キャラクター | 1話【願い1 お宝求めて】 |
ノーマ | ようやく見つけたわ……伝説の玉手箱 ! ! |
イクス | だ、大丈夫か ! ? この玉手箱を開けたら不思議な煙がモクモクとたちこめて俺たち、お年寄りになっちゃうんじゃ……。 |
ノーマ | それは俗説。あたしが手に入れた古文書には玉手箱の中に、何でも願いが叶うお宝が入っているって記されてたもん。 |
ノーマ | きっと浦島太郎は、ひとり若い姿で時代に取り残されてしまったのが悲しくてそのお宝に自らお爺さんになることを望んだんだよ。 |
ノーマ | あたしはお宝が入っている事を望んでんだから中にはすんごいお宝が入ってるに違いないの !さあ、玉手箱を開けるわよ~ ! ! えいっ ! ! |
一同 | ! ! こ、これは…… ! ! |
シャーリィ | 空っぽ……だね。 |
ノーマ | そ、そんなぁ~……。で、でもでも ! 中身は持ってかれたけどこの玉手箱にだって相当の価値はあるはず ! |
グリューネ | あら ? 値札がついてるわ。こんなに立派な玉手箱が5ガルドだなんてとってもお買い得ねぇ♪ |
ノーマ | うっそ~ ! ! 完全な偽物 ! ?ってかなんで値札なんてついてんの ! ?ただのイタズラ ! ? 嫌がらせ ! ? |
セネル | 終わったな。よし、帰るか。 |
ノーマ | ちょ、ちょっと待ってよ !セネセネってばなんで笑顔なの ! ?お宝が手に入らなくて悔しくないわけ ! ? |
セネル | 俺はお前がイクスたちに迷惑をかけないよう監視するためについてきただけだ。別にお宝なんて興味ない。 |
セネル | それに、こうなることはわかってたしな。 |
ノーマ | むっき~ ! ! どういう意味よ ! ?あたし、ちゃんとエバーライトを見つけたっていう実績もあるんですけど ! ? |
セネル | 確かにノーマはエバーライトを見つけた。けどな、エバーライトや明鏡四水のような何でも願いの叶うお宝がいくつもあるはずないだろ。 |
ノーマ | 言ったわね ? その言葉、後悔させてあげる。 |
セネル | なに ? |
ノーマ | 次こそは大本命 ! 七夕伝説のお宝よ ! |
セネル | まだ続ける気なのか ! ? |
シャーリィ | ノーマ。その七夕伝説ってティル・ナ・ノーグに伝わるおとぎ話の ? |
ノーマ | そうそう。織姫と彦星が出てくる物語。みんなもエッちゃんの読書会で読んだでしょ ? |
ミリーナ | 織姫と彦星は互いに恋に落ちて相思相愛になる。けれど恋におぼれ大切な仕事をしなくなってしまった。 |
ミリーナ | 二人は、仕事を放棄した罰として引き裂かれ一年に一度しか会わせてもらえなくなってしまうのよね。 |
イクス | 恋に溺れて、務めを忘れてはならない。そういう教訓が込められているんだよな。 |
グリューネ | でも、大切な人と会えなくなっちゃうなんてなんだか悲しいお話よねぇ。 |
イクス | 昔の人もそう思ったんでしょうね。そんな織姫と彦星に祈りを捧げるためのお祭りとして七夕祭りというものが今にも伝わっているんです。 |
ミリーナ | 短冊に願いを書いて、星々にお祈りするの。 |
シャーリィ | あっ、私たちの世界の星祭に似ていますね。星祭は、願いを書いた葉を水に流して滄我に想いを託すお祭りなんです。 |
イクス | 確かに星祭と七夕祭りは似ているな。たとえ世界が違っても共通しているものもあるのは興味深いな。 |
ノーマ | うん ! あたしも七夕伝説のお宝がいったいどんなものなのかさらに興味が湧いてきたよ~ ! |
セネル | ちょっと待て。七夕伝説の物語には玉手箱すら登場しないんだぞ。本当にお宝はあるのか ? |
ノーマ | この古文書によるとあの海辺の村の先にある森の中にすんばらしいお宝があるって話だよ。 |
セネル | その古文書で偽物掴まされたばかりだろ ! |
ノーマ | 今度は大丈夫だよ。ほら、ここ読んで。「これはガチだぞ。ぎゃはは」って作者も書いてるでしょ。 |
セネル | ノリが軽すぎる……。お前とスヴェンさんみたいなトレジャーハンターも世界共通とは……。 |
ノーマ | まあ、もちろん他にもあたしが信じている根拠はあるけど。ほら、あそこの海辺の村を見てみてよ。 |
グリューネ | あら、なんだか賑やかねぇ。お祭りの準備をしているのかしら。 |
ミリーナ | もしかして七夕祭りかしら。 |
シャーリィ | えっ、けど七夕の時期ってもう終わってますよね ? |
イクス | 旧暦だとちょうどあと数日後が七夕なんだよ。けど旧暦での七夕祭りなんて珍しいな。あ、ちなみに新暦と旧暦っていうのは―― |
セネル | イクス、大丈夫だ。正直難しい話はもうたくさんだ。 |
イクス | う、うん。わかった。とにかく今もまた七夕の季節ってことだよ。 |
ノーマ | けどさ、わざわざ旧暦で七夕祭りを開催するなんて何かあると思わない ?もしかしたら七夕伝説の発祥地だったりとか~。 |
セネル | もし仮にそうだとしてもお宝があるとは限らないが……。 |
シャーリィ | お兄ちゃん ? |
ノーマ | お宝よりもお祭りが気になる、と。セネセネがまさかそこまでお祭り好きになるとはね。ハロウィンを頑張って仕掛けたかいがあったよ。 |
セネル | 誰がお祭り好きだ。勝手に決めつけるな。ハロウィンの件も水に流したわけじゃないからな。 |
グリューネ | けどお姉さんは、クロエちゃんや他のみんなも誘ってお祭りをまわれたらとっても嬉しいわ。 |
