キャラクター | 1話【1階層 古の宝珠】 |
ティア | ここは……アーク ? |
ルーク | なんだ、俺たちまた呼び出されたのか。 |
ライラ | でも、変ですわね。いつもよりずいぶん静かです。 |
アーチェ | お祭り、やってないのかな ? |
ワイズマン | おっしゃる通りです。今は、緊急事態ですので。 |
ルーク | 緊急事態ね。つまりは、それが俺たちを呼んだ理由か。 |
ワイズマン | 詳細をお話する前に、まずはご紹介させてください。 |
ティア | 女の子…… ? |
ヘスティア | ベル君を助け出すのに協力してくれ !お礼ならなんでもする ! なんでもだーっ ! ! |
ヘスティア | 取り乱してすまなかった……。 |
ティア | いえ……。大事な人の身を案じるのは当然だと思うわ。 |
ルーク | 要するに、その【宝珠】の中にベルってやつが閉じ込められてるんだな ? |
ワイズマン | はい。【宝珠】は人を食うと言われています。 |
ワイズマン | 人を取り込み、恐怖と苦痛を与え、精気を吸い取る。大昔の魔術士が生み出した曰く付きの代物です。 |
アーチェ | うげげー、なんでまたそんなもの作ったのよ~。 |
ワイズマン | それは不明です。何せ作り出した魔術士本人が最初の犠牲者になってしまいましたから。 |
ライラ | 報いを受けた、ということなのでしょうね。 |
ヘスティア | そんな大昔のことはいいんだ !今大事なのはベル君だよ ! |
ティア | 人の命がかかっているんだもの。もちろんできるかぎり協力するつもりよ。でも、私たちが中に入って大丈夫なの ? |
ワイズマン | 外から何かすれば、中にいるベルさんにまで危険が及びかねないと判断したのです。それに―― |
ヘスティア | 君たちを呼ぶ前にボクたちが中に入ってみたんだ。そうしたら怪物(モンスター)が大騒ぎし始めてしまって。ボクが『神』だからかもしれない。 |
ルーク | 神ぃ ! ? このちっこいのが ! ? |
ヘスティア | 失礼だな ! 君は ! |
ティア | ルーク、人が見かけによらないのはアジトの人たちを見ていればわかるでしょう ?あ、人じゃなくて神様……だったわね。 |
アーチェ | そういえばライラだって神様の親戚みたいなもんじゃないの ? |
ライラ | さすがに、天族を神と並べるのは恐れ多いですわ。 |
ヘスティア | こんな話をしている場合じゃないんだ !こうしてる間にもベル君の身に危険が ! |
ルーク | わかった、わかったって !手、貸してやるから ! |
ヘスティア | おお、感謝するよ赤毛君。君は意外とイイやつだね。 |
ルーク | 意外とってなんだよ……。 |
ヘスティア | 君たちが頼りなんだ。 |
ワイズマン | 危険な仕事ですが、魔鏡通信機を経由して外から出来る限りサポートします。どうか、よろしくお願いします。 |
ライラ | 聞いてた通り、洞窟のようですわね。 |
ティア | おかしいわね。これが自然にできたものなの ?まるで迷路みたいだわ。 |
ヘスティア | そりゃあ『ダンジョン』だからね。 |
ルーク | 魔鏡通信、宝珠の中でも問題なく繋がるみたいだな。 |
ヘスティア | こっちの世界には便利なものがあるんだね。神の力やスキルでもなく、遠く離れた人間とこうやって会話できるなんて。 |
ヘスティア | うーむ……これがあればダンジョンにいる間もベル君とおしゃべりできる……。 |
ルーク | なんか話がそれてないか ? |
ヘスティア | おっと、すまない。えーと、ボクが言いたかったのはそこが『ダンジョン』なら一つ注意点が── |
アーチェ | 壁からモンスターが生えてきたよ ! ? |
ルーク | どうなってんだ、ここは ! |
ティア | 数が多いわ ! みんな、気をつけて ! |
ライラ | アーチェさん ! ここは術で一気に ! |
アーチェ | おっけー ! ビックリしたけどただのモンスターなら……アイストルネード ! |
ライラ | フォトンブレイズ ! |
モンスター | グルルルル…… ! |
アーチェ | ウソ ! ? 効いてない ! ? |
ライラ | そんな、どうして…… ! ? |
ルーク | だったら剣で ! はあっ ! |
ルーク | なっ…… ! ? 剣も通じないのかよ ! |
ティア | いったい、どうなってるの……。 |
ヘスティア | まさか……。 |
アーチェ | ちょっと、何か知ってるなら教えなさいよ ! |
ヘスティア | 説明すると長くなる !だから、とにかく今は逃げるんだ ! |
ルーク | なんだよ、そりゃ…… ! ?くそっ、俺が道を作る。後ろは任せたぞ ! |
ライラ | 任せてください。術が効かなくても、牽制くらいにはなるはず ! |
アーチェ | もう、どうしてこんなことに~ ! |
ルーク | よし、この道にはモンスターがいない。みんな、こっちだ ! |
少女 | ………………。 |
ルーク | っ ! ? 女の子…… ? どうしてこんなところに……。なあ、お前―― |
少女 | ……。 |
ルーク | 消えた…… ? |
アーチェ | ちょっと、ルーク !後ろがつかえてんだから止まらないでよ~ ! |
ルーク | え……っと、うおっ ! ? |
ライラ | 地面が、崩れますわ ! |
ルーク | アーチェ、お前の箒でなんとかしてくれ…… ! |
アーチェ | よ、よし、みんな掴ま―― |
ティア | きゃああああああっ ! |
キャラクター | 2話【2階層 出会い】 |
ルーク | う……いってええ……。 |
アーチェ | みんな、だいじょぶ~ ! ? |
ライラ | ええ。大きな怪我はありませんわ。 |
