キャラクター | 1話 【ケリュケイオンブリッジ】 |
| ―― これは今からほんの少しだけ未来に起きる出会いの物語 |
イクス | ――カレイドスコープの修理は、そんなに難航しているんですか…。 |
ゲフィオン | ああ。調整を終えたはずの箇所が、翌日にはまた不調をきたしてしまう。…この繰り返しだ。 |
カーリャ | それってワザと修理を妨害してる人がいるんじゃありませんかぁ ? |
カーリャ | ちゃんと怪しい人間からカレイドスコープを守れてるんですかねぇ ? |
ミリーナ | ちょっ、カーリャ !申し訳ありません。 |
ゲフィオン | 良いのだ。言われて当然なのだからな。 |
ゲフィオン | ただ、見張りの兵も増やしているが魔鏡技師に良からぬ輩の息がかかっている可能性も排除できぬ。 |
ゲフィオン | そこで、この後のカレイドスコープの修理はガロウズに任せようと思う。腕はもちろん、誰よりも信用のおける人物だ。 |
ゲフィオン | イクス、ミリーナ。彼を伴って、セールンドまで来てくれるか。 |
イクス | 承知しました。 |
ゲフィオン | それともう一つ、伝えておくことがあるのだが―― |
イクス | ここで待ってるって話だったんだけど…いないなあ。 |
ミリーナ | ゲフィオン様が言っていた、新たに見つかったはぐれ鏡映点さんって、保護されたばかりなんでしょ ? |
ミリーナ | もしかして、不安で怯えて隠れてるんじゃ…。 |
ユーリ | 怯えるねえ。話のとおり、オレんとこの連れだとしたらそんな可愛いタマじゃねぇと思うけど。 |
? ? ? | 待ちなさいよ、あんたって人はー ! ! |
レイヴン | わーーダメ ! リタっちその炎はダメ !おっさん本気で黒コゲちゃうー ! |
リタ | コゲれば ? 炭になれば長時間火もつくし、よっぽど人のためになるってもんよ。 |
イクス | うわ、すごいケンカ…。男の人の方が一方的にやられてるけど…器用によけてるな。 |
ミリーナ | あれって魔術よね ? あの子の出した火の玉、どんどん大きくなってる。すごい…けど…マズくない ? |
レイヴン | あ、青年、そこにいるの青年じゃない !助けて ! このままじゃホントに炭になって人のお役に立っちゃう ! |
イクス | ユーリさん、あの人こっちにむかって手を振ってるけど…もしかして… |
ユーリ | イクス~、船に戻ろうぜ~。 |
レイヴン | せーーねーーん ! ? |
リタ | …まあ、一通りの事情は理解したわ。それに、あんたがこっちにいるってわかって…少し安心した。 |
ユーリ | なんだよリタ、寂しかったのか ? |
リタ | はぁ ? バカじゃないの。この面倒なおっさんのお守りから、ようやく解放されて安心したってこと。 |
レイヴン | 言っとくけど、お守りされる方も命がけだからね… ? |
ユーリ | 大丈夫か ? 大変だったな、おっさん。誰かに助けを求めりゃよかったのに。 |
レイヴン | 求めて見捨てられたでしょ ! ? |
リタ | ったく、突然妙な所に放り出された上にあたしらを保護しにきたって連中、詳しい話は迎えの者に聞けとしか言わないし…。 |
ミリーナ | 多分、私たちの任務に極秘事項が多すぎて一般兵には知らされてなかったんだと思う。嫌な思いをしたなら…ごめんなさい。 |
リタ | え ? べ、別に、あんたに謝って欲しいわけじゃないってば。…ほら、もういいって。 |
レイヴン | そうそう。むしろこっちが謝らないとね。リタっちってば保護の説得にかかる兵士をちぎっては投げ、ちぎっては投げ―― |
イクス | …あの…。 |
リタ | おっさんだって迷惑かけてるじゃない !さっきだって、待ち合わせ場所から動いてフラフラと女の後ついてったでしょ ! ? |
イクス | …ちょっと話を… |
レイヴン | あ、あれは情報収集なの !情報収集とささやかな趣味を兼ねて―― |
ラピード | ワンッ ! ! |
リタ・レイヴン | ひっ ! ! |
ユーリ | イクス、ラピードがさっさと話せってさ。 |
イクス | ど、どうも…。レイヴンさん。それにリタ。 |
イクス | 俺たち、王宮に用事があるんだ。二人はしばらく、この船で待機になるけどいいかな。 |
リタ | えー退屈。だったら外に出て、もっと色々と調べたいんだけど。 |
ガロウズ | なあ、イクス。まだ王宮に行かねぇのか ?カレイドスコープの修理具合によっちゃ、システムの根本的な解析が必要に―― |
リタ | カレイドスコープって、さっき説明してた具現化装置のことよね。気になってたの。ねえ、どんなシステムなの ? 術式は ? |
ガロウズ | おっと、新入りかい。う~ん、そうだな。カレイドスコープの話はちょっと難しいから今度ゆっくり説明してやるよ。 |
リタ | 馬鹿にしないでくれる ?あっという間に理解してみせるわよ。ほら、話聞かせてって。 |
ガロウズ | そこまで言うんじゃ仕方ねぇな。ここから王宮までの間でいいってんならかまわないぜ。 |
リタ | それで十分。いい暇つぶしになりそうだわ。 |
イクス | それじゃ、すぐに王宮へ向かおう。 |
キャラクター | 2話 【協同1 カレイドスコープの異変】 |
