キャラクター | 1話【贈り物1 鏡殻変動後の世界】 |
| 鏡界の拠点 広間 |
ジェイド | ミリーナ、ちょっといいですか ? |
ティア | 大佐、丁度いいところに。現時点で把握しているアスガルド帝国と救世軍の情報をまとめていたんです。 |
ティア | 一緒に確認して貰えませんか。 |
ジェイド | それはこちらとしても好都合です。実は私の知り合いが、鏡殻変動後の世界について情報を集めてくれているんですよ。 |
ジェイド | そろそろその人物とミリーナを引き合わせた方がいいと思いましてね。少しおつきあい願えますか ? |
ミリーナ | ジェイドさんいつの間にそんな手配を……。 |
ジェイド | 鏡殻変動の後、あなたは完全に心を閉ざしてイクスを救う方法だけを追い求めていましたからね。 |
ジェイド | こちらでもできる限りの手を打っておこうとしただけです。 |
ミリーナ | すみません……。ご迷惑をおかけして……。 |
ジェイド | その気持ちがあるなら、今後は自分の中の焦りや不安に囚われ過ぎないように心がけて下さい。 |
コーキス | そんな言い方するなよ。ミリーナ様には時間が必要だったんだ。 |
ミリーナ | コーキス、いいのよ。ジェイドさんの言っていることは正しいわ。 |
ミリーナ | ――それで、情報を集めている方っていうのはどこにいらっしゃるんですか ? |
ジェイド | 街のパティスリーで働いています。以前、焼きたてのフィナンシェが美味しいとかで、皆さんが買い出しに行った店です。 |
ミリーナ | ああ ! パティスリー・ロンドですね。あそこのフィナンシェは本当に美味しかったなぁ……。 |
ミリーナ | そういえばそろそろバレンタインですよね。もしお店へ行くのなら、チョコレートを買ってみんなに配るのもいいですね。 |
ティア | バレンタイン…… ? それは何 ?チョコレートのお祭りか何か ? |
ミリーナ | あ、ティアたちの世界にはバレンタインデーがないのね。 |
ミリーナ | バレンタインっていうのは古い鏡士の名前なの。 |
ミリーナ | 昔、鏡士の自由恋愛が禁止されていた時期があって、その頃に愛し合った二人を守って戦ったのがバレンタイン様なのよ。 |
ミリーナ | バレンタイン様の功績を称えて作られた記念日がバレンタインデー。簡単に言うと、恋人たちの記念日なの。 |
ミリーナ | 恋人同士はもちろん、好きな人や大切な人に感謝と愛を伝える日なのよ。 |
コーキス | 愛の証にチョコレートを贈り合うのが一般的らしいぜ。 |
コーキス | 本当はチョコでなくてもいいらしいんだけどお菓子業界が仕組んだとか何とかってマスターは言ってたな。 |
ジェイド | ふむ……。中々面倒そうな記念日ですね。 |
ティア | 大切な人に感謝……。 |
ミリーナ | うふふ。もしかして、ティアはルークさんにチョコをあげたいの ? |
ティア | えぇっ ! ? |
ミリーナ | せっかくだからティアもお店へ行きましょうよ。一緒にチョコを選んであげるわ。 |
ミリーナ | それとも手作りする ? |
ティア | え ? ちょ、ちょっと待って。別にルークにあげるなんて一言も言ってな―― |
ルーク | ……え ? 俺に何かくれるのか ? |
ティア | えぇぇっ ! ? ち、違うわよ ! ?別にルークには関係ない話だからっ !……っていうか、なんで今出てくるの ! ? |
ルーク | なんだよ。ジェイドに呼ばれたから来たんじゃねーか。人を邪魔者みたいに言うなよな。 |
ティア | 誰も邪魔だなんて言ってないわ。ただ間が悪いっていうか……。 |
ルーク | 結局邪魔なんじゃねーか ! |
ガイ | おい、ルーク。突っかかるなよ。 |
ミュウ | 喧嘩は駄目ですの ! |
ルーク | 喧嘩じゃねーし別に突っかかってねーよっ !ティアがなんか隠してるのが悪いんだろ。 |
ティア | べ、別に隠してなんか……ああっ、もう、バカっ ! |
ルーク | バカってなんだよ、おい、ティア ! |
ミリーナ | ま、待って、ルークさん。今のは私が悪いのよ。私がティアをからかうようなことを言ったから……。 |
ルーク | え ? 何を言ったんだ ? |
ミリーナ | あ……えっと、それは……秘密。 |
ルーク | はぁぁぁ ! ? 何だよミリーナまで !おい、ジェイド、何話してたんだ ? |
ジェイド | 秘密♪ |
コーキス | うわ…………。 |
ルーク | 相変わらず気持ち悪いなそういうとこ……。 |
ジェイド | ひどいですねぇ。愛嬌たっぷりに返事をして差し上げたのに。 |
ジェイド | まぁ、いいでしょう。今からミリーナと一緒に街へ向かいますのでルークたちも是非ご一緒に。 |
ガイ | へぇ、俺たちは護衛係って訳か。何をしに行くんだ ? |
ジェイド | 行けばわかりますよ。 |
キャラクター | 2話【贈り物2 パティスリー・ロンド】 |
ミリーナ | ――私は帝国から追われているから入り口で待ってるわね。 |
ルーク | あ……そうか。黒衣の鏡士って手配書が出てるんだっけ……。 |
コーキス | それなら俺も見たことがあります。すっげぇ下手くそな似顔絵が描かれた奴ですよね。 |
コーキス | ミリーナ様、あんなのミリーナ様だなんてわかりませんよ ! |
ミリーナ | でも……何か騒動が起きるとまずいから。 |
ジェイド | 一人で大丈夫ですか ? |
ガイ | だったら俺が一緒に残るよ。 |
