キャラクター1話【花火1 再会】
イクスよし。この街でまだ見回ってないのはこの先にある教会だけだな。
スタンウッドロウさん、体の具合は大丈夫ですか ?休みたくなったら遠慮なく言ってくださいね。
ウッドロウ私は大丈夫だよ。むしろ歩いていると心地よいぐらいだ。まだ残暑はあるが、だいぶ涼しくなったからね。
スタンもう夏も終わりですもんね。なんだかあっという間だったなぁ。
スタンリオンはどこか遊びに出かけたか ?
リオンお前たちと一緒にするな。
スタンえっ ! ? まさか結局海にも山にも一度も行かなかったのか ! ?
リオン当然だ。僕からしてみれば遊び呆けているお前たちの気が知れない。もし帝国が攻め込んできたらどうするつもりだ。
ウッドロウカロル調査室が安全を保証してくれていただろう ?アジトでの見張り役もローテーションで組んでる。リオン君がずっと仕事していることはないと思うが。
リオン自分の目で確かめるのが一番だ。それに僕が何をしていようと関係ないだろ。
イクスそうかもしれないけどたまの気分転換ぐらいはした方がいいんじゃないか ?俺たちに仕事は任せてさ。
スタンイクスだってこう言ってくれてるだろ。今からでも遅くない。リオン、この後、遊びに行こう。ほら、あっちにアイスクリーム屋もあるぞ。
リオン僕たちは遊びに来たわけじゃないぞ。それにこの街の様子を見てみろ。呑気に立ち食いをしている雰囲気ではないだろ。
スタンまぁ、それはそうだけど……。
ミリーナディムロスさんから報告があったとおり街の人たち全員が沈んでるものね……。まるでみんな心を病んでしまっているみたい。
ウッドロウ無理もない。ファンダリア領内では新生対帝国部隊と帝国とで激しい戦いがあった。何人死傷者がでたかわからないほどだ。
イクスこの街は部隊の家族や恋人が多く暮らしている。つまり亡くなった部隊員と親しかった人も大勢いるはず。街から活気がなくなるのも無理ないよな……。
ウッドロウ大切な者たちの死もそうだろうが季節的なことも原因の一つかもしれないね。
ウッドロウ夏の終わりに近づくほどに人々の喧騒やセミの声も次第に消えてゆく。それらがよりいっそう寂しさを誘うのだろう。
スタン……寂しさか。俺、街の人たちに早く元気になって欲しいです。何かできることはないですかね……。
ウッドロウそうだな……。街の様子を見た限り突然のことに感情の整理がつかない者が多いように、私には思えた。
ウッドロウここはやはり、故人に別れを告げる機会を用意するのがよいのではないだろうか。
ミリーナ別れを告げる機会……ですか ?
ウッドロウ例えば、夏祭りなどはどうだろう。ティル・ナ・ノーグの文化では死者を弔う意味でも行われていたはずだ。
スタンいいですね ! 楽しそうですし !きっと街の人も元気になってくれると思います !
イクス俺たちも賛成です。
ウッドロウでは私が指揮を執り、進めるとしよう。ディムロス隊長と街の代表者に掛け合ってみるよ。
ミリーナお願いしてもいいんですか ?
ウッドロウイクティノスがないので戦闘ではあまり役に立てず申し訳ないと思っていたんだ。
ウッドロウ代わりと言ってはなんだがここは私に任せてくれないかな ?
スタンはい、お願いします ! この中でいったらウッドロウさんが一番適任だと思いますし俺たちとしても助かりますよ。
ウッドロウ私などまだまだだ。きっと今回も君たちの力を借りることになるだろう。そのときはよろしく頼むよ。
イクスはい ! 力を合わせて頑張りましょう !
スタンリオンも頑張ろうな。
リオン……仕方ない。少しだけだぞ。
ウッドロウおや。リオン君も手伝ってくれるとは。これは心強いな。
リオンシャルティエ少佐から新生対帝国部隊の士気も低下傾向になると報告が入った。
リオンこの街に活気が戻れば、自ずと部隊の士気も回復するだろう。そう考えたまでだ。
スタンなんだ。てっきりリオンも夏祭りが楽しみなのかと思ったのに。
ソーディアン・シャルティエやっぱり違ったんですね……。
リオンお前たちは、揃いも揃って……。
ウッドロウしかしながらリオン君の意見も当を得ている。ディムロス隊長と相談をして部隊員にも夏祭りに参加してもらうのもよさそうだ。
ミリーナなんだか規模が大きくなりそうね。私は商人たちとの繋がりのあるロゼに一報を入れておくことにするわ。
イクスえっと……あと他にやっておくことは……。
ウッドロウ具体的な内容はまた後で考えよう。見回りついでに教会の慰霊碑で一度祈りを捧げてからでも遅くはないだろう。
イクスそれもそうですね。俺たちも混ぜてもらいましょう。
ミリーナ司祭様が来たわ。そろそろ祈りの時間みたい。
スタンあれ……ちょっと待ってくれ。あの司祭の人って……もしかして……。
フィリアえっ……そこにいるのは……。
スタンフィリア ! ? フィリアじゃないか !
ウッドロウまさかこんなところで会うことになろうとは !
フィリアスタンさん ! ウッドロウさんも ! !それに――えっ ! ?
リオン……。
フィリアリ、リオンさん……どうして……。
スタンお、おい。どうしたんだよ、フィリア。
フィリアどうしたって……だって……。
ウッドロウフィリア君。まずは話し合おう。どこか落ち着いて話せる場所はあるかい ?
フィリアそ、それでしたら……この教会の奥に私がお借りしている部屋があります。ご案内しますね。
ウッドロウああ、よろしく頼む。

キャラクター2話【花火2 フィリア】
イクス……ということなんだ。俺たちからの説明はこんなところなんだけど大丈夫そうか ?
