キャラクター1話【聖夜の贈り物1 異常気象】
クラースいいや。私は間違いなく、事前に伝えておいたぞ。今日はアレウーラ領で精霊探索の予定だとな。おじさんでもなければ、もうろくもしていない。
アーチェはいはい、わかったわよ。けどクリスマスパーティにはちゃんと戻ってきてよね。準備はあたしたちでやっておくから。
メルディセルシウスも待ってるからな !
セルシウスわたしのことは待たなくていいわよ。クリスマスパーティとやらにも興味ないわ。
イフリート俺はメチャクチャ楽しみだぜ !
セルシウス勝手に話に入ってこないで。暑苦しい。
イフリートうぐぬっ…‥。
クラースともかく、パーティに間に合うかどうかは調査の進捗次第だ。こうして魔鏡通信で話している間も時間はなくなっていく。もう切るからな。
アーチェあっ、ちょっと ! まだ話は終わってな――
クラースよし。ではさっそく調査を開始するか。カイウスとルビアも準備はいいな ?
カイウスもちろんだ。カロル調査室のおかげでようやくティルキスとアーリアの手がかりも掴めた。はやく二人を見つけてやらないと。
ルビアこの港町にいるかもしれないのよね。お兄様もアーリアも、無事だといいけど。
イクスクリスマスなのに忙しくなりそうだな。本当ならみんなにはアジトでゆっくりして欲しかったのに申し訳ない……。
クラースむしろ私はアジトから出られてホッとしている。チェスターとアーチェだけならまだしもカイルとリアラやら、もう騒がしくてかなわない。
セルシウスクリスマスは感情が高ぶっている人間が多くてわたしもあまり好きにはなれないわ。
カイウス二人の言いたいことはわかるけどクリスマスなのに何もないのも寂しいだろ。少なくともオレはこの港町の様子をみてそう思ったぜ。
ルビアそうよね。飾り付けもしていないどころかみんな家に引きこもっているみたいで街に活気が全然ないもの。
クラースカロル調査室の資料にあるとおり原因は異常気象。主に落雷だ。突発的な雷雨により街の人たちもうかうか外に出られないのだろう。
カイウス更に言うと、その異常気象の原因には精霊が関わっているって話だよな。
セルシウスこの被害状況から考えるに精霊はヴォルトとみて間違いないわね。この街の周辺から気配も感じるわ。
クラースヴォルトは人間の言葉が通じない可能性が高い。私の世界だけではなく、しいなの世界のヴォルトもそうだったと聞いているからな。油断するなよ。
イクス今までの精霊と違って意思疎通という面でも一筋縄ではいかないかもしれないということですね。はい、気をつけます。
ルビアそれじゃあまずは聞き込みね。お兄様とアーリアを捜しつつヴォルトに関わりそうな情報を――
カイウス―― ! ? この感じは――
ルビアちょっと、カイウス !よそ見してないで――
カイウス――ルビア ! 危ない !
イクス雷 ! ? 二人とも大丈夫か ! ?
カイウスああ。なんとか間に合った。ルビアも大丈夫か ?
ルビアう、うん。えっと……あり、がと。
クラース見ろ。さっきまでは青空が見えていたのに気がつけば雷雲で覆われてしまっている。明らかに自然現象ではないな。
セルシウスまたいつ雷が落ちてきてもおかしくないわね。ひとまず避難するわよ。
カイウスルビア ! オレたちも行くぞ。
ルビアちょ、ちょっと待って……。
イクスルビア、どうかしたのか ! ?はやく避難しないと危ないぞ !
ルビアわ、わかってるけど……。
カイウスほら、オレがおぶってやるよ。雷が怖くて腰が引けるなんてルビアも案外お子さまだな。
ルビアなっ……ち、違うわよ ! ちょっと驚いただけ !それにあたしは一人で歩けるわ !子ども扱いしないで !
カイウス足が震えてるぞ。無理するなって。ただでさえそんな歩きづらそうなスカートを履いてるんだしさ。
ルビア歩きづらそうなスカート……ですって…… ?
カイウスルビア ?
ルビア……へぇ。カイウスってばこのスカートのことそんな風に思ってたんだ。
カイウスな、なんだよ。
ルビアカイウスのバカ ! もう知らない ! !
カイウスハァ ! ? なに怒ってるんだよ !
ルビアそんなこともわからないのね !本当デリカシーも記憶力もないんだから !カイウスなんて……大嫌いよ ! !
カイウスなっ……そ、そこまで言うことないだろっ ! !
