キャラクター | 1話【在りし日の過ち1 奇怪な事件】 |
リベラ | アニス……。イオン……。 |
アニス | そう ! 私がアニスで、こっちがイオン様。 |
リベラ | イオンサマ。 |
イオン | あ、【様】は名前ではないんです。イオン。僕はイオンです。 |
リベラ | イオン……。おぼえた……。 |
ルーク | すげーな、リベラ !ついこの間目が覚めたばっかなのにもうみんなの名前覚えられたんだな。 |
リベラ | ルーク……。……えっと、ほめてくれて、ありがとう。 |
ルーク | おお、ちゃんとしてる ! |
イオン | ルーク……。すみません。付き合わせてしまって。僕は造られた時に記憶の刷り込みがあったのでリベラの状態を正確には把握できていなくて……。 |
ルーク | いいっていいって。それにリベラはメチャクチャ覚えが早いぜ。すぐ歩けるようになったし、言葉だって話せるし……。 |
イオン | ええ……。もしかしたら刷り込みに似た何かが施されていた状態なのかも知れませんね。 |
イオン | ディストにリベラの状態を聞ければいいのですが今はそれどころじゃないでしょうから……。 |
リベラ | ………… ? |
ルーク | ああ、リオン警備部がディストの取り調べをしてるんだよな。おっかねーの。あいつら拷問とかしてそうだし。 |
アニス | リオン警備部って呼ぶとリオンに怒られるよ。眉間にお金挟めそうな程しわを寄せちゃったりしてさ。 |
ルーク | そうだった。「浮遊島警備部と言え ! 」って怒鳴られるな。 |
ガイ | ――お、ここにいたか。 |
リベラ | ……ガイ ? |
アニス | そう、ガイだよ ! リベラ本当にすごいね ! |
ガイ | え ? もう俺の名前を覚えてくれたのか ?ありがとな、リベラ。 |
リベラ | ありがとう。 |
ルーク | ところでガイ、何か用か ? |
ガイ | ああ……。ちょっと気になる話を仕入れてな。オールドラント領のことなんだが……。 |
ルーク | ……何かあったのか ? |
ガイ | あ、いや、領主サマと従騎士殿云々って話じゃない。グラスティンが出没してるんじゃないかって噂があるんだ。 |
アニス | え ? 黒髪マニアの ? |
ガイ | ああ。カロル調査室の方に情報が上がってきてるんだ。領都のダアトで妙な殺人事件が頻発してるって。 |
アニス | あー、わかった !ガイってば、またリタとパスカルのところをウロウロしてたんでしょ。ガイのえっち~ ! |
ガイ | あのなー !ちゃんと彼女たちとは社会的距離を保ってたし目当ては音機関……じゃなくて機械の方だ ! |
ルーク | それもどうかと思うけどな。 |
ガイ | どういう意味だ ? |
ルーク | 別に。人一倍彼女欲しいくせに、そういうとこが甘いってみんなが言ってたから。 |
ガイ | みんなって誰だ ! ?……っていうか、人をダシにして何の話をしてるんだ ! ? |
リベラ | ガイ……あまい ? |
ガイ | ほら見ろ ! リベラの教育に悪いだろ ! ? |
イオン | フフ……。ガイ、落ち着いて下さい。アニスもルークも、ガイをいじめてはいけませんよ。 |
アニス | ええ ! ?今回のはほとんどルークの犯行ですよ~ ! ? |
ルーク | 言い出したのはアニスじゃん ! |
イオン | 二人とも。 |
二人 | ……ごめんなさい。 |
ガイ | いや、別に謝ってもらうこともないんだが……。それより、さっきの殺人事件の件だ。 |
ガイ | 被害者が黒髪ばかりだって言うんで内偵の人員を集めるつもりだったらしくてな。 |
ガイ | オールドラント領のことだし俺たちで調べに行かないか ? |
ルーク | ダアトって、ジェイド像のあるとこだろ ?やべーな。もう一度アレを見てぇ…… ! |
アニス | そうだ ! 行こう行こう !大佐の銅像、あれからどうなったか超楽しみ !ティアとナタリアにも声をかけるでしょ ? |
ガイ | おいおい、ノリがピクニックになってるぞ。 |
イオン | 僕は遠慮しておきます。元々リベラが領主でしたから僕が行くと目立ってしまいそうですし。 |
アニス | そうして下さい。もしグラスティンがいたら危ないですし。 |
ルーク | ジェイドとアッシュはどうする ?ディストの取調中だろ ? |
イオン | 僕から二人に報告しておきますよ。 |
ガイ | まあ、ジェイドの旦那もダアトには近づきたがらないだろうしな。 |
ルーク | ひひひ、そうだよな。 |
アニス | だよねー ! |
リベラ | ………… ? |
ガイ | それじゃあ、全員支度をしてオールドラント領の転送ゲート前に集合だ。 |
ルーク | おう ! |
キャラクター | 2話【在りし日の過ち2 取り調べ】 |
リオン | おい、こいつは本当に人語が話せるのか ?会話が全然かみ合わないぞ。 |
アッシュ | 形は人間だが、人類かどうかはわからんな。俺はタコの可能性が高いと思っている。 |
ディスト | 何なんです ! ?さっきから失礼ですね、あなたたちは ! ? |
ジェイド | そうですよ。タコに失礼です。 |
ディスト | どういう意味ですか ! ? |
ジェイド | ……ああ、元の世界でもこういう尋問をした記憶が甦ってきました。本当に、あなたは私の人生のシミのようなものですねぇ。 |
ディスト | 私も思い出しましたよ。この場にピオニーがいないのには清々しますねぇ。 |
ジェイド | その点については同意しますよ。 |
ディスト | そうでしょうとも !金の貴公子ジェイドにふさわしいのはこの私―― |
ジェイド | リオン。どうせ殺しても死にませんから痛めつけてしまって下さい。私は仕事がたまっているので失礼します。 |
ディスト | 待ちなさい ! この薔薇のディスト様の取り調べという重責を担えるのはジェイドだけの筈ですよ ! ? |
アッシュ | ちっ、本当に面倒な奴だな……。 |
ジェイド | 連れてきたのはあなたですよ、アッシュ。自分で拾ったタコの面倒は自分で見て下さい。 |
リオン | 一理あるな。最低限の情報は得た。後はアッシュに任せる。このくだらない騒ぎに付き合う程、僕は暇じゃない。 |
ジェイド | リオンの言う通りです。アッシュ、後は頼みましたよ。 |
アッシュ | おい、待て死霊使い(ネクロマンサー) ! |
ディスト | そうですよ !ジェイド、私が何故帝国を出てきたのか不思議に思わないのですか ? |
ディスト | 我々の夢を叶える準備が整ったからなのですよ ! ? |
ジェイド | ! ! |
アッシュ | ……夢 ? 何のことだ、ジェイド。 |
ディスト | あなたには関係の無いことですよ、アッシュ。これはあの輝かしい時代を取り戻すための―― |
ジェイド | 『ここ』では無理な筈だ。レプリカ情報がない。仮にあったとしても……それでは『完璧』ではない。 |
ディスト | ええ、その通りです。ですが、私は見つけたのですよ。『完璧』に一番近い存在を。 |
ジェイド | ――アッシュ。行きましょう。 |
アッシュ | お、おい、話の途中だぞ ! ? |
ディスト | ま、待ちなさい ! ジェイド ! ? |
ディスト | ……何なんです !どいつもこいつもこのディスト様をないがしろにして ! |
ディスト | ……ちょっと。本当に誰もいなくなったんですか ? |
ディスト | ……誰か ! ? 誰かいないのですか ! ?取り調べを放棄するなんて職務怠慢ですよ ! ?ジェイドを呼びなさい ! ! |
リベラ | ……ジェイド ? |
ディスト | おや……導師イオン――ではありませんね。 |
リベラ | ぼくはリベラ。あなたは ? |
