キャラクター | 1話【邂逅1 エドナ様におやつを献上する会】 |
ミリーナ | スレイさん。ベルベット見かけなかった ?どこを探しても見当たらなくて。 |
スレイ | ライフィセットに呼ばれたらしくてさっき出かけていったよ。 |
エドナ | …ライフィセットに ? |
ミクリオ | ああ。なんだか急いでる様子だったな。 |
エドナ | ………そう。 |
イクス | エドナ様 ? どうかしたのか ? |
エドナ | …いいえ。何でもないわ。 |
スレイ | みんなベルベットに用でもあったの ?緊急ならオレが伝えてくるよ。まだ何とか追いつけると思うし。 |
ミリーナ | ありがとう。けど大丈夫よ。ベルベットには次のお菓子作り担当、どうかよろしくって伝えようと思っただけだから。 |
ミクリオ | お菓子作り担当 ? なんだいそれは ? |
イクス | いま女子グループの間でエドナ様におやつを作ってあげるのが流行っているんだってさ。 |
ミリーナ | この前のお茶会で気づいちゃったの。そういえば私たち、エドナ様の笑顔を見たことないって。 |
ミリーナ | だから、とびきり美味しいお菓子を作ってエドナ様に喜んでもらえば笑顔を見られるんじゃないかって。 |
エドナ | こうしてエドナ様におやつを献上する会が発足されたというわけ。 |
ミリーナ | だけど、いまのところ全敗で…。最後の切り札ベルベットの出番ということになったのよ。 |
ミクリオ | そ、そんなことになっていたのか…。 |
イクス | そういえば最近お菓子の材料を買いに行くと何故か商店街が品薄なんだよな。食材も値上がりしてるしさ。 |
アリーシャ | それは盗賊団が原因だろう。 |
ミリーナ | アリーシャ ! 何か事情を知ってるの ! ? |
アリーシャ | ああ。王宮騎士団で耳にしたのだが最近になって盗賊団が商人を襲う事件が頻発しているらしい。 |
イクス | そうだったのか…。それは何とかしたいな。 |
アリーシャ | 私も事態解決のため協力しているのだがなかなか尻尾が掴めなくてな…。これからまた調査に向かうところなんだ。 |
イクス | それなら俺たちも協力するよ。 |
ミリーナ | 街の人や商店街の人たち、そしてエドナ様にお菓子を作ってあげるためにも頑張るわ。 |
アリーシャ | ありがとう。それじゃあ案内するよ。ついてきてくれ。 |
キャラクター | 2話【邂逅2 予期せぬ出会い】 |
ライフィセット | アイゼン、大丈夫 ?怪我はしてない ? |
アイゼン | ああ。俺はもう大丈夫だ。ライフィセット、ベルベット。罠の破壊、助かった。 |
ベルベット | 手袋を落とした上に罠にハマるなんて。あんたは相変わらずね。 |
アイゼン | 今更だな。どこにいても死神の呪いは健在ってだけだ。 |
ライフィセット | たとえ別世界でもね。そういう誇らしげなところアイゼンらしいや。 |
アイゼン | それにしても…ティル・ナ・ノーグか。はじめは異大陸に飛ばされたのかと考えたがまさかここは異世界であったとはな。 |
ベルベット | そうよ。けどエンコードとかいう具現化時の作用により性質が変わっていて穢れは増幅も聖隷を蝕むこともない。 |
ベルベット | つまり…あんたたち聖隷が人間や業魔といった穢れを放つ存在と一緒にいても何ら悪影響は発生しないわ。 |
アイゼン | ドラゴン化の心配もないということか。まぁ、海賊として生きると決めたときから特段気にしてはいないがな。 |
ライフィセット | あともう一つちょっと複雑なのが僕たちにとって遙か未来の存在も具現化されているってことだよ。 |
アイゼン | 同じ世界の未来の存在…。俺たちの時代から約千年後を生きる者か。 |
ライフィセット | そしてその一人が…エドナ。いまはケリュケイオンにいるはずだよ。 |
アイゼン | ……あいつが。それならお前たちとはここまでだ。 |
ライフィセット | 一緒に来ないってこと ? |
アイゼン | ああ。それからあいつには俺と出会ったことは言うな。 |
ライフィセット | …どうして ? 会いたがってたよ ? |
アイゼン | 何も変わりはしないからさ。それじゃあ俺はそろそろ―― |
エドナ | お…お兄ちゃん…… ? |
アイゼン | なっ……。 |
ベルベット | あんたたち、どうしてここに ? |
イクス | と、盗賊団の調査で……って、えっ。ちょっと、待ってくれ。エドナ様、いま…何て言った ? |
スレイ | …エドナのお兄さんってことはアイゼンさん…だよね ? |
ミクリオ | た、確かに髪の色や横顔がよく似ている。兄妹というのも頷けるな…。 |
エドナ | う、うるさいわね…。ミボのくせに。 |
ミリーナ | 本当に…本当にエドナ様のお兄さんなの ! ?エドナ様、よかったじゃない ! |
ベルベット | アイゼン。こういう時は兄貴らしくあんたから話しかけてやったら ? |
アイゼン | ……うるせぇ。 |
エドナ | …………。 |
アイゼン | おう…元気だったか ? |
エドナ | …見てのとおりよ。 |
アイゼン | そうか……。 |
エドナ | …………。 |
アイゼン | じゃあな。 |
エドナ | …ええ。 |
ライフィセット | えっ、アイゼン ! ? それだけなの ! ? |
アイゼン | …………。 |
エドナ | ふっ…何から何まで……本当に変わってないわね……まったく。 |
イクス | ど、どういうことだ ! ?アイゼンさん、行っちゃったぞ ! ? |
ミリーナ | エドナ様、せっかくお兄さんと会えたのにこれでいいの ! ? |
エドナ | もう…なんでそんなに動揺してるのよ。 |
ミリーナ | だって…兄妹なんでしょ…… ?それにずっとエドナ様…会いたそうにしてたから……。 |
スレイ | エドナ。このままでいいの ? |
エドナ | ええ。いいのよ。あれがお兄ちゃんの生き方なの。 |
エドナ | それに…ワタシと一緒にいたらお兄ちゃんを苦しめてしまうから……。 |
ベルベット | あんた自身ではなくアイゼンが ? |
エドナ | …同じことよ。 |
スレイ | それって…どういう……。あっ…いや、ごめん。これじゃあ質問攻めだね。 |
エドナ | いまは…少しだけ…落ち着きたいわ。 |
イクス | わかった。近くの街に向かおう。 |
キャラクター | 3話【邂逅3 死神の呪い】 |
