キャラクター | 1話【物語1 一人旅】 |
ロンドリーネ | あっつい……水……飲みたい……。 |
ロンドリーネ | 街……どこ……。 |
ロンドリーネ | こんなことなら、みんなにもついてきてもらえばよかった……。 |
クレス | オアシスの街に、知り合いを捜しに行く ? |
ロンドリーネ | うん。ちょっと気になる噂を聞いてね。実際にこの目で確かめたくって。 |
クラース | しかし、女性一人では何かと大変だろう。 |
ミント | そうですよ。よかったら私たちもご一緒に……。 |
ロンドリーネ | 大丈夫だってば。これでも一人旅には慣れてるから。 |
ロンドリーネ | うう……せめて、馬車か何か借りればよかった……。 |
商人 | おーい、お嬢ちゃん。いい加減に起きてくれないかね。 |
ロンドリーネ | うう……行き倒れに無茶言わないでよ。 |
商人 | 長いこと砂漠で暮らしてるがオアシスの目の前でそんなことを言うやつは初めてだ。 |
ロンドリーネ | オアシス……オアシス ! ? |
ロンドリーネ | やったー ! いつの間にか辿り着いてた !私、結構やるじゃん ! |
商人 | いや、うちらの隊商が行き倒れてたあんたをここまで運んでやったんだがな。 |
ロンドリーネ | あ、はは……そうだっけ ? |
商人 | もちろん、お代はいただくがね。 |
ロンドリーネ | お、おいくらかしら ? |
ロンドリーネ | うう……かなりふんだくられちゃった。 |
ロンドリーネ | ま、無事辿り着けたんだからそれでよし。さっそくあの子たちを捜しに……。 |
ロンドリーネ | と、その前にお水、お水。もうノドがカラカラ。 |
水売り | お ! 嬢ちゃん、水がほしいのかい !だったらこいつを飲みな ! |
ロンドリーネ | お、ありがとね。ゴクゴク……。 |
水売り | 五千な。 |
ロンドリーネ | ぶはっ ! ? |
水売り | おいおい、勿体ねーなー。 |
ロンドリーネ | ご、ごごご、ごせん ! ?いくらなんでも高すぎでしょ ! ? |
水売り | だけどなあ、飲んじまったもんは払ってもらわねーと。 |
ロンドリーネ | うう……しょうがないか……。 |
水売り | まいどありー。 |
ロンドリーネ | はぁ……なんてトコなの。到着してすぐにお財布がすっからかん。 |
ロンドリーネ | こんな調子で、あの子たちを見つけられるのかね ? |
ロンドリーネ | いたっ ! |
弟分 | いってえええええっ !いてえええよおおおあにきいいいっ ! |
あにき | おうおうおう、こいつはひでぇ。大事な弟分の腕が折れちまってらあ。 |
ロンドリーネ | な、なに ? 腕 ? |
弟分 | いてえええいてえええよおおおっ !怖い嬢ちゃんに怒鳴られてよけいいてええええ ! |
ロンドリーネ | あー、これはアレか。いわゆるアレってやつだね。 |
役人 | こんな往来で何を騒いでいる。 |
あにき | 聞いてくれよ、お役人さん。この嬢ちゃんが弟分に乱暴を。 |
ロンドリーネ | はいはい、そんなわけ―― |
役人 | 詳しい話は地主様の屋敷で聞く。おい、娘を連行しろ。 |
ロンドリーネ | ってちょっとちょっと、問答無用 ! ? |
役人 | この地を治める地主様がお前の話を聞きたいとおっしゃっておられる。 |
ロンドリーネ | 地主様 ? |
地主 | 娘よ。お前は魔術は使えるか ? |
ロンドリーネ | なんなの急に ? ま、自分の身を守る程度には使えるよ。 |
地主 | どんな魔術だ ?こう、相手を操ったり服従させたりできるか ? |
ロンドリーネ | そういうのはないね。私が得意なのは風で切り裂いたり、浮かせて叩きつけたり……。 |
地主 | なるほど……。 |
役人 | いかがいたしましょう ? |
地主 | まあ、とりあえずキープだ。 |
役人 | はっ ! 娘、お前がぶつかった者たちだが治療費さえ出せば訴えはしないとのことだ。 |
ロンドリーネ | だからさ、ぶつかって来たのはあっち。私が出すものなんてないよ。 |
役人 | 黙れ ! 判決は被害者への治療費と街への損害賠償だ !おい、この娘の荷物を取りあげろ ! |
ロンドリーネ | ちょっと、触るなって !あっ、それは…… ! |
衛士 | この娘、指輪を身につけております。見たところ、かなり高価そうです。 |
役人 | ちょうどいい。それを預かろう。 |
ロンドリーネ | 返して ! それは大事な指輪なんだから ! |
役人 | 返してほしくば金を稼ぐことだな。お前ならいくらでも働き口があるだろう……。 |
ロンドリーネ | やれやれ……。 |
ロンドリーネ | どうしてこうなっちゃったかな~。まったくツイてないね。 |
ロンドリーネ | ……なんて、愚痴ってても仕方ないか。指輪はなんとかするにしてもひとまず今日のご飯代くらい稼がないと。 |
オーナー | お嬢ちゃん、そういうことならうちで働かないかね ? |
ロンドリーネ | うわっと ! だ、誰 ? |
オーナー | なに、この街でちょっとした店を営んでるもんさ。お嬢ちゃんならうちの仕事はピッタリだと思うがね。 |
オーナー | どうせ、役人どもに金を絞り盗られたんだろう ? |
ロンドリーネ | どうしてそれを ? |
オーナー | この街に来る旅人は二つに一つだ。借金背負って居着くか、さっさと通り過ぎるか。 |
オーナー | お嬢ちゃんは前者だろう ?うちで働けばすぐに借金返済できる。 |
オーナー | いや、もしかしたらそれ以上に大儲けできるかも。お嬢ちゃんはなかなかの美人だからな。 |
ロンドリーネ | なんだか、いかがわしいな~。 |
オーナー | そんなことはない。うちは健全な店だ。試しに働いてみればいい。はい、一名様体験入店~ ! |