リタ | ねえ、ここのエネルギー係数おかしくない ?制御系統の出力が下がってるのって、これも原因なんじゃ…。 |
ガロウズ | なるほどな。じゃあ反射板の角度を調整して…。 |
リタ | そっちで対処するのね。いいかもしんない。それなら…。 |
レイヴン | なにあれ、心配してついてきたのに、二人だけですっごい盛り上がって…おっさん嫉妬しちゃう ! |
ユーリ | 一緒に修理するって言い出した時はどうなるかと思ったけど、随分と気があったみたいだな。 |
レイヴン | そうか…リタっちもついに、大人の階段のぼっちゃう日が…ホロリ…。 |
リタ | アホかー ! |
レイヴン | ぶほあぁっ ! !じょ、冗談だってば冗談。 |
リタ | ほんっとあんたたち、いい加減にしてよね。それどころじゃないんだから ! |
ガロウズ | …待たせたな。 |
イクス | ガロウズ、カレイドスコープは直ったのか ? |
ガロウズ | いや…予想よりも悪い。今やってたのは応急処置だ。しかもこのままだと、程なく暴走しちまう。 |
イクス | 暴走 ! ?そうなったらアイギス計画は… |
ガロウズ | 計画どころじゃねえだろうなぁ。暴走すれば無作為に異世界をサーチして、具現化を繰り返すようになるんだぜ ? |
リタ | 具現化の際に起こる地震、鏡震だっけ ?あれが連続するってことね。計算するとこの世界が滅びるほどの大鏡震が起こる。 |
ユーリ | なんだよそれ。兵器だったもんを、わざわざ世界を救う道具にしたんだろ ?そいつがまた滅ぼしてちゃ世話ねえぜ。 |
レイヴン | 便利な物ってのは、得てして表裏一体か。まったく…どこの世界にいっても逃れられん話なわけね。 |
リタ | だからこそ、なんとかしなくちゃ。こっちに来てまで、同じような思いするのはまっぴら。 |
ミリーナ | 修理ができないわけじゃないんでしょ ? |
ガロウズ | ああ。けど面倒なのが、カレイドスコープのツインミラーシステムだ。これを司る大鏡は特殊な鏡石を採掘して加工しねぇと。 |
ガロウズ | 他にも、照準を司るカーネルリングの損傷が酷いから、こいつも作り直す必要がある。 |
イクス | …間に合うのか ? |
ガロウズ | 少なくともシステムと照準、二つの修理は同時進行じゃないと厳しいな。 |
ガロウズ | 大鏡の方は、俺自身が採掘にいかないと難しいから、かかりきりになる。 |
ガロウズ | そこでだ。カーネルリングの調達と加工は、リタに任せることにした。 |
ユーリ | マジかよ…こいつの腕は確かだけどさ。そんな大役、いきなり任せて大丈夫か ? |
ガロウズ | ああ、間違いねぇよ。俺と一緒に修理したこのわずかな時間で、宮廷技師の誰よりも的確に原因を見抜いたんだぜ ? 天才だよ。 |
リタ | そういうこと。あんた、あたしが誰だか忘れたの ? |
ユーリ | そりゃ失礼いたしました。 |
レイヴン | って、言ったそばから、どこ行くのよ、リタっち。 |
リタ | え ? 素材の調達だけど。キラル純結晶。精製場所まで。 |
レイヴン | 飴ちゃん買いに行くような気軽さだね。どうするよ青年 ?放っといたら一人で行っちゃうよ ? |
ユーリ | しゃあねぇなぁ。イクス、オレたちも一緒に行っていいか ?こいつが暴走しないようにお目付け役で。 |
イクス | ああ、もちろん。 |
ミリーナ | フフッ、ユーリさんてば、お目付なんて言ってるけど、本当は心配なんでしょ。優しいのね。 |
ユーリ | そりゃどーも。けどさ、リタの場合は本当に…なあ ? |
ラピード | ワフン… ? |
レイヴン | おま、ワフン… ? じゃないよ。俺様もう余計なことは言わないかんね ?今も視線でビシバシ殴られてるんだから ! |
イクス | 視線… ? |
レイヴン | ほら、よぉく見てごらん、鏡士の兄ちゃん。あの「無駄口叩くな」と言わんばかりの鋭いしせ―― |
リタ | ……。 |
レイヴン | ……。 |
ユーリ | …おっさん頑張れ。とにかく頑張れ。 |
イクス | ま、まあとりあえず、みんなも準備よろしくな。 |
リタ | ねえ、あんた、えーっと…イクスだっけ ?追加で必要な部品や素材があるの。これ、メモしてあるから、ついでに調達頼むわね。 |
イクス | …なんかやたら増えてるぞ ?それにダークオーブっていうのは…。 |
リタ | それ、一番大事だから。あの子の自己修復機能の修理に不可欠なエネルギーなの。 |
イクス | あの子…って、カレイドスコープのこと ? |
リタ | 当たり前じゃない。あの子にもそのうち、いい名前をつけてあげなきゃね。 |
ミリーナ | 名前かあ。愛情持って直してあげてるのが、良くわかるわ…とても素敵よ、リタさん ! |
リタ | …そ…そんな、大げさなことじゃ…。それに「さん」はいらないし…。 |
ミリーナ | そう ? それじゃリタね、リータ ! |
リタ | 何よ…ったく、こういうタイプはやりにくいったら…もう…。 |
イクス | それで、ダークオーブはどのくらい必要 ?買うなら数を書いてくれるかな。 |
リタ | 店に手配済みだけど、それじゃ全然足んないだから集められるだけ集めてちょうだい。 |
イクス | 集めるって、どこで ? |