イクスク、クラースさん。どうしましょう。あの二人の間に火花が散ってますけど……。
クラース今のあの二人にうかつに近づけば私たちの方が感電死しかねない。ヴォルトの雷よりも男女の諍いはよっぽど恐ろしい。
イクスはは……そうですね……。とはいえ放っておくこともできないし――
? ? ?ははっ。カイウス。さっきの雷はかわせたがかわりにルビアの雷を直撃するハメになったみたいだな。
? ? ?もう。冗談言ってる場合じゃないでしょ。
二人その声は ! ?
ティルキス誰かと思って心配して来てみればまさかお前たちだったとはな。
アーリア雷雲の下にも関わらず喧嘩をしているところを見ると相変わらずみたいね。
ルビアお兄様 ! それにアーリア !
クラース……ということは彼らがカイウスたちの尋ね人か。捜す手間がはぶけたようだな。
カイウスああ、こんなに早く見つかるなんて。
カイウスそれに、よかった……。リビングドール状態じゃないみたいだ……。
アーリアリビングドール…… ?ティルキスが操られていた状態の時のことかしら ?
イクスすみません。その頃のことや色々な状況に関しては後にさせてもらえませんか。この状況は危険なので……。
ティルキスそれがいい。今はとにかく避難だ。ルビア。立てるか ?
ルビアはい、お兄様。カイウスがあたしを怒らせたせいで恐い気持ちも吹き飛びましたから。
カイウスならオレにお礼の一言ぐらいあってもいいんじゃないか ?
ルビア何よ ! ?
カイウスなんだよ ! ?
クラースこっちの雷も収まりそうにないな。

キャラクター2話【聖夜の贈り物2 異常気象の原因】
カイウスえっと……要約するとアーリアはティルキスを助けて帝国から逃亡後この街に潜伏していたんだな。
アーリア異常気象が発生して帝国兵は撤退したけどそれまでは警備も厳しくてなかなか自由に行動ができなかったのよ。
ティルキスとはいえ霞を食って生きていけるわけじゃないからな。あまり人目につかないように働きつつこの家で暮らしていたってわけだ。
イクスそうか……それは大変だったな。
ティルキスいや。こういっちゃなんだがそこまで悪いものでもなかったぞ。
ティルキス確かに生活は厳しかった。毎日汗水垂らして働いてやっとだからな。
ティルキスけど大切な人と過ごせる日々っていうのは王宮での暮らしよりよっぽど幸せだ。少なくとも俺はそう思うよ。
アーリア……ティルキス。ええ。わたしもよ。
ルビアキャーッ ! 素敵 ! !これぞ純愛よ ! !
ティルキスじゅ、純愛って……。
アーリアそ、そんなことは……。
クラースセルシウス。この部屋、暑くないか ?アジトにも引けを取らないほど。
セルシウスクリスマスだからよ。
ティルキスそう、今日はクリスマスだ。というわけで、イクス。アジトに合流するのは明日でもいいか ?
イクス別にいいけど……アジトでクリスマスパーティがあるんだ。よかったら二人にも来てほしかったんだけど。
ティルキスそのお誘いはとても嬉しいが俺とアーリアは、この家でクリスマスパーティをしようと思ってるんだ。
アーリアこんな狭苦しくて隙間風も酷いボロ屋だけどここには二人で暮らした思い出があるの。だから大切な日はここで過ごしたいのよ。
イクス――わかったよ。そういうことなら、アジトに来てもらうのはクリスマスが終わってからにしよう。
クラースとはいえヴォルトの問題が残っている。こいつをなんとかしなくてはクリスマスどころじゃないんじゃないのか。
アーリアええ。もちろんヴォルトの探索にはわたしたちも協力するわ。
ティルキスこの街の人たちには世話になった。平和なクリスマスを取り戻すことで少しは恩返しにもなるだろう。
ルビアなんとしてもヴォルトを見つけましょう !そしてクリスマスを取り返すのよ !お兄様とアーリアのためにも !
カイウスルビア。どんだけテンション高いんだよ。さっきからうるさいぞ。
ルビアふんっ。
カイウスおい ! 無視することないだろ ! ?
ルビア言ったでしょ、カイウスなんて知らないって。もっと歩きやすそうなスカートを履いてる人と話してくれば ?
カイウスお前……どれだけスカートのこと根に持ってるんだよ。
ルビア根に持つわよ !だって……だってこのスカートは……。
カイウス……このスカートは ?
ルビアもうっ ! カイウスの馬鹿ッ !
カイウスだから、なんでそうなるんだよ !
