キャラクター | 1話【百禍狂嵐1 潜入】 |
| これは未来の物語。互いの信念がぶつかり合った死闘の果てに辿り着くは無限の極致。 |
| その幕間の物語を今ここにーー |
コーキス | (……よし、看守は全員気絶したな。ここまでは計画通りだ。あえて捕まったことで懐にも潜り込めた) |
コーキス | (それにしても帝国は監獄島も研究施設として利用していたなんてな。また侵入が難しい場所を選んでくれたもんだ) |
コーキス | (とにかく、ボスから命じられた帝国施設の破壊工作を、早く片付けるか。えっと、この先は警備が薄いルートのはず――) |
帝国兵β | 誰だ。 |
コーキス | ! |
帝国兵β | …………。 |
コーキス | (あ、あぶねぇ……。何とか隠れたけど牢に逆戻りするところだった) |
コーキス | (けど、どういうことだよ。思ってたよりも警備が多いぞ……。くそ、一人で倒しきれる数じゃないし……) |
帝国兵β | 侵入者を発見。 |
コーキス | なっ ! ! まだいたのか ! ? |
? ? ? | 重ね陽炎 ! ! |
コーキス | えっ……その技は ! ? |
ロクロウ | 久しぶりだな。コーキス。元気にやってたか ? |
コーキス | ロクロウ様 ! ? |
マギルゥ | なんと、アジトを離反した裏切り者の不良鏡精がおるではないか~ ! |
エレノア | コーキス。この人の言葉を気にする必要はありませんよ。後で私からキツく言っておきます。 |
コーキス | マギルゥ様、エレノア様 !どうしてここに……。 |
ビエンフー | ボクたちもいるでフよ ! ! |
ライフィセット | カロル調査室にコーキスの情報が入って監獄島に詳しい僕たちが、急ぎ派遣されたんだよ。それにしても、まさかこんなに帝国兵がいるなんて。 |
アイゼン | 以前ここに来たときに作っておいた秘密の通路が役に立ったな。 |
ベルベット | わざわざケリュケイオンにいるあんたを呼んだ甲斐があったわ。男のロマンもたまには役に立つのね。 |
アイゼン | ロマンとはそういうものじゃない。何度説明すればわかる。 |
エレノア | とにかくコーキスが無事でよかったです。敵を倒しながら一度撤退しましょう。 |
コーキス | みんな…………ありがとう。もうアジトの仲間じゃないのに……俺のために、こんな危険な場所にまで来てくれて……。 |
アイゼン | 礼を言われる筋合いはない。俺は帝国を潰してやりたいから来ただけだ。特にリビングドールの技術や研究に関わるものならば、見過ごすわけにはいかん。 |
ライフィセット | 監獄島ではリビングドールの研究が行われてるって情報だったからね。 |
ライフィセット | 意思を封じて相手を傀儡にする技術……こんな聖寮みたいなやり方、僕も許せないよ。 |
ベルベット | あたしも自分のために来ただけよ。ミッドガンド領で、ある噂を聞いたからその調査のついでにね。 |
コーキス | 噂 ? |
ベルベット | それよりも、今はとにかく目の前のことに集中しなさい。 |
ロクロウ | ちなみに俺はベルベットへの恩返しだ。だから同じく礼は不要だぞ。 |
マギルゥ | 儂は暇つぶしじゃ。お主がどうなろうとどーでもいいからのう。謝礼金があるというなら受け取るが ? |
コーキス | あ、あれ……ここにいる中で、純粋に俺を心配して来てくれたのってエレノア様だけ……。 |
エレノア | すみません……。皆、好き勝手で……。 |
コーキス | いや、別にいいんだ。それもベルベット様たちらしいしさ。みんな相変わらずみたいでよかったよ。 |
ライフィセット | 待って、誰かいるよ ! |
? ? ? | ヒ……ヒヒヒヒ……。 |
コーキス | この声は……。 |
グラスティン | ヒヒヒ、何やら騒がしいと思って来てみれば上等な黒髪が二人もいるじゃないか。 |
コーキス | グラスティン ! ! |
ベルベット | こいつが黒髪狂いのドブネズミか。 |
グラスティン | 人様の土地に潜り込んできたドブネズミはお前らの方だろう ? |
グラスティン | 黒髪の二匹は俺の腑分け用マウスにする。実験用マウスにする予定の鏡精と共に捕獲しろ。他の肉どもは一匹残らず駆除だ……やれ。 |
帝国兵β隊 | はっ ! ! |
コーキス | くそっ……グラスティンだけじゃなく帝国兵もまだこんなに……。 |
アイゼン | ちまちま倒す手間が省けた。ここで全員蹴散らすぞ。 |
ロクロウ | 応。またどっちが多く倒せるか勝負だ。 |
エレノア | 一応言っておきますが遊びじゃないんですからね。 |
ベルベット | 倒してくれればどっちだっていいわよ。フィー、援護頼むわよ。 |
ライフィセット | うん ! |
コーキス | ……心配の必要もなかったか。ベルベット様たちがいれば百人力だ。 |
マギルゥ | さあ、皆のもの ! 腕の見せ所じゃぞ ! |
ベルベット | あんたも手伝いなさい ! さあ、いくわよ ! ! |
キャラクター | 2話【百禍狂嵐2 大太刀の男】 |
ベルベット | 邪霊雷牙 ! |
帝国兵β | ――ぐはっ ! ! |
コーキス | さすがベルベット様たちだ……。あれだけいた帝国兵をあっという間に倒しちまうなんて……。 |