ティア | 斜面になっていたのが幸いしたわね。滑るように落ちてきたみたい。 |
ルーク | だけど、かなり下まで落とされた。こりゃ戻るのは一苦労だぞ。 |
ベル | あの……みなさん、大丈夫ですか…… ? |
ティア | だ、誰っ ! ? |
ベル | ま、待ってください ! 僕は敵じゃありません ! |
ヘスティア | その声は……ベル君 ! ベル君じゃないか ! |
ベル | 神、様…… ? |
ベル | ……なるほど。そういうことだったんですね。なんとなく僕の知ってる『ダンジョン』とは違うと感じてたんです。 |
ルーク | 偶然落ちたところで捜し人が見つかるなんて運が良いのか悪いのか……。 |
ヘスティア | なんにしても、ベル君が無事でよかった !だけど、君がヴァレン某君と一緒にいた件についてはきちんと説明して欲しいところだけどね ! |
アイズ | …………私 ? |
ベル | アイズさんとは偶然会ったんです。 |
ベル | 僕たち、気づいたらこのダンジョンにいて……。いつもと様子も違うから、念のため二人で協力して進むことにしたんです。 |
ヘスティア | ふーん……二人で、協力して、ねえ……。ずいぶんと嬉しそうじゃないか。 |
ベル | そんなことありませんってば。 |
アーチェ | 二人が楽しくダンジョン散策してたかどうかはこの際どうでもよくて。他に重要なことがあるでしょ。 |
ベル | だから、違いますって ! |
ティア | アーチェの言う通りだわ。どうして私たちの攻撃がモンスターに通じなかったのか。それが問題よ。 |
ベル | モンスターに、攻撃が通じない ?僕たちはそんなことありませんでしたけど……。 |
アイズ | いつも通り、倒して前に進んできた。 |
アーチェ | なにそれ。じゃあ、あたしたちだけってこと ? |
ワイズマン | それについては、原因がわかっています。 |
ルーク | そういや、ちっこい神様が「後で説明する」とかなんとか言ってたよな。 |
ヘスティア | 誰がちっこい神様だい ! |
ヘスティア | まったく ! いいかい、ここはボクたちの世界の『ダンジョン』と同じなんだ ! |
アーチェ | ぜーんぜん、わかんないんだけど……。 |
ワイズマン | 正確には、この『ダンジョン』にはヘスティアさんやベルさんの世界のルールが適用されているのです。 |
ヘスティア | ベル君やヴァレン某君にあって他の世界の人にはないものはなんだと思う ? |
ベル | そうか、『神の恩恵(ファルナ)』 ! |
ティア | 『神の恩恵(ファルナ)』 ? それはどういうものなの ? |
ヘスティア | 簡単に言うと、神の眷族に授けられる力だよ。 |
ベル | 僕たち眷族は、恩恵の力でステイタスを更新して『ダンジョン』のモンスターに対抗してるんです。 |
ライラ | 私たち天族で言う加護……のようなものでしょうか。 |
アーチェ | じゃ、あたしたちもその恩恵をもらわないとモンスターと戦えないってこと ? |
ワイズマン | 皆さんが眷族になるのは難しいでしょう。それは異なる世界のルールですから。 |
ルーク | じゃあ、どうするんだ ?このままじゃ俺たち足手まといだぜ。 |
アーチェ | 助けに来た相手に守ってもらいながら帰るのってさすがにちょっと情けないよね。 |
ワイズマン | ひとつ考えがあります。 |
ワイズマン | 皆さんは、それぞれ異なる世界からやってきました。その際に、新たな世界に最適化されました。 |
ティア | エンコードね。それを、ここでも起こそうというの ? |
ワイズマン | あくまで疑似的に、ですが。そのため『ファミリア』の仕組みを利用します。 |
ワイズマン | 主神を決め、その恩恵という形で皆さんに最適化を施すのです。 |
アーチェ | わかるような、わからないような……。 |
ルーク | 俺は全然わかんねー。 |
ワイズマン | ともかく実際に試してみましょう。そうですね、神役はティアさんにお願いします。 |
ティア | わ、私 ? |
ワイズマン | ティアさんを主神に、そしてティアさんの持つ魔鏡通信機を介して私が最適化を施すのです。 |
ワイズマン | その際は、ヘスティアさんたちが恩恵を授けるのと同じ儀式をすることになります。 |
ヘスティア | 『ステイタス更新』だね。 |
ティア | だいたいのことはわかったわ。でも、神様役なら天族のライラの方が……。 |
ヘスティア | ちなみに、『ステイタス更新』は眷族の素肌に直接触れる必要があるんだ。 |
ルーク | 直接肌に触れる ? |
アーチェ | ティアってば、いいの~ ?ライラがやっちゃっても。 |
ティア | え ? どうして私に聞くの ? |
ライラ | 私としても、ティアさんの方が適任ではないかと思いますわ。 |
ティア | 二人とも、なんなの…… ?まあいいわ。私がやればいいのね。 |
ワイズマン | では、さっそくやっていきましょう。まずはルークさんからでいかがでしょう。 |
ルーク | あ……お、おう。わかった。 |
ヘスティア | 安心したまえ、ティア君。ボクが君にしっかりレクチャーしてあげるから。 |
ティア | は、はい。よろしくお願いします。 |
ティア | ルーク……あの、痛くはない ? |
ルーク | あ、ああ……大丈夫だ。ちょっと熱いような気がするけど。 |
ティア | そ、そう……手早くすますわ。 |
ルーク | あのさ、ティアのその格好……。 |
ティア | これは ! ヘスティア様が、どうせならって !……や、やっぱり変かしら ? |
ルーク | あ、いや ! そんなことは……ないと思うけど……。 |
アーチェ | おーい、後がつかえてるんですけどー。 |
