キャラクター1話【VSレッサー・デーモン】
ガイいよいよ、だな……。
ゼルガディス中にどんな魔族が待ち受けてるかわからん。気を抜くなよ。
アメリアもちろんです ! 悪に対してひとかけらの油断もありません。
ファラうん、イケるイケる ! わたしたちなら !
リナあ、ちょっと待って。
ガウリイなんだ ? 便所か ?
リナ違うわよ !あんたほんとデリカシーってもんがないわね !いいから、待ってなさい。
リナ黄昏よりも昏きもの 血の流れより紅きもの──
ゼルガディスお前、まさか……
リナ時の流れに埋もれし 偉大なる汝の名において我ここに闇に誓わん 我等が前に立ち塞がりしすべての愚かなるものに──
盗賊だあああっ ! 待て待て !お前何をするつもりだ !
リナ何って、とりあえず塔に竜破斬(ドラグ・スレイブ)を撃ち込んでおこうかなと。
盗賊そんなもの、とりあえずで撃ち込むな !
ガイおいおい、少しは考えてくれ。中にはナタリアもいるんだぞ !
リナあ……忘れてた。
ガイ忘れるな !
リナいやー、なんかいつもの流れで、つい。あいつゾンビ並にしぶといから。
ゼルガディス中身はそうかもしれんが、今は他人の身体なのだろう。さすがにマズいと思うぞ。それは。
リナも、もう、やーねー、本気なわけないじゃない。あは、あははは……。
リナさ、さあ気を取り直して塔に乗り込みましょ !
リッドあれは、止めなきゃ絶対撃ち込んでたな。
ファラ危なかったぁ……。
盗賊俺はもしかしてとんでもない悪魔にケンカを売っちまったんじゃ……。
ガウリイ今さら気づいたか。
ゼルガディス自業自得だな。
アメリアごしゅーしょーさまです。
盗賊うう……。
ファラ誰も……いないね。
リッド何もないと見せかけていきなり派手に出てくるんじゃねぇか ?
アメリアこの世に仇なす悪の下僕たちよ !そこに隠れているのはお見通しです !姿を現しなさい !
魔族グオアアアアアアアッ !
ガイ指差した方とは真反対から出てきたな。
ゼルガディスまあ、そういうこともある。
アメリアわたしの目を欺くとはただ者ではありません !みなさん、気をつけてください !
リナアメリア、逞しい子……。
魔族グオアアアアアアアッ !
ファラみんな、来るよ !
リッドやってやるさ !

キャラクター2話【VSレッサー・デーモン】
リッドあー、疲れた。こんなのをあと何回やらなきゃいけないんだ。
ガイ確かに、タフな相手だったが……。
ゼルガディス腑に落ちない、か ?どうしてこんな回りくどいやり方をするのか。
ガイああ、そうだ。敵の目的がいまいち見えないのは気味が悪いな。
盗賊くっくっく……。そりゃもちろんてめえらを長くいたぶるためさ。
盗賊言っておくが、次の相手はこんなもんじゃねえぞ。階を重ねるごとにより強力な……あ、いたいいたいっ。こづかないで ! 調子に乗ってゴメンナサイ !
ガウリイいちおー、立場はわきまえておかないとリナにいじめられるぞ。
リナんー ? そうねー。
ファラリナ、さっきから何やってるの ?
リナちょっと、この塔の強度をね。地精道(ベフィス・ブリング) !
リナ地精道だと威力が弱いっと。んー、なるほど。だいたいわかったわ。
リナそれじゃ、次の階に行きましょ。
リッド次はどんなやつだ ? さっさと片付けようぜ。
魔族グルアアアアアアッ !
ガウリイこいつは、さっきのやつよりは歯ごたえがありそうだ。
ゼルガディス気を抜くなよ、アメリア。
アメリアとーぜんです。悪に対しては微塵の油断もありません !
ガイいくぞ…… !
リナ爆裂陣(メガ・ブランド) !
アメリアリナ……魔族相手とはいえ、不意打ちはどうかと思うわ。
盗賊わははは ! 心配する必要なんかねえ !その程度の魔術が効くもんか !
リナいや、あたしは不意打ちしたつもりもその魔族を狙ったつもりもないわよ ?
盗賊な、なにぃ ?
リッド床が !
ガイ崩れた ! ?
魔族グオオオオオン…… !
ファラあ、魔族落っこちちゃった。
リナおっし、大成功 !
盗賊て、て、てめえ ! なんのつもりだ !
リナこの塔、思ったより急ごしらえね。床はちゃんと補強しておいた方がいいわよ。
盗賊バカにしやがって……ふ、ふん。だが、この程度で魔族がやられるわけ──
リナみんな、この調子でガンガン登ってガンガン上から魔族を落っことすわよ。
盗賊なぁっ ! ?
リナ爆裂陣 !
盗賊ちょっ ! やめっ──
魔族ギアアアアアアッ…… !
リナもういっちょ爆裂陣 !
魔族グルルルルルルッ…… !
盗賊あああああああああああっ ! ?
リナも一つおまけに爆裂陣 !
魔族キャインッキャインッ !
盗賊え、エリザベスうううううっ !
ガウリイ今度はオレが ! はぁっ !
魔族アギャアアアアッ !
ファラわたしも ! 獅子戦吼 !
魔族グオアアアアアッ…… !
盗賊あ、ああ……あ……。
リナうーん、こりゃ楽ちんでいいわ〜。
ガイさすがに、ちょっと可哀想になってきたな。
ゼルガディスああ……。

キャラクター3話【VS塔の支配者】
リッド到着っと。いやー、登った登った。
リナどうやら、ここが最上階みたいね。
盗賊て、てめえら……こんなやり方許さねえぞ !
ガイまあ、気持ちはわからないでもないがお前らに許してもらう必要もないんでね。それよりナタリアはどこだ ?
ナタリア ?え ! ? リナ、もう来ちゃったの ! ?
ナタリア ?ちょっと、こんなに早いなんて聞いてないわよ。まあいいわ。お化粧直して来るからちょっと待ってて。
リナんなことしなくていーから。
ナタリア ?と見せかけて、いきなり氷の矢(フリーズ・アロー) !
リナなんの ! 盗賊バリヤー !
盗賊ぎゃあああああっ !
ファラ盗賊を !
リッド盾にしやがった !
ガイえげつない……。
ガウリイおいリナ、いくら悪人顔だからってさすがにそれはちょっとひどいぞ。
ナタリア ?そうよ、そんなことされたらわたしもつい攻撃の手を緩めちゃう……と言いつつ氷の槍(アイシクル・ランス) !
リナなんの読んでたわ ! バリヤー改 !
盗賊ひぎゃあああああああっ !
ガイリナもひどいが、あっちもあっちでたいがいだな。
ファラさすがリナの友達……。
リッド類はナントカを呼ぶってやつだな。
アメリアどちらかと言えば、朱に交われば──の方では ?
リナちょっとアメリア !あたしが原因みたいに言わないでよ !
ナタリア ?認めなさい、リナ。ライバルとはお互いに影響し合う関係……などと言いつつ烈閃槍(エルメキア・ランス) !
リナそれも読んでた真・盗賊バリヤー !
盗賊っ…… !
ゼルガディス烈閃槍を、防いだ…… ! ?
ファラどういうこと ? さっきまで当たって痛がってたのに……。
リナやっぱりね。
リッドおい、リナ ! どういうことだよ ?
リナ簡単よ。そいつは盗賊でも善良な一般市民でもなく魔族だってこと。
リッドこいつが、魔族 ! ?
リナ烈閃槍は精神のみにダメージを与える魔術。なのに傷を負ったりしたらさすがに隠し切れない。だから、咄嗟に防いでしまった。そうよね ?
盗賊…………。
ガウリイなるほど。どうりで変な感じがしてたわけだ。
ガイおいおい、あんた、気づいてたのか ! ?だったらなんで言わなかったんだ。
ガウリイリナが騙されたフリをしてるから何か考えがあるんだろうなと思って。
リナそれ、単に自分で考えるのが面倒だからでしょ。
ガウリイはっはっは。
リナ笑って誤魔化すな ! ……ったく。さて、言い逃れはあるかしら ? 善良な一般市民さん。
盗賊聞いていた通り一筋縄ではいかんようだ。
盗賊魔道士としての腕はもちろん、我ら魔族を出し抜く狡猾さも併せ持つ……リナ=インバース。
盗賊参考に聞かせてもらってもいいかな。どうして私が魔族だと気づいたのか。
ナタリア ?え ? ほんとに魔族だったの ! ?
リナはいはい。あんたは少し黙ってなさい。……えーと、どうやって気づいたか、だったわね。正直、確信したのはついさっきよ。
リナもしかしたらって思ったのはあんたが魔族に力を借りたって言い始めたところからね。
リナそこのナー……じゃなくてナタリアや傭兵たちを雇う時点で本気で殺すつもりがないように見える。
リナこの塔だってそうよ。わざわざ一階ずつ魔族と戦わせる意味がない。
リナじゃあ、目的は ?おそらく、あたしたちを疲れさせ弱らせること。
リナそうやってじっくり負の感情を味わうか最後に自分の手でトドメを刺すため。
リナそれだけ慎重に事を運ぼうとするならきっとどこかで必ず事の成り行きを見ている。
リナそうするための一番の特等席って今のあんたのポジションじゃない ?