マギルゥ | 元の世界では死神を連れて行動していたからのう。この程度の修羅場は慣れっこじゃ。もっとも、この程度で終わるという保証はないがな。 |
エレノア | 不吉なこと言わないでください。それよりもグラスティンを追いましょう。ここで倒しておくのが賢明ですよ。 |
アイゼン | …………。 |
ライフィセット | アイゼン。どうかしたの ? |
アイゼン | ……いや、少し妙だと思ってな。何故、帝国兵たちはリビングドール化されている。本来ならば、こいつらを処置する必要はないはずだ。 |
ロクロウ | 言われてみれば……帝国の兵士ならリビングドール化しなくても警備や巡回ぐらいの命令なら普通に従うはずだもんな。 |
ベルベット | それに、数も気になるわ。これだけの兵士をリビングドール化するには時間も労力もかかるはず。 |
コーキス | えっと……つまりどういうことだ ? |
アイゼン | 何が起こるかわからん。油断するなという意味だ。 |
マギルゥ | おっと。黒髪コンビや。お主らにご執心のドブネズミがおるぞ。 |
グラスティン | 黒髪を振り乱しながら必死に俺を追いかけて来るなんて、そそるじゃないかぁ。そんなに切り刻んで欲しかったのか ? |
ベルベット | 余裕ぶってるけど、その先は行き止まりよ。さっさと降伏しなさい。そうしたら一突きで殺してあげる。 |
ロクロウ | 俺は抵抗してもらっても構わないぞ。お前は変態だが腕はいいからな。もう少し斬りあっていたい。 |
マギルゥ | どちらにしても結末は同じことじゃがな。まさに袋のネズミというわけじゃ。 |
グラスティン | ああ。そうだな、ドブネズミども。これに懲りたらエサを見た時罠がないかを確認することだ。 |
エレノア | それはどういう―― |
ライフィセット | 床に術式が ! ? |
コーキス | な、なんだこれ ! ? |
アイゼン | くっ……間に合わん。コーキス、お前だけでも―― |
コーキス | ――うわっ。 |
グラスティン | チッ……一匹すり抜けやがったか。だが、まあいいとしよう。今はこのお楽しみ風景を目に焼き付けないとなあ。 |
ベルベット | からだ、が……。 |
エレノア | ……うごか、ない。 |
ビエンフー | ……で、フ。 |
グラスティン | これで捕獲完了だぁ。 |
一同 | ぐあああっ ! ! ! ! |
コーキス | みんな ! ! |
コーキス | グラスティン ! 何をした ! ? |
グラスティン | ……ひひひ。さあ、肉人形ども。鏡精狩りの時間だ。 |
アイゼン ? | …………。 |
コーキス | ……アイゼン様 ? |
アイゼン ? | 摩天楼 ! ! |
コーキス | うわっ…… ! ! |
コーキス | そ、そんな……まさかさっきの変な術で一度に全員リビングドールにしたってのか ! ? |
グラスティン | この場所には罪人を拘束するための術式があちこちに施されていたからな。俺の技術と組み合わせて利用させてもらったんだよ。 |
グラスティン | それで完成したのがこの量産型リビングドールγ。こいつらは俺の新しいオモチャって訳だ。まだ試作段階で改善の余地があるけどな。 |
コーキス | つまり……新しいリビングドールってことか ! ? |
グラスティン | ……そう言ってるだろう。馬鹿と会話をしても一ミリも興奮しないな……。それよりは黒いネズミで遊ぶとするか。 |
グラスティン | まずは女の黒髪の方からだ。この丸出しの腹を正中切開して内臓を引きずり出す……。ふううう、高ぶるなあ ! |
グラスティン | 男の黒髪の方はどうするか……。まず皮をはいで、むき出しの筋肉を解体しようか。ヒヒヒヒヒ……。 |
二人 | …………。 |
コーキス | ベルベット様 ! ! ロクロウ様 ! ! |
グラスティン | ひゃはは ! 両手に黒髪かあ !せっかくの機会だから、意識のあるまま二人まとめて―― |
グラスティン | チッ……。デミトリアスからの魔鏡通信か。さすがに三回も無視すると面倒なことになるか。……仕方ない。奴のところに顔を出してくるか。 |
コーキス | 待て、グラスティン ! |
グラスティン | リビングドール共、命令だ。俺が帰ってくるまでにそいつを捕らえておけ。それと、もう一匹のネズミもな。 |
一同 | 了解。 |
コーキス | あっ、おい ! 待て、グラスティン !みんなを元に戻せ―― |
エレノアγ | 裂駆槍 ! |
コーキス | しまっ……剣が弾かれて ! ! |
マギルゥγ | ブレイズスウォーム ! |
ライフィセットγ | カレイドイグニス ! |
アイゼンγ | 蜃気楼 ! |
コーキス | はぁはぁ……よ、容赦なさすぎだろ。ここは一度あの扉から港に逃げて……。 |
コーキス | そんな !なんで扉が開かないんだ ! ? |
エレノアγ | 後は私たち二人で対処します。 |
マギルゥγ | お主らは侵入者を探せ。 |
アイゼンγ | 了解した。 |
コーキス | くそっ……どうすりゃいいんだ。とりあえず武器……武器……確かあの倉庫にいくつかあったな。 |
コーキス | 武器……なんでもいいから武器は…………ああもう、この太刀でいいや ! |
二人 | 追い詰めた。 |