リタ | ガロウズの話じゃ、あたしたちの目的地方面にいる魔物が持ってるって。だから倒したら忘れず確保。いいわね ? |
イクス | う~ん…ダークオーブはそれでいいとして。他の部品の調達はどうしよう。 |
イクス | こんなに色々と寄り道してたらカレイドスコープの暴走に間に合わなくて、世界が…。 |
レイヴン | お~鏡士の兄ちゃん。難しい顔してどしたの ? |
イクス | いや、修理に必要な部品の種類が多くて、集めるのに人手が足りないんです。 |
レイヴン | そんなの、活きのいいのがこの船に待機してるじゃない。見にいったらみんな騒いでたよ~ ? 「何か手伝わせろ」って。 |
イクス | …そうですね。これだけの量があるし、危険だけど、今回は全員に頼んで手分けして集めるしかないか。 |
レイヴン | そそ、こういう時のお仲間さんでしょ。兄ちゃんが上手く采配ふってやんな。 |
レイヴン | 腕っぷしの強え奴、交渉上手な奴、人当たりの良さそうな奴、それぞれのいいとこ知ってれば大丈夫よ。 |
イクス | …もしかしてレイヴンさん、こういうの得意だったりします ? だったら一緒に…。 |
レイヴン | おっさんがそんなのが得意に見えるの ?そりゃ買いかぶりってもんだわ。 |
ガロウズ | イクス、準備はどうだ ?俺の方はもう出られるぞ。 |
レイヴン | ま、頑張りな、若人。 |
ガロウズ | 悪い、話の途中だったみたいだな。けど、そろそろ出発しないと間に合わなくなるぜ。 |
イクス | わかってる。部品と素材集めだけど、鏡映点のみんなを隊分けして、一気に集めてきてもらおうって話をしてたんだ。 |
ガロウズ | そりゃありがたい。なら、ケリュケイオンに繋がる通信機を各隊に用意するか。 |
イクス | それいいな、頼んだ ! |
イクス | みんな、無事に出発したよ。 |
ガロウズ | 隊分け、うまくいったみたいだな。なら俺たちも行こうぜ。 |
リタ | あんたも一緒なの ?行き先は採掘所でしょ ? |
ガロウズ | 鏡石の採掘所と、あんたらの目的地の精製所は、結構近いんだぜ ?道も途中までは一緒だ。 |
リタ | そう。じゃあ、その間に、魔鏡科学のこと、色々聞かせてもらうわよ。 |
レイヴン | おーおー嬉しそうにしちゃってまあ。 |
ユーリ | やくなよ、おっさん。 |
ガロウズ | …なあリタ、それにお前らも、ちょいと聞いてくれるか。 |
ガロウズ | これは他の隊の奴らにも言ったんだが、任務を遂行するにあたって、必ず守って欲しいことがある。 |
ガロウズ | 今回、あまり時間の余裕はねぇ。だから、何か不測の事態が起きても、まずは自分の任務を全うすることを優先してくれ。 |
リタ | 誰に言ってんの ?あんたこそ、余計な事考えてグズグズすんじゃないわよ。 |
ガロウズ | 頼もしいじゃねぇか。その意気で頼むぜ。 |
イクス | それじゃリフィル先生、マリアンさん。悪いけど留守番よろしくお願いします。 |
リフィル | ええ、ケリュケイオンは任せてちょうだい。 |
マリアン | どうかみなさん、お気をつけて。無事のお帰りをお待ちしています。 |
キャラクター | 3話 【協同2 不穏な気配】 |
リタ | ――それなら、あたしたちの世界でいう魔導器がカレイドスコープ本体。カーネルリングは魔核に置き換えられるわ。 |
ガロウズ | なるほどな。で、あんたは魔核の方が専門てわけか。じゃあ俺の判断は、あながち間違っちゃいなかったってわけだな。 |
リタ | まあ、そういうことね。 |
ガロウズ | キラル純結晶の精製には高度な魔鏡科学を扱えないとダメなんだ。あんたなら間違いねぇ。 |
リタ | ほ、ほめたって、なんも見返りないわよ ? |
ガロウズ | いやぁ、カレイドスコープを直せる人物ってだけでも十分な見返りだぜ ?もし俺が動けなくても安心だからな。 |
リタ | なによ「動けなくても」って。見かけのわりにはマイナス思考ね。 |
ガロウズ | ハハッ、悪ぃ悪ぃ。 |
王宮騎士 | ――ガロウズ殿、こちらへお早く ! |
ガロウズ | おっと…そろそろお別れだな。採掘所はこっちの道だ。護衛の騎士さん方を待たせるといけねぇ。 |
リタ | あ、そう。ここまでなんだ…。 |
ガロウズ | それじゃリタ、カーネルリングのことくれぐれも頼んだぜ。お前らもよろしくな ! |
イクス | ああ、ガロウズも気を付けて。 |
リタ | ……。 |
レイヴン | なによリタっち、名残惜しそうに見送っちゃって。 |
リタ | べ、別にそんなんじゃないし。もうちょっと魔鏡科学のこととか、知識を仕入れておきたかっただけ。 |
レイヴン | やっこさん、妙に神妙だったからね。自分が動けなくとも、か。リタっちじゃなくても気になるわ。 |
リタ | そんなんじゃないって言ってるでしょーが ! |
ミリーナ | …もしかしたらガロウズさん、「いつ何があるかわからない」って思ってるのかも。 |
ミリーナ | あの人、戦争で死にかけて、自分の腕も、大事な人も失ってるの。今もこんな状況だからもしかしたらって…。 |
レイヴン | ……。 |
ミリーナ | でもね、辛くて絶望していた時に、魔鏡技術と出会ったんだって。そして今は、あんなに頼れる技師になってる。 |
