キャラクター | 1話【学園祭1 ポスター】 |
スパーダ | おっ、いたいた。イクス、ミリーナ。ちょっといいか ? |
イクス | スパーダにヒスイさん。どうしたんだ ? |
ヒスイ | ちょっと、こいつを見てほしいんだが……。 |
ミリーナ | わあっ、ステキな絵ね。学園祭の告知ポスターかしら ? |
ヒスイ | そいつは俺たちが情報収集してた街で見つけたんだがどうもベリル……俺たちの仲間の絵に似てんだよ。 |
スパーダ | それでよ、確認するためにも一度学園に行ったほうがいいんじゃねえかってお前たちに相談しに来たってワケだ。 |
イクス | ああ、うん。俺たち、まさに今そのことで相談してる最中だったんだ。 |
ヒスイ | 何っ ! ?それじゃあお前ら、この学園にベリルがいるって知ってたのかよ ? |
ミリーナ | ええ、ついさっきアスターさんからの便りが届いたところなの。 |
スパーダ | アスター ? アスターって確か、セールンドにいる商人で、オレたちにも協力してくれてる奴だよな ? |
イクス | そうなんだけど、彼は学園の理事もやってるんだ。それで、この前の花見で行ったときにロゼから学園を隠れ蓑にしたらどうかって提案を受けててさ。 |
イクス | アスターに話してみたら二つ返事で了承してくれたよ。 |
ミリーナ | アスターさんには、鏡映点候補のリストを送ってここに載ってる人を見つけたら保護して欲しいって頼んでいたの。 |
ヒスイ | ははーん、見えてきたぞ。で、その学園からベリルを匿ってるっていう知らせが入ったんだな ? |
ミリーナ | ええ。だけど、彼女だけじゃないの。他にもう一人、『アンジュ』って人も一緒みたい。 |
スパーダ | アンジュだと ! ?おいおいマジかよ……。 |
スパーダ | だったら話は早ぇ。オレたちがアンジュとベリルを連れてくる !な、構わねえだろ ? |
イクス | それじゃあ、よろしく頼むよ。学園にいる二人も、知ってる人が迎えに来たほうが安心するだろうし。 |
ヒスイ | よし ! そうと決まればコハクとシングの奴にも声を掛けてくるぜ ! |
スパーダ | オレもルカたちを呼んでこねえとな。へへっ、喜ぶぜ、あいつら。 |
ミリーナ | 二人とも、学園は帝国の勢力圏にあるからくれぐれも気を付けて。 |
二人 | おうっ ! 任せとけ ! |
キャラクター | 2話【学園祭2 不安】 |
イリア | ったくスパーダのやつ、遅いわね。学園のまわりを偵察するぐらい手間取るようなもんでもないでしょうに。 |
ルカ | そんなに焦らなくても……。きっとスパーダも慎重になってるんだよ。 |
コハク | シングも一緒なんだし、心配いらないよ。だから、信じて帰りを待とう ? |
イリア | べ、別に心配してるわけじゃないわよっ。……仕方ない、少し待ってやるわ。 |
ヒスイ | お、見ろ。あいつら、やっと戻ってきたみたいだぞ。 |
シング | みんな、お待たせ !学園の警備が思った以上に厳しくてさ。気取られないよう動くのが大変だったよ。 |
スパーダ | 正門のガードマンも相当ピリピリしてるぜ。人の出入りにすっげェ気を使ってる。 |
スパーダ | ただ、帝国軍が近くにいるってわけじゃなさそうだぜ。さっさと二人を捜して連れ出しちまいてェが、どうすっかな……。 |
ルカ | だったら、二組に分かれるのはどうかな ?一組は学園にアンジュたちを迎えに行ってもう一組は、いざという時のためにここで待機。 |
シング | うん、いいんじゃないかな。さすがに六人全員で入ったら目立っちゃうしね。 |
ヒスイ | よっしゃ、決まりだな ! |
イリア | じゃあルカ、あんたが迎えに行ってきなさい。 |
ルカ | えええっ ! ?ぼ、僕が ! ? |
イリア | そうよ。あんたってば無害そうな顔してるし学園の生徒のフリしてればバレないって。 |
ルカ | ちょ、ちょっと待ってよ !突然そんなこと言われてもこ、心の準備ってものが…… ! |
イリア | 自分で言い出しておいてなにグズグズ言ってんのよ。そこは男らしくバシッと返事しなさいよ ! |
スパーダ | まあまあ、落ち着けって。こういうことはルカには向いてねェよ。オレが行ってやる。 |
ルカ | スパーダ…… ! |
スパーダ | ついでに学園に通う美女たちも一目見ておきてェしな ! ヒャハハハハ ! |
イリア | ……あんた、そっちが目的なんじゃないの ?まぁ、別にいいわ。それじゃお願いね。 |
ヒスイ | しゃーねえな。俺も付き合うぜ、スパーダ。 |
スパーダ | なんだよ、ヒスイ。お前も美女たちとお近づきになりてえってか ? |
コハク | ……お兄ちゃん。 |
ヒスイ | ちっ、違うぞコハク ! !スパーダだけじゃベリルが誰だかわからねーと思っただけだ ! |
スパーダ | それもそうだな。んじゃ、潜入組はオレたちで決まりってことでいいよな ? |
コハク | ……大丈夫なの、お兄ちゃん ? |
ヒスイ | 安心しろ、すぐにベリルたちを連れて戻ってくっからよ。 |
コハク | ほんとに~ ?お兄ちゃん、生徒たちとケンカしたりとか揉めごとを起こしたりしない ? |
ヒスイ | し、しねーよ、そんなこと。コハクよぉ、頼むからもう少し兄貴を信用してくれよ ! |
シング | そうだよ、コハク。オレは信用してるよ、ヒスイのこと。 |
ヒスイ | シング……お前……。 |
シング | あ、でも生徒たちと目を合わせないようにね。ヒスイって目つきがすご~く怖いから睨まれたって勘違いされちゃうよ ! |
ヒスイ | んだと ! ?シング、てめぇケンカ売ってんのか ! |
コハク | うーん、やっぱり不安だなぁ……。 |
ルカ | だね……。 |
スパーダ | なぁに、心配いらねェよ。こいつが誰かと揉めそうになったらオレが体を張って止めてやるよ。 |
ルカ | いや……。スパーダだったら、首を突っ込んで余計に騒ぎを大きくするよね…… ? |