コーキス | や、やるしかないか……。 |
? ? ? | おっ。ようやく見つけたぜ。坊主、悪ぃがそいつを返しちゃくれねぇか ? |
コーキス | えっ……だ、誰 ! ? |
エレノアγ | 侵入者を発見。 |
シグレ | なんだ。エレノアとどこぞの魔女じゃねぇか。お前らいったい何やって―― |
エレノアγ | 雷牙轟閃 ! |
シグレ | おっと、いい挨拶だな。いきなり仕掛けてくるとはよ。 |
ムルジム | シグレ、待って。彼女たち様子がおかしいわ。 |
シグレ | ……みてぇだな。意思を封じられた聖隷みたいになってやがる。 |
シグレ | 坊主 ! ここでこいつらに斬られちまってもいいのか ?嫌なら、はやくその大太刀をよこせ。 |
コーキス | えっ ! ? あ、ああ ! |
シグレ | 感謝するぜ !んじゃまあ、こいつらを片付けるとするか ! |
コーキス | あの大太刀を片手で振るえるのか ! ?いや……けど、待ってくれ !いくらなんでもその二人を相手にするのは―― |
ムルジム | 心配ないわ。彼は聖寮でも三人しかいない特等対魔士。そして剣士なら知らぬ者はいないほどの大剣豪。ランゲツ家当主のシグレ・ランゲツ、その人だから。 |
コーキス | シグレ……ランゲツ ! ? |
シグレ | 肩慣らしにはちょうどいい !久しぶりに斬り暴れようぜ、號嵐 ! ! |
キャラクター | 3話【百禍狂嵐2 大太刀の男】 |
シグレ | 安心しな…… |
シグレ | 峰打ち、だぁっ ! ! |
二人 | うっ…… ! ! |
コーキス | つ、強えぇ……。 |
シグレ | 坊主。怪我ねぇか ? |
コーキス | 坊主じゃない。俺はコーキスだ。怪我はしてないけど……。 |
シグレ | おいおい。何、警戒してんだよ。別にお前のことを斬りゃしねぇよ。 |
コーキス | 俺、あんたのこと知ってる。ロクロウ様の兄貴だろ。詳しくは知らないけど確か、敵対してたって聞いた。 |
シグレ | あいつとも知り合いか。まさかお前も業魔どもの仲間か ? |
コーキス | ……業魔どもって言い方なんかベルベット様たちを見下してるみたいで嫌だ。 |
シグレ | 業魔を業魔って言って何が悪い。まさかお前も業魔か ?気配が普通の人間のそれじゃねぇよな。 |
コーキス | 俺は鏡士から生まれた鏡精だ。業魔じゃない。 |
シグレ | 鏡士 ? 鏡精 ?そんなの聞いたことねぇぞ。ムルジム、お前は知ってるか ? |
ムルジム | あたしも知らないわ。前にも話したけどやっぱりここは、あたしたちがいたウェイストランドとは世界の仕組みから異なる場所なんじゃないかしら。 |
シグレ | みてぇだ。お前の推測がいよいよ現実味を帯びてきたぜ。 |
エレノア | うっ……。 |
マギルゥ | ここ、は……。 |
ビエンフー | ビエ……。 |
シグレ | おっ、目を覚ましやがったな。 |
エレノア | あなたは…‥……シグレ様 ! ? |
マギルゥ | 何故お主がここにおる ! ?とうとう化けて出おったか ! ?怨敵退散南無阿弥陀仏 ! |
シグレ | おいおい。人を幽霊扱いするとは何事だ。わざわざ助けてやったっていうのによ。 |
エレノア | ……助けて ?ハッ、そういえば私達は……。 |
コーキス | ああ。グラスティンの仕掛けていた術でリビングドールγにされてたんだ。 |
エレノア | リビングドールγ ? |
コーキス | 量産型のリビングドールだってさ。詳しくは後で説明するよ。 |
マギルゥ | なるほどのう。ともかく儂らはリビングドールγにされたと。 |
コーキス | ああ。俺だけじゃ手も足も出なくて困ってたところをシグレ様が助太刀してくれたおかげで二人を元に戻せたんだよ。 |
マギルゥ | なんじゃと ! ? つまり儂らは対魔士に救われたというのか ! ?これでは災禍の一味の名折れではないか ! |
エレノア | メンツを気にしている場合ですか !リビングドールγのこともそうですがシグレ様も具現化されていたことの方が重大ですよ ! |
シグレ | だから、リビングドールγだの具現化だのお前らさっきから何を話してんだ。 |
ムルジム | よければ、あたしたちにもわかるようにこの世界のことや、どうしてあたしたちがここにいるのか説明をしてくれないかしら。 |
コーキス | もちろんいいけど……俺、難しい話は苦手なんだよな。今はカンペも持ってないし……。 |
エレノア | では、私から説明させていただきます。ひとまずここは安全なようですしね。 |
マギルゥ | シグレや、これで貸し借りはチャラじゃぞ !マギルゥ奇術団の談合はタダではないのじゃからな ! |
シグレ | 別に貸しを作ったなんざ思ってねぇよ。エレノア、いいから話せ。今ここで何が起こってるかもな。 |
エレノア | わかりました。 |
キャラクター | 4話【百禍狂嵐3 恩返し】 |
エレノア | ……ということです。 |
シグレ | なるほどな。ウェイストランドでも異大陸でもない。ここは、正真正銘の異世界ってわけか。 |
ムルジム | そして、あたしたちは具現化された鏡映点なのね。おかげでだいぶ状況を理解できたわ。 |