ロンドリーネ | ちょっと、私は働くなんて一言も── |
ディオ | おうよ ! 体験入店のごあんなーい ! |
メル | 最初は戸惑うかもしれないですけど働いてみたら意外と楽しい……あれ ? |
ロンドリーネ | え……。 |
三人 | あああああああああっ ! |
キャラクター | 2話【物語2 頼もしい二人】 |
ロンドリーネ | じゃあ、ディオくんとメルちゃんはかなり前にこっちに来たんだ。 |
ディオ | ほんと、あの時はビックリしたぜ。いきなり目の前の景色が変わるんだからなー。 |
メル | 最初はまた時間を飛び越えたのかと思ったよね。 |
メル | しばらく旅してみて、どうもそうじゃないって分かったんですけど……。 |
ディオ | 具現化かあ……。元の世界にもオレがいるって変な感じだ。 |
メル | じゃあ、今のわたしたちは偽物ってことになるのかな ? |
ロンドリーネ | あまり深く考えちゃダメよ。私たちは私たちなんだから。それでじゅーぶん。 |
ディオ | だな ! オレたち、こっちの世界でもけっこー頑張ってきたもんな ! |
メル | 最初は大変だったけどね。 |
メル | しばらく旅をして、このオアシスに辿り着いてオーナーさんのお店で働かせてもらうことになったんです。 |
ロンドリーネ | それって、大丈夫なの ?ていうか、どういうお店なのここ……。 |
ディオ | どういうお店って言われてもなー。 |
メル | 夜だけやってるよね。 |
ディオ | オーナー以外、働いてるのはほとんど女の人だな。 |
メル | いろんなショーを見せるお店 ? |
ディオ | あと、お客さんとおしゃべりしたりな。オレたち、そっちはほとんどやらないけど。 |
ロンドリーネ | やっぱり、いかがわしい……。双子ちゃんたちを働かせてて大丈夫なの ? |
ロンドリーネ | っていうか、私もここで働くのか……。 |
ディオ | 心配すんなって !オレたちがいろいろ教えるからさ ! |
メル | お店のことだけじゃなくてこの街のこととかもね。 |
ディオ | まずはあれだ。お水は店で買わない、だな。 |
メル | ここではお水は貴重でとっても高いんです。だからノドが渇いたら果物を食べるんです。 |
ディオ | 大人は、お酒を飲むって人も多いけどな。 |
ロンドリーネ | ふむふむ。 |
ディオ | それと、街の入り口近くの店には近づかない。あそこは旅人からふんだくる店が多い。 |
メル | 当たり屋なんかもいるから気をつけてください。 |
ロンドリーネ | は、はい。気をつけます ! |
メル | 買い物だったら、バザールに行くといいですよ。一日中やってるけど、朝と夕方は混むから注意です。 |
ロンドリーネ | 朝と夕方は避ける……と。 |
メル | 他にもいろいろあるけど、少しずつ教えますね。 |
ディオ | 店のことでも街のことでも、なんでも聞いてくれよな ! |
ロンドリーネ | ありがと。ほんと、二人が元気で逞しくなっててお姉さんなんだか嬉しいような寂しいような……。 |
ロンドリーネ | なんて、湿っぽいのはなしだね。とにかく ! 二人に会えてよかったよ ! |
キャラクター | 3話【物語3 人気の三人】 |
オーナー | さあ、開店だ。みんな、今夜も稼いで稼いで稼ぎまくるぞ ! |
店員たち | おー ! |
ディオ | さーて、お立ち会い !ここにおりますのは、珍しき東洋の剣士にございます ! |
ディオ | いくぞ……なりきりっ ! クロスシフト ! |
ディオ | 見よ ! 我が刀の切れ味を ! |
客たち | おおおーっ ! |
ロンドリーネ | やるね、ディオくん ! |
メル | よーし、わたしだって ! |
メル | はーい、皆さんのご注文はわたしが箒に乗ってお届けしまーす。 |
客A | メルちゃん、おかわりくれよ ! |
客B | こっちはフルーツ盛り合わせ ! |
客C | ならこっちはシャンパンのボトルだ ! |
メル | はいはーい、順番にお伺いしますね。 |
ロンドリーネ | 双子ちゃんたち、がんばってるね。お姉さんもちょ~っと張り切っちゃおうかな ! |
ロンドリーネ | はーい、お代は見てのお帰り……じゃないけどもらった分はきっちりサービスしちゃうからね~。 |
客A | いいぞー ! ロンドリーネちゃーん ! |
客B | ロンドリーネちゃんこっちむいてー ! |
メル | はいはいうちは健全なお店でーす。踊り子さんにはお手を触れないでくださーい。 |
ディオ | 悪いお客さんは、刀の錆にしちまうぞー。 |
メル | さすが、ロディさんあっという間に大人気ですね。 |
ディオ | ちぇー、今日はオレだって張り切ったのになー。お客さんみーんな、ロディに持ってかれちゃったよ。 |
ロンドリーネ | ふふん。お姉さんが本気を出せばざっとこんなものよ。 |
ロンドリーネ | 最初はどんないかがわしいお店かと思ったけど本当にショーを見せるだけの健全な店でよかった。こういうショーなら私の腕の見せ所ってね。 |
ロンドリーネ | でも、二人ともほんとにすごいよ。 |
ロンドリーネ | 右も左も分からない世界でずっとこんな風に働いてたんでしょ。 |
メル | 最初は、すごく不安でした。でもディオが『オレがなんとかする ! 』って。 |
メル | そしたらわたしもなんだか勇気が出てきたんです。 |
ディオ | あー、オレ、そんなこと言ったっけ ? |
ロンドリーネ | またまた照れちゃって。やっぱりディオくんは良い子だね~。 |
ディオ | あ、頭撫でんなって !子供じゃねーんだしっ。 |
ロンドリーネ | いいんだよー、二人はこれからもずーっと私の弟と妹みたいなものなんだから。 |