コーキス | ミリーナ様は女だけど大丈夫なのか ? |
ガイ | コーキスにまでそんなことを言われるとはなぁ……。大丈夫だよ。これでも随分慣れたんだ。 |
ミリーナ | ふふ、ガイさん、女性恐怖症を克服しようとたまにエドナ様のお茶会に参加しているものね。 |
ガイ | おもちゃ兼給仕役みたいなもんだけどな。 |
ルーク | えっ ! ? マジかよ ! ? |
ガイ | ジェイドも参加してるだろ。 |
ジェイド | ……私は勝手に参加させられているんです。 |
ルーク | なんだよ、それ。ガイが参加してるなら俺も参加したい。 |
ジェイド | やめておきなさい。頭が痛くなりますよ。さて……そろそろ行きましょうか。 |
ミリーナ | コーキス。みんなのこと頼むわね。 |
コーキス | はいっ ! |
??? | いらっしゃいませ~♪ |
アニス | ――って、大佐 ! ?それにルークと火を噴く生物 ! ! |
ミュウ | アニスさんですの ! |
ルーク | えええええっ ! ? アニス ! ? マジかよ ! ?お前も具現化されてたのか ! ? |
アニス | きゃわーん♪そんな風に熱烈歓迎してくれるなんて、ルークってば離れてる間にアニスちゃんの魅力に気づいちゃった~ ? |
ルーク | それはない。 |
アニス | はぅあ ! ?大佐ー、ルークがいじめるよー ! ! |
ジェイド | いいじゃないですか。いつもあなたがいじめてるんですからたまにはいじめられても。 |
アニス | 一番のいじめっ子が何言ってるんですか ! |
コーキス | カーリャ先輩みたいな人だな……。ジェイド様、この人が情報提供者ですか ? |
ジェイド | ええ。アニス・タトリン。私やルークと同じ世界の人間です。 |
アニス | アニスちゃんでーす♪よろしく~ ! |
ジェイド | 鏡殻変動の少し前、ファントムが具現化を行った際、どうやらこの星全体にレイヤード処理を行っていたようなんです。 |
ジェイド | その時にアニスもはぐれ鏡映点として具現化されたのでしょう。 |
アニス | 聞いてよルーク ! |
アニス | 大佐ってば、せっかく私と再会したのにルークたちと合流しないで、しばらく世界の情勢を探ってくれって放り出したんだよ ! |
コーキス | この人もはぐれ鏡映点……。くそ、小さい姿の時は、光魔も鏡映点も鳥肌が立ってすぐにわかったのに……。 |
ジェイド | やはり、今は何も感じないのですね。 |
コーキス | やはり…… ? 何か心当たりがあるのか ? |
ジェイド | はい。マークもそんな感じだったようなので鏡精は姿が大人になると存在そのものが変質するのかも知れないと思いまして。 |
アニス | はぅあ ! ? 大佐がもったいぶった隠し事をしないなんて ! ? |
ジェイド | いやですねぇ誰がいつ隠し事をしたんですか ? |
アニス | 露骨に忘れるなんて、老化現象だ…… ! |
ジェイド | ええ、そうなんです。このところすっかり老いてしまって。 |
ジェイド | それであなたと連絡を取り合うのも体に負担が掛かるのでミリーナに引き合わせることにしたんです。 |
アニス | やっと……やっとみんなと合流できる…… !――でもその前に、ちょっとこの先のカカオ農園に行かなくちゃなんですよね。 |
アニス | あ、そうだ !せっかくだから手伝って下さいよー ! |
アニス | 鏡殻変動の後から強い魔物がバンバン増えて街道歩くのもマジヤバなんです。 |
ルーク | アニスが言うなら相当危険なんだな。ジェイド、コーキス一緒に行ってやろうぜ。 |
アニス | ふぇぇぇん ! ルークやーさしー ! ! |
ルーク | ゴマすっても何も出ないぞ。 |
アニス | 知ってるよー。この世界じゃルークも貧乏人だもんね。あーあ、どこかにお金持ち(の財布)いないかなー。 |
コーキス | ……カーリャ先輩よりやべー奴がきたな。 |
ジェイド | はっはっはっ !ヤバさと五月蠅さは保証しますよ。 |
キャラクター | 3話【贈り物3 それぞれの想い】 |
ミリーナ | あなたが情報提供者 ! ?小さくて可愛いのにしっかりしてるのね ! |
アニス | いや~それほどでも~ !それにしても手配書と全然顔が違うね。美人でメロンじゃん。 |
ミリーナ | え ? メロン…… ? |
ガイ | はは……いや、何でもないよ。それよりアニス、よく一人で頑張ってたな。 |
アニス | でしょでしょ ?人使いの荒い眼鏡に放り出されてホント困ったよ~ ! |
アニス | 丁度この街のパティスリーがアルバイトを募集してたから、住み込みで働かせてもらうことにしたんだ。 |
ルーク | そういやアニスめちゃくちゃ料理上手いもんな。 |
ガイ | パティシエールとして頑張ってたって訳か。 |
アニス | んー、まぁ、パティシエール兼販売員 ?みたいな ? |
アニス | お客さんから色々社会情勢を聞き出して大佐に報告してたんだよねー。 |
コーキス | すげぇ、見た目より有能だな ! |
ミリーナ | 大変な役目だったのね。ありがとう。 |
アニス | ふおっ ! そんな風にお礼を言われるとちょっと照れちゃうな~。 |
ミリーナ | カカオ農園に行くのもお店のお仕事なのよね ? |
アニス | うん、そう。最近魔物とか盗賊とか色々物騒で、農園からの荷物が遅れてるんだよね。 |
