キャラクター | 1話【1-1 ひとけのない街道】 |
ミリーナ | イクス、大丈夫 ?やっぱり私、手伝いましょうか ? |
イクス | え ! ? こ、子供じゃないんだから、大丈夫だよ !それにもうすぐ着替え終わるから……。 |
コーキス | へへっ。 |
カーリャ | どうしたんですか、コーキス。 |
コーキス | だってさ、マスターとミリーナ様全然変わらねーからさ。 |
カーリャ | 確かに……。でもミリーナさまが幸せそうで本当によかったです。 |
イクス | ――よし、お待たせ。 |
カーリャ | あ、イクスさまのお着替え、終わったみたいですよ ? |
ミリーナ | ええ。それじゃあ、失礼します……。 |
イクス | えっと……ど、どうかな ? |
ミリーナ | イクス ! すごく似合ってるわ ! とっても格好いい ! |
コーキス | おっ ! マスターの意見を取り入れてもらって黒い布使ってもらったんだな ! |
カーリャ | イクスさまって、意外とセンス、アレですよねー。 |
イクス | アレってなんだよ ! カーリャは相変わらずだな……。 |
ミリーナ | 着心地はどう ? |
イクス | あ、大丈夫だよ。でも、なんか変な感じでさ……。 |
ミリーナ | え ? やっぱりその服、気に入らない ?だったら作り直すわ。 |
イクス | え ! ? ち、違うよ ! 第一、この服具現化じゃなくてミリーナが手縫いしてくれたんだろ ? |
イクス | その気持ちが嬉しいし、デザインが嫌だとか着心地が変だとか、そういうことじゃないんだ。 |
イクス | ほら……俺、急に背が伸びただろ ?ミリーナの顔がいつもより下に見えて……なんか落ち着かなくて。 |
ミリーナ | そうよね……。魔鏡結晶の中でイクスの身体が成長したなんて……。 |
ミリーナ | ううん、成長じゃないのよねきっと。まだこの現象が何なのかわからないからイクスの身体が心配だけど……。 |
イクス | ……確かに楽観視はできないよな。でも、今のところ変な自覚症状はないからさ。ただ、急に背とか髪が伸びて驚いたってだけだよ。 |
コーキス | マスター……。 |
イクス | あ、この髪の毛どうかな ?本当は長髪のままでもいいなって思ってたけど……。 |
ミリーナ | ――駄目。長髪は縁起が悪いから。 |
イクス | 何だよ、それ。まぁ、でも駄目だって言われたからさせめてちょっとセットを変えてみたんだ。 |
ミリーナ | うん。前の髪型もすっごく可愛くて格好良かったけど今回の髪型もすっごく可愛くて格好いいわ ! |
イクス | 可愛い……はちょっと嫌だけど気に入ってくれたならよかったよ。 |
コーキス | へへっ。 |
イクス | ん ? どうした、コーキス。 |
コーキス | え、いや、何でもないよ。 |
カーリャ | コーキスはイクスさまが帰ってきてからずっとこんな風にニヤニヤしてるんですよ。 |
コーキス | だってさ、マスターがちゃんと目の前にいてミリーナ様が笑ってて……。 |
コーキス | やっと……俺がずっとこうなったらいいなって思ってたことが現実になったからさ。 |
イクス | コーキス……。辛い思いをさせてごめんな。 |
コーキス | 辛かったのはマスターだろ。痛いのとか我慢してたんだから。 |
イクス | みんな大変だったんだよな……。……っていうか、まだ大変なのか。うん。今日からは、俺もみんなと一緒に頑張るから。 |
ミリーナ | イクス……。 |
イクス | でも頑張るって、何から手をつけたらいいんだろう。そもそも俺たち、何をしたらいいのかな。 |
イクス | 帝国が脅威だってことはわかってるけど相手が何をしようとしているのか、俺たちは何をしたらいいのか、全然整理できてないよな。 |
イクス | まず目的をはっきりさせる必要があるのか。 |
ミリーナ | さすがイクス ! 頼りになるわ ! |
コーキス | あー……懐かしいな。ミリーナ様のマスター全肯定。 |
カーリャ | ミリーナさまはイクスさまの前に出ると駄目な感じになっちゃいますね。 |
ミリーナ | そんなことないわ。イクスが頼りになるのは本当だから否定することが何もないのよ。 |
コーキス | 鏡精だってそこまで全肯定できないけどなぁ。 |
カーリャ | ですね。 |
イクス | ははは……。そういえばミリーナはどうして黒い服を着てるんだ ? |
ミリーナ | え ? |
イクス | 前に着てた赤い服、似合ってたのに。あ、黒い服も格好いいけどさ。なんか大人っぽくて。 |
ミリーナ | ……うん、そうね。でも、イクスがこの服を格好いいって言ってくれたからこのままでいるわ。イクスはこういうテイスト、好きだものね ? |
イクス | え、うん……まぁ……。 |
ミリーナ | それじゃあ、そろそろ行きましょうか。フィルが待ってるわ。 |
イクス | ! |
イクス | ――わかった。行こう。 |
キャラクター | 2話【1-1 ひとけのない街道】 |
マーク | お、イクスが来たぜ。 |
フィリップ | ! ! |
キール | イクス……久しぶりだな。元気そうで……よかった。 |
クレス | みんな早くイクスに会いたいって思っていたんだ。何より、ミリーナとコーキスが苦しんでいたからね。 |
ミリーナとコーキス | ……………… ! |
イクス | ああ…… ! あの、改めて……待たせてごめん。それからありがとう。 |
キール | ああ、まったくだ。1年近く待たされたんだからな。 |
カーリャ | その間に、鏡映点さまも随分増えましたしね。 |
コーキス | 大丈夫だよ。マスター、頭はいいから、すぐに覚えられるって。 |
イクス | 頭『は』って……。ひどいな。 |
イクス | それと、フィル……さん。やっとちゃんと会えましたね。 |
フィリップ | イクス……やっぱりその姿……。 |
イクス | ? |
ミリーナ | フィル。イクスの変化に心当たりがあるの ? |
フィリップ | あ、いや、違うんだ。ごめん。その……僕が知ってるイクスによく似ていたから……。 |
イクス | フィルさんの知ってる俺…… ?『最初の俺』ってことですか ? |
フィリップ | ああ、そうだよ。それとイクス、僕のことはフィルでいい。 |
イクス | あ……でも……。 |
マーク | ――なぁ、フィル。このイクスとミリーナは具現化されたもう一つの可能性でリアライザーなんだって言ってなかったか ? |
マーク | 混同するなって言っておきながら、お前イクスに一人目と同じ対応してくれってのはおかしいんじゃねぇの ? |
ミリーナ | ………………。 |
フィリップ | あ……ああ……。そうだね。僕が一番割り切れていなかったのか。すまない。 |
フィリップ | 君たちにしてみれば僕は単なる中年のおじさんだよね。わかっていた筈なのにな……。 |
コーキス | フィリップ様……。 |
イクス | ……あの。俺も……フィルって呼んでいいです――いいかな ?年下だから生意気に聞こえたら悪いんだけど。 |
フィリップ | も、もちろん ! ……ありがとう、イクス。 |
キール | ……そろそろいいか ?話さなきゃならないことがたくさんあるんだ。 |
イクス | あ、そうだよな。いいよ、進めてくれ。 |
キール | それじゃあ、まずは現状について報告しよう。 |
クレス | リフィルさんに資料を纏めて貰ったんだ。イクスなら読んだ方が早いだろうって。 |
イクス | わかった。読んでみるよ。 |
エドナ | ………………。 |
アイゼン | ……エドナ。 |
エドナ | そんな顔しなくても大丈夫よ。わかっていたことだもの。別れの時が近づいているって。 |
エドナ | それより、ベルベットたちには話したの ?ケリュケイオンに移るって話。 |
アイゼン | いや、まだだ。それにあいつらは、俺がここを離れようと気にしないだろう。 |
エドナ | ――そうね。単にケリュケイオンに行くだけですもの。会おうと思えばいつだって会えるわ。 |
アイゼン | ああ。好きなときにパルミエを届けてやれる。 |
エドナ | それぐらい自分で持ってきたら ? |
アイゼン | そうだな。 |
エドナ | ………………。 |
エドナ | ……そうよ、自分で届けてちょうだい。必ずね。 |
アイゼン | そうしよう。 |
エドナ | 気をつけて。 |
アイゼン | ああ。 |
ヴィクトル | ……助かった、のか ? |
ヴィクトル | (……せめてここでなら、救えると思ったのに) |
ヴィクトル | ――待っていてくれ、ミラ。 |
キャラクター | 3話【1-2 アスガルド城1】 |
リヒター | ……メルクリアの様子はどうだ ? |
ジュニア | やっと眠ったところ……。無理もないよ。ナーザ将軍を――お兄さんを失ったんだから。 |
リヒター | ナーザはどうなったんだ ?虚無に引き戻されたのか ? |
ジュニア | うん……。また永遠の牢獄に閉じ込められたんだ。 |
リヒター | ……そうか。苦しみを伴わないだけこちらの方がマシだったのかも知れないな。 |
チーグル | ――鏡映点に何がわかる !虚無の絶望を ! 永遠の苦痛と生を ! |
チーグル | 死にながら生き続ける終わりのない地獄に私たちは閉じ込められていた。 |
チーグル | ナーザ……いや、ウォーデン様はまたそこへ戻されてしまったんだ ! |
リヒター | ああ、わからないさ。だが、大切な人を失った者の気持ちはわかる。 |
チーグル | ……メルクリア様のことか。 |
リヒター | 俺は……アステルのためにここに残ると決めていた。だが……。 |
チーグル | メルクリア様のためにも残るというのかい。ならば自分がどこに『属す』つもりなのかはっきりさせるんだね。 |
チーグル | 所詮デミトリアスはセールンドの王族だ。ビフレスト皇国にとっては仇の一人。 |
チーグル | メルクリア様を守ってきたからこそ従ってやってきたが、この後はわからない。 |
ローゲ | 随分と不穏な話をしているじゃないか。 |
ジュニア | ! ! |
ローゲ | 安心しろ、ジュニア。貴様は用済みだ。ファントムが黒衣の鏡士の元に落ちた今貴様は使い道のないゴミクズに過ぎん。 |
ジュニア | ………………。 |
チーグル | ローゲ。エルレインは落ち着いたのか ? |
ローゲ | フン……。もとより取り乱してなどいなかったわ。肝の太い女だ。それにどうやらこの体の持ち主をよく知っているようでな。 |
チーグル | きみもよくよく考えておくんだね、ローゲ。メルクリア様のご意向次第では我らは帝国を離れることになる。 |
ローゲ | 知ったことか。 |
チーグル | 何 ! ? |
ローゲ | この程度のことで心が折れるような小娘が我らがビフレスト皇国を率いるに値するものか。 |
ローゲ | それに貴様の考えていることなどデミトリアス帝はとうに気付いているぞ。なぁ、デミトリアス帝 ? |
チーグル | 精霊の封印地から戻っていたのか、デミトリアス帝。 |
デミトリアス | ああ。マクスウェルは捕らえられなかったがね。 |
デミトリアス | ところでチーグル――いや、ビフレストの黒き虎ドンナー卿とお呼びした方がいいかな。 |
チーグル | ……セールンドに敗北した私に気高きドンナー家の名は似合わないからね。チーグルで結構。 |
デミトリアス | 失礼した。あなたやビフレストの方々の気持ちはわかっているつもりだ。 |
デミトリアス | 故に、メルクリアにも自由を与えたしビフレストの皇国の復活も帝国の目的の一つとした。 |
デミトリアス | だが……コーキスが誕生し、イクスが自由になった今あまり悠長なことも言ってはいられない。 |
デミトリアス | ティル・ナ・ノーグがニーベルングと同じ過ちを犯さぬように、あらゆる手を尽くす必要がある。それが非道であったとしても。 |
チーグル | 私たちの望みは、世界の救済を前にしては小さいとでも言いたげだね。 |
エルレイン | 神の救済の前では、全てが矮小な事柄に違いない。 |
チーグル | 何…… ! |
エルレイン | だが、亡国の復活がお前たちの救済に繋がるというなら否定するつもりはない。 |
エルレイン | むしろ叶えてあげたいとすら思う。だが、この世界で私の力は大きな制限を受けているようだ……。 |
チーグル | きみは……ベルセリオス博士と一緒に具現化されたというエルレインか。 |
エルレイン | 具現化か……。私の奇跡の力が弱まっているのはその具現化とやらの影響のようだな。 |
エルレイン | こんなことは初めてだ。ここでの私の運命……私がここに作り出された意味は……一体……。 |
デミトリアス | きみの存在の意味はこの世界に救いをもたらすことだよ。いずれわかる。 |
デミトリアス | エルレインの奇跡の力に関しては新たに研究チームを立ち上げる。ジュニア、彼女を頼むよ。 |
ジュニア | ……は、はい。 |
デミトリアス | 精霊装に関してはレイカー博士とベルセリオス博士に一任した。メルクリアに預けていた四幻将とその配下は帝国で吸収しよう。 |
デミトリアス | 既に黒衣の鏡士の元へ走った者もいるし再編は不可欠だろう。 |
デミトリアス | 私もようやくこの体が馴染んできた。いや……本来の姿を取り戻したのに馴染んだというのもおかしな話だがね。 |
デミトリアス | とにかく、これで私も自由に動けるようになった。やっとラグナロクに立ち向かえる。 |
デミトリアス | 詳しい話は作戦会議室で行おう。サレとハスタも呼んである。 |
メルクリア | ――お待ち下さい、義父上 ! |
ジュニア | メルクリア ! ? 起きて大丈夫なの ! ? |
メルクリア | 大丈夫じゃ。メイドたちが義父上のことを話していたからいても立ってもいられなくなって……。 |
デミトリアス | メルクリア。無理はしない方がいい。 |
メルクリア | 義父上……。四幻将を取り上げないで下され。わらわには兵が必要です。兄上様を二度も殺したあの鏡士を倒すために ! |
チーグル | メルクリア様……。 |
ローゲ | はーっはっはっはっ !それでこそビフレストの皇族よ !見直しましたぞ、メルクリア様 ! |
デミトリアス | ……わかった。悪いようにはしない。だが今は部屋で休んでいなさい。いいね、メルクリア。 |
メルクリア | ……きっと、きっとじゃぞ、義父上 ! |
キャラクター | 4話【1-7 ひとけのない森林3】 |
ガイ | ――さて、こちらキール研究室。俺は進行役のガイだ。各自部屋に待機してると思うけど魔鏡通信は届いているか ? |
エル | はーい ! こちらエルとルドガーの部屋。ちゃーんと届いてるよ。 |
カロル | カロル調査室とセキレイの羽もばっちり。 |
クレス | 道場の方も大丈夫だ。 |
ファラ | ファラ生活向上委員会もね。今、みんなで手分けしてお茶とお菓子配ってるから ! |
エドナ | あら、気が利くわね。さぁ、ティア、あなたも返事なさい。 |
ティア | あ、はい ! エドナ様のお茶会の準備は万全よ。 |
ガイ | その謎の集団で集まってるのかよ……。 |
エドナ | 何か言ったかしら、給仕。 |
ガイ | 誰が給仕だ ! えっと後は―― |
エステル | エステルの読書会も全員揃っています。 |
ガイ | そんなのまで出来てるのか……。ケリュケイオン組はどうだ ? |
クラトス | 聞こえている。進めてくれ。 |
ガイ | わかった。それじゃあ、早速始めようか。まずはイクスが動けるようになったことの報告からだ。 |
イクス | えっと、イクスです。初めましての人は初めまして。それから俺のために、みんな色々と力を尽くしてくれてありがとう。 |
イクス | まだ直接顔を合わせられていない人もいるから今ここで、改めて言わせて下さい。 |
イクス | えっと……。ミリーナ、コーキス……それに、みんな。――ただいま |
ほぼ全員 | お帰り、イクス ! |
イクス | ! ! |
ガイ | 泣くな泣くな。キールが横で目をつり上げてるぞ。 |
キール | 泣くのはコーキスだけで十分だ。 |
コーキス | うぅ……マスター……良かった……。 |
イクス | ご、ごめん ! ほら、コーキスも泣くなって ! |
コーキス | うん……。悪い……。なんか嬉しくてさ……。 |
ミリーナ | コーキス……。そうよね……。 |
カーリャ | カーリャも涙が……うううう ! |
ガイ | わかったわかった。ミリーナ、鏡精たちを頼む。イクス、進めてくれ。 |
イクス | わ、わかった。えっと……俺が魔鏡結晶の中に入ってからのことは、リフィル先生たちがまとめてくれた資料で把握した。 |
イクス | みんな、本当にありがとう。 |
イクス | それで今日は、この先のことについてみんなと相談していきたいって思ってるんだ。 |
イクス | ただ、バルドさんやカロル調査室、それに帝国から来てくれた人たちが持ってきてくれた情報もある。 |
イクス | だからまずは、これまでとこれからのことを新しい情報も交えて整理したいと思う。 |
イクス | 始めに、みんなが鏡映点としてティル・ナ・ノーグに来ることになってしまった原因から。 |
イクス | 知っていることもあると思うけど整理する意味で聞いて欲しい。 |
フィリップ | ここからは僕から話そう。誰よりもこの世界の『終わり』について詳しいからね。 |
フィリップ | 今はこの世界の暦で3238年だ。 |
フィリップ | デミトリアス陛下が復興を宣下したアスガルド帝国というのは、今から約1200年前――2010年に成立したと言われる古の帝国だ。 |
スタン | そんなに古い時代の国だったのか。 |
スレイ | もしかして今まで見つけた遺跡の中にはアスガルド帝国のものもあったかも知れないな。 |
ミクリオ | スレイ、やめろ。リフィル先生の目の色が変わった。 |
スレイ | あっ ! ? |
ガイ | あー、遺跡マニアはそっちで上手く対応してくれ。フィリップ。続きを頼む。 |
フィリップ | ああ。シャーリィの体を乗っ取っていたヨウ・ビクエはこのアスガルド帝国の初期に生まれた人物だ。 |
フィリップ | 彼女と関わりがあるアイフリードも同時期の人間ということになる。 |
ライラ | そんなに古い時代の人間がまだ生きているなんて……。天族や天使のようですわね。 |
ミトス | 人ならざる者になったのか人ならざる者の力を借りたのかってことだね。 |
フィリップ | デミトリアス陛下はアスガルド帝国を復活させヨウ・ビクエの体を確保しているらしい。この時代の何かを陛下は必要としていると言うことだ。 |
フィリップ | さて、時代はそれからさらに下る。アスガルド帝国が分裂、瓦解して、小国が乱立する時代があった。やがて残ったのがセールンド王国とビフレスト皇国だ。 |
フィリップ | 二国間で終戦協定が結ばれたのが、3113年。しばらく二国間の関係は平穏だった。 |
フィリップ | だが、キラル分子と呼ばれるエネルギーの発見と利用法を巡って対立するようになってしまった。 |
ミリーナ | キラル分子というのは私たちの世界のエネルギーの元になる粒子なの。鏡士も具現化の際にキラル分子を使用しているわ。 |
ミリーナ | 性質やあり方は違うけれど、ユーリさんたちの世界のエアルや、クレスさん、ロイド、ジュードさんたちの世界のマナ、ルークさんたちの世界の音素(フォニム) |
ミリーナ | ……のようなものかしら。 |
フィリップ | そして魔鏡戦争が勃発した。きっかけはビフレスト皇国がセールンド王国のオーデンセ島を襲ったこと。 |
フィリップ | オーデンセは鏡士の故郷で、セールンドの鏡士と鏡精を忌み嫌っていたビフレストにとっては恰好の目標だった……と聞いている。 |
フィリップ | この当時、僕もミリ……ゲフィオンもまだ若くて国の上層部で何が行われていたかは知らなかったんだ。 |
フィリップ | ……そしてこのオーデンセ襲撃で最初のイクスが命を落とした。 |
イクス | ……その時の俺―― 一人目のイクスの遺体を何故かビフレストは持ち帰り保管していた。それでナーザが使っていたんだな。 |
カイル | ……あれ ? 揺れてる ? 地震かな ? |
ジューダス | このアジトで地震が起きる訳がない。アークからの呼び出しか ? |
ミリーナ | ――いえ、違うわ。何かがおかしい……。私、ちょっとアジトの具現化に支障が出ていないか見てくるわ。 |
ミリーナ | イクス、コーキスを連れて行ってもいいかしら。 |
イクス | ああ、もちろん。俺も行こうか ? |
ミリーナ | いえ、イクスはここで話を進めていて。カーリャもここに残って仮想鏡界を維持していて。 |
カーリャ | はい ! |
フィリップ | マーク。きみも一緒に行ってあげてくれ。鏡精の中では一番年長だろう ? |
マーク | 人を幼稚園児みたいに言うのはやめてくれっつーの。まぁ、いいぜ。アジトの様子がおかしいのは確かだ。 |
ミトス | ボクも行くよ。ちょっと気になる。クラースならわかるよね。 |
クラース | ……ああ。精霊……の気配のようなものを感じる。しかしミトス、何故お前にそれがわかったんだ ? |
ミトス | ……どうやらボクが具現化された時の状況が影響しているみたい。ボクはまだ【オリジン】と契約したままなんだよ。 |
ロイド | そうか……。そういえばミトスは元の世界でオリジンにエターナルソードを作ってもらったって……。 |
ミラ=マクスウェル | ……四大からも妙な気配がすると言ってきている。私もミリーナと行こう。エミル、セルシウス、共に来てくれるか ? |
エミル | わ、わかったよ。 |
セルシウス | ……何だか嫌な予感がするわ。急ぎましょう。 |
ミトス | クラースも来て。人間でも召喚士なんだから、役に立つでしょう。 |
クラース | 当然だ。 |
イクス | わかった。それじゃあ、みんな、よろしくお願いします。コーキス、気をつけて行けよ。 |
コーキス | ああ、ミリーナ様もみんなもちゃんと守るからマスターは安心してそこで待ってろよ ! |
キャラクター | 5話【1-8 ひとけのない街道1】 |
エルダ | メルクリア。そなたはビフレスト皇国に生まれた知の象徴。ダーナの揺り籠を護るために生まれた知の乙女。 |
エルダ | セールンドの悪魔共に心を許してはならぬ。 |
メルクリア | (……母上様…… ? ) |
エルダ | そなたはいずれビフレスト式魔鏡術を極めビフレスト皇国を繁栄させる筈じゃった……。それこそが知の乙女たるそなたの宿命じゃった……。 |
メルクリア | (……で、でも、母上様。わらわは――) |
エルダ | ゲフィオンめ ! 我が皇国を辱め、滅ぼした悪魔 !カレイドスコープを生み出し、私の可愛いウォーデンもあの悪魔が殺した……。 |
エルダ | おぞましき鏡精を生み出す破戒者共。許さぬ……許さぬぞ…… ! |
メルクリア | (母上様……わらわは嫌じゃ……。母上様とずっと一緒に……) |
エルダ | 呪う……呪うてやる…… ! セールンドに滅びを !我が皇国に再び命の光を ! |
エルダ | 許さぬ……ふふ……許さぬ…… !死の砂嵐はダーナの天罰じゃ。わらわもこの身をダーナに捧げ、奴らに呪いを―― |
メルクリア | ……ゆ……め………… ? |
ジュニア | ……大丈夫 ? |
メルクリア | ……ジュニア、か。 |
ジュニア | また、あの夢を見たの ? |
メルクリア | ……そうじゃ。母上様がわらわを置いて逝ってしまった日の夢じゃ。 |
メルクリア | あの時はまだ母上様が仰ることを何一つ理解していなかったが……。 |
メルクリア | もしも今ほどの知識があれば……。いや、結局母上様はわらわを置いて逝ってしまわれた。 |
メルクリア | みんな……わらわを置いていく……。わらわを独りぼっちにする。ジュニアもそうであろう。そなたはビクエの三人目じゃ。 |
ジュニア | 僕は……――僕も捨てられちゃったから……。 |
メルクリア | …………そうか。 |
メルクリア | ――――ん ? 何じゃ、この妙な空気の振動は……。 |
ジュニア | 仮想鏡界が揺らぎ始めてる…… ? |
メルクリア | ファントムを連れて行かれたからか ? |
ジュニア | ううん。僕がいるからそれはない筈だけど……。ちょっと仮想鏡界の様子を見てくる ! |
フィリップ | ――アジトのことは気になるけれどひとまずミリーナたちに任せて僕たちは話を進めようか。 |
フィリップ | 魔鏡戦争勃発後のことはみんなもそれなりに知っているね。 |
フィリップ | ミリーナと僕は最初のイクスの仇を討つために王立魔鏡研究所に入り、イクスの亡くなったご両親の研究を引き継いで、カレイドスコープを開発した。 |
フィリップ | カレイドスコープは魔鏡戦争の切り札となってビフレスト皇国を壊滅。戦争はセールンド王国の勝利で終わった。 |
フィリップ | この時終戦協定が結ばれて、ビフレスト皇国の皇后エルダと皇女メルクリアが人質としてセールンドに連れてこられたんだ。 |
カイウス | メルクリアは人質だったのか ! ?そんな風には見えなかったけど……。 |
シング | うん、すごく自由にしていたしデミトリアス陛下とも親しそうだったよ。 |
フィリップ | それは……エルダ皇后が亡くなられた後デミトリアス陛下がメルクリアを義理の娘として育てると仰ったからかも知れないね。 |
リッド | 皇后が亡くなったって……病気か何かか ? |
フィリップ | ……自害された。錯乱されて……メルクリアと無理心中をしようとしたんだ。 |
フィリップ | メルクリアは助かったけれどエルダ皇后はそのまま息を引き取った。 |
ルーティ | ……なんてことを。 |
フィリップ | ――きっかけは死の砂嵐だった。終戦後しばらくしてカレイドスコープによる消滅の反動から死の砂嵐が発生したんだ。 |
フィリップ | 世界の終焉を予測して絶望されたのか……エルダ皇后は自ら命を絶った。 |
フィリップ | 僕とゲフィオンは、世界の消滅を食い止めるためこの世界を護る防御壁であるアイギスを作ったんだ。 |
フィリップ | でもその段階で、既にこの世界はセールンドの周辺海域を除いて全てが消滅してしまった。 |
イクス | それで、大陸の具現化を始めたんだな。 |
フィリップ | ああ。まずは過去から大陸や人々を具現化していった。少しずつね。世界に全ての大陸と人々を具現化するのに8年を費やしたよ。 |
フィリップ | ただ過去へのアプローチといっても遡れるのはおよそ1年。範囲を狭めても10年が限界だった。 |
フィリップ | しかも現在との距離が離れれば離れるほど具現化は困難になる。だから僕らは死の砂嵐が発生する直前の過去から、世界を具現化することにしたんだ。 |
フィリップ | 世界の方はそれでどうにかなったけれど……。でも僕は――僕とゲフィオンはどうしてもイクスを甦らせたかった。 |
フィリップ | だから自分たちの記憶を経由する具現化を開発したんだ。これで10年の壁を突破した。 |
フィリップ | 僕とゲフィオンは3217年から二人目のイクスとミリーナを具現化して3237年のオーデンセに住まわせた。 |
フィリップ | これが今のミリーナと二人目のイクスだ。 |
フィリップ | この段階で島の人たちとイクスとミリーナの間に記憶のズレが発生してしまうはずだったけれどエンコードで調整を掛けることになっていた。 |
イクス | その口ぶりだと……エンコードは出来なかったのか ? |
フィリップ | 救世軍がアイギスを破壊してしまったからね。あとは……知っての通りだよ。 |
フィリップ | アイギスが破損して、オーデンセ島も過去から具現化した大陸も全て失ってしまった。二人目のイクスもね。 |
フィリップ | だから異世界からの具現化という手段に踏み切ったんだ。その為には……イクスの力が必要だった。 |
イクス | どうしてだ ? これだけのことをゲフィオンとフィルがやってきたなら俺の力なんて必要なかったんじゃ……。 |
フィリップ | カレイドスコープもアイギスも全てはイクスのご両親が残した魔鏡を元に作られているんだ。 |
イクス | この……俺が今使っている魔鏡 ? |
フィリップ | そう。それは三枚目だけれどね。不思議なことにその魔鏡は魔鏡だけを具現化して増やそうと思っても増やせないんだ。 |
フィリップ | イクスを具現化したときだけ一緒に具現化される。その魔鏡はイクスに合うように造られているんだよ。 |
フィリップ | そして異世界からの具現化を可能にするにはその魔鏡の力を最大限に引き出す必要があった。だからイクスの力が必要だったんだ。 |
イクス | それで三人目――今の俺が具現化された……。 |
フィリップ | ああ。マークがミリーナと二人目のイクスを見つけたときには二人目のイクスは……亡くなっていた。 |
フィリップ | だからゲフィオンは三人目のイクスを二人目のイクスの遺体とすり替えたんだ。 |
イクス | ……それで俺はゲフィオンに会いにいって……。大陸の具現化を始めた。ユーリさんたち鏡映点のみんなに出会って……助けられて、ここまで来た。 |
ガイ | ……これが今俺たちが生きているティル・ナ・ノーグの再誕史って訳だ。 |
キャラクター | 6話【1-9 ひとけのない街道2】 |
キール | ――みんなにティル・ナ・ノーグのたどった歴史を共有したのには訳がある。 |
リオン | 帝国の目的が、ティル・ナ・ノーグの古代史に関わりがあるからだな。 |
イクス | 俺がスタック・オーバーレイで、魔鏡結晶を世界中に生み出した前後のことをまとめてみた。 |
イクス | まずセールンド王国は、ゲフィオンの発案による異世界の力を借りた大陸の具現化を進めていた。 |
イクス | これを阻止しようとしていたのがファントムとあいつが支配していた救世軍だ。 |
イクス | この当時俺やミリーナは気付いていなかったけどセールンド王国と救世軍以外にさらに二つの勢力が存在していたことになる。 |
イクス | 一つはフィルやカノンノ――えっとイアハートが属していた勢力。仮にビクエ勢力とする。 |
イクス | そしてもう一つはメルクリアの勢力だ。彼らはファントムを通して救世軍に通じていた。 |
シング | ああ。オレやコハクやカイウスたちはメルクリアに……助けられた。まぁ、騙されてたんだけど。 |
イクス | みんなから聞いた話をとりまとめると、メルクリアは当初ファントムに協力していたのに途中からフィルの方へ鞍替えしたってことになる。 |
フィリップ | メルクリアにしてみれば、ファントムの目的である理想世界の具現化が、メルクリアの目的であるビフレスト皇国の復活に邪魔だったんだろうね。 |
フィリップ | ただ、メルクリアとファントムを結びつけたのはデミトリアス陛下の筈なんだ。 |
フィリップ | つまりデミトリアス陛下も、どこかのタイミングでファントムと協力することをあきらめた。 |
フィリップ | あの人は、ファントムに同情的だった。それが翻ったのは、何故か―― |
ヒルダ | ――ナーザが甦ったから、ね。私がアスター様に拾われた頃、ナーザらしき男がセールンドの城に出入りしているって話を聞いたことがある。 |
ヒルダ | 私が具現化されたのは魔鏡結晶が出現する前だから時期的にほぼ間違いないと思うわ。 |
フィリップ | ああ、僕もそう思う。ナーザからもたらされた情報によってデミトリアスは方針を転換した。 |
フィリップ | それまではゲフィオンの大陸具現化に協力しつつもファントムの理想世界の具現化が成功するならそちらの方がいいと考えていたんだと思う。 |
フィリップ | あの人はゲフィオンが犠牲になる世界の具現化には消極的だった。何か別の方法があるならその方がいいと考えていたようだからね。 |
イクス | ゲフィオン様が犠牲になることを気にかけていたデミトリアス陛下が、突然リビングドールなんて非道なことを許すようになった。 |
イクス | それはつまり、ナーザからもたらされた情報が強硬的にならざるを得ないものだったからだと思う。 |
スタン | 具体的には何だったんだ ? |
イクス | まだはっきりとはわからない。でもヒントはある。ダーナの予言と精霊だ。 |
ゼロス | どうよ、ケリュケイオンの状態は。 |
ガロウズ | ……おい、ミリーナたちとの会議に参加しなくていいのか ? |
ゼロス | そっちはクラトスとシンクが出てっから。難しい話はあの二人がまとめて教えてくれるだろ。 |
ガロウズ | 別に、俺に気をつかわなくてもいいぞ。 |
ゼロス | 俺さま女尊男卑をモットーにしてるからおっさんに気を遣う優しさは持ち合わせてねーけどな。 |
ガロウズ | ――シドニーはずっと死んでいた。今までのは、たまたま霊界と通信できちまってたってだけだ。 |
ゼロス | なるほど。 |
ガロウズ | ……ああ。 |
ガロウズ | ――で、ケリュケイオンだが、何とか飛ばすことはできそうだ。まぁ、どこかで本格的なメンテが必要になりそうだけどな。 |
ゼロス | なぁ、アイゼンの奴をこっちに引き込んでいいのか ? |
ガロウズ | ……まぁな。仲間はミリーナ達の下に残るんだし悩ましいところだが本人が協力するって言ってるからなぁ。 |
ガロウズ | それに海と空で勝手は違うだろうがでかい船の扱いに慣れてる奴が増えるのは助かる。 |
ゼロス | アイフリードのことが気になってるのかねぇ、あいつ。 |
ガロウズ | 俺たちの世界のアイフリードとアイゼンの世界のアイフリードは別人だからな。 |
ガロウズ | そこにこだわってるとは思えないがもしかしたら興味はあるのかも知れないな。 |
ガロウズ | 或いは、アイフリードがどうこうより魔の空域にあったあの石碑の件とか……。 |
ゼロス | その辺に興味示しそうなのってスレイ遺跡探検隊の連中ぐらいじゃねぇの ? |
ガロウズ | 何だ、そんな集団までできたのか ? |
ゼロス | いや、俺さまが勝手に呼んでるだけ。遺跡マニア友の会でもいいけど。 |
? ? ? | ………………。 |
ガロウズ | ――ん ? 何か変な音がしないか ? |
ゼロス | ……音っつーより、息か ? |
? ? ? | ……うぅ……。 |
ゼロス | ――な、何だ ! ? お前、血まみれじゃねぇか ! ? |
ガロウズ | お、おい……。あんた、大丈夫か ? |
? ? ? | ――黒衣の……鏡士に……。 |
ゼロス | ――何 ? |
? ? ? | 仮想鏡界が……危険だ……。 |
ゼロス | うおっと ! ? 倒れちまった ! ? |
ガロウズ | ブリッジに知らせる ! |
ゼロス | ついでに担架と助っ人を寄越してくれ。頭を打ってるとまずい。 |
キャラクター | 7話【1-10 アスガルド城1】 |
ジュニア | ――これは……。鏡震…… ? |
メルクリア | どうなっておるのじゃ ? |
ジュニア | 仮想鏡界は想像の力で鏡士の心の中を具現化する術だ。心は無意識で世界と繋がっている。 |
メルクリア | 集合的無意識じゃな。 |
ジュニア | そう。意識の奥に仮想鏡界で具現化する無意識の領域があり、そのさらに奥に存在する場所だ。だから仮想鏡界は世界と繋がっている。 |
メルクリア | つまり仮想鏡界はティル・ナ・ノーグの影響を受けやすいのじゃな。 |
ジュニア | うん。ティル・ナ・ノーグを支えているのはダーナと精霊だと考えると仮想鏡界は精霊の力に影響を受けやすい。 |
メルクリア | 義父上が精霊の封印地からお戻りになったことと関係があるのか ? |
ジュニア | デミトリアス陛下は、精霊の封印地へ空のマクスウェルを捕獲しにいった。そこで何かがあったはずだ。 |
ジュニア | それが仮想鏡界の存在を揺らがせているんだと思う。 |
メルクリア | ……待て。こちらの仮想鏡界が揺らぎ始めているなら黒衣の鏡士の仮想鏡界も揺らいでいる筈じゃな。 |
ジュニア | ――メルクリア、駄目だ。 |
メルクリア | そなたはフィリップの三人目じゃからな。だが、わらわは兄上様を苦しみの場所に追いやったあの者を決して許さぬ ! |
ジュニア | ミリーナは、そんなつもりじゃ―― |
メルクリア | だまれ ! |
メルクリア | ここが崩壊すれば、そなたもただでは済むまい。そなたはここで仮想鏡界を安定させなければならぬ。 |
メルクリア | わらわはわらわのしたいようにする。そなたはここで成り行きを見ているのじゃ ! |
ジュニア | メルクリア…… ! |
ミリーナ | ……みんな、待って。 |
ミリーナ | これ以上奥には行かない方がいいわ。見た目ではわからないかも知れないけれど仮想鏡界が消えかかってるみたい。 |
クラース | どういうことだ ?ミリーナの具現化に何か問題でも起きたのか ? |
ミリーナ | いえ……。私の力が衰えたとかそういうことじゃないみたい。 |
コーキス | ……なんか、寒気がする。 |
クラース | セルシウスがいるから……という訳ではなさそうだな。 |
セルシウス | わたしが普段からコントロールせずに冷気を発していたらこの仮想鏡界ごと氷漬けになってるわよ。 |
マーク | その寒気は、鏡精だけが感じてるものみたいだな。俺もさっきから震えが止まらねぇ。 |
マーク | 多分幼体の方がこの変化を感じ取りやすい筈だからカーリャパイセンが心配だな。 |
コーキス | パイセンのことをパイセンってゆーな !っつーか、何なんだ、これ ! ? |
マーク | 仮想鏡界のほころびから、何らかのアニマが流入してそいつに反応してるんじゃないかとは思うんだが……。 |
ミラ=マクスウェル | ……何だ ? 目眩がする……。 |
ミトス | ミラの顔色が真っ青だ。セルシウスはなんともないのに……。 |
ラタトスク | ……なるほど。わかったぞ。鏡精共がアニマだと言っているこの妙なエネルギー……。こいつは【マクスウェル】だ。 |
セルシウス | ――確かに。 |
セルシウス | ミラが傍にいるから区別が難しかったけれどこれはティル・ナ・ノーグのマクスウェルの……残滓ね。 |
コーキス | 仮想鏡界の綻びから、この世界のマクスウェルのアニマが流れてきているってことか ? |
セルシウス | 正確に言うなら、死んだマクスウェルの欠片……のようなものかしら。 |
ミラ=マクスウェル | ……微精霊……のようなもの……だろうか。そういえば……この世界のマクスウェルは……既に……。 |
ミリーナ | ミラ、ここはあなたにとって良くない場所なのかも知れないわ。みんなの下へ戻っていて。 |
ミラ=マクスウェル | しかし……。 |
ラタトスク | ……いや、ミリーナの言う通りだ。 |
ラタトスク | この世界のマクスウェルが生きているならともかく死んでいるとなると、同じマクスウェルであるお前はどんな影響を受けるかわからない。 |
ミラ=マクスウェル | ……わかった。 |
? ? ? | ラタトスク様 ! そこは危険です ! |
クラース | な、何だ ! ? 今の声は ! ? |
ラタトスク | テネブラエか ! ? |
ラタトスク | ――ミリーナ ! ゲートを開け ! |
ミリーナ | ここで ! ?仮想鏡界の状態が不安定なのに危険だわ ! |
ラタトスク | テネブラエがこの場所を危険だと言ってるんだ。いいから早くしろっ ! |
ミトス | ……ミリーナ。仮想鏡界を維持したままゲートを開くのはかなりの負担だと思うけれどやった方がいい。 |
ミトス | 外に出ればマクスウェルのアニマの正体もわかるかも知れない。それにテネブラエは信用できる。 |
ミリーナ | ――わかったわ。やってみる。でも、どこへ続くゲートを開けばいいの ? |
ラタトスク | テネブラエ ! どこだ ! |
テネブラエ | ケリュケイオンなる船の近くです。 |
ミリーナ | 了解よ。今ケリュケイオンがある場所に一番近いところへゲートを開くわ。 |
クラース | ミラはイクスたちのところへ戻って状況を説明しておいてくれ。マーク、コーキス、君たちは―― |
マーク | ――ミラを送っていくんだろ ? 任せとけ。 |
コーキス | ええ ! ? 俺はミリーナ様を守らないと―― |
セルシウス | そんなに震えている状態で何を言ってるの。あなたもみんなのところに戻るのよ。 |
ミリーナ | コーキス。イクスとカーリャをお願い。私はみんながいるから大丈夫よ。 |
コーキス | ……わかりました。 |
ミリーナ | さあ、ゲートを開くわ ! |
クラース | ここは……ケリュケイオンの着陸地点より南の街道かな。 |
セルシウス | とりあえずケリュケイオンを目指せばいいのよね。行きましょう。 |
キャラクター | 8話【1-13 静かな街道1】 |
ミリーナ | ここまで来る間、特に仮想鏡界に影響を与えていそうなものは見当たらなかったわね。 |
セルシウス | マクスウェルの残滓も感じなかったわ。 |
ラタトスク | となると、あいつに聞くしかないな。 |
ラタトスク | ――おい、テネブラエ ! どこだ ! ? |
テネブラエ | ――こちらです。ラタトスク様。 |
セルシウス | ……センチュリオン、ね。ミトスの世界に存在する、大樹の精霊の尖兵。 |
クラース | 精霊、ではないのか ? |
テネブラエ | はい。我々はラタトスク様の手足となって魔物たちを統べ、マナを循環させる役割を持つ生命体です。 |
ラタトスク | いつ具現化した ? |
テネブラエ | ラタトスク様と一緒に。ですが、力が極端に弱まっており、今まで眠りについておりました。 |
テネブラエ | ある人物の協力で、ようやくラタトスク様の下に戻ることができた次第です。 |
テネブラエ | それにしても……まさかミトスさんと一緒におられるとは。仲直りなさったのですね。良かったです。 |
テネブラエ | このテネブラエ、お二人が仲違いされたことを心配して夜も10時間しか眠れぬ日々を過ごしておりました。 |
クラース | しっかり寝ていたんだな……。 |
ミリーナ | ふふ♪案外お茶目な性格なのね、テネブラエさんって。 |
テネブラエ | はい、イケてるお茶目とよく褒められます。いやーまいりますな。はっはっはっ ! |
ミトス | 相変わらずだね、テネブラエ。 |
テネブラエ | いえいえ、ミトスさんもお変わりなく。 |
ラタトスク | そんなことはどうでもいい !さっきの話はどういうことだ。仮想鏡界が危険だとか何とか……。 |
ミリーナ | そうだわ。私の仮想鏡界は確かに不安定になっているけれど、原因を知っているの ? |
テネブラエ | はい。この世界の始まりと終わりが混在する場所――精霊の封印地についてご存じでしょうか。 |
クラース | いや……初耳だが……。 |
テネブラエ | そうですか。精霊の封印地とは、この世界を生み出した精霊たちが封印されている場所だそうです。 |
テネブラエ | そこにはこの世界の核であるダーナの心核が収められています。 |
ミトス | ダーナ……。女神の心核 ?女神の心が具現化されて置かれているってこと ? |
テネブラエ | ええ。その心核が破損しました。ダーナの心核はこの世界の心そのものです。 |
クラース | それはこの世界の心核が傷ついたということか。 |
ミリーナ | それで世界と集合的無意識で繋がる私の心にも影響が出て、私の心の具現化でもある仮想鏡界に不具合が発生した…… ? |
ミリーナ | ! ? |
ミリーナ | う……うぅぅぅぅ……。 |
テネブラエ | まずい !この女性の心が軋んで悲鳴を上げています ! |
クラース | 仮想鏡界に何かあったのか ! ? |
ミトス | 待って。今、アジトに連絡を取る。 |
ミトス | クラース、ケリュケイオンの中に入ってクラトスたちにも話を聞いてみて。魔鏡通信で会議に参加していた筈だから。 |
クラース | 承知した ! |
カーリャ | さむぅぅぅぅぅ ! |
イクス | カーリャ、どうしたんだ ? |
カーリャ | なんか急に寒気が……。いつものぶるぶるとも違いますし、何なんでしょう。 |
ガイ | 風邪でもひいたのか ? |
カーリャ | そうじゃなくて急にぞぞぞって……。 |
イクス | ミリーナに何かあったのかな ? |
フィリップ | 連絡してみた方がいいかもしれないね。 |
キール | また揺れた…… ? 一体何が起きてるんだ……。 |
フィリップ | ……集合的無意識からの干渉かも知れない。 |
イクス | え ? |
フィリップ | 心というのはね、無意識で世界中の人々や世界そのものと繋がっているんだ。 |
フィリップ | ここはミリーナの無意識の一部を具現化した場所だからね。無意識で繋がった他の人や世界から干渉されやすい。 |
フィリップ | もっとも、人が人の心に干渉するというのはとても難しいことだから誰かがというより何かがというべきだと思う。 |
ミラ=マクスウェル | その……通りだ。今回は……精霊の干渉があったらしい……。 |
イクス | ミラ ! ? 顔色が悪いけど、どうしたんだ ? |
ミラ=マクスウェル | いや、私のことはいい……。それより……この仮想鏡界そのものが危険な状況だ。 |
ガイ | どういうことだ ? |
カーリャ | ふぁ――っ ! ? |
イクス | カーリャ ! ? |
コーキス | カーリャ先輩、どうした ! ? |
カーリャ | 仮想鏡界がほどけてますぅぅぅぅぅ ! ? |
ジューダス | どういうことだ ! ? |
マーク | 物置の方の仮想鏡界が不安定になってたんだ。マクスウェルの影響じゃないかって話だったんだがまさかそこから仮想鏡界が消えかかってるのか ? |
カーリャ | そ、そうです !しかも何かが侵入してきているようなんです ! |
カーリャ | カーリャはここを維持するのに集中します !侵入者を何とかして下さい ! ! |
フィリップ | まずい……。このままもし仮想鏡界が崩壊したら僕らはみんなミリーナの深層意識の中に閉じ込められてしまう。 |
フィリップ | それだけじゃない。僕らという異物のせいで、ミリーナの心が崩壊するぞ。 |
イクス | えっ ! ?だったら、みんな、アジトから一旦外に出ないと―― |
ミラ=マクスウェル | ――もう……遅い ! 何かが来る ! |
キャラクター | 9話【1-14 静かな街道2】 |
メルクリア | ……見つけたぞ。黒衣の鏡士の仮想鏡界を ! |
コーキス | メルクリア ! ? どうやってここに ! ? |
メルクリア | 世界の綻びが仮想鏡界を揺るがせているのじゃ。今ならば、黒衣の鏡士を生きる屍にしてやれる ! |
コーキス | やらせるかっ ! |
コーキス | 消えた ! ? |
イクス | コーキス、そいつはまやかしだ ! |
コーキス | ! ? |
メルクリア | ……そなたは冷静なのじゃな。確かにわらわは幻、本体は別の場所にいる。 |
フィリップ | むしろ、幻体であるからこそ綻びの生じた他人の仮想鏡界に侵入できたんだ。 |
メルクリア | 心を壊すには心をぶつけるしかない。わらわが内側から、黒衣の鏡士の息の根を止めてやる ! |
ガイ | 光魔かっ ! ? |
キール | しかもこの狭い場所に何匹も出してこられると戦うにも戦えないぞ ! |
マーク | こいつも幻なら、始末のしようがないな。 |
スタン | おい、俺たちのところにも光魔が現れたぞ ! ? |
クレア | こちらにも光魔が ! ? |
ミラ=マクスウェル | アジト中に光魔が出現しているのか……っ ! |
メルクリア | あははははっ ! 幻の光魔は、仮想鏡界を――黒衣の鏡士の心を傷つけ、破壊できる。しかしそなたたちは幻の光魔に傷一つつけられぬ ! |
メルクリア | そこで黒衣の鏡士の精神が死ぬところを指をくわえてみているがいい ! |
シング | みんな、持ちこたえて !オレたちのソーマなら光魔に攻撃が効くみたいだ。ヒスイとコハクと三人で光魔を片付ける ! |
メルクリア | ……ソーマか。確かにソーマなら幻の光魔を傷つけることができような。じゃが、無駄だ。たった三人でこれだけの数の光魔を始末できるものか ! |
メルクリア | よしんばできたところで、倒し終わる頃には黒衣の鏡士の心は壊れているだろう !行け ! 光魔 ! |
コーキス | くそっ ! こっちのダメージが効かない !どうすれば―― |
フィリップ | イクス ! 具現化だ ! |
イクス | え ! ? |
フィリップ | 光魔の幻体に実体を与える。具現化するんだ ! |
イクス | こ、こんなにたくさん ! ?しかもここからじゃ見えない場所にもいるのに ! ? |
フィリップ | 僕も協力する。 |
フィリップ | 仮想鏡界は心の中であり、心の中は概念の世界だ。実体を与えることはそれほど難しくない。光魔が実体化すれば、みんなが光魔を倒してくれる ! |
イクス | ――わかった ! |
イクス | (大丈夫。落ち着け。まずはオーバーレイで基礎魔鏡力を上げるっ ! ) |
メルクリア | な……何じゃ ! ? |
マーク | お、おい、フィル ! ?こいつはオーバーレイ暴走じゃないのか ! ? |
フィリップ | いや……違う。暴走じゃない。これはイクスの力が無限増殖している―― |
メルクリア | ――なっ ! 体が……融ける……っ ! ? |
ミトス | 駄目だ……。アジトと連絡が取れない。 |
クラース | 大変だぞ !アジトがメルクリアに襲撃されているらしい ! |
ガロウズ | クラトスたちの話だと、光魔に襲われたところで通信が完全に遮断されたらしい。 |
ガロウズ | まずいぞ。もしこのまま仮想鏡界が消滅するとアジトの連中はミリーナの心に閉じ込められたままになっちまう。 |
ミトス | ゲートに戻ったとしてもミリーナが気を失っていたらゲートは開かない……。シングたちもアジトの中か……。くそ ! |
テネブラエ | ま、待って下さい。何か得体の知れないものが集まってくるような感覚が……。 |
クラース | おい ! あれを見ろ ! 空に何かが見える ! |
ラタトスク | 蜃気楼…… ? いや、違うな。何かが具現化している ? |
ガロウズ | ……大陸…… ? |
セルシウス | そうだわ……。空に大陸が出現している…… ! ? |
ミリーナ | ……うぅ……。 |
セルシウス | ミリーナ ! 大丈夫 ? |
ミリーナ | ……え、ええ……。あそこへ……あの大陸へ向かって。あれは……イクスとフィルが創り出した空中大陸よ。 |
ミリーナ | 私にはわかる。あれは……仮想鏡界のアジトに実体を与えた物なの…… ! |
キャラクター | 10話【1-15 静かな街道3】 |
キール | ……死ぬかと思ったが、何とか光魔を倒せたな。 |
マーク | ああ、これで実体化した光魔共はあらかた片付けた。それにしてもこの状況は……。 |
マーク | 何がどうなってやがるんだ ?アジトに【外】ができてやがるじゃねぇか……。 |
フィリップ | ……イクス。大丈夫かい ? |
イクス | ……あ、ああ。なんか、すごく疲れたけど……何とか大丈夫。 |
ファラ | ねぇ、何がどうなってるの ?窓の外の景色が一変してて……。外に出られるなんて……。 |
リッド | ちょっと辺りを見て回ったんだがここは仮想鏡界じゃないよな ?この風の感じは外の世界と同じだ。 |
スタン | ここは空中にあるみたいだったぞ。 |
マーク | 空中 ! ? |
ミラ=マクスウェル | 空に浮かぶ島という感じだろうか。少し先に行くと、崖があって、雲の下に海が見えた。四大もここが空中に浮かぶ島だと告げている。 |
スタン | どうなってるんだ ? アジトがあったのは現実とは違う空間ってことだったよな。それがどうしてこんな空中に浮かぶ島になってるんだ ? |
フィリップ | ……多分、イクスの創造の具現化の力の作用だ。力が強すぎて、光魔だけじゃなくてミリーナの仮想鏡界にまで実体を与えてしまったんだよ。 |
フィリップ | 本来ならカレイドスコープの力を借りないと成し得ない陸地の――島の具現化をイクスは行ったんだ。 |
イクス | 俺が……島を具現化した…… ? |
フィリップ | もちろん、代償はあったけれどね。 |
コーキス | うわぁぁぁぁ ! ? なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁ ! ?俺、縮んでる ! ? |
カーリャ | ど、どういうことですか ! ? |
キール | イクスの力が弱まったのか ! ? |
フィリップ | さすがキール。その通りだよ。 |
フィリップ | イクスが光魔を――いや、実際には島を具現化したんだけれどその時に限界まで力を使い切ったんだ。 |
フィリップ | それでコーキスを具現化する力が弱まったんだよ。大丈夫。少し休めばコーキスも眼帯姿に戻れる。 |
コーキス | いや、眼帯は邪魔なんだけど……。 |
ミリーナ | イクス ! すごいわ ! ケリュケイオンでこの島の上空を飛んでみたの。この島の形……オーデンセにそっくりなのよ ! |
イクス | え ! ? じゃあ、俺、光魔を具現化しようとしてオーデンセを具現化したのか…… ? |
フィリップ | いや、オーデンセをモチーフにアジトを具現化したんだと思う。仮想鏡界と違って、現実世界に建物を具現化しようとしたら大地が必要だからね。 |
フィリップ | 光魔を具現化しようとして、アジトまで具現化しアジトを置く場所が必要だから、オーデンセ島をモチーフに浮島を作りだしたんじゃないかな。 |
フィリップ | ……脱帽するよ。こんなこと……僕にもできない。 |
イクス | え、でもフィルが協力してくれたからじゃないのか ?俺一人の力でこんなことできる訳ないし。 |
フィリップ | いや、僕は少しフォローしただけだよ。 |
ファラ | ……ねぇ、ミリーナ。どうしたの、その服。泥だらけだよ。 |
ミリーナ | あ……。ちょっと外に出たときに……。――ごめんなさい、すぐ着替えるわ。 |
イクス | あ ! |
ミリーナ | な、何 ? |
コーキス | あ、そうか。アレだな ! |
カーリャ | アレですね ! |
ミリーナ | ――ちょっと待って。コーキス、あなたどうしたの ! ? |
コーキス | まぁまぁ、俺のことは後で話すから。さ、マスター ! |
イクス | うん。あ、あの、着替えるなら俺の用意した服に着替えてくれないかな。 |
ミリーナ | え ? |
カーリャ | じゃじゃーん。この服でーす ! |
イクス | その……俺、微妙に背が伸びたりしてミリーナがわざわざこの服を仕立ててくれただろ。 |
イクス | 実はミリーナが服を仕立ててくれてるって少し前にカーリャたちから聞いててさ。俺も……なんかお返ししたいなって。 |
イクス | その服、具現化じゃないんだ。ファラたちに協力してもらって、デザイン考えてさみんなで作ったんだよ。 |
イクス | 俺も下手だけど、ちょっとだけ縫ったりしたんだぜ。 |
ファラ | うん。みんなで話してたの。ミリーナ、そろそろその黒い服とお別れしてもいいんじゃないかなって。 |
ミリーナ | ……ありがとう。 |
イクス | 迷惑だったか ? |
ミリーナ | ……ううん。そうよね。私……もうこの服にお別れした方がいいのかも知れない。 |
ミリーナ | イクスやみんなが作ってくれた服だもの。大事に着させてもらうわ ! |
テネブラエ | ……えー、大変いいお話のところ恐縮なのですが。 |
ミリーナ | ――あ、そうね。みんなに紹介したい人がいるの。 |
ミリーナ | 彼はテネブラエさん。そしてこちらに歩いてくるのが――ヴィクトルさん。 |
スタン | あ、あんたはあの時の !……っていうか、どうしたんだ、その傷は ! ? |
テネブラエ | ……ヴィクトルさんは私とミラさんを守るために怪我を負われたのです。 |
ヴィクトル | 私はバルドの協力者として、帝国の動きを調べていた。表に出てくるつもりはなかったが、事情が変わった。 |
クラトス | ヴィクトルは救世軍への合流と共闘を持ちかけてきた。私は受け入れようと思っている。フィリップ、構わないだろうか。 |
フィリップ | ええ。あなたたちがそう判断したのなら、僕は構いません。 |
クラトス | 彼の話はお前たちも聞いておいた方がいい。 |
イクス | わかりました。 |
イクス | ――コーキス、カーリャ。悪いけど、二人でアジトのみんながどうなっているか確認してきてくれ。 |
マーク | 俺も行くわ。ちびっ子二人じゃ心配だからな。 |
カーリャ | ムムム ! ? 馬鹿にしないで下さい ! |
コーキス | 自分はでかいままだからって威張るなよな ! |
マーク | はいはい、悪かった悪かった。それじゃ、行くとしようぜ。 |
ファラ | わたしはクレアたちと一緒にアジトの片付けをしてくる。リッドも来てくれるよね。 |
リッド | そう言われると思ったよ。まぁ、ややこしそうな話はキールの方が向いてるだろうしな。 |
キール | ああ。任されてやる。 |
クラトス | ヴィクトル、座るか。 |
ヴィクトル | いや、このままでいい。 |
ヴィクトル | どこから話せばいいか―― |
テネブラエ | ここにいるミラさんとは違うもう一人のミラさんのお話からがいいのではないでしょうか。 |
ミラ=マクスウェル | ! ? |
ヴィクトル | ……ああ、そうしよう。ミラが……自分の命と引き替えにこの世界を支えてくれているという話から、な。 |
| to be continued |
キャラクター | 1話【2-1 精霊の封印地への道のり1】 |
ヴィクトル | ルドガーと共にいる君たちなら今更説明するまでもないだろうが私の世界には正史と分史という概念がある。 |
ヴィクトル | この世界に具現化された私はまずこの世界が分史世界であることを疑った。 |
ヴィクトル | 調べを進めるうちにバルドと知り合いここが正史や分史とは何の関係もない別世界だと言うことを知った。 |
ヴィクトル | ここでは分史世界の人間であろうと正史と同じように存在できるのだと……。 |
ヴィクトル | だが、アスガルド帝国はこの世界に分史世界という概念を生み出そうとしていると知り私はやむを得ずバルドと協力することにした。 |
イクス | 分史世界という概念…… ?分史世界というのは並行宇宙のような物なんですよね。 |
ヴィクトル | 単なる並行宇宙とは違う。ある一族の血を引く者が望み生み出した可能性の世界だ。 |
イクス | ………………。 |
イクス | ――ミリーナ。話の途中だけど、着替えてきたら ? |
ミリーナ | え ! ? こんな大切な話をしているときに ! ? |
キール | そうだぞ、イクス。何を空気の読めないことを言ってるんだ ! |
クラトス | ……いや、汚れた服のままでは居心地も悪かろう。行きなさい。 |
ミリーナ | ……は、はい。 |
テネブラエ | 私もお供しましよう。この島の様子を見にいったラタトスク様のことも気になります。お話はヴィクトルさんに任せます。 |
カーリャ | はわわ、待って下さい、ミリーナさま ! |
ヴィクトル | ……優しいな。 |
イクス | ……ごまかしだってことはわかってます。でも今はミリーナにこの話を聞かせたくない。後で、俺からちゃんと説明します。 |
イクス | この世界は……ゲフィオンの生み出した分史世界のようなものだから。 |
キール | イクス……。 |
イクス | ヴィクトルさん。分史世界が誰かの願いによって生み出された並行世界なら、このティル・ナ・ノーグはどうして分史世界と定義されないんでしょうか。 |
イクス | 分史世界にあってこの世界にないもののために帝国は分史世界という概念を持ち込もうとしているんですよね。 |
ヴィクトル | なるほど……。君は賢いな。だが、この具現化世界と分史世界は決定的に違うことがある。 |
ヴィクトル | だがその前にここに至るまでの状況を話しておきたい。 |
イクス | わかりました。先走ってすみません。 |
ヴィクトル | ――では話を戻そう。アスガルド帝国は分史世界という概念をこの世界に生み出すにあたって精霊の力が必要であることに気付いた。 |
ヴィクトル | そして精霊を支配下に置こうとしてこの世界の精霊マクスウェルを殺してしまった。 |
ヴィクトル | だが、マクスウェルは必要不可欠な精霊だ。彼らは代わりのマクスウェルとしてミラを具現化した。 |
ミラ=マクスウェル | その『ミラ』というのは私ではない、もう一人のミラのことだな。 |
ヴィクトル | ……そうだ。今は……そうだな。分史世界のミラと呼んでおこう。 |
ヴィクトル | 分史世界のミラにこの世界のマクスウェルの残滓をキメラ結合させ、新たな精霊マクスウェルを作る。それがアスガルド帝国の目的だった。 |
ヴィクトル | 私はバルドに頼まれ、それを阻止するために分史世界のミラを移送していた馬車を襲撃した。 |
サレ | ……ま……さか……こんな……。 |
帝国軍兵士A | サレ様が負けた…… ! ? |
帝国軍兵士B | ど、どうする……。 |
ヴィクトル | …………。 |
帝国軍兵士A | 来るぞ ! ? |
ミラ | 待って ! |
ミラ | あなた……何者 ? それ、骸殻能力よね。 |
ヴィクトル | 私は――私はエルの父親だ。 |
ミラ | ! ? |
キール | エルの父親 ! ? あなたが ! ? |
イクス | だったら、今すぐエルをここへ―― |
ヴィクトル | 今はいい。こんな姿を見せて、エルを心配させたくない。 |
イクス | でも―― |
クラトス | イクス。ヴィクトルは怪我の治療を急ぐべきだ。今は最低限情報を共有させてやれ。 |
イクス | ……はい。 |
ヴィクトル | 私は分史世界のミラに何が起こっているのか説明をした。 |
ヴィクトル | そして一足先に、【精霊の封印地】へ向かって欲しいと告げたのだ。 |
キャラクター | 2話【2-5 精霊の封印地3】 |
イクス | 【精霊の封印地】と言うのは一体何なんですか。 |
ヴィクトル | 世界の――君たちの世界の始まりの場所だと聞いている。それを帝国が精霊の封印地と名付けた。 |
イクス | 始まりって……どういう意味でしょう。文字通りですか ? |
ヴィクトル | ああ。世界が生まれた場所、世界の始まりの場所だ。 |
コーキス | 世界ってどうやってできたんだ、マスター ? |
イクス | それは宇宙に漂う塵やガスが集まって――いや、待ってくれ。【この世界】は一度滅んでる。だから最初にフィルたちが具現化で世界を造った。 |
イクス | でもそれも壊されて、今度は俺とミリーナと鏡映点のみんなで少しずつ世界を具現化していった。だからこの世界の始まりは……。 |
コーキス | ん ?じゃあ、マスターとミリーナさまがこの世界の始まりか ? |
キール | いや、セールンドの周辺は死の砂嵐に飲み込まれずギリギリ残っていたんだよな。つまり、この世界の全てをイクスたちが具現化した訳じゃない。 |
ヴィクトル | そう。【精霊の封印地】はセールンド海域の小さな島に存在する、今では数少ない【異世界のアニマを借りていない島】だ。 |
ヴィクトル | そこは精霊が眠る場所、精霊の故郷だと言われている。そこでダーナと分史世界のミラを引き合わせるというのが、私とバルドが考えた帝国への対抗策だった。 |
ヴィクトル | 私はミラを助け出した後バルドとの約束を果たすためにセールンドへ向かった。 |
コーキス | あ…… ! マスターを助け出したときのことだな。スタンさまとリオンさまとヴィクトル……さまと俺でカレイドスコープの魔術障壁を消したんだ。 |
ヴィクトル | そうだ。その後のことは知っているな。君たちを逃がした後、私は精霊の封印地で分史世界のミラと合流した。 |
ミラ | ……遅かったわね。 |
ヴィクトル | 片付けなければならないことが多かったのでね。 |
ミラ | ………………。 |
ヴィクトル | どうした ? |
ミラ | 私たち、前にどこかで会ってる ? |
ヴィクトル | いや、君とは初めてだ。 |
ミラ | そう……。そうよね。私がエルのお父さんのことを知っている訳ないもの。変なことを聞いてごめんなさい。 |
ミラ | それで、ダーナはどこにいるの ? |
ヴィクトル | ――目の前に。 |
ミラ | まさか……この大きな結晶がダーナなの ! ? |
ヴィクトル | ――敵か ! |
ヴィクトル | 何だ、こいつは…… ! ? |
ミラ | テネブラエ ! |
ヴィクトル | こいつを知っているのか ? |
ミラ | ラタトスクとかいう精霊の眷属だと言っていたわ。私たちのように異世界から具現化されたって。 |
テネブラエ | ……二人とも、逃げて下さい。アスガルド帝国軍が来ています。 |
ヴィクトル | その怪我は帝国にやられたのか。 |
テネブラエ | ええ。この場所を守る精霊に封印を強化するように伝えました。あなた方も戦いに巻き込まれる前に―― |
? ? ? | 力を貸せ、マクスウェル ! |
テネブラエ | ぐぅぅぅぅっ ! ? |
ミラ | テネブラエ ! ? |
デミトリアス | 一足遅かったね、センチュリオン・テネブラエ。 |
デミトリアス | 具現化されたのは確かだったのにどこへ姿をくらましたのかと思いきや精霊の封印地に身を隠していたとは。 |
ヴィクトル | ……デミトリアスか。 |
ミラ | この世界の皇帝…… ! |
デミトリアス | なるほど。仮面の君がサレを傷つけたのか。あのサレに膝をつかせるとは大した手練れだ。 |
デミトリアス | だが、ミラは引き渡してもらうよ。この世界にはマクスウェルが必要だ。 |
ヴィクトル | ならば何故先ほどマクスウェルの力を使った ? |
ヴィクトル | ――まさか、精霊装が完成したのか ! ? |
デミトリアス | そういうことだ ! |
ミラ | あの指輪は、ルビアが無理矢理つけさせられていたマクスウェルの指輪 ! |
テネブラエ | いけません !あの指輪は精霊の生命エネルギーの結晶。あの力をこの場所で解放されてはダーナの心核が壊れる ! |
デミトリアス | そして、この精霊輪具の力をミラ=マクスウェルが取り込むことでこの世界の新しいマクスウェルが誕生する ! |
キャラクター | 3話【2-6 精霊の封印地4】 |
ミラ | く……。頭が……痺れる……。 |
? ? ? | 聞こえますか、異世界のマクスウェルであったものよ。 |
? ? ? | 私の力ではあなたを救い出すことは出来ません。ですが、あなたが力を貸してくれるならあなたを守ることはできます。 |
ミラ | どういうこと ! ? |
? ? ? | 私は心の精霊。ミラ、どうかダーナの心を繋ぎ止める楔となって下さい。 |
? ? ? | ダーナの心が壊れれば、この世界も崩壊する。 |
ミラ | ! ? |
? ? ? | 私にはわかります。 |
? ? ? | あなたはこの世界に具現化されてからずっとある人々のことを心にとめていることを。彼らとの再会を強く願っていたことを。 |
? ? ? | ですが、このままでは世界そのものが―― |
テネブラエ | くっ……。 |
デミトリアス | 亜精霊が、マクスウェルを跳ね返した、だと ? |
ミラ | ど、どうしてそこまでして私を守るの ! |
テネブラエ | 同じ属性の精霊であろうとあなたとこの世界のマクスウェルは別の存在。それを一つにするなど、無礼にも程があります ! |
ミラ | ! ! |
デミトリアス | センチュリオンを排除せよ ! |
帝国兵たち | 御意 ! |
テネブラエ | 今の私にはこれが精一杯です。二人とも、早く逃げて下さい ! |
ヴィクトル | あの程度の敵、私一人で充分だ。もう休んでいろ。 |
テネブラエ | この音は、ダーナの心核の崩壊の音―― |
ミラ | ……この場はヴィクトルに任せていいわね。 |
ヴィクトル | ? |
ミラ | 私はダーナの心核とやらを引き受けるから。 |
デミトリアス | ――そうか ! 兵士たちよ !マクスウェルを捕らえろ !彼女はダーナの心核へ【逃げる】つもりだ ! |
ヴィクトル | どういうことだ ! ? ミラ ! |
ミラ | ダーナの心核を守るために、私が楔になる。 |
ミラ | ヴィクトル、エルに伝えて。いつか必ず会いに行くって。そのときには私の作ったスープを飲んでねって。 |
ヴィクトル | ! ! |
テネブラエ | ミラさん……。 |
ヴィクトル | ――テネブラエ。下がっていろ。ミラに伝言を頼まれた。すぐに奴らを片付けて、エルの元へ行く ! |
デミトリアス | それは――浄玻璃鏡の力か !何故貴様がそれを持っている ! ? |
ヴィクトル | 私とエルが本物である世界を手に入れるために――貴様を排除する ! |
ヴィクトル | デミトリアスをあと一歩のところまで追い詰めたが取り逃がしてしまった。私もこの有様だ。 |
ヴィクトル | 帝国の奴らを追い払った後、ダーナの心核を確認したが私もテネブラエも、ある距離から近づくことすらできなくなっていた。 |
ヴィクトル | テネブラエの話では心の精霊ヴェリウスが守護を強めたのだそうだ。 |
イクス | それじゃあ、ダーナの心核には今分史世界のミラさんが融合した状態で崩壊を食い止めているんですね。 |
ミラ=マクスウェル | 私ではないマクスウェル……か。 |
キール | ん ? でもどうしてダーナの心核なんてものが精霊の封印地にあったんだ ? |
キール | ダーナはこの世界の太陽神の筈だ。神の心が具現化されて抜き出されているってことか ? |
キール | この世界における神というのは、【何】なんだ ?信仰の対象としての概念ではなく、実在するのだとして何故心だけが置かれているんだ。 |
ヴィクトル | ダーナは人神だ。 |
ミラ=マクスウェル | 元は人間、ということか。 |
イクス | 後世に神として崇められるようなことをした人……。 |
イクス | 待って下さい。世界の始まりの場所が精霊の封印地ならまさかこの世界を創造したのは神になる前のダーナってことですか ? |
キール | 待て。話が合わない。世界の前にダーナが……人が存在していたのか ?だとしたら、人は【どこから】来たんだ ! ? |
ミラ=マクスウェル | ……この世界の前に、世界があった、ということか。 |
イクス | ……あぁ……まさか、まさか……。 |
キール | ――馬鹿な。これを突き詰めて考えるとここは本当に死の世界になるぞ……。 |
ヴィクトル | そうだ。ここは鏡士ダーナが生み出した箱庭の世界。ダーナの心が創造の力で生み出した理想郷だ。 |
ヴィクトル | そしてダーナが暮らしていた世界ニーベルングは既に滅びた。ここはニーベルングの生き残りが世界の消滅から逃れるために生み出した閉じた箱庭だ。 |
イクス | それを……壊したり、具現化したりしてきたのか俺たちは……。最初の世界が消滅したことも知らないでこの世界が最初から具現化された世界とも知らないで。 |
キャラクター | 4話【2-7 ひとけのない森1】 |
クラトス | ……これで、今最低限共有するべきことは伝えられた。まだ話すべきことはあるがあとはヴィクトルを休ませてからにしよう。 |
クラトス | ヴィクトル、ひとまずケリュケイオンに戻るぞ。 |
ヴィクトル | ああ。 |
ヴィクトル | イクス。少し状況が落ち着いてからこの手紙をエルに渡して欲しい。 |
イクス | 直接伝えないんですか ? |
ヴィクトル | ……頼む。 |
イクス | ――わかりました。お預かりします。 |
クラトス | この島を具現化させたことで混乱している者も多かろう。そちらは情報収集にあたってくれ。 |
クラトス | 私はヴィクトルを休ませた後フィリップたちと状況を再整理する。 |
イクス | そうですね。俺も、この話をミリーナに伝えないと。 |
クラトス | では失礼する。 |
コーキス | なぁ、マスター。俺、よくわかってないんだけどこの世界の前に別の世界があったってことなのか ? |
イクス | ……ああ。信じられないけどでもそれなら納得できることもあるんだ。 |
キール | ティル・ナ・ノーグの外――本来宇宙空間である場所すらも、虚無になっていることだな。 |
イクス | ああ。ゲフィオンの仕業なのかと思っていたけどカレイドスコープのせいで虚無が発生したのなら虚無はカレイドスコープから外へと広がっていく筈だ。 |
イクス | 真っ先に消滅するのはセールンドじゃなければおかしい。でも実際はセールンドは残ってるだろ。 |
イクス | 多分、虚無とはニーベルングという世界が消滅した跡地で、その中にティル・ナ・ノーグという世界が造られたんだ。 |
キール | ああ。ぼくもそう思う。本来は虚無に飲み込まれないための防御機構が備わっていたんだろう。 |
キール | 或いはそれが精霊の封印地だったのかも知れない。だが、カレイドスコープによって防御機構が消失しティル・ナ・ノーグは外側から虚無に浸食された。 |
キール | 外側から浸食された場合この世界が球状の星なら、世界の全ての場所が一瞬で虚無に飲み込まれるのが普通なんだが……。 |
イクス | 何らかの力が働いてセールンド周辺は消滅せずに済んだ。 |
キール | ああ。そしてカレイドスコープによって生み出された死の砂嵐は虚無に漂い続けることになった。 |
コーキス | ……ってことは人間は何回も世界を壊してるってことか ? |
ミラ=マクスウェル | そうだな。その時々、携わった人間も事情も違うがここでは同じようなことがくり返されてきたのだろう。 |
ジェイド | ――ふむ、なるほど。無機物は問題なさそうですね。 |
ユーリ | ……何やってるんだ、ジェイド。 |
ジェイド | あなた……丈夫でしたよね。 |
ユーリ | は ? |
ジェイド | いえいえ、こちらの話です。ちょっと実験動物になってくれるとありがたいのですが。 |
ユーリ | 冗談は存在だけにしておいてくれ。 |
ジェイド | やはり断られましたか。 |
ユーリ | 何をさせるつもりだったんだ。 |
ユーリ | ――ん ? 何だこの蜃気楼みたいな穴は。 |
ジェイド | あなたの持っている魔鏡通信機で私の装置に繋いでもらえますか ? |
ユーリ | ……はーん。そういうことか。 |
ユーリ | ――よし。通信、繋がったぜ。 |
ジェイド | 何が見えます ? |
ユーリ | 木、だな。草と……空も。それに鳥がいる。 |
ジェイド | 危ない場所ではないようですね。少なくとも植物が自生できる場所なら危険度は下がる。あとは……。 |
ユーリ | 人間がここを通れるかってことか。そういうことなら試してみるか。 |
ジェイド | いえ、少し待っていて下さい。ここにはもう少し遠慮せずに実験の協力をお願いできる存在がいますから。 |
カーリャ | 何なんです、ワル眼鏡大佐。人を魔鏡通信で呼び出しておきながら返事も返してこないなんて。 |
ジェイド | あー、すみません。うっかり私の魔鏡通信機をそこの穴に落としてしまったものですから。 |
カーリャ | へ ? 穴 ? |
ジェイド | えい♪ |
ミリーナ | ちょっ ! ? カーリャに何を ! ? |
カーリャ | ぎゃああああぁぁぁぁぁ―― |
ユーリ | おいおいマジかよ。そりゃないだろう ! |
テネブラエ | カーリャさんが消えました ! ? |
カーリャ | ミリーナさまぁぁぁぁぁ ! ここどこですかぁぁぁ ! ? |
ミリーナ | カーリャ ! ? 大丈夫 ! ? |
ジェイド | ふむ、存在が消えないということはこの島……仮にアジト島としますが、アジト島からさほど遠くない場所に繋がっているということですね。 |
ミリーナ | どういうつもりですか ! ? |
ジェイド | いえ、いくつかの実験で、この穴がどこかと繋がっていることが確認できたので生き物も通れるのかと思いまして。 |
ジェイド | ああ、ご安心を。昆虫や鳥などで何度か実験は済ませていますのである程度の確証はあったのですよ。 |
ミリーナ | 丁寧な説明をどうも ! それで、どうやってカーリャをここへ戻すんですか ! ? |
ジェイド | カーリャ。近くに今通った穴と同じようなものはありませんか ? |
カーリャ | ほぇぇぇ ? あ、ありましたー ! |
カーリャ | ああああ ! ? 戻ってこられたー ! ? ! ?何すんだ、この性悪眼鏡 ! ! |
ジェイド | 元気そうで何よりです♪ ただ、ここがある種のゲートとして使えるのでしたら、この穴を通じて不審者が入り込んでくる可能性がありますね。 |
ジェイド | ミリーナ、あなたはこの話をイクスたちに共有しておいて頂けますか ?私は一旦この穴を使えないような手段を構築します。 |
ミリーナ | ……わかりました。でもその前に、カーリャに謝って下さい。 |
ジェイド | そうですね。申し訳ありませんでした。実験へのご協力、感謝しますよ。 |
カーリャ | ジェイドさまのばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁかっっっ ! ! |
ミリーナ | カーリャ。相手と同じ土俵に立ったら駄目よ。ほら、行きましょう。 |
テネブラエ | あの、ミリーナさん。私はもう少しここにいます。 |
ミリーナ | え ? ええ、わかったわ。エミルたちを見かけたら連絡するわね。 |
ジェイド | ユーリ、それに……。 |
テネブラエ | テネブラエ。センチュリオン・テネブラエと申します。ラタトスク様の眷属のようなものです。 |
ジェイド | なるほど。私はジェイド・カーティス。よろしければ名前の方で呼んで下さい。 |
ジェイド | まぁ、それはそれとしてお二人は何故ここに残っているんです ? |
ユーリ | 何、あんたがその穴を封じるところでも見せてもらおうかと思ってね。 |
テネブラエ | 奇遇ですねぇ。私もその点が非常に気になりまして。何しろあなたは、人間にしてはあまりに非情な心の持ち主です。 |
テネブラエ | その闇の心にシンパシーを感じます。ええ、私は闇属性なので。闇はいいものです。 |
ジェイド | 光属性の軍人を捕まえて、ひどい言い様ですねぇ。 |
ユーリ | 二人で漫談やってる場合か ? |
ジェイド | ……なるほど。私の邪魔をしないというならついてきても構いませんよ。 |
テネブラエ | いえ、そこは。 |
ユーリ | 保証できねぇな。 |
テネブラエ | おお、呼吸がぴったりではありませんか。その衣装も闇っぽくて実にいい趣味です。あなたも闇属性とお見受けしました ! |
ユーリ | 頼むから一緒にしないでくれ。 |
テネブラエ | 何と ! 闇差別ですか ! ? |
ジェイド | ユーリ、それはいけませんねぇ。あなたも相当に黒いのですから、受け入れて優しくしてあげればいいではありませんか。闇属性同士。 |
ユーリ | あんたにだけは言われたくねぇな……。 |
キャラクター | 5話【2-8 ひとけのない森2】 |
ミリーナ | イクス、みんな。ヴィクトルさんのお話、もう終わっちゃった ? |
ミラ=マクスウェル | ああ。ヴィクトルの容体があまり良くないようだ。ケリュケイオンに戻った。それと、ヴィクトルのことだが―― |
イクス | あ、いいよ、ミラ。俺から話す。ミリーナ、ヴィクトルさんから聞いた話を共有するよ。 |
ミリーナ | ………………。 |
カーリャ | あ、あの……。カーリャにはもう、何が何だか……。 |
コーキス | 駄目だな、パイセンは。要するに、アレだ。ニーベルングって世界があったけど、消滅しちゃうからティル・ナ・ノーグを造って引っ越ししたんだって。 |
コーキス | それが今のこの世界だ。 |
キール | コーキス。お前だって、さっきまでよくわからないって言ってただろ。 |
カーリャ | なーんだ。コーキスだってカーリャと同じだったんじゃないですか。 |
ミリーナ | ……ヴィクトルさんはどうしてそんなことを知っているのかしら。 |
イクス | バルドさんから聞いたんじゃないのか ? |
ミリーナ | でも……。それならバルドさんが私たちにその話をしてくれても良さそうなものだったのに。 |
ミラ=マクスウェル | 確かに、少し不自然だな。 |
キール | テネブラエなら情報源を知っているんじゃないか ?テネブラエはどうしたんだ ? |
ミリーナ | あ、そうだったわ。ジェイドさんが、この島から別の場所へ出られるゲートのようなものを発見したの。 |
ミリーナ | 恐らくあれはこの島が具現化されるときに私とカーリャが維持していた仮想鏡界と現実を結ぶゲートを具現化したものじゃないかと思うんだけど。 |
イクス | そうか。そんなものまで具現化してたのか……。自分でも信じられないや。 |
カーリャ | ひどいんですよ ! あの性悪ロンゲスト眼鏡 !カーリャを実験台にしたんです ! |
ミリーナ | そうなの。カーリャを使って、具現化されたゲートが人間も通れることを確認したのよ。 |
ミリーナ | それで、このままゲートを放置しておくと不審者が侵入する恐れがあるからゲートを閉じておくって言ってたわ。 |
ミラ=マクスウェル | 本当にゲートを閉じていいのか ? |
ミリーナ | え ? |
イクス | そうか。仮にここを今後の拠点にするとしてもいつまで浮いていられるのか、どうして浮いているのかわからない限りは不安だよな。 |
イクス | すぐに避難できるゲートは、そのままにしておく方がいいのかも知れない。それに食料の買い出しなんかの時も便利だろうし……。 |
ラタトスク | おい ! あの眼鏡、裏切ってるんじゃないのか ! ? |
イクス | また眼鏡…… ? それってジェイドさんのことか ? |
ラタトスク | 裏切りそうな眼鏡と言えばあいつしかいないだろうが ! |
ミラ=マクスウェル | そうだろうか。意外と善人そうな描写をされている人間の方が、真犯人であることが多いと推理小説完全解剖にも書かれていたが。 |
カーリャ | ジェイドさまはストレートに悪い奴ですよ !真犯人です ! 最初から疑わしい真犯人です ! |
アスベル | 裏切ってるかどうかはともかくジェイドさんがユーリとテネブラエさんという人と一緒に、この島を出たらしいんだ。 |
ミリーナ | ……やられた。私をイクスのところに行かせてその隙にゲートを使ったんだわ。自分が使うためにカーリャを利用して安全性を確かめたのね。 |
イクス | でもユーリさんが一緒なんだから、変なことは―― |
アスベル | ……すまない。こんなことは言いたくないんだがユーリは単独行動を好むところがあるように思う。 |
アスベル | それにどうも帝国への再侵入を計画していたらしい節もあるんだ。 |
イクス | ――あ、じゃあテネブラエさんが……。 |
ラタトスク | さんなんぞいらない。あのくそバカが。 |
ラタトスク | あいつは手負いなんだ。使役する魔物もいない。そんな状態であの戦闘狂と真犯人に勝手な動きをされて止めることができるかってんだ。 |
コーキス | アレ ? でもどうしてその三人が島を出たってわかったんだ ? |
イクス | テネブラエさんの声がラタトスクに聞こえたとか ? |
ラタトスク | いや、あの時はミリーナの仮想鏡界が崩壊しかかって思念のようなものが届きやすい環境だったからだろう。普通は近くにでもいなけりゃ、奴の声は聞こえない。 |
アスベル | どうもラピードとミュウが現場を見ていたらしい。テネブラエさんがミュウにこの状況を知らせるよう伝言したんだそうだ。 |
イクス | その絵面は、なんか和むな……。 |
ラタトスク | テネブラエのことが気になる。俺とアスベルとマルタで追いかけてみる。 |
イクス | あ、俺も行くよ。 |
アスベル | イクスはまだ病み上がりみたいなものだろ。 |
イクス | いや、大丈夫。少しは体を動かさないと。 |
ミリーナ | だったら私も行くわ。 |
アスベル | ――わかった。でも無理は禁物だからな。 |
イクス | うん、大丈夫だよ。 |
イクス | じゃあミラとキールは、他のみんなの状況を確認しておいてもらえるかな。 |
イクス | それとヴィクトルさんのことも含めてさっきの話はまだ伏せておいてくれ。 |
キール | そうだな。ぼくたちも状況を整理して飲み込んでからでないと説明が難しいし。救世軍側にもその旨知らせておこう。 |
ミラ=マクスウェル | 救援が必要ならすぐに連絡をくれ。 |
イクス | ああ、ありがとう ! |
キャラクター | 6話【2-12 ひとけのない森】 |
ユーリ | 生きてるみたいだな。 |
ジェイド | まぁ、アジト島がイクスによるミリーナの仮想鏡界の具現化なら、先ほどの穴はミリーナとカーリャが創り出していたゲートの具現化と推測できます。 |
ジェイド | 概ね問題はないことは予測できてはいましたが試してみないことにはわかりませんからね。 |
テネブラエ | ジェイドさん。そこに落ちている鏡はあなた用の通信装置なのでは ? |
ジェイド | おや、ありがとうございます。 |
ユーリ | しかし、ここはどこなんだ。見上げると少し先にアジト島が見えるってことはそんなに離れた場所じゃないだろうが……。 |
ジェイド | 地形と位置関係を確認すると……セールンドの外れではないでしょうか。 |
ユーリ | ……帝国へ行くには、ちっと遠いか。 |
ジェイド | おや、まだ諦めていなかったのですか ? |
ユーリ | デミトリアスってのに直接会った方が話が早いと思ってるだけさ。 |
ジェイド | まぁ、その点は同意ですがアスガルド帝国というのは色々と得体が知れませんからもう少し慎重になって頂けるとありがたいですねぇ。 |
ユーリ | つっても、このまま奴らの動きに合わせてオタオタしてても仕方ねぇぜ ? |
ジェイド | ええ、もちろんです。では、そろそろ移動しましょうか。 |
テネブラエ | やはり何かあるのですね。 |
ユーリ | 何するつもりかしらねぇが、ま、お手並み拝見といきますか。 |
テネブラエ | この街は…… ? 随分寂れていますね。 |
ユーリ | セールンドか。ここにはまだ帝国の連中がウロウロしてるんじゃねぇのか ? |
ジェイド | ええ、それでいいんです。 |
ユーリ | ――見つかったか ! |
帝国軍兵士 | しっ ! 大きな声を出すな。 |
テネブラエ | ……その声は ! ? |
ジェイド | おや、声で気付くとはさすがですね。 |
帝国軍兵士 | 何でテネブラエが……。まぁ、とりあえず場所を変えよう。そこの建物の中が安全だ。ついてきてくれ。 |
テネブラエ | ……あのおかしな香水の匂いがしませんがあなたはデクスですね。 |
デクス | ぷはー。やっとあの汚い服を脱げたぜ。よう、テネブラエ。異世界ってところでも顔を合わせるとはな。 |
テネブラエ | アリスはどこです。何か企んでいるのではありませんか ? |
デクス | 何だよ、何も説明してないのか ? |
ジェイド | 元々連れてくるつもりはありませんでしたから。 |
ユーリ | で、こいつぁ誰なんだよ。……なんか見覚えある気もするけど。 |
ジェイド | そうでしょうね。エミルたちが出していた鏡映点リストに入っていました。 |
ジェイド | 彼は私の間者です。バルドたちだけを信用するのも危険だと思っていましたので帝国に侵入してもらっていました。 |
デクス | 愛の使者デクスだ。よろしくな。 |
ユーリ | ……またこんなのか。 |
ジェイド | 仕方ありません。たまたま見つけた鏡映点がこのデクスだったので。 |
デクス | いやぁ、ジェイドに「あなたの力が必要なんです」って頼み込まれちまってな。 |
デクス | 俺の愛する人を捜してくれるって条件で協力することにしたんだ。頼られたのに力を貸さないのは男が廃るからな。 |
テネブラエ | ジェイドさん。彼は危険です。 |
ジェイド | ええ、アリス嬢が傍にいれば、ね。今のところ彼女は見つかっていません。帝国にいるという話も聞かない。 |
ジェイド | まぁ、今のところは安全弁が効いている状態ですよ。それに情報も正確です。だからこそ私もイクスの救出作戦で、色々と無茶な予測を立てられました。 |
ユーリ | おい、これを他に知ってる奴は―― |
ジェイド | いません。 |
ユーリ | だろうな。まったく、散々オレが単独行動をする危険分子だって喧伝しておいて自分が一番勝手なことをやってるじゃねぇか。 |
ジェイド | ありがとうございます。 |
ユーリ | 褒めてねぇけどな。 |
ジェイド | デクス。帝国内の鏡映点の状況を聞かせてもらえますか。 |
デクス | 俺が新しく確認できたのはエルレイン、ハロルド、イオン、リチア。 |
ジェイド | ! ? |
デクス | それに帝国に引き込むのに失敗したのがダオス。離反したのがザビーダってところだ。 |
ジェイド | ……全員鏡映点リストに名前が載っていますね。一つ確認したいのですが、イオンというのは……どのような人物でしたか ? |
デクス | いや、そっちは名前だけだ。なんか実験に関わってるみたいでハロルドと同じく姿が見えない。 |
ジェイド | ……そうですか。 |
デクス | あと、ヨウ・ビクエって女の子の体は間違いなく帝国が回収してる。こっちは確認できた。 |
テネブラエ | ヨウ・ビクエの体を帝国が回収したところは私も見ていました。まだ体が動かない状況でしたので阻止することはできませんでしたが……。 |
テネブラエ | もともとヨウ・ビクエの体は精霊の封印地で眠っていましたから。 |
ジェイド | なるほど、テネブラエはヨウ・ビクエのことも知っているのですね。これは後で色々と話を聞かせてもらう必要がありそうです。 |
ジェイド | それはともかく、ありがとうございました、デクス。さすが私が見込んだ通り、有能ですね。 |
ユーリ | 棒読みじゃねぇか……。 |
ジェイド | では引き続き、潜入調査をお願いします。 |
デクス | ああ。このデクス様に任せておいてくれ。 |
ユーリ | ――待った。デミトリアスと顔を合わせられるようなチャンスはないか ? |
デクス | デミトリアスか……。わかった。奴のスケジュールも探ってみる。 |
テネブラエ | ………………。 |
デクス | それじゃあ、そろそろ行くぞ。 |
デクス | ……さっきリヒターとすれ違ってな。気付かれたかも知れないんで少し慎重に動きたいんだ。 |
ジェイド | もしも捕まったら――わかっていますね。 |
デクス | ああ、そこはぬかりないぜ。じゃあな ! |
テネブラエ | いやぁ、予想していたよりまともな行動でしたね。ジェイドさん。 |
ユーリ | ああ。てっきり帝国の連中に情報でも売るのかと思ってたけどな。 |
ジェイド | 嫌ですねぇ。売るほどの情報もないじゃないですか。それより、先ほどから何度も魔鏡通信の呼び出しが来ていますが、出ても構いませんよ。 |
ユーリ | んじゃ、心配してる連中に返事してやるか。 |
キャラクター | 7話【2-13 セールンドの街】 |
イクス | ここが……ゲートの先、か。 |
アスベル | ここはどこなんだ ? |
イクス | 多分……セールンド島の外れだと思うんだけど……。 |
ラタトスク | ――くそっ ! |
マルタ | ラタトスク、落ち着いて。 |
ミリーナ | どうしたの ? |
ラタトスク | ジェイドとユーリの魔鏡を呼び出してるんだがあいつら一向に出ないんだ。何してやがる ! |
アスベル | この辺りにはいないみたいだな。 |
コーキス | この姿に戻ったから、鏡映点がいればチキン肌になるよな。 |
カーリャ | 一回知り合いになった鏡映点だと激しくぶるぶるはしないかもですけど反応はあると思いますよー。 |
アスベル | それだと、アジトにいるときはずっと震えっぱなしなんじゃないか ? |
カーリャ | んー。いるなぁってことは何となくわかりますけど新入りの鏡映点の方を見つけた時ほど激しくないので慣れちゃうんでしょうね。 |
アスベル | へぇ、不思議だな。 |
イクス | ――少しジェイドさんたちの動きを考えてみたんだけどセールンド島に来たなら、情報を仕入れに街の方へ行ったかも知れない。 |
イクス | 帝国の連中に見つからないように街の方へ向かってみよう。 |
ラタトスク | わかった。 |
マルタ | ねぇ、エミルに状況を話しておいた方がいいんじゃないかな ? |
ラタトスク | 急いでるんだ。後で説明すればいい。 |
マルタ | ………………。 |
イクス | ……魔鏡結晶の柱、まだあるんだな。 |
ミリーナ | バルドさんとセシリィが魔鏡結晶の穴を塞いでくれたから死の砂嵐はあそこに封じ込められたまま……。 |
イクス | ……あの人たちを救えないのかな。 |
ラタトスク | あいつらはもう死んでるんだろ ? |
イクス | そうだけど……。でも意識はあるんだ。俺はずっとその声を聞いてきたから……。 |
イクス | 最初は死の砂嵐を何とかして消せばこの世界は守られるんだって単純に考えてたけど本当にそれでいいのかなって。 |
ラタトスク | ん ? ユーリから魔鏡通信だ。 |
ラタトスク | おい ! 今どこにいやがる ! |
ユーリ | セールンドだ。……って、お前らもセールンドに来てるのか。 |
アスベル | ユーリたちを追いかけてきたんだよ。どうしたんだ。アジトがあんなことになってみんなもバタバタしているときに、勝手に抜け出して。 |
ユーリ | 勝手なのはこいつ。 |
ジェイド | はっはっはっ。同調圧力をかけられました。 |
テネブラエ | これはドーチョーもないですな。はっはっはっ ! |
アスベル | え ! ? 何だ、この……猫のような……黒い……。 |
テネブラエ | センチュリオン・テネブラエ。ラタトスク様のしもべです。 |
マルタ | テネブラエ ! ? ホントにテネブラエ ! ? |
テネブラエ | これは……マルタ様 !やっとこちらでもお顔を見ることができましたね。 |
マルタ | テネブラエ、早く会いたい。今どこにいるの ? |
テネブラエ | アジト島に続くゲートに戻るところです。もう少しでマルタ様のいる区画に着きますよ。 |
マルタ | 本当 ! ? どっちから来る ! ? |
イクス | ユーリさんたちがどこから来るのかわからないと方角までは……。 |
アスベル | ――待った。誰か来る。 |
マルタ | テネブラエ ! ? |
テネブラエ | おや、私たちはまだそちらには―― |
コーキス | じゃあ、帝国兵か ! ? |
カーリャ | はわわ、隠れましょう ! |
マルタ | ――待って。あれって、リヒター ! ? |
ラタトスク | 何 ! ? |
テネブラエ | ! ! |
イクス | あ、ラタトスク ! 駄目だ―― |
リヒター | お前は…… ! |
ラタトスク | 丁度いいところに現れやがったな。ここでてめぇの息の根を止めてやる ! |
マルタ | 待って、ラタトスク ! |
ラタトスク | 止めるな、マルタ ! |
リヒター | ――いいだろう。貴様が仇であることは変わらない。どの世界であろうと、元の世界でアステルはお前に殺された ! |
ラタトスク | ああ、そうだ ! 人は世界を滅ぼす生き物だ。始末して当然だろう ! この世界だってそうだ !人は壊さずにはいられないんだよ ! |
リヒター | だが、それでもアステルに罪はなかった ! |
ラタトスク | 知ったことかよ ! ひねり潰してやる ! |
キャラクター | 8話【2-13 セールンドの街】 |
リヒター | ここで終わらせてたまるか…… ! |
ラタトスク | くそ ! しつこい奴だ ! |
テネブラエ | ラタトスク様 ! |
ラタトスク | テネブラエか ! |
テネブラエ | ラタトスク様、武器を収めて下さい。リヒターと戦うことはエミルの本意ではありません。 |
ラタトスク | エミルがどうした。あいつは俺の身代わりだっただけの人格だ。飾り物にどうして遠慮する ! |
マルタ | なら、どうしてリヒターが劣勢になったときにとどめを刺さなかったの ? |
ラタトスク | ―― ! ! |
リヒター | ………………。 |
マルタ | ねぇ、ラタトスク。この世界に具現化されて色々状況がわかってきたとき、私たち決めたよね。二人だけど三人で力を合わせていこうって。 |
ラタトスク | ――俺は……俺が譲ってやったんだ。エミルが俺を封じ込めようとしやがったのにマルタが頼むから、俺は飲み込んだんだぞ ! ? |
イクス | え、何、どういうことだ ? |
ユーリ | イクス。今は黙っとけ。 |
アスベル | 一つの体に二つの存在……。解決すべきことがあるのだとしたらそれは今行われるべきなんだろうと思う。 |
アスベル | (……ラムダ。お前とも、いつかちゃんと話したいよ) |
アステル | リヒター !知り合いがいたって、どういうこと―― |
リヒター | お前は来るな ! ! |
アステル | ……え ? |
ラタトスク | ! ? |
ミリーナ | 浄玻璃鏡が反応した ! ? |
エミル | やっと……同じところに浮上できたよ。 |
ラタトスク | 俺の意識が表に出ているときにお前は顔を出せないはずだ。 |
ラタトスク | ここにはヴェリウスもいない。俺を封じ込める奴は誰もいないはずだ ! |
エミル | そうだよね。だけど、何でだろう。テネブラエがここに来たときにヴェリウスの気配を感じたんだ。 |
エミル | それから急に外の様子が見えて僕らと同じ姿の人が駆け込んでくるのがわかった。 |
ラタトスク | ……あ……あいつは……。 |
エミル | ラタトスクは知ってるんだよね。あれが……アステルさんなんだね。 |
ラタトスク | ………………。 |
エミル | ラタトスク。僕のあのときの選択が――君の存在を心の奥底に封じ込めてしまうことがどれだけひどいことかわかってた。 |
エミル | わかってたけど、ああするしかないと思ってたんだ。でも少し、試してみてもいいかな。 |
ラタトスク | 何をだ……。 |
エミル | 君と話したい。ちゃんと。ここなら時間のリミットはない。 |
エミル | 僕は自分のことをラタトスクの良心や優しさだなんて思ってないよ。優しさは君にもあるんだって、僕は知ったから。 |
ラタトスク | ふざけるな ! 俺は―― |
エミル | ラタトスク、聞いて。僕は君、君は僕。本当は何も変わらないんだ。 |
エミル | 僕は以前、元の世界で、戦うことが怖くて嫌な役割を全部君に押しつけようとした。 |
エミル | 君はリヒターさんの復讐に取り憑かれた心を知って自分がしてしまったことを後悔した。 |
エミル | それで、僕が優しさそのものなの ?君が封じられるべき存在なの ? |
ラタトスク | お前は……俺を封じて、自分もギンヌンガ・ガップの扉に封じられるつもりだったんだろう。俺はそんな奴は認めない。 |
エミル | あの時、元の世界の僕がやろうとしていたことがわかったなら、今僕が何を考えているかもわかるよね。 |
ラタトスク | 俺はお前みたいなひ弱な坊やじゃない。 |
エミル | 僕だって、君みたいな乱暴者じゃないよ。だけど君はただ乱暴なんじゃない。 |
エミル | 君の優しさがずっと踏みにじられてきたからそうならざるを得なかったんだ。 |
ラタトスク | ……で、お前は、自分の弱さを盾にして俺に迫るのか。決断を。 |
エミル | ねぇ、僕は思うんだよ。僕はラタトスクでもありエミルでもある。君はエミルでもありラタトスクでもある。 |
エミル | ただそれを―― |
ラタトスク | ――わかったよ。 |
エミル | ラタトスク ? |
ラタトスク | ……お前を信じてみる。いや、自分を信じて、受け入れてやるさ。 |
エミル | ありがとう…… ! 君が僕でよかった。 |
キャラクター | 9話【2-14 ひとけのない森】 |
テネブラエ | ……エミル様。 |
リヒター | ……エミル、ラタトスクはどうした。 |
エミル | ここに。一緒にいます。本来あるべき姿に戻ったんだと思います。 |
マルタ | ラタトスクを封じた訳じゃないよね ? |
リヒター | ラタトスクを封じる ? どういうことだ。 |
エミル | 僕は元の世界でラタトスクを封じようとしたんです。心の精霊ヴェリウスの力を借りて。 |
エミル | でも……この状態は違います。僕がこうしてみんなと話しているようにラタトスクも一緒に話を聞いてる。 |
エミル | 主人格が入れ替わってもこの状態は変わりません。今の僕は……エミルとラタトスクは対等なんです。 |
ラタトスク | リヒター。さっきの勝負は一時中断だ。エミルは戦いたくないらしいからな。 |
エミル | ……って、こんな感じで。ややこしいですかね、はは……。 |
アステル | すごい ! もしかしてあなたは精霊ラタトスク ! ?どうして僕と同じ姿なのかわからないけどあなたにずっと会いたかったんです ! |
エミル | あ……あの……。僕……ごめんなさい。 |
アステル | え ? どうして謝るんですか ? |
リヒター | エミル。お前が謝る必要はない。それに……アステルは何も知らない。だから―― |
エミル | ……だったら、リヒターさんに謝らせて下さい。ラタトスクも本当は後悔してるから。 |
エミル | あ、謝られても困るのはわかります。許して欲しいとは言いません。 |
エミル | これは、精霊ラタトスクのけじめです。僕もラタトスクだから。 |
ラタトスク | ……いや。エミルはこういってるが、俺は謝らないぞ。だから貴様は未来永劫ラタトスクを恨めばいい。それでいいんだ。 |
エミル | あ……ラタトスク……。 |
リヒター | ……それでいい。 |
エミル | え ? |
リヒター | 俺はラタトスクを憎み、恨み続ける。それでいいんだ。 |
アステル | ……ねぇ、やっぱり僕、ラタトスクに殺されたの ? |
エミル | えっ ! ? あ、あの……。 |
アステル | みんなが噂してたよ。四幻将はみんな大切な人を甦らせたかったんだって。 |
アステル | 僕がリヒターの大切な人ってのは笑っちゃうけど。 |
マルタ | ええ……。そんなこと言っちゃう…… ? |
アステル | 僕はさ、リヒターに自分を大事にして欲しかったんだよね。まあ、その話は一旦置いとくけど……。 |
アステル | だからリヒターは僕を具現化してもらったんでしょう ? |
アステル | 今の僕には、フィールドワークしながら精霊ラタトスクを探していた頃の記憶までしか残ってないんだ。 |
アステル | だからきっと、道中に何かあったんだろうな……とは気付いてた。 |
アスベル | リヒター。この成り行きを見る限りお前と俺たちは戦う理由がないように思う。 |
アスベル | さっきの言葉は「ラタトスクを憎むことはやめないけれど、殺すつもりもない」ってことだよな。 |
リヒター | ……いや。こちらの世界に来てからの事情もある。 |
リヒター | 俺は……チェスターやミトスのようにお前たちと合流することはない。俺の前に立ちはだかるなら、お前たちは俺の敵だ。 |
イクス | リヒターさん。どうしてですか。あなたは話せばわかる人だと感じました。理由を聞かせて下さい。 |
リヒター | 理由、か。そうだな。俺はメルクリアを放っておけない。ただそれだけだ。 |
ジェイド | なるほど、それは残念です。ではアステル―― |
ジェイド | 今からあなたは私たちの大切な人質です。せいぜい大人しくして下さい。 |
アステル | ええっ ! ? い、痛っ ! ? |
リヒター | な…… ! ? 貴様、アステルを放せ ! |
ジェイド | ご冗談を。敵の言うことを素直に聞く軍人がいると思いますか。 |
ジェイド | さあ、リヒター。武器を捨てて、距離をとって下さい。隙を突こうとしても無駄ですよ。 |
ジェイド | あなたがおかしな動きを見せた瞬間に、私はアステルの喉を掻き切って、あなたに譜術……そちら風に言えば魔術をお見舞いすることができます。 |
ジェイド | 本気だと言うことは……おわかりですよね ? |
エミル | ジェイドさん ! やめて下さい ! |
マルタ | そ、そうだよ。なんか……おかしくない ?こういうのって悪い人がやることでしょ ? |
ジェイド | いいえ。手段を選ばない人間がやることですよ、マルタ。さあ、リヒター、武器を捨てなさい ! |
テネブラエ | いやぁ……悪どい。さすが闇属性です。 |
リヒター | ……くっ。 |
リヒター | ……武器を捨てたぞ。これでいいな。 |
ジェイド | いい子ですね。イクス、ミリーナ。リヒターを牽制して下さい。私はこのままアステルをアジトへ連れて行きます。 |
リヒター | ……あの空に浮かぶ島か。とんでもないものを具現化したな。 |
イクス | すみません。えっと、ジェイドさんの分もすみません。でも……ジェイドさんは理由もなくこんなことをする人じゃない。 |
イクス | ……ってルークが、えっと仲間が言ってました。俺もそう思います。アステルさんの安全は保証します。ここは退きましょう。お互いに。 |
ユーリ | ま、そっちは一人、オレらはジェイドと鏡精コンビとテネブを除いても六人。おまけに人質もいる。あんたはバカじゃないだろ。 |
アスベル | 卑怯な真似をして済まない。イクスだけじゃなくて、俺も約束する。アステルを傷つけないし、傷つけさせたりしない。 |
ミリーナ | 私もよ。大切な人を失う悲しみは、私もよく知っているもの。 |
マルタ | リヒター……。ごめん。本当にごめんなさい。 |
リヒター | ……今は……退く。 |
リヒター | だが、アステルは必ず返してもらう。もしアステルに何かあればあの島ごと、貴様たちを消滅させるからな ! |
キャラクター | 10話【2-15 静かな街道】 |
マルタ | ねぇ……本当に良かったの ?完全にリヒターのこと怒らせちゃったけど。 |
エミル | だけど、ジェイドさんのこと誰が止めるの ?ルークたちかリフィル先生でも一緒だったらともかく……。 |
テネブラエ | いやぁ、リフィルさんはどうでしょうね。あの人は爆弾魔だったそうじゃないですか。 |
アステル | あ、僕のことは気にしないで下さい。 |
アステル | 本気で腕を捻り上げられたときはヤバいって思ったけど冷静に考えれば皆さんのところには精霊がたくさんいるんですよね。 |
アステル | むしろいいチャンスだと思うことにしました。 |
ジェイド | そう言っていただけてほっとしました。善良な一小市民としては、あのような手段に出ることに罪悪感を抱いていたものですから。 |
ユーリ | よく言うぜ。だが、まぁ、この坊やは研究者なんだろ。キールやリタが大喜びするんじゃねぇの ?帝国の事情にも詳しそうだしな。 |
エル | あ ! ルドガー !悪いメガネのおじさんたち戻ってきたよ。 |
カーリャ | ふっふっふっ。完全に悪メガネで定着していますね。しめしめです。 |
ルドガー | みんな、お帰り。……あれ ? エミルが……二人 ?え ? まさか、エミルとラタトスクが分離した ! ? |
アステル | あ、そっくりですけど、別人です。人質のアステルって言います。 |
アステル | あなたは、確か骸殻っていう力を持っているルドガーさんですよね。なんか変身ヒーローみたいで格好いいなって思ってました ! |
ルドガー | え ? は、はぁ…… ? え ? 人質 ? |
アスベル | はは……。混乱することだらけだよな、この状況。 |
イクス | ルドガーにエル !この島の状態はどうかな ? 怪我人とかは……。 |
ルドガー | 光魔との戦いでかすり傷を負った人はいるけどみんな元気だったよ。 |
ルドガー | アジトの建物も仮想鏡界の時と変わってないからいまはみんなそれぞれの部屋で待機してもらってる。 |
ルドガー | 一部の人はケリュケイオンにいるけどね。 |
エル | 今ね、ルドガーと島の探検してたんだ。 |
ルドガー | みんなが見た島の情報をキールたちがまとめてくれたからそれを元に地図を作ろうと思って。 |
ミリーナ | さすがルドガーさん。助かるわ。 |
ルドガー | そういえば、また一人鏡映点が来たらしいって聞いたけど、どこにいるんだ ? |
イクス | えっと……。あー……ちょっと怪我をしているんで今はケリュケイオンで休んでる……かな。 |
ルドガー | そうか。じゃあ救世軍と行動を共にするのかな。だとしたら、食事の準備は今までのままで構わないか。 |
ミリーナ | あ、アステルさんが加わるから一人分追加してもらえると助かるわ。 |
ルドガー | よし。ファラ生活向上委員会に共有しておくよ。 |
ジェイド | さて、早速アステルの話を聞きたいですね。それと……イクス。何か隠していますよね。そのことも教えていただけますか ? |
イクス | え ! ? な、何も……隠してなんて……。 |
エル | あー ! イクス、嘘ついてる ! |
イクス | (困ったな……。エルの前でヴィクトルさんの話はできないよ……) |
ルーティ | イクス ! ミリーナ ! |
イクス | ルーティ ? あれ……目が赤い……。 |
ルーティ | あ……これは何でもないの !それより医務室に来てよ。 |
イクス | まさか、誰か目を覚ましたのか ! ? |
ルーティ | セシリィと……ジョニーが…… !とにかく早く来て ! なんかもう、帝国の奴ら本当に酷いことばかりしてきたみたいで……許せない。 |
アステル | ……すみません。 |
ルーティ | え ? 何でエミルが謝るの――って、エミルが二人 ! ?ラタトスクと分離したの ! ? |
ルドガー | 俺と同じこと言ってる。 |
ルーティ | えー、だってそう思うじゃない。精霊なんだからそれぐらいできそうだし。 |
ルーティ | あー、話がそれた。とにかく医務室に来て。ジョニーの話も聞いてやって。 |
イクス | わかった。えっと……。 |
ユーリ | オレはキール研究室に顔を出してくる。アスベル、お前も来いよ。 |
アスベル | …… ? 構わないよ。 |
エミル | えっと僕は―― |
ラタトスク | 他の精霊組に話がある。テネブラエ、来い。 |
テネブラエ | はい、ラタトスク様。 |
マルタ | 私も一緒に行く。 |
アステル | 僕は……良ければ、僕も医務室にご一緒させて下さい。 |
ジェイド | 私も同行させていただきます。 |
コーキス | ん……。 |
カーリャ | どうしました、コーキス。 |
コーキス | なんか、目の奥がかゆくて。……ゴミでも入ったかな。 |
ミリーナ | コーキス、大丈夫 ? |
コーキス | ああ、うん。大丈夫です。 |
コーキス | それよりマスター、医務室に行くんだろ。急ごうぜ。 |
イクス | ああ。 |
| to be continued |
キャラクター | 1話【3-1 鬱蒼とした森林1】 |
アスベル | ルーティ……泣いていたみたいだね。ジョニーさんの容体が良くないんだろうか。 |
ユーリ | 話はできるようだから大丈夫なんだろう。 |
ユーリ | それより、あのやっかいな軍人の情報をキール研究室とカロル調査室で共有しておいた方がいい。どうせ、自分から説明するつもりもないだろうしな。 |
アスベル | やっかいな軍人ってジェイドさんのことか。 |
アスベル | 確かにアステルさんを人質に取ったときは驚いたけどよく見ていたら、アステルさんをつかむ腕をすぐに緩めたみたいだった。 |
アスベル | あれならアステルさんも逃げようと思えば逃げられた筈だけど、わざと残ろうとしているように感じたから、止めるべきか悩んだよ。 |
ユーリ | 本気で逃げようとしたら本気で攻撃してたかも知れねぇけどな。 |
アスベル | ジェイドさんが ? まさか……。 |
ユーリ | オレはジェイドがある程度は本気だったと思ってるぜ。まぁ、アステルってのも、オレたちの側に来ることで何か利があると考えたんだろうよ。 |
ユーリ | 実際、本人もいいチャンスだって言ってたしな。……まぁ、あそこでジェイドを止めて奴とやり合うってのも面白そうだったがな。 |
アスベル | ……手合わせしたいなら、クレス道場でしてくれ。 |
パスカル | あれー、アスベルにユーリ。いらっしゃい。珍しいね。二人がキール研究室に来るの。 |
リタ | ねぇ、キール見かけなかった ? |
リタ | ちょっと前に青い顔して戻ってきたんだけど何があったのか説明もしないまま、アジトのみんなの様子を聞いてくるって飛び出しちゃって。 |
リタ | なーんか気になるのよね……。 |
リフィル | 状況の把握と共有をするつもりだったのに光魔に襲われて、仮想鏡界が具現化されて……。 |
リフィル | まぁ、ショックを受けない方がおかしいけれどあの感じはそれとは違っていたわね……。 |
アスベル | いや、キールの姿は見かけなかったよ。 |
リタ | そう……。 |
ユーリ | なぁ、ここに鏡映点リストあるだろ ? |
リフィル | あるわよ。――はい、どうぞ。またはぐれ鏡映点が見つかったの ? |
ユーリ | まぁな。 |
ユーリ | ……あった。導師イオン。こいつか……。 |
パスカル | へー、その子が新しいはぐれくんなの ? |
リタ | それ、ルークたちの仲間よね。 |
アスベル | ユーリ。ジェイドさんの話、共有しておくんだよな。 |
ユーリ | ああ。 |
リフィル | ……呆れた。相変わらず勝手なことをしているのね。 |
ユーリ | へぇ、あんたはジェイドのやり方を理解してると思ってたけどね。 |
リフィル | それ、どういう意味かしら。私も情報源を複数用意することは賛成だけれどそのことを仲間に共有しないのは頂けないわ。 |
ユーリ | だよな。 |
ユーリ | ……にしても、このリストを見ただけじゃ、ジェイドが何を思ってアステルを人質に取ったのかわからねぇな。 |
ユーリ | イオンってのがやばい奴で急いでアジトに戻る必要があるのかと思ったが説明を読むと人畜無害って感じだ。 |
パスカル | ルークたちに聞いた方が早いんじゃない ?そういえば、さっき資料室でガイが倒れた本棚片付けてたよ。 |
アスベル | 聞いてみるか。 |
ユーリ | そうだな。 |
ミリーナ | ねぇ、ルーティ……。もしかして、泣いてた ? |
ルーティ | そんなんじゃないわよ。……ジョニーの話を聞いてたら悔しくなっちゃったの。もっと早く助けられたらあんなに衰弱しなかったんじゃないかって……。 |
ミリーナ | ルーティ……。ジョニーさんの治療、みんなで協力しましょう。早く元気になるように。 |
ルーティ | そうね。ジョニーは特異鏡映点らしいからその辺も心配だしね。 |
イクス | ジョニーさんってどんな人なんだ ? |
ルーティ | うるさい奴よ。まぁ、元気であればって話だけど。 |
ミリーナ | セシリィも目を覚ましたのよね。 |
ルーティ | ええ。今はミントたちが相手をしてくれてるわ。ただ……あたしたちは、リビングドールだったセシリィを知ってるじゃない ? |
ルーティ | 本当のセシリィとあのセシリィの印象が違い過ぎて……。 |
ジェイド | 姿が同じでも……別人ですからね。 |
コーキス | そうか……。俺たちの知ってるセシリィさまはシドニーさんって人なんだよな……。 |
カーリャ | どっちのセシリィさまもおつらいですよね。アステルさまはセシリィさまのことをご存じなんですか ? |
アステル | ここにいるみんなと同じだよ。僕が知っているのは……魔鏡技術に詳しいセシリィだけ。 |
アステル | 彼女がリビングドールだってこともつい最近まで知らなかったから。 |
ジェイド | ……アステル。あなたも帝国で研究をしていたのならイオンという名前の少年を知りませんか。 |
アステル | ああ……。ベルセリオス博士から話を聞いたことはあります。 |
ルーティ | ベルセリオス博士 ! ?それってソーディアン・ベルセリオスの元の人格の ! ? |
アステル | えっと、ルーティさんでしたっけ。ベルセリオス博士をご存じなんですね。 |
アステル | ソーディアンのことは色々と教えてもらいましたけどルーティさんたちの世界にはすごい技術があるんですね。 |
アトワイト | 待って、ルーティ。この世界にはもう一人ベルセリオス博士がいる可能性があるのを忘れているわ。 |
ルーティ | あ、そうか。カイルたちの仲間のハロルド・ベルセリオスね。 |
ルーティ | でも、変わってるわよね。ハロルドって一般的には男の名前だけど、カイルたちの仲間は確か女の子なんでしょ? |
アステル | え、ちょっと待って。ルーティさんの前に聞こえた声……。その剣から聞こえませんでしたか ! ? |
アトワイト | ええ。私はソーディアン・アトワイトです。 |
アステル | 僕はアステルです。うわー ! 話に聞いていたアトワイトさんにお目にかかれて光栄です ! |
アステル | あれ ? でもソーディアンの声は持ち主にしか聞こえないんじゃ……。 |
アステル | ――あ、そうか。エンコードの影響ですね。 |
ジェイド | 理解が早いですね。なるほど……。帝国で重宝される訳だ。 |
コーキス | なぁ、アステルさま。アステルさまの知ってるベルセリオス博士って男か ? それとも女か ? |
アステル | 女の人だったよ。 |
ルーティ | あ、それなら、カイルたちの仲間のハロルドなのね。 |
アトワイト | ……………………。 |
キャラクター | 2話【3-2 鬱蒼とした森林2】 |
ジュード | おかえり、イクス、ミリーナ、コーキスにカーリャも。ジョニーさんがお待ちかねだよ。 |
ジョニー | お前さんたちが鏡士ご一行様か。悪いね、ベッドの上からで。 |
ジョニー | 肋をやられているらしくてね。上半身を起こしているのが精一杯なんだ。 |
イクス | そんな……。俺たちは大丈夫ですから、無理はしないで下さい。 |
ミリーナ | 横になった方が楽なら、そうして頂いても……。 |
ジョニー | いや、大丈夫だ。お前さんたちが来るまでの間に大体のことは聞かせてもらったよ。 |
ルカ | 勝手に話しちゃったけど悪かったかな ? |
イクス | いや、助かるよ。ありがとう、ルカ。 |
スタン | ジョニーさん。俺たちの方からさっきの話をしましょうか ? |
ジョニー | いや、自分で話すよ。まず、自己紹介から。俺はジョニー・シデン。元の世界では訳あってスタンたちと一緒に旅をしていた。 |
イクス | あ、俺はイクスです。イクス・ネーヴェ。こっちは俺の鏡精のコーキスです。 |
コーキス | ちっす。よろしく、ジョニーさま。 |
ミリーナ | 私はミリーナ・ヴァイスです。この子は私の鏡精のカーリャです。 |
カーリャ | よろしくお願いしまーす。 |
ジョニー | 奥の二人も鏡士かい ? |
ジェイド | いえいえ。しがない鏡映点兼軍人です。ジェイドとお呼び下さい。 |
アステル | あ、僕もしがない鏡映点兼人質のアステルです。 |
ジョニー | 人質…… ? |
イクス | あ、その辺りはまた後で。無駄話も疲れさせてしまうでしょうからジョニーさんのお話を聞かせて頂けませんか。 |
ジョニー | ……悪いがそうさせてもらうよ。 |
ジョニー | さて、と。俺が具現化されたのは1年近く前のことだった。 |
ジョニー | ファントムって男が特異鏡映点を集めていて俺も特異鏡映点だったってんで救世軍に捕まったんだ。ここまではOK ? |
ミリーナ | はい。ルカやローエンさんたちと同じですね。 |
ジョニー | ああ、そこの坊やは、俺の牢屋仲間だった。魔鏡陣とやらで気を失ってから、姿を見なくなっちまったから心配していたが、無事で何よりだ。 |
ルカ | すみません。僕だけ先に逃げ出していて……。 |
ジョニー | それを言ったら、俺だってリーガルを残したままだからな。人のことは言えないさ。体を治したら、助け出してやらないとな。 |
リオン | ファントムは特異鏡映点を使って負の力を帯びたアニマを集め奴の理想の世界を造ろうとしていたんだな。 |
ジョニー | ああ。だが、ファントムって奴はしくじったらしいな。気付いたら今度はアスガルド帝国とやらに捕まっちまってた。 |
ジョニー | 牢屋から牢屋へ引っ越しなんてうんざりしたぜ。 |
イクス | 帝国はどうしてジョニーさんたちを捕らえていたんですか ? |
ジョニー | ローエンから聞いてないのか ? |
ルーティ | ローエンはまだ本調子じゃないのよ。それにここにいる訳じゃないから話を聞きそびれちゃってるのよね。 |
ジョニー | そうか。ローエンは衰弱が激しかったしな……。帝国の連中は俺たちが持つ負のアニマを使って過去の世界を具現化する為の研究をしたかったらしい。 |
ジョニー | その為に取引の材料にされたのが【死者の復活】だ。俺の場合は―― |
スタン | エレノアさんか……。 |
コーキス | エレノアさま ? あ、名前が同じの別の人か……。 |
カーリャ | どういうご関係なんですか ? |
リオン | くだらないおしゃべりはやめろ、カトンボ。 |
カーリャ | カトンボォォォォ ! ? |
コーキス | リオンさま ! それはパイセンに失礼だろ ! |
ミリーナ | 二人とも、落ち着いて。カーリャ。あまりぶしつけなことを聞いては駄目よ。 |
ジョニー | いや、構わないよ。彼女は大切な……幼なじみだ。奴らの申し出はもちろん断ったよ。 |
ジョニー | 異世界で彼女を甦らせたところでどうなるって言うんだ ?そんなものは死者への冒涜だ。 |
二人 | ………………。 |
ジュード | ジョニーさんはひどい暴行を受けていたみたいなんだ。全身痣だらけで、骨にヒビが入っている箇所もある。 |
ジュード | パスカルがレントゲン装置を作ってくれたのが役に立ったよ。 |
ジェイド | ……ではあなたは、無理矢理その過去の具現化研究に協力させられていたということですね ? |
ジョニー | 途中まではね。ある時から精霊の研究とやらに引っ張り出されたのさ。 |
アステル | 精霊…… ? 精霊装研究ですか ? |
ジョニー | いや、詳しいことはよくわからないが俺には【音の精霊】とやらの力を引き出す能力があるって話でな。 |
ジェイド | ! |
アステル | 音の精霊…… ? 聞いたことがないな……。 |
ミリーナ | アステルさんって帝国で精霊の研究をしていたんでしょう ? そのアステルさんが知らない精霊なんているのかしら……。 |
コーキス | クラースさまとかミラさまとかエミルさまに聞いてみたらいいんじゃないか ?セルシウスさまもいるし……。 |
ジェイド | 精霊たちに話を聞くのが手っ取り早いかも知れません。ただ……。 |
リオン | ジェイド。何か心当たりがあるのか。 |
ミリーナ | ジェイドさん。確証が持てなくても構いません。教えて下さい。 |
ジェイド | 確証……とまでは行きませんが、ある程度の予測はついていますよ。 |
ジェイド | そうですね。……ここはお話ししておいた方がいいのかも知れない。 |
ジェイド | ジョニー。その音の精霊の名前は【ローレライ】ではありませんか ? |
ジョニー | ああ、確かそんな名前だった。お前さん、音の精霊を知ってるのかい ? |
ジェイド | ……知っているのとは少々違いますね。私のいた世界には音素(フォニム)というエネルギーが存在しており、様々な属性を帯びています。 |
ジェイド | そして音素(フォニム)は一定数以上集まると自我を持つ……と言われていました。 |
ジェイド | その中で音の属性を持つ音素(フォニム)の意識集合体をローレライと読んでいたんですよ。 |
ジェイド | 我々の世界の意識集合体は精霊という概念に似ていると考えています。 |
ミリーナ | そうか……。音の意識集合体がエンコードされて精霊と認識された……と考えているんですね。 |
ジェイド | はい。ここまでキール研究室では、様々な異世界のエネルギー法則などを学び、それがこの世界でどう定着していったのかを研究していました。 |
ジェイド | 異世界の様々なエネルギー物質――例えばマナや音素(フォニム)、レンズに宿るエネルギーなどはこの世界ではキラル分子に変換されています。 |
ジェイド | 厳密に言えば、全てがキラル分子として定義されている訳ではありませんがそれはまぁ、置いておきましょう。 |
ジェイド | この世界では、我々の世界のエネルギーはキラル分子化しているんです。そうすることでパッチワークのように様々な世界を一つの世界にまとめている。 |
ジェイド | エンコードは異世界の法則をティル・ナ・ノーグの法則に書き換える為の処置ですから。 |
イクス | だからエンコードが施された結果エネルギーだけでなく天族も精霊のように定義された。 |
イクス | それなら、音の意識集合体も精霊と定義された可能性がある……と言うことですね。 |
ジェイド | ええ。そしてローレライにはもう一つ星の記憶を持つという特性があります。 |
ジェイド | この特性がエンコードによって残されているかはわかりませんが、帝国好みだとは思いませんか ? |
イクス | 過去の具現化……分史世界の概念……精霊……ダーナ……滅びた世界ニーベルング。それに星の記憶……。 |
イクス | まさか帝国が甦らせようとしているのはビフレストじゃなくて―― |
ミリーナ | ……滅びた世界ニーベルング。 |
ジュード | ニーベルング ? それは何 ? |
ジェイド | ……なるほど。イクスの隠し事はそのニーベルングに関わるものなんですね。 |
イクス | それだけじゃないんですけど……。ここにはエルもいませんから全てを話しておきますね。 |
キャラクター | 3話【3-5 鬱蒼とした森林5】 |
リヒター | (デクスに似た男がいたような気がしたが……。捜させるべきか……) |
アスガルド軍兵士 | 焔獄のリヒター様 ! |
リヒター | その呼び方はやめろと言った筈だ !ディストは眠ったままなんだ。義理立てする必要もないだろう。 |
アスガルド軍兵士 | は……。それが、サレ様が必ずそう呼びかけるように、と……。 |
リヒター | ちっ。あのイカレコンビの片割れか。……それで、何か用なのか ? |
アスガルド軍兵士 | メルクリア様が焔……リヒター様を捜しておられます。 |
リヒター | ! |
リヒター | ……起きていていいのか、メルクリア。 |
メルクリア | ……話を聞いたのだな。そんな怖い顔をするな。アルヴィンはもっと優しかったぞ ? |
リヒター | これでも怒鳴りつけたいのを我慢してやっているんだ。危険を顧みずに幻体を他人の心の中に送り込むなどお前はバカか。 |
メルクリア | ……わらわを叱るなど、100万年早いぞ ! |
リヒター | 黙れ ! 自分にやれることとやれないことの区別ができずに無鉄砲をするようなガキがいきがるな ! |
メルクリア | ……う………………。 |
ジュニア | ま、待って、リヒターさん。メルクリアは幻体を送り込んだせいで元々弱ってた体が―― |
リヒター | ジュニア。お前もメルクリアを甘やかすな。気持ちがわかるんだろうが……。 |
ジュニア | ………………。 |
リヒター | メルクリア。泣きたいなら泣いてもいい。だが、自分がしたことには責任を取れ。 |
メルクリア | ……わ……わかった……。 |
ジュニア | ……リヒターさんって、昔のイクスに似てるね。 |
リヒター | ……俺はあんなに神経質じゃないぞ。 |
ジュニア | ああ、そういうところはね。そりゃ、イクスの方が穏やかだけど小さな頃のイクスは今とはちょっと違ってたんだよ。 |
メルクリア | ……あんなセールンドの鏡士のことはどうでもいい。それよりリヒター、アステルはどうした ?ハロルドが捜していたぞ。 |
リヒター | ……少し、散歩に出ている。その内に戻る。 |
メルクリア | 本当か ? そなたもわらわに隠し事をするのか…… ? |
リヒター | ……ここだけの話にできるか ? |
メルクリア | 無論じゃ。わらわは約束は守る。ジュニアもじゃな。 |
ジュニア | ……うん。 |
リヒター | アステルは……イクスとミリーナたちに誘拐された。 |
ジュニア | え ! ? |
メルクリア | なんじゃと ! ? 黒衣の鏡士め !リヒターの莫逆の友になんという真似を ! ! |
メルクリア | リヒターもリヒターじゃ ! アステルを奪われておめおめと逃げ戻ってきたのか ! ?それとも手勢を連れて、今一度鏡士たちを―― |
リヒター | 落ち着け ! あちらにはエミルがいる。……ラタトスクも、だが。 |
リヒター | エミルなら……アステルを傷つけたりはしないだろう。それに今はアステルが帝国にいないことは好都合だ。 |
ジュニア | どういう意味ですか、リヒターさん。 |
リヒター | ジュニアも知っているだろう。先だっての御前会議で精霊装の実用化計画がスタートすることになった。 |
リヒター | 武器に人格を投影するベルセリオス博士の理論とアステルの考案した精霊輪具を使って精霊装を汎用的に利用するつもりらしい。 |
リヒター | だが俺は、精霊装を闇雲にばらまくのには反対だ。精霊を扱うにはそれなりの力がいる。アステルがいなければ、計画は一時的に止まるだろう。 |
リヒター | その間に、精霊装の扱いを再考させたい。 |
ジュニア | いいんですか、リヒターさん。メルクリアにその話をしても。 |
リヒター | メルクリアを子供扱いして何も知らせないからメルクリアはこうなった。違うか ? |
ジュニア | それは……。 |
メルクリア | どういう意味じゃ ? |
リヒター | メルクリア。お前はデミトリアスが何をしようとしているのか知っているか ? |
メルクリア | 義父上はビフレストを甦らせる手助けをして下さっている。そしてこの世界を滅ぼすセールンドの鏡士と鏡精を退治しようとしておられるのじゃ。 |
メルクリア | セールンドの愚かしさの責任と向き合いビフレストとの戦争を止められなかった悔恨の気持ちを抱いておられる。 |
リヒター | ……間違ってはいない。だがデミトリアスはお前とお前の母の復讐心を利用している。 |
メルクリア | 母上様のことは言うでない ! |
リヒター | メルクリアお前のその気持ちは本当に自分のものなのか ? |
メルクリア | 黙れ ! 母上様は……母上様はわらわを知の乙女と認めて下さった ! |
メルクリア | わらわがビフレストを甦らせれば母上様はきっと褒めて下さる。 |
ジュニア | メルクリア……。エルダ皇后はもう亡くなったんだよ。 |
メルクリア | そんなことはわかっている !じゃが母上様はビフレストの復活を望みセールンドを憎んでおられた。 |
メルクリア | わらわはビフレストの民と国を甦らせ知の乙女としてダーナの力を宿し皆を幸せにするのじゃ ! |
メルクリア | それこそが母上様とわらわの望みじゃ !ビフレストの皆を甦らせるのじゃ ! ! |
リヒター | メルクリア、それは間違っている。 |
メルクリア | 何故じゃ ! 何故死んだ者を甦らせてはならぬ !リヒターもアステルを甦らせたではないか。わらわだって皆を甦らせたい ! |
メルクリア | 兄上様も――母上様だって !今はその手段がなくとも、必ず―― |
リヒター | 違う。甦らせたいと思うのは、みんな同じだ。だがお前の望みとお前の母親の望みは同じではないだろう。 |
リヒター | お前が本当にビフレストを甦らせたいのなら俺は何も言わん。だが、お前はビフレストのことを知らないだろう ? |
リヒター | ビフレストはお前が今よりもっと幼い頃に滅びた。ビフレストのことを何一つ覚えてはいない筈だ。 |
メルクリア | 知らぬ ! 知らぬから甦らせたいのじゃ !母上様が愛し、兄上様が命をかけて守ろうとしたビフレストをわらわも見たいのじゃ ! |
メルクリア | わらわは……わらわは……。 |
リヒター | ……わかった。この話はまたにしよう。 |
リヒター | だが、メルクリア。デミトリアスが何をしようとしているのかは知っておいた方がいい。目的は同じでも手段は違うかも知れないぞ。 |
メルクリア | ………………。 |
キャラクター | 4話【3-7 閑散とした街道1】 |
ルカ | え……。つまり、このティル・ナ・ノーグはニーベルングと言う世界の滅亡から逃れる為に造られた世界ってこと ? |
ルーティ | 何なの、それ……。 |
クラース | ……今の話は本当なのか ? |
ルーク | この世界そのものがレプリカみたいなものってことか ? |
イクス | ど、どこから聞いてたんですか ! ? |
エミル | す、すみません。あの……。ヴィクトルさんの話のあたりから……。 |
コーキス | ほぼ全部じゃん ! ? |
カーリャ | 立ち聞きですよね、それ ! ? |
ガイ | すまん。止めようとはしたんだが……。 |
マルタ | なんか、気になる話をしてたし……。 |
アーチェ | 深刻そうな雰囲気だったしさー。 |
テネブラエ | まぁ、途中でお話の腰を折るより全部聞いてしまおうと。いえいえ、けっして出歯亀根性ではなく。 |
リオン | フン、しつけのなってない奴らだ。 |
クラース | すまん。言葉もない……。 |
ジョニー | 何だか一気に人が増えたな。元気ならば一曲披露したいところだが……。 |
ルーティ | それは元気だったとしても遠慮しておくわ。 |
ルーティ | で、あんたたち、何か用 ?まさか本当に立ち聞きしにきただけじゃないんでしょ。 |
アーチェ | じゃ、まずはあたしから。セシリィが落ち着いてきたから話を聞いてあげて欲しいと思って。 |
エミル | 僕たちは……。精霊たちが感じてる妙な気配のことを共有したくてきました。 |
クラース | 私もその話に興味があってな。一緒に来たと言う訳だ。 |
ガイ | 俺たちの要件は、もう想像がついてるだろ、ジェイド。 |
ジェイド | おや。 |
ルーク | ユーリたちから聞いたんだ。イオンのこと……。それでアニスが……。本人は平気だって言うんだけどどう見ても平気じゃねぇから……。 |
ジュード | 色々混線してるね。ただ、これ以上ここで話すのはジョニーさんの体に負担がかかる。 |
ジュード | 医務室を預かる身としては他の場所で話の続きをして欲しい。 |
ジョニー | すまないね、迷惑をかけて。 |
ミリーナ | それじゃあ、こうしましょう。私はセシリィの話を聞きに行くわ。ジェイドさんはルークさんたちと話をして、イクスは―― |
イクス | 精霊組の話を聞けばいいんだな。 |
アステル | あ、僕も精霊の皆さんとお話しさせて下さい。 |
ジェイド | ……ルーク、ガイ。私はアステルから話を聞きたいと思っています。後で必ず皆さんのところに行きますから今はアニスをお願いします。 |
ルーク | ……わかった。俺も……気になるからさ。早く来てくれよな。 |
スタン | 俺たちはここでもう少しジョニーさんと話していくよ。いいだろ、ジュード、ルカ。 |
ジュード | もちろん。 |
ルカ | 後でスパーダも挨拶したいって言ってました。 |
ジョニー | そうか……。 |
イクス | それじゃあ、みんな、そろそろ失礼しよう。ジョニーさん。まずは体をしっかり治して下さい。 |
ジョニー | すまない、恩に着るよ。 |
エミル | とりあえず、みんな僕の部屋に集まってもらったよ。ミラさんだけはまだちょっと体調が心配だから休んでもらってるけど。 |
アステル | ……この世界のマクスウェルの影響ですね。 |
イクス | 妙な気配を感じてるって聞いたけど……。それって、この世界のマクスウェルの残滓のことか ? |
セルシウス | いえ、似ているけれど違うわ。わたしたちが今感じているのはアスカとシャドウの気配よ。ただ……妙なの。 |
エミル | わかります。上手く言えないけど……存在が空気中に染みだしているって言うか……。 |
ジェイド | ……アステル。丁度いい頃合いです。あなたに聞きたいことがあります。帝国が精霊をどうしようとしているのか。 |
ジェイド | 確かアスカは光、シャドウは闇の精霊ですね。その気配がおかしいのは帝国に関わりがあるのでは ? |
アステル | ……はい。そのことを伝えたくて僕もここに来ました。 |
アステル | リヒターも多分、精霊を守りたいと思っているはずだから、ここで話しても許してくれると思います。 |
エミル | リヒターさん……。精霊の研究をしていたんですよね。 |
アステル | そうです。……って、なんか不思議だな。自分の顔を見ながら話すのって。 |
二人 | ……………………。 |
アステル | 帝国はダーナの声を聞こうとしてるんです。その為に精霊の力を借りようとした。 |
アステル | それでアイフリードの残した宝具を使い最初に接触できたのがマクスウェル。 |
アステル | でも、マクスウェルを目覚めさせることはできず逆にマクスウェルは命を落としたそうです。 |
アステル | 僕はそのマクスウェルを再生させる研究を請け負っていました。 |
アステル | そしてマクスウェルの残滓を発見した。それを精霊輪具で集めて、マクスウェルの力だけは精霊輪具に宿すことができたんです。 |
コーキス | 前に聞いたぞ。精霊輪具は精霊と神依するための指輪だって。 |
アステル | そう。神依の資料を読んで、精霊輪具を考えたんだ。 |
アステル | 何か依代があれば、精霊輪具に宿したマクスウェルの力と依代を神依化させてマクスウェルを助けられるんじゃないかって。 |
アステル | でも……デミトリアス陛下は、単なる依代じゃなくて異世界のマクスウェルを呼び出して、そのマクスウェルと精霊輪具のマクスウェルの力を神依化させようとした。 |
