キャラクター | 1話【恩1 初詣】 |
コーキス | パイセン ! あけおめ !今年もよろしくな ! |
カーリャ | あけおめことよろ~♪ |
コーキス | あれ ? そういえばマスターとミリーナ様は ?パイセン、みんなで初詣に行こうって計画してただろ。 |
カーリャ | ミリーナさまがイクスさまにベッタベタだったのを見てやっぱり二人きりで過ごしてもらう方がいいかなって。あんなに楽しそうな姿、久しぶりでしたからね。 |
コーキス | そういうことか。そういえば二人にとってこんな穏やかな日も久しぶりだしな。 |
コーキス | うん。マスターとミリーナ様も鏡映点の人たちと同じように思い思い楽しく過ごしてもらうのが一番だ。 |
カーリャ | というわけで初詣は二人で行きましょう。その後は屋台巡りをしたり福袋を買ったりとにかくパーッとやりますよ。 |
コーキス | マスターとミリーナ様からもらったお年玉もあるしな。無駄遣いしない範囲で楽しむとするか。 |
カーリャ | ふっふっふ。なにを心配してるんですか。コーキスの分はこのカーリャがおごってやりますよ。 |
コーキス | マジで ! ? いいのかパイセン ! ? |
カーリャ | ず~~っと外に出られなくてお小遣いたまりまくってますからね~。 |
カーリャ | ミリーナさまがカーリャの動ける範囲を広げてくれましたし、どこまで遠出できるか試してみなきゃです ! |
カーリャ | それに、コーキスが死に物狂いで頑張ってきたのはちゃんと私もわかってますから。正月ですし、先輩からかわいい後輩へのお年玉ですよ。 |
コーキス | ……パイセン。 |
カーリャ | ん ? どうかしました ? |
コーキス | い、いや。何でもない。それじゃあお言葉に甘えさせてもらうぜ。とにかく、まずは初詣だな。 |
カーリャ | けっこう並んでますねぇ。って、……ルドガーさまたちじゃないですか。 |
ルドガー | コーキスとカーリャじゃないか。あけましておめでとう。 |
カーリャ | あけおめです~。ルドガーさまたちは初詣の帰りですか ? |
ルドガー | ああ。ついでにおみくじも引いてきたよ。結果は…………今年も大凶だったけどな。 |
ユリウス | おっ、俺も大凶だぞ。やはり兄弟だな、ルドガー。 |
コーキス | ユリウス様、なんで嬉しそうなんだよ……。 |
エル | ねぇ……エルもダイキョーなんですけど。 |
ユリウス | エルはルドガーの相棒だからじゃないか ? |
ルドガー | ちょっ、兄さん ! ? |
エル | ルドガーの巻き添えかぁ。まっ、アイボーだし仕方ないよね。 |
ユリウス | ああ。新年からお互いルドガーとの絆を実感できた。そう考えれば大凶も悪くはないな。 |
エル | けどルドガー、どうせなら大吉を引いてよね。 |
ルドガー | ……頑張るけど、俺だって望んで大凶を引いてるわけじゃないからな。 |
ユリウス | それじゃあ初詣も済んだことだし俺たちは街をまわってみるとするよ。コーキス、カーリャ。またな。 |
コーキス | 何だかんだルドガー様たちも楽しんでるみたいだな。パイセン、俺たちも後でおみくじ引こうぜ。 |
カーリャ | いいですよ。おみくじはあっち―― |
? ? ? | おっ……大凶か。どうやら今年も退屈することはなさそうだな。さてと……そろそろ待ち合わせ場所に向かうとするか。 |
コーキス | あの剣士の人も大凶みたいだな……って、パイセン !めっちゃチキン肌ってるぞ ! |
カーリャ | ぷるっぷるっ…… ! 新年初ぷるぷるです !コーキス、あの人は鏡映点っぽいですよ ! |
コーキス | あっ ! 言われてみればあの人、鏡映点リストでみかけた気がする ! |
カーリャ | そういえば……誰の仲間だったかは思い出せませんが。まぁ細かいことは置いといていまはとにかく追いかけますよ ! ! |
コーキス | あれぇ。あの剣士の人、どこ行ったんだ。 |
カーリャ | コーキス ! あそこです !誰かと話しているみたいですが―― |
コーキス | ロゼ様 ! |
ロゼ | うん ? コーキスとカーリャじゃん。あけおめー ! 今年もよろしくね。 |
ロクロウ | なんだ。お前たち、まだ俺をつけてきてたのか。 |
カーリャ | ありゃ……バレてましたか。 |
コーキス | えっと……ロゼ様、その人と知り合いなのか ? |
ロゼ | まあね。会うのは今日がはじめてだけど。今まで仲介を通して仕事を頼んでたんだ。 |
ロクロウ | だがどういう風の吹き回しか突然直接会いたいと言ってきた。しかも正月早々に、だ。 |
ロゼ | 察してると思うけど厄介事でさ。実は……って、この気配。さっそくお出ましみたいだね。 |
ロクロウ | なるほど。こいつらがその厄介事か。 |
コーキス | な、なんだ、こいつら ! ?魔物とも違う雰囲気だぞ ! |
カーリャ | コーキス ! 後ろ―― ! ! |
二人 | ! |
二人 | ランゲツ流 ! ? |
コーキス | いまの二人……全く同じ太刀筋だったぞ。 |
ロクロウ | お前、ロゼと言ったな。覚えておこう。 |
ロゼ | そりゃどうも。で、ロクロウ、こいつら倒せるよね ? |
ロクロウ | 応 ! |
ロゼ | よし ! それじゃあとっとと片付けますか !コーキスもいくよ ! |
コーキス | わかった ! |
キャラクター | 2話【恩1 初詣】 |
ロゼ | デゼルの雑煮、それとこっちのおせち料理も最高に美味しいよ。 |
デゼル | ふんっ。この程度、朝飯前だ。だがそれより―― |
ロクロウ | デゼルと言ったか。この雑煮、実に素晴らしい味付けだ。ご馳走になってすまないな。 |