アニス | だから様子を見てこないと。バレンタインデーはかき入れ時だって店長も言ってたし。 |
アニス | チョコレートばんばん作らなきゃなのに材料が足りなくて困ってるんだよ。 |
ミリーナ | ……ごめんなさい。 |
アニス | へ ? なんでミリーナが謝るの ? |
ジェイド | 鏡殻変動に責任を感じているんですよ。 |
アニス | そんなの――あー……でもそうか……。 |
ルーク | な、なんだよ、俺の事じっと見て。 |
アニス | ルークも、ミリーナの気持ちわかるでしょ。 |
ルーク | ……うん。でもミリーナは別に本当に悪気があったわけじゃ……。 |
ガイ | ……お前だって悪気があった訳じゃないだろ。 |
ルーク | ………………。 |
コーキス | ルーク様、何かあったのか ? |
アニス | 人間色々あるんだよ。ルークも……私も。 |
アニス | 自分が取り返しのつかないことをして初めてそうなっちゃった人の追い詰められた気持ちがわかったし……。 |
アニス | それに……。 |
アニス | (――イオン様……) |
アニス | ――えっと、なんというか、謝りたければ謝ればいいけど、あんまり色々背負い込むこともないんじゃない ? |
ミリーナ | ……ええ、ありがとう。アニスは大人なのね。 |
アニス | ……いろいろあったからなぁ。 |
アニス | まぁ、ちょっと変な雰囲気になっちゃったけど、責任感じてるって言うならカカオ農園まで付き合ってよ。 |
アニス | よろしくなのです ! |
ルーク | アニス……。今の、もしかして……俺にも……。 |
アニス | あーうー……。ルークはもう……色々頑張ってたじゃん。それで何の因果か異世界にきてさ……。 |
アニス | そりゃ、元の世界では大本の私たちが今でも頑張ってるんだと思うけど……。 |
アニス | こっちに来ちゃったものはもうしょうがないじゃん。 |
アニス | ここは……だからご褒美みたいな感じでさ色々吹っ切っていいと思うんだよね。 |
アニス | だって……そうしようと思っても吹っ切れないものってあるじゃん。 |
ルーク | アニスも……そうしろよ ?イオンのこと……。 |
アニス | ルークが吹っ切ったら私もそうできるかな。わかんないけど。 |
コーキス | ルーク様もアニス様も何か大変なことがあった……のか ? |
ジェイド | ……ええ。二人も私たちもとても愚かで不器用だったので、色々な事がありました。 |
ジェイド | だからあなたやミリーナ、イクスには穏やかな道を歩いて欲しいと思いますよ。今が穏やかではないのは承知の上で。 |
ガイ | そうだな。まぁ、でも今は目の前の問題に対応しようぜ。 |
ミリーナ | 目の前の問題……ですか ? |
ガイ | パティスリー・ロンドが経営の危機、なんだろ。 |
アニス | そうだよ !とりあえずカカオ農園にしゅっぱーつ ! |
キャラクター | 4話【贈り物4 黄金のカカオ】 |
マーク | はぁ ! ?ありったけのカカオ豆を奪われた ! ? |
農園主 | はい……。ついさっきアスガルド帝国の軍人さんが接収すると仰って……。 |
コーキス | ま、マジかよ ! ? なんで軍隊がカカオ豆なんか欲しがるんだ ! |
マーク | ――え ? お前ら……なんでここに……。 |
アニス | あ ! マーク様ぁ~♪ |
マーク | アニス ! ? なんでアニスがミリーナたちと一緒にいるんだ。 |
ルーク | アニスは俺たちの仲間だぞ。 |
マーク | 何…… ? |
アニス | あ、ちょっとルークってば !せっかく手懐けてたのにそれ言っちゃまずいっしょ ! |
マーク | ……やっぱりはぐれ鏡映点だったのか。おかしいと思ったぜ。 |
ガイ | どういう関係なんだ ? |
アニス | えっと、ウチのパティスリーのお客さん。 |
ミリーナ | そういえば、前に焼きたてのフィナンシェが食べたいって騒いでいたものね……。 |
ミリーナ | あ、だったら近くにフィルがいるのね ?フィルに会わせて ! |
マーク | ……それは、ちょっと。フィルもあんたに会うのは色々心苦しいだろうしな。 |
マーク | それよりアニス、カカオ豆を受け取りにきたのか ? |
アニス | えーとぉ、そうなんですぅ~。 |
マーク | 今更取り繕っても無駄だぞ。 |
アニス | ちっ。 |
ミュウ | カカオないですの ? |
農園主 | はい……。通常のカカオはもちろん黄金のカカオまで―― |
アニス | 黄金のカカオって何ですか ! ? |
マーク | この農場で取れる、とびきり上質なカカオ豆のことだ。そいつで作ったチョコはそれはもう特別な味がするらしいぜ。 |
マーク | そのチョコを貰えた自分が特別な存在だと思えるようになるとか……。 |
コーキス | 特別な存在だと思えるか……。すげぇな。 |
アニス | そんなの初耳ですよ ! 本当ですか ! ? |
農園主 | は、はい……。そのように言われているらしいです。 |
アニス | きゅぴーん ! アニスちゃんひらめいちゃったもんね。 |
アニス | 店長さんに頼まれたのは普通のカカオだけどその黄金のカカオも手に入れればパティスリー・ロンドの客足が戻るかも ! |
ジェイド | おや、その口ぶりだとあの店の売れ行きは厳しいようですね。 |
アニス | あー……。 |
マーク | 鏡殻変動で、世界中が混乱してるからな。何とか日々の生活はできるようになったが。 |