ルーク | わ、わかってるよ ! |
キャラクター | 3話【3階層 神の恩恵】 |
ヘスティア | うんうん、無事成功したみたいだね。 |
ライラ | それはいいのですが、私たちのこの服は……。 |
アーチェ | 『ステイタス更新』ってのをしてるうちに勝手にこの格好になっちゃったんだけど。 |
ヘスティア | なんだかどこかで見たような姿じゃないか。 |
ルーク | 格好はともかく問題は戦えるようになったかってことだ。 |
アーチェ | おあつらえ向きってやつね。 |
ヘスティア | ティア・ファミリアの初陣だ。がんばるんだよ ! |
ティア | え、ええ……。みんな、行きましょう ! |
ルーク | よし、いけるぜ。これならいつも通り戦える。 |
ベル | みなさん、すごいですね。剣も魔法も、上級冒険者みたいです ! |
アーチェ | そりゃ、あたしたちってば世界を救うために戦ってたりしたからね~。 |
ルーク | ベルだってすげえじゃねえか。そんなナイフ一本で、よく戦ってるな。 |
ベル | い、いやあ、神様のおかげですよ。恩恵にスキル、それにこのナイフだって神様が僕のために用意してくれたすごい業物なんです。 |
ヘスティア | ふふーん、ボクのベル君への愛がつまっているからね ! |
ライラ | アイズさんは、風の魔法を纏っているのですね。 |
アイズ | そう。これで攻撃を防いだり素早く移動したりする。 |
ライラ | なるほど、デゼルさんの神依と似たところがあるかもしれませんね。 |
ヘスティア | さてと、君たちが戦えるとわかったところでボクたちからもいくつか報告させてもらっていいかい ? |
ベル | 神様、報告ってなんですか ? |
ヘスティア | このダンジョン……いや、ダンジョンを作り出している宝珠の力についてだよ。 |
ワイズマン | この宝珠は人間に恐怖や苦痛を与える。そう説明したことは覚えていますか ? |
ティア | ええ、そうやって精気を吸い取るって。 |
ワイズマン | もう少し具体的なことがわかってきました。どうやら、取り込んだ人間の心の中にある記憶やイメージを具現化しているようなのです。 |
ヘスティア | ダンジョンは夢や一攫千金を求めると同時に命をかけて挑む危険な場所だ。 |
ヘスティア | 不安や恐れを抱かない冒険者なんていない。 |
ベル | じゃあ、ここは僕やアイズさんのイメージが作り出したダンジョンなんですか ? |
ヘスティア | そういうことだろうね。 |
ヘスティア | 実際は神ではないティア君を主神に見立ててファミリアを作るなんて荒技が通ったのもここが、あくまでイメージから生まれた場所だから。 |
ヘスティア | つまりは、ある意味なんでもありってことさ。 |
ルーク | だったら、パパッとアークに戻れたりしないのか ? |
ヘスティア | ベル君やヴァレン某君が「できる」と本気で思えばできるだろうね。 |
ベル | さすがに、それは無理です……。 |
アイズ | 私も、そんな魔法は聞いたことがない。 |
ヘスティア | というわけさ、赤毛君。なんでもありだが、常識が邪魔をするんだ。 |
ルーク | ちぇっ、そう都合よくいかねえってことか。 |
ライラ | だから、ティアさんのファミリアを作るという下準備が必要だったわけですね。 |
ヘスティア | ベル君たちが無意識に思っているであろう「ダンジョンに挑めるのはファミリアに所属する冒険者だけ」という常識。 |
ヘスティア | それが、赤毛君たちの攻撃がモンスターに効かなかった理由だろうね。 |
ワイズマン | ついでに言いますと、皆さんの服装が変化したのはベルさんたちのイメージがこちら側に流れ込んだのでしょう。 |
ワイズマン | 我々が行った誤魔化しが想定以上に上手くいったという証でしょうね。 |
ルーク | あー、ややこしい話は聞き飽きたぞ。とにかくこれで、モンスターとも戦えるし先に進めるってことだろ ? |
アーチェ | あたし、早く帰ってお風呂入りたい ! |
ヘスティア | 魔女っ子君の言う通りだよ !ベル君、早く帰ってきておくれ~。 |
ベル | はい ! 頑張ります ! |
アイズ | ……見て、あそこ。通路がある。 |
ティア | あれは……もしかして上の階層に続いてるのかしら。 |
アーチェ | ナーイス ! 早く行こっ。 |
ワイズマン | あっ、皆さんもう一つお伝えしたいことが── |
ヘスティア | 行ってしまったみたいだね。 |
ワイズマン | 大丈夫でしょうか……。 |
ヘスティア | まあ、命に関わるほどじゃない……と思う。 |
キャラクター | 4話【4階層 生い茂る緑】 |
アーチェ | うわー……洞窟を抜けたらいきなり森に出ちゃったよ。 |
ベル | ダンジョンは階層ごとにぜんぜん違うんです。洞窟や荒れ地、街だってあるんですよ。 |
ティア | すごいわね。こんな大きな森が地下に広がっているなんて。 |
ベル | でも、おかしい。こういう森はもっとずっと下の階層だって聞いてたんだけど……。 |
ルーク | ここはベルたちの記憶からできた場所なんだろ ?だったら階層とかあんま意味ないんじゃねーか ? |
ベル | だとしても、僕はまだここまで下の階層には降りたことがないんです。 |
ライラ | ということは、ここはアイズさんのイメージから作られたのでしょうか。 |
アイズ | …………え……何 ? |
ルーク | いや、何って。聞いてなかったのか ? |
ベル | アイズさんは、この場所に見覚えないですか ? |
ティア | なにか知ってることがあれば聞きたいわ。生息してるモンスターのこととか休める場所はあるのかとか。 |
アイズ | それは……。 |
