キャラクター | 1話【救出作戦1 オルバース領へ】 |
| この物語は4部 第1章の裏側で起きていたお話です。 |
リッド | ……ここにもいねえのか。ったく、キールのやつ、一体どこにいるんだ ? |
ファラ | あれ、リッド、どうしたの ? |
リッド | なあ、ファラ。キール見なかったか ? |
ファラ | キールならセルシウスと一緒にちょっと前に出て行ったよ。 |
ファラ | レムの居場所が分かったからその調査に向かってるんだって。 |
リッド | そういや、メルディとチャットもシャドウの調査に出かけてんだよな。 |
リッド | 仕方ねえ。話は全員が帰ってきてからにするか。 |
ファラ | リッド、何かみんなに話したいことでもあったの ? |
リッド | ああ、さっきカロル調査室の会議で嫌な話を聞いちまったんだ。セネルたちが見つけた魔核精製工場って覚えてるか ? |
ファラ | えっと……確か、聖核ってものを作ってる工場だよね ? でも、ウェルテス領にあったその工場はジュディスたちが壊したんでしょ ? |
リッド | そうなんだが、ジェイが危惧してた通り帝国がその工場を各領に建設したらしい。 |
リッド | おまけに、カロルたちの情報だとそこに各領の領主と従騎士の心核が運び込まれてるって話だ。 |
ファラ | そんな ! ? それじゃあ……。 |
リッド | 領主や従騎士を助ける為にはその工場に行って心核を取り返さねえといけないってことだ。 |
ファラ | 各領に工場があるってことはオルバース領にもあるってことだよね。 |
ファラ | ……わかった ! リッド、今すぐその魔核精製工場に行こう ! わたし、準備してくるっ ! |
リッド | 待て待て ! そんなすぐに行く訳ねえだろっ ! ? |
ファラ | えっ、でも……。 |
リッド | あのな……計画もなしに飛び込んだところで帝国の連中に見つかって捕まるのがオチだろ。 |
リッド | だから、キールたちにも協力してもらってある程度人数を揃えてから潜入しようと思ってたんだ。 |
ファラ | そうだよね……。でも、もしわたしたちの世界の誰かがリビングドールにされてるって思うと……。 |
リッド | それに関しては、まだ情報は何もねえけど他の領主たちの選定を聞いてると十中八九、オレたちが知ってるやつなんだろうな。 |
ファラ | ……だったら、なおさらわたしたちがなんとかしなくちゃ。 |
リッド | なあ、ファラ……言っておくが、その領主たちってのが元の世界ではオレたちの敵だったやつの可能性だってあるんだぞ。 |
ファラ | うん……。わかってる。だけど、勝手に身体を使われてるなんてそんなこと、絶対に間違ってるよ。 |
ファラ | だから、わたしは例え元の世界で敵だった人でも、絶対に助ける。そのあとのことは、助けてから考える ! |
リッド | ったく、簡単に言ってくれるぜ。シゼルのときはどうにかなったが、全員がオレたちに協力してくれるわけじゃねえんだからな。 |
ファラ | 大丈夫 ! イケる、イケる ! ! |
リッド | はいはい。んじゃ、オレはキールたちが帰ってくるまでゆっくりさせてもらうか。ここ最近は働きすぎてろくに昼寝もできてねえからな。 |
ファラ | うん。最近のリッド、すっごく頑張ってるもんね。 |
リッド | な、なんだよ急に……。 |
ファラ | だって、さっきの魔核工場の話もそうだけどリッド、大陸班のリーダーとしてちゃんと仕事してるんだなって思ってさ。 |
リッド | あのな、リーダーはお前がやれって言ったんだろ……。 |
ファラ | でも、こんなに真面目にやるとは思ってなかったからちょっと感心しちゃった。 |
リッド | そりゃあ……オレだけ手を抜くわけにはいかねえだろ。その……お前だって、みんなの為に毎日美味い飯作ってくれてるだろ。それと一緒だよ。 |
ファラ | ……うん。やっぱり、リッドはリッドだね。 |
リッド | ……どういう意味だよ ? |
ファラ | リッドは頼りになるってこと ! |
リッド | そ、そんなのいちいち言わなくていいんだよ ! あー、もう ! なんか騒いだら腹減ってきた ! |
ファラ | 了解。何かリクエストあれば作ってあげるよ。 |
リッド | そうだな……ん ? わりぃ、魔鏡通信だ。 |
セネル | リッド。今、大丈夫か ? |
リッド | ああ、問題ないぜ。どうしたんだセネル ? 確か、仲間が見つかって捜しに行ってんだろ ? |
セネル | ああ、そうなんだが……実は、その途中でオルバース領にあった研究施設に潜入してそこで鏡映点リストに載っていた人物を見かけたんだ。 |
セネル | それで、その人物っていうのがおそらく、リッドたちが鏡映点候補に挙げていたフォッグとレイスってやつだと思う。 |
二人 | ! ? |
セネル | ただ、その二人はリビングドールにされている上に妙な焼印を付けられたあと、そのままオルバース領の領主の館に送られたんだ。 |
セネル | その場にはグラスティンもいたんだがあいつの口ぶりからすると、二人がオルバース領の領主と従騎士である可能性は高いと思う。 |
リッド | マジかよ……。じゃあ、オレたちの大陸の領主と従騎士は、フォッグとレイスなのか。シゼルのことが解決したばかりだってのに……。 |
ファラ | レイスが……。 |
リッド | ファラ、大丈夫か。 |
ファラ | う、うん。リッド、わたしたちもオルバース領に行こう。 |
リッド | そうだな。セネル、オレたちはフォッグとレイスが送られたっていう領主の館へ向かってみる。 |
セネル | 了解。気を付けろよ。 |
リッド | キールたちの帰りを待つなんて悠長なことは言ってられねえか……。 |
ファラ | …………。 |
リッド | ファラ ? |
ファラ | ……え ? ああ、うんっ !二人を早く助けないといけないもんね ! |
リッド | ……ああ、そうだな。ファラ、オレたちだけでも先に領都へ行くぞ。 |
キャラクター | 2話【救出作戦2 領都到着】 |
| オルバース領 領都インフェリア |
キール | ――状況はわかった。まさか、フォッグとレイスが領主と従騎士にされていたなんてな……。 |
メルディ | リッドたちは、これからどうするつもりか ? |
リッド | オレとファラは、このまま領都で情報を集める。二人が本当に領主の館にいるのかも確かめねえといけないからな。 |
セルシウス | あなたたちだけで大丈夫なの ? わたしたちが行くまで、あまり動かないほうがいいんじゃないの ? |