クラースさてと。色々な意味でヴォルトの探索に向かいたいところだがまだ外は雷が酷いみたいだな。
セルシウスもう少し収まったら出発しましょう。それまでは休憩よ。

キャラクター3話【聖夜の贈り物3 貧しいけれど】
ルビアすごいわ ! 生活用品だけじゃなくて食器まで二人お揃いなのね !
ルビア手作りの料理をこのお揃いのお皿によそったあと二人はテーブルで向かい合い、食事をとっていたのね。こう……あ~ん、って互いに食べさせあいながら。
ルビアはぁ……素敵……。
ティルキスおいおい。暇だからってあまり部屋をジロジロ見ないでくれよ。なんだか恥ずかしいだろ。
ルビアだって気になるんですもの。お兄様とアーリア……二人の愛の巣が !
ティルキスあ、愛の巣 ! ?
アーリアそ、そんなんじゃないわよ。一緒に暮らしていたってくらいでルビアったらおおげさね。
カイウスアーリア。手に持っている工具が上下逆さまだぞ……。
アーリアえっ、あっ……こ、これは……。ちょっと手元が狂っただけよ。
アーリアそう ! 狂ってクルッと工具が逆さま ! みたいな !
ルビア…………えっ ?
アーリアもしかして……面白くなかった ?今のは手元が「狂って」と工具が「クルっと」なったのを掛けてて……。
カイウスそ、それはわかったけど……い、いや ! あまりに面白くてみんな黙っただけさ !な ! ルビア ! ?
ルビアそ、そうね !……えっと、ところでアーリア。さっきから何を作っているの ?
アーリアこれはクリスマスイルミネーション用の発光器具よ。今まで使っていたものが落雷のせいで壊れたらしくて街の人に頼まれたの。ちょっとした内職ね。
イクスいや。さっきからずっと見てるけど、一人でこの発光器具を開発できるなんてすごい技術だよ。もしかして学者か研究者だったのか ?
アーリアいいえ。わたしはただの僧侶よ。それにこれはほぼ独学。プリセプツの構築……この世界で言うところの魔術工学が趣味なのよ。
クラース魔科学のような複雑な技術を、趣味でここまで理解し習得するとは……なかなかの切れ者だな。召喚術の理論を完成させた私も認めざるを得ない。
セルシウスクラース。若者の才能に嫉妬しないの。大人げないわよ。
クラース……セルシウス。最近はイフリートに対してだけじゃなく私にも冷たいな。
ティルキスとにかくアーリアは本物の学者先生も認めるほどの才女ってことだな。
アーリアもう。ティルキスったら。なんであなたが嬉しそうなのよ。
ティルキスそりゃあアーリアのことを褒められたら嬉しいさ。だって俺は……ほら……アーリアの……。
アーリア……わ、わたしの ?
ルビア…………ごくり。
ティルキスの旦那 !ちょっと相談があるんだ、話せるかい ?
ティルキスん ? どうやら客人が来たみたいだな。みんな、ちょっと待っててくれ。
ルビア何よもう ! いいところだったのに ! !一体誰なの ! ?
アーリアお仕事の依頼者さんじゃないかしら。この街に来てからティルキスはなんでも屋さんをしているから。
カイウスなんでも屋さんか。なんだかティルキスらしいな。
アーリアええ。そうよね……。そうだと思うけど……。
ルビア……アーリア ?
ティルキスみんな、すまない。仕事の依頼が入った。ちょっと出てくる。
ルビアちょっと、お兄様。今日はクリスマスですよ。お仕事はお休みしてもいいじゃないですか。それにこの落雷の中、外出するのは危険です。
ティルキスだからこそ、なんでも屋である俺の力が必要とされているのさ。
ティルキスこの悪天候のせいでクリスマスなのにプレゼントの配送ができなくて困ってるらしい。放っておくわけにはいかないだろ。
ルビアそれはわかりますけど……。
アーリアいいのよ、ルビア。ティルキスもクリスマスパーティまでには戻ってきてくれるわよね ?
ティルキスああ、もちろんだ。約束する。ただ精霊探索はお前たちに任せることになってしまうが……。
イクスこっちのことは任せてくれ。俺たちで何とかするよ。
ティルキスありがとう。それじゃあ、早速だが行ってくるよ。
アーリア待って。手袋を忘れているわよ。今日は特に寒いから、つけていった方がいいわ。
ティルキスおっと、危ない。ありがとう、アーリア。カイウス。すまないがその引き出しから手袋を取ってくれないか ?
