キャラクター | 1話【アジト】 |
マルタ | ……ねぇねぇ、ミリーナ。いいでしょ ? |
ミリーナ | 困ったわね。可愛いマルタの頼みなら聞いてあげたいけれど、闘技場の街……って確かセールンド諸島にあったわよね。 |
ミリーナ | あの辺りは危険じゃないかしら……。 |
エミル | デミトリアス陛下がセールンド島を離れてから、あの辺りは寂れる一方で帝国軍も駐留してはいないみたい。 |
エミル | そういう意味では大丈夫だと思うんだけど……。 |
マルタ | ロゼから聞いたんだけどね、たちの悪い賞金稼ぎが居座っていて、闘技場がスラム化しちゃってるらしいんだ。 |
マルタ | そんなのほっとけないよ。 |
エミル | ……僕たちも似たようなことをしていたからどの口が言うかって感じなんだけど。 |
カーリャ | 闘技場の周辺の人たちからも色々巻き上げてましたもんね♪ |
エミル | うん、申し訳ないよ……。 |
マルタ | 私たち、罪滅ぼしに闘技場を盛り上げるって言っておきながら、色々あったからずっと顔を出せてないでしょ。 |
マルタ | だから……お願い ! |
ミリーナ | そうね……。確かに気になるわよね……。 |
コーキス | ミリーナ様。何なら、俺も二人についていきますよ。 |
ラタトスク | ……はぁ ? おい、鏡精。てめぇ、俺の力が信用できないとでも言うのか ! ? |
コーキス | その喧嘩っ早さが心配なんだよミリーナ様はっ ! |
ロゼ | あーあ、そんなことだろうと思ってた。ほら、これ見て。 |
ミリーナ | これは……セールンド諸島への穀物輸送スケジュール ? |
ロゼ | 最近、セールンド近辺の航路を押さえてる商人たちと知り合ってね。 |
ロゼ | セールンド諸島に帝国の影響を受けない貿易都市を造ろうって話してるんだ。 |
ロゼ | ほら、上から睨まれてると色々商売しにくい物ってのもあるからさ。 |
ロゼ | もちろんあたしたちが黒衣の鏡士と関係があるってことは秘密だけどね。 |
ミリーナ | ああ、なるほど。この貿易船が入港するタイミングで闘技場のある島に行けば目立たずにすむってことね。 |
ミリーナ | それに貿易港を作るなら、島のメイン観光である闘技場がスラム化していると治安の面でも収入の面でも心配よね。 |
ロゼ | さすがミリーナ。話が早い。 |
ミリーナ | そういうことなら闘技場を見てきてもらいましょうか。行くのはエミルとラタトスクとマルタと……。 |
ロゼ | あたしは港に用があるから闘技場の方はパス。 |
ミリーナ | じゃあ、コーキスに一緒に行ってもらおうかしら。 |
コーキス | は、はい ! わかりました ! |
ラタトスク | こんな奴いらねーよ ! |
ミリーナ | ラタトスク。あんまり我が儘言うとクラース精霊調査部に閉じ込めるわよ ? |
ラタトスク | ……………… ! |
マルタ | もう、大丈夫。私はきみのこと凄く頼りにしてるから。ね ? |
ラタトスク | ……フ、フン ! |
エミル | ……あ……えっと。もしかしてラタトスク何か酷いこと言った ?空気が尖ってるような……。 |
ミリーナ | ううん。酷いことを言ったのは私。 |
ミリーナ | ほら、セルシウスで精霊の仲間が三人目でしょう ? |
ミリーナ | クラースさんったらキール研究室に精霊調査専門の部署を立ち上げたりしてテンションが上がってるから……。 |
エミル | ああ……うん……。痛いこととか怖いことはされないけどちょっと面倒なんだよね……。 |
ロゼ | ねぇ、闘技場へ行くならそろそろ出た方がいいよ。 |
ミリーナ | そうね。それじゃあ、三人とも気をつけてね。もちろんロゼもね。 |
ロゼ | サンキュ ! |
マルタ | ちゃんと闘技場を盛り上げてくるからね ! |
エミル | えっと……頑張るよ。 |
コーキス | ミリーナ様 ! 行ってきます !カーリャ先輩、お土産買ってきてやるからな。 |
カーリャ | 美味しい物期待してますからね ! |
キャラクター | 2話【一回戦】 |
コーキス | ……え、ここ、本当に闘技場か ?廃墟じゃなくて ? |
マルタ | 誰もいないけど……一応、今回の武闘会のエントリーは始まってるんだよね ? |
エミル | あ、見て ! 向こうに受付って看板があるよ。……曲がって落ちかけてるけど。 |
コーキス | マジだ……。え、本当に大丈夫なのか ?こんな状態で武闘会とか開けるのかよ……。 |
マルタ | とりあえず受付だけ済ませちゃおうよ。そうすれば状況もわかるかもでしょ。 |
エミル | そ、そうだね……。 |
マルタ | あの……。今度の武闘会に出場したいんですけど……。 |
受付 | ひ……ひぃぃぃぃぃ !金髪の悪魔が戻ってきた ! ? |
コーキス | 金髪の悪魔って、エミル様のことか ? |
エミル | 多分……。ほら、僕たちこの周辺の人たちに色々迷惑をかけちゃってたから……。 |