メル | あの……ロディさん。聞きたいことがあるんですけど。 |
ロンドリーネ | ん ? なになに ? なんでも聞いちゃって。 |
メル | この世界に、エトは……。 |
ロンドリーネ | あ……そっか、当然気になるよね。ごめんね、少なくとも私は会ってないんだ。 |
メル | そう、ですか……。 |
ディオ | 心配すんなって !いつかどっかで会えるよ ! |
メル | ディオ……うん。そうだね。 |
ロンドリーネ | あ、でも、クレスたちには会ったよ。 |
ディオ | ほんとか ! ? |
ディオ | 時空戦士たちもこっちに来てるってことはもしかしてこの世界も何かピンチなのか ! ? |
ロンドリーネ | まあ、ピンチといえばピンチかな。帝国っていうところが、いろいろ暗躍してるし。 |
ロンドリーネ | だからね、私たちみたいな別の世界から具現化した人間が集まって対抗してるわけ。 |
ディオ | すっげー ! 悪と戦う正義の組織ってわけか ! |
ロンドリーネ | ま、そんなとこ。 |
ロンドリーネ | 二人の噂を聞いて捜しに来たのも私たちと来てくれないかな~って。 |
ロンドリーネ | もちろん、二人が心配だったのもあるけどね。 |
ディオ | なる ! オレ、仲間になるよ !なっ、メル ! |
メル | もう、そんなに簡単に決められないでしょ。オーナーさんにだって、説明しないといけないし。 |
ディオ | あ、そうだった。 |
ロンドリーネ | ねえねえ、もしかして二人も借金とかあるの ?あのオーナーに騙されてない ? |
メル | 大丈夫ですよ。オーナーさんとっても良い人ですから。 |
ロンドリーネ | ほんとに ? なんか、このオアシスに来てから騙されてばかりで大人が信用できなくなりそう。 |
ディオ | オーナーは、お金にはうるさいけどけっこう優しいよな。 |
ディオ | それより悪いのは地主だよ !あいつ、オアシスの水をひとり占めしてんだ ! |
メル | 地主さんを怒らせると、水を売ってもらえないから誰も逆らえないんです。 |
ロンドリーネ | なるほどね~。だからあんなに偉そうだったんだ。 |
ディオ | おまけに、あいつメルのこと狙ってるんだぜ !何度も店に来ちゃ、メルを寄越せって ! |
ロンドリーネ | げっ、あいつそんな趣味なの ? |
メル | 少し前に、地主さんが魔物に襲われていたところを魔術で助けたら、それ以来……。 |
ディオ | メルだけじゃねーよ。魔術の使える女の子を何人も屋敷に呼んでるって噂だ。 |
ロンドリーネ | そういえば、私にも魔術が使えるかどうか聞いてたわねう~ん、世の中にはいろんな好みがあるのねえ。 |
ロンドリーネ | でも、可愛いメルちゃんに手を出そうなんてそんなのお姉さんが許さないわ ! |
オーナー | おまえら、なにくっちゃべってんだ。いつまでたっても店仕舞いできねえじゃねえか。 |
メル | オーナーさん、ごめんなさい。すぐに掃除しますね。 |
ディオ | んだよ、今ちょうどオーナーのこと褒めてたのに。地主に比べて、オーナーは良い人だって。 |
オーナー | やめろやめろケツが痒くなる。 |
オーナー | それと、地主様を悪く言うのはやめろって前々から言ってるだろうが。 |
ディオ | なんであんな嫌なやつかばうんだよ !あいつが水をひとり占めしなきゃ、もっと── |
オーナー | オアシスにはオアシスのやり方がある。いいから、さっさと掃除終わらせろ。 |
ディオ | くそっ……どうして、みんな怒らないんだ。悪いのは地主のやつなのに。 |
メル | ディオ……。 |
キャラクター | 4話【物語4 守りたいもの】 |
ディオ | やっぱり納得いかねえ ! |
メル | ディオ、もうその話は終わったでしょ。 |
ディオ | だけどさ、みんな水が足りなくて困ってるんだぜ ! |
ディオ | なのに地主のやつはぜんぜん売ってくれないんだ。売ってくれたとしてもすっげー高いし。 |
ディオ | おまけに、ちょっとの水を盗んだだけで捕まえられて街の広場で鞭打ちの刑にされちゃうんだ。 |
メル | ひどい時には、殺されることもあるって……。 |
ディオ | 地主は悪いやつだ。みんなでやっつけた方がいい。なあ、ロディもそう思うだろ ? |
ロンドリーネ | うーん……私は、ちょっと違う意見かな。 |
ディオ | な、なんでだよ ! |
ロンドリーネ | あのね、私は二人の話を聞いてダオスの故郷のことを思い出したんだ。 |
ディオ | ダオスの……故郷…… ? |
メル | デリス・カーラーンのことですか ? |
ロンドリーネ | うん。そう。 |
ロンドリーネ | デリス・カーラーンはマナが枯渇して滅びに瀕していた。 |
ロンドリーネ | あいつは故郷を救うため、私たちの星に来たんだ。 |
ディオ | ……覚えてるよ。 |
ディオ | 魔王だと思ってたダオスにも理由があったんだって。なんだか、すごくショックだった。 |
メル | あのまま知らないでいたらただの悪い人としか思えなかった。 |
ディオ | で、でもよ ! ダオスがやったことは悪いことだろ !人間を襲うなんて…… ! |
ロンドリーネ | うん、その通りだよ。ダオスは、許されないことをした。 |
ロンドリーネ | じゃあこのオアシスの水とデリス・カーラーンのマナ。入れ替えて考えてみたらどうかな ? |
ロンドリーネ | マナが枯渇した詳しい理由はわからない。けど、もしも誰かがマナを厳しく管理してたら―― |
ロンドリーネ | 今もデリス・カーラーンにマナが残っていてダオスは魔王にならなかったかもしれない。 |
ロンドリーネ | ぜんぶがぜんぶ、上手くいく方法なんてなかなかない。誰かが、どこかで我慢や苦労をしないといけないんだ。 |
