キャラクター | 1話【一回戦】 |
カイル | ……いよいよ次が決勝戦。ようやくここまで来たんだ。絶対にチャンピオンになって……そしてオレは―― |
ロニ | おおっ。今回はいつにもましてすげぇ盛り上がりだな。期間限定ビフレスト式の闘技場。そしてこの場に集った美女たちにロニさまの勇姿を刻めないのが残念だぜ。 |
カイル | ロニ ! ? どうしてここに ! ?厨房で仕事があるんじゃなかったの ! ? |
ロニ | ちょいと抜けてきたのさ。ったく、闘技場に合わせた期間限定メニューが大人気で客と注文の嵐。おかげで着替える暇すらなかったぜ。 |
カイル | そんなに忙しかったんだ。けどさ、その厨房の制服、よく似合ってるよね !すごく格好いいよ ! |
ロニ | おっと。まさかカイルに見初められちまうとはな。だがご指名の注文なら断れねぇ。ご主人様のお望み通りこの給仕姿で甲斐甲斐しくご奉仕をさせて頂き―― |
カイル | 近寄らないでってば ! 気持ち悪い !まったく。こっちは決勝戦直前で集中してるのにロニはオレを邪魔しに来たわけ ? |
ロニ | ははっ。悪ぃ悪ぃ。ついからかいたくなっちまってな。けど普段と変わらないやり取りもいいもんだろ ? |
カイル | それは……うん。そうだね。おかげでちょっと緊張がほぐれたよ。 |
ロニ | カイル。おまえがどうしてもチャンピオンになりたいことそしてその理由もよくわかってる。だから緊張して前のめりになって、つい下ばっか見ちまうのもな。 |
ロニ | だが、そういうときこそ上を見ろ。 |
カイル | 上を…………あれ ?ちょっと待って、あそこの観客席にいるのって―― |
リアラ | カイル ! 頑張って ! ! |
ナナリー | 負けたら承知しないよ ! |
ジューダス | ……ふっ。 |
カイル | …………みんな。 |
ロニ | スタンさんは仕事で決勝戦の観戦には来られない。だからこそ、チャンピオンになったという結果を見てもらうしかない。そりゃプレッシャーだよな。 |
ロニ | だが忘れるな。俺たちだってついてるってこと。 |
カイル | ……ロニ。 |
ロニ | 最前列で見てるぜ。本当はスタンさん用のチケットだが来られなかった時は使ってくれって言われてるんだ。まぁ、スタンさんの代わりは務まらねぇと思うがな。 |
カイル | ずっと側にいてくれたロニほど心強い人はいないよ。ありがとう、ロニ。だから頼むよ……オレの戦いをその目で見ていてくれ ! |
ロニ | ……カイル。ああ、任せとけ !おまえなら勝てる ! 自信持って行って来い ! ! |
ジョニー | このステージではゴングを響かせるぜ。司会進行役のジョニー・シデンだ。サンキュー♪ |
イクス | 同じく司会進行役のイクス・ネーヴェです。さあて、挑戦者カイル・デュナミス選手が入場 !もうまもなく決勝戦がはじまります ! |
ジョニー | おっ、いいアナウンスじゃないかイクス。司会進行役もすっかり様になってきたな。 |
イクス | はい、今回は調査で忙しいエミルたちに代わって俺たちが闘技場を盛り上げるって約束しましたから。 |
イクス | それに、カイルの戦う姿を見てたら自然と言葉に熱が入っちゃうんですよね。 |
ジョニー | おっと、イクス。その気持ちはわかるがたとえ仲間でも、試合中のアナウンスは公平に頼むぜ。 |
ジョニー | しかしカイルはアウェイにも関わらず堂々としてるな。なかなかロックだぜ。ええっと、迎え撃つ現チャンピオンは……こほっ。 |
イクス | ジョ、ジョニーさん。無理しないでくださいね。進行は俺がメインで引っ張りますから。 |
ジョニー | 悪いな。それじゃあバトンタッチだ。こいつがチャンピオンの資料……うん ?この男は……まさか……。 |
リアラ | ねぇ。そういえば現チャンピオンってどんな人なのかしら ? |
ナナリー | 噂で聞いた限りではチャンピオンになってから無敗。今まで挑戦者たちを秒殺してきたみたいだね。 |
リアラ | 無敗なうえ秒殺 ! ? |
ナナリー | おまけに街の治安を守り、子どもたちにも大人気の男らしいよ。この決勝戦さすがに一筋縄ではいかないだろうね。 |
ジューダス | ……カイル。 |
カイル | 誰が相手であろうと、オレが勝ってみせる !さあ、出てこい ! |
イクス | ――チャンピオンの入場です ! |
? ? ? | ふっ……待たせたな。 |
カイル | えっ……あなたは…… ! ? |
歓声 | マイティ ! マイティ ! マイティ ! マイティ !マイティ ! マイティ ! マイティ ! マイティ !マイティ ! マイティ ! マイティ ! マイティ ! |
コングマン | 俺様がチャンピオン ! マイティ・コングマンだ ! ! |
歓声 | うおおおおおおおおおおおおおおお ! ! ! ! |
イクス | あ、あれ ? あのチャンピオンの人確か鏡映点リストに載っていたジョニーさんたちの仲間ですよね ? |
ジョニー | これは面白くなってきたな。どんなビートが刻まれるか楽しみだ。さあ、イクス。このライブ、ノンストップで進めるぜ。 |
イクス | は、はい……。 |
カイル | そ、そんな……。あなたは確か……ノイシュタットの闘技場にいた元チャンピオンのマイティ・コングマン ! ? |
コングマン | も、元チャンピオン……だと ?誰だか知らねぇがこのチャンピオンである俺様を小馬鹿にしてくるとは随分なガキじゃねぇか。 |
カイル | えっ、オレのことを知らない ? あっ……わかったぞ !これはあれだ……えっと、具現化時間軸が違うんだ !だからまだ元チャンピオンじゃないんだな ! |
コングマン | …………てめぇ、また同じことを。 |
カイル | ちょっと待ってくださいね。あなたはこの世界では鏡映点という存在なんです。今詳しく説明します。えっとマニュアルはこっちのポッケにあったはず……。 |
コングマン | その態度、気に食わねぇな。 |
カイル | えっ ? |
コングマン | 世界だか鏡映点だかなんだか知らねぇがリングの上の世界にはチャンピオンか挑戦者しかいねぇんだよ。 |
コングマン | それにてめぇのツラも気に食わねぇ。そのどっかのスカタン野郎に似た立ったまま居眠りでも始めそうな間抜け面がな。 |
カイル | それって……お前 ! 父さんのことをッ ! ! |
コングマン | 父さん ? ハハハッ !何を言い出すかと思えばこれは傑作だぜ ! |
コングマン | 急にビビってパパに助けを乞いたくなったか ?だったら即刻、リングの上の世界から立ち去りな ! |
カイル | ならリングの世界に挑んでやる。けど後悔するなよ !この戦いでお前は、また間抜け面の挑戦者のせいで元チャンピオンになってしまうんだからな ! ! |
コングマン | 寝言は寝てから言うもんだぜ !今から俺様がこの拳で寝かしつけてやるから感謝しな !さあ、ゴングを鳴らせ ! ! |
イクス | レディ――ファイトッ ! ! |
二人 | うおおおおおおおおおおおおおおお ! ! ! ! |
? ? ? | 待ちなさーーーーーいっ ! ! |
二人 | ――ぐはっ ! ! |
ナナリー | そんな ! あの二人を一瞬で投げ払った ! ?いったい誰だい、あの乱入者は ! ? |
? ? ? | さてと。さっそくだけど家族会議をはじめよっか。 |
コングマン | くそっ。誰だか知らねぇがふざけやがって。この神聖なリングの上の世界を汚す野郎は俺様が許さな―― |
? ? ? | うるさい ! 私は野郎じゃないし今は家族会議中なの !決勝戦だか知らないけど邪魔するっていうなら―― ! ! |