ディスト | ああ……導師イオンのレプリカですか。 |
リベラ | レプリカ ? |
ディスト | 私の名は薔薇のディストです。 |
リベラ | ばらのディスト。 |
ディスト | おや……なかなか賢いではありませんか。 |
リベラ | ばらのディスト…… ? ぼくのことしってるひと ? |
ディスト | ――ええ。あなたのことは誰よりも知っていますよ。 |
リベラ | イオン……いってた。ぼくのこと……ディストにききたいって。 |
ディスト | そうですか……。ではリベラ、私に協力しませんか ? |
リベラ | ………… ? |
キャラクター | 3話【在りし日の過ち3 死霊使い】 |
イクス | ――どうしたんです、ジェイドさん。それにアッシュさんも。ディストさんの取り調べの最中だったと思いますけど。 |
カーリャ | 何だかいつも以上に怖い顔ですね……。 |
ジェイド | 嫌ですねえ、カーリャ♪私はいつも温和な顔をしているじゃありませんか♪ |
カーリャ | ミ、ミリーナさまぁ ! ? 怖いですよ、あのメガネ ! ? |
ミリーナ | カーリャが刺激するようなことを言うからでしょ。 |
ジェイド | ――幸い、この部屋にいるのはあなた方三人だけのようですね。内密に話があります。 |
イクス | わ、わかりました。 |
ミリーナ | カーリャ。部屋の外に出て、人が来ないか見張ってちょうだい。 |
カーリャ | わかりました ! |
ジェイド | ありがとうございます。 |
アッシュ | おい、死霊使い(ネクロマンサー)。一体どういうつもりだ。 |
アッシュ | ディストの尋問を打ち切った理由をちゃんと説明してくれるんだろうな。 |
ジェイド | ええ。イクスとミリーナにも聞いておいて貰いたいのでここに場所を移しました。私の――罪について。 |
イクス | 罪……ですか ? |
ジェイド | 先程もアッシュが私のことを死霊使い(ネクロマンサー)と呼びましたがそれは元の世界で私につけられた不名誉な名前です。 |
ジェイド | 戦場で死体を持ち帰り、レプリカを作る実験に利用していました。レプリカ技術――フォミクリーの開発者は私なんですよ。 |
二人 | ! ! |
ジェイド | この世界で具現化という技術を知って驚きました。フォミクリーに似ている――いえ、正確には私が目指していたフォミクリーの完成形に似ていると。 |
イクス | フォミクリーは具現化とは違うんですね。 |
ジェイド | ええ。あなた方がルークから何処まで聞いているかはわかりませんが色々と差異があります。 |
ジェイド | 大きなところとしてはレプリカは被験者(オリジナル)の記憶を継承しないんです。それが……私にとっては問題でした。 |
ミリーナ | ……記憶を継承しない方が幸せかもしれませんよ。 |
イクス | うん……。 |
ジェイド | 作られた側はそうかも知れませんね。ただ、私が目指していたのは死者の復活だったので。 |
イクス | 死者の復活……。 |
ミリーナ | ………………。 |
アッシュ | ……それがディストの尋問打ち切りとどう繋がるんだ。 |
ジェイド | ええ、そうですね。話を戻しましょうか。実はオールドラントからの鏡映点候補のリストですが一人、意図的に外していた人物がいます。 |
イクス | え ! ? どうしてですか ! ? |
ジェイド | まず、その人物がはぐれ鏡映点として無作為に具現化される可能性が限りなく低かったからです。 |
ジェイド | はぐれ鏡映点はカレイドスコープの照準の甘さによる瑕疵です。その条件は概ね以下の二点と考えられます。 |
ジェイド | 『その世界の最初の鏡映点との時代の一致』もしくは『世界にとって重要である』という条件です。 |
ミリーナ | ジェイドさんいつの間にそんなことを調べていたんですか ? |
ジェイド | 能ある鷹は爪を隠すと言いますから。 |
アッシュ | 自分で言うか、普通……。 |
ジェイド | ツッコミがルークに似てきましたね。 |
アッシュ | う、うるさい ! |
ジェイド | 私とルークの場合、二人同時……という可能性もあるので慎重に検討しました。 |
ジェイド | しかし以前ゲフィオンの許可を得て、カレイドスコープを調査した際の情報から、鏡映点として先に抽出されたのはルークで間違いありません。 |
ジェイド | リストから外した人物はルークの誕生時には死亡しており、接点はないので第一の条件は除外されます。 |
ジェイド | まあ、時間跳躍できる世界なら条件も変わると思いますが……。 |
ミリーナ | もう一つの『世界にとって重要』っていう条件にも当てはまらないんですか ? |
イクス | そういえば、その条件のことはゲフィオンも言っていたけど具体的にはどういう基準なんでしょう。 |
ジェイド | ティル・ナ・ノーグからの観測の基準なので我々の世界で基準を作るのは少々難しいですが……。 |
ジェイド | 敢えて定義すればその人物が『直接』世界のあり方に変容をもたらす可能性があるか、でしょう。 |
ジェイド | ルークよりも過去の時代の人間はルークから見れば死者です。死者は直接世界を変容させることはまずあり得ない。 |
ジェイド | よほどの英雄的存在であれば話は別ですがリストから外した人物はそこまでではありません。 |
イクス | ……ジェイドさんにしては甘い気もしますけどまあ、わかりました。でも帝国が鏡映点としてピンポイントで具現化する可能性もありますよね。 |
ジェイド | そうですね。帝国がこのジェイド・カーティスという存在をどうしても手に入れて自由にしたい……と考えたならばあり得る話です。 |
ジェイド | まあ、私の能力を求められることは想像に難くありませんが、私というコマは中々制御が難しいですからね。 |
ジェイド | 能力的に格落ちしますが、ディストが帝国にいましたし帝国も私を引き入れる利点と不利益とを天秤にかければ具現化しない可能性の方が遥かに高いと考えました。 |
アッシュ | よくもそんな台詞をしゃあしゃあと言えるな。 |
ジェイド | 褒められると照れるのですがまあ、今のは全て言い訳です。 |
三人 | ! ? |
ジェイド | 自分の過去の話をしたくなかったので必要に迫られるまで黙っていました。 |
アッシュ | 貴様…… ! よくもまあぬけぬけと ! |
ジェイド | すみません。まあ、鏡映点リストの精度はその程度のものですよ。それに、私は今でもその人物が具現化されることはないと予測しています。 |
ジェイド | 帝国にとって私はそれほど重要人物ではありません。 |
ジェイド | そのつもりがあるなら、まず今のオールドラントの領主を利用してくるでしょうし。私には可愛い妹もいますので。 |
イクス | ああ……。そうか、そうでしたね……。けど、ディストさんを―― |
ジェイド | 帝国が ? 利用する ? ディストを ?逆ならともかく、それはないでしょう。 |
アッシュ | お前はディストを信頼しているのか軽んじているのかわからんな。 |
ジェイド | どちらでもありません。現実を見ているまでです。 |
イクス | ん ? でも、だったらどうして俺たちにその話をしてくれたんですか ? |
ジェイド | その人物の……レプリカの方なら色々な意味で具現化されている可能性があるからです。 |
イクス | レプリカ……。それってもしかして……ジェイドさんが……。 |
ジェイド | はい。私が甦らせたいと願い、作ったレプリカです。名前はゲルダ・ネビリム。子供の頃に通っていた私塾の先生です。 |
アッシュ | おい。まさかさっきディストが「見つけた」と言っていたのは、その先生とやらのレプリカなのか ? |