フィリアええ、おかげで具現化や私たちの置かれている状況についてもだいぶ理解ができましたわ。
フィリアイクスさんとミリーナさんでしたね。改めましてフィリア・フィリスと申します。こちらは私のソーディアン・クレメンテです。
ソーディアン・クレメンテふぉっふぉっふぉ……ミリーナさんか。こんな金髪の美人がいる陣営につけるとは帝国側から逃げてきて正解じゃったな。
フィリアもう、クレメンテったら。ミリーナさん、ごめんなさいね。
ミリーナふふっ。クレメンテさんのような人生経験豊富なおじ様が仲間になってくれてとても心強い限りです。
ミリーナそれにフィリアが加わってくれたことも凄く嬉しいわ。優しくて知的で可愛くて……フィリアを見ていると天から降りてきた女神様かと思えてきちゃう。
フィリアそ、そんな。私ごときが神だなんて。恐れ多いですよ。
ミリーナ慎み深いところも素敵だわ。尊い……。
リオンそしてもう一人。いや、もう一本が正しいか。
ソーディアン・イクティノスウッドロウのソーディアン・イクティノスだ。よろしく頼むよ。
イクスはい。こちらこそ。よろしくお願いします。
スタンウッドロウさん、よかったですね。ちゃんとイクティノスの機能が回復したみたいで。
二人…………。
スタンえっと……俺、何か変なことを言ったか ?
リオンそれについては後だ。まだ聞きたいことが山程ある。
フィリア私のことですね。では、具現化されてからイクティノスを持ってこの街に逃亡してくるまでのことをお話しますわ。
フィリア……簡潔にまとめるとこんなところですわ。
ウッドロウ……なるほど。つまりフィリア君はこの世界のストレイライズ神殿を拠点とする新生アタモニ神団の神官役として具現化されたと。
イクス帝国の鏡士っていうとジュニアか。
フィリアジュニアさんから新生アタモニ神団の長であるエルレイン様を紹介された後は、彼女の指示に従いストレイライズ神殿で研究に勤しんでいましたわ。
リオンだが帝国上層部の非道な行いを知ってストレイライズ神殿の研究所に保管されていたイクティノスを持ち、逃げてきたと。
フィリアはい。新生アタモニ神団は実質的に帝国の一部。これ以上、人の命や心を弄ぶ悪事に加担することはできませんでした。
ミリーナそしてフィリアは逃げた後、この街の人たちに帝国の追手から匿ってもらったのね。
フィリアええ。皆さん、親しい人たちの死を嘆いていましたから少しでも恩返しができればと思い、司祭として教会のお手伝いをはじめ、今に至ります。
スタンフィリアも大変だったんだな。無事で本当によかったよ。
フィリア私もまたスタンさんたちにお会いできて嬉しいですわ。
スタンそれにしても、どうやってイクティノスを修復したんだ ?
スタンほら、俺たちがいた時代の技術では修復不可能だって話だっただろ ?
フィリアそれは……。
ウッドロウ元の世界。ヘルレイオスの天上軍の技術研究施設で私たちの手で修復をした。
ソーディアン・ディムロスヘルレイオスだと ! ?確かにあそこではソーディアンの研究も行われていた。事実であるとすれば不可能ではないが……。
リオン……やはり僕たちの具現化時間軸には差があるようだな。
フィリア! 先程の話では、私たちから見て大昔天地戦争時代のディムロスが具現化されているという話でしたよね。なら、もしかして……。
ウッドロウ私とフィリア君からみてスタン君たちは過去の人間のようだ。
スタンえっ ! ? ウッドロウさんとフィリアは俺たちからみて未来のタイミングから具現化されたってことか ! ?
ウッドロウディムロス隊長たちほど時間の隔たりはないようだがね。
フィリアだからリオンさんも……。
リオン……。
スタンな、なぁ。ウッドロウさんもフィリアも、リオンと再会した時、ただ事じゃないような顔してたけど、どうしてなんだよ。
スタンもしかして……未来で何か…………。
二人…………。
スタンご、ごめん。やっぱり何でもない。けどとにかく具現化のタイミングが違うんだってことはちゃんとわかったよ。
リオンだがまだ伝えておかなくてはならないことがある。それは僕やお前たちからみて数十年後の未来の人間も具現化されているということだ。
フィリア私たちにとって未来の人まで具現化されているんですか ! ?
リオンああ。だがそいつらから聞いた話には僕たちの世界での法則や歴史と明らかな矛盾があった。
リオンだから未来といっても断定的なものではない。可能性の一部としての『未来』だ。
フィリア……可能性の一部としての『未来』。
ウッドロウこれはディムロス隊長たちが具現化された『過去』にも同じことが言えるだろうね。
スタンフィリア、大丈夫か ?もう難しすぎてわけわかんないよな。
フィリア私はなんとか……。ちなみに、その未来の方々というのはどのような――
ミリーナ待って。誰か来たみたい。
アニスやっほー ! ロゼに話を聞いてお祭りの手伝いにきた心優しいアニスちゃんでーす !助っ人でガイも連れてきたからね !
スタンアニス ! それにガイさんも !ありがとうございます ! 助かりますよ !
フィリアえっと、この方たちはアジトを拠点に行動を共にしているという別の世界の鏡映点という認識で間違いないでしょうか ?
ガイその通りだ。そこの可憐な眼鏡のお嬢さんはスタンたちの世界から具現化された鏡映点だよな ?俺はガイ、こっちはアニス。よろしくな。
フィリアは、はい。フィリア・フィリスです。よろしくお願いします。
アニスあー。ガイがさっそく色目使ってる。司祭の女の子からメイドお姉さんまでホント節操ないんだから。フィリア、気をつけなよ ?
フィリアそ、そうなのですか ! ?……神よ。どうか私をお守りください。
リオン貴様っ……まさかまたマリアンに !