ミリーナ | それを受け継ぐ能力を持ったリタが現れて、本当に頼りにしてるのよ。きっとすごく喜んでると思うわ。 |
リタ | あたしが来て喜んでる…そうかしら ? |
ミリーナ | そうよ。だって、こんなに強くて賢くて、可愛い弟子ができたんだもの。本当、リタって可愛いわ ! |
リタ | あ、あたしはあいつの弟子なんかじゃな――ちょーっとちょっと、あんた近い、ちーかーいーってば ! |
イクス | ミリーナの奴、保護欲全開になってる…。 |
レイヴン | 麗しい光景じゃない。おっさんも混ぜて混ぜてー ! |
リタ | もーあんたら、うっさい ! |
ユーリ | リタ、お楽しみのところ悪いが、さっさと行かないと間に合わなくなるぞ ? |
リタ | 楽しんでないからっ ! |
レイヴン | ……。 |
レイヴン | …絶望から立ち上がって、夢を見出した奴、か。…いやあ、頭さがるね。 |
レイヴン | …ホント…強ぇわ…。 |
リタ | …ちょっと、何してんの。 |
レイヴン | なに ? 俺様のことが心配で迎えにきちゃった ? |
リタ | ふざけないで。まさか、調子悪いんじゃ…。 |
レイヴン | え、めっちゃ元気よ ? ここが異世界だってわかった時に、体に影響がないかリタっち色々と調べてくれたじゃない。 |
リタ | ならいいけど…。何かあったら言いなさいよね。 |
レイヴン | はいはい。…ほんと、優しいねぇ。 |
リタ | い、いっとくけど、あんたに何かあったら、こっちが面倒だからよ ? |
レイヴン | わかってますって。でもさ、リタっちがいてくれてよかったよ。ありがとさん。 |
リタ | ちょ…キモ…。 |
レイヴン | なんで ! ? マジメに感謝してるのに ! |
リタ | いいからほら、さっさと行くわよ !じゃないと…。 |
レイヴン | なに…またこのパターン ! ?黒コゲは勘弁よ ! ? |
リタ | うっさい ! さっさとみんなのとこ、戻れ ! |
レイヴン | 火 ! ? ひいいいいいぃぃ ! |
リタ | ったく…あんな顔して、一人でいるんじゃないわよ。…バーカ。 |
キャラクター | 4話 【協同4 焦りの感情】 |
マリアン | ――各隊、順調に進んでいます。むしろ予定よりも早いくらいですね。 |
イクス | わかりました。定期連絡ありがとうございます。またお願いします。 |
マリアン | 承知しました。失礼いたします。 |
ミリーナ | よかった。この分なら問題なく修理にこぎつけそうね、リタ。 |
リタ | …精製時間を短縮して…でもそれだと結晶化までの冷却効果が高い物質が必要に…。 |
ミリーナ | …考え中、かな。すごい集中力。 |
ユーリ | 用心しな。こういう時、うかつに話しかけると一発くらうぜ ? |
ミリーナ | ほ、本当に ? |
ユーリ | ま、あんたは大丈夫だろ。あいつ結構気に入ってるみたいだし。 |
ミリーナ | それなら良かったです。しつこくしすぎて、嫌われちゃったらどうしようかと思っていたけど…。 |
カーリャ | でもリタさま、やけに表情が厳しいですね。 |
ユーリ | 確かに…ちと気負ってんな、あいつ。 |
ユーリ | ――なあ、リタ。 |
リタ | …ここだけは何とかしないと、あたしが任されたんだから、何とか…。 |
ユーリ | おいリタ ! |
リタ | ―― ! な、なによ。この忙しいときに邪魔すんな ! |
ユーリ | らしくないぜ、どうした。 |
リタ | …考えれば考えるほど…足りないのよ。この世界での経験も、知識も、何もかも。 |
リタ | 術式やエアルの知識、魔導器に関してなら誰にも負けない。けど―― |
ユーリ | 違う世界から来て、まだよくわかってない内に、みんなの運命を左右する大役を担っちまった… |
イクス | 怖いし不安だよな。俺も最初そうだった。…わかるよ。 |
リタ | な、何よ ! 怖いなんて言ってないでしょ。あんたと一緒にしないで。 |
レイヴン | いいじゃない、怖くたって。むしろそういうの無い方が怖いって。 |
レイヴン | それにさ、リタっちが怖いのってそれだけじゃないでしょ ? |
リタ | …何のこと。 |
レイヴン | 全幅の信頼を寄せてくれたガロウズの期待に、答えられないかもっていう恐怖感――とか ? |
リタ | ……。 |
レイヴン | うわーホントに当たった ! ? おっさん複雑 !あのリタっちが、人からどう思われるか気にするなんて、嬉しいやら寂しいやらも~。 |
リタ | やめてよね…今ツッコむ気分じゃない。 |
レイヴン | でも暗くなったってしょうがないじゃない。不安な時こそ、自分を信じて…ってあれ ?これリタっちの専売特許じゃなかったっけ ? |
リタ | …そうよ。 |
レイヴン | この流れ、前にもあった ? |
リタ | そうよ ! |
リタ | 知識や経験が足りなくっても覚悟を決めるわよ !面倒な信頼とやらに応えてやるわ ! |
リタ | あー ! ムカつく !おっさんに正論説かれると本当ムカつく ! |
リタ | さあ、あんたたち、キリキリ歩きなさい !さっさと任務を成功させて、この世界にもあたしの名前を轟かせてやるんだから。 |
ユーリ | やれやれ、少しは落ち着いたみたいだな。おっさんもフォローご苦労さん。 |