ヒスイ | とにかく、ここは俺たちに任せとけってんだ。文句は言わさねぇぞ ! |
コハク | はぁっ……。もう、わかったよ。じゃあ、くれぐれも気を付けて行ってきてね。 |
ヒスイ | よしシング、俺がいない間はお前がしっかりコハクを守るんだぞ、いいな ! |
シング | うん、任せてよ ! |
キャラクター | 3話【学園祭3 潜入】 |
スパーダ | とりあえず何事もなく入り込めたな。 |
ヒスイ | それにしてもスパーダよぉ。そのカッコ、なかなかサマになってんじゃねーか。 |
スパーダ | あぁ ? これのことか ?まさか、こっちに来てまで制服を着るなんて思わなかったぜ。 |
ヒスイ | そういやお前、ルカと同じで現役の学生なんだっけか ?なら、こういうとこの流儀はわきまえてるよな。 |
スパーダ | いやあ、そいつはあんま自信ねェな。あいにくオレは、兄貴たちみたいなイイ子ちゃんじゃねェもんでよ。 |
スパーダ | なんせ、ルカとおんなじ学園に通いながら校内で一度も顔を合わせたことがないぐらいサボリまくってたしな。 |
ヒスイ | ハハハ、そいつは筋金入りだな。でもよ、ってことはお前の振る舞いをマネても参考にならないってことか。 |
スパーダ | 何だよ、ビビッてんのか ?学生のフリをするぐらい、大したことじゃねェよ。要は目立たなきゃいいんだよ。 |
ヒスイ | ビビッてねーよ !た、ただ……制服を着るような学校なんて通ったことねぇから聞いてみただけだ。フツーにしてればいいんだろ。フツーに。 |
スパーダ | おーおー、いつも通りにしてンのが一番だぜ。さて、おしゃべりはこれぐらいにしてお目当ての二人を捜すか。 |
ヒスイ | お前の仲間は『アンジュ』って名前だったよな。どこにいるか見当はつくのか ? |
スパーダ | そうだな……校内に礼拝堂があればそこで祈りでも捧げてそうなんだが。なんせ教会につとめる聖女サマだしよ。 |
ヒスイ | パッと見たとこ、それっぽい建物は見当たらねぇな。先に俺の仲間んとこに行ってもいいか ? |
スパーダ | 別に構わねェけど……。ってか、居場所に心当たりあんのかよ ? |
ヒスイ | まあな。ここからでもわかりやすく窓にでっかい看板が出てるからな。 |
ヒスイ | おっ、やっぱここにいやがったな。 |
スパーダ | あの帽子被ったやつか ?なんか、真剣に絵を描いてるぜ。 |
ベリル | フフーン♪ イイ感じだよ~。これはボクの最高傑作になること間違いなしだね ! |
ヒスイ | これが最高傑作ぅ ? いつものお前のラクガキとそんな変わんねえだろ。 |
ベリル | なっ、なんだと~ ! 誰だ ! ?ボクのゲイジュツにケチをつけるやつは ! ?……って、うわあああっ ! ? |
ヒスイ | よおベリル、久しぶりだな。とりあえず、元気そうで安心したぜ。 |
ベリル | ヒスイっーー ! !どうしてこんなところにいるのさ ! ? |
ヒスイ | どうしてもこうしてもあるか。お前を迎えに来てやったんだよ。 |
ベリル | えっ ! 迎えが来てくれるって話は聞いてたけど、それってヒスイのことだったの ! ? |
ヒスイ | そういうこった。まぁ、一人で来たってわけじゃねえけどな。 |
スパーダ | こんな子供がヒスイたちと一緒に戦ってたってのか……。たまげたぜ。 |
ベリル | むーっ ! 初対面なのに失礼なやつだな ! !ボクはこれでも18歳だぞ、子供扱いするなーっ ! |
スパーダ | ハァ ? お前、嘘つくならもちっとましなのにしろよ。どうみてもエルマーナと同い年だろ。13歳の。 |
ベリル | むきぃ~~~っ !だーかーらー、子供扱いするなって言ってるだろーっ ! |
ヒスイ | ったく、相変わらずギャーギャーうるせー奴だ。そんなんだからますますお子さまって見られちまうんだぞ。 |
ベリル | ぐっ、むむむ……。 |
ヒスイ | スパーダ、あらためて紹介するぜ。こいつは俺たちの仲間でソーマ使いのベリルだ。ま、仲良くしてやってくれ。 |
スパーダ | オレはスパーダ・ベルフォルマ。今はヒスイたちの仲間の一人だ。子供と勘違いして悪かったな。 |
ベリル | ……ふーん、意外と素直じゃんか。まあ、ちゃんと謝ってもらったからには根に持つようなボクじゃないから安心してよね。 |
ベリル | ボクはベリル・ベニト。いずれグランパを越える天才画家として名を馳せる未来の大巨匠さ、よろしくっ ! |
スパーダ | 未来の大巨匠ね。デカいのは、持ってる筆だけじゃなく夢も。ってか。 |
ベリル | これは一流画家の師匠が譲ってくれた文化的ソーマだからね。近いうちにボクの実力も見せてあげるさ ! |
ヒスイ | 自慢話をするのはいいが、早いとこ学園から出るぞ。シングやコハクもお前に会いたがってんぜ。 |
ベリル | シングとコハクもいるの ! ?あっ ! でも……。 |
スパーダ | ん ? どうしたんだよ ? |
ベリル | あの……ごめん。もうちょっとだけ待ってもらえないかな ? |
ベリル | 実はね、もうすぐ学園祭があるんだ。それで、ボクもお世話になった学園のみんなと一緒に最後までやり遂げたくて……ダメ、かな…… ? |
ヒスイ | 学園祭……ポスターにあったあれか。あの絵も気合入れて描いてたみたいだしな。でも、すぐ連れてくるって話しちまったし……。 |
スパーダ | 学園祭が終わるまで待ってもらうようにみんなに話せばわかってくれるんじゃねェ ?まだアンジュだって見つかってないんだしよ。 |
ヒスイ | そうだな。匿ってもらった礼にもなるだろ。わかった、ベリル。好きにしろよ。 |
ベリル | えっ、いいのっ ! ?ありがとー、今回の学園祭は生徒全員にとって特別なものだったからさ ! |
スパーダ | 特別 ? ただの学園祭じゃねェのか ? |
ベリル | この学園はね、由緒正しいエリート校で教育方針も校則もすご~く厳しいんだよ。 |
