キャラクター | 1話【旋律1 身を潜める二人】 |
| オールドラント領・森 |
アリエッタ | ……………………。 |
魔物 | ……グルウウゥ。 |
魔物 | …… ! ! ウウウッ……ガウッ ! ! |
リグレット | 心配するな、私だ。……と言っても、言葉は通じないか。 |
魔物 | ……クゥーン。 |
リグレット | ……どいてくれたか。敵意がないことだけはわかるようだな。 |
リグレット | アリエッタ……。また吐き出してしまったのね。待っていなさい。すぐに新しい食料を用意するわ。 |
リグレット | すりおろしたリンゴならまだ食べやすいでしょう。ほら、口を開きなさい、アリエッタ。 |
アリエッタ | …………ケホッ、ケホッ ! |
リグレット | 無理にでも飲み込むのよ。少しでもいいから栄養を摂っておかないと。 |
アリエッタ | ……………………。 |
リグレット | いい子ね、その調子よ。焦らずゆっくり食べなさい。 |
アリエッタ | …………。 |
アリエッタ | …………。 |
リグレット | 眠ったようね。なんとか食事を与えることはできたけれどこのままでは衰弱していく一方だわ……。 |
リグレット | 譜術による治療は試してみたが、どれも効果がない。やはり精神的な面で問題があるのでしょうけれど……。 |
リグレット | アリエッタ……一体何があったというの……。 |
魔物 | グルルルルッ……バウッ ! バウッ ! |
リグレット | どうした ? |
リビングドールβ兵 | 目標、発見。及び複数の魔物と人間一名の存在を確認。 |
リグレット | 帝国の手先の者だな。アリエッタを連れ戻しに来たのか ? |
リビングドールβ兵隊長 | 少女一名のみを確保せよ。同行者は抵抗するようであれば排除しろ。 |
リビングドールβ隊 | 了解。 |
リグレット | くっ、数が多いな。アリエッタを庇いながらでは厳しいか……。 |
魔物 | ウウッ…… ! ! グルアアアッ ! ! |
リビングドールβ兵 | 目標、魔物たちと共に逃走を開始。 |
リグレット | ……魔物が勝手にアリエッタを咥えて逃げていくとはな。しかし、いい判断だ。こちらも動きやすくなる。 |
リビングドールβ兵 | これより、目標の追跡に移行する。 |
リグレット | そうはさせん ! |
リビングドールβ兵 | ぐううっ ! |
リグレット | 舐めてもらっては困るな。これ以上先へは、誰一人通すつもりはない。 |
リビングドールβ兵 | 武器の所持を確認。及び敵対行動と見做し、排除対象とする。総員、かかれ ! |
リグレット | いいだろう。全員まとめて相手をしてやる ! |
キャラクター | 2話【旋律2 森の調査】 |
アニス | うへぇ、また水たまり~。やだなぁ、服に泥が跳ねたらどうしよう。洗濯したばっかりなのに。 |
ルーク | あー、わかる。自分でやるようになってわかったけど泥汚れって落ちないんだよなあ……。 |
ティア | そういえば、ルークって意外と身だしなみに気を付けるところがあるわよね。 |
ルーク | 意外ってなんだよ ! ? |
ジェイド | まあ、お貴族様ですからねえ。感性はともかく、身だしなみに気を付けることは当然教育されてきたのでしょう。 |
ルーク | 感性のことをジェイドには言われたくないぞ ! |
ティア | ご、ごめんなさい。意外だなんて言って。きちんとしているのはいいことだと思うわ。 |
ルーク | あ、う、うん……。 |
アニス | ルーク良かったじゃん。ティアに褒められて ! |
ルーク | はあ ! ? ガキ扱いすんなっつーの ! |
アニス | えー、でもイオン様も褒めてたよ。「ルークは掃除も洗濯も料理も頑張っていますね」……って。 |
ジェイド | ええ。技量はともかくとして、頑張っていますね。 |
ルーク | ジェイドはいつも一言余計なんだよっ ! |
ミュウ | みゅううう……。イオンさん、一緒に来られなくてかわいそうですの。 |
ルーク | かわいそうなのはこっちも同じだからな。イオンの代わりがジェイドだぞ ?また色々理由を付けてアジトに残るのかと思ったのに。 |
アニス | ふっふっふっ。アニスちゃんはわかってますよ !さすがの大佐もイオン様の頼みは断れなかったんですよね~ ? |
ジェイド | いえいえ、偶然あなたたちが魔物退治の依頼を引き受けたという話をイオン様から伺ったので心優しい私はあなた方に同行することにしたんですよ。 |
ルーク | 心優しいって……ほんと、お前図々しいよな。 |
ジェイド | そんな……。生まれてこの方遠慮と謙虚と手を携えて生きてきた善良な小市民ですよ ? |
ティア | ――冗談はともかく大佐はイオン様の身体検査に立ち会わなくて良かったんですか ? |
ジェイド | 今回の検査はイオン様の身体の検査というよりハロルドが付けた精霊ローレライとのキメラ結合に必要な魔鏡片の調整ですからね。 |
ジェイド | 精霊ローレライに関しては私も調べてはいますが魔鏡に関する知識はイクスたちもいることですし専門である皆さんにお任せすることにしました。 |
ルーク | そっか……。イオンのやつ、自分は大丈夫だってよく言ってるけど、あんまり無理させたくねえよな。 |
ジェイド | そうですね。では、イオン様に良い報告ができるように皆さんは魔物退治を頑張ってください ♪ |
ルーク | お前もやるんだからな、お前も ! |
ルーク | ……つっても、この森に来てから結構経つのに魔物に一匹も遭遇しないよな ? |
ティア | ナタリアの話だと、近辺にある村の人たちが魔物の被害に遭っているという話だったわね。 |
アニス | けど、魔物の気配は今のところ全然ないもんね。 |
ティア | ここ最近は大雨が続いていたみたいだしもしかしたらそれが魔物たちに何か影響を与えているのかしら……。 |
ルーク | 一旦ナタリアたちに連絡してみるか ?あっちは魔物に遭遇してるかもしれないし。 |
ティア | そうね。定時報告も兼ねて一度連絡を……。 |
アニス | なに、今の音 ? |
ミュウ | みゅ、みゅう~。ビックリしたですの。 |
ルーク | まさか、ナタリアたちか ? |
ジェイド | 誰かはともかく、近くで戦闘が行われているのは間違いないようですね。 |
ティア | 民間人が魔物に襲われている可能性もあるわ。ルーク、様子を見に行きましょう ! |
リグレット | くっ……。次から次へと増援が……。 |
リビングドールβ兵 | 対象の戦闘能力の低下を確認。総員、攻撃を続けろ。 |
リビングドールβ兵隊 | 了解。 |
リグレット | マズいな……このままではこちらの体力が持たない。しかし、アリエッタたちが逃げ切るまでもう少し時間を稼がなければ……。 |
ルーク | おいっ ! あれ、帝国兵じゃねえか ! ?それに、あいつは…… ! ! |
ティア | リグレット教官 ! ? |
リグレット | ティア ! それにお前たちまで、何故ここに……。 |
アニス | それはこっちの台詞だよ !ってか、もしかしなくてもヤバヤバな感じ ? |
ジェイド | なるほど、はぐれ鏡映点ですか。さて、どうしますか、ルーク ? |
ルーク | どうするって、そんなの決まってんだろ !帝国に鏡映点を連れて行かれるのはヤバいんだから俺たちも加勢する ! |
リグレット | 何 ? |
ジェイド | こちらにも事情があるんですよ。説明している暇はありません。とりあえず、一気に片付けてしまいましょう。 |
キャラクター | 3話【旋律3 共闘】 |
アニス | はぁはぁ……。やっと終わった~。帝国、マジうざい~ ! ゴキブリかっちゅーの ! |
ルーク | なー ! あいつら砂糖に群がるアリみたいに湧いてきやがる。ホント、マジうぜー ! |
ジェイド | あなたたちは、妙なところで似たもの同士ですねえ……。 |
