キャラクター | 1話【温泉1 精霊術のコツ】 |
ミラ=マクスウェル | ……精霊術のコツを教えて欲しい ? |
クラース | マクスウェル。お前は精霊術を行使する際、四大精霊の力を借りていると聞いた。 |
クラース | 私の召喚術、お前の精霊術とで原理は異なる。だが精霊に呼びかけを行う点は共通しているだろう。もしや召喚術にも応用できるのではと思ってな。 |
ミラ=マクスウェル | なるほど……。そこでコツが知りたいというわけか。そうだな、強いて言えば―― |
ミラ=マクスウェル | 「つべこべ言わず術を放て ! 」という意志をこめているだけだ。 |
クラース | なんだそれは ! ? ただの脅迫じゃないか ! |
ミラ=マクスウェル | 安心してくれ。効き目は私が保証しよう。 |
セルシウス | ……ミラ。それは貴女だから可能なのよ。生まれたときからずっと共に過ごしてきたという四大との関係性があってこそだと思うわ。 |
ミラ=マクスウェル | ふむ。そういうものか。となると他にコツは……思い浮かばないな。 |
クラース | はぁ……わかってはいたがやはり一朝一夕にはいかないか。 |
ミラ=マクスウェル | すまない、私も力になれれば良かったのだが。 |
ウンディーネ | やはりアイフリードの枷が原因でしょうね。精霊と契約を重ねたことで枷は弱まってきていますが依然として、その影響は大きいようです。 |
イフリート | 現状、このように実体化しているのが精一杯だ。召喚術に応じて本来持つ力を引き出そうとした瞬間、霊体化してしまうだろう。 |
シルフ | それに、無理に召喚術を発動させようとすると反動でクラースに悪影響がでちゃうかもだしね。 |
ミラ=マクスウェル | なるほど……。であれば実体化せず霊体化状態で術のみを行使してみてはどうだろうか ?それこそ今の私が用いている精霊術のように。 |
クラース | それは厳しい。召喚術は精霊を実体化し魔術を行使することを前提とした理論だ。悪いがそこまで便利なものじゃない。 |
ミラ=マクスウェル | となると、残りの精霊を探すのが先決だろう。更に契約を重ね、アイフリードの枷を解除するほかあるまい。 |
クラース | それには私もおおむね同意だが……。 |
セルシウス | ……クラース、どうかしたの ? |
クラース | いや、キールとの共同研究が気になってな。この世界のエンコードという作用、及びアニマについてだが……まぁいいだろう。 |
クラース | マクスウェルの言うとおりいまはとにかく残りの精霊を探すべきだな。具体的に言うと地の精霊ノームと契約したいところだ。 |
セルシウス | ノームと契約すれば四大精霊が揃うものね。 |
クラース | だがノームは変わり者だからな。どこにいるのか探すのに手間がかかりそうだ。 |
イフリート | そう悲観的になるな。こうして我々とも出会えたのだ。明鏡四水の輝きが必ずお前を導いてくれる。 |
セルシウス | ……なんだか不思議ね。 |
イフリート | ……どうした、セルシウス。 |
セルシウス | いいえ……いまのわたしがもつ記憶、元の世界でのイフリートと比べて貴方はだいぶ理知的だと思って。 |
イフリート | がははっ ! つまり俺と会いたかったってことか !クレーメルケイジの中で夜通し語り合った仲だもんな !嬉しいぜ ! ! |
ミラ=マクスウェル | おぉ。お前はキールたちの世界のイフリートか。姿は変わらないが意識だけが異なるのも興味深い。セルシウスと仲が良いのか ? |
セルシウス | いいえ。 |
イフリート | がーんっ ! ! そ、そんなハッキリ言わんでも……。 |
セルシウス | 近寄らないで。暑苦しい。 |
イフリート | ぐ、ぐうぅ…………。 |
クラース | まったく。アーチェとチェスターとは違った方面で賑やかな奴らだな。 |
ウンディーネ | ……あら ? 噂をすれば。アーチェさんが来たみたいですよ。ロンドリーネさんも一緒みたいですね。 |
アーチェ | クラース ! 聞いて聞いて !大ニュースだよ ! |
クラース | 何だ、アーチェ。お菓子の特売セールにならミントに付き合ってもらえ。私は研究で忙しいんだ。 |
アーチェ | もー、なにさ。ホントのホントに大ニュースなのに。これだから人の話を聞かないおじさんは。 |
クラース | お、おじさんではない !何度でも言うが私はまだ二十代だ ! |
ミラ=マクスウェル | ところで、その大ニュースとは何だ ? |
ロンドリーネ | ふふっ、驚かないでよ。なんと―― |
ロンドリーネ | 地の精霊ノームの居場所がわかったかもしれないんだ ! |
クラース | ノームの居場所だと ! ?ど、どこだ ! ? |
ロンドリーネ | 焦らない焦らない♪場所はここに書いてあるんだ。 |
クラース | どれどれ……うん ?これは、チケットか ? |
ミラ=マクスウェル | ……温泉旅館の宿泊券のようだが。 |
二人 | ノームを探しに、温泉旅行に出発~ ! ! |
キャラクター | 2話【温泉1 精霊術のコツ】 |
クラース | 休憩は終わりだ。そろそろ旅館に向けて出発するぞ。全員揃っているな ? |
ミント | あら ? コーキスさんがいないみたいです。 |
コーキス | はぁはぁ……ぎりぎり間に合った。悪い、遅れちまって ! |
チェスター | コーキス、どこ行ってたんだよ。 |
コーキス | アリーシャ様に頼まれて海風村の様子を見てきたんだ。 |
ロンドリーネ | 海風村 ?街道を歩いてたときに見えた海辺の村のこと ? |
コーキス | ああ。なんか水泳大会にガチな村でマスターとミリーナ様とアリーシャ様たちが村の代表として水泳大会に出場したこともあったんだ。 |
ミリーナ | あのときは隣の潮風村と争っていたわよね。大会のあと和解したみたいだったけどいまも関係は問題なさそうだった ? |
イクス | 『様子を見た限りだと大丈夫そうだったな。ちゃんと互いに協力し合っていた』 |
コーキス | マスターも大丈夫そうだったって言ってます。確かに、前より活気がある感じがしましたもんね。 |
クラース | なら、無事用事も済んだということだな。 |
アーチェ | はーい ! それじゃあ話はここまで !今度こそ全員揃ったということで温泉旅館にレッツ・ゴー♪ |
ロンドリーネ | 温泉、美味しいお料理……あーもうっ楽しみ ! ! |
クラース | お前たち、旅行が楽しみなのはいいが他に目的があることを忘れないでくれよ。 |
ミント | 精霊の捜索ですよね。 |