マーク | バレンタインだの高級菓子だのにうつつを抜かすところまではみんなの気持ちが持ち直してないんだろう。 |
ミリーナ | ……そうよね。 |
ガイ | ミリーナ。そんな顔するなよ。君が落ち込んでいるとコーキスも俺たちも悲しくなる。 |
ガイ | 君は気づいていないかも知れないけれど君の笑顔はいつもみんなを和ませてくれていたんだぜ。 |
ガイ | つらいときに無理して取り繕えとは言わないけれど、たまには君の笑顔を見せてくれよな。 |
ミリーナ | ガイさん……。 |
マーク | ……あんたさもしかしてミリーナを口説いてるのか ? |
コーキス | そんなの駄目だぞ ! マスターに代わって俺がミリーナ様につく虫を排除する ! |
ガイ | ち、違う ! どうして慰めただけでそんなことを言われるんだ ! ? |
アニス | 相変わらずの天然タラシか……。 |
ルーク | あーあーさすがイケメンガイ先生だよなー。きっとバレンタインデーにはチョコがたくさん貰えるんだろーなー。 |
コーキス | ミリーナ様ガイ様にたぶらかされたら駄目ですよ ! |
ミリーナ | もう、コーキスったら……。私がイクス以外の人を好きになる訳ないじゃない。 |
マーク | (……ははっ。地味にダメージくらうな) |
アニス | 残念だったね、ガイ♪ |
ガイ | だから違うって言ってるだろ !ロイドだって似たようなこと言ってるじゃないか。 |
ガイ | どうして俺だけこんな風に言われるんだ。 |
ジェイド | 人徳の差じゃないですか ? |
ルーク | それにロイドはあんなことは言わない。もっとこう……魂が清らかだ。 |
ガイ | 俺の魂が清らかじゃないってのか ! |
ミリーナ | ちょっと、みんな。話がずれていってるわよ。カカオ、どうするの ? |
アニス | そうだった。黄金のカカオ……。これはいい商売になるよ。なんとしても帝国軍から奪い取らないと。 |
コーキス | 黄金のカカオか……。確かに興味はあるな。でも奪い取るってのは……。 |
アニス | 言葉のあやだよ。ちゃんと交渉して分けてもらうつもり。 |
アニス | ……まぁ、大人しく分けてくれなかったら奪い取るしかないけど。 |
マーク | いいねぇ。俺たち救世軍も帝国軍には色々思うところがあるんだ。 |
マーク | ウチの義勇兵も半数以上が帝国軍に吸収されちまったからな。 |
マーク | 幸い相手はまだこの近くにいるようだしお互いに手分けして帝国軍を捜そうぜ。 |
アニス | ……でも、なんでそこまでしてカカオが欲しいの ? |
マーク | 欲しいのはカカオじゃない。黄金のカカオだ。鏡精からご主人様へ感謝チョコの差し入れって所かな。 |
コーキス | ――やろうぜ、みんな。俺も黄金のカカオが欲しい。 |
ミリーナ | そうね……。とりあえずカカオ豆を接収したって言う帝国兵を捜してみましょうか。 |
ジェイド | ……やれやれ。とんだことになってきましたね。 |
ルーク | ――だな。おい、清らかじゃないガイ、行くぞ ! |
ガイ | あのなぁ……。人を穢れた魂の持ち主みたいに言わないでくれ ! |
キャラクター | 5話【贈り物5 帝国兵を捜して】 |
| 仮想鏡界のアジト |
ティア | ……はぁ。 |
シェリア | ティア……元気出して。ルークだってそんなに気にしていないと思うわ。 |
ティア | ……そうかしら。私……キツいって言われたことがあるし人の心を察するのが苦手なんだと思うわ。 |
ティア | それにあんなに慌てなくてももっとさらっとバレンタインのことを話せば良かったって……。 |
シェリア | さらっと……ね。何だかわかるかも。私もつい気負って言い過ぎちゃったりするし……。 |
ティア | ――決めたわ。私、やっぱりルークを追いかけて謝ってくる。時間が経てば経つほど謝りにくくなるし……。 |
シェリア | ティア……偉いわ ! |
ティア | ――でも、大佐たちも一緒なのよね……。 |
シェリア | ああ、ジェイドさんか……。あの人何だかちょっと怖いのよね。 |
ティア | 怖い……というか、全て見透かした上で人をからかったりするから……。 |
シェリア | 待って !ミリーナも一緒なんでしょう ? |
シェリア | ミリーナに協力してもらえばジェイドさんや周りの人を遠ざけてくれるんじゃないかしら。 |
シェリア | ミリーナは勘もいいしジェイドさんに対等に渡り合えると思う。 |
ティア | そ、そうね…… ! |
シェリア | 私も一緒に行くわ。気持ちわかるもの ! |
ティア | シェリア……あ、ありがとう……。 |
コーキス | 帝国軍……いませんね。マークの方はどうなのかな。 |
ミリーナ | 魔鏡通信が使えないのは本当に痛いわね。何かいい方法はないかしら……。 |
アニス | そういえば、ティアは ?具現化されてないの ? |
ルーク | ティアなら怒って仮想鏡界のアジトに残ってるよ。 |
アニス | えー ! ルークってばまたティアを怒らせてるの ! ? |
ルーク | またってなんだよ ! ティアが隠し事してるのがいけないんだろ。 |
アニス | ほへ ? 隠し事 ? |
ミリーナ | ねぇ、ルークさん。ティアを許してあげて。悪気があったんじゃないのよ。誰にでも一つや二つ秘密はあるでしょう ? |
ルーク | ……わかってるよ。けどさ……なんか……すげぇ嬉しそうにしてたから俺も話を聞きたかったなって……。 |