エレノア | ……あの、一つよろしいでしょうか。どうしてシグレ様たちは監獄島に ?ここに具現化されたわけではないですよね。 |
シグレ | 號嵐のためだ。 |
ムルジム | この人、具現化された拍子に意識を失っちゃって、その間に號嵐を山賊に奪われたみたいなのよ。 |
ムルジム | その後は察しのとおり。號嵐の噂を聞いては、取り戻すためあちこち渡り歩いてたの。 |
シグレ | だが、この坊主のおかげでようやく號嵐を取り戻せたって訳だ。 |
コーキス | 坊主じゃなくてコーキスだ !何度も同じこと言わせないでくれよ ! |
シグレ | ははっ、お前、おもしれぇな。 |
ムルジム | シグレ。今はコーキスをからかって遊んでいる場合じゃないわよ。 |
ビエンフー | ムルジムの言うとおりでフよ。いつまでも倉庫の中で隠れながら雑談しているわけにはいかないでフ。 |
エレノア | まずは状況を整理しましょう。コーキスの話によれば、扉には結界が張られ監獄島の外には出られないとのことでしたね。 |
マギルゥ | 監獄島は収容施設じゃからのう。極悪人どもが逃げられないよう細工がしてある。扉の結界もそのひとつじゃろうな。 |
エレノア | 結界を管理している機器がどこかにあるはず。場所は恐らく、ここの最深部でしょう。 |
コーキス | 最深部……ならそこに帝国の研究機器も集中しているはずだ。ボスからの任務も果たせて一石二鳥だぞ。 |
マギルゥ | じゃがそうは問屋が卸すまい。リビングドールγどもがいるからのう。 |
エレノア | そうですね。リビングドールγにされたベルベットやライフィセットたちも助けてあげないと……。 |
シグレ | なんだよ。あの業魔もリビングうんちゃらってのにされちまってんのか。 |
エレノア | えっ……あ、はい……。ベルベットとライフィセットそれと私たちと同じ鏡映点が数名……。 |
シグレ | ほぅ。 |
エレノア | シグレ様はこの後どうなさるつもりですか ? |
シグレ | この坊主についてく。 |
コーキス | だから坊主じゃ……えぇ ! ?なんで俺に ! ? |
シグレ | 決まってるだろ。ランゲツ家の家宝である號嵐を見つけてもらった恩返しだ。 |
コーキス | 恩返し ! ? |
マギルゥ | うわぁ……弟も弟なら兄も兄じゃのう。 |
エレノア | ランゲツ家の教えなのは知っていますがまさかこんなことになるなんて……。 |
コーキス | あの……シグレ様、恩返しって本気か ? |
シグレ | ランゲツ家の当主が恩を忘れたとありゃあ一族の恥だからな。お前が何と言おうが付いていくぜ。 |
コーキス | 何だよそれ。そりゃあ協力してくれるのはすげぇ助かるけど……。 |
シグレ | 安心しろって。こいつら二人をどうにかするつもりはねぇよ。別に今戦わなくちゃならねぇ理由もねぇしな。 |
コーキス | えっと、エレノア様とマギルゥ様もいいのか ? |
エレノア | ……問題ありません。元々私達は利害が一致しているから行動を共にしている集団ですし今は少しでも戦力が欲しいところですから。 |
マギルゥ | 儂らは、じゃがな。 |
シグレ | ? |
エレノア | マギルゥ ! |
マギルゥ | おっと、口が滑ったわい。まずは歓迎の挨拶じゃな。特等対魔士殿、災禍の顕主一味へようこそ♪共に悪逆非道の限りを尽くそうではないか。 |
シグレ | おいおい、勘違いすんな。俺はこの坊主について行くだけだぜ。坊主がやれっつったら、お前らも斬る。 |
エレノア | わかっています。私たちの味方になったわけではないことぐらい。 |
マギルゥ | というわけで、コーキスや。この狂犬の管理は任せたぞ。儂らの命がかかっておるのじゃからな ? |
コーキス | わ、わかったよ……。正直いまいち信用しきれないけどとりあえずよろしくな、シグレ様。ムルジム様も。 |
シグレ | 応。 |
ムルジム | ええ、よろしくね。 |
マギルゥ | さてと、では気持ちをあらたに出発……と行きたいところじゃが。 |
アイゼンγ | …………。 |
エレノア | アイゼン ! |
コーキス | さっそく見つかったか ! |
シグレ | 何だよ。業魔の嬢ちゃんと、ちっこい聖隷以外は知らねぇ奴かと思ったらそういうわけでもねぇみたいだな。 |
エレノア | それは……。 |
シグレ | まぁいい ! とりあえずやりあおうぜ ! |
キャラクター | 5話【百禍狂嵐4 弟】 |
コーキス | いちおう俺たちから伝えておくことはこんなところだけど……アイゼン様、もう大丈夫なのか ? |
アイゼン | ああ……身体の具合も問題ない。置かれている状況も理解した。そして、こいつがこの場にいる理由もな。 |
シグレ | 聖隷のくせにアイフリード海賊団の副長。そのうえ、拳はもはや凶器の域ときたもんだ。お前、やっぱおもしれぇ聖隷だな。 |
アイゼン | 特等の位にありながら聖隷の意思を解放している聖寮きってのはぐれ物対魔士に言われるとはな。 |
アイゼン | まあ、あの義理堅い業魔の兄と言われればおかしくはないか。 |
シグレ | それじゃあ先に進むとすっか。業魔の嬢ちゃんとちっこい聖隷ついでに業魔のあいつも待ってるからな。 |
エレノア | シグレ様……そのことですが……。 |