ジェイド | ……先生のレプリカは『処分』し損ねたので生きていたなら具現化されている可能性は高い。ディストの口ぶりからしても……十分あり得ますよ。 |
イクス | 処分って……そんな言い方……。 |
カーリャ | あのー……イオンさまが緊急のお話があると―― |
イオン | ――すみませんカーリャ、失礼しますよ。ジェイドとアッシュもここにいたんですね。丁度よかった。 |
イオン | イクス、ミリーナ。大変です。ディストが脱走しました。 |
四人 | ! ? |
ジェイド | そうですか…… ! |
キャラクター | 4話【在りし日の過ち5 ダアトにて】 |
ルーク | 何度見ても壮観だな……。聖人ジェイド像 ! |
ミュウ | ジェイドさん、大きいですの ! |
アニス | さっきお土産屋さんで聖人ジェイド像のキーホルダー売ってたよ !イオン様とリベラに買ってあげようかな。 |
ナタリア | あら、素敵ではありませんか。せっかくですから、ディストにも買ってあげたらどうでしょう。 |
ガイ | よせよせ、ナタリア。どんな酷い目に遭うかわからないぞ。 |
ティア | 大佐も……何だか気の毒ね。本心から嫌がっているみたいだから……。 |
二人 | うひひひひひ♪ |
ガイ | お前たちはそういうところばっかり気が合うなあ……。 |
アニス | だってねー ? |
ルーク | なー ? |
ナタリア | な、何ですの、今の悲鳴は ? |
ティア | あっちの方から聞こえたわね。 |
ルーク | あ、おい、ティア ! 待てよ ! |
ガイ | 俺たちも追いかけよう。 |
ルーク | ――どうした ? |
ティア | 駄目 ! ルーク、来ないで ! |
ルーク | え…… ? |
ティア | ……人が死んでるわ。かなり酷い状態よ。 |
ガイ | ――ルークたちはそこにいろ。わざわざ見なくていい。どれ……っと。 |
ガイ | 酷い状態だが……黒髪、じゃないな。聞いてた話と違うぞ。 |
ティア | ええ。ロゼの話だと、グラスティンは黒髪ばかりを狙って殺しているそうだからグラスティンが犯人……ではなさそうね。 |
街の住人 | あ、あんたたち……犯人を捜してるのか ? |
ガイ | ああ、何か知ってるのかい ? |
街の住人 | いや、俺も後ろ姿をちらっと見ただけだけど……あれは女だったと思うんだ……。 |
ルーク | ……いってぇ……。また頭痛が……。 |
アッシュ | おい、ルーク。どこにいる ! ? |
ルーク | アッシュ ! ? どこって……ダアトだよ。っていうか、魔鏡通信使えよ。毎度毎度便利に使いやがって。 |
ルーク | こっちはお前が回線繋いできた時じゃないと声を届けられないんだぞ。 |
アッシュ | 実際便利なんだ。仕方ないだろうが。それより、俺たちもオールドラント領に来た。できれば合流したい。 |
ルーク | 俺たち…… ? |
アッシュ | ……こっちの場所は伝えたぞ。 |
ジェイド | ありがとうございます。ところで……あちらで何かあったのですか ? |
アッシュ | ん ? いや、ルークの話は要領を得なくてよくわからないがグラスティンが犯人ではないとかなんとか……。 |
ジェイド | そういえば、ルークたちは殺人事件とやらの捜査のためにオールドラント領へ来たのでしたね。 |
イオン | はい……。グラスティンがこの領内でもむやみに人を殺めているのではないかと……。 |
ジェイド | しかしどうやらグラスティンではない……。そしてディストが逃げ出した先もオールドラント領、ですか。 |
アッシュ | まさか、殺人事件とディストが関係あるとでも言うのか ? |
ジェイド | ……いえ、ちょっと気になることがあるので。 |
アッシュ | ルークたちが合流するのに、まだ少し時間がかかる。思わせぶりに隠すぐらいならさっさと話せ。 |
ジェイド | あなたは気が短いですねぇ……。まあいいでしょう。ネビリム先生のレプリカのことを思い出していたんですよ。 |
イオン | ジェイドが作った最初の人間のレプリカ、ですね。ディストはやはり、そのネビリムさんのレプリカの元に向かったのでしょうか。 |
ジェイド | ええ……。そうだと思います。ただ、私が気になったのはディストのことではなく先生のレプリカのことなんですよ。 |
ジェイド | あの当時はまだ譜術の理論でレプリカを作っていたんです。 |
イオン | 僕やルークとは作り方が違っていたのですね。 |
ジェイド | ええ。ただ、そのやり方では一部の音素が欠落してしまう。 |
ジェイド | 無機物なら影響はないのですが、生物の場合は精神の均衡が保てなくなって、破壊衝動に襲われたりある種の能力だけが異常発達してしまいます。 |
ジェイド | もし先生のレプリカがこの世界にいるとしてもその部分がエンコードされていない可能性がある。 |
ジェイド | エンコードされていなければ、精神の均衡を求めて欠落している属性の音素を求めるのでは……と。 |
イオン | 音素を求める……というと具体的にはどんなことをするのですか ? |
ジェイド | 必要な音素が集まる土地などに行って吸収するか……或いは物や人に宿った音素を回収するか……。 |
イオン | ジェイド。まさかとは思いますが、オールドラント領で起きている殺人を、ネビリムさんのレプリカが行っていると考えているのですか ? |
ジェイド | 飛躍しすぎだ、と思いますか ? 確かに、この世界の殺戮者が事件を起こしているだけ、とも考えられます。 |
ジェイド | ですが、私の記憶の中にあるネビリム先生のレプリカは……そういうことをやりそうなのですよ。 |
ジェイド | それにグラスティンが犯人というのはどうも考えにくい。 |
ジェイド | 奴の傾向を考えると、現場に死体を残すのではなく相手を自分の好みの場所に連れ込んで殺人という行為を楽しみたいように思えます。 |
アッシュ | だが、この世界では音素も違う物にエンコードされているんだろう ? |
アッシュ | 仮に人を殺したところで音素を回収することはできないんじゃないのか ? |
ジェイド | そうですね。音素のエンコードに関しては前にアッシュとイオン様がローレライを呼んでくれたおかげで、ある程度の確証を得られました。 |
ジェイド | この世界で音素はキラル分子にエンコードされていると考えて問題なさそうです。 |
ジェイド | ただし、第七音素だけは精霊となったローレライが保有する音のアニマという形に置き換えられている。 |
ジェイド | つまり、この世界に音素はないがそこに宿る属性と近しいものは存在する。 |
アッシュ | アニマか……。自分に欠けている属性を他者のアニマを奪うことで補っている……というんだな。 |
ジェイド | まあ、あくまで予想でしかありませんがね。 |
キャラクター | 5話【在りし日の過ち6 追跡】 |
ルーク | はあ、やっと着いた……。道々アッシュから聞いたけどディストが逃げたってマジかよ。 |
イオン | はい。ルークたちが出かけたことをジェイドに知らせようと、リオ……浮遊島警備部のある別棟に行ったんです。 |
イオン | ですが、ディストが入っていた筈の牢屋の鍵が開いていて、ディストの姿はありませんでした。 |
ガイ | そもそもあいつはなんで浮遊島まで来たんだ ? |
ティア | それは……アッシュとアステルが……。 |
アッシュ | 俺はアジトに戻るついでに、奴を転送ゲートに押し込んだだけだ。奴は奴の目的を果たすために帝国を出たらしいからな。 |
ナタリア | ディストの目的とは何ですの ? |