コーキス | そういや、エミル様もマルタ様も有名だったんだよな。……ゴロツキチャンピオンとして。 |
マルタ | あ、あの時はごめんなさい ! また迷惑をかけに来たとかじゃないんです。 |
マルタ | 鏡殻変動の影響で、この街も大変なんじゃないかと思って、何か力になれたらって。 |
エミル | そ、そうなんです。僕たちで役に立てることがあれば何でもやらせて下さい ! |
? ? ? | 貴様らか、以前この街に寄生していたゴロツキチャンピオンってのは。 |
マルタ | 誰がゴロツキチャンピオン―― |
マルタ | って、ルーク ! ? |
アッシュ | ――何、貴様、どうしてその名を ! ?お前たち、ルークの知り合いなのか ! ? |
エミル | あ……あの……。えっと、ルークは僕たちの仲間……です。それで、その良かったらお名前を教えて頂けませんか ? |
エミル | 僕はエミル。隣がマルタとコーキスです。 |
アッシュ | 俺の名は……アッシュだ。ルークは……奴は近くにいるのか ? |
コーキス | 近くにはいないけど、呼んでこようか ? |
アッシュ | ……断る。この訳のわからん世界でまであいつの顔なぞ見たくもない。 |
コーキス | え ? でも、ルーク様と同じ顔してるじゃん。 |
アッシュ | 黙れ、クズが ! |
コーキス | 人をいきなりクズ呼ばわりかよ ! ? |
アッシュ | あのレプリカの仲間でゴロツキチャンピオンなら、クズで十分だ。 |
ラタトスク | はぁ…… ? 何だと、このトサカ野郎。クズクズ言いたきゃ鏡でも見ながら叫んでろ。 |
アッシュ | てめぇ……いい度胸してるな。このアッシュ様に喧嘩を売ろうって言うのか。 |
ラタトスク | 売って欲しけりゃ売ってやるぜ。そこに土下座して、デコッパチの額を泥にこすりつけて頼むんだなぁ ! |
マルタ | ちょ、ちょっとラタトスク !喧嘩は良くないよ ! |
アッシュ | 口だけは一人前だな。喧嘩を売るのは勝手だが、今の俺は金にならない戦いなんざするつもりもねぇ。 |
アッシュ | どうしても俺と戦いたいなら武闘会で決勝に上がってくるんだな。 |
コーキス | え ! ? まさかお前が今のチャンピオンなのか。 |
アッシュ | 当然だ。俺に勝てる奴がいる訳がない。 |
コーキス | すげぇ……。二代目ゴロツキチャンピオンじゃん。 |
エミル | おい、コーキス。てめぇ……しばかれたいのか ! ? |
マルタ | ――もう !みんなちょっと落ち着こうよ。 |
アッシュ | ……ふん。貴様らの指図は受けない。せいぜいあがいて決勝の舞台まで勝ち上がってくるんだな。 |
コーキス | 今のアッシュって奴、ルーク様そっくりだったけど、双子か兄弟なのかな ? |
コーキス | ……あ、そうか !前にルーク様がマスターに話してた……。 |
マルタ | 何 ? ルークの兄弟か何かなの ? |
コーキス | あ……えっと。あれって多分秘密の話のような気がするから……。 |
マルタ | OK。なら詳しいことは聞かないでおく。それよりルークの知り合いならあの人も鏡映点なんじゃない ? |
コーキス | はぐれ鏡映点か…… ! よし、やっぱり俺アジトに戻ってルーク様たちを呼んでくる。マルタ様たちはエントリーしておいてくれ。 |
ラタトスク | ――フン。さっさと登録を済ませてあの生意気なクソ野郎をぶっ潰すぞ。 |
受付 | ひぃぃぃ……、も、元チャンピオン。まさか、現チャンピオンを倒した後またここで強奪を……。 |
マルタ | そ、そんなことしませんってば ! 私たちはこの街の力になりたくてきたんです。何とか活気を取り戻して欲しくて……。 |
受付 | ……そ、そうですか。本当にそうなるといいのですが……。 |
受付 | 今この闘技場のチャンピオンは先ほどの悪魔――じゃなくてアッシュさんと相棒のナタリアさんのお二人なのです。 |
受付 | お二人は、鏡殻変動の後、盗賊や脱走兵に狙われたこの街を守って下さいました。 |
受付 | ですが、このご時世です。 |
受付 | アッシュさんがあのような調子で、わざと相手に喧嘩を売って、参加者を増やしてくれていますが、客足は戻らず……。 |
受付 | 運営が行き詰まってしまったので武闘会の開催も今回で終了となりそうです。 |
マルタ | へぇ……。あのアッシュって人意外といい人なんだね。 |
ラタトスク | けっ、どこがだ。 |
マルタ | ほら、ラタトスク。機嫌直してよ。これから三人で頑張ろう。 |
ラタトスク | コーキスは戻ったぞ。 |
マルタ | キミとエミルと私。そうでしょ ? |
ラタトスク | ………………。 |
エミル | え、マ、マルタ ! ?か、顔が近いんだけど……。 |
マルタ | ふふ、照れちゃって。キミもラタトスクも可愛い♪ |
エミル | ……は……はは……。 |
キャラクター | 3話【一回戦】 |
