キャラクター | 1話【聖夜の贈り物1 異常気象】 |
クラース | いいや。私は間違いなく、事前に伝えておいたぞ。今日はアレウーラ領で精霊探索の予定だとな。おじさんでもなければ、もうろくもしていない。 |
アーチェ | はいはい、わかったわよ。けどクリスマスパーティにはちゃんと戻ってきてよね。準備はあたしたちでやっておくから。 |
メルディ | セルシウスも待ってるからな ! |
セルシウス | わたしのことは待たなくていいわよ。クリスマスパーティとやらにも興味ないわ。 |
イフリート | 俺はメチャクチャ楽しみだぜ ! |
セルシウス | 勝手に話に入ってこないで。暑苦しい。 |
イフリート | うぐぬっ…‥。 |
クラース | ともかく、パーティに間に合うかどうかは調査の進捗次第だ。こうして魔鏡通信で話している間も時間はなくなっていく。もう切るからな。 |
アーチェ | あっ、ちょっと ! まだ話は終わってな―― |
クラース | よし。ではさっそく調査を開始するか。カイウスとルビアも準備はいいな ? |
カイウス | もちろんだ。カロル調査室のおかげでようやくティルキスとアーリアの手がかりも掴めた。はやく二人を見つけてやらないと。 |
ルビア | この港町にいるかもしれないのよね。お兄様もアーリアも、無事だといいけど。 |
イクス | クリスマスなのに忙しくなりそうだな。本当ならみんなにはアジトでゆっくりして欲しかったのに申し訳ない……。 |
クラース | むしろ私はアジトから出られてホッとしている。チェスターとアーチェだけならまだしもカイルとリアラやら、もう騒がしくてかなわない。 |
セルシウス | クリスマスは感情が高ぶっている人間が多くてわたしもあまり好きにはなれないわ。 |
カイウス | 二人の言いたいことはわかるけどクリスマスなのに何もないのも寂しいだろ。少なくともオレはこの港町の様子をみてそう思ったぜ。 |
ルビア | そうよね。飾り付けもしていないどころかみんな家に引きこもっているみたいで街に活気が全然ないもの。 |
クラース | カロル調査室の資料にあるとおり原因は異常気象。主に落雷だ。突発的な雷雨により街の人たちもうかうか外に出られないのだろう。 |
カイウス | 更に言うと、その異常気象の原因には精霊が関わっているって話だよな。 |
セルシウス | この被害状況から考えるに精霊はヴォルトとみて間違いないわね。この街の周辺から気配も感じるわ。 |
クラース | ヴォルトは人間の言葉が通じない可能性が高い。私の世界だけではなく、しいなの世界のヴォルトもそうだったと聞いているからな。油断するなよ。 |
イクス | 今までの精霊と違って意思疎通という面でも一筋縄ではいかないかもしれないということですね。はい、気をつけます。 |
ルビア | それじゃあまずは聞き込みね。お兄様とアーリアを捜しつつヴォルトに関わりそうな情報を―― |
カイウス | ―― ! ? この感じは―― |
ルビア | ちょっと、カイウス !よそ見してないで―― |
カイウス | ――ルビア ! 危ない ! |
イクス | 雷 ! ? 二人とも大丈夫か ! ? |
カイウス | ああ。なんとか間に合った。ルビアも大丈夫か ? |
ルビア | う、うん。えっと……あり、がと。 |
クラース | 見ろ。さっきまでは青空が見えていたのに気がつけば雷雲で覆われてしまっている。明らかに自然現象ではないな。 |
セルシウス | またいつ雷が落ちてきてもおかしくないわね。ひとまず避難するわよ。 |
カイウス | ルビア ! オレたちも行くぞ。 |
ルビア | ちょ、ちょっと待って……。 |
イクス | ルビア、どうかしたのか ! ?はやく避難しないと危ないぞ ! |
ルビア | わ、わかってるけど……。 |
カイウス | ほら、オレがおぶってやるよ。雷が怖くて腰が引けるなんてルビアも案外お子さまだな。 |
ルビア | なっ……ち、違うわよ ! ちょっと驚いただけ !それにあたしは一人で歩けるわ !子ども扱いしないで ! |
カイウス | 足が震えてるぞ。無理するなって。ただでさえそんな歩きづらそうなスカートを履いてるんだしさ。 |
ルビア | 歩きづらそうなスカート……ですって…… ? |
カイウス | ルビア ? |
ルビア | ……へぇ。カイウスってばこのスカートのことそんな風に思ってたんだ。 |
カイウス | な、なんだよ。 |
ルビア | カイウスのバカ ! もう知らない ! ! |
カイウス | ハァ ! ? なに怒ってるんだよ ! |
ルビア | そんなこともわからないのね !本当デリカシーも記憶力もないんだから !カイウスなんて……大嫌いよ ! ! |
カイウス | なっ……そ、そこまで言うことないだろっ ! ! |
イクス | ク、クラースさん。どうしましょう。あの二人の間に火花が散ってますけど……。 |