リナそして、竜破斬(ドラグ・スレイブ)を慌てて止めた時に疑いはさらに強まったわ。
リナあんたたちの親分のことを聞いて血相変えてたじゃない。学のない盗賊にしては魔術に詳しすぎる。
盗賊私としては、上手く誤魔化してきたつもりだったのだが貴様が答えに辿り着くには充分すぎたか。
リナそういうこと。で、どうする ?このまま帰っては……くれないわよね。
盗賊無論だ。私とて魔族だ。やり方はともかく命令には従わねばならん。
ナタリア ?ふっ…… ! あなたに倒せるかしら ! このわたしが !
リナ……おい。
ナタリア ?あなたが魔族だってことはとっくにお見通し !ここまで、騙されたフリをしてたのよ !
リッドあんなこと言ってるぞ。
ファラさっき「ほんとに魔族だったの ! ? 」とか驚いてたよね。
リナああいうやつなのよ。いちいち気にしてたら疲れるだけよ。
ガイともかく、こいつを倒せば事件も解決。ナタリアの身体も取り戻せるってことだろ。
ガウリイその方が話が早くて助かるな。
盗賊来るがいい。私はこれまでの雑魚とは違うぞ。
ナタリア ?その言葉、そっくりそのまま返してあげるわ !
リナいや、だからあんたが言うなって……。
ゼルガディスいいから、さっさと片付けるぞ。
アメリア今こそ、正義の鉄槌を下してあげます !

キャラクター4話【VS塔の支配者】
盗賊オオオ……そんな、私が……滅びる……。
盗賊……さま……申しわけ……ん……。
ナタリア ?終わったわね……。
リナそうね。あとは、あたしたちの決着をつけるだけね。
ナタリア ?え ? あれ ? も、もうリナったら冗談きついわよ。ほら、笑って笑って。
リッドそのくらいにしといてやれよ。
ワイズマン皆さん、無事に原因を突き止めてくださったようですね。
ガイワイズマン !
リナこの光ってるのが、ワイズマン…… ?
ガウリイおい、リナ……。
リナわかってるわよ。魔族や竜族とも違う……。とにかくとんでもない存在だってことは。
アメリア目がチカチカします……。
ワイズマンこれは失礼。あなた方はこちらの世界の方ですね。
ゼルガディスおい、あんたがワイズマンなら俺をアークに連れて行ってくれ。
ナタリア ?ねえ、ワイズマンとかアークとかなんのこと ?わたしにも説明してよ。
ワイズマン少しお待ちを。まずは、この塔をなんとかしなければいけません。
ガイ塔 ? 塔が今回の原因なのか ?
ワイズマンこの塔は、エネルギーを集めて異界へのゲートを開くために造られたようです。
リッドじゃあ、さっきの魔族が犯人ってわけか。にしても、どうしてそんなことしたんだ ?
? ? ?それは、彼を誘い出すためですよ。
リッドな、なんだ ! ?
ワイズマンこれは……私がこちらに来るために作ったゲートが無理矢理開かれようとしている…… ! ?
? ? ?ええ、あなたの力を利用させていただきました。残念ながら塔だけではゲートを開くことができませんでしたから。
リナゼロス…… ! ? あんた、なんで…… !
獣神官 ゼロスお久しぶりです。リナさん。あなたの言葉をお借りすれば僕が黒幕ということになりますかね。
ゼルガディスゼロス ! 貴様…… !
獣神官 ゼロスおっと、あなた方と戦う気はありませんよ。僕の目的はアークに行くことですから。
リナあんたがなんでアークに……まさか ! ?
獣神官 ゼロスすみませんが、長話をするつもりはありません。お先に失礼しますね。
ガイおい、奴は何者だ ?なんでアークに ?
リナあいつも魔族よ。それも、さっき倒したやつなんか足下にも及ばない高位の魔族。
リナあいつの仕事は『写本』を見つけて処分すること。
ゼルガディスまさか……あるのか。アークに。
リナ前にリッドたちが言ってたでしょ。アークにはあらゆる知識を収めた図書館があるって。だったら写本があってもおかしくはない。
リッドなんなんだよ、その写本ってのは。
リナ異界の知識を収めた本よ。そこには特別な技術や魔術のことが書かれてる。でも、それは今はどうでもいい。問題は……。
ゼルガディスゼロスは写本を処分するためなら手段を選ばん。それこそ、アークごと火の海にするぞ。
ファラそんな…… !
ワイズマン皆さん……。
ガイおい、ワイズマン大丈夫か ! ?
ワイズマン塔がゲートを無理矢理こじ開けようとしています。このままではこちらの世界がアークに溢れ出してしまう。
ワイズマン私はこれを抑え込みます。しかし、その間、ここから動けません。
ワイズマン重ねてお願いします。あの者を止めていただきたい。アークを、守ってください。
アメリアアークにいる人々が危険に晒されているというのなら正義の名において見捨てるわけにはいきません !
ゼルガディス元の身体に戻るためにもアークを失うわけにはいかん。
ガイなんで、こんな大事になったんだ。単なる調査で終わるはずだったのに……。
ナタリア ?ふーん、なんだかよくわからないけど手伝えば報酬くらいは出るわよね ?
リナもちろんよ。ね、ワイズマン。
ワイズマンえ……あ、はい。出来る限りのお礼は……。
リナ報酬は思いのままですって !
ワイズマンいえ、そんなことは一言も……。
リナよーし、あたしのお宝──じゃなくてアークを守るわよ !
アメリアうわー、なんですかここ。
ゼルガディスここが、アークなのか ?
ワイズマン正確には、皆さんの世界とアークを繋ぐ回廊です。
ガウリイうおっ、頭ん中に変な声が。
リナこの声、ワイズマンね。
ワイズマン少しでも時間を稼げるよう空間をねじ曲げやつをここに足止めしています。ですが、それも長くは保ちません……。
リナつまり、急いでゼロスに追いつけってことね。
ワイズマンどうか……よろしくお願いします。
ガイ時間がない、か。
ファラ急ごう、みんな !
リナ待ちなさい、ゼロス !
獣神官 ゼロスおや、リナさん。どうかしましたか ?
リナどうもこうも、あんたを止めに来たのよ。
獣神官 ゼロスうーん、困りましたね。もしかして、利用されたのを怒ってます ?
獣神官 ゼロス僕はアークに行ければそれでよかったのですがまさか、リナさんが巻き込まれるとは。
ガイじゃあ、目的は俺たちだったのか ?
獣神官 ゼロスもう少し具体的に言えば、ワイズマンさんをこちらにおびき出せさえすればよかったのですよ。
獣神官 ゼロスところが、あなたのお仲間にリナさんのご友人が憑依してしまった。そして彼はそれを利用した。
ファラ彼って、あの盗賊のこと ?
獣神官 ゼロスええ、そうです。
獣神官 ゼロスそれなりに力のある魔族なのですがあそこまで慎重で臆病な方だとは知りませんでした。ああ、そういえば名前も聞いてませんでしたね。
獣神官 ゼロスそうだ、こういうのはどうでしょう。僕の邪魔をしないでくれたら、写本以外のお宝はリナさんに進呈しますよ。
リナ悪いけど、先にワイズマンに手を貸すって約束しちゃったのよ。
リナ信条的にも、アークが火の海になるのを見過ごすわけにはいかないわ。
獣神官 ゼロス火の海だなんて、そんな物騒な。しかし残念です。良い提案だと思ったんですが。
ファラ……この人、すごく嫌な感じ。
リナだから言ったでしょ。あたしが知る限りでもっとも胡散臭い神官だって。
獣神官 ゼロスできればリナさんと事を構えたくはなかったのですが。仕方ありません。戦いましょうか。
ゼルガディス気をつけろ、あんなふざけた態度だが魔族としてはトップクラスの力を持っている。
ガイああ、わかってる。この気配、確かに一筋縄ではいかなそうだ。
リッドけど、負けるわけにはいかねぇ !
アメリアその通り ! 悪に屈するわけにはいきません !
ファラうん、イケるイケる ! わたしたちなら !
ナタリア ?おーほっほっほ !ついに、このわたしの実力を見せる時が来たわね !
ガウリイリナ、後ろは任せたぞ。
リナええ、任せて……。いくわよ、ゼロス !