エミル | 何とか最初の試合には勝てたけどこの後どうしよう……。どうすればこの街に活気を取り戻せるのかな。 |
マルタ | うーん。こういうのってロゼとかミリーナの方がいいアイデア持ってそうだよね。 |
? ? ? | ――お待ちになって ! |
? ? ? | あなた方が以前チャンピオンだったというゴロツキコンビさんでしょうか ? |
ラタトスク | 誰がゴロツキだっ ! ! |
? ? ? | あら、人違い……でしたの ?でも先ほど一回戦に参加して見事に勝利なさったでしょう ? |
マルタ | あ、あの……。確かに私たちは元チャンピオンだけどゴロツキって呼ばれるのは……。 |
マルタ | もちろんそう思われることをしちゃってたんですけど……。 |
ナタリア | ゴロツキというのはお二人のコンビ名ではなかったのですか ! ? |
エミル | 誰がそんな売れない漫才師みたいな名前を名乗るかってんだ ! |
ナタリア | まぁ……。それは失礼致しました。 |
エミル | 全くだ ! 俺は……まぁともかくマルタをゴロツキ呼ばわりするんじゃねぇ ! |
アッシュ | 貴様 ! ナタリアになんて口をききやがる ! |
エミル | 何だぁ ? またてめぇかよ !てめぇこそ、口の利き方に気をつけろ ! |
アッシュ | しつけのなってない犬だな。 |
エミル | 誰が犬だ、この腐れ豚野郎 ! |
マルタ | ラタトスク ! ちょっと言い過ぎだよ ! |
ナタリア | アッシュ !そのような物言いはいけませんわ ! |
二人 | ぐっ…………。 |
ナタリア | 申し訳ございません。私がおかしな話をしてしまったばかりに、お二人を不愉快にさせてしまいましたわ。 |
マルタ | ううん。ゴロツキだったのは本当だから……。 |
ナタリア | 実は、そのあたりのいきさつを伺いたかったのです。 |
ナタリア | 自己紹介が遅れてしまいましたわね。 |
ナタリア | 私はナタリア。アッシュと共に『キムラスカの星』として大会にエントリーしております。 |
エミル | ……フン。アッシュにナタリア……。現チャンピオンってことか。 |
ラタトスク | そのチャンピオン様がなんで俺たちの過去を知りたがるんだ。 |
ナタリア | 私たちはこの街を甦らせたいと考えているのです。 |
ナタリア | 行き倒れ同然でここに辿り着いた私とアッシュを、この街の方々は優しく迎え入れて下さいました。 |
ナタリア | ですから私たちも、街の施政をお手伝いすることでご恩返しをしようと考えておりましたの。 |
アッシュ | ……おい、こいつらは街を荒らしただけで何の役にも立っていなかったんだぞ。今更話を聞いてどうするんだ。 |
ナタリア | あら、それはおかしいですわ。 |
ナタリア | ゴロツキコンビがカガミシコンビと一緒に素晴らしい戦いを披露して、街は活気を取り戻したと皆さん仰っていました。 |
ナタリア | その時のお話を聞いて同じような戦いを披露できればさらなる集客になりませんこと ? |
アッシュ | しかしそれはカガミシが起こした鏡殻変動とやらが起きる前の話だろう ? |
アッシュ | ここはカガミシのゆかりの街だと言うことで一時は締め付けも厳しかった。 |
アッシュ | むしろこいつらが来ることでまたカガミシを捜す帝国の連中が乗り込んでくるかも知れない。 |
マルタ | 待って待って。私たちがここに来たのもこの街を助けたいからなんだよ。ちょっと話を聞いてくれないかな。 |
アッシュ | ……つまり、セキレイの羽とやらがこの辺りを貿易都市にしようと考えているんだな。 |
ナタリア | それにルークたちもこちらの世界にいるなんて…… !心強いですわね。 |
アッシュ | 別に奴らのことはどうでもいいが、この街が貿易の要になるという情報は有益だ。少なくとも人は集まってくる。 |
アッシュ | ならばここにとどまりたい理由を作ってやればいい。 |
ナタリア | そうですわね。予算が限られておりますから街の全面改修は難しいと思いますが最低限の生活基盤は整えましょう。 |
ナタリア | 気持ちよく休める場所になるだけで印象が違いますわ。あとは……やはり娯楽でしょうか。 |
アッシュ | そうだな。この辺りは鏡の石のせいで最低限の農作物しか穫れなくなっている。 |
アッシュ | 元々観光が中心だったようだし何かを売るよりも観光事業に力を入れていくべきだろう。 |
アッシュ | 早速草案をまとめるぞ。 |
マルタ | すごい……。私たちなんて、何から手を付けたらいいか悩んでたのに……。 |
ナタリア | いえ、私たちは元の世界でもこのようなことを仕事にしていたのです。 |
アッシュ | いや、仕事にしていたのはナタリアだけだ。ナタリアは王女だったからな。 |
マルタ | 王女様 ! 上品な人だなって思ってたけどなるほどね~ ! |
マルタ | そういえば雰囲気は違うけど、エステルも上流階級の人って感じだったしやっぱり王女様って気品があるんだね。 |