ベリル | 最初は割と自由な校風だったらしいんだけど初代生徒会長だった人が学園長になってからガチガチに厳しくなったんだって。 |
ヒスイ | つまり、お前ならすぐに文句をいうような学園だったってことか。 |
ベリル | もうっ、茶化さないで聞いてってば !――でね、今年から就任した生徒会長がそういう閉鎖的な空気を変えはじめたんだよ。 |
ベリル | 学園祭にしても、ずーっと長い間却下され続けてきたんだけど、それをあの人が一生懸命かけあって認めさせてくれたんだ。 |
スパーダ | なーるほど。待望の学園祭ってことでお前らもガチになってるってか。にしても、その生徒会長は骨のあるヤツだよな。 |
ベリル | うん ! 頭もいいし、みんなのことを考えてくれるし誰にでも優しいし、胸もおっきいしとーっても頼りになる人なんだよ ! |
スパーダ | おおっ ! そりゃ是非ともお近づきに……。……って待てよ。そいつ、もしかして……。 |
生徒会役員 | 失礼しまーす。生徒会の者ですが各クラブに通達がありまして。美術部の方、いらっしゃいますか ? |
ベリル | はいはいー ! どうしたの ? |
生徒会役員 | はい……。生徒会長いわく学園祭は無期延期にするとのことでただちに準備を中止してほしいそうです。 |
ベリル | はああああっ ! ?な、何それ、どういうことっ ! ? |
生徒会役員 | さあ、自分は連絡係を頼まれただけなので……。それじゃ、これで。 |
ベリル | ……………………そんなぁ。みんな、あんなに楽しみにしてたのに……。 |
ヒスイ | ……おいベリル、何ボサッとしてやがる。 |
ベリル | ……ヒスイ ? |
ヒスイ | 学園祭、やりてえんだろ ?だったら、俺たちのやることは一つじゃねえか。 |
ベリル | そ、そうだね ! !ボク、生徒会長のところに行ってくるよ ! |
ベリル | せっかくここまで頑張ったんだもん !無期延期だなんて、ゼッタイに受け入れるわけにはいかないんだからねっ ! |
スパーダ | ああ。ちょうどオレも、その生徒会長サマに会いてえと思ってたところだぜ。 |
キャラクター | 4話【学園祭4 生徒会長】 |
ベリル | 失礼しまーす !お~い ! 生徒会長~ ! |
アンジュ | あら。美術部のベリルじゃない。待っててね、今お茶とお菓子を用意するから。 |
ベリル | えっ、お菓子 ! ? ありがとう~……じゃない !学園祭が無期延期ってどういうことっ ! ?ちゃんと説明してよね ! |
アンジュ | そうね……まずは落ち着きましょう。私だって、みんなに意地悪しようと思ってそういう判断を下したわけじゃないの。 |
スパーダ | ま、確かにお前だったら何の理由もなくそんなことするわけねェよな。そうだろ、アンジュ ? |
アンジュ | えっ…… ?もしかして、スパーダくん ! ? |
スパーダ | そうとも、スパーダ・ベルフォルマ様よ。元気だったか、アンジュ。 |
アンジュ | また会えて嬉しいわ。私だったらこの通り、ピンピンしてるわよ。 |
スパーダ | だな。見たとこ顔色もいいしさぞかしいいモンばっか食ってんじゃねェか ?実際、前より体がふっくらと……。 |
アンジュ | ……スパーダくん。実際、何だっていうのかしら ? |
スパーダ | あ、そ、その……。何でもないです、忘れてください。 |
ヒスイ | ……気のせいか ?なんか一瞬、部屋の空気がありえねえぐらい冷え込んだ気がするぞ……。 |
ベリル | ボ……ボクも、一瞬ゾクッと寒気がしたよ !なんだったんだろ、今の ? |
スパーダ | お前ら、命が惜しかったらこれ以上突っ込むのはやめとけ。怒ったアンジュはマジで怖ェぞ……。 |
ベリル | そ、そっか……。まあ、それはともかくスパーダと生徒会長って知り合いだったんだね !ビックリしちゃったよ ! |
アンジュ | ええ、スパーダくんと私は共に戦った仲間なの。ところで、そちらのあなたは…… ? |
ヒスイ | おっと、挨拶が遅れたな。俺はヒスイ、ベリルの仲間のソーマ使いだ。よろしく頼むぜ。 |
アンジュ | 初めまして、アンジュ・セレーナと申します。聖都ナーオスで聖女と呼ばれておりました。今はこの学園の生徒会長をしているの。 |
スパーダ | やっぱりアスターにここへ連れて来られてしばらく身を潜めてろって言われたんだよな ? |
アンジュ | ええ、その認識で合っているわ。 |
ベリル | えーっ、アンジュもなの ! ?ボク、そんなの初耳だよ ! |
アンジュ | 私は私で、あなたが私と同じ身の上だったということに驚いているのだけれど……。 |
ヒスイ | おいおい、鏡映点同士でお互いの正体を今まで知らずにいたってのかよ ? |
ベリル | あのさ、『鏡映点』ってなんのこと ? |
スパーダ | その辺はオレが解説してやるよ。つまりだな―― |
スパーダ | ……ってな感じで、オレは帝国に捕まってひでェ目に遭っちまったってわけだ。 |
アンジュ | ええっ…… ! ?スパーダくん、大丈夫だったの ? |
スパーダ | 心配ねェよ、ルカやイリアたちが助けてくれたからな。だからこそ、こうしてアンジュを迎えに来ることだってできてるわけさ。 |
アンジュ | 確かにそうよね。それにしても、大変だったのね……。 |
スパーダ | さて、身の上話はこれくらいで十分だな。アンジュ、一緒に来てくれるだろ ?ルカもイリアも心配してるぜ。 |
アンジュ | ええ、もちろんよ。でも、少しだけ待ってほしいの。学園祭無期延期の通達を済ませたら生徒会長を引退して、引き継ぎをするから。 |
アンジュ | 私としても愛着のある学園だから名残惜しく思うけれど……。踏ん切りをつけないとね。 |
ベリル | だーかーらー、その愛着のある学園の学園祭をなんで無期延期にするわけ ! ?ちゃんと説明してよーっ ! |
アンジュ | ……わかったわ。くれぐれも、ここだけの話ということでお願いね ? |
アンジュ | みんなからの熱望に後押しされて初の学園祭を開催することになったのは知っての通りね。 |