デゼル | ……おい、ロゼ。どういうつもりだ。なんでここに憑魔……いや、業魔がいる。 |
ロゼ | ベルベットだって業魔じゃん。それに穢れとかもこの世界では関係ないんだし気にしてもしょうがないでしょ。 |
デゼル | チッ……。 |
ロゼ | 舌打ちしない。一応取引の相手でもあるんだから。 |
ロクロウ | 業魔として忌み嫌われるのには慣れている。おまけにデゼルは聖隷……いや天族だからな。警戒するのも無理はない、俺への気遣いは無用だ。 |
カーリャ | えっと。ロクロウさま……食事しながらざっとこの世界について説明しましたけどなにか質問とかありますか ? |
コーキス | 俺たちこういう説明とか苦手ですげぇわかりにくかったかもだけど……。 |
ロクロウ | いいや。問題ないぞ。カーリャもコーキスも一生懸命説明してくれて、ありがとうな。 |
カーリャ | ……本当ですか ?カーリャたちに気を使わなくていいですよ。 |
ロクロウ | 正直色々疑問はある。だがいまの俺はこの世界にもベルベットがいるとわかれば十分だ。 |
コーキス | ベルベット様 ? |
ロクロウ | あいつには恩があるんだ。それに、この世界でも、あいつと一緒に、剣を振るえると思うと楽しみだ。 |
ロゼ | その大太刀……かなりの業物だね。 |
ロクロウ | クロガネ征嵐、だ。 |
ロゼ | ……クロガネ征嵐。 |
ロクロウ | 悪いがこいつは売れないぞ。 |
ロゼ | 交渉の余地なし、と。それじゃあ諦めて仕事の話に戻るとしますか。 |
ロクロウ | さっきのイノシシ……怪亥の討伐依頼だったな。 |
ロゼ | そうそう。商品の流通に支障が出そうなんだよ。街や村への被害を防ぐためにも倒してきて欲しいんだ。引き受けてもらえる ? |
ロクロウ | もちろんだ。お前には日銭を稼がせてもらった恩もあるからな。 |
ロゼ | 仕事なんだし恩もなにもないと思うけど、まぁ、引き受けてくれるならサンキュ。助っ人は何人くらい必要 ? |
ロクロウ | 不要だ。お前たちが怪亥出現の原因を探り、解決するまでの間、街や村の人々に被害がでないよう斬って斬って斬りまくる……簡単な仕事だろ ? |
ロゼ | さすが夜叉の業魔。それじゃそっちはロクロウに任せて調査の件はイクスとミリーナに―― |
カーリャ | あぁっ ! 待ってください ! ! |
ロゼ | えっ ? なに ? |
カーリャ | えっと……イクスさまとミリーナさまには……お正月を満喫して欲しくて……。 |
ロゼ | ああ。そういうことか。けど代わりに頼めそうな人いないんだよね。あたしはあたしで別に仕事あるし。 |
コーキス | ロゼ様 ! よければ俺とパイセンに任せてくれ ! |
ロゼ | えぇ……大丈夫なの ? |
コーキス | ああ ! やる気は十分だ !なぁ、パイセン ? |
カーリャ | ドンとこいですよ ! ! |
ロゼ | いやぁ……けどさぁ。 |
ロクロウ | 本人たちもこう言ってるんだ。主君を想うこの二人の心意気、信じてやってもいいんじゃないか ? |
二人 | ロクロウ様 ! ! |
ロゼ | ……デゼル、街周辺の警護頼める ? |
デゼル | 問題ない。 |
ロゼ | なら、ロクロウは二人に同行して。調査しつつ群れや巣を見つけたら潰していって。 |
ロクロウ | 応。二人ともよろしく頼むぞ。 |
カーリャ | はい ! こちらこそです ! |
ロクロウ | よし。腹ごしらえも済んだことだしさっそく出発するとするか。 |
コーキス | その前にベルベット様たちと合流しなくていいんですか ? |
ロクロウ | お前たちと同じ理由さ。こっちの仕事をきっちり片付けてから合流するつもりだ。 |
カーリャ | ロクロウさま……義理堅くて、いい人ですね。 |
ロクロウ | 業魔だけどな ! |
ロゼ | 何であろうと剣の腕は信用してるよ。 |
ロクロウ | そういえば……ロゼ。お前、先ほどの剣術は誰から習った ? |
ロゼ | ランゲツ流のこと ? 育ての親からだよ。 |
ロクロウ | ……そうか。 |
ロゼ | ま、あたしはロクロウと違って囓った程度だけどさ。 |
ロクロウ | いいや。謙遜するな。お前の太刀筋もなかなかのものだったぞ。実戦経験も豊富なようだしな。 |
ロゼ | 正月からそういう物騒な話する ? |
ロクロウ | すまん。剣士の性でつい、な。ともかくいまは仕事だな。 |
ロゼ | うん。それじゃあ三人とも、よろしく頼んだよ。 |
キャラクター | 3話【恩2 怪亥退治に出発】 |
コーキス | ロゼ様から仕事を任せてもらったのはいいけど……。 |
カーリャ | 何からはじめればいいんですか~ ! !こういう頭使うのは苦手だって忘れてました~ ! ! |
コーキス | マスターやミリーナ様ならすぐ計画を立てられるんだろうけどな。まさか初っぱなから躓くなんて……抜かったぜ。 |
カーリャ | ロクロウさま。どうしましょう ? |
ロクロウ | 怪亥を斬って斬って斬りまくればいい。すべて斬ってしまえば事態は解決したも同然だろ。 |
カーリャ | ですけど無限に湧いてくるかもしれないじゃないですか。 |
ロクロウ | なら無限に斬り続ければいい。 |
コーキス | ロクロウ様……すげぇ頼もしいけどもしかして斬りたいだけなんじゃねぇか…… ? |
カーリャ | あ~もう、どうしましょう !鬼畜メガネに頼るのもシャクですし ! ! |
ユリウス | お前たち。ここにいたのか。 |
カーリャ | 優しいイケメガネことユリウスさま~♪それにルドガーさまも。カーリャたちに何か用ですか ? |
ルドガー | ロゼから預かり物だ。さっそくだがこの資料を見てくれ。 |
カーリャ | これ……紋章ですよね。モチーフは、イノシシですか ?なんかちょっとダサくて笑えますね。 |