スレイ | 土砂崩れで街道が塞がれた ? |
イクス | ああ。いま復旧作業中らしいんだけどもうしばらく時間がかかるみたいだ。 |
ライフィセット | ケリュケイオンに戻ることもできないし今日はこの街の宿に泊まるしかないね。 |
ミクリオ | それにしても……。このあたりは降水量や土質から考えても土砂崩れは発生しづらい場所のはずだが…。 |
コーキス | マジかー… |
カーリャ | ツイてないですねぇ。 |
ベルベット | …そうね。 |
ライフィセット | これって…もしかして。 |
アイゼン | …お前たち。 |
エドナ | お兄ちゃん……。 |
ライフィセット | よかった。アイゼン、無事だったんだね。 |
アイゼン | 土砂崩れに飲み込まれそうになったがこれしき無人島に漂流したときに比べればたいしたことはない。 |
アイゼン | だが…お前をさっそく巻き込んでしまったな…。怪我はないか? |
エドナ | ワタシはなんともないわよ。 |
イクス | あの…巻き込んでしまったっていうのは…いや、それよりもいまはひとまず宿に向かおう。 |
スレイ | だな。アイゼンさんも土砂崩れで足止めくらってるんですよね ? よければオレたちと一緒の宿にしませんか ? |
ミクリオ | この街の宿はそう多くないからな。エドナもいいだろ ? |
エドナ | …そうね。仕方ないわ。せっかくだから―― |
アイゼン | 断る。宿が取れんなら野宿するだけだ。死神の呪いがある限り…一緒にいることはできない。 |
エドナ | ……そう、だったわね。 |
アイゼン | この土砂崩れだって偶然ではない。死神の呪いによる災いだからな…。 |
スレイ | ……死神の呪い ? |
アイゼン | 聖隷はそれぞれ特殊な力… 加護を持っていることは知っているな ? |
アイゼン | 死神の呪いは俺の持つひねくれた加護。近くにいる奴なら俺自身も含め誰彼構わず災いをもたらす。 |
ミクリオ | …災いを。そんな加護が…あるのか…。 |
アイゼン | こいつと一緒に暮らしていたときもあった。だが死神の呪いのせいで妹を危険な目に遭わせてしまった。 |
アイゼン | 業魔に襲われたり、ドラゴンに捕らわれそうになったりな。お前も忘れてはいないだろ ? |
エドナ | ……ええ。 |
アイゼン | …この世界でも死神の呪いは消えていない。昔と同じだ。俺がいてはエドナを傷つけてしまう。 |
スレイ | 死神の呪いをなんとかする方法はないんですか ? |
アイゼン | ない。ドラゴンを浄化することが絶対に不可能なように死神の呪いを消し去ることはできない。 |
アイゼン | それに死神の呪いを含めてこれが俺だからな。 |
ミクリオ | けど…それじゃあエドナは…過去も未来も…この世界でも……お兄さんと一緒にいられないっていうのか ! ? |
スレイ | ……そんな。 |
アイゼン | 街道が復旧するまで俺もこの街にいる。だが別行動だ。 |
エドナ | ……ええ。 |
アイゼン | これがお前にとっても安全なんだ。わかってくれるな ? |
エドナ | わかってるわよ。 |
アイゼン | …いい子だ。じゃあな。 |
エドナ | …………。 |
ライフィセット | 僕たちはアイゼンについて行くよ。まだ話しておきたいこともあるから。 |
ベルベット | エドナ。何か伝えて欲しいことがあれば聞くわよ ? |
エドナ | ……何もないわ。 |
ベルベット | 下の子っていうのは上の子に何かと話したがるものでしょ。兄妹でも姉弟でも。 |
ベルベット | 本当は話したいことあったんじゃないの? |
エドナ | …けど、下の子の冒険譚を聞いて心配したりするのも上の子でしょ。 |
エドナ | だから…余計なことは言わない。そっちの方がいいこともある。それだけよ。 |
キャラクター | 4話【邂逅4 変わらないモノ】 |
ライフィセット | アイゼン、街道が復旧したらどうするつもりなの ? |
アイゼン | 隣町の港に向かう。手に入れた情報によるとバンエルティア号が停泊予定らしい。 |
ライフィセット | ベンウィックたちも具現化されてるの ! ? |
ベルベット | けど鏡映点ではないかもしれないわよ。もしそうなら元の世界の記憶はない。あんたのことも覚えていない。 |
アイゼン | それでもアイフリード海賊団の副長として俺はあいつらを追いかける。 |
アイゼン | 陸でも空でもなく海が…バンエルティア号が今の俺の居場所だからな。 |
ライフィセット | もし、エドナが一緒に行きたいって言ったら ? |
アイゼン | 置いていくに決まってる。海はただでさえ危険に満ちているんだ。 |
ベルベット | …死神の道連れにするわけにはいかないってわけね。 |
ライフィセット | アイゼンがエドナを守るためにも離れようとしてるのはわかるよ。 |
ライフィセット | けど、実際に会うことになってろくに話もせず別れるのは…。 |
アイゼン | 俺が何を言っても言い訳になるだけだ。そして面と向かって話すのは手紙より…感情が伝わり過ぎる。 |
アイゼン | 俺だってあいつの望みはわかってる。本来なら叶えてやりたいとも思ってる。 |
アイゼン | だが、死神の呪いがある限り現実は変わらない。…叶わぬ期待を持たせたくないんだ。 |
ライフィセット | だから…あんなにハッキリと一緒にいられないって言ったんだね…。 |
ライフィセット | ごめん…。僕、あんな言い方しなくてもいいのにって…思ってた……。 |
アイゼン | いや。いいんだ。 |
ベルベット | けどせっかく会うことができたのも事実よ。離れていても、言葉を交わさなくても妹のためにできることもあるんじゃない ? |
アイゼン | …何がいいたい ? |
ベルベット | \"エドナ様におやつを献上する会\"とかいう意味不明な会があるのよ。で、あたしが次のお菓子作りの当番になったわけ。 |
ベルベット | けど、あたしは面倒だからパスするわ。だから悪いけどあんたに押しつけさせてもらう。 |
アイゼン | ……俺に。 |
ライフィセット | 昔はよくパルミエを作ってあげてたんでしょ ? |
アイゼン | ああ…。 |
ライフィセット | それならまた作ってあげようよ。きっとエドナも喜ぶよ。 |
ベルベット | アイゼン。あたしの弟は死んだ。けどあんたの妹は生きてる。 |