ガイちょ、アニス !誤解を招くようなことを言うな !二人も頼むから落ち着いてくれ !
アニスむふふふ♪ これはお祭りの準備をしっかりこなして信用を回復しないとだね。頑張れ、ガイ ! 今こそ使用人根性を見せる時だよ !
ガイはいはい。謹んで奉仕させていただきますよ。アニスたちの商売根性に負けないぐらいにな。
ウッドロウふっ。これは頼もしい。ではフィリア君、一度私たちの話はこれくらいにしてお祭りの準備に取り掛かるとしようか。
フィリアそうですね。気になることはまだありますが一度自分の中で情報も整理したいですし話はまた後ということで。
フィリアそれに、街の人たちのこともあります。お祭りの準備を最優先に進めましょう。
スタン街の人たちには早く元気になって欲しいもんな。
アニスそうそう。さっき街の倉庫に行ってきたんだ。備品の確認をしてたんだけど、その時お祭りにも使えそうな面白いものを見つけたんだよ !
スタン面白いもの ? なんだか気になるな。
アニスそれは見てからのお楽しみ~♪というわけでみんな、付いてきて !

キャラクター3話【花火3 面白いもの】
アニスそれじゃあいくよ。ここに火をつけて……はいっ !
スタンおぉっ ! これが線香花火か !棒の先から火花がでてきた !
フィリアふふっ。スタンさん、楽しそうですね。
スタンああ ! ディムロスの炎も格好いいけど線香花火はカラフルで綺麗だからな。全然違うところもとっても面白いよ。
ソーディアン・ディムロス我と線香花火を同じくくりで話すのはやめてもらおうか。
ミリーナアニスが倉庫で見つけた面白いものって花火のことだったのね。
イクスそういえば小さい頃、俺たちも遊んだっけ。なんだか懐かしいな。やっぱり夏といえば花火だよな。
アニス去年は鏡殻変動とか色々あって催し物があちこちで中止になったんだって。だから花火がたくさん余ってるみたい。
ウッドロウこんな素敵なものを余らせておくのは勿体無い。それなら、お祭りに花火の要素を加えてもいいかもしれないね。
アニスそういうこと ! 参加者に手持ち花火をプレゼントすれば呼び込みアピールにもなるでしょ ?それに今なら格安で仕入れられるし一石二鳥だよ !
イクス俺もいいと思う !夏祭りの趣旨にもあってるしさ !
ミリーナ夏のこの時期、死者を慰めるため花火を打ち上げるという風習がティル・ナ・ノーグにはあるものね。
イクス本当は打ち上げ花火でやるものだけどさすがに今から用意するのは厳しいもんな。
アニスチッチッチッ。このアニスちゃんを見くびらないでよね。
アニスなんと ! 花火師はもう手配済み !今ガイが最終確認しに向かっているところでーす♪
イクスもしかして、打ち上げ花火もできるのか ! ?
アニス空高くまでドカーンッとぶっ放して真っ暗な夜空に大きな花を咲かせてやろうよ !
スタンおぉ ! すっごく楽しみだ !今から当日が待ち遠しいよ !
ガイ水を差すようで悪いな。打ち上げ花火はやっぱり厳しいそうだ。
アニスえっ、どういうこと ! ?人員も機材も揃ってるって話だったよね ?
ガイ雨漏りのせいで打ち上げ花火の玉が全部ダメになっちまったらしい。今から作ってちゃ到底間に合わないそうだ。
スタンそっかぁ。それは残念だな……。
フィリア……スタンさん。
アニス打ち上げる玉がないんじゃしょうがないよね。手持ち花火で我慢するしかないかー。これでも十分楽しんでもらえるだろうしさ。
ガイわかった。花火師の人たちにもそう伝えてくる。
フィリアあの ! 待ってください !
アニスフィリア、どうかしたの ?
フィリアこの薬瓶を見ていてください。いきますよ……えいっ !
アニスはうわっ ! 爆発したんだけど ! !
ガイ片手で持てるぐらいの大きさなのにたいした威力だな !それはいったい何なんだ ! ?
フィリア私の可愛い手作りボム。フィリアボムと言います。
スタンわかりやすくて覚えやすいしいい名前だよな !
アニスで、そのフィリアボムがどうかしたの ?
フィリアえっと……花火玉がないということでしたがこのフィリアボムを改良すれば代用品を調合可能かもしれないと思って。
ミリーナそんなことができるの ! ?
フィリアはい。たとえばあの薬品にあれとそれを加えれば……ふ、ふふふっ。
ガイフィリアの頭の中ではもう完成してるみたいだな。
イクスそ、そうみたいだな。少しフィリアから闇を感じたけど気にしないことにするよ。
フィリアですがリセルベウムという特殊な鉱石が必要なのでこれが揃うかどうか……。
ガイその鉱石なら花火師たちが持っていたな。採掘場所も知っているはずだ。俺がひとっ走り聞いてくるよ。
フィリアガイさん、ありがとうございます。これなら打ち上げ花火もできそうですね。
ウッドロウではこの夏祭りは花火大会というテーマで決まりかな。
アニスちょっと待って。アニスちゃん、いい事を閃いちゃった。
アニス表向きは普通の夏祭りってことにして打ち上げ花火はサプライズにしない ?
アニス街の人たちやアジトのメンバーにも打ち上げ花火のことは秘密にしておいてみんなをビックリさせる作戦 !
ガイそいつは面白そうだな。いまその考えを聞いただけでルークが目ン玉を丸くする顔が浮かんだよ。
ウッドロウ皆、賛成のようだね。ではアニス君の案で進めるとしよう。
アニスいい ? 花火のことはここにいる私たちと花火師の人たちだけの秘密だからね。ぜ~ったい話しちゃダメだよ。
スタンああ。わかったよ。約束だ、絶対に言わない。
フィリア私も誓います。このことは絶対に秘密です。
ウッドロウではそろそろ本格的に準備に取り掛かろう。私はディムロス隊長や街の代表者との面会があるので花火のことは君たちに頼めるかな ?