ミュウ | ご主人様、ティアさんと仲良くしたかったですの ? |
ルーク | はぁ ! ? 別にそんなんじゃねーよっ ! |
ジェイド | しっ、静かに。 |
ガイ | どうした ? |
ジェイド | ――いえ、気のせいかも知れませんが何か虫酸が走るほど嫌な声が聞こえたような気がして……。 |
コーキス | え ? それって、この近くにジェイド様の知り合いがいるってことか ? |
アニス | え……。それってもしかして……。 |
ガイ | まぁ、蛾とかゴキブリとかってのは何故か苦手な奴の方が早く発見するもんだしなぁ……。 |
ミリーナ | ふふ、そうね。それにイクスがここにいたらきっと―― |
イクス | げっ、またディストさんかよ ! |
ミリーナ | ……………………。 |
ルーク | と、とりあえず、もう少し近くに行って様子を見てみようぜ。 |
コーキス | そ、そうですよ、ミリーナ様。行きましょう。 |
ミリーナ | え……ああ、そうよね。ごめんなさい。 |
コーキス | ………………。 |
キャラクター | 6話【贈り物6 腐れ縁】 |
ディスト | はーっはっはっはっ !ようやく手に入れましたよ、黄金のカカオ ! |
アニス | うわ……。ホントに具現化されてたんだ……。 |
ルーク | ジェイドのディスト探知能力マジすげーな……。 |
ガイ | しかし、あいつ、カカオを奪ってどうするつもりなんだ ? |
ガイ | まさかチョコレートを手作りして配るなんて真似はしないだろう ?それともジェイドに渡すつもりなのか…… ? |
ジェイド | 殺しますよ ? |
コーキス | やべぇ……。ジェイド様、目が笑ってない……。 |
アニス | さすがにディストがチョコレートを手作りするとは思えないけど。 |
アニス | そもそも素人がカカオ豆からチョコを作っても美味しくならないし。 |
ミリーナ | いっそ、本人から聞いてみたらどうかしら。どうせカカオを分けてもらう交渉をしなければいけないんだし。 |
アニス | ふむふむ。確かにそうかも。 |
アニス | ディースト ! ディストじゃーん ! |
ディスト | ! ? アニス ! ? あなたもこの世界に具現化されていたのですか ! ? |
アニス | そうなんだよー。でも良かった。異世界にきて不安だったから、ディストに会いたいなーって思ってたんだよね。 |
ディスト | ………… ! |
アニス | ほら、やっぱりローレライ教団で一緒にお昼ご飯食べてた仲じゃん。 |
ディスト | そ、そうですね……。ですが、このディスト様の真の友は金の貴公子ジェイドのみ。 |
ディスト | あなたは友ではなくあくまで職場の―― |
アニス | はいはいわかってるわかってる。職場のお友達だよね ? |
ディスト | ! ! ! ! ! |
アニス | ところでディスト、アニスちゃんちょっとお願いがあるんだけどなぁ ? |
ディスト | な、なんですか ? トクナガの修理ですか ?それとも私と同じ職に就きたいのですか ? |
ディスト | あなたを四幻将に迎え入れるのは難しいかも知れませんが、何なら五幻将と名前を変えるよう提案しても―― |
アニス | あー、いやいや、そうでなく。黄金のカカオ豆をゆずって欲しいんだよね。 |
ディスト | それは……無理です。 |
アニス | えー、少しぐらいいいじゃん。そのカカオがないと困る人がいるんだよ。 |
アニス | 農園の人だってカカオを根こそぎ接収されて困ってたよ。 |
ディスト | 何を言っているのです。このカカオたちも薔薇のディスト様に使われる方が幸せでしょう。 |
アニス | 絶対駄目 ?せめて黄金のカカオだけでもくれない ? |
ディスト | 黄金のカカオこそ渡せません。普通のカカオはついでに頼まれただけで私の目当てはそちらですから。 |
ディスト | そんなにカカオが欲しいなら私と共にアスガルド帝国へ来てはどうですか ? |
ディスト | 五幻将として取り立てるよう口をきいてあげても―― |
アニス | ――あ ! ? あんな所に大佐が ! ? |
ディスト | 何を言っているんです。そんな古くさい手には乗りませんよ ! |
ジェイド | ディスト――お休みなさい。 |
コーキス | ジェイド様、ディストの後頭部を思いっきり殴ってたけど大丈夫なのか ? |
ジェイド | 殺すつもりで殴りましたが―― |
ディスト | ……ジェイド……痛いよ……待ってよ……。 |
アニス | あ、やっぱり生きてた。 |
ジェイド | この隙に、馬車ごと積み荷のカカオを頂きましょう。 |
ミリーナ | い、いいのかしら……。何だか強盗みたいになってるけれど……。 |
ルーク | いや、強盗みたい……じゃなくて強盗だよ、これ。 |
アニス | いいっていいって。さて、いったんカカオ農園まで戻ろっか ! |
コーキス | え ? え ? いいのか ? 本当に ? |
ガイ | ……コーキス、あきらめろ。元の世界でもこんなノリだったんだから。 |
キャラクター | 7話【贈り物7 合流】 |
アスベル | ――シェリア ! ティア ! 待ってくれ ! |
シェリア | アスベル ! ? どうしたの ? |
アスベル | リフィル先生が二人と一緒に行けって。 |
ティア | え…… ? アスベルも来るの…… ? |
アスベル | ああ。ジェイドさんたちの帰りが遅いから念のため様子を見て欲しいって。二人とも、それで街へ行くんじゃないのか ? |