リッド | 心配すんなって。無理はしねえからよ。それでさっき話したことなんだが……。 |
キール | ああ。心核があるかもしれない工場についてだな。カロル調査室の情報だし、領主たちの心核が運ばれたという話は本当だと思っていいだろう。 |
チャット | 魔核精製工場の場所は確認できました。ちょうど、ボクたちやキールさんたちが領都に向かう道のりの途中にあるみたいです。 |
キール | となると、ぼくとセルシウスは工場に向かってそこでメルディとチャットたちとも合流するか。 |
チャット | 合流後、ボクたちでフォッグさんたちの心核を回収したあとに領都に向かう、という訳ですね。 |
リッド | 悪いな。そっちは任せることになっちまうが、頼んだぜ。 |
メルディ | 大丈夫よ。メルディたちにお任せ ! フォッグとレイス、絶対助けるよ ! |
クィッキー | クィッキー ! ! |
キール | リッド。こっちの計画は今伝えたとおりだ。だから、セルシウスも言ったことだがお前たちは絶対に無茶はするなよ。 |
リッド | ああ、分かってる。そっちも気を付けろよ。何かあったらオレたちもすぐに駆け付けるからな。 |
キール | ぼくがそんなヘマをするわけないだろ。それじゃあ、また連絡する。 |
メルディ | リッド。メルディたちもすぐ行くからな。 |
リッド | ……さてと、オレたちはキールたちが来るまで情報を集めとこうぜ。 |
ファラ | そうだね……。 |
リッド | ……おい、ファラ。さっきのキールたちとの話ちゃんと聞いてたか ? |
ファラ | ……えっ ? あっ、うん ! もちろんだよ ! えっと……。 |
リッド | ファラ……やっぱお前レイスのこと気にしてんだな ? |
ファラ | ……そっか。隠してるつもりだったけどリッドにはバレちゃってたんだ。 |
リッド | 当たり前だろ。何年ずっと一緒にいると思ってんだ。 |
ファラ | ……おかしいよね。こういうこともあるってちゃんと頭では分かってたつもりだったのにこんなに動揺しちゃうんだもん。 |
ファラ | わたし、この世界に来るまでは、もう二度と……レイスとは会えないんだって思ってたから……。 |
リッド | 別に……お前だけじゃねえよ。オレだって、レイスが生きてるって聞かされて驚いてんだ。 |
ファラ | ……ねえ、リッド。わたし、レイスに言いたいことがいっぱいあったはずなのに、今は何を話せばいいのか全然分からないの。 |
ファラ | レイスは……自分の命と引き換えにわたしたちを守ってくれたのに……。 |
リッド | ……そんなこと、今考えたって仕方ねえだろ ? |
ファラ | えっ ? |
リッド | お前が言ったことだぜ。「助けてから考える」ってな。 |
ファラ | リッド……。 |
リッド | だからよ、今はレイスたちを助けることだけを考えようぜ。そのあとのことは、またそのときになんとかすりゃあいいんだからよ。 |
ファラ | うん……そだね。リッドの言う通りだよ。 |
リッド | なら、オレたちもそろそろ動くか。収穫が何もないんじゃ、キールたちに大口叩いただけになっちまうからな。 |
ファラ | ……ねえ、リッド。あっちの市場があったところなんだか人が集まって騒がしくなってない ? |
リッド | ん ? 言われてみりゃそうだな。何かあったのか ? |
帝国兵β | ――こちら、異常なし。 |
リッド | やべっ、帝国兵か。ファラ、一旦隠れるぞ。 |
ファラ | う、うん ! |
リッド | 結構な数の兵がいるな。しばらくは身を隠しておいたほうがよさそうだが……。 |
ファラ | 待って、リッド ! ? あそこにいるのって…… ! ? |
フォッグβ | さて、街の様子を見てみるとしようか。 |
リッド | フォッグ ! ? ……いや、フォッグだけじゃねえ。 |
レイスβ | お供致します、領主様。 |
ファラ | …………レイス。 |
キャラクター | 3話【救出作戦3 心無い騎士】 |
レイスβ | 我々の不在中、何か異変はなかったか ? |
帝国兵β | こちら、特に問題ありません。 |
レイスβ | では、引き続き警備にあたれ。 |
帝国兵β | 承知しました。 |
リッド | さすがに、オレたちが領都にいるってことはバレてねえみたいだな。 |
ファラ | どうする、リッド ? |
リッド | しばらくは尾行するしかないな。どこかで二人を助け出す隙がありゃいいんだが……。 |
万屋の店主 | 領主様、それに従騎士様もお見えになって頂き、誠にありがとうございます。 |
万屋の店主 | 私がこうして商売をして暮らしていけるのも全て領主様たちのお力があってこそです。どうか、今後ともこの領都をよろしくお願いします。 |
フォッグβ | 任せておけ……ん ? |
万屋の店主 | あの……領主様、どうかされましたか ? |
フォッグβ | お前、そこで何をしている ? |
? ? ? | ……しまった ! ? |
万屋の店主 | おっ、お前は ! ? この野郎 ! また店のモンを盗みやがったな ! |
盗人少年 | うるさいっ ! 簡単に盗まれるほうが悪いんだよっ ! |
万屋の店主 | くそっ ! あのガキ ! ! 待ちやがれ ! ! |
盗人少年 | へへ~ん。悔しかったら捕まえてみなー ! ! |
フォッグβ | ――ならば、望み通りにしてやろう。 |
盗人少年 | う、うわあああっ ! な、なんだよコイツ ! ボクに追い付くなんて ! ? は、はなせー ! ! |
万屋の店主 | さすがは領主様 ! いやぁ、助かりました。そいつはこの界隈じゃ有名な泥棒で困ってたんですよ。 |
レイスβ | 子供だろうと、罪は罪だ。 |
盗人少年 | なんだよ ! 従騎士様だかなんだか知らないがお前たちには関係ないだろっ ! |
レイスβ | 領主様、処罰はどうされますか ? |
フォッグβ | 好きにしろ。 |
レイスβ | では……覚悟しろ。少年。 |
盗人少年 | ヒッ ! ? や、やめ…… ! ? |
リッド | 嘘だろ…… ! 剣なんか抜きやがって相手は子供だぞ ! ? |
ファラ | ……やめて。レイスの姿で、そんなことしないで ! ! |
リッド | おい、ファラ ! ! くそっ、なんでこうなるんだよ ! ! |
盗人少年 | だ、誰か、助け…… ! ! |
レイスβ | 命乞いか ? もう遅い。 |
ファラ | はああああああああっ ! ! ! ! |
レイスβ | 貴様、何者だ ? |
ファラ | こんな小さな子に剣を向けるなんてわたしが絶対に許さないんだから ! ! |
帝国兵β | 従騎士様への襲撃を確認。総員、対象者を捕えよ。 |
