キャラクター1話【配達1 魔物退治】
シオン…………はぁ。
アルフェンん ? どうした、シオン ?疲れたならそろそろ休憩するか。
シオンこのぐらいで疲れたりしないわよ。ただ、あなたのお人好しぶりにあきれていただけ。
アルフェンお人好しってことはないだろう ?行商人たちから正式に依頼があったんだ。この山道で魔物を退治してくれ、って。
アルフェンここはシスロデンと周囲の街をつなぐ要になっているんだ。安全に通れなければ俺たち自身の生活にも関わる。
シオン事情はわかっているわ。でもそうやって、来る依頼を全部受けていたら体がいくつあっても足りないわよ。
シオン私たちは何でも屋じゃないんだから。いくら戦いが落ち着いてきたからって――
アルフェン依頼がたくさん来ているってことはそれだけみんな困ってるってことだろう。放っておくわけにはいかない。
アルフェン俺たちだって街のみんなに助けられてきた。手を貸したいと思うのは、そんなに変か ?
シオンそこまでは言ってないわ。私はただ、限度があるって言いたいだけ。
アルフェン……まぁ、確かに最近はちょっと引き受けすぎたかもな。このところ毎日どこかで魔物退治をしているし。
シオン少しは自覚があるみたいでよかったわ。まったく、付き合うこっちの身にもなって欲しいものね。
アルフェン……それもそうだな。いつもありがとう、シオン。
シオン……どうしてお礼を言われたのかわからないんだけど ?
アルフェンいや、いつもこうして付き合ってくれるからさ。ちょっとした魔物退治ぐらいなら俺一人でも十分なのに。
シオンはあ……いいこと、あなた一人じゃいざというときに炎の剣も使えないし怪我も治せないでしょう。
アルフェンああ、そうだ。だからお礼を言ったんだ。シオンに助けられているから。
シオン……そう。それじゃ素直に受け取っておくわ。でも、だからといって――
アルフェン―― !シオン、危ない !
シオンきゃっ ! ?ちょっと、急に近づかないで――
アルフェンはっ !
魔物ギャウッ ! !
シオンなっ……魔物 ! ?いつの間に……。
アルフェンどうやら、もうすっかり囲まれてるな。すばしっこい奴らだ。
シオン大した魔物ではなさそうだけどこの数が相手だと気は抜けないわね……。まずはこの包囲をどうにかしないと。
アルフェンなら、一気に畳み掛けて突破するしかないな。援護してくれ、シオン。
シオンええ、任せて。
魔物グァァァゥゥゥッ ! !
アルフェン――来るぞ !
? ? ?ちょぉぉぉっと待ったぁぁぁ ! !
アルフェンな、何だっ ! ?
? ? ?今、助けてやるぜ !臥龍空破 !
魔物ギャゥッ ! !
シオンこの声―― !
? ? ?そこのあんたら、大丈夫か ?俺たちが来たからにはもう安心だぜ。
? ? ?――って、ああっ ! ?
二人ロウ ! !
ロウアルフェンにシオン ! ?
ロウおいおい、マジかよ…… !ずっと探してたんだぜ !
シオンそれはこっちの台詞よ。でも、「俺たち」ってまさか…… ?
ロウああ、あいつもすぐ後ろに――
? ? ?天雷の裁き…… !サンダーブレード !
? ? ?……ちょっと、ロウ !合図するから待ってろって言ったくせになんでのんびりお喋りしてるわけ ! ?
アルフェンリンウェル…… !
リンウェル……えっ ! ?シオン ! アルフェン !
アルフェン二人とも無事だったんだな……。どこかにいるんじゃないかとは思っていたがこんな場所で会えるとは。
フルルフルルゥ !
リンウェルフルルが、自分も数に入れろってさ。
アルフェンおっと、すまない……じゃあ、二人と一羽だな。本当に、無事でよかった。
リンウェルうん、よかった…… !よかったよ、また二人に会えて !
ロウおいおい、大丈夫か ?声が泣きそうになってるぞ、お前。
リンウェルなっ、泣いてなんかいないってば !
アルフェン二人とも、今までどうしていたんだ ?それにその格好は…… ?
ロウあー、それは……。話せば長くてさ。
シオン……だったら詳しいことは後で聞くわ。三人とも、まだ魔物に囲まれたままなのを忘れたわけじゃないわよね。
アルフェンそうだな。こいつらを片付けてからゆっくり話そう。手伝ってくれるか、二人とも ?
ロウおう、あったり前だろ !
リンウェルうん ! みんなで一気に蹴散らしちゃおう !

キャラクター2話【配達2 再会】
アルフェン……これで全部片付いたか。
ロウへへっ、やっぱ俺たちが揃えばこの程度の魔物なんて屁でもねえな !
リンウェルまたすぐ調子に乗るんだから……。本当に、二人と合流できてよかったよ。ロウだけじゃ心もとなくてさ。
ロウ心もとないって、おい、ここまで来られたの俺の拳と冷静な判断力のおかげだろ。
リンウェルすぐ魔物に突っ込んでく人に言われても全然説得力ないんですけど。
シオン確かに、全くないわね。
ロウお前ら、ちょっとひどくねぇ ! ?
アルフェンははは……、二人とも元気そうだな。聞きたいことは山ほどあるんだがまず何から聞いたものか……。
シオン……その服はどうしたの ?初めて見る衣装だわ。
リンウェルあ、やっぱりこれ気になる ?えへへ、結構かわいいでしょ。
シオンええ、気品があって悪くないわね。赤が強くて普段着には少し派手だから催事で着るものかしら。
リンウェルへぇ、さすがはシオンだね。アルフェンはどう思う ?
アルフェン服のことはよくわからないが二人とも似合ってると思うぞ。お揃いで買ったのか ?