ティア | ――あの……教官。お怪我はありませんか ? |
リグレット | ……あ、ああ、問題ない。しかし、まさかお前たちに助けられるとはな。この世界にいることは予想していたが……。 |
ルーク | この世界って……いや、さすがにわかるか……。ここがオールドラントじゃないってことは。 |
アニス | けど、どうして私たちもいるって思ったの ? |
リグレット | 領都と呼ばれる場所に、死霊使いの銅像があった。あんなものを見せられれば誰でも推測できる。 |
二人 | ……ぷっ。 |
ミュウ | ジェイドさんの大きな銅像ですの !カッコイイですの ! |
ジェイド | ……やれやれ。あなたもあれを見たのですか。やはり破壊しておくべきですかねえ……。 |
ティア | あの、教官。教官はどこまで事情をご存じなんですか ? |
リグレット | 聖人ジェイドとやらのことか ? |
ティア | ち、違います ! |
リグレット | フッ、冗談だ。それを話す為には、私の今の状況も説明しなくてはいけないな。 |
ジェイド | ええ、ぜひお願いします。帝国もあなたが鏡映点だからという理由だけでわざわざこのような辺境に兵を送り込まないでしょう。 |
リグレット | 兵士たちが追っているのは私ではない。アリエッタだ。 |
ルーク | アリエッタ ! ? あいつも一緒なのか ! ? |
リグレット | 一緒だった……というのが正しいな。私が兵士たちを足止めしている間にはぐれてしまった。 |
アニス | ちょっと待ってよ。あいつって、帝国に協力してるんでしょ ?なのに、なんで追われてる訳 ? |
リグレット | それは、私にもわからない。 |
アニス | わからないって……。一緒にいたんだから、話くらいは聞いてるでしょ ? |
リグレット | いや、話ができる状態ではなかった。私がアリエッタを見つけたときにはほとんど廃人状態になっていたからな。 |
三人 | ! ? |
ジェイド | ……なるほど。ところで、あなたは何故アリエッタと接触したのです ? |
リグレット | 私の目的は閣下の奪還だ。その為にアリエッタの力が必要だった。 |
ルーク | 師匠の ! ? |
ジェイド | となると、ヴァンがリビングドールにされていることも把握済みですか。 |
リグレット | そのリビングドールというものがどういう仕組みなのかは理解していないが一度、領都で閣下の姿を見かけたのだ。 |
リグレット | ひと目で私の知っている閣下ではないとわかった。どのような術を施したのかは知らないが閣下を利用するなど、許しておけるものか。 |
ジェイド | 結構。そこまでわかっていれば十分です。では、あなたはこれから帝国の兵士と戦いながらアリエッタを捜す……ことになるのでしょうね。 |
リグレット | その通りだ。 |
ジェイド | ふむ。どうやら、こちらの問題は解決したようですよ。 |
ルーク | へ ! ? な、何がだよ ? |
ジェイド | いやですねえ、魔物ですよ。我々は魔物退治にきた筈では ? |
アニス | そうですけど、全然解決してないじゃないですか ! |
リグレット | ……魔物退治 ? |
ティア | は、はい。この辺りの村が魔物に襲われているという情報があって魔物退治に……。 |
リグレット | なるほど。ならば死霊使いの言う通り解決したも同然だろう。原因は他の魔物の縄張りにアリエッタの魔物が居着いているせいだろうからな。 |
ジェイド | ええ。リグレットがアリエッタを救出――或いは帝国がアリエッタを回収すれば森の魔物も大人しくなるでしょう。 |
ルーク | そう……なのか…… ? |
リグレット | ああ。お前たちも、早くここを立ち去るといい。おそらく帝国兵の増援はまだまだ潜んでいるだろう。 |
ティア | リグレット教官……。 |
ジェイド | さて、ガイたちに連絡を取ってアジトに戻りましょうか。 |
ルーク | おい、ジェイド ! アリエッタのことこのままでいいのか ? リグレットだって鏡映点だし帝国に捕まったら、きっと何かに利用されるぞ。 |
ジェイド | おや、ではルークはアリエッタを助けると ?帝国の一員として、我々と敵対していたアリエッタを ? |
ルーク | う……。だけど、なんか廃人状態になってんだろ ?帝国の連中に何かされたんじゃないのか ?敵対してたのも、理由があるのかもしれないし……。 |
ジェイド | そんな判断ができる性質ではないと思いますよ。大方被験者イオンの存在に釣られて被験者イオンの言いなりになっていたのでしょう。 |
ルーク | けど……リグレットは……別に帝国の味方じゃないし……。ティアの教官だし……。 |
ティア | ルーク……。 |
アニス | 大佐。リグレットに協力しませんか ?アリエッタのこと……放っておくのは……。 |
リグレット | お前たち……何を言っている ?私とお前たちは敵同士だぞ ? |
ルーク | そ、それは元の世界での話だろ !この世界には預言なんかねえし、ヴァン師匠が正気で帝国の味方をするって言うならともかく……。 |
リグレット | お前たち……何故そこまで首を突っ込もうとする ? |
ルーク | 上手く言えねえけど、放っておけねえんだよ !ティアだって、さっきからすげえ心配そうな顔でリグレットのこと見てるじゃねーか。 |
ティア | ルーク……。 |
ルーク | なあ、アニスの言う通り、リグレットと一緒にアリエッタを助けようぜ。情けは人のためならずって言うだろ。 |
ティア | ……大佐。すみません。私も……教官に力を貸したいです。 |
ジェイド | やれやれ。まあ、そこまで仰るのでしたら協力しても構いませんが……。 |
ルーク | ジェイド ! |
リグレット | 本気で言っているのか ? |
ジェイド | ええ、不本意ながら。 |
ティア | リグレット教官。私たちもお力になれると思います。どうか、同行の許可をいただけませんか。 |
リグレット | ……好きにしろ。 |
キャラクター | 4話【旋律4 少女の捜索】 |
ガイ | ――事情はわかった。で、どうする ? 俺たちもいったん合流するか ? |
ジェイド | いえ、今はまだ別行動にしておきましょう。二手に分かれてアリエッタを捜索したほうが効率的でしょうからね。 |
ガイ | 了解だ。しかし、まさかリグレットがこの世界になあ……。 |
ガイ | まあ、シンクやヴァンがいるんだからおかしくはないんだが……。 |
ナタリア | ティアが心配ですわ。大丈夫ですの ? |
ジェイド | ええ。今はリグレットと敵対している訳ではありませんしね。 |
ジェイド | ――おっと。アジトにいるイクスから通信です。 |
イクス | ジェイドさん。魔鏡通信文、ありがとうございました。リグレットさんとアリエッタのことですがカロル調査室には共有済です。 |
イクス | 何かあれば、俺たちの方も動けるように準備はしてありますけど―― |
ジェイド | 流石、仕事が早いですねイクス。ですが、今回の目的を考えると、できれば我々だけで対処したほうが得策でしょう。 |
イクス | 下手に俺たちが加勢すると帝国にさらなる動きを察知されてしまうから……ですか ? |
ジェイド | そういうことです。ですから、浮遊島の皆さんの手を借りずに解決できるのが一番望ましい。 |
ルーク | けど、リグレットの話だとアリエッタの今の状態って結構ヤバいんだろ ?俺たちより先に帝国兵に見つかってたら……。 |
ティア | 当然、アリエッタを助ける為に戦闘は避けられないでしょうね。 |
アッシュ | 雑魚共は蹴散らせばいいが、数が多いのは厄介だな。 |
イオン | あの……ジェイド。僕からも確認しておきたいことがあるのですが……。 |
ジェイド | なんでしょう ? |
イオン | リグレットの話だと、アリエッタは心神喪失状態に近いという話でしたよね ? |
イオン | ルークも気にしていた通り、もしかしたら帝国がアリエッタを使って、何らかの実験をしていた可能性があるのでは……と僕も思います。 |