シグレ | 相変わらず隠し事が下手だな。特命を受けてスパイやってた時からそこだけは全然変わってねぇ。 |
アイゼン | シグレ。ロクロウをどうする気だ ? |
シグレ | リビングうんちゃらにされてんだろ。なら答えは一つだ。はやく元に戻してやらねぇとな。 |
一同 | …………。 |
シグレ | なんだよ、お前らのその顔は。坊主もそれが望みなんじゃねぇのか ? |
コーキス | うん……ただ、ちょっと意外だったからさ。シグレ様って意外と優しいんだな。俺、てっきり斬り捨てるものかと思ってたよ。 |
シグレ | バーカ。斬るのは助けた後だ。 |
マギルゥ | なるほどのう、これも兄弟の愛……って、そういうオチかい !てっきり泣かせる話かとおもったわい ! |
シグレ | リビングうんちゃらってのはあいつ本人じゃねぇ。そんなあいつを斬っても面白くねぇからな。 |
マギルゥ | まぁ、斬れるうちに斬っておくのも生存戦略的にはアリかと思うがのう。 |
エレノア | マギルゥ ! |
シグレ | ……おい、お前ら。まだ隠してることがあるみてぇだな。 |
コーキス | 隠してること ? |
エレノア | それは……。 |
アイゼン | 俺たちはお前よりも未来の時間軸から具現化された。つまり、ここにいるロクロウはすでにお前を斬ったロクロウだ。 |
シグレ | ! |
エレノア | ちょっとアイゼン ! ? |
アイゼン | 助けられた借りは返した。 |
コーキス | ちょ、ちょっと待ってくれ。ロクロウ様って……元の世界でシグレ様を……実の兄貴を斬ったのか ! ? |
エレノア | ……コーキスもそこまでは知らなかったのですね。 |
マギルゥ | まあ、こやつらにバレるのも時間の問題じゃったろうしちょうど良い機会じゃろ。 |
エレノア | それはそうかもしれませんが……。 |
シグレ | そうか……未来であいつは、俺を斬ったか……。 |
ムルジム | シグレ……。 |
シグレ | ムルジム……聞いたよな ? |
シグレ | 面白れぇ ! !こいつはとんでもなく面白くなってきやがったぜ ! ! |
キャラクター | 6話【百禍狂嵐9 戦う理由】 |
シグレ | さあ、早く先に進もうぜ。 |
コーキス | シグレ様。さっきからすげぇ楽しそうだな。 |
シグレ | 当たり前だろ。あいつが待ってるからな。はやく助けて、斬り合いてぇ。 |
コーキス | 斬り合う、か……。 |
シグレ | なんだよ。文句でもあるのか ? |
コーキス | そういうわけじゃないけど……実の弟が相手なのにどうしてシグレ様はそんなに楽しそうなんだ。 |
コーキス | ロクロウ様は夜叉の業魔だからまだわかるけどシグレ様はすげぇ強いけど人間なのにさ……。 |
シグレ | 業魔も人間も関係ねぇよ。ただ強い奴だから斬りてぇ。それが剣士ってもんだ。 |
エレノア | そうなのでしょうね。事実ロクロウはシグレ様を斬りたくて斬りたくて業魔になったと言っていましたし。 |
アイゼン | コーキス、これは流儀というものだ。たとえ世間一般に非難されることであろうとその流儀を曲げることはできん。 |
コーキス | それもわかっちゃいるけど……。 |
マギルゥ | そうじゃろうなぁ。お主も鏡精ともあろうにご主人を裏切り家出中の同族じゃし。 |
コーキス | うっ……それは……。 |
エレノア | 人には譲れない想いがあります。それは人間も聖隷も業魔も同じ。もちろん鏡精だってそうなのでしょう。 |
エレノア | コーキスが出ていった理由は知りませんし聞くつもりもありません。もしかしたらコーキス自身もまだはっきりとわかっていないのかもしれない。 |
エレノア | けどコーキスが自分で決めたことなら少なくとも私たちは責めたりしませんよ。 |
コーキス | エレノア様……。 |
マギルゥ | さすが聖寮を裏切って災禍の顕主についた元テンナンバーのエリート対魔士様が言うと言葉に重みがあるのう。 |
シグレ | いやぁ、まさか俺もエレノアがガチのガチで裏切るとは思ってなかったぜ。 |
エレノア | マギルゥだけじゃなくシグレ様まで……。からかわないでくださいよ。 |
コーキス | そ、そうか……エレノア様も色々あったんだな。 |
エレノア | ですが、ひとつだけ言わせてください。私、自分の想いは裏切ってませんから。 |
シグレ | おっ、言うようになったじゃねぇか。アルトリウスの石頭にもそのツラを見せてやりてぇぜ。お前はやっぱ、ずいぶん変わったみてぇだ。 |
エレノア | ええ、聖寮にいた頃の私だったらロクロウとシグレ様のことも理解できなかったでしょう。 |
エレノア | ですが、今ならその想いを理解できます。兄弟であろうと二人が出会えば戦いは避けられない。ですから、私は止めたりしませんよ。 |
シグレ | そうしてくれると助かるぜ。自分を斬った相手と斬り合える。こんな面白ぇ勝負、やるなって方が無理だからな。 |
アイゼン | ロクロウも同じだろう。邪魔すれば斬られても文句は言えんな。 |
シグレ | あいつはガキの頃からずっと俺を斬りたがってたからな。まあ、そのたびに返り討ちにしてやってたけどよ。 |
シグレ | キララウス火山で待っていた俺よりも更に強くなった俺を見たら、あいつはまた斬りたくなるはずだ。今のうちに剣の腕に磨きをかけておかねぇとな。 |