カイウスああ。えっと……あった。はい、ティルキス。お仕事、頑張ってな。
ティルキスありがとな、カイウス。それじゃあ今度こそいってくる。
アーリアええ。いってらしゃい。
ルビア……ねぇ、アーリア。本当によかったの ?今日はクリスマスなのよ。それなのにお兄様ったらお仕事を優先するなんて……。
イクスもしかして……その……生活が厳しかったのか ?
アーリアいいえ。そこまでじゃないのだけど……ただティルキスは最近やけに仕事をたくさん引き受けているのよね。
ルビアどういうこと ? 生活費は足りているんだったら無理してたくさん引き受けることないじゃない。
アーリアわたしも疑問に思って聞いてみたのよ。そうしたら「お金のためじゃない」とは言っていたのだけど……。
アーリアはぁ……男心っていうのは難解だわ。プリセプツの理論の方がよっぽど簡単よ。
クラースふっ……それは頭のいいお嬢さんでも永遠に解けないかもしれないな。
ルビアお兄様がそこまで働く理由……。お仕事にやり甲斐を見出したとか……後は何があるかしら。カイウスはどう思う ?
カイウス………… !
ルビアちょっと。さっきから黙って何してるの ?引き出しの中に何かあるわけ ?
カイウスえっ ! ? い、いや……別に !なんでもないぞ !
ルビア

キャラクター4話【聖夜の贈り物3 貧しいけれど】
アーリアカイウス。ちょっといいかしら。
カイウスえっ ! ? ど、どうした ! ?
アーリア発光器具が仕上がったからテストをお願いしようと声をかけたのだけど……そんなに慌ててどうかしたの ?
カイウスあ、慌ててなんていないさ !いきなり声をかけられて驚いただけで……えっと……だから気にしないでくれ。
ルビアやっぱり様子がおかしいわね。もしかして何か隠し事をしてるんじゃないの ?
カイウスハァ ! ? い、いきなり何言ってるんだよ !オレは何も隠してないぞ !
ルビアウソね ! お兄様が出ていってから明らかに様子がおかしいもの !あたしの目をごまかせると思ってるの ! ?
カイウスル、ルビアに何がわかるんだよ。適当なこと言わないでくれ。
ルビアなっ……なんですって ! ?せっかくスカートのことも水に流してあげようと思っていたのに……。
ルビアわかった ! こうなったら意地でも吐かせてやるんだから !くらいなさい……コチョコチョ ! !
カイウスや、やめろ ! ! あはははっ !ルビア、くすぐるなって ! !
ルビアこんなの序の口よ !幼馴染の恐ろしさはこんなものじゃないわ !カイウスの弱いところなんて全部お見通しなんだから !
クラースカイウス。こうなってしまっては手遅れだ。言いづらいことなのかもしれんが白状するしかない。後になればなるほど、収拾がつかなくなっていく。
イクスなんだかクラースさんが言うと説得力があるな。
セルシウス身に覚えがあるんじゃないの ?
クラース言うな。
ルビアカイウス。どうするの ?
カイウス……わ、わかったよ。話す、話せばいいんだろ。
ルビアまったく。手こずらせないでよ。早く何があったのか言いなさい。
カイウス……アーリアも知りたいか ?
アーリア確認だけど、それはティルキスに関わることなのよね ?
カイウスああ。だから言い出せなかったんだ……。
アーリア…………教えて。大切な人のことだからこそちゃんと知っておきたいの。
ルビア……アーリア。
カイウス……わかった。ならこれを見てくれ。さっき引き出しを開けた時偶然見つけたんだ……。
アーリアこれって……借用書 ! ?名義はティルキスで……しかもこんな大金 ! !
ルビアお兄様が借金をしていたってこと ! ?
アーリアそんな……どういうことなの……。
カイウスこの額面から考えるに、生活費に困って借りた……という訳ではなさそうだよな。
クラース理由はわからない。だがこれで近頃仕事に明け暮れていた理由も説明がつく。
イクス借金返済のため……か。
クラースティルキスは王族の人間だったな。昔を思い出してふとした拍子に豪遊をしてしまった。この可能性は考えられるか ?
カイウスいや、ありえない。確かにティルキスは王子だけど一緒に旅をして無駄遣いをしたことは一度もなかった。オレたち庶民の感覚もよくわかっていたよ。
クラースだとすると……ルドガーと同じようにティルキスも何か事件に巻き込まれて多額の借金を背負わされたのか……。
カイウスそれだ !だからアーリアに心配かけないように黙っていたんじゃないか ! ?