イオン | そして、ジェイド、あなたはアリエッタの症状に心当たりがあるのではありませんか ? |
リグレット | 本当か、死霊使い。 |
ジェイド | ええ、まあ、見当はついています。そうですね。そろそろ皆さんにも話しておいたほうがいいのかもしれません。 |
アッシュ | チッ。また何か隠してやがったのか。 |
ジェイド | 隠し事、という程のものではありませんよ。ハロルドやイオン様たちには黙っていてもらうようお願いしていましたが、イクスたちには共有済みです。 |
イクス | ジェイドさん……まさか……。 |
ジェイド | ええ、まずは順を追って説明しましょう。以前ハロルドを救出したときのことは憶えていますか ? |
ルーク | それって、戦士の館にカイルたちが潜入してハロルドを助けたときのことか ? |
ジェイド | ええ。その時に、カイルたちはハロルドを見つける手がかりとして、あるペンダントを回収していました。 |
ジェイド | しかし、そのペンダントを所持していた人間は内臓まで引き裂かれており、かろうじて残っていたのは右手だけだったそうです。 |
ナタリア | ……なんて……惨いことを…… ! |
アッシュ | おい、ジェイド !余計なことばかり言わずにさっさと結論を話せ ! |
ジェイド | これは失礼。要するに、そのペンダントの持ち主が死んでしまったという事実が重要なのです。 |
ガイ | その口ぶりからして、ペンダントの持ち主が誰かわかっているようだな。 |
ジェイド | ええ。死んだのは被験者イオンです。 |
4人 | ! ? |
リグレット | 被験者イオン……。あの方まで、この世界に呼び出されていたのか。 |
アニス | 死んだって……どうして…… ? |
ジェイド | 詳しい理由はわかりませんが、被験者イオンの存在が帝国にとって不都合、もしくは不要になったから排除したと考えるのが妥当でしょう。 |
ジェイド | 情報を精査すると、彼らにとって被験者イオンは精霊となったローレライと接触するために必要な素材にすぎない。 |
ジェイド | そして、帝国は既にローレライとの接触に成功しています。邪魔になってしまったのなら排除する可能性は十分に考えられます。 |
アニス | そんなの……アリエッタが知ったら…… ! ! |
ガイ | まさか……。 |
ルーク | おい、ジェイド !アリエッタが帝国を離れた理由って…… ! |
ジェイド | 知ってしまったのでしょうね。被験者イオンがいなくなれば彼女が帝国に協力する理由はありませんから。 |
ガイ | 必要なくなれば切り捨てる、か。帝国にとって、俺たち鏡映点ってのはただの使い捨ての駒ってことか。 |
イクス | ごめん……。俺もジェイドさんの言う通りルークたちには、まだ伝えないほうがいいと思って黙ってたんだ。 |
ジェイド | あなたが謝る必要はありませんよ、イクス。口止めをお願いしていたのは私ですから。 |
アニス | アリエッタ……そんな……。 |
リグレット | 目的のために手段は選ばぬというのは我らも同じだ。非難するつもりはない。だが、こちらが思惑に乗ってやる義理もない。 |
ジェイド | アリエッタの心を利用して使っていたのは神託の盾騎士団も同じですからね。 |
リグレット | そうだ。だが、この世界ではそうする必要がない。あの子を縛るものから解放してやれる。 |
ジェイド | 呪縛がなくては生きられない人間もいるのではありませんか ? あなたのように。 |
リグレット | どういう意味だ ? |
ジェイド | いえ、お気になさらず。年寄りの戯言です♪ |
イクス | ……え、ええっと。リグレットさんアリエッタの救出の件、俺たちも協力するので何でも言って下さい。 |
リグレット | ……イクス、だったか。すまない、感謝する。 |
イオン | 皆さん、僕が言うのもおかしいかもしれませんが無理はしないようにしてください。そして、アリエッタのこと……宜しくお願いします。 |
ルーク | ああ、任せとけ。 |
ガイ | それじゃあ、俺たちも一旦通信を切るぜ。また何かあったら連絡する。 |
リグレット | ……先ほどのイクスという青年が鏡士か。まだ若いようだが、随分しっかりしているようだな。 |
ティア | あの、リグレット教官……。 |
リグレット | どうした、ティア ? |
ティア | ……いえ、何でもありません。 |
リグレット | そうか。では行くぞ。 |
アニス | アリエッタ……あいつ、イオン様のことあんなに大好きだったのに……。 |
アニス | どうして……アリエッタばっかり……。それなのに、私だけ……。 |
魔物A | ――ギャウンッ ! ! |
魔物B | グルルルッ……ワフッ ! |
リビングドールβ兵A | 敵対する対象の排除完了。但し、魔物一体のみ逃走を開始。 |
リビングドールβ兵B | 目標を確保したため、魔物の追跡は必要なしと判断。捜索中の各隊にも帰還命令を通達しろ。 |
リビングドールβ兵隊 | 了解。 |
アリエッタ | ……………………。 |
キャラクター | 5話【旋律5 夜に咲く花】 |
ジェイド | ――この世界についての説明は以上です。大まかにはなってしまいましたがご理解いただけましたか ? |
リグレット | ああ。何か特殊な術で閣下を操っているのかと思っていたが、まさか心を入れ替えていたとは。 |
リグレット | だが、心核を取り戻せば閣下は元に戻るのだな。 |
ジェイド | ええ。心核の取り換えは特殊な装置が必要ですので必要になればお貸ししますよ。 |
ジェイド | ルークも言っていましたがこの世界では、ヴァンやあなたが我々を敵視する可能性は極めて低いでしょうからね。 |
リグレット | ……相変わらず、全てを見透かしたような男だ。 |
ティア | リグレット教官。教官は……兄さんを助けた後どうするつもりなのですか ? |
リグレット | ……先ほど、私に聞こうとしたのはそのことか ? |
ティア | ……はい。 |
リグレット | そうだな……。正直に話せば、まだその答えは決まってはいない。 |
リグレット | だが、私の閣下への忠誠は、例え違う世界であろうと変わらないと断言できる。 |
ティア | ……そうですか。 |
リグレット | お前はどうなんだ、ティア ? |
ティア | 私、ですか ? |
リグレット | そうだ。お前の意志を聞かせてほしい。 |
ティア | 私は……まだ自分の気持ちに整理がついていません。 |
ティア | ですが、もう一度兄と話してみたいと思っています。私は、兄のことをまだきちんと理解できていなかったように思えるんです……。 |
ルーク | ティア……。 |
リグレット | ……そうか。やはりお前も閣下との対立を望んでいた訳ではなかったのだな。 |
ティア | リグレット教官 ? |
リグレット | いや、気にするな。今の発言は単なる私の感傷だ。 |
ルーク | ……なぁ、リグレット。お前は、師匠が元の世界に戻れないって知ったらどうすると思う ? |
リグレット | 愚問だな。私の考えを言ったところでそれはなんの意味も持たない。 |
リグレット | だが、死霊使いの言うようにお前たちと敵対する理由がなくなったことは確かだ。 |
ルーク | そう……だよな。 |
ティア | ルーク……。 |
ルーク | 悪い。俺も色々考えたんだけど師匠がどう思うかなんて、わからなかった。それに、自分がどうしたいのかも……。 |
ティア | ……ルーク。今はそれでいいと思うわ。でも、ありがとう。兄さんのことを考えてくれて。あなたに酷いことをした兄さんなのに……。 |
ジェイド | さて、そろそろアリエッタの捜索を再開しますよ。それとアニス、考えごともほどほどに。 |
アニス | ……えっ ? 何か言いました ? |
ルーク | アニス……お前、大丈夫か ?なんか顔色が悪いぞ。 |