エレノア | シグレ様……。 |
アイゼン | ふっ……お前もある種の兄バカのようだな。 |
シグレ | 兄バカだぁ ? なにか勘違いしてんじゃねぇのか。俺が剣の腕を磨くのは自分のためだ。自分を斬ったあいつを斬るためにな。 |
ムルジム | そうかもしれないけどあなたが兄バカなのは間違ってないと思うわ。 |
シグレ | おい、ムルジム。そりゃあどういう意味だ ? |
ムルジム | わかってるくせに。 |
コーキス | 流儀は流儀としてシグレ様も弟であるロクロウ様のこと大切に思ってるんだな。 |
シグレ | まあ、対魔士と業魔、それに互いに剣士ではあるが兄弟ってのは変わらねぇからな。 |
マギルゥ | 家の伝統に従い、先代シグレであった母は斬ってもその後転生しドラゴン化しかかっていた母は斬らない。まったく、お主らしい流儀じゃな。 |
シグレ | さあ、何のことだかな。 |
アイゼン | お喋りはそこまでだ。来るぞ。 |
ベルベットγ | …………。 |
コーキス | ベルベット様 ! |
シグレ | お次は災禍の顕主か。あいつはエレノアと同じアルトリウスの弟子でもあったな。こいつは楽しみだぜ。 |
マギルゥ | エレノアよ。リビングドール化されているとはいえ一度敗れた相手と戦えるかえ ? |
エレノア | あんな意思のないベルベットなんて恐れるに足りませんよ。 |
マギルゥ | ま、それもそうじゃの。じゃがあやつ一人ではないようじゃぞ。 |
ライフィセットγ | …………。 |
エレノア | ライフィセット ! |
アイゼン | チッ……ライフィセットもいやがったか。あの二人が相手となると油断はできん。 |
シグレ | 面白くなってきやがったな !さあ、一気に片付けようぜ ! ! |
キャラクター | 7話【百禍狂嵐10 乱月】 |
ライフィセット | ファーストエイド ! |
ベルベット | ありがとう、フィー。もう大丈夫よ。アイゼンたちから事情も聞いたしそろそろ出発しましょう。 |
アイゼン | 残るはロクロウだけか。 |
ライフィセット | たぶん研究機器や結界の制御機がある場所を守ってるんじゃないかな。 |
コーキス | ロクロウ様を元に戻したら研究機械や結界の制御器もぶっ壊してはやく監獄島から脱出しよう。 |
エレノア | そうですね。グラスティンを討つにしてもここで待ち伏せをするのは得策ではありません。まだ監獄島に仕掛けがあるかもしれませんから。 |
マギルゥ | もうリビングドール化されるのは懲り懲りじゃからなぁ。あの変態が戻ってくる前に全て片付けようぞ。 |
アイゼン | ああ。だが次に会った時は、この俺が殺す。 |
ベルベット | 悪いけど、早いもの勝ちよ。 |
アイゼン | 上等だ。 |
ライフィセット | シグレも黒髪だしグラスティンには気をつけてね。 |
シグレ | 俺は斬られるのは好きじゃねぇからな。たとえ髪だろうと斬られるつもりはねぇよ。斬ろうとしてきたら、逆にそいつを斬ってやる。 |
マギルゥ | いや、微妙に論点がズレているのじゃが……。お主もロクロウのようなことを言いよるのう。 |
シグレ | そうか ? |
ベルベット | さすがはランゲツ家の男ね。 |
エレノア | それには同意します。 |
シグレ | そりゃあ俺はいちおう当主だしな。 |
ベルベット | ……シグレ、ひとつ言っておく。 |
シグレ | 何だ ? |
ベルベット | あんたたちがまた斬り合うのは勝手だし別に止めようとは思わない。 |
ベルベット | ただ、だからといってみすみすロクロウをくれてやるつもりはないわ。 |
シグレ | ほう。 |
ライフィセット | うん……シグレには助けられた借りができたけどもし元の世界のように、また戦いになったら僕もロクロウにつかせてもらうよ。 |
アイゼン | 悪いが俺もだ。あいつとは釣りや昆虫採集に腕相撲まだまだ勝負がついてないことが山程あるからな。 |
エレノア | 私も夜桜あんみつの約束があります。ですからシグレ様、悪く思わないでくださいね。 |
シグレ | なるほど。お前らは、ここでもあいつ側ってわけだ。 |
マギルゥ | コーキスや、お主の忠犬が大ピンチじゃぞ~。さあ、お主はどちらに賭ける ?フィッチ・ウィッチ・フィッチ ? |
コーキス | えっ……俺は……。 |
シグレ | コーキス。お前もあいつ側につけ。 |
コーキス | えっ ! ? |
シグレ | あいつは、こいつらとの旅で刀以外のもんも手に入れたみてぇだからな。 |
シグレ | だから、あいつには持ってるもの全部使わせる。俺はな、すげぇ腕とすげぇ武器を持った最高の状態のあいつと、斬り合いてぇのよ。 |
シグレ | それにな、こうなることをこの俺が考えていなかったと思うか ? |
コーキス | まさか……。 |
シグレ | 俺がこいつらを元に戻したのは坊主への恩返しでもあるがあいつと全力で戦うためでもあるんだよ。 |
アイゼン | やはりとんだ兄バカだ。 |
シグレ | だから俺自身のためだっての。 |
ライフィセット | けどシグレの覚悟、よくわかったよ。それにロクロウがシグレのことどうしても斬りたいって思う理由もね。 |