クラース | 今のあの二人にうかつに近づけば私たちの方が感電死しかねない。ヴォルトの雷よりも男女の諍いはよっぽど恐ろしい。 |
イクス | はは……そうですね……。とはいえ放っておくこともできないし―― |
? ? ? | ははっ。カイウス。さっきの雷はかわせたがかわりにルビアの雷を直撃するハメになったみたいだな。 |
? ? ? | もう。冗談言ってる場合じゃないでしょ。 |
二人 | その声は ! ? |
ティルキス | 誰かと思って心配して来てみればまさかお前たちだったとはな。 |
アーリア | 雷雲の下にも関わらず喧嘩をしているところを見ると相変わらずみたいね。 |
ルビア | お兄様 ! それにアーリア ! |
クラース | ……ということは彼らがカイウスたちの尋ね人か。捜す手間がはぶけたようだな。 |
カイウス | ああ、こんなに早く見つかるなんて。 |
カイウス | それに、よかった……。リビングドール状態じゃないみたいだ……。 |
アーリア | リビングドール…… ?ティルキスが操られていた状態の時のことかしら ? |
イクス | すみません。その頃のことや色々な状況に関しては後にさせてもらえませんか。この状況は危険なので……。 |
ティルキス | それがいい。今はとにかく避難だ。ルビア。立てるか ? |
ルビア | はい、お兄様。カイウスがあたしを怒らせたせいで恐い気持ちも吹き飛びましたから。 |
カイウス | ならオレにお礼の一言ぐらいあってもいいんじゃないか ? |
ルビア | 何よ ! ? |
カイウス | なんだよ ! ? |
クラース | こっちの雷も収まりそうにないな。 |
キャラクター | 2話【聖夜の贈り物2 異常気象の原因】 |
カイウス | えっと……要約するとアーリアはティルキスを助けて帝国から逃亡後この街に潜伏していたんだな。 |
アーリア | 異常気象が発生して帝国兵は撤退したけどそれまでは警備も厳しくてなかなか自由に行動ができなかったのよ。 |
ティルキス | とはいえ霞を食って生きていけるわけじゃないからな。あまり人目につかないように働きつつこの家で暮らしていたってわけだ。 |
イクス | そうか……それは大変だったな。 |
ティルキス | いや。こういっちゃなんだがそこまで悪いものでもなかったぞ。 |
ティルキス | 確かに生活は厳しかった。毎日汗水垂らして働いてやっとだからな。 |
ティルキス | けど大切な人と過ごせる日々っていうのは王宮での暮らしよりよっぽど幸せだ。少なくとも俺はそう思うよ。 |
アーリア | ……ティルキス。ええ。わたしもよ。 |
ルビア | キャーッ ! 素敵 ! !これぞ純愛よ ! ! |
ティルキス | じゅ、純愛って……。 |
アーリア | そ、そんなことは……。 |
クラース | セルシウス。この部屋、暑くないか ?アジトにも引けを取らないほど。 |
セルシウス | クリスマスだからよ。 |
ティルキス | そう、今日はクリスマスだ。というわけで、イクス。アジトに合流するのは明日でもいいか ? |
イクス | 別にいいけど……アジトでクリスマスパーティがあるんだ。よかったら二人にも来てほしかったんだけど。 |
ティルキス | そのお誘いはとても嬉しいが俺とアーリアは、この家でクリスマスパーティをしようと思ってるんだ。 |
アーリア | こんな狭苦しくて隙間風も酷いボロ屋だけどここには二人で暮らした思い出があるの。だから大切な日はここで過ごしたいのよ。 |
イクス | ――わかったよ。そういうことなら、アジトに来てもらうのはクリスマスが終わってからにしよう。 |
クラース | とはいえヴォルトの問題が残っている。こいつをなんとかしなくてはクリスマスどころじゃないんじゃないのか。 |
アーリア | ええ。もちろんヴォルトの探索にはわたしたちも協力するわ。 |
ティルキス | この街の人たちには世話になった。平和なクリスマスを取り戻すことで少しは恩返しにもなるだろう。 |
ルビア | なんとしてもヴォルトを見つけましょう !そしてクリスマスを取り返すのよ !お兄様とアーリアのためにも ! |
カイウス | ルビア。どんだけテンション高いんだよ。さっきからうるさいぞ。 |
ルビア | ふんっ。 |
カイウス | おい ! 無視することないだろ ! ? |
ルビア | 言ったでしょ、カイウスなんて知らないって。もっと歩きやすそうなスカートを履いてる人と話してくれば ? |
カイウス | お前……どれだけスカートのこと根に持ってるんだよ。 |
ルビア | 根に持つわよ !だって……だってこのスカートは……。 |
カイウス | ……このスカートは ? |
ルビア | もうっ ! カイウスの馬鹿ッ ! |
カイウス | だから、なんでそうなるんだよ ! |
クラース | さてと。色々な意味でヴォルトの探索に向かいたいところだがまだ外は雷が酷いみたいだな。 |
セルシウス | もう少し収まったら出発しましょう。それまでは休憩よ。 |