ルドガー | デザインセンスの話は置いておいて……この紋章が刺繍されたローブを纏った神官たちがあちこちで目撃されているらしいんだ。 |
コーキス | なるほど…………で、それがどうかしたのか ? |
ユリウス | 今年の干支は亥。突然現れた怪亥。そして亥の紋章のローブを羽織った神官。偶然にしてはできすぎているとは思わないか ? |
二人 | あっ ! ! |
ロクロウ | お前らなぁ……。 |
カーリャ | カ、カーリャは気付いてましたよ ?コーキスはまだまだですね~。 |
コーキス | パイセン絶対ウソだろ ! |
ロクロウ | おいおい、お前たち。本題はこれからだろうが。ライフィセットを見習えとまでは言わんがもうちょい落ち着いて話を聞こうな ? |
二人 | ……は、はい。 |
ユリウス | 君がロクロウ・ランゲツか ?自己紹介が遅くなってすまない。俺はユリウス、そしてこっちは弟のルドガーだ。 |
ルドガー | これからよろしく頼む。コーキスとカーリャのことも。 |
ロクロウ | ああ。任せてくれ。 |
ルドガー | それから、今回の一件……俺と兄さんも協力をさせてもらう。 |
ロクロウ | お前たちも ? 何か訳ありか ? |
ルドガー | エル……俺の相棒の女の子がその神官にさらわれたんだ。 |
コーキス | エル様が ! ? |
ルドガー | 屋台で買い物をしていたとき、少し目を離したらいなくなっていたんだ。はじめは迷子になっただけかと思ったんだけど……。 |
ロクロウ | ……聞き込みをしているうちにそのエルという少女らしき人物を神官の男が連れ去ったという目撃情報が確認されたと。 |
ルドガー | くそっ……俺がしっかりしていれば。 |
ユリウス | ……ルドガー。 |
コーキス | エル様は無事なのか ! ?どうしてさらわれたんだよ ! ? |
ルドガー | 理由はわからない。だが……あいつら、エルに何かしたみたいなんだ。 |
ロクロウ | 何かって……どういう意味だ ? |
ルドガー | 目撃情報によると……エルは瞳がとろんとしてやや頬が赤くなっていたらしい。あと、ろれつが上手くまわっていなかったとか。 |
ルドガー | くそっ……あいつら……いったいエルに何をしたんだっ ! ! |
四人 | …………。 |
ルドガー | なんだよ。みんな黙って。 |
コーキス | パイセン……確か屋台で甘酒、売ってたよな ? |
カーリャ | 売ってましたね。 |
コーキス | 俺、頭よくないから間違ってるかもだけど……エル様、甘酒を飲んでウトウトしてたところを保護されただけだったりしないか…… ? |
カーリャ | カーリャもそう思ったんですけど……ルドガーさま、ドシリアスで語ってるから言い出せないというか……。 |
コーキス | ユリウス様かロクロウ様……代わりに指摘してくれ……頼む ! |
ユリウス | いや……ルドガー。そのエルがさらわれたという話なんだが……。 |
ルドガー | 兄さんも許せないだろ ! ?あんな小さな子に何かするなんて !頼む……兄さんも力を貸してくれ ! |
ユリウス | ……分かった。ならば、俺も全力で力を貸そう。エルはお前の、大切な相棒だもんな。 |
二人 | (ユリウス様~~っ ! ! ) |
ロクロウ | ……エルがどこでどうしているか今は、ハッキリしたことはわからないんだな。 |
ロクロウ | だがどちらにせよ、エルの居場所をつきとめるには神官を追えばいいわけだ。だったら、はやく調査を始めようぜ。 |
二人 | (ロクロウ様、それはそうだけど~っ ! ! ) |
ルドガー | ロクロウの言うとおり善は急げだ。さっそくこの5人で行動を開始しよう。 |
ルル | ナァ~ ! |
ルドガー | ルルもよろしく頼んだぞ。 |
ユリウス | ルドガーはルルと一緒に現地調査をしてくれ。紋章、神官、怪亥、そしてエルの目撃情報、何か判明したら、俺に魔鏡通信で報告を頼む。 |
ルドガー | わかった。兄さんはどうするんだ ? |
ユリウス | 俺はカロル調査室で資料や文献を元にした調査、及びお前たちへの伝令役を務めることにするよ。 |
ロクロウ | それは心強い ! |
カーリャ | 優しいインテリメガネ素敵すぎますぅ~♪ |
ユリウス | ルドガー。また少し離れることになるが……。 |
ルドガー | ……兄さん ? |
ユリウス | …………いや、何でもない。何か困ったことがあったら連絡をくれ。 |
ルドガー | ああ。わかった、こっちは任せてくれ。 |
カーリャ | ユリウスさま、カーリャたちは何をすればいいですか ? |
ユリウス | コーキス、ロクロウ、そしてカーリャはデゼルの指示に従って怪亥の討伐を行ってくれ。どうやら予想以上に怪亥が出現しているらしい。 |
ユリウス | それに経験則ではあるが……時歪の因子のように特定の怪亥を倒せば事態が収束する場合も考えられる。 |
ユリウス | ユーリたちの話では去年出現した怪戌たちはその主を倒すことで解決したようだしな。今回も同様の確率は高いと俺は考えている。 |
ロクロウ | とにかく、斬ればいいってことだな。 |
コーキス | そういうわかりやすいのを待ってたぜ ! |
カーリャ | ユリウスさまのおかげでバッチリですね。風を読む力で街を警戒中のデゼルさまに指示をもらいつつ怪亥退治に出発しましょー ! ! |
キャラクター | 4話【恩3 怪亥を捜して】 |
コーキス | デゼル様によるとこの村の周辺に怪亥の群れがいるって話だったよな。 |
ロクロウ | 村の様子を見たところではまだこちらには来ていないようだな。まぁ、悲惨な状況であることに変わりはないが。 |