フィリアもちろんですわ。ウッドロウさんは実行委員会も忙しいでしょうからこちらのことは任せてください。
ガイそれじゃあ、俺たちはまず鉱石の採取だ。みんな、身支度を整えてきてくれ。ここでまた合流し、採掘所に出発しよう。
一同了解 !

キャラクター4話【花火4 鉱石採取】
スタン採掘場までもう少しみたいだぞ。フィリアボム式打ち上げ花火のため張り切っていこう !
ガイスタンはやる気十分みたいだな。そんなに打ち上げ花火が楽しみなのか ?
スタン今から待ち遠しくて仕方がないよ。早く見てみたいなぁ。
フィリアでしたら私も腕によりをかけて調合をいたしますわ。
フィリア街の人たちやアジトの皆さん、そして…………スタンさんにも喜んでいただけるように。
ミリーナ…………フィリア…………。
イクスミリーナ、どうかしたのか ?
ミリーナ……ううん。何でもないわ。
スタンあっ。着いたみたいだぞ。ここが採掘場……って、何だここ ! ?ゴミ捨て場みたいじゃないか。
ガイガスもでてるみたいだぞ。これはなかなか骨が折れそうだな。
フィリア…………。
ミリーナフィリア、大丈夫 ?なんだか具合が悪そうだけど。
ソーディアン・クレメンテフィリアは潔癖症なところがあるからのう。やはりこのような場所は苦手のようじゃな。
フィリアい、いえ……これくらいは大丈夫です。皆さん、行きましょう。
スタンあまり無理はするなよ。鉱石は俺たちが採ってくるからフィリアはここで待っていてもいいんだぞ。
フィリアそういうわけにはいきません。これも花火のためですから。
ソーディアン・ディムロス決意は硬いようだな……。
フィリアさあ。皆さん。パッと終わらせましょ、パッと。
ミリーナフィリア、待って !そこの地面にはヘドロが溜まっているわよ !
フィリアきゃあっ ! !
ガイひぃっ ! や、やめろ !俺から離れてくれ ! !
イクスしまった ! ガイさんは女性恐怖症だった !
ミリーナガイさん、こらえて !いまフィリアを突き飛ばしたりしたらフィリアがヘドロまみれになっちゃうわ !
ガイわ、わかった。わかったから早く、体勢を立て直してくれ !
フィリアも、もう大丈夫です。すみません、お騒がせしました。
ガイいいや。俺としては美女と密着できてこんなに嬉しいことはないんだが……。すまないね、フィリア。乱暴な言葉を使ってしまって。
フィリアあ……いえ……。こちらこそ申し訳ありません……。
ソーディアン・クレメンテいまのアクシデントだけでどっと疲れたのう……やはり先が思いやられるわ。
スタンこのあたりはどこもゴミだらけだもんな。
フィリアやってられませんね。
一同えっ……。
フィリアあ、あら……私ったら。何か変なことを口にしました ?
ガイ……や、やっぱり女性は恐ろしいな。
ソーディアン・ディムロス……フィリアが正気を保っていられる間に鉱石を集める必要がありそうだな。
スタンあ、ああ。急ぐとしよう。

キャラクター5話【花火7 未来から来た少年】
フィリアウッドロウさん、フィリアボム式打ち上げ花火。全て調合が終わりましたわ。今スタンさんが花火玉を花火師の方々に届けに行ってくれています。
ウッドロウこちらも屋台の設営などの準備は整った。無事、夏祭りを開催できそうだ。皆はそれぞれ祭りを楽しんでくれたまえ。
ウッドロウ私はまだ実行委員会の仕事が残っているから失礼させてもらうよ。
ガイそれじゃあ俺も行くとするか。
イクスガイさんも何か仕事ですか ?
ガイいいや、ルークのところさ。お祭りは一緒にまわりたいって頼まれてな。待ち合わせをしてるんだ。
アニスあれ ? ルークはガイを誘ったんだ。てっきりティアだと思ってたよ。相変わらず朴念仁だなぁ !
ガイまぁ、そう言うなって。急にルークが積極的になってもびっくりするだろ。
ガイ……ローレライの具現化のこともあったからな。男同士、ちょっと元気づけてやろうと思ってるんだ。
アニス……そっか。今は落ち着いてるけど……やっぱり心配だもんね。
ガイそれに、ティアの方も夏祭りはナタリアと二人で行くって言ってたぜ。今は自分が側にいてやりたいんだとさ。
アニスあー。ティア、ナタリアのこと心配してたもんね。アッシュが出ていってから少し元気がないって。
ガイ……アニスも、な。平気なフリばっかりしてると疲れちまうぞ ?たまには思い切り泣いてもいいんだぜ ?
アニスえ ?ガイってばアニスちゃんに胸を貸してくれるのー ?
ガイいや……それはジェイドの旦那にでも頼んでくれ。
ガイ……それにしても人生ってのはままならないもんだな。
フィリア…………。
ガイ……って、すまないな。せっかくお祭りがはじまるってのにこっちの身内話で、暗い気分にさせちまった。
フィリアいえ。詳しい事情は存じませんが皆さんのお気持ちはわかりますから……。
アニスあっ ! ごめん !そろそろ屋台に行かないと !ロゼたちを待たせてるんだった !
アニスみんな、ちゃんとかき氷買いに来てよね !
ガイそれじゃあ俺も行くとするか。またな。
イクスミリーナ、俺たちもそろそろ行こう。コーキスとカーリャが待ってる。
ミリーナそうね。フィリアもお祭りを楽しんで。
フィリアええ。それでは。
ソーディアン・クレメンテフィリア。お主はどうするのじゃ ?