クラース | そうだ。私の代わりとしてマクスウェルとセルシウスがキールとの共同研究を手伝ってくれている。ただ観光してきましたじゃ皆に申し訳ない。 |
ミント | しっかり捜索しないといけませんね。 |
コーキス | えっと……確か、温泉地の一部で突然いくつもの源泉から温泉が出なくなったんだよな。で、これが精霊と関係してるって話であってるか ? |
クラース | ああ。温泉が止まった理由は何かしらの特殊な力が働いたことで突発的な地層変動が発生し地下水脈が変化したからだ。 |
ミリーナ | その特殊な力を及ぼした存在が地の精霊ノームなのでは……というわけですね。精霊の封印が弱まっているからかしら……。 |
クラース | 今までの突発的な自然現象を思い出してみるとほとんどが精霊の封印が弱まったからだったしな。今回も同様のケースとみて間違いないというわけさ。 |
チェスター | なるほど……まぁ難しい話は置いておいてとにかくノームを捜せばいいんだよな。封印地点の検討はついてるのか ? |
クラース | 温泉地帯周辺にある洞窟内部だ。 |
コーキス | 洞窟 ? |
クレス | 僕たちの世界でもノームは\"精霊の洞窟\"にいましたよね。確かに、この世界でも洞窟にいるかもしれません。 |
クラース | おまけに\"精霊の洞窟\"と温泉地帯周辺の洞窟には地質学的類似点があることも判明している。十中八九、洞窟の中さ。 |
ミリーナ | ええ、わかりました。明鏡四水の様子もみつつ捜索していきましょう。 |
アーチェ | けど、到着したらまずは温泉に入ったり休んでいいんでしょ ? |
クラース | その予定だ。ゲート地点から旅館まで結構な距離があったからな。 |
クラース | アミィもアーチェの箒に乗せてもらっているとはいえ長距離の移動は疲れるだろう。 |
アミィ | アーチェさん、ごめんなさい。 |
アーチェ | 気にしないで ! アミィちゃん、チョー軽いしさ♪温泉観光の特別ゲストのつもりでゆっくりしててよ。 |
ロンドリーネ | 温泉旅館を満喫するのも大事な目的なんだからね。今回の件でチケットが格安だったとはいえお金払ってるわけだし楽しまなきゃ損 ! |
クラース | ふっ……まったく、お前たちは。だがそれも間違いなく大事な目的だな。 |
ミント | クラースさんも最近ずっと研究室に籠もりきりでしたしたまには羽を伸ばしてくださいね。 |
アーチェ | なんだかんだクラースもすごく楽しみだったもんね ?鼻歌を歌いながらルンルン気分で身支度してたしさ。 |
クラース | あっ ! こら、アーチェ !それは秘密にしろと言っただろう ! |
アーチェ | 秘密にしろとは言われたけど約束した覚えはありませんよーだ♪ |
クラース | まったく、相変わらず屁理屈を。もういい……行くぞ。 |
チェスター | おい、アーチェ。ちょっと待て。 |
アーチェ | 何よ。説教でもするつもり ? |
チェスター | その……なんだ。 |
チェスター | ……アミィのこと、箒に乗っけてくれてありがとな。 |
アーチェ | えっ……。 |
アミィ | アーチェさん。私からも、ありがとうございます。皆さんとこうして一緒に来られてすごく嬉しいから。 |
アーチェ | い、いや。もうそういうのいいってば。アミィちゃんはまだしもチェスターがありがとうって全然らしくないし。 |
チェスター | な、なんだと ! ?人がせっかく素直に感謝してやってるのに ! |
アーチェ | 感謝してやってるって何よ ! ?わかった ! こうやって油断させておいてまた覗くつもりなんでしょ ! |
チェスター | あっ ! ちょ、バカ !アミィの前で何言ってるんだ ! |
アミィ | えっ ? 覗き ?お兄ちゃん、何のこと ? |
チェスター | えっと、その……なんだ。アミィ、お兄ちゃんはちょっと話があるからしばらくクレスと一緒にいてくれ。 |
アミィ | う、うん。わかった。 |
チェスター | アーチェ ! このやろっ ! |
アーチェ | きゃー ! こっちこないでー !スケベがうつるー ! |
クレス | あはは。またやってるよ。 |
アミィ | お兄ちゃんとアーチェさんは仲良しなんですね。 |
ミント | ふふっ。アミィちゃんから見ても仲良しさんだなんてお二人のやりとり、本当微笑ましいです。 |
クラース | 私からしたら騒がしくて敵わんがな……。 |
コーキス | あっ ! 旅館が見えてきたぞ ! |
クラース | もうそろそろだな。一気に山道を抜けてしまおう。 |
キャラクター | 3話【温泉2 温泉旅館を目指して】 |
クラース | よし。旅館のチェックインも完了と。さっそくひとっ風呂浴びてくるとするか。 |
ミリーナ | あっ……ちょっと待ってください。キールから魔鏡通信が入りました。 |
クラース | キールから ? |
キール | クラース。いきなりすまない。 |
クラース | いや、気にするな。どうやら急ぎの用件のようだが……もしかして共同研究についてか ? |
キール | ああ。クラースの召喚術、ぼくの晶霊術、そしてミラの精霊術、それぞれの理論をエンコードという側面から比較検討してみたんだ。 |
キール | とはいえまだはっきりしたことは言えないが……。 |
クラース | ……直接会って話した方がよさそうだな。必要があれば急ぎ研究室に戻るが ? |
キール | それには及ばない。ぼくがそっちに行くよ。 |
ミリーナ | キール、大丈夫…… ?ゲートから少し距離があるわよ ? |
キール | なんでちょっと心配そうなんだ ! ?ぼくだってそれくらいの体力はある ! |
キール | それに、そっちにはノームがいるかもしれないだろ。ぼくが到着する前に契約を済ませてくれてるとこれからする話も確度が増すからな。 |
クラース | なるほど。あわよくば、ということか。だが道中には光魔も出現するぞ。キール単独での行動は危険だ。 |
ミラ=マクスウェル | その点に関しては問題ない。私とセルシウスが護衛役を務めるからな。 |
クラース | 二人も来るならちょうどいい。今回、世話になったからな。キールたちの宿代は私がおごらせてもらおう。 |
セルシウス | それは嬉しいけど……わたしは温泉に入るつもりはないから。アツいのはあいつだけで十分。 |
ミラ=マクスウェル | では、私はクラースの言葉に甘えるとしよう。人間は『裸のつきあい』というのを経て親睦を深める……と、聞いたことがある。 |
キール | は、裸の付き合いって……ミラ ! お前は何言ってるんだ ! ? |