キャラクター | 3話【聖夜の贈り物3 貧しいけれど】 |
ルビア | すごいわ ! 生活用品だけじゃなくて食器まで二人お揃いなのね ! |
ルビア | 手作りの料理をこのお揃いのお皿によそったあと二人はテーブルで向かい合い、食事をとっていたのね。こう……あ~ん、って互いに食べさせあいながら。 |
ルビア | はぁ……素敵……。 |
ティルキス | おいおい。暇だからってあまり部屋をジロジロ見ないでくれよ。なんだか恥ずかしいだろ。 |
ルビア | だって気になるんですもの。お兄様とアーリア……二人の愛の巣が ! |
ティルキス | あ、愛の巣 ! ? |
アーリア | そ、そんなんじゃないわよ。一緒に暮らしていたってくらいでルビアったらおおげさね。 |
カイウス | アーリア。手に持っている工具が上下逆さまだぞ……。 |
アーリア | えっ、あっ……こ、これは……。ちょっと手元が狂っただけよ。 |
アーリア | そう ! 狂ってクルッと工具が逆さま ! みたいな ! |
ルビア | …………えっ ? |
アーリア | もしかして……面白くなかった ?今のは手元が「狂って」と工具が「クルっと」なったのを掛けてて……。 |
カイウス | そ、それはわかったけど……い、いや ! あまりに面白くてみんな黙っただけさ !な ! ルビア ! ? |
ルビア | そ、そうね !……えっと、ところでアーリア。さっきから何を作っているの ? |
アーリア | これはクリスマスイルミネーション用の発光器具よ。今まで使っていたものが落雷のせいで壊れたらしくて街の人に頼まれたの。ちょっとした内職ね。 |
イクス | いや。さっきからずっと見てるけど、一人でこの発光器具を開発できるなんてすごい技術だよ。もしかして学者か研究者だったのか ? |
アーリア | いいえ。わたしはただの僧侶よ。それにこれはほぼ独学。プリセプツの構築……この世界で言うところの魔術工学が趣味なのよ。 |
クラース | 魔科学のような複雑な技術を、趣味でここまで理解し習得するとは……なかなかの切れ者だな。召喚術の理論を完成させた私も認めざるを得ない。 |
セルシウス | クラース。若者の才能に嫉妬しないの。大人げないわよ。 |
クラース | ……セルシウス。最近はイフリートに対してだけじゃなく私にも冷たいな。 |
ティルキス | とにかくアーリアは本物の学者先生も認めるほどの才女ってことだな。 |
アーリア | もう。ティルキスったら。なんであなたが嬉しそうなのよ。 |
ティルキス | そりゃあアーリアのことを褒められたら嬉しいさ。だって俺は……ほら……アーリアの……。 |
アーリア | ……わ、わたしの ? |
ルビア | …………ごくり。 |
男 | ティルキスの旦那 !ちょっと相談があるんだ、話せるかい ? |
ティルキス | ん ? どうやら客人が来たみたいだな。みんな、ちょっと待っててくれ。 |
ルビア | 何よもう ! いいところだったのに ! !一体誰なの ! ? |
アーリア | お仕事の依頼者さんじゃないかしら。この街に来てからティルキスはなんでも屋さんをしているから。 |
カイウス | なんでも屋さんか。なんだかティルキスらしいな。 |
アーリア | ええ。そうよね……。そうだと思うけど……。 |
ルビア | ……アーリア ? |
ティルキス | みんな、すまない。仕事の依頼が入った。ちょっと出てくる。 |
ルビア | ちょっと、お兄様。今日はクリスマスですよ。お仕事はお休みしてもいいじゃないですか。それにこの落雷の中、外出するのは危険です。 |
ティルキス | だからこそ、なんでも屋である俺の力が必要とされているのさ。 |
ティルキス | この悪天候のせいでクリスマスなのにプレゼントの配送ができなくて困ってるらしい。放っておくわけにはいかないだろ。 |
ルビア | それはわかりますけど……。 |
アーリア | いいのよ、ルビア。ティルキスもクリスマスパーティまでには戻ってきてくれるわよね ? |
ティルキス | ああ、もちろんだ。約束する。ただ精霊探索はお前たちに任せることになってしまうが……。 |
イクス | こっちのことは任せてくれ。俺たちで何とかするよ。 |
ティルキス | ありがとう。それじゃあ、早速だが行ってくるよ。 |
アーリア | 待って。手袋を忘れているわよ。今日は特に寒いから、つけていった方がいいわ。 |
ティルキス | おっと、危ない。ありがとう、アーリア。カイウス。すまないがその引き出しから手袋を取ってくれないか ? |
カイウス | ああ。えっと……あった。はい、ティルキス。お仕事、頑張ってな。 |
ティルキス | ありがとな、カイウス。それじゃあ今度こそいってくる。 |
アーリア | ええ。いってらしゃい。 |
ルビア | ……ねぇ、アーリア。本当によかったの ?今日はクリスマスなのよ。それなのにお兄様ったらお仕事を優先するなんて……。 |
