キャラクター | 1話【花火1 再会】 |
イクス | よし。この街でまだ見回ってないのはこの先にある教会だけだな。 |
スタン | ウッドロウさん、体の具合は大丈夫ですか ?休みたくなったら遠慮なく言ってくださいね。 |
ウッドロウ | 私は大丈夫だよ。むしろ歩いていると心地よいぐらいだ。まだ残暑はあるが、だいぶ涼しくなったからね。 |
スタン | もう夏も終わりですもんね。なんだかあっという間だったなぁ。 |
スタン | リオンはどこか遊びに出かけたか ? |
リオン | お前たちと一緒にするな。 |
スタン | えっ ! ? まさか結局海にも山にも一度も行かなかったのか ! ? |
リオン | 当然だ。僕からしてみれば遊び呆けているお前たちの気が知れない。もし帝国が攻め込んできたらどうするつもりだ。 |
ウッドロウ | カロル調査室が安全を保証してくれていただろう ?アジトでの見張り役もローテーションで組んでる。リオン君がずっと仕事していることはないと思うが。 |
リオン | 自分の目で確かめるのが一番だ。それに僕が何をしていようと関係ないだろ。 |
イクス | そうかもしれないけどたまの気分転換ぐらいはした方がいいんじゃないか ?俺たちに仕事は任せてさ。 |
スタン | イクスだってこう言ってくれてるだろ。今からでも遅くない。リオン、この後、遊びに行こう。ほら、あっちにアイスクリーム屋もあるぞ。 |
リオン | 僕たちは遊びに来たわけじゃないぞ。それにこの街の様子を見てみろ。呑気に立ち食いをしている雰囲気ではないだろ。 |
スタン | まぁ、それはそうだけど……。 |
ミリーナ | ディムロスさんから報告があったとおり街の人たち全員が沈んでるものね……。まるでみんな心を病んでしまっているみたい。 |
ウッドロウ | 無理もない。ファンダリア領内では新生対帝国部隊と帝国とで激しい戦いがあった。何人死傷者がでたかわからないほどだ。 |
イクス | この街は部隊の家族や恋人が多く暮らしている。つまり亡くなった部隊員と親しかった人も大勢いるはず。街から活気がなくなるのも無理ないよな……。 |
ウッドロウ | 大切な者たちの死もそうだろうが季節的なことも原因の一つかもしれないね。 |
ウッドロウ | 夏の終わりに近づくほどに人々の喧騒やセミの声も次第に消えてゆく。それらがよりいっそう寂しさを誘うのだろう。 |
スタン | ……寂しさか。俺、街の人たちに早く元気になって欲しいです。何かできることはないですかね……。 |
ウッドロウ | そうだな……。街の様子を見た限り突然のことに感情の整理がつかない者が多いように、私には思えた。 |
ウッドロウ | ここはやはり、故人に別れを告げる機会を用意するのがよいのではないだろうか。 |
ミリーナ | 別れを告げる機会……ですか ? |
ウッドロウ | 例えば、夏祭りなどはどうだろう。ティル・ナ・ノーグの文化では死者を弔う意味でも行われていたはずだ。 |
スタン | いいですね ! 楽しそうですし !きっと街の人も元気になってくれると思います ! |
イクス | 俺たちも賛成です。 |
ウッドロウ | では私が指揮を執り、進めるとしよう。ディムロス隊長と街の代表者に掛け合ってみるよ。 |
ミリーナ | お願いしてもいいんですか ? |
ウッドロウ | イクティノスがないので戦闘ではあまり役に立てず申し訳ないと思っていたんだ。 |
ウッドロウ | 代わりと言ってはなんだがここは私に任せてくれないかな ? |
スタン | はい、お願いします ! この中でいったらウッドロウさんが一番適任だと思いますし俺たちとしても助かりますよ。 |
ウッドロウ | 私などまだまだだ。きっと今回も君たちの力を借りることになるだろう。そのときはよろしく頼むよ。 |
イクス | はい ! 力を合わせて頑張りましょう ! |
スタン | リオンも頑張ろうな。 |
リオン | ……仕方ない。少しだけだぞ。 |
ウッドロウ | おや。リオン君も手伝ってくれるとは。これは心強いな。 |
リオン | シャルティエ少佐から新生対帝国部隊の士気も低下傾向になると報告が入った。 |
リオン | この街に活気が戻れば、自ずと部隊の士気も回復するだろう。そう考えたまでだ。 |
スタン | なんだ。てっきりリオンも夏祭りが楽しみなのかと思ったのに。 |
ソーディアン・シャルティエ | やっぱり違ったんですね……。 |
リオン | お前たちは、揃いも揃って……。 |
ウッドロウ | しかしながらリオン君の意見も当を得ている。ディムロス隊長と相談をして部隊員にも夏祭りに参加してもらうのもよさそうだ。 |
ミリーナ | なんだか規模が大きくなりそうね。私は商人たちとの繋がりのあるロゼに一報を入れておくことにするわ。 |
イクス | えっと……あと他にやっておくことは……。 |
ウッドロウ | 具体的な内容はまた後で考えよう。見回りついでに教会の慰霊碑で一度祈りを捧げてからでも遅くはないだろう。 |
イクス | それもそうですね。俺たちも混ぜてもらいましょう。 |
ミリーナ | 司祭様が来たわ。そろそろ祈りの時間みたい。 |
スタン | あれ……ちょっと待ってくれ。あの司祭の人って……もしかして……。 |
フィリア | えっ……そこにいるのは……。 |
スタン | フィリア ! ? フィリアじゃないか ! |
ウッドロウ | まさかこんなところで会うことになろうとは ! |
フィリア | スタンさん ! ウッドロウさんも ! !それに――えっ ! ? |
リオン | ……。 |
フィリア | リ、リオンさん……どうして……。 |
スタン | お、おい。どうしたんだよ、フィリア。 |
フィリア | どうしたって……だって……。 |
ウッドロウ | フィリア君。まずは話し合おう。どこか落ち着いて話せる場所はあるかい ? |
フィリア | そ、それでしたら……この教会の奥に私がお借りしている部屋があります。ご案内しますね。 |