ミラ=マクスウェル | 相変わらずキールはジュードのような反応をするのだな。私は何もおかしなことは言っていないはずだが ? |
クラース | まったく。突飛な言動もさることながらお嬢さんマクスウェルには色々と驚かされるな。 |
アーチェ | あたしたちの世界じゃマクスウェルはおじいちゃんだったしね。 |
ミント | ミラさんは綺麗な女性の姿でしたから、最初はマクスウェルだなんて思いもしませんでした。 |
クレス | おまけに剣の腕も立つからね。道場で手合わせしたときは驚いたよ。 |
ミラ=マクスウェル | クレスには負けるよ。所詮、私の剣技は付け焼き刃だ。四大が奪われた際、戦う術が必要で急遽アルヴィンに教わったものだからな。 |
ミラ=マクスウェル | やはり今後のことを考えると更に剣技に磨きを掛けなくてはなるまい。 |
ミラ=マクスウェル | いまの私は四大を実体化できない。つまり、具現化以前よりも私は劣っているということだからな。 |
コーキス | ミラ様……そんなことは……。 |
ミラ=マクスウェル | コーキスが気に病む必要はない。四大が実体化できずとも私は変わらない。なすべきことをなす、それだけだ。 |
クラース | なすべきことをなす、か。戦闘面だけでなく精神面もお嬢さんマクスウェルはとても強いようだな。 |
クラース | まったく、見習わせてもらいたいものだよ。私の場合、召喚術の代わりに剣を振るったりもできず戦いという面ではからっきしだからな……。 |
クレス | ……クラースさん。 |
ミラ=マクスウェル | もちろん四大の実体化を諦めたわけではない。私自身でも何か方法はないか引き続き考えてみるつもりだ。 |
クラース | わかった。私も何かできることがあれば君に協力しよう。 |
ミラ=マクスウェル | ああ、助かるよ。 |
クラース | さて、ついつい長話をしてしまったな。もうこれくらいでいいだろう。 |
ミラ=マクスウェル | ああ。では私たちも向かうとしよう。いざとなればキールは私が背負う。安心してくれ。 |
キール | なんだそれは ! ?ぼくは背負われるつもりなんてないからな ! ? |
ミラ=マクスウェル | なに。私も歩けなくなったときにはジュードに背負ってもらった。恥ずかしがることはない。 |
キール | そんなこと知るか !絶対に力は借りないからな ! |
セルシウス | ……はぁ、騒がしくなりそう。それじゃあ現地で。 |
クラース | よし。では私たちは温泉に行くとするか。 |
アミィ | あっ。私は宿でお留守番してます。キールさんたちが来るかもしれないから。 |
チェスター | 結構、時間かかるかもしれないぜ。温泉に入る時間くらいはあるだろ。 |
アミィ | けど、追加の予約の申し込みとか色々あるでしょう。それぐらいなら私も手伝えるからやりたいの。 |
アミィ | だから、私は後で入るね。お兄ちゃんたち、先に楽しんできて。それじゃあまた。 |
クレス | ……アミィちゃん。 |
チェスター | ……あいつ、迷惑かけたって思ってるのかもな。だから少しでも、役に立ちたいんだと思うぜ。 |
ミント | アミィちゃん……良い子ですね。 |
チェスター | ……あぁ。本当にな。 |
チェスター | (元はと言えば……ここに具現化されたのもあんな酷い目に遭ったのも全部オレのせいだってのに……。ごめんな、アミィ) |
キャラクター | 4話【温泉3 入浴】 |
コーキス | はぁ~、あったけー !さすがは歴代ビクエたちもお忍びで逗留してた秘湯だぜ。 |
クラース | いいねぇ~♪ 疲れが吹き飛ぶよ。これも温泉の効能のおかげかな。 |
クレス | ……チェスター。 |
チェスター | うん ? どうした ? |
クレス | アミィちゃん、元気になってよかったな。 |
チェスター | ……ああ。一時はどうなるかと思ったけど本当にみんなのおかげだ。 |
チェスター | もちろん……ダオスへの恨みが完全に消えたわけじゃないし元の世界が恋しくないかと言ったらウソになる。 |
チェスター | けど……やっぱりオレはこの世界に具現化されてよかったとも思うんだ。たとえもう、一生帰れなくても。 |
コーキス | ……チェスター様。 |
クラース | 何事もそう簡単に割り切れるものじゃない。特に人間っていうのは複雑な生き物だからな。 |
クラース | だが、大切な人とまた共に歩んでいけることは紛れもなく幸せなことだ。あまり難しく考えすぎるなよ。 |
チェスター | ……クラース。ああ、そうだよな。なんだかオレ、色々な感情がごちゃごちゃになってたみたいだ……。 |
チェスター | よしっ。風呂から上がったらみんなで卓球勝負しようぜ ! |
クレス | ああ、もちろん受けて立つよ。 |
コーキス | 負けるつもりはないからな ! |
クラース | ふっ。元気がいいようでなによりだ。 |
チェスター | と、……ちょっと待て。 |
クレス | ……どうかしたのか ? |
チェスター | いま誰かの話し声が聞こえたぞ。 |
ミント | いいお湯ですねぇ。 |
ロンドリーネ | 癒されるなぁ……。 |
ミリーナ | 極楽よねぇ……。 |
アーチェ | …………。 |
ロンドリーネ | アーチェ、どうかしたの ?さっきからずっと黙ってるけど。 |
アーチェ | ……みんな……おっきいね。 |
ロンドリーネ | ……えっ ? |
ミント | ア、アーチェさん……。あまりその……みないでください。 |
アーチェ | だって羨ましいんだもん。あーあ、三人ともいいなぁ。あたしもおっきくなるかなぁ……。 |
ロンドリーネ | 肩はこるし、かがむとき下はみえづらいしいいことばかりじゃないよ。 |
ミリーナ | それにアーチェは今のままでも十分魅力的よ。すごく可愛いもの。 |
アーチェ | けどさぁ、一度でいいからおっきくなりたいよ。ロディの世界のあたしはもう少しおおきくなってたりしなかった ? |
ロンドリーネ | ううん。そのまんまだったよ。 |
アーチェ | 別の世界のあたしもこのままかぁ……。 |
ロンドリーネ | けど、私は何も変わってなくて安心したな。アーチェが私の知ってる性格、見た目のままでさ。もちろんミントやクレスたちも。 |
ミント | ロディさんは私たちが具現化された世界と極めて近い並行世界からいらっしゃったんですよね。 |
ロンドリーネ | うん。そこでは私もクレスたちと一緒に旅したんだ。だからアークでクレスたちが私のこと知らないってわかったときは……ちょっとショックだった。 |
ロンドリーネ | まぁ、こういうケース初めてじゃなかったんだけどね。でも仲良くなれるのかなーって、少し不安だったんだ。 |