ベルベット | これが最後のチャンスなのかもしれない。それだけは言っておくわ。いちおう、同じ上の子としてね。 |
アイゼン | …そうだな。昔のように一緒に食べることはできないがそれでも……。 |
ライフィセット | 決まったみたいだね。 |
ベルベット | パルミエのレシピ、忘れてないでしょうね ? |
アイゼン | 当然だ。砂糖は控えめ…香り付けとして紅茶葉をパイ生地にいれたものが…特にあいつのお気に入りだった……。 |
アイゼン | どれだけ時が経とうと忘れることはない。あいつの大好物だったからな。 |
キャラクター | 5話【邂逅5 盗賊とノル様人形】 |
アイゼン | …小麦粉は品切れ ?砂糖と紅茶葉も入荷待ちだと ? |
ライフィセット | この街の商店街も品薄みたいだね。どうしよう…食材がないとパルミエも作れないよ……。 |
ベルベット | 幸い市販のパイ生地は売ってるみたいだしこれを使えばいいでしょ。 |
アイゼン | ダメだ。俺のパルミエは厳選された小麦を丹念に製粉したきめ細かい小麦粉を用い一からパイ生地を作らなければ完成しない。 |
ベルベット | あんたねぇ…。ありもので何とかするのも料理でしょうが。 |
ライフィセット | そう言ってるあいだに市販のパイ生地も買われちゃったよ ! |
アイゼン | …うむ。まったく食材が揃わん。 |
ベルベット | 他に店は……って、あそこにいるのエドナじゃない ? |
アイゼン | あいつが…。どこだ ? |
アリーシャ | ――と、説明は以上だ。それでは引き続きよろしく頼む。 |
スレイ | ああ。わかったよ。報告ありがとう。 |
エドナ | はぁ……メンドーね。 |
ベルベット | 何してるのかしら。 |
ライフィセット | おーい ! エドナ ! |
エドナ | ……あっ。 |
エドナ | …………。 |
ライフィセット | …あれ ? 気づかなかったのかな。 |
アイゼン | いいや。気づいたが…ってところだろうな。あいつなりの気遣いなんだろう。 |
ベルベット | あんたの妹らしいわ。 |
アイゼン | まぁな。 |
スレイ | あっ ! ベルベット !それにライフィセットにアイゼンさんも ! |
エドナ | ……はぁ。 |
ベルベット | けど、あの導師にはかなわないわね。 |
アイゼン | ふんっ。 |
スレイ | 三人揃ってどうしたの…って、商店街にいるってことは買い物だよね。 |
ベルベット | そんなところよ。あんたたちは何してるの ?見たところ買い物ではないみたいだけど。 |
スレイ | オレたちは商店街の見回り。盗賊の襲撃に備えてね。 |
ミクリオ | 街道がだいぶ復旧したらしいんだ。物資支援もかねた行商人が先行してそろそろ街にやって来る。 |
ミクリオ | だが、それを狙って盗賊が襲いかかってくることも考えられるからね。 |
ミクリオ | 警備も人手不足のようだったから僕たちも協力することにしたというわけさ。 |
スレイ | そういうこと。 |
アイゼン | 盗賊の襲撃か……。 |
イクス | 街の中は大丈夫だと思うんですが念のために……。 |
ミリーナ | アリーシャたち王宮騎士団が街の外を巡回してくれているものね。 |
ベルベット | 待ちなさい。その盗賊団って各大陸でも行商人たちを襲ってる相当の手練れよね……アイゼンどう思う ? |
アイゼン | 悪人が身分を偽るのは常套手段だ。すでに盗賊はこの街に紛れ込んでいる可能性が高い。 |
スレイ | 確かに…それは一理ある。ありがとう。オレはそこまで考えてなかったから。 |
ベルベット | こっちはあんたたちとある意味、生きる世界が違うのよ。すぐ警備を街の中に回しなさい。 |
アイゼン | それから…お前はさがっていろ。 |
エドナ | ……危険だから ? |
アイゼン | …それだけじゃない。嫌な予感がする……。 |
行商人 | た、助けてくれー ! ! |
アイゼン | チッ…さっそくか。 |
イクス | 声の先は…街の商人と行商人が取引する予定だった場所だ ! |
アイゼン | 商人に扮していたか。よくある手だな。だが、みすみす食材をくれてやる気はない。いくぞっ。 |
キャラクター | 6話【邂逅5 盗賊とノル様人形】 |
イクス | よしっ。無事、盗賊は捕まえられたな。 |
ライフィセット | アイゼン。食材は ? |
アイゼン | 小麦粉は手に入った。だが、紅茶葉はすべて盗まれてしまったようだ。 |
エドナ | ……紅茶葉 ? |
??? | うーん。いないのぉー。どこにいったのじゃー。 |
ミリーナ | ね、ねぇ。イクス。あの積み荷を漁っている人…誰かしら。 |
イクス | あ、怪しいな……。もしかして…盗賊か……。 |
マギルゥ | 失礼な ! 儂は魔女じゃ ! ! |
ベルベット | マギルゥ ! ? あんたここで何してるの ! ? |
マギルゥ | 久しいな。ベルベットや。 |
イクス | えっと…ベルベットさんの仲間ですか ? |
マギルゥ | ふふっ…聞かれたからには答えよう。自分でいうのも楽しいが地獄の沙汰もノリ次第 ! |
ベルベット | マギルゥよ。仲間じゃなくて賭けの相手でストーカーの魔女。 |
マギルゥ | って、おーい ! 邪魔するでないわい !せっかくの鏡映点バージョンの口上がベルベットの薄情で台無しじゃ ! |
ライフィセット | 鏡映点って…。マギルゥ、具現化のこと知ってるの ? |
マギルゥ | もちろん。色々と\"看取って\"いたからの。鏡士イクスとミリーナじゃったか?故に、長ったらしい説明は抜きでいいぞ。 |
イクス | あ、はい。わかりました。マギルゥさん、よろしくお願いします。 |
マギルゥ | なんじゃ、偉大なる魔女を前にして緊張でもしているのか ?もっと気さくに儂のことは―― |
ベルベット | マギルゥでいいわよ。あと普通に話してくれていいから。 |
マギルゥ | って、またお主か !どれだけ儂に名乗らせたくないんじゃ ! |
マギルゥ | ま、どーでもいいがの。 |
ライフィセット | マギンプイ、だね。 |
イクス | マギンプイ ? おまじないか ? |
マギルゥ | どうでもいいことがどうでもよくなる呪文じゃ。 |
マギルゥ | お近づきの印として二人にも使用を特別に許可しよう。どうじゃ ? 嬉しいか ? |
ミリーナ | マギンプイ♪ |
マギルゥ | そうそう。そのように使用を……って、どうでもいいとはなんじゃ ! |