帝国兵β隊 | 了解。 |
ファラ | いいわ。全員まとめて相手してあげる ! |
リッド | 馬鹿ッ ! こんな大人数と戦えるわけねえだろ ! ? ひとまず逃げるぞ ! |
ファラ | リッド ! ? |
帝国兵β | 捕獲対象者、一名を追加。これより、確保する。 |
リッド | そんな簡単に捕まるかよっ ! |
帝国兵β | ぐわああっ ! ? |
リッド | ファラ、こっちだ ! |
ファラ | う、うん…… ! |
レイスβ | 領主様、ここは兵士たちに任せて我々は館へと戻りましょう。 |
フォッグβ | そうだな。お前たち、後は任せたぞ。 |
帝国兵β隊 | 了解。これより、反逆者二名の捕獲を開始する。 |
キャラクター | 4話【救出作戦4 心を取り戻しに】 |
メルディ | あっ、キールが来たよ ! メルディたち、ここだよ ! |
キール | ……はぁはぁ。やっと……着いた……か。 |
メルディ | キール、大丈夫か ? |
キール | 心配……ない。レムとの契約も……あった……せいで体力を想像……以上に……消耗した……だけだ ! |
セルシウス | それに加えて、あなたたちから先に着いたっていう連絡が来た途端、歩くペースを速めたせいね。 |
メルディ | そうなのか ? ごめんな、キール。もしかして、メルディたちのせいか ? |
キール | ち、違う ! ぼくはその……お前が勝手なことをして計画に支障が出ると困るから急いで来ただけだ ! |
チャット | つまり、メルディさんが心配で仕方がなかったと ? |
キール | なぜそうなる ! チャット、お前は余計なことを言うなっ ! |
チャット | ボクは客観的意見を言っただけです。 |
セルシウス | そんなことより、急ぐ理由は他にもあったんじゃなかったかしら ? |
キール | そ、そうだ ! ぼくたちは一刻も早く心核を取り返さなくちゃいけないんだ ! |
キール | だが、その前に確認しておきたいんだがメルディ、シャドウの精霊の契約は上手くいったのか ? |
メルディ | バッチリだよ~。シャドウとの契約、ちゃんとできた ! |
チャット | さっきの話してる様子だと、キールさんもレムとの契約は無事成功したみたいですね。 |
キール | ああ、いざとなったらいつでもレムを召喚できる。だが、それを喜ぶのは後回しだ。 |
キール | いいか。まず、見張りの兵たちはセルシウスの力で凍らせてもらう。そして、安全が確保できたとぼくが判断したら、全員で建物の中に潜入する。 |
チャット | むむっ、キャプテンであるボクが指揮をしないことに不満はありますが、時間がないので今回だけは特別に許可しましょう。 |
クィッキー | クィック、クィ、クィ、ッキー ! |
チャット | ギャー ! お、お前は絶対ボクに近づくなよ ! 分かったな ! ? |
クィッキー | クィッキー ! |
セルシウス | ……もしかして、あまり潜入に向いていないメンバーなんじゃないかしら ? |
キール | ……今さら言ったって仕方ないさ。 |
キール | ……よし、ここまでは順調だ。あとは、心核が保管されている場所が分かればいいんだが……。 |
メルディ | キール。こっち。廊下にいる人たち、何か喋ってるよ。それに心核って言葉、使ってた。 |
キール | なに、本当か、メルディ ? |
メルディ | はいな。でも、内容はあまり上手く聞き取れなかったよ。 |
チャット | ……どこかに向かうみたいですね。どうします ? 尾行してみますか ? |
キール | そうだな。物陰に隠れながら近づくぞ。 |
研究者A | ――しかし、別の大陸の魔核工場が襲撃されたと聞いたが、ここは大丈夫なのか ? |
研究者B | 侵入者への対策としてグラスティン様が警備兵を増員して下さったそうだ。 |
研究者A | さすがグラスティン様だ。領主たちの心核の提供だけでなくそのような配慮までしてくださるとは。 |
研究者B | ああ、私たちもグラスティン様のお力になれるよう鏡映点の心核を使った聖核の増産を急がなくてはな。 |
キール | 心核を使った聖核の増産だと ! ? それに、鏡映点の心核ということはリッドたちの言った通り、領主たちの心核を使ってるのか ? |
キール | 心核を使う……。どう利用しているんだろう……。 |
メルディ | フォッグとレイスが心核悪いことに使われてるか ? |
セルシウス | 今はそれを考えている時じゃないと思うわ。少なくとも、ここに心核があるのは間違いないみたいだしね。 |
チャット | どうやら、この先の部屋があの人たちの研究室みたいですね。 |
キール | ……行こう。何か重要な手がかりがあるかもしれないからな。 |
研究者A | ちょうど『入れ替え』の時間か。おい、そっちにある心核を……。 |
チャット | ――ピコハン ! ! |
研究者A | ぐっわ ! ? |
研究者B | な、なんだ ! ? |
チャット | あなたも、少し大人しくしてもらいますよ ! ――コチハン ! |
研究者B | か……身体……が…… ! |
チャット | ……ふぅ。これで問題ありませんね。みなさん、もう出て来て大丈夫ですよ。 |
メルディ | ワイール ! チャット、すごいなぁ ! |
チャット | これぐらいキャプテンとして当たり前です ! |
クィッキー | ク、ク、クィッキー ! ! |
チャット | ギャー ! だ、だからお前は近づくなって言ってるじゃないか ! ! うわーん ! ! |
キール | 静かにしろ ! せっかく警備をかいくぐってきたのにバレたらどうするつもりだ ! |
セルシウス | ……キール、あなたもね。 |
キール | うっ ! そ、それはともかく、心核を回収するぞ。 |
セルシウス | ちょっと待って。この心核が入っているケース……。何か機械のようなものが繋がっているみたい。 |
チャット | 詳しく調べてみないと分からないですがあの研究者たちが言っていた聖核を増産するための機械ではないでしょうか ? |
キール | ……ああ、机の上においてあった資料でも確認できた。やはり、心核のエネルギーを使って聖核を作っていたみたいだ。 |
キール | それに、この資料によると鏡映点たちの心核エネルギーは普通の人物たちと比べてかなり多いと記載されている。 |
キール | 領主と従騎士の心核が使われているのもそのためだ。ご丁寧に、ここで使われている心核の所有者としてフォッグとレイスの名前も書かれている。 |
チャット | 成程。だから、領主と従騎士の心核がここにあるという訳ですか。 |
