キャラクター1話【バレンタイン1 姉の心配】
この物語は未来のお話です。
オスカー…………。
テレサオスカー、起きていたのですね。
オスカー姉上……。
テレサ具合はどう ?まだ本調子とはいかないと思うけれど食べたいものがあったら言って。
テレサああ、そうだわ。もしも食欲があるようなら、あなたの好きなキッシュを作るけれど――
オスカーありがとうございます、姉上。ですが、そんなに気を遣わなくても大丈夫ですよ。
オスカー身体も、もうずいぶんよくなったんです。姉上が看病をしてくれたおかげですね。本当に迷惑をかけてしまって……。
テレサ何を言っているのです。これくらい当たり前のことよ。
テレサせっかくあなたとこうして一緒に暮らせるようになったのです。むしろ世話を焼かせて欲しいくらい。
オスカーいえ、いつまでも姉上の手を煩わせるわけにはいきません。
オスカーこうして共に過ごせるようになったのならなおのこと。姉上だけに全てを任せてはバチが当たります。
オスカーいつまでも寝てばかりはいられませんしそろそろ僕も姉上の手伝いを――
オスカーッ !
テレサオスカー、無理をしないで。まだ怪我が完治していないのよ。安静にしていないと。
オスカーしかし……。
テレサ焦ってはいけません。無理に動いたりしたら、治りかけた傷口が開いてしまうでしょう ?
テレサ体力だって落ちているでしょうし……。美味しいものを食べて、ゆっくり眠って。そうすれば、少しずつ良くなっていくから。
オスカー……わかりました。
テレサ…………。私は、街へ買い物に行ってきます。何か欲しいものはありますか ?
オスカーいえ。先日姉上に買って来てもらった本がまだ途中ですから。
オスカー……今日は、本を読んでのんびりと過ごすことにします。姉上も、ゆっくり買い物をしてきてください。
テレサわかりました……。それでは、行ってきます。
オスカーはい。行ってらっしゃい。
テレサ……オスカー。私のことは気にしないで、自分のことを優先で考えていいのに……。
テレサ何か、あの子が穏やかな気持ちになれるようなものがあればいいのだけど。
テレサ……街で少し探してみようかしら。
テレサ薬は無事に手に入った。あとは、夕飯の買い物と、それから――
チェルシーむむ、むむむ……むぅ……。
テレサあら ? あの子、確か……。
チェルシーううん、ううーん、どうしましょう~ !
テレサ(確か、黒衣の鏡士の仲間、だったような。……どうしたのかしら、あの鬼気迫る様子……)
テレサ…………。
チェルシー……ッ !
テレサあっ……。

キャラクター2話【バレンタイン2 乙女の悩み】
チェルシーッ ! も、もしかして今の、見てました…… ?
テレサごめんなさい、不躾に。ジロジロと見るつもりはなかったのですがなんだかその……かなり真剣な様子でしたから……。
チェルシーうう……そうなんです。私、もうどうしたらいいかわからなくって……。
テレサそんなに真剣な悩みだったのですね……。本当にごめんなさい、興味本位で眺めるような真似をしてしまって。
テレサ……あの、お詫びというわけではありませんが何か私に出来ることがあるようなら手伝いましょうか ?
チェルシーあなたが…… ?
テレサあ……いえ。私はそのようなことを言える立場ではありませんね。今のは忘れて――
チェルシーいえ !あなたみたいな綺麗で大人っぽい人の意見ならすごく参考になる気がします !
チェルシー私、チェルシーです。チェルシー・トーン。
テレサあ……私は、テレサ。テレサ・リナレスです。
チェルシーテレサさん、ですね。……あれ ? どこかで聞いたことがあるようなお名前の気が……。
カノンノ・Gチェルシー !そろそろどんなチョコレートにするか決まった ?
チェルシーあ、皆さん。すみません、お待たせしてしまって。丁度、先ほどお知り合いになったテレサさんに相談してみようと思っていたところで……。
テレサあ……あなたたちは――
ミリーナテレサさん !久しぶりね、お買い物に来ていたの ?
テレサえ、ええ……。お久しぶりです、ミリーナ。
ミリーナ元気そうでよかったわ。今、オスカーさんと一緒に暮らしているのよね ?もう元気になったかしら……。
テレサ怪我は、少しずつよくなっています。まだ本調子とはいかないけれど……。
ミリーナそう、それならよかったわ。酷い状況だったから、あれからどうなったか気になっていたの。
テレサ……ありがとう。
テレサあとは回復を待つばかりなので何か栄養のあるものでも食べさせてあげようと思っていたのです。
ミリーナああ、それで買い物に来ていたのね。
テレサええ。まだ何を作ってあげたらいいか考えているところですが……。
ミリーナそうだったのね……。でも、滋養がありそうな食材を使ったとしても好き嫌いがあるでしょうし……。
テレサそうですね……。それに、家から出られないせいでストレスが貯まっているということもあるかもしれません。
テレサですので、何かリラックス出来るようなもの……たとえば、甘いものでもどうかと思っていたのです。
ソフィだったら、テレサもチョコを作ったら ?
テレサえ ?
カノンノ・G実は私たち、これからチョコを作ろうと思ってたんです。
ミリーナバレンタインのチョコレートのことよ。今年はみんなで手作りして、思い思いの人に渡そうっていう話をしていたの。
テレサああ、そういうことだったのですね。
ソフィ今、そのお買い物をしてたの。でも、チェルシーがまだ決まってないんだって。
チェルシーうう、そうなんです。私の大切なウッドロウさまに贈ろうと思うんですがどんなチョコレートが相応しいかわからなくて……。
チェルシーさっき聞こうとしたのも、そのことなんです。せっかくなら、私の想いをギュッと詰め込んだ大人っぽいチョコレートにしたくって !
