願いがあります。聞いてくれますか ?
アニスお願い…… ?
イオンはい、僕からの大切なお願いです。
イオンアニス、僕の導師守護役はアニスだけです。
アニス! ? イオン……様 ! !
イオンまた、僕の傍にいてくれますか ?
アニス……イオン……様…… !イオン様ぁぁぁぁ ! !
イオンアニス、この世界でもよろしくお願いしますね。……僕の一番、大切な——
to be continued
キャラクター1話【14-1 ファンダリア領】
エルレイン――では、奇跡の力の復活は未だ難しいと ?
ジュニアはい……。この夏からずっとあなたの奇跡の力を取り戻すために異世界の神の力の具現化を試みてきました。
ジュニアでも、完全な形で成功した実験はひとつもなかったんです。
ジュニアすみません……。いい報告ができなくて。
エルレイン本来、神の力は人が扱うべきものではない。そう簡単に成し遂げられることではないと承知しているつもりですよ。
ジュニアですが、僕が実験に失敗したせいでこの世界を滅ぼしかねない危機が何度もあったんです。
ジュニア救済を掲げるあなたにとってはとても不愉快な話ではないでしょうか……。
エルレイン…………。
ジュニアやっぱり、僕みたいな未熟者には荷が重すぎる役目なのかもしれません。
ジュニアだから、その……。
エルレインこの研究から離れると ?
ジュニア…………。
エルレインでは、一つ聞かせて欲しい。『あなた自身の目的』はもう遂げたのですか ?
ジュニア! !
ジュニア(まさか、ばれてる ! ? そんなはずは……)
エルレイン何を驚くことがあるのです。そのために奇跡の力の研究をしていたのでしょう。
ジュニア(やっぱりこの人は知っているんだ。僕が奇跡の力の研究を口実にしてナーザ将軍を復活させようとしていることを)
エルレイン答えよ。鏡士。
ジュニア……目的は、まだ遂げていません。
エルレインならば何故。
ジュニア大切な友人が捕まっているんです。僕は今、その友人を助けることを優先したい。
ジュニアそれに、研究自体も今は足踏み状態で目処が立たないんです。
エルレインナーザの魂が器に宿れないようだな。
ジュニアそんなことまでご存じなんですか ! ?
エルレインこの私が、お前たちの行いを唯々見過ごし義務的な報告ばかりを待つ身だとでも思ったか。
ジュニア……すみま……せん……。
エルレイン……話を戻しましょう。魂が納得の上であっても、死者である器に入れない。それは器の方に原因があるからです。
ジュニア器 ! ? ってことは、ナーザ将軍じゃなくてイクスの体が問題…… ?
エルレインこれで、あなたの抱える幾分かの悩みは解決される筈です。
ジュニア……なぜ助けてくれるんですか。僕は帝国を……あなたを裏切るかもしれないのに。
エルレインあまねく人々の救済。それこそが私の存在意義です。
エルレイン皆に等しく手を差し伸べ、余すことなく全てを救う。それが裏切者であろうと何であろうと。
ジュニアあなたは本気でこの世界の全てを救おうと考えているんですね。
エルレインええ。それが神のご意思です。この救済を拒み、逆らう事など許さない。
ジュニア(この人は、なんて恐ろしくて……愛が深い人なんだろう……)

キャラクター2話【14-2 アジト】
ユリウスお帰り、カロル、ユーリ。情報収集ご苦労様。
イクスビフレストの具現化を阻止してから、カロル調査室はフル回転でしたからね。
ユーリまったく人使いが荒いよな、お前らは。
ミリーナフフ、ごめんなさい。しばらくはゆっくり休んで下さいね。
カーリャあれ ? そういえばロゼさまはどこですか ? 今度帰ってきた時は、お土産に新しいお菓子をくれるって言ってたのに……。
ユーリそれなんだが……セキレイの羽からは色々情報をもらってるんだが、ロゼとデゼルからは全然連絡が来てねぇんだ。
カロルロゼたちにはグラスティンの周辺を探ってもらってたから、多分どこかに潜入してるんだとは思うんだけど……。
イクス……そうか。そういえば、ネヴァンからの連絡も滞ってるよな。みんな、危険な目に遭っていないといいんだけど……。
ユーリそういうときのために例のデクスって野郎がいるんだろ ?
ユーリ何かあればあっちのラインから連絡が入る筈だ。
ユリウスそうだな。色々なことを織り込み済で情報網を広げているんだ。無事であることを祈りつつこちらも状況を分析していこう。
ユリウスこの二ヶ月で帝国の支配体制はほぼ確立したらしいな。
カロルうん。こっちがオーデンセだのジルディアだの色んな大陸の具現化に振り回されてる間に各領の領都に、新しい領主が赴任しちゃったからね。
カロルしかも全員鏡映点リストにある名前だから、きっと――
ハロルドリビングドールβ化されてるって事ね。
ユーリ全員が全員ってことでもないみてぇだけどな。ファンダリア領の新しい領主になったエルレインはリビングドール化されてないんだろ。
ハロルド帝国に協力する意志のある鏡映点はリビングドールにする必要はないしね。
キールしかし不思議じゃないか ? わざわざリビングドールにしてまでどうして鏡映点を領主にする必要があるんだ ?
キール言うことを聞かせたいなら、別に自分たちの配下の人間を派遣すればいいだろう。その方が簡単だ。
ハロルド目印って聞いてるけど。
カロル目印…… ?
ハロルド【ルグの槍】を落とす目印だって。ニーベルングの復活には【ルグの槍】が必要だとか言ってたわね。詳しいことは『さぱらん』って感じ。
コーキスハロルド様にまで『さぱらん』が侵蝕してる……。
ユーリ槍を落とす目印ねえ。訳がわかんねえな……。イクス、ミリーナ。【ルグの槍】ってのに聞き覚えはないのか ?
イクスいや、俺は聞いたことがないです。ミリーナは ?
ミリーナ私も……。
キールだが、嫌な感じの言葉だな。槍を落とすって……。まるで兵器みたいじゃないか ?
ユリウスああ。空からの攻撃……のようなイメージだな。
イオンそういえば、以前ディストが妙なことを言っていました。【ルグの槍】を打ち込む前に前世を具現化しなければ何の意味もない……と。
ミリーナ前世を具現化 ? イリアたちの世界の前世と関わりがあるのかしら。
イクス……答えは出ませんね。デミトリアスに直接問いただせれば話は別でしょうけど……。
ユーリお、奴の所に乗り込むってんなら協力するぜ。その方が話は早い。
カロルユーリはずっとそれを考えてたもんね。
コーキス俺も賛成 ! ぐちゃぐちゃ考えてても訳がわかんないしその方が手っ取り早いよ !
キールそんなむちゃくちゃな……。
ユリウス……いや、ここで考え込むよりその方が早い気もするな。
ユリウスハロルドやイオンにも細かな情報が伝わってないとなれば、俺たちがどれだけ情報を集めたところでたかが知れてる。
イクスもし、本当にデミトリアスに話を聞くならこちらが潜入するより、何とかしておびき出した方がいいですよね。
ユーリ――イクス、何かあったのか ?
イクスえ ?
ユーリいや、しばらく見ない間に憑き物が落ちたって顔してるからさ。
イクスそう、ですか ? ……そうかも知れないです。少しだけ、考えすぎる癖をやめるようにしました。
イクス……って、性分なんでやっぱり色々考えちゃうことはあるんですけど。
カーリャ下手の考え休むに似たりって言いますもんね !
ミリーナカーリャ ! それ、どういう意味かしら。
カーリャはわわわわ……。ミリーナさまが怖い……。
イオンフフフ、カーリャはすぐ思ったことを口にしてしまうんですね。
ユリウス話がそれてしまったな。デミトリアス帝の件は、いったん置いておこう。
ユリウス新しく領主になった鏡映点の名前を見ればみんな大騒ぎになるのは間違いない。まずはこれをみんなに知らせないといけないからな。
カロルうん……。レイヴンもテルカ・リュミレース領の領主のこと聞いてからなんか考え込むことが増えたし……。
ユーリ………………。
イクスアレクセイさん、でしたっけ。確かレイヴンさんの元上司だとか……。
イオンオールドラント領のことも……ルークたちには言い出しにくいです。ジェイドも悩んでいるみたいですし。
コーキスそうか……。みんな元の世界で関わりのある人たちだもんな……。
ユリウス…………そう、だな。
エミルイクス ! 大変だよ !
イクスエミル ? どうしたんだ ?
エミルリヒターさんがいなくなっちゃったんだ ! 地上に降りたみたいで……。
キールリヒターって、ずっと眠っていたあの男か ? 急に動いて大丈夫なのか ! ?
エミルそれが僕も心配で……。マルタが追いかけてくれてるみたいだから僕たちも行こうと思うんだけど、いいかな ?
イオンイクス、ミリーナ。リヒターはまだリビングドール化の影響が残っている筈です。僕にも行かせて下さい。
ユリウス領主に関する連絡はこちらで済ませておこう。行ってくるといい。
イクスありがとうございます。
イクスエミル、俺たちも行くよ ! ちょっと待ってて。
エミルうん、ありがとう !

キャラクター3話【14-3 静かな平原1】
リヒター(……なるほど。これが奴らが話していたゲート……。鏡士たちはこの仕組みを使って空中に浮かんだアジトから行き来しているのか)
リヒター……くっ。
リヒター(情けない。歩くのが精一杯とは……。俺は随分と長く眠っていたようだな……)
リヒター(これではすぐに、鏡士どもに追いつかれる……)
マルタリヒター !
リヒター――マルタ……か。
マルタ良かった……見つかった。
リヒター…………。
マルタ…………。
リヒター……………………すまなかったな。
マルタえ…… ? そ、そうだよ !みんな心配してるんだからね。目が覚めたと思ったら突然いなくなっちゃって。
マルタ謝るなら私だけじゃなくて、みんなに謝って !
リヒター今のはお前への謝罪だ。マルタ。
マルタ私…… ?
リヒター俺は、お前の父親をセンチュリオン・コアによって狂わせた。
マルタ…………。
リヒターあいつは、俺のせいで別人のように変わり果てた。そして本来の志とは違う道を歩むことになってしまった。
マルタ…………。
リヒター……あの時のブルートはリビングドールと同じだ。それがどれほど苦痛なことか、今はよくわかる。
リヒターもっとも、異世界からではブルート本人への謝罪など届かないだろうが。
マルタ私だって……私だってパパに謝りたいよ……。
リヒターマルタ……。
マルタ私は、おかしくなっていくパパを止められなかった。それどころか、結局戦うことになって……。
マルタああするしかなかったのはわかってる。でも……。
リヒター……ブルートはどうなったんだ。
マルタ酷い怪我をしたの……。でも、命はとりとめた。
マルタ私はこの世界に来ちゃったからそこまでしか分からないけど……。多分……ううん、きっと元気になってるはず。
マルタあの後、何があったとしてもきっと元の世界の私が、パパを支えてるよ。
リヒター……そうだろうな。
マルタ……何か変な感じ。リヒターとこんな話するなんて。
マルタそれに、パパのことを話すのも久しぶり。いつも、どうしてるかなって考えるだけだったから。
リヒター話し相手はいるだろう。エミルはどうした。
マルタエミルたちは、ただでさえ大変なんだし私のことで心配なんかさせられないよ。
マルタそれに、元に戻ったパパとは話ができたから。それだけでも十分……。
リヒターそうか ? 『父が恋しい』と顔に書いてあるぞ。わかりやすい奴だ。
マルタそっ、そんなこと…… !
リヒターだが、お前が元に戻ったあいつと話ができたのなら良かった。
リヒターコアに汚染される前のブルートは本当に気のいい奴だったからな。
マルタ……うん。
マルタあ、そうだ ! みんなに連絡しなきゃ。リヒターのこと、まだ捜してるはずだから。
リヒター待て、俺は戻る気は――
マルタあ、エミル、リヒターを見つけたよ !それでね――
リヒター………… ?何か来る……。おい、気を付けろ !
マルタ何 ? 今、通信中だから後に――あっ !
魔物グルルルル……
マルタ魔物 ! ?リヒター、逃げて。私が引きつける !
リヒターそこまで落ちぶれてはいない。自分の身は自分で守る。
マルタ今まで寝たきりだったんだよ。起きたばっかりで戦えるわけないじゃない !
リヒターうるさい。構えろ、来るぞ !

キャラクター4話【14-5 静かな平原3】
マルタこれで終わりかな。リヒター、怪我はない ?
リヒター! ! マルタ、後ろだ !
マルタえっ…… ! ? きゃあああっ !
リヒターくそっ…… !
マルタあ、ありがとう、リヒター……。私、あの魔物をしとめ損ねてたんだね……。
リヒターまったく、油断……しすぎだ……。
マルタリヒター ! 大丈夫 ! ?
リヒター少し、疲れただけだ……。
マルタごめんなさい……。私が守るって言ったのに……。結局リヒターに守ってもらうなんて……。
カーリャミリーナさま、いましたよ ! マルタさまです。
コーキスリヒター様も一緒だ !
ミリーナ途中で通信が切れたって聞いて焦ったけどふたりとも無事で良かったわ。
テネブラエラタトスク様もキレていましたからね。通信が『切れ』て。ククク……。
エミルテネブラエは黙ってて !マルタ ! リヒターさん !
イクスあっ、待ってくれ、エミル !
テネブラエおっと、怒らせてしまいました。
イオンテネブラエは場を和ませようとしたんですよね。
イオンそれより、僕たちも急ぎましょう。……リヒターが無理をしていなければいいのですが。
マルタエミル ! テネブラエ !みんなも来てくれたんだね。ありがとう。
エミル心配したよ。いきなり魔鏡通信が切れちゃったから……。
マルタごめんね。魔物に襲われちゃったの。でもリヒターが助けてくれたんだ。
エミルリヒターさん……。無事で良かったです。あの……、ええと……体は平気ですか ?
リヒター……問題ない。
二人……………………。
カーリャう……空気が重すぎますぅ。
コーキス仕方ないって。一応ほら……敵ってことになってるし。
エミル敵じゃないよ。僕はリヒターさんのことを、そんな風には――
リヒター…………くっ。
エミルリヒターさん ! ?
マルタどうしよう……。さっき魔物に襲われたときに私を助けて戦ってくれたの。それで余計に具合が悪くなったのかも……。
イオンその体で戦ったんですか ? なんて無茶を……。
ミリーナリヒターさん。じっとしていてくださいね。治癒術で少しは楽になると思います。
リヒター……捕虜にも等しく治療を施すか。
イクス捕虜だなんて、そんな……。
リヒターそれなりに状況は理解しているつもりだ。自分がリビングドールにされていたこともわかっている。
リヒターなのに、正気に戻るとお前たちのアジトにいた。ならば捕虜として連れてこられたんだろう ?
イクス違います。イオンが命をかけてあなたを助け出してくれたんですよ。
リヒターイオン……。そういえばその顔、研究所で見た気がするな。
イオンリヒター、あなたに仕掛けられたリビングドール化は今までのβよりも、さらに高度な術式が仕込まれているとハロルドから聞いています。
リヒターベルセリオス博士か。彼女も鏡士側に来ているのか。
イオンええ。その辺りの経緯も、後ほど詳しく説明しますね。今はあなたの体の話をさせてください。
イオン最新型のリビングドールのせいでその体にはかなりの負担がかかっています。ですから、もうしばらくの静養が必要なんです。
イクスだからリヒターさんは二ヶ月も眠ったままだったのか。
リヒター二ヶ月、だと…… ?
イオンはい。しかも今は目覚めたばかりです。何が起こるかわかりません。どうか僕たちと一緒にアジトへ戻ってください。
リヒター……助けてくれたことには感謝する。だが――
カーリャ・N小さいミリーナ様 !
ミリーナネヴァンからだわ。――ネヴァン、心配していたのよ。しばらく連絡がなかったから。
カーリャ・N申し訳ありません。至急お伝えしたいことがあります。
カーリャ・Nメルクリアとルキウスが帝国に連行されました。
一同! !
イクス帝国にって、どういうことだ ! ?二人は元々帝国側の人間だろう ?
イクスそれともビフレストの具現化に失敗して立場が悪くなったのか ! ?
リヒタービフレストの具現化…… ! ?
カーリャ・Nいえ、あの二人はかなり前から帝国に追われる立場になっていたようです。
リヒター……デミトリアスめ。
エミルリヒターさん ! ? どこへ行くつもりですか。
リヒター俺はメルクリアを助けに行く。世話になったな。
マルタそんな体で無茶だよ !
リヒターお前たちには関係のないことだ。邪魔をするなら力ずくでも――
エミル待ってください。……だったら、僕もついて行きます。手伝わせて下さい !
マルタそれなら私も !
テネブラエもちろん、私も。
リヒター……断る。
マルタそんなこと言ってる場合じゃないでしょ ! ?そんな体だし、放っておけないよ。
エミルイクス、みんな、ごめん。僕たちはリヒターさんと一緒に行くよ。
コーキス待ってくれ、エミル様。そんな状態のリヒター様を連れて四人だけで乗り込むってのか ?
カーリャそうですよ。無謀です !
コーキスだよな ! だからさ、マスター……。
イクスわかってるよ、コーキス。リヒターさん、俺たちもメルクリア救出に同行します。
リヒター慣れあうつもりはないと言ったはずだ。それに、お前たちにそこまでしてもらう義理はない。
イクスいいえ、あります。以前、アステルを攫って迷惑をかけましたし俺たち、前に一度メルクリアに助けられているんです。
リヒターメルクリアに…… ?
リヒター……ならば、勝手にするといい。せいぜい利用させてもらう。
イクスわかりました。それじゃミリーナ、俺たちはこのままメルクリア救出へ向かおう。
ミリーナええ。本当は、一度アジトに戻ってみんなと相談するべきなんでしょうけど……。
イオンでしたら、僕がアジトへ戻って報告しますよ。僕もこの世界では、多少戦えますがそれでも今回は足手まといになってしまいますから。
イクス足手まといなんかじゃないよ。ありがとう、イオン。何かあったら連絡よろしくな。
イオンはい。では皆さん、どうか気をつけて。それとリヒター、無理は禁物ですよ。
リヒター……わかっている。
マルタ大丈夫。私たちがちゃーんと見張っておくから。ね、エミル ! ……エミル ?
エミルあ、ああ。もちろんだよ !
エミル(……ラタトスク。リヒターさんを助けてもいいよね ? )
ラタトスク(……フン。俺は手を貸さないからな。後はお前とテネブラエに任せる。勝手にしろ)

キャラクター5話【14-6 イ・ラプセル城】
アスガルド帝国 イ・ラプセル城
ロゼ……行った ?
デゼルああ。他に風の動きはない。今のが巡回兵ならしばらく見回りもないだろう。
ロゼよっしゃ。この先にグラスティンの部屋があるって話だよね。今のうちに入ろ !
デゼルしかし、お前がここまでやる必要があるか ?イクスやカロルたちの報告だけでも十分だろう。
ロゼそりゃ、イクスたちの情報を疑ってなんかないよ。でもさ、やっぱりちゃんと調べておきたいんだ。
ロゼ黒髪ばっか狙う誘拐事件のせいで街の人たちも怯えてるし、商人たちも警戒してる。このままじゃ商売に影響でまくりだもん。
デゼルふん、商売以上に首突っ込んでるくせによ。ま、お前らしいっちゃらしいけどな。
ロゼ知らん顔できないでしょ。黒髪マニアのグラスティンの話はイクスたちから聞いてたし。それに……。
ロゼ……親がいなくなって泣いてる子や友達や家族を捜してる人、あたしたちが街を巡る間にどれだけ見たと思ってんの。
ロゼしかも収まるどころか増え続けてる。
デゼルまあ、おかげで目撃情報にはことかかなかったがな。
ロゼ帝国所属のサレって男が攫ってるのはわかったし後は攫われた人たちがどうなったのか調べて――あ、この部屋じゃない ?
デゼル……聞いたとおりだな。薬液と血の匂いが染みついてやがる。
ロゼそれに……壁一面の遺体。間違いないね。
デゼル……反吐が出るぜ。確かこの奥はもっと酷いって話だが……。
デゼル………… !
ロゼねえデゼル、そっちは何かあった ?
デゼル………まあな。間違いない。サレの野郎が攫った人間はここでグラスティンの実験に使われている。
デゼル帰るぞ。長居は無用だ。
ロゼはあ ? 何言ってんの。あたしはまだ、入り口しか確認してないって。
デゼルこれ以上、入る必要はない。それに……お前でもキツいかもしれん。
ロゼ今更でしょ。大丈夫、ちゃんと確認させて。
ロゼ…………酷いね。
デゼルああ……。
ロゼこれで、あいつらがやっているのが大義名分の『実験』だけじゃないのがよくわかったよ。
ロゼあいつらは命を弄んでいる。
ロゼこれは――『悪』だ。
デゼル…………。
? ? ?グラスティン…… !
二人! !
アリエッタ違う……。グラスティン、じゃない……。
ロゼちょっ、あんた血まみれ…… !どうしたの ! ? 怪我してるの ! ?
デゼルいや……ありゃ自分のだけじゃなさそうだ。
アリエッタグラスティンがいないなら……いい……。
ロゼ待って ! なんでグラスティンを捜してるの。
アリエッタグラスティン、イオン様を殺した…… !だから、殺す。殺すの !本当にグラスティン……いない ?
ロゼいないよ。いつ帰るかもわかんない。
アリエッタそう……。……あの……ありがと……。
デゼルあいつ、俺たちなんて気にもかけちゃいなかったな。おかげで助かったが……。って――ロゼ、どこへ行く !
ロゼあの子を追う。
デゼルやめておけ。これ以上は本当にヤバイぞ。何が起きるかわかりゃしねえ。
ロゼあのまま放っておくなんて無理 !あたしは行くよ。デゼルは先に外へ出てて !
デゼルチッ……、できるわけないだろうが。待てよ、ロゼ !

キャラクター6話【14-7 アスガルド城】
帝国 アスガルド城
メルクリア………………。
デミトリアス私は悲しいよ。メルクリア。何故、ビフレストの具現化なんて勝手な真似をしたんだ。
メルクリアお忘れか、義父上。わらわからチーグルやジュニアたちを召し上げた日のことを。
メルクリアあの時、わらわは「自由にやらせてもらう」と宣言した筈じゃ。
デミトリアス……まさか、本気だったとはね。
デミトリアスジュニアたちのことは本当に悪かったと思っている。
デミトリアスだからこそ、君に対しては何かしらの埋め合わせをと思っていたんだ。それなのに……。
メルクリアそれも結構と言ったはずじゃ。
メルクリアわらわはもう、義父上には何も期待しない。
デミトリアスメルクリア……。
メルクリアそれよりも、ルキウスをどこへやった。グラスティン、お前も一枚噛んでおるのじゃろう !
グラスティンさあてな。それよりも皇女様には大事な仕事がある。ヒヒヒ……お手伝い頂けますかな ?
メルクリア己でやれ ! 下衆の仕事など知るか !
グラスティン己ねえ。そうしたいのは山々ですが俺の周りで鏡精を生み出せるのは皇女様ぐらいのものなんでなあ。
メルクリア鏡精じゃと…… ? わらわへの嫌がらせか。冗談にも程があるわ !
グラスティン冗談 ?ヒヒヒ、俺はいつだって本音で語っているつもりだぞ。
グラスティン――皇女よ、鏡精を作るんだ。
メルクリア断る !第一、わらわは鏡精の作り方など知らぬわ !
グラスティン俺が教えるとおりにやればいい。なーに、簡単なことさあ。
メルクリアやらぬと言っているであろう !鏡精を作るのは悪しき鏡士の行い。それは義父上とて承知の筈じゃ。そうじゃろう ! ?
デミトリアスその通りだ。けれど……。
メルクリア義父上 ! ?
グラスティンよく吠える皇女様だ。そうそう……吠えると言えば今、黒い毛並みの可愛い子犬をあずかっててなぁ。
グラスティン会ってみるか、皇女様。――おい、誰か ! あいつを連れて来い !
ルキウス……うっ……。
メルクリアルキウス ! !
グラスティンおっと、近づくなよ。それ以上動くと首が飛ぶ。
ルキウスくっ……。
グラスティンああ、いい目だなあ。悔しそうに睨みつけて。えぐってやりたくなる。黒髪で鏡映点……内臓はどんな色なんだろうなあ。
グラスティンなあ、飼い主様。駄々をこねるなら手始めにこいつの片目を――
メルクリアやめよ、グラスティン !
グラスティン……ああ ?
メルクリア……貴様の望むようにしてやる。だからルキウスには手を出すな。
グラスティンなんだ、もう諦めるのか。残念だな……。
ルキウスメルクリア……。ごめん……。

キャラクター7話【14-8 セールンドの街道】
カーリャ・N小さいミリーナ様、今どちらに ?
ミリーナあなたに言われたとおりセールンドへ向かっているところよ。
イクスさっきはどうしたんだ ?とにかくセールンドへ行けって言ってすぐに通信を切っちゃったけど。
カーリャ・N先程はすみません。突然状況が変わったのです。それについて新たな情報を入手しました。
カーリャ・N当初、メルクリアはアスガルド城へ入りその後は城内に留め置かれていました。
カーリャ・Nですが現在、帝国の一行はメルクリアを伴いセールンドで一番高い山へと向かっているのです。
カーリャ山 ? なんでですか ?
カーリャ・Nあの山には、かつてアイギスシステムの関連施設がありました。考えすぎかも知れませんがそれが関係しているのかも……。
ミリーナアイギスシステム……。嫌な予感がするわ。
カーリャ・N私もです。帝国は何か企んでいるに違いありません。皆さん、どうかくれぐれも気を付けて。
イクスわかったよ。ありがとう、ネヴァン。そっちも気を付けてくれ。
リヒター……急ぐぞ。一刻も早く追いついてメルクリアを救出する。
マルタ待って。そんなんじゃすぐバテちゃうよ。無理しないようにってイオンも言ってたでしょ。
リヒターわかっている。だがメルクリアに何かあってからでは遅い。
イクス……リヒターさんは、どうしてそこまでメルクリアに肩入れするんですか ?
リヒター以前にも言ったはずだ。メルクリアを放っておけないだけだと。
カーリャ放っておけないだなんてリヒターさまって怖そうなのに面倒見がいいんですねぇ。
リヒター別にそういうわけじゃない。……メルクリアは同志だからだ。
コーキス同志…… ? リヒター様とメルクリアは同じ目的を持ってるってことか ?
カーリャメルクリアの目的っていうとビフレストの復活と鏡士への復讐とかですかね。
コーキス前も兄上の復讐だって言って襲いかかってきたしな。だとするとリヒター様は――
リヒター――歩きながら話すのは疲れる。遠慮してくれ。
二人ご、ごめんなさい……。
エミル………………。
マルタエミル……。
エミルあ、あのリヒターさん、疲れているのにごめんなさい。一つだけ聞かせて欲しいんです。
エミル今、アステルさんはどうしてますか ?
マルタそうだね。心配だよ。帝国内も混乱してるみたいだし。
リヒター大丈夫だろう。最悪でも殺されはしない筈だ。あれでもアステルは研究部門で重要な位置にいる。
リヒター何かトラブルがあったとしても今のあいつなら必ず切り抜ける。必ずな……。
リヒター……無駄話は本当にここまでだ。急ぐぞ。
エミルリヒターさん……、無理してるよね。
マルタうん……。けど、エミルもだからね。
エミルえ ?
マルタ気にしてるでしょ、リヒターの復讐のこと……。
マルタメルクリアが同志だっていうの復讐したい相手がいる気持ちがわかるから……ってことでしょ ?
エミル……そうだよね。やっぱり。
マルタだから、無理しないでねって言ってるの。つらい時はつらいって吐き出してね ?
エミル……うん。ありがとう、マルタ。
テネブラエフフフ、お二人はやはりいいコンビですね。吐き出せる仲間がいるというのはいいものです。
マルタもう……やめてよ、テネブラエ。照れちゃう…… !
エミルはは……。
マルタそれにしたって、リヒターってば……。
エミルリヒターさんが何 ?
マルタあ、ううん、こっちの話。
マルタ(……私のこと、あんな風に言ってたくせに)
マルタ(自分だって、顔に書いてあるじゃない。「アステルが心配でたまらない」って……)

キャラクター8話【14-12 イ・ラプセル城】
アステルすみませーん ! 開けてもらえませんかー ?
アステル………………。
アステル返事がない……。
アステル(誰もいないのかな ? ずっと見張りの兵士が扉の外にいたのに……)
アステル(な、何だろう、この音…… ? )
アステルえ ? 地震……じゃない…… ? この揺れは…… ?
アステルか、壁が崩れる ! ? ケホッ ! ケホッ ! だ、誰か ! ? 助けて下さい ! ! 扉を開けて ! 部屋が潰れる ! !
???ハーッハッハッハッ ! この部屋が潰れることはありませんよ。ちゃーんと城の構造を把握して掘り進んできましたから。
アステル……え ? その声……もしかして薔薇のディスト博士 ?
ディストおや、レイカー博士。ということは、計算通り研究棟の地下まで辿り着いたようですね。
アッシュ――おい、いつになったら外に出られるんだ。
ディストまったく、人の話を聞いていなかったのですか ? ここから左に40度掘り進むと脱出用の地下通路にぶつかるんですよ。
アステルえ ? まさかディスト博士、帝国から逃げるんですか ?
ディスト逃げる ? 何を言うのかと思えば。
ディスト勘違いしないで頂きたいですね。この薔薇のディスト様の方が今まで帝国にいてやったのですよ。
ディストそろそろ私の目的を果たす時が来たのでね、自分の研究に専念することにしたのです。
アステルそれで掘削機を使って地下を掘り進んで来たんですか ! ? ディスト博士なら、城内を自由に移動できるのに。
ディスト私の研究資料や成果が勝手に奪われていましたからね。保管庫から回収する必要があったのですよ。
アッシュアステル、だったな。お前はここに閉じ込められていると聞いた。何なら俺たちと一緒に来るか ?
アステルえ ! ?
ディストアッシュ ! あなたにしてはいい考えですね。
アッシュどういう意味だ……。
ディストレイカー博士。あなたは私ほどではありませんが研究者として良い資質を持っています。特に精霊の分野では役に立つ。
ディスト私と一緒に来るというなら歓迎しますよ。
アステル――あの、だったらリヒターを助けるのに力を貸してもらえませんか ! ?
アステルリビングドールにされて、テセアラ領の領都に派遣された所までは聞いてるんですけどそれきりなんの消息もなくて……。
ディスト焔獄のリヒターですか ?
ディスト私を崇拝し、私の主催するサロンに顔を出すところは殊勝だと思いますが、研究者としてはさほど見るべきところはありませんよ。
アステル(崇拝……してたかな ? まあ、いいや)
アステルリヒターも専門は精霊なんです。僕一人よりリヒターの助けがある方がディスト博士の研究に役立てると思います。
ディストふむ……。
アッシュおい、死神。こいつにとってのリヒターはお前にとっての死霊使いのようなものじゃないのか ?
アッシュいくらお前の存在が人外でもアステルの気持ちぐらいは理解できるだろうが。
ディスト誰が死神ですか ! 薔薇だと言っているでしょう。物覚えの悪い男ですね。
ディストそれにジェイドは我が友であり、同時に我が仇敵 ! リビングドールにされるような間抜けではありません。全く理解できませんよ。
アッシュおい、アステル。一緒に来い。この歩く茹でダコに人間の気持ちを説くだけ無駄だった。
アッシュリヒターを助けるならイクスたちの協力を仰いだ方が早い。
ディスト何を勝手に決めているんです ! ?
アッシュお前が掘削機で掘り進む間に追っ手だの魔物だのを切り伏せているのは俺だということを忘れるなよ、メガネダコ。
ディストさっきから何なんです ! ? 人のことをタコ呼ばわりして ! ?
アッシュああ、タコに失礼だったな。
ディストムキーッ ! あなた、私がローレライに会わせてやった恩も忘れて何なんですか ! ?
アステルディスト博士。ご迷惑でしょうが、僕を連れて行って下さい。この城を脱出するまででかまいませんから。
ディスト相変わらず、あなたは殊勝ですねえ…… ! もちろんかまいませんよ。
ディスト焔獄のリヒターのことはともかくあなたのことは評価していますから。
アッシュグラスティンとその麾下の連中はこの城を離れている。今が脱出の好機だ。行くぞ。
アステルはい !
ディストでは壁を掘り進めますよ ! シールドマシン『ミニカイザーディスト』号始動 !