ウッドロウ | ああ、よろしく頼む。 |
キャラクター | 2話【花火2 フィリア】 |
イクス | ……ということなんだ。俺たちからの説明はこんなところなんだけど大丈夫そうか ? |
フィリア | ええ、おかげで具現化や私たちの置かれている状況についてもだいぶ理解ができましたわ。 |
フィリア | イクスさんとミリーナさんでしたね。改めましてフィリア・フィリスと申します。こちらは私のソーディアン・クレメンテです。 |
ソーディアン・クレメンテ | ふぉっふぉっふぉ……ミリーナさんか。こんな金髪の美人がいる陣営につけるとは帝国側から逃げてきて正解じゃったな。 |
フィリア | もう、クレメンテったら。ミリーナさん、ごめんなさいね。 |
ミリーナ | ふふっ。クレメンテさんのような人生経験豊富なおじ様が仲間になってくれてとても心強い限りです。 |
ミリーナ | それにフィリアが加わってくれたことも凄く嬉しいわ。優しくて知的で可愛くて……フィリアを見ていると天から降りてきた女神様かと思えてきちゃう。 |
フィリア | そ、そんな。私ごときが神だなんて。恐れ多いですよ。 |
ミリーナ | 慎み深いところも素敵だわ。尊い……。 |
リオン | そしてもう一人。いや、もう一本が正しいか。 |
ソーディアン・イクティノス | ウッドロウのソーディアン・イクティノスだ。よろしく頼むよ。 |
イクス | はい。こちらこそ。よろしくお願いします。 |
スタン | ウッドロウさん、よかったですね。ちゃんとイクティノスの機能が回復したみたいで。 |
二人 | …………。 |
スタン | えっと……俺、何か変なことを言ったか ? |
リオン | それについては後だ。まだ聞きたいことが山程ある。 |
フィリア | 私のことですね。では、具現化されてからイクティノスを持ってこの街に逃亡してくるまでのことをお話しますわ。 |
フィリア | ……簡潔にまとめるとこんなところですわ。 |
ウッドロウ | ……なるほど。つまりフィリア君はこの世界のストレイライズ神殿を拠点とする新生アタモニ神団の神官役として具現化されたと。 |
イクス | 帝国の鏡士っていうとジュニアか。 |
フィリア | ジュニアさんから新生アタモニ神団の長であるエルレイン様を紹介された後は、彼女の指示に従いストレイライズ神殿で研究に勤しんでいましたわ。 |
リオン | だが帝国上層部の非道な行いを知ってストレイライズ神殿の研究所に保管されていたイクティノスを持ち、逃げてきたと。 |
フィリア | はい。新生アタモニ神団は実質的に帝国の一部。これ以上、人の命や心を弄ぶ悪事に加担することはできませんでした。 |
ミリーナ | そしてフィリアは逃げた後、この街の人たちに帝国の追手から匿ってもらったのね。 |
フィリア | ええ。皆さん、親しい人たちの死を嘆いていましたから少しでも恩返しができればと思い、司祭として教会のお手伝いをはじめ、今に至ります。 |
スタン | フィリアも大変だったんだな。無事で本当によかったよ。 |
フィリア | 私もまたスタンさんたちにお会いできて嬉しいですわ。 |
スタン | それにしても、どうやってイクティノスを修復したんだ ? |
スタン | ほら、俺たちがいた時代の技術では修復不可能だって話だっただろ ? |
フィリア | それは……。 |
ウッドロウ | 元の世界。ヘルレイオスの天上軍の技術研究施設で私たちの手で修復をした。 |
ソーディアン・ディムロス | ヘルレイオスだと ! ?確かにあそこではソーディアンの研究も行われていた。事実であるとすれば不可能ではないが……。 |
リオン | ……やはり僕たちの具現化時間軸には差があるようだな。 |
フィリア | ! 先程の話では、私たちから見て大昔天地戦争時代のディムロスが具現化されているという話でしたよね。なら、もしかして……。 |
ウッドロウ | 私とフィリア君からみてスタン君たちは過去の人間のようだ。 |
スタン | えっ ! ? ウッドロウさんとフィリアは俺たちからみて未来のタイミングから具現化されたってことか ! ? |
ウッドロウ | ディムロス隊長たちほど時間の隔たりはないようだがね。 |
フィリア | だからリオンさんも……。 |
リオン | ……。 |
スタン | な、なぁ。ウッドロウさんもフィリアも、リオンと再会した時、ただ事じゃないような顔してたけど、どうしてなんだよ。 |
スタン | もしかして……未来で何か…………。 |
二人 | …………。 |
スタン | ご、ごめん。やっぱり何でもない。けどとにかく具現化のタイミングが違うんだってことはちゃんとわかったよ。 |
リオン | だがまだ伝えておかなくてはならないことがある。それは僕やお前たちからみて数十年後の未来の人間も具現化されているということだ。 |
フィリア | 私たちにとって未来の人まで具現化されているんですか ! ? |
リオン | ああ。だがそいつらから聞いた話には僕たちの世界での法則や歴史と明らかな矛盾があった。 |
リオン | だから未来といっても断定的なものではない。可能性の一部としての『未来』だ。 |
フィリア | ……可能性の一部としての『未来』。 |
ウッドロウ | これはディムロス隊長たちが具現化された『過去』にも同じことが言えるだろうね。 |
スタン | フィリア、大丈夫か ?もう難しすぎてわけわかんないよな。 |
フィリア | 私はなんとか……。ちなみに、その未来の方々というのはどのような―― |
ミリーナ | 待って。誰か来たみたい。 |
アニス | やっほー ! ロゼに話を聞いてお祭りの手伝いにきた心優しいアニスちゃんでーす !助っ人でガイも連れてきたからね ! |
スタン | アニス ! それにガイさんも !ありがとうございます ! 助かりますよ ! |
フィリア | えっと、この方たちはアジトを拠点に行動を共にしているという別の世界の鏡映点という認識で間違いないでしょうか ? |