フィリア私は……。
? ? ?おお ! まさかこんなところで会うなんて !
フィリア今の声、スタンさん ?花火玉の運搬が終わって戻ってきたのでしょうか。
ソーディアン・クレメンテ誰かと話しているようじゃな。
フィリアいったい誰と……。
カイルオレも遊びに来ました !
フィリア――っ ! ?
ソーディアン・クレメンテあの少年……。
フィリア……似てる、スタンさんに。それに…………。
フィリアい、一瞬だけ……………………ルーティさんの、面影も……。
ソーディアン・クレメンテウッドロウたちの話によるとわしらから数十年後の世界から具現化された者がいると聞いていたが……まさか、あの少年が…………。
フィリア…………。

キャラクター6話【花火7 未来から来た少年】
カイルそれじゃあリアラたちみんなが待ってるんでオレ、そろそろ行きますね。
スタンカイル。よければこのお祭り最後まで楽しんでいってくれ。
カイルえっ、何かあるんですか ?
スタンそれは秘密だ。
カイルえー、気になるな。けどわかりました !スタンさんが言ってたっていえばロニやジューダスも許可してくれると思いますし !
スタンもちろん夜更しはよくないから無理のない範囲でな。
カイルわかってますよ ! それじゃあ行ってきます !ルーティさんもそろそろ到着するはずですしスタンさんもお祭り、楽しんでくださいね !
フィリア…………やっぱり。
? ? ?……あれ ? そこにいるの……。
フィリアえっ……。
ルーティやっぱり ! フィリアじゃないの !あたしよ、あたし。まさか忘れてないでしょうね ?
フィリアル、ルーティさん……。
ルーティ……ちょっと。少し顔色が悪くない ?ファンダリア領でお祭りの準備をしてるって報告は聞いていたけど、あんたまた無理してたんじゃ……。
フィリアい、いえ……そんなことは……。気のせいですよ……。
スタンあれ ? フィリアじゃないか。それにルーティも一緒だったのか。
ルーティあっ…………スタン。久しぶり。あんたは相変わらず元気そうね。
フィリア…… ?
スタンルーティもお祭りに来たんだよな。この後はどうするんだ ?
ルーティそ、そりゃあ……アニスやロゼ、イリアと屋台の仕事よ。お祭りが終わるまで、ずっとね。
スタンそっかぁ。それじゃあ忙しいよな……。
ルーティ……もし時間があったら連絡するかも。時間があったらね。
スタンうん……わかった。どうするかはルーティに任せるよ。
ルーティ……それじゃあ。フィリア、またゆっくり話しましょ。
フィリアは、はい…………。
スタン…………。
フィリアあの、スタンさん。私の勘違いだったら申し訳ないのですが……。
スタンうん ? どうかしたか ?
フィリア…………いえ。何でもありません。
スタンそっか。ところでフィリアはこの後どうするんだ ?
フィリアわ、私ですか ?
スタンウッドロウさんは実行委員会、ジョニーさんはライブステージ、ルーティは屋台。みんな忙しそうだからフィリアもなのかと思って。
フィリア…………え、ええ。私もちょっと…………。
スタンそっかぁ……残念だな。リオンも魔鏡通信を切ってるのか連絡がつかないし……どこにいるんだろう。
スタン……元の世界と同じでやっぱり集まるのはなかなか難しいんだな。
フィリア……スタンさん。
フィリアあの……リオンさんなら実行委員会の運営本部にいらっしゃると思いますよ。もうすこしで休憩の時間のはずですが……。
スタンそうなのか ! ? なら行ってみるよ !あれ……けど、運営本部の場所って……。
フィリアふふっ。
スタンフィリア ? どうしたんだ ?
フィリアすみません、ちょっとおかしくって。運営本部なら、私がご案内しますよ ?
スタンありがとう ! そうだ、運営本部に向かう途中の屋台で何かごちそうするよ。
フィリアい、いいですよ。なんだか悪いです……。
スタン遠慮することないって。もちろん、フィリアは優しくて慎み深いところがいいところなのはわかってるけどさ。
フィリア……スタンさん。
スタンさあ、行こう。
フィリアはい。

キャラクター7話【花火8 夜店】
ルークはぁ……財布と魔鏡通信はアジトに忘れてくるしガイとははぐれちまうし……なんかツイてねぇな。
ウッドロウガイ君には私から連絡しておいた。もうすぐここに来るはずだ。
ルークごめん、ウッドロウさん。実行委員会の仕事で忙しいのに……。
ウッドロウなに、気にすることはない。困ったときはお互い様だ。それに、困っているルーク君を見て見ぬフリなどできないさ。
ルーク……うん、ありがとう。
ガイルーク ! 捜したぞ !
ルークガイ、どこ行ってたんだよ ! 気がついたら、姿が見えなくなってるし、すげぇ人混みの中に一人取り残されるし、めちゃくちゃ焦ったんだからな !
ガイはぁ……はぁ……それはこっちの台詞だ。あれほど人混みのなかではボーッとするなって言ったのに……。
ルーク別にボーッとなんて……。
ウッドロウガイ君、だいぶ急いできたようだね。着物が少しはだけているよ。
ガイおっと……せっかく祭りの手伝いのお礼にって商店街の職人が仕立ててくれたものだからな。魂が宿った浴衣を雑に着たら失礼だ。
ウッドロウああ、それでもう大丈夫だ。ちゃんと着こなせているよ。
ガイありがとう、ウッドロウ。
ルークガイ、その浴衣、よく似合ってるもんな。爽やかな感じでさ。
ガイだろ ? 俺も気に入ってるんだ。
ルークウッドロウさんのもすっきりしてて格好いいよな。すげぇ大人っぽい。
ガイそういうのは着る人を選ぶだろうからな。その浴衣も、お似合いの人に着てもらえてきっと喜んでるんじゃないか ?