ミリーナ | クロエたち、さっきは仕事で忙しいみたいだったけどもう少し後なら時間が取れるかもしれないものね。 |
シャーリィ | みんなでお祭り、楽しそうだよね。お兄ちゃん。 |
セネル | それは……まあな。 |
ノーマ | そんじゃ ! お祭りが開催されるまで時間つぶしがてらトレジャーハンティングだね !お宝目指して、海辺の村の先にある森にしゅっぱ~つ ! |
キャラクター | 2話【願い2 森での発見】 |
シャーリィ | だいぶ森の奥まで来たね。薄暗くてなんだか不気味……。 |
グリューネ | ノーマちゃん。この森に七夕伝説のお宝があるの ? |
ノーマ | そのとおり ! この古文書を解読したところこのあたりに、それはもう美しいお宝がある……はずなんだけど、おかしいなぁ。 |
イクス | 何もないみたいだな。 |
セネル | ……いや、ちょっと待って。あっちに何かあるぞ。 |
イクス | これって……お祭りの屋台か ! ?盆踊りのやぐらまであるぞ ! |
グリューネ | お祭りの準備中みたいね。お姉さん、見ているだけで踊りたくなってくるわぁ。 |
シャーリィ | けど、どうしてこんな森の中に……。 |
セネル | まさかこれがお宝だとか言わないよな ? |
ノーマ | そ、そんなあ……。もうちょっとあたりを見てみようよ !このお祭りやお宝のこともわかるかも ! |
? ? ? | 待て。その先は危険だ。現在は関係者以外立ち入り禁止となっている。 |
セネル | その声は……ウィル ! ? |
ウィル | なっ……セネルたちか ! ? |
シャーリィ | ウィルさん。お久しぶりです。よかった、無事だったんですね。 |
グリューネ | また会えて嬉しいわぁ。 |
ノーマ | おおっと ! これは予想外の収穫 ! |
ウィル | ……なるほど。騒がしい声も聞こえてくると思ったがあれはノーマの声だったようだな。てっきり新種のサルかと思ったぞ。 |
ノーマ | むき~ ! 誰がサルだ~ ! ! |
セネル | (サルだ) |
グリューネ | (おサルさんみたいで可愛いわぁ♪) |
シャーリィ | おサルさんのよう……あっ、すみません。思わず口に出ちゃいました。今のはなかったことにしてください。 |
セネル | シャーリィ。惜しかったな。次からは気を付けような。 |
ノーマ | あたしへのフォローはナシかい ! !お宝はみつからないしサル扱いだしもうやってらんないっての ! |
ノーマ | ほげっ。 |
ウィル | うるさいぞ、ノーマ。 |
ノーマ | いったぁ~~い ! ! けどこの感じ久しぶりでなんだか心にしみる……。おふくろの味ならぬ、オヤジのゲンコツみたいな。 |
ウィル | おかわりが欲しいのか ? |
ノーマ | い、いや……それはいらないかな。 |
スタッフ | ウィルさん。お話の所すみません。屋台の設営終わりました。 |
ウィル | そうか。ご苦労だったな。皆には一休みするよう伝えてくれ。 |
スタッフ | 了解です ! |
セネル | ……ウィル、このお祭りを取り仕切ってるのか ? |
ウィル | まあ色々あってな。お互いに聞きたいことは山程あるだろう。一度村に帰って話すとしよう。 |
ノーマ | 村っていうと、この先にある海辺の村 ?さっきあたしたち通りかかったんだ。 |
ウィル | いや、その村じゃない。オレが暮らしているのは別の村。山の上にある村だ。 |
キャラクター | 3話【願い3 山間の村】 |
ウィル | ……鏡士による具現化。なるほど、おかげでだいぶ理解できた。まさかクロエたちもいるとはな……。 |
イクス | えっと、俺たちからの説明はこんなところです。 |
セネル | それにしてもウィルがお祭りの取締役だけじゃなくこの村の村長も引き受けていたとはさすがに驚いたな。 |
グリューネ | 遺跡船の保安官だったウィルちゃんなら村長役も適任よねぇ。 |
ウィル | オレの本業は博物学者ですよ。保安官を名乗ったことは一度もありません。それにオレは村長ではなく、あくまで村長代行です。 |
シャーリィ | 村長代行 ? |
ウィル | ああ。オレはウェルテス領に具現化されてからは光魔の研究をしていたんだ。だが鏡殻変動で世界の様相が突然変わっただろう。 |
ウィル | オレは原因の調査のためウェルテス領から今いるセールンド諸島に向かうことにしたんだ。 |
ウィル | セールンド諸島到着後、各所をまわっていたところに魔物に襲われていたこの村の村長と遭遇した。なんとか助けることはできたが村長は負傷していてな。 |
セネル | 怪我をした村長の代わりとしてウィルが村長代行を務めるようになったんだな。 |
ウィル | そういうことだ。お祭りの取締役も村長業務の一貫だな。 |
ノーマ | 光魔の研究やら鏡殻変動の調査やらウィルっちは相変わらずだね。 |
ウィル | この世界でもトレジャーハンターをしているノーマも相変わらずのようだがな。 |
ウィル | いや、ノーマだけじゃなくセネルたち全員以前と変わりないようだな。久しぶりの再会だが全く時を経た感じがしない。 |
シャーリィ | ちょっと離れたくらいでわたしたちは何も変わったりしませんよ。 |
ウィル | ふっ……ああ、そうだな。シャーリィの言うとおりだ。 |
グリューネ | ウィルちゃんが元気でいてくれてよかったわ♪ |
イクス | けど村長代行って大変じゃないですか ?見知らぬ土地でウィルさんもなれてないでしょうし。 |
ウィル | いや、そうでもない。説明するよりも、村の様子を見てもらったほうが早いな。 |