テレサなるほど……。ふふ……そういう相手を想う気持ちが何よりも大切ですから、気取らなくてもいいと思いますよ。
チェルシーうぅ……やっぱり、大人です…… !
テレサでも、これでは具体的なアドバイスにはなりませんね。
テレサ私もそういう想いを込めたチョコレートというのは贈ったことがなくて……。お役に立てなくてごめんなさい。
チェルシーいえ、大丈夫です !もうちょっと考えてみます。
チェルシーううぅん、特別なハーブを入れることは決まってるからあとは見た目でも特別感を出せればいいんですけど。
テレサああ、ハーブで香り付けをするのですね。
カノンノ・Gはい ! 今年、街で流行ってるんです。美味しくて、身体にもいいハーブなんですよ。
ソフィあなたのことが大事だよ、っていう気持ちも伝えて元気にもなってもらえるの。大切な人に贈るのにぴったりなんだって。
ソフィだから、テレサも一緒に作ろう ?きっとオスカー、元気になるよ。
ミリーナそうね、それがいいわ。一緒に作る人が増えるのは楽しいことだし私たちも大歓迎よ。
テレサ身体にもいい、というなら、確かにオスカーにもぴったりだとは思います。
テレサでも……。
テレサ(でも……彼女たちは、ベルベットの仲間。そんな子たちと私が一緒に行動していいものかしら……)
テレサ(この子たちがいい子なのはわかる……。でも、だからこそ私がいるのは相応しくないような気がする)
テレサ(申し出はありがたいけれど、やっぱり断ろう)
テレサあの、気持ちは嬉しいのだけど、私は――
カノンノ・Gあれ ? ハーブが売ってたのって確かあのお店だったよね ?
ミリーナえ ? ええ。今回のチョコレートのレシピを配布していたのもあそこのお店よ。
カノンノ・Gやっぱりそうだよね ?でも、ハーブが並んでないの。
チェルシーえっ ! ?
ソフィもしかして、売り切れちゃった ?
ミリーナそうかもしれないわ……。ちょっとお店の人に聞いてみましょう。
カノンノ・Gうん!
テレサあっ…… !
テレサ……どうしましょう。断りそびれてしまったわ……。

キャラクター3話【バレンタイン3 話題のハーブ】
ミリーナ――それじゃあ、ハーブは全て売り切れてしまったんですね。
店のおばさんええ、そうなのよ。まさかこんなに話題になるなんて思わなくってあまり仕入れてなくてねぇ。
チェルシーそんなあ……。
ソフィ大切な人のための特別なチョコレートみんな作りたいって思ったんだね。
カノンノ・Gうん、そうだね……。大切な人がいる人が、それだけたくさんいるってすごく素敵なことだと思う。
カノンノ・Gでも、私たちも大切な人のために作れたらよかったな……。
テレサ…………。
テレサあの……横からごめんなさい。そのハーブを改めて仕入れに行くということは出来ないのでしょうか ?
店のおばさんうーん、それが難しいんだよ。なにしろハーブが生えているのが山奥で道中には魔物もいるからねぇ。
店のおばさんそれなりに準備をして採りに行ってもらってるから気軽にまた行ってきてとも言えないんだ。
ミリーナそれじゃあ、バレンタインの日までに再入荷するということは……。
店のおばさん申し訳ないけど、ちょっと難しいだろうね。
ミリーナそうですか……。
チェルシーうう、残念です……。
カノンノ・G魔物がいるような危険な場所じゃすぐには難しいよね……。
ソフィ……あ。
チェルシー? どうしたんですか ?
ソフィ魔物がいるところでも、わたしたちなら採りに行けないかな ?
三人! !
チェルシーそうか……そうですよね !私たちだったら、魔物と戦うのにも慣れてます !
カノンノ・G山道を旅するのだって慣れてるし、危険がないように帰って来ることも出来るはず !
ミリーナあの、もしよかったらその仕入れのお仕事を私たちにやらせてもらえませんか ?
店のおばさんええっ、あなたたちが ! ?
カノンノ・Gはい ! 私たち、こう見えても結構強いんです !
店のおばさんまあ……確かに立派な武器も持ってるし無駄のない鍛え方をしているように見えるわね。
チェルシーはい、どんな魔物も一網打尽です !もちろんお店にご迷惑は掛けませんしハーブを採りすぎたりしないようにもします !
店のおばさんそうだね。仕入れをお願い出来るんだったらこっちとしても助かるわけだし……。
店のおばさんちょっと待ってなさい。今、ハーブが生えている場所までの地図を描いてあげるから。
四人やったあ !
テレサ……。
テレサ(一時はどうなることかと思ったけれどこの子たちの希望は叶いそうね。彼女たちの実力は知っているし……)
チェルシーふふ、みんなで山に行くなんてちょっとわくわくしちゃいますね !
カノンノ・Gそういえば、このメンバーで冒険って初めてだね。
ソフィうん。みんなと一緒に行けて、わたしもうれしい。
ミリーナあ、そうだわ。出かける前におやつでも買って行きましょう。
三人賛成~ !
テレサ…………。
テレサあの、もし迷惑でなければ、私も一緒に行って構わないでしょうか ?
チェルシー! テレサさんも来てくれるんですか ! ?
カノンノ・G嬉しいな。私、テレサさんともっとお話してみたいなって思ってたんです !