アッシュ | 当然だ。ナタリアは素晴らしい王女だからな。 |
ナタリア | な、何ですの……。そんな、私なんてまだまだですわ。もっともっと民のために尽くさなければ。 |
ナタリア | それが王族に生まれ……いえ、王族に連なる立場にある者のつとめです。 |
ナタリア | でも今はこの街の方にご恩返ししなければいけませんわね。 |
ナタリア | マルタさんにラタトスクさんお力をお貸し下さいませんか ? |
マルタ | もちろん ! 私たちもその為に来たんだし。それに私のことは呼び捨てでいいよ。ラタトスクもそうだよね。 |
ラタトスク | ……ああ。 |
マルタ | あ、王女様なんだから、私たちの方こそ口の利き方に気をつけないと……。 |
ナタリア | あら、どうかお気になさらないで下さい。この異世界で王女だの貴族だのという肩書きには、何の意味もありませんわ。 |
ナタリア | どうかナタリアとお呼びになって。 |
マルタ | よかった~。それじゃあ私たちは何をしたら良いのかな。 |
ナタリア | 観光の目玉を一緒に考えて頂けませんか ?それが決まれば、私たちで街の方々に提案できますわ。 |
マルタ | OK ! 頑張ろうね、ラタトスク ! |
ラタトスク | (……面倒だ。後でエミルと入れ替わるか) |
キャラクター | 4話【三回戦】 |
マルタ | さすがエミルとラタトスク !二回戦も楽勝だったね ! |
エミル | あはは……ゴロツキだけど一応元チャンピオンだからね。 |
コーキス | おーい ! ミリーナ様とルーク様たちを連れてきたぞ ! |
ミリーナ | みんな、お待たせ。 |
ルーク | なぁ、アッシュとナタリアがいたって本当か ! ? |
エミル | うん。ルークにそっくりな赤毛の男の人と金髪の上品な女の人だった。 |
ルーク | 上品…… ?あいつの趣味、結構下品だと思うけど……。 |
ナタリア | まぁ ! 失礼ですわね ! |
ティア | ナタリア ! それにアッシュも。無事で何よりだわ。 |
アニス | はわわー ! 異世界でもお二人一緒とは妬けますなぁ、大佐♪ |
ジェイド | ええ、妬けますねー♪ |
アッシュ | ……こ、こいつら……全員集合していやがったのか……。 |
ナタリア | あら、ガイは…… ? |
アッシュ | どうせ俺がいるから来たがらないんだろう。 |
ルーク | ち、違うよ。ガイは港で女の人たちに囲まれて……。 |
ガイ | す……すまない……。やっとご婦人方を巻いてきた……。 |
アッシュ | ……ガイ……。 |
ガイ | ――そんな顔するな。……今度会った時には人間ガイラルディアとして、もう一度お前と向き合うって決めてたんだ。 |
ガイ | 今までのわだかまりは一旦水に流す。……俺も、お前もな。 |
アッシュ | 俺にはわだかまりなんかねぇ。お前が……。 |
アッシュ | ――いや、いい。 |
ナタリア | アッシュ……。 |
マルタ | ……え ? 何かあったの ? |
ガイ | ……そりゃまあ、人間色々あるさ。だが、まぁ、大丈夫だ。そうだろ、アッシュ。 |
アッシュ | ……ああ。それよりお前たちもここに来たからにはこの街の復興に力を貸せ。 |
ルーク | へ ? どういうことだ ? |
ミリーナ | そう……。私たちが関わったこともこの街に迷惑をかけてしまっていたのね。 |
ミリーナ | だったら協力して闘技場に活気が戻るように頑張りましょう。 |
マルタ | ねぇねぇ、私、いいこと思いついたんだ。前にシェリアたちが森を守るためにお芝居をしたって言ってたでしょ。 |
マルタ | お芝居ってまさに観光の目玉になるんじゃない ? |
ナタリア | 確かに、闘技場を舞台に見立てればたくさんのお客様を呼び込めますわね。 |
ルーク | えー ! ? 闘技場の街の魅力はやっぱり闘技場の充実からだろ !もっとこう、血湧き肉躍る戦いをさー。 |
ティア | ルークは闘技場が大好きですものね……。 |
アニス | はいはいはい ! 闘技場の勝敗にくじを導入するってどう ! ? 優勝チームを予想して見事当てたら1億ガルドとか ! |
ラタトスク | おい、マルタは舞台がいいと言ったんだぞ ! |
アッシュ | ナタリアも舞台に賛成したんだ !ナタリアの意向を無視するな、クズども ! |
ラタトスク | ……アッシュ、お前中々話がわかるじゃねぇか。 |
アッシュ | 貴様こそ、精霊だか何だか知らないが正しい物の見方ができる奴だな。 |
ルーク | ……なぁ、ガイ。あれ、どう思う。 |
ガイ | 言うな言うな。人の恋路を邪魔する奴は――って言うだろ。 |
ミリーナ | うふふ ! ラタトスクもアッシュさんも恋人の希望を叶えてあげたいのね。 |
二人 | ! ? |
二人 | ! ! |
ナタリア | あ、そ、そんな……私たちは……あの……。 |
マルタ | どうしよう、嬉しいけど、私……エミルとラタトスクどっちも大事だから……。 |