カイウスアーリア。ティルキスが仕事をたくさん引き受けはじめる前、何か変わったことはなかったか ?落ち込んでいたとか口数が少なかったとか。
アーリアいえ……そんなことなかったわ。むしろいつもより明るくて口数も多かった。なんだか幸せそうに見えたくらいよ。
アーリアこの二人での生活にも慣れてきて……本当に……幸せそうに見えていたのよ、わたしは……。
ルビア……アーリア。
アーリア……どういうこと。あれは演技で、全てウソだったのかしら……。
クラースそれともまた別の理由があるのか……。
セルシウス話しているところ悪いけど、雷がやんだわ。今のうちにヴォルトを捜すべきじゃないかしら。
クラース……そうだな。行くとしよう。アーリアはここで待っていてくれ。
アーリアいいえ。わたしも行くわ。
ルビア……大丈夫なの ?
アーリアええ。心配してくれてありがとう。迷惑はかけないから、わたしも一緒に行かせて。今はここに一人でいたくないの……。
クラース……わかった。だが無理はするなよ。
アーリアはい。
クラースセルシウス。案内を頼む。
セルシウスわかったわ。ついてきて。

キャラクター5話【聖夜の贈り物6 ヴォルトとの契約】
カイウスようやく山の頂上までたどり着いたな。
イクス明鏡四水が輝いてる。精霊の封印地点はここみたいだな。
クラースセルシウス。案内ご苦労。
セルシウス礼は結構よ。それより構えなさい……来るわ !
ヴォルトピーー$、ピ%#カ、-%#カ !ーー ! &%ピ$ ! ! $レ# ! !
クラース封印されていた精霊はやはりヴォルトだったか。この世界でも相変わらずこいつの言葉はまったくわからないが……。
ヴォルトキ%-ラ、%#キラ、ータ#$、%ナジ !
アーリアなにかしら。わたしの方をジッと見ているけれど……。
クラースヴォルト。契約者は彼女ではなく私だ。ここにサードニックスの指輪も――
ヴォルトキ%キラノ、ヒ$% !ーーシ%、サ%リタ# ! !
アーリアちょっと、なんなのよ !ついてこないで ! !
ヴォルト#ラー%、%%#$ ! !ピ$%カ、-#$%、#$%カ ! !
カイウスアーリアから離れろ !
ルビアすばしっこいわね。
クラースヴォルト、契約者は私だ !なぜ彼女を付け狙う ?
ヴォルトピ$%カ、-#$%、#$%カ ! !
アーリア何を言っているのかさっぱりだわ !もういい加減にしてちょうだい !
ヴォルト#-、ニ$% ? ワ#シハ、$#ソ#ヒカ$%、ショ#$&ヲ、シ&%- !
セルシウス…………まったく。
アーリアセルシウス ! ヴォルトの言葉がわかるなら教えて。
セルシウス精霊らしからぬくだらないことよ。今はとにかく契約を交わすのが先決。そうすれば全て解決するわ。
イクス契約を交わすということは……。
セルシウス力を示しなさい、クラース。
クラース望むところだ。
カイウスオレたちも手を貸すぜ !
ヴォルト&カ%カノ、ヒ$% !ー%&$ ! #%@ !
クラースようやくこちらを向いたか。ではいくぞ ! ヴォルト ! !

キャラクター6話【聖夜の贈り物6 ヴォルトとの契約】
クラースよし。なんとか落ち着いたみたいだな。
ヴォルト$マ#イ、ス%&、%シャ&スギ# !
セルシウスクラース。もう大丈夫よ。契約の指輪をかざしなさい。
クラースではさっそく……。
クラース我、今、雷の精に願い奉る。
クラース指輪の盟約のもと我に精霊を従わせたまえ……。
クラース我が名はクラース……。
クラースヴォルトと契約完了だ。
イクスお疲れ様です。これで一段落ですね。
ルビアアーリア、怪我はしていない ?ヴォルトに狙われていたけど……。
アーリアわたしは無事よ。それに……戦っていて気がついたの。確かにヴォルトはわたしを狙っていたみたいだったけど攻撃対象とみなされていた訳ではなかったみたい。
セルシウスそのとおりよ。あれはただじゃれていたようなものだもの。
アーリアじゃれていた ? わたしに ?
セルシウス厳密に言うと、あなたにではなくあなたが持っている器具によ。
アーリアもしかしてこの発光器具のこと ?