ガイ | その通りだ。そこの可憐な眼鏡のお嬢さんはスタンたちの世界から具現化された鏡映点だよな ?俺はガイ、こっちはアニス。よろしくな。 |
フィリア | は、はい。フィリア・フィリスです。よろしくお願いします。 |
アニス | あー。ガイがさっそく色目使ってる。司祭の女の子からメイドお姉さんまでホント節操ないんだから。フィリア、気をつけなよ ? |
フィリア | そ、そうなのですか ! ?……神よ。どうか私をお守りください。 |
リオン | 貴様っ……まさかまたマリアンに ! |
ガイ | ちょ、アニス !誤解を招くようなことを言うな !二人も頼むから落ち着いてくれ ! |
アニス | むふふふ♪ これはお祭りの準備をしっかりこなして信用を回復しないとだね。頑張れ、ガイ ! 今こそ使用人根性を見せる時だよ ! |
ガイ | はいはい。謹んで奉仕させていただきますよ。アニスたちの商売根性に負けないぐらいにな。 |
ウッドロウ | ふっ。これは頼もしい。ではフィリア君、一度私たちの話はこれくらいにしてお祭りの準備に取り掛かるとしようか。 |
フィリア | そうですね。気になることはまだありますが一度自分の中で情報も整理したいですし話はまた後ということで。 |
フィリア | それに、街の人たちのこともあります。お祭りの準備を最優先に進めましょう。 |
スタン | 街の人たちには早く元気になって欲しいもんな。 |
アニス | そうそう。さっき街の倉庫に行ってきたんだ。備品の確認をしてたんだけど、その時お祭りにも使えそうな面白いものを見つけたんだよ ! |
スタン | 面白いもの ? なんだか気になるな。 |
アニス | それは見てからのお楽しみ~♪というわけでみんな、付いてきて ! |
キャラクター | 3話【花火3 面白いもの】 |
アニス | それじゃあいくよ。ここに火をつけて……はいっ ! |
スタン | おぉっ ! これが線香花火か !棒の先から火花がでてきた ! |
フィリア | ふふっ。スタンさん、楽しそうですね。 |
スタン | ああ ! ディムロスの炎も格好いいけど線香花火はカラフルで綺麗だからな。全然違うところもとっても面白いよ。 |
ソーディアン・ディムロス | 我と線香花火を同じくくりで話すのはやめてもらおうか。 |
ミリーナ | アニスが倉庫で見つけた面白いものって花火のことだったのね。 |
イクス | そういえば小さい頃、俺たちも遊んだっけ。なんだか懐かしいな。やっぱり夏といえば花火だよな。 |
アニス | 去年は鏡殻変動とか色々あって催し物があちこちで中止になったんだって。だから花火がたくさん余ってるみたい。 |
ウッドロウ | こんな素敵なものを余らせておくのは勿体無い。それなら、お祭りに花火の要素を加えてもいいかもしれないね。 |
アニス | そういうこと ! 参加者に手持ち花火をプレゼントすれば呼び込みアピールにもなるでしょ ?それに今なら格安で仕入れられるし一石二鳥だよ ! |
イクス | 俺もいいと思う !夏祭りの趣旨にもあってるしさ ! |
ミリーナ | 夏のこの時期、死者を慰めるため花火を打ち上げるという風習がティル・ナ・ノーグにはあるものね。 |
イクス | 本当は打ち上げ花火でやるものだけどさすがに今から用意するのは厳しいもんな。 |
アニス | チッチッチッ。このアニスちゃんを見くびらないでよね。 |
アニス | なんと ! 花火師はもう手配済み !今ガイが最終確認しに向かっているところでーす♪ |
イクス | もしかして、打ち上げ花火もできるのか ! ? |
アニス | 空高くまでドカーンッとぶっ放して真っ暗な夜空に大きな花を咲かせてやろうよ ! |
スタン | おぉ ! すっごく楽しみだ !今から当日が待ち遠しいよ ! |
ガイ | 水を差すようで悪いな。打ち上げ花火はやっぱり厳しいそうだ。 |
アニス | えっ、どういうこと ! ?人員も機材も揃ってるって話だったよね ? |
ガイ | 雨漏りのせいで打ち上げ花火の玉が全部ダメになっちまったらしい。今から作ってちゃ到底間に合わないそうだ。 |
スタン | そっかぁ。それは残念だな……。 |
フィリア | ……スタンさん。 |
アニス | 打ち上げる玉がないんじゃしょうがないよね。手持ち花火で我慢するしかないかー。これでも十分楽しんでもらえるだろうしさ。 |
ガイ | わかった。花火師の人たちにもそう伝えてくる。 |
フィリア | あの ! 待ってください ! |
アニス | フィリア、どうかしたの ? |
フィリア | この薬瓶を見ていてください。いきますよ……えいっ ! |
アニス | はうわっ ! 爆発したんだけど ! ! |
ガイ | 片手で持てるぐらいの大きさなのにたいした威力だな !それはいったい何なんだ ! ? |
フィリア | 私の可愛い手作りボム。フィリアボムと言います。 |
スタン | わかりやすくて覚えやすいしいい名前だよな ! |
アニス | で、そのフィリアボムがどうかしたの ? |
フィリア | えっと……花火玉がないということでしたがこのフィリアボムを改良すれば代用品を調合可能かもしれないと思って。 |
ミリーナ | そんなことができるの ! ? |
フィリア | はい。たとえばあの薬品にあれとそれを加えれば……ふ、ふふふっ。 |
ガイ | フィリアの頭の中ではもう完成してるみたいだな。 |
イクス | そ、そうみたいだな。少しフィリアから闇を感じたけど気にしないことにするよ。 |
フィリア | ですがリセルベウムという特殊な鉱石が必要なのでこれが揃うかどうか……。 |
ガイ | その鉱石なら花火師たちが持っていたな。採掘場所も知っているはずだ。俺がひとっ走り聞いてくるよ。 |
フィリア | ガイさん、ありがとうございます。これなら打ち上げ花火もできそうですね。 |
ウッドロウ | ではこの夏祭りは花火大会というテーマで決まりかな。 |
アニス | ちょっと待って。アニスちゃん、いい事を閃いちゃった。 |