ミリーナ | ふふ、冗談よ。マギルゥ、素敵な呪文をありがとう。 |
マギルゥ | うわー。純粋に感謝されてしもうた。これは新手のボケつぶしか ?それでは観客のウケは掴めぬぞ ! |
エドナ | ふっ……すべり芸としては見事ね。 |
スレイ | ミクリオ。あの本の金具の細工、すごくないか ! ? |
ミクリオ | ああ。僕も気になっていた。あれでどこにでも本を持ち運べる。画期的な手段だ。 |
マギルゥ | それは儂の欲しいウケじゃなーい ! |
アイゼン | いつまで漫才やってる気だ。お前、ここで何をしている。 |
ライフィセット | そういえばビエンフーの姿が見えないけど…。 |
マギルゥ | さすが坊は察しがいいのう。儂はビエンフーを探しておるのじゃよ。 |
ミリーナ | ビエンフーさん ? |
ライフィセット | マギルゥと契約しているノルミン族の聖隷だよ。 |
イクス | ノルミン族っていうのは何なんだ ? |
ライフィセット | えっと…簡単に説明すると僕やアイゼンとは違ってマスコットみたいな見た目の聖隷のこと。 |
マギルゥ | そんな見た目じゃからのぉ。あやつ、人形と間違われて出荷されてしまったんじゃよ。 |
ライフィセット | 出荷 ! ? そうだったの ! ? |
マギルゥ | 袋詰めにされ身動きが取れなくなっているやもしれんからこうして儂が探し回っているわけじゃが…。 |
マギルゥ | もう疲れたわ ! この積み荷を見よ !こんなに大量のノル様人形の中からビエンフーを探さなくてはならぬのじゃ ! |
ミリーナ | エドナ様の傘についてるのにそっくりなマスコットがこんなに…。確かにこの中から探すのは骨が折れそうね。 |
アイゼン | 待て。何故こんな大量にノル様人形がある ?積み荷にある数だけで現存推定人形数を優に超えているぞ。 |
イクス | ノル様人形 ?本来はこれって貴重なものなんですか ? |
アイゼン | 大昔に四聖主の神殿で配られていた人形だ。今となってはその希少さもあり非常に有り難い人形だと言われている。 |
マギルゥ | そしてノル様人形には赤、黒、緑、青の4種類があり、すべて集めると幸せになれると伝えられておるのぉ。 |
ミリーナ | 幸運の人形みたいなものかしら。 |
アイゼン | そんなところだ。俺もエドナに贈ろうと集めたことがあったが探すのに非常に苦労した。 |
イクス | けど…いま目の前には大量にある。 |
マギルゥ | 盗賊が奪っていったものなどを含めるとこの積み荷にあるノル様人形などほんの一部じゃ。 |
マギルゥ | 何故、こんな大量にあるのかは儂にはさぱらんじゃがな。 |
イクス | もしかしたら具現化の影響か…。ベルベットさんたちを鏡映点とする大陸は俺たちが具現化した大陸じゃなかったし。 |
ミリーナ | 異世界のアニマをトレースする際具現化工程に想定外の作用が発生しノル様人形が何度も複製されたのかも…。 |
ライフィセット | そういえば、ビエンフーがいないってことはマギルゥ、力が使えなくなってる ? |
マギルゥ | タコにもそのとおりじゃ。いまの儂は戦うことはできぬ。後ろで応援しておるからの。 |
ベルベット | ったく。使えないわね。 |
マギルゥ | 聖隷術が使えるようになるためにも…鏡士の二人よ。ビエンフー探し、手伝ってくれるな ? |
ミリーナ | つまりノル様人形を集めればいいのよね。ええ。もちろんよ。 |
イクス | 大変そうだけど、盗賊団も絡んでるみたいだしな。 |
アリーシャ | みんな。話し中のところすまない。 |
ミリーナ | アリーシャ。そんな慌ててどうしたの ? |
アリーシャ | まだ残っていた盗賊と騎士団が交戦中なんだ。手を貸してくれないか ? |
スレイ | わかった。すぐ行くよ。 |
キャラクター | 7話【邂逅6 我が名はフェニックス】 |
アリーシャ | みんな。助かったよ。これで周囲にいた盗賊はあらかた捕らえることができた。 |
ミリーナ | よかった。これでこの街はもう安全よね。 |
アイゼン | ……よし。 |
ライフィセット | アイゼン。食材は全部揃った ? |
アイゼン | ああ。充分だ。 |
ベルベット | あんたの方も一段落ね。 |
エドナ | …………。 |
マギルゥ | おーい。儂の方は一段落しとらんぞ。ビエンフーはまだ見つかっておらん。 |
イクス | 盗賊から取り返した馬車はもう探した ?ノル様人形がたくさん積まれていたみたいだったけど。 |
マギルゥ | 元の持ち主の商人からそんな気に入ったなら全部くれてやると押しつけられるぐらい探したが見つからんかったわ。 |
マギルゥ | ノル様人形など儂は興味ないというのに。どうじゃ、嬢よ。1つぐらい受け取ってはくれぬか ? |
エドナ | …いらない。ワタシはもう、もらったのがある。 |
マギルゥ | そういうでない。これだけたくさんのノル様人形じゃ。とてつもない幸運が訪れるやもしれんぞ ? |
エドナ | ……どういう意味 ? |
マギルゥ | というわけでー。はい、これも。そしてこっちも。嬢よ、遠慮せずに受け取るがよい。 |
エドナ | ちょ、ちょっと。こんなに持てないわよ。 |
アイゼン | おい。いいかげんに――くっ ! ! |
イクス | な、なんだこの光……。 |
ミリーナ | エドナ様の傘につけてるマスコットが光っているわ…… ! |
? ? ? | 盟約の――そして再会の時は来たれり ! |
スレイ | マスコットがノルミンに ! ?お前は…… ! ? |
? ? ? | ふっ、冥土の土産に覚えておくがいい。我が名は―― |
アイゼン | 久しぶりだ、フェニックス。エドナのこと守ってくれていたようだな。やはり…お前に頼んでよかった。 |
エドナ | けど、マスコットのふりするの下手すぎ。とっくの昔に正体気づいたもの。 |
ミクリオ | エドナ ! 知っていたのか ! ? |
アリーシャ | わ、私はなんてことを…。先日気づかずゴシゴシ洗濯してしまった…。フェニックス様、どうかお許しを。 |
フェニックス | …………。 |
フェニックス | 我が名はフェニックス !ノルミン天族最強の漢なり ! |
エドナ | で、何か用 ?いきなり動き出したりして。 |
フェニックス | 圧倒的なまでの幸運の力を前にし我の加護――不死鳥の加護が共鳴したのだ。いま我はかつてない程の力を手に入れた。 |