アーチェ | ……ロディ。 |
ロンドリーネ | けど、そんな心配無用だったね。気がついたらこうして気軽に話せる仲になってた。 |
ミント | えぇ、そうですね。私もロディさんと仲良くなれて嬉しいです。 |
アーチェ | あたしも。ロディとはなんか気があうもんね。そっちの世界でも今みたいな感じだったのかなって想像できちゃったもん。 |
ロンドリーネ | ありがとう。こうして温泉で話しているだけでみんなと旅行に来られてよかったと思うよ。アジトに残っている仲間たちにも感謝しなきゃ。 |
ミリーナ | みんなの分、お土産を買っていきましょうね。 |
ロンドリーネ | もちろん ! |
チェスター | これって……アーチェたちの声。まさかこの立ち入り禁止区域の先って女湯に繋がってるのか……つまり先に進めば。 |
クレス | チェスター、やめとけって。またアーチェに文句言われるぞ。それにこの先は急な斜面になっていて危険だ。 |
チェスター | へへっ。だからって引き下がれるかよ。危険を乗り越えてこそ男ってもんだ。 |
クラース | まったく。相変わらず若いなぁ。 |
コーキス | ちょっと待った !この先には行かせない ! |
チェスター | おっ。コーキス、オレとやるっていうのか ? |
コーキス | 当然だ ! マスターの名にかけてミリーナ様の入浴は俺が守る……えっ ! ? |
クレス | コーキス !このあたりは滑りやすくなってる !はやく手を掴むんだ ! |
コーキス | だ、ダメだ……間に合わな―― ! ! |
コーキス | うわぁぁあああ ! ! ! ! |
ミント | な、何ですか ! ?湯の滝から何か落ちてきました ! |
ロンドリーネ | な、なんだろ ? 岩 ? |
ミリーナ | けど……動いてるみたいよ……。 |
コーキス | …………いててっ。 |
ミリーナ | コーキス ! ? |
イクス | 『う……うわぁぁぁぁ ! ? 駄目だ、コーキス ! 』目を閉じるんだ ! ! 』 |
コーキス | は、はいっっ ! ! ! |
アーチェ | えぇ ! ? チェスターじゃないの ! ? |
ミント | ……きゃっ。 |
ロンドリーネ | おぉ、もしかしてお姉さんのボディ目当てに乗り込んできた ? なかなか勇敢だね。 |
コーキス | ち、ちち……ちがっ ! ! |
コーキス | 違うんだあああ ! ! |
アーチェ | 言い訳無用よ !あたしの桶投げ――くらいなさいっ ! ! |
キャラクター | 5話【温泉4 ノーム】 |
コーキス | ……いてて。 |
カーリャ | こらぁ ! ! コーキス、何やってるんですか ! ! |
コーキス | パ、パイセン、誤解なんだ !ワザとじゃ―― |
カーリャ | ホントですかね~ ?それにミリーナ様はかばって下さいましたけど言い訳なんて聞きたくありません ! |
カーリャ | 今日からコーキスはスケベ大魔王です ! ! |
コーキス | スケベ大魔王 ! ? |
カーリャ | スケベな後輩なんて知りません。ふんっ。 |
コーキス | ……はぁ。何で俺がこんな目に遭わなきゃいけないんだよ。 |
チェスター | コーキス、なんかその……悪かったな。けどこれも温泉の醍醐味ってやつだ。元気出せって。 |
クレス | チェスター。その励まし方はどうなんだ……。 |
ミント | 皆さん ! 大変です !周囲の温泉と同様に先ほどの温泉も止まってしまいました ! |
ロンドリーネ | 噂に聞いていた事態ね。予想が正しければ―― |
ミリーナ | 明鏡四水が反応してるわ ! |
クレス | やっぱり精霊の影響……みたいだね。これ以上、被害が広まる前に精霊を捜そう。契約すれば温泉も元に戻るだろうからね。 |
ミリーナ | キールたちにも魔鏡通信で伝えておくわ。急ぎましょう。 |
クラース | …………。 |
クレス | クラースさん ? どうかしましたか ? |
クラース | い、いや……何でもない。温泉のおかげかいつもより調子がいいように感じてな。 |
クラース | ともかく、急ぎ精霊の捜索に出発するぞ。 |
キール | お前たち、ここにいたのか。 |
ミリーナ | キール ! 無事合流できてよかったわ !ミラとセルシウスも来てくれてありがとう。 |
ミラ=マクスウェル | それで、精霊は見つかったのか ? |
クレス | いや、このあたりはほとんど捜したけど結局見つからなかった。 |
クラース | 消去法的に……この洞窟にいるはずだが……。 |
ミリーナ | ……明鏡四水の反応も強くなっているわ ! |
キール | 正解のようだな。それなら今は先に進むのが先決だ。クラースも研究については後でいいよな ? |
クラース | もちろんだ。私としても急ぎ契約がしたい。 |
セルシウス | この気配 ! みんな、あそこよ ! |
ノーム | おぉー、よくここまで来たでしー。 |
ミラ=マクスウェル | やはり……地の精霊ノーム。 |
キール | ぼくたちは運がいいな。こいつと契約することができれば四大精霊がすべて揃うぞ。 |
クラース | 色々と話を聞きたいところだがいまはとにかく時間が惜しい。 |
コーキス | 俺たちは準備万端だ。 |
ノーム | 力を試す覚悟はあるってことでしか ? |
クレス | ああ、もちろんだ ! |
ノーム | うーん。なんだかみんなせっかちでしねー。 |
ノーム | けど、わかったでし。それじゃあはじめるでし ! |
コーキス | みんな ! いくぞ ! ! |
キャラクター | 6話【温泉4 ノーム】 |
ノーム | 強いでしねー。それじゃあ、僕と契約するでし。 |
クラース | 我、今、地の精に願い奉る指輪の盟約のもと我に精霊を従わせたまえ……。 |
クラース | 我が名はクラース……。 |
クレス | これで四大精霊すべてと契約完了しましたね !クラースさん ! おめでとうございます ! |
クラース | ありがとう。君たちのおかげだ。 |
アーチェ | よーし ! それじゃあ早くこんなジメジメした洞窟おさらばしようよ ! |
ロンドリーネ | きっと温泉も元に戻ってるよね。戻ったらまずは汗を流したいなぁ。 |
ミント | いつものようにエレメントの回収も忘れずにしないといけませんね。 |
チェスター | とにかく、これでクラースも召喚術が使えるようになったんだろ。ひとまず一件落着ってわけだ。 |
クラース | いや、これでようやくスタートラインに立てたと言ったところだろう。 |