ミュウ | きっとジェイドさんと仲良くすることですの ! |
ジェイド | ミュウ、おかしなことを言うとルークが酷い目に遭いますよ ? |
ルーク | 俺かよ ! ? |
ガイ | ははは、飼い主の責任って奴だな。 |
イオン | ……ジェイドさっきの話をしておいた方がいいのでは ? |
アニス | んんん ? 何かあったんですか ? |
ジェイド | ……そうですね。以前ルークには少し話をしたことがありますが皆さんにもお話ししておきましょう。 |
アニー | あの、リベラを見かけませんでしたか ? |
ミリーナ | リベラ…… ? いえ、見てないけど、どうかしたの ? |
アニー | 薬の時間なので部屋を訪ねたんですけど……何処にも姿が見えなくて。 |
イクス | リベラは最近目が覚めたばかりだからそんなに遠くには行けないと思うけど……。庭で遊んでるのかな。 |
カーリャ・N | 小さいミリーナ様、それにイクス様も……。あの、イオン様を知りませんか ? |
イクス | 今度はイオンか……。イオンならジェイドさんたちとオールドラント領に出かけたけど。 |
カーリャ・N | あの……イオン様宛のメモが転送ゲートの傍に落ちていたんです。 |
カーリャ・N | 子供のような字で『ごめんなさい、イオン。ぼくがつれもどします』と。 |
アニー | それ……リベラの文字に似てる。アニスさんが教えているのを横で見ていたから……。 |
カーリャ | もしかして連れ戻すって……ディストのことなんじゃ…… ? |
イクス | どうしてリベラが ?待てよ、もしかしてディストさんが脱走できたのはリベラが何かしたからなのか…… ? |
ティア | ……では、ディストが脱走したのもネビリムさんのレプリカの下に向かった可能性が高いんですね。 |
ジェイド | ええ、おそらくは。 |
ルーク | ……ジェイド、大丈夫か ? |
ジェイド | この世界に来てからというもの私は自分がやろうとしていたことの一つの形を見せられ続けていたようなものですからね。 |
ジェイド | 今更どうと言うこともありません。 |
ナタリア | ……私たちがこの世界にいるのもかつてミリーナだったゲフィオンとフィリップさんが世界とイクスを具現化したことが始まりですものね。 |
イクス | すみません、ジェイドさん。そっちにリベラはいますか ? |
ジェイド | リベラ……ですか ? いえ、いませんが……。 |
イクス | そうですか……。それじゃあやっぱり……。 |
アニス | リベラがどうかしたの ? |
イクス | それが……どうもディストさんを追いかけて行ったみたいなんだ。 |
ジェイド | ……しまった。計算よりディストの脱獄が早いのをもっと疑ってかかるべきでした。 |
ルーク | え ? どういうことだ ? |
ジェイド | ディストにはネビリム先生のレプリカの下に案内してもらう必要があったのでわざと警備棟から人を外したんですよ。 |
ジェイド | イオン様から連絡を貰った時にディストにしては随分手早く脱獄したものだと思ったのですが……。 |
ジェイド | 人がいないせいでリベラが警備棟に入り込んでしまったのでしょうね。 |
イオン | リベラがディストを脱獄させたと言うことですか ? |
アニス | リベラがそんなことする訳ありませんよぅ ! |
ジェイド | ええ。ディストが言葉巧みに利用したのでしょう。 |
イクス | だから「ごめんなさい、イオン」なのか。ジェイドさん、俺たちもリベラ捜索のためにそっちに向かいます ! |
? ? ? | はーっはっはっはっ ! やはり私の予測通りでしたよ ! |
ルーク | な、何だ ? この声 ? |
ガイ | あ ! ? もしかして魔鏡型盗聴器か ! ?パスカルがこの間作ってた ! |
ジェイド | ガイ……。そんなにパスカルといちゃいちゃしていてはアスベルの弟くんに睨まれてしまいますよ。 |
アニス | ガイってば、やっぱりハレンチ~♪ |
ミリーナ | ガイさん…… ! まさか、そういうことですか ! ? |
イクス | ミリーナ、そういうときだけ前のめりになるなよ……。やっとガイさんに来た春なんだから温かく見守らないと……。 |
アッシュ | お前ら ! ガイを馬鹿にするな ! |
ガイ | アッシュ……。 |
ルーク | アッシュ……。お前本当にガイが好きだな……。 |
ナタリア | 子供の頃からそうですわ。いつも私をおいて二人で遊びに行ってしまって……。 |
ティア | ま、待って、みんな。情報が錯綜しているわ。ガイの話はひとまずおいておきましょう。 |
ガイ | その言い方だと、俺がこの場を混乱させているようにも聞こえるんだが……。 |
ティア | ああ ! ? そうよね、ごめんなさい……。 |
ガイ | 情報を整理するぞ。さっきの声はディストのものだ。ジェイドが魔鏡型盗聴器をディストに持たせたんだな。 |
ジェイド | まあ、持たせたというか、食べさせたというか……。 |
イクス | 食べさせた ! ? |
ジェイド | 何をしでかすかわからないので食事に混ぜておいたんです。 |
ジェイド | ああ見えてディストは大食漢で何でもろくに噛まずに飲み干しますからね。 |
アニス | 怖い……。大佐マジで怖い……。 |
イクス | けど……あの……。すぐに排出されるんじゃ……。 |
ジェイド | 胃壁に張り付いてはがれない仕様です。胃酸による損傷を考慮して定期的に摂取させる必要がありますが……。 |
ルーク | おえ……。もうその辺りでやめてくれ。 |
ジェイド | アジトにいた時の音声はカロル調査室に保存されるように調整してありますのでリベラと何を話したのかもそれでわかると思います。 |
イクス | わ、わかりました。データを確認してからそっちに向かいます。 |
ガイ | 今になって急にディストの声が聞こえたってことはディストが近くにいるってことだな。 |
ジェイド | ええ。受信機の範囲内にディストがいるのでしょう。 |
ガイ | よし、それじゃあ受信機の反応を見ながらディストの居場所を突き止めよう。それと俺は別にパスカルとは何もない。残念ながらね。 |
ルーク | また、そうやって残念とか余計な事言うから……。 |
アニス | あわよくば、この発言がパスカルの耳に入って……なんて考えてるんじゃないの~ ? |
ガイ | いい加減にしろーっ ! ! |
キャラクター | 6話【在りし日の過ち7 発見】 |
タルロウ型スパイ | ディスト様、報告ヅラ。ネビリム様のレプリカは大氷壁から消失したヅラ。 |
ディスト | そうですか。クロノスは持ち出せませんでしたがローレライでも代用はできたようですね。引き続き辺りの様子を監視しておきなさい。 |
タルロウ型スパイ | 了解ヅラ。 |
ディスト | ――さて、と。もう、息も絶え絶えではありませんか。出てきなさい、リベラ。 |
リベラ | ……ばらのディスト……かえって……。 |
ディスト | 浮遊島にですか ?あそこへは成り行き上行くことになったまでですよ。 |
ディスト | まあ、ジェイドにネビリム先生のことを話せるいい機会にはなりましたが。 |
リベラ | ……ぼくは……ぼくのこと……はなしてほしかっただけ……。おねが……い……。 |
ディスト | 牢屋の鍵を開けて貰う代わりにあなたのことを話してあげる約束でしたからそれぐらいは果たしてあげますよ。 |
ディスト | あなたを作ったのはグラスティンという……まあ、小者なりに頭は切れるもののつまらない男です。 |
ディスト | 技術そのものはジェイドと私が開発したフォミクリーを流用しただけですがね。 |