ソフィ一緒に冒険、楽しみだね。
ミリーナええ、本当だわ。協力してくれてありがとう。
テレサいえ……。
テレサ(こんな、ピクニック気分でふわふわとしたまま山奥へ行くこの子たちが心配だなんて……)
テレサ(……さすがに、本人たちには言わないほうが賢明ですね)

キャラクター4話【バレンタイン4 森を歩きながら】
カノンノ・Gえーっと、描いてもらった地図によると……こっちかな ?
テレサ……少し違います。こちらのほうですね。
カノンノ・Gあ、そっか。向きが間違ってたんですね。
チェルシーテレサさんすごいです~ !この道、入り組んでるのによくわかりますね~ !
ソフィ道が間違ってても教えてくれるからテレサがいてくれて安心だね。
テレサ……地図、私が持っていてもよいでしょうか ?
ミリーナええ、そうね。お願いしようかしら。
カノンノ・Gよろしくお願いします、テレサさん。
テレサ(やっぱりついてきてよかった……放っておいたらこの子たち、すぐに迷子になりそう)
ミリーナそういえば、みんなは誰にチョコレートをあげるかもう決めたの ?
カノンノ・Gうん ! 私はパスカやイアハートと一緒にチョコレートを作ろうかなって思ってるんだ。それでお互いにプレゼントするの !
ミリーナわぁ、素敵ね !ソフィは誰かと一緒に作るの ?
ソフィうん。リトルクイーンと一緒に作るの。アスベルと、シェリアと、ヒューバートと、パスカルとリチャードと、教官と、ラムダの分。
ミリーナふふ、たくさん作るのね。
ソフィうん。みんなの似顔絵のチョコにするの。リトルクイーンが似顔絵を考えてくれてるんだよ。
ミリーナいいわね、完成するのが楽しみだわ。チェルシーは、ウッドロウさんに贈るのよね ?
チェルシーはい ! ウッドロウさまへ !
チェルシーなんですけど……うぅ……まだ、どんなチョコレートにするか決まってないんでした……。
テレサああ……そういえば、悩んでいると言っていましたね。
チェルシーそうなんです……。ウッドロウさまに渡すのは当然としてもそれに相応しいものにしたいですし。
チェルシーでもウッドロウさまのような素敵な大人の男性に相応しいチョコレートってどんなものなんだろうって考えると……。
カノンノ・G大人の男性に相応しいチョコレートかぁ……。確かにちょっと難しいよね。
ソフィ大人の男性……。わたしが教官にあげるのとは違うの ?
チェルシーそうですね……。マリクさんは少し、その……大人すぎるというか……。
カノンノ・G確かに、ソフィがマリクさんにプレゼントするのはお父さんにあげる感じに近いかもしれないね。
チェルシーそうなんです……。ウッドロウさまの心を射止めることが出来るようなカッコよくて素敵でキラキラしたのがいいんです !
テレサチョコレートでキラキラ、というのは少し難しいような気がしますが……。
テレサ街でも申しましたが、私はその想いさえあればいいのではないかと思います。
チェルシーえ ?
テレサ手作りのお菓子というのは、それだけで価値があるものだと思うのです。
テレサお菓子作りは、どうしても時間と手間がかかります。誰かにプレゼントするために作るのだとしたらその間ずっと大切な人のことを考えることになります。
テレサそうやって、たくさんの想いが詰まったお菓子はどんな形をしていても素敵でキラキラ輝いているのではないでしょうか。
チェルシー……そうかもしれません。私、すごいものにしないと、って考えてばかりで一番大事なことを見失っていたんですね。
テレサそれだけ相手のことを想っているのは確かですから気負いすぎることなく、思うままに作ってみてはどうでしょうか。
テレサ真っ直ぐな気持ちというのは、時として毒にもなってしまうものだけれど……。
ミリーナ…………。
テレサそれでも、大切な想いは歪みません。あなたのような一途な気持ちはきっと届くはずです。
ミリーナ……ええ、そうね。チェルシーの気持ちは伝わるわ。
ミリーナたとえば、そうね……想いを形にするということでチェルシーの一番好きなものを作ってみるとか ?
テレサいいかもしれませんね。自分の好きなものなら、それだけ想いも込めやすいでしょうし。
チェルシーなるほど…… !
ソフィ大きくするのはどうかな ?そしたら、おっきな気持ちが伝わると思う。
カノンノ・Gいいと思う !単純かもしれないけど、わかりやすいのって大事だよね。
チェルシーなるほど、なるほど…… !
チェルシーうん……なんだか、イメージが湧いてきました !おっきくて、私が大好きなもの !
テレサよかった。先ほどは具体的な助言が出来なかったので申し訳なく思っていたのです。
テレサでも、一番大切なのはその笑顔だったのかもしれませんね。
チェルシーふふ、そうかもしれません。ありがとうございます、テレサさん。
テレサ……はい。
テレサそろそろ目的地に着きます。この先にハーブがあると地図には書かれていますので……。
テレサ……あら ?
ミリーナえっ ! ?これは…… !

キャラクター5話【バレンタイン5 ハーブの群生地】
ミリーナなんなの、これ……。地面が掘り起こされてる ! ?
カノンノ・Gここにハーブが生えてるはずなんだよね ?
テレサええ、そのはずなのですが……。
チェルシーで、でも一本も生えてないです !
ソフィ誰かが持って行ったの…… ?