ロンドリーネ | オーナーもこの街の人たちも、それが分かってるから地主のやり方に従ってるのかもしれないよ。 |
ディオ | …………。 |
メル | 自分が悪者になっても守りたいもの……。そんなのわたし、ぜんぜん考えてませんでした。 |
ロンドリーネ | 仕方ないよ。きっとそれは、もの凄く苦しんでそれでもって思って選ぶ道だと思うから。 |
ロンドリーネ | 大人はね、子供にそんな苦しみを味わわせないようにがんばるものなのさ。 |
ロンドリーネ | 知らなかった、考えたことなかったってことはエトちゃんが二人を守ってくれてた証拠だね。 |
ディオ | エト……。 |
メル | 会いたい、ね……。 |
キャラクター | 5話【物語5 時空戦士たち】 |
ディオ | オーナーも人使い荒いよなー。 |
ディオ | 夕べもあんなに働かせてそのうえ買い出しまでさせるなんてさー。 |
メル | もう、文句言わないの。ちゃんとお給料はもらってるんだから。 |
ロンドリーネ | 意外と給料いいんだよねー。借金返しても、このまま働いちゃおうかなー。なんて……ん ? |
ロンドリーネ | 今日は、なんだかいつもより人が多いね。 |
メル | あ、そうか。今日は隊商が来る日なんですよ。 |
ロンドリーネ | 隊商って、私が乗せてもらったやつ ? |
メル | それは定期便ですね。隊商は月に一度。たくさんの商品を持ってくるんです。 |
メル | いろんな取り引きがあったりして隊商がいる間は街が賑やかになるんです。 |
メル | お店も、いつもより忙しくなりますよ。 |
ロンドリーネ | ほほう、それはつまりこのロディさんのファンがまた増えちゃうってことね。 |
ディオ | なにをー、オレだって負けねえからな ! |
メル | ふふ。買い出し、多めにしておかなきゃね。 |
? ? ? | 信じられないな ! |
ロンドリーネ | ん…… ? この声は……。 |
クラース | これだけの酒が、こんな値段で売られているとは。ユークリッドでは考えられん。 |
クラース | ここで買いだめしておくべきか。どれ、レイヴンとアルヴィンにも土産を……。 |
ロンドリーネ | クラース ! ? |
クラース | む……ロディか。ちょうどいいこの街はどうなってるんだ。 |
クラース | 水が貴重だというのはわかるがまさか酒がここまで安いとはな。 |
ロディ | いやいやいや ! そんなことよりどうしてこんなところにいるのよ ! ? |
クラース | そんなこととは、聞き捨てならんな。いいか ? 一日あたりの晩酌を今の額で考えると…… |
ロンドリーネ | ああー ! なんか変なスイッチ入っちゃった ! |
商人 | お嬢ちゃんみたいな可愛い子が宝石の一つも身につけてないなんて、そりゃあ勿体ないってもんだ ! |
アーチェ | ええー、可愛いだなんてー。そんなほんとのこと言われてもー。 |
商人 | ほら、これなんかお嬢ちゃんにピッタリだ ! |
アーチェ | どうしよっかなー、買っちゃおっかなー。 |
チェスター | なーに、口車にのせられてんだよ。んな石ころつけても大して変わらねーよ。 |
アーチェ | ひっどーい !そういうこと言っちゃうんだ ! |
アーチェ | あー、傷ついたなー。傷ついたから罰としてチェスターが買ってよ。 |
チェスター | はあ ! ? なんでオレが ! ? |
弟分 | いってえええええっ !いてえええよおおおあにきいいいっ ! |
あにき | おうおうおう、こいつはひでぇ。大事な弟分の腕が折れちまってらあ。 |
ミント | こ、骨折ですか ! ? それは大変です !すぐに法術で治します ! |
弟分 | え……あの……。 |
あにき | べ、別にいいって !おれは治療費さえ払ってくれりゃ……。 |
ミント | いいえ、一刻も早く治療しないと !いきます。セイントエンブレイ── |
弟分 | ああー ! よく見たら折れてないかも ! |
あにき | おお ! そいつはよかった !というわけで、あばよ~。 |
ミント | あ、あのっ、せめて消毒を ! |
すず | あなた、なぜ私の背後をとろうとしたのです。もしや刺客ですか。 |
スリ | ち、違うって。俺はその……あだだだっ ! |
すず | この右手、明らかに私に向けられていました。毒かそれとも刺殺か……。 |
すず | 降りかかる火の粉は払わなければなりません。お覚悟…… ! |
スリ | ひいいいいいっ ! |
ロンドリーネ | はいはい、すずちゃんストップ。ただのスリだから。そこまですることないから。 |
ロンドリーネ | ていうか、みんな何でここにいるのよ……。 |
クレス | ミント、お待たせ。まいったよ。隊商の人たちがこのまま護衛として雇われてくれって放してくれなくて…… |
クレス | 護衛がいればこえーものはないって……あれ ? |
ロンドリーネ | やっぱりクレスもいるんだね。 |
すず | むしろ、ロディさんを捜しに行こうと言い出したのはクレスさんです。 |
クレス | ずっとロディからの連絡がなくて心配だったんだ。でも、無事でよかったよ。 |
クレス | それで、捜していた相手は見つかったのかい ? |
ロンドリーネ | うん、ちゃんとね。この子たちなんだけど……。 |
ディオ | クレスさん ! 久しぶり !うわぁ ! この世界でも会えるなんて ! |
クレス | 君は……誰だい ? |
ディオ | オレだよ、ディオだよ。一緒に戦っただろ ?忘れちまったのか ? |
ロンドリーネ | あーそういえば、そこまで説明してなかったかー。 |
ロンドリーネ | あのね、ディオくん。このクレスは君の知ってるクレスじゃないんだ。 |