ウッドロウありがとう。褒めても何も出せないがね…………と、普段は言うだろうが、今日は特別だ。よければこれを受け取ってくれ。
ガイこれは……金魚すくいのタダ券、三回分か。
ウッドロウさきほどクジ引きで当たったのだがまだ実行委員会の仕事が残っている。代わりに君たちに楽しんで来てほしい。
ルークやった ! !そういうことならもらっとこうぜ !
ガイそれじゃあ遠慮なく。ウッドロウ、ルークのことも恩に着るよ。
ウッドロウ気にすることはない。では、お祭りを楽しんでくれ。
ルークよーし ! せっかくタダ券もらったんだ !ガイ、さっそく金魚すくいやろうぜ !
ガイもちろんだ。親父。ポイ2つ頼む。
屋台の親父あいよ。
ルークよーし ! 見てろよ !ぜってぇガイよりもたくさん、すくってやる !
ガイ遊びだからって、負けるつもりはないからな、ルーク !
二人いくぞっ ! !
ルークうわっ ! やべぇ、めっちゃ跳ねた !
ガイこういうのは忍耐が、肝心なんだ。ポイをそ~っと……寄せていって金魚が油断したところを…………すくうっ !
ルークうおっ ! ガイ、すげぇな !一度に二匹もすくえるのかよ ! ?
ガイちょっとコツを掴めば簡単さ。ルークも同じようにやってみろ。
ルークえっと……まずは、そ~っと……って……あ、あれ…………。
ガイおい、ルーク。その手の震えは……。
ルーク――へ ?
ルークあ ! ? これはローレライのアレとは違うぞ !ポイに穴をあけないように気を付けたら手に力が入っちゃって……。
ルーク大体、音素乖離が始まったら、手が震えるんじゃなくて消えかけ――あっ !
ルークあー、くそ ! ガイが変な勘違いするからポイが破れちまった…… !ちぇっ。この勝負、ガイの勝ちか……。
ガイ……悪い。気を回しすぎたな。
ガイ親父。この二匹、別々の袋にいれてくれ。
ルーク……ガイ ?
屋台の親父はい、どうぞ。
ガイルーク。お前に一匹やるよ。どっちがいい ?
ルークえっ、いいよ。俺、面倒みられるかわかんねぇしさ。
ガイ安心しろ。俺が教える。
ルークけど……さっきのはガイの勘違いだけどいつか俺に何かあったら……そいつ、一人になっちまうし……。
ガイそうならないよう、生きるんだ。
ガイローレライは具現化されたがこの世界でも音素乖離が発生するかはわからないって話だっただろ。
ガイそれなのに、消えることなんて考えるな。自分のいない未来なんて想像するな。お前に生きていて欲しいんだよ。この先もずっと。
ルーク…………ガイ。
ルーク――よし。じゃあ俺はこっちのちっこい奴にするかな。ガイはこのひらひらの奴な。
ガイ――ああ。ちゃんと面倒見るんだぞ。
ルークわかってるって。名前どうしようかな。ウミザルとか ?ポチ太郎でもいいな。へへ !
ガイポチ太郎は俺の別名だから禁止だ。っていうか、もうちょっといい名前はないのか ?その感覚、コレットといい勝負だぞ。
ルークそうかー ?
ガイほら、そろそろ次に行くぞ。まだまだ行ってみたい屋台がたくさんあるんだ。ルークにも付き合ってもらうからな。
ルーク……ああ !

キャラクター8話【花火9 夏祭り】
ルーティいけない ! さっきの人からお代もらうの忘れてた !
ロゼなに言ってるの。あれはクジで当たったタダ券と交換したじゃん。
ルーティえっ……あぁ、そうだったっけ。
イリアルーティ、大丈夫 ?なんだかあんたらしくないわよ。
アニスちょっと休んだ方がいいんじゃない ?
ルーティ何言ってるのよ。今は書き入れ時でしょ。あたしは大丈夫だから力合わせてガッツリ稼ぐわよ。
ロゼオッケー。じゃあみんな、仕事に戻るよ。アニスは呼び込みよろしく。
アニスアニスちゃんにお任せだよ !がっぽり呼び込んでがっぽり稼いじゃうもんね !
? ? ?アニスたちがやっているかき氷屋さん、このあたりかしら。
アニスあっ、この声。
ティアアニス、遊びに来たわよ。かき氷屋さん、ずいぶん繁盛しているね。
ナタリア人混みをかき分けてなんとかたどり着けましたわ。
アニスティア、ナタリア ! いらっしゃい !どうどう、店員姿のアニスちゃん ?
ナタリアずいぶんと可愛らしい浴衣ですわね。
ティアけど……その浴衣ちょっと大胆過ぎるんじゃないかしら。
アニスふっふっふっ、パティ直伝の客寄せ技だよ。というわけで、二人も、アニスちゃんおすすめのかき氷はいかがですかぁ ?
ナタリアもちろん、いただきますわ。
アニスまいどありぃ !
アニスイリア、アニススペシャル2つよろしくぅ !
イリアはいよ、おまちどう !
ティア(トクナガのクッキーがついてる…………かわいい)
アニス人が密集してるから暑かったでしょ。かき氷で涼んでいってね。
ティアえ、ええ。それじゃあ、いただきます。
ティアはむっ…………ん~~っ。
ナタリアふふっ。ティア、頭がキーンってなってますわね。
ティアすっごく冷たいわ。舌触りもよくて美味しいけどナタリアも気をつけて。
ナタリアそれでは、私も覚悟を決め、て…………。
ティア……ナタリア ?
ナタリアいま……人混みの中に、赤い髪が……。
アニスえっ ! ? それってもしかして――
ナタリアアッシュ ! ?