イクス | もしかして……その……生活が厳しかったのか ? |
アーリア | いいえ。そこまでじゃないのだけど……ただティルキスは最近やけに仕事をたくさん引き受けているのよね。 |
ルビア | どういうこと ? 生活費は足りているんだったら無理してたくさん引き受けることないじゃない。 |
アーリア | わたしも疑問に思って聞いてみたのよ。そうしたら「お金のためじゃない」とは言っていたのだけど……。 |
アーリア | はぁ……男心っていうのは難解だわ。プリセプツの理論の方がよっぽど簡単よ。 |
クラース | ふっ……それは頭のいいお嬢さんでも永遠に解けないかもしれないな。 |
ルビア | お兄様がそこまで働く理由……。お仕事にやり甲斐を見出したとか……後は何があるかしら。カイウスはどう思う ? |
カイウス | ………… ! |
ルビア | ちょっと。さっきから黙って何してるの ?引き出しの中に何かあるわけ ? |
カイウス | えっ ! ? い、いや……別に !なんでもないぞ ! |
ルビア | ? |
キャラクター | 4話【聖夜の贈り物3 貧しいけれど】 |
アーリア | カイウス。ちょっといいかしら。 |
カイウス | えっ ! ? ど、どうした ! ? |
アーリア | 発光器具が仕上がったからテストをお願いしようと声をかけたのだけど……そんなに慌ててどうかしたの ? |
カイウス | あ、慌ててなんていないさ !いきなり声をかけられて驚いただけで……えっと……だから気にしないでくれ。 |
ルビア | やっぱり様子がおかしいわね。もしかして何か隠し事をしてるんじゃないの ? |
カイウス | ハァ ! ? い、いきなり何言ってるんだよ !オレは何も隠してないぞ ! |
ルビア | ウソね ! お兄様が出ていってから明らかに様子がおかしいもの !あたしの目をごまかせると思ってるの ! ? |
カイウス | ル、ルビアに何がわかるんだよ。適当なこと言わないでくれ。 |
ルビア | なっ……なんですって ! ?せっかくスカートのことも水に流してあげようと思っていたのに……。 |
ルビア | わかった ! こうなったら意地でも吐かせてやるんだから !くらいなさい……コチョコチョ ! ! |
カイウス | や、やめろ ! ! あはははっ !ルビア、くすぐるなって ! ! |
ルビア | こんなの序の口よ !幼馴染の恐ろしさはこんなものじゃないわ !カイウスの弱いところなんて全部お見通しなんだから ! |
クラース | カイウス。こうなってしまっては手遅れだ。言いづらいことなのかもしれんが白状するしかない。後になればなるほど、収拾がつかなくなっていく。 |
イクス | なんだかクラースさんが言うと説得力があるな。 |
セルシウス | 身に覚えがあるんじゃないの ? |
クラース | 言うな。 |
ルビア | カイウス。どうするの ? |
カイウス | ……わ、わかったよ。話す、話せばいいんだろ。 |
ルビア | まったく。手こずらせないでよ。早く何があったのか言いなさい。 |
カイウス | ……アーリアも知りたいか ? |
アーリア | 確認だけど、それはティルキスに関わることなのよね ? |
カイウス | ああ。だから言い出せなかったんだ……。 |
アーリア | …………教えて。大切な人のことだからこそちゃんと知っておきたいの。 |
ルビア | ……アーリア。 |
カイウス | ……わかった。ならこれを見てくれ。さっき引き出しを開けた時偶然見つけたんだ……。 |
アーリア | これって……借用書 ! ?名義はティルキスで……しかもこんな大金 ! ! |
ルビア | お兄様が借金をしていたってこと ! ? |
アーリア | そんな……どういうことなの……。 |
カイウス | この額面から考えるに、生活費に困って借りた……という訳ではなさそうだよな。 |
クラース | 理由はわからない。だがこれで近頃仕事に明け暮れていた理由も説明がつく。 |
イクス | 借金返済のため……か。 |
クラース | ティルキスは王族の人間だったな。昔を思い出してふとした拍子に豪遊をしてしまった。この可能性は考えられるか ? |
カイウス | いや、ありえない。確かにティルキスは王子だけど一緒に旅をして無駄遣いをしたことは一度もなかった。オレたち庶民の感覚もよくわかっていたよ。 |
クラース | だとすると……ルドガーと同じようにティルキスも何か事件に巻き込まれて多額の借金を背負わされたのか……。 |
カイウス | それだ !だからアーリアに心配かけないように黙っていたんじゃないか ! ? |
カイウス | アーリア。ティルキスが仕事をたくさん引き受けはじめる前、何か変わったことはなかったか ?落ち込んでいたとか口数が少なかったとか。 |
アーリア | いえ……そんなことなかったわ。むしろいつもより明るくて口数も多かった。なんだか幸せそうに見えたくらいよ。 |
