キャラクター1話【神なき世界に降臨した聖女】
これは未来の物語。やがてこの世界に顕現する、神なき世界に降臨した聖女の道程。
そのほんの一部を今ここに――
イクスミリーナ、遅くなってすまない。ディムロスさんから作戦完了の通達があったぞ。
ミリーナこっちもスタンさんたちと連絡がついたわ。みんな無事みたい。私たち陽動部隊も急いで撤退をしましょう。
イクスマークとの合流地点まで帝国軍から逃げ切れれば俺たちの勝ちだ。急いで、カイルたちにも知らせなきゃ――
? ? ?ぐはっ―― ! !
ミリーナ! いまの声って…… ?
イクスカイルだよな ! ? まさか……。
カイルくっ……。
リアラカイル。しっかりして。
カイルだ、大丈夫だよ。
ジューダスお前はさがっていろ。帝国軍との連戦で消耗しきっているんだ。
カイルそれはジューダスも同じだろ。まだオレは戦える。
エルレイン……ならば、続けよう。カイル。お前たちの言う人間の強さとやらを示してみせろ。
イクス待ってください !
カイルイクス ! ミリーナ !
エルレイン鏡士の。久しいな。
イクスエルレインさん、どういうことですか。ここにいるということは俺たちがした話――帝国の真の目的を信じてくれたんじゃないんですか ! ?
エルレインああ。お前たちの話は真実だった。帝国はニーベルング世界の再建を目論んでいる。ニーベルング■■■■■■■■も秘密裏に進めていた。
エルレイン本当に、この世界を■■■■■■し、真なるニーベルングの■■■■■■■■■■■■■■■■■■■と画策していたとは。
エルレインいったいこれの何が救済であろうか。救済とはあまねく人々に注がれるべきもの。嘆かわしいにもほどがある。
イクス……俺には救済とか難しいことはわからない。けど…………。
イクス俺自身や鏡映点、そして貴女も含めて……今この世界にはニーベルング世界の■■■■■■■帝国の考える■■■■■がたくさんいるんだ。
イクスそんな人たちを帝国は切り捨てようとしている。確かに偽りだけど……存在していることは事実だ。だから俺は、その全てを守りたい。
エルレインどうやって ?
イクス決まってるだろ。カイルと同じさ。
カイル掴み取る。オレたち自身の手で。
エルレイン神による救済ではなく、か。
エルレインならば――
カイル……ぐっ。
リアラカイル !
イクスやめろっ ! !何故戦わなくちゃならない ! ?
エルレイン確かにお前たちには感謝している。これ以上、聖女としての使命に反する行いを――帝国の偽りの救済に荷担せずに済んだ。
エルレイン聖女の力をほぼ失った私の今やるべきこと、それは救済の対象であるあまねく人々の保護。つまりは帝国の野望の阻止であろう。
ミリーナ私たちは同じ敵と戦っているわ。そして、帝国の野望を阻止するためには私たちは貴女の、貴女は私たちの協力が必要不可欠。
エルレインその通り。
エルレインだが、フォルトゥナを具現化すると言った場合、お前たちはどう反応するだろう。
カイルフォルトゥナだと ! ?
イクス神の具現化は不可能のはずだ。
エルレイン……ふふっ。それはどうだろう。幸いこの世界にはエンコードされているとはいえレンズも具現化されている。
リアラフォルトゥナの具現化には失敗したはずなのに可能性はゼロではないというの ! ?
エルレイン……お前たちはただ待てばいい。フォルトゥナの降臨を。すべての魂が救済されるその時を。
ジューダス本当の楽しみや喜びを代償にした永遠を夢の中で過ごす苦しみや悩み、痛みのない世界……。
ジューダスお前は神による完全なる幸福をこの世界でも実現しようというのか !
カイルそんなことオレは絶対に許さない ! !フォルトゥナを降臨させるというのならオレたちはお前をとめてみせる !
ジューダスカイル ! 無茶をするな !これ以上は――
カイルジューダス、止めないでくれ !まずはオレが証明しなくちゃなんだ。
カイル人間は弱くなんかないって ! !
ジューダス……カイル。
ジューダスふっ、いいだろう !僕も付き合ってやる !
リアラわたしもよ !カイルの選択は、わたしの選択だもの !
イクスミリーナ、俺たちも加勢するぞ !もう一踏ん張りだ。
ミリーナ援護は任せて。みんなで切り抜けましょう。
エルレイン愚かな。どれだけ束になろうと無駄だ。――人間は弱い。私もお前たちに身を以て証明してくれよう。

キャラクター2話【聖女の選択】
カイルくっ……足がっ。
リアラカイル !