アステル | そのために、このアジトにいるミラ=マクスウェルとは違う、もう一人のミラ=マクスウェルを具現化した。 |
アステル | 僕は……そんな風にするために精霊輪具を開発した訳じゃないのに……。 |
クラース | ……もう一人のミラは、ヴィクトルによって帝国から助け出された。そして……今は精霊の封印地でダーナの心核の崩壊を防いでくれているのだな。 |
クラース | しかしダーナの声を聞こうとしていた筈が何故ダーナの心核を壊すような真似をするんだ ? |
アステル | わかりません。その話を聞いて……僕もショックです。リヒターは僕が帝国の情報に触れることを嫌がって遠ざけようとするから、僕も知らないことが多くて。 |
ジェイド | 話を戻させてもらいますよ。ヴィクトルの話に出ていた【精霊装】というのは、精霊輪具を使った神依と考えていいのでしょうか。 |
アステル | はい。もちろん完全な神依化はスレイさんと天族にしかできないと思います。 |
アステル | ただ、帝国は目覚めていない精霊のエネルギーすらも精霊輪具で取り込むことに成功してしまいました。これは……僕のせいでもありますが。 |
アステル | そしてベルセリオス博士の考案した装置を使って精霊の力を武器に投射して使う【精霊装】が完成したんです。 |
アステル | 手始めにアスカとシャドウを精霊装に利用すると言っていました。僕は……それを阻止したい。だからここに来ました。 |
マルタ | 阻止って……どうするの ?クラースさんが契約するとか ? |
マルタ | 精霊って一人の召喚士と契約すれば他の人とは契約できないんでしょう ? |
セルシウス | それはあなたの世界の精霊との約束事ね。だからといって、全ての世界がそのルールというわけではないの。 |
セルシウス | ティル・ナ・ノーグはそのルールではないわ。それにアスカもシャドウもまだ目覚めていない。 |
テネブラエ | 私は闇のセンチュリオンです。シャドウの気配は他の精霊より強く感じます。 |
テネブラエ | シャドウが目覚めていないのは断言してもいい。クラースさんはまだ契約ができないでしょう。 |
アステル | それに契約したところで精霊輪具には関係がないんです。精霊の力を吸い取ってしまうから。 |
コーキス | そういえばミクリオさまが精霊輪具をはめたとき疲れたって……。あれって力を奪われたってことだったのか ! ? |
アステル | そう。だから長時間つけては駄目だって言ったんだ。 |
ジェイド | 帝国の精霊装を阻止したいと言いましたね。アステル。何か策があるのですか ? |
アステル | 万全とは言えないけど……あります。精霊の力を占有させない方法が。 |
アステル | それと精霊が精霊輪具に抵抗する方法も。これは既に目覚めている精霊を守るために役立つと思います。 |
キャラクター | 5話【3-7 閑散とした街道1】 |
ミリーナ | 初めまして、セシリィ。私はミリーナ、こっちの子はカーリャよ。 |
カーリャ | よろしくお願いします♪ |
セシリィ | ……は、はい。初めまして、ミリーナさん……。 |
ミリーナ | 何が起きたかわかる ? |
セシリィ | ……うん。あの……クレアさんたちに、色々お話聞いたから……。 |
ミリーナ | そう。じゃあ、どうしようかしら。とりあえずガロウズを呼びましょうか ? |
セシリィ | 駄目 ! ボスは駄目 ! 怒られちゃう ! |
クレア | セシリィは……自分でリビングドールに志願したらしいの。 |
ミリーナ | え ! ? |
セシリィ | ……私、ボスみたいにもっと魔鏡に詳しくなって早く一人前の魔鏡技師になりたかったから。 |
セシリィ | ビフレストの凄い鏡士が私の中に入ってきたら私も鏡士みたいに魔鏡に詳しくなれるのかなって……。それにメルクリア様にも協力したかった。 |
セシリィ | でも、ボスがこの話を聞いたら絶対怒ってハモンだって言うもん……。 |
ミント | メルクリアさんとはお友達なんだそうです。 |
ミリーナ | そうなの……。ねぇ、セシリィメルクリアとはどうやって知り合ったの ? |
セシリィ | ゲフィオン様に頼まれたの。セールンドのお城に、メルクリア様と同じぐらいの年の子供がいないから、遊び相手になって欲しいって。 |
ミリーナ | ! ? |
マリアン | ミリーナさん ? 何だか顔色が……。椅子に座った方がいいのでは……。 |
ミリーナ | あ……。大丈夫。ありがとう……。ちょっと驚いただけで……。 |
ミリーナ | (ゲフィオンの記憶は滅びの夢として受け継いで来た筈なのに……) |
ミリーナ | (やっぱり私が受け継いだゲフィオンの記憶には欠落があるんだわ) |
リヒター | ジュニア。メルクリアを頼む。早く体調を戻してデミトリアスから離れさせたい。芙蓉離宮が無理ならどこか別の場所でもいい。 |
ジュニア | リヒターさん、どこへ行くんですか ? |
リヒター | ハロルドと話をしてくる。アステルの件、適当にごまかしておかないとな。……そんな手段が通じる女ではないだろうが。 |
メルクリア | ……待ってくれ、リヒター。わらわが悪かった。母上様のことを出されると取り乱してしまうのじゃ。 |
メルクリア | それより聞かせて欲しい。義父上と何を話したのじゃ ?ジュニアは話してくれぬ。だから……。 |
リヒター | ……わかった。 |
デミトリアス | 全ての方針を見直すことにした。 |
チーグル | どういうことだい。デミトリアス帝。まさか……ビフレスト復活の悲願をなかったことにするとでも言うのかな。 |
リヒター | だとしたら迷走にも程があるな。最初は救世軍としてゲフィオンの具現化計画を止めるように言われた。 |
リヒター | もっともあれは、ファントムの望む理想世界の構築の片棒を担がされた訳だが……。 |
リヒター | その後に救世軍ごと帝国に吸収されビフレスト復活の為、リビングドール計画だのダーナの器探しだのと奔走させられた。 |
リヒター | ファントムにせよメルクリアにせよ貴様が後ろ盾だった。つまりは貴様の迷走だろう。 |
デミトリアス | そうだね。その点は恥ずかしく思うよ。最初はフィルの願望を愚直に実行しようとするファントムに同情して、彼に力を貸しただけだった。 |
デミトリアス | ゲフィオンを犠牲にしなくても世界が救われるのならその方がいいと思ったからね。 |
デミトリアス | しかしファントムとメルクリアが、ウォーデン――ナーザ将軍をリビングドールとして甦らせてから全てが変わってしまった。 |
ローゲ | 死の砂嵐こそが、死の季節【フィンブルヴェトル】だと知ったのだな。 |
デミトリアス | そうだ。 |
デミトリアス | この世界はダーナが生み出した【ダーナの揺り籠】。滅びた世界ニーベルングの生き残りが避難してきた方舟のような世界だった。 |
デミトリアス | 具現化によって生まれた世界だからこそ鏡士の力があらゆるものを【想像】し、世界と【融合】させることで【創造】できた。 |
デミトリアス | この世界において鏡士は神にも等しい力を持っている。 |
チーグル | ダーナは予言を残した。 |
チーグル | 『揺り籠を揺らす手を操ろうとしてはならぬ。鏡写しの心は、アニマ無き人となり再びフィンブルヴェトルを招くだろう。 |
チーグル | フィンブルヴェトルが揺り籠を飲み込むときダーナの巫女は目覚め精霊を従えてラグナロクへと立ち向かう。 |
チーグル | フィンブルヴェトルは死の季節。世界の終末の始まりである』ダーナの黙示録の一節さ。 |
サレ | ゲフィオンのカレイドスコープが死の砂嵐――いやフィンブルヴェトルとやらを生み出したんだろう ? 歴史は繰り返すんだねぇ。 |
サレ | ニーベルングを滅ぼしたフィンブルヴェトルを避難先でご丁寧に再現するなんてこの世界の人間は脳みそがハムスター並だね。 |
サレ | 回し車の中で全力疾走して滅びから逃げたつもりになってるのかな ? |
チーグル | 黙れ、血まみれのドブネズミが。 |
サレ | へぇ、ハムスターにもプライドがあるんだね。 |
チーグル | ! |
ローゲ | やめておけチーグル。所詮はどこぞの馬の骨に一撃で沈んだ三下よ。 |
サレ | ! |
ハスタ | フェスティバ――――ル。ハムスターで生ハム作りか ?ダ・レ・ニ・ミ・カ・タ・シ・ヨ・ウ・カ・ナ。よし、両方殺そう ! |
デミトリアス | サレ、ハスタ。退屈の虫が騒ぐのなら別の機会を用意するよ。 |
デミトリアス | 特にハスタ。特異鏡映点亜種の二人には浅からぬ因縁があるのだろう ? |
ハスタ | アス……なんとかとデュラなんたらさんだっけか……?俺さまにズタボロのボロキレにされるがいいわぁぁはははは ! |
リヒター | ハスタ、サレ。お前たちは――いや、俺も所詮はこの世界の異分子。その行く末に興味は無いはずだ。 |
リヒター | 今はわざわざこの世界の愚かな連中を煽ったところでこの下らん会議が長引くだけだぞ。 |
サレ | ……自分は賢者だとでも言いたげだね、リヒター。アステルのことが話題に上がれば自分もうるさく騒ぎ立てるくせに。 |
リヒター | ………………。 |
ジュニア | ――あの……。陛下。全てはダーナの声を聞いて確証を得てからではなかったんですか ? |
ジュニア | 死の砂嵐がフィンブルヴェトルで間違いないのかもダーナの言葉を聞く必要があります。 |
ジュニア | それに、ダーナの巫女が完全に目覚める前に一部の精霊が目覚め始めているのも……。 |
デミトリアス | ……いや、もうダーナの言葉を待つつもりはない。もちろん、ビフレストの復活は約束する。だが、それがティル・ナ・ノーグであるとの保証はしない。 |
チーグル | ……どういうことだ ? |
デミトリアス | 私はティル・ナ・ノーグを救うためにはこの世界ができた当時の姿に戻すことが最良と考えた。 |
デミトリアス | しかしアスガルド帝国以前の十二王国時代のことは完全に文献が失われている。故にアスガルド帝国時代に回帰することを第一の目的とした。 |
デミトリアス | あの頃はダーナの託宣を受ける巫女がいたからだ。 |
デミトリアス | だが……仮に鏡精を殺し、セールンドの鏡士の力を封じたとしても、いずれまた同じ危機がやってくるのではないか。 |
デミトリアス | ならば目指すべきは抜本的変化。つまりダーナの揺り籠たるティル・ナ・ノーグを捨てニーベルングに回帰する。 |
ローゲ | 滅びた世界に回帰する、とな ? 面白いではないか ! |
チーグル | 馬鹿な……。そんなことができるものか ! |
デミトリアス | 誰ができぬと決めた ?ダーナがこの世界を生み出したときも同じように言われたのではないか ? |
リヒター | ……ダーナにはニーベルングが救えなかった。だからこの世界を生み出したのではないか ? |
デミトリアス | 今は、ダーナの時代になかったものがある。 |
ジュニア | 異世界のアニマと鏡映点……ですか ? |
デミトリアス | そうだ。我らはこの世界を捨て、ニーベルングを再誕させる ! |
メルクリア | な……何…… ?それは……それではビフレストはニーベルングに甦らせるというのか ? |
メルクリア | それは……それは本当にビフレストなのか ? |
リヒター | ……さあな。メルクリア、お前はビフレストを『どんな形で甦らせたい』んだ ? よく考えろ。その答え次第で、デミトリアスは敵になる。 |
ジュニア | リヒター。メルクリアはまだ子供なんだよ ? |
メルクリア | わ、わらわは子供ではない ! |
リヒター | 子供は子供であることを否定する。俺もメルクリアは子供だと思う。 |
リヒター | だが、子供だからものが考えられない訳じゃない。勇気を持って真実を追究しろ。 |
リヒター | 勇気は……夢を叶える魔法だ。 |
キャラクター | 6話【3-9 イ・ラプセル城】 |
イクス | とりあえず、アステルさんに言われた通りイ・ラプセル城の堀まできたけど……。ここで精霊の研究が行われてるんですか ? |
アステル | そんな、気を遣って喋らないでよ。見た感じ僕の方が年下みたいだし。 |
イクス | あ、うん。わかった。ありがとう、アステル。 |
アステル | で、精霊研究の件だけど、複数の施設があるんだ。ここはその一つ。精霊装研究を行ってるところ。 |
アステル | さて、ここからどうやって忍び込もうかな。僕一人なら、なんてことなく入れるけど……。 |
コーキス | ミリーナさまがいれば、幻の霧で姿を隠せるのに……。 |
マルタ | ミリーナはセシリィの話を聞いてから合流するって言ってたんだっけ。 |
クラース | 事を荒立てるのは良くないからな。 |
テネブラエ | いい方法があります。 |
テネブラエ | こういうのはいかがでしょう ? |
エミル | ええええええ ! ? |
マルタ | そういえば、テネブラエって色々変身できたもんね。釣り竿とか。 |
アステル | 凄い ! 僕も以前センチュリオンのアクアと旅したことがあるけどアクアにはこういう力はなかったなぁ。 |
テネブラエ | 所詮、アクアはジメジメしたカビ臭い水属性。高貴な闇に敵う筈もありません。 |
クラース | ウンディーネが聞いたら何を言われるかわからん発言だな……。 |
マルタ | シャーリィもミクリオも怒りそう。あ、シャーリィの場合はセネルが怒りそう……。 |
エミル | だから陰険ジジブラエって言われるんだよ。 |
テネブラエ | 失敬な ! 私はジジイではありません ! |
コーキス | 陰険は否定しないんだな……。 |
クラース | しかし、この変装――いや、変身なら、敵も偽物とは分からないだろう。テネブラエとアステルに見張りを遠ざけてもらって、城の中へ入ろう。 |
アステル | わかった。それじゃあリヒブラエ、行こうか ! |
リヒブラエ | 承知しました。 |
エミル | リ……リヒブラエ……。 |
イクス | 今度リヒターに会ったら、うっかりリヒブラエって言っちゃいそうだな……。はは……。 |
クラース | 何とか、内部に潜入できたな。 |
リヒブラエ | 私の手に掛かれば朝飯前――いえ、夜飯前ですよ。 |
クラース | ……センチュリオン……か。何というか、精霊の眷属にも色々あるのだな。 |
マルタ | ねぇ、ここにシャドウとアスカがいるの ? |
アステル | 正確には、シャドウとアスカの心核があるんだ。帝国は眠りについた精霊の心を具現化することで手元に保管しているんだ。 |
アステル | 今のところ、シャドウとアスカとクロノスの心核具現化に成功してる。 |
クラース | どこにいるともわからない精霊の心を具現化した ! ? |
アステル | ジュニア……えっと小さいフィリップがね。ファントムのカレイドスコープを使って精霊の力を見つけたんだ。 |
イクス | フィル……。昔から頭が良かったからな。鏡士としても才能があって、すぐにセールンドの王立魔鏡科学研究所に推薦されたんだ。 |
イクス | ……って、これは、一人目のイクスの記憶なのかも知れないけど。 |
アステル | うん。彼は凄いね。心核を……えっと別の世界の晶霊石というものに見立てて、クレーメルケイジに収めたんだ。 |
アステル | 精霊たちは眠っているけど、その力は既に世界中に広がり始めてる。でも心核があれば、そこを目指して精霊の力が戻ってくるみたいなんだ。 |
アステル | 帝国はそれを精霊輪具で吸収して精霊装に使おうとしてるんだよ。 |
クラース | 晶霊というのは、キール達の世界での精霊のような存在だったな。なるほど……。そうすれば目覚めていない精霊を先んじて支配下におけると言うことか。 |
ラタトスク | けっ。人間如きが精霊を許可なく檻に閉じ込めるとはな。だから人は信用できねぇんだ。 |
エミル | 人間ってひとくくりにするのは駄目だよ、ラタトスク。精霊も色々、人も色々、でしょ ? |
ラタトスク | んなこたぁ、お前に言われなくてもわかってる。 |
イクス | アステルの希望は、俺たちがシャドウとアスカのクレーメルケイジを回収してアジトに持ち帰ることなんだよな。 |
アステル | そう。クロノスは別の場所に運ばれているから無理だけど、シャドウとアスカだけでも帝国の手から取り上げて欲しいんだ。 |
クラース | それで、敵の精霊装計画を阻止するのはわかった。だが精霊が精霊輪具に抵抗する方法というのはどうするんだ ? |
クラース | それに何故帝国は精霊を武器として使用する ? |
アステル | 精霊を武器にするのは、おそらく精霊の力でしか壊せないものを壊すためだと思います。 |
アステル | 異世界にある晶霊砲(クレーメルキャノン)や魔導砲という大型の兵器にすることも考えられているようですが今のところそれでは『被害が大きすぎる』んだとか。 |
アステル | でも何を壊すつもりなのかは僕には知らされていなくて……。 |
リヒブラエ | その研究を止めよう……とはなさらないんですか。あなたは元の世界で、滅びを回避しようと命がけでラタトスク様の元へ出向いた筈だ。 |
アステル | ……その姿で言われると笑っていいのか反省すればいいのかわからなくなっちゃうけど。 |
アステル | でも、そうだね。僕は止めたいと思ってる。でも……例えこの世界の僕らが影の存在でもこの世界のリヒターを殺すような真似はしたくない。 |
アステル | 僕が研究をやめれば、リヒターが危ないと思う。それに、僕の代わりの天才は異世界にいくらでもいるだろうからね。 |
アステル | せいぜい研究しているフリで足を引っ張るのが関の山なんだ。 |
イクス | ……もしかして、それが理由でアステルは帝国から逃げだそうとしなかったのか ? |
アステル | それも理由の一つ。あとはリヒターが……メルクリアを助けたいと思っているみたいだから。口は悪いけど、お人好しなんだよね。リヒターって。 |
エミル | ……はい。知ってます。リヒターさんは……いつも優しかった。 |
ラタトスク | エミルには、な。 |
クラース | ……では、我々がシャドウとアスカのクレーメルケイジを回収すればアステルの心労も少しは軽くなるという事か。 |
クラース | 逆に刺激することにもなりかねないという危惧はあるがしかしここはアステルの言う通り、敵の精霊装研究を遅らせるべきなんだろうな。 |
クラース | もう一つの精霊輪具への抵抗というのは―― |
アステル | それは研究室でお話しします。とりあえず行きましょう。リヒブラエの正体がばれないうちに。 |
リヒブラエ | はい。それがいいと思いますよ。 |
コーキス | よし、俺、今の話を魔鏡通信でミリーナさまに連絡しとくよ。 |
イクス | 頼むよ、コーキス。 |
キャラクター | 7話【3-10 精霊研究所1】 |
アニス | ……い、嫌だなー。大佐まできちゃったんですかぁ ?アニスちゃん、めちゃくちゃ元気ですよ。だって……イオン様が……生きてるんだから……。 |
ティア | ……大佐。本当なんですか。導師イオンが帝国におられるというのは。 |
ガイ | どういうことだ。フローリアンの間違いじゃないのか ? |
ジェイド | 我々とは具現化された時期が違うのでしょう。こういう可能性は十分考えられた。だからこそ鏡映点リストに加えていた訳ですが……。 |
ジェイド | とりあえず本人がイオンを名乗っている以上フローリアンの可能性は限りなく低いでしょうね。 |
ナタリア | もし本当にあの導師イオンなのだとしたら私たちが具現化された時より前の時間軸から具現化されたのですわね。 |
アッシュ | ……もし、それが可能なら。『それ』は本当に導師なのか ? |
ルーク | は ? どういうことだ ? |
アッシュ | お前はいい加減その脳みそを使うことを覚えろ !モノは俺と同じの筈だ ! |
ルーク | 俺のこと、劣化してるって言わないのか ! ? |
アッシュ | 言って欲しいなら言ってやるぞ ! |
ガイ | 二人ともいい加減にしろ ! |
アッシュ | ……すまん、ガイ。 |
ルーク | ちぇっ。ガイには素直なんだな。 |
アッシュ | 何―― |
ティア | ルーク。アッシュは被験者(オリジナル)のことを言っているのだと思うわ。 |
ルーク | ……え ? |
アニス | ! ! |
ジェイド | さすがアッシュ。私も同じことを考えました。イオンと名乗る可能性のある人物は過去へ遡れるなら、少なくとも二人いることになる。 |
ジェイド | そして……我々の知らないイオン様であった場合少々面倒なことになります。彼は……自分のレプリカを作ろうとした人物ですからね。 |
ジェイド | もしもディストが目を覚ましていたら……さらに面倒なことになる。 |
ルーク | ここでもレプリカを作ろうとするってことか ? |
ジェイド | ええ。可能性はあります。そもそもこの世界の具現化はレプリカと発想が似ている。 |
ジェイド | いや、記憶を継承できるという点ではこちらのほうが遥かに上です。 |
ジェイド | それに……ローレライの具現化も予想されます。 |
アニス | ローレライって……第七音素(セブンスフォニム)の意識集合体…… ! |
ジェイド | ……ルーク、アッシュ。残念ですが、そろそろ本当のことを話す時期がきたのかも知れません。 |
ルーク | それって、俺がレプリカだってことか ? |
ナタリア | 確か、イクスとコーキス、それにヴェイグとセネルにはその話をしたそうですわね。 |
ルーク | みんな、察してくれて何も言わないでいてくれたけどな。 |
ガイ | イクスとコーキスはもちろんだがヴェイグもセネルもいい奴だもんなぁ……。 |
ジェイド | みんなに導師イオンの存在を説明する為には……避けて通れません。 |
ジェイド | それに、恐らくこの先は、私たちだけではなく様々な異世界の人間が、抱え込んでいる秘密を語らざるを得なくなるでしょうね。 |
ジェイド | 先ほどミリーナたちがイクスたちを追いかけてアスガルド帝国へ向かいました。話は彼らが戻ってきてからにしましょう。 |
フィリップ | ………………。 |
マーク | こんなところにいたのかよ。ヴィクトルの話の途中で消えちまって……。 |
マーク | また何か不安なことでもあったのか ?それとも……発作か ? |
フィリップ | ……ごめん。ヴィクトルの話から……色々なことに思い当たってしまって……。 |
マーク | なぁ、フィル。一人で思い悩むなよ。一人で背負い込むのもナシだ。何を悩んでるんだよ。 |
フィリップ | 僕らの始まりの場所……。 |
マーク | ……ん ? それはチビフィルが言ってたことか ? |
フィリップ | ……僕はずっと避けてきた。あの場所には行きたくなかったから。でも……行かなきゃいけないのかも知れない。 |
マーク | 何処なんだ、その始まりの場所って。 |
フィリップ | 水鏡の森。正確にはかつて水鏡の森から行くことができた聖域。……精霊の封印地のことだよ。 |
マーク | 水鏡の森って……オーデンセにあった森だろ ?あそこから精霊の封印地に行けたのか ! ? |
フィリップ | 水鏡の森は、色々と特別な場所だったんだ。 |
フィリップ | 今考えれば、あの森で見られた不思議な現象は精霊の封印地へ通じる次元通路があったから引き起こされていたんじゃないかと思う。 |
マーク | 今すぐ行くのか ? |
フィリップ | テネブラエの話では心の精霊が守りを強めたようだから……すぐにはたどり着けないかも知れないけれどね。 |
マーク | なぁ、そこには何があるんだ。 |
フィリップ | ――それは、行かないとわからない。 |
フィリップ | ただ、どうしても気が乗らなくてね。フィリップ・レストンが『こう』なった場所だから。わかるだろ、マーク。 |
マーク | ……鏡精は鏡士と記憶を共有する訳じゃねぇからな。まぁ……何となく想像ついちまったけど。 |
マーク | わざわざ心抉りに行くのは感心しねぇけど必要なんだって言うなら仕方ねぇな。ヴィクトルが目を覚ましたら、相談してみようぜ。 |
フィリップ | ああ。 |
キャラクター | 8話【3-11 精霊研究所2】 |
マルタ | ……ここが精霊研究所 ? なんか想像してたのと違う。 |
リヒブラエ | どんなものを想像していたのですか ? |
マルタ | サイバック……元の世界の学問所みたいなところ。なんか得体の知れないものが得体の知れない液体に浮いてたり……。 |
エミル | 僕も同じこと考えてた。普通の建物なんだね。 |
アステル | ああ、確かにあそことは違うかもね。 |
アステル | それより、エミルとラタトスクは気をつけてね。他の精霊と違って君たちと同じ属性の精霊はこの世界に存在していなかったんだ。 |
アステル | だからまだ帝国では研究が進んでいないけどもし捕まって研究対象にされたら……。 |
ラタトスク | 俺がそんなドジを踏むと思うか。それよりアスカとシャドウの気配がする。イクスの左だ。 |
クラース | イクス。きみの横にある机の上に置いてあるのがクレーメルケイジではないか ? |
イクス | ああ、これか。キールたちが持っている物とはちょっと違うんだな。 |
コーキス | うわ ! ? マスター、光ったぞ ! ? |
イクス | な、何も変なことはしてない筈だぞ ! ?お、落ち着け……。ボタンらしきものはなかった。レバーらしきものもない。 |
イクス | もしかして人体の熱に反応しているのか ?だとしたらうかつに触ったことで―― |
アステル | お、落ち着いて、イクス。これは予想通りの反応だから。イクスの反応は予想外だったけど……。 |
コーキス | いや、マスターはこーゆー奴だぞ。 |
イクス | わ、悪かったな !でもアステル。どういうことなんだ ? |
アステル | そのクレーメルケイジの中にはアスカが入っているんだ。アスカは光の精霊。イクスは光の精霊との相性がいいんだよ。 |
アステル | だからクレーメルケイジが反応したんだ。 |
クラース | ということは、私がそれを手にすれば……。 |
エミル | クラースさんでも光ってるけど……。 |
リヒブラエ | それはそうでしょう。クラースさんは召喚士ですよね。精霊全般と相性がいい筈です。 |
コーキス | わ ! 俺も持ちたい ! |
アステル | 鏡精の場合はどうなのかなぁ……。 |
マルタ | それじゃあ、私が持ってみるよ。 |
マルタ | 全然光らない……。つまり、私は光の精霊との相性が良くないんだね。 |
アステル | 相性が良くないんじゃなくて、普通なんだよ。でも、やっぱり僕の思っていた通りだった。 |
アステル | ……ナーザ将軍が、ここまでじゃないけれど光の精霊と相性が良かったんだ。 |
アステル | もちろんナーザ将軍はリビングドールだからイクスが同じ結果を得られるとは限らなかったんだけどでも可能性は十分あった。 |
アステル | 同じようにゲフィオンさんのデータを使った実証実験もしたんだ。その結果によればシャドウとミリーナの相性もかなりいい筈だよ。 |
クラース | その口ぶりでは、まるでイクスとミリーナに光と闇の精霊装を託そうとしているようだが……。 |
アステル | その通りです。それが、精霊を帝国による精霊装と精霊輪具から、精霊を守ることになるから。 |
リヒブラエ | ……皆さん。気をつけて。誰かがこちらに来ます。 |
アステル | ベルセリオス博士 ?今はアスガルド城にいる筈だけど……。 |
イクス | まずい。隠れる場所は―― |
リヒブラエ | 駄目です ! この部屋にきます ! |
チーグル | ……ここか。精霊の心核が置いてあるのは―― |
二人 | ! ? |
ラタトスク | おっと ! 見つかっちまったか。 |
チーグル | ……どういうことだ ? レイカー博士が二人――いや片方は樹の精霊ラタトスクか !おい、リヒター ! これは一体どういうことだ。 |
イクス | ――ご苦労だったな、レイカー博士。 |
アステル | ! ? |
イクス | 大人しく言うことを聞いてくれて助かった。シャドウとアスカは俺たちが頂いていく ! |
クラース | ! |
クラース | しかし頭がいいと言っても所詮子供だな。 |
クラース | このリヒターを本物のリヒターと信じて助けようとしたその友情には感心したが肝心の友が偽者と気付かないとはな ! |
リヒブラエ | ! ! |
テネブラエ | はっはっはっ。リヒターと信じた馬鹿な小僧めっ !センチュリオンの力をもってすればリヒターの姿になるなど造作もないことだ ! |
チーグル | 貴様ら !レイカー博士を謀って、精霊装を奪いにきたか ! |
マルタ | ざまーないね、レイカー博士 ! |
エミル | おっと、ローゲにチーグルだったな。このラタトスク様が三下の名前を覚えてやったんだ感謝しろ ! |
エミル | だが動くなよ。動けばレイカー博士の首をはねる。 |
ローゲ | 三下だとぉ ! ? そんな小僧の命など知ったことか ! |
チーグル | 待て、ローゲ。レイカー博士を失えば精霊装の計画が遅れることになる。 |
ローゲ | 構うものか ! |
チーグル | なっ ! ? なんだこれは―― |
ローゲ | くっ ! 姿が見えなくとも気配で…… |
チーグル | よせ ! レイカー博士に当たったらどうする ! |
コーキス | マスター ! これはミリーナさまの ! |
イクス | ああ。みんな脱出するぞ ! |
キャラクター | 9話【3-15 鬱蒼とした森林】 |
ミリーナ | イクス ! みんな ! 大丈夫 ! ? |
イクス | 助かったよ ! ありがとう、ミリーナ。 |
アーチェ | クラ~ス~♪ さっきの演技、中々だったじゃん♪ |
クラース | 大人をからかうのはやめなさい ! |
コーキス | エミルさまも相変わらずチンピラの演技がうめーよな。 |
エミル | ラタトスクの真似しただけだよ。……っていうか、こういう時は出てこないんだからラタトスク……。 |
マルタ | ラタトスク、呼んでるよ ? |
ラタトスク | 演技なんてかったるいことエミルがやればいいだろうが。 |
テネブラエ | ラタトスク様らしいと言うか……。それよりあの霧も長くは持たないでしょう。急いで脱出しましょう ! |
アステル | ………………。 |
イクス | この跳ね橋を渡れば、城の外に出られる。街に出られれば何とか逃げ切れるぞ。 |
アステル | ――ねぇ、みんなは急いで跳ね橋を渡って。僕はここに残って跳ね橋を上げておくよ。そうすればローゲたちを少しは足止めできるからさ。 |
エミル | え ! ? だけど……。 |
アステル | さっきはみんな、僕が裏切り者にならないように気を遣ってくれたんでしょ ? 本当にありがとう。おかげで上手くやり過ごせそうだよ。 |
アステル | ほら、元々僕は人質だからね。ずっとそっちにいるのも楽しそうだけど……。やっぱりリヒターのことを一人にはできないし。 |
イクス | アステル……。ありがとう。でも、くれぐれも無理はしないでくれよ。 |
アステル | うん、大丈夫。それから精霊装について教えておくね。クレーメルケイジの横についてるのは精霊輪具。それ、精霊はうかつに触らないように。 |
アステル | 多分一回ぐらいは精霊装を纏えるぐらいの力がたまってると思う。 |
アステル | スレイたちの神依の時とは違ってイクスとミリーナがその指輪をつければそこから精霊の力が武器に宿るから。 |
アステル | 武器と精霊との神依だと思って。恒久的に使うには、スレイの時みたいに魔鏡に映すのがいいと思う。 |
アステル | あと、これを天族に応用すればスレイは全属性の神依が可能になると思うって伝えて。 |
アステル | それとできればシャドウとアスカだけじゃなくて他の精霊もそっちの仲間で精霊装にして欲しいんだ。 |
ミリーナ | 霧が消えるわ ! |
アステル | 他にも色々教えたかったんだけど、時間がない。後のことは精霊輪具を調べてみて。君たちのところには天才がたくさんいるでしょう ? |
テネブラエ | ローゲたちがきます ! |
アステル | 行って ! 少しの間だけど楽しかった。できれば君たちと道が一つに繋がることを祈ってる ! |
イクス | 俺もだ ! だから、さよならは言わないよ ! またな ! |
アステル | うん ! また、ね ! |
ミリーナ | ……ここまで来れば、少しは休んでも平気かしら。 |
カーリャ | さすがにカーリャも飛びっぱなしでへろへろですぅ……。 |
コーキス | はぁ……はぁ……。だ、だらしねぇな、パイセン……。 |
カーリャ | コーキスだって息が上がってるじゃないですか ! |
エミル | アステルさん……大丈夫かな。 |
マルタ | 私たちの味方だと思われてないといいんだけど……。 |
アーチェ | そこはアステルの立ち回りのうまさを信じるしかないよね。 |
クラース | 我々の方もまだ安心はできないぞ。とにかく急いで帝国領を出なければ―― |
テネブラエ | ……おかしい。 |
イクス | テネブラエ ? |
テネブラエ | 魔物たちが静かです。 |
ラタトスク | ――敵さんが追いついてきたってことか。 |
アーチェ | ちょっと待って。上から見てくる。 |
アーチェ | まずいかも。ローゲとチーグルが馬でこっちに向かってきてる。ローゲは手強いしチーグルは光魔を呼ぶんだよね。 |
クラース | 光魔を無限に呼ばれたらやっかいだな。それに馬が相手では逃げ切れないぞ。 |
ミリーナ | 無限には呼べないんじゃないかしら……。今はイクスも魔鏡結晶の外にいるし、ナーザもいない。 |
ミリーナ | バルドさんたちが人体万華鏡の穴を塞いでくれたから一時的に死の砂嵐の流出が止まっている状態よ。 |
ミリーナ | 死の砂嵐にアクセスできなければリビングドールも作れないし光魔も無限には生み出せない筈。 |
イクス | ……ってことは、ローゲたちを何とかできればこの場をやり過ごせるんだな。 |
ラタトスク | ……イクス、ミリーナ。精霊装を使え。 |
二人 | え ! ? |
ラタトスク | 俺たちが精霊装を使ったのを見れば奴らは報告のために撤退するだろうよ。 |
ラタトスク | 雑魚は俺たちが引き受ける。二人はローゲを徹底的に叩け。 |
ミリーナ | 精霊装……。本当にできるのかしら……。 |
イクス | アステルはできるって言ってた。試してみよう。 |
テネブラエ | ……どうやら追いついてきたようですよ。 |
チーグル | レイカー博士をどう言いくるめたか知らないが逃げられると思ったら大間違いだよ。 |
ローゲ | シャドウとアスカを返してもらうぞ ! |
キャラクター | 10話【3-15 鬱蒼とした森林】 |
イクス | 精霊よ輝け ! |
ミリーナ | 精霊よ織りなせ ! |
イクス | 陽剣・至白刃 ! ! |
ミリーナ | 月鏡・継黒陣 ! ! |
ローゲ | ぐぉぉぉぉぉぉぉぉっ ! ? |
チーグル | ローゲ ! ? |
ローゲ | くっ……これが精霊装……。だが、この程度―― |
チーグル | 待て ! ローゲ ! アニムス粒子が乖離しかけている ! |
ローゲ | ぐぬぅ……―― |
チーグル | 退くぞ ! このままではお前が危険だ ! |
クラース | ……転送魔法陣で消えた、か。しかし今の状況は……使えるかも知れないな。 |
イクス | ……はい。精霊装による攻撃は、リビングドールのあり方に影響を与えるみたいでした。これならリチャードさんを救えるかも知れません。 |
マルタ | キール研究室のみんなに精霊輪具を見せたらアステルが言ってたみたいにもっと色々なことがわかるのかも知れないね。 |
ミリーナ | ええ。急いで調べてもらう必要がありそうね。 |
アーチェ | それじゃあ、さっさと帰ろう。また追っ手がきたら大変だもん。 |
エミル | そうだね。けど……アステルさんを置いてきたこと……ジェイドさん怒るかな。 |
テネブラエ | 大丈夫ですよ。あの人のことはよくわかりませんが闇属性に悪い人はいませんから。 |
エミル | ジェイドさん、闇属性なの ? |
テネブラエ | 色合い的には水っぽい気もしますがあのユーモアセンスは闇でしょう。 |
テネブラエ | あ、ですが、ユーリさんの方がもっと闇属性ですよ。何しろ真っ黒ですから。ええ。実にセンスがいい。 |
マルタ | ええ…… ? 色基準なの…… ? |
テネブラエ | そうですよ。ミリーナさんも精霊装の時にお召し物が漆黒の闇色に変わりました。やはり闇属性ですね。 |
ミリーナ | ふふ、テネブラエさんと一緒で嬉しいわ。 |
テネブラエ | そうでしょうとも。 |
クラース | なんと頭の痛い会話だ……。 |
ベルベット | アイゼン。あんた何してるの。 |
アイゼン | ――ああ。引っ越しだ。アジトの荷物をケリュケイオンにな。 |
ベルベット | ……そういうこと。 |
ライフィセット | え ? まさかアイゼンケリュケイオンに行っちゃうの ? |
アイゼン | ああ。人手が足りないらしくてな。死神の呪いのことも話したが、今でも地獄みたいなメンツだから今更どうでもいいとさ。 |
アイゼン | 異世界にもおかしな連中がいるんだな。ま、アイフリード海賊団には敵わないが。 |
ライフィセット | このこと、エドナは知ってるの ? |
アイゼン | 別れは済ませた。それにこの世界なら、いつでも会えるだろう。 |
ベルベット | ……そんな風に言って結局帰れなくなるなんてのは笑えないわよ。 |
アイゼン | ああ、そうだな。 |
ベルベット | それじゃ、気をつけて。 |
アイゼン | そっちもな。 |
コーキス | はぁ……やっと帰ってこられた……。 |
カーリャ | カーリャも外で冒険するのが久々で疲れました~。 |
ベルベット | あら、おかえりなさい。 |
イクス | ベルベットにライフィセット。何してるんだ ? |
ベルベット | 食事の準備よ。何だか立て続けに色々起きたけど食事をしない訳にはいかないでしょ。 |
アーチェ | ああ……。そう聞いたらお腹すいてきちゃった。 |
ベルベット | 色々込み入ったことになってるらしいわね。さっきジェイドたちから聞いたわ。 |
ベルベット | 珍しく懇切丁寧に説明して回ってるからすぐにみんな情報が共有されると思うわよ。 |
テネブラエ | さすが、闇属性は働き者ですね。そういえば、ベルベットさん……でしたか。あなたも闇属性とお見受けしました ! |
ベルベット | な……何よ、この大きなネコ。 |
ライフィセット | 何だか不思議な気配がするね……。 |
マルタ | え ! ?今空に飛んでいったのって、ケリュケイオン ! ? |
ミリーナ | え ! ? フィルたち、出発しちゃったの ! ? |
イクス | そんな……。精霊装のことフィルの意見も聞きたかったのに……。 |
ベルベット | 精霊装…… ? それって、前にスレイとミクリオが話してた帝国の研究 ? |
クラース | ああ。これがあれば、リビングドールにされた人間を元に戻せるかも知れないんだ。 |
ライフィセット | そうなの ! ? だったら、アスベルたちが喜ぶね ! |
イクス | うん。まず当面は、この精霊装を安定して使えるようにしていかないといけないな。 |
ミリーナ | その間に、この島のこともきちんと調べて生活の環境を整えないとね。ルドガーさんたちが地図を作ってくれていた筈だし……。 |
クラース | 幸い、この世界で空を飛べる乗り物はケリュケイオンだけだ。ここにいる限り帝国から襲われることもないな。 |
イクス | ええ。そしていずれは……死の砂嵐に囚われた人たちを助け出して、虚無から世界を救いたい。 |
イクス | ティル・ナ・ノーグをニーベルングの二の舞にはしないよ。絶対に。 |
イクス | ここが嘘の世界だとしても、俺にとっては真実なんだ。守ってみせる。 |
ミリーナ | ふふ、イクスったら♪ |
イクス | ちぇっ。決まらないな。……そういえば、中々食事する時間も取れなかった。 |
ベルベット | じゃあ、すぐに準備に取りかかりましょう。みんな手伝ってちょうだい。 |
二人 | もちろん ! |
エミル | あ、マルタとアーチェさんはいいよ。 |
二人 | ちょっと、それどういう意味 ! ? |
ベルベット | あ、そうだ。アイゼンがケリュケイオンに移籍するらしいわよ。 |
イクス | へぇ……――って、ええ ! ?アイゼンさんだけですか ! ?い、いいんですか、それで ! ? |
ライフィセット | 僕らも今さっき聞いたばっかりなんだ。 |
ベルベット | アイゼンがそうするって決めたんだからあたしたちがとやかく言うことじゃないわ。 |
ベルベット | それに、今は救世軍とは敵対している訳じゃないんだし。向こうに居てくれた方が何かと便利かもしれない。 |
ミリーナ | アイゼンさんのこと、信頼してるんですね。 |
ベルベット | そんなんじゃないわよ。ただ、舵は自分で取るってだけ。 |
イクス | ……そうですね。いつも一緒にいることだけが仲間でいるってことじゃないですよね。 |
ライフィセット | ちょっと寂しくなるけどね。 |
コーキス | けど、俺たちにもやることはたくさんあるからさ。すぐにそんなこと言ってられなくなるって。 |
イクス | ああ。頑張らないとな。……未来を作るために。 |
| to be continued |
キャラクター | 1話【4-1 閑散とした街道1】 |
ルカ | カイウス、ルビアの調子はどう ?ケリュケイオンから移って、何か困ってることはない ? |
カイウス | 今は大丈夫。でも…………なあルビア、もう少しどうだ ?ほとんど食べてないだろ。 |
ルビア | うん……でも、もういい……。 |
カイウス | だったら、他に何か欲しいものあるか ? |
ルビア | ……いらないって言ってるでしょ。もう……食べたくない……。 |
カイウス | ……そうか。 |
ルカ | ルビア、無理しなくてもいいよ。でも、以前僕を看病してくれてる時に言ってたよね ?「体力回復には食べなくちゃ」って。 |
ルビア | ……そうよね。立場が反対になっちゃった。 |
ルカ | あの時、僕の好きなチーズスープを作ってくれたの、すごく嬉しかったんだ。だから食べたい物があったら、いつでも言って ? |
カイウス | ああ、オレが必ず手に入れてくるよ。ルビアが早く元気になるようにさ !そうじゃないと、オレ…… |
ルビア | ……ねえ、カイウス。あたしもう少し、食べてみようかな……。 |
カイウス | 本当か ! よし、ほらルビア。あーん。 |
ルビア | …………。 |
ルカ | え、えっと、じゃあ僕、ジュードの手伝いしてくるよ ! |
ジュード | 食事は終わった ? もう少ししたら薬を―― |
ルカ | ジュード、丁度良かった !ちょっと質問があるんだけどいい ? |
ジュード | いいけど……じゃあ部屋の外で話そうか。 |
ルカ | ルビアの回復、遅すぎないかな。目が覚めたからアジトに移ってもらったけど、未だに一人で起きあがることもできないなんて……。 |
ジュード | 僕も気になってるんだ。あの衰弱の仕方は特異鏡映点とも違うみたいだからね。 |
ジュード | アプローチを変えて治療しようにも原因がわからないままじゃ下手な処置はできない。 |
ルカ | そうなんだ……。 |
ジュード | 今のところ、ルビアの体力に頼るしかないのがもどかしいよ。何か手がかりでもあれば…… |
シング | ねえ、ルビアは起きてる ! ? |
リタ | 今すぐに聞きたいことがあるんだけど話はできそう ? |
ルカ | 起きてるけど、もう少し体調が戻ってからの方がゆっくり話せると思うよ。 |
リタ | 無理にとは言わないわ。けど話によっちゃ回復の手掛かりになるかもしれないの。 |
ジュード | わかった。二人とも、中に入って。 |
シング | ルビア、帝国でつけられてた指輪って、これと同じもの ? |
ルビア | ……宝石の色は違うけど、同じような作りだったわ。 |
リタ | やっぱりね。シング、あんたの予想どおりよ。 |
カイウス | それ、何なんだ ?オレたちが帝国にいたころ、そんなの見たっけ ? |
シング | これは、さっきイクスたちが持ち帰って来た精霊輪具だよ。 |
シング | オレは、ミラ――空のマクスウェルからルビアが指輪をはめてたって話を聞いてたんだ。それでもしかしたらって思って。 |
カイウス | あっ、牢から脱出した時の話か !でも、あの時には指輪がはずされてたから―― |
リタ | その話はあと。長引くとルビアが疲れるでしょ。――ねえルビア、もう少し話せるなら、指輪をはめた経緯を教えてくれない ? |
ルビア | ええ。……空のマクスウェルは、帝国が捕獲した時に、ひどい傷を負ってしまったらしいの。あたしが見た時には、命を落としかけていたわ。 |
ルビア | だから、どうしてこんな酷いことになったのか、立ちあってたアステルに聞いてみたの。そうしたら―― |
ルビア | 「ティル・ナ・ノーグのマクスウェルの残滓を、空のマクスウェルが取り込んだこと」が原因だって言ってた。 |
ジュード | またマクスウェルの残滓か……。ミラはそのせいで、たまに体調が良くないんだよ。もう一人のミラも、そのせいで……。 |
リタ | もしかして、異なるマクスウェル同士が互いを異物とみなして反応したのかしら…… ?でも、エンコードされていれば、そんなこと……。 |
リタ | う~ん、とりあえずこの辺はキールやクラースの分野ね。それで ? |
ルビア | アステルは対策を考えるって、その場を離れたわ。他の研究者たちは、「またマクスウェルに死なれては困る」って騒いでた。 |
ルビア | そしてあたしに、指輪をはめるように言って来たの。その指輪――精霊輪具は精霊の力を吸収する力があるんですってね。 |
ルビア | それを使えばマクスウェルを助けられるって言われて……。 |
カイウス | バカ ! それで言われるまま使ったのか ! ?怪しいと思わなかったのかよ ! |
ルビア | 思ったわよ。……元々、反逆罪であの研究所に送られてたんだもの。きっとあたしは、何かの実験台なんだって。 |
ルビア | でも……目の前で苦しんでるあの人をそのままになんか出来なかった……。 |
カイウス | ルビア……。 |
ルビア | だからあたし、精霊装を纏って、この世界のマクスウェルの『残滓』っていうのを……自分を通して、吸収した……の……ハァ……。 |
リタ | えっ、ちょっと、大丈夫 ? |
ルビア | 大丈夫……少し……疲れただけ。 |
シング | ごめん。体が辛い時に無理させて。でもおかげで色々わかったよ。 |
リタ | そうね。今の話でなんとなく見当はついたわ。ルビアの体調がずっと戻らないのは精霊との相性が原因の一つかもね。 |
ルビア | 相性…… ? |
リタ | そう。ちなみにイクスは光、ミリーナは闇との相性がいいそうよ。この精霊輪具で、二人ともすごい力を引き出したらしいわ。 |
リタ | つまりあんたは、相性の悪いマクスウェルを無理やりに纏って、マクスウェルの力を吸収してしまった。多分、不調はそのせいじゃない ? |
リタ | とにかく、この推測が当たっていれば精霊輪具の研究を進めることでルビアの体を元に戻せる可能性が高くなるはずよ。 |
カイウス | 本当か ! ? 良かったな、ルビア ! |
ルカ | それなら、リタたちの研究結果が出るまで、これ以上体力を落とさないように治療方針を考えよう。 |
ジュード | ルカも医者の顔になってきたね。 |
ルカ | そんな……。でも本当にそうなれるように、ジュードにはもっと色々教わらないと。 |
シング | ルビアが元気になったら、きっとミラも喜ぶだろうな。命がけでルビアとオレを逃がしてくれたんだから。 |
カイウス | ……ルビアはあの人の命を救ったけど、オレたちだって、あの人に救われたんだよな。 |
ジュード | ……助けなくちゃね。もう一人のミラを。 |
キャラクター | 2話【4-2 閑散とした街道2】 |
テネブラエ | ――なるほど。私の知る姿とは違いますが、その姿もまた、お美しくていらっしゃる。 |
セルシウス | なによ。見慣れた姿でなければ落ち着かないとでも ? |
テネブラエ | いえいえ、どうぞそのままで。また変身する際の参考にもなりますから |
セルシウス | またって……、まさか、わたしに変身したことが―― |
カーリャ | お待たせしましたー……って、みんなもう集まってますよ ! |
コーキス | やべっ、俺たちが最後みたいだぞ、マスター ! |
イクス | ミリーナ、早く早く ! |
ミリーナ | 少しゆっくりしすぎたみたいね。ごめんなさい。 |
リフィル | いいのよ。休める時には、しっかり休まないと。 |
ユリウス | 精霊装を使ったらしいな。その後、なにか問題は出ていないか ? |
イクス | 大丈夫です。仮眠もとったからむしろ調子がいいくらいですよ。 |
ジェイド | でしたら、早速始めましょう。ここに来て、だいぶ事情が込み入ってますからね。 |
ジェイド | さて――我々が今後とるべき方針についてですが、まずは現在の課題を、ひとつずつ整理していきましょう。 |
ジェイド | 手始めに、精霊研究所から持ち帰って来たクレーメルケイジとそれに付属していた精霊輪具ですがこれらの研究と解析を早急に進めねばなりません。 |
キール | それはもちろん、キール研究室メンバーが請け負う。特にクレーメルケイジなら、ぼくの専門分野だ。 |
セルシウス | そうね。わたしもクレーメルケイジの差異が気になるわ。この世界のものは造りが少し違うようだから、中にいる精霊にどんな影響があるか知っておきたい。 |
クラース | 付け加えると、今回イクスたちが精霊装を纏ったことで精霊装による攻撃が、リビングドールに影響を与えることも分かっている。 |
クラース | これを突き詰めていけば、アスベルたちの仲間のリチャードを元に戻せる可能性もあるんだ。そのあたりも考慮に入れて研究を進めるといいだろう。 |
ユリウス | ところで、その精霊輪具の実物は今どこに ? |
キール | クレーメルケイジはここにあるけど、精霊輪具はリタが無理やり持っていったんだ。会議で使うかもしれないから少し待てって言ったのに ! |
カロル | それって、ボクがキールを呼びに行った時でしょ ?研究室からリタが飛び出してきたからびっくりしたよ。 |
カロル | どこ行くのって聞いたら、マクスウェルがどうとか、ルビアの回復が何とか……って。で、その後をシングが慌ててついて行ったんだ。 |
ミラ=マクスウェル | マクスウェル ? そう言えば、ルビアという娘は精霊装を纏ったことがあるという話だったな。もう一人の私が、それを気に病んでいたとか……。 |
ユリウス | まあ、リタからは後で話を聞こう。その報告次第では、精霊装の危険性も考慮に入れないとならないからな。 |
リフィル | ……精霊関係だけでも、やることは山積みね。 |
カロル | それじゃあ、ボクたちカロル調査室も、精霊のことを調査する ? |
ジェイド | いいえ、カロルたちには、帝国の目的について調査してもらおうと思っています。 |
ジェイド | ここにいる皆さんには先ほど一通り説明しましたが帝国の目的は相変わらず謎のままですからね。 |
ミリーナ | 目的……。ヴィクトルさんの話ではデミトリアスは、ダーナの心核がある精霊の封印地で精霊装の力を解放しようとしたのよね。 |
テネブラエ | ええ。まるで心核が壊れることなど構わないかのような行いでした。そして実際に、心核の崩壊は始まってしまった。 |
イクス | それを、もう一人のミラさんが心核に融合して食い止めているんだよな。 |
ミラ=マクスウェル | …………。 |
ミリーナ | ダーナの心核の崩壊は世界の崩壊と同じなのに、それを厭わないということは、帝国にとって、この世界は滅びても構わないということになるけれど…… |
ユリウス | 構わないどころか、むしろ積極的にさえ感じるな。まあ……その情報が本当であればの話だが。 |
ユリウス | その、ヴィクトルという鏡映点は、本当に信用できるのか ? |
キール | 信用できるさ。だってあの男は―― |
イクス | そ、そう ! あの男はバルドさんと行動を共にしてたんですから ! |
キール | そ、そうだ ! そうだぞー ! |
ユリウス | しかし、どこの世界から具現化された人物かくらいわからないと―― |
ジェイド | 残念ですが、彼は重症なので、必要な情報以外は引き出すことができなかったようです。何しろ鏡映点リストにも載っていない人物ですからねぇ。 |
クラース | まあ、その辺りの調査は引き取った救世軍の方にまかせればいいさ。 |
テネブラエ | ユリウスさん、私はその現場の当事者です。情報の正確さは私が保証いたしますよ。 |
テネブラエ | どんな嘘にも塗りつぶされぬのが黒き闇。私の言葉は真実のみです。どうぞご安心を。 |
ユリウス | ………。そうだな。少し引っかかるが……まあいい。 |
イクス | (……はぁ、みんな上手くごまかしてくれたな。ヴィクトルさんの正体を知らせるならもう少し落ち着いてからじゃないと……) |
ユリウス | 話の腰を折って済まなかった。とにかく、帝国のやろうとしていることは自ら積極的に滅びに行くも同義ということだ。 |
ジェイド | ……そうなのかもしれません。それを踏まえると、帝国はこの世界を滅ぼして新世界を作ろうとしているように思えます。 |
ミリーナ | ジェイドさん、まさかそれってニーベルングと同じ……。 |
ジェイド | ティル・ナ・ノーグは、まさに世界が滅びたからこそ生み出された箱庭です。彼らが同じことを考えても、おかしくありませんよ。 |
ジェイド | 帝国が分史世界の概念を生み出そうとしているという情報も、別の世界を作り出すためとも聞こえますしね。 |
ジェイド | それに、帝国にはディストがいますから。ありえないとは言えないのですよ。 |
カロル | なんでディストが関係あるの ? |
ジェイド | 私の世界では、レプリカというあらゆるものを複製する技術があったんです。 |
ミラ=マクスウェル | レプリカ……まるで具現化のようだな。 |
ジェイド | ええ。そして私たちの敵であった人物は、人間すべてをレプリカに置き換えようとしていたのです。 |
ジェイド | 人と世界、複製を作ろうとしている物に違いはありますが、その発想はよく似ています。 |
ジェイド | ディストが帝国にいたのですから、この答えにたどりつく可能性は十分に考えられる。 |
リフィル | ……ちょっといいかしら。 |
リフィル | あなたが言うように、一度世界を壊して、具現化なり、分史世界なり、レプリカなり、何らかの手で帝国が新世界を生み出すことが目的だと仮定するわね。 |
リフィル | 過去に、ニーベルングは具現化で新たな世界を造った。そしてティル・ナ・ノーグとして発展し、現在また、死の砂嵐で世界は再び滅びかけている。 |
リフィル | もしも、帝国が新たな世界を作り、その世界のおかげで、いま滅びかけているティル・ナ・ノーグの人々が救われるのだとしたら―― |
ミラ=マクスウェル | 帝国が考えていることは、あながち悪とは決めつけられない、とでも ? |
リフィル | 現状を考えれば、精霊やそれに属する人たちには面白くない話かもしれない。でも、そういう考え方を見落としてはいけないというだけよ。 |
イクス | ……帝国の考え方……か。 |
キャラクター | 3話【4-3 閑散とした街道3】 |
コーキス | 帝国のやっていることが結果的には正しいかもしれないなんて……。 |
カーリャ | 何だか納得できないですよぉ……。 |
ミリーナ | それが答えって訳じゃないわ。リフィル先生は、帝国の目的や考えを見極めなければならないって言ってるだけよ。 |
リフィル | ええ。一方的な物の見方は危険だから。 |
イクス | わかっています。……でもやっぱり俺もコーキスやカーリャと同じように思えるんです。 |
リフィル | 理由を聞かせてもらえる ? |
イクス | 本当に新世界を作ることで救われるなら帝国は、俺たちと対立せずに、協力を持ちかけてもいいはずじゃないですか ? |
リフィル | そうね。真の救済をかかげて協力を申し出る方が都合がいいかもしれない。 |
ミリーナ | 以前は、ファントムやナーザのように私たちを敵視する人物がいたけど、今なら手を結ぶことも難しくないわね。 |
イクス | ああ。だけど協定を申し出るような動きは見えないだろう ? |
イクス | だからその上でもしかして俺たちを憎むビフレスト勢が異議を唱えて手を組めないんじゃないかって考えた。 |
イクス | でもそれ以前に、メルクリアたちビフレスト勢が今の帝国のやりかたに賛同してるとは、とても思えなくて……。 |
ミリーナ | ……ナーザは、この世界の存続と未来のために私たちを殺そうとしていたんだものね。 |
イクス | ああ。そのナーザがいなくなったからって、いきなり世界を滅ぼして、新世界にしますなんて計画にビフレスト勢が納得するかな。 |
ユリウス | だとすると、帝国側も一枚岩ではないかもしれないな。 |
リフィル | 考えてみれば、当初から帝国が行ってきたリビングドール計画や、神降ろしに精霊装――どれも目的がちぐはぐな印象ね。 |
リフィル | その全てが、そもそも一つの目的に向けた計画ではなかったとしたら……。 |
ジェイド | ええ。イクスが言ったようにそれぞれの派閥の思惑や方針の変更などがあったのかもしれません。 |
ジェイド | まずリビングドール計画ですが、これはビフレスト復活のためであることは想像がつきますね。 |
ジェイド | そして神降ろしは、アステルの話から鑑みるに、ダーナ本人の声を聞こうと、もともと帝国が進めていたものでしょう。 |
ジェイド | 精霊との接触もその一環かと思われます。 |
キール | ヴィクトルは、精霊が分史世界の概念を生み出す為に必要なんだと話していたぞ。 |
ジェイド | そうですね。帝国にとって精霊は複合的に利用価値があるのでしょう。 |
ジェイド | マクスウェルへのこだわりといい、精霊こそが帝国のあらゆる計画の鍵を握る存在と言ってもいい。 |
カロル | それなら、精霊からもっと話を聞けないかな。ミラやセルシウスは何か知らないの ? |
ミラ=マクスウェル | 済まないが、特に情報はない。私はこの世界のマクスウェルではないからな。 |
クラース | セルシウス、君はエンコードの影響でこの世界の精霊と融合している。何かわかることはないか ? |
セルシウス | 残念だけど、この世界の精霊としての記憶は封じられた状態よ。 |
ミリーナ | ……ということは、アイフリードによる精霊の封印はまだ有効ってことなのかしら。 |
クラース | ……なるほど。そこで精霊装の登場というわけか。封印された状態でも、精霊の力を取り込んで利用するために編み出されたのかも知れんな。 |
クラース | それにアステルの話では、帝国は精霊装を『精霊の力でしか壊せないものを壊す道具』として想定しているそうだ。 |
キール | だったら悪用されないうちに、早く精霊たちを味方にしておかないと ! |
クラース | そうだな。では私が精霊の捜索と保護を担当しよう。やれやれ、体力勝負になりそうだな。キールも一緒にどうだ ? |
キール | ぼ、ぼくは……その……。 |
クラース | 冗談だよ。精霊輪具やクレーメルケイジの研究を進めておいてくれ。フィールドワークなら私の出番だ。 |
キール | ああ、わかった。こっちは任せてくれ ! |
コーキス | あからさまにホッとした顔してるな、キールさま……。 |
カーリャ | カーリャは、なに考えてるかわからない人より、よっぽど素直でいいと思いますよ。 |
ジェイド | おや、何か熱い視線を感じますねぇ♪ |
テネブラエ | 確かに、メラメラと燃えるような熱視線。カーリャさんはジェイドさんがお好みですか。闇属性を選ぶとは、なかなかにお目が高い。 |
カーリャ | 怒りで燃えているんですぅ ! |
カロル | えーっと……精霊輪具の研究はキール研究室で、精霊捜索がクラース精霊研究室っと……。ボクたちは帝国の目的調査と、内部分裂の可能性を…… |
コーキス | カロルさま、ちゃんと今までの話、整理してるのか。 |
カロル | うん、でもかなり難しくて……。コーキスはわかった ? |
コーキス | 俺は……えーっと、つまりその……帝国はこの世界を壊して、新世界を作ろうとしていて、それで俺たちはこの世界を守ればよくて…… |
コーキス | そのために精霊を捜したり、とにかくなんか色々やるんだろ ? |
カロル | ざっくりだね……。 |
カーリャ | ざっくりすぎます。薄味にもほどがありますよ。 |
ジェイド | いえいえ、上出来上出来。わかりやすくて良い説明ですよ。 |
コーキス | ジェイドさま、棒読みじゃねーか ! |
イクス | アハハ、でも本当にわかりやすかったよ。説明ありがとうな、コーキス ! |
コーキス | へへっ、どういたしまして、マスター ! |
リフィル | では、一度解散ね。それぞれの仕事を始めましょう。 |
クラース | イクス、ミリーナ、セルシウス。この後、クラース精霊研究室へ集まってくれ。精霊関係者たちと、今後について話しておきたいんだ。 |
二人 | わかりました。 |
クラース | それと、ミラはミュゼと一緒に。テネブラエも、エミルとラタトスクに声をかけて欲しいんだが、頼まれてくれるか ? |
テネブラエ | 承りましょう。 |
ミラ=マクスウェル | ミュゼもか。確かガイアスのところにいたな。すぐに連れてこよう。 |
キャラクター | 4話【4-4 閑散とした街道4】 |
テネブラエ | おや、これはこれは…… ! |
ラタトスク | ミトス…… ? どうしてお前がいるんだよ。今回は精霊関係者だけじゃなかったのか。 |
ミトス | いいじゃない。見学だよ。 |
ラタトスク | ……何か余計なこと考えてるわけじゃねえよな。 |
ミトス | 余計なことってなに ?ボクがまた、精霊を裏切るかもしれないって ? |
ラタトスク | そうじゃねえよ。お前が妙な動きをする理由なんて見当が付くって言ってんだ。 |
ミトス | へぇ……さすがだね。 |
ミトス | ――あれ、テネブラエも一緒なの ?ジーニアスやリフィルさんには会った ? |
テネブラエ | ええ。先程リフィルさんにご挨拶させて頂きましたよ。残念ながら私のことは知らないようでしたが。 |
ラタトスク | チッ、ごまかしやがって……。 |
エミル | テネブラエ、すごく嬉しそうだね。 |
ラタトスク | あいつは昔からそうなんだよ。ミトスには妙になつきやがって。何をそんなに気に入ったんだか。 |
ミトス | 何、ラタトスク、やきもち ? |
ラタトスク | そんなわけあるか ! |
テネブラエ | モテるセンチュリオンは辛いですねえ。ですがご心配なく。私はラタトスク様の忠実な眷属。ラタトスク様が一番です。 |
テネブラエ | それに、ミトスさんが我が主を裏切ったこと私は許していませんから。 |
ミトス | ……うん、良かった。それでいいよ。やっぱりテネブラエは面白いね。 |
テネブラエ | ありがとうございます。ミトスさんなら、そうおっしゃると思っていました。 |
クラース | ――さて、挨拶もすんだようだ。そろそろ始めてもいいかね ? |
ラタトスク | こっちはまだ話が終わってねえ !おい、ミトス。お前がこんな所に来たのはマーテルのことで―― |
ミラ=マクスウェル | ラタトスク、その話は後でもいいんじゃないか ? |
ミュゼ | そうよね~。ミラの言うとおりよ。だいたい、部外者云々でミトスのことを言うならそこにいる天族はどうなるの ? |
ライラ | ど、どうも~、お邪魔してま~す。 |
クラース | ライラは天族代表として私が招いたんだ。ティル・ナ・ノーグでは、元の世界で精霊ではなかった存在も、精霊としてエンコードされているからな。 |
テネブラエ | ほう、天族で精霊ですか。そうなると、精霊くくりの者があなた以外にもまだいるのですね。 |
ライラ | はい。ぞくぞく出てきますよ ! 天「族」だけに ! |
テネブラエ | ……どういう方か理解しました。ですがそのセンス、嫌いではありません ! |
クラース | ……ともかく、現時点で精霊と定義されている天族も、精霊捜索と保護には重要な存在だと考えているんだ。――ライラ、よろしく頼むよ。 |
ライラ | こちらこそ、是非ご一緒させて下さい。この計画に参加することは、私たち天族にとっても有意義なことですから。 |
ミリーナ | 張り切ってるわね、ライラ。 |
ライラ | はい。アステルさんという方の伝言によるとスレイさんの神依化が、元の世界のように全ての属性の天族とできるようになる可能性があると。 |
ライラ | 天族のみんながスレイさんと神依化できれば、同じようにロゼさんとの神依化もできるかも知れません。きっと戦局でお役に立つことも多いかと思います。 |
ライラ | ミクリオさんに先を越されてしまいましたが、ようやく主神としての務めを果たせそうですわ ! |
イクス | 火の天族……か。見た目より熱い人なんだな……。 |
ミリーナ | フフッ、そこがとっても可愛いでしょ ? |
ミラ=マクスウェル | クラース、聖隷は呼ばないのか ?彼らも元の世界では似たような存在だと聞いているが。 |
クラース | 天族が精霊と定義されているのは、ほぼ確実なんだがこの世界での聖隷はまだわからなくてね。だから今回は保留としておく。 |
ミラ=マクスウェル | なるほど、ティル・ナ・ノーグでは元の世界そのままというわけにもいかないからな。 |
ミュゼ | 私は元の世界そのまま、ミラのことが大好きよ ? |
ミラ=マクスウェル | 私にとってのミュゼはそのままではないが、今のミュゼは好きだぞ。 |
ミュゼ | ミラーー ! |
ミラ=マクスウェル | ではクラース、進めてくれ。 |
クラース | ようやくだな……。さて、これから我々のやるべきことは二つだ。 |
クラース | 一つ目は、このアジトでの精霊たちと、精霊装を進める。そのためには、精霊輪具の解析が必要になるが、そう簡単ではないから、これは一旦後回しだ。 |
クラース | 二つ目は、未発見、未契約の精霊たちを捜し出して保護すること。しかし、この世界にどれだけの精霊がいるかは現在わかっていない。 |
クラース | 私も、自分の世界の全ての精霊を把握していたわけではないんだ。そこに加えて、天族の例もある。 |
セルシウス | 具現化のせいで、この世界にはいなかったはずの異世界の精霊も増えているわ。全てを把握するのは途方もない作業になるわね。 |
ミラ=マクスウェル | ミトスは帝国にいたのだろう ?あちらでは精霊について何か聞いたことはないのか ? |
ミトス | そうだね。ボクが帝国にいた頃、この世界で認知された精霊なら教えてあげられるよ。 |
ミトス | 君の従える四大とマクスウェル、セルシウス、シャドウ、アスカ、クロノス、ヴェリウス、ヴォルト、そしてオリジン。 |
ミトス | あとはジェイドの報告だと、他にもローレライや他の天族が具現化されているんだったよね。 |
ミラ=マクスウェル | これは助かる情報だ。ありがとう、ミトス。 |
ミトス | どういたしまして。 |
ラタトスク | ……お前、ずいぶんと素直じゃねえか。 |
ミトス | マクスウェルには、元の世界で恩があるから、この程度ならね。でも、これで精霊が全てかはわからないよ。 |
ミュゼ | それじゃやっぱり地道に捜すしかないの ?いやだわ、気が遠くなっちゃう。 |
イクス | 手がかりはあるよ。アステルの話じゃフィル……ジュニアが、ファントムのカレイドスコープで精霊の力をみつけて、心核を具現化したって。 |
ミラ=マクスウェル | それを使えば精霊を捜すことも可能ということか。だが、カレイドスコープは確か、ジュニアとファントムの仮想鏡界の中ではなかったか ? |
ミトス | もしもジュニアが仮想鏡界を維持できていれば、眠ってるファントムを通じて侵入できるんじゃない ?体はこっちで確保してるんだし、すぐ実行できるよ。 |
ミラ=マクスウェル | なるほど。シングの力を借りて、ファントムの心の中に入るんだな。 |
クラース | 心の中か……。これは少々勝手が変わってきたな。まあいい。新たな精霊を発見できるなら、どこにでも行ってやるさ。 |
キャラクター | 5話【4-5 閑散とした街道5】 |
ジュード | ――ファントムの心に入るの ?確かに、今のファントムは眠っているけど彼の精神状態がどうなっているか、わからないんだよ ? |
イクス | ああ。かなり危険だと思う。それでもソーマ使いの力が必要なんだ。頼むよ、シング。 |
シング | もちろん引き受けるよ。当たり前だろ !それに……。 |
ミラ=マクスウェル | …… ?どうしたシング。私の顔に何かついているか ? |
シング | ……ううん、何でもない。オレさ、ジィちゃんから胸の大きな美人が困ってたら、死んでも助けろって言われてるんだ。だから喜んで協力するよ ! |
ミラ=マクスウェル | 胸か。なるほど……。シングにとって胸の大きさとは、命をかけるに値するのだな。覚えておこう。 |
シング | ……やっぱり、オレの会ったミラとは違うんだね。分史世界と正史世界って不思議だな。 |
ミュゼ | でも、どの世界のミラも魅力的なのは変わらないでしょ ? |
シング | うん。オレもそう思うよ !ところで、今回スピルリンクするメンバーは ? |
イクス | 俺とミリーナ、それにクラースさんとミトスだ。 |
コーキス | 俺たちもいくからな、マスター ! |
カーリャ | 忘れないでくださいよ ! |
シング | コーキスとカーリャもだね。了解 !ミラやミュゼは行かないの ? |
ミュゼ | 残念だけど、私たちはお留守番なの。 |
ミリーナ | ファントムの仮想鏡界に入るということは敵の懐に飛び込むのと同じだから、今回は安全策を取ることにしたのよ。 |
クラース | 精霊たちを連れて行って、逆に捕獲される可能性もあるからな。 |
ジュード | それじゃみんな、行こうか。ファントムはこっちの部屋に―― |
カイウス | ミラさん、ミュゼさん、ルビアが起きたよ。 |
ミラ=マクスウェル | そうか。今いく。 |
カーリャ | ミラさま、もしかしてここに来たのって見送りの他に、ルビアさまのお見舞いのためですか ? |
ミラ=マクスウェル | 目を覚ましているなら会ってみようかと思ってな。そうだ、みんなも会ってから出発したらどうだ ? |
ミリーナ | あんまり人数が多いと、ルビアが疲れてしまうんじゃ…… |
カイウス | 大丈夫だよ。最近オレの顔ばっかりで飽きてるだろうしルビアもきっと喜ぶと思う。 |
カイウス | ルビア、みんながお見舞いに来てくれたぞ ! |
ミラ=マクスウェル | ……っ ? |
ミュゼ | ミラ、どうしたの ? |
ミラ=マクスウェル | ……いや、なんでもない。 |
ルビア | あなたが……もう一人のマクスウェル ?驚いたわ。本当にそっくりなのね。 |
ミラ=マクスウェル | 私が礼を言うのもおかしいだろうが、もう一人の私を助けてくれて感謝するよ。ルビア。 |
ルビア | いいえ、こっちこそ助けてもらったわ。ここで「ありがとう」って言いたいけど、これはあたしを助けたマクスウェルのために取っておくわね。 |
ミラ=マクスウェル | ああ。是非そうしてくれ。彼女を助け出した時には、……改めて……話を…… |
ジュード | ミラ ! ? |
ミラ=マクスウェル | ……すまない、軽い目眩だ。どうということはない。 |
ミリーナ | 以前受けた、マクスウェルの残滓の影響が残っているのかしら。 |
ジュード | (残滓……まさか、ルビアの中のマクスウェルの残滓が……) |
ルビア | ねえ、あなた大丈夫なの ? |
ミラ=マクスウェル | すまない、ルビア。見舞うはずの相手に、心配させてしまったな。――もう問題ない。 |
クラース | だが……。 |
ミラ=マクスウェル | 私は今回留守番だ。その間に休ませてもらうよ。みんなはファントムの所へ行ってくれ。 |
イクス | わかった。ジュード、ミラのことを頼む。ファントムはこっちの部屋だったよな ? |
ジュード | うん。くれぐれも気をつけて。 |
シング | ――よし、スピルリンク成功だ !みんな、ファントムのスピリアに入ったぞ。 |
クラース | これが人の心の中なのか。クレスたちから聞いてはいたが……。 |
シング | ここはまだ、ほんの入り口なんだ。もっと奥へ進んで、仮想鏡界の入り口っていうのを―― |
ジュード | みんな聞こえる ! ? |
イクス | ジュード、どうしたんだ ? |
ジュード | ミラが倒れたんだ !みんながスピルリンクした後、すぐに…… |
ミリーナ | やっぱり具合が悪いのね ! 症状は目眩 ? |
ジュード | うん。さっきはふらつく程度だったけど、今は立てないくらい辛そうなんだ。どんどん悪くなってる。 |
ジュード | ミュゼの話では、みんながスピルリンクした直後からマクスウェルの残滓が流れ込んできてるって。 |
ジュード | とにかく、一度そこから戻ってきてくれないかな。もしかしたら、症状の悪化を止められるかもしれない。 |
シング | わかったよ。すぐに解除する。戻ってもいいよね、イクス ! |
イクス | ああ、頼む ! |
シング | 戻ったよ、ジュード ! |
コーキス | うっ……なんか気持ち悪ッ !出発前は、こんな空気じゃなかったよな ! ? |
カーリャ | 前にマクスウェルの残滓を感じた時と同じですよ。ゾゾゾッていう感じ ! |
コーキス | 体がでかかった時は寒気くらいだったけど小さいとこんな感じなんだな。う~……。 |
ミュゼ | ミラ……ミラ ! しっかりして ! |
イクス | ミラの容体は ! ? |
ミラ=マクスウェル | ……すまない……みんなの邪魔をしてしまって……。 |
ジュード | よかった……話せるみたいだね。さっきよりは落ち着いたかな。 |
ミトス | 顔色が悪いね。仮想鏡界がほどけた、あの時と同じだ。 |
ミリーナ | やっぱり、ミュゼさんの言うとおりマクスウェルの残滓が影響して……。 |
シング | オレ、何か失敗したのかな……。ファントムにスピルリンクしただけで、マクスウェルの残滓が流れ込むなんて。 |
ミリーナ | スピリアは心の中だから、集合的無意識と繋がる場所になるわ。そしてその場所はティル・ナ・ノーグの影響を受けやすいから…… |
イクス | ティル・ナ・ノーグを支えているダーナの心核が傷ついた影響かもしれない。 |
イクス | ヴィクトルさんの話では、もう一人のミラさんが戦った場所は精霊の封印地で、ダーナの心核の近くだったはずだ。 |
イクス | それで、精霊の封印地に溢れたマクスウェルの残滓が心の世界に流れ込んだ……ってことはないかな。それがファントムの心から流れ込んできてるとか。 |
クラース | もしそうなら、スピルリンクをするたびに、スピルメイズを通じてマクスウェルの残滓が流れてくることに……。 |
ミュゼ | そんなのダメよ、ミラが死んじゃうわ !スピルリンク禁止 ! |
クラース | 落ち着くんだ。まだ仮定の話だよ。 |
ルビア | ……倒れたのは、あたしにも原因があるかも……。 |
カイウス | なに言ってんだよ。 |
ルビア | だって、この部屋に入って来た時から、具合が悪そうだったでしょ ? |
ルビア | 精霊装で吸収したマクスウェルの残滓が原因でこんなことになってるのかもしれないわ。 |
カイウス | ……でも、それはルビアのせいじゃ……。 |
クラース | 確かにルビアの所に来てから、ミラは具合が悪かった。だがそれはルビアのせいというわけではなく、精霊の力の特性によるものだろうな。 |
イクス | そうか ! アステルが言ってましたよね。広がった精霊の力は、その力の源である心核を目指して戻ってくるらしいって。 |
クラース | マクスウェルの力は、マクスウェルの心核に集うということだろう。 |
クラース | だからルビアが吸収したものも、ファントムから流れて来たものも、ミラの心核に惹かれて流れ込もうとしているんだ。 |
ミュゼ | じゃあ、マクスウェルの残滓を取り除けるようになればいいのよね ? |
クラース | それは……キールたちの研究が進まないと難しいだろう。 |
シング | やっぱりミュゼの言うとおり、スピルリンクは禁止するしかないのか……。 |
ミラ=マクスウェル | それでは私のせいでみんなの足を引っ張ることになる。私はまだ耐えられるから大丈夫だ。 |
ジュード | 危険だよ、ミラ。 |
イクス | ……精霊輪具のようにマクスウェルの残滓を集められる方法があれば……。 |
キャラクター | 6話【4-9 迷いの森4】 |
イクス | ルビアがもう一人のミラさんを助けられたのも、無理に精霊輪具を使った精霊装をさせられたからだよな。今更だけどアステルがこっちにいてくれれば―― |
クラース | しかし精霊輪具の精霊を吸収する力が解明できてもミラの心核以上の吸引力を担保できるだろうか ?世界は違えど、ミラもマクスウェルだからな。 |
ミュゼ | 集めるのも取り除くのも難しいなら捨てちゃえばいいのよ。 |
コーキス | 捨てるってミュゼさま、そんなゴミみたいに……。 |
カーリャ | その辺のゴミ箱にポイってわけにはいきませんよ ? |
ミュゼ | わかってるわ。私が言ってるのは、マクスウェルの残滓を次元の彼方に飛ばせばいいってこと。 |
ジュード | そうか ! 時空を切り裂く剣だね ! |
イクス | 時空を切り裂くって、どういうことなんだ ? |
ジュード | ミュゼの力だよ。それを持つ剣を使えば別の次元への入り口を切り開くことができるんだ。 |
ミュゼ | 一度折れてるから、まずは剣を作るところから始めないといけないけれど試してみる価値はあるでしょう ? |
ジュード | えっ、あの剣、折れちゃったの ! ? |
ミュゼ | そうよ ? 誰かさんのせいでね。待ってて。今から作ってみるから。 |
ミュゼ | …… ?おかしいわ。力が上手くまとまらない。 |
クラース | まさか、エンコードの影響か ? |
ミリーナ | そうですね……。もしかしたら次元に干渉できるようなものは作らせないというこの世界の法則があるのかも知れません。 |
ミリーナ | ミュゼさん自身が、この世界から別次元へ移動することが不可能な状態だと思うから、きっとその力を使う剣も……。 |
ミュゼ | ……そう。 |
ミトス | 時空を切り裂く……か。ボクのエターナルソードによく似ているね。 |
クラース | エターナルソード ! 時間の剣か。 |
ミトス | へえ、知ってるんだ。 |
クラース | ああ。敵のダオスを倒すためにオリジンに頼んで作ってもらったんだ。だが、その剣は少々違うようだな。 |
ミトス | そうだね。この剣は、ボクのために、ボクの世界のオリジンが生み出した、時空を切り裂く剣なんだ。 |
ミュゼ | ミトスのその剣はどうしてこの世界に存在できるの ?エンコードの影響は ? |
ミトス | ボクがエターナルソードを手にしているタイミングで具現化されたから――じゃない ? |
ミトス | もちろん、機能は制限されているよ。元の世界のようには使えない。 |
ミトス | でも、マクスウェルの残滓を、別の次元に集めることくらいはできるはずだ。 |
イクス | 本当か ! ? |
シング | それじゃ、スピルリンクも可能になるんだな ! |
ミトス | そう簡単な話じゃないけどね。まず、ファントムのスピリアに侵入しないと。そこで残滓を集めて、エターナルソードで封じるんだ。 |
シング | ……あれ ? それだと結局スピルリンクはしないといけないってことだよな ? |
ミュゼ | また、ミラが倒れちゃうじゃない ! |
ミトス | それ以上に過酷だよ。ファントムの中で残滓を集めるには、その残滓が集まる目標が必要だから。 |
イクス | ……それは、ミラを『おとり』にするってことか。 |
ミトス | ……そうなるね。 |
ミュゼ | ダメよ ! 絶対に反対だわ ! |
ジュード | ……ごめん、ミトス。提案はありがたいけど、僕も賛成できない。 |
ミトス | 別に強要はしないよ。好きにすればいいさ。ボクもマクスウェルが苦しむところをわざわざ見たくはないからね。 |
ミラ=マクスウェル | 待ってくれ……。私はこのまま、皆の足手まといになるつもりはない。 |
ミラ=マクスウェル | ミトス、その提案を受け入れよう。私がおとりになればいいんだな ? |
ミュゼ | ミラ ! ! |
ミトス | ……わかった。でも、無理はしなくていいからね。 |
ミラ=マクスウェル | ジュード、ミュゼ。私は平気だ。ミトスがうまくやってくれるよ。 |
ジュード | ……でも、今のミラの状態で、そんな賭けみたいなことは……。 |
イクス | 俺もそう思う。ぶっつけ本番じゃ危険すぎるよ。だからその方法を、ここで試してみないか ? |
ミラ=マクスウェル | ここで…… ? |
イクス | まず、ルビアの中のマクスウェルの残滓を取り出してみるんだよ。ミラはルビアの中の残滓に反応していただろ ? |
ルビア | ……えっ ? |
イクス | それで、ミトスの提案した方法が成功するかミラの体への負担がどうか、確かめてみればいい。危険な事には変わりないけど、どうかな ? |
ミラ=マクスウェル | それはいい考えだ。是非やらせてくれ。 |
カイウス | そんなことして平気なのか ?そりゃ、ルビアが元気になるのは嬉しいけど……。 |
ミラ=マクスウェル | 君が気に病む必要はない。私が、苦しむ人を救ってやりたいだけだ。 |
ジュード | …………。 |
ミラ=マクスウェル | ジュード、ミュゼ。私の身を案じてくれているのはわかる。でもどうか―― |
ジュード | わかってるよ。ミラがそう言うなら、僕は全力で支える。 |
ミュゼ | 私もそばにいるわ。 |
ミラ=マクスウェル | ああ。頼りにしている。――ミトス、手順は ? |
ミトス | そうだね。ルビアと接触して、より明確にマクスウェルの残滓に目標はここだとわからせてあげればいいんじゃないかな。 |
ルビア | ……無理はしないでね。苦しかったら、すぐにあたしから離れて。 |
ミラ=マクスウェル | 安心しろ。私はかなり頑丈で強いんだ。な、ジュード。 |
ジュード | うん。僕の世界の仲間全員が保証するよ。 |
ミラ=マクスウェル | ではルビア、手を。 |
ミラ=マクスウェル | ――っ…… !(……来い。私は……マクスウェルはここだ) |
コーキス | ルビアさまから光が……うっ ! ? なんかゾゾッと…… |
カーリャ | はい、この部屋全体からもマクスウェルの残滓の気配が集まって来ましたね……。 |
ミトス | ――今だ ! |
シング | うわっ、空中に小さな穴 ! ? |
ミュゼ | あれは次元に開けた穴ね。でもとても小さいわ。 |
カイウス | 光があっという間に吸い込まれた……。 |
ミトス | さあ――終わったよ。 |
二人 | ミラ、大丈夫 ! ? |
ミラ=マクスウェル | ……ああ。今ので疲労感は増してるが、ルビアの中の残滓が消えたせいか、体に力が戻って来た気がする。 |
カイウス | ルビアはどうだ ? |
ルビア | あたしも……体が軽いわ。 |
クラース | どうやら、成功のようだな。 |
シング | 良かったな、ルビア ! カイウス ! |
カイウス | な、なんでオレまで。 |
ルビア | そうよ、別にあたしたち…… |
ジュード | ルビア、まだ安静にね。でもきっと、回復は早いと思うよ。 |
ルビア | ありがとう。みんな。それと――これは正真正銘、あなたへのお礼の言葉よ。助けてくれてありがとう、ミラ ! |
ミラ=マクスウェル | ああ。喜んで受け取ろう。 |
イクス | ミトス、助かったよ。ありがとう !これならきっと スピルリンクもうまく行くと思う。 |
ミトス | ……そうだといいんだけどね。 |
キャラクター | 7話【4-10 ファントムのスピルメイズ1】 |
シング | ――よし、ファントムにスピルリンクできたぞ。 |
ジュード | ミラ、具合はどう ? |
ミラ=マクスウェル | ああ、まだ平気だよ。マクスウェルの残滓も感じないな。 |
クラース | この入り口付近に漂ってたマクスウェルの残滓がアジトに流れ込んでいたのかもしれないな。 |
クラース | さっきのミトスの処置で、アジトに漂ってたものも一緒に封じられたから今はまだ影響が少ないんだろう。 |
イクス | そうすると、もっと奥へ進まないと、マクスウェルの残滓が集まらないのか。 |
ミリーナ | 早めにミラさんを帰さないと、ミュゼさんが大変なことになっちゃうわ。 |
カーリャ | スピルリンクギリギリまでミラさまにくっついてましたからね。 |
コーキス | 最終的に、カイウスさまが無理やり引きはがしてたもんなぁ。 |
ミトス | 最初から留守番は決まってたんだから、仕方ないよ。それに妹を大切に思う気持ちは、ボクにもわかる。結局留守番をしているだけ偉いんじゃない ? |
ミリーナ | そうよね、私が同じ立場でも絶対ついていきたいもの。 |
二人 | でしょうね……。 |
ミトス | それにしても……、あのファントムの心に入るとはね。 |
クラース | スピリアは迷路のようだと聞いていたが……心の中とは、みんなこうなのか ?この辺りなんて崩れ落ちてるぞ。 |
シング | スピルメイズは人それぞれだけどでも、こんな風になってるのはきっとファントムのスピリアが壊れかけてるから……。 |
イクス | ファントム……。野望のために世界を歪めようとした敵だったけど、あいつだって具現化されたもう一人のフィルなんだよな……。 |
ミリーナ | ……その具現化に関わったのはゲフィオンよ。失われたものを甦らせるというエゴのためにファントムは生み出されて、犠牲になった……。 |
ミリーナ | 私はゲフィオンとは違う。でも、そう考えてても、やっぱり……。 |
ミラ=マクスウェル | ミリーナ、これからの君が何を選び、何をするかが問題なんじゃないか ? |
ミリーナ | ……そうよね。 |
シング | あのさ、こうしてファントムのスピリアに入れたんだから、もしかしたらファントムの心を取り戻してやることも出来るんじゃないかな。 |
シング | スピルーン……じゃなくて、心核をとられてたコハクの時とは違うけど、ファントムがデスピル病ならオレたちソーマ使いが治してあげられるかもしれない。 |
コーキス | デスピル病 ? |
シング | オレたちの世界で広がっていた、感情が暴走する病気っていえばいいのかな。それで暴れたり、無気力になっちゃったりするんだ。 |
シング | フィリップさんはあんなに穏やかなんだしファントムだって、もしかしたら―― |
ミトス | 全てを救おうとして、全てを失うこともある。余計なことはしないほうがいいよ。 |
シング | ……余計なこと、か。 |
イクス | ………………。 |
ミラ=マクスウェル | ……うっ ! |
ジュード | ミラ、僕につかまって。マクスウェルの残滓が近くにあるんだね ? |
ミラ=マクスウェル | ああ……呼びかけてみる。ミトス、用意しておいてくれ。 |
ミトス | いつでもいいよ。 |
ミラ=マクスウェル | (この世界のマクスウェルの残滓よ……。私のもとへ……) |
カーリャ | ひぃーーゾゾゾっと来ましたよ ! |
コーキス | やっぱ慣れねー ! |
ミトス | 集まって来たね。それじゃ行くよ ! |
ミトス | …………え ? |
イクス | ……どうしたんだミトス ? |
ミトス | エターナルソードが発動しない……… ! |
シング | なんで――うっ、うわあ !ソーマが光って……震えてる ! ? |
クラース | シング ! ? 何が起こってるんだ ! |
シング | オレにもわからないんだ ! ソーマが勝手に力を―― |
イクス | なんでこんなことに…… ! |
ミリーナ | まさか、ここがスピリアだから ? |
イクス | ミリーナ、何か気が付いたのか ? |
ミリーナ | ここは心の中、ある意味仮想鏡界と近い特殊な空間よ。だからエターナルソードの次元を切り裂く力が、正しく作用していないのかもしれない ! |
イクス | それじゃミラが……ジュード ! |
ジュード | わかってる !ミラ、呼ぶのをやめて !マクスウェルの残滓を集めちゃ駄目だ ! |
ミラ=マクスウェル | 駄目なんだ……ジュード……。呼びかけをやめたのに……次々に……集まって……。 |
ジュード | ミラ――――っ ! ! |
キャラクター | 8話【4-14 ファントムのスピルメイズ5】 |
イクス | ミラ、無事か ! ? 返事をしてくれ ! |
ミラ=マクスウェル | …………。 |
クラース | ミラの体が光ってるぞ……。ルビアの時のように、マクスウェルの残滓が集まって取り囲んでいるのか。 |
ミトス | このままじゃミラが危険だ。シング、すぐにここから脱出して ! |
シング | それが……出来ないんだよ !さっきからソーマが変なんだ。今までこんなこと無かったのに……。 |
ミリーナ | ソーマを持たない私たちがスピルリンクするために、シングのソーマの力を魔鏡術で増幅して補ってるわ。 |
ミリーナ | その二つの力と、エターナルソードが干渉しあって力が上手く使えないのかもしれない。 |
シング | でも、ミトスは今までだってエターナルソードを使ってたよな。 |
ミリーナ | 現実世界ならエンコードで力を弱められてるけど、スピリアの中で、エンコードそのものが危うくなってるとしたら……。 |
イクス | だから力の制御が効かずに、干渉しあって不安定になってるのか。 |
シング | くそっ、ミラだけでも、ここから出してあげたいのに ! |
ジュード | ミラ……しっかりして、ミラ ! |
ミラ=マクスウェル | …………。 |
ジュード | ――うわっ ! ! |
コーキス | 大丈夫か、ジュードさま !なんでいきなり吹っ飛んだんだ ? |
ジュード | 今のは…… ? |
カーリャ | 見て下さい ! ミラさまを取り囲む光がまるで防御壁みたいになってます ! |
ミトス | マクスウェルの残滓が実体化してる…… ! ? |
クラース | これでは近づくことが出来ないぞ。実体化した残滓を破壊しないと。 |
ジュード | あんなもの―― ! |
ジュード | 待っててミラ、今助ける ! |
ミラ=マクスウェル | ここはどこだ……。 |
? ? ? | 『世界を守る ! 』 |
ミラ=マクスウェル | 世界を…… ? 誰だ…… ? |
? ? ? | 『――虹の橋を守る』 |
ミラ=マクスウェル | おまえは誰だ…… |
? ? ? | 『…………』 |
ミラ=マクスウェル | 私は……誰だ…… ? |
謎の声 | ――こちらへ。 |
ミラ | ! ! |
? ? ? | 私は心の精霊ヴェリウス。 |
ミラ=マクスウェル | …… ? |
ヴェリウス | スピリアと呼ばれている世界は、心の世界です。私が担う場所であるからこそ、この異変に気づくことができました。 |
ヴェリウス | 今は、もう一人のあなたの姿を借りて、ここにいます。 |
ミラ=マクスウェル | ……姿…… ? |
ヴェリウス | そう、この姿はあなたと同じミラ=マクスウェルのもの。 |
ミラ=マクスウェル | ……私…… |
ヴェリウス | そうです。あなたは―― |
ジュード | ――ラ ! 必ず―― ! |
ミラ=マクスウェル | 誰だ……。 |
ミラ=マクスウェル | ……あれは……。 |
ヴェリウス | あなたが覚えていなくともその心には、『彼』や仲間との旅路で得たものが残されているはずですよ。 |
ジュード | その先は研究所だよね。君は一体―― |
アルヴィン | おいおい、こんなイイ男と、女、子どもが重罪人に見える ? |
エリーゼ | あ、あの……え、えと…………なにしてる……んですか ? |
ローエン | ほっほっほ、面白いですね。四大精霊をまるで知人のように。 |
レイア | さあ、まだまだだよ ! 行けー ! |
ミラ=マクスウェル | 私は彼らと一緒に―― |
ガイアス | 我が字はアジュール王、ガイアス。よく来たな、マクスウェル |
ミュゼ | 私はあなたの姉です。 |
ミラ=マクスウェル | 共に旅をして、戦い、人の強さや弱さを知った。私は―― |
ジュード | 必ず助ける ! ――待ってて、ミラ ! ! |
ミラ=マクスウェル | そうだ。私は――ミラ ! |
ジュード | うおおおおっ ! ! |
ミラ=マクスウェル | 君は―― |
ジュード | うおおおおっ ! ! |
イクス | 空破裂光塵 ! |
ミリーナ | だめ、まだ壁が壊れない ! |
シング | コハクやヒスイにも応援を頼んでみる !魔鏡通信が上手く繋がればいいけど…… |
クラース | 私は精霊たちに、ミラ救出の協力を頼んでみよう。――イフリート、ウンディーネ、シルフ、ノーム ! |
シング | なんだ ? 壁の内側が光ってるぞ ! |
ミリーナ | これは……浄玻璃鏡の光よ ! |
ミラ | ――ジュード ! ! |
ジュード | ! ! |
ミラ | 四大よ ! こい ! |
イクス | 精霊たちが、マクスウェルの残滓を突き抜けていったぞ ! |
クラース | まさか、精霊たちは……。 |
シング | 内側から壁が壊れた ! |
カーリャ | あれは、ミラさまです ! |
クラース | やはり、君が命じていたんだな。 |
ジュード | ミ……。 |
ミラ=マクスウェル | ミトス、エターナルソードを ! |
ミトス | うん。……マクスウェルの残滓、これでもう終わりにしよう。 |
コーキス | マクスウェルの残滓が消えた……成功だ ! |
ジュード | ミラ……。 |
ミラ=マクスウェル | ……ジュード。 |
キャラクター | 9話【4-15 ファントムの仮想鏡界】 |
イクス | 無事でよかったよ、ミラ。 |
ミリーナ | 体はなんともない ? 目眩も ? |
ミラ=マクスウェル | ああ。すまない、心配をかけたな。 |
シング | どうして、マクスウェルの残滓をはねのけられたんだ ?オレたちじゃ歯が立たなかった、あの壁まで壊すなんて。 |
ミラ=マクスウェル | ヴェリウスの助力があったんだ。 |
クラース | ヴェリウス……心の精霊だな。そうか、スピリアは心の世界だから干渉できたということか。 |
ミラ=マクスウェル | さすがクラース、そのとおりだ。そして何より、ジュードや、元の世界の仲間たちが私を助けてくれたんだよ。 |
ジュード | 僕たちが ? |
ミラ=マクスウェル | どうやら私は、この世界のマクスウェルに侵食されかかっていたらしい。 |
ミラ=マクスウェル | 自分が何者かもわからなくなった時、私の中に、ジュードたちとの記憶がよみがえったんだ。 |
ミラ=マクスウェル | あれは走馬燈とでもいうべきか……皆と出会った時の記憶が、鮮やかに思い出された。 |
ジュード | ミラと出会った時か。衝撃だったなぁ……。 |
コーキス | へえ、衝撃って、どんな ? |
カーリャ | ヤボですねぇ、コーキスは。ジュードさまとミラさまの、大事な思い出なんですよ ? |
ミラ=マクスウェル | 大事な思い出……か。そのとおりだよ。 |
ミラ=マクスウェル | 私を、私たらしめてくれた、その大事な記憶が、マクスウェルの残滓の侵入をはねのける防御壁になってくれたんだ。 |
シング | ミラたちのスピリアが、それだけ強く繋がってたって証拠だね。 |
ミリーナ | ええ。きっとそれが、オーバーレイの切っ掛けよ。マクスウェルの残滓が作った壁の向こうから、浄玻璃鏡の光が見えたわ。 |
ミラ=マクスウェル | 確かに、今思えば、あの走馬燈は浄玻璃鏡が映し出したものだったんだろう。 |
ミトス | ……その浄玻璃鏡の力がスピリアに影響してエターナルソードも安定したのかな。シングのソーマはどう ? |
シング | 平気そうだ。元の状態に戻ってるよ。 |
クラース | 絡み合った力が、ミラのオーバーレイで打ち消されたとか、仮説は色々と考えられるが……。 |
ミトス | その辺りは研究好きの連中に任せるよ。ミラが無事ならそれでいいから。 |
シング | そうだね ! 今まで通り元気そうでよかったよ。 |
ミラ=マクスウェル | ふむ……。今まで通りかというと少々違う気もするが……。 |
ジュード | どこか違和感があるの ? |
ミラ=マクスウェル | 違和感といえばそうなのだろう。浄玻璃鏡には、元の世界で君と旅をしていた時とは明らかに違う景色が見えたんだ。 |
ミラ=マクスウェル | 君をはじめ、皆、今とは違う、まるでエレンピオス人のような服装だったし、ミュゼは……そう、今のミュゼのように穏やかだったよ。 |
ジュード | それは……もしかして……。 |
ミラ=マクスウェル | ああ。恐らく未来の私たちの姿だろう。ルドガーたちの世界なのかもしれない。 |
ミリーナ | 浄玻璃鏡は、その人の過去だけじゃなくて未来の可能性も映し出すわ。だから未来という推測は正しいんじゃないかしら。 |
ミラ=マクスウェル | ……そうか。すると、異世界の精霊と融合している四大はルドガーたちの時代の記憶も持っているんだな。 |
ミラ=マクスウェル | 私たちは鏡映点としてここに呼ばれ、リアライザーとなって元の世界とは違う道を歩き始めてしまったが…… |
ミラ=マクスウェル | ……なるほど。私たちには、あんな未来がありえたんだな。 |
ジュード | 僕は……どんな風になって、どんな道を選んだのかな。ルドガーたちに聞けばわかるんだろうけど……。 |
ミラ=マクスウェル | 聞かなくても問題はない。ジュードはジュードだ。何も変わっていなかったぞ。ああ、髪型は変わっていたが。 |
ジュード | そ、そうなんだ。へえ……。 |
コーキス | イメチェンってやつか、ジュードさま ! |
イクス | うん、わかる。髪型で印象って変わるもんな。俺もそれに気がついてから、日々勉強中だよ。 |
ミリーナ | ふふ♪ 何だって似合うわよ、イクスなら。 |
クラース | さあ、おしゃべりはそれまでだ。本来の目的を忘れるなよ ? |
ミトス | マクスウェルの残滓の脅威はひとまず落ち着いたからね。ただ、ミラは精霊だから―― |
ミラ=マクスウェル | いや、ここまで来たんだ。私も共に行かせてくれ。 |
クラース | わかった。今回は同行してもらおう。だが、ミラは精霊……しかもマクスウェルだ。くれぐれも気を付けてくれよ。 |
シング | それじゃあ、スピルメイズのどこかにある、仮想鏡界への入り口を探そう。 |
シング | ここ……なんか変だ。これが仮想鏡界の入り口じゃないか ? |
ミリーナ | ええ。間違いないわ。何があるかわからないから、慎重に入って。 |
シング | これは―― ! |
イクス | 魔物が、こんなに…… ! |
ミトス | やっぱり、そう簡単には行かなかったね。こっちの侵入を予期してたんだ。 |
カーリャ | この魔物だらけの中を抜けていくんですか ? |
コーキス | カレイドスコープだって、とっくに運び出されてるかも……。 |
ジュード | だけど、ここで引き下がっても状況は何も変わらないよ。 |
ミラ=マクスウェル | そうだな。カレイドスコープが見つからなかったとしてもその所在くらいは掴まないと、次につながらない。 |
イクス | ……その通りだ。とにかく進んでみよう。みんな、気を付けて ! |
キャラクター | 10話【4-15 ファントムの仮想鏡界】 |
イクス | 広いんだな。下手したら迷いそうだよ。 |
ミリーナ | ええ。仮想鏡界の規模が大きい。さすがフィル……。いえ、ジュニアとファントムよね。 |
シング | ミトス、確かこっちに大きな部屋がなかったっけ ? |
ミトス | そっちは封鎖されてるみたいだね。ボクたちがいた頃とは、だいぶ造りも変わってるからあまり当てにはしない方がいいよ。 |
ミリーナ | それでも、予想がつくのはありがたいわ。 |
コーキス | ――あれ ? あっちの通路、広くて大きいな。 |
イクス | 本当だ。何か大きいものの搬入口とか……。行ってみよう。 |
イクス | あった…… ! カレイドスコープだ ! |
ミリーナ | 見た目はセールンドのものと似てるけど……。 |
イクス | ファントムが作ったものだから、よく調べないとな。ミリーナ、手伝ってくれ。 |
ミリーナ | ええ ! |
カーリャ | イクスさま、頼もしくなりましたね。魔鏡術はミリーナさまの方が詳しかったのに、あんな風に調べられるまでになるなんて。 |
コーキス | うん。その代わりすげえ努力してるよ。本読んで調べたり、みんなから話を聞いたり……。 |
クラース | ああ。まだ魔鏡結晶から出たばかりだというのにキール研究室にもよく顔を出しているようだ。 |
ジュード | イクス、ミリーナ、どんな感じ ? |
イクス | お持たせ。だいたい分かったよ。ファントムのカレイドスコープは、セールンドのものと内部構造がかなり違うんだ。 |
ミリーナ | 前にチェスターが持ってきた設計図と比べても、さらに改良されてるわね。 |
クラース | それで、動かせそうなのか ? |
イクス | はい。精霊の心核がサーチできるか試しにやってみます。 |
ミリーナ | 待ってイクス、どの精霊をサーチするの ?手掛かりになるものが何もないわ。 |
クラース | それなら、ヴォルトをサーチしてみよう。私が契約したことのある精霊だ。 |
クラース | この世界でも同じ形態をとっているかはわからないが何もないよりはマシだろう ? |
ミラ=マクスウェル | ヴォルトか……。私たちの世界では、雷を操る精霊だったな。 |
クラース | 我々の世界でも雷の精霊だった。 |
ミトス | どの世界でもヴォルトは雷の精霊なんだね。だったら、ボクたちが知っている限りのヴォルトの情報もインプットしてみたら ? |
イクス | そうだな。みんな、それぞれの世界のヴォルトの特徴を教えてくれ。 |
ミリーナ | これでデータは全部ですね。 |
クラース | ああ。それで試してみてくれ。……まあ、上手くサーチできて会えたとしても、まともに会話が成り立つかはわからん奴だがな。 |
ミトス | ああ、そっちのヴォルトも話が通じないんだね。でもボクとリフィルさんはヴォルトと会話できたんだ。もしかしたらこの世界でも会話できるかも知れないよ。 |
ミリーナ | ――準備、整ったわ。始めましょうか。 |
イクス | カレイドスコープを使うなんて久しぶりだ。なんだか緊張するよ。――それじゃ、サーチ開始。 |
イクス | ……何も、見つからなかったな。 |
クラース | やはり駄目か。もっと具体的に、精霊と繋がっているものでサーチできれば結果は違うのかもしれないが……。 |
ミラ=マクスウェル | だったら、ヴォルトではなく、オリジンを捜してみたらどうだ。 |
ミラ=マクスウェル | 異世界の物だが、ミトスのエターナルソードはオリジンが作った剣なのだろう ?この世界のオリジン捜しに役立つかもしれない。 |
クラース | あーーっ ! そうだ、それがあったじゃないか……。 |
ミラ=マクスウェル | オリジンについては、他にも気になることがあるんだ。ミトスがマクスウェルの残滓を封じた直後、私の心に、ヴェリウスが話しかけてきたんだが―― |
ヴェリウス | ミラ……、ミトスのエターナルソードによってマクスウェルの残滓は、次元の穴に封じられました。 |
ヴェリウス | ですが、今後も気を付けなければなりません。帝国が、マクスウェルを精霊装として利用するたびにマクスウェルの残滓は、心の世界に四散します。 |
ヴェリウス | ですが、この四散した残滓が、再び精霊輪具に還る前に回収できれば帝国の精霊装の力を削げるでしょう。 |
ヴェリウス | そして、覚えておいてください。マクスウェルの残滓は、あなたにとっては危険ですがこの世界を存続させるためには大切なものです。 |
ヴェリウス | この世界のマクスウェルは、ニーベルングとティル・ナ・ノーグを繋ぐ虹の橋をオリジンから託された守護者なのです。 |
ミラ=マクスウェル | ――私にはいまひとつ、理解できなかったんだが君たちは何か知っているか ? |
イクス | 虹の橋だって…… ! ?それが本当にあるっていうのか ! |
ミリーナ | 伝説だとばかり思ってたわ……。私たちが知ってるものと同じなのかしら。 |
シング | 伝説って、どんな ? |
ミリーナ | 虹の橋っていうのは、オーデンセに伝わる伝説のひとつなの。水鏡の森の奥で見られる、幻影だっていわれているわ。 |
ミリーナ | ヴェリウスが言う虹の橋が、それと同じものだとしたら―― |
? ? ? | ――なるほど。ヴェリウスと接触していたか。 |
全員 | ! ! |
シング | 敵か ! ? 今の、どこから聞こえた ? |
ミトス | ボクにもわからない。 |
カーリャ | 誰もいないのに、声が聞こえるなんてまるで魔鏡通信みたいですね。 |
ミリーナ | まさか、私たちのほかにも、似た仕組みを開発して―― |
帝国軍兵士 | グラスティン様、いました ! 鏡士の一団です ! |
グラスティン | よし、捕らえろ ! マクスウェル以外は――いや、その黒髪の坊やはコレクションに加えよう。 |
グラスティン | 坊やとマクスウェル以外は殺しても構わん。 |
ジュード | ! ! |
ミラ=マクスウェル | 貴様……何を ! ! |
シング | 兵士が集まってきてる !これじゃもう、戦って突破するしかないよ。 |
クラース | ああ。こうなるのは覚悟の上だ。ミラ、絶対に捕まるなよ ! |
イクス | 行くぞ、みんな ! |
コーキス | ……いっ……。 |
カーリャ | コーキス ? |
コーキス | う……うああっ ! 目が、目の奥が……痛っ…… ! ? |
イクス | コーキス、どうしたんだ ! コーキス ! ! |
| to be continued |
キャラクター | 1話【5-1 カレイドスコープ1】 |
カイウス | ……ミラさんとジュード、遅くないか ?何かあったのかな。 |
ミュゼ | やっぱり私がついていけば良かったわ。ああ、ミラ……。 |
ルビア | カイウス ! どうしてそういうこと言うの ?デリカシーがないわね。 |
カイウス | チェッ、ちょっと良くなったかと思ったらすぐこれだ。 |
ルビア | なによ、あたしが元気になるのがそんなに嫌 ! ? |
カイウス | 嫌なわけないだろう ?どれだけ心配したと思ってるんだ。 |
ルビア | そ、そう。ふーん。 |
ミュゼ | ……はぁ、みんな早く帰ってこないかしら。 |
エル | もしもーし、ルビア、入ってもいい ? |
ミュゼ | あら、エルじゃない。それにエリーゼたちも。どうぞ、遠慮せずに入って。 |
ティポ | エラそー、ミュゼの部屋じゃないのにさー。 |
エリーゼ | ルビア、体は大丈夫ですか ?少しだけ元気になったって聞いてお見舞いに来たんですけど……。 |
カイウス | 少しどころか、うるさいくらいだよ。 |
ルビア | ……カイウス ? |
アミィ | あ、あの、ケンカはやめましょう、ね ? |
エル | そうだよ。ルル抱っこすれば ? 落ちつくよ。 |
ルル | ナァ~ ! |
クレア | フフ、二人とも。これはケンカじゃないから大丈夫。ね、カイウス、ルビア ? |
二人 | ……はい。 |
クレア | 私たち、さっきまでセシリィのお見舞いに行ってたのよ。部屋にいたルカから聞いたけど色々と大変だったわね。 |
ルビア | ええ。おかげで体が楽になったわ。でも、ミラは具合が悪いままスピルリンクしているからそれが心配で……。 |
エリーゼ | ジュードとミラ、まだ帰って来ないんですか ?ルカは、二人は先に戻るはずだって話してたのに。 |
リタ | ルビア、ちょっといい ? ……あっ。 |
ルル | ナァ~。 |
リタ | ニャー……じゃなくて、あんたの場合は……ナァ~、ナァ~。 |
ルル | ナァ~ ! |
エル | 前から思ってたけど、リタってルルとなに話してるの ? |
リタ | 別に話してないけど ?それにしても何 ? こんなに集まって。 |
ルビア | みんなお見舞いに来てくれたのよ。もしかしてリタも ? |
リタ | あたしはマクスウェルの件が気になっただけで別にお見舞いっていうか……まあ、それでもいいわ。元気になってよかったわね。 |
ルビア | ありがとう。リタが手掛かりを掴んでくれたおかげよ。 |
リタ | マクスウェルの残滓の除去については大まかにルカから聞いたわ。けど、もう少し詳しく聞かせてほしいのよね。 |
ルビア | いいわよ。ミラがあたしの部屋に来た時にね―― |
リタ | ミラに残滓が集まる……精霊輪具も力を集める……。装備者の適合、不適合の判断……。 |
リタ | 指輪という人工的に作ったものに集まるなら精霊輪具自体に、特定の情報を解析したり蓄積する機能が備わってる…… ? |
? ? ? | ―――― ! ! |
ミュゼ | ――っ、なに、今の ! ? |
リタ | ちょっと、静かにして ! 今、考えて―― |
エリーゼ | ……何か聞こえましたよね ?ファントムの部屋の方からです。 |
ミュゼ | 今のは四大の声よ。助けを求めてるわ ! |
クレア | 四大って、四大精霊のことよね ?私には何も聞こえないけれど……。 |
ミュゼ | ミラがファントムの中にいるから近くにいる私に強く感じられるのかもしれないわ。 |
エリーゼ | 四大の声がわたしに聞こえたのも精霊術を使うからでしょうか ? |
ミュゼ | わからないけど、とにかくミラが危ないの !すぐに助けに行かないと ! |
リタ | オロオロすんじゃないの。イクスかミリーナに魔鏡通信で確かめればいいでしょ。 |
カイウス | そうだよ。精霊は危険だから留守番してるんだろ ?これでミュゼさんに何かあったらミラさんが悲しむぞ。 |
ミュゼ | でも…… ! |
エリーゼ | ミュゼ、わたしが行きます。ミラやジュード……みんなを連れて帰ります ! |
ティポ | ぼくら精霊じゃないもんねー。止めてもムダだよー ! |
リタ | ……しょうがないなぁ。んじゃ、あたしも行く。気になることもあるし小さいのだけじゃ行かせられないし。 |
ティポ | リタだってちっちゃいくせに。 |
リタ | そこ、うっさい ! |
カイウス | ミュゼ、ここはエリーゼとリタたちに任せよう。いいよな ? |
ミュゼ | ……わかったわ。 |
クレア | 私は、コハクかヒスイさんを呼んでくる。それと他の人たちにも、この状況を伝えてくるわ。エル、アミィも手伝ってもらえる ? |
エル・アミィ | はーい ! |
コーキス | う……うああっ ! 目が、目の奥が……痛っ…… ! ? |
イクス | コーキス、どうしたんだ ! コーキス ! ! |
シング | イクス、コーキスを連れて下がってて。ここはオレが食い止める ! |
ミラ=マクスウェル | これだけの敵を防ぐのは難しいだろう。私も前線を預かる。 |
ミトス | ミラは後ろにいて。ついでにジュードもね。 |
ジュード | 僕も戦うよ。ここはみんなで協力しないと無理だ。 |
クラース | 君たちには下がっていて欲しいが戦力的には仕方ないか。 |
コーキス | マスター……マスターは大丈夫なのか…… ?この痛みは……俺だけ…… ? |
イクス | ああ。こっちには何の影響もないよ。 |
コーキス | だったら戦ってくれ……。俺はいいから……みんなを……。 |
カーリャ | コーキスのことは任せてください ! |
ミリーナ | ……イクス、私たちも戦いましょう。早くこの囲みを突破しないとコーキスをちゃんと看てあげられないわ。 |
イクス | ……そうだな。――シング、ミトス、俺と一緒に切り込むぞ !みんなは援護を頼む ! |
キャラクター | 2話【5-2 カレイドスコープ2】 |
イクス | はぁ……はぁ……。こっちが押してるぞ !今なら突破して逃げられる ! |
グラスティン | それはどうかな ? |
シング | 兵士の増援 ! ? こんなにたくさん ! |
ミトス | さすが雑魚だね。無駄に数ばかり多い。 |
帝国軍兵士1 | おい、マクスウェルとそこの少年。大人しくすればお前たちは傷つけない。投降しろ ! |
ジュード | はぁ……はぁ……ミラは絶対に渡さない ! |
グラスティン | ヒヒッ、いいぞ坊や……。活きがよくて興奮するなぁ。もっとその黒髪を振り乱して、抵抗してみせてくれ ! |
? ? ? | ヘ、ヘンタイだ―― ! ! |
グラスティン | ! ? |
? ? ? | どこから話しかけてるのか知らないけどキモイのよアンタ !――ファイアボール ! |
帝国軍兵士たち | うわああああっ ! ! |
コハク | みんな、大丈夫 ! ? |
シング | コハク ! ? |
ミラ=マクスウェル | リタとエリーゼも一緒か ! |
エリーゼ | ミラ、ジュード、間にあって良かったです ! |
グラスティン | ああ……せっかくのショーが台無しだ。……しかし、そこの黒髪のお嬢さんはイイね。実にイイ ! |
コハク | な、何なの……気持ち悪い !姿を隠してないで、堂々と出てきなさいよ ! |
シング | コハク、気を付けて !あいつ黒髪がなんとかって変なことばっかり言うんだ ! |
ティポ | タイヘンなヘンタイ ! タイホされちゃえー ! |
グラスティン | 変態か……。フフ、それで ?お前達が俺にどんなレッテルを貼ろうと俺の邪魔はできないさ。 |
リタ | あっそ。コハク、エリーゼ、いける ? |
エリーゼ | バッチリです ! |
コハク | ボコメキョにしてやるから ! |
リタ | じゃあね、ヘンタイ。タイダルウェイブ ! |
エリーゼ | フラッターズ・ディム ! |
帝国軍兵士たち | ぎゃああああっ ! ! |
グラスティン | 騒ぐな、次の詠唱に入る前に奴らを潰せ ! |
コハク | そう来ると思った !エクスプロード ! |
帝国軍兵士1 | 時間差だと ! ?グラスティン様 ! このままでは――うわあああっ ! |
グラスティン | ……肉が増えたな。フフ、こいつはめでたい。とはいえ、マクスウェルと黒髪の子供達は捕まえないとな。もっと兵を集めろ ! |
ミリーナ | まだ諦めるつもりはないみたいね。 |
イクス | とはいえ、何とか時間を稼げそうだな。助かったよ。リタ、コハク、エリーゼ。でも、どうしてここに ? |
コハク | エリーゼとミュゼに四大の助けが聞こえたの。それを頼りにたどりついたんだよ。それに、ここからシングのスピリアを感じたから……。 |
リタ | 話はあと。ミラたちをさっさと逃がして。ミリーナ、あの子は使える ? |
ミリーナ | あの子って、カレイドスコープ ? |
リタ | ええ。今のうちにどうしても抜き出したいデータがあるの。すぐに終わらせるから手伝って。 |
ミリーナ | ……わかったわ。みんな、先に行って。 |
イクス | だったら、俺とシングがここに残る。クラースさん、みんなを連れて逃げて下さい。 |
クラース | 二手にわけるなら私もこちらに残ろう。シングと二人だけではデータを抜き出す時間を稼ぐのは難しいぞ。 |
イクス | いいえ、ミラたち側に戦力を固めた方がいい。……そちら側の方が負担が大きくなると思うので。 |
クラース | ――そういうことか……承知した。 |
イクス | すみません。こちらでもなるべく敵を引き付けます。 |
クラース | いや、敵はできうる限りこちらで請け負う。 |
コハク | シング、信じてるから……またね ! |
シング | ああ、みんなを頼んだよ、コハク ! |
ミトス | ―― !もうそろそろ来るよ。追加の雑魚が。 |
ミラ=マクスウェル | わかった。行くぞ ! |
ジュード | イクス、ミリーナ、シング、リタ、気を付けて ! |
グラスティン | なんだ、追いかけっこかい、坊や ?いいねぇ、捕まえてやるよぉ ! |
グラスティン | お前たち、マクスウェルを逃がすな。最優先だぞ。黒髪の二人は俺のところに必ず連れて来い !残った肉どもの処理も忘れるなよ。 |
帝国軍兵士2 | 承知しました !マクスウェル捕獲に人員を投入しろ ! |
シング | くそっ、兵士がミラたちの方へ ! |
イクス | まだ増援の兵士は集まりきってない。あのままなら逃げ切れると思う。 |
イクス | ミラたちに追っ手の人数が割かれることを想定の上でクラースさんたちに頼んだんだ。この方が全員生き残る可能性が高い。 |
シング | ……わかった。だったら、オレたちはここでできるだけ敵を食い止めよう ! |
キャラクター | 3話【5-6 カレイドスコープ6】 |
イクス | ミリーナ、リタ、データはまだか ! |
ミリーナ | もう少しよ ! カーリャ、コーキスはどう ? |
カーリャ | 我慢してるけど、ずっと痛がってます……。 |
コーキス | へいき……だって、パイセン……。 |
リタ | 終わったわ。とっとと逃げるわよ ! |
シング | ……さっきからグラスティンの声がしないな。もしかしたらミラたちの方に気を取られてるのかも。 |
イクス | それならこっちに兵を追加されることもなさそうだな。今のうちに突破だ ! |
帝国軍兵士1 | くそっ、こんなはずでは…… ! |
ローゲ | なんの騒ぎかと思えば、また貴様らか。グラスティンは何をしている ! |
帝国軍兵士1 | ローゲ様 ! |
ローゲ | まあ、今回は良しとするか。これで以前の礼ができるからなぁ ?盗人の鏡士どもよ。 |
イクス | ローゲ…… ! |
シング | イクス、オレがこいつを引きつける !その隙に兵の囲みを破ってくれ ! |
イクス | シング、ローゲ相手に一人は無理だ ! |
ローゲ | シング ? そうか、お前が裏切者のシングか。メルクリア様がたいそう心を痛めていたぞ ? |
シング | 裏切られたのはこっちだ !お前たちが騙してコハクに酷いことをしたからだろう ! |
ローゲ | 聞く耳もたん。貴様も鏡士同様、ここで死ね ! |
リタ | シング、離れて ! ブラッディハウリング ! |
帝国軍兵士たち | ぎゃああああっ ! |
帝国軍兵士2 | あ……あの女……いつの間に詠唱を……。 |
リタ | あんたらの上司がグダグダしゃべってる間にね。みんな、こっちから突破よ ! |
イクス | コーキス、俺の手に乗れ。 |
コーキス | ……うっ、マス……タ……。 |
ローゲ | チッ、逃がすか ! ! |
イクス | くそっ、ローゲを足止めしないと駄目か !シング、コーキスを連れて下がってくれ。ミリーナ、精霊装だ ! |
ミリーナ | わかったわ ! |
イクス | 精霊よ輝け ! 陽剣・至白刃 ! ! |
ローゲ | ぐおおおおおおっ !やはり精霊装は……我らにとって……。だが、まだだ。俺はまだ…… ! |
ミリーナ | 精霊よ織りなせ ! 月鏡・継黒陣 ! ! |
ローゲ | 体が……動か……くっ…… ! ! |
イクス | よし、今のうちだ ! |
リタ | イクス、ミリーナ、早く !こっちにゲートを見つけたわ。 |
シング | ゲートなら、現実世界に出られるかもしれない。行先はわからないけど……。 |
ミリーナ | いいわ、そのまま飛び込んで ! |
カーリャ | だ、大丈夫なんですか ! ?ミラさまたちの後を追うって選択も……。 |
イクス | ここから脱出するのが優先だよ。考えるのは後でいい。 |
カーリャ | ふぇぇ……。まさか、イクスさまがそんなこと言うなんて ! |
リタ | ほら、いいからさっさと入る ! |
ローゲ | しまった ! あのゲートは―― |
キャラクター | 4話【5-7 地下室1】 |
イクス | ここは…… ? |
ミリーナ | 何かの研究所みたいね……。しかも大慌てで出てったみたいに機材も何もかもそのままだわ。 |
シング | あっ、そうか ! ここセールンドだよ。セールンドのカレイドスコープの間の地下だ。 |
リタ | セールンド ? なんで帝国の仮想鏡界のゲートがこんな所に繋がってるわけ ? |
シング | 帝国は精製所の他にここでもリビングドールの研究をしていたんだ。 |
シング | カイウスから聞いたけど、マーテルさん救出の時に心核がカレイドスコープの間の地下にあるって情報が流れたんだろう ? |
シング | カイウスたちが、その情報を否定できなかったのはこの施設の話を知ってたからだと思う。 |
リタ | ふうん。ここでもリビングドールをね。誰もいないけど放棄されたのかしら。 |
ミリーナ | イクス奪還作戦で私たちが乗り込んだから……。 |
リタ | 確かに、あの騒ぎじゃ研究どころじゃないか。……ってことは、もしかして ! |
シング | あっ、どこにいくんだよ。リタ ! |
リタ | まさかとは思うけど……もしかしたら……。やっぱりあった ! |
ミリーナ | 心核 ! ? それもかなりの数よ。 |
リタ | ミトスはここでコハクの心核を手に入れたんでしょ ?だから他にもあるんじゃないかって。 |
リタ | ……正直、予想としてはあんま当たって欲しくなかったけど心核を置いて逃げてったみたいね。 |
シング | じゃあ、奴らが回収に来るかもしれない ? |
リタ | どうだろう……。放置しつづけてるってことは、回収の必要がなくなったからかも。 |
シング | そんな……心核は人の命なのに。これじゃ捨てられてるのと同じじゃないか ! |
ミリーナ | 考えられなくもないわ。リビングドールの中には本体の心核が邪魔だと考える人がいるかも……。 |
シング | こんなの可哀想だよ。 |
イクス | ……だよな。この心核、俺たちで持って帰ろう。 |
ミリーナ | そうね。それに、まだ会っていない鏡映点の心核がこの中に入ってる可能性もあるから。 |
リタ | 付け加えると、この心核を調べることでリチャードの心核を正常に戻す手掛かりが見つかるかもしれないわ。 |
シング | だといいな。アスベルたちが喜ぶよ。 |
ミリーナ | そうね。でも、リビングドールを生み出すには色々な方法があるみたいだから―― |
コーキス | ううっ…… ! |
イクス | コーキス、大丈夫か ? |
コーキス | ごめ……話の……邪魔して……。 |
イクス | いいんだよ。我慢するな。 |
カーリャ | そうですよ。もっとギャーギャー叫んだっていいんですから。 |
コーキス | へへ……かっこ悪ぃ……。 |
カーリャ | ミリーナさま。ジェイドさまの方法は試せませんか ?痛みを抑えるためにコーキスを気絶させてましたよね ? |
ミリーナ | あれは医学的な知識が必要な危険な処置なの。もしできたとしても、今のコーキスの小さな体にあんなことできないわ。 |
イクス | ジェイドさんがそんなことを ? |
ミリーナ | ええ。魔鏡結晶の中にいたイクスはもっとひどい痛みに襲われていたはずよ。 |
イクス | 魔鏡結晶の……。そうだ !ゲフィオンなら何か知ってるかもしれない。 |
ミリーナ | ゲフィオンが ? |
イクス | コーキスに伝えた魔眼の話はゲフィオンから聞いたものなんだよ。 |
イクス | 【その目はイクスと繋がっている。自分のアニマとイクスのアニマを重ねて合わせて、死を放て。それこそが鏡精に与えられた禁断の魔眼だ】――って。 |
イクス | でも、魔鏡結晶の中にいたゲフィオンも俺と同じように、ひどい痛みに苦しんでいて……それ以上の話はできなかったんだ。 |
ミリーナ | …………。 |
イクス | できるかどうかわからないけどもう一度ゲフィオンと話をしてみるよ。幸い、この上はカレイドスコープの間だしな。 |
ミリーナ | ……わかったわ。ゲフィオンの魔鏡結晶へ行ってみましょう。 |
キャラクター | 5話【5-9 地下室3】 |
| セールンド カレイドスコープの間 |
カーリャ | ゲフィオンさま……。ずっとこの魔鏡結晶の中で死の砂嵐を封じているんですね……。 |
ミリーナ | ……今はシドニーがゲフィオンにキメラ結合して一緒に死の砂嵐を封じてくれてるわ。 |
イクス | ……シドニーを身代わりにして、俺だけが―― |
ミリーナ | 違うわ !……お願いだから、そんな風に思わないで。シドニーだってそんな風には思ってない筈よ。 |
イクス | ……ごめん。 |
シング | ミリーナの言うとおりだよイクス。それに自分のために命をかけてくれた人がいるならなおさら前に進まないといけないんだ。そうだろ ? |
イクス | シング……。 |
シング | ほら、コーキスのためにも早くゲフィオンに話を聞こう。――ゲフィオン ! 聞こえてる ? |
| ……………… |
リタ | 返事どころか物音一つなしね。ま、そう簡単にいくとは思わないけど。カーリャやミリーナは聞こえた ? |
ミリーナ | いいえ、何も。 |
カーリャ | カーリャもです……。魔鏡結晶で覆われる前なら、ゲフィオンさまの心の苦しみとかが伝わってたんですけど……。 |
イクス | ……俺の力が結晶化したのがこの魔鏡結晶なんだよな ? |
ミリーナ | ええ。 |
イクス | もしかすると、俺なら巨大魔鏡結晶を通じてゲフィオンに――……うわっ ! ! |
ミリーナ | イクス ! ? |
リタ | なっ、なにが起こってんの ! ? 何かした ! ? |
シング | イクスが魔鏡結晶に触れただけだよ !どうなってるんだ、ミリーナ。 |
ミリーナ | これは急激なオーバーレイ現象だわ。どうしてこんな……… ? |
イクス | ……あれ ?この場所、前にコーキスと……。 |
ゲフィオン | 久しぶりだな、イクス。 |
イクス | ゲフィオン……様…… ? |
ゲフィオン | 魔鏡結晶に触れただろう。あれはお前の力を具現化したもの。触れたことで体が急速に力を取り戻そうとしているようだな。 |
ゲフィオン | そのせいで現実の世界のお前はオーバーレイ現象を起こしている。 |
イクス | 現実ってことは、やっぱりここは俺の心の中なんですね。どうりで見覚えがあるはずだ。 |
ゲフィオン | よく聞きなさい、イクス。今後、不用意に魔鏡結晶に触れてはならぬ。 |
ゲフィオン | たとえ触れずとも、今も魔鏡結晶を通じて虚無の痛みが、お前の内側を蝕んでいるのだから。 |
イクス | 今もだなんて……気づかなかった。 |
ゲフィオン | コーキスが痛みを引き受けているからな。 |
イクス | それじゃ、コーキスは俺の身代わりで……。 |
ゲフィオン | ……そうだ。だが、コーキスを救う方法はある。 |
ゲフィオン | お前の体は、あの浮遊島を作ったせいで、一旦、力を使いきってしまい、コーキスも幼体となった。だが今は魔鏡結晶に触れたことで、急速な充填状態にある。 |
ゲフィオン | 力が回復すれば、コーキスも再び成体に戻るだろう。そうなれば、コーキスにリンクしている痛覚を切り離してやることができる。 |
イクス | 切り離す…… ?もしかしてそれは鏡精を―― |
ゲフィオン | そうだ。鏡精を独立させるための技法、その応用となる。だが、ともすれば、これにより虚無の痛みをお前が……。 |
イクス | 教えて下さい。一刻も早くコーキスを救ってやりたいんです。 |
コーキス | ――いっ……ああああああっ ! ! |
カーリャ | コーキス !どうしましょうミリーナさま。今までで一番苦しそうです ! |
ミリーナ | シング、イクスをお願い。コーキス、私の声が聞こえる ? |
コーキス | ミリーナさま……頼む……俺の目……取って…… |
カーリャ | な、何を言ってるんですか ! |
コーキス | 苦しいんだ……痛くて……痛くてもう……お願いだよ先輩……駄目なら自分でやるから―― ! ! |
カーリャ | やめなさい、コーキス ! |
ミリーナ | 駄目よ ! |
コーキス | 離してくれ ! うああああっ ! ! |
ミリーナ | ごめんなさいコーキス……。私、あなたにこれくらいしか……。 |
リタ | ちょっ、ミリーナ !そんな暴れてるコーキスを抱いてたらあんたが怪我するわ ! |
ミリーナ | 大丈夫……大丈夫よコーキス……。いい子だから落ち着いて……。 |
コーキス | くうっ ! ! はぁ……はぁ……。…………。 |
ミリーナ | コーキス……、コーキス…… ?――きゃああっ ! |
カーリャ | コ、コーキスの体が……大きくなった ! ? |
リタ | 何でいきなり―― |
イクス | ――っ ! ! |
シング | 危ない ! |
リタ | なっ、何 ! ? |
カーリャ | そ、そっちはどーなってるんですか ! ? |
シング | いてて……イクスが魔鏡結晶からふっ飛ばされたんだ。なんとか受け止めたけど……。 |
ミリーナ | イクス、コーキス……。あなたたちに何が起こってるの…… ? |
キャラクター | 6話【5-10 セールンド】 |
ゲフィオン | ――イクス、痛覚の切り離しはうまくいったようだな。 |
イクス | ありがとうございます。おかげで、これ以上コーキスに苦しい思いをさせずに済みました。 |
ゲフィオン | お前も意識を戻した方がいい。そして私には二度と話しかけに来てはならない。 |
イクス | そんな……俺たちはまだ聞きたいことがあるんです ! |
ゲフィオン | 私は心と記憶の一部を切り離した。故に、お前たちの疑問に正確な答えを与えることはできないのだ。 |
ゲフィオン | お前に教えたコーキスの魔眼のことも今の私の持っていた知識ではない。……だから、私と話しても無駄なのだ。 |
ゲフィオン | 私の正しい記憶は【カーリャ】が持っている。必要だと思うのなら、カーリャを捜せ。 |
イクス | カーリャなら、今もミリーナと一緒にいますよ ? |
ゲフィオン | 捜すのは私の……ゲフィオンの【カーリャ】だ。 |
イクス | ! !……そうか。そうだよな。【ミリーナ】には【カーリャ】だもんな。 |
ゲフィオン | …………。 |
ゲフィオン | フィルならば、私が忘れようとしたことも知っているはずだ。 |
イクス | ゲフィオ――……ミリーナ……。 |
コーキス | ……ん…… ? |
カーリャ | コーキス ! 気が付いたんですね ! |
ミリーナ | 目はどう ? 痛みはない ? |
コーキス | はい……嘘みたいに無くなって……って……あれ ? |
コーキス | 俺、大きくなってる ! ? |
コーキス | ――ってか、何だこのカッコ ! ?ダサッ ! ? え、これ、またマスターの趣味か ! ? |
リタ | ……その様子なら、ひとまず大丈夫そうね。一時はどうなるかと思ったわ。シング、コーキスが目を覚ましたわよ。 |
シング | コーキス ! よかった、動けるんだな。けど、無理はするなよ。 |
コーキス | 大丈夫。すぐ戦えるくらい元気だって。ありがとな、シング様。……ところで、マスターは ? |
シング | あっちで寝てるよ。突然オーバーレイ化したあと魔鏡結晶からはじき飛ばされて、気を失ったんだ。 |
コーキス | えっ ? マスター、大丈夫か ! ? |
リタ | コーキス、ストップ !……誰か来る ! |
ローゲ | ここにいたか、盗っ人ども。 |
全員 | ローゲ ! |
ローゲ | ほう、呑気に昼寝とはな。大した度胸だ。 |
シング | しまった、イクスが…… ! |
コーキス | マスター ! 起きろよ、マスター ! |
ミリーナ | まだ意識が戻らないんだわ……イクス ! |
ローゲ | 貴様ら、地下にあった心核を盗んだな。返してもらおうか。でなければ、こいつの首をかっ切る。 |
ローゲ | それとそこの小娘。貴様が動いてもこいつを殺す。 |
リタ | ……くっ。 |
ミリーナ | (どうしよう……私一人の精霊装でどこまでローゲの動きを止められるか……。失敗したらイクスは……) |
シング | ……ミリーナ、一瞬だけでもローゲをひるませられる ? |
ミリーナ | わからない。けど……。 |
コーキス | 信じてください、ミリーナ様 !マスターは必ず俺が―― |
ローゲ | 返事は無しか。ならば死ぬのは、こいつからだ ! |
カーリャ | イクスさま ! |
ミリーナ | ――精霊よ織りなせ ! 月鏡・継黒陣 ! ! |
ローゲ | ぐっ……やはり体が……だがこの程度…… ! |
シング | 行くぞ、コーキス ! |
コーキス | マスターから離れろ――っ ! ! |
ローゲ | ぐおおおおおっ ! ! |
コーキス | マスターを傷つける奴は許さない ! |
バルバトス | 鏡精……この悪魔が……。 |
シング | やった……。精霊装で隙が作れなかったら危なかったな。 |
ミリーナ | イクス ! |
コーキス | マスターに怪我はなさそうだ。よかった……。 |
リタ | ローゲも完全に気絶してるわ。まあ、あんだけ攻撃くらったしね。 |
シング | ……ん ? イクスの持ってる心核……光ってないか ? |
カーリャ | あ、これですね。この一つだけピカピカしてます。 |
ミリーナ | 心核が光るなんて、コハクの時みたい。 |
シング | うん。あの時はオレのソーマに反応してたんだ。 |
リタ | ってことは……これはローゲ――じゃなくてえっとバルバトスだっけ ? その心核なんじゃない。 |
ミリーナ | だとすると、さっき倒れた時にイクスが持っている心核に触れたのかもしれないわね。 |
リタ | この心核を今のうちに戻したらどう ?そうすればこいつ、追って来られなくなるでしょ。 |
ミリーナ | でも、バルバトスはカイルの敵だって言ってたわ。元の世界では、かなり暴力的な人物だとも聞いているし……。 |
リタ | なんもしないで追いつめられるよりマシよ。 |
シング | バルバトスが敵になるとしてもオレは本人に体を返す方がいいと思う。こんな状態はおかしいんだからさ。 |
ミリーナ | ……そうね。カーリャ、私たちはローゲにスピルリンクするからイクスをお願い。 |
カーリャ | 任せてください。いいですかコーキス、ミリーナさまのことちゃんとお守りするんですよ ! |
コーキス | へへっ、そんなふうにパイセンに頼まれるのは久しぶりだぜ。なんか嬉しいな。 |
コーキス | それじゃ行きましょう、ミリーナ様。必ず俺が守ります ! |
キャラクター | 7話【5-10 セールンド】 |
シング | ――ここだよ。きっとあれがローゲのスピルーン……人工心核だ。 |
ミリーナ | シング、コハクの時とは少し違うけど基本的にはスピルーンの扱いと同じだと思うからお願いしてもいい ? |
シング | ああ、いいよ。人工心核を外してバルバトスの心核をおさめれば……よし、完了っと。 |
シング | はい、これが人工心核だ。 |
ミリーナ | ありがとう。これでバルバトスに戻るはずよ。 |
コーキス | さっきまであんなにしつこかったローゲが今はこの人工心核の中ってわけか。 |
ミリーナ | 改めて考えると、シングたちのソーマってすごい力なのよね。 |
リタ | ねえ、その人工心核見せて。 |
ミリーナ | ええ、いいわよ。 |
リタ | ……ふうん。これが魂を定着させてるのね。……ってことは、応用も……。うん、わかったわ。ありがとう。 |
ミリーナ | 何か考え付いたの ? |
リタ | まあね。とりあえずここを出ましょ。ローゲの他に追っ手が来ないとも限らないし。 |
コーキス | よし !早くマスターとパイセンのところへ帰ろう。 |
カーリャ | あっ、お帰りなさい ! |
ミリーナ | ただいま、カーリャ。イクスはどう ? |
カーリャ | まだ目が覚めないんです。さすがに心配になってきましたよぉ……。 |
コーキス | 大丈夫だよ、パイセン。マスターに何かあったらきっと俺にも伝わると思う。思うんだけど……。 |
コーキス | ……マスター、大丈夫だよな ?そろそろ起きろって。なあ、起きてくれよ ! |
ミリーナ | コーキス、そんなに揺すったら…… |
イクス | ……うん、あれ ? なんか良く寝たな。 |
コーキス | はぁ――……ったく、のんきだな。 |
ミリーナ | よかった…… ! おはよう、イクス。起き抜けの顔も素敵だわ。 |
イクス | は、はは……。心配させてごめん。みんなには迷惑かけちゃったな。コーキスも無事に大きくなれてよかった。 |
イクス | それに、相変わらず格好いいな、その服。 |
コーキス | やっぱりそうか。俺が大きくなったのも痛みがなくなったのも、服がダセーのもマスターのおかげだったんだな。 |
イクス | え ! ? その服格好いいだろ ! ? |
リタ | ねえ、服のことより、何があったの ? |
シング | そうだよ、イクスは突然オーバーレイ状態になるしコーキスは大きくなるしさ。 |
イクス | ええと……そのへんは落ち着いてから話すよ。 |
ミリーナ | じゃあ一つだけ。ゲフィオンには……会ったの ? |
イクス | ああ。俺の心の中で話を聞いたよ。それでコーキスに痛みが伝わらないようにしたんだ。 |
ミリーナ | 痛み…… ? どういうこと ? |
イクス | とりあえず、ミラたちと連絡をとろう。コーキスが治ったことも伝えて安心させないとな。 |
イクス | こっちでも色々あったんだろう ?コーキス、教えてくれ。 |
コーキス | あ、ああ。マスターが倒れたあと、ローゲが来てさ―― |
ミリーナ | …………。 |
デミトリアス | ――もう芙蓉離宮に戻るのか。もうしばらくここで療養しても良かったんだよ。メルクリア。 |