レイヴン | いやいや~、それほどでも。でも、もっと感謝してくれてもいいのよ ? |
ラピード | ワンッワォン ! |
レイヴン | …いまワンコに「調子にのんな」って言われた気がする…。 |
ユーリ | ヒュー、当たり。 |
カーリャ | もしかしてレイヴンさまって、ヒエラルキー低いんですかね ? |
ミリーナ | しっ、カーリャ聞こえちゃう。 |
レイヴン | 聞こえてますぅっ ! |
キャラクター | 5話 【協同6 ガロウズ側の状況 】 |
イクス | …遅いなあ。とっくに定期連絡の通信が来てもいい頃なんだけど…。 |
リタ | まさかあの通信係、サボってんじゃないでしょうね。 |
ユーリ | んな訳ねえだろ。なあ、こっちから連絡したらどうだ ? |
イクス | そうですね、あんまり遅いようなら―― |
マリアン | 申し訳ありません、連絡が遅れました。 |
イクス | 良かった。待ってたんです。みんなの様子はどうですか? |
マリアン | …はい。問題、ありません。 |
イクス | そうですか。俺たちの方も順調なので予定より早く目的地に着くと思います。 |
マリアン | それはなによりです。では、他の隊への連絡もありますので、これで失礼―― |
レイヴン | ちょっと待った。ねえ、本当に何もない ? |
マリアン | …ええ、ありません。それではこれで…。 |
レイヴン | ちょいちょいちょい !それよそれ、なんでそんなに急いでんの。 |
レイヴン | しかもさ、お姉ちゃん。「問題ありません」って言った時、一瞬言葉に詰まったね。 |
マリアン | ……。 |
イクス | 何かあったなら教えて下さい。どんな些細なことでもいいですから。 |
レイヴン | このまま通信切っても、俺ら心配できっと任務に集中できないと思うよ ? |
マリアン | …実は…先ほどガロウズさんたち一行が、鏡石の採掘中に救世軍の襲撃を受けました。 |
リタ | 何よそれ…。あっちの状況はどうなってんの ! ? |
マリアン | 騎士団の話では、襲撃の際にガロウズさんは負傷して孤立、――その後行方が、知れないと…。 |
イクス | …捜索はしてるんですよね?護衛の人たちとかが…。 |
マリアン | いえ、襲撃が激しく一時撤退したと…。その連絡を最後に彼らとも通信が途絶えています…。 |
イクス | それって通信機が壊れたか、…それとも―― |
レイヴン | 兄ちゃん、今は事実だけを認識しときな。 |
マリアン | 王宮へは、こちらから連絡を入れました。現在、捜索隊を編成しているとのことです。ですから皆さんは、任務を優先して下さい。 |
カーリャ | でも王宮にも敵がたくさん紛れ込んでるんですよね…。 |
リタ | ほかに救助に行けそうな奴は… ?鏡映点てのは強いんでしょ。あいつらはまだ戻ってないの ? |
マリアン | …はい。ですが戻り次第―― |
リタ | 戻るって、いつよ ! ? |
リタ | …あたし採掘所いってくる。ここからならあたしたちが一番近い。石を採ったついでにあいつ見つければ全部解決よ ! |
ユーリ | 落ち着けよリタ。 |
リフィル | マリアン、私が代わるわ。 |
リフィル | ――みんな、状況は伝えたとおりよ。けれどあなたたちはこのまま任務を続けて。 |
リタ | 続けられるわけないでしょ ! ?こっちの任務が成功したって、あっちが失敗したらなんにもならないんだから ! |
リフィル | まだ採掘班が失敗とは決まっていないわ。それとこちらでも、他の部隊が戻り次第、救助に向かわせる手筈を整えています。 |
リタ | だから、それがあてになんないっての !あんただって戦えるんでしょ ?だったら―― |
リフィル | 今、この船を動かせるのは私だけよ。離れるわけには行かないの。 |
リフィル | それにこの船ごと移動してしまったら、他のメンバーの任務に関わるわ。救出に向かうのも、ますます遅れるかもしれない。 |
リタ | だから、あたしたちが行くって―― |
リフィル | 話はここまで。いいこと ? 任務を続行して。以上よ。 |
リタ | ちょっと何よ、勝手に切って !ねえ、もう一回つないで、あの女と話つけるから ! |
イクス | …あっちも各隊とのやりとりで手一杯だと思う。それに今はリフィル先生の言うとおり任務を続行した方がいい。だって―― |
リタ | あんたまでそんなこと…。ああそう。このまま鏡石が手に入らずに、この世界がぶっ壊れてもいいってのね ? |
ユーリ | お前な、誰もそんなこと言ってねえだろ。こうやってグダグダ立ち止まってねぇで、少しでも先行けっつってるだけだ ! |
リタ | そんなの分かってる ! けど…。 |
ユーリ | こんな言い合いだってな、歩きながらでもできんだよ。ほら行くぞ、足動かせ。 |
リタ | なによ…偉そうに…。進むわよ、進めばいいんでしょ ! |
レイヴン | …ホントおまえさん、損な役回りが得意だよね。 |
ユーリ | …それでいいんだよ。こういうのは得意な奴がやれば。イクスも、リタの言ったこと気にすんなよ。 |
イクス | 大丈夫です。俺も何度も焦ってテンパったりしてるんでわかる気がしますから。 |
イクス | (ガロウズ…。どうか無事でいてくれよ…) |