ミリーナ | うふふふ ! 照れてるマルタとナタリアとっても可愛いわ。 |
ミリーナ | じゃあ、可愛い二人の希望も入れつつルークさんの希望も取り入れて―― |
ミリーナ | 闘技場の決勝戦前のイベントとして演劇を上演したらどうかしら ? |
アッシュ | ナタリアの意見が通るなら、俺は構わん。 |
ラタトスク | 俺もだ。あとはエミルに任せる。 |
エミル | …… ? みんな変な顔してるけどまたラタトスクが何か言った ? |
アニス | んー、まぁねいつも通りって感じ ?それよりエミルも難儀な性質だねー。ガンバ ! |
エミル | あはは……。ホントにね……。 |
ミリーナ | それじゃあ手分けして準備を進めましょう !……あら、ジェイドさんは ? |
ティア | ――しまった ! 逃げられたわ。 |
アニス | 舞台の準備が面倒だからだ……。さすがの逃げ足。 |
ガイ | やれやれ、相変わらずだねぇ、あの旦那も。仕方ない、他の連中は逃げるなよ。 |
ナタリア | そうですわ。街の皆様のため必ずや良い舞台にするのです ! |
ルーク | ……ちぇっ、俺も逃げたかったなぁ。 |
キャラクター | 5話【四回戦】 |
ミュウ | ただいま帰りましたですの ! |
ルーク | こっちに演劇の台本書けるって人がいたから連れてきたぜ ! |
ガイ | よし、既存の有名な話をモチーフに、簡単に演じられそうな台本を作ってもらおう。 |
コーキス | ミリーナ様 ! 近所の人から衣装に使えそうな洋服と端切れをもらってきました。 |
ミリーナ | ありがとう、コーキス。これで台本の方向が決まり次第衣装を作れるわね。 |
ティア | ねぇ、ミリーナ。あなたは裁縫も上手だから衣装の方はあなたとコーキスに任せてもいいかしら。 |
ミリーナ | ティアとアニスはどうするの ? |
アニス | 舞台には大道具も必要でしょ ?材木扱ってるところでいらない物を分けてもらってくる。 |
ティア | 私、ちょっと大雑把なところがあるから大きな物を扱った方が向いているように思うの。 |
アニス | トクナガがいれば荷物運びも余裕余裕♪ |
エミル | あ、だったら僕も一緒に行きます。僕、彫刻みたいなことならできるから舞台装置に協力できると思うし。 |
マルタ | 私も一緒に行くよ。 |
エミル | 大丈夫だよ。街の人たちも手伝ってくれてるし。 |
エミル | マルタは次の戦いもあるんだから休んでて。 |
マルタ | そんなのエミルも一緒でしょ。 |
エミル | 僕は体力あるから大丈夫だよ。 |
アッシュ | 街の自治会を招集しろ !舞台の告知を徹底させるぞ ! |
アッシュ | 名称はティル・ナ・ノーグの古代語で物語を表すテイルと舞台の意味を掛け合わせてテイルズオブステージ。テイステで行く。 |
アッシュ | 急いで港に宣伝部隊を走らせろ。 |
ナタリア | アッシュ。自治会の方とお話するのでしたら私も一緒に参りますわ。 |
アッシュ | いや、この程度の差配は俺一人で十分だ。ナタリアは次の戦いに備えて休んでいろ。 |
ナタリア | アッシュ…… |
ナタリア | みんな働いていらっしゃいますのに私一人が休むなどできませんわ……。 |
マルタ | そうだよね……。 |
マルタ | ――あ、いいこと思いついちゃった ! |
ナタリア | まぁ、何ですの ? |
マルタ | みんな一生懸命働いてるんだからお腹がすくと思うんだ。 |
マルタ | 炊き出しの準備をすればきっとみんな喜ぶよ ! |
ナタリア | ……炊き出し、ですか。 |
マルタ | え ? 駄目 ? |
ナタリア | 私……料理は苦手なんですの。 |
マルタ | そうなの ? ……あ、そうか。お姫様って自分で料理なんてしないもんね。 |
マルタ | でも、だからこそ、愛情込めた差し入れなんて作っちゃったらみんな感激すると思うけど。 |
ナタリア | ……そう……でしょうか ? |
ナタリア | ……まぁ、確かに、苦手だからといって何もしないでいるのは良くないことですわよね。 |
ナタリア | ちゃんと現実を見据えて苦手を克服してこそ未来が切り開けるというものですわ。 |
マルタ | そう、その通りだよ !よーし、みんなを驚かせようね、ナタリア ! |
ナタリア | わかりましたわ ! |
ミュウ | ……ご主人様、ナタリアさんとマルタさんがどこかへ行っちゃうですの。 |
ルーク | ……ん ? 次の戦いに備えて休むんだろ。あいつら武闘会にも参加してるから大変だろうし、そっとしておいてやれよ。 |
街の人 | ルークさん、ガイさん、台本の方向性はこんな感じでいいですか ? |
ガイ | もうまとまったのか ! どれどれ……。え ? アビスマンVS怪盗イスパニアの星 ?ルーク、これ、お前のアイデアか ? |
ルーク | え ? 駄目か ? だって俺本なんか読まないからどんな話がいいのかよくわからねーし。 |
ガイ | いや、これはどっちも子供向けだからなぁ……。 |