クラース | セルシウス。ノームと契約を交わしたことで何か変化はあったか ? |
セルシウス | そうね……何というのかしら。クラースとの間にあった障壁が取り除かれて見晴らしがよくなったように感じるわ。 |
キール | よかった ! 研究結果から予想していた通り、今まで契約者と精霊を阻んでいた力、アイフリードの枷が外れたみたいだな ! |
キール | もちろんアイフリードの枷が 完全に解けたわけじゃないが、召喚術に 応じられる最低限の条件は満たされたってことだ! |
クラース | 後は私自身の問題か。よし。戻って実際に召喚術を―― |
イクス | 『うん ! ? どういうことだ ! ? 』 |
コーキス | マスター、どうかしたのか ? |
イクス | 『温泉地を見てみたんだけどどの温泉も元に戻ってないんだ』 |
コーキス | えっ ! ? どの温泉も元に戻ってない ! ?本当ですか、マスター ! ? |
キール | 何だって ! ? 温泉がとまった理由はノームの封印が弱まっていたことが原因のはずだろう ! ? |
ノーム | ちがうでしよー。僕は大人しくずっと眠っていたでし。 |
ミリーナ | つまり原因は他にあるということ ! ?イクス、周囲に何か変わったものはない ? |
イクス | 『いや、特に何も……うん ?ちょっと待て……暗くてよくみえないけど地下に何か蠢いて……』 |
コーキス | ……マスター ? |
イクス | 『な、なんだこれ ! ?こっちに猛スピードで近づいてきてるぞ ! ! 』 |
コーキス | え、えっと……マスターが何か近づいてきてるって !とにかくヤバい状況みたいです ! ! |
キール | おい ! もっとちゃんと説明してくれ ! |
ミリーナ | ! 地下から何か来るわ ! ! |
クラース | な、何だこいつは ! ? |
ミラ=マクスウェル | アンデッドドラゴン。特殊な魔鏡術を帯びたドラゴンの化石……だったな ? |
コーキス | あっ! 水泳大会の最後に突然現れたっていうヤツか!けど、どうしてまたいきなり!? |
キール | 場所が関係しているのかもしれないな。ここは海風村にも近い。とは言っても根本の原因は不明だが。 |
ミラ=マクスウェル | このまま放っておくわけにはいかない。始末するぞ ! |
クレス | それなら僕とコーキスで前衛を担当する。ノームとの戦闘の後でみんな消耗が激しいだろうから一気にかかろう ! |
コーキス | 了解だぜ、クレス様 !それじゃあ行くぞ―― |
ミリーナ | 待って ! この魔鏡術の強さは―― ! ! |
コーキス | ――はぁぁっ ! ! |
コーキス | な、何だ ! ? 全然効いてないぞ ! ?そんなバカな―― |
クレス | コーキス ! 危ない ! ! |
コーキス | ――ぐはっ ! ! |
ミント | コーキスさん ! ファーストエイド ! |
アーチェ | やってくれたわね。くらいなさいっ……アイスニードル ! ! |
アーチェ | うっそ ! ? これもダメなの ! ? |
ミリーナ | ! このアンデッドドラゴン、身体の奥に何か光る結晶を宿してるわ !これが核となって力を増しているのよ ! |
キール | 以前戦ったドラゴンと違うのはそういうことか !まさか攻撃が通じないのもその結晶が原因か ! ? |
ミリーナ | ええ、結晶の影響で擬似的な魔鏡術が発動し結果としてアニマによるシールドが全身に形成されたんだわ ! |
ミラ=マクスウェル | さしずめ結晶は増霊極のようなものか。ならば、あの結晶をなんとかすれば……。 |
セルシウス | けど、結晶を破壊したくてもシールドのせいで攻撃が通らないじゃない。 |
クレス | くそっ。どうすれば―― |
ロンドリーネ | クレス ! あぶない ! ! |
クレス | ――うわっ ! ! |
クラース | くそっ……やるしかないか ! ! |
キール | クラース ! ? まさか今ここで召喚術を使うつもりか ! ? |
クラース | ああ、そのまさかだ。 |
セルシウス | なるほど……召喚術による精霊の強力な一撃でならシールドを破壊できるはず ! |
キール | そんなのわかってる !現状ではそれしか対処の手段はないってこともな ! |
キール | だが、それとこれとは話は別だ !確かにぼくたちの研究により導き出された結論ではもうすでに精霊の契約者は召喚術を行使可能だが―― |
キール | クラースという契約者がこの世界で召喚術を行使できるかの確証はない !無理に発動させようとすればタダじゃすまないんだぞ ! |
アーチェ | な、何よそれ ! ? どういうこと ! ? |
クラース | 説明は後だ !いきなり実戦になってしまったが今この場で召喚術を試させてもらう ! |
クラース | (頼む……発動してくれ……) |
チェスター | おっ ! いけそうか ! ? |
キール | ……ダメだ。理由はわからないが徐々に力が弱まっている。あぁもうっ、いったいどういうことなんだ。 |
クラース | (くそっ……) |
クラース | イフ、リー……。 |
セルシウス | ! ? クラース、それ以上はやめなさい ! |
クラース | ……ぐっ ! ! |
ロンドリーネ | クラース ! ? ちょ、ちょっと大丈夫なの ! ? |
クラース | あ、あぁ……何ともない。 |
セルシウス | やせ我慢しない ! 呼吸してるのがやっとでしょ !みんな、クラースのことはわたしに任せて ! |
ミリーナ | 今の私たちに打てる手はないわ。撤退するわよ。 |
コーキス | け、けどアンデッドドラゴンはどうするんですか ! ? |
ミラ=マクスウェル | …………そこか。 |
ミラ=マクスウェル | イフリート ! ! |
コーキス | ミラ様 ! そいつに攻撃は……って、全然違うところに術を撃ってる ! ? |
ミリーナ | ! 洞窟を破壊してあいつを生き埋めにするのね ! |
ミラ=マクスウェル | 私も前にこうして助けられたことがあった。わずかだが時間稼ぎにはなるだろう。 |
イクス | 『脱出経路を案内する !コーキス、みんなを先導するんだ ! 』 |
コーキス | わかった !みんな ! こっちだ ! ! |
キャラクター | 7話【温泉7 洞窟から脱出3】 |
ミント | ……クラースさん、本当に大丈夫なのでしょうか。ずっと病室からでてきませんが。 |
ミラ=マクスウェル | 命に別状はない。引き続き、私とキールで看病する。 |
クレス | そうですか……よかった。 |
ミラ=マクスウェル | お前たちも今のうちに休んでくれ。いつアンデッドドラゴンが動き出すかわからないからな。 |