カーリャ | ……鏡殻変動の影響で、家が壊れたり畑が荒れちゃったりしてますね。 |
ロクロウ | そう暗い顔をするな。お前たち、あの集まりをみてみろ。 |
コーキス | ……すごい良い匂いがするな。みんなで鍋を囲っているのか ? |
ロクロウ | この村の名産品であるウリボア、その煮込みらしい。おせち料理や雑煮……世間一般で言う正月料理は貧しくて食べることはできなくても新年は祝える。 |
ロクロウ | 人間っていうのはたくましいと思わないか ? |
カーリャ | カーリャたちだけじゃなく……どんな人たちも懸命に生きているんですね。 |
コーキス | 怪亥の群れを捜しに行こう。この村に被害がでないように倒さなきゃ。 |
ロクロウ | そうだな……って、うん ? |
ライフィセット | えっ……ロクロウ ! ? ロクロウじゃないか ! ! |
ロクロウ | おっ、ライフィセットか。あけましておめでとう。久しぶりだな。元気にしていたか ? |
ライフィセット | あけましておめでとう……って、それよりもまずはロクロウのことでしょ !何でコーキスたちと一緒にいるの ! ? |
ロクロウ | わかった、わかった。落ち着け。今、経緯を説明してやるから。 |
コーキス | ライフィセット様、もしよければロクロウ様に具現化とかについても説明してくれないか ?俺たちじゃうまくできなくてさ。 |
ライフィセット | う、うん。わかった。スレイたちのこともあるから……。ロクロウ、落ち着いて聞いてね。 |
ロクロウ | 安心しろ。俺はいつでも落ち着いていただろ ? |
ライフィセット | もう……よく言うよ。それじゃあ説明するね。 |
ロクロウ | ほう。我らが災禍の顕主が未来の導師一行と対決し、その後アイゼンが未来の妹と再会しただけに飽き足らずベルベットの味覚がエンコードにより戻っていた、と。 |
ロクロウ | 面白いっ ! いやぁ、俺もその場に居合わせたかった ! |
ライフィセット | ひとまず今までのことや具現化については理解できた ? |
ロクロウ | 無論だ。ありがとうな、ライフィセット。 |
ベルベット | フィー、買い物にどれだけ時間かかってるの……って、ロクロウ ? なんで、あんた……。 |
ロクロウ | やっと会えたな。まだ恩返しが終わってないだろう ?それから、あけましておめでとう、ベルベット。 |
ベルベット | ふっ……どんだけ義理堅いのよ。 |
エレノア | ロクロウ ! あなたも具現化されていたのですね ! |
マギルゥ | これでようやく勢揃いといったところかの。どこかの死神を除けばじゃが。 |
ロクロウ | ハッハッハ。海でも空でもアイゼンは変わらないな。まぁ、どうせしぶとく生きているだろう。 |
ロクロウ | ともかくエレノアもマギルゥもあけましておめでとう。もちろんビエンフーもな。 |
エレノア | はい。あけましておめでとうございます。 |
ビエンフー | あけおめでフ~♪やっぱり正月は賑やかでいいでフよね~ ! |
マギルゥ | なぁにが、おめでたいものか。ついさっきまで儂はそこの業魔女にウリボアをおびきだす囮をさせられていたんじゃぞ。 |
ロクロウ | ほう。お前たちはウリボア狩りに来ていたのか。 |
ライフィセット | 今年は亥年でしょ。ティル・ナ・ノーグでは亥年にイノシシやウリボア料理を食べると縁起がいいんだって。だからせっかくだしって。 |
ベルベット | エサがダメだったのかあまり狩れなかったけどね。まぁ、少ないけどこれで満足するわ。命に感謝して、美味しく頂きましょう。 |
マギルゥ | うんうんそうじゃな……って、おーい、ベルベットや。不猟は鏡殻変動の影響じゃろう ?ウリボアと同様に儂にも命の尊さがあるのじゃぞ ? |
エレノア | ところでロクロウは何故こんなところに ?しかもコーキスとカーリャと一緒に。 |
ライフィセット | さっき怪亥の群れを倒しにって―― |
ロクロウ | 武者修行だ。 |
エレノア | 武者修行 ? |
ロクロウ | そうだよな ? コーキス ? |
コーキス | あ、あああ、ああ。その通りだ。ロクロウ様に剣術を指南してもらってるところでさ。 |
ライフィセット | ……ロクロウ。 |
ロクロウ | …………。 |
ライフィセット | ……あっ。 |
ライフィセット | …………うん、わかった。 |
マギルゥ | なぁーに熱い視線を送り合っているんじゃか。漢と漢の友情とかなんとか言って次は拳で語り出したりせんじゃろうな。 |
ロクロウ | 女にはわかるまい。特に口から生まれたような魔女にはな。 |
ロクロウ | というわけでベルベット。悪いが恩返しは一時中断だ。 |
ベルベット | 何言ってるの。どうせこれも恩返しの一環なんでしょ。 |
ロクロウ | さあ、何のことだろうな。武者修行だと言ったはずだが。 |
ベルベット | 女の勘を舐めないことね。まぁ、別にいいけど。それじゃああたしたちは行くわ。 |
ロクロウ | 応。また後でな。 |
ライフィセット | うん。あとでゆっくり話そうね、ロクロウ。 |
マギルゥ | 生きて帰ってこられればじゃがな~。 |
エレノア | ……で、では。 |
コーキス | ロクロウ様、あれでよかったんですか ? |
カーリャ | 絶対ベルベットさま、気付いてましたよね ?カーリャはなんだかクールで格好いいと思いつつも喉に小骨がつかえたような~~っ。 |
ロクロウ | いいんだよ。これが俺たちなのさ。それじゃあ出発するぞ。 |
コーキス | ああ。武者修行だな。 |
エレノア | ………………。 |
キャラクター | 5話【恩5 怪亥】 |
カーリャ | なかなか怪亥の群れがみつかりませんねぇ。 |