ロウいや、そういうわけじゃねえから !
リンウェルそうだよ ! 変なこと言わないでよね。ちょっと事情があって借りてるだけだよ。
アルフェンそ、そうか……すまん。
シオンその事情っていうのは……さっきからそこに座っている犬と、隣のソリにも関係あるの ?
犬たちワン !
ロウあっ ! お前ら、追いかけて来ちまったのか。待ってろって言ったのに。
犬たちクゥ〜ン……。
リンウェルちゃんと繋いでおかなかったからでしょ。この子たちのせいにしないの。ね、みんなは悪くないからね。
犬たちバウ、ワウ !
アルフェン……仲がいいみたいだな。その犬たちも、借りてるのか ?
リンウェルうん。実は今、この犬ソリで色んな街の子供たちにプレゼントを配る仕事を手伝ってるんだ。この服もそのための衣装なの。
シオンプレゼント……ああ、クリスマスのことね。そのお祭りのことなら私たちも聞いたわ。サントコロとかいう……。
ロウサンタクロースね。そう、それ。次はシスロデンに配りに行くとこだったんだ。
ロウそしたら、山道の途中で誰かが魔物に囲まれてるのが見えたからさ……。まさか、アルフェンたちだとは思わなかったぜ。
アルフェンなるほど、そういうことだったのか……。だったら遅かれ早かれ、俺たちとは会えていたかもしれないな。
シオンそうね。私たちは今、シスロデンに拠点を置いているから。
アルフェン二人とも、よかったらこのまま俺たちの基地まで来てくれないか ?ここでずっと話し込むわけにもいかないし。
シオンそれがよさそうね。説明しなければならないことがたくさんあるもの。この世界のことも……。
リンウェル……じゃあ、二人は何か知ってるんだね。ここがどういう世界で、私たちに何が起きたのか。
アルフェンああ。こっちでも協力しあえる仲間ができてな。彼らに色々と聞かせてもらった。
リンウェルわかった。それじゃ、シスロデンに行ってお互いに情報共有しよう。
ロウそうと決まれば、早速出発だな。おーい、お前らも行くぞ !
犬たちワン !
アルフェン…………。
シオン…… ?どうかしたの、アルフェン ?
アルフェンいや、さっきの魔物のことが少し気になって。なんというか……微妙に違和感があったんだ。
リンウェル違和感 ?
アルフェンああ。俺たちは行商人の依頼を受けてあいつらを退治しに来たが、聞いていた話より手応えがなかったような気がしてな。
シオン……確かにそうね。数は多かったけど、あれぐらいなら護衛を雇えば十分追い払えたはずだわ。
ロウそんなに深く考えることないんじゃねえか ?俺たちが一緒だったんだから魔物なんか余裕で勝てて当然だって !
リンウェルまーた、調子に乗って……。
ロウでも、事実だろ。
アルフェン……そうだな、ロウの言う通りかもしれない。離れている間に、二人がどれだけ頼もしい存在か俺は忘れていたみたいだ。
リンウェル頼もしい……えへへ、そうかな ?
ロウ……お前も十分調子に乗ってんじゃねえかよ。
リンウェルの、乗ってないってば !
シオンいいから、早く戻りましょう。そろそろ暖まれる場所に行きたいわ。
アルフェンなんだ ? ずいぶん急ぐんだな、シオン。あ……もしかして腹が減ったのか ?
シオン…………誰もそんなことは言ってないでしょう。勝手に決めつけるのはやめて。
ロウ腹減ったんだな。
リンウェルお腹が空いたんだね。
フルルフルルルゥ。
シオンはぁ……わかったわ。認めるわよ。認めるから早く戻りましょう。……やっぱりもう一皿食べておくんだったわ。

キャラクター3話【配達3 配達の理由】
ロウ……なるほどな。ダナでもレナでもない別の世界か。ま、そんなことだろうとは思ってたぜ。
リンウェルロウ、よくそんなに冷静でいられるね……。
ロウんなこと言ったってよ。どう考えても、ここが俺たちの知ってるダナじゃねえってのはわかってただろ。
リンウェルそれは分かってたよ。分かってたけど……。街の様子も、本に書いてある歴史とかも何から何まで全然違ってたし。
リンウェルでも、やっぱり戻れないんだって思ったら……なんか、気持ちの整理がつかなくて。
フルルフルルゥ……。
アルフェン混乱するのは当たり前だ。焦らず、少しずつ考えていけばいい。
リンウェルうん……、そうしてみる。
ロウ……で、こっちに来てからアルフェンたちはどうしてたんだ ?
アルフェン俺たちは、ここシスロデンで抵抗組織に参加してずっと帝国と戦っていた。
シオン誰かさんが首を突っ込むおかげで、なし崩し的にね。
ロウははは…… ! そうか、やっぱりな。思ってた通りだぜ。
アルフェン? 何が「やっぱり」なんだ ?
ロウいや、帝国とかいうのが暴れてるって知ってからアルフェンなら絶対こういう連中を放っておくわけがねえと思ってたんだ。
ロウだから、俺の予想が当たって嬉しいんだよ。……あんたの芯が変わってなくてさ。
アルフェンそういうことか……。期待に添えてよかった、ってところかな。
ロウ張り合うわけじゃねえけど、俺たちも似たようなことしてたんだぜ。な、リンウェル ?
リンウェルうん。私たちがこの世界に、えっと――『具現化』されたのは、小さな街の近くだったの。
リンウェルその街もやっぱり帝国に脅かされてて……ここよりずっと小さい抵抗組織がギリギリで持ちこたえてる状態だったんだ。
ロウだから、俺たちも組織に参加して戦ったんだ。この世界の事情はさっぱりだったけどただ見てるだけなんてできるわけねえからな。
リンウェルうん。ここにはレナとダナの対立はないけど大きい力に押しつぶされそうな人たちの姿は元の世界のダナ人と一緒だった。
アルフェン……確かにそうだな。
ロウそんなこんなで帝国と戦ってたら組織の連中からシスロデンの噂が入ってきてさ。
シオン噂 ?