ベルベット | これで気にすることもなくなったわ。あんたへの借りを返すためロクロウ側について、あんたを討つ。 |
シグレ | 応 ! それこそ俺への恩返しだ ! |
コーキス | シグレ様……。 |
シグレ | 坊主、なにしけたツラしてんだよ。 |
マギルゥ | そうじゃぞコーキス。こやつの葬儀はもう少し先じゃ。その顔は後にとっておくんじゃな。 |
シグレ | おいおい。元の世界同様に俺が斬られると思ってんのか ? |
ベルベット | そう簡単にいかないのはわかってる。けど、ロクロウもこっちの世界でさらに腕を磨いてきたのよ。 |
シグレ | それは俺も同じだ。どうやって俺を斬ったか知らねぇが今度は俺が斬る番だぜ。 |
コーキス | 正直……俺にはどっちが勝つかはわからないけどさけど、間違いなくどっちかは……。 |
シグレ | 斬られることになるな。 |
コーキス | ごめん……俺、ベルベット様たちやシグレ様みたいにそこまで強くないみたいだ……。二人の流儀はわかってるつもりなんだけどさ……。 |
シグレ | いや、それだけわかってりゃ十分だ。 |
アイゼン | そしてその受け入れ難いという感情もお前自身のもの。受け入れられないのなら、受け入れなくて構わん。自分の舵は、自分で取れ。それだけだ。 |
コーキス | 自分の舵は、自分で……。 |
シグレ | ……坊主。お前、大太刀に興味持ってたな。もし俺が生き残ったら、剣の稽古に付き合ってやる。 |
コーキス | えっ、いいのか ? |
シグレ | 強くなりてぇなら、自分を鍛え上げるしかねぇ。なぁに、昔は弟たちの稽古によく付き合ってやってたから気にすんな。 |
シグレ | それに、これも恩返しだ。 |
ベルベット | もしあんたが生き残ったらあんたの恩返しも長くなりそうね。 |
シグレ | ランゲツ家の男は義理堅いんだよ。 |
ベルベット | 知ってるわ。だからロクロウにはまだまだ恩返しをさせるつもりよ。ランゲツ家の男らしくね。 |
シグレ | あいつが生き残ったら、だけどな。 |
マギルゥ | さあてと、とうとう最深部に到着じゃ。 |
シグレ | そこにいるんだろ。出てこいよ。 |
ロクロウγ | …………。 |
ライフィセット | ロクロウ ! |
エレノア | やはりリビングドール化されています。 |
シグレ | んじゃまぁ、はやく助けてやるとしようぜ !あいつを斬るためにな ! ! |
キャラクター | 8話【vsシグレ】 |
コーキス | お待たせ !ボスへの任務達成の連絡、終わったよ ! |
ベルベット | これで全員揃ったわね。 |
ロクロウ | シグレはこの先で待っているんだよな。さっそく進むとしよう。 |
マギルゥ | それにしてもまた火山か。別に平原などもっと戦いやすい場所でもよかろうに。 |
エレノア | いいじゃないですか。やはり二人の対決は火山ですよ。 |
ライフィセット | うん。僕もそう思うよ。 |
コーキス | ということは……元の世界でも火山で戦ったのか ? |
ロクロウ | そうだぞ。キララウス火山でシグレを斬った。 |
アイゼン | あの時、シグレは酌をしながら待っていたな。 |
マギルゥ | ということは……。 |
シグレ | 来やがったな、ロクロウ。まあ、一杯やろうや。 |
マギルゥ | やはり酌をしておったわ ! |
ロクロウ | では一献。 |
シグレ | ……背中の太刀、見せてみろ。 |
ロクロウ | ほらよ。 |
シグレ | ……この刀身あいつ、自分自身を刀にしやがったか。たいした野郎だな。 |
ロクロウ | ああ。その太刀はクロガネの数百年そのもの。そして、その名は―― |
ロクロウ | ――クロガネ征嵐。號嵐を征した刀だ。 |
シグレ | ……面白ぇなぁ ! !こいつで俺を斬ったのか ! ! |
ロクロウ | 號嵐を征してこその征嵐だ。だからこの世界で、もう一度お前を斬る。 |
シグレ | 今の俺は、お前に斬られた俺よりも、強ぇぜ。 |
ロクロウ | わかっている。だからこそ、お前を斬りたい。また、このクロガネ征嵐でな。 |
シグレ | 面白ぇ ! ! |
一同 | …………。 |
ロクロウ | 待たせたな。 |
ベルベット | それじゃあ、とっとと片付けましょう。悪いけど、また手を出させてもらうわよ。 |
ロクロウ | 応。 |
シグレ | 準備はできたか ? |
ロクロウ | こっちはいつでも大丈夫だ。お前もはやく枷を外せよ。 |
シグレ | それも知ってやがったか。いいだろう……ムルジム、外せ。 |
ムルジム | ―― ! ! |
シグレ | うおぉぉぉお ! ! ! ! |
コーキス | なっ ! ? 嘘だろ ! ?シグレ様、まだこんな力を隠していたのか ! ? |
マギルゥ | タコにもそのとおり !あやつは修行のため自分の霊力をムルジムの力で制限させておったのじゃよ ! |
アイゼン | 対アルトリウス用のとっておきだと抜かしていた。 |
エレノア | まだまだこんなものではありませんよ。 |
ライフィセット | コーキスも気をつけて ! |
コーキス | あ、ああ……。 |
シグレ | それでいい ! !正々堂々なんてぬかせるほど俺の剣は甘かぁねぇからな ! |