キール | おそらく、他の大陸の工場でも同じことが行われているんだろうな……。 |
メルディ | キール、こっちにも似たものあるよ。これも心核か ? |
セルシウス | ……何かの溶液に浸けているわね。 |
キール | それは、多分【キラル溶液】だ。どうやら、心核のエネルギーはその溶液に一定時間浸すと、ある程度回復するらしい。 |
キール | だが、こんな無茶苦茶なエネルギー循環をおこなえば心核に悪影響を与えるに決まってる ! 帝国は人の命や心をなんだと思ってるんだっ ! |
メルディ | キール……。 |
セルシウス | キール、今は冷静になるべきよ。 |
キール | ……ああ、分かってるさ。これでフォッグとレイスの心核は回収できた。早くここを出て、リッドたちと合流するぞ。 |
キャラクター | 5話【救出作戦5 街中の逃走劇】 |
伝令兵β | こちら、第一部隊より伝令。街の通行口の封鎖作業が完了。 |
帝国兵β | 了解。第二部隊は引き続き捕獲対象者の捜索を継続する。 |
リッド | ……マズいな。街を封鎖されちまったら、キールたちとも合流が難しくなるかもしれねえ。 |
ファラ | ごめん……リッド。わたしのせいで……またみんなに迷惑かけちゃった。 |
リッド | ファラ……。 |
ファラ | でも、気づいたら身体が勝手に動いちゃってたの。だから……。 |
リッド | ……いいじゃねえか、それがお前なんだからよ。 |
ファラ | ……えっ ? |
リッド | お前は、あの子供を助ける為に飛び出した。それが間違ってたなんてオレは絶対に思わねえよ。 |
リッド | それに、たとえお前が飛び出さなくてもオレがレイスを止めてた。だから、気にすんな。 |
ファラ | ……リッド。なんだか、今日のリッドは優しいね。 |
リッド | き、気のせいだろ !オレはいつも通りだっての ! ? |
ファラ | そっか……でも、ありがとう。 |
帝国兵β | ――捕獲対象発見。捕獲する。 |
リッド | やべっ ! ? バレちまった !おい、ファラ ! 逃げるぞ ! |
ファラ | う、うん ! ! |
リッド | ……駄目だ ! この先は行き止まりになってやがる ! |
ファラ | リッド、このままじゃ、わたしたち……。 |
リッド | 仕方ねえ。こうなりゃ、強行突破するしか……。 |
盗人少年 | おい、お前たち、こっちだ ! |
リッド | お前、あの市場にいた子供か ! ?おい、お前も逃げねえと捕まるぞ ! ? |
盗人少年 | ボクのことはいいんだよ !それより、早くこっちに来い !お前らも追われてんだろ ! ? |
リッド | 待てよ、そっちに逃げ道なんて……。いや……だとしたらあいつ、どっから出てきたんだ ? |
ファラ | ……行こう、リッド !わたし、あの子を信じる ! |
リッド | ……考えてる暇はねえよな。わかった、ひとまず、あの子供に付いていくしかねえか。 |
ファラ | ……ここは ? |
盗人少年 | 地下水路だよ。街全体に繋がってるけど誰も移動になんて使ってないししばらくは兵士たちにもバレないと思う。 |
リッド | 確かに、帝国兵たちが追ってくる気配はねえな。しっかし、こんな場所があるなんてよく知ってたな。助かったぜ。 |
盗人少年 | ……盗みがバレて店のやつに追われたときにここを使って逃げてたんだよ。誰にも言うなよ。 |
ファラ | ……やっぱり、似てる。 |
盗人少年 | な、なんだよ。人の顔をそんなじっと見つめて……。 |
ファラ | ねえ、リッド。この子、わたしたちが元の世界で会った泥棒の子にそっくりじゃない ?ほら、初めてレイスに会った時にいた子。 |
リッド | ああっ ! そういやそうだ !あの時の子供か ! |
盗人少年 | ……何言ってんだよ ?ボクはお前たちのことなんて知らないぞ。 |
ファラ | ……わたしたちのこと、分かんないみたいだね。 |
リッド | ……前にキールたちが言ってたんだがマゼット博士にそっくりな人に会ったときも相手は自分たちのことは何も知らなかったらしい。 |
リッド | 多分、マゼット博士と同じで、こいつもこの世界の住民として具現化されたんだろうな。オレたちのことを知らねえのが、その証拠だ。 |
ファラ | ……そっか。知ってる人に会えたのに覚えてもらってないっていうのは、ちょっと悲しいね。 |
リッド | こればっかりは、誰が悪いって訳でもねえよ。 |
リッド | ……ん、魔鏡通信か。きっとキールたちだな。 |
キール | リッド。こっちは無事フォッグとレイスの心核を回収できたぞ。そっちはどうだ ? |
リッド | わりぃ。オレたちのほうは帝国兵に見つかっちまった。 |
キール | なんだって ! ? おい、一体何があったんだ ! !あれほど注意しろと言ったじゃないか ! ! |
メルディ | リッドたち、キケンなのか ? |
ファラ | ううん、今は大丈夫。わたしたちを助けてくれた人がいて今は安全なところにいるの。 |
リッド | だが、街全体の警備が厳重になってるはずだ。今もオレたちを捜してるだろうからな。 |
チャット | ということは、ボクたちが領都に入ることも難しくなってしまったかもしれないですね。 |
盗人少年 | ……なんだ、その鏡 ?どうして別の人間が映って会話してるんだ…… ? |
リッド | あっ、そうだ。なぁ、お前、今のオレたちの話、聞いてたか ? |
盗人少年 | う、うん……。 |
リッド | なら、大体の事情は分かったと思うんだが外の人間が兵士たちにバレないように街に入ってこれる方法があったりしねえか ? |
盗人少年 | それなら、この地下水路は街の外にも繋がってるから、その出入り口を使えば多分、大丈夫だと思うけど……。 |
リッド | よし ! なら、その道を教えてくれ。外にいる仲間とここで合流してえんだ。 |
盗人少年 | お前たち、逃げなくていいのかよ ? |
リッド | そりゃあ、さっさと逃げてえところなんだが生憎と、まだやらなきゃいけねえことがあるんだよ。 |
キャラクター | 6話【救出作戦6 仲間との合流】 |
クィッキー | ク、ク、クィッキー ! |
メルディ | リッド、ファラ~ ! |
リッド | お、来た来た。思ったより早かったじゃねえか。 |
キール | 「早かったじゃねえか」じゃないだろ ! !一体何をやってるんだ、お前たちは ! ! |
リッド | わ、悪かったって !けどよ、起こっちまったことは仕方ねえじゃねえか。 |
キール | いいや、よくない !下手をしたら、フォッグたちを助けるどころかお前たちが危険なことになっていたんだぞ ! |