ディオ | え……ど、どういうことだ ? |
メル | あの……よかったらお店で話しませんか ?このままだと大騒ぎになりそうなので。 |
ロンドリーネ | うん、そうだね。みんな、一緒に来て。 |
キャラクター | 6話【物語6 訪問者】 |
ディオ | じゃあ、ここにいるクレスさんたちはオレやメルの世界とは別の世界から来たのか ? |
ロンドリーネ | うーん、まあだいたいそんな感じ。 |
ロンドリーネ | クレスたちはディオくんやメルちゃんとは一度も会ったことがない。それは確実。 |
ディオ | そっか……。 |
メル | ちょっと寂しいね。あんなに一緒に旅したのに。 |
ディオ | うん……。 |
チェスター | 良かったら今度聞かせてくれよ。お前たちと冒険したオレの勇姿をさ。 |
アーチェ | 勇姿~ ? そんなのあるのかね~ ? |
ディオ | 面倒見のいい、頼れる兄貴だったぜ。妹さんのために、ちょっと変な服作ってたけど……。 |
チェスター | ぬぐっ…… ! ? |
ミント | ディオくんとメルちゃんは、私たちより百年後の世界に生まれたんですよね ? どんな世界でしたか ? |
メル | いろいろあったけど、今はとても平和な世界ですよ。 |
ディオ | ぜんぶ、時空戦士のおかげだぜ !クレスさんたちは伝説の英雄だからな ! |
チェスター | 英雄なんて、なんか照れるな。 |
クレス | 今の僕たちのことじゃないだろ。 |
アーチェ | ねえねえ、それよりあたしは ?あたしの伝説って何かないの ? |
アーチェ | 世界を魅了した超絶美少女とか ! |
ディオ | あー……えーっと……。 |
メル | アーチェさんは、なんていうかその……。変わっていないというか……。 |
ディオ | 街でイタズラばっかしてたよな。訪ねていったら意地悪されたし。 |
アーチェ | ええー ! なにそれ ! |
チェスター | お前、それだけ経ったらもう少し成長しろよ。 |
アーチェ | そういうのは未来のあたしに言ってよ ! |
クレス | 僕たちが英雄で、平和な世界、か……。 |
ロンドリーネ | クレス……。 |
ディオ | ヴァルハラの街なんか、すっげえ大きくなってんだぜ。 |
クラース | ヴァルハラが、街だと ?ずいぶん変わったものだな。 |
ディオ | とにかく話したいことも聞きたいこともいっぱいあるんだ ! |
地主 | おや、昼間だというのにずいぶんと賑やかだな。 |
メル | 地主さん、どうされたんですか ? |
地主 | おお、メルちゃん。もちろん君に会いに来たんだよ |
ディオ | おい、メルに近寄るな ! |
地主 | ちっ……双子だというのに片割れの方は相変わらず礼儀知らずなことだ。 |
クラース | あの人は ? |
ロンドリーネ | ここのオアシスの地主。 |
ロンドリーネ | 若くて可愛い女の子──それも魔術が使える子に目が無いんだって。 |
アーチェ | うわ、なにそれ。あたしなんか思いっきりターゲットじゃん。 |
地主 | ん…… ? むむむ…… ! |
アーチェ | え ? なに ? やっぱりあたし ?いやー、正直ちょっと無理って── |
地主 | おおっ、そなた見ない顔だがなかなか可愛いのう。旅の者か ? 魔術は使えるのか ? |
ミント | え……あ、はい。法術ですけど……。 |
アーチェ | ちょっとそこはあたしじゃないの ! ? |
地主 | ん? そなたも魔術が使えるのか ? うーむ……。背に腹は代えられんか……。 |
アーチェ | なんなの、その扱い ! ? |
チェスター | まさか、選ばれたかったのかよ。 |
アーチェ | ぜんぜんそんなんじゃないけど !なんか悔しいの ! |
地主 | ほうほう、よく見ればそっちにも小さくて可愛らしい子がおるではないか。 |
すず | ひっ…… ! ? |
クレス | ど、どうしたんだい ?急に僕の後ろに隠れて。 |
すず | す、すみません……。背筋に寒気が走ったので。 |
オーナー | これはこれは地主様。今日はいったいどのようなご用件で ? |
地主 | ふん、わかっておるだろう。いい加減、メルちゃんをうちに寄越せ。 |
地主 | 何日もとは言わん。今夜一晩でもかまわんのだ。 |
オーナー | その話は前々からお断りしているはず。 |
オーナー | メルはうちの店の稼ぎ頭ですから。一晩でもいなくなられると困るのですよ。 |
役人 | おい、地主様に逆らうつもりか。こんな店すぐにでも潰せるんだぞ。 |
オーナー | そう言われましてもですね……。 |
地主 | ええい、待っておれん !力づくでも連れていくぞ ! |
ディオ | やれるもんならやってみろ !お前なんかにメルは渡さないからな ! |
クレス | そういうことなら、僕たちも加勢するよ。 |
チェスター | 袖にされたアーチェのかたきもとってやらないといけないしな。 |
アーチェ | 袖になんてされてなーい ! |
役人 | 地主様、こいつらとんでもない強さです ! |
地主 | ええい、情けないことを言うな !しかし、おかげで確信ができた。 |
地主 | その不思議な衣装に着替えた時の魔術の力……儂の望みを叶えられるのはメルちゃんしかおらん !なんとしても連れ帰るんだ ! |
チェスター | 懲りない連中だな。まだやる気か。 |
すず | このしつこさ、後々、禍根を残しかねません。いっそこの場で……。 |
ロンドリーネ | はいはい、物騒なこと考えないの。地主さんもいい加減諦めてかえ……って……。 |
メル | ロディさん ? どうしたんですか ?急に固まって……。 |
ダオス | 貴様らもいたのか。 |
ロンドリーネ | ダオス……どうしてここに……。 |