アニス | 表向きは普通の夏祭りってことにして打ち上げ花火はサプライズにしない ? |
アニス | 街の人たちやアジトのメンバーにも打ち上げ花火のことは秘密にしておいてみんなをビックリさせる作戦 ! |
ガイ | そいつは面白そうだな。いまその考えを聞いただけでルークが目ン玉を丸くする顔が浮かんだよ。 |
ウッドロウ | 皆、賛成のようだね。ではアニス君の案で進めるとしよう。 |
アニス | いい ? 花火のことはここにいる私たちと花火師の人たちだけの秘密だからね。ぜ~ったい話しちゃダメだよ。 |
スタン | ああ。わかったよ。約束だ、絶対に言わない。 |
フィリア | 私も誓います。このことは絶対に秘密です。 |
ウッドロウ | ではそろそろ本格的に準備に取り掛かろう。私はディムロス隊長や街の代表者との面会があるので花火のことは君たちに頼めるかな ? |
フィリア | もちろんですわ。ウッドロウさんは実行委員会も忙しいでしょうからこちらのことは任せてください。 |
ガイ | それじゃあ、俺たちはまず鉱石の採取だ。みんな、身支度を整えてきてくれ。ここでまた合流し、採掘所に出発しよう。 |
一同 | 了解 ! |
キャラクター | 4話【花火4 鉱石採取】 |
スタン | 採掘場までもう少しみたいだぞ。フィリアボム式打ち上げ花火のため張り切っていこう ! |
ガイ | スタンはやる気十分みたいだな。そんなに打ち上げ花火が楽しみなのか ? |
スタン | 今から待ち遠しくて仕方がないよ。早く見てみたいなぁ。 |
フィリア | でしたら私も腕によりをかけて調合をいたしますわ。 |
フィリア | 街の人たちやアジトの皆さん、そして…………スタンさんにも喜んでいただけるように。 |
ミリーナ | …………フィリア…………。 |
イクス | ミリーナ、どうかしたのか ? |
ミリーナ | ……ううん。何でもないわ。 |
スタン | あっ。着いたみたいだぞ。ここが採掘場……って、何だここ ! ?ゴミ捨て場みたいじゃないか。 |
ガイ | ガスもでてるみたいだぞ。これはなかなか骨が折れそうだな。 |
フィリア | …………。 |
ミリーナ | フィリア、大丈夫 ?なんだか具合が悪そうだけど。 |
ソーディアン・クレメンテ | フィリアは潔癖症なところがあるからのう。やはりこのような場所は苦手のようじゃな。 |
フィリア | い、いえ……これくらいは大丈夫です。皆さん、行きましょう。 |
スタン | あまり無理はするなよ。鉱石は俺たちが採ってくるからフィリアはここで待っていてもいいんだぞ。 |
フィリア | そういうわけにはいきません。これも花火のためですから。 |
ソーディアン・ディムロス | 決意は硬いようだな……。 |
フィリア | さあ。皆さん。パッと終わらせましょ、パッと。 |
ミリーナ | フィリア、待って !そこの地面にはヘドロが溜まっているわよ ! |
フィリア | きゃあっ ! ! |
ガイ | ひぃっ ! や、やめろ !俺から離れてくれ ! ! |
イクス | しまった ! ガイさんは女性恐怖症だった ! |
ミリーナ | ガイさん、こらえて !いまフィリアを突き飛ばしたりしたらフィリアがヘドロまみれになっちゃうわ ! |
ガイ | わ、わかった。わかったから早く、体勢を立て直してくれ ! |
フィリア | も、もう大丈夫です。すみません、お騒がせしました。 |
ガイ | いいや。俺としては美女と密着できてこんなに嬉しいことはないんだが……。すまないね、フィリア。乱暴な言葉を使ってしまって。 |
フィリア | あ……いえ……。こちらこそ申し訳ありません……。 |
ソーディアン・クレメンテ | いまのアクシデントだけでどっと疲れたのう……やはり先が思いやられるわ。 |
スタン | このあたりはどこもゴミだらけだもんな。 |
フィリア | やってられませんね。 |
一同 | えっ……。 |
フィリア | あ、あら……私ったら。何か変なことを口にしました ? |
ガイ | ……や、やっぱり女性は恐ろしいな。 |
ソーディアン・ディムロス | ……フィリアが正気を保っていられる間に鉱石を集める必要がありそうだな。 |
スタン | あ、ああ。急ぐとしよう。 |
キャラクター | 5話【花火7 未来から来た少年】 |
フィリア | ウッドロウさん、フィリアボム式打ち上げ花火。全て調合が終わりましたわ。今スタンさんが花火玉を花火師の方々に届けに行ってくれています。 |
ウッドロウ | こちらも屋台の設営などの準備は整った。無事、夏祭りを開催できそうだ。皆はそれぞれ祭りを楽しんでくれたまえ。 |
ウッドロウ | 私はまだ実行委員会の仕事が残っているから失礼させてもらうよ。 |
ガイ | それじゃあ俺も行くとするか。 |
イクス | ガイさんも何か仕事ですか ? |
ガイ | いいや、ルークのところさ。お祭りは一緒にまわりたいって頼まれてな。待ち合わせをしてるんだ。 |
アニス | あれ ? ルークはガイを誘ったんだ。てっきりティアだと思ってたよ。相変わらず朴念仁だなぁ ! |
ガイ | まぁ、そう言うなって。急にルークが積極的になってもびっくりするだろ。 |
ガイ | ……ローレライの具現化のこともあったからな。男同士、ちょっと元気づけてやろうと思ってるんだ。 |
アニス | ……そっか。今は落ち着いてるけど……やっぱり心配だもんね。 |
ガイ | それに、ティアの方も夏祭りはナタリアと二人で行くって言ってたぜ。今は自分が側にいてやりたいんだとさ。 |
アニス | あー。ティア、ナタリアのこと心配してたもんね。アッシュが出ていってから少し元気がないって。 |
ガイ | ……アニスも、な。平気なフリばっかりしてると疲れちまうぞ ?たまには思い切り泣いてもいいんだぜ ? |
アニス | え ?ガイってばアニスちゃんに胸を貸してくれるのー ? |
ガイ | いや……それはジェイドの旦那にでも頼んでくれ。 |
ガイ | ……それにしても人生ってのはままならないもんだな。 |