ディスト | ただ、あなたの様子を見るに刷り込み技術もある程度取り込んでいるようですね。 |
リベラ | ……………… ? |
ディスト | まあ、わかりませんか。 |
? ? ? | ……こんなところにお客様 ?ふふ、嬉しいわ。 |
ディスト | ! ? |
? ? ? | あら……あなた、もしかして……。 |
ディスト | はーっはっはっはっ ! やはり私の予測通りでしたよ !氷の中で眠る先生を見つけた時に、氷の壁そのものが何らかの封印であると看破したのです。 |
ディスト | ネビリム先生、お久しぶりです ! サフィールです !あなたを冷たい封印から解放したのはこのサフィール・ワイヨン・ネイスなのですよ ! |
ネビリム | サフィール……。そう、あなたがサフィール……。ふふ……大きくなったのねぇ、サフィール。あなた、一人なの ? ジェイドはどこ ? |
ディスト | 先生。待って下さい。あなたはまだ完璧ではない。ジェイドに会わせるのはあなたが完璧になってからです。 |
ネビリム | 完璧……。 |
ディスト | 我々の理論は間違っていなかった筈です。あなたは記憶を持っている。 |
ディスト | ――いや、時を巻き戻しさえすれば記憶が甦る筈です。あなたが殺された時の記憶が ! |
ネビリム | そう……。サフィール、あなたも私を完璧ではないというのね。 |
ネビリム | でも大丈夫よ。さっき補充してきたの。第一と第六の音素を。 |
ディスト | 欠落した音素……。いえ、ですが、この世界に音素は存在しない筈。……先生、『何』を補充してきたのですか ! ? |
ネビリム | だから第一音素と第六音素よ。そういえば……あなたも第一音素を帯びているわね。もちろん私にくれるわよね ? |
ディスト | ネビリム先生……何を―― |
リベラ | ディスト…… ! |
リベラ | ああ…… ! ? |
ディスト | な、なんであなたが私を庇うのですか ! ? |
ネビリム | あら……サフィール。駄目よ、死んでくれないと。私、あなたの第一音素が必要なの。 |
ディスト | ――くっ ! |
イクス | ディストさん ! 走れ ! |
ミリーナ | 私が霧でネビリムさんの動きを一時的に止めるわ ! |
ジェイド | 助ける義理はありませんが、仕方ありません。急ぎなさい ! |
ディスト | ――リベラ。背中に乗りなさい ! |
リベラ | ばらの……。 |
ディスト | 喋らなくて結構です。せいぜい生き存えなさい ! |
ネビリム | 待ちなさい、サフィール ! |
ネビリム | く……見えない。すぐそこに第一音素の塊があるのに…… ! |
キャラクター | 7話【在りし日の過ち8 実験】 |
イクス | ……ここまで来れば大丈夫かな。 |
ミリーナ | しばらくは霧が方向感覚を狂わせる筈だから大丈夫だと思うけど……。 |
ディスト | ………………。 |
アニス | ディスト ! リベラを降ろして ! 治療しなきゃ ! |
ディスト | ――ええ、そうでしたね。 |
ナタリア | ティア、一緒に治癒を ! |
ティア | ええ ! |
ジェイド | ……今、何を考えていたんです。 |
ディスト | 全てを諦めたあなたに話しても仕方の無いことです。 |
ジェイド | サフィール ! |
ディスト | だってそうでしょう。元の世界であなたはネビリム先生を甦らせることを諦めた。 |
ディスト | そして異世界に来て、新たな環境と技術が目の前にあるのに、あなたはそこのレプリカを延命させることを優先している。 |
ルーク | ………………。 |
ミリーナ | ……本当に諦めたんですか、ジェイドさん。 |
ジェイド | おや、あなたがそれを言いますか。 |
ルーク | ミリーナ ! ジェイドはネビリムさんのレプリカを作ったことを後悔してるんだ。 |
ルーク | ミリーナだって……ミリーナじゃないけどゲフィオンの記憶を受け継いでるなら……。 |
ミリーナ | ええ……。ゲフィオンも後悔した。でも彼女が後悔したのは、世界を滅ぼしてしまったこと。 |
ミリーナ | もし……世界に何の影響もなく、誰にも迷惑をかけることなく最初のイクスを甦らせる手段があったのなら……きっと迷わず手を伸ばした。そんな気がするの。 |
ルーク | そんな……。 |
ガイ | 死者の復活、か……。確かに、大切な誰かを失った人間は誰だって一度は考えるよな。 |
ティア | ええ……。大抵は手段がないからその先に進まないだけなのかも知れないわ。 |
アッシュ | それで救われた奴がアジトにもいるな。そのこと自体の是非を論じるつもりはない。 |
アッシュ | それぞれに事情があり、俺たちが口を出すことではないからな。だが、死者の復活が正しいことなのかどうかと言われると……首をひねりたくなる。 |
イオン | そうですね。それが倫理というものなのかもしれません。 |
ディスト | 倫理などというものは正義と同じくらい当てにはなりませんよ。 |
ディスト | こうあるべきと言う理屈は、いくらでも変えられる。時代や場所によっても簡単に変わってしまう。 |
アニス | もしも、本当に誰にも迷惑がかからないのなら……私も生き返らせたいって思うよ……きっと。 |
イオン | ………………。 |
イクス | 俺も、ずっと考えてます。この世界は……一度死んだも同然の世界でそれを甦らせてしまったのは、俺たちだから。 |
イクス | それが正しくないことだと言われても命を繋ぐ方法があるならそうしたいと思ったし一度甦らせたからには守りたい。 |
イクス | だから今日まで戦ってきました。けど……こうも思うんです。 |
イクス | 死者を蘇らせたいのは生きている人間のエゴで死んでしまった人たちがどう思っているかはわからないって。 |
ジェイド | ……それはあなたが死者の声を聞いたからですか ? |
イクス | そう、ですね。一人目の俺は……生き返れるとしてもそうしないような気がして。わからないですけど。それにナーザ将軍も、かな。 |
イクス | もちろん無念で生き返りたいと思う人も大勢いると思います。ただ、俺たちにはそれがわからないじゃないですか。 |
イクス | 誰が生き返りたいと思っていて、誰が死んだままでいいと思っているのか。それをこちらの都合でどうにかするのは、おかしいですよね。 |
ナタリア | 亡くなった方の気持ちを尊重するなら命を甦らせる手段があったとしてもそれを行使はしない……ということですわね。 |
ディスト | ならば、ネビリム先生の声を聞けばいいではないですか。 |
ディスト | この世界には時を操る精霊がいる。この場にはローレライを呼べる存在もいます。 |
ジェイド | サフィール。あれはレプリカだ。レプリカの時間を巻き戻したところで記憶は継承されていない。 |
ディスト | レプリカは被験者から作り出されるものですよ !レプリカの時を巻き戻すことは被験者に繋がる可能性がある。 |
ジェイド | 存在が消えるだけだ。 |
ディスト | あなたはそれを試したのですか、ジェイド ! |
ジェイド | ……試せば、お前は納得するのか ? |
ルーク | ジェイド ! ? |
ディスト | ええ。私は諦めないと決めています。 |
ジェイド | ……ならばそうしよう。ただし、それで上手くいかなければあのネビリム先生は私が息の根を止める。 |
全員 | ! ? |
ジェイド | お前とネビリム先生の会話は聞いていた。あれは……もう無理だ。 |
ジェイド | それに、無辜の人々を大勢手にかけている。改悛も望めないだろう。彼女を生み出した責任は私たちにある。 |
ディスト | いいでしょう。 |