アーリア | この二人での生活にも慣れてきて……本当に……幸せそうに見えていたのよ、わたしは……。 |
ルビア | ……アーリア。 |
アーリア | ……どういうこと。あれは演技で、全てウソだったのかしら……。 |
クラース | それともまた別の理由があるのか……。 |
セルシウス | 話しているところ悪いけど、雷がやんだわ。今のうちにヴォルトを捜すべきじゃないかしら。 |
クラース | ……そうだな。行くとしよう。アーリアはここで待っていてくれ。 |
アーリア | いいえ。わたしも行くわ。 |
ルビア | ……大丈夫なの ? |
アーリア | ええ。心配してくれてありがとう。迷惑はかけないから、わたしも一緒に行かせて。今はここに一人でいたくないの……。 |
クラース | ……わかった。だが無理はするなよ。 |
アーリア | はい。 |
クラース | セルシウス。案内を頼む。 |
セルシウス | わかったわ。ついてきて。 |
キャラクター | 5話【聖夜の贈り物6 ヴォルトとの契約】 |
カイウス | ようやく山の頂上までたどり着いたな。 |
イクス | 明鏡四水が輝いてる。精霊の封印地点はここみたいだな。 |
クラース | セルシウス。案内ご苦労。 |
セルシウス | 礼は結構よ。それより構えなさい……来るわ ! |
ヴォルト | ピーー$、ピ%#カ、-%#カ !ーー ! &%ピ$ ! ! $レ# ! ! |
クラース | 封印されていた精霊はやはりヴォルトだったか。この世界でも相変わらずこいつの言葉はまったくわからないが……。 |
ヴォルト | キ%-ラ、%#キラ、ータ#$、%ナジ ! |
アーリア | なにかしら。わたしの方をジッと見ているけれど……。 |
クラース | ヴォルト。契約者は彼女ではなく私だ。ここにサードニックスの指輪も―― |
ヴォルト | キ%キラノ、ヒ$% !ーーシ%、サ%リタ# ! ! |
アーリア | ちょっと、なんなのよ !ついてこないで ! ! |
ヴォルト | #ラー%、%%#$ ! !ピ$%カ、-#$%、#$%カ ! ! |
カイウス | アーリアから離れろ ! |
ルビア | すばしっこいわね。 |
クラース | ヴォルト、契約者は私だ !なぜ彼女を付け狙う ? |
ヴォルト | ピ$%カ、-#$%、#$%カ ! ! |
アーリア | 何を言っているのかさっぱりだわ !もういい加減にしてちょうだい ! |
ヴォルト | #-、ニ$% ? ワ#シハ、$#ソ#ヒカ$%、ショ#$&ヲ、シ&%- ! |
セルシウス | …………まったく。 |
アーリア | セルシウス ! ヴォルトの言葉がわかるなら教えて。 |
セルシウス | 精霊らしからぬくだらないことよ。今はとにかく契約を交わすのが先決。そうすれば全て解決するわ。 |
イクス | 契約を交わすということは……。 |
セルシウス | 力を示しなさい、クラース。 |
クラース | 望むところだ。 |
カイウス | オレたちも手を貸すぜ ! |
ヴォルト | &カ%カノ、ヒ$% !ー%&$ ! #%@ ! |
クラース | ようやくこちらを向いたか。ではいくぞ ! ヴォルト ! ! |
キャラクター | 6話【聖夜の贈り物6 ヴォルトとの契約】 |
クラース | よし。なんとか落ち着いたみたいだな。 |
ヴォルト | $マ#イ、ス%&、%シャ&スギ# ! |
セルシウス | クラース。もう大丈夫よ。契約の指輪をかざしなさい。 |
クラース | ではさっそく……。 |
クラース | 我、今、雷の精に願い奉る。 |
クラース | 指輪の盟約のもと我に精霊を従わせたまえ……。 |
クラース | 我が名はクラース……。 |
クラース | ヴォルトと契約完了だ。 |
イクス | お疲れ様です。これで一段落ですね。 |
ルビア | アーリア、怪我はしていない ?ヴォルトに狙われていたけど……。 |
アーリア | わたしは無事よ。それに……戦っていて気がついたの。確かにヴォルトはわたしを狙っていたみたいだったけど攻撃対象とみなされていた訳ではなかったみたい。 |
セルシウス | そのとおりよ。あれはただじゃれていたようなものだもの。 |
アーリア | じゃれていた ? わたしに ? |
セルシウス | 厳密に言うと、あなたにではなくあなたが持っている器具によ。 |
アーリア | もしかしてこの発光器具のこと ? |
クラース | なるほど。そういえば発光器具に施されていた技術はレアバードの飛行機械と似た点が多々あった。両者の親和性の高さからヴォルトが興味を持ったのか。 |
カイウス | えっと……ネコがネコじゃらしを見て興奮したのと同じようなことだったわけか。 |
クラース | そういうことだ。つまりヴォルトも悪気があったわけではなかった、と。 |
アーリア | わたし……誤解してしまっていたわね。 |
ルビア | 仕方ないわよ。ヴォルトが何を考えていたかなんてあたしたちがわかるはずないもの。 |