コングマン | ぐへっぐほっぐはっげほっぼこっぐほっ。 |
? ? ? | 容赦しないからね ? |
コングマン | つ、強ぇ…………。 |
イクス | コ、コングマン選手がノックダウン !まさかのチャンピオン交代だ ! |
カイル | あのコングマンを一瞬で倒した ! ?それも……おたまとフライパンで ! ?だ、誰なんだ、いったい ! ? |
? ? ? | 誰だなんて酷いなぁ。もしかして遊び呆けていて妹の顔も忘れちゃったのかなぁ、お兄ちゃ……ん ? |
カイル | えっ…………ああああ !もしかしてリリスおばさん ! ? |
リリス | ちょっ……誰がおばさんよ !私は確かにリリス、リリス・エルロン !けどおばさんじゃなく天下無敵の17歳なんだからね ! |
二人 | リリスさん ! ? |
カイル | 17歳って……わかった !おばさんも具現化時間軸が―― |
リリス | ま、またおばさんって言ったわね ! ? |
コングマン | なんだかてめぇも気に入らねぇツラしてるが……嬢ちゃん……気持ちはわかるぜ。今は嬢ちゃんがチャンピオンだ……やっちまいな。 |
リリス | そうね。お兄ちゃんかと思ったら人違いで申し訳ないことしたと思ったけど、やっぱりなし !それにまだ試合終了のゴングは鳴っていないもの ! |
カイル | ウソ ! ? このまま続けるの ! ? |
リリス | 当たり前でしょう !覚悟なさい ! いざ、尋常に勝負よ ! ! |
キャラクター | 2話【二回戦】 |
リリス | ふっ……なかなかやるじゃない。具現化について難しいことはよくわからないけどあなたの腕がそれなりなのはよくわかったわよ。 |
カイル | へへっ……それはどうもっ !リリスおば……リリスさんにそう言ってもらえるのはオレとしても嬉しいよ ! |
リリス | けど気になることがあるわ。私とあなた……ううんまずお兄ちゃんとあなた……一体どういう関係なの ?これは勘だけど、どうも他人とは思えない。 |
カイル | それは……。 |
コングマン | 試合が終わったらでいいだろ。俺様もよくわからねぇことや気になることはあるがリングの上の世界ではどれも些末な問題よ。 |
リリス | それもそうね。けど気になることも事実よ。だから……そろそろ終わりにしましょ ! ! |
カイル | くっ……おたまの威力が増した ! ?まだそんな力を残していたなんてっ ! ! |
ナナリー | おいおい。これはマズいんじゃないかい。唸るおたま、鉄壁のフライパン。カイルの奴完全にペースを持っていかれちまってるよ。 |
ロニ | いいや……大丈夫さ。 |
リアラ | ロニ ? |
ロニ | 心配することはねぇよ。あいつも俺もおたまとフライパンの怖さならよく知ってんだ。そしてもうすぐ、身体が思い出すはずだぜ。 |
ジューダス | カイルが動き始めた。ここから逆転するぞ。 |
カイル | (……恐ろしい。けど懐かしい。やっぱりこのおたまとフライパン捌き、どこか母さんらしさを感じる。すごく怖いけど、温かいものがこもってるんだ) |
カイル | わかったよ、リリスさん。オレはそのおたまもフライパンも恐れない。まっすぐ受け止めて、そしてオレもまっすぐに挑む ! ! |
リリス | 望むところよ ! このおたまに全てを込めるわ ! |
二人 | てやぁああああ ! ! ! ! |
イクス | ど、どっちだ……勝ったのは……………。 |
リリス | …………くっ。 |
ジョニー | 勝負ありだ ! このゴングを勝者に捧げるぜ。勝者カイル・デュナミスに ! |
カイル | オレが……オレが……勝った ? |
リリス | ええ、そうよ。お兄ちゃんにも劣らないぐらい見事な一撃だったわ。おめでとう、カイル。あなたがチャンピオンよ。そしてこれがその証。 |
カイル | これは…… ? |
コングマン | チャンピオンのバッジだ。なかなか似合ってるじゃねぇか。俺様もてめぇをチャンピオンと認めざるを得ねぇな。 |
カイル | ……コングマン。 |
コングマン | 今この場はお前のものだ。俺様と嬢ちゃんはさがらせてもらうぜ。せいぜい勝利の一時に酔いしれな。 |
ロニ | さすが俺の可愛いカイル ! やっぱりおまえは最高だ !カーイール ! カーイール ! カーイール !あっそれ……カイル ! カイル ! カイル ! カイル ! |
一同 | カイル ! カイル ! カイル ! カイル !カイル ! カイル ! カイル ! カイル !カイル ! カイル ! カイル ! カイル ! |
カイル | ロニってば。なんだか恥ずかしいよ。けど、オレ……やったんだな。オレ、チャンピオンになったんだ ! |
スタン | はぁ……はぁ……ようやく着いた。ごめん、困っている人を助けていたら遅れちゃって。 |
カイル | スタンさん ! ! |
スタン | カイル ! おめでとう !外までカイルを呼ぶ歓声が聞こえてきたよ !チャンピオンになったんだな ! |
カイル | ちょ、恥ずかしいですよ。 |
スタン | あははっ。ごめんごめん。なんだか俺もすごく嬉しくてさ。カイル、よくやったな。本当におめでとう。 |
カイル | ……スタンさん。 |
スタン | そうだ。せっかくだし何かプレゼントを買わなきゃな。お祝いってことでさ。 |
カイル | いえ……オレはこう……今みたいに抱きしめてもらえれば……それだけで……。 |
スタン | ……カイル。お前、泣い―― |
カイル | 泣いてませんから !だってオレは最強のチャンピオンですよ ?この闘技場で一番強いんですから ! |
ロニ | カイル……強がりやがって。ここぞというときにガキになりきれねぇんだよな。 |
ナナリー | いいや。カイルはもうガキじゃないってだけさ。 |
ロニ | ……そうかもしれねぇな。 |
カイル | おーい ! みんなもチャンピオンバッジ見てよ !金細工も入っていてすごく高そうなんだ !これってオレのおやつ何日分ぐらいするんだろうね ? |
リアラ | ふふっ。カイルってばあんなにはしゃいじゃって。 |
ジューダス | 子供だな。 |
二人 | ああ。やっぱまだガキだ。 |
? ? ? | チャンピオンになったぐらいで……悲しいわね。やはり期待しすぎたかしら。 |
カイル | うわっと。いてて……。 |
? ? ? | ……失礼、カイル。 |
カイル | 君……オレを、知っているのか ? |
? ? ? | さあ、どうかしら。 |
スタン | 二人とも大丈夫か ! ? |
カイル | えっ……は、はい。ちょっと転んだだけです。 |
? ? ? | もちろん、わたしも平気です。この程度で転んだりなどしませんから。 |
カイル | ……この程度で、か。オレはチャンピオンのカイル・デュナミス。君は ? |
リムル | わたしはリムル。最強を目指すただの剣士。そして、さっきスタン・エルロンの弟子になった者よ。 |
カイル | スタンさんの弟子 ! ? ど、どういうことだ ! ? |
スタン | えっと……実は困っていた人っていうのは彼女、リムルのことでさ。どうして師弟になったかと言うと―― |
リムル | 知る必要はないわ。あなたには関係ないもの。 |
カイル | …… ! ! |
ロニ | あぁ ? なんだあいつは ? せっかくのカイルの記念すべき場に乗り込んで来たうえ上から目線で偉そうに言ってくれるじゃねぇか。 |
ジューダス | おい ! やめないか !もしカイルが焚きつけられたら―― |
カイル | リムルさん。オレと勝負しようよ。 |
リムル | チャンピオンの方から挑戦状を叩きつけてくるとはね。 |
スタン | お、おい。二人とも……。 |