村人 | こっちの採掘終わったぞ。余裕があるから手伝えることがあれば言ってくれ。 |
村人 | ありがとう。こっちも今終わったところだから集積や研磨の奴らの様子を見に行こう。 |
グリューネ | みんな協力しあって一生懸命にお仕事しているわね。とても頼もしいわねぇ。 |
ウィル | この村の奴らは皆、勤勉だ。オレが特に何かをする必要もない。村長業務も帳簿や資料をつくるくらいなものだからな。 |
ウィル | 村長代行なんて肩書きではあるがオレより村の人々の方がこの村に貢献していると言える。 |
セネル | 確かに、この村の人たちはよく働いてるが…………。 |
イクス | セネル、何か気になるのか ? |
セネル | いや……なんだか男ばかりだと思ってな。 |
ノーマ | もしかして、かわいい女の子がいないか捜してたの ?も~、あたしというものがいるってのに。 |
シャーリィ | お兄ちゃん ? |
セネル | ちょ、誤解だ ! シャーリィも落ち着いてくれ !この村にはどうも男しかいないみたいだから俺はその理由が気になっただけだ ! |
ミリーナ | 言われてみれば……女性や子供の姿が見当たらないわね。もしかして、何かあったんですか ? |
ウィル | いや。別に何か事件などがあったわけじゃない。強いて言えば昔からの風習みたいなものだな。 |
シャーリィ | 風習ですか ? |
ウィル | 海辺の村があっただろ。この山村は昔から鉱物採掘のためその海辺の村からやって来た者たちが暮らす場所であり、仕事場みたいなものなんだ。 |
ウィル | 鉱物採掘の作業には危険が伴う。そのため働き手である男たちしかこの村にはいない。 |
セネル | そうか……だから海辺の村はやけに女性や子供が多かったのか。 |
グリューネ | もしかしてセネルちゃん、海辺の村を眺めてたのはお祭りが気になったからじゃなくて村にいる人たちのことが気になっていたからなの ? |
セネル | さすがに警戒しすぎかと思って言わなかったがな。 |
シャーリィ | …………。 |
セネル | シャーリィ、どうかしたか ? |
シャーリィ | ううん。ただ家族や恋人同士でも離れて暮らさなくちゃいけないんだろうなって思ったらちょっとかわいそうで……。 |
ウィル | ……そうだな。 |
シャーリィ | あっ……ごめんなさい。暗い雰囲気にしてしまって。七夕伝説の物語が頭によぎったのもあって……わたし、村の人たちに感情移入し過ぎたみたいです。 |
ミリーナ | 互いに離れた場所で仕事に勤しむ織姫と彦星……海辺の村の女性たちと、この山村の男性たちに重なるところがあるものね。 |
ノーマ | そういえば……ウィルっちの話だと開催を進めている森での七夕祭りは海辺の村と山の村が合同で開催するお祭りなんだよね ? |
ウィル | そうだ。だから両村の中間地点であるあの森の中で一年に一度執り行われてきたらしい。昔からずっと続く大切なお祭りだそうだ。 |
ノーマ | これって織姫と彦星みたいじゃない ! ? |
イクス | 七夕伝説はビフレストが発祥のはずだけど昔話や伝承は後世へ伝聞されるうちに時代性や地域性などの影響により変わっていくものだ。 |
イクス | もしかしたらこの地域の風習が現在伝わっている七夕伝説を形作るのに影響を及ぼしたのかもしれないな。 |
ウィル | それは興味深い考察だ。博物学者としてはこのあたりの植物について調べてみるのを勧める。 |
イクス | 生態系という観点からの考察ですか。新しい切り口だから、何か発見がありそうだな……。さすが博物学者ですね。頼りになります。 |
ウィル | 学者としてまだまだ力不足さ。だが君とは話が合いそうだ。 |
カーリャ | うぅ……なんだか話が難しくなってきてカーリャにはついていけないかもです。ミリーナさまは大丈夫ですか ? |
ミリーナ | 私はイクスが楽しそうだから問題ないわ。 |
グリューネ | そうよね。楽しいのが一番だわ。 |
セネル | ダメだ……俺一人ではツッコミが間に合わない。こんなときクロエがいてくれたら助かるんだがあいつも最近は仕事で忙しいみたいだからな。 |
シャーリィ | きっと今頃、見回りしながらくしゃみしてるよ。 |
クロエ | クシュッ……なぜだろう。今クーリッジに噂された気が……。 |
ノーマ | まあ、とにかく七夕伝説のお宝に一歩近づいたってことだよ ! ! |
ウィル | ……おっと、もうこんな時間か。つい話し込んでしまったな。 |
セネル | 何か用事があるのか ? |
ウィル | 祭りに関しての話し合いがある。悪いが少し席をはずさせてもらうぞ。 |
イクス | 大丈夫ですよ。俺たちのことは気にしないでください。 |
ウィル | すまないな。お前たちに合流するのは構わんが村長代行としての役目がある。少なくとも七夕祭りが終わるまでは離れられない。 |
セネル | それについても問題ない。ウィルならそう言うだろうとわかってたからな。 |
シャーリィ | 何かお手伝いできることがあれば言ってくださいね。 |
ノーマ | じゃあ、あたしたちは七夕伝説のお宝についてちょっくら聞き込みでもするとしますか。よ~し、がんがん行くよ~ ! |
キャラクター | 4話【願い4 森の異変】 |
シャーリィ | ノーマ、おかえりなさい。何か七夕伝説についてわかった ?わたしたちの方はあまり収穫がなかったけど……。 |
ノーマ | あたしもだよ~。あちこち歩きまわってクタクタ~。それに暑いしさ~……とにかく暑いしさぁ~……。あたし、このままじゃ溶けちゃうよ~……。 |