キャラクター5話【VS獣神官ゼロス】
獣神官 ゼロスおや、負けてしまいましたか……。
リナゼロス、あんた本気じゃなかったわね。
獣神官 ゼロスさすがリナさん。お見通しでしたか。
獣神官 ゼロスこちらに渡って万が一戻れなかったら困りますからね。本体はあちらに残して来ました。
ガイあれで、全力じゃなかったのか。魔族ってのはとんでもないな。
ワイズマン安心してください。これでもうアークに行くことはできません。
リッドワイズマン、戻ったのか。
ワイズマンはい。ゲートもいったんは塞ぎました。皆さんがお帰りになる際にまた開きます。その際は、充分に注意しますよ。
獣神官 ゼロスさすがの僕もあなたと直接事を構える気はありません。写本はお預けします。
リナねえ、ゼロス。
獣神官 ゼロスなんでしょう、リナさん。
リナなぜアークに写本があるって知ってたの ?そもそもアークの存在をどうやって……。
リナもしかしてワイズマンは──
獣神官 ゼロス人の身に過ぎた知識は不幸を招きますよ。リナさん。
リナどういう意味──
獣神官 ゼロスそれは、秘密です。
リッド最後までいけ好かねえやつだ。
ファラほんとだね。
リナまあ、いいじゃない。いなくなったやつのことは。それよりも……ワイズマン、報酬ちょーだい。
ナタリア ?そうよ ! わたしも !
ガイいや、あんたは先にナタリアの身体を返してくれ。
ナタリア ?あら、けっこうこの身体気に入ってたのに。高貴さと気品を感じるわよね。わたしと同じで。
ガイどこがだ !
ワイズマン予定とは違いますが異世界のゲストも来たことですし。どうでしょう、いつものように祭りを催して皆さんを歓迎させてください。
ナタリア ?わたしってばアークを救った功労者ですものね。ふっ……仕方ない。歓迎されてあげるわ !
ガイいや、だからあんたは身体を返してくれ……。
ワイズマンああ、それは気づきませんでした。すぐにナタリアさんを元に戻して差し上げましょう。
ナタリア ?え ? ちょっと、待ってわたしまだ……ああ〜。
ナタリア――……は……っ ! ?ここ……は…… ? 私は……一体……。
ガイナタリア ! よかった、元に戻ったんだな !
ナタリアな……な……何ですのこの格好は ! ?ああ……そんな……私……体を奪われて…… ! ?
ガイ……どうやら、状況が飲み込めてきたみたいだな。
ナタリア何ということですの ! ? 何者かに意識を奪われ皆さんにご迷惑をお掛けしてしまうなんて……。恥ずかしくて穴があったら入りたいですわ。
ナタリアお願いです。どうか皆さん、私の恥ずかしい行いをどうかお忘れになって…… !
ガイ……ああ、恥ずかしいのは服じゃなくてそっちか。キミがそういう人だってことを忘れてたよ。目のやり場に困るから早く着替えてくれ……。
リッドおい ! それはオレがとっといた肉だぞ !
リナほへほ、ふははふへほ ?
リッドああー ! ぜんぶ食うんじゃねぇ !
ガウリイへえ、そっちの世界もあまり変わらないんだな。
ガイまあな。国があって王様がいて。違うのはそっちの魔族みたいな連中がいないくらいだ。代わりに人間同士がしょっちゅう争ってるけど。
ファラナタリア、どうしたの ?そんなところにしゃがみこんで。
ナタリアいえ……その、先日までの自分を考えるととても祭りを楽しむ気分にはなれなくて……。
ファラま、まあ、あれは別の人だったんだし。
ナタリアですが、私の未熟さ故に体を奪われ皆さんに迷惑を掛けてしまいましたわ……。ああ……何度思い出しても情けない……。
ワイズマン皆さん、楽しんでいただけているようで何よりです。この宴が終われば、すぐにでも元の世界にお返しします。
ゼルガディス待ってくれ、ワイズマン。俺はしばらくここに残りたい。あんたのところの蔵書を見たいんだ。
ワイズマンかまいませんよ。図書の閲覧もすべてというわけにはいきませんが一部でしたら許可しましょう。
ゼルガディスそうか、感謝する。これで俺の身体を元に戻す方法が見つかるかもしれん。
ワイズマンただ、元の世界に戻ればあなたのここでの記憶は消えてしまいますが。
ゼルガディスなに…… ! どういうことだ !
ワイズマン今は、一時的にあなたがたの世界がアークと重なっているだけ。
ワイズマンこれが元に戻るということはあなた方も元の状態に戻るということです。
ゼルガディスでは、ここで得た知識は忘れてしまうのか。
ワイズマン解決というわけにはいきませんが忘れない方法がないわけではありません。
ワイズマンあなたがたは元の世界へと戻る。しかし、この世界にシャドウを残すことはできます。
ゼルガディスシャドウ…… ?それはホムンクルスのようなものか ?
ワイズマン似ていますが、大きく違うのはシャドウがまぎれもなくあなた自身だということです。
ワイズマンこの世界に残りたいという意思。それをもってここに留まるのです。
ゼルガディス……なら、そのシャドウとかいうのを残してくれ。ここに、手がかりがあるかもしれない。それを確かめないまま戻るのは嫌だ。
アメリアゼルガディスさん……。
ワイズマンわかりました。他の皆さんはどうしますか ?
リナあっちのあたしがいなくなるわけじゃないのよね ?だったら、あたしも残るわ。
リナだって、このまま忘れたらワイズマンから報酬を取りっぱぐれることになるじゃない。
ワイズマン記憶はなくなりますが、そこはきちんと考慮しますよ。
リナいーえ ! 口約束なんてないものと同じよ !ちゃんとお宝をこの目で拝むまでは !
リナそれに、新しい世界ってのも悪くないじゃない ?
ガウリイそういうことなら、オレも残ることにする。
リナガウリイ、別にあんたが付き合う必要ないのよ。
ガウリイそうもいかん。オレはリナの保護者だからな。
リナだーかーらー、いつあんたが保護者になったのよ。まったく……いいわよ。好きにくっついてくれば ?
ガウリイおう。そうさせてもらう。
アメリアわたしも残ります !
リナアメリア、あんたまでどうして……。
アメリア言ったでしょ。何かがどこかで動いている。それはどうやらリナが関わっている。
アメリアこの世界に呼ばれたのも、きっとその何かのうちに違いありません。
アメリアそれに、ファラたちがいる世界には悪逆非道をつくす帝国なる連中がいるらしいじゃないですか。
アメリアならば、このわたしが正義の鉄槌を下さなければなりません !
リナなんか、前にも聞いたような台詞ね……。ま、好きにして。
アメリアはい。好きにくっついていきます !
リッドなんだ、結局みんな残るのか。
ガイあんたらとまた旅が出来るのは面白そうだ。今度はナタリアも、ナタリアとして交流できるしな。
ナタリアええ、そうですわね。異世界のお話を是非伺いたいですわ。それに……私の中にいたあの方のことも。
ファラそれじゃ、帰ったらアジトのみんなに紹介するね !

キャラクター1話【一、 徹底調査】
ワイズマン謎の侵入者の件、よろしくお願いします。それでは皆さん、お気をつけて──
リッドお気をつけて、ね。いきなり呼びだしといてよく言うぜ。
ナタリア来た途端に文句ですの ?
リッドこれからメシってところだったんだよ。おかげで食いそびれちまった。腹減った……。
ファラ仕方ないでしょ。近くの街に着いたらなにか食べよ。
ガイそんなに悠長にしてていいのか ?アークに侵入しようとした『何か』ってのがその街にいるかもしれないんだろ。
ファラだからこそだよ !街に溶け込んだ方が調査しやすいでしょ ?
ナタリア私もファラの意見に賛成です。それに、こんな場所で議論していても仕方ありません。さあ、参りますわよ。
ガイはいはい、お姫さまたちに従いますよ……。
ガイふーん、別の世界の街って言ってもあっちとそう変わらないな。
ファラうん。もっと変わった見た目の人が多いかと思ってた。
ナタリアでも、おかげで聞き込みはしやすそうですわね。
リッドお、見ろよ。なんか美味そうなもん売ってるぜ。
ナタリアリッド、遊びに来たのではないのですよ。
リッドわかってるって。まあ、見てろよ。おっさん、その美味そうな串焼き一つくれ。
店主あいよ。お連れさんのはいいのかい ?
リッドとりあえず一つ食ってみて美味かったら頼むよ。
店主そう言われちゃ手は抜けねえな。ほら、一番いいとこだ。持ってけ。
リッドお ! おっさん気が利くな。どれどれ……あむ……んー ! 美味ぇ !
リッドただの肉かと思ったらしっかりハーブが効いててこりゃクセになる味だな。
ファラそんなに美味しいの ?じゃあ、わたしも一つもらおうかな。
ガイどれどれ、俺も味見させてもらうとするか。そのでかいやつをくれ。
ナタリアもう、みんな誘惑に弱いですわね……。
リッドところでおっさん、街がえらく賑やかだけどなにかお祭りでもあるのか ?
店主なんだ、あんたら知らずにこの街に来たのか。遺跡だよ、遺跡。
店主山向こうで、ナントカって古代の遺跡が見つかったって学者やら冒険者やらが集まって来てんだよ。
店主この街はちょうど山越えをする前の中継地点ってことで連日大賑わいってわけだ。
ナタリア遺跡……今回のことと何か関係があるのでしょうか。
ガイワイズマンは『大きな力がアークへの通路をこじ開けようとしたようだ』って言ってたな。
ファラうーん……遺跡、一応行ってみる ?