キャラクター | 6話 【協同7 ふくらむ不安】 |
イクス | リタ、妙に静かだな。さっきまでの剣幕がうそみたいだ。 |
ミリーナ | うん、でも何だか心配ね…。 |
リタ | …ちょっといい ? |
イクス | え ? ああ、もちろん。 |
リタ | さっきは色々とその…ごめん。 |
イクス | 気にしてないよ。俺だってリタと同じだ。本当は、ガロウズを助けに行ければって思ってたんだし。 |
リタ | あのね、あたしが心配してるのは鏡石 !あれがなきゃ、何も始まらないんだから。本当は今からだって採掘所に―― |
ラピード | ワンワンッ ! ! |
リタ | な、何よ犬 ! |
ユーリ | おまえ、まだそんなこと言ってんのか。 |
リタ | …だって、王宮の捜索隊や他の奴らよりあたしたちの方が採掘所に近いのは事実でしょ。 |
リタ | これは効率の問題よ。単純にそれだけの話だから。 |
ユーリ | 本当はガロウズが心配だっていっちまえば、まだ可愛げもあるんだけどな。 |
リタ | あ、あんたねえ…ホントうっさい ! |
ユーリ | おっと。 |
リタ | なんで避けんのよ ! |
ユーリ | おっさんみたいに、素直にくらってやるほどオレもお人好しじゃないんでね。 |
レイヴン | コラコラ、じゃれあいはおよしなさいよ。どうせなら、おっさんを混ぜなさい。 |
ユーリ | 自ら死地に飛び込むとは、さすがおっさん。勇気あんな。…歓迎するぜ ? |
レイヴン | …今回は遠慮しとく。ま、それは置いといて―― |
レイヴン | さっきの効率の話だけどさ、時間や距離の問題だけなら、リタっちの言うとおりだよ ? けど…。 |
レイヴン | じゃあなんで、留守番のお姉ちゃんたちは、一度は襲撃情報を伏せたのよ。効率よくさっさと俺たちに頼めば良かったのにさ。 |
リタ | それは…突然のことで、頭回ってなかったんじゃない ?それで勝手に判断して―― |
イクス | リフィル先生は冷静で、頭のいい人だよ。ガロウズの件を説明してた時だってすごく落ち着いてた。 |
ミリーナ | そうね。勝手に「任務を続行しろ」なんて判断をする人じゃない。 |
レイヴン | ん~ ? どっかで聞いたわね。そのセリフ。出発する時だっけ。 |
リタ | …何よ…それじゃ、ガロウズが自分から口止めしたってこと ?なんでそんな…。 |
レイヴン | そんなの、リタっちが一番わかってるでしょ。 |
リタ | ……。…あたしまで、何かあったら、修理ができなくなるから…。 |
リタ | でもそんなの、合理的じゃない。あたしが修理するよりもあいつがやった方がずっと成功する確率が―― |
ユーリ | リタなら、修理をやり遂げる。そう思ったから、余計なことに煩わされないようあえて襲撃を伏せた―― |
ユーリ | 確率とか効率とかの数字じゃねえ。ガロウズがお前に任せたのは、リタっていう人間を信じたから――わかってんだろ ? |
リタ | …ええ。 |
レイヴン | でも、ちょっとずるいよね。リタっちを信じてるなら、襲撃を知ってもやり遂げるって信じてくれなきゃ。 |
リタ | …そうね。ホント、ずるいんだから。まったく…。 |
レイヴン | …おっさん、余計なこといっちゃったかな。落ち込まなきゃいいけど…。 |
ユーリ | あいつは平気だよ。自分のやるべきことくらい理解してる。 |
ラピード | クゥーン…。 |
キャラクター | 7話 【協同8 役割を果たすために】 |
イクス | へぇ…。ここでキラル純結晶が精製されるのか。 |
リタ | さ、ここからが勝負ね。あたしはすぐに作業にかかるわ。 |
イクス | 何か手伝うことは ? |
リタ | あるわ。あんたたちじゃなきゃ出来ないことが。――あいつを、助けに行って。 |
ユーリ | ハァ…。ま、そうくると思ったぜ。けど言っとくが――。 |
リタ | わかってる。あたしは行かない。ここでカーネルリングを作るわ。 |
リタ | それが、あたしのやるべきこと。あいつを助けるよりも大事なこと、でしょ ? |
リタ | でも、あんたたちは別だからね。ほら行って行って ! |
リタ | それと、ガロウズに伝えてくれる ?会ったら一発殴るからって ! |
レイヴン | …しゃーない。助けに行きますか。リタっちが異世界で初めて心許した男をさ ! |
リタ | ちょ、あんたそれ、言い方 ! |
ユーリ | やれやれ…。まあ、ここまで来れば問題ねぇか。 |
ユーリ | こっちで勝手に話つけちまって悪いが、それでいいか ? イクス。 |
イクス | もちろん、すぐに向かいます ! |
ミリーナ | リタも頑張って !私たち、絶対にガロウズさんを見つけるから ! |
リタ | ええ、任せたわ。…ミ、ミ、ミリーナ… |
ミリーナ | あ…名前、初めてよんでくれた !嬉しい ! ありがとう、リタ ! |
レイヴン | リタっち照れてるぅ~。 |
リタ | うっさい ! そうだミリーナ、あたしは側にいないから、おっさんにエロいことされないように気を付けんのよ。 |
ミリーナ | え…レイヴン…さん ? |
レイヴン | ちょっ、やめて ! ?ミリーナちゃん引いてるじゃない。 |
ユーリ | イクスに刺されないようにな、おっさん。 |