リッド | どうしたんだよ、キール。なんか変だぞ、お前。 |
キール | 変なことあるか ! ぼくはだな……。 |
メルディ | キール、メルディにもわかるよ。今のキール、かなりとても怒ってる。 |
キール | メルディ、お前まで ! ? |
メルディ | でも、それはキールがリッドたちのことホントに心配だったから。 |
メルディ | メルディ、知ってるよ。キールがすごく優しくて二人のこと、とても大事に想ってること。だから怒ってる、違うか ? |
キール | か、勝手にぼくの心情を代弁するな ! |
リッド | んだよ。それならそうと素直に言ってくれりゃあよかったのによ。 |
ファラ | ごめんね、キール。わたしたちのことで、心配かけちゃって。 |
キール | ち、違う ! ぼくは本当に作戦に支障が出るのが嫌だっただけだ ! 他意はない ! |
リッド | ま、そういうことにしとくか。実際、迷惑かけちまったのは本当だしな。 |
チャット | 確かに、キールさんの仰る通り領主の館だけでなく、街全体の警備が厳しくなってしまったのは厄介ですよ。 |
セルシウス | そうね。奇襲をかければ相手の裏を突けたかもしれないけど、警戒されている以上それも難しいかもしれないわね。 |
キール | ……いや、それに関してはぼくに考えがある。ただ、その為には出来るだけリスクを減らして領主の館まで近づきたい。 |
キール | おい、少年。お前がリッドたちをここまで連れて来たっていう子供だな ? |
盗人少年 | そうだけど……それがどうしたんだよ ? |
キール | なら、一つ聞きたいことがある。ここから地上に出ずに、領主の館にはどれくらい近づけるか分かるか ? |
盗人少年 | ……あの新しく出来た建物だろ ?なら、その近くにも出口はあるけどさすがに敷地内は無理だからな。 |
キール | いや、上出来だ。道案内も任せていいか ? |
盗人少年 | 別にいいけど……。 |
メルディ | キール、どんな作戦か ? |
キール | 時間がない。歩きながら話すからよく聞くんだ。いいか、まず領主の館に入る方法だが――。 |
盗人少年 | ――着いたぜ。ここを上がれば領主の館はすぐ目の前にあるはずだ。 |
チャット | では、キールさんの作戦通りに行きましょう。みなさん、準備はいいですね ? |
キール | いや、少し待ってくれ。リッド、イクスたちに連絡を入れておいてくれ。 |
キール | 万が一の為に、ぼくたちの動きをイクスたちにも共有しておいたほうがいい。 |
ファラ | そういえば、わたしたち何も言わずにアジトから出てきちゃったもんね。 |
リッド | わかった。ちょっと待ってろよ。 |
リッド | ――よし、繋がった。イクスか ? |
イクス | リッド ! セネルたちから聞いたぞ。仲間が見つかったんだって ? |
リッド | なんだ、聞いてたのか。レイスとフォッグの救出に動いてるから連絡しとこうと思ったんだよ。 |
イクス | そっちの様子はどうだ ? 救援はいるか ? |
リッド | いや、オレたちの方は心配すんな。すぐに二人を連れて帰る。じゃあな。 |
イクス | わかった、そっちは頼む。 |
リッド | よし、あとはこれでオレたちが上手くやりゃあいいだけだな。 |
盗人少年 | ……悪いけど、ボクが協力するのはここまでだからな。 |
キール | いや、十分すぎるくらいさ。助かった。 |
メルディ | ワイール ! メルディたち助けてくれて、ありがとな ! |
盗人少年 | お、お礼なんていらないよ。じゃあ、ボクはもう行くからな。 |
ファラ | 待って ! |
盗人少年 | な、なんだよ ? |
ファラ | わたしたち、まだ名前を聞いてなかったよね ?教えてくれないかな ? |
ベッポ | ……ベッポだよ。 |
ファラ | ねえ、ベッポ。最後にわたしたちに約束して。もう二度と、泥棒なんてしないって。 |
ベッポ | はぁ ? そんなの……おばちゃんには関係ないだろ。 |
ファラ | おばっ…… ! ? なんだって ? |
ベッポ | お、お姉様です。美しい……お姉様。 |
ファラ | ふむ。よろしい。ねえ、ベッポ。あんただって、店の商品を盗むことが悪いことだってちゃんと分かってるわよね ? |
ベッポ | そりゃあ……そうだけど……。 |
ファラ | だったら、あんたが街の人たちから借りたもの将来必ず返しなさいよ。人に何かをしてあげられるようになったら必ず返すの。いいわね ? |
ベッポ | …………。 |
ファラ | ……本当は、これを言うのも二回目なんだけどね。 |
ベッポ | えっ ? |
ファラ | ううん、こっちの話。それで、約束できるの ? |
ベッポ | ……わかったよ。約束する。 |
ファラ | ……そう。じゃあ、あんたも気を付けてね。 |
ベッポ | ……お前たちも、絶対捕まるなよ ! |
ファラ | ……よし、行こう、みんな ! |
リッド | よっしゃあ。それじゃ、敵のアジトに乗り込むとするか ! |
キャラクター | 7話【救出作戦7 救出作戦】 |
帝国兵β 其の一 | ――異常なし。引き続き、周辺の警備を継続する。 |
チャット | 予想通り、館前の警備は厳重ですね。 |
キール | よし、まずは作戦の第一段階だ。頼んだぞ、メルディ。 |
メルディ | はいな ! クィッキー ! |
クィッキー | クィッキー ! |
帝国兵β 其の一 | ――前方に生命体を確認。 |
クィッキー | クッ、クィッキー ! |
帝国兵β 其の二 | こちらに対して、威嚇行動を開始。念のため、こちらも対処行動に――。 |
リッド | ――おっと、よそ見してっと危ねえ、ぜっ ! |
ファラ | やあああっ ! ! |
帝国兵βたち | ぐはっ………… ! |
リッド | いっちょ上がりっと。とりあえず、こいつらは物陰に運んどくか。 |
キール | ああ、あとはセルシウスが帰ってくれば……。 |
セルシウス | もういるわ。ほら、言われた通り適当に巡回してた兵士から人数分の鎧を取ってきたわよ。 |
キール | さすがだ、セルシウス。こっちも警備兵を倒したところだ。 |
メルディ | クィッキーも、頑張ったな !お利口さんだよ ! |
クィッキー | クィッキー、クィッキー ! |
リッド | ただ、問題はこのあとなんだよな……。 |
キール | 何が心配なんだ ?ぼくの作戦は完璧なんだ。どこにも死角はない ! |
ファラ | そうだよ、リッド。イケる、イケる ! ! |