キャラクター9話【14-13 セールンド山4】
メルクリアな、なんじゃ……ここは……。
メルクリアあそこに横たわっておるのは兄上様の器 ! ?どういうことじゃ ! ?何故最初のイクスの死体がここにある ! ?
グラスティンこれから始まるショータイムに欠かせないパーツなんでなあ ?
メルクリアどういう意味じゃ ! ?ここで鏡精を作らせて、何をしようというのじゃ ! ?
光魔……ウゥ~……ハルルルルル !
ルキウス光魔 ! ?
グラスティン――おっと、お前ら。まだ、皇女様に手を出しちゃ駄目だぞ ?
メルクリアな、何匹おるのじゃ……。
ルキウスメルクリア、壁を見て !一面に光魔の檻がびっしり……。
メルクリアどういうことじゃ ? 何故こんなに沢山の光魔がいる ?虚無へのアクセス手段が断たれ光魔は生み出せない筈じゃぞ…… ?
デミトリアスあの光魔はレプリカだ。はぐれて生き残っていた光魔を捕獲して増やしたんだよ。
ルキウスそこまでしてどうして光魔を増やす必要があったんだ……。それにどうやって飼い慣らしている ?
ルキウスチーグルも魔鏡結晶を使って呼び出すことしかできなかった筈なのに。
グラスティンヒヒヒ、飼い慣らすなど簡単だ。奴らにだって心はあるんだからな ?
メルクリアまさか、リビングドールか ! ?
グラスティン光魔は便利なんだよなあ。奴らは死ぬと死の砂嵐に帰っていく。その時に一瞬できる道を使って死の砂嵐に接触するんだ。
グラスティン毎回殺さなきゃならないのが不便だがなあ……。殺しても肉にもならないし……。
デミトリアスグラスティン、そんな話をメルクリアたちに聞かせることはないだろう。
グラスティンヒ……ヒヒ……。いつもながらずれた優しさを持っているな。デミトリアス。
グラスティンまあいいさ、それじゃあそろそろ鏡士の奇跡の力を見せてもらおうか、皇女様。
メルクリア――わ、わらわが鏡精を作ればルキウスを解放してくれるんじゃな。
デミトリアスああ、約束するよ。
メルクリア………………。
メルクリア(鏡精は……世界を滅ぼす存在じゃと兄上様は仰っていた……。じゃが……このままではルキウスが……)
ルキウスメルクリア ! 嫌な予感がする。こいつらの言うことなんて聞かなくていい !
グラスティンヒヒヒ……。そうか、お前は俺に解体されたいんだなあ。かまわないぞ、それでも。
メルクリアルキウスに手を出すでない !貴様はそこで大人しく見ておれ !
メルクリア(鏡精は心の具現化……。心を……もう一人のわらわを捜す……)
メルクリアアニマを感じよ……。わらわの中にいるもう一人のわらわを。わらわの心の現し身――
メルクリア(何じゃ、この感覚は…… ! ?わらわの中から何かが――)
メルクリア現世に姿を見せよ ! 鏡精モリアン !
ジュニア――メルクリア ! ?
ナーザ! !
グラスティンヒヒヒヒヒ…… ! 上手くいったぞ !やっぱり異世界のアニマを利用するより鏡精の方が断然エネルギー効率がいい !
ジュニアど、どういうこと…… ? 鏡精…… ?
グラスティン――おっと、小さなフィリップのお出ましか。皇女様のことが気になったようだなあ ?
ジュニアグラスティン ! 何をした ! ?まさか鏡精を殺してキラル分子を作り出したんじゃ――
グラスティンご名答。お前がマークを差し出さないから皇女様に鏡精を作ってもらったんだよおぉぉぉぉ !
ジュニア! ?
ナーザメルクリアに鏡精を作らせた……だと ! ?
グラスティンおやあ…… ? その声は――
ジュニアメルクリア ! ?
メルクリア………………わら……わ……わら……わ……ここ……ろ……ひ……あ……ふふ……ふふふふふ…………。
ジュニアまさか……鏡精を切り離さずにキラル分子変換したの ! ?そんなことをしたらメルクリアの心が潰れる ! !
ナーザ……何という……邪悪 ! !
ジュニア何をするつもりなんです ! ?鏡精をキラル分子化して何に利用するつもりですか ! ?
グラスティンおお、怖い……。せっかく皇女様の望みを叶えてやろうとしたのに、そう睨まないでくれよ……ヒヒヒ……。
ルキウスまさか……ビフレストの復活…… ?
グラスティンそうだあ ! 皇女様のお望み通りビフレストを具現化してやるんだよ !
グラスティン皇女様たちが一度具現化しかけてくれたからな。その仕掛けとデータを再利用してビフレストが復活する !

キャラクター10話【14-15 リヒター】
イクスもう少しで山頂だ……。リヒターさん、大丈夫ですか ?
リヒターああ……。
コーキスな ! ? 何だ ! ? 地震か ! ?
テネブラエ皆さん ! ここは足下が悪い ! 気を付けて !
イクス……収まった、か ?みんな、大丈夫か ! ?
コーキスえっと……エミル様たちは……。
カーリャ少し先の所です。あの、ちょっと開けた場所……。
帝国兵A――なんだ、今の地震は ?
帝国兵Bグラスティン様が言ってた『鏡震』だろう。
コーキス帝国兵 ! ?
帝国兵A――貴様たち。侵入者か。
帝国兵B賊は排除する。
エミルマルタ ! リヒターさん ! 大丈夫 ?
リヒター俺は平気だ。マルタは――
マルタ私も大丈夫。凄く大きな地震だったね……。
テネブラエ――待って下さい !イクスさんたちが帝国兵に囲まれています !
エミルえ ! ?
リヒターいや、どうやらこちらもだ。山頂の方から兵士たちが来る。
テネブラエ警備兵でしょうか。しかし、数が多い。
リヒターよほど後ろ暗いことをしているんだろう。この先でな。
帝国兵C侵入者、発見。
帝国兵Dこれより排除にかかる。
リヒターくっ ! 今のが鏡震ならメルクリアの力が利用されたはずだ。あいつは無事なのか ! ?
エミルリヒターさん ! 僕とテネブラエで敵を引きつけます。マルタと一緒に先に行って下さい !
エミルマルタ、リヒターさんをお願い !
マルタエミル ! ? だけど――
エミル二人の位置からなら、走って突破できる。僕たちなら大丈夫 !
ラタトスク――リヒターを一人で行かせて死なれたら寝覚めが悪いからな。奴を守ってやれ。
リヒター何……。
ラタトスク俺はお前が俺を殺しに来るところを返り討ちにしたくてたまらねぇんだ。それまで死なれてたまるか !
ラタトスクマルタ ! お前ならできる !
マルタ――わかった ! リヒター、行こう !
リヒターちぃっ !
マルタな……何 ! ? 光魔がこんなに沢山……。待って ! ? リヒター、光魔に囲まれてるのって――
リヒター――メルクリアとジュニアか ! ?
ジュニアリヒターさん ! ? どうしてここに ! ?
メルクリア……ぐぅ……ううう……。
リヒターやらせるか ! !
グラスティンおっと……。リヒターか。ヒヒヒ……。姿をくらませたと思いきや自分を取り戻していたとは恐れ入るな。
リヒター貴様、メルクリアに何をした ! ?
グラスティン鏡士として働いてもらっただけだよ。それの何が問題なんだ ?
ジュニアリヒターさん、お願いです。少し時間を稼いで下さい。そうすれば、味方を増やせるから――
グラティン! !
グラスティン……ヒヒ、そういうことか。小さいフィリップ。だが、俺の手にはあの黒髪の仔犬がいることを忘れるなよお ?
ルキウス――くぅっ !
兵士うわあっ ! ?
グラスティン――ちぃっ ! ? 雑魚肉が邪魔するな !
マルタだ、誰が、雑魚肉よ ! この変態 ! !その男の子に手出しはさせないんだから !
グラスティンガキが面白いことを言うなあ。生意気な肉は解体してやろう。臓物になれば、少しは見栄えもよくなるだろうよ。
マルタな、何なのアンタ ! ? マジでキモいんだけど !
グラスティンヒヒヒヒヒ、だからなんだ ?
リヒターマルタ ! 逃げろ !こっちは光魔の相手で手一杯だ !お前にそいつの相手は――
マルタ無理だって言うの ! ? 冗談じゃない !
マルタ(ヤバい……。絶対ヤバい相手だよ。だけど……)
エミルマルタ、リヒターさんをお願い !
エミルマルタ ! お前ならできる !
マルタ(エミルとラタトスクに頼まれたんだもん。二人が今まで私を守ってくれたみたいに今度は私が――)
マルタ私が、ここにいるみんなを守る !私だって――守られてばかりじゃないんだから !
ジュニア浄玻璃鏡が光った…… ! ?
リヒター――マルタ ! オーバーレイだ !
グラスティンちぃ、これだから鏡映点ってのは始末が悪い。
マルタオーバーレイだか何だかわかんないけど変態なんかに負けないんだから !

キャラクター11話【14-15 リヒター】
マルタやった ! ?
リヒター気を抜くな、マルタ !奴はクロノスの力で再生できる !
ラタトスク――だったら、今度は俺たちが相手だ !
マルタラタトスク ! ?
エミルマルタ ! お待たせ !
マルタエミル…… !
カーリャ・N皆さん、グラスティンとデミトリアス陛下が逃げるつもりです !
グラスティン――カーリャか。お前、生きていたとはなあ。
デミトリアスグラスティン ! 急げ !
グラスティンしかし、小さいフィリップが――
デミトリアス後にしろ ! グラスティン !
グラスティンちっ……。だったら、交渉材料にお前を連れて行くぞ黒髪の犬コロ !
ルキウスうっ……。
テネブラエ転送魔法陣で逃げられましたね……。
カーリャ・N……すみません。私がもっと早くこの場所に着いていれば……。
イクスいや、俺たちだってそうだよ。なあ、ミリーナ――
ミリーナ………………。
イクス――ミリーナ ?
ミリーナイクス……。あれ、最初のイクスじゃ……。
イクス本当だ……。横にはジュニアが…… ?何をして――
カーリャ・Nイクス様の体が――最初のイクス様の体が光り出した ! ?
イクス……何……だ……急に……意識が……――
コーキスマスター ! ?
カーリャミリーナさま ! イクスさまが倒れちゃいましたよ ! ?
イクス(……真っ暗だ……。一体何がどうなって……)
? ? ?――祖父ちゃん、どうしてだよ。俺だって鏡士の血を引いてるんだぞ !
? ? ?そうだな。そろそろちゃんと話して聞かせる時が来たのかも知れないな。
? ? ?イクス。お前は特別なんだ。お前が鏡士になるということは世界の理を変えることになるかも知れない。
? ? ?私はお前を亡くしたくない。お前の父も母も同じだ。それでも鏡士になるというなら――
イクス(祖父ちゃんの声 ? )
イクス(……違う。これは……まさか……最初のイクスの『記憶』…… ? )
ジュニア――やっぱり。イクスの体は『破損』していたんだ。だからナーザ将軍を受け入れられなかった。
? ? ?そのようだな。
ナーザ俺がこの体を離れた後、デミトリアスたちが死の砂嵐に繋がる術を見つけようとこの体を実験に利用した。
カーリャ・Nどういうことです。イクス様のご遺体を何に使ったというのですか ! ?
ジュニア虚無に繋がる道を生み出すための魔鏡作り……だと思う。
ジュニアイクスの遺体をレプリカで増やして人体万華鏡に改造したんだ……。
ジュニア多分レプリカを作った時に最初のイクスの遺体に悪影響が……。
二人! ?
ナーザだが、今はこうして俺の宿る疑似心核を受け入れた。恐らく、そこの具現化されたイクスが影響しているのだろう。
コーキスどういうことだ ?マスターが倒れたのはお前らのせいなのか ! ?
ジュニアそうじゃないよ。僕にも理屈はよくわからないけど最初のイクスのアニムスと三人目のイクスのアニマが共鳴したんだ。
ナーザ――ジュニア。行くぞ。あの毒は世界を死に至らしめる。俺は止めねばならない。ビフレストの皇子として。
ナーザ――リヒターと言ったか。至らぬ愚妹に力添え感謝する。
リヒター待て。俺も――お前たちと共に行く。
エミルリヒターさん ! ?
リヒターメルクリアの無事を見届けたい。
ナーザ……物好きな奴だ。好きにしろ。
カーリャ・N待ちなさい !イクス様のご遺体に勝手な真似をするのは私が許しません !
ナーザカーリャか。貴様の許しを得るつもりなどない。それに俺にかかずらっている場合か ?ビフレストが具現化したのだぞ。
ミリーナさっきの地震は……鏡震 ! ?
キールおい、大変だぞ ! ?前にオーデンセが具現化された場所にまた島が現れた !
キール今情報を分析しているが明らかにオーデンセとは違う島だ !
ナーザ黒衣の鏡士よ。今は貴様らとやり合っている時ではない。
ナーザ今の俺の敵は、世界に毒をもたらす邪悪。アスガルド帝国の皇帝を自称するデミトリアスだ。その為に――この体は借りていく。
ジュニア転送魔法陣、起動させます !
カーリャ・Nイクス様ッ ! !
マルタ……何 ? 何がどうなったの…… ?
ミリーナわからない……。今は急いでアジトに戻らないと。ビフレストの具現化も確認しなければいけないし何よりイクスが……。
コーキスマスター……。
キャラクター1話【15-1 集合的無意識1】
メルクリアここは……どこじゃ…… ?
メルクリアそこで倒れているのは……兄上様か ! ?
メルクリア兄上様 ! 兄上様 ! どうなさったのです ! ?
? ? ?……誰…… ?
メルクリアわらわじゃ ! メルクリアじゃ ! 兄上様 !
? ? ?……メルクリア ?島にそんな子はいなかった筈だけど。
? ? ?え ? 何だこの格好……。随分ビフレスト風だな。
? ? ?君のせいか……。君は『今の俺の身体』を知ってるんだな ?その記憶が俺をこんな格好にしているのか。
メルクリアな、何を言っているのじゃ……。
? ? ?あー、悪い悪い。わからないよな。こんな話をしても。そういえば……君もビフレスト風の服を着てるけどビフレストの人 ?
メルクリア……兄上様、ではないのか ?
イクス ?俺はイクス。イクス・ネーヴェ。
メルクリアセールンドの鏡士 ! ?
イクス ?よく知ってるな。
イクス ?そうか……。君がビフレストの人ならやっぱりビフレスト側は俺が鏡士になったことに気付いていたんだな。
メルクリアイクス・ネーヴェ…… ? わらわのことを忘れたのか ?いや、そもそもここはどこじゃ ! ?
イクス ?ここは【アニマのるつぼ】。集合的無意識の底だよ。世界中の人々の心が繋がる場所の最下層だ。俺の姿に気付いたと言うことは……君も鏡士なのかな。
メルクリア正確にはわらわはまだ鏡士ではない。力は使えるがな。
メルクリアしかし……【アニマのるつぼ】 ?セシ……シドニーからはそんなもの聞いたことがなかったが……。
イクス ?そうだろうな。俺がそう名付けたんだ。ここは死んだ人間のアニマが、消滅しきれず行き場をなくして閉じ込められている場所、だと思う。
イクス ?メルクリア、だったな。君みたいな小さな子までこんなところに来るなんて外ではまだ戦争が続いているのか ?
メルクリア戦争…… ? 死んだ人間のアニマ……。まさか……そなた、一人目のイクス・ネーヴェか ! ?
イクス ?一人目 ? それは一体どういう意味だ ?
イクス――それは『こういう』意味です。イクス……さん。初めまして。俺は三番目に具現化されたあなたです。
イクス ?! ?
メルクリアそちらがわらわの知るイクスであったか……。しかしこれはどういうことじゃ…… ?
イクス1st同じ顔が二人……。ややこしいな。まあ、その話は一旦置いておこう。二人にはこの場所のことを説明した方がよさそうだ。
イクスはい、お願いします。俺もどうしてこんなところにいるのか……。
イクス仲間と一緒に、セールンド山のアイギス制御施設へ向かって、そこで気を失って……。俺の知らない俺――多分あなたの記憶を一瞬垣間見て……。
イクス1st混乱してるみたいだな……。ここは生き物が死んだ後、そのアニマが消滅するまでの待機場所のようなところだ。
イクス1st一般的には死ぬこととアニマの消滅は同義なんだが何らかの原因で、死んだのにアニムス――つまり肉体は死ななかったというケースがある。
イクス1stそういう場合は、こうして【アニマのるつぼ】で肉体の死を待つことになる……んだと思う。
イクス1stということは、メルクリアも三番目だっていう君も死んだか、死にかけていると考えられる。
二人! ?
イクス1st何があったんだ ? 外で何が起きている ?君たちはどうしてここに来てしまったんだ ?
イクスあの……少し長い話になりますが聞いてもらえますか ?
イクス1stもちろん。どうせ時間だけは無限にあるからな。じっくり聞かせてくれ。君たちのことをさ。
イクス1st………………。
イクス1st……そうか。ミリーナとフィルが……。二人とも変なところで真面目だったからな。それにしたって、止める奴がいないとあの二人は……。
イクス1st――イクス……って、自分に呼びかけてるみたいで変な感じだな。まあ、とにかくそっちのイクスの話は一旦後回しにしよう。長くなりそうだ。
イクス1stまずはメルクリアの方からだ。
メルクリアわ、わらわ ? わらわがなんじゃというのだ ?
イクス1stメルクリア、君は今とても危険な状況だ。君のアニマの損傷が激しいのは鏡精ごと心を潰されたせいだろう。
イクス1stこのままだとメルクリアは植物状態になってしまう。そうなると後は衰弱して、その内本当に死んでしまう。
メルクリアわらわが……死ぬ…… ?
イクススピルリンクという、心を具現化して内部に入る手段があります。それで心を内側から修復することはできませんか ?
イクス1st心を具現化して中に入る……。それがどんなものなのか、俺は実際に見ていないから断言はできないけど、恐らく無理なんじゃないかな。
イクス1stメルクリアの心は具現化しても崩壊した状態だと思う。例えるなら地震で潰れた家のようなもんだ。中に入るのは難しい。
メルクリア……知らなかったこととはいえわらわは鏡精モリアンを見殺しにしたも同然じゃ。その罰なのかも知れぬな。
イクス1stいやいや、そいつは違うな。誰が罰を与えたって言うんだ ?
イクス1st仮にそれが女神ダーナの与えた罰だとしても筋違いにも程があるだろ。物わかりがよすぎるのもどうかと思うぞ。
イクスそうだよ。悪いのはデミトリアス陛下とグラスティンだろ ?
メルクリア……同じ顔で立て続けにうるさいわ。
イクス1stはは、そりゃそうだ。悪かった。
イクスけど、何かメルクリアを助ける方法はないんでしょうか……。
メルクリアき、貴様に助けられる謂われはない !そも、セールンドの鏡士はこの世を滅ぼす鏡士じゃぞ !
イクス1st………………。メルクリアの傍にはビフレストの鏡士がいるんだったよな。
イクス1stだったら……多分、俺を殺した時と同じ方法を使えば何とかなるんじゃないかと思う。
メルクリア離魂術か ? 何故それでわらわが助かるというのじゃ。
イクス1st離魂術っていうのか。名前は知らなかったけど俺の身体がいつまでも朽ちないのはその術のせいだと思う。
イクス1stカレイドスコープもそうだけどアニマを切り離せるなら元に戻す手段もある筈だ。
メルクリアま、まことか ! ?
イクス1stただ、その為には、メルクリアはこの【アニマのるつぼ】に居続けては駄目だ。ここは死者のアニマが消滅を待つだけの場所だからな。
イクス1st恐らく君のアニマは、俺の身体の近くにいてその影響を受けてここに辿り着いてしまったんだ。誰かが君を迎えに来てくれれば……。
メルクリアこんな場所に誰が迎えに来てくれるというのじゃ……。
イクス1st二人の話を聞く限りだと、心当たりはあるよ。メルクリアの兄さんは俺の身体の中にいるから難しいか……。
イクス1stそうだな……。メルクリアの兄さんの部下たちならこのるつぼにアニマが眠っているかも知れない。
イクスバルドさんとかチーグルさんとか ?
メルクリア! ?

キャラクター2話【15-2 アジト1】
ジョニークレア、マリアン。通信番、交代するぜ。そっちはそろそろ食事の準備があるだろ ?
クレアジョニーさん !
マリアンお体は大丈夫ですか ?
ジョニーああ。前線に立てないから、後方支援ぐらいはな。まったく、なんで俺はリビングドールから解放された他の連中より、治りが遅いんだろうな。
アルヴィン――よう、通信番の交代に来たぜっと……あれ、今日の当番は俺とエミルじゃなかったか ?
ジョニーああ、エミルはイクスたちと外に出ていっちまってな。暇を持て余してるジョニー様が代わりを買って出たんだ。
アルヴィン……イクスの奴、また外に出たのか ?大丈夫なのかね。色々と。
クレアそれが、色々とあって……。今、申し送りをしますね。
パスカルねえねえ ! なんかこっちの索敵装置に真っ黒いのがどっぱーんって湧いてきてるよ !
マリアン真っ黒いの……ですか ?
ヒューバートそれじゃあ伝わりませんよ、パスカルさん !
ヒューバート浮遊島索敵カメラの三番と四番を確認して下さい。まだかなり小さいですが、何かがセールンド方面から発生して、こちらに向かっています !
ジョニー何だ…… ? この黒い塊は…… ? 虫の集団か ?
アルヴィン虫だとしたらかなりの大群だぞ ?しかも海から発生するなんてのは……。
ヒューバート何にしても、あれがこの浮遊島を目指していることは間違いありません。もし危険なものなら迎え撃つ準備が必要です。
アルヴィンクレア、マリアン。アジト全体に緊急警報を発令してくれ。俺は戦えないチビ共が外をうろついてないか調べてくる。
ジョニー俺も行こう。ヒューバートの方は、今アジトに残ってる連中で迎撃準備を進めてくれ !
アミィえ ! ? 何 ! ?
エリーゼ警報……。アミィ、建物の中に避難しましょう。
アミィう、うん。
ルーク警報 ! ? これって、なんかやべー時になる奴だよな。
ティアルーク、アッシュたちへの指示は任せるわ。私は通信室に連絡をとってみるから。
ルークああ、わかった。アッシュ ! 聞こえるか ! ?
アッシュがなり立てるな ! 聞こえている。何があった ?
アステル魔鏡通信機がなくても連絡が取れるなんて便利だなあ !
ディストはーっはっはっはっ !この私が、故郷にいた頃に連絡が取れるようにしてあげたのですよ。この私が !
アステル完全同位体……でしたっけ。どうしてそんなことができるんだろう。
ディストこの世界と我々の世界では、完全同位体同士が連絡を取り合える仕組みに違いがあります。聞きたいですか ?
アステルはい ! 薔薇のディスト博士 !
ディスト仕方がありませんねぇ……。これは第七音素の存在の有無が――
アッシュ――ええい、黙れ、お前たち ! うるさくてレ……ルークの声が聞こえないだろうが !
二人! !
アッシュもう一度言え、ルーク。黒い虫 ? それがセールンド方面から発生してアジトに向かっているのか ?
二人! !
ディスト黒い虫……。まさか、死鏡精ですか ?
ジョニーこの辺りだって話だったよな。エリーゼとアミィが遊んでたって場所は……。
アルヴィンくそっ ! ……二人ともどこに行っちまったんだ。
アミィだ……誰か ! ! 助けて ! !
ジョニーアミィの声だ !
死鏡精Aカガミシ……カガミシ……。
アミィ私たちは鏡士じゃないよ……。
エリーゼ大丈夫ですよ、アミィ。わたしがあなたを守りますから !
アミィエリーゼ……。
アルヴィン俺も協力するぜ、お姫様。
ティポアルヴィン ! ナイスタイミング !
アルヴィンジョニー、アミィを頼む !
エリーゼアルヴィン、やりましょう !