イクス | レイヴンさん…まさか…。 |
レイヴン | ちょっと兄ちゃん目が怖い ! |
リタ | ほんっとあんたら、バカっぽい…。 |
キャラクター | 8話 【協同10 忍び寄る魔の手】 |
イクス | ガロウズ ! ガロウズー ! |
ユーリ | …チッ、人の気配がねぇ。ガロウズと護衛がはぐれたってのは本当にこの辺か ? |
イクス | さっき通信でリフィル先生に聞いたから間違いないはずだけど…。 |
ラピード | …………。…ワウッ ! |
ユーリ | どうしたラピード。 |
ラピード | ――ワンワンワンッ ! |
ユーリ | ナイスだ、ラピード !みんな ! ガロウズのにおいをみつけた !こっちだ ! |
ラピード | ワン ! ワンワンッ ! |
イクス | ――いた、ガロウズ !しっかり、生きてるよな ? |
ガロウズ | …う…イクス… ? ミリーナ…も…。 |
ミリーナ | 良かった…無事で…。 |
ガロウズ | 悪い…。迷惑、かけちまった…。 |
レイヴン | しゃべれる程度には大丈夫みたいね。…それにしても、ずいぶんと分かりにくい所にいたもんだね、こりゃ。 |
ガロウズ | すまねぇ…はぐれた後も、救世軍の奴らに追われて…隠れてた。 |
レイヴン | いやいや、よく逃げ延びてくれたよ。ウチの魔導少女にも、いい報告できるってもんさ。 |
ガロウズ | 魔導…そうだ、リタは ? |
ユーリ | 安心しな。あんたの期待に応えるために絶賛、お仕事中だよ。 |
ユーリ | しかし…どっから聞きつけたかは知らねぇが救世軍ってのは、よっぽどあの機械の修理を邪魔したいらしいな。 |
ラピード | ―― !…グルルルル… |
ユーリ | ―― ! …チッ、いつの間に…。 |
イクス | 魔物 ! ? こんなにたくさん… |
ユーリ | ありゃ襲う気マンマンってツラだな。イクス、こっから離れるぞ。 |
ミリーナ | ガロウズさん、怪我はどう ? 走れる ? |
ガロウズ | 悪ぃ、ちと厳しいな。 |
イクス | 俺が支えるよ――っとと… |
レイヴン | 兄ちゃんだけじゃムリムリ。青年、手伝ってやって。 |
ユーリ | よし――って、おっさん何やってんだよ、逃げんぞ ! |
レイヴン | 少しはお仕事しないとね。弓だったら、距離とってけん制できるから時間稼げるっしょ。 |
ユーリ | おい、無理すんなって、おっさん ! |
レイヴン | ちょっと青年、中年を馬鹿にする者は、中年期に泣くよ ? |
ユーリ | そうじゃねぇよ ! こっちとオレらの世界じゃ色々勝手が違うだろ ! ?あんたは―― |
イクス | …… ? |
レイヴン | …んとにまあ、リタっちといい、おまえさんといい…。 |
レイヴン | ご心配なく。今んとこぜっこーちょーよ ?何しろ天才魔導士のお墨付き。 |
ユーリ | …そうかよ…なら、任せたぜ、レイヴン ! |
レイヴン | あいよ ! |
魔物 | キキキーッ ! |
レイヴン | おっと、おまえさんたちの相手はこっちだってば。 |
レイヴン | おーこわ ! でも、そう簡単に、殺られるわけにゃあいかんのよね。 |
レイヴン | ――俺の命は、あいつらのもんだからさ。 |
イクス | ハアッ、ハアッ…レイヴンさん…大丈夫かな…。 |
ガロウズ | すまねぇ…俺がこんなだから…。 |
ユーリ | そんなヤワなおっさんじゃねえよ。…それよりも――こっちにも厄介なのが待ってたみたいだぜ。 |
マーク | へぇ、あの魔物の群れから逃れて来たか。さすが鏡映点さま、たいしたもんだぜ。 |
ファントム | 生贄を差し出しての逃走とは…。そういう手段を選ばないやり方私も嫌いではありませんよ。 |
ファントム | しかも友達思いのイクスくんがこんな手段に出るなんて、ねぇ。 |
イクス | …… ! ? |
ユーリ | あの魔物はてめぇらの仕業か。 |
マーク | この状況ならそうに決まってんだろ ?綺麗なお兄さんよ。 |
マーク | ――さて、ファントム。これで義理は果たしたぜ。ガロウズの居場所を見つけてやった。 |
マーク | アンタのやり方は嫌いなんでな。俺の主はアンタじゃない。きっちり自分で後始末してくれや。 |
ファントム | フフフ…。一人では遠くに行けない坊やが何を吠えるのかと思えば。まぁ、かまいませんよ。早く帰りなさい。 |
マーク | …ちっ。――イクス。こんなつまらねぇ男に負けるなよ。お前を殺すのは俺の仕事だからな。 |
イクス | …な、何だ ? 仲間割れか ? |
ミリーナ | イクス、気を取られないで ! |
ファントム | さすがミリーナさん。そう、敵の事情など気にしている場合ではありませんよ。 |
ファントム | こちらはガロウズさえ消せば、目的は達成ですからね ! |
ガロウズ | ――っ ! ? |
イクス | しまっ―― |
リタ | させるかー ! |
ユーリ | リタ、おまえなんでここに ! |
リタ | カーネルリングの修復が終わったからよ。文句ある ?あ、ついでにこいつも回収してきたから。 |
レイヴン | ハァ~イ、来ちゃった ! てへっ。 |
ユーリ | はっ、んなこったろうと思ったぜ。 |