アーチェ | あーもうっ。いきなりドラゴンが現れたりクラースが召喚術を使おうとしてぶっ倒れたり何が何だかわからないよっ。 |
クレス | それに……四大精霊と契約して、アイフリードの枷も解除したのになぜクラースさんは召喚術を使うことができないんだ。 |
キール | それについてはぼくが説明しよう。 |
キール | まずスレイとミクリオを思い出して欲しい。スレイは人間。一方、ミクリオは天族……まぁこの世界では精霊に近い存在だ。 |
キール | この二人の力が融合することで神依は発動している。ここまではいいな ? |
コーキス | お、おう。なんとか。 |
キール | だが思い出して欲しい。セシリィやぼくたちの分析ではそもそもとして神依の発動自体が、非常に難しいものなんだ。 |
クレス | アステルさんの協力があったにしろ神依が発動したということ自体がすごいことだったんだね……。 |
キール | これは二人の強い因果のようなもの……分かりやすく言うならば二人の絆が起こした奇跡としか説明しようがない。 |
キール | だが、そのような奇跡としか言えない事象を起こしたスレイとミクリオであっても現状、神依の力を満足に行使できてはいないんだ。 |
クレス | つまり、人間が精霊の力を行使することはそれだけ難しいということかい ? |
キール | 厳密に言うならば異なるアニマ同士を融合させ安定化させるのが非常に難しいんだ。 |
コーキス | それがクラース様の召喚術とどう関係してるんだ ? |
キール | 考えてみろ。ただでさえ人間が精霊の力を行使するのは難しいうえに、クラースが契約している精霊は具現化世界の意識が統合されている存在なんだぞ。 |
ロンドリーネ | それってごちゃごちゃのアニマを取り込んで安定状態にしなくちゃいけないってこと ! ?一対一のアニマ融合でも難しいのに、できるの…… ? |
キール | ……可能性はあった。いま研究中ではあるが恐らく、ぼくたちには取り込んだアニマを融合、安定化させる器官のようなものが備わっている。 |
キール | 仮にこれをアニマチャネルと呼称しよう。しかし、このアニマチャネルは個人によって活性度合いが異なるみたいなんだ。 |
キール | つまり、エンコードの影響を受ける。 |
キール | たとえば霊力野を持つリーゼマクシア人、この世界でいうジュードはぼくと比較してアニマチャネルの活性度が高いだろう。 |
キール | しかしクラースは……精霊でもなければエルフでもなく特別な力を持たないただの人間だ……。ぼくと同じようにな……。 |
ミント | ……だから、アニマチャネルの活性度が低く実際、アイフリードの枷が弱まっても召喚術を行使できなかったのですね。 |
キール | ぼくの場合はエンコードでクレーメルケイジの晶霊が術という概念に置き換わっていた。だから晶霊術を行使できている。 |
キール | クレーメルケイジ内に具現化されたのが晶霊のままだったら……ぼくも晶霊術を使うことができなかったかもしれないな。 |
アーチェ | それって具現化された時点……ううん、さらにたどると本人の生まれながらの素質とかで魔術が使えるか決まっているようなものじゃん。 |
アーチェ | なんだか人間とエルフみたい……。 |
クレス | そんなのって……。クラースさんは人間でも魔術が使える、その証明に人生をかけてきた人なんですよ……。 |
チェスター | ……クレス。 |
クレス | クラースさんが絶対安静なのはわかっています。そしてミラさんとキール以外を病室に入れないようにと言っていることも。 |
クレス | けど、僕も会わせて欲しい。 |
ミラ=マクスウェル | ダメだ。通すわけにはいかない。 |
クレス | ……どうしてですか。 |
ミント | なら、せめて……本当のことを教えてください。病室から時々、苦しそうな声が聞こえてきます。ただ寝ているだけではないのですよね ? |
ミラ=マクスウェル | …………。 |
キール | クラースに口止めされていたが……これ以上隠すのは無理だろう。 |
キール | クラースは、召喚術に関する実験をしている。詳細な実験内容については控えさせてくれ……。 |
クレス | ……危険な実験じゃないですよね ? |
キール | …………。 |
コーキス | そんなっ ! クラース様は死にかけたんだぞ !いくらなんでもそんな危ないこと―― |
ミラ=マクスウェル | 忘れてはいないか ?アンデッドドラゴンに対抗するにはクラースが召喚術を成功させるほかないと。 |
クレス | それはわかってます…… !だけど…… ! |
キール | ……それだけじゃない。ファントムとの決戦に赴くお前たちをクラースはどのような気持ちで見送ったと思う。 |
キール | かつて共に歩んだ仲間の隣に自分は立つことができない……、そんな非力な自分をどう感じたと思う……。 |
ミラ=マクスウェル | クラースは己が使命を果たそうとしている。私はそんな彼と約束を交わした。だから、私はお前たちを通すことはできない。 |
クレス | …………。 |
ミラ=マクスウェル | もちろん……お前たちがクラースを案じているのは理解しているつもりだ。 |
クレス | ……ミラさん。いえ、僕たちの方こそ……すみません。 |
ミント | きっと……ミラさんとキールさんもおつらいはずなのに……。 |
イクス | 『 ! ? アンデッドドラゴンが動きだしたぞ !海風村の方に向かっている ! ! 』 |
コーキス | ドラゴンが海風村に向かってるってマスターが言ってます ! ! |
ミリーナ | 何ですって ! ? |
チェスター | おいおい、どうするんだよ ! ?このままじゃ村がヤバいんじゃないのか ! ? |
クレス | くそっ ! こんなときに限って ! ! |
クラース | はぁ……はぁ……。もう少し……埋まっていてくれていると……助かったんだがな……。 |
クレス | クラースさん ! ? |
キャラクター | 8話【温泉8 アンデッドドラゴンを倒すために】 |
クレス | クラースさん、大丈夫ですか ! ?顔色が真っ青だ…… ! ! |
アーチェ | やっぱり……危ない実験してたんじゃない。 |
クラース | どうしても自分の身体で試す必要があったからな……。なぁに……死にはしない程度のものさ。まぁミラルドがいたら止められていたかもしれんがな。 |
ミント | そんな体で動かないでください…… !すぐに治療します。 |
クラース | 私のことは構うな。それよりクレスたちに頼みがある。 |