店主遺跡に行くなら気をつけろよ。そっちに続く街道はかなり物騒だっていうからな。
ガイなるほど、人が集まれば他人の財布を狙う連中も集まってくるってわけか。
店主いやいや、もっとおっかねえのが出たんだよ。
ファラもっとおっかないの ?
店主なんでも、集まった盗賊や傭兵くずれを襲うとんでもない怪物が出たって話だ。
店主そいつは、突如現れたかと思えば破壊の限りを尽くし辺りを火の海にしちまうって。
店主噂じゃ、美しい少女の姿で現れ、相手が油断した途端に毛むくじゃらの化け物に変身するんだと。
店主口から炎を吐き出す姿はまさに伝説のドラゴン !いや、そのドラゴンすら恐れをなしてまたいで通りすぎるほどの凶悪な姿だった !
店主とまあ、そんな噂が広まって、今じゃ『盗賊殺し』なんて名前で呼ばれてる。
ナタリア『盗賊殺し』……いかにもなネーミングですわね。
ガイだが、本当に盗賊の集団を壊滅させてるのならそれだけの力を持った奴ってことだ。
ファラじゃあ、アークに入ってこようとしたのって……。
ナタリア可能性はありますわね。
リッドほら、いい情報が聞けただろ。
ファラもう、そうやって自慢しなければ素直に褒めたのに。
ガイなあ、その『盗賊殺し』っていうのはここ最近も現れたのか ?
店主ああ、まさに一昨日のことだ。西にある洞窟を根城にしてた連中がやられたってよ。
ファラ一昨日……それって、ワイズマンが言ってたのと同じタイミングだよね。
ナタリア何か関係があるかもしれません。私とガイで、その洞窟を調べに参りましょう。
ガイちょっと待てよ。何があるかわからないし俺とリッドで組んだ方がいいんじゃないか ?
ナタリアアッシュに何か言われたのですね。ですが、心配無用です。私の腕前はガイも知っているでしょう ?
リッドオレはどっちでもかまわねーけど。
ガイ……わかったよ。ナタリアの言う通りにしよう。知らない街に女性を二人だけにするってのも何かと心配だしね。
ナタリアでは、日が暮れないうちに行ってきましょう。ファラたちは引き続き街で情報収集を頼みますわね。無法者が多いようですから、どうかお気を付けて。
ファラうん、わかった。ありがとう。ナタリアたちも気をつけてね。

キャラクター2話【二、 いきなりの出会い】
リッドさーて、そんじゃオレはもう少し腹ごしらえするかな。
ファラリッド、まだ食べるの ?他の場所でも情報収集するんだからね。
リッド大丈夫だって。おっさん、さっきのもう一本 !
店主悪いな。もう売り切れだ。
リッドはあ ! ? 今、そこで山ほど焼いてただろ !
店主そこの嬢ちゃんが全部買っちまったんだよ。
リッドまじかよ ! ?
? ? ?んーっ、美味しいっ。おっちゃんいい腕してるわね。
リッドお、おいおいあんた、一人でどんだけ買い占めてんだ ! ?
? ? ?んももんもももも ?
リッド飲み込んでからしゃべってくれ……。
? ? ?んもんも……ん、ごっくん。買い占めなんて人聞き悪いわね。自分で食べる分を買っただけよ。
ファラ自分で食べる分って……その量を ?
リナだって、育ち盛りだから。
リッドそういうもんか…… ? オレにも一本譲ってくれよ。
リナやだ。……モグモグ。
ファラすごい勢いでお肉が消えていってる……。
リッドああーっ、美味い肉が…… !
? ? ?ところでさ、あなたたちどこから来たの ?
ファラそれはその……えーと……。
? ? ?この街の人には見えないし遺跡を調べに来たってわけでもなさそう。
? ? ?さっき別れた二人は物腰からして貴族っぽかったけどその護衛にしては別行動するのはおかしい。
? ? ?あなたたち、もしかして……。
リッドう……なんだよ……。
? ? ?おのぼりさんね !
リッド……は ?
ファラそ、そうなの ! わたしたち、ラシュアンって小さな村から今日出て来たばっかりで。
リッドお、おい、ファラ……。
ファラしーっ ! いいから、話を合わせて !わたしたちのこと、別の世界の人に言えないでしょっ。
リッドそ、そうだな。確かに。
? ? ?ふーん……。
ファラう……怪しまれてる……。
? ? ?ま、いいけど。
? ? ?それより、自己紹介がまだだったわね。あたしはリナ。リナ=インバースよ。
ファラわたしはファラ。こっちは幼なじみのリッド。
リナファラに、リッドね。よろしく。
ファラよろしく〜。あはは……。ところで、リナさんはどうしてこの街に ?
リナリナでいいわよ。まあ、来たっていうか来させられたっていうか……。
リナ自称、あたしの保護者と二人で旅をしてたんだけど気づけば迷い込んでたってのが正解かしら。
ファラ迷い込んだ ?
リナだってここ、あたしが元いた世界じゃないでしょ。
ファラえ…… !
リナもっと正確に言えば元の世界に別の世界が混じった……そんな感じかしらね。
リナ確かにここはあたしたちが目指してた街だけど新しく古代都市の遺跡が見つかったなんて、初耳だわ。
リナこれでも魔道士のはしくれだから歴史はそれなりに勉強してる。だけど【アーク】なんて名前の都市はどんな歴史書にも載ってない。
ファラアーク ! ?
リッドお、おい、その遺跡、アークって名前なのか ?
リナふーん、やっぱりなんか知ってるんだ。
ファラリッド !
リッドし、しまった……。
リナねえねえ教えて ?教えてくれたら、お肉分けてあげるから。
リッド串しか残ってねえじゃねーか !
リナだいじょーぶ。まだちょっと味が残ってるから。
リッドんなもんいらねぇよ ! 普通に肉をくれ !
リナちぇー、ケチ。
リナま、いいわ。あなたたち何か知ってそうだし。くっついて行けばそのうちボロを出すでしょ。
リッドおい、こいつ付いてくる気だぞ。
ファラど、どうしよう……。
子供ねえねえ、お姉ちゃん。
リナん……あたし ?
子供お姉ちゃんに、お手紙。
リナ手紙……いったい誰が ?
子供知らない。お顔隠してたから。じゃあ、渡したからね。
リナあ、ちょっと !
ファラどうしたの ?
リナさあね。でも、こういうことたまにあるから。どーせ、「どこそこへ来い。決着をつけよう」とかって内容よ。
リッドたまにあるのかよ……。いったいどんな人生おくってんだ。
リナほら、思った通り……っ ! ?
ファラ何が書いてあったの ?
リナ「相棒を預かってる。西の洞窟まで来い」ですって。
ファラ西の洞窟って……ナタリアたちが行ったところじゃない ! ?
リッドもしかして渡す相手を間違えたのか ! ?
リナさあね。でも確かめる方法は一つしかないわ。
リッド行くしかねえか……。
ファラ急ごう、二人に何かあったら大変だよ !

キャラクター3話【三、 類を見ぬ対決】
リナ急いで、洞窟はこの先よ。
リッド急いでって……。誰のせいでこんなに遅くなったと思ってんだ。
リナうっ……。だって、まだ食べ足りなかったんだもん。そういうあんただって何杯おかわりしてるのよ。
ファラもう ! ケンカしてる場合じゃないでしょ ! ?リナも仲間が心配じゃないの ?
リナだいじょーぶよ。わざわざ手紙まで寄越したんだから。よほどの恨みがあるに決まってるわ。
リナってことは、人質はあたしたちの目の前で始末するとかそーゆー陰湿なこと企んでるわよ。ぜったい。
ファラ全然大丈夫に思えないんだけど……。
リッドそんなことより、道は合ってんだろうな ?さっきからガンガン進んでるけど。
リナ心配しないで。前にも来たことあるから。
リッド前にも…… ?
リナギク……き、気にしないで。ほら、あそこよ。
ガイ待て ! それ以上進むな。
ファラガイ ! よかった、無事だったんだね。でも、進むなって…… ?
リッド下がれ、ファラ。ガイのやつ、やる気だ。
ファラえ…… ?
ガイ悪いが、この先へ進ませるわけにはいかない。
リッドガイ ! どういうつもりだ !
ガイ何も言うな ! そして、このまま街に戻ってくれ。
リナちょっと、お仲間かなんか知らないけどあたしは進ませてもらうわよ。連れがいるかもしれないんだから──
ガイはっ !
リナっ !
リナあなたたちのお仲間、相当な腕じゃない。峰打ちとはいえ、当たったら痛そうよ。
リッドガイ…… !
ガイ…………。
ファラど、どうしよう……。
リナこうなったら魔術で──
ガイさせるか…… !
リナ速いっ ! ?
? ? ?おっと、こいつに手出しはさせないぜ。
リナガウリイ !
ファラえ……もしかして、リナの連れって、この人 ?
リナそうよ。だけどガウリイあんた今までどこに……。
ガウリイ悪いが話は後だ。……ハッ !