アイゼン | 不死鳥の加護が共鳴だと ?ここにあるノル様人形に反応したってわけか ? |
マギルゥ | 不死鳥の加護が力を増した…。。穢れ、業魔、ドラゴンをも退ける幸運の力が増したとあらば―― |
フェニックス | いまの我が不死鳥の加護は死神の呪いをも凌駕する。 |
アイゼン | な……なんだと……。 |
エドナ | …………お兄ちゃん。 |
アイゼン | そ、そんな都合のいい話、信じられんが…もし…仮に…それが本当ならば俺とエドナは……また……。 |
フェニックス | …凌駕する。と、言い切りたいのだがまだ僅かに力が足りん !兄妹よ……すまぬっ ! ! |
エドナ | ……ダメじゃん。 |
アイゼン | フェニックス。それはつまり…さらにノル様人形があれば……。 |
フェニックス | 汝から死神の呪いを消し去ることはできぬ。だが、汝の妹を我が加護で死神の呪いから守ることができるやもしれん。 |
イクス | それって…エドナ様とアイゼンさんが一緒にいられるってことか ! ? |
ミリーナ | アイゼンさん、エドナ様。それならどうするか答えは一つよね ! ? |
エドナ | …………。 |
アイゼン | …だが今この瞬間、死神の呪いからこいつを守れているわけではない。 |
エドナ | そう…よね……。 |
ライフィセット | けど、街道が完全に復旧するまではもうしばらく時間がかかるよ。それまで何もしないよりいいと思う。 |
ベルベット | それから、あんたはまだあたしが押しつけたことを果たしていない。途中で投げ出すなんて許さないわ。 |
アイゼン | ……そうだったな。それは俺の意思で引き受けたことでもある。 |
マギルゥ | ノル様人形はあたりに落ちているか…捕らえ損ねた盗賊が持っているはずじゃ。売ればそこそこの金になるようじゃしな。 |
イクス | それなら誰かに拾われる前に急いで集めないとだな。 |
フェニックス | いざ行かん ! !ノル様人形回収の旅路へ ! ! |
ベルベット | ……あんたが仕切るのね。 |
アイゼン | …………。 |
エドナ | ……お兄ちゃん。まず手に持ってる食材…置いてきたら ? |
アイゼン | あ、あぁ……。そうだな。 |
エドナ | あと……それから…。 |
エドナ | ……パルミエなら。別に…ワタシはいいから……。 |
アイゼン | ……食材だけでわかるんだな。驚かせようと思ったんだが…。 |
アイゼン | もう…嫌いになったか ? |
エドナ | そうじゃない……。ワタシはただ…パルミエを作る時間があるなら……お兄ちゃんに…………。 |
アイゼン | ……何だ ? |
エドナ | …ううん。何でもない。 |
フェニックス | 何をしている !いま足を止めている場合ではないぞ ! ! |
エドナ | ……はいはい。小言がうるさいノルね。 |
アイゼン | …ノル様人形。何もしないうちに諦めるな…か。だが…今回ばかりは……。 |
キャラクター | 8話【邂逅7 すれ違う想い】 |
エドナ | ……っ。 |
アイゼン | お、おい。大丈夫か ?さっき魔物にやられた傷が開いたんじゃ…。 |
エドナ | …何ともないわよ。ライフィセットに治療してもらったから。 |
ライフィセット | けど…あまり無理しないでね ? |
エドナ | 全然平気よ。それより |
アイゼン | …いや。一度戻るぞ。 |
エドナ | 待って。ワタシは大丈夫よ。 |
アイゼン | ………戻るぞ。 |
エドナ | わかった……。 |
イクス | よし。全員戻ってきたな。みんな、ノル様人形…かなり集まったぞ。 |
スレイ | このあたりのノル様人形はほぼ集めきったもんな。 |
ミクリオ | 塵も積もればなんとやらだ。数日、街周辺を走り回った甲斐があった。 |
イクス | これだけ集めたんだ。フェニックスの不死鳥の加護も―― |
フェニックス | 足りぬ。まだ…ノル様人形が足りぬ ! |
ライフィセット | な、なんで ! ?こんなにたくさんあるじゃないか ! |
マギルゥ | なるほどのぉ。ビエンフーはまったりゆったり探すとしてもノル様人形集めは急を要するようじゃな。 |
ベルベット | どういう意味 ? |
ミリーナ | ノル様人形の幸福の力を受けて不死鳥の加護はブーストしたはずよね ? |
マギルゥ | 簡単なことじゃて。フェニックス。お主、加護の力が弱まってきておるな ? |
フェニックス | ……すまぬ。 |
アイゼン | やはり一時的なものだったか。 |
エドナ | …………。 |
フェニックス | だがまだ可能性はある。 |
フェニックス | 我が加護で汝の妹を覆い尽くすこと。それが一瞬でも実現できたならしばらくは死神の呪いを退けられる。 |
マギルゥ | つまりそれは不死鳥の加護に再ブーストをかけるということか。 |
マギルゥ | じゃが、それには死神の呪いを圧倒する必要がある。つまり、目の前に数倍の数のノル様人形が必要ということじゃ。 |
マギルゥ | まぁ、それだけやっても一時しか死神の呪いから嬢を守ることはできんようじゃがのう。 |
フェニックス | それを承知の上で汝らに頼みがある。我はこれ以上、我が友の妹が悲しい顔をすることに耐えられぬのだ。 |
フェニックス | 頼む。二人が別れずに済むようノル様人形を集めて欲しい。このとおりだっ。 |
ミリーナ | それは…私たちも諦めたくないけど……。 |
スレイ | もう…ノル様人形は集められるだけ集めた。これ以上…どこを探せばいいのかすらわからないんだ……。 |
ミクリオ | 時々刻々と加護のブーストも弱まっている。少しづつ集めている暇もないとなると…。 |
マギルゥ | どこかにたんまりとノル様人形を貯め込んでおる者はおらんかのう。まぁ、そんな奴おらんじゃろうなぁ。 |
エドナ | …………。 |
アイゼン | …ここまでだな。 |
ライフィセット | アイゼン。行っちゃうの ? |
アイゼン | さきほど街道の復旧も完了したと聞いた。もう俺がここに留まる理由はない。 |
ベルベット | あたしが押しつけたことはどうなったのよ。 |
アイゼン | ……わかっている。 |
エドナ | ……なに ? |
アイゼン | パルミエだ……。 |
エドナ | 別に…いいって言ったのに……。しかも……なんで今なのよ……。 |