ルークえっ……。
ナタリアあっ……。
ガイルーク、どうかしたのか……って、ナタリアたちじゃないか。こりゃあ奇遇だな。
ティアルークとガイもかき氷を食べにきたの ?
ルークうん。アニスたちがやってるって聞いたからさ。
ナタリアあの……ルーク。さっきはごめんなさい。見間違えてしまいましたわ。
ルークしょ、しょうがねぇよ。すげぇ人混みだしさ。俺の方こそ……なんかごめん。
ガイルーク。お前が謝る理由なんてないだろ。
ナタリアそうですわよ。間違えたのは私の方ですわ。
ナタリアルーク、どうか気を遣わないで。――いえ、気を遣わせてしまってすみません。でも、私は大丈夫ですわ。みんながいますもの。
ルークうん……。わかった。
アニスも~、そんなところで突っ立ってられると迷惑なんですけどぉ ?というわけで――
アニスそこのお兄さん♪アニスちゃんおすすめのかき氷おひとついかが ?
ルークははっ、なんだよそれ。ルーク様の次はお兄さんか ?けど、俺、財布忘れてきたからなぁ。
ガイこっちを見るなこっちを。そんな目で見なくても買ってやるよ。アニス、俺とルークにかき氷を1つずつ頼む。
アニスまいどありぃ !
ロゼルーティ、アニススペシャル2つね。
ルーティオッケー。ちょっと待ってて。
ロゼあと、その2つ作り終わったら今日はもうあがっちゃって。
ルーティえっ、あたしならまだやれるけど ?
ロゼだって心ここにあらずって感じみたいなんだもん。そんなんじゃ絶対ミスするよ。だから気分転換してきて。
ルーティけど――
ロゼということで、よろしくね~。
ルーティあっ、ちょっと ! ロゼ !
ルーティはぁ……。イリアが言ってたとおりホント、らしくないわ……。
アニスルーティってば何を考えてるかわかりやす過ぎだって。ロゼはそういうのさぱらんなんだろうけど。
ルーティな、なによいきなり。
アニスさっきの私たちのやり取り、見てたでしょ ?大切な人と一緒にいられるならその機会を大切にした方がいいよ。
アニス……もう二度と会えなくなることだってあるんだからさ。
ルーティ…………アニス。
アニスかき氷、ありがと♪これでルーティの今日の仕事は終わりだよ。ほら、行った行った。
ルーティ……うん、じゃあ行ってくるわ。

キャラクター9話【花火9 夏祭り】
フィリアふふっ。クレメンテ。線香花火、とても綺麗ですわね。
ソーディアン・クレメンテ…………。
フィリアクレメンテ。どうかしましたか ?
ソーディアン・クレメンテ…………わしの前ではそのように無理して笑わないでくれんかのう……。
フィリアな、なんのことですか……。
ソーディアン・クレメンテお主はわしの大切なマスターじゃ。年寄りの小言ほど鬱陶しいものはないとはわかっておるが、ここは一つ聞いてくれ。
フィリア……はい。
ソーディアン・クレメンテフィリアよ……もし、元の世界でのことに後悔があるのなら今がやり直すチャンスなのではないか ?
フィリア……それは、卑怯ではないでしょうか。まるで運命に逆らうかのような行いのように思えてしまいます。
ソーディアン・クレメンテお主は未来の存在も気になるようじゃがそれは可能性の一部としての『未来』という話であったじゃろう。
ソーディアン・クレメンテ今のわしらは元の世界から切り離された存在じゃ。だからこそ、皆、この世界の中で自分の思うように生きようとしておる。
ソーディアン・クレメンテフィリアよ。ここでの未来は、ここでのお主の行動次第じゃぞ。
フィリア……私の行動次第。
スタンあれ ? フィリアじゃないか。
フィリアスタンさん、どうしてここに ! ?リオンさんと一緒のはずではなかったのですか ! ?
スタン一緒に屋台をまわったんだけど街の見回りは終わりだって一人で行っちゃったんだ。
スタンけど、おかげでリオンとの夏の思い出ができたよ。すっごく楽しかったしあんなに笑ったのも久しぶりだった。
スタンフィリア。ありがとう。
フィリアはい。どういたしまして。楽しい時間を過ごしていただけたようなら私としても嬉しい限りですわ。
スタンところでフィリアはどうしてここに ?もしかして俺と同じで散歩か ?
フィリアえっと、私は――
ソーディアン・ディムロス! スタン、魔鏡通信だぞ。
スタン本当か ! ? フィリア、ごめん ! ちょっと待っててくれ !
フィリア…………はい。
スタンもしもし ! ルー……あっ。
ウッドロウスタン君。突然すまない。1つ頼みたいことがあって連絡したんだ。もちろん予定があるのなら断ってくれてかまわないが。
スタン……いえ、特に予定はないので大丈夫ですよ。頼みたいことって何ですか ?
ウッドロウ花火の発射台設置場所付近の見回りを頼みたい。花火師の方々から魔物がいるとの報告が入ったんだ。魔物避け対策はしてあるが万が一ということもある。
ウッドロウフィリア君が行くことになっているがやはり念を入れてもう一人だけ人員を増やしておきたいと思ってね。
スタン了解です。ちょうどフィリアもここにいるので俺も一緒に行きますね。
ウッドロウありがとう。頼んだよ。
スタンフィリア。ということだから、一緒に行こう。あれ……けど、発射台の設置場所ってどこだったっけ ?
フィリア……スタンさん。私は一人でも構わないですわよ。
スタンえっ……それって俺が足手まといってことか ?
フィリアまさか ! 違いますよ。
フィリア私としては……スタンさんがいてくれるのはとても、心強いです……。
スタンよかったぁ。今日はフィリアに頼りっぱなしだったから呆れられちゃったかと思ったよ。なら俺も行くから、また案内頼めるか ?
フィリア……はい。喜んで。
スタンよし ! それじゃあ出発――
ルーティ…………。
フィリアルーティさん ! ?