フィリア | …………。 |
ガイ | ……って、すまないな。せっかくお祭りがはじまるってのにこっちの身内話で、暗い気分にさせちまった。 |
フィリア | いえ。詳しい事情は存じませんが皆さんのお気持ちはわかりますから……。 |
アニス | あっ ! ごめん !そろそろ屋台に行かないと !ロゼたちを待たせてるんだった ! |
アニス | みんな、ちゃんとかき氷買いに来てよね ! |
ガイ | それじゃあ俺も行くとするか。またな。 |
イクス | ミリーナ、俺たちもそろそろ行こう。コーキスとカーリャが待ってる。 |
ミリーナ | そうね。フィリアもお祭りを楽しんで。 |
フィリア | ええ。それでは。 |
ソーディアン・クレメンテ | フィリア。お主はどうするのじゃ ? |
フィリア | 私は……。 |
? ? ? | おお ! まさかこんなところで会うなんて ! |
フィリア | 今の声、スタンさん ?花火玉の運搬が終わって戻ってきたのでしょうか。 |
ソーディアン・クレメンテ | 誰かと話しているようじゃな。 |
フィリア | いったい誰と……。 |
カイル | オレも遊びに来ました ! |
フィリア | ――っ ! ? |
ソーディアン・クレメンテ | あの少年……。 |
フィリア | ……似てる、スタンさんに。それに…………。 |
フィリア | い、一瞬だけ……………………ルーティさんの、面影も……。 |
ソーディアン・クレメンテ | ウッドロウたちの話によるとわしらから数十年後の世界から具現化された者がいると聞いていたが……まさか、あの少年が…………。 |
フィリア | …………。 |
キャラクター | 6話【花火7 未来から来た少年】 |
カイル | それじゃあリアラたちみんなが待ってるんでオレ、そろそろ行きますね。 |
スタン | カイル。よければこのお祭り最後まで楽しんでいってくれ。 |
カイル | えっ、何かあるんですか ? |
スタン | それは秘密だ。 |
カイル | えー、気になるな。けどわかりました !スタンさんが言ってたっていえばロニやジューダスも許可してくれると思いますし ! |
スタン | もちろん夜更しはよくないから無理のない範囲でな。 |
カイル | わかってますよ ! それじゃあ行ってきます !ルーティさんもそろそろ到着するはずですしスタンさんもお祭り、楽しんでくださいね ! |
フィリア | …………やっぱり。 |
? ? ? | ……あれ ? そこにいるの……。 |
フィリア | えっ……。 |
ルーティ | やっぱり ! フィリアじゃないの !あたしよ、あたし。まさか忘れてないでしょうね ? |
フィリア | ル、ルーティさん……。 |
ルーティ | ……ちょっと。少し顔色が悪くない ?ファンダリア領でお祭りの準備をしてるって報告は聞いていたけど、あんたまた無理してたんじゃ……。 |
フィリア | い、いえ……そんなことは……。気のせいですよ……。 |
スタン | あれ ? フィリアじゃないか。それにルーティも一緒だったのか。 |
ルーティ | あっ…………スタン。久しぶり。あんたは相変わらず元気そうね。 |
フィリア | …… ? |
スタン | ルーティもお祭りに来たんだよな。この後はどうするんだ ? |
ルーティ | そ、そりゃあ……アニスやロゼ、イリアと屋台の仕事よ。お祭りが終わるまで、ずっとね。 |
スタン | そっかぁ。それじゃあ忙しいよな……。 |
ルーティ | ……もし時間があったら連絡するかも。時間があったらね。 |
スタン | うん……わかった。どうするかはルーティに任せるよ。 |
ルーティ | ……それじゃあ。フィリア、またゆっくり話しましょ。 |
フィリア | は、はい…………。 |
スタン | …………。 |
フィリア | あの、スタンさん。私の勘違いだったら申し訳ないのですが……。 |
スタン | うん ? どうかしたか ? |
フィリア | …………いえ。何でもありません。 |
スタン | そっか。ところでフィリアはこの後どうするんだ ? |
フィリア | わ、私ですか ? |
スタン | ウッドロウさんは実行委員会、ジョニーさんはライブステージ、ルーティは屋台。みんな忙しそうだからフィリアもなのかと思って。 |
フィリア | …………え、ええ。私もちょっと…………。 |
スタン | そっかぁ……残念だな。リオンも魔鏡通信を切ってるのか連絡がつかないし……どこにいるんだろう。 |
スタン | ……元の世界と同じでやっぱり集まるのはなかなか難しいんだな。 |
フィリア | ……スタンさん。 |
フィリア | あの……リオンさんなら実行委員会の運営本部にいらっしゃると思いますよ。もうすこしで休憩の時間のはずですが……。 |
スタン | そうなのか ! ? なら行ってみるよ !あれ……けど、運営本部の場所って……。 |
フィリア | ふふっ。 |
スタン | フィリア ? どうしたんだ ? |
フィリア | すみません、ちょっとおかしくって。運営本部なら、私がご案内しますよ ? |
スタン | ありがとう ! そうだ、運営本部に向かう途中の屋台で何かごちそうするよ。 |
フィリア | い、いいですよ。なんだか悪いです……。 |
スタン | 遠慮することないって。もちろん、フィリアは優しくて慎み深いところがいいところなのはわかってるけどさ。 |
フィリア | ……スタンさん。 |
スタン | さあ、行こう。 |
フィリア | はい。 |
キャラクター | 7話【花火8 夜店】 |
ルーク | はぁ……財布と魔鏡通信はアジトに忘れてくるしガイとははぐれちまうし……なんかツイてねぇな。 |
ウッドロウ | ガイ君には私から連絡しておいた。もうすぐここに来るはずだ。 |
ルーク | ごめん、ウッドロウさん。実行委員会の仕事で忙しいのに……。 |
ウッドロウ | なに、気にすることはない。困ったときはお互い様だ。それに、困っているルーク君を見て見ぬフリなどできないさ。 |