カイル | リムルさん。断ったっていいんだよ。師匠の前で負けるのが嫌ならね。 |
リムル | 今の実力さもわからない、か……。まあいいわ、カイル。その安い挑発に乗ってあげる。 |
リムル | 色々と気になることはあるけどリングの上ではどうでもいいわ。今は全て後回し。さあ、早くはじめましょう。 |
イクス | え、えっと……突然ですが只今よりチャンピオンのカイル選手と挑戦者リムル選手の試合が行われることになりました ! |
ロニ | いけぇ ! カイル ! やっちまえ ! ! |
ジューダス | …………。 |
カイル | もしオレが勝ったら、さっきの質問に答えてもらうよ。 |
リムル | 勝ったら、ね。 |
ジョニー | こいつは燃えてきた。みんなも付いてこいよ。さあ、いくぜ、レディー……ファイトッ ! ! |
リムル | いくわよ、カイル ! いざ、尋常に勝負 ! ! |
キャラクター | 3話【二回戦】 |
カイル | 爆炎剣 ! 爆炎剣 !まだまだいくぞ……爆炎剣 ! ! |
リムル | 炎を纏った剣技……やるわね。けど、これ以上はさせないっ――瞬雷刃 ! ! |
カイル | 早いけど見切れないわけじゃない !いくぞ、雷をも追い越す旋風……空破絶風撃 ! ! ! ! |
リムル | ! ! |
ロニ | よっしゃ ! カイルが追い詰めたぞ ! !いっけぇ、そこだ ! 遠慮するこたねぇ ! !チャンピオンの強さを見せつけてやれ ! ! |
リアラ | カイル ! ! 頑張って ! ! |
ナナリー | 驚いたね。カイルがあそこまで強くなってるとは。一方であのリムルって子は後手に回ってばかり。もう勝負は決まったも同然ってやつか。 |
ジューダス | ああ……すでに雌雄は決している。残念ではあるがな……。 |
リアラ | ジューダス ? |
カイル | はぁはぁ……よし、このまま押し切る ! !これでトドメだ、全力でいくぞ ! ! |
リムル | …………そう、終わりなのね。わかったわ。なら試合のお礼として最後にわたしの本気も少しだけ見せてあげる。 |
ロニ | 追い込まれたのに攻めの構え ! ?あの女剣士、何を考えてるんだ ! ? |
カイル | 強がりもそこまでだ !この剣で全てを焼き切る……爆炎閃業波 ! ! |
リムル | ……かわしてみなさい。ただ最強を求め振り続けた名もなきこの一振り……わたしにとっての切り札を ! ! |
ジューダス | マズい ! ! カイル、さがれ ! ! |
カイル | えっ………… ? |
リムル | 雌雄は決した。 |
カイル | ぐはぁぁああああ ! ! ! ! ! |
一同 | カイル ! ! ! ! ! ! |
ジョニー | こ、こいつはたまげた……。 |
イクス | 何が起こったんだ……。早すぎて目で追えなかった……。 |
カイル | くっ……オ、オレは……まだ負けて……。 |
リムル | まだ続けるというの ? |
ジューダス | カイル、もうやめろ。試合は終了だ。 |
カイル | ジューダス……。 |
ジューダス | 審判も何をしている。早くゴングを鳴らせ。 |
イクス | えっ……あ、ああ ! これにて試合終了です !勝者は挑戦者リムル !彼女がこの闘技場の新たなチャンピオンです ! ! |
リムル | ……ダメね。まだまだだわ。 |
カイル | なん、だと…… ? |
リムル | いえ、違うの。今のはキミのことじゃない。さっきわたしが放った一振りのことよ。あれはダメ、まだ完成には程遠い……悔しいわ。 |
リアラ | そ、そんな……さっきの一振りはまだ技として未完成だっていうの……。 |
ナナリー | チャンピオンもどうでも良いって態度だね。けど、そうか……ジューダスが言っていたすでに雌雄は決しているっていうのは……。 |
ロニ | ああ。あの女剣士は勝利を確信していたんだろうよ。後手に回っていたのはカイルの実力を測るため。くそっ、いけすかねぇ奴だぜ。 |
カイル | そんな……ようやくチャンピオンになれたと思ったのに……。スタンさんの前だって言うのに……オレは……。 |
リアラ | ……カイル。 |
カイル | ……リムルさん、お願いします。もう一度、もう一度オレと戦ってください。 |
ジューダス | カイル、冷静になれ。おまえは戦える状況じゃない。 |
リムル | 同感だわ。それに今のわたしにはキミと戦う意味も見出だせない。悪いけど、お断りよ。 |
カイル | ……お願いします。 |
リムル | 情けないわね。チャンピオンなんて肩書きがそんなに大事 ? |
カイル | それは違います ! チャンピオンなんてどうでもいい !だってオレがチャンピオンになりたかったのは……スタンさんと戦うためだから ! |
リムル | スタンさんと……どういうこと ? |
カイル | オレはスタンさんみたいに強くなりたい……。そのためにもスタンさんの強さをこの身で感じたい。 |
カイル | けど……スタンさんはオレと本気で戦ってくれたことはまだ一度もないんだ。 |
カイル | オレにはわかる。スタンさんがオレに向ける剣はまだどこかに遠慮が宿っている。だからオレは―― |
リムル | ――強さを示したかった。遠慮なくぶつかってきても自分は大丈夫であるという証として、このチャンピオンバッジを求めたのね。 |
カイル | それは ! いつのまに ! |
リムル | そこに落ちていたわ。さっきキミが倒れた時に取れたのでしょうね。 |
カイル | ……もう、あなたのものだ。 |
リムル | ならもらっておくわ。それじゃあね。 |
カイル | 待ってください !お願いです、もう一度オレと戦ってください ! |
リムル | ふっ……粘るわね。そういうところは嫌いじゃないわ。 |
カイル | それじゃあ―― ! |
リムル | 勘違いしないで。試合はお断り。最強を目指しているわたしにとって今のキミは戦う価値がない弱者。 |
リムル | けど、それは今の弱いキミのままだったらの話。だからチャンスをあげるわ。そうね……何がいいかしら。 |
ジョニー | なら俺から提案だ。 |
リムル | ……ジョニー・シデン。その提案とはなんですか ? |
ジョニー | この資料に目を通してくれ。お前たちも観客も誰もが胸を熱くする最高のセットリストを用意したぜ。 |
リムル | これは…… ! ふふっ……面白いわね ! !いいわ、乗ってあげる ! |
リムル | 皆のもの、聞きなさい ! チャンピオン権限を以て「ビフレスト式武闘会」開催を宣言するわ ! ! |
一同 | 「ビフレスト式武闘会」 ! ? |
リムル | カイル ! わたしと戦いたければ「ビフレスト式武闘会」の四天王を全て倒しわたしとのチャンピオン戦まで勝ち上がってきなさい ! |
カイル | ああ、やってやる !四天王が誰だか知らないけど全員倒してやるぞ ! |
リムル | ふっ……そう簡単にいくかしらね ?ジョニーさん、頼むわ ! |
ジョニー | カモン ! 四天王たち ! |
? ? ? | まさかチャンピオン権限が発令されるとはね。闘技場のチャンピオンはまさに一国の王に等しい存在。これは私たちも招集に応じなければならないな。 |
? ? ? | 私なんかが四天王で良いのでしょうか。スタンさんの方がふさわしい気が……。 |
? ? ? | どうでもいいけど、これってちゃんとギャラは支払われるんでしょうね ? |
? ? ? | チッ……これも仕事とはいえどうして僕がこんなことを。 |
カイル | そ、その声は ! ? |
カイル | ウッドロウさん ! フィリアさん !ルーティさん ! リオンさん !ソーディアンマスターが四天王だったのか ! ? |