クラース | ドラゴンを食い止めて欲しい。 |
クレス | もちろんそのつもりですけど……僕たちにはドラゴンを倒す手段が……。 |
クラース | 安心しろ。私が召喚術でシールドを打ち破る。 |
キール | 新しい召喚術理論が完成したのか ! ? |
クラース | その通りだ。この温泉旅行に参加してよかったよ。私たちの入った洞窟の温泉にはアニマチャネルを活性化させる効能があると判明した。 |
コーキス | 何だか入浴後に調子が良かったのは温泉の効能のおかげだったのか ! |
ミラ=マクスウェル | ビクエたちも訪れるわけだな。 |
キール | なるほど……わかってきたぞ。温泉成分を抽出、結晶化すれば……。 |
クラース | ああ。温泉成分を結晶化させたものにキールとの共同研究の理論を用いればアニマチャネル活性化装置が作れるはずだ。 |
クラース | マクスウェルの世界でいう増霊極のようなものだな。 |
ミリーナ | 待って。けどいまはどの温泉も枯れ果てているわよ。 |
コーキス | しかも原因不明のままだし。 |
クラース | 原因ならわかっている。すべてあのドラゴンのせいだ。 |
ロンドリーネ | どういうこと ! ? |
クラース | まずなぜアンデッドドラゴンが出現したかについて説明する。 |
クラース | 恐らく、あのドラゴンの化石は地下深く、複数の水脈の交流地点に埋まっていたんだ。 |
クラース | それが鏡殻変動の影響で地層に変化が生じ、周辺の温泉がドラゴンのいる交流地点に流れ込むようになった。 |
クラース | そして高純度の温泉成分の結晶が生成された。ドラゴンはその結晶を核として取り込みアンデッド化したというわけだ。 |
ミリーナ | ドラゴンの中にあった鉱物は温泉成分の結晶だったのね。 |
コーキス | けど、水泳大会のドラゴンにはなかったんですよね? |
キール | きっと視認できないほど脆く小さい状態だったんだ。地層の浅い場所に埋まっていたから核が小さくても地上に出てこられたんだろう。 |
クラース | ところが今回のアンデッドドラゴンは最悪だ。地下深くで身動きが取れなかったことで巨大かつ高純度の結晶が生成されてしまった。 |
クラース | そして地上には出られないまでも地下を移動できる程度になった際、更に力を増すため温泉の成分を求めた。 |
クラース | 元いた場所を巣として、そこに温泉が流れ込むよう水脈や地層を調整した……と言ったところか。 |
クラース | まぁ、召喚術でノームの力を使えばまた温泉は元に戻せる。解決策はわかっているのだが……。 |
キール | いまはその肝心な召喚術が使えない。つまり温泉を元に戻すことができないというわけだ。こんな状況でアニマチャネル活性化装置を作れるのか ? |
クラース | 完全なものは作れないだろう。いまセルシウスが各地で湯の花をかき集めているがよくて召喚術を1回発動するのが限度だ。 |
ミラ=マクスウェル | ……シールドを打ち破るチャンスは一度きり、か。 |
クラース | おまけに、時間とも戦わなくてはならない。 |
ミリーナ | さすがに私たちもずっとドラゴンを食い止めていることは難しいですもんね……。 |
クラース | だがこの戦いは私たちにとってチャンスでもある。 |
クラース | もし、あのドラゴンを倒し核である超高純度の結晶を手に入れることができたら私はいつでも召喚術が使用可能となる。 |
クラース | それだけじゃない。アニマチャネルの研究を飛躍的に進歩させ精霊装の実用化にもこぎ着けるはずだ。 |
キール | 待ってくれ。もしかして……その理論を応用すれば……。 |
キール | マクスウェル、君が本来の力を取り戻し四大を実体化することも可能になるかもしれない。 |
ミラ=マクスウェル | ! |
クラース | この戦いは私たちの今後の戦局を変えるとても大きな意義を持つ。 |
クラース | だからこそ、失敗は許されない。 |
クラース | 皆に誓おう。 |
クラース | 世界が変わろうと、私は変わらない。必ずや証明してみせよう。ただの人間でも魔術を、召喚術を使えるのだと。 |
クレス | クラースさん……。 |
クレス | わかりました。こっちは僕たちに任せてください。 |
クラース | ……お前たちを見送るのはこれで最後だ。だから、しばらく待っていてくれ。 |
クレス | はい。僕たちはいつだってクラースさんのことを信じてますよ。 |
クラース | ふっ……頼んだぞ。 |
ミリーナ | 行きましょうか。 |
クレス | ああ。クラースさんが来るまで何が何でも持ちこたえるんだ。 |
キャラクター | 9話【温泉10 アンデッドドラゴンの討伐】 |
クレス | はぁ……はぁ……。あのドラゴン……なんて強さなんだ。 |
コーキス | クレス様、交代だ !今度は俺が前に出る !いまのうちに休んでいてくれ ! |
クレス | すまない、頼むよ。 |
アーチェ | まったく……何なのよ、あのシールド。ダオスと同じくらい厄介なんだけど……。 |
チェスター | くそっ……。海風村への進行を遅らせるだけで……精一杯だぜ……。 |
ミリーナ | ……これ以上、戦いが長引くと危険ね。コーキスも強がっているけどだいぶ消耗しているわ。 |
ミント | 法術で癒すのも……あと数回しか……。 |
クレス | …………クラースさん。 |
ミラ=マクスウェル | ひとまず海風村の全住民の避難は済ませたぞ。 |
ミリーナ | ありがとう、ミラ。助かったわ。 |
ミラ=マクスウェル | ミリーナ、海風村の村長から伝言がある。村の統治権を一時的に譲渡するとのことだ。 |
アーチェ | えっ。それってどういうこと ? |
ミリーナ | ……砦として使ってもいいという意味でしょうね。 |
クレス | 待ってくれ !砦に使ってしまったら、村は滅茶苦茶だ…… ! |
ミラ=マクスウェル | 覚悟の上だろうな。有事の際は潮風村が海風村住民を受け入れると話もついているようだ。 |
ミリーナ | 村を砦として使わせてもらう。それが現状で一番理にかなった判断だと思うわ。 |
クレス | …………そう、だね。 |
コーキス | ――ぐはっ ! ! |
ロンドリーネ | さがって ! 私が代わる ! |
キール | ミント、コーキスに回復を ! |
ミラ=マクスウェル | 早々に決断する必要があるようだな。どうする、ミリーナ。 |
ミリーナ | 酷いことを言うようだけど、皆の安全を考えたら村を砦として使わせてもらった方がいいと思うわ。 |
クレス | …………。 |