ティア | アリエッタのこと……気になっているのよね。 |
リグレット | ……そうか。アニスは元の世界でアリエッタと決闘をしたのだったな。殺した相手が生きているというのは複雑か。 |
アニス | そ、そんなんじゃないし。てゆーか、アニスちゃんの気持ちとか今はどうでもよくない ! ? |
ルーク | お、おう……。まあ、アニスがそう言うなら……。じゃあ、ジェイドの言う通り、アリエッタを捜しに―― |
リグレット | ――待て。動くな。 |
ルーク | えっ ? ど、どうしたんだよ、急に……。 |
リグレット | 足下をよく見てみろ。魔物の足跡が残っている。 |
ティア | 本当だわ……。この先の茂みに入っていったようですね、教官。 |
リグレット | 足跡の形からして、アリエッタを守っている魔物のものによく似ているようだが……断定は難しいな。 |
ジェイド | この辺りでよく見かける魔物とは足跡の種類が違うようにも見えますね。 |
ルーク | そうか、アリエッタの連れてる魔物は、この辺に棲んでる魔物とは違うから、この辺りの魔物が縄張りを荒らされたって騒いだんだよな。だったら……。 |
リグレット | 判断は早計だが、他に手がかりもない。死霊使い。この足跡を追ってみようと思うが異論はあるか ? |
ジェイド | 構わないのではありませんか ?まあ、うっかりたちの悪い魔物の巣に入ってしまってもルークが何とかしてくれるでしょう。 |
ルーク | は ! ? 何で俺なんだよ ! ? |
ジェイド | あなたが一番いつも通りのようなので。 |
ルーク | あ……そ、そうか……。ティアとアニスは……。――ん ? 待てよ。ジェイドだっていつも通りだろ。なのに何で俺だけ―― |
ジェイド | ミュウ、応援を。 |
ミュウ | ご主人様 ! 頑張るですの ! |
ジェイド | ですの♪ |
ルーク | うえ……。 |
ティア | この辺りは、草木が生い茂っているせいであまり日が入ってこないようね。 |
リグレット | 気を付けろ、ティア。視界が悪いうえに障害物が多いと敵も身を潜めやすい。常に警戒心を怠るな。 |
ティア | はい、教官。 |
ルーク | よし、足跡はちゃんと残ってるな。このまま追いかけりゃ……ん ? |
ティア | どうしたの、ルーク ? |
ルーク | なぁ、ティア。こっち来てくれ。ここに咲いてる花……。 |
ティア | これは……セレニアの花にそっくりだわ。 |
ルーク | けど、確かこの花って夜にしか咲かないんじゃなかったか ? |
ティア | そうね。もしかしたら日が当たらない場所だから咲いているのかしら……。 |
ジェイド | それもそうだとは思いますが、おそらく具現化の際に植生などもエンコードされたのでしょう。 |
ジェイド | その結果、フォンスロットのない世界でどこに群生するかなどが新たに定められたのでしょうね。 |
リグレット | まさか異世界でセレニアの花を見ることになるとはな。この花を見ると、お前や閣下のことを思い出す。 |
ティア | 教官……。そう……かもしれませんね。ユリアシティにも、この花だけは咲いていましたから。 |
リグレット | お前は知らないだろうが……閣下はこの花を見ると必ずお前の話をしていたものだ。 |
ティア | 兄さんが、私のことを……ですか ? |
リグレット | ああ。殆どは苦労話のように語っていた。幼いお前は、寝かしつけたと思っても、自分が離れるとすぐに泣いてしまうような子供だった、とかな。 |
ルーク | へえー……ティアも子供の頃はちゃんと素直で子供っぽかったんだな ! |
ティア | ルーク……それ、どういう意味 ? |
ルーク | あ、いや、ふ、深い意味は……。 |
リグレット | ……フフッ。 |
ティア | きょ、教官 ! ? どうして笑うんですか ! ? |
リグレット | ……いや、すまない。 |
リグレット | お前には理解できないかも知れないが閣下はお前と過ごした時間を何よりも大切に想っていた。 |
ティア | 兄さんが…… ? |
リグレット | ああ。 |
リグレット | 我々の計画のことを考えると矛盾していると……お前は思うだろうが閣下はお前が幸せになるように願っていた。 |
ティア | 兄さんの、願い……。 |
ヴァン | ――ティア。ユリアは預言を覆して欲しいと願っていたのだよ。 |
ヴァン | ユリアは世界を愛していた。譜歌は世界を愛したユリアが―― |
ティア | (今の記憶は…… ? とても小さな頃に言われたこと……かしら。よく思い出せないわ……。でも……) |
魔物 | ――グルルルッ ! ! |
ルーク | なっ ! 魔物か ! ?まさかアリエッタの魔物じゃないだろうな ! ?だとしたら、攻撃したらまずいぞ。 |
ジェイド | ルーク、あなたは誰かさんのご主人様ではなかったのですか ? |
ルーク | あ、そうか ! ミュウ !あの魔物と話をしてみてくれ ! |
ミュウ | は、はいですの ! |
ミュウ | 大変ですの ! !アリエッタさん、帝国兵さんたちに捕まっちゃったみたいですの ! ! |
全員 | ! ? |
ミュウ | 魔物さん、アリエッタさんがいる場所まで案内してくれるって言ってるですの ! |
リグレット | くっ ! やはり追手はあれだけではなかったのか。 |
アニス | アリエッタ……。 |
ティア | 急いで追いかけましょう ! |
キャラクター | 6話【旋律7 捕らわれた少女】 |
ルーク | おい、ミュウ。あとどれくらいで追いつくって言ってるかわかるか ? |
ミュウ | はいですの !もうすぐだって、魔物さんは言ってるですの ! |
アニス | アリエッタ……無事でいてよね……。 |
リグレット | ――待て。ここからは慎重に行くぞ。 |
ルーク | え、どうしたんだ ? |
ティア | しっ……何か聞こえるわ。 |
ルーク | ん ? 何か聞こえるって……。俺には、どっかで水が流れる音くらいしか聞こえねえけど……。 |
リグレット | いや、その音に交じって、大勢の部隊が移動している足音が確かに聞こえた。敵は近くにいる筈だ。 |
ルーク | 足音って……よく気付くな、そんなの。 |
リグレット | 訓練を積めば、これくらい容易なことだ。 |
ガイ | それじゃあ、バレずに近づけた俺たちはちょっとは自慢できるよな。 |
ルーク | ガイ ! ナタリア ! アッシュ ! |
アッシュ | 騒ぐな、ルーク。わざわざ敵に居場所を教えたいのか。 |
ナタリア | アリエッタの行方がわかりそうだと聞いて急いで皆さんのところに参りましたのよ。どうやら、間に合ったようですわね。 |
ジェイド | 敵軍と対峙する前、という意味ではそうなりますね。実に良いタイミングで来てくれたものです。 |
リグレット | アッシュ、か……。 |
アッシュ | こうして顔を合わせるのは久しぶりだな、リグレット。言っておくが、俺は元の世界での関係をここに持ち込むつもりはない。 |
リグレット | 無論、私も同じだ。だからこそ、こうしてティアたちと共に行動している。 |
アッシュ | その割には、ヴァンに拘っているようだな。 |
リグレット | 閣下をお助けするのは、私の使命であり、意志だ。 |
アッシュ | ……ヴァン、か。 |
ジェイド | おや、あなたもヴァンが心配なクチでしたか。 |
アッシュ | 俺は別に―― |
リグレット | ――足音が遠ざかっていく。追いかけるぞ。 |
リビングドールβ兵A | 報告。これより先のルートは川の氾濫により橋が損傷。通過は困難かと思われます。 |
リビングドールβ兵B | 了解。これより川を渡らず迂回するルートに変更する。 |
ルーク | いたぞ、帝国兵だ。それに、あいつらが囲っているのは……。 |
アリエッタ | ……………………。 |
リグレット | 間違いない。アリエッタだ。 |