ルーク | ジェイド ! ネビリムさんとちゃんと話してみた方がいいんじゃないか ?今、そんな結論を出さなくても―― |
ジェイド | ……ルーク。 |
ルーク | ごめん……。わかってる。俺が口を出すようなことじゃないって。 |
ルーク | でも俺も……劣化レプリカって言われて……それが本当なのもわかってるけどすごく嫌で……。 |
アッシュ | ………………。 |
ルーク | ネビリムさんだって、もしかしたら―― |
ジェイド | ルーク。わかりました。あなたに免じて話はしてみます。ですから……今回は私の好きにさせて下さい。 |
ルーク | …………うん。 |
キャラクター | 8話【在りし日の過ち10 師の元へ】 |
イクス | 今、ダアトまで戻ってきました。医療班にリベラを引き渡したら、そっちに戻ります。 |
アニス | リベラ、大丈夫そう ? |
ミリーナ | ええ。傷は深いけれど、急所は外れているしティアとナタリアの治癒術で傷口は広がらなかったそうよ。 |
ディスト | リベラが目覚めたらよく言い聞かせておきなさい。薔薇のディスト様はレプリカに守られるほど弱くはないと。 |
イクス | ありがとう、お大事にってことですね。伝えておきます ! |
ディスト | 何を言っているのです、あの鏡士共は…… ? |
アニス | イクスたちは善人だからさ、ディストが照れ隠しを言ったんだと思ってくれたんだよ。そんな訳ないのに。 |
アッシュ | あいつらはどうもディストを間違った方向に理解している節があるからな。 |
ジェイド | さあ、こちらはこちらでやることを済ませましょう。ディスト、ネビリム先生のレプリカは帝国が意図的に具現化したものではないのですか ? |
ディスト | 違いますよ。確かにデミトリアスをそそのかして試みはしましたがね。 |
ディスト | ジュニアの話では、すでに具現化されている形跡があるとのことでしたので、はぐれ鏡映点としてこちらにいるとわかったのです。 |
ガイ | それでしらみつぶしに捜したのか ? |
ディスト | 私はそんな非効率的なことはしませんよ。 |
ディスト | はぐれ鏡映点なら初期のカレイドスコープに具現化の痕跡があると思って調べたところそれらしい情報を見つけました。 |
ディスト | そこから具現化位置を割り出したところあの雪山の大氷壁に封じられていたのです。 |
ティア | でも、どうして封じられた状態で具現化されたんでしょうか。 |
ジェイド | 封印ごと具現化された……のでしょうね。そういえば、ネビリム先生のレプリカと遭遇したあの時一瞬でしたが妙な譜陣を見ましたが……。 |
ディスト | さすがはジェイド。あの譜陣に気付くとは。あれこそがネビリム先生のレプリカを封じていた封印であり、惑星譜術の譜陣ですよ。 |
ディスト | どうもマクガヴァン元帥がネビリム先生をロニール雪山に封じていたようなのです。 |
イオン | マクガヴァン元帥というのはセントビナーにいらしたあのご老人ですね。ジェイドの上官だった……。 |
ジェイド | ええ。――元帥が先生のレプリカを封じた……ということは封じるしかできなかったと言うことか。 |
ルーク | それって、ネビリムさんが倒せない程すげー強いってことか ? |
ジェイド | そうでしょうね。ディスト、惑星譜術に関する情報を教えて下さい。なるべく詳細に。 |
ナタリア | 惑星譜術って、なんですの ? |
ジェイド | 創世暦時代に考案された大規模譜術です。セフィロトを利用して星の力を解放する譜術ですよ。 |
ジェイド | もっともティル・ナ・ノーグにセフィロトがあるとは思えませんから、あまり意味は無いかも知れません。それでも何かの役に立つ可能性がありますからね。 |
アッシュ | ローレライの方はどうする。召喚する必要があるんだろう ? |
ナタリア | 以前アッシュとイオンがローレライを召喚した時は二人とも意識を失っておりましたわよね。 |
ナタリア | 同じように召喚するのでしたら二人を守るための戦力が必要ですわ。 |
アニス | もしネビリムさんのレプリカが本当に強いなら結構大変そうだなー。 |
ジェイド | そこはイクスとミリーナに任せましょう。 |
ガイ | やれやれ、色々と骨が折れそうだな。 |
ディスト | 私とジェイドの研究に協力できるのですから誇りに思って頂きたいですねえ。 |
ジェイド | 綿埃の分際で何を言うのやら。 |
ディスト | キィィィィ ! ?これから崇高な実験に赴こうというのに―― |
ジェイド | サフィール。あなただけが頼りです。早く惑星譜術の情報を聞かせてもらえませんか。 |
ディスト | ! ? |
ディスト | そうでしょうそうでしょう。最初から素直に教えを請えばいいのです。仕方がありません。それでは解説しましょう。 |
ルーク | ……ジェイド。 |
イオン | ルーク、ジェイドのことが心配なのはわかります。けれど、ジェイドにはジェイドなりの考えがあってディストの実験に協力したのだと思いますよ。 |
イオン | 信じてあげましょう。 |
ルーク | ああ……そうだよな。うん、俺、ジェイドのこと信じてるのに……何か色々考えちゃってさ。 |
ルーク | あと……ごめんな。またローレライを召喚させることになって。 |
イオン | ルークが謝ることではありませんよ。それに僕……今回は少しだけ怒っているんです。リベラを傷つけて……アニスを悲しませたあの人を。 |
イオン | 悩める人々を救い導く立場の者がこんな個人的な怒りを持つのはとても未熟で恥ずかしいことですけれど……。 |
イオン | ですから、僕が協力できることは何でもやるつもりなんですよ。 |
ディスト | いよいよです……。オールドラントでは叶わなかった時間の壁を超えて、『あの時の記憶』を持った私たちの先生を甦らせる。 |
ジェイド | まずはネビリム先生のレプリカを弱らせる必要があります。その後、ローレライを召喚しレプリカの時間を巻き戻させる。 |
ジェイド | ただし、ローレライは音の精霊です。時の概念を帯びてはいますが……預言の持つ性質を考えても本来は未来に対しての力が強い筈です。 |
ジェイド | 時の巻き戻しが上手くいかなかった場合は―― |
アニス | ネビリムを叩く、ですよね。任せといて下さい。リベラの分も殴っちゃる…… ! |
イオン | アニス……先走らないで下さいね。 |
ミリーナ | ……それじゃあ、霧を払うわね。 |
イクス | ああ。ミリーナ、頼むよ。 |
ネビリム | 感じるわ……。第一音素の気配……。戻ってきたのねサフィール。 |
ネビリム | それに……隣にいるのはジェイドよね。ふふ……怖いお顔になってしまったけれどそれでも面影が残っているわ。 |
ジェイド | あなたと話すことはありません。それでも念のために聞いておきますが大人しく投降する気はありますか ? |
ネビリム | あら、面白いことを言うのね。私はこれからあなたたちに宿る第一音素を吸収する。そして完全な存在になるの。 |
イクス | 第一音素って何のことです ? |
イオン | シャドウの属性を帯びた音素のことです。ですが、この世界では音素はエンコードされている筈なので……。 |
ミリーナ | シャドウの属性……。もしかしたらアニマの属性をそう感知しているのかも知れないわ。 |
ミリーナ | オールドラント大陸周辺のアニマはシャドウの属性を帯びているの。 |
ミリーナ | オールドラントから具現化された人もほとんどがシャドウ属性のアニマを持っている筈よ。 |
ネビリム | 何を言っているの ? |
ネビリム | まあ、いいわ。その金髪の女の子と銀髪の男の子からは微量だけれど第六音素を感じる……。やっと……第六音素を吸収できるわ。 |