テレサ…………。
テレサ……ソフィの言う通りだと思います。これは明らかに人の手で掘り起こされていますね。
テレサハーブの根と思われるものが土の底にかなり残っていますし、乱暴に扱われたと想定出来ます。
カノンノ・Gそんな……。大切なハーブが……。
チェルシーこの惨状は、お店の関係者の人が仕入れのためにやったわけではなさそうです。
ミリーナええ。仕入れのためだとしたら、全部掘り起こしていくことは考えづらいもの。
テレサ根こそぎ採り尽くしてしまえば、ハーブが全滅して二度と収穫出来なくなる可能性もありますから。
テレサ通常の仕入れのために来たのだとしたらそのような採り方は間違いなくしません。
テレサハーブを持ち去った者は、ただ儲けることしか頭になかったのでしょう。
ソフィお金儲けのためにハーブを全部採っちゃったの ?
チェルシー独り占めっていうことですか ! ?そんなの酷いです…… !
カノンノ・Gみんな、大切な人のためにチョコレートを作ろうとしてるのに……。
ミリーナ酷いわ……。
チェルシーここを荒らしていった人、もしかして他の場所でも同じことをしているんじゃないでしょうか ?
ミリーナそうかもしれないわね……。儲けられるならなんでもいいと思っている可能性は十分にあるわ。
ソフィそんなの、許せない。
カノンノ・Gうん、放っておけないよ。このままじゃ森が根こそぎ荒らされちゃう !
チェルシーここを荒らした犯人を捕まえて、こんなことはしないでって言わないといけませんね !
ソフィうん。みんなで分けようって、お話しよう。
テレサ…………。
テレサ(この子たち、もしかして話し合いで解決できると思っているのかしら…… ?)
カノンノ・G急いで追いかけなきゃ !
ミリーナええ、そうね。それじゃあ――
ミリーナ……どこに向かえばいいのかしら ?
三人あ……。
カノンノ・Gどこに行ったのかな…… ?
チェルシーええーっと……ここに来るまでにはすれ違いませんでしたよね ?
ソフィうん。気配も感じなかった。
ミリーナだとすると、少なくとも私たちが来た方向は探さなくていいことにはなるけれど……。
カノンノ・Gうーん、まだ候補がありすぎてどこに向かうか決められないね……。
チェルシー森は広いし、見通しも悪いからもしも道を間違えたら追いつけなくなっちゃうかもしれません。
ミリーナええ、そうね。どうしよう、せめてヒントになるものがあればいいのだけど……。
三人ううーん……。
テレサ…………。
テレサ(やっぱり、この子たちを放っておくわけにはいきませんね……)

キャラクター6話【バレンタイン6 犯人捜し】
テレサ少しいいでしょうか ?
ミリーナ? どうしたの、テレサ。
テレサおそらく、犯人がどちらに向かったのかある程度絞り込めると思います。
四人! !
カノンノ・G本当ですか ! ? テレサさん !
テレサはい。方向がわかる、というくらいの推定ではあるので、それを認識したうえで聞いて欲しいのですが……。
テレサまず、この掘り起こされた土。乾燥しておらず、しっとりとしています。
テレサこれは底にあった部分が地表に出て間もないことを示している……つまり、掘り起こされてさほど時間が経っていないということになります。
チェルシーなるほど…… !
テレサそれから、これだけの範囲を掘り起こしたことにより犯人の足跡がくっきりと残っています。
カノンノ・Gあ ! ここにも……こっちにもある !
ソフィ足跡の大きさ、いろいろだね。犯人はたくさんいるのかな ?
テレサはい。靴底の形状や大きさから考えて、最低でも三人はいたと考えられます。
テレサ掘り起こしたハーブは、乱暴に籠に入れて運んだのではないでしょうか。その証拠に、地面には土が点々と続いています。
ミリーナ本当だわ ! 気づかなかった……。
カノンノ・Gよく見ないとわからないけど、確かに落ちてるね。
ソフィそれじゃあ、これをたどれば犯人に追いつける ?
テレサそうではないかと推測しています。あとはこの土がどこまで続いているかにかかってきますが……。
三人すごーい !
チェルシーテレサさん、すごいです !まるで名探偵みたいでカッコイイです…… !
カノンノ・Gひとつずつ言われたらわかったけどそうじゃなかったら気づかなかった……。
ソフィありがとう、テレサ。これで追いかけられるね。
ミリーナええ、本当に !テレサが一緒に来てくれてよかったわ。
テレサいえ、私は気づいたことを伝えただけです。それよりも早く追いかけましょう。今ならきっと間に合うはずです。
ミリーナええ、そうね。
チェルシーみんなで協力して、必ず犯人を捕まえましょう !
カノンノ・Gうん、頑張ろうね !
チェルシーはぁ、はぁ……結構歩いて来ましたよね ?そろそろ追いつけるでしょうか……。
ミリーナそうね……まだ土が落ちているから見失うことはないと思うのだけど。
カノンノ・Gけど、だいぶ土の量が減ってきてるよね。完全になくなったら追いつけなくなっちゃうかな……。
テレサ……その心配はなさそうですよ。
チェルシーえ ?
ソフィ本当だ、見て。あそこに大きな籠を背負った人がいる。
カノンノ・Gあそこ、って……あっ、いた !
チェルシーわぁ、まだ遠いのによく気づきましたね !
ミリーナソフィもテレサもさすがね !でも、無事に追いつけてよかったわ。
カノンノ・Gうん !ちょっとそこの人たち、待って !
テレサえっ ! ? あの、迂闊に近づくのは――
テレサああ、行ってしまいました……。
ミリーナみんなあの人たちを放っておけないんだわ。私たちも急ぎましょう。
テレサええ、そうですね。
盗賊1ああん ? なんだお前ら !
ソフィその背負ってる籠の中、ハーブだよね ?
盗賊2だったらなんだってんだよ !