アーチェ | うわっ、変な色のモンスターが出てきたよ !なにこの虫、気持ち悪い~。 |
モンスター | シュルルルルルッ……。 |
アーチェ | な、なんであたしの方に来んの ! ? |
ルーク | 変な色とか言われたんで怒ったんじゃねーか ? |
アーチェ | ちょっとルーク ! なんとかして ! |
ルーク | わかったわかった。ちょっと待ってろ。 |
アーチェ | いやー ! もー無理 !ファイアボール ! ファイアボール ! |
ルーク | うわっ ! ? 危ねえだろっ。 |
ライラ | アーチェさん、そんなやたらめったらに魔術を放っては ! |
ルーク | ていうか、せめて目を開けて撃ってくれー ! |
アイズ | ……ッ ! |
アーチェ | わ……、た、倒してくれてありがと……。 |
アイズ | 先を、急ごう。 |
ルーク | おい、なんか機嫌悪くないか ? |
ライラ | ムシして行くなんて、ムシのモンスターだけにムシの居所が悪かったのでしょうか ? |
アーチェ | ライラ、このタイミングだと笑えないからそれ。 |
ティア | アーチェ、ライラは場を和ませようとしてくれたのだと思うわ……。多分……。 |
ルーク | ベル。お前、仲良いんだろ ?ちょっと声かけた方がいいんじゃないか ? |
ベル | ア、アイズさんはすごい人で、みんなに人気があって僕が一方的に憧れてる、というか……。 |
ルーク | この顔ぶれだと、お前が一番あいつに近いじゃん。俺たちはアイズのことまだよく知らないし……。 |
アーチェ | 落ち込んでる女の子を元気づけてあげるとポイント高いよね~。 |
ベル | え、ええっ ! ? |
ライラ | では、ベルさんには私から場を和ませるとっておきのダジャレを── |
アーチェ | いや、それはいいから。 |
ライラ | えー。そんな……。 |
キャラクター | 5話【5階層 忘れがたい記憶】 |
ティア | この辺り、ずいぶん開けた場所ね。少し休憩をとりましょうか。 |
ルーク | だな。ここならモンスターが近づいてもすぐに気づける。 |
ベル | アイズさん ! 少し、休憩しましょう ! |
アイズ | ……わかった。 |
アイズ | …………。 |
アーチェ | やっぱ、なんか空気が重いね……。 |
ティア | ベルは、理由に心当たりはないの ? |
ベル | すみません……。 |
ベル | アイズさんは、僕よりずっとランクの高い冒険者なんです。ここはかなり下の階層みたいだから僕の知らない何かを警戒してるのかも……。 |
ティア | そう……。 |
ルーク | おーい、そろそろ見張り交代してくれ。 |
アイズ | それなら、私が。 |
ティア | 待って。私も一緒に行くわ。 |
ライラ | では、次は私とルークさんに代わってアイズさんとティアさんに見張りをお願いしますね。 |
ティア | この森に来てから、ずっと気が張ってるみたいね。 |
アイズ | ……そう、見える ? |
ティア | ベルが、オロオロしちゃうくらいにはね。 |
ティア | 何か気になることがあるなら話してみてくれないかしら。もちろん、無理にとは言わないけど……。 |
アイズ | …………。 |
アイズ | ここで、戦ったことがある。 |
ティア | それは、モンスターじゃないのね。 |
アイズ | 人間。……ううん、半分はモンスターかもしれない。それは、私にとって……。 |
ティア | 無理に言葉にしなくてもいいのよ。アイズにとって忘れがたい出来事だってことは伝わったから。 |
アイズ | ……うん。 |
ティア | ここは……宝珠は、そういう記憶ばかりを掘り起こすのかもしれないわね。気を張ってしまうのも仕方ないわ。 |
アイズ | ごめんなさい。 |
ティア | いいのよ。こっちが勝手に気を回していただけ。……でも。できればベルには声をかけてあげて。 |
アイズ | ベルに ? |
ティア | たぶん、彼が一番あなたのことを心配してるから。 |
アイズ | そう……うん。わかった。ベルに伝える。私は大丈夫だよって。 |
ティア | ええ、よろしくね。 |
アイズ | っ ! |
ティア | モンスター ! ? でも、気配は感じなかったわ ! |
アイズ | これは……何か、違う。 |
ルーク | 何があった ! |
ティア | わからない、でも……。 |
ルーク | アッシュ…… ! ? |
ライラ | スレイさんが……どうして……。 |
ルーク | いや、こんなところにアッシュがいるわけが……。お前……誰なんだ ? |
アッシュ ? | 誰だ……だと ?レプリカってのは、脳みそまで劣化してるのか ? |
アッシュ ? | 家族も、居場所も、全部奪った出来損ないの偽物のお前が俺が誰なのか一番よくわかってるはずだろう。 |
ルーク | ……っ ! |
スレイ ? | ライラ……君は教えてくれなかったね。先代導師のこと……。 |
ライラ | スレイさん…… ! ? |
アーチェ | 二人とも、しっかりしなさーい ! |
二人 | ! ? |
ティア | これは本物のアッシュでもスレイでもないわ !二人ともわかっている筈でしょう ! |
ベル | ルークさん、ここは僕に任せて !はああああっ ! |
キャラクター | 6話【6階層 記憶にない場所】 |
モンスター | グルアアアア……。 |
アーチェ | やっぱり、モンスターが化けてたのね。 |
ルーク | くそっ……情けねえ。アッシュじゃないってわかってたのにやっぱり動揺しちまった。 |
ライラ | 私もです……申し訳ありません。 |
ティア | 仕方ないわ。それより、早く移動した方がよさそうね。 |