ガイ | ……しかし、話には聞いていたが遠目から見ても、まるで生気を感じられないな。 |
ナタリア | それほどまでに精神的な負荷が強かったのですわね。アリエッタにとって、導師イオンを失うということは……。 |
アニス | …………ッ ! ! |
ルーク | ……おい、これからどうするんだ ?このままアリエッタを助けていいんだろ ? |
リグレット | ああ。幸い、川の氾濫によって奴らに退路はない。奇襲をかけるには好都合だ。 |
ジェイド | いいでしょう。では、まずはあなたとナタリアで遠方から攻撃を行ってください。 |
ジェイド | そのあとは、私とティアで譜術による追撃。その間に―― |
リグレット | 残りの者が切り込み、アリエッタを奪い返す。そんなところか ? |
ジェイド | ええ。単純ですが確実なところでしょう。 |
アッシュ | 先陣は俺が切る。リグレットの撃ち筋もナタリアの腕前も心得ているからな。 |
ナタリア | お任せ下さい。しっかり役目を果たしてみせますわ。 |
ミュウ | ご主人様、ボクも何かお手伝いしたいですの ! |
ルーク | はあ ? うーん……そうだな……。じゃあ、ティアの傍にいてやれよ。譜術に専念できるように守るんだ。 |
ミュウ | わかりましたですの !ご主人様の代わりに、ティアさんを守るですの ! |
二人 | えっ ! ? |
ルーク | ばっ、ち、ちげーよ !そういう意味じゃ―― |
リグレット | ――二人とも、敵を目前に気を緩めるな。 |
ガイ | はは、叱られたな、二人とも。 |
ルーク | いや、今のはミュウが―― |
ティア | すみません、リグレット教官。私は大丈夫です。いつでも行けます。ルークも、行けるわね ? |
ルーク | お、おう……。 |
リグレット | ――よし、では行くぞ ! |
リビングドールβ兵A | うっ ! ! |
リビングドールβ兵B | 敵襲 ! 各自、戦闘準備―― |
リグレット | 遅いッ ! ! |
リビングドールβ兵B | ぐわあっ ! ! |
ナタリア | 流石ですわね。私も負けていられませんわ ! |
リビングドールβ兵C | 敵二名の存在を確認。すぐに排除―― |
ティア | させないわ !シアリングソロゥ ! ! |
ジェイド | ディバインセイバー ! ! |
リビングドールβ隊 | ぐわああああああっ ! ! |
アッシュ | 敵陣が崩れた ! 行くぞ ! |
ガイ | よし、任せろ ! |
アッシュ | 雑魚は俺とガイで蹴散らす !お前たちは―― |
ルーク | わかった ! アニス ! |
アニス | うん ! アリエッタを助けるよ ! |
リビングドールβ兵D | 総員、捕獲した目標の守護を最優先せよ。デミトリアス様の命により、この者の安全は―― |
リグレット | な、なんだ、この音は ! ? |
ガイ | 微かに地面が揺れてる…… ? |
ジェイド | ――まずい ! 山津波です ! |
リグレット | クッ、確かにこの辺りではしばらく大雨が続いていたな。地盤が緩んでいたのか。 |
ティア | みんなこっちへ !私が譜歌で守るわ ! 早く ! |
アニス | アリエッタ ! 一緒に行こう ! ! |
アリエッタ | ……………………。 |
リグレット | この状況でも駄目か。お前たちは逃げろ !私はアリエッタを―― |
アッシュ | やめろ ! お前の位置からでは間に合わん ! |
ルーク | アニス ! お前も戻れ ! |
ルーク | くそ ! ? 土砂が―― |
アニス | あーっ ! もう、世話が焼けるっ !トクナガダーイブ ! ! |
リグレット | 馬鹿な ! ? アリエッタと心中するつもりか ! ? |
ナタリア | あ ! ? アニスがアリエッタと一緒に河へ飛び込みましたわ ! ? |
ジェイド | 土砂に飲み込まれるよりいい判断です !我々も退きますよ !でないと、アニスたちを救出できない ! |
ガイ | ルーク ! 急げ ! |
ルーク | わ、わかった !頼む、アニス…… ! 無事でいてくれよっ ! |
キャラクター | 7話【旋律8 濁流の先に】 |
ティア | ――みんな、大丈夫 ? |
ナタリア | ええ……ありがとうティア。あなたのこの力に助けられたのは二度目ですわね。 |
リグレット | ……今のが、ユリアの譜歌。閣下もかつてこの力で魔界に生きて辿り着いたのか……。 |
ティア | (そうだった……。兄さんも譜歌で……) |
ティア | (何かしら……。兄さんに関する記憶……。大事なことを忘れているような……) |
アッシュ | 帝国兵は、みんな土砂の下に埋もれちまったようだな。 |
ルーク | 一歩遅ければ、俺もこの土砂の下だったのか……。 |
ガイ | この辺りは危険だな。いつ俺たちの立っている足場が崩れるかわからない。 |
ジェイド | ええ。まずはこの場を離れましょう。アニスたちを捜すのはそれからです。 |
リグレット | しかし、アニスも無茶をする。何故あんな無謀な真似を……。 |
ルーク | ……もう、アリエッタが死ぬところを見たくないんだと思う。 |
ルーク | あいつ、ずっと素直にならなかったけど本当はアリエッタのこと……好きだったんじゃないかな。 |
ルーク | だから、あんな最後を望んでた訳じゃないと思う。 |
リグレット | ………………。 |
アニス | ……はぁはぁ ! !い、生きてる…… ! |
アニス | アリエッタは……。確かトクナガにぎゅっと掴ませた筈……。 |
アリエッタ | …………。 |
アニス | ――いた ! ! |
アニス | 体が冷たい…… ? やだやだ、嘘でしょ……。脈は………………ある ! |
アニス | 水も飲んでないみたい……。もう……脅かさないでよ……。あー……なんか……気が抜けた……。 |
アリエッタ | …………。 |
アニス | ちょっと、何か言いなよ。このアニスちゃんがあんたの為に泥まみれでびしょ濡れになってまで助けてあげたんだからさー。 |
アリエッタ | …………。 |
アニス | ……そっか。まあ、アリエッタも私なんかと話したくはないよね。 |
アニス | ま、だけど、アニスちゃんは優しいのできちんと面倒は見てあげるよ。 |
アニス | 私だって、別にアリエッタと仲良くしたい訳じゃないけど、あんたのこと放っておく訳にもいかないから、我慢してよね。 |
アリエッタ | ………………。 |
アニス | ……アニスちゃんに面倒見られるのが嫌だったら心の中に閉じこもってないでさっさと出てこーい ! |
アニス | ――なんて、無理だよね。あんたにとってはイオン様が全てだったもんね。コハクたちがいれば、ソーマで助けられるのかな。 |
アニス | ……その為には、まずみんなと合流しなきゃ。アリエッタはトクナガに乗せて……っと。 |
アニス | ……えーっと、魔鏡通信~っと……―― |
アニス | はぅあ ! ? 魔鏡通信機がない……。嘘嘘嘘 ! ? マジで ? ぎゃー ! ? |
アニス | ……ホントにない。もしかしてさっきので流されちゃったのかな……。 |
アニス | 土砂崩れ……マジぶっ潰す。 |
アニス | ……はああああ。もう、仕方ないなぁ。まあ、一人ではぐれるのは慣れてるし何とかなるっしょ ! |
アニス | ……アリエッタ。あんたのこと、意地でも助けるからね。 |
ティア | ……この辺りまで来れば、ひとまず安心ね。 |
アッシュ | ああ。足場が危うい場所は抜けた。だが―― |
ガイ | アニスとアリエッタの行方だな。相変わらず魔鏡通信には応答がないが……。 |
リグレット | 川下の方に下りながら川辺を見ていくしかないか……。 |
ナタリア | そうですわね。上手く岸に辿り着いてくれていればアニスのことですから、きっと何か痕跡を残してくれていると思うのですが……。 |
ジェイド | ――静かに。何かが近くにいます。 |