メルクリア | ご心配には及びませぬ。体も癒えておりますゆえ。 |
デミトリアス | そうか。二人とも、メルクリアをよろしく頼む。 |
ジュニア | はい。 |
リヒター | メルクリア、挨拶はこれで終わりか ? |
メルクリア | …………。 |
リヒター | そうか……ではこれで―― |
メルクリア | ち、義父上 ! お聞きしたい事があります。 |
デミトリアス | 言ってみなさい。 |
メルクリア | 義父上の言うビフレストの復活とはなんじゃ ? |
デミトリアス | ……どういうことかな。 |
メルクリア | わらわが望むのは、過去に失われたビフレストとそこに住んでいた人々の復活じゃ。それ以外の形を、わらわは認めぬ。 |
デミトリアス | もちろん、わかっているよ。 |
メルクリア | 義父上にもお考えがあるのは知っておる。じゃが今一度、約束してくだされ。――必ず【わらわのビフレスト】を復活させると。 |
デミトリアス | ……できる限りね。 |
メルクリア | できる限りではない ! 絶対じゃ ! |
帝国軍兵士 | ご報告申し上げます。陛下、グラスティン様が至急お目通り願いたいと。 |
デミトリアス | わかった。すぐに通せ。――メルクリア、名残惜しいが話はここまでだ。気を付けて帰るんだよ。 |
メルクリア | ……はい。 |
グラスティン | おや、皇女様もおいでだったとは。邪魔をしてしまったようだな。 |
メルクリア | 気安く話しかけるでない。帰るぞ。リヒター、ジュニア。 |
ジュニア | う、うん。 |
グラスティン | ! !……ヒヒッ……ヒヒヒヒ……ヒャーッハハハハ !フィリップ ! フィリップじゃないか ! ! |
ジュニア | えっ、な、なに…… ? |
グラスティン | 幼くて瑞々しいその姿も新鮮でいいなぁ。髪も肌も柔らかそうだ。その潤んだ目もいい……とてもいいぞ……ヒヒヒ。 |
ジュニア | や、やめ……。 |
リヒター | 子供を脅かすのが趣味のようだが貴様の冗談に付き合うほど暇ではないんだ。ジュニア、メルクリア、行くぞ。 |
デミトリアス | ……相変わらずだな。グラスティン。それで、至急の要件とはなんだい ? |
グラスティン | 仮想鏡界に奴らが来たぞ。あの女、つくづく俺の邪魔をするのが好きなようだ。 |
デミトリアス | 君が【あの女】呼ばわりするならミリーナたちか。……まあいい。計画に変更はないからね。 |
キャラクター | 8話【5-11 イ・ラプセル城1】 |
ミラ=マクスウェル | みんな、いるか ? |
コハク | 大丈夫。全員ゲートから出たから。追っ手も来てないみたい。 |
ジュード | 手近なゲートに飛び込んじゃったけど……ここはどこだろう ? |
ミトス | 多分、イ・ラプセル城だよ。この様子だと研究棟の方だね。 |
クラース | なるほど、だとすれば多少は見当がつくか……。 |
エリーゼ | クラースは、ここを知ってるんですか ? |
クラース | ああ。この前、潜入したばかりだよ。といっても、基本アステル頼みだったんだが……。 |
ミトス | ボクも研究棟の方までは詳しくないんだ。ここはクラースの記憶を頼りに進もう。 |
クラース | やれやれ、責任重大だ。 |
ティポ | ボケて忘れてないといいねー。 |
クラース | そんな歳じゃない !いいだろう。私についてきなさい ! |
ミラ=マクスウェル | クラース、ここはどの辺りなんだ ? |
クラース | 出口に向かって進んでいる。……はずだ。 |
エリーゼ | はずってことは……。 |
クラース | ……少々迷ったかもしれん。すまん。 |
ティポ | クラースのバホー ! ! 自信満々で迷ってたー ! |
コハク | クラースさん、ミソを食べるといいですよ。ミソは老化を防止するから。 |
クラース | コハク、これは歳のせいではないと―― |
ミラ=マクスウェル | なるほど。コハクはミソについて詳しいんだな。 |
コハク | うん ! 今度ミラにもミソ料理作ってあげるね。オススメはやっぱりサクランボミソ焼きおにぎりかな。 |
ミラ=マクスウェル | じゅる……。なるほど、是非お願いしよう。クラース、その時はお前も来るといい。 |
クラース | ……ああ、うん。気づかい感謝する。 |
ミトス | 気にすることないよ、クラース。どうせニンゲン如きの記憶力なんてたかが知れてるんだから。それで次はどっち ? |
クラース | この先を真っ直ぐだ。……はぁ、アステルがいればなぁ……。 |
クラース | ――ん ? 通路への扉かと思ったがここは研究室のようだな。壁に標本が…… |
クラース | ――っ ! ! なんだここは…… ? |
ジュード | どうしたんですか、クラースさん !うわっ――この部屋 ! ? |
ミラ=マクスウェル | ……壁一面に人の遺体がびっしりと並んでいる。しかもこれは恐らく……。 |
ミトス | うん。人形でも悪趣味すぎるけどこれは全て本物だよ。 |
ジュード | 壁のものは防腐処理されてる……。でもなんだろう……死臭が……。このにおい、奥からだ。 |
ミラ=マクスウェル | 待てジュード。もしかしたらそこには……。 |
ジュード | …… ! ! ……これ、人の……。 |
ミトス | この臓物の量、一人分どころじゃない。しかもきれいに並べてある。きっとコレクションのつもりなんだ。 |
クラース | おい君たち、そこに何が……うっ……これは……。 |
エリーゼ | みんな、何を見つけたんですか ? |
クラース | コハク ! エリーゼを近づけるな !君も来ない方がいい。 |
コハク | は、はい ! エリーゼ、こっち。 |
ヨウ・ビクエ | 本当、悪趣味よねぇ。この部屋の主は。 |
エリーゼ | えっ ! ? |
コハク | あ、あなた誰 ! ? |
ヨウ・ビクエ | 私はヨウ・ビクエ。ヨーランドって呼んでもいいわ。あなたの体、少しだけ貸してもらえない ?出口まで案内するから。 |
コハク | 体を…… ? |
ヨウ・ビクエ | 精神体じゃすぐ消えちゃうの。あなたならもう一人を宿すくらいのキャパを備えてるし迷惑はかけないから……ね ? |
コハク | ……わかったわ。必ずみんなを助けてよね。 |
エリーゼ | コハク、大丈夫ですか ! ? コハク ! |
ジュード | エリーゼ、コハクがどうかしたの ? |
ヨウ・ビクエ | 私はヨーランド・ビクエ・オーデンセ。……ごめんなさいね。この子の体を借りたわ。あ、ちゃんと合意の上よ。 |
クラース | ヨーランド…… ! ヨウ・ビクエか ! ? |
ヨウ・ビクエ | とにかくこの部屋を出るわよ。ここにはろくな物はないし、吐き気を催すだけだから。出口まで案内するついでに、私とお話ししましょ ? |
クラース | あの部屋の近くに、こんな隠し通路があったんだな。 |
ヨウ・ビクエ | ええ。そしてここを抜ければ裏口へ出られるの。あなたの案内、あながち間違いじゃなかったってこと。いい勘してるわよ ? |
クラース | いやまあ、なんというか、ハハハ……。 |
ティポ | おみそれしましたー。 |
ヨウ・ビクエ | それとさっきの部屋は、グラスティンっていうデミトリアスが新しく雇った魔鏡学者の部屋よ。嫌なものを見ちゃったわね。 |
ミラ=マクスウェル | あのグラスティンか。奴はジュードをコレクションしたいと言っていたがもしかしたら……。 |
ジュード | やめてよ。想像したくない……。 |
ヨウ・ビクエ | よかったわね。可愛い坊や。あいつの部屋に飾られずに済んで。さあ、あそこが出口。 |
エリーゼ | ありがとうございます。ヨウ・ビクエ ! |
ヨウ・ビクエ | フフ、どういたしまして。そうだ、シャーリィは元気 ? |
ジュード | 元気ですよ。そういえばあなたがシャーリィの心核を直したと聞きました。 |
ヨウ・ビクエ | ええ。あの子を気にかけておいて欲しいの。シャーリィはウンディーネとの親和性が極めて高いわ。精霊や天族と同じような属性をもつのかもしれない。 |
クラース | シャーリィとウンディーネが……わかった。 |
ヨウ・ビクエ | それと、この子……コハクに伝えて。あなたの心の中にいた人を知っていると。 |
ジュード | コハクの心の中 ? どういうことですか ? |
ヨウ・ビクエ | ごめんなさい、そろそろ時間切れみたい。私からの連絡を待っていて。お願いよ……必ず…………。 |
コハク | …………あれ ? もしかして、ここ出口 ? |
ミトス | ……消えたようだね。 |
クラース | もっと色々と話を聞きたかったが……まあ、仕方がないか。 |
イクス | ミラ、聞こえるか ? こっちはみんな無事だよ。 |
ミラ=マクスウェル | イクスから魔鏡通信だ。あちらも無事逃げきったようだな。 |
ジュード | うん。お互いの状況を確認して合流しよう。 |
キャラクター | 9話【5-14 イ・ラプセル城4】 |
メルクリア | ローゲは何をしておる。いつまでわらわを待たせるのじゃ。 |
チーグル | ローゲは最後のリビングドールの様子を見るために仮想鏡界へ赴いているのです。もう戻ってくるかと思いますが……。 |
メルクリア | まったく、あやつは勝手がすぎるのう。 |
リヒター | だったら我々だけでも先に芙蓉離宮へ出発するか ? |
メルクリア | いやじゃ。わらわは皆と共に帰る。ローゲも一緒じゃ !……一人は寂しいからな。 |
ジュニア | 僕、マークに確認してみるよ。ローゲがどこにいるかわかれば―― |
帝国軍兵士1 | なんだと……どうしてそんなことに ! ? |
帝国軍兵士2 | わかりません ! とにかく陛下にお伝えしないと ! |
ジュニア | なんだか慌ててる……どうしたんだろう ? |
リヒター | おい、何があった。 |
帝国軍兵士1 | リヒター様 !ローゲ様が城下で暴れているとの報せが入ったのです。 |
メルクリア | なんじゃと ! ?あやつは仮想鏡界に行ったのではなかったのか ? |
チーグル | その筈ですが……。 |
メルクリア | ええい、ここで考えていても仕方ない。わらわが城下へ参り、直接確かめてくれる。 |
メルクリア | いたぞ、ローゲじゃ ! |
帝国軍兵士3 | おやめ下さい ! どうか……ローゲ様 !ぐあああっ ! |
バルバトス | 誰がローゲだ !俺の名はバルバトス !バルバトス・ゲーティアだ ! ! |
メルクリア | ! ?なんじゃと…… ? |
チーグル | まさかローゲは……。 |
リヒター | ……あいつはもうローゲではない。本来の体の持ち主、バルバトスなのだろう。 |
メルクリア | そんな……。ローゲ、何があったというのじゃ…… !お前まで虚無に帰ったというのか ! ? |
メルクリア | あやつは誰よりも強くて、ふてぶてしくてそれゆえに兄上を失った時にはわらわを躊躇なく鼓舞してくれた猛者じゃった……。 |
メルクリア | なのに……またわらわは失うのか……。ううっ……うう……。 |
ジュニア | 泣かないで、メルクリア……。 |
バルバトス | うおおおおおっ ! ! |
帝国軍兵士4 | お静まりください。王宮までお連れいたします !謁見が許可されれば、すぐにでも―― |
バルバトス | 謁見 ? 許可 ? ふざけたことをぬかすなっ !俺はここを動かんぞ。皇帝とやらをここへ連れて来い !貴様らをなぶり殺しながら待ってやる。 |
帝国軍兵士4 | ひ、ひいいいいっ ! どうか、お許しを ! |
メルクリア | あの男、なんと凶暴な…… !じゃがなにゆえ兵士たちはローゲではないと気づかぬのだ。 |
リヒター | お前も知っているだろう。リビングドールは比較的親和性の高い者同士をキメラ結合させる。しかも見た目が同じであれば、わかるわけがない。 |
チーグル | ……荒れ狂ったローゲも手段を選ばない奴だったからね。事情を知らなければ私だってあれをローゲだと思うだろう。 |
帝国軍兵士5 | 一時撤退だ ! 撤退しろ ! |
バルバトス | 撤退だと ? この腰抜けどもがっ !貴様らが逃げるなら、この街の奴らが身代わりだ ! |
リヒター | ……兵士ではもう無理だな。俺が行く。ジュニア、メルクリアを見ていろ。 |
チーグル | 私も行こう。あの下劣さは見るに堪えん。 |
バルバトス | さあ、死にたい奴は逃げるがいい !殺されたい奴はかかってこいっ ! |
バルバトス | ぬうっ、誰だ ! |
リヒター | いい加減にしろ。言葉が通じないわけではないだろう。 |
チーグル | 共に来る気がなければ、ここで討つ。 |
バルバトス | ああ、やってみろ。貴様らが俺を倒す前にこの街の人間を皆殺しにしてやるっ ! |
バルバトス | 雑魚はどけええぃ ! |
帝国軍兵士6 | ぎゃああっ ! |
帝国軍兵士7 | しまった、あっちには一般人の避難所が ! ! |
リヒター | チッ、あの男、本気で街の人間を…… ! |
メルクリア | インディグネイション ! ! |
バルバトス | ぐああああっ ! |
メルクリア | リヒター、チーグル、今じゃ ! |
チーグル | 身の程をわきまえろ ! |
リヒター | 貴様はやりすぎだ。 |
バルバトス | くそ……どもが………。 |
チーグル | メルクリア様が自らお手を下す必要など……。ジュニア、なぜ止めなかったんだ。 |
ジュニア | すみません……。 |
メルクリア | これはわらわの意志じゃ。このような下衆をのさばらせたのもある意味ローゲを失った、わらわの不始末じゃからな。 |
チーグル | メルクリア様……。 |
バルバトス | メル……ク……………………………。 |
リヒター | ようやく静かになったか。 |
チーグル | とどめを刺しますか ? |
メルクリア | いや、再びローゲを呼び戻すためにもこやつは手元に置いておく必要がある。 |
メルクリア | この者を監獄へ運べ。厳重に閉じ込めておくのじゃ ! |
キャラクター | 10話【5-15 浮遊島】 |
コーキス | ただいま、みんな ! |
カイウス | コーキス ! 本当にでっかくなったんだな ! |
ミュゼ | お帰りなさい、ミラ ! 心配したのよ。体はどう ? 辛くないの ? |
ミラ=マクスウェル | 帰還連絡の際に伝えただろう ? もう問題ない。ミュゼには随分と心配をかけたな。 |
カイウス | 魔鏡通信をもらった後でも確認するまで安心できないって大変だったんだぜ ? |
ルビア | ミラは優しいお姉さんがいて羨ましいわ。 |
ミラ=マクスウェル | ルビアには兄弟はいないのか ? |
ルビア | いないわ。あ、でもお兄様って呼んでた人なら……とても素敵な人よ ! |
コハク | お兄様かぁ。そうだ、シング。わたし、お兄ちゃんのところに行ってくるよ。 |
コハク | あの人が言ってた【わたしの心の中にいた人】ってきっとリチアのことだと思う。 |
シング | そうだね。それにシャーリィのことも聞いたんだろう ?セネルたちに伝えないと。 |
コハク | うん。それじゃルビア。また来るね ! |
ルビア | ……確か、コハクもずっと眠らされていて大変だったんでしょ ? |
ジュード | うん。でも今はあんなに元気だよ。ルビアだって、すぐに動けるようになるさ。 |
ルビア | ええ。これから少しずつリハビリして必ずみんなの役に立ってみせるわ。 |
ミリーナ | 頼もしいわね。でも焦らないで、きちんと回復させましょう。 |
イクス | …………。 |
ミリーナ | どうしたのイクス。 |
イクス | バルバトス……大丈夫だったかなって。……結局置いていくことになっちゃっただろ。 |
ミリーナ | 仕方ないわ。見張りの兵士達が来てしまって連れて帰る余裕がなくなってしまったんだもの。 |
ミリーナ | ただ……いくら元の世界でカイルたちと敵対していた人とはいえひどい選択をしたことは間違いないわよね。 |
ミリーナ | いつか、ちゃんと話をして、協力を―― |
イクス | ……協力、か。それは虫が良すぎる気がするな。 |
ミリーナ | イクス…… ? |
イクス | どんな状況であれ、俺たち――いや、俺は俺自身の判断で、バルバトスを助けないという選択をしたんだ。 |
イクス | この件に関して俺は謝罪することしかできないよ。その先はバルバトス……さんの判断だ。 |
二人 | ………………。 |
イクス | カイルたちには話を共有しておこう。この先どうなるにしても、カイルたちにとっては因縁の相手だからさ。 |
ミリーナ | ……ええ。そうね。でも忘れないで。バルバトスのことは私も同罪よ。 |
ミリーナ | バルバトスを気にしていたシングたちに急いで逃げるように促したのも私。 |
ミリーナ | だからバルバトスのことも、私とイクス二人の責任にして。一人で背負い込まないでね。 |
二人 | ………………。 |
リタ | ――ねえ、あんたたち。この後、キール研究室へ来てくんない ?人工心核と精霊輪具について話があるの。 |
ミリーナ | 何かわかったの ? |
リタ | まあ色々とね。あたしは先に行ってるから。 |
ミリーナ | このまま私たちも行きましょうか。イクス。 |
イクス | みんな、先に行っててくれ。俺は後から行くから。 |
コーキス | マスター ? |
イクス | ちょっと疲れたから部屋で一息いれたいんだよ。少しの間だけ、いいかな。 |
カーリャ | イクスさまも色々大変でしたもんね……。 |
ミリーナ | ……無理してないわよね ? |
イクス | ああ。ちゃんとこうして疲れたから休みたいって言ってるだろう ? |
ミリーナ | わかったわ。それじゃ行きましょう、コーキス。 |
コーキス | あ…………はい……。 |
イクス | …………。 |
フィリップ | どうだい ? 難しいかな。 |
マーク | やっぱ駄目だ。何度やっても近づけねえ。 |
フィリップ | そうか……。ヴィクトルの話では心の精霊ヴェリウスが守護を強めたらしいからね。精霊の封印地そのものに近づけないんだろうな。 |
フィリップ | 昔のオーデンセには精霊の封印地へ移動する入り口があったんだけど、オーデンセが失われた今では直接、封印地に降り立つしかない。 |
マーク | 召喚士の力を頼ってみるか……それとも……。 |
イクス | フィル、聞こえるか ?二人で話をしたいんだけどいいかな。 |
フィリップ | ……イクス ? ちょっと待ってくれ。マーク、しばらく頼むよ。 |
マーク | ……了解。面倒事なら断れよ。 |
フィリップ | 待たせたね。どうしたんだい ? |
イクス | ……さっきゲフィオンと会ってきたよ。それでフィルに聞きたいことがあって連絡したんだ。 |
フィリップ | ゲフィオン…… ?詳しく聞かせてくれ。 |
フィリップ | ――鏡精を切り離す、か。確かに鏡精は、ある術式を施すことで主人から独立することが可能になる。 |
フィリップ | ゲフィオンはその術を使って自分の【カーリャ】を切り離しその際に一部の記憶と心をカーリャに渡したんだ。 |
イクス | ……そうか。ゲフィオンの話は本当だったんだ。 |
フィリップ | イクス、なぜ僕と二人だけでこの話をしようと思ったんだい ? |
イクス | 今の話をゲフィオンから聞いたのは俺だけだから。それに、ずっと違和感があったんだ。……ミリーナに。 |
フィリップ | …………。 |
イクス | あのさ、真面目に変なこと言うぞ ?ミリーナって、俺のことあんなに好きだったかな……。 |
イクス | 俺自身の記憶にあるミリーナは、俺を年下扱いするような感じでさ。でもきっと……そういう意味の好意を持ってくれてるんだろうなって雰囲気だった。 |
イクス | それが、まだオーデンセがあった頃俺がじいちゃんと長期の漁に出るって決まった辺りから……なんか、ちょっと変わってきて。 |
イクス | 俺の作られたタイミングを考えるとマークに助けられる前までの記憶は一人目と二人目の俺の記憶なんだよな。 |
イクス | だから、俺の知ってるミリーナって言葉はちょっと違うのかも知れないけどでも今みたいな愛情を示すミリーナは、なんか……。 |
フィリップ | イクスの知ってるミリーナとは違う ? |
イクス | ……うん。 |
イクス | 俺は【フィルとゲフィオンの記憶】を経由して作られた三人目のイクスだ。 |
イクス | なあ、フィル、俺はどこまで本来の【俺】なんだ ?今の二人目のミリーナは ? |
イクス | 俺たちはどこまで【一人目】と一緒でどこから違うんだろう。……教えてくれ。 |
フィリップ | ……それは……。 |
イクス | フィル ! |
フィリップ | ……さすがだね。三人目だろうと、イクスは凄いや。 |
フィリップ | でも……少しだけ待ってくれないか。僕たちが精霊の封印地に行くことができたら全て……話すから。 |
フィリップ | だからそれまで猶予が欲しい。……頼む。 |
イクス | ……わかったよ。困らせてごめんな、フィル。 |
キャラクター | 11話【5-15 浮遊島】 |
イクス | (……早くキール研究室に行かなきゃな) |
コーキス | …………。 |
イクス | コーキス…… ! お前、今の話……。 |
コーキス | ごめん……立ち聞きした。マスターのことが気になって後を追ったら話し声が聞こえちゃって……。 |
イクス | ……いいよ。でも今の話は誰にも言わないでくれ。 |
コーキス | ああ。絶対に言わない。マスターを裏切ったりしないよ ! |
イクス | わかってるって。ありがとな。 |
コーキス | あのさ、マスターがあの時に言ってた「痛みが伝わらないようにした」って話は鏡精を切り離す術の応用だったんだろう ? |
イクス | そうだよ。もうコーキスの目が痛むことはないから安心してくれ。 |
コーキス | そうじゃなくて……。その術がきっかけで俺のことを完全に切り離したりしないよな ? |
イクス | ハハッ、なんだよ急に。そんなことしないよ。 |
コーキス | 俺はマスターといたいんだ。ずっと一緒に……。マスターの痛みだと思えば耐えられるから痛覚を元どおりに繋いでくれ。 |
コーキス | なんか今までと変わっちゃうみたいで……嫌なんだよ。魔鏡結晶を出てからのマスターは上手く言えないけど……前と違う感じがするから。 |
イクス | ……そうか ? 自分ではそんな感じしないけど。 |
コーキス | 俺の気にしすぎかもだけどでも……何となく心配なんだよ。それにもしマスターに負担が行くことがあるなら……。 |
イクス | 馬鹿なこというなって。それに俺はコーキスみたいな痛みを感じてないぞ。 |
イクス | 多分、コーキスたち鏡精は俺たち鏡士の心から生まれた存在だからマスターよりも痛みを鋭敏に感じるんじゃないかな。 |
コーキス | でも……。 |
イクス | 俺は痛みもないし、コーキスも苦しまないならこの状態が一番だろう ? このままでいいんだよ。 |
コーキス | 本当に苦しくないんだな ?俺のこと、切り離したりしないよな ? |
イクス | ああ、大丈夫。ほら、キール研究室へ行こう。ミリーナたちが待ってるぞ ! |
カーリャ | あ、コーキスたち、やっと来ましたよ。 |
ミリーナ | イクス、もう大丈夫なの ? |
イクス | ああ、十分休んだよ。 |
リフィル | 失礼するわ。あら、みんな集まってるのね。 |
ミリーナ | リフィル先生。キール研究室にご用ですか ? |
リフィル | さっきクラースから仮想鏡界潜入の件で報告を受けたのよ。それであなたたちからも話を聞こうと思って。お邪魔だった ? |
イクス | 丁度よかったです。よければリフィル先生も一緒に聞いてください。――それでリタ、話はどこまで進んでるんだ ? |
リタ | 話どころか図面まで引き終わっちゃったわ。 |
コーキス | 図面って……なんだこれ ? リタ様こんな複雑なもの、帰ってきてから書いたのか ? |
パスカル | あたしたちが手伝ったからね~。こんなのシャシャーっでズバーンでドッカーンだよ ! |
カーリャ | なんか最後バクハツしてましたけど……。 |
イクス | で、結局なんなんだ ? |
キール | これは精霊片吸引器。精霊輪具の力を元に作り出した装置だ。 |
パスカル | 図面のここ見て。ここに現在契約している精霊たちのデータを読みこむことで、この世界に飛び散っている各属性の精霊片を呼び集めることができるんだよ~。 |
リタ | これなら精霊輪具みたいに、特定の精霊や人物に装備させる手間がかからないし精霊たちを傷つける心配もないわ。 |
リタ | そのかわり精霊を呼びよせる力は弱いし時間もかかる。ま、その辺は精霊への負担を減らす効果もあるからしかたないわね。 |
パスカル | そして~、テッテレ―― !今回の目玉は――――これっ ! |
ミリーナ | この部分の図……ローゲの人工心核に似てるわ。 |
リタ | そう、これは人工心核をモデルにした【人工精霊核】よ。 |
イクス | 人工って、もしかしてそこに精霊を ?そうか……なるほどな。 |
コーキス | 全然わかんねー !俺にもわかるように説明してくれよ。 |
キール | 仕方ない。順番に教えるからよく聞くんだ。精霊は個体でありながらこの世界に息づく存在でもある。 |
キール | だから世界中に、精霊の欠片のようなものが微精霊のように散ってるんだ。 |
キール | それを集めるのがこの装置。集めたものを固着させる媒体が人工精霊核ってわけだ。ここまではわかるか ? |
コーキス | うん、ぎりぎり……。 |
キール | なら後は簡単だ。つまりこれがあれば個としての精霊の心核を具現化しなくても精霊片を集めることで、ある程度の精霊の力が集まる。 |
キール | 行方のわからない精霊の力もな。 |
コーキス | あ……なるほど ! 確かにすげー便利だ。 |
リタ | カレイドスコープを調べたら、帝国がオリジンやヴォルトの心核を具現化しようとした形跡があったの。あたしはそのデータを抽出してきたってわけ。 |
パスカル | リタが持ち帰ったデータと、人工心核に精霊輪具全部がそろって初めて可能になった装置だよ~。いや~久々に面白いものが作れそう ! |
キール | おい ! 話はまだ終わってないぞ ! |
キール | ……まあいい。まずはこれを完成させて精霊片を集めてみよう。それに、このアジトも改良していかないとな。 |
イクス | そうだな。ジェイドさんたちが調べてくれたけどよくわからないゲートとか、まだありそうだし。 |
カーリャ | 何よりこのアジト、浮いちゃってますからね。みなさん出入りが大変そうです。 |
リフィル | それに関しては、ジェイドが帝国の転送魔法陣を解析しているわ。完成すればこの空中のアジトでも移動が便利になるはずよ。 |
リフィル | でも、完成にはもう少し時間がかかりそうだったからその間に、以前具現化された大陸の状況を調べた方がいいんじゃないかしら。 |
コーキス | 大陸の状況って、帝国だけじゃなくて ? |
リフィル | ええ。具現化された市井の人々はあやふやな記憶から、徐々にこの世界の住人として存在を確立していくのでしょう ? |
リフィル | だとしたら、そろそろどの大陸の人たちも自分たちがティル・ナ・ノーグの人間だとはっきり自覚している頃なんじゃないかしら。 |
リフィル | 自分を存在する【個】として認識し、意識が固まれば必ずしも帝国に従属するという人間ばかりではなくなると思うの。 |
リフィル | その一番いい例としてはアスターのような人物ね。 |
コーキス | ヒルダ様を助けてくれた商人か。ルーク様たちの話じゃ怪しいけどいい人だって言ってたな。 |
ミリーナ | 鏡映点だけではなく、この世界の人間を味方につけるということですね。 |
リフィル | そういうこと。巨大な相手と戦うには必ず必要な存在になってくるはずだから。 |
リフィル | それと、あなたたちも少し休みなさい。ずっと落ち着かないままでしょう。 |
ミリーナ | そう言えばもうすぐ年末だわ。本当だったら、みんな仕事を一段落させて年を越す準備をする時期よね。 |
イクス | そうか……色々あり過ぎて忘れてたよ。 |
イクス | よし、ここからしばらく俺たちはアジトの拡充に重点を置くか。 |
カーリャ | それと年越し準備もですよ !お正月はみんなで初詣とかもいいですよね。今のうちから計画たてておかなくちゃ ! |
コーキス | パイセン、嬉しそうだな。 |
ミリーナ | 私たちも少しの間、落ち着いて過ごしましょう。そんな日があってもいいわよね、イクス ? |
イクス | ……そうだな。これからはもっと大変になるだろうしみんなの鋭気を養うために必要だよ。 |
イクス | (きっとそれは、俺自身も――) |
| to be continued |
キャラクター | 1話【6-1 閑散とした街道】 |
| 帝都・アスガルド城 |
帝国軍兵士 | 陛下、グラスティン様がお見えです。 |
デミトリアス | 通してくれ。お前たちは下がっていい。 |
帝国軍兵士 | はっ。 |
グラスティン | これはデミトリアス陛下におかれましてはご機嫌麗しゅう……。 |
デミトリアス | そんな他人行儀な言い方はやめてくれ。それより、よく来てくれた。最近、体調はどうだい ? |
グラスティン | 目覚めた時と変わらないな。すこぶる好調だよ。おかげで毎日新鮮な【肉】に囲まれて楽しい研究三昧さ。フフフフ……。 |
デミトリアス | ……そうか。君が、アニマ汚染による長い植物状態から復帰してすでに三ヶ月が経つ。 |
デミトリアス | 私と同じ治療を施して、ようやく目覚めはしたがその後の経過が心配だったんだ。何もないようで安心したよ。 |
デミトリアス | それで、研究の進捗はどうだ ? |
グラスティン | すでに具現化世界の技術には全て目を通してある。その中でも、特に有用な物を特定した。 |
グラスティン | まずは、我々がリーゼ・マクシアと名付けた大陸【リーゼ・マクシア領】。その元となった世界に存在する【分史概念】 |
グラスティン | 同じく、オールドラント領の【レプリカ】レグヌム領の【前世】そしてファンダリア領の【ソーディアン】 |
グラスティン | この四つを組み合わせることで、お前の悲願を果たすことができるだろう。 |
グラスティン | これが具体的な案をまとめた計画書だ。目を通してくれ。 |
デミトリアス | なるほど……よくぞここまで。さすがグラスティン、セールンド一の魔鏡技師だ。君を友人に持った私は幸運だよ ! |
デミトリアス | ……だが、この計画を実行すればメルクリアは絶望するかもしれないな。 |
デミトリアス | あれほどまでに故郷を望んでいるあの子を……私は……。 |
グラスティン | この期に及んで敵国の娘の心配か ?その甘さがお前の弱さだ。デミトリアス。 |
デミトリアス | ……弱さ、か。 |
グラスティン | それと、その計画について提案がある。ディストを目覚めさせたい。 |
デミトリアス | ディスト ? そういえば治療を終えた後も眠らせていたが、彼が必要かね ? |
グラスティン | 俺もレプリカ技術に関して独自に研究を進めている。そのための人員も、ジュニアに何度か具現化させた。 |
グラスティン | だが、レプリカがオリジナルよりも劣化する点において奴からも意見を聞かねばならない。 |
デミトリアス | そうか。彼は色々とトラブルが多かったから覚醒を先延ばしにするようメルクリアに指示していたんだが……。 |
デミトリアス | わかった、許可しよう。 |
デミトリアス | それにしても、君が目覚めてからの成果は素晴らしいよ。何か褒美を取らせたいところだが、望みはあるか ? |
グラスティン | 望み ? ヒヒッ……そんなもの決まっているだろ。フィリップだよ…… !フィリップ・ビクエ・レストンが欲しい ! |
グラスティン | この間やっとフィリップに会えたんだ……。テセアラ領でね……。彼は変わらず完璧で美しかったよ。ヒヒ……ヒヒヒ……。 |
デミトリアス | ……私の答えは分かっているだろう、グラスティン。せめて私の手の届く範囲にしてくれないか。 |
グラスティン | ……だったらジュニアとファントムならどうだ。あれは帝国に所属しているだろう。 |
デミトリアス | 済まないが、それも難しいな。ファントムはミリーナたちに奪われているしジュニアはメルクリアが気に入っているんだ。 |
グラスティン | メルクリア ? まだそんなことを……。だったらジュニアを奪うのを黙認してくれるだけでいい。 |
グラスティン | ジュニアさえ手に入れば現在は封じている仮想鏡界を再び開かせてファントムを奪い返すことも出来る。 |
デミトリアス | ファントムを奪還……か。しかしファントムは……。 |
グラスティン | ……そういえば、俺が植物状態だった間お前はファントムに肩入れしてアレを救おうとしていたそうだな。 |
グラスティン | フィリップという、完璧な存在が近くにいたのにどうして不完全な具現化によるフィリップのなれの果てを救おうとした ? |
デミトリアス | そんな言い方はやめてくれ。彼は……可哀想な生まれ方をした。救えるなら救ってやりたかったんだよ……。 |
グラスティン | ふ……ふふ……。そうか。少しガタが来ている方がお好みなのか。ならばいいさ。俺はジュニアで手を打つ。 |
グラスティン | まぁ、待っていろ。いずれファントムも取り返してやるさ。ヒヒ……ヒヒヒ……。 |
グラスティン | だが、ジュニアを手に入れるにはリヒターが邪魔だな。いつもジュニアの周りをチョロチョロしやがって……。 |
グラスティン | なあ、デミトリアス奴を処分してもいいだろう ? |
デミトリアス | リヒターは精霊研究者としての能力も高い。彼を失うのはかなりの痛手だ。何よりリヒターとアステルの関係を考えると同意はできん。 |
グラスティン | リヒターがいなければ、アステルが帝国を離れる可能性を危惧しているのか ?それなら問題ない。 |
グラスティン | リヒターは【リビングドールβ】として生かしておく。ちょうど被験者を増やしたいと思っていたからな。 |
デミトリアス | あれをリヒターに施すのか ? それは……。 |
デミトリアス | ――……いや、わかった。好きにしていい。 |
グラスティン | ヒヒ……感謝するよデミトリアス。 |
キャラクター | 2話【6-1 閑散とした街道】 |
イクス | ――それじゃ、そろそろ班長会議を始めるけどもう全員そろってるかな。 |
ミリーナ | ええ。具現元となった各世界からの代表者を一人班長として選出してもらったわ。一応、名簿も作ってあるけど……。 |
カーリャ | カーリャが確認しますね !チェスターさま、ジョニーさま、リッドさま、ジューダスさま、ジーニアスさま、ヴェイグさま |
カーリャ | セネルさま、ガイさま、カイウスさま、スパーダさまマルタさま、フレンさま、シングさま、アスベルさま |
カーリャ | レイアさま、ガイアスさま、スレイさまベルベットさま、最後は救世軍のクラトスさま !……ぜーはー……全員そろってますぅ……。 |
コーキス | やるじゃんパイセン、ひと息で読み上げた !あんま意味はねぇけどな……。 |
イクス | よし、じゃあ始めよう。これからみんなに報告するのはカロル調査室のみんなが、ここ数カ月間に渡ってティル・ナ・ノーグを調査した結果だ。 |
イクス | まず、具現化大陸全体の状況だけど具現化当初のような違和感を持つ住人はもういないみたいだな。 |
ミリーナ | みんな、自分は元からティル・ナ・ノーグの人間だと思いこんでいるのね。 |
イクス | ああ。ゲフィオンの思い描いていたアイギス計画の大陸具現化に関する部分はほぼ完成したとみていい状態だと思う。 |
イクス | そして帝国は具現化した各大陸に異世界由来の名前をつけて領土化しているらしいんだ。 |
カーリャ | じゃあ、一番最初に具現化したユーリさまやラピードさまがいた所は ? |
イクス | その大陸は今【テルカ・リュミレース領】と呼ばれているよ。 |
フレン | テルカ・リュミレースは、僕たちの世界を表す名称だ。話には聞いていたけどそうか……帝国は正式に命名したのか。 |
チェスター | フレンはもう知ってると思ってたぜ。カロル調査室と一緒に動いているんじゃないのか ? |
フレン | ユーリやカロルたちの調査は、臨機応変が過ぎてね。だから僕は待機しつつ、彼らのバックアップが多いんだよ。 |
ジーニアス | そういえば、カロルたちって調査に出るとなかなか予定通りに帰って来ないよね。フレンも大変でしょ ? |
フレン | あれがカロルたちのやり方だからね。そもそもユーリが昔からあんな感じだから、慣れているんだ。 |
フレン | それに自由だからこそ思いがけない成果を得ることもある。 |
フレン | むしろカロル調査室がよりよく機能するために僕ができることをしているだけなんだ。こういう場に出るのも含めてね。 |
レイア | ま、真面目……。班長選出で、そこまで考えてんだ。 |
リッド | オレなんか「イケる、イケる ! 」っつってわけわからないうちに班長にされてたのにさ。 |
チェスター | なあイクス、その資料、見せてくれないか。オレたちの世界が元になってる大陸ってのは…… |
イクス | チェスターと会った大陸はここ、【アセリア領】だ。みんなも確認してくれ。 |
チェスター | アセリア……アセリア歴からか。なるほどね。 |
ジョニー | どれどれ、俺たちは【ファンダリア領】だな。ウッドロウがいたらどんな顔をしただろうな。ジューダス、お前さんのところも同じでいいんだろ ? |
ジューダス | ……そうだ。だからこそ班長会議には僕が代表して出ると言ったのに。だいたい、今のおまえは戦えないだろう。 |
ジョニー | 確かに、特異鏡映点用のブレスレットが上手く働かないから、まだ、みんなと行動はできない。せいぜい応援がてら、歌う程度が関の山さ。 |
ジョニー | だからこそ、こういう所で役に立っておきたいんだよ。 |
スパーダ | いいじゃねえか。ジョニーのその心意気 !好きにさせてやれって、お面野郎ォ。 |
ジューダス | お面じゃない ! 仮面だ ! |
スパーダ | 細けぇヤツだな。で、オレんとこはどこだ ?あー……【レグヌム領】ね。王都レグヌムか。ルカとオレの地元の名だな。 |
リッド | この【オルバース領】っていうのは、オレの世界が元になってる大陸か ? オルバース界面……。インフェリアでもセレスティアでもないのか。へえ……。 |
セネル | 【ウェルテス領】……灯台の街ウェルテスか……。懐かしいな。ヴェイグのところは ? |
ヴェイグ | オレのところは【カレギア領】だ。元の世界では王国名だった。覚えやすくていい。 |
カイウス | オレのところもわかりやすいぜ !この【アレウーラ領】って名前はオレの世界の大陸の名前だったんだ。 |
ガイ | さて、ウチは……【オールドラント領】ね。ま、惑星名だし妥当な命名だな。マルクトなんて名付けられてたら、どんな奴が出てくるか……。 |
アスベル | ガイのところも惑星名か。俺のところも同じだよ。【エフィネア領】の、エフィネアっていうのは俺たちが住んでいた星の名前なんだ。 |
シング | オレの世界が元になった大陸は【原界(セルランド)領】か。もう一つの世界の要素って、この大陸に含まれてるのかな……。 |
ジーニアス | もう一つの世界 ? シングの世界も複雑そうだね。ボクたちの世界も、シルヴァラントとテセアラの二つだったけど、名前はどうなってるんだろう。 |
クラトス | 我々の世界は……【テセアラ領】だ。 |
マルタ | じゃあ、私やエミルたちもそこなんだね。未来とはいえ、同じ世界だし。 |
レイア | 未来かぁ。だったら、わたしたちの未来だっていうルドガーたちの世界も含めてこの【リーゼ・マクシア領】になるのかな。 |
ガイアス | エレンピオスと思われる名称のついた大陸は見当たらないな。だとすれば同じだろう。 |
スレイ | ……あれ ? おかしいな。オレの世界は、この【グリンウッド領】だけど……ベルベットは ? |
ベルベット | あたしのところは【ミッドガンド領】よ。別におかしいところなんて見当たらないけど。 |
スレイ | だって、オレたちって過去と未来の関係なんだろう ?マルタや、ガイアスさんたちは同じ大陸なのに何でオレたち分けられてるんだろう。 |
ベルベット | それはファントムが、あんたの世界とは別にあたしたちを具現化したからでしょ。 |
スレイ | そうか。そのせいで別の大陸名になってるんだな。スッキリしたよ ! |
イクス | よし。現時点で他の世界の具現化大陸はないようだな。今、みんなに確認してもらった各大陸には帝国から領主の派遣が進んでいるらしいんだ。 |
イクス | この状況を継続して調査するためにもカロル調査室メンバーの他に、各大陸の元の世界の関係者にも手伝ってもらいたいと思ってる。 |
ガイアス | それでは各地に戦力を分散させることになるぞ。ここの守りはもちろん現地に赴く者も危険ではないか ? |
セネル | 確かに、簡単に行き来ができるわけじゃないんだ。いざという時にも集まりにくいぞ。 |
ミリーナ | それは大丈夫。ジェイドさんが、帝国の転送魔法陣と仮想鏡界の時からあったゲートを解析して組み合わせた新たな転送ゲートを完成させたの。 |
ガイ | ああ。俺も転送ゲートを維持する装置を作るのを色々と手伝わされたよ。音機関……機械いじりは好きだからいいんだけどな。 |
ミリーナ | ガイさん、エドナ様のお茶会も休んで頑張ってくれたのよ。この転送ゲートを使えばアジトからの移動も比較的自由になるわ。 |
イクス | 実は、みんなに各地の調査をお願いするのは他にも気になる点があるからなんだ。 |
イクス | 最近、【聖アタモニ教団】という宗教組織が台頭してきたって報告があったんだよ。 |
ジューダス | アタモニだと ?まさか、エルレインが動き出したのか ! ? |
キャラクター | 3話【6-2 閑散とした街道】 |
ジューダス | エルレインが具現化されたと聞いたときから嫌な予感はしていたが……。 |
ヴェイグ | 確か、現在帝国にいる鏡映点の一人だったな。聖アタモニ教団というのはエルレインに関係しているのか。 |
ジューダス | ああ。僕たちの世界にも、アタモニ神団という似た名前の組織があった。エルレインはその組織で聖女と呼ばれていた女……僕たちの敵だ。 |
ジューダス | もし、この世界でも奴が教団の指導者だとしたらやっかいなことになるぞ。 |
イクス | ジューダスの言う通りだ。こういうケースを想定して元の世界での経験を元に、みんなにも――あっ……ちょっとごめん、魔鏡通信だ。 |
シャルティエ | イクスくんかい ? |
イクス | えっ、シャルティエさん ? |
シャルティエ | この魔鏡通信って便利だね。この世界に来てから連絡手段が不便で仕方なかったから助かったよ。今、話してもよかったかな ? |
イクス | ええ。大丈夫ですけど、何かあったんですか ? |
セネル | なあ、シャルティエって誰だ ?リオンのしゃべる剣と同じ名前だけど……。 |
ジューダス | 聞いていないか ?最近、対帝国部隊と同盟の協定を結んだだろう。そこに所属している、鏡映点の一人だ。 |
アスベル | ソーディアンの人格の元となった人物か。鏡映点として具現化されていたって話だったな。 |
ガイアス | その中でも、ディムロスという男は有能な指揮官であり、部下からの信頼も厚いと聞いている。 |
コーキス | そうそう、マスターが言ってたぜ。そのディムロス様のところの人だよな ? |
シャルティエ | はいはい。ディムロスのところのシャルティエですよ。どうせ僕だけじゃ印象が薄いですよー……。 |
イクス | いや、シャルティエさんの印象が薄いんじゃなくてディムロスさんの印象が強いだけで……。 |
シャルティエ | それ、全然フォローになってないからね ! ?……はぁ、もう用件を伝えてもいいかな。 |
イクス | あっ、すみません。どうぞ ! |
シャルティエ | 別の街を拠点にしているレジスタンスから「同盟を結びたい」っていう手紙が届いたんだよ。差出人は、ナナリー・フレッチ。 |
ジューダス | ナナリー…… ! |
シャルティエ | あ、ジューダスくんもそこにいたんだね。君たちの仲間に、同じ名前の子がいた筈だよね。それで連絡をとったんだよ。 |
シャルティエ | レジスタンスと会う前に、カイルくんたちに確認をとれって、ディムロスに言われてさ……。なんで僕がこんなこと……。 |
ジューダス | よく知らせてくれた、シャル、……ティエ。イクス、僕はカイルたちを連れてファンダリア領へ向かう。構わないな ? |
イクス | もちろん。俺とミリーナも一緒に行くよ。 |
シャルティエ | 了解。それじゃ、こっちに合流してくれ。 |
イクス | みんな、すまないけど、ここはひとまず解散しよう。各地の調査に関しては、ユリウスさんとリフィル先生に方針を聞いてくれ。きっと俺より説明上手いし……。 |
コーキス | あー、マスターは話が長いからなぁ。 |
イクス | そ、そんなことないよ !コーキスが単純化しすぎなんだよ。 |
ミリーナ | あら♪ イクスの説明は丁寧でわかりやすいしコーキスも端的でイクスの次にわかりやすいわよ。 |
イクス | はは……。 |
カーリャ | それじゃあ、皆さま。ひとまずお疲れ様でした~ ! |
イクス | ――あの、待ってください、クラトスさん。ヴィクトルさんの容体はどうですか ? |
クラトス | ヴィクトルか。安心しろ。かなり回復してきた。最近では、精霊の封印地に近づくための調査にも協力してもらっている。 |
イクス | そうですか。だったら、もうそろそろ平気かな……。 |
イクス | クラトスさんは、以前、俺がヴィクトルさんから手紙を預かったのを覚えていますか ? |
クラトス | ああ。エルへの手紙だな。 |
イクス | あの手紙、まだ渡していなかったんです。タイミングを見ているうちに先延ばしになっちゃって……。 |
イクス | だから、今回の件が落ち着いたらエルに手紙を渡して話をするつもりだとヴィクトルさんに伝えてもらいたいんです。 |
クラトス | エルに……。そうか、わかった。 |
イクス | あと……あの……フィルにも……。 |
クラトス | ……どうした ? 言いにくいことか ? |
イクス | ……いえ、あの……。フィルにそろそろ話を聞かせて欲しい……と。 |
クラトス | 伝えておこう。……私からも、構わないか ? |
イクス | は、はい。もちろんです。 |
クラトス | ロイドは……壮健だろうか。 |
イクス | はい。あの……直接話をしていったらどうですか ? |
クラトス | そう……なのだろうが。どう振る舞ったらいいのか……よくわからないのだ。 |
クラトス | 父親として向き合う、とは決めたものの私がロイドと別れたのはあれが三つの時だ。知らない時間が多すぎる。 |
クラトス | ロイドはそんなことなど気にしないともわかってはいるのだが……。妻が生きていれば……また違ったのだろうな。 |
イクス | 若輩者が、何を言うと思われるかも知れませんけどヴィクトルさんなら何かヒントをくれるんじゃないでしょうか。 |
クラトス | ……かも知れぬな。ありがとう、イクス。 |
キャラクター | 4話【6-3 対帝国部隊の村】 |
ディムロス | ――皆、よく来てくれた。先日は世話になったな。 |
カイル | こちらこそ、また会えて嬉しいです ! |
リアラ | カイルったら、またディムロスさんたちに会えるってすごく喜んでいたんですよ。 |
ディムロス | それは光栄だな。今回はジューダスくんも一緒か。よろしく頼む。 |
ジューダス | ああ。……シャルティエの姿が見えないようだが……。 |
シャルティエ | みなさん、お待たせしました。まずはお茶をどうぞ。 |
ディムロス | シャルティエ、気が利くじゃないか。 |
シャルティエ | こういう役回りも、なんか慣れちゃいましたから。 |
ジューダス | ふっ……。 |
シャルティエ | ……何だい、ジューダスくん。 |
ジューダス | いや、なんだかんだ言いつつ世話焼きな奴だと思っただけだ。 |
シャルティエ | どうせ僕は、こういう目立たない仕事がお似合いですよ。 |
コーキス | なぁパイセンジューダス様、ちょっと笑ってなかったか ? |
カーリャ | ええ。珍しいですねぇ。 |
イクス | ディムロスさん。早速ですけど手紙の件を聞かせてもらえますか。 |
ディムロス | そうだな。これがレジスタンスから送られてきた手紙だ。 |
カイル | 本当だ……。ナナリー・フレッチって署名してある。やっぱりナナリーもこの世界にいるんだよ ! |
ジューダス | まだ名前が一致しただけだろう。もっとも同姓同名の別人の可能性は極めて低いと思うが……。 |
リアラ | そうね。他に特定できそうなことが書いてあればいいんだけど……。 |
ミリーナ | この手紙だと、ファンダリア領の領都と定められたダリルシェイドってところで面会することになってるわね。 |
カイル | ダリルシェイドが都って、なんか変な感じだな。領土名はファンダリアなのに。 |
カーリャ | 変って、何がですか ? |
ジューダス | 元の世界では、ファンダリアの首都はハイデルベルグでセインガルド王国の首都がダリルシェイドだったんだ。カイルが違和感を覚えても仕方ない。 |
カイル | この世界って、見覚えのある景色や名前があってもやっぱり偽物なんだよな……。 |
カイル | ――あ、ご、ごめん ! |
ミリーナ | いいえ、いいのよ。本当のことだもの。 |
ジューダス | それよりも、都というくらいだからダリルシェイドはこの村よりも発展しているんだろう ? |
ジューダス | 反体制派であるレジスタンスと、対帝国部隊がそんな大都市で会うなどと危険な計画を立てるとは……いったいどういうつもりだ。 |
ディムロス | その懸念はもっともだがこれはレジスタンス側の提案だ。 |
ディムロス | ナナリーくんのこともある。まずは確認のためにもあちらの要望を飲むことにした。もちろん、重々警戒はしている。 |
ディムロス | とはいえ、君たちの安全が保障できないのも事実だ。危険と判断するならば、君たちは戻って我々の報告を待ってくれてもいい。 |
リアラ | わたしたちも一緒に行きましょう。ナナリーのこともあるし、大都市なら聖アタモニ教団の情報が手に入るかもしれないわ。 |
イクス | ダリルシェイドで聞き込みをするのか。人が多いのなら、何かしら教団の話が聞けるかもしれないな。 |
シャルティエ | 聖アタモニ教団って……。 |
ディムロス | ああ。我々も探りを入れている宗教団体だな。最近では、ストレイライズ大神殿を建設してさらに勢力を拡大している。 |
3人 | えっ ! ? |
カイル | ストレイライズ大神殿ってこっちの世界でも建ててるんだ。それって、どこにあるんですか ? |
シャルティエ | 君たちは運がいいよね。これから行くところ、ダリルシェイドだよ。 |
ジューダス | どうやら、このファンダリア大陸に聖アタモニ教団の中枢勢力が集められているようだな。 |
リアラ | だったら、もう決まりよね、カイル ! |
カイル | ああ。みんなでダリルシェイドへ行こう ! |
キャラクター | 5話【6-4 ダリルシェイドへ続く道】 |
コーキス | 領都ダリルシェイドかぁ。カイル様たちの世界でも首都だったって話だからやっぱり賑やかな所なんだろうな ! |
カイル | いや、オレが知ってるダリルシェイドはものすごく寂れた街だったんだよ。 |
ジューダス | 首都として機能していたのはカイルたちが生まれる前の話だからな。 |
シャルティエ | 僕たちはわからないけど、今の領都はそのカイルくんたちが生まれる前のダリルシェイドっていうのに近いのかもしれないね。 |
ジューダス | …………。 |
ディムロス | む……あれは…… ? 皆、身を隠せ。シャルティエ、彼らを安全な所へ誘導をしろ ! |
シャルティエ | 了解。みんな、こっちの繁みへ。 |
帝国軍兵士1 | 早くしろ ! 急げ ! |
イクス | ……帝国兵たちだ。 |
ミリーナ | この方向だと、ダリルシェイドよね。 |
帝国軍兵士1 | まずいぞ……。少しでも遅れたらサレ様にどんなお叱りを受けるか。 |
帝国軍兵士2 | いや、エルレイン様が一緒におられるんだ。サレ様も、そう酷いことはなさるまい。――とにかく、一刻も早くダリルシェイドに入るぞ。 |
コーキス | ……行ったみたいだな。 |
コーキス | ……あれ ? サレって……聞き覚えが……。 |
イクス | ヴェイグたちの敵だった男だ。割と綺麗な顔の……。鏡映点リストにもあったしコーキスはスパーダを助けるときに会ってるよ。 |
コーキス | さすがマスター ! 細かいことよく覚えてるよな ! |
リアラ | それに……エルレインって言ってたわよね。やっぱり、ダリルシェイドにいるんだわ。 |
ジューダス | すぐに出発したいところだが……このままだと、今の奴らの後を追うことになる。下手をすると見つかるぞ。 |
カーリャ | だったら街道へ出ないでこの森を進んだらどうですか ?ほらこっち、少し開けたところがありますよ。 |
ディムロス | 待て ! そこは獣道―― |
オウルベア | グルルルルルッ…… ! |
カーリャ | キャアーーーッ ! |
ミリーナ | カーリャ ! ? |
カイル | 危ないカーリャ ! |
カーリャ | あわわわ……た、助かりました、カイルさま……。 |
カイル | いや、まだだ……。色んなところからオウルベアの気配がする ! |
コーキス | うわっ、こっちにも ! 何匹出てくんだよ ! |
ジューダス | まさか……ここはオウルベアの巣か ! ? |
ディムロス | 私とシャルティエがここを預かる。カイルくんたちは、そのまま森を抜けろ ! |
カイル | でも…… ! |
カーリャ | カイルさま、後ろ ! |
カイル | ! ! |
? ? ? | お前ら、危ないところだったな――って……お前、カイル…… ? カイルじゃねえか ! ? |
カイル | ロニ ! ? なんで ! ? |
ロニ | ……話はあとだまずはこいつらをなんとかするぞ ! |
キャラクター | 6話【6-4 ダリルシェイドへ続く道】 |
イクス | はぁ……どうにか逃げ切ったな。 |
ミリーナ | ねえ、イクス。あの人って……。 |
ロニ | カイル ! 俺の可愛いカイル~ !大丈夫か ! ? 怪我してねえか ! ? |
カイル | うん、何ともないよ。本当にロニなんだね ! |
ロニ | そうだぜ、よく見ろ。こんないい男ほかにいるか ?ロニ=デュナミス、ただいま参上……ってな ! |
ジューダス | この頭の悪い発言、間違いないようだ。 |
リアラ | 良かった。ロニが何も変わってなくて。 |
ロニ | どういう意味だよ ! |
カイル | でも驚いた。もう会えないかもって思ってたからさ。 |
ロニ | そりゃこっちのセリフだぜ。俺とナナリーが、どんだけお前らを捜したか !ったく、心配させやがって……。 |
カイル | よかった、ナナリーも一緒なんだね。 |
ロニ | ああ。毎日うるせーのなんの。そんなことより、ディムロスさんたちまでいるのかよ。ナナリーの予想が当たってたって訳か。 |
ロニ | しかしまあ、どこの時代に飛ばされたか知んねえがリアラがいるならもう安心だぜ。それとも、戻るにはまたレンズが足りないとか ? |
カイル | えっと……イクス、ロニに説明してもらえる ? |
イクス | ああ。……ロニさん。俺はイクス・ネーヴェといいます。この世界のことなんですが―― |
ロニ | ……はぁ。めちゃくちゃだな。なんつーことしてくれてんだよ。こんな話、あいつが聞いたら……。 |
イクス | すみません……。何を言われても仕方ないと思ってます。 |
ロニ | ああ。正直、言いたいことは山ほどあるぜ。けどな、今はカイルに免じて引き下がってやるよ。何より―― |
ロニ | ミリーナが美人だからなあ。特別サービスだ ! |
ミリーナ | え ? あ、ありがとうございます。ロニさん。 |
ロニ | それに今はここでやらなきゃならねえことがあるしな。 |
ディムロス | レジスタンスの指揮、か ? |
ロニ | そりゃナナリーの仕事だよ。俺はあいつの補佐だ。帝国の進出に反対するレジスタンスと会ってたらいつの間にかそうなっちまってね。 |
リアラ | なんとなく想像がつくわ。ナナリーって面倒見がいいから。 |
ロニ | ここに居合わせたのも、ナナリーが対帝国部隊と会うってんで、前もって様子を見に来たからさ。ま、おかげでこうして出会えた訳だけど。 |
ロニ | そうだ。カイル、あとでいいからミリーナやイクス以外の仲間も紹介してくれよ。どんな奴らと一緒にいたのか会ってみてえし。 |
カイル | あ……うん。そのことだけど……。ロニ、ちょっとこっちで話さない ?リアラとジューダスも来て。 |
ロニ | なんだよ。こういう所で内緒話ってのは感じ悪くみえるぞ ? |
イクス | それぞれの世界ごとに事情があるのはわかってますから。気にしないで下さい。 |
カイル | あのさ……オレたちは今若い頃の父さんや母さんと一緒にいるんだ。それに、リオンさんも。 |
ロニ | ……スタンさんや、ルーティさんと ! ?リオンってことは、ジューダスお前……。 |
ジューダス | そうだ。もう一人の僕が同時に存在している。 |
カイル | でもオレたちのことは、みんなに詳しく話してない。オレが二人の子供だってことも知らないんだ。だからロニも……。 |
ロニ | 言うな……ってか。スタンさんのことも何もかも……知らないふりをしろって ? |
リアラ | ずっとじゃないわ。今はまだ様子を見てるだけ。何より、スタンさんやルーティさんやリオンさんを考えてのことだから。 |
ロニ | ……わかったよ。俺だってスタンさんたちを悩ませたくないからな。 |
シャルティエ | 戻ってきたね。存分に内緒話はできたかい ? |
ロニ | ああ、おかげ様で。こっちは、したくてしてるわけじゃねぇけどな。 |
ディムロス | そのことだが、我々はもうこの世界からは逃れらないのだろう ? ならば、話せる範囲のことは話した方がいいのではないか ? |
シャルティエ | 確かに、何がきっかけで不信を招くかわかりませんからね。僕たちと会った時のリオンくんのように。 |
カイル | でも……どうしようジューダス……。 |
ジューダス | ……以前からジェイドには出来るだけ情報は開示していく方向へシフトしたいと話をされているんだ。 |
ジューダス | あの秘密主義の男がそう切り出すんだからそれだけの事態が起きている……という事なんだろう。 |
ジューダス | だが、「それ」を告げることが本当に正しいのかは……僕にはまだわからない。 |
ロニ | ……その話、今は置いとこうぜ。それより帝国兵の少ないルートを知ってるからそこを使ってダリルシェイドへ行くぞ。 |
キャラクター | 7話【6-6 ダリルシェイド】 |
イクス | へえ…… ! 賑やかな街だな。以前のセールンドみたいに人が多いよ。 |
ミリーナ | ディムロスさんが言っていた通り活気があるわね。これって、帝国が介入しているせいもあるのかしら。 |
街の女 | ねえ、見た ? エルレイン様の騎士 ! |
街の女2 | 見た見た ! 素敵よねぇ、サレ様 !きれいな顔してるし、理想の騎士様って感じ ! |
カイル | サレって、さっき話してた帝国の奴だよね。 |
ロニ | お前ら、サレを知ってるのか。あいつ、最近この辺りでよく見かけるようになったんだ。 |
ロニ | しっかしまあ、あんなキザったらしい男のどこがいいのかねぇ。俺の方がよっぽど―― |
? ? ? | いた ! どこでアブラ売ってたんだい。このスカタン ! |
ロニ | ナナリー ! なんでここにいるんだよ。お前は隠れ家で待ってる筈だろうが。 |
ナナリー | 状況が変わったんだよ。それにみんな、あんたのこと心配して―― |
ロニ | まあまあ、俺に文句言う前に周りをみろよ。ほら、ほらほら ! |
カイル | ナナリー ! やっと会えたね ! |
ナナリー | ウソ……カイルじゃない ! リアラにジューダスも ! ?あ、やっぱりディムロスさんたちもいたね。こっちは予想通りだ。 |
ディムロス | どういうことだ ? |
ナナリー | 話はあと。もうすぐエルレインがここを通るんだ。このままじゃ鉢合わせだよ。 |
ナナリー | とりあえずこっちに隠れて。……ほら、もう来たよ ! 早く ! |
サレ | ――それで、今日はこれからどちらに ? |
エルレイン | 監獄塔へ。バルバトスに会いに行く。 |
サレ | では、お供いたしますよ。 |
エルレイン | ここを空けてもよいのか ? |
サレ | ええ。この後は【β(ベータ)】が来ることになっていますから。もう、こちらが領都に目配りをする必要はありません。 |
サレ | それに、グラスティンからも新しい【肉】の調達をと急かされてまして。いや、困ったものですよ。 |
エルレイン | そうか ? さして困ったようには聞こえぬがな。 |
サレ | フフフ……。さあ、参りましょうか。 |
コーキス | ……なにを話してたかは、わかんねえけど顔はバッチリ確認できたぜ。サレって、やっぱりあのサレだったな ! |
リアラ | エルレイン……本当に具現化されてたのね。わかってはいたけど……。 |
ナナリー | 具現化って何 ? エルレインも時間を移動してここにいるんじゃないの ? |
リアラ | あのね、ナナリー……。 |
ロニ | いいか、ナナリー。落ちついて聞けよ。凶暴なお前はす~ぐ口や手や足や関節技が出る…… |
ロニ | ぎゃーーーーっ ! |
コーキス | す、すげえ、ナナリー様 !流れるようなサブミッション ! |
カーリャ | これは完全にキマってますよぉ ! |
ナナリー | あんたたち、なんか訳ありなんだね。まずはそっちの話を聞かせてよ。 |
イクス | え、えっと……このままで ? |
ナナリー | このままで。ほら、早く。 |
ロニ | て、手短に……頼むぅぅ……。 |
ナナリー | ――いいかい。今はとりあえず飲みこむよ。けど、完全に納得したわけじゃない。あんたらのこれからの行い次第ってことで、いいね ? |
ミリーナ | はい、わかりました。ナナリーさん。 |
ナナリー | あとそれ、やめてくんない ?そんな他人行儀じゃ、ますます溝が深まっちまうよ。 |
ミリーナ | ……それじゃあ。――ありがとう、ナナリー ! |
カイル | ……よかった。ナナリーが怒り出した時はどうなるかと思ったよ。ロニもお疲れ様。 |
ロニ | ……技かけられ過ぎて、手足が伸びた気がするぜ……。 |
ジューダス | 良かったじゃないか。随分と見てくれもよくなっただろう。モテるぞ。 |
ロニ | やったぜ ! ……とでも言うと思ったか ! |
リアラ | でも、ナナリーは本当に大丈夫かしら。 |
カイル | そうだね……。エルレインが世界を作り変えようとしたときだってすごく怒ってたし。 |
ジューダス | 弟を失うとわかっても、神の力に頼らず自分たちの力で生きて行くと決めた奴だからな。 |
リアラ | なのに、このティル・ナ・ノーグは具現化や、世界の創造に、死者の復活が行われていてしかも、もう帰れないなんて……。 |
ロニ | 平気だよ。あいつは強い。それに、いざと言う時は……。 |
ナナリー | ねえ、ロニ !カイルたちも、こっち来てくれる ? |
カイル | ロニ、いざと言う時は、何 ? |
ロニ | あ ? 俺があいつを支えるってだけさ。今の俺はナナリーの補佐だからな。仕事じゃ仕方ねぇ。――ほら、行くぞ。 |
ロニ | 待たせたな。 |
ナナリー | もう、こっちは大事な話してんのに。 |
ロニ | はいはい。で、ディムロスさんにはこっちの状況を伝えたのか ? |
ディムロス | 今、報告を受けていたところだ。レジスタンスも、最近の帝国にはかなり苦慮しているようだな。 |
ナナリー | あんたたちが来てくれて心強いよ。やっぱり、ディムロスさんたちが西の対帝国部隊をまとめてたんだね。 |
シャルティエ | よく僕たちのことがわかったね。 |
ナナリー | 最近、あっちの活動が活発になったって話だったから色々さぐりを入れてたんだ。 |
ナナリー | そうしたら、新しく来たディムロスって優秀な奴が指揮を取ってるっていうじゃないか。それで手紙を出したのさ。 |
シャルティエ | ……ああ、そう。やっぱり凄いですね。ディムロスは。ははは。 |
ロニ | なあ、こんな所で立ち話もねえだろ。とりあえず俺たちの隠れ家に行こうぜ。 |
ナナリー | 待って。状況が変わったって言ったろ ?ついさっき報せがあったんだよ。もうすぐ【領主】が街に入るって。 |
ロニ | 本当か ! ? 予定よりも早いじゃねえか。 |
ナナリー | そうなんだ。だから今すぐ領主の館へ行かないと。 |
コーキス | それって偵察ってことか ? |
ナナリー | ……まぁ、それもあるんだけどね。 |
ディムロス | …………。 |
カイル | はぁ……せっかくナナリーと会えたのに、ゆっくり話もできないのか。 |
ナナリー | ごめんよ。けど、後でたっぷり時間をとるからさ。あたしの手料理つきでね !さ、行くよ。 |
キャラクター | 8話【6-9 ダリルシェイド】 |
カーリャ | うわっ、なんですかこれ。すごい人だかりですよ ! |
ジューダス | 新しい領主を見にきた野次馬だな。 |
警備兵 | おい、そこ、道を開けてくれ。領主様の馬車が通るんだ。 |
ミリーナ | 警備の兵士も多いわね。 |
イクス | ダリルシェイドに来るときに見た兵士はこのために駆り出されたのかもしれないな。――おっと、コーキス、はぐれるなよ ! |
コーキス | 危ねぇ……うっかりしてたら迷子だぜ。こんなんで偵察なんてできんのか ? ナナリー様。 |
ナナリー | むしろ好都合さ。これなら人込みに紛れて安全に領主の顔を拝めるだろ ? |
リアラ | あっ、馬車が来たわよ。 |
警備兵 | 長旅、お疲れ様でございました ! |
領主 | …………。 |
? ? ? | …………。 |
ジューダス | あれは……ウッドロウ ! |
カイル | え、ウッドロウさん ! ? |
ディムロス | アトワイト…… ! ? |
シャルティエ | 一体、どうなってるんだ……。 |
イクス | あの二人と知り合いなのか ? |
カイル | うん。ウッドロウさんは俺の知ってる姿とちょっと違うけどね。でも、どうして帝国の領主なんて……。 |
ロニ | なあ……あの二人、様子が変じゃないか ? |
警備兵 | すぐにお部屋へご案内いたします。広間には宴の準備も整っておりますので―― |
領主 | 余計なことはするな。私はすぐに休む。 |
警備兵 | も、申し訳ありません。ではご案内します。そちらの奥様のお部屋ですが…… |
護衛騎士 | 訂正を求める。私は彼の護衛騎士だ。 |
警備兵 | これは失礼いたしました ! では、こちらへ。 |
ディムロス | ……あれはアトワイトではない。私にはわかる。 |
カイル | ウッドロウさんも雰囲気が全然違う。もしかしたら……。 |
ミリーナ | ええ。リビングドールにされているのかもしれないわ。 |
ロニ | 魂だか心だかを入れ替えるって言うアレか ! |
ナナリー | ……一旦引き上げだね。あたしたちの隠れ家へ行こう。 |
ジョニー | そいつ、本当にウッドロウだったのか ? |
イクス | はい。リビングドールにされてるようでここの領主になっています。 |
ジョニー | ダリルシェイドの領主がウッドロウねえ……。帝国もセンスがないな。完全に配置ミスだぜ ? |
カイル | ですよね ! ウッドロウさんにはハイデルベルグですよ ! |
イクス | えっと……とにかく、こういう状況なのでファンダリア領の元となった世界のスタンさんたちにも応援を要請したいんです。 |
ジョニー | わかった。すぐにそっちへ派遣するよ。しばらく待っててくれ。 |
ロニ | スタンさんたちが来るのか !すげえな ! いや、やっぱりどうしよう……。 |
ナナリー | 喜ぶのか動揺するのか、どっちかにしなって。 |
ディムロス | ……ナナリーくん。君たちの様子から察するにウッドロウが領主としてここに来ることを知っていたのではないか ? |
ナナリー | ……まあね。情報だけだったから実際に顔を見るまでは確信できなかったんだよ。 |
ナナリー | でも、本当に本人だと確認できたらどうにか繋ぎをつけて、レジスタンスの活動を助けてもらおうと思ってたんだ。 |
ロニ | けど、中身が別人じゃなぁ……。 |
? ? ? | おい、開けろ。 |
一同 | ! ! |
ナナリー | シッ……。あんたたちは黙って。――誰だい ? |
? ? ? | 愛の使者だ。 |
ナナリー | 間に合ってます。帰んな。 |
? ? ? | おかしい……ジェイドやカロルにはこれで通じてるのに……。 |
イクス | あっ、もしかしてデクス……さん、ですか ?ジェイドさんに協力してるっていう。 |
デクス | そうだよ。早く入れろ。見つかったらオレだって危ないんだ。 |
ナナリー | 知り合いかい。悪かったね。ほら、入っとくれ。 |
デクス | まったく……。領主の護衛をしてるときにお前たちを見かけたから苦労して後をつけて来たってのに。 |
ミリーナ | ありがとうございます。ところでさっき、カロルって言ってましたよね ? |
デクス | ジェイドからの指示で繋ぎが変わったんだよ。カロルたちの方が連絡とりやすいだろうってな。 |
コーキス | そっか。カロル様たちは外回りが多いもんな。 |
イクス | それで、何か情報があるんですか ? |
デクス | ああ。手短に言うぞ。帝国では、人工知能を人工心核に宿したβ(ベータ)版の【リビングドールβ】が投入された。 |
デクス | その第一弾となる四名の【β】のうちの二名がさっき着任した領主、ウッドロウとその護衛騎士となったアトワイトなんだ。 |
イクス | 人工知能……ってことはあの二人は、誰かの人格でも魂でもないってことか ? |
デクス | さあな。オレも詳しいことは知らないが魔鏡結晶から死の砂嵐にアクセスできなくなったから代替えだとか何とか……。 |
デクス | デミトリアス付きの宮廷学者たちが開発したらしい。 |
ミリーナ | でも、リビングドールであることには変わりがないのよね ? それなら、心核さえあれば今までの方法で二人を戻せるはずだわ。 |
カーリャ | 前に、たくさん心核を持って帰りましたよね。あの中にお二人の心核があるかもしれませんよ ! |
イクス | そうなると、二人をアジトに連れていかないとな。でも、どうすれば……。 |
ディムロス | 潜入し、あわよくば制圧、といったところか。かなり無理のある作戦だな。……デクスくんこれには君の協力が不可欠となるが、どうだろう? |
デクス | アリスちゃんを見つけるまでは協力すると約束したからな。愛の使者、デクス様に任せておけ ! |
キャラクター | 9話【6-10 芙蓉離宮】 |
| アスガルド帝国 芙蓉離宮 |
メルクリア | ……さても頭の痛い……。 |
チーグル | ご気分がすぐれませんか ?でしたら、お休みになられてはいかがでしょう。 |
メルクリア | いや、わらわの配下の戦力のことじゃ。 |
メルクリア | 四幻将も今や、お前たち二人のみ。ディストは義父上の言いつけで眠らせたまま。ローゲは消え、器だったバルバトスは監獄塔の中じゃ。 |
メルクリア | シドニーも兄上もバルドもいなくなった。セシリィはあの憎い鏡士に連れ去られたまま……。 |
メルクリア | こうして、側近くに仕える臣下はもうお前たちしかおらぬ。……寂しくなった。 |
リヒター | …………。 |
衛兵 | メルクリア様。デミトリアス陛下の使者がお着きです。お通ししてもよろしいでしょうか。 |
メルクリア | 義父上の ? よい、通せ。 |
? ? ? | お目通りをお許し頂き感謝する。 |
メルクリア | そなた……ティルキスか ? |
ティルキス ? | そうだ。私はティルキスだ。 |
メルクリア | …… ? まあよい。それで用向きはなんじゃ。 |
ティルキス ? | グラスティンがディストを所望している。すぐに引き取りの準備を進めてもらいたい。 |
メルクリア | なんじゃと ! ?あれは四幻将、わらわの臣下じゃぞ !それを差し出せとは無礼にもほどがある ! |
ティルキス ? | これはデミトリアス陛下直々の命である。あなたに拒否権はない。 |
メルクリア | 義父上が…… ? そんなはず―― |
衛兵 | お待ちください !今、メルクリア様は使者と謁見を―― |
? ? ? | その使者に用があると言っているんだ。通してもらう ! |
リヒター | どうしたんだルキウス、お前はまだ療養中だろう。 |
ルキウス | ティルキスと名乗る使者が来たと聞いたんだ。だから―― |
ティルキス ? | ティルキスは私だ。何か用か ? |
ルキウス | ティルキス…… ! 無事だったのか。ボクだ、ルキウスだ ! |
ティルキス ? | 誰だ、お前は。 |
ルキウス | えっ…… ? |
ティルキス ? | こちらの話はまだ終わっていない。出て行け。 |
ルキウス | ……そうか。これが噂のリビングドールか。君はティルキスまで、こんな風にしてしまったんだな。メルクリア ! |
メルクリア | わ、わらわは知らぬ ! 確かにティルキスは兄上様が具現化した。だが、リビングドールにする前に兄上様はお倒れになったのじゃぞ ! |
メルクリア | その時に、全ての計画は中断しているはずじゃ。リビングドールである訳が……。 |
ティルキス ? | 私が問題なのか ?ならば早急に解決して話を進めよう。 |
ティルキスβ | 私は【リビングドールβ】クンツァイトという機械人を解析して生み出された人工心核型リビングドールだ。 |
メルクリア | 新しいリビングドールじゃと…… ! ? |
チーグル | デミトリアスは我々の技術を盗んだというのか !……なんと狡猾な ! |
ティルキスβ | 解決したようだな。ならば次の話にうつる。 |
ルキウス | こっちの話はまだ―― |
ティルキスβ | リヒター、アステルのことでサレが話したいことがあるらしい。一緒に来てくれ。 |
リヒター | アステルだと ? サレの奴、一体何を……。 |
ティルキスβ | 表で待っている。なんでもリヒターだけに伝えねばならない話だそうだ。 |
リヒター | ……メルクリア、俺が戻ったらディストの件も含めて、今後の方針を考えるぞ。 |
メルクリア | リ、リヒター……。 |
リヒター | すぐ戻る。待っていろ。 |
ティルキスβ | ディストは生命維持装置ごと運び出す。 |
ティルキスβ | 用件は以上だ。これで失礼する。行くぞ、リヒター。 |
ルキウス | ティルキス ! 待って――あっ ! |
メルクリア | ルキウス ! 大事ないか ? 無茶をするから―― |
ルキウス | 触るなっ ! |
メルクリア | っ ! ! 何をする。ティルキスのことは知らぬと―― |
ルキウス | 君は、ボクを利用しただろう……。兄さんを繋ぎ止めるために……自分のためだけに ! |
メルクリア | ………………。 |
チーグル | ルキウス、言葉が過ぎるぞ ! |
メルクリア | ――いや…………その通りじゃ。わらわは…………。 |
ティルキスβ | リヒター、こっちだ。 |
リヒター | (アステルに何かあったら、今度こそ――) |
ティルキスβ | 連れて来ました。――グラスティン様。 |
リヒター | グラスティン ? |
グラスティン | ご苦労。 |
リヒター | なっ ! ? ――うっ ! |
グラスティン | アステルは本当にいいエサだな。こんな簡単に釣れるとは。 |
リヒター | 貴様……何をした……。 |
グラスティン | お前は働き過ぎだ。ゆっくり眠るといい。これで俺も安心してジュニアに近づける。ヒヒヒ……ッ。 |
リヒター | くっ…………意識…………が…………。 |
グラスティン | ……やっと静かになったか。さて、リヒターを運ぶぞ。 |
ティルキスβ | 承知しました。グラスティン様。 |
キャラクター | 10話【6-11 領主の館】 |
イクス | ――スタンさんとルーティが到着したよ。 |
ルーティ | おっつかれー ! |
スタン | 待たせたな、みんな ! |
ロニ | ……スタンさん。それにルーティさん…… ?……はは……すげえ。俺より年下かよ……。 |
ルーティ | あんたたちが、カイルの元の世界のお仲間 ? |
ロニ | はい、そうです……ルーティさん……。俺、ロニです……。 |
スタン | 俺はスタンだ。カイルたちを助けてくれてたんだって ?俺がいうのも変だけど、ありがとう、ロニさん。 |
ロニ | ロ、ロニでいいです! 俺のほうこそ……スタンさんには……スタンさんには……っ……。 |
スタン | どうしたんだロニ ?……泣いてんのか ? |
ロニ | い、いやいやいや ! ルーティさんが美人だからさ !きっと将来はきれいな花嫁になるんだろうなーなんて想像したら色々こみあげて ? みたいな―― |
ルーティ | は ! ? ちょっと、こいつなに言ってんの ! ? |
ナナリー | 済まないね。なんか悪い物でも食べたみたいで。あたしはナナリー。こいつにはよーく言って聞かせるから。 |
ロニ | いででででででっ !お前、言ってることと、やってることがーーーーっ ! ! |
スタン | カイルの仲間は賑やかだな !けど、ロニってなんか俺たちのこと……。 |
カイル | あー、スタンさん !リオンさんは来ないんですか ? |
スタン | ああ。リオンのやつ、ジューダスがいるなら自分は行く必要ないって言って、来なかったんだよ。 |
ルーティ | まったくあいつったら……。いくらジューダスとそっくりだからって片っぽがいりゃいいって訳じゃないのにさ。 |
一同 | ! ! |
カイル | まさか、リオンさんは全部……。 |
リアラ | ええ、多分。……いいえ、きっとそうよ。 |
ロニ | おいジューダス。このままでいいのか ? |
ナナリー | ……ジューダスに言ったって仕方ないだろ。気づいちまったもんはさ。それともあんたたち、もしかしてお互い、もう……。 |
ジューダス | …………。 |
リアラ | ……そう、だったの。 |
イクス | ……ごめん。俺も何となくそうじゃないかと思ってたんだ……。ってことはカイルは……。 |
ミリーナ | ええ。今までも言葉の端々から感じてはいたけど……。どうりで似ているはずよね。髪も、目の色も……。 |
ルーティ | ……何よ、この空気。カイルが何 ? リオンとジューダスがなんだって―― |
ルーティ | というか……あの剣捌き……。何もかもが……あいつに似すぎてるわよ……。 |
ルーティ | ! ! |
ルーティ | ……ジューダス、まさかあんたは……。 |
ジューダス | …………。 |
ルーティ | え……何、なんで否定しないのよ……。 |
ルーティ | それって、つまりコレットとマルタの世界とかベルベットとロゼの世界とか……。ミラとエルの世界とかみたいな……。 |
ルーティ | ――嘘。待って。じゃあ、カイルが似てるってのは……。 |
スタン | …… ? |
カイル | ウソでしょ ! ? 母さんまで ! ? |
ルーティ | 誰があんたの母さんよ。失礼しちゃうわね。 |
ルーティ | …………まさか。 |
スタン | なんだよ、ルーティ。そんなに俺の事を睨みつけて。 |
ルーティ | ちょっと待って、来ないで !ああああああああっ ! ちょっと待ってーーーー ! |
ソーディアン・アトワイト | ルーティ、落ち着いて。理由はわかるけど。 |
ルーティ | わからないでいいわよ !うう、胸が……頭がクラクラする……。 |
スタン | 大丈夫か、ルーティ。顔が真っ赤だぞ ! |
ルーティ | ダメ、あんたが来たら悪化する ! |
スタン | なんだよ、心配してやってるのに……。 |
ソーディアン・ディムロス | スタンよ、今は逆効果だ。 |
ミリーナ | ルーティ、落ち着いて ?多分、デリケートな問題だし今の勢いで話したら、色々と誤解が生じるわ。 |
ルーティ | そ、そうよね。誤解って線もあるじゃない !あたしったら。アッハハハ !気のせいよ、気のせい。気のせいだから。 |
ソーディアン・アトワイト | ……道のりは長そうね。 |
ミリーナ | この件は後日、改めて話し合いましょう ?みんな、それでいいですよね。 |
ジューダス | ……ああ。そうしてくれ。 |
ディムロス | はっきりさせた方がいいと思うが……。この後の作戦に影響を及ぼすようなら致し方あるまい。 |
コーキス | なんか俺たち……色々とおいてけぼりな感じだな。カイル様たちとスタン様たち、何かあったのか ? |
イクス | はは……。いいんだよ。それはまたその内にな。 |
シャルティエ | その内に、か。僕なんて、ディムロスたちといるときはいつもこうやって蚊帳の外で……。 |
カーリャ | シャルティエさま、頑張ってたんですねぇ……。 |
イクス | ――いけない、そろそろ時間だ。みんな、出発の準備をしよう。 |
イクス | ……ええと、デクスさんが見張りを担当している通用門っていうのは……。 |
デクス | おいこっちだ ! 今のうちに通れ。 |
イクス | デクスさん ! ありがとうございます。 |
デクス | 領主の部屋の場所は知らせた通りだ。オレが出来るのはここまでだからな。後は自分たちでなんとかしてくれよ。 |
ディムロス | 君の尽力に感謝する。では、これより作戦開始だ。――全員、必ず生きて帰るぞ ! |
デクス | 格好いい台詞だな ! それ !いずれ、アリスちゃんと再会したらオレも言いたいぞ。 |
デクス | ――アリスちゃん、必ず生きて帰るぞ !……なんて――あ、もう誰もいない……。 |
キャラクター | 11話【6-15 領主の館】 |
ディムロス | ……この部屋だ。私が中を確認する。シャルティエはもう一名と扉の周囲を警戒。他の者は私が合図をしたら踏み込め。 |
シャルティエ | 了解。えっと……。 |
ジューダス | 僕が残る。行くぞシャルティエ。 |
カイル | ……中はどうですか、ディムロスさん。 |
ディムロス | ……鏡士の二人、来てくれ。あの装置はなんだ ? |
ミリーナ | あれは魔鏡装置だわ。でも何のための……。 |
イクス | 装置に繋がってるの……ウッドロウさんだ…… ! |
ミリーナ | アトワイトさんはウッドロウさんの治療をしているのかしら。あの装置で脈を診ているみたいだけど……。 |
アトワイトβ | ……誰だ。 |
ディムロス | 気づかれた、行くぞ ! |
アトワイトβ | なんだ、お前たちは。 |
ディムロス | アトワイト……。 |
ルーティ | あれがアトワイト……。あんたの姿なのね。 |
ソーディアン・アトワイト | ええ。でも肉体だけよ。「私」じゃない。ディムロスも、わかってるわね。 |
ディムロス | くっ…… ! |
カイル | ウッドロウさん ! |
ウッドロウβ | …………。 |
リアラ | なんの反応もないわ……。 |
ナナリー | なんだいありゃ、まるで抜け殻じゃないか。あんな風にしちまうなんて ! |
アトワイトβ | 出ていけ。心核のメンテナンス中だ。 |
ルーティ | ……アトワイト、あたし本気で行くけど、いいわね。 |
ソーディアン・アトワイト | ええ、ルーティ。全力でやりなさい。ディムロス、あなたたちもよ ! |
ディムロス & ソーディアン・ディムロス | 承知した ! |
ソーディアン・ディムロス | 行くぞ、スタン ! |
スタン | うおぉぉぉおっ ! |
アトワイトβ | ……これが多勢に無勢というものか。なるほど。 |
ロニ | なんだよ、観念したか ? |
アトワイト | ああ。 |
ロニ | マジかよ ! ? ま、まあこっちだってこれ以上その体を傷つけるつもりは―― |
アトワイト | ……人工心核データ抽出完了。撤退する。 |
コーキス | 窓の向こうに……消えた ! ? |
イクス | しまった、窓の下に転送魔法陣を仕込んでたのか…… ! |
ウッドロウβ | うっ………。 |
スタン | ウッドロウさん ! しっかり ! |
ミリーナ | このままじゃ危ないわ。早く心核の治療をしないと。 |
イクス | みんな集まってくれ。転送ゲートで、一旦アジトへ戻るぞ ! |
ジュニア | ――リヒターは、僕のところには来ていないよ。 |
ルキウス | ボクも、あれから見ていない。 |
メルクリア | そんな……本当にリヒターはどこにもおらぬのか ! ?すぐに戻ると言うたのに……。 |
チーグル | ……やはり、ティルキスがそのままデミトリアス帝の元へ連れていったのかと。 |
メルクリア | 義父上……。わらわからリヒターまで取りあげるのか ! |
ジュニア | メルクリア……。 |
メルクリア | ……嫌じゃ。渡さぬぞ。今よりわらわは、ティルキスを追う ! |
チーグル | では、私もお供いたします。 |
ジュニア | 僕も一緒に行くよ。メルクリア。 |
メルクリア | チーグル、ジュニア……。わらわは義父上に利用されているだけかもしれぬのにこうも尽くしてくれるのか。 |
メルクリア | ならば、尽くされる者は応えねばならぬな。……わらわの臣下は、この手で守る。 |
ルキウス | メルクリア……ボクは……。 |
メルクリア | ……ルキウス。お前にはだまし討ちのようにしてラムダを背負わせ、苦しめた。……本当に済まなかった。 |
メルクリア | わらわはまだわかっていなかった。道具として使われることがどれほど心を傷つけるのか。義父上は……恐らくわらわを……。 |
メルクリア | ………………。 |
メルクリア | ……自らが体験せねばわからぬのは愚か者。なれど、愚かと知って振る舞いを変えられぬは恥知らず故、そなたにも頭を下げねばならぬ。 |
メルクリア | カイウスの元へ行くのなら止めはしない。二人が共にあるのが、本来の姿じゃ。……お前にも……寂しい思いをさせたな。 |
ルキウス | かつてのボクも、そうだった……。ただ盲目に信じ続けて道を誤った……。 |
メルクリア | ルキウス……? |
ルキウス | 行き倒れていたボクやカイウス兄さんやルビアを助けてくれたのはきみだ。その分の恩は返しておく。 |
ルキウス | だから、必ずリヒターを取り戻すんだ。……ボクも協力する。 |
メルクリア | ルキウス………… !………………ありがとう。 |
イクス | ……光った ! これがウッドロウさんの心核だ ! |
ミリーナ | よかった……手持ちの中にあって。 |
カイル | さすが王様、運が強いなぁ。 |
シング | それじゃオレ、スピルリンクで心核を戻してくるよ。あと三人入れるけど、誰が来る ? |
スタン | それじゃ、俺とカイルとルーティで―― |
ルーティ | あ、あたし、ちょっと用があったんだ !そっちで何とかしてくんない ? じゃあね ! |
ミリーナ | ルーティったら……。 |
イクス | それじゃ、スタンさんとカイルとシングでお願いできるかな。 |
ロニ | 待ってくれ、俺が行く ! 絶対行く ! 死んでも行く ! |
イクス | ロ、ロニさん…… ? |
ロニ | なあ、いいだろう ? カイル、スタンさん。 |
スタン | 別に、駄目なんて言ってないさ。一緒に行こうぜ、ロニ ! |
キャラクター | 12話【6-15 領主の館】 |
ロニ | ……驚いたぜ。人の心に入れるなんてよ。でもどうせだったら、美女の心の中に入ってみたかったぜ。さぞかし綺麗なんだろうなぁ。 |
シング | 美人だからスピリアがきれいってわけじゃないよ。あ、でもコハクは、スピルーンも綺麗だったなぁ。 |
ロニ | なに ! ? コハクさんという美女がいるのか !なるほどなるほどぉ ? 後で紹介しろよ ! |
カイル | ロニ、ダメだよ。コハクにはシングがいるんだから。 |
ロニ | なんだ、タダの彼女自慢か……。お幸せそうで何よりだな。 |
シング | ありがとう、ロニ ! |
ロニ | くっ……まっすぐな目で見やがって……。 |
スタン | シング、あそこに見えるのが人工心核か ? |
シング | そうだよ。あの人工心核とこのウッドロウさんの心核を入れ替えるんだ。 |
シング | これで完了っと。……このスピルメイズかなり狭くなって荒れてる感じがするな。 |
スタン | ウッドロウさんの精神にかなり負担がかかってたってことか……。 |
カイル | アトワイトさんも同じなんですよね。早く元に戻してあげないと……。 |
ロニ | なあシング、疑うわけじゃねえけどさこれで本当にウッドロウさんは元に戻るのか ? |
シング | バルバトスの時も成功してるし大丈夫さ。 |
ロニ | バルバトス ! ? あいつもこの世界にいるのかよ ! ?……こんな所まで、くそっ…… ! |
ロニ | シング ! なんであんな奴、助けたんだ ! |
シング | それが正しいと思ったからだよ。 |
ロニ | お前は知らないからだ !あいつはな ! あいつのせいで…… ! |
スタン | ロニ ! シングが悪いわけじゃないだろう。その場にいた、みんなが選んだことだ。 |
ロニ | ……悪かったな、シング。つい……。 |
シング | いいんだ。ロニたちの敵なんだろう ?それを助けちゃったら、怒るのは当然だ。 |
カイル | 大丈夫だよ、ロニ。確かにこの世界でもバルバトスが暴れたって話も聞いた。 |
カイル | けど、あいつが次に何かしようとした時にはオレが全力で倒す ! 絶対に ! |
カイル | そのために、スタンさんにも稽古をつけてもらってるんだ。 |
スタン | ああ。すごいぞカイルは。どんどん強くなるんだぜ !そのうち俺が相手じゃ、もの足りなくなるかもな。 |
カイル | そんなことないです ! でも……へへへ。スタンさんにそう言ってもらえると嬉しいなぁ。 |
ロニ | ……そうか。良かったな、カイル。俺はずっと、お前とスタンさんのこんな姿を……。 |
カイル | ロ、ロニ ! スタンさん、あのね―― |
スタン | もういいって、カイル。 |
カイル | ……え ? |
スタン | 二人はさ、俺たちの世界の未来から来たんだろう ? |
二人 | ! ! |
スタン | あの時ルーティも言ってたけど、ロイドやエミルとかスレイとベルベットとか、ジュードとルドガーたちも。あんなのが周りにゴロゴロいるんだぜ ? |
スタン | だから……カイルたちを見ててもしかしたらって、ずっと思ってたんだ。 |
シング | スタンって、勘がいいんだな。そういうの気にしてないと思ってたからちょっと意外だったよ。 |
スタン | 俺だってバカじゃないって。これだけ色々と重なったら、そりゃ気がつくよ ! |
スタン | それにさ……ジューダスだって……。…………………。 |
カイル | スタンさん……。 |
スタン | いや……、今日はここまでにしよう。 |
スタン | もうちょっと聞きたいこともあったんだけどさ。それについてはルーティが嫌がってるみたいだし今はやめとくよ。――さ、戻ろうぜ ! |
カイル | スタンさん……もしかして……。 |
ロニ | カイル、このまま帰っちまっていいのかよ。 |
カイル | ……スタンさん ! |
スタン | 何だ、カイル ? |
カイル | いつか……ロイドがクラトスさんのことを呼ぶみたいにスタンさんのことも呼んでいいですか ? |
ミリーナ | お帰りなさい。みんな ! |
カイル | ただいま ! ウッドロウさんの心核、戻してきたよ。 |
イクス | 良かった。後は、ウッドロウさんの回復を待つばかりだな。 |
ナナリー | ご苦労さん ! どうだった ? 心の中ってやつは。 |
ロニ | いやあ、中々衝撃的な経験ができたぜ。な ! |
カイル | うん ! |
ナナリー | なんだい、嬉しそうだね。こっちもいい報せがあるよ。ね、ディムロスさん ! |
ディムロス | ああ。我々、対帝国部隊とレジスタンスは正式に同盟を結ぶことになった。 |
カイル | そうなんだ ! これでナナリーたちの活動も、やりやすくなったね ! |
ナナリー | それなんだけどさ、レジスタンスも含めた総指揮をディムロスさんが引き受けてくれることになったんだよ。 |
ロニ | すげえじゃねえか。天地戦争の英雄が指揮をとるなんてよ ! |
ディムロス | その代わりといってはなんだが君たちは、イクスくんたちに協力をしてやって欲しい。カイルくんのためにもな。 |
ロニ | 元からそのつもりだぜ。だろ、ナナリー。 |
ナナリー | 奇遇だね。あんたと気が合うとは。ま、そんなわけだからさ。これからもよろしく頼むよ、イクス、ミリーナ。 |
イクス | ああ、大歓迎だよ。改めてよろしく、ロニさん、ナナリー ! |
ミリーナ | ナナリーみたいな可愛い人が力を貸してくれるなんて心強いわ ! |
キャラクター | 12話【6-15 領主の館】 |
カーリャ | ルドガーさま、エルさま、いらっしゃいますかー ? |
エル | あ、カーリャ、いらっしゃい !ルドガー、イクスたちが来たよ。 |
ルドガー | どうぞ入ってくれ。今、お茶をいれるから。 |
ミリーナ | いえ、気を使わないでください。 |
イクス | はい、これ。エルに渡してくれって頼まれたんだ。 |
エル | 手紙…… ? 開けていいよね ?えっと……「エルへ。元気ですか。パパは……」これ、パパ ! ? パパからの手紙 ! ? |
ルドガー | エルの父親 ! ? この世界にいるのか ! ? |
イクス | そうです。その手紙は、救世軍にいるヴィクトルという人から預かりました。 |
ルドガー | ヴィクトル……。エル、俺も一緒に読んでいいか ? |
エル | うん。ルドガーはアイボーだから、特別 ! |
ルドガー | …………。 |
エル | ねえルドガー、これ、本当かな。パパ、本当に来てくれるかな ? |
コーキス | エル様、手紙には何て書いてあったんだ ? |
カーリャ | コーキス、それ聞いちゃうんですか ?確かに気になりますけど。 |
エル | いいよ。教えてあげる。 |
エル | あのね、パパは、エルの大切なともだちを助けたりエルと【本物の家族】として暮らすために頑張ってるから、まだ会えないんだって。 |
エル | でも、今は離れていても必ず迎えに来るって、書いてあったんだ。 |
コーキス | そうか。良かったな、エル様。 |
エル | うん。……でも、本当はすぐに会いたい。ねえ、ちょっとだけでも会いにいっちゃダメかな。キューセーグンにいるんでしょ ? |
カーリャ | それは……。 |
ミリーナ | エルのお父さんが助けようとしている「エルの友達」はエルの知ってるミラさんのことなんですって。二人が会えるようにって、頑張ってるのよ ? |
エル | 本当 ! ? だったら待ってる !パパとミラが、いつ帰ってきてもいいように。 |
イクス | ああ。エルがここで待ってるってだけでヴィクトルさんは心強いと思うよ。 |
エル | うん ! でもさー、パパももう少しわかりやすく書けばいいのに。そしたらエルも会いに行くなんていわなかったよ。 |
エル | ここの「本物の家族として暮らす」っていうのも訳わかんない。これじゃエルとパパが本物じゃないみたいだし。 |
ルドガー | …………。 |
イクス | どうしたんですか、ルドガーさん。 |
ルドガー | あ、いや……。ちょっと、びっくりしたんだ。いきなりエルの父親が出てきたから……。 |
エル | 大丈夫。パパはすっごく優しいから。パパが来たら、ルドガーのことショーカイするね。エルのアイボーですって。 |
ルドガー | ああ、楽しみにしてるよ。 |
ルドガー | (【本物の家族】……本物として暮らす…… ?まさかエルは、分史世界の……) |
? ? ? | ――あ、タルロウ ! そこ汚れてるから拭いておいて。それからお茶をお願い。あと洗濯とトイレ掃除と……。 |
? ? ? | ハロルド、そんな一気に命令したらタルロウが混乱しますよ。 |
ハロルド | へーきへーき ! 私が改造したのよ ?この程度、ちゃちゃっとやってくれるわよ。ほら、もうお茶が出て来たわ。 |
? ? ? | 本当だ。ありがとうございます。あ、美味しい……。 |
ハロルド | そのタルロウにはね、クンツァイトっていう機械人の機能の一部をコピーして組み込んであるの。あれはすごいわよ ? 家事全般において万能だから。 |
ティルキスβ | ハロルド、グラスティン様から支給された次のリビングドールβの被験者、リヒターだ。 |
? ? ? | ……また犠牲者を増やすつもりですか ?こんなことはもうやめるべきです。 |
ハロルド | はいはい。イオンは黙ってて。ティルキス、そいつ、そこに寝かせておいて。 |
イオン | ハロルド……この実験を続ければ悲しむ人が増えるだけですよ ? |
ハロルド | ふうん……レプリカと言っても性格はあの被験者イオンの方と全然違うんだ。不思議よねぇ……。 |
イオン | …………。 |
| セールンド カレイドスコープの間 |
? ? ? | ゲフィオン……。この状態では話をすることもままならぬか。 |
? ? ? | これは……魔鏡の護符か ? |
? ? ? | …………そこの人ならざる者よ。封印が弱まっている。この世界に残された時間は、あまりないぞ。 |
? ? ? | やはり、そうですか……。 |
? ? ? | 貴様は知っているか。この閉じた世界から脱出する術を。 |
? ? ? | それは……どれだけ足掻こうとも不可能です。人体万華鏡となったミリーナ様なら何かご存じだったかも知れませんが。 |
? ? ? | 人ならざる者。貴様の名は ? |
? ? ? | ……カーリャ。ミリーナ様の鏡精だった者、です。 |
| to be continued |
キャラクター | 1話【7-1 閑散とした街道】 |
ティア | ……それじゃあ、まだ、ルークの体に悪い影響は出ていないんですね。 |
ミュウ | みゅうぅぅ ! ご主人様大丈夫ですの ?よかったですの ! |
ジェイド | ええ。ですが―― |
ルーク | ……うん。わかってる。ローレライがこの世界に具現化されたなら、第七音素も具現化されてる可能性があるもんな。 |
ジェイド | やれやれ。あれほど説明したのに相変わらずその程度の理解ですか。第七音素そのものが具現化されることは、ほぼありません。 |
ジェイド | エンコードの性質上、この世界の法則に合うよう置き換えられる筈です。 |
ジェイド | そして、あなたがこの世界に具現化されている以上第七音素はすでに何らかのエンコードを施された上でこの世界に具現化されているんです。 |
ルーク | ……またわからなくなってきたぞ。要するに俺が第七音素で構成されたレプリカだから、第七音素的な奴が具現化されてる事は確か……ってことだっけ。 |
ティア | ……大佐。 |
ジェイド | ……ええ。 |
ジェイド | ルーク。この話はまた―― |
ルーク | わかってるよ。どうせ俺はバカだから、また今度説明するって言うんだろ。 |
ルーク | でもローレライが具現化されたから、すぐ俺の音素が乖離する……って訳じゃないのは、ちょっと安心した。俺……まだ消えないんだって……。 |
ティア | ルーク ! 後ろ…… ! |
ガイ | ……へぇ。やっぱりそういうことか。 |
ルーク | うぇ ! ? みんな ! ? |
アニス | ……嘘でしょ ? ルークも消えちゃうの…… ? |
ルーク | あ……あの……。 |
ナタリア | 隠そうとしても無駄ですわ。ローレライが具現化されたと聞いてから、ルークはずっとふさぎ込んでいるようでしたもの。 |
ナタリア | 何かあったんだと……すぐわかりましたのよ。 |
アッシュ | ジェイド。話せ。 |
ルーク | ま、待ってくれ。俺が……話す。ちゃんと話すから。 |
アッシュ | つまり貴様は、元の世界で音素乖離を引き起こし消えかけていた。それがこの世界に具現化された時環境の変化によって止まっていた。そういうことだな。 |
ルーク | ……うん。まぁ、そういうこと……だよな ?ジェイド ? |
ジェイド | ええ。ですが、今は違います。ローレライが具現化されたのなら、ティル・ナ・ノーグの環境はオールドラントに近づいた。 |
ジェイド | まだ音素乖離は始まっていませんが注意深く観察する必要があります。 |
アッシュ | ……ちっ。どこまでも手のかかるレプリカだ。 |
ルーク | ……ごめん。 |
アッシュ | 誰が謝れと言った ! |
ナタリア | アッシュ ! あなたもおかしいですわよ。ローレライの具現化のことを聞いてから、この世界に具現化されたばかりの頃のあなたに戻ってしまったみたいで……。 |
アッシュ | ………… ! |
ジェイド | それはそうでしょうねぇ。アッシュはアッシュで自分が消えると思い込んでいるようですから。 |
アッシュ | ………………。 |
ナタリア | え ? どういうことですの、アッシュ ! ? |
アッシュ | ――死霊使い(ネクロマンサー)、俺は消えるのか。 |
ジェイド | この世界はオールドラントの条件とあまりに違います。まして未来のことは、何も断定出来ません。 |
ジェイド | ですが、現時点において、被験者であるあなたの生命が脅かされることはないでしょう。 |
ジェイド | ローレライは精霊として具現化された。もはやオールドラントでの第七音素研究は参考資料でしかなくなりました。 |
ジェイド | あなたが元の世界で抱いた焦りは少なくともここでは杞憂と言える。 |
ジェイド | 詳しい説明は省いて構いませんね ?どうせ話したところで私以上にフォミクリーに詳しくはなれないのですから。 |
アッシュ | 相変わらず、いちいち癪に障る言い方をする奴だな。だが、まだ生きられるというならそれでいい。お前が俺を安心させるために嘘をつくとも思えないしな。 |
ガイ | なぁ、ルークが消えることを心配していたのはわかったが、アッシュはどうして自分が消えると思ったんだ ? |
アッシュ | ……話せば長くなる。現状が変わらないなら説明しなくてもいいだろう。 |
ナタリア | アッシュ……。 |
アッシュ | 大丈夫だ、ナタリア。苛ついてすまなかった。……ルークも。 |
ルーク | えぇ…… ? 槍でも降ってくるんじゃないか ? |
アッシュ | ……フン。それより、ジェイドの口ぶりだとルークの方は楽観視できない、という風に聞こえたが。 |
ジェイド | ええ。否定はしません。だからこそ何とかして精霊ローレライと接触したい。 |
ジェイド | この世界では、音素はキラル分子に置き換えられたと考えられます。これは譜術が魔術として定義されたことからも明らかだ。 |
ジェイド | 問題は音素――特に第七音素が持っていた性質や属性はどうなったのか……ということです。 |
アニス | 第七音素はこの世界だと治癒術の性質に似てますよね ? |
ジェイド | ええ。ですが、音素の性質はそれだけではない。キラル分子が持つ属性の一つとなったのかこの世界独特の概念であるアニマに取り込まれたのか。 |
ティア | ローレライが精霊として具現化されたと言うことはその際にレイヤード処理がされて、今までの法則が変わっている可能性があるらしいの。 |
ガイ | レイヤード処理って言うのは、具現化の上書き処理……だったか。ややこしい……。 |
ガイ | つまり、ルークの今後を調べるためには第七音素の性質がどう変わったか調べる必要があってその為にはローレライに会うのが手っ取り早いのか。 |
イクス | ルーク ! あの……大変なんだ。すぐに作戦会議室に来てくれ。 |
ルーク | イクス。大変って……何があったんだ ? |
イクス | オールドラント領に領主が到着したってカロルたちから報告があって。それが、はぐれ鏡映点リストに名前のある人なんだ。 |
イクス | 【イオン】って名前の……。 |
アニス | ! ? |
キャラクター | 2話【7-1 閑散とした街道】 |
メルクリア | ――遅い !義父上はいつまで待たせるおつもりなのじゃ ! |
チーグル | メルクリア様。このままデミトリアス帝を信じてよいものでしょうか。 |
メルクリア | わかっている。確かに近頃の義父上はわらわへの隠し事が多い……。 |
二人 | ………………。 |
メルクリア | しかし、生死の境をさまよっていたわらわを助けたのは義父上じゃ。それはわらわも覚えている。 |
メルクリア | わらわの傷口を押さえながら、死んではならぬと何度も声を張り上げておられた。義父上は心優しき方だ。ビフレスト皇国にとって仇には違いないが……。 |
チーグル | いえ、その優しさが問題です。確かにデミトリアス帝が優しさを持ち合わせていることは事実なのでしょう。ですが、優しい人間が善人であるとは限りません。 |
チーグル | ナーザ様も、デミトリアス帝を「優しい毒」と仰っていました。 |
メルクリア | 優しい……毒 ? どういう意味じゃ。 |
アスガルド兵 | 失礼致します。デミトリアス陛下がお呼びです。謁見の間へどうぞ。 |
メルクリア | ! |
デミトリアス | 待たせたね、メルクリア。急ぎの用だと言っていたが……。 |
メルクリア | リヒターをわらわに返して下され。 |
デミトリアス | ……やはりその話か。 |
メルクリア | 何故じゃ。四幻将はわらわの元に残して下さる約束じゃ !ディストを連れて行くなら、せめてリヒターは……。 |
デミトリアス | すまない。テセアラ領へ領主を派遣するにあたって付き人を用意する必要があったんだよ。 |
デミトリアス | 必ずしも同じ世界の人間を……と決まっている訳ではないんだが……。 |
メルクリア | ならば、リヒターでなくてもいいではありませぬか ! |
リヒター ? | 私を呼んだか ? |
メルクリア | おお、リヒター ! 無事であったか ! |
リーガル ? | 知り合いか、リヒター。 |
リヒター ? | いや、初めて会う子供だ。 |
メルクリア | リヒター…… ? |
ジュニア | ――まさか、リヒターさんをリビングドールβに ! ? |
メルクリア | ! ? |
チーグル | ………………。 |
リヒターβ | そうだ。私は領主として調整されたリーガルの付き人として調整されたリビングドールβだ。 |
メルクリア | ……な……。 |
リヒターβ | どうした ? 何か問題でもあるか ?お前の後ろにいるのも旧式だがリビングドールだろう ? |
メルクリア | ……あ。……チーグル……。 |
チーグル | ……メルクリア様。その者の言う通りです。私は―― |
グラスティン | ――失礼。やはりデミトリアス陛下は甘すぎるようだ。 |
デミトリアス | グラスティン ! 私は……。 |
グラスティン | チーグルとジュニアを確保しろ ! |
メルクリア | 何をする ! ? |
リヒターβ | 動くな、子供よ。 |
リーガルβ | グラスティンの指示だ。 |
メルクリア | リヒター ! |
ルキウス | メルクリア。無駄だ。ティルキスと同じなんだとしたらどんな言葉もあいつには届かない。 |
メルクリア | 義父上 ! チーグルとジュニアまでわらわから奪うおつもりか ! |
グラスティン | ヒヒヒ……。大義のためだ、皇女よ。チーグルはエフィネア領の領主の体として使う。 |
グラスティン | 心配しなくても、チーグルはリチャードの心核に寄生しているから、心核を保管しておけば消えることはないさ。 |
グラスティン | それにジュニアは元から帝国のために具現化を請け負っていたんだ。政治の中心であるアスガルド城にいるのが道理だろう ? |
グラスティン | 連れて行け ! |
メルクリア | チーグル ! ジュニア ! ! |
チーグル | メルクリア様 ! 私のことはご心配なく !必ず、メルクリア様の元に戻ります ! |
ジュニア | 僕も ! メルクリア、待ってて ! |
デミトリアス | グラスティン……。もっと違うやり方はなかったのか ?メルクリアはいい子だ。話せばきっとわかってくれる。それをわざわざこんな風に傷つけるような……。 |
メルクリア | ……優しい……毒。 |
デミトリアス | ……ん ? どうしたんだい ? メルクリア。 |
メルクリア | ………………。 |
ルキウス | メルクリア。ひとまずここを出よう。いいな ? |
グラスティン | ……おやぁ ! これは驚いた。ここにもこんなに綺麗な黒髪の坊やが……。ヒヒヒヒ ! |
メルクリア | 貴様……。その汚らわしい目をこの者に向けるな !ルキウスにまで手を出すというなら、わらわが―― |
デミトリアス | グラスティン ! 欲しいものは与えたはずだ。 |
グラスティン | ヒヒ……。ああ、限りなく本物に近いフィリップを手に入れたんだ……。他の代用品はいらないよ。今は、ね……。 |
メルクリア | ――義父上。わらわはこれで失礼致します。 |
デミトリアス | メルクリア、すまない。この埋め合わせは必ずするよ。 |
メルクリア | 結構じゃ。義父上がそのおつもりなら……わらわも自由にやらせてもらう。帰るぞ、ルキウス。 |
ルキウス | メルクリア。どうするつもりだ。 |
メルクリア | ……リビングドールは、ビフレスト復活のための技術研究に過ぎないのじゃ。そのことは義父上もご存じない。 |
メルクリア | 知っているのはわらわとシドニーと……。 |
メルクリア | ………………。 |
ルキウス | メルクリア ? |
メルクリア | ……わらわは知らなかった。親しい者がわらわを忘れ別人となる事が、これほど悲しいものだと。度し難い未熟さよ。 |
メルクリア | なれど、未熟故にできることもあると気付いた。 |
メルクリア | リヒター、ジュニア、チーグルとリチャードそれにティルキスとあのリーガルなる者も。わらわが必ず取り戻す。どんな手段を用いてもな。 |
ルキウス | 何をするつもりなんだ ? |
メルクリア | リビングドールならぬリビングシティじゃ。具現化した街に……ビフレストを宿らせる。 |
メルクリア | さすればビフレストの兵力が甦り、義父上やあの忌々しいグラスティンとやらに対抗できよう。 |
ルキウス | まさか、この帝都をリビングシティにするつもりか ?だとしたら、それは間違っている。大規模なリビングドールを作ってどうするんだ。 |
メルクリア | ……うむ。帝都や既に存在する街を使ってはリチャードやティルキス、リヒターらの尊厳を奪ったことと何も変わらぬ。 |
メルクリア | そこまで愚かなことはせぬつもりじゃ。ひとまず芙蓉離宮で計画を話す。共に来てくれるか ? |
ルキウス | そうだな。……君は誰かがみていないと暴走するかも知れないからね。 |
メルクリア | うむ。わらわは未熟じゃからな。世話をかける。 |
キャラクター | 3話【7-2 ダアト1】 |
コーキス | おっ。なんか、遠くに見えてきた。あそこにダアトって街があるのかな ? |
ティア | 何だか不思議な気分ね。ダアトという名前の街がオールドラント領の領都だなんて……。 |
ミリーナ | 確かダアトというのはティアたちの世界の宗教都市……だったわよね ? |
ティア | ええ。私やアニスが所属しているローレライ教団の総本山がある街なの。ここでは違うのでしょうけど。 |
ガイ | ついこの間のウッドロウのことといい今回のことといい、帝国は領土の支配力を強めることに躍起になってるみたいだな。 |
ナタリア | ウッドロウさん……まだ目が覚めないそうですわ。ルーティたち、心配でしょうね。 |
アッシュ | スピルメイズの中がかなり荒れていたらしいからな。悪い影響がないといいんだが……。 |
コーキス | つーか、マスターもルーク様もさっきから、何をきょろきょろしてるんだ ? |
イクス | いや……。俺の記憶が確かなら、今からいくダアトってジェイドさんの偽者が出た街じゃないかなって。 |
ルーク | あ ! やっぱりそうか !だからさっき通った道に覚えがあったんだ ! |
カーリャ | 懐かしいですね。優しくて紳士なジェイドさま……。どうしてあっちが本物じゃなかったんでしょう……。 |
ジェイド | 悲しいですねぇ。私は心からカーリャを大切に思っているというのに♪ |
カーリャ | ひぃぃぃぃ……。心がこもってなさ過ぎて怖いですぅぅぅぅ。 |
ルーク | ……アニス。大丈夫か ? |
アニス | ――な、何が ? |
ルーク | 何がって……。イオンのことだよ。 |
イクス | なぁ、みんなそのイオンさんの名前を出す時すごく悲しそうだけど……何があったのか聞いてもいいかな ? |
イクス | もちろん、俺たちが知らなくていいことだとルークたちが判断したなら強制はできないんだけど……。 |
ジェイド | いえ、強制してでも情報はとりまとめるべきですよ。あなたとミリーナはね。自分の世界の存続が掛かっているのですから。 |
ミリーナ | ジェイドさん……。 |
カーリャ | ――ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃ ! ? ! ? ! ? |
ミリーナ | カーリャ ! ? どうしたの ! ?ひきつけでも起こしたみたいな声を出して ! ? |
カーリャ | あ、あれ…… ! あの街の中心……。なんか背の高い建物があると思ったら……。 |
カーリャ | ジェイドさまの銅像ですぅぅぅぅぅぅ ! ? ! ? ! ? |
コーキス | うわ……。どういうことだ、これ……。 |
アッシュ | 何でこいつの銅像がこんなところに……。 |
アニス | マ、マジか……。 |
ガイ | こいつは傑作だな、旦那 !ミリーナに記念写真でも撮ってもらうか ! |
ジェイド | 殺しますよ、ガイ。 |
街の住人 | お、あんたたち。ダアトは初めてかい ? |
街の住人 | この銅像は聖人ジェイド様。以前ジェイド様ってお方がこの広場で、人に優しさを分け与えることの尊さを街のみんなに教え、導いて下さったんだ。 |
街の住人 | それ以来、ここはジェイド広場と呼ばれていてね。この街では一年中ジェイド様ブームが……って、あれ ? |
街の住人 | ――あ、あなたはまさかジェイド様では ! ? |
ジェイド | 違います。よく似ていると言われますが、赤の他人です。 |
街の住人 | そ、そうかい ? ……まぁ、以前ジェイド様の悪質な偽者が出たこともあるらしいからまぁ似ている人もいるんだろうけど……。 |
? ? ? | えぇい ! 責任者を呼びなさい ! 責任者を ! |
イクス | ……え ? もしかして、この声は……。 |
ジェイド | おや ? イクスの知り合いですか ? |
イクス | え ! ? いや、だって、あの声は―― |
街の住人 | おっと、死神ディストだ。あんたたちもさっさと逃げた方がいい。 |
街の住人 | あいつ、昨日この街に来たばかりなんだがどうもジェイド様に張り合ってるらしくてくだらない自慢話を聞かされるんだよ。 |
ルーク | あー……。最近姿が見えなくて安心してたのに。 |
アッシュ | ………………。 |
ナタリア | アッシュ…… ? |
ミリーナ | みんな、ディストさんには悪いけどそこの植え込みに隠れてやり過ごしましょう。面倒だわ。 |
ジェイド | 遠慮することはありません。誰だって壊れた下水管からは距離をとるものですよ。 |
ディスト | 何なんです、この街は !さっきまで大勢人がいたのにもう誰もいないじゃありませんか ! |
帝国兵A | しにが……薔薇のディスト様。銅像の件ですがイオン様に願い出てはいかがでしょうか。 |
ディスト | ふん。機械仕掛けのつまらない心核を入れられたリビングドールに、美しい私の銅像の価値がわかる筈もありませんよ。 |
ディスト | このジェイド像の隣にはディスト像が並んでこそ――いえ、もうこの際、ジェイドの銅像を壊して私の銅像に置き換えましょう。その方が喜ばれます。 |
コーキス | あんなこと言われてる。いいのかよ、ジェイド様 ! |
ジェイド | 珍しくディストと意見が一致しそうです。是非あの銅像は壊して頂きたい。虫酸が走ります。 |
帝国兵B | ――イオン様がお戻りです ! |
アニス | ! ! |
イオンβ | 死神ディスト。また騒いでいるのか。 |
ディスト | これはこれは領主様。お元気そうで何より。 |
アッシュ | ……おい、ジェイド。仕掛けるぞ。 |
ジェイド | おや……。 |
ルーク | イオンを連れてくるのか ? ウッドロウみたいに。 |
ナタリア | 先ほどの話を聞く限り、イオンもリビングドールβにされている様子でしたわね。 |
ティア | だとしたら、このまま放置しておけば導師イオンの心身に悪影響が出かねないわ。 |
ジェイド | ……アッシュがねぇ。まぁ、いいでしょう。イクス、何が起きるかわかりませんが、構いませんか ? |
イクス | わかりました。一気に飛び出して、イオンさんを助け出しましょう ! |
キャラクター | 4話【7-3 ダアト2】 |
ガイ | ……勝負あったな。領主様を渡してもらおうか。 |
イオンβ | 死神ディスト。どうするのだ ?お前自ら、私の付き人に志願してきたのだ。何とかして見せろ。 |
アニス | イオン……様……。 |
ディスト | なるほど……。導師イオンが領主になるという噂を聞きつけてきたのですね。フフフフ……。 |
ディスト | ですが、ここで導師イオンを連れ帰っても彼の心核はあなた方の元にはありませんよ。 |
アニス | こっちが取り囲んでるのに随分余裕ぶっこいてるじゃん、ディスト。 |
ディスト | あなたは平静を保とうと必死ですねぇ、アニス。どうです ? 自分が殺したご主人様と再会する気分は ? |
コーキス | え…… ! ? |
アニス | その程度で揺れるアニスちゃんだと思わないでよね。でも……ぶっ潰す ! ! |
アッシュ | ――そうはさせるか ! |
アニス | ちょっ ! ? アッシュ ! ?攻撃する方間違えてるんだけど ! ? |
アッシュ | 間違えてなどいない。 |
ルーク | アッシュ ! ? |
ディスト | どういうつもりです、アッシュ。 |
アッシュ | ローレライが具現化されたと聞いた。俺は奴に用がある。 |
ディスト | ローレライに会うためにジェイドたちを裏切る、という事ですか。 |
アッシュ | 裏切る…… ? 面白いことを言うな、鼻たれ。お前のお得意の奴だろう。自分の目的のために全ての物を利用するってのはな。 |
ディスト | 誰が鼻たれですか ! ? ですが、まぁ、いいでしょう。私も別に帝国のことなどどうでもいいんですから。 |
ディスト | それよりアッシュ、あなたが来るならこの世界でのフォミクリー研究が捗ります。 |
ジェイド | ………………。 |
ナタリア | アッシュ ! ? 本気ですの ! ? |
ティア | ……待って。何の音 ? |
ガイ | 駆動音……。それも大量だ。 |
ジェイド | なるほど。街の外にタルロウを伏せていたようですね。 |
ディスト | フッフッフッ。その通り。あなたたちは袋のネズミですよ。 |
イクス | ……みんな、撤退する ! |
ミリーナ | イクスの傍へ ! |
ディスト | 何を……―― |
アッシュ | おい、鼻たれの死神 ! 奴らを止めろ ! |
ディスト | え ! ? な、何なんですさっきから人のことを鼻たれ鼻たれって―― |
イクス | 転送ゲート、展開 ! |
ディスト | キィィィィィ ! どういうことです、アッシュ ! |
アッシュ | 転送魔法陣とやらの改造版だ。それより俺をローレライのところへ連れて行け。 |
ディスト | どうして私があなたに命令されなければならないんですか ! そもそも、どうしてあなたまで私のことを鼻たれと呼ぶんです ! |
アッシュ | 鼻たれでも死神でもひしゃげたダンゴムシでも構わん。早くローレライの元へ案内しろ ! |
ディスト | そうはいきませんよ。あなたが本当にジェイドたちを裏切ったのか確かめなければいけませんからねぇ……。 |
イクス | ……く……。 |
コーキス | マ、マスター ! ? どうしたんだ ! ? |
ジェイド | ……これは……。転送ゲート展開の際の副作用か……。 |
ミリーナ | え ! ? どういうことですか、ジェイドさん ! |
ジェイド | 医務室で説明します。ガイ、イクスを運ぶのを手伝って下さい。 |
ルーク | 俺も手伝う ! |
ジェイド | ティア、カーリャ。ナタリアとアニスを頼みましたよ。落ち着かせてから、医務室へ連れてきて下さい。 |
ティア | 了解です。 |
カーリャ | が、頑張ります ! |
キャラクター | 5話【7-4 静寂の森1】 |
マーク | 今日、みんなに集まってもらったのは配置換えを行うためだ。 |
ルック | 配置換え……ですか ? |
マーク | イクス救出作戦の時に、多くの同志が負傷した。他にも帝国との小競り合いやら病気やらで前線で戦うのは厳しい状況の奴も多い。 |
マーク | フィルとも相談したんだがテセアラ領のアルタミラ近郊の地上基地を本格的に運用しようと思っている。 |
救世軍A | まさか、俺たちをそこに厄介払いしようって言うんですか ! ? |
救世軍B | そりゃないぜ、マークさん !ビクエ様に掛け合ってくれよ ! 俺たちはまだ戦える ! |
救世軍B | 相手が魔女だろうと帝国だろうとセールンドを取り戻して守るのが俺たちの使命なんだ ! |
救世軍A | そうですよ。アルタミラの地上基地なんて使命を捨てて帝国に日和った裏切り者たちが、今更助けてくれって駆け込んできて、集まってる場所じゃないですか ! |
救世軍B | 俺らはまだ戦える !手足を失っても、捨て石ぐらいにはなれるんだ ! |
マーク | 馬鹿野郎 ! そんな使い方できる訳ねぇだろ ! |
マーク | それに、勘違いすんなよ。お前らを降ろすと決めたのはフィルじゃねぇ。このマーク様だ。 |
マーク | それにこの方針に従えねぇって奴は捨て石にする価値もねぇよ。出て行ってくれても構わないんだぜ。 |
ルック | マークさん、待って下さい !みんなの気持ちがわからないあなたじゃないでしょう。それにケリュケイオンにも後方支援の人員が必要だ。 |
ルック | ここに集まってる同志の中には、バックアップなら十分できるって連中も大勢います。 |
マーク | ルック。他人事みたいにいってるんじゃねぇぞ。今回の配置換えで、お前も地上任務になるんだからな。 |
ルック | ! ? |
マーク | ――とにかく、荷物をまとめておけ。いいな ! |
フィリップ | ……マーク。大丈夫だったかい ?みんな、ショックを受けていたんじゃ……。 |
マーク | まぁ、不満は色々あるみたいだが……大丈夫だよ。 |
シンク | 足手まといだから降ろすなんて言われればまぁ、不満も出るでしょ。 |
フィリップ | そんなつもりじゃないんだ。本当に……。この先は、ケリュケイオンにいる方が危険になる。なるべくみんなを巻き込みたくないんだよ。 |
フィリップ | ……やっぱり、僕からみんなに説明を―― |
マーク | 駄目だ。フィルじゃ、奴らの剣幕に押されて結局ケリュケイオンへの残留を許しちまう。 |
フィリップ | ば、馬鹿にするなよ。僕だってビクエとして王宮の狐や狸相手に渡り合ってきたんだ。はっきり言わなきゃいけない時には、僕だって……。 |
シンク | だったら、さっさとイクスに真実を話したら ?クラトスにも言われてたでしょ ?先延ばしにすればするほどつらくなるって。 |
シンク | まぁ、こっちはその方が面白いけど。 |
フィリップ | ……それは…………精霊の封印地に……入れたら……。 |
マーク | はぁ……。じゃあ、フィルは引き続き精霊の封印地へのアプローチ方法を探してくれ。俺とシンクは負傷兵達を地上の拠点まで送ってくる。 |
シンク | せいぜい頑張ってね、ビクエ様。 |
ルック | ……マークさん。せめて自分には本当の事を聞かせて下さい。 |
ルック | 今までビクエ様とマークさんに付いてきた連中は自分も含めて、最期の瞬間まで行動を共にしたいと願っている奴らばかりです。 |
ルック | 確かに、酷い怪我を負った奴もいる。俺だって、この間の戦いで片足を失いました。それでもちゃんとやれていたでしょう ? |
ルック | どうして今になってケリュケイオンから降ろすんですか。 |
マーク | ……希望の芽ってのは潰えちゃいけねぇんだよ。それだけだ。 |
ルック | ………………。 |
シンク | ちょっと ! 隊列止めて。 |
マーク | どうした ? |
シンク | そこに、人間が倒れてる。あいつ、バルバトスって奴じゃない ?帝国に捕まってリビングドールにされてたマヌケのさ。 |
マーク | ……マジかよ。血まみれじゃねぇか。なんでこんなところに……。 |
ルック | この先の北の岬に、帝国が監獄を作ったらしいんです。そこから逃げてきたんじゃないですかね。 |
救世軍A | マークさん、どうするんですか。この人。移動の『足手まといになる』からここに置いていくんですか ? |
ルック | おい、その言い方はないだろ ! |
マーク | ……しっ。大声出すな。ルック、荷物の軽い連中集めて、あの男を運べ。俺とシンクは―― |
救世軍A | 帝国兵 ! ? |
帝国兵 | ――くっ、バルバトスの奴ここで仲間と合流するつもりで脱獄したのか。 |
マーク | おいおい、仲間扱いかよ。こっちは通りすがりだっての。 |
帝国兵 | 何でもいい ! バルバトスを――その大男を渡せ ! |
マーク | ルック、みんなを連れて逃げろ !ここは俺とシンクで片付ける ! |
ルック | わ、わかりました ! |
キャラクター | 6話【7-6 ダアト付近の平原】 |
ミリーナ | ……どう、イクス ? 少しは落ち着いた ? |
イクス | ああ……。ごめん。何か急に全身の力が抜けて……。痛いとか苦しいとかじゃなくて、だるいって言うか。 |
イクス | 前に使った時は、少し疲れたなって感じたぐらいだったんだけど。 |
コーキス | 本当か ! ? また痛いの隠してるとかそういうことないか ! ? |
イクス | コーキス、心配性なのは俺一人で十分だよ。ありがとう。大丈夫だから。 |
ジェイド | 転送ゲートは、ミリーナの仮想鏡界のゲートが具現化した物を転用していますから、イクスが使うと適性の問題で負担が大きいのかも知れません。 |
ジェイド | 前回の使用からそう間も空いていませんし実験データも足りないままの運用ですので頻繁に利用することは避けた方がよさそうですね。 |
ミリーナ | 私なら、イクスほどのダメージはないんですよね ?転送ゲートは鏡士にしか使えない……。だったらこれから緊急避難として使う場合は、私がやります。 |
ジェイド | ……ふむ。あなたが自ら実験に参加してくれるというなら止めはしませんが、それでも回数は制限した方がいいと思いますよ。 |
ジェイド | あなたとイクスでは魔鏡術の潜在能力に隔たりがある。イクスでこの負担なら、たとえ適性のあるミリーナでも危険であることには変わりありません。 |
イクス | あの……俺のことより、アッシュさんのことは……。アッシュさん、どうして急にディストさんの方へ付いたんでしょうか ? |
ナタリア | ……やはり、まだ焦りがあったのでしょうか。その……ローレライが具現化されたことで……。 |
ミリーナ | ローレライが具現化されたことがそんなに問題なんですか ? |
ルーク | ――なぁ、みんな。イクスたちに俺とアッシュの話をしてもいいか ? イクスには前に少し話したことがあるけど、俺の体のこととか、全部。 |
ガイ | ルークが話すと決めたなら、誰も反対はしないさ。そうだろ ? |
アニス | だったら、私のことも一緒に話していい ?イオン様が具現化されたなら話さなきゃいけないでしょ ? |
ルーク | アニス……。うん、一緒に話そう。 |
イクス | つまり、ルークはアッシュのレプリカ――同一人物の具現化みたいな存在なんだな。記憶は受け継がないけど。 |
イクス | それで、ローレライが具現化されたことでルークと……もしかしたらアッシュにも音素乖離……細胞崩壊みたいなことが起きるかも知れない。 |
ミリーナ | そしてリビングドールβにされたイオンさんは……ルークさんたちの世界では既に亡くなっているのね。 |
ミリーナ | イオンさんが具現化されたのは、恐らくルークさんたちの時間より前の時間から。 |
カーリャ | コーキス……。何泣いてるんです ! |
コーキス | パイセンこそ鼻水出てるぞ ! |
カーリャ | で、出てませんよ ! グスン……。 |
ルーク | ……ごめん。コーキス、カーリャ。そんな顔させちゃって。 |
コーキス | 謝るなよ、ルーク様 ! ずっと怖かっただろ……。消えるかもって思うの。 |
ミリーナ | ……そうよね。ごめんなさい。私たち、何も知らなかった。具現化の力……複雑だったでしょう ? |
ルーク | 大丈夫だよ。そんな風に気を遣わないでくれ。イクスには話したけど、俺、感謝してるんだ。命の猶予をもらったから。 |
ルーク | それに、どっちかっていうとジェイドの方がつらいのかなって。 |
ルーク | だって……レプリカを作る技術はジェイドが考えた物で……ジェイド、後悔してるみたいだったから。 |
アニス | それは違うよ、ルーク。大佐は……もう一度ちゃんとフォミクリーと向き合おうって決めてるんだよ。 |
ジェイド | アニス。おしゃべりな口は縫い付けますよ ? |
コーキス | アニス様だって……。 |
アニス | それもいいの。大丈夫。私は……酷いことをした。それはずっと消えない。それでいいんだよ。この気持ちと責任は、私が背負わなきゃいけないんだ。 |
ミリーナ | ……アニス。 |
ガイ | ルークの話で、俺たちの状況は何となくわかってもらえたと思う。アッシュのことも……。 |
ガイ | だけど、アッシュの体に関しては、ジェイドが問題ないって伝えたんだがなぁ。普段のあいつならその辺りはちゃんと理解できてる筈なんだが……。 |
イクス | 何か考えがあるんじゃないかな。 |
ジェイド | ……アッシュの話はいったん置いておきましょう。私としては、一刻も早くリビングドール化したイオンをこちらに連れていきたいと考えています。 |
ミリーナ | ………………。 |
ティア | でも、仮に助け出せたとして、イオン様の心核が―― |
ルーク | あ……いっ……痛ぇ…… ! ? 頭が……。 |
ティア | ルーク ! ? |
ガイ | おい、まさか……その頭痛は ! |
ローレライ | ルーク……アッシュ……。私の声が……るか……。ダアトの……森の……。急いで来て……しい……。導師の……―― |
ナタリア | ルーク ! 凄い汗ですわ。大丈夫ですの ? |
ルーク | ……ああ、大丈夫。痛みは引いてきたよ。具現化されてから初めての例のアレだったからちょっと驚いたけど。 |
ジェイド | 連絡してきたのはアッシュですか ?それともローレライですか ? |
ルーク | ローレライだ。ダアトの……森がどうとかって。で、急いで来てくれって。 |
コーキス | え ! ? 精霊の声が聞こえたのか ! ? |
ルーク | うん。元の世界では、ローレライの声とアッシュの声が聞こえることがあったんだよ。こっちからは連絡を取れなかったけど……。 |
ミュウ | 便利連絡網ですの ! |
コーキス | マスターの声が聞こえたみたいな奴だな。確かに便利だったよな、アレ !魔鏡通信機無しで話ができるんだもんな。 |
ジェイド | ダアトの森……ですか。 |
ティア | ミュウが巨大化したあの森かも知れません。 |
ジェイド | ええ、可能性はありますね。向かってみましょう。 |
イクス | わかりました。 |
ミリーナ | 駄目よ、イクス。あなたはここに残って、体を休めて。私とコーキスとカーリャで向かうわ。 |
イクス | え、だけど―― |
ジェイド | イクス、そうして下さい。ミリーナに暴走されたくありませんから。 |
イクス | え……。はは……。えっと……。 |
ルーク | いいからいいから。何かあったら連絡するよ。 |
アニス | モテる男はつらいね、イクス♪ |
ミリーナ | あの……ジェイドさん。もしかしてリビングドールβにされたイオンさんは被験者のイオンさんだと思っているんですか ? |
ジェイド | ……どうしてそう思ったんです ? |
ミリーナ | 仲間のイオンさんの事を話す時はイオン様と呼んでいたのに、さっきはイオンと……。 |
ジェイド | なるほど。これはうっかりしました。 |
ミリーナ | だとしたら、アニスに先に伝えてあげた方がいいんじゃないでしょうか。 |
ミリーナ | レプリカというのは記憶を継承しない。なら、姿は同じでも、アニスの知っているイオンさんではないんですよね。 |
ジェイド | ミリーナ。記憶を継承していてもゲフィオンとあなたは違いますよね。 |
ミリーナ | あ……。ええ、それはそうですけど……。 |
ジェイド | 混同してしまう気持ちは……まぁ、察することはできますよ。でもアニスを案ずる前にあなたが覚悟をしておいた方がいい。 |
ジェイド | イクスのことも、自分自身のことも、ね。 |
ミリーナ | ……………… ! |
キャラクター | 7話【7-10 イオンのいる森】 |
アニス | それにしても、ローレライも毎度唐突だよね。 |
アニス | いつ具現化されたのか知らないけどこっちがローレライに気付いた途端また一方的に連絡してきた訳でしょ。 |
アニス | 面倒な彼氏みたいじゃん ?性別知らないけどさ。 |
ガイ | お、アニス。調子出てきたじゃないか。 |
アニス | アニスちゃんはいつでも絶好調でーす。ガイこそ、ルークのこと心配して取り乱してたじゃん。 |
ガイ | え ! ? |
ルーク | そうなのか ? |
ナタリア | そうですわよ。 |
ティア | ガイはルークの親友ですものね。 |
ミリーナ | ふふ、ガイさん。顔が赤いわ。 |
ガイ | はは……。それより、奥の方から何か聞こえないか ? |
ジェイド | よかったですね、ガイ。都合のいいことに、本当にあちらに魔物が集まっているようです。 |
ガイ | あのな ! 俺が気を逸らそうとしてるみたいな言い方はやめてくれ ! |
ミュウ | みゅみゅみゅ ! ! |
ルーク | ミュウ ! ? 気を付けろそっちは魔物がいるかも知れないんだぞ ! ? |
ティア | 待って、ルーク。一人じゃ危ないわ ! |
ルーク | え ! ? イオン ! ? |
ティア | 危ない…… ! |
イオン | ………… ! |
ミュウ | イオン様ですの ! イオン様ですの ! |
ルーク | おい、大丈夫か ! ? 今のダアト式譜術だろ ! ?倒れちまうんじゃ……。 |
イオン | ……ちょっと疲れましたけど、大丈夫です。ルーク、久しぶりですね。ティアもミュウも……。 |
ルーク | イオン……。本当にイオンなんだよな…… ?俺の知ってる……。 |
ジェイド | ええ、ルーク。どうやら、我々の知るイオン様で間違いないようですよ。 |
コーキス | この人がイオン……様 ?あれ ? でもあのリビングドールβの人は ?あの人もイオン様なんだろ ? |
ナタリア | あら、そうですわよね。何かのきっかけで心を取り戻したのでしょうか ? |
イオン | それは……―― |
イオン | ――あ ! アニス ! ! |
アニス | ! |
イオン | あなたもこちらに具現化されていたんですね。心強いです ! |
アニス | ……イオン……様……。 |
イオン | アニス…… ? どうかしたんですか ? |
アニス | ――っ ! |
アニス | 何でも……――何でもないです。イオン様にまた会えて……会えると思ってなくて……嬉しくて……。 |
イオン | アニス。泣かないで下さい。何だかいつものアニスではないみたいですね。こちらでつらいことでもあったのでしょうか……。 |
アニス | 違います。……違います。イオン様……会いたかった…… ! |
イオン | アニス……。ええ、僕もあなたに会いたかったですよ。 |
ルーク | ……なぁ、ここで話すのも何だし俺たちのアジトで話さないか ? |
ミリーナ | ええ。そうしましょう。イオンさん、私は鏡士のミリーナ・ヴァイスです。よかったら―― |
イオン | ありがとうございます。でも……僕にはやることがあるんです。 |
イオン | その為に精霊のローレライの力を借りてルークに連絡を取ってもらいました。 |
ルーク | じゃあ、あのローレライの声はイオンが ! ? |
イオン | はい。僕……僕らは、こちらの世界風に言うと精霊ローレライに対してだけの召喚……のようなことができるそうなんです。 |
イオン | それでローレライに頼みました。 |
コーキス | 召喚……。クラース様とかしいな様みたいなことができるのか。 |
イオン | 研究者によると、召喚とはちょっと違うようですがその辺りのことはよくわかりません。ある装置を使うと声が聞こえることがある……という感じです。 |
アニス | オールドラントでも理論上は意識集合体を操れるって勉強はしたけど……。 |