リッド | ……はぁ。だといいんだがな。胃が痛くなってきたぜ。 |
帝国兵 ? | 報告します ! たった今、周囲をうろついていた反逆者二名を捕えました ! |
二人 | …………。 |
館内の帝国兵β | ご苦労。では、後は我々が引き取る。 |
帝国兵 ? | い、いえ ! この者たちは至急領主様たちのところへ連れてくるようにと報告を受けていますので自分たちが引き続き、連行致します ! |
館内の帝国兵β | ――承知した。では、早急に向かえ。 |
帝国兵 ? | はっ ! では、失礼しますっ ! ! |
キール | ……どうだ、リッド !ぼくが言った通り、何も問題はなかったじゃないか ! |
メルディ | ワイール ! さっすがキールが考えた作戦 !バッチリだよ ! |
キール | おいっ馬鹿 ! 誰もいないからってまだ鎧を取るな ! 気づかれたらどうする ! ? |
メルディ | わかったよぅ。でも、この鎧、ブカブカで動きづらい。 |
キール | 我慢しろ。ぼくだって、重たくて仕方ないんだ。 |
セルシウス | だけど、反逆者を捕えた兵になりすますなんてよく思いついたわね ? |
キール | 以前、リフィル先生から話を聞いていたんだ。それで、今回の状況と似ていると思ったから応用してみたんだ。 |
リッド | あいつらも、何かと苦労してたんだな……。ってか、キール。お前、変に気合入りすぎなんだよ。こっちは笑いを堪えるのに必死だったぜ。 |
キール | し、仕方ないだろ ! 疑われないようにするために必要な演技だったんだ ! |
キール | そんなことより、領主の間まであと少しだ。いいか。ぼくたちはこのまま帝国兵になりすまして隙をついて一気に叩く。 |
ファラ | うん、わたしとリッドもみんなに合わせるよ。 |
キール | それじゃあ、このあとも予定通りでいくぞ。 |
帝国兵β | フォッグ様、レイス様。捕獲した反逆者二名をこちらに連れて参りました。 |
レイスβ | 時間が掛かったようだが、まあいい。通せ。 |
帝国兵β | はい、では……入れ。 |
キール | 失礼します ! こちら、反逆者二名の確保に成功いたしました。 |
二人 | …………。 |
レイスβ | 我々に反逆しようなどと、愚かなことをしたな。 |
リッド | へっ……それで、オレたちをどうするつもりなんだよ ? |
レイスβ | 貴様たちの処遇は既に決まっている。帝国への反逆罪として、公開処刑を行う。 |
全員 | ! ? |
レイスβ | 貴様たちのような人間が出ない為にも我々帝国の力を知らしめるいい機会だ。 |
リッド | ……オレたちは見せしめって訳かよ。 |
フォッグβ | そういうことだ。 |
レイスβ | 話は以上だ。そいつらは明朝まで地下牢に幽閉しておけ。 |
キール | ……お断りだね。 |
レイスβ | なに ? |
キール | 誰がお前たちの言うことなんか聞くもんか !メルディ ! ! |
メルディ | はいな !――ブリザード ! ! |
フォッグβ | ぐ、ぐおおおっ ! ? |
帝国兵β | 敵の襲撃を確認 !総員、事態の鎮静にかかれ ! |
帝国兵β隊 | うおおおおおおっ ! ! |
キール | そうはさせるか !――エクスプロード ! ! |
帝国兵β隊 | ぐ、ぐわああっっ ! ! |
チャット | やりましたね ! 不意打ち成功です ! |
リッド | ……いや、まだだ。 |
レイスβ | ……小賢しい真似を。 |
フォッグβ | お前たち、どうやら死にたいようだな。 |
キール | さすがに、リビングドールとはいえこの二人を一撃で倒すのは無理か。 |
チャット | ですが、残ったのはこの二人だけです。一気に畳みかけましょう ! ! |
ファラ | フォッグ、レイス……。待っててね、すぐ助けるから ! ! |
リッド | さて、その二人の身体は返してもらうぜ ! |
キャラクター | 8話【救出作戦8 館からの脱出】 |
フォッグβ | どうした ? もう終わりか ? |
キール | くっ……フォッグ本人じゃないとはいえ無茶苦茶な戦い方をするのは一緒なのか…… ? |
メルディ | キール ! 大丈夫か ! ? |
キール | ぼくの心配は無用だ !仕方ない……あまりフォッグの身体に負担をかけるようなことはしたくなかったが……。 |
キール | チャット、セルシウス !少しだけ時間を稼いでくれ !あとは、ぼくとメルディでフォッグを止めるっ ! ! |
チャット | 了解です ! フォッグさん !あなたのその頑丈な身体を信じますからね ! |
チャット | ――いっぱい投げる ! スプリットスロー ! ! |
セルシウス | もう手加減はしないわ。――余さず凍れ ! ブリザードストーム ! ! |
フォッグβ | 無駄だっ ! ! |
チャット | うわああああっ ! ! |
セルシウス | きゃあああっ ! ? |
キール | チャット、セルシウス ! ?待ってろ、すぐに助ける ! !レム―― ! ! |
フォッグβ | なんだ、あれは……。 |
キール | 全てを癒す、至高の光よ !白きを紡ぎ ! 安寧を……示せ ! ! |
セルシウス | この光は……。 |
チャット | 助かりました、キールさん ! |
フォッグβ | ちっ、回復したのか ?だが、何度やっても結果は同じだ。 |
キール | いいや、これで終わりさ ! メルディ ! あとは任せたぞ ! |
メルディ | はいな ! いくよ ! シャドウ ! ! |
フォッグβ | なに ! ? |
メルディ | 全てを穢す ! 深淵の闇よ !黒きを紡ぎ…… ! 絶望を示せ ! ! |
フォッグβ | ぐおおおおおおおううううううっっ ! ! |
チャット | やりましたか ! ? |
フォッグβ | ……………………ううっ。 |
セルシウス | やっと大人しくなったわね。 |
キール | ……ああ、リッド、ファラ。そっちは任せたぞ。 |
レイスβ | ……ぐっ。 |
ファラ | はあああああっ ! ! |
レイスβ | …………ぐはっ ! ! |
リッド | ……やっぱりな。リビングドールのお前なんて、オレたちの敵じゃねえ。 |
リッド | あいつの……レイスの剣はこんなもんじゃねえんだよ ! ! |
レイスβ | ぐっ………… ! ! |
リッド | ……終わったな。 |
ファラ | ……うん。 |
キール | リッド、ファラ !大丈夫か ? |
リッド | ああ、こっちも倒したぜ。それで、フォッグは ? |
チャット | 先ほど、ハロルドさんの装置で心核の入れ換えを終えました。レイスさんの心核も、すぐに入れ換えます。 |
