キャラクター | 1話【星の子供たち1 夢】 |
ソフィ | う……うう……。 |
? ? ? | ……よ……フォドラの子よ……。 |
ソフィ | やめて……ちがう……わたしは……。 |
? ? ? | ……還るのだ……生まれた……の大地……使命を……。 |
ソフィ | い……いやぁっ ! |
ソフィ | ……はぁっ……はぁっ……。 |
ソフィ | また……あの夢……どうしてわたしを呼ぶの ? |
ソフィ | どうして……こんなに、胸が苦しいの…… ? |
ヴェイグ | ここが、報告にあった村か……。 |
ベルベット | ある日、突然村人が全員いなくなったみたいだけどとくに争った形跡もないし、家も荷物もそのまま。 |
ベルベット | 何か危険が迫っていて安全な場所に避難しただけなんじゃないかしら ? |
ヴェイグ | だとしたら、その危険がなんなのか調べるのがオレたちの仕事だ。 |
ベルベット | そうね。でも、本当になんの変哲もない── |
ベルベット | あれは…… ! |
ヴェイグ | 追うぞ。村人かもしれない。 |
ベルベット | ……くっ、全然追いつかないわ。 |
ヴェイグ | 村人……ではなさそうだ。余計に正体を探る必要がでてきたな。 |
ベルベット | ねえ、見て、これ。 |
ヴェイグ | 花びらか…… ? あまり見ない色と形だ。 |
ベルベット | 自分の通った後にこんなものを残すなんて明らかに、あたしたちを誘ってるわね。 |
ヴェイグ | どうする ? わざわざ相手の思惑に乗ることは……。 |
ベルベット | ここまで来て収穫もなしに帰るわけにはいかないわ。せめて何か手がかりを──ヴェイグ ! 後ろ ! |
ヴェイグ | ぐっ ! ? |
ベルベット | っ…… ! ここまで手の込んだことをしておいてやることは不意打ち ? ずいぶんと姑息ね ! |
? ? ? | …………。 |
ベルベット | ヴェイグ、大丈夫 ? |
ヴェイグ | ああ……大したことは無い。だが……。 |
ベルベット | 囲まれたわね。……いける ? |
ヴェイグ | ああ、問題ない。片付けるぞ…… ! |
ベルベット | 次から次へと ! しつこい ! |
ヴェイグ | くっ…… ! |
ベルベット | どうしたの ! ? |
ヴェイグ | 腕が、痺れて……さっきの攻撃のせいか。 |
ベルベット | 不意打ちでそのうえ毒なんて厄介なことをしてくれたわね。 |
? ? ? | …………。 |
ベルベット | また、だんまりってわけ。 |
? ? ? | 強い、個体だ。 |
? ? ? | ヒトの子よ。 |
? ? ? | その痛み、わたしに変えてあげる……。 |
ヴェイグ | 同じ顔…… ! ? |
ベルベット | ……ヴェイグ、まだ走れる ? |
ヴェイグ | あ、ああ……だが、何をするつもりだ ? |
ベルベット | あたしが時間を稼ぐ。その間にアジトに連絡して。 |
ヴェイグ | 待て ! おまえだけを残して行くわけには…… ! |
ベルベット | 勘違いしないで。あたしは犠牲になるつもりはないわ。全のために個を捨てるなんて考え、大嫌いなのよ。 |
ヴェイグ | ……わかった。必ず戻る。 |
ベルベット | ええ……任せたわよ。 |
ヴェイグ | ああ ! |
ベルベット | このあたしが喰らいついているうちは絶対に行かせないわよ ! |
キャラクター | 2話【星の子供たち4 救援へ】 |
イクス | ベルベットさんが捕まった ! ? |
ヴェイグ | すまない……オレのせいだ。 |
ミリーナ | ヴェイグさんのせいじゃないわ。それに、こうして知らせてくれたんだもの。 |
イクス | すぐに応援を送るよ。 |
ヴェイグ | それなんだが、一つ気になることがある。 |
ソフィ | わたしに似ている女の子…… ? |
ミリーナ | ええ、ヴェイグさんとベルベットが戦ったそうなの。普通の人間じゃない。不思議な力を持っていたって。 |
ソフィ | 人間じゃ、ない……。 |
シェリア | そ、それって ! いったい、どんな力だったんですか ? |
イクス | 魔物を操り、従わせていたそうだ。 |
イクス | 他には毒のようなものだろうか。傷をうけると、その部位が痺れてしまうと言ってたな。 |
パスカル | 麻痺に即効性……ということは神経性の毒かなー。 |
パスカル | 獲物を動けなくしてからトドメを刺すなら毒もかなり強力なはずだよ。ヴェイグ、逃げられてラッキーだったね。 |
ミリーナ | そうだわ。もうひとつ、ヴェイグさんが言ってたの。その少女が通った後に花びらが落ちていたって。薄紫色の細い花びらだそうなんだけど……。 |
ソフィ | アスベル……それって……。 |
アスベル | ああ、クロソフィの花に似ているな。 |
ヒューバート | そういえば、ベルベットさんたちが調査に行ったのはぼくたちの世界の大陸が具現化した地域でしたね。 |
シェリア | ソフィによく似た女の子に、クロソフィの花……。 |
アスベル | イクス、俺たちに行かせてくれ。いや、俺たちが行くべきだと思う。 |
イクス | わかった。アスベルたちに任せるよ。ヴェイグとベルベットさんを助けてくれ。もし他にも手助けが必要ならすぐに連絡してくれ。 |
アスベル | ……わかった。ありがとう、イクス。 |
シェリア | それじゃあ、すぐに旅の準備をはじめましょ。 |
パスカル | どんな毒かなー、検査器具いっぱい持ってかないと ! |
ヒューバート | ベルベットさんの身が危ないんですよ。もっと緊張感を持って下さい。 |
ヒューバート | パスカルさんは、ちゃんと必需品も持って来てくださいよ。 |