シェリア | そんなような……感じかしら ? |
ティア | え、ええ。そんなような感じ……ね。 |
アスベル | 二人とも、何か変だな ? |
ティア | な、何でもないわ。――ええ、とにかくルークたちの所へ急ぎましょう。 |
シェリア | そ、そうね。 |
マーク | ――なんだ ? お前たちも、帝国軍捜しに狩り出されたのか ? |
ティア | マーク ! |
マーク | おっと ! いきなり武器を構えるなよ。アニスから何も聞いてないのか ? |
ティア | アニス…… ? え……どういうこと ?どうしてアニスの名前が出てくるの ? |
アスベル | ……なるほど。それでジェイドさんたちの帰りが遅くなっているのか。 |
ティア | まさかアニスまでこの世界に具現化されていたなんて……。 |
シェリア | でもマークって大人の姿だけれどカーリャやコーキスと同じなのね。 |
マーク | はぁ ? |
シェリア | だってフィリップさんにチョコレートをプレゼントするんでしょ ? やっぱり自分のマスターのことが好きなのね。 |
マーク | ……参ったね、どうも。そりゃ、鏡精はマスターの一部からできてるからな。まぁ……そういうこった。 |
ティア | ………………。 |
アスベル | シェリア、ティア。俺たちはどうする ?街に行ってもジェイドさんたちには会えないだろうし……。 |
ティア | ――待って。空をみて。南の方角。 |
アスベル | あれは……ディスト……じゃないか ?あいつ、確か椅子で空を飛んでいたよな。 |
シェリア | ねぇ、もしかして、黄金のカカオを接収した帝国軍って、ディストのことなんじゃない ? |
マーク | ……あいつなら黄金のカカオを狙うかもな。 |
シェリア | ああ……。あの人クリスマス会とかバレンタインデーとかイベントが好きそうだものね。 |
ティア | ……マーク。本当のことを教えて。 |
ティア | あなた、本気でチョコレートを手作りするために黄金のカカオを手に入れようとしている訳じゃないわよね。 |
マーク | カカオなんて、チョコレートかココア作るぐらいしか意味ないだろ ? |
ティア | カカオ回収なんて、どう考えても大佐が大人しく参加するとは思えないわ。 |
ティア | それにディストは自分の目的のため以外には動かない男よ。まぁ……チョコレートを作る可能性も否定はできないけれど……。 |
ティア | まして、あなたがチョコレートを手作りするタイプには思えない。 |
アスベル | ――確かに、ティアの言う通りだ。マーク、何を隠している。 |
マーク | やれやれ……。やっぱりあの眼鏡の旦那も黄金のカカオの秘密に気づいてたのか。 |
マーク | まぁ、そうだよな。アニスがかしましいんでごまかせたかと思ったが……。 |
シェリア | ええ ! ? マスターのことが好きだからチョコレートをあげるんじゃないの…… ?何だか騙された気分だわ。 |
ティア | 気分じゃないわ。騙したのよ。 |
マーク | 隠したと言ってくれ。仕方ない。全て話してやるから、一緒に来い。ディストを追いかけた方がいいだろう。 |
マーク | どう考えても奴は今回の件に無関係とは思えないからな。 |
ティア | ――どうする ? アスベル、シェリア。 |
アスベル | ついていくしかないだろう。マークが俺たちに武器を向ける可能性もゼロではないが……。 |
シェリア | でも、救世軍だって、帝国に追われている立場でしょう ? 私たちを狙う意味があるの ? |
マーク | シェリアは素直でいいねぇ。その通り。現時点ではあんたらと敵対する意味はない。 |
マーク | 個人的な動機はともかくとして救世軍全体の意思としてはな。 |
ティア | ……なら、ひとまず一緒にディストを追いかけましょう。 |
キャラクター | 8話【贈り物8 黄金カカオの秘密】 |
アニス | さて、あとはここでマークと落ち合うだけだね。 |
ジェイド | ……すみません。少々調べたいことがあるので黄金のカカオがなる木を見てきます。 |
コーキス | 一人で行くのか ? |
ジェイド | ええ。すぐ戻ります。 |
ルーク | あいつ、何か隠してるのかな。 |
ガイ | ルークもそう思ったか ? |
ミリーナ | 二人がそう思うのなら、間違いないわね。 |
ミュウ | ミュウウウ ? |
アニス | あー。やっぱり。大佐が素直にカカオ探しに協力するなんてなんか裏があると思った。 |
コーキス | え、マジか。素直に信じてたの俺とミュウだけかよ ! ? |
ミリーナ | ふふ、そういう素直なところイクスに似てるわね。 |
ミリーナ | 私も、最初は珍しいと思っていただけだったけれど、ディストさんが黄金のカカオに執着しているのをみて、気になってきたの。 |
ミリーナ | 黄金のカカオには、帝国軍が狙うだけの秘密があるんじゃないかって。 |
ミリーナ | もしそうなら、マークが必死になっていた理由もわかる気がする……。 |
アニス | でも黄金のカカオにどんな秘密があるのかな……。 |
ディスト | はーっはっはっはっ ! あなたたちは黄金のカカオのことを何も知らなかったのですか。哀れですねぇ ! |
アニス | ディスト ! ? もう気がついたの ! ? |
ルーク | 相変わらず無駄に丈夫だよな。 |
ガイ | 体を鍛えて剣とか斧で戦った方がいいんじゃないか ? |