ミュウ | みゅぅ…… ? |
キャラクター | 6話【五回戦】 |
街の人A | 台本の印刷が上がってきたぜ ! |
街の人B | 衣装合わせを行いますからキャストの方は集まって下さい ! |
エミル | 何だか嬉しそうですね、アッシュさん。 |
アッシュ | テイステも何とか形になりそうだからな。 |
アッシュ | それより敬語なんか使わなくていい。大して歳も変わらないだろ――って、いやお前は精霊、だったな。 |
アッシュ | 精霊という存在がどんなものかよく分からないが、俺の方がひよっこか。 |
エミル | あ、長生きしてるのはラタトスクの方で僕はその……後から生まれた人格というか。いや、もう一つの側面 ? |
エミル | ……すみません。僕も僕のことがよく分からないんです……ってあ、敬語は無しだった。ごめんなさい。 |
アッシュ | ……お前は、ラタトスクから偽者扱いされたりはしないのか ? |
エミル | ……偽者。ラタトスクは……僕の気弱なところにイライラするみたいだけどでもそんな風には思われてないと思うな。 |
エミル | それにどちらかというと、僕らのこの姿がある人にとっては偽者みたいなものだから。 |
アッシュ | ……すまん。よく分からんが言いにくいことを聞いたようだな。 |
エミル | ううん。でもどうしてそんなことを ?――あ、言いにくいことなら……。 |
アッシュ | ……ジェイドからフォミクリーという技術のことを聞いたことはあるか ?或いはレプリカのことを。 |
エミル | ふぉ……み……栗 ? |
アッシュ | いや……聞いていないならそれでいい。 |
アッシュ | (俺だって……本当はわかっている。ルークと俺は別人だと言うことぐらい) |
アッシュ | (以前は何も知らなかったルークを殺したいほど憎んでいた) |
アッシュ | (なのに今は、自我を持ったルークという存在に、怯えのような感情を抱いている) |
アッシュ | そういえば、ナタリアとマルタはどうした ? |
エミル | あれ……確かに姿が見当たらないね。 |
コーキス | なんじゃこりゃ―――― ! ? ! ? |
アッシュ | 今のは、あの眼帯の声じゃないか ! ? |
エミル | 広場の方だね。行こう ! |
アッシュ | ……な、何だ……これは……。 |
エミル | 街の人たちが倒れてる……。 |
アッシュ | おい、レ……ルーク。何があった ! ? |
ルーク | ――え ! ?今、俺の事ルークって言ったか ! ? |
アッシュ | お前がルークでなくて何なんだ ! ?このクズがっ ! |
ルーク | 何だと――おぅぇぇ……。 |
アッシュ | うわっ ! ? こ、こっちに吐くな ! ? |
コーキス | くそ……帝国軍の飯テロか…… !……あ……吐く……。 |
エミル | コーキス ! ? |
ミリーナ | まさか炊き出しに毒を盛るなんて……。でもどうして帝国がそんなことを……。 |
ミュウ | みゅみゅみゅ ! ? ご主人様 ! ?どうしたんですの ! ? |
ルーク | ……胸が詰まって……苦しい……。 |
ミュウ | 苦しくなるほどたくさん食べたんですの ! ?ナタリアさんもマルタさんも喜ぶですの ! |
二人 | ナタリア ! ? |
二人 | マルタ ! ? |
アッシュ | ちょっと待て。マルタもアレなのか…… ? |
エミル | え……まさかナタリアも…… ? |
ミリーナ | みんな――っ ! !炊き出しは中止よ――っ ! ! |
ジェイド | とりあえず、重篤そうな患者はジュードに引き渡します。 |
ジェイド | あとは、こんなこともあろうかと私が調合した解毒薬がありますので実験がてら飲んで頂くというのも……。 |
ルーク | マジかよ ! ?それだけは断固拒否す……――おぇ……。 |
ティア | ルーク ! ?ファ、ファーストエイド ! !ハートレスサークル ! ! ! |
アニス | よかった~。ティアと一緒に大道具作ってたから炊き出し食べ損ねて助かった~。 |
ガイ | ……言うな。うっかり食べちまった自分のうかつさに涙が出る。 |
コーキス | ガイ様はたった一口じゃないかよ。俺なんて……うっぷ……。 |
ナタリア | ……面目ございませんわ。まさかこんな大惨事になってしまうなんて……。 |
マルタ | ごめんなさい……。おむすびとお味噌汁なら私たちでも作れると思ったんだけど……。 |
ミリーナ | そ……そうね。二人とも悪気はなかったってことはわかっているから。 |
ミリーナ | みんな命に別状はないみたいだしきちんと謝れば許して貰える……と思うわ。私も一緒に謝るわね。 |
アッシュ | 俺も責任者として一緒に謝りに行く。 |
ナタリア | いえ……。これは私とマルタのしてしまったことです。というか……主に私が……。 |
ナタリア | やはり料理などするべきではなかったのですわね。 |