リムル | あら、怖気づいたのかしら。あなたの強さを求める覚悟はそんなものだったの ? |
リムル | そんな腑抜けた根性でスタンさんと本気で戦いたいなど笑止千万 ! !やはりあなたは弱いわね、カイル ! ! |
カイル | くそっ……言わせておけば ! ! いいよ、やってやる !四天王全員を倒して、リムルさんあなたの元にたどり着いてみせる ! ! |
カイル | そしてチャンピオンバッジを取り戻したときにはあなたは一体何者で、どうしてオレを知っているのかスタンさんとの師弟関係についても答えてもらうぞ ! |
リムル | 約束するわ ! 勝つことができたらの話ではあるけど !せいぜいあがきなさい、カイル・デュナミス ! ! |
イクス | それじゃあさっそく試合を―― |
リリス | もういい加減にしなさーーい ! !さっきは間違って乱入しちゃった手前ずっと黙っておとなしくしていたけど我慢の限界よ ! |
カイル | うわっと ! リ、リリスさん ! ? |
リリス | まったく。さっきからずっと戦いっぱなしで聞きたいことも聞けやしない ! |
スタン | えっ、リリス ! ? そこにいたのか ! ? |
リリス | い・た・の・か……ですってぇ ? |
リリス | 闘技場にお兄ちゃんらしき人がいるって聞いて見つけたと思ったら人違い。 |
リリス | どこにいるのかと思ったらリムルと一緒に遊んでいたお兄ちゃんに私の気持ちはわからないかぁ……。 |
スタン | ち、違うぞ ! 遊んでいたわけじゃない !俺たちは一緒に修行をしていたんだ ! |
リリス | そんなのどうでもいいわよ !お兄ちゃんのバカ~~~~ ! ! |
スタン | お、落ち着いてくれ ! |
リムル | そ、そうです ! 師匠は悪くありません ! |
リリス | リムルも酷いじゃない ! 勝手に出ていくなんて ! |
リムル | そ、それは……。 |
スタン | えっ、リムルってリリスと知り合いだったのか ? |
リムル | ………はい。 |
リリス | この世界に来て知り合ったの。リムルとの出会いは―― |
ジューダス | 腹の虫の大合唱だな。 |
カイル | しょうがないだろ。ずっと戦いっぱなしでもうお腹ペコペコなんだ。 |
スタン | 俺も腹が減ったなぁ。 |
リムル | ……面目ない。 |
リリス | ふふっ、仕方ないな。それじゃあ厨房に行こっか。料理を作ってあげるね。食事を取りながらみんなで一度ゆっくりお話しましょう。 |
キャラクター | 4話【三回戦】 |
イクス | えっ……ということは、鏡映点リストにはなかったけどリムルもカイルたちと同じ世界かつ時間軸から具現化された鏡映点だったのか ! ? |
リムル | わたしはただの武芸者でしかないけれど元の世界の記憶があるということはそうみたいね。 |
リアラ | 鏡映点リストになかったのは、わたしたち全員がリムルさんを知らなかったのだから無理もないわ。 |
ロニ | だが、あんたほどの強者がただの武芸者ねぇ……。本当は俺たちの命を狙っていた闇の組織の手先だったり何か言えないことがあって隠してるとかじゃねぇよな ? |
リムル | どのように想像していただいても結構。わたしは自分の身の上を語るつもりはないわ。 |
カイル | ロニ。リムルさんは絶対に悪い人じゃないよ。一緒に戦ったオレにはわかるんだ。だってリムルさんの剣はすごく真っ直ぐなんだもん。 |
ロニ | そうかよ。まあ、人を見る目は俺よりお前の方が上だろうから悪人じゃないのは間違いないんだろうよ。 |
ジューダス | …………。 |
ナナリー | リムル。この世界はただでさえややこしい状況なうえあたしたちは特に複雑な状況に置かれている鏡映点だ。ここまでで不明点や聞いておきたいことはあるかい ? |
リムル | いえ。この世界のことや具現化については概ね理解したつもりだから大丈夫よ。それに四英雄の方々との時間軸の違いも。 |
リアラ | それにしても過去のコングマンさんやリリスさんまで具現化されていたなんて驚いたわよね。 |
カイル | オレなんて試合中だったしパニック寸前だったよ。コングマンまではなんとか状況を整理できてたけどリリスさんが現れたときは頭が真っ白になりかけた。 |
ロニ | カイル。今後リリスさんの前で頭が真っ白になったとしても今から言うことだけは忘れないでいろよ。 |
ロニ | それはな……人妻のリリスさんも、美少女のリリスさんもどっちも最高ってことだ♪ |
ナナリー | 最低なあんたはリリスさんに謝罪を忘れないようにねー。 |
ロニ | ギャーーーー ! ! リリスさん、ごめんなさい ! ! |
リムル | ………………。 |
ジューダス | スタンやカイルだけでなくリリス・エルロンの存在も気になるようだな。 |
リムル | それは…………。 |
リリス | なになに ? リムルってば私のこと気にかけてくれていたの ?もう、やっぱり可愛いところあるじゃない♪ |
リムル | ひゃっ ! ! かあ……リリスさん ! ? |
リリス | 本当は勝手に修行に出ていったこと叱り飛ばしたかったけどその反応に免じて許してあげる。 |
リムル | …………それよりもそちらの話し合いは終わったのですか ? |
リリス | うん。ウッドロウさんから事情は聞いたよ。私もコングマンさんも難しいことはよくわからなかったけどね。 |
リリス | まぁ……ちょっと驚く話もあったけど……。 |
カイル | 驚く話って……もしかして……。 |
リリス | でもいいの。今はお兄ちゃんと一緒にいられるしここではリムルって言う可愛い妹もできたことだしね ♪ |
一同 | 妹 ! ? |
リムル | 言っておくけど本当の妹ではないわよ。この闘技場の街で暮らしていくのに女一人では何かと物騒だから、姉妹と名乗っているだけよ。 |
リリス | 広場で女性につきまとっていた賊を一緒に懲らしめたのがきっかけで一緒に暮らすようになったのよね。 |
リリス | あれ……私は具現化されてからは料理人として生活してきたし……よく考えてみたらリムルと出会ってからまだあまり日は経ってないわね。 |
リムル | 言われてみれば……。わたしは各地を武者修行していましたから。そもそもお互い闘技場の街にやってきたのが最近のことです。 |
リリス | なのにずっと一緒にいた気がする。きっと私たち相性がいいのね。 |
カイル | リリスさんとリムルさん、外見もどことなく似ているし本当に血の繋がった姉妹って言われても何も違和感ないですよ。 |
リムル | 血の繋がった姉妹……ではないわ。 |
リリス | けど、もう家族みたいなものよ。私のことはリリスお姉ちゃんもしくはリリスお姉様って呼んでくれていいからね。 |
リムル | 遠慮しておきます。リリスさん。 |
リリス | もう。自分の身の上だけじゃなく私と同じ具現化された存在だったこともずっと黙っていたり、妙につれないんだから。 |
リリス | まあ、そういうのは勝手に家を出たうえ手紙すらよこさないお兄ちゃんで慣れているけどね。 |
リリス | そういえばお兄ちゃんとリムルは一時的だけど師弟関係になったのよね。はぁ……これ以上リムルがお兄ちゃんに似ないといいけど。 |
スタン | えっ ? 俺のこと呼んだか ? |
リリス | あっ、お兄ちゃんたちも来たんだ !皆さん、もうお話は終わったんですか ? |
コングマン | おうよ。共に再会を熱く喜びあったぜ。 |
ジョニー | コングマンは相変わらずだよな。まさかこっちの世界でも闘技場のチャンピオンをやっているとは思わなかったぜ。 |
コングマン | 馬鹿言ってんじゃねぇ。たとえ世界が違っても俺様がチャンピオンであることに変わりはねぇのよ。 |