ロクロウ | だがそろそろ遭遇してもおかしくない。お前たち、気を抜くなよ。 |
コーキス | あっ……ちょっと待ってくれ。ユリウス様から魔鏡通信だ。 |
ユリウス | 朗報だ。イノシシの紋様についての文献を見つけたぞ。どうやら地方の民間信仰に関係があるようだ。 |
コーキス | さすがユリウス様 !やっぱ頭が良い人ってかっけぇな ! |
ユリウス | 褒めても何もでないぞ。とにかく今はルドガーに信仰組織の本拠地である神殿の場所を探ってもらっているところだ。 |
ロクロウ | そこの神殿に噂の神官たちはいるんだよな。だったらエルもその神殿にいるとみて間違いない、と。居場所は判明したも同然だな。 |
カーリャ | 信仰組織ですかぁ……。やっぱり悪の秘密結社だったりするんですか ?となるとエルさまが心配ですが……。 |
ユリウス | いや。資料によると規模が小さいからあまり知られていないようだが歴史ある真っ当な民間信仰組織のようだった。 |
ユリウス | だからまぁ……エルも無事だろう。……もちろんルドガーの判断が絶対に間違っているとは思っていないがな。 |
ロクロウ | なるほど。弟を一人前として扱っているからこそ、その判断を信じて見守ってやる……と。ルドガーは良い兄貴を持ったな。 |
ユリウス | そうでもないさ……。 |
ロクロウ | ……これは失礼した。込み入った事情があったようだな。 |
ユリウス | いいや。気にすることはない。 |
ロクロウ | ……兄弟と言っても一つに括れないものもあるな。 |
ユリウス | ……ロクロウ。もしかして君も ?いや、すまない。無粋だったな。 |
ロクロウ | いいや。これでおあいこだ。お互い水に流そうぜ、ユリウス。 |
ユリウス | ふっ……そうだな。それでは、話を戻すとしよう。 |
ユリウス | この民間信仰組織だが文献によるとかつて怪亥が出現した際、群れの主を倒すことでそれを鎮めた過去があると判明した。 |
コーキス | えっ……それってつまり昔も怪亥が出現したことがあったってことか ! ? |
ユリウス | しかし、依然として怪亥出現の原因は不明のままだ。もしかしたら神殿に保管されている文献を確認すればわかるかもしれないが……。 |
ロクロウ | ほう、解決の糸口は見えてきたな。 |
ユリウス | ああ。この文献によると主を倒せば他の怪亥は消滅すると書かれている。 |
ユリウス | 君たちは引き続き群れを捜索、怪亥の主を見つけたら討伐をしてくれ。 |
ロクロウ | 承知した。 |
ユリウス | ロクロウ、型は違えど同じ二刀流の使い手として君の腕前は信用している。だが何が起こるか不明だ。討伐不可能と判断した場合は潔く撤退するようにな。 |
ロクロウ | すまんな。それは約束できん。死ぬことになろうと俺は戦い続けるかもしれん。 |
コーキス | えぇ……ロクロウ様、マジかよ……。しかもめっちゃ冷静に言ってるし……。 |
ロクロウ | そんなヤバい奴を見る目をするな。仕方がないだろう ?俺は夜叉の業魔であり剣士なんだからな ! |
カーリャ | 開き直りっぷりが気持ちよすぎてカーリャたちが間違っているように感じてきます……。 |
ロクロウ | いいや、それは違う。コーキスとカーリャは俺に構わずヤバいと思ったら逃げろよ ?命あっての物種というやつだ。 |
ユリウス | ……ロクロウのこともわかってきたよ。それでは対処の仕方は任せる。よろしく頼んだぞ。 |
ロクロウ | 応 ! |
コーキス | よし。それじゃあ群れとその主を捜しに―― |
ロクロウ | ――待て ! |
コーキス | えっ ? |
ロクロウ | ……ここから離れているが無数の動物の足音、そして戦いの音が微かにする。 |
ロクロウ | まさか、あいつ―― ! ! |
コーキス | あっ ! ロクロウ様 ! ! |
カーリャ | コーキス ! 何やってるんですか !追いかけますよ ! |
エレノア | クッ……なんなんですか、この業魔とも光魔とも違う魔物は。倒しても倒しても切りがありません。 |
エレノア | あなたが群れの主というわけですか。だったら、雑魚に構わず―― |
エレノア | (後ろから―― !これは躱せな――) |
ロクロウ | ――破ッ ! ! |
エレノア | ロクロウ ! あ、ありがとう―― |
ロクロウ | どうしたんだ !たった一人で、こんな森の奥まで来るなんて不用心だぞ、エレノア ! |
エレノア | ……すみません。 |
コーキス | はぁはぁ……ロクロウ様、足早ぇ……。 |
ロクロウ | コーキス、エレノア。まだやれるな ? |
コーキス | ああ ! 全然余裕だ ! |
エレノア | もちろんですよ。 |
ロクロウ | ちょうど怪亥の主もいるみたいだ !一気に行くぞ ! ! |
キャラクター | 6話【恩5 怪亥】 |
ロクロウ | ――破ッ ! ! |
コーキス | す、すげぇ。あんな大物を一太刀で……。 |
カーリャ | 雑魚も消滅したみたいですよ~ ! |
エレノア | よくわからない魔物でしたがこれで一件落着のようですね。 |
ロクロウ | ……エレノア。話がある。 |
エレノア | はい……。 |
ロクロウ | すまなかった。 |
エレノア | ……えっ。 |
ロクロウ | 考えてみたんだがお前がこんなところまで一人で来たのは俺たちを心配して追いかけてきたからだろう。 |
ロクロウ | ならお前が危険な目にあったのはお前を心配させた俺が原因ということになる。なのにキツく言ってしまった……御免。 |
エレノア | い、いえ……。ロクロウの言うとおり確かに私も不用心なことをしたという自覚はありますから……謝られるほどでは。 |