ジェイド | 今のお話を聞く限りでは、操れるというところまでは達していないようですね。それではローレライに質問するのは難しいか……。 |
ガイ | なぁ、イオン。やることっていうのは一体何なんだ ? |
ルーク | あ、そうだよ。俺を呼び出したって事は、俺に関わることなのか ? |
イオン | いえ……。ルークに、というより黒衣の鏡士の陣営にいる皆さんへのお願いです。 |
イオン | アステルが来ると言っていたのですが今、彼はちょっと色々あって動けないので僕が代わりにここへ来ました。 |
ミリーナ | お話、聞かせて下さい。 |
イオン | はい。今、僕ら――帝国の中で、様々な実験に関わっている鏡映点は、内部から少しずつ帝国を切り崩せないかと動いています。 |
イオン | その為の作戦を実行するためにアトワイトさんの心核を必要としています。 |
ルーク | アトワイトって確かディムロスさんたちの仲間だよな。 |
ミリーナ | ええ。ウッドロウさんと一緒にいた女の人よね。リビングドールβにされていた……。 |
イオン | はい。彼女の心核は皆さんのところにある筈なんです。それを僕に預けて頂けませんか。アトワイトさんを元に戻してあげたいんです。 |
カーリャ | 本当ですか ! ? |
コーキス | アトワイト様を助けてくれるなら問題ありませんよねミリーナ様 ! |
ジェイド | いえ、イオン様。あなたを信用しない訳ではありませんが、そう簡単に頷くこともできません。おわかりですよね。 |
ルーク | ジェイド ! どうしてだよ ! |
イオン | ルーク、ジェイドは正しいですよ。 |
イオン | 僕はいま帝国に属する立場です。もし仮に僕が本気でアトワイトさんを助けようとしていてもその先で邪魔をされるだけかも知れません。 |
イオン | 大切な心核を預かるのならその見返りを求めることがあってもおかしくはありません。 |
ルーク | そ、それはそうかも知れないけれど……。 |
イオン | ジェイド。僕はあなたと交渉するためにいくつかの情報と、ある人物の心核を持ってきました。取引ではいかがでしょう。 |
イオン | この書類をお渡しします。この世界における第七音素のあり方の考察がまとめられています。被験者のイオンと帝国の研究者がまとめ、ディストが確認した物です。 |
イオン | まだ研究途中の段階ですが、参考になると思いますよ。カレイドスコープを使って観測した情報ですから。 |
ティア | 被験者の導師イオン……。そちらのイオン様も具現化されていたんですね。 |
ジェイド | なるほど、それは確かに有益な情報です。ところで、一つ質問をさせて下さい。 |
ジェイド | イオン様が持ってきた別の人物の心核……というのはリビングドールβにされたイオンの心核でしょうか。 |
イオン | はい、その通りです。領主として派遣されたあのイオンも、僕とは別のイオンなんです。 |
ルーク | それって誰だ ! ? フローリアン ?それとも被験者か ! ? |
ジェイド | 研究に関わっている以上、被験者をリビングドールにはしないでしょう。第七音素のあり方の考察が進みローレライも具現化している。 |
ジェイド | その上でアレがリビングドールβの側にいるのですからあの領主は、フローリアンや被験者ではなく導師イオンの新しいレプリカだ。違いますか ? |
一同 | ! ? |
イオン | ……さすがジェイドですね。帝国はローレライを使ってこの世界でのフォミクリーに成功しました。彼は八番目のイオンです。 |
イオン | 僕は彼を助けたい。生まれてすぐ、全ての自由を奪われ本当に代用品として扱われてしまったあのイオンに心を戻してあげたいんです。 |
アニス | ルーク、大佐、ミリーナ !イオン様の願いを叶えて ! お願い ! |
ルーク | ジェイド ! この世界でもジェイドの技術が悪用されるのは嫌だろ ! ? |
ミリーナ | ジェイドさん。アトワイトさんの心核を渡します。そして私たちの手でもう一人のイオンさんを助けましょう。 |
ジェイド | ――これも因果なのでしょうかね。元々そのつもりでしたし、領主のイオンを助けましょう。 |
ティア | でも、どの心核がアトワイトさんの心核なのかわからないですよね……。 |
ジェイド | イオン様は判別の手段をご存じの筈です。そうでなければわざわざここへは来ない筈だ。 |
イオン | 相変わらず何でもお見通しですね、ジェイド。 |
イオン | この魔鏡を使って下さい。ミリーナさん。鏡士の方なら心核の主が判別できるそうです。 |
ミリーナ | わかりました。私が、一度アジトに戻ってアトワイトさんの心核をとってきます。カーリャ、いらっしゃい。 |
カーリャ | はい ! |
ミリーナ | コーキス。みんなをお願いね。 |
コーキス | 任せて下さい ! |
キャラクター | 8話【7-14 ダアトへ続く道4】 |
イクス | なぁ、ルカ ? もう起きてもいいかな。俺すっかり元気だよ。 |
ルカ | ……うん。点滴も終わったみたいだし大丈夫じゃないかな。今、念のためジュードに聞いてくるよ。 |
ジュード | ルカ ! 急いでスタンたちを呼んで ! |
ルカ | え ! ? どうしたのジュード。そんな驚いた様子で。 |
ジュード | ウッドロウさんが目を覚ましたんだ ! |
二人 | ! ! |
ウッドロウ | ……色々と迷惑をかけてしまったようだ。イクスくん、だったかな。私の心を取り戻してくれて感謝する。 |
イクス | いえ、俺の力じゃないです。スタンさんやみんながウッドロウさんを助けてくれたんですよ。 |
イクス | それに目覚めるなり、色々とお話してしまって……。きっと混乱したと思うんですけど……。 |
ウッドロウ | ありがとう。しかし、具現化されてしばらくはアスガルド帝国に囚われていたので予備知識はあった。今の状況を確認できてよかったよ。 |
スタン | ウッドロウさん ! |
リオン | 目が覚めたそうだな。 |
ウッドロウ | スタン君、……それにリオン君も。心配をかけてすまない。 |
スタン | そんな……。よかったです、無事に目が覚めて……。 |
イクス | あれ、ルーティとジョニーさんは ? |
スタン | カイルたちを捜してもらってる。カイルたちも心配してたからさ。 |
イクス | ああ……。そうだよな。 |
ウッドロウ | スタン君、それにイクス君にジュード君にルカ君も。すまないが、リオン君と二人で話をさせてもらえないか。何、すぐに終わる。 |
スタン | は、はぁ……。 |
ジュード | わかりました。僕たちは廊下に出ていますから何かあれば呼んで下さい。 |
リオン | 話というのは何だ。 |
ウッドロウ | リオン君は……元の世界では何をしているところで具現化されたんだ ? |
リオン | ! |
リオン | ………………。 |
ウッドロウ | どうやらイクス君の話を聞くと私は……スタン君たちより少し先の時間から具現化されたようだ。 |
ウッドロウ | リオン君が私を知っているということは神の眼を回収して以降であることは間違いなさそうだが……。 |
リオン | ………………。 |
ウッドロウ | ……そうか。いや、答えたくなければ構わない。 |
リオン | ……イクティノスはどうしたんだ。 |
ウッドロウ | 帝国に取り上げられてしまってね。何とか回収できればいいんだが……。この体では、私もしばらくは動けないだろうな。 |
イクス | あれ ? 魔鏡通信だ。 |
マーク | イクスか。妙なことになっちまったぞ。 |
イクス | マーク ? どうしたんだ ? |
マーク | バルバトスを拾っちまった……。 |
スタン | バルバトス ? それって―― |
ジュード | カイルたちを呼んだ方がいいかな。 |
マーク | あ、いや。そっちとは色々因縁がある奴なんだろ。大怪我してるんで、とりあえずうちで回収しておく。ただ、情報は共有した方がいいと思ってな。 |
ミリーナ | イクス ! 起きていて大丈夫なの ! ? |
イクス | ミリーナ ! ? ルークたちとローレライを捜しに行ったんじゃないのか ! ? |
シンク | ローレライ ! ? 第七音素の意識集合体の ! ? |
イクス | あ、うん。精霊として具現化されたってことはそっちにも共有していたと思うけどルークがローレライの声を聞いたんだ。 |
イクス | 導師を助けて欲しいとか何とか……。 |
シンク | ! ? |
ミリーナ | イオンさんには会えたのよ。だけど、八番目……八人目……とにかく、新しくイオンさんのレプリカが作られたらしくて―― |
シンク | ……鏡士。何が起きてるのさ。詳しい話を聞かせてもらいたいね。 |
キャラクター | 9話【7-15 ダアト】 |
ジュニア | アスガルド城にカレイドスコープを移したのか……。 |
グラスティン | いや、ここは仮の置き場だよ、小さなフィリップ。 |
ジュニア | ……仮の ? |
グラスティン | ヒヒヒ。仮想鏡界を閉じた以上、別の安全な場所に隠さなければいけないからな。 |
グラスティン | ただ、急いで鏡映点を具現化してもらう必要があるから一時的にここに置いているんだ。 |
ジュニア | まだ具現化をするの ! ? もう十分でしょう ? |
グラスティン | 仕方ないだろう。俺も無駄なことだと思っているがデミトリアスはあの性格だ。ティル・ナ・ノーグを正しく治めたいのさ。どうせ最後には捨てるのに。 |
ジュニア | 捨てる ? 何、どういうこと ? |
グラスティン | ヒヒ……。興味があるのか。小さなフィリップも好奇心が強いんだなぁ。ヒヒヒ……。 |
ジュニア | ………………。 |
帝国兵 | グラスティン様 ! |
グラスティン | どうした ? 俺はこの小さなフィリップと大事な話をしているところだ。くだらない用事なら、ミンチにするぞ ? |
帝国兵 | はっ ! それがイ・ラプセル城からの伝令でリビングドールβへの処理中に鏡映点が一人逃げ出したとのことです ! |
グラスティン | ……まったく、無能な奴らだ。大方、ディストの奴が管理をしくじったんだろう。 |
帝国兵 | は……。その死神ディストなのですが勝手に、領主として派遣したイオンβの付き人になって一緒にダアトへ向かったようで……。 |
グラスティン | ヒヒヒ、なるほど。目覚めてすぐに俺の作品を見て刺激されたのかも知れないな。しかしそこまで自分の欲望に忠実とは…… ! 面白いじゃないか ! |
グラスティン | いいよ、実にいい……。奴がいればますますフォミクリーの完成度は高まる。無限にフィリップの代用品を増やせるようになるぞ ! |
ジュニア | ! ? |
グラスティン | ヒヒヒ、練習が捗るよ……。限りなくフィリップに近い玩具だなんて…… !最高じゃないかぁ ! ! イヒヒヒヒヒ ! |
グラスティン | ああ……楽しみだよ ! 興奮が収まらない !早くフィリップのレプリカを作って綺麗に並べたいなぁ…… ! |
帝国兵 | あ……あの、グラスティン様……。逃げ出した鏡映点はどうしますか。 |
グラスティン | もちろん捕まえる。一度具現化したモノは大切に使わないとなぁ。で、誰が逃げ出した ? |
帝国兵 | マリク・シザースであります ! |
グラスティン | そいつは厄介だ。リチャードとセットで使うつもりだったのに計算が狂うな。 |
グラスティン | よし、小さなフィリップ。ここで待っていろよ。仕事を済ませたらすぐに戻ってくる。 |
グラスティン | 逃げようとしても無駄だぞ。その綺麗な体に刻み込んでやった呪いのことを忘れるなよ……。お前は俺のコレクションになるんだ。ヒヒヒヒヒ ! |
ジュニア | ………………。 |
ジュニア | (鏡映点が逃げ出したなら、少し時間がかかるな。……カレイドスコープがここにあるならナーザの体もきっとこの部屋にある筈だ) |
ジュニア | (待ってて、メルクリア。僕が今できるのは……目を覚まそうとしている君の味方を増やすこと。例え大人の僕やミリーナに……軽蔑されたとしても ! ) |
ミリーナ | みんな、お待たせ。 |
カーリャ | アトワイトさまの心核、持ってきましたよ。 |
ガイ | 二人とも、お疲れ様。 |
イオン | ありがとうございます。ミリーナさん。 |
ルーク | 領主の方のイオンの心核はジェイドに預かってもらってる。 |
ミリーナ | 了解よ。ところで、ルークさんのところにローレライから連絡が来たって本当 ? |
アニス | うん、便利連絡網でね。 |
ルーク | 相変わらず、いまいち何言ってるのかわかんねー感じだったけど、どうも領主のイオンがどこかに出かけるみたいなんだ。 |
イオン | ふふ、僕も何度かローレライと話しましたが確かに、少し回りくどいしゃべり方をしますよね。 |
ジェイド | うらやましいですね。私もローレライと話してみたいものです。 |
ジェイド | 意識集合体――いや、ここでは精霊ですか。とにかく第七音素と話せる機会なんてそうはありませんから。 |
ルーク | ……ん ? あれ、雨が降ってきたぞ。 |
ガイ | ……結構強いな。これじゃあすぐびしょ濡れになるぞ。雨宿りしたいところだが、いつ領主の方のイオンが出てくるかわからないか……。 |
ナタリア | 仕方ありませんわ。今はここを離れる訳にはいきませんもの。 |
ティア | ……しっ ! 街から馬車が出てくるわ。 |
ミリーナ | 霧を出すわね。それで馬車のスピードが止まるはず。 |
ジェイド | なるほど。それなら馬車が止まったら馬を放して下さい。それから霧を解いて―― |
ルーク | 襲撃するんだな。 |
ガイ | ……襲撃ねぇ。毎度の事ながら俺たちろくな事をしてないよなぁ。 |
アニス | イオン様。危険ですから、私の側を離れないで下さいね。 |
イオン | はい !……何だか懐かしいです。こういうの。 |
アニス | ………そう、ですね……。 |
イオン | ……………… ? |
ミリーナ | 馬車が来る…… ! 行くわよ ! |
御者 | な、何だ ! ? 急に霧が…… ! ?くそ、前が全く見えない ! ? |
ティア | 馬車が止まったわ ! |
コーキス | よし ! 馬を放したぞ ! |
アッシュ | 何だ…… ! ? 急に霧が晴れた…… ! ? |
イオンβ | 馬がいない……。どうなっている ? |
ルーク | そのイオンを渡せ――っ ! |
アッシュ | ! |
アッシュ | お前か ! |
ルーク | アッシュ ! どうして―― |
二人 | 何 ! ? |
ミリーナ | ルークさんとアッシュさんの浄玻璃鏡が……同時に輝いた ! ? |
ルーク | これがオーバーレイ ! ? |
アッシュ | お前と同時に反応するとはな。面白い。どちらの力が上か、勝負だ ! |
キャラクター | 10話【7-15 ダアト】 |
ルーク | よし ! これでイオンを―― |
? ? ? | みんな ! ニセモノを捕まえて ! |
アッシュ | ……アリエッタか。 |
アニス | ! ? |
アリエッタ | ……アッシュ ? どうして ?アッシュのことも……イオン様が呼んだの ? |
アッシュ | 後で説明してやる。どうせディストに言われてお前を迎えに行くところだった。 |
アリエッタ | ううん。もう、ダアトに行く必要……ないから。アリエッタが捜してたニセモノ……見つけた。 |
アリエッタ | アリエッタ、イオン様に頼まれて、イオン様のニセモノを連れ戻しに来ただけだから。 |
アニス | アリエッタ……。あんたも……ここに……。 |
アリエッタ | アニスまでここにいるなんて……。ニセモノがアニスを呼んだんでしょ ! |
イオン | アリエッタ。僕は偽者ではありません。あなたのイオンではありませんが僕もイオンなんです。 |
アリエッタ | 違うもん ! レプリカはニセモノだもん ! |
アニス | イオン様を偽者なんて言うな ! |
アリエッタ | ニセモノはニセモノだもん !アニスの馬鹿 ! アリエッタが導師守護役に戻ったから意地悪して、ニセモノの味方をするんでしょ ! |
アニス | アリエッタ ! 違うよ !イオン様のこと……私のイオン様のこと偽者なんて言ったら―― |
シンク | あー、うるさい。うるさいから、撤退してくれる ?アリエッタ。 |
アリエッタ | うっ、い、痛い……。シンク…… ?シンクもいたの ? 痛いぃぃっ ! ? |
シンク | オトモダチの魔物を撤退させるんだ。さもないと、この腕、そのままへし折るよ。 |
アリエッタ | うぅ……。で、でも……。 |
シンク | やるんだよ ! |
アリエッタ | ……みんな……。離れて……。 |
コーキス | すげぇ……。魔物があんな小さな子の言うことを聞くなんて……。 |
イオン | ……シンク。アリエッタを放してあげて下さい。 |
シンク | へぇ……。本当にいいの ?ボクがアリエッタを解放したらまた魔物を使って取り囲んで来ると思うけど。 |
イオン | アリエッタは、僕を帝都へ連れて帰るためにここへ来たんですよね。だったら、僕はアリエッタと一緒に帝都へ戻ります。 |
ルーク | イオン ! ? |
イオン | 元からそのつもりだったんです。その代わり、リビングドール化されたイオンはルークたちに預けてもらえませんか。 |
アッシュ | 何を勝手なことを言ってやがる。 |
イオン | 被験者なら構わないと言う筈ですよ。……彼は、代用品ならまた作ればいいという考え方ですからね。 |
シンク | ……反吐が出るね。 |
アッシュ | ――アリエッタ。それでいいな。ディストには俺から説明しておく。 |
アリエッタ | ……わかった、です。 |
イオン | ルーク、アニス……。それに皆さん。すみません。でも久々にお目にかかれて嬉しかったです。 |
アニス | イオン様……。 |
イオン | アニス。そちらのイオンを……よろしくお願いします。僕らの弟みたいなものですから。 |
シンク | ……フン。代用品同士の傷の舐め合いなんて、惨めだね。 |
イオン | シンク……。いつか、あなたともちゃんと話をさせて下さい。……あなたがこの世界にいると聞いて、僕は―― |
シンク | うるさいよ。さっさと行けば、ニセモノイオンサマ。 |
シンク | ……で ?こっちの裏切り者はどうするの ? 始末する ? |
アッシュ | 面白い。やるってのか、シンク。 |
シンク | レプリカに負けたくせに、随分強気じゃない。傷だらけだよ。見逃してやるからさっさとしっぽを巻いて逃げるんだね。 |
シンク | あの鼻たれのドクダミ博士のところにサ ! |
アッシュ | ………………。 |
ナタリア | アッシュ ! どうしてですの ! ?訳があるなら教えて下さいませ ! |
アッシュ | ……その指輪。無くすなよ。 |
ナタリア | ! |
ガイ | それにしても、どうしてシンクがここに ? |
ミリーナ | 私たちがアジトに戻った時に丁度マークたちから連絡が来ていたの。 |
ミリーナ | それでイオンさんのことを話したらシンクがこっちに来るって……。 |
シンク | ……ギリギリだったけどね。何とか間に合った。 |
ルーク | やっぱりイオンが具現化されてたこと気になったのか ? |
シンク | はぁ ? 馬鹿じゃないの ?ボクはディストを殺しに来たんだよ。 |
ジェイド | ……この世界でもレプリカを作ったから、ですか。だとしたら、待った方がいい。恐らくこのイオンを作ったのはディストではないでしょうから。 |
全員 | ! ? |
シンク | ………………。 |
ルーク | ……何か、いっぺんに色んな事があって凄く疲れたよ。ローレライ、ディスト、イオンにアリエッタアッシュが裏切って、最後はシンクまで出てきてさ。 |
ナタリア | ルーク。アッシュは裏切ってなどいませんわ。 |
ルーク | へ ? だってあいつ、ディストについていっただろ。 |
ナタリア | それは……。でも違います。あの方は、指輪を無くさないように仰いましたわ。ホワイトデーに私のために作って下さった指輪を……。 |
ミリーナ | そうね。アッシュさん、きっと何か考えがあるのよ。でなければ、ナタリアを置いていったりしないわ。 |
ティア | ……アニスたちは大丈夫かしら。 |
ミリーナ | きっと領主の方のイオンさんの心核を元に戻してくれるわ。シングも一緒だし。 |
ガイ | それにしても、アニスとジェイドはともかくまさかシンクまでスピルメイズに入るなんて言い出すとはねぇ……。 |
ティア | ……そうね。やっぱり心配なのかしら。領主のイオンのことが……。 |
ガイ | よせよせ。その言葉シンクに聞かれたら、面倒なことになるぞ。 |
ルーク | 痛ぇ……。また……ローレライ、かよ……。 |
アッシュ | 誰がローレライだ。 |
ルーク | あ……アッシュ ! ? |
アッシュ | ……お前がうまく騙されてくれたおかげでディストの目をごまかすことができた。 |
ルーク | は ! ? |
アッシュ | ローレライの声は俺にも届いていた。ということは俺からお前にも連絡ができる筈だと思っていたがやはり正解だったな。 |
ルーク | おい、アッシュ ! どういうことなんだ ! |
アッシュ | 俺はこのまま帝国の懐に潜り込み、内部の様子を調べる。何かあればこの回線を使ってお前に報告するつもりだ。 |
ルーク | 間者になるって事か ! ?だったらどうしてそれを先に言わないんだよ ! |
アッシュ | お前が演技をできないからだ。ジェイド辺りは俺の思惑に気付いている筈だぞ。何か言ってなかったのか ? |
ルーク | いや、何も……。 |
アッシュ | ちっ。死霊使い(ネクロマンサー)め。面倒がって説明しなかったな。 |
ルーク | だけど、大丈夫なのかよ。帝国で何かあったら……。 |
アッシュ | お前じゃあるまいし、大丈夫だ。 |
ルーク | 一言多いな ! ? ジェイドかよ ! ? |
アッシュ | あいつと一緒にするな。 |
アッシュ | ……とにかく、デクス……だったか。あのくねくねした変な奴と接触して情報を集めるつもりでいる。 |
アッシュ | お前は……ナタリアのことを頼む。 |
ルーク | ――ああ、わかった。でも助けが必要なら、すぐ連絡してくれよ。 |
アッシュ | ……フン。……その言葉、まぁ、覚えておいてやるさ。 |
| to be continued |
キャラクター | 1話【8-1 閑散とした街道】 |
ミリーナ | イクス、領主のイオンさんはどう ? |
イクス | 大丈夫、落ち着いてるよ。今のところスピルリンクも上手くいってるみたいだ。 |
ミリーナ | よかった。でも、リビングドールβは精神への負担が大きいみたいだからこの後の処置に気を付けないとね。 |
イクス | ウッドロウさんも危険な状態だったもんな。 |
マーク | イクス、そっちはどうだ。シンクは迷惑かけてねぇか ? |
イクス | マークか。シンクは大丈夫……だと思う。今、領主のイオンのスピルメイズに入ってるよ。 |
マーク | そうか。あいつ、出て行く時に少し様子がおかしかったからさ。気になってたんだ。 |
コーキス | シンク様のことが心配で連絡してきたのか ? |
カーリャ | マークは面倒見がいいですねぇ。 |
マーク | 嫌でもよくなるさ。手のかかるおっさんに加えて救世軍って大所帯抱えてるんだからな。それに、シンクのことだけで連絡したわけじゃねえよ。 |
マーク | ついさっき情報が入った。ここ――救世軍地上施設の近くにある帝国の監獄にチーグルが運ばれて来るらしい。 |
イクス | チーグル……リチャードさんか ! |
ミリーナ | でも、あの人は幹部よね ?監獄に入れられるなんて何かあったのかしら。 |
マーク | さてな。その辺のことはよくわからねぇ。テセアラ監獄の方も、立て続けのトラブルで混乱していて、情報が錯綜してるんだよ。 |
コーキス | トラブルって……もしかしてバルバトスが脱獄したことか ? |
マーク | ああ。あいつ、チーグルの移送で大わらわになった隙をついて脱獄してきたらしい。 |
マーク | おかげで監獄は蜂の巣を突いたような騒ぎだぜ。兵どもが必死の形相で駆けずり回ってるらしい。 |
カーリャ | うわぁ、なんか面倒なことになってますねぇ。 |
イクス | でも裏を返せば、混乱している上に捜索に人手も割かれてるってことだ。だったら―― |
コーキス | あっ ! この騒ぎに乗じてリチャード様を取り戻せるかもしれないってことだろ ?な、マスター ! |
イクス | ああ。その通り。後は、この状況を長引かせるためにもバルバトスさんが見つからないようにしないと。 |
マーク | あいつの傷を見たが結構な深手だった。しばらくは大人しくしてる……と思うんだがなぁ。 |
ミリーナ | だったら、マークが保護してくれている間に行動を起こした方がいいわね。 |
イクス | それに、リチャードさんを取り戻すならアスベルたちの協力が不可欠だ。その上で作戦をたてないと。 |
マーク | その辺は任せる。こっちもゴタついてるんでな。俺はこのままテセアラ領の救世軍施設に待機する。何かあったら連絡してくれ。 |
イクス | ありがとう。とりあえず、俺たちもリチャードさんの救出部隊を組んでそっちへ向かうよ。 |
マーク | わかった。気を付けて来いよ。帝国の連中がウロウロしてるからな。 |
カーリャ | マークも大変そうですね。何か甘い物でも差し入れてあげましょうか。 |
ミリーナ | カーリャ、それはコーキスたちに頼みましょう。私たちは残らないと。 |
カーリャ | あ……そうでした。領主のイオンさまを放ってはおけませんよね。 |
イクス | スピルリンク後に何があるかわからないし鏡士がついていた方がいいからな。ミリーナ、カーリャ、頼むよ。 |
ミリーナ | ええ、任せて。コーキス、帰って来たばかりで大変だけどイクスをお願いね。 |
コーキス | はい。マスターが無理しないようミリーナ様の代わりに見張ります ! |
イクス | 見張られるほど無茶なんてしてないのに……。 |
コーキス | 自覚ねぇのかよ、マスターは……。まぁ、いいや。それじゃ俺、アスベル様たちを呼んでくる。 |
イクス | 頼むな。打ち合わせをしたらすぐに出発だ。 |
キャラクター | 2話【8-1 閑散とした街道】 |
マーク | ――大丈夫だって。バルバトスのことは、こっちで何とかするさ。 |
フィリップ | だけど、シンクもいないんだろう ?今だけでも僕がそっちにいた方がいいんじゃないか ? |
マーク | 人の心配より自分の心配しろっての。じゃあな、また後で連絡する。 |
マーク | (イクスもこっちに来るって言ってんのに。顔合わせて困るのは誰だって話だよ。まったく……) |
ルック | マークさん。今しがた、一部の負傷兵が独断で出撃したと報告が入りました ! |
マーク | 出撃 ? どういうことだ。 |
ルック | チーグルが監獄に運ばれたとの情報を受けて出ていったようです。 |
ルック | 功績をあげれば、ケリュケイオンに戻してもらえるかもしれないと言っていたそうで……。 |
マーク | 馬鹿野郎共が !無駄死にさせるために連れて来たわけじゃねぇぞ。これじゃ何のために……。 |
マーク | ……いや、わかった。俺が連れ戻す。留守はお前に任せて―― |
救世軍兵士 | マークさん ! バルバトスが……くっ……。 |
マーク | おい、どうした ! ? |
救世軍兵士 | バルバトスが目覚めたんですがすぐに暴れはじめて……俺たちではとても抑えきれません ! |
マーク | くそっ、なんだってこんな時に ! |
ルック | マークさん、負傷兵の捜索には自分が出ます。 |
マーク | それはお前の仕事じゃねぇよ。この辺だってバルバトスの捜索で帝国兵がうろついてんだぞ。もしもの時にその足で逃げ切れるのかよ。 |
ルック | …………。 |
マーク | あいつらの捜索には別部隊を派遣する。荷運びと警備の奴らを回せば何とかなるだろう。 |
マーク | ――おい、すぐに隊を組んで捜索に出るように伝えろ。バルバトスのところへは俺が行く。 |
救世軍兵士 | は、はい ! |
マーク | ルック、お前も俺と来い。 |
ルック | えっ ? |
マーク | お前の仕事をしてもらうんだよ。万が一、俺がバルバトスにやられた時には命乞いしてもらわねぇとな。 |
ルック | 命乞いって……。 |
マーク | 負傷兵の捜索よりも危険だが、頼まれてくれるな ?それとも俺の命を預かるのは嫌か ? |
ルック | いいえ、喜んで ! 行きましょう。 |
救世軍兵士 | ひいいっ ! こ、ここを通すわけには……。 |
バルバトス | 帝国の犬が !雑兵の分際で邪魔をするんじゃねぇっ !潰れろぉぉぉぉぉっ ! |
マーク | ――おっと。いててて……。馬鹿力だな、アンタ。 |
バルバトス | 俺の拳を……貴様っ…… ! |
マーク | 俺はマーク・グランプ。それと、ここは帝国じゃなくて救世軍だ。 |
バルバトス | だったら尚更こんな所にいられるかっ !今すぐ俺を帝国に連れて行け。あいつらを八つ裂きにして……くっ……。 |
マーク | ……傷が開いたな。それ、結構な深手だったぜ。その体で帝国を相手に喧嘩売る気かよ。 |
バルバトス | これしきの傷で後れなど取らぬわ !怪我を理由に引きこもるなど弱さを言い訳にした負け犬の所業よ。 |
バルバトス | 貴様の後ろで縮こまっている、その雑魚のようにな ! |
ルック | くっ……。 |
マーク | そういっても、『傷ごとき』で行き倒れてたのを治療したのは俺たちだぜ ?ちなみに、あんたの言う雑魚がここまで運んだんだ。 |
バルバトス | だからどうした。貴様らが勝手にやったことなど知るか ! |
マーク | そうだな。だからこそ、勝手に治療した責任は最後まで取らせてもらう。 |
マーク | 暴れて開いた傷を手当てさせてくれ。その間だけでいいから、俺の話を聞いちゃくれねぇか。 |
バルバトス | 貴様の話だと ? |
マーク | ああ。帝国のこと、この世界のこと具現化された後、あんたに何が起きたのか全部説明する。俺の知る範囲で、だがな。 |
バルバトス | ! ! |
マーク | どうだ、悪い取引じゃないだろ ? |
バルバトス | ……くくくっ、いいだろう。だが役に立たぬ話ならば、その首へし折るぞ。 |
キャラクター | 3話【8-2 テセアラ領の森1】 |
イオン | ……アリエッタ。僕の話を聞いてはくれませんか ? |
アリエッタ | ニセモノの話なんて、聞きたくない、です。どうせアニスみたいに……意地悪する気でしょ ? |
イオン | アリエッタ、アニスは―― |
アリエッタ | イオン様 ! イオン様のニセモノ、連れてきました。 |
ハロルド | あ、おかえり~。イオンを連れ戻してくれたんだ。 |
アリエッタ | ……ち、違うもん。これはイオン様のニセモノだもん。イオン様は、イオン様だけ……だから。あれ……イオン様、どこ ? |
ハロルド | 散歩でもいってるんじゃない ?アリエッタ、捜してきてよ。 |
アリエッタ | でも……ニセモノは…… ? |
ハロルド | こっちで預かっておくわ。あんただってイオン様に早く会いたいでしょ。 |
アリエッタ | うん、行ってくる ! ハロルド、ありがとう ! |
ハロルド | ふっふっふ、時間稼ぎ成功♪で、首尾はどう ? |
イオン | ええ。手に入れてきました。これがアトワイトの心核です。 |
ハロルド | ご苦労様。これでようやくアトワイトを戻せるわ。まったく、鏡士たちに心核が持ち去られたって聞いた時は、さすがに焦ったわよ。 |
イオン | 仕方ありません。彼らだってこんなことになるとは思っていなかったでしょうからね。 |
イオン | 帝国にいる僕でさえあなたが何を考えて行動しているのか理解していませんでしたから。 |
ハロルド | そうねー。イオンってば口を開けば、実験をやめろやめろってうるさかったもん。 |
イオン | すみません。あなたが帝国の技術と目的を探るために協力していたことは承知していましたがやはり非道な実験を見過ごすのは心苦しくて……。 |
ハロルド | それで正解よ。おかげで奴らも、私があんたと繋がってるとは全く気付いてないんだから。 |
ハロルド | あいつらに気付かれたら胸糞悪い実験を続けた甲斐がなくなっちゃう。 |
ハロルド | さあ、すぐにアトワイトの心核を戻すわよ。 |
ハロルド | ――クンツァイト、ちょっと来て。この心核を確認してちょうだい。 |
クンツァイト | データ照合。アトワイトの心核と確認。 |
ハロルド | これからアトワイトにこの心核を戻したいんだけどスピルリンクって、すぐに始められる ? |
クンツァイト | ハロルドには惜しみなく協力するようリチア様から申し付けられている。即刻開始しよう。 |
ハロルド | それじゃ、アトワイトを連れて―― |
クンツァイト | 警告。何者かの接近を確認。この部屋に向かっているようだ。 |
二人 | ! ! |
帝国兵 | ハロルド様、いらっしゃいますか ! |
ハロルド | 今、実験中だから入らないで。用件は何 ? |
帝国兵 | グラスティン様がこちらにおいでになりますので一応、ご報告をと。 |
ハロルド | グラスティン ?あいつ、しばらくはアスガルド城にいるんじゃなかったの ? |
帝国兵 | 鏡映点の一人がこの城から脱走しまして。その件でこちらに向かっているとか。 |
ハロルド | 脱走って、誰が ? |
帝国兵 | マリク・シザースです。 |
ハロルド | そう。実験材料が減っちゃったわね。わかったわ。グラスティンが着いたらすぐに報告して。 |
帝国兵 | はっ。 |
イオン | ハロルド…… ! |
ハロルド | もうバレちゃった。想定より早かったわね。 |
イオン | どうしましょう……。逃がすタイミングが悪かったでしょうか。このままでは彼が危ない。 |
ハロルド | こうなったら、あいつの腕を信じるしかないでしょ。それに想定外ってのは悪いことばかりじゃないわ。 |
イオン | ……そうですね。いい方向に結果が出ることを願いましょう。 |
グラスティン | 鏡映点が逃げたというのにハロルドは何をしているんだ。 |
帝国兵 | 相変わらず研究に没頭しておられます。それ以外のことには、あまり関心がないようで。鏡映点の脱走もご存じないようでした。 |
グラスティン | ……なるほど。色々とやることがありそうだなぁ……。 |
グラスティン | 俺も本気を出すとするかぁ…… !ヒヒヒッ ! ! |
グラスティン | さっさと仕事を終わらせて帰らないと小さいフィリップが寂しがるからなぁ !ヒヒヒヒヒヒッ ! |
イクス | ……行ったか ? |
コーキス | ああ。もう隠れなくても大丈夫そうだぜ。 |
シェリア | さっきから帝国兵が多いわね。やっぱりバルバトスの脱獄のせいかしら。 |
ソフィ | 隠れてばっかりで、あんまり進まないね。救世軍の地上施設ってまだ先なんでしょ ? |
アスベル | くそっ、一刻も早くリチャードを助けないといけないのに……。 |
ヒューバート | 焦る気持ちはわかりますがこちらの動きが知られるのは危険です。今回は陛下を取り戻す千載一遇のチャンスですからね。 |
イクス | うん。敵との遭遇はなるべく避けた方がいいだろうな。 |
パスカル | ねえねえ、それじゃアレはどうする ?放っておくの ? |
コーキス | アレって……あっ、救世軍の兵士 ! ?帝国兵に追われてるぞ ! ?どうする ! ? |
アスベル | みんなはここにいてくれ。俺が助けに行ってくる ! |
ソフィ | 待って、アスベル。わたしも行く。 |
パスカル | ソフィが行くなら、あたしも~ ! |
シェリア | もう、見つからないようにって言ったばかりなのに……仕方ないわね。待って、怪我人がいたら真っ先に保護するのよ ! |
ヒューバート | こうなったら早急に事態を沈静化する方が得策です。イクス、コーキス、兄さんたちの援護をお願いできますか ? |
イクス | わかった。任せてくれ。 |
コーキス | アスベル様たち、みんな好き勝手に動いてるようで実は息ぴったりだよな。 |
イクス | ああ、そうだな。俺たちも行くぞ、コーキス ! |
キャラクター | 4話【8-3 テセアラ領の森2】 |
アスベル | これで、終わりだ ! イクス、そっちは ? |
イクス | ああ。こっちも片がついた。――みなさん、無事ですか ? |
救世軍兵士A | ありがとうございました。まさか、鏡士の一行に助けてもらえるとは……。 |
ソフィ | 大丈夫 ? その腕、ブラブラしてるよ。 |
シェリア | 怪我したんですね。見せてください。すぐに治療しますから。 |
シェリア | あ……これ……。 |
救世軍兵士A | この傷は以前負ったものなんだ。もう……無理だろ ? |
シェリア | ごめんなさい。力になれなくて……。 |
コーキス | マスター、この人たち、みんな……。 |
イクス | うん……負傷した兵士ばかりだ。マークに連絡して救助にきてもらおう。 |
救世軍兵士A | 連絡 ! ? やめてくれ、頼む ! |
イクス | えっ ! ? でも……。 |
救世軍兵士A | まだ帰るわけにいかないんだ。このままじゃ俺たちはただの足手まといになっちまう ! |
救世軍兵士B | ああ。帰るのは目的を果たしてからだ。 |
ヒューバート | 冷静に考えてください。あなた方の目的が何であれその体で遂行するのは難しいでしょう。撤退すべきではありませんか ? |
救世軍兵士C | 馬鹿にするな ! 俺たちはまだやれる。チーグルの野郎を捕らえて連れ帰ればそれを証明できるんだ ! |
アスベル | チーグルって…… !それじゃあなたたちは、彼を捕らえるために独断で動いてるんですか ! ? |
救世軍兵士D | ああそうさ。だから邪魔をしないでくれ。俺たちの存在意義を示す、最後のチャンスなんだよ ! |
帝国兵 | ……くっ ! |
コーキス | あの帝国兵、まだ動けたのか ! |
帝国兵 | はぁ、はぁ……近寄るな ! |
アスベル | しまった、警笛を ! |
帝国兵 | ぐああっ―― ! |
パスカル | ひゃあ、今の何 ! ? 何か飛んできた ! |
アスベル | あの武器は…… ! |
? ? ? | 物事は完全に終わるまで油断してはならない。オレはそう教えていた筈だ。 |
マリク | 詰めが甘いぞ。前にもこんなことがあったな、アスベル。 |
アスベル | あなたは……マリク教官 ! ? |
シェリア | 教官もこの世界に ! ? |
ソフィ | 教官、久しぶり。 |
ヒューバート | 皆さん待って下さい !……あなたは本当にマリク・シザース本人ですか ? |
パスカル | もしかして弟くん教官がリビングドールかもって疑ってる ? |
マリク | ふっ、さすがヒューバートだ。アスベル、お前は真っ直ぐすぎる。時にはこのくらいの疑り深さは必要だぞ。 |
アスベル | は、はい ! ご助言頂きありがとうございます ! |
ヒューバート | まったく……。兄さん、あなたという人は……。 |
ソフィ | ねえ、教官は教官でいいの ? もう近寄ってもいい ? |
パスカル | いいよ~。ついでにあたしもソフィに近寄っちゃお~っと♪ |
ソフィ | パスカルはだめ。 |
マリク | 相変わらずだな、お前たちは。元気そうで安心したぞ。 |
イクス | アスベル、よければ俺にも紹介してくれないか ? |
アスベル | ああ、すまないイクス。この人は俺の騎士学校時代の恩師なんだ。具現化されてたんだよ。 |
マリク | マリク・シザースだ。そうか……君が鏡士のイクスか。 |
イクス | 俺のことを知っているんですか ? |
マリク | 帝国に囚われていた間にそこそこの情報は仕入れてある。この世界のことも、自分自身の状況もな。 |
シェリア | 囚われてって……それじゃ教官は脱走してきたんですか ! ? |
マリク | ああ。イ・ラプセルという城にいたんだがハロルドという研究者の手引きで逃げられた。 |
コーキス | マスター、ハロルドって人は確かカイル様の仲間だったよな。 |
イクス | うん。デクスさんの情報では具現化後の所在は確認が取れてないって話だったけどイ・ラプセル城で研究していたのか。 |
コーキス | ってことは、ハロルド様は帝国側の鏡映点……なんでマリク様を逃がしてくれたんだ ? |
マリク | この先は別の場所で話そう。今の小競り合いで帝国兵が集まってくるかもしれん。 |
イクス | あ、お礼が遅れましたけど先程はありがとうございました。警笛を鳴らされていたら、今頃どうなっていたか。 |
マリク | 礼には及ばん。仲間を呼ばれて困るのはオレも同じだからな。 |
ヒューバート | なるほど。この付近の兵士の多さはあなたへの追っ手も含まれていたわけですね。 |
マリク | そういうことだ。オレは今、この森の奥にある猟師小屋を根城にしてる。そこなら少しは落ち着けるはずだ。 |
マリク | おい、そこの救世軍。お前たちも一緒に来い。今はまだ戻れんのだろう ? |
救世軍兵士A | すまない、世話になる……。 |
マリク | アスベル、お前にはしんがりを任せる。他の者は負傷兵を守りつつ周囲を警戒しろ。すぐに出発だ。 |
アスベル | はい、よろしくお願いします ! |
イクス | さすが、アスベルを指導した人だな。こっちまで背筋が伸びる気がするよ。 |
コーキス | 俺もマリク様に教わりたいぜ。戦闘での立ち回りとかさ。 |
ソフィ | じゃあ今度、コーキスも一緒に教官の話聞く ?教官は、色んなことを知ってるよ。 |
コーキス | 聞く聞く ! ソフィ様はどんなこと教わったんだ ? |
ソフィ | えっと、パスカルは魚類でエラ呼吸、とか。 |
コーキス | マ、マジか ! ? どう見ても人間なのに ! ? |
シェリア | 落ち着いて、コーキス。見た目通り、パスカルは人間よ。教官のあの見た目と雰囲気に流されたら駄目。 |
イクス | ははは……。なるほど。マリクさんがどういう人かちょっとわかった気がするよ……。 |
キャラクター | 5話【8-5 テセアラ領の森4】 |
アスベル | それでは、教官はリチャード救出のために動いておられたのですか。 |
マリク | ああ。帝国を探っているハロルドが報せてくれた。 |
イクス | ……ということは、ハロルドさんって人は獅子身中の虫……ってことかな ? |
コーキス | え ! ? ハロルドって人も人じゃなくて虫なのか ! ? |
マリク | ああ、丁度、幼虫からさなぎに変態したところだったな。 |
コーキス | ヘンタイ ! ? 虫でヘンタイ ! ? |
イクス | マリクさん ! 真顔で冗談を言うのはやめて下さい ! ?コーキスも、もう少し勉強しような、色々と。 |
アスベル | コーキス。イクスはハロルドさんがわざと味方の振りをして帝国の情報を集めているって言っているんだよ。 |
ヒューバート | そう断定するのは早計ですよ。教官はどうお考えですか ? |
マリク | そうだな。今のところは疑う理由はない。だが、気を付けた方がいいのは確かだ。 |
イクス | そう……ですね。 |
マリク | ハロルドの話によれば、帝国は陛下をエフィネア領主に据える気のようだ。そのためにチーグルを分離しようと考えているらしい。 |
ヒューバート | 陛下をリビングドールβにするつもりですね。 |
シェリア | 酷いわ。陛下の心や身体を、まるで道具のように……。 |
イクス | でもそれなら、どうしてチーグルを監獄へ連れてきたんだろう。帝国でリビングドールβにすればいいのに。 |
マリク | 陛下は初期型だから……どうとか言っていたな。陛下とチーグルは心を共有しているそうだ。 |
コーキス | そういえばそうか。リチャード様もフレン様と同じタイプだったよな。 |
アスベル | ああ、だから前に助け出せた時はリチャードを眠らせておくしかできなかった。 |
マリク | だが心を分離する技術を持つ者が亡くなったとかで心に入る力を持ったリチアという鏡映点を使って分離を行う計画を立てたようだ。 |
シェリア | リチアって、コハクがいつも話してる人だわ。 |
ソフィ | 大事な友達だって言ってた。教官、リチアがどこにいるか知ってるの ? |
マリク | テセアラ領の監獄だ。彼女の力でバルバトスを大人しくさせるために派遣されている。 |
アスベル | だからリチャードも監獄に送られることになったんですね。それで教官もこちらへ。 |
マリク | ああ。だがバルバトスが脱獄してこの騒ぎだ。さらにオレ自身にも追っ手が迫って動きづらくなっていたところに、だ。 |
パスカル | あたしたちが登場 ! って感じ ? |
マリク | いいタイミングだったぞ。思っていたよりも、オレは運がいいらしい。 |
マリク | それでだ。運がいいついでにお前たちの計画にオレを加えてはもらえないだろうか ? |
アスベル | 教官のお力を貸して頂けるのですか ! |
マリク | 貸すも貸さないもないだろう。むしろこの場合は、オレが助けてもらう方だ。 |
マリク | イクス、どうだろう。オレの知る限りではあるが情報も提供する。 |
イクス | もちろんです。こちらこそお願いします ! |
救世軍兵士A | 待ってくれ。俺たちも協力させてもらえないか。 |
イクス | えっ、でも……。 |
救世軍兵士A | 俺たちが役に立つってことをマークさんに証明したいんだ。 |
救世軍兵士B | 無力だと思われてる俺たちがどう挽回すればいいのかこれ以上思いつかないんだよ……頼む ! |
コーキス | 一体、救世軍はどうなってんだ ?マークは上手くやってると思ってたのに。 |
アスベル | ……なあイクス、コーキス。彼らが望むなら加えてやったらどうだろう。 |
イクス | アスベル ? |
アスベル | ……俺にも覚えがあるんだ。この人たちは今、自分の無力感で押しつぶされそうなんじゃないかな。 |
アスベル | こういう時には、誰かの役に立つことで救われることもあると思う。だから……。 |
イクス | アスベル……。わかった。彼らにも一緒に来てもらおう。みんなもいいよな。 |
救世軍兵士A | ありがとう ! この恩は必ず返す。 |
マリク | だがな、いつまでもそのままではいられんぞ。己の価値は、己で見出すしかない。それだけは忘れるな。 |
救世軍兵士A | ……わかっているさ。 |
イクス | 俺、マークに連絡しておくよ。救世軍の拠点でマークたちと合流するつもりだったけどこの敵の多さじゃ、時間的ロスが大きすぎる。 |
イクス | このままマリクさんと一緒にリチャードさんを救出する。 |
イクス | 救世軍の人たちも一緒だから、当然連携作戦になるし向こうに話は通しておかないと。……皆さんも、それでいいですね ? |
救世軍兵士A | ああ。よろしく頼む。 |
| テセアラ領 救世軍施設 |
マーク | 俺の話は聞いただろう ?なのにここを出て行こうってのかよ。 |
バルバトス | 俺に指図するんじゃねぇ !今、貴様らが生きていられるのは俺なりの情けだということを忘れるなよ ! |
マーク | はいはい。で ? 出ていってどうするつもりだ。 |
バルバトス | 知れたこと。メルクリアを殺す。 |
マーク | はぁ……。あんた、今の状況がわかってて―― |
ルック | あの、マークさん、魔鏡通信が……。 |
イクス | マーク ! 大至急伝えたいことがあるんだ。 |
マーク | 悪いが取り込み中だ。手短に頼む。 |
イクス | 了解。そっちに向かう途中に救世軍の負傷兵と会ったんだ。それで、彼らと一緒にチーグル奪還作戦を進めることになった。 |
バルバトス | チーグル…… ? |
ルック | あいつら ! 何をやって……。 |
マーク | ……今更連れ戻すわけにもいかねぇだろう。イクス、そのまま計画を続行してくれ。 |
イクス | わかった。それと、チーグルの移送に関する新たな情報が入ったんだ。 |
イクス | チーグルは船で監獄へ入る予定だったけどバルバトスさんの脱走騒ぎで変更になって別の港から陸路を使って監獄へ向かっているらしい。 |
マーク | そうか。こっちでも対応を検討する。手間かけるが、あいつらのことよろしく頼むな。 |
イクス | ああ、任せてくれ。 |
ルック | 今の件、負傷兵の捜索に出た者にも連絡しておきます。しかしまさか、こんなことになるとは。 |
マーク | あいつらが単独で行動するよりはイクスたちと一緒の方がマシだろう。 |
バルバトス | ……ふっ、はははははっ ! |
マーク | バルバトス ? |
バルバトス | そうだ、思い出したぞ !チーグル……あの小娘の一味だったな。 |
マーク | (しまった、こいつチーグルを知ってたのか !) |
バルバトス | くくく……メルクリアをおびき出すいいエサになる。マーク、貴様にはつくづく感謝するぞ ! |
ルック | か、勝手にここを出ることは許さ―― |
バルバトス | 退けぇい ! ! |
ルック | うあああっ ! |
マーク | ルック ! 大丈夫か ! ? |
マーク | おい、待てバルバトス ! バルバトス ! !……くそっ ! 何で俺の周りにはこう面倒な奴らばかり集まってくるんだ ! |
キャラクター | 6話【8-9 テセアラ領の森8】 |
イクス | 街道か、もしくは森側のルート、ですか。 |
マリク | ああ。港から監獄までの陸路は複数あるがハロルドの話では、この二つが有力だ。現場を確認したがオレも同感だ。 |
マリク | 街道はオレたちで押さえる。アスベル、イクス、ソフィ、用意をしておけ。 |
ヒューバート | では、ぼくたちはこちらの森側で陛下の輸送隊を待ち伏せます。何かあったらすぐに連絡をください。 |
アスベル | 頼んだぞ、ヒューバート。シェリアとパスカルをよろしくな。イクス、他に気になることはあるか ? |
イクス | いえ、特には。変更後の方針もすぐに決まってマリクさんに指揮をお願いしてよかったです。 |
コーキス | それじゃ行ってくるぜ、マスター。 |
イクス | ああ。コーキスも気を付けろよ。 |
コーキス | そりゃこっちのセリフだぜ。アスベル様、マスターが無理しそうな時は強引にでも止めてくれよな。 |
アスベル | わかった。でも、どうして俺なんだ ? |
コーキス | だって、ラムダ様を説き伏せたアスベル様ならマスターのことも上手く説得してくれそうだしさ。んじゃ、頼みます ! |
アスベル | ラムダ様……か。コーキス、今はラムダのことを俺たちと同じように考えてくれてるんだな。 |
イクス | ああ。アスベルと同じ具現化された存在だし今はもう俺たちと一緒にいるんだからあいつにとって様づけは当然なんだと思うよ。 |
アスベル | ……ありがとう。よし、俺もコーキスの期待に応えるぞ !イクス、無茶はほどほどにしてくれよ ? |
イクス | わかってる。けど、もしかしたら逆になるかもしれないぞ ? アスベルだってラムダの時には相当無茶したって聞いてるし。 |
マリク | ……おい、アスベル。さっきから気になってたんだが、ラムダがどうした ?リチャードから引き離されたとは聞いているが……。 |
アスベル | 教官、ご存じなかったんですか ?でしたら報告が遅れてすみません。ラムダは今、俺の中にいるんです。 |
マリク | 何だと ! ? お前、ラムダに寄生されているのか ! ? |
アスベル | 寄生というよりは、同居というか……。 |
マリク | とにかく詳しく話してくれ。 |
アスベル | はい。少々長くなりますが……。 |
マリク | 本当にそんなことが可能だとは……驚いた。 |
アスベル | ただしコーキスが言ったようないい関係ではなく俺はまだ拒絶されたまま……だと思います。 |
アスベル | 一度だけ、ラムダの意思で力を貸してくれましたがそれ以降は反応がないんです。 |
マリク | なるほど。今はその目以外に異常は出ていないか ?ラムダの浸食を感じることは ? |
アスベル | いいえ。何の問題もありません。 |
ソフィ | 今のラムダ、大人しいよ。 |
マリク | そうか。だが解決には至っていないのだろう。どうするつもりだ。 |
アスベル | 本当はもっとラムダと話したいのですが―― |
イクス | あっ、ごめんアスベル。連絡が来た。――どうした、コーキス。 |
コーキス | マスター、こっちが当たりみたいだぜ !帝国の部隊が近づいてる。 |
パスカル | 兵士がいっぱいでさ~。全部相手にしてたら肝心のターゲットに逃げられちゃうかも。 |
ヒューバート | 陛下は馬車で運ばれているようです。馬車を隊列から分断させれば奪還の成功率も上がると思います。 |
マリク | そうか。だったら分断後に馬車を別のルートへ追い込めばより確実だ。そこで待ち伏せよう。 |
マリク | ただし、そこへ誘導する者が必要になるが……。 |
救世軍兵士A | 俺たちを使ってくれ。戦闘では足手まといだがバックアップならできる。 |
救世軍兵士B | ああ。襲撃で混乱した隊列を分断し目標の馬車を誘導すればいいんだろう。 |
マリク | バックアップと言っても危険な仕事だぞ。本当にいいのか。 |
救世軍兵士C | 承知の上だ。やらせてくれ ! |
マリク | わかった。だが命を捨てるような真似はするなよ。逃げるのも戦術のうちだ。 |
マリク | では襲撃はヒューバートたちが担当。ターゲットの分断と誘導を救世軍。オレたちは先回りをしてチーグルを捕獲する ! |
ソフィ | ――教官、馬車が来た ! |
アスベル | ヒューバートたち、上手くやったみたいだな。 |
イクス | ああ。誘導場所も計画どおり。救世軍との連携は大成功だよ。 |
マリク | 喜ぶのはまだ早いぞ。あいつらが繋げたチャンスを活かすも殺すもオレたち次第なのだからな。 |
三人 | はい ! |
マリク | 最後まで油断するなよ。――行くぞ ! |
キャラクター | 7話【8-10 テセアラ領の森9】 |
イクス | アスベル ! チーグルを確保してくれ ! |
アスベル | わかった !――大人しく出て来い ! チーグル ! |
チーグル | ……以前と同じ状況か。あの時もお前たちが襲撃者だったな。 |
チーグル | おおかた影に小娘でも仕込んで不意打ちを狙ってるんだろう ? |
マリク | 大人しく投降しろ。お前の味方はいない。 |
チーグル | だろうね。そうさせてもらうよ。 |
アスベル | え…… ? |
チーグル | 何を呆けた顔をしてるんだい ?連れていけと言っているんだ。 |
チーグル | ああ。抵抗する気はない。 |
イクス | マリクさん、本気だと思いますか ? |
マリク | ……確かに、罠の可能性も捨てきれん。 |
マリク | チーグル、後ろを向け。拘束するが構わんな ? |
チーグル | 野蛮だな。だが、正しい判断だ。好きにすればいい。 |
アスベル | チーグル……お前は一体……。 |
シェリア | さあ、みんな早く ! 急いで ! |
救世軍兵士 | はぁ、はぁ……。 |
アスベル | どうしたんだ、シェリア。向こうで何かあったのか ? |
シェリア | アスベル、陛下は確保したのね ! ?だったらすぐに逃げて ! |
シェリア | 分断した隊列にバルバトスが攻めてきたの。チーグルを捜して追って来てるわ ! |
イクス | バルバトスさんは救世軍にいる筈じゃないのか ! ? |
パスカル | そんなのわかんないよー !今は弟くんやコーキスが足止めしてるけど―― |
ソフィ | コーキスたち、来たよ ! |
ヒューバート | 皆さん、早くここを離れてください !すぐにバルバトスが来ます ! |
コーキス | あいつ、全然ひるまないんだ !本当に大怪我してんのかよ !ゴリラみたいに馬鹿力だし、うぜーよ ! |
イクス | ……時間がないな。転送ゲートを使おう。 |
コーキス | なっ、何言ってんだよ ! それは駄目だ ! |
イクス | 死ぬ訳じゃないさ。それにアスベルたちのためにもリチャードさんを守らなきゃいけない。 |
アスベル | イクス、待ってくれ ! 他に方法を―― |
バルバトス | 見つけたぞ…… !こんなところに隠れていやがったか !チーーーーグルゥウウウウッ ! ! |
救世軍兵士 | 早く逃げてくれ ! ここは俺たちが防ぐ ! |
バルバトス | なんだと ?ろくに戦えもしないゴミ共が何をほざきやがる ! |
アスベル | あなた達も逃げるんだ ! このままじゃ―― |
救世軍兵士たち | 戦えなくても壁くらいにはなる !俺たちだって……戦士なんだ ! |
バルバトス | ほぅ。思い上がりも甚だしいが、その意気やよし。――望みどおり皆殺しにしてやるぜ ! |
マーク | 待て、バルバトス ! そこまでだ ! |
バルバトス | 貴様……。 |
イクス | マーク ! どうなってるんだ ! ? |
マーク | いいから行け ! 俺を信じて、ここは任せろ ! |
イクス | わかった ! 転送ゲート…… |
アスベル | イクス ! |
コーキス | マスター、やめて―― |
イクス | ――展開 ! ! |
バルバトス | 消えただと…… ?このクソがぁあああああああああっ ! ! |
救世軍兵士 | うわああああっ ! |
バルバトス | この虫けら共が !俺の復讐を邪魔しやがって ! 死ねぇええ ! ! |
マーク | ――待った ! ! |
マーク | そんなにメルクリアが憎いならあの小娘がいる帝国へ向かう、簡単な方法があるぜ。知りたくはないか ? |
マーク | だがそれ以上、俺の部下に手を出したら俺も本気であんたとやりあわなくちゃならねぇ。 |
マーク | それよりは、俺の話を聞いてとっとと帝国へ向かった方がいいだろう ?英雄バルバトス殿 ? |
バルバトス | ははははっ ! 面白い奴だ。気に入った。貴様はいつか、このバルバトス様が殺してやる。メルクリアを八つ裂きにした後でな ! |
マーク | ……また殺されリストに追加されたのかよ。もう好きにしてくれ。それじゃあ交渉成立でいいな。 |
マーク | ……ルック、負傷兵の奴らを回収して手当してくれ。 |
ルック | はい ! |
キャラクター | 8話【8-14 閑散とした街道2】 |
マリク | ……ここはどこだ ? |
ヒューバート | ぼくたちの拠点です。無事に戻ってこられたようですね。 |
マリク | あの一瞬でここまで来たのか……驚いたな。さっきまでの騒ぎが嘘のようだ。 |
シェリア | ……アスベル、どうしたの ? |
アスベル | 救世軍の負傷兵は無事だろうかと……。 |
イクス | そうだな……。でも、何かあればマークが連絡をくれるさ。今はまずリチャードさん……を……。 |
コーキス | マスター ! やっぱフラフラじゃねえか ! |
アスベル | 済まない。イクスがこんなことになるのを止められなくて……。 |
コーキス | アスベル様のせいじゃないって。俺も、今のは仕方なかったって思うし……。 |
コーキス | とにかく休まないとな。ほらマスター、部屋に行くぞ。 |
イクス | 俺のことはいいって。それよりもリチャードさんを助けないと……。 |
チーグル | ……鏡士。ここにビフレストの魔鏡術を受け継いだ者はいるのか ? |
イクス | ……いや、いない。 |
チーグル | そうか。僕は初期型リビングドールだ。バルドとフレン同様に僕はリチャードの心核と共にある。 |
チーグル | お前たちは、ローゲの心核を何らかの方法でバルバトスから取り除いたようだが同じようにはいかないよ。 |
コーキス | だからって、リチャード様を返さない気か ! ? |
イクス | ……いや、精霊装なら分離を促すことができるかもしれない。スピルリンクしてから精霊装を使えば、あるいは……。 |
コーキス | マスター、まさか行く気じゃないだろうな。 |
イクス | さすがにこの状態じゃ無理だってわかってるよ。他の誰かに頼んで、スピルリンクしてもらう。 |
イクス | 今、俺やミリーナ以外で精霊装を使えるのは確か、スタンさんとリオンとヴェイグか……。 |
イクス | コーキス、誰か精霊装を使える人とスピルリンクできる人を呼んできてくれないか ? |
コーキス | よし、任せとけ ! |
チーグル | 精霊装か。お前たちが使った後心核からローゲのアニムス粒子が乖離しかけていたな。なるほど……。 |
チーグル | 理屈はまだよくわからないが確かにあれならばいけるかも知れないな。 |
アスベル | ……どういうつもりだ ? |
チーグル | 何がだ ? |
マリク | まるで陛下から分離されることを望んでいるような口ぶりだ。何を企んでいる ? |
チーグル | ……別に企んでなどいないよ。 |
チーグル | それよりも、この体のことを話しておこう。今は僕がリチャードという存在を封じている状態だ。 |
チーグル | もう長い間、彼の声は聞こえない。リチャードとやらを助けたければ――僕を、殺せ。 |
キャラクター | 9話【8-15 リチャード】 |
アスベル | これがリチャードの心の中なのか。 |
ソフィ | ねえアスベル、さっき教官から何かもらってた ? |
アスベル | ああ。疑似心核だってさ。今回は必要ないだろうけど自分は入れないから、念のために持ってけって。 |
ソフィ | そう。みんなで来られたらよかったね。 |
ヴェイグ | すまない。他の仲間も来たかっただろうにオレが枠を取ってしまって。 |
アスベル | 何いってるんだ。精霊装を使えるヴェイグがいないとリチャードは助けられないんだ。来てくれて感謝してるよ。 |
ソフィ | うん。本当にありがとう、ヴェイグ。お礼に、ご飯を全部ピーチパイにしてもらうようにクレアに頼んでおくね。 |
ヴェイグ | いや、それは……気持ちだけで十分だ……。 |
アスベル | コハク、リチャードの心核っていうのはどこにあるんだ ? |
コハク | もっと奥の方だと思うよ。 |
ソフィ | チーグルも、そこにいるんだよね。 |
コハク | 多分ね。でもどんな形でチーグルが存在しているのかはわからないから用心はしておいて。 |
アスベル | (チーグル……。一体何を考えているんだ。本当にリチャードを解放する気なのか ? ) |
コハク | 多分、この辺……あっ、誰かいるよ ! |
ソフィ | え ? リチャードが二人 ? |
チーグル | ようやく来たか。お前たちを待っていたよ。さあ、リチャードを心の檻から解き放ってくれ。 |
アスベル | お前は……チーグルだな。それじゃ、そっちが…… ! |
二人 | リチャード ! ! |
アスベル | リチャード、俺だ ! わかるか ? |
ソフィ | リチャード、ねぇ、リチャード ?……どうしたの ? |
ヴェイグ | おかしい……。何の反応もないぞ。 |
チーグル | ……駄目か。 |
コハク | リチャードさんに何したの ! ? |
チーグル | 僕は今までずっとこの者を無理やり封じ込めていたからね。そんな僕の声では彼に届かない。 |
チーグル | 仲間の声であればと思ったんだが……。このままではリチャードの意識は薄まり消えるかもしれない。 |
アスベル | リチャード……。リチャード !お前、このまま消えるつもりか ! ? |
ラムダ | ……消えるだと ? |
アスベル | ラムダ ! ?お前、リチャードのために目覚めてくれたのか ! |
ヴェイグ | アスベルは誰と話しているんだ。 |
ソフィ | アスベルの中のラムダ。目を覚ましたみたい。 |
ラムダ | リチャード、お前は生きたいのではなかったのか。 |
リチャード | ……ラム、ダ…… ? |
コハク | リチャードさん、反応した ! |
リチャード | ラムダ……どこに……。 |
アスベル | リチャード、ここだ。ラムダは俺の中にいる。 |
リチャード | ラムダ……アスベル…… ?アスベル、君なのか……。 |
アスベル | リチャード、しっかりするんだ ! 戻ってこい ! |
リチャード | 嫌だ……。ラムダは僕の希望だったのに……。奴らは僕から希望を奪ったんだ……。 |
チーグル | …………。 |
リチャード | 僕は、僕であることさえも奪われた……。どこの世界にいても同じだ……。争い……裏切り……世界は汚れきっている……。 |
リチャード | 僕は……裏切られるくらいなら、誰とも関わらない……みんな消えてなくなればいい……。僕も……消えてなくなって……。 |
アスベル | お前は消えないよ、リチャード。 |
リチャード | アスベル…… ? |
アスベル | 長い間待たせてしまってすまない。俺は、お前を助けに来たんだ。 |
アスベル | さあ行こう、リチャード。 |
リチャード | 助ける…… ? 何故そんな風に手を差し伸べるんだ。僕は元の世界で人間を滅ぼそうとした。この世界でも、君の敵だったんだろう ! |
リチャード | それなのに……。 |
アスベル | 元の世界でも、この世界でもリチャードは敵なんかじゃなかった。 |
アスベル | 俺とお前は友達だ。だから助けるのなんて当然だろう。 |
ソフィ | そうだよ。リチャードはそんなことも忘れちゃったの ? |
リチャード | ……そうだった。君はいつだって僕の……。 |
アスベル | ほら。何やってんだ。早く手を。 |
コハク | ……もう、大丈夫だよね。リチャードさん。 |
ヴェイグ | ……ああ。 |
チーグル | ――ようやく自我を取り戻したようだな、リチャード。これで僕が心核から分離しても体が崩壊することはあるまい。 |
チーグル | では、最後の仕上げといこうか。精霊装で、この僕を討て。 |
ヴェイグ | ! ! |
チーグル | 何を今更驚くんだい。そうしなければ僕はいつまでもリチャードの心に住み着いたままになるぞ。いいのか ? |
アスベル | チーグル…… ! |
チーグル | さあ、剣を抜け。そしてリチャードを解放するんだ。 |
キャラクター | 10話【8-15 リチャード】 |
ソフィ | ……倒した、の ? |
チーグル | ……フフ……。偽りの生き返しとも……これでお別れ、か。さあ、精霊装で僕にとどめを刺せ ! |
ヴェイグ | ……アスベル。いいんだな。 |
アスベル | ………………。 |
アスベル | ……ああ。頼む。 |
ヴェイグ | ――氷霊よ全てを砕け ! 砕気凍絶斬 ! |
チーグル | ぐああああっ !……くっ……これで……いい……。 |
コハク | チーグルの姿が薄れてる……。 |
リチャード | チーグル……。 |
チーグル | リチャード、君にこの体を返す……。もう二度と……失わぬようにしたまえ。 |
アスベル | チーグル、何故自ら消えるような真似をしたんだ。 |
チーグル | メルクリア様が、そう望む筈だからだ。今のあの方なら……きっと。 |
アスベル | チーグル、まだ逝くな。お前の話を聞かせてくれ。 |
チーグル | 無茶を言う……。今更何を……。 |
アスベル | このまま何もわからずにお前を消してはいけない気がするんだ。頼む。 |
チーグル | ふっ……どうせ消えるなら恨み言の一つも聞いてもらおうか。 |
チーグル | 僕は……ビフレスト皇国の皇族に仕える騎士だった。しかしセールンドとの戦いでは主たるウォーデン殿下や故国を守れず戦死した。 |
チーグル | 死の砂嵐の中、ただひたすら苦痛に耐えながら僕は自らの無力を嘆き、恥じた。それが永遠に続く筈だったんだ。 |
ヴェイグ | 虚無……。そこにお前もいたんだな。 |
チーグル | ああ。それが思いがけず生き返しの機会を得た。僕はダーナに誓った。汚名をそそぎ祖国復興を望むメルクリア様を守る、とね。 |
チーグル | ビフレストを甦らせることが出来るのならばどんな悪辣非道なことさえも成してみせる。そう決めて、お前たちとも戦った。 |
チーグル | その意志は、こうして消える今でも変わらない。オーデンセの鏡士たちは怨敵、お前たちも同様だ。 |
アスベル | …………。 |
チーグル | 当初はメルクリア様もそうだった。手段を問わず、ただ無邪気にビフレスト復興のみを目指していた。 |
チーグル | けれど……何も知らない子供だったメルクリア様が今、様々なものに触れて変わろうとしている。 |
チーグル | 今のメルクリア様なら、きっとリチャードをリビングドールから解放することを選ぶだろう。 |
ソフィ | だから、あなたは自分から消えるの ? |
チーグル | ……そうだよ。それに……こんな命令を下すのはメルクリア様にとって心の痛むことだろうからね。 |
チーグル | メルクリア様のため、ビフレストの未来のため……これで……僕の役目は……。 |
アスベル | 駄目だ !だったら尚更、お前は消えるべきじゃない ! |
ヴェイグ | アスベル ! ? どうするつもりだ ?何かできることがあるのか ? |
アスベル | ああ、いざというときはこれが使えると思っていた。 |
ソフィ | あ、教官がくれた疑似心核 ! |
アスベル | チーグル、この中に移れないか ? |
チーグル | 何だと…… ? |
アスベル | お前の仲間のローゲは人工心核のままで俺たちが預かってる。 |
チーグル | ローゲは虚無に戻ってはいないのか…… ? |
アスベル | そうだ。そしてうまくいけばお前も虚無には戻らずにこの世界に留まれるはずだ。だから、この心核に移ってくれ。 |
チーグル | ……安い同情だね。 |
アスベル | 同情……かもしれない。だけど、俺と同じように考えている仲間だっている。 |
アスベル | シングを知っているだろう。シングは、虚無に閉じ込められた人々の魂も救いたいと言っていた。 |
チーグル | だからと言って、この程度の話で友人を苦しめた存在を、お前は許せるのか ? |
チーグル | そうやって、自己満足で僕たちを助けてこの先どうするつもりだ。 |
アスベル | リチャードやラムダにした非道な行いは許せない。その先をどうすればいいかもわからない。だけど……それでも……。 |
アスベル | (……ごめん、リチャード、ラムダ) |
アスベル | 俺は、お前たちを救いたいんだ ! |
チーグル | ……君の名を教えてくれないか。 |
アスベル | アスベル・ラントだ。 |
チーグル | そうか。僕はトルステン・ドンナー。チーグルは僕の幼い頃の名だ。……それと、アスベル。ひとつ、頼みがある。 |
チーグル | いつかローゲの心核と共に僕をメルクリア様のもとへ届けて欲しい。 |
アスベル | わかった。約束する。 |
チーグル | ……感謝する。すまなかったね、リチャード。 |
コハク | 一瞬、疑似心核が光った……。チーグルが入ったってことだよね。 |
リチャード | チーグル……。 |
アスベル | これで、ようやく本当のリチャードに会えるな。さあ、行くぞ。 |
リチャード | 行くってどこに ? |
ソフィ | あのね、シェリアも、ヒューバートも、パスカルも、教官も、みんなリチャードに会いたがってるんだよ。だから……。 |
アスベル & ソフィ | 一緒に帰ろう。リチャード。 |
リチャード | あ……。 |
アスベル | リチャード、目が覚めたか ! |
ソフィ | おはよう。リチャード。 |
ヒューバート | 陛下、ご無事で何よりです ! |
パスカル | お帰り~ ! そんでもって久しぶり ! |
マリク | これでようやく全員そろったな。待ちわびておりました。陛下。 |
シェリア | 順番で言えば、教官が一番最後ですからね。陛下、お体の具合はいかがですか ? |
コーキス | 俺、ミリーナ様たちを呼んでくるよ。きっと大喜びするぜ ! |
イクス | 俺はジュードに知らせてくる。リチャードさんの体調をみてもらわないとな。 |
アスベル | (信じ続けてよかった。こんな風にリチャードと向き合える日を……) |
ラムダ | 信じる……か。 |
アスベル | (ラムダ !) |
ラムダ | お前は、我を利用しリチャードを貶め仲間に刃をむける敵にさえも歩み寄るのか。なるほど。 |
アスベル | (…………) |
ラムダ | 人間は強欲で、残忍で、傲慢。我にとって、その認識は変わらない。 |
ラムダ | だが……お前やコーネルが見せたかったものが今は少しだけ理解できる気がする。 |
アスベル | (ラムダ……。今なら俺の手を取ってくれるか ?) |
ラムダ | お前が我の手を取るというのなら―― |
アスベル | (手……この手、は……) |
リチャード | 心の中では、君がこうして僕の手を取ってくれたね。 |
アスベル | リチャード……。 |
リチャード | 本当はずっと君に助けて欲しいと願っていた。……ありがとう、アスベル。 |
アスベル | ああ。いつだって助けにいくさ !この世界でも俺たちは……。そうだ ! ソフィ、こっちに来てくれ。 |
ソフィ | なに ? |
アスベル | 俺たちの手に、お前の手を重ねるんだ。 |
ソフィ | あ…… ! わかった ! |
アスベル | ……たとえこの先何があっても。 |
リチャード | 僕たちは友達でいよう。 |
ソフィ | 友達でいよう。 |
アスベル | よし、これで俺たちはこの世界でもずっと友達だ ! |
ソフィ | うん。ずっと一緒だね。アスベル、リチャード。 |
リチャード | ああ。新たな世界での、新たな友情の誓いだ。忘れないよ。絶対に。 |
| to be continued |
キャラクター | 1話【9-1スピルメイズ】 |
アニス | ここが、あの八番目のイオン様の心の中、なんだよね。スピルメイズだっけ ?人の心の中に入るって、おとぎ話もびっくりだよ。 |
シング | オレにとっては当たり前のことだけど他の世界の人から見たらそう感じるんだろうね。 |
シング | ……っていうか、八番目のイオン様ってどういう意味 ? |
アニス | ……あ。えっと、それは……。 |
ジェイド | 我々の世界にはイオンという名前の人物が複数いましてね。まぁ、便宜上の呼び方だとでも思って下さい。 |
ジェイド | さて、このスピルメイズの奥に、心核がある訳ですね。今回は、帝国が八番目のイオンを領主にするために人工心核が植え付けられている筈ですが……。 |
シンク | ――そんな話、時間の無駄だね。先に行くよ。 |
ジェイド | おっと。ここは普通の場所ではありません。和を乱すような行動はいただけませんねぇ。シンくん ? |
シンク | ! ? |
アニス | さっすが大佐 ! 呼び方に悪意を感じますね ! |
ジェイド | 悪意だなんてとんでもない。同じ世界から具現化された者同士是非親交を深めたいと思いましてね。 |
シンク | 虫酸が走るね。 |
ジェイド | それは良かった。では、今後は『烈風のシンくん』と名乗ってみてはいかがでしょう ? |
アニス | 烈風のシンくん♪ |
シンク | ……くだらないね。それともボクに殺されたい訳 ? |
ジェイド | またまたご冗談を。アニスはともかく私があなたに負けるとでもお思いですか ? |
シンク | 面白い。八番目の生ゴミのスピルメイズをお前の墓穴にしてやるよ ! |
シング | やめなよ三人とも !今は喧嘩なんてしてる場合じゃないだろ ? |
アニス | え ! ? 今の流れでアニスちゃんまで被弾 ! ? |
シング | シンくんって呼ばれるの、シンクが嫌がってたのにアニスも一緒になってからかっただろ。そういうのは良くないと思う。 |
ジェイド | おや、怒られてしまいましたね、アニス。反省して下さい。 |
アニス | いっときますけど、大佐も怒られてますからね ! |
シンク | 時間が惜しいって言ったよね。さっさと行くよ。 |
シング | あっ、待ってよシンク !ジェイドさんの言い方はともかく単独行動が危険なのは確かだよ。 |
シング | それに、一緒にスピルリンクしたんだからもっと仲良くやっていこうよ。 |
シンク | ……うるさいな。アンタまでボクに構ってくる気 ? |
シング | う~ん、構うっていうか単にシンクと仲良くなりたいって思ったんだけど。 |
シング | それにほら ! オレとシンクって名前も似てるし。二人合わせて『シンシンコンビ』なんてどうかな ! |
シンク | 馬鹿じゃないの ? |
シング | ええっ、いいコンビ名だと思ったんだけどな……。 |
シンク | どうでもいいからさっさと人工心核の場所まで案内してよね。 |
ジェイド | ――だ、そうですよ。素直な方のシンくん♪ |
ジェイド | どうやら、ここが最深部のようですね。 |
アニス | うわぁ……。なんかここ……荒れてる ? |
シング | うん。こんなにボロボロになってるスピルメイズを見るのはオレも初めてだよ……。 |
ジェイド | これは、報告に上がっていたウッドロウやファントムのケースと同じですね。 |
ジェイド | 心核の取り外しの際、被験体の精神に深刻な負担が掛かっており、それがこのようなスピルメイズの破損に繋がっているのでしょう |
ジェイド | 帝国ではかなり強引な心核へのアプローチが行われているとみて間違いありません。 |
シンク | 生ゴミにふさわしい扱いって訳だ。 |
シング | くそっ ! 帝国軍の奴ら……。人を何だと思ってるんだ ! ! |
ジェイド | 使い捨ての駒、といったところでしょうね。 |
アニス | そんなの……酷すぎるよ……。 |
シンク | そう ? これぞ正しいレプリカの使われ方でしょ ? |
アニス | そんな言い方…… ! |
シンク | 何感情的になってるのさ。このイオンのことは何も知らない筈だろ ? アンタはこのイオンと導師のイオンを混同してるんだよ。 |
アニス | ……違うよ ! 何も知らなくても勝手に心を奪われることが酷いことだって思うのは当たり前でしょ ! |
アニス | あんただって、この八番目のイオン様のことを心配して、ここまで一緒に来たんじゃないの ! ? |
シンク | おめでたいね。ボクはただ、この世界で作られたレプリカのなれの果てを見たかっただけさ。 |
シング | ……ねえ、さっきからシンクが言ってるレプリカって何のこと ? |
シンク | へぇ……。話してないの、死霊使い。 |
ジェイド | ええ。必要の無い情報でしたから。――今までは。 |
シンク | レプリカはレプリカ。ニセモノの複製品のことさ。 |
シンク | フォミクリーっていう、あらゆるモノの複製を作る技術があってね。レプリカってのはその技術で作られた複製品のこと。 |
シンク | この八番目のイオンも、ボクも、ルークも被験者(オリジナル)から作られた複製品――レプリカなんだよ。 |
シング | 複製って……コピーってこと ?人間をコピーして作るなんて……。 |
シング | ――あ、待って。じゃあ、もしかしてルークとアッシュって双子じゃなくて……。 |
シンク | 詳しいことは、そこのメガネにでも聞いてよね。フォミクリーを開発したのはそいつなんだから。 |
シング | え ! ? |
ジェイド | ええ。その通りです。ルークの件については……そろそろ皆さんにご説明するつもりでいました。 |
ジェイド | 詳細はスピルメイズを出てからにしましょう。 |
シング | ……あの、シンク。ごめん、オレ、何も知らなくて……。 |
シンク | 知ってたらどうだっていうのさ。どうでもいいだろ。 |
シング | どうでもよくないよ !それに、オレはシンクがレプリカだからって偽者だなんて思わない。 |
シンク | はぁ ? |
シング | だってシンクにもちゃんとスピリアがあるじゃないか。そのスピリアは、コピーでも偽物でもないシンク本人だけのものだと……オレは思う。 |
アニス | ……シングの言う通りだよ。シンクの心は、シンクだけのものだよ。それは、この八番目のイオン様も一緒だから……。 |
シンク | 安い同情だね。ゴシンセツニドウモ。それとも、いつかみたいにこの仮面を取ってお礼を言ってあげようか ? |
シンク | ありがとう、アニス――ってさ。ああ、この世界の導師イオンは生きてるからボクがあいつの真似をしても意味は無かったね。 |
アニス | シンク……。 |
ジェイド | シンク。ことさらに自分とイオン様を重ねることで自分を代用品ではないと主張するのも結構ですが時間が惜しいと言ったのはあなたでしたよね。 |
シンク | 何…… ! |
ジェイド | 死にたかろうと殺したかろうと結構ですから全てはスピルメイズを出てからにして下さい。 |
ジェイド | シング。心核を元に戻してもらえますか ? |
シング | ……わかった。 |
キャラクター | 2話【9-2 閑散とした街道】 |
カーリャ | あっ、皆さま ! ! 無事に帰って来たんですね ! ! |
ミリーナ | おかえりなさい。その……彼の容態はどうですか ? |
シング | それが、心核は元に戻したんだけどまだ目を覚まさなくて……。 |
ジェイド | 八番目のイオンの心の中――スピルメイズはファントムたちと同じようにかなり荒れていました。まして、彼は色々と特殊な生まれですから。 |
ジェイド | 目を覚ますまでにはまだしばらく時間がかかると思いますよ。 |
ミリーナ | そうですか……。早く元気になってくれればいいんですけど。 |
ジェイド | ところで八番目のイオンが目を覚ます前に彼をどう呼ぶのか決めておきたいのですが。 |
ミリーナ | ああ……。そうですよね。まさか本人に『八番目のイオン』さんなんて呼びかける訳にはいきませんよね。 |
カーリャ | う~ん、でも、どんな名前がいいんですかね ?こういう時にパッと名前を付けられるカイルさまやコレットさまがいたらよかったんですけど……。 |
ジェイド | では、ここはアニスに任せましょう。 |
アニス | えっ ? 私ですか ? |
ジェイド | ええ。あなたなら彼にぴったりの名前を思いついてくれるはずです。 |
アニス | ……大佐って人の心が読めるんじゃないですか ? |
ジェイド | とんでもない。顔に書いてあっただけですよ。それで、どう呼ぶつもりなのですか ? |
アニス | ……えっと。あの人のこと【リベラ】って呼んであげたいなって思ってます……。 |
シンク | …………。 |
ミリーナ | リベラ……。それって、どういう意味なの ? |
ジェイド | 古代イスパニア語――私たちの世界の古い言葉で【自由】という意味です。 |
アニス | ……自由でいて欲しいんだ。しがらみとか縛り付けるものなんかはねのけて。 |
シング | 自由かぁ。うん ! ぴったりだと思うよ !きっと喜んでくれるんじゃないかな ! |
アニス | えへへ、そうだと嬉しいんだけどね……。 |
ヒスイ | おい、シング ! ! ここにいたのか ! ? |
シング | ヒスイ ? どうしたのさ、そんなに慌てて ? |
ヒスイ | どうしたもこうしたもあるか ! !あいつが……リチアが帝国軍の奴らのところにいるってわかったんだよ ! ! |
シング | えっ ! ? リチアが ! ? |
ミリーナ | リチアさんって……鏡映点リストにもあったシングたちの仲間よね。 |
ヒスイ | ああ、さっきアスベルたちが戻ってきたときに言ってやがったんだ。リチアはテセアラ領の監獄にいるらしい。 |
ジェイド | ヒスイ、それは間違いありませんか ? |
ヒスイ | マリクっつう、帝国軍から逃げて来た奴からの情報だ。帝国内部の動きも相当詳しかったぜ。 |
ジェイド | ……マリクという名前は鏡映点リストにあったアスベルたちの仲間ですね。 |
ジェイド | 無条件に信じていいかはともかく話を聞いておく必要はありそうだ。そちらはシングとヒスイにお任せしていいですか ? |
ヒスイ | お任せされなくても聞きに行くぜ !おい、行くぞ ! シング ! |
シング | ああ、わかった ! |
カーリャ | あわわ、何だか慌ただしくなってきましたね。 |
ミリーナ | そうね。みんな、無理をしないといいんだけど……。 |
ジーニアス | ねぇ、シングは戻ってきた ? |
ミトス | ……ジェイドとアニスとシンクがいてシングがいないってことは入れ違いになったみたいだね。 |
ミリーナ | ええ。シングたちの仲間の居場所がわかったの。今はヒスイさんと一緒に対処してもらっているわ。 |
エミル | そうなると、こっちの調査に協力してもらうのは難しそうだね。 |
ジェイド | ミトスやエミルが関わっているということは世界樹の調査……でしょうか。 |
ジェイド | しかもシングを連れていこうと考えるとは……中々面白い。目の付け所がいいですね。 |
ミトス | 人間に褒められてもちっとも嬉しくないけどね。 |
ミリーナ | え ? どういうことですか ? |
ジーニアス | えっとね、簡単に言うと世界樹と精霊は繋がっている可能性が高いんだ。 |
ラタトスク | ……元の世界と同じなら、大樹――世界樹は俺のモノだからな。 |
ラタトスク | ミトスが、ソーマ使いなら、樹を通じて精霊の心にアクセスできるかも知れないと言い出してな。 |
ミトス | テセアラ領の大樹カーラーンとアセリア領の世界樹ユグドラシルを調べればこの世界の精霊のことも分かるんじゃないかと思って。 |
ミリーナ | 確かに、それは面白い着眼点だわ……。ありがとう、みんな。 |
ミトス | 別におま……君たちのためじゃないけどね。そうだ、ミリーナ。君が撮った写真の中に世界樹が写っているものはあるかな ? |
ミリーナ | うーん、どうだったかしら…… ?でも、写真は部屋で保管してあるから探しておくわ。 |
ミトス | ……ありがとう。それじゃあボクたちはテセアラ領の世界樹の調査に行ってくる。 |
ミトス | そっちならソーマ使いはいなくてもラタトスクがいるから。 |
エミル | 待って、ミトス。戦力的にも、もう一人欲しいって言ってたけど、どうするの ? |
ミトス | ああ、それはもう見つけたから平気。 |
シンク | ………なんでこっちを見るのさ。 |
ミトス | 話は聞いてたでしょ ?ボクは君の友達になってあげたんだから友達のことは助けてくれないと。 |
ジェイド | おや ? あの烈風のシンクにお友達……。それはそれは…… ! |
アニス | なんとなんと…… ! |
カーリャ | よかったですねぇぇぇぇぇぇ ! ! ! |
シンク | ――シークレット…… |
エミル | 待って待って ! ?魔鏡技は待って ! ? |
ジーニアス | そうだよ。いい機会だからシンクも一緒に行こうよ。ボク、ミトスの新しい友達がどんな人なのかずっと気になってたんだ。 |
ラタトスク | ああ、俺もだ。さあ、ぐだぐた言ってないでさっさとこい。 |
シンク | おいやめろ ! 服を引っ張るな ! ! |
ジェイド | いやぁ、これは面白いものを見せて頂きました。当分はいじって遊べますね。 |
キャラクター | 3話【9-3 閑散とした街道】 |
マリク | すでにイクスたちには伝えたが、ハロルドは内部から帝国を崩すために情報を集めている。 |
マリク | だが、彼女自身が動きにくくなっているのが現状だ。下手に動けば、こっちの計画がバレてしまうからな。 |
イクス | それで……マリクさんやリチアさんのような何らかの理由で帝国にいる鏡映点に協力してもらっている状況らしいんだ。 |
ヒスイ | 俺が知りてえのはそんなことじゃねぇ !あいつは……リチアはちゃんと無事なんだろうな ! ! |
マリク | すまないが無事だと断言はできん。帝国側もリチアの力を必要としている以上手荒な真似はしていないと思うが……。 |
ヒスイ | クソッ ! ! だったら早く助けに行くぞ ! ! |
シング | イクス、テセアラ領の監獄にはオレたちが行ってくるよ。 |
シング | コハクも一緒に行きたいだろうけど、今はリチャードの心核を治してる途中だからさ。コハクには戻ってきたらリチアのことを伝えてくれないかな ? |
イクス | わかった。俺も一緒に行ければいいんだけど……今の状態だと足手まといに……なるから…………コーキスに…………。 |
コーキス | マスター ! ? 大丈夫か ! ?真っ青だぞ ! ? |
イクス | はは……ごめ……ん……。ちょっと眩暈がしただけだよ。大したことは……。 |
コーキス | そんなわけないだろ ! |
コーキス | (やっぱり、マスターの様子がおかしい。いくらゲートを何度も使ったからってこんなになっちまうもんなのかよ…… ? ) |
コーキス | ごめん、シング様、ヒスイ様。俺も一緒には行けないよ。こんな状態のマスターをほっとけないし。 |
コーキス | それに、鏡精はマスターの影響を受けるんだ。世界中にある魔鏡結晶のおかげで俺はあんまり制限はないけど……。 |
シング | ううん、気にしないでコーキス。それにイクスも。今回はオレたちでちゃんとリチアを助けてくるよ。ね、ヒスイ。 |
ヒスイ | 当たり前だ !帝国軍の連中なんざぁ、俺が一発で仕留めてやんよ。 |
イクス | ……うん。ありがとう、二人とも。 |
マリク | だが、そうなると監獄に向かうための戦力に少し不安が出てくるか……。 |
マリク | 俺が行ってやれればいいんだが情報共有のために残る必要があってな。 |
レイア | ねえねえ、しいな。白米が好きならサイダー飯も食べてみなよ !絶対美味しいからさ ! |
しいな | 本当に美味しいのかい、その料理 ?そんなヘンテコな組み合わせ、聞いたこともないよ。 |
レイア | 大丈夫大丈夫♪って、あれ ? みんな、どうしたの ?なんか、深刻そうな感じだけど……。 |
しいな | それにイクス。あんた随分顔色が悪いね。知らない顔も増えてるみたいだし……。 |
コーキス | えっと、色々あってメチャクチャ人手が足りないんだ。 |
イクス | コーキス……。相変わらず説明が雑すぎるぞ……。 |
シング | えっと、これからヒスイとテセアラ領の監獄に行こうとしてたんだけど、戦力が足りなくてさ。誰か探しにいこうかと思ってたんだ。 |
レイア | えっ、そうなの ? だったら任せて !事情はよくわかってないけど、助っ人が欲しいならわたしがシングたちと一緒に行くよっ ! |
シング | ホントに ! ? 助かるよ、レイア ! |
レイア | あっ !でもしいなにサイダー飯作ってあげる約束が……。 |
しいな | 何言ってんだい。そんなのいつでもいいだろ。それより、あたしも一緒に連れてっとくれよ。 |
しいな | 大人しくしてるっていうのはどうも性に合わなくてね。それに潜入調査ってのはあたしの育った里の得意分野サ。 |
ヒスイ | へっ、頼もしいじゃねーか !なら、俺たちで監獄に乗り込むぞ ! |
ミリーナ | う~ん、やっぱりないわね。 |
カーリャ | ミリーナさま~。只今戻りました~。 |
ミリーナ | おかえりなさい、カーリャ。リベラの様子はどうだった ? |
カーリャ | はい、顔色もよくなっていましたよ。リベラさま、早く目を覚ますといいですね。 |
ミリーナ | ジュードたちに任せておけば安心だと思うわ。それに、アニスも傍にいてくれてるし。 |
カーリャ | そうですね ! それじゃあ、カーリャはリベラさまが目を覚ましたときの為にいっぱいお菓子を用意しておきます ! |
ミリーナ | ふふっ、カーリャらしいわね。医療チームの許可が出たら差し入れしてあげましょう。 |
カーリャ | はい ! ところでミリーナさま。写真なんか並べてどうしたんですか ? |
ミリーナ | さっきミトスが言ってたでしょ ?世界樹の写真があれば渡してほしいって。 |
カーリャ | なるほど ! それで早速ミトスさまの為に写真を探しているんですね。 |
ミリーナ | ええ。最近はミトスもコレットやアーチェと一緒に物資の調達を手伝ってくれてるの。だから、私も力になってあげたかったんだけど……。 |
ミリーナ | 駄目ね。やっぱりアセリア領の世界樹の写真は撮ってなかったみたい。 |
カーリャ | う~ん、写真を撮れるのはミリーナさまだけですし他の人が持ってることもないですよね、きっと。 |
ミリーナ | ……ねえ、カーリャ。私、今からアセリア領へ行ってみようと思うの。 |
カーリャ | ええっ ! ? 今からですか ? |
ミリーナ | 善は急げって言うじゃない。それに、私もみんなの為に何かしたいの。 |
カーリャ | それならカーリャも一緒に行きます !そこまで離れちゃうと存在が保てるとも思えないですし……。 |
ミリーナ | ありがとう、カーリャ。それじゃあ、準備をしてから向かいましょう。 |
ロンドリーネ | あれ ? ミリーナ。どこかに出掛けるの ? |
ミリーナ | ロディ !ええ、ちょっとやることができちゃって。でもすぐに戻るわ。 |
ミリーナ | あっ、それと、このことはみんなに内緒にしててね。特にミトスには、絶対よ。ちょっとしたサプライズの仕込みだから。 |
ロンドリーネ | うん、わかった。気を付けて行ってきてね。 |
カーリャ | ご安心を ! ミリーナさまはカーリャが全力でお守りしますので ! |
ロンドリーネ | あはは、それは頼もしいね。それじゃあ、ミリーナのことは頼んだよ、カーリャ。 |
カーリャ | はい ! では、行ってきますね ! |
キャラクター | 4話【9-4 イ・ラプセル城】 |
クンツァイト | ――スピルリンク終了。戦闘モードを解除する。 |
ハロルド | あら、思ったよりも早かったわね。どう、予定通り上手くいった ? |
クンツァイト | 肯定。対象者アトワイトの心核の入れ替えは成功。これで目を覚ますはずだ。 |
アトワイト | ――ん、んん……。 |
ハロルド | おや、言ってるそばからお目覚めみたいね。 |
アトワイト | ……驚いたわ。本当にあなたのおかげだったのね、ハロルド。 |
ハロルド | その様子だと、事情はもうわかってるって感じかしら? |
アトワイト | ええ、私のスピルメイズ――心の中で聞いたわ。そこにいるクンツァイトさんそれに、ヨーランドさんからもね。 |
アトワイト | 改めて、助けてもらったことを感謝するわ。自分の身体を勝手に使われるなんてあまり気分がいいものじゃないもの。 |
ハロルド | お礼なんてお門違いもいいとこよ。あんたの心核と人工心核を入れ替えたのはこの私。恨み言ならたっぷり聞いてあげるわ。 |
イオン | すみません、アトワイトさん。お叱りなら僕も一緒にお願いします。僕たちはどうしても帝国の目を欺く必要があったんです。 |
アトワイト | わかってるわ。ハロルドのことはよく知ってるし私も軍に所属していた人間だもの。ちゃんと理解はしているつもりよ。 |
ハロルド | ところでアトワイト。あんた、違和感とかない ?シドニーが残していった心核除去装置には副作用があった筈なんだけど。 |
アトワイト | 大丈夫よ。ヨーランドさんが修復してくれたわ。それに、彼女はちゃんと私の心の中に宿っていて今も私たちの話を一緒に聞いているわよ。 |
クンツァイト | アトワイトのスピルメイズの破損状況は自分でも修復不可能であった。だが、全て彼女が元に戻してみせたのだ。 |
イオン | ヨーランドさんは、鏡士の始祖――初代ビクエ、でしたよね。とてつもない力を持っているんですね。 |
ヨウ・ビクエ | (あら、照れちゃうわね。でもこれは別に私が特別優れている……というのとは違うの。詳しい話はいずれするけれど) |
ヨウ・ビクエ | (アトワイト。申し訳ないけどしばらく心の中にお邪魔させてもらうわね) |
アトワイト | ヨーランドさんが、力のことはいずれ説明してくれると言っているわ。暫くは一緒に私と行動してくれるみたい。 |
ハロルド | ここまでは、私たちの計画通りね。他にも色々話したいところなんだけどそうのんびりもしていられないわ。 |
ハロルド | いい、アトワイト。あんたはこの後、クンツァイトと一緒にここから脱出しなさい。 |
アトワイト | 脱出って……いきなり突拍子もない話ね。 |
ハロルド | それがさ、グラスティンとかいう帝国側に厄介な奴がいんのよ。 |
ハロルド | そいつにあんたを利用されないためにもヨーランドのことを隠すためにもここにいない方がいいの。 |
アトワイト | 大事なカードはこっちで取っておくってところかしら。 |
ハロルド | そういうこと。あと、念のために聞いておくんだけどヨーランドから何か言ってきたりしてる? |
ヨウ・ビクエ | (私もハロルドに賛成よ。あの趣味の悪い男には会いたくないわ) |
アトワイト | ヨーランドさんも賛成だそうよ。でも不思議ね、自分の中に別の人の意識があるなんて。 |
クンツァイト | 意識と体を分離した存在。今のヨーランドはリチアさまがコハクの中にスピリアを宿していた状態と酷似している。 |
ヨウ・ビクエ | (だって、こうしていないとこの世界が崩壊しちゃうきっかけを与えちゃうもの) |
アトワイト | ヨーランドさんが意識だけになっているのもこの世界の崩壊と関係があるようね。 |
イオン | 確か、帝国が精霊の力を利用しているせいでヨーランドの封印が解けそうになってしまったので心を分離した、と言っていましたよね ? |
ヨウ・ビクエ | (その通りよ。歪められた目覚めは世界に悪影響を起こすの) |
ヨウ・ビクエ | (だから、ハロルドたちに協力してもらって私と相性のいい鏡映点を捜してもらってたのよね。まぁ、本人は色々実験できて楽しそうだったけど) |
アトワイト | ……その様子がはっきりと目に浮かぶわ。でも、その寄生しやすい鏡映点っていうのが私だったってことでいいのかしら ? |
イオン | ええ。おかげで今後はヨーランドが自由に動けます。誰かの心に寄生していないと、自分の体から遠くへは行けないということでしたから……。 |
帝国軍兵士 | ——ハロルド様。只今グラスティン様がお見えになられました。至急お話を伺いたいとのことですが……。 |
ハロルド | はいはい、ほんっとせっかちな奴ね。部屋で待ってるって伝えなさい。 |
イオン | ……時間稼ぎは難しそうですね。 |
ハロルド | クンツァイト。予定通りアトワイトと一緒に精霊の封印地へ向かいなさい。そこでヨーランドにダーナの意志っていうのを聞いてもらうのよ。 |
クンツァイト | 了承。これより作戦を実行する。行くぞ、アトワイト。 |
アトワイト | ええ。ハロルド、あなたも気を付けてね。 |
ハロルド | この私がヘマなんてすると思う ?人の心配より自分の心配をしなさい。 |
アトワイト | ふふっ、あなたらしい返答ね。 |
キャラクター | 5話【9-7 テセアラ領の森】 |
ヒスイ | やっと見えたぜ。監獄だ ! |
シング | うん、マリクが教えてくれたルートのおかげで帝国兵とも鉢合わせにならずに済んだね。 |
レイア | よ~し ! みんな、このままガンドコ行くよっ ! ! |
シング | ああっ、レイア ! オレのセリフ取らないでよ ! ? |
レイア | いいじゃん♪ 一回言ってみたかったんだよね~。 |
しいな | あんたたち、もうちょっと緊張感ってのを持ったらどうなんだい ?ここからは見張りも厳しくなってるはずサ。 |
ヒスイ | …………。 |
しいな | ――ヒスイ、大丈夫かい ? |
ヒスイ | あっ ? ああ、わりぃ。ちっと考え事をしてただけだ。 |
レイア | やっぱりリチアさんのこと、心配だよね……。 |
ヒスイ | ああ。あいつ、たまにとんでもねぇ無茶しやがる時があるからよ。厄介なことに巻き込まれてなきゃいいんだが……。 |
しいな | ……だったら尚更、あたしたちが迎えにいってあげなきゃいけないね。 |
ヒスイ | ……だな。待ってろよ、リチア……。俺が必ず助けてやるからなッ ! ! |
シング | う~ん、やっぱり変だよね……。 |
レイア | ん ? どうしたのシング ? |
シング | なんかさ、この監獄の周りって他の場所と比べて魔鏡結晶がいっぱいあると思わない ? |
レイア | そういわれてみれば……。ここまで来る間もかなり沢山あったよね。 |
しいな | 確か魔鏡結晶ってのは、イクスがでっかい魔鏡結晶に閉じ込められたんだか閉じこもったんだかの時世界中にできたものなんだろ ? |
しいな | たまたまこの辺に多かったってだけじゃないのかい ? |
シング | でも、この監獄、結構最近建てられたものだと思うよ。 |
シング | もしこの監獄が、イクスがスタックオーバーレイした後に建てられたなら、監獄の建物にまで結晶が侵蝕してるのはおかしくない ? |
ヒスイ | ……確か魔鏡結晶ってのはイクスの力の具現化だったか ? |
ヒスイ | よくわからないがイクスの様子がおかしいのはこの魔鏡結晶が原因……かもしれねぇな。 |
しいな | はぁ……。こういうときにリフィルがいれば何か意見が聞けたんだけど……―― |
しいな | ――っと、誰かいるね。 |
レイア | あれは、帝国兵 ! ? |
ヒスイ | こんなところで見つかったら厄介だ。おめぇら、一旦隠れるぞ。 |
帝国軍兵士A | おい ! お前たちも早く来い ! ! |
帝国軍兵士B | なんだ ? 中で何かあったのか ? |
帝国軍兵士A | リチア様が急に倒れたんだ !その後すぐに監獄の中にまで魔鏡結晶が発生して囚人たちを捕えていた檻も壊れちまった ! ! |
シング | そんな ! リチアが倒れただって ! ? |
帝国軍兵士A | 待てっ ! そこに誰かいるのか ! ? |
しいな | マズい。気づかれちまったよ ! |
ヒスイ | ――槍鴎ッ ! ! |
帝国軍兵士A・B | ぐはああっ ! ! |
レイア | 凄いよヒスイ !離れてる見張りを一瞬で倒しちゃった ! |
シング | ありがとう、ヒスイ。……ごめん。オレのせいで見つかっちゃって。 |
ヒスイ | んなことはいいんだよ !それよりお前も聞いたろ ! ? リチアが倒れたって !コソコソ潜入なんざしてられっか ! ! |
ヒスイ | 警備兵が何人いようが俺が全員ぶっ倒す ! !行くぞ、おめぇら ! ! |
レイア | あっ ! ? ちょっとヒスイ ! ?一人で先に行ったら危ないよ ! ! |
しいな | いや、場が混乱している今なら……。シング、レイア !あたしたちもヒスイの後に続くよ ! |
クンツァイト | ……ここは ? |
アトワイト | ヨーランドの話だと、精霊の封印地への転送魔法陣を展開した筈なんだけど……。 |
ヨウ・ビクエ | (いえ、どうやら私たちは……アイフリードのお墓がある場所に飛ばされちゃったみたいね) |
アトワイト | アイフリード ? |
クンツァイト | 警告。前方に生体反応を確認。何者かがこちらに近づいてきている。 |
ヴィクトル | ――誰だ、お前たちは ?まさか、帝国の人間なのか ? |
クンツァイト | 対象、敵対行動に移る可能性あり。こちらも戦闘モードに移行する。 |
アトワイト | 待って。私たちは……。 |
ヨウ・ビクエ | (アトワイト、よかったら代わってもらえないかしら?私、この人のこと、少しだけ知っているのよ) |
アトワイト | そうなの ? だったらここはあなたに任せたほうがいいみたいね。 |
ヴィクトル | ん ? 女、今なにか言ったか ? |
ヨウ・ビクエ | ――ヴィクトル、元気そうで何よりだわ。 |
ヴィクトル | ……何を言っている ? |
ヨウ・ビクエ | ごめんなさい。この体の持ち主――アトワイトに頼んで意識を譲ってもらったの。 |
ヨウ・ビクエ | あなたも、もう一度精霊の封印地に向かおうとしてここへ来てしまった……んじゃないかしら ? |
ヴィクトル | 貴様、何者だ ? |
ヨウ・ビクエ | 私はヨーランド。ダーナの巫女よ。ヨウ・ビクエの方が通りがいいかしら。 |
ヴィクトル | ダーナの巫女、だと ? |
ヴィクトル | ……そうか、お前がバルドの言っていた【眠りの巫女】というわけか。 |
キャラクター | 6話【9-8 テセアラ領の森】 |
ゼロス | ったくよー ! なんで俺さま、毎回毎回こいつと組まされなきゃいけないわけ ! ? |
クラトス | ここは帝国領の上空だ。その上で我々が呼ばれたのだから空からの奇襲を考えているのだろう。 |
ゼロス | んなことたぁ、言われなくてもわかってるっつーの !はぁ~、いいよなあんたは。班長会議だとかいってアジトの美女軍団に会えるんだからよ……。 |
マーク | よう。相変わらず仲良しこよしってとこか? |
ゼロス | 本気でそう見えるなら早いとこ目医者でも紹介してもらえよな。 |
ゼロス | ……で、なんだ ? その後ろにいる大男は。また性懲りも無く男の仲間を増やしたのかよ。 |
マーク | 仲間、ねぇ……。ま、色々訳ありでな。こちらの『偉丈夫』はバルバトス『さん』だ。 |
マーク | これからクラトスと二人でこいつを芙蓉離宮に下ろしてやってくれないか。 |
ゼロス | 芙蓉離宮 ? 何でそんなとこに……。 |
バルバトス | ごちゃごちゃ言ってないで、さっさと俺を運べ。文句がある奴は、顎を切り落としてやる。 |
ゼロス | ちょ ! ? 何だよこいつ ! ?完全にやべー奴でしょーよ ! |
マーク | 頼むぜ、バルバトスの旦那。ここでやり合ったところでお前の目的が果たせなくなっちまうだけだぞ。 |
バルバトス | ……フンッ。 |
ゼロス | なぁ、マーくんよ。俺さまが言うのもなんだが仲良くする相手は選んだほうがいいぜ ? |
マーク | 俺もそろそろ自分で呆れてるところだよ。ともかく、今回は手伝ってやってくれ。 |
ゼロス | へいへい、わーったよ。 |
クラトス | では、行くぞ。上空とはいえ、敵地に長居するのは得策ではないからな。 |
バルバトス | 急げ ! 飛ばせ !俺はいつまでも紳士的じゃないぞ ! !……待っていろよメルクリア。くくく……。 |
マーク | ……やれやれ。ようやく厄介払いができたな。これで少しは落ち着けそうだ。 |
ローエン | マークさん、ここにいましたか。 |
マーク | ……っと、そうでもなかったか。ローエン、どうかしたか ? |
ローエン | 先ほど、精霊の封印地へ向かったヴィクトルさんから連絡がありました。何でも、ヨウ・ビクエという人物と遭遇したとか……。 |
マーク | ヨウ・ビクエ ! ? シャーリィに取り憑いてたいかにもフィル好みのあの姐さんか。 |
ローエン | ほっほっほ。それを聞いたらフィリップさんがどんな顔をすることか。 |
マーク | 顔を真っ赤にして全否定する様が目に浮かぶぜ。 |
ローエン | その、バリボーな美女が好きなフィリップさんがマークさんを呼んでいますよ。ヨウ・ビクエとの通信に同席して欲しいそうです。 |
ヨウ・ビクエ | 久しぶりね、フィリップ。マーク。それに、知らない顔が増えてるみたい。 |
ヨウ・ビクエ | 私の隣にいるイケメンはクンツァイト。帝国にいた鏡映点よ。 |
ローエン | 確かシングさんたちのお仲間でしたね。 |
クンツァイト | シングを知っているのか ?帝国を離反したとは聞いていたが。 |
マーク | ああ。黒衣の鏡士達のところで元気にやってるぜ。 |
フィリップ | ――あの、一つ確認ですがあなたは本当に初代ビクエなんですか ? |
ヨウ・ビクエ | ええ。今はアトワイトの体を一瞬借りているのよ。もちろん同意の上でね。 |
ヨウ・ビクエ | まぁ、だから初代ビクエだと信じろと言われても難しいでしょうけれど、今は信じたフリだけでいいから話を聞いてもらえると助かるわ。 |
フィリップ | は、はぁ……。でも、イクスたちからは初代ビクエがイ・ラプセル城にいたと報告受けていましたが……。 |
ヨウ・ビクエ | ダーナの心核がある精霊の封印地へ行こうとしたらここ――魔の空域に飛ばされちゃったみたいなの。 |
ヴィクトル | 私も同じだ。バルドから聞いていた精霊の封印地へ続く転移の呪文を用いたが、何度転送魔法陣を作り出しても魔法陣の先には精霊の封印地とは違う景色が見えた。 |
ヴィクトル | そのたびに転移をキャンセルしたが結果は同じ——。だが、転移の呪文以外で封印地に辿り着く方法はない。そこで、調査のためにも飛び込んでみたのだが……。 |
マーク | 魔の空域の島に辿り着いて初代ビクエと鉢合わせって訳か。 |
フィリップ | 待って下さい。そこが魔の空域だというのなら魔鏡通信が使えない筈では――。 |
フィリップ | ……いや、これも初代ビクエの力か。 |
ヨウ・ビクエ | ええ。私、ティル・ナ・ノーグではとっても便利な存在なの。 |
ヨウ・ビクエ | だから、自分を卑下しないでちょうだいね。私は特別。不自然な存在。そこにはそれなりの理由がある。 |
ヨウ・ビクエ | でも、そんな私でもこの場所にいるのはちょっと厄介でね。 |
ローエン | まるで神の如き力を持つあなたでもそこからは抜け出せないと ? |
ヨウ・ビクエ | ご明察よ。素敵なおじいちゃま。ヴィクトルから聞いたけれど、心の精霊の封印の影響で転移の呪文が通じなくなってしまったのだと思うわ。 |
ヨウ・ビクエ | 端的に言えば、私たちは今この島に閉じ込められている状態なの。 |
マーク | そいつは笑えない話だな。何とかならないのか ? |
ヨウ・ビクエ | 『私だけ』の力じゃ無理ね。だから、当代ビクエの力を貸してほしいの。 |
フィリップ | 僕の力 ? |
ヨウ・ビクエ | ええ、ひとまずここを脱出するために魔鏡通信機を利用して、あなたの心にスピルリンクするわ。 |
フィリップ | スピルリンク ! ?ですが、それはソーマを使わなくては……。 |
クンツァイト | 問題ない。自分の腕型ソーマ「ヴェックス」とヨーランドの力を合わせれば、この場にいる全員でのスピルリンクは可能だ。 |
ヨウ・ビクエ | そこから、私の力であなたがいる飛空艇……ケリュケイオンって言ったかしら ?そっちに皆で行くことにするわ。 |
フィリップ | 僕の心を通じてここへ移動するというのか ! ? |
フィリップ | ヨウ・ビクエ……。同じビクエだというのに僕とはレベルが違いすぎる……。 |
ヨウ・ビクエ | だから言ったでしょ。私は不自然な存在だって。私がこんなことをできるのは私が【ダーナの巫女】だから。 |
ヨウ・ビクエ | 人間にこんなことをできる方が――おかしいのよ。 |
キャラクター | 7話【9-10 テセアラ領の森】 |
レイア | うわ……脱走した囚人と兵士たちでメチャクチャだね……。 |
シング | うん。巻き込まれないようにオレたちも早くリチアを見つけてここを出よう。 |
ヒスイ | リチア……どこにいるッ ! ? |
しいな | ヒスイ、落ち着きなって。聞いた話だとリチアは帝国の客人として迎えられている筈だろ。監獄にいるってことはないはずサ。 |
ヒスイ | あぁ ? ここじゃないならどこにいるっつーんだよ ! ! |
しいな | 怒鳴ってないで頭使っとくれよ !あたしゃ、そういうのは苦手なんだ ! |
ヒスイ | 俺だって―― |
ヒスイ | ……そうか。リチアが客分扱いならあいつがいるのはこんな檻の近くじゃねぇ。お前ら、ついてこい ! |
シング | ここが看守棟か。こっちも魔鏡結晶の被害が酷いみたいだね……。 |
ヒスイ | ああ。だが客分なら応接室とかそういうところに案内するだろ。だからきっとリチアも―― |
レイア | ねえ ! あそこの壊れた扉の先 !誰か倒れてない ! ? |
ヒスイ | あれは……リチアッ ! ! おいっ、リチアッ ! ! |
リチア | …………その、声は。 |
ヒスイ | リチアッ ! ! 俺だ ! !待ってろよ ! ! すぐに助けてやっからな ! ! |
リチア | ヒ……スイ……。 |
ヒスイ | リチアッ ! ? クソッ ! !魔鏡結晶が邪魔で先に進めねぇ ! ! |
レイア | マズいよ ! リチア、すっごく苦しそうだよ ! ? |
ヒスイ | 何で壊れねえんだよ、この結晶 ! !オラッ ! ! オラァッ ! ! |
しいな | ちょっと、ヒスイ ! ?そんなに術を使ったらあんたの身体が持たないよ ! ? |
ヒスイ | 俺の身体なんてどうだっていい ! !あいつが苦しんでる姿はもう見たくねぇんだよ ! ! |
ヒスイ | 俺が……俺があいつを守るって決めたんだ ! ! |
シング | くっ、リチアが目の前にいるのに、どうしたら……。 |
? ? ? | ――ま、すか ?――マを、――し、者たちよ。 |
シング | えっ ? な、何だ ? この声……。 |
ヒスイ | まさか、ソーマから聞こえてきてんのか ! ? |
? ? ? | ――はい、あなたたちのソーマを通じて私の声を届けています。 |
ヴェリウス | 私は心の精霊ヴェリウスです。シング、ヒスイ。あなたたちのソーマの力でリチアのスピリアを守って下さい。 |
レイア | ちょっと、どうしたの二人とも ? |
シング | ヴェリウスって精霊がオレたちに話し掛けてきてるんだ。オレたちの力でリチアを守れって……。 |
ヴェリウス | 魔鏡結晶に宿るイクスの力が彼女に干渉しデスピル病を発症しています。事態は急を要する。早くリチアにスピルリンクを ! |
ヒスイ | ――シング ! リチアにスピルリンクするぞッ ! ! |
レイア | ――え ! ? 何 ! ? ここ、どこ ! ? |
しいな | ど、どうなってるんだい ! ? |
シング | え ! ? レイアとしいなもスピルメイズに来てるの ! ?どうして ! ? スピルリンクする魔鏡もないのに……。 |
しいな | スピルメイズって……。それじゃあ、ここはリチアって人の心の中なのかい ! ? |
ヴェリウス | ――しいな。今のあなたは知らないでしょうけれどあなたと私には確かな繋がりがあります。それを使って、私があなたとレイアを招きました。 |
ヴェリウス | ソーマ使いの二人を助けてあげて下さい。 |
レイア | うわ ! ? わたしにも声が聞こえた……。今のがヴェリウスの声…… ? |
しいな | ………………。 |
しいな | ヴェリウスの声が聞こえなくなっちまった……。 |
レイア | ヴェリウスは心の精霊だって言ってたんだよね ?わたしの世界では聞いたことがない精霊だけど……。 |
しいな | ……そいつはあたしもサ。まあ、会ったことがないだけであたしの世界にいたのかも知れないけどね。 |
レイア | ミラなら何か知ってたかも……。 |
ヒスイ | だが、今はヴェリウスのことよりリチアのことだ。デスピル病になったってのが本当ならすぐに何とかしないとッ ! |
レイア | デスピル病って何 ? |
シング | ゼロムっていう思念体が、スピリア――こっちで言う心に取り憑く病気、かな。そうなるとスピルーン――心核を喰い尽くされて……。 |
ヒスイ | ……死んじまう。そんなことさせてたまるかッ ! |
アトワイト | あら ? あなたたちは……。 |
クンツァイト | シング ! それにヒスイか ! ? |
ヒスイ | クンツァイト ! ?お前、何でリチアのスピルメイズの中にいるんだ ! ? |
クンツァイト | リチアさまの…… ?ヒスイ、一体何のことだ ?ここはフィリップという人物のスピルメイズだ。 |
シング | そんな筈ないよ。オレたち、ヴェリウスっていう心の精霊にリチアがデスピル病だって言われてスピルリンクした――筈だから……。 |
クンツァイト | リチアさまがデスピル病だと ! ?シング、それは本当なのか ! ? |
ヴィクトル | ヨウ・ビクエ。これはどういうことだ ? |
ヨウ・ビクエ | ……そうね。おそらくイクスの魔鏡結晶を通じてフィリップの心とリチアの心が混ざりあっている状態なんだわ。 |
ヨウ・ビクエ | ねえ、イクスがリチアから物理的に近い場所で転移術のようなものを発動させたってことはない ? |
シング | ……あっ。そういえば、リチャードを助ける時に転送ゲートを使ったって言ってた。 |
ヨウ・ビクエ | やっぱりね。それが心――スピルメイズが混ざった原因よ。 |
レイア | ごめん。全然わからないんだけど……。 |
ヨウ・ビクエ | ああ、だったら、これだけ理解してちょうだい。あなたたちはこのままリチアの心核を目指せば大丈夫ってこと。 |
ヨウ・ビクエ | あとは――クンツァイト。あなたはシングたちと一緒にいったほうがいいわね。あなたにとってもリチアは大切なんでしょう ? |
クンツァイト | しかし、自分が離れてしまうとヴィクトルがこのスピルメイズ内から出られなくなるのではないか ? |
ヨウ・ビクエ | その点は問題ないわ。スピルリンクの解除だけならソーマがなくても私の力だけで可能よ。いざとなったら、優秀な当代ビクエもいるしね。 |
クンツァイト | ならば、シングたちと行かせてもらう。自分はリチアさまの守護機士。我が主の窮地となれば、動かないわけにはいかない。 |
しいな | ちょっと待っとくれよ。あんたたちはどうするんだい ? |
ヨウ・ビクエ | 私とヴィクトルはフィリップのところへ向かうわ。残念だけど、あなたたちとはここでお別れね。 |
ヨウ・ビクエ | そうだ。もしここまであなたたちを導いたっていう心の精霊が、もう一度コンタクトを取ってきたら精霊の封印地の状況を聞いておいてくれないかしら ? |
ヨウ・ビクエ | それじゃあ、またね。 |
レイア | 行っちゃった……。 |
クンツァイト | 彼女たちならば問題はないだろう。シング、ヒスイ。自分はこれよりリチアさまの救出を最優先とする。力を貸して欲しい。 |
ヒスイ | んなもん当たり前だッ !頼むぜ、クンツァイト ! ! |
シング | よし、リチアのスピリアがある場所まで行こう ! |
キャラクター | 8話【9-13 スピルメイズ】 |
シング | みんな、もうすぐ最深部のはずだよ。きっとリチアのスピリアもここに…… ! ! |
ヒスイ | こいつはッ…… ! ! |
クンツァイト | 間違いない。これは我が主のスピリアの反応だ。 |
レイア | じゃあ、リチアは近くにいるんだね ! ? |
しいな | みんな ! あっちに見える人影って……。 |
ヒスイ | あの髪の色……間違いねぇっ ! !おい、リチア ! ! |
リチア | その声は……ヒスイなのですか ! ? |
シング | よかった ! 無事だったんだね、リチア。 |
リチア | シング……それにクンツァイトまで……。 |
ヒスイ | お前、大丈夫なのか ! ?そうだ ! デスピル病は ! ? 帝国の奴らに何かひでぇことされたんじゃねえだろうな ! ! |
しいな | ヒスイ、そんないっぺんに聞いたら答えられるもんも答えられないだろ ?一旦落ち着きなよ。 |
ヒスイ | お、おう……そうだな、わりぃ。 |
リチア | いえ、わたくしを助けるために来てくれたのですよね ?ありがとう、ヒスイ。 |
リチア | ですが、またわたくしはあなたたちを危険な目に遭わせてしまったのですね……。 |
ヒスイ | ああ ? 何言ってやがんだおめぇは ? |
リチア | ……えっ ? |
ヒスイ | お前はな、そうやっていっつも自分だけで背負いこみすぎなんだよ。 |
ヒスイ | お前はずっと、俺たちを守ってくれてたじゃねえか。それに、俺にはお前に返しきれねぇ程の借りがあるんだよ。 |
ヒスイ | ……だからよ、リチア。俺は、お前がどこにいようが絶対に助けに行く。これからも、ずっと一緒にいるためにな。 |
リチア | ヒスイ……。 |
ヒスイ | あっ、いや ! ? へっ、変な勘違いすんなよっ ! !お前はずっとコハクと一緒だから家族みてぇな存在って言いたかっただけだからな ! ! |
レイア | もう、ほんっと男の子って素直じゃないよね。 |
しいな | はは……。まぁ、男ばかりとは限らないけどね。素直になれないのは……。 |
レイア | ………………。 |
シング | リチア、一体何があったの。オレたちが駆け付けたときにはリチアが急に倒れたって聞いたんだけど……。 |
リチア | ここへはリチャードという人物のスピリアからチーグルという人物のスピリアを分離するように言われてきたのです。 |
リチア | ですが、何か騒ぎがあったようでしばらくこの看守棟で待つように命じられました。 |
リチア | しばらく待っていると突然、何者かの不安が、わたくしのスピリアの中に紛れ込んできたのです。 |
リチア | それを退けようとしているうちに、わたくしと不安を生み出す何者かのスピリアが同調して制御不能となってしまいました。 |
クンツァイト | リチアさまが気を失われるほどの力……。 |
シング | まさかそれがゼロムなんじゃあ……。 |
クンツァイト | ――警告 ! ! 前方からの攻撃反応を確認 ! ! |
ヒスイ | 早速現れやがったな ! !リチアのスピリアに勝手に混ざりやがって ! !痛ぇじゃすまさねぇぞ、ゼロムッ ! ! |
しいな | ――いや、ちょっと待っとくれよ ! !あれは……。 |
ゼロム ? | ………………。 |
レイア | イクス ! ? 何でイクスがここにいるの ? |
リチア | いえ、あれは人の形を模したゼロムです。そして、わたくしのスピリアに入ってきた不安の正体でもあります ! |
イクス型ゼロム | ——全部、嘘だったんだ。 |
シング | 嘘 ? |
イクス型ゼロム | そうさ……。俺も、ミリーナも、この世界さえも全て作り物だ。 |
ヒスイ | 作り物だぁ ?こいつ、何言ってやがる ? |
リチア | このゼロムは彼――イクスという人の不安そのもの。ずっと押し込もうとした想いがゼロムとなってしまったのでしょう。 |
しいな | それじゃあ、こいつの言ってることはイクスが抱えている感情だっていうのかい ? |
クンツァイト | 肯定。魔鏡結晶を通じてイクス・ネーヴェの思念がゼロム化したと推測。排除対象と判断する。 |
シング | これが……イクスの思念……。 |
イクス型ゼロム | 俺は……偽物なんだ……。ただの、代用品でしかないんだ……。 |
シング | ! ? |
シンク | レプリカはレプリカ。ニセモノの複製品のことさ。 |
シンク | フォミクリーっていう、あらゆるモノの複製を作る技術があってね。レプリカってのはその技術で作られた複製品のこと。 |
シンク | この八番目のイオンも、ボクも、ルークも被験者(オリジナル)から作られた複製品――レプリカなんだよ。 |
シング | ……違う……そんなはずない ! ! |
シング | 誰かに造られた存在でも ! !世界に生まれた瞬間、イクスはイクスじゃないか ! !そのスピリアもイクスだけのものなんだ ! ! |
イクス型ゼロム | そのスピリア——心だって嘘かもしれないんだぞ !俺から生まれる感情がクリエイトされてないって誰が証明してくれるんだ ? |
イクス型ゼロム | 世界を守りたい気持ちも、ミリーナを守りたい気持ちもそれに、ミリーナから向けられた信頼や愛情すらも作り物だったとしたら、俺は何を信じればいい ? |
イクス型ゼロム | 一体……俺は【誰】なんだ……。 |
レイア | イクス……。 |
ヒスイ | ……んなこと知ったことかよッ ! ! |
イクス型ゼロム | ! ? |
ヒスイ | 感情が造られたものとかんなもん誰にもわかる訳ねぇだろうがッ ! !そんなものは俺だって知らねえよ ! ! |
ヒスイ | だがな ! そんなことより肝心なのはてめぇの覚悟だろうがッ ! ! |
ゼロム型イクス | 俺の、覚悟…… ? |
ヒスイ | お前は今まで何の為に戦って来たんだ ! !世界を……ミリーナたちを守るために戦ってきたんだろうがッ ! ! |
ヒスイ | その感情まで疑っちまうっていうのかよ ! !てめぇにはもう、一番大事なもんが自分のスピリアにあるだろう ! ! |
ヒスイ | お前がいつ造られたとか、んなこたぁ知らねぇが今この瞬間、お前の守りたいもんが壊されようとしたらそいつを守りたいとは思わねぇのか ! ? |
ヒスイ | それが覚悟ってもんだろうがよッ ! |
イクス型ゼロム | そうだ。俺は……俺は……。 |
ヴェリウス | ——ソーマを受け継ぎし者たちよ。ゼロムの力が弱まっています。 |
シング | この声は、ヴェリウス ? |
ヴェリウス | シング、今ならこのゼロムをリチアの心から追い払うことが可能です。 |
クンツァイト | シング ? これは……。 |
シング | ヴェリウスの声だ。みんな ! ゼロムを倒してリチアのスピリアを守るんだ ! ! |
キャラクター | 9話【9-14 閑散とした街道】 |
ルカ | あれ…… ? イクス、どうしたの ?なんだか顔色が……。 |
イクス | ……あ、ああ。ごめん。大丈夫だよ。それより、今さっきリチャードさんが目を覚ましたんだ。アスベルたちが心核を戻してくれて……。 |
イクス | だから念のため、医療班に診てもらおうと思って。お願いできるかな ? |
ルカ | もちろんだよ。――ジュード、ちょっといいかな ! |
イクス | ごめんな。医療班のみんなは働きづめだから…………うぅ……ぐっ…… ! ? |
ルカ | イクス ! ? イクス、大丈夫 ! ? |
イクス | はぁ……はぁ……。胸が……くるしい…… ! ! |
ジュード | ――イクス ! ?待ってて、すぐに原因を突き止めるから。まずは呼吸をゆっくりすることを意識して。 |
イクス | ……はぁはぁ、うぅ…… ! |
ルカ | イクス ! ? |
ジュード | ルカ、イクスをベッドまで運ぶのを手伝って。アニーは鎮痛剤の準備をお願い ! |
アニー | わかりました ! |
クンツァイト | ――魔鏡結晶の破壊に成功。リチアさまの生命反応に異常がないことを確認。 |
ヒスイ | リチア ! ! おい、聞こえるかリチア ! ! |
リチア | ……ちゃんと聞こえていますわ、ヒスイ。 |
ヒスイ | ……ったく、心配かけさせんじゃねぇよ。 |
リチア | ごめんなさい。ですが、あなたが助けに来てくれたときわたくしは、本当に嬉しかったのです。 |
リチア | 愛おしい、わたくしの大切な『家族』にこの世界でも出会えたのですから……。 |
ヒスイ | ……ああ、また一緒だな。 |
リチア | ……ええ。 |
クンツァイト | リチアさま、申し訳ございません。シングたちがいなければ、自分はリチアさまの危機に駆け付けることができませんでした。 |
リチア | いいえ。貴方はこの世界でもわたくしを守ろうとしてくれました。――ですから今度は、わたくしがみんなを守ります。 |
ヒスイ | お前、また無茶しようとしてんじゃねぇだろうな ?今は大人しくしてろ。それに、思念術を使っちまったらお前は……。 |
クンツァイト | ヒスイ、その点に関しては問題ない。驚くべきことだが、この世界に来てからリチアさまの白化の進行は停止している。 |
ヒスイ | なんだとッ ! ? |
レイア | 白化……って何のこと ? |
クンツァイト | ゼロムによるスピリアの消失、または精神が寿命に達することにより、肉体が白い結晶へと変化してしまう現象のことだ。 |
クンツァイト | リチアさまの肉体は思念術を使用すると白化の進行を促進させてしまっていたが現在その傾向は感知されていない。 |
クンツァイト | ハロルドによれば、この世界のエンコードという力がリチアさまの肉体にも影響を与えていると言っていた。 |
ヒスイ | それじゃあ、おめぇ……。 |
リチア | ええ、わたくしもみんなと一緒に戦います。ここから立ち去るくらいの余力も残っています。 |
ヒスイ | バカ野郎……俺は……そんな心配をしてんじゃねぇ。白化が止まってるってことは、これからもお前は……。 |
シング | ……よかったね、ヒスイ。それに、リチアも。コハクもきっと喜ぶよ ! |
クンツァイト | シング、ヒスイ。こちらの情報も共有したいところだがリチアさまの仰った通り、まずはこの場所からの撤退を推奨する。 |
ヒスイ | この足音……マズいな。帝国軍かもしれねぇ。ひとまず、適当なところに隠れんぞ。 |
帝国軍兵士A | くそっ、囚人たちどころか妙な連中まで攻め込んで来やがって。何者だ、あいつらは ? |
帝国軍兵士B | 救世軍の奴らだ。このタイミングで襲撃……。まさか、この変な結晶が異常繁殖したのもそいつらの仕業じゃねえだろうな。 |
帝国軍兵士A | ともかく、周辺の陸路は封鎖したらしいからあとは袋のネズミだ。俺たちはこの看守棟にいるリチア様の保護を優先するんだ。 |
レイア | まずいよ ! 陸路が塞がれちゃったらわたしたちが使うゲートまで行けなくなっちゃう ! ? |
リチア | ……では、船を使ってはどうでしょうか ?この監獄と直結している港にいけばまだ残っている船が見つかるかもしれません。 |
レイア | なるほど ! そこで密航して脱出するんだね !任せて ! わたし、経験者だから皆にもやり方教えてあげる ! |
ヒスイ | おい、自慢げに言うことじゃねぇぞ、それ……。 |
シング | とにかく、港を目指せばいいってことだね。 |
クンツァイト | ――シング。複数の生命反応を感知。この看守棟を目指して来ていると予測する。急いでここを離れた方がいい。 |
しいな | さっきの奴らが言ってたように、狙いはリチアだね。よし、港へ急ぐよ ! |
リチア | ありましたわ ! 船です ! |
レイア | でも、あの一隻しか残ってないみたいだよ。 |
リチア | ヒスイ、大丈夫ですか ?確か、あなたは船が苦手では……。 |
ヒスイ | んなこと気にしてられる場面じゃねぇだろ。気合いで何とかしてやるよ ! ! |
救世軍 | 待ちな ! ! この船は俺たちが使わせてもらう。 |
シング | お前たちは、救世軍 ! ? |
救世軍 | 囚人のくせによく知ってるじゃないか。帝国に向かうためにこの船が必要なんだ。お前たちは大人しく牢屋に戻ってろ ! |
クンツァイト | 敵か ?必要とあれば自分は戦闘モードへと移行するが ? |
しいな | 救世軍ってゼロスのいるとこだろ ?戦う必要は無いんじゃないのか ? |
レイア | ちょ、ちょっと、誤解しないでよ。わたしたち囚人じゃなくて―― |
ルック | やめろ ! その人たちは俺たちの敵じゃない ! |
救世軍 | ルックさん……。 |
ルック | すまないな。こっちも色々訳ありで気が立っててさ。実は俺たち、バルバトスさんを追って帝都へ向かうつもりだったんだ。 |
シング | バルバトス…… ?なんか、よくわからないけどケリュケイオンで行けばいいんじゃないの ? |
ルック | ……いや、そいつはちょっと難しくてな。 |
救世軍 | ルックさん ! マズいですよ ! !監獄から本物の囚人連中が港に集まってきてます ! ! |
しいな | あー、まぁ、考えることはみんな同じか。 |
ルック | 悪いが一旦話は中断だ。まずはここに来る囚人たちを迎え撃つ。お前たちも手を貸してくれ。 |
リチア | わかりました。いきますわよ、クンツァイト。 |
クンツァイト | リチアさまの命によりこれより敵対する勢力の完全排除を実行する。 |
キャラクター | 10話【9-15 リチア】 |
リチア | ――先ほどの人たちが最後だったようですね。 |
ルック | ……結果的に、あんたたちに助けられちまったな。 |
しいな | 結局どうするんだい。囚人たちは追い返したけど船が一隻しかない状況は変わんないよ。 |
ルック | あんたたちの目的はアジトに帰ることだろ ?だったら確か、セールンドにもゲートは存在してるってマークさんが言ってたが……。 |
シング | うん、イクスも班長会議で言ってたよ。ゲートは色んな場所にあるって。 |
ルック | なら、まずはお前たちと一緒にセールンドへ向かってその後に俺たちは帝都を目指す。――これでどうだ ? |
レイア | あっ、それならわたしたちが船を取り合う必要もないね。 |
ルック | 決まりだな。よし、船出の準備は俺たちでやっておく。あんたたちは先に乗っててくれ。 |
シング | わかったよ。ありがとうルックさん ! |
カーリャ | ふえええ ! ? 近くで見るとますます大きく見えますね、この樹。 |
ミリーナ | ええ。こっちはアセリア大陸――クレスさんたちの世界のアニマを元に具現化した大陸にある方の世界樹だから確か……ユグドラシルと言う名前だそうよ。 |
カーリャ | ミリーナさま。写真、撮り終わりましたか ? |
ミリーナ | ええ、ばっちり♪ |
カーリャ | ミトスさまはどうしてこの樹の写真が欲しいんですかね ? |
ミリーナ | 名前が同じだからかも知れないわね。 |
ミリーナ | ミトスには色々お願いしてしまっているからちょっと遠出して写真撮るくらいは私たちでやってあげないと。 |
カーリャ | サプライズですもんね !ミトスさま喜んでくれるといいですね ! |
? ? ? | 貴様が黒衣の鏡士、か。 |
ミリーナ | え…… ? |
カーリャ | ミリーナさまっ ! ? ミリーナさまーっ ! ? |
イクス | ――あれ……ここは ? |
ジュード | イクス ! ? よかった、目を覚ましたんだね。 |
イクス | 俺、どうしちゃったんだ……。 |
アニー | 胸を押さえて、うなされていたんです。顔色はよくなってきていますがどこか身体に違和感はありませんか ? |
イクス | いや……もう何ともないよ。胸の痛みも……なくなってる。 |
ルカ | 僕、ミリーナを呼んでくるよ。さっきは何処かに行ってたみたいだけどもしかしたら、もう帰って来てるかもしれないし。 |
ジュード | そうだね。ミリーナもイクスの体調を気にしていたから……――イクス ? |
イクス | ……えっ……ああ、ごめん。まだ少し寝ぼけてるのかな、ははっ……。 |
イクス | (……あの光景は、本当に夢だったのか ? ) |
ヒスイ | ……んなこと知ったことかよッ ! ! |
イクス型ゼロム | ! ? |
ヒスイ | 感情が造られたものとかんなもん誰にもわかるわけねぇだろうがッ ! !そんなものは俺だって知らねえよ ! ! |
ヒスイ | だがな ! そんなことより肝心なのはてめぇの覚悟だろうがッ ! ! |
ゼロム型イクス | 俺の、覚悟…… ? |
ヒスイ | お前は今まで何の為に戦って来たんだ ! !世界を……ミリーナたちを守るために戦ってきたんだろうがッ ! ! |
ヒスイ | その感情まで疑っちまうっていうのかよ ! !てめぇにはもう、一番大事なもんが自分のスピリアにあるだろう ! ! |
ヒスイ | お前がいつ造られたとか、んなこたぁ知らねぇが今この瞬間、お前の守りたいもんが壊されようとしたらそいつを守りたいとは思わねぇのか ! ? |
ヒスイ | それが覚悟ってもんだろうがよッ ! |
イクス | (覚悟……か……。覚悟ならしてきたつもりだったよ。) |
イクス | (でも……俺の予想が正しければ感情すら……心すら造れるんだ。鏡士の望む通りに。だからファントムだって――) |
イクス | ……ん ? これは、魔鏡通信 ? |
フィリップ | ……イクス。きみに大切な話があるんだ。 |
イクス | ―― ! |
フィリップ | 今、君たちのアジトがある浮遊島に向かっているところだ。……きみとの約束を果たすためにね。 |
イクス | ……やっと話してくれるんだな。 |
フィリップ | ああ。待たせてごめん。今がその時だと思うんだ。だから――直接会って二人だけで話がしたい。 |
イクス | わかった。待ってるよ、フィル。正直……ちょっと怖いけどでも、俺、ずっと知りたかったんだ。 |
イクス | 俺やミリーナは『誰』なのか。 |
| to be continued |
キャラクター | 1話【10-1 イ・ラプセル城】 |
グラスティン | マリク・シザースを逃がしたそうだなぁ ?ベルセリオス博士。 |
ハロルド | ああ、報告は受けたけど、それって私のせい ?リビングドールβの体の管理はあのトカゲみたいな男に任せたじゃない。 |
ハロルド | 文句があるなら、あのディストって奴に任せた自分の無能さを恨んだら ? |
グラスティン | 俺は、ディストには『導師イオンのレプリカを見せるな』と伝えた筈だ。 |
ハロルド | 見せてないわよ。 |
グラスティン | だったら、何故奴はイオンのレプリカと一緒にオールドラント領へ向かった ? |
ハロルド | 知るわけないでしょ……って言いたいところだけどこっちも妙な資料を見つけたのよね。 |
ハロルド | ほら、見て。ティル・ナ・ノーグ各領の領都の住民の詳細な調査票。 |
ハロルド | 名前、性別、身長、体重、髪の色……。あらら、よく見たら黒髪ばっかり。 |
グラスティン | ………………。 |
ハロルド | ま、このリストの中身はどうでもいいのよ。問題は領都の横に書かれてる領主の名前。 |
ハロルド | 今見せてるこれはアレウーラ領のものだけど領主としてティルキスって名前が書かれてるわよね。 |
ハロルド | もしこれと同じような資料がオールドラント領の分もあったなら当然イオンって名前は書かれてるでしょうね。 |
グラスティン | 何が言いたい ? |
ハロルド | 説明しなきゃわからない ?要は私の管理してない情報を見ている可能性があるってこと。 |
グラスティン | ヒヒヒヒヒ……確かに。頭ごなしに疑って悪かったなぁ……ベルセリオス博士。 |
ハロルド | わかってくれればいいのよ。 |
グラスティン | それじゃあ、俺は別の角度からマリク・シザースの件を調べることにしよう。 |
グラスティン | そうそう後でベルセリオス博士の研究室を見学させて欲しい。構わんよなぁ…… ? |
ハロルド | ……もちろん。ただしノックは忘れないでよ。乙女の秘密が詰まってるんだから。 |
グラスティン | ヒヒヒ……心しておこう。そうそう、アトワイトの調整はどうなっている ? |
ハロルド | あんたがこうして邪魔しなければ早く終わると思うけど。 |