ルーク | ……うん、ありがとう。 |
ガイ | ルーク ! 捜したぞ ! |
ルーク | ガイ、どこ行ってたんだよ ! 気がついたら、姿が見えなくなってるし、すげぇ人混みの中に一人取り残されるし、めちゃくちゃ焦ったんだからな ! |
ガイ | はぁ……はぁ……それはこっちの台詞だ。あれほど人混みのなかではボーッとするなって言ったのに……。 |
ルーク | 別にボーッとなんて……。 |
ウッドロウ | ガイ君、だいぶ急いできたようだね。着物が少しはだけているよ。 |
ガイ | おっと……せっかく祭りの手伝いのお礼にって商店街の職人が仕立ててくれたものだからな。魂が宿った浴衣を雑に着たら失礼だ。 |
ウッドロウ | ああ、それでもう大丈夫だ。ちゃんと着こなせているよ。 |
ガイ | ありがとう、ウッドロウ。 |
ルーク | ガイ、その浴衣、よく似合ってるもんな。爽やかな感じでさ。 |
ガイ | だろ ? 俺も気に入ってるんだ。 |
ルーク | ウッドロウさんのもすっきりしてて格好いいよな。すげぇ大人っぽい。 |
ガイ | そういうのは着る人を選ぶだろうからな。その浴衣も、お似合いの人に着てもらえてきっと喜んでるんじゃないか ? |
ウッドロウ | ありがとう。褒めても何も出せないがね…………と、普段は言うだろうが、今日は特別だ。よければこれを受け取ってくれ。 |
ガイ | これは……金魚すくいのタダ券、三回分か。 |
ウッドロウ | さきほどクジ引きで当たったのだがまだ実行委員会の仕事が残っている。代わりに君たちに楽しんで来てほしい。 |
ルーク | やった ! !そういうことならもらっとこうぜ ! |
ガイ | それじゃあ遠慮なく。ウッドロウ、ルークのことも恩に着るよ。 |
ウッドロウ | 気にすることはない。では、お祭りを楽しんでくれ。 |
ルーク | よーし ! せっかくタダ券もらったんだ !ガイ、さっそく金魚すくいやろうぜ ! |
ガイ | もちろんだ。親父。ポイ2つ頼む。 |
屋台の親父 | あいよ。 |
ルーク | よーし ! 見てろよ !ぜってぇガイよりもたくさん、すくってやる ! |
ガイ | 遊びだからって、負けるつもりはないからな、ルーク ! |
二人 | いくぞっ ! ! |
ルーク | うわっ ! やべぇ、めっちゃ跳ねた ! |
ガイ | こういうのは忍耐が、肝心なんだ。ポイをそ~っと……寄せていって金魚が油断したところを…………すくうっ ! |
ルーク | うおっ ! ガイ、すげぇな !一度に二匹もすくえるのかよ ! ? |
ガイ | ちょっとコツを掴めば簡単さ。ルークも同じようにやってみろ。 |
ルーク | えっと……まずは、そ~っと……って……あ、あれ…………。 |
ガイ | おい、ルーク。その手の震えは……。 |
ルーク | ――へ ? |
ルーク | あ ! ? これはローレライのアレとは違うぞ !ポイに穴をあけないように気を付けたら手に力が入っちゃって……。 |
ルーク | 大体、音素乖離が始まったら、手が震えるんじゃなくて消えかけ――あっ ! |
ルーク | あー、くそ ! ガイが変な勘違いするからポイが破れちまった…… !ちぇっ。この勝負、ガイの勝ちか……。 |
ガイ | ……悪い。気を回しすぎたな。 |
ガイ | 親父。この二匹、別々の袋にいれてくれ。 |
ルーク | ……ガイ ? |
屋台の親父 | はい、どうぞ。 |
ガイ | ルーク。お前に一匹やるよ。どっちがいい ? |
ルーク | えっ、いいよ。俺、面倒みられるかわかんねぇしさ。 |
ガイ | 安心しろ。俺が教える。 |
ルーク | けど……さっきのはガイの勘違いだけどいつか俺に何かあったら……そいつ、一人になっちまうし……。 |
ガイ | そうならないよう、生きるんだ。 |
ガイ | ローレライは具現化されたがこの世界でも音素乖離が発生するかはわからないって話だっただろ。 |
ガイ | それなのに、消えることなんて考えるな。自分のいない未来なんて想像するな。お前に生きていて欲しいんだよ。この先もずっと。 |
ルーク | …………ガイ。 |
ルーク | ――よし。じゃあ俺はこっちのちっこい奴にするかな。ガイはこのひらひらの奴な。 |
ガイ | ――ああ。ちゃんと面倒見るんだぞ。 |
ルーク | わかってるって。名前どうしようかな。ウミザルとか ?ポチ太郎でもいいな。へへ ! |
ガイ | ポチ太郎は俺の別名だから禁止だ。っていうか、もうちょっといい名前はないのか ?その感覚、コレットといい勝負だぞ。 |
ルーク | そうかー ? |
ガイ | ほら、そろそろ次に行くぞ。まだまだ行ってみたい屋台がたくさんあるんだ。ルークにも付き合ってもらうからな。 |
ルーク | ……ああ ! |
キャラクター | 8話【花火9 夏祭り】 |
ルーティ | いけない ! さっきの人からお代もらうの忘れてた ! |
ロゼ | なに言ってるの。あれはクジで当たったタダ券と交換したじゃん。 |
ルーティ | えっ……あぁ、そうだったっけ。 |
イリア | ルーティ、大丈夫 ?なんだかあんたらしくないわよ。 |
アニス | ちょっと休んだ方がいいんじゃない ? |
ルーティ | 何言ってるのよ。今は書き入れ時でしょ。あたしは大丈夫だから力合わせてガッツリ稼ぐわよ。 |
ロゼ | オッケー。じゃあみんな、仕事に戻るよ。アニスは呼び込みよろしく。 |
アニス | アニスちゃんにお任せだよ !がっぽり呼び込んでがっぽり稼いじゃうもんね ! |
? ? ? | アニスたちがやっているかき氷屋さん、このあたりかしら。 |
アニス | あっ、この声。 |
ティア | アニス、遊びに来たわよ。かき氷屋さん、ずいぶん繁盛しているね。 |
ナタリア | 人混みをかき分けてなんとかたどり着けましたわ。 |
アニス | ティア、ナタリア ! いらっしゃい !どうどう、店員姿のアニスちゃん ? |
ナタリア | ずいぶんと可愛らしい浴衣ですわね。 |