ガイっ……やるな。
ガウリイそっちこそ、見たことない太刀筋だな。防御より攻撃を優先した剣術ってとこか。
ガイよくわかったな。色々と訳ありの流派でね。そちらさんこそ、かなりの腕前みたいだな。
ガウリイ言っておくが名乗るほどの流派なんてないぜ。
ガイだが我流にしては、いくらか型のような動きもある。かといってそこにはまらず変幻自在……。
ガイ一子相伝の流派……ってところか。
ガウリイわざわざ自分の手の内をしゃべると思うか ?
ガイ確かにあんたの言う通りだ。悪かったな。水を差して。
ガウリイいいさ。ここから仕切り直しだ。
ガイああ、見せてくれよ。あんたの剣を !
ガウリイいくぞ !
ガイおう !
リナ火炎球(ファイアー・ボール) !
ガウリイぬおおお ! ?
ガイうおわああっ ! ?
リナ自分たちだけで盛り上がってんじゃないわよ !
リッドお前、いきなり魔術で吹っ飛ばすとかいくらなんでもひどくねぇか。
リナああいう時、男は人の話を聞かなくなるって相場が決まってんのよ。
リナなーにが「見せてくれよ。あんたの剣を ! 」よ。三流の吟遊詩人だってもうちょっとひねった台詞を吐くわよ。
ガイ他人の口から聞くと恥ずかしくなるからやめてくれないか……。
リナていうかガウリイ !あたしの話を遮るとはいい度胸じゃない !
ガウリイす、すまん ! 許してくれ !真剣にやらないとヤバそうだったんで、つい……。
リナまあ、とにかくあんたと合流できてよかったけど……。
ファラじゃあ、洞窟に囚われてるのってリナの仲間じゃないってことだよね。
リッドそもそもガイはなんでこんなことしたんだ ?
ガイいや、それは……。
リナちょっと、まだやろうっての ?
ガイ――いや、俺はただ……各方面への影響を避けたかったというか彼女の名誉を守りたかったというか……。
リッド名誉を守る ? なんだそりゃ。
ガイ説明するより、見てもらった方が早い。付いてきてくれ。

キャラクター4話【四、 随分な変わり様】
ナタリア ?おーっほっほっほっほ !のこのこやってきたわね、リナ=インバース !
リナお、おおお……。
ナタリア ?ちょっと、なんでいきなりズッコケてるのよ。
リナズッコケいでか !この状況で、なんであんたが……って、あんた誰 ?
リナその高笑いといい、服のセンスといいどこかの誰かをほーふつとさせるんだけどでもその顔は……。
ガイナタリア ! いい加減正気に戻ってくれ…… !
ナタリア ?ナタリア…… ? ああ、そう。この身体の持ち主の名前ね。だったら、今はそう名乗ることにしましょう。
ナタリア ?まんまとおびき出されたわね、リナ !今日こそ引導を渡してあげるわ。
ナタリア ?あなたの永遠のライバル、白蛇の……じゃなくて、このナタリアがね !
リナうう……もうやだ。
ガウリイなあ、状況がよくわからんのだが。
ファラそうだよ ! ナタリアどうしちゃったの ! ?
ガイ二人でこの洞窟を調査してたんだがちょっと目を離したらこうなっちまってたんだよ。
リッドあれじゃないのか。ほら、アークが異世界からゲストを呼んで、精神だけこっちの人間に移っちまったことがあるんだろ ?
ガイじゃあ、あれはやっぱりナタリアじゃないのか。ナタリアの中にああいう願望があったわけじゃないんだよな。
リッドまあ、意外としっくりきてるかもな。
ファラ二人とも、ナタリアが元に戻ったら言いつけるよ。アッシュにも。
リッドじょ、冗談だって。それより、あいつリナのことをライバルとか言ってるぞ。知り合いじゃねえのか。
リナライバルだとは絶対に認めたくないけどたぶん、中の人に心当たりというか実際、面識がないこともないこともないわ !
リッドいや、どっちなんだよ。
リナとにかく ! ナー……じゃなくてナタリアとやら !いったいなんのつもりであたしを呼びだしたの !
ナタリア ?さっきも言ったでしょう。あなたを倒すためよリナ。その悪行も今日までと思いなさい !
リナ悪行って……むしろあんたには何度もごはん奢ってあげた気がするんだけど。ていうか、最後に会った時はお金も貸したような。
ナタリア ?……な、なんのことかわからないわね !だってわたし、今はナー……じゃなくてナタリアだから !
リナこ、こいつ状況を都合良く利用して誤魔化した……。
ナタリア ?ともかく ! リナ ! あなたがこの辺りに暮らす善良な一般市民たちを襲撃していたのはお見通しよ !
リナ善良な、一般市民…… ?
盗賊俺たちのことだよ、リナ=インバース。
リナあ、あなたは…… !
リナって、誰 ?
盗賊なにぃ ! ? お、俺の顔を忘れたのか !つい一昨日会ったばかりだろうが !
リナ一昨日…… ?
盗賊忘れもしねえ、この場所で !善良な俺たちが一仕事終えて酒盛りをしていたらいきなり魔術を撃ち込んで来ただろうが !
リナ……ああ ! もしかして、あの時の盗賊どもの生き残り ! ?
盗賊その通りだ ! だが盗賊じゃねえ ! 善良な一般市民だ !
ファラねえ、リナ。いきなり魔術を撃ち込んだって……。
リナや、やーねー、物の弾みよ。
リナほら、か弱い乙女がこんなむさ苦しい洞窟に入るなんてとっても危ないじゃない ? だからまずは火炎球でキレイに消毒したのよ。合理的でしょ ?
リッド合理的ってか、えげつねぇな、お前……。
ファラもしかして街で聞いた『盗賊殺し』ってリナのこと ?
リナぐはっ ! ? そ、その通り名は……。
盗賊って、おまえら俺を無視するな !
リナあ、ごめん。すっかり忘れてたわ。えーと、それで盗賊が何の用なわけ ?
盗賊盗賊じゃねえ、俺はリナ=インバースに家と家族を奪われた善良な一般市民よ。
リナむさ苦しいおっさんばっかで洞窟に住んでる奴らが一般市民なわけないでしょ。だいたい、その顔で善良とか言う ? ふつー。
盗賊生まれつきだ ! この顔は !それにな、こいつは商売道具なんだよ。
盗賊街道あたりで待ち伏せして、通る人間に気さくに声をかける。すると、みんな自主的に寄付をしてくれる。そういう仕事だ !
リナそれを追い剥ぎっていうのよ !
盗賊とにかく、てめえに復讐するためにここに呼びだしたらたまたまこの妙な格好の……ナタリア姐さんがいた。話してみればお互いてめえに苦汁を飲まされたと。
盗賊そんなわけで、てめえに復讐……じゃなくて正義の鉄槌を下すために協力することにしたんだ !
ファラじゃあ、やっぱりあの手紙はリナ宛てだったんだ。ナタリアは巻き込まれちゃったんだね。
ガイ事情はわかったが、こっちはナタリアの身体で好き勝手されるわけにはいかないんだ。取り押さえさせてもらう。
盗賊おっと、そうはさせねえ !
ファラ洞窟の入り口が崩れてる ! ?
盗賊これで、どこにも逃げられねえぞ。このまま洞窟を崩落させて生き埋めにしてやる。
盗賊リナ=インバース以外はまあ、運が悪かったと思って諦めるんだな。
リナどーでもいいけど、あんたはどうやって逃げるの ?
盗賊……し、しまったあ !
リッド頭、痛くなってきたぜ……。
ナタリア ?落ち着きなさい。ここでリナたちを倒して後でゆっくり魔術で穴を掘って脱出すればいいのよ。
盗賊な、なるほど ! さすが姐さん !
ナタリア ?というわけで、覚悟なさいリナ !
リナやれやれ、やるしかないみたいね。

キャラクター5話【五、 思わぬ助っ人】
ナタリア ?ま、待った ! リナ !わたしの話を聞いてちょーだい !
リナなによ、命乞いとかだったら受け付けないわよ。
ナタリア ?や、やーね。そんな真剣にならなくても。ほら、わたしたちの仲じゃない ?
リナ仲って、どんな仲 ?あたし、ナタリアって人とはさっき会ったばかりなんだけど。
ナタリア ?ああっ、そんな !
ファラな、なに ! ? この揺れ !
ガウリイ気をつけろ ! 天井が崩れてくるぞ !
ガイいったいどうなってやがるんだ ! ?
ナタリア ?わ、わたしなんにもしてないわよ !
盗賊姐さん、こっちです !
ナタリア ?あれ ? 出口はないんじゃなかったの ?
盗賊そんなこと今はどうでもいいでしょう !逃げないと埋まっちまいやす !
ナタリア ?そ、そうね。というわけで、また会いましょうリナ !
ガイあ、待て ! おいナタリアの身体を──
リッドくそっ、出口がふさがっちまった !
ファラええっ、わたしたち生き埋めになっちゃうの ! ?