クラースなるほど。そういえば発光器具に施されていた技術はレアバードの飛行機械と似た点が多々あった。両者の親和性の高さからヴォルトが興味を持ったのか。
カイウスえっと……ネコがネコじゃらしを見て興奮したのと同じようなことだったわけか。
クラースそういうことだ。つまりヴォルトも悪気があったわけではなかった、と。
アーリアわたし……誤解してしまっていたわね。
ルビア仕方ないわよ。ヴォルトが何を考えていたかなんてあたしたちがわかるはずないもの。
アーリアそうね。けど、だからこそちゃんと向き合っていく必要があるのだと思ったわ。
クラースおっ、見てみろ。雷雲が消えていく。空が晴れてきたぞ。
イクスよかった。これでもう落雷の心配もない。街の人たちもクリスマスを安心して過ごせるはずだ。
アーリアそれじゃあ一度街に戻りましょう。

キャラクター7話【聖夜の贈り物7 イルミネーション】
アーリアこっちの準備は整ったわよ !クラースさん、お願い !
クラースではいくぞ……ヴォルト !
カイウスうわぁ ! すごく綺麗だな !
ルビアええ。すごく素敵なイルミネーションよね。まるで街中に星が散りばめられたみたい。
カイウス星か……。そういえばフェルン村でも二人で夜空を眺めたことがあったな。ルビア、覚えてるか ?
ルビアええ。忘れるわけないわよ……って、ちょっと。気安く話しかけないでくれるかしら。あたしはまだカイウスを許したわけじゃないのよ ?
カイウスなんだよ。もしかしてまだスカートのこと根に持ってるのか ?
ルビア当たり前よ。忘れるカイウスが悪いんだから。
カイウス忘れる ? それってそのスカートがオレと関係してるってことだよな ?
ルビアさあ、どうかしら。関係があったとしてもカイウスの頭じゃ昔のことなんて思い出せないと思うけど。
カイウスなんだと ! ?
ルビア何よ ! ?
ティルキスおいおい。雷雲の下で喧嘩をしていたと思ったら今度はイルミネーションの下で喧嘩か ?お前たちも本当に飽きないな。
ルビアお兄様 ! ? どうしてここに ! ?
ティルキス天気が回復したから、精霊の問題を解決したお前たちも帰ってくる頃だと思って、配達のついでに寄ったんだ。そんなに驚くほどのことか ?
カイウスい、いや……別にそういうわけじゃなくてティルキスの衣装に驚いたんだ。
ルビアそ、そうよ ! お兄様、似合っているわ !
ティルキスありがとな。アーリアも似合っているぜ。
アーリア……ティルキス。ええ、あなたも素敵よ。
ティルキスそういや無事に発光器具も完成したんだな。街のイルミネーション、すごく綺麗だぞ。
アーリア……ええ、ありがとう。
ティルキス……アーリア ? どうかしたのか ?
ルビアお兄様 ! どうかしたのかじゃないです !アーリアはお兄様のことで――
アーリア待って。
ティルキス……俺のこと ?
アーリアティルキス。後で話があるの。いいかしら ?
ティルキス……ああ。わかった。
アーリアそれじゃあまた後で。お仕事頑張って。
ティルキスああ。ありがとう、アーリア。カイウスたちもまた後でな !
ルビア……二人とも大丈夫かしら。
クラース第三者が心配することでもないだろう。あとは当人たちの問題だ。それにきっと、なるようになるさ。
ルビアなんだかクラースさんはずいぶんとご機嫌ね。二人が破局の危機かもしれないのに。
セルシウス理由は二つよ。一つはお酒。もう一つは契約精霊が増えたから。
クラース契約の指輪を眺めながら一杯やるのが最高なんだ。
イクスクラースさん。お楽しみのところすみません。宝石商の人からクラースさんに手紙を預かってきたんですけど……。
クラースどれどれ……なんだ、またこの話か。いくら金を出すと言われても契約の指輪は売れないとさっきも断ったんだがな。
イクスすごい高額を提示してきましたね。やっぱり契約の指輪と知っているからでしょうか。
クラースいや。私もどうしてそこまで欲しがるのか気になって聞いてみたんだ。するとこんなことを話してくれた。
クラースなんでも、以前とある物好きな青年が偶然仕入れた珍しい指輪を高値で買い取ってくれたそうだ。
クラースその青年は一般人を装っていたが宝石商の勘では高貴な身分の人物に違いなくいい商売相手になる。
クラースだから珍しい指輪をたくさん仕入れておきその青年に会った時、また高値で買い取ってもらうという算段とのことだった。
カイウスそういうことだったのか。その宝石商も宝石商だけど物好きな金持ちもいたものだよな。
カイウスなんでか知らないけどそんな高い指輪を欲しがる気持ちがオレにはよくわからないよ。
アーリア自分の趣味か……もしかしたらプレゼントか……。
ルビア高価なプレゼント……素敵よねぇ。カイウスは甲斐性なしだから絶対に買えないでしょうけど。
カイウスそんな言い方ないだろ !