アーチェ | さんせーい。仲間と同じ顔の相手と何度も戦うなんて、ごめんだもんね。 |
ルーク | 今度は村か。ほんとになんでもありだな。 |
ライラ | ほとんどの家が無人ですね。ずいぶん長い間放置されていたようです。どなたか、記憶にありますか ? |
ベル | 僕は見覚えがないです。 |
アイズ | 私も、知らない。 |
ルーク | 俺たちもだ。 |
アーチェ | じゃあ、ここって……。 |
ティア | ここで立ち止まって議論していても仕方ないわ。あそこに、まだ朽ちてない屋敷がある。中を調べてみましょう。 |
アーチェ | へー、中はけっこう綺麗。これなら一晩くらい休めそうじゃない ? |
ルーク | そうだな。ここに来るまでモンスターも見なかった。もしかしたらこの階層にはいないのかもな。 |
ティア | 油断は禁物よ。さっきみたいなことがないとも言い切れないし。 |
アーチェ | 実は、屋敷のどこかに隠れてたりして。 |
ライラ | むしろ、こういう場所でしたら屋敷に残された持ち主の怨念などではないでしょうか ? |
ティア | へ、変なことを言わないで ! |
アイズ | ティア……幽霊、苦手なの ? |
ティア | べ、別に苦手じゃないわ……。 |
ルーク | 相変わらず素直じゃねえなあ。じゃあ、他のみんなで屋敷の中を調べてくるからティアはここで待って―― |
ティア | ひ、ひとりで ! ? |
アイズ | 私もここに残る。 |
ティア | あ、ありがとうアイズ……。 |
ライラ | それでは、手分けして調べてまいりましょう。男性陣は二階を、私たちは一階ということで。 |
ルーク | さてと、けっこうな数の部屋があるな。 |
ベル | 僕が右から順番に調べてきます。 |
ルーク | じゃあ俺は左からだな。 |
ベル | お邪魔しまーす……。 |
ベル | 誰もいない……。それにしても、ほんとに綺麗だ。まるでつい最近まで誰か住んでいたみたいな……ん ? |
ベル | これって……肖像画……。この家に住んでた家族かな ?子供は小さな女の子が一人……幸せそうだ。 |
ルーク | おーい、ベル。何か見つかったかー ? |
ベル | あ、ルークさん。えっと……いいえー ! とくには何もー ! |
ルーク | なら、さっさと引き上げようぜー。 |
ベル | はい ! |
ルーク | 一通り見て回ったが、普通の家だった。怪しいものもなけりゃ、人の気配もない。 |
ルーク | ついでに言えば、ここにいる誰もこの屋敷に見覚えがない。 |
ベル | 誰かの記憶からこのダンジョンが作られている。神様はそう言ってましたよね。 |
ヘスティア | そのとーりだよ、ベル君 ! |
アーチェ | わっ、出た ! |
ヘスティア | 出たとは何だ ! 失礼だな。 |
ティア | ……な、なんだ。ヘスティア様……だったのね。 |
ルーク | おーい、あんまり驚かせないでやってくれ。ひとり、敏感になってるやつがいるから。 |
ルーク | それより、しばらく顔見せなかったな。 |
ヘスティア | 君たちのために、宝珠について少し調べていたんだよ。 |
ライラ | 何か、わかったのですか ? |
ヘスティア | 推測はあった。それが君たちの体験で確信に変わったというところかな。 |
ルーク | 勿体ぶってないでさっさと話してくれよ。こっちは嫌な記憶を思い出すはめになってうんざりしてるんだ。 |
ヘスティア | そう ! それだよ赤毛君 ! |
ルーク | はぁ ? なんだそりゃ ? |
ヘスティア | もう気づいているとは思うけど、どうやら君たちのいるそのダンジョンは今もなお変化している。 |
ヘスティア | 最初はベル君やヴァレン某君の記憶からそして今度は後から入った君たちの記憶にも影響を受け始めているんだ。 |
ワイズマン | 実のところ、その可能性があることは最初からわかっていたのですが、お伝えするタイミングを逃してしまい……。 |
ティア | 聞いていたからといって対処できる問題でもなさそうだけれど……。それよりも問題はこの先のことよ。 |
ワイズマン | おっしゃる通り、時間をかければそれだけダンジョンは皆さんの記憶を取り込みより複雑で危険になっていくでしょう。 |
ベル | そうならないためにも、早く脱出しないと…… !神様、ここから出口までどのくらいかわかりますか ? |
ヘスティア | そういうのはこのピカピカ光ってる彼に聞いてくれ。 |
ワイズマン | 魔鏡通信の感度から推測するに……。残りはおよそ三分の一といったところでしょうか。 |
ヘスティア | うわ、ほんとにわかるんだ……。便利だな、君は。 |
ティア | 三分の一……思ったより早く戻れそうね。 |
ライラ | 変に焦って、また崩落にでも巻き込まれたら元も子もありません。ここからは少し慎重に行くべきかと。 |
ティア | 同感だわ。 |
アイズ | それなら、私が先行する。 |
ベル | そうか、アイズさんの魔法なら崩落が起きても咄嗟に回避できますもんね。 |
アーチェ | じゃ、あたしも !あたしだって箒で飛べるんだから。 |
ライラ | アーチェさんの場合はずっと浮かんでるので地面が崩落しそうなことに気づかないのでは…… ? |
ティア | 確かに、アーチェの後ろで私たちだけ落っこちるなんてことになりかねないわね。 |
アーチェ | い、言われてみれば……。 |
ティア | でも、これでひとまずの方針は決まったわ。予定より早いけれど、そろそろ出発しましょうか。 |
ルーク | …………。 |
ティア | ルーク ? どうかしたの ? |
ルーク | いや、ちっこい神様が言ってたことがちょっと気になってさ。 |
ルーク | 崩落に巻き込まれる直前、俺、見たんだ。 |