? ? ?地精道(ベフィス・ブリング) !
リナこの魔術…… !
? ? ?こっちだ ! 早く !
リッド誰だか知らねぇけど助かった !みんな、脱出するぞ !
リッドはー、なんとか逃げられたなー。
ガイああ、まさに危機一髪ってやつだ……。
ファラよかった、みんなケガがなくて。
リナそうね。ところで、そろそろ出て来たら ?
ガイ――お前は……。
リナ待って。彼なら敵じゃないわ。たぶんね。そうでしょ……ゼルガディス。
ゼルガディス……ああ。今のところはな。
ファラリナの知り合い ?
リナええ。以前に何度かね。愛想は悪いけど案外良い奴よ。
ゼルガディス助けてやったのに、ずいぶんな言い草だな。
リナそれより、あんたがいるってことはやっぱり【アーク】が目当てなの ?
ガイなに…… ! ?
ゼルガディスどうやらそっちも目的は同じらしいな。
ガイおい、どういうことだ。なんでリナからアークの名前が……。
ファラえっと、それはね……。
リッドまあまあ、どうせ長い話になるんだ。一度、街に戻ろうぜ。
リナ賛成。あなたもそれでいい ? ゼルガディス。
ゼルガディスあまり人の多いところには行きたくないが……。まあ仕方ないだろう。
リナ決まりね。お腹も空いてきたとこだしちょうどいいわ。
リッドお前、さっきあんだけ食ってたじゃねえか……。
リナ……なるほど。あなたたちはアークから来たと。
ガイ俺たちが元いた方のアークは、古代の遺跡じゃなくて小綺麗な都市って感じだけどな。
リナじゃあ、あなたたちも異世界の人ってわけ ?
ガイまあな。もっと詳しく言えば、俺とナタリアは同じ世界から呼ばれたが、リッドとファラはまた別の世界から来てる。
ガイその辺りを説明すると長くなるんだが……。
リナそれはおいおい聞かせてもらうわ。重要なのは、あたしたちの世界の一部とそっちのアークが混じり合っちゃってることね。
リッドもう一つ、そっちの世界からこっちのアークに入りこもうとした奴がいる。オレたちはその原因を探してんだ。
リナなるほどね。ゼルガディスは ?
ゼルガディス俺は、【アーク】の噂を聞いて来た。そこにはあらゆる知識を収めた図書館があると。
ゼルガディスその知識があれば、俺のこの身体を元に戻せるかもしれんからな。
ファラ確かに、わたしたちの知ってるアークは学園都市だから、大きな図書館があるよね。
リッド名前といい、図書館の件といい、共通点が多いよな。やっぱ行ってみるしかねえか。その遺跡の方の【アーク】に。
ガイおい、ナタリアのことも忘れないでくれよ。
リッドもちろんだ。けど、うーん……。いざとなりゃふん縛って連れ帰るか ?
ガイワイズマンに頼めばなんとかなる……んだろうか。あの姿をみんな……特にアッシュに見られるのだけはどうあっても避けないと……。
ファラショックを受けそうだもんね。アッシュは特に。
リッドガイは責任取らされそうだしな。
ガイやめてくれ。考えただけで気が重い……。
リナじゃあ、明日は朝一に出発ね。みんな夜更かししないよーに。
リッドちょっと待った。お前も付いてくんのか ?
リナ当然でしょ。もともと突然現れた遺跡については実際に行って調べようと思ってたから。
リナそれに、上手くいけば異世界の方のアークにも行けるかもしれないじゃない ?
ゼルガディス俺もアークの図書館には用がある。
リッドおい、誰も連れてくとは言ってねぇぞ。
リナ誰も連れてってとは言ってないわ。勝手に付いていくのよ。
リッドただの屁理屈じゃねぇか。
リナだいたいね、ナー……じゃなくてナタリアはあたしを追ってるのよ ?
リナナタリアを捕まえたいのならあたしも連れて行くしかないでしょう ?
ガイ確かに……。
リッドあー、わかったよ。調査が終わったらワイズマンに頼んでやるよ。
リナやったー。異世界の都市だもんね。いろいろとお宝がありそう。
リッドほんとに連れてって大丈夫かよ……。

キャラクター6話【六、 武闘派正義】
ゼルガディス遺跡は、この山を越えたところだ。
リナめんどくさいわねー。そっちの世界の技術でぱっと越えられないの ?
リッドんなもんあったらオレだって使いてえよ。
ファラバンエルティア号があればよかったんだけどねー。
リナバンエルティア号 ? なにそれ ?
ファラ元の世界でわたしたちが乗っていた船だよ。潜水艇と飛行艇もあったんだ。
リナなにそれすごいじゃない。どんな技術で動いてるの ?
ファラたぶん晶霊の力を使った技術だと思うけど詳しいことは仲間のチャットかキールに聞いてみないとわからないな。
リナ残念。やっぱり、そっちとは魔術理論にも大きな違いがあるみたいね。これは興味深いわ。
ファラ機会があったら二人を紹介するね。リタやパスカルも話を聞きたがると思うな。
ガウリイリナ、待て。
ゼルガディスおしゃべりはここまでのようだ。
傭兵Aへっへっへ……よく気づいたな。俺たちが待ち伏せしてるってことに。
リナけっこうバレバレだったわよ。
傭兵Aへっ、粋がるのも今のうちだ。おい、こいつらで間違いないか。
傭兵B『長髪の剣士』『フードで顔を隠した魔法剣士』あと『胸は小さいが態度はでかい魔道士風の少女』
リナくぉおら ! 胸が小さいが態度はでかいって誰が言ってんのよ !
傭兵A知る必要はねえ。てめえらはここでくたばるんだからな !
ガイ来るぞ !
? ? ?お待ちなさい !
傭兵Aだ、誰だ ! ?
傭兵Bあそこだ !
? ? ?己が欲望のため、卑劣な罠を仕掛ける者たち !人はそれを悪と呼ぶ !
? ? ?悪あるところに正義あり !闇を裂き、影を照らす光はここにある !
? ? ?時すでに遅し ! もはや弁解も釈明も聞きません !わたしの拳は正義の怒りで真っ赤に燃えている !
傭兵Aなんだかよくわからねえことばかり言いやがって !
リナいや、単に出番が遅すぎてもう待ちくたびれたって言ってるだけよ。
リッドってことは、あれ、お前の知り合いか ?
リナええ、まあ旅の連れというか勝手に付いてきてる子というか……。
? ? ?いくわっ、とうっ !
リナあ、アメリアそっち崖……。
アメリアひあああああああっ !
リッド落ちた ! ?
ガイ落ちたぞ !
ファラだ、大丈夫 ! ?
リナまあ、大丈夫でしょ。あの子もお父さんに似て頑丈だから。
傭兵Aくそっ、俺たちを笑わせて出鼻をくじくって腹か !もう我慢ならねえ、おめえらやっちまえ !
傭兵たちうおおおおおっ !
リナはぁ……結局こうなるわけね。
傭兵Aち、ちくしょう覚えてやがれ !
アメリアまったく、口ほどにもありませんでしたね !
リナうわっ ! ? アメリア !戻ってくるの、意外と早かったわね……。
アメリアはい。そのまま崖をわしわし登ってきましたから !
リナ相変わらず逞しいわね……。
アメリアところでリナ、こちらの方たちは ?
リナあー、それはね……。
アメリアなるほどなるほど。聞いたこともない遺跡に街の様子。どうりで、おかしいと思いました。まさか別の世界の影響だったとは。
リッドあんたもリナも驚かないんだな。こっちは説明の手間が省けていいけど。
リナこっちの世界の魔道士なら別の世界があるってことは基礎知識っていうか、神話みたいなものだからね。
アメリアじゃあ、ゼルガディスさんもその【アーク】を目指しているんですか ?
ゼルガディスああ。俺の身体を元に戻す手がかりがあるかもしれんからな。
アメリアでは、わたしもお手伝いします !これほどの事態、悪しき企みがあるに違いありません !
リナというわけで、アーク観光はもう一名追加ね。言っとくけど、この子は何がなんでも付いてくるわよ。
リッドお前も似たようなもんじゃねえか……。もう、一人増えるくらい問題じゃねぇだろ。
リナそれにしても、よくあたしたちの居場所がわかったわね。
アメリア噂を辿って来ましたから。あちこちで盗賊たちを壊滅させている人がいるって。
ガウリイオレも同じだ。そんなことをするのはリナしかいないと思って。
リナ認めたくない……けど否定できない……。
ガイ噂と言えば、さっきの連中、妙なこと言ってたな。
ファラそうそう。リナやガウリイの人相を知っててここで待ち伏せしてたみたいだったよ。
リナどういうことかしら……。誰があたしたちを狙って──
ごろつきはっはっは ! 見つけたぜ !てめえらを倒せば俺も大金持ちだ !
リッドちょうどいい、あいつに聞きゃいいんじゃねえか。
リナあたしも同じこと考えてたとこ。
ごろつきえ、え…… ?