リンウェルそう。顔半分に仮面をつけた男の人と銃を持った女の人がいるって。これは絶対アルフェンとシオンだと思ったよ。
ロウ二人とも目立つからな。探す手間が省けたと思ったぜ。
アルフェン俺たちも、どこかの街に鏡映点がいるらしいって話は聞いていたんだ。どこの街か調べていたんだがきっとロウとリンウェルのことだったんだな。
ロウお互い情報だけは入ってたってわけか。
リンウェルすぐにでも確かめに行きたかったんだけど戦いの最中じゃなかなか動けなくて……。
ロウ最近、ようやく街の状況が落ち着いたんでシスロデンに確かめに行くつもりだったんだ。まさか道中でバッタリ会うとは思わなかったけどな。
シオンじゃあ、シスロデンへは私たちを捜しにきたの ?さっきはプレゼントを配りにきたと言っていたけれど。
ロウああ、そのことか……。二人を捜しに行く途中で、プレゼント配りも引き受けることになっちまったんだよ。
リンウェルえっと、さっきの山道の途中に教会があってね。その教会は、身寄りのない子供たちを保護してあげたりしてるんだ。
リンウェルそれで毎年、クリスマスになると近くの街や村の教会にプレゼントを届けて同じような子供たちに配ることになってるんだって。
シオンなるほど……施し、みたいなものかしら。
リンウェルそう言っちゃうと少し語弊あるかな。プレゼントはプレゼントだよ。
シオンそれで、どうしてあなたたちがそのプレゼントを運ぶことになったの?
ロウさっき俺たちが倒した魔物のせいだよ。あいつらが山道に住み着いて危険だからってプレゼント配りは中止になりかけてたんだ。
ロウけど、せっかく子供たちが楽しみにしてんのに中止なんてもったいねえだろ。だったら配ってやるって引き受けたんだよ。
アルフェンへぇ、偉いじゃないか。
リンウェルちょっと ! ロウが一人で考えたみたいに言わないでよね。二人で引き受けたんだから。
ロウ別に一人でなんて言ってないだろ。……っと、とにかくそういう訳さ。
シオンそのプレゼント、まだ残っているみたいだけどこれから配りに行くの ?
リンウェルうん。この後、シスロデンの教会に行くつもりだよ。
アルフェンだったら、俺たちと一緒に行かないか ?まだ話し足りないし、街の中も案内するぞ。
ロウおっ、そりゃ助かるぜ。俺たちの知ってるシスロデンとは様子も違うみてえだし、寒い中迷いたくねえからな。
リンウェルなんだか、元の世界とはあべこべだね。私たちがシスロデンを案内してもらうなんて。
アルフェン……そういえば、向こうではリンウェルに導かれてシスロデンまで来たんだったな。なんだかずっと昔のことみたいだ。
シオン懐かしむほど昔じゃないでしょう。ほら、行くなら早くするわよ。

キャラクター4話【配達4 最後の配達】
ロウよしっ ! これで教会の子供たちに全部プレゼントを渡せたな。
リンウェルみんな、喜んでくれてたね。私もなんだかすごく嬉しい……。
アルフェンそうだな。子供たちが笑ってる姿を見るとこっちも笑顔になる。
シオン……まぁ、悪い気はしないわね。
リンウェルうん、本当に……。
ロウどうした、リンウェル ?なんかボーッとしてねえか。
リンウェルえ ? あ、うん……。なんか、ちょっとしんみりしちゃったの。
リンウェル私ももう両親とは会えないしあの子たちの気持ち考えたらなんか、ね。
アルフェンリンウェル……。
リンウェルあ、別に落ち込んでるわけじゃないからね !ただ、自分が子供の頃にああやってプレゼントをもらえたら、嬉しかっただろうなって。
リンウェルだから私、このクリスマスってお祭り大好きだよ。誰かが誰かにプレゼントをあげるってすっごく素敵なことだよね。
ロウ……おう。そうだよな。プレゼントを贈るってのは、いいことだよな。うん、うん。
アルフェンロウ、どうしたんだ ?なんかそわそわしてないか。
ロウえ ! ? いや、別に……なんでもねえよ ?
シオンなんでもないって反応には見えないわね。まあ、私には関わりのないことだけど。
ロウなんか、傷つくなその言い方……。
リンウェル? なんの話してるの ?
ロウな、なんでもねえって !ところで、アルフェンたちはこれからどうすんだ ?
シオン露骨に話題を変えたわね……。
アルフェンそのことなんだが、俺たちの基地で抵抗組織のみんなとクリスマスパーティーを開くことになってるんだ。
リンウェルえっ、パーティー ! ? すごい !楽しそう !
アルフェンああ、だから二人も仕事が終わったのなら俺たちと一緒に参加しないかと思って。
ロウシオンも参加すんのか ?人混みとか好きじゃなさそうだけど。
シオン……顔を出すだけよ。最低限の社交辞令ぐらいわきまえてるわ。
アルフェン料理もたくさん用意してるぞ。ケーキにステーキ、ローストチキンもな。
リンウェルあー……。
シオンべ、別にそれだけが理由じゃないわよ。
ロウ……でも、理由の一つではあるんだな。
アルフェンそれで、どうする ?二人も来るだろ ?
ロウそりゃもちろん行きたいけどよ。あともう一箇所、プレゼントを届けなきゃならない村があるんだよ。
リンウェルでも、そこが最後だから !その村に届け終わった後なら参加できると思う。っていうか、絶対参加するよ !
アルフェンわかった、じゃあ俺たちは先に戻ってパーティーの準備をしておこう。もし手が必要だったら、遠慮なく言ってくれ。
リンウェルうん、ありがとう !さあ行くよ、ロウ !
ロウあー、それなんだけどな、リンウェル。
リンウェルえ ? どうしたの。
ロウお前は先にパーティーに参加してていいぜ。次の村には俺一人で行ってくるからよ。
リンウェルえっ…… ?
リンウェルちょ、ちょっと、急に何言い出すの ! ?一人でって……どういうこと ?
ロウいや、別に深い理由なんかねえって。単に一人で行きたい気分っていうか、みたいな ?
リンウェル何それ ! ? 今まで二人で頑張ってきたのにそんなあやふやな理由で納得できないよ !
ロウいいだろ別に。お前だって損な話じゃないし。
リンウェルやだよ、私も一緒に引き受けたんだから !最後までやりとげたいの。
リンウェルそれに、さっきみたいにまた魔物に襲われるかもしれないよ。ロウ一人じゃ食べられちゃうかも。
ロウだったらアルフェンについてきてもらうさ。いいだろ、アルフェン ?
アルフェンえ ? ああ、別にかまわないが……。
リンウェルあっそう。つまり、私と一緒にいたくないってわけ。ふーん、なるほどね。
ロウそうは言ってねえだろ !
リンウェルじゃあどういうわけか言いなさいよ !
ロウいや、だからそれはだな…… !
フルルフルルゥ……。
シオンアルフェン……。そろそろ、なんとかしてもらえる ?このままだと一日中やってるわよ。
アルフェンお、俺がか ?
シオン止められるのは他にいないでしょう。私は嫌よ。
アルフェンはぁ……そうだな。キサラがいたらパッと収めてくれそうなんだが。
アルフェン……二人とも、その辺にしておかないか。プレゼントを子供たちが待ってる。
リンウェルあ……うん。ごめん。私、つい……。
アルフェンプレゼント配りには俺とロウが行くからリンウェルはシオンとパーティの準備を頼む。それでいいか ?
シオンわかったわ。
リンウェル……うん。それでいいよ。
ロウリンウェル…… !
リンウェル…………フン。
ロウくそっ……。
アルフェン行くぞ、ロウ。リンウェルのことは、シオンが見てくれるさ。こっちも早いところ仕事を済ませよう。
ロウああ、わかってるよ。
ロウハァ……何やってんだ、俺。こんなつもりじゃなかったのに……。

キャラクター5話【配達5 村への道】
ロウ……行けども行けども森ん中、だな。
アルフェンああ。こう細い道が続くと、せっかくのソリもあまり速度が出せないな。
犬たちクゥ〜ン……。
ロウお前らが悪いわけじゃねぇよ。ちゃんとプレゼント引っ張ってくれてるだろ。
アルフェン目的地の村は、ずいぶん山奥にあるんだな。雪もどんどん深くなってきた……。道を見失ったら大変だな。
アルフェンロウはシスロディアに俺より長くいたしこういう雪道には慣れているのか ?
ロウ…………。
アルフェンロウ ? ……ロウ !
ロウん ? ああ、悪い。ちょっとボーッとしちまってた。
アルフェンらしくないな。やっぱり、リンウェルのことが気になってるのか ?
ロウ別に……気にしちゃいねえよ。あんな奴のこと。
アルフェンロウ。ここにリンウェルはいない。無理に話せというつもりはないが俺にまで隠さなくてもいいんじゃないか ?
ロウ……やっぱバレバレだったか ?
アルフェンいつになく強情だったからな。
ロウったく……。〈蛇の目〉で、他人の嘘は散々見慣れてんのに自分の嘘は下手くそなままで嫌んなるぜ。
アルフェン俺は、それがロウのいいところだと思うけどな。
ロウ敵わねえな。わかった、んじゃ、話すよ。でも、絶対に笑うなよな。
アルフェンああ、もちろんだ。
ロウ実は――
ロウ……ってわけだ。
アルフェンふっ……あはははっ !
ロウなっ……おい ! アルフェン !絶対笑うなって言っただろ !なに速攻、破ってんだよ !
アルフェンす、すまない。なんていうか、嬉しいような暖かいような感じがして、つい。
ロウいいけどよ、別に……。しょうもない理由かもしれねえけど俺なりに真面目に考えたんだぜ。
アルフェンわかってる。馬鹿にしたわけじゃないんだ。ロウらしい、心のこもったやり方だと思う。
ロウ……あいつ、機嫌直るかな。
アルフェンああ、きっと伝わるさ。俺が保証する。
ロウ……だといいな。
アルフェンよし ! それじゃ、そのためにも早くプレゼントを配ってシスロデンに戻らないとな。
ロウああ。……悪いな、付き合わせちまって。
アルフェンこのぐらい、いくらでも付き合うさ。仲間だろう。
ロウへへ…… !
ロウおっ、ここからは道が広くなってんな。お前らの出番だぜ !
犬たちワン ! ワンワン !
アルフェン犬たちも気合が入ってるみたいだな。ロウが元気になったのが伝わったのかもしれない。
ロウさぁ、どうだかな。こいつらリンウェルになついてるからあいつのためってのがわかったんじゃねえか ?
犬たちウゥー……ワン !
ロウははっ、やる気は十分だな !準備いいか、お前ら ?
犬たちワン !
ロウよっしゃ、全速力で行くぜぇぇっ !
アルフェンおおっ ! ? 速い !こ、これは、昂ぶるな…… !
ロウ振り落とされんなよ、アルフェン !おらおらおらぁぁーっ !

キャラクター6話【配達6 近辺の魔物】
教会の子供たちプレゼント、ありがとう !
ロウおう、大事にしろよな。来年もいい子でいるんだぜ !
アルフェンお疲れさん、ロウ。
ロウなんかこそばゆいな、こういうの。とにかく無事に配り終えられてよかったぜ。
アルフェン不思議な風習だな、クリスマスっていうのは。カラグリアの子供たちも、こんな風にプレゼントをもらえたら喜んだだろうにな。
ロウ俺たちの本来の世界じゃ自分が生きるので精一杯だったもんな。
アルフェン子供たちにとってはこっちの世界の方がずっと生きやすいんだろうな……。
ロウま、向こうだって領将ぶっ倒して壁をぶっ壊してきたんだから少しはマシになってんだろ、きっと。
アルフェン……そうだと思いたいな。いや、そう信じることにしよう。
アルフェンところで、プレゼントといえば……例のものはちゃんと手に入ったのか ?
ロウああ、ばっちりだぜ !さっき店に寄って、最後の一個をギリギリ滑り込みで買ってきた。
アルフェンよし。なら、この村での用事は済んだな。シスロデンに戻ろう。
ロウこれであいつが喜んでくれりゃあいいんだけどな……。
村人……おい、あんたたち。これから向こうの道を通って降りるつもりかい ?
ロウああ、そうだけど……。なんか問題でもあるのか ?シスロデンに行く道は他にないだろ。
村人そうなんだが……今はやめた方がいい。危険な魔物の群れが出たんだよ。
アルフェン魔物…… ?来た時には見なかったが。
村人そりゃ、運が良かったな。最近ずっとこの辺の山をねぐらにしてる奴らでね。あちこちの道に出没しては行商が襲われてる。
ロウん…… ?それって、俺たちが会った時に倒した奴らのことじゃねえのか ?
村人倒した ? いや、そんなはずはないぞ。ついさっき、村の若いのが襲われかけたんだ。
ロウ……ってことは、あの時の奴ら以外にもまだ残ってたのか。
アルフェンもしかすると、俺たちが倒したのは群れの一部だけで、残りの魔物たちはこっちに移動した後だったのかもしれないな。
ロウそういや、手応えがなさすぎるとか言ってたな。こっちに本命がいたってわけか…… !今度こそ、まとめてぶっ倒してやるぜ !
アルフェンシスロデンに戻るには、そうするしかなさそうだな。いずれにせよ、魔物たちを放置すればこの村の交易も途切れたままになってしまう。
村人ま、魔物を倒すって……本気か ?
アルフェン大丈夫、こういうのには慣れてるんだ。魔物が出た場所を教えてくれ。
村人あ、ああ……。
ロウよーし、待ってやがれ魔物ども !
アルフェンこの辺りか……油断するなよ、ロウ。どこから魔物が現れるかわからない。
ロウ誰に言ってんだよ、アルフェン。俺はいつでも油断なんかしないぜ。常に戦場にいる心構えで……。
アルフェン! ロウ、後ろだ !
ロウん ? おおわっ――と !
魔物たちガウッ ! !
ロウあぶねっ !くそっ、油断したぜ……。
アルフェン……油断はしないんじゃなかったのか ?
ロウそりゃ言葉の綾ってやつで……。……それより見ろよ、あれ。
大型の魔物ガオオォォーンッ ! !
アルフェン周りの奴らとは格が違うな。あれが群れの親玉ってわけか。
ロウってことは、あいつさえぶっ倒せば他の奴らも散り散りになるだろうな。
アルフェン……問題は、その前に周りの魔物たちを突破しなきゃならないってことだ。
ロウだったら、俺たち二人でまとめて吹っ飛ばすっきゃねえな !
アルフェン……だな。よし、行くぞロウ !
ロウおうっ ! 叩き潰してやるぜ !
アルフェン爪竜連牙斬 !
アルフェンなんだ…… ! ?急に魔物たちが退いたぞ。
ロウ俺たちの一撃に恐れをなした……ってわけじゃなさそうだな。……なんか嫌な予感がするぜ。
アルフェン……ああ。何か妙な音も聞こえる。地響きのような……。
ロウ! おい…… !雪山で地響きって、そりゃ……。
ロウ雪崩だっ ! くそっ、マジかよ !逃げろアルフェン !
アルフェンダメだ、間に合わな――うわぁぁっ ! ?

キャラクター7話【配達7 不安】
リンウェルあ、シオン…… !そっちの方にある星飾り、とってもらえる ?木の上に飾りたいんだ。
シオンええ、いいわよ。……ここに置くから、持っていって。
リンウェルありがと。じゃ、もらっていくね。
リンウェルよし、これをここに付けてっと。……うん、ばっちり !
リンウェルふふっ。やっぱり楽しいな、クリスマスって。こんなこと元のシスロデンじゃ全然しなかったよ。
シオン……でしょうね。ガナベルトが統治していた頃にこんなパーティーができたとは思えないもの。
抵抗組織員あ、あの……シオンさん !こっちの飾り付けなんですけど……。なんか物足りなくないっすか ?
シオン配置の間隔が悪いんじゃないかしら。部屋全体の見映えを考えて、向こうの壁の飾りをこっちに移したらどう ?
抵抗組織員おお、なるほど !さすがシオンさん…… !
シオン……別に大したことじゃないわ。
抵抗組織員いえ、ありがとうございます !
リンウェルへぇー……。
シオン何 ?
リンウェルううん、シオンも結構ここに馴染んでるんだなって。組織の人たちともちゃんと話してるし。
シオン組織にいるのはアルフェンに付き合っているだけよ。馴れ合いもしないし、特に愛着もないわ。
リンウェルそんな風に見えないけどなぁ……。
リンウェルそれにしてもシオン、結構落ち着いてるよね。別の世界に来たっていうのに。
シオン……落ち着いてなんかいないわよ。全てが変わってしまったんだもの。
リンウェルでも、悩んだりしてるようにも見えないよ。シオンだって、向こうで目的があったんでしょ。
シオン思い悩んでどうなることでもないもの。それに……誰かさんのおかげで悩むような暇もなかったわ。
リンウェル誰かさん……って、アルフェンのこと ?
シオン他にいないでしょう。こっちの世界でも相変わらず他人にお節介を焼いてばかりで……。私もあちこち付き合わされたわ。
リンウェルあはは、アルフェンらしいね。
シオン本当に、あきれるぐらい変わらないわ。良くも悪くも……。
リンウェル良くも……ってことはいいところでもあるって認めてるの ?
シオン別に、褒めているつもりはないわよ。……でも、少しだけ助けられたとは思うわ。
シオン急に、周りの全てが変わってしまったから……アルフェンが今まで通りだったおかげで私もあまり考え込まずにいられたのかもしれない。
リンウェルそっか……。その気持ち、わかる気がするな。
リンウェル私もね、こっちに来てからロウには結構助けられたんだ。
リンウェル私、最初はすごく不安でさ。アルフェンたちがいなくなって、自分がどこにいるのかもわからなくて……。
リンウェルだけど、ロウがずっと一緒にいて落ち着かせたり、元気付けたりしてくれた。
シオンさっきはロウのこと、頼りにならないとか言っていた気がするけど ?
リンウェルそれは、だって……本人に言ったら調子に乗るでしょ。ロウのせいで苦労したのも嘘じゃないし。
リンウェルすぐ突っ走るし、お馬鹿だし。私のこと子供扱いしてくるし。
シオンふふっ。そっちも相変わらずだったってことね。
リンウェルそうだね、良くも悪くも。……きっと私も、ロウがいつも通りでいてくれたからこの世界でやってこられたんだと思う。
シオンだったら、さっきはあんな風に強く言わなければよかったんじゃない ?
リンウェルそっ、それは別の話だから !
リンウェルっていうか、今までそうやって二人で頑張ってきたからこそ、私は怒ってるの。急に一人で勝手に決めて、置いてけぼりにしてさ !
シオンどうなのかしらね……。さっきの様子だと、ロウも何か考えているみたいだったけど。
リンウェル何かって、何 ?
シオンそこまではわからないけど。本人が戻ってきたら聞いてみたらどう ?
リンウェル……それもそうだね。早く戻ってくるといいな、二人とも。
抵抗組織の伝令おーい ! みんな、ちょっと準備を中断してくれ !緊急の伝達事項がある。
シオン……いきなり、何事なの ?
抵抗組織の伝令北の山奥で雪崩があったらしいんだ。今のところ、直接被害があったって話はないが山道が埋まっちまったそうだ。
リンウェルちょっと待って…… ! ?それって、ロウたちがプレゼントを届けに行った場所じゃない !
シオン……そういえば、二人とも戻ってくるのが遅いわね。その雪崩のせいで足止めされているのかしら。
リンウェル……ま、まさか雪崩に巻き込まれてたりしないよね ?ねえ、他に情報はないの ! ?
抵抗組織の伝令さぁ、俺もこれ以上のことは……。少し経てばもっと情報が入ってくると思うが。
リンウェルじゃあ、待つしかないのかな。どうしよう、なんだか心配になってきちゃった……。
シオン情報が届くのをじっと待つより自分の目で確かめた方が早いわ。行くわよ、リンウェル。
リンウェルう、うん…… !そうだね、そうしよう !
シオンアルフェン……。本当に、世話が焼けるんだから。
リンウェル…………。
シオン……何 ?
リンウェルううん、なんでもない。急ごう。二人を見つけなくちゃ !

キャラクター8話【配達9 雪崩の後】
リンウェルはぁ、はぁ……。うぅ……山道、きついなぁ。
シオン……雪崩があったのはこの辺りね。確かに、道が雪で埋まっているわ。
リンウェルアルフェンたち、見当たらないね。ここまでの道でもすれ違わなかったし……。
シオン……そうね。
リンウェルそれじゃ、やっぱり二人とも雪崩に巻き込まれちゃったの…… ?
リンウェルあ ! わ、悪い方に考えちゃダメだよね。村の方にいるのかもしれないし !
シオン……まだ何もわからないわ。もっと調べてみないと。
リンウェル! 待って。何か聞こえる……犬の声だよ !
犬たちワン ! ワンワン !
リンウェルみんな ! よかった、無事で……。
シオンでも、いるのは犬だけよ。二人はどこに行ったの ?
リンウェルソリもないし、やっぱりこの雪の下に…… ?こうなったら星霊術で雪を溶かして――
フルルフルル ! フルルゥ !
リンウェル……えっ、やめた方がいい ?そっか、二人が埋まってたら燃えちゃうもんね。じゃあどうすれば……。
犬たちワンワン ! ワンワン !
シオン……リンウェル。さっきから犬があなたの靴を引っ張ってるわよ。もしかして、どこかに連れて行きたいんじゃない ?
リンウェルえっ ? ……そうなの ?
犬たちワン !
リンウェルあ ! 走って行っちゃった……。
シオン追いかけましょう。今は他に手がかりがないわ。
リンウェルうん。行くよ、フルル !……フルル ?
フルルフルゥ……。
リンウェルそっか……フルルも心配なんだね。
リンウェル大丈夫だよ、フルル。二人は絶対に見つけるから。
フルルフル……フルルゥ !
リンウェルそうそう、その意気だよ。待っててね、アルフェン……ロウ !
ロウくぁ……っ !ちっくしょ……いてて。
アルフェン大丈夫か、ロウ ?
ロウああ、どうにか……。
ロウ……って、おい !アルフェン、お前ほとんど雪ん中に埋まっちまってるぞ ! ? そっちこそ大丈夫かよ !
アルフェンどうやら、そうらしいな……。首が動かなくて、よく見えないんだ。骨は折れていないと思うんだが。
ロウ痛みも寒さも感じねえからって危機感なさすぎだぜ……。
ロウ待ってな。すぐ掘り出してやるから。
アルフェン……ふぅ、助かった。ありがとう、ロウ。
ロウ気にすんなって、お互い様だ。……で、俺たちどこまで流されちまったんだ ?
アルフェン全くわからないな……。元の場所からだいぶ離れてしまったのは確かみたいだが。
ロウソリも完全に壊れちまってんな。犬たちが無事ならいいんだけど……。
アルフェンロウが買った例のものは ?まだ持っているか ?
ロウわからねえ。どっかに埋まってんだろうけどさすがに掘り返してる場合じゃねえよな……。
アルフェンあとでまた探しにくればいいさ。ひとまず、道のあるところまで戻ろう。流されてきた方向は大体わかる。
ロウ! いや……アルフェン。そう甘くねえみたいだぜ。
魔物たちグルルル……。
アルフェンあいつら…… !俺たちが雪崩で弱ってるのを見越してここまで追ってきたのか……。
ロウ魔物のくせに、小狡いこと考えやがる。
アルフェンいや、きっと魔物だからだろう。獲物を仕留めるための手段なんか選んじゃくれない。
ロウへっ、だったらこっちも遠慮なしで行くだけだ。さぁ、かかって来やがれ !

キャラクター9話【配達10 ハッピークリスマス】
ロウくそっ、倒しても倒してもキリがねえ…… !親玉もまだ出てきてねえってのに……。
アルフェンく……、思うように体が動かない。さっきの雪崩で、思った以上に体力を消耗したらしいな……。
ロウ俺も、足がついてこなくなってきやがった。……このままじゃマズいぜ。
アルフェン来るぞ、ロウ !
魔物たちガウッ ! グァァァッ !
ロウちくしょう…… !こんなとこでやられてたまるかよっ !あいつにも、まだ――
? ? ?清浄の螺旋をなせ…… !
アルフェン! この声は…… !
リンウェルメイルシュトローム !
魔物ギャァァァッ !
ロウリンウェル ! ?お前、どうして――
シオンよそ見している場合じゃないでしょう。……ルーナイェシェット !
アルフェンシオン…… !二人とも、来てくれたのか。
シオン話は後よ。さっさとこいつらを片付けましょう。
アルフェンああ、そうだな !俺たちが揃えば、このぐらいどうってことはない !
ロウっしゃあ ! 片付いたぜ。
シオンアルフェン、傷を見せて。どうせまたボロボロになっているんでしょう。
アルフェンああ……すまないな。シオン。
犬たちワン ! ワワン !
ロウおっ ! ? お前ら、無事だったのかよ !はは、巻き込まれてなくてよかったぜ。
シオンこの子たちがここまで導いてくれたのよ。雪崩の前兆に気づいて、避けていたんでしょう。あなたたちより犬の方が賢かったみたいね。
アルフェンはは……、そうかもしれないな。助けに来てくれてありがとう、みんな。
ロウああ、マジで危ないとこだったぜ。……ありがとな、リンウェル。
リンウェル…………。
ロウ……やっぱ、まだ怒ってんのか ?
リンウェル当たり前でしょ !本当に本当に心配したんだから !
ロウわかってるよ !心配かけちまって悪かったって。
リンウェル全然わかってないよ !二人に何かあったらって考えたら本当に怖くて、苦しかったんだから…… !
アルフェンリンウェル……。
リンウェルロウとだって、あんな喧嘩したままで二度と会えなくなっちゃったらどうしようって……。
ロウそうか……。本当言うと、俺も同じこと考えてたぜ。お前に謝る前に死にたくねえ、ってさ。
リンウェル……本気でそう思ってるんだったらちゃんと説明してよ。どうして、急に一人で行くなんて言い出したのか。
ロウそうだな……もう教えちまうか。肝心なアレもなくなって、計画はおじゃんだしな。
リンウェル計画…… ?
ロウああ。お前に――
ワン ! ワン !ワワワン !
ロウわっ ! な、なんだお前 ?急に割り込んできて……。
リンウェルん ? その子、口に何かくわえてるよ。プレゼントの包み…… ?
ロウあ ! そいつは……。
ロウお前、拾っといてくれたのか ?……ありがとな。
ワン !
リンウェルちょっと、ロウ !そのプレゼント、どうしたの ?
ロウあーっと、これは、その……。
リンウェル……なんで隠すの ?まだ届けてないプレゼントがあるなら村に戻って渡さなくちゃ。
ロウいや ! こいつは違うんだ。そういうプレゼントじゃなくて……。
リンウェルじゃあ、どういう――
アルフェンリンウェル ! その話は後だ。魔物がまた集まってきたぞ。
リンウェルまた ? 今、忙しいのに…… !
シオン……今度はさっきの奴らとはずいぶん様子が違うみたいね。
大型の魔物グルルル……ガォォォーンッ ! !
ロウあの野郎は…… !へっ、ようやく親玉がお出ましかよ。
アルフェンこの山に住む人々のためにも俺たちが生きて帰るためにも……ここで全て倒しきるぞ ! !

キャラクター10話【配達10 ハッピークリスマス】
アルフェン……よし ! 周りは片付いたぞ。残るは親玉だけだ !
ロウここは俺に任せろ !リンウェル、手伝ってくれ !
リンウェルロウ…… ! わかった、動きを止めるよ !
大型の魔物グォォォッ ! !
リンウェル疾風の舞……、エアスラスト !
ロウ今だっ ! ぶっ潰してやる !
ロウ迅雷 ! 狼影脚っ ! !
大型の魔物グゴァァァッ ! !
シオン……終わったわね。
ロウよっしゃぁ ! トドメ刺してやったぜ !
アルフェン喧嘩していたとは思えないくらい二人とも最後は息がぴったりだったな。
リンウェル……まぁ、私が力を貸してあげないとロウだけじゃ危ないかなって思ったし。
ロウなんだよ、別に俺一人でも倒せてたぜ。でも、念のためっつーか……ま、助かったよ。
リンウェル……どういたしまして。
シオンそれで、結局ロウが持っているプレゼントはなんだったの ?
リンウェルあ、そうだ ! まだ話の途中だったじゃない。一緒に行きたがらなかった理由も聞いてないし !
ロウあー……それは、だな。説明したいのは山々なんだけどちょっと事情が変わっちまったっていうか……。
リンウェル? 事情…… ?
アルフェンリンウェル。気持ちはわかるがもう少しだけ待ってやってくれないか。
リンウェルでも……。
アルフェンロウなりに考えがあってしたことなんだ。決してリンウェルに悪気があるとかじゃない。信じてくれ。
リンウェルそうなの ? ロウ。
ロウ……ああ。約束するよ。街に帰ったら、ちゃんと全部話すって。
リンウェル……わかった。
シオン話はまとまったみたいね。それじゃ、戻りましょうか。
アルフェンああ、行こう。クリスマスパーティーが待ってるぞ !
シオンクリスマスツリーはそこに動かして。こっちの机をもう少し右……そう。それでいいわ。
アルフェンローストチキンはあと10分待ってくれ !もう少しスパイスを足してじっくり焼いた方が美味くなるはずなんだ。
リンウェル……準備、順調みたいだね。
ロウああ、そうだな。俺たちもあとは手伝わなくていいとさ。
ロウ……んじゃ、そろそろ渡しとくか。ほら、これ。
リンウェルえ ? それ、さっきのプレゼント……。なんで私に渡すの ?
ロウなんでって……そりゃお前の分だし。
リンウェルえっ……私に ! ?
ロウい、いいから早く受け取れって。いらねえんなら俺がもらっちまうぜ ?
リンウェル……じゃあ、もらう。開けてもいい ?
ロウいいんじゃねえの。もうお前のもんだし。
リンウェルあ……木彫りのフクロウ !かわいい……。
ロウそれ、さっきプレゼントを届けに行ったあの村の名産品なんだぜ。フクロウだし、お前好きだろうと思って。
リンウェルもしかして、これを買いに行きたかったの ?だから一人でって……。
ロウまあな。どうせプレゼントすんなら驚かせた方が喜ぶかと思ってよ。
ロウだけど、そのせいでかえってややこしい話になっちまった。やっぱ慣れないことはするもんじゃねえな。
リンウェルううん、嬉しいよ…… !こんな素敵なものもらえると思ってなかった。
ロウ気に入ったんならよかったぜ。雪まみれになった甲斐があった。
リンウェルその……ありがと。ロウ。
ロウ礼なんかいらねえよ。俺の方こそ、お前に礼がしたかったんだ。
リンウェルえっ ?
ロウ本当言うと、俺……こっちに来てから結構不安な時もあったんだよ。
リンウェルそうだったの…… ?ずっと平気そうな顔してたけど。
ロウ顔に出さねえようにしてただけさ。何しろ意味わかんねえ状況だったからな。不安にならない方がありえねえって。
ロウ……だけど、お前がずっと頑張ってんの見てたら俺も負けてられねえって思ってさ。そのおかげでなんとか踏ん張ってこられたんだ。
リンウェルそっか……ロウも同じだったんだ。
ロウ同じ ?
リンウェルううん、なんでもない。……これ、大事にするね。
ロウおう、そうしてくれよ。なかなかいい顔してるよな、そのフクロウ。フルルよりイケてるんじゃねえか ?
フルルフルゥ ! フルルゥ ! !
ロウわっ ! いてて、怒んなって !冗談だよ、冗談 !
リンウェルあ〜あ、そんなこと言うから。フルルが一番素敵だよ、ね !
フルルフルル〜 !
リンウェル……まぁ、この木彫りのフクロウもフルルの次ぐらいではあるかもね。
アルフェンおーい、みんな !ローストチキンが焼けたぞ。俺が腕によりをかけた特製だ !
リンウェルうわ、辛そう〜 !
ロウ匂いだけでやべえぞ、これは。……でも、この刺激臭もちょっと懐かしいな。
リンウェルふふっ、そうだね。食べるのはやっぱり怖いけど……。
シオン……これで料理も出揃ったわね。そろそろパーティーを始めましょうか。
リンウェルあれ。なんか急に仕切り出したね、シオン。
ロウ料理の山を目の前にしたからじゃねえの ?俺もそろそろ腹ペコで限界だぜ。
アルフェン……その前に、ちょっと聞いてもいいか ?リンウェル、ロウ。
ロウん ? なんだ ?
アルフェン二人が、これからどうするのか確かめておきたいんだ。元いた街に戻るつもりなのか ?
ロウ……そういや、まだはっきり決めてなかったな。どうする、リンウェル ?
リンウェル私はこのまま、こっちでアルフェンたちと一緒にいたいな。せっかく再会できたんだもん。
ロウ俺も同感だな。向こうの組織も今は落ち着いてるし俺たちがいなくてもしばらく大丈夫だろ。
リンウェルあ ! もちろん、アルフェンたちがそれでよければだけど……。
シオンいいんじゃない ?私たちに断る理由はないわよね。
アルフェンああ、当然だ !それじゃ、決まりだな。俺たち四人と一羽の再会を祝して――
アルフェン乾杯 !
全員乾杯 ! !