ミリーナ | 聞き込みお疲れ様。ノーマもこっちで一緒に涼みましょう。 |
グリューネ | 水が気持ちいいわねぇ~。お姉さん、と~っても涼しくなってきたわぁ♪ |
ノーマ | あっ、グー姉さん ! その浴衣どったの ?いいね~、涼しげだね~ !それにすっごく似合ってるじゃん ! |
グリューネ | ありがとう、ノーマちゃん。お姉さんもとっても気に入っているわ。 |
シャーリィ | お祭りに浴衣を着ていこうって話になってミリーナさんに作ってもらったんですよね。 |
ノーマ | いいな、いいな~ !あたしも浴衣着てみたい ! |
ミリーナ | シャーリィとノーマの浴衣も考えてあるわ。もう少し待っててね。 |
ノーマ | 本当 ! ? やったー !ありがとう、リナっち ! |
シャーリィ | それにしても……グリューネさん。ちょっと裾をまくり過ぎじゃないですか ? |
グリューネ | そのままだとせっかくの浴衣が濡れてしまうもの。それにね、こうして裾をまくって足を水につけていると気持ちいいのよ。 |
シャーリィ | それはわかりますけど……。 |
ノーマ | さすがグー姉さん ! 浴衣のうなじだけじゃなく脚もすっごくセクシーだよね !セネセネもそう思うでしょう ? |
セネル | 俺に話を振るな ! |
グリューネ | セネルちゃんも一緒に足で水をちゃぷちゃぷして遊びましょう。 |
セネル | ……いや、遠慮しておく。 |
グリューネ | あらぁ。残念ねぇ。 |
イクス | お待たせ。みんなの分のスイカも持ってきたよ。村の人たちが差し入れにくれたんだ。川に浸しておいたから、よく冷えてるぞ。 |
ノーマ | よく冷えたスイカ ! ? やった~ ! この村の人たちは働き者だし気が利くしでいい人ばっかだね~。ではでは、ご厚意に甘えて、さっそくいただきま~す ! |
シャーリィ | う~ん……甘くて瑞々しくてひんやりしててとっても美味しいね。それに採れたてみたいに新鮮。 |
イクス | 海辺の村で採れたスイカをこっちに運ぶとき荷物の中に、この浄化作用のある葉を一緒にいれることで鮮度を保っているんだってさ。 |
シャーリィ | それが浄化作用のある葉っぱなんですね。青々しくて凛としてて綺麗……。 |
イクス | 七夕祭りの飾りとしても使われるんだってさ。浄化作用のある葉を神聖なものとして大切にしていた名残なのかもしれないな。 |
イクス | ウィルさんが言ってたとおり文化や風習を博物学的な視点でみると新しい発見があって面白いよ。 |
イクス | って、ごめん。なんか色々語っちゃって。 |
セネル | いや、気にするな。ウィルの学者バカっぷりに比べたらイクスなんて全然可愛いもんだからな。 |
グリューネ | た~ねを植えま~しょ~♪み~ずをまきま~しょ~♪ |
グリューネ | す~くす~く すこやかに~お~きくな~れぇ~♪ |
セネル | グリューネさんもご機嫌みたいだな。スイカの種まきか。 |
ノーマ | なんだか楽しそう !あたしも種まきしよっと !こうして口の中にまとめた種を……。 |
ノーマ | がうっ。 |
ウィル | はしたないぞ。 |
ノーマ | いった~ ! ! もう、なにすんのさ~ ! !というか、うっかり種を飲んじゃったじゃん !お腹の中にスイカができたらどうしてくれんの ! ? |
グリューネ | あらぁ、それは大変ねぇ。とりあえずお水を持ってこようかしら ? |
セネル | グリューネさん。別に水はやらなくていいからな。 |
ウィル | まったくお前たちは……。 |
シャーリィ | ウィルさん、話し合いは終わったんですね。……何かあったんですか ? |
ウィル | 実は……祭りの開催場所付近で見慣れない魔物が出現したと報告があった。 |
セネル | 魔物退治なら手伝うぞ。 |
ウィル | 話が早くて助かる。そうだな……これで恐らく解決するはずだ。 |
シャーリィ | 何か他にも問題があるんですか ? |
ウィル | ……オレの気にし過ぎかもしれないが最近どうも村の男たちの様子がおかしいんだ。どこか心が上の空とでも言えばいいのか。 |
セネル | そうなのか ? 俺は別にそうは見えなかったが。 |
ノーマ | この村の人たち、みんな真面目だからね~。仕事に支障がないようにとか、心配かけないようにとか頑張って取り繕ってるんだと思うな。 |
シャーリィ | 魔物が発生したせいで ? |
ウィル | 理由はわからん。たしかに魔物が発生したことで不安になっているのかもしれないが……。 |
イクス | 魔物の対策の他にも何か俺たちができることはないかな。 |
ノーマ | それなら、それぞれの村で前夜祭でも開催してパーッと盛り上げるってのはどう ?アジトにフィー姉さん特製花火がまだあるはずだしさ。 |
グリューネ | まぁ。それは楽しそうね♪ |
シャーリィ | わたしも花火、良いと思うな。 |
ウィル | そうだな。大掛かりなものは間に合わないだろうが村の皆で楽しく花火をするという程度なら今からでも間に合うだろう。 |
ノーマ | じゃああたし、クーに花火を海辺の村まで持ってきてもらうよう魔鏡通信で頼んでおくね。 |
セネル | 俺たちも魔物を倒しながら海辺の村に向かうとするか。 |
キャラクター | 5話【願い5 魔物退治】 |
セネル | くらえっ ! ! |
イクス | よし。お祭りの開催場所付近の魔物はこれであらかた倒せたな。もう大丈夫だとは思うけど……。 |
ウィル | これは何ということだ ! ! |
シャーリィ | ウィルさん ! ? どうしたんですか ! ? |