ファラ | ……これで、レイス……レイスとフォッグの意識は戻るんだよね。 |
キール | ああ。だが、心核の取り換えが終わったからといってすぐに目が覚めるわけじゃない。ぼくたちでアジトまで運ばないといけないな……。 |
チャット | 地味に重労働ですよね……。特に大柄なフォッグさんを運ぶと思うと気が……。 |
フォッグ | うおおおおおおおおおおおおおおっっっっ ! ! ! ! |
リッド | な、なんだ ! ? |
フォッグ | おおおおおおおっっっっ…………おっ ?おぅ ? どこだ、ここは ? |
チャット | フォッグさん ! ? どうして…… ? |
フォッグ | おぅ ! 坊主じゃねえか ! !ってことは、ここはアレだな ? がははははっ ! ! |
チャット | だから、ボクは坊主じゃありません !何度言ったらわかるんですか ! ? |
リッド | どういうことなんだよ、キール。フォッグのやつ、すぐ目を覚ましちまったぞ。 |
キール | そうか、あのとき【キラル溶液】に浸されていたのはフォッグの方の心核だったのか ! |
キール | それで体から外されて傷ついている筈の心核があらかじめ修復された状態になっていて通常より意識の回復が早くなったんだ。 |
リッド | よく分かんねえけど、フォッグを運び出す手間は省けたってわけだな。んじゃ、レイスはオレが――。 |
帝国兵β | ――敵襲 ! !総員、対象者の身柄の確保にかかれ ! ! |
帝国兵β隊 | はっ ! ! |
ファラ | そんな……帝国兵がこんなに…… ! ! |
リッド | そりゃあ、あれだけ派手に暴れてりゃあ異変に気付かねえほうがおかしいか……。 |
セルシウス | まずいわね。退路を完全に塞がれたわ。 |
メルディ | そんな……せっかくフォッグとレイス助けられたのに……。 |
クィッキー | ク、ク、ク、クィッキー ! ! |
フォッグ | おぅ ! なんだこいつら ! ?アレか、アレなのか ! ? |
チャット | 帝国兵ですよ ! 言っても分からないでしょうけどボクたちを捕まえようとしてるんです !でも、逃げようにも出口がどこにも……。 |
フォッグ | おぅ ! ! そういうことなら俺さまに任せな ! ! |
チャット | フォッグさん ! ? 何しようとしてるんですか ! ? |
フォッグ | 出口がなきゃあ、作りゃあいいだろうが ! !うおおおおりゃああああああ ! ! ! ! |
フォッグ | ようしっ ! これでいいんだろ ?ぐわはははは ! ! |
ファラ | 凄い……壁ごと、壊しちゃった……。 |
メルディ | ごうかいさん……だな。 |
キール | と、とにかく助かった !あそこから外に出て脱出するんだ ! |
キャラクター | 9話【救出作戦10 光の試練】 |
伝令兵 | ――報告は以上です。オルバース領の領主と従騎士は行方不明。魔核精製工場も甚大な被害を受けたとのことです。 |
グラスティン | ヒヒヒ……早速、動き出したか……。 |
伝令兵 | グラスティン様 ? |
グラスティン | おい、オルバース領に派遣しているリビングドール兵には、反逆者共の捜索を打ち切らせて元の仕事に戻るように指示しておけ。 |
グラスティン | ああ……但し、領主たちがいなくなったことは領民どもに勘付かれるなよ。騒がれたら色々と面倒だからな。 |
伝令兵 | はっ ! では、失礼いたします ! |
グラスティン | なに、あの二人に【贄の紋章】が刻まれている以上奪還されようが【ルグの槍】の計画には支障はない。 |
グラスティン | ヒヒヒ……せいぜい、今だけは感動の再会に酔いしれてるがいいさ。 |
グラスティン | どうせ領主だの何だのはデミトリアスの箱庭遊びに過ぎない。奴も安全な場所からの施しはさぞ心地がいいだろうよ。 |
レイス | …………ん、ここは…… ? |
ファラ | レイス ! ! 良かった、目が覚めたんだね ! ! |
レイス | ……ファラ。どうして君が……うっ ! |
ファラ | レイス ! ? もしかして、どこか痛かったりする ?どうしよう……誰か呼んでこようか ? |
レイス | いや、大丈夫だ。それより、どうして君がいるんだ ?私は一体……。 |
ファラ | 待って。話さないといけないことがたくさんあるの。すぐ、みんなを呼んでくるね ! |
イクス | ――ということなんです。すみません、レイスさんまで巻き込んでしまって……。 |
レイス | いや、君たちに非がないことは分かったよ。だから、私に謝る必要もないさ。 |
レイス | しかし、驚いたよ。つまり、ここはインフェリアでもセレスティアでもない世界ということか。 |
フォッグ | おぅ。俺さまたちはアレってわけだ !ぐわはははは ! ! |
チャット | 絶対分かってませんよね、フォッグさん。 |
ファラ | でも、レイスが無事で本当に良かった……。また、こうして会えたんだもの……。 |
レイス | …………。 |
キール | レイス、さっきも話した通り、ぼくたちの仲間がレイスとフォッグに妙な紋章を付けられているところを目撃している。 |
キール | 悪いがそれが何なのか分かるまでは一緒にいてほしい。 |
レイス | ……わかった。しばらくは君たちの言う通りにしよう。私もすでに随分と世話になってしまったようだからね。 |
イクス | ありがとうございます。レイスさん、今はゆっくり休んでください。 |
メルディ | レイス、ここにはたくさんの人いるよ。あとでみんなにも紹介する ! |
レイス | ああ、よろしく頼むよ。ただ、その前に……リッド、私と二人で話さないか ? |
リッド | オレと ? |
レイス | 私から、君に話しておきたいことがあるんだ。それに少し外の様子も見ておきたい。 |
リッド | ……イクス、ちょっと外に出るけど構わねえか ? |
イクス | ああ、浮遊島を出なければ安全だろうし問題ないよ。 |
レイス | それじゃあ、案内は任せたよ、リッド。空に浮かぶ島を散歩するなんて貴重な体験だからね。 |
ファラ | …………。 |
リッド | それで、オレに話したいことって何なんだ ? |
レイス | では、単刀直入に聞こう。リッド、元の世界の私はどうなった ? |
リッド | ! ? |
レイス | 私の記憶は、バリル城にいる君たちのところへ向かったところまでしかない。だが、君たちはその先を知っている。違うか ? |
リッド | それは……。 |
レイス | 君たちの反応を見て、すぐに分かったよ。特に、ファラの私に対する態度は明らかに何かを隠しているようだった。 |