ティア | ちょっと、やめてよ。そんな、今さら怖い話なんて……。 |
ルーク | 違うって。……いや、違わないのかな。 |
ティア | ルーク……。 |
ルーク | 怖い顔すんなって !ただ単に『女の子』を見たってだけだから ! |
ライラ | 女の子、ですか ?いったいどこで ? |
ルーク | だから、俺たちが落っこちたあの場所でだよ。ていうか、みんなは見てないのか ? |
アーチェ | ぜーんぜん。 |
ライラ | 私も、見ていません。 |
ティア | 私も見てないわ。ルーク、もしかして……。 |
ルーク | ほんとに怖がらせるつもりはないんだって。だとしたら、あの子も誰かの記憶から出て来たのかな……。 |
ベル | 女の子……。 |
アイズ | ベル ? |
ベル | 皆さん、ちょっと待っていてください ! |
ベル | これを…… ! |
ティア | 肖像画 ? この屋敷にあったの ? |
アーチェ | ケホッケホッ、埃くらい払ってきてよー。 |
ベル | す、すみません。でも、あの !ルークさん、これを見てください ! |
ルーク | なんでそんなことを……あ。 |
ルーク | そうだよ、俺が見たのはこの女の子だ ! |
ベル | やっぱり……。 |
ライラ | ルークさんが見た女の子にこの屋敷、肖像画……まさか。 |
アーチェ | え ? なになに ? どういうこと ? |
アイズ | 私たちの他にも、いるかもしれない。このダンジョンに閉じこめられている人が。 |
ティア | この屋敷、どうりで誰も見覚えがなかったわけね。 |
ライラ | ルークさんが見た女の子本人なのかそれとも家族全員なのか……。 |
ベル | 捜しにいきましょう ! |
ヘスティア | 待つんだベル君 ! |
ベル | 神様、どうして止めるんですか ! ? |
アイズ | ベル……ヘスティア様の言う通り、だと思う。 |
ベル | アイズさんまで……。 |
ヘスティア | まずは自分たちの脱出ルートを確保するべきだ。 |
ベル | それは……。 |
ライラ | お気持ちはわかります。ですが、感情に任せて行動すれば大事なことを見失います。 |
ライラ | どうか、今は我慢してください。 |
ベル | わかりました……。 |
キャラクター | 8話【10階層 疑念】 |
ルーク | 俺たちが崩落に巻き込まれたのはこの辺りだな……。 |
アーチェ | うっわー、上から見ると高ーい。みんなよく無事だったよね。 |
ティア | ルークはここで女の子を見たのよね。 |
ルーク | 見たのは、もう少し手前の通路だ。 |
ルーク | あの時はモンスターに追われていて必死だっただろ。そしたら突然進行方向に女の子が現れたんだ。思わず後を追いかけようとして……。 |
ティア | そうして、崩落に巻き込まれた……。誘い込まれた……とも考えられるわね。 |
ライラ | ですが、そのおかげで私たちはベルさんやアイズさんと合流できたとも言えます。 |
アーチェ | 実際、この崩落した穴って斜面になっててみんな無事だったんだよね。 |
ティア | ええ、だからまだ敵とも味方とも言えないわ。 |
ティア | それに、私が気になるのはこの危険なダンジョンを女の子が一人で歩き回っているということよ。 |
ベル | じゃあ、本物の人間じゃない……。誰かの記憶が作り出した存在なんでしょうか ? |
ティア | そうとも言い切れないのが難しいところね……。ただ、私たちに好意的にせよ、そうじゃないにせよ何らかの意図というか、意思のようなものを感じるわ。 |
アーチェ | ここまで戦ってきたモンスターってなんかこう、生き物っていうより意思のない魔法生物……って感じがしなかった ? |
ライラ | 確かに、偽物のスレイさんも私の心を映すようにただ言葉を発するだけで、意思のようなものは感じられませんでした。 |
ルーク | 言われてみると、アッシュもなんとなく目に生気がない感じだったような……。 |
ティア | ここでいくら考えていても答えは出ないわね……。 |
アイズ | ベル ? |
ベル | 僕は……もう少し辺りを調べてみたいと思います。もしかしたら何か手がかりが見つかるかもしれない。 |
ルーク | じゃあ俺たちも付き合おうぜ。 |
アーチェ | ここまで来たら途中で放り出すのも気持ち悪いもんね。 |
ベル | ありがとうございます ! みなさん ! |
ティア | ! ! |
ティア | ……まさか……。 |
ルーク | ティア ? どうしたんだ―― |
ルーク | っ ! ? |
ティア | 兄さん……。 |
ルーク | ……いや ! さっきの話も考えるとこいつは師匠じゃない ! |
ティア | ええ、その通りよ。 |
アーチェ | げげっ、今度はダオスになった ! ? |
ダオス ? | 私にはマナが必要なのだ。 |
ダオス ? | 私を待ち望んでいる民のためにも……。 |
ダオス ? | 絶対に邪魔はさせぬぞ ! |
アーチェ | っ ! ? |
キャラクター | 9話【10階層 疑念】 |
ライラ | 終わりましたね……。 |
アーチェ | …………。 |
ルーク | 大丈夫か ? そんなに怖かったなら……。 |
アーチェ | ううん、怖かったんじゃない。ちょっと思い出しちゃっただけだから。 |
アーチェ | 結局、あたしたちはダオスと決着をつけないままこっちの世界に来ちゃったんだなって。 |
ティア | 私も同じよ。兄さんを止める……その目的を果たす前にこちらに来てしまったから。 |
ベル | もしかして、この宝珠は僕たちの考えているような恐ろしいものじゃないのかも……。 |
アイズ | ベル ? |
ベル | あ、いえ、なんとなくそう思っただけで……。 |