コングマン | そしてフィリアさん……あなたの美しさも変わらない。いや、ますます可憐になられた……。 |
フィリア | え、えぇっ……私ですか ! ? |
ロニ | おい、コングマン ! てめぇなにしてやがる !偉大なる英雄フィリアさんを口説こうって気ならその暴挙、黙って見過ごすことはできねぇな ! |
コングマン | あぁ ? なんだてめぇ ?まさかてめぇもフィリアさん狙いか ? |
ロニ | そんなんじゃねぇ !ただアリかナシかで言えば全然アリだ ! ! |
ナナリー | このバカかい ? 話をややこしくしてるのは ? |
ロニ | ギャーーー ! ! ごめんなさいごめんなさい ! ! |
コングマン | 今更謝ったって遅すぎるぜ。ちょうどいい、フィリアさんにふさわしい男は誰か今この場で決めようじゃねぇか。 |
スタン | おい、コングマン。そういうのはやめろよ。フィリアが困ってるじゃないか。 |
フィリア | スタンさん…………。 |
コングマン | て、てめぇ ! スタン ! !なにひとり抜け駆けしようとしてんだ !汚ねぇぞ ! ! |
スタン | いや、俺はそんなつもりじゃ―― |
コングマン | もう面倒くせぇ ! 全員まとめてかかってきやがれ ! ! |
キャラクター | 5話【四回戦】 |
カイル | このショウロンポウ、うっまいなぁ ! !肉汁がジュワッと口の中に広がって……もう、たまらないよ ! |
リムル | こっちのチャーハンもイケるわ !このパラパラ感もくせになるしなんといってもこの焼き豚がいい味を出しているわ ! |
リアラ | ふふっ。二人ともよく食べるわね。 |
カイル | ずっと戦いっぱなしだったのもあるけどこの料理、すごく美味しいんだもん ! |
リムル | さすがリリスさんよね。 |
イクス | けど、こんな美味しい料理を食べられなかったコングマンさんを思うと可哀想になってくるな。かといって医務室に持っていくわけにもいかないし。 |
ジョニー | あいつはフィリアのために戦い、そして散った。奴としても何も思い残すことはないだろうさ。 |
フィリア | 私としてはやはり心配なのですが……。 |
ウッドロウ | なに。私が後で杏仁豆腐でも差し入れするとしよう。だから今はこの目の前の御馳走を満喫しようではないか。 |
スタン | それもそうですね。よし、どんどん食べるぞ。店員さん、すみませーん !追加の注文お願いします ! |
ロニ | はい ! 今お伺いしまーす ! |
リリス | ロニさん ! ついでにこの料理も運んで ! |
ロニ | あいよ ! 電光石火の配膳技をみせてやるぜ ! |
カイル | ロニ。お仕事お疲れ様。チャーハンとショウロンポウを追加でお願い ! |
ロニ | そう言われると思ってリリスさんが用意してくれていたぜ……はいよっと ! |
スタン | おーい、リリス ! ありがとな ! !どの料理もすっごく美味しいよ ! |
リリス | ありがとう、お兄ちゃん ♪けど今忙しいから感想は後で聞かせてね。 |
カイル | なんだか忙しそうだな。 |
ロニ | もう少ししたら団体が来店予定なんだよ。他の厨房スタッフは疲れてバテちまってるし……ホールは俺一人でもなんとかなるが……。 |
ナナリー | なるほどね。ならあたしが手を貸すよ。 |
ロニ | こいつは正直助かるぜ。 |
リアラ | ロニ、ナナリー、私も手伝うわ。 |
ナナリー | いや、厨房の広さから考えてあまり大勢だとかえって効率が落ちちまう。今回はあたしだけで十分さ。 |
ロニ | 気持ちだけもらっとくよ。ありがとな、リアラ。 |
ナナリー | というわけだ。悪いがお暇させてもらうよ。 |
ウッドロウ | それでは私たちもそろそろ行こうか、フィリア君。 |
フィリア | そうですね。お腹も満たされましたから。 |
カイル | ウッドロウさんとフィリアさんも行っちゃうんですか ? |
フィリア | 私たちは四天王という立場なので挑戦者よりも一足先に闘技場について試合の準備をしなくてはならないのです。 |
カイル | ……そうか。もうすぐ……試合がはじまるのか。 |
ウッドロウ | カイル君。君と戦えることを楽しみにしているよ。それでは、闘技場で。 |
イクス | ジョニーさん。俺たちも審判の仕事がありますしそろそろ闘技場に戻りますか ? |
ジョニー | そうだな。だが焦ることもないだろう。このお茶を飲み終わった後でもいいんじゃないか ? |
イクス | それもそうですね。なら最後にデザートでも食べて行こうかな。 |
リムル | わたしはこのゴマ団子だけもらっていくわね。あとで食べるおやつとして。 |
スタン | それじゃあ俺も二つほど……。よし、リムル。行くとするか。 |
カイル | えっ ? 二人ともどこに ? |
スタン | 修行だよ。リムルは切り札となる一撃を―― |
ソーディアン・ディムロス | スタン。それはお前とリムルが師弟関係になった理由とも関係している。黙っておくと決めたのではなかったか ? |
リムル | ……いえ、もう師弟関係になった理由を隠しておく必要はなくなったわ。未完成とはいえ、あの一振りを見せたんだもの。 |
カイル | あの一振り……って、もしかして ! ? |
リムル | ええ。あなたを倒したあの一振りよ。 |
リムル | 今のわたしには切り札がない。どんな不利な状況をも、跳ね返せる強力な切り札が。 |
リムル | その切り札を手に入れたくて修行をしていたの。けれどうまくいかず……難儀していた。その時、スタンさんと出会い、師弟関係になったのよ。 |
リムル | ……スタン・エルロン ?そ、それがあなたの名であると……。 |
スタン | ああ。そうだけど、何か気になることでもあるのか ? |
リムル | いえ……。 |
スタン | それより何か困っているみたいだったけどどうかしたのか ? 俺でよければ相談に乗るよ。 |
リムル | ……自分が未熟なだけですので、お気になさらず。 |
スタン | そうはいかないよ。「困っている人を見過ごすな」っていうのがエルロン家の家訓なんだ。 |
スタン | それに誰かの力を借りることは恥ずかしいことじゃない。リムル、俺でよければ何でも言ってくれ。 |
リムル | スタンさん…………。 |
カイル | そういう経緯で二人は師弟になったのか……。 |
スタン | まあ、師匠って言っても、俺は何もせずにずっとリムルの横にいるだけなんだけどな。 |
リムル | それもわたしが頼んだことです。ただ、師匠として側にいて欲しいと。それだけでも……わたしにとっては……。 |
スタン | そっか。まあよくわからないけどリムルの役に立っているならよかったよ。 |
カイル | …………。 |
スタン | カイル。俺は一度リムルを助けると決めた以上リムルの力になる。だけどカイルのことも応援しているからな。 |
カイル | ……スタンさん。 |
リムル | わたしは必ず、あの切り札となる技を完成させそしてまた闘技場に戻ってくるわ。より強くなってね。 |
リムル | だからカイル、不安なんて感じている暇ないわよ !四天王を全て倒し、死に物狂いで這い上がってきなさい !そして、わたしを倒してみせるのよ ! |
カイル | ……ああ、そうだよな。単純な話さ。リムルさんが強くなるなら、オレも強くなればいい。それだけだよな……。 |
カイル | やってやる ! 絶対にチャンピオン戦までたどり着いてみせる ! だから次会う時は―― |
二人 | ――闘技場のリングの上で ! ! |
ジョニー | いやぁ、これが若さか。最高だぜ。身体が本調子なら一曲披露したいくらいだ。 |