魔物 | ウォ――――ン ! |
ルーク | 魔物 ! ? いや、待てよ ? もしかして―― |
ミュウ | はいですの !あの魔物さん、皆さんを捜していたみたいですの。 |
ティア | 私たちを……なら、あれはアリエッタの魔物なのね ? |
ミュウ | はい。アリエッタさんを探すのを手伝ってくれるそうですの。 |
リグレット | 本当か ! ?ならば、捜索範囲を広げられるぞ。 |
リグレット | 死霊使い。この辺りの地形は頭に入っているな ? |
ジェイド | おや ?ええ、まあ、もちろん。 |
リグレット | ならば人が流れ着きやすい場所を挙げろ。魔物たちに、ポイントを絞って向かわせる。 |
リグレット | もしもアニスが目を覚ましていて動けるようならお前たちの魔鏡通信に連絡が来る筈だが……。いや、連絡できない可能性もあるな。 |
ティア | もし動けなければ救難信号に準ずる物を準備する筈です。 |
アッシュ | 神託の盾騎士団式のものなら俺とティアが発見できる。 |
リグレット | よし。ではそちらはお前たちに任せる。ルーク。お前はミュウと共に魔物たちの持ってくる情報をまとめろ。 |
リグレット | 外部への連絡は―― |
ジェイド | ガイが適任でしょう。 |
ガイ | こんな時でも俺かよ……。まあ、要はアジトへの連絡とルークがまとめる情報の精査役だな。 |
リグレット | ナタリア王女。王女なら、アッシュの手綱を握れるし治癒術がつかえる。私やティアたちと共に捜索班に加わってくれ。 |
ナタリア | 承知しましたわ。 |
リグレット | 死霊使い。作戦本部の指揮権は貴様に預ける。 |
ジェイド | 構いませんよ。しかし、鮮やかなお手並みですね。中々の仕切り上手です。 |
リグレット | 本来はシンクの仕事だ。奴がいないのだから仕方あるまい。協力を求めている側が図々しいのは承知している。 |
リグレット | では、各人配置に付け ! |
キャラクター | 8話【旋律9 鬱蒼とした森】 |
ナタリア | ……あれから随分と川を下りましたがまだ見つからないのでしょうか ? |
アッシュ | 魔鏡通信もまだ繋がらないようだな。単に連絡できる状況でないだけならいいが……。 |
リグレット | ……覚悟しておけということだな。 |
ナタリア | そんな ! 今の段階で、そのような覚悟をする必要がありますか ? 今はむしろ、希望を持ち必ず見つけるという覚悟をするべきです ! |
ヴァン | ユリアは未来に希望を託した。だから私たちは―― |
ティア | (まただわ……。何か、大事なことを……思い出せそうなのに……) |
ティア | (……ううん。今はアニスたちを見つけるのが先よ) |
リグレット | どうした ? ティア。何か気に掛かることでもあるのか ? |
ティア | ――す、すみません。こんな大事なときにぼんやりしてしまって……。 |
リグレット | セレニアの花を見てから様子がおかしいな。何かあるなら言ってみろ。 |
ティア | ……いえ、くだらないことなんです。あの時から、忘れていた子供の頃の記憶が甦りそうに……。でも思い出せなくて……。 |
ナタリア | そういうこともありますわ。もどかしいですわよね。 |
ティア | ええ……。でも、今はそんな場合ではないから……。すみません、教官。気を引き締め直します。 |
リグレット | ……閣下に関する記憶、か。 |
ルーク | おい ! 魔物たちがアニスのものらしい足跡を見つけたぞ ! |
四人 | ! ? |
ティア | 場所はどこ ! ? |
ジェイド | あなた方の捜索地点から、さらに下った先になります。場所を送りますから、そこで落ち合いましょう。 |
ガイ | 近くに帝国兵もいるらしい。気を付けろよ ! |
アニス | ……よし。足場のいいところに逃げてきたし火も熾せたし……。これで服を乾かせるよね。 |
アニス | アリエッタ。ルークたちが捜してくれてるはずだから私たちはしばらくここで待機するよ。 |
アニス | 簡単にだけど屋根も作ったから雨風は凌げるはず。あとで食べ物も集めてくるからね。 |
アリエッタ | ………………。 |
アニス | はぅあ ! ? また髪の毛に蜘蛛の巣付いてる~ ! ?ああ、もう~最悪 ! !さっき通った、あの木の下で付いたのかな……。 |
アニス | あ、アリエッタ ! あんたには付いてないよね ? |
アニス | ……うん、大丈夫か。代わりにトクナガが汚れてるけど……。これは洗濯が大変だわー。 |
アリエッタ | …………。 |
アニス | あーあ、こんなことになるんなら私もイ――アジトでお留守番しとけば良かったな。 |
アニス | ………………。 |
アニス | ……ごめんね、アリエッタ。あんたのイオン様のこと……全然知らなかった。 |
アニス | 知ってても……何もできなかったかも知れないけど。あんたがこんな状態にならずに済んだかもしれないじゃん……。 |
アニス | せっかく……あんたが生きてるのに上手くいかないね……。 |
アニス | あんたは元の世界でもこっちでもただ、あんたのイオン様と一緒にいたかっただけなんだよね。 |
アリエッタ | ………………。 |
アニス | ……どうして、どこに行ってもつらいことって消えないんだろうね、アリエッタ。 |
アリエッタ | …………アニ、ス……。 |
アニス | ! ? アリエッタ ! ! あんた、今…… ! ! |
リビングドールβ兵A | 目標、発見。及び一名の同行者を確認。別隊の報告にあった反逆者の一人だと推測。 |
アニス | 帝国兵 ! ? まだいたの ! ? しつこいな !しかもメチャクチャ数が多いし…… ! |
リビングドールβ兵B | 大人しく、その娘を渡せ。 |
アニス | そんなこと言われて「はい、そうですか」って渡す馬鹿がいるわけないでしょ ! |
リビングドールβ兵B | 交渉による目標の引き渡しを拒否。これより、任務遂行の為武力行使を開始する。 |
アニス | 上等 ! !全員まとめて、ぶっ潰す ! ! |
ルーク | おーい、待たせたな !何か手がかりはあったか ? |
ティア | 野営のあとを見つけたわ。それに神託の盾騎士団式の目印も。 |
ガイ | とりあえず無事だってことだな。 |
アッシュ | ――わからんぞ。その先の地面を見ろ。交戦の跡だ。 |
ガイ | おい、今の音は…… ? |
魔物 | ワフッ ! ! ワウッ ! ! |
ミュウ | あの音がしたほうに、アリエッタさんたちがいるって言ってますの ! ! |
リグレット | くっ、帝国軍に先を越されたか ! |
アニス | …………ううっ。 |
リビングドールβ兵A | 敵、大幅な体力低下を確認。 |
アニス | ほんっと、しつこい奴ら……。さすがにそろそろ限界かもだよ……。 |
アリエッタ | …………。 |
リビングドールβ兵A | 総員、かかれ ! |
アニス | ――ええい、まだまだ諦めるアニスちゃんじゃないんだからねっ ! |
リビングドールβ兵B | ぐっ ! ! |
リビングドールβ兵A | はああっ ! ! |
アニス | しまっ……きゃああああっ ! ! |
リビングドールβ兵A | ……敵、損傷。致死量の出血を確認。 |
アニス | いっ……たいなぁ……・もう……。 |
アリエッタ | …………。 |
アニス | ……へへっ、あんたに情けないとこ、見せちゃったね。 |
リビングドールβ兵A | 目標の確保にかかれ。 |
リビングドールβ兵隊 | 了解 ! |
アニス | させる……もんかっ !あんたは……私が……っ ! ! |
アリエッタ | …………アニ……ス……。 |
アニス | 私が……絶対助けるんだからっ ! ! |
アリエッタ | ! ! |
アリエッタ | イオン様……死んじゃった……。どうして…… ? |
アリエッタ | あ――イオン様 ? |
アリエッタ | いや……イオン様…… ?アリエッタも連れて行って……。 |