マルタ | そんなことないよ。言い出しっぺは私だもん。 |
マルタ | でも、どうしよう……。テイステのスタッフほとんど倒れちゃったよね…… ? |
エミル | スタッフどころか、キャストも一部ね……。 |
ジェイド | 中止にしますか ? そろそろ舞台と決勝戦目当ての客が到着する頃です。早く連絡した方がいい。 |
ミリーナ | ――いえ、やりましょう。幸い、まだ被害を免れた人も何人かいるから……。 |
ガイ | とはいえ、当初の予定通りとは行かないぜ。舞台装置も動かせない。劇の方も登場人物を絞るしかないだろうな。 |
ナタリア | 私でやれることは何でもやりますわ。 |
マルタ | 私も。人の何倍も働くよ。 |
エミル | 僕にもできることがあればやらせて。 |
アッシュ | ……こうも動ける人数が少ないと俺も出るしかないだろうな。 |
ジェイド | おっと……そういえば、私も炊き出しをいただいたような気がします。あーっ ! 目眩が……。 |
ミリーナ | ジェイドさん。自分で調合した薬を飲むか、働くか覚悟を決めて下さい。 |
ジェイド | ……やれやれ。年寄りをこき使うとは悪い子ですねぇ。 |
ルーク | ……あいつ……やっぱり自分でも飲めないような薬を飲ませようとしたんだな。……うっぷ。 |
キャラクター | 7話【決勝戦?「テイルズオブステージ」開幕!】 |
アナウンス | 大変長らくお待たせ致しました。 |
アナウンス | 闘技場決勝戦を前に、新旧チャンピオンの共演によります舞台――テイルズオブステージを上演致します。 |
アナウンス | 皆様、最後までごゆっくりお楽しみ下さい。 |
ナタリア | ああ……。私はどうしたらよいのでしょう。 |
ナタリア | 今までは、ただ、失われたイスパニア王国復興だけを望み、盗賊イスパニアの星として暗躍してまいりました。 |
ナタリア | ですが、私の危機を救って下さったあの方……アビスシルバー様のことが頭から離れないのです。 |
アッシュ | ――ご一緒してもよろしいですか。 |
アニス | ちっがーう ! 『ご一緒してもよろしいですかセニョリータ』だよ ! |
アッシュ | ……くっ……せ……セニョリータ……。 |
ルーク | ぶほっ ! ? |
ティア | だ、駄目よ笑っちゃ…… !笑っちゃ……だ……め…………っ。 |
ナタリア | まぁ、あなたはキムラスカ王国のアッシュ殿下……。 |
アッシュ | 私はあなたの素性を知っています。イスパニア王国の王女ナタリア殿下――いえ、女盗賊イスパニアの星 ! |
ナタリア | な……何故そのことをっ ! ? |
アッシュ | 私はあなたの国を滅ぼした敵国の王子ではなく、この国を憂う正義の使者アビスマンとして参上しました。 |
ナタリア | まさか、あなたはアビスシルバーなのですか ! ? |
アッシュ | そうです。ナタリア殿下。いえ、イスパニアの星よ。私はあなたをあ……あ…… |
アニス | 『愛してしまった』でしょ !何今更意識してんの ? |
アッシュ | き、貴様…… ! |
ナタリア | 貴様…… ? |
アッシュ | あ、いや……。――あ、愛してしまった。 |
ナタリア | まぁ ! あなたも私のことを…… ?これは夢なのでしょうか。あなたのことを思って、私は……―― |
マルタ | 『私は夜も眠れずただ切なく涙していたのです』だよ ! |
ナタリア | あ、ええ……。わ、私は夜も眠れずただ切なく涙していたのです。 |
アッシュ | イスパニアの星……。 |
アニス | はい、ここでイスパニアの星を抱き寄せるアビスシルバー ! |
アッシュ | ! ? |
マルタ | そしたらイスパニアの星は、目を閉じながら『あなたの誠をこの唇に』って……きゃー !照れるー ! |
アニス | そしたらアッシュはここでぶっちゅーって !もうぶっちゅーって ! ! |
アッシュ | ふ、ふざけるな ! ? そんなことできるか ! ? |
ナタリア | そんなこと…… ? |
アッシュ | あ、いや……そういう意味じゃ……。 |
ナタリア | ではどういう意味ですの…… ? |
ガイ | よっ、アビスシルバー ! |
ジェイド | いいさらし者ですよー ! |
アッシュ | てめぇら ! 人を馬鹿にするのもいい加減にしやがれっ ! |
ミリーナ | まずい。舞台が壊れるわ。エミル ! コーキス ! 出番よ ! |
エミル | え ! ? は、はい ! ! |
コーキス | 任せて下さい、ミリーナ様 ! |
コーキス | おっと、エミルの兄貴 !チャラい若者がいちゃいちゃしてやがりますぜ ! |
エミル | ……こ、こういうのはラタトスクの方が向いてると思うのに……。 |
エミル | ――はっ ! 見せつけてくれるじゃねぇか ! |
アッシュ | なんだ、貴様らは。 |
エミル | このラタトスク党のエミル様を知らねぇとはいい度胸じゃねぇか ! |
エミル | チャラチャラ赤毛を伸ばしやがって。丁度いい、てめぇの髪とその女はいただいていくぜ ! |