チェルシーそのハーブ、独り占めするのはダメですよ !みんなが欲しがっているものなんですから !
盗賊3そんなモン関係ねえだろ ?こっちは売り物の仕入れに来てるだけなんだからよ。正当なやり方をしてるだろうが。違うか ?
チェルシーそ、それは……。
カノンノ・Gでも、根こそぎ持って行ったら二度とハーブが生えなくなっちゃうかもしれないし。
盗賊1そうなるってわかったわけじゃねえんだろ ?また生えてくるかもしれないじゃねえか !
盗賊2そんな言いがかりを付けて俺たちからハーブを奪おうとでも言うのか ? ああん ?
チェルシーそ、そんなつもりではなかったんですけど……。
カノンノ・Gでも、やっぱりやり方がよくないって思うから……。
テレサ(あの子たち、もしかして説得するつもり ?話が通じる相手とは思えないし、今だって完全に言い負かされてしまっているけれど……)
テレサ(でも……今から私が出てもかえって場を混乱させてしまうかもしれない……。しばらくは、様子を見ることにしましょう)

キャラクター7話【バレンタイン7 少女の説得】
ソフィ……やっぱり、ダメだよ。お店に置くのだって、みんなで分けないと。
チェルシーそうですよ !仕入れが大変なのはその通りですし商売をするために頑張っているのはわかります。
チェルシーそれでも、いろんなことを考えなきゃいけないと思うんです。みんなで豊かになることとか生態系を人間の都合で崩さないこととか……。
カノンノ・G私もそう思う。みんなで幸せになれる方法を考えよう ?きっとあるはずだよ。
テレサ……やはり、あの子たちは甘すぎます。
ミリーナええ、そうかもしれないわ。でも……それが彼女たちのやり方なのよ。
テレサ…………。
テレサ話が通じる相手だとも思えません。それでも……。
テレサ彼女たちの真心が伝わることを信じたいですね。
ミリーナええ。私もそう思うわ。
ソフィあのね、そのハーブは、バレンタインのチョコレートを作るために使いたいの。
ソフィ大切な人にずっと元気でいてね、いっぱい幸せになってねって、そういう気持ちを込めて贈るんだよ。
カノンノ・G全部ちょうだいなんて言わないよ。私たちが採りに来たのと同じようにあなたたちだってこんな山奥まで来たんだもん。
カノンノ・Gでも、全部採ってっちゃうのはダメだと思うの。もうそのハーブが生えてこなくなったら森のバランスが崩れちゃう。
チェルシーこの森を守るためにも、たくさんの笑顔を守るためにも私たちはそのハーブを分けてもらいたいんです !
チェルシーあなたたちにも、大切な人がいますよね ?だからお金を稼ぐ必要があって、こうやって森にハーブを採りに来たんですよね ?
チェルシーだったら、その大切な人たちのためにも心ないことはしないで欲しいんです !お願いします…… !
カノンノ・Gお願い…… !
盗賊たち…………。
盗賊1……泣かせること言うじゃねえか、嬢ちゃんたち。
三人! !
盗賊2ああ。こんなこと言われちまって意地張るわけにはいかねぇよな。
チェルシーそれじゃあ…… !
盗賊3あんたらの言う通りにするよ。このハーブ、分けてやってもいい。
三人よかった…… !
盗賊1ほら、この籠の中から好きなだけ持っていきな。遠慮はいらねぇぜ。
チェルシーありがとうございます !
テレサ! 待って、迂闊に近づいたりしたら…… !
盗賊1……なんてな ! ハアッ !
チェルシー! !
テレサさせません !
盗賊1! チッ !
チェルシーテレサさん…… !
テレサ……こうなると思っていました。あなたたちのような悪党はどこまでいっても悪党ですから。
盗賊2ハッ ! 頭がお花畑な嬢ちゃんだけじゃなかったってことかよ。
テレサええ。私に彼女たちのような純粋な気持ちはありません。人を疑い、最悪の可能性を想定しそれに対応出来るようにしておくまでです。
テレサそもそも人の心があるのであれば生態系を崩しかねない採取の仕方はしないでしょうし。
盗賊1ハッ、ごもっとも。
テレサですので警戒はしていましたがこの子たちに危害を加えようとしたこと、そして純粋な想いを踏みにじったことは許せません。
テレサ今すぐ償ってもらいます。手加減はしません。
盗賊1その細腕で、やれるもんならやってみなぁ !
テレサ! !
チェルシーテレサさん !
ミリーナ私たちも応戦しましょう !もう説得出来るような状況じゃないわ。
カノンノ・Gうん、そうだね…… !
ソフィテレサのこと、傷つけたら許さない !
チェルシー乙女の思いを台なしにした罪はしっかり償ってもらいます !
テレサええ、覚悟しなさい !

キャラクター8話【バレンタイン8 ハーブのお礼】
盗賊1クッ……お、覚えてやがれ !
チェルシーいやですー ! すぐ忘れますから !
カノンノ・G酷い人たちだったね……。
ソフィでも、ハーブが守れてよかった。
ミリーナそうね。なんとか取り戻せたわ。……このハーブ、さっきの場所に植えたら元通り元気になってくれるかしら ?
テレサそうですね……。
テレサ全てを元の通りには出来ないと思います。ですが、根が十分に残っているものもありますしいくつかは植えれば定着するかと。
ソフィ本当 ? よかった。
チェルシーはい ! これで森のハーブを守ることが出来ますね !
カノンノ・Gじゃあ、すぐに生えていたところに戻ろう !
ソフィこれで、最後……。
ソフィ綺麗に植えられたね。
チェルシーはい ! あとはまた元気になってくれるのを祈るだけですね。
カノンノ・Gちゃんと元通りになるかな…… ?
ミリーナきっと大丈夫よ。根が残っているものも多かったから。そうよね、テレサ。
テレサはい。私も植物にさほど詳しいわけではないので断言は出来ませんが……。
テレサ元気になったハーブが種子を残して、植物が豊かな森が守られると……そう、信じています。
ソフィうん、そうだね。
チェルシーそれじゃあ、この植えられなかったハーブはお店の人に届けるということでいいでしょうか ?
ミリーナええ。欲しい人みんなに渡るくらいの量はあるし約束通り届けることにしましょう。
店のおばさんあなたたち !なかなか帰って来ないから心配したのよ。大丈夫だった ?
カノンノ・G遅くなってごめんなさい。色々あって。実は――
店のおばさんあらあら、そうだったの !大変だったわねぇ……でも無事に帰ってきてくれてよかったわ !
ソフィ森のハーブもちゃんと元通りになると思う。ほかのは、採ってきたから。はい、これ。
店のおばさんあらあら、本当に助かるわ !これなら欲しがっていた人の分は十分あるだろうし……仕入れ代を払わないとね !
ミリーナいえ、気にしないでください。これだけたくさん採れたのはたまたまですから。
チェルシーはい ! 私たちが使う分だけ分けてもらえたらそれで十分です。
店のおばさんんー、でもねぇ。さすがに何もお礼をしないというのは……。
店のおばさんああ、そうだわ !ちょうどいいものがあるの。よかったらこれをもらってくれないかしら ?
テレサえっ、これって……服 ?
カノンノ・Gわぁ、可愛い !すごく素敵 !
チェルシーはい ! 色もデザインもとってもお洒落です !でもこんなに可愛いお洋服、もらっていいんですか ?
店のおばさんええ、もちろん !今すぐ用意出来るのは4着しかないけどもうちょっとしたら他にも届くからね。
テレサそういうことなら、私は――
ミリーナ私は今じゃなくていいから、みんなで着て欲しいわ。テレサも一緒にね。
テレサえっ…… ? でも……。
ソフィわたし、テレサとおそろいの服着たい。
テレサ…………。
カノンノ・G私も ! 私もテレサさんとおそろいだったら嬉しい。こうやって一緒にいろんなことが出来るのって初めてだから。
チェルシー私もです !テレサさんにはたくさんお世話になりましたしもっと仲良くなりたいです !
テレサあなたたち……。
ミリーナみんなもこう言っているし、どうかしら ?素敵な服を着て帰ったら、オスカーさんも喜ぶと思うの。
テレサ……そこでオスカーを持ち出すのは卑怯じゃないですか ?
ミリーナふふっ。そうかもね。
テレサもう……ふふ。わかりました。私もおそろいの服を着させていただきますね。
三人やったー !
店のおばさん誰が着るのか決まったみたいね !さ、店の奥で着替えていらっしゃい。
三人はーい !
テレサ……お言葉に甘えさせていただきます。
ソフィミリーナ、着替え終わったよ。
ミリーナあ、お帰りなさい。わあ…… !
チェルシー見てください、ミリーナさん !このお洋服、とっても可愛いんです~ !
カノンノ・G色違いだったから、みんなそれぞれが似合う色を話し合って決めたんだ !
ソフィ髪はテレサがやってくれたの。こっちのほうがきっと可愛いからって。
ミリーナ三人とも素敵よ !服もそうだけど、髪飾りもそれぞれ凝っていてとってもよく似合っているわ。
ミリーナ……あら ? テレサは ?
テレサ……着替えは、終わりましたけど。
テレサ私には、その……少し可愛すぎるデザインのような気がしてやっぱりミリーナが着たほうが……。
ミリーナそんなことないわ !ああ、思った通りとっても素敵よ、テレサ !髪型も少しアレンジしてきたのね。
ミリーナいつもの服装も素敵だと思っていたけれどこういう可愛らしい感じもよく似合うのね !新しい魅力が知れて本当によかったわ。
テレサそ、それは少し、大げさなのでは……。
カノンノ・G大げさなんかじゃないですよ。テレサさん、本当にすごく可愛いもん !
チェルシーテレサさんみたいな大人の雰囲気の人もこういうお洋服が似合うんだな~って思ったらなんだかドキドキしちゃいます !
ソフィわたし、こういう服のテレサも好き。
カノンノ・G私も !
チェルシー私もです~ !
テレサ……ありがとう。
ミリーナふふ、よかった。
ミリーナそうそう、みんなが着替えている間にチョコレート作りの材料を用意しておいたの。
ミリーナ一緒に作る約束をしていた子たちもそろそろ到着するんじゃなかったかしら ?
カノンノ・Gうん ! このお洋服、また入荷されるって言ってたしそうしたらパスカやイアハートにも着てもらおう。
ソフィわたしも、リトルクイーンと一緒に着たいな。
チェルシー私はウッドロウさまにあげるチョコを作るのに時間がかかると思うので、早速調理に取りかかりますね !
ミリーナええ。準備が出来た人から作り始めるといいわ。テレサは、よかったら私と一緒に作らない ?
テレサ……そうですね。ここまできたらせっかくですし、一緒に作りましょう。
ミリーナええ !それじゃあ、早速キッチンに行きましょう !