アンジュ | でも、いざ生徒みんなで準備に取りかかりはじめた途端よからぬことばかり起こりはじめたの。 |
ベリル | な、何なのさ。『よからぬこと』って ? |
アンジュ | 校内の窓ガラスや花瓶が割れたり、備品が壊されたりカーテンが破かれたり……。 |
アンジュ | そういう薄気味悪いことばかり続いたから安全性がきちんと確認できるまでは延期すべきだと判断したの。 |
ベリル | えええーっ、何それ ?ボク、そんな話、初めて聞いたけど ? |
アンジュ | 私が固く口止めしていたからよ。いったんこういう話が広まると尾ひれがついて収拾がつかなくなってしまうでしょ ? |
ヒスイ | へえ。さすが、生徒会長なんてもんを務めてるだけあって、利口なんだな。 |
アンジュ | さてベリル、これで納得してもらえたかしら ? |
ベリル | う~っ、でもでも~ !やっぱりボク、あきらめきれないよーっ ! |
スパーダ | ――なあ、アンジュ。生徒たちの安全が保障されるなら学園祭を開催しても問題ねェんだろ ? |
アンジュ | そうね。生徒に危害が及ばないなら開催したいわ。 |
スパーダ | だったらオレが学園祭が無事終わるまでの間学園の警備を引き受けてやるよ。ルカとイリアにも声掛けとくぜ。それならどうだ ? |
ヒスイ | もちろん俺も協力するぜ。それに、きっとコハクとシングも手伝うって言うはずだ。 |
アンジュ | ま……まあ、お願いしてもいいの ? |
ヒスイ | 学園祭をきっちりやり遂げりゃ、二人ともなにも思い残すことなく合流できるんだろ ?なら、こんぐらいのことはしてやらないとな。 |
ベリル | ぐふふ~ !ヒスイってば相変わらず口も態度も悪いけど親切だよね ! |
ヒスイ | うるせえ、茶化してんじゃねぇよ ! |
アンジュ | ありがたい限りの申し出です。スパーダくんにヒスイくん、学園祭が終わるまでの間是非ともよろしくお願いします。 |
スパーダ | おうよ、任せとけってんだ ! |
ベリル | じゃ、じゃあ、無期延期っていう話はなくなったんだよね ?学園祭、やってもいいんだよねっ ! ? |
アンジュ | ええ、もちろんよ。私とあなたにとって、この学園での最後のお仕事だから、気合いを入れていきましょ ! |
ベリル | うん、やった~ !頑張ろうね、アンジュ ! |
アンジュ | ええ ! |
アンジュ | (”あの件”について気にはなるけど……今回の事件と関連があるかもわからないし今はまだ黙っておきましょう) |
キャラクター | 5話【学園祭7 準備3】 |
スパーダ | 待たせたな。業者って触れ込みで、みんなを連れてきたぜ ! |
アンジュ | ありがとう、スパーダくん。どうぞみなさん、遠慮しないで入って下さい。 |
コーキス | 俺たちもアジトからカーテンとか暗幕とか、届けに来たぜ ! |
シング | 取り付けもオレたちに任せて !手伝えることがあれば何でもするよ ! |
アンジュ | まあ、助かるわ。 |
スパーダ | おい、ルカにイリア。お前らも入って来いよ ! |
ルカ | 久しぶりだね、アンジュ !また会えて嬉しいよ。 |
イリア | 話はスパーダとヒスイから聞いてるわよ。学園祭が終わるまでの警備はあたしたちに任せて ! |
アンジュ | ありがとう、ルカくん、イリア。それに……。 |
シング | オレはシング ! よろしく ! |
コハク | わたし、コハクっていうの。よろしくね、アンジュさん。 |
アンジュ | 私のことはアンジュでいいわ。女の子同士、仲良くやりましょ ? |
コハク | ありがとう、そう言ってくれると嬉しいよ。わたしのこともコハクって呼んでくれていいからね ! |
コーキス | 俺はコーキス、マスターの鏡精だ !よろしく頼むぜ、アンジュ様。 |
シング | ちなみにコーキスのマスターはイクスって人で、オレたち全員が世話になってるんだ。 |
アンジュ | ええ、そのあたりは簡単にお話を伺ってるわ。いずれ直接お礼を言わないといけないわね。 |
アンジュ | あなたたちには負担を掛けてしまうけど学園祭は全校生徒が熱望していることだから……。警備の方、くれぐれもよろしくお願いします。 |
コハク | うん、任せといて !お兄ちゃんたちから学園祭の話を聞いてわたしも凄く楽しみにしてるの ! |
シング | それに、オレはジィちゃんに『胸のおっきな美人が困ってたら死んでも助けろ』って言われてるしね ! |
アンジュ | まあ、シングくんったら。 |
シング | ところでさ、ベリルがどこにいるか知らない ?オレ、ベリルにも早く会いたいんだ ! |
アンジュ | ふふっ、仲間思いなのね。それだったら、たぶんだけど―― |
ヒスイ | そーらよっ !ゲイジュツはバクハツってな ! |
ベリル | むきぃ~~~っ !そのセリフ、ボクのパクリだろっ ! |
ヒスイ | んじゃ、ダァーッと描いて……と ! |
ヒスイ | 俺もなかなか絵心あるじゃねぇか。なぁベリル ?……なんだよその顔は ! ? |
ベリル | ああ、ううん。お世辞にも上手いなんて言えないけど、勢いがあるしこれはこれで悪くないなって。 |
ベリル | ……ただし、それ以外に見るべきところは特にないんだよねえ。ホント、ただの勢いまかせってだけ ! |
ヒスイ | かぁーっ !そこは素直にホメとけよ !相変わらず可愛くねぇな。 |
コハク | ふふふっ。なんかこうやって見ると、いかにもお兄ちゃんが描いた絵って感じがするかも ! |
ベリル | って……あーっ、コハクっ ! ?それに、シングも ! |
シング | 久しぶりだね、ベリル !元気そうで安心したよ。 |
シング | 学園祭、オレたちも手伝わせてもらうからさ。この看板だけど、さっそく飾り付けをするんだよね ? |
ベリル | ああ、うん。それじゃあ校門まで運んでもらってもいいかな ? |
シング | うん、了解 ! |