ネビリム | さあ……私を完全にしてちょうだい ! |
キャラクター | 9話【vsネビリム】 |
ネビリム | く……。音素が足りない……。癒やさなければ……。 |
ジェイド | 今です ! |
イオン | アッシュ、手を ! |
アッシュ | わかっている ! |
イオン | 精霊ローレライ……。僕の呼びかけに応えて下さい。 |
ローレライ | ……アッシュ。暫しその身を借り受ける。 |
イオン | ローレライ。ネビリムのレプリカの時を巻き戻して下さい。 |
ローレライ | あの者にそれを施すのは二度目だ。 |
イオン | 二度目…… ? どういうことです ? |
ローレライ | あの者の封印を解くためディストがリベラを使って私を呼んだ。 |
イオン | それはリベラが領主だった頃の話ですね。二度目は危険と言うことですか ? |
ローレライ | 鏡映点は鏡写しの時の中にある。あの者とて同じ。重ねて時の音を纏えばどうなるかわからぬ。それでもよいか ? |
二人 | 構いません。 |
ルーク | ! ! |
ローレライ | 承知した……。 |
ネビリム | ああああああ…… ! ? |
マルクト軍兵士 | 一個中隊が全滅です ! |
マクガヴァン | ――ぬぅ……。このままでは倒すことも叶わぬか。ならば封じるしかあるまい。惑星譜術の譜陣を利用すれば、あの者を押さえられるじゃろう。 |
アニス | 何…… ? これ…… ? |
イオン | これは……レプリカであるネビリムの記憶…… ? |
ネビリム | 完全になる……音素さえあれば……私は……完全に……。 |
ネビリム | ああ……あああああ……―― |
ネビリム | ―――――――――― |
イクス | ネビリムさんの身体が消える…… ! ? |
ローレライ | この先は……無、だ。 |
ディスト | どういうことです、ローレライ ! ? |
ローレライ | このレプリカは消える……。その時には……虚無の壁があり被験者までは手が届かない。 |
ジェイド | ……やはりそうですか。 |
ディスト | ジェイド ! ? |
ジェイド | ティル・ナ・ノーグは虚無に包まれている。 |
ジェイド | 仮にレプリカの時間を巻き戻して被験者まで辿り着こうとしても、被験者そのものは虚無の外の世界にいるから手が届かない。 |
ジェイド | ディスト、あなたが考えた『レプリカの中にある筈の被験者の情報を甦らせる』という手法はこの世界で生まれたレプリカにしか適用できない。 |
ディスト | ……っ ! |
ルーク | ジェイド……。もしかしてこうなることがわかってて……。 |
ジェイド | ………………。 |
ローレライ | ……いけない…… !レプリカが力を取り戻して―― |
ナタリア | アッシュ ! ? な、何が起きたんですの ! ? |
ミュウ | ……怖いですの…… ! 何か怖いものが……。 |
ネビリム | 星の藻屑と消え去りなさい……ビッグバン ! ! |
ナタリア | アッシュ ! 危ない ! |
ルーク | ヤバい ! ? よけきれな―― |
アニス | イオン様 ! ! |
イクス | うわああああああああっ ! ? |
ジェイド | ――っ ! 私以外全滅ですか……。 |
イオン | いえ……。ジェイド、僕もいます。アニスが、僕を庇ってくれました。 |
ネビリム | ――うふふ……。案外しぶといのね。けれど二度目はないわ。 |
ルーク | ……ジェ……イド……。 |
ジェイド | ルーク ! ? |
ルーク | 悪い……。まともに食らっちまって……。けど……よかった……。ジェイドが……ネビリムさんを甦らせるつもりがなかった……って……。 |
ジェイド | ルーク ! ! |
ネビリム | まあ。怖い。怒っているのね。 |
ネビリム | ねえ、ジェイド。その子は完全なレプリカなの ?とっても大事なのね、そのレプリカが。だったら……私がその子の音素を吸収すればいいのかしら。 |
イオン | この光は……浄玻璃鏡の…… ! |
ジェイド | ――そのレプリカは、大事な実験の最中なんですよ。 |
ジェイド | お前に邪魔はさせない。 |
ネビリム | そう……。あなたは私を捨てて、その子をとるの。私が不完全だから。 |
ジェイド | お前が完全かどうかはどうでもいいことだ。 |
ジェイド | ――それより、ルークとの約束ですから一応聞いてあげましょう。 |
ジェイド | 投降するなら命を保証して差し上げますがどうしますか ? |
ネビリム | 命の保証 ? うふふふふ、それはこちらの台詞よ。私があなたたちに負けるはずがないわ。 |
ネビリム | だってもうここにはあなたとお供のレプリカしかいないのよ。 |
ディスト | ――それはどうでしょうね。 |
イオン | ディスト ! ? あなたも無事だったのですか ! ? |
ディスト | フン、これぐらいで倒れる私ではありません。薔薇のディスト様を甘く見ないでもらいたいですね。 |
ディスト | 実験の結果が出た以上ジェイドとの約束を守るしかありません。 |
ディスト | ジェイド、安心なさい。私がいるからにはたとえネビリム先生のレプリカだろうと―― |
アニス | ――アニスちゃん、ふっかーつ ! ! ! |
イオン | アニス ! ? |
アニス | ふっふっふっ !トクナガを盾にして、衝撃を吸収したんですよ。導師守護役を甘く見ないで貰いたいですね。 |
ディスト | アニス、それは私の台詞―― |
アニス | ネビリムだか何だか知らないけど、リベラを傷つけてルークに嫉妬して、イオン様をお供呼ばわりしてみんなを傷つけて―― |
アニス | ぶっ潰す ! |
ジェイド | ――だそうです。ツケを払って貰いますよ ! |
ネビリム | あら、それなら試してみましょうよ。本当にツケを払うのは……どちらなのかをね ! |
キャラクター | 10話【vsネビリム】 |
ネビリム | ……乖離……する……何か……何か……。 |
ジェイド | ――まさか ! |
ディスト | ……ええ、一度ローレライの力で封印の力を消し去りました。ですからあの譜陣は今や封印ではない。 |
イオン | 惑星譜術の譜陣そのもの……。それを使うつもりですか、彼女は ! |
ジェイド | ……………… ! |
アニス | ――イオン様 ! ディストも !気絶してるみんなを助けてここから離れましょう ! |
イオン | ですが―― |
アニス | いえ、大佐が ! |
ディスト | アニス、大丈夫です。だからこそ、少し距離を取るだけでかまいません ! |
ネビリム | 天の禍 |
ジェイド | 地の嘆き |
イオン | 同時に惑星譜術を ! ? |
ネビリム | あらゆる咎を送らんがため |
ジェイド | 今断罪の剣が振り下ろされる ! |
ジェイド | ――ネビリム先生。 |
ネビリム | ! |
ジェイド | ……滅せよ ! ! |
ネビリム | しま―― |
ネビリム | きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ ! ? |
ジェイド | ………………。 |
ディスト | ジェイド。あなたの中にもまだフォミクリー研究者としての矜持が残っていたのですね。だからこそ、試さずにはいられなかった。 |
ディスト | 最初期のフォミクリー技術にはレプリカの中に被験者の情報も含まれるという仮説の検証を。 |
ジェイド | ここでも無理なことはわかっていました。 |
ディスト | でもあなたは踏み切った。 |
ジェイド | 否定はしません。私の中にはいつも欲求があった。 |