ティア | けど……その浴衣ちょっと大胆過ぎるんじゃないかしら。 |
アニス | ふっふっふっ、パティ直伝の客寄せ技だよ。というわけで、二人も、アニスちゃんおすすめのかき氷はいかがですかぁ ? |
ナタリア | もちろん、いただきますわ。 |
アニス | まいどありぃ ! |
アニス | イリア、アニススペシャル2つよろしくぅ ! |
イリア | はいよ、おまちどう ! |
ティア | (トクナガのクッキーがついてる…………かわいい) |
アニス | 人が密集してるから暑かったでしょ。かき氷で涼んでいってね。 |
ティア | え、ええ。それじゃあ、いただきます。 |
ティア | はむっ…………ん~~っ。 |
ナタリア | ふふっ。ティア、頭がキーンってなってますわね。 |
ティア | すっごく冷たいわ。舌触りもよくて美味しいけどナタリアも気をつけて。 |
ナタリア | それでは、私も覚悟を決め、て…………。 |
ティア | ……ナタリア ? |
ナタリア | いま……人混みの中に、赤い髪が……。 |
アニス | えっ ! ? それってもしかして―― |
ナタリア | アッシュ ! ? |
ルーク | えっ……。 |
ナタリア | あっ……。 |
ガイ | ルーク、どうかしたのか……って、ナタリアたちじゃないか。こりゃあ奇遇だな。 |
ティア | ルークとガイもかき氷を食べにきたの ? |
ルーク | うん。アニスたちがやってるって聞いたからさ。 |
ナタリア | あの……ルーク。さっきはごめんなさい。見間違えてしまいましたわ。 |
ルーク | しょ、しょうがねぇよ。すげぇ人混みだしさ。俺の方こそ……なんかごめん。 |
ガイ | ルーク。お前が謝る理由なんてないだろ。 |
ナタリア | そうですわよ。間違えたのは私の方ですわ。 |
ナタリア | ルーク、どうか気を遣わないで。――いえ、気を遣わせてしまってすみません。でも、私は大丈夫ですわ。みんながいますもの。 |
ルーク | うん……。わかった。 |
アニス | も~、そんなところで突っ立ってられると迷惑なんですけどぉ ?というわけで―― |
アニス | そこのお兄さん♪アニスちゃんおすすめのかき氷おひとついかが ? |
ルーク | ははっ、なんだよそれ。ルーク様の次はお兄さんか ?けど、俺、財布忘れてきたからなぁ。 |
ガイ | こっちを見るなこっちを。そんな目で見なくても買ってやるよ。アニス、俺とルークにかき氷を1つずつ頼む。 |
アニス | まいどありぃ ! |
ロゼ | ルーティ、アニススペシャル2つね。 |
ルーティ | オッケー。ちょっと待ってて。 |
ロゼ | あと、その2つ作り終わったら今日はもうあがっちゃって。 |
ルーティ | えっ、あたしならまだやれるけど ? |
ロゼ | だって心ここにあらずって感じみたいなんだもん。そんなんじゃ絶対ミスするよ。だから気分転換してきて。 |
ルーティ | けど―― |
ロゼ | ということで、よろしくね~。 |
ルーティ | あっ、ちょっと ! ロゼ ! |
ルーティ | はぁ……。イリアが言ってたとおりホント、らしくないわ……。 |
アニス | ルーティってば何を考えてるかわかりやす過ぎだって。ロゼはそういうのさぱらんなんだろうけど。 |
ルーティ | な、なによいきなり。 |
アニス | さっきの私たちのやり取り、見てたでしょ ?大切な人と一緒にいられるならその機会を大切にした方がいいよ。 |
アニス | ……もう二度と会えなくなることだってあるんだからさ。 |
ルーティ | …………アニス。 |
アニス | かき氷、ありがと♪これでルーティの今日の仕事は終わりだよ。ほら、行った行った。 |
ルーティ | ……うん、じゃあ行ってくるわ。 |
キャラクター | 9話【花火9 夏祭り】 |
フィリア | ふふっ。クレメンテ。線香花火、とても綺麗ですわね。 |
ソーディアン・クレメンテ | …………。 |
フィリア | クレメンテ。どうかしましたか ? |
ソーディアン・クレメンテ | …………わしの前ではそのように無理して笑わないでくれんかのう……。 |
フィリア | な、なんのことですか……。 |
ソーディアン・クレメンテ | お主はわしの大切なマスターじゃ。年寄りの小言ほど鬱陶しいものはないとはわかっておるが、ここは一つ聞いてくれ。 |
フィリア | ……はい。 |
ソーディアン・クレメンテ | フィリアよ……もし、元の世界でのことに後悔があるのなら今がやり直すチャンスなのではないか ? |
フィリア | ……それは、卑怯ではないでしょうか。まるで運命に逆らうかのような行いのように思えてしまいます。 |
ソーディアン・クレメンテ | お主は未来の存在も気になるようじゃがそれは可能性の一部としての『未来』という話であったじゃろう。 |
ソーディアン・クレメンテ | 今のわしらは元の世界から切り離された存在じゃ。だからこそ、皆、この世界の中で自分の思うように生きようとしておる。 |
ソーディアン・クレメンテ | フィリアよ。ここでの未来は、ここでのお主の行動次第じゃぞ。 |
フィリア | ……私の行動次第。 |
スタン | あれ ? フィリアじゃないか。 |
フィリア | スタンさん、どうしてここに ! ?リオンさんと一緒のはずではなかったのですか ! ? |
スタン | 一緒に屋台をまわったんだけど街の見回りは終わりだって一人で行っちゃったんだ。 |
スタン | けど、おかげでリオンとの夏の思い出ができたよ。すっごく楽しかったしあんなに笑ったのも久しぶりだった。 |
スタン | フィリア。ありがとう。 |
フィリア | はい。どういたしまして。楽しい時間を過ごしていただけたようなら私としても嬉しい限りですわ。 |
スタン | ところでフィリアはどうしてここに ?もしかして俺と同じで散歩か ? |
フィリア | えっと、私は―― |
ソーディアン・ディムロス | ! スタン、魔鏡通信だぞ。 |