| ガタガタガタッ、ピシピシピシピシピシッ…… ! |
一同 | ………… ! ? |
ヒスイ | なんだ、今の音…… ? |
ベリル | ちょ、ちょっと、シングっ !今度おどかしたら顔にラクガキするよっ ! |
シング | い、いや、オレは何もしてないってば ! |
スパーダ | よう、邪魔するぜ。 |
シング | ルカたち、ずいぶん遅かったじゃないか。何やってたの ? |
ルカ | えっと、イリアが家庭科部の部室で試食と称して、つまみ食いを始めちゃって……。 |
コーキス | あの食べっぷり、パイセンにも負けてなかったぜ ! |
イリア | いや~、お腹いっぱいで幸せいっぱい !まぁ、食べた分はちゃんと働くから安心しなさいって。 |
スパーダ | ってなわけだ。早ェとこ準備を終わらせちまおうぜ ! |
ベリル | よぉ~っし、飾り付け終了っと ! |
イリア | へえ、立派な看板じゃないの !いよいよ祭り近しって感じになってきたわね。 |
ベリル | 手伝ってくれてありがと、ルカにイリア !それにコーキスも ! |
コーキス | 礼なんかいいって !ベリル様の役に立てたなら本望だからな ! |
| ズゥゥゥン…… ! |
一同 | ………… ! ? |
ルカ | な……何だろう、今の地響き…… ? |
ベリル | ちょ、ちょっと、シングっ !そんなに顔にラクガキされたいの ! ? |
シング | い、いや、だから、オレじゃないってば ! |
ルカ | ……なんだか、嫌な予感がするな。このまま、何も起こらないといいんだけど……。 |
ベリル | ルカ ! そういう発言は禁止っ !とにかく ! 学園祭は何があってもぜーったい開催させるんだからねっ ! |
キャラクター | 6話【学園祭8 開催】 |
| 学園祭当日―― |
学園生徒A | 正午から講堂にて、演劇部の公演『雨と共に去りぬ』が開催されます !ぜひお立ち寄りくださーい ! |
学園生徒B | さあさあ、料理部特製のマーボーカレー食べていってくださいっ ! |
ミリーナ | 凄い活気ね、イクス ! |
イクス | そうだな。あちこち目移りしちゃって困るぐらいだ。 |
コーキス | マスター ! あっちに俺が手伝った展示物もあるぞ !あとで一緒に見に行こうぜ ! |
イクス | ああ、コーキスも頑張ったんだよな。どんな展示物なのか、楽しみにしてるよ。 |
アンジュ | コーキスくん、こんにちは。今日は来てくれてありがとう。 |
コーキス | あっ、アンジュ様。丁度よかった。こっちの二人が……。 |
アンジュ | イクスさんにミリーナさんね。ルカくんたちから話は聞いてるわ。 |
イクス | アンジュさん、今日は俺たちまで招待してもらってありがとうございます。 |
アンジュ | いいのよ、この学園祭が無事に開催できたのもお二人のお蔭なんだから。 |
ミリーナ | ふふっ、アンジュさんって可愛いだけじゃなくてとっても礼儀正しくて、優しい人なのね。おっとりとした雰囲気もすっごく癒されるわ♪ |
アンジュ | ありがとう、ミリーナさん。でも、あなたたちにもちゃんと会ってお礼を言いたかったの。 |
アンジュ | おかげさまで生徒たちのやる気もうなぎのぼりだし、私としても嬉しい限りよ。 |
イクス | アンジュさん、立ち話もなんだし学園祭を見て回りながら、話をしたいんだけどどうかな ? |
アンジュ | そうね。じゃあ、生徒会長として私がこの学園を案内するわ。それと、私のことはアンジュでいいわよ。 |
ミリーナ | わかったわ。よろしくねアンジュ。 |
ヒスイ | おら、寄ってけ見てけ。自称天才画家も所属する美術部の力作だぞ ! |
客A | ほほう……。これは、なかなか……。 |
客B | まだまだ荒削りだが、見所があるな……。 |
ヒスイ | よかったな、ベリル。お前の絵を褒めてくれる客も何人かいるみたいだぜ。 |
ベリル | う、うん……。嬉しいけど……作品を展示するなんてめったにないから緊張しちゃうよ……。 |
シング | ベリル、ヒスイ、お疲れさま ! |
ベリル | あっ、シング ! コハク ! |
コハク | 出口のところでやってるアンケートをチラッと見てきたけど、ベリルの絵けっこう好評だよ ! |
ベリル | え、えっ ? ほ……ホント ?よかったぁ…… ! |
ヒスイ | ん ? おい、シングスパーダたちは一緒じゃねーのか ? |
シング | ああ、スパーダだったら―― |
スパーダ | おらよッ ! ホットドッグ一丁上がりィ ! |
客A | わぁーっ、ありがとう !……んんっ ! すっごく美味しい ! |
スパーダ | そっちのお客さん、もうちょっとだけ待っててくれよな ! |
客B | お兄さーん、俺にもひとつ頼むよ ! |
スパーダ | はいよォ、まいどあり !へへっ、大忙しだぜェ ! |
コンウェイ | やあスパーダくん。ボクにもひとつ焼いてもらえるかな ? |
スパーダ | おっ、コンウェイか。お前も来てたんだな。 |
コンウェイ | アンジュさんがここで生徒会長をしてて学園祭をやるって聞いたものだからね。 |
コンウェイ | ところで、スパーダくんはもう「あの話」を知ってるのかな ? |
スパーダ | なんだよ、「あの話」って ?あいにく、なんも心当たりねェぞ。 |
コンウェイ | ボクもさっき聞いたんだけどルカくん、仮装コンテストに出場することになったそうだよ。 |
コンウェイ | 優勝賞品が欲しくてたまらないイリアさんに押し切られるなんて、ルカくんらしいよね。 |
スパーダ | ヒャヒャヒャヒャ、そいつは傑作じゃねぇか !こうしちゃいらんねェぜ冷やかしに行かねーとなぁ ! |
コンウェイ | キミならそう言うと思ったよ。くれぐれも、アンジュさんに怒られない程度にね。 |
司会 | さて始まりました、第一回コスプレコンテスト !ではまず、参加者のみなさんに壇上に上がっていただきましょう ! |
ルカ | う、うううっ……。は、恥ずかしいよぉ……。 |