ディスト | ならば何故です ?何故、フォミクリーに向き合わないのですか ! ? |
ジェイド | あなたが指摘したじゃありませんか。 |
ジェイド | 異世界に来て、新たな環境と技術が目の前にあるのに、ルークを延命させることを優先している――と。 |
ジェイド | ここにはこの世界固有の技術や異世界の技術がある。あらゆる可能性を試し、ルークが生きる道を模索する。 |
ディスト | それは……ネビリム先生を甦らせようとすることと同じです。 |
ジェイド | ええ、本質的にはね。けれどルークはまだ生きている。だから足掻きたいんです。そしてそれに結論が出た時に私は次に進めるのだと思います。 |
ディスト | それが回り道に過ぎないと知っていてあなたはその愚かな道を進むのですね。 |
ディスト | ――いいでしょう。私は待つことには慣れています。ですが私は、あのレプリカに何の思い入れもない。私は私で、あの瞬間の先生を甦らせてみせます。 |
ジェイド | それに何の意味がある ? |
ディスト | あなたと同じことですよ。あなたは時折目的に別の意味を被せようとする。私はそうではない。 |
ディスト | ですから結局は同じなのです。ルークレプリカを救った末に見つける物とネビリム先生を甦らせた時に見つける物は。 |
ジェイド | そうですね。 |
ミュウ | ご主人様 ! 大丈夫ですの ? |
アニス | んー……。雪がクッションになったおかげで打ち身は酷くないみたい。大丈夫じゃないかな。 |
イオン | ……アニスはすごいですね。 |
アニス | ほえ ? どうしたんです、イオン様。 |
イオン | ジェイドが惑星譜術を使おうとしたこと僕はすぐには気付きませんでした。アニスはすぐ気付いて、周りに被害が出ないよう動こうとした。 |
アニス | まあ、場数が多いですし……。それ言ったらディストの方がもっとすごくありません ?トカゲ椅子メガネのくせに。 |
イオン | ふふ……。アニス……ありがとう。 |
アニス | いやいや、そんな~照れちゃいますよう ! |
イオン | ……僕を……生き返らせたいと思ってくれて。 |
アニス | ! ? |
イオン | 黙っていた方がいいと思ってはいたんです。でも……アニスは僕を見る度に苦しそうだった。きっとモースがあなたに何かを命じたんですね。 |
イオン | でも、モースに何を命じられたとしても僕はアニスを恨むことはありません。 |
イオン | 僕はアニスにいつも救われていたんです。あなたに出会えて本当に幸せだったんですよ。 |
アニス | ………………。 |
イオン | だからあなたを苦しめていることの一つが僕なのだとしたら、せめてこの世界でだけは少しだけでもいいですからその苦しみを忘れて下さい。 |
イオン | そう言っても、あなたが背負い込む性格なのはよく知っていますけど。 |
アニス | ……駄目です。そういうの……ずるいです。 |
イオン | すみません。 |
アニス | ………………っ。 |
ミュウ | みゅうううう ? ご主人様、起きてるですの ? |
アニス | ……はあああああああ ! ?ルーク立ち聞き――いや、寝聞き ! ? |
ルーク | ば……それを言うなら狸寝入りだろ ! ? |
ジェイド | 何をいちゃついているんですか。 |
アニス | 大佐~ ! 酷いんですよ、ルークってば !乙女の秘密を盗み聞きしたんです ! |
ジェイド | なげかわしいですねぇ。ところで他の皆さんは…… ? |
イオン | ミリーナたちが先に目を覚ましてくれたので順番に手当てをして貰っているところです。 |
ジェイド | そうですか。では、そろそろ浮遊島に戻りましょうか。 |
アニス | ……ほえ ?大佐、ディストがいませんけど。 |
ジェイド | ディスト…… ? 何です ?その世にもおぞましい響きのそれは。 |
ルーク | ……なあ、気のせいかな。向こうの方に、メチャクチャデカい雪だるまが見えるんだけど。 |
ジェイド | ああ、すみません。雪国育ちなものでつい童心に返ってしまって雪だるまを作ってしまったんですよ。 |
ジェイド | よくできているでしょう ? |
三人 | ………………。 |
ミュウ | 大きい雪だるまですの ! |
ティア | ――みんな、こんなところに集まってどうしたの ?こっちはみんな応急手当がすんだけれど……。 |
ジェイド | 何でもありません。中のゴミは回収を頼んでおきましたので我々は帰りましょう。 |
イオン | いえ、ですが、あの中にはディ―― |
アニス | 帰りましょう ! イオン様 ! |
ルーク | お、おう、帰ろう。そうしよう ! |
シンク | ねえ……ビクエ宛に死霊使いから魔鏡通信文が届いたんだけど。 |
マーク | はあ ? 通信じゃなくて通信文 ? |
マーク | いや、まあ、そういう使い方もできるっちゃできるんだろうがジェイドからってのが引っかかるな。見せてくれ。 |
マーク | ………………。 |
マーク | ――雪山の粗大ゴミを回収して引き取れだあ ! ? |
シンク | 椅子と生ものって書いてあるけどこれ、どう考えてもあの死神のことだろ。 |
マーク | ……奴の頭の中の情報は利用したいが側には置きたくないってことか。あいつは鬼か ? |
シンク | そんなのみんなそうでしょ。あんなのが四六時中傍にいると気が狂うよ。 |
マーク | うちも一人死神を抱えてるしなあ……。 |
ナーザ | ……ビクエの鏡精から連絡だと ? |
ジュニア | あっちのマークが当面の活動資金と物資をくれるって話なんです。 |
ナーザ | 奴らと馴れ合うつもりはないと言った筈だが……。 |
ジュニア | でも資金は必要ですよ。 |
ナーザ | ……仕方ない。それで、何処まで取りに行けばよいのだ ? |
ジュニア | オールドラントの雪原地帯だそうです。 |
ルーク | はー……。やっと帰ってきた。リベラが元気そうでよかったよ。 |
ジェイド | そうですね。 |
ルーク | ……ジェイド。一つだけ聞いていいか ? |
ジェイド | どうかしましたか ? |
ルーク | もし……元の世界に帰れて元の世界でレプリカのネビリムさんを見つけて……それで今と同じ実験ができるとしたら……。 |
ルーク | ジェイドは……やるのか ? |
ジェイド | それはあまりにも仮定の話が多すぎますね。でも、まあ……あなたが何を言わんとしているかはわかります。 |
ジェイド | そしてそんなあり得ない仮定を結びつけなくてもこの世界でなら……私の望むネビリム先生を甦らせることができるのかもしれません。 |
ルーク | 甦らせたいのか ? |
ジェイド | そうするつもりはない……と以前言ったことがありませんでしたか ?元の世界で。 |
ルーク | でも、あれはレプリカの話で……。 |
ジェイド | 本当に私は信用がありませんねえ……。まあ、自業自得ですが。 |
ジェイド | この世界にはあなたがいるので私はそれどころではないのですよ。 |
ルーク | 俺が抑止力になるって話か ? |
ジェイド | 私がその気ならあなた如き、抑止力にもなりはしませんよ。 |
ルーク | はあ ! ? |
ジェイド | ――私は今、自分自身を実験台にして人生をかけた研究をしているところなんです。他の研究に手を出す余裕はありません。 |
ルーク | え ! ? そうなのか ! ? 何を研究してるんだ ?毒薬か ? 真人間になる薬でも開発してるのか ! ? |
ジェイド | 真人間……ねえ。近いと言えば近いのかも知れません。 |
ジェイド | 私は『死』を研究しているのですよ。それが何かを知るために、ね。 |