スタン | 本当か ! ? フィリア、ごめん ! ちょっと待っててくれ ! |
フィリア | …………はい。 |
スタン | もしもし ! ルー……あっ。 |
ウッドロウ | スタン君。突然すまない。1つ頼みたいことがあって連絡したんだ。もちろん予定があるのなら断ってくれてかまわないが。 |
スタン | ……いえ、特に予定はないので大丈夫ですよ。頼みたいことって何ですか ? |
ウッドロウ | 花火の発射台設置場所付近の見回りを頼みたい。花火師の方々から魔物がいるとの報告が入ったんだ。魔物避け対策はしてあるが万が一ということもある。 |
ウッドロウ | フィリア君が行くことになっているがやはり念を入れてもう一人だけ人員を増やしておきたいと思ってね。 |
スタン | 了解です。ちょうどフィリアもここにいるので俺も一緒に行きますね。 |
ウッドロウ | ありがとう。頼んだよ。 |
スタン | フィリア。ということだから、一緒に行こう。あれ……けど、発射台の設置場所ってどこだったっけ ? |
フィリア | ……スタンさん。私は一人でも構わないですわよ。 |
スタン | えっ……それって俺が足手まといってことか ? |
フィリア | まさか ! 違いますよ。 |
フィリア | 私としては……スタンさんがいてくれるのはとても、心強いです……。 |
スタン | よかったぁ。今日はフィリアに頼りっぱなしだったから呆れられちゃったかと思ったよ。なら俺も行くから、また案内頼めるか ? |
フィリア | ……はい。喜んで。 |
スタン | よし ! それじゃあ出発―― |
ルーティ | …………。 |
フィリア | ルーティさん ! ? |
スタン | ルーティ ! ?黙って突っ立ってるからビックリしたよ。こんなところで何してるんだ ? |
ルーティ | ……さっきリオンとすれ違って、あんたならこのあたりにいるだろうって言ってたから。 |
スタン | そういうことだったのかわざわざこんなところまでごめんな。街の中心地から離れてるし大変だっただろ ? |
ルーティ | ……そういうあんたたちは ? |
スタン | 俺たちは、打ち上げ花―― |
ルーティ | …………なに ? |
スタン | えっと……警護の仕事があるんだ。魔物が出たらしくてさ。 |
ルーティ | 何を魔物から警護するっていうのよ。この先には何もないでしょ ? |
スタン | それは…………。 |
フィリア | ルーティさん。聞いてください。あの……この先には―― |
ルーティ | ううん。もう大丈夫よ。 |
ルーティ | さっきの楽しそうなスタンを見てあたし、とっても安心した。 |
スタン | ……ルーティ ? |
ルーティ | フィリア。あんたの浴衣、とっても可愛いわね。すっごく女の子らしくてよく似合ってる。 |
フィリア | ……あ、ありがとうございます。 |
ルーティ | それじゃあ、またね。 |
スタン | ルーティ ! 待って―― |
ルーティ | 来ちゃダメ。前も言ったかもしれないけどもし来たら本気で怒るからね。 |
スタン | ……っ。 |
ルーティ | うん。それでいいわ。まだお祭りは終わってない。あんたたちも楽しんで。 |
キャラクター | 10話【花火10 秘めた想い】 |
スタン | このあたりにもう魔物はいないみたいだな。ちょっと休むか。 |
フィリア | スタンさん。もうすぐ打ち上げ花火の時間ですよ。 |
スタン | もうそんな時間か。あっという間だったな。 |
フィリア | ……ルーティさんのことはいいんですか ? |
スタン | ……来るなって言ってたからな。今はルーティの気持ちを尊重したいんだ。 |
フィリア | それは……カイルさんのこともあるからですか ? |
スタン | ……うん。ルーティから聞いたのか ? |
フィリア | いいえ。話を聞かなくても一目見ただけで直感しました。 |
フィリア | スタンさんとルーティさんの子だって。 |
スタン | ……俺もさすがに驚いたよ。けど、俺よりもルーティだ。すごく混乱してる。 |
スタン | 俺、バカだからわからないんだ。どうしたらいいのか。 |
スタン | もう……元には戻れないのかな。前みたいにくだらないことで喧嘩したりどうでもいいことで笑い合ったり……。 |
フィリア | …………スタンさん。 |
スタン | どうした ? |
フィリア | あちらに見晴らしのよい場所があります。そこで花火を見ませんか ? |
フィリア | 私たち二人で。 |
スタン | えっ……。 |
フィリア | スタンさん、打ち上げ花火をすごく楽しみにしてたじゃないですか。 |
スタン | あ、ああ。もちろん。この打ち上げ花火のためにお祭りの準備も頑張ってきたもんだからな。 |
フィリア | 調合もバッチリでした。どれも私の魂がこもった自信作です。 |
スタン | 街の人たちや俺たちの仲間それに亡くなった人たちもフィリアの花火を必ず楽しんでくれるよ。 |
スタン | もちろん俺もすっごく楽しみだ !想像してたらまたワクワクしてきた !はやく花火が見たいよ ! |
フィリア | その自然な笑顔でいればきっとルーティさんも笑ってくれますよ。 |
スタン | …………フィリア ? |
フィリア | 大丈夫。私が保証します。いつものスタンさんが一番です。 |
フィリア | きっとルーティさんも今はもう大丈夫。だから、行ってください。 |
スタン | ……けどこのあたりの警備もあるだろ。 |
フィリア | さっきこっそり助っ人を頼みました。なのでスタンさんがここにいる理由はもうありません。 |
スタン | …………。 |
フィリア | どうか、早く。花火が打ち上げられる前に。 |
スタン | 行って……いいんだよな。 |
フィリア | ふふっ……もう、スタンさんったら。変なことを聞かないでください。 |
フィリア | もちろんですよ。だってスタンさんは―― |
フィリア | ルーティさんと花火が見たいんですから。 |