イリア | こらーっ、ルカーっ !シャキッとしなさいっての ! |
スパーダ | そうだそうだ !もっと胸を張れっ、胸を ! |
コンウェイ | 頑張って、ルカくん。キミなら優勝も夢じゃないよ。 |
ルカ | はぁぁっ……。まったく、人の気も知らないで……。 |
キャラクター | 7話【学園祭9 トラブル】 |
ベリル | ううっ~、もうお昼過ぎちゃってるじゃん。お腹がペコペコなわけだよぉ~。 |
ヒスイ | んじゃ、交代で休憩を取ろうぜ……っといや、ちょっと待て。 |
ベリル | ん ? どうしたのさ ? |
ヒスイ | なぁ、あそこにいる男だけどよ……。 |
男 | …………。 |
ベリル | あの人がどうかしたの ? |
ヒスイ | 気づいたらあそこに突っ立ってやがった。出入りする連中は全員に目を配っていたがあいつの姿を見た覚えが全くねえんだ。 |
ヒスイ | おまけになんの気配も感じねえし気味が悪いぜ。 |
ベリル | う~ん。でも、特に何も怪しくなさそうだけど ?ヒスイが目を離したスキに入ってきたってだけじゃ―― |
| バリィン ! ! |
二人 | っ ! ? |
客A | な、なんだなんだ ! ?窓ガラスが割れるなんて ! |
客B | 外から石でも投げ込まれたのか ! ? |
男 | …………。 |
ヒスイ | あっ ! あいつ、出て行っちまうぞ !おい、待ちやがれ ! |
| バリィン、バリィン ! ! |
来場客たち | きゃあああーっ ! ? |
ベリル | わわわわっ ! ?ま、窓ガラスが一斉に割れたよぉ ! ? |
ヒスイ | くそっ、どうなってやがる…… ! ? |
イクス | なんだ、今の音は ! ? |
ミリーナ | な、なんなの、これ……。どうしてこんなことになっちゃったの ? |
ヒスイ | おっ、いいところにっ !イクス、ミリーナ ! この場は任せた !俺たちはあの怪しい奴を追いかけるぜ ! |
イクス | 怪しい奴 ? |
ヒスイ | 見ろ、あいつだっ ! |
男 | …………。 |
ベリル | あっ ! ? 逃げられちゃうよ !は、早くっ ! |
ヒスイ | おうっ ! |
ベリル | あの人、どこ行ったんだろ……って、あっ !ヒスイ、あそこっ ! |
男 | …………。 |
ヒスイ | おい ! そこのお前っ、止まれ !止まれってんだよ ! |
ベリル | ま、待ってヒスイっ !危ないよっ ! |
| ドタドタドタ…… ! |
学園生徒A | うわぁーっ、助けてくれーっ ! |
学園生徒B | お、おい、どけ、どいてくれっ ! |
ヒスイ | な……なんだってんだよ ! ?うっ……く、くそっ ! |
| ドタドタドタ…… ! |
ヒスイ | ……な、何がどうなってやがる ! ? |
ベリル | な、なんか、ひどく怖いものでも見たって感じだったけど……。 |
ヒスイ | ……って、くそっ !あいつ、どこ行っちまったんだ ! ? |
ベリル | って……わわわっ ! ? |
人魂 | ウォォォォォ…… ! |
ベリル | え、ええええっ ! ?な、なんなの、こいつら ! ? |
ヒスイ | へえ、なるほどな。さっきの奴らがケツまくって逃げてたのはこれが原因ってわけか。 |
スパーダ | ――スパーダ様参上っ !助太刀するぜ ! |
コハク | お兄ちゃん、ベリル、大丈夫っ ! ? |
ヒスイ | ああ、心配いらねぇよ。それより、あの連中を早いとこあの世に送り返してやんねぇとな ! |
人魂 | ウォォォォォ…… ! |
イリア | あんたたちのせいで霜降り肉ゲットし損ねちゃったじゃないの !覚悟はできてんでしょうね ! |
ベリル | えっ、霜降り肉 ? |
イリア | そうよ ! ルカがコスプレコンテストに出て—— |
ルカ | わ、わーっ ! !そ、その話はいいから、早くあいつらを何とかしようよ ! |
シング | よし ! 作戦はひとつ……。『全力で戦う』だ ! ! |
キャラクター | 8話【学園祭9 トラブル】 |
男 | …………。 |
ヒスイ | あっ、いたぞ ! |
ベリル | みんな ! あいつがこの騒ぎを起こしてる怪しいヤツだよ ! ! |
ルカ | えっ、ホントなの ? |
ベリル | 少なくとも、まったく無関係なんてことはゼーッタイありえないっ ! |
シング | よし !ガンドコ追いかけよう ! |
ヒスイ | こら、待ちやがれ ! |
男 | …………。 |
シング | あっ、校舎の中にっ ! |
コハク | 急がないと ! |
ベリル | ちょ、ちょっと待ってっ !あ、あそこは正直、あんまり無闇に立ち入らない方が……。 |
ヒスイ | あぁっ ! ? 何言ってやがる ! !グズグズしてたら逃げられちまうだろうが ! ! |
ベリル | で、でもあの旧校舎は……。 |
アンジュ | ——あの校舎はね、いわく付きの場所なのよ。 |
スパーダ | いわく付き ? なんだそりゃ ? |
アンジュ | ……あそこはね、夜な夜な声が聞こえるとか人魂を見かけたとか、そういう報告が相次いで廃棄が決まった場所だそうなの。 |
アンジュ | 新設された校舎に移った後、閉鎖された旧校舎を何人かの生徒たちが面白半分に探検して大ケガをして帰ってきた事件もあったそうよ。 |
アンジュ | 結局、彼らは怯えて震えるばかりで中で何を見たのか、どんな目に遭ったのか決して語ろうとしなかったらしいの。 |
ヒスイ | そんなヤバいとこをみすみす放置してたってのか ? |
アンジュ | もちろん、何度も取り壊そうという話が持ち上がったし、私だってそれを推し進めていたわ。 |
アンジュ | でも、そのたびに地震が起こったり異音が聞こえたりして工事関係者がすっかり怯えてしまって……。 |
ルカ | そっか……そんなことがあったら無理に壊そうとはしなくなるよね……。 |
スパーダ | なぁ、学園祭を開催しようとした時も同じようなことが起こったんだろ ?関係してるとは思わなかったのか ? |