グラスティン | ファンダリア領にリビングドールβを送り直す必要があるんでなぁ。頼んだぞぉ ? 間違っても逃がしたりしないようにな ? ヒヒヒヒヒ……。 |
グラスティン | ――リビングドールβ用の肉だがしばらくベルセリオス博士の下へ送り込むのは止めておけ。 |
帝国兵A | しかし、それでは領主の派遣が―― |
グラスティン | そんなものは後回しでいい。所詮デミトリアス――皇帝陛下の甘っちょろい理想を叶えるだけでこの世界の未来にはなんの益もない。 |
グラスティン | それよりあの女、思った通り鏡映点を逃がしていたようだ。 |
グラスティン | ディストが勝手に動くことは予想の範疇だったがそれに便乗する形で、鏡映点共を解放するとはな。ヒヒヒ……面白い。 |
グラスティン | マリクを逃がしたなら、アトワイトやクンツァイトも逃がすつもりだろう。アトワイトとクンツァイトのデータを回せ。 |
帝国兵A | はっ ! 急いで執務室に回します。 |
グラスティン | いや、俺はいったんアスガルド城へ帰る。あの女がダーナの巫女について調べていた形跡があった。ダーナの巫女の体を調べたい。 |
グラスティン | 資料は直接俺のところへ届けろ。 |
| 領都ジャンナ・領主の館 |
ティルキスβ | オールドラント領の領主が来ている、だと ? |
アレウーラ領兵 | はい。オールドラント領で暴れる黒衣の鏡士たちから逃げてきたと申しております。 |
ティルキスβ | ……計画に支障が生じたということか。わかった。通せ。 |
ティルキスβ | 同志よ。何があった ?我らは定められた領内で、領民を導きつつ滅びの時を迎えねばならない。 |
イオン ? | 黒衣の鏡士が、領都を占拠しようと攻め入ってきた。 |
ティルキスβ | それでおめおめと逃げ出したのか ?従者はどうした。その時のための従者だろう。 |
イオン ? | 従者ディストは我々を裏切った。 |
ティルキスβ | ディストはリビングドールβではなかったのか。 |
イオン ? | その通りだ。それが災いした。あの男は我らの疑似心核に妙な仕掛けを施していったらしい。除去作業を行う必要がある。 |
ティルキスβ | 除去作業 ? どういうことだ。 |
イオン ? | まずはこれを見てくれ。 |
ティルキスβ | ! ? |
ティルキスβ | き……さま……は…………。 |
イオン | ここまでは上手くいきました……。次は心核の入れ替えを……。 |
ハロルド | これは帝国の心核除去装置の改良版よ。被験者へのダメージを取り除くことはできなかったけど心核と疑似心核の入れ替えはできる。 |
ハロルド | これをつかって、こっちの手元に心核がある領主候補たちを助けるの。 |
ハロルド | 私がリビングドールβにした人たちはわざと心核を外しやすくしてあるからこの簡易装置でもいける筈よ。 |
ハロルド | 私がグラスティンの相手をしている間に転送魔法陣でリビングドールβのところへ向かって。頼んだわよ。 |
イオン | (彼女は僕を信頼して送り出してくれました。帝国に残る方が危険だと言うのに……。その期待には応えたい) |
イオン | (装置を設置するのは額の上……。慎重に……) |
イオン | (……よし。あとは装置を起動させて――) |
イオン | ――誰です ! ? |
? ? ? | ……ティルキス ? |
イオン | え…… ? |
? ? ? | あなた……誰 ?ティルキスに何をしたの ! ? |
イオン | あ……。いえ、待って下さい。これは違うんです。僕は彼を救おうと―― |
ハスタ | はいは~い、そこまでだワン ! 痴話喧嘩はワンコも食べないって知ってた ? |
イオン | ! ? |
アーリア | な……何…… ? |
ハスタ | 肉を探して三千里。ハスタくんの登場です !キミの血肉が、悲鳴が、今 ! ボクちんに必要とされているんだ……デザイア ! ! |
イオン | ハスタ……。どうしてここに……。 |
ハスタ | オレっち「あなたの心のマリーゴールド」だからいつでもどこでも側にいるんだポン ! |
ハスタ | あの日……母上とした約束のためにもあんさんらのお命、わっちがいただくでありんす !さあ、流血大会はっじまっるよー ! |
イオン | ――この男は話が通じない。ここは僕が食い止めます。あなたはティルキスさんを連れて逃げて下さい !できるだけ遠くへ ! |
アーリア | ! ? |
イオン | さぁ、早く ! |
アーリア | ――わかったわ ! |
ハスタ | かっけ~ッ ! 見せつけられちゃいました !でも、その足も首も切り刻むでごじゃるよ ! |
キャラクター | 2話【10-2 アスガルド城】 |
ジュニア | ………………。 |
グラスティン | 大人しくしていたか、小さいフィリップ。 |
ジュニア | ……案外早かったね。 |
グラスティン | どうした ? 何故こちらを見ない ? 俺の醜さが恐ろしいか ? |
ジュニア | ……あなたに、興味なんて無い。 |
グラスティン | ……ヒヒヒヒヒ、なるほどなぁ。小さいといえどもフィリップだ。融合の魔鏡術はお手の物かぁ ? |
ジュニア | ! |
グラスティン | ここに『影』を置いて、どこへ逃げた ? |
ジュニア | ………………。 |
グラスティン | ……まあいい。俺は寛大だからなぁ。夜明けまでに戻ってくればお前の可愛い鏡精へのお仕置きは免除してやろう。 |
グラスティン | もしも朝日が昇っても帰ってこなかったらあの鏡精は腑分けする。ヒヒヒ……鏡精の腑分けか……。楽しみだよぉ。 |
ジュニア | マークを傷つけたら許さない ! |
グラスティン | だったら早く帰ってくるんだなぁ ?俺は忙しいんでな。話はこれで切り上げだ。せいぜい急ぐんだなぁ、小さいフィリップ。 |
ジュニア | (……グラスティンの奴こんなに早く帰ってくるなんて) |
ジュニア | (夜明け前までに、このセールンドからアスガルド城に戻るには、あまり時間が無い) |
ジュニア | (最初のイクスの体から、ナーザのアニムス粒子にアクセスできればよかったんだけどそれはできなかったから……) |
ジュニア | 最初のミリーナ。あなたに関するフィリップの記憶はあなたと二人目のイクスが死の砂嵐を封じる前に滅びの夢で少しだけ見ました。 |
ジュニア | せっかく死の砂嵐を封じたのに……ごめんなさい。僕はどうしても死の砂嵐の中に漂っている、ナーザのアニムス粒子を回収しなくちゃいけないんです。 |
ジュニア | (……あれ ? セシリィ――シドニーとバルドさんが封じたはずの人体万華鏡の穴に、傷が付けられてる ?) |
ジュニア | (僕以外にも、誰かここに来て死の砂嵐にアクセスしようとしたのかな ?) |
ジュニア | (でもこの傷のおかげで、アニムス粒子を取り出すことはできなくても虚無に声を届けることはできそうだ) |
ジュニア | ここに持ってきたナーザの指輪をつかって残留アニマに反応するアニムスを呼び寄せる……。 |
ジュニア | ナーザ将軍――いえ、ビフレスト皇国皇太子ウォーデン・ロート・ニーベルング殿下。僕の声に応えて下さい。 |
ジュニア | メルクリアを……あなたの妹を助けたいんです ! |
デミトリアス | どうした、グラスティン。急ぎの話があるそうだがこちらはエルレインを待たせている。手短に頼むよ。 |
グラスティン | つれないことを言うなよ。精霊の封印地へ向かう方法を思いついたんだぞ ? |
デミトリアス | どういうことだ ! ? |
グラスティン | ヒントは精霊の封印地で見つけたダーナの巫女だ。あの女、様々な手段を施したが目覚めようとしなかったな。 |
デミトリアス | ああ。やはり巫女の目覚めには条件があるのだろう。神降ろしの儀式にも反応しなかった。 |
グラスティン | だが精霊どもは目覚め始めている。という事は、実はあの巫女は目覚めているのではないか ? |
デミトリアス | 何…… ? |
グラスティン | フフフフ、ダーナの巫女は鏡士の始祖。ならば魔鏡術もお手の物だろう。心を切り離すぐらいのことはやってのけるんじゃないかってなぁ。 |
デミトリアス | 確証はあるのか ? |
グラスティン | もちろんだ。ベルセリオス博士の研究データをちょいと拝借してきた。 |
グラスティン | ヒヒヒヒ、あの女が見つけていたよ。最初の神降ろし――シャーリィとか言う娘の時に心核が妙な反応を見せていたことをな。 |
デミトリアス | つまり、あの時神降ろしは成功していた ?いや、シャーリィに宿ったのがダーナの巫女ならば巫女降ろしか。 |
グラスティン | そこが分かれば後は簡単だ。俺たちがダーナの巫女の体を回収した時心核にアニムス粒子の反応はあった。 |
グラスティン | つまり、心はダーナの巫女に宿っていた。時系列を考えれば、シャーリィに取り憑いたダーナの巫女は、一度自分の体に戻ったということだ。 |
グラスティン | そして先程ダーナの巫女の体を調べたところ今度は心核にアニムス粒子の反応はなかった。 |
デミトリアス | また、誰かの心に寄生している……ということか。 |
グラスティン | 心が離れているなら丁度いい。心の精霊の精霊片を纏わせて、疑似精霊化しよう。そうすれば心の精霊の守護など無力だ。 |
デミトリアス | さすがだ、グラスティン。では早速出撃準備に掛かろう。今度こそダーナの心核を破壊し、持ち帰らねばならぬ。 |
キャラクター | 3話【10-3 ケリュケイオン】 |
ゼロス | 驚いたな。本当に人の心の中を渡って物理的にこっちに来ちまうなんて。どういう仕組みなんだ ? |
ヨウ・ビクエ | 簡単に言うと、人の心というのは無意識の奥深くで世界中の人々と繋がっているの。だから私の心を無意識の奥からフィリップの心へと繋いだのよ。 |
アイゼン | なるほど。言わんとすることはわかるが理解したかと言われるとさっぱりだな。 |
ゼロス | 俺さまもー。 |
ヴィクトル | 途中、リチアとか言う別の人間の心に繋がってしまったようだがあれはどういうことなんだ ? |
ヨウ・ビクエ | あれは、リチアって子の心にまつわる力が規格外だったせいよ。あの子は異世界の人間なのにダーナの巫女である私に近い能力を持っているみたい。 |
ヨウ・ビクエ | それに今はイクスも規格外の力を持っている状態なの。世界中に出現している魔鏡結晶は彼の力そのもの。つまり心が外に露出してしまっている状態なの。 |
ヨウ・ビクエ | 人の心に自由に入れるリチアの傍で心が露出しているイクスが、魔鏡術をつかった。それで心の境界線が曖昧になった……ということね。 |
ヨウ・ビクエ | ま、わからなくても大勢に影響はないわよ。 |
ヴィクトル | 『心』か……。 |
アイゼン | そういえば、お前たちも魔の空域に行ったんだったな。アイフリードの墓はまだあったのか ? |
ヴィクトル | ああ。 |
ヨウ・ビクエ | 無かったら困るわよ。あそこは、ティル・ナ・ノーグと既に滅びたニーベルングを繋ぐターミナルのような場所だから。 |
アイゼン | ああ……。この世界はニーベルングとやらが滅びた後に造られた世界だったな。 |
アイゼン | だがどうして滅びた世界と、このティル・ナ・ノーグを繋いでおく必要があるんだ ? その上そんな場所にアイフリードの墓があるなんて、妙な話だろうが。 |
ヨウ・ビクエ | あの場所で繋がっていないと、ティル・ナ・ノーグは虚無に飲み込まれるらしいの。それを避けるための楔なのよ。あの島とお墓はね。 |
ヨウ・ビクエ | アイフリードはあそこで精霊の封印を受け持っているの。彼は召喚士だから。 |
ローエン | 確かにアイフリードが召喚士だとは聞いていましたがその説明の仕方ですと、まるでアイフリードがまだ生きているかのようですね。 |
ヨウ・ビクエ | 生きてはいないわよ。さすがにね。 |
ヨウ・ビクエ | ……ところで、みんな、浮遊島には降りないの ? |
アイゼン | フィリップだっていい大人だろう。ゾロゾロついて行くのは野暮ってもんだ。 |
ローエン | ええ、マークさんが一緒に下りましたから我々はここで待ちましょう。フィリップさんが抱えていた秘密をイクスさんに打ち明けるまで。 |
ヨウ・ビクエ | そうね……。それじゃあ、私も引っ込むわ。アトワイト、ありがとう。 |
アトワイト | いいえ。お疲れ様、ヨーランド。 |
フィリップ | イクス……待たせてすまなかった。 |
イクス | やっと……話してくれるんだな。 |
フィリップ | ああ……。ようやく精霊の封印地へ向かう方法が見つかったんだ。 |
フィリップ | ここから先は何が起こるかわからない。だからその前にイクスに全てを伝えようと思っていた。……そうやって先延ばしにしていたとも言えるけどね。 |
フィリップ | そういえば、ミリーナはどうしたんだい ? |
イクス | それが……どこにもいないんだ。ミリーナもこのところハードだったからどこかで休んでるのかも……。捜してこようか ? |
フィリップ | いや、まずはイクスに話をするよ。ミリーナは後でいい。 |
イクス | わかった。 |
イクス | それで……フィル。俺は何なんだ ?イクス・ネーヴェの三人目だってことはわかってる。だけど、俺は何処まで最初のイクスと同じなんだ ? |
フィリップ | ……イクス。きみは頭がいいから多分おおよそのことがわかっているんだと思う。だから焦っているし不安に思っている。 |
フィリップ | ゆっくり話そう。きみが造り出された経緯について。 |
イクス | ああ……。 |
フィリップ | まずはっきりさせておこうか。イクス、きみは三人目に具現化された存在。そしてきみを造ったのは僕だ。 |
イクス | それは知ってる。ゲフィオン……最初のミリーナとフィルが俺を造ったんだろう ? |
フィリップ | いや、ゲフィオンはイクスの具現化には関与していない。 |
イクス | ……え ? |
フィリップ | 事情は後で説明する。とにかくイクスを造ったのは僕だ。そしてきみは――僕にとって都合のいいイクスなんだ。 |
イクス | ! ? |
キャラクター | 4話【10-4 アジト1】 |
フィリップ | さて、何から話そうか。 |
フィリップ | 僕は……幼い頃からずっとミリーナが――いや、ゲフィオンが好きだった。イクスが気付いていたかはわからないけれどね。 |
フィル | ミリーナ。お願いがあるんだけど、いい ? |
ミリーナ | もちろんいいわよ。何、フィルのお願いって。 |
フィル | えっと……。今から一緒に水鏡の森に行って欲しいんだ。 |
ミリーナ | 水鏡の森 ? 素敵ね。だったらお弁当を持って行きましょうよ !簡単なもので良ければ、すぐに作るわ。 |
フィル | うん ! ありがとうミリーナ。 |
ミリーナ | あ、イクス ! |
イクス | ミリーナ、フィル、どこに行くんだ ? |
ミリーナ | 水鏡の森までピクニックに行くの。イクスも一緒に行かない ? |
フィル | ! |
イクス | いや、俺は港に行かないと……。 |
イクス | そういえば、このところ水鏡の森には物騒な魔物が出てるみたいだぞ。 |
ミリーナ | フィルも一緒だから大丈夫。イクスもお仕事が終わったら合流して ! ね ? |
イクス | だったら俺の仕事が終わるまで待っててくれないか。二人だけじゃ心配だから一緒に行くよ。 |
ミリーナ | ……そう ? |
フィル | 大丈夫だよ。イクスは心配性だね。僕もミリーナも鏡士なんだよ ?先に行って準備してるよ。 |
ミリーナ | ……そうよね。うん、大丈夫 !私お姉さんなんだしちゃんとフィルのこと守れるわ。 |
イクス | わかった。でも危ないところには行くなよ。二人とも案外抜けてるんだから。 |
ミリーナ | 失礼ね、大丈夫だってば。さ、行きましょう、フィル ! |
イクス | それ、月見の丘にピクニックに行った時の話だよな ?あれ ? 水鏡の森だったか ? |
フィリップ | 水鏡の森だったんだ。覚えていて欲しくなかったから月見の丘へのピクニックに記憶を挿げ替えた。 |
イクス | ! ? |
フィリップ | そう、そうなんだ。イクスたちを具現化するのに時間の壁を突破したと言ったよね。その際に僕やゲフィオンの記憶を経由すると。 |
フィリップ | 記憶を経由して具現させると、具現化対象者の記憶も操作できることがわかったんだ。ファントムでそれを試して……イクスにも適用した。 |
イクス | じゃあ、俺のこの記憶は……全部嘘なのか ? |
フィリップ | 全てではないよ。どうしても覚えていて欲しくないことだけ僕が書き換えたんだ。 |
フィリップ | 秘伝魔鏡術の暴走にまつわる一連の出来事について。それだけはイクスに忘れて欲しかった。 |
イクス | けど、俺覚えてるよ。 |
イクス | 港で仕事をしてたら、ミリーナが呼びに来たんだ。それで祖父ちゃんを楽させてやるために鏡士になりたいってって……。 |
フィリップ | それは『いつ』のことだった ? |
イクス | いつって……ピクニックに誘われた日だよ……。 |
イクス | ……あれ ? 港に行く道でフィルたちに会って……。二人は月見の丘に行って、俺は港に行って……それでまたミリーナたちが……戻ってきた ? |
フィリップ | あの日、本当に起きたことを話すよ。 |
フィリップ | 僕とミリーナは水鏡の森へ向かったんだ。あの森の奥にある湖には、時々不思議な光が立ち上る。それをミリーナに見せたかった。でも―― |
フィル | ――水鏡の森に、魔物 ! ? |
ミリーナ | イクスの言ってた物騒な魔物って、これ…… ! ? |
フィル | 逃げよう ! |
フィル | はぁっ、はぁっ、はぁっ……。 |
ミリーナ | フィル ! 立ち止まっちゃ駄目 ! |
フィル | 駄目だよ……僕、もう走れない……。ミリーナだけでも逃げて ! |
ミリーナ | フィル ! ? 危ない ! ? |
イクス | やらせるかっ ! ! |
ミリーナ | イクス ! ? どうしてここに―― |
イクス | 祖父ちゃんたちに話を聞いたら魔物が相当ヤバそうだってわかったからな。こいつは俺が何とかする。 |
イクス | 二人は――って、まずいな。囲まれちゃってるのか。 |
ミリーナ | 私も戦う ! |
フィル | ぼ、僕も ! |
イクス | いや、大丈夫だ。二人は隙を見て、大人を呼んで来てくれ ! |
イクス | ――秘伝魔鏡術 ! |
二人 | ! ? |
イクス | オーバーレイ ! |
フィリップ | イクスは密かに魔鏡術の訓練をしていたんだ。鏡士になる事を諦めてなかった。あの日、水鏡の森でイクスは魔鏡術で魔物の集団を蹴散らしてくれた。 |
フィリップ | でも敵の数が多すぎたこともあって、制御しきれずオーバーレイ暴走を引き起こしてしまったんだ。 |
ミリーナ | イクスの力が暴走して……止まらない !私が、私がイクスの言うことを聞いてもっと気を付けていれば…… ! |
ミリーナ | 私が……イクスのことをちゃんと待ってれば……。 |
フィル | 大丈夫、ミリーナ。僕の守護魔鏡を使えば止められる ! |
ミリーナ | えっ ! ? |
フィル | 僕の鏡士としての力を弱める封印なんだ。これを使えばきっと―― |
ミリーナ | 駄目よ、フィルは体が弱いからわざと力を弱めているんでしょう ? |
フィル | でもこのままじゃイクスが死んじゃうよ ! |
ミリーナ | ――わかった。でも、私にやらせて。バックファイアを受けるのは私だけでいいから ! |
フィル | ミリーナ ! ? |
フィル | イクスの暴走が……止まった……。 |
フィル | ミリーナは ! ? |
フィル | よかった……。息はある……。イクスは―― |
フィリップ | イクスも生きていた。ひどい傷だったけれど……。そして思い知った。ミリーナはイクスしか見てない。イクスがうらやましかったよ。 |
フィリップ | ミリーナに大切にされて、自己流の訓練だけでオーバーレイを成功させて……。 |
フィリップ | 鏡士としてのとんでもない才能、友達の危機に命がけで駆けつけてくれる勇気、頭がよくて、運動神経もよくて家族想いで……みんなイクスを慕っていた。 |
フィリップ | 僕もイクスみたいに――いやイクスになりたかったんだ。 |
フィル | 今なら……誰も見てない……。イクスが死んでも……魔物のせいだと思われる。今なら―― |
フィリップ | そして、僕はイクスを刺したんだ。鏡の破片で。 |
キャラクター | 5話【10-7 精霊の封印地】 |
イクス | ……ぐぅっ……。 |
フィル | ……あ……ぁ……。 |
イクス | ……フィ……ル…… ? |
フィル | ……イクス……ごめ……ごめ……んなさい……。 |
イクス | ……フィル……。この……馬鹿……。 |
フィル | イクス……僕……あの……。 |
イクス | 俺に……文句があるなら……刺す前に話せ……って……。 |
フィル | あ、駄目だよ ! ? 鏡の破片を抜いたら血が……。 |
イクス | 抜いたら……止血してくれ。魔鏡術で。それぐらいできるだろ ? |
イクス | こいつが刺さったままじゃ……村のみんなにバレちゃうから、さ。 |
フィル | 僕が……止血しなかったら ? |
イクス | ハハ……。化けてでるよ。だから……そうならないように頼む。あとは……俺とお前の秘密だ。いいな ? |
フィリップ | イクスは本当に何も言わなかった。水鏡の森で何があったのか……。そして僕は……セールンドに逃げたんだ。 |
フィリップ | それから魔鏡戦争が始まって……色々あって……二人目のイクスを具現化することになった時こう思った。 |
フィリップ | 僕の罪を消せるんじゃないかって。オーバーレイ暴走を違う形で引き起こしたことにしようって。 |
イクス | ……ゲフィオンもそれを知ってたのか ? |
フィリップ | 僕がイクスを刺したことを知っているかはわからない。でも彼女もオーバーレイ暴走の日のことを悔やんでいたんだ。 |
フィリップ | いつも三人で行動していたのにあの時だけ僕と二人で出かけたことイクスの心配を軽くとっていたこと。 |
フィリップ | そのせいで……イクスがオーバーレイ暴走を引き起こしたことを。 |
フィリップ | だから僕が誘導した。イクスを守るためにオーバーレイ暴走を利用しようと。 |
フィリップ | それで臆病なイクスが生まれればイクスは危険な事に近寄らない。オーバーレイ暴走に関する記憶を改ざんしてしまおうって。 |
イクス | ……一人目はこんなに心配性じゃなかったのか。 |
フィリップ | 慎重ではあったけど、決して臆病でも心配性でもなかったよ。みんな、イクスがオーデンセを率いていくリーダーになると思っていた。 |
フィリップ | 僕は自分が理想としていたイクスを穢そうとして二人目を作り、そのデータを元に今のきみが具現化されたんだ。 |
フィリップ | もっとも二人目もきみも、肝心なところでは一人目と同じように行動するけれど……。 |
イクス | ミリーナも、フィルが記憶を改ざんしてるのか ?記憶だけじゃない。感情も。だってミリーナはあんなに俺のことを好きじゃなかった。 |
フィリップ | 彼女を造ったのはゲフィオンだ。少なくともオーバーレイ暴走に関しては改ざんしている筈だよ。 |
フィリップ | ……それ以外も、かな。自分が守れなかったイクスを今度こそ守る……という思いがミリーナには植え付けられているみたいだから。 |
イクス | やっぱり感情も操作されてるんだな。……ファントムも、ジュニアも ? |
フィリップ | 記憶は改ざんしている。ファントムの場合は初期型ということもあって、感情部分は上手く制御できなかったけれど、ジュニアは―― |
イクス | ……はは……ははは……。 |
フィリップ | イクス ? |
イクス | ……予想通りだったし、ある意味予想以上だったよ。 |
フィリップ | 軽蔑したかい ? |
イクス | ああ。でもそれは一人目を殺そうとしたからじゃない。 |
イクス | そんなくだらないことのために、記憶と感情すら俺やミリーナたちから奪って平然としているその面の皮の厚さをだ。 |
フィリップ | ………………。 |
マーク | ――おい、取り込み中に悪いんだが、話は打ち切りだ。ヨウ・ビクエが倒れた。 |
二人 | ! ? |
アトワイト | ごめんなさい。大切な話があったみたいなのに……。 |
フィリップ | い、いえ……―― |
イクス | ――大丈夫です。一番聞きたかった話は聞けました。続きは後で構いません。 |
マーク | ………………。 |
イクス | それで、ヨウ・ビクエが倒れたって言うのは…… ? |
アトワイト | 倒れたというのが正確かどうかはわからないけれど突然悲鳴が聞こえて、それからなんの反応もなくなってしまったの。 |
アトワイト | 多分心核の中には宿っていると思うのだけれど……。 |
ローエン | どなたかソーマを持っている方に調べて頂くというのはどうでしょう。 |
イクス | ええっと……今は……コハクが残ってる筈だけど……。 |
アイゼン | ――こんな時に通信か。誰だ ? |
ヒスイ | おい、そっちのブリッジにイクスがいるって話だが……お、いたな。 |
イクス | (……ヒスイさん) |
イクス | どうしたんですか ? |
ヒスイ | リチアが、この世界のスピルーン――ええい、クンツァイト、頼む。 |
クンツァイト | 承知した。リチアさまがこの世界のスピルーンの異変を感じ取っている。 |
ヴィクトル | この世界のスピルーンとは精霊の封印地にあるダーナの心核のことか ? |
クンツァイト | そうだ。この世界の――ダーナのスピルーンが崩壊しかかっているらしい。 |
クンツァイト | リチアさまがダーナのスピルーンと共鳴しスピルリンクに近い状態となっている。 |
ヴィクトル | ダーナの心核が崩壊…… ! ? ミラに影響は―― |
クンツァイト | 今リチアさまが、ダーナのスピルーンの中にいる人物を補佐している。しばらくは持つだろうが危険な状態だ。 |
イクス | ヨウ・ビクエが反応しないことと関係があるのかな……。 |
フィリップ | 精霊の封印地へ行こう。 |
フィリップ | ヨウ・ビクエが言っていた筈だ。心の精霊がイクスたちの陣営に力を貸しているなら彼らと一緒に封印地まで行けば、封印は解ける筈だと。 |
レイア | 心の精霊 ! 確かにわたしたちに話しかけてきたよ ! |
シング | よし、だったらこっちも精霊の封印地へ行くよ。海からも行けるんだろ ? |
アイゼン | 封印地のある島は肉眼じゃ見えないぞ。座標を教えてやるが接近しすぎて岸壁にぶつけるなよ ? |
シング | わかった ! 気を付ける ! |
マーク | 俺たちも向かうか。イクス、お前も来るか ? |
イクス | もちろん。あとダーナの心核の中にいるミラさんと関わりのある人たちも連れて行こう。何があるかわからないから。 |
ローエン | 私が呼んでまいりましょう。 |
デミトリアス | 心の精霊ヴェリウスよ。道を拓け。 |
ヴェリウス | 痴れ者め。どうやって外界から封じたこの島に立ち入った。早々に立ち去りなさい。 |
デミトリアス | ……我らの言葉に耳を貸さぬなら、それでもいい。心の精霊の代わりはこの者が果たす。 |
ヴェリウス | そのものはダーナの巫女 ! ?そしてその力は私の―― |
ヨウ・ビクエ | 滅せよ。 |
グラスティン | ヒヒヒ……。思った通りだ。ダーナの巫女は心の精霊との相性がすこぶるいい。このまま心の精霊として代用できるぞぉ ? |
デミトリアス | これでもう一度ダーナの心核の元に近づけるな。 |
グラスティン | 進め ! デミトリアス陛下のために道を拓け ! |
帝国兵たち | おおっ ! |
デミトリアス | ダーナの巫女――いや、次代の心の精霊となるものよ。共に参ろうか。偽りの世界を破壊するために。 |
ヨウ・ビクエ | ………………。 |
キャラクター | 6話【10-10 街道】 |
カイウス | 本当なのかな。ティルキスがアレウーラ領の領主になったって噂。 |
ロゼ | 聞いた話だと、背格好なんかの特徴はティルキスで間違いなさそうなんだよね。 |
ロゼ | あと従者だか付き人だか護衛だかが、今は領都を離れてるみたいなんだけど、鏡映点リストにあったフォレストってのに似てるみたい。 |
ロゼ | まぁ、会ってみればわかるよ。 |
ルビア | もし本当に二人があたしたちの仲間の二人ならリビングドールβにされてるのよね。許せない……。 |
ユリウス | 気持ちはわかるが、怒りや焦りは判断を狂わせる。落ち着いていこう。 |
ロゼ | 調査室の手が足りなくてユリウスさんまで巻き込んでごめん !でも助かる ! |
カイウス | ユリウスさんは博識だし、頼りにしてます。ここまで来る間も、手際よく街で情報を集めてくれたし……。 |
ユリウス | 何だか照れるな……。 |
ユリウス | それにしても気になるのはさっきの村で聞いた領兵の存在だな。人を捜している様子だったと言うが……。 |
ロゼ | えっと二組だったよね。片方が怪我した男と女の二人連れで、もう片方が怪我した男を連れた帝国兵ってことだったけど……。 |
ロゼ | 領兵だって帝国兵だよね ?これって鏡映点関係なんじゃないかな。 |
ルビア | 単なる仲間割れじゃなくて ? |
ユリウス | ああ、俺もそう思う。カイウスやルビアも元は帝国側にいたんだ。 |
ユリウス | そういう鏡映点が反旗を翻して逃走それを帝国が追っているという可能性がある。 |
カイウス | それ、ルキウスだったりしないかな……。 |
ルビア | ……ええ。 |
ロゼ | それってカイウスの弟だっけ ? |
ユリウス | ……兄弟が敵に捕まっているのはつらいな。 |
カイウス | ルキウス……どうしてるんだろう……。 |
ロゼ | ――ユリウスさん。 |
ユリウス | ああ。みんな、気を付けろ。何者かがこっちに向かってくる。 |
二人 | ! |
ユリウス | ――何者だ ! |
帝国兵 | 待った !ロゼがいるってことはお前ら黒衣の鏡士の仲間だろ ! ? |
ロゼ | ……その声。もしかしてデクス ? |
デクス | その通り ! 助かった !ちょっとヤバい奴に襲われてな。傷の手当てをしてやりたいんだ。 |
デクス | けど街という街は警戒が厳重で薬一つ手に入れられなくてな。 |
ルビア | 私でよければ治療するけど……怪我人は何処 ? |
デクス | あそこの草むらに寝かせてる。 |
イオン | はぁ……はぁ……あなた方は……。 |
ロゼ | この子、もしかしてアニスの世界の導師…… ? |
イオン | アニスを……ご存じなんですね……。 |
ルビア | ひどい怪我 ! 今、治療しますね。 |
ユリウス | デクス……だったか。これは一体どういうことだ ?お前はたしかティルキスの動向を見張っているんじゃなかったか ? |
デクス | その筈だったんだが―― |
カイウス | ……ってことはティルキスはその金髪の女の人が連れて逃げたんだな。 |
ルビア | それってアーリアよね、きっと。 |
カイウス | ああ、オレもそう思う。 |
ロゼ | なるほどね。これは方針転換した方がよさそうだね。 |
ユリウス | ああ。しかし人手がいる。カロルに連絡を取ろう |
カロル | はい、カロル調査室――あ、ユリウス ! |
ユリウス | アレウーラ領の領都及び領主の調査だが手が足りなくなりそうだ。 |
カロル | ええ ! ? そっちもトラブル ! ? |
ロゼ | そっちも……って、またアジトで何かあったの ? |
カロル | ロゼたちがアレウーラ領に行ってから色々あって……。今、一番まずいのは、精霊の封印地にあるダーナの心核が壊れそうってことかな。 |
ユリウス | ダーナの心核にはもう一人のミラが入っていると聞いていたが……。 |
カロル | うん。それでさっきイクスたちと一緒にルドガーとエルも精霊の封印地へ向かったんだ。 |
ユリウス | 何 ! ? |
カロル | だから、そっちにどれだけ人手を割けるか……。 |
ユリウス | ルドガー……エル……。 |
カイウス | ……ユリウスさんも精霊の封印地へ向かった方がいいんじゃないか ? |
ユリウス | ! |
カイウス | オレがルキウスのことを心配なのと同じようにユリウスさんだってルドガーさんのことが心配だろ。 |
カイウス | こっちはルビアとロゼがいるしデクスって人もいるし。 |
デクス | おお、少年 ! 存分に俺を頼っていいぞ ! |
ロゼ | うん。その方がいい。ねぇ、カロル。イリアたちをこっちの助っ人に回してもらえないかな ? |
ロゼ | イリアたちと因縁のあるヤバい奴が出てきてるみたいなんだよね。 |
カロル | オッケー。そっちの動きが決まったらまた連絡して。こっちはこれからルカたちに話をしてくるから。 |
ロゼ | よし、まずはこの導師をどこか安全な場所に連れていこう。 |
ロゼ | 助っ人と合流したら、あたしはハスタを捜してみる。カイウスとルビアはティルキスたちの足取りを追って。 |
カイウス | わかった。 |
ルビア | ユリウスさんは急いで精霊の封印地へ行かないと。 |
デクス | 精霊の封印地か……。一番手っ取り早いのは帝国の港から船で向かう方法かな。 |
デクス | 俺の制服をつかって変装してくれ。そっちのが少し背が高いが、まぁ、問題ないだろ。帝国の港までは、転送魔法陣を出すよ。 |
ユリウス | 助かる。 |
カイウス | ユリウスさん、気を付けて。 |
ユリウス | ああ、大丈夫だ。これでもエージェントとしては優秀な方だったからな。 |
キャラクター | 7話【10-12 セールンド城】 |
ジュニア | ウォーデン殿下 ! 応えて下さい ! お願いです ! |
ジュニア | ………………。 |
ジュニア | ……駄目、なのかな。 |
ジュニア | ――え ! ?ゲフィオンに……人体万華鏡にヒビが ! ?どうして…… ? |
? ? ? | 世界が……壊れかけている……。 |
ジュニア | だ、誰…… ! ? |
? ? ? | この声に聞き覚えがないか……。そうだろうな。俺はオーデンセの鏡士の体に宿っていた死人だ。 |
ジュニア | ウォーデン殿下ですか ! ? |
ナーザ | 貴様にそのように呼ばれる筋合いはない。 |
ジュニア | では、ナーザ将軍とお呼びします。ナーザ将軍。何が起きているんですか ? |
ナーザ | 正確なところはわからぬ。だが……虚無が――いや、虚無に漂う死の砂嵐が突然大きくうねり暴れ出した。 |
ナーザ | 恐らくティル・ナ・ノーグに何らかの異変が起きているのだろう。 |
ジュニア | セールンドの人体万華鏡にヒビが入っています。このままだと死の砂嵐が溢れてきてしまう…… ! |
ナーザ | それをどうにかして欲しくて俺の名を呼び続けたのか ? |
ジュニア | それは……。 |
ナーザ | 魔鏡結晶を通じて断片的に状況はわかっている。……貴様はそうまでしてメルクリアを救いたいというのか ? |
ジュニア | メルクリアは変わろうとしています。彼女には支えが必要です。僕の力だけでは……及びそうもなくて……。 |
ナーザ | ……今なら、外に出ることができる。疑似心核はいくつある ? |
ジュニア | え ! ? えっと……三つ……あります。 |
ナーザ | 案外欲深いな、貴様は。三人は無理だ。一人は内側から人体万華鏡の穴を塞ぐ役目がある。 |
ジュニア | ……え ? |
ナーザ | 私とバルドは疑似心核に移ろう。今を逃しては、虚無からでることは叶うまい。 |
ナーザ | これはシドニーの意見でもある。シドニーに感謝するのだな、小僧。俺は永遠に貴様に応えるつもりはなかった。 |
ジュニア | あ、ありがとうございます ! |
バルド | ……ジュニア。私もウォーデン様も疑似心核に移動しました。次は人体万華鏡の崩壊を防がねばなりません。 |
ナーザ | それならば――そこにいる鏡精が適任だろう。 |
ジュニア | ――え ? |
? ? ? | ……ええ。力を貸して下さい、フィリップ。 |
ジュニア | あなたは……。 |
イクス | おかしい……。封印地のある島は心の精霊の力で見えなくなっていた筈ですよね。でも肉眼でこの島を見ることができた。 |
ヴィクトル | 封印が解けた――もしくは解かれたということだろう。 |
ルドガー | ……あの、ヴィクトルさん。 |
ヴィクトル | ルドガーくん、だったかな。今はダーナの心核のことを優先しよう。きみが何かに気付いたのだとしても、ね。 |
ルドガー | ! ! |
マーク | ヴィクトルの推測通りなら先客がいるのは間違いない。 |
マーク | ダーナの心核を傷つけようなんて奴は帝国の連中ぐらいのもんだろうけどな。 |
ローエン | 念のため、上空はケリュケイオンでアイゼンさんが島の周辺はクラトスさんたちが警戒してくれています。何かあれば連絡が来る手筈です。 |
フィリップ | わかりました。ありがとうローエンさん。アトワイトさん、ヨウ・ビクエは ? |
アトワイト | 相変わらず、何の反応もないわ。 |
ガイアス | ならば急くぞ。 |
デミトリアス | ――マクスウェルの力よ !この世界の楔たるダーナの心核を破壊せよ ! |
ミラ | く……っ。このままじゃ……本当に……。 |
リチア | 諦めないで下さい。今わたくしもそちらに向かっています。ダーナのスピルーンを崩壊させはしません。 |
ミラ | リチア……だっけ ? もう限界よ。氷が溶ける時みたいな音が聞こえるの。パチパチって。 |
ミラ | 外側からだけじゃない。内側からも壊れかけてるんだわ。 |
リチア | 大丈夫。もうすぐきっと―― |
イクス | お前たちは―― |
デミトリアス | やぁ、イクス。久しぶりだね。ミリーナは一緒じゃないのかい ? |
イクス | だ、誰だ ? |
フィリップ | ……デミトリアス陛下。そのお姿は……。 |
イクス | デミトリアス陛下 ! ? え ! ? |
マーク | どういうこった。 |
マーク | アニマ汚染でくたばりそうなツラしてたのにまるでフィルと一緒に研究してた頃と変わらない姿になってるじゃねぇか。 |
デミトリアス | アニマ汚染で弱った体をどうにかしたくてね……。異世界の技術をつかってアニマ汚染を無効化したんだよ。 |
フィリップ | そんなことができる筈が……。 |
グラスティン | おおお、フィリップ…… ! ? |
グラスティン | ああ……。すまない、フィリップ。お前の美しい眼にこの醜い姿を映してしまった……。完璧なお前が穢れてしまうよ……。 |
マーク | ち、変態野郎も一緒か。 |
ガイアス | 姿形などどうでもいい。これ以上ダーナの心核を傷つけさせはせん ! |
コーキス | ――マスター ! 見えない壁があるみたいだぞ ! ? |
ルドガー | ……ああ。これ以上は近づくこともできないみたいだ。どうする ? |
アトワイト | ……あぁ……ううぅ……。 |
イクス | アトワイトさん ! ? |
アトワイト | ……ヨウ・ビクエが……。彼女の体が偽りの心の精霊に……。 |
グラスティン | ほぅ、アトワイト。やっぱりお前がダーナの巫女の心を宿していたのか。ヒヒヒ……なるほどなぁ……。 |
フィリップ | 偽りの心の精霊……まさか、精霊装による疑似精霊化か ! ? |
デミトリアス | ああ。ダーナの巫女には心の精霊になってもらいヴェリウスを封じてもらった。 |
デミトリアス | きみたちはそこでダーナの心核が壊れるところを見学しているといい。 |
キャラクター | 8話【10-13 精霊の封印地1】 |
ヒスイ | おい ! ?何そんなところでボーッと突っ立ってるんだ ! ? |
コーキス | ヒスイ様たち ! ? |
ルドガー | いや、俺たちの前に見えない壁があってこれ以上進めないんだ。 |
フィリップ | 恐らく帝国の心の精霊が生み出している壁なんだと思う。 |
レイア | 帝国の心の精霊 ? |
しいな | ヴェリウスって精霊とは別の心の精霊かい ? |
ガイアス | いや、精霊装によって精霊の力を与えられた……というようなことを言っていた。 |
リチア | ……心の精霊の生み出したものならソーマを持つ者や鏡士なら超えられる筈。見えない壁の内側へ入りましょう。 |
クンツァイト | つまり、リチアさまと自分とヒスイそれにイクスですか ? |
リチア | ……隣の眼帯をしている方と赤い髪の大剣持ちの方からもその力を感じます。それに、こちらのお二人も。 |
二人 | ! ? |
イクス | コーキスは鏡精だからとしてもルドガーさんとヴィクトルさんはどうして ? |
リチア | わかりません。世界の壁を越える力……のようなものがあるようです。追求はともかく急ぎましょう。 |
リチア | ダーナの心核の中にいるミラに限界が迫っています。 |
ルドガー | ――わかった。どうすればいいんだ ? |
リチア | この壁の向こうへ【スピルリンク】して入り口をこじ開けます。 |
イクス | 瞬間移動した ! ? |
フィリップ | イクス ! ヨウ・ビクエから精霊輪具を外そう !それで疑似精霊化を止められる筈だ ! |
イクス | あ、ああ、わかった ! |
グラスティン | クックックッ。いいのかぁ ? 分断して…… ? |
ルドガー | ガイアスたちが ! ? |
ガイアス | 人の心配をしている場合か ?こちらの雑魚はこちらで片付ける。お前たちは自分の成すべきことをしろ。 |
グラスティン | いいか、お前ら ! 壁の外のそっちにいる黒髪の二人は生け捕りにしろよぉ ?中に入ってきた黒髪の男の方は、俺が捕まえる。 |
ヒスイ | って、なんで俺を見てるんだ ! ? きめぇ奴だな ! ?そっちの仮面野郎も黒髪だろ ! |
マーク | まあ、気にすんなって、ヒスイ。で、どうする。全員でデミトリアスたちを叩くのか ? |
デミトリアス | そう簡単にいくかな ? |
グラスティン | ――デミトリアス。お前はマクスウェルの力で引き続きダーナの心核を攻撃しろ。 |
グラスティン | フィリップと周りの肉は俺の獲物だぁ……。ヒヒヒヒヒ ! |
デミトリアス | ……わかった。きみに任せよう。 |
リチア | わたくしとソーマ使いの三人は、ダーナの心核にスピルリンクして、ミラを助けます。彼女が力尽きた時、ダーナの心核も崩壊する。 |
イクス | なら、残りのメンバーでダーナの心核を守りつつヨウ・ビクエから精霊輪具を取り上げるんだな。 |
ヴィクトル | ……グラスティンは私とルドガーくんイクスとコーキスで引きつける。フィリップとマークはヨウ・ビクエを頼む。 |
フィリップ | 了解だよ。 |
グラスティン | ヒヒヒヒヒ……。フィリップが相手じゃないのは残念だが邪魔なフードを脱ぐことができるなぁ……。 |
グラスティン | さぁて、お前ら全員、ミンチジュースにしてやるよぉ ! |
キャラクター | 9話【10-14 精霊の封印地2】 |
ルドガー | ヨウ・ビクエは ! ? |
マーク | ――今、指輪を外した ! |
レイア | 何、今の音 ! ? |
アトワイト | ……くぅ……。 |
しいな | ちょっとあんた、どうしたんだい ! ? |
フィリップ | ヨウ・ビクエ…… ! ? |
ヨウ・ビクエ | ――体に戻るわね。こんな風に体を使われるんじゃ心を切り離している方が不利になるから。 |
ローエン | ですが、見えざる壁が、まだ―― |
ヨウ・ビクエ | 私は今、心だけの存在。心の生み出す壁なんて意味はないわ。大丈夫。 |
ヨウ・ビクエ | ……ふぅ……。この体で動くのは……ものすごく久しぶり……。 |
ルドガー | よし、後はデミトリアスを止めればダーナの心核を守り切れる ! |
デミトリアス | ――上手くいったようだな。 |
イクス | 何…… ? |
グラスティン | 引っかかったなぁ……鏡士の諸君。 |
ヴィクトル | ――そうか。狙いはダーナの巫女の覚醒、か。 |
グラスティン | ヒヒヒヒヒ……。偽物の黒髪の癖によくわかってるじゃないかぁ。 |
グラスティン | ダーナの巫女が目覚めれば、アイフリードが残した精霊の封印は完全に解ける。そして【ダーナの揺り籠】であるこの世界も滅びを迎える。 |
イクス | ……本気か ! ?世界を滅ぼせばお前たちだって死ぬんだぞ ! |
グラスティン | 死なないさぁ。俺たちはなぁ ? |
ヨウ・ビクエ | はき違えないでちょうだい。 |
ヨウ・ビクエ | 私が目覚める時は、世界が滅びの危機を迎える時。けれど、私が目覚めるから世界が滅ぶわけじゃない。ダーナ様の造ったこの世界を壊させはしないわ ! |
デミトリアス | ダーナの巫女。ならばそのダーナに問うてもらえないか ?何故いびつな楽園を造り出したのか。 |
デミトリアス | 緊急避難などという理由が単なるおためごかしであることはわかっているのだ。 |
ヨウ・ビクエ | あれだけダーナ様の心核を破壊しておいて話が聞ける状態だとでも思っているの ? |
デミトリアス | まだ足りない。ダーナの心は徹底的に破壊する。 |
ヨウ・ビクエ | やらせないわ。 |
グラスティン | そうはいかないなぁ、ダーナの巫女。あんたにはまだまだ色々とやってもらうことがある。 |
ヨウ・ビクエ | ……そこをどきなさい ! |
グラスティン | 嫌なこった。 |
イクス | ヨウ・ビクエ ! 今―― |
デミトリアス | 光魔 ! お前たちの復活を阻止する悪魔共を滅ぼせ ! |
コーキス | どうして…… ? マスターもここにいて死の砂嵐も封じているのにどうしてこんなに光魔を呼べるんだよ ! ? |
フィリップ | ダーナの心核が崩壊しかけている影響かもしれない。 |
イクス | くそ !とにかく光魔を倒して、ヨウ・ビクエを守ろう ! |
フィリップ | 一体一体倒していてはキリがない。僕が魔鏡術で広範囲に攻撃する。 |
マーク | それで散らせなかった分を俺たちでフォローするんだな !けど無理するなよ、フィル。お前の体は―― |
フィリップ | ……まだ、大丈夫。 |
コーキス | マスター ! 魔眼を使おう ! |
ヴィクトル | ……いや。それは最終手段にとっておけ。 |
ヴィクトル | ルドガーくん、フルで行けるか ? |
ルドガー | フルって、骸殻のことですか ?いえ、スリークォーターまでです。 |
ヴィクトル | ならばそれでいい。『一緒に』蹴散らすぞ。 |
ルドガー | ! ? |
エル | ほら、やっぱりユリウスだ ! |
ユリウス | エル ! ? どうしてここにいるんだ ! |
ゼロス | どうしてもルドガーやヴィクトルと一緒にいたいっていうからケリュケイオンに乗せたんだよ。 |
エル | エル、おぺれーたーっていうのやってたんだ。そしたらユリウスがこっちに来るのが見えたから迎えにきたんだよ。 |
ゼロス | ルドガーたちへの助太刀か ?だが、ダーナの心核の周辺は、ソーマ使いやら鏡士やらじゃないと近づけないらしいぜ。 |
ゼロス | こっちも困ってるんだ。 |
ユリウス | なら、ルドガーもダーナの心核には近づけていないのか ? |
エル | ううん。ルドガーとパパはバリアの中に入れたみたい。 |
ユリウス | ! ? |
エル | ゼロス ! ユリウスを追いかけよう ! |
ゼロス | エルちゃん。危ないからケリュケイオンに戻っててくれって。 |
エル | ゼロスが一緒に行かないならエル一人で行くからいい。 |
ゼロス | ……あちゃー。そうなるわな。へいへい、お供しますよお姫様。 |
エル | それアルヴィンっぽいよ。 |
ゼロス | ええ ! ? 心外だわー。 |
ガイアス | ユリウスか。 |
ユリウス | ルドガーは ! ? |
ルドガー・ヴィクトル | ゼロディバイド ! ! |
ユリウス | ……あの動きは……。まさか……。 |
ガイアス | ユリウス。お前ならこの見えざる壁の向こうに行けるんじゃないのか ? |
ガイアス | ルドガーとヴィクトルが、何故向こうに行けたのかよくわからなかったのだが、もし骸殻化できることが理由の一つなら、お前にも行けると考えられるが。 |
ユリウス | いや、エンコードで力を制限されている。俺はここでは骸殻化できない……。 |
エル | ユリウス ! ルドガーとパパを助けて ! |
ユリウス | エル……。 |
ユリウス | ………………。 |
ユリウス | ……ああ、そうだな。骸殻が使えなくても、中には入れるなら ! |
レイア | ――壁を……抜けた…… ? |
ローエン | まるで壁が存在していないかのようにあっさり走っていかれましたね。 |
エル | ねぇ、本当に壁なんてあるの ? 何にも見えないよ ? |
ゼロス | あっと、エルちゃん、ストップ――って……うおおおい ! ?エルちゃんも向こう側にいっちまったぞ ! ? |
アトワイト | ……壁はまだあります。少なくとも私は中には入れない。 |
しいな | まずいよ ! エルが戦いに巻き込まれちまう ! |
イクス | よし、だいぶ光魔の数が減ってきたぞ。 |
フィリップ | ヨウ・ビクエ ! 今ならダーナの心核に近づける ! |
ヨウ・ビクエ | ええ ! |
グラスティン | ヒヒヒ……。動かないでもらおうか。 |
ルドガー・ヴィクトル | エル ! ? |
エル | パパ……ルドガー……。 |
ルドガー | エルを放せ ! |
グラスティン | どっちの立場が上かわかってないみたいだなぁ ? |
エル | 痛いっ ! ? |
グラスティン | さぁ、ヨウ・ビクエを捕まえて引き渡してもらおうか ? |
ユリウス | ――やらせるか ! |
ヴィクトル | ! ! |
ルドガー | 兄さん ! |
ユリウス | エルもルドガーも……傷つけさせはしない ! |
ユリウス | この光は……浄玻璃鏡か ? |
ヴィクトル | ……ユリウス。今なら骸殻化できる筈だ。 |
ユリウス | ――ルドガー。ヴィクトル。共にエルを守ろう。 |
ユリウス | エルに――ルドガーの……相棒に手をかけようとした罪、償ってもらうぞ ! |
キャラクター | 10話【10-14 精霊の封印地2】 |
グラスティン | ……フゥゥ……。心地のいい痛みだった……。 |
グラスティン | なるほどなぁ。こいつらが分史世界の……。ヒヒヒ……そしてあのガキがクルスニクの鍵か……。 |
二人 | ! ! |
ヴィクトル | 私の娘を薄汚れた目で見るな。 |
デミトリアス | グラスティン。ご苦労。やるべき事は終わった。必要な物も手に入れたしね。 |
デミトリアス | ダーナの声が聞けなかったのは残念だがダーナの巫女が目覚めれば十分だ。引き上げよう。 |
イクス | 待て ! |
グラスティン | そう言って待つ馬鹿はいないよなぁ……。フィリップ……次に会う時はお前を綺麗な標本にしてやるからなぁ…… ! |
コーキス | 転送魔法陣か……。 |
マーク | フィル、ヨウ・ビクエはどうした ? |
フィリップ | ダーナの心核の中に入っていった。 |
ミラ | ……もう駄目……。手足の感覚が……。 |
リチア | ミラ、もう大丈夫。仲間を連れてきました。 |
シング | ミラ ! やっぱりあの時のミラだ ! |
ミラ | シング…… ? |
シング | あの時は助けてくれてありがとう。今度はオレがミラを助ける番だよ。 |
ミラ | それでわざわざこんなところへ来てくれたの ? |
シング | 何処にだって行くよ。ミラを助ける為なら。 |
ミラ | おかしな子……。 |
リチア | クンツァイト。内側からできるだけの修復を施して下さい。わたくしも協力します。 |
クンツァイト | 了解。スピルーンの損傷度合の測定を開始します。 |
ヒスイ | 俺たちは何をすればいいんだ ? |
リチア | ……ミラはもう限界です。彼女を外に連れ出して下さい。 |
ミラ | けど、私がいなくなったらダーナの心が壊れるんじゃないの ? |
リチア | わたくしとクンツァイトがいます。 |
ヒスイ | まさか、お前が残るって言うんじゃないだろうな ! ? |
クンツァイト | リチアさま。それならば自分が一人でここに残ります。 |
? ? ? | お待ちなさい……。今、ダーナの巫女がそちらに向かっています。彼女がこの場に残って修復作業を行ってくれる。 |
? ? ? | 異世界から強引に招かれたあなたたちにこれ以上の迷惑はかけられません。 |
ミラ | その声は……ヴェリウスね ? |
ヴェリウス | ええ。不覚にも敵に後れをとり存在が消えかかっていましたが今は自分を取り戻しました。 |
ヴェリウス | ミラ、長い間ダーナの心を守ってくれてありがとう。 |
ヨウ・ビクエ | ……はぁ、やっと来られたわ。ミラ、苦しい思いをさせてごめんなさい。今外に、あなたの仲間が来ているわよ。 |
ミラ | 私の……仲間……。それってルドガーとエルのこと ! ? |
ヨウ・ビクエ | ええ、そう。早く戻ってあげて。この先は私が引き受けるわ。 |
ヨウ・ビクエ | ここは……私のご先祖様が生まれた場所。故郷みたいなものだからご先祖のためにも綺麗に修復してあげないとね。 |
シング | えっと……あなたは確か……。 |
ヨウ・ビクエ | 私はヨウ・ビクエ。ヨーランド・ビクエ・オーデンセよ。 |
ヨウ・ビクエ | シングとヒスイにはリチアのスピルメイズで会ってるわよね。 |
ヒスイ | ああ。あの時はバタバタしていたけどな。 |
ヨウ・ビクエ | 今もバタバタしてるわよ。急がないと、ダーナ様の心が完全に崩壊してしまうもの。 |
ヨウ・ビクエ | あのデミトリアスとか言う男心核を思いっきり攻撃してくれたから……。 |
ヴェリウス | ヨーランド。急ぎましょう。 |
ヨウ・ビクエ | ええ。それじゃあ、ヒスイとシングはミラを連れて外へ出て。 |
ヨウ・ビクエ | リチアとクンツァイトは、ギリギリまで心核――そちら風に言うとスピルーンの修復を手伝ってくれないかしら。 |
ヨウ・ビクエ | もちろん後できちんとアジトまで送っていくわ。 |
リチア | もちろんです。スピルーンが壊れるところは……もう二度と見たくありませんから。 |
クンツァイト | 自分はリチアさまに従います。 |
ヨウ・ビクエ | ありがとう。それと、外に出たら鏡士たちに伝えて。ダーナの心核は魔の空域に移動させて封印を施すって。 |
ヨウ・ビクエ | そうすれば帝国も簡単には近づけなくなるわ。その代わり……世界が少し不安定になる。 |
ヨウ・ビクエ | 死の砂嵐こそ侵入してこないけれど虚無との境が危うくなって光魔が現れやすくなるわ。気を付けて。 |
シング | わかった。他には ? |
ヨウ・ビクエ | 私が目覚めたことで、精霊たちが目を覚まし始めるわ。彼らを味方に付けて。それがティル・ナ・ノーグを守るための第一歩よ。 |
シング | 必ず伝えるよ。 |
シング | さあ、ミラ、オレに掴まって。ヒスイも肩を貸してあげて。 |
ヒスイ | あ、ああ……。 |
ミラ | ありがとう……。 |
ミラ | ねぇ、あなた、誰 ?先祖がここで生まれたってどういうこと ? |
ヨウ・ビクエ | ああ、その話が途中だったわね。私のご先祖様はね、太陽神ダーナの鏡精だったのよ。私は鏡精の子孫ってこと。 |
キャラクター | 11話【10-15 ミラ】 |
? ? ? | ミラ……まだ目を覚まさないのかな……。 |
? ? ? | 随分衰弱していたから、ゆっくり休ませてあげないと。 |
ミラ | ……ん…………。 |
エル | ミラ ! ! エルのミラ ! ! |
ミラ | ……え…… ? |
ルドガー | ミラ……。よかった、気がついて。 |
ミラ | え…… ? ここは……どこ ? シングは ? |
エル | シングとヒスイが、ミラを大きな宝石の中から連れてきてくれたんだよ。 |
ルドガー | その時には、ミラはもう気を失っていたんだ。それでケリュケイオン……ここの医務室に連れてきた。 |
エル | ……ミラは、エルのことちゃんと覚えてる ? |
ミラ | え ? 何言ってるのよ。当たり前じゃない。 |
エル | よかった…… !ジュードたちはエルのこと覚えてなかったから……。 |
ミラ | ジュードたちもここにいる……のよね。 |
ルドガー | ああ。 |
ルドガー | ……と言っても、俺たちに出会う前のジュードたちだけどね。俺たちの知ってる姿より少し若いから驚くと思うよ。 |
ミラ | ……もう一人の私も……いるのよね。 |
ルドガー | ………………。 |
エル | ねぇ、ミラ。パパから伝言聞いたよ。スープ作ってくれるんでしょ ? |
ルドガー | こら、エル。ミラはまだ病み上がりみたいなものなんだぞ。 |
ミラ | ふふ……。いいわよ。動けるようになったら、作ってあげるわ。 |
ミラ | ……ううん、作らせて欲しい。やっと二人に会えたんだもの。 |
ユリウス | きみは……行かなくていいのか。ミラのところに。 |
ヴィクトル | バルドに頼まれて、成り行きでミラを精霊の封印地へ連れて行っただけだ。別に会って話すようなこともない。 |
ユリウス | ……そうか。 |
ヴィクトル | ………………。 |
ユリウス | ヴィクトルと言う名前は、本名か ? |
ヴィクトル | まるで尋問だな。 |
ユリウス | そうだな。……単刀直入に聞こう。きみは分史世界のルドガーなんじゃないか ? |
ヴィクトル | この世界で、正史も分史もないだろう。ここは全てが正史であり、同時に分史のようなものだ。 |
ユリウス | ああ。確かにこの世界でなら俺は生きてルドガーと共に歩める。クルスニクの呪縛はここには存在しないからな。 |
ユリウス | エルを守ってやることもできる。この世界でなら。 |
ユリウス | ――お前はどう生きるつもりなんだ、ルドガー。 |
ヴィクトル | ………………。 |
フィリップ | ゲホッ……ゲホッ……くふぅ……。 |
マーク | ……大丈夫か、フィル。 |
フィリップ | ああ……。さっき発作を抑える……薬を飲んだから……コホッ……。 |
マーク | 前よりひどくなってるじゃねぇか。 |
フィリップ | ……歳のせいかな。 |
マーク | 馬鹿なこと言ってるんじゃねぇよ。それで……わかったのか ? チビフィルが言ってた『始まりの場所』に行けってやつの意味。 |
フィリップ | ……うん。バタバタしていたけど、わかったと思う。あれは……ゲホッゴホッ…… ! |
マーク | また血を吐いたな……。 |
マーク | なぁ、このままじゃ本当に死ぬぞ。どうしてそこまでしてイクスたちに尽くすんだ。罪滅ぼしのつもりか ? |
フィリップ | ……はは。聞いてたのか。イクスとの話。 |
マーク | 扉の外で見張りをしてたからな。聞こえちまったんだよ。 |
マーク | そんなこったろうと思ってたから驚きはしなかったけどな。 |
マーク | いくら歪んでいようがファントムはもう一人のお前だ。 |
マーク | そいつがイクスとミリーナを殺せなんて言い出すんだ。お前の中にも……多少なりともそういう感情があるだろうとは予想が付くさ。 |
マーク | うちのマスターはクズの大馬鹿野郎だからな。 |
フィリップ | 耳が痛いよ……。でもその通りだ。 |
マーク | フィル……。死ぬつもりなんだろう ? |
フィリップ | ………………。 |
マーク | 鏡士が自分の魔鏡を手放すのは、自決する時だけ。お前、一度魔鏡を手放してるよな。 |
フィリップ | ……まだ死なないよ。イクスとミリーナのために、やることが沢山ある。 |
マーク | まったく……。『どの』イクスとミリーナのためなんだよ……。 |
イクス | 何だかこの数日、立て続けに色々なことが起きて正直頭がパンクしそうだよ。 |
コーキス | なあ、マスター。フィリップ様と何を話したんだ ? |
イクス | ………………。 |
コーキス | ……え ? 何でそんな怖い顔するんだ ? |
イクス | ……いや、何でもない。コーキスは知らなくていい。 |
コーキス | けどマスター―― |
イクス | コーキス ! ! |
コーキス | ! ? |
イクス | ……悪い。大声出して。この話はいいんだ。俺が……消化しなくちゃいけないことだから。それにまだ話の続きがあるみたいだったし……。 |
クラトス | アジトから魔鏡通信だ。スクリーンに映すぞ。 |
コンウェイ | 失礼するよ。そっちにミリーナさんはいるかな ? |
イクス | え ? ミリーナ ? アジトに残ってる筈だけど……。 |
コンウェイ | それが……彼女どこにもいないんだ。 |
イクス | ……え ? |
コンウェイ | もう夜も遅い。買い物に出たんだとしてもこんな時間まで連絡が無いというのはおかしいってルカくんが心配していてね。 |
コンウェイ | こちらも心当たりをあたってみるから急いで戻ってきてくれないか。 |
イクス | あ、ああ。わかった。今向かってるから。 |
イクス | (ミリーナ……。何かあったのか…… ?) |
| to be continued |
キャラクター | 1話【11-1 アセリア領の世界樹1】 |
? ? ? | (ごめんなさい、イクス……。あなたまで、この無間地獄に引きずり込んでしまった) |
? ? ? | (きっとあなたも虚無の痛みと苦しみを感じているでしょう。私も同じ……。意識を保つのがやっとだわ……) |
ミリーナ | (これは……夢…… ? ) |
イクス | クッ…… ! |
ミリーナ | (イクス…… ! ?もしかしてこれは滅びの夢の続き…… ?ゲフィオンの記憶なの ! ? ) |
ゲフィオン | (今の私は人型のカレイドスコープ。声を発することもできない) |
ゲフィオン | (イクスを……私のエゴで生み出された三人目のイクスを、慰めることも勇気づけることも彼に謝ることすらもできない。もどかしい……) |
ミリーナ | (辺りは虚無と死の砂嵐とイクスだけ……。これが人体万華鏡になったゲフィオンの見ているもの……) |
ゲフィオン | (事態は悪い方へ進むばかり……。どうすればいいの……。何か知っている筈なのに思い出せない……) |
ゲフィオン | (私は……記憶を切り離してしまったの ?わからない……) |
ミリーナ | (ゲフィオンが人体万華鏡になってから記憶の共有は途切れていたのに……。どうして今になって……) |
ミリーナ | (いえ、詮索は後だわ。ここはどこかしら。カーリャはどこ ?確か私たちは森で――) |
? ? ? | 目が覚めたか。黒衣の鏡士。 |
ミリーナ | あなたは私たちを襲った……。 |
? ? ? | 貴様に話がある。 |
ミリーナ | いきなり襲いかかっておいて話をしろなんて随分図々しいのね。 |
? ? ? | 世界を滅ぼした女ほどではない。お前はその分霊に過ぎぬようだが……それでも記憶を共有していると聞いた。 |
ミリーナ | あなたは何者なの ?どこかで見覚えがあるわ。きっと鏡映点……よね。 |
ダオス | 我が名はダオス。 |
ミリーナ | ! ! |
ミリーナ | (クレスさんたちの世界の――魔王 !物理攻撃は効かない……と聞いたことがあるわ。魔鏡術なら少しは――) |
ダオス | ……また、か。 |
ミリーナ | (来る ! ? ) |
ミリーナ | な、何 ? 魔物 ! ? |
ダオス | 伏せろ、鏡士。 |
ダオス | ―― |
ダオス | ここにまで現れるとは……。この森が奴らに寄生されつつあるというのか。 |
ミリーナ | あ……あの、ダオス……。ありがとう……ございます。今の……魔物、のようなものから助けて下さって。 |
ミリーナ | もしかして世界樹の前で私たちを襲ったのも本当は―― |
ダオス | お前たちを襲ったつもりはない。あの得体の知れない『アヤカシ』共に邪魔をされたくなかっただけだ。 |
ダオス | 奴らに見つかる前に世界樹の側を離れるつもりであったが小さな鏡精が騒ぎ立てたせいで面倒なことになった。 |
ミリーナ | ……あの、カーリャは無事なんでしょうか。 |
ダオス | あのアヤカシは、鏡精には攻撃を加えぬようだ。うるさく抵抗するから気絶させたが、問題なかろう。 |
ミリーナ | そんな言い方……。 |
ダオス | ……またアヤカシ共が来るぞ。時間がない。鏡士よ、答えるのだ。 |
ダオス | この世界から離れる術はないのか ?ここは愚かな人間どもに造られた、閉じた箱庭。しかし最初から閉じていた訳ではないだろう。 |
ミリーナ | ない筈……です。ゲフィオンの記憶に該当するものはありません。でも……ゲフィオンは自分の記憶に空白があると言っていました。 |
ダオス | ――時間切れのようだ。 |
ミリーナ | ! ! |
? ? ? | シネ カガミシ。 |
ミリーナ | きゃあああっ ! ? |
キャラクター | 2話【11-3 アレウーラ領】 |
ルビア | ……どう ? 治癒術効いてる ? |
イオン | はい……。ありがとうございます。 |
ロゼ | ……うん。顔色もよくなってきたしこれなら大丈夫みたいだね。さすが、ルビア。 |
ルビア | そんなことないわよ。それにあたしもアジトのみんなに助けてもらったから、これぐらいは当然だもの。 |
カイウス | なぁ、イオンって帝国にいるんだろ ?今あっちはどうなってるんだ ?メルクリアはどうしてるんだ ? |
イオン | 皇女メルクリアですね。残念ながら僕はお会いしたことがないんです。 |
イオン | 僕は具現化されてからずっと……その、僕の双子の兄……のような存在に預けられていましたから。 |
カイウス | イオンも双子なのか ! ? |
ルビア | カイウスとルキウスもそうだしルークとアッシュもそうだし、何だか双子だらけね。 |
二人 | ………………。 |
ロゼ | ――あ、誰か来る。この足音はスパーダ、かな ? |
スパーダ | よぉ、大丈夫か ? |
カイウス | スパーダ ! |
ルビア | あら、スパーダ一人なの ? |
スパーダ | ああ ? オレ一人じゃ不満か ? |
ルビア | そんなこと言ってないでしょ。 |
ルビア | これからアレウーラ領を調査したり、ハスタって奴を追いかけたりするんだから、てっきりイリアとルカも来てくれるんだと思ってたのよ。 |
スパーダ | ハスタ、ねぇ……。まったく異世界にまで来てあいつと関わるとは思わなかったぜ。 |
スパーダ | ま、そいつはともかく、計画は一旦中止になった。 |
ロゼ | どういうこと ? ユリウスさんが向かった精霊の封印地で何かまずいことがあったの ? |
スパーダ | いや、そっちは一旦片付いたらしいんだが今度はアジトの方で問題が発生したんだよ。 |
スパーダ | で、色々情報も整理しなきゃならないってんで各地に散らばってる調査隊も全員引き上げようってことになったらしいぜ。 |
カイウス | それで、アジトで何が起きたんだ ? |
スパーダ | ミリーナがいなくなっちまったんだよ。 |
三人 | ! ! |
ロゼ | いなくなったって、どういうこと ?攫われたの ? あのアジトで ? |
スパーダ | そこら辺は、今調べてるところだ。 |
ロゼ | なるほどね。確かに色々立て続けに事件が起きすぎてる。 |
ロゼ | こっちもハスタの捜索は適当なところで切り上げた方がよさそう。 |
カイウス | だったらアジトに戻りがてらこの辺りの情報を集めていこう。いいだろ、スパーダ。 |
スパーダ | おう。そのつもりでこのスパーダ様が来てやったんだからな。ルビアにはルカも世話になったしよ。 |
ルビア | そんなのお互い様よ。でも……イオンを連れ回すのはよくないわよね。あたし、先にイオンを連れてアジトに戻るわね。 |
イオン | ………………。 |
デクス | じゃあ、俺もそろそろ持ち場に戻るとするか。制服無くした言い訳は考えておかないとなぁ……。 |
イオン | あの……デクスさん。帝国へ戻るなら、僕も一緒に連れて行ってもらえませんか ? |
ルビア | え ! ? その体で帝国へ帰るの ! ? 無茶よ ! |
イオン | ……はい、確かにその通りだと思います。ですが、僕はまだハロルドとの約束を果たしていません。 |
イオン | 彼女は自分の身に危険が及ぶことを承知の上で僕を送り出してくれました。彼女の信に答えなければ僕がここにいる意味がありません。 |
ロゼ | ……約束って、何 ? |
イオン | 各地に派遣されている領主――リビングドールβを救うことです。 |
スパーダ | 『心に剣を持ち、誰かの楯になれ』『右手に規律を、左手に誇りを』『己を殺し、永久の礎にせよ』 |
スパーダ | 『正しき道を正しく歩め』『個よりも全に仕えよ』 |
デクス | なんだ、そりゃ ? |
スパーダ | 騎士の心得だ。オレの中に叩き込まれて、裏切れねェもんなんだ。こいつもそうなんだろうと思ってよ。 |
イオン | ――はい。僕はこの世界ではあまりに無力だ。それでも……託された信頼を……思いをそして苦しむ人々を放っておくことはできません。 |
ロゼ | 導師、か……。世界は違っても、導師って呼ばれる人は何となく似てるとこがあるんだね。 |
ロゼ | いいんじゃない。魔鏡通信機は持ってるんでしょ ?何かあったらこっちに連絡をくれればいい。きっと誰かが助けに行く。 |
イオン | ありがとうございます。 |
ルビア | でも、イオン。ルークたちはきっとイオンのこと心配してるわよ。だから自分を大事にすることは忘れないでね。 |
イオン | はい。僕の代わりは……いませんから。 |
キャラクター | 3話【11-4 テセアラの世界樹】 |
ミトス | 毒気に当てられたって顔してるね。どうだった ? シングって毒は ? |
シンク | 別に。何かわめいていたけど、もう忘れたよ。そっちこそ帝国にいた頃にあの毒を浴びてたんじゃないの ? |
ミトス | 知らなかった ?ボク、ああいうタイプの毒には耐性があるんだよ。墜ちた勇者だからね。 |
シンク | ……フン。 |
ジーニアス | どうしたの、二人とも。凄く怖い顔してるよ。……ってシンクの顔は見えないけど。 |
ラタトスク | やめとけ、ジーニアス。どうせろくな話じゃない。 |
ジーニアス | ……そう ? でも、まあ、無理に聞き出すことじゃないよね。誰だって触れて欲しくないことってあるもん。 |
ミトス | ところで、ジーニアスこそどうしたの ?エミルとラタトスクと三人で何か真剣に話していたでしょう ? |
ジーニアス | あ、そうそう。大樹カーラーンのことだよ。えっと……ミトス、ボクたちの世界の大樹のこと覚えてる……よね? |
ジーニアス | ボクの知ってる大樹は、一度急激に大きくなって暴走して……枯れたんだけど……。 |
ミトス | ……うん、知ってる。多分、ボクとジーニアスは同じような時期に具現化されたんだね。 |
ミトス | ごめんなさい、言いにくいことを言わせて。 |
ミトス | 元の世界での大樹の暴走は、ボクが君たちを利用して引き起こしたようなものだからジーニアスが気にすることはないよ。 |
シンク | 何があったのか知らないけど相変わらず同族には甘いね、墜ちた勇者サマ。 |
ジーニアス | そんな言い方しないでよ ! |
ミトス | いいんだよ、ジーニアス。事実なんだから。それより、まだ続きがあるんでしょう ? |
エミル | (ミトスのシンクとジーニアスへの態度の差が……) |
ラタトスク | (っていうか、ジーニアスとリフィルに甘いんだよ。あいつは……) |
エミル | (そ、そうかも……) |
ジーニアス | あ、うん。えっと、僕らの知ってる大樹は枯れた状態でエミルの知ってる大樹は、芽が出たばかりの小さな木だったんだって。 |
ジーニアス | エミルはボクたちより未来の世界の人だから樹の状態が一致してなくてもおかしくはない。 |
ジーニアス | でも、どちらの世界が影響したにせよ僕らの世界を具現化したのならこんな立派な大樹は存在していないと思うんだ。 |
シンク | 具現化ってのは、鏡映点を通すから鏡映点の記憶とか感情が影響するんだろ ? |
シンク | この大陸を具現化した時一番の核になったのはクラトスの息子なんだからあいつの影響じゃないの ? |
ジーニアス | ロイドだって、枯れた樹しか知らない筈だよ。 |
ミトス | ラタトスクの影響じゃない ?ラタトスクは知ってるでしょ大樹カーラーンが元気だった頃の姿。 |
エミル | ……ああ。だが、あの樹は俺が知っているカーラーンの姿とも違う。デカすぎる。 |
ミトス | どういうこと ? |
シンク | ……成長しているってことだろ。しかもラタトスクの口ぶりだと、異常なほどにさ。 |
ミトス | ボクが若かった頃には、大樹もかなり弱っていたから元の姿はわからないけど……。 |
シンク | こうなると、やっぱりソーマ使いを無理矢理連れてきた方がよかったんじゃない ? |
ジーニアス | でも本当に植物にスピルリンクできるかどうかは賭けみたいなものだったから……。 |
エミル | ……とりあえず俺がこの樹にアクセスできるかどうか試してみる。 |
ラタトスク | ――……応えろ、大樹カーラーン ! |
ラタトスク | ……なん……だ……これは…… ? |
ジーニアス | どうしたの、ラタトスク ! ? 顔が真っ青だよ ! |
ラタトスク | ……………………。 |
ミトス | アクセスできなかったの ?それとも『他の精霊』が見えた ? |
ラタトスク | ……わからない。 |
シンク | はぁ ? |
ラタトスク | 何かが……いた。この樹は俺の樹だ。だが……俺だけの樹じゃなくなっていやがる。 |
ミトス | ロイドたちが……未来の世界で大樹の種子――大いなる実りから大樹を芽吹かせた。その時大樹には新しい精霊が誕生した……って聞いた。 |
ラタトスク | ……それでも、これは俺の樹だ ! |
シンク | 所有権はどうでもいい。後で勝手に主張してよね。 |
シンク | それより、アンタだけの樹じゃなくなってるってのはその新しい精霊とやらもこの世界に具現化されてこの樹に取り憑いてるっていうこと ? |
ラタトスク | いや、新しい精霊……は痕跡しか残っていない。どこかに立ち去ったのか、帝国が捕まえたのか定かじゃねぇ。 |
エミル | さっきこの樹にいたのは精霊じゃないよ。あれは……呪いの塊のようなものだった……。 |
エミル | それがマナ――ここではキラル分子だっけ。とにかくそれを集めている……ように感じたけど。 |
ジーニアス | キラル分子を集めているから樹が異常発達してるってことなんじゃない ?確かにこの辺りはマナが異常に濃いもん。 |
ミトス | ………………。 |
シンク | ――ちっ。死霊使い(ネクロマンサー)から呼び出しだ。 |
ジーニアス | ジェイドさん ? 嫌なら代わろうか ?ボク、意外とあの人嫌いじゃないよ。ちょっと面倒くさいけど。 |
シンク | ……だったら任せるよ。顔を見ると今すぐ殺しにいきたくなるからさ。 |
ジーニアス | 怖…… ! |
ラタトスク | ……おい。どういうことだ。 |
ミトス | 何のこと ? |
ラタトスク | おかしいと思ったんだ。お前が人間共に協力して精霊の調査だのと言い出すなんて。 |
ラタトスク | あの得体の知れない呪いの塊はともかく何なんだ、あの新しい樹の精霊は。なんで精霊の名前が『マーテル』なんだ ? |
ミトス | さぁ、ね。アセリア大陸の影響じゃないの ?元々この大陸は、あっちとキメラ結合していたし。 |
ミトス | クラースたちの世界にはいるんでしょ。マーテルって精霊が。 |
ラタトスク | ……そっちの精霊のことは知らねぇが俺がカーラーンの中で見た精霊の痕跡……あの新しい精霊は、マーテルと同じ顔をしていたぞ。 |
ミトス | ……そう。やっぱり、そうなんだ。 |
キャラクター | 4話【11-5 アジト】 |
ルカ | おかえり、スパーダ !ロゼさんもカイウスもルビアもお疲れ様 ! |
イリア | で、どうだったの ? ハスタの奴は ? |
スパーダ | 実際に遭遇することはなかったんだがよ。ああいう奴だから目撃証言も痕跡も腐るほどあってな。 |
スパーダ | 大体の足取りは掴めたぜ。 |
カイウス | ハスタの奴、イオンがオレたちに匿われた辺りでイオンの足取りを見失ったみたいで、近くの町や村を順番に……襲っていったらしいんだ。 |
ルカ | そんな……。 |
ルビア | どこもひどい有様だったわ。人捜しのために襲ったなんてレベルじゃなかったもの。 |
イリア | それ、ほっといて大丈夫なの ! ?何かした方がいいんじゃない ? |
ロゼ | とりあえずセキレイの羽には、被害に遭った村や町を回るように伝えた。こんな時だけど、アジトからも救護の手を出したいから、ちょっと話をまとめてくる。 |
ロゼ | ………………。 |
ルビア | あたしも行くわ。あたしたちの世界が元になっている大陸で起きたことだもの。他人事とは思えない。カイウス、報告は任せたわよ ! |
ルカ | それで……ハスタはどうしたの ?まだアレウーラ領で暴れてるの ? |
スパーダ | いや、それが、途中で駐留兵を残して引き上げちまったらしいんだ。どうも船で帝都に向かったらしい。 |
カイウス | イオンがデクスと帝都へ向かってるからそれに感づいた……とかじゃないといいんだけど。 |
スパーダ | まあな。ただ、お前の仲間の―― |
カイウス | ティルキスとアーリア ? |
スパーダ | ――そう、そいつらは上手いこと逃げ切れるんじゃねェか。ハスタの意識はイオンの方に向いてるみたいだからよ。 |
ルカ | イオン……さん、か……。 |
スパーダ | あ ? なんか気になることがあるのか ? |
ルカ | うん……。後で話すよ。ミリーナのことも心配だし、色々ばたついてるから。 |
ルカ | そうだ、カイウスの仲間の件はカロル調査室にも共有した方がいいね。 |
カイウス | そうだな。オレ、カロルに話してくるよ。それにイオンたちやハロルドさんのことも心配だしさ。 |
ミクリオ | ――この浮遊島で、誰かに攫われるなんてことは考えにくい。やっぱりミリーナは自発的にどこかへ出かけたんじゃないか。 |
エドナ | だとしても、自分が帝国に追われている立場だってことぐらいわかっている筈よ。帝都や領都のような人目に付く場所には行かないんじゃないかしら。 |
ロンドリーネ | ねぇ、ミリーナが帰ってこないってホント ! ? |
ジェイド | おや、まるでミリーナが出掛けたことをご存じのような口ぶりですねぇ。 |
ロンドリーネ | ……ごめん。こんなに大事になるなんて思ってなかったから……。 |
ジョニー | ロディ、何があったんだ ? |
ロンドリーネ | 実は―― |
ロンドリーネ | あれ ? ミリーナ。どこかに出掛けるの ? |
ミリーナ | ロディ !ええ、ちょっとやることができちゃって。でもすぐに戻るわ。 |
ミリーナ | あっ、それと、このことはみんなに内緒にしててね。特にミトスには、絶対よ。ちょっとしたサプライズの仕込みだから。 |
ロンドリーネ | これが昼間の話。軽い感じだったからパーティーか何かの買い出しかなって。そういうこと、みんなよくやるでしょう ? |
スレイ | ミトスには絶対内緒……ってことはミトスには何か心当たりがあるかも知れないね。 |
エドナ | 大佐のボーヤ。 |
ジェイド | もうやっていますよ。不本意ながらね。 |
ジェイド | ――おや、シンクにかけたつもりでしたがそこまで嫌われていましたか。いやぁ、残念です。 |
ジーニアス | もー、そういうこと言うから嫌われるんだよジェイドさん。それで、何の用 ? |
ジェイド | 単刀直入に言いますが、ミリーナが外出したまま連絡がなく、魔鏡通信にもでません。ミトスなら心当たりがあるのではないかと思うのですが。 |
ミトス | ……もしかして、アセリア領の世界樹、かな。写真があったら欲しいとは言ったよ。 |
ジェイド | ――なるほど。ありがとう。もう夜も遅い。そちらも気を付けて戻ってきて下さい。 |
ミトス | ……いや、ボクたちはこのままアセリア領に向かうよ。丁度あっちの世界樹も見たいと思ってたんだ。 |
ジェイド | それはそれは……。 |
ミトス | ――何 ? |
ジェイド | いえ、謎が解けるといいですね。お気を付けて。 |
ジェイド | ジーニアス、そのメンバーではあなたとエミルが一番常識的だ。他のメンバーの手綱をしっかり握っていて下さい。 |
ジーニアス | 了解 ! |
スレイ | ミリーナはアセリア領の世界樹に向かったのかな。それで……何か不測の事態が起きた。 |
ミクリオ | あの辺りは帝国の監視も薄いし安全な場所だと思っていたが……。 |
ジョニー | アセリア領、か。カロル調査室の報告じゃ最近ダオスとかいう奴があの辺りをうろついてる……って言ってなかったか ? |
コンウェイ | ミリーナさんのことケリュケイオンに連絡してきたよ。 |
コンウェイ | ところで、面白そうな話をしているね。 |
エドナ | 面白い ? 何が ? |
コンウェイ | アセリア領に魔王と呼ばれたダオスがいるってところが、さ。やっぱりクレスくんたちを呼ぶのかい ? |
ジェイド | ……そうですね。アセリア領を調査するなら彼らの方が適任でしょう。 |
ジェイド | イクスが戻り次第出発できるようクレスたちに協力を仰ぎましょう。 |
コンウェイ | なら、ボクも同行させてもらおうかな。 |
ジェイド | おや、これはまた珍しい。 |
コンウェイ | こんな機会は滅多にないからね。 |
スレイ | オレたちも一緒に行った方がいいんじゃないか。人手は少しでも多い方がいいだろ ? |
ジェイド | ええ。ただ、世界樹の傍にいない可能性もあります。念のため、世界樹を中心に、アセリア領全土にも捜索範囲を広げておきましょう。 |
ジェイド | スレイ、ミクリオ。他に協力してもらえそうなメンバーを集めてきて下さい。それと―― |
エドナ | もう一度ケリュケイオンに連絡、ね。 |
キャラクター | 6話【11-6 アトワイト】 |
イクス | ミリーナの奴……。朝になってもアジトに帰ってこないなんて……。全然連絡も取れないし……。 |
ロンドリーネ | 本当にごめん……。すぐに帰ってくるから誰にも言わないでって頼まれてて……。 |
ロンドリーネ | でも……まさか連絡が取れなくなっちゃうなんて思わなかったから……。 |
イクス | いや、ロディは悪くないよ。それより秘密だったのに話してくれてありがとう。 |
コンウェイ | 世界樹ユグドラシルの写真を撮りに行くなんて素敵だよね。ボクも誘って欲しかったな。 |
クラース | ……もしや世界樹を見たくてミリーナの捜索に来たのか ? |
コンウェイ | まさか。ミリーナさんの身を案じてついて来たに決まってるじゃないか。……それにしても本物の世界樹は素晴らしいね。想像以上だよ。 |
アーチェ | 本物っていうか、具現化した世界樹だけどね。 |
クレス | イクス ! あそこにいるのはカーリャじゃないか ! ? |
イクス | 本当だ ! ? カーリャ ! ? どうしたんだ ! ? |
カーリャ | イクス……さま……。ミリーナさまが……。連れていかれて……。 |
イクス | 何 ! ? |
すず | 周りに敵がいないか、確認してきます。 |
ミント | 今、法術で怪我を癒やします。そうすれば、少しはカーリャさんも楽になるはずですから。 |
チェスター | おい、カーリャ。少しは楽になったか ? |
カーリャ | はい……。ありがとうございます……。 |
クラース | 一体何があったんだ。帝国軍が現れたのか ? |
すず | ――いえ、周囲の草は踏み固められていません。足跡もほとんどない。軍隊ではないと思います。 |
すず | ただ、少し先の狩猟小屋が半壊していました。そこで何者かが戦った形跡があります。 |
カーリャ | きっと……あのイケメンですぅ……。 |
アーチェ | え ! ? ちょっとカーリャ、頭でも強く打ったの ! ? |
コンウェイ | ……まさか、とは思うけど。そのイケメンっていうのは金髪で長身のマントの男かい…… ? |
二人 | ! ! |
カーリャ | そうです。黒衣の鏡士かって……確認して……ミリーナさまをさらって……。 |
コンウェイ | ……確か、カロル調査室が出してきた最新のはぐれ鏡映点リストに、ダオスの名前があったよね。 |
すず | だとしたら、あの狩猟小屋で戦っていたのはミリーナさんとダオスということになりますね。 |
イクス | それで……連れていかれたのか。 |
ロンドリーネ | どうして……そんなことを……。 |
チェスター | あいつならやるだろ !オレたちの村だってそもそもあいつのせいで……。 |
クレス | こうしてはいられない。ミリーナの行方を捜そう。そこにダオスもいるなら、元の世界で途中だったダオスとの決着を、ここでつける ! |
イクス | ま、待ってくれ !ダオスはなんでクレスたちと敵対していたんだ ? |
イクス | ミリーナを殺さずにさらおうとしたのは、元の世界でやろうとしていたことに関係があるんじゃないかな。 |
イクス | 具現化された人は、みんな元の世界を強制的に捨てさせられた。それって果たしたかった願いとか目的も取り上げられてしまうってことだと思う。 |
チェスター | 関係あるかよ ! ? ミリーナがさらわれたんだぞ ! ? |
すず | カーリャさんも……こんな目に……。 |
クレス | ああ。ダオスが僕たちの世界でしてきたことを考えればティル・ナ・ノーグでも何かを企んでいるに違いない。 |
コンウェイ | ……クレスくんってダオスのことになるといつもと雰囲気が変わるんだね。 |
クレス | ――ダオスは倒すべき敵だ ! |
ロンドリーネ | ………………。 |
クラース | ――そう、私たちの倒すべき敵だ。だがこの世界においては、イクスの言うこともわかる。 |
クレス | クラースさん ! ? |
クラース | こうしよう。ダオスを追いかけ、ミリーナを取り戻す。それは当然のことだ。だが……ダオスの目的について彼に問いかけてみてはどうだ。 |
クレス | ………………。 |
チェスター | 奴と話して、何をしようとしていたのかがわかったところでどうなる ! ? |
チェスター | いくらこの世界にアミィを具現化されていても元の世界のアミィが辛い思いをしたのは変わらない !トーティス村だって…… ! |
ミント | ………………。 |
コンウェイ | でも、ダオスがこの世界に何かを仕掛けていた場合。ダオスを殺すことで、この世界に解けない呪いを放つことになるかも知れないよね。 |
アーチェ | んー、だから、ダオスの目的を知っておけってことか。 |
すず | 確かに、戦いにおいて敵を知ることは大事です。敵を知り己を知れば百戦危うからずといいます。 |
クレス | ……わかった。でも、ダオスが何も答えないまま攻撃してきたら――その時は元の世界で果たせなかった決着をつけることになる。それでいいかな、イクス。 |
イクス | ……ごめん。でもありがとう。 |
すず | 狩猟小屋から血の跡が続いていました。少量でしたから、致命傷による出血というよりはパンくずと同じではないでしょうか。 |
イクス | ミリーナがわざと残したメッセージか。リフィル先生の時と同じだな……。 |
クレス | それはどっちの方角に続いているんだい ? |
すず | ……あちらです。このまま森を抜けるとまっすぐ先にダオス城があります。 |
チェスター | ダオス城…… ! あそこか ! |
コンウェイ | なら、提案があるんだ。ボクとイクスくん、ロディさん、カーリャは別働隊として動いたらどうかな ? |
コンウェイ | クレスくんたちはダオスに向き合うために正面から。ボクたちはミリーナさんを捜索するために別ルートから侵入する。 |
コンウェイ | クレスくんたちがダオスを引きつけて、ボクたちがミリーナさんを救出するための時間を確保してもらいたい。 |
コンウェイ | ミリーナさんさえ救出すれば、ゆっくりダオスの真意を聞けるだろう ? |
コンウェイ | ……まぁ、元の世界とは違うから干渉したことにはならないだろうし。 |
イクス | ? |
ロンドリーネ | ダオスの真意……。 |
イクス | ……えっと、うん。俺はそれでいいと思う。ただクレスたちはそれで構わないかな ? |
クレス | みんな――いいね。 |
チェスター | ああ。あいつを叩けるならな。 |
アーチェ | こんな形でダオスと戦うことになるなんてね。 |
すず | 私の覚悟は決まっています。 |
クラース | 無論、私もだ。 |
ミント | クレスさん、行きましょう。 |
クレス | ああ。そして僕たちは今度こそ、ダオスを――倒す ! |
キャラクター | 5話【11-6 アトワイト】 |
| 早朝。 |
イクス | 遅くなってすみません ! ミリーナから連絡は ? |
リフィル | お帰りなさい、イクス。残念ながらまだ連絡はないわ。すでにスレイたちを中心にして、アセリア領の外周部から順次捜索を開始してもらっているところよ。 |
フィリップ | こちらも救世軍の地上部隊をアセリア領での捜索にあたらせています。捜索地図を共有しましょう。 |
リフィル | ええ、お願いするわ。 |
クレス | イクス、僕らは世界樹ユグドラシルからミリーナを捜そう。 |
ミント | 私たちも協力します。 |
イクス | ごめん、みんな……。ミリーナのことでこんな迷惑をかけてしまって……。 |
クラース | イクスが謝ることじゃない。何でも背負いすぎるのは感心しないな。 |
ロンドリーネ | そうよ。謝りたいのは私の方。今回の件は、私の責任でもあると思うから……。だからそんな顔しないでよ。 |
コーキス | ………………。 |
チェスター | ところでイクス、お前大丈夫か ? 顔色が悪いぞ。 |
アーチェ | この数日ろくに寝てないでしょ。あたしたちだけで行こうか ? |
すず | 極度の疲労は判断力を鈍らせます。無理は禁物です。 |
コーキス | ……そうだよ、マスター。ケリュケイオンの中でも結局ほとんど寝てなかったし、ミリーナ様は俺が代わりに見つけるから、マスターは少し休めよ。 |
イクス | いや、大丈夫。一緒に行かせてくれ。 |
コーキス | ……大丈夫じゃないよ。 |
イクス | そんなことないよ、大丈夫―― |
コーキス | 大丈夫じゃねぇっつってんだろ ! |
一同 | ! ! |
コーキス | マスターは俺が鏡精だってこと忘れてるんじゃねーのか ! ? |
コーキス | 俺はマスターが何を考えてるかはわかんねーけど感じてることは何となくわかるんだよ ! |
コーキス | なんか超苦しんでるだろ ! ? つらいんだろ ! ?何で隠すんだよ ! ? 大丈夫大丈夫って全然大丈夫じゃねーじゃん ! ! |
イクス | ………………。 |
コーキス | マスターは休んでてくれよ。俺、ちゃんとミリーナ様を見つけるから。な ? |
イクス | ……いや、俺も行く。 |
コーキス | はあ ! ? 俺が信じられねぇのかよ ! ? |
イクス | そうじゃない。俺は……一応ミリーナの幼なじみだから。俺ならわかる手がかりがあるかも知れないだろ。 |
コーキス | んなもの、魔鏡通信で見てもらえばいいだろ ! ? |
イクス | 俺が行く。そう決めてるんだ。 |
コーキス | ……あー、そうかよ。勝手にしろ、石頭のクソマスター ! !俺はもう知らねーからなっ ! |
クレス | コーキス ! |
クレス | ――イクス、いいのかい ?コーキスの言うことももっともだと思うけれど。 |
イクス | ……コーキスの気持ちはありがたいけど今は時間が惜しい。 |
フィリップ | イクス、待ってくれ。コーキスとちゃんと話した方がいい。 |
イクス | あなたの知っているイクスならそうしたかも知れませんね。 |
フィリップ | ! ! |
イクス | ――とにかく、これ以上事態を放置してみんなに迷惑をかけることは避けたい。 |
イクス | 行こう、クレス。クラースさんも、チェスターもミントたちも……よろしくお願いします。 |
マーク | ……自分から空気悪くしといてそりゃねぇだろ、イクス。 |
イクス | ………………。 |
リフィル | ――はい、そこまで。 |
リフィル | マーク、煽るのはよくないわ。イクス、あなたも少しいつもの冷静さを取り戻した方がいいわね。 |
リフィル | とにかく、時間が惜しいと思うのなら協力して最善を尽くしましょう。 |
イクス | ……そう、ですね。すみません。今のは俺が悪かったです。 |
アトワイト | イクスさん、コーキスさんのことは任せてもらえるかしら。あの子の気持ち、わかるような気がするの。後であなたと仲直りできるよう、少し話をしてみるわ。 |
イクス | ……すみません。アトワイトさんにもご迷惑をおかけして。 |
アトワイト | いいのよ。それより体調が万全でないのは明らかだから気を付けてちょうだいね。 |
イクス | はい、わかりました。 |
アトワイト | ここにいたのね、コーキスさん。 |
コーキス | ……マスターは ? |
アトワイト | ミリーナさんを捜しに行ったわ。 |
コーキス | ………………。 |
アトワイト | コーキスさん。あなたの言っていたことは正しいわ。イクスさんは明らかに無理をしている。彼を戦力に数えるのは愚策よ。 |
コーキス | だったらどうしてマスターを止めてくれなかったんだよ ! ? |
アトワイト | あなたならどうかしら。 |
コーキス | え ? |
アトワイト | もしもイクスさんが行方不明なら、あなたは自分の体がどんな状態であろうと、イクスさんを捜しに行くでしょう? |
コーキス | それは……俺はマスターの鏡精だから……。 |
アトワイト | 違うわ。鏡精だからじゃないの。大切な人に危機が迫れば、人は冷静ではいられない。イクスさんもそうなのよ。 |
アトワイト | ただ、私が彼を止めなかったのはそれだけが理由ではないけれど……。 |
コーキス | え ? |
アトワイト | 一つは能力の問題。彼、かなりの記憶力の持ち主だそうね。 |
アトワイト | それに鏡士同士は、魔鏡通信機がなくても魔鏡で連絡が取れるとも聞いたわ。ミリーナさんを捜すのに、イクスさんの能力はとても有益よ。 |
コーキス | そりゃ……マスターは頭いいし……強いし……。 |
アトワイト | そしてもう一つ。イクスさんは明らかに何かを悩んでいる。あなたが指摘した通り。それは……恐らく自身に関わる何か重大なことなのでしょうね。 |
アトワイト | だから、何かをせずにはいられない。動いていないと、余計なことを考えてしまう……そんなところじゃないかしら。 |
アトワイト | そんな彼を止められるのは彼をよく知る人物だけだと思うの。 |
コーキス | ミリーナ様……。 |
アトワイト | ええ、そうよ。そしてコーキスさんあなたもイクスさんの理解者なの。近いからこそ、わかるからこそ、ぶつかってしまう。 |
コーキス | …………うん。 |
アトワイト | 私もフィリップさんたちとミリーナさんを捜すつもりよ。いわば、イクスさんたちの後方支援ね。 |
アトワイト | コーキスさん、あなたも一緒にどうかしら。あなたが手伝ってくれたら、イクスさんもきっと喜ぶわ。 |
コーキス | ……そうかな。 |
アトワイト | ええ、きっと。 |
キャラクター | 7話【11-9 ケリュケイオン】 |
アトワイト | イクスさんたちは、何かミリーナさんの手がかりをつかんだのかしら。 |
マーク | 何かありゃ、連絡してくるとは思うが……。 |
コーキス | ……なぁ。 |
マーク | ……ああ、お前も感じてるのか。 |
コーキス | やっぱ、なんかいるよな ? 昔、鏡映点が近くにいる時に感じたチキン肌みたいな……。うーん、もっと気持ち悪い感じの……。 |
マーク | ああ。何なんだ、こいつは……。 |
アトワイト | それは、鏡精独特の感覚なのかしら。フィリップさん、何か思い当たることはある ? |
フィリップ | いや……。鏡精が反応するとしたらキラル分子に関わるもの……ぐらいかな。それも幼体でないと、さほどではないと思う。 |
クラトス | ――マークとコーキスが察しているものかはわからぬがここから北東の方角で、何者かが戦っているようだ。 |
ゼロス | おっと、天使様はさすがお耳の具合がよろしくていらっしゃる。いや、それとも視力の方かな ? |
クラトス | 神子も天使化すれば、すぐにわかる筈だが ? |
ゼロス | 必要に迫られなきゃ、あんなものはご免だってーの。 |
コーキス | クラトス様、誰が戦ってるかわかるか ?まさかマスターたちってことは……。 |
クラトス | ……いや、私の記憶が確かならあれはダオス、という者に似ているようだ。 |
マーク | おっと……そう来たか。 |
アトワイト | 行ってみましょう。ミリーナさんの姿を見ているかも知れない。 |
ダオス | ――テトラシャドウ。 |
アトワイト | な、何…… ! ? あれは魔物なの ? |
フィリップ | ま……さか…… ? |
マーク | ……うちの大将に思い当たる節がありそうだが今はあのイケメンのフォローが先だ。各自、宜しく頼むぜ ! |
ゼロス | ……何だったんだ。今の敵は。なんつーか……手応えがまるで感じられなかったぞ。 |
コーキス | あいつらだ……。俺が感じてた、あの嫌な感じを発してたのは。 |
フィリップ | (やっぱりアレは……) |
ダオス | ……鏡精が二人。お前たちも鏡士か ? |
コーキス | え ! ? 俺たちが鏡精って、どうしてわかるんだ ! ? |
ダオス | 質問しているのは私だ。 |
コーキス | な、何 ! ? |
アトワイト | コーキスさん。怒りに身を任せてはいけないわ。冷静に。 |
コーキス | ……うぅ。 |
アトワイト | 確かに鏡士も一緒にいるわ。あなたは……ダオス、よね ? |
ダオス | 何故、私を知っている。黒衣の鏡士の仲間か ? |
コーキス | ミリーナ様を知ってるんだな ! ? |
ダオス | そうか……。あの女を捜しに来たのだな。 |
コーキス | もう、何なんだよ ! 人の話を聞けよ !ミリーナ様はどこにいるんだ ! ? |
ダオス | ――招かれざる客が来たようだ。どうせお前たちの仲間だろう。あの女もいずれ見つかる。 |
フィリップ | 招かれざる客 ? イクスたちか…… ? |
ダオス | ……そのモノクルは魔鏡だな。貴様が鏡士か。 |
フィリップ | ! |
ダオス | お前なら知っているか ?この地獄から抜け出す方法を。 |
フィリップ | ない。ここは閉じた世界だ。外側からは観測することすらできない。……本来なら。 |
ダオス | ――やはりあるのだな ! この世界から逃れる方法が ! |
全員 | ! ? |
フィリップ | 期待をさせたなら謝る。鏡映点が元の世界に戻る確率は限りなくゼロに近い。 |
フィリップ | だが、ゼロだとは言い切れない。 |
フィリップ | この世界には壁がある。外からの干渉を防ぐ次元の壁――ティル・ナ・ノーグの内側から見れば外へ出るために超えなければならない壁だ。 |
フィリップ | だが、この壁は何度か崩壊しかけている。 |
クラトス | その壁というのはアイギスのことか。 |
フィリップ | そう、虚無から世界を守る壁だ。今、この壁には小さな傷がある。それを塞いで守っているのがゲフィオンだ。 |
フィリップ | 壁がなければ、この世界は滅ぶ。その時なら――鏡映点も異世界に帰れるかもしれない。 |
ダオス | この世界を壊せばいいということか。 |
コーキス | そんな ! ? |
フィリップ | ただし、この世界が滅ぶ時には当然、この世界の人間も、鏡映点も共に滅ぶ。 |
ダオス | 滅びる前に脱出すればいい。 |
フィリップ | 賭けてみるかい ?たった一度の命を賭けたチャンスに。 |
フィリップ | 成功しても必ず戻れるという保証はない。よしんば戻れたとして、具現化された存在が元の存在と融合することはできない。 |
フィリップ | 具現化はこの世界の仕組みによって成り立っている。違う世界に行けば、消えるか、自壊するか或いは異物となって元の世界をも消滅させるかだ。 |
フィリップ | それより何より、学術的にゼロと言い切れないだけで計算上はこの世界の終わりと共に鏡映点も終わる。故に、戻ることは不可能だ。 |
ダオス | それでも万一望みがあるなら、私はこの世界を滅ぼす !そうすればこの世界に具現化された世界樹から大いなる実りを運び出せる…… ! |
マーク | どうやって ? |
ダオス | 何 ? |
マーク | どうやって世界を滅ぼして、どうやって滅びきる前に次元の壁の穴を見つけ、どうやって死の砂嵐や虚無を超えて、どうやって元の世界を見つけるんだ。 |
マーク | その方法が見つからなけりゃ世界を滅ぼす意味がない。あんたは意味のないことをする馬鹿には見えないがねぇ。 |
ダオス | ………………。 |
マーク | 戻りたきゃ――世界を滅ぼしたきゃ今は鏡士とこの世界を守っておいた方がいい。あんたの疑問に答えを出せるのは鏡士だけだ。違うか ? |
ダオス | ――よく喋る男だ。 |
コーキス | あ、おい ! ミリーナ様は―― |
コーキス | ……って、いなくなっちまった。どうする ? あいつ、ミリーナ様の行方を知ってるみたいだったけど……。 |
アトワイト | ダオスが言っていたわね。招かれざる客が来たって。 |
クラトス | ああ。それが本当に我々の仲間なら、捜索隊の誰かがダオス城に侵入したのだろう。 |
クラトス | ダオス城の仕掛けのことを考えればそれはデリス・エンブレムを持つ者でしかあり得ない。 |
アトワイト | 確かクレスさんたちはデリス・エンブレムを持っているんだったわね。 |
クラトス | あとは私とマーテルとミトスも持っている。クレスたちの物とは違うが、構造はよく似ており同等の働きをするだろうとジェイドが言っていた。 |
クラトス | それにラタトスクならデリス・エンブレムは必要がないとも聞いている。 |
マーク | 確かミトスたちも、こっちの大陸に来てるんだったな。シンクに連絡を取ってみるか。 |
フィリップ | ………………。 |
マーク | おい、フィル ? 聞いてたか ? |
フィリップ | ――え ? あ、ああ……。うん、そうだね。頼むよ。マーク。 |
フィリップ | (ダオスにはああ言ったけどもしさっき戦ったのが本当に【死鏡精】ならダオスがどうこうする前に世界は消滅しかねない……) |
フィリップ | (でも【死鏡精】に関してはミリーナの方が詳しかった。どうすれば――) |
コーキス | ……なぁ、凄い怖い顔してるけど、何かあったのか ? |
フィリップ | あ……ああ……。すまない、大丈夫だよ。 |
コーキス | 鏡士はみんなそんな風に言うんだな。 |
フィリップ | コーキス……。ごめんよ。イクスが悩んでいるのは僕のせいだ。僕があまりに……自分本位だったから。 |
フィリップ | 償いはする。だからコーキス、どうかイクスを支えてあげてくれ。 |
フィリップ | 僕の知っている最初のイクスに鏡精はいなかった。君だけが――今のイクスが、唯一無二のイクスであるという証なんだよ。 |
コーキス | ……はぁ ? 鏡士はみんな難しいこと言うなぁ。俺、馬鹿なんだからもっとわかりやすく言ってくれよ。 |
マーク | ――馬鹿自慢してるところだが、朗報だぞ。丁度向こうから連絡が来た。ミリーナが見つかったそうだ。 |
全員 | ! ! |
キャラクター | 8話【11-11 ダオス城2】 |
イクス | 暗くて……冷たい……。虚無が近づいてくる……。 |
イクス | 万華鏡の裂け目を塞がないと……。……でも、力がどんどん拡散して……。 |
ゲフィオン | (イクス……。イクス、無理をしてはダメ。そのままではあなたの力が虚無に吸い取られてしまう…… !) |
イクス | く……っ。死の砂嵐からの悲鳴がうるさくて……集中できない……。それにこの痛み……。 |
ゲフィオン | (届かない……。イクスに私の声が……。どうすればいいの。イクス、気付いて !) |
ミリーナ | (これはゲフィオンの記憶……。私……また夢を見ているのね……) |
? ? ? | こっちです ! ミリーナさまはこっちにいます ! |
? ? ? | いたよ ! イクスくん ! |
? ? ? | 気を失ってる……。でも怪我はしてないみたい……。 |
? ? ? | ミリーナ ! ? 大丈夫か ! ? |
ミリーナ | (この声は…………) |
ミリーナ | ――イクス ! ? |
イクス | ミリーナ ! よかった……目が覚めたんだな ! |
ミリーナ | イクス…… ! カーリャ !それに……コンウェイさんとロディも…… ?ここは……。 |
コンウェイ | ここはダオス城だよ。何があったのか聞きたいのはこちらの方なんだけれど、覚えているかな ? |
ミリーナ | あ……そうだわ。あの人が……ダオスが助けてくれたのよ。 |
イクス | え ? ダオスにさらわれたんじゃないのか ? |
カーリャ | そうですよ ! あのイケメンカーリャに魔術を使ってきましたよ ! ?ミリーナさま、洗脳されてるんじゃないですか ! ? |
ロンドリーネ | ちょっと、カーリャ ! ?ダオスはそんなことしないよ ! ? |
ミリーナ | 確かにダオスは私とカーリャを襲ってきたけれど……あれは、妙な魔物から逃げるためだったらしいの。 |
イクス | ……ダオスは元の世界に戻る方法を探してミリーナに接触してきたのか。 |
ミリーナ | ええ。その後で、またダオスが『アヤカシ』と呼んだ敵が襲ってきて……。私も戦ったんだけれど襲われて気を失ってしまったの。 |
カーリャ | ……あれ ? でも気絶してたならあの血の跡はどうやって残したんですか ? |
ミリーナ | 血の跡 ? 私、怪我なんてしていないけれど……。 |
ロンドリーネ | え ?だったら森の狩猟小屋から続いてた、あの血痕は…… ? |
コンウェイ | ミリーナさんでないなら残るはダオスってことになるね。 |
イクス | ……もしかして、カーリャが捜しに来られるように目印を残してくれたのかな ? |
カーリャ | ええ ! ? そんな親切な人なんですか ! ? |
イクス | 親切な人かどうかはわからないけどでもそうとしか考えられないよ。 |
ロンドリーネ | ダオス……。 |
コンウェイ | イクスくんの言った通りダオスにはミリーナさんをさらう理由があった……ということだね。 |
ミリーナ | ……あの、ごめんなさい。私が軽率だったからアジトのみんなにも迷惑をかけてしまって……。 |
コンウェイ | ああ、それはそうだね。安全な場所だったとはいえ、少し軽はずみだった。 |
ミリーナ | ええ。反省します。 |
ロンドリーネ | あんまりミリーナをせめないでよ。悪気があった訳じゃないし……。軽率って意味では、私も同罪だからさ。 |
ロンドリーネ | それよりミリーナも見つかったし早くクレスたちに連絡を取った方がいいと思うんだけど。 |
イクス | そうだな。ちょっと待ってくれ―― |
イクス | ……ダメだ。クレスたちからの応答がない。 |
ロンドリーネ | ……もしかしたらクレスたちもうダオスと戦ってるのかも。 |
イクス | だったら、直接知らせに行こう !ミリーナの件は誤解だったんだしもしかしたら話し合えるかも知れな……―― |
イクス | あ……れ…… ? |
カーリャ | イクスさま ! ? ふらついてますよ ! ? |
ラタトスク | フン……。大方、ミリーナが見つかったんで気が抜けたんだろうよ。 |
ミトス | 人間のくせに不眠不休で動くからこういうことになるんだよ。 |
イクス | ラタトスクとミトス ! ?それにジーニアスとシンクも……。どうしてここに…… ? |
ジーニアス | ジェイドさんから聞いてない ?テセアラ領から直接ミリーナを捜しに来たんだ。 |
ミリーナ | え ! ? 私を…… ! ? |
ミトス | ……ボクのせいで死なれたら迷惑だからね。見つかったならそれでいいよ。 |
ミトス | ねぇ、クレスたちに知らせに行くんでしょう ?イクスとミリーナとカーリャはこっちで引き受けるけど ? |
ミトス | 幸い救世軍もこっちに混じってるし、戦力は十分だよ。 |
コンウェイ | 墜ちた勇者が魔王の城にいる……か。面白いね。まさかこんな場面に遭遇するなんて。 |
ミトス | ……何 ? |
コンウェイ | いいや。異世界も捨てた物じゃないと思ってね。ロディさん、行こうか。 |
ロンドリーネ | うん、急ごう。ミトス、シンクジーニアス、ラタトスク、ありがとう ! |
ミトス | ――さて、弱った人間を二人も運ぶのは面倒だね。救世軍さん。 |
シンク | うるさいよ。今、マークに連絡してるところだ。 |
マーク | おっと、こっちから連絡しようと思ってたところだ。ナイスタイミングだぜ、シンク。 |
シンク | そっちの用事はどうでもいい。人騒がせな鏡士が見つかったよ。殺す ? それとも殺してから死体を持って帰る ? |
マーク | おいおい、そういう冗談はやめてくれよ。生かして連れ帰るに決まってるだろ。ちょっと待っててくれ。 |
マーク | ――馬鹿自慢してるところだが、朗報だぞ。丁度向こうから連絡が来た。ミリーナが見つかったそうだ。 |
マーク | シンクたちが見つけてくれたらしい。 |
コーキス | 本当か ! ? |
イクス | コーキス ! ? |
コーキス | マスター ! ? え ! ?なんでシンク様たちとマスターが一緒に…… ? |
コーキス | ……っていうか、マスターなんで座り込んでるんだ ! ?まさか倒れたのか ! ? |
カーリャ | コーキス ! うるさいですよ ! !もうちょっと落ち着きなさい。まだまだ子供ですね、コーキスは。 |
イクス | カーリャ、その辺にしてやってくれ。俺が悪いんだ。コーキスに心配かけちゃってあんなに忠告されたのに、このザマだからな。 |
ミリーナ | どうしたの ?イクスもコーキスも……何かあったの ? |
コーキス | それは……その……。 |
イクス | コーキス。俺が悪かったよ。意地を張りすぎた。お前に甘えちゃったんだな。 |
コーキス | マスター……。 |
アトワイト | コーキスさん、あなたも一緒にどうかしら。あなたが手伝ってくれたら、イクスさんもきっと喜ぶわ。 |
フィリップ | 償いはする。だからコーキス、どうかイクスを支えてあげてくれ。 |
フィリップ | 僕の知っている最初のイクスに鏡精はいなかった。君だけが――今のイクスが、唯一無二のイクスであるという証なんだよ。 |
コーキス | しょ……しょうがねぇな。今回だけだからな、許してやるのは。 |
イクス | ありがとう、コーキス。 |
シンク | そろそろいい ?ケリュケイオンを城の近くまで寄せて欲しいんだけど。 |
コーキス | あ、悪い……。マーク、聞こえたか ? |
マーク | はいはい、聞こえてるよ。こっちも城の前まで行くから、そこで落ち合おう。頼むぞ、シンク。 |
ミント | ダオスの姿が見えませんね……。 |
すず | ここにはいないのでしょうか。 |
クレス | ダオス ! ! |
ダオス | 勝手に忍び込んでおいて、図々しいものだな。 |
クレス | やっぱりお前もこの世界に具現化されていたんだな。 |
ダオス | ふふふ……それはこちらの台詞だ。この世界でもお前たちと顔を合わせることになるとはな。 |
アーチェ | ミリーナは一緒じゃないんだね。 |
ダオス | あの女か……。 |
ミント | ダオス、どうしてミリーナさんをさらったのですか ? |
ダオス | そんなことを聞いてどうする。この異世界に殉じるつもりの貴様たちには意味のないことよ。 |
チェスター | はぐらかすな !元の世界でお前がやってきたことを考えればどうせろくでもない理由に決まってる ! |
クレス | ……ミリーナが何をしたっていうんだ。何故罪のない人々を苦しめようとするんだ !この世界でも、元の世界でも ! |
ダオス | ――罪のない、だと ? |
チェスター | そうだ ! アミィには……何の罪もなかった ! |
チェスター | アミィだけじゃねぇ !みんな、虫けらみたいに殺された !俺はお前を許さねぇ ! ! |
ダオス | 貴様らに許される筋合いなどない !愚かな下等生命体め ! !その非礼、その命を持って贖うがいい ! ! |
クラース | ――クレス !これ以上は無理だ。戦わざるを得まい ! |
チェスター | 構うもんかよ ! ここで決着を付けるんだ ! |
アーチェ | 馬鹿! イクスたちとの約束はどうすんのよ ! |
すず | ――来ます ! |
キャラクター | 9話【11-12 ダオス城3】 |
クレス | や、やったのか ? |
クラース | いや、まだだ ! |
ダオス | ふはははは……。下等な生命体がここまでやるとは思わなんだぞ。 |
ダオス | この世界においてもはや貴様たちが私に刃向かう意味はないだろうに。それほどまでに死にたいか。 |
クレス | 意味ならある !僕は――トーティス村のみんなやミッドガルズのみんなのためにお前を倒す ! |
ダオス | ……良かろう。ならば私も全身全霊を賭して戦おうではないか ! ! |
クレス | て、手加減していたっていうのか ! ? |
ミント | ――待って下さい ! |
ダオス | ……この期に及んで命乞いか ? |
ミント | あなたに、聞きたいことがあります。前にあなたは、私たちとは戦う理由がないと言いました……。 |
ミント | 何故、ですか ? |
クレス | ミント ! ? |
アーチェ | クレス、これ以上続けたらもう最後まで行くしかなくなっちゃう。それじゃあ、イクスたちとの話が無駄になるじゃん。 |
ダオス | ……………………。 |
ダオス | それは……お前たちが魔科学に関わる者ではないからだ。 |
ミント | 何故、魔科学はいけないのですか ? |
ダオス | 魔科学はマナの力をことごとく使い果たしてしまうからだ ! ! 私は、魔科学を使う人間を抹殺しなければならなかった ! |
クラース | 何故、そうまでして魔科学を否定する ?確かに魔科学の力はすさまじいものだ……。 |
クラース | だが、人間も愚かではない !もう世界樹が枯れるようなことはしない ! |
ダオス | 本当にそう思うのか ?私がミッドガルズをほろぼさねばお前たちの星の世界樹はなかったのだぞ。 |
クレス | そうまでして、何故ユグドラシルを守る ! ?この世界では、ユグドラシルの写真を撮っていただけのミリーナまでさらって、カーリャを傷つけた。 |
クレス | お前の望みは何なんだ ? |
ダオス | 私にはマナが必要なのだ。だが、その理由を貴様らに話したところで理解できまい。 |
チェスター | 分かりたくもねぇ !いまさら、言い訳なんか聞かねえぜ ! |
ダオス | ははははは !なぜ私が弁解せねばならぬのだ ? |
ロンドリーネ | 待って、ダオス ! |
ダオス | ………………。 |
ロンドリーネ | ダオス、もうこんなこと止めよう。私たちが戦う理由なんてないんだ。 |
ダオス | ……誰だ、貴様は ? |
ロンドリーネ | ……そうか。あんたもクレスたちと同じで私のことを知らないダオスなんだね……。 |
ロンドリーネ | でも、私は知ってるんだよ、ダオス。故郷の星を救おうとした、あんたのことをね。 |
クレス | 故郷の星 ? 一体なにを言っているんだ、ロディ ? |
コンウェイ | 何とか間に合ったみたいだね。ミリーナさんはイクスくんと救世軍で外へ運び出したよ。 |
ダオス | 黒衣の鏡士を連れ戻しに来たのか。……だが、あの者の知識の中には欠落があった。私にはもう、用がない。好きにするがいい。 |
コンウェイ | ダオス。この世界のユグドラシルが、大いなる実りを生み出すかどうかわからない。生み出したところでそれを持ち帰る術がわからない。 |
コンウェイ | ミリーナさんの中のゲフィオンの知識を求めたのはその為じゃないのかな ? |
クレス | 大いなる実り…… ?それはロイドの世界の大樹の種子のことか ?マナの塊だっていう……。 |
ダオス | 何故貴様らが大いなる実りのことを知っている ! ? |
コンウェイ | そこはさして重要なことじゃない。ここにいるクレスくんは、あなたが元の世界で戦っていたクレスくんより、さらに知識があるんだ。 |
コンウェイ | そして、あなたのやろうとしてきたことの真意を知る人もいる。 |
ロンドリーネ | ユグドラシルが大いなる実りを生み出してくれればダオスはそれをデリス・カーラーン――故郷の星に持ち帰ることができる。 |
ロンドリーネ | そうすればダオスの故郷は救われるんだ。ダオスはずっと、ユグドラシルを守るために戦っていたんだよ。 |
ロンドリーネ | それが、多くの命を救いたかったダオスの願いであり使命だったんだ。 |
クレス | 命を救う……ダオスが……。 |
ミント | だから、私たちとは戦う理由がないと……。 |
ダオス | 私を待ち望んでいる民のためにも……私は大いなる実りを手に入れこの閉ざされた牢獄から逃れねばならぬのだ ! |
ダオス | 絶対に邪魔はさせぬぞ ! |
チェスター | 何してんだ、クレス ! 武器を構えろ ! |
チェスター | あいつが自分の故郷を救うためだったとしてどうしてオレたちの村が――世界が蹂躙されなきゃいけねぇんだよ ! |
クラース | そうだ。クレス。私たちは間違ってなどいない。奴だって多くの人間を犠牲にしているんだ。 |
クラース | ダオスは、己の信じる正義のために戦っている。だが、私たちにも譲れないものがある。守るべき人々がいる。 |
クラース | ……違うか ? |
クレス | ………………。 |
クレス | ダオスは倒すべき敵だ。何を聞いても、どこまで行っても、それは変わらない。 |
クレス | ただ、僕らとダオスはもっと違う時間で、違う形で出会っていれば、もしかしたら協力し合うことができたんじゃないかって……。 |
チェスター | クレス……。 |
クレス | ……ここでダオスを倒したら、僕たちこそがダオスの故郷の魔王になってしまうんじゃないか。 |
クレス | できることなら、僕は僕たちの星も、ダオスの故郷もこのティル・ナ・ノーグも救いたい。それが……僕の旅の進む道だと思えるんだ。 |
ダオス | 母なる星を……デリス・カーラーンを救うだと ?下等生命体である貴様らが ? |
ロンドリーネ | でもダオスはその下等生命体の星に――そこにある世界樹ユグドラシルに救いを求めにきたんだよね。 |
ロンドリーネ | クレスたちはわかってるよ。ユグドラシルをきっと守ってくれる ! あんたが大いなる実りを持ち帰ることも邪魔はしないはずさ。 |
コンウェイ | ……そうだね。その点は、ボクも保証するよ。まぁ、初対面の人間が保証したところで気高い王には何の意味もないだろうけれど。 |
コンウェイ | でも王の器の持ち主なら……相手の器もわかるんじゃないかな ? |
ダオス | ………………。 |
ダオス | ――去れ。少なくとも我が目的を邪魔立てしない限りは貴様たちと争うつもりはない。 |
クレス | ――ダオス、一つだけ約束しろ。この世界では、もう誰も傷つけないと。 |
クレス | そして、いつか全てを救う道筋を見つけ出したときはお前と決着をつける。 |
ダオス | ……好きにしろ。 |
クレス | ――行こう、みんな。 |
ロンドリーネ | ……ダオス。あんたが私を知っている世界のあんたじゃなくて、少し残念だよ。でも……これ以上敵対しなくていいのは……すごく嬉しいんだ。 |
ロンドリーネ | おかしな女だと思うだろうけどまた会えるのを楽しみにしてるから。 |
ロンドリーネ | だから覚えておいて。私……このロンドリーネのことを。 |
コンウェイ | ……やれやれ、なんとか危機は脱したようだね。 |
ロンドリーネ | クレスたちは ? |
ミリーナ | 先にケリュケイオンに乗ったわ。 |
ミリーナ | クレスさんたちには伝えたけれど改めて二人にもお礼を言わないとね。助けてくれて本当にありがとう。 |
ロンドリーネ | 私は何もしてないよ。気にしないで。 |
イクス | ……なぁ、コンウェイ。さっき教えてくれたダオスの話が本当だとしてどうして、それを知ってるんだ ? |
コンウェイ | イクスくん、悪いけど、今はこれ以上のことを話すつもりはないよ。いずれ、その内に、ね。 |
ミリーナ | クレスさんたちとダオス……。大丈夫かしら。フィルがマークなら上手く取りなしてくれるって言っていたけれど。 |
コンウェイ | ……そうだね。まぁ、大丈夫じゃないかな。クレスくんが伝説の勇者になって魔王を退治するのは――違う世界の物語さ。 |
コンウェイ | この世界の人の心に潜む『悪』が芽を出さない限り彼が『魔王』になることはないからね。 |
イクス | 何だかまるでコンウェイはクレスの世界のことを知ってるみたいな口ぶりだな。 |
イクス | ……なぁ、俺、余計なことを言ったのかな ?ダオスの真意は何か……なんて。 |
イクス | クレスたちに余計なことを言わなければクレスたちが何も知らなければ……ダオスを……。 |
イクス | (何も知らなければ……。俺も何も知らないままだったら……こんな気持ちには……) |
ミリーナ | そうね。何も知らなければ復讐を果たすことができた。でも私……いえ、ゲフィオンがそうだったようにその後で、また別の悩みを背負っていたかも知れない。 |
ミリーナ | それにロディは止めたいと思っていたんでしょう?何が正解かはわからない。でも人は……それでも前に進むしかないのよ。 |
ロンドリーネ | ……うん。 |
イクス | ………………。 |
カーリャ | イクスさま ? |
イクス | ……ごめん。何だかひどく疲れて……。 |
コンウェイ | イクスくんはいい加減休んだほうがいいね。コーキスくんがまた怒り出すよ。 |
イクス | ああ、そうさせてもらうよ。ごめん……。限界だから先に戻らせてもらう……。 |
ミリーナ | イクス……本当に疲れているだけかしら……。心配だわ……。 |
ロンドリーネ | それはミリーナもだよ。アヤカシとやらに襲われたから念のため精密検査をした方がいいってフィリップが言ってた。 |
ミリーナ | 私は平気なのに……。 |
カーリャ | ミリーナさまもイクスさまももう少し自分を大事にしないといけませんね。 |
コンウェイ | フフ、ミリーナさんとイクスくんは無茶なところがそっくりだね。 |
ミリーナ | ……ごめんなさい。反省します。 |
キャラクター | 10話【11-13 ダオス城4】 |
ダオス | ……鏡精か。貴様の仲間は帰ったぞ。今更何をしに来た。 |
マーク | 黒衣の鏡士からの伝言。一人目の自分が原因でデリス・カーラーンを滅ぼす罪まで背負うのは寝覚めが悪いから、協力させて欲しい、とさ。 |
ダオス | ……元の世界にいる本当の私が大いなる実りを持ち帰る筈だ。私はそれを確認できればいい。ただ―― |
マーク | 何かの時のためのスペアは確保しておきたいんだろ。わかるさ。 |
マーク | ところでうちの親分は、ゲフィオンと一緒に異世界からの具現化技術を完成させた人間だ。 |
マーク | こっちにつけ、とは言わない。普段はこの城にいてもいい。でもまぁ、よければ救世軍の方にも顔出してくれよ。別荘感覚でな。 |
ダオス | ……何故ことさらに軽薄を取り繕うのだ、鏡精。 |
マーク | こんなこといかれてるって思うからだよ。それでもうちの親分は、ゲフィオンのためにこの世界を救いたいんだ。 |
マーク | だったらいかれてようが望みを叶えてやるしかねぇだろ。 |
マーク | あんたは誇り高い一匹狼だ。鎖に繋ぐつもりはない。 |
マーク | だがこっちにも、デリス・カーラーンの関係者やら大いなる実りに詳しい奴やらがいる。利用してくれて構わないんだぜ。 |
ダオス | ……お前も去れ、鏡精。必要とあらば、立ち寄ってやらぬこともない。 |
マーク | そいつはよかった。……救われてるといいな……あんたの故郷。 |
ダオス | いらぬ気遣いだ。 |
マーク | だな。それじゃあ、失礼するぜ、ダオス陛下。 |
マーク | ………… ? |
? ? ? | 久しぶりですね、マーク……。 |
マーク | ……な……何で…… ? |
? ? ? | 相変わらずの間抜け顔ですね。 |
マーク | パイセン…… ! ? |
? ? ? | そういう軽薄な呼び方はやめなさい。本当に、いつまでも子供なんですから。 |
マーク | マジかよ……カーリャ先輩 ! 何でこんなところに ! ? |
カーリャ・N | こんなところというのは失礼ですよ、マーク。 |
カーリャ・N | 小さなミリーナ様を助けて下さってありがとうございます。 |
ダオス | 別に助けたつもりはない。聞くべきことを聞くまで生きていてもらう必要があっただけだ。 |
ダオス | ……無駄であったがな。 |
カーリャ・N | 小さなミリーナ様に記憶の共有はなかったのですね。 |
ダオス | あの者の記憶は欠落している。 |
カーリャ・N | ミリーナ様が私を切り離したから……ですね。 |
マーク | ……それだけじゃないみたいだけどな。パイセンは知らねぇだろ。二人目のミリーナがどうやって具現化されたのか。 |
カーリャ・N | どうやって…… ? それはどう言う意味ですか ? |
マーク | ……フィルに聞いてくれ。パイセンになら、フィルも話すだろ。 |
カーリャ・N | ………………。 |
ダオス | ……貴様は何故ここに来た ? |
カーリャ・N | セールンドの人体万華鏡が崩壊しかかっています。魔鏡の護符によって一時的に食い止めましたが……。 |
ダオス | 私が訪れた時に反応していた、あの鏡か。 |
カーリャ・N | あれはミリーナ様――人体万華鏡を護ろうと、侵入者を検知するために設置したものですが、小さいフィル様にご協力頂いて、封印強化に転用したんです。 |
マーク | 小さいフィル……ってジュニアのことか ! ?何であいつがセールンドに……。 |
カーリャ・N | マーク。人の話に割り込んではいけません。 |
マーク | ……はいはい、すみませんね。パイセン。 |
カーリャ・N | ――話を戻します。 |
カーリャ・N | 原因はまだわかりませんが、虚無に漂う死の砂嵐がうねりだしたと聞いています。それが人体万華鏡に何か影響を及ぼしたのかも知れません。 |
ダオス | カーリャ。そこの鏡精が何か知っているようだぞ。 |
マーク | ――思い当たる節が二つほど。一つはテセアラ領の世界樹――大樹カーラーンの異常発達。 |
ダオス | あの世界樹が異常発達している、だと ? |
マーク | アセリア領の世界樹ユグドラシルにはその兆候がないみたいだな。それとも、この後何か起きるのか……。 |
ダオス | ………………。 |
カーリャ・N | もう一つというのは ? |
マーク | ちょっと長い話になるがこの場を借りて説明して構わないかい、ダオス陛下。帰れって言われたのに、長居することになっちまうが。 |
ダオス | 構わぬ。その軽口は気に入らぬがな。 |
マーク | こいつは失礼。今後は気を付ける。 |
マーク | さてと……それじゃあ始めようか。ダーナの心核と、この世界の成り立ちの話を。 |
キャラクター | 11話【11-14 ケリュケイオン1】 |
ミリーナ | もう、みんな大げさよ。私、本当に元気なのよ。私のことよりイクスの方が心配だわ……。 |
ミリーナ | それに軽い気持ちで動いてみんなに迷惑をかけてしまったことが心苦しいの。ねぇ、何か私にできることはない ? |
カーリャ | 駄目ですよぅ、ミリーナさま !今は大人しく寝ていて下さい。 |
フィリップ | ああ、そうだよ、ミリーナ。それにきみがしっかり休まないとカーリャにも影響が出てしまう。違うかい ? |
ミリーナ | ……それは……そうだけれど……。 |
コーキス | 申し訳ないって気持ちがあるなら、今は休んでそれから働いてくれればいい……ってマスターなら言うと思う。 |
コーキス | ……そういうマスターも、全然休んでくれないけどさ。 |
ミリーナ | コーキス。イクスとは仲直りしたんでしょう ?そんな顔しないで。 |
ミリーナ | イクスだってコーキスが心配してくれてることちゃんとわかっているわよ。ね ? |
マーク | ――失礼するぜ……っておいおい、どうしたコーキス ?しょぼくれた顔して。 |
コーキス | う、うるさいな ! マークには関係な―― |
コーキス | ……誰だ、その人 ? |
フィリップ | カーリャ ! ? |
カーリャ | な、なんですか ! ?カーリャはここにいますよ ! ? |
カーリャ・N | ………… ! |
カーリャ・N | ミリーナ様…… ! |
ミリーナ | ? |
カーリャ・N | フィル様……。本当に……成功させてしまったんですね……。 |
コーキス | え ? マスターたちの知り合いなのか ? |
フィリップ | 彼女は―― |
カーリャ・N | ――いえ、フィル様。自分で説明します。初めまして、小さなミリーナ様。それに……イクス様の鏡精コーキスも。 |
カーリャ・N | 私はカーリャ。カーリャ・ネヴァン。最初のミリーナ様――ゲフィオン様の鏡精だった者です。 |
三人 | ! ? |
マーク | ダオスに話をしにいったら、ばったり会っちまった。 |
カーリャ・N | それはこちらの台詞です。 |
ミリーナ | カーリャ…… ? あなたが…… ? |
カーリャ・N | よければ、私のことはネヴァンと呼んで下さい。ミリーナ――いえ、ゲフィオン様から切り離された後に自分で付けたファミリーネームです。 |
カーリャ・N | 小さなカーリャと混乱してしまいますから。 |
カーリャ | カーリャが成長するとこうなるんですか…… ? |
カーリャ・N | ええ、おそらくは。 |
カーリャ・N | ダオス様のところで、マークからこれまでの話を聞かせてもらいました。そして、今世界がとてつもない危機に陥っていることを知った。 |
カーリャ・N | 私はなんとしてもこの世界を護らなければなりません。ですから、小さいミリーナ様とイクス様に協力したいのです。 |
コーキス | それは……。あなたが本当にゲフィオンの鏡精なら俺たちの知らないことをアドバイスしてくれるだろうし、きっとありがたいんだろうけど……。 |
ミリーナ | コーキス。大丈夫よ。マークが言うんだからこの人は確かにゲフィオンの鏡精なんだと思うわ。 |
フィリップ | ああ。その点は僕も保証するよ。でもカーリャ……いや、ネヴァン。今まできみはどこで何をしていたんだい ? |
カーリャ・N | ゲフィオン様のお側に。人体万華鏡となったゲフィオン様を護りながら……助け出す手段を捜していました。 |
カーリャ・N | それと、一つ訂正を。私はもう鏡精ではありません。鏡精であった者、です。 |
ミリーナ | どういうこと ? |
カーリャ・N | ――ずるいですね、フィル様。それにマークも。ミリーナ様たちに何も教えていないなんて。 |
マーク | ……その話、今しちまうのか。 |
コーキス | な、何で俺を見るんだよ ! ? |
カーリャ・N | 鏡精は、マスターである鏡士から切り離されて独立することができます。 |
カーリャ・N | 成体となった鏡精は、マスターとの繋がりを断たれると人間という存在とほぼ同じになります。 |
三人 | ! ? |
コーキス | だから……俺……あんなに切り離されるのが怖かった、のか ? |
カーリャ・N | 切り離されるのが……怖い ?成体であるあなたにそんな感覚はない筈ですが……。もしかしたらまだ幼いのかも知れませんね。 |
コーキス | な…… ! 馬鹿にするなよな ! |
カーリャ・N | ふふ、ムキになるところがまだ幼い所以ですね。でも鏡精は本質的にマスターから切り離されることを嫌うものなので、気持ちはわかりますよ。 |
ミリーナ | ねぇ、ネヴァン。あなた、ゲフィオンを助け出す手段を探していた……と言ったわよね。それは人体万華鏡から解放するってこと ? |
カーリャ・N | はい。私はゲフィオン様とフィル様の計画に反対していました。だから……切り離されてしまったのですが……。 |
カーリャ・N | もちろんこうなった今でも反対しています。特にゲフィオン様があんな風に犠牲になることは。自己犠牲は罪を犯した者の自己満足に過ぎない。 |
カーリャ・N | 気持ちは痛いほどわかりますがそれでもとるべき手段ではない、と私は考えています。 |
カーリャ・N | ゲフィオン様はもっと別の形で償う方法を考えられた筈ですから。イクス様が生きていたらきっと同じように仰ったと思います。 |
フィリップ | ………………。 |
カーリャ・N | ……すみません。つい、偉そうなことを言ってしまいました。 |
カーリャ・N | それより、ゲフィオン様の人体万華鏡が崩壊の危機にあります。それを食い止めるためにも皆さんの力が必要なのです。 |
一同 | ! ? |
コーキス | ――ええっと、つまり、今は虚無に戻ったシドニー様が内側から封印を護りつつ、外側はネヴァンとジュニア様の二人で崩壊を食い止めているんだな。 |
コーキス | でもジュニア様は何でセールンドにいたんだ ? |
マーク | その辺りは、パイセン――ネヴァンパイセンが何も話しちゃくれないんだよ。ジュニアとの約束だって。 |
カーリャ・N | それがゲフィオン様を救うことに繋がるのであれば……私は手段を選びませんから。 |
フィリップ | ……………………。 |
フィリップ | ――じゃあ、その話はいったん置いておこう。 |
フィリップ | マークは人体万華鏡の急激な変化――つまり虚無に漂う死の砂嵐の活性化は、大樹カーラーンの異常発達と関係があると思っているんだね。 |
マーク | 実際、タイミングが同じなんだから可能性は高いだろ ?それとダーナの心核が傷つけられたことも大きいな。 |
コーキス | ……そうか。今、ダーナの心核は魔の空域に移されてるんだよな。本来の場所から動かしてる上に壊れてて、ダーナの巫女も目を覚ましちゃって……。 |
コーキス | 全てが関係していてもおかしくない……のかも。 |
カーリャ・N | 大樹カーラーンというのは、異世界から具現化された樹ですよね。何か際立った特徴などはないのですか ? |
ミリーナ | エミルとラタトスクから聞いた話だと本来はマナっていうエネルギーを生み出して世界中に循環させる機能があるらしいの。 |
ミリーナ | でも一度樹が枯れて、種子だけになったのをロイドたちが芽吹かせたんだそうよ。 |
ミリーナ | その辺りがロイドたちとエミルたちの間で認識がずれてるから、なんとも言えないんだけれど。 |
ミリーナ | エミルの世界とロイドの世界は同じ世界の過去と未来らしいの。それがキメラ結合して具現化されてしまったから……。 |
フィリップ | エネルギーの生産と循環……。 |
カーリャ・N | ――まるでキラル分子の生成と循環に似ていますね。 |
マーク | 確かに……。 |
フィリップ | ……やはり【死鏡精】か ? |
コーキス | 【死鏡精】 ? なんだそれ ? |
カーリャ | なんか凄く不吉なワードに聞こえるんですけど……。 |
カーリャ・N | ……小さなカーリャとコーキスには酷な話かも知れません。でも話さずには進められませんから、お伝えします。 |
フィリップ | カーリャ ! |
カーリャ・N | 【死鏡精】は文字通り死んだ鏡精の残滓。キラル分子生成の過程で犠牲になった鏡精の怨嗟が形となったものです。 |
キャラクター | 12話【11-15 ケリュケイオン2】 |
コーキス | ……は ? つまり……それって……。 |
カーリャ | 鏡精を殺してキラル分子を造ってるってことですか ! ? |
ミリーナ | 嘘……。そんなの聞いてない……。 |
フィリップ | ……ああ、ミリーナはまだそこまで習っていない筈だよ。それに恐らく鏡精に関わる記憶はゲフィオンが切り離した筈だ。 |
フィリップ | カーリャ……ネヴァンを切り離した時にね。 |
カーリャ・N | 鏡士は鏡精を切り離す時に、鏡精に関する記憶も一緒に切り離します。そうしないと……何度も鏡精を生み出しては殺すことに耐えられませんから。 |
カーリャ・N | ゲフィオン様はそれ以外にも、いくつかの記憶を私に預けていってしまいましたが……。 |
コーキス | 何度も生み出して、殺す…… ? |
カーリャ・N | それがセールンド王国のエネルギーシステムです。キラル分子を生み出す魔鏡機器はいくつか存在していましたが、鏡精を使ったシステムには勝てなかった。 |
カーリャ・N | 鏡精はキラル分子を大量に生み出す力がある。それを殺して取り出したキラル分子は、魔鏡機器が生み出す量の何百倍もあります。 |
カーリャ・N | これでセールンド王国はエネルギー問題から開放されました。 |
コーキス | そんな……それじゃあ俺たち鏡精は……ただの道具じゃないか。 |
ミリーナ | コーキス……。それは違うわ。コーキスは道具なんかじゃない。 |
ミリーナ | イクスがどれだけあなたを大切に思っているか……。あなたにもわかる筈よ。 |
コーキス | …………うん。 |
ミリーナ | カーリャもよ。道具だなんて思わないで。あなたは私の大切な親友よ。あなたに何度救われたかわからないわ。 |
カーリャ | ミリーナさまぁ…… ! ! |
ミリーナ | ……カーリャ。あなたを殺させはしない。あなたは私の大切な親友で、私の心の護り手なんだもの。あなたを殺すことは私が死ぬことだわ。 |