ベル | でも、少なくとも僕はこの場所を『怖い』と思ったことはないんです。 |
アイズ | むしろ慣れた場所 ? そんな感じ。 |
ベル | ですよね ! 僕も同じこと考えてました ! |
ヘスティア | こらー、ベル君 !なにをイチャイチャしているんだ ! |
ベル | か、神様 ! ? 聞いてたんですか ! ?イ、イチャイチャなんてっ… ! |
ヘスティア | まったく、ボクが頑張っていたというのにまったく !まったくまったくだよ ! |
ワイズマン | ヘスティアさんは、ベルさんのために不眠不休でこの宝珠について調べていたんですよ。 |
ベル | 神様……僕のために……。 |
ヘスティア | そ、そんな顔したってダメだからね。帰ったらたっぷり膝枕してもらうよ ! |
ヘスティア | もちろん、ベル君が枕になるパターンとボクの膝でベル君が寝るパターンの両方だ ! |
ベル | えっ、あっ…。 |
ルーク | イチャイチャしてるのはそっちの方じゃん……。 |
アーチェ | ルーク、羨ましいんだ ? |
ルーク | 羨ましくなんかねえよ !膝枕なんて、ガキがやってもらうことだろ ! |
ティア | もう……。何か話があったんじゃないの ? |
ヘスティア | おお ! そうだった !実は、宝珠を作った魔術士の手記を見つけたんだ ! |
ライラ | 何か、重要なことが書かれていたのですか ? |
ヘスティア | この宝珠がどんな目的で作られたのかそれが書かれていた。 |
ヘスティア | 手記によれば、宝珠は魔術士が事故で失った自分の家族に会うために作ったらしいんだ。 |
ライラ | 家族に会うため ?それは、あまりにも……。 |
ヘスティア | 今の状況とかけ離れている。そう言いたいんだろう ?だけどよく考えてみてくれ。この宝珠のことを。 |
ティア | そうか、自分の記憶から家族を呼び出そうとしたのね。私たちが兄さんに会ったように。 |
ヘスティア | その通りだ。 |
ライラ | でも、上手くはいかなかったんですね……。 |
ヘスティア | いいや、その逆だよ。上手くいきすぎたんだ。 |
ヘスティア | 生前と変わらず、しゃべって笑って時には怒ったり泣いたりもする。本物同然の娘を取り戻した。 |
ヘスティア | 魔術士は、宝珠の中に屋敷を作ってそこで娘と暮らした。 |
ヘスティア | けど、すぐに耐えられなくなったんだ。あまりにもよくできた偽物との生活に。 |
ルーク | 偽物……か。 |
ティア | ルーク……。 |
ヘスティア | 魔術士がその後どうなったかはわからない。一方でこの宝珠はいろんな持ち主の元を転々とした。 |
ヘスティア | その過程で、誰か他の者の手が加わったのか本来とは違う歪んだ代物になってしまったようだ。 |
ベル | じゃあ、僕たちが捜している女の子は……。 |
ヘスティア | 宝珠を作った魔術士の娘……。その、偽物ということになるだろうね。 |
ベル | その子も、歪んでしまったんでしょうか。お父さんに捨てられて、一人寂しくて……。 |
ヘスティア | わからない。 |
ルーク | どうする ? このままその子を捜すか ? それとも……。 |
ベル | …………。 |
ベル | 捜します。 |
ティア | もしかしたら、こうして私たちが捜しにいくことすらも仕向けられたことかもしれない。それでもいいの ? |
ベル | それでも、何もしないよりマシです。騙されたとしても、僕にはその方が納得できる。 |
ベル | 女の子が、今でもお父さんを捜しているのだとしたらそれこそ、僕には放っておくことなんてできません。 |
ルーク | ……だな。俺もその方がいいと思う。ティアも、いいだろ ? |
ティア | ええ。私もそうしてあげたいわ。 |
アーチェ | うんうん、ベルくんいい子いい子~。 |
ベル | か、からかわないでくださいっ。 |
ライラ | 皆さん嬉しいんですよ。ベルさんのような真っ直ぐな人がいることが。 |
アイズ | 行こう、ベル。 |
ベル | はい ! |
ルーク | な、なんだ ! ? |
アーチェ | 地震 ! ? |
ライラ | これは……まるで、世界そのものが震えているような…… ! |
少女 | ……。 |
ベル | あれは…… ! ? |
アーチェ | 肖像画の女の子 ! |
少女 | ……げて……に……て……。 |
ベル | ま、待って ! 今、何か言って……。 |
ルーク | ベル ! このままじゃ埒が明かない ! まずは追うぞ ! |
ベル | はいっ ! |
ルーク | なんだ、ここは…… ! ? |
ライラ | ダンジョンとは、明らかに違います。 |
ヘスティア | ベル君 ! ベル君どこなんだい ! ?急に君たちの声が聞こえなくなって―― |
ティア | 魔鏡通信が途切れかけているわ。いったいここは……。 |
アイズ | ベル…… ! |
ベル | あ、あの子…… ! 待って ! ! |
少女 | …………。 |
ベル | よかった……。あ、あの、僕は君を助けたいんだ。 |
少女 | どうして……来てしまったの……。 |
ベル | え……。 |
少女 | もう、手遅れ……あれが……来る……。 |
ベル | え…… ! ? |
? ? ? | オオオオオオオオ…… ! |
ルーク | なんだ、この音は…… ! ? |
ライラ | これは、何か生き物の咆吼です…… ! |
アーチェ | 生き物って、こんな大きなのが ! ? |
アイズ | 来る……。 |
アイズ | あれは……ミノタウロス ! |
ベル | あ……ああ……。 |
アーチェ | ちょっと、どうしちゃったのよベル ! |