ルビアあら、事実じゃない。
ルビア……まあ、カイウスから高価な贈り物なんて期待してないけど。あのときのプレゼントだって……。
カイウスえっ……プレゼントって……もしかして……。
クラースさあ、もういい時間だ。そろそろ別行動としよう。
イクスはい。それじゃあ俺はアジトに戻ります。ミリーナたちが待っているので。
クラースアジトは若者たちのお祭り騒ぎだろうから私はもうしばらくこの街にいる。セルシウス、次はあっちの酒場に行くぞ。
セルシウス……契約者とはいえ酔いつぶれたときの介抱はしないわよ。
アーリアそれじゃあわたしたちは一度家に戻りましょう。

キャラクター8話【聖夜の贈り物8 パーティの準備1】
アーリアよし。クリスマスパーティに出す料理の下ごしらえはこんなところね。後は焼くだけ。ティルキスの喜びそうな顔が目に浮かぶわ。
カイウスアーリア。ちょっといいか ?
アーリアカイウス。どうかしたの ?
カイウス辞典に載っているこの花を探しているんだ。このあたりで見なかったか ?
アーリアそれなら街の裏手に咲いていたわよ。けど、いきなりどうしたの ?
カイウス実はようやくわかったんだ。ルビアがなんでスカートのことで怒ったのか。
アーリアあら……そういえば探している花とルビアのスカートの形、よく似ているわね。
カイウス昔、この花をルビアにプレゼントしたんだ。そうしたらあいつ、すごく気に入ってくれてさ……。
アーリアそう。だからルビアはあのスカートを……。
カイウスああ。だからちゃんとオレも覚えてるって伝えるためにも、クリスマスプレゼントとしてこの花の花束をもう一度渡すつもりなんだ。
アーリアいいと思うわ。とっても素敵ね。それに、なんだか羨ましいわ。
カイウス羨ましい ?
アーリア二人は幼馴染でしょう。この花のような、特別な思い出が二人にはたくさんあるんだろうなって。
カイウスそんな特別って言っていいのかわからないけどまあ、ずっと一緒だったから思い出だけはたくさんあるな。
カイウスけど、アーリアとティルキスにだって思い出なら色々できたんじゃないか ?それこそプレゼントをティルキスからもらったとか。
アーリア……プレゼント。そういえば元の世界でティルキスが指輪をくれると言ってくれたことがあったわね。
アーリア……ちょっと待って、もしかして…… !
カイウスアーリア ?
アーリアい、いえ……なんでもないの !
カイウスそうか ? 急に顔が真っ青になったから驚いたけど、問題ないならよかった。それじゃあオレは花を摘みに行ってくる。
アーリアえ、ええ。いってらっしゃい。
アーリア…………指輪。もしかしてティルキス……。
ティルキスどうかしたか ?
アーリアティルキス ! ? えっ、どうしているの ! ?
ティルキスカイウスと入れ違いに戻ってきたんだが俺のこと見えてなかったのか。
アーリアご、ごめんなさい。ちょっと考え事をしていて。けど、まだ仕事の筈でしょう ?
ティルキスちょっと仕事の休憩時間ができたんだ。だからアーリアがどうしているのか気になって戻ってきたのさ。
アーリア……ティルキス。
ティルキスおっ。料理の下ごしらえ中だったんだな。クリスマスパーティのディナーメニューは何の予定なんだ ?
アーリアふふっ、秘密よ。これがわたしからあなたへのプレゼントなのだから。
ティルキスおっと、そういえばそうだった。楽しみはとっておかないとな。
アーリア…………。
ティルキスアーリア ? 大丈夫か ?
アーリアえっ ? 急にどうしたのよ ?
ティルキス何か話したいことがあるんじゃないのか ?
アーリアそ、それは…………。
アーリアううん。本当になんでもないの。
ティルキス……そうか。
アーリアそろそろ休憩時間も終わりでしょう。
ティルキスおっと、もう終わりか。アーリアと話しているとあっという間に時が過ぎていくな。
ティルキスそれじゃあ、クリスマスパーティで。

キャラクター9話【聖夜の贈り物10 聖なる夜に】
アーリア全員揃ったわね !それじゃあパーティを始めましょう !
全員メリークリスマス !
カイウスなんだか悪いな。オレとルビアもお邪魔しちゃって。
ティルキス何を気にしてるんだ。一緒に旅をした仲だろう。俺とアーリアも二人がいてくれて嬉しいさ。そうだろう、アーリア ?