ロクロウ | いいや。それだけじゃない。お前は俺たちの中でも割と真っ当な人間だったな。久しぶりで忘れかけていた。 |
エレノア | ……そうですよ。普通、心配するに決まってるじゃないですか。追いかけない方がおかしいって私は思います。 |
エレノア | そもそも、ちゃんと言ってくれればよかったんです。変に隠したりするから。それに、ロクロウは嘘が下手過ぎます。 |
ロクロウ | ははっ。エレノアに言われてしまったな。これは一本取られた。 |
ロクロウ | なにはともあれ、無事なようでなによりだ。 |
エレノア | ええ。あなたのおかげです。ありがとうございます。 |
カーリャ | ロクロウさま……いい業魔ですね。どおりでライフィセットさまがアイゼンさまと同じくらい格好いいって言うわけです。 |
コーキス | ああ。強いだけじゃなくて気遣いもできて優しくて……ああいう男って、なんだか憧れるな。 |
エレノア | ん ? 優しいって……。 |
エレノア | まさかロクロウ……感情が……心が戻ったんですか ! ?ベルベットの味覚が戻ったように ! |
ロクロウ | …………黙っていたがお前には隠せなかったようだな。 |
エレノア | ……ロクロウッ ! ! |
ロクロウ | な~んてなっ !どうだ ? 俺の本気の嘘はなかなかのものだろ ? |
エレノア | …………。 |
コーキス | パイセン。これって……。 |
カーリャ | ええ。ロクロウさま、やっちまいましたね。 |
エレノア | 正座ッ ! ! |
ロクロウ | はい ! って、あまりの迫力に身体が勝手に。 |
エレノア | なんですか ! その心ない冗談は !さすがに笑えませんよ ! |
ロクロウ | 心ない冗談って言われても、俺は業魔だからな。 |
エレノア | そういう話をしているんじゃありません ! |
エレノア | まったく、やはりロクロウは業魔ですね。 |
ロクロウ | ああ。この世界でもちゃんと業魔だ。 |
エレノア | そして、ちゃんとロクロウだとわかりました。 |
ロクロウ | ならよかった。それじゃあ怪亥の主も倒したことだしひとまず村に戻るとするか。 |
コーキス | その前にユリウス様に一度連絡を……って、ちょうど魔鏡通信だ。 |
ユリウス | コーキス。そっちは無事か ? |
コーキス | ああ。バッチリ怪亥の主を倒したぜ。文献にあったとおり、他の怪亥も消滅した。 |
ユリウス | それはなによりだ。よくやってくれた。だが……またしても緊急事態だ。すまないが大至急、村に戻ってくれ。 |
ロクロウ | 何かあったのか ? |
ユリウス | 村で謎の奇病が発生した。 |
キャラクター | 7話【恩7 村に到着】 |
ロクロウ | おお。これはまた凄まじい光景だな。まさにこの村、地獄絵図だ。 |
ユリウス | 高熱、腹痛、手足の痺れから笑い苦しむ者。村人たちがそれぞれ違った症状の奇病に苦しんでいる。こんなこと通常はありえん。 |
エレノア | しかも聖隷術や薬草……何を試しても一切効きません。あんな小さい子供まで熱にうなされて……。それなのに……私は何もできないなんて。 |
ロクロウ | ……エレノア。 |
エレノア | だ、大丈夫です。少しだけ……風邪を引いたときのモアナを思い出しただけですから。 |
カーリャ | ユリウスさま~ ! ただいま戻りましたよ ! |
コーキス | ユリウス様が気にしていた通りだったぜ。怪亥の主……確かに埋葬したはずなのにその死骸が一片の肉片もなく消えてたんだ。 |
エレノア | 何ですって ! ? |
ユリウス | やはりか……だとするとこの奇病も怪亥が原因とみて間違いない。やはり文献から紐解いた仮説は正しかったようだ。 |
ロクロウ | 仮説 ? |
ユリウス | 過去、怪亥が出現した年に謎の奇病が発生し、怪亥を鎮めたことで奇病が治まった。複数の文献の時系列を整理して気付いたんだ。 |
ユリウス | もっとも、ここまで酷い奇病の発生ははじめてのケースだがな。 |
ロクロウ | ともかく奇病の対処の仕方はわかったわけだ。 |
エレノア | 急ぎ怪亥の主を捜索、今度こそ鎮めましょう。躯が消えていたということは他の場所に出現しているはずです。 |
ロクロウ | 落ち着け。その怪亥の主の鎮め方がいまの俺たちにはわからん。 |
ユリウス | ……ただ倒せばよかったわけじゃない。どうやら鎮めるには何か他に儀式が必要だったのかもしれないな。 |
コーキス | ……儀式 ? |
ユリウス | それは俺にもわからん。神殿の神官は知ってるかもしれんが……。 |
ルドガー | 兄さんたち ! ここにいたのか ! |
ユリウス | ルドガー ! ? |
ルドガー | 聞いてくれ。神殿の居場所を突き止めた。 |
ユリウス | ナイスタイミングだ、ルドガー。よくやったな。 |
ルドガー | あと、エルの安否も確認した。 |
ユリウス | 無事だったか ? |
ルドガー | それが……甘酒に気持ちよくなってフラフラしていたところを保護されただけ、らしい。誘拐とかじゃなかったみたいだ。 |
ルドガー | 屋台で売っていた甘酒を口にしたみたいで……。神官たちもみんな優しくていい人だった。 |
四人 | やっぱり。 |
ルドガー | えっ…… ? もしかして、みんな……。 |
四人 | ………………。 |
ルドガー | えええぇぇっ ! ? |
エレノア | ま、まぁ……エルが見つかったならよかったじゃないですか。 |
コーキス | とにかく神殿まで案内を頼むよ、ルドガー様。 |
キャラクター | 8話【恩8 エルを迎えに行こう】 |
エル | あははっ。ルドガーってばエルが誘拐されたと思ってたんだ。 |
ユリウス | エル、笑わないでやってくれ。とても心配してたんだ。 |