レイス | リッド、正直に答えてくれ。元の世界の私は……どうなったんだ ? |
リッド | お前は……オレたちを助けてくれたんだ。……命を懸けてな。 |
レイス | そうか……元の世界の私は全て君に託したんだな。――ならば。 |
リッド | レイス ! ? いきなり武器なんか構えてどういうつもりだ ? |
レイス | 私はもう一度、自分自身の目で確かめたい。私の選択が、本当に正しかったのか。 |
レイス | ……いや、違うな。これは私自身のけじめだ。リッド、今の君の力を、私に見せてくれ。 |
リッド | ……手加減はしなくていいんだな ? |
レイス | 無論だ。本気でかかってきてくれ。 |
リッド | ……わかった。そんじゃ……いくぜ、レイス ! ! |
キャラクター | 10話【救出作戦10 光の試練】 |
リッド | ……はぁ、はぁ ! レイス……お前……ホントにさっき目が覚めたばっかなのかよ…… ?こっちはギリギリだったぜ……。 |
レイス | ああ。だが……それを言い訳にはしないさ。リッド、私の完敗だ。 |
リッド | 別に……勝ち負けなんかに興味はねえよ。お前の気が済むんだったらいくらでも付き合ってやるだけだ。 |
レイス | ……ならば、リッド。これが私からの最後の質問だ。 |
レイス | 君はその力……真の極光術を何の為に使う ? |
リッド | ――大切な人を守るためだ。 |
リッド | オレは……大切な人たちを守りたいから、強くなった。セイファートの試練を乗り越えられたのもみんなが……仲間がいたからだ。 |
リッド | だけど、それを教えてくれたのは……レイス……お前なんだよ。 |
レイス | ……そうか。 |
リッド | なぁ、レイス。オレたちに力を貸してくれねえか ?そうすりゃ、きっとファラだって……。 |
リッド | レイス ! ? |
レイス | すまない……。流石に少し無理をしすぎたようだ……。 |
ファラ | リッド ! ! レイス ! ! これ以上はやめてっ ! ! |
リッド | ファラ ! ? な、なんだよ、急に ! ? |
ファラ | それはこっちの台詞だよ ! ?どうして二人が戦ってたのよ ! ? |
リッド | お前、見てたのか。いや、これはだな……。 |
ファラ | レイス ! ! どうしてなの ! ?もう、わたしたちが争う必要なんてないんだよ ! ! |
リッド | おい、ファラ。あのな……。 |
ファラ | リッドは黙ってて ! ! |
ファラ | レイスも、そんなつらそうな状態でそれでも戦うの ! ?どうしてもわかってくれないなら力ずくでもわたしたちと一緒にいてもらう ! ! |
レイス | ……くっ、はははははっ。ファラ、君は本当に変わらないな。 |
ファラ | えっ ? えっ ?なになに ? どういうこと ? |
リッド | お前……いいか、よく聞けよ。オレたちは争ってたわけでもねえしお前が心配してるようなことは何一つ起こってねえよ。 |
ファラ | えっ ? じゃあ……なんでリッドとレイスは戦ってたのよ ? |
リッド | そりゃあ……色々あったんだよ。 |
ファラ | 色々って何よ ! ?ちゃんと分かるように説明して ! ! |
リッド | だぁー ! !とにかく、何でもねえんだよ ! !レイス、お前からも言ってやってくれ。 |
レイス | すまない。ファラには心配をかけてしまったようだ。 |
ファラ | じゃ、じゃあ……本当に大丈夫なんだね ? |
リッド | だから、さっきからそう言ってんじゃねえか。それをお前が一方的にだな……。 |
メルディ | キール ! ファラたちいたよー ! |
ファラ | あれ ? みんな、どうしたの ? |
キール | どうしたもこうしたもあるか。メルディからファラが血相を変えて外に出て行ったと聞いて、急いで駆けつけたんだ。 |
メルディ | レイス苦しそうだな。もしかして、リッドとレイス、何かあったのか ? |
リッド | ほら、お前のせいで全員が変な勘違いしてんじゃねえか。 |
ファラ | わ、わたしのせいじゃないもん ! |
レイス | やれやれ、ファラのおてんば振りは相変わらずのようだね。 |
ファラ | ちょ、レイスまで ! ? |
レイス | いや、すまない。私のことなら大丈夫だ。どうやら心核を取り戻して貰った反動のようなものが出ているようだね。 |
リッド | そうだろうな。目覚めてすぐ動ける方がおかしいんだ。 |
フォッグ | ぐわははははっ ! |
シゼル | ……ほう。何やら騒がしいと思って来てみればあのときの男か。 |
レイス | あなたは…… ? |
メルディ | おカーサン ! もう身体は大丈夫か ? |
シゼル | ああ……心配をかけて済まなかったな、メルディ。もう、私はネレイドの呪縛から完全に切り離されているようだ。 |
レイス | ネレイドだと ? まさか……。 |
シゼル | ああ。私もまた、新たな道を示された存在だ。そこにいる、真の極光を持つ男とその仲間たちによってな。 |
シゼル | お前にも、私と同じく新たな道が示されている。真の極光の使い手ならば、自分の意思に従うが良い。 |
レイス | ……これは、この世界に来て一番の驚きかもしれないな。 |
リッド | レイス……。 |
レイス | リッド。先ほどの話だが私も君たちに手を貸すことにするよ。この体を癒やしてから、必ず。 |
リッド | ホントか ! ? |
レイス | ああ。今度は……只の『レイス』としてね。 |
ファラ | レイス…… ! ! |
メルディ | ワイール ! ! またレイスと一緒だな ! !メルディも嬉しいよ ! ! |
クィッキー | クィッキー ! ! |
キール | 当然だ。何のためにぼくたちが必死になって助けたと思ってる。言っておくが、やることはいっぱいあるから覚悟しておくんだな。 |
セルシウス | ひとまず、これで一件落着なのかしらね。 |
フォッグ | よっしゃ ! ! 俺さまたちで天下取ろうぜ ! !ぐわはははは ! ! |
チャット | だから、そういうのじゃないんですって ! |
ファラ | うん、イケる、イケる ! ! |
チャット | ちょっと ! ?ファラさんまで乗らないでくださいよ ! ? |
リッド | ったく、一気に騒がしくなっちまったな。 |
レイス | ああ……。だが、こういうのも悪くはないな。 |
リッド | ん ? なんか言ったか ? |
レイス | ……いや。なんでもない。また、君たちと一緒にいると面白くなりそうだと思っただけさ。 |