エドナ | もう行っちゃうんでしょ…。紅茶をいれる時間すらないじゃない…。 |
アイゼン | お前が好きなときに紅茶をいれて…お前が好きなときに食べればいい。 |
ベルベット | あんたねぇ。普段あれだけ男心が何だとか語ってるけど、女心の方はからっきしわかっていないみたいね。 |
ミリーナ | アイゼンさんが引き受けたことってエドナ様におやつを献上する会の当番のことですよね ? |
ベルベット | この会ができた理由…。あたしはちゃんと伝えたわよね ?これじゃあ本末転倒なんじゃないの ? |
アイゼン | …………。 |
エドナ | 二人とも。もういいから…。 |
アイゼン | おまえは……何かあるか ? |
エドナ | …………ないっ。 |
アイゼン | わかった……。 |
エドナ | …………。 |
アイゼン | ……元気でな。 |
マギルゥ | あやつ…本当に行きおったわ。振り返ることなく……。 |
エドナ | ……ただ元の形に戻っただけよ。 |
ベルベット | …エドナ。あんたは妹でしょ。もっと…ワガママ言ったりしてもいいはずよ…。 |
エドナ | それは…子どものすることよ…。 |
ミリーナ | ……エドナ様。 |
エドナ | ちょっとだけ…散歩してくる……。 |
スレイ | エドナ…。 |
ベルベット | やめなさい。一人になる時間が必要な時もあるのよ。 |
スレイ | …それがいまのオレにできること ? |
ベルベット | ええ…。 |
キャラクター | 9話【邂逅8 忍び寄る影】 |
一同 | …………。 |
マギルゥ | なんじゃ。静まりかえって。葬式やってるわけでもあるまいに。 |
ベルベット | なにつまらないこと言ってるのよ。 |
マギルゥ | ならば我が弟子ベルベットよ。お主がこの場を笑いに変えてみせよ。いま再びあのポッポーを…… |
マギルゥ | いたっ ! ! |
ベルベット | う・る・さ・い。 |
アリーシャ | みんな。ここにいたのか。えっと…エドナ様とライフィセット様は ? |
スレイ | エドナはまだ戻ってきてないんだ。さっき、さすがに帰りが遅いからってライフィセットが迎えに行ったよ。 |
アリーシャ | そ、そうか……。 |
ミリーナ | …アリーシャ ? どうかしたの ? |
アリーシャ | 単刀直入に伝える。ここにいる全員、盗賊団に襲われる危険性がでてきた。まだ裏で盗賊たちは動いている。 |
スレイ | な、なんだって ! ? |
マギルゥ | ほう。まだ組織を根絶やしにはできておらんかったか。 |
アリーシャ | 盗賊団は捕らえた者たちを取り返そうと計画しているようだ。人質を用意することで。 |
ミリーナ | 盗賊逮捕に一役買った私たちを狙ってきてもおかしくないわね。恨みもあるだろうし―― |
ベルベット | すぐ二人を探すわよ。フィーが一緒にいるはずだから大丈夫だと思うけど急ぎましょう。 |
イクス | あ、ああ。わかった。 |
ライフィセット | エドナ、ここにいたんだね。 |
エドナ | ……まあね。 |
ライフィセット | アイゼンのパルミエ…食べないの ? |
エドナ | お兄ちゃんはわかってないのよ。ワタシがどうしてこれが好きなのか。 |
ライフィセット | 昔みたいにアイゼンと一緒にパルミエを食べたかったんだよね ? |
エドナ | いつも、小麦粉のうんちくや焼き加減のこだわりを楽しそうに語っていたわ…。 |
エドナ | あの顔がないと…ワタシの本当に好きなパルミエにはならないのにね……。 |
ライフィセット | アイゼンのこと…追いかけなくていいの ? |
エドナ | ボーヤらしいおせっかいね。お兄ちゃんと旅してきたんでしょ。だったらわかるわよね ? |
ライフィセット | うん…ごめん。わかってる。けど、大切な人の手を掴んで放さない。そういう生き方もできると思ったから。 |
エドナ | 言ったでしょ。元々の形に戻っただけよ。 |
ライフィセット | エドナは我慢しすぎだよ…。本当は…話したいこと、いっぱいあったんじゃないの ? |
ライフィセット | 手紙じゃ伝わらない、言葉として言いたいことがあったんじゃないの ? |
エドナ | ……そんな事まで知ってるのね。 |
ライフィセット | 大切な想いほど口にするには覚悟がいる。 |
ライフィセット | 一度、自分が口にした言葉は絶対に取り消せないから。 |
ライフィセット | だけど、伝えなくちゃいけないことがエドナにはある。 |
エドナ | ……覚悟ねぇ。 |
ライフィセット | 伝えようよ ! エドナの言葉で ! |
エドナ | おしゃべりはここまでよ。 |
ライフィセット | えっ ! ? |
エドナ | そこにいるのは…聞くまでもないわね。盗賊が何のようかしら。 |
盗賊団 | ……来てもらうぞ。 |
ライフィセット | エドナ…援護して。僕は前に出て戦う。 |
エドナ | …やめておきなさい。この数…さすがに勝ち目はないわよ。 |
ライフィセット | けど、ここで僕たちが捕まったらベルベットたちに迷惑がかかる。そんなの、僕は絶対イヤだ。 |
ライフィセット | どんな状況でだって、後悔がないように自分の意思でどうするかを選ばなきゃ。そう…アイゼンに教わったんだ ! |
ライフィセット | だから……僕は ! |
エドナ | ボーヤはさがってなさい。 |
ライフィセット | な、なに ! ? |
エドナ | メンドーだけどたまにはね。ここはワタシに任せてもらうわ。 |
エドナ | 本当にメンドーだけどこれでも…アイゼンの妹だから。 |
キャラクター | 10話【邂逅9 監獄島を目指して】 |
アイゼン | くそっ、エドナとライフィセットが盗賊団にさらわれただと ?どうしてこうなる。 |
マギルゥ | お主もわかっておろうに。死神の呪いの置き土産じゃよ。 |
アイゼン | …うるせぇ。 |
ベルベット | 色々言いたいことや思うところはあるでしょうけどすべて後よ。 |
アイゼン | お前が二人を直接追わずに俺のところまで来たってことは何かあるんだろ ? 早く話せ。 |
ベルベット | 二人を助けるためにあんたが必要なのよ。 |
アイゼン | どういう意味だ。 |
イクス | まず簡単に状況を話すと二人は無事です。ライフィセットからケリュケイオンに連絡が届きました。 |
ミリーナ | けど今は連絡が取れない。ノイズから判断するに悪天候による影響です。 |