アニス | 私が……絶対助けるんだからっ ! ! |
アリエッタ | アニス ! ?どこ ? イオン様を助けるの ! ?アリエッタだって……イオン様を―― |
アリエッタ | イオン様を助けるんだからあぁぁぁっっ ! ! |
リビングドールβ兵A | 目標。意識の回復を確認。 |
アリエッタ | …………イオン様……助ける……。 |
アニス | アリ……エッ……タ ? |
アリエッタ | みんな、みんな……イオン様の敵 ! ! ! !倒すんだからぁぁぁっ ! ! |
キャラクター | 9話【旋律10 思い出の歌】 |
ティア | 爆発音がしたのは、この先ね。 |
ガイ | おい、いたぞ ! だが、あれは…… ! |
アリエッタ | ―――― |
リグレット | アリエッタ……お前…… ! |
ジェイド | ……アリエッタの周りで倒れているのはリビングドールの帝国兵ですね。しかも、ほとんどが致命傷を負っているようだ。 |
アニス | み……んな……。 |
ルーク | アニス ! ! お前、その傷 ! ! |
ティア | 待って。すぐに私が…… ! ! |
アリエッタ | うわああああああっっっっ ! ! |
リグレット | ティア ! ! 下がれ ! |
ティア | リグレット教官 ! 私を庇って―― |
リグレット | 不用意に近づくな。状況をよく見ろと教えた筈だ。そのような動き方では守れるものも守れんぞ。 |
ティア | は、はい ! |
アッシュ | 貴様こそ、自分の身を挺してティアを庇うとはらしくないな。 |
リグレット | ……そうだな。勝手に体が動いた。しかし、アリエッタはどうして我々まで手に掛けようとしているんだ ? |
ルーク | おいっ ! アリエッタ !俺たちはお前と戦うつもりなんてねえ !ちゃんと話を―― |
アリエッタ | みんな……みんな敵…… !イオン様を傷つける悪い人たちっ ! ! |
ジェイド | ――みんな、伏せなさい !タービュランス ! |
ガイ | くっ、今のはジェイドが相殺してくれたがそう何度もという訳にはいかないぞ ! |
ナタリア | これでは、アニスを助けることも出来ませんわ ! |
ミュウ | た、大変ですの ! 魔物さんたちが怒ってるですの ! ? |
魔物 | グルルルルッッ ! ! |
アッシュ | ち、こっちに敵意を見せてやがるな。アリエッタの仕業か ? |
ジェイド | おそらく、何らかの要因で、アリエッタが目覚め暴走しているのでしょう。 |
ジェイド | そもそも心が死んだも同然だった筈。今は敵味方を判断する能力もないでしょうね。 |
ルーク | じゃあ、どうすりゃいいんだよ ! |
アッシュ | おい、死霊使い。ローレライは使えないのか ?暴走状態――いや、心が壊れる前まで時間を戻すようなことができれば―― |
ジェイド | 確かにローレライは、この世界において時の概念を帯びています。ですが、ローレライの召喚にはイオン様が必要だ。 |
ルーク | 待ってくれ、ジェイド ! 前に俺にもローレライを呼べる力があるかもしれないって言ってたよな !だったら、俺とアッシュで…… ! |
ティア | 駄目よ、ルーク ! 危険すぎるわ ! |
ジェイド | ティアの言う通り、理由は以前にも話したはずですよ。私の説明が理解できなかったほどあなたは馬鹿ではない筈です。 |
ルーク | けど、このままじゃアリエッタだけじゃなくてアニスまで…… ! |
ジェイド | ええ。ですから、アリエッタは私が処理します。 |
四人 | ! ? |
ジェイド | これが、私たちの生存率が最も高い方法です。リグレット。嫌ならアリエッタの方についても構いませんよ。 |
リグレット | …………っ ! |
リグレット | ――ジェイド・カーティス。一つ提案がある。 |
リグレット | アリエッタを殺るなら、私に任せて欲しい。私がアリエッタを引きつける間に貴様らはアニスを助けて離脱しろ。 |
ティア | そんな……駄目です、教官 !そんなことをしたら、教官まで…… ! |
リグレット | アリエッタに遅れを取るほど未熟ではない。それにアリエッタを一人で逃がしたのは私の失態だ。 |
ジェイド | いいでしょう。みんな、下がりなさい。私がアニスを回収してきます。 |
ナタリア | そんな ! ここまできて―― |
ルーク | そうだよ ! もう少しで助けられそうなのに !こんな結末、アニスだってきっと辛いはずだ ! |
リグレット | ティア――私は生き残るつもりだがそれでも、もしも……何かあったときはどうか閣下を――ヴァンを助けてほしい。 |
ティア | そんな……そんなの…… ! |
ティア | (私にもっと力があれば…… !どうすればいいの……兄さん !) |
ヴァン | ――ティア。ユリアは預言を覆して欲しいと願っていたのだよ。 |
ヴァン | ユリアは世界を愛していた。譜歌は世界を愛したユリアがローレライに捧げた契約なのだ。 |
ヴァン | ユリアは未来に希望を託した。だから私たちは、預言にすがるのではなく現実に向き合う覚悟をしなければな。 |
ヴァン | ティア……メシュティアリカ。いつかお前にもこの譜歌に込められた想いが理解できるはずだ。 |
ヴァン | そして、どうか……。歪んだこの世界の中で、お前だけは―― |
ティア | 思い……出した……。ユリアの七番目の譜歌……。 |
ルーク | え ! ?お前、七番目の譜歌は知らないんじゃ……。 |
ティア | ううん、違うの。『知っていた』のよ。 |
ティア | そうだわ…… ! 譜歌はユリアがローレライと契約した証の歌。もしかしたら大譜歌なら―― |
ジェイド | ……そうか ! 大譜歌か。これなら、或いはイオン様がいなくてもローレライを呼べるかも知れません ! |
アリエッタ | ううっ……ううっ ! ! |
ナタリア | アリエッタの様子が変ですわ。まるで譜歌の旋律に苦しんでいるような……。 |
ガイ | ――おい、アリエッタの奴ティアに狙いを定めてるんじゃないか ! ? |
アニス | ……させないよっ !トクナガードォォォッ ! |
ルーク | アニス ! お前 ! そんな身体で動いたら―― |
アニス | ……ぐ……ぅ……。だって……みんな……アリエッタに近づけないんだから……私がアリエッタを抑えるしかない……じゃん。 |
アニス | ……ティア……ローレライを呼んで…… !私が、この馬鹿のこと……抑えるから……。 |
アニス | 謡って……ティア ! ! |
リグレット | なんだ、この光は…… ! |
ガイ | 浄玻璃鏡か ! しかも、二人同時に ! |
リグレット | ジェイド・カーティス ! アリエッタの力を弱めるぞ。アニスがアリエッタの壁になっている今なら我々もアリエッタに近づける ! |
リグレット | アリエッタの力をそぎ取ってティアの譜歌でローレライが召喚できるまでもたせたい ! |
ジェイド | いいでしょう。ただし、アニスの限界が来たら私がアリエッタを始末します。 |
ルーク | そんなことしなくてもすむようにアリエッタを抑える !行くぞ、みんな ! |
アニス | 今度こそ……アリエッタを助けるっ ! |
キャラクター | 10話【旋律10 思い出の歌】 |
グラスティン | ほら、形見だ、アリエッタ。 |
ロミー | 何 ? その黒くて汚い石。 |
グラスティン | 被験者イオンの心だった石の欠片だよ。体が死んで心も死んじまったから、単なる石ころなんだがデミトリアスが捨てずに残してやれとさ。 |
グラスティン | ほら、お前のイオン様だ。受け取れ。 |
アリエッタ | う……そ……うそだ……うそ嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘 |
アリエッタ | イオンサマイオンサマイオンサマイオンサマイオンサマイオンサマイオンサマイオンサマイオンサマイオンサマイオンサマイオンサマイオンサマイオンサマイオンサマ |