スタンルーティ ! ?黙って突っ立ってるからビックリしたよ。こんなところで何してるんだ ?
ルーティ……さっきリオンとすれ違って、あんたならこのあたりにいるだろうって言ってたから。
スタンそういうことだったのかわざわざこんなところまでごめんな。街の中心地から離れてるし大変だっただろ ?
ルーティ……そういうあんたたちは ?
スタン俺たちは、打ち上げ花――
ルーティ…………なに ?
スタンえっと……警護の仕事があるんだ。魔物が出たらしくてさ。
ルーティ何を魔物から警護するっていうのよ。この先には何もないでしょ ?
スタンそれは…………。
フィリアルーティさん。聞いてください。あの……この先には――
ルーティううん。もう大丈夫よ。
ルーティさっきの楽しそうなスタンを見てあたし、とっても安心した。
スタン……ルーティ ?
ルーティフィリア。あんたの浴衣、とっても可愛いわね。すっごく女の子らしくてよく似合ってる。
フィリア……あ、ありがとうございます。
ルーティそれじゃあ、またね。
スタンルーティ ! 待って――
ルーティ来ちゃダメ。前も言ったかもしれないけどもし来たら本気で怒るからね。
スタン……っ。
ルーティうん。それでいいわ。まだお祭りは終わってない。あんたたちも楽しんで。

キャラクター10話【花火10 秘めた想い】
スタンこのあたりにもう魔物はいないみたいだな。ちょっと休むか。
フィリアスタンさん。もうすぐ打ち上げ花火の時間ですよ。
スタンもうそんな時間か。あっという間だったな。
フィリア……ルーティさんのことはいいんですか ?
スタン……来るなって言ってたからな。今はルーティの気持ちを尊重したいんだ。
フィリアそれは……カイルさんのこともあるからですか ?
スタン……うん。ルーティから聞いたのか ?
フィリアいいえ。話を聞かなくても一目見ただけで直感しました。
フィリアスタンさんとルーティさんの子だって。
スタン……俺もさすがに驚いたよ。けど、俺よりもルーティだ。すごく混乱してる。
スタン俺、バカだからわからないんだ。どうしたらいいのか。
スタンもう……元には戻れないのかな。前みたいにくだらないことで喧嘩したりどうでもいいことで笑い合ったり……。
フィリア…………スタンさん。
スタンどうした ?
フィリアあちらに見晴らしのよい場所があります。そこで花火を見ませんか ?
フィリア私たち二人で。
スタンえっ……。
フィリアスタンさん、打ち上げ花火をすごく楽しみにしてたじゃないですか。
スタンあ、ああ。もちろん。この打ち上げ花火のためにお祭りの準備も頑張ってきたもんだからな。
フィリア調合もバッチリでした。どれも私の魂がこもった自信作です。
スタン街の人たちや俺たちの仲間それに亡くなった人たちもフィリアの花火を必ず楽しんでくれるよ。
スタンもちろん俺もすっごく楽しみだ !想像してたらまたワクワクしてきた !はやく花火が見たいよ !
フィリアその自然な笑顔でいればきっとルーティさんも笑ってくれますよ。
スタン…………フィリア ?
フィリア大丈夫。私が保証します。いつものスタンさんが一番です。
フィリアきっとルーティさんも今はもう大丈夫。だから、行ってください。
スタン……けどこのあたりの警備もあるだろ。
フィリアさっきこっそり助っ人を頼みました。なのでスタンさんがここにいる理由はもうありません。
スタン…………。
フィリアどうか、早く。花火が打ち上げられる前に。
スタン行って……いいんだよな。
フィリアふふっ……もう、スタンさんったら。変なことを聞かないでください。
フィリアもちろんですよ。だってスタンさんは――
フィリアルーティさんと花火が見たいんですから。

キャラクター11話【花火10 秘めた想い】
ソーディアン・クレメンテもうそろそろ時間じゃの。
フィリア……スタンさん、間に合うでしょうか。
ソーディアン・クレメンテどうだかのう。
? ? ?おい。
フィリア! ? スタンさ――
リオン誰がスタンだ。お前わざとやってるだろ。
フィリア……リオンさん。失礼しました。
リオン僕の持ち場は向こう側でいいんだな ?
フィリアはい。警備を引き受けてくださりありがとうございます。
リオン構わん。どうせ他の場所を見回っていたついでだ。それに、借りを作ったままなのも癪だからな。
フィリア借り ? えっと、何か貸しましたか ?
リオン……なんでもない。僕は自分の持ち場に行く。
フィリアあの、1つだけ伺いたいのですが来る途中、スタンさんとすれ違ったりしませんでした ?
リオンまったく……いい加減、僕にスタンのことをちょくちょく聞いてくるのはやめろ。
フィリアす、すみません……。ルーティさんの元に向かったはずなんですが花火の時間には間に合いそうか気になってしまい……。
リオン……それなら心配ない。近道を教えておいてやった。
フィリアリオンさん……。
リオンふんっ。
フィリア…………よかった。
ソーディアン・クレメンテフィリア。おぬしはいい女じゃのう。わしの嫁にしたいぐらいじゃ。
フィリアもう、クレメンテったら。ですが冗談でも嬉しいですわ。
ソーディアン・クレメンテ冗談ではないぞ。心からそう思っておる。
ソーディアン・クレメンテおぬしには心に決めた者がいるのが悲しいところじゃがのう。
フィリアいよいよですわよ。
ソーディアン・クレメンテそのようじゃ。
フィリア……綺麗ですわね。
ソーディアン・クレメンテずっと眺めていたいのう。
フィリアええ。ですがもう、次で最後ですわ。
フィリア亡くなった人たちの無念。
フィリアこの世に生きる人々の嘆き。
フィリアどうか全ての悲しみが、癒やされますように。