アンジュ | ……ごめんなさい。だけど、いま話したことはあくまで旧校舎に関係して起きた現象だから。 |
アンジュ | 今回のケースだと、旧校舎はまったく関わりがないしその可能性は低いって思ってしまったの。 |
イリア | ……ま、過ぎたことをどうこう言っても仕方ないわ。今は怪現象の根っこを絶つことだけ考えましょ。 |
シング | それに、さっきの怪しい奴が学園祭を邪魔してたのかもしれないんだろ ?だったら、オレたちのやることは一つしかないよ ! |
コハク | お祭りをジャマする悪い奴はボコメキョにしちゃうんだから ! |
ヒスイ | へっ、そうと決まりゃあさっさと乗りこもうぜ ! |
ベリル | あー、もう ! 行けばいいんだろっ !ボクだって学園祭を邪魔されたこと怒ってるんだからね ! ! |
アンジュ | ……そうね、足踏みしている場合じゃなかったわ。みんな、行きましょう ! |
キャラクター | 9話【学園祭10 後夜祭】 |
シング | なんだか不気味なところだね……。 |
コハク | う、うん……。空気は淀んでひんやりしてるし心なしか、さっきから肩が微妙に重いような……。 |
ベリル | だ、大丈夫だよコハク !何かあっても、ボクが絶対にコハクを守ってあげるからね ! |
スパーダ | しっかし、噂はまんざらでもなかったってわけか。ルカ、オレから離れるなよ。 |
ルカ | う、うん、ありがとうスパーダ。でも僕、自分の身は自分で守れるから―― |
イリア | わぁーーーっ ! ! |
ルカ | ひゃあぁっ ! ? |
イリア | イッシッシッシッシ !ルカちゃまったら可愛いらしい悲鳴上げちゃって。 |
ルカ | イ、イリアが脅かすからじゃないかぁ~ ! |
アンジュ | こら、イリア !時と場合をわきまえなさい ! |
イリア | あーら、怒られちゃった。ごめんあそばせ~。 |
? ? ? ? | ええい、この痴れ者どもめが…… ! |
イリア | ちょ ! 何よルカ !そんなに怒ることないじゃない ! |
ルカ | い、いや、今のは僕じゃないよ ! |
イリア | えっ…… ?あんた、またつまんない冗談を―― |
アンジュ | ――っ !見て、あそこよ ! |
ベリル | あああっ…… ! ?な、何あれっ ! |
幽霊 ? | 神聖なる学び舎を乱痴気騒ぎの巷にしたばかりでなく我が安住の地を土足で踏み荒らすとは…… !どこまで貴様らは罪深いのだ ! |
ヒスイ | へっ、ナリは違ってても気配でわかるぜ。お前、校内をフラフラ歩き回ってたあの野郎だろ ! |
アンジュ | あなたはなぜ、学園祭を邪魔するのですか ? |
亡霊 ? | 遊興や娯楽にうつつを抜かすなどまったくもって言語道断…… ! |
亡霊 ? | この神聖なる学び舎に通う若人たちは寸暇を惜しんで刻苦勉励せねばならぬのだ。ゆえに、罰を与えてやったまでのこと ! |
ベリル | そ、そんなの自分勝手すぎるだろ !幽霊のくせしてボクたちの邪魔するなんて『おこまがしい』んだよっ ! ! |
ヒスイ | お前、また間違って言ってんぞ。それを言うなら『おこがましい』だろが。 |
ベリル | ど、どっちでもいいんだよ ! !とにかく、ボクは怒ってるんだからなー ! ! |
アンジュ | あなたは一体何者なのですか ?なぜこの旧校舎に棲みついているのです ? |
亡霊 ? | 私は、未来を担う若者たちの育成を目指しこの学園の綱紀を作り替えた者である。 |
亡霊 ? | そして一生を後進の指導に捧げ、死した後魂の故郷たるこの校舎へ帰還を果たしたのだ。 |
アンジュ | ! ……もしかしてあなたは初代生徒会長を務め上げ、学園長に就任して厳格な校風に染め上げた、あの……。 |
初代生徒会長の亡霊 | その通りだ、現生徒会長アンジュよ。私こそ、君が言う人物の成れの果てである。 |
アンジュ | …………。そうだったのね……。 |
ベリル | こら~ ! 先輩のくせに後輩たちにこんな嫌がらせをして恥ずかしいって思わないのか~ ! ! |
初代生徒会長の亡霊 | 貴様たちこそ、貴重な時間を無為に費やして恥ずかしいとは思わぬのか ? |
初代生徒会長の亡霊 | 学生時代など、あっという間に過ぎてしまう。多くの者は後になって気づくが、一生のうち真剣に勉強できるのはこの時期しかないのだぞ。 |
初代生徒会長の亡霊 | なのに、学園祭などという無駄の極みでしかないものを企画しそれを強引に押し通す始末。 |
初代生徒会長の亡霊 | だから、この手で妨害してやったのだ !二度とこんなくだらない行事にうつつを抜かさずに済むようにな…… ! |
ベリル | くだらないだって ! ?みんなが楽しみに、一生懸命準備してるコトをそんな風にしか思えないの ! ? |
アンジュ | 先輩の主張がまったくわからないわけではありませんが、あまりに一方的すぎます !もっと別の伝え方があったはずではありませんか ? |
初代生徒会長の亡霊 | ふん、聞く耳持たんわ !私にもの申したくば、腕ずくで挑んでこい ! |
スパーダ | へっ、最初からそう言えっつーの !グダグダ説教されるよりよっぽど分かりやすいぜ ! |
ヒスイ | いくぞ、お前ら !いっちょぶちのめして、反省させんぞ ! |
一同 | おうっ ! |
キャラクター | 10話【学園祭10 後夜祭】 |
初代生徒会長の亡霊 | あ、ありえぬ…… ! この私が、こんな浮ついた連中にみすみす後れを取るなど…… ! |
初代生徒会長の亡霊 | ああ、私が無力なばかりに……。私が愛したこの学園は、いったいどうなってしまうんだ…… ! ? |
アンジュ | ……先輩。あなたがどれだけ真面目に、かつ禁欲的に学業に挑んできたかはよくわかります。 |
アンジュ | でも、先輩は本当に学業だけに打ち込みたかったのでしょうか ? |
初代生徒会長の亡霊 | な、何が……言いたい ? |