ベルベット | 二人が連れ去られた場所、もうわかるでしょ ?笑っちゃうぐらい縁があるわよね。 |
アイゼン | …監獄島か。 |
ベルベット | 悪天候でケリュケイオンではたどり着けない。残された道は海路のみってこと。 |
イクス | いちおう俺も船は操縦できます。だけど…いま必要なのは元漁師のひよっこ船乗りじゃない。 |
イクス | 荒れ狂う海で舵を取り航海ができる一流の航海士…いいや、海賊の助けが必要なんです。 |
アイゼン | 俺しかいないと。 |
マギルゥ | よかったのう。アイゼン。また妹と会うことができるぞ。 |
アイゼン | ふっ…。そうだな。 |
マギルゥ | おっ。珍しくウケたか ? |
アイゼン | いい皮肉だ。俺とエドナが再び会う…それはつまり再び別れるということだ。 |
アイゼン | そう簡単に別れさせてもくれない。さすがは死神の呪いだな。 |
アイゼン | 妹の笑顔を何があっても守ると誓った俺がまたあいつに悲しい顔をさせることになるのだから。 |
ベルベット | バカね。だから何よ。 |
アイゼン | …なんだと ? |
ベルベット | 今度こそ最後まで妹の笑顔を守り切ればいい。それだけでしょ ? |
アイゼン | 簡単に言ってくれる。 |
ベルベット | 一度笑顔にすればこっちのものよ。ここだけの話、下の子ってそうなのあんたもわかるでしょ ? |
アイゼン | だが些細なことで急に不機嫌になったりもする。 |
ベルベット | よく見ていないとなのよね。 |
アイゼン | そうだな…。だがその舵取りはなかなかに難しい。 |
ベルベット | けど、あんたならできるわよ。なんせ究極の兄バカなんだから。 |
アイゼン | ふっ…それは否定せん。 |
スレイ | アイゼンさん。エドナとライフィセットを助けるため一緒に来てくれますか ? |
アイゼン | 愚問だ。ベルベット、船は ? |
ベルベット | それこそ愚問ね。あたしを誰だと思ってるの ?いつでも出航できるわよ。 |
アイゼン | 海賊め。 |
ベルベット | あたしは災禍よ。 |
アイゼン | いいか、お前たち。これから盗賊団のアジトに乗り込む。 |
アイゼン | 竜巻、渦潮、死神の呪い。死ぬかもしれんが退屈させない。俺の舵取りをみせてやろう。 |
ミリーナ | ふふっ。振り落とされないように命がけでついていきますね。 |
イクス | 俺も…今は先のことを心配するのはやめてアイゼンさんに食らいついていきます。 |
アイゼン | 目的地は監獄島。出港だ。 |
キャラクター | 11話【邂逅11 出会いと別れ】 |
アイゼン | くそっ。エドナとライフィセットはどこだ。アジトだけあって雑魚どもがウジャウジャ湧いてきやがる。 |
ベルベット | 邪魔するなら蹴散らすだけよ。恐らく二人はこの先にいる。 |
イクス | わかりました…って、――うわっ !な、なんだ ? いきなり矢が壁から…。 |
アイゼン | 気をつけろ。罠が仕掛けられてる。床のスイッチに連動した壁の仕込み矢…。あまりに芸のないつまらん罠だがな。 |
スレイ | ――アイゼンさん ! 後ろから魔物が ! ! |
魔物 | …ウゥ~…ガルルルル ! ! |
アイゼン | くっ…魔物まで出てきやがるのか。次から次へと―― ! |
イクス | な、何が起こったんだ ! ?魔物が一瞬で倒れたぞ ! ? |
アイゼン | 今のは…地の聖隷術……。……まさか。 |
エドナ | 久しぶりの兄孝行よ。どうだったかしら ? |
アイゼン | ……エ、エドナ。お前…無事だったのか ? |
エドナ | いまのワタシはこれしき何ともないわよ。 |
ライフィセット | 僕たちは大丈夫。 |
エドナ | むしろチョロ甘過ぎるくらい。 |
アイゼン | ……計算だったというわけか。 |
イクス | えっと…どういうこと ? |
エドナ | 盗賊団のアジトの内情を暴くためせっかくだからあえて捕まったフリをした。それだけのことよ。 |
エドナ | 予想通り、ノル様人形も大量にあったわ。お兄ちゃんたちの声が聞こえたから後にしてこっちに来たけど。 |
ミクリオ | 盗賊たちを欺くとはなかなかやるじゃないか。 |
エドナ | 所詮はボーヤの集まりよ。すぐ女の言ってることを信じてただのバカね。 |
スレイ | ははっ。なんだかエドナらしいや。 |
アイゼン | らしい、か……。お前にはそう見えるんだな…。 |
スレイ | …アイゼンさん ? どうかしました ? |
アイゼン | いいや…。何でもない。 |
ミリーナ | とにかくエドナ様とライフィセットが無事で本当によかったわ ! |
マギルゥ | じゃが再会を喜んでいる暇はなさそうじゃぞ。いよいよ最後の演目じゃ。 |
盗賊団頭領 | く、くそ ! たった数人でここまで… !こいつら…何なんだよ ! ? |
エドナ | 演技でさらわれるフリをしてあげたけどワタシに手を出したことは事実よ。ホント、あなたたちツイてないわね。 |
アイゼン | 妹に手を出したら殺す。 |
ベルベット | あたしたち…手加減とかできないから。 |
盗賊団頭領 | こ、こうなったら仕方ねぇ ! !かかってきやがれ ! ! |
ライフィセット | おとなしく騎士団に捕まった方が身のためなのに。 |
マギルゥ | これもまた死神の呪いかの。 |
イクス | みんな ! 来るぞ ! ! |
アイゼン | 上等だ。 |
キャラクター | 12話【邂逅12 不死鳥の加護】 |
イクス | よし。ここにいた盗賊は全員、騎士団に身柄を引き渡したな。 |
ミリーナ | 盗賊団の問題についてはこれでもう大丈夫そうね。 |
アリーシャ | ああ。だが……。 |
スレイ | エドナ。フェニックスの不死鳥の加護、再ブーストかけることは……。 |
エドナ | …ダメだったわ。ここの略奪品の保管庫、アジトだけあってかなりの数のノル様人形があったのだけれど……。 |
スレイ | それでもか……。フェニックスは何て ? |
エドナ | あともう少しノル様人形があればとか何とか言っていたわ。支離滅裂で本当かどうか怪しかったけど。 |
ミクリオ | 支離滅裂 ? |
アイゼン | 己が未熟さを悔いていま保管庫でむせび泣いている。 |
マギルゥ | うっすら聞こえる薄気味悪いむせび声はフェニックスのものじゃったか。鬱陶しい奴じゃのぉ。 |
ライフィセット | それだけ熱い漢なんだよ。 |
