キャラクター | 1話【記念日1 意外な訪問者】 |
イクス | あれ、マーク ? |
マーク | よ、久しぶりだな。イクス、ミリーナ。それからパイセンズ。 |
二人 | パイセンズとはなんですか ! |
マーク | ははは、小言も二倍か。 |
ミリーナ | ケリュケイオンは来てないわよね ?まさか地上のゲートからアジトへ来たの ? |
マーク | まあ、今日は色々と事情があってな。俺一人だけで来たかったんだわ。 |
マーク | 悪いが、これから俺が話すことをフィルには言わないでもらえるか ?適当な口実つけてこっちに来てるんでな。 |
カーリャ・N | フィリップ様に内緒だなんて珍しいですね。何かあったのですか ? |
マーク | いや、そんな風にかしこまられると困るんだが……。そんな大した話じゃない。まあ、ちょっとばかりパーティーでもできればと思ってな。 |
四人 | ……え ? |
カーリャ | パーティーって、あのパーティーですか ?みんなでわいわいパーッと盛り上がるあのパーティー ? |
マーク | それ以外にどんなパーティーがあるんだよ。 |
カーリャ・N | マーク……大丈夫ですか ?頭でも打ったのではありませんか ?それか拾い食いでもしたのでは ? |
マーク | 俺はパイセンとは違って拾い食いなんてしないけどな。 |
二人 | ひ、拾い食いなんてしませんよ ! ? |
マーク | そこもハモるのかよ……。 |
ミリーナ | でも、本当にどうしたの ?突然パーティーだなんて。フィルの誕生日はまだだし……。 |
イクス | あ、そうか ! マークの誕生日か ! |
マーク | 俺が誕生日を祝って欲しいタイプに見えるならお前もとんだ風船頭だな、イクス。 |
イクス | (風船頭って……どういう意味だ…… ?) |
マーク | 実はもうすぐ【鏡士の日】なんだけどよ。 |
二人 | ! |
イクス | 鏡士の日……なんて、あったっけ ? |
マーク | ――あ……っと、そうか。イクスは知らないよな。 |
マーク | 鏡士の日は、魔鏡戦争中に戦意高揚のために作られた記念日なんだよ。ビクエや鏡士たちに感謝をすることで自分たちの戦いの意義を確認する、だったっけな。 |
カーリャ | ほー…… ?ミリーナさま、ご存知でした ? |
ミリーナ | ええ。私というより、ゲフィオンの記憶だけれど。 |
マーク | まあ、別に理由は何でもいいんだけどな。要は、ぱーっと盛り上がることでもやってフィルの奴を元気づけてやりたいんだよ。 |
イクス | フィルさん、元気がないのか ? |
マーク | ああ。最近、何かと考え込むことが増えてな。いや、まあ、今に始まったことじゃないんだがそれにしても、妙に深刻そうなのが気になるんだよ。 |
マーク | けど、あいつが考え込むと碌なことがないからな。おかしなことを言い出す前に気分転換させたいんだ。 |
マーク | あいつは俺の言うことなんか馬耳東風だから何か口実をつけて、強制的にパーティーでもやれば考えごとをしてる場合じゃなくなるだろうと思ってよ。 |
カーリャ・N | 確かにあの方も、少し意固地なところがありますね。 |
カーリャ | フィルさま、思い悩むタイプですもんね~。 |
ミリーナ | ええ。一度何かを考え始めるとずっとそのことで頭がいっぱいになってしまったり……。 |
イクス | ……何だか自分のことを言われているような気分になるな。 |
マーク | まあ……イクスとフィルはちょっと似てるところがあるよな。 |
マーク | あ、いや、反応するなよ。喜ばれても悲しまれても微妙な気持ちになる。 |
イクス | だったら言うなよ ! |
ミリーナ | ねえ、イクス。私たち、フィルにはとてもお世話になってるし協力してあげましょうよ。 |
イクス | あ、うん。それはもちろんだよ。俺も……色々あったけど、やっぱり感謝してるし。 |
マーク | イクス、ミリーナ……。悪いな、二人とも。 |
マーク | パイセンズもOKだろ ? |
カーリャ | はあ ! ? こっちには随分適当ですね、マーク ! |
カーリャ・N | その図々しい態度、少しは改めなさい ! |
マーク | ははは、悪かった悪かった。 |
イクス | まあまあ、カーリャもネヴァンも。 |
イクス | そうだ。アジトのみんなにも声をかけたらどうかな ? |
カーリャ | それはいいですね !カーリャもなんだかワクワクしてきましたよ~ ! |
ミリーナ | でもどうしてわざわざ私たちに話を持ってきたの ?救世軍でもパーティーぐらい……――あ。 |
ミリーナ | ご、ごめんなさい。そうよね、大丈夫よ !こっちにはロゼやルーティやアニスがいるし最近はイエガーさんもすごくて ! ねえ、イクス ! |
イクス | あ、うん ! うちは割と安定してるから !ルドガーさんやファラやナナリーの節約術もすごいよ。 |
イクス | あと俺もエレノアたちと漁に出るしリッドやスレイたちは狩りもしてるしクレアの家庭菜園のおかげで新鮮な野菜も―― |
マーク | あー……悪かった。うちが万年金欠なせいで妙な気を使わせちまったな。さすがにパーティーするぐらいの金はあるんだ。 |
マーク | けど考えてみろよ、うちのメンツを。 |
アリス | パーティー ?ああ、フィリップもそろそろ定年ってこと ?だったらアリスちゃんが救世軍をもらってあげる ♪ |
シンク | くだらないね。アンタの頭の中はスポンジケーキでも詰まってるの ?耳から生クリーム突っ込んで食べてみたら ? |
バルバトス | パーティーか、いいだろう。喜べ ! まず貴様から血祭りにしてやるわ ! |
四人 | …………………………。 |
カーリャ・N | まあ……。 |
カーリャ | 何というか……。 |
イクス | ほ、ほら個人主義だし……。 |
ミリーナ | いつもお疲れ様、マーク……。 |
マーク | ははは……。巻き込んですまないな。 |
カーリャ・N | いいえ、マーク。鏡士の日というのならイクス様や小さいミリーナ様の日でもありますよ。むしろ、共に祝える機会をくれたことに感謝します。 |
マーク | お、さすがパイセン。話がわかるね。 |
イクス | 俺たちの日でもある、か。まあ、記念日ができた経緯はちょっとアレだけどせっかくだからいいパーティーにしたいな。 |
マーク | よし、話は決まったな。それと、さっきも言ったがくれぐれもフィルには内密にな。 |
ミリーナ | サプライズね ! 任せて ! |
マーク | ああ。それじゃあ頼んだぜ。 |
キャラクター | 2話【記念日2 鏡精の心配】 |
マーク | よう、定例会議の時間だが、今大丈夫か ? |
カーリャ | 題して『フィル元気出して ! 鏡士の日お祝い作戦』の定例会議ですね。 |
マーク | 誰だ、その微妙なタイトルをつけた奴は……。 |
ミリーナ | え……微妙だったかしら…… ? |
マーク | ――あ、いや、ミリーナか。 |
マーク | ああ……いや、まあわかりやすくていいんじゃないか。 |
イクス | 絶対俺だと思ってただろ、マーク。 |
マーク | まさか ! 真面目なイクスなら『フィルさんを元気づける会実行委員会』みたいな感じだろ。 |
イクス | え ! ? すごいな、マーク。俺はその名前を提案したんだけど硬すぎるって却下されて……。 |
カーリャ・N | それより、そろそろ本題に入りましょう。フィリップ様にこの通信がバレては元も子もありません。 |
イクス | あ……そ、そうだな。とりあえず、みんなで相談して当日のメニューを決めてみたんだ。 |
イクス | 料理はルドガーさんが中心に、エレノアとかクレアとかファラとか、料理上手なメンバーが集まって作ってくれることになったよ。 |
ミリーナ | それから、ソフィやエル、すず、ディオ、メルがメインで色々な飾り付けを作ってくれるんですって !どんな飾りにするか張り切って相談していたわ。 |
カーリャ | 当日の出し物を考えてくださる皆さんもいますよ !まあ、パスカルさまが中心になってたのでちょこーっとだけ不安もあるんですけど……。 |
マーク | お、いいんじゃないか。少しぐらいハプニングがあった方が盛り上がるだろうし。 |
カーリャ・N | 少しで済むように私たち運営側がしっかりしなくてはなりませんね。 |
マーク | ……やっぱりイクスたちに任せて正解だったな。 |
マーク | うちにだって友好的な奴も料理が得意な奴もいるが元々が反体制組織だからな。組織としての根っこはやっぱり『軍』みたいなもんだ。 |
マーク | お前らみたいに、和気藹々というかあっけらかんというか……ゆるい空気にはなりづらいところがあるんだよな。良くも悪くも。 |
カーリャ・N | ……そうでしょうね。それはわかるような気がします。 |
マーク | ま、救世軍そのものがデカくなりすぎてみんな実務に手一杯ってのもあるか。なかなか余裕が作れなくてなあ……。 |
マーク | ま、かくいう俺も書類仕事を山積みにしちまってるんだよ。情けねえ……。 |
イクス | た、大変そうだな……。俺も何か手伝えればいいんだけど。 |
マーク | はは……いやいや、今回の件だけで大助かりだわ。これ以上、借りを作ったら返せねえよ。 |
マーク | これでも、一人で救世軍を切り盛りしてた頃に比べりゃ、何倍もマシになったんだ。何より、フィルが目の届くところにいるのが助かる。 |
フィリップ | マーク ? そこにいるかい ? |
マーク | おっと……噂をすればフィルだ。悪い、また連絡する。 |
イクス | ああ。こっちも引き続き準備をしておくよ。じゃあな。 |
フィリップ | あれ ? 魔鏡通信で誰かと話してた ? |
マーク | ああ、ちょっとパイセンとな。で、どうした ? 俺に用なんだろ。 |
フィリップ | ああ。昨日僕が読んでいた本を知らないかな ?ほら、魔鏡での戦い方をまとめた少し分厚い……。 |
マーク | 相変わらずボケ老人だな、お前は。何で自分で読んだ本の行方がわからなくなってるんだよ。 |
フィリップ | 知らないよ。本の方がどこかに行っちゃうんだ。 |
マーク | んなわけあるか。 |
マーク | ん ? 何だよ。ソファーの横に落ちてたぞ。何でこんなところに本があるんだっての。――ほら。 |
フィリップ | ああっ ! そうだ ! 昨日テーブルの上が資料でいっぱいで本の置き場がなくてソファーの横の床に置いたんだ。 |
フィリップ | ありがとう、マーク ! |
マーク | まあ、そんなのはいいんだけどよ。最近、また無理をしてるんじゃないか ? |
マーク | 昨日だって調べ物に夢中になって薬を飲むのを忘れてただろ。 |
フィリップ | う……それはごめんってば。それじゃあ、ちょっと僕用事があるから……。 |
マーク | ん ? ああ。今日の分も飲み忘れるなよ。忘れて痛い目見るのは自分なんだからな ! |
フィリップ | はーい。マークってお母さんみたいだよね。 |
マーク | お前がガキなだけだっつーの ! |
マーク | ……どうもおかしいな。心ここにあらずというかまた何か妙なことを考えてる顔だぞ、アレは。 |
マーク | おかしなことをしでかさなきゃいいんだが。 |
キャラクター | 3話【記念日3 マスターの心配】 |
ソフィ | イクス、見て。わっかにリボンを結んだの。 |
エル | これをいっぱいつなげたら、かわいいかざりになるの !ねえ、どうかな ? |
ミリーナ | 可愛いわ ! すごく可愛い !何もかもみんな最高よ ! |
イクス | ははは、ミリーナは相変わらずだな。でも俺も、すごくいいと思うよ。カラフルで華やかになりそうだ。 |
エル | えへへー !これ、すずが考えてくれたんだよ。 |
すず | いえ、私は案を出しただけで……。いろんな色を入れたらいいと思うと言ってくれたのはライフィセットさんです。 |
ライフィセット | それは、みんなを見てて思ったんだ。みんなバラバラの世界から来て、いろんな雰囲気が混ざり合ってるから。それが表現出来るかなって。 |
ミリーナ | 天才ね。天才の仕事よ !尊いわ……。 |
イクス | ああ、みんな色々考えてくれてるんだな。フィルさんもきっと喜ぶと思うよ。 |
ソフィ | 本当 ? よかった。 |
エル | それじゃあ、もっともっとハデにしないとね ! |
ライフィセット | うん ! あ、ねえ、みんなの世界に咲いてる花とか作ってみるのはどうかな ? |
すず | いいかもしれませんね。それぞれの世界に特徴的な花があるのかどうか皆さんに聞いてみましょう。 |
ソフィ | うん。じゃあ、まずはクレスたちから。 |
ミリーナ | ふふふ♪飾りも可愛いけど、ソフィたちも可愛い♪ |
イクス | ミリーナは本当にミリーナだよな……。 |
ミリーナ | あら、これでも色々我慢しているのよ。 |
イクス | ……うん。最近俺が一番可愛いって言わなくなったもんな。 |
ミリーナ | 寂しい ? |
イクス | そ、そんなことはないよ !ただ……なんか、申し訳ないっていうか……。 |
ミリーナ | イクスは自分の気持ちを正直に言っただけなんだからそんな風に思わないで。それでいいのよ。イクスは今まで通りにしていてね。 |
イクス | ミリーナ……。 |
ミリーナ | 私はただの幼なじみとしてもイクスのことは大好きなの。 |
ミリーナ | ただ、イクスが困るようなことはしない。そう決めただけ。 |
イクス | お、俺だって、ミリーナのことはその……ちゃんと大事だよ。幼なじみとしても友達としてもさ。 |
ミリーナ | ええ。ありがとう、イクス。 |
ミリーナ | ……あら ?もう一人の幼なじみからの魔鏡通信よ。 |
フィリップ | イクス、ミリーナ。今、少し話をしてもいいかな ?もし迷惑だったら、また改めるけど……。 |
イクス | はい、もちろんです。どうかしましたか ? |
フィリップ | うん……ちょっと確かめたいことがあるんだ。その、マークのことで。 |
ミリーナ | マークの ? マークがどうかしたの ? |
フィリップ | ええっと……。ここのところ、君たちとよく通信しているみたいだけど何かトラブルでも起きてるのかな ? |
イクス | あ、ああ……。えっと……。 |
フィリップ | やっぱり何かあるんだね ?もし良ければ僕に教えてくれないか ? |
フィリップ | マークはネヴァンたちと楽しく話しているだけだなんて言うけど……。いや、マークとネヴァンが仲良しなのはよく知ってるけど……。 |
フィリップ | でも、もし本当にそれだけなら僕の前でも普通に魔鏡通信で話すと思うんだ。 |
ミリーナ | フィル……。そうね。これ以上隠してもしょうがないみたいだから話すけれど―― |
イクス | ミリーナ ! ? |
ミリーナ | 実はマークから救世軍の資金繰りのことで相談を受けていたの。 |
フィリップ | え ! ? またうちの資金繰りがまずいのかい ! ? |
ミリーナ | 今すぐに焦げ付くとか、そんなことはないみたいね。 |
ミリーナ | でも救世軍をより良い組織にするために組織を離れた後の保障や、怪我をしたときの保障を色々手厚くしていきたいみたい。 |
フィリップ | そうか……。今目の前の戦いだけじゃなくてその先のこともマークは見据えてるのか……。 |
イクス | あ、ああ、流石ですよ、マークは。 |
イクス | 帝国との戦いが終わった後どうしていくかは俺たちも考えておかなくちゃいけないしいい機会だから色々と打ち合わせをしていて……。 |
フィリップ | そうだったのか……。僕なんて大人なのに目の前のことでいっぱいいっぱいだったよ。恥ずかしいな……。 |
イクス | い、いや……でも目の前のことをきちんと見てくれる人がいるからその先のことにまで考えを向けられるんだと思います。 |
フィリップ | うん……。 |
フィリップ | やっぱりマークには、僕が憧れる要素が受け継がれてるんだろうな……。僕とは大違いだ……。僕ももっとしっかりしないと……。 |
フィリップ | そうだ !二人とも、今度の予算会議には僕も呼んでくれないか ?ちゃんと現実を見ておきたいんだ。 |
イクス | え……あ……、そ、それは……。 |
ミリーナ | それは私たちの一存では決められないわ。マークからは、フィルに秘密にするように念を押されているの。 |
ミリーナ | かといって、フィルがマークを問い詰めれば私たちが話を漏らしたことがバレてしまって私たちが信頼を失ってしまうわ。 |
フィリップ | あ、そうか……。そうだね。ごめん。僕としたことが、そこまで気が回らなくて。 |
ミリーナ | いいえ、いいのよ。だから折を見て、私たちからフィルにも声を掛けるようマークを説得するわ。それでいいかしら ? |
フィリップ | ああ。もちろんだよ。 |
イクス | (さ、さすがミリーナ……。なんかゲフィオンの記憶を受け継いでから凄みが増したような…… ?) |
フィリップ | 二人には迷惑ばっかりかけているね。本当にごめん。頼りないかも知れないけど僕にできることは何でも言ってくれ。 |
フィリップ | 僕は本気で二人の役に立ちたいんだ。 |
イクス | ありがとうございます。けど、今だって十分力をお借りしてますよ。頼りにしています。 |
フィリップ | う……うん……。そうだといいんだけど……。 |
フィリップ | でも、僕、もっと頑張るから ! |
フィリップ | ……それじゃあ申し訳ないけどマークの説得、よろしくお願いします。 |
ミリーナ | フィル……。何だかいつも以上に後ろ向きに前向きだったような……。 |
カーリャ | ええ。まるでご主人様に捨てられそうで必死になっている老犬みたいでしたね……。 |
カーリャ・N | そ、その言い方は……。 |
カーリャ・N | まあ、でも、そうですね。不安そうではありました。 |
イクス | 二人とも、立ち聞きしてたのか ! ? |
カーリャ・N | す、すみません !おやつの時間なのでお二人を呼びに来たのですが深刻そうな内容だったので……。 |
カーリャ | 興味津々で立ち聞きしちゃいました……。 |
ミリーナ | もう、二人とも、仕方がないんだから。 |
イクス | ……けど、マークが心配して気晴らしさせようって考えるのもわかるような気がしたよ。 |
カーリャ・N | ですが、あれはパーティーで元気になるようなものとは思えません。 |
カーリャ・N | フィリップ様が意識を改革しなければ根本的には変わらないことではないかと。 |
ミリーナ | そうね。でもマークもそんなことはわかっていてそれでも元気づけたいんでしょうね。 |
イクス | だとしたら俺たちもできる限りのことをしてあげたいな。 |
カーリャ・N | ………………。 |
ミリーナ | ネヴァン ? どうしたの ? |
カーリャ・N | いえ……。少し、昔を思い出していました。フィリップ様はその『昔』を『思い出』にしなければいけないのでしょうね。 |
キャラクター | 4話【記念日4 偵察任務】 |
マーク | お、今日のブリッジ当番はガロウズか。 |
セシリィ | ボスだけじゃないですよー。私もいます ! |
マーク | おっ、セシリィもか。こいつは頼もしいな。 |
ガロウズ | こいつがケリュケイオンの調整を手伝わせろってうるさくてな。 |
マーク | いいじゃねぇか。戦力になってくれるならありがたい。 |
セシリィ | さっすがマークさん。ボスと違って話がわかるう ! |
ガロウズ | まったく……。で、どうしたマーク。見回りか ? |
マーク | いや、地上部隊のルックから帝国軍が妙な動きをしてるって聞いたんでな。ちょっと探りを入れてくる。 |
マーク | 悪いがアルタミラの近くで降ろしてくれるか ? |
フィリップ | ――ええっ ! ? |
マーク | おわっ ! ? フィル ! ?お前、ブリッジにいたのか ! ? |
セシリィ | ビクエ様ならさっきからずっと通信席で船を漕いでましたよ。 |
マーク | はあ ! ? お前、寝るなら自分のベッドで寝ろっていつも言ってるだろうが ! |
フィリップ | マーク、地上に行くのなら、僕も連れて行ってくれ ! |
マーク | 人の話を聞いてるのかよ……。まったく。 |
マーク | 単なる偵察だ。地上部隊のルックたちと一緒に行くから別にフィルまで来なくてもそこまで遠くに行く予定はないぜ。 |
フィリップ | けど、何が起きるかわからないだろう。帝国軍の動きは僕も知りたいし。 |
マーク | 何言ってんだ。戻ってきたらお前に報告するんだからそれでわかるだろ。 |
フィリップ | 自分の目や耳で直接確認したいんだよ。 |
マーク | 気持ちはわからないでもないがお前、最近根を詰めて調べ物をしてるみたいだし倒れられても困るから、今回は―― |
フィリップ | 駄目だよマーク。そうやって僕を甘やかさないでくれ。そもそも救世軍は僕とフリーセルが作った組織だよ。 |
フィリップ | 自分が束ねる組織のことを、君に任せきりにするのは良くないと思うんだ。最近は発作もあまり起きてないし……。頼むよ。 |
マーク | いや、だからって指揮官が前線に出なくてもいいだろ。 |
フィリップ | けど、マークの行動範囲を広げるためにはマークを切り離すか、僕がもっと身軽になるしかない。 |
フィリップ | それに、今よりもっと動けるようになってイクスやミリーナやマークや……みんなを助けられるようになりたいんだ ! |
マーク | ………………。 |
フィリップ | この辺りが、帝国兵が目撃されたっていう森か。 |
ルック | はい。この辺には特に街や村がある訳でもないですし帝国軍がうろつく理由が見当たらないんです。 |
ルック | 何度か接触もしてるんですが、その度に奴ら蜘蛛の子を散らすように逃げていって……。 |
マーク | ……どういうことだ。 |
ルック | それにしても、マークさんと一緒にビクエ様までいらっしゃるとは思いませんでした。 |
フィリップ | いつも迷惑を掛けてばかりだからたまにはみんなの役に立ちたいんだ。ルックたちには前に辛い思いをさせてしまったし……。 |
ルック | あ、いや、そんな……。頭を上げて下さいよ、ビクエ様 ! |
マーク | ……しっ。静かに。近くに帝国兵がいる。 |
フィリップ | ! |
マーク | ルック、足は大丈夫か ? |
ルック | はい。崖だって登れますよ。 |
マーク | よし、後ろに控えてる連中を連れてこの先の様子を見てきてくれ。 |
マーク | ここに来るまでに、もう五人は帝国兵を見てる。奴らがどの規模で展開してどれくらいの範囲にいるのかを知りたい。 |
ルック | 了解です。 |
マーク | 本当にただの森だぞ……。何だってこんなに帝国兵がいるんだ ?奴ら、ここで何をするつもりなんだ。 |
フィリップ | ……妙だね。 |
マーク | 何が ? |
フィリップ | 帝国軍の目的だよ。あちこちで反乱が起こっているっていうのにこんなところに兵力を割く余裕があるのかな。 |
マーク | まあ、そいつを確かめるための―― |
フィリップ | マーク ? 今何かが…… ! |
魔物 | グオオオオオオッ ! |
フィリップ | 魔物か ! |
マーク | チッ !帝国兵に気を取られすぎたか。フィル、下がれ ! |
帝国兵 | ! ? そこにいるのは誰だ ! ? |
マーク | クソッ、気づかれたか…… !フィル、逃げるぞ !ルックの話が本当なら、奴ら、深追いはしないはずだ。 |
フィリップ | でもルックたちは―― |
マーク | 撤退信号を出した。ポイントαで合流する。俺がここでしばらく足止めをするからお前は先に行け ! |
フィリップ | でも……。 |
帝国兵 | あれは救世軍の!――応援を呼べ! 奴らを逃がすな ! |
マーク | 何 ? こっちとやり合おうってのか ? |
フィリップ | マーク ! 危険だ !やっぱり僕もここに残る !一緒に戦おう ! |
マーク | 馬鹿、俺は平気だ !これはいつもの作戦だし、大したことじゃない。それよりお前は―― |
フィリップ | いつもの作戦 ! ?いつもこんな危なっかしいことをしているのかい ! ?だったら尚更放っておけないよ ! |
マーク | くそ、逃がす間もなくなったか。仕方ねえ。いいか、足引っ張るなよ !俺の指示には従え。いいな ! |
キャラクター | 5話【記念日5 フィリップの思い】 |
マーク | ――おいおい、まだ来るのか。 |
フィリップ | はあ……一気に……片付けよう ! |
マーク | お、おい、フィル ! 無理すんな ! |
フィリップ | 聖なる螺旋を描け…… !ホーリースパイラル ! |
フィリップ | はぁ……はぁ……。ほら、僕も……戦える、だろ……。 |
マーク | フィル、お前……。 |
帝国兵2 | 油断したな ! 覚悟…… ! |
フィリップ | ッ ! ? |
マーク | フィルッ ! |
フィリップ | うわああっ ! |
マーク | フィル――――ッ ! ! |
フィリップ | ん…… ? |
イクス | フィルさん ! |
ミリーナ | フィル、気づいたのね…… ! |
フィリップ | え…… ? ここ、は…… ? |
ミリーナ | 浮遊島よ。ルックさんたちから救援要請をもらったの。 |
ミリーナ | 私たちがついたときにはマークが帝国兵を倒したところで……。 |
フィリップ | ……そ……うか、僕は森で帝国兵に……。 |
フィリップ | ――マークはっ ! ?マークは無事なんだよね ! ? |
イクス | はい。今は外にいます。 |
フィリップ | ……そう、か。 |
フィリップ | 僕は、だいぶ危うかったのかな。 |
ミリーナ | 怪我自体は大したことがなかったわ。でも、ジュードさんの話では体力が落ちていたせいで体へのショックが大きかったんだろうって。 |
フィリップ | 当然だよね。わかっていたつもりだったのにまたみんなに迷惑を掛けてしまったみたいだ。ごめん……。 |
イクス | 迷惑とは思っていませんけどちょっと気になっていることはあります。 |
フィリップ | え ? |
イクス | マークから、詳しい話は聞きました。偵察任務についていったうえ、帝国兵たちに囲まれてマークの指示を無視して戦おうとした、って。 |
イクス | でも……フィルさんは、今までそんな風に戦うことがあまりなかったから、どうしたのかなって思って。 |
フィリップ | 僕は生まれつきのアニマ欠乏症の影響で戦時中も後方任務ばかりだった。でも僕はビクエだ。 |
フィリップ | 魔鏡術に関してはこの世界でトップクラスの力を持っていると自負している。僕が戦いに出られるようになれば、少しは―― |
フィリップ | いや、そうじゃない。本当はいても立ってもいられなかったんだ。マークやイクスたちは前線で戦っているのに僕だけが後ろでじっとしているなんて。 |
カーリャ・N | 適材適所という言葉があります。 |
カーリャ・N | それに鏡精はマスターを守るためにいるのです。マークはフィリップ様が前線に出てくることを納得していないと思いますよ。 |
フィリップ | ……そうだね。でも僕もイクスとコーキスみたいに一緒に戦えればって思ったんだ。一緒に情報を集めて、一緒に戦って、一緒に……。 |
イクス | わ、わあ ! ? な、泣かないで下さい、フィルさん ! |
フィリップ | う……ご、ごめん。歳を取ると涙もろくなって……。 |
カーリャ | まだそんな歳じゃないですよね ! ? |
フィリップ | いや、もうそういう歳だよ……。でも、ごめん。 |
ミリーナ | ねぇ、本当にそれだけ ?私の中のゲフィオンの記憶を手繰ると、フィルが無茶をするときは、大抵イクスが絡んでいるんだけど……。 |
イクス | え ! ? あ、いや、最初のイクスさんか。 |
フィリップ | う……。こっちのミリーナもお見通しか……。 |
カーリャ・N | え ! ?最初のイクス様のことで何かあったんですか ? |
フィリップ | 最初の……じゃなくて目の前にいるイクスの影響というか……。 |
イクス | お、俺ですか ? 俺、何かしましたか ? |
フィリップ | ……以前、イクスに言われただろう ?責任をとるためにも生きなければならない、って。 |
イクス | だったら、必ず責任を取ってください。そのためにも、あなたは生きなくちゃいけない。 |
イクス | あ……はい……。 |
フィリップ | そのことは、しっかりと心に刻んでいる。だから薬の改良にも取り組んで少しでも寿命を延ばせるようにやってきた。 |
ミリーナ | 寿命…… ? どういうこと ? |
フィリップ | え ? イクスから聞いていないのかい ? |
イクス | わあああああ ! ?え ! ? 何でそんなカジュアルにバラすんですか ! ? |
フィリップ | ええ ! ? もしかして何も話していないのか ! ? |
イクス | 話しませんよ ! 話すわけないでしょう !あ、コーキスには……ちょっと話しましたけど。 |
ミリーナ | な、何の話なの ? まさか……。 |
フィリップ | ……あ、ああ。うん。何だか変な形になっちゃったけど実は……僕に残された時間は、そう長くはないんだ。 |
フィリップ | もちろん、今日明日にもどうにかなる……なんてことはないよ。まあ、でも……十年持てばいい方だろうね。 |
三人 | ! ? |
ミリーナ | ……そんな……そこまで病状が重かったなんて……。 |
フィリップ | ごめん。でも同情して欲しいとかじゃないんだ。単純な事実として、僕の時間は限られている。 |
フィリップ | だからこそ、僕が動けるうちに少しでも何かを返さなければと思っていたんだ。 |
ミリーナ | で、でも……だからといって、前線に出て戦うのはフィルには向いていないと思うわ。戦いには、後方で大局を見る指揮官も必要なのよ ? |
ミリーナ | フィルにはフィルのやり方がある。焦らずにそれを見つけたほうがいいんじゃないかしら……。 |
フィリップ | ……そう、なのかもしれないね。 |
イクス | …………。 |
フィリップ | ……すまない、世話になったね。体調はもう落ち着いたし……そろそろ帰るよ。 |
イクス | あ……はい。 |
フィリップ | 今回のことは、ちゃんと考えてみるよ。もう無茶はしないようにする……出来る限りね。 |
カーリャ | フィルさま……そんな大変な状況だったんですね。 |
ミリーナ | ええ……。だからあんなに必死になっていたのね……。心配だわ。 |
イクス | マークも付いているし大丈夫……だと思いたいけど……。 |
カーリャ・N | …………。 |
マーク | ……だから焦ってたのかよ。普段のお前なら気付くことも見落として。戦いだって、あそこまで下手じゃなかっただろ。 |
マーク | 何で突然そんなになっちまったんだ ?命の期限なんて今に始まったことじゃないだろ。 |
フィリップ | ……ごめん。マーク。大丈夫だよ。……大丈夫だから。 |
マーク | そうかよ。 |
フィリップ | うん……。 |
マーク | じゃあ……帰るぞ。 |
フィリップ | ……うん。 |
キャラクター | 6話【記念日6 マスターと鏡精】 |
イクス | ごめんな、ミリーナ。フィルさんのこと、黙ってて。 |
イクス | 口止めされたわけじゃないんだけどそれでも簡単に話していいことじゃないと思って。 |
ミリーナ | でも、コーキスには話したのよね ? |
イクス | ご、ごめん ! 前にコーキスに聞かれたことがあって。あの頃はコーキスが隠し事ばっかりだって心配していた頃だったから……。 |
ミリーナ | フフ、冗談よ。いいの、イクスの判断は正しいわ。でも……何とかならないのかしら。 |
イクス | フィルさんの病気のことや飲んでる薬のこともう少し聞いてみようか。 |
イクス | それを元に、アトワイトさんとかハロルドさんとかみんなに相談してみたら、何とかできるかも知れない。 |
ミリーナ | そうね。何もしないよりマシよね。 |
カーリャ | イクスさま、ミリーナさまぁ !マークから魔鏡通信が入ってますよ~ ! |
ミリーナ | マークから ? |
イクス | なんだろう…… ?さっきケリュケイオンに戻ったばかりなのに。 |
マーク | 悪いな、さっき邪魔したばっかりなのに。フィルのいるところでは話せなかったんでな。 |
ミリーナ | それは構わないけれど……。どうしたの ? |
カーリャ | なんか、思い詰めてるように見えますよ ?大丈夫ですか ? |
マーク | そんなことねぇよ、ちっこいパイセン。ありがとな。 |
マーク | イクス、ミリーナ。例のパーティーの件なんだが中止にしてもらえないか。せっかく準備を進めてたところ悪いんだが……。 |
イクス | もしかして、まだフィルさんの体調が良くないのか ?だったらもう一度―― |
マーク | いや……あいつの体調は問題ねえよ。 |
マーク | フィルには、しばらくケリュケイオンの自室から外に出ないで、頭を冷やしてもらうことにした。本人もそれで納得してる。 |
マーク | 仮にも救世軍をまとめる立場の人間がてめぇの命の期限のことぐらいでまともな判断ができなくなるんじゃ困るんだ。 |
イクス | ぐらいなんて言い方はないだろ ! |
マーク | フィルが責任のある立場じゃなけりゃ俺だってこんなことは言わねぇよ。 |
マーク | かかった費用はあとで領収書を送ってくれ。そこはちゃんとケジメつける。色々巻き込んですまなかった。 |
カーリャ | ちょっと、マーク ! |
カーリャ | ……切れちゃいました。 |
イクス | なんか、マークの奴も変じゃなかったか ?上手く言えないけど、いつものマークじゃないというか……敵対していた頃のマークっぽいというか。 |
ミリーナ | ファントムと一緒に行動していた頃のことね。ええ……確かに。何だか余裕がない感じだわ。 |
カーリャ | ……マークも不安なのかも知れません。 |
イクス | え ? |
カーリャ | フィルさまが亡くなればマークも消えてしまいます。マークを生かすためにはフィルさまはマークを切り離さなければいけない。 |
カーリャ | でも……鏡精はマスターから切り離されるのが嫌です。別に捨てられるわけじゃないと思ってもやっぱり繋がっていたいから……。 |
ミリーナ | カーリャ……。 |
イクス | そうか……。そういう話、きっと二人はしてる筈だよな。特にフィルさんが怪我したばかりだし。 |
イクス | それでお互いにぎこちなくなっちゃってるのかな ? |
イクス | いや、そんな俺とコーキスみたいな理由な訳ないか。あの二人の方が大人だし……。 |
ミリーナ | そうかしら。二人とも案外子供よ。でも、そうね。深い絆があるからこそかえってこじれてしまうことはあるわよね。 |
カーリャ | フィルさまはマークを守りたいしマークはフィルさまを守りたい。 |
カーリャ | マークはフィルさまと離れたくないしフィルさまはマークに生き続けて欲しい……ってことなんじゃないでしょうか。 |
イクス | ――なあ、やっぱりパーティーをやらないか ? |
カーリャ | えっ ! ? 中止だって言われたのにですか ? |
イクス | だって、パーティーの目的は『鏡士の日』を祝うことだろ。今のフィルさんとマークにはぴったりの記念日だと思うんだ。 |
イクス | 俺は鏡士の道を選んだから、コーキスに出会えた。ミリーナとカーリャだってそうだろ ?もちろんフィルさんとマークも。 |
イクス | こじれた絆はほどけばいいんだよ。こじれきって取り返しがつかなくなる前に。 |
イクス | お互いがどう生きていきたいのかこれを機にちゃんと話し合って、『鏡士の日』を二人の新しい記念日にできたらいいんじゃないかな。 |
ミリーナ | イクス…… !そうね。私もそれがいいと思うわ。 |
カーリャ | イクスさまのくせに格好いいですー ! |
イクス | くせには余計だぞ !まあ、俺もコーキスと離れてる今偉そうなことは言えないんだけどさ。 |
ミリーナ | そんなことないわよ。コーキスはコーキスで今、一生懸命、自分がどう生きていきたいのかを考えているんだと思う。 |
ミリーナ | あなたもそう思うわよね、ネヴァン。 |
二人 | ! ! |
カーリャ・N | ……気づいていたんですね、小さいミリーナ様。 |
ミリーナ | ふふ。あなたにとってマークは大切な後輩でしょう ?ゲフィオンの記憶の中ではいつも二人は一緒にいたもの。 |
ミリーナ | だからマークのことが気になってあの通信を隠れて聞いていたのよね。 |
カーリャ・N | フィリップ様の体の話を聞いて思ったんです。マークは私を見るのが辛いのでは、と。私はゲフィオン様から切り離された鏡精ですから。 |
カーリャ | それで姿を隠していたんですね。 |
カーリャ・N | ええ。でも皆さんのお話を聞いていて私も覚悟が決まりました。 |
イクス | 覚悟 ? どういうことだ ? |
カーリャ・N | フィリップ様とは、一度きちんと話をしなければと思っていたんです。 |
カーリャ・N | 戦争中はそれどころではありませんでしたが今ならフィリップ様も耳を傾けてくれると思います。 |
ミリーナ | フィルに何か言いたいことがあるのね。 |
カーリャ・N | はい。私をケリュケイオンに派遣して下さい。パーティーのことも、私が二人を説得します。 |
イクス | わかった。頼むよネヴァン。その間に、俺たちはパーティーの準備を進めておくから ! |
カーリャ・N | はい ! |
キャラクター | 7話【記念日7 ネヴァンの思い】 |
フィリップ | やあ、いらっしゃい。ネヴァン。 |
カーリャ・N | お邪魔します。 |
フィリップ | はは……僕が部屋に押し込められていることはマークから聞いた ? |
カーリャ・N | ……はい。 |
フィリップ | そうか……まあ、自業自得だよね。気をつけろって言われていたのに怪我はするわ、足は引っ張るわで。 |
フィリップ | マークが怒るのも当然だ。 |
カーリャ・N | ……本当にマークが怒っていると思われますか ? |
フィリップ | え ? |
カーリャ・N | もし本気でそう思っているならあなたは大馬鹿者です。 |
フィリップ | ネヴァン――いや『カーリャ』……。それは一体どういう意味だい ? |
カーリャ・N | マークはあなたの病気を治すために生み出されたそうですね。 |
フィリップ | 知っていたのか ! ? |
カーリャ・N | ずっと昔にマークから聞きました。あなたは先天性アニマ欠乏症の治療薬を飲みたくないと拒絶した。 |
カーリャ・N | 代わりに提案されたのが、自己心片療法――自分自身の心を削って保管し、発作の際に注入及び服用する。心を削りすぎないためには鏡精のサポートが必要です。 |
フィリップ | そうか……。マークとカーリャの間には本当に隠し事がないんだな。そのこと、イクスたちも知っているのかい ? |
カーリャ・N | いえ、特に誰にも話してはいません。プライベートなことですし、話せば何故フィリップ様が治療薬を拒絶したのかも話すことになります。 |
カーリャ・N | でも、ゲフィオン様の記憶を受け継いだミリーナ様は治療薬の正体をご存じかも知れませんね。 |
フィリップ | そうだね……。あれはキラル分子を作る際に殺した鏡精の遺体から作るもの。僕には耐えられなかった。 |
カーリャ・N | 私はあなたが薬を拒絶して、自己心片療法を選んで下さったことを尊敬しています。 |
カーリャ・N | 心を削るのは苦しい作業ですし、心片から得られる薬も鏡精の遺体から得られる薬より効果が低い。それでもあなたは鏡精を大切にしてくれた。 |
カーリャ・N | マークもとても嬉しそうでした。自慢のマスターだと。フィリップ様を守るために生まれたことを誇りに思っているようでした。 |
フィリップ | マークがそんなことを……。 |
カーリャ・N | マークはいつだってあなたのことが一番なんです。鏡精はみんなそうです。みんなマスターが一番大切なんです。 |
カーリャ・N | ましてマークは、自分こそがあなたの命を守る存在だと信じている。 |
カーリャ・N | マークは怒っているのではありません。悲しんでいるんです。マークが守ろうとしているものをあなたが守ろうとしてくれないから。 |
フィリップ | それは――それは……。 |
カーリャ・N | あなたは、自分が死ぬことを前提として行動しているように感じられます。それは、きっとマークにも伝わっている筈。それがどれだけ残酷なことか……。 |
フィリップ | それでも……身体の限界は変えられない。だからまだ動けるうちに償いをしたい。 |
フィリップ | カーリャは僕の罪の重さをよく知っている筈だよね。僕がイクスの具現化を提案したとき真っ先に、しかも強硬に反対したのは君だった。 |
フィリップ | 僕たちがやるべきなのは過去を甦らせることではない。未来を創ることだって。それが戦争に荷担した僕たちの償いだって。 |
カーリャ・N | 私も前線で戦いました。フィリップ様の気持ちも少しはわかるつもりです。 |
カーリャ・N | でも、お願いですからマークを見てあげて下さい。あなたが自分を罰して、償いに命を捧げるときマークも傷つくんです。 |
カーリャ・N | 守りたいと思う存在が、死に急ぐ姿を見なければいけないのですから。 |
フィリップ | それは……君自身のことでもあるんだね、カーリャ。 |
カーリャ・N | …………はい。 |
カーリャ・N | 何かを償うために何かを犠牲にするのは過去にあなたやゲフィオン様がしてきたことと何も変わりません。 |
フィリップ | 僕がやろうとしていることはマークを犠牲にしている ? |
カーリャ・N | マークもフィリップ様ご自身も、です。 |
フィリップ | まいったな……。どうすればみんなの役に立てるのかどうしたら自分の罪をあがなえるのかそればかり考えていたのに、結局何も変わらない、か。 |
カーリャ・N | あなた一人が罪人ではありません。私もマークもゲフィオン様も……みんなが少しずつ今の状況を作り出してしまった。 |
カーリャ・N | 一人で苦しまないで下さい。マークのためにも。それに、フィリップ様を許したイクス様や小さいミリーナ様のためにも。 |
フィリップ | