キャラクター | 1話【嗜虐の嵐1 嵐の噂】 |
サレ | う……ん……。 |
サレ | ……は……。…………身体、は……動く、か。 |
サレ | ようやく回復してきたみたいだね。 |
サレ | アレクセイのあの顔は見物だったけどそのせいで、グラスティンの追っ手に見つかるなんて。まったく、酷い目に遭ったよ。 |
サレ | あれからどれだけ経ったのかは……まあ、どうでもいいか。今更帝国に戻るわけでもない。 |
サレ | それにしても、グラスティンは滑稽だったな。大事な宝物を壊したくらいであんなにキレるなんてね。 |
サレ | 救済を掲げながら何一つ救えない聖女様のお守りも飽きたところだ。 |
サレ | せっかく偽物の面白い世界に来たわけだし面白いものもいただいてきたし……。 |
サレ | もう少しこの世界を楽しんでおかないとね。フフ……。 |
ヴェイグ | おはよう、イクス、ミリーナ。 |
クレア | おはよう、ふたりとも。揃って何をしているの ? |
ミリーナ | おはよう、ヴェイグさん、クレアさん。カロル調査室からの報告を待っているところよ。 |
イクス | まあ、ここのところは特に異常もなくて雑談をして終わるっていう感じなんだけどさ。 |
クレア | まあ、そうだったの。でも異常無しという連絡なら安心できるわね。 |
ミリーナ | ええ、そうなの。元気な姿が見られるだけでホッとするわ。 |
イクス | あ、魔鏡通信が入った。 |
カロル | イクス、ミリーナ !あ、ヴェイグとクレアも一緒だったんだね。ちょうどよかった。 |
ヴェイグ | ちょうどいい ? |
クレア | どうかしたの ? |
カロル | うん、実は昨日からカレギア領に来てるんだけどちょっと気になる話を聞いたんだ。 |
イクス | 気になるって、どんな ? |
カロル | 最近、急に嵐みたいな風が吹くらしくって。でも天気は悪くないし、バッと吹いたら止んじゃうしちょっと不気味だって噂になってるんだ。 |
カロル | これってさ、勘違いかもしれないんだけど何か特別な能力のせいだったりしないかな ?シルフが絡んでるなら、ミラがすぐ気付くと思うし。 |
イクス | 確かに、ずっと吹いているならともかくその瞬間だけ吹いて止むっていうのは自然現象とは考えにくいな……。 |
ミリーナ | 精霊の可能性が薄いのなら、なんなのかしら。帝国が何か新しい装置でも開発したとか ? |
イクス | あるいは、もっと別の能力なのか……。 |
ヴェイグ | ……そうかもしれない。 |
イクス | 別の能力ってことか ? |
ヴェイグ | ああ。それは嵐のフォルス――サレかもしれない。 |
イクス | サレって、確か帝国にいる鏡映点だよな。 |
ヴェイグ | ああ、オレたちの世界から具現化されたヒトだ。最近の動向は特に聞いていないが。 |
クレア | その不思議な現象が嵐のフォルスのせいなら直接見てみればわかるかしら ? |
ヴェイグ | そうだな。カロル、その現象が起きている場所を教えてもらえるか ? |
ヴェイグ | 他の皆にも意見を聞いてみるが……サレのせいだとしたら、オレたちが行った方がいい。直接調べてみれば何かわかる気がする。 |
ヴェイグ | 構わないだろうか ? |
イクス | ああ、もちろん。是非、調査をお願いするよ。 |
クレア | 私、アニーたちを呼んでくるわ。 |
ヴェイグ | ああ、頼む。 |
カロル | こっちも帝国の調査で手が足りないから助かるよ。それじゃあ、場所は後で転送しておくね。でも、くれぐれも気をつけて。 |
ヴェイグ | そうだな。気を引き締めていく。カロルたちも、引き続き頼む。 |
ヴェイグ | ……何事もなければいいんだが。 |
キャラクター | 2話【嗜虐の嵐2 不穏な空気】 |
マオ | ここがカロルが言ってた村 ? |
ユージーン | ああ。普段は穏やかな村で、名産の木の実を育てて暮らしているらしいんだが……。 |
ティトレイ | な、なんか、ちょっと怖い雰囲気じゃねーか ?みんなギスギスしてるっていうか……。 |
ヒルダ | ええ。殺気立っているのかしら。嵐のような風が関係しているのかもしれないわ。 |
アニー | ここに来るまでも色々調査しましたけど嵐のフォルスが使われたような痕跡はありませんでしたよね。 |
ティトレイ | うーん、ここで考え込んでても仕方ないな。ちょっとあそこにいる人に聞いてみようぜ ! |
ヒルダ | ちょっと、慎重にいきなさいよ ?失礼なことを言わないように。 |
ティトレイ | わかってるわかってる。おーい、そこの人~ ! |
村人 | ……なんだ ?あんた、旅の人か ? |
ティトレイ | ああ。ちょっと変な噂を聞いて来たんだけどもしかして村で何かあったのか ? |
村人 | ああそうだ……殺人だよ。 |
ティトレイ | 殺人 ! ? |
マオ | ちょっと待って !その被害者ってもしかして、黒髪のヒト ? |
村人 | いや、そいつは金髪だ。可哀想に、酷い殺され方をして……。あんたらも気をつけろよ。 |
ティトレイ | あ、ああ……。教えてくれてありがとな。 |
マオ | ……殺人って、ホントに ?嵐みたいな風の話じゃなかったの ? |
ヴェイグ | 違ったようだな……。殺人、か。 |
アニー | 殺されたのが黒髪でないのならグラスティンの可能性は低いですよね ? |
ユージーン | 絶対とは言えないが、違う可能性が高いだろう。サレが関わっているのかどうかもこの時点ではなんとも言えないが。 |
ヒルダ | 判断するにしても、情報が少なすぎるわね。もう少し村の人から話が聞けないかしら。 |
クレア | そうね。まだ人が亡くなったばかりで混乱しているかもしれないけど……。 |
マオ | それでも、万が一サレが関わっているならのんびりしてられないヨ ! |
ティトレイ | だよな ! 証拠や情報は新鮮なうちに集めねえと。 |
ヒルダ | ちょっと待って。こんな状況だし聞き込み前に少し占ってみるわ。 |
マオ | さっすがヒルダ ! ついでに手掛かりとか掴める ? |
ヒルダ | どうかしら。やってはみるけど具体的な内容は期待しないで。 |
アニー | それでも、少しでもヒントがある方が助かります。 |
ヒルダ | ……まず現在の状況。月の正位置。不安や疑念に苛まれている状態ね。 |
ティトレイ | 殺人事件があれば、当然そうなるよな。 |
ヒルダ | そして、過去。厳父の逆位置。悪意による情報……異端者の存在 ?誰かが不安を作り出した ? |
ヴェイグ | 誰かが不安を……。 |
ヒルダ | 現状からもたらされる未来のカードは――運命の輪。希望或いは絶望……。これは……。 |
ティトレイ | なんだよ、希望と絶望って随分と両極端だな。それって村のことか ? それとも、おれたち ? |
ヒルダ | さあ。そこまではわからないわ。 |
アニー | どちらにしても、結果はわたしたち次第。占いは道しるべ――ですよね、ヒルダさん。 |
ヒルダ | ええ、そうよ。ちゃんと覚えているようね。 |
ユージーン | サレのことは別にしても誰かが何かを仕掛けていると考えて用心しながら動いた方がいいようだな。 |
ヴェイグ | ああ。今の話を頭に入れてもう少し聞き込みをしてみよう。 |
ユージーン | では、またここに集合することにして手分けしてあたろう。 |
ヒルダ | 運命の輪……。希望と絶望の分かれ道。……嫌な結末にならないといいんだけれど。 |
ヴェイグ | これで全員戻って来たか ? |
ヒルダ | そうみたいね。村の人の話、どうだった ? |
マオ | ボクが聞いたのは「隣の村の人が犯人だ ! 」っていう話だったよ。 |
アニー | わたしも同じ話を聞きました。殺された方の近くに、隣の村でしか咲かない花が落ちていたのが根拠だ、と……。 |
ティトレイ | おれが聞いたのも同じだ。あんなによくしてやったのに、なんてことを !ってかなり怒っててさ。 |
ヴェイグ | ……妙だな。 |
ティトレイ | へ、何が ? |
ヴェイグ | 人を殺しに行くときに、花を持ち歩くのはおかしい。 |
ユージーン | よっぽど気が立っていたとも考えられるがわかりやすく証拠を残していくというのも違和感があるな。 |
マオ | ってことは、ヒルダの占い通り誰かが仕組んだってコト ? |
ヴェイグ | そうかもしれない。 |
ティトレイ | でも、だったら誰がこんなこと……。 |
マオ | ……あれ ? |
クレア | どうしたの ? |
マオ | あそこに男の子が一人でいるんだ。どうしたんだろう……。 |
アニー | 確かに気になるわね……。話を聞いてみる ? |
マオ | うん ! |
マオ | ねえ、キミ。そんなところで何をしてるの ? |
男の子 | っ !お兄ちゃん、誰…… ? |
マオ | あっ、びっくりさせてごめんネ !えーっと、旅の途中なんだけど、この村で怖い事件があったって聞いて……一人でいたら危ないんじゃない ? |
男の子 | ……うん。パパたちが、村から出ちゃダメって。隣の村に行ったら殺されるから絶対に行くなって……。 |
男の子 | だから、いつも遊んでる隣の村の友達と遊べなくなっちゃった……。 |
マオ | そうだったんだ……。それは、悲しいネ……。 |
ティトレイ | こうなったら、おれたちが隣村に行ってみようぜ !何かわかるかもしれないし。 |
ヴェイグ | そうだな。行こう、隣の村に。 |
キャラクター | 3話【嗜虐の嵐4 疑心暗鬼】 |
ティトレイ | お、この村だな !奥に花が咲いてるぜ。 |
クレア | 本当だわ。綺麗……。 |
ヒルダ | ヴェイグの言う通り、あんなに華やかに咲いている花をわざわざ殺人現場に持っていくかしら……。まあ、全くないとは言えないけれど……。 |
アニー | ええ。……しかも自分たちが大事に育てた花を持ち歩いて人を殺すなんて、考えづらいです。 |
マオ | ……あれ、見て !村の入口に女の子がいる。 |
ヴェイグ | ……もしや、さっきの村の男の子が言っていた友達か ? |
マオ | おーい、そこのキミ ! |
女の子 | ……誰 ? |
マオ | 旅をしてるんだ。さっき隣の村で男の子に会って友達と会えなくなったって言ってたんだけど……。 |
女の子 | ! ! それ、きっと私のお友達だわ !今日、森で遊ぶ約束をしていたの。 |
女の子 | でも、昨日村で人が殺されてしまってそれが隣の村の人のせいだから絶対に行くな、殺されるって言われてて……。 |
全員 | ! ? |
ヴェイグ | どういうことだ…… ? |
ティトレイ | 隣の村と同じじゃねーか !おいおい、同時に殺人事件なんて起こるかよ ? |
ユージーン | あまりにも不自然だ。第三者が関わっていると考えるべきだろうな。 |
ティトレイ | その第三者ってのが犯人なら相当根性が曲がってる奴だぜ。なに考えてこんなふざけたことを…… ! |
ユージーン | ふざけて人を殺せる奴……か。 |
全員 | …………。 |
ヒルダ | ……みんな同じ顔が浮かんでるみたいね。 |
マオ | まさか……本当にサレが犯人かもしれないってコト ? |
ヴェイグ | まだ断定は出来ない。ひとまずこの村の人たちにも話を聞いてみよう。 |
アニー | みなさん、どうでした ? |
ヒルダ | さっきと同じだったわ。今回は向こうの村でしか採れない木の実が遺体のそばに落ちていたって。 |
ユージーン | 木の実ならば服の隙間に入り込んでいたと考えることも出来なくはないが……。 |
クレア | 今までの話と合わせて考えるとやっぱり変よね……。 |
ティトレイ | ひーっ ! 違う、違うって !落ち着いてくれよー ! |
ティトレイ | はー、びっくりしたぜ ! |
ヒルダ | ちょっと、何をしてるの ?村の人にうかつに声をかけて怒らせたんじゃ……。 |
ティトレイ | いや、そういうわけじゃねーんだよ。殺された人のそばに隣の村でしか採れない木の実が落ちてて、それが証拠だって言うからさ。 |
ティトレイ | その木の実を見せてくれないかって聞いたらいきなり「隣の村のヤツに雇われたのか ! ?」って。 |
マオ | ええっ ! ?なんでそんな話になっちゃったの ? |
アニー | 何か怪しい行動をしているように思われてしまったんでしょうか ? |
ティトレイ | なのかなぁ。別に変な聞き方をしたわけじゃねーけど敏感になってはいるだろうし。 |
ヴェイグ | ……オレも似たような雰囲気は感じた。怒鳴られることはなかったが。 |
マオ | そういえば、ユージーンもちょっと警戒されてる感じだったよネ ? |
ユージーン | ああ。だからあまり話が聞けなかった。 |
ヒルダ | 余所者で、外見的にも威圧感があると思われて警戒されたのかもしれないわ。 |
村人 | おい、さっきのヤツどこに行った ! ?もしかしたら隣の村に雇われた殺し屋かもしれないぞ ! ? |
ティトレイ | こっ、殺し屋 ! ? |
ヒルダ | えぇ……あんたが殺し屋 ?余程理性的に考えられない状態のようね。 |
マオ | 失礼だな~ ! って言いたいところだけど今は仕方ないよネ……。 |
アニー | ええ……。あまり刺激しないほうがいいと思います。 |
ヴェイグ | 一旦ここを離れたほうがよさそうだ。行くぞ。 |
キャラクター | 4話【嗜虐の嵐5 調査開始】 |
ヴェイグ | ここなら大丈夫か。 |
ティトレイ | だな !にしても驚いたぜ……。 |
マオ | 殺し屋だもんネ。一番あり得なそうなカンジなのに。 |
アニー | 確かに、殺し屋というには少し人が良すぎるというか……。 |
クレア | お姉さん思いで真っ直ぐで優しい人だものね。 |
ヒルダ | 単純とも言えるけど。 |
ティトレイ | だよな !そんなおれでも殺し屋とか言われるんだから結構ヤバいと思うんだよな。 |
ヒルダ | 単純、の部分も認めるのね……。まあいいわ。 |
ヒルダ | それにしても、何が起こっているのかしら。 |
マオ | 最初の村では隣村でしか採れない花が落ちてたから犯人は隣村の人だ、って言ってたよネ。 |
アニー | その隣村では最初の村でしか採れない木の実が落ちていたから犯人はあっちの村の人だ、と。そう言っていました。 |
ユージーン | 実際に両方の村でそれぞれ一人ずつ殺されている。最初の村は金髪、次の村は赤髪の人物が被害者でグラスティンの関与の可能性は低い。 |
ティトレイ | うーん……これが今わかってることの全部か。これじゃどうしようもないぜ。 |
マオ | けど、なんとか解決したいよネ……。 |
クレア | ええ……。きっと二つの村は、元々とても仲が良かったんだと思うの。 |
クレア | 二つの村の子供たちがあんなに仲良くしているんだもの。 |
アニー | そうですね……。それなのにこんな形で引き離されてしまうなんて悲しすぎます。 |
ティトレイ | どっちの村の人も頭に血が上ってる感じだったのも気になるんだよな。 |
ティトレイ | 「武器を持って隣村に乗り込め !」なんて言ってる人もいてさ。すぐにでも殴り込みに行きそうだったぜ。 |
マオ | ボク、嫌だな。ヒューマとガジュマの間で起こった争いみたいなコトになっちゃうのは……。 |
ユージーン | ……ああ。それだけは止めなければならない。 |
ヒルダ | 種族の問題もなく、いがみ合っていたわけでもない。それなのに互いに憎み合うなんてあまりにも残酷だわ。 |
ヴェイグ | それが誰かに仕組まれたことなら絶対に、許せない。 |
ヴェイグ | もう一度、手がかりがないか調べよう。 |
ヒルダ | そうね。このまま引き下がるわけにいかないわ。 |
ティトレイ | それなら二手にわかれた方がいいな ! |
アニー | そうですね。一刻を争う状況ですから。 |
ティトレイ | よし !じゃあ、ヴェイグとクレアさんとアニーが最初の村おれとヒルダとユージーンとマオでもう一つの村。 |
ティトレイ | で、とりあえず夕方くらいに一度ここで落ち合う !そういう感じでどうだ ! ? |
ヴェイグ | ああ、そうしよう。 |
ヒルダ | でも、気をつけて。どちらの村も普通の状態じゃなかったわ。 |
アニー | 村の人から話を聞ければいいですが難しいかもしれませんね……。 |
クレア | それでもきっと、話せばわかってくれるはず。元々仲が良かったなら、その気持ちが残っているはずだわ。 |
ヴェイグ | ああ……きっと、見つけよう。この事件の真実を。 |
? ? ? | フフ……うまくいってるね。本当に予想通りの連中だ。 |
? ? ? | さて、じゃあ次は『コレ』の効果を確かめさせてもらおうかな……。 |
キャラクター | 5話【嗜虐の嵐7 待ち受ける者】 |
ティトレイ | ……ん ?なんか騒がしくねーか ? |
マオ | ホントだ。どうしたんだろう。 |
村の男性 | おーい、どこに行った ! ? |
村の女性 | さっきまで村の入口にいたのよ ! ?やっぱり隣村の人に攫われたんだわ ! |
ヒルダ | 村の入口にいた……って、もしかしてさっきの女の子のことかしら ? |
ユージーン | 恐らくそうだろう。しかし、まずいな……。 |
マオ | うん。なんだかさっきよりもずっと殺伐とした感じになっちゃってるヨ。 |
ティトレイ | もうちょっと詳しく聞きてーけど、無理だよな ? |
ヒルダ | ええ。やめたほうがいいと思うわ。特にティトレイはさっきも村の人を刺激してしまっているし。 |
ティトレイ | くっそ ! あのときもうちょっと慎重に話をしてたら……。 |
ユージーン | いや、お前が悪いわけではない。警戒されていたのは他のみんなも同じだろう。 |
ユージーン | たまたまティトレイが話しかけたタイミングで爆発したというだけで、誰が怒鳴られていてもおかしくなかった。 |
ティトレイ | そうかもしれねーけどさ……。 |
ヒルダ | 反省するのは後回しよ。今出来ることはなんなのか、それを考えなきゃ。 |
ティトレイ | ああ、そうだよな、悪い !今出来ることが何かっつったら―― |
マオ | 女の子を探しに行こうヨ !無事に見つけられればきっと話を聞いてもらえるハズ ! |
ユージーン | それが一番だろうな、これ以上被害者を出すわけにはいかない。 |
ティトレイ | だな ! よし、手分けして探そう ! |
マオ | おーい、おーい !村の女の子ー ! いたら返事してー ! |
マオ | うう、名前くらい聞いておけばよかったヨ……。無事でいてくれればいいんだケド……。 |
マオ | ッ ! ?そこに誰かいるの ! ? |
女の子 | うぅ……。 |
マオ | さっきの村の子だ !だ、大丈夫 ! ? |
女の子 | すー……。 |
マオ | なんだ、寝てるだけか……。よかった……。 |
マオ | 怪我もしてないみたいだし、大丈夫かな ?でもどうしてこんなところで……。 |
? ? ? | 僕がその子をご招待したからだよ。 |
マオ | ! ? |
マオ | サレ…… ! |
サレ | フフッ、驚いてくれたようで何より。そのマヌケ面、とってもお似合いだよ、マオぼうや。 |
マオ | 今回の事件、やっぱりキミの仕業だったのか…… ! |
サレ | まあね。こうすればキミたちが飛んで来てくれると思ってたけど、まさにその通りだった。 |
マオ | ……キミ、ホントに何も変わらないネ。 |
サレ | フフ、そうかもね。さて、感動の再会も果たしたことだし……。 |
マオ | ッ ! な、何をするんだヨ ! |
マオ | (どうしよう、ボク一人じゃこの子を守りながらサレの相手をするのは――) |
サレ | さあ……次のステップだ。 |
マオ | ! !そのこてって…… ! |
サレ | ああ、コレのこと知ってるんだ ?じゃあ使い方もわかってるよね。 |
マオ | やっぱり、グラスティンがシャーリィに使ったっていう…… ! ?まさか、それをこの子に…… ! ? |
サレ | 残念。外れだよ。これは――キミに使うんだ ! |
マオ | うわぁぁぁ――ッ ! ? |
サレ | フフッ……自分が狙われるとは考えなかったかい ?その子を庇って背中を向けてくれちゃって。おかげでこっちは楽だったけどね。 |
サレ | キミたちは本当に単純だよ。いや、キミが特別に単純なだけなのかな ? |
サレ | どちらでも構わないか。きっちりと仕事をしてくれるならね。 |
マオ | …………。 |
サレ | さあ、最後の仕上げといこうか。キミの仕事は―― |
キャラクター | 6話【嗜虐の嵐8 怒りの噴出】 |
ティトレイ | まだ戻って来ないのか ? マオは。大丈夫なのか…… ! ? |
ティトレイ | 手分けしねー方がよかったか ?いやでもそれじゃ無駄に時間かかっちまうしあー、でも…… ! |
ヒルダ | ちょっと、落ち着きなさい。森の奥まで行ってるだけかもしれないでしょ。 |
ティトレイ | そうかもしれねーけどさぁ ! |
ヒルダ | あんたの頭でぐるぐる考えてたってしょうがないでしょ。せめて落ち着いて待つくらいしなさいよ。 |
ヒルダ | マオなら大丈夫よ。あの子はしっかりしてるじゃない。ユージーンも、そう思うでしょう ? |
ユージーン | …………。 |
ヒルダ | ユージーン ? |
ユージーン | あ、ああ……すまない。考え事をしていた。 |
ヒルダ | マオのこと ? |
ユージーン | ああ……。 |
ヒルダ | 意外ね。あんたも焦っているの ? |
ユージーン | いや、焦っているというよりは……嫌な予感がする。 |
ヒルダ | 嫌な予感……。 |
ティトレイ | おいおいおい、やめてくれよ ! ?あんま不吉なこと言うのはさ……。 |
ユージーン | そうだな、すまない。気のせいだとは思うが―― |
ヒルダ | あの時の運命の輪のカード……。まさかマオのことだったのかしら……。 |
ティトレイ | な、なんだよ。それって一体―― |
ヒルダ | マオ !それに、その女の子…… ! |
ティトレイ | 見つけたのか ! ?なんだよ、だから遅かったんだな…… !あー、無事でよかったぜ ! |
マオ | ……ウン。 |
ユージーン | マオ ? |
村の女性 | ああ、よかった、無事だったのね ! |
村の男性 | あんたが見つけてくれたのか ! ?本当にありがとうよ !でも一体どこに……。 |
マオ | ……森の中にいたヨ。攫われたんだ……。 |
マオ | 隣の村の人に。 |
ティトレイ | お、おい、それ本当なのか ! ? |
マオ | ……ウン。 |
ユージーン | 待て、様子がおかしい。恐らくマオは―― |
村の女性 | なんてこと…… !あんまりだわ ! 今まであんなに仲良くしてたのに本当は私たちを恨んでいたのね ! ? |
村の男性 | もう我慢できねえ、こんなこと許しておけるか !武器を持て ! 隣村に乗り込むぞ ! |
村の人々 | おお ! |
ティトレイ | なっ……ちょ、ちょっと待てよ !武器って……そこまですることないだろ ! ? |
ヒルダ | ダメだわ、聞こえてないみたい。怒りに囚われてしまってる。 |
ユージーン | マオ、マオ !しっかりしろ ! |
マオ | っ ! ?あれ、ボ、ボク……。 |
ユージーン | 正気に戻ったか ? |
マオ | なんでボク、こんなところに……。……あっ ! |
マオ | みんな、大変なんだ !森の中にサレがいた ! |
全員 | ! ? |
マオ | 森の中で女の子が倒れててその子に駆け寄ったらサレが現れてそれで、ボクは―― |
マオ | ……何か、こてみたいなものを押しつけられたような気がして、そこから記憶が……。 |
マオ | どうしよう……。ボク、取り返しの付かないことを……。 |
ユージーン | マオ……。 |
ティトレイ | いや、落ち込むのはまだ早い !村の人たちは今出てったところだ !追いかければまだ間に合う ! |
ヒルダ | そうね。なんとしても止めましょう !サレの思い通りにさせるわけにいかないわ ! |
ユージーン | ああ、必ず止める。行くぞ ! |
男の子 | う、うぅ……。 |
アニー | ! |
アニー | ここにいたのね、よかった…… !村に戻ったらあなたがいなくなったと聞いて捜していたの。 |
アニー | 大丈夫 ? 怪我はしていない ? |
男の子 | だ……だいじょう、ぶ。でも、お姉ちゃん、気をつけて……。うしろ……。 |
アニー | 後ろ ? |
サレ | そう、気をつけて。誰がいるかわからないからね……フフ。 |
アニー | ッ ! サレ ! |
キャラクター | 7話【嗜虐の嵐9 戯れ】 |
アニー | やっぱり、あなたの仕業だったんですね。 |
サレ | フフッ……本当にキミたちはわかりやすくて愚かだよね。 |
サレ | さっきといい、今といい、全く同じ手段であっさり引っかかってしまうんだから。 |
アニー | さっき…… ? |
サレ | キミのところのチビッコだよ。彼もあっさりと引っかかってくれたなぁ。 |
アニー | マオ…… ! ? マオに何をしたんですか ! |
サレ | そのうちわかるさ。それにしてもキミたちの単純さには本当に感謝するよ。おかげで簡単に呼び寄せることが出来た。 |
サレ | おまけに、いい表情も見せてもらえたしね。驚愕と戸惑いと……嫌いじゃないよ、ああいう顔。 |
アニー | ……最低です。そうやって人の怒りや悲しみを楽しむなんて。 |
サレ | フフ、それが僕の好みだというだけだよ。どんな趣味のヒトがいたって構わないと思わないかい ? |
サレ | 僕は僕の楽しみや喜びを追い求める。キミたちはキミたちの楽しみや喜びを追い求める。それの何が悪いのかわからないね。 |
アニー | あなたの喜びが誰かの犠牲で成り立つものでなければわたしたちだってあなたの邪魔をしたりしません。でも、あなたの存在が他人を不幸にする。 |
サレ | だから僕を殺すって ? |
アニー | ……そこまでは、考えていません。 |
サレ | それが甘いって言うんだよ。僕とキミたちは明らかに主張が違う。相容れないのは理解しているはずだ。 |
サレ | それなのに僕を殺そうともしない。その程度の覚悟で何かを変えられるとでも ? |
ヴェイグ | ――犠牲を出さずに解決する方法を探す。それも覚悟の必要なことだ。 |
サレ | ……フフ。やあ、久しぶりだねヴェイグ。 |
クレア | やっぱりあなただったのね……。 |
ヴェイグ | アニー、無事か ? |
アニー | はい。行方不明になっていた男の子も、大丈夫です。 |
ヴェイグ | クレア、男の子と一緒に安全な場所へ。 |
クレア | わかったわ ! |
サレ | そんなに怖い顔しちゃって。僕と剣を交えようって ? |
ヴェイグ | …………。 |
サレ | それとも、愚かな話し合いでもしてみるかい ?僕のことも救えるかもしれないと思ってる ?それこそ聖女様の『救済』のように。 |
サレ | ご大層な看板を掲げても何も成し遂げられない。そんなくだらない理想をキミも追いかけるのかい ? |
ヴェイグ | オレたちは―― |
ティトレイ | ヴェイグ、ここにいたのか !……って、サレ ! ? |
サレ | やれやれ、次から次へと……。 |
ティトレイ | お前、マオに変なことしやがって…… !いや、でも今はこいつに構ってる場合じゃねえ !手を貸してくれ、ヴェイグ ! |
ヴェイグ | どうした ? |
ティトレイ | 両方の村の人たちで乱闘になってるんだよ !このままじゃ何人犠牲になるか……。 |
ヴェイグ | 何 ! ? |
サレ | あはは ! 本当に面白いね、ヒトっていうのは。ちょっとつついただけなのに、乱闘にまでなったんだ ?そこまでは期待してなかったな。 |
ティトレイ | サレ、てめえ…… ! |
アニー | 落ち着いてください。ヒトの心を弄ぶこの人を許せないのは確かです。でも今は、村の人たちを。 |
ヴェイグ | これ以上の犠牲は出せない。男の子はオレが連れて行く。ティトレイ、案内してくれ。 |
ティトレイ | ああ、こっちだ ! |
サレ | フフッ……本当に、面白いよ。心なんて、脆いものなんだ。本当はね……。 |
キャラクター | 8話【嗜虐の嵐10 森の騒乱】 |
ヴェイグ | ! ! なんだ、これは…… ! |
クレア | ああ、酷い乱闘に……。 |
ユージーン | ヴェイグ ! 来てくれたのか。 |
ヴェイグ | ああ。何が起こっているんだ ? |
ユージーン | 向こうの村で女の子が攫われた。それを隣村の人間のせいだと思い込み怒りで我を忘れているらしいが……。 |
ユージーン | どうやらその隣村でも同じことが起きていたらしい。その結果、ぶつかり合いになったんだ。 |
ヒルダ | ヴェイグ、あんたが連れている男の子って……。 |
ヴェイグ | 攫われた男の子だ。……サレの仕業だった。 |
ヒルダ | やっぱりそうだったのね……。 |
マオ | でも、こんな風に乱闘になっちゃったのはボクのせいなんだ。 |
マオ | はっきり覚えてないんだけど、余計なコトを言っちゃったから……。 |
ティトレイ | 違う !それだってサレが仕組んだことだ。マオは女の子を守っただけだろ ! ? |
アニー | 許せません……。どうしてこんな酷いことを ! |
ヒルダ | サレのことは気になるけれどまずはこの戦いを止めないと。 |
ヒルダ | まだ命を落とした人はいないけれどこのままではわからないわ。 |
ティトレイ | けど、どうやって止めるんだよ ! ?もう話が出来る雰囲気じゃねーぞ ! |
ヴェイグ | ……一時的に、気を失ってもらうしかない。 |
ヒルダ | それしかないかしらね……。 |
ティトレイ | クソッ……みんな、ごめん ! |
ヴェイグ | ……少し、落ち着いたか。 |
ユージーン | ああ。特に血の気の多かった人を止めたら小康状態にはなったようだ。 |
ユージーン | だが……長くは保たないだろうな。 |
クレア | やっぱり根本的な問題を解決しなければいけないんじゃないかしら。 |
ヴェイグ | ……サレ、か。 |
サレ | 呼んだかい ? |
全員 | ! ? |
サレ | フフ、そんなにも僕に会いたいと思ってくれていたとはね。 |
ヴェイグ | ……ああ。お前とはしっかり決着を付ける必要がある。 |
サレ | こっちも、そのつもりだよ。ずっと願っていたんだから。 |
サレ | キミたちが持つ『心の力』をぐちゃぐちゃに踏みにじることをね ! |
キャラクター | 9話【vsサレ】 |
サレ | ヒトの心をバカにして生きてきたけどキミたちの言う『心の強さ』は確かにあるんだと認めざるを得なかった……。 |
サレ | けど、この偽物の世界に来て改めて気づいたんだ。やっぱりヒトは愚かなものだ。 |
サレ | ある者は叶う見込みのない理想を掲げある者は中途半端な力を振るって自ら絶望し愚かな希望を夢見てあがき続ける。 |
サレ | そうやって歪む顔は本当に魅力的だったね……。特に帝国の連中はそんな奴ばかりでまったく退屈しなかったよ。 |
サレ | でも、どうせ偽物の世界だろう ?ここでしか生み出せない絶望も見てみたくなったんだよ。 |
ヴェイグ | それが、この混乱か。 |
サレ | ハハハ……。僕はきっかけを作っただけだよ。 |
サレ | あっちの村とこっちの村、それぞれで殺人事件を起こしそれぞれの村の名産物を落としておいたのさ。 |
サレ | たったそれだけのことで彼らは疑うこともなく互いに争いを始めた。そして……キミたちもやってきた。 |
アニー | ……わたしたちを呼び寄せるためにこんなことを起こしたと言っていましたね。 |
サレ | そう。これまでのキミたちの行動を考えれば間違いなく来るとわかっていたからね。 |
サレ | そして、もう少し騒ぎを大きくするためにこの刻印器を使った。 |
マオ | !それ、さっきボクが使われた…… ! |
サレ | ああ、そうだよ。グラスティンが玩具にしている【贄の紋章】とやらを焼き付けるための道具さ。 |
サレ | 暗示を仕込んだり、毒を仕込んだり手軽にヒトを利用できるって触れ込みでね。せっかくだから試させてもらったよ。 |
サレ | けれど、たった一度だ。それだけで二つの村は大乱闘になってしまった。 |
サレ | もう少し僕がお膳立てしてあげないといけないかと思っていたのに……つまらないね。 |
サレ | でも、これでわかったはずだ。ヒトは愚かだ。大抵のヒトの心は弱く流言にも甘言にもあっさりと負ける。 |
サレ | 偽物も本物も関係ない。それが現実なんだよ。 |
ティトレイ | 違う !確かに冷静じゃなくなることもあるけどお前みたいなヤツに負けたりしない ! |
サレ | そうかな ?そこのマオぼうやの言葉であっという間に大乱闘に繋がったのに ? |
マオ | それは……。 |
ユージーン | お前が利用したんだろう。まるで道具のように。 |
サレ | そうだよ。ヒトなんて道具と同じさ。それを使うことの何が悪い ? |
ヒルダ | あんたは知ったこっちゃないでしょうけどね使われた方はたまったもんじゃないわ。まして、悪事に荷担させるなんて ! |
クレア | 私たちは、確かに間違えることもある。暗い感情に囚われて、絶望することもある……。 |
クレア | それでも信じて前を向き続けていれば必ず笑顔になることが出来るわ。 |
マオ | ウン……あの変な道具を使われてたとはいえボクは取り返しの付かないことをしたと思う。 |
マオ | だったら、必ず解決するヨ !みんなが笑顔になれるように全力で頑張るから ! |
サレ | ……本当に不愉快だね、キミたちは。それが『心の強さ』っていうものなんだったらやっぱり徹底的に叩き潰すしかないね ! |
ヴェイグ | こういう形しかとれないのは残念だとは思う。だが―― |
ヴェイグ | 必ず決着を付ける。これが最後だ…… ! |
キャラクター | 10話【vsサレ】 |
サレ | くっ…… ! |
ヴェイグ | …………。 |
ティトレイ | 死んだ……わけじゃないよな ? |
ヴェイグ | ああ。しばらくすれば目を覚ますだろう。 |
男の子 | あ、あの……。 |
アニー | あなたは、さっきの……。 |
男の子 | 助けてくれて、ありがとう。でも……村のみんな、大丈夫かな…… ? |
アニー | そうね……。 |
ヒルダ | サレとの話は聞こえていただろうから詳しい状況はわからないなりに落ち着いてくれればいいんだけど……。 |
村の男性 | お、おい……どういうことだ ?俺たちはつまり、騙されてたのか…… ? |
村の女性 | 勝手に隣村のせいだと思い込んで武器を手にしてしまったっていうこと…… ? |
ユージーン | ……やはり、混乱しているようだな。 |
ヒルダ | 無理もないわ。誰も命を落とさなかったのは不幸中の幸いだけど怪我人は出てしまっているし……。 |
クレア | それに、それぞれ犠牲者が出ている事実は変わらないんですよね……。 |
ティトレイ | けど、今なら会話になるんじゃないか ?とりあえず、村の人たちにもわかるようにこれまでのことを説明しようぜ。 |
ティトレイ | 訳わかんねーままだったらお互いに話し合いもできねーだろうし。 |
アニー | そうですね……。みなさんに話をしに行きましょう。 |
マオ | 待って ! |
アニー | マオ ? |
マオ | ボクがみんなに説明するヨ。それに……ちゃんと、謝らないと。乱闘になっちゃったのはボクのせいだもん。 |
ユージーン | だが、お前は操られていたせいで……。 |
マオ | ウン、確かにそうだよ。でも、村の人たちにとってはボクのせいだってことに変わりはないと思うんだ。 |
マオ | だから、ちゃんと話したい。そうしないと、何も変わらないでしょ ? |
ユージーン | ……そうだな。 |
マオ | ヴェイグも、いいよね ? |
ヴェイグ | ……ああ。 |
男の子 | …………。 |
マオ | ……あ、あの ! |
村の男性 | あんたたちか。一体どうなってるんだ。そこに倒れている男が言っていたのは本当なのか ? |
マオ | うん……。このサレってヤツがみんなの村の人の命を奪って混乱が起こったんだ。 |
村の女性 | そんな……。それじゃ私たち本当に思い込みだけでこんな間違いを…… ? |
村の男性 | 俺、幼馴染だった隣村のあいつを酷く殴りつけちまったのに……。 |
マオ | みんながお互いに武器を持って争ったのはボクが間違ったことを言っちゃったからなんだ。だから……だから、本当にごめんなさい ! |
村の男性 | ごめんで済むかよ ! |
村の女性 | でも、さっきの話じゃ、この子も操られてたって……。 |
村の男性 | そんなのは、あいつらの都合だ !おかげでこっちは取り返しのつかないことをしちまったんだぞ ! 俺たちを巻き込みやがって ! |
村の女性 | いい加減にして ! この子だって被害者なのに……。――あなたも、謝らなくていいんだからね。 |
マオ | それでも……謝ります。ちゃんとわかり合うためにもそれが最初の一歩だと思うから。 |
村の男性 | ……争いの切っ掛けが偉そうに―― |
男の子・女の子 | やめてよ ! |
女の子 | このお兄ちゃんは、私を助けてくれたの !だから私は大丈夫だったの。お兄ちゃんは何も悪くないよ ! |
男の子 | そうだよ。それにね、悪いことをしたらごめんねって言って、喧嘩したら仲直りをするんだよ。そうしたら元通りになれるもん ! |
ヒルダ | ……フフ。こういうのは、子供たちの方が本当に大切なことをわかっているものなのよね。 |
アニー | ええ……その通りです。みなさんは、これまでずっと仲良くしてきたんですよね ? |
アニー | だったら、大丈夫。きちんと話をすれば元通りになれるはずです。人の心は、強いものだから。 |
クレア | それでも気まずいなら、美味しいものを一緒に食べてみたらいいと思います。 |
クレア | そうしたらきっと、その喜びを分かち合うことを思い出せるはずですから。 |
村の人々 | …………。 |
村の男性 | ……あんた、マオって言ったか。 |
マオ | え ? そうだけど……。 |
村の男性 | 済まなかった……。自分が悪いと思いたくなくてあんたを責めちまった……。 |
村の男性 | あんたが勇気を出して謝ってくれたように俺もきちんと謝って話をしてみるよ。お互いに、元通りになれるように。 |
マオ | うん ! きっと……ううん、絶対大丈夫 !ボクたちがこうして仲直りできてるんだからネ ! |
村の男性 | ああ。ありがとうな、マオ。 |
ティトレイ | 人はみんなやり直せるんだ。また仲良くやれるよ ! |
ヒルダ | ……帰って行ったわね。少し不安は残るけれど……。 |
ヴェイグ | 大丈夫だ。必ず、解決する。 |
サレ | うっ……。 |
全員 | ! ? |
サレ | く……そ……身体が、動かない、か……フフ……無様だね……。 |
ヴェイグ | サレ……。 |
サレ | なんだよ、その目は……。さっさととどめを刺せばいいだろう ? |
ヴェイグ | ……いや。お前を殺すことは目的ではない。 |
サレ | は ? なんだよそれ……僕に情けでも掛けているつもりかい ? |
ヴェイグ | ……お前が考えを改めると思っている訳ではない。だが、それでもお前がこの世界に現れたことにも何か意味があるんじゃないかと思う。 |
ティトレイ | せっかくやり直せるチャンスなんだ。頑張って生きろよ。 |
ヴェイグ | ……行こう。 |
サレ | は ? ふざけるな !クソ……クソッ !舐めてるのか ! ? |
サレ | 何がやり直せるだ……何が頑張れだ !殺せよ……責任持って殺していけよ !クソオオオオ ! |
グラスティン | そんなにお望みなら、殺してやるよ。 |
サレ | ! ! |
サレ | く……ぁ……グラス……ティン……。 |
グラスティン | ヒヒヒ、やっと見つけたぞ。帝国を抜けるのはどうだっていいがジュニアへの仕掛けを台無しにしやがって……。 |
グラスティン | さて……刻印器は返してもらうがお前の処理はどうしようか……。黒髪以外はただの肉だしなあ……。 |
サレ | く……っ ! |
グラスティン | ああ、でも死にたいんだったな ?だったら、聖女様に代わってお前を救ってやるよお ! |
グラスティン | ヒヒヒ、本望だろう ? |
サレ | ぐあっ……。 |
グラスティン | よかったな……ちゃーんと、死ねて。これが俺からの冥土の土産だ。あの世でまた会おうなあ、ヒヒヒヒヒ。 |
サレ | う……ぁ……ハハ……。 |
サレ | バカバカしい……やり直し、なんて……。どうせヒトは、同じことを繰り返すんだよ……。 |
サレ | 救いなんか、どこにも……ないね……―― |