ウィル | こいつは今までに見たことのない魔物だ !それにこの毛並み ! 色つや !実に素晴らしい ! ! |
ウィル | |
イクス | ウィルさん ? |
セネル | はじまったな……。 |
ウィル | 凶暴ではあるが歯並びからして雑食。傷の治り具合が異常に早いな。免疫器官が独自発達したようだな。 |
ウィル | できれば生け捕りにしたかったがやむを得ん。一番体の外傷が少ない個体を持ち帰るとしよう。ふむ……これは新種の可能性もあり得るな。 |
ノーマ | ウィルっち。学者バカの血がうずいちゃったのはわかるけどほどほどにしておきなよ。 |
ウィル | ほどほどになどできるものか !むしろお前たちはこの新しい発見という貴重な瞬間に立ち会っていながら、なぜ平然としていられる ! ? |
カーリャ | なんという豹変ぶり。なんだかリフィルさまみたいですねぇ。遺跡モードならぬ魔物モードみたいな ? |
ミリーナ | 好きなことがあるのは素晴らしいことよ。私もついイクスモードになっちゃったりするからウィルさんの気持ちはよくわかるわ。 |
グリューネ | ふふっ。ならわたくしはみんなが大好きだからみんなモードということかしら。 |
イクス | なんだか話がズレていっているような……。 |
シャーリィ | そろそろクロエが海辺の村に到着する頃だよ。あんまりゆっくりしてると待たせちゃうんじゃないかな。 |
ウィル | それもそうだな。これから祭りの準備が本格化する。魔鏡通信で挨拶はしたが、やはり直接会って言葉を交わしたいしな。 |
ノーマ | そうそう。それに海辺の村で七夕伝説について調査もしなきゃなんだから。 |
セネル | お前、まだお宝を諦めてなかったのか。 |
ノーマ | 当然 ! 海辺の村と山の村は二つでひとつみたいなものなんだしまだ調査は終わってないよ。 |
グリューネ | 無事に見つかるといいわねぇ。お姉さん、ノーマちゃんのために祈ってるわ。 |
ノーマ | グー姉さんにそう言ってもらえるとなんだか本当に叶いそうな気がしてくるよ。さあ、もうジャンジャン祈っちゃって。 |
ウィル | お祈りか……。 |
セネル | どうした、ウィル ? |
ウィル | 七夕祭りでは願い事をするのが習わしだ。お前たちもせっかくの機会だ。何を願うのか考えておくといい。 |
イクス | お願い事か。何にしようかな。あんまり大きなことを願っても叶いそうにないもんなぁ……。 |
カーリャ | こういうのって悩みますよねぇ。デザート系かメインディッシュ系かあえてジャンキー系でいくか。 |
セネル | 全部食べ物……。 |
シャーリィ | 願い事かぁ。わたしたちは元の世界での星祭以来だね。 |
ノーマ | そ、そういえばあたしの願いは……。どういうこと ! ?クーどころかリッちゃんにすら届いてない ! ? |
イクス | ノーマはどんな願いをしたんだ ? |
セネル | イクス。その話は触れないでいい。 |
ウィル | まだ七夕祭りまで時間はある。海辺の村に向かいながらでも考えておくといい。 |
セネル | ああ、せっかくだし考えておくよ。それじゃあ海辺の村に向かうとするか。 |
キャラクター | 6話【願い7 前夜祭】 |
グリューネ | あら。もう前夜祭がはじまってるわねぇ。 |
ノーマ | ほらほら。リッちゃんもグー姉さんもこっちこっち ! |
シャーリィ | ちょっとノーマ。走ると危ないよ。 |
クロエ | 三人とも浴衣に着替えたのか。皆、よく似合っているな。 |
シャーリィ | そ、そうかな ? |
セネル | ああ。三人とも似合ってると思うぞ。 |
ノーマ | セネセネのお墨付きだ。 |
シャーリィ | うん……ありがとう、お兄ちゃん。けど、クロエは浴衣じゃなくてよかったの ? |
ミリーナ | 今からでも作るわよ !とびきり可愛いの ! |
クロエ | い、いや。私はいいんだ。こっちの方がいざというとき動きやすいからな。 |
ノーマ | いざというときってどういうときよ……。 |
セネル | まあ、それもクロエらしいけどな。 |
グリューネ | 可愛い服装のクロエちゃんはもう少し先ということね。お姉さん、楽しみにしているわ。 |
クロエ | グリューネさん。私は一言も可愛い服が着たいとは言っていないのだが。 |
ウィル | とにかく、クロエのおかげで前夜祭も無事開催できた。こちらの村長さんと共に、事前に準備を進めてくれていたおかげだ。 |
クロエ | 大したことじゃないさ。だが皆の役に立てたなら何よりだ。村も活気を取り戻しつつあるようだしな。 |
ウィル | 海辺の村もだったか……。やはり前夜祭を開催して正解だったな。 |
グリューネ | 森での七夕祭りも楽しんでもらえるといいわねぇ。 |
ウィル | ああ。村長代行とはいえしっかり役目を果たさなくては。 |
イクス | ウィルさん、おとなですね。しっかり責任感もあって。 |
ノーマ | けど、それだけじゃないでしょ ? |
ウィル | なに ? |
ノーマ | 相変わらずお宝についてはわからずじまいだけど七夕伝説に関して調べているうちにこの七夕祭りの歴史についてはわかったんだ。 |
シャーリィ | 七夕祭りの歴史 ? |
ウィル | ……この七夕祭りは両村にとって大切なものだという話はしたな。 |
ウィル | それは、かつて互いの村人は、一年に一度きりこのお祭りでしか会うことを許されなかったからだ。 |
イクス | ……一年に一度きりしか ? |