ごろつきだから……うう……人相書きがあちこちに……。倒したら……ぐすっ……お金くれるって……。
リナいや、泣かれても困るんだけど。
リッドあんだけ恐ろしい目にあったら仕方ねぇよ。……お前、ほんとひどい奴だな。
リナいきなり襲いかかって来る方がひどいでしょ !ていうか、悪人に人権はないってお母さんに習ったでしょ !
リッドそんなこと教える母親がいるかよ……。
ガイまあ、興味深いリナの実家についてはそのうちまた聞くとして、厄介なことになったな。
ゼルガディスああ、どうやら俺たちの首に賞金がかけられたようだ。
リッドどう考えても、前の洞窟で会った盗賊の仕業だぜ。
ファラ賞金って、わたしたちお尋ね者ってこと ?このままずっと狙われ続けるの ?
リッドあの盗賊、リナのことよっぽど恨んでんだな。
リナう……あたしのせいだってゆーの ?
ガイあんなのがひっきりなしに来たんじゃたまらないな。いちいち相手にしていられないぞ。
リナわーったわよ !連中に狙われない方法を考えればいいんでしょ !
ガウリイおい、何する気だリナ。
リナいいから、あたしに考えがあるの。
アメリアファラがわたしの格好をして――
ガウリイガイがオレの格好か……。こんなことしてなんになるんだ ?
リナまあまあ、聞きなさい。
リナ襲ってくる連中はあたしやガウリイの格好で判別してるわけでしょ ?
リナ似たような格好の一行がもう一組あればそっちにも襲撃の目が行くと思うの。
ガイおいおい、そいつは要するに囮ってことじゃないか !
リナま、まあそうとも言うわね。でもほら、こっちはこっちで格好はそのままだし。上手い具合に襲撃が分散すると思うの。
ガイ理屈はわかるが、何か釈然としないな。
リッド釈然としないのはオレの方だ。
リッドなんなんだよ、この衣装は。
リナだってほら、消去法的にリッドはあたしの格好ってことになるわけじゃない ?女の子の服、さすがに嫌でしょ ?
リッドそりゃあそうだけど……。
ファラじゃあ、リッドのこの衣装って ?
リナああ、それはね。あたしが知る限りでもっとも胡散臭い神官の格好を参考にしたのよ。
リナあまりの胡散臭さに目立つことうけあい !襲撃者たちも首ったけ !
リッドやっぱりこっちが囮じゃねーか !
ガイ思うんだが、リナじゃなくてゼルガディスの格好でよかったんじゃないのか ?
リナ…………。
リナさあ、ここからは二手に分かれて出発よ !山を越えた先にある村で合流ってことで !
リッド誤魔化すなー !

キャラクター7話【七、 座して待つは】
リナやっほー。あんたたちも無事みたいね。
リッドまあな……。お前の言う通り、それほど待ち伏せはなかったよ。
リナだったらいいじゃない。なによその不満そうな顔は。
ガイこの一見ばかばかしい作戦が上手くいったことがなんとなく釈然としないってところだろうな。
リッド……あ~もう、この服脱いでいいよな ! ?
ガウリイいや、そいつはもう少し後にした方がよさそうだ。
ナタリア ?おーっほっほっほっほ !
リナこ、この笑い声は……。
ナタリア ?どうやら無事に辿り着いたようね !まあ、この程度のことで倒れているようじゃわたしのライバルは名乗れないけどね !
リナあんたのライバルを名乗ったことなんかただの一度もないっての。
リナそれより、そのへんの雑魚をけしかけて自分は高みの見物なんて、ずいぶんと姑息なことしてくれるじゃない。
リッドオレたちがあんなのにやられるとでも思ったのかよ。
盗賊ふん。あんな連中に仕留められるとは思っちゃいない。てめえらを多少なりとも疲弊させてくれりゃそれで充分なんだよ。
ガイ盗賊の割に、戦略を心得てるな、あいつ。
ファラでも、なんか陰湿。やるならもっと正々堂々とするべきだよ。そしたらわたしも正義の拳で迎え撃つから。
ガイその格好のせいか、言動もちょっとアメリアっぽくなってないか ? ……って、そのアメリアは ?
ゼルガディスあそこだ。
アメリアそこまでよ !
盗賊な、なんだてめえは ! ?
アメリア悪の道に堕ちた者に聞かせる名はないわ !だけど、あえて名乗るのであれば正義の使徒と言っておきましょう !
盗賊くそっ、助っ人か ! 汚ねぇぞ !
リナいや、あんたが言うなあんたが。
盗賊だが、しょせんはたった一人。姐さんの超絶魔術の前じゃ大した戦力じゃねえぜ !なあ、姐さん !
ナタリア ?な、な、な……。
盗賊あ、あれ ? 姐さん…… ?
アメリアあなたがリナを付け狙っているという魔道士ですね !その姿、まさしく悪の……悪の……おや ?
ファラどうしたの、アメリア ?ほら、がつーんとやっちゃって !
アメリアいえ、気のせいかそこの魔道士の方がどうも知っている人に似ているような気がして。
リッドあんなのが他にいるのかよ。
ゼルガディス友人は選んだ方がいい。
ガウリイそうだぞ、こんな風になっちゃうぞ。
リナなんでそこであたしを指差すのよ !
ナタリア ?本当に ? いえ、でもこんなところにいるわけが……。そうか、そうよ、きっと他人の空似よ !
ナタリア ?だけど、このわたしを動揺させて隙をつくとはさすがリナ ! 卑劣な手を思いつくわね !
ナタリア ?決してあなたの策にはまったわけじゃないけどなんだかものすごく疲れたから、今日のところはこのくらいで勘弁してあげるわ !
盗賊な ! ? 待ってくれよ、姐さん !ここから奴らをコテンパンに──
ナタリア ?無理。帰って寝る。
盗賊姐さーん ! ?
リナ誰が逃がすもんですか !
ガイああ ! ナタリアの身体を返してもらう !
盗賊ちっ、こうなったら……こいつをくらえ !
ガイ魔物を呼び出した…… ! ?
リナ盗賊ごときが、なんでそんなものを…… ! ?
盗賊へへへっ……こいつは、ある親切な人がくれたのよ。
リナ魔物を呼び出すマジックアイテムなんて親切なんかであげられる代物じゃないわ。いったい誰があんたのバックについてるの。
盗賊いや、酔っ払って路地裏を歩いてたら『リナ=インバースを倒したいなら手を貸そう』ってどこからともなく声がしてこれが落ちてた。
リナ拾うな ! そして使うな !そんな怪しいもん !
盗賊確かに怪しいが、実際役に立ったぜ !こいつらに勝てるかな ! ?
ファラリナ ! 出所も怪しいけど、この魔物も普通じゃないよ !
リッドああ、この気配……どうも嫌な感じがする。
リナくっ…… !仕方ない、まずはこいつらを片付けるわ !

キャラクター8話【八、 冷酷な魔族】
リッドはぁっ !
ゼルガディスそいつで最後のようだな。だが、やつらには逃げられたか。
ガイ…………。
アメリアどうしたんですか ? ガイさん。
ガイあ……いや。なんでもない。それより、この先どうする ?
アメリア遺跡は、もうすぐそこなんですよね ?このままの勢いで行っちゃいましょう !
ファラうん、イケるイケる !……って、言いたいところだけど一度、落ち着いて話した方がいいんじゃないかな。
リッドだな。オレも気になることがある。
リナまあ、無理して先を急ぐ必要はないわね。もうすぐ日も落ちることだし。
ガイそういうことなら宿を確保してこよう。
リナそれで、気になることって ?
リッドなんていうか、うまく言えねぇんだけど――
ガウリイさっきの魔物のことだろ。やけに剣の手応えがなかったって。
ガイやっぱりそうか。俺も同じことを感じてた。
リナあー、なるほど。そういうことね。
リッドどういうことだよ ?知ってんなら教えてくれ。
リナあれはおそらく魔族よ。
ファラ魔族って ? 普通の魔物とは違うの ?
リナ魔族って、本来は精神生命体なのよ。だから物理的な攻撃が効かないの。
リナあたしたちの前に現れたのは、魔族の中でも下位のレッサー・デーモンって呼ばれるやつら。
リナ精神生命体が生き物の身体に乗り移って変異した魔物だから実体はあるけど、それでもやっぱり剣なんかは効きにくいの。
リッドだから、妙に斬った手応えが弱かったのか。
ガイけど、ガウリイはいつもと同じように斬ってたようだが……。
リナそれは、ガウリイじゃなくて剣が特別なの。
ガウリイ光の剣っていってな。まあとにかくどんな相手でも斬ることができる。先祖代々伝わる代物だ。
ガイなるほど、そりゃすごい業物だ。
リナ言っておくけど、あげないわよ。光の剣はあたしがもらう約束してるんだから
ガウリイしとらんしとらん。
ファラでも、この先あんな魔物とばかり戦うんだとしたら対策は考えないとね。
アメリア大丈夫です ! 気合いと正義の心があればたとえ魔族だろうとこの拳は届きます !