アニス | それいいじゃん !鎌とか持ってたら、マジで死神だね♪ |
ディスト | だまらっしゃい ! 私の最高級の頭脳と美しい肌に傷が付いたらどうするんですか ! |
コーキス | いや、いいおっさんが美しい肌とか意味分かんねーし。 |
ディスト | きぃぃぃぃぃぃぃぃ ! ! そこの眼帯 ! !復讐日記につけておきますよ ! |
アニス | え、まだつけてたの、そんなの ! |
ディスト | あなたの名前も書いておきますからね !アニス ! |
ディスト | 大体、この私の純真な気持ちを弄んでカカオまで奪うとは。なんて悪辣な !カカオは返してもらいますからね ! |
コーキス | 待て ! |
ディスト | 待ちませんよ ! これでも食らいなさい ! |
ミリーナ | あれは、魔鏡結晶 ! ?まさか、光魔を呼ぶつもりじゃ―― |
ディスト | その通り ! |
コーキス | くそ ! 囲まれたかっ ! |
ディスト | ふっふっふっ !せいぜい光魔とじゃれ合っていなさい ! |
キャラクター | 9話【贈り物9 乙女の力】 |
ディスト | さて……。アホどもが光魔と戦っている隙に荷馬車を……。 |
ディスト | 荷馬車が……どこにもありません ! ? |
アスベル | カカオの積まれた馬車なら移動させた。 |
シェリア | 危険な黄金のカカオを帝国軍に渡すわけにはいかないわ。 |
ディスト | ……なるほど。あなたたちも黄金のカカオの秘密に気づいたのですね。 |
ティア | 黄金のカカオには興奮や覚醒を司る脳内物質を異常分泌させる効果がある。 |
ティア | この世界におけるアニマにも影響があると聞いたわ。 |
ディスト | その通り。私の次なる研究には黄金のカカオが不可欠なのです。そこをどくか、カカオを渡しなさい。 |
ミリーナ | ――そういうことだったのね。 |
アニス | ディストのどーでもいい研究のためにカカオは渡せないよ。カカオがないとウチの店長さんたちも困るんだから ! |
シェリア | 私たちもその話はマークから聞いたわ。 |
シェリア | お店にチョコレートが並ばなかったら恋人がいる人も片思いの人もバレンタインデーを楽しめないじゃない。 |
シェリア | あなたは恋する人たち全員の敵バレンタインの死神よ ! |
ルーク | す、凄い理屈が来たな……。 |
ミリーナ | シェリア…… ! そうよね、その通りだわ !可愛い女の子たちが想いを伝えようと頑張る日なのに、邪魔をするなんて許せない。 |
ティア | ……え ?何だか話がずれてきているような……。 |
アニス | 何でもいいよ。このバレンタインの死神をぶっ潰して、バレンタインを解放しよ~う ! |
シェリア | ええ ! 取り戻せ、バレンタイン ! |
ミリーナ | 恋する女の子に幸せを ! |
アニス | かかれーっ ! ! ! |
ティア | え ? えええっ ! ? |
キャラクター | 10話【贈り物9 乙女の力】 |
ミリーナ | ディストさん、綺麗な弧を描いて空の彼方に飛んでいったわね。 |
コーキス | いい飛びっぷりでしたね……。 |
アニス | いぇーい ! バレンタインばんざーい♪ |
ルーク | 意味わかんねーな……もう……。 |
シェリア | ――ティア、今がチャンスよ。ジェイドさんもいないし、マークも馬車を隠しにいってるからいないわ。 |
シェリア | アスベルはからかったりしないし、ガイさんもコーキスも安全ないい人だから大丈夫よ。 |
ティア | え、ええ……そ、そうね。 |
コーキス | よく分かんねぇけど、俺なら大丈夫だぜ ! |
ガイ | (いや、安全ないい人認定も男としてはどうなんだ……) |
ティア | ルークっ ! あ、あの……。 |
ルーク | ――ティア。な、なんだよ……。 |
ティア | さっきはごめんなさい。私たち……あの時バレンタインデーの話をしていたの。 |
ティア | それで……ルークにチョコレートをあげるかどうかって話になって……。 |
ティア | だから突然あなたが来て私、話を聞かれたかもって……。 |
ルーク | ――え……。あ……う、うん……。話はよく聞いてなかったけど……。 |
ティア | よかった……。私、心にもないことを言ってしまったから。 |
ティア | あの……あなたに隠し事をするとかそういうつもりじゃなかったの……。本当にごめんなさい。 |
ルーク | い、いいよ……。俺が大人げなかっただけだし……。 |
ルーク | 俺、ティアにハブられたのかなーって寂しくなってさ。俺の方こそごめん。 |
ティア | あ、謝らないで。あなたにそんな思いをさせるなんて私がいけなかったの。だから……。 |
ジェイド | ……なるほど。これを私に見られたくなかったんですか。 |
ティア | た、大佐 ! ? |
ジェイド | 私もティアにハブられたのかなーと寂しい気分です。 |
ルーク | お、お前 ! ?いつから話を聞いてたんだよ ! ? |
ジェイド | シェリアが今がチャンスだとか言い出した頃でしょうか。 |
シェリア | さ、最初から ! ? |
ミリーナ | ジェイドさん。そういうところですよ。反省して下さい。 |
ジェイド | これは失礼。さて、黄金のカカオの件ですが―― |
ガイ | さらっと話を変えてくるな。確か、興奮や覚醒を司る脳内物質が異常分泌するんだったか ? |