アニス | え……。エミルってば、演技超上手くない ? |
マルタ | さすがエミル……格好いい…… ! |
アッシュ | 面白い ! やれるモンならやってみやがれ !行くぞ、ナタリア――じゃなかったイスパニアの星 ! |
ナタリア | ええ、ラタトスク党など叩きつぶしてやりますわ ! |
アナウンス | こうしてイスパニアの星とラタトスク党の戦いの火ぶたが今、切って落とされたのであります ! |
キャラクター | 8話【決勝戦?「テイルズオブステージ」開幕!】 |
ジェイド | いやー、最後の方はもうぐだぐだでしたが異様なほど盛り上がりましたねぇ。 |
アニス | やっぱりアニスちゃんの台詞のアレンジが効いたんでしょ ! |
ジェイド | 素晴らしい台本改変でしたよ、アニス♪おかげで非常に面白いものが見られました。 |
ガイ | おいおい、それくらいにしておいてやれよ。アッシュの奴、あっちで落ち込んでるぜ。 |
ティア | それにしても、お客様は喜んで下さったみたいだし、何とか成功してよかったわ。 |
ルーク | エミルもコーキスも上手かったぜ ! |
コーキス | そういや、エミル様、あれラタトスク様と入れ替わってたわけじゃないんだよな ?すげぇ迫力だったぜ ! |
エミル | そ、そうかな……。無我夢中だったからよく覚えてないんだけど……。 |
マルタ | 凄いよ。迫真の演技だったもん。キミってやっぱり最高だね ! |
アッシュ | ……はぁ……俺は何をしているんだ。 |
ナタリア | アッシュ……。そんなに落ち込まないで下さいませ。 |
ナタリア | 皆様、本当に楽しそうにしていらっしゃいましたわよ。 |
ナタリア | それにこれからは、決勝の前に今回のような寸劇を入れる方針でいくと自治会の方々も張り切っておられました。 |
ナタリア | おかげで私やマルタの料理の件も許して頂けましたし……。あなたのおかげですわ。 |
アッシュ | ナタリア……。この後、お前はどうする ? |
ナタリア | え ? |
アッシュ | 聞いただろう。少なくともこの世界の俺たちは、オールドラントの存在の現し身。単なる影だ。 |
アッシュ | もう元の世界に戻ることはできない。お前が願ったキムラスカの幸せもここでは祈ることしかできないんだぞ。 |
ナタリア | ……そうですわね。今は……まだ実感が湧いておりませんの。 |
ナタリア | それでも……やはり帰りたいですし故郷が恋しいですわ。 |
ナタリア | エルドラントのヴァンのことも心配ですし……。 |
アッシュ | …………。ここでなら……俺の体も……。 |
ナタリア | あなたの……体 ? どこか悪いのですか ! ? |
アッシュ | いや……。そうじゃない。ただ、ここには時間がある。 |
アッシュ | 俺たちは預言を覆らせるために必死で駆け抜けて立ち止まる余裕もなかった。違うか ? |
ナタリア | ……ええ。あまりに色々なことが起きてとにかく目の前の出来事に対処していくしかありませんでしたわ。 |
アッシュ | 帰る方法がないならここで生きるしかない。いずれ状況は変わるかも知れないが、今はここで生きていくことを考える必要がある。 |
アッシュ | 今日までと同じようにな。 |
ナタリア | ――わかりましたわ。場所を変えるのですわね。この街ではなく、ミリーナたちの元へ……。 |
アッシュ | ……その方がお前のためにもなる。仲間がいるんだからな。 |
ナタリア | あなたも仲間ですわよ。もし、元の世界ではそう思えなかったのだとしてもここではそう思って下さるでしょう ? |
アッシュ | ……ルーク ! |
ルーク | な、何だよ……。 |
アッシュ | 一時休戦だ。 |
ルーク | ! ? |
アッシュ | ミリーナ。俺とナタリアも連れていって欲しい。お前たちの元に。 |
ミリーナ | ええ。大歓迎よ。よろしくね、アッシュさん、ナタリア。 |
ナタリア | 私、皆様のお役に立つよう頑張りますわ。……お料理以外で。 |
ミリーナ | ふふ、ナタリアったら可愛いわ。 |
ルーク | アッシュ。あの……ちょっといいか ? |
ルーク | 俺の正体って言うかレプリカのことなんだけど……。 |
アッシュ | どうせ何も話していないんだろう。とりあえずお前は、俺の双子の弟……ということでいいか。 |
ルーク | ……それでいいのかよ。 |
アッシュ | どうせ俺も元の世界から見れば模造品だ。だが、大人しく消えるつもりはない。 |
アッシュ | 戻れないなら、戻れるようになるまでここで生き抜く。這いつくばってでもな。俺が俺である限り、俺がオリジナルだ。 |
ルーク | ……アッシュはすげぇな。 |
アッシュ | お前はもう、俺の代替え品じゃないんだろうが。だったらそんなふぬけた顔をするな。 |
ルーク | ……おう !よろしくな、兄貴 ! |
アッシュ | ――ちょ、調子に乗るな ! |