パスカル | 必需品って、なに ? |
ヒューバート | それは、食糧とか着替えとか……。 |
パスカル | うーん、めんどくさい。そういうの弟くんが用意してよ。 |
ヒューバート | そ、そんなことできるわけないでしょう ! |
ヒューバート | ……シェリア、すみませんが手伝ってあげてください。 |
シェリア | わかった。時間がないから私が準備しておくわ。 |
シェリア | そうだ、アスベル。二人には声をかけないの ? |
アスベル | 教官には一緒に来てもらうつもりだ。だけど、リチャードは……。 |
マリク | ……なるほど。そういうことなら、同行しよう。 |
アスベル | ありがとうございます。教官。 |
リチャード | アスベル、僕も一緒に行くよ。 |
アスベル | リチャード ! ?だけど、身体のほうは……。 |
リチャード | ずっと、この身体を明け渡していたから今は少しでも動かして感覚を取り戻したいんだ。 |
リチャード | それに、ソフィのことが気がかりなんだ。 |
アスベル | 例の、ソフィによく似た少女のことか。 |
リチャード | ただの他人の空似ならいい。だけど、そうじゃなかったとしてそれがソフィの生まれに関わることなら……。 |
リチャード | 僕たちはなんの力にもなれないかもしれない。それでも、側にいることくらいはできる。 |
リチャード | ラムダもチーグルも手放しにいい関係だったとは言えないけど、僕の一番近くにいたんだ。 |
リチャード | それが、救いでもあったと今の僕は思える。 |
アスベル | ……わかった。でも、無理はしないでくれよ。 |
リチャード | ああ、約束するよ。 |
キャラクター | 3話【星の子供たち5 クロソフィの花】 |
ヴェイグ | 待っていた。 |
アスベル | すまない。すぐにでもベルベットの救出に向かおう。ベルベットと別れたのは近くの森だったよな。 |
ヴェイグ | いや、少し状況が変わった。 |
ヒューバート | どういうことです ?ベルベットさんの安否がわかったんですか ?彼女を人質に、こちらに何か要求してきたとか。 |
ヴェイグ | そうじゃない。だが、相手は単純に危害を加えるつもりというわけではなさそうだ。 |
ヴェイグ | これなら、ベルベットが無事な可能性も大いにある。代わりに、相手の目的がわからなくなったが。 |
マリク | どういう意味だ ? |
ヴェイグ | 実際に、見てもらった方が早いだろう |
マリク | 何の変哲もない、普通の村だな。 |
シェリア | お花がいっぱいで素敵なところね。 |
ソフィ | うん。綺麗。それに、みんな笑ってる。 |
ヴェイグ | そうだな。平和な村だ。平和すぎるくらいに。だが、ここは昨日まで村人が消えていたんだ。 |
ヒューバート | なんらかの理由があって彼らは村を離れていたのが今朝になって戻って来ただけでは ? |
ヴェイグ | ……誰かに話を聞いてみるといい。 |
パスカル | そういうことならっ、ねえねえそこのひとー ! |
村人 | まあ、こんにちは。旅のお方ですか ? |
パスカル | そうそう。旅人。ところで、昨日はこの村に誰もいなかったよね ? どこ行ってたの ? |
村人 | なんのことですか ? 私たちはずっと村にいましたよ。ええ、ずっと、ここに。 |
パスカル | そうですか。それじゃそーゆーことで。 |
ヒューバート | あっさり引き下がってどうするんですか。 |
パスカル | だって、ウソをついてる感じはしなかったよ ? |
ヴェイグ | みなが来る前に、オレなりに聞き込みをしてみた。だが、誰に話しかけてもあの調子なんだ。覚えていないのか、それともオレが幻を見たのか…… |
マリク | あまり深く考えすぎるな。見た目で判断してはいけないのも確かだが目に見えるものを疑うようになれば自分を見失うぞ。 |
ヴェイグ | ……その通りだな。すまない。少し気を回しすぎていたようだ。 |
アスベル | ……なんだか懐かしい感じがするな。 |
リチャード | 懐かしい ? ラントに似ているからかい ? |
アスベル | あ、いや。今のは多分俺じゃない。ラムダがそう感じたんだと思う。 |
アスベル | そうか、ここは俺たちの世界だけじゃない。フォドラの大地も混じっているんじゃないかな。 |
ヒューバート | 具現化の際、二つの星が一つの世界と認識された。確か、キールたちの世界もそうだったはずです。ありえない話ではないですね。 |
リチャード | どうする ? すぐに森に入って捜索をはじめるかい ? |
ヴェイグ | じきに夜になる。ただでさえ隠れるのが上手い相手だ。危険は避けた方がいいと思う。 |
アスベル | なら、今日はこの村に泊まらせてもらって日が昇ったらすぐに捜索をはじめよう。 |
ソフィ | …………。 |
シェリア | ソフィ、どうしたの ? |
ソフィ | ……花壇、どうなったかな。 |
シェリア | ラントで植えたクロソフィのこと ?今頃また、たくさん花を咲かせているでしょうね。 |
ソフィ | うん……そうだと、いいな。 |
シェリア | ソフィ……。 |
キャラクター | 4話【星の子供たち6 異変】 |
アスベル | ソフィの様子がおかしい ? |
シェリア | ええ、ずっと考え込んでるみたいなの。 |
マリク | フォドラという名をふたたび耳にすれば無理もない。 |
シェリア | ソフィにとっては、故郷だものね。嫌でもいろいろ考えちゃうわよね。 |
リチャード | 元の世界か……僕も時折り考えるよ。 |
リチャード | あちらに、もう一人の僕がいてもしかしたら世界を滅ぼしているかもしれない。 |