シグレ | お前の持ってるもん全てでこの俺にぶつかってこい、ロクロウ ! |
ロクロウ | 応 ! 1014……いや、何回目かなんて細かいことはどうでもいいよな、シグレ ! ! |
二人 | さあ、楽しもうぜ ! ! |
キャラクター | 9話【vsシグレ】 |
シグレ | ……っ、やるじゃねぇか !だがそんなもんじゃねぇだろ ! |
ロクロウ | ああ。まだお前に、俺の剣を見せていない。 |
シグレ | なら休んじゃいられねぇな !さあ、出し惜しみすんなよ ! |
ロクロウ | ああ ! 確かめてみろ !お前の命を賭けて ! ! |
シグレ | そっちこそな ! ! |
ロクロウ | これが―― |
ロクロウ | 俺の―― |
二人 | うおぉぉぉお ! ! ! ! |
ロクロウ | 剣だ ! ! |
シグレ | ! ? |
ロクロウ | 征嵐・黒鋼――――斬ッ ! ! |
シグレ | ―――― ! ! |
ロクロウ | ……………。 |
エレノア | やりましたか ! ? |
ロクロウ | ……………………いや。 |
シグレ | っ……さ、三刀……お前の剣、か……。や、やるじゃ……ねぇか……。 |
ロクロウ | …………わずかに浅かったか。俺もまだ未熟だな。 |
シグレ | だが……勝負あり、だぜ……。もう指一本……うごかせ、ねぇ……。意識を保ってるのが、やっと……だ。 |
ムルジム | ……シグレ。 |
コーキス | シグレ様……。 |
ベルベット | ロクロウ。今のあたしたちにはこいつを喰らう理由がないわ。あたしが喰らう相手は……あいつだけで十分よ。 |
シグレ | アルトリウス、か……。 |
ロクロウ | シグレ……ここでならお前の葬儀ぐらいはできそうだ。 |
シグレ | 遺言は、元の世界の俺から……聞いてるよな…… ? |
ロクロウ | ああ。號嵐のことも、ムルジムのことも、そして上意討ちのことも……一通り、お前との話はついている。 |
シグレ | なら……もう、言うことは、ねぇよ……。面白かったぜ、お前の剣……。 |
ロクロウ | ……そうか。 |
シグレ | やれ。 |
ロクロウ | ――――斬ッ ! ! |
コーキス | ――っ ! ! |
ベルベット | コーキス ! ? |
シグレ | ぼう、ず……。 |
ロクロウ | そこをどけ、コーキス ! !邪魔をするなら容赦はしない ! !たとえお前であろうと斬り捨てるぞ ! ! |
コーキス | 嫌だ ! 俺はどかない !ロクロウ様には悪いけどシグレ様は俺がもらっていく ! ! |
ロクロウ | バカなことを ! させるかよぉ ! ! |
エレノア | ロクロウ ! ! |
ベルベット | さがりなさい !今のロクロウは止められない ! ! |
ロクロウ | コーキス、どういうつもりだ ! ?前にも警告はしたはずだぞ ! ! |
コーキス | ロクロウ様に恨まれるのも覚悟のうえだ !こっちは人手不足だから――なッ ! |
ロクロウ | ――チッ ! なんだ、今のは ! ? |
コーキス | それに、シグレ様にはまだ恩を返しきってもらってない。剣の稽古の約束だってあるんだ。 |
ロクロウ | そんなこと知る、か―― ! ? |
ライフィセット | ロクロウ ! ? |
ロクロウ | か、身体が……うごか、ない……。さっきのは……毒針、か。コーキス、やりやがったな……。 |
コーキス | 正々堂々って言えるほど俺が歩むと決めた道は甘くない。恨んでいいよ、ロクロウ様。 |
ロクロウ | 別に恨みはしない……。だが、シグレをかばい続けるならお前は俺の敵だ……。 |
コーキス | ……うん。わかってる。 |
ロクロウ | けど……さっきのは見事だったぞ。お前がこんな決断をするとはな……。恐れ入ったよ、コーキス。 |
コーキス | ……え ? |
ロクロウ | 強くなりたいんだよな。ちゃんと、シグレに鍛えてもらえよ……。 |
コーキス | ……ロクロウ様。 |
コーキス | わかったよ。俺もシグレ様ぐらい強くなってやる。だから次に会う時は―― |
二人 | 存分に斬り合おう。 |
シグレ | へへっ……二人とも、いい悪い顔だ……。ああぁ……すげぇ、いい悪い顔……だ…………。 |
コーキス | シグレ様 ! ? |
シグレ | ちと、眠る……。あとは、頼んだぞ……コーキス。 |
ムルジム | シグレのことはあたしに任せて !だからコーキス、今はとにかくシグレを安全な場所へ運んで ! |
コーキス | わ、わかった !シグレ様の治療は俺の根城で ! |
ライフィセット | コーキス……。 |
アイゼン | 止めるな。これはあいつが選んだ道だ。 |
エレノア | ……そうですね。 |
マギルゥ | あやつも災禍の顕主一味から影響を受けすぎたようじゃ。ま、どーでもいいがの。 |
ベルベット | コーキス。待ちなさい。最後に一つだけ言っておくわ。 |
コーキス | ベルベット様 ? |
ベルベット | 別にあたしはシグレの件で咎めたりはしない。ただ、もしアルトリウスをかばうようなことをした時には―― |
ベルベット | ――あんたを、容赦なく殺すわ。 |
コーキス | ああ、わかった。その言葉、覚えておく。 |
ロクロウ | それじゃあ達者でな。シグレ、コーキス…………。 |