イクス | けど……四天王は全員ソーディアンマスターですよね……。それって冷静に考えれば……。 |
カイル | うん……オレは勝てない。 |
リアラ | ……カイル。 |
カイル | けど諦めるつもりはないよ。普通に戦ったら勝てないのならば頭を使え。そうだろう、ジューダ……ス ? |
カイル | あれ ! ? ジューダスはどこ ! ?相談しようと思っていたのに ! ? |
イクス | ジューダスは…………。 |
ジョニー | やめろ、イクス。約束しただろ。 |
カイル | 二人とも何か知ってるの ? もしかして……ジューダスの身に何かあったんじゃないよね ! ?頼む、教えてくれ ! |
イクス | お、落ち着いてくれ !わかった……今、話すから ! |
ジョニー | 今回の闘技場は、古のビフレストの形式を採用した特別な武闘会になっている。つまり今回はルールも何もかも、全てがビフレスト式なんだ。 |
ジョニー | ジューダスはビフレスト式闘技場の掟に従い地獄の修練場……通称【愚者の館】に連行された。 |
カイル | 地獄の修練場……だって ?そんな、なんでだよ ! ジューダスがいったい何をしたっていうんだよ ! ? |
イクス | ジューダスはカイルとリムルの戦いを止めに入った。あれはチャンピオン戦への乱入行為とみなされるんだ。 |
ジョニー | チャンピオンに挑んだ乱入者は勝たねばならない。だが乱入しておきながら破れた愚か者には地獄のような罰がくだされる。その裁きの場が……。 |
二人 | ……愚者の館。 |
カイル | ジョニーさん ! 愚者の館はどこにあるんですか ! ?今すぐジューダスを助けに行かないと ! |
ジョニー | 教えてもいいが、無事に帰って来られる保証はない。それに、試合の方はどうする ? |
カイル | それはそうだけど……だってジューダスが連行されたのはオレのせいってことだろ !なのにジューダスを放っておくなんて―― |
リアラ | カイル。闘技場に向かいましょう。 |
カイル | リアラ ! ? |
リアラ | ジューダスはカイルを思い、黙って去ったのよ。 |
リアラ | ジューダスを思うのなら今カイルがやるべきことジューダスが望むことはなに ? |
カイル | ……闘技場で、勝ち進むこと。 |
カイル | けど……今のオレにいったいどうやってソーディアンマスター四天王を倒せっていうんだ……。 |
イクス | 俺もできれば力を貸したいけど……。 |
ジョニー | ダメだ。審判である以上特定の選手に肩入れはご法度だぜ。 |
カイル | ……ジューダス。 |
リアラ | カイル、大丈夫よ。わたしに考えがあるわ。 |
カイル | ……リアラに ? |
ウッドロウ | 一対一での勝利は絶望的。だから複数人での戦いを選ぶ。ここまでは賢い策といえよう。 |
フィリア | ですがそれはソーディアンマスターを同時に複数人相手にするという意味でもあります。 |
ウッドロウ | さて、いったいどのような手で我々を倒すつもりなのかな。 |
リアラ | カイル ! |
カイル | ああ、わかってる。 |
ウッドロウ | ……お手並み拝見といこう。 |
ジョニー | いくぜ……レディ・ファイトッ ! ! |
二人 | いざ、尋常に勝負 ! ! |
キャラクター | 6話【四回戦】 |
カイル | くっ……さすがウッドロウさんとフィリアさん。これだけ攻め込んでるのに一瞬の隙すらも見せないなんて……。 |
リアラ | カイル ! 諦めないで !援護するからわたしにあわせて ! |
カイル | ありがとう、リアラ !よしっ、今度こそキメてやる ! ! |
ウッドロウ | カイル君。君たちの連携は大したものだ。共に多くの困難を乗り越えてきた絆が垣間見える。そしてどれをとっても最善手だ。 |
ウッドロウ | だが、だからこそ読めてしまうのだよ。君たちが取りうる攻撃……君たちの次の一手が。 |
フィリア | リアラさん ! 申し訳ありませんがこの晶術で妨害させてもらいます ! |
リアラ | ――キャッ ! ! |
カイル | リアラ ! ! |
ウッドロウ | 体勢が崩れた。もうどのような策を講じようとこの攻撃を防げまい。いくぞ、カイル君……リミッターを外させてもらうぞ ! |
カイル | くっ、さすが賢王ウッドロウ。オレたちが打つ手は全て想定済みか……ここでオレを確実に討ち取る狙いだったのか。 |
リアラ | 言ったでしょう。わたしたちの考えていることは二人には全てお見通しだろうって。けど、だからこそ、そこに勝機もある ! それが今よ ! |
カイル | リアラ…………頼む ! ! |
リアラ | 任せて ! ここまで近づけばフィリアさんの動きを止められる ! |
フィリア | っ、……眩しいっ ! ! |
クレメンテ | 晶術による目潰しじゃと ! ? |
イクティノス | だが一番の想定外は……。 |
ウッドロウ | リアラ君が前に出た、か。私の攻撃を受ければただではすまない。危険な賭けと知りながらも。 |
リアラ | そうよ……カイルの勝利のために ! ! |
ウッドロウ | 覚悟の上ならば良し。 |
カイル | ……リアラ。 |
リアラ | カイル。あなたに未来を託したわ―― |
カイル | リアラァアアアアアア ! ! ! ! ! ! ! ! |
ジョニー | ウッドロウの一撃でリアラはダウン。だがそのリアラによりカイルの活路が開かれた、と。 |
ウッドロウ | うっ……反動、が……。 |
カイル | 二人からしたらこんなやり方は賢くないかもしれない。もっと良策だってあったのかもしれない。けど……これがオレとリアラが共に出した答えなんだ。 |
カイル | だからこの愚策を最善策とし、あなたたちを討つ ! !いくぞっ――――――――爆炎閃業波 ! ! ! ! |
ウッドロウ | 見事…………。 |
フィリア | ……ですっ――――。 |
イクス | そんな……まさか本当に……。 |
ジョニー | ふっ……会場からざわめきが聞こえるな。だがこれが現実だぜ――勝者はカイル !四天王の二人を討ち取ったのは挑戦者カイルだ ! ! |
観客 | カイル ! カイル ! カイル ! カイル ! カイル !カイル ! カイル ! カイル ! カイル ! カイル !カイル ! カイル ! カイル ! カイル ! カイル ! |
カイル | …………っ。 |
リアラ | ここ、は……。 |
カイル | リアラ ! よかった !目を覚ましたんだね ! |
リアラ | ふふっ……カイルったら。確かにウッドロウさんの一撃は堪えはしたけどおおげさね。ちょっと気を失っていただけなのに。 |
カイル | …………ごめん……オレのせいでジューダスに続いてリアラまで―― |
リアラ | ――犠牲にはなってないわよ。それはジューダスも同じ。 |
カイル | …………リアラ。 |
リアラ | もうそろそろ次の試合がはじまるわよ。わたしはしばらく医務室から出られないけどここで応援してるわ。 |
カイル | リアラ……うん、ありがとう !絶対……絶対に、次の四天王も倒してみせるよ ! |
カイル | ……とは言ったものの今はロニとナナリーは仕事で手がいっぱいだしリアラもジューダスもいない……。 |
カイル | なのに、次の対戦相手の四天王は現役バリバリの母さんとリオンさんなんだよな……。 |
カイル | くそっ……あの二人をオレ一人で相手にしないといけないなんていったいどうしたらいいのか検討もつかな―― |
カイル | うわっと ! ! |
リリス | ……あっ、カイル。ごめんなさい、気が付かなくて。 |