キャラクター9話【バレンタイン9 いざクッキング】
ミリーナふぅ……チョコレート、無事に完成ね。
テレサええ。その……ありがとうございます、ミリーナ。こんな経験をすることになるなんて想像もしていなかったけれど。
ミリーナ私もよ。でも、あなたと一緒にチョコレートを作れてとっても嬉しかった。
テレサ……ええ。
ミリーナみんなもチョコレート作りは順調かしら ?ちょっと様子を見に行こうと思うんだけど……テレサも、一緒に行かない ?
テレサ……そうですね。一緒に行きます。
ミリーナええ !じゃあ、まずはソフィのところからね。
ソフィリトルクイーン、見ててね。わたしが最初にやってみるから。
リトルクイーンええ。
ソフィこうやって……目を大きくすると可愛くなるからちょっと大きめにして……。
ソフィどうかな ?
リトルクイーンこれが、可愛い似顔絵 ?
ソフィそう。アスベルの顔。似てる ?
リトルクイーン……こっちのほうが、可愛い。
ミリーナふふ、順調に作れているみたいね。
ソフィあ、ミリーナとテレサ。
ミリーナソフィがリトルクイーンにお手本を見せてあげているのね。
ソフィうん。みんなの似顔絵、一緒に描けたら嬉しいから。
ミリーナそうね。リトルクイーンも、楽しい ?
リトルクイーン……楽しい。とても。
ミリーナそれならよかった。
ミリーナああ、テレサ。ソフィとリトルクイーンは姉妹みたいなものなの。ソフィのほうがお姉ちゃんよ。ね ?
ソフィうん、わたしがお姉ちゃんだからリトルクイーンに楽しいことを教えられたらいいなって、思ってたの。
テレサそう……だから一緒にチョコレートを作ろうと思ったのですね。
ソフィそうだよ。大切な人と、大切な思い出を作るの。
テレサ……ソフィは、とてもいいお姉さんなのですね。
ソフィテレサもおんなじだよ。オスカー、喜んでくれるといいね。
テレサええ……喜んでもらえたら、嬉しいです。
ミリーナ……次は、グラスバレーたちのところに行きましょう。
カノンノ・Gパスカ、そっちのチョコはちゃんと固まった ?
P・カノンノうん ! 形も崩れなかったしとても可愛く出来たと思うわ。
カノンノ・Gよかった !イアハートは ? 飾り付け進んでる ?
カノンノ・Eうん、進んでるよ !ちょっと潰れちゃったけど……。
カノンノ・G大丈夫だよ。可愛いかわいい !いっぱい作って、いつもお世話になってるみんなに渡そうね !
二人うん !
ミリーナずいぶんたくさんのチョコレートを作っているのね。
カノンノ・Gあ、ミリーナとテレサさん。せっかくだからたくさん作って、みんなの所に遊びに行こうかなって相談してたんだ。
カノンノ・Eミリーナたちに会うのも久しぶりだったでしょ ?それで、他の人たちはどうしてるかなって三人で話をしてて……。
P・カノンノ全員に会いに行くのは難しいかもしれないけど近くの人には連絡して会えるんじゃないかなってことになったの。
ミリーナそうだったのね !きっとみんな喜ぶと思うわ。
テレサ……やはり、共に戦ってきた仲間とは離れた後でも親しいのですね。
P・カノンノうん、この世界に来てから、みんな色々なことがあったけど……それでも、せっかく出会えたんだもの。
カノンノ・E今まで大変だったね、だけじゃなくって最近はどうしてる ? って声を掛け合ってまた笑い合えたり出来るのは、嬉しいもん !
テレサそうなのですね……。やはりあなたたちは、心優しい人たちですね。
カノンノ・Gそんな風に言ってもらえて嬉しいけど私は、テレサさんともそういう関係になりたいです。
テレサ……私とも ?
カノンノ・Gはい ! だって、今日はテレサさんのおかげで無事にハーブを手に入れることが出来たから。
カノンノ・Gだから私たち、もう仲間だと思うの。……それとも、さすがにまだ早いですか ?
テレサ……いえ。そう言ってもらえて、嬉しいです。
カノンノ・Gよかった !これからも、私だけじゃなくてパスカやイアハートとも仲良くしてください。
テレサええ。ありがとうございます。
ミリーナ最後はチェルシーね。
テレサ彼女、一人で作っていましたよね ?苦労していないでしょうか……。
ミリーナそうね。時間がかかるとも言っていたし……大変そうだったら手伝いましょう。
テレサそうですね。
ミリーナチェルシー、入るわね。チョコレート作りは進んでいるかしら ?
チェルシーふふっ、あともう少しで完成です !私の想いを詰め込んだ、ウッドロウさまへのチョコレート !
テレサこれは……すごい、ですね。
ミリーナ本当に…… !なんて立派なチョコレートなのかしら。
テレサ立派な……というか……。いえ、立派なのはその通りですが……。
チェルシーあ、ミリーナさん、テレサさん !見てください、あともう少しで完成するんです。ウッドロウさまの等身大チョコレート !
テレサ等身大……やっぱり、そうなのですね……。
ミリーナ本当にすごいわ、チェルシー !ウッドロウさんにそっくりよ。
チェルシーえへへ。ウッドロウさまのことはいつも穴が空くほど見つめていますからね !
チェルシー今回はその成果を思う存分発揮するつもりで頑張って作ったんです~ !
テレサ本当に……これは力作です。頑張りましたね。
チェルシーえへへ。でもこれを作ろうって思ったのはミリーナさんやテレサさんのおかげなんですよ。
テレサもしかして、森の中で話したときに…… ?
チェルシーはい !テレサさんが想いを込めればいいと言ってくれたこととミリーナさんが想いを形にすると提案してくれたこと。
チェルシーそれでハッと思いついたんです。私のウッドロウさまへの想いを形にするとしたらウッドロウさまを作るしかないって !