エル | そっか、そうだよね。心配かけてごめんねルドガー。 |
ルドガー | いや、俺の勘違いだったわけだしとにかく、エルが無事でよかったよ。 |
ルドガー | けど……せめて兄さんには言って欲しかった……。 |
ロクロウ | だがこれも兄貴の気遣い。そうだよな、ユリウス。 |
ユリウス | ロ、ロクロウ……。 |
ルドガー | どういうこと ? |
ユリウス | ……ルドガー、お前は立派に育った。だから……今までのようにお前の考えや行動に口出しするのも悪いと思ってな。 |
ユリウス | だが今回は言うべきだったようだ。なかなか境界線が難しいな……すまん。 |
ルドガー | ……兄さん。 |
エル | ルドガーってたまに抜けてるところがあるからね。エルもルドガーを支えるのには苦労してるもん。 |
ルドガー | はは…………苦労をかけて悪かったな。 |
エル | だから、ユリウスもたまにはルドガーを支えるの手伝ってもいいって思うな。 |
ユリウス | ……エル。そうだな、確かにやりすぎはいかんがたまにはいいよな。 |
エル | そうそう ! アイボーと兄弟のトッケン ! |
ユリウス | ルドガー。エルはまだこんなに小さいのに賢くて良い子だな。さすがお前が選んだ相棒だ。 |
ルドガー | ……兄さん。なんだか最近、エルに対してちょっと甘くないか ? |
エル | ぜ、全然そんなときないしー。 |
ルドガー | たくさんお年玉もらったの知ってるぞ。 |
エル | ぎくっ。 |
ユリウス | 何て言うんだ……。姪ができたらこんな感じに接するべきかと……。って、何を俺はおじさんくさいことを。 |
エル | そうだよ。おじさんくさいのキンシ ! |
ユリウス | そうだな。またエルに“メガネのおじさん”って言われないよう、俺も気をつけるよ。 |
ルドガー | やっぱり甘くなってる気がする……。 |
ルル | ナァ~♪ |
エレノア | 何はともあれエルが無事でよかったです。 |
コーキス | あとは怪亥の主を鎮めれば奇病も治まって今度こそ一件落着だな。 |
カーリャ | で、どうすればいいんですか ? |
ユリウス | 神官たちから話を聞き、この神殿に保管されていた文献も読ませてもらった。やはり倒した後に儀式を執り行う必要がある。 |
エレノア | それで、その儀式とは ?何を行えばよいのですか ? |
ユリウス | 村で食されたウリボアの骨と一緒に怪亥の主の骨を御焚き上げする。 |
ロクロウ | 御焚き上げ ? |
ユリウス | 頂いた命に感謝を示す意味があるらしい。 |
ユリウス | 毎年あの村ではウリボアの骨の御焚き上げをやっているそうなのだが今年は鏡殻変動の影響もありできなかったそうだ。 |
ユリウス | 神殿の文献によると、村で御焚き上げができなかった年に怪亥は出現している。同時に奇病の発生も。 |
ロクロウ | 命を頂いた恩。それを忘れた人間へのタタリ……怪亥の出現にはそういう意味があったのか。 |
ユリウス | 無病息災の加護が信じられている猪の神様がへそをまげて色々な奇病を発生させた。そう考えれば村での奇妙な現象も納得だ。 |
ユリウス | おまけに今年は亥年。だから怪亥の力も増し奇病の症状も酷かったんだろうな。 |
コーキス | 怪亥の力が増し……って、そうか。怪亥が過去に類を見ないほど大量発生したのも亥年だったからだな。 |
カーリャ | 地方の民間信仰ですからカーリャたちにはよくわかりませんが不思議なこともあるものですね……。 |
エレノア | 待ってください。それってつまり……あの村で狩りをしてウリボアを食べた人がタタリの対象になるということですよね。 |
ロクロウ | ベルベットたちも狩ったウリボアを料理して食べたかもしれないな。 |
エレノア | 急ぎましょう。ベルベットたちのためにも、そして村の人たちのためにも。 |
コーキス | ああ ! 怪亥の被害を食い止めるためにも ! |
ユリウス | ……だがひとつ、気がかりなことがある。俺たちはあの村の住民でもなければウリボアの肉も口にしていない。 |
ユリウス | 俺たちに、怪亥の主を鎮める資格はあるのか……。 |
ロクロウ | ベルベットが狩りをした。で、俺たちはベルベットと顔見知りだ。資格がないとも言えないだろう ? |
コーキス | ロクロウ様。本心はまた斬りたいだけだろ ? |
ロクロウ | 応 ! |
エレノア | やっぱり自分のためなんですね。その理由、こじつけもいいところです。 |
ロクロウ | さてな。 |
エレノア | まったく……。 |
ロクロウ | だが、そんなもんで十分だろう。やってダメだったらその時はその時だ。 |
ルドガー | そうだな。それに亥年の影響で奇病が酷く村人たちは御焚き上げどころか力を増してる怪亥と戦えるはずがない。 |
ロクロウ | そういうことだ。 |
コーキス | なら早く怪亥の主を鎮めて楽しい正月を取り戻そうぜ ! |
カーリャ | そうですよ ! カーリャたちなんてまだ初詣もできてないんですから。 |
ロクロウ | よし。それじゃあ出発だ。 |
ルル | ナァー ! |
キャラクター | 9話【恩10 怪亥の主】 |
ロクロウ | この気配……そろそろだな。 |
エレノア | ユリウス、ルドガー。二人は村に怪亥がいかないようお願いします。 |
ルドガー | ああ。任せてくれ。 |
エル | その間にエルとルルで村のウリボアの骨を集めとく ! |
ルル | ナァ~♪ |
エレノア | ええ。よろしくお願いしますね。 |
コーキス | あっ。魔鏡通信……ロゼ様からだ。 |
ロゼ | お疲れ~ ! 途中経過を聞いたよ !もうちょいで怪亥の件、解決するらしいじゃん !これで流通経路も元通りだね ! |