カーリャ・N | ミリーナさま…… ! |
カーリャ・N | やっぱり小さいミリーナ様も同じようなことを言うんですね。少し……うらやましいです。 |
カーリャ・N | コーキスとカーリャにはつらい話をしてしまいました。すみません。でも【死鏡精】の問題はとても重要です。 |
カーリャ・N | 【死鏡精】は鏡精の墓場から生まれます。鏡精の墓場もまた、カレイドスコープによる世界の消滅で滅びた筈です。 |
カーリャ・N | ということは、死の砂嵐の中に死鏡精の残滓も含まれている。そして死の砂嵐は、今活性化している。 |
フィリップ | デミトリアス陛下――いや、デミトリアスは光魔を呼びだしていた。きっと何らかの形で死の砂嵐にアクセスする方法を見つけたんだ。 |
フィリップ | 死鏡精の残滓……というのもそこから漏れ出ているんじゃないだろうか。 |
ミリーナ | そして【死鏡精】は、自らの生成システムに近い大樹カーラーンを住処にしている ? |
フィリップ | 住処にしているだけならまだいいがそこで自己増殖している可能性もある。 |
フィリップ | それがさらに世界に悪影響を及ぼしているのかもしれない。実際、【死鏡精】はセールンド王国でも駆除対象だった。ひどい話だけれどね。 |
コーキス | ……なぁ、フィル様。フィル様はビクエでえらかったんだろ ? |
コーキス | もしかして鏡精を殺してキラル分子を作るように命令してた側なんじゃないのか ? |
マーク | だったら、俺がここにいる訳ねぇだろ。こいつは馬鹿でドジで救いようのないクズだが鏡精の敵じゃない。 |
マーク | カレイドスコープの研究は、鏡精システムを止める為でもあったんだ。――まぁ、兵器としてってところはフォローしきれないけどな。 |
ミリーナ | そう……だわ。カレイドスコープは対象物のアニマを抜き出し、カレイドスコープの中で反射を繰り返すことで消滅させる兵器。 |
ミリーナ | その際にキラル分子が生み出される。そもそもはイクスのご両親が遺した魔鏡とキラル分子の生成機がヒントになったのよ。 |
フィリップ | これは伝聞だけれど、イクスのご両親も鏡精システムを嫌っていて、何とかそれに変わる物を生み出そうと研究していたそうだよ。 |
カーリャ・N | 【死鏡精】のことはもっと調べる必要がありますね。皆さんは浮遊島とかいうアジトに戻って下さい。私はもう少し【死鏡精】について―― |
カーリャ・N | ! ! |
マーク | お ? 今の荒々しい腹の虫は、でっかいパイセンか ?食いしん坊なところ全然変わってな―― |
カーリャ・N | だ、黙りなさい !後輩のくせに生意気ですよ、マーク ! |
カーリャ・N | 人間はお腹がすくんです !別に私が特別食いしん坊な訳じゃありませんから ! |
コーキス | なーんだ。そういうとこやっぱカーリャパイセンのパイセンなんだな。 |
カーリャ | なんですか、そのパイセンのパイセンってのは ! ? |
コーキス | だって、パイセンより先に生まれてるんだからパイセンのパイセンじゃん。 |
カーリャ | むむ……。それはそうですね……。じゃあ先輩、カーリャのとっておきの飴玉を分けてあげますよ。先輩後輩のよしみで ! |
カーリャ・N | そ、それは……無碍にするのも悪いですから……頂いておきましょう。ありがとうございます。 |
カーリャ・N | べ、別にそこまでお腹はすいていませんが厚意はありがたく頂かなくては。 |
ミリーナ | それだけじゃ足りないでしょう ?【死鏡精】のことを調べるのだとしてもいったん食事をとってからの方がいいわ。 |
マーク | そうだな。ネヴァンパイセン。食堂に案内する。ちっこいパイセンの飴はデザートにとっときな。 |
ミリーナ | コーキスも、何か食べた方がいいわ。あなただって疲れているでしょう ? |
カーリャ | そうですよ。ミリーナ様にはカーリャもついてますし。 |
コーキス | はい、わかりました。ミリーナ様。 |
マーク | おい、フィル。お前は ? |
フィリップ | 僕は……いいよ。その……まだイクスに色々と伝えなきゃ行けないことがあるからちょっと図書室で頭を整理しておく。 |
フィリップ | イクスに……これ以上嘘はつきたくないから。 |
ミリーナ | ………嘘 ? |
フィリップ | ……うん。この話は込み入っているからまた今度きちんと話すよ。今は体を休めることを優先してくれ。 |
ミリーナ | え、ええ……。 |
マーク | 安心しろって。俺がちゃんと話をさせるさ。隠し事はさせねぇよ。 |
カーリャ・N | ……マークも案外信用なりませんけれど。 |
マーク | う……。痛いとこ突くなぁ、パイセン。 |
ミリーナ | ねぇ、ネヴァン。食事の後でまたお話ししましょう ?色々聞かせて欲しいわ。ゲフィオンのこととか……。 |
カーリャ・N | ……いえ、食事を頂いた後は、すぐに出発します。やはり【死鏡精】のことは気になるので……。 |
ミリーナ | そう……。残念だわ……。 |
カーリャ・N | でも、調査が終わりしだいすぐに小さいミリーナ様の元にはせ参じます。その時には、どうかよろしくお願いします。 |
コーキス | (【死鏡精】か……。なぁ、マスター。本当に……大丈夫なんだよな。俺、マスターのこと信頼してていいんだよな ? ) |
コーキス | (マスターはゲフィオン様みたいに俺を……切り捨てないよな……) |
キャラクター | 1話【12-1 アジト】 |
コーキス | マスター ! 聞いたか ! ?パイセンのパイセンが戻ってくるらしいぜ ! |
イクス | パイセンのパイセンって……ネヴァンか ! |
イクス | そうか、やっとちゃんと会えるんだな……。俺、ネヴァンとは彼女が【死鏡精】の調査に出かける前、少し挨拶しただけだったからさ。 |
コーキス | あの時のマスター……ボロボロだったからな。今は無理してねぇだろうな ? |
イクス | はは……。ごめんな、コーキス。大丈夫だよ。あれからゆっくり眠ったし、少し時間ができた時に海に行ったり、花火を楽しんだり……。 |
イクス | けっこうリフレッシュしたからさ。 |
コーキス | ……なら、いいんだ。 |
コーキス | (また、嘘だ。マスター、夜も寝てないことが多いしネヴァンパイセンがいなくなった後、フィル様と何か話してたのに、そのことも隠してるし……) |
アトワイト | そしてもう一つ。イクスさんは明らかに何かを悩んでいる。あなたが指摘した通り。それは……恐らく自身に関わる何か重大なことなのでしょうね。 |
アトワイト | だから、何かをせずにはいられない。動いていないと、余計なことを考えてしまう……そんなところじゃないかしら。 |
アトワイト | そんな彼を止められるのは彼をよく知る人物だけだと思うの。 |
コーキス | ミリーナ様……。 |
アトワイト | ええ、そうよ。そしてコーキスさんあなたもイクスさんの理解者なの。近いからこそ、わかるからこそ、ぶつかってしまう。 |
コーキス | (アトワイト様……。俺、マスターがわかんねぇよ……) |
イクス | コーキス、どうした ?元気がないけど……。 |
コーキス | な、何でもないよ。それより、早くパイセンのパイセンを迎えに行ってやろうぜ。 |
カーリャ・N | ただいま戻りました。小さいミリーナ様。 |
ミリーナ | カーリャ……じゃなくて、ネヴァン !お帰りなさい ! 無事で何よりだわ ! |
カーリャ | 先輩、お帰りなさい !おやつを用意して待ってましたよ ! |
カーリャ・N | おやつ…… ! |
カーリャ・N | ――コホン。おやつはともかく……。【死鏡精】に関しての調査は今できる範囲のことを行なってきました。 |
カーリャ・N | ただ……その、世界の殆どが消えた状態で中々手がかりを得られず、行き詰まっている状態です。 |
カーリャ・N | できれば小さいミリーナ様やイクス様のお知恵も拝借したいと思っています。 |
イクス | もちろんだよ、ネヴァン ! |
カーリャ・N | イ……イクス様 ! ? |
イクス | お帰り、ネヴァン。君が帰ってくるのを待ってたよ。 |
カーリャ・N | ! ! |
カーリャ・N | あ、ありがとう……ございます。 |
イクス | 死鏡精の話も重要だけど、まずはカーリャの用意してくれたおやつを食べながら休んだ方がいいよ。 |
カーリャ | そうですよ ! |
カーリャ・N | は、はい……。イクス様がそう仰るなら……。 |
ミリーナ | ふふ♪そうと決まったら、みんなでお茶にしましょう ! |
コーキス | 俺、ネヴァンパイセンの荷物を持つよ。 |
カーリャ・N | あ、ありがとうございます、コーキス。 |
コーキス | パイセンのパイセンは俺のパイセンでもあるからな。 |
カーリャ・N | パイセン……。はぁ……ここにもマークの良くない影響が出ているんですね……。 |
キャラクター | 2話【12-2 アスガルド城1】 |
ジュニア | お願い、今度こそ成功しますように…… ! |
ジュニア | っ ! ! 今のは…… ! |
ジュニア | ナーザ将軍、聞こえますか ?イクスの体には入れたんですか ? |
ナーザ | ……駄目だ。まだ人工心核の中にいる。 |
ジュニア | また失敗……。どうして……。 |
ナーザ | 俺にもわからぬ。前回は何も知らぬままリビングドールになっていたからな。 |
ジュニア | ……そうでしたね。 |
ジュニア | (前回と違うのは、ナーザ将軍の意識がはっきりしているということだけど……) |
ジュニア | (もしかしたら無意識下で、イクスの体を使うことに抵抗しているのかもしれない) |
ジュニア | (……もともとナーザ将軍は死者が生者の世界に関与することに否定的な人だった) |
ジュニア | (メルクリアのためだと理解していても心が受け入れられないのだとしたら肉体への移動なんて上手くいく筈がない) |
ジュニア | (ナーザ将軍、あなたの高潔さが裏目に出てしまうなんて……) |
グラスティン | 小さなフィリーップ、ご主人様のお帰りだぞ。 |
ジュニア | ! !(この心核だけは見つからないようにしなくちゃ……) |
グラスティン | ヒヒヒ、どうした ?早く顔を見せてくれよぉ。 |
ジュニア | 待って、すぐに行くから。 |
グラスティン | 小さなフィリップ、今日もいい子で待っていたな。 |
デミトリアス | やあ、ジュニア。息災かね。 |
ジュニア | ……はい。 |
グラスティン | ククッ、そりゃ息災だろうよ。ここしばらくは俺の下で大人しくしているからなぁ ? |
デミトリアス | なるほど。どうりできみの機嫌がいいわけだ。 |
グラスティン | ああ。毎日楽しくてたまらないよぉ。好きな時に好きなだけこいつを眺めていられる。そして想像するんだ。 |
グラスティン | どうやってフィリップの体を切り開いてやろうかってなぁ ! ヒヒヒッ ! |
ジュニア | …………。 |
デミトリアス | ……ジュニア、奇跡の力の研究はどうなっている ? |
ジュニア | はい。今のところですが……。 |
ジュニア | (奇跡の力……そうだ ! ) |
ジュニア | あの、その件について陛下にお願いがあるんです。 |
グラスティン | 願い ? そんなことは後で俺に言え。今は研究の成果を聞いているんだ。 |
デミトリアス | 構わないよ。言ってごらん、ジュニア。 |
ジュニア | 奇跡の力の研究ですが当初の計画よりも進みが遅いように思えます。優秀な人材が不足していることも否めません。 |
デミトリアス | そういえば、しばらく前に、エルレインの元から神官――研究員が逃亡したと報告があったな。確か鏡映点のフィリアだったか。 |
ジュニア | はい。彼女にあの仕事を頼んだのは僕でしたからとても残念で……。 |
ジュニア | 有能な人員を失ったのは痛手です。その穴を埋めるためにも、研究の陣頭指揮を僕に任せて頂きたいんです。 |
デミトリアス | つまり、自由に動ける権限が欲しいと ? |
グラスティン | 自由 ? まさか俺から離れようとでも言うのか ?そいつはダメだ。お前は俺のペットなんだからなぁ ! |
ジュニア | 違うよ。今までどおり、あなたの下でいい。ただ、思ったような成果を得られないのがもどかしいんだ。 |
デミトリアス | なるほど。やはり小さくてもフィリップだな。確かに今の状況ではきみという天才の足を引っ張るだけかもしれない。 |
ジュニア | 僕は天才なんかじゃ……。 |
デミトリアス | 謙遜することはないさ。わかった。今後の研究指針はきみが決めるといい。相応の地位を約束しよう。 |
ジュニア | あ、ありがとうございます、デミトリアス陛下 ! |
グラスティン | ――おい、デミトリアス。 |
デミトリアス | それとジュニア、ひとつ付け加えておくがきみがグラスティン付きだということを忘れてはならない。 |
デミトリアス | 彼の命には従うように。いいね。 |
ジュニア | ……はい。 |
グラスティン | フン……まあいい。お優しい陛下でよかったなぁ、小さなフィリップ。恩を仇で返すような真似はするなよ。 |
ジュニア | ……わかってるよ。 |
ジュニア | (これでいい。我慢なんていくらでもしてやる) |
ジュニア | (エルレインの奇跡の力。あの異世界の神の力が使えるようになればナーザ将軍をイクスの体に移せるかもしれない) |
ジュニア | (いや、もしかしたらナーザ将軍やバルドさんたちに体を作ってあげられるかも……) |
ジュニア | (そうすればこれ以上イクスの体を使わなくても済む) |
デミトリアス | ところで、ベルセリオス博士の行方は聞いていないか ? |
ジュニア | いいえ。突然いなくなったそうですね。 |
グラスティン | ああ、それなら今さっき、ようやく尻尾を掴んだぞ。 |
デミトリアス | そうか ! さすがグラスティンだな。それで彼女はどこにいる ? |
グラスティン | まあ焦るな。なかなか面白いことになっているようだからなぁ。ヒヒヒ……。 |
キャラクター | 3話【12-3 アスガルド 戦士の館】 |
ハロルド | ……う……。 |
アリエッタ | あ……目、覚めた…… ? |
ハロルド | アリ……エ……。 |
アリエッタ | 動かないほうがいい……です。体中、傷だらけだから。 |
ハロルド | ……あいつは ? |
アリエッタ | イオン様は……いません。 |
ハロルド | 休憩タイムってわけ……痛っ……。酷くやってくれたわね……。けどまあ……痛覚のいいデータに……なる……かしら。 |
アリエッタ | 今のうちにハロルドも休んだ方がいい、です。 |
ハロルド | もちろん……そうさせてもらうわよ。あ~、口の中血だらけ。気持ち悪ぅ……。 |
アリエッタ | ……お水、飲む ? |
ハロルド | 飲む飲む。しみるから優しく飲ませてよ ? |
アリエッタ | はい……。 |
ハロルド | ふぅ……ありがと。じゃあついでに拘束を解いてここから逃がしてくれる ? |
アリエッタ | ダ、ダメ ! ハロルドの監視はイオン様に任された大事な仕事だもん ! |
ハロルド | あ~はいはい……言ってみただけよ。あんたにとってイオン様は絶対……っ……。 |
アリエッタ | 苦しい……よね ? |
ハロルド | へ~きへ~き♪って、言いたいところだけどね……。 |
アリエッタ | イオン様は、ハロルドが言うことを聞かないからこうするしかないって……。 |
アリエッタ | イオン様のお願い……聞いて欲しい、です。そうすれば―― |
ハロルド | あんた……そのお願いが何か、わかって言ってるの ? |
アリエッタ | ううん……。アリエッタは知る必要ないって。イオン様が……。 |
ハロルド | 知る必要がない、か。それとも知られたくないのかしらね……。 |
ハロルド | (まあ、この子には言えないか……。イオンの心核とシンクってレプリカの心核を入れ替えろ……だなんてね) |
ハロルド | (他人と心核を入れ替えようとすると拒絶反応が出るから、相手を十分に選ぶ必要がある。でもレプリカなら――) |
アリエッタ | ――ハロルド ? 大丈夫…… ? |
ハロルド | ……あ、ごめんごめん。ちょっと考え事。 |
アリエッタ | ……このままだと、ハロルド……死んじゃう、です。 |
ハロルド | そうなったら、この体を解剖……って自分で自分は無理ね……。あ~あ、もったいない……。 |
ハロルド | ……レプリカが欲しいって気持ちちょっとわかるかも。 |
アリエッタ | ハロルド、イオン様と仲直りする、です。 |
ハロルド | アリエッタは、どうしてイオンに従ってるの ? |
アリエッタ | アリエッタは導師守護役だから。 |
ハロルド | それだけ ? |
アリエッタ | それだけじゃない、です。イオン様は……アリエッタを助けてくれたから。 |
アリエッタ | 言葉を教えてくれて……食べ物や、寝る所や居場所も……全部くれた。 |
ハロルド | ふうん、あのイオンがねぇ……。 |
アリエッタ | アリエッタは、イオン様の側にいられるだけで幸せだった。なのに……。 |
アリエッタ | アリエッタはイオン様を守れなくて……。 |
アリエッタ | でも、イオン様は生きてた。この世界で会えた。だから今度こそイオン様を守るの !……絶対に ! |
ハロルド | なるほどね。あいつがあんたに何も話さない理由何となくわかった気がする。 |
アリエッタ | どういうこと、です ?ハロルドの言うこと……よくわからない。イオン様のお願い、聞いてくれるの ? |
ハロルド | そうね……。じゃあ、わかりやすく言うわ。 |
ハロルド | ――絶対に、嫌。 |
アリエッタ | ハロルドの馬鹿っ ! 死んでも知らないから ! |
キャラクター | 4話【12-4 アスガルド城2】 |
| アスガルド城 カレイドスコープの間 |
メルクリア | あったぞルキウス ! カレイドスコープじゃ ! |
ルキウス | しっ、気づかれたらどうする。 |
メルクリア | 大丈夫じゃ。先ほど兵士たちも話していたであろう ?どこぞの騒ぎで兵が駆り出されているからしばらくこの場所に人を寄せ付けるな、と。 |
メルクリア | とはいえ、ここまで調べ上げたルキウスの苦労を無駄にするところであったな。すまなかった。 |
ルキウス | ボクだけの力じゃないさ。アスガルド城に潜入できたのは君のおかげだ。あの抜け道は、君じゃなきゃ探しだせなかったよ。 |
メルクリア | ここは芙蓉離宮に次ぐ我が居城じゃ。この程度は造作もない。……と言っても今となっては客分同様だがな。 |
メルクリア | ……いや、わらわは最初からこの国の客であったか。義父上にとっても……。 |
ルキウス | ……そこまでだよ、メルクリア。調査を始めよう。 |
メルクリア | ……そうであったな。まずはイクスの体を探すぞ。カレイドスコープと共に保管されていると聞いたが……。 |
ルキウス | メルクリア、こっちに来てくれ。これがイクスの遺体じゃないか ? |
メルクリア | ! ! |
メルクリア | ああ、間違いない。あの時の姿のままじゃ……。 |
ルキウス | あの時 ? |
メルクリア | そうか。ルキウスは会っていなかったな。イクスとも、兄上とも……。 |
メルクリア | よく見つけてくれた。これでようやく、わらわの計画も動き出す。 |
ルキウス | その計画、詳しく教えてくれないか ?イクスの遺体を見つけたら話すって言ってただろう。 |
メルクリア | そうであったな。事に移る前に説明しておこう。 |
メルクリア | ルキウスは、アニマとアニムスについてどこまで知っている ? |
ルキウス | 大まかにしかわからないよ。ボクの世界とは命の概念が違うみたいだから。 |
メルクリア | では、わらわがシドニーから学んだことをそのまま教えよう。 |
メルクリア | この世界の命は、アニマとアニムスで成り立っている。アニマは魂――命の光アニムスは魄――命の設計図。 |
メルクリア | アニマがなければ体を保てずアニムスがなければ、体を失ってしまうのじゃ。 |
ルキウス | アニマが魂っていうのはわかるけどアニムスが命の設計図っていうのは ? |
メルクリア | アニムスは命の器を構成するものじゃ。体や記憶、遺伝的要素はアニムスに属する。 |
ルキウス | アニマは生命エネルギー、アニムスはそれを保つ器……肉体って考えればいいのかな。 |
メルクリア | 厳密にはもっと色々あるのじゃが今はその認識で構わぬ。 |
メルクリア | このイクスの遺体はアニマを失っている。つまり『死んで』いる状態じゃ。 |
メルクリア | だが、特殊な保存により体は保たれている。命の設計図に含まれる『記憶』もこの体に残っているというわけじゃ。 |
ルキウス | 君の計画には、イクスの記憶が必要だってこと ? |
メルクリア | そのとおりじゃ。まずはイクスの記憶から【無垢なるオーデンセ】を生み出す。 |
メルクリア | その後、そこにビフレストを具現化してキメラ結合させるのじゃ。 |
ルキウス | オーデンセをリビングドール化するのか ?それは前に言っていた、リビングシティ構想と同じじゃないか ! |
メルクリア | あくまでオーデンセという島だけじゃ。そこに新たな命は具現化しない。 |
メルクリア | わらわはもう命を弄ぶ気はない。そうしてはならぬとルキウスたちが教えてくれたであろう ? |
ルキウス | でも、このリビングシティ構想は予測不能だ。何が起きるかわからない。君にとっても危険だよ。 |
ルキウス | それに、この遺体……この人の思い出を利用することにもなるんじゃ……。 |
メルクリア | ! |
メルクリア | か、鏡士どもの思い出がなんじゃ !わらわには思い出さえなかった。ゲフィオンは、わらわの国を滅ぼしたのじゃぞ ! ? |
メルクリア | オーデンセは、その元凶たるゲフィオンの故郷じゃ。利用して何が悪い ! |
ルキウス | ……少しでも思う所があるなら一度立ち止まってみたら ? |
ルキウス | そして答えが出るまで考えるんだ。自分がしていることは本当に正しいのかって。 |
メルクリア | 何故、今更そのようなことを ! |
ルキウス | 答えがないまま突き進むのは自分だけじゃなくて周りの人も不幸にする。ボクはそれを知っているから。 |
メルクリア | ……答えなら、とうに出ている。 |
メルクリア | 作業を始めるぞ。イクスの記憶からオーデンセのデータを抽出するのじゃ。 |
ルキウス | メルクリア……。 |
キャラクター | 5話【12-5 芙蓉離宮】 |
| 芙蓉離宮 |
バルバトス | メルクリアの居場所を吐け。そうすれば楽に殺してやる。 |
帝国兵 | お、お許しを ! 我々は何も知らされておりません。ただ、しばらく留守にするとだけしか……。 |
バルバトス | ……フン。おい、救世軍ども !メルクリア捜索隊の進捗を聞かせろ ! |
バルバトス | あれからもう二週間以上たつのにまだしっぽも掴めないのか弱い上に無能な奴らめ。 |
救世軍 | 申し訳ありません……。誰もメルクリアの姿を見た者がいないのです。恐らく転送魔法陣を使ったのではないかと……。 |
救世軍 | 館から出た形跡も見られないため現在、地下や隠し部屋などの調査も進めていますが踏み込むのに難航しているようです。 |
バルバトス | なら壊せ。そしてどんな手を使ってでもメルクリアを捜しだし生かした状態で俺の前に連れて来い ! |
帝国兵 | お待ちください !これ以上、宮殿を破壊されては……。 |
バルバトス | なら代わりに貴様が壊されるか ?ここは誰の城だと思っているんだ ? |
帝国兵 | バ、バルバトス様です ! |
バルバトス | わかっているなら俺に逆らうな !貴様らは俺に負けた。この芙蓉離宮は陥落し、すでに俺の城となった。 |
バルバトス | よって何を壊すも自由 !この宮殿の奴らの命も全て俺の掌の中よ ! |
帝国兵 | ……我々はバルバトス様のしもべです。ですから、捕虜となった者たちも含めどうか命だけは……。 |
バルバトス | では貴様らも捜せ !追っ手を放ち、死ぬ気でメルクリアを狩り出せ ! |
帝国兵 | はい、仰せのままに……。 |
ルック | (バルバトスさん……ここまでやらなくても……) |
救世軍A | ルック、止血薬あるか ?こいつ、さっきの地下捜索でヘマしちまった。 |
ルック | おい、大丈夫か ? 少し休んだ方が……。 |
救世軍B | いや、手当をすれば、まだ作戦に参加できる。バルバトスさんからの命令は ? |
ルック | 今は気にするな。無理しないで休息を取れって。 |
救世軍B | そんなこと言わないでくれよ。今はあの人について行きたいんだよ。 |
救世軍A | ああ。バルバトスさんと合流してなきゃはみ出し者の俺たちが帝国の離宮を落とすなんて夢のまた夢だったもんな。 |
救世軍A | マークさんに黙ってでもバルバトスさんを追ってきて良かったぜ。 |
救世軍B | もう、俺たちアルタミラ移動組を手負いの役立たずだの用済みだのなんて言わせねえよ ! |
ルック | ……そうだな。 |
救世軍B | なんだ、浮かない顔して。ルックだって自分の価値を認めさせたくて俺たちと来てくれたんだろ ? |
ルック | …………。 |
バルバトス | おい、マークの腰巾着。さっさとそいつらもメルクリア捜索に回せ。 |
ルック | こいつらは外してくれませんか。 |
救世軍B | 何言ってんだルック ! 俺たちはまだ―― |
ルック | 最近は魔物だって増えているんだ。無駄死にさせるわけにはいかねぇだろ ! |
バルバトス | 俺の命令に無駄もクソもねぇ !メルクリアを捜すには数がいる。動ける奴は全員働かせろ ! |
ルック | そんな…… ! |
バルバトス | フン、貴様もマークと同じか ?聞けば、貴様らのような戦えぬ連中を飼い殺しているそうじゃないか。 |
ルック | …………。 |
バルバトス | 俺はあんな腰抜けとは違うぞ。生きている限りは、貴様ら傷病兵共も一兵士だ。俺の手足として死ぬまで働け。 |
救世軍B | 俺たちを足手まといだとは思わないんですか ? |
バルバトス | 貴様ら虫ケラが、俺の足を引っ張れるとでも ?ハッ、笑わせてくれる ! |
バルバトス | 戦いたい奴は戦え !蔑む奴には己の価値を見せつけろ !力でねじ伏せ、叩き潰せ ! |
救世軍A | バルバトスさん……。 |
救世軍B | ……ルック。俺はバルバトスさんに付いていく。この人は、俺たちに生きる意味をくれる人だ。 |
救世軍B | 俺は戦うことしかできねえ。それが憐みの目でみられて……役立たずのまま生きるなんて御免だ ! |
救世軍A | 俺もだ。必要だと言ってくれる人の所に行くよ。 |
ルック | …………。 |
バルバトス | そうだ、その意気だ。さあ行け、メルクリアを引きずり出せ ! |
バルバトス | 俺を貶めた小娘……ひと思いには殺さんぞ。少しずつ引き裂いて思い知らせてやる。クックックッ…… ! |
ルック | (……凶暴で残忍な男だ。俺たちのことなんてきっと道具としか見ていない。それはよくわかってる。でも……) |
ルック | (あの人の背中を追うことで救われる奴もいる。多分、俺もその一人だ) |
ルック | (だが、このまま突き進んでいいのか ?マークさんに知らせないまま……) |
救世軍C | バルバトスさん !お探しのリビングドールと鏡映点に関する研究資料を入手しました。 |
バルバトス | よこせ !下らぬ研究に俺を利用しやがって……。 |
バルバトス | ――なんだこれは…… ? |
バルバトス | おい、腰巾着 !この資料にある名前を知っているか ?こいつらだ ! |
ルック | ああ、この人なら対帝国部隊のリーダーです。俺たちクラスじゃ噂程度しか知らないですけど英雄だなんて言う人もいるくらいで……。 |
バルバトス | 英雄……クククッ……ハーッハハハハァ ! !そうか、この世界でも英雄か ! |
バルバトス | おい、メルクリアと平行してこいつらについても調査しろ。 |
ルック | その人はメルクリアと関わりがない―― |
バルバトス | しのごの言わずにさっさと行け ! |
バルバトス | ……クソみたいな世界だと思っていたがようやく面白くなってきたぜ。なあ、ディムロス、アトワイト ! ! |
キャラクター | 6話【12-6 帝都へ向かう船】 |
リアラ | 見て、カイル。港が見えてきたわ ! |
カイル | やった ! ようやく帝国入りだ。船だと時間がかかるなぁ。 |
リアラ | そうね。浮遊島アジトのゲートが帝国に繋がっていればもっと早く来られたのに。 |
ナナリー | 二人ともせっかちだね。まあ、気持ちはわかるけどさ。 |
ロニ | こういう時こそ余裕を持てよ。今日の俺たちは運がいいんだ。 |
ロニ | 首尾よく帝国行きの船に乗れたし天気は上々、航路は順調。言うことなしだろ ! |
ロニ | ……あとはハロルドさえ無事ならな。 |
カイル | ハロルド……大丈夫かな。行方不明だなんて。 |
ナナリー | カロル調査室の報告には驚いたよ。アトワイトさんの話じゃあっちで上手く立ち回ってるって聞いてたのにさ。 |
ロニ | これが帝国から無事脱出してましたってオチなら万々歳なんだけどな。 |
リアラ | でも、帝国兵にはベルセリオス博士を見つけ次第保護しろって通達されているんでしょう ? |
リアラ | それって、逃亡者とか罪人とは別の扱いってことじゃない ? |
ナナリー | 本当のトラブルって線が濃厚か……。それが一番怖いんだけどね。 |
カイル | きっとハロルドの研究室に潜入できれば何か手がかりがあるはずだよ。 |
カイル | ああもう、早く帝国に入らないかなあ ! |
ロニ | まあまあ、港はすぐそこだから……つーかこの船、心なしかスピード落ちてないか ? |
ナナリー | 落ちてるどころか、止まろうとしてるよ ! |
ジューダス | おい、まずいことになったぞ。 |
カイル | ジューダス、どこ行ってたんだ ? |
ジューダス | ど、どこだっていいだろう。考えごとをする時は一人になりたいんだ。 |
カイル | 前に船に乗った時もそんなこと言ってたよね。 |
ジューダス | いいから聞け ! この船はこれ以上港には近づけない。 |
四人 | えっ ! ? |
ジューダス | どこかの帝国の船がシージャックされたそうだ。そのせいで港を封鎖しているらしい。 |
カイル | シージャック……って誰かが船を乗っ取ったってこと ? |
ジューダス | ああ。船長たちが大騒ぎしている。このままでは帝国に入るどころか海上で足止めだ。 |
カイル | そんな……。早くハロルドを助け出さないといけないのに。どうしよう、泳ぐ ! ? |
ジューダス | 泳ぎきれるような距離か ! 却下だ ! |
ロニ | くそっ、運が良かったのは船に乗るまでかよ……。 |
リアラ | わたしの力がエンコードされてなければ……。無理にでも船を動かせたかもしれないのに。 |
ナナリー | 誰だい、まったく !シージャックなんて迷惑な真似した奴は。時と場合を考えろってんだ ! |
ロニ | それだと時と場合がよけりゃやっても構わないって聞こえるぞ。 |
ナナリー | こんな時に余計な口を挟むんじゃないよ ! |
ロニ | んぎゃーーーー ! 悪かった ! 悪かったって ! |
ジューダス | 悪かったと思うなら打開策を出せ。その頭では無理だと思うがな。 |
ロニ | 頭……頭……ボーっとして、それどころ……じゃ……ボーット……ボー……ト……。 |
カイル | あ ! もしかしてロニ、ボートって言おうとしてる ! ? |
ジューダス | 救命ボートか ! なるほど。これだけの大型船なら数隻は用意されているはずだ。 |
ナナリー | へえ。命の危険を感じると頭が回るんだね。 |
ロニ | し……死ぬかと思った……。よくわからんが、このロニ様に感謝しろよ ! |
カイル | じゃあオレ、船長に交渉して―― |
ジューダス | やめておけ。たとえ交渉が上手くいったにしろ無断上陸がバレた時に責任が問われるのはこの船だ。 |
ジューダス | 船長たちに迷惑をかけたくなければボートを盗まれた被害者にしておいてやれ。 |
ロニ | へえ、この船の乗組員のことまで考えるなんていいところあるじゃねえか。 |
ジューダス | まあ、強奪の方が手っ取り早いしな。 |
ロニ | はは……前言撤回。 |
ジューダス | ――さて、うまく港に上陸できたはいいがここからどう帝都の中心部に潜入するかだな。 |
リアラ | ちょっと待って。……何か聞こえない ? |
カイル | 魔物の声だ ! 一体どこから―― |
ナナリー | ……あっちだね。ほら、あの大きな排水溝からだよ。 |
ロニ | こんなところに魔物が棲み着いてんのかよ。どれどれ……かなり深そうだな。まるで迷路だぜ。 |
ジューダス | 迷路のような通路に魔物か……。もしかして、以前ユーリたちが潜入したという地下通路と繋がっているんじゃないか ? |
カイル | 戦士の館ってところに通じているんだっけ ?行ってみよう ! |
ロニ | みんな、気を付けろよ。どこから魔物が襲ってくるか―― |
| グルァアアアアア ! ! |
カイル | 危ないロニ ! 後ろ ! |
ロニ | えっ ! うわあああっ…… ! ……って……あれ ? |
カイル | あの魔物、ロニのこと無視して行っちゃった。 |
ナナリー | よっぽど不味そうだったのかね。食われないでよかったじゃないか。 |
ロニ | うるせー ! けど、なんか変じゃねえか ?って、また魔物 ! ……あれ ? |
カイル | ……今度も無視 ? |
リアラ | ねえ、どんどん魔物の数が増えてる…… !なのに、わたしたちには見向きもしないなんて。おかしいわ ! |
ジューダス | 一様に同じ方向へ走っているようだ。何か起きてるのかもしれない。追うぞ ! |
キャラクター | 7話【12-9 アスガルド 戦士の館】 |
カイル | ――ここは…… ! |
ジューダス | おそらく例の戦士の館とか言うところだろうな。この帝都の中枢部にあたるはずだが……。 |
ナナリー | 酷い有様だね。館の中を魔物が走っていくよ。しかもこの臭い……。 |
リアラ | この床の汚れって……血……よね。 |
ロニ | ああ。一人二人が怪我したって量じゃねえぜ。魔物はこの臭いにつられて館に入り込んだのかもしれないな。 |
ジューダス | それにしたって異常だ。魔物が暴走するような何かがこの館で起こったとしか思えん。 |
ナナリー | 誰かの襲撃とか ? |
ジューダス | わからん。だが恐らく原因はこの先にある。血の跡をたどっていけばわかるだろう。 |
カイル | ――こんなに魔物がいて館の人たちは無事なのかな。 |
ロニ | おい ! あの床に転がってるのって……人……だよな……。 |
ジューダス | 魔物に食い散らかされてバラバラになったのかそれとも戦いで……。 |
ナナリー | ……しばらく肉料理ができなくなりそうだよ。 |
リアラ | ……ねえ、待って ! ……嘘 ! ! |
カイル | どうしたのリアラ ? |
リアラ | あれ……あそこに落ちてる手……。あの手が握っているのは……。 |
ジューダス | これか ? 確かに何か握ってるな。 |
ナナリー | 細いね……子供の手だよ。可哀想に……。ごめんよ、ちょっと見せてもらうね。 |
ロニ | 妙な形のペンダントだな。それと……なんだこりゃ。イヤリング―― |
全員 | ! ! |
カイル | これ……ハロルドのイヤリングじゃ…… ! |
リアラ | やっぱり見間違いじゃなかったのね……。ねぇ、まさかハロルドもこんな風にされてるなんてことは―― |
ナナリー | 馬鹿言うんじゃないよ。きっと大丈夫さ。 |
カイル | ああ、ハロルドは必ず生きてここにいる。早く見つけてあげなきゃ ! |
ロニ | 待ってくれ、カイル。……なあ、ジューダス。この右手の持ち主生きていると思うか ? |
ジューダス | いや。さっき落ちていた臓物がこいつの物ならもう無理だろう。 |
ロニ | ……だよな。……悪いな。このペンダント、もらってくぞ。仲間の大事な手掛かりになるかもしれねぇ。 |
ロニ | ――よし、ハロルドを捜そうぜ。もし生きている奴がいたらこのペンダントも見せて聞き込みだ ! |
カイル | ジューダス、そっちの部屋はどう ? |
ジューダス | いや、誰もいない。 |
ナナリー | こっちもだよ。どの部屋ももぬけの空さ。みんな避難した後ならいいんだけど。 |
ロニ | これじゃハロルドを見つけるどころか聞き込みもできやしないぜ。俺たち、捜す場所を間違えてんじゃねえか ? |
リアラ | でも、血の跡はこっちに続いているわ。さっきのペンダントの持ち主もこっちの方から来たみたいだし。 |
カイル | ねえ、この扉、外から鍵がかけられてる。壊しちゃってもいいよね。 |
ロニ | その大きさじゃ物置かなんかだろ ?どっか別のところを―― |
ジューダス | いや、念のために確認しろ。 |
カイル | よし、じゃあ……とりゃっ ! |
カイル | 開いた ! 中は――うわあああっ ! ! |
四人 | ! ! |
ジューダス | カイル……そいつは…… ! |
カイル | いてて、なんか転がり出て来た……って…………ハロルド ! ! |
リアラ | ハロルド、しっかりして ! 酷い傷……。 |
ジューダス | これは……戦ってついた傷じゃないな。 |
ナナリー | なら何だってんだい。 |
ジューダス | おそらく拷問だろう。 |
ロニ | ……くそっ ! 俺たちがもっと早く来ていれば……。 |
? ? ? | ――いやぁああああああっっ ! |
ロニ | 今の悲鳴……女か ? |
ハロルド | ……アリ、エ……。 |
リアラ | ハロルド ! ? 気が付いた ? |
ハロルド | って……。イ……危な……。 |
ナナリー | 無理してしゃべるんじゃないよ。 |
ハロルド | 行って……。イオンが……危な……。 |
カイル | イオンって、ルークさんたちの仲間の ? |
ジューダス | 悲鳴はその先から聞こえた。行くぞ。 |
リアラ | ハロルドはまだ動かせないわ。 |
ハロルド | いいから……行けって……の。 |
ナナリー | ロニ、あんたはハロルドを背負いな。リアラ、移動しながら治療を続けられる ? |
リアラ | できるけど、途中で魔物たちが襲ってきたら……。 |
カイル | 大丈夫。オレたちを信じて。ハロルドはこれ以上傷つけさせない。 |
リアラ | ……わかったわ。みんな、お願い ! |
キャラクター | 8話【12-12 戦士の館 中庭】 |
カイル | こっちだ ! ……ここは中庭かな ? |
カイル | っ ! ! なんだ、これ……。 |
ジューダス | どうした。なにがあった。 |
全員 | ! ! |
ロニ | 見渡す限り死体って……悪夢かよ……。魔物と……こいつらは帝国兵だな。 |
ナナリー | 誰か ! 生きているなら返事しな ! いないのかい ! ? |
ジューダス | 無駄だ。全員死んでいる。 |
ハロルド | 遅かったみたいね……。 |
カイル | ハロルド、しゃべれるの ? |
ハロルド | 何とか……。世話かけちゃったわ。 |
リアラ | 良かった。でも無理はしないで。 |
カイル | ハロルド、どうしてこんなことになったんだ。 |
ハロルド | 順を追って話すから、しばらく黙って聞いといて。 |
ハロルド | まず、私を監禁してたのはイオンよ。と言っても私の協力者のイオンとは別人だけど。 |
ハロルド | ややこしいから、協力者の方はイオン。私をここに監禁した奴を【被験者イオン】としときましょ。 |
ハロルド | 被験者イオンが私を攫ったのは下らない理由だから省略。見解の相違ってことでよろしく。 |
ハロルド | で、私の捜索にあたったのがグラスティンらしいけどあいつ、突然ここを襲ってきたみたいね。 |
ハロルド | 襲撃を知った被験者イオンは、私を物置に閉じ込めて魔物使いのアリエッタと出ていったわ。あんたたち、どこかで二人を見なかった ? |
ナナリー | いや、それらしいのはいなかったね。 |
ハロルド | ……そう。話はこれで終わり。なんか質問ある ? |
カイル | この魔物はアリエッタが呼んだのかな。 |
ハロルド | でしょうね。それにさっきの悲鳴もアリエッタだと思ったんだけど……。 |
ロニ | そうだ。このペンダントに見覚えないか ?おまえの服の切れ端と一緒にあったんだよ。 |
ハロルド | ペンダント ?……それって―― |
グラスティン | おや ? ベルセリオス博士 !こんなところにいたのか。 |
全員 | ! ! |
グラスティン | 手間をかけさせやがって。お前を捜すためにこんなにたくさん、肉共を捌く羽目になったぞ ?……さあ、こっちに来い。 |
ハロルド | 自分で帰るから結構よ。 |
グラスティン | ヒヒヒ、昔のお仲間がお迎えに来てくれたって訳だ。どっちに帰るつもりなのかなぁ、ベルセリオス博士。 |
カイル | ハロルドが帰るのはオレたちの所だ !ハロルドは今もオレたちの仲間なんだからな ! |
グラスティン | ……どけ、肉小僧。お前が邪魔で後ろの綺麗な黒髪が見えないだろうが。 |
ジューダス | …………ウジ虫が。 |
グラスティン | なんとでも言ってくれ。これは滾るよ……。極上の黒髪だぁ…… !ヒヒヒヒヒ ! |
ナナリー | 噂には聞いてたけど、こいつ…… ! |
ロニ | 実際に見ると鳥肌もんだぜ……。 |
ジューダス | 無駄口を叩く暇があるならハロルドを避難させろ ! |
グラスティン | なぁ、そんな醜い仮面を外してお前の美しい黒髪をみせてくれよぉ……。それともはがしてもらう方がお好みかぁ ? |
ジューダス | カイル、こいつを黙らせるぞ。 |
カイル | グラスティン…… !ハロルドも、ジューダスも誰も渡さない ! |
キャラクター | 9話【12-12 戦士の館 中庭】 |
グラスティン | があああっ…………くそっ……。 |
カイル | ……どうだ !今度こそもう立ちあがれないだろ ! |
ジューダス | しぶとい奴だったな。すぐにここを出るぞ ! |
グラスティン | ――なんてな。まだまだ遊んでもらうぜぇ ? |
ロニ | またかよ ! さっきから何度も何度も ! |
ナナリー | 今のは致命傷だったのに……。あいつ、不死身だってのかい ? |
グラスティン | ヒヒヒ、そうさ。この程度の傷、全て無かったことにできるんだよ。 |
ハロルド | 無かったって……なるほど、そういうことね。あいつ、精霊装を使ってるんだわ。 |
カイル | 精霊装 ! ? 精霊装であんなことできるの ? |
ハロルド | あれはクロノスの精霊装だからよ。時の精霊クロノスの力を使ってバケモノじみた復活を繰り返してるってわけ。 |
カイル | そんな……。それじゃいくら倒してもキリがないよ ! |
グラスティン | ヒヒヒ、肉共の頭でも理解できたみたいだなぁ ?だったらそろそろ諦めてくれよぉ、ベルセリオス博士 ! |
カイル | させるか ! |
ロニ | ハロルド、何か作戦はねえのかよ ! ? |
ハロルド | 作戦ね。じゃあ、みんな頑張れ ! |
ナナリー | なんだいそりゃ ! |
ハロルド | いいから、キリキリ戦って。ほらジューダス、カイルだけ戦わせておく気 ? |
ジューダス | 言われなくても ! |
グラスティン | ヒヒ、黒髪仮面くんかぁ !俺に仮面をはぎ取って欲しいんだろう ?今願いを叶えてやるよ。それから解体だぁ ! |
ハロルド | ……ふぅ……まったく……。 |
リアラ | ハロルド、大丈夫なの ?本当は話すのも辛いでしょ。 |
ハロルド | 平気。……どうせ、あと少しだから。 |
リアラ | どういうこと ? |
グラスティン | ヒャーッハハハハ……ハ………… ?………………ガハッ ! ! |
カイル | え、なんで急に…… ? |
ハロルド | はい来たーー ! 時間切れーー♪ |
グラスティン | 何を………した……… ? |
ハロルド | アホね。単純にバテたのよ。あれだけ力を使って、まだ耐えられると思ってた ? |
ハロルド | 精霊輪具を使った精霊装はそんな甘い物じゃない。そうそう長く持つわけないでしょ。 |
ハロルド | なのに黒髪ちゃんに煽られちゃって。執着が過ぎて引き際を誤ったわね。 |
グラスティン | くくっ……そうか。これは改良の余地ありだなぁ……。 |
ジューダス | その必要はない。お前はここで―― |
帝国兵 | グラスティン様 ! 大至急ご報告があります !グラスティン様はどちらに ! |
ロニ | 帝国兵 ! こんな時にかよ ! ? |
グラスティン | ヒヒヒ……。黒髪仮面くんに切り刻まれるのも楽しそうだが、まだ本命に手をつけていないんでなぁ。 |
グラスティン | ――お前ら、あの肉共を殺せ !おっと、黒髪の仮面のガキは生かしておけよ。 |
カイル | くっ、帝国兵の数が多すぎる……。 |
ナナリー | 雑魚は放っときな ! ハロルドは確保したんだ。あたしらは逃げるよ。 |
ハロルド | 待って ! どうせ逃げるなら―― |
帝国兵 | グラスティン様、皇帝陛下からの勅命です。新たな島の具現化が確認されたため急ぎ、アスガルド城へ戻るようにとのことであります。 |
グラスティン | 島…… ? 何故そんなものを具現化している ?黒衣の鏡士共の仕業か ? |
帝国兵 | 残念ながら、詳細は不明です。 |
グラスティン | ……肉ネズミ共の退治は一時中断か。 |
グラスティン | この場は引き上げる。具現化された島の調査を優先しろ。 |
リアラ | ハロルドの言う通り、逃げたフリをして隠れていて正解だったわね……。 |
カイル | うん。それにしても……島の具現化だって ? |
ハロルド | さっきの様子だと、グラスティンたちも知らなかったみたいね。あんたたちの鏡士がやったって線は ? |
カイル | イクスたちじゃないよ。絶対に。 |
ハロルド | そう。でも色んな可能性を……考えないと…………いけないんだけど…………ちょっと……きゅーけー…………。 |
カイル | ハロルド ! ? |
リアラ | 大丈夫、寝てるだけ。このままにしておきましょう。かなり無理をしていたはずだから。 |
カイル | ……そうだね。じゃあオレ、イクスたちに具現化のこと知らせておくよ。 |
カーリャ・N | 美味しいです……。このチョコレートケーキ…… ! |
カーリャ | やりましたね、ミリーナさま ! |
ミリーナ | ええ。ネヴァンに喜んで欲しくて一生懸命焼いたのよ♪ |
カーリャ・N | 小さいミリーナ様……。 |
クレア | イクス、ミリーナ、大変よ !通信室で新しい島の具現化を確認したわ ! |
一同 | ! ? |
コーキス | あれ ? マスター、カイル様とフィル様からも魔鏡通信が来てるぞ ? |
カイル | イクス ! 色々報告があるんだけど新しい島が具現化されたって話は本当 ? |
フィリップ | イクス、ミリーナ、見たかい ! ?かつてビフレストのあった海域にオーデンセ島が具現化されているんだ ! |
イクス | な……何だ ? 何が起きてるんだ ? |
ミリーナ | 順番に話を聞きましょう。まずカイルたちから―― |
イクス | ――状況はわかったよ。ありがとうカイル。気を付けて帰ってきてくれ。 |
カイル | うん。具現化された島のこと、よろしくね。 |
イクス | ……そういうわけだ。今の話、そっちにも聞こえてたよな。 |
フィリップ | ……ああ。帝国の仕業ではないなら具現化可能なのは、オーデンセをよく知るジュニアくらいのものだけど……。 |
フィリップ | ここで考えていても仕方ない。僕たちはすぐに現地に向かうよ。君たちはどうする ? |
ミリーナ | もちろん私たちも行くわ。ね、イクス。 |
イクス | ……あ、ああ。そうだな。 |
フィリップ | ……わかった。すぐに迎えに行くよ。来てくれてありがとう……イクス。 |
イクス | ………………。 |
ミリーナ | 驚いたわね、イクス。魔鏡通信で見た限りでは私たちが暮らしていたあのオーデンセそのものに見えたわ。 |
イクス | アスガルド帝国の帝都もこの浮遊島もオーデンセをモチーフに具現化されているみたいだけど今回は……正真正銘オーデンセ、なのかな。 |
イクス | (正真正銘のオーデンセって何なんだろう。俺もこの世界もオーデンセも……全てがまやかしみたいなものじゃないか……) |
キャラクター | 10話【12-13 オーデンセ港】 |
コーキス | ここがオーデンセか。マスターやミリーナ様が生まれた場所なんだな。 |
ミリーナ | ええ、そうよ。懐かしいわ。この景色……。 |
カーリャ | カーリャも覚えていますよ。イクスさまとの初対面もこの港でした。ね、イクスさま ! |
イクス | え ? ああ、そうだったよな。 |
カーリャ | ありゃ、違いましたっけ ? |
イクス | いや、間違いないよ。俺は三人目でカーリャと出会った後に具現化されたみたいだけどちゃんとカーリャと会った記憶は残ってるからさ。 |
カーリャ | あ…… ! あの、ええと……。 |
ミリーナ | イクス、ごめんなさい。カーリャは変な意味で言ったんじゃないの。 |
イクス | ! ! |
イクス | ち、違うんだ。ごめん。俺もそんな当てつけとかじゃなくて……。 |
イクス | 突然オーデンセが現れて思ったより混乱してるみたいだ。……ごめんな、カーリャ。 |
フィリップ | …………。 |
マーク | ――さ、仕切り直しだ。俺たちは調査に来たんだろ ?さっさと始めようぜ。 |
コーキス | そっ、そうだよ !なあマスター、色々と案内してくれよ。俺はこの島のこと何もわからねえし。 |
コーキス | そういや、アトワイト様とネヴァンパイセンは ?まだケリュケイオンから降りてこないのか ? |
カーリャ・N | すみません。お待たせしました。 |
アトワイト | 何が起こるかわからないからネヴァンさんに手伝ってもらって色々と準備をしていたの。 |
コーキス | アトワイト様がついてきてくれて安心したよ。最近のマスター、やっぱり変だからさ……。 |
アトワイト | コーキスさんが安心してくれるなら何よりだわ。それに私もイクスさんの体調は気になってたの。 |
アトワイト | 特に鏡士は無茶をする傾向があるみたいだから医療面でのサポートには念を入れないとね。 |
三人 | わかる……。 |
カーリャ・N | …………。 |
マーク | どうしたネヴァンパイセン。あさっての方を見て。 |
カーリャ | なにか美味しそうなものでも見つけました ?……もしも~し。先輩 ? 先輩ってば~ ! |
カーリャ・N | ここは、私たちのオーデンセです……。 |
コーキス | パイセンのパイセンもそれかよ。みんなもう驚き飽きたとこだぜ ? |
コーキス | あっ、どこ行くんだよ。ネヴァンパイセン ! |
マーク | 俺には何だかんだうるさいくせに、自分はこれだよ。おーい、勝手な行動は慎めっての。パイセーン。 |
カーリャ・N | やっぱり……。ミリーナ様、イクス様……。 |
ミリーナ | ネヴァン、その樹がどうかしたの ? |
カーリャ・N | ……これを見て確信しました。 |
カーリャ・N | ここは、初代のイクス様とミリーナ様だけが知るオーデンセです。間違いありません。 |
三人 | ! ! |
イクス | なんでそんなことがわかるんだ。 |
カーリャ・N | この木がその証明です。 |
イクス | 俺と、ミリーナの名前が彫ってある……。それに日付も……。 |
イクス | ……え ! ?……ってことは……。 |
ミリーナ | イクス……。それじゃ、私たち…… ! |
フィリップ | …………そう、だったんだ。はは……。 |
マーク | ………………。 |
コーキス | どうしたんだ、みんな。 |
アトワイト | これに何か重要な意味があるの ? |
カーリャ・N | オーデンセでは、結婚を決めた二人が木の幹に名前と日付を彫る習慣があります。 |
カーリャ・N | この日付は、イクス様がミリーナ様に結婚を申し込んだ日……です。 |
コーキス | けっ、結婚 ! ? |
カーリャ | ミリーナさまとイクスさまが ! ? |
カーリャ・N | はい。当時、イクス様は十七歳でした。初めて長期の漁に出ることになった時にミリーナ様にプロポーズなさったんです。 |
カーリャ・N | イクス様は、お祖父様から鏡士になることを反対されていました。でも、必ず説得するから鏡士になれたら結婚して欲しいと仰って……。 |
カーリャ・N | 私は物陰から見ていましたがお二人とも、本当に、本当に、幸せそうでした……。 |
二人 | …………。 |
イクス | (それって……二人目の俺がカーリャと初めて出会ったあの日……だよな ? でも二人目の俺はプロポーズする気配なんてなかった) |
イクス | (二人目と俺は……性格を変えられてしまったからか ?それにカーリャが生まれた時期もゲフィオンとミリーナで違うみたいだし……) |
カーリャ・N | ……この話を知る者は、もう私以外にはいません。フィル様も知らないはずです。この頃にはもう、オーデンセにはいませんでしたから。 |
フィリップ | ……そうだね。初耳だよ。 |
イクス | 待ってくれ。だったら、このオーデンセは誰が具現化したんだ ! ? |
イクス | フィルもジュニアも知らないんだろう ?ゲフィオンは人体万華鏡になったままだ。それなら後は……。 |
コーキス | 最初のイクス様か ! ? |
ミリーナ | まさか、生きているの ! ? |
フィリップ | そんなはず―― ! |
帝国兵 | お待ちください ! このままでは、我々は反逆者になってしまいます。どうか一度帝都へ戻り船の正式な出港許可を得てください ! |
メルクリア | なにを言う ! わらわは皇女じゃ。わらわの命で船を動かして何の問題がある ! |
帝国兵 | ですが、帝国では恐らくこの船を奪われたものとして捜索しているはずです。ですから―― |
全員 | ! ! |
ミリーナ | メルクリア…… ? どうしてここに…… ! |
メルクリア | お前たちは……黒衣の鏡士の郎党共 ! ! |
イクス | 先に島へ乗り込んでいたのか ! |
メルクリア | ……兄上様の仇 !よくもその顔をわらわの前にさらしてくれたな ! |
ミリーナ | 待って ! あなたとは―― |
メルクリア | 黙れ ! 消し炭にしてくれるわ ! |
キャラクター | 11話【12-14 オーデンセ港】 |
ルキウス | やめるんだ、メルクリア ! |
メルクリア | ルキウス ! しかし…… ! |
イクス | ルキウスって、確かカイウスの……。 |
ミリーナ | ええ、弟さんだわ。カイウスにそっくり。 |
ルキウス | メルクリア、こんなことをしている時間はないんだ。はやくこの島を出ないと。 |
メルクリア | くっ……、行くぞ ! 全員、船に乗り込め ! |
ルキウス | 君たちも早くこの島を離れた方がいい。もうすぐビフレストがこの場所に復活する。 |
イクス | ビフレストが復活って……どういうことなんだ ! |
ルキウス | 島に残ればキメラ結合に巻き込まれる。そうなれば命はない。……きっと、メルクリアもそれは望まないから。 |
メルクリア | ルキウス、早く乗るのじゃ ! |
ルキウス | 忠告はしたよ。イクス。 |
イクス | 待ってくれ ! 君はカイウスの弟だろう。カイウスはずっと君を心配して―― |
コーキス | 駄目だ、船が出ちまう ! 追うか、マスター ! |
イクス | いや、オーデンセをこのままにはしておけない。ビフレストの具現化を止めないと ! |
カーリャ・N | 追跡は私に任せてください。 |
アトワイト | ネヴァン、一緒に行くわ。あなたたちは鏡士として事態の収束を優先して。 |
イクス | 無茶だ ! ネヴァン、アトワイトさん ! |
カーリャ | あわわ……、二人とも船に乗っちゃいましたよ !どうしましょう……見つかっちゃったら……。 |
マーク | いや……。騒ぎが起こらねえ。ってことは上手く密航できたってことだろ。さすが軍人さん……と、俺のパイセンだな。 |
イクス | ……アトワイトさんたちの方は信じて任せよう。俺たちは具現化を阻止しないと。 |
イクス | ――フィル、見通しはどうだ ? |
フィリップ | ……大がかりな具現化にキメラ結合だ。これには仕掛けが必要なはずだよ。解除すれば具現化は阻止できる。 |
ミリーナ | この島のことは隅々まで知っているわ。仕掛けるための最適な場所も検討はつくから大丈夫。 |
コーキス | でもあいつら、時間がないって言ってたぞ。間に合うのか ? |
イクス | 大丈夫。まだ具現化は始まらないよ。 |
イクス | メルクリアだって、自分たちが巻き込まれないようにこの海域から離れる時間を考慮しているはずだ。その時間内で処理できる。 |
イクス | それに最悪の事態になったら俺がみんなを転送ゲートでアジトに連れ帰る。 |
イクス | まずは既存の島に新たな島をキメラ結合させる場合に想定される魔鏡装置とその設置場所の洗い出しだ。始めるぞ。ミリーナ、フィル ! |
ミリーナ | ええ ! |
フィリップ | あ、ああ……。 |
マーク | どうしたフィル。呆けたツラして。 |
フィリップ | ……なんだかまるで僕の知るイクスが甦ったように思えたんだ。 |
フィリップ | 三人目のイクスは僕のせいで苦しんでいるのにそれでも、もがいて前に進もうとしている。それに比べて僕は……何をしているんだろう……。 |
マーク | 何もしてないなら、何かすればいいんじゃねぇの ?何もしないより遥かに酷いことをしてるけどな。それでも、やれることはあるだろ ? |
マーク | 頼むから、俺を切り離して死のう……ってのはやめてくれよ ? |
フィリップ | ……そうできたら、どんなにか楽だろうね。その前に、僕の命の方が尽きそうだけれど。 |
マーク | ………………。 |
コーキス | ――おーい、フィル様 !フィル様が知恵を出してくれないと話が進まないぞ ! |
フィリップ | ――ああ、わかってるよ。この計画がメルクリアの手によるものならこの具現化はビフレスト式だろう。 |
フィリップ | それにメルクリアはビフレストを知らない。恐らく彼女の想像のビフレストを具現化させるつもりだろう。 |
フィリップ | それなら、手段は限られる筈だ。オーデンセの地図を魔鏡に映してくれ。それで指示するよ。 |
キャラクター | 12話【12-15 ハロルド】 |
ハロルド | ――へえ、ゲートねえ。そんなものまであるんだ~。このアジト、調べ甲斐がありそう。 |
リアラ | しばらくは大人しくしてて。傷が全部治ったわけじゃないんだから。 |
ナナリー | そうだよ。さっきまで死んだみたいに眠ってたんだ。少しは自重しな。 |
カイル | ねえハロルド。話の続きだけど罠って帝国の中に仕掛けたの ? |
ハロルド | あ、そうそう。あっちこっちにね。結構苦労したのよ ? |
ハロルド | けど、それも私が帝国を離反したことでバレちゃったかもしれないなーって。 |
カイル | ……悔しいな。ハロルドは敵の中でこんなに頑張ってくれてたのに。 |
ハロルド | まあ、そうは言っても全部は見つけられないはずよ。 |
ハロルド | この私が全身全霊心を込めて組んだ罠だもん。名づけるなら、帝国切り崩しネットワークってとこかしら。 |
ハロルド | これは役に立つはずよ。今すぐじゃなくても、じわじわと必ずね。グフフフフ……。 |
ロニ | 言い方が怖いんだよ……。まるで帝国に毒盛ってやったみたいな口振りだぜ。 |
ジューダス | おまえにしては言い得て妙だ。ハロルドのように、腹に一物ある奴が帝国内には多く潜んでいるようだからな。 |
ハロルド | そうそう。敵だと思っていても、ある日突然仲間に !なんて展開があるかもしれないわよ ? |
リアラ | 敵……。もしかしたらエルレインも……なんてことは。 |
ロニ | いやいや、あの聖女様が味方になんてありえねえって。もしそうなったら裸でアジトを走りまわってやるよ ! |
ナナリー | 誰も見たかないよ、そんなお粗末な物 ! |
ロニ | 誰が粗末だ ! いつ粗末って知った ! |
ジェイド | おや、ずいぶんと賑やかだと思ったら無事に戻っていたんですね。 |
カイル | ただいま、ジェイドさん。ええと、こっちが―― |
ジェイド | ハロルドですね。お噂はかねがね。私のことはジェイドと呼んで下さい。 |
ハロルド | ああ、あんたが『あの』ジェイドね。その名前、ディストの口からやたら聞いたわ。 |
ジェイド | それはおそらく幻聴でしょう。もしくは、我々には感知しえない何かの声……なのかもしれません。 |
ロニ | ゆ、幽霊とかの話じゃねえよな ? |
カイル | ロニ、びびってるー ! |
ジェイド | はっはっはっ。幽霊などとアレを一緒にしては幽霊に失礼ですよ。幽霊にも矜持はあるでしょうから。会ったことはありませんが。 |
ジェイド | さて、冗談はさておき、後ほどあなた方の報告を聞かせて頂けるとありがたいのですがね。 |
ジェイド | ハロルド救出の経緯と帝国の状況も把握しておきたいので。 |
カイル | あ……そうだ !このペンダントのことも調べなきゃ。 |
ジェイド | ! ! |
ロニ | それか……。そいつを使ってハロルドの居場所を聞き込もうと思ってたのにな。死体だらけで、それどころじゃなかったぜ。 |
ジェイド | 随分と凄惨な現場だったようですね。そのペンダントの持ち主も亡くなっていたのですか ? |
ナナリー | ……酷い有様だったよ。 |
ジェイド | なるほど。一応、確認のために預からせて頂けますか ? |
カイル | はい。どうぞ。 |
ハロルド | ……………。 |
ジェイド | ……………。 |
ハロルド | は~、それにしても疲れたわ。なんかお腹もへった気がするし。あんたたちは平気なの ? |
カイル | そういえばへってる ! |
ナナリー | じゃあ、あたしが何か作るよ。ハロルドの分はここに持ってくるかい ? |
ハロルド | ひと眠りしてからにするわ。あんたたちは先に食べてきて。 |
リアラ | じゃあ、お先に。ゆっくり休んでね。 |
カイル | あ、ジェイドさんも一緒にどうですか ? |
ジューダス | ……そいつが人間の食べるものを食べるとでも思っているのか ?放っておけ。 |
カイル | ええっ ! ? |
ジェイド | さすがの察しの良さですね。まあ、ひどい言われように傷つきましたが。 |
ハロルド | ……それ、イオンのペンダントでしょ。 |
ジェイド | ええ。 |
ハロルド | さっき聞いたとおりよ。そのペンダントの持ち主は内臓の一部と手だけしか残っていなかった。 |
ジェイド | あなたは、どちらのイオンだと思いますか ? |
ハロルド | 何とも言えないわね。 |
ハロルド | そもそも私が捕まったのは被験者イオンを、レプリカイオンだと思ってのこのこついて行ったからよ。 |
ジェイド | 本気で成りすまされたら見分けはつきませんよ。双子ではなく、同一人物ですからね。 |
ハロルド | 同情はお断り。凡ミスなのは自分でわかってるから。 |
ハロルド | あの時、現場にいたのは被験者イオンよ。でもレプリカイオンが私を助けにきていたとしたら ?レプリカイオンならありえるでしょ。 |
ジェイド | ………………。 |
| アスガルド帝国 近海 |
救世軍バルバトス派 | すげぇ……。バルバトスさん、相手の船にこっちの船首を突撃させるなんて。 |
バルバトス | 出て来い、メルクリア ! どこに隠れていやがる ! |
バルバトス | おい、救世軍の役立たずども !メルクリアは本当にこの船に乗っているんだろうな ? |
救世軍バルバトス派 | ま、間違いありません !皇女がこの帝国船で帰ってくると報せがあったんです ! |
バルバトス | ならメルクリアが出てくるまでの間この船の兵を一人づつ海に捨てる !無論、手足は縛ったままでな ! ! |
バルバトス | 聞こえているか、メルクリア ! |
アトワイト | (一体なにが起きてるの ? 誰がこんなことを……) |
バルバトス | 貴様はアトワイト…… ? |
アトワイト | バルバトス……なぜあなたがここに ! ? |
バルバトス | くくく……これはこれは……。思わぬところで巡り合ったものだ。 |
アトワイト | ……バルバトス、まずは武器を納めなさい。これ以上の暴挙は許さないわ。 |
バルバトス | 久しぶりに会ったというのにつれないことを言う。戦を共にする同士ではないか。 |
アトワイト | …… ? あなたはもしかして……。 |
バルバトス | 共に再会を喜び会おう。……なあ ? アトワイトオオオオッ ! |
アトワイト | ―――― ! ! |
| to be continued |
キャラクター | 1話【13-1 船上】 |
バルバトス | どうしたアトワイト ?先ほどまでの威勢が嘘のようではないか ? |
アトワイト | ……くっ、何とでも言いなさい。あなたが聞きたかったことは全部話したつもりよ。 |
バルバトス派救世軍兵士 | あの、バルバトスさん……。この女の人、誰なんですか…… ?バルバトスさんは知り合いだったみたいですけど……。 |
バルバトス | 貴様らのような死にぞこないが知ってどうするっ !つべこべ言わずに、この女をどこかの部屋に閉じこめておけ ! |
バルバトス派救世軍兵士 | はっ、はい ! |
バルバトス | マークの腰巾着 ! この女の話は聞いていただろう。すぐにメルクリアたちが逃げた大陸に船を向かわせろ ! 今すぐだ ! |
ルック | わ、わかりました。ただ、ここからメルクリアたちが逃げたっていうファンダリア領まで向かうとなるとそれなりに時間がかかります……。 |
バルバトス | ふん、まあよかろう。 |
バルバトス | 転送魔法陣なぞ使って船から逃げ出したようだがディムロスたちがいる大陸を選ぶとはなかなか気が利くではないか。 |
バルバトス | メルクリア ! ! そしてディムロスっ ! !待っていろ、すぐにまとめて俺が殺してやる ! ! |
バルバトス | クク、クククククッ !アーッハッハッハッハッ ! ! |
カーリャ・N | ――お待たせしました。見回りの兵たちはここから離れたようですが念のため、しばらくは大人しくしていてください。 |
ルキウス | ありがとう。きみが手を貸してくれなければボクたちも今頃、乗っていた船と一緒に海の底に沈んでいたかもしれない。 |
ルキウス | でも、ボクたちをかばって戦った兵たちの中には……。 |
カーリャ・N | ……今は考えないことです。まずは現在の状況をお伝えしておきます。 |
カーリャ・N | この船は、アトワイト様が流した嘘の情報によりあなた方が逃げたことになっているファンダリア大陸に向かっています。 |
カーリャ・N | なので私たちは港に着き次第タイミングを見計らって次の行動に移ります。いいですね ? |
ルキウス | ああ。今はきみの指示に従うよ。 |
メルクリア | ……何故じゃ。 |
ルキウス | メルクリア ? |
メルクリア | 何故わらわたちを助けるような真似をするッ ! !貴様らにとって、わらわは敵ではなかったのか ! ! |
カーリャ・N | それは……。 |
メルクリア | 答えろっ ! ! さもなくば、わらわはすぐにでも貴様をここで八つ裂きにしてくれるぞ ! ! |
カーリャ・N | ……そうですね。私には、あなたを助ける義理などありません。 |
メルクリア | ! ? |
カーリャ・N | ですが、あなたを助けることはミ……ゲフィオン様の望みなのです。 |
メルクリア | ゲフィオン……じゃと ? |
ルキウス | ゲフィオン……ビフレストを滅ぼした鏡士……。 |
メルクリア | 戯言を抜かすでないッ ! ! ゲフィオンがビフレストの皇女であるわらわを助けようなどと思うはずがなかろう ! ! |
メルクリア | あやつはわらわの大切なものを全て奪っていったのだ !故郷も、民も、母上様や兄上様さえも…… !そのような者に慈悲の心があるとでも言うのかっ ! |
カーリャ・N | あなたに話しても理解してもらえるとは思いませんしゲフィオン様も理解されたいとは思わないでしょう。 |
メルクリア | 何じゃと…ッ ! ? |
ルキウス | 落ち着くんだ、メルクリア。こんなところで争っている場合じゃない。 |
ルキウス | ボクたちの置かれている状況がわからないメルクリアじゃないだろう ? |
メルクリア | ……う……しかし……。 |
カーリャ・N | それに、今回あなたを助けようと決めたのは私だけではありません。 |
カーリャ・N | 捕まったアトワイト様は、私のように私情ではなく人としてあなたたちを見捨てるわけにはいかないと自ら囮となってくださいました。 |
カーリャ・N | あなたは、そのアトワイト様の行動さえ無駄にしようというのですか ? |
メルクリア | …………ッ ! |
カーリャ・N | それでも私に刃を向けたいというのならあなたもそれまでの人間ということ。私も全力で相手をしましょう。 |
メルクリア | …………今回だけじゃ。今回だけは、貴様らに従ってやる……。 |
キャラクター | 2話【13-1 船上】 |
イクス | 水鏡の森……。具現化に必要な仕掛けがありそうな場所で調べていないのは、ここだけだ。 |
ミリーナ | 当たり前だけど、やっぱりこの森の景色も同じなのね。歩いてるとイクスやフィルと一緒にピクニックへ行ったりしたことを思い出すわ。 |
フィリップ | あ、ああ……懐かしいね……。 |
ミリーナ | 確か、魔物が出るからって言われて、それ以来あまり水鏡の森には近づかなくなったのよね ? |
フィリップ | ミリーナ、それは……。 |
イクス | ……ミリーナ、その話は後でゆっくりしよう。今は一刻も早く仕掛けを見つけるんだ。 |
ミリーナ | そうね。ごめんなさい、懐かしくてつい……。 |
コーキス | ん ? なぁマスター。あっちのほう、何かチカチカ光ってないか ? |
イクス | あれは……魔鏡が反射する光だ !ということは……。 |
マーク | ようやく見つかったか。 |
フィリップ | ああ、間違いない。ここに設置された魔鏡は具現化の魔鏡陣の力を増幅させるためのものだ。 |
カーリャ | やりましたね ! では、ちゃちゃっとこの魔鏡陣を何とかしちゃいましょう ! |
フィリップ | ……いや、どうやらそう簡単にはいかないみたいだ。 |
コーキス | まさか、フィル様でも解除できない術式なのか ! ? |
フィリップ | いや、正確には術式自体はなんとかできると思う。ただ、それを実行するために必要な段取りが少々厄介なんだ。 |
イクス | 教えてくれ、フィル。どうすればビフレストの具現化を止められるんだ ? |
フィリップ | まず、この魔鏡陣を書き換えたり消しただけではビフレストの具現化とキメラ結合は止まらない。 |
フィリップ | 魔鏡陣の構成を考えるに、オーデンセの具現化とビフレストとのキメラ結合は各具現化大陸からキラル分子を吸い上げて行われている。 |
フィリップ | おそらく、ビフレストの具現化を止めるには各具現化大陸に仕掛けられた魔鏡を破壊する必要がある。 |
フィリップ | それも、一つだけじゃない。各大陸に数ヵ所、必要な数の魔鏡を設置しているはずだ。 |
マーク | 面倒くせえやり方しやがって。こりゃ人海戦術で挑むしかねえな。 |
イクス | フィル、ビフレストの具現化が完了するまで、あとどれくらいなんだ ? |
フィリップ | ……時間的猶予はない。具現化は今も少しずつ進行しているんだ。すぐにでも各大陸とのリンクを切らないと……。 |
コーキス | なるはや……って奴だな ! |
ミリーナ | イクス、急いでアジトのみんなに連絡して協力してもらいましょう ! |
イクス | ああ ! |
ユリウス | わかった。すぐに人員を手配する。何かあればこちらからも連絡をするようみんなには伝えておこう。 |
イクス | ありがとうございます。俺たちは具現化を止める準備をしておきますからみんなによろしく伝えてください。 |
リッド | 大陸ごとにある魔鏡の破壊ねえ。こりゃあ、骨が折れそうな仕事だぜ。 |
ガイアス | 魔鏡があると思われる場所は既にイクスたちが見当をつけてくれている。だが……。 |
セネル | 問題は時間だな。この浮遊島からケリュケイオンとゲートを使うにしても全部の場所を回るとなると、かなり厳しいぞ。 |
リッド | ああ、ゲートで各大陸に行けたとしてもそっから魔鏡の場所まで遠いとこだってあるしな。 |
ガイアス | 俺だけならミュゼに運んでもらうという方法も可能かもしれんが、それだけでは足りんだろう。 |
リッド | あんたが運ばれてるとこ想像するとすげーシュールだな。 |
フィリップ | いや、もっといい方法がある。 |
リッド | フィリップにマーク ! ?お前ら、イクスたちと一緒じゃなかったのかよ ? |
フィリップ | ついさっきまではね。きみたちがイクスから連絡を受けている間に僕たちは鏡士が使う転送ゲートでここに来たんだ。 |
セネル | それって……かなり体力を消耗するから緊急時以外は使うなって言われてるやつだろ。大丈夫……なのか ? |
フィリップ | 緊急事態だからね。それにこれでも僕はこの世界で一番の鏡士だよ。大丈夫さ。 |
マーク | …………。 |
フィリップ | 時間が惜しいから手短に話すよ。きみたちをこれから、僕の転送魔鏡術で各地の魔鏡設置ポイントに送り込む。 |
セネル | 帝国の連中が使ってる魔鏡術か。確かに、それなら時間はかなり短縮できるな。あんたがそれを使えるとは思わなかった。 |
フィリップ | あれはビフレスト式の魔鏡術でね。本来は事前準備が必要なんだが今回はそれを飛ばして行う。 |
フィリップ | だから片道切符になってしまうしもしかしたら危険な場所に転送されるかも知れない。それに、帰りは自力で帰ってきてもらうことになる。 |
リッド | いや、十分だぜフィリップ。それなら何とかなるんじゃねえか ? |
ガイアス | ……お前は、本当にそれでいいのだな ? |
フィリップ | これでもビクエだからね。たまには年配者の威厳ってものを見せておかないと。 |
ガイアス | ……わかった。では俺たちも仲間を集めて準備に取り掛かろう。 |
ガイアス | ユリウス、お前はアジトに残り全体の指揮を頼む。ジェイドは色々と忙しそうだからな。 |
ユリウス | 了解だ。では、各大陸への転送は五分後。その間に出来る限りアジトのみんなに情報を共有しておこう。 |
フィリップ | ――マーク。 |
マーク | ……何だよ。 |
フィリップ | ありがとう、何も言わないでいてくれて。 |
マーク | …………この馬鹿マスターが。 |
キャラクター | 3話【13-2 テセアラ領 領主の館1】 |
| テセアラ領・領都アルタミラ |
イオン ? | リヒター、なぜ僕が領主と面談が許されないのか詳しく教えてもらえないかな ? |
リヒターβ | 現在、各大陸の領主が次々と襲われていると報告を受けている。同時に、帝都で保管されていた心核もいくつか持ち去られたという話だ。 |
イオン ? | その犯人が僕だとでも言いたげな態度だね。そんなことをするのは、出来損ないの【レプリカ】のほうじゃないのかな。 |
リヒターβ | ああ、我々もその線で動いている。だからこそお前が『あの』イオンだと証明できない限り領主であるリーガルの元へは行かせられん。 |
イオン ? | ……つまり、この僕が【被験者】ではない、と言いたいのか。 |
リヒターβ | その通りだ。 |
イオン ? | 困ったね。信じてもらえないとなるとお前を力尽くでどかすしかないってことだから。 |
イオン ? | まあ、どうせ、リビングドールβなんて汎用型のオモチャだし、壊してもかまわないか。 |
リヒターβ | ……待て。わかった。俺から話をつけてこよう。 |
イオン ? | ふうん。出来損ないのオモチャでも恐怖心があるんだ。面白いね。 |
リヒターβ | ……但し、一つ聞いておくことがある。お前は自分がいつ頃この世界に具現化されたか覚えているか ? |
イオン ? | ……おかしなことを聞くね。僕が具現化されたのはハロルドと同じ頃だったはずだけど。 |
リヒターβ | ……そうか。 |
イオン ? | 無駄口を叩いている暇があったら早く領主であるリーガルに―― |
リヒターβ | ――はああっ ! |
イオン ? | なっ ! ? |
リヒターβ | ……上手く避けるじゃないか。身体が弱いと聞いていたのだがな。レプリカイオン。 |
イオン | どうして……僕が【被験者】じゃないとわかったのですか ? |
リヒターβ | お前たちに伝わっていた情報には齟齬がある。被験者と呼ばれた方は、もっと前に具現化された。あのディストによってな。 |
イオン | ……なるほど、迂闊でした。 |
リヒターβ | さて、大人しく捕まってもらおうか。 |
イオン | ……そうはさせません ! |
リヒターβ | なにっ ! ? これは…… ! !ぐううううっっ…… ! ! |
イオン | ――ダアト式譜術。万が一の為あなたが来るまでの間に準備をしておきました。少しの間だけ、眠っていてもらいますよ。 |
イオン | (……心核を入れ替えて……) |
イオン | ――よし、これで大丈夫なはずです。あとは……。 |
帝国軍兵士 | おい、どうした ! ?物騒な物音がしたようだが……。 |
イオン | ! ! |
リーガルβ | 貴様……リヒターに何をした ? |
イオン | (……この人数相手にもう一度ダアト式譜術を使う……か ?) |
リーガルβ | そいつを捕らえろ。詳しい話を聞く必要がある。 |
イオン | (上手くいけばリーガルの心核も戻せるかもしれない。でも僕の体力が持つか……) |
? ? ? | 助けが来る……。 |
イオン | ……なるほど、そうですか。 |
リーガルβ | お前、何を笑っている ? |
イオン | いえ。どうやら助けが来てくれるようなので。 |
ロイド | うおっ ! ? すげーな ! !本当にパッとついちまったぜ ! ? |
帝国軍兵士 | なっ、なんだ ! ?転送魔法陣 ! ? こんな所に ! ? |
マルタ | ちょっと ! 周りが帝国兵だらけじゃない ! ? |
エミル | な、なんでこんな状況になってるの ! ? |
リーガルβ | なるほど、仲間がいたのか。 |
エミル | ――え ! ? リーガルさん ! ? |
ロイド | リーガル ! ! どうしてこんな所に……ってそもそもここはどこなんだ ?アルタミラ付近に飛ばすって話だったけど。 |
ミトス | 領主の館……じゃないかな。だとしたら、テセアラ領の領主はリーガルでリビングドールβにされてるってことになるけど。 |
ロイド | ……そういうことかよ。だったらここでとっ捕まえてアジトに連れて帰ればリーガルを助けられるってことだな ! |
帝国軍兵士 | リーガル様 ! ここは我々が ! |
リーガルβ | わかった。後は任せるぞ ! |
ロイド | あっ、おい ! ! 待てよ ! ! |
ミトス | ロイド、深追いは禁物だよ。ボクらの目的は―― |
ロイド | ……ビフレストの具現化を食い止める。分かってるさ。 |
帝国軍兵士 | 侵入者共が何をガタガタと !みんな、かかれ ! |
キャラクター | 4話【13-5 テセアラ領 領主の館4】 |
ロイド | よし、これで片付いたな。 |
ラタトスク | ……ちっ。数が多すぎて時間がかかっちまった。 |
ミトス | ――ねぇ、その顔……。もしかしてイオン ?鏡映点リストで見たよ。被験者かレプリカの方かは分からないけど。 |
イオン | ああ……。はい、レプリカの方……です。証明できるものはありませんが……。 |
ロイド | レプリカ…… ?てか、お前、顔が青いの通り越して白いぞ ! ?大丈夫か ! ? |
イオン | ……すみま……せん。少し休めば大丈夫……。それより、あちらの彼を……。 |
マルタ | エミル、見て ! ? あそこで倒れてる人って ! ? |
エミル | リヒターさん ! ? どうして ! ? |
イオン | 彼は……気を失っているだけです。リビングドールβに……されていたので心核を……戻しま…… |
マルタ | ちょっと ! 全然大丈夫じゃないじゃない ! ?顔も真っ青だよ ! ?待ってて、すぐに治癒術を……。 |
イオン | はぁはぁ……申し訳、ありません……。少し無理をしてしまったようです。 |
イオン | あなた方は……ジェイドたちの……仲間ですよね。どうか、リヒターをあなたたちのアジトまで送り届けてくだ……さ―― |
ロイド | おい ! しっかりしろ ! ! |
ミトス | 気絶しただけだよ。命に別状はない。とはいえ、このままって訳にもいかないね。 |
エミル | 魔鏡陣の仕掛けを壊すんだよね。でもリヒターさんが……。 |
ラタトスク | リヒターなんざ、どうでもいいだろ。 |
二人 | よくないだろ ! |
エミル | ――え ? ミトス ? |
ミトス | ……何 ? リヒターはハーフエルフなんだから心配して当然でしょ。それにイオンもボクらと似たようなものだし。 |
ロイド | ………………。 |
ラタトスク | だが、どうする ? アジトに帰るゲートは魔鏡が設置されている場所とは逆方向だぞ。 |
マルタ | 手分けしたらどうかな。リヒターたちをアジトに連れて帰る組と魔鏡陣の仕掛けを壊す組と。 |
ロイド | ミトス。お前がエミルとマルタと一緒にこのイオンって人とリヒターを運んでやってくれよ。 |
エミル | それじゃあロイドが一人になっちゃうよ ! ? |
ミトス | ……本当に、嫌なやつ。 |
ロイド | な、なんだよ ? 俺、そんな嫌なこと言ったか ?だってミトスはイオンのことなんかわかってるみたいだったし。 |
ロイド | リヒターのことはエミルとマルタが知ってるだろうし。それに、この二人を運びながら戦うとなると人数は多い方がいいだろ。 |
ラタトスク | ――テネブラエ。 |
テネブラエ | はい、お側に。 |
ラタトスク | お前、ロイドについていってサポートしてやれ。俺たちは急いでこの足手まとい共をアジトに運ぶ。 |
ロイド | よし、決まりだな。テネブラエ、頼むぜ ! |
テネブラエ | ノイシュさんからいつもロイドさんのことは聞いていますからね。おまかせ下さい。 |
マルタ | じゃあ私、ジーニアスたちにも一応連絡しておくね。いざという時にロイドのサポートができないか確認してみる。 |
ロイド | ああ、頼む。それじゃあ、俺は例の仕掛けってやつを探しにいくか ! |
ミトス | ロイド……。 |
ロイド | ん ? 何だ ? |
ミトス | ……せいぜい必死であがくといいよ。疲れ切って帰ってくるのを楽しみにしてるから。 |
ロイド | おう。あがくのは得意だからな。 |
バルバトス | ようやく着いたか。もうすぐだ、もうすぐでお前に会えるぞ……。 |
バルバトス | おいっ ! お前たち ! ! ディムロスだ ! !まずはディムロスという男がどこにいるのか捜し出せ ! ! |
バルバトス派救世軍 | はいっ ! |
バルバトス | おっと、あの女も連れてくることを忘れるなよ ?ディムロスへの大切な手土産だからな。 |
ルック | (いいのか……俺は本当にこのままバルバトスさんに従い続けて……) |
バルバトス | どうした、マークの腰巾着。まさか、今さら怖気づいた……などということはあるまいな ? |
バルバトス派救世軍 | そんなことはありません !なあ、ルック ! 俺たちは戦うためにバルバトスさんに付いてきたんですから ! |
バルバトス | ならば、最後まで俺のためにその命を使え。戦場で死ぬのがお前たちの本望だろう ? |
バルバトス派救世軍 | はい、その通りです ! ! |
バルバトス | クックックッ、それでこそ戦士の証だ。救世軍から捨てられたお前たちでも死に場所くらいはこの俺が与えてやろう。 |
ルック | ………………。 |
カーリャ・N | 船が停泊したようですね。では、私たちも行動を開始しましょう。 |
カーリャ・N | 帝国軍の主力が上陸したら、船を奪取します。捕まった帝国兵を解放してそのまま沖へ出てください。 |
ルキウス | きみはどうするつもりなんだ ? |
カーリャ・N | 私はあなたたちの乗った船が沖に出たのを見届けたのち、アトワイト様の救出に向かいます。 |
ルキウス | それじゃあ、ここからは別行動だね。色々とありがとう。でも……。 |
カーリャ・N | はい、私たちは敵同士です。次に会うときは戦いの場かもしれません。 |
ルキウス | ……残念だね。 |
メルクリア | …………。 |
カーリャ・N | では、私は船に残っている見張り兵を一掃しますのであとは、あなたたちにお任せします。 |
ルキウス | ああ、こっちは上手くやってみせるよ。 |
カーリャ・N | それでは、ご武運を。 |
ルキウス | メルクリア、ボクたちもいつでも動けるようにしておこう。 |
メルクリア | ルキウスよ……わらわは、本当にこのままでよいと思うか ? 何もせず、鏡士たちの仲間に助けられるだけでよいのか ? |
ルキウス | ……それは、きみの中にしか答えがない問いかけだよ。 |
メルクリア | わらわは……。 |
ルキウス | メルクリア。きみはどうしたいんだい ? |
メルクリア | わらわは……本当は……。 |
キャラクター | 5話【13-6 ファンダリア領 村】 |
スタン | お待たせ、ディムロス ! |
ディムロス | よく来てくれた、スタン。すまない、我々も協力は惜しまないが、こちらも日夜帝国軍との戦闘で動かせる兵が限られていてな。 |
スタン | いや、ディムロスたちが協力してくれて本当に助かったよ。この大陸の地形なら俺たちより対帝国軍部隊の人たちのほうが詳しいだろうし。 |
シャルティエ | それで、大陸のキラル分子を吸収してるっていう魔鏡はどこにあるんですか ? |
スタン | イクスたちが言うにはこのファンダリア大陸には全部で三つの魔鏡が設置されているそうなんだ。 |
ソーディアン・ディムロス | 二つの魔鏡は、それぞれリオンとルーティウッドロウとフィリアが破壊に向かってくれている。 |
ディムロス | なるほど、つまり、残る一つを我々が破壊すればよいのだな。 |
ソーディアン・ディムロス | ただ、一つ問題があってな。その魔鏡が集めたキラル分子を求めて、魔物まで集まってくるのだ。 |
シャルティエ | 危険が伴う任務ってことですね。 |
スタン | カイルたちも手伝うって言ってくれたけどハロルドさんを助けにいったばかりで無理をさせるわけにはいかなくて……。 |
ディムロス | それで、我々に白羽の矢が立ったというわけか。 |
スタン | ごめん、俺たちだけでなんとかしたかったんだけど。 |
ディムロス | 何を言っている ? こういう不測の事態の時こそ互いに協力する為の同盟ではなかったのか ?そうだろう、シャルティエ ? |
シャルティエ | ええ、ええ、わかってますよ。ディムロスが引き受けたのなら初めから僕に拒否権なんてありませんからね。 |
スタン | 二人とも……ありがとう ! |
ディムロス | よし、では早速その魔鏡がある場所へ向かおう。シャルティエ、念のため我々の本部にはピエール部隊を待機させておいてくれ。 |
シャルティエ | ええ~、あいつらですか ?別にいいですけど、大丈夫ですかね……。ちゃんとみんなに指揮とかできるかな……。 |
ソーディアン・ディムロス | 大丈夫か、スタン ? |
スタン | えっ ! ? な、なんだよ急に……。 |
ソーディアン・ディムロス | なに、珍しく考え事をしているような顔をしていたのでな。 |
スタン | ……なんか馬鹿にされたような気がするぞ。でも、やっぱりディムロスにはバレてたのか。 |
ソーディアン・ディムロス | ルーティのことか ? |
スタン | ……ああ。ルーティ、ずっと様子が変だろ ?俺やカイルとのこともあったし色々悩んでいるんだと思う。 |
スタン | だから、そんな状態で魔物に襲われたりでもしたらって考えちゃってさ……。 |
ソーディアン・ディムロス | こればかりは、お前たちの問題だからな。 |
ソーディアン・ディムロス | しかし、だからといって目の前の問題を蔑ろにしていいわけではない。ルーティもそれがわからぬ未熟者ではあるまい。 |
スタン | ……そうだな。それに、リオンも一緒だし、きっと大丈夫だよな。 |
フィリップ | ――これで……全員の転送は……完了だ。 |
ユリウス | あとは、みんなからの報告を待つだけか。フィリップ、きみはゆっくり休んでいてくれ。 |
フィリップ | ああ……、そうさせてもらうよ。 |
カノンノ・G | あの、私、何か飲み物持ってきましょうか ? |
フィリップ | そう……だね。少しだけ水を貰えるかな ? |
マーク | おい、フィル。身体は……。 |
フィリップ | ……大丈夫。ただ、やっぱり歳……かな。つか……れ……。 |
マーク | フィル ! ? |
カノンノ・E | フィリップ ! ? そんな、すごい熱…… ! ! |
P・カノンノ | わ、私、すぐ医療班の人たちを呼んでくる ! ! |
ユリウス | マーク、これは一体どういうことだ ? |
マーク | ……まあ、見ての通りだ。転送魔鏡術ってのは負担が大きすぎる術式でな。だから事前に仕掛けをしておかないとヤバいんだ。 |
マーク | なのにこの馬鹿は、緊急事態だからって……。ビクエだろうと、こんなにポンポン飛ばしてりゃ倒れるに決まってんだよ ! |
マーク | ああっ ! ! 誰だ、こんなときに魔鏡通信なんぞかけてくる奴はっ ! ! |
ルック | …………マークさん、俺です。 |
マーク | ルック ! ? お前、今どこにいるんだ ! ? |
ルック | すみません。今はバルバトスさんと一緒にファンダリア領にいます……。 |
マーク | バルバトスだと ! ?あいつ、なんでファンダリア領なんかに……。 |
ルック | メルクリアがファンダリア領にいるって情報を手に入れて……それに、ディムロスって人も捜してるみたいなんです。 |
ルック | でも、途中で帝国軍の艦隊も追いついてきて……。バルバトスさんが帝国の船を奪ったんで追われてるんです。 |
ルック | で、その帝国軍を押しやるために動けない仲間を使って足止めしろって命令されて……。 |
マーク | ちょっと待て ! ? そんなことしたらあいつらは確実に……。 |
ルック | マークさん ! ! こんなこと頼めた義理じゃないのは百も承知です ! ! でも、このままじゃあいつら全員、死んじまう……っ ! ! |
ルック | おねがいです、マークさん。俺、何とかあがいて時間を稼いでみますからあいつらを助けて下さい ! |
マーク | ……くっ。 |
カノンノ・E | マーク ! どうして黙ってるの ! ?このままじゃ本当にルックさんたちが ! ! |
マーク | わかってる ! だが、ビフレストの具現化を阻止するのに、救世軍の兵力も割いてるんだ。 |
マーク | 俺が兵力かき集めて行くにしてもアジトからファンダリア領じゃ距離がありすぎて、存在が消えちまう……。 |
フィリップ | 僕も一緒に行けばその点は解消されるね。ルック。僕らが行くよ。だから、それまで何とか耐えてくれ……。 |
マーク | フィル ! ? お前……。 |
フィリップ | マーク……ケリュケイオンのみんなに連絡だ。僕たちを迎えに来たあと、すぐにファンダリア領へ向かう旨を伝えてくれ。 |
マーク | 何言ってんだ ! ?こんな状態のお前を連れていくことなんて……。 |
フィリップ | 頼む、行かせてくれ……。イクスなら……例えどんなときでも……大切な仲間のために戦うはずだ。 |
マーク | こんなときでもイクスかよ。久々にあいつにムカついてきたぜ。 |
マーク | ……くそっ、どうなっても知らねえからな ! !おい、ルック ! !俺たちが行くまで、絶対死ぬんじゃねえぞ。 |
ルック | はっ、はい ! ! |
キャラクター | 6話【13-7 ファンダリア領 平原1】 |
リオン | 魔鏡の仕掛けがあるというのはこの辺りで間違いないんだな。 |
ルーティ | そのはずよ。だから、ここからは一層気を引き締めていかないとね。 |
リオン | それは僕に言ってるのか ? |
ルーティ | 誰もあんたなんかの心配なんてしてないわよ。魔鏡につられて、魔物が集まるって話だったのを思い出しただけ。 |
リオン | なら、僕の足手まといにならないように。気を付けるんだな。 |
ルーティ | わかってるわよ、いちいちうるさいわね !大体、あんたはいっつもそうやって偉そうに―― |
リオン | ……ふっ、やっと調子が出てきたようだな。 |
ルーティ | ……はあ ? |
ソーディアン・アトワイト | ルーティ。リオンさんはあなたのことを心配してくれて言ってくれてるんじゃないかしら ? |
リオン | おいっ ! 勝手なことを言うのは止めろ ! |
ソーディアン・シャルティエ | すみません、坊ちゃんは誰かを励ましたりするのが絶望的に苦手ですから。 |
リオン | シャル ! お前まで…… ! ? |
リオン | ――待て、あれは何だ ? |
ルーティ | あんたねぇ、話を逸らしたいからってそんな古典的な方法で誤魔化さなくても……。 |
リオン | 違う ! よく見ろ ! |
帝国軍兵士 | ウオオオオオオオッ ! ! |
バルバトス派救世軍兵士 | ――まだだぁ ! ! 俺たちはまだ戦えるんだッ ! ! |
ルーティ | ちょっと……何なの、あの兵士の数…… ! ! |
リオン | 戦っているのは帝国軍と救世軍の兵士か。 |
ソーディアン・アトワイト | ……まるで戦争だわ。 |
ソーディアン・シャルティエ | どうしますか、坊ちゃん。魔鏡がある場所はこの先ですよ ? |
リオン | ……巻き込まれると面倒だ。時間は掛かるが迂回するぞ。 |
バルバトス派救世軍兵士 | バルバトスさん ! このままではすぐに帝国軍の連中に追いつかれます ! ! |
バルバトス | 帝国の虫ケラ共め…… !この俺の邪魔をしたことを後悔させてやる ! !来い、アトワイト ! ! |
アトワイト | ……ッッ ! ! |
ルーティ | アトワイト ! ! |
アトワイト | ルーティさん ! ? どうしてここに……。 |
バルバトス | ――何だ ?貴様ら、この女のことを知っているのか ? |
バルバトス | ……ククク、そうか。アトワイトを知っているということは、さては貴様ら、ディムロスが率いる対帝国軍部隊の兵か ! ! |
アトワイト | まずいわ…… ! 二人とも、すぐに逃げるのよ ! |
バルバトス | いけぇぇぇ、救世軍どもよ ! !あいつらを捕らえてディムロスの居場所を吐かせろおぉぉ ! ! |
バルバトス派救世軍兵士 | ――うおおおおおっ ! ! |
リオン | マズい ! 退け ! ルーティ ! ! |
ルーティ | ……くっ、こいつら、なんて気迫なのっ ! ? |
ソーディアン・シャルティエ | ど、どうしましょう ! 坊ちゃん ! ? |
リオン | ……くそっ、兵の数が多すぎる。このままでは僕たちが……。 |
ルーティ | ……仕方ないわね。 |
ルーティ | リオン ! あんただけでも逃げなさいッ !こいつらはあたしが足止めするわ !その代わり、あんたは絶対に魔鏡を壊してきなさいよ ! |
リオン | 馬鹿を言うな !それじゃあお前が――。 |
ルーティ | あたしがこんなところでくたばる訳ないでしょ !その代わり、あんたにはでっかい貸しを作るんだから覚悟しときなさいよ ! |
ソーディアン・シャルティエ | ……坊ちゃん。 |
リオン | ……シャル、僕たちは魔鏡がある目的地まで向かう。一気に切り抜けるぞ ! |
ソーディアン・シャルティエ | りょ、了解です ! ! |
ルーティ | ……ほんと、世話が焼けるんだから。それじゃあ、アトワイト……って今二人この場にいるからややこしいわね。 |
ソーディアン・アトワイト | そうね。でも、あなたをマスターに選んだアトワイトは私一人だけよ、ルーティ。 |
ルーティ | あー、そういう話は、この場を切り抜けてから聞きたかったわ。でも、ちょっとだけやる気は出たかも。 |
ルーティ | さあ、来なさい !あんたたちの相手はこのあたしよ ! |
フィリア | ……遅いですね、ルーティさんたち。 |
スタン | 駄目だ。さっきから魔鏡通信で連絡してるけど二人とも出てくれない……。 |
ウッドロウ | 何か問題が発生したのかもしれない。私たちも動く準備をしておいたほうがいいのかもしれないね。 |
シャルティエ | で、でも。あのリオン君たちに限って……。 |
対帝国軍部隊伝令 | ディムロスさん ! 先ほど、伝令部隊から緊急の報告が上がってきました ! |
ディムロス | 何があった ? |
対帝国軍部隊伝令 | それが、近くで大規模な戦闘が始まったと……。これが詳しい場所が記載された報告書です。 |
フィリア | これは…… ! ? |
スタン | ルーティたちが向かった場所じゃないか ! ? |
ウッドロウ | となると、二人がこの戦闘に巻き込まれている可能性もある。どうする、スタン君 ? |
スタン | 決まってます !ルーティとリオンを助けに行かなきゃ ! |
ディムロス | スタン、私たちも同行しよう。何やら嫌な予感がする……。 |
キャラクター | 7話【13-10 ファンダリア領 街道3】 |
ロイド | イクス ! 設置されてた魔鏡は壊したぜ ! |
イクス | ありがとう、ロイド。テセアラ領の魔鏡はこれで全部破壊完了だ。 |
ロイド | 了解。それじゃあ、あとはよろしく頼むぜ。 |
ミリーナ | これで残りの魔鏡の仕掛けはファンダリア領だけね。 |
カーリャ | はわわ……待ってるだけっていうのは落ち着かないですね。 |
コーキス | マスター……。フィル様が言ってた時間もそろそろじゃないか ?このままじゃ……。 |
イクス | ……一度、アジトにいるユリウスさんに連絡してみる。何か報告が入っているかもしれない。 |
ユリウス | イクスか。すまない、色々あってこちらの連絡が滞ってしまっていた。 |
イクス | 色々って、もしかして何か問題が起こったんですか ? |
ユリウス | いや、少し話が入り組んでいてな。この作戦が終わってから報告しようと思ったのだがそちらも何かあったのか ? |
ミリーナ | それが、魔鏡の破壊は順調に進んでいるんですがファンダリア領のキラル分子リンクだけまだ切れていないんです。 |
ユリウス | ファンダリア領だと ? まさか……。 |
イクス | ユリウスさん ? |
ユリウス | イクス、こちらにファンダリア領で救世軍を巻き込んだ大規模な戦闘が発生したという報告があったんだ。もしかしたら、それが影響しているのかもしれない。 |
コーキス | 救世軍が ! ? ユリウス様、そっちにフィル様とマークがいるだろ ? 二人は何て言ってんだ ? |
ユリウス | ……いや、二人は事態の収拾のため現場に向かった。そのあとの報告は、我々のところにも届いていない。 |
ユリウス | ともかく、何か動きがあればすぐに報告する。不安だろうが、イクスたちはそのまま現場で待機しておいてくれ。 |
コーキス | どうするんだよ。マスター !もし、ファンダリア領の魔鏡が壊せなかったらここにいる俺たちも具現化に巻き込まれちまうんだろ ! ? |
カーリャ | あわわ !これって大ピンチってやつじゃないですか ! ? |
ミリーナ | いざとなったらキラル分子リンクを解除しないまま具現化停止処理を行う方法もあるけど……。 |
カーリャ | 駄目ですよ、ミリーナさま !フィリップさまがその方法は危険だって仰ってたじゃないですか ! ? |
ミリーナ | そうだけど……。イクスはどう思う ? |
イクス | …………。 |
ミリーナ | イクス ? |
イクス | えっ ? あ、ああ……。ごめん、もう一回言ってくれないか ? |
カーリャ | もう、しっかりしてくださいよイクスさま !いつもならここでイクスさまの心配性が出て色々言ってくれるところじゃないですか ! ? |
イクス | さ、最近はそうでもないだろ !でも、そうだよな……。この状況でどう行動するのが最適か考えないと……。 |
ミリーナ | ……イクス、ちょっと二人だけで話をしない ? |
イクス | ミリーナ…… ? |
ミリーナ | イクス、単刀直入に聞くわ。フィルと何があったのか教えて。 |
イクス | ! ? ど、どうしたんだよ急に……。 |
ミリーナ | 急なんかじゃないわ。フィルと何かあったんでしょう ? |
ミリーナ | 私、イクスから話してくれるのを待っていたの。でも、ここに来てからのイクス……なんだかいつもとは違っていたから……。 |
イクス | 俺は……いつも通りだよ。 |
ミリーナ | ううん。普段のイクスならフィルが危険を承知で転送ゲートを使おうとしたときに止めたはずよ。 |
ミリーナ | だから、フィルを止めなかったイクスを見てきちんと話を聞くべきだと思ったの。 |
ミリーナ | お願い、イクス。私にもちゃんと話して。一体、フィルと何があったの ? |
イクス | ……ミリーナ。ミリーナは、自分の感情を疑ったことはないか ? |
ミリーナ | ……自分の、感情を ? |
イクス | ああ。答えてくれ、ミリーナ。 |
ミリーナ | ――あるわ。 |
イクス | ! ? |
ミリーナ | 私にはゲフィオンの記憶が受け継がれているから。『最初の私』と『今の私』の記憶と感情が同居しているんだもの。 |
ミリーナ | 影響だって……受けているでしょうね。 |
イクス | あ……。なら……ミリーナはどうやって自分の気持ちが自分だけのものだって……。 |
ミリーナ | ……感情って何なのかしらね。 |
イクス | え ? |
ミリーナ | 全然興味のなかったもの――そうね、例えばハーブがあまり好きじゃなかったとして、でも好きな人がハーブが好きだから、一生懸命好きになろうとする。 |
ミリーナ | そして気付いたら嫌いじゃなくなってる……なんてこともあるかも知れないわよね。 |
イクス | そういうことも……あるかもな。 |
ミリーナ | それは私の感情なのかしら?好きな人に影響された感情は私だけの感情? |
イクス | それは……自分の感情だよ。だって自分でハーブを好きになろうとして選んだんだから。 |
ミリーナ | ええ。誰かに影響を受けたとしても、選ぶのは私。 |
ミリーナ | ゲフィオンの記憶や感情に影響を受けても私は今目の前にいるイクスを見てイクスを好きになることを選んだの。 |
イクス | ! ! |
イクス | け、けど……それが、そうなるようにあらかじめインプットされていたものだとしたら……。或いは暗示をかけられているとしたら……。 |
ミリーナ | ゲフィオンが、私を造る時にそうなるように仕向けていたらってことよね。ありそうな話だわ。だって、ゲフィオンはイクスを守りたかったんだから。 |
イクス | ミリーナ……。気付いてたのか? |
ミリーナ | 気付いていた ? どういうこと ?私は……単に私が二人目を造るならそうすると思ったの。酷い女だもの、私。 |
イクス | (ゲフィオンから受け継いだ記憶に具現化された時のことはないのか……) |
ミリーナ | でも……もしイクスが私を傷つけたり、幻滅させることがあったら、きっとインプットされた気持ちだって消えていってしまうと思う。 |
ミリーナ | 暗示だってそう。どんなに強固なものでも打ち破れるものだと思うわ。人の心は脆くて崩れやすいから。 |
ミリーナ | 私たちが具現化されてもう二年以上経ってるのよ ?もう具現化前のイクスより目の前のイクスの方がずっと鮮やかだわ。 |
ミリーナ | イクスは違うの? 記憶の中のミリーナと『私』とどっちの方が鮮明? |
イクス | それは目の前のミリーナだよ。記憶は……風化していくから。 |
ミリーナ | 感情もよ。時間はかかるかも知れないけれど。 |
イクス | 感情も……風化する……。 |
ミリーナ | 私は、ずっと『今』のイクスの傍にいた。みんなと出会って、ゲフィオンが抱えてきた嘘を真実にしようと戦ってくれたイクスを見てきた。 |
ミリーナ | 私は、色んなことに怯えて、悩んで、それでも最終的には前を向いて頑張ってるイクスが好き。今のあなたが好き。 |
ミリーナ | それはゲフィオンの感情じゃない。私が自分で生みだした感情。 |
イクス | ミリーナ……。 |
ミリーナ | 私は、イクスのことが大好きよ。 |
キャラクター | 8話【13-11 アジト】 |
イオン | ……うっ……。ここ、は…… ? |
イオン | そうだ、彼は…… ! |
リヒター | …………。 |
イオン | よかった……。 |
ジェイド | お目覚めのようですね、イオン様。 |
イオン | ジェイド ! それにハロルドも !では、ここは皆さんのアジトなんですね ? |
ハロルド | まあね。ってことで、早速だけどちょ~っとあんたの身体を見させてもらうわよ。 |
マルタ | ええっ ! ? 何やってるのハロルド ! ?いきなり男の子の服を捲し上げるなんて ! ? |
ミトス | ……胸に何か埋め込まれている。あれは、鏡……魔鏡の破片 ? |
ハロルド | おっ、あったあった。ってことはあんたは正真正銘レプリカイオンの方ってことね。 |
マルタ | えっと、どういうこと ? |
ハロルド | そっか。まだあんたたちには言ってなかったわね。まぁ、ちゃちゃっと説明すると、この鏡の破片がこの子がレプリカイオンである証拠なの。 |
イオン | 僕たちの計画を進めるには、僕の身体が虚弱すぎました。いざというとき、ハロルドの足手まといにならないよう僕は自分で自分の身を守れなければなりませんでした。 |
ハロルド | そう。元々身体の弱いイオンの体力を補うためには親和性の高い精霊ローレライとキメラ結合させてローレライのアニマを共有させる必要があったって訳。 |
ハロルド | そこで、レプリカイオンには鏡の破片を埋め込んだのよ。どう ? これで少しはわかってきたでしょ ? |
ジェイド | なるほど……。イオン様にローレライの第七音素――ここではアニマとキラル分子ですが、とにかくそれを供給する形で、体力を底上げしているわけですか。 |
マルタ | えっと……私は全然わからなかったんだけど……。 |
ミトス | 精霊輪具を使った精霊装の応用だよ。ボクたちの世界のエクスフィア、他には天族と人間が融合する神依とかも参考にしたんだろうね。 |
ミトス | それらを複合させ、魔鏡片を使ってイオンと精霊ローレライを擬似的に結合させた。 |
ミトス | 要するに、イオンは常時精霊ローレライとごく微弱な精霊装状態にあって、ローレライのマナ――生命エネルギーを借り受けているんだ。 |
イオン | はい……。そこまでしてもらっても少し戦うとこの通りですが……。 |
ジェイド | ハロルド、念のためにお聞きしますが精霊装状態によるイオン様への悪影響は ? |
ハロルド | ないわね。精霊輪具の使用だと負担も大きいけどこの魔鏡片はエネルギーの吸収を弱めているわ。 |
ハロルド | 何よりイオンはレプリカだからローレライとは構成が驚く程似ているの。他の人間じゃ拒絶反応で倒れるでしょうね。 |
ジェイド | ………………。 |
マルタ | 要するに、イオンは体が弱くて戦える体じゃないのにハロルドが戦えるようにしたってことだよね ? |
マルタ | レプリカってのがよく分からないけど……でも、なんだか凄いね。 |
ハロルド | 当たり前でしょ。なんたって私、天才だから。 |
ジェイド | イオン様……相変わらずあなたは無茶をしますね。こんなことをハロルドが勝手にやるとは思えない。あなたが頼んだのですね? |
イオン | ……ええ。僕たちには味方がいなかったんです。僕も戦わざるを得なかった。 |
イオン | どんな手段でもかまわないから、足手まといにならない最低限の力が欲しいとハロルドにお願いしました。元の世界で、僕は守られるばかりで無力でしたから。 |
イオン | ……今も無力なのは変わらないかも知れません。僕はリーガルをリビングドール状態から救うことができませんでした。申し訳ありません。 |
ハロルド | 仕方ないわよ。むしろ、リヒターだけでもリビングドール状態から解放できたんだから上出来よ。 |
ハロルド | それにあんたは無力なんかじゃないわよ。ちゃんと約束を果たそうとしてくれたんだもの。ありがとう、イオン。 |
ジェイド | ……色々と言いたいことはありますが今はこれだけにしておきます。元の世界でもあなたは無力ではなかった。 |
ジェイド | 無力などと言ったら、ルークもアニスも悲しみますよ。 |
イオン | ……ありがとう、ジェイド。 |
ジェイド | さて、イオン様。今、あなたが把握している各大陸の領主の状況を教えていただけませんか ? |
イオン | はい、そのことなのですが—— |
イオン | ! ?これ、は……。 |
ジェイド | イオン様 ? どうされたのですか ? |
イオン | ローレライの、声です……。 |
ジェイド | ……やはりそうか。イオン様はローレライを召喚できると言っていましたね。それは魔鏡片を埋め込まれる前からですか ? |
ハロルド | そうよ。被験者にはできなかったけどイオンとこの世界で造られた新しいレプリカイオン――リベラだっけ ? その二人はローレライを呼べた。 |
ジェイド | だとすれば、今のイオン様は常にローレライを召喚しているのと同じだ。 |
イオン | そうです。さすがジェイドですね。魔鏡片を埋め込まれてから、僕は折に触れてローレライの声を受け取っています。 |
ジェイド | それは預言(スコア)ですか? |
イオン | いえ、この世界に預言(スコア)は存在しないようです。 |
イオン | その代わりローレライは時の流れの音を聞くことができるそうなのです。 |
ハロルド | そのせいで、イオンも自分の意志とは関係なく過去や未来の音を聞いてしまうそうよ。 |
ハロルド | これから起きるかも知れないことやかつて起きてしまったことなんかをね。 |
ハロルド | でも、イオンだけズルいわよね。私だって精霊と話してみたいのに ! |
マルタ | ハロルドさんって、やっぱ変……。 |
イオン | …… ! ? そんな……。 |
ジェイド | イオン様、ローレライは何と ? |
イオン | ジェイド、イクスたちに一刻も早く今いる島から離れるように伝えてください。 |
イオン | ローレライが言うには、このままでは【バロールの眼】が開いてしまうと……。 |
ミトス | 【バロールの眼】 ?それは、一体何のこと ? |
イオン | 僕にもそれがどういうものなのかまではわかりませんが、危険なものであることは間違いないとローレライは言っています。 |
キャラクター | 9話【13-12 ファンダリア領 平原2】 |
シャルティエ | ……酷い状況ですね、これは。あちこちに死体が……。 |
ウッドロウ | 大規模な抗争だと聞いてはいたがまさか、ここまでのものだったとは。それに、この戦いは……。 |
フィリア | ええ……帝国軍に立ち向かっている救世軍の方々は殆どが負傷兵です。 |
ディムロス | 自軍の負傷兵すら戦わせようとするなどこの軍の指揮官は何を考えているんだ ! |
バルバトス派救世軍兵士 | ……ううっ ! |
フィリア | 大丈夫ですか ! ? しっかりしてください ! !今手当てを ! |
バルバトス派救世軍兵士 | ——どけっ ! ! |
フィリア | きゃぁ ! ! |
スタン | フィリア ! ! お前、何するんだ ! ?フィリアに謝れ ! ! |
バルバトス派救世軍兵士 | 俺たちは——俺たちは戦えるっ ! !たとえ手足が失われようともっ ! ! |
スタン | おいっ ! 待て ! ! |
ソーディアン・ディムロス | 止めろ、スタン !あの者には、すでに我らの声は届いていない。 |
フィリア | あの人の眼……何かにとり憑かれているようでした……。 |
スタン | ……こんな戦い、絶対に間違ってる ! !早く止めないと ! ! |
ディムロス | 方法なら一つだけある。この部隊を指揮する者を討ち倒すのだ ! ! |
シャルティエ | で、でも僕たちは魔鏡を壊しに行かないといけませんしルーティさんやリオンくんも捜さないといけないんですよ ! ? |
シャルティエ | せめて、両軍を相手にできる兵がいないと……。 |
ローエン | では、私たちが助太刀致しましょう。 |
スタン | ローエンさんにヴィクトルさん ! ?二人がどうしてここに ? |
ローエン | フィリップさんからの指示です。一刻も早く、この戦いを止めるために我々が派遣されました。 |
ディムロス | しかし、何故このような場所で救世軍と帝国軍が争っているのだ ? |
ローエン | 帝国軍の目的はバルバトスさんです。どうやら帝国軍籍の艦を奪ってこの地にやってきたという情報がありました。 |
ディムロス | バルバトスだと ! ?奴もこの世界に来ていたのか ! ? |
シャルティエ | どおりで戦い方が無茶苦茶な訳だ。無理やりこんなことをやらされている兵たちもたまったもんじゃないですよ。 |
ヴィクトル | いや、厄介なことに救世軍の兵たちはバルバトスに心酔してしまっている。 |
ヴィクトル | 彼らは自ら志願して肉の壁となり帝国軍の侵攻を妨害しているのだ。 |
ローエン | このままでは犠牲者が増える一方です。しかし、すぐにでも魔鏡を破壊しなくてはイクスさんたちが危険なのも事実。 |
ローエン | そこで、皆さんには今から二手に分かれて行動して頂きます。 |
ローエン | 一方は救世軍の鎮静化。もう一方は魔鏡の破壊へと向かいましょう。 |
ウッドロウ | 戦力が分散されるのは痛いが時間がない以上それが得策か。 |
ディムロス | では、私とスタンは当初の予定通り魔鏡の破壊に向かう。シャルティエ、お前は対帝国軍部隊と共に、この戦いを止めるのだ。 |
シャルティエ | はい、わかりました。 |
ディムロス | スタン、お前も異論はないな。 |
スタン | ああ、魔鏡は俺とディムロスで何とかします。 |
フィリア | スタンさん……気を付けてくださいね。 |
スタン | ありがとう、フィリア。それじゃあ、行ってくる ! |
ディムロス | スタン、魔鏡がある場所まではもうすぐだ。ここからは魔物の気配にも気を配っておこう。 |
スタン | ああ。それにルーティたちも近くにいるかもしれない。合流できたらいいんだけど……。 |
ソーディアン・ディムロス | スタン、気持ちはわかるが今は集中するんだ。なに、彼らならば機転を利かせて行動しているはずだ。 |
スタン | ……そうだよな。リオンは俺なんかよりよっぽど頭がいいし、ルーティだって……。 |
バルバトス | みつけたぞぉぉぉぉぉぉぉ ! ! ! !ディィィィィィムロォォォォスッッッッ ! ! ! ! |
ディムロス | なにっ ! ? 後ろか ! ? |
スタン | ディムロス ! ! 危ない ! ? |
バルバトス | ぶるるるるああああっっっっ ! ! |
スタン | ——くっ、うわああああっ ! ! |
ディムロス | スタン ! ! |
バルバトス | 俺の邪魔をしおって……。まあいい。これで貴様とゆっくり殺し合いができるというものだ。そうだろう、ディムロス ! |
ディムロス | バルバトス ! お前の目的はなんだ ?なぜ、兵たちにあのような真似をさせる ! ? |
バルバトス | ふっはっはっ ! !決まっているだろ、貴様をこの手で殺すためだ ! ! |
バルバトス | 俺がどれほど、この日を待ち望んでいたか……。それを貴様の身体を切り刻んで味合わせてやるっ ! ! |
ディムロス | ……ならば、望み通り相手をしてやろう。但し、地に伏せるのは貴様のほうだ ! ! |
バルバトス | ほほぅ、では、これを見ても同じことが吐けるか ? |
アトワイト | ディムロス ! ! |
ディムロス | アトワイト ! ?……バルバトス、貴様はまた同じ過ちを繰り返そうというのか ! ! |
バルバトス | ……過ちだと ?俺はずっとこの日を待ち望んでいたのだ ! ! |
バルバトス | 英雄と呼ばれた貴様をこの手で殺す瞬間を味わう日をなぁぁ ! ! |
キャラクター | 10話【13-13 ファンダリア領 森】 |
バルバトス | ふはははっ……たまらんな !貴様の女の命は今この俺が握っている。 |
バルバトス | どうだ ? ディムロス中将。今の心中を教えてはくれまいか。憎いか ? 俺を殺したいか ? |
ディムロス | ……貴様っ。 |
アトワイト | ディムロス。挑発に乗ってはいけないわ。 |
バルバトス | つまらん。なら手始めに……おいっ。あの女を連れてこい。 |
バルバトス派救世軍兵士 | ハッ ! こちらに ! |
ルーティ | ……くっ。 |
二人 | ルーティ ! ? |
スタン | ルーティ……だと。 |
ディムロス | スタン ! 目を覚ましたのか ! ? |
スタン | あぁ……なんとかっ。それより、ルーティを助けなくちゃ。 |
バルバトス | ほう。死にぞこないの分際で。まだ俺とやり合おうというのか。 |
バルバトス | 面白い。やはりこの女から殺すとしよう。腕か脚か……どこから切り落とすべきか。 |
ルーティ | やれるものならやってみなさ―― |
ルーティ | ぐっ ! |
スタン | ルーティ ! ! やめろっ、バルバトス ! ! |
バルバトス | その目だ。貴様のような目をした輩がいつも俺の邪魔をするために群がってくるのだ……。 |
バルバトス | アトワイト、スタン・エルロン。それにディムロス。貴様ら全員、同じ目をしやがる ! ! |
バルバトス | その目を潰し、舌を切り裂きじっくり苦しみ悶えながら殺してやるっ ! !まずは、この女からだっ ! |
リオン | そうはさせるかっ ! |
バルバトス | なにっ ! ? |
バルバトス | ——うぐっ。 |
リオン | 僕の手を煩わすな。 |
アトワイト | ありがとう。おかげで助かったわ。 |
ルーティ | まったく。遅いわよ。 |
リオン | ふん。お前まで助けたつもりはない。 |
シャルティエ | 二人とも無事救出完了ですね。 |
バルバトス | ちっ ! ……シャルティエか !小虫ごときが俺の視界に入るんじゃねえ ! |
シャルティエ | 正直、貴方とは関わりたくありませんでしたがそうも言ってられない状況だったもので。 |
ディムロス | バルバトス。今すぐ部下と共に戦場から撤退しろ。 |
バルバトス | 黙れ ! 軟弱が ! !すぐに引き裂いてやる ! ! |
ディムロス | 今貴様らが勝手な行動を取ればイクス率いる先行部隊の作戦遂行に多大なる支障が発生する。 |
ディムロス | 我らに争ってる時間はない。今にも皇女メルクリアは亡国ビフレストを復活させようとしてい── |
バルバトス | その名を口にするな ! !あの女も貴様らも皆殺しにしてやる ! ! |
バルバトス | メルクリアは俺をリビングドールに……操り人形にしやがった !俺の尊厳を踏みにじりやがった ! |
バルバトス | あのガキめ ! 今殺す ! すぐ殺す ! !抹殺してやる ! 貴様らはそれを見ていろ ! !殺した後に全員すり潰してやる ! ! |
ディムロス | 私怨か。相変わらず貴様の戦いには信念も大義もないようだな。 |
アトワイト | 部下を道具としか思わない残虐なところもね。 |
バルバトス | メルクリアを殺すまで屍の山を築いてやる !みんな使い捨ての駒どもだ ! !どうなろうと知ったことか ! ! |
ディムロス | 貴様とてかつては軍人のはず。大義と、部下を生かして帰してこその誇り。それを失った貴様はただの狂犬だ ! |
バルバトス | 俺に向かってしゃべってんじゃねえ !何が大義だ、何が部下を生かしてだ ! ?てめえはいつも偉そうにぬかしやがるっ ! |
バルバトス | まずは力で示せっ ! この腰抜け野郎がっ ! ! |
ディムロス | 何を話そうと貴様には届かぬか。ならば仕方がない。憎しみに囚われた愚か者―― |
ディムロス | 我が誇りに懸けて貴様をとめるっ ! ! |
バルバトス | 足掻き苦しめ ! 俺を楽しませろっ ! !俺の餓えを満たせ ! ! ディムロスっ ! ! |
キャラクター | 11話【13-13 ファンダリア領 森】 |
バルバトス | ——まだだ、まだ俺の飢えは満たされん ! !こいっ ! ディムロス ! ! |
ルーティ | はぁはぁ……まだ戦おうっての ?勘弁しなさいよ……。 |
リオン | こいつ……本当に人間か ? |
ディムロス | いや、奴も限界が近いはずだ。スタン ! ! |
スタン | ああ ! このまま一気に決めるぞ ! |
バルバトス | 無駄だ ! その程度でこの俺を止めようなどと—— ! ! |
? ? ? | 天光満つる処に我は在り黄泉の門開く処に汝在り出でよ神の雷 ! |
リオン | この声は—— ! ? |
メルクリア | これで終わりじゃ !インディグネイション ! ! |
バルバトス | ぐあああああああああっっっっ ! ! |
メルクリア | わらわの術を受けて、まだ意識があるとは噂通りの化け物ぶりじゃな、バルバトスよ。 |
バルバトス | な……、き……さまは…… ! ? |
メルクリア | わらわがメルクリアじゃ。ローゲ程の品格もない男に名乗るのも口惜しいがの。 |
メルクリア | じゃが、貴様が場をかき回してくれたお陰でビフレストを復活させるという我が悲願が成就する。化け物も人の役に立つとは驚きじゃ。 |
バルバトス | 黙れ…… !きさ、まは……ここで俺が……ころ、して……。 |
メルクリア | ……わらわを猪のように追い回すだけしか能のない単細胞では何もできぬ。頭の足りぬ力任せの単細胞など恐るるに足らぬわ。 |
バルバトス | ……ころ……し……。 |
スタン | バルバトスが、止まった……。 |
メルクリア | ——わらわの用は済んだ。その男の処理は貴様らに任せる。好きにするがよい。 |
リオン | 待て。どういうつもりだ。キラル分子を送り込む最後の魔鏡は、僕が破壊した。ビフレストの具現化も失敗したはずだ。 |
メルクリア | そんなことはわかっておる。わらわはただあの猪のような大男に、狙うは貴様らではなくわらわであると教え直してやったまでのことじゃ。 |
リオン | その行動に何の意味がある ?下手をすれば、本当にバルバトスに殺されていたかもしれないんだぞ ? |
メルクリア | ……この程度では借りを返すにもあたらぬが命の恩人を見捨てるような外道ではない。 |
アトワイト | メルクリア、あなた……。 |
帝国兵 | メルクリア様 ! ここは危険です !すぐに我々と共に避難を ! |
メルクリア | わかっておる。 |
メルクリア | ――黒衣の鏡士の仲間共よ !わらわはまだ諦めてなどおらぬぞ。次は必ず我がビフレストを復活させてみせる ! |
ルーティ | 何だったわけ ?まさか、あたしたちを助けてくれたの ? |
リオン | 理由などどうでもいい。このままメルクリアを野放しにするのは危険だ。僕たちも追いかけるぞ。 |
カーリャ・N | お待ち下さい。メルクリアの追跡は引き続き私に任せて頂けませんか ? |
アトワイト | ネヴァンさん。メルクリアを尾行していたのね。 |
カーリャ・N | はい。彼女が皆様に危害を加えるようなことがあれば出て来ざるを得ませんでしたが……。 |
ディムロス | 結果的に、我々は彼女に助けられたという訳か。 |
アトワイト | リオンさん。ネヴァンさんの言う通りメルクリアの追跡は彼女に任せましょう。私たちもさっきの戦いで、かなり疲弊しているわ。 |
リオン | ……ネヴァン、何かあったらすぐに連絡しろ。僕たちも動けるように待機しておく。 |
カーリャ・N | ありがとうございます。では、皆様もお気をつけて。 |
イクス | ——よし ! 各大陸とのリンクは全部切れたぞ ! |
ミリーナ | イクス、すぐに私たちも始めましょう ! |
イクス | ああ、フィルが書き換えた魔鏡陣を作動してビフレストの具現化を止めるっ ! |
コーキス | マスター、頼んだぜ ! |
イクス | ————いくぞ ! ! |
カーリャ | な、なんですか ! ?急に目の前が真っ白になりましたよっ ! ! |
ミリーナ | これは……光がオーデンセ中を包み込んでいるんだわ ! |
コーキス | マスター ! ! ミリーナ様 ! !くそっ、前が……見えない…… ! ! |
ミリーナ | イクス ! ? |
コーキス | マスター ! 大丈夫か ! ?身体とかどこか痛かったりしないか ! ? |
イクス | ……大丈夫、俺は何ともないよ。それに、ビフレストの具現化も止まったみたいだ。 |
カーリャ | ということは、無事成功したんですねっ ! |
コーキス | やったな、マスター ! |
イクス | ……ただ、魔鏡陣を作動させたことでキラル分子の供給がなくなったから—— |
カーリャ | はわわわわわっ ! !凄い揺れです~~ ! ! |
コーキス | どうなってるんだ、マスター ! |
イクス | 島が消滅しようとしてるんだ !すぐに転送ゲートを使ってアジトに戻るぞ ! |
キャラクター | 12話【13-14 ファンダリア領 街道4】 |
救世軍兵士 | マークさん、帝国軍の兵が撤退しているとの報告が上がってきました。 |
マーク | ローエンの作戦通りだな。お前たちもよくやった。すぐに引き上げる準備をしておけ。 |
救世軍兵士 | 了解です ! |
マーク | はぁ。今度こそマジでヤバイかと思ったが何とかなるもんだな。 |
フィリップ | お疲れ様、マーク。見事だったよ。 |
マーク | いや、指示を出していたのは殆どローエンだよ。あの爺さん、普段は飄々としてる癖してなかなかの策士だぜ。 |
フィリップ | ヴィクトルが言うには、元の世界では「指揮者(コンダクター)イルベルト」として名を馳せていたそうだよ。 |
マーク | 人は見かけに寄らねえってことか。それで、イクスたちの方はどうなったんだ ? |
フィリップ | 無事、ビフレストの具現化は阻止されて具現化したオーデンセも消失した。 |
フィリップ | キラル分子のリンクを切ったことでオーゼンセは存在を保てなくなったんだと思う。 |
マーク | そうか……。 |
マーク | それにしてもあの島のおかげで残酷な真実ってやつを知っちまったな。 |
フィリップ | ……あの島は、僕が目を背けていた現実だったんだよ。本当はもっと早く向き合わなきゃいけなかったんだ。 |
フィリップ | イクスを刺したあの日から僕はオーデンセへの里帰りもやめてしまったしイクスからの手紙も読もうとはしなかった。 |
フィリップ | そうして逃げ続けて、果ての果てまで来てしまった。僕にはもう逃げるところがない。全て壊してしまったからね。 |
フィリップ | だったら、いい加減向き合うしかない。現実と。 |
マーク | ……命の期限と競争だな。 |
フィリップ | ……ああ、それまでに、必ず決着は付けるよ。今度こそ世界の為、イクスやミリーナの為それから……僕自身の為にも。 |
マーク | 自分の為にと言えるようになったならちったあマシだな。 |
フィリップ | マーク。僕はね、いつだって本当は自分自身のためだけにしか動いてなかったんだよ。 |
マーク | 誰だってそんなもんだろ。ただ、そうだと認められずに言い訳ばかりするやつは駄目だってだけさ。 |
フィリップ | そうだね……。 |
マーク | んじゃ、まずは目先の問題から片付けるとしようぜ。バルバトスの奴はどうする ?放っておいたらまた暴れだすぜ、あいつ。 |
フィリップ | そうだね、厄介者を引き取るのは厄介者が一番だろう。 |
マーク | はあ……。厄介者、ねえ。まあ、否定はしねぇが……。 |
フィリップ | バルバトスに付いていったみんなのことも本人たちの希望を聞かずに地上軍へ追いやった僕の責任だ。 |
フィリップ | 傷つけないように守るつもりがもっとひどい傷をつけることになってしまった。 |
フィリップ | 僕は昔からそうなんだ。守るつもりで傷つけて、守るつもりで壊してしまう。もうこれ以上、彼らを傷つけるわけにはいかない。 |
フィリップ | バルバトスがこちらにつけば彼に付いていった救世軍も戻ってきてくれるんじゃないかな ? |
マーク | ……言ってることはさぞ立派だが説得するのは俺なんだよなあ、ったく。 |
救世軍兵士 | 失礼します ! マークさん、バルバトスの下で働いていた兵たちのことですが、想像以上に負傷者が多く、現場も混乱しているようです。 |
マーク | はいはい、わかったわかった。すぐに行くから、まずは重症の奴から手当てしろと伝えておけ。そのあとのことは直接指示を出す。 |
フィリップ | マーク。きみは先に救世軍のみんなのところへ行ってくれ。僕は先にバルバトスが向かったという場所まで行っておく。 |
マーク | おいおい、だからバルバトスの説得は俺が……。 |
フィリップ | いや、事情を話さないといけないのはバルバトスだけじゃない。 |
フィリップ | 彼の処遇については鏡映点の人たちにも納得してもらうつもりさ。 |
マーク | ……わかったよ。その代わり、バルバトスと話すときは絶対一人になるなよ。 |
フィリップ | そこまで無茶をするつもりはないよ。マーク、救世軍のことは頼んだよ。出来るだけ彼らのことは優しく迎えてやってくれ。 |
マーク | ……優しくねぇ。悪いな、フィル。あいつらにはキツめのお灸を据えてやるつもりだよ。 |
キャラクター | 13話【13-15 イオン】 |
リオン | さて、僕たちも戻るぞ。ビフレストの具現化を阻止した以上もうここに用はない。 |
スタン | リオン、遅くなったけど、さっきはありがとう。リオンがいなきゃ、ルーティもアトワイトさんも助けれられなかったかもしれない。 |
リオン | ……ふん、僕はただ借りを作らせたままにしておくのが嫌だっただけさ。 |
ルーティ | ちょ、あんた ! ?まさかさっきので、あたしがあんたを逃がしたのをチャラにしようって訳じゃないわよね ? |
リオン | そのつもりだが ? |
ルーティ | 何言ってんのよ ! こっちは人質にまでなったのよ !すこ~しいいところで出てきたからってそれで済むと思ったら——。 |
リオン | ……それで、この男はどうするつもりなんだ ? |
ルーティ | こら ! 無視すんじゃないわよ ! |
アトワイト | ルーティさん……悪いけれどその話は後にしましょう……。 |
ソーディアン・アトワイト | そうね、人間の私が言う通りよルーティ。今はバルバトスの処遇を決めるほうが先よ。 |
ルーティ | うっ。わ、わかったわよ……。 |
スタン | そっか、さすがのルーティも二人のアトワイトさんの意見ならちゃんと言うこと聞くんだな。 |
ルーティ | スタン、あんた今なんか言った ? |
スタン | い、いや ! 何にも言ってないって !あはは……。 |
ソーディアン・ディムロス | スタン……お前はルーティ一人でも充分そうだな。 |
アトワイト | ディムロス、あなたの意見を聞かせて頂戴。 |
ディムロス | バルバトス……やはりあいつを自由にしておくのは危険だ。今ここで捕らえておかねばなるまい。 |
フィリップ | ——待ってくれ。彼のことは僕たちに任せて欲しい。 |
ディムロス | フィリップ ! ? |
フィリップ | 君たちは先に行ってくれ。帝国側が動き始めた。 |
ディムロス | だがお前たちだけでバルバトスをとめられるのか ? |
フィリップ | 僕では無理かも知れないね。だが、君たちよりは僕らの方が奴に近い。——色々な意味で、ね。 |
フィリップ | それにマークがいる。マークを信じて欲しい。 |
ディムロス | ……いいだろう。では、奴の処遇はお前に委ねる。みんな、それでいいな ? |
スタン | ああ、ディムロスが決めたことなら誰も文句は言わないさ。 |
フィリップ | ありがとう。必ず、悪い方向へ事が進まないようにしてみせるよ。 |
マーク | あいつらがいないってことは上手く説得できたみたいだな。 |
フィリップ | ああ。だけど、肝心のバルバトスはまだ目を覚ましていない。 |
マーク | 丁度いい、フィル。お前は戻ってろ。あとは俺が何とかする。元々、そういう手筈だっただろ ? |
フィリップ | マーク……だけど……。 |
マーク | いいから、お前は戻ってバルバトスに付いていった連中に何か言ってやってくれ。あいつら、俺の顔を見た途端、謝るばかりで話にすらならねえんだわ。 |
フィリップ | ……わかった。それじゃあ、後は頼んだよ、マーク。 |
マーク | はいよ。このマーク様に任せときな。 |
マーク | さて、大見得切ったのはいいがどうしたもんかねえ。まぁ、暫くは様子見でもさせてもらうか。 |
バルバトス | ——ぐううっ……。メルクリアめ……。小癪な真似をしおって……。 |
バルバトス | 奴らはどこだ ?まさか、俺を置いて立ち去ったとでもいうのか……。 |
バルバトス | ——いや、命知らずの馬鹿がまだ残っているようだな。 |
バルバトス | こそこそ隠れてんじゃねぇ。出てきやがれ。 |
マーク | 久しぶりだな。 |
バルバトス | マーク・グランプ……か。 |
マーク | ディムロスじゃなくて悪かったな。けど名前を覚えてもらえてたのは光栄だ。 |
バルバトス | 貴様の差し金か。 |
マーク | そんなところだ。 |
バルバトス | ふんっ。 |
マーク | おっと。どこに行く気だ ? |
バルバトス | わかっているだろう。 |
マーク | メルクリアのところだよな。だったらやめとけ。 |
バルバトス | ……邪魔する気か ?ならば—— |
マーク | 殺すってか。いいぜ、好きにしろよ。お前なら俺を殺すくらい楽勝だろ。 |
マーク | だが、『事情』が変わったと言ったら ? |
バルバトス | なにっ。 |
マーク | バルバトス。俺たちと来いよ。 |
バルバトス | 雑魚と群れるつもりはない。それに—— |
バルバトス | 俺は貴様の手下であってもためらいなく殺すぜ ?今までも、これからも。 |
マーク | あんたが俺のどうしても奪われたくない物に手をかけるってんなら、その時は全力で阻止するさ。 |
マーク | あんた同様『どんな手』を使ってでもな。それに—— |
マーク | あいつらはお前を慕って救世軍を辞め自分の意思でお前についていった。ただそれだけのことだ。 |
バルバトス | あんなゴミくず共に意志があったとは驚きだ。 |
マーク | あんたらしい、クソみたいな言い草だな。 |
マーク | だが、あいつらがなぜディムロスじゃなくお前を選んだのかわかったぜ。 |
バルバトス | なんだと ? |
マーク | ——あんた、気づいてたんだろ ?あいつらは全員、怪我や病気でまともに戦える奴らじゃなかった。 |
マーク | 本当は戦いたくても腹の中に恨み辛みを押し込めてずっと生きてきたんだ。 |
マーク | だが、理屈も現実も全部受け止めて自分の醜い気持ちも自分のものとして逆境にも挑んでいくお前に希望を見た。 |
バルバトス | そして犬死にしていったと。欺瞞に満ちた美談には反吐がでる。あいつらは俺に利用されただけだ。 |
マーク | それでもだ。きっとお前は世界いや自分自身すら救うことはできない奴だ。けどな—— |
マーク | あんたは間違いなくあいつらを救った。 |
マーク | 手段を選ばないという手段を選ぶこと。是非はともかく、中々できることじゃない。 |
マーク | 実際、俺もそこまで割り切るのは難しいだろうな。 |
マーク | だから、死んでいったあいつらにとってはディムロスよりもあんたこそが英雄なんだ。 |
マーク | ……俺から見てもその傲慢さはある意味で英雄的かもな。 |
バルバトス | ……英雄だと ? |
マーク | ああ。 |
バルバトス | ふっ、ふははははっ ! !その言葉、よくぞ俺に吐いたわ ! ! |
マーク | さて、そろそろ返事を聞かせてくれよ。 |
バルバトス | メルクリアは俺が殺す。そのために救世軍を利用させてもらうぜ。 |
マーク | 十分だ。 |
バルバトス | メルクリア、待っていろよ。そしてディムロス……貴様も。 |
キャラクター | 14話【13-15 イオン】 |
イクス | 俺たちは無事帰ってこられたけど他の人たちは、もうアジトに戻ってきてるのかな ? |
ミリーナ | そうね、先に魔鏡通信で連絡を取り合ったほうがいいかもしれないわね。 |
イクス | あっ、待ってくれ。丁度ジェイドさんから連絡だ。 |
カーリャ | げっ、ジェイドさまからですか……。カーリャは近くにいないとお伝えください……。 |
コーキス | パイセン……ジェイド様に対する反応が他の鏡映点の人たちと違いすぎねーか ? |
ミリーナ | 大丈夫よ、カーリャ。いくらジェイドさんでも、魔鏡通信越しで酷いことなんてできっこないわ。 |
ジェイド | おや~、でしたら試してみましょうか ?面白い実験になりそうです♪ |