エドナ | けど、やれることはやったわ。 |
アイゼン | ……。 |
エドナ | …行くのね ? |
アイゼン | いいや…。今度はお前が行く番だ。 |
アイゼン | イクス。帰りはお前に任せる。いまは少し海も穏やかだ。お前なら十分に舵を取れるだろう。 |
イクス | …わ、わかりました。でも、アイゼンさん。独りでここに残るつもりなんですか ? |
アイゼン | 船が沈没するよりマシだろう。自分のことは自分で何とかする。俺のことは気にするな。 |
イクス | そうは言っても…。 |
エドナ | お兄ちゃん…ワタシ、実はね。もう待つのはやめたの。 |
アイゼン | …良い出会いは人を変える。俺もそうだった。 |
ベルベット | いまのエドナには共に歩みたい人がいるのよね。 |
エドナ | ワタシはもう寂しくない…。やるべきこともちゃんとある。だから……。 |
エドナ | さよなら。お兄ちゃん。 |
アイゼン | ……エドナ。 |
エドナ | お兄ちゃんも笑ってよ。 |
アイゼン | ああ。ありがとう…。 |
アイゼン | エドナ。さよならだ。 |
フェニックス | 待つのだ。我が友よ。そして我が友の妹よ。 |
アイゼン | どうした。フェニックス。 |
フェニックス | 何故だ…。何故別れを選ぶ ! ?あともう少しで汝らは共に歩む未来を掴めるやもしれんのだぞ ! ? |
フェニックス | それなのに何故諦めてしまうのだ ! ? |
エドナ | 諦めたわけじゃないわ。ワタシは納得して自分の意思で別れを選んだのよ。 |
アイゼン | そういうわけだ。そこをどいてもらおうか。 |
フェニックス | 通すわけにはいかない。 |
フェニックス | 今ここでは笑っていることもできよう。だが別れた後も微笑みを絶やさずにいられるのか ! ? |
フェニックス | 寂しさに胸を痛めることも悲しみに涙を流すこともなく笑っていられるというのか ! ? |
エドナ | …そうね。きっとあなたの言うとおりよ。それは難しいでしょうね。 |
エドナ | けどワタシたちはそれでも今ここで別れることを選んだのよ。 |
エドナ | そこに後悔なんてまったくない。別れは悲しいことかもしれないけれどたとえそれでも―― |
エドナ | ワタシはワタシの舵を取る。 |
フェニックス | ならば我が試練を乗り越えてみせよ ! |
アイゼン | 流儀と流儀がぶつかれば戦いは避けられん。ならば俺たちは受けて立とう。 |
ベルベット | こいつどかしてさっさと帰るわよ。 |
ライフィセット | どんな試練か知らないけど望むところだよ ! |
スレイ | エドナが選んだ道ならそれはオレも応援したい。 |
ミクリオ | 手伝わないわけにはいかないね。 |
アリーシャ | そうですね。 |
ミリーナ | ここにいるみんなが。 |
イクス | 同じ気持ちだ。 |
マギルゥ | ほう。これはなかなか。 |
フェニックス | よかろう !汝らの力、見せてもらおう ! ! |
キャラクター | 13話【邂逅12 不死鳥の加護】 |
エドナ | まだやる気 ? |
フェニックス | いや。汝らは我が試練に打ち勝った。我は認めるほかあるまい。 |
フェニックス | その不死鳥の如き不屈の意志。いまの汝であればどのような悲しみをも乗り越えられるであろう。 |
エドナ | ふんっ。わかればいいのよ。 |
アイゼン | …エドナ。いつの間にかお前は本当に―― |
アイゼン | ――成長したな。 |
フェニックス | おおおぉぉ ! ! これは ! ! ! ! |
ライフィセット | フェニックスが光ってる !加護がブーストしたときと同じだ ! |
ベルベット | けどこの光……フェニックスだけのものじゃないわよ。 |
アイゼン | 俺のカーラーン金貨も……。 |
イクス | な、なにが…起こったんだ ? |
エドナ | さあね。それよりさっさとここから―― |
アイゼン | エドナ ! 待て !その床には罠が―― |
エドナ | ……………えっ ? |
イクス | そ、それって俺がくらいそうになった壁から矢が飛んでくる罠と同じものだよな ? |
エドナ | ああ。これね。けど何度、床のスイッチを踏んでも何も起きないわよ ? |
アイゼン | どういうことだ。今までなら死神の呪いでエドナは傷を負っていたはず。 |
アイゼン | ……裏か。死神の呪いが消えたわけではないようだ。 |
フェニックス | 我にも理由はわからぬ。だがいま、死神の呪いは汝の妹にのみ力を向けていない。 |
アリーシャ | エドナ様にだけ、ですか ? |
スレイ | いったいどうして…。 |
ライフィセット | 死神の呪いすら退けるほどエドナ自身が強くなったとか ? |
エドナ | ワタシにそんな加護も特別な力もないわよ。 |
マギルゥ | 元の世界と合わせれば嬢はぶっちぎりで死神の呪いの被害に遭ってきておるからのぉ。 |
マギルゥ | じゃがそれでも全く折れぬほど心身共に健やかに成長した。 |
マギルゥ | 死神の呪いの方が根負けして一時撤退することにしたのかもしれんな。 |
マギルゥ | まぁ。どーでもいいがの。 |
アイゼン | 適当なこと言うんじゃねぇ。 |
イクス | けど…死神の呪いがエドナ様から退いたってことは……。 |
ミリーナ | エドナ様とアイゼンさんが一緒にいられるってことよね ! ? |
アイゼン | だが死神の呪い自体が消えていない以上、恐らくこれも一時的なものだ。 |
エドナ | だとしてもパルミエを食べる時間ぐらいはあるわよね。 |
アイゼン | ……エドナ ? |
エドナ | 断ってもいい。けどこれがいまの素直な気持ち。 |
ベルベット | 航海と同じよ。目的地に向かう途中、物資の補給のために立ち寄る港だってあるでしょ。 |
マギルゥ | それにバンエルティア号はもういずこかへ出航してしまったはずじゃからのぉ。 |
アイゼン | …俺は別に構わない。だが、いつかは必ず俺たちは別れることになる。 |
アイゼン | お前は耐えられるか ? |
エドナ | 約束する。また必ず笑顔でお兄ちゃんを送り出してみせるわ。 |
アイゼン | そうか。ならば俺も約束しよう。必ずお前を笑顔で送り出すと。 |
ミクリオ | 良かったね、エドナ。 |
エドナ | 何のこと ? |
スレイ | お兄さんのこと。 |
エドナ | ……そうね。 |