アリエッタ | ―――――――――――――――――――――――― |
? ? ? | 今度こそ……アリエッタを助けるっ ! |
アリエッタ | ――――――………… ?だれ……です…… ? |
ローレライ | 私の力だけでは……過去へ定着させられない……。私は星の記憶を知るもの。ここに『星の記憶』はない……が……。 |
ローレライ | 獣の子よ。過去の正気の瞬間から手を伸ばせ。それが絶望の道であっても――お前を待つ者がいる。 |
アニス | アリエッタ ! |
リグレット | アリエッタ ! |
イオン | アリエッタ、起きましょう……。 |
アリエッタ | ――う……。 |
アニス | アリエッタ……よか……った……。 |
ティア | アニス ! ? |
ジェイド | ……大丈夫です。気を失っただけでしょう。手当をお願いします。 |
アリエッタ | ……アニ……ス ? |
ジェイド | こちらも、正気を取り戻したようですね。 |
アリエッタ | ――うぅっ…………。イオン……様…………。 |
アリエッタ | イオン様……死んじゃった…… !もう……イオン様に会えない…… ! |
リグレット | …………。 |
アリエッタ | アリエッタ、また一人ぼっちになっちゃった……。みんな……みんないなくなっちゃうんだ……。 |
リグレット | このままでいいのか、アリエッタ ? |
アリエッタ | ……えっ、リグ……レット ? |
リグレット | 人は……誰かの為でなくては命をかけられない。お前は誰の為に、その命を使うと決めた ? |
アリエッタ | アリエッタは……アリエッタはイオン様の……。 |
リグレット | 世界が憎いのなら、最後まで抗ってみせろ。今までも私たちはそうしてきた筈だ。 |
リグレット | 答えろ、アリエッタ。お前が今、戦うべき相手は誰だ ?お前から全てを奪ったのは誰だ ? |
アリエッタ | 戦う相手……。アリエッタからイオン様を奪ったのは……。 |
グラスティン | ほら、お前のイオン様だ。受け取れ。 |
アリエッタ | グラスティン…… ! |
アリエッタ | 許さない…… ! あいつだけは……絶対に許さない……です ! |
リグレット | ならば生きろ、アリエッタ。お前の望みを叶える為に、私も協力する。 |
アリエッタ | 生きる……。 |
リグレット | そうだ、生きろ。そうして生きていけば……いつかお前の傷も癒えるかも知れない。かつての私のように……。 |
アリエッタ | ……アニスは ? |
アッシュ | ……アニスなら、お前のために瀕死の重傷だ。 |
アリエッタ | ……アニス……アリエッタを……迎えに来てくれた……です……。 |
アリエッタ | アニスのこと……嫌いだったけど…………き、嫌いじゃない……です……。 |
ルーク | なんだよ、こっちも捻くれてるじゃん……。 |
アリエッタ | アニス…………ありが……とう……。 |
ガイ | ……アニスの容態も落ち着いたようだしひとまず、一件落着ってことでいいんだよな。 |
ジェイド | まあ、そういうことになりますね。 |
ルーク | なぁ、やっぱりリグレットたちもアジトに来いよ。イクスたちなら絶対歓迎してくれるだろうしそれに、ティアやアニスだって……。 |
リグレット | いや、私は閣下の救出を何より優先したい。それに……レプリカの導師がいるところにアリエッタは置いておけない。 |
ティア | 教官……。 |
ジェイド | でしたら、私にお勧めの物件があるのですが。すぐに内覧できるよう先ほど連絡を入れておきました。 |
ガイ | なんだなんだ ? 急に胡散臭い不動産屋みたいなことを言い出したな……。 |
ルーク | ……お前、なんか企んでるだろ ? |
ジェイド | 悲しいですねぇ。私の親切心を疑われるとは。 |
ジェイド | ……とにかく、一度尋ねてみて下さい。あなた方の新生活に必要なものは大体そろっていると思いますよ。 |
リグレット | ……いいだろう。そこまで言うのであれば、お前の口車に乗ってやる。 |
リグレット | ――ティア、最後に一つ聞きたいことがある。お前が謡った譜歌は、閣下から教えて貰ったものだったのか ? |
ティア | ……はい。小さい頃、兄さんは私の為に譜歌を子守歌にして教えてくれていたんです。 |
ティア | 譜歌は七つの旋律全てを揃え、大譜歌にすることであらためて意味を持ちます。私は……七番目のユリアの譜歌を……忘れていました。 |
ティア | いえ、知らないと思い込んでいた。旋律も象徴も。いつの間にか……兄との思い出に蓋をしていたのかも知れません。 |
ティア | でも、今ははっきりと、その時の兄さんの顔も思い出せます。私に伝えたかった想いも……。 |
リグレット | そうか……。ならば、その思い出は大事にしておけ。 |
ティア | リグレット教官……。 |
アリエッタ | アニスに伝えて。アニスのイオン様のことニセモノなんて言って……ごめんなさいって。 |
ルーク | えっ…… ? |
アリエッタ | ティアの歌が聴こえてきて……色んな人がアリエッタを……迎えに来て……そこに……イオン様もいた、です。 |
アリエッタ | イオン様はアリエッタと一緒に……いるです。あの人は……アリエッタの知らないイオン様……。だって顔は同じだけど、違うから……。 |
アリエッタ | それだけ、です。さよなら……。 |
リグレット | ……ではな。 |
ティア | 大佐……。私はローレライを呼べたんでしょうか ? |
ジェイド | ……ええ、恐らくは。ローレライは第七音素そのものですからおそらくアリエッタを治療した形になったのでしょう。 |
ティア | 時を巻き戻せたわけではないんですね。 |
リグレット | 死霊使いが指定した場所はここだな。しかしどこに『物件』とやらが……。 |
ディスト | きいぃぃぃぃぃ ! !ジェイドはいつまで、この私を待たせるのですか ! ? |
アリエッタ | ……ディスト ? |
ディスト | おや ? アリエッタ……それにリグレットではありませんか。あなたも具現化されていたのですか ? |
リグレット | ……なるほど。そういうことだったか。お前も、相変わらずあの男に上手く使われているようだな……。 |
ディスト | 何の話です ? |
リグレット | いや……。死霊使いから伝言だ。私とアリエッタを預かって欲しいとな。 |
ディスト | ジェ……ジェイドが……私に…… ? |
バルド | ――ディスト博士。この辺りにジェイドさんの姿はないようですよ。 |
ディスト | バルド。全ての謎は氷解しました。ジェイドは優秀な私にこの二人を預かって欲しかったのですよ。 |
バルド | あなたは……確かアリエッタでしたね ! |
アリエッタ | アリエッタ、この人知ってる。前にセールンドで会った……。 |
バルド | 覚えていて下さったのですね。私も、あなたのことをずっと心配していました。 |
バルド | 私たちに敵意がない様子をみるともう帝国からは解放されたようですね。 |
リグレット | ……その口ぶりからするとお前たちも帝国を敵視している人間か。 |
バルド | はい。私はバルドと申します。 |
リグレット | リグレットだ。ジェイドの口車に乗せられてここに来てしまったが―― |
バルド | ……フフ。あの方は困った方ですね。ですが、我々には戦力が必要です。どうかお力を貸して頂けませんか ? |
リグレット | ディストを引き取っているとは大したものだと思ったがなるほどそれなりの器量はあるようだ。我々も寄る辺を必要としている。よろしく頼む。 |
バルド | 恐縮です。それでは早速、我々の拠点へご案内しましょう。 |
ディスト | フッフッフッ。ジェイドが私を頼るとは……。わかっていました。わかっていましたよ、ジェイド !はーっはっはっはっ ! |