ウィル | 今となっては昔の話だ。だが当時は最低限の物流のやり取りのみ。手紙すらも禁止されていたらしい。 |
シャーリィ | 家族や恋人たちが再会できる大切なお祭りだったんですね。 |
ウィル | そうだな……。 |
イクス | もしかしてウィルさんにもそういった大切な人が……。 |
ウィル | …………お前たちにも話してもいいかもな。 |
ウィル | オレにはハリエットという娘がいる。亡くなった妻アメリアによく似てオレを困らせるのが得意な奴でな……。 |
ミリーナ | 娘さんが……。 |
ウィル | アメリアは名家の令嬢でな。妻の両親に反対されオレたちは二人で逃げ出した。だが、アメリアは実家に引き戻され、ハリエットを残し彼女は病で亡くなった。 |
ウィル | ハリエットには母親を見捨てた酷い父親いや、父親とすら思ってもらえてなかったが……。 |
セネル | 二人で暮らすようになれたんだよな。 |
グリューネ | ハリエットちゃんもこっちに来ているのかしら。 |
ウィル | いや。イクスたちの話から推測するにハリエットが具現化されている可能性は極めて低いだろう。 |
ウィル | だが元の世界にもオレはいる。ならばハリエットは一人じゃない。それだけでオレは十分だ。 |
セネル | ウィル……。 |
二人 | …………。 |
ノーマ | よしっ。準備完了っと。 |
ウィル | ? |
ノーマ | 見よっ ! これがあたしの花火スペシャルだぁ~ ! |
ウィル | お、おい、ノーマ ! !人に花火を向けるな ! ! |
ノーマ | あ、オヤジが怒った ! |
ウィル | 誰がオヤジだ ! |
グリューネ | あら ? けど私がお姉さんでウィルちゃんはオヤジなのよね ? |
ウィル | グ、グリューネさんまで……。 |
シャーリィ | ウィルさんはわたしたち7人のオヤジですから。ゲンコツもその証なんですよね。 |
ノーマ | イっくんとリナっちも、一発くらっとく ? |
イクス | なら、お願いしようかな。 |
カーリャ | 試練ってやつですね ! |
ウィル | ゲンコツはそういうものじゃない ! |
クロエ | ふっ……フィリア特製花火をたくさん持ってきたからな。私たちも花火をしよう。 |
セネル | そうだな。俺たちも七夕祭りに向けて。 |
キャラクター | 7話【願い8 村の歴史】 |
グリューネ | 昨夜の花火とっても楽しかったわねぇ。 |
ノーマ | あたしももうちょっと花火をしてたかったなぁ。ウィルっちがもう夜遅いから寝ろってうるさくてちょっと消化不良だよ~。 |
ウィル | オレが止めなければ朝日が登るまでずっとやっていただろ。 |
セネル | 今日はいよいよ七夕祭りだからな。俺たちも何かと忙しくなる。ちゃんと睡眠をとっておいて正解だったと思うぞ。 |
シャーリィ | みんなで一緒にお祭りもまわりたいもんね。 |
ノーマ | まあ、それもそうだね。よく寝たおかげで頭もスッキリだしさ。難しい文献でもスラスラ読めるよ。 |
シャーリィ | ノーマ、さっきから何を読んでるの ? |
ノーマ | 海辺の村の村長さんが保管していた資料だよ。クーが借りてきてくれたんだ。 |
クロエ | 歴史ある貴重な資料だ。大切に扱うんだぞ。 |
イクス | どんなことが書かれてるんだ ? |
ノーマ | 山の村ができた経緯についてだよ。一年に一度しか会えなかったお祭りといい七夕伝説と深い関係がありそうだなって思ってさ。 |
セネル | それで何かわかったのか ? |
ノーマ | まぁ、ものすごくざっくりまとめると昔、若い男女が恋に落ちて仕事をしなくなっちゃったんだって。 |
ノーマ | そしてその男女の影響は、村の若者全員にまで及び村は経済的に困窮。当時の村長さんがこの事態を受けて山の村を作ることに決めたのが経緯みたい。 |
イクス | 七夕伝説に似ているな……。 |
ウィル | 待て、ノーマ !その話は本当なのか ! ? |
ノーマ | あたしを疑ってるの ?ほら、ちゃんとここに書いてあるってば。 |
ウィル | 貸してくれ ! |
ウィル | …………そんなまさか。 |
セネル | ウィル、どうしたんだ ? |
ウィル | ……いや、 |
商人 | や、やめろ ! こっちに来るな ! |
イクス | みんな、川辺で魔物に襲われてる人がいるぞ ! |
グリューネ | あっちは魔物がいて危ない場所よねぇ。間違えて入っちゃったのかしら。 |
ウィル | 間違えたかどうかは知らんが今はともかく助けるぞ。 |
キャラクター | 8話【願い9 輸送隊の荷】 |
セネル | ……よし。これで魔物は片付いたな。みんな、無事か ? |
イクス | ああ。川辺だったから戦ってる時に服がちょっと濡れたけどそれ以外は大丈夫だ。 |
ウィル | お前は村の商人だったな。ひとまず無事なようで何よりだ。 |
商人 | は、はい……。ありがとうございます、ウィルさん。 |
セネル | おい。ここは魔物が出るから立ち入り禁止になってたはずだぞ。どうしてこんなところにいる ? |
商人 | 申し訳ありません……。 |
ウィル | オレたちは理由を聞いているんだ。 |
シャーリィ | あれ ? その背中の籠に入ってるのは……。 |
イクス | あっ……浄化作用のある葉だ。荷物の輸送や、七夕祭りに使われるっていう。このあたりに生えているのか。 |
クロエ | つまり、この葉を採りに来たということか。 |
ウィル | だが祭りの飾り分はすでに確保されている。それに荷物の輸送になら、これ以外にも代用は利く。なぜわざわざ危険を犯してまで、その葉を採りにきた ? |