ヘスティア | 何が起きてるんだい !そっちの様子が見えないんだ ! |
ルーク | ミノタウロスだ !そいつを見たら、ベルのやつ急にかたまっちまって ! |
ヘスティア | ミノタウロス……まさか ! ? |
ヘスティア | 頼む ! 手を貸してくれ !そのミノタウロスはベル君にとって因縁の相手なんだ ! |
ルーク | 言われなくてもそのつもりだ……ベル ! |
ベル | っ ! ? |
ルーク | しっかりしろ ! 今は止まってる場合じゃないだろ !お前のやりたいことは何だった ? |
ベル | 僕のやりたいこと…… !そうだ。僕は、あの子を助けたいんだ ! |
ルーク | そうだ。俺たちはその為にここに来たんだからな ! |
ベル | あのミノタウロスは僕が本気で戦って負けた相手です。だから、僕の心が作り出した……僕の心の棘 ! |
ベル | いつかは自分ひとりの力で勝ちたい……。でも、今は……皆さんの力を貸してください ! |
アーチェ | まっかせて ! |
ライラ | 微力ながら、お手伝いさせていただきます。 |
ルーク | 水臭い事言うなよ。俺たちはお前を助けに来たんだぞ。 |
ティア | 私たち、ファミリアですものね。 |
アイズ | ベル、いくよ。 |
ベル | はい ! アイズさん ! 皆さん ! |
キャラクター | 10話【vs幻影アステリオス】 |
? ? ? | オオオオオオ……。 |
ルーク | やったな。ベル。これで、お前も……。 |
ベル | いいえ、これは僕の、僕だけの力じゃないです。それに、本当のあの人はもっと強かった。 |
ルーク | それでも、今回はなんとかなったんだ。胸を張っていいと思うぜ ! |
アーチェ | また地震 ! ? でっかい牛は倒したのに ! ? |
ライラ | 倒したから、ではないでしょうか。おそらくこれはダンジョンが崩れて……。 |
ルーク | おい、あの子は ? |
少女 | ありが……とう……。 |
ベル | 消えた……。 |
ティア | ……役目を終えた、ということなのかしら。 |
ベル | 役目を……でも、あの子は……まだなんにも……。お父さんにだって……。 |
アイズ | でも、ありがとうって言ってた。だからベルのしたことは正しかったと思う。 |
ベル | ……はい。 |
ルーク | ここは、アークか…… ? |
ヘスティア | ベル君ベル君ベルく~ん ! |
ベル | うわぁっ ! ? |
ヘスティア | 良かった戻って来られたんだねー ! |
ベル | 神様 ! ? じゃあ、ここは……。 |
アイズ | ダンジョンから、出られた ? |
ワイズマン | 皆さん、ご無事で何よりです。 |
ティア | ワイズマンさん、宝珠はどうなったの ? |
ワイズマン | ご覧の通り、力を失ってただの水晶珠に。もう二度と、人に危害を加えることはないでしょう。念のためアークで厳重に保管するつもりです。 |
ティア | そう……。よかった、と言っていいのかしら。 |
ルーク | ああ……あの子は、何のために生まれたんだろうな。偽物のまま、仲間や友だちもいないまま一人で……。 |
ティア | ルーク……。 |
ルーク | ……悪い。大丈夫だよ。ごめんな、ティア。いつも心配かけて。 |
ティア | そんなこと……いいのよ。私が勝手に気にしているだけだもの。 |
アーチェ | ところで、全部解決したご褒美とかはないの~ ? |
ヘスティア | もちろん、とーっても感謝してるさ。ここがオラリオなら、ジャガ丸くんでもご馳走してあげるところなんだけどね。 |
ワイズマン | では、そのジャガ丸くんというものを再現してみましょう。 |
ヘスティア | できるのかい ! ? |
アイズ | できるの ! ? |
アーチェ | なんで、二人が食いついてんの ? |
ベル | あはは……二人とも、大好物ですから。 |
ベル | あの、それで僕たちって元の世界に帰れるんでしょうか ? |
ワイズマン | もちろんです。私が責任を持ってお送りします。ここで起きたことは一切記憶に残らずあなた方に影響を及ぼすことはありません。 |
ベル | じゃあ、皆さんのことを忘れちゃうんですか ? |
ワイズマン | ええ、そうなります。 |
アイズ | 私も、ティアたちのことを忘れてしまうの…… ? |
ティア | 私も、覚えていてもらえないのは寂しいけれど仕方ないことなのよ。 |
ベル | ……。 |
ルーク | どうした、ベル ? |
ベル | ……あの子のこと、せめて僕の記憶の中だけでも消さないでいてあげたかったなって。 |
ヘスティア | ベル君……。 |
ワイズマン | その想いがあれば、シャドウを残すことは可能です。 |
ベル | シャドウ……ですか ? |
ワイズマン | 言うなれば、ベルさんがこの世界にいる理由。想いや目的を具現化したもう一人のあなたです。 |
ベル | お願いします !その、シャドウを残してください ! |
ワイズマン | わかりました。 |
ヘスティア | じゃあ、ボクもそうしようかな。 |
ベル | 神様 ! でも……。 |
ヘスティア | 水くさいぜ、ベル君。ボクと君は一心同体じゃないか。 |
アイズ | じゃあ、私も。 |
ヘスティア | なぬっ ! ? |
ヘスティア | ヴァレン某君 !君は無理しなくていいんだよ ! |
アイズ | 私もベルと同じ。あの子のこと、ティアたちのこと忘れたくない。 |
ヘスティア | ぐぬぬぬっ……。異世界にボクとベル君の二人だけというせっかくのシチュエーションが……。 |
ルーク | へへ、また賑やかになりそうだな。そういうことならこれからもよろしく頼むぜ。ちっこい神様。 |
ヘスティア | だから、ちっこいとか言うなー ! |