テレサ若干思考の飛躍が見られる気もしますが……あながち間違ってはいない……のかも ?
ミリーナふふ。チェルシーの熱い想いが溢れていてとってもいいと思うわ !きっとウッドロウさんにも伝わるはずよ。
テレサ……そうですね。これを見ても気持ちが伝わらないとしたらさすがに鈍感すぎるでしょうし。
テレサチェルシー、あなたの想いが伝わることを心から祈っています。
チェルシーはい、ありがとうございます !よーっし、あともうちょっと、頑張りますよ~ !

キャラクター10話【バレンタイン10 弟の心配】
ミリーナみんなとても素敵なチョコレートを作っていたわね。
テレサはい。少し驚くようなものもありましたけど……でも、なんだか楽しかったです。
ミリーナ……よかった。テレサが笑ってくれて。
テレサミリーナ…… ?
ミリーナ最初はあまり乗り気でないようにも見えたから……。テレサのこと、無理矢理付き合わせてしまったかもって心配していたの。
テレサ……ええ。確かに、最初は気乗りしませんでした。でもそれはあなたたちが嫌だったというわけではなくて……。
テレサ……ふさわしくないと思ったのです。あのような純粋な子たちと私が一緒に行動するなど。
ミリーナ……でも、来てくれたのね。
テレサええ。だって、あんなにのんびりした子たち放っておくなんて出来ないでしょう ?
ミリーナふふ、なんだかわかるわ。
テレサ……今は、行って良かったと思っています。あの子たちの笑顔をそばで見られたことで少し心が安らぎましたし。
ミリーナええ……。
ミリーナ無理にとは言わないけれど……これからも、こういう機会が持てたら嬉しいわ。
テレサそうですね……考えておきます。
テレサ……次は、オスカーも一緒に。
ミリーナ……ええ !
テレサただいま。遅くなってごめんなさい。
オスカーいえ。お帰りなさい姉上――あれ ?
テレサえ ?
オスカー街で新しい洋服に着替えてきたんですね。
テレサあっ……そうでした。その、ごめんなさい。こんな浮かれた格好をしてしまって……。
オスカー謝ることなど何もありませんよ、姉上。むしろ嬉しいくらいです。
テレサ嬉しい…… ?
オスカーああ……いえ、この言い方は少しおかしいかな。だけど、僕にとってはやっぱり嬉しいことなんです。
オスカー街で何かあったんじゃないですか ?
テレサええ……。今までに出会ったことがないような子たちに会いました。
テレサ……少し、長くなるかもしれないのだけど聞いてもらえるかしら ?
オスカーはい、もちろんです。
テレサありがとう。あのね――
オスカー……そうでしたか。それはまた、今までにない体験でしたね。
テレサええ。あんなに人が良い子たち、見たこともなかったから驚きました。
テレサだって、盗賊相手に本気で説得しようとしていたのですよ ?
オスカーそれは、僕でも驚くかもしれません。説得など通用しない者がほとんどでしたから。
テレサそうね。私たちの常識からは考えられません。
テレサそれでも、あの子たちにとっては説得しようと思うことのほうが常識だったのです……。
テレサ……敵対していたことがあった私にも話をしてみたい、一緒に何かをしたいと躊躇わずに声をかけてくれるのよ。
テレサそんなこと、信じられますか ?
オスカー信じられません……と、今までなら言っていたと思います。
オスカーですが、姉上は既にそういう人たちと出会い交流をしてきたんですよね ?
テレサええ、そうです。
オスカーそれなら、それが真実なのでしょう。
オスカー生きていれば、自分たちの想像の及ばないことが起こるものなのでしょうね。
テレサそうかもしれないわ。すでに、予想もしなかったことがたくさん起こっているのだもの。
テレサ今日出会った子たちのこともそうだけれど……こうして、あなたと穏やかに過ごす時間があるということ自体が、奇跡のようです。
オスカー……はい。僕も、そう思います。
テレサそれでね……あの子たちと一緒に、チョコレートを作ったの。あなたのために。
オスカー僕に、ですか ?
テレサええ。さっき話したハーブを使ったチョコレートよ。受け取ってもらえるかしら ?
オスカーもちろんです !ありがとうございます、姉上。
オスカー…………。
テレサオスカー ?
オスカーああ……すみません。本当によかったと思ったんです。
テレサ…… ?
オスカー僕の怪我がなかなか治らないことで姉上を縛り付けてしまっているような気がしていたので……。
テレサそんなことはありません !私は私の意志で――
オスカーええ、もちろんわかっています。姉上は昔から僕に優しかったですから。
オスカーですが、もっと自由に時間を過ごしてもらいたいとも思っていました。気軽に遊びに行ったりも……。
オスカーですから、姉上に友人が出来たことが本当に嬉しいんです。
テレサ友人……と、呼んでいいのかはわからないけれど……。
テレサでも……そうね。またこういう機会が持てたら嬉しいと言われました。
オスカーでしたら、友人と言っていいと思います。
オスカーこの世界では、きっと、僕たちが今までに出来なかったことが出来るはずです。
オスカーですから、姉上。あなたの心からの笑顔が見られて、僕は幸せです。
テレサ……ありがとう、オスカー。
テレサ次は、あなたも一緒に行きましょう。あの子たちに、あなたを紹介したいわ。
オスカーはい、是非 !
オスカーもっとお話を聞かせてください、姉上。その子たちが、どんな子だったのか。
テレサもちろん話しますよ。このチョコレートを一緒に食べながら。
オスカーはい !いただきます、姉上。
テレサええ。いただきます。