キャラクター3話【15-5 アジト4】
アルヴィン倒しても倒しても湧いてくるな ! ?
エリーゼキリがないです……。
ティポ流石に疲れて来ちゃったよー !
ジョニー二人とも、ここは任せていいか ?このまま手をこまねいてるとこの黒い虫どもが増える一方だ。
ジョニー俺はアミィを建物の中に避難させてそのまま助けを呼んでこようかと思うんだが。
アルヴィンああ、そうしてくれ ! 監視装置の映像から考えると今来てるのは虫共の先遣隊みたいなもんだ。本隊が来る前に、こっちの戦力を整えないとな。
ジョニーよし、悪いが後は頼む。
ジョニーアミィ、走れるか ?チェスターのところへ逃げるぞ !
アミィはい、ジョニーさん !
アッシュルークの話だと、この辺りにアジトに繋がる転送ゲートがある筈なんだが……。
ディスト――おや、アッシュ。あなたの左手側の空間妙に歪んでいるように見えますが。
アッシュ……これか。あったぞ、ルーク。転送ゲートだ。
ルークよし、今、ゲートのロックを解除するよ。えーっと……これでいい筈……。
アッシュ開いたか ?
ルークうん、開いた !
アッシュおい、鼻たれの死神。
ディストな ! ?あなたに鼻たれなどと言われる筋合いはありませんよ ! ?
アッシュいいからお前から行け ! !
アステル蹴った ! ?
ディストギャ―――― ! ?
アステルあの、よかったんですか、アッシュさん ! ?
アッシュこれくらいでくたばるような繊細な奴じゃないだろう。
ルーク――うわ ! ? アッシュ ! ?なんでお前じゃなくてディストが転送ゲートから出てきたんだよ ! ?
ルーク帝国から脱走するのに、こいつも連れてきたのか ! ?ジェイドに殺されるぞ ! ?
アッシュ行きがかり上、仕方がなかったんだ。これから俺とアステルもそっちに行く !
ジョニーアミィ、あと少しだ。
アミィはい !
死鏡精カガミシ……カガミシ……。
アミィきゃあ ! ?
ジョニー囲まれたか !
ジョニーいいか、アミィ。俺が敵の真ん中に突破口を作る。俺が合図したら、アミィは振り返らずに走り抜けて建物の中に逃げ込むんだ。
アミィでも、ジョニーさんは ?ジョニーさん、まだ身体が治っていないってジュードさんが……。
ジョニー本調子じゃなくたって、こんな虫の化け物ぐらいは余裕で片付けられるさ。行くぞ !
ジョニーソニックレイブ !
死鏡精ウアァァッ ! ?
ジョニー今だ ! アミィ !
アミィは、はいっ !
ジョニーよし、いいぞ。そのまま逃げるんだ !
死鏡精……シネ……セカイゴト……シネ…… !
ジョニー……おいおい、倒したそばから増えるってのは勘弁してくれよ。まさか本隊とやらが到着しちまったのか…… ?
ジョニー仕方ねぇな !ビートヘヴン !
死鏡精アアァァッ…… !
ジョニー……く…… !
ジョニー(まずいな……。だんだん視界がぼやけて来やがった。道化のジョニーもここまでか…… ? )
ジョニー――いいや、最後の最後まで足掻いてみせるさ。
ジョニーミ・ラ・ク・ル~ぅわあぁぁぁぁぁおぅ !
ルークアッシュ ! おかえり !みんな、お前のこと心配してたんだぞ。無事に戻ってこれて良かった !
アッシュフン……。貴様に心配されるとは俺も落ちぶれたな。
ルーク口が減らないのは変わってないなー……。
アッシュ何 ! ?
ティアアッシュ、今は我慢して。アジトが大変なの。ええっと、そちらは――
アステルアステルです。ここにお邪魔するのは二度目です !
ティア――ああ、あなたが。話は聞いているわ。その……大佐――ジェイド大佐から。
ティアどうしてあなたたち三人が一緒にいるのか聞きたいところだけれど今ここは敵襲を受けていて……。
アステルもしかして、死鏡精ですか ?
ティア死鏡精 ! ?あれが……ミリーナたちの言っていた……。
ティアいえ、それは実際に見てもらった方がいいかもしれないわね。アジトのセールンド側から見たことのない敵が襲ってきているの。
ルーク敵襲を受けてるのはこっちだ ! 一緒に来てくれ !
ディストちょ、ちょっと待ちなさい !アッシュやレイカー博士はともかく、何故私があなたたちに協力しなければならないのですか。
ルーク一緒に来ればジェイドも喜ぶんじゃねーかな。ディストに会いたがってたし。
ディスト! ?
ティアルーク ! ?
ルークティア。言いたいことはわかる。けど、ジェイドに押しつけちまえば後はどうとでもなるだろ ?
ティアえ、ええ……。そ、それはそうね……。
ディスト――ふふふ、そうでしょうそうでしょう。やはりジェイドには私が必要なのですよ。やっとわかったのですね、ジェイド。
ディストええ、仕方ありませんね。この私のたぐいまれなる頭脳が必要だというのなら特別に力を貸してあげましょう。
アッシュ……俺は知らんぞ。後でどうなっても。

キャラクター4話【15-6 集合的無意識2】
イクス1st……さて。メルクリアに関しての俺の見解はこんなところかな。
イクス1stメルクリアはここで、るつぼの外からの声に耳を澄ませているといい。
イクス1st絶対に自分を失うなよ。それからどんなに眠くなっても絶体に眠っちゃ駄目だ。眠ったら存在が融けて本当に死んでしまう。
メルクリア……わかったような、わからぬような……。
イクス1st俺も死んだ存在だからな。これ以上助けてあげられなくてごめん。
メルクリア……べ、別にセールンドの人間に助けてもらおうなどとは思わぬ。
イクス1stはは、そうだよな。敵国だもんな。
イクス1stさて、次は三番目だって言う君の番だ。
イクス1st多分、俺がるつぼの中でこうして自我のようなものを取り戻して話しているのは三番目だっていう君の存在の影響だと思う。
イクス1stメルクリアに声をかけられるまで俺はるつぼの中に融けていた……んだろうな。
イクス俺はどうしてここにいるんでしょう。
イクス1st俺の死体が何かに使われているんじゃないかな。その、メルクリアのお兄さんの身体としてだけじゃなくて……。
メルクリア……わらわが……おぬしのアニムスを利用してオーデンセを具現化しようとしたことは関係あるか ?
イクス1st……なるほど。保存された死体の記憶を使って具現化か……。そんなことができるなんて凄いな。
イクス1st確かにそれは関係あるかも知れない。ただ、それだけじゃない気もするけどさ。
イクス1stまあ、外で何が起きているのかはわからないけど俺のアニムスと三番目の君のアニマが一時的にキメラ結合して――
イクス1st細かいことはいいか。限りなく似た存在同士で磁石みたいにひっついたって感じだろうな。
イクス俺は……あなたですからね。
イクス1st俺……にしては、控えめでしっかりしてるように見えるけど。君は『いくつの俺』を具現化されたんだ ?
イクス17歳じゃないでしょうか。
イクスフィル……フィリップさんの話だと、ゲフィオン……ミリーナさんは、初めて長期の漁に出る直前の具現化を希望したみたいです。
イクス1stそれって、プロポーズの夜か ! ?
メルクリアプロポーズとな ! ?
イクスあ、いえ、俺にはその時の記憶はないので実際はプロポーズのタイミングより少し前の時間軸から具現化されたんだと思います。
イクスそもそも……その俺の中ではミリーナにプロポーズする程気持ちも盛り上がってなくて……。
イクス1stやめろ……やめてくれ……。自分の顔でプロポーズだの盛り上がっただの言われたくは……。
イクス1st――うん ? 盛り上がってない ?
イクスあ、さっきざっくり話しましたけど、俺は……その、過去の記憶や感情を改ざんされてるみたいで……。
イクス1stそうか……。そうだったよな。フィルの奴、手紙読んでくれなかったのかな。
イクス手紙…… ?
イクス1st……いや、いいんだ。俺が自信過剰だったのかもな。フィルは俺のことが好きだから必ず手紙を読んでくれるって思い込んでたんだ。
イクス(す、すごい自己肯定感だな……。俺、絶対そんな風には思えないよ……。だって刺された相手だぞ ! ?)
イクスその……好きだから、嫌われたことを確認したくなくて手紙を読めなかった……とか ?あ、いえ、読んでるかも知れないですけど。
メルクリア何が書いてあるかわからぬままの方が恐ろしいではないか。ビクエも不思議な奴じゃの……。
イクスはは……。なんて言うか、二人ともすごいな。俺、あんまり自分に自信が持てない方で……。
イクスあ、いや、このままじゃいけないなって思ってはいるんです。だから努力して、自信を持てる自分になるって……。
イクス1stえー、すごいな ! ? 君、本当に俺の具現化なのか ?俺、そんなに努力家じゃないよ。見た目はそっくりだけど、やっぱり違うんだな。
イクスそう……かもしれませんね。俺はあなたの17歳までの記憶を受け継いで作られた存在で……でも過去を改ざんされていて……。
イクスどちらかというと枝分かれしたあなたの可能性の一つ……なのかも知れない。
イクス1stでも17歳の俺にしては、随分背が高いな。
イクスあ、それは、魔鏡結晶の中に閉じ込められている時に急激に成長したみたいで……。実感はないんですけど。
イクス1stその辺の理屈はよくわからないな。俺は鏡士になりたてだし……。鏡士歴で言えば、君の方が先輩だ。
イクス1st……色々総合すると、君は理想のイクスなのかもな。
イクス! ?
イクス1st鏡士を目指さず、漁師として生きようとした俺。俺が鏡士にならなければ――俺は死ななかったし多分戦争も起きなかった。
イクス1stいや、起きたのかも知れないけど君たちから聞いたような歴史にはならなかったんだろうな。
イクス俺があなたの理想なんですか ! ?
イクスそんな筈ない。あなたはミリーナ――ゲフィオンから愛されて、フィルに尊敬されてあなたを失いたくなかったからみんなが……。
イクス1st俺の理想って意味じゃないよ。俺は……俺の理想は――いや、その話は置いておくか。
イクス1st俺じゃなくて、『世界』にとっての理想だよ。俺が君みたいだったら、世界は話に聞くような絶望に陥らなかっただろうって。
イクス俺が『世界』の理想…… ?
メルクリア世界の理想だから何じゃ。そんなこと、おぬしにとってはどうでもいいことではないか。
イクス! ?
イクス1stああ、そうだな。確かにメルクリアの言う通りだ。誰かの理想とか、想いとかそんなもの、本当はどうでもいいもんな。
イクス1st君だって三番目だなんて名乗る必要もない。っていうか、俺の具現化だからって俺に縛られることもないんだぜ。
イクスえ ! ? けど、自分の具現化に託したい想いとかそういうのは……。
イクス1st託されたいのか ?
イクス………………。
イクス1stああ……でも、託したいって訳じゃないけど伝えておかなきゃって思うことはあったな。
イクス何ですか ?
イクス1stどうして俺がビフレストに殺されたのか、だよ。メルクリアはどうして俺が殺されたか聞いてるか ?
メルクリアセールンドの鏡士は悪だからじゃ。
イクス1stはははは、ビフレストから見ればそうだろうな。じゃあ、どうして悪なのか知ってるか ?
メルクリアそ、それは鏡精を作るからじゃ。
イクス1stどうして鏡精を作ったら悪なんだ ?
メルクリアそれは……………………何故じゃ ?
イクス1st俺も知らない。
メルクリア何じゃと ! ?
イクス1st怒った顔も可愛いな、ビフレストのお姫様は。
メルクリア! ?
イクス(す、すごい……。変な言い方だけどこの人は俺じゃないんだな。記憶を弄られなかったとしてもこうなったとは思えない……)
イクス1stごめんごめん。鏡精を作っちゃいけない本当の理由は俺も知らないよ。
イクス1stでも俺が殺された理由と鏡精を作っちゃいけない理由は……多分関係があるんだと思う。
イクス1st俺がビフレストに命を狙われたのは俺がバロールの魔眼を持つ鏡精を生み出せるからだって祖父ちゃんが言ってたから。
イクス! ?
イクスの祖父そうだな。そろそろちゃんと話して聞かせる時が来たのかも知れないな。
イクスの祖父イクス。お前は特別なんだ。お前が鏡士になるということは世界の理を変えることになるかも知れない。
イクスの祖父私はお前を亡くしたくない。お前の父も母も同じだ。それでも鏡士になるというなら、一つ約束してくれ。けっして鏡精を生み出さないと。
イクスどういうことだ ?
イクスの祖父お前は私と同じバロールの魔眼を受け継いだ。ネーヴェの家系に生まれる破戒者の証だ。
イクスバロールの魔眼 ?何だか禍々しい名前だけど……それって何なんだ ?
イクスの祖父バロールの魔眼は女神ダーナの作ったこの揺り籠を解く力だ。世界に『死』を放つ。
イクスの祖父その力は生み出した鏡精に宿り鏡精を通じて鏡士にも宿る。だからお前は鏡精を生み出してはならないんだ。
イクス俺が鏡精を作ると世界を滅ぼすことになる…… ?
イクスの祖父そうだ。お前が鏡士になればビフレストが黙っていないだろう。命を狙われることになる。世界を守るという名目でな。
イクスビフレストに命を狙われることをわかっていて鏡士になったんですか ! ?
イクス1stああ。少し悩んだけどそれが父さんたちの遺言でもあったから。
イクス父さんたちの遺言 ?
イクス1stああ、そうか。17歳の俺じゃ、まだ見つけてないな。父さんと母さんの形見の魔鏡に遺言が記録されてるんだ。戻ったら見てみるといいよ。
イクス1stまあ、親の記憶なんてほとんどないけどな。二人が王都に行ったのは、俺がまだ赤ん坊の頃だし。そのまま二度と会えなかったから。
イクス1stそれでも……背中を押してくれるきっかけにはなった。
メルクリア………………。

キャラクター5話【15-7 集合的無意識3】
ルークこっちだ !
ティアルーク ? そっちは畑がある方よね ?
ルークこっちからの方が近道になるんだ。
ティア詳しいのね。意外だわ。
ルークアジトのガキはみんなここらで遊ぶんだよ。そしたらメシの時間に早く帰れるし。
アッシュお前もガキ共と戯れているって訳か。精神年齢が合っていて良かったな。
ルークはあ ! ? 違うっつーの !この間エリーゼに聞いたんだよ !
ジョニー……うっ ! ?
ディスト……何です ?今のプレス機で熨されたイカのような声は ?
アッシュタコの貴様にそんなことを言われたくはないだろうよ。
アステルあ ! ? あっちの建物の方に倒れてる人が……。あれってジョニーさんじゃ…… ?
ルークジョニー ! ? 何でジョニーが ! ?
ディスト周りの黒い集団は……やはり死鏡精ですね。
ティアとにかく、ジョニーを助けましょう !
ジョニーおいおい……ここは一体どこだ ?
イクス1stおっと、また誰か来たな。どうしていきなりアニマとアニムスの状況が乖離した死者が増えたんだ ?
メルクリア何者じゃ ? この男は……。
イクス――え ! ?ジョニーさん ! ? 死んじゃったんですか ! ?
ジョニーイクス、会うなりその言い種は――
ジョニーいや、イクスはそういう冗談を言うタイプじゃなかったな。待ってくれ、つまり俺は死んだ……ってことか ?
イクス1stいや、どうだろう。ここに来る直前に何があったかにもよると思うからな……。
イクス1stメルクリアやイクスのことを考えると、あなたもアニマに何か深刻なダメージがあっただけで生きているのかも知れない。
ジョニー……あんた、ナーザ将軍か ?
メルクリア兄上様を知っておるのか ! ?
ジョニーということは、お嬢ちゃんがメルクリアか。
イクスジョニーさん、彼女はメルクリアだけどあっちはナーザ将軍じゃありません。最初のイクス・ネーヴェ、だそうです。
ジョニー! ?
ディストキィィィィィ ! 早く死鏡精を何とかしなさい ! ?
ルークだったらあんたも戦えよ !
アッシュ諦めろ。奴は譜業がなければ単なる生ゴミだ。墨でも吐ける分、タコの方が役に立つ。
ディスト何なんです ! ? 一々私をタコ呼ばわりして ! ?
ティア駄目だわ。敵の数が多すぎる。それに死鏡精たちがみんなジョニーを狙ってくるから守りながら戦うにはもっと戦力が――
ガイそういうことなら、協力するぜ !
二人ガイ ! !
ティアアニス、ナタリア、大佐 ! それにイオン様まで ! ?
イオン微力ですが、非戦闘員の保護ぐらいなら僕でもお役に立てると思います。
アニスイオン様、絶対無茶しないで下さいね !
アッシュナタリア……。
ナタリアお話は後ですわ。今は敵を迎撃しなければ !
チェスターおっと、オレたちがいることも忘れるなよ。
ルーククレスたちも来てくれたのか ! ?
クレスああ。もっと奥でアルヴィンとエリーゼも取り残されているらしいんだ。
チェスターアミィを助けてくれたって聞いてな。礼はきっちり返さねえと。
ジェイドジョニーのことはこちらにおまかせを。
アーチェあたしたちはアルヴィンとエリーゼを助ければいいのよね。
すず皆さん、急ぎましょう。
クラース他に死鏡精が取り憑いた地点もそれぞれ迎撃隊が向かっている。みんな、何とか乗り越えよう !
ジョニーなるほど、行き場を失った心の墓場……みたいな場所ってことか。
イクスでもジョニーさんの場合はどうしてここに……。話を聞く限りでは、アジトを襲っている敵は死鏡精だと思うんですが、それと関係あるのかな……。
イクス1st死鏡精…… ?
イクスあなたも知らないんですか ! ?
イクス1st俺は鏡士になったばかりだったからな……。
メルクリア死鏡精……。兄上様が何か仰っていたような……。
イクス死鏡精は……キラル分子を生成するために殺された鏡精の怨嗟が形になったものだってネヴァン――カーリャが言ってた。
イクス1stカーリャ ? ミリーナの鏡精の ?
ジョニーそうか……。あれが前にイクスたちが話していた死鏡精か……。
メルクリア待て。キラル分子を鏡精で作っていた……じゃと ?何と言うことを……。セールンドの鏡士は悪魔か ! ?
イクス1st……………………。だから、父さんと母さんは……。
イクス1st――いや、それよりジョニーさんのことだ。俺の乏しい知識で予測するに、恐らく死鏡精というのは鏡精に残された最後の原始的なアニマだと思う。
イクス1stアニマはアニムスを求める。わかりやすく言えば身体を失った鏡精の心は、新しい身体を求めるってことだ。
イクス1stジョニーさん、意識をしっかり保って下さい。死鏡精があなたの身体を奪おうとしている。だからあなたの心がこのるつぼに来てしまったんだ。
三人! ?

キャラクター6話【15-10 救世軍のアジト1】
ナーザ……ここか。かつて救世軍が使っていた根城というのは。
ジュニア……周りが雪山だから……冷えますね。
リヒター雨風しのげるだけマシだろう。転送魔法陣が使えて、帝国がいない場所と言えばここぐらいしか思いつかなかった。
リヒター今、火をおこす。メルクリアを火にあたらせよう。
ナーザ……リヒター。何故メルクリアにここまで肩入れする ?
ナーザ四幻将だったとはいえ、お前を帝国に縛り付けていたのはレイカー博士が人質だったからに過ぎぬだろう。
リヒターメルクリアは……元の世界の俺だ。それよりはずっと幼いが、同じように愚かだ。
リヒターだがメルクリアは少しずつその愚かさから脱却しようとしている。
リヒター元の世界で俺は生き方を変えられなかった――変える気もなかったが、こんな幼い子供が俺と同じような生き方をする必要はない。
ナーザ失った者を取り戻すための復讐か……。
ナーザわかった。ならば俺はもう何も言うまい。
ナーザリヒター。それにジュニア。俺はアスガルド帝国皇帝を自称するデミトリアスを討つ。
ナーザしかしその為には、もっと力が必要だ。お前たちの力を貸してくれまいか。
ナーザ俺のためなどではない。メルクリアが『呪い』に打ち勝ち平穏に暮らすための世界を取り戻すためだ。
リヒター……そのつもりでここへきた。
ジュニア僕もです。それに……僕のマークも。
ナーザ鏡精か……。背に腹は代えられぬか。マークは今どこにいる。
ジュニアさっき合流して、この周辺の様子を見てくれてます。
ナーザわかった。後は……メルクリア、か。鏡精ごと心を潰された。何とかしてメルクリアの心を修復せねば……。
? ? ?ウォーデン様。
ナーザナーザと呼べ、バルド。
リヒターバルド ! ? 奴もいるのか ! ?
ジュニアはい。あの……少しでもメルクリアの助けになる人を増やしたくて……。僕が無理矢理こちらに呼び寄せました。
ナーザセールンドの鏡士は、平気で死者に手を伸ばす。外道ではあるが、今回はそれに助けられた。今バルドは人工心核に宿っている状態だ。
バルドリヒター、ご無沙汰しています。
リヒター……ああ。姿が見えないから妙な感じだな。
バルドご容赦下さい。これから我らは、ナーザ様の元で共に戦う者。ビフレスト聖騎士団の仲間です。
リヒター……四幻将だの聖騎士団だの俺にはどうでもいいことだ。
バルドその通りですね。すみません。
ナーザバルド。何の用だ ?
バルドメルクリア様ですが人工心核を利用してはどうでしょうか。
バルドメルクリア様の心が消えてしまう前に人工心核に移し、それから治療を施せば時間が稼げるのでは。
ジュニアそうだ……。シドニーの分に使うつもりだった人工心核があります。
ジュニアでも、ソーマか特別な魔鏡でもなければ心の中に入ることは……。
リヒターイクスたちに助けを求めるか ?
ナーザ……いや。ビフレスト式で行く。幸いこの身体は鏡士の身体だ。バロールの血を引くだけに、力は申し分ない。
リヒターバロールの血 ?
ナーザ女神ダーナを殺そうとした悪しき男の名だ。オーデンセのネーヴェ家はバロールの末裔と聞いている。
ジュニア! ?
ジュニア――待って !マークが……マークの気配が弱まってる ! ?
リヒターな、何だ ! ?
ナーザ死鏡精か。何故ここに…… !
死鏡精ミツケタ……ワタシノマスタア……。
リヒター狙いはメルクリアか ! ?
死鏡精カワイソウナマスタア……。タスケテアゲル……ワタシガ……。
メルクリア! ?
イクスどうした ? メルクリア ?
メルクリアあ……苦し……わらわ……が……――
イクス1stまずい ! ? メルクリアの心が消える ! ?何とかつなぎ止めるんだ !
イクスメルクリア ! 消えるな !
ジョニー――お姫様 !このジョニー様の歌声を頼りに戻ってくるんだ !
メルクリア何じゃ、その歌は……。ふふ……楽しくなるでは……ないか……。
? ? ?ウルサイオト…… ! ? ジャマシナイデ…… !
二人危ない ! !
ジョニーくっ、あいつだ。浮遊島を襲ってきたのは……。
イクス死鏡精か !
死鏡精マスタアヲカエシテ !
一同! ?
メルクリア ?フ、フハハハ ! ようやく身体を得たぞ !
ジュニアメル……クリア ?
メルクリア ?メルクリアさまはわらわの中で眠っておる。わらわはもう誰にもメルクリアさまを傷つけさせぬ。
メルクリア ?わらわとメルクリアさまを絶望に追いやる全てに復讐してやる !
ナーザ……貴様、死鏡精か。メルクリアの身体を奪ったな ?
メルクリア ?奪ったのではない。戻ってきたのじゃ。ここがわらわのいるべき場所だからな !
モリアンわらわはモリアン !メルクリアさまを守る鏡精であった者。そしてメルクリアさまを永遠に守る者じゃ。
モリアンわらわはもう鏡精ではない。わらわとメルクリアさまは一つに戻ったのじゃ !集え、我が仲間たちよ !
モリアンさらばじゃ、メルクリアさまとわらわを守れなかった鏡士共 !
モリアンわらわはメルクリアさまの望み通りビフレストへ行く !

キャラクター7話【15-12 アジト5】
カーリャ・Nイクス様……大丈夫でしょうか。
コーキスマスター……。
ミリーナ呼吸はしているから……。多分……。
エミル駄目だ。みんな通信に出ないや。
マルタ何かあったんじゃ……。
ミリーナ気になるわね。転送ゲートでアジトに戻りましょう。私が開くわ。
テネブラエその方法は身体に負担が掛かるのでは ?
ミリーナ緊急事態だもの。大丈夫。さあ、みんな、集まって !
イクスえ……あれ…… ?
ジョニーおい、メルクリアの次はイクスもか ! ?よし、もう一度俺の歌で――
イクス1st……いや、これは違うよ、ジョニーさん。イクスが俺の死体のそばから離れてるんだ。
イクス1st物理的に距離が離れれば、俺に引かれてるつぼに来ていたイクスの心もキメラ結合が解けて離れていく。
イクスあ、じゃあ、ミリーナたちが俺をセールンド山から運び出してるのかな ?
イクス1st……お別れだな。イクス。
イクスあなたは……どうなるんですか ?
イクス1st融けてるつぼの一部になる。そして死ぬ。
イクス1stいや、もう死んでるんだからメルクリアのお兄さんが死体を返してくれるまでここで眠るんだろうな。
イクス1stまあ、そのまま目覚めることもないからこれが本当のお別れだ。
ジョニー訳がわからないな。あんたは生きてるようにしか見えないが。
イクス1st死んでますって。離魂術……だったかな。そのせいでこんな状況になってるだけで本来なら、二人と出会うこともなかった。
イクス1st幽霊みたいなものです。でも会えてよかった。俺の幼なじみのやらかしをフォローできそうだ。
イクスえ……。それはどういう……。
イクス1stフィルに伝えてくれ。手紙、ちゃんと読んでくれたかって。もし読んでたら……もう一度思い出してくれって。
イクスミリーナさんには ?
イクス1stミリーナに声が届けられるのか ?
イクスわからないですけど、可能性はあります。
イクス1st……じゃあ――
ジョニーおい、イクス ! ?
イクスイクスさん !
イクス1st――やっぱりいいよ。ミリーナを惑わせたくない。それにミリーナに届ける声は俺自身の声でありたいからな。
イクス1stなあ、イクス。全部捨てていいんだ。俺のことも世界だって、ミリーナの愛情だってな。
イクス! ?
イクス1stイクスは自由だ。俺もお前も自由だ。忘れるなよ。
イクスイクスさ――
ジョニー行っちまったな……。
イクス1stジョニーさんも、呼ばれているみたいですよ。
ジョニーえ ?
ルーク……よし、第三波も片付けたぞ。
ナタリア油断はできませんわ。すぐにまた現れるかもしれません。
ジェイドええ、ナタリアの言う通りでしょうね。このままではこちらが消耗してしまう。
ディスト死鏡精は無尽蔵に出現する訳ではありません。虚無との接触手段が限られている以上どこかで途切れる筈ですよ。
ジェイド……なるほど。流石詳しいですね、サフィール。
ディスト私のことをサフィール……と ! ?そ、そうですか ! 私の古い名を呼ぶ程私に会いたかったのですね、ジェイド。
イオン――ディスト。少し黙って下さい。
ディスト! ?
イオンジョニーが、わずかですがこちらに反応しています。これはもしや……。
アッシュ――な、何だ。何故俺とルークを見ている。
ルークえ ! ? 俺たちに何かできることがあるのか ! ?
アニー皆さん ! ? 戻られたんですね ! ?連絡が途絶えたと聞いていましたから心配していました。
ミリーナごめんなさい。でも大変なの。イクスがまた倒れて――
マルタ待って、ミリーナ。イクスが目を覚ましたみたい。
二人! ?
イクス……う……ここは……。
アニーここはアジトです。今、脈を診ますね。
イクス……アジト…………。
コーキスマスター、大丈夫か ! ?
イクスコーキス……。
イクスの祖父その力は生み出した鏡精に宿り鏡精を通じて鏡士にも宿る。だからお前は鏡精を生み出してはならないんだ。
イクス………………。
コーキスマスター…… ?
アニー少し脈が速いですね。
イクス――そうだ !アジトが死鏡精に襲われてるんだよな ! ?
アニーえ、ええ……。誰かがイクスさんたちに連絡してくれたんですね。
ミリーナえ ! ? いえ、私たちは初耳だけど……。イクス、どういうこと ?
イクス後で話す !アニー、ジョニーさんが危険なんだ ! どこにいる ! ?
アニージョニーさんの救出ならナタリアさんたちが向かいました。
イクス案内してくれ !
アニーわ、わかりました。
ミリーナ……イクス…… ?
カーリャ・N小さいミリーナ様 ?
カーリャみんな、行っちゃいましたよ ! ?
ミリーナえ、ええ ! すぐ行くわ !

キャラクター8話【15-14 アジト7】
イオンジョニーが反応しているのは僕の中のローレライの気配なのではと思うんです。
イオンジョニーは特異鏡映点として過去のティル・ナ・ノーグの具現化そして精霊ローレライの研究に利用されていた。
イオン元々負のアニマを持ち、過去の具現化の実験をさせられていた段階で、彼は時間の概念を帯びている……のではないでしょうか。
ジェイドイオン様……。あなたはこの世界の――鏡映点の時の流れが異質であることに気付いているのですね。
イオンやはりジェイドもですか。僕はディストやハロルドから聞いただけですが……。
ルーク鏡映点の時間の流れ…… ? 何だそりゃ ?
イクス……それは、鏡映点の人たちの時間が止まっているということですか ?
十四人! ?
ジェイドなるほど、イクスも気付いていましたか。
ガイちょっと待ってくれ……。意味がわからないんだが……。時間が止まってる ?
アステル正確には、時間がループしているんです。だって、皆さん、お腹はすくでしょう ?
ディストこの世界の鏡映点は、時間の流れが止まっていることに対してもある種の生体恒常性を保っています。
ディスト肉体の老化現象だけが停止している……と考えればいいでしょう。
イオン今は、皆さんの理解を待つ余裕はありません。ジョニーを助けなければいけませんから。
イオンとにかく、鏡映点は何らかの理由で時間の流れが止まっている。にもかかわらずジョニーの恒常性に狂いが生じている。
ジェイドだから、ジョニーの容体だけがいつまでも安定しなかった――か。ええ、辻褄は合います。
ジェイド……そうか。ローレライはこの世界では音の精霊として認識されているが本来は時の精霊に似た性質を持っている。
ジェイドローレライの力を研究する際ジョニーは本来相性がいい訳ではないローレライに干渉させられた。
ジェイドそれが恒常性が安定しない原因か。
ディストアッシュ、あなたには一度ローレライをまとわせてあげましたね。
ルークえ ! ? 精霊装みたいなことか ! ?
アッシュ……精霊装とは違うがな。俺はローレライに接触するためディストを利用したんだ。
ディスト……やはりここの鏡士との縁は切れていなかったのですねえ。帝国の調査もいい加減なものです。
ディストまあ、私には大した問題ではありませんが。あなたが間者かどうか調べることで、デミトリアスを安心させて資金を引き出せればよかったので。
イオンアッシュ、では僕と協力してローレライを呼んでみて下さい。
イオンローレライが狂わせたジョニーの恒常性を取り戻してもらいましょう。
ルーク俺は ? 俺も協力しなくていいのか ?
ジェイドいえ、あなたは関わらない方がいい。前にも説明したとおり、この世界における第七音素の性質はまだはっきりしていません。
ジェイドあなたを失う訳には行かないのです。あなたは……レプリカなのですから。
ディスト………………。
ジョニー……なんだ ? 戻ってきたのかと思ったがここは……るつぼなのか ?
アッシュ ?ジョニーか。久しいな。
ジョニーアッシュか ? どうしてお前がここにいるんだ ?お前もるつぼに来ちまったのかい ?
ローレライ私はローレライ。今はルーク……いやアッシュの姿を借りている。
ジョニー精霊ローレライ、か……。なんて夢を見てるんだ。
ジョニーあんたのおかげで、俺は苦労させられたよ。あんたを呼び出せだの、降ろせだのと。
ローレライすまなかった。お前が奏でる負のアニマを帯びた音と星の記憶を視る時に発する私の音が重なってしまった。
ローレライそのせいで、お前だけがクロノスの理から外れてしまったようだ。
ジョニー難しいことを言われても困るんだがつまりどういうことだ ?
ローレライ私の因子を返してもらう。それでお前は皆と同じ時間に生き――戦う度に身体を蝕む傷みからも解放されるだろう。
ジョニー要するに俺を治療してくれるってことか。そいつはありがたいね。
ローレライジョニー。私には視える。お前の歌は負のアニマを帯びている。
ローレライそしてその力が、取り残された鏡精たちの時間を巻き戻すだろう。
ジョニー何だって ? それは一体――
ジョニー…………今度こそ……現実、か ?
イクスジョニーさん ! はい、ここは俺たちのアジトです !
ジョニーイクス ! ?そうか……。お互いるつぼから生還できたんだな。
ジョニーしかし、何だって俺の隣でアッシュとイオンが寝てるんだ ?
ジョニー今まで見てたローレライの夢と関係があるのか ?ローレライがアッシュの姿をして出てきたんだが……。
ジェイドこの二人がローレライを召喚してジョニーの身体に残されていたローレライの力を回収したんですよ。
ジョニーなるほど。あれはただの夢じゃなかったんだな。……じゃあ、ローレライが言ってたあの言葉も……。
ジェイドローレライの言葉……というのは大いに気になりますがどうやら話を聞いている時間はなさそうです。
ガイ――おっと、また死鏡精共が湧いてきたのか。しかしアッシュたちがこの状態じゃ……。
ルーク俺が二人の分まで戦う !
ガイルーク……。
ジョニー……なあ、俺に考えがあるんだ。少しだけ時間を稼いでもらえるかい ?
ジョニーローレライの言葉を信じるなら俺にもできることがある。
ジェイド――わかりました。あてにしますよ。
アニスナタリア ! 二人でイオン様とアッシュを守ろう !
ナタリアええ !
ガイはは、頼もしいな。女性陣は。アステルとディストも下がってろ。庇いながら戦うには戦力が足りないからな。
カーリャ・N戦えない方は、私がフォローします !
イクス俺たちのことも忘れないでくれ。みんなと一緒に戦うよ !
ミリーナええ、当然よね。エミル、マルタ、アニー。力を貸してくれる ?
エミルもちろんだよ。
アニー任せて下さい。
マルタ死鏡精だか何だか知らないけど、ぶっ潰す !
イクスよし――行くぞ !

キャラクター9話【15-15 ジョニー】
ルークおい、ジョニー ! まだかよ ! ?
ジョニー――よし。どうやら本気で歌っても大丈夫みたいだ。マイクはないが、ここは一発、声を張り上げるか。
ジョニーイエスッ ! 盛り上がっていくぜ !ジョニー・シデン作詞作曲ティル・ナ・ノーグナンバーエイト !
ジョニーイクスに捧げるレクイエム !
イクスなっ、何ですか、それは ! ?
ミリーナまさか、歌うの ! ?
アニーこの状況で、ですか ! ?
ジョニー♪るつぼの~奥で~眠るのは~探し~求めた~自分自身~ !
アニスレクイエム ! ? メチャクチャ激しいんですけど ! ?
カーリャロックじゃないですか ! ?
ジョニー知らぬ間に~がんじがらめの俺~解き~ ! 放つ~ ! のは~ !影であることを認める、勇気~ !
死鏡精ア゛……ア゛ア゛ア゛ア゛…… ! ?
ジョニー――道化のジョニーならぬ浄化のジョニーってな !俺の歌に痺れて消えな ! !
ジョニー……本当に死鏡精が消えちまった。
ミリーナジョニーさん、すごいわ ! ?でも身体は大丈夫なんですか ?いきなりあんな大声張り上げてしまって……。
ジョニーいや、久々に腹の底から歌えて最高の気分だ。
コーキスすげえ ! ? ジョニー様の歌つえー ! ?
カーリャでもあれ、レクイエムではなかったですよね…… ?
ジョニーそうかな ? 俺としては最高の鎮魂歌が出来上がったと思ってるけどな。
イクスジョニーさん……。あの歌……。
ジョニー歌は歌だ。イクス。
イクス……フフ……。
ジョニーうん ?
イクス俺、わかりました。とりあえず後で考えよう、今はやれることをやらなきゃって思ってましたけど……そうですよね。
イクス俺は……ただの影で……過去なんて全部ねつ造でもう、気持ちも記憶も、何もかも嘘だらけだけど……。そんなの……俺のせいじゃないですよね。
イクス――俺のせいじゃない。全部……全部知ったことか !
ミリーナイクス ! ?
コーキスマスター ! ? どうしちまったんだ ?
イクス――ここからやり直す。もう抱え込むのはやめる。俺が何者なのかってのは全然わからないけどもう疲れた。
イクス全部取っ払って、残ったものだけを俺だと思う。
ジョニーで ? 何が残ったんだ ?
イクスこの身体。それだけです。ここから手に入れます。イクス・ネーヴェの影だった俺が本当に欲しいと思うものを。
イクスその為には……まずこの世界を何とか延命しないとならないですけどね。
ジョニーああ。これから欲しいと思うものは誰にも干渉されてない、お前さんだけの欲求だからな。それだけは間違いない。
ミリーナイクス……。あれからずっと悩んでたのね。
イクスうん……。性格だからな。この性格も作られたものだから……とかうじうじ悩んでたけど、わからないよな。
イクスどこまでがフィルに弄られたせいでどこまでが自分のせいかなんて。考えても意味がない。
イクスそれでも考えちゃうんだろうけど意味がないって思えるようになっただけマシだ。
ジェイド――いやー、青春ですね。実に美しい。ところでイクスが何やら吹っ切ったところでジョニーにお願いがあります。
ジョニーいい性格してるね、ジェイドは……。
ジェイド褒められると照れるのですが他の区画ではまだ死鏡精の襲撃が続いています。
ジェイド魔鏡通信を使って、浮遊島全域にあなたの歌声を響かせて頂けるとありがたいのですが。
ジョニーアンコールってことか。任せとけ ! 何曲でも歌ってやるさ !
ジェイドアニー。ジョニーと一緒に通信室へ行ってあげて下さい。まだ病み上がりには違いありませんからね。
アニーそうですね。ジョニーさん、大丈夫ですか ?
ジョニーああ、大丈夫。それじゃあ、ジョニー・オン・ステージのアンコール公演に向かおうか。
ジェイドテネブラエ。あなたはどんなものにも姿を変えることができましたね。
テネブラエええ。闇のセンチュリオンですから !
エミル闇は関係ないような……。
ジェイドでは、手錠になって頂けますか ?
テネブラエかまいませんとも。
ジェイド――ガイ !
ガイはいよっと。――ディスト、悪いな。
ディストは ! ? どうして私に手錠をかけるのですか ! ?
ジェイドあなたに聞きたいことがあるのですよ。……色々とね。連行して下さい。
ジェイド残りの皆さんはアッシュとイオン様を医務室へ運んで下さい。
ジェイド――それと、ルーク。
ルークへ ? 何だ ?
ジェイドディストをここに連れてきたのはあなたですね。
ルークは ! ? いやいや、それはアッシュが――って、まさかあの時の会話を…… ?まさか、ティア ! ?
ティアええ ! ? 私は何も言ってないわよ ! ?
ジェイド――おや、カマをかけただけなのですがやはりディストがここにいる理由に一枚噛んでいるようですね。
ルークしまった……。
ジェイド後でじっくり話を聞かせてもらいましょう。

キャラクター10話【15-15 ジョニー】
イクス……ひとまず死鏡精の襲撃は食い止められたみたいだな。
ミリーナジョニーさんの歌声が効果てきめんだったわ。どういう仕組みなのかしら……。
カーリャ・N今後の対策として、ジョニー様の歌を録音しこの浮遊島に流しておくことにしました。これで死鏡精が近づいてくることはないでしょう。
コーキスルーティ様がもの凄く嫌な顔してたけどな……。
カーリャでもカーリャはけっこう好きですよ。ジョニーさまの歌。
コーキス気が合うな、パイセン。俺もだぜ !
イクス(コーキス……。俺はコーキスを作っちゃいけなかった…… ?)
イクス(コーキスのあの左眼がバロールの魔眼ってことなんだろうか……)
コーキスそういえばマスター、どうしてアジトが死鏡精に襲われてるってわかったんだ ?
イクスあ、ああ……。不思議な話なんだけど俺……最初のイクスに会ったんだ。
四人! ?
イクス気を失っている時の夢かも知れないと思ったんだけどジョニーさんもその場にいて……。
イクスジョニーさんも覚えていたみたいだから……夢じゃなかったんだろうな。
カーリャ・N――イクス様は、生きておられるのですか ! ?
イクスネヴァン……。
イクスいや、死んだっていってた。集合的無意識の底にいて幽霊みたいな存在だって……。
カーリャ・N……そう、ですか……。
イクスそういえば……メルクリアはどうなったんだろう。
ミリーナメルクリア ? メルクリアもそこにいたの ?
イクスああ。心が壊れてるって……。それから……モリアンっていう死鏡精がメルクリアに乗り移って、消えてしまって。
カーリャどういうことなんでしょう ?
イクスよくわからないんだ。あれも実際に起きたことならジュニアに連絡をしたら何かわかるのかな。
ジェイド失礼しますよ。
ミリーナジェイドさん、ガイさん。アッシュさんとイオンさんは無事ですか ?
ガイああ、さっき目を覚ましたよ。身体に異常もないみたいだし、一安心だ。
イクスよかった……。
ジェイド私の方は、空いた時間を利用してディストに話を聞いてみました。
ガイ……ディストの奴、悲鳴上げてたけどな。
コーキスな、何したんですか ! ?まさかリオン様みたいに……。
ジェイドいやですねえ。私は平和を愛するただの軍人ですので丁重に話を聞きましたよ。
カーリャがたがたぶるぶるがたがたぶるぶる……。
ジェイド帝国の目的がニーベルングの復活であろう事は目星がついていましたが、どうやらビフレストの具現化は、その為の実験の一環だったようです。
ジェイドメルクリアの仕掛けた具現化の術式を再利用して行ったようですね。
ミリーナ実験 ? ビフレストの具現化が…… ?ビフレストとニーベルングに関係が…… ?
ミリーナいえ、どちらかというと具現化のさせ方に意味があるのかしら……。
ジェイドそれともう一つ。キールたちが死鏡精の動きを追跡してくれました。死鏡精の発生源の一つはセールンド山です。
ミリーナえ ! ?大樹カーラーンじゃなかったんですか ! ?
コーキスそうだよ。あそこを住処にして増殖してるかもって話だったのに……。
ジェイド報告はまだ途中ですよ。セールンド山からきた死鏡精はこの浮遊島を襲撃しました。
ジェイドそして大樹カーラーンからも死鏡精の群れが出現した。そちらは具現化したビフレストに向かったようです。
ジェイド今、セールンド山の方は調査隊を向かわせています。具現化されたビフレストの方も注視した方がいい。
カーリャ・N帝国は……イクス様の遺体をレプリカで増やし、その身体を利用して人体万華鏡を作ったと言っていました。
カーリャ・Nそれに……あの光魔……。私が帝国で発見した資料と照らし合わせると、あの光魔は人工心核を移植されたリビングドールなのでしょう。
カーリャ・N恐らくその二つを利用して、虚無への道を開き死鏡精を呼び込んでいるのでは……。
ジェイドセールンド山の方の発生源はそれかも知れません。ただ、死鏡精そのものは帝国の目的ではないのではと推察します。
ジェイド恐らく副産物なのでしょう。ディストの話では、帝国側は虚無と死の砂嵐の方に強い興味を持っているようですから。
ガイちなみに、こいつがケリュケイオンから送られてきた例の具現化ビフレストだ。
カーリャ・Nなんて禍々しい……。
ミリーナ本当だわ。本で読んだビフレストとは全然違う……。
ガイ魔都、だな。とんでもないものが具現化されちまった……。
ジェイド私はビフレストへの潜入と偵察を提案します。死鏡精がここに集まっているなら放置するのは危険だ。
ジェイドジョニーがいれば死鏡精はある程度無効化できるでしょう。
ジョニーおっと、こっちでも同じ話が出て来てるらしいな。
イクスジョニーさん !
ジョニーリオンにユーリにクレスにユリウス。みんなその『魔都ビフレスト』に行こうって言い出してる。
ジョニー俺の歌が必要なら、いくらでも協力するぜ ?
ミリーナ救世軍にも声をかけてみましょう。
イクスそうだな。調査に出てるセネルやロゼたちにも連絡を取ろう。
ジェイド大所帯になりましたからね。また魔鏡通信を繋ぎましょう。
ジェイド帝国が用意した新しい領主のことや、今の状況ビフレスト潜入隊の選抜……。長い会議になりますよ。
コーキスそういう頭使いそうなことはマスターがいれば大丈夫だよな !
イクスの祖父その力は生み出した鏡精に宿り鏡精を通じて鏡士にも宿る。だからお前は鏡精を生み出してはならないんだ。
イクス(――例えそうだったとしても俺はコーキスに救われた。俺は……コーキスを信じる)
イクスああ。俺は頭脳労働で、コーキスは肉体労働だもんな ?
コーキス何だよそれ ! ?まあ、でも、マスターがそうして欲しいって言うなら俺はそれでいいぜ !
カーリャコーキスはイクスさまが大好きですねえ。
コーキスへへっ ! まーなっ !
イクス1st……みんな、いなくなっちゃったな。
イクス1st静かだ……。何だか……俺も……眠くなってきた……。
イクス1stそろそろ融けるんだな……。死んだ後の世界の話を聞けるなんて……わからないもんだなあ……。
イクス1st……ミリーナ、フィル。ごめんな……直接助けてやれなくて……。
イクス1st二人のこと……愛してるから……な……。
キャラクター1話【16-16 ウェルテス領 領主の館1】
ウェルテス領 領主の館
ジェイ――さあ、この部屋に入ってください。早く !それと人数の確認を。
ミラ=マクスウェル問題ない。全員いるようだ。
ユーリよお、セネル。待たせたな。
セネルみんな、早かったな ! 無事に合流できてよかった。
ユーリお前んとこの新入りのおかげだよ。
ジュード本当に助かったよ、ジェイ。ありがとう。
ジェイどういたしまして。
レイヴンけど驚いたわ。この新顔の少年てば大所帯の俺ら全員つれて領主の館に侵入するって言うんだもん。
パティそうじゃの~。だが、タコが蛸壺に入るくらいスムーズな潜入だったのじゃ。
カロルうん、でもすごく緊張したね。なんかどっと疲れた……。
レイアあはは、おつかレイアー !
ジェイ正直なところ、ぼくもこれだけの数で侵入するのはどうかと思いました。
ジェイですが、結晶をうかつに外へと持ち出した場合どんなリスクがあるかわかりません。
ジェイだったらいっそ、まとめて来てもらった方が話も早い。人数が多い分、有事の際の戦力にもなりますしね。
エステルなんだかジェイは軍師のようですね。
ノーマエッちゃん鋭い ! 本当に軍師してたんだよ。すごいでしょ、うちのジェージェー。情報収集だってお手のものなんだから。
ノーマだからさ、ユーくんやジューどんたちも何か用があればジェージェーに依頼してよ。あたしが窓口になるから !
アルヴィンなるほど。目的はピンハネか高額請求ってとこか。やるね~。
ノーマでしょでしょ ? ……ってなんでバレた ! ?
エリーゼノーマ、自分でバラしてます……。
グリューネと~っても素直なのよね、ノーマちゃんは。
ティポこういうの、正直なバカっていうんでしょー。
ノーマそれを言うならバカ正直 !ヴィンすけ、後で覚えてろよー !
ジュディス依頼の話は別にしても、ノーマの言うとおりならカロル調査室にとっていい話よね。有能な人材が確保できたんだもの。
ジェイ言っておきますが、セネルさんたちはともかくぼくはまだ皆さんの仲間になるとは言っていません。今の状況は成り行きみたいなものですからね。
ジュディスあら残念。でも仲間っていいものよ。
ジェイ……そうですね。よく知ってます。
ラピードワン !
リタ犬が急かしてるわよ。聖核(アパティア)はどこにあるの ?
シャーリィ結晶がある場所は、この空き部屋を出てさらに奥です。
ジェイもう少ししたら、この部屋を出ます。警備兵が工場内の見回りを終えればしばらくは無人になるはずです。
セネルそうは言っても、人数も多いし気を付けないとな。クロエ、みんなの後ろを固めてもらえるか ?
クロエああ。任せてくれ !
フレン僕も一緒にしんがりを務めるよ。
クロエよろしく頼む。今回は、シーフォもローウェルと一緒なんだな。
フレンああ。今までユーリたちのバックアップが多かったけど今回は聖核の話が出たからついてきたんだ。それに、他にも気になることがあるからね。
ミラ=マクスウェル随分と気にするのだな。聖核なるものはそんなに危険なのか ?
フレンそれは……使う人によるんだと思う。
レイヴン…………。

キャラクター2話【16-17 ウェルテス領 領主の館2】
カロルうわあ ! 本当に工場みたいだ。
セネルほら、こいつが例の結晶だ。確認してくれ。
ユーリなるほどね。見た目は完全に聖核だ。
エステルでも……こうして手に取ってみると少し違和感がありますね。
リタそう ? もしかして具現化の時にエンコードで性質を変えられたのかしら。
ジュディス…………。
パティどうしたのじゃ、ジュディ姐。
ジュディス……ちょっとね。
リタこんな大量の聖核なんてありえないわよ !フォミクリーを使って増やしてるのかも。
カロルじゃあこれ、レプリカってこと ?
リタ多分。ただ、違和感の原因がエンコードのせいなのかレプリカだからなのかは調べてみないと……。
ミラ=マクスウェルリタ、さっきから四大も騒いでいるんだがこの結晶からウンディーネの力を感じるんだ。
一同ウンディーネ ! ?
ジュディスそう……。じゃあこの聖核は蒼穹の水玉(キュアノシエル)だったのね。
エステル…………。
エリーゼエステル、どうかしたんですか ?なんだか悲しそうです。
エステルあ……、大丈夫です。心配させてすみません。
アルヴィンあのさ、聖核がおたくらの世界の『エアル』とかいうエネルギーを結晶化したものってのは聞いているぜ。
アルヴィンけどウンディーネがどうとか、こっちはさっぱりだ。説明してくれないか ?
ジュディスええ。聖核は、エアルを蓄えることができる強い生物が死を迎えたときに残すものよ。彼らの魂といってもいいわ。
ジュディスそれにある特殊な術式を施すことで聖核は精霊へと生まれ変わるの。
レイヴンちなみにその特殊な術式を作り上げちゃったのがそこの天才魔導少女なんだけどね。
エステルええ。リタは本当にすごいんですよ !
リタあ、あれはエステルがいたからどうにかなったんだってば。すごいのはあんたよ。
ユーリ話が脱線してんぞ。つまりオレらの世界じゃこいつはウンディーネになるはずの聖核なんだ。
レイア死んで残して、そこから生まれ変わるのか……。聖核って本当に『魂』なんだね。
ジュードウンディーネってことは、シャーリィとも繋がりが深いはずだけど。ミラは何かわかった ?
ミラマクスウェル
エステルウンディーネ……。ベリ……いいえ、覚えていませんよね。
ウンディーネ覚えていますよ。私にウンディーネの名を与えし者、エステル。
エステルウンディーネ !
カロルしゃべり方とか違うけど、本当にボクたちのウンディーネなんだね。
ミラマクスウェル
リタその話は後回し。ねえウンディーネ、この聖核とシャーリィが感じるっていう滄我になんの関係があるの ?
シャーリィわたし、あなたとの親和性が高いといわれました。それが関係しているんですか ?
ウンディーネそうです。そして聖核に感じるという違和感もエンコードによるものだという推測は間違っていません。
リタやっぱりね。
ウンディーネシャーリィが蒼穹の水玉から滄我を感じるのはエンコードによってこの世界の私の主であった海神に、滄我の力が――
ラピードグルルルルゥ……ワン !
リタ犬、うっさい ! ウンディーネ、話を続けて。
ウンディーネいいえ、この話は後でしましょう。敵が来ます。
一同! !
セネルさすがに気づかれたか。
フレン今から隠れるには無理な人数だな。
ユーリなら倒すだけさ。やるぞ !
ラピードワォン !

キャラクター3話【16-18 アジト】
カイルどうしよう。領主と従騎士の話スタンさんたちにも教えておいたほうがいいかな。
ロニう~ん、どうかねぇ。イレーヌはスタンさんたちの知り合い……なんだよな ?
ジューダス……ああ。
ハロルドやめとけば ? いま知らせたって何が変わるわけでもないでしょ。あっちの都合も考えなさいって。
ジューダスそうだな。今は死鏡精の問題に専念させておけ。スタンは単純な奴だ。他に脳みそを使わせない方がいい。
リアラもしかして、スタンさんたちのことを気遣ってるの ?
ジューダス不要な連絡で、任務を失敗されたくないだけだ。
ナナリーまったく素直じゃないねぇ。
ハロルドそれよりも、私ウェルテス領が気になるのよね。ちょっと連絡とってみよ~っと。
ロニさっき相手の都合を考えろって言ったクセに……。
ユーリ――これで終わりかよ ? あっけなかったな。
アルヴィンなんだ、もの足りないってか ?ほんとお仕事大好きだねぇ。
クロエ軽口を叩いている場合じゃないぞ。この兵たちが戻らなければ、すぐに増援が来る。ここは撤退した方がいいかもしれない。
リタもう ! ? まだほとんど調べてないってのに。
カロルあっ、待って、通信がきてる !
ハロルドカロル調査室、聞こえる ? そっちはどんな感じ ?
カロルハロルド ! 今ゆっくり話してる暇ないんだ。ボクたち警備に見つかっちゃって、撤退するかも――
ハロルドあら、それはナイスタイミング。そっちにタルロウいない ?
カロルタルロウって、あのタルロウ ?
ハロルドほら、早く探して。時間ないんでしょ。
カロルみんな、そのへんにタルロウいない ?
エリーゼカロル、あれ ! 工場の奥のすみっこで寂しそうに立ってるの、そうですよね ?
カロルうわっ、本当にいた !
ハロルドそいつに私の映ってる魔鏡を見せて。
カロルこ、攻撃したりしないよね ?えーっと、はい、どーぞー……。
タルロウ…………――ハロルド様、確認。タルロウ密偵モード、開始ズラ !
ノーマうわ、なにこれ !
ハロルド帝国切り崩しネットワークの一つってとこかしら。あっち側にいる頃、いろいろ仕込んでたのよ。
グリューネおしゃべりできるのね。かわいいわぁ~。
クロエかわいい……のか ?
レイアこれ、ディストさんのだよね ?
ハロルドディストのタルロウを元に私が改造したの。あいつとは関係ないわよ。
ハロルドそこでいろんな情報拾ってるはずだからそいつに聞いてみて。じゃあね~。
リタハロルド !そういうのは先に教えときなさいって――あ、切った !
ユーリおい、ぐずぐずしてらんねえぞ。そいつに聞くだけ聞いて脱出だ。
セネルそうだな。じゃあ、この工場はなんだ ?
タルロウここは、精霊輪具に取り付ける魔核を作るための工場ズラ。
リタ精霊輪具ですって ! ? もっと詳しく !
タルロウ精霊ウンディーネの力を効率的に兵士に配るために精霊輪具を作っているズラ。そのための魔核生産工場ズラ。
ジュード……帝国の精霊輪具って精霊の力を吸い取って作ってたんだよね。
レイアさっきこの聖核はウンディーネの魂って言ってたけど……。じゃあここはウンディーネの命を使う工場ってこと ! ?
リタそういうことになるわね。だけど、あたしたちが使う魔導器(ブラスティア)も同じように作られてるのよ。
シャーリィえっ ! ?
リタ聖核を元に魔核を作り、それを魔導器に取り付け様々なエネルギーとして使われる。あたしが魔術を使えるのも魔導器のおかげ。
エステルでも、それは知らなかったから……。
パティ知ろうが知るまいが仕組みは同じじゃ。こればかりは否定できん。しかし少なくとも、うちらの世界では犠牲を前提に聖核を作ったりはしてなかったはずじゃ。
パティだが、ここにある聖核は違う。生命力を使うためだけに増やされておる。
ユーリああ。しかも危険だとわかっていて精霊輪具を兵士に配るってのも気に入らねえな。
リタこれがレプリカならオリジナルがあるはずだけど。ねえあんた、オリジナルの蒼穹の水玉がどこにあるか知らない ?
タルロウオリジナルの所在は不明ズラ。ここにはレプリカ情報しかないズラ。
ジェイとなると、ここをどうにかしても似たような工場を作ることはできるでしょうね。
ミラ=マクスウェルだがそれでも、奴らの計画の足止めにはなるんじゃないか ?
ジュディスそうね。ぶっ壊しちゃいましょう。……見ているだけで気分が悪いわ。

キャラクター4話【16-19 精霊の封印地】
マークそれじゃ行ってくる。後のことは頼んだぜ、ローエン。
ローエンかしこまりました。皆さん、どうか無理だけはなさらないように。特にフィリップさんは。
フィリップ心配をかけてすまない。ローエンさん。ガロウズ、ケリュケイオンをよろしく。
ガロウズお任せを。――そうだ、ヴィクトル。
ヴィクトルなんだ。
ガロウズあんたがたまに作る美味いメシケリュケイオンの連中が楽しみにしてんだ。もちろん俺もな。
ガロウズ帰ってきたらまた頼むぜ。無事で行って来いよ。
ヴィクトルああ、わかった。
カーリャ美味いメシですか ! ?
コーキスそういや、エル様が「パパのスープが一番」って言ってたことがあったなぁ。ルドガー様も同じくらい美味しいらしいけど。
カーリャいいですねぇ……。ヴィクトルさま、皆さんにごちそうする時はカーリャたちにもお相伴させてくれませんか ?
ヴィクトルかまわない。メニューを考えておこう。
二人やったー !
イクスあの、フィル『さん』
二人…………。
イクスこの精霊の封印地で、何をするつもりなんですか ?
フィリップ僕は幼い頃、ここでダーナと出会っていたのかもしれないんだ。
イクスダーナと ?
フィリップうん。前にジュニアも、この場所へ行けと言っていた。あれは「ダーナに会え」という意味だったんじゃないかと思ってね。
ミリーナ幼いって、いつの話 ?あの頃のフィルが、精霊の封印地へ行ったなんて話聞いたことがないわ。
フィリップ精霊の封印地と水鏡の森は繋がっていたんだよ。だからこそあの森では、不思議な現象が起こっていたんだ。
ミリーナじゃあ、オーデンセのおとぎ話に出てきた虹の橋っていうのも……。
フィリップその一種だと思う。僕は昔、あの森から立ち上る美しい光をみたんだ。
フィリップそれを君に……ミリーナに見せたくてあの時、水鏡の森に誘ったんだよ。
ミリーナあのピクニック、そうだったのね……。
フィリップだいぶ時間がかかってしまったけどようやくここに来る決心がついた。君たちには遠回りさせてしまって申し訳ない。
イクスでも、今のダーナの心は魔の空域にあるんですよね ?どうやって会うつもりですか ?
フィリップその点は心配いらないよ。ただ……、しばらくは連絡が取れなくなると思う。
フィリップメルクリアやビフレストのことは君たちに任せるよ。
イクス……大丈夫なんですか ?魔の空域は、ケリュケイオンで入った時でさえ危険な場所だったと聞いてますけど。
フィリップ世界を救うために、危険のない作業なんてないよ。
フィリップそれに、嘘にまみれた世界を生み出した僕だからこそ取らなければならない責任がある。……命をかけてでもね。
コーキスそれって、思いっきり危険ってことじゃ――
イクスだったら、必ず責任を取ってください。そのためにも、あなたは生きなくちゃいけない。
フィリップイクス…… ?
イクス俺はフィルさんと一緒に、生きて世界を守りたい。
フィリップ! !
イクス確かにこの世界は嘘だらけかもしれないけどでもそこに真実がない訳じゃない。
イクス嘘も真実も現も幻も、俺は全てを守りたい…… !その為には、あなたが必要なんです。
フィリップ…………。
イクス俺はフィルさんを信じますよ。無事に戻るって。
ミリーナそうね。ここにいるみんなも、今は離れている仲間もきっとみんなフィルを信じてる。
ミリーナだから……、行ってらっしゃい、フィル。気を付けて。
フィリップ……ああ。行ってくるよ、みんな。
マーク……今度は泣いてねえな。上出来だ。
フィリップもう涙は流すだけ流したからね。
マークそれで、魔の空域にはどうやって入るつもりだ。
フィリップ以前、ジュニアの心を読んだときに魔の空域はビフレストの伝承に伝わる【この世の果て】だと知った。
フィリップそしてこの地も同じく、世界の果て。魔の空域と精霊の封印地は、それぞれの世界の果てなんだ。
フィリップそして世界の果てと果ては繋がっている。
マークそれは仮説じゃねえのか ?
フィリップいや、ヴィクトルが調べてくれたオリジンのアニマからも明らかだよ。オリジンは原初の精霊だ。その精霊の痕跡を、それぞれの果てから感じる。
ヴィクトル魔の空域は、この世界における『カナンの地』……のようなもの、か。
マークつまりなんだ ? ここから魔の空域にアクセスできるってことか。
フィリップ……正確に言うとアクセスしたいのはダーナの心核なんだ。
フィリップダーナの心核は魔の空域にある。今は心の精霊があの場を守護しているから恐らく魔の空域には入れないだろう。
マーク――まさかここから直接ダーナの心核に呼びかけるってのか ?
フィリップああ。ここが一番魔の空域に近い場所だからね。それじゃあ始めようか。

キャラクター5話【16-20 テセアラ領】
テセアラ領 大樹カーラーン
スタン……やけに静かだな。
ロイドここに着くまでは死鏡精が襲ってきてたのになんでだろう。
マルタジョニーさんの歌を警戒してるんじゃない ?すごかったもんね。
エミルうん。録音で流れているのよりも生の方が威力も増すような気がするよ。
ジョニーサンキュ-、オーディエンス !まだまだいけるぜ !
リフィルジョニー、今は死鏡精もいないし喉を休ませておいて。
ジョニーそうかい ? まだ歌い足りないんだがなぁ。
フィリアふふっ、ジョニーさん、すっかり元通りですね。安心しました。
プレセアでも、どうして死鏡精は大人しくなったんでしょう。大樹カーラーンには変化がないように思えますが。
しいな油断させといて不意打ちって作戦かもしれないよ。
ウッドロウそうだな。用心はしておこう。君たちの見立てはどうだい ?
ラタトスク……大人しいのは見た目だけだ。大樹の内部エネルギーは以前の比じゃねえ。恐ろしいほど増してやがる。
リフィル死鏡精がキラル分子を集めているせいではなくて ?
ラタトスクいや、奴らが集めてどうにかなる量だとは思えねえ。何かエネルギーの塊みたいなものでも喰ってりゃ別だがな。
ウッドロウエネルギーの塊、か。我々の世界ならレンズが相当するが……。
ルーティちょっと待って ! ええと、これこれ !
スタンどうしたんだ ?ってこれ……レンズじゃないか !
ルーティ死鏡精を倒したら落としたのよ。ほら、さっきの戦いでコレットが転んだでしょ ?
コレットうん、ルーティがかばってくれたんだよね。そっか。あのとき倒した死鏡精が持ってたんだ。ピカピカしてるから、つい持ってきちゃったのかな ?
ジーニアス光物を集めるって、カラスじゃないんだから……。
フィリアでも、通常レンズが発見されるのは私たちが具現化されたファンダリア領が主です。このテセアラ領にあるのは不自然じゃありませんか ?
ルーティあたしもそう思ったんだけどだからって、そのまま放っておけないでしょ ?
リオン強欲レンズハンターだからな。
ルーティちょっとあんた !
リフィルそこまで。ともかく、ルーティの言うとおりなら死鏡精たちは意図的にレンズを探し出しカーラーンへ運んでいることになるわ。
ジーニアスじゃあ、大樹のエネルギーが増えたのも死鏡精が運んだレンズのせい ?
ラタトスクその可能性が高いだろう。それに、死鏡精どもの無限増殖にも影響しているかもしれない。
エミル色々とわかってきたね。ルーティさんとコレットのおかげだよ。
しいな本当、コレットのドジは祝福されてるよ。
スタンじゃあ、ルーティの強欲も祝福されているかもしれないな。
ルーティなによそれ ? バカにしてんの ?
ロイド違うよ。スタンのは誉め言葉だろ ?ルーティの強欲は、みんなを幸せにするって、な ?
スタンそういうこと !
ミトスまったく……、そういう能天気な物の考え方本当にうらやましいよ。
ミトス――ラタトスク、カーラーンに巣くってる死鏡精はどうにかできそうなの ?
ラタトスクわからねえ。まずは奴らの巣にアクセスしないと。だがそれも難しい。
ラタトスク腹は立つが、今は俺だけの樹じゃないからな。
テネブラエ加えて、以前ラザリスが具現化された際にレイヤード処理されてしまいましたからね。
テネブラエ今や、大樹の主であるラタトスク様でも以前のように内部へ接触するのは難しいでしょう。
マルタそんな、何とかならないの ?
テネブラエそうですねぇ。方法がないわけでも――
? ? ?いた ! みんなー !
一同
カノンノ・Eよかった、追い付いた !
マルタイアハート ? パスカにグラスバレーも。なんでここに ?
カノンノ・E突然押しかけてごめんなさい。私たち、この任務に配属されなかったけどやっぱり黙ってみていられなくて……。
P・カノンノカーラーンの内側では、オリジナル・カノンノとラザリスが眠っているでしょう ?でも、死鏡精がそれを妨げてる。
P・カノンノそれだけは絶対に許せないの。
カノンノ・Gうん。三人で話してたらいてもたってもいられなくなっちゃった。
カノンノ・Gアジトのみんなには、ちゃんと話を通してきたからお願い、一緒に戦わせて。
テネブラエもちろん大歓迎ですとも。いやあ、ナイスタイミング !運がいいですねぇ、我が主は !
エミルどういう意味 ?
テネブラエ大樹の精霊であるラタトスク様と根源の世界樹に深く関わる彼女たちが協力すればあなた方を大樹内部へ送りこめるかもしれません。
エミル本当 ! ?
テネブラエええ。うまくいけば、直接、死鏡精の巣に乗り込むことになります。危険ですがてっとり早いに越したことはないでしょう?
ラタトスクだったらすぐに始めるぞ。
一同おう !
ミトスちょっと待ってよ。全員で内部に入るつもり ?何かあった時に対処できないと思うけど。
リフィルそうね。アクセス役が倒れたら大樹内部から戻れなくなる可能性も高いわ。
ウッドロウここは、内部潜入班と、こちらに残る護衛役の二手に分かれた方が賢明だろう。
ミトスボクはこちら側に残るよ。内部には入らない方がいい。
ラタトスク…………。
ジョニーだとすると、当然、俺は潜入班だよな。奴らに最高のレクイエムをぶつけてやらないと。
ミトスそうだね。ジョニーを中心にスタンたちで潜入したらどう ?連携も取りやすいでしょ。
スタン了解だ。みんなもそれでいいかな。
ロイドああ。こっちは任せてくれ。何があっても絶対に守ってみせる。
マルタうん。エミルもラタトスクも安心して集中していいからね。
ラタトスクああ、任せたぜ。
エミルよろしく、みんな。
ラタトスクお前たちも準備はいいか ?
三人はい ! それじゃ……行くよ !

キャラクター6話【16-21 大樹カーラーン1】
スタンここがカーラーンの中か。なんかスピルメイズと似てないか ?
リオンこの場所は、言わば大樹カーラーンの精神世界だ。似るのも道理だろう。
ジョニー奴らの巣のど真ん中ってわけでもなさそうだな。入ったらすぐに、ジョニー・オン・ステージ開幕かと思ったぜ。
フィリアそれでは、ここからまた死鏡精の棲み処を探さないといけませんね。
ルーティなによ。こっちはすっかり心の準備を済ませておいたのに。
ソーディアン・アトワイトずいぶんと気合が入っているのね。
ルーティそりゃ、あいつらがレンズを持ってるってわかったしね。少しくらい稼がせてもらわなきゃやってらんないわよ。
スタンあのさ、ここって樹の内部だよな。運び込まれたレンズってもうエネルギーになってるんじゃないか ?
ルーティあ…… !
リオンふん、スタンにしては冴えている。
スタンなんだよ、リオンが俺を褒めるなんて珍しいな !
ソーディアン・シャルティエ今の褒めてましたかね…… ?
ソーディアン・ディムロス言うな。すでに少々ルーティが落ち込んでいる。これ以上、士気が下がってはかなわん。
ソーディアン・クレメンテやれやれ、少年少女は繊細じゃのう。昔のわしのようじゃ。
ソーディアン・イクティノスクレメンテ老、冗談はほどほどに。
ソーディアン・イクティノスウッドロウ、今は急いだ方がいい。いつ死鏡精が押し寄せるかわからない。
ウッドロウそうだな。見たところ、この空間は奥へ続いているようだ。みんな、このまま進もう。
ルーティまったく、どれだけ進めばいいのよ。
フィリア待ってください。あそこで光ってるのは、もしかして…… !
スタンあれは……神の眼 ! ?
ウッドロウそれにしては違和感があるな。
スタン周りに黒いものも見えますね。
リオン死鏡精かもしれない。気づかれないように近づくぞ。
スタン見ろよ、あの神の眼。つぎはぎだらけだ。
ルーティそれどころじゃないでしょ ! 何よあれ…… !神の眼から、死鏡精がどんどん生まれているわ。
ウッドロウあれを破壊しなければ死鏡精は増殖し続けるということか。
ジョニー今ここで壊さないと、あの勢いじゃ世界中に死鏡精が溢れかえっちまうぜ。
ウッドロウああ。だが……。
フィリア…………。
ソーディアン・クレメンテどうしたんじゃ、フィリア。祈りなど捧げて。
フィリア……彼らは、エネルギー生産のためだけに命を使われた鏡精たちなのですよね。
リオンだから可哀そうだっていうのか ? 今更だな。
ウッドロウフィリア君、彼らは確かに気の毒かもしれないがあのまま放置できるものじゃない。
フィリアわかっています。このままでは世界中が死鏡精に襲われてしまうことも。
フィリアですが、死鏡精の境遇を考えたら、つい……。
ルーティいいんじゃない ? あいつらに同情するくらい。お金もかかんないし。
ルーティそれで手心加えるつもりはないんでしょ ?
フィリアええ、もちろんですわ。そのための祈りです。
ソーディアン・クレメンテ相手の立場で物事を考えられるのはフィリアの良いところじゃな。
スタンああ。俺もフィリアの優しいところ、好きだぜ !
フィリア……ありがとうございます !
ジョニーその笑顔で新曲が作れそうだぜ。ところでウッドロウ、さっき何か言いかけたな。
ウッドロウああ。壊す手段についてだ。元の世界では、ソーディアンを以てしても神の眼を壊すことはできなかった。
スタンそうでしたね。どうしたらいいんだろう……。
ソーディアン・ディムロス問題ない。あれは本物の神の眼ではないからな。
ソーディアン・クレメンテそのとおり。有り物のレンズで形だけ似せたまがい物に過ぎんからのう。
ソーディアン・アトワイトあれなら、私たちの力でも十分に壊すことができるはずよ。
スタンわかった。みんな、剣を掲げて――
? ? ?ソウハサセナイ……。
スタン死鏡精か ! ?
マークワレラヲジャマスルモノニ、シヲ !
スタンマーク…… ? なんでここに !
マークツドエ ! ワガドウホウヨ !
スタンどうしたんだよ、マーク !
死鏡精シネ ! シネ ! シネ !
ジョニー俺の~歌を~聞け~ ! !
死鏡精グアアッ !
ジョニーフッ、ざっとこんなもんさ。
スタン助かりました ! マークは――
マーク――シネ。
ジョニー歌が効いてないのか ! ? くっ、俺の~歌~ !
スタンうわああああっ !
ルーティスタン !ジョニー、うるさくていいからもっと歌ってよ !
ジョニー駄目だ ! マークには俺の歌が通じない !
スタンマーク ! なんでだよ !
リオンお前の頭で考えても無駄だ !死にたくなければ戦え !
ソーディアン・イクティノス……あの様子、操られてるのかもしれないな。
ウッドロウそのようだ。――全員でマーク君を止めるぞ !

キャラクター7話【16-22 大樹カーラーン2】
マーク……ハナセ……ジャマヲスルナ…… !
ウッドロウこれ以上、手荒な真似はしたくない。大人しくしてくれ。
スタンおい、マーク ! しっかりしろよ !
マークマーク……、オレ……俺は……マーク……。あんたたちは……、そうか……ミリーナの……。
ソーディアン・ディムロス正気に戻ったようだ。
スタンよかった ! 何があったんだ、マーク。イクスたちと一緒じゃなかったのか ?
マーク違う……。俺は、もう一人のフィル……ジュニアの鏡精だ。
一同えっ ! !
ウッドロウ驚いたな……。同一人物の鏡精とはここまでそっくりになるものなのか。
ルーティカーリャとネヴァンもそうだけどあの二人は大きさからして違うから比べようがないわね。
ジョニーなるほど。死鏡精じゃないなら俺の歌は効かないわけだ。
マークそれでも死鏡精の影響を弱めることはできたよ。助かったぜ。
フィリアとにかく傷を癒しましょう。命に別状はありませんから、安心してくださいね。
マークいや、治さなくていい。このまま俺を殺してくれ。
一同なっ ! ?
スタンなに言ってるんだよ ! できるわけないだろう !
ルーティそうよ。あんたがどうしてこうなったのか訳も分からないのに !
マークだな。すまねえ……。俺は死鏡精に取り込まれて自我を失いここに連れてこられたんだ。
マーク今はどうにか話せちゃいるがじきにまた、死鏡精に取り込まれて利用される。そうなったら俺の存在は厄介だ。
フィリアでも、死ななくても何か方法があるはずです。
フィリアもう一人のマークさんがフィリップさんを慕うようにあなただってジュニアさんの元へ戻りたいでしょう ?
マーク……なるほど。あっちの俺はずいぶんと好かれてるんだな……。ありがとよ。
マークけどいいんだ。俺はここで死んでも。あいつさえ、ジュニアさえ生きていればもう一度、俺を作りだせる。
マーク鏡精ってのは、そういう生き物なんだ。
一同…………。
リオン……聞きたいことがある。少し前から、僕たちへの攻撃が減っている。ここで作られている鏡精は何をするつもりだ。
マーク奴らの大半はビフレストへ向かっている。ここで作られた死鏡精は……鏡精モリアンの尖兵になって……いる……。
マークモリアンを救ってやってくれ……。
スタン鏡精モリアンって、なんなんだ ?
マークメルクリア……が……自分の鏡精に心を……乗っ取られ………られ………オレ……モ……もう……… !
フィリアマークさん ! 気をしっかり持ってください !
マーク駄目だ……もう時間が……お前たち、早く……コロス……。
マークコロシ……俺を殺してくれ ! 今すぐっ ! !
スタンけど !
リオン――スタン、どけ。
マークぐっ、ごふっ…………。
スタンリオン…… !
マークすま……ねえ。嫌なこと、させ……。
リオン情報の礼だ。気にするな。
マークフィル……。いま……もど…………。
リオン…………。
スタンマークが消えた…… ?
リオン驚くことはないだろう。カーリャのことを思い出せ。
リオン姿が消えても、すぐに復活していた。それと同じだと思えばいい。
リオン幼体ではないから、人を殺したような気になるだけだ。……大したことじゃない。
ソーディアン・シャルティエ坊ちゃん……。
ウッドロウすまない、リオン君。君にばかり負担を強いた。
リオン大したことじゃないと言ってるだろう。それより、さっさとこの神の眼モドキを始末するぞ。
スタンああ、やろう。こんなのは、もうたくさんだ。――ディムロス !
ソーディアン・ディムロスああ、準備はできている。
ルーティアトワイトもいい ?
ソーディアン・アトワイトええ。やりましょう、ルーティ。
フィリアクレメンテ、お願いします。
ソーディアン・クレメンテこの程度、朝飯前じゃ。
ウッドロウ頼んだぞ、イクティノス。
ソーディアン・イクティノスああ、任せておけ。
リオンシャル、しくじるなよ。
ソーディアン・シャルティエ坊ちゃんに恥はかかせませんよ !
ジョニー死鏡精が向かってきたら、俺が蹴散らしてやるぜ !
スタンお願いします !
スタン――さあ、こいつをぶっ壊すぞ !

キャラクター8話【16-23 セールンド山】
ガイここがアイギスシステムの調整施設ってやつか。とりあえず無事到着だな。
アニスイオン様、お体はどうです ?無理はしないでくださいね。
イオンありがとう、アニス。僕は大丈夫です。激しい戦闘もありませんでしたからね。
ルーク思ったよりも簡単に着いちまったよな。死鏡精がこう、どわーっと襲ってくるかと思ってたのに。
ティアそうね。姿も見せないなんて……。もしかして、虚無との出入口が閉じているのかしら。
アッシュそうだったら手間が省けるんだがな。だが奇妙といえば奇妙だ。
ナタリアこちらも変ですわ。マルタの話では壁一面の檻に光魔が入っていたとの話でしたが見たところ空っぽ――
光魔ハウルルルルル !
ナタリアキャアッ !
アッシュ檻から離れろ、ナタリア !
ナタリアご、ごめんなさい。油断していましたわ……。
アッシュよかった……怪我はないな。
ジェイドどうやら、何匹か残っているようですね。なるほど…………。
アッシュおい、死霊使い。一体どうなってやがる。
ジェイドそうですねぇ。では……ガイ !
ガイおいおい、勘弁してくれ。俺は説明なんてできないぞ ?
ジェイドいいえ。この光魔を倒してください。
ガイはあ ? なんだよ、藪から棒に。
ジェイドこのままにはしておけないでしょう。あ、アッシュもどうぞ張り切って参加を。ナタリアを驚かせた光魔に、敵討ちができますよ ?
アッシュ人をいいように使いやがって。
ガイなんだかんだ逆らえないのが俺たちの悲しいところだな。やるぞ、アッシュ。
アッシュ仕方がない。――魔王絶炎煌 !
ガイ龍爪旋空破 !
ガイふぅ……。倒したぜ。これで満足かい ?
アニスあれ ? 光魔のいたところ、変な鏡が……。
イオン気を付けてください !光魔の消えた後には虚無への路が開く !
ルークあ、そうか ! あれは光魔の鏡だ !
死鏡精ミ……カガミ……
ティア光魔の鏡から、死鏡精が !
ルークくそっ ! 早く倒すぞ !
ジェイドいいえ、まだです。
死鏡精カガミシ……。
ナタリアあの死鏡精、こちらへ来ませんわ ?
死鏡精カガミシニシヲ !
アニスあっ、飛んでいっちゃいますよ !
ティアあの方角はアジト…… ?このままじゃ見失います、大佐 !
ジェイドそろそろいいでしょう。――フレイムバースト !
死鏡精カガミシ……ア……アァァ……。
ルーク消えた……。はぁ、驚いたぜ。
ジェイドおかげでじっくり観察できました。ご協力ありがとうございます。
ナタリア大佐、悪い癖ですわよ。きちんと説明なさい。
ジェイドこれは失礼。今まで報告にあった事象の確認を取っていました。
ジェイド光魔の死に際し、虚無への路が開く。そこから死鏡精は発生する、というね。
ガイで、そのとおりだったってか ?
ジェイドええ。今の死鏡精もですが、あれらは虚無に取り込まれ漂っていた存在なのでしょう。
ジェイドそれが、虚無への路が一時的に繋がったことで飛び出してきたのだと思われます。
ルークけど、前は光魔を倒しても光魔の鏡が出現したりしなかったよな ?
ジェイド以前とは状況が違いますからね。それに光魔には疑似心核が入れられている。そこに術式を組み込んでいるのではないでしょうか。
ルーク……うん、よくわからねーことがわかった !
ジェイドま、いいでしょう。そしてもう一つ、虚無から現れた死鏡精は我々のアジトを襲うのが目的のようです。アジトを狙う理由はまだわかりませんがね。
イオンそれにしても……帝国の施設から死鏡精が発生していた。……なんだか嫌な予感がしますね。
ルークええと……つまりなんだ ?
アッシュ死鏡精も帝国が『製造』していたんじゃないかってことだ。
ナタリアでは、これからも死鏡精の製造は続きますの ?
ジェイド元となる光魔はほとんど消えています。この場所からの死鏡精の発生は止まったと思っていいでしょう。
イオンでも、なぜ『死鏡精』なのか、それらを虚無から呼び出す必要性は何か、はっきりしませんね。
ジェイドええ、それに死鏡精も死の砂嵐の一部になっていたはずです。死の砂嵐の中の存在がこちらに現れる場合、今までは『光魔』だった。
ジェイドなのに何故ここに来て『死鏡精』という存在として出現したのか。これには意味がある筈です。
ジェイドそれに、帝国には死の砂嵐から任意に望んだ人物の心を呼び出す術があります。
ルークナーザたちみたいな奴らのことだな。
ジェイドええ。それがどんなものかは未だ不明ですが、死鏡精にはその技術が応用されているのではないかと。
ルーク待ってくれ。セネルたちから連絡だ。
セネルルーク、そっちはどうだ ?
ルークああ。死鏡精の発生は抑えられそうだ。セネルの方は ?
セネルちょっと面倒な話になってる。アジトに戻ってから詳しく話すけど――
ジェイドいえいえ、遠慮せずに。今ここで話して、すっきりしてしまいなさい。
アッシュああ。中途半端に言われては気になるだろう。わかったことがあるなら言え。
セネル(尋問されるって、こんな気持ちか……)
セネル――ざっとだけど、今のところはこんな状況だ。他にもわかったら後で連絡する。
ルークおお、ありがとな !
ジェイド――精霊輪具を魔導器として利用……ですか。
ガイあっちは聖核だの魔核だの、こっちは虚無から死鏡精。どこに行ってもヤバイ情報だらけだな。
ジェイド死鏡精も、そういった何らかの技術に転用するために製造されているのかもしれませんね。
ジェイド聖核はいわば死んだ者の魂。死鏡精も何らかの形で変化させれば魔核として利用できるでしょう。
ティアそんな……。鏡精たちはエネルギーとして使われたのに死んだ後もまだ利用されるんですか ?
ジェイド帝国が意図的に増やしているのであればその可能性があるということです。
ジェイドであればもちろんエネルギーに執着している帝国は聖核同様、軍用としての利用を考えるでしょうね。
ティア軍用って……兵器ですよね。死んでも安らかに眠ることさえ許されないなんて。
ルークあの死鏡精たちは利用されるために生まれたってのかよ……。
ジェイド………………。
ジェイド気持ちお察ししますが、冷静に。そもそも帝国は死鏡精をそこまで重要視はしていない筈です。
ジェイド死鏡精は虚無や死の砂嵐を調査した際の副産物にすぎない筈ですよ。帝国の目的はニーベルングの復活ですからね。

キャラクター9話【16-24 魔都ビフレスト1】
イクスここがビフレスト……。
シング人の気配がしないね。
ミリーナええ……。島だけが具現化されたみたいね。帝国兵もいないみたい……。
コハク島を具現化したんだから、メルクリアか帝国のどちらかはここに来てるんじゃないかと思ったけど……外れだったのかな。
コーキスじゃあここには誰もいないのか ?
クンツァイト否。ここには死鏡精のものと思われる反応がある。
リチアええ。それも数え切れない程沢山……。彼らはゼロム――わたくしたちの世界の思念生物とよく似ています。
リチアメルクリアや帝国兵がいなくても死鏡精がこれだけ存在していれば世界に対する脅威となり得ます。
ヒスイ死鏡精とゼロムは同じ存在って訳じゃねえんだろ ?
クンツァイト似て非なるものだ。鏡精のほうがゼロムのあり方に近いと言える。
カーリャ私たちがゼロムだって言うんですか ! ?……って、ゼロムって何ですかあ ?
シングああ、カーリャは知らないんだな。前にレイアたちには話したんだけど……。
クンツァイトゼロムは人間のスピリアを破壊するために作られた思念生物だ。
コハクゼロムはスピリアに寄生しスピリアをエサにしているの。ゼロムに寄生されると病気になっちゃうんだ。
カーリャ・Nゼロム……。心に寄生する生物……。
カーリャひええええ……。カーリャは人の心に取り憑いたりしませんよ ! ?
クンツァイト鏡精がゼロムと同じだと言っているのではない。死鏡精よりは鏡精の方がゼロムに似ていると言っているだけだ。
クンツァイトもちろん鏡精もゼロムとは違う。ただ――
リチアクンツァイト。その先はわたくしが。
リチアこの世界ではまだ本来のゼロムを観測していません。かつてイクスの思念がゼロム化していましたがあれはわたくしたちの世界のゼロムそのものではなかった。
ミリーナどういうこと ?
リチアこれは……あくまでわたくしとクンツァイトの推測なのですが、鏡士はゼロムに限りなく近い思念体を作り出せるのではないでしょうか。
リチア疑似ゼロムと言ってもいいかもしれない。
イクス疑似ゼロム……。
カーリャ・N興味深いお話ですが今はこの島の調査を優先しましょう。
カーリャ・N連絡が取れませんが、クラトス様とゼロス様もこちらに上陸しているとのことですからできれば合流したいところです。
シングうん、そうだね。魔鏡通信機は……使えるみたいだな。だったら、手分けして捜そうか。
イクスそうだな。ケリュケイオンを目印に左回りと右回りに分かれて、島を捜索しよう。
イクス左は俺とミリーナとコーキスとカーリャとネヴァン。右は――
コハクわたしたちが担当するのね。
リチアわかりました。けれど相手は死鏡精です。
リチア心から生まれた存在だからこそ、同じように心から生まれた鏡精や、鏡精を生み出せる鏡士にどんな影響があるかわかりません。気を付けて下さい。
ミリーナそれはソーマ使いのみんなも同じよ。お互い慎重に行きましょう。
コーキス上手くいけば中間地点で合流だな !
ヒスイああ、しくじるなよ !
イクスしばらく歩いてきたけど死鏡精にも出会わないなんておかしいな。
カーリャ・N嵐の前の静けさ……でなければいいのですが。
カーリャあわわわ、な、何ですこの霧は……。
カーリャ・Nこれは魔鏡術 ! ?
ミリーナいけない !この霧はお互いの位置を見失ってしまうわ !
イクスみんな、手を伸ばせ ! 互いに手を掴むんだ ! 早く !
イクスこの手は……誰だ ?
ミリーナ私よ !私の手を握っているのはイクスと……ネヴァン ?
カーリャ・Nは、はい、そうです。小さいミリーナ様 !
イクス霧が……晴れてきた……。
イクス………… ? コーキスとカーリャは何処だ ?
ミリーナ二人だけはぐれた…… ?いえ、これは意図的に引き離されたのかしら…… ?
カーリャ・Nそうかもしれません。死鏡精にしてみれば鏡精は人間より取り込みやすいですから。
イクスでもネヴァンは――
カーリャ・N私は切り離された時点でほぼ人間と同じ存在です。
カガミシ……ミツケタ !
ミリーナ死鏡精 ! ?
イクスくっ、囲まれたか ! ?
カガミシニシヲ !
クラトス助太刀しよう。
ゼロスミリーナちゃ~ん ! ネヴァンちゃ~ん !あとおまけ !愛の戦士ゼロス様が、今助けるからねー !

キャラクター10話【16-25 魔都ビフレスト2】
コーキスく……何だよこの霧は…… ! ?
カーリャミリーナさまが出す霧と同じようなものだと思いますけど……。
コーキスマスターたちの気配が消えてる……。もしかしてはぐれちまったのか ?
? ? ?鏡士たちに会いたいか ?
コーキス誰だ ! ?
? ? ?鏡士たちに会いたければわらわの下へ来るがよい。
コーキス一箇所だけ霧が晴れて……道みたいになった……。
カーリャコーキス……。これって罠ですよねぇ ?
コーキスけど、ここにずっといても、何も変わらないよな。
カーリャう……それはその通りです。わ、わかりました。コーキスは私の後ろをついてきなさい !あ、危ないですからねっ !
コーキスパイセン、かっけーな !
カーリャか、からかわないで下さい ! 早く行きますよ !
カーリャ行き止まりみたいですねえ……。
カーリャ……ん ? 何か話し声が聞こえませんか ?
? ? ?……とう……います。助か……した。
コーキスマスターの声だ ! ?
カーリャミリーナさま !
カーリャいたたた ! ? ここに見えない壁がありますよ ! ?
モリアン無駄じゃ。わらわの魔鏡術で、奴らと我らの間に壁を作り出しているからのう。
コーキスメルクリア ! ?だ、大丈夫だったのか ! ?
カーリャイクスさまが言ってましたよ。メルクリアがモリアンって死鏡精にのっとられ……――あ ! ?
コーキスまさか、お前……モリアンなのか ?
モリアンわらわの方を気にしていてよいのか ?お前たちが愛して止まない鏡士たちが鏡精の話をしているぞ ?
イクスありがとうございます。助かりました。
ゼロスどう致しまして。それよりちっちゃいカーリャちゃんとコーキスはどうしたんだ ?
ミリーナそれが……魔鏡術の霧に取り囲まれた時にはぐれてしまって……。
ジュニアはぐれたってことは、僕のマークと同じ…… ?
ナーザ死鏡精に取り込まれた可能性があるな。
イクス! ?
カーリャ・Nお前は ! ?イクス様のお体を奪っておいてよくも――
ミリーナネヴァン、待って。
カーリャ・Nですが !
クラトスネヴァン。気持ちは察するが、今はこらえて欲しい。我々は協力体制にある。
イクスどういうことですか ?
イクスそうか……。やっぱりメルクリアは心を失って、モリアンに……。
リヒターこの島では、魔鏡通信の出力が下がるらしくてな。ケリュケイオンにも連絡が取れずにいた。
ジュニアうん。だから島の外の状況が色々と聞けて僕たちも助かったよ。
ジュニアそれに……驚いたな。イクスと最初のイクスが話をしたなんて。その場にメルクリアもいたのか……。
ナーザ最初のイクス・ネーヴェは知っていたのか ?自分が何故命を狙われたのか。
ミリーナ……イクスを狙っていた ?オーデンセの鏡士全員を狙っていたのではないの ?
ナーザカーリャ……いや、ネヴァンか。お前はゲフィオンからどれだけの記憶を託されたのだ。
カーリャ・N……イクス様に関する全てを。ただその詳細は私も知りません。ミリーナ様の記憶を見られるのはミリーナ様だけです。
ナーザフン。ではまだ知らないのだな。このミリーナは。
ナーザイクス・ネーヴェはバロールの魔眼を受け継ぐものだ。バロールの魔眼は、予言された世界を解体する力。世界に『死』を放つ存在だ。
イクス………………。
ナーザ知っていたようだな、最初のイクス・ネーヴェは。オーデンセの鏡士は古き盟約を違えた。
ナーザバロールの魔眼を持つ者はけっして鏡士にしてはならない。
ナーザもしも約束を違えた時はバロールの血筋を根絶やしにすると。
ミリーナイクスが鏡士になったから……オーデンセを襲ったの ! ?
ナーザそれが全ての始まりだ。もとよりオーデンセの鏡士共は鏡士としてのあり方を歪めていた。
ナーザ禁忌であった鏡精を生み出しそれを殺してエネルギーとするなどおぞましいにも程がある。
ナーザ我らが何度やめるように警告しても、セールンド王国は鏡精エネルギーの使用をやめなかった。滅ぼされて当然だ。
イクス当然なんかじゃない !
ナーザ何 ?
イクス確かにセールンドのエネルギーシステムは非道だ。それに最初のイクスが鏡士になったことが問題ならイクスだけを殺せばよかったじゃないか。
イクス滅ぼされて当然なんて言い方はやめてくれ。
ナーザバロールの血筋はオーデンセの鏡士のどこに潜んでいるかわからぬ。
ナーザイクス・ネーヴェ以外にも、バロールの血を受け継いだ者がいた可能性がある。
ナーザ――だが、確かに言葉が過ぎた。我が国も問題解決のため、力に訴えたことは事実だ。
ミリーナ……待って。そんなに恐ろしいものならそもそもどうしてバロールの血筋を残しておいたの ?
ミリーナ最初のイクスの遺体を保存していたのもバロールの魔眼と関係があるの ?
ナーザ遺体を残したのは、バロールの血筋を滅ぼしてもバロールの力を残しておく必要があったからだ。
ナーザ大事なのはバロールの魔眼をもつ鏡精を作らせないことだったからな。
カーリャ・Nそれはコーキスのことですか。
ナーザそうだ。まさか具現化したイクスが鏡精を作ることになるとは……。
ナーザどちらにしてもビフレストが滅んだ後ではどうにもならなかった。いや……ゲフィオンは気付いていた筈だが……。
イクス確かに、最初のイクスは言っていました。自分が鏡精を作ると世界を滅ぼすことになるって。
コーキス! ?
ナーザ鏡精は単なる心の具現化ではない。ティル・ナ・ノーグの前の存在した世界――ニーベルングを滅ぼした兵器だ。
ナーザ故にダーナはティル・ナ・ノーグで鏡精を作ることを禁じた。
ナーザかつてバロールの魔眼をもつ鏡精はフィンブルヴェトルを引き起こしニーベルングを破壊したという。
ナーザコーキスはその再来だ。生まれてきてはならなかった。
コーキス……俺たちは……兵器…… ?
カーリャ嘘です……そんなの……。
モリアン嘘ではない。鏡精は死なぬ。鏡士と繋がっている限りは何度でも甦る。何故じゃ ?
コーキス……その方が……兵器として、便利だから ?
モリアンそうじゃ ! 気づいたか、鏡精。そなたらは鏡の中から生まれ出でた破滅の象徴殺戮兵器じゃ !
コーキス……俺の魔眼が……バロールの魔眼 ?
モリアンエネルギーとして利用されるために殺された死鏡精と兵器のために何度も蘇りを強要される鏡精とどちらが悲惨なのかのう ?
コーキスマスターは……俺を作っちゃいけないって知ってた…… ?
コーキスマスターは鏡精を……謀れる……。だからマスターは……。何も言わずにいて……。
コーキスマスター……俺……生まれちゃいけなかった…… ?
カーリャコーキス ! ?
モリアンやはり……。おぬしは鏡士とのリンクを一部切っているな。鏡士との繋がりが弱まっておるわ。その体、もらい受けるぞ !
ジュニア――待って ! ? 何かが来る ! ?
イクスコーキス ! ? どこに行ってたんだ ! ?
コーキス……カガミシニ……シヲ……。
カーリャ・Nいけません、イクス様 ! コーキスの様子がおかしい !
カーリャコーキスはモリアンに……死鏡精に操られているんです !
コーキスカガミシニシヲ !
イクスコーキス ! ?
コーキスカガミシニシヲ ! !

キャラクター11話【16-26 魔都ビフレスト3】
コーキス(マスター ?どうして俺に斬りかかってくるんだ ! ?)
コーキス(俺が……生まれちゃいけない鏡精だったからか…… ?)
モリアンくくく……。鏡士に裏切られた気分はどうじゃ ?お前も他の死鏡精たちと同じなのじゃ。鏡士に殺される。
コーキス(マスターは……ますたーは……そんな……)
モリアンよいのじゃ。それでも鏡士が恋しかろう。わらわにはわかる。
モリアン力を貸せ、コーキス。その魔眼の力で、全てを焼き払いわらわのように主と一つになればよい !
コーキス――カガミシニ……シヲ…… !
イクスコーキス ! ?どうして俺たちが戦わなきゃならないんだ ! ?
カーリャ・Nコーキス ! しっかりしなさい !あなたは操られている !
ナーザイクス。このままでは死鏡精共が魔眼を手に入れる。その前に、コーキスを消せ。
イクス! ?
コハクイクスたち、遅いね。
シング連絡を取ってみよう。
シング……あれ ? 魔鏡通信機が反応しない。
ヒスイはあ ? 何言ってんだ、貸してみろ !
ヒスイ……本当だ。どういうことだ ?
クンツァイトリチアさま、空を !
リチアあれは死鏡精の群れ……。
シング大樹から飛んできてる奴かな。この島に集まって何をするつもりなんだろう。
シング魔鏡通信できればミトスたちの状況も聞けるんだけど……。
リチアもしかしたら……死鏡精が大量に集まっているせいで魔鏡通信機のスピリアを繋ぐ機能がマヒしているのかもしれません。
コハククンツァイト、何とかならない ?
クンツァイト出力を上げて繋がるかどうか、試してみよう。
クンツァイト――上手くいったようだ。音声のみだが、連絡を取れるだろう。
シングよし、まずイクスだ。
? ? ?……待っていて下され、メルクリアさま。あなたを傷つけたこの世界にわらわが復讐してみせます。
ヒスイ何だ……この声は ?
シングメルクリアの声にそっくりだけど……本人なら自分のことメルクリア様なんて言わないよね。
コハク確かイクスの話では、メルクリアは死鏡精のモリアンに乗っとられたって言ってたよね。
リチア! ! これはもしや……操られてるメルクリアのスピリアに繋がっているのでは ?
クンツァイト出力を強めたせいで、魔鏡通信機ではなく付近にいる人物のスピリアに直接繋がったというのですか。
? ? ?クク……マークは失ったが、コーキスは手中に落ちた。我ら死鏡精の力とバロールの魔眼とでメルクリアさまを傷つける世界に報復する !
ヒスイ――おい、こいつ、何言ってんだ ! ?マークを失った ? コーキスを手に入れた ?イクスたちに何が起きてるってんだよ ! ?
コハク早くイクスたちと合流した方がいいんじゃない ?
リチアええ。確か順調に来ていればイクスたちはあちらの道から――
シング……ねえ、鏡精や死鏡精はゼロムに似た存在なんだよね。
シングそれがメルクリアに乗り移ったってことはメルクリアのスピリアにゼロムが取り憑いてるってこと ?
シングもしそうならメルクリアにスピルリンクしてモリアンを倒せたらイクスたちを助けられるんじゃないかな。
ヒスイスピルリンクするったって、メルクリアの居場所がわかんねぇだろうが !
リチア……確かに目の前にメルクリアがいない以上、メルクリアにスピルリンクはできません。
リチアでも、今この魔鏡通信機はモリアンのスピリアに繋がっています。モリアンに直接スピルリンクしましょう。
リチアモリアンはメルクリアのスピリアの一部ですからモリアンにスピルリンクすれば、わたくしたちもメルクリアのスピリアに入れるはずです。
四人………… ! !
イクスコーキスを消す…… ?
コーキス………………。
カーリャそ、そうです !鏡精は消えてもマスターがいれば何度でも――
イクス……嫌だ ! そうだとしても俺は自分の手でコーキスを消したりしない !
ミリーナイクス……。
イクスわかってるんだ。ミリーナが何度もカーリャを消したり出したりしてるのは見てたから。
イクスそれでカーリャが苦しまないことも鏡精はそういう生き物だってことも……。
イクスでも俺が嫌なんだ ! コーキスが納得したとしても俺はコーキスを家族みたいに思ってて……。家族を消すとか出すとか、おかしいだろ ?
モリアン何が家族じゃ。『これ』が家族のすることか !
ナーザ――貴様 ! メルクリアを返せ !
モリアン黙れ。貴様はメルクリアさまを守ることができなかったではないか。そのような奴らにメルクリアさまは渡さぬ。
モリアンメルクリアさまはわらわと一つになり死鏡精たちと新たなビフレストを作るのじゃ。その為に貴様らを始末してやる !
モリアンコーキス ! 魔眼を使うのじゃ !
ナーザイクス ! コーキスを消せ !
コーキスう……うう……。
イクスコーキス !お前の出番はまだ終わってないぞ。帰ってこい !
コーキスで……ばん…… ?
イクス現世に姿を見せろ ! 鏡精コーキス !
コーキスいやっほーぅっ !ようやく俺の出番って訳か !マスター、ありがとな !
イクス俺はお前を消したりしない。俺とコーキスは家族で親友で、運命共同体だろ ?
コーキス……マス……タアアアアッ !
モリアン正気を取り戻した ? フン無駄な足掻きを…… !一度出来た心の隙間、何度でも突いてみせ――
モリアン………… ?
モリアン――侵入者か ! ?
ジュニアあ、メルクリア ! ?
ナーザ――いや、あれは単なる写し身だ。本人は別の場所にいるのだろう。
イクスコーキス ! 大丈夫か ! ?
コーキス…………マスター……。ごめん……。なんか……いつの間にか……。
イクス大丈夫ならいい。それよりお前はこのままケリュケイオンに戻るんだ。
コーキス……それは……俺が足手まといだから ?
イクスそうじゃない。ただ――
ナーザ――甘いな、イクス。
ナーザ鏡精、貴様の言うとおりだ。また死鏡精にのっとられたら迷惑だということぐらい貴様にもわかるだろう。
コーキス……っ !
ジュニア……コーキス。ナーザ将軍の言う通りだよ。君は行かない方がいい。マークのようになってしまうから。
ナーザマークがどうした ?
ジュニア……今、マークが僕の心に戻ってきました。多分……消えたから。
コーキスえ ?
ジュニアああ、マークってのは、僕の鏡精の方のマーク。きっとコーキスみたいに死鏡精に取り込まれて……それで死んだんだろうね。
ジュニアだから具現化が解けて、僕の心に戻ってきたんだ。
ミリーナコーキス。あなたならわかるわね。鏡精は消えても復活できる。ジュニアのマークもジュニアが呼び出せばまたすぐ現れる。
ミリーナでもイクスは、そうだとわかっていて……あなたを消したくないの。
イクスコーキス……。そうだな。俺がはっきり言わなきゃ駄目だな。
イクス俺はコーキスを消したくない。だからケリュケイオンで待っていてくれ。
ゼロスんじゃ、俺さまが引率でもするかね。ジュニアも一緒に来るだろ。マークも鏡精だ。ここでは呼び出さない方がいい。
ゼロスマークが呼べないなら戦いの現場に出る必要もないでしょーよ。
ジュニア……そうですね。
コーキスマスター……。俺を消したくないのは……俺が消えたら……もう具現化できないかも知れないからか ?
イクスえ…… ?もしかしてコーキス、俺たちの話を聞いてたのか ?
コーキス……ケリュケイオンに、戻ってる。
イクス――なあ、コーキス。俺はお前を具現化してよかったって思ってるからな。
コーキス……うん。ありがとう。
カーリャ私もコーキスと一緒に行きます。ミリーナさま、気を付けて下さいね。
ミリーナ……ええ、カーリャ。コーキスをお願いね。
クラトス――では、先を急ごう。まずはシングたちと合流しなければな。

キャラクター12話【16-30 メルクリア】
イクスこの辺りがシングたちとの合流地点の筈なんだけど……。
クンツァイトリチアさまたちは、現在、死鏡精モリアンにスピルリンクしている。
ミリーナクンツァイトさん !
カーリャ・N先程、モリアンが侵入者……と口にしていました。もしやシング様たちのことなのでは。
ナーザそれで写し身を送り込んでくることをやめたのか。
イクスシングたちが心の中でモリアンを無力化してくれればメルクリアを助けられるな。メルクリア――モリアンは今どこにいるんだ ?
クンツァイト魔鏡通信機がモリアンのスピリアと繋がったことを考えるとここから遠くはないと思われる。
リヒター……その先に見える大きな建物は何だ ?死鏡精が群がっているようだが。
クラトスビフレスト風ではあるが……城のようにも見えるな。
カーリャ・N死鏡精が集まっていると言うことはモリアンの拠点という可能性があります。
イクスこの辺りには俺たち以外に人影もないしあそこへ行ってみよう。
イクス見てくれ !奥にメルクリア――モリアンがいる !
ミリーナでも、すごい数の死鏡精……。これじゃあ、前に進めないわ。
イクスこの場にジョニーさんがいてくれたら……。
カーリャ・N魔鏡通信がつなげられればいいのですがそれもできませんしね。
クンツァイト魔鏡通信機の出力を上げることは可能だがそれで正しくジョニーのスピリアを捕捉するのは難しい。
リヒター頼れないものは仕方ない。それにここから見る限りではモリアンの動きが止まっている。シングたちがスピルメイズでモリアンと対峙しているんじゃないか。
クンツァイトその通りだ。
ナーザならば、今のうちにメルクリアの体を確保しいざというときのために拘束する。それが俺たちに出来る最善策だろう。
クラトスシングたちを信じるのだ。死鏡精が集まっているのはモリアンを守るためだろう。彼らがメルクリアの中のモリアンを止めてくれれば、状況は変えられる。
イクスわかりました。みんな、行こう !
シングここはモリアンのスピルメイズ ?それともメルクリアなのかな ?
ヒスイボロボロで今にも崩れそうになってやがる。どうしてこんな状態に……。
リチアスピルーンが……粉々になっています。こんなことって……。
コハクえ…… ? ここに散らばってる欠片がスピルーン ?それじゃあここは――
モリアンここはメルクリアさまの心の中じゃ。貴様ら、どうしてここに来た ! ?
シングモリアン……だよね ?メルクリアのスピリアに一体何が起きたんだ ?
モリアン帝国の愚か者共が、わらわを殺したのじゃ。ビフレストを具現化する為のエネルギーに変換するために。
モリアンその際に、わらわをメルクリアさまから切り離さなかった。そのせいでメルクリアさまの心はわらわと共に破壊された。
コハク酷い…… !
モリアン酷いのは貴様らも同じじゃ。ここはわらわとメルクリアさまだけの世界。この場所から出ていけ !
シング来るぞ ! ?
クラトス――数が多すぎるな。私がここで死鏡精を引きつける。イクスたちは先に行け !
イクスは、はい !
リヒター俺もここに残ろう。ナーザ、メルクリアを頼む。
ナーザ感謝する。死ぬなよ !
ヒスイ――くそっ ! どうなってやがる。奴の攻撃は食らうのに、こっちの攻撃が届かねぇぞ ! ?
リチアわたくしたちをスピルメイズから追い出すために壁を作っているのだと思います。彼女の注意が少しでも『外』に向けば……。
シングどういうこと ?
リチアモリアンはメルクリアのスピリアの具現化。いわばメルクリアのスピルーンの一部です。
リチア彼女が宿っている今こそが、メルクリアのスピルーンを修復する絶好の機会なのです。
コハクでも『外』に注意を向けるって、どうやって ?
シングそうか……クンツァイトだ !
クンツァイト
ミリーナどうしたの ? クンツァイトさん ?
クンツァイト――シングたちからの伝言だ。メルクリアのスピリアを修復するため、モリアンの注意を『外』に向けて欲しいと言っている。
ナーザメルクリアの心を治せるのか ! ?
ミリーナ確かに、コハクたちならソーマがあるから可能なのかも知れないわ。コハクも元の世界で心――スピリアがバラバラになったと聞いたもの。
ミリーナ状況は違っても、コハクたちなら、きっと……。
カーリャ・Nでは、皆さんは急いで下さい。ここは私が引き受けます。ここで死鏡精を引きつければもうメルクリアの体はすぐそこです。
クンツァイト自分もここに残ろう。ネヴァン一人を残した場合生き残る確率は58%。不安の残る数字だ。
カーリャ・Nありがとうございます、クンツァイト様。小さいミリーナ様、イクス様、それに……ナーザ将軍。後はおまかせします。
ミリーナええ、すぐに終わらせて戻ってくるわ。
クンツァイトリチアさまたちのためにも、頼むぞ。
イクスああ、わかってる !
モリアン………………。
ナーザメルクリア !
ミリーナ反応しないわ。
ナーザ……俺たちがメルクリアの体を傷つけることはないと高を括っているのだろう。
イクスナーザ将軍 ! ?まさか妹さんを攻撃するつもりですか ! ?
ナーザ『外』に意識を向けるのだろう ?
イクスそれはそうですけど――
バルバトス隙だらけなんだよ !
バルバトス覚悟はできたか ! ? ワールドデストロイヤー ! !
ナーザな、何 ! ? ローゲ……いや、バルバトス ! ?
イクスどうしてここに ! ?
ミリーナきゃああああああ ! ?
モリアン――甘いわっ ! !
バルバトス黙れ ! 貴様だけは生きたまま手足を折り首をねじ切ってやるわッ ! !
モリアン痴れ者め !死鏡精たちよ、この三下をひねり潰すのじゃ !
バルバトス三下だと ! ? 虫けらが思い上がるなッ ! !
死鏡精モリアンヲ、マモル !
バルバトス邪魔だ、羽虫共 ! どけえぇぇぇぇぇッ ! !
? ? ?イクスさん、今ならバルバトスが死鏡精を引きつけてくれています。モリアンを !
イクス……う……。だ、誰だ…… ?
ナーザ――鏡士には声が聞こえるんだったな。今のはバルドだ。
ミリーナバルド、さん…… ?
モリアン……鏡士共、生きていたか。
イクスモリアン ! メルクリアを返してくれ !俺はるつぼでメルクリアと話をした。話せたってことは、あの子の心はまだ生きてるんだ。
モリアン黙れ ! 貴様たちはメルクリアさまが憎んでいた鏡士ではないか !
モリアンミリーナ ! 貴様はビフレストを滅ぼして自分の欲しいものだけ甦らせた !
モリアンイクス ! 貴様は一度死んだのにこうしてわらわの目の前に立っている !
モリアンナーザ ! 貴様はメルクリアさまの兄でありながらメルクリアさまの気持ちをわかろうとしなかった !皆、わらわとメルクリアさまの敵じゃ !
バルバトスよく言った ! そうよ、貴様は敵だ !敵は殺す ! 完膚なきまでになあッ !
イクスバルバトスさん ! ? 死鏡精を倒してきちゃったのか。くっ、話がややこしくなるな……。
バルバトス何と言った小僧 ! ?
イクスな、何でもありませんっ !こうなったら、バルバトスさんも手伝って下さ……じゃなくて、バルバトスさん、加勢させて下さい !
バルバトスフン ! 俺の肉壁になりたいか !面白い ! 足を引っ張るなよ ! ?
イクスミリーナ、ナーザ将軍 !
ミリーナええ、わかってるわ。
ナーザやむを得まい。俺たちがバルバトスを壁にすればいい。行くぞ !

キャラクター13話【16-30 メルクリア】
バルバトスとどめだ ! !
イクスバルバトスさん ! ?
死鏡精たちヤラセナイ ! !
バルバトスええいっ ! 邪魔をするな ! ?
モリアン……く……死鏡精……我が同志たち……死の楔となって、そやつらを……。
死鏡精たちワレラノテキニ……シヲ ! ! !
バルバトスうおおおおおおおおっ ! ?
死鏡精たちカガミシタチニ……シヲ ! ! !
ミリーナナーザ将軍 ! ?
イクスど、どうして ! ?
ナーザ死体の便利なところはな……物理的な痛みが鈍く感じられることだ……。
ナーザイクス……魔眼……の使い方……お前も知っている筈……。
イクス『コーキス。ゲフィオンから伝言だ。俺にはわからないこともあるから、そのまま伝えるぞ』
イクス『その目はイクスと繋がっている。自分のアニマとイクスのアニマを重ねて合わせて、死を放て。それこそが鏡精に与えられた禁断の魔眼だ』
イクスけど、あれはコーキスの……。
ナーザアニマを重ねろ……ミリーナ……と……。魔眼とまでは行かずとも……きっと……死鏡精を……。
イクスアニマを重ねる……。そうか ! スタック・オーバーレイを――
死鏡精たちカガミシタチ……マダ……イキテイル……。
イクス――ミリーナ ! 力を貸してくれ !
ミリーナえ、ええ。でも、どうすれば……。
イクス俺を信じて。俺にミリーナのアニマを預けてくれ。二人の力をスタックするんだ。
イクスきっとスタック・オーバーレイがナーザ将軍が言ってた魔眼なんだと思う。
ミリーナ二人で力を重ねるのね。わかったわ。
死鏡精たちカガミシ…… !
死鏡精たちシネ――――――ッ ! !
イクス・ミリーナフューチュリティレイズ ! !
死鏡精たちウアアアアアアアアアッ ! ?
コハクモリアンが消えた ! ?
シングリチア !
リチアええ、今のうちです。シング、あなたはこの中では一番メルクリアに近かった筈。
リチアメルクリアのスピリアに呼びかけて下さい。あなたのスピリアの輝きがきっとメルクリアのスピリアを導いてくれるでしょう。
シングわかった !
シング(メルクリア……。応えてくれ。みんな、メルクリアを助けようとしてるんだ。覚えてるよね。メルクリアの側にいた人たちのこと)
シング(カイウス、ルビア、ミトス、リヒター、セシリィそれにナーザだって)
シング(メルクリアは嫌かも知れないけど……イクスもミリーナも力を貸してくれてるんだよ)
ヒスイスピルーンの欠片が輝きだした…… ! ?
イクスシング ! ?
シングイクス ! ミリーナ !メルクリアのスピリアが元に戻ったんだ !
モリアンまだじゃ……。大樹から生まれし死鏡精たち…… !わらわとメルクリアさまに……。
モリアン………………。
モリアン……何故……じゃ……。何故、来ない…… ?
クラトス……無駄だ。先程ミトスたちと連絡がついた。死鏡精を生み出していた装置を破壊した、とな。
モリアンく……どうして……。どうしてわらわとメルクリアさまの望みは叶わぬのじゃ……。自分の欲望のまま死者を蘇らせた者がいるというのに……。
モリアン何故わらわたちだけが、悪じゃと断罪される……失ったものを取り戻して何が悪いのじゃ……。
イクス悪くなんてないよ。
モリアン! ?
イクス誰だって、失ったものを取り戻せるならそうしたい。そうしたいと思う気持ちは悪じゃない。
イクスそれが悪だなんて、誰が決めたんだ。そんなこと誰にも決められないって、俺は思う。
モリアンならば…… ! ?
イクス――でも、その望みを叶えることで誰かや何かを傷つけてしまうのだとしたらそれは悲しいことだと思う。
イクス悲しみを埋めるために失った者を取り戻すことで別の悲しみを生み出すのならその連鎖は断ち切ったほうがいい。
イクスモリアン。君は悪じゃない。メルクリアも悪じゃない。やり方はよくなかったけど、悪じゃないって俺は思う。
モリアン……死にたくない……。
イクスごめん。これまでの鏡士が君たちを救えなくて。
モリアン……そうじゃ……だから……メルクリアさま……どうか……もう二度とわらわたちのような……――
メルクリア……ん……。
シングメルクリア ! ?
メルクリア……シング……か ? 覚えておるぞ……。そなた……わらわの心に土足で入り込みおった……。
シングメルクリア ! お帰り…… ! 本当によかった !
メルクリア……ありが……とう……。
ローエン……浮かない顔ですね、イクスさん。
イクスローエンさん……。いえ、メルクリアを助けることはできましたけど事態は何も変わっていないんだなって……。
ミリーナ死鏡精の増殖を防げただけでも前進よ。
イクスそうだな……。それはその通りなんだけど……。バロールの魔眼のこともまだよくわからないし帝国の動きも気になるし。
ローエンナーザ将軍の傷が癒えたら、話を聞きましょう。
ミリーナ……私もあとでネヴァンと話をしてみるつもりよ。彼女が知っている筈の色々なことを。
ミリーナもっと早く話を聞ければよかったんだけどネヴァンもほとんどアジトにいなかったし戻ってきてからも立て続けに色々なことがあったから。
ローエンそれに、ネヴァンさんは……話をすることをためらっておいでのようですからね。
ミリーナええ……。
コーキス………………。
カーリャコーキス……。どうしてイクスさまたちのところに行かないんですか ?
コーキス…………うん。
コーキス(……今会うと、決心が鈍るから)
ガロウズ――おっと、コーキス。こんなところにいたか。そろそろ着くぞ。
カーリャほえ ? 何の話です ?
ガロウズ何か、買い物があるんで近くの街に寄りたいって――ん ? イクスたちから頼まれたって聞いてたが違うのか ?
コーキス――いや、その通りだよ。マスターには俺から伝えとくから。
ガロウズそうか。じゃあ、頼んだぞ。
カーリャ……………… ?
フレン――ハロルドに状況は伝えたよ。
セネルひとまず工場は破壊したが同じような設備が他にもあると考えた方がいいな。
ジュードそれにさっきのウンディーネの話も気になるよね。
シャーリィ滄我は、この世界の海の神の力にエンコードされている可能性があるということでしたよね。この世界のウンディーネは海の神の眷属だと……。
ミラ=マクスウェルそのようだな。ヨウ・ビクエが目覚めたことで四大たちもこの世界の精霊としての記憶が少しずつ甦ってきているようだ。
ミラ=マクスウェルさらに記憶が戻ってくれば詳細がわかると思うが。
ユーリ海の神って言っても、ダーナが人間だったんだから海の神も人間って可能性はあるよな。ま、ここで考えてても始まらねえか。
ジュードうん。一旦アジトに戻って――
? ? ?諸君――いよいよ……じま……。
リタ何 ? この声 ?
ジェイあの奥の通信装置みたいですね。壊してしまったので雑音混じりですが……。
? ? ?カレイドスコープによって作られた……の……は…………ング転移の生贄となってもらう。ルグの槍の起動に備えよ !
? ? ?ニーベルングに回帰するのだ !これが最後の戦いになる !諸君 ! その命をもって、帝国に尽くすのだ !
ユーリこの声……デミトリアスか !
ジェイド――フォミクリー装置の情報を回収しました。戻りましょう。
ガイおっと。帝国の連中、情報をそのままにしていたのか ?
ジェイドいえ、一応消去は試みたようですね。ですが、基本的に私が開発した音機関の派生ですから情報の復旧方法も把握しています。
アニスさっすが、大佐。抜け目ないですね !
ジェイドいえいえ、アニスほどでは !
ティア……大佐、平気なのかしら。
ナタリアそれを言ったらあなたもですわよ、ティア。オールドラントの領主と従騎士がまさかあの二人だなんて……。
ルークピオニー陛下と……ヴァン師匠、か……。
ティア………………。
ナーザ……最後にもう一度尋ねるぞ。本当にいいのか ?
コーキスああ。俺は……このままじゃ駄目だ。死鏡精なんかに付け入られたのは俺の心が弱かったからだ。
コーキスマスターのこと信じきれなかった。人を信じるって難しいんだって俺、わかってたのに……。
メルクリアコーキス。そなたがわらわたちと来るのであれば教えてくれぬか。鏡精とはどんな生き物なのか。
メルクリアわらわは……モリアンを亡くしてしまった。キラル分子化された鏡精は、そなたやマークのように再具現化することはできぬと言う。
メルクリアわらわは……一度もモリアンときちんと話せなかった。話せぬまま失ってしまったのじゃ……。
ジュニアメルクリア……。
リヒター急げ。――イクスたちに気付かれた。
イクス待ってくれ ! ナーザ将軍、まだ傷が――
イクス――コーキス ?
コーキス………………。
イクスコーキス、どうしてここにいるんだ ?
ナーザ行くぞ、コーキス。
コーキス……ああ。
イクスコーキス ! ?
コーキス来ないでくれ、マスター !俺はナーザたちと一緒に行く。
イクスな、何を言ってるんだ ?
コーキス――行こう。
イクス待てよ、コーキス !
コーキス放してくれ !
イクスそういう訳にいくか ! 話ぐらい――
コーキス放せっ !
イクス! ?
ミリーナイクス ! ? 危ない ! ?
カーリャ・Nイクス様っ !
コーキスネヴァン先輩…… !
カーリャ・Nどういうつもりかわかりませんがマスターに武器を向けるなど言語道断。下がりなさい !
コーキス先輩……。
カーリャ・Nそれとも、一戦交えるつもりですか。ならば私が相手をします。
コーキス………………。
カーリャ・Nコーキス、私と戦うというのなら容赦はしませんよ。
コーキス……その時には、俺も……本気で先輩と戦う。
イクスコーキス ! ?
コーキスマスター。俺は……マスターの側にいちゃ駄目なんだ。俺……マスターの側にいたら、いつか本当にバロールの魔眼を発動させるかも知れない。
イクスそんなこと――
コーキス魔眼はスタック・オーバーレイに似てるんだろ ?
コーキス俺とマスターのアニマを重ねて死を放つってそういうことだったんだって……俺、わかっちゃったから。
イクスそんなことさせない。だから出ていく必要なんか――
コーキスそれに、俺、やることがあるんだ。やらなきゃいけないことなんだ。
コーキス――パイセン、ネヴァン先輩、それにミリーナ様。マスターのこと、頼みます。
カーリャコーキス……。
イクスコーキス ! ? おい、待てよ ! ?それじゃあ、何が何だかさっぱりわからないだろ !なあ、コーキス ! ?
コーキスさよなら、マスター。
イクスコーキス ! ?
イクス行くな、コーキスッ ! !

キャラクター1話【16-1 イ・ラプセル城】
イクス達がセールンド山でグラスティンと戦っている頃イ・ラプセル城では――
アリエッタはぁ、はぁ……。
アリエッタ止まっちゃ駄目……。グラスティン探さなきゃ……。見つけて、絶対……殺す…… !
デゼルロゼ、この先だ。
ロゼいた ! ねえ、ちょっと待って !
アリエッタあ……、グラスティンの部屋にいた人…… ?
ロゼやっと追いついた。捜してたんだよ。
アリエッタなんでアリエッタを追いかけてくるの ?もしかして、アリエッタの敵…… ?
ロゼ(アリエッタ…… ? ってことはルークの世界の、あの『アリエッタ』か。そういや、『イオン様』って言ってたっけ)
ロゼ違うよ。その怪我が心配で追ってきただけ。少し休んで治療したら ?
アリエッタダメ ! 休んでたらグラスティンが逃げちゃう !
ロゼでもさ、さっき変な地震もあったし、なんか様子が変じゃない ? いったんここを出て――
アリエッタ邪魔しないで ! イオン様の仇、討つんだから !
ロゼ待って ! そんなんでうろついてたら余計に警戒されるよ ?
アリエッタこっち来ないで !これ以上邪魔するなら、殺し……ます…… !
ロゼわかった。わかったから……。
デゼル待て、こいつは手負いの獣と同じだ。
デゼル――おい、安心しろ。これ以上は近づかないし邪魔もしない。お前の好きにしな。
アリエッタ本当…… ?
デゼルああ。ただ、今のお前じゃグラスティンを殺すのは難しいぜ。理由を知りたいか ?
アリエッタ! !
アリエッタ………………。知りたい……、です……。
デゼルそうか。なら、こいつの話を聞いてみろ。――ロゼ、後は任せる。
ロゼサンキュー、デゼル。ええと、アリエッタっていうんだよね。
アリエッタはい……。
ロゼあたしはロゼ、こっちはデゼル。あたしたちもアリエッタと同じでグラスティンと戦ってるんだ。
アリエッタアリエッタと同じ…… ?
ロゼそう。だけどグラスティンは、クロノスの精霊の力で怪我してもすぐ治っちゃうんだよ。
ロゼそんな面倒な奴を相手するのに怪我したままじゃ、勝てるものも勝てないでしょ ?
アリエッタ…………。
ロゼそこで提案。あたしたちと一緒に一旦、城の外へ出ない ?安全なところで治療しながら、こっちの情報も――
デゼル―― ! ! おい、誰か来るぞ。
ロゼああ、もう ! まだ途中なのに !アリエッタ、こっち !
アリエッタは、はい……。
帝国兵陛下とグラスティン様がアスガルド城へ帰還されたそうだ。
帝国兵では、こちらも実験体の搬入を急いだ方がいい。遅れるとグラスティン様がお怒りになるからな。
ロゼグラスティンが来る…… ! ?
デゼルちっ、タイミングがいいんだか悪いんだか。
アリエッタグラスティン……グラスティンが帰ってきた !
ロゼしまった……落ち着いて、アリエッタ !
アリエッタイオン様の仇 ! 絶対に逃がさない !みんな、一緒に来て ! !
ロゼみんな ?
デゼル魔物だと ! ? どこから湧いてきた !
アリエッタグラスティン、許さない……、殺してやる !絶対に殺してやるんだから !行こう、みんな !
ロゼ待って、アリエッタ !
デゼルちっ、魔物が邪魔しやがる !おまけにこの騒ぎじゃ――
衛兵いったい何が――うわあっ、魔物が !
衛兵侵入者だ !
デゼルやっぱりな。兵士どもが集まるぞ !
ロゼいったん隠れてやりすごそう。
ロゼ……うわ、どんどん兵士が増えてるよ。これじゃ脱出は難しいかぁ。
デゼルだから言っただろう。これ以上ここにいたら面倒になると。……しかしあの魔物使い、なんて奴だ。
ロゼすごかったね。魔物を手下みたいに……ううん、手下じゃないな。
ロゼ「みんな一緒に行こう」って言ってたしあの子にとっては友達みたいなものなのかも。
デゼルそっちの話じゃない。あいつ、穢れがまるでなかった。
ロゼあっ ! そういえば、あたしも感じなかった。
デゼル性質が変わったとはいえ、ここでも穢れは存在する。あれだけの殺意と憎しみなら、穢れを生んでもおかしくないはずだ。
デゼルなのに欠片も感じない。まるで――……
ロゼ……ん ? なに ?
デゼルいや……何でもない。とにかく、このままじゃ埒が明かないぞ。
ロゼじゃあ強行突破で――
帝国兵お前たち、こんなところで何をしているんだ ! ?
二人! !
デクス早くこっちへ来い。他の奴らに見つかるだろう !
ロゼデクス ! びっくりしたあ。
デクスびっくりしたのはこっちだぜ。魔物が発生したって聞いて来たのに……お前たちの仕業か ?
デゼル違う。魔物使いが呼び出した。
デクス魔物使い ! ? まさかアリスちゃん ! ?すごい美人で、女神のように優しい可憐な女性じゃなかったか ! ?
ロゼアリス ? アリエッタって子だったけど。
デクスそうか……。アリスちゃん、今頃どこに……。
デゼルおい、その話は後だ。脱出ルートを教えろ。
デクスああ、そうだった。裏口なら人目につかずに逃げられるはずだ。オレが案内する。
ロゼ助かったー。よっ、頼りになる男 !
デクスおお、任せておけ ! オレについて来い !
デクスよし、誰もいないな。今のうちに早く行け。
ロゼありがと ! 助かったよ。
デクスそうだ、アジトの連中が連絡を取りたがってたぞ。無事だって知らせてやれよな。
ロゼ了解。デクスも気をつけて !

キャラクター2話【16-2 アスガルド城1】
デミトリアス――留守の間に問題はなかったか ?
帝国兵はい。今のところ報告はあがっていません。無事のご帰還、何よりです。
グラスティン無事だと ? フン、大事な玩具を――小さなフィリップを逃したがな……。くそっ……。
デミトリアス私はメルクリアの方が心配だよ。あのような状態で連れ去られるとは……。
ルキウス何を他人事のように !誰がメルクリアをあんな風にしたと思っているんだ !
グラスティンギャンギャン吠えるな、やかましい。おい、こいつを牢に閉じ込めておけ !こいつは色々と使える。せいぜい丁重になあ ?
帝国兵はっ ! さあ行くぞ。
デミトリアス……さて、今後の対策が必要だな。最初のイクスの遺体は失ってしまった。計画に支障が出るのではないか ?
グラスティンそんなのは、小さなフィリップを失ったことに比べれば些末な問題だ。あの死体はレプリカデータがある。いくらでも量産が可能だ。
グラスティン劣化は避けられないだろうが、質は量でカバーできる。ヒヒヒヒ……。
サレご歓談中失礼するよ。
グラスティンなんだ、サレか。
サレなんだとはご挨拶だねえ。せっかくいい報告を持ってきたのに。
グラスティンさっさと言え。俺は忙しい。
サレはいはい。いつもの『肉』が揃ったよ。さっき、イ・ラプセル城に搬入する手筈を整えたからすぐにでもキミの玩具にできる。
グラスティンヒヒヒ、いいタイミングだ ! ストレス解消と行くか。質は落ちてないだろうな ?
サレもちろん、全員きれいな黒髪さ。ただ、最近ハデに狩りすぎたせいか警戒されてるんだ。それを強引に連れていくのも面白いけどね。
グラスティン苦労させているなあ……。せいぜい大事に遊ばせてもらうよ。
サレああ、存分に楽しんでくれ。僕は次の狩りに行ってくるよ。
グラスティンお前も楽しそうで何よりだ。頑張ってくれよ ?
サレふふ、では失礼。
デミトリアスグラスティン……。少し自重したらどうだ。
グラスティンそれは無理だ。俺を目覚めさせた時にこの『趣味』のこともわかっていただろう。その上で組むと腹を決めたんじゃないのか ?
デミトリアス……そうだったな。
グラスティン俺は一度イ・ラプセル城へ行ってくる。肉の質を確かめたい。話の続きはそれからだ。
デミトリアスわかった。けれど自分の仕事を忘れるな。ほどほどで帰って来い。
グラスティンほどほどに、か。ヒヒヒッ、承知しているさ。
帝国兵失礼します ! グラスティン様、緊急事態です !
グラスティンああ ? せっかくいい気分になりかけてたのになぁ……――何があった。
帝国兵先程、クレーメルケイジの保管室にエルレイン様が入られたのですが捕らえていた鏡精を逃がしたとの報告です !
グラスティン馬鹿な ! マークを逃がしただと ! ?すぐに保管室に行く。エルレインを外へ出すなよ !

キャラクター3話【16-3 アスガルド城2】
グラスティン―― ! !鏡精型クレーメルケイジが……。
エルレインええ。捕らわれていた鏡精を逃がすために私が壊しました。
兵士現在、城内をくまなく捜索していますが未だ鏡精の発見には至っておりません……。
グラスティン当たり前だろう。今頃は小さなフィリップのところだ。もういい、下がれ。
グラスティン――さて、聞かせてもらおうか、エルレイン。
グラスティン何故マークを逃がした。あれは大事な質草だぞ。小さなフィリップを縛る枷をわざわざ外してやるとは……。
エルレインあまねく命の救済が私の使命だ。鏡精もそれに准じて救ったまでのこと。
グラスティン小さなフィリップにはその使命とやらを全うする奇跡の力を研究させていたんだぞ。
グラスティン自分の首を絞めることに気づかないほど愚かな聖女様だったとはなあ。
エルレイン何を言われようと私の答えは変わらぬ。救える者を救っただけだ。
グラスティンふん……貴様も狂人か。
エルレインそれよりも、サレがここに来ているだろう。
グラスティンさあ、どうだったか。
エルレインあの男は私の部下のはずだ。しかし最近は何かと理由をつけて留守が多い。
エルレイン随分といいように使っているようだな。グラスティン。
グラスティンあいつは聖女様と違って有能な働き者なんでねえ。ついつい頼み事をしてしまうんだよ。
エルレイン己の血なまぐさい欲望を満たすためだろうに。
グラスティンなんだ、知っていたか。
エルレイン『肉』か……サレは検体の収集と言っていたがそうではない。お前の快楽のためだった。
エルレインお前たち帝国は、本気で人々を救済するつもりがあるのか ?
グラスティンそうだなぁ……。答えてほしいなら先に俺の質問に答えてくれよ。
グラスティンさっきから「あまねく人々を救済する」と豪語しているが、だったら俺も救ってくれるのか ?
エルレインええ、あなたも救済の対象です。
グラスティンでは、どうやって救う ?お前曰く『血なまぐさい欲望』に囚われた人間だぞ。
エルレインそれは、殺人衝動を消して欲しいという意味ですか ?
グラスティンああ……さすが聖女様だ。何て優しくて慈悲深い。
エルレインあなたがそう望むのならば――
グラスティンでも、そうじゃないんだよなぁ。
グラスティン俺の望みはフィリップ・レストンを永遠にすることだ。
エルレインそれが救いになると ?
グラスティンああ。この手で、あの美しいフィリップを永久に保存したいんだよ。それを手元におくことで俺は救われる。
グラスティンあいつが手に入るなら、他の黒髪なんてゴミ同然だ。どうだ聖女様、俺を救ってくれるか ?ヒヒヒッ……ヒャッハハハ !
エルレイン…………。

キャラクター4話【16-5 城下町2】
ロゼ――はぁ、何とか脱出成功。デクスに感謝だね。
デゼル……街が騒がしいな。
ロゼ…… ! まさか !
住民おい、こっちにもケガ人がいるぞ ! 運べ !
子供痛いよぉ……怖いよぉ……。
母親大丈夫。もう魔物は行っちゃったからね。
ロゼやっぱり、アリエッタが呼んだ魔物たちがここを通っていったんだ……。
デゼルおかげで街は混乱状態だ。あれを放っておくと厄介なことに――……。
デゼル…… ? 嫌な風だな。
ロゼなんか空が暗くなった ?雨なんて降りそうな天気じゃ……って、なにあれ ! ?
住民おい、空に変なもんがいるぞ ! また魔物か ! ?
住民2いや、違う。黒い帯……虫の大群じゃないか ?空を横切っていく。
デゼル……あれは虫なんかじゃねえ。お前も感じるだろう、ロゼ。
ロゼうん。あの黒いの、すごい穢れをまとってる…… !
デゼル酷く穢れちゃいるが、あれは鏡精の気配に似ているな。もしかして、イクスたちが言ってた死鏡精って奴じゃねえのか ?
ロゼ死鏡精……、あんなにいっぱい ! ?何がどうなってんの ! ?
マーク――ルック、ちゃんと観測できてるか ?
ルックはい。この映像、あちらのアジトにも送りますか ?
マークああ。そうしてくれ。しかし……あれが具現化されたビフレストだってのかよ。気味が悪いぜ。
ルック調査に下りたクラトス様とゼロス様が心配ですね。
ローエンどうです ? お二人から連絡は入りましたか ?
マークいや、まだだ。フィルはどうしてる ?
ローエン自室に戻って休んで頂いてます。ブリッジで観測を続けたいと粘られましたが何とか説き伏せてきました。
マーク悪いな、世話かけて。今はどうせ連絡待ちだ。あいつには体力を温存しておいてもらわないとな。
ローエン……マークさん、門外漢の私が口を出すのも差し出がましいのですが、フィリップさんはしばらく休んだ方がよいのではないでしょうか。
ローエンマークさんもわかっておいででしょうが最近は特に体調が優れません。せめて原因がわかればよいのですが。
マークまあ、もともと身体が悪いところへ面倒が重なったからな。仕方がない。
ルックすみません。俺たちが無茶をしたから……。
マークまたそれか ? もう終わったことだろう。お前らがこっちに戻った時にフィルから聞いた話を忘れたのかよ。
ルックいいえ。ビクエ様が俺たちを思ってくれていたことは十分伝わりましたし、マークさんの気持ちも理解したつもりです。
マークだったら蒸し返しすなって。それとも、自分の傷をえぐって楽しむタイプか ?だとしたら悪かったなぁ、今まで気が付かなくて。
ルック勘弁してください。そっちの趣味はありませんよ。
マークははっ、だったら俺も安心したぜ !その枠で面倒みるのは手一杯なんでな。
マークまあ、そんなわけだからあいつの身体が悪いのは誰のせいでもないんだ。
マーク……ローエン、あいつのことを気にしてくれて感謝するよ。
ローエン……承知しました。今は誤魔化されておくとしましょう。
ルック! ! マークさん、これを見てください !何か黒い塊のようなものが、こちらへ向かっています !虫の大群のような…… ?
マーク虫…… ?
マーク……っ ! 違う、こいつら死鏡精だ !なんでこんな大群になってんだ !
ローエンもしやケリュケイオンを狙っているのでは ! ?
マークいや……このまま奴らが方向を変えなければ目的はビフレストのはずだ。だからと言って安心はできねぇけどな。
ローエンなるほど。この位置だと我々は彼らのルートのど真ん中ですからね。
ローエン……マークさん、ここは危険を承知でビフレストへ着陸することを提案します。
ローエン空中での戦闘になれば数と機動力で敵う相手ではないかと。
マークそうだな。うまくいけばこっちを無視してビフレストの目的地に集中してくれるかもしれない。
マークよし、ケリュケイオン、着陸準備に入るぞ !

キャラクター5話【16-6 ウェルテス領 領都1】
キュッポ皆さん、朗報だキュ !ジェイに似た人を見つけたキュ !
ピッポいや、あれは絶対ジェイに間違いないキュ !
ポッポすぐにウェルテス大陸の都まで来て欲しいキュ。そこで待ってるキュ !
ノーマ――ってな連絡もらったけどさぁ。あのホタテ三兄弟、どこにもいないじゃ~ん !
セネルまだ約束の時間からそれほど経ってないだろ。もう少し待ってみよう。
シャーリィでも、少し心配だよね。キュッポたちに何かあったんじゃ……。
クロエそうだな。あれだけの可愛さだ。よからぬことを考える輩がいるかもしれない。
セネルいや、あいつらそれなりに逞しいだろう。きっと少し遅れているだけさ。
クロエそれはそうなんだが……可愛いし……。なあクーリッジ、手分けして捜さないか ?
グリューネいいわね~。わたくしも一緒にいくわ。ちょうどお散歩がしたいなぁ~って思ってたの。
ノーマ賛成 ! んじゃみんなで遊びに……じゃなくてホタテ捜索にレッツゴー !
セネルおい待てノーマ。今「遊びに」って言っただろ。捜す気ないな ?
ノーマえ、言った ? あはは~最近記憶がちょっと……グー姉さんのがうつったかなぁ ?
ノーマっていうか、グー姉さんだって散歩って言ったじゃん。あたしばっか責めんの、おかしくない ?
セネルグ、グリューネさんはいいんだよ。あれで。
ノーマずるい ! ひいきだ ! 差別だ !さてはグー姉さんの色気に惑わされたな ?
クロエ何だと…… ? クーリッジの人でなし !
セネル……ノーマたちが合流してから賑やかになったな。
シャーリィふふっ、そうだね !……あれ ? お兄ちゃん大丈夫 ? 疲れた顔してるよ。
領民1おい、みんな道を開けろ !領主様が見回りに来られたぞ !
クロエ領主だと ? おい、クーリッジ !
セネルああ、俺たちは隠れて様子をうかがおう。みんな、こっちだ !
領民たち領主様 ! 領主様ー !
領民たちわざわざ自ら出向いて視察なさるとは勤勉なお方だよな !
ノーマどれどれ~、どれだけ勤勉か、確かめてや……。
全員! ?
シャーリィあの領主って……マウリッツさん ! ? それに……。
セネル嘘だろ……。護衛は……ワルター…… ! ?
クロエそんな ! だってあの時に…… !
? ? ?やっぱり驚きますよね。ぼくも初めて見た時は驚きました。
全員えっ ! ?
グリューネあらあ、ジェイちゃん。
セネルジェイ ! ? お前 !
ジェイ話は後です。ひとまずこっちへ。ぼくの隠れ家へ案内します。
ピッポ皆さん ! 無事にジェイと会えたキュ !
セネルお前ら ! ここにいたのか。心配してたんだぞ。
ピッポすまないキュ。わけあって先にジェイと会ってたキュ。
キュッポ嬉しくてホタテたくさん割ったキュ !キューーーー !
ポッポジェーイ ! ジェーイ ! ジェーイ ! ジェーイ !
ジェイ実はもう少し情報を掴んでから、キュッポたちと接触しようと思っていたんですけどね。
ジェイセネルさんとの待ち合わせ場所が、ちょうど領主の視察場所だとわかったので急きょキュッポたちに会って家にいてもらいました。
ジェイ……下手をしたら領主側と戦闘になる可能性もありましたから。
グリューネ相変わらず優しいのね、ジェイちゃん。
ノーマっていうかさ、仲間との涙の再会 ! そして感動 !みたいな展開はないわけ ?さっきからジェージェー、すっごくドライじゃん。
セネルお前が言うな……。ノーマが合流してきたこの間のハロウィンのこと俺は忘れてないからな。
セネルジェイは、すでにキュッポたちのことを把握してたし領主が敵かもしれないと予測してた。
セネル実はもうこの世界のこととか色々と調べて知っていたんじゃないか ?『不可視のジェイ』だもんな。
ジェイまあ、情報収集はぼくの本業ですからね。帝国とその敵対勢力とか、きな臭い状況はそれなりにわかっていました。
ノーマな~んだ。じゃあ、あたしたちのことなんてとっくに知ってたから、そんなフツーな感じなわけね。
ピッポそうでもないキュ。ピッポたちと会った時にセネルさんたちのこと、根ほり葉ほり聞いてきたキュ。ジェイ、すごく嬉しそうだったキュ !
ジェイピ、ピッポ !
セネルそうか……。ずっと一人だったもんな。早く見つけてやれなくて、ごめん。
ジェイ別に……、そういうの、いいですから。それよりも、この世界のことを詳しく説明してもらえませんか ?
ジェイ……なるほど。思ったよりも込み入ってますね。でも、おかげでわかりました。
ジェイマウリッツさんと会っても何の反応もなかった理由やあのワルターさんが側にいたこともね。それにリビングドール……やっかいですね。
クロエ「会った」って、もしかしてもう領主の所に行ったのか ?
ジェイええ。彼らの反応がおかしかったので適当に誤魔化して帰りましたけど。ついでに館の中も調べてきました。
セネル仕事が早いな。どうだった ?
ジェイ一見普通の館ですが、地下には妙な施設があって不思議な結晶がたくさんありました。ちょっとした製造工場みたいでしたよ。
シャーリィそれって、もしかして……。
ジェイぼくもセネルさんの話を聞いて気が付きました。あれは疑似心核を作っていたのかもしれないって。
クロエならば、そこを潰してしまおう !……いや、それでは駄目か。他に製造工場があれば徒労に終わってしまう。
シャーリィマウリッツさんたちを元に戻せれば、協力してくれるんじゃないかな。帝国の情報も流れてくるだろうし。
セネルそうできればいんだけどな。きっとマウリッツさんの心核は帝国で保管されてると思う。今は下手に手出しできない。
ノーマ……ねえ、ジェージェー。その変な施設、あたしたちも見られない ? さっきからみんな、「思う」とか「かもしれない」とかばっかじゃん。
セネルそうだな。ジェイ、俺たちも潜入できるか ?
ジェイわかりました。一度見てもらいましょう。

キャラクター6話【16-8 ウェルテス領 領主の館】
帝国兵1……異常なし。
帝国兵2……異常なし。
セネルなあ、この館の兵士って、みんなこんな感じなのか ?感情がないっていうか……。
ジェイそうですよ。領主をはじめ兵に至るまでみんな反応は同じです。
ノーマもしかして、リビングドールβってのにされてるんじゃない ?
ジェイでしょうね。彼らはまるで機械のようですから。恐らく疑似心核を埋め込まれているんでしょう。
セネルこんな一般兵までリビングドールに……。
クロエ許せない…… ! 兵を遊戯の駒に例えることもあるが帝国は本気で兵の人格さえも不要だというのか !
シャーリィ落ち着いてクロエ。見つかっちゃう。
クロエす、すまない……。
セネルクロエが怒るのもわかるよ。こんなこと早く止めないと。
ジェイおしゃべりは、そのくらいにしてもらえますか。ほら、この奥が目的地です。
ジェイ前に潜入した時には、見張りはいませんでしたがまた同じとは限りません。今まで以上に用心してくだい。
ジェイ……よし、誰もいない。さあどうぞ。ここが例の施設です。
セネルこれは…… !
グリューネまあ、きれいな石がいっぱい !それになんだか少し……不思議な感じがするわねぇ。
ジェイどうです ? 皆さんの言う疑似心核と同じですか ?
セネルう~ん、イクスたちに見せてもらったのと似てはいるけど……。まったく同じかどうかは俺たちじゃ判断はできないな。
ノーマだったら、一つもらって帰ろうよ。アジトで調べればいいじゃん。え~と、このへんのやつを……。
クロエこら、ノーマ ! 手を出すな !
ノーマ堅いな~クーは。どうせこんなにいっぱいあるんだから一つくらいわかりゃしないって。よし、これに決~めた !
シャーリィ待って、とりあえず魔鏡通信でミリーナさんに見てもらおうよ。だからこれは一旦置いて――………… ?
シャーリィ……ねえ、ノーマはこれに触っても……何も感じない ?
ノーマ別に。リッちゃんは何か感じるの ?
シャーリィ何か……何だろう。そうだ、これは滄我……。この石から滄我の力を感じる……。
全員! ?
スレイ――みんな ! ロゼから連絡がきたぞ !無事だったんだな、ロゼ !
ロゼごめんごめん ! ちょっと色々あってさ。あ、デゼルもちゃーんと無事だから安心して。
ミクリオ色々って何があったんだ。こっちからの連絡にも出ないし、心配したんだぞ。
エドナだからそれを説明するために連絡してきたんでしょ。余計な口をはさんで、これだからミボなのよ。
ミクリオくっ……。
ロゼあはは、相変わらずだね。あたしの報告はちょっと長くなりそうだからさそっちの状況を先に教えてよ。
アリーシャこちらではビフレストが具現化されて大騒ぎしているところだ。ロゼのところで揺れは感じなかったか ?
ロゼビフレストが ! ?ってことはあの地震、鏡震だったんだ。
ライラこちらでは、その対策会議を開くところなんですよ。
スレイ実は、ロゼにも参加して欲しいって言われてるんだ。始まる前に連絡がついて良かったよ。
ロゼオッケー、わかった。いつ始まってもいいようにこっちも準備しとく。
ロゼちなみにさ、みんな死鏡精の大群ってみた ?
スレイロゼも襲われたのか ! ?
ロゼ「も」ってことは、そっちは襲撃うけたの ! ?みんなは大丈夫 ?
スレイああ、アジト全員無事だよ。ジョニーさんが大活躍だったんだ ! な ?
アリーシャああ。歌で死鏡精を消してしまったんだよ。私も聞いたんだが、これが素晴らしくいい声なんだ !
ロゼあー……なんか状況はさぱらんけどそれなら良かった。
ロゼあたしたちは、死鏡精が通り過ぎていくのを見ただけ。けど、すごい穢れを感じた。
スレイうん、オレもだ。多分ミクリオたちも。
スレイこの世界の穢れがエンコードされていてよかったよ。そうでなければこのアジト全体が大変なことになっていたと思う。
ロゼその辺もみんなと話がしたいからよろしく。
スレイわかった。イクスたちに知らせてくるよ !

キャラクター7話【16-9 アジト1】
イクスそれじゃあ、新たに具現化されたビフレスト――魔都ビフレストに関する情報共有と調査隊派遣についての会議を行います。
イクスセネルたちはウェルテス領へ鏡映点の捜索に出ていて会議には参加できないって連絡があったから後でまとめて情報を共有する予定です。
イクス例によって人数が多いから魔鏡通信での会議になるけど、よろしくお願いします。
コーキスマスター、何硬くなってんだよ !緊張してるのか ? こういうの初めてじゃないだろ。
イクスそ、そうだけど……。今までリフィル先生とかジェイドさんとかキールとかがやってくれてたから。
ユーリま、簡潔にまとめてくれればありがたいけどな。
イクスぜ、善処します……。
イクス――ええっと、まず、現在の状況から。みんなも知っての通り、ファンダリア領近海に魔都ビフレストが具現化された。
イクスいくつかの情報をまとめると、これは以前メルクリアがオーデンセを具現化したのと同じ術式を使用しているらしい。
イクス具現化した鏡士はメルクリアで間違いないと思う。
ミリーナただ、それを仕組んだのはデミトリアス陛下やグラスティン……帝国上層部であることは間違いないわ。
イクスそれと同時に死鏡精の大群が発生した。一部はアジトを襲ってきたから当然みんなも知ってると思うけど。
アルヴィン今もアジトの外でジョニーの歌声が流れてるからな……。
ルーティまったく……何で四六時中この歌声を聞かされなきゃならないのよ。死鏡精避けだってわかってるけど勘弁して欲しいわ。
カーリャええ ? カーリャはジョニーさまの歌好きですよ ?
ジョニー嬉しいことを言ってくれるね、カーリャ。
カーリャえへへへへへ♪
イクスこの死鏡精だけど、発生源は二箇所。一つは大樹カーラーンの中にある死鏡精の巣からだけどもう一つはセールンド山らしいんだ。
イクス大樹カーラーンから発生している方はビフレストをセールンド山の方はアジトを目指しているっていう行動の違いもある。
イクスその辺りも含めて調査隊を派遣しようと思うんだけどどうかな。
クレスアセリア領担当班異議なし。
スタンファンダリア領担当班もだ。
リッドオレたちも賛成。
コーキス他の班からも反対はないみたいだぞ、マスター。
イクスうん、ありがとう。
イクスまず大樹カーラーンの死鏡精だけど、こちらは『死の砂嵐に巻き込まれず、この世界に残った死鏡精が大樹の中で自己増殖した物』だ。
イクスしかも何らかの対処をしないと無限に増え続ける可能性がある。
イクス恐らく大樹の特性も関係していると思うからこっちはテセアラ領担当班のロイドたちとジョニーさんがいるファンダリア領担当班に任せたい。
スタンロイド、よろしくな !
ロイドおう、一緒に頑張ろうな !
スタン……魔都ビフレストの方に行きたかったけど仕方がないな。
イクスセールンド山の方の死鏡精の調査は……ジェイドさんのたっての希望でオールドラント領担当班に任せます。
ベルベット珍しいわね。あいつが自分から率先して仕事を増やすなんて。
ジェイド今回ばかりは仕方がありません。敵はセールンド山で私たちの世界の技術……フォミクリーを利用しています。
ジェイドこれは具現化とよく似た技術で、あらゆる物の複写物――レプリカを造る技術です。
ジェイド帝国は最初のイクスの遺体をレプリカで増やしていると聞きました。我々が向かうのが適任かと。
スパーダ死体を増やすだと ! ? 下衆野郎共が……。
ルカどうしてそんなことを……。
イクス一人目の俺の遺体で、人体万華鏡を大量に作っているって話だ。何に使っているのかまでは……。
カーリャ・Nダーナの心核が魔の空域に緊急避難しているため今は世界と虚無の境界が曖昧になっています。
カーリャ・Nそれを利用して帝国が虚無にアクセスする手段――すなわち光魔の鏡の人工生産に成功したようです。人体万華鏡を光魔の鏡へ転用しているのかも……。
ルークあ、それと……今言っておくべきだと思うからここで話としくな。
ルークもう何人かには打ち明けてるけど……俺とアッシュは双子じゃない。俺はレプリカなんだ。アッシュの。
アッシュ………………。
ヴェイグ……今話してしまってよかったのか、ルーク。
ルークああ。ありがとな、ヴェイグ。気遣ってくれて。でも、俺っていう存在を見ればレプリカが何なのかってみんなにわかりやすいだろうからさ。
イオン僕も、今アジトで保護されているリベラもイオンという被験者のレプリカです。
ジェイド帝国がフォミクリーを手に入れたということはリビングドールや具現化とはまた別の形の『同じ姿の別人』と出会う可能性があります。
ベルベット同じ姿の別人……。あんなことがこれからも起きる可能性があるって訳ね。
スレイ………………。
イクスセールンド山の方の死鏡精はいずれ発生が止まるって予測されてる。虚無との出入り口を塞げばいいだけなんだから。
イクスとはいえレプリカのことを考えるとやっぱりルークたちに調査しておいて貰った方がいいと思うんだ。
ルークああ、わかってる。任せてくれって。
イクスそれで、肝心の魔都ビフレストの調査なんだけど――
ユーリそいつはカロル調査隊の仕事だろ ?
ロゼそれってあたしたちも含まれるってこと ?
スレイロゼが行くなら、オレたちだって行くよ。ビフレストの様式にも興味があるし何より死鏡精からは強い穢れを感じる。
スレイ導師として見過ごせないよ。
ベルベット穢れを感じるなら、あたしたちの方が適任じゃない ?
シング待ってよ ! 死鏡精がスピリアから生まれた存在ならオレたちの力も役立つ筈だよ。
イクスちょ、ちょっと、みんな、一旦落ち着いてくれ。セネルから通信が入った。切り替えるぞ。
セネル――会議中のところ悪いな。ちょっと見て欲しいものがあるんだ。
ミリーナ見て欲しいもの ?セネルさんたちは今どこにいるの ?
セネルウェルテス領の領主の館にいる。地下に妙な施設があるのを仲間から教えて貰ったんだ。
セネル――シャーリィ !
シャーリィうん、今持っていくね。
シャーリィはい、これ。疑似心核じゃないかって話してたんだけど……。
ユーリ・リタ・レイヴン! ?