カイル | い、いえ。オレは大丈夫ですけど……リリスさん、何かありました ?そんな風にボーッとして……。 |
リリス | えっ……あ、ああ。ちょっと考え事していただけよ。また私に黙ってどこかにいなくなったお兄ちゃんとリムルをどうしてやろうかしらってね。 |
リリス | まったくもう。帰ってきたらただじゃおかないわ。 |
カイル | …………リリスさん。 |
リリス | そういえばカイルこそどうしたの ?困っているなら私が助けになるわよ。 |
カイル | えっ ! ? いいんですか ! ? |
リリス | もちろん。カイルも知っているでしょう ?「困っている人がいたら見過ごすな」って言うのがエルロン家の家訓ですもの。 |
カイル | よっし ! これで首の皮が一枚繋がったぞ !リリスさん、お願いします。どうかそのおたまとフライパンでオレを助けてください ! |
リリス | ええ ! 任せなさい ! ! |
キャラクター | 7話【五回戦】 |
カイル | えっと……リリスさん。そのおたまとフライパンをオレのために振るってはくれないんですか ? |
リリス | なに言ってるのよ。疲労が一発で吹き飛んじゃうと評判のエルロン家特製スタミナ料理を作ってあげたじゃない。 |
カイル | いや、確かにおかげで身体は絶好調なんですが……えっと、一緒に戦ってくれることを期待していたというか……。 |
リリス | ごめんなさい。もう厨房に戻らなきゃなのよ。それに私、戦いは専門じゃないから。 |
カイル | あんなに強いのに ! ? |
リリス | 私を倒したカイルなら大丈夫よ !それじゃあ、頑張ってね ! |
カイル | あっ、ちょっと待って ! リリスさん ! !えっ……どうしよう。二対二で試合申請してるんだけど ! ? |
イクス | それでは次の試合がはじまります !挑戦者カイルの入場です ! ! |
カイル | ああっ、もうこうなれば気合だ ! !一人でだってオレなら大丈夫 !やってやる、やってやる、やってやる。 |
リオン | わざわざ負けに来るとは物好きな奴だな。 |
カイル | …………リオンさん。 |
リオン | ふんっ。 |
カイル | あれ……けど、リオンさんも一人 ?ルーティさんは……。 |
リオン | あいつは僕が棄権させた。心が乱れれば自ずと剣も乱れる。味方の足手まといほど厄介なものはないからな。 |
リオン | それにお前のような雑魚が誰と組もうがさしたる違いはないからな。僕一人で十分だ。 |
カイル | 随分と言ってくれるじゃないですか。 |
リオン | 貴様と無駄話をするつもりはない。はじめるぞ。 |
カイル | 臨むところだ ! |
イクス | 一対一ながらこれがカイルの四天王最終戦だ !果たして勝利なるか……レディ・ファイトッ ! ! |
リオン | いくぞ、シャル ! ! |
ソーディアン・シャルティエ | はい、坊ちゃん ! ! |
キャラクター | 8話【五回戦】 |
リオン | ディアボロス・ティア。 |
カイル | うっ……ぐ…………。くそっ……こんな、ところで……。 |
リオン | もう立ち上がることすらできないのにまだ続けるつもりか。 |
カイル | オレは……絶対に、諦めない……。 |
リオン | 往生際の悪い奴だ。だがそれもここまで。シャル、終わりにするぞ。 |
ソーディアン・シャルティエ | はい ! 坊ちゃん ! |
リオン | ――トドメだ ! ! |
? ? ? | そう勝負を急ぐこともないだろう。 |
カイル | えっ ! ? まさか…… ! ? |
リオン | ……どういうつもりだ。 |
ジューダス | 僕が相手をしてやる。さっさとかかって来い ! |
カイル | ジューダス ! どうしてここに ! ?地獄の修練場「愚者の館」に連行されたはずじゃ ! ? |
イクス | まさか……課せられた特訓という名の罰を全てこなし地獄の底から舞い戻ってきたのか ! ? |
ジューダス | ちょうどいいウォーミングアップだとは思ったがまさかあれが地獄の特訓だったとはな。 |
カイル | ジューダス ! 無事に戻ってきてくれて本当によかった !ずっと心配していたんだ ! |
ジューダス | まったく。僕のことよりも少しは自分の置かれているこの状況を心配したらどうだ ? |
カイル | この状況、オレには何も心配することなんてないよ。 |
ジューダス | それもそうか。カイル、後は任せろ。 |
リオン | この僕に挑むというのか ? |
ジューダス | その通りだっ ! ! |
リオン | ふん……無駄だ。お前がどう来るのかなど手に取るようにわかる。 |
ジューダス | だろうな。それは僕も同じだ。 |
リオン | なら同じ技がぶつかれば僕とお前のどちらが競り勝つかもわかっているはず、だっ ! ! |
ジューダス | くっ……。 |
リオン | そんなナマクラで僕たちに勝てると思っているなら間違いだ。この一撃で沈めてやる ! ! |
ジューダス | ふっ……思ってなどいないさ。代わりなんていないからな。 |
ジューダス | ――シャルの。 |
ソーディアン・シャルティエ | ―― ! |
リオン | シャル ! 集中しろ ! ! |
ソーディアン・シャルティエ | す、すみません ! 坊ちゃん ! |
ジューダス | 心が乱れれば剣も乱れる。それはソーディアンでも同じ……もらった ! ! |
リオン | ――甘い ! ! |
イクス | リオンが防いだ ! ? |
ジョニー | おっと。ジューダスは剣を弾かれて丸腰になっちまった。こいつは勝負ありか。 |
リオン | ……なぜ剣をなくしても動じない。 |
ジューダス | 今にわかるさ。 |
カイル | ジューダス ! 受け取れ ! ! ! ! |
ソーディアン・シャルティエ | 坊ちゃん ! カイルが剣を投げて―― |
リオン | わかっている ! 先に切り捨てるぞ ! |
ジューダス | いくぞ……いざ、勝負 ! ! |
二人 | ――ハァッ ! ! ! ! |
イクス | ……ど、どっちだ。どっちが先に相手を討ったんだ ? |
ジョニー | こいつは……。 |
リオン & ジューダス | ……………っ。 |
ジョニー | 両者は完全に同時の相打ち !よってこの試合はリングに残っているこの男挑戦者カイルの勝利だ ! ! |
ソーディアン・シャルティエ | 坊ちゃん。申し訳ありません。僕が気を取られることがなければ……。 |
リオン | いや、気にすることはない。それよりも気になるのは……。 |
ジューダス | やはりお前もシャルのマスターだったのか ?そう尋ねたければ尋ねればいい。 |
リオン | お前に興味などない。僕は行かせてもらう。 |
ジューダス | カイル。助かった。 |
カイル | オレも今と同じように助けてもらったからね。借りを返しただけだよ。 |
ジューダス | お前もなかなか言うようになったな。 |
ジューダス | だが僕が共に戦えるのはここまでだ。あとは観客席で見守っている。 |
カイル | ……ああ、わかったよ。けどリアラだけじゃなくジューダスにも誓わせてくれ。 |
カイル | オレ、絶対に、リムルさんに勝ってみせる。絶対に。 |
ジューダス | その意気だ。リムルは修行を終え更に強くなって帰ってくるだろう。だからカイルも最後の最後まで修行に励め。 |
ジューダス | チャンピオン戦、僕も楽しみにしている。 |
キャラクター | 9話【決勝戦】 |
ロニ | はぁはぁ……なんとか仕事を片付けてきたぜ。 |
ナナリー | 間に合ったみたいだね。まだチャンピオン戦ははじまってないみたいだよ。 |
ジューダス | これからはじまるようだな。 |