アーリア | そうね。けど、だからこそちゃんと向き合っていく必要があるのだと思ったわ。 |
クラース | おっ、見てみろ。雷雲が消えていく。空が晴れてきたぞ。 |
イクス | よかった。これでもう落雷の心配もない。街の人たちもクリスマスを安心して過ごせるはずだ。 |
アーリア | それじゃあ一度街に戻りましょう。 |
キャラクター | 7話【聖夜の贈り物7 イルミネーション】 |
アーリア | こっちの準備は整ったわよ !クラースさん、お願い ! |
クラース | ではいくぞ……ヴォルト ! |
カイウス | うわぁ ! すごく綺麗だな ! |
ルビア | ええ。すごく素敵なイルミネーションよね。まるで街中に星が散りばめられたみたい。 |
カイウス | 星か……。そういえばフェルン村でも二人で夜空を眺めたことがあったな。ルビア、覚えてるか ? |
ルビア | ええ。忘れるわけないわよ……って、ちょっと。気安く話しかけないでくれるかしら。あたしはまだカイウスを許したわけじゃないのよ ? |
カイウス | なんだよ。もしかしてまだスカートのこと根に持ってるのか ? |
ルビア | 当たり前よ。忘れるカイウスが悪いんだから。 |
カイウス | 忘れる ? それってそのスカートがオレと関係してるってことだよな ? |
ルビア | さあ、どうかしら。関係があったとしてもカイウスの頭じゃ昔のことなんて思い出せないと思うけど。 |
カイウス | なんだと ! ? |
ルビア | 何よ ! ? |
ティルキス | おいおい。雷雲の下で喧嘩をしていたと思ったら今度はイルミネーションの下で喧嘩か ?お前たちも本当に飽きないな。 |
ルビア | お兄様 ! ? どうしてここに ! ? |
ティルキス | 天気が回復したから、精霊の問題を解決したお前たちも帰ってくる頃だと思って、配達のついでに寄ったんだ。そんなに驚くほどのことか ? |
カイウス | い、いや……別にそういうわけじゃなくてティルキスの衣装に驚いたんだ。 |
ルビア | そ、そうよ ! お兄様、似合っているわ ! |
ティルキス | ありがとな。アーリアも似合っているぜ。 |
アーリア | ……ティルキス。ええ、あなたも素敵よ。 |
ティルキス | そういや無事に発光器具も完成したんだな。街のイルミネーション、すごく綺麗だぞ。 |
アーリア | ……ええ、ありがとう。 |
ティルキス | ……アーリア ? どうかしたのか ? |
ルビア | お兄様 ! どうかしたのかじゃないです !アーリアはお兄様のことで―― |
アーリア | 待って。 |
ティルキス | ……俺のこと ? |
アーリア | ティルキス。後で話があるの。いいかしら ? |
ティルキス | ……ああ。わかった。 |
アーリア | それじゃあまた後で。お仕事頑張って。 |
ティルキス | ああ。ありがとう、アーリア。カイウスたちもまた後でな ! |
ルビア | ……二人とも大丈夫かしら。 |
クラース | 第三者が心配することでもないだろう。あとは当人たちの問題だ。それにきっと、なるようになるさ。 |
ルビア | なんだかクラースさんはずいぶんとご機嫌ね。二人が破局の危機かもしれないのに。 |
セルシウス | 理由は二つよ。一つはお酒。もう一つは契約精霊が増えたから。 |
クラース | 契約の指輪を眺めながら一杯やるのが最高なんだ。 |
イクス | クラースさん。お楽しみのところすみません。宝石商の人からクラースさんに手紙を預かってきたんですけど……。 |
クラース | どれどれ……なんだ、またこの話か。いくら金を出すと言われても契約の指輪は売れないとさっきも断ったんだがな。 |
イクス | すごい高額を提示してきましたね。やっぱり契約の指輪と知っているからでしょうか。 |
クラース | いや。私もどうしてそこまで欲しがるのか気になって聞いてみたんだ。するとこんなことを話してくれた。 |
クラース | なんでも、以前とある物好きな青年が偶然仕入れた珍しい指輪を高値で買い取ってくれたそうだ。 |
クラース | その青年は一般人を装っていたが宝石商の勘では高貴な身分の人物に違いなくいい商売相手になる。 |
クラース | だから珍しい指輪をたくさん仕入れておきその青年に会った時、また高値で買い取ってもらうという算段とのことだった。 |
カイウス | そういうことだったのか。その宝石商も宝石商だけど物好きな金持ちもいたものだよな。 |
カイウス | なんでか知らないけどそんな高い指輪を欲しがる気持ちがオレにはよくわからないよ。 |
アーリア | 自分の趣味か……もしかしたらプレゼントか……。 |
ルビア | 高価なプレゼント……素敵よねぇ。カイウスは甲斐性なしだから絶対に買えないでしょうけど。 |
カイウス | そんな言い方ないだろ ! |
ルビア | あら、事実じゃない。 |
ルビア | ……まあ、カイウスから高価な贈り物なんて期待してないけど。あのときのプレゼントだって……。 |