リタ | そこのあんた、どんな魔物呼ぶ気か知らないけど、無駄だからやめときなさい。 |
ファントム | …あはははは、これはこれは。異世界の魔導士風情が大口を叩くといずれ後悔することになりますよ。 |
リタ | 後悔すんのはあんたの方。あたしを誰だと思ってんの。天才魔導士、リタ・モルディオ様よ ? |
リタ | この名にかけて、あんたのやること、片っ端から、ぶっ潰してあげるわ ! |
ファントム | この私に刃向かうとは勇ましいお嬢さんだ。 |
ファントム | しかし残念ながらお嬢さんにはちり一つほどの興味もないのですよ。 |
ファントム | それにわざわざ援軍を相手にするほど私も愚かではありません。私のペットたちとでも遊んでいて下さい。 |
ファントム | では失礼。 |
イクス | まずい…!あの魔物は!? |
リタ | はっ!?何がまずいわけ? |
イクス | 以前、奴の幼体に襲われたことがある。奴に魔術を使われたら壊滅するぞ!魔術を使わせるな! |
キャラクター | 9話 【協同10 忍び寄る魔の手】 |
ユーリ | なんだよあのファントムってのは。魔物呼ぶだけ呼んだら、さっさと消えちまいやがって。 |
リタ | そんなのどーでもいいわ。それよりも…あんた平気 ? |
ガロウズ | すまねぇな。任務を全うしろなんてでかい口たたいといてこのザマだ。…けど、よくこんな短時間で精製を…。 |
リタ | 行きがけに考えてた、結晶精製の短縮方法を試してみたの。 |
ガロウズ | それを一発で成功させたってのか。はは…参ったねどうも。 |
リタ | ねえ、鏡石はどうなってるの ? |
ガロウズ | ああ、採掘した分は、はぐれる前に護衛の騎士団に託してる。持って帰ってくれてりゃいいんだが…。 |
イクス | それは大丈夫。さっきリフィル先生と通信した時に、騎士団が石を持って、城に到着したっていってたよ。 |
イクス | それと、他の隊も材料を確保してもうすぐ戻ってくるってさ。 |
ガロウズ | そうか。あの石が無事なら材料は十分だ。あとは俺が加工と修理を…いててっ…。 |
リタ | そんな体で修理 ? 間に合うの ? |
ガロウズ | ハハッ、そりゃもう、天才魔導士様がついてるからな。 |
リタ | し、仕方ないわね ! …世界の危機だし、あんたの分も手伝ってやるわよ。 |
レイヴン | …ん ? そういえば…忘れてた !技師の兄さんよ、リタっちがさ、会ったら絶対一発なぐ―― |
リタ | だああああああっ ! |
レイヴン | ちょっと ! なんでおっさんを殴るの ! ? |
ガロウズ | …………。 |
リタ | ここを締めれば――よし、これで終了っと。 |
ガロウズ | お疲れさん。これでもう、暴走の心配はないぜ。 |
ミリーナ | やったわね、リタ ! |
ユーリ | よっ、さすが天才。 |
リタ | ふぃ~、結構ハードだったわ…。 |
レイヴン | あらら、ほんとにぐったりなのね。よし、その疲れ、俺様の胸で癒してあげようじゃないか。さ、飛び込んでおいで ! |
リタ | 行くわけないでしょ、バカっぽい…。余計疲れるわ…。 |
レイヴン | じゃあミリーナちゃん―― |
ミリーナ | ふふ、飛び込む胸はもう決めてるので遠慮しておきますね。 |
| ワン、ワンワンッ ! |
ユーリ | 「よし、代わりに飛び込んでやる」だってさ。 |
レイヴン | ワンコ…、なんで獲物をしとめる態勢なのよ…。 |
ガロウズ | ハハッ、本当、賑やかな奴らだな。こりゃさらに船の中が騒がしくなるぞ。 |
イクス | なあガロウズ、この集めたダークオーブ、まだたくさん余ってるけど、どうする ? |
ガロウズ | それか。金にすることもできるけど、大した金額にゃならないんだよな。でも大事な材料だし…。 |
ガロウズ | よし、ゲフィオン様に相談してみるか。 |
ゲフィオン | ――なるほど。ならば、ダークオーブは王宮で引き取ることにしよう。 |
ゲフィオン | それと引き換えに褒美の品を与える。 |
イクス | いいんですか ?そんなに値のはるものではないと聞きましたが。 |
ゲフィオン | 良いのだ。おまえたちは本当によくやってくれた。集めた分の労力には報わねばな。後で持ってくるが良い。 |
イクス | ありがとうございます ! |
ミリーナ | すごい、ご褒美ですって ! |
カーリャ | なんですかねえ、ワクワクしますね ! |
イクス | それじゃ早速持っていこうか。 |
レイヴン | ちょい待ち。 |
レイヴン | 宰相様さ、「集めた分の労力には報わねば」って言ってたじゃない ? |
イクス | …… ? |
レイヴン | もっと集めて持ってったら、ご褒美ざくざく倍率ドーン !…なんてことない ? |
イクス | ……そ・れ・だ ! ! ! ! |
ユーリ | さすがおっさん、やるじゃねえか !手口がセコイぜ ! |
リタ | 天才のあたしでさえ頭が下がるわ。見事よ。そのケチくささ ! |
レイヴン | あれ~、おっさん耳がおかしいのかな ?褒められてるように聞こえないんだけど ? |
イクス | そんなことありません !すごいですよ、レイヴンさんの強欲作戦 !どんどん集めましょう ! |
レイヴン | …イクスくん…おっさんそろそろ泣いていい ? |