リアラ | みんな、見て ! 出てきたわよ ! |
ジョニー | さあて、いよいよチャンピオン戦だ !四天王を倒しここまで這い上がってきたカイル修行を終えたリムル、両者の入場だぜ ! |
二人 | ………………………。 |
カイル | リムルさん。切り札、完成させたんだね。 |
リムル | わかるの ? |
カイル | ああ。その澄んだ瞳を見てピンときたよ。 |
リムル | 嬉しいこと言ってくれるじゃない。カイルもいい目つきになったわね。出会った頃よりもずっと強さを感じる。 |
カイル | それはどうだろ……。ここまで来られたのはオレだけの力じゃない。だから強くなってるかと言われると―― |
リムル | なっているわ。出会ったときよりもカイルは強くなってる。 |
カイル | わかるの ? |
リムル | ええ。キミがここまで来られたのは仲間の助けがあったおかげなのは知っている。けど、大切な点は別にあるわ。 |
リムル | それは仲間に助けられたことでキミには仲間のためにも勝つ必要が生まれたってことよ。 |
リムル | キミは大切な人のために戦うとき一番強くなれる人間。だから、今のキミはどんなキミよりも最強よ !わたしにはわかるわ ! |
カイル | 今のオレがどんなオレよりも最強……か。なんだかそれ面白いね。 |
リムル | カイル。わたしは今すぐにでもキミと戦いたい。けど、その前に聞いて欲しいことがあるの。わたしの正体について。 |
カイル | リムルさんの……正体 ? |
リムル | わたしね、リリスさんの……うんんあなたの知っているリリスおばさんの娘なの。つまり、あなたとは従兄妹なのよ。 |
カイル | えぇ ! ? そうだったの ! ? |
カイル | でも、そうか……だからオレのことも知っていたのか。けど身の上は話さないって言っていたよね。今になってどうして ? |
リムル | キミが変わったからよ。とても強くなったから。この事実を知っても気持ちが揺らいだりましてわたしに手加減なんてしないでしょう ? |
リムル | それにわたしも変わった。英雄スタンの血を引いているからじゃない。あなただから、戦いたいの。 |
カイル | ……オレ、だから。 |
カイル | ありがとう、リムルさん。オレも、リムルさんだから戦いたい。 |
リムル | リムル。そう呼んで。 |
カイル | ……わかったよ、リムル !オレと戦おう ! |
リムル | もちろんよ、カイル !それじゃあはじめましょう ! |
二人 | いざ、尋常に―― |
リリス | ちょっと待ちなさい !その前に家族会議よ ! ! |
スタン | いたたっ。リリス、引っ張らないでくれよ。 |
二人 | リリスさんにスタンさん ! ? |
リリス | さあてと。どういうことなのかな。また私に黙って修行に出かけるなんて。 |
リムル | そ、それは……強くなるために必要で……。 |
スタン | そうなんだよ。だからリリス、怒らないでくれよ。 |
リリス | 私は怒ってないわよ !私は……私は……。 |
カイル | 寂しかったし、心配だったんだよね。 |
リリス | …………。 |
スタン | リリス。そうだったのか……。 |
リリス | ……二人のことはわかってるつもりよ。けどもうちょっと、気を遣ってくれてもいいじゃない。どうして勝手にいなくなっちゃうのよ。 |
スタン | リリス…………。 |
リムル | リリスさん。ごめんなさい。自分の身勝手さはよくわかっています。 |
リムル | けど……最強を目指すことはやめられない。そして自分でも危険な道だとわかっているからこそあなたの優しさに甘えてしまうと思った。 |
リムル | だから……黙って出ていきました。 |
リムル | けどこれだけは本当です。最強を目指すのはあなたを傷つけるためじゃない。あなたが大切だからでもあるのだと。 |
リリス | ……リムル。 |
スタン | ああ。俺も似たような感じだ。リリスや家族が大切なのは本当だよ。 |
リリス | お兄ちゃんも……。 |
リリス | もう……わかったわよ。これからは二人とも好きにしていいわ。 |
リリス | けど……お兄ちゃんは、最後にお仕置きさせて。そうじゃないと腹の虫がおさまらないわ。 |
スタン | え、なんで俺 ! ? |
リリス | 当たり前でしょう ! リムルはまだしもお兄ちゃんは何度目だと思ってるの ! ? |
リリス | リムル。私のことを思っていてくれたならその強さ、今だけ私に貸して。 |
リムル | わかりました。困っている人がいたら見過ごすな。母からの教えでもありますから。 |
リリス | それじゃあせっかくだしこのおそろいの―― |
二人 | ドレスで ! ! |
スタン | ちょ、ちょっと待てよ ! |
カイル | スタンさんが困っている。ならオレはスタンさん側につきます。 |
リムル | それは好都合。一対一もいいけどカイルとスタンさん、戦いたい人と一度に戦えるこの状況も面白いわ。 |
リリス | それじゃあ家族会議の延長線上ということで―― |
一同 | いざ、尋常に勝負 ! ! |
キャラクター | 10話【決勝戦】 |
ジョニー | 勝負あり ! 勝者はスタン&カイルチームだ ! |
リリス | あーあ。また負けちゃった。 |
リムル | これが私の実力。まだまだ修行が足りないみたいね。もっともっと、精進していかないと。 |
スタン | カイル。お疲れ様。俺たちがチャンピオンみたいだぞ。 |
カイル | やりましたね ! スタンさん ! |
スタン | それにしてもカイルすごく強くなったよな。 |
カイル | えっ……そうですか ? |
スタン | ああ。こうして一緒に戦って感じたよ。俺もカイルと本気で戦いたくなった。 |
カイル | スタンさん……。 |
コングマン | 良い試合をみせてもらったぜ。さすがの俺様も見入っちまった。 |
スタン | コングマン !よかった、治療が終わったんだな。それならアジトまでついて来てくれ。 |
コングマン | 悪いがそいつはごめんだ。俺様は修行のため山に籠もる。 |
スタン | 修行 ! ? 大丈夫なのか ! ? |
コングマン | 舐めるんじゃねぇ。俺様はより強くなって帰ってくる。今回のチャンピオンは譲ってやるが次はそうはいかねぇから覚悟しておけ……あばよ ! |
スタン | あっ……コングマン !まったく、相変わらず豪快だな。 |
カイル | ……修行か。 |
カイル | スタンさん。オレと戦いたいって言ってくれたことすごく嬉しかったです。けど、今のオレはやっぱりまだまだです。まだ自分自身が納得できない。 |
カイル | だから、勝負はもうしばらくしてからでも大丈夫ですか ? |
スタン | ああ。もちろんだよ。いつでも勝負は受けるからな。 |
リムル | やっぱりカイル……成長したわね。 |
スタン | そうだ。カイルもリムルも修行したいみたいだし俺たち三人でやろうよ。大勢のほうがきっと楽しいしさ。 |
二人 | はい ! |
リリス | けどその前に……。 |
リムル | はい。わかっています。 |
スタン | みんなで食事だよな ? |
リリス | うん♪ |
ロニ | となることを予想して厨房は貸し切りにしておいたぜ ! |
ナナリー | 食材も確保しておいたよ。 |
ジューダス | ただ闇雲に修行をしてもしっかり食事を取らなければバテてしまうからな。 |
リアラ | 早く行きましょう、カイル ! |
カイル | みんな ! ありがとう ! ! |
カイル | よしっ、しっかり食べてしっかり修行してまだまだ頑張ろうね、リムル ! |
リムル | もちろんよ ! |
二人 | 最強の自分を目指して ! ! |