カイウス | えっ……プレゼントって……もしかして……。 |
クラース | さあ、もういい時間だ。そろそろ別行動としよう。 |
イクス | はい。それじゃあ俺はアジトに戻ります。ミリーナたちが待っているので。 |
クラース | アジトは若者たちのお祭り騒ぎだろうから私はもうしばらくこの街にいる。セルシウス、次はあっちの酒場に行くぞ。 |
セルシウス | ……契約者とはいえ酔いつぶれたときの介抱はしないわよ。 |
アーリア | それじゃあわたしたちは一度家に戻りましょう。 |
キャラクター | 8話【聖夜の贈り物8 パーティの準備1】 |
アーリア | よし。クリスマスパーティに出す料理の下ごしらえはこんなところね。後は焼くだけ。ティルキスの喜びそうな顔が目に浮かぶわ。 |
カイウス | アーリア。ちょっといいか ? |
アーリア | カイウス。どうかしたの ? |
カイウス | 辞典に載っているこの花を探しているんだ。このあたりで見なかったか ? |
アーリア | それなら街の裏手に咲いていたわよ。けど、いきなりどうしたの ? |
カイウス | 実はようやくわかったんだ。ルビアがなんでスカートのことで怒ったのか。 |
アーリア | あら……そういえば探している花とルビアのスカートの形、よく似ているわね。 |
カイウス | 昔、この花をルビアにプレゼントしたんだ。そうしたらあいつ、すごく気に入ってくれてさ……。 |
アーリア | そう。だからルビアはあのスカートを……。 |
カイウス | ああ。だからちゃんとオレも覚えてるって伝えるためにも、クリスマスプレゼントとしてこの花の花束をもう一度渡すつもりなんだ。 |
アーリア | いいと思うわ。とっても素敵ね。それに、なんだか羨ましいわ。 |
カイウス | 羨ましい ? |
アーリア | 二人は幼馴染でしょう。この花のような、特別な思い出が二人にはたくさんあるんだろうなって。 |
カイウス | そんな特別って言っていいのかわからないけどまあ、ずっと一緒だったから思い出だけはたくさんあるな。 |
カイウス | けど、アーリアとティルキスにだって思い出なら色々できたんじゃないか ?それこそプレゼントをティルキスからもらったとか。 |
アーリア | ……プレゼント。そういえば元の世界でティルキスが指輪をくれると言ってくれたことがあったわね。 |
アーリア | ……ちょっと待って、もしかして…… ! |
カイウス | アーリア ? |
アーリア | い、いえ……なんでもないの ! |
カイウス | そうか ? 急に顔が真っ青になったから驚いたけど、問題ないならよかった。それじゃあオレは花を摘みに行ってくる。 |
アーリア | え、ええ。いってらっしゃい。 |
アーリア | …………指輪。もしかしてティルキス……。 |
ティルキス | どうかしたか ? |
アーリア | ティルキス ! ? えっ、どうしているの ! ? |
ティルキス | カイウスと入れ違いに戻ってきたんだが俺のこと見えてなかったのか。 |
アーリア | ご、ごめんなさい。ちょっと考え事をしていて。けど、まだ仕事の筈でしょう ? |
ティルキス | ちょっと仕事の休憩時間ができたんだ。だからアーリアがどうしているのか気になって戻ってきたのさ。 |
アーリア | ……ティルキス。 |
ティルキス | おっ。料理の下ごしらえ中だったんだな。クリスマスパーティのディナーメニューは何の予定なんだ ? |
アーリア | ふふっ、秘密よ。これがわたしからあなたへのプレゼントなのだから。 |
ティルキス | おっと、そういえばそうだった。楽しみはとっておかないとな。 |
アーリア | …………。 |
ティルキス | アーリア ? 大丈夫か ? |
アーリア | えっ ? 急にどうしたのよ ? |
ティルキス | 何か話したいことがあるんじゃないのか ? |
アーリア | そ、それは…………。 |
アーリア | ううん。本当になんでもないの。 |
ティルキス | ……そうか。 |
アーリア | そろそろ休憩時間も終わりでしょう。 |
ティルキス | おっと、もう終わりか。アーリアと話しているとあっという間に時が過ぎていくな。 |
ティルキス | それじゃあ、クリスマスパーティで。 |
キャラクター | 9話【聖夜の贈り物10 聖なる夜に】 |
アーリア | 全員揃ったわね !それじゃあパーティを始めましょう ! |
全員 | メリークリスマス ! |
カイウス | なんだか悪いな。オレとルビアもお邪魔しちゃって。 |
ティルキス | 何を気にしてるんだ。一緒に旅をした仲だろう。俺とアーリアも二人がいてくれて嬉しいさ。そうだろう、アーリア ? |
アーリア | ええ。せっかくですものね。みんなで楽しみましょう。 |
ルビア | ありがとう ! お兄様とアーリアの愛の巣でクリスマスを迎えられてすごく嬉しいわ ! |