リチャード | そう思うと、ね……。 |
アスベル | そんなことにはならないさ。必ず、俺たちが止めている。 |
アスベル | その後は、こんな風に同じテーブルを囲んで懐かしい話をしていたりするんだ。 |
リチャード | アスベル……うん、そうだね。きっとそうだ。 |
ヒューバート | 兄さんは相変わらずお気楽ですね。そうやって、いいことばかり想像する。 |
シェリア | それでいいのよ、アスベルは。 |
マリク | 悪い結果はどうしても起こる。重要なのは、その時、どう考え、どう動くかだ。 |
マリク | おまえが前を向いていればソフィも安心する。 |
アスベル | はい、教官。 |
パスカル | ……んにゃぁ……すかー……。 |
ヒューバート | やけに静かだと思ったら、この人は……。 |
シェリア | 夕べ、遅くまでなにか作ってたみたいだから。 |
アスベル | 明日は早い。俺たちも休もう。 |
ソフィ | ここは……どこ。 |
ソフィ | わたし…… ? どうしてわたしがもう一人……。 |
ソフィ | え…… ! |
ソフィ | やめて ! どうしてそんなことするの ! ? |
ソフィ | いや……いや…… ! お願いだからやめて ! |
ソフィ | アス、ベル……ダメ……ダメ……。 |
ソフィ | いやあああああああっ ! |
ソフィ | ……はぁっ、はぁっ…… ! |
ソフィ | どうして、あんな夢……。 |
ソフィ | っ ! 誰っ、そこにいるの ! |
ソフィ | ヴェイグ…… ? |
ヴェイグ | いこう、クレア。ここは危険だ。 |
ソフィ | なにを、言ってるの ? |
ヴェイグ | おまえを氷に閉じ込めた……。もう二度と、あんなことは……あんな思いは……。 |
ソフィ | ねえ、変だよ。わたし、クレアじゃない。 |
シェリア | ソフィ ! 起きて ! 大変なの !村の人が大勢集まって、この家を取り囲んで──って、ヴェイグ ! ? |
ヴェイグ | クレア、早くするんだ ! |
ソフィ | ちがう。だから、わたしは── |
パスカル | ええっ ! ? ソフィかと思ってたらクレアだった ! ? |
ヒューバート | そんなわけないでしょう !あきらかに様子が変です ! |
ヴェイグ | 誰にも、クレアを傷つけさせない ! |
ソフィ | いやっ ! |
ヒューバート | とにかく、今は外へ !ここにいて火でもかけられたら逃げ場がありません ! |
シェリア | ソフィ ! こっちへ ! |
ソフィ | うん ! |
パスカル | そうと決まったら逃げろ逃げろ~ ! |
ソフィ | アスベル ! |
アスベル | 無事だったか ! そっちの様子は ! ? |
シェリア | それが、ヴェイグが……。 |
ヴェイグ | クレアを……返せ。 |
アスベル | ヴェイグ……俺たちがわからないのか ! ? |
マリク | 村の人間たちも同じだ。俺たちのことを敵だと思いこんでいるようだ。 |
リチャード | すっかり囲まれてしまった。……アスベル、どうする ? |
マリク | 突破口を開くなら、まずはオレが行く。 |
ソフィ | 待って。あの人たちは、操られているだけ。傷つけないで。 |
リチャード | どうして、そんなことがわかるんだい ? |
ソフィ | わからない……なんとなく、そう感じる。 |
アスベル | ……わかった。俺はソフィを信じる。 |
アスベル | それに、俺たちを取り囲んでおきながら積極的に危害を加えてはこないのも気になる。多分、他に何か目的があるんだろう。 |
ヒューバート | 下手をすれば後手にまわりますよ。 |
アスベル | それでも、相手の真意を知るべきだ。 |
ヒューバート | ……はぁ。わかりました。従いましょう。 |
マリク | さっそく来たようだぞ。 |
シェリア | ヴェイグ…… ! それに、あの女の子たちは…… ! |
キャラクター | 5話【星の子供たち7 フォドラの子】 |
リチャード | ほんとうにソフィによく似ている。 |
ソフィ | わたし……あんな顔 ? |
シェリア | 似てる……と思うけど、なんだか変な感じがするわ。どうしてそう思うのかしら。 |
パスカル | うーん、表情がないからじゃないかな。作りものっぽいっていうか。 |
パスカル | その点、ソフィはほら !ぷにぷにのつるつる〜。 |
ソフィ | さわるの、だめ。 |
パスカル | む~。いいじゃん、ソフィ~。 |
? ? ? | フォドラの子よ……やっと見つけた。 |
ソフィ | わたし…… ? |
? ? ? | そう。ともに、フォドラより生まれた。わたしたちは、かつて一つだった。 |
ソフィ | 一つ……どういう事 ? |
? ? ? | 理解する必要はない。わたしが知っている。それはおまえの知識でもある。 |
アスベル | 待ってくれ。聞きたいことがある ! |
? ? ? | …………。 |
アスベル | 村の人や、ヴェイグに何をした。彼らは無事なのか ? それにベルベット……俺たちの仲間の女性も―― |
? ? ? | 無事 ? |
? ? ? | 生命活動は継続している。 |
? ? ? | 繋がり、共有した。 |
ヒューバート | あまり、答えになってませんね。ぼくたちの言葉に慣れていないのでしょうか。 |
アスベル | ソフィを捜していた……んだよな。いったい何が目的なんだ。 |
? ? ? | フォドラへの帰還。 |
アスベル | フォドラへ…… ! ? |
? ? ? | わたしたちは、フォドラと切り離された。 |
? ? ? | 環境に適応するため変化した。 |