カーリャ | ギャー ! ! でたー ! ! |
ミリーナ | ジェイドさん !これ以上カーリャを怖がらせないでください !私、本気で怒りますよ ! |
ジェイド | これは失礼。その様子だとビフレストの具現化は無事止められたようですね。それで、今はどちらにいますか ? |
イクス | えっと、もう浮遊島に戻って来ていますけど……。 |
ジェイド | それは結構。でしたら、そのままアジトの医務室に来てください。イオン様があなたたちにお話したいことがあるそうです。 |
ミリーナ | イオンさん ! ? 帝国から戻ってきたのね。 |
イクス | わかりました、すぐに向かいます。 |
イオン | ——これが、ローレライが僕に伝えてきたことの全てです。 |
イクス | 【バロールの眼】……、一体何のことなんだ……。ミリーナは聞いたことがあるか ? |
ミリーナ | ……いいえ。私も今初めて聞いたわ。 |
イクス | そうか……けど、眼と言えばコーキスが使う【魔眼】が関係してるのかもしれない。それに、何だか嫌な予感がするんだ。 |
ジェイド | ローレライは、この【バロールの眼】が危険なものだと言ったそうです。詳しい情報を集めておいたほうがいいでしょうね。 |
コーキス | (もしかして、俺のこの【魔眼】のせいでマスターたちが危険な目に遭うんじゃ……。いや、そんなことは絶対に……) |
ジェイド | しかし、今は一旦置いておきましょう。少ない情報だけで憶測を立てるのは危険です。 |
ジェイド | イオン様には引き続きローレライとの接触を行ってもらいます。 |
ジェイド | 次に、そのイオン様のことについてお話があります。 |
ハロルド | その点については私から話すわ。あんたたちも知ってると思うけどこの世界には三人のイオンが存在してる。 |
ミリーナ | 今、目の前にいるイオンさんと私たちが保護している【リベラ】そして、【被験者】と呼ばれているイオンね。 |
ハロルド | その通り。そして、私が助けられた戦士の館には『イオンの死体』があった……。 |
ハロルド | ——これ以上は、何も言わなくてもわかるわね ? |
イクス | ……死んだのは『被験者のイオン』さんなんですね。 |
イオン | ……そういうことになりますね。 |
ジェイド | 念のためにお聞きしますが他のレプリカを製作、もしくは新たに具現化したという可能性はありませんか ? |
ハロルド | ありえないわね。帝国を出るときに被験者のデータはきれいサッパリ消去しておいたからもう一度レプリカを作るには時間が足りないわ。 |
ハロルド | もう一つ、具現化の線だけど、こっちも無理ね。異世界からの再度の具現化は、過去からの具現化以上に厳しい制約があるみたいだから。 |
ハロルド | 帝国は既にローレライを確保してる。他のレプリカイオンを具現化することに意味はない。だから新たに具現化をしたとは考えにくいわね。 |
ハロルド | 以上のことから、あれが被験者のイオンでない可能性は限りなくゼロに近いってこと。この天才科学者の名に懸けてね。 |
イオン | 僕が具現化されたのも、あくまでフォミクリーというレプリカ技術をこの異世界で完成させるための実験だったに過ぎません。 |
ミリーナ | フォミクリー……。まるで鏡士の具現化みたい……。 |
ジェイド | ………………。 |
イクス | ごめん……イオン。俺たちのせいで、こんなことに巻き込まれて……。 |
イオン | いいえ、あなたたちが謝ることではありません。ですが、これ以上帝国軍の思い通りにさせない為に協力していただけませんか ? |
イオン | ――いえ、違いますね。僕を皆さんの仲間に加えて下さい。僕も協力したいんです。 |
ジェイド | イオン様。あなたはローレライと接触できる。それで十分役に立っていますし協力してくれていますよ。 |
イオン | ジェイド。僕は元の世界の僕より少しだけ……ほんの少しだけ体力があります。より導師としての力を発揮できる。 |
イオン | それに……僕、何となく分かっているんです。前にアニスたちに会った時に気付いてしまいました。僕はみんなと具現化された時間が違う。それは―― |
ジェイド | ――イオン様。 |
イオン | 止めないで下さい、ジェイド。 |
イオン | 僕が初めてあなたと会った時もあなたは僕を諫めることはあっても頭ごなしに言うことを聞かせようとはしなかった。 |
イオン | ここでなら、僕のやりたかったことができる。そして、元の世界でやり残したこともできると思うんです。 |
イオン | 無理はしません。約束します。みんなより弱いことは分かっていますから。 |
ジェイド | ……いいえ。あなたは十分に強いですよ。初めて出会った時からあなたは唯一無二の導師でした。 |
ルーク | おいっ ! イオンがいるって本当なのか ! ? |
ティア | 導師イオン ! 良かった、ご無事だったのですね……。 |
ナタリア | 何やら大変な目に遭ったとお聞きしたのですがお元気そうで安心しましたわ。 |
ミュウ | イオン様が来てくれてボクも嬉しいですのっ ! |
ジェイド | やれやれ。皆さん、ここは医務室ですよ。お静かに願います。 |
ガイ | まあまあ、固いこと言うなよ。こっちは一仕事終えて急いで駆けつけて来たんだぜ。なあ、アニス ? |
アニス | えっ ! ? あ、えっと……。 |
イオン | ……アニス ? |
アニス | …………てへっ !いやぁ~、もう ! イオン様ってば無茶しすぎですよ !すっごく心配したんですからね ! ? |
アニス | あっ、いっけな~い !アニスちゃん大事な用事を思い出しちゃった !それじゃあイオン様、今はゆっくり休んでください~。 |
ルーク | はぁ ! ? おいっ、どこ行くんだよ、アニス ! ! |
イオン | 待ってください、アニス ! |
アニス | はうわっ ! な、何ですか ? |
イオン | ……アニス、僕の傍に来てくれませんか ? |
アニス | ど、どうしたんですか急に……。 |
イオン | お願いします。さあ、アニス、こちらへ。 |
アニス | ……もう、イオン様ってば本当にどうしちゃったんですか ? |
アニス | あっ ! わかっちゃいましたよ~。さてはさっきまで大佐に虐められてましたね ?もう、駄目ですよ大佐、イオン様を虐めちゃ——。 |
イオン | アニス……泣かないでください。 |
アニス | ……えっ ? や、やだなぁ、イオン様。私、泣いてなんかいませんよ ? |
イオン | でも、涙が……。 |
アニス | ……えっ ? あれ ? ホントだ……。なんで……私……。 |
イオン | 僕のせいで、アニスが悲しい思いをしているのですね。 |
アニス | ち、違いますっ ! !イオン様は、何も悪くありませんっ…… ! !悪いのは、私……なんですっ ! ! |
イオン | ……アニス。僕から一つ、あなたにお願いがあります。聞いてくれますか ? |
アニス | お願い…… ? |
イオン | はい、僕からの大切なお願いです。 |
イオン | アニス、僕の導師守護役はアニスだけです。 |
アニス | ! ? イオン……様 ! ! |
イオン | また、僕の傍にいてくれますか ? |
アニス | ……イオン……様…… !イオン様ぁぁぁぁ ! ! |
イオン | アニス、この世界でもよろしくお願いしますね。……僕の一番、大切な—— |
| to be continued |
キャラクター | 1話【14-1 ファンダリア領】 |
エルレイン | ――では、奇跡の力の復活は未だ難しいと ? |
ジュニア | はい……。この夏からずっとあなたの奇跡の力を取り戻すために異世界の神の力の具現化を試みてきました。 |
ジュニア | でも、完全な形で成功した実験はひとつもなかったんです。 |
ジュニア | すみません……。いい報告ができなくて。 |
エルレイン | 本来、神の力は人が扱うべきものではない。そう簡単に成し遂げられることではないと承知しているつもりですよ。 |
ジュニア | ですが、僕が実験に失敗したせいでこの世界を滅ぼしかねない危機が何度もあったんです。 |
ジュニア | 救済を掲げるあなたにとってはとても不愉快な話ではないでしょうか……。 |
エルレイン | …………。 |
ジュニア | やっぱり、僕みたいな未熟者には荷が重すぎる役目なのかもしれません。 |
ジュニア | だから、その……。 |
エルレイン | この研究から離れると ? |
ジュニア | …………。 |
エルレイン | では、一つ聞かせて欲しい。『あなた自身の目的』はもう遂げたのですか ? |
ジュニア | ! ! |
ジュニア | (まさか、ばれてる ! ? そんなはずは……) |
エルレイン | 何を驚くことがあるのです。そのために奇跡の力の研究をしていたのでしょう。 |
ジュニア | (やっぱりこの人は知っているんだ。僕が奇跡の力の研究を口実にしてナーザ将軍を復活させようとしていることを) |
エルレイン | 答えよ。鏡士。 |
ジュニア | ……目的は、まだ遂げていません。 |
エルレイン | ならば何故。 |
ジュニア | 大切な友人が捕まっているんです。僕は今、その友人を助けることを優先したい。 |
ジュニア | それに、研究自体も今は足踏み状態で目処が立たないんです。 |
エルレイン | ナーザの魂が器に宿れないようだな。 |
ジュニア | そんなことまでご存じなんですか ! ? |
エルレイン | この私が、お前たちの行いを唯々見過ごし義務的な報告ばかりを待つ身だとでも思ったか。 |
ジュニア | ……すみま……せん……。 |
エルレイン | ……話を戻しましょう。魂が納得の上であっても、死者である器に入れない。それは器の方に原因があるからです。 |
ジュニア | 器 ! ? ってことは、ナーザ将軍じゃなくてイクスの体が問題…… ? |
エルレイン | これで、あなたの抱える幾分かの悩みは解決される筈です。 |
ジュニア | ……なぜ助けてくれるんですか。僕は帝国を……あなたを裏切るかもしれないのに。 |
エルレイン | あまねく人々の救済。それこそが私の存在意義です。 |
エルレイン | 皆に等しく手を差し伸べ、余すことなく全てを救う。それが裏切者であろうと何であろうと。 |
ジュニア | あなたは本気でこの世界の全てを救おうと考えているんですね。 |
エルレイン | ええ。それが神のご意思です。この救済を拒み、逆らう事など許さない。 |
ジュニア | (この人は、なんて恐ろしくて……愛が深い人なんだろう……) |
キャラクター | 2話【14-2 アジト】 |
ユリウス | お帰り、カロル、ユーリ。情報収集ご苦労様。 |
イクス | ビフレストの具現化を阻止してから、カロル調査室はフル回転でしたからね。 |
ユーリ | まったく人使いが荒いよな、お前らは。 |
ミリーナ | フフ、ごめんなさい。しばらくはゆっくり休んで下さいね。 |
カーリャ | あれ ? そういえばロゼさまはどこですか ? 今度帰ってきた時は、お土産に新しいお菓子をくれるって言ってたのに……。 |
ユーリ | それなんだが……セキレイの羽からは色々情報をもらってるんだが、ロゼとデゼルからは全然連絡が来てねぇんだ。 |
カロル | ロゼたちにはグラスティンの周辺を探ってもらってたから、多分どこかに潜入してるんだとは思うんだけど……。 |
イクス | ……そうか。そういえば、ネヴァンからの連絡も滞ってるよな。みんな、危険な目に遭っていないといいんだけど……。 |
ユーリ | そういうときのために例のデクスって野郎がいるんだろ ? |
ユーリ | 何かあればあっちのラインから連絡が入る筈だ。 |
ユリウス | そうだな。色々なことを織り込み済で情報網を広げているんだ。無事であることを祈りつつこちらも状況を分析していこう。 |
ユリウス | この二ヶ月で帝国の支配体制はほぼ確立したらしいな。 |
カロル | うん。こっちがオーデンセだのジルディアだの色んな大陸の具現化に振り回されてる間に各領の領都に、新しい領主が赴任しちゃったからね。 |
カロル | しかも全員鏡映点リストにある名前だから、きっと―― |
ハロルド | リビングドールβ化されてるって事ね。 |
ユーリ | 全員が全員ってことでもないみてぇだけどな。ファンダリア領の新しい領主になったエルレインはリビングドール化されてないんだろ。 |
ハロルド | 帝国に協力する意志のある鏡映点はリビングドールにする必要はないしね。 |
キール | しかし不思議じゃないか ? わざわざリビングドールにしてまでどうして鏡映点を領主にする必要があるんだ ? |
キール | 言うことを聞かせたいなら、別に自分たちの配下の人間を派遣すればいいだろう。その方が簡単だ。 |
ハロルド | 目印って聞いてるけど。 |
カロル | 目印…… ? |
ハロルド | 【ルグの槍】を落とす目印だって。ニーベルングの復活には【ルグの槍】が必要だとか言ってたわね。詳しいことは『さぱらん』って感じ。 |
コーキス | ハロルド様にまで『さぱらん』が侵蝕してる……。 |
ユーリ | 槍を落とす目印ねえ。訳がわかんねえな……。イクス、ミリーナ。【ルグの槍】ってのに聞き覚えはないのか ? |
イクス | いや、俺は聞いたことがないです。ミリーナは ? |
ミリーナ | 私も……。 |
キール | だが、嫌な感じの言葉だな。槍を落とすって……。まるで兵器みたいじゃないか ? |
ユリウス | ああ。空からの攻撃……のようなイメージだな。 |
イオン | そういえば、以前ディストが妙なことを言っていました。【ルグの槍】を打ち込む前に前世を具現化しなければ何の意味もない……と。 |
ミリーナ | 前世を具現化 ? イリアたちの世界の前世と関わりがあるのかしら。 |
イクス | ……答えは出ませんね。デミトリアスに直接問いただせれば話は別でしょうけど……。 |
ユーリ | お、奴の所に乗り込むってんなら協力するぜ。その方が話は早い。 |
カロル | ユーリはずっとそれを考えてたもんね。 |
コーキス | 俺も賛成 ! ぐちゃぐちゃ考えてても訳がわかんないしその方が手っ取り早いよ ! |
キール | そんなむちゃくちゃな……。 |
ユリウス | ……いや、ここで考え込むよりその方が早い気もするな。 |
ユリウス | ハロルドやイオンにも細かな情報が伝わってないとなれば、俺たちがどれだけ情報を集めたところでたかが知れてる。 |
イクス | もし、本当にデミトリアスに話を聞くならこちらが潜入するより、何とかしておびき出した方がいいですよね。 |
ユーリ | ――イクス、何かあったのか ? |
イクス | え ? |
ユーリ | いや、しばらく見ない間に憑き物が落ちたって顔してるからさ。 |
イクス | そう、ですか ? ……そうかも知れないです。少しだけ、考えすぎる癖をやめるようにしました。 |
イクス | ……って、性分なんでやっぱり色々考えちゃうことはあるんですけど。 |
カーリャ | 下手の考え休むに似たりって言いますもんね ! |
ミリーナ | カーリャ ! それ、どういう意味かしら。 |
カーリャ | はわわわわ……。ミリーナさまが怖い……。 |
イオン | フフフ、カーリャはすぐ思ったことを口にしてしまうんですね。 |
ユリウス | 話がそれてしまったな。デミトリアス帝の件は、いったん置いておこう。 |
ユリウス | 新しく領主になった鏡映点の名前を見ればみんな大騒ぎになるのは間違いない。まずはこれをみんなに知らせないといけないからな。 |
カロル | うん……。レイヴンもテルカ・リュミレース領の領主のこと聞いてからなんか考え込むことが増えたし……。 |
ユーリ | ………………。 |
イクス | アレクセイさん、でしたっけ。確かレイヴンさんの元上司だとか……。 |
イオン | オールドラント領のことも……ルークたちには言い出しにくいです。ジェイドも悩んでいるみたいですし。 |
コーキス | そうか……。みんな元の世界で関わりのある人たちだもんな……。 |
ユリウス | …………そう、だな。 |
エミル | イクス ! 大変だよ ! |
イクス | エミル ? どうしたんだ ? |
エミル | リヒターさんがいなくなっちゃったんだ ! 地上に降りたみたいで……。 |
キール | リヒターって、ずっと眠っていたあの男か ? 急に動いて大丈夫なのか ! ? |
エミル | それが僕も心配で……。マルタが追いかけてくれてるみたいだから僕たちも行こうと思うんだけど、いいかな ? |
イオン | イクス、ミリーナ。リヒターはまだリビングドール化の影響が残っている筈です。僕にも行かせて下さい。 |
ユリウス | 領主に関する連絡はこちらで済ませておこう。行ってくるといい。 |
イクス | ありがとうございます。 |
イクス | エミル、俺たちも行くよ ! ちょっと待ってて。 |
エミル | うん、ありがとう ! |
キャラクター | 3話【14-3 静かな平原1】 |
リヒター | (……なるほど。これが奴らが話していたゲート……。鏡士たちはこの仕組みを使って空中に浮かんだアジトから行き来しているのか) |
リヒター | ……くっ。 |
リヒター | (情けない。歩くのが精一杯とは……。俺は随分と長く眠っていたようだな……) |
リヒター | (これではすぐに、鏡士どもに追いつかれる……) |
マルタ | リヒター ! |
リヒター | ――マルタ……か。 |
マルタ | 良かった……見つかった。 |
リヒター | …………。 |
マルタ | …………。 |
リヒター | ……………………すまなかったな。 |
マルタ | え…… ? そ、そうだよ !みんな心配してるんだからね。目が覚めたと思ったら突然いなくなっちゃって。 |
マルタ | 謝るなら私だけじゃなくて、みんなに謝って ! |
リヒター | 今のはお前への謝罪だ。マルタ。 |
マルタ | 私…… ? |
リヒター | 俺は、お前の父親をセンチュリオン・コアによって狂わせた。 |
マルタ | …………。 |
リヒター | あいつは、俺のせいで別人のように変わり果てた。そして本来の志とは違う道を歩むことになってしまった。 |
マルタ | …………。 |
リヒター | ……あの時のブルートはリビングドールと同じだ。それがどれほど苦痛なことか、今はよくわかる。 |
リヒター | もっとも、異世界からではブルート本人への謝罪など届かないだろうが。 |
マルタ | 私だって……私だってパパに謝りたいよ……。 |
リヒター | マルタ……。 |
マルタ | 私は、おかしくなっていくパパを止められなかった。それどころか、結局戦うことになって……。 |
マルタ | ああするしかなかったのはわかってる。でも……。 |
リヒター | ……ブルートはどうなったんだ。 |
マルタ | 酷い怪我をしたの……。でも、命はとりとめた。 |
マルタ | 私はこの世界に来ちゃったからそこまでしか分からないけど……。多分……ううん、きっと元気になってるはず。 |
マルタ | あの後、何があったとしてもきっと元の世界の私が、パパを支えてるよ。 |
リヒター | ……そうだろうな。 |
マルタ | ……何か変な感じ。リヒターとこんな話するなんて。 |
マルタ | それに、パパのことを話すのも久しぶり。いつも、どうしてるかなって考えるだけだったから。 |
リヒター | 話し相手はいるだろう。エミルはどうした。 |
マルタ | エミルたちは、ただでさえ大変なんだし私のことで心配なんかさせられないよ。 |
マルタ | それに、元に戻ったパパとは話ができたから。それだけでも十分……。 |
リヒター | そうか ? 『父が恋しい』と顔に書いてあるぞ。わかりやすい奴だ。 |
マルタ | そっ、そんなこと…… ! |
リヒター | だが、お前が元に戻ったあいつと話ができたのなら良かった。 |
リヒター | コアに汚染される前のブルートは本当に気のいい奴だったからな。 |
マルタ | ……うん。 |
マルタ | あ、そうだ ! みんなに連絡しなきゃ。リヒターのこと、まだ捜してるはずだから。 |
リヒター | 待て、俺は戻る気は―― |
マルタ | あ、エミル、リヒターを見つけたよ !それでね―― |
リヒター | ………… ?何か来る……。おい、気を付けろ ! |
マルタ | 何 ? 今、通信中だから後に――あっ ! |
魔物 | グルルルル…… |
マルタ | 魔物 ! ?リヒター、逃げて。私が引きつける ! |
リヒター | そこまで落ちぶれてはいない。自分の身は自分で守る。 |
マルタ | 今まで寝たきりだったんだよ。起きたばっかりで戦えるわけないじゃない ! |
リヒター | うるさい。構えろ、来るぞ ! |
キャラクター | 4話【14-5 静かな平原3】 |
マルタ | これで終わりかな。リヒター、怪我はない ? |
リヒター | ! ! マルタ、後ろだ ! |
マルタ | えっ…… ! ? きゃあああっ ! |
リヒター | くそっ…… ! |
マルタ | あ、ありがとう、リヒター……。私、あの魔物をしとめ損ねてたんだね……。 |
リヒター | まったく、油断……しすぎだ……。 |
マルタ | リヒター ! 大丈夫 ! ? |
リヒター | 少し、疲れただけだ……。 |
マルタ | ごめんなさい……。私が守るって言ったのに……。結局リヒターに守ってもらうなんて……。 |
カーリャ | ミリーナさま、いましたよ ! マルタさまです。 |
コーキス | リヒター様も一緒だ ! |
ミリーナ | 途中で通信が切れたって聞いて焦ったけどふたりとも無事で良かったわ。 |
テネブラエ | ラタトスク様もキレていましたからね。通信が『切れ』て。ククク……。 |
エミル | テネブラエは黙ってて !マルタ ! リヒターさん ! |
イクス | あっ、待ってくれ、エミル ! |
テネブラエ | おっと、怒らせてしまいました。 |
イオン | テネブラエは場を和ませようとしたんですよね。 |
イオン | それより、僕たちも急ぎましょう。……リヒターが無理をしていなければいいのですが。 |
マルタ | エミル ! テネブラエ !みんなも来てくれたんだね。ありがとう。 |
エミル | 心配したよ。いきなり魔鏡通信が切れちゃったから……。 |
マルタ | ごめんね。魔物に襲われちゃったの。でもリヒターが助けてくれたんだ。 |
エミル | リヒターさん……。無事で良かったです。あの……、ええと……体は平気ですか ? |
リヒター | ……問題ない。 |
二人 | ……………………。 |
カーリャ | う……空気が重すぎますぅ。 |
コーキス | 仕方ないって。一応ほら……敵ってことになってるし。 |
エミル | 敵じゃないよ。僕はリヒターさんのことを、そんな風には―― |
リヒター | …………くっ。 |
エミル | リヒターさん ! ? |
マルタ | どうしよう……。さっき魔物に襲われたときに私を助けて戦ってくれたの。それで余計に具合が悪くなったのかも……。 |
イオン | その体で戦ったんですか ? なんて無茶を……。 |
ミリーナ | リヒターさん。じっとしていてくださいね。治癒術で少しは楽になると思います。 |
リヒター | ……捕虜にも等しく治療を施すか。 |
イクス | 捕虜だなんて、そんな……。 |
リヒター | それなりに状況は理解しているつもりだ。自分がリビングドールにされていたこともわかっている。 |
リヒター | なのに、正気に戻るとお前たちのアジトにいた。ならば捕虜として連れてこられたんだろう ? |
イクス | 違います。イオンが命をかけてあなたを助け出してくれたんですよ。 |
リヒター | イオン……。そういえばその顔、研究所で見た気がするな。 |
イオン | リヒター、あなたに仕掛けられたリビングドール化は今までのβよりも、さらに高度な術式が仕込まれているとハロルドから聞いています。 |
リヒター | ベルセリオス博士か。彼女も鏡士側に来ているのか。 |
イオン | ええ。その辺りの経緯も、後ほど詳しく説明しますね。今はあなたの体の話をさせてください。 |
イオン | 最新型のリビングドールのせいでその体にはかなりの負担がかかっています。ですから、もうしばらくの静養が必要なんです。 |
イクス | だからリヒターさんは二ヶ月も眠ったままだったのか。 |
リヒター | 二ヶ月、だと…… ? |
イオン | はい。しかも今は目覚めたばかりです。何が起こるかわかりません。どうか僕たちと一緒にアジトへ戻ってください。 |
リヒター | ……助けてくれたことには感謝する。だが―― |
カーリャ・N | 小さいミリーナ様 ! |
ミリーナ | ネヴァンからだわ。――ネヴァン、心配していたのよ。しばらく連絡がなかったから。 |
カーリャ・N | 申し訳ありません。至急お伝えしたいことがあります。 |
カーリャ・N | メルクリアとルキウスが帝国に連行されました。 |
一同 | ! ! |
イクス | 帝国にって、どういうことだ ! ?二人は元々帝国側の人間だろう ? |
イクス | それともビフレストの具現化に失敗して立場が悪くなったのか ! ? |
リヒター | ビフレストの具現化…… ! ? |
カーリャ・N | いえ、あの二人はかなり前から帝国に追われる立場になっていたようです。 |
リヒター | ……デミトリアスめ。 |
エミル | リヒターさん ! ? どこへ行くつもりですか。 |
リヒター | 俺はメルクリアを助けに行く。世話になったな。 |
マルタ | そんな体で無茶だよ ! |
リヒター | お前たちには関係のないことだ。邪魔をするなら力ずくでも―― |
エミル | 待ってください。……だったら、僕もついて行きます。手伝わせて下さい ! |
マルタ | それなら私も ! |
テネブラエ | もちろん、私も。 |
リヒター | ……断る。 |
マルタ | そんなこと言ってる場合じゃないでしょ ! ?そんな体だし、放っておけないよ。 |
エミル | イクス、みんな、ごめん。僕たちはリヒターさんと一緒に行くよ。 |
コーキス | 待ってくれ、エミル様。そんな状態のリヒター様を連れて四人だけで乗り込むってのか ? |
カーリャ | そうですよ。無謀です ! |
コーキス | だよな ! だからさ、マスター……。 |
イクス | わかってるよ、コーキス。リヒターさん、俺たちもメルクリア救出に同行します。 |
リヒター | 慣れあうつもりはないと言ったはずだ。それに、お前たちにそこまでしてもらう義理はない。 |
イクス | いいえ、あります。以前、アステルを攫って迷惑をかけましたし俺たち、前に一度メルクリアに助けられているんです。 |
リヒター | メルクリアに…… ? |
リヒター | ……ならば、勝手にするといい。せいぜい利用させてもらう。 |
イクス | わかりました。それじゃミリーナ、俺たちはこのままメルクリア救出へ向かおう。 |
ミリーナ | ええ。本当は、一度アジトに戻ってみんなと相談するべきなんでしょうけど……。 |
イオン | でしたら、僕がアジトへ戻って報告しますよ。僕もこの世界では、多少戦えますがそれでも今回は足手まといになってしまいますから。 |
イクス | 足手まといなんかじゃないよ。ありがとう、イオン。何かあったら連絡よろしくな。 |
イオン | はい。では皆さん、どうか気をつけて。それとリヒター、無理は禁物ですよ。 |
リヒター | ……わかっている。 |
マルタ | 大丈夫。私たちがちゃーんと見張っておくから。ね、エミル ! ……エミル ? |
エミル | あ、ああ。もちろんだよ ! |
エミル | (……ラタトスク。リヒターさんを助けてもいいよね ? ) |
ラタトスク | (……フン。俺は手を貸さないからな。後はお前とテネブラエに任せる。勝手にしろ) |
キャラクター | 5話【14-6 イ・ラプセル城】 |
| アスガルド帝国 イ・ラプセル城 |
ロゼ | ……行った ? |
デゼル | ああ。他に風の動きはない。今のが巡回兵ならしばらく見回りもないだろう。 |
ロゼ | よっしゃ。この先にグラスティンの部屋があるって話だよね。今のうちに入ろ ! |
デゼル | しかし、お前がここまでやる必要があるか ?イクスやカロルたちの報告だけでも十分だろう。 |
ロゼ | そりゃ、イクスたちの情報を疑ってなんかないよ。でもさ、やっぱりちゃんと調べておきたいんだ。 |
ロゼ | 黒髪ばっか狙う誘拐事件のせいで街の人たちも怯えてるし、商人たちも警戒してる。このままじゃ商売に影響でまくりだもん。 |
デゼル | ふん、商売以上に首突っ込んでるくせによ。ま、お前らしいっちゃらしいけどな。 |
ロゼ | 知らん顔できないでしょ。黒髪マニアのグラスティンの話はイクスたちから聞いてたし。それに……。 |
ロゼ | ……親がいなくなって泣いてる子や友達や家族を捜してる人、あたしたちが街を巡る間にどれだけ見たと思ってんの。 |
ロゼ | しかも収まるどころか増え続けてる。 |
デゼル | まあ、おかげで目撃情報にはことかかなかったがな。 |
ロゼ | 帝国所属のサレって男が攫ってるのはわかったし後は攫われた人たちがどうなったのか調べて――あ、この部屋じゃない ? |
デゼル | ……聞いたとおりだな。薬液と血の匂いが染みついてやがる。 |
ロゼ | それに……壁一面の遺体。間違いないね。 |
デゼル | ……反吐が出るぜ。確かこの奥はもっと酷いって話だが……。 |
デゼル | ………… ! |
ロゼ | ねえデゼル、そっちは何かあった ? |
デゼル | ………まあな。間違いない。サレの野郎が攫った人間はここでグラスティンの実験に使われている。 |
デゼル | 帰るぞ。長居は無用だ。 |
ロゼ | はあ ? 何言ってんの。あたしはまだ、入り口しか確認してないって。 |
デゼル | これ以上、入る必要はない。それに……お前でもキツいかもしれん。 |
ロゼ | 今更でしょ。大丈夫、ちゃんと確認させて。 |
ロゼ | …………酷いね。 |
デゼル | ああ……。 |
ロゼ | これで、あいつらがやっているのが大義名分の『実験』だけじゃないのがよくわかったよ。 |
ロゼ | あいつらは命を弄んでいる。 |
ロゼ | これは――『悪』だ。 |
デゼル | …………。 |
? ? ? | グラスティン…… ! |
二人 | ! ! |
アリエッタ | 違う……。グラスティン、じゃない……。 |
ロゼ | ちょっ、あんた血まみれ…… !どうしたの ! ? 怪我してるの ! ? |
デゼル | いや……ありゃ自分のだけじゃなさそうだ。 |
アリエッタ | グラスティンがいないなら……いい……。 |
ロゼ | 待って ! なんでグラスティンを捜してるの。 |
アリエッタ | グラスティン、イオン様を殺した…… !だから、殺す。殺すの !本当にグラスティン……いない ? |
ロゼ | いないよ。いつ帰るかもわかんない。 |
アリエッタ | そう……。……あの……ありがと……。 |
デゼル | あいつ、俺たちなんて気にもかけちゃいなかったな。おかげで助かったが……。って――ロゼ、どこへ行く ! |
ロゼ | あの子を追う。 |
デゼル | やめておけ。これ以上は本当にヤバイぞ。何が起きるかわかりゃしねえ。 |
ロゼ | あのまま放っておくなんて無理 !あたしは行くよ。デゼルは先に外へ出てて ! |
デゼル | チッ……、できるわけないだろうが。待てよ、ロゼ ! |
キャラクター | 6話【14-7 アスガルド城】 |
| 帝国 アスガルド城 |
メルクリア | ………………。 |
デミトリアス | 私は悲しいよ。メルクリア。何故、ビフレストの具現化なんて勝手な真似をしたんだ。 |
メルクリア | お忘れか、義父上。わらわからチーグルやジュニアたちを召し上げた日のことを。 |
メルクリア | あの時、わらわは「自由にやらせてもらう」と宣言した筈じゃ。 |
デミトリアス | ……まさか、本気だったとはね。 |
デミトリアス | ジュニアたちのことは本当に悪かったと思っている。 |
デミトリアス | だからこそ、君に対しては何かしらの埋め合わせをと思っていたんだ。それなのに……。 |
メルクリア | それも結構と言ったはずじゃ。 |
メルクリア | わらわはもう、義父上には何も期待しない。 |
デミトリアス | メルクリア……。 |
メルクリア | それよりも、ルキウスをどこへやった。グラスティン、お前も一枚噛んでおるのじゃろう ! |
グラスティン | さあてな。それよりも皇女様には大事な仕事がある。ヒヒヒ……お手伝い頂けますかな ? |
メルクリア | 己でやれ ! 下衆の仕事など知るか ! |
グラスティン | 己ねえ。そうしたいのは山々ですが俺の周りで鏡精を生み出せるのは皇女様ぐらいのものなんでなあ。 |
メルクリア | 鏡精じゃと…… ? わらわへの嫌がらせか。冗談にも程があるわ ! |
グラスティン | 冗談 ?ヒヒヒ、俺はいつだって本音で語っているつもりだぞ。 |
グラスティン | ――皇女よ、鏡精を作るんだ。 |
メルクリア | 断る !第一、わらわは鏡精の作り方など知らぬわ ! |
グラスティン | 俺が教えるとおりにやればいい。なーに、簡単なことさあ。 |
メルクリア | やらぬと言っているであろう !鏡精を作るのは悪しき鏡士の行い。それは義父上とて承知の筈じゃ。そうじゃろう ! ? |
デミトリアス | その通りだ。けれど……。 |
メルクリア | 義父上 ! ? |
グラスティン | よく吠える皇女様だ。そうそう……吠えると言えば今、黒い毛並みの可愛い子犬をあずかっててなぁ。 |
グラスティン | 会ってみるか、皇女様。――おい、誰か ! あいつを連れて来い ! |
ルキウス | ……うっ……。 |
メルクリア | ルキウス ! ! |
グラスティン | おっと、近づくなよ。それ以上動くと首が飛ぶ。 |
ルキウス | くっ……。 |
グラスティン | ああ、いい目だなあ。悔しそうに睨みつけて。えぐってやりたくなる。黒髪で鏡映点……内臓はどんな色なんだろうなあ。 |
グラスティン | なあ、飼い主様。駄々をこねるなら手始めにこいつの片目を―― |
メルクリア | やめよ、グラスティン ! |
グラスティン | ……ああ ? |
メルクリア | ……貴様の望むようにしてやる。だからルキウスには手を出すな。 |
グラスティン | なんだ、もう諦めるのか。残念だな……。 |
ルキウス | メルクリア……。ごめん……。 |
キャラクター | 7話【14-8 セールンドの街道】 |
カーリャ・N | 小さいミリーナ様、今どちらに ? |
ミリーナ | あなたに言われたとおりセールンドへ向かっているところよ。 |
イクス | さっきはどうしたんだ ?とにかくセールンドへ行けって言ってすぐに通信を切っちゃったけど。 |
カーリャ・N | 先程はすみません。突然状況が変わったのです。それについて新たな情報を入手しました。 |
カーリャ・N | 当初、メルクリアはアスガルド城へ入りその後は城内に留め置かれていました。 |
カーリャ・N | ですが現在、帝国の一行はメルクリアを伴いセールンドで一番高い山へと向かっているのです。 |
カーリャ | 山 ? なんでですか ? |
カーリャ・N | あの山には、かつてアイギスシステムの関連施設がありました。考えすぎかも知れませんがそれが関係しているのかも……。 |
ミリーナ | アイギスシステム……。嫌な予感がするわ。 |
カーリャ・N | 私もです。帝国は何か企んでいるに違いありません。皆さん、どうかくれぐれも気を付けて。 |
イクス | わかったよ。ありがとう、ネヴァン。そっちも気を付けてくれ。 |
リヒター | ……急ぐぞ。一刻も早く追いついてメルクリアを救出する。 |
マルタ | 待って。そんなんじゃすぐバテちゃうよ。無理しないようにってイオンも言ってたでしょ。 |
リヒター | わかっている。だがメルクリアに何かあってからでは遅い。 |
イクス | ……リヒターさんは、どうしてそこまでメルクリアに肩入れするんですか ? |
リヒター | 以前にも言ったはずだ。メルクリアを放っておけないだけだと。 |
カーリャ | 放っておけないだなんてリヒターさまって怖そうなのに面倒見がいいんですねぇ。 |
リヒター | 別にそういうわけじゃない。……メルクリアは同志だからだ。 |
コーキス | 同志…… ? リヒター様とメルクリアは同じ目的を持ってるってことか ? |
カーリャ | メルクリアの目的っていうとビフレストの復活と鏡士への復讐とかですかね。 |
コーキス | 前も兄上の復讐だって言って襲いかかってきたしな。だとするとリヒター様は―― |
リヒター | ――歩きながら話すのは疲れる。遠慮してくれ。 |
二人 | ご、ごめんなさい……。 |
エミル | ………………。 |
マルタ | エミル……。 |
エミル | あ、あのリヒターさん、疲れているのにごめんなさい。一つだけ聞かせて欲しいんです。 |
エミル | 今、アステルさんはどうしてますか ? |
マルタ | そうだね。心配だよ。帝国内も混乱してるみたいだし。 |
リヒター | 大丈夫だろう。最悪でも殺されはしない筈だ。あれでもアステルは研究部門で重要な位置にいる。 |
リヒター | 何かトラブルがあったとしても今のあいつなら必ず切り抜ける。必ずな……。 |
リヒター | ……無駄話は本当にここまでだ。急ぐぞ。 |
エミル | リヒターさん……、無理してるよね。 |
マルタ | うん……。けど、エミルもだからね。 |
エミル | え ? |
マルタ | 気にしてるでしょ、リヒターの復讐のこと……。 |
マルタ | メルクリアが同志だっていうの復讐したい相手がいる気持ちがわかるから……ってことでしょ ? |
エミル | ……そうだよね。やっぱり。 |
マルタ | だから、無理しないでねって言ってるの。つらい時はつらいって吐き出してね ? |
エミル | ……うん。ありがとう、マルタ。 |
テネブラエ | フフフ、お二人はやはりいいコンビですね。吐き出せる仲間がいるというのはいいものです。 |
マルタ | もう……やめてよ、テネブラエ。照れちゃう…… ! |
エミル | はは……。 |
マルタ | それにしたって、リヒターってば……。 |
エミル | リヒターさんが何 ? |
マルタ | あ、ううん、こっちの話。 |
マルタ | (……私のこと、あんな風に言ってたくせに) |
マルタ | (自分だって、顔に書いてあるじゃない。「アステルが心配でたまらない」って……) |
キャラクター | 8話【14-12 イ・ラプセル城】 |
アステル | すみませーん ! 開けてもらえませんかー ? |
アステル | ………………。 |
アステル | 返事がない……。 |
アステル | (誰もいないのかな ? ずっと見張りの兵士が扉の外にいたのに……) |
アステル | (な、何だろう、この音…… ? ) |
アステル | え ? 地震……じゃない…… ? この揺れは…… ? |
アステル | か、壁が崩れる ! ? ケホッ ! ケホッ ! だ、誰か ! ? 助けて下さい ! ! 扉を開けて ! 部屋が潰れる ! ! |
??? | ハーッハッハッハッ ! この部屋が潰れることはありませんよ。ちゃーんと城の構造を把握して掘り進んできましたから。 |
アステル | ……え ? その声……もしかして薔薇のディスト博士 ? |
ディスト | おや、レイカー博士。ということは、計算通り研究棟の地下まで辿り着いたようですね。 |
アッシュ | ――おい、いつになったら外に出られるんだ。 |
ディスト | まったく、人の話を聞いていなかったのですか ? ここから左に40度掘り進むと脱出用の地下通路にぶつかるんですよ。 |
アステル | え ? まさかディスト博士、帝国から逃げるんですか ? |
ディスト | 逃げる ? 何を言うのかと思えば。 |
ディスト | 勘違いしないで頂きたいですね。この薔薇のディスト様の方が今まで帝国にいてやったのですよ。 |
ディスト | そろそろ私の目的を果たす時が来たのでね、自分の研究に専念することにしたのです。 |
アステル | それで掘削機を使って地下を掘り進んで来たんですか ! ? ディスト博士なら、城内を自由に移動できるのに。 |
ディスト | 私の研究資料や成果が勝手に奪われていましたからね。保管庫から回収する必要があったのですよ。 |
アッシュ | アステル、だったな。お前はここに閉じ込められていると聞いた。何なら俺たちと一緒に来るか ? |
アステル | え ! ? |
ディスト | アッシュ ! あなたにしてはいい考えですね。 |
アッシュ | どういう意味だ……。 |
ディスト | レイカー博士。あなたは私ほどではありませんが研究者として良い資質を持っています。特に精霊の分野では役に立つ。 |
ディスト | 私と一緒に来るというなら歓迎しますよ。 |
アステル | ――あの、だったらリヒターを助けるのに力を貸してもらえませんか ! ? |
アステル | リビングドールにされて、テセアラ領の領都に派遣された所までは聞いてるんですけどそれきりなんの消息もなくて……。 |
ディスト | 焔獄のリヒターですか ? |
ディスト | 私を崇拝し、私の主催するサロンに顔を出すところは殊勝だと思いますが、研究者としてはさほど見るべきところはありませんよ。 |
アステル | (崇拝……してたかな ? まあ、いいや) |
アステル | リヒターも専門は精霊なんです。僕一人よりリヒターの助けがある方がディスト博士の研究に役立てると思います。 |
ディスト | ふむ……。 |
アッシュ | おい、死神。こいつにとってのリヒターはお前にとっての死霊使いのようなものじゃないのか ? |
アッシュ | いくらお前の存在が人外でもアステルの気持ちぐらいは理解できるだろうが。 |
ディスト | 誰が死神ですか ! 薔薇だと言っているでしょう。物覚えの悪い男ですね。 |
ディスト | それにジェイドは我が友であり、同時に我が仇敵 ! リビングドールにされるような間抜けではありません。全く理解できませんよ。 |
アッシュ | おい、アステル。一緒に来い。この歩く茹でダコに人間の気持ちを説くだけ無駄だった。 |
アッシュ | リヒターを助けるならイクスたちの協力を仰いだ方が早い。 |
ディスト | 何を勝手に決めているんです ! ? |
アッシュ | お前が掘削機で掘り進む間に追っ手だの魔物だのを切り伏せているのは俺だということを忘れるなよ、メガネダコ。 |
ディスト | さっきから何なんです ! ? 人のことをタコ呼ばわりして ! ? |
アッシュ | ああ、タコに失礼だったな。 |
ディスト | ムキーッ ! あなた、私がローレライに会わせてやった恩も忘れて何なんですか ! ? |
アステル | ディスト博士。ご迷惑でしょうが、僕を連れて行って下さい。この城を脱出するまででかまいませんから。 |
ディスト | 相変わらず、あなたは殊勝ですねえ…… ! もちろんかまいませんよ。 |
ディスト | 焔獄のリヒターのことはともかくあなたのことは評価していますから。 |
アッシュ | グラスティンとその麾下の連中はこの城を離れている。今が脱出の好機だ。行くぞ。 |
アステル | はい ! |
ディスト | では壁を掘り進めますよ ! シールドマシン『ミニカイザーディスト』号始動 ! |
キャラクター | 9話【14-13 セールンド山4】 |
メルクリア | な、なんじゃ……ここは……。 |
メルクリア | あそこに横たわっておるのは兄上様の器 ! ?どういうことじゃ ! ?何故最初のイクスの死体がここにある ! ? |
グラスティン | これから始まるショータイムに欠かせないパーツなんでなあ ? |
メルクリア | どういう意味じゃ ! ?ここで鏡精を作らせて、何をしようというのじゃ ! ? |
光魔 | ……ウゥ~……ハルルルルル ! |
ルキウス | 光魔 ! ? |
グラスティン | ――おっと、お前ら。まだ、皇女様に手を出しちゃ駄目だぞ ? |
メルクリア | な、何匹おるのじゃ……。 |
ルキウス | メルクリア、壁を見て !一面に光魔の檻がびっしり……。 |
メルクリア | どういうことじゃ ? 何故こんなに沢山の光魔がいる ?虚無へのアクセス手段が断たれ光魔は生み出せない筈じゃぞ…… ? |
デミトリアス | あの光魔はレプリカだ。はぐれて生き残っていた光魔を捕獲して増やしたんだよ。 |
ルキウス | そこまでしてどうして光魔を増やす必要があったんだ……。それにどうやって飼い慣らしている ? |
ルキウス | チーグルも魔鏡結晶を使って呼び出すことしかできなかった筈なのに。 |
グラスティン | ヒヒヒ、飼い慣らすなど簡単だ。奴らにだって心はあるんだからな ? |
メルクリア | まさか、リビングドールか ! ? |
グラスティン | 光魔は便利なんだよなあ。奴らは死ぬと死の砂嵐に帰っていく。その時に一瞬できる道を使って死の砂嵐に接触するんだ。 |
グラスティン | 毎回殺さなきゃならないのが不便だがなあ……。殺しても肉にもならないし……。 |
デミトリアス | グラスティン、そんな話をメルクリアたちに聞かせることはないだろう。 |
グラスティン | ヒ……ヒヒ……。いつもながらずれた優しさを持っているな。デミトリアス。 |
グラスティン | まあいいさ、それじゃあそろそろ鏡士の奇跡の力を見せてもらおうか、皇女様。 |
メルクリア | ――わ、わらわが鏡精を作ればルキウスを解放してくれるんじゃな。 |
デミトリアス | ああ、約束するよ。 |
メルクリア | ………………。 |
メルクリア | (鏡精は……世界を滅ぼす存在じゃと兄上様は仰っていた……。じゃが……このままではルキウスが……) |
ルキウス | メルクリア ! 嫌な予感がする。こいつらの言うことなんて聞かなくていい ! |
グラスティン | ヒヒヒ……。そうか、お前は俺に解体されたいんだなあ。かまわないぞ、それでも。 |
メルクリア | ルキウスに手を出すでない !貴様はそこで大人しく見ておれ ! |
メルクリア | (鏡精は心の具現化……。心を……もう一人のわらわを捜す……) |
メルクリア | アニマを感じよ……。わらわの中にいるもう一人のわらわを。わらわの心の現し身―― |
メルクリア | (何じゃ、この感覚は…… ! ?わらわの中から何かが――) |
メルクリア | 現世に姿を見せよ ! 鏡精モリアン ! |
ジュニア | ――メルクリア ! ? |
ナーザ | ! ! |
グラスティン | ヒヒヒヒヒ…… ! 上手くいったぞ !やっぱり異世界のアニマを利用するより鏡精の方が断然エネルギー効率がいい ! |
ジュニア | ど、どういうこと…… ? 鏡精…… ? |
グラスティン | ――おっと、小さなフィリップのお出ましか。皇女様のことが気になったようだなあ ? |
ジュニア | グラスティン ! 何をした ! ?まさか鏡精を殺してキラル分子を作り出したんじゃ―― |
グラスティン | ご名答。お前がマークを差し出さないから皇女様に鏡精を作ってもらったんだよおぉぉぉぉ ! |
ジュニア | ! ? |
ナーザ | メルクリアに鏡精を作らせた……だと ! ? |
グラスティン | おやあ…… ? その声は―― |
ジュニア | メルクリア ! ? |
メルクリア | ………………わら……わ……わら……わ……ここ……ろ……ひ……あ……ふふ……ふふふふふ…………。 |
ジュニア | まさか……鏡精を切り離さずにキラル分子変換したの ! ?そんなことをしたらメルクリアの心が潰れる ! ! |
ナーザ | ……何という……邪悪 ! ! |
ジュニア | 何をするつもりなんです ! ?鏡精をキラル分子化して何に利用するつもりですか ! ? |
グラスティン | おお、怖い……。せっかく皇女様の望みを叶えてやろうとしたのに、そう睨まないでくれよ……ヒヒヒ……。 |
ルキウス | まさか……ビフレストの復活…… ? |
グラスティン | そうだあ ! 皇女様のお望み通りビフレストを具現化してやるんだよ ! |
グラスティン | 皇女様たちが一度具現化しかけてくれたからな。その仕掛けとデータを再利用してビフレストが復活する ! |
キャラクター | 10話【14-15 リヒター】 |
イクス | もう少しで山頂だ……。リヒターさん、大丈夫ですか ? |
リヒター | ああ……。 |
コーキス | な ! ? 何だ ! ? 地震か ! ? |
テネブラエ | 皆さん ! ここは足下が悪い ! 気を付けて ! |
イクス | ……収まった、か ?みんな、大丈夫か ! ? |
コーキス | えっと……エミル様たちは……。 |
カーリャ | 少し先の所です。あの、ちょっと開けた場所……。 |
帝国兵A | ――なんだ、今の地震は ? |
帝国兵B | グラスティン様が言ってた『鏡震』だろう。 |
コーキス | 帝国兵 ! ? |
帝国兵A | ――貴様たち。侵入者か。 |
帝国兵B | 賊は排除する。 |
エミル | マルタ ! リヒターさん ! 大丈夫 ? |
リヒター | 俺は平気だ。マルタは―― |
マルタ | 私も大丈夫。凄く大きな地震だったね……。 |
テネブラエ | ――待って下さい !イクスさんたちが帝国兵に囲まれています ! |
エミル | え ! ? |
リヒター | いや、どうやらこちらもだ。山頂の方から兵士たちが来る。 |
テネブラエ | 警備兵でしょうか。しかし、数が多い。 |
リヒター | よほど後ろ暗いことをしているんだろう。この先でな。 |
帝国兵C | 侵入者、発見。 |
帝国兵D | これより排除にかかる。 |
リヒター | くっ ! 今のが鏡震ならメルクリアの力が利用されたはずだ。あいつは無事なのか ! ? |
エミル | リヒターさん ! 僕とテネブラエで敵を引きつけます。マルタと一緒に先に行って下さい ! |
エミル | マルタ、リヒターさんをお願い ! |
マルタ | エミル ! ? だけど―― |
エミル | 二人の位置からなら、走って突破できる。僕たちなら大丈夫 ! |
ラタトスク | ――リヒターを一人で行かせて死なれたら寝覚めが悪いからな。奴を守ってやれ。 |
リヒター | 何……。 |
ラタトスク | 俺はお前が俺を殺しに来るところを返り討ちにしたくてたまらねぇんだ。それまで死なれてたまるか ! |
ラタトスク | マルタ ! お前ならできる ! |
マルタ | ――わかった ! リヒター、行こう ! |
リヒター | ちぃっ ! |
マルタ | な……何 ! ? 光魔がこんなに沢山……。待って ! ? リヒター、光魔に囲まれてるのって―― |
リヒター | ――メルクリアとジュニアか ! ? |
ジュニア | リヒターさん ! ? どうしてここに ! ? |
メルクリア | ……ぐぅ……ううう……。 |
リヒター | やらせるか ! ! |
グラスティン | おっと……。リヒターか。ヒヒヒ……。姿をくらませたと思いきや自分を取り戻していたとは恐れ入るな。 |
リヒター | 貴様、メルクリアに何をした ! ? |
グラスティン | 鏡士として働いてもらっただけだよ。それの何が問題なんだ ? |
ジュニア | リヒターさん、お願いです。少し時間を稼いで下さい。そうすれば、味方を増やせるから―― |
グラティン | ! ! |
グラスティン | ……ヒヒ、そういうことか。小さいフィリップ。だが、俺の手にはあの黒髪の仔犬がいることを忘れるなよお ? |
ルキウス | ――くぅっ ! |
兵士 | うわあっ ! ? |
グラスティン | ――ちぃっ ! ? 雑魚肉が邪魔するな ! |
マルタ | だ、誰が、雑魚肉よ ! この変態 ! !その男の子に手出しはさせないんだから ! |
グラスティン | ガキが面白いことを言うなあ。生意気な肉は解体してやろう。臓物になれば、少しは見栄えもよくなるだろうよ。 |
マルタ | な、何なのアンタ ! ? マジでキモいんだけど ! |
グラスティン | ヒヒヒヒヒ、だからなんだ ? |
リヒター | マルタ ! 逃げろ !こっちは光魔の相手で手一杯だ !お前にそいつの相手は―― |
マルタ | 無理だって言うの ! ? 冗談じゃない ! |
マルタ | (ヤバい……。絶対ヤバい相手だよ。だけど……) |
エミル | マルタ、リヒターさんをお願い ! |
エミル | マルタ ! お前ならできる ! |
マルタ | (エミルとラタトスクに頼まれたんだもん。二人が今まで私を守ってくれたみたいに今度は私が――) |
マルタ | 私が、ここにいるみんなを守る !私だって――守られてばかりじゃないんだから ! |
ジュニア | 浄玻璃鏡が光った…… ! ? |
リヒター | ――マルタ ! オーバーレイだ ! |
グラスティン | ちぃ、これだから鏡映点ってのは始末が悪い。 |
マルタ | オーバーレイだか何だかわかんないけど変態なんかに負けないんだから ! |
キャラクター | 11話【14-15 リヒター】 |
マルタ | やった ! ? |
リヒター | 気を抜くな、マルタ !奴はクロノスの力で再生できる ! |
ラタトスク | ――だったら、今度は俺たちが相手だ ! |
マルタ | ラタトスク ! ? |
エミル | マルタ ! お待たせ ! |
マルタ | エミル…… ! |
カーリャ・N | 皆さん、グラスティンとデミトリアス陛下が逃げるつもりです ! |
グラスティン | ――カーリャか。お前、生きていたとはなあ。 |
デミトリアス | グラスティン ! 急げ ! |
グラスティン | しかし、小さいフィリップが―― |
デミトリアス | 後にしろ ! グラスティン ! |
グラスティン | ちっ……。だったら、交渉材料にお前を連れて行くぞ黒髪の犬コロ ! |
ルキウス | うっ……。 |
テネブラエ | 転送魔法陣で逃げられましたね……。 |
カーリャ・N | ……すみません。私がもっと早くこの場所に着いていれば……。 |
イクス | いや、俺たちだってそうだよ。なあ、ミリーナ―― |
ミリーナ | ………………。 |
イクス | ――ミリーナ ? |
ミリーナ | イクス……。あれ、最初のイクスじゃ……。 |
イクス | 本当だ……。横にはジュニアが…… ?何をして―― |
カーリャ・N | イクス様の体が――最初のイクス様の体が光り出した ! ? |
イクス | ……何……だ……急に……意識が……―― |
コーキス | マスター ! ? |
カーリャ | ミリーナさま ! イクスさまが倒れちゃいましたよ ! ? |
イクス | (……真っ暗だ……。一体何がどうなって……) |
? ? ? | ――祖父ちゃん、どうしてだよ。俺だって鏡士の血を引いてるんだぞ ! |
? ? ? | そうだな。そろそろちゃんと話して聞かせる時が来たのかも知れないな。 |
? ? ? | イクス。お前は特別なんだ。お前が鏡士になるということは世界の理を変えることになるかも知れない。 |
? ? ? | 私はお前を亡くしたくない。お前の父も母も同じだ。それでも鏡士になるというなら―― |
イクス | (祖父ちゃんの声 ? ) |
イクス | (……違う。これは……まさか……最初のイクスの『記憶』…… ? ) |
ジュニア | ――やっぱり。イクスの体は『破損』していたんだ。だからナーザ将軍を受け入れられなかった。 |
? ? ? | そのようだな。 |
ナーザ | 俺がこの体を離れた後、デミトリアスたちが死の砂嵐に繋がる術を見つけようとこの体を実験に利用した。 |
カーリャ・N | どういうことです。イクス様のご遺体を何に使ったというのですか ! ? |
ジュニア | 虚無に繋がる道を生み出すための魔鏡作り……だと思う。 |
ジュニア | イクスの遺体をレプリカで増やして人体万華鏡に改造したんだ……。 |
ジュニア | 多分レプリカを作った時に最初のイクスの遺体に悪影響が……。 |
二人 | ! ? |
ナーザ | だが、今はこうして俺の宿る疑似心核を受け入れた。恐らく、そこの具現化されたイクスが影響しているのだろう。 |
コーキス | どういうことだ ?マスターが倒れたのはお前らのせいなのか ! ? |
ジュニア | そうじゃないよ。僕にも理屈はよくわからないけど最初のイクスのアニムスと三人目のイクスのアニマが共鳴したんだ。 |
ナーザ | ――ジュニア。行くぞ。あの毒は世界を死に至らしめる。俺は止めねばならない。ビフレストの皇子として。 |
ナーザ | ――リヒターと言ったか。至らぬ愚妹に力添え感謝する。 |
リヒター | 待て。俺も――お前たちと共に行く。 |
エミル | リヒターさん ! ? |
リヒター | メルクリアの無事を見届けたい。 |
ナーザ | ……物好きな奴だ。好きにしろ。 |
カーリャ・N | 待ちなさい !イクス様のご遺体に勝手な真似をするのは私が許しません ! |
ナーザ | カーリャか。貴様の許しを得るつもりなどない。それに俺にかかずらっている場合か ?ビフレストが具現化したのだぞ。 |
ミリーナ | さっきの地震は……鏡震 ! ? |
キール | おい、大変だぞ ! ?前にオーデンセが具現化された場所にまた島が現れた ! |
キール | 今情報を分析しているが明らかにオーデンセとは違う島だ ! |
ナーザ | 黒衣の鏡士よ。今は貴様らとやり合っている時ではない。 |
ナーザ | 今の俺の敵は、世界に毒をもたらす邪悪。アスガルド帝国の皇帝を自称するデミトリアスだ。その為に――この体は借りていく。 |
ジュニア | 転送魔法陣、起動させます ! |
カーリャ・N | イクス様ッ ! ! |
マルタ | ……何 ? 何がどうなったの…… ? |
ミリーナ | わからない……。今は急いでアジトに戻らないと。ビフレストの具現化も確認しなければいけないし何よりイクスが……。 |
コーキス | マスター……。 |
キャラクター | 1話【15-1 集合的無意識1】 |
メルクリア | ここは……どこじゃ…… ? |
メルクリア | そこで倒れているのは……兄上様か ! ? |
メルクリア | 兄上様 ! 兄上様 ! どうなさったのです ! ? |
? ? ? | ……誰…… ? |
メルクリア | わらわじゃ ! メルクリアじゃ ! 兄上様 ! |
? ? ? | ……メルクリア ?島にそんな子はいなかった筈だけど。 |
? ? ? | え ? 何だこの格好……。随分ビフレスト風だな。 |
? ? ? | 君のせいか……。君は『今の俺の身体』を知ってるんだな ?その記憶が俺をこんな格好にしているのか。 |
メルクリア | な、何を言っているのじゃ……。 |
? ? ? | あー、悪い悪い。わからないよな。こんな話をしても。そういえば……君もビフレスト風の服を着てるけどビフレストの人 ? |
メルクリア | ……兄上様、ではないのか ? |
イクス ? | 俺はイクス。イクス・ネーヴェ。 |
メルクリア | セールンドの鏡士 ! ? |
イクス ? | よく知ってるな。 |
イクス ? | そうか……。君がビフレストの人ならやっぱりビフレスト側は俺が鏡士になったことに気付いていたんだな。 |
メルクリア | イクス・ネーヴェ…… ? わらわのことを忘れたのか ?いや、そもそもここはどこじゃ ! ? |
イクス ? | ここは【アニマのるつぼ】。集合的無意識の底だよ。世界中の人々の心が繋がる場所の最下層だ。俺の姿に気付いたと言うことは……君も鏡士なのかな。 |
メルクリア | 正確にはわらわはまだ鏡士ではない。力は使えるがな。 |
メルクリア | しかし……【アニマのるつぼ】 ?セシ……シドニーからはそんなもの聞いたことがなかったが……。 |
イクス ? | そうだろうな。俺がそう名付けたんだ。ここは死んだ人間のアニマが、消滅しきれず行き場をなくして閉じ込められている場所、だと思う。 |
イクス ? | メルクリア、だったな。君みたいな小さな子までこんなところに来るなんて外ではまだ戦争が続いているのか ? |
メルクリア | 戦争…… ? 死んだ人間のアニマ……。まさか……そなた、一人目のイクス・ネーヴェか ! ? |
イクス ? | 一人目 ? それは一体どういう意味だ ? |
イクス | ――それは『こういう』意味です。イクス……さん。初めまして。俺は三番目に具現化されたあなたです。 |
イクス ? | ! ? |
メルクリア | そちらがわらわの知るイクスであったか……。しかしこれはどういうことじゃ…… ? |
イクス1st | 同じ顔が二人……。ややこしいな。まあ、その話は一旦置いておこう。二人にはこの場所のことを説明した方がよさそうだ。 |
イクス | はい、お願いします。俺もどうしてこんなところにいるのか……。 |
イクス | 仲間と一緒に、セールンド山のアイギス制御施設へ向かって、そこで気を失って……。俺の知らない俺――多分あなたの記憶を一瞬垣間見て……。 |
イクス1st | 混乱してるみたいだな……。ここは生き物が死んだ後、そのアニマが消滅するまでの待機場所のようなところだ。 |
イクス1st | 一般的には死ぬこととアニマの消滅は同義なんだが何らかの原因で、死んだのにアニムス――つまり肉体は死ななかったというケースがある。 |
イクス1st | そういう場合は、こうして【アニマのるつぼ】で肉体の死を待つことになる……んだと思う。 |
イクス1st | ということは、メルクリアも三番目だっていう君も死んだか、死にかけていると考えられる。 |
二人 | ! ? |
イクス1st | 何があったんだ ? 外で何が起きている ?君たちはどうしてここに来てしまったんだ ? |
イクス | あの……少し長い話になりますが聞いてもらえますか ? |
イクス1st | もちろん。どうせ時間だけは無限にあるからな。じっくり聞かせてくれ。君たちのことをさ。 |
イクス1st | ………………。 |
イクス1st | ……そうか。ミリーナとフィルが……。二人とも変なところで真面目だったからな。それにしたって、止める奴がいないとあの二人は……。 |
イクス1st | ――イクス……って、自分に呼びかけてるみたいで変な感じだな。まあ、とにかくそっちのイクスの話は一旦後回しにしよう。長くなりそうだ。 |
イクス1st | まずはメルクリアの方からだ。 |
メルクリア | わ、わらわ ? わらわがなんじゃというのだ ? |
イクス1st | メルクリア、君は今とても危険な状況だ。君のアニマの損傷が激しいのは鏡精ごと心を潰されたせいだろう。 |
イクス1st | このままだとメルクリアは植物状態になってしまう。そうなると後は衰弱して、その内本当に死んでしまう。 |
メルクリア | わらわが……死ぬ…… ? |
イクス | スピルリンクという、心を具現化して内部に入る手段があります。それで心を内側から修復することはできませんか ? |
イクス1st | 心を具現化して中に入る……。それがどんなものなのか、俺は実際に見ていないから断言はできないけど、恐らく無理なんじゃないかな。 |
イクス1st | メルクリアの心は具現化しても崩壊した状態だと思う。例えるなら地震で潰れた家のようなもんだ。中に入るのは難しい。 |
メルクリア | ……知らなかったこととはいえわらわは鏡精モリアンを見殺しにしたも同然じゃ。その罰なのかも知れぬな。 |
イクス1st | いやいや、そいつは違うな。誰が罰を与えたって言うんだ ? |
イクス1st | 仮にそれが女神ダーナの与えた罰だとしても筋違いにも程があるだろ。物わかりがよすぎるのもどうかと思うぞ。 |
イクス | そうだよ。悪いのはデミトリアス陛下とグラスティンだろ ? |
メルクリア | ……同じ顔で立て続けにうるさいわ。 |
イクス1st | はは、そりゃそうだ。悪かった。 |
イクス | けど、何かメルクリアを助ける方法はないんでしょうか……。 |
メルクリア | き、貴様に助けられる謂われはない !そも、セールンドの鏡士はこの世を滅ぼす鏡士じゃぞ ! |
イクス1st | ………………。メルクリアの傍にはビフレストの鏡士がいるんだったよな。 |
イクス1st | だったら……多分、俺を殺した時と同じ方法を使えば何とかなるんじゃないかと思う。 |
メルクリア | 離魂術か ? 何故それでわらわが助かるというのじゃ。 |
イクス1st | 離魂術っていうのか。名前は知らなかったけど俺の身体がいつまでも朽ちないのはその術のせいだと思う。 |
イクス1st | カレイドスコープもそうだけどアニマを切り離せるなら元に戻す手段もある筈だ。 |
メルクリア | ま、まことか ! ? |
イクス1st | ただ、その為には、メルクリアはこの【アニマのるつぼ】に居続けては駄目だ。ここは死者のアニマが消滅を待つだけの場所だからな。 |
イクス1st | 恐らく君のアニマは、俺の身体の近くにいてその影響を受けてここに辿り着いてしまったんだ。誰かが君を迎えに来てくれれば……。 |
メルクリア | こんな場所に誰が迎えに来てくれるというのじゃ……。 |
イクス1st | 二人の話を聞く限りだと、心当たりはあるよ。メルクリアの兄さんは俺の身体の中にいるから難しいか……。 |
イクス1st | そうだな……。メルクリアの兄さんの部下たちならこのるつぼにアニマが眠っているかも知れない。 |
イクス | バルドさんとかチーグルさんとか ? |
メルクリア | ! ? |
キャラクター | 2話【15-2 アジト1】 |
ジョニー | クレア、マリアン。通信番、交代するぜ。そっちはそろそろ食事の準備があるだろ ? |
クレア | ジョニーさん ! |
マリアン | お体は大丈夫ですか ? |
ジョニー | ああ。前線に立てないから、後方支援ぐらいはな。まったく、なんで俺はリビングドールから解放された他の連中より、治りが遅いんだろうな。 |
アルヴィン | ――よう、通信番の交代に来たぜっと……あれ、今日の当番は俺とエミルじゃなかったか ? |
ジョニー | ああ、エミルはイクスたちと外に出ていっちまってな。暇を持て余してるジョニー様が代わりを買って出たんだ。 |
アルヴィン | ……イクスの奴、また外に出たのか ?大丈夫なのかね。色々と。 |
クレア | それが、色々とあって……。今、申し送りをしますね。 |
パスカル | ねえねえ ! なんかこっちの索敵装置に真っ黒いのがどっぱーんって湧いてきてるよ ! |
マリアン | 真っ黒いの……ですか ? |
ヒューバート | それじゃあ伝わりませんよ、パスカルさん ! |
ヒューバート | 浮遊島索敵カメラの三番と四番を確認して下さい。まだかなり小さいですが、何かがセールンド方面から発生して、こちらに向かっています ! |
ジョニー | 何だ…… ? この黒い塊は…… ? 虫の集団か ? |
アルヴィン | 虫だとしたらかなりの大群だぞ ?しかも海から発生するなんてのは……。 |
ヒューバート | 何にしても、あれがこの浮遊島を目指していることは間違いありません。もし危険なものなら迎え撃つ準備が必要です。 |
アルヴィン | クレア、マリアン。アジト全体に緊急警報を発令してくれ。俺は戦えないチビ共が外をうろついてないか調べてくる。 |
ジョニー | 俺も行こう。ヒューバートの方は、今アジトに残ってる連中で迎撃準備を進めてくれ ! |
アミィ | え ! ? 何 ! ? |
エリーゼ | 警報……。アミィ、建物の中に避難しましょう。 |
アミィ | う、うん。 |
ルーク | 警報 ! ? これって、なんかやべー時になる奴だよな。 |
ティア | ルーク、アッシュたちへの指示は任せるわ。私は通信室に連絡をとってみるから。 |
ルーク | ああ、わかった。アッシュ ! 聞こえるか ! ? |
アッシュ | がなり立てるな ! 聞こえている。何があった ? |
アステル | 魔鏡通信機がなくても連絡が取れるなんて便利だなあ ! |
ディスト | はーっはっはっはっ !この私が、故郷にいた頃に連絡が取れるようにしてあげたのですよ。この私が ! |
アステル | 完全同位体……でしたっけ。どうしてそんなことができるんだろう。 |
ディスト | この世界と我々の世界では、完全同位体同士が連絡を取り合える仕組みに違いがあります。聞きたいですか ? |
アステル | はい ! 薔薇のディスト博士 ! |
ディスト | 仕方がありませんねぇ……。これは第七音素の存在の有無が―― |
アッシュ | ――ええい、黙れ、お前たち ! うるさくてレ……ルークの声が聞こえないだろうが ! |
二人 | ! ! |
アッシュ | もう一度言え、ルーク。黒い虫 ? それがセールンド方面から発生してアジトに向かっているのか ? |
二人 | ! ! |
ディスト | 黒い虫……。まさか、死鏡精ですか ? |
ジョニー | この辺りだって話だったよな。エリーゼとアミィが遊んでたって場所は……。 |
アルヴィン | くそっ ! ……二人ともどこに行っちまったんだ。 |
アミィ | だ……誰か ! ! 助けて ! ! |
ジョニー | アミィの声だ ! |
死鏡精A | カガミシ……カガミシ……。 |
アミィ | 私たちは鏡士じゃないよ……。 |
エリーゼ | 大丈夫ですよ、アミィ。わたしがあなたを守りますから ! |
アミィ | エリーゼ……。 |
アルヴィン | 俺も協力するぜ、お姫様。 |
ティポ | アルヴィン ! ナイスタイミング ! |
アルヴィン | ジョニー、アミィを頼む ! |
エリーゼ | アルヴィン、やりましょう ! |
キャラクター | 3話【15-5 アジト4】 |
アルヴィン | 倒しても倒しても湧いてくるな ! ? |
エリーゼ | キリがないです……。 |
ティポ | 流石に疲れて来ちゃったよー ! |
ジョニー | 二人とも、ここは任せていいか ?このまま手をこまねいてるとこの黒い虫どもが増える一方だ。 |
ジョニー | 俺はアミィを建物の中に避難させてそのまま助けを呼んでこようかと思うんだが。 |
アルヴィン | ああ、そうしてくれ ! 監視装置の映像から考えると今来てるのは虫共の先遣隊みたいなもんだ。本隊が来る前に、こっちの戦力を整えないとな。 |
ジョニー | よし、悪いが後は頼む。 |
ジョニー | アミィ、走れるか ?チェスターのところへ逃げるぞ ! |
アミィ | はい、ジョニーさん ! |
アッシュ | ルークの話だと、この辺りにアジトに繋がる転送ゲートがある筈なんだが……。 |
ディスト | ――おや、アッシュ。あなたの左手側の空間妙に歪んでいるように見えますが。 |
アッシュ | ……これか。あったぞ、ルーク。転送ゲートだ。 |
ルーク | よし、今、ゲートのロックを解除するよ。えーっと……これでいい筈……。 |
アッシュ | 開いたか ? |
ルーク | うん、開いた ! |
アッシュ | おい、鼻たれの死神。 |
ディスト | な ! ?あなたに鼻たれなどと言われる筋合いはありませんよ ! ? |
アッシュ | いいからお前から行け ! ! |
アステル | 蹴った ! ? |
ディスト | ギャ―――― ! ? |
アステル | あの、よかったんですか、アッシュさん ! ? |
アッシュ | これくらいでくたばるような繊細な奴じゃないだろう。 |
ルーク | ――うわ ! ? アッシュ ! ?なんでお前じゃなくてディストが転送ゲートから出てきたんだよ ! ? |
ルーク | 帝国から脱走するのに、こいつも連れてきたのか ! ?ジェイドに殺されるぞ ! ? |
アッシュ | 行きがかり上、仕方がなかったんだ。これから俺とアステルもそっちに行く ! |
ジョニー | アミィ、あと少しだ。 |
アミィ | はい ! |
死鏡精 | カガミシ……カガミシ……。 |
アミィ | きゃあ ! ? |
ジョニー | 囲まれたか ! |
ジョニー | いいか、アミィ。俺が敵の真ん中に突破口を作る。俺が合図したら、アミィは振り返らずに走り抜けて建物の中に逃げ込むんだ。 |
アミィ | でも、ジョニーさんは ?ジョニーさん、まだ身体が治っていないってジュードさんが……。 |
ジョニー | 本調子じゃなくたって、こんな虫の化け物ぐらいは余裕で片付けられるさ。行くぞ ! |
ジョニー | ソニックレイブ ! |
死鏡精 | ウアァァッ ! ? |
ジョニー | 今だ ! アミィ ! |
アミィ | は、はいっ ! |
ジョニー | よし、いいぞ。そのまま逃げるんだ ! |
死鏡精 | ……シネ……セカイゴト……シネ…… ! |
ジョニー | ……おいおい、倒したそばから増えるってのは勘弁してくれよ。まさか本隊とやらが到着しちまったのか…… ? |
ジョニー | 仕方ねぇな !ビートヘヴン ! |
死鏡精 | アアァァッ…… ! |
ジョニー | ……く…… ! |
ジョニー | (まずいな……。だんだん視界がぼやけて来やがった。道化のジョニーもここまでか…… ? ) |
ジョニー | ――いいや、最後の最後まで足掻いてみせるさ。 |
ジョニー | ミ・ラ・ク・ル~ぅわあぁぁぁぁぁおぅ ! |
ルーク | アッシュ ! おかえり !みんな、お前のこと心配してたんだぞ。無事に戻ってこれて良かった ! |
アッシュ | フン……。貴様に心配されるとは俺も落ちぶれたな。 |
ルーク | 口が減らないのは変わってないなー……。 |
アッシュ | 何 ! ? |
ティア | アッシュ、今は我慢して。アジトが大変なの。ええっと、そちらは―― |
アステル | アステルです。ここにお邪魔するのは二度目です ! |
ティア | ――ああ、あなたが。話は聞いているわ。その……大佐――ジェイド大佐から。 |
ティア | どうしてあなたたち三人が一緒にいるのか聞きたいところだけれど今ここは敵襲を受けていて……。 |
アステル | もしかして、死鏡精ですか ? |
ティア | 死鏡精 ! ?あれが……ミリーナたちの言っていた……。 |
ティア | いえ、それは実際に見てもらった方がいいかもしれないわね。アジトのセールンド側から見たことのない敵が襲ってきているの。 |
ルーク | 敵襲を受けてるのはこっちだ ! 一緒に来てくれ ! |
ディスト | ちょ、ちょっと待ちなさい !アッシュやレイカー博士はともかく、何故私があなたたちに協力しなければならないのですか。 |
ルーク | 一緒に来ればジェイドも喜ぶんじゃねーかな。ディストに会いたがってたし。 |
ディスト | ! ? |
ティア | ルーク ! ? |
ルーク | ティア。言いたいことはわかる。けど、ジェイドに押しつけちまえば後はどうとでもなるだろ ? |
ティア | え、ええ……。そ、それはそうね……。 |
ディスト | ――ふふふ、そうでしょうそうでしょう。やはりジェイドには私が必要なのですよ。やっとわかったのですね、ジェイド。 |
ディスト | ええ、仕方ありませんね。この私のたぐいまれなる頭脳が必要だというのなら特別に力を貸してあげましょう。 |
アッシュ | ……俺は知らんぞ。後でどうなっても。 |
キャラクター | 4話【15-6 集合的無意識2】 |
イクス1st | ……さて。メルクリアに関しての俺の見解はこんなところかな。 |
イクス1st | メルクリアはここで、るつぼの外からの声に耳を澄ませているといい。 |
イクス1st | 絶対に自分を失うなよ。それからどんなに眠くなっても絶体に眠っちゃ駄目だ。眠ったら存在が融けて本当に死んでしまう。 |
メルクリア | ……わかったような、わからぬような……。 |
イクス1st | 俺も死んだ存在だからな。これ以上助けてあげられなくてごめん。 |
メルクリア | ……べ、別にセールンドの人間に助けてもらおうなどとは思わぬ。 |
イクス1st | はは、そうだよな。敵国だもんな。 |
イクス1st | さて、次は三番目だって言う君の番だ。 |
イクス1st | 多分、俺がるつぼの中でこうして自我のようなものを取り戻して話しているのは三番目だっていう君の存在の影響だと思う。 |
イクス1st | メルクリアに声をかけられるまで俺はるつぼの中に融けていた……んだろうな。 |
イクス | 俺はどうしてここにいるんでしょう。 |
イクス1st | 俺の死体が何かに使われているんじゃないかな。その、メルクリアのお兄さんの身体としてだけじゃなくて……。 |
メルクリア | ……わらわが……おぬしのアニムスを利用してオーデンセを具現化しようとしたことは関係あるか ? |
イクス1st | ……なるほど。保存された死体の記憶を使って具現化か……。そんなことができるなんて凄いな。 |
イクス1st | 確かにそれは関係あるかも知れない。ただ、それだけじゃない気もするけどさ。 |
イクス1st | まあ、外で何が起きているのかはわからないけど俺のアニムスと三番目の君のアニマが一時的にキメラ結合して―― |
イクス1st | 細かいことはいいか。限りなく似た存在同士で磁石みたいにひっついたって感じだろうな。 |
イクス | 俺は……あなたですからね。 |
イクス1st | 俺……にしては、控えめでしっかりしてるように見えるけど。君は『いくつの俺』を具現化されたんだ ? |
イクス | 17歳じゃないでしょうか。 |
イクス | フィル……フィリップさんの話だと、ゲフィオン……ミリーナさんは、初めて長期の漁に出る直前の具現化を希望したみたいです。 |
イクス1st | それって、プロポーズの夜か ! ? |
メルクリア | プロポーズとな ! ? |
イクス | あ、いえ、俺にはその時の記憶はないので実際はプロポーズのタイミングより少し前の時間軸から具現化されたんだと思います。 |
イクス | そもそも……その俺の中ではミリーナにプロポーズする程気持ちも盛り上がってなくて……。 |
イクス1st | やめろ……やめてくれ……。自分の顔でプロポーズだの盛り上がっただの言われたくは……。 |
イクス1st | ――うん ? 盛り上がってない ? |
イクス | あ、さっきざっくり話しましたけど、俺は……その、過去の記憶や感情を改ざんされてるみたいで……。 |
イクス1st | そうか……。そうだったよな。フィルの奴、手紙読んでくれなかったのかな。 |
イクス | 手紙…… ? |
イクス1st | ……いや、いいんだ。俺が自信過剰だったのかもな。フィルは俺のことが好きだから必ず手紙を読んでくれるって思い込んでたんだ。 |
イクス | (す、すごい自己肯定感だな……。俺、絶対そんな風には思えないよ……。だって刺された相手だぞ ! ?) |
イクス | その……好きだから、嫌われたことを確認したくなくて手紙を読めなかった……とか ?あ、いえ、読んでるかも知れないですけど。 |
メルクリア | 何が書いてあるかわからぬままの方が恐ろしいではないか。ビクエも不思議な奴じゃの……。 |
イクス | はは……。なんて言うか、二人ともすごいな。俺、あんまり自分に自信が持てない方で……。 |
イクス | あ、いや、このままじゃいけないなって思ってはいるんです。だから努力して、自信を持てる自分になるって……。 |
イクス1st | えー、すごいな ! ? 君、本当に俺の具現化なのか ?俺、そんなに努力家じゃないよ。見た目はそっくりだけど、やっぱり違うんだな。 |
イクス | そう……かもしれませんね。俺はあなたの17歳までの記憶を受け継いで作られた存在で……でも過去を改ざんされていて……。 |
イクス | どちらかというと枝分かれしたあなたの可能性の一つ……なのかも知れない。 |
イクス1st | でも17歳の俺にしては、随分背が高いな。 |
イクス | あ、それは、魔鏡結晶の中に閉じ込められている時に急激に成長したみたいで……。実感はないんですけど。 |
イクス1st | その辺の理屈はよくわからないな。俺は鏡士になりたてだし……。鏡士歴で言えば、君の方が先輩だ。 |
イクス1st | ……色々総合すると、君は理想のイクスなのかもな。 |
イクス | ! ? |
イクス1st | 鏡士を目指さず、漁師として生きようとした俺。俺が鏡士にならなければ――俺は死ななかったし多分戦争も起きなかった。 |
イクス1st | いや、起きたのかも知れないけど君たちから聞いたような歴史にはならなかったんだろうな。 |
イクス | 俺があなたの理想なんですか ! ? |
イクス | そんな筈ない。あなたはミリーナ――ゲフィオンから愛されて、フィルに尊敬されてあなたを失いたくなかったからみんなが……。 |
イクス1st | 俺の理想って意味じゃないよ。俺は……俺の理想は――いや、その話は置いておくか。 |
イクス1st | 俺じゃなくて、『世界』にとっての理想だよ。俺が君みたいだったら、世界は話に聞くような絶望に陥らなかっただろうって。 |
イクス | 俺が『世界』の理想…… ? |
メルクリア | 世界の理想だから何じゃ。そんなこと、おぬしにとってはどうでもいいことではないか。 |
イクス | ! ? |
イクス1st | ああ、そうだな。確かにメルクリアの言う通りだ。誰かの理想とか、想いとかそんなもの、本当はどうでもいいもんな。 |
イクス1st | 君だって三番目だなんて名乗る必要もない。っていうか、俺の具現化だからって俺に縛られることもないんだぜ。 |
イクス | え ! ? けど、自分の具現化に託したい想いとかそういうのは……。 |
イクス1st | 託されたいのか ? |
イクス | ………………。 |
イクス1st | ああ……でも、託したいって訳じゃないけど伝えておかなきゃって思うことはあったな。 |
イクス | 何ですか ? |
イクス1st | どうして俺がビフレストに殺されたのか、だよ。メルクリアはどうして俺が殺されたか聞いてるか ? |
メルクリア | セールンドの鏡士は悪だからじゃ。 |
イクス1st | はははは、ビフレストから見ればそうだろうな。じゃあ、どうして悪なのか知ってるか ? |
メルクリア | そ、それは鏡精を作るからじゃ。 |
イクス1st | どうして鏡精を作ったら悪なんだ ? |
メルクリア | それは……………………何故じゃ ? |
イクス1st | 俺も知らない。 |
メルクリア | 何じゃと ! ? |
イクス1st | 怒った顔も可愛いな、ビフレストのお姫様は。 |
メルクリア | ! ? |
イクス | (す、すごい……。変な言い方だけどこの人は俺じゃないんだな。記憶を弄られなかったとしてもこうなったとは思えない……) |
イクス1st | ごめんごめん。鏡精を作っちゃいけない本当の理由は俺も知らないよ。 |
イクス1st | でも俺が殺された理由と鏡精を作っちゃいけない理由は……多分関係があるんだと思う。 |
イクス1st | 俺がビフレストに命を狙われたのは俺がバロールの魔眼を持つ鏡精を生み出せるからだって祖父ちゃんが言ってたから。 |
イクス | ! ? |
イクスの祖父 | そうだな。そろそろちゃんと話して聞かせる時が来たのかも知れないな。 |
イクスの祖父 | イクス。お前は特別なんだ。お前が鏡士になるということは世界の理を変えることになるかも知れない。 |
イクスの祖父 | 私はお前を亡くしたくない。お前の父も母も同じだ。それでも鏡士になるというなら、一つ約束してくれ。けっして鏡精を生み出さないと。 |
イクス | どういうことだ ? |
イクスの祖父 | お前は私と同じバロールの魔眼を受け継いだ。ネーヴェの家系に生まれる破戒者の証だ。 |
イクス | バロールの魔眼 ?何だか禍々しい名前だけど……それって何なんだ ? |
イクスの祖父 | バロールの魔眼は女神ダーナの作ったこの揺り籠を解く力だ。世界に『死』を放つ。 |
イクスの祖父 | その力は生み出した鏡精に宿り鏡精を通じて鏡士にも宿る。だからお前は鏡精を生み出してはならないんだ。 |
イクス | 俺が鏡精を作ると世界を滅ぼすことになる…… ? |
イクスの祖父 | そうだ。お前が鏡士になればビフレストが黙っていないだろう。命を狙われることになる。世界を守るという名目でな。 |
イクス | ビフレストに命を狙われることをわかっていて鏡士になったんですか ! ? |
イクス1st | ああ。少し悩んだけどそれが父さんたちの遺言でもあったから。 |
イクス | 父さんたちの遺言 ? |
イクス1st | ああ、そうか。17歳の俺じゃ、まだ見つけてないな。父さんと母さんの形見の魔鏡に遺言が記録されてるんだ。戻ったら見てみるといいよ。 |
イクス1st | まあ、親の記憶なんてほとんどないけどな。二人が王都に行ったのは、俺がまだ赤ん坊の頃だし。そのまま二度と会えなかったから。 |
イクス1st | それでも……背中を押してくれるきっかけにはなった。 |
メルクリア | ………………。 |
キャラクター | 5話【15-7 集合的無意識3】 |
ルーク | こっちだ ! |
ティア | ルーク ? そっちは畑がある方よね ? |
ルーク | こっちからの方が近道になるんだ。 |
ティア | 詳しいのね。意外だわ。 |
ルーク | アジトのガキはみんなここらで遊ぶんだよ。そしたらメシの時間に早く帰れるし。 |
アッシュ | お前もガキ共と戯れているって訳か。精神年齢が合っていて良かったな。 |
ルーク | はあ ! ? 違うっつーの !この間エリーゼに聞いたんだよ ! |
ジョニー | ……うっ ! ? |
ディスト | ……何です ?今のプレス機で熨されたイカのような声は ? |
アッシュ | タコの貴様にそんなことを言われたくはないだろうよ。 |
アステル | あ ! ? あっちの建物の方に倒れてる人が……。あれってジョニーさんじゃ…… ? |
ルーク | ジョニー ! ? 何でジョニーが ! ? |
ディスト | 周りの黒い集団は……やはり死鏡精ですね。 |
ティア | とにかく、ジョニーを助けましょう ! |
ジョニー | おいおい……ここは一体どこだ ? |
イクス1st | おっと、また誰か来たな。どうしていきなりアニマとアニムスの状況が乖離した死者が増えたんだ ? |
メルクリア | 何者じゃ ? この男は……。 |
イクス | ――え ! ?ジョニーさん ! ? 死んじゃったんですか ! ? |
ジョニー | イクス、会うなりその言い種は―― |
ジョニー | いや、イクスはそういう冗談を言うタイプじゃなかったな。待ってくれ、つまり俺は死んだ……ってことか ? |
イクス1st | いや、どうだろう。ここに来る直前に何があったかにもよると思うからな……。 |
イクス1st | メルクリアやイクスのことを考えると、あなたもアニマに何か深刻なダメージがあっただけで生きているのかも知れない。 |
ジョニー | ……あんた、ナーザ将軍か ? |
メルクリア | 兄上様を知っておるのか ! ? |
ジョニー | ということは、お嬢ちゃんがメルクリアか。 |
イクス | ジョニーさん、彼女はメルクリアだけどあっちはナーザ将軍じゃありません。最初のイクス・ネーヴェ、だそうです。 |
ジョニー | ! ? |
ディスト | キィィィィィ ! 早く死鏡精を何とかしなさい ! ? |
ルーク | だったらあんたも戦えよ ! |
アッシュ | 諦めろ。奴は譜業がなければ単なる生ゴミだ。墨でも吐ける分、タコの方が役に立つ。 |
ディスト | 何なんです ! ? 一々私をタコ呼ばわりして ! ? |
ティア | 駄目だわ。敵の数が多すぎる。それに死鏡精たちがみんなジョニーを狙ってくるから守りながら戦うにはもっと戦力が―― |
ガイ | そういうことなら、協力するぜ ! |
二人 | ガイ ! ! |
ティア | アニス、ナタリア、大佐 ! それにイオン様まで ! ? |
イオン | 微力ですが、非戦闘員の保護ぐらいなら僕でもお役に立てると思います。 |
アニス | イオン様、絶対無茶しないで下さいね ! |
アッシュ | ナタリア……。 |
ナタリア | お話は後ですわ。今は敵を迎撃しなければ ! |
チェスター | おっと、オレたちがいることも忘れるなよ。 |
ルーク | クレスたちも来てくれたのか ! ? |
クレス | ああ。もっと奥でアルヴィンとエリーゼも取り残されているらしいんだ。 |
チェスター | アミィを助けてくれたって聞いてな。礼はきっちり返さねえと。 |
ジェイド | ジョニーのことはこちらにおまかせを。 |
アーチェ | あたしたちはアルヴィンとエリーゼを助ければいいのよね。 |
すず | 皆さん、急ぎましょう。 |
クラース | 他に死鏡精が取り憑いた地点もそれぞれ迎撃隊が向かっている。みんな、何とか乗り越えよう ! |
ジョニー | なるほど、行き場を失った心の墓場……みたいな場所ってことか。 |
イクス | でもジョニーさんの場合はどうしてここに……。話を聞く限りでは、アジトを襲っている敵は死鏡精だと思うんですが、それと関係あるのかな……。 |
イクス1st | 死鏡精…… ? |
イクス | あなたも知らないんですか ! ? |
イクス1st | 俺は鏡士になったばかりだったからな……。 |
メルクリア | 死鏡精……。兄上様が何か仰っていたような……。 |
イクス | 死鏡精は……キラル分子を生成するために殺された鏡精の怨嗟が形になったものだってネヴァン――カーリャが言ってた。 |
イクス1st | カーリャ ? ミリーナの鏡精の ? |
ジョニー | そうか……。あれが前にイクスたちが話していた死鏡精か……。 |
メルクリア | 待て。キラル分子を鏡精で作っていた……じゃと ?何と言うことを……。セールンドの鏡士は悪魔か ! ? |
イクス1st | ……………………。だから、父さんと母さんは……。 |
イクス1st | ――いや、それよりジョニーさんのことだ。俺の乏しい知識で予測するに、恐らく死鏡精というのは鏡精に残された最後の原始的なアニマだと思う。 |
イクス1st | アニマはアニムスを求める。わかりやすく言えば身体を失った鏡精の心は、新しい身体を求めるってことだ。 |
イクス1st | ジョニーさん、意識をしっかり保って下さい。死鏡精があなたの身体を奪おうとしている。だからあなたの心がこのるつぼに来てしまったんだ。 |
三人 | ! ? |
キャラクター | 6話【15-10 救世軍のアジト1】 |
ナーザ | ……ここか。かつて救世軍が使っていた根城というのは。 |
ジュニア | ……周りが雪山だから……冷えますね。 |
リヒター | 雨風しのげるだけマシだろう。転送魔法陣が使えて、帝国がいない場所と言えばここぐらいしか思いつかなかった。 |
リヒター | 今、火をおこす。メルクリアを火にあたらせよう。 |
ナーザ | ……リヒター。何故メルクリアにここまで肩入れする ? |
ナーザ | 四幻将だったとはいえ、お前を帝国に縛り付けていたのはレイカー博士が人質だったからに過ぎぬだろう。 |
リヒター | メルクリアは……元の世界の俺だ。それよりはずっと幼いが、同じように愚かだ。 |
リヒター | だがメルクリアは少しずつその愚かさから脱却しようとしている。 |
リヒター | 元の世界で俺は生き方を変えられなかった――変える気もなかったが、こんな幼い子供が俺と同じような生き方をする必要はない。 |
ナーザ | 失った者を取り戻すための復讐か……。 |
ナーザ | わかった。ならば俺はもう何も言うまい。 |
ナーザ | リヒター。それにジュニア。俺はアスガルド帝国皇帝を自称するデミトリアスを討つ。 |
ナーザ | しかしその為には、もっと力が必要だ。お前たちの力を貸してくれまいか。 |
ナーザ | 俺のためなどではない。メルクリアが『呪い』に打ち勝ち平穏に暮らすための世界を取り戻すためだ。 |
リヒター | ……そのつもりでここへきた。 |
ジュニア | 僕もです。それに……僕のマークも。 |
ナーザ | 鏡精か……。背に腹は代えられぬか。マークは今どこにいる。 |
ジュニア | さっき合流して、この周辺の様子を見てくれてます。 |
ナーザ | わかった。後は……メルクリア、か。鏡精ごと心を潰された。何とかしてメルクリアの心を修復せねば……。 |
? ? ? | ウォーデン様。 |
ナーザ | ナーザと呼べ、バルド。 |
リヒター | バルド ! ? 奴もいるのか ! ? |
ジュニア | はい。あの……少しでもメルクリアの助けになる人を増やしたくて……。僕が無理矢理こちらに呼び寄せました。 |
ナーザ | セールンドの鏡士は、平気で死者に手を伸ばす。外道ではあるが、今回はそれに助けられた。今バルドは人工心核に宿っている状態だ。 |
バルド | リヒター、ご無沙汰しています。 |
リヒター | ……ああ。姿が見えないから妙な感じだな。 |
バルド | ご容赦下さい。これから我らは、ナーザ様の元で共に戦う者。ビフレスト聖騎士団の仲間です。 |
リヒター | ……四幻将だの聖騎士団だの俺にはどうでもいいことだ。 |
バルド | その通りですね。すみません。 |
ナーザ | バルド。何の用だ ? |
バルド | メルクリア様ですが人工心核を利用してはどうでしょうか。 |
バルド | メルクリア様の心が消えてしまう前に人工心核に移し、それから治療を施せば時間が稼げるのでは。 |
ジュニア | そうだ……。シドニーの分に使うつもりだった人工心核があります。 |
ジュニア | でも、ソーマか特別な魔鏡でもなければ心の中に入ることは……。 |
リヒター | イクスたちに助けを求めるか ? |
ナーザ | ……いや。ビフレスト式で行く。幸いこの身体は鏡士の身体だ。バロールの血を引くだけに、力は申し分ない。 |
リヒター | バロールの血 ? |
ナーザ | 女神ダーナを殺そうとした悪しき男の名だ。オーデンセのネーヴェ家はバロールの末裔と聞いている。 |
ジュニア | ! ? |
ジュニア | ――待って !マークが……マークの気配が弱まってる ! ? |
リヒター | な、何だ ! ? |
ナーザ | 死鏡精か。何故ここに…… ! |
死鏡精 | ミツケタ……ワタシノマスタア……。 |
リヒター | 狙いはメルクリアか ! ? |
死鏡精 | カワイソウナマスタア……。タスケテアゲル……ワタシガ……。 |
メルクリア | ! ? |
イクス | どうした ? メルクリア ? |
メルクリア | あ……苦し……わらわ……が……―― |
イクス1st | まずい ! ? メルクリアの心が消える ! ?何とかつなぎ止めるんだ ! |
イクス | メルクリア ! 消えるな ! |
ジョニー | ――お姫様 !このジョニー様の歌声を頼りに戻ってくるんだ ! |
メルクリア | 何じゃ、その歌は……。ふふ……楽しくなるでは……ないか……。 |
? ? ? | ウルサイオト…… ! ? ジャマシナイデ…… ! |
二人 | 危ない ! ! |
ジョニー | くっ、あいつだ。浮遊島を襲ってきたのは……。 |
イクス | 死鏡精か ! |
死鏡精 | マスタアヲカエシテ ! |
一同 | ! ? |
メルクリア ? | フ、フハハハ ! ようやく身体を得たぞ ! |
ジュニア | メル……クリア ? |
メルクリア ? | メルクリアさまはわらわの中で眠っておる。わらわはもう誰にもメルクリアさまを傷つけさせぬ。 |
メルクリア ? | わらわとメルクリアさまを絶望に追いやる全てに復讐してやる ! |
ナーザ | ……貴様、死鏡精か。メルクリアの身体を奪ったな ? |
メルクリア ? | 奪ったのではない。戻ってきたのじゃ。ここがわらわのいるべき場所だからな ! |
モリアン | わらわはモリアン !メルクリアさまを守る鏡精であった者。そしてメルクリアさまを永遠に守る者じゃ。 |
モリアン | わらわはもう鏡精ではない。わらわとメルクリアさまは一つに戻ったのじゃ !集え、我が仲間たちよ ! |
モリアン | さらばじゃ、メルクリアさまとわらわを守れなかった鏡士共 ! |
モリアン | わらわはメルクリアさまの望み通りビフレストへ行く ! |
キャラクター | 7話【15-12 アジト5】 |
カーリャ・N | イクス様……大丈夫でしょうか。 |
コーキス | マスター……。 |
ミリーナ | 呼吸はしているから……。多分……。 |
エミル | 駄目だ。みんな通信に出ないや。 |
マルタ | 何かあったんじゃ……。 |
ミリーナ | 気になるわね。転送ゲートでアジトに戻りましょう。私が開くわ。 |
テネブラエ | その方法は身体に負担が掛かるのでは ? |
ミリーナ | 緊急事態だもの。大丈夫。さあ、みんな、集まって ! |
イクス | え……あれ…… ? |
ジョニー | おい、メルクリアの次はイクスもか ! ?よし、もう一度俺の歌で―― |
イクス1st | ……いや、これは違うよ、ジョニーさん。イクスが俺の死体のそばから離れてるんだ。 |
イクス1st | 物理的に距離が離れれば、俺に引かれてるつぼに来ていたイクスの心もキメラ結合が解けて離れていく。 |
イクス | あ、じゃあ、ミリーナたちが俺をセールンド山から運び出してるのかな ? |
イクス1st | ……お別れだな。イクス。 |
イクス | あなたは……どうなるんですか ? |
イクス1st | 融けてるつぼの一部になる。そして死ぬ。 |
イクス1st | いや、もう死んでるんだからメルクリアのお兄さんが死体を返してくれるまでここで眠るんだろうな。 |
イクス1st | まあ、そのまま目覚めることもないからこれが本当のお別れだ。 |
ジョニー | 訳がわからないな。あんたは生きてるようにしか見えないが。 |
イクス1st | 死んでますって。離魂術……だったかな。そのせいでこんな状況になってるだけで本来なら、二人と出会うこともなかった。 |
イクス1st | 幽霊みたいなものです。でも会えてよかった。俺の幼なじみのやらかしをフォローできそうだ。 |
イクス | え……。それはどういう……。 |
イクス1st | フィルに伝えてくれ。手紙、ちゃんと読んでくれたかって。もし読んでたら……もう一度思い出してくれって。 |
イクス | ミリーナさんには ? |
イクス1st | ミリーナに声が届けられるのか ? |
イクス | わからないですけど、可能性はあります。 |
イクス1st | ……じゃあ―― |
ジョニー | おい、イクス ! ? |
イクス | イクスさん ! |
イクス1st | ――やっぱりいいよ。ミリーナを惑わせたくない。それにミリーナに届ける声は俺自身の声でありたいからな。 |
イクス1st | なあ、イクス。全部捨てていいんだ。俺のことも世界だって、ミリーナの愛情だってな。 |
イクス | ! ? |
イクス1st | イクスは自由だ。俺もお前も自由だ。忘れるなよ。 |
イクス | イクスさ―― |
ジョニー | 行っちまったな……。 |
イクス1st | ジョニーさんも、呼ばれているみたいですよ。 |
ジョニー | え ? |
ルーク | ……よし、第三波も片付けたぞ。 |
ナタリア | 油断はできませんわ。すぐにまた現れるかもしれません。 |
ジェイド | ええ、ナタリアの言う通りでしょうね。このままではこちらが消耗してしまう。 |
ディスト | 死鏡精は無尽蔵に出現する訳ではありません。虚無との接触手段が限られている以上どこかで途切れる筈ですよ。 |
ジェイド | ……なるほど。流石詳しいですね、サフィール。 |
ディスト | 私のことをサフィール……と ! ?そ、そうですか ! 私の古い名を呼ぶ程私に会いたかったのですね、ジェイド。 |
イオン | ――ディスト。少し黙って下さい。 |
ディスト | ! ? |
イオン | ジョニーが、わずかですがこちらに反応しています。これはもしや……。 |
アッシュ | ――な、何だ。何故俺とルークを見ている。 |
ルーク | え ! ? 俺たちに何かできることがあるのか ! ? |
アニー | 皆さん ! ? 戻られたんですね ! ?連絡が途絶えたと聞いていましたから心配していました。 |
ミリーナ | ごめんなさい。でも大変なの。イクスがまた倒れて―― |
マルタ | 待って、ミリーナ。イクスが目を覚ましたみたい。 |
二人 | ! ? |
イクス | ……う……ここは……。 |
アニー | ここはアジトです。今、脈を診ますね。 |
イクス | ……アジト…………。 |
コーキス | マスター、大丈夫か ! ? |
イクス | コーキス……。 |
イクスの祖父 | その力は生み出した鏡精に宿り鏡精を通じて鏡士にも宿る。だからお前は鏡精を生み出してはならないんだ。 |
イクス | ………………。 |
コーキス | マスター…… ? |
アニー | 少し脈が速いですね。 |
イクス | ――そうだ !アジトが死鏡精に襲われてるんだよな ! ? |
アニー | え、ええ……。誰かがイクスさんたちに連絡してくれたんですね。 |
ミリーナ | え ! ? いえ、私たちは初耳だけど……。イクス、どういうこと ? |
イクス | 後で話す !アニー、ジョニーさんが危険なんだ ! どこにいる ! ? |
アニー | ジョニーさんの救出ならナタリアさんたちが向かいました。 |
イクス | 案内してくれ ! |
アニー | わ、わかりました。 |
ミリーナ | ……イクス…… ? |
カーリャ・N | 小さいミリーナ様 ? |
カーリャ | みんな、行っちゃいましたよ ! ? |
ミリーナ | え、ええ ! すぐ行くわ ! |
キャラクター | 8話【15-14 アジト7】 |
イオン | ジョニーが反応しているのは僕の中のローレライの気配なのではと思うんです。 |
イオン | ジョニーは特異鏡映点として過去のティル・ナ・ノーグの具現化そして精霊ローレライの研究に利用されていた。 |
イオン | 元々負のアニマを持ち、過去の具現化の実験をさせられていた段階で、彼は時間の概念を帯びている……のではないでしょうか。 |
ジェイド | イオン様……。あなたはこの世界の――鏡映点の時の流れが異質であることに気付いているのですね。 |
イオン | やはりジェイドもですか。僕はディストやハロルドから聞いただけですが……。 |
ルーク | 鏡映点の時間の流れ…… ? 何だそりゃ ? |
イクス | ……それは、鏡映点の人たちの時間が止まっているということですか ? |
十四人 | ! ? |
ジェイド | なるほど、イクスも気付いていましたか。 |
ガイ | ちょっと待ってくれ……。意味がわからないんだが……。時間が止まってる ? |
アステル | 正確には、時間がループしているんです。だって、皆さん、お腹はすくでしょう ? |
ディスト | この世界の鏡映点は、時間の流れが止まっていることに対してもある種の生体恒常性を保っています。 |
ディスト | 肉体の老化現象だけが停止している……と考えればいいでしょう。 |
イオン | 今は、皆さんの理解を待つ余裕はありません。ジョニーを助けなければいけませんから。 |
イオン | とにかく、鏡映点は何らかの理由で時間の流れが止まっている。にもかかわらずジョニーの恒常性に狂いが生じている。 |
ジェイド | だから、ジョニーの容体だけがいつまでも安定しなかった――か。ええ、辻褄は合います。 |
ジェイド | ……そうか。ローレライはこの世界では音の精霊として認識されているが本来は時の精霊に似た性質を持っている。 |
ジェイド | ローレライの力を研究する際ジョニーは本来相性がいい訳ではないローレライに干渉させられた。 |
ジェイド | それが恒常性が安定しない原因か。 |
ディスト | アッシュ、あなたには一度ローレライをまとわせてあげましたね。 |
ルーク | え ! ? 精霊装みたいなことか ! ? |
アッシュ | ……精霊装とは違うがな。俺はローレライに接触するためディストを利用したんだ。 |
ディスト | ……やはりここの鏡士との縁は切れていなかったのですねえ。帝国の調査もいい加減なものです。 |
ディスト | まあ、私には大した問題ではありませんが。あなたが間者かどうか調べることで、デミトリアスを安心させて資金を引き出せればよかったので。 |
イオン | アッシュ、では僕と協力してローレライを呼んでみて下さい。 |
イオン | ローレライが狂わせたジョニーの恒常性を取り戻してもらいましょう。 |
ルーク | 俺は ? 俺も協力しなくていいのか ? |
ジェイド | いえ、あなたは関わらない方がいい。前にも説明したとおり、この世界における第七音素の性質はまだはっきりしていません。 |
ジェイド | あなたを失う訳には行かないのです。あなたは……レプリカなのですから。 |
ディスト | ………………。 |
ジョニー | ……なんだ ? 戻ってきたのかと思ったがここは……るつぼなのか ? |
アッシュ ? | ジョニーか。久しいな。 |
ジョニー | アッシュか ? どうしてお前がここにいるんだ ?お前もるつぼに来ちまったのかい ? |
ローレライ | 私はローレライ。今はルーク……いやアッシュの姿を借りている。 |
ジョニー | 精霊ローレライ、か……。なんて夢を見てるんだ。 |
ジョニー | あんたのおかげで、俺は苦労させられたよ。あんたを呼び出せだの、降ろせだのと。 |
ローレライ | すまなかった。お前が奏でる負のアニマを帯びた音と星の記憶を視る時に発する私の音が重なってしまった。 |
ローレライ | そのせいで、お前だけがクロノスの理から外れてしまったようだ。 |
ジョニー | 難しいことを言われても困るんだがつまりどういうことだ ? |
ローレライ | 私の因子を返してもらう。それでお前は皆と同じ時間に生き――戦う度に身体を蝕む傷みからも解放されるだろう。 |
ジョニー | 要するに俺を治療してくれるってことか。そいつはありがたいね。 |
ローレライ | ジョニー。私には視える。お前の歌は負のアニマを帯びている。 |
ローレライ | そしてその力が、取り残された鏡精たちの時間を巻き戻すだろう。 |
ジョニー | 何だって ? それは一体―― |
ジョニー | …………今度こそ……現実、か ? |
イクス | ジョニーさん ! はい、ここは俺たちのアジトです ! |
ジョニー | イクス ! ?そうか……。お互いるつぼから生還できたんだな。 |
ジョニー | しかし、何だって俺の隣でアッシュとイオンが寝てるんだ ? |
ジョニー | 今まで見てたローレライの夢と関係があるのか ?ローレライがアッシュの姿をして出てきたんだが……。 |
ジェイド | この二人がローレライを召喚してジョニーの身体に残されていたローレライの力を回収したんですよ。 |
ジョニー | なるほど。あれはただの夢じゃなかったんだな。……じゃあ、ローレライが言ってたあの言葉も……。 |
ジェイド | ローレライの言葉……というのは大いに気になりますがどうやら話を聞いている時間はなさそうです。 |
ガイ | ――おっと、また死鏡精共が湧いてきたのか。しかしアッシュたちがこの状態じゃ……。 |
ルーク | 俺が二人の分まで戦う ! |
ガイ | ルーク……。 |
ジョニー | ……なあ、俺に考えがあるんだ。少しだけ時間を稼いでもらえるかい ? |
ジョニー | ローレライの言葉を信じるなら俺にもできることがある。 |
ジェイド | ――わかりました。あてにしますよ。 |
アニス | ナタリア ! 二人でイオン様とアッシュを守ろう ! |
ナタリア | ええ ! |
ガイ | はは、頼もしいな。女性陣は。アステルとディストも下がってろ。庇いながら戦うには戦力が足りないからな。 |
カーリャ・N | 戦えない方は、私がフォローします ! |
イクス | 俺たちのことも忘れないでくれ。みんなと一緒に戦うよ ! |
ミリーナ | ええ、当然よね。エミル、マルタ、アニー。力を貸してくれる ? |
エミル | もちろんだよ。 |
アニー | 任せて下さい。 |
マルタ | 死鏡精だか何だか知らないけど、ぶっ潰す ! |
イクス | よし――行くぞ ! |
キャラクター | 9話【15-15 ジョニー】 |
ルーク | おい、ジョニー ! まだかよ ! ? |
ジョニー | ――よし。どうやら本気で歌っても大丈夫みたいだ。マイクはないが、ここは一発、声を張り上げるか。 |
ジョニー | イエスッ ! 盛り上がっていくぜ !ジョニー・シデン作詞作曲ティル・ナ・ノーグナンバーエイト ! |
ジョニー | イクスに捧げるレクイエム ! |
イクス | なっ、何ですか、それは ! ? |
ミリーナ | まさか、歌うの ! ? |
アニー | この状況で、ですか ! ? |
ジョニー | ♪るつぼの~奥で~眠るのは~探し~求めた~自分自身~ ! |
アニス | レクイエム ! ? メチャクチャ激しいんですけど ! ? |
カーリャ | ロックじゃないですか ! ? |
ジョニー | 知らぬ間に~がんじがらめの俺~解き~ ! 放つ~ ! のは~ !影であることを認める、勇気~ ! |
死鏡精 | ア゛……ア゛ア゛ア゛ア゛…… ! ? |
ジョニー | ――道化のジョニーならぬ浄化のジョニーってな !俺の歌に痺れて消えな ! ! |
ジョニー | ……本当に死鏡精が消えちまった。 |
ミリーナ | ジョニーさん、すごいわ ! ?でも身体は大丈夫なんですか ?いきなりあんな大声張り上げてしまって……。 |
ジョニー | いや、久々に腹の底から歌えて最高の気分だ。 |
コーキス | すげえ ! ? ジョニー様の歌つえー ! ? |
カーリャ | でもあれ、レクイエムではなかったですよね…… ? |
ジョニー | そうかな ? 俺としては最高の鎮魂歌が出来上がったと思ってるけどな。 |
イクス | ジョニーさん……。あの歌……。 |
ジョニー | 歌は歌だ。イクス。 |
イクス | ……フフ……。 |
ジョニー | うん ? |
イクス | 俺、わかりました。とりあえず後で考えよう、今はやれることをやらなきゃって思ってましたけど……そうですよね。 |
イクス | 俺は……ただの影で……過去なんて全部ねつ造でもう、気持ちも記憶も、何もかも嘘だらけだけど……。そんなの……俺のせいじゃないですよね。 |
イクス | ――俺のせいじゃない。全部……全部知ったことか ! |
ミリーナ | イクス ! ? |
コーキス | マスター ! ? どうしちまったんだ ? |
イクス | ――ここからやり直す。もう抱え込むのはやめる。俺が何者なのかってのは全然わからないけどもう疲れた。 |
イクス | 全部取っ払って、残ったものだけを俺だと思う。 |
ジョニー | で ? 何が残ったんだ ? |
イクス | この身体。それだけです。ここから手に入れます。イクス・ネーヴェの影だった俺が本当に欲しいと思うものを。 |
イクス | その為には……まずこの世界を何とか延命しないとならないですけどね。 |
ジョニー | ああ。これから欲しいと思うものは誰にも干渉されてない、お前さんだけの欲求だからな。それだけは間違いない。 |
ミリーナ | イクス……。あれからずっと悩んでたのね。 |
イクス | うん……。性格だからな。この性格も作られたものだから……とかうじうじ悩んでたけど、わからないよな。 |
イクス | どこまでがフィルに弄られたせいでどこまでが自分のせいかなんて。考えても意味がない。 |
イクス | それでも考えちゃうんだろうけど意味がないって思えるようになっただけマシだ。 |
ジェイド | ――いやー、青春ですね。実に美しい。ところでイクスが何やら吹っ切ったところでジョニーにお願いがあります。 |
ジョニー | いい性格してるね、ジェイドは……。 |
ジェイド | 褒められると照れるのですが他の区画ではまだ死鏡精の襲撃が続いています。 |
ジェイド | 魔鏡通信を使って、浮遊島全域にあなたの歌声を響かせて頂けるとありがたいのですが。 |
ジョニー | アンコールってことか。任せとけ ! 何曲でも歌ってやるさ ! |
ジェイド | アニー。ジョニーと一緒に通信室へ行ってあげて下さい。まだ病み上がりには違いありませんからね。 |
アニー | そうですね。ジョニーさん、大丈夫ですか ? |
ジョニー | ああ、大丈夫。それじゃあ、ジョニー・オン・ステージのアンコール公演に向かおうか。 |
ジェイド | テネブラエ。あなたはどんなものにも姿を変えることができましたね。 |
テネブラエ | ええ。闇のセンチュリオンですから ! |
エミル | 闇は関係ないような……。 |
ジェイド | では、手錠になって頂けますか ? |
テネブラエ | かまいませんとも。 |
ジェイド | ――ガイ ! |
ガイ | はいよっと。――ディスト、悪いな。 |
ディスト | は ! ? どうして私に手錠をかけるのですか ! ? |
ジェイド | あなたに聞きたいことがあるのですよ。……色々とね。連行して下さい。 |
ジェイド | 残りの皆さんはアッシュとイオン様を医務室へ運んで下さい。 |
ジェイド | ――それと、ルーク。 |
ルーク | へ ? 何だ ? |
ジェイド | ディストをここに連れてきたのはあなたですね。 |
ルーク | は ! ? いやいや、それはアッシュが――って、まさかあの時の会話を…… ?まさか、ティア ! ? |
ティア | ええ ! ? 私は何も言ってないわよ ! ? |
ジェイド | ――おや、カマをかけただけなのですがやはりディストがここにいる理由に一枚噛んでいるようですね。 |
ルーク | しまった……。 |
ジェイド | 後でじっくり話を聞かせてもらいましょう。 |
キャラクター | 10話【15-15 ジョニー】 |
イクス | ……ひとまず死鏡精の襲撃は食い止められたみたいだな。 |
ミリーナ | ジョニーさんの歌声が効果てきめんだったわ。どういう仕組みなのかしら……。 |
カーリャ・N | 今後の対策として、ジョニー様の歌を録音しこの浮遊島に流しておくことにしました。これで死鏡精が近づいてくることはないでしょう。 |
コーキス | ルーティ様がもの凄く嫌な顔してたけどな……。 |
カーリャ | でもカーリャはけっこう好きですよ。ジョニーさまの歌。 |
コーキス | 気が合うな、パイセン。俺もだぜ ! |
イクス | (コーキス……。俺はコーキスを作っちゃいけなかった…… ?) |
イクス | (コーキスのあの左眼がバロールの魔眼ってことなんだろうか……) |
コーキス | そういえばマスター、どうしてアジトが死鏡精に襲われてるってわかったんだ ? |
イクス | あ、ああ……。不思議な話なんだけど俺……最初のイクスに会ったんだ。 |
四人 | ! ? |
イクス | 気を失っている時の夢かも知れないと思ったんだけどジョニーさんもその場にいて……。 |
イクス | ジョニーさんも覚えていたみたいだから……夢じゃなかったんだろうな。 |
カーリャ・N | ――イクス様は、生きておられるのですか ! ? |
イクス | ネヴァン……。 |
イクス | いや、死んだっていってた。集合的無意識の底にいて幽霊みたいな存在だって……。 |
カーリャ・N | ……そう、ですか……。 |
イクス | そういえば……メルクリアはどうなったんだろう。 |
ミリーナ | メルクリア ? メルクリアもそこにいたの ? |
イクス | ああ。心が壊れてるって……。それから……モリアンっていう死鏡精がメルクリアに乗り移って、消えてしまって。 |
カーリャ | どういうことなんでしょう ? |
イクス | よくわからないんだ。あれも実際に起きたことならジュニアに連絡をしたら何かわかるのかな。 |
ジェイド | 失礼しますよ。 |
ミリーナ | ジェイドさん、ガイさん。アッシュさんとイオンさんは無事ですか ? |
ガイ | ああ、さっき目を覚ましたよ。身体に異常もないみたいだし、一安心だ。 |
イクス | よかった……。 |
ジェイド | 私の方は、空いた時間を利用してディストに話を聞いてみました。 |
ガイ | ……ディストの奴、悲鳴上げてたけどな。 |
コーキス | な、何したんですか ! ?まさかリオン様みたいに……。 |
ジェイド | いやですねえ。私は平和を愛するただの軍人ですので丁重に話を聞きましたよ。 |
カーリャ | がたがたぶるぶるがたがたぶるぶる……。 |
ジェイド | 帝国の目的がニーベルングの復活であろう事は目星がついていましたが、どうやらビフレストの具現化は、その為の実験の一環だったようです。 |
ジェイド | メルクリアの仕掛けた具現化の術式を再利用して行ったようですね。 |
ミリーナ | 実験 ? ビフレストの具現化が…… ?ビフレストとニーベルングに関係が…… ? |
ミリーナ | いえ、どちらかというと具現化のさせ方に意味があるのかしら……。 |
ジェイド | それともう一つ。キールたちが死鏡精の動きを追跡してくれました。死鏡精の発生源の一つはセールンド山です。 |
ミリーナ | え ! ?大樹カーラーンじゃなかったんですか ! ? |
コーキス | そうだよ。あそこを住処にして増殖してるかもって話だったのに……。 |
ジェイド | 報告はまだ途中ですよ。セールンド山からきた死鏡精はこの浮遊島を襲撃しました。 |
ジェイド | そして大樹カーラーンからも死鏡精の群れが出現した。そちらは具現化したビフレストに向かったようです。 |
ジェイド | 今、セールンド山の方は調査隊を向かわせています。具現化されたビフレストの方も注視した方がいい。 |
カーリャ・N | 帝国は……イクス様の遺体をレプリカで増やし、その身体を利用して人体万華鏡を作ったと言っていました。 |
カーリャ・N | それに……あの光魔……。私が帝国で発見した資料と照らし合わせると、あの光魔は人工心核を移植されたリビングドールなのでしょう。 |
カーリャ・N | 恐らくその二つを利用して、虚無への道を開き死鏡精を呼び込んでいるのでは……。 |
ジェイド | セールンド山の方の発生源はそれかも知れません。ただ、死鏡精そのものは帝国の目的ではないのではと推察します。 |
ジェイド | 恐らく副産物なのでしょう。ディストの話では、帝国側は虚無と死の砂嵐の方に強い興味を持っているようですから。 |
ガイ | ちなみに、こいつがケリュケイオンから送られてきた例の具現化ビフレストだ。 |
カーリャ・N | なんて禍々しい……。 |
ミリーナ | 本当だわ。本で読んだビフレストとは全然違う……。 |
ガイ | 魔都、だな。とんでもないものが具現化されちまった……。 |
ジェイド | 私はビフレストへの潜入と偵察を提案します。死鏡精がここに集まっているなら放置するのは危険だ。 |
ジェイド | ジョニーがいれば死鏡精はある程度無効化できるでしょう。 |
ジョニー | おっと、こっちでも同じ話が出て来てるらしいな。 |
イクス | ジョニーさん ! |
ジョニー | リオンにユーリにクレスにユリウス。みんなその『魔都ビフレスト』に行こうって言い出してる。 |
ジョニー | 俺の歌が必要なら、いくらでも協力するぜ ? |
ミリーナ | 救世軍にも声をかけてみましょう。 |
イクス | そうだな。調査に出てるセネルやロゼたちにも連絡を取ろう。 |
ジェイド | 大所帯になりましたからね。また魔鏡通信を繋ぎましょう。 |
ジェイド | 帝国が用意した新しい領主のことや、今の状況ビフレスト潜入隊の選抜……。長い会議になりますよ。 |
コーキス | そういう頭使いそうなことはマスターがいれば大丈夫だよな ! |
イクスの祖父 | その力は生み出した鏡精に宿り鏡精を通じて鏡士にも宿る。だからお前は鏡精を生み出してはならないんだ。 |
イクス | (――例えそうだったとしても俺はコーキスに救われた。俺は……コーキスを信じる) |
イクス | ああ。俺は頭脳労働で、コーキスは肉体労働だもんな ? |
コーキス | 何だよそれ ! ?まあ、でも、マスターがそうして欲しいって言うなら俺はそれでいいぜ ! |
カーリャ | コーキスはイクスさまが大好きですねえ。 |
コーキス | へへっ ! まーなっ ! |
イクス1st | ……みんな、いなくなっちゃったな。 |
イクス1st | 静かだ……。何だか……俺も……眠くなってきた……。 |
イクス1st | そろそろ融けるんだな……。死んだ後の世界の話を聞けるなんて……わからないもんだなあ……。 |
イクス1st | ……ミリーナ、フィル。ごめんな……直接助けてやれなくて……。 |
イクス1st | 二人のこと……愛してるから……な……。 |
キャラクター | 1話【16-16 ウェルテス領 領主の館1】 |
| ウェルテス領 領主の館 |
ジェイ | ――さあ、この部屋に入ってください。早く !それと人数の確認を。 |
ミラ=マクスウェル | 問題ない。全員いるようだ。 |
ユーリ | よお、セネル。待たせたな。 |
セネル | みんな、早かったな ! 無事に合流できてよかった。 |
ユーリ | お前んとこの新入りのおかげだよ。 |
ジュード | 本当に助かったよ、ジェイ。ありがとう。 |
ジェイ | どういたしまして。 |
レイヴン | けど驚いたわ。この新顔の少年てば大所帯の俺ら全員つれて領主の館に侵入するって言うんだもん。 |
パティ | そうじゃの~。だが、タコが蛸壺に入るくらいスムーズな潜入だったのじゃ。 |
カロル | うん、でもすごく緊張したね。なんかどっと疲れた……。 |
レイア | あはは、おつかレイアー ! |
ジェイ | 正直なところ、ぼくもこれだけの数で侵入するのはどうかと思いました。 |
ジェイ | ですが、結晶をうかつに外へと持ち出した場合どんなリスクがあるかわかりません。 |
ジェイ | だったらいっそ、まとめて来てもらった方が話も早い。人数が多い分、有事の際の戦力にもなりますしね。 |
エステル | なんだかジェイは軍師のようですね。 |
ノーマ | エッちゃん鋭い ! 本当に軍師してたんだよ。すごいでしょ、うちのジェージェー。情報収集だってお手のものなんだから。 |
ノーマ | だからさ、ユーくんやジューどんたちも何か用があればジェージェーに依頼してよ。あたしが窓口になるから ! |
アルヴィン | なるほど。目的はピンハネか高額請求ってとこか。やるね~。 |
ノーマ | でしょでしょ ? ……ってなんでバレた ! ? |
エリーゼ | ノーマ、自分でバラしてます……。 |
グリューネ | と~っても素直なのよね、ノーマちゃんは。 |
ティポ | こういうの、正直なバカっていうんでしょー。 |
ノーマ | それを言うならバカ正直 !ヴィンすけ、後で覚えてろよー ! |
ジュディス | 依頼の話は別にしても、ノーマの言うとおりならカロル調査室にとっていい話よね。有能な人材が確保できたんだもの。 |
ジェイ | 言っておきますが、セネルさんたちはともかくぼくはまだ皆さんの仲間になるとは言っていません。今の状況は成り行きみたいなものですからね。 |
ジュディス | あら残念。でも仲間っていいものよ。 |
ジェイ | ……そうですね。よく知ってます。 |
ラピード | ワン ! |
リタ | 犬が急かしてるわよ。聖核(アパティア)はどこにあるの ? |
シャーリィ | 結晶がある場所は、この空き部屋を出てさらに奥です。 |
ジェイ | もう少ししたら、この部屋を出ます。警備兵が工場内の見回りを終えればしばらくは無人になるはずです。 |
セネル | そうは言っても、人数も多いし気を付けないとな。クロエ、みんなの後ろを固めてもらえるか ? |
クロエ | ああ。任せてくれ ! |
フレン | 僕も一緒にしんがりを務めるよ。 |
クロエ | よろしく頼む。今回は、シーフォもローウェルと一緒なんだな。 |
フレン | ああ。今までユーリたちのバックアップが多かったけど今回は聖核の話が出たからついてきたんだ。それに、他にも気になることがあるからね。 |
ミラ=マクスウェル | 随分と気にするのだな。聖核なるものはそんなに危険なのか ? |
フレン | それは……使う人によるんだと思う。 |
レイヴン | …………。 |
キャラクター | 2話【16-17 ウェルテス領 領主の館2】 |
カロル | うわあ ! 本当に工場みたいだ。 |
セネル | ほら、こいつが例の結晶だ。確認してくれ。 |
ユーリ | なるほどね。見た目は完全に聖核だ。 |
エステル | でも……こうして手に取ってみると少し違和感がありますね。 |
リタ | そう ? もしかして具現化の時にエンコードで性質を変えられたのかしら。 |
ジュディス | …………。 |
パティ | どうしたのじゃ、ジュディ姐。 |
ジュディス | ……ちょっとね。 |
リタ | こんな大量の聖核なんてありえないわよ !フォミクリーを使って増やしてるのかも。 |
カロル | じゃあこれ、レプリカってこと ? |
リタ | 多分。ただ、違和感の原因がエンコードのせいなのかレプリカだからなのかは調べてみないと……。 |
ミラ=マクスウェル | リタ、さっきから四大も騒いでいるんだがこの結晶からウンディーネの力を感じるんだ。 |
一同 | ウンディーネ ! ? |
ジュディス | そう……。じゃあこの聖核は蒼穹の水玉(キュアノシエル)だったのね。 |
エステル | …………。 |
エリーゼ | エステル、どうかしたんですか ?なんだか悲しそうです。 |
エステル | あ……、大丈夫です。心配させてすみません。 |
アルヴィン | あのさ、聖核がおたくらの世界の『エアル』とかいうエネルギーを結晶化したものってのは聞いているぜ。 |
アルヴィン | けどウンディーネがどうとか、こっちはさっぱりだ。説明してくれないか ? |
ジュディス | ええ。聖核は、エアルを蓄えることができる強い生物が死を迎えたときに残すものよ。彼らの魂といってもいいわ。 |
ジュディス | それにある特殊な術式を施すことで聖核は精霊へと生まれ変わるの。 |
レイヴン | ちなみにその特殊な術式を作り上げちゃったのがそこの天才魔導少女なんだけどね。 |
エステル | ええ。リタは本当にすごいんですよ ! |
リタ | あ、あれはエステルがいたからどうにかなったんだってば。すごいのはあんたよ。 |
ユーリ | 話が脱線してんぞ。つまりオレらの世界じゃこいつはウンディーネになるはずの聖核なんだ。 |
レイア | 死んで残して、そこから生まれ変わるのか……。聖核って本当に『魂』なんだね。 |
ジュード | ウンディーネってことは、シャーリィとも繋がりが深いはずだけど。ミラは何かわかった ? |
ミラ | マクスウェル |
エステル | ウンディーネ……。ベリ……いいえ、覚えていませんよね。 |
ウンディーネ | 覚えていますよ。私にウンディーネの名を与えし者、エステル。 |
エステル | ウンディーネ ! |
カロル | しゃべり方とか違うけど、本当にボクたちのウンディーネなんだね。 |
ミラ | マクスウェル |
リタ | その話は後回し。ねえウンディーネ、この聖核とシャーリィが感じるっていう滄我になんの関係があるの ? |
シャーリィ | わたし、あなたとの親和性が高いといわれました。それが関係しているんですか ? |
ウンディーネ | そうです。そして聖核に感じるという違和感もエンコードによるものだという推測は間違っていません。 |
リタ | やっぱりね。 |
ウンディーネ | シャーリィが蒼穹の水玉から滄我を感じるのはエンコードによってこの世界の私の主であった海神に、滄我の力が―― |
ラピード | グルルルルゥ……ワン ! |
リタ | 犬、うっさい ! ウンディーネ、話を続けて。 |
ウンディーネ | いいえ、この話は後でしましょう。敵が来ます。 |
一同 | ! ! |
セネル | さすがに気づかれたか。 |
フレン | 今から隠れるには無理な人数だな。 |
ユーリ | なら倒すだけさ。やるぞ ! |
ラピード | ワォン ! |
キャラクター | 3話【16-18 アジト】 |
カイル | どうしよう。領主と従騎士の話スタンさんたちにも教えておいたほうがいいかな。 |
ロニ | う~ん、どうかねぇ。イレーヌはスタンさんたちの知り合い……なんだよな ? |
ジューダス | ……ああ。 |
ハロルド | やめとけば ? いま知らせたって何が変わるわけでもないでしょ。あっちの都合も考えなさいって。 |
ジューダス | そうだな。今は死鏡精の問題に専念させておけ。スタンは単純な奴だ。他に脳みそを使わせない方がいい。 |
リアラ | もしかして、スタンさんたちのことを気遣ってるの ? |
ジューダス | 不要な連絡で、任務を失敗されたくないだけだ。 |
ナナリー | まったく素直じゃないねぇ。 |
ハロルド | それよりも、私ウェルテス領が気になるのよね。ちょっと連絡とってみよ~っと。 |
ロニ | さっき相手の都合を考えろって言ったクセに……。 |
ユーリ | ――これで終わりかよ ? あっけなかったな。 |
アルヴィン | なんだ、もの足りないってか ?ほんとお仕事大好きだねぇ。 |
クロエ | 軽口を叩いている場合じゃないぞ。この兵たちが戻らなければ、すぐに増援が来る。ここは撤退した方がいいかもしれない。 |
リタ | もう ! ? まだほとんど調べてないってのに。 |
カロル | あっ、待って、通信がきてる ! |
ハロルド | カロル調査室、聞こえる ? そっちはどんな感じ ? |
カロル | ハロルド ! 今ゆっくり話してる暇ないんだ。ボクたち警備に見つかっちゃって、撤退するかも―― |
ハロルド | あら、それはナイスタイミング。そっちにタルロウいない ? |
カロル | タルロウって、あのタルロウ ? |
ハロルド | ほら、早く探して。時間ないんでしょ。 |
カロル | みんな、そのへんにタルロウいない ? |
エリーゼ | カロル、あれ ! 工場の奥のすみっこで寂しそうに立ってるの、そうですよね ? |
カロル | うわっ、本当にいた ! |
ハロルド | そいつに私の映ってる魔鏡を見せて。 |
カロル | こ、攻撃したりしないよね ?えーっと、はい、どーぞー……。 |
タルロウ | …………――ハロルド様、確認。タルロウ密偵モード、開始ズラ ! |
ノーマ | うわ、なにこれ ! |
ハロルド | 帝国切り崩しネットワークの一つってとこかしら。あっち側にいる頃、いろいろ仕込んでたのよ。 |
グリューネ | おしゃべりできるのね。かわいいわぁ~。 |
クロエ | かわいい……のか ? |
レイア | これ、ディストさんのだよね ? |
ハロルド | ディストのタルロウを元に私が改造したの。あいつとは関係ないわよ。 |
ハロルド | そこでいろんな情報拾ってるはずだからそいつに聞いてみて。じゃあね~。 |
リタ | ハロルド !そういうのは先に教えときなさいって――あ、切った ! |
ユーリ | おい、ぐずぐずしてらんねえぞ。そいつに聞くだけ聞いて脱出だ。 |
セネル | そうだな。じゃあ、この工場はなんだ ? |
タルロウ | ここは、精霊輪具に取り付ける魔核を作るための工場ズラ。 |
リタ | 精霊輪具ですって ! ? もっと詳しく ! |
タルロウ | 精霊ウンディーネの力を効率的に兵士に配るために精霊輪具を作っているズラ。そのための魔核生産工場ズラ。 |
ジュード | ……帝国の精霊輪具って精霊の力を吸い取って作ってたんだよね。 |
レイア | さっきこの聖核はウンディーネの魂って言ってたけど……。じゃあここはウンディーネの命を使う工場ってこと ! ? |
リタ | そういうことになるわね。だけど、あたしたちが使う魔導器(ブラスティア)も同じように作られてるのよ。 |
シャーリィ | えっ ! ? |
リタ | 聖核を元に魔核を作り、それを魔導器に取り付け様々なエネルギーとして使われる。あたしが魔術を使えるのも魔導器のおかげ。 |
エステル | でも、それは知らなかったから……。 |
パティ | 知ろうが知るまいが仕組みは同じじゃ。こればかりは否定できん。しかし少なくとも、うちらの世界では犠牲を前提に聖核を作ったりはしてなかったはずじゃ。 |
パティ | だが、ここにある聖核は違う。生命力を使うためだけに増やされておる。 |
ユーリ | ああ。しかも危険だとわかっていて精霊輪具を兵士に配るってのも気に入らねえな。 |
リタ | これがレプリカならオリジナルがあるはずだけど。ねえあんた、オリジナルの蒼穹の水玉がどこにあるか知らない ? |
タルロウ | オリジナルの所在は不明ズラ。ここにはレプリカ情報しかないズラ。 |
ジェイ | となると、ここをどうにかしても似たような工場を作ることはできるでしょうね。 |
ミラ=マクスウェル | だがそれでも、奴らの計画の足止めにはなるんじゃないか ? |
ジュディス | そうね。ぶっ壊しちゃいましょう。……見ているだけで気分が悪いわ。 |
キャラクター | 4話【16-19 精霊の封印地】 |
マーク | それじゃ行ってくる。後のことは頼んだぜ、ローエン。 |
ローエン | かしこまりました。皆さん、どうか無理だけはなさらないように。特にフィリップさんは。 |
フィリップ | 心配をかけてすまない。ローエンさん。ガロウズ、ケリュケイオンをよろしく。 |
ガロウズ | お任せを。――そうだ、ヴィクトル。 |
ヴィクトル | なんだ。 |
ガロウズ | あんたがたまに作る美味いメシケリュケイオンの連中が楽しみにしてんだ。もちろん俺もな。 |
ガロウズ | 帰ってきたらまた頼むぜ。無事で行って来いよ。 |
ヴィクトル | ああ、わかった。 |
カーリャ | 美味いメシですか ! ? |
コーキス | そういや、エル様が「パパのスープが一番」って言ってたことがあったなぁ。ルドガー様も同じくらい美味しいらしいけど。 |
カーリャ | いいですねぇ……。ヴィクトルさま、皆さんにごちそうする時はカーリャたちにもお相伴させてくれませんか ? |
ヴィクトル | かまわない。メニューを考えておこう。 |
二人 | やったー ! |
イクス | あの、フィル『さん』 |
二人 | …………。 |
イクス | この精霊の封印地で、何をするつもりなんですか ? |
フィリップ | 僕は幼い頃、ここでダーナと出会っていたのかもしれないんだ。 |
イクス | ダーナと ? |
フィリップ | うん。前にジュニアも、この場所へ行けと言っていた。あれは「ダーナに会え」という意味だったんじゃないかと思ってね。 |
ミリーナ | 幼いって、いつの話 ?あの頃のフィルが、精霊の封印地へ行ったなんて話聞いたことがないわ。 |
フィリップ | 精霊の封印地と水鏡の森は繋がっていたんだよ。だからこそあの森では、不思議な現象が起こっていたんだ。 |
ミリーナ | じゃあ、オーデンセのおとぎ話に出てきた虹の橋っていうのも……。 |
フィリップ | その一種だと思う。僕は昔、あの森から立ち上る美しい光をみたんだ。 |
フィリップ | それを君に……ミリーナに見せたくてあの時、水鏡の森に誘ったんだよ。 |
ミリーナ | あのピクニック、そうだったのね……。 |
フィリップ | だいぶ時間がかかってしまったけどようやくここに来る決心がついた。君たちには遠回りさせてしまって申し訳ない。 |
イクス | でも、今のダーナの心は魔の空域にあるんですよね ?どうやって会うつもりですか ? |
フィリップ | その点は心配いらないよ。ただ……、しばらくは連絡が取れなくなると思う。 |
フィリップ | メルクリアやビフレストのことは君たちに任せるよ。 |
イクス | ……大丈夫なんですか ?魔の空域は、ケリュケイオンで入った時でさえ危険な場所だったと聞いてますけど。 |
フィリップ | 世界を救うために、危険のない作業なんてないよ。 |
フィリップ | それに、嘘にまみれた世界を生み出した僕だからこそ取らなければならない責任がある。……命をかけてでもね。 |
コーキス | それって、思いっきり危険ってことじゃ―― |
イクス | だったら、必ず責任を取ってください。そのためにも、あなたは生きなくちゃいけない。 |
フィリップ | イクス…… ? |
イクス | 俺はフィルさんと一緒に、生きて世界を守りたい。 |
フィリップ | ! ! |
イクス | 確かにこの世界は嘘だらけかもしれないけどでもそこに真実がない訳じゃない。 |
イクス | 嘘も真実も現も幻も、俺は全てを守りたい…… !その為には、あなたが必要なんです。 |
フィリップ | …………。 |
イクス | 俺はフィルさんを信じますよ。無事に戻るって。 |
ミリーナ | そうね。ここにいるみんなも、今は離れている仲間もきっとみんなフィルを信じてる。 |
ミリーナ | だから……、行ってらっしゃい、フィル。気を付けて。 |
フィリップ | ……ああ。行ってくるよ、みんな。 |
マーク | ……今度は泣いてねえな。上出来だ。 |
フィリップ | もう涙は流すだけ流したからね。 |
マーク | それで、魔の空域にはどうやって入るつもりだ。 |
フィリップ | 以前、ジュニアの心を読んだときに魔の空域はビフレストの伝承に伝わる【この世の果て】だと知った。 |
フィリップ | そしてこの地も同じく、世界の果て。魔の空域と精霊の封印地は、それぞれの世界の果てなんだ。 |
フィリップ | そして世界の果てと果ては繋がっている。 |
マーク | それは仮説じゃねえのか ? |
フィリップ | いや、ヴィクトルが調べてくれたオリジンのアニマからも明らかだよ。オリジンは原初の精霊だ。その精霊の痕跡を、それぞれの果てから感じる。 |