ベリル | まーだ認めないつもりー ? あんただって他の生徒たちみたいに思う存分遊びたかったんでしょっ ! |
初代生徒会長の亡霊 | な、何を言う ! この私が、そんな……。 |
スパーダ | なーるほどねェ。激しい憎悪は憧れの気持ちと表裏一体だったってか。 |
ヒスイ | ったくよぉ。未練を募らせた挙げ句、亡霊になって嫌がらせするたぁ、不粋もいいとこだぜ。 |
初代生徒会長の亡霊 | だ、だから、違うと言っているだろう ! |
ベリル | 本当にぃ~ ?本音としては、みんなの輪に入ってワイワイ賑やかにやりたかったんじゃないの ? |
ベリル | 楽しそうにしているみんなを見てどうしようもなくハラが立っちゃったんじゃないの ? |
アンジュ | いかがですか ? 答えてください、先輩。 |
初代生徒会長の亡霊 | ……ああ、そうだ。 |
初代生徒会長の亡霊 | 私だって学業に打ち込むばかりではなく恋をしたり、仲間同士でつるんだり思う存分、青春を謳歌したかった。 |
初代生徒会長の亡霊 | でも……ダメだった。自分から勇気を出して、そういう輪の中に入っていくことができなかった……。 |
初代生徒会長の亡霊 | そして教職に就き、学園長になった後ひたすら校則を厳しくして、生徒たちから自由を取り上げた。 |
初代生徒会長の亡霊 | 生徒たちのためと言いながら輝かしき青春の日々を送れなかったことへの報復だった……。 |
ベリル | そう、ちゃんと非を認めてくれるんだね。 |
初代生徒会長の亡霊 | ……これ以上、この旧校舎に棲みつき後輩たちに迷惑を掛けるのは本意ではない。私は今日限りで、天に還るとしよう。 |
初代生徒会長の亡霊 | アンジュと言ったな ? 頼む、どうか学園祭をいまからでも仕切り直してはもらえないだろうか。 |
アンジュ | ええ、言われるまでもありません。どうかご心配なく。 |
アンジュ | ただし、その前にあなたにはちゃんと全校生徒たちの前に出て今回のことをきちんと謝罪してもらいます。 |
初代生徒会長の亡霊 | ……そうだな。これだけ迷惑をかけたのだ。誠心誠意、詫びなくては。 |
アンジュ | それを聞いて安心しました。それでしたら、仕切り直した後の学園祭にはどうぞ先輩も参加してください。 |
初代生徒会長の亡霊 | な、何っ ! ? |
ベリル | これから天に還るって言ってるんだしま、それぐらいは認めてあげてもいいよね。 |
ヒスイ | ああ、そうだな。最後のお祭りを楽しんでけってんだ。 |
初代生徒会長の亡霊 | い、いや、しかし……。 |
スパーダ | 最後ぐらい素直になったってバチは当たんねェだろうがよ。それとも何か、あの世に後悔を持ち越す気か ? |
初代生徒会長の亡霊 | …………。ありがとう、輝かしき若人たちよ…… ! |
アンジュ | その代わり、謝罪が先ですよ。本当はお尻ペンペンもしたいところだけど今回はそれで許してあげます。 |
初代生徒会長の亡霊 | なっ…… ! ? ……ああ、分かった。精一杯の謝罪をすると約束しよう。 |
アンジュ | ふふっ、素直でよろしい。 |
アンジュ | 学園祭、本当にお疲れ様でした !途中、ハプニングもありましたがなんとか無事に本祭を終われてよかったです ! |
アンジュ | それでは、後夜祭も盛り上がっていきましょう ! |
全校生徒たち | おおーっ ! ! |
シング | あ、あのさ、コハク。オレと踊ってくれる? |
コハク | うん、喜んで ! |
ヒスイ | おいコラ、シング ! 俺の目が黒いうちはコハクに手を出させや―― |
ベリル | はいはい。ヒスイは二人の邪魔をしないようにね。 |
ヒスイ | わっ ! ベッ、ベリルッ ! 離しやがれっ~ ! |
スパーダ | おい、ルカ。こんなチャンスを逃してどうすんだよ ? 男ならバシッと決めてこい ! |
ルカ | スパーダ…… ! うん、行ってくる ! |
ルカ | イ……イリア。そ、そ、その……。 |
イリア | なによ ? |
ルカ | え、え、えーっと……。――よかったら、僕と踊ってくれないかな ? お……お願いしますっ ! |
イリア | そ、そんな真剣にお願いされたら断れないじゃない……!いいわよ、ちょっとだけだかんねっ! |
アンジュ | みんな仲良く踊ってるわね。心温まる光景だわ。 |
スパーダ | ――さてと。んじゃ、オレもちょっと行ってくるか。 |
アンジュ | ……スパーダくん、もしかしてだけど学園の生徒たちをナンパしような~んて思ってるじゃないわよね ? |
スパーダ | ギクッ ! ? は、ははっ~ ! んじゃな ! ! |
アンジュ | あっ、こら待ちなさい ! ! ……もう、スパーダくんは相変わらずね。 |
ベリル | あはは……。 |
ベリル | まあ、それはともかく !学園祭も無事に終わったことだしボク、みんなと一緒に行くよ ! |
ヒスイ | 心残りがなくなってよかったな。まあ、絵はどこでも描けるんだし、自称天才画家の腕をティル・ナ・ノーグでも轟かせてみせろよ。 |
ベリル | うんっ、もちろん ! |
アンジュ | 私もさっき生徒会長の引き継ぎを済ませたわ。これで心おきなく、みんなと一緒に行ける。 |
アンジュ | このティル・ナ・ノーグにもあの先輩みたいな迷える魂がいるのだから私の手で安らぎを与えてあげなくちゃ。 |
ベリル | ふーん、それがアンジュのやりたいことなんだ。もしできることがあれば、ボクも手伝うからね ! |
アンジュ | ありがとう、ベリル。ベリルは、何かやりたいことがあるの ? |
ベリル | ボク、大好きなみんなが幸せに暮らす世界をこの手で描くのが夢なんだよね。 |
ベリル | で、さ。みんなが仲良く踊る姿を見てたらゲイジュツ的衝動がこみ上げてきちゃって……。 |
アンジュ | ふふっ。だったら遠慮しないで、さっそく一枚描いたらどう ? |
ベリル | うんっ、そうさせてもらうよ ! 今なら最高の絵が描ける気がするからねっ ! |