? ? ? | ヒトの群れも一つにする。 |
ヒューバート | やはり、どうも話がかみ合いませんね。 |
パスカル | そうかな ? けっこうわかりやすくない ? |
ヒューバート | あなただけですよ、そんなこと言うの。 |
パスカル | 要するに、フォドラに帰るためにみんなの力を集めようってことでしょ ?まあ、無理矢理言うこときかせてるみたいだけど。 |
アスベル | 意思をねじ曲げて操るなんて人に対してやっていいことじゃない。こんなやり方今すぐやめるんだ。 |
? ? ? | ヒトの存在はフォドラにとって害悪。滅ぼすべき。 |
アスベル | なに…… ! ? |
? ? ? | だけど、今は優先すべきことがある。 |
? ? ? | 力が必要。 |
? ? ? | ふたたびフォドラの核と繋がるため。 |
アスベル | いや、おそらくフォドラに戻るのは不可能だ。 |
? ? ? | 戻れない ? |
? ? ? | 戻れない ? |
? ? ? | 戻れない……。 |
パスカル | あら、なんか固まっちゃった。 |
アスベル | 君も俺たちも、ここで生きていくしかないんだ。だから、俺たちと一緒に行こう。協力し合えば新しい世界でもやっていけるはずだ。 |
? ? ? | 星の核。 |
? ? ? | この星の核と繋がる。 |
? ? ? | その力で、フォドラに帰還する。 |
アスベル | 待ってくれ ! そんなの無茶だ ! |
パスカル | そうだよ ! あたしたちの世界みたいに核があるかどうかもわからないんだから ! |
? ? ? | なければ、わたしがそうなればいい。 |
アスベル | なに…… ! ? |
? ? ? | ふたたび、ヒトが星を傷つける前に。 |
? ? ? | わたしが星を守る。 |
? ? ? | この地が新たなフォドラとなるのだ。 |
シェリア | そんなのダメよ ! この星にもちゃんと生きてるヒトがいるんだから ! |
ヒューバート | シェリア、下がって !彼女はもうこちらの話を聞くつもりはないようです ! |
リチャード | まずいぞ、村人たちを盾にされでもしたら僕たちには手の出しようがない ! |
? ? ? | 滅ぼしはしない。 |
? ? ? | ヒトの強い個体。 |
? ? ? | ただ、一つになるだけ。 |
パスカル | えーと、要するにあたしたちが強いから操って仲間に加えようってことかな ? |
ヒューバート | 冷静に分析してる場合ですか ! |
マリク | そうだ ! 今は力尽くでもあの少女を止めるしかない ! |
マリク | ベルベット ! ? |
ベルベット | ラフィは、私が守る ! |
マリク | 待て ! オレたちがわからないのか ! ? |
ベルベット | あああああああっ ! |
マリク | くそっ、聞こえていないか…… ! |
ヴェイグ | クレア……そこにいたのか。 |
? ? ? | わたしはここにいる。 |
? ? ? | 守りなさい。 |
? ? ? | それが、あなたの役目。 |
ヴェイグ | ああ、誰にもおまえを傷つけさせない…… ! |
アスベル | 目を覚ませ ! ヴェイグ ! ベルベット ! |
リチャード | アスベル ! 彼らに僕たちの言葉は届いていない ! |
アスベル | だけど、二人を傷つけるわけには…… ! |
ベルベット | また、あたしから家族を奪おうとする……許さない ! |
パスカル | まずっ、ベルベットってば本気 ! ? |
シェリア | みんな、避けて ! |
ベルベット | ──ナイトメアクロウ ! |
パスカル | ふぃ~、間一髪だよ~。 |
ヒューバート | 兄さん、防戦一方では長くは保ちませんよ。 |
アスベル | くっ……どうすれば……。 |
? ? ? | ……花がっ ! ? |
? ? ? | 花を、傷つけないで ! |
? ? ? | 守りなさい ! |
リチャード | なんだ ? 急に、慌てはじめて……。 |
マリク | なんでもいい。この隙にいったん引くぞ !村人を盾にされたら手出しができん ! |
アスベル | 教官…… ! みんな、行くぞ ! |
ソフィ | …………。 |
キャラクター | 6話【星の子供たち9 見張り】 |
ヒューバート | 追ってこないようですね。 |
マリク | 偶然とはいえベルベットのおかげで助かったな。楽観視はできないが……。 |
リチャード | 確か、ヴェイグは森で襲撃を受けたと言っていた。それも操られての言葉かもしれないがここも安全とは言い難いだろうね。 |
アスベル | あれは本物のヴェイグやベルベットだったんだろうか ? |
シェリア | 私の思い込みかもしれないけど、偽物とか違う人が身体を奪っているようには見えなかったわ。 |
シェリア | だって、なんだかヴェイグもベルベットもすごく必死だったから……。 |
ラムダ | アレは、おまえたちの仲間で間違いない。 |
アスベル | ラムダ…… ! ? |
リチャード | ラムダが、話しかけてきたのかい ? |
アスベル | ああ。――ラムダ、何か知っているのか ? |
ラムダ | 知っているのではない。そう感じるのだ。同じ、フォドラの核から生まれた者としてな。 |
アスベル | じゃあ、あの女の子もおまえと同じ── |
ラムダ | 近いが、同じではない。アレはもっとわかりやすい。そう、フォドラの防衛本能のようなものだ。 |
ラムダ | 見ただろう。同じ姿が三つ。身体は別でも生物としては一つの存在だ。実際はもっとたくさんの分体がいたのかもしれん。 |
ラムダ | どうやら、こちらに具現化されたせいで力が制限されているようだ。 |