キャラクター | 7話【物語7 解決策】 |
クレス | ダオス ! |
ディオ | ダオス、だって…… ! ?あいつもこっちの世界に来てたのかよ ! |
ダオス | ここに、この地の長がいるはずだ。 |
地主 | な、なんだ儂になんの用だ ! |
ダオス | 貴様が長か。聞きたいことがある。 |
地主 | 聞きたいことだと……そうだ !お前のその態度、雰囲気、きっと腕が立つのだろう ! |
地主 | こいつらを痛めつけてやれ !そうしたらなんでも聞いてやるぞ ! |
チェスター | このやろっ、往生際が悪すぎるぞ ! |
アーチェ | で、でもダオスが相手ならさすがにやばいよ…… ! |
ダオス | ふっ、手を貸せだと ? |
地主 | な、何を笑っている ! ?儂に聞きたいことがあるんじゃないのか ! |
ダオス | 口を割らせる方法などいくらでもある。お前が死んでいようがな……。 |
地主 | ひいいぃっ ! |
クレス | やめろ ! ダオス ! |
ダオス | ……貴様か。私の邪魔をするなと言ったはずだ。 |
クレス | こっちも言ったはずだ。誰も傷つけるなと。 |
チェスター | こっちはお前を許したつもりはねえ。今ここで決着をつけてやってもいいんだぞ。 |
ロンドリーネ | ちょっとやめてよ !こんなところで争ってどうするの ! |
メル | そうです !今、戦う理由はないと思います ! |
アーチェ | ていうか、あんたたちがにらみ合ってる間にさっきのスケベ親父逃げちゃったよ ? |
ディオ | あ、ほんとだ !あの野郎 ! |
ダオス | ……ならば、もうここに用はない。 |
ロンドリーネ | ま、待って ! ダオス── |
ロンドリーネ | ダオス……。 |
アーチェ | なんだか大変なことになっちゃったね。 |
チェスター | ダオスはともかく、あの地主。あれで諦めるとは思えないが。 |
ロンドリーネ | 逆らっちゃったから、水を売ってくれなくなるかも。オーナーは心配するなって言ってたけど……。 |
メル | やっぱり、わたしが地主さんのお屋敷に行った方が……。 |
ディオ | なに言ってんだよ !あんなやつの言うこと聞く必要ない ! |
アーチェ | ディオの言う通りだよ ! |
アーチェ | それに、あんなスケベ親父のところにいったらなにされるか……ああっ ! 考えただけで鳥肌が ! |
メル | でも……。 |
ミント | 大丈夫、メルちゃんは心配しなくていいんですよ。 |
アーチェ | そうそう。オーナーだって行く必要ないって言ってたじゃん。 |
クラース | しかし、ダオスは何をしに来たのだろうな。地主に聞きたいことがあると言っていたが。 |
ロンドリーネ | まだ探してるんだよ。デリス・カーラーンを救う方法を……。 |
メル | …………。 |
メル | ……みんな、ごめんなさい。 |
ディオ | なにやってんだよ、メル。 |
メル | ディオ ! どうして……。 |
ディオ | ばか ! わかるに決まってんだろ !双子なんだから ! |
ディオ | どーせ、自分が行けば全部解決するとか思ってたんだろ ! |
メル | だって、こうしないとみんなやオーナーさんに迷惑かけちゃうんだよ。 |
ディオ | お前はそれでいいのかよ。怖くて泣きそうになってるくせに。 |
メル | 怖いよ ! 怖いけど、わたしが行かないと ! |
ディオ | だから、そうじゃないんだって ! |
メル | え……。 |
ディオ | ああ、もう ! なんでわかんないかな !オレも一緒に行くって言ってんだよ ! |
メル | ディオ……。 |
ディオ | か、勘違いすんなよな。お前のためじゃないんだからな。 |
ディオ | オレは、あの地主をぶっ飛ばしに行くんだ。 |
メル | ……ありがとう、ディオ。一緒に来てくれて嬉しいよ。 |
ディオ | まあ、怖いなら手を繋いでやってもいいけど。 |
メル | うん ! |
役人 | お前たちは……。 |
メル | 地主さんに会いに来ました。 |
ディオ | こっちからわざわざ来てやったんだ。早く地主に会わせろよな ! |
役人 | 娘の方だけでよかったものを……まあいい。こっちだ、ついてこい。 |
メル | ほっ……。 |
ディオ | 意外とあっさりオレも通してくれたな。ていうか、どこに連れてくつもりなんだ ? |
メル | すごい……地主さんの屋敷の地下にこんな洞窟があったなんて。 |
ディオ | 見ろよ、メル !水がこんなにたくさん ! |
メル | ほんとだ……そっか、ここが水源なんだ。 |
地主 | その通り。ここは秘密の場所。街の人間はほとんど知らん。 |
ディオ | 出たな……おい ! こんなに水があるのにどうしてみんなに分けてあげないんだ ! |
地主 | なぜ小僧までついてきておるのだ。 |
役人 | 申し訳ありません、一緒に来たもので……。 |
地主 | まあいい。もう時間がないからな。この際、小僧にも見せてやろう。 |
ディオ | 見せてやるって、なにを……。 |
地主 | あれだ。 |
二人 | かにー ! ? |
キャラクター | 8話【物語8 地下に眠るもの】 |
ディオ | なんでこんな大きなかにの魔物が街の地下にいるんだ ! ? |
地主 | こいつは、この水源の主だ。 |
地主 | この辺りが水のない砂漠になったのはこいつが水源に居座っていたからだ。 |
地主 | それに気づいた儂は、こいつを薬で眠らせて地上に水が流れるようにした。 |
メル | ここにオアシスが出来たのはそんな理由だったんだ……。 |
地主 | だが、だんだんと薬も効かなくなってきた。そこで、今度は魔術で眠らせることにしたのだ。 |
ディオ | だからメルを……。でも、今のうちにやっつければいいだろ。 |