ゼルガディス気合い、というのはまああながち間違ってない。魔術やそれに類するもので拳や剣を強化すれば奴らにもダメージを与えられる。
ファラそういうことなら、通用しそうな技がいくつかあるよ。
ガイ俺も、なんとかなりそうだ。
リッド精神生命体ね……。また、そんなのと戦わなきゃなんねえとはな。
リナレッサー・デーモン自体はそれほど脅威じゃない。問題はもっと別のところにあるわ。
ガイどういうことだ ?
リナレッサー・デーモンは、名前の通り下位の魔族なの。知能も低いし、ああやって他の生物に乗り移ってるからまだ戦いやすい。
ゼルガディスそうか、あの盗賊にマジックアイテムを渡したのはもっと高位の魔族ということか。
リナそういうこと。
ガイその高位の魔族が黒幕ってわけか。そいつは、リナを遺跡に行かせたくないのか ?
リナさあね。魔族の考えることなんてわからないわよ。連中、人の負の感情が大好物で、自らも含めてなんもかんも破壊して滅びましょうって種族だから。
ファラなにそれ、嫌な種族……。
アメリアそう、まさに悪そのものなのです !だから決してやつらの狙い通りにさせるわけにはいかないんです !
リナなんて勢い込んだところで、こっちから打つ手はないしとりあえず明日に備えて休みましょ。
リッドそうだな。遺跡に着けば嫌でもわかるだろ。

キャラクター9話【九、 因縁の好敵手】
ナタリア ?おーっほっほっほ !また会ったわね、リナ !
リナあんたもいい加減ワンパターンね。たまには違う登場の仕方ができないわけ ?
ナタリア ?ふっ……これは様式美というやつよ。高貴なわたしの美学が理解できないとは胸だけじゃなくて教養も足りないようね !
リナこのぉ……今日はえらく噛みつくじゃない。やっと決着をつける気になったの ?
ナタリア ?ええ、その通りよ。だけど、残念ながら『今』じゃないわ。
リナどういうこと…… ?
盗賊へへへっ……この先の遺跡がてめえらの墓場ってことさ。今日はそいつを伝えにきたんだ。
ナタリア ?遺跡で待っているわ、リナ。わたしたちの決着にふさわしい舞台を用意してね。
ガイおい、待て。お前らの黒幕はリナを遺跡に行かせたくないんじゃないのか ?
盗賊黒幕じゃねえ。親切な協力者だ。その人がわざわざ用意してくれたんだよ。たっぷりの罠と強敵をな。
リナじゃあ行かない。
盗賊え……。
リナだって、罠があるんでしょ ?危ないから行かないことにするわ。
盗賊ま、待て待て ! えーと、冗談 ! やっぱ罠はない !
リナえー、どうしよっかなー。遺跡とかってー、オバケとか出そうだしー。リナ、そういうの苦手だしー。
盗賊そ、そう言わずにな ? な ?そうだ ! お宝だってたくさん用意するから !
リナお宝ってーなあに ?
盗賊古代都市に眠ってたもんがいろいろあるって話だ !親切な協力者が教えてくれたんだ !
リナうーん、だったらー、ちょっと興味あるかもー。
盗賊そ、そうか ! よかった !
リッドおい、リナ。なんだよそのしゃべり方は。なんかこう、そこはかとなく怖いぞ。
リナうっさいわね。交渉術よ。こーしょーじゅつ。ちょっとだけど黒幕の情報が得られたでしょ。あと、お宝のことも。
ガイそっちがメインだろ、絶対。
アメリア目を覚ましなさい !あなたたちは魔族に操られているのよ !
盗賊なんだと……って、姐さん ?なんで俺の後ろに隠れてるんですか。
ナタリア ?いえ、なんでもないわ。他人の空似だと思ってもなんとなく顔を合わせづらいだけだから。
ファラ魔族ってなんでもかんでも壊す悪いやつらなんでしょ ?あなたたちだってきっと利用されてるんだよ !
リナファラの言う通りよ。いくらなんでも話がうますぎると思わないの ?
ナタリア ?ふっ……きっととっても親切な人なのよ。ていうかリナ、そんなに人を疑ってばかりいると友達なくすわよ。
リナこ、こいつは……人が心配してやってるのに……。ここでぶっ飛ばしてやろうかしら。
ファラリナ、落ち着いてっ。
ガイ夕べ話し合っただろ、とにかく黒幕をあぶり出すって。
ナタリア ?伝えるべきことは伝えたからこれで去るとしましょう。おーっほっほっほっほ !
盗賊おい、リナ=インバース。
リナあによ。
盗賊姐さんはああ言ってたが、俺は魔族が関わってようがどうでもいいんだ。てめえに復讐ができればな。これが、どういう意味かわかるな。
リナいざとなれば、ナタリアも人質になるってことかしら ?
盗賊察しがいいじゃねえか。あのおキレイな顔がズタズタになるところなんざてめえらも見たくはないだろ ?
ガイ貴様…… !
盗賊おっと、そう焦るなよ。ちゃんと舞台は用意したんだ。遺跡で、待ってるぜ……。
ゼルガディス黒幕をあぶり出すどころか、そいつの懐にこっちから乗り込むことになりそうだな。
リッド手間が省けていいじゃねえか。
アメリア正義の志で悪の企みごと打ち砕いて見せます !
ファラうん、イケるイケる !
ガウリイだってよ、他のみんなはやる気だぞ。どうする ? リナ。
リナふん、もちろん行ってやるわよ !覚悟してなさい、どっかの魔族 !

キャラクター10話【十、 図々しき一団】
ガイここが例の……って、なんだこりゃ ?古代都市の遺跡なんてないぞ。
ファラそれどころか、誰もいないよ。遺跡発掘で賑わってるって話じゃなかった ?
ゼルガディスだが、少し前まで人のいた痕跡はある。どこかに隠れているのか…… ?
ガウリイいや、辺りに気配はない。だが……。
リッドあの奥の塔……アレだな。
リッドここからでも、伝わってくるぜ。あの中にヤバイのがいるってな。
ファラあの中に、ナタリアが……。
盗賊くっくっく……その通りだ。
リナアメリア、確保。
アメリアりょーかい !
盗賊え ? あ、ちょっと待っ……ぎゃああああ !
盗賊て、てめえらこんなことしてタダですむと思ってるのか !この縄を解きやがれ !
リナまったく、そっちからのこのこ出てくるなんて。捕まえてくれって言ってるようなもんじゃない。相変わらず詰めが甘いわねー。
盗賊お、俺はおまえらに最後の──
リナはいはい。どーせ、『泣いて命乞いをするなら今だ』とか、そういうこと言いに来たんでしょ。
リナそんで、誰が命乞いなんてするもんですかとか言ったら『くっくっく、じきに後悔することになる』とかなんとか言って去って行くのよ。
盗賊う……。
ファラ図星、だったみたいね……。
ガイていうか、そのくらい言わせてやれよ。
リナやだ。
アメリア悪党以上に悪辣な手段でその出鼻をくじくなんて。さすがはリナ。
ガウリイこういうこと考えさせると、世界一だよな。
ゼルガディス連中に同情する。
リッドお前、今、すげぇ楽しそうな顔になってるぞ。
リナうっさいわねー。それよりこいつに洗いざらい吐かせるわよ。で、あの塔はなんなの ?
盗賊あ、あれは協力者が用意してくれたんだ。
リナ塔を、丸ごと作ったっていうの…… ?
ゼルガディスそれだけの力を持つ魔族か。想定した以上に高位の存在のようだな。
ファラ遺跡に集まった人たちは ?みんなどこへ行ったの ?
盗賊知らねえよ。俺たちが来た時には誰もいなかった。
盗賊へっ……きっと塔の中で待ってる魔族どもの餌にでもされちまったんだろうな。
盗賊てめえらも覚悟しておけよ。中にいるのはどれもとんでもねえ化け物ばかりだ。
アメリア許せません ! いたずらに罪無き人たちの命を奪いあまつさえ、あんな邪悪な塔を建てるなんて !
ガイおい、ナタリアはどこにいる ?まさか……。
盗賊姐さんなら塔の最上階だ。自分が人質だとも知らずにてめえらを待ってるよ。
リナなるほど。よーするに魔族を倒して塔を登ってナタリアを助ければいいわけね。
盗賊言っておくが、俺を捕らえても魔族どもは容赦してくれやしねえぞ。
リナんなのわかってるわよ。でも、盾くらいにはなりそうじゃない ?
ゼルガディス魔術の一発くらいなら防げそうだな。
アメリア投げれば多少のダメージは与えられるかもしれませんね。
盗賊おいおいおい ! 冗談だろ !
ファラさすがに可哀想なんじゃ……。
アメリアいいえ、ファラ。これは償いなのです。悪に染まったその身を挺して道を切り開く。それこそまさに禊ぎ…… !
ガイむちゃくちゃ言ってるな。
リナそんじゃ、さっそく塔に乗り込みましょう。あ、そいつは男どもで運んどいて。
盗賊い、嫌だー ! 連れてかないでー !
リッドいいのかよ、こんなノリで……。
(つづくっ ! )