キャラクター8話【16-10 ナーザ】
リヒター……俺にはわからんがビフレストというのはこういう場所だったのか ?
ナーザこのような禍々しき都ではなかった。所詮はメルクリアの力を利用してデミトリアスらが作り出したまがい物だ。
ナーザメルクリアがビフレストにいたのは赤子の頃。どう足掻いても、本来のビフレストのようには具現化できまい。
リヒター記憶にない故郷を具現化しようとした結果がこれか……。
リヒター――ジュニア、マークはまだ再具現化できないのか ?
ジュニアはい、ずっと反応がありません。もしかしたら死鏡精に取り込まれているのかも……。どうしよう……マーク……。
ナーザ……鏡精など助ける義理はないが、我が愚妹を支えてもらった義理がある。
ナーザメルクリアも、そしてお前の鏡精も、必ず取り戻すぞ。心得ておけ、ジュニア。
ジュニアナーザ将軍、ありがとうございます。
ジュニアマーク、必ず助けるから無事でいて…… !
? ? ?その『マーク』ってのは、うちの『マーク』のことじゃないよな ?
ジュニアえっ ! ?
ゼロス……まあ、可愛い方のカーリャちゃんと美人の方のカーリャちゃんがいるんだからマークが二人……ってのもあり得るんだな。
ジュニアあなたたちは救世軍の…… !
ゼロス世界のアイドル ゼロス・ワイルダー君とおまけのおっさんでーす♪
リヒターゼロスか……。相変わらずふざけた奴だ。
ゼロスあんた、俺さまの未来の知り合いなんだっけ ?ま、未来で出会う野郎の事なんざどうでもいいけどな。
ナーザ何の用だ。
ゼロス……おおっと。ナーザ将軍めでたく復活ってか。ジュニアが計画してるって話は俺さまたちも聞いてたけどよ。
ゼロス喜んでいいのやら悪いのやら。複雑な気分だねぇ。まあ、一番複雑なのはイクスくんとミリーナちゃん――いやネヴァンちゃんなのかもな……。
ナーザそれで ? 事を構えるというなら――
クラトスいや、こちらにそのつもりはない。我々もこの島の調査にきただけだ。
ゼロスそうそう、目的は似たようなもんだろ。ま、仲良くとはいかないまでも穏便にいこうや。
クラトスところで、メルクリアを奪還すると聞こえたのだがどういうことだ。
ナーザ……地獄耳だな。まあいい。教えてやろう。
ゼロスあの子も親に恵まれなかった口なのかねぇ……。
クラトス……では、メルクリアの身体を乗っ取った死鏡精モリアンは、この島にいるのだな。
ナーザそうだ。
ナーザ――では失礼する。リヒター、ジュニア。行くぞ。
ゼロスおいおいおい、ここまで話しといてお前らだけで行くつもりなのか ! ?
ナーザ当然だろう。我々は急いでいる。邪魔をするな。
ゼロス邪魔なんかしねぇよ。なあ、クラトス ?
クラトスああ、異論はない。私も手を組むべきだと思う。
ゼロスあんたとツーカーっつーのもゾッとしねぇけど話が早いのは助かるな。……ってことで、そっちの意見はどうよ。
ナーザ断る。
ゼロス即答 ! 少しは考えろって。
ナーザ我々と手を組んで、貴様たちに何の得がある。
クラトス我々の目的は、ビフレストとして具現化されたこの島の調査だ。
クラトス以前のビフレストとまったく同じでないとしてもビフレスト出身のお前たちの知識は役に立つ。それに死鏡精に対抗する戦力は、双方に必要だろう。
ゼロスそれに、酷いことをされた女の子を放っておけないってのがゼロスさまなんだよなー。
ナーザ……それでも貴様らの手は借りぬ。貴様らはセールンドの鏡士に与する者だ。
バルド――ナーザ様 !
ゼロスおわっ ! ? 何だ今の声は ? 魔鏡通信か ! ?
ナーザ……バルドか。
ゼロスバルド ! ? って、あのバルドか ! ?
ジュニア……すみません。あの、説明し忘れてましたけど実はバルドさんも呼び戻して今は疑似心核に宿ってもらっているんです。
ジュニア心核の状態だと、バルドさんが望んでも鏡士としか意思疎通ができないのでそちらから貰った魔鏡通信機を改造して利用してます。
クラトスなるほど。それでバルドの声だけが聞こえているのか。
ゼロスちびっ子でもフィリップだな。やることなすこと規格外でしょーよ……。
バルドナーザ様、あなたはいつからそのように狭量になられましたか。
バルドそれとも死の砂嵐に囚われるうちに状況を判断する力も失われたのですか。
ナーザ何が言いたい。
バルド彼らと手を組むべきです。メルクリア様を助け出すためにも恨みや憎しみに囚われるのは得策ではありません。
バルド今、彼らを拒否しては、かつてのメルクリア様と同じ道をたどることにはなりませんか ?
ナーザ俺が、メルクリアと…… ?
リヒターメルクリアは変わろうとしていた。ならば、お前はかつてのメルクリア以下……ということだな。
ナーザ……ほとほと呆れはてた。
ジュニアナーザ将軍 ! バルドさんは――
ナーザジュニア。みなまで言わずともよい。俺は自分の中の嫌悪を制御できず最も優先するべきことを忘れていたようだ。
ナーザバルド、礼を言うぞ。リヒターとジュニアにもな。
ナーザそれと――セールンドの鏡士の元にいる……。
ゼロス麗しのゼロスさまとおまけのクラトス。
ナーザクラトスにゼロスよ。先程の礼を失した態度は謝罪する。改めて愚妹の救出のため、力を貸して貰いたい。
クラトス無論だ。
リヒター……ならば情報交換と行こうか。まずはこちらからだ。
ゼロス……あー……流れとはいえ、女の子が一人もいない連中と手を組んでしまった。俺さまつらい……。つらすぎる……。
バルド心中お察しします、ゼロスさん。
ゼロスえ ? 何々、バルド君、もしかしていける口 ?
バルドいける……というのが何なのかはわかりかねますが私は女性という存在そのものに抗いがたい魅力を感じているのです。
ゼロスわかる ! わかるなー、俺さま !何だよ、バルド君ってばお堅い騎士様かと思いきや意外だわー。
ゼロス俺さまたち仲良くできるんでねーの !でひゃひゃひゃひゃ !
ジュニアあ、あの……お二人とも……。ナーザ将軍とリヒターさんとクラトスさんが……。
ゼロスあー……。視線だけで死ねそうだわー……。

キャラクター9話【16-12 アジト2】
イクス――う~ん、確かに疑似心核と似てはいるけど……。シャーリィ、その結晶、もう少し魔鏡通信機に近づけてもらえるか ?
シャーリィはい……えっと、これで見えますか ?
ミリーナありがとう。そうね……。魔鏡越しだからきちんと判断はできないけど疑似心核とは違うような気がするわ。
ユーリちょっと待て、こいつは…… !
パティ聖核(アパティア)とそっくりなのじゃ !
ラピードワフッ !
カーリャ聖核ってなんですか ?
ジュディス魂……いいえ、簡単に説明するのなら、私たちの世界で『エアル』と呼んでいるエネルギーが結晶化したものって言えばいいかしら。
レイヴンやれやれ、聖核まで登場とはねぇ……。ははっ、参った参った !
エステルレイヴン……。
リタとにかく、直接調べないことには何とも言えないわ。
カロルじゃあボクたち、セネルのところに行った方がいいかもしれないね。シャーリィ、すぐそっちに行くよ !
シャーリィわかった、待ってるね。それと、カロルさんたちの言ってる聖核とは関係ないかもしれないけど、この結晶から滄我を……わたしたちの世界の海の力を感じるの。
二人あっ ! !
シャーリィあの、なにか…… ?
クラース以前、ヨウ・ビクエに言われていたんだ。シャーリィは、精霊や天族と同じ属性を持つかもしれないとね。
ジュードうん。だから、シャーリィのことを気にかけておいて欲しいって。
ミラ=マクスウェルそうだったな。精霊のことであれば私も力になれるかもしれない。
レイアだったら、わたしたちもカロルたちと一緒にシャーリィのところへ行こうよ。
クラースでは、そちらは君たちに任せよう。何かあったら連絡を頼む。
スレイ――それで、魔都ビフレストの方はどうする ?
イクスうん……。死鏡精から穢れを感じるって言ってたけどそれが本当なら、スレイやベルベットさんたちには残って貰った方がいいかもしれない。
ミクリオ何故だ ?この世界では穢れを感知することはできてもエンコードによって穢れによる悪影響はない筈だ。
ライフィセット……もしかしてジョニーが言ってた時が止まってるってことと生体恒常性に関係がある ?
キールああ、そうか。穢れが影響しないのがエンコードの結果なら問題ないが、時が止まった事による副産物なら何かの拍子に穢れが問題になる可能性があるんだな。
アスベルだけど、鏡映点の時間がいつから止まっているのかはまだわからないんだよな。
キールああ。こればかりは調査してみないと。でも、こちらに具現化されてすぐ時が止まったとは考えにくい。
キールその予測に基づくなら穢れはエンコードされているという結論で問題ないとは思うが……。
ベルベット断言はできないって訳ね。
イクスうん。それにアジトにも死鏡精が来ることは間違いない。
イクスジョニーさんの歌で守ってはいるけど、死鏡精を感知できるスレイやベルベットさんたちには残って貰ってアジトの防衛を任せたいんだ。
カイウスそうか。アジトの方にも戦力を残さなきゃいけないんだな。イクスたちは行くつもりなんだろ ?
イクスそのつもりだよ。……俺、集合的無意識のるつぼでメルクリアと話したんだ。それで思ったんだよ。
イクスなんか上手く言えないけど、状況が違ったら仲良くなれたんじゃないかって。だから……助けてあげたいなって。
ミリーナ私も一緒に行くわ。私……聞きたいの。メルクリアに。ゲフィオンという人について。
コーキス俺とパイセンとパイセンのパイセンも行くだろ ?後は ?
ユリウスシングたちソーマ使いに同行してもらうのがいいだろうな。
シング了解、任せてくれ !
ヴェイグとなると、残る奴らでアジトの防衛だな。
リッドジョニーの歌をすり抜けてくる奴らは撃退しないとな。
スレイああ、用心していこう。
帝国兵1慎重に運べ ! この荷物は『生もの』だからな !
グラスティンじゅう……にじゅう……。確かに揃ってるな。ヒヒヒッ、サレは本当に優秀な奴だ。
帝国兵1敵襲っ ! ま、魔物、魔物が…… !
グラスティン魔物…… ?
帝国兵1お逃げ下さい ! グラス……ぎゃあああっ !
グラスティンああ、ひとつ『肉』が増えたな。
アリエッタグラスティン……見つけた ! イオン様の仇っ !
グラスティンなんだ、イオンのペットか。
アリエッタイオン様……殺した ! 絶対……許さないっ !お前も殺す、です !
グラスティンイオンに会いたいのか ?
アリエッタうるさいっ !
グラスティン生きているぞ。『イオン様』は。
アリエッタ………………え ?
グラスティンヒヒヒ、聞こえなかったか ?生きていると言ったんだ。今から会わせてやってもいい。
アリエッタイオン様が……生きてる…… ?会える…… ?
グラスティンそうだ。会いたいだろう ? だったらその魔物を引け。
アリエッタで……でも、本当…… ?
グラスティンヒヒヒ、いいのか ?このまま魔物を引かせないとお前は永遠に『イオン様』には会えないんだ。
アリエッタま、待って ! みんな離れて、大人しくして !
グラスティンヒヒヒ、よし、ついて来い。大事な大事なイオン様と久しぶりのご対面だ。
アリエッタイオン様、無事だったんだ……。イオン様…… !

キャラクター10話【16-13 アジト3】
マオただいまー ! さっきルークたちが転送ゲートから出発したヨ。これで全員、出発完了 !
ユージーンついでにいくつかのゲート周辺を見回ってきたが今のところ死鏡精も入り込んではいないようだ。
クレスそれじゃ、残った僕たちも、もう一度浮遊島の警戒にあたろうか。
ユリウスいや、会議はまだ終わりじゃない。続きをイクスから任されている。
ユリウス魔鏡通信は繋いだままだからみんなに聞いていて欲しい。
カイルえ、どういうこと ?
ユリウス死鏡精やビフレストの具現化で報告が遅れてしまったが各領地に新しい領主と騎士が着任したそうだ。
ユリウスまずは、ここに残っているメンバーが関係する領地で判明している領主と従騎士の名前を共有しよう。
ユリウスアセリア領は領主も従騎士も正体がわかっている。領主はルーングロム、騎士はモリスンだそうだ。
一同えっ ! ?
アーチェモリスンって、あのモリスンさん ! ? うっそー !
チェスターそれにルーングロムっていうと、あの宮廷魔術師か ! ?
ユリウス――続けるぞ。
ユリウスファンダリア領――スタンとカイルたちのところはウッドロウに代わりエルレインが領主になった。
ユリウス従騎士はアトワイトの代わりにイレーヌという人物になったそうだ。
カイルエルレインは想像どおりだけどイレーヌって確か……。
ジューダス…………。
ユリウスカレギア領は領主にアガーテ、従騎士にミルハウスト。
ヒルダ皮肉なものね……。
クレアこんな形で、二人が一緒になるなんて……。
ユリウスレグヌム領の領都には領主マティウスと従騎士チトセが赴任したそうだ。
イリアはぁ ! ? チトセ ! ?それにマティウスって……何よそれ……。
ユリウスエフィネア領は……領主にカーツ、従騎士はヴィクトリア。
マリクっ ! よりによって……帝国も趣味が悪いな。
アスベル教官……。
ユリウスそれと、従騎士のみ判明しているのがスレイのところのグリンウッド領だ。名前はセルゲイ。
スレイセルゲイが騎士か。
ライラこういっては不謹慎ですが、納得の人選ですね。
ユリウスオルバース領、アレウーラ領そしてミッドガンド領についてはまだ判明していない。以上だ。
カイウスそうか、わからないのか……。
リッド気が抜けたような安心したような、変な気分だぜ。
ベルベット……そうね。
ユリウスそれと、エルレインとミルハウストはリビングドール化されていないらしい。これについても各々思うところはあるだろうが……。
ユリウスまずは、領主、騎士、いずれかが判明していない領地は関係者に調査の協力を願いたい。班長たち、よろしく頼む。
一同了解。
アンジュユリウスさん。少し気になることがあるのですが聞いてもいいですか ?
ユリウスああ、どうぞ。
アンジュなぜそれほど、領主や騎士の素性を知ることに力を注いでいるんですか ?
アンジュもちろん、鏡映点が利用されているのだから助けるべきだとは思います。
アンジュですが、死鏡精の問題はまだ片付いていないしもし鏡映点の方々を救出したとしても抜かれた心核のありかさえわかっていない状況ですよ。
ルカ言われてみれば……。この緊急時に調査を進める理由って、何かあるんですか ?
ユリウス……そうだな。説明しておこう。特にルカたちの世界の者には関係の深い話だからな。
アンジュ私たちに ?
ユリウスディストを捕虜にしたことで、こちらもある程度帝国の行動が推測できるようになった。
ユリウスそこで得た情報によると帝国は失われたニーベルングを、ティル・ナ・ノーグの【前世】として、とらえているらしい。
ルカ前世 ! ?
ユリウスニーベルングは滅びを迎えダーナは緊急避難的にティル・ナ・ノーグを作った。この構造は君たちの世界に酷似しているそうだ。
ユリウスそして君たちが前世から継いだ『天術』という力だが確か元の世界では、すでに失っていたと聞いている。
ルカはい。でも具現化されてなぜかまた使えるようになっていたんです。
ユリウスその理由だが、転生者はエンコードされたことでただ具現化されただけでなく
ユリウス『ニーベルングの人間が転生した存在』として改めて定義されたのではないかと考えられているんだ。
一同! !
イリア待って待って、頭こんがらがる !あたしたち、ニーベルングの人間になっちゃったの ?
ルカいや、まだ考えられるっていうだけの話だから。ね ?
スパーダんなことで動揺すんなよ。どーんと構えてろって。
イリア落ち着いてるけど、あんた、本当にわかってんでしょうね ?
ユリウス混乱するのはもっともだ。エンコードは、恐らく君たちの前世の情報を処理しきれなかったんだろう。
ユリウスそこで君たちの前世をニーベルングと仮定することで存在を定義した。つまり、君たちが具現化されたことでニーベルングはこの世界の前世として定義されたんだ。
イリアなるほどね……ってさっぱりわからないんだけど ! ?
ユリウスわかった。なら理解しなくていい。実際はともかくとして、君たちはニーベルングの転生者ということになってしまったんだ。
ルカええええ ! ?
ユリウス話を続けるぞ。ニーベルングの転生者として定義づけられたと仮定してだ。
ユリウスそうなると君たちは、ニーベルングに接触するための鍵や触媒になり得る存在となる。
アンジュその話をしたということは、領主探しの理由というのもニーベルングと繋がっているんですね。
ユリウスああ。そして俺やルドガーも関係することなんだが……。
ルドガー兄さん…… ?

キャラクター11話【16-14 アスガルド城3】
デミトリアス……エルレイン。きみが掲げる救済理念は理解している。だが、あまりにも逸脱した行動は控えてもらいたい。
エルレイン逸脱、か。では、グラスティンやサレハスタといった者たちはどうだ。あれらの行いは逸脱してはいないのか ?
エルレイン人を虐げ、殺め、暴虐をつくすことを喜びとしている。なぜ彼らの横暴を許すのだ。納得のいく説明をもらおうか。
デミトリアス……わかった。答えよう。グラスティンの能力は、この世界にとって必要だ。私の理想を実現する計画を担う人材だからね。
デミトリアスサレは……彼の性質はさておき騎士として有能なのは君も知っているだろう。
デミトリアスハスタはその存在に価値がある。ニーベルングを甦らせるためには生かしておかなければならない。
エルレイン彼らによって、どれだけ多くの者が失われようと許す理由があるというわけか。
デミトリアスそうだ。クルスニクの鍵が鏡士たちの元にあるとわかった今、ニーベルング復活の目処はたった。この機会を逃したくない。
デミトリアスようやくだ。ようやく……。
エルレインニーベルングの復活を優先しこの世界の救済は後回しか。
デミトリアスとんでもないことだ。これこそ世界の救済だよ。成し遂げれば、君も納得してくれるだろう。
デミトリアスダーナの心核の欠片と、転生者の魂。そしてクロノスの力を利用すればニーベルングの分史世界を作り出すことができる。
ルドガーニーベルングの分史世界って本気でそんなこと考えているのか ! ?
ユリウスディストによれば、だがな。
コンウェイ転生者の魂を使う……か。
アンジュそういえばコンウェイさんって……。まあいいわ。
アンジュ帝国は分史世界を作ることが目的なんですか ?
ユリウスいや、さらに面倒な話になる。クルスニクの鍵を使って、分史世界ニーベルングのレプリカ情報を抜きとろうと考えているそうだ。
ガイアスニーベルングの……滅びた世界のレプリカを作る気か。デミトリアスという男、正気の沙汰ではないな。
スパーダ……ニーベルングを分史でレプリカ……。
ルカどうしたのスパーダ ?
スパーダ駄目だ ! やっぱもうわかんねェ !
イリアいひひひ、ようやく素直になったわね。あたしもよ !
エルエルもわかんない。仲間に入れて。
イリアおいでおいで~。他にも受け付けるわよ。
エドナ呼ばれてるわよ。行ったら ?
ミクリオなんで僕が !
スパーダお、ミクリオもお仲間か ? スレイもついでに来いよ !一緒に悩もうぜ。
スレイあはは、今のところは大丈夫。……それにしても、そのレプリカを作ってどうする気なんだろう。
ファラそうだよね。作ったら作ったで置き場所に困りそう。
リッドなんかファラが言うと生活感がにじむよな……。
キール置き場所……。置き場所か。
キール具現化されたビフレストはイクスたちの故郷を元に置き換えたようなものだ。だとすると……。ユリウス、もしかして帝国は……。
ユリウスああ。帝国は、俺たちが存在するこのティル・ナ・ノーグを消滅させ、ニーベルングのレプリカを置く計画らしい。
ユリウスそしてレプリカのニーベルングをティル・ナ・ノーグのあった場所に誘導するための楔が領主と従騎士だと推測されているんだよ。
一同………… ! ?

キャラクター12話【16-15 アジト4】
イクスありがとう、マーク。迎えに来てくれて。
マーク毎度気軽に呼び出しやがって――と言いたいところだが本来はお前らに与えられた乗り物を、勝手に使わせて貰ってるからな。まあ、気にすんなって。
フィリップとはいえ、ゼロスさんとクラトスさんがビフレストに潜入している状態だからね。なるべく急いで戻らないと。
ミリーナ死鏡精はビフレストの方にも行っていたのよね。ケリュケイオンは襲われなかったの ?
フィリップああ。あちらの目的は僕ら……という訳ではなかったようだ。
コーキス……なんでアジトは狙われてるんだろう。
マーク大方、鏡士の存在が関係してるんだろうな。だからこそケリュケイオンも襲われるかもと思ったんだが……。
マーク――と、それより今はビフレストへの潜入を急ぐべきだな。乗ってくれ。
イクス――あ、俺フィル、さんに話があるからシングたちは先に乗っててくれ。
フィリップえ…… ?
シングあ……ああ。うん、わかった。みんな、行こう。
ヒスイイクス。覚悟が決まったって顔してるぜ。自分で出した答えが一番強いってことか。
イクスヒスイさん……。心配かけてすみませんでした。
ヒスイそこは謝るところじゃねえだろ。
ミリーナ……私たちも行くわね。カーリャ、ネヴァン。
二人はい。
イクス……あの、俺、最初のイクスさんに会いました。
フィリップえ…… ? それは……どういう意味 ?
イクス集合的無意識の底に、最初のイクスさんのアニマが消滅しないで残っていたんです。
二人! ?
マークどういうことだ ? そんなことあり得るのか ! ?
フィリップ……イクスは……イクスの身体が、まだ朽ちずに残っているから……その影響なんだろう。幻覚などでなければ……。
イクス幻覚ではないと思います。ジョニーさんもイクスさんに会いましたし、メルクリアもその場にいました。
イクスイクスさんは自分のことを幽霊みたいなものだって言ってました。
フィリップ……イクス……。
イクスそれで、フィルさんに伝言を預かって来たんです。
フィリップイクスが……僕に伝言…… ?
マーク……死者からの伝言って、霊媒かっつーの。
フィリップイクスは何て ! ?
イクス「手紙、ちゃんと読んでくれたか」「もし読んでたら……もう一度思い出してくれ」って。
フィリップ! !
フィリップ……僕が手紙を読むって信じて疑ってなかったのか。本当に……イクスは……。
イクス(……何となくフィルさんの気持ちがわかってしまうな)
フィリップ――ありがとう、イクス。手紙は……読もうと思っていたんだ。精霊の封印地に着く前に読んでしまうよ。
コーキス精霊の封印地 ? ビフレストに行くんじゃないのか ?
マークどうしてもあの場所に行かないといけないんだとさ。俺とヴィクトルが同行する。
マーク俺たちを精霊の封印地で降ろしてからお前らをビフレストに運ぶ算段だ。その辺りはローエンに差配を任せてあるからよ。
マーク……イクスはその辺りの話、フィルから聞いてただろ ?
イクス……うん。
マークま、そういうこった。さ、それじゃ、そろそろ出発するか。
フィリップイクス……。僕のことをフィルさんって呼ぶことにしたんだね。
イクス……はい。色々考えて……それで、もう考えることはやめたんです。俺は今から始めるって……今からが俺なんだって決めたから。
イクスあなたのことは鏡士の先輩で頼れる仲間のフィルさん……だと思うんです。俺にとっては。
フィリップ……そうか。ありがとう……今まで僕の我が儘に付き合ってくれて。そして申し訳なかった。君を苦しめて。
イクスそれはフィルさんだけが謝ることじゃないでしょう。それに……俺、少しだけわかってしまいました。あなたの気持ちが。
フィリップ
イクスいいんです。行きましょう。俺を生み出してまで、この世界を守ろうとしたんだから最後までやりきらないと。
フィリップ…… !
フィリップああ、そうだね。その通りだ。
イクス俺、ちゃんとフィルさんと話せてたかな。許すって決めてたけど、やっぱりまだちょっと怒ってるところもあるからさ……。
コーキス話せてたよ。超格好良かったぜ。なんかマスター、大人って感じだった。
イクス何だよ、それ……。
コーキス……なあ、聞いていいか、マスター。
イクスうん ? 何を ?
コーキスフィル様が精霊の封印地に行くつもりって話いつしたんだ ?
イクスいつだったかな……。でもあの場所をもう一度調査したいって話は何度か聞いてたよ。
コーキス前に……夜遅くまでフィル様と話し込んでたことがあっただろ。あの時かなって思ってたんだけど。
イクス……夜遅くまで ?
コーキスほら、ミリーナ様がダオスと色々あって……パイセンのパイセンが来て、マスターが俺に隠し事ばっかしてて……。あの頃だよ。
イクス――ああ、あの時のことか。うーん……。コーキス、誰にも言わないって約束できるか ?
コーキス約束する ! 鏡精とマスターの誓いだ !
イクスコーキスは『誓い』とかそういうの好きだなあ……。まあ、いいか。
フィリップ――最後に伝えておきたいことがあるんだ。
イクスこれ以上他に何があるんですか。
フィリップ僕自身のことだよ。僕の身体はアニマ汚染でやられていてね。もうそれほど長くはないんだ。
イクス………………。
フィリップだから許して欲しいとか同情してくれとかそういう話じゃないよ。
フィリップ元々命の期限があるから、僕がゲフィオンの代わりに人体万華鏡になって死の砂嵐を封じるつもりだった。
フィリップけれどファントムの計画を阻止するために色々あって……それは叶わなかったけど。
フィリップそれで……今は死の砂嵐と虚無を無くしたいと思ってるんだ。どんな形にせよ、金色の砂になった人々を解放してティル・ナ・ノーグを守りたい。
イクスそれがあなたの命の期限とどういう関係があるんです ?
フィリップ君を――君のあり方を歪めてしまった僕にできることはそう多くはない。けれどイクスの希望があればそれは全て叶えたいと思っている。
フィリップだけどイクスの願いが、『僕の死』なのだとしたら少し待って欲しいんだ。
フィリップ確かに残りの人生はそう長くはないけれどそれでも世界を守るまでは何とか生きていたい。
フィリップ世界を守ることも君の希望を叶えることも僕のせめてもの罪滅ぼしだと思っているから。
フィリップ君が僕の死を望むなら僕は全て終わってから命を絶つよ。
コーキス……それで、マスターは何て答えたんだ ?
イクスその時は、少し考えさせて欲しいって言った。フィルさんに死んで欲しいとかじゃなくて俺……いっぱいいっぱいだったからさ。
イクスでも今は違う。俺はもうフィルさんに何もして貰わなくていいんだ。それより一緒に世界を守ろうって言いたい。
イクスさっきも……そういうつもりでフィルさんと話したんだけどさ。
コーキスさすが、俺のマスター !
イクスコーキス ! ? 抱きつくな ! ?お前もう結構デカいから苦しい……。
コーキス俺、マスターの鏡精でよかった !俺、ずっとマスターの側にいるからな !
イクスコーキス……。うん。俺も、お前が俺の鏡精でよかったよ。

キャラクター13話【16-15 アジト4】
フィリップ……この手紙を読む時が来るとはね。
マークよくその量の手紙を取っておいたよな。読むか捨てるかするだろ、普通。
フィリップ……怖かったんだ。
マーク手紙の中身がか ?
フィリップそうだと思ってたけど、違うんだろうな。多分……醜い自分を見るのが怖かったんだ。
マーク………………。
フィリップ……ずっと、言えなかったことがあるんだよ。イクスとミリーナに。
マーク当ててみせようか。
フィリップマークは僕の鏡精なんだから……わかるに決まってる。
マーク鏡精だからってマスターの考えてることが全部わかる訳ねえだろ。付き合いが長いからわかるんだよ。
マークこっちはお前がジュニアぐらいの歳の頃から一緒にいるんだぜ。
フィリップそうだね。でも、言わせてくれ。もう二人には届かないけど口にしないと終わらない気がするんだ。
マークああ、聞いてやるよ。お前、俺の中に最初のイクスとやらを見てるみたいだからな。
フィリップ! !
フィリップ……そうだよ。マークは……何となく似てる。イクスに。けど、僕はマークをイクスの代わりだと思ったことはないよ !
マーク知ってるよ。そんな顔すんなって。で、何を伝えたかったんだ ? 最初の二人に。
フィリップ……ミリーナには「ミリーナが好きだ」ってこと。ちゃんと伝えて、ちゃんと振られていればよかったんだ。
フィリップけど、僕は自分の気持ちを知られることも怖くて……。そのくせミリーナの方から僕を選んでくれないかなって……そうしたら傷つかないのになって……。
マーク知ってた。
フィリップはは……だよね……。イクスには……イクスにも「イクスが好きだ」ってことを伝えたかった。
フィリップ僕はイクスが羨ましくて、イクスの持っているもの全てが欲しくて、イクスが憎らしかった。僕はイクスになりたかったんだ。
フィリップだからあの時……イクスを……。だけどイクスを刺した時に、気付いたんだよ。僕はイクスが好きで好きで仕方がなかったんだって。
マークああ、それも知ってた。
フィリップ………………ッ !
マークお前はさ、好かれたかったんだよな。大好きな二人にさ。
フィリップ……そうだよッ !本当はミリーナに振り返って欲しかったしイクスに僕が一番すごいって褒めて欲しかったッ !
フィリップ二人に「フィルが一番好きだよ」って言って欲しかったんだ。
フィリップそんな……そんな子供じみたことを馬鹿みたいにずっとずっと抱え込んで……結局二人を傷つけて……。
フィリップ嫌われたんじゃないかって怖くなって……好かれていたかもわからないのにとにかく全部無かったことにして蓋をして……。
フィリップ僕は……本当に愚かだ。愚かで醜い……。
マーク……すげぇな。三十過ぎたおっさんがびーびー泣く姿って。
フィリップ……………おじさんだって泣くことぐらいあるよ。
マークまあ、そりゃそうだけどな。そら、早いとこ手紙読んじまえよ。踏ん切りついたろ。
マーク大好きなイクスに罵られても仕方ないことしでかしたんだから。
フィリップわ、わかってるよ。いいんだ。マークの言う通りだよ。それに……それでも僕はやっぱりイクスが好きで……憧れずにはいられないからさ。
マーク………………。
フィリップ……これが……僕がセールンドに逃げ帰ってから最初に来た手紙……。
イクスの手紙親愛なるフィリップへ。昔話をしようか。俺、フィルが好きなんだよ。
イクスの手紙突然何だよって思うかも知れないけれど俺は初めてフィルに出会った時からフィルのことが羨ましくて、憧れてたんだ。
イクスの手紙頭がよくて、魔鏡術に詳しくておっちょこちょいなところもあるけど目的に向かって一直線に進んでいく強さがあって。
イクスの手紙こうやって書くとラブレターみたいだな !……笑うとこだぞ ?
マーク刺された後なのにこうくるか。嫌な奴だな……。
フィリップ横から覗いて、文句言わないでくれないかな。
イクスの手紙だから、あんなことがあったけどそれでも俺はフィルを愛してる。この先も変わらないよ。
イクスの手紙もっと早くこういう話をすればよかったな。本当は顔を合わせて話したかったけどフィルは嫌がるだろうと思ったから手紙にした。
イクスの手紙フィルがどうしてあんなことをしたのか……本当のところはわからないけど、でも多分何かを変えたかったんじゃないかって思うんだ。
イクスの手紙だって本気なら、あそこで戸惑わなかっただろう ?もし俺の想像通りなら、フィル、大丈夫だよ。フィルなら変えられる。自分だって何だって。
イクスの手紙けど、そのままのフィルも俺は好きだけどな。どっちだっていい。どっちのフィルも俺の親友だから。
マーク……また泣いてるのか。そのツラ、後でヴィクトルに不審がられるぞ。まだ何通もあるのに、大丈夫なのか ?
フィリップ……わかってる。だけど、涙が止まらないんだよ。
モリアン……ニンゲンか。
モリアンそうか。わらわとメルクリアさまを引き離そうとするニンゲンたちが来たのか。
モリアンあれだけメルクリアさまを苦しめ、傷つけ心を殺したくせに……。なおもわらわとメルクリアさまを切り離そうとするのか。
モリアン黒衣の鏡士共も来るか !彼奴らはメルクリアさまが最も憎むべき仇にして我らの仇でもある宮廷鏡士。
モリアンわらわとメルクリアさまの痛みそして数多の鏡精たちの苦しみを思い知らせてやるわ !
モリアン覚悟せよ、鏡士共 !
死鏡精カガミシニシヲ !カガミシニシヲ ! !
死鏡精カガミシニシヲ ! ! !