アーリアええ。せっかくですものね。みんなで楽しみましょう。
ルビアありがとう ! お兄様とアーリアの愛の巣でクリスマスを迎えられてすごく嬉しいわ !
ティルキスだから愛の巣って言うのはやめてくれ !
アーリアさあ。おしゃべりもいいけどみんなお腹が空いているでしょう。たくさん作ったからどんどん食べてね。
ティルキスこれは……ステーキじゃないか ! !
アーリアあなたの好物よ。
ティルキス覚えていてくれたのか !
アーリア当たり前よ。
ティルキスいやぁ。アーリアが作ってくれた料理を腹いっぱい食べれるなんてこんな幸せなことはないよ。最高のクリスマスプレゼントだ。
アーリアもう。ティルキスったら。
カイウスル、ルビア !オレから、その……クリスマスプレゼントがあるんだ !この花束なんだけど……。
ルビアえっ……この花って……。
カイウスごめん。なかなか思い出せなくて。
ルビア……もう、遅すぎよ。けど……カイウスの頭じゃ仕方ないわね。特別に許してあげる。
ルビアそれと……あたしからもプレゼント。チョコレートケーキを作ったからデザートに食べなさい。
ルビアもちろん、ビターテイストよ。
カイウスルビアの手作りスイーツはバレンタイン以来だな。また作ってくれるとは思ってなかったよ。
カイウスルビア、ありがとう。
ルビアどういたしまして。
ティルキスおっと。残るは俺だけか。本来ならこの流れで俺もアーリアに渡したいところだが……。
カイウス……だが ?
ティルキスあいにくと俺のプレゼントはここでは渡せないんだ。
アーリアどういう意味 ?
ティルキスまあ、そう焦らないでくれ。せっかくのご馳走が冷めてしまうだろ。
ティルキスプレゼントは食後二人きりで……だ。
アーリア……二人で ?

キャラクター10話【聖夜の贈り物10 聖なる夜に】
クラースさてと。そろそろアジトも落ち着いた頃だろう。私たちも帰るとしよう。
セルシウス待って。あそこにいるのは……。
ティルキス悪いな、こんなところに連れてきて。けどどうしてもここで渡したかったんだ。
アーリアこの、港で ?
ティルキスそうだ。そしてこれが俺のプレゼント。箱を開けてみてくれ。
アーリア……これは !
ティルキス指輪だ ! 元の世界で渡すと約束したからな。どうだ、驚いたか ?
アーリア…………。
ティルキスアーリア ?
アーリア……とても嬉しいわ。けれど、あなたに話しておかなくちゃいけないことがあるの。
ティルキス…… ?
ティルキスははっ、なるほど。借用書や宝石商から聞いた話から俺が何をしていたのか気がついたんだな。
アーリア……ごめんなさい。あなたはわたしのためにずっと影で頑張ってくれていた。
アーリアけど、わたしはあなたを疑ってこのプレゼントの中身を暴いてしまったわ。
ティルキス……アーリア。
アーリアティルキス。本当に、ごめんなさい……。
ティルキス…………ふふっ。
アーリアえっ ?
ティルキスはははっ。いやあ、俺もツメが甘いな。いや、さすがは頭脳明晰なアーリアと言うべきか。
アーリアちょ、ちょっと。笑うところじゃないでしょう。
ティルキスいいや。笑うところさ。それに俺は嬉しいんだ。
アーリア……嬉しい ?
ティルキス俺は気づかれたことに全然気づいていなかった。つまり、黙っていればなかったことにできた。けど、アーリアはそうはしなかった。
ティルキス何ていうんだろうな。ちゃんと話してくれたことが俺はすごく嬉しいんだと思う。
アーリア……ティルキス。
アーリアええ。旅の時は隠していたこともあった。けど、もうあの時のようなことはしないわ。
アーリアあなたの前ではありのままの自分でいたいから。
ティルキス……アーリア。
クラースまったく。結局アジトにいても外にいても変わらなかったかもしれないな。これだからクリスマスは。
セルシウスクラース。本当は羨ましいのでしょう ?
クラースどうしてそうなる。ありえない。
セルシウスそう。けど精霊のわたしから見ればあなたも十分、暑苦しさを持っているわ。
クラースそれは気のせいだ。
セルシウス……まったく。
クラースセルシウス ?
アーリア……これは、雪ね。
ティルキスホワイトクリスマスだな。すごく綺麗だ。
アーリア……けど、ちょっと寒いわね。
ティルキスああ。それはそうだな。
クラースお前がこんなことをするとは意外だな。てっきり私と同じタイプかと思ったが。
セルシウスわたしは暑苦しいのが苦手なだけよ。