ミリーナ | けど、どうするかはクレスさんが決めるべきだと思うの。 |
クレス | えっ、僕が ? |
ミリーナ | もちろん私が決めていいのなら責任を持って私が決断をくだすわ。 |
ミリーナ | けど、この戦いは様々な意義を持っている。村を守ること、ドラゴンの核を手に入れること、そして……クラースさんとの約束を果たすこと。 |
クレス | ……どこで待つか、それは約束を交わした僕が、僕たちが決めるべきということだね。 |
ミラ=マクスウェル | 私たちはお前の決定に従おう。 |
クレス | …………。 |
三人 | ……。 |
クレス | ……僕たちは様々なものを失ってきた。ミントはお母さん、アーチェは親友、僕とチェスターは……故郷と家族。 |
クレス | 大切なものを失う辛さは……痛いほどわかっている。 |
クレス | だから、僕はできることならそんな辛い思いを誰にもして欲しくないんだ。 |
クレス | 村を滅ぼさせはしない。僕たちだけの力で食い止めよう。 |
ミラ=マクスウェル | すでに皆、消耗しきっている。入れ替え体勢ではなく全員で応戦する必要があるぞ。 |
クレス | わかっています。あと少しの間しか僕たちは持たないだろうってことも。 |
クレス | けどここで引くわけにはいかない。クラースさんだって頑張っているんだ。 |
チェスター | その通りだぜ ! |
ミント | ええ。行きましょう。 |
ロンドリーネ | はぁ……はぁ……。クレスたち……あぁ、なるほど。 |
クレス | ロディ、ここは僕に任せてくれ。 |
ロンドリーネ | 大丈夫。私も最後まで戦い抜くよ。もうどこかに行ったりはしない。 |
ロンドリーネ | それに、こうなることもなんとなくわかっていたからね。 |
クレス | ……ロディ。 |
クレス | わかった。なら援護を頼む。 |
ロンドリーネ | 了解 ! |
クレス | くらえっ ! ! |
クレス | ……くっ ! |
チェスター | クレス ! 危ねぇ ! |
ミント | ダメです ! 間に合いません ! |
クレス | …………っ ! ! |
? ? ? | フリーズランサー ! |
セルシウス | まったく、無茶するんだから。 |
クレス | セルシウス ! ? ということは―― |
クラース | 待たせたな。 |
クレス | クラースさん ! ! |
アーチェ | も、もう ! 遅いわよ ! ! |
キール | アニマチャネル活性化装置が完成したのか ! ? |
クラース | 理論上はな。ここからはぶっつけ本番だ。 |
コーキス | あと少しの辛抱だ !クラース様が召喚術を発動させるまで俺たちでドラゴンを引きつけるぞ ! |
クラース | (頼む……発動してくれっ ! ) |
ミラ=マクスウェル | クラース ! そうではない ! |
クラース | な、なんだ ! ? 詠唱中だぞ ! |
ミラ=マクスウェル | 聞け、お前はこう考えているかもしれない。自分は人間、私は精霊マクスウェル。私たちは違うのだと。 |
ミラ=マクスウェル | だがそんなものは些末な問題だ。私とお前は似ている。今回の件でよくわかったよ。 |
クラース | ……マクスウェル。 |
ミラ=マクスウェル | クラース、ゆけっ !すでにコツは教えているはずだ ! |
クラース | ああ、そうだったな……。 |
クラース | (いまここには私を待ってくれていた仲間がいる。傷付きながら戦ってくれた彼らを前にし情けない姿など見せられるものか) |
クラース | (私の呼び声に意地でも応えてもらうぞ―― ! ! ) |
クラース | ――イフリートッ ! ! |
ミリーナ | シールドが壊れたわ ! |
キール | クラース ! やったぞ ! ! |
クラース | ……くっ。私はここまでのようだ。 |
クレス | 後は任せてください !クラースさんがくれたチャンス、無駄にはしません ! |
ミリーナ | シールドが再生する前に片付けるわよ !あの核を抜き取りましょう ! |
クレス | ――みんな、いくぞ ! ! |
キャラクター | 10話【温泉10 アンデッドドラゴンの討伐】 |
クレス | ――トドメだ ! ! |
キール | や、やった ! ドラゴンを倒したぞ ! ! |
クラース | 結晶も無事回収……んっ ! ? |
イフリート | ……力を感じる。 |
ウンディーネ | ええ。泉のように溢れてきます。 |
シルフ | これなら僕たち、いつでも召喚術に応じられるよ。 |
ノーム | 温泉、元に戻しておくでしねー。 |
クラース | ……四大精霊たち。ありがとう。改めて、今後もよろしく頼むよ。 |
クラース | もちろん、セルシウスも。 |
セルシウス | ええ。それじゃあ私たちは少し休ませてもらうわ。 |
チェスター | ったく。怒涛の展開続きでナレーション付ける暇すらなかったぜ。 |
クラース | お前たち……………。 |
ロンドリーネ | どうかしたの ? |
クラース | ふっ……いや、つくづく不思議なものだなと思ってな。 |
ミント | 不思議 ? 何のことですか ? |
クラース | ……私たちのことさ。私たちは本来、互いに出会うことのなかった存在だろう。 |
クラース | そして、元の世界でダオスを倒したとしてもその後には互いに元の時代に戻り、私はお前たちと二度と会うことはなかったはずだ。 |
クラース | しかし、今はこうして私たちは共に未来に向かって歩んでいる。 |
クラース | それが不思議であり同時に、とても嬉しく思う。 |
アーチェ | ……クラース。 |
クラース | だいぶ時間がかかったがようやく、追いつけたようだな。 |
クラース | ありがとう。待っていてくれて。 |
クレス | 当たり前ですよ。約束しましたから。これからもよろしくお願いします、クラースさん。 |
キール | さてと。ぼくは一足先に帰ってメルディと研究だ。これから更に忙しくなるぞ。 |
ミラ=マクスウェル | クラース。 |
クラース | どうした、マクスウェル。 |
ミラ=マクスウェル | 礼を言わせてくれ。お前のおかげで私も本来の力を発揮することができる。 |
クラース | まだ力を取り戻したわけじゃないだろう。研究はこれからだ。感謝するのは早いと思うぞ。 |
ミラ=マクスウェル | 前払い、というやつだ。信頼できる相手には先に対価を支払っておく場合もある、そうだろう ? |
クラース | ふっ……ずいぶん俗っぽい知識を持っているな。だが、承知した。お前の感謝の言葉、確かに受け取ったよ。 |
クラース | 任せてくれ、ミラ。 |