ジェイド | ええ。元々カカオにはそのような成分が含まれているのですが、黄金のカカオの場合その含有量が桁違いなようですね。 |
ジェイド | だから黄金のカカオを使ったチョコレートは特別な気分になるのでしょう。 |
ジェイド | 大量に摂取しなければ危険はありませんが今後のことを考えて黄金の実をつけるカカオの木は伐採しておきました。 |
アニス | えええええ ! ?農場の人の許可は得たんですか ? |
ジェイド | もちろんです。おそらく土壌も影響していると思うので、土壌の調査をすることもお勧めしておきました。 |
マーク | ……やってくれるぜ。カカオの木ごと買い付けるつもりだったのに。 |
ジェイド | おや、救世軍でも黄金のカカオを使った研究を行うつもりだったのですか ? |
マーク | ああ。フィルに頼まれてな。 |
ミリーナ | ――フィルはどんな研究をしているの ? |
マーク | ……いずれ時が来たらフィルの方からそっちに連絡してくるだろうよ。 |
マーク | それじゃあ、俺はここで失礼するぜ。必要なものは手に入れたからな。 |
アスベル | まさかカカオを全て回収したんじゃないだろうな。 |
マーク | 俺を信じて荷馬車を託してくれたんだ。そんな悪どい真似はしねぇよ。今回はな。 |
マーク | ――黄金のカカオを少し頂いた。残りは好きにしろや。 |
コーキス | 黄金のカカオがそんな危ないものだったなんて。 |
コーキス | せっかくカーリャ先輩と二人でミリーナ様に感謝のチョコレートをプレゼントしようと思ったのにな。 |
ミリーナ | その気持ちだけで十分よ。 |
ジェイド | ……念のためマークの話が本当かどうか調べましょう。黄金のカカオも確認しておきたい。 |
アスベル | 俺が馬車を隠したところへ案内するよ。 |
ガイ | それじゃあ、行くか。 |
キャラクター | 11話【贈り物10 バレンタイン】 |
アニス | ねぇ、ティア。仲直りの印にルークにチョコレートあげたら ? |
アニス | お店にカカオを届けたら一緒にチョコレート作ろうよ。 |
ティア | え ! ? |
ミリーナ | いいじゃない。私も手伝うわ。せっかくだからコーキスとカーリャの分も作りたいし。 |
ミリーナ | (安全っていわれて傷ついていたガイさんにも、ね) |
ミリーナ | (イクスにも……渡したいのにな……) |
ティア | ――だったらシェリアも一緒に作りましょうよ。あの……アスベルに。 |
シェリア | え ! ? アスベルに ? |
アスベル | ――え ? 呼んだか ? |
シェリア | い、いいえ ! 何でもないわ ! |
アニス | ――声が大きいよ、シェリア。 |
シェリア | ご、ごめんなさい。 |
ティア | ねぇ、シェリア。二人で反省したじゃない。つい気負い過ぎちゃうって。 |
ティア | 今回シェリアが話を聞いてくれたから、私もルークにちゃんと謝ろうって思えたのよ。今度は私がシェリアの背中を押すわ。 |
アニス | へぇ~。そういうことなのか~♪それは絶対作るべきだよ。 |
アニス | 可愛い女の子からチョコレートもらって嬉しくない奴なんかいないって。ね ? |
シェリア | ……そうね。私、やってみる。ソフィにも作ってあげたいし。 |
コーキス | ミリーナ様たち、何をひそひそしてるんだ ? |
ガイ | 決まってるだろ。 |
ジェイド | 決まってますね。 |
アスベル | え ? 何を話してるんだ ? |
ルーク | 俺もわかんねぇ……。 |
ガイ | いいんじゃないか。どうせ後でわかるから。それより、馬車はどこなんだ ? |
アスベル | この辺りだと思ったんだが……。ちょっと手分けして探そう。 |
アニス | 大佐 ! |
ジェイド | おや、アニス。秘密の話は終わったんですか ? |
アニス | ふふふ。大佐にはアニスちゃんがチョコレートあげますからね。 |
ジェイド | いえ、結構です。 |
アニス | ひどーい !これでもお礼のつもりなんですよ。大佐、わざと私に仕事を与えたんでしょ ? |
ジェイド | 何のことでしょう。 |
アニス | ……だって、この世界にはパパもママもいない……。ローレライ教団もない。 |
アニス | 私がしてきたことを忘れないように戒める風景が何もない。 |
ジェイド | ………………。 |
アニス | 私が考え込まないように、この世界で新しい生き方を探せるようにって時間をくれたんですよね。 |
ジェイド | ――答えは見つかりましたか ? |
アニス | ……正直わかりません。私はパパとママのために生きてきたから……。ずっと……。 |
アニス | それに自分のしてきたことは消えないのにここにはその痕跡が何もなくて……。楽になれるはずなのに逆に苦しい。 |
ジェイド | 人の心は複雑ですね。 |
アニス | でも、大丈夫。戻りたいけど戻れないなら……何とかしていくしかないですもんね。 |
アニス | まだ納得してはいないけど帰れるなら帰りたいけど……でも、アニスちゃんは大人なのです。 |
ルーク | おい、大変だ ! |
アスベル | 馬車の積み荷が魔物に荒らされていた !荷物の一部が魔物に持ち去られたみたいだ。 |
ミリーナ | え ! ? それじゃあチョコレートが作れなくなっちゃうわ。 |
コーキス | できる限り探して取り戻しましょう ! |
アニス | ――ここはここで退屈しそうにないなぁ。よし、お店のためにもカカオ回収頑張ろー ! |