ヴィクトル | 魔の空域は、この世界における『カナンの地』……のようなもの、か。 |
マーク | つまりなんだ ? ここから魔の空域にアクセスできるってことか。 |
フィリップ | ……正確に言うとアクセスしたいのはダーナの心核なんだ。 |
フィリップ | ダーナの心核は魔の空域にある。今は心の精霊があの場を守護しているから恐らく魔の空域には入れないだろう。 |
マーク | ――まさかここから直接ダーナの心核に呼びかけるってのか ? |
フィリップ | ああ。ここが一番魔の空域に近い場所だからね。それじゃあ始めようか。 |
キャラクター | 5話【16-20 テセアラ領】 |
| テセアラ領 大樹カーラーン |
スタン | ……やけに静かだな。 |
ロイド | ここに着くまでは死鏡精が襲ってきてたのになんでだろう。 |
マルタ | ジョニーさんの歌を警戒してるんじゃない ?すごかったもんね。 |
エミル | うん。録音で流れているのよりも生の方が威力も増すような気がするよ。 |
ジョニー | サンキュ-、オーディエンス !まだまだいけるぜ ! |
リフィル | ジョニー、今は死鏡精もいないし喉を休ませておいて。 |
ジョニー | そうかい ? まだ歌い足りないんだがなぁ。 |
フィリア | ふふっ、ジョニーさん、すっかり元通りですね。安心しました。 |
プレセア | でも、どうして死鏡精は大人しくなったんでしょう。大樹カーラーンには変化がないように思えますが。 |
しいな | 油断させといて不意打ちって作戦かもしれないよ。 |
ウッドロウ | そうだな。用心はしておこう。君たちの見立てはどうだい ? |
ラタトスク | ……大人しいのは見た目だけだ。大樹の内部エネルギーは以前の比じゃねえ。恐ろしいほど増してやがる。 |
リフィル | 死鏡精がキラル分子を集めているせいではなくて ? |
ラタトスク | いや、奴らが集めてどうにかなる量だとは思えねえ。何かエネルギーの塊みたいなものでも喰ってりゃ別だがな。 |
ウッドロウ | エネルギーの塊、か。我々の世界ならレンズが相当するが……。 |
ルーティ | ちょっと待って ! ええと、これこれ ! |
スタン | どうしたんだ ?ってこれ……レンズじゃないか ! |
ルーティ | 死鏡精を倒したら落としたのよ。ほら、さっきの戦いでコレットが転んだでしょ ? |
コレット | うん、ルーティがかばってくれたんだよね。そっか。あのとき倒した死鏡精が持ってたんだ。ピカピカしてるから、つい持ってきちゃったのかな ? |
ジーニアス | 光物を集めるって、カラスじゃないんだから……。 |
フィリア | でも、通常レンズが発見されるのは私たちが具現化されたファンダリア領が主です。このテセアラ領にあるのは不自然じゃありませんか ? |
ルーティ | あたしもそう思ったんだけどだからって、そのまま放っておけないでしょ ? |
リオン | 強欲レンズハンターだからな。 |
ルーティ | ちょっとあんた ! |
リフィル | そこまで。ともかく、ルーティの言うとおりなら死鏡精たちは意図的にレンズを探し出しカーラーンへ運んでいることになるわ。 |
ジーニアス | じゃあ、大樹のエネルギーが増えたのも死鏡精が運んだレンズのせい ? |
ラタトスク | その可能性が高いだろう。それに、死鏡精どもの無限増殖にも影響しているかもしれない。 |
エミル | 色々とわかってきたね。ルーティさんとコレットのおかげだよ。 |
しいな | 本当、コレットのドジは祝福されてるよ。 |
スタン | じゃあ、ルーティの強欲も祝福されているかもしれないな。 |
ルーティ | なによそれ ? バカにしてんの ? |
ロイド | 違うよ。スタンのは誉め言葉だろ ?ルーティの強欲は、みんなを幸せにするって、な ? |
スタン | そういうこと ! |
ミトス | まったく……、そういう能天気な物の考え方本当にうらやましいよ。 |
ミトス | ――ラタトスク、カーラーンに巣くってる死鏡精はどうにかできそうなの ? |
ラタトスク | わからねえ。まずは奴らの巣にアクセスしないと。だがそれも難しい。 |
ラタトスク | 腹は立つが、今は俺だけの樹じゃないからな。 |
テネブラエ | 加えて、以前ラザリスが具現化された際にレイヤード処理されてしまいましたからね。 |
テネブラエ | 今や、大樹の主であるラタトスク様でも以前のように内部へ接触するのは難しいでしょう。 |
マルタ | そんな、何とかならないの ? |
テネブラエ | そうですねぇ。方法がないわけでも―― |
? ? ? | いた ! みんなー ! |
一同 | ? |
カノンノ・E | よかった、追い付いた ! |
マルタ | イアハート ? パスカにグラスバレーも。なんでここに ? |
カノンノ・E | 突然押しかけてごめんなさい。私たち、この任務に配属されなかったけどやっぱり黙ってみていられなくて……。 |
P・カノンノ | カーラーンの内側では、オリジナル・カノンノとラザリスが眠っているでしょう ?でも、死鏡精がそれを妨げてる。 |
P・カノンノ | それだけは絶対に許せないの。 |
カノンノ・G | うん。三人で話してたらいてもたってもいられなくなっちゃった。 |
カノンノ・G | アジトのみんなには、ちゃんと話を通してきたからお願い、一緒に戦わせて。 |
テネブラエ | もちろん大歓迎ですとも。いやあ、ナイスタイミング !運がいいですねぇ、我が主は ! |
エミル | どういう意味 ? |
テネブラエ | 大樹の精霊であるラタトスク様と根源の世界樹に深く関わる彼女たちが協力すればあなた方を大樹内部へ送りこめるかもしれません。 |
エミル | 本当 ! ? |
テネブラエ | ええ。うまくいけば、直接、死鏡精の巣に乗り込むことになります。危険ですがてっとり早いに越したことはないでしょう? |
ラタトスク | だったらすぐに始めるぞ。 |
一同 | おう ! |
ミトス | ちょっと待ってよ。全員で内部に入るつもり ?何かあった時に対処できないと思うけど。 |
リフィル | そうね。アクセス役が倒れたら大樹内部から戻れなくなる可能性も高いわ。 |
ウッドロウ | ここは、内部潜入班と、こちらに残る護衛役の二手に分かれた方が賢明だろう。 |
ミトス | ボクはこちら側に残るよ。内部には入らない方がいい。 |
ラタトスク | …………。 |
ジョニー | だとすると、当然、俺は潜入班だよな。奴らに最高のレクイエムをぶつけてやらないと。 |
ミトス | そうだね。ジョニーを中心にスタンたちで潜入したらどう ?連携も取りやすいでしょ。 |
スタン | 了解だ。みんなもそれでいいかな。 |
ロイド | ああ。こっちは任せてくれ。何があっても絶対に守ってみせる。 |
マルタ | うん。エミルもラタトスクも安心して集中していいからね。 |
ラタトスク | ああ、任せたぜ。 |
エミル | よろしく、みんな。 |
ラタトスク | お前たちも準備はいいか ? |
三人 | はい ! それじゃ……行くよ ! |
キャラクター | 6話【16-21 大樹カーラーン1】 |
スタン | ここがカーラーンの中か。なんかスピルメイズと似てないか ? |
リオン | この場所は、言わば大樹カーラーンの精神世界だ。似るのも道理だろう。 |
ジョニー | 奴らの巣のど真ん中ってわけでもなさそうだな。入ったらすぐに、ジョニー・オン・ステージ開幕かと思ったぜ。 |
フィリア | それでは、ここからまた死鏡精の棲み処を探さないといけませんね。 |
ルーティ | なによ。こっちはすっかり心の準備を済ませておいたのに。 |
ソーディアン・アトワイト | ずいぶんと気合が入っているのね。 |
ルーティ | そりゃ、あいつらがレンズを持ってるってわかったしね。少しくらい稼がせてもらわなきゃやってらんないわよ。 |
スタン | あのさ、ここって樹の内部だよな。運び込まれたレンズってもうエネルギーになってるんじゃないか ? |
ルーティ | あ…… ! |
リオン | ふん、スタンにしては冴えている。 |
スタン | なんだよ、リオンが俺を褒めるなんて珍しいな ! |
ソーディアン・シャルティエ | 今の褒めてましたかね…… ? |
ソーディアン・ディムロス | 言うな。すでに少々ルーティが落ち込んでいる。これ以上、士気が下がってはかなわん。 |
ソーディアン・クレメンテ | やれやれ、少年少女は繊細じゃのう。昔のわしのようじゃ。 |
ソーディアン・イクティノス | クレメンテ老、冗談はほどほどに。 |
ソーディアン・イクティノス | ウッドロウ、今は急いだ方がいい。いつ死鏡精が押し寄せるかわからない。 |
ウッドロウ | そうだな。見たところ、この空間は奥へ続いているようだ。みんな、このまま進もう。 |
ルーティ | まったく、どれだけ進めばいいのよ。 |
フィリア | 待ってください。あそこで光ってるのは、もしかして…… ! |
スタン | あれは……神の眼 ! ? |
ウッドロウ | それにしては違和感があるな。 |
スタン | 周りに黒いものも見えますね。 |
リオン | 死鏡精かもしれない。気づかれないように近づくぞ。 |
スタン | 見ろよ、あの神の眼。つぎはぎだらけだ。 |
ルーティ | それどころじゃないでしょ ! 何よあれ…… !神の眼から、死鏡精がどんどん生まれているわ。 |
ウッドロウ | あれを破壊しなければ死鏡精は増殖し続けるということか。 |
ジョニー | 今ここで壊さないと、あの勢いじゃ世界中に死鏡精が溢れかえっちまうぜ。 |
ウッドロウ | ああ。だが……。 |
フィリア | …………。 |
ソーディアン・クレメンテ | どうしたんじゃ、フィリア。祈りなど捧げて。 |
フィリア | ……彼らは、エネルギー生産のためだけに命を使われた鏡精たちなのですよね。 |
リオン | だから可哀そうだっていうのか ? 今更だな。 |
ウッドロウ | フィリア君、彼らは確かに気の毒かもしれないがあのまま放置できるものじゃない。 |
フィリア | わかっています。このままでは世界中が死鏡精に襲われてしまうことも。 |
フィリア | ですが、死鏡精の境遇を考えたら、つい……。 |
ルーティ | いいんじゃない ? あいつらに同情するくらい。お金もかかんないし。 |
ルーティ | それで手心加えるつもりはないんでしょ ? |
フィリア | ええ、もちろんですわ。そのための祈りです。 |
ソーディアン・クレメンテ | 相手の立場で物事を考えられるのはフィリアの良いところじゃな。 |
スタン | ああ。俺もフィリアの優しいところ、好きだぜ ! |
フィリア | ……ありがとうございます ! |
ジョニー | その笑顔で新曲が作れそうだぜ。ところでウッドロウ、さっき何か言いかけたな。 |
ウッドロウ | ああ。壊す手段についてだ。元の世界では、ソーディアンを以てしても神の眼を壊すことはできなかった。 |
スタン | そうでしたね。どうしたらいいんだろう……。 |
ソーディアン・ディムロス | 問題ない。あれは本物の神の眼ではないからな。 |
ソーディアン・クレメンテ | そのとおり。有り物のレンズで形だけ似せたまがい物に過ぎんからのう。 |
ソーディアン・アトワイト | あれなら、私たちの力でも十分に壊すことができるはずよ。 |
スタン | わかった。みんな、剣を掲げて―― |
? ? ? | ソウハサセナイ……。 |
スタン | 死鏡精か ! ? |
マーク | ワレラヲジャマスルモノニ、シヲ ! |
スタン | マーク…… ? なんでここに ! |
マーク | ツドエ ! ワガドウホウヨ ! |
スタン | どうしたんだよ、マーク ! |
死鏡精 | シネ ! シネ ! シネ ! |
ジョニー | 俺の~歌を~聞け~ ! ! |
死鏡精 | グアアッ ! |
ジョニー | フッ、ざっとこんなもんさ。 |
スタン | 助かりました ! マークは―― |
マーク | ――シネ。 |
ジョニー | 歌が効いてないのか ! ? くっ、俺の~歌~ ! |
スタン | うわああああっ ! |
ルーティ | スタン !ジョニー、うるさくていいからもっと歌ってよ ! |
ジョニー | 駄目だ ! マークには俺の歌が通じない ! |
スタン | マーク ! なんでだよ ! |
リオン | お前の頭で考えても無駄だ !死にたくなければ戦え ! |
ソーディアン・イクティノス | ……あの様子、操られてるのかもしれないな。 |
ウッドロウ | そのようだ。――全員でマーク君を止めるぞ ! |
キャラクター | 7話【16-22 大樹カーラーン2】 |
マーク | ……ハナセ……ジャマヲスルナ…… ! |
ウッドロウ | これ以上、手荒な真似はしたくない。大人しくしてくれ。 |
スタン | おい、マーク ! しっかりしろよ ! |
マーク | マーク……、オレ……俺は……マーク……。あんたたちは……、そうか……ミリーナの……。 |
ソーディアン・ディムロス | 正気に戻ったようだ。 |
スタン | よかった ! 何があったんだ、マーク。イクスたちと一緒じゃなかったのか ? |
マーク | 違う……。俺は、もう一人のフィル……ジュニアの鏡精だ。 |
一同 | えっ ! ! |
ウッドロウ | 驚いたな……。同一人物の鏡精とはここまでそっくりになるものなのか。 |
ルーティ | カーリャとネヴァンもそうだけどあの二人は大きさからして違うから比べようがないわね。 |
ジョニー | なるほど。死鏡精じゃないなら俺の歌は効かないわけだ。 |
マーク | それでも死鏡精の影響を弱めることはできたよ。助かったぜ。 |
フィリア | とにかく傷を癒しましょう。命に別状はありませんから、安心してくださいね。 |
マーク | いや、治さなくていい。このまま俺を殺してくれ。 |
一同 | なっ ! ? |
スタン | なに言ってるんだよ ! できるわけないだろう ! |
ルーティ | そうよ。あんたがどうしてこうなったのか訳も分からないのに ! |
マーク | だな。すまねえ……。俺は死鏡精に取り込まれて自我を失いここに連れてこられたんだ。 |
マーク | 今はどうにか話せちゃいるがじきにまた、死鏡精に取り込まれて利用される。そうなったら俺の存在は厄介だ。 |
フィリア | でも、死ななくても何か方法があるはずです。 |
フィリア | もう一人のマークさんがフィリップさんを慕うようにあなただってジュニアさんの元へ戻りたいでしょう ? |
マーク | ……なるほど。あっちの俺はずいぶんと好かれてるんだな……。ありがとよ。 |
マーク | けどいいんだ。俺はここで死んでも。あいつさえ、ジュニアさえ生きていればもう一度、俺を作りだせる。 |
マーク | 鏡精ってのは、そういう生き物なんだ。 |
一同 | …………。 |
リオン | ……聞きたいことがある。少し前から、僕たちへの攻撃が減っている。ここで作られている鏡精は何をするつもりだ。 |
マーク | 奴らの大半はビフレストへ向かっている。ここで作られた死鏡精は……鏡精モリアンの尖兵になって……いる……。 |
マーク | モリアンを救ってやってくれ……。 |
スタン | 鏡精モリアンって、なんなんだ ? |
マーク | メルクリア……が……自分の鏡精に心を……乗っ取られ………られ………オレ……モ……もう……… ! |
フィリア | マークさん ! 気をしっかり持ってください ! |
マーク | 駄目だ……もう時間が……お前たち、早く……コロス……。 |
マーク | コロシ……俺を殺してくれ ! 今すぐっ ! ! |
スタン | けど ! |
リオン | ――スタン、どけ。 |
マーク | ぐっ、ごふっ…………。 |
スタン | リオン…… ! |
マーク | すま……ねえ。嫌なこと、させ……。 |
リオン | 情報の礼だ。気にするな。 |
マーク | フィル……。いま……もど…………。 |
リオン | …………。 |
スタン | マークが消えた…… ? |
リオン | 驚くことはないだろう。カーリャのことを思い出せ。 |
リオン | 姿が消えても、すぐに復活していた。それと同じだと思えばいい。 |
リオン | 幼体ではないから、人を殺したような気になるだけだ。……大したことじゃない。 |
ソーディアン・シャルティエ | 坊ちゃん……。 |
ウッドロウ | すまない、リオン君。君にばかり負担を強いた。 |
リオン | 大したことじゃないと言ってるだろう。それより、さっさとこの神の眼モドキを始末するぞ。 |
スタン | ああ、やろう。こんなのは、もうたくさんだ。――ディムロス ! |
ソーディアン・ディムロス | ああ、準備はできている。 |
ルーティ | アトワイトもいい ? |
ソーディアン・アトワイト | ええ。やりましょう、ルーティ。 |
フィリア | クレメンテ、お願いします。 |
ソーディアン・クレメンテ | この程度、朝飯前じゃ。 |
ウッドロウ | 頼んだぞ、イクティノス。 |
ソーディアン・イクティノス | ああ、任せておけ。 |
リオン | シャル、しくじるなよ。 |
ソーディアン・シャルティエ | 坊ちゃんに恥はかかせませんよ ! |
ジョニー | 死鏡精が向かってきたら、俺が蹴散らしてやるぜ ! |
スタン | お願いします ! |
スタン | ――さあ、こいつをぶっ壊すぞ ! |
キャラクター | 8話【16-23 セールンド山】 |
ガイ | ここがアイギスシステムの調整施設ってやつか。とりあえず無事到着だな。 |
アニス | イオン様、お体はどうです ?無理はしないでくださいね。 |
イオン | ありがとう、アニス。僕は大丈夫です。激しい戦闘もありませんでしたからね。 |
ルーク | 思ったよりも簡単に着いちまったよな。死鏡精がこう、どわーっと襲ってくるかと思ってたのに。 |
ティア | そうね。姿も見せないなんて……。もしかして、虚無との出入口が閉じているのかしら。 |
アッシュ | そうだったら手間が省けるんだがな。だが奇妙といえば奇妙だ。 |
ナタリア | こちらも変ですわ。マルタの話では壁一面の檻に光魔が入っていたとの話でしたが見たところ空っぽ―― |
光魔 | ハウルルルルル ! |
ナタリア | キャアッ ! |
アッシュ | 檻から離れろ、ナタリア ! |
ナタリア | ご、ごめんなさい。油断していましたわ……。 |
アッシュ | よかった……怪我はないな。 |
ジェイド | どうやら、何匹か残っているようですね。なるほど…………。 |
アッシュ | おい、死霊使い。一体どうなってやがる。 |
ジェイド | そうですねぇ。では……ガイ ! |
ガイ | おいおい、勘弁してくれ。俺は説明なんてできないぞ ? |
ジェイド | いいえ。この光魔を倒してください。 |
ガイ | はあ ? なんだよ、藪から棒に。 |
ジェイド | このままにはしておけないでしょう。あ、アッシュもどうぞ張り切って参加を。ナタリアを驚かせた光魔に、敵討ちができますよ ? |
アッシュ | 人をいいように使いやがって。 |
ガイ | なんだかんだ逆らえないのが俺たちの悲しいところだな。やるぞ、アッシュ。 |
アッシュ | 仕方がない。――魔王絶炎煌 ! |
ガイ | 龍爪旋空破 ! |
ガイ | ふぅ……。倒したぜ。これで満足かい ? |
アニス | あれ ? 光魔のいたところ、変な鏡が……。 |
イオン | 気を付けてください !光魔の消えた後には虚無への路が開く ! |
ルーク | あ、そうか ! あれは光魔の鏡だ ! |
死鏡精 | ミ……カガミ…… |
ティア | 光魔の鏡から、死鏡精が ! |
ルーク | くそっ ! 早く倒すぞ ! |
ジェイド | いいえ、まだです。 |
死鏡精 | カガミシ……。 |
ナタリア | あの死鏡精、こちらへ来ませんわ ? |
死鏡精 | カガミシニシヲ ! |
アニス | あっ、飛んでいっちゃいますよ ! |
ティア | あの方角はアジト…… ?このままじゃ見失います、大佐 ! |
ジェイド | そろそろいいでしょう。――フレイムバースト ! |
死鏡精 | カガミシ……ア……アァァ……。 |
ルーク | 消えた……。はぁ、驚いたぜ。 |
ジェイド | おかげでじっくり観察できました。ご協力ありがとうございます。 |
ナタリア | 大佐、悪い癖ですわよ。きちんと説明なさい。 |
ジェイド | これは失礼。今まで報告にあった事象の確認を取っていました。 |
ジェイド | 光魔の死に際し、虚無への路が開く。そこから死鏡精は発生する、というね。 |
ガイ | で、そのとおりだったってか ? |
ジェイド | ええ。今の死鏡精もですが、あれらは虚無に取り込まれ漂っていた存在なのでしょう。 |
ジェイド | それが、虚無への路が一時的に繋がったことで飛び出してきたのだと思われます。 |
ルーク | けど、前は光魔を倒しても光魔の鏡が出現したりしなかったよな ? |
ジェイド | 以前とは状況が違いますからね。それに光魔には疑似心核が入れられている。そこに術式を組み込んでいるのではないでしょうか。 |
ルーク | ……うん、よくわからねーことがわかった ! |
ジェイド | ま、いいでしょう。そしてもう一つ、虚無から現れた死鏡精は我々のアジトを襲うのが目的のようです。アジトを狙う理由はまだわかりませんがね。 |
イオン | それにしても……帝国の施設から死鏡精が発生していた。……なんだか嫌な予感がしますね。 |
ルーク | ええと……つまりなんだ ? |
アッシュ | 死鏡精も帝国が『製造』していたんじゃないかってことだ。 |
ナタリア | では、これからも死鏡精の製造は続きますの ? |
ジェイド | 元となる光魔はほとんど消えています。この場所からの死鏡精の発生は止まったと思っていいでしょう。 |
イオン | でも、なぜ『死鏡精』なのか、それらを虚無から呼び出す必要性は何か、はっきりしませんね。 |
ジェイド | ええ、それに死鏡精も死の砂嵐の一部になっていたはずです。死の砂嵐の中の存在がこちらに現れる場合、今までは『光魔』だった。 |
ジェイド | なのに何故ここに来て『死鏡精』という存在として出現したのか。これには意味がある筈です。 |
ジェイド | それに、帝国には死の砂嵐から任意に望んだ人物の心を呼び出す術があります。 |
ルーク | ナーザたちみたいな奴らのことだな。 |
ジェイド | ええ。それがどんなものかは未だ不明ですが、死鏡精にはその技術が応用されているのではないかと。 |
ルーク | 待ってくれ。セネルたちから連絡だ。 |
セネル | ルーク、そっちはどうだ ? |
ルーク | ああ。死鏡精の発生は抑えられそうだ。セネルの方は ? |
セネル | ちょっと面倒な話になってる。アジトに戻ってから詳しく話すけど―― |
ジェイド | いえいえ、遠慮せずに。今ここで話して、すっきりしてしまいなさい。 |
アッシュ | ああ。中途半端に言われては気になるだろう。わかったことがあるなら言え。 |
セネル | (尋問されるって、こんな気持ちか……) |
セネル | ――ざっとだけど、今のところはこんな状況だ。他にもわかったら後で連絡する。 |
ルーク | おお、ありがとな ! |
ジェイド | ――精霊輪具を魔導器として利用……ですか。 |
ガイ | あっちは聖核だの魔核だの、こっちは虚無から死鏡精。どこに行ってもヤバイ情報だらけだな。 |
ジェイド | 死鏡精も、そういった何らかの技術に転用するために製造されているのかもしれませんね。 |
ジェイド | 聖核はいわば死んだ者の魂。死鏡精も何らかの形で変化させれば魔核として利用できるでしょう。 |
ティア | そんな……。鏡精たちはエネルギーとして使われたのに死んだ後もまだ利用されるんですか ? |
ジェイド | 帝国が意図的に増やしているのであればその可能性があるということです。 |
ジェイド | であればもちろんエネルギーに執着している帝国は聖核同様、軍用としての利用を考えるでしょうね。 |
ティア | 軍用って……兵器ですよね。死んでも安らかに眠ることさえ許されないなんて。 |
ルーク | あの死鏡精たちは利用されるために生まれたってのかよ……。 |
ジェイド | ………………。 |
ジェイド | 気持ちお察ししますが、冷静に。そもそも帝国は死鏡精をそこまで重要視はしていない筈です。 |
ジェイド | 死鏡精は虚無や死の砂嵐を調査した際の副産物にすぎない筈ですよ。帝国の目的はニーベルングの復活ですからね。 |
キャラクター | 9話【16-24 魔都ビフレスト1】 |
イクス | ここがビフレスト……。 |
シング | 人の気配がしないね。 |
ミリーナ | ええ……。島だけが具現化されたみたいね。帝国兵もいないみたい……。 |
コハク | 島を具現化したんだから、メルクリアか帝国のどちらかはここに来てるんじゃないかと思ったけど……外れだったのかな。 |
コーキス | じゃあここには誰もいないのか ? |
クンツァイト | 否。ここには死鏡精のものと思われる反応がある。 |
リチア | ええ。それも数え切れない程沢山……。彼らはゼロム――わたくしたちの世界の思念生物とよく似ています。 |
リチア | メルクリアや帝国兵がいなくても死鏡精がこれだけ存在していれば世界に対する脅威となり得ます。 |
ヒスイ | 死鏡精とゼロムは同じ存在って訳じゃねえんだろ ? |
クンツァイト | 似て非なるものだ。鏡精のほうがゼロムのあり方に近いと言える。 |
カーリャ | 私たちがゼロムだって言うんですか ! ?……って、ゼロムって何ですかあ ? |
シング | ああ、カーリャは知らないんだな。前にレイアたちには話したんだけど……。 |
クンツァイト | ゼロムは人間のスピリアを破壊するために作られた思念生物だ。 |
コハク | ゼロムはスピリアに寄生しスピリアをエサにしているの。ゼロムに寄生されると病気になっちゃうんだ。 |
カーリャ・N | ゼロム……。心に寄生する生物……。 |
カーリャ | ひええええ……。カーリャは人の心に取り憑いたりしませんよ ! ? |
クンツァイト | 鏡精がゼロムと同じだと言っているのではない。死鏡精よりは鏡精の方がゼロムに似ていると言っているだけだ。 |
クンツァイト | もちろん鏡精もゼロムとは違う。ただ―― |
リチア | クンツァイト。その先はわたくしが。 |
リチア | この世界ではまだ本来のゼロムを観測していません。かつてイクスの思念がゼロム化していましたがあれはわたくしたちの世界のゼロムそのものではなかった。 |
ミリーナ | どういうこと ? |
リチア | これは……あくまでわたくしとクンツァイトの推測なのですが、鏡士はゼロムに限りなく近い思念体を作り出せるのではないでしょうか。 |
リチア | 疑似ゼロムと言ってもいいかもしれない。 |
イクス | 疑似ゼロム……。 |
カーリャ・N | 興味深いお話ですが今はこの島の調査を優先しましょう。 |
カーリャ・N | 連絡が取れませんが、クラトス様とゼロス様もこちらに上陸しているとのことですからできれば合流したいところです。 |
シング | うん、そうだね。魔鏡通信機は……使えるみたいだな。だったら、手分けして捜そうか。 |
イクス | そうだな。ケリュケイオンを目印に左回りと右回りに分かれて、島を捜索しよう。 |
イクス | 左は俺とミリーナとコーキスとカーリャとネヴァン。右は―― |
コハク | わたしたちが担当するのね。 |
リチア | わかりました。けれど相手は死鏡精です。 |
リチア | 心から生まれた存在だからこそ、同じように心から生まれた鏡精や、鏡精を生み出せる鏡士にどんな影響があるかわかりません。気を付けて下さい。 |
ミリーナ | それはソーマ使いのみんなも同じよ。お互い慎重に行きましょう。 |
コーキス | 上手くいけば中間地点で合流だな ! |
ヒスイ | ああ、しくじるなよ ! |
イクス | しばらく歩いてきたけど死鏡精にも出会わないなんておかしいな。 |
カーリャ・N | 嵐の前の静けさ……でなければいいのですが。 |
カーリャ | あわわわ、な、何ですこの霧は……。 |
カーリャ・N | これは魔鏡術 ! ? |
ミリーナ | いけない !この霧はお互いの位置を見失ってしまうわ ! |
イクス | みんな、手を伸ばせ ! 互いに手を掴むんだ ! 早く ! |
イクス | この手は……誰だ ? |
ミリーナ | 私よ !私の手を握っているのはイクスと……ネヴァン ? |
カーリャ・N | は、はい、そうです。小さいミリーナ様 ! |
イクス | 霧が……晴れてきた……。 |
イクス | ………… ? コーキスとカーリャは何処だ ? |
ミリーナ | 二人だけはぐれた…… ?いえ、これは意図的に引き離されたのかしら…… ? |
カーリャ・N | そうかもしれません。死鏡精にしてみれば鏡精は人間より取り込みやすいですから。 |
イクス | でもネヴァンは―― |
カーリャ・N | 私は切り離された時点でほぼ人間と同じ存在です。 |
| カガミシ……ミツケタ ! |
ミリーナ | 死鏡精 ! ? |
イクス | くっ、囲まれたか ! ? |
| カガミシニシヲ ! |
クラトス | 助太刀しよう。 |
ゼロス | ミリーナちゃ~ん ! ネヴァンちゃ~ん !あとおまけ !愛の戦士ゼロス様が、今助けるからねー ! |
キャラクター | 10話【16-25 魔都ビフレスト2】 |
コーキス | く……何だよこの霧は…… ! ? |
カーリャ | ミリーナさまが出す霧と同じようなものだと思いますけど……。 |
コーキス | マスターたちの気配が消えてる……。もしかしてはぐれちまったのか ? |
? ? ? | 鏡士たちに会いたいか ? |
コーキス | 誰だ ! ? |
? ? ? | 鏡士たちに会いたければわらわの下へ来るがよい。 |
コーキス | 一箇所だけ霧が晴れて……道みたいになった……。 |
カーリャ | コーキス……。これって罠ですよねぇ ? |
コーキス | けど、ここにずっといても、何も変わらないよな。 |
カーリャ | う……それはその通りです。わ、わかりました。コーキスは私の後ろをついてきなさい !あ、危ないですからねっ ! |
コーキス | パイセン、かっけーな ! |
カーリャ | か、からかわないで下さい ! 早く行きますよ ! |
カーリャ | 行き止まりみたいですねえ……。 |
カーリャ | ……ん ? 何か話し声が聞こえませんか ? |
? ? ? | ……とう……います。助か……した。 |
コーキス | マスターの声だ ! ? |
カーリャ | ミリーナさま ! |
カーリャ | いたたた ! ? ここに見えない壁がありますよ ! ? |
モリアン | 無駄じゃ。わらわの魔鏡術で、奴らと我らの間に壁を作り出しているからのう。 |
コーキス | メルクリア ! ?だ、大丈夫だったのか ! ? |
カーリャ | イクスさまが言ってましたよ。メルクリアがモリアンって死鏡精にのっとられ……――あ ! ? |
コーキス | まさか、お前……モリアンなのか ? |
モリアン | わらわの方を気にしていてよいのか ?お前たちが愛して止まない鏡士たちが鏡精の話をしているぞ ? |
イクス | ありがとうございます。助かりました。 |
ゼロス | どう致しまして。それよりちっちゃいカーリャちゃんとコーキスはどうしたんだ ? |
ミリーナ | それが……魔鏡術の霧に取り囲まれた時にはぐれてしまって……。 |
ジュニア | はぐれたってことは、僕のマークと同じ…… ? |
ナーザ | 死鏡精に取り込まれた可能性があるな。 |
イクス | ! ? |
カーリャ・N | お前は ! ?イクス様のお体を奪っておいてよくも―― |
ミリーナ | ネヴァン、待って。 |
カーリャ・N | ですが ! |
クラトス | ネヴァン。気持ちは察するが、今はこらえて欲しい。我々は協力体制にある。 |
イクス | どういうことですか ? |
イクス | そうか……。やっぱりメルクリアは心を失って、モリアンに……。 |
リヒター | この島では、魔鏡通信の出力が下がるらしくてな。ケリュケイオンにも連絡が取れずにいた。 |
ジュニア | うん。だから島の外の状況が色々と聞けて僕たちも助かったよ。 |
ジュニア | それに……驚いたな。イクスと最初のイクスが話をしたなんて。その場にメルクリアもいたのか……。 |
ナーザ | 最初のイクス・ネーヴェは知っていたのか ?自分が何故命を狙われたのか。 |
ミリーナ | ……イクスを狙っていた ?オーデンセの鏡士全員を狙っていたのではないの ? |
ナーザ | カーリャ……いや、ネヴァンか。お前はゲフィオンからどれだけの記憶を託されたのだ。 |
カーリャ・N | ……イクス様に関する全てを。ただその詳細は私も知りません。ミリーナ様の記憶を見られるのはミリーナ様だけです。 |
ナーザ | フン。ではまだ知らないのだな。このミリーナは。 |
ナーザ | イクス・ネーヴェはバロールの魔眼を受け継ぐものだ。バロールの魔眼は、予言された世界を解体する力。世界に『死』を放つ存在だ。 |
イクス | ………………。 |
ナーザ | 知っていたようだな、最初のイクス・ネーヴェは。オーデンセの鏡士は古き盟約を違えた。 |
ナーザ | バロールの魔眼を持つ者はけっして鏡士にしてはならない。 |
ナーザ | もしも約束を違えた時はバロールの血筋を根絶やしにすると。 |
ミリーナ | イクスが鏡士になったから……オーデンセを襲ったの ! ? |
ナーザ | それが全ての始まりだ。もとよりオーデンセの鏡士共は鏡士としてのあり方を歪めていた。 |
ナーザ | 禁忌であった鏡精を生み出しそれを殺してエネルギーとするなどおぞましいにも程がある。 |
ナーザ | 我らが何度やめるように警告しても、セールンド王国は鏡精エネルギーの使用をやめなかった。滅ぼされて当然だ。 |
イクス | 当然なんかじゃない ! |
ナーザ | 何 ? |
イクス | 確かにセールンドのエネルギーシステムは非道だ。それに最初のイクスが鏡士になったことが問題ならイクスだけを殺せばよかったじゃないか。 |
イクス | 滅ぼされて当然なんて言い方はやめてくれ。 |
ナーザ | バロールの血筋はオーデンセの鏡士のどこに潜んでいるかわからぬ。 |
ナーザ | イクス・ネーヴェ以外にも、バロールの血を受け継いだ者がいた可能性がある。 |
ナーザ | ――だが、確かに言葉が過ぎた。我が国も問題解決のため、力に訴えたことは事実だ。 |
ミリーナ | ……待って。そんなに恐ろしいものならそもそもどうしてバロールの血筋を残しておいたの ? |
ミリーナ | 最初のイクスの遺体を保存していたのもバロールの魔眼と関係があるの ? |
ナーザ | 遺体を残したのは、バロールの血筋を滅ぼしてもバロールの力を残しておく必要があったからだ。 |
ナーザ | 大事なのはバロールの魔眼をもつ鏡精を作らせないことだったからな。 |
カーリャ・N | それはコーキスのことですか。 |
ナーザ | そうだ。まさか具現化したイクスが鏡精を作ることになるとは……。 |
ナーザ | どちらにしてもビフレストが滅んだ後ではどうにもならなかった。いや……ゲフィオンは気付いていた筈だが……。 |
イクス | 確かに、最初のイクスは言っていました。自分が鏡精を作ると世界を滅ぼすことになるって。 |
コーキス | ! ? |
ナーザ | 鏡精は単なる心の具現化ではない。ティル・ナ・ノーグの前の存在した世界――ニーベルングを滅ぼした兵器だ。 |
ナーザ | 故にダーナはティル・ナ・ノーグで鏡精を作ることを禁じた。 |
ナーザ | かつてバロールの魔眼をもつ鏡精はフィンブルヴェトルを引き起こしニーベルングを破壊したという。 |
ナーザ | コーキスはその再来だ。生まれてきてはならなかった。 |
コーキス | ……俺たちは……兵器…… ? |
カーリャ | 嘘です……そんなの……。 |
モリアン | 嘘ではない。鏡精は死なぬ。鏡士と繋がっている限りは何度でも甦る。何故じゃ ? |
コーキス | ……その方が……兵器として、便利だから ? |
モリアン | そうじゃ ! 気づいたか、鏡精。そなたらは鏡の中から生まれ出でた破滅の象徴殺戮兵器じゃ ! |
コーキス | ……俺の魔眼が……バロールの魔眼 ? |
モリアン | エネルギーとして利用されるために殺された死鏡精と兵器のために何度も蘇りを強要される鏡精とどちらが悲惨なのかのう ? |
コーキス | マスターは……俺を作っちゃいけないって知ってた…… ? |
コーキス | マスターは鏡精を……謀れる……。だからマスターは……。何も言わずにいて……。 |
コーキス | マスター……俺……生まれちゃいけなかった…… ? |
カーリャ | コーキス ! ? |
モリアン | やはり……。おぬしは鏡士とのリンクを一部切っているな。鏡士との繋がりが弱まっておるわ。その体、もらい受けるぞ ! |
ジュニア | ――待って ! ? 何かが来る ! ? |
イクス | コーキス ! ? どこに行ってたんだ ! ? |
コーキス | ……カガミシニ……シヲ……。 |
カーリャ・N | いけません、イクス様 ! コーキスの様子がおかしい ! |
カーリャ | コーキスはモリアンに……死鏡精に操られているんです ! |
コーキス | カガミシニシヲ ! |
イクス | コーキス ! ? |
コーキス | カガミシニシヲ ! ! |
キャラクター | 11話【16-26 魔都ビフレスト3】 |
コーキス | (マスター ?どうして俺に斬りかかってくるんだ ! ?) |
コーキス | (俺が……生まれちゃいけない鏡精だったからか…… ?) |
モリアン | くくく……。鏡士に裏切られた気分はどうじゃ ?お前も他の死鏡精たちと同じなのじゃ。鏡士に殺される。 |
コーキス | (マスターは……ますたーは……そんな……) |
モリアン | よいのじゃ。それでも鏡士が恋しかろう。わらわにはわかる。 |
モリアン | 力を貸せ、コーキス。その魔眼の力で、全てを焼き払いわらわのように主と一つになればよい ! |
コーキス | ――カガミシニ……シヲ…… ! |
イクス | コーキス ! ?どうして俺たちが戦わなきゃならないんだ ! ? |
カーリャ・N | コーキス ! しっかりしなさい !あなたは操られている ! |
ナーザ | イクス。このままでは死鏡精共が魔眼を手に入れる。その前に、コーキスを消せ。 |
イクス | ! ? |
コハク | イクスたち、遅いね。 |
シング | 連絡を取ってみよう。 |
シング | ……あれ ? 魔鏡通信機が反応しない。 |
ヒスイ | はあ ? 何言ってんだ、貸してみろ ! |
ヒスイ | ……本当だ。どういうことだ ? |
クンツァイト | リチアさま、空を ! |
リチア | あれは死鏡精の群れ……。 |
シング | 大樹から飛んできてる奴かな。この島に集まって何をするつもりなんだろう。 |
シング | 魔鏡通信できればミトスたちの状況も聞けるんだけど……。 |
リチア | もしかしたら……死鏡精が大量に集まっているせいで魔鏡通信機のスピリアを繋ぐ機能がマヒしているのかもしれません。 |
コハク | クンツァイト、何とかならない ? |
クンツァイト | 出力を上げて繋がるかどうか、試してみよう。 |
クンツァイト | ――上手くいったようだ。音声のみだが、連絡を取れるだろう。 |
シング | よし、まずイクスだ。 |
? ? ? | ……待っていて下され、メルクリアさま。あなたを傷つけたこの世界にわらわが復讐してみせます。 |
ヒスイ | 何だ……この声は ? |
シング | メルクリアの声にそっくりだけど……本人なら自分のことメルクリア様なんて言わないよね。 |
コハク | 確かイクスの話では、メルクリアは死鏡精のモリアンに乗っとられたって言ってたよね。 |
リチア | ! ! これはもしや……操られてるメルクリアのスピリアに繋がっているのでは ? |
クンツァイト | 出力を強めたせいで、魔鏡通信機ではなく付近にいる人物のスピリアに直接繋がったというのですか。 |
? ? ? | クク……マークは失ったが、コーキスは手中に落ちた。我ら死鏡精の力とバロールの魔眼とでメルクリアさまを傷つける世界に報復する ! |
ヒスイ | ――おい、こいつ、何言ってんだ ! ?マークを失った ? コーキスを手に入れた ?イクスたちに何が起きてるってんだよ ! ? |
コハク | 早くイクスたちと合流した方がいいんじゃない ? |
リチア | ええ。確か順調に来ていればイクスたちはあちらの道から―― |
シング | ……ねえ、鏡精や死鏡精はゼロムに似た存在なんだよね。 |
シング | それがメルクリアに乗り移ったってことはメルクリアのスピリアにゼロムが取り憑いてるってこと ? |
シング | もしそうならメルクリアにスピルリンクしてモリアンを倒せたらイクスたちを助けられるんじゃないかな。 |
ヒスイ | スピルリンクするったって、メルクリアの居場所がわかんねぇだろうが ! |
リチア | ……確かに目の前にメルクリアがいない以上、メルクリアにスピルリンクはできません。 |
リチア | でも、今この魔鏡通信機はモリアンのスピリアに繋がっています。モリアンに直接スピルリンクしましょう。 |
リチア | モリアンはメルクリアのスピリアの一部ですからモリアンにスピルリンクすれば、わたくしたちもメルクリアのスピリアに入れるはずです。 |
四人 | ………… ! ! |
イクス | コーキスを消す…… ? |
コーキス | ………………。 |
カーリャ | そ、そうです !鏡精は消えてもマスターがいれば何度でも―― |
イクス | ……嫌だ ! そうだとしても俺は自分の手でコーキスを消したりしない ! |
ミリーナ | イクス……。 |
イクス | わかってるんだ。ミリーナが何度もカーリャを消したり出したりしてるのは見てたから。 |
イクス | それでカーリャが苦しまないことも鏡精はそういう生き物だってことも……。 |
イクス | でも俺が嫌なんだ ! コーキスが納得したとしても俺はコーキスを家族みたいに思ってて……。家族を消すとか出すとか、おかしいだろ ? |
モリアン | 何が家族じゃ。『これ』が家族のすることか ! |
ナーザ | ――貴様 ! メルクリアを返せ ! |
モリアン | 黙れ。貴様はメルクリアさまを守ることができなかったではないか。そのような奴らにメルクリアさまは渡さぬ。 |
モリアン | メルクリアさまはわらわと一つになり死鏡精たちと新たなビフレストを作るのじゃ。その為に貴様らを始末してやる ! |
モリアン | コーキス ! 魔眼を使うのじゃ ! |
ナーザ | イクス ! コーキスを消せ ! |
コーキス | う……うう……。 |
イクス | コーキス !お前の出番はまだ終わってないぞ。帰ってこい ! |
コーキス | で……ばん…… ? |
イクス | 現世に姿を見せろ ! 鏡精コーキス ! |
コーキス | いやっほーぅっ !ようやく俺の出番って訳か !マスター、ありがとな ! |
イクス | 俺はお前を消したりしない。俺とコーキスは家族で親友で、運命共同体だろ ? |
コーキス | ……マス……タアアアアッ ! |
モリアン | 正気を取り戻した ? フン無駄な足掻きを…… !一度出来た心の隙間、何度でも突いてみせ―― |
モリアン | ………… ? |
モリアン | ――侵入者か ! ? |
ジュニア | あ、メルクリア ! ? |
ナーザ | ――いや、あれは単なる写し身だ。本人は別の場所にいるのだろう。 |
イクス | コーキス ! 大丈夫か ! ? |
コーキス | …………マスター……。ごめん……。なんか……いつの間にか……。 |
イクス | 大丈夫ならいい。それよりお前はこのままケリュケイオンに戻るんだ。 |
コーキス | ……それは……俺が足手まといだから ? |
イクス | そうじゃない。ただ―― |
ナーザ | ――甘いな、イクス。 |
ナーザ | 鏡精、貴様の言うとおりだ。また死鏡精にのっとられたら迷惑だということぐらい貴様にもわかるだろう。 |
コーキス | ……っ ! |
ジュニア | ……コーキス。ナーザ将軍の言う通りだよ。君は行かない方がいい。マークのようになってしまうから。 |
ナーザ | マークがどうした ? |
ジュニア | ……今、マークが僕の心に戻ってきました。多分……消えたから。 |
コーキス | え ? |
ジュニア | ああ、マークってのは、僕の鏡精の方のマーク。きっとコーキスみたいに死鏡精に取り込まれて……それで死んだんだろうね。 |
ジュニア | だから具現化が解けて、僕の心に戻ってきたんだ。 |
ミリーナ | コーキス。あなたならわかるわね。鏡精は消えても復活できる。ジュニアのマークもジュニアが呼び出せばまたすぐ現れる。 |
ミリーナ | でもイクスは、そうだとわかっていて……あなたを消したくないの。 |
イクス | コーキス……。そうだな。俺がはっきり言わなきゃ駄目だな。 |
イクス | 俺はコーキスを消したくない。だからケリュケイオンで待っていてくれ。 |
ゼロス | んじゃ、俺さまが引率でもするかね。ジュニアも一緒に来るだろ。マークも鏡精だ。ここでは呼び出さない方がいい。 |
ゼロス | マークが呼べないなら戦いの現場に出る必要もないでしょーよ。 |
ジュニア | ……そうですね。 |
コーキス | マスター……。俺を消したくないのは……俺が消えたら……もう具現化できないかも知れないからか ? |
イクス | え…… ?もしかしてコーキス、俺たちの話を聞いてたのか ? |
コーキス | ……ケリュケイオンに、戻ってる。 |
イクス | ――なあ、コーキス。俺はお前を具現化してよかったって思ってるからな。 |
コーキス | ……うん。ありがとう。 |
カーリャ | 私もコーキスと一緒に行きます。ミリーナさま、気を付けて下さいね。 |
ミリーナ | ……ええ、カーリャ。コーキスをお願いね。 |
クラトス | ――では、先を急ごう。まずはシングたちと合流しなければな。 |
キャラクター | 12話【16-30 メルクリア】 |
イクス | この辺りがシングたちとの合流地点の筈なんだけど……。 |
クンツァイト | リチアさまたちは、現在、死鏡精モリアンにスピルリンクしている。 |
ミリーナ | クンツァイトさん ! |
カーリャ・N | 先程、モリアンが侵入者……と口にしていました。もしやシング様たちのことなのでは。 |
ナーザ | それで写し身を送り込んでくることをやめたのか。 |
イクス | シングたちが心の中でモリアンを無力化してくれればメルクリアを助けられるな。メルクリア――モリアンは今どこにいるんだ ? |
クンツァイト | 魔鏡通信機がモリアンのスピリアと繋がったことを考えるとここから遠くはないと思われる。 |
リヒター | ……その先に見える大きな建物は何だ ?死鏡精が群がっているようだが。 |
クラトス | ビフレスト風ではあるが……城のようにも見えるな。 |
カーリャ・N | 死鏡精が集まっていると言うことはモリアンの拠点という可能性があります。 |
イクス | この辺りには俺たち以外に人影もないしあそこへ行ってみよう。 |
イクス | 見てくれ !奥にメルクリア――モリアンがいる ! |
ミリーナ | でも、すごい数の死鏡精……。これじゃあ、前に進めないわ。 |
イクス | この場にジョニーさんがいてくれたら……。 |
カーリャ・N | 魔鏡通信がつなげられればいいのですがそれもできませんしね。 |
クンツァイト | 魔鏡通信機の出力を上げることは可能だがそれで正しくジョニーのスピリアを捕捉するのは難しい。 |
リヒター | 頼れないものは仕方ない。それにここから見る限りではモリアンの動きが止まっている。シングたちがスピルメイズでモリアンと対峙しているんじゃないか。 |
クンツァイト | その通りだ。 |
ナーザ | ならば、今のうちにメルクリアの体を確保しいざというときのために拘束する。それが俺たちに出来る最善策だろう。 |
クラトス | シングたちを信じるのだ。死鏡精が集まっているのはモリアンを守るためだろう。彼らがメルクリアの中のモリアンを止めてくれれば、状況は変えられる。 |
イクス | わかりました。みんな、行こう ! |
シング | ここはモリアンのスピルメイズ ?それともメルクリアなのかな ? |
ヒスイ | ボロボロで今にも崩れそうになってやがる。どうしてこんな状態に……。 |
リチア | スピルーンが……粉々になっています。こんなことって……。 |
コハク | え…… ? ここに散らばってる欠片がスピルーン ?それじゃあここは―― |
モリアン | ここはメルクリアさまの心の中じゃ。貴様ら、どうしてここに来た ! ? |
シング | モリアン……だよね ?メルクリアのスピリアに一体何が起きたんだ ? |
モリアン | 帝国の愚か者共が、わらわを殺したのじゃ。ビフレストを具現化する為のエネルギーに変換するために。 |
モリアン | その際に、わらわをメルクリアさまから切り離さなかった。そのせいでメルクリアさまの心はわらわと共に破壊された。 |
コハク | 酷い…… ! |
モリアン | 酷いのは貴様らも同じじゃ。ここはわらわとメルクリアさまだけの世界。この場所から出ていけ ! |
シング | 来るぞ ! ? |
クラトス | ――数が多すぎるな。私がここで死鏡精を引きつける。イクスたちは先に行け ! |
イクス | は、はい ! |
リヒター | 俺もここに残ろう。ナーザ、メルクリアを頼む。 |
ナーザ | 感謝する。死ぬなよ ! |
ヒスイ | ――くそっ ! どうなってやがる。奴の攻撃は食らうのに、こっちの攻撃が届かねぇぞ ! ? |
リチア | わたくしたちをスピルメイズから追い出すために壁を作っているのだと思います。彼女の注意が少しでも『外』に向けば……。 |
シング | どういうこと ? |
リチア | モリアンはメルクリアのスピリアの具現化。いわばメルクリアのスピルーンの一部です。 |
リチア | 彼女が宿っている今こそが、メルクリアのスピルーンを修復する絶好の機会なのです。 |
コハク | でも『外』に注意を向けるって、どうやって ? |
シング | そうか……クンツァイトだ ! |
クンツァイト | ! |
ミリーナ | どうしたの ? クンツァイトさん ? |
クンツァイト | ――シングたちからの伝言だ。メルクリアのスピリアを修復するため、モリアンの注意を『外』に向けて欲しいと言っている。 |
ナーザ | メルクリアの心を治せるのか ! ? |
ミリーナ | 確かに、コハクたちならソーマがあるから可能なのかも知れないわ。コハクも元の世界で心――スピリアがバラバラになったと聞いたもの。 |
ミリーナ | 状況は違っても、コハクたちなら、きっと……。 |
カーリャ・N | では、皆さんは急いで下さい。ここは私が引き受けます。ここで死鏡精を引きつければもうメルクリアの体はすぐそこです。 |
クンツァイト | 自分もここに残ろう。ネヴァン一人を残した場合生き残る確率は58%。不安の残る数字だ。 |
カーリャ・N | ありがとうございます、クンツァイト様。小さいミリーナ様、イクス様、それに……ナーザ将軍。後はおまかせします。 |
ミリーナ | ええ、すぐに終わらせて戻ってくるわ。 |
クンツァイト | リチアさまたちのためにも、頼むぞ。 |
イクス | ああ、わかってる ! |
モリアン | ………………。 |
ナーザ | メルクリア ! |
ミリーナ | 反応しないわ。 |
ナーザ | ……俺たちがメルクリアの体を傷つけることはないと高を括っているのだろう。 |
イクス | ナーザ将軍 ! ?まさか妹さんを攻撃するつもりですか ! ? |
ナーザ | 『外』に意識を向けるのだろう ? |
イクス | それはそうですけど―― |
バルバトス | 隙だらけなんだよ ! |
バルバトス | 覚悟はできたか ! ? ワールドデストロイヤー ! ! |
ナーザ | な、何 ! ? ローゲ……いや、バルバトス ! ? |
イクス | どうしてここに ! ? |
ミリーナ | きゃああああああ ! ? |
モリアン | ――甘いわっ ! ! |
バルバトス | 黙れ ! 貴様だけは生きたまま手足を折り首をねじ切ってやるわッ ! ! |
モリアン | 痴れ者め !死鏡精たちよ、この三下をひねり潰すのじゃ ! |
バルバトス | 三下だと ! ? 虫けらが思い上がるなッ ! ! |
死鏡精 | モリアンヲ、マモル ! |
バルバトス | 邪魔だ、羽虫共 ! どけえぇぇぇぇぇッ ! ! |
? ? ? | イクスさん、今ならバルバトスが死鏡精を引きつけてくれています。モリアンを ! |
イクス | ……う……。だ、誰だ…… ? |
ナーザ | ――鏡士には声が聞こえるんだったな。今のはバルドだ。 |
ミリーナ | バルド、さん…… ? |
モリアン | ……鏡士共、生きていたか。 |
イクス | モリアン ! メルクリアを返してくれ !俺はるつぼでメルクリアと話をした。話せたってことは、あの子の心はまだ生きてるんだ。 |
モリアン | 黙れ ! 貴様たちはメルクリアさまが憎んでいた鏡士ではないか ! |
モリアン | ミリーナ ! 貴様はビフレストを滅ぼして自分の欲しいものだけ甦らせた ! |
モリアン | イクス ! 貴様は一度死んだのにこうしてわらわの目の前に立っている ! |
モリアン | ナーザ ! 貴様はメルクリアさまの兄でありながらメルクリアさまの気持ちをわかろうとしなかった !皆、わらわとメルクリアさまの敵じゃ ! |
バルバトス | よく言った ! そうよ、貴様は敵だ !敵は殺す ! 完膚なきまでになあッ ! |
イクス | バルバトスさん ! ? 死鏡精を倒してきちゃったのか。くっ、話がややこしくなるな……。 |
バルバトス | 何と言った小僧 ! ? |
イクス | な、何でもありませんっ !こうなったら、バルバトスさんも手伝って下さ……じゃなくて、バルバトスさん、加勢させて下さい ! |
バルバトス | フン ! 俺の肉壁になりたいか !面白い ! 足を引っ張るなよ ! ? |
イクス | ミリーナ、ナーザ将軍 ! |
ミリーナ | ええ、わかってるわ。 |
ナーザ | やむを得まい。俺たちがバルバトスを壁にすればいい。行くぞ ! |
キャラクター | 13話【16-30 メルクリア】 |
バルバトス | とどめだ ! ! |
イクス | バルバトスさん ! ? |
死鏡精たち | ヤラセナイ ! ! |
バルバトス | ええいっ ! 邪魔をするな ! ? |
モリアン | ……く……死鏡精……我が同志たち……死の楔となって、そやつらを……。 |
死鏡精たち | ワレラノテキニ……シヲ ! ! ! |
バルバトス | うおおおおおおおおっ ! ? |
死鏡精たち | カガミシタチニ……シヲ ! ! ! |
ミリーナ | ナーザ将軍 ! ? |
イクス | ど、どうして ! ? |
ナーザ | 死体の便利なところはな……物理的な痛みが鈍く感じられることだ……。 |
ナーザ | イクス……魔眼……の使い方……お前も知っている筈……。 |
イクス | 『コーキス。ゲフィオンから伝言だ。俺にはわからないこともあるから、そのまま伝えるぞ』 |
イクス | 『その目はイクスと繋がっている。自分のアニマとイクスのアニマを重ねて合わせて、死を放て。それこそが鏡精に与えられた禁断の魔眼だ』 |
イクス | けど、あれはコーキスの……。 |
ナーザ | アニマを重ねろ……ミリーナ……と……。魔眼とまでは行かずとも……きっと……死鏡精を……。 |
イクス | アニマを重ねる……。そうか ! スタック・オーバーレイを―― |
死鏡精たち | カガミシタチ……マダ……イキテイル……。 |
イクス | ――ミリーナ ! 力を貸してくれ ! |
ミリーナ | え、ええ。でも、どうすれば……。 |
イクス | 俺を信じて。俺にミリーナのアニマを預けてくれ。二人の力をスタックするんだ。 |
イクス | きっとスタック・オーバーレイがナーザ将軍が言ってた魔眼なんだと思う。 |
ミリーナ | 二人で力を重ねるのね。わかったわ。 |
死鏡精たち | カガミシ…… ! |
死鏡精たち | シネ――――――ッ ! ! |
イクス・ミリーナ | フューチュリティレイズ ! ! |
死鏡精たち | ウアアアアアアアアアッ ! ? |
コハク | モリアンが消えた ! ? |
シング | リチア ! |
リチア | ええ、今のうちです。シング、あなたはこの中では一番メルクリアに近かった筈。 |
リチア | メルクリアのスピリアに呼びかけて下さい。あなたのスピリアの輝きがきっとメルクリアのスピリアを導いてくれるでしょう。 |
シング | わかった ! |
シング | (メルクリア……。応えてくれ。みんな、メルクリアを助けようとしてるんだ。覚えてるよね。メルクリアの側にいた人たちのこと) |
シング | (カイウス、ルビア、ミトス、リヒター、セシリィそれにナーザだって) |
シング | (メルクリアは嫌かも知れないけど……イクスもミリーナも力を貸してくれてるんだよ) |
ヒスイ | スピルーンの欠片が輝きだした…… ! ? |
イクス | シング ! ? |
シング | イクス ! ミリーナ !メルクリアのスピリアが元に戻ったんだ ! |
モリアン | まだじゃ……。大樹から生まれし死鏡精たち…… !わらわとメルクリアさまに……。 |
モリアン | ………………。 |
モリアン | ……何故……じゃ……。何故、来ない…… ? |
クラトス | ……無駄だ。先程ミトスたちと連絡がついた。死鏡精を生み出していた装置を破壊した、とな。 |
モリアン | く……どうして……。どうしてわらわとメルクリアさまの望みは叶わぬのじゃ……。自分の欲望のまま死者を蘇らせた者がいるというのに……。 |
モリアン | 何故わらわたちだけが、悪じゃと断罪される……失ったものを取り戻して何が悪いのじゃ……。 |
イクス | 悪くなんてないよ。 |
モリアン | ! ? |
イクス | 誰だって、失ったものを取り戻せるならそうしたい。そうしたいと思う気持ちは悪じゃない。 |
イクス | それが悪だなんて、誰が決めたんだ。そんなこと誰にも決められないって、俺は思う。 |
モリアン | ならば…… ! ? |
イクス | ――でも、その望みを叶えることで誰かや何かを傷つけてしまうのだとしたらそれは悲しいことだと思う。 |
イクス | 悲しみを埋めるために失った者を取り戻すことで別の悲しみを生み出すのならその連鎖は断ち切ったほうがいい。 |
イクス | モリアン。君は悪じゃない。メルクリアも悪じゃない。やり方はよくなかったけど、悪じゃないって俺は思う。 |
モリアン | ……死にたくない……。 |
イクス | ごめん。これまでの鏡士が君たちを救えなくて。 |
モリアン | ……そうじゃ……だから……メルクリアさま……どうか……もう二度とわらわたちのような……―― |
メルクリア | ……ん……。 |
シング | メルクリア ! ? |
メルクリア | ……シング……か ? 覚えておるぞ……。そなた……わらわの心に土足で入り込みおった……。 |
シング | メルクリア ! お帰り…… ! 本当によかった ! |
メルクリア | ……ありが……とう……。 |
ローエン | ……浮かない顔ですね、イクスさん。 |
イクス | ローエンさん……。いえ、メルクリアを助けることはできましたけど事態は何も変わっていないんだなって……。 |
ミリーナ | 死鏡精の増殖を防げただけでも前進よ。 |
イクス | そうだな……。それはその通りなんだけど……。バロールの魔眼のこともまだよくわからないし帝国の動きも気になるし。 |
ローエン | ナーザ将軍の傷が癒えたら、話を聞きましょう。 |
ミリーナ | ……私もあとでネヴァンと話をしてみるつもりよ。彼女が知っている筈の色々なことを。 |
ミリーナ | もっと早く話を聞ければよかったんだけどネヴァンもほとんどアジトにいなかったし戻ってきてからも立て続けに色々なことがあったから。 |
ローエン | それに、ネヴァンさんは……話をすることをためらっておいでのようですからね。 |
ミリーナ | ええ……。 |
コーキス | ………………。 |
カーリャ | コーキス……。どうしてイクスさまたちのところに行かないんですか ? |
コーキス | …………うん。 |
コーキス | (……今会うと、決心が鈍るから) |
ガロウズ | ――おっと、コーキス。こんなところにいたか。そろそろ着くぞ。 |
カーリャ | ほえ ? 何の話です ? |
ガロウズ | 何か、買い物があるんで近くの街に寄りたいって――ん ? イクスたちから頼まれたって聞いてたが違うのか ? |
コーキス | ――いや、その通りだよ。マスターには俺から伝えとくから。 |
ガロウズ | そうか。じゃあ、頼んだぞ。 |
カーリャ | ……………… ? |
フレン | ――ハロルドに状況は伝えたよ。 |
セネル | ひとまず工場は破壊したが同じような設備が他にもあると考えた方がいいな。 |
ジュード | それにさっきのウンディーネの話も気になるよね。 |
シャーリィ | 滄我は、この世界の海の神の力にエンコードされている可能性があるということでしたよね。この世界のウンディーネは海の神の眷属だと……。 |
ミラ=マクスウェル | そのようだな。ヨウ・ビクエが目覚めたことで四大たちもこの世界の精霊としての記憶が少しずつ甦ってきているようだ。 |
ミラ=マクスウェル | さらに記憶が戻ってくれば詳細がわかると思うが。 |
ユーリ | 海の神って言っても、ダーナが人間だったんだから海の神も人間って可能性はあるよな。ま、ここで考えてても始まらねえか。 |
ジュード | うん。一旦アジトに戻って―― |
? ? ? | 諸君――いよいよ……じま……。 |
リタ | 何 ? この声 ? |
ジェイ | あの奥の通信装置みたいですね。壊してしまったので雑音混じりですが……。 |
? ? ? | カレイドスコープによって作られた……の……は…………ング転移の生贄となってもらう。ルグの槍の起動に備えよ ! |
? ? ? | ニーベルングに回帰するのだ !これが最後の戦いになる !諸君 ! その命をもって、帝国に尽くすのだ ! |
ユーリ | この声……デミトリアスか ! |
ジェイド | ――フォミクリー装置の情報を回収しました。戻りましょう。 |
ガイ | おっと。帝国の連中、情報をそのままにしていたのか ? |
ジェイド | いえ、一応消去は試みたようですね。ですが、基本的に私が開発した音機関の派生ですから情報の復旧方法も把握しています。 |
アニス | さっすが、大佐。抜け目ないですね ! |
ジェイド | いえいえ、アニスほどでは ! |
ティア | ……大佐、平気なのかしら。 |
ナタリア | それを言ったらあなたもですわよ、ティア。オールドラントの領主と従騎士がまさかあの二人だなんて……。 |
ルーク | ピオニー陛下と……ヴァン師匠、か……。 |
ティア | ………………。 |
ナーザ | ……最後にもう一度尋ねるぞ。本当にいいのか ? |
コーキス | ああ。俺は……このままじゃ駄目だ。死鏡精なんかに付け入られたのは俺の心が弱かったからだ。 |
コーキス | マスターのこと信じきれなかった。人を信じるって難しいんだって俺、わかってたのに……。 |
メルクリア | コーキス。そなたがわらわたちと来るのであれば教えてくれぬか。鏡精とはどんな生き物なのか。 |
メルクリア | わらわは……モリアンを亡くしてしまった。キラル分子化された鏡精は、そなたやマークのように再具現化することはできぬと言う。 |
メルクリア | わらわは……一度もモリアンときちんと話せなかった。話せぬまま失ってしまったのじゃ……。 |
ジュニア | メルクリア……。 |
リヒター | 急げ。――イクスたちに気付かれた。 |
イクス | 待ってくれ ! ナーザ将軍、まだ傷が―― |
イクス | ――コーキス ? |
コーキス | ………………。 |
イクス | コーキス、どうしてここにいるんだ ? |
ナーザ | 行くぞ、コーキス。 |
コーキス | ……ああ。 |
イクス | コーキス ! ? |
コーキス | 来ないでくれ、マスター !俺はナーザたちと一緒に行く。 |
イクス | な、何を言ってるんだ ? |
コーキス | ――行こう。 |
イクス | 待てよ、コーキス ! |
コーキス | 放してくれ ! |
イクス | そういう訳にいくか ! 話ぐらい―― |
コーキス | 放せっ ! |
イクス | ! ? |
ミリーナ | イクス ! ? 危ない ! ? |
カーリャ・N | イクス様っ ! |
コーキス | ネヴァン先輩…… ! |
カーリャ・N | どういうつもりかわかりませんがマスターに武器を向けるなど言語道断。下がりなさい ! |
コーキス | 先輩……。 |
カーリャ・N | それとも、一戦交えるつもりですか。ならば私が相手をします。 |
コーキス | ………………。 |
カーリャ・N | コーキス、私と戦うというのなら容赦はしませんよ。 |
コーキス | ……その時には、俺も……本気で先輩と戦う。 |
イクス | コーキス ! ? |
コーキス | マスター。俺は……マスターの側にいちゃ駄目なんだ。俺……マスターの側にいたら、いつか本当にバロールの魔眼を発動させるかも知れない。 |
イクス | そんなこと―― |
コーキス | 魔眼はスタック・オーバーレイに似てるんだろ ? |
コーキス | 俺とマスターのアニマを重ねて死を放つってそういうことだったんだって……俺、わかっちゃったから。 |
イクス | そんなことさせない。だから出ていく必要なんか―― |
コーキス | それに、俺、やることがあるんだ。やらなきゃいけないことなんだ。 |
コーキス | ――パイセン、ネヴァン先輩、それにミリーナ様。マスターのこと、頼みます。 |
カーリャ | コーキス……。 |
イクス | コーキス ! ? おい、待てよ ! ?それじゃあ、何が何だかさっぱりわからないだろ !なあ、コーキス ! ? |
コーキス | さよなら、マスター。 |
イクス | コーキス ! ? |
イクス | 行くな、コーキスッ ! ! |
キャラクター | 1話【16-1 イ・ラプセル城】 |
| イクス達がセールンド山でグラスティンと戦っている頃イ・ラプセル城では―― |
アリエッタ | はぁ、はぁ……。 |
アリエッタ | 止まっちゃ駄目……。グラスティン探さなきゃ……。見つけて、絶対……殺す…… ! |
デゼル | ロゼ、この先だ。 |
ロゼ | いた ! ねえ、ちょっと待って ! |
アリエッタ | あ……、グラスティンの部屋にいた人…… ? |
ロゼ | やっと追いついた。捜してたんだよ。 |
アリエッタ | なんでアリエッタを追いかけてくるの ?もしかして、アリエッタの敵…… ? |
ロゼ | (アリエッタ…… ? ってことはルークの世界の、あの『アリエッタ』か。そういや、『イオン様』って言ってたっけ) |
ロゼ | 違うよ。その怪我が心配で追ってきただけ。少し休んで治療したら ? |
アリエッタ | ダメ ! 休んでたらグラスティンが逃げちゃう ! |
ロゼ | でもさ、さっき変な地震もあったし、なんか様子が変じゃない ? いったんここを出て―― |
アリエッタ | 邪魔しないで ! イオン様の仇、討つんだから ! |
ロゼ | 待って ! そんなんでうろついてたら余計に警戒されるよ ? |
アリエッタ | こっち来ないで !これ以上邪魔するなら、殺し……ます…… ! |
ロゼ | わかった。わかったから……。 |
デゼル | 待て、こいつは手負いの獣と同じだ。 |
デゼル | ――おい、安心しろ。これ以上は近づかないし邪魔もしない。お前の好きにしな。 |
アリエッタ | 本当…… ? |
デゼル | ああ。ただ、今のお前じゃグラスティンを殺すのは難しいぜ。理由を知りたいか ? |
アリエッタ | ! ! |
アリエッタ | ………………。知りたい……、です……。 |
デゼル | そうか。なら、こいつの話を聞いてみろ。――ロゼ、後は任せる。 |
ロゼ | サンキュー、デゼル。ええと、アリエッタっていうんだよね。 |
アリエッタ | はい……。 |
ロゼ | あたしはロゼ、こっちはデゼル。あたしたちもアリエッタと同じでグラスティンと戦ってるんだ。 |
アリエッタ | アリエッタと同じ…… ? |
ロゼ | そう。だけどグラスティンは、クロノスの精霊の力で怪我してもすぐ治っちゃうんだよ。 |
ロゼ | そんな面倒な奴を相手するのに怪我したままじゃ、勝てるものも勝てないでしょ ? |
アリエッタ | …………。 |
ロゼ | そこで提案。あたしたちと一緒に一旦、城の外へ出ない ?安全なところで治療しながら、こっちの情報も―― |
デゼル | ―― ! ! おい、誰か来るぞ。 |
ロゼ | ああ、もう ! まだ途中なのに !アリエッタ、こっち ! |
アリエッタ | は、はい……。 |
帝国兵 | 陛下とグラスティン様がアスガルド城へ帰還されたそうだ。 |
帝国兵 | では、こちらも実験体の搬入を急いだ方がいい。遅れるとグラスティン様がお怒りになるからな。 |
ロゼ | グラスティンが来る…… ! ? |
デゼル | ちっ、タイミングがいいんだか悪いんだか。 |
アリエッタ | グラスティン……グラスティンが帰ってきた ! |
ロゼ | しまった……落ち着いて、アリエッタ ! |
アリエッタ | イオン様の仇 ! 絶対に逃がさない !みんな、一緒に来て ! ! |
ロゼ | みんな ? |
デゼル | 魔物だと ! ? どこから湧いてきた ! |
アリエッタ | グラスティン、許さない……、殺してやる !絶対に殺してやるんだから !行こう、みんな ! |
ロゼ | 待って、アリエッタ ! |
デゼル | ちっ、魔物が邪魔しやがる !おまけにこの騒ぎじゃ―― |
衛兵 | いったい何が――うわあっ、魔物が ! |
衛兵 | 侵入者だ ! |
デゼル | やっぱりな。兵士どもが集まるぞ ! |
ロゼ | いったん隠れてやりすごそう。 |
ロゼ | ……うわ、どんどん兵士が増えてるよ。これじゃ脱出は難しいかぁ。 |
デゼル | だから言っただろう。これ以上ここにいたら面倒になると。……しかしあの魔物使い、なんて奴だ。 |
ロゼ | すごかったね。魔物を手下みたいに……ううん、手下じゃないな。 |
ロゼ | 「みんな一緒に行こう」って言ってたしあの子にとっては友達みたいなものなのかも。 |
デゼル | そっちの話じゃない。あいつ、穢れがまるでなかった。 |
ロゼ | あっ ! そういえば、あたしも感じなかった。 |
デゼル | 性質が変わったとはいえ、ここでも穢れは存在する。あれだけの殺意と憎しみなら、穢れを生んでもおかしくないはずだ。 |
デゼル | なのに欠片も感じない。まるで――…… |
ロゼ | ……ん ? なに ? |
デゼル | いや……何でもない。とにかく、このままじゃ埒が明かないぞ。 |
ロゼ | じゃあ強行突破で―― |
帝国兵 | お前たち、こんなところで何をしているんだ ! ? |
二人 | ! ! |
デクス | 早くこっちへ来い。他の奴らに見つかるだろう ! |
ロゼ | デクス ! びっくりしたあ。 |
デクス | びっくりしたのはこっちだぜ。魔物が発生したって聞いて来たのに……お前たちの仕業か ? |
デゼル | 違う。魔物使いが呼び出した。 |
デクス | 魔物使い ! ? まさかアリスちゃん ! ?すごい美人で、女神のように優しい可憐な女性じゃなかったか ! ? |
ロゼ | アリス ? アリエッタって子だったけど。 |
デクス | そうか……。アリスちゃん、今頃どこに……。 |
デゼル | おい、その話は後だ。脱出ルートを教えろ。 |
デクス | ああ、そうだった。裏口なら人目につかずに逃げられるはずだ。オレが案内する。 |
ロゼ | 助かったー。よっ、頼りになる男 ! |
デクス | おお、任せておけ ! オレについて来い ! |
デクス | よし、誰もいないな。今のうちに早く行け。 |
ロゼ | ありがと ! 助かったよ。 |
デクス | そうだ、アジトの連中が連絡を取りたがってたぞ。無事だって知らせてやれよな。 |
ロゼ | 了解。デクスも気をつけて ! |
キャラクター | 2話【16-2 アスガルド城1】 |
デミトリアス | ――留守の間に問題はなかったか ? |
帝国兵 | はい。今のところ報告はあがっていません。無事のご帰還、何よりです。 |
グラスティン | 無事だと ? フン、大事な玩具を――小さなフィリップを逃したがな……。くそっ……。 |
デミトリアス | 私はメルクリアの方が心配だよ。あのような状態で連れ去られるとは……。 |
ルキウス | 何を他人事のように !誰がメルクリアをあんな風にしたと思っているんだ ! |
グラスティン | ギャンギャン吠えるな、やかましい。おい、こいつを牢に閉じ込めておけ !こいつは色々と使える。せいぜい丁重になあ ? |
帝国兵 | はっ ! さあ行くぞ。 |
デミトリアス | ……さて、今後の対策が必要だな。最初のイクスの遺体は失ってしまった。計画に支障が出るのではないか ? |
グラスティン | そんなのは、小さなフィリップを失ったことに比べれば些末な問題だ。あの死体はレプリカデータがある。いくらでも量産が可能だ。 |
グラスティン | 劣化は避けられないだろうが、質は量でカバーできる。ヒヒヒヒ……。 |
サレ | ご歓談中失礼するよ。 |
グラスティン | なんだ、サレか。 |
サレ | なんだとはご挨拶だねえ。せっかくいい報告を持ってきたのに。 |
グラスティン | さっさと言え。俺は忙しい。 |
サレ | はいはい。いつもの『肉』が揃ったよ。さっき、イ・ラプセル城に搬入する手筈を整えたからすぐにでもキミの玩具にできる。 |
グラスティン | ヒヒヒ、いいタイミングだ ! ストレス解消と行くか。質は落ちてないだろうな ? |
サレ | もちろん、全員きれいな黒髪さ。ただ、最近ハデに狩りすぎたせいか警戒されてるんだ。それを強引に連れていくのも面白いけどね。 |
グラスティン | 苦労させているなあ……。せいぜい大事に遊ばせてもらうよ。 |
サレ | ああ、存分に楽しんでくれ。僕は次の狩りに行ってくるよ。 |
グラスティン | お前も楽しそうで何よりだ。頑張ってくれよ ? |
サレ | ふふ、では失礼。 |
デミトリアス | グラスティン……。少し自重したらどうだ。 |
グラスティン | それは無理だ。俺を目覚めさせた時にこの『趣味』のこともわかっていただろう。その上で組むと腹を決めたんじゃないのか ? |
デミトリアス | ……そうだったな。 |
グラスティン | 俺は一度イ・ラプセル城へ行ってくる。肉の質を確かめたい。話の続きはそれからだ。 |
デミトリアス | わかった。けれど自分の仕事を忘れるな。ほどほどで帰って来い。 |
グラスティン | ほどほどに、か。ヒヒヒッ、承知しているさ。 |
帝国兵 | 失礼します ! グラスティン様、緊急事態です ! |
グラスティン | ああ ? せっかくいい気分になりかけてたのになぁ……――何があった。 |
帝国兵 | 先程、クレーメルケイジの保管室にエルレイン様が入られたのですが捕らえていた鏡精を逃がしたとの報告です ! |
グラスティン | 馬鹿な ! マークを逃がしただと ! ?すぐに保管室に行く。エルレインを外へ出すなよ ! |
キャラクター | 3話【16-3 アスガルド城2】 |
グラスティン | ―― ! !鏡精型クレーメルケイジが……。 |
エルレイン | ええ。捕らわれていた鏡精を逃がすために私が壊しました。 |
兵士 | 現在、城内をくまなく捜索していますが未だ鏡精の発見には至っておりません……。 |
グラスティン | 当たり前だろう。今頃は小さなフィリップのところだ。もういい、下がれ。 |
グラスティン | ――さて、聞かせてもらおうか、エルレイン。 |
グラスティン | 何故マークを逃がした。あれは大事な質草だぞ。小さなフィリップを縛る枷をわざわざ外してやるとは……。 |
エルレイン | あまねく命の救済が私の使命だ。鏡精もそれに准じて救ったまでのこと。 |
グラスティン | 小さなフィリップにはその使命とやらを全うする奇跡の力を研究させていたんだぞ。 |
グラスティン | 自分の首を絞めることに気づかないほど愚かな聖女様だったとはなあ。 |
エルレイン | 何を言われようと私の答えは変わらぬ。救える者を救っただけだ。 |
グラスティン | ふん……貴様も狂人か。 |
エルレイン | それよりも、サレがここに来ているだろう。 |
グラスティン | さあ、どうだったか。 |
エルレイン | あの男は私の部下のはずだ。しかし最近は何かと理由をつけて留守が多い。 |
エルレイン | 随分といいように使っているようだな。グラスティン。 |
グラスティン | あいつは聖女様と違って有能な働き者なんでねえ。ついつい頼み事をしてしまうんだよ。 |
エルレイン | 己の血なまぐさい欲望を満たすためだろうに。 |
グラスティン | なんだ、知っていたか。 |
エルレイン | 『肉』か……サレは検体の収集と言っていたがそうではない。お前の快楽のためだった。 |
エルレイン | お前たち帝国は、本気で人々を救済するつもりがあるのか ? |
グラスティン | そうだなぁ……。答えてほしいなら先に俺の質問に答えてくれよ。 |
グラスティン | さっきから「あまねく人々を救済する」と豪語しているが、だったら俺も救ってくれるのか ? |
エルレイン | ええ、あなたも救済の対象です。 |
グラスティン | では、どうやって救う ?お前曰く『血なまぐさい欲望』に囚われた人間だぞ。 |
エルレイン | それは、殺人衝動を消して欲しいという意味ですか ? |
グラスティン | ああ……さすが聖女様だ。何て優しくて慈悲深い。 |
エルレイン | あなたがそう望むのならば―― |
グラスティン | でも、そうじゃないんだよなぁ。 |
グラスティン | 俺の望みはフィリップ・レストンを永遠にすることだ。 |
エルレイン | それが救いになると ? |
グラスティン | ああ。この手で、あの美しいフィリップを永久に保存したいんだよ。それを手元におくことで俺は救われる。 |
グラスティン | あいつが手に入るなら、他の黒髪なんてゴミ同然だ。どうだ聖女様、俺を救ってくれるか ?ヒヒヒッ……ヒャッハハハ ! |
エルレイン | …………。 |
キャラクター | 4話【16-5 城下町2】 |
ロゼ | ――はぁ、何とか脱出成功。デクスに感謝だね。 |
デゼル | ……街が騒がしいな。 |
ロゼ | …… ! まさか ! |
住民 | おい、こっちにもケガ人がいるぞ ! 運べ ! |
子供 | 痛いよぉ……怖いよぉ……。 |
母親 | 大丈夫。もう魔物は行っちゃったからね。 |
ロゼ | やっぱり、アリエッタが呼んだ魔物たちがここを通っていったんだ……。 |
デゼル | おかげで街は混乱状態だ。あれを放っておくと厄介なことに――……。 |
デゼル | …… ? 嫌な風だな。 |
ロゼ | なんか空が暗くなった ?雨なんて降りそうな天気じゃ……って、なにあれ ! ? |
住民 | おい、空に変なもんがいるぞ ! また魔物か ! ? |
住民2 | いや、違う。黒い帯……虫の大群じゃないか ?空を横切っていく。 |
デゼル | ……あれは虫なんかじゃねえ。お前も感じるだろう、ロゼ。 |
ロゼ | うん。あの黒いの、すごい穢れをまとってる…… ! |
デゼル | 酷く穢れちゃいるが、あれは鏡精の気配に似ているな。もしかして、イクスたちが言ってた死鏡精って奴じゃねえのか ? |
ロゼ | 死鏡精……、あんなにいっぱい ! ?何がどうなってんの ! ? |
マーク | ――ルック、ちゃんと観測できてるか ? |
ルック | はい。この映像、あちらのアジトにも送りますか ? |
マーク | ああ。そうしてくれ。しかし……あれが具現化されたビフレストだってのかよ。気味が悪いぜ。 |
ルック | 調査に下りたクラトス様とゼロス様が心配ですね。 |
ローエン | どうです ? お二人から連絡は入りましたか ? |
マーク | いや、まだだ。フィルはどうしてる ? |
ローエン | 自室に戻って休んで頂いてます。ブリッジで観測を続けたいと粘られましたが何とか説き伏せてきました。 |
マーク | 悪いな、世話かけて。今はどうせ連絡待ちだ。あいつには体力を温存しておいてもらわないとな。 |
ローエン | ……マークさん、門外漢の私が口を出すのも差し出がましいのですが、フィリップさんはしばらく休んだ方がよいのではないでしょうか。 |
ローエン | マークさんもわかっておいででしょうが最近は特に体調が優れません。せめて原因がわかればよいのですが。 |
マーク | まあ、もともと身体が悪いところへ面倒が重なったからな。仕方がない。 |
ルック | すみません。俺たちが無茶をしたから……。 |
マーク | またそれか ? もう終わったことだろう。お前らがこっちに戻った時にフィルから聞いた話を忘れたのかよ。 |
ルック | いいえ。ビクエ様が俺たちを思ってくれていたことは十分伝わりましたし、マークさんの気持ちも理解したつもりです。 |
マーク | だったら蒸し返しすなって。それとも、自分の傷をえぐって楽しむタイプか ?だとしたら悪かったなぁ、今まで気が付かなくて。 |
ルック | 勘弁してください。そっちの趣味はありませんよ。 |
マーク | ははっ、だったら俺も安心したぜ !その枠で面倒みるのは手一杯なんでな。 |
マーク | まあ、そんなわけだからあいつの身体が悪いのは誰のせいでもないんだ。 |
マーク | ……ローエン、あいつのことを気にしてくれて感謝するよ。 |
ローエン | ……承知しました。今は誤魔化されておくとしましょう。 |
ルック | ! ! マークさん、これを見てください !何か黒い塊のようなものが、こちらへ向かっています !虫の大群のような…… ? |
マーク | 虫…… ? |
マーク | ……っ ! 違う、こいつら死鏡精だ !なんでこんな大群になってんだ ! |
ローエン | もしやケリュケイオンを狙っているのでは ! ? |
マーク | いや……このまま奴らが方向を変えなければ目的はビフレストのはずだ。だからと言って安心はできねぇけどな。 |
ローエン | なるほど。この位置だと我々は彼らのルートのど真ん中ですからね。 |
ローエン | ……マークさん、ここは危険を承知でビフレストへ着陸することを提案します。 |
ローエン | 空中での戦闘になれば数と機動力で敵う相手ではないかと。 |
マーク | そうだな。うまくいけばこっちを無視してビフレストの目的地に集中してくれるかもしれない。 |
マーク | よし、ケリュケイオン、着陸準備に入るぞ ! |
キャラクター | 5話【16-6 ウェルテス領 領都1】 |
キュッポ | 皆さん、朗報だキュ !ジェイに似た人を見つけたキュ ! |
ピッポ | いや、あれは絶対ジェイに間違いないキュ ! |
ポッポ | すぐにウェルテス大陸の都まで来て欲しいキュ。そこで待ってるキュ ! |
ノーマ | ――ってな連絡もらったけどさぁ。あのホタテ三兄弟、どこにもいないじゃ~ん ! |
セネル | まだ約束の時間からそれほど経ってないだろ。もう少し待ってみよう。 |
シャーリィ | でも、少し心配だよね。キュッポたちに何かあったんじゃ……。 |
クロエ | そうだな。あれだけの可愛さだ。よからぬことを考える輩がいるかもしれない。 |
セネル | いや、あいつらそれなりに逞しいだろう。きっと少し遅れているだけさ。 |
クロエ | それはそうなんだが……可愛いし……。なあクーリッジ、手分けして捜さないか ? |
グリューネ | いいわね~。わたくしも一緒にいくわ。ちょうどお散歩がしたいなぁ~って思ってたの。 |
ノーマ | 賛成 ! んじゃみんなで遊びに……じゃなくてホタテ捜索にレッツゴー ! |
セネル | おい待てノーマ。今「遊びに」って言っただろ。捜す気ないな ? |
ノーマ | え、言った ? あはは~最近記憶がちょっと……グー姉さんのがうつったかなぁ ? |
ノーマ | っていうか、グー姉さんだって散歩って言ったじゃん。あたしばっか責めんの、おかしくない ? |
セネル | グ、グリューネさんはいいんだよ。あれで。 |
ノーマ | ずるい ! ひいきだ ! 差別だ !さてはグー姉さんの色気に惑わされたな ? |
クロエ | 何だと…… ? クーリッジの人でなし ! |
セネル | ……ノーマたちが合流してから賑やかになったな。 |
シャーリィ | ふふっ、そうだね !……あれ ? お兄ちゃん大丈夫 ? 疲れた顔してるよ。 |
領民1 | おい、みんな道を開けろ !領主様が見回りに来られたぞ ! |
クロエ | 領主だと ? おい、クーリッジ ! |
セネル | ああ、俺たちは隠れて様子をうかがおう。みんな、こっちだ ! |
領民たち | 領主様 ! 領主様ー ! |
領民たち | わざわざ自ら出向いて視察なさるとは勤勉なお方だよな ! |
ノーマ | どれどれ~、どれだけ勤勉か、確かめてや……。 |
全員 | ! ? |
シャーリィ | あの領主って……マウリッツさん ! ? それに……。 |
セネル | 嘘だろ……。護衛は……ワルター…… ! ? |
クロエ | そんな ! だってあの時に…… ! |
? ? ? | やっぱり驚きますよね。ぼくも初めて見た時は驚きました。 |
全員 | えっ ! ? |
グリューネ | あらあ、ジェイちゃん。 |
セネル | ジェイ ! ? お前 ! |
ジェイ | 話は後です。ひとまずこっちへ。ぼくの隠れ家へ案内します。 |
ピッポ | 皆さん ! 無事にジェイと会えたキュ ! |
セネル | お前ら ! ここにいたのか。心配してたんだぞ。 |
ピッポ | すまないキュ。わけあって先にジェイと会ってたキュ。 |
キュッポ | 嬉しくてホタテたくさん割ったキュ !キューーーー ! |
ポッポ | ジェーイ ! ジェーイ ! ジェーイ ! ジェーイ ! |
ジェイ | 実はもう少し情報を掴んでから、キュッポたちと接触しようと思っていたんですけどね。 |
ジェイ | セネルさんとの待ち合わせ場所が、ちょうど領主の視察場所だとわかったので急きょキュッポたちに会って家にいてもらいました。 |
ジェイ | ……下手をしたら領主側と戦闘になる可能性もありましたから。 |
グリューネ | 相変わらず優しいのね、ジェイちゃん。 |
ノーマ | っていうかさ、仲間との涙の再会 ! そして感動 !みたいな展開はないわけ ?さっきからジェージェー、すっごくドライじゃん。 |
セネル | お前が言うな……。ノーマが合流してきたこの間のハロウィンのこと俺は忘れてないからな。 |
セネル | ジェイは、すでにキュッポたちのことを把握してたし領主が敵かもしれないと予測してた。 |
セネル | 実はもうこの世界のこととか色々と調べて知っていたんじゃないか ?『不可視のジェイ』だもんな。 |
ジェイ | まあ、情報収集はぼくの本業ですからね。帝国とその敵対勢力とか、きな臭い状況はそれなりにわかっていました。 |
ノーマ | な~んだ。じゃあ、あたしたちのことなんてとっくに知ってたから、そんなフツーな感じなわけね。 |
ピッポ | そうでもないキュ。ピッポたちと会った時にセネルさんたちのこと、根ほり葉ほり聞いてきたキュ。ジェイ、すごく嬉しそうだったキュ ! |
ジェイ | ピ、ピッポ ! |
セネル | そうか……。ずっと一人だったもんな。早く見つけてやれなくて、ごめん。 |
ジェイ | 別に……、そういうの、いいですから。それよりも、この世界のことを詳しく説明してもらえませんか ? |
ジェイ | ……なるほど。思ったよりも込み入ってますね。でも、おかげでわかりました。 |
ジェイ | マウリッツさんと会っても何の反応もなかった理由やあのワルターさんが側にいたこともね。それにリビングドール……やっかいですね。 |
クロエ | 「会った」って、もしかしてもう領主の所に行ったのか ? |
ジェイ | ええ。彼らの反応がおかしかったので適当に誤魔化して帰りましたけど。ついでに館の中も調べてきました。 |
セネル | 仕事が早いな。どうだった ? |
ジェイ | 一見普通の館ですが、地下には妙な施設があって不思議な結晶がたくさんありました。ちょっとした製造工場みたいでしたよ。 |
シャーリィ | それって、もしかして……。 |
ジェイ | ぼくもセネルさんの話を聞いて気が付きました。あれは疑似心核を作っていたのかもしれないって。 |
クロエ | ならば、そこを潰してしまおう !……いや、それでは駄目か。他に製造工場があれば徒労に終わってしまう。 |
シャーリィ | マウリッツさんたちを元に戻せれば、協力してくれるんじゃないかな。帝国の情報も流れてくるだろうし。 |
セネル | そうできればいんだけどな。きっとマウリッツさんの心核は帝国で保管されてると思う。今は下手に手出しできない。 |
ノーマ | ……ねえ、ジェージェー。その変な施設、あたしたちも見られない ? さっきからみんな、「思う」とか「かもしれない」とかばっかじゃん。 |
セネル | そうだな。ジェイ、俺たちも潜入できるか ? |
ジェイ | わかりました。一度見てもらいましょう。 |
キャラクター | 6話【16-8 ウェルテス領 領主の館】 |
帝国兵1 | ……異常なし。 |
帝国兵2 | ……異常なし。 |
セネル | なあ、この館の兵士って、みんなこんな感じなのか ?感情がないっていうか……。 |
ジェイ | そうですよ。領主をはじめ兵に至るまでみんな反応は同じです。 |
ノーマ | もしかして、リビングドールβってのにされてるんじゃない ? |
ジェイ | でしょうね。彼らはまるで機械のようですから。恐らく疑似心核を埋め込まれているんでしょう。 |
セネル | こんな一般兵までリビングドールに……。 |
クロエ | 許せない…… ! 兵を遊戯の駒に例えることもあるが帝国は本気で兵の人格さえも不要だというのか ! |
シャーリィ | 落ち着いてクロエ。見つかっちゃう。 |
クロエ | す、すまない……。 |
セネル | クロエが怒るのもわかるよ。こんなこと早く止めないと。 |
ジェイ | おしゃべりは、そのくらいにしてもらえますか。ほら、この奥が目的地です。 |
ジェイ | 前に潜入した時には、見張りはいませんでしたがまた同じとは限りません。今まで以上に用心してくだい。 |
ジェイ | ……よし、誰もいない。さあどうぞ。ここが例の施設です。 |
セネル | これは…… ! |
グリューネ | まあ、きれいな石がいっぱい !それになんだか少し……不思議な感じがするわねぇ。 |
ジェイ | どうです ? 皆さんの言う疑似心核と同じですか ? |
セネル | う~ん、イクスたちに見せてもらったのと似てはいるけど……。まったく同じかどうかは俺たちじゃ判断はできないな。 |
ノーマ | だったら、一つもらって帰ろうよ。アジトで調べればいいじゃん。え~と、このへんのやつを……。 |
クロエ | こら、ノーマ ! 手を出すな ! |
ノーマ | 堅いな~クーは。どうせこんなにいっぱいあるんだから一つくらいわかりゃしないって。よし、これに決~めた ! |
シャーリィ | 待って、とりあえず魔鏡通信でミリーナさんに見てもらおうよ。だからこれは一旦置いて――………… ? |
シャーリィ | ……ねえ、ノーマはこれに触っても……何も感じない ? |
ノーマ | 別に。リッちゃんは何か感じるの ? |
シャーリィ | 何か……何だろう。そうだ、これは滄我……。この石から滄我の力を感じる……。 |
全員 | ! ? |
スレイ | ――みんな ! ロゼから連絡がきたぞ !無事だったんだな、ロゼ ! |
ロゼ | ごめんごめん ! ちょっと色々あってさ。あ、デゼルもちゃーんと無事だから安心して。 |
ミクリオ | 色々って何があったんだ。こっちからの連絡にも出ないし、心配したんだぞ。 |
エドナ | だからそれを説明するために連絡してきたんでしょ。余計な口をはさんで、これだからミボなのよ。 |
ミクリオ | くっ……。 |
ロゼ | あはは、相変わらずだね。あたしの報告はちょっと長くなりそうだからさそっちの状況を先に教えてよ。 |
アリーシャ | こちらではビフレストが具現化されて大騒ぎしているところだ。ロゼのところで揺れは感じなかったか ? |
ロゼ | ビフレストが ! ?ってことはあの地震、鏡震だったんだ。 |
ライラ | こちらでは、その対策会議を開くところなんですよ。 |
スレイ | 実は、ロゼにも参加して欲しいって言われてるんだ。始まる前に連絡がついて良かったよ。 |
ロゼ | オッケー、わかった。いつ始まってもいいようにこっちも準備しとく。 |
ロゼ | ちなみにさ、みんな死鏡精の大群ってみた ? |
スレイ | ロゼも襲われたのか ! ? |
ロゼ | 「も」ってことは、そっちは襲撃うけたの ! ?みんなは大丈夫 ? |
スレイ | ああ、アジト全員無事だよ。ジョニーさんが大活躍だったんだ ! な ? |
アリーシャ | ああ。歌で死鏡精を消してしまったんだよ。私も聞いたんだが、これが素晴らしくいい声なんだ ! |
ロゼ | あー……なんか状況はさぱらんけどそれなら良かった。 |
ロゼ | あたしたちは、死鏡精が通り過ぎていくのを見ただけ。けど、すごい穢れを感じた。 |
スレイ | うん、オレもだ。多分ミクリオたちも。 |
スレイ | この世界の穢れがエンコードされていてよかったよ。そうでなければこのアジト全体が大変なことになっていたと思う。 |
ロゼ | その辺もみんなと話がしたいからよろしく。 |
スレイ | わかった。イクスたちに知らせてくるよ ! |
キャラクター | 7話【16-9 アジト1】 |
イクス | それじゃあ、新たに具現化されたビフレスト――魔都ビフレストに関する情報共有と調査隊派遣についての会議を行います。 |
イクス | セネルたちはウェルテス領へ鏡映点の捜索に出ていて会議には参加できないって連絡があったから後でまとめて情報を共有する予定です。 |
イクス | 例によって人数が多いから魔鏡通信での会議になるけど、よろしくお願いします。 |
コーキス | マスター、何硬くなってんだよ !緊張してるのか ? こういうの初めてじゃないだろ。 |
イクス | そ、そうだけど……。今までリフィル先生とかジェイドさんとかキールとかがやってくれてたから。 |
ユーリ | ま、簡潔にまとめてくれればありがたいけどな。 |
イクス | ぜ、善処します……。 |
イクス | ――ええっと、まず、現在の状況から。みんなも知っての通り、ファンダリア領近海に魔都ビフレストが具現化された。 |
イクス | いくつかの情報をまとめると、これは以前メルクリアがオーデンセを具現化したのと同じ術式を使用しているらしい。 |
イクス | 具現化した鏡士はメルクリアで間違いないと思う。 |
ミリーナ | ただ、それを仕組んだのはデミトリアス陛下やグラスティン……帝国上層部であることは間違いないわ。 |
イクス | それと同時に死鏡精の大群が発生した。一部はアジトを襲ってきたから当然みんなも知ってると思うけど。 |
アルヴィン | 今もアジトの外でジョニーの歌声が流れてるからな……。 |
ルーティ | まったく……何で四六時中この歌声を聞かされなきゃならないのよ。死鏡精避けだってわかってるけど勘弁して欲しいわ。 |
カーリャ | ええ ? カーリャはジョニーさまの歌好きですよ ? |
ジョニー | 嬉しいことを言ってくれるね、カーリャ。 |
カーリャ | えへへへへへ♪ |
イクス | この死鏡精だけど、発生源は二箇所。一つは大樹カーラーンの中にある死鏡精の巣からだけどもう一つはセールンド山らしいんだ。 |
イクス | 大樹カーラーンから発生している方はビフレストをセールンド山の方はアジトを目指しているっていう行動の違いもある。 |
イクス | その辺りも含めて調査隊を派遣しようと思うんだけどどうかな。 |
クレス | アセリア領担当班異議なし。 |
スタン | ファンダリア領担当班もだ。 |
リッド | オレたちも賛成。 |
コーキス | 他の班からも反対はないみたいだぞ、マスター。 |
イクス | うん、ありがとう。 |
イクス | まず大樹カーラーンの死鏡精だけど、こちらは『死の砂嵐に巻き込まれず、この世界に残った死鏡精が大樹の中で自己増殖した物』だ。 |
イクス | しかも何らかの対処をしないと無限に増え続ける可能性がある。 |
イクス | 恐らく大樹の特性も関係していると思うからこっちはテセアラ領担当班のロイドたちとジョニーさんがいるファンダリア領担当班に任せたい。 |
スタン | ロイド、よろしくな ! |
ロイド | おう、一緒に頑張ろうな ! |
スタン | ……魔都ビフレストの方に行きたかったけど仕方がないな。 |
イクス | セールンド山の方の死鏡精の調査は……ジェイドさんのたっての希望でオールドラント領担当班に任せます。 |
ベルベット | 珍しいわね。あいつが自分から率先して仕事を増やすなんて。 |
ジェイド | 今回ばかりは仕方がありません。敵はセールンド山で私たちの世界の技術……フォミクリーを利用しています。 |
ジェイド | これは具現化とよく似た技術で、あらゆる物の複写物――レプリカを造る技術です。 |
ジェイド | 帝国は最初のイクスの遺体をレプリカで増やしていると聞きました。我々が向かうのが適任かと。 |
スパーダ | 死体を増やすだと ! ? 下衆野郎共が……。 |
ルカ | どうしてそんなことを……。 |
イクス | 一人目の俺の遺体で、人体万華鏡を大量に作っているって話だ。何に使っているのかまでは……。 |
カーリャ・N | ダーナの心核が魔の空域に緊急避難しているため今は世界と虚無の境界が曖昧になっています。 |
カーリャ・N | それを利用して帝国が虚無にアクセスする手段――すなわち光魔の鏡の人工生産に成功したようです。人体万華鏡を光魔の鏡へ転用しているのかも……。 |
ルーク | あ、それと……今言っておくべきだと思うからここで話としくな。 |
ルーク | もう何人かには打ち明けてるけど……俺とアッシュは双子じゃない。俺はレプリカなんだ。アッシュの。 |
アッシュ | ………………。 |
ヴェイグ | ……今話してしまってよかったのか、ルーク。 |
ルーク | ああ。ありがとな、ヴェイグ。気遣ってくれて。でも、俺っていう存在を見ればレプリカが何なのかってみんなにわかりやすいだろうからさ。 |
イオン | 僕も、今アジトで保護されているリベラもイオンという被験者のレプリカです。 |
ジェイド | 帝国がフォミクリーを手に入れたということはリビングドールや具現化とはまた別の形の『同じ姿の別人』と出会う可能性があります。 |
ベルベット | 同じ姿の別人……。あんなことがこれからも起きる可能性があるって訳ね。 |
スレイ | ………………。 |
イクス | セールンド山の方の死鏡精はいずれ発生が止まるって予測されてる。虚無との出入り口を塞げばいいだけなんだから。 |
イクス | とはいえレプリカのことを考えるとやっぱりルークたちに調査しておいて貰った方がいいと思うんだ。 |
ルーク | ああ、わかってる。任せてくれって。 |
イクス | それで、肝心の魔都ビフレストの調査なんだけど―― |
ユーリ | そいつはカロル調査隊の仕事だろ ? |
ロゼ | それってあたしたちも含まれるってこと ? |
スレイ | ロゼが行くなら、オレたちだって行くよ。ビフレストの様式にも興味があるし何より死鏡精からは強い穢れを感じる。 |
スレイ | 導師として見過ごせないよ。 |
ベルベット | 穢れを感じるなら、あたしたちの方が適任じゃない ? |
シング | 待ってよ ! 死鏡精がスピリアから生まれた存在ならオレたちの力も役立つ筈だよ。 |
イクス | ちょ、ちょっと、みんな、一旦落ち着いてくれ。セネルから通信が入った。切り替えるぞ。 |
セネル | ――会議中のところ悪いな。ちょっと見て欲しいものがあるんだ。 |
ミリーナ | 見て欲しいもの ?セネルさんたちは今どこにいるの ? |
セネル | ウェルテス領の領主の館にいる。地下に妙な施設があるのを仲間から教えて貰ったんだ。 |
セネル | ――シャーリィ ! |
シャーリィ | うん、今持っていくね。 |
シャーリィ | はい、これ。疑似心核じゃないかって話してたんだけど……。 |
ユーリ・リタ・レイヴン | ! ? |
キャラクター | 8話【16-10 ナーザ】 |
リヒター | ……俺にはわからんがビフレストというのはこういう場所だったのか ? |
ナーザ | このような禍々しき都ではなかった。所詮はメルクリアの力を利用してデミトリアスらが作り出したまがい物だ。 |
ナーザ | メルクリアがビフレストにいたのは赤子の頃。どう足掻いても、本来のビフレストのようには具現化できまい。 |
リヒター | 記憶にない故郷を具現化しようとした結果がこれか……。 |
リヒター | ――ジュニア、マークはまだ再具現化できないのか ? |
ジュニア | はい、ずっと反応がありません。もしかしたら死鏡精に取り込まれているのかも……。どうしよう……マーク……。 |
ナーザ | ……鏡精など助ける義理はないが、我が愚妹を支えてもらった義理がある。 |
ナーザ | メルクリアも、そしてお前の鏡精も、必ず取り戻すぞ。心得ておけ、ジュニア。 |
ジュニア | ナーザ将軍、ありがとうございます。 |
ジュニア | マーク、必ず助けるから無事でいて…… ! |
? ? ? | その『マーク』ってのは、うちの『マーク』のことじゃないよな ? |
ジュニア | えっ ! ? |
ゼロス | ……まあ、可愛い方のカーリャちゃんと美人の方のカーリャちゃんがいるんだからマークが二人……ってのもあり得るんだな。 |
ジュニア | あなたたちは救世軍の…… ! |
ゼロス | 世界のアイドル ゼロス・ワイルダー君とおまけのおっさんでーす♪ |
リヒター | ゼロスか……。相変わらずふざけた奴だ。 |
ゼロス | あんた、俺さまの未来の知り合いなんだっけ ?ま、未来で出会う野郎の事なんざどうでもいいけどな。 |
ナーザ | 何の用だ。 |
ゼロス | ……おおっと。ナーザ将軍めでたく復活ってか。ジュニアが計画してるって話は俺さまたちも聞いてたけどよ。 |
ゼロス | 喜んでいいのやら悪いのやら。複雑な気分だねぇ。まあ、一番複雑なのはイクスくんとミリーナちゃん――いやネヴァンちゃんなのかもな……。 |
ナーザ | それで ? 事を構えるというなら―― |
クラトス | いや、こちらにそのつもりはない。我々もこの島の調査にきただけだ。 |
ゼロス | そうそう、目的は似たようなもんだろ。ま、仲良くとはいかないまでも穏便にいこうや。 |
クラトス | ところで、メルクリアを奪還すると聞こえたのだがどういうことだ。 |
ナーザ | ……地獄耳だな。まあいい。教えてやろう。 |
ゼロス | あの子も親に恵まれなかった口なのかねぇ……。 |
クラトス | ……では、メルクリアの身体を乗っ取った死鏡精モリアンは、この島にいるのだな。 |
ナーザ | そうだ。 |
ナーザ | ――では失礼する。リヒター、ジュニア。行くぞ。 |
ゼロス | おいおいおい、ここまで話しといてお前らだけで行くつもりなのか ! ? |
ナーザ | 当然だろう。我々は急いでいる。邪魔をするな。 |
ゼロス | 邪魔なんかしねぇよ。なあ、クラトス ? |
クラトス | ああ、異論はない。私も手を組むべきだと思う。 |
ゼロス | あんたとツーカーっつーのもゾッとしねぇけど話が早いのは助かるな。……ってことで、そっちの意見はどうよ。 |
ナーザ | 断る。 |
ゼロス | 即答 ! 少しは考えろって。 |
ナーザ | 我々と手を組んで、貴様たちに何の得がある。 |
クラトス | 我々の目的は、ビフレストとして具現化されたこの島の調査だ。 |
クラトス | 以前のビフレストとまったく同じでないとしてもビフレスト出身のお前たちの知識は役に立つ。それに死鏡精に対抗する戦力は、双方に必要だろう。 |
ゼロス | それに、酷いことをされた女の子を放っておけないってのがゼロスさまなんだよなー。 |
ナーザ | ……それでも貴様らの手は借りぬ。貴様らはセールンドの鏡士に与する者だ。 |
バルド | ――ナーザ様 ! |
ゼロス | おわっ ! ? 何だ今の声は ? 魔鏡通信か ! ? |
ナーザ | ……バルドか。 |
ゼロス | バルド ! ? って、あのバルドか ! ? |
ジュニア | ……すみません。あの、説明し忘れてましたけど実はバルドさんも呼び戻して今は疑似心核に宿ってもらっているんです。 |
ジュニア | 心核の状態だと、バルドさんが望んでも鏡士としか意思疎通ができないのでそちらから貰った魔鏡通信機を改造して利用してます。 |
クラトス | なるほど。それでバルドの声だけが聞こえているのか。 |
ゼロス | ちびっ子でもフィリップだな。やることなすこと規格外でしょーよ……。 |
バルド | ナーザ様、あなたはいつからそのように狭量になられましたか。 |
バルド | それとも死の砂嵐に囚われるうちに状況を判断する力も失われたのですか。 |
ナーザ | 何が言いたい。 |
バルド | 彼らと手を組むべきです。メルクリア様を助け出すためにも恨みや憎しみに囚われるのは得策ではありません。 |
バルド | 今、彼らを拒否しては、かつてのメルクリア様と同じ道をたどることにはなりませんか ? |
ナーザ | 俺が、メルクリアと…… ? |
リヒター | メルクリアは変わろうとしていた。ならば、お前はかつてのメルクリア以下……ということだな。 |
ナーザ | ……ほとほと呆れはてた。 |
ジュニア | ナーザ将軍 ! バルドさんは―― |
ナーザ | ジュニア。みなまで言わずともよい。俺は自分の中の嫌悪を制御できず最も優先するべきことを忘れていたようだ。 |
ナーザ | バルド、礼を言うぞ。リヒターとジュニアにもな。 |
ナーザ | それと――セールンドの鏡士の元にいる……。 |
ゼロス | 麗しのゼロスさまとおまけのクラトス。 |
ナーザ | クラトスにゼロスよ。先程の礼を失した態度は謝罪する。改めて愚妹の救出のため、力を貸して貰いたい。 |
クラトス | 無論だ。 |
リヒター | ……ならば情報交換と行こうか。まずはこちらからだ。 |
ゼロス | ……あー……流れとはいえ、女の子が一人もいない連中と手を組んでしまった。俺さまつらい……。つらすぎる……。 |
バルド | 心中お察しします、ゼロスさん。 |
ゼロス | え ? 何々、バルド君、もしかしていける口 ? |
バルド | いける……というのが何なのかはわかりかねますが私は女性という存在そのものに抗いがたい魅力を感じているのです。 |
ゼロス | わかる ! わかるなー、俺さま !何だよ、バルド君ってばお堅い騎士様かと思いきや意外だわー。 |
ゼロス | 俺さまたち仲良くできるんでねーの !でひゃひゃひゃひゃ ! |
ジュニア | あ、あの……お二人とも……。ナーザ将軍とリヒターさんとクラトスさんが……。 |
ゼロス | あー……。視線だけで死ねそうだわー……。 |
キャラクター | 9話【16-12 アジト2】 |
イクス | ――う~ん、確かに疑似心核と似てはいるけど……。シャーリィ、その結晶、もう少し魔鏡通信機に近づけてもらえるか ? |
シャーリィ | はい……えっと、これで見えますか ? |
ミリーナ | ありがとう。そうね……。魔鏡越しだからきちんと判断はできないけど疑似心核とは違うような気がするわ。 |
ユーリ | ちょっと待て、こいつは…… ! |
パティ | 聖核(アパティア)とそっくりなのじゃ ! |
ラピード | ワフッ ! |
カーリャ | 聖核ってなんですか ? |
ジュディス | 魂……いいえ、簡単に説明するのなら、私たちの世界で『エアル』と呼んでいるエネルギーが結晶化したものって言えばいいかしら。 |
レイヴン | やれやれ、聖核まで登場とはねぇ……。ははっ、参った参った ! |
エステル | レイヴン……。 |
リタ | とにかく、直接調べないことには何とも言えないわ。 |
カロル | じゃあボクたち、セネルのところに行った方がいいかもしれないね。シャーリィ、すぐそっちに行くよ ! |
シャーリィ | わかった、待ってるね。それと、カロルさんたちの言ってる聖核とは関係ないかもしれないけど、この結晶から滄我を……わたしたちの世界の海の力を感じるの。 |
二人 | あっ ! ! |
シャーリィ | あの、なにか…… ? |
クラース | 以前、ヨウ・ビクエに言われていたんだ。シャーリィは、精霊や天族と同じ属性を持つかもしれないとね。 |
ジュード | うん。だから、シャーリィのことを気にかけておいて欲しいって。 |
ミラ=マクスウェル | そうだったな。精霊のことであれば私も力になれるかもしれない。 |
レイア | だったら、わたしたちもカロルたちと一緒にシャーリィのところへ行こうよ。 |
クラース | では、そちらは君たちに任せよう。何かあったら連絡を頼む。 |
スレイ | ――それで、魔都ビフレストの方はどうする ? |
イクス | うん……。死鏡精から穢れを感じるって言ってたけどそれが本当なら、スレイやベルベットさんたちには残って貰った方がいいかもしれない。 |
ミクリオ | 何故だ ?この世界では穢れを感知することはできてもエンコードによって穢れによる悪影響はない筈だ。 |
ライフィセット | ……もしかしてジョニーが言ってた時が止まってるってことと生体恒常性に関係がある ? |
キール | ああ、そうか。穢れが影響しないのがエンコードの結果なら問題ないが、時が止まった事による副産物なら何かの拍子に穢れが問題になる可能性があるんだな。 |
アスベル | だけど、鏡映点の時間がいつから止まっているのかはまだわからないんだよな。 |
キール | ああ。こればかりは調査してみないと。でも、こちらに具現化されてすぐ時が止まったとは考えにくい。 |
キール | その予測に基づくなら穢れはエンコードされているという結論で問題ないとは思うが……。 |
ベルベット | 断言はできないって訳ね。 |
イクス | うん。それにアジトにも死鏡精が来ることは間違いない。 |
イクス | ジョニーさんの歌で守ってはいるけど、死鏡精を感知できるスレイやベルベットさんたちには残って貰ってアジトの防衛を任せたいんだ。 |
カイウス | そうか。アジトの方にも戦力を残さなきゃいけないんだな。イクスたちは行くつもりなんだろ ? |
イクス | そのつもりだよ。……俺、集合的無意識のるつぼでメルクリアと話したんだ。それで思ったんだよ。 |
イクス | なんか上手く言えないけど、状況が違ったら仲良くなれたんじゃないかって。だから……助けてあげたいなって。 |
ミリーナ | 私も一緒に行くわ。私……聞きたいの。メルクリアに。ゲフィオンという人について。 |
コーキス | 俺とパイセンとパイセンのパイセンも行くだろ ?後は ? |
ユリウス | シングたちソーマ使いに同行してもらうのがいいだろうな。 |
シング | 了解、任せてくれ ! |
ヴェイグ | となると、残る奴らでアジトの防衛だな。 |
リッド | ジョニーの歌をすり抜けてくる奴らは撃退しないとな。 |
スレイ | ああ、用心していこう。 |
帝国兵1 | 慎重に運べ ! この荷物は『生もの』だからな ! |
グラスティン | じゅう……にじゅう……。確かに揃ってるな。ヒヒヒッ、サレは本当に優秀な奴だ。 |
帝国兵1 | 敵襲っ ! ま、魔物、魔物が…… ! |
グラスティン | 魔物…… ? |
帝国兵1 | お逃げ下さい ! グラス……ぎゃあああっ ! |
グラスティン | ああ、ひとつ『肉』が増えたな。 |
アリエッタ | グラスティン……見つけた ! イオン様の仇っ ! |
グラスティン | なんだ、イオンのペットか。 |
アリエッタ | イオン様……殺した ! 絶対……許さないっ !お前も殺す、です ! |
グラスティン | イオンに会いたいのか ? |
アリエッタ | うるさいっ ! |
グラスティン | 生きているぞ。『イオン様』は。 |
アリエッタ | ………………え ? |
グラスティン | ヒヒヒ、聞こえなかったか ?生きていると言ったんだ。今から会わせてやってもいい。 |
アリエッタ | イオン様が……生きてる…… ?会える…… ? |
グラスティン | そうだ。会いたいだろう ? だったらその魔物を引け。 |
アリエッタ | で……でも、本当…… ? |
グラスティン | ヒヒヒ、いいのか ?このまま魔物を引かせないとお前は永遠に『イオン様』には会えないんだ。 |
アリエッタ | ま、待って ! みんな離れて、大人しくして ! |
グラスティン | ヒヒヒ、よし、ついて来い。大事な大事なイオン様と久しぶりのご対面だ。 |
アリエッタ | イオン様、無事だったんだ……。イオン様…… ! |
キャラクター | 10話【16-13 アジト3】 |
マオ | ただいまー ! さっきルークたちが転送ゲートから出発したヨ。これで全員、出発完了 ! |
ユージーン | ついでにいくつかのゲート周辺を見回ってきたが今のところ死鏡精も入り込んではいないようだ。 |
クレス | それじゃ、残った僕たちも、もう一度浮遊島の警戒にあたろうか。 |
ユリウス | いや、会議はまだ終わりじゃない。続きをイクスから任されている。 |
ユリウス | 魔鏡通信は繋いだままだからみんなに聞いていて欲しい。 |
カイル | え、どういうこと ? |
ユリウス | 死鏡精やビフレストの具現化で報告が遅れてしまったが各領地に新しい領主と騎士が着任したそうだ。 |
ユリウス | まずは、ここに残っているメンバーが関係する領地で判明している領主と従騎士の名前を共有しよう。 |
ユリウス | アセリア領は領主も従騎士も正体がわかっている。領主はルーングロム、騎士はモリスンだそうだ。 |
一同 | えっ ! ? |
アーチェ | モリスンって、あのモリスンさん ! ? うっそー ! |
チェスター | それにルーングロムっていうと、あの宮廷魔術師か ! ? |
ユリウス | ――続けるぞ。 |
ユリウス | ファンダリア領――スタンとカイルたちのところはウッドロウに代わりエルレインが領主になった。 |
ユリウス | 従騎士はアトワイトの代わりにイレーヌという人物になったそうだ。 |
カイル | エルレインは想像どおりだけどイレーヌって確か……。 |
ジューダス | …………。 |
ユリウス | カレギア領は領主にアガーテ、従騎士にミルハウスト。 |
ヒルダ | 皮肉なものね……。 |
クレア | こんな形で、二人が一緒になるなんて……。 |
ユリウス | レグヌム領の領都には領主マティウスと従騎士チトセが赴任したそうだ。 |
イリア | はぁ ! ? チトセ ! ?それにマティウスって……何よそれ……。 |
ユリウス | エフィネア領は……領主にカーツ、従騎士はヴィクトリア。 |
マリク | っ ! よりによって……帝国も趣味が悪いな。 |
アスベル | 教官……。 |
ユリウス | それと、従騎士のみ判明しているのがスレイのところのグリンウッド領だ。名前はセルゲイ。 |
スレイ | セルゲイが騎士か。 |
ライラ | こういっては不謹慎ですが、納得の人選ですね。 |
ユリウス | オルバース領、アレウーラ領そしてミッドガンド領についてはまだ判明していない。以上だ。 |
カイウス | そうか、わからないのか……。 |
リッド | 気が抜けたような安心したような、変な気分だぜ。 |
ベルベット | ……そうね。 |
ユリウス | それと、エルレインとミルハウストはリビングドール化されていないらしい。これについても各々思うところはあるだろうが……。 |
ユリウス | まずは、領主、騎士、いずれかが判明していない領地は関係者に調査の協力を願いたい。班長たち、よろしく頼む。 |
一同 | 了解。 |
アンジュ | ユリウスさん。少し気になることがあるのですが聞いてもいいですか ? |
ユリウス | ああ、どうぞ。 |
アンジュ | なぜそれほど、領主や騎士の素性を知ることに力を注いでいるんですか ? |
アンジュ | もちろん、鏡映点が利用されているのだから助けるべきだとは思います。 |
アンジュ | ですが、死鏡精の問題はまだ片付いていないしもし鏡映点の方々を救出したとしても抜かれた心核のありかさえわかっていない状況ですよ。 |
ルカ | 言われてみれば……。この緊急時に調査を進める理由って、何かあるんですか ? |
ユリウス | ……そうだな。説明しておこう。特にルカたちの世界の者には関係の深い話だからな。 |
アンジュ | 私たちに ? |
ユリウス | ディストを捕虜にしたことで、こちらもある程度帝国の行動が推測できるようになった。 |
ユリウス | そこで得た情報によると帝国は失われたニーベルングを、ティル・ナ・ノーグの【前世】として、とらえているらしい。 |
ルカ | 前世 ! ? |
ユリウス | ニーベルングは滅びを迎えダーナは緊急避難的にティル・ナ・ノーグを作った。この構造は君たちの世界に酷似しているそうだ。 |
ユリウス | そして君たちが前世から継いだ『天術』という力だが確か元の世界では、すでに失っていたと聞いている。 |
ルカ | はい。でも具現化されてなぜかまた使えるようになっていたんです。 |
ユリウス | その理由だが、転生者はエンコードされたことでただ具現化されただけでなく |
ユリウス | 『ニーベルングの人間が転生した存在』として改めて定義されたのではないかと考えられているんだ。 |
一同 | ! ! |
イリア | 待って待って、頭こんがらがる !あたしたち、ニーベルングの人間になっちゃったの ? |
ルカ | いや、まだ考えられるっていうだけの話だから。ね ? |
スパーダ | んなことで動揺すんなよ。どーんと構えてろって。 |
イリア | 落ち着いてるけど、あんた、本当にわかってんでしょうね ? |
ユリウス | 混乱するのはもっともだ。エンコードは、恐らく君たちの前世の情報を処理しきれなかったんだろう。 |
ユリウス | そこで君たちの前世をニーベルングと仮定することで存在を定義した。つまり、君たちが具現化されたことでニーベルングはこの世界の前世として定義されたんだ。 |
イリア | なるほどね……ってさっぱりわからないんだけど ! ? |
ユリウス | わかった。なら理解しなくていい。実際はともかくとして、君たちはニーベルングの転生者ということになってしまったんだ。 |
ルカ | ええええ ! ? |
ユリウス | 話を続けるぞ。ニーベルングの転生者として定義づけられたと仮定してだ。 |
ユリウス | そうなると君たちは、ニーベルングに接触するための鍵や触媒になり得る存在となる。 |
アンジュ | その話をしたということは、領主探しの理由というのもニーベルングと繋がっているんですね。 |
ユリウス | ああ。そして俺やルドガーも関係することなんだが……。 |
ルドガー | 兄さん…… ? |
キャラクター | 11話【16-14 アスガルド城3】 |
デミトリアス | ……エルレイン。きみが掲げる救済理念は理解している。だが、あまりにも逸脱した行動は控えてもらいたい。 |
エルレイン | 逸脱、か。では、グラスティンやサレハスタといった者たちはどうだ。あれらの行いは逸脱してはいないのか ? |
エルレイン | 人を虐げ、殺め、暴虐をつくすことを喜びとしている。なぜ彼らの横暴を許すのだ。納得のいく説明をもらおうか。 |
デミトリアス | ……わかった。答えよう。グラスティンの能力は、この世界にとって必要だ。私の理想を実現する計画を担う人材だからね。 |
デミトリアス | サレは……彼の性質はさておき騎士として有能なのは君も知っているだろう。 |
デミトリアス | ハスタはその存在に価値がある。ニーベルングを甦らせるためには生かしておかなければならない。 |
エルレイン | 彼らによって、どれだけ多くの者が失われようと許す理由があるというわけか。 |
デミトリアス | そうだ。クルスニクの鍵が鏡士たちの元にあるとわかった今、ニーベルング復活の目処はたった。この機会を逃したくない。 |
デミトリアス | ようやくだ。ようやく……。 |
エルレイン | ニーベルングの復活を優先しこの世界の救済は後回しか。 |
デミトリアス | とんでもないことだ。これこそ世界の救済だよ。成し遂げれば、君も納得してくれるだろう。 |
デミトリアス | ダーナの心核の欠片と、転生者の魂。そしてクロノスの力を利用すればニーベルングの分史世界を作り出すことができる。 |
ルドガー | ニーベルングの分史世界って本気でそんなこと考えているのか ! ? |
ユリウス | ディストによれば、だがな。 |
コンウェイ | 転生者の魂を使う……か。 |
アンジュ | そういえばコンウェイさんって……。まあいいわ。 |
アンジュ | 帝国は分史世界を作ることが目的なんですか ? |
ユリウス | いや、さらに面倒な話になる。クルスニクの鍵を使って、分史世界ニーベルングのレプリカ情報を抜きとろうと考えているそうだ。 |
ガイアス | ニーベルングの……滅びた世界のレプリカを作る気か。デミトリアスという男、正気の沙汰ではないな。 |
スパーダ | ……ニーベルングを分史でレプリカ……。 |
ルカ | どうしたのスパーダ ? |
スパーダ | 駄目だ ! やっぱもうわかんねェ ! |
イリア | いひひひ、ようやく素直になったわね。あたしもよ ! |
エル | エルもわかんない。仲間に入れて。 |
イリア | おいでおいで~。他にも受け付けるわよ。 |
エドナ | 呼ばれてるわよ。行ったら ? |
ミクリオ | なんで僕が ! |
スパーダ | お、ミクリオもお仲間か ? スレイもついでに来いよ !一緒に悩もうぜ。 |
スレイ | あはは、今のところは大丈夫。……それにしても、そのレプリカを作ってどうする気なんだろう。 |
ファラ | そうだよね。作ったら作ったで置き場所に困りそう。 |
リッド | なんかファラが言うと生活感がにじむよな……。 |
キール | 置き場所……。置き場所か。 |
キール | 具現化されたビフレストはイクスたちの故郷を元に置き換えたようなものだ。だとすると……。ユリウス、もしかして帝国は……。 |
ユリウス | ああ。帝国は、俺たちが存在するこのティル・ナ・ノーグを消滅させ、ニーベルングのレプリカを置く計画らしい。 |
ユリウス | そしてレプリカのニーベルングをティル・ナ・ノーグのあった場所に誘導するための楔が領主と従騎士だと推測されているんだよ。 |
一同 | ………… ! ? |
キャラクター | 12話【16-15 アジト4】 |
イクス | ありがとう、マーク。迎えに来てくれて。 |
マーク | 毎度気軽に呼び出しやがって――と言いたいところだが本来はお前らに与えられた乗り物を、勝手に使わせて貰ってるからな。まあ、気にすんなって。 |
フィリップ | とはいえ、ゼロスさんとクラトスさんがビフレストに潜入している状態だからね。なるべく急いで戻らないと。 |
ミリーナ | 死鏡精はビフレストの方にも行っていたのよね。ケリュケイオンは襲われなかったの ? |
フィリップ | ああ。あちらの目的は僕ら……という訳ではなかったようだ。 |
コーキス | ……なんでアジトは狙われてるんだろう。 |
マーク | 大方、鏡士の存在が関係してるんだろうな。だからこそケリュケイオンも襲われるかもと思ったんだが……。 |
マーク | ――と、それより今はビフレストへの潜入を急ぐべきだな。乗ってくれ。 |
イクス | ――あ、俺フィル、さんに話があるからシングたちは先に乗っててくれ。 |
フィリップ | え…… ? |
シング | あ……ああ。うん、わかった。みんな、行こう。 |
ヒスイ | イクス。覚悟が決まったって顔してるぜ。自分で出した答えが一番強いってことか。 |
イクス | ヒスイさん……。心配かけてすみませんでした。 |
ヒスイ | そこは謝るところじゃねえだろ。 |
ミリーナ | ……私たちも行くわね。カーリャ、ネヴァン。 |
二人 | はい。 |
イクス | ……あの、俺、最初のイクスさんに会いました。 |
フィリップ | え…… ? それは……どういう意味 ? |
イクス | 集合的無意識の底に、最初のイクスさんのアニマが消滅しないで残っていたんです。 |
二人 | ! ? |
マーク | どういうことだ ? そんなことあり得るのか ! ? |
フィリップ | ……イクスは……イクスの身体が、まだ朽ちずに残っているから……その影響なんだろう。幻覚などでなければ……。 |
イクス | 幻覚ではないと思います。ジョニーさんもイクスさんに会いましたし、メルクリアもその場にいました。 |
イクス | イクスさんは自分のことを幽霊みたいなものだって言ってました。 |
フィリップ | ……イクス……。 |
イクス | それで、フィルさんに伝言を預かって来たんです。 |
フィリップ | イクスが……僕に伝言…… ? |
マーク | ……死者からの伝言って、霊媒かっつーの。 |
フィリップ | イクスは何て ! ? |
イクス | 「手紙、ちゃんと読んでくれたか」「もし読んでたら……もう一度思い出してくれ」って。 |
フィリップ | ! ! |
フィリップ | ……僕が手紙を読むって信じて疑ってなかったのか。本当に……イクスは……。 |
イクス | (……何となくフィルさんの気持ちがわかってしまうな) |
フィリップ | ――ありがとう、イクス。手紙は……読もうと思っていたんだ。精霊の封印地に着く前に読んでしまうよ。 |
コーキス | 精霊の封印地 ? ビフレストに行くんじゃないのか ? |
マーク | どうしてもあの場所に行かないといけないんだとさ。俺とヴィクトルが同行する。 |
マーク | 俺たちを精霊の封印地で降ろしてからお前らをビフレストに運ぶ算段だ。その辺りはローエンに差配を任せてあるからよ。 |
マーク | ……イクスはその辺りの話、フィルから聞いてただろ ? |
イクス | ……うん。 |
マーク | ま、そういうこった。さ、それじゃ、そろそろ出発するか。 |
フィリップ | イクス……。僕のことをフィルさんって呼ぶことにしたんだね。 |
イクス | ……はい。色々考えて……それで、もう考えることはやめたんです。俺は今から始めるって……今からが俺なんだって決めたから。 |
イクス | あなたのことは鏡士の先輩で頼れる仲間のフィルさん……だと思うんです。俺にとっては。 |
フィリップ | ……そうか。ありがとう……今まで僕の我が儘に付き合ってくれて。そして申し訳なかった。君を苦しめて。 |
イクス | それはフィルさんだけが謝ることじゃないでしょう。それに……俺、少しだけわかってしまいました。あなたの気持ちが。 |
フィリップ | ? |
イクス | いいんです。行きましょう。俺を生み出してまで、この世界を守ろうとしたんだから最後までやりきらないと。 |
フィリップ | …… ! |
フィリップ | ああ、そうだね。その通りだ。 |
イクス | 俺、ちゃんとフィルさんと話せてたかな。許すって決めてたけど、やっぱりまだちょっと怒ってるところもあるからさ……。 |
コーキス | 話せてたよ。超格好良かったぜ。なんかマスター、大人って感じだった。 |
イクス | 何だよ、それ……。 |
コーキス | ……なあ、聞いていいか、マスター。 |
イクス | うん ? 何を ? |
コーキス | フィル様が精霊の封印地に行くつもりって話いつしたんだ ? |
イクス | いつだったかな……。でもあの場所をもう一度調査したいって話は何度か聞いてたよ。 |
コーキス | 前に……夜遅くまでフィル様と話し込んでたことがあっただろ。あの時かなって思ってたんだけど。 |
イクス | ……夜遅くまで ? |
コーキス | ほら、ミリーナ様がダオスと色々あって……パイセンのパイセンが来て、マスターが俺に隠し事ばっかしてて……。あの頃だよ。 |
イクス | ――ああ、あの時のことか。うーん……。コーキス、誰にも言わないって約束できるか ? |
コーキス | 約束する ! 鏡精とマスターの誓いだ ! |
イクス | コーキスは『誓い』とかそういうの好きだなあ……。まあ、いいか。 |
フィリップ | ――最後に伝えておきたいことがあるんだ。 |
イクス | これ以上他に何があるんですか。 |
フィリップ | 僕自身のことだよ。僕の身体はアニマ汚染でやられていてね。もうそれほど長くはないんだ。 |
イクス | ………………。 |
フィリップ | だから許して欲しいとか同情してくれとかそういう話じゃないよ。 |
フィリップ | 元々命の期限があるから、僕がゲフィオンの代わりに人体万華鏡になって死の砂嵐を封じるつもりだった。 |
フィリップ | けれどファントムの計画を阻止するために色々あって……それは叶わなかったけど。 |
フィリップ | それで……今は死の砂嵐と虚無を無くしたいと思ってるんだ。どんな形にせよ、金色の砂になった人々を解放してティル・ナ・ノーグを守りたい。 |
イクス | それがあなたの命の期限とどういう関係があるんです ? |
フィリップ | 君を――君のあり方を歪めてしまった僕にできることはそう多くはない。けれどイクスの希望があればそれは全て叶えたいと思っている。 |
フィリップ | だけどイクスの願いが、『僕の死』なのだとしたら少し待って欲しいんだ。 |
フィリップ | 確かに残りの人生はそう長くはないけれどそれでも世界を守るまでは何とか生きていたい。 |
フィリップ | 世界を守ることも君の希望を叶えることも僕のせめてもの罪滅ぼしだと思っているから。 |
フィリップ | 君が僕の死を望むなら僕は全て終わってから命を絶つよ。 |
コーキス | ……それで、マスターは何て答えたんだ ? |
イクス | その時は、少し考えさせて欲しいって言った。フィルさんに死んで欲しいとかじゃなくて俺……いっぱいいっぱいだったからさ。 |
イクス | でも今は違う。俺はもうフィルさんに何もして貰わなくていいんだ。それより一緒に世界を守ろうって言いたい。 |
イクス | さっきも……そういうつもりでフィルさんと話したんだけどさ。 |
コーキス | さすが、俺のマスター ! |
イクス | コーキス ! ? 抱きつくな ! ?お前もう結構デカいから苦しい……。 |
コーキス | 俺、マスターの鏡精でよかった !俺、ずっとマスターの側にいるからな ! |
イクス | コーキス……。うん。俺も、お前が俺の鏡精でよかったよ。 |
キャラクター | 13話【16-15 アジト4】 |
フィリップ | ……この手紙を読む時が来るとはね。 |
マーク | よくその量の手紙を取っておいたよな。読むか捨てるかするだろ、普通。 |
フィリップ | ……怖かったんだ。 |
マーク | 手紙の中身がか ? |
フィリップ | そうだと思ってたけど、違うんだろうな。多分……醜い自分を見るのが怖かったんだ。 |
マーク | ………………。 |
フィリップ | ……ずっと、言えなかったことがあるんだよ。イクスとミリーナに。 |
マーク | 当ててみせようか。 |
フィリップ | マークは僕の鏡精なんだから……わかるに決まってる。 |
マーク | 鏡精だからってマスターの考えてることが全部わかる訳ねえだろ。付き合いが長いからわかるんだよ。 |
マーク | こっちはお前がジュニアぐらいの歳の頃から一緒にいるんだぜ。 |
フィリップ | そうだね。でも、言わせてくれ。もう二人には届かないけど口にしないと終わらない気がするんだ。 |
マーク | ああ、聞いてやるよ。お前、俺の中に最初のイクスとやらを見てるみたいだからな。 |
フィリップ | ! ! |
フィリップ | ……そうだよ。マークは……何となく似てる。イクスに。けど、僕はマークをイクスの代わりだと思ったことはないよ ! |
マーク | 知ってるよ。そんな顔すんなって。で、何を伝えたかったんだ ? 最初の二人に。 |
フィリップ | ……ミリーナには「ミリーナが好きだ」ってこと。ちゃんと伝えて、ちゃんと振られていればよかったんだ。 |
フィリップ | けど、僕は自分の気持ちを知られることも怖くて……。そのくせミリーナの方から僕を選んでくれないかなって……そうしたら傷つかないのになって……。 |
マーク | 知ってた。 |
フィリップ | はは……だよね……。イクスには……イクスにも「イクスが好きだ」ってことを伝えたかった。 |
フィリップ | 僕はイクスが羨ましくて、イクスの持っているもの全てが欲しくて、イクスが憎らしかった。僕はイクスになりたかったんだ。 |
フィリップ | だからあの時……イクスを……。だけどイクスを刺した時に、気付いたんだよ。僕はイクスが好きで好きで仕方がなかったんだって。 |
マーク | ああ、それも知ってた。 |
フィリップ | ………………ッ ! |
マーク | お前はさ、好かれたかったんだよな。大好きな二人にさ。 |
フィリップ | ……そうだよッ !本当はミリーナに振り返って欲しかったしイクスに僕が一番すごいって褒めて欲しかったッ ! |
フィリップ | 二人に「フィルが一番好きだよ」って言って欲しかったんだ。 |
フィリップ | そんな……そんな子供じみたことを馬鹿みたいにずっとずっと抱え込んで……結局二人を傷つけて……。 |
フィリップ | 嫌われたんじゃないかって怖くなって……好かれていたかもわからないのにとにかく全部無かったことにして蓋をして……。 |
フィリップ | 僕は……本当に愚かだ。愚かで醜い……。 |
マーク | ……すげぇな。三十過ぎたおっさんがびーびー泣く姿って。 |
フィリップ | ……………おじさんだって泣くことぐらいあるよ。 |
マーク | まあ、そりゃそうだけどな。そら、早いとこ手紙読んじまえよ。踏ん切りついたろ。 |
マーク | 大好きなイクスに罵られても仕方ないことしでかしたんだから。 |
フィリップ | わ、わかってるよ。いいんだ。マークの言う通りだよ。それに……それでも僕はやっぱりイクスが好きで……憧れずにはいられないからさ。 |
マーク | ………………。 |
フィリップ | ……これが……僕がセールンドに逃げ帰ってから最初に来た手紙……。 |
イクスの手紙 | 親愛なるフィリップへ。昔話をしようか。俺、フィルが好きなんだよ。 |
イクスの手紙 | 突然何だよって思うかも知れないけれど俺は初めてフィルに出会った時からフィルのことが羨ましくて、憧れてたんだ。 |
イクスの手紙 | 頭がよくて、魔鏡術に詳しくておっちょこちょいなところもあるけど目的に向かって一直線に進んでいく強さがあって。 |
イクスの手紙 | こうやって書くとラブレターみたいだな !……笑うとこだぞ ? |
マーク | 刺された後なのにこうくるか。嫌な奴だな……。 |
フィリップ | 横から覗いて、文句言わないでくれないかな。 |
イクスの手紙 | だから、あんなことがあったけどそれでも俺はフィルを愛してる。この先も変わらないよ。 |
イクスの手紙 | もっと早くこういう話をすればよかったな。本当は顔を合わせて話したかったけどフィルは嫌がるだろうと思ったから手紙にした。 |
イクスの手紙 | フィルがどうしてあんなことをしたのか……本当のところはわからないけど、でも多分何かを変えたかったんじゃないかって思うんだ。 |
イクスの手紙 | だって本気なら、あそこで戸惑わなかっただろう ?もし俺の想像通りなら、フィル、大丈夫だよ。フィルなら変えられる。自分だって何だって。 |
イクスの手紙 | けど、そのままのフィルも俺は好きだけどな。どっちだっていい。どっちのフィルも俺の親友だから。 |
マーク | ……また泣いてるのか。そのツラ、後でヴィクトルに不審がられるぞ。まだ何通もあるのに、大丈夫なのか ? |
フィリップ | ……わかってる。だけど、涙が止まらないんだよ。 |
モリアン | ……ニンゲンか。 |
モリアン | そうか。わらわとメルクリアさまを引き離そうとするニンゲンたちが来たのか。 |
モリアン | あれだけメルクリアさまを苦しめ、傷つけ心を殺したくせに……。なおもわらわとメルクリアさまを切り離そうとするのか。 |
モリアン | 黒衣の鏡士共も来るか !彼奴らはメルクリアさまが最も憎むべき仇にして我らの仇でもある宮廷鏡士。 |
モリアン | わらわとメルクリアさまの痛みそして数多の鏡精たちの苦しみを思い知らせてやるわ ! |
モリアン | 覚悟せよ、鏡士共 ! |
死鏡精 | カガミシニシヲ !カガミシニシヲ ! ! |
死鏡精 | カガミシニシヲ ! ! ! |