ティルキス | だから愛の巣って言うのはやめてくれ ! |
アーリア | さあ。おしゃべりもいいけどみんなお腹が空いているでしょう。たくさん作ったからどんどん食べてね。 |
ティルキス | これは……ステーキじゃないか ! ! |
アーリア | あなたの好物よ。 |
ティルキス | 覚えていてくれたのか ! |
アーリア | 当たり前よ。 |
ティルキス | いやぁ。アーリアが作ってくれた料理を腹いっぱい食べれるなんてこんな幸せなことはないよ。最高のクリスマスプレゼントだ。 |
アーリア | もう。ティルキスったら。 |
カイウス | ル、ルビア !オレから、その……クリスマスプレゼントがあるんだ !この花束なんだけど……。 |
ルビア | えっ……この花って……。 |
カイウス | ごめん。なかなか思い出せなくて。 |
ルビア | ……もう、遅すぎよ。けど……カイウスの頭じゃ仕方ないわね。特別に許してあげる。 |
ルビア | それと……あたしからもプレゼント。チョコレートケーキを作ったからデザートに食べなさい。 |
ルビア | もちろん、ビターテイストよ。 |
カイウス | ルビアの手作りスイーツはバレンタイン以来だな。また作ってくれるとは思ってなかったよ。 |
カイウス | ルビア、ありがとう。 |
ルビア | どういたしまして。 |
ティルキス | おっと。残るは俺だけか。本来ならこの流れで俺もアーリアに渡したいところだが……。 |
カイウス | ……だが ? |
ティルキス | あいにくと俺のプレゼントはここでは渡せないんだ。 |
アーリア | どういう意味 ? |
ティルキス | まあ、そう焦らないでくれ。せっかくのご馳走が冷めてしまうだろ。 |
ティルキス | プレゼントは食後二人きりで……だ。 |
アーリア | ……二人で ? |
キャラクター | 10話【聖夜の贈り物10 聖なる夜に】 |
クラース | さてと。そろそろアジトも落ち着いた頃だろう。私たちも帰るとしよう。 |
セルシウス | 待って。あそこにいるのは……。 |
ティルキス | 悪いな、こんなところに連れてきて。けどどうしてもここで渡したかったんだ。 |
アーリア | この、港で ? |
ティルキス | そうだ。そしてこれが俺のプレゼント。箱を開けてみてくれ。 |
アーリア | ……これは ! |
ティルキス | 指輪だ ! 元の世界で渡すと約束したからな。どうだ、驚いたか ? |
アーリア | …………。 |
ティルキス | アーリア ? |
アーリア | ……とても嬉しいわ。けれど、あなたに話しておかなくちゃいけないことがあるの。 |
ティルキス | …… ? |
ティルキス | ははっ、なるほど。借用書や宝石商から聞いた話から俺が何をしていたのか気がついたんだな。 |
アーリア | ……ごめんなさい。あなたはわたしのためにずっと影で頑張ってくれていた。 |
アーリア | けど、わたしはあなたを疑ってこのプレゼントの中身を暴いてしまったわ。 |
ティルキス | ……アーリア。 |
アーリア | ティルキス。本当に、ごめんなさい……。 |
ティルキス | …………ふふっ。 |
アーリア | えっ ? |
ティルキス | はははっ。いやあ、俺もツメが甘いな。いや、さすがは頭脳明晰なアーリアと言うべきか。 |
アーリア | ちょ、ちょっと。笑うところじゃないでしょう。 |
ティルキス | いいや。笑うところさ。それに俺は嬉しいんだ。 |
アーリア | ……嬉しい ? |
ティルキス | 俺は気づかれたことに全然気づいていなかった。つまり、黙っていればなかったことにできた。けど、アーリアはそうはしなかった。 |
ティルキス | 何ていうんだろうな。ちゃんと話してくれたことが俺はすごく嬉しいんだと思う。 |
アーリア | ……ティルキス。 |
アーリア | ええ。旅の時は隠していたこともあった。けど、もうあの時のようなことはしないわ。 |
アーリア | あなたの前ではありのままの自分でいたいから。 |
ティルキス | ……アーリア。 |
クラース | まったく。結局アジトにいても外にいても変わらなかったかもしれないな。これだからクリスマスは。 |
セルシウス | クラース。本当は羨ましいのでしょう ? |
クラース | どうしてそうなる。ありえない。 |
セルシウス | そう。けど精霊のわたしから見ればあなたも十分、暑苦しさを持っているわ。 |
クラース | それは気のせいだ。 |
セルシウス | ……まったく。 |
クラース | セルシウス ? |
アーリア | ……これは、雪ね。 |
ティルキス | ホワイトクリスマスだな。すごく綺麗だ。 |
アーリア | ……けど、ちょっと寒いわね。 |
ティルキス | ああ。それはそうだな。 |
クラース | お前がこんなことをするとは意外だな。てっきり私と同じタイプかと思ったが。 |
セルシウス | わたしは暑苦しいのが苦手なだけよ。 |