ジューダスくそっ。エンコードによりエルレインの力は制限されているとはいえ……厳しいか。
イクス帝国軍との連戦で疲弊しきっているんだ。みんなもう限界か……。
エルレインやはり人間は弱い。これが現実だ。さぁ、諦めて降伏しろ。そうすれば命までは取るまい。
イクスカイル ! いま助けに――
カイル来るな ! !
イクスえっ ! ?
カイル言っただろ、
カイル人間は弱くないって ! !
カイルくっ……。
エルレイン……それがお前の選択か。いまのお前にこの私を倒すことはできない。わかっているだろう ?
カイルそれはどうかな ?リアラ ! ジューダス !
ジューダスいくぞ、リアラ !
リアラええ ! ジューダスにあわせるわ !
エルレインなるほど。お前は囮か。だが私の二の太刀の方が速い。そしてそれを、いまのお前は防ぎきれまい。
カイルそんなことわかってるよ。最悪、オレはここまでってことも。
エルレイン……わかって飛び込んできただと ?何故だ。死ぬことが怖くないというのか。
カイル怖いさ ! けどここを乗り越えればお前を倒すことができるかもしれない !
エルレインできなければ ?
カイルそのときはまた考えればいいだけだ !たとえいま、そして未来に苦しみが待ち受けていようと更に先には大きな幸福がきっとある ! だから――
カイル人間は辛い未来すら選べる !それが人間の強さだ ! !
エルレイン―― ! !
二人――くらえっ ! !
イクスな、なんて威力だ……。
ミリーナ……けど。
エルレイン無駄だと言っただろう。
リアラカイル ! !
エルレイン動くな。
ジューダス
カイルはぁ……ぐっ。
エルレインもうこれで終わりだ。
ジューダスエルレイン ! 貴様ッ !
リアラ! ? ううん、ジューダス。待って、もういいの。
ジューダスなに……。
エルレイン治癒魔法だ。少しは楽になっただろう。
カイルえっ…………あ、ありがとう。けど、どうして ?
エルレイン……言っておくべきことがある。
エルレインお前たちの強さは認めよう。だが、すべての人間がお前たちのように強いとは限らない。
カイルそうかもしれないけど――
エルレイン聞け。
カイル……わ、わかった。
エルレインここはフォルトゥナが……私たちを救う神がいない世界。お前たちが望む世界のありさまだ。
エルレインお前たちが理想とする幸せな世界に私とリアラは本来存在しない。だが幸か不幸か、いま私たちは神なき世界にいる。
エルレイン滅びと絶望に包まれたこの世界であってもお前の言うように人々は苦難を乗り越え幸福を手に入れることができるのか。
エルレイン神の御使いたる聖女として、そして神を失った力なき一人の人間としてこの世界の人々の行く末を観測するのも悪くはない。
カイルえっと……つまりどういうこと ?
イクス力を貸してくれるのか ! ?
エルレイン帝国の野望は阻止せねばなるまい。そしてわたしの信じる神がいないこの世界でも今のわたしに出来うる救済を行う。
エルレインそう、判断したまで。
カイルつまり協力してくれるんだね ! ?
リアラエルレイン……ありがとう。カイルに、いえ人間の強さに可能性を見出してくれて。
エルレイン私はしばらく観測をしようと決めただけだ。そのために一時的にお前たちに協力するが――
エルレイン人は、もろく、はかない存在。その事実が証明されたならばお前たちを切り捨て私はフォルトゥナによる救済を選ぶ。
カイルわかった ! じゃあオレたちはそうならないよう頑張るよ !
エルレインいいでしょう。
リアラ…………。
アスガルド兵見つけたぞ !
イクス敵の追っ手だ !
エルレインいきなさい。
ジューダスお前一人で大丈夫なのか ?
マーク安心しろって。俺たちもいるからよ。
バルバトス虫けら、ウジ虫どもが。捻りつぶしてくれる。
イクスマーク ! ?
カイルバルバトスも ! ?
マークったく、遅いからなにやってるかと思えば。あんたも相当面倒な女だな。
エルレインあなたは、フィリップの鏡精でしたね。
マーク覚えててくれてどうも。イクス、この先でフィルたちが待ってる。他の奴らと一緒に先に行け。
イクスわかった。ありがとうマーク。みんな、行こう。
マークそれじゃあ一仕事はじめますか。バルバトス、頼んだぜ。
バルバトス俺に命令すんじゃねぇ ! !俺はこの雑魚共を捻りつぶしたいだけだ ! !
マーク元気が良いねぇ。――さて、茶番は済んだかい、聖女様。納得したならあなたにも働いてもらいたいんだがね。
エルレイン茶番ではない。救済の遂行を担えるかの審判だ。全ては世界の救済のため。
エルレイン……人々の幸せがあらんことを。
これは未来の物語。先の見えぬ果てしない荒野をもう一人の聖女も歩み始めた。
願わくばこれからも、共に良い旅を――