地主 | こいつにはとてつもない数の眷属がおるのだ。仮に倒せたとしてもそいつらが街に押し寄せてしまう。 |
メル | そんなことになったら、オーナーさんや街の人たちが……。 |
ディオ | くそっ…… ! |
ダオス | この地に水と緑が蘇ったのはそういうことだったか。 |
ディオ | ダオス ! どうしてここに ! ? |
ダオス | 何か手がかりがあるやもと思ったが無駄足だったようだ。 |
ダオス | 砂漠に湧いた泉など所詮はこんなものか。 |
メル | 待ってください ! |
メル | この魔物を倒すのに、力を貸してください ! |
ディオ | おい、メルなに言ってんだ ! ? |
メル | ロディさんが言ってました。ダオスさんは、本当は優しい人だって。 |
メル | この街は、少ない水をみんなで大切に分け合って一生懸命生きてるんです。 |
メル | このままじゃ、そんな人たちがたくさんの魔物に襲われちゃう。 |
メル | お願いです。手を、貸してください…… ! |
ダオス | ……………………。 |
ダオス | ……私には関係のないことだ。 |
メル | そんな……。 |
ディオ | あいつ…… !やっぱり嫌なやつだ。 |
地主 | い、いかん。やつが目覚める !早く魔術で眠らせるんだ ! |
役人 | だ、ダメです地主様 !もう手遅れ── |
魔物 | キシャアアアアアアアアッ ! |
メル | くっ、わたしの魔術で…… ! |
魔物 | キシャアアアアアアアアッ ! |
メル | きゃあああっ ! |
ディオ | メルッ ! ! |
メル | ディオ……ごめん。わたしの魔術じゃ、あいつを止められない。 |
ディオ | 謝るなよ。メルのせいじゃないだろ。それに、まだ終わったわけじゃない。 |
メル | ……うん。そうだね。諦めちゃダメだよね。 |
地主 | ああああ……なんてことだ。ついに目覚めてしまった。もうおしまいだ ! |
ディオ | おい ! 地主のおっさん !泣いてる場合じゃねーだろ ! |
メル | 戻って、みんなに知らせるんです !それから、街の外に避難してもらいます ! |
地主 | だ、だが、それでどうなる ! ?魔物はすぐに地下から上がってくる ! |
地主 | そ、そしたら街はもう終わりだ ! |
ディオ | 全然だいじょーぶ !街には、すっげー強い人たちがいるから ! |
メル | あの人たちと一緒ならできないことなんて、ない ! |
キャラクター | 9話【物語10 本当にやりたいこと】 |
ディオ | なんだ……街が騒がしいぞ。 |
メル | ディオ見て ! あれって、地下にいた魔物だよ ! |
ディオ | ほんとだ ! ? あいつより小さいけど、あんなにたくさん……。 |
メル | きっとあれが眷属ってやつなんだよ。急いでみんなのところに戻らないと ! |
ロンドリーネ | ディオくん ! メルちゃん ! よかった、無事だったんだね。 |
ディオ | ロディ、街に何があったんだ ! ? |
ロンドリーネ | 地面の下から魔物が這い出してきて街の人を襲いはじめたんだ。 |
ロンドリーネ | 今はクレスたちが魔物と戦ってくれててその間に私とオーナーで街の人を避難させてる。 |
ディオ | くそっ、魔物のやつもう出て来やがったのか ! |
ロンドリーネ | ディオくんたち何か知ってるの ? |
メル | それは、この人が知っています。 |
地主 | う、うう……。 |
ロンドリーネ | スケベ親父……じゃなかった !地主のおじさんじゃない ! ? |
ディオ | 街の下には魔物が棲みついてたんだ。そいつが起きて、地上に出てこようとしてる。 |
メル | 地下にはまだ大きい魔物がいるんです。それが出てくる前に避難をさせないと。 |
ロンドリーネ | なるほど……事情はだいたいわかったわ。よーするに、私たちの出番ってわけね ! |
ロンドリーネ | よし、二人はクレスたちに合流してこのことを伝えて。 |
ロンドリーネ | 私は、君たちが心おきなく戦えるように引き続き街の人たちを避難させるから。 |
ロンドリーネ | ついでに、このおじさんたちもね。 |
地主 | うう……た、助かる。 |
ディオ | ありがとう、ロディ ! |
メル | 必ず、クレスさんたちに伝えます ! |
ロンドリーネ | うん、任せたぜ。 |
ロンドリーネ | さてと、お姉さんもいっちょ張り切りますかねっ。 |
メル | ディオ、見て。魔物の数が多いよ。 |
ディオ | だけど、遠回りしてるヒマはないぞ。なんとしてもここを突破するんだ ! |
メル | ……うん、わかった。 |
ディオ | いくぞ ! なりきりクロスシフト ! |
メル | えええい ! |
ディオ | いっけー ! |
ディオ | よし…… ! なんとか突破できたぞ ! |
メル | はぁはぁ……っ |
ディオ | 大丈夫か ? メル。 |
メル | このくらい、平気……だって、わたしたち一緒にいろんなことを乗り越えてきたんだもん。 |
ディオ | だな ! |
メル | あ、見て ! あそこ、クレスさんたち ! |
ディオ | ほんとだ、おーい ! クレスさーん ! |
クレス | 君たちは…… ! よかった、無事だったんだね。 |
ディオ | クレスさん ! 聞いてくれ !魔物はこいつらだけじゃない ! |
メル | もっと大きなのが、地下にいるんです ! |
クラース | なるほど……それが、こいつらの親玉だな。倒してもキリがないわけだ。 |
チェスター | 雑魚をいくら倒しても無駄ってことか ? |
すず | 悪いものは元から断つべし。道理ですね。 |
ミント | そんなのが出て来たら街の被害が大変なことに……。 |