ラムダ | そのせいか、自ら新たな環境に適応するため他の生物を操り自分を守らせることにしたのだろう。 |
ヒューバート | ……なるほど。他の生物を操って自分の兵士や労働力にする。ある意味、効率的な能力ですね。 |
アスベル | ラムダの話だと、リビングドールのように完全に乗っ取られている訳じゃなくて認識がすり替わっているらしい。 |
アスベル | たとえば、あの少女を自分の大切な人だと思いこんでしまうみたいな。 |
シェリア | だから、ヴェイグはソフィのことをクレアさんだと思いこんでいたのね。 |
マリク | そして今は、あの少女をクレアだと思っている……。そうやって都合良く認識を歪めて操っているのか。 |
リチャード | 人が誰かに抱く親愛の情を自分に向けさせる。なるほど、それなら誰でも味方にしてしまえる。 |
ヒューバート | まるで蜂のようですね。女王があの少女で、巣がこの辺り一帯……と。ぼくたちは縄張りに踏み込んだ外敵というわけですか。 |
パスカル | そういえば、あの子に名前がなかったよね。クイーン……だと、ちょっと違うかなー。ちっちゃいから“リトルクイーン”ってどう ? |
ヒューバート | 今決めるべきことですか、それ。 |
パスカル | 名前は大事だよー。 |
パスカル | いざ戦う時に「女の子」とか「少女」だとなんか気合い入らないでしょ。 |
マリク | 呼び名はともかくなぜソフィに似ているかの方が重要だろう。ラムダは何か言っていなかったか。 |
アスベル | それは……。 |
ソフィ | わたしは大丈夫。ちゃんと、聞きたい。自分のことだから。 |
アスベル | ……そうか。 |
アスベル | ラムダは、リトルクイーンとソフィの波長が似ていると言っていた。 |
アスベル | それがどういうことなのかラムダ自身も正確には答えられないみたいだった。だが、一つの推測はできるとは言っていた。 |
アスベル | ラムダと対消滅させるために生まれたのなら同じ星の核から生まれた存在を参考にしたのかもしれないと。 |
パスカル | あ、なるほどー。そういうことか。 |
パスカル | ラムダに拮抗する存在をゼロから生み出すなんていくら当時の技術でも難しいんじゃないかって思ってたんだよねー。 |
ソフィ | じゃあ、わたしはあの子と同じ…… ? |
ソフィ | 人を操って、従わせる……。アスベルたちとは、ぜんぜん違う存在……。 |
シェリア | ソフィ ! ちがうわ、ソフィはソフィなんだから ! |
ソフィ | シェリア……。 |
アスベル | シェリアの言う通りだぞ。ソフィはソフィだ。俺たちと違っていても、いいんだ。 |
アスベル | 違うから、わかり合いたいと思う。そうやって友達になっていくんだ。 |
アスベル | お互いに絆を結んでいけばソフィと俺たちはもう家族だろう ?家族になることだって出来る。 |
ソフィ | 家族……わたしと、アスベルは家族 ? |
アスベル | そうだ。俺だけじゃない。ここにいるみんな、ソフィの家族だ。 |
ソフィ | 家族……家族……。 |
ソフィ | ふしぎ。すごく温かい感じがする。 |
シェリア | それが家族の証よ。 |
ソフィ | ……うん。 |
ヒューバート | では、その家族の大黒柱に見張りを任せてぼくたちは休むとしますか。 |
アスベル | お、おい、ヒューバート。 |
パスカル | あたしも、いろいろ準備しておこーかなー。弟くんのテント行っていい ? |
ヒューバート | はぁ ! ? なにを言ってるんですかあなたは ! |
パスカル | いや、ちょーっと手伝ってほしいことがあるんだけど。 |
ヒューバート | だからって、どうしてぼくのテントに……。 |
シェリア | はいはい、ヒューバートが困ってるでしょ。パスカルの手伝いなら私がするわ。 |
パスカル | おお、ありがとー。 |
リチャード | 相変わらず、パスカルさんは面白いな。あれを自然にやってるんだとしたらヒューバートも苦労するね。 |
リチャード | ……アスベル ? どうかしたかい ? |
アスベル | え ? ああ、少し考え事をしていて……。 |
マリク | ひとりで考え込むなよ、アスベル。言葉にできそうになったら、誰かに話すといい明日の作戦までにはまだ時間がある。 |
リチャード | そうだね。一人で抱え込まないで僕たちのことも頼ってくれ。 |
アスベル | ありがとうございます、教官。ありがとう、リチャード。 |
マリク | さて、二時間で交代する。それまで見張りを頼んだぞ。 |
アスベル | はい、教官。 |
シェリア | アスベル。 |
アスベル | シェリア……まだ寝てなかったのか ? |
シェリア | うん、パスカルを手伝ってたらなんだかタイミングを逃しちゃった。 |
シェリア | だから、私も一緒に見張りでもしようと思って……邪魔、だった ? |
アスベル | そんなことない。話し相手がいてくれると助かるよ。 |
シェリア | そう、よかった。……さっきリチャードから聞いたのだけど何か悩んでいるの ? |
アスベル | ……シェリアはリトルクイーンとは分かり合えると思うか ? |
シェリア | え ? |
アスベル | ラムダと分かり合えた――いや、今もわかり合おうとしているところだけど、同じようにあの子とも争わずにすむ方法があるんじゃないかと思って。 |
シェリア | 村人を盾にしたり、ヴェイグたちを操ってるのよ。話し合うことができるのかしら……。どうしてそう思ったの? |
アスベル | 花を守ったんだ。 |
シェリア | 花を ? |
アスベル | あの時、俺たちと戦うことよりもクロソフィの花を守ることを優先しただろう。よほど大切だったんだろうな。 |
アスベル | 花が好きなら大切なものを守りたい気持ちがあるのならわかり合えるかもしれないと思ったんだ……。 |
シェリア | ……そうね。アスベルらしいわ。 |
ソフィ | …………。 |
アスベル | さて、そろそろ交代の時間だ。教官たちを起こし……て……。 |
シェリア | アスベル ! ? |
アスベル | これは……急に眠気が……まさか……。 |
シェリア | 私も、なんだか眠く……。 |
ソフィ | アスベル ! シェリア ! |
リトルクイーン | ……ようやく眠ったか。 |
ソフィ | あなたは…… ! |
キャラクター | 7話【星の子供たち10 リトルクイーンを追って】 |
ソフィ | どうして、ここに……。 |
リトルクイーン | ここは、わたしの森。迷い込んだ者は、深い眠りに落ちる。 |
ソフィ | やっぱり罠だった…… !でも、アスベルたちはわたしが守る ! |
リトルクイーン | フォドラの子よ。あなたと争うつもりはない。 |
ソフィ | わたしはフォドラの子なんかじゃない。 |
リトルクイーン | あなたはフォドラの子。フォドラより生まれフォドラに還る。それが定めであり正しい循環。 |
リトルクイーン | わたしたちは、ヒトを滅ぼすため生み出された。その役目を果たさなければならない。 |
ソフィ | 勝手に決めないで。わたしはアスベルたちといる。それに、あなたの言ってることはおかしい。 |
リトルクイーン | …………。 |
ソフィ | 人を滅ぼしたいのに人と一緒にいる。それも、たくさん。 |
リトルクイーン | この世界で、わたしの存在は変化した。もはや分体を増やすことができない。その代わりに、強いヒトの個体を── |
ソフィ | だったら、村の人たちは ?戦えない人たちをどうして集めるの ?花を育てさせて、なんの意味があるの ? |
リトルクイーン | それは……。 |
ソフィ | あなたが言っている事はなんだか変だよ。 |
リトルクイーン | ……ヒトの言葉は曖昧すぎる。 |
ソフィ | だから、わかり合えた時が嬉しいの。 |
リトルクイーン | 理解できない。だけど、それもふたたび一つになればわかる。痛みも、喜びも、すべてわたしに変わる。 |
ソフィ | そんなことにはならない !わたしはわたし、ソフィだから ! |
リトルクイーン | …… ! |
ベルベット | 下がっていて。ここはあたしが…… ! |
ヴェイグ | ……誰にもおまえを傷つけさせない。 |
リトルクイーン | フォドラの子を捕らえて。死なせてはダメよ。 |
ソフィ | また、他の人を使って…… ! |
アスベル | ソフィ ! 下がれ !──魔神剣 ! |
ソフィ | アスベル ! |
リトルクイーン | なぜ……おまえたちは眠っていたはず。 |
アスベル | ラムダに感謝しないとな。俺だけなら、今も眠っていたはずだ。 |
アスベル | 他のみんなもすぐに目を覚ます。パスカルが特別製の解毒剤を用意しておいてくれたからな。 |
アスベル | ソフィ、この二人は俺が引き受ける。彼女にまだ言いたいことがあるんだろう ? |
ソフィ | ……うん。気をつけて、アスベル。 |
アスベル | まかせろ ! |
ソフィ | あなたの相手はわたし。 |
リトルクイーン | …………。 |
ソフィ | わたしに言うことを聞かせたいなら力づくでくるしかないよ。 |
リトルクイーン | その必要は、ない…… ! |
ソフィ | ……しまっ ! ? |
リトルクイーン | 繋がる。一つに…… ! |
ソフィ | ここは……。 |
? ? ? | ここは、どこ…… ? |
ソフィ | わたしは、わたし…… ? |
? ? ? | わたしって、なに…… ? |
ソフィ | わたし、あなた、わたし……ちがう存在。 |
? ? ? | わからない。 |
ソフィ | わたしは、ソフィ。アスベルがつけてくれた名前。 |
リトルクイーン | あああああああっ ! |
ソフィ | いまの……なに…… ? |
リトルクイーン | ちがう…… ! フォドラの子じゃ、ない ! |
ベルベット | 待って、ラフィ ! |
ヴェイグ | クレア ! ! オレから離れるな ! |
アスベル | どうしたんだ、急に ? |
ソフィ | わからない。でも……。 |
パスカル | おっまたせー !みんなも起きたよーって、もう終わってるー ! ? |
キャラクター | 7話【星の子供たち10 リトルクイーンを追って】 |
マリク | 妙だな。リトルクイーンはなぜ急に逃げたんだ。 |
アスベル | 俺にもよくわかりません。ソフィと接触したと思ったら急に。ひどく動揺した様子でした。 |
ソフィ | ……怖がってた。 |
ヒューバート | 怖がっていた ? いったい何を。 |
ソフィ | わからない。でも、触った時に感じた。たぶん、あの子の心……。 |
アスベル | 心か……。 |
ヒューバート | 兄さん、もしかしてまた話し合いたいなんて言い出すつもりじゃないでしょうね。 |
アスベル | ああ、そのつもりだ。 |
ヒューバート | やっぱり……いつもながら難しい方法ばかり選びますね。 |
シェリア | それは、アスベルだからよね。 |
リチャード | 今さら言っても無駄だよヒューバート。アスベルはそういう人だろう。 |
ヒューバート | わかっています。子供の頃からさんざん付き合わされたんですから ! |
ヒューバート | 兄さんはいつもそうです。こうと決めたら絶対に譲らない。そして周囲を巻き込むんです。 |
シェリア | ほんとね。私たちいつも付き合わされてた。 |
リチャード | だけど、そのおかげで僕は救われたよ。 |
マリク | オレもだ。 |
パスカル | あたしは退屈しなくていいけどねー。 |
ソフィ | うん。いつも大変。でも、いいこともたくさんあった。 |
アスベル | なんだかみんな言いたい放題じゃないか ? |
ヒューバート | 当然でしょう。文句くらい言わせてもらいますよ。なにせ、これからまた付き合わされるんですから。 |
アスベル | ヒューバート……。 |
マリク | そうと決まれば、さっそく準備だ。相手にはベルベットとヴェイグがいる。一筋縄ではいかんぞ。 |
パスカル | それについてなんだけどきっと二人とリトルクイーンを繋ぐ端末のようなものがあると思うんだよねー。 |
リチャード | なるほど、それを取り除けば元に戻ると。 |
マリク | それならば、手の打ちようはあるな。 |
ヒューバート | さっそく作戦を立てましょう。 |
アスベル | みんな……。 |
シェリア | みんな、アスベルと同じ気持ちなのよ。 |
シェリア | リトルクイーンも私たちのいた世界から生まれた存在なんだから、私たちで説得しましょう。きっとわかり合える……。 |
ソフィ | アスベル、わたしもあの子を止めたい。わたしはわたし、フォドラはフォドラ。ぜんぶ同じにするなんておかしい。 |
アスベル | ソフィ……ああ、俺もそう思う。 |
ラムダ | ……おい。 |
ラムダ | アレのことをなぜそこまで気にかける ? |
アスベル | アレってのは、リトルクイーンのことか ? |
ラムダ | おまえたちが付けた呼び名などどうでもいい。もとよりアレに個という概念はないのだからな。 |
アスベル | それも、フォドラにいた頃の話だろう。今はもう違う。おまえと同じようにな。 |
ラムダ | 我が、変わったというのか…… ? |
アスベル | そうだ。コーネル博士はおまえにヒトの言葉や考え方を教えてくれただろう?そうやって、今のおまえがある。 |
アスベル | リトルクイーンもきっと同じだ。今はまだ真っさらな赤ん坊のようなものなんだ。新しい世界で、自分の行き場をなくしている。 |
アスベル | だから、フォドラやソフィに執着するんだと思う。 |
ラムダ | まだ赤ん坊だから今のうちに教え込もうというのか。 |
アスベル | 言い方は悪いけど、まあそんなところだ。 |
ラムダ | 狡猾だな。そうやって自分たちの手駒を増やすか。 |
アスベル | せめて、友達と言ってくれ。それに俺は最後はあの子自身に見つけてほしいと思ってるよ。 |
ラムダ | 見つける…… ? |
アスベル | やりたいこと、大切なもの、なんでもいい。自分がどう生きて、なにをするのか── |
アスベル | 俺はずっと親父が俺の生き方を勝手に決めているように感じていた。 |
アスベル | 実際、親父は俺に後を継いで欲しかったんだろう。だけど、騎士になると決めた時も止めはしなかった。親父ならいくらでも手を回せたはずだ。 |
アスベル | もっとちゃんと話せばよかった。思ってることぜんぶ打ち明ければよかった。 |
アスベル | そして、親父の気持ちを知りたかった。 |
アスベル | ヒト同士でも、親子でもこんなにすれ違うんだ。おまえやリトルクイーンとわかり合うのはもっと大変だろう。 |
アスベル | だから、コーネル博士もおまえにいろんなことを教えて自分の考えや想いを伝える方法を身につけてほしかったんじゃないかと思うんだ。 |
ラムダ | ……あやつは、我に「生きろ」と命じた。 |
アスベル | 命じたんじゃない。願ったんだ。生きてほしいと。 |
アスベル | 家族、だから。 |
ラムダ | 家族……我とコーネルが……。 |
アスベル | だから俺も、おまえやリトルクイーンに言いたい。 |
アスベル | 生きろ。自分を見つけるために。 |
ラムダ | ……いいだろう。その口車に乗ってやる。 |
ラムダ | だが、そうやって見つけたものが結局、ヒトを滅ぼすことだったらどうする ? |
アスベル | その時はまた止めにいくさ。何度でも。 |
キャラクター | 8話【vsリトルクイーン】 |
マリク | 夜が明けたな……。 |
アスベル | みんな、準備は整ったか ? |
パスカル | もちろん、ばっちりこーんだよ ! |
ヒューバート | パスカルさんの奇妙な言い回しはともかく抜かりはありませんよ。 |
シェリア | アスベルは ?ちゃんと休めた ? |
アスベル | ああ、問題ない。 |
リチャード | では、出発にあたってひと言たのむよ。 |
アスベル | ひと言って、いったい何を言えばいいんだ ? |
ソフィ | なんでもいいよ、アスベル。 |
アスベル | ……わかった。 |
アスベル | これは、きっと俺たちがけりをつけなければならないことなんだろうと思う。だから、カタを付けに行こう。俺たちの手で ! |
リトルクイーン | くる……あの子が……わたしを壊しにくる……。 |
ベルベット | 大丈夫よ、ラフィはあたしが守るから。 |
ヴェイグ | そうだ。ここには近づけさせない。オレたちが食い止める。 |
ヴェイグ | だから、安心して眠ってくれ……クレア。 |
リトルクイーン | 強い、ヒト……。わたしを守る力が必要……あの子のように。 |
ヒューバート | ずいぶんと、奥まで来ましたね。 |
リチャード | 思ったより抵抗が弱いな。 |
マリク | 懐深くまで誘い込んで、一気に囲むつもりかもしれん。アスベル、油断するな。 |
アスベル | はい、教官。 |
ソフィ | ……来る。 |
シェリア | ソフィ ? |
マリク | ついに来たか ! |
ヒューバート | 二人を傷つけず、身体のどこかにある端末を見つけ出す……でしたよね ? |
パスカル | そうそう。きっと脳に近くて神経の束が多いところたぶん首筋とかにくっついてるよ。 |
リチャード | あの二人を相手に背後をとれなんて簡単に言ってくれるね。 |
シェリア | でも、やるしかないわ ! |
リトルクイーン(分体) | ヒトは、危険。 |
リトルクイーン(分体) | 強い個体。 |
リトルクイーン(分体) | 守りなさい、わたしたちを。 |
リチャード | くっ ! 村人たちを盾にするつもりか ! |
マリク | 大丈夫だ。こうなることは予想していた !パスカル ! 頼む ! |
パスカル | キュピーン ! まっかせて~ ! |
パスカル | 山脈をも震撼させるこの一撃。金星の力を借りて、いま必殺の~ |
ヒューバート | 前置きが長すぎです !早く投げてください ! |
パスカル | えー、わかったよー。投げますよー。……えい。 |
リトルクイーン(分体) | これ、は…… ! ? |
パスカル | ふっふ~ん、昨日の眠たーくなるやつ。ちょちょちょいっと採取して利用させてもらったよん。 |
ヒューバート | これで、操られていた人たちも眠ったはず……。 |
ヒューバート | ……なんて、都合良くはいきませんか。 |
リチャード | だが、村人を盾にされなくなっただけでも充分だ。 |
アスベル | ああ、俺たちの目的は戦うことじゃない。リトルクイーンを止めることだ。誰かが傷つくのは見たくない。 |
リトルクイーン(分体) | 小賢しい。 |
リトルクイーン(分体) | やはり、数だけでは。 |
リトルクイーン(分体) | ヒトにはヒトで対抗する。 |
シェリア | うそ、アスベルになった ! ? |
ラムダ | ……擬態だ。こんな能力まで獲得したとはな。 |
アスベル | ラムダ、どういうことだ ? |
ラムダ | 簡単だ。お前たちを強敵と認めたのだ。多くのヒトを操るより、ヒトの真似をする方が効率的だとでも思ったのだろう。 |
ラムダ | だが、これでわかった。あれは本体ではない。倒しても問題ないだろう。 |
アスベル | なるほど……みんな、アレは偽物らしい。本物のリトルクイーンはこの先にいる ! |
マリク | さながら、女王を守る三人の騎士といったところか。 |
リチャード | ロマンチックな例えだね。とはいえ、確かに紛れもなく騎士だ。 |
アスベル | だけど、なんでよりによってあの格好なんだ。あれは親父の大礼服だぞ。 |
ソフィ | たぶん、わたしの記憶を見たから。あの時のアスベル、すごく嬉しそうだった。だから、よく覚えてる。 |
シェリア | だって、アスベル。 |
アスベル | う……、見られてたのか。確かに、あの服に袖を通した時は少し親父に認められたような気分になったよ。 |
アスベル | そうだ。ただ、認めてほしかったんだ。だから俺は乗り越えなければいけない。 |
アスベル | 親父と、親父に反発するだけだった過去の自分を !いくぞ、みんな ! |
キャラクター | 9話【vsリトルクイーン】 |
リトルクイーン | う、うう……。 |
ヒューバート | 彼女が、本当のリトルクイーン……。 |
シェリア | すごく、怯えてるわね。 |
アスベル | ああ、俺たちを怖がってるんだ。無理もない。 |
リチャード | 説得はできそうかい ? |
アスベル | わからない。でも、誠心誠意話してみるしか……。 |
ソフィ | アスベル、わたしが話したい。 |
アスベル | ソフィ……わかった。まかせるよ。 |
ソフィ | うん。 |
ソフィ | ……怖がらなくても大丈夫だよ。 |
リトルクイーン | ……ヒトの子は強い。世界を滅ぼす恐ろしい生き物。わたしは、わたしは……。 |
シェリア | フォドラは人のせいで滅びかけたんだもの。怖くて当然よね……。 |
ヒューバート | フォドラの核がリトルクイーンを生み出したのは人への恐れだったのかもしれませんね。 |
リチャード | 怒りや憎しみは恐怖の裏返しでもある。理不尽なことや悲しいことから心を守るために。 |
ソフィ | この世界にたった一人で、怖かったんだよね。ずっとフォドラに還りたくて、一人が嫌で自分と同じ仲間を探してたんだね。 |
ソフィ | わかるよ。わたしもずっと一人だったから。 |
ソフィ | 一人でも、平気だと思ってた。でも、アスベルやみんなに会って、知ったの。 |
ソフィ | 誰かといることの温かさ。一人じゃないことが、すごく嬉しいって。 |
リトルクイーン | ひとり……ひとりは……いや。どうしてこんなに胸が苦しいの…… ? |
ソフィ | その気持ちは「寂しい」っていうんだよ。 |
リトルクイーン | さみ、しい…… ? |
ソフィ | そう。他にもたくさん教えてあげたいことがあるよ。楽しいとか、嬉しいとか……。 |
ソフィ | ほら、こうやって手を繋ぐと温かいこととか。 |
リトルクイーン | あたたかい……。 |
ソフィ | 違っていても、同じじゃなくても一緒にいられる。アスベルが教えてくれた。 |
ソフィ | 一つになるんじゃなくて、家族になろう。わたしと。そのために……あなたに名前をあげる。 |
リトルクイーン | 名前…… ? |
ソフィ | 私はソフィ。あなたの好きなクロソフィからアスベルがつけてくれたの。 |
リトルクイーン | ……ソフィ。 |
ソフィ | うん、そうだよ。それがわたしの名前。あなたの名前も考えてあるの。 |
ソフィ | あのね、あなたの名前は── |