ロクロウ | その予定だが……捕らぬ狸のなんとやら、とも言うぞ ? |
ロゼ | あたしだって腕を見込んで頼んでるんだからね。正真正銘のランゲツ流の使い手なら余裕でしょ。 |
ロゼ | デゼルが料理と心水も用意して待ってるからはやく片付けて戻ってきてね、じゃ ! |
ロクロウ | 心水か……うん。それはいい。ルドガー、ユリウス。終わったら一杯どうだ ? |
ユリウス | ああ。付き合おう。 |
エル | エルもジュースで参加する ! |
ロクロウ | ならエレノアは甘酒で参加だな。 |
エレノア | ええ、いいですよ。 |
コーキス | 俺も甘酒、飲んでみたい ! |
カーリャ | カーリャも ! |
ロクロウ | じゃあ、早々に平らげて宴を楽しもうぜ ! |
コーキス | ああっ ! いくぞ ! |
コーキス | ロクロウ様 ! エレノア様 !怪亥の主をみつけたぞ ! |
エレノア | いや、待ってください。 |
ロクロウ | あそこにいるのは―― |
ベルベット | 奇遇ね。 |
ロクロウ | ベルベット……お前どうして……。 |
エレノア | まさかやっぱり心配して―― |
ベルベット | 違うわ。ウリボアがもう少し欲しくなっただけ。 |
ライフィセット | たまたまってことだよね。 |
マギルゥ | 儂は暇つぶしじゃがな。 |
ロクロウ | ふっ……なるほど。お前たちも相変わらずのようだな。 |
ベルベット | このイノシシのせいで狩りがうまくいかなくて困ってるのよ。ロクロウ、手伝ってくれるわよね ? |
ロクロウ | 当然だ。肉は多いほどいいんだろう ? |
コーキス | それじゃあ今度こそ怪亥の主を鎮めるぞ ! ! |
ロクロウ | ああっ ! いくぞっ ! ! |
キャラクター | 10話【恩10 怪亥の主】 |
コーキス | よしっ ! もう少しで倒せるぞ ! ! |
ロクロウ | 邪魔だっ ! ! |
コーキス | ――うわっ ! ! |
カーリャ | コーキス ! ! |
ロクロウ | ははっ……さっき戦ったより強くなってるな !それでこそ斬りがいがあるってもんだ ! ! |
ロクロウ | これで仕舞いだ――破ッ ! ! |
エレノア | 仕留めましたね !他の怪亥も消滅しました。 |
ベルベット | みたいね。けど…………まったく。 |
ロクロウ | ハハッ……面白い ! !まだだ、まだ斬り足りん ! !次の奴はどいつだ ! ? |
コーキス | ロクロウ様…… ? どうしたんだよ ?もう敵はいないぞ。 |
ロクロウ | うるさい ! ならお前を俺が―― |
ベルベット | そこまでよ ! |
ロクロウ | ……お、おう。なんだか既視感のある光景だな。 |
ベルベット | なら同じことは言わなくていいわよね ? |
ロクロウ | ……ああ。わかった。 |
コーキス | ……ロ、ロクロウ様 ?俺、本気で殺気を感じたんだけど……。 |
ロクロウ | いやぁ。すまなかったな。今後はもう同じことは繰り返さん。恩人の命令だからな。 |
コーキス | あ、ああ……わかった。なんかちょっと、ロクロウ様の印象変わった。 |
ライフィセット | コーキス……わかるよ。僕も同じような経験があるから。 |
ロクロウ | あのときはライフィセットもすまなかったな。 |
マギルゥ | ベルベットや。しっかり手綱を握っておくのじゃぞ。剣を抜いたそやつは、猛犬、いや、飢えた狼じゃからな。 |
ベルベット | あたしにとって不利益になりそうな場合はね。それ以外は知らない、噛まれる奴が悪いのよ。 |
エレノア | あなたもまた適当な……。 |
ライフィセット | とにかくこれで一件落着だね。 |
ロクロウ | 後は御焚き上げだ。頂いたウリボアの命に対しての恩として。 |
ベルベット | 恩って……なるほど。だいたい理解したわ。本当、あんたらしいわね。 |
ロクロウ | 御焚き上げをしたらまたお前への恩返しに専念するからな。安心してくれ。 |
ベルベット | 勝手にすれば。ついてくるなら利用させてもらうだけよ。 |
ロクロウ | 応 ! よろしくな ! |
ロクロウ | そしてエレノアとライフィセットにも今回の件に関しては、かたじけなかったな。 |
エレノア | 私たちに ? |
ロクロウ | エレノアは俺を心配して駆けつけてくれた。ライフィセットは……あの時だ。 |
ライフィセット | うん ! |
エレノア | そんな、気にしないでください。仲間を案ずるのは当然です。 |
マギルゥ | おーい。いい話のところ悪いのじゃが儂への感謝の言葉はないのかえ ? |
ロクロウ | うん ? まぁ思いついたら何か言ってやろう。 |
マギルゥ | なんじゃこの扱いの差は。恩というより怨を感じるのじゃが。 |
ロクロウ | ロゼがメシを用意して待ってくれている。ルドガーたちも呼んでみんなで食うとしよう。 |
ライフィセット | ……あっ。お腹の虫が。 |
ロクロウ | ちょうど腹も減っているようだしな。 |
ライフィセット | うん ! |
コーキス | それじゃあとっとと用事を片付けてお正月を満喫するぞ ! |
カーリャ | いやぁ。食べまくりましたねぇ。 |
コーキス | ああ。しかもどの料理も最高だった。 |
カーリャ | それに平和で落ち着いた何てことない日のありがたさを痛感しました。 |
コーキス | だな。 |
カーリャ | それじゃあ帰りますよ ! |
コーキス | ただいま戻りました ! |
カーリャ | 戻りました~ ! |
イクス | おかえり。コーキス、カーリャ。ずいぶん遅かったな。 |
ミリーナ | そういえばそうね。二人とも、何かあったの ? |
二人 | ぜーんぜん。なーんにも。 |