ディオ | だから、ここで食い止めたいんだ !一緒に戦ってくれよ ! |
メル | お願いします ! 街を守りたいんです ! |
クレス | もちろん。僕たちも同じ気持ちだ。一緒に親玉を倒そう ! |
ディオ | クレスさん ! |
ディオ | くぅ〜っ、また時空戦士と一緒に戦えるなんて ! |
メル | 良かったね、ディオ ! |
アーチェ | それにしても、このかになんなのよー。アッパーとかタックルとかしてきちゃってぇ ! |
ディオ | かには、アッパーするよな ? |
メル | うん。タックルも。 |
アーチェ | え ? |
二人 | ん ? |
チェスター | 妙な話をしてる場合じゃない !でかいのが来るぞ ! |
クレス | ディオ、準備はいいか ? |
ディオ | いつでもいいぜ ! |
アーチェ | メルちゃん、いくよ !魔女っ娘たちの力を見せてあげるんだから ! |
メル | はいっ ! |
キャラクター | 10話【物語10 本当にやりたいこと】 |
クラース | 倒したか……。 |
ロンドリーネ | あらら、もうやっつけちゃってたか。さすが、クレス ! |
クレス | ロディ、住人たちは無事かい ? |
ロンドリーネ | 安全なところに集まってるよ。ケガ人がいるみたいだからミントに来てもらえるかな。 |
ミント | ええ。わかりました。 |
チェスター | さて、残った雑魚を掃除したら戻れそうだな。 |
アーチェ | あともうひと仕事か~。 |
ディオ | それにしてもこいつ、でっけえよなー。 |
すず | っ ! いけません ! それはまだ── |
魔物 | キシャ……アアアアアアアアッ ! |
ディオ | うわあああっ ! ? |
メル | ディオ ! |
ディオ | あ、あれ ? 動かなくなった…… ? |
クレス | 今の魔術は……。 |
アーチェ | え ? え ? あたしじゃないよ ! ? |
チェスター | いったい誰が……。 |
ロンドリーネ | まさか……。 |
オーナー | 街の人間はみんな無事だ。魔物も片付いた。 |
オーナー | 地主様も、今後は水の値を下げると言ってる。ぜんぶ、あんたらのおかげだよ。 |
クレス | いえ、お礼なら彼らに。 |
クレス | 二人が行動を起こしていなければ僕たちも後手に回っていたと思います。 |
オーナー | そうか……ありがとな、ディオ、メル。 |
ディオ | へへっ、まあな !けっこー、見直しただろ ! |
メル | もう、調子にのりすぎ。 |
オーナー | はははっ、いや、ほんとに見直したよ。 |
オーナー | だからよ、お前らはこんなとこでくすぶってちゃいけねえ。 |
ディオ | オーナー ? なに言ってんだよ。 |
オーナー | 行きたいんだろ。この人たちと。 |
ディオ | で、でも、オレたちがいなくなったら店はどーすんだよ ! |
オーナー | ガキが気を遣うんじゃない。うちの店なら大丈夫だ。 |
ディオ | オーナー……。 |
メル | ディオ、オーナーさんの言う通りだよ。わたしたち、もっといろんなこと学ばないと。 |
ディオ | ……うん。そうだな。 |
ロンドリーネ | それじゃあ改めて……よろしくね、双子ちゃん ! ! |
クレス | きっとイクスたちも歓迎してくれるよ。 |
チェスター | まーたアジトにちびっ子が増えるのか。ま、アミィも喜ぶかな。 |
ミント | 賑やかになりそうですね。 |
ディオ | 子供扱いすんなよ !オレたちだって戦えるんだからな ! |
すず | なりきり士でしたか。衣装を変えるだけで能力も変わるとか。 |
クラース | なかなか興味深い力だ。キールと共にじっくりと研究してみたいものだな。 |
ディオ | げっ……オレたちもしかして研究対象として誘われた ! ? |
アーチェ | あー、クラースがいじわるしてるー。 |
メル | ふふっ、楽しくなりそうだねディオ。 |
ディオ | へへ……そうだなメル。 |
オーナー | ともかく、今日は祝いだ。ディオとメルの送別会もかねてな ! |
ロンドリーネ | ふふ。みんな盛り上がっちゃって。 |
ロンドリーネ | あれは……。 |
ロンドリーネ | ダオス……やっぱり、あなただったんだ。 |
ダオス | ……なんのことだ。 |
ロンドリーネ | ディオくんを魔物から助けてくれたのあなたでしょう ? |
ダオス | あの魔物が目障りだっただけだ。 |
ロンドリーネ | うん、じゃあそういうことにしておく。 |
ロンドリーネ | ダオスは、これからもそうやって故郷を救う方法を探し続けるんだね。 |
ロンドリーネ | 元の世界に帰れるかどうかもわからないのに。 |
ダオス | どこであろうと関係ない。 |
ダオス | こうして水面に映る星であれば地上からでも手が届く。可能性などそれで十分だ。 |
ダオス | 私には『大いなる実り』が必要なのだ。私を待ち望んでいる、民の為にも…… |
ロンドリーネ | やっぱりすごいね、ダオスは。そんな重い責任を背負っていけるなんて。 |
ダオス | 王たる者の務めを果たしているだけだ。それより…… |
ロンドリーネ | これ……あなたにもらった指輪…… ! |
ダオス | 屋敷に転がっていた。 |
ロンドリーネ | 勝手に持って来ちゃったの ?それって泥棒じゃ……。 |
ダオス | もともと私のものだ。 |
ロンドリーネ | 私がもらっていいの ? |
ダオス | 今は貴様のものなのだろう。何の力も残っていない指輪など不要だ。 |
ロンドリーネ | じゃ、遠慮なくもらっておくね。ふふっ、二度目の誕生日プレゼントだね。 |
ダオス | 妙なことを……。まあいい、好きにするがいい。 |
ロンドリーネ | ……またね、ダオス。 |