商人 | そ、それは……いくらウィルさんでも言えません !とにかく申し訳ありませんでした ! ! |
クロエ | あっ、こら ! 待て ! ! |
ウィル | クロエ、追わなくていい。あいつは悪さをしていたわけではない。それにもう立ち入ることもないだろうからな。 |
クロエ | レイナードがそう言うなら……。だが、いったい彼は何を隠していたんだ。 |
ノーマ | さっきの葉に秘密があるのかな。 |
イクス | ここに同じのが落ちてるな。さっきの人が落としていったみたいだ。何も変わったところはないみたい―― |
セネル | 待て ! 文字が浮かび上がってきたぞ ! |
イクス | なっ……どういうことだ ! ?何も書かれてなかったはずなのに……。 |
ウィル | 濡れた手で触れたことが理由だろう。この植物はなかなか興味深い性質を持っているな。イクス、よく見せてくれ。 |
イクス | は、はい。どうぞ。 |
ウィル | ふむ……強い浄化作用をもつこの葉は傷をつけてもしばらくすれば修復されるが水に濡らすと切創部分が反応して色が変化するわけか。 |
ノーマ | 浄化作用のある葉は他にもあるけどこの葉は言葉を宿すこともできたから七夕祭りの飾りにも利用されるわけだね。 |
イクス | そういうことだったのか。いやぁ、博物学者と考古学者が揃うといっきに会話が面白くなるな ! |
カーリャ | そ、そうですかねぇ……。 |
クロエ | だが、どうして先ほどの商人はこのことを隠していたんだ。 |
セネル | あの商人だけじゃない。村の人たちは全員知っていたはずだ。 |
シャーリィ | 全員がわたしたちには隠していたってこと ? |
イクス | いったいどうして……。興味深い現象ではあるけどそこまでして秘密にするほどのことなのか ? |
ウィル | いや……秘密にするほどのことだったのだろう。 |
セネル | ウィル ? |
ウィル | 先ほど、ノーマから見せてもらった資料を読んで気づいた。 |
ウィル | かつての若者たちは恋に溺れて堕落したわけではない。引き裂かれたんだ。 |
キャラクター | 9話【願い10 森の秘宝】 |
セネル | シャーリィ、足元に気をつけろよ。川の上流は岩場になっていて躓きやすいからな。 |
シャーリィ | うん、わたしは大丈夫だよ。それよりウィルさんさっきの話の続きをお願いします。 |
クロエ | レイナードは、海辺の村周辺での発掘調査や山の村での記録から考えるにかつて発生した貧困は人為的なものだと言いたいのか ? |
ウィル | あくまでオレの仮説に過ぎないがな。 |
ノーマ | けど不自然な取引の記録とか、食べずに廃棄された収穫物の化石群も発見されてるならウィルっちの説も完全には否定できないと思うな。 |
ミリーナ | その発端となったのが身分差の恋……。 |
ウィル | 記録では、かつて村長は貴族出身の者が務めていた。そして、ある代の村長の家系図を見たところその娘であるはずの人物が家系図から抹消されていた。 |
ノーマ | その人が家系図から抹消されたのは村の男と駆け落ちしたと考えてるわけだね。ウィルっちとアメリアさんみたいに。 |
ウィル | このようなことが二度と起きないよう貴族の身である当時の村長は、大切な家族……自分の娘を守るために、男たちを山へと追いやった。 |
ウィル | 経済的貧困を人為的に作り上げ若者たちの恋愛による堕落……七夕伝説の教訓を、利用することでな。 |
ウィル | 今でこそどちらの村でも村長と村人は互いに手を取り合っているが昔はまた違ったのだろう。 |
シャーリィ | それが本当なら悲しい歴史ですね……。 |
ウィル | だが、そんな困難にも村人たちはめげずひっそりとした反抗を企てた。さきほどの葉がその証拠だ。 |
グリューネ | あの葉っぱを使ってこっそりお手紙していたのね。なんだか素敵だわ。 |
ウィル | 海辺の村から山の村に送るときには荷物の中にそして、山の村から海辺の村に送るときには……。 |
セネル | 山から海へと流れるこの川を利用した。いや、今も利用してるってわけだな。 |
ウィル | オレの見立てが正しければ……いたぞ ! |
ノーマ | うげぇ~。ウィルっちが盲目になってたあの魔物がいっぱいいるんだけどぉ~。 |
ウィル | どうやらあの魔物は鏡殻変動により異常発生し他の魔物が苦手な浄化作用のある葉を食物としてこの森で繁殖を繰り返してきたとみられる。 |
ウィル | 独自の免疫器官を持つのは葉の持つ浄化作用が由来だったというわけだ。 |
ノーマ | なるほどね。ウィルっちの学者バカっぷりもたまには役に立つね。 |
ウィル | バカは余計だ。 |
イクス | あの魔物が川辺に生えていた葉をほとんど食べつくしてしまったから海辺の村から山の村へ言の葉が届かなくなった。 |
ミリーナ | 山の村から海辺の村への言の葉もあの魔物たちが食べてしまっていたのね。 |
ウィル | オレはずっと不思議だった。どうしてこの村の者たちは恋人や家族と離れ離れで暮らしているのに平然としていられるのか。 |
ウィル | だがようやく答えがわかった。平然としていられるはずがなかったんだ。 |
セネル | ウィル……。 |
ノーマ | さすが博物学者のウィルっち。魔物や動植物だけじゃなく恋する若者たちについてもよくわかってる~。 |
シャーリィ | そして互いを想う家族のことも。 |
ウィル | お、お前たち……茶化すのはやめろ。それは博物学者であることと関係はない。それよりお前たち、お喋りばかりして油断するなよ。 |
クロエ | ああ、お祭りの前に片付けるとしよう。 |
ウィル | 離れ離れでいながらも互いに想い合う恋人や家族……彼らの言の葉を紡ぐためにな。 |
キャラクター | 10話【願い10 森の秘宝】 |
イクス | 七夕祭り、だいぶ賑わってるな。 |
シャーリィ | 前夜祭だけじゃなく七夕祭りも無事に開催できてよかったです。 |
セネル | 祭りのまとめ役もそろそろ仕事から解放されるころだな。 |
ウィル | 待たせたな。 |
ノーマ | あっ ! ウィルっちも浴衣だ !いいじゃん、いいじゃん。渋くてよく似合ってるよ。まさにオヤジって感じだね♪ |
ウィル | それは褒めているつもりか ? |
セネル | 安心しろ、ウィル。似合ってることは確かだ。 |
クロエ | レイナードらしく落ち着きがあって私もぴったりだと思うぞ。 |
シャーリィ | これもミリーナさんが作ったんですか ? |
ミリーナ | いえ。私じゃないわ。 |
ウィル | この浴衣は村人たちからもらったものだ。オレは別にいいと断ったんだが村の者たちにどうしてもと言われてだな。 |
ノーマ | よかったじゃん、ウィルっち。けど、あたしもちょっとでいいから何か報酬が欲しかったなぁ~。 |
セネル | 七夕伝説のお宝が結局見つかってないからって現金なやつだな。 |
ノーマ | ハァ ? なに言ってんの ?もうちゃんと見つかってます~。 |
イクス | お宝が見つかったのか ! ? |
ノーマ | まあちょっと期待してたのとは違うけどね。ほら、こっちついて来て。 |
クロエ | ノーマ。そっちには何も―― |
シャーリィ | …………綺麗。川が星の光でキラキラ輝いてる。 |
ノーマ | この川の水、すごく澄んでるよ。例の葉っぱが流れて川が浄化されたみたいだね。 |
ウィル | つまり、愛の輝きか。 |
ノーマ | ねぇ、せっかくだしお願い事しようよ。星祭みたいに、願い事を書いた葉を流してさ。 |
セネル | それは七夕祭りでの祝い方じゃないだろ。 |
ノーマ | 別にいいじゃん。あたしたちはあたしたちらしく。ほら、これも小さな反抗だよ。 |
イクス | ならその小さな反抗に今回は俺たちも加えてもらおうかな。 |
ミリーナ | せっかくだものね。 |
ノーマ | それじゃあ決定ね !みんなの分の葉はこれだよ。はい、受け取って。 |
セネル | まったく……。けどこういうのもたまにはいいか。 |
ウィル | 願い事か……。 |
ジェイ | この世界では何を願いましょうかね。 |
ノーマ | ジェージェー ! 来てくれたんだ ! |
ウィル | ジェイ、久しぶりだな。 |
ジェイ | お久しぶりです、ウィルさん。村長代行やお祭りのまとめ役だけでなく村人たちのために魔物退治までお疲れ様でした。 |
ウィル | 相変わらずの情報収集能力だな。セネルたちから話は聞いていたが不可視のジェイはこの世界でも健在というわけか。 |
ジェイ | はい。ウィルさんもお元気そうでなによりです。 |
セネル | ジェイ。俺たちに気を使う必要はなかったんだぞ ? |
ジェイ | いえ。おかげさまでキュッポたちとは十分にまったりと過ごさせてもらいましたからご心配なく。 |
キュッポ | 家族でいっぱい遊んだキュ ! |
ピッポ | やっぱり家族と一緒は最高だキュ ! |
ポッポ | この世界でもずっと一緒だキュ ! |
ノーマ | ラッコたちも一緒だったんだ。 |
三人 | ラッコじゃないキュ ! ! |
ウィル | モフモフ族の三人組も相変わらずのようだな。よかったな、ジェイ。 |
ジェイ | まあ、それはそうですけど……。 |
ノーマ | ね~みんな~、それよりお願い事でしょ~ ! ?ウィルっちも早くはやく~ ! ! |
ウィル | 願いか……。食卓の平和は約束されたわけだからな。今回は何を願おうか。 |
グリューネ | そういうノーマちゃんは決まったの ? |
ノーマ | まあね。今回もクーみたいに……と思ったけどすっごく川の輝きが綺麗でさエバーライトのことを思い出しちゃった。 |
ノーマ | だから自分のためじゃなく今回は誰かのために祈るのもありかなって。ちょっとしたオヤジ孝行みたいな。 |
ウィル | オレのことを言ってるのか ? |
ノーマ | そういうわけでウィルっちは素直に願いを書きなよ。 |
シャーリィ | ウィルさんは立派なおとなですけど私たちの前では、強がらなくたっていいんですからね。 |
イクス | それに、その葉に書かれた言葉は水以外に、誰も知りませんから。 |
ウィル | いや、オレのことはいい。お前たちはちゃんと自分の願いを書け。 |
ノーマ | ちょっと ! せっかくオヤジ孝行してやるって言ってるのにオヤジ泣きどころかそれを遠慮するってどういうこと ! ? |
セネル | 別にいいだろ。何と言われようと俺たちは勝手に願いを書くだけだ。 |
クロエ | そうだな。どうせレイナードには何を願ったかはわからない。 |
ノーマ | こうなったら意地でもオヤジ孝行してやる。 |
イクス | それじゃあ俺たちも。 |
ミリーナ | 同じ願いを。 |
ジェイ | 面白いですね。ではボクも便乗させてもらいます。 |
ウィル | はぁ……オレの言うことを素直に聞いてくれない奴らばかりだな。 |
ウィル | だが、別にいいか……。オレを困らせてくる奴らにはもう慣れっこだからな。 |
ノーマ | それじゃあいくよ ! |
シャーリィ | 水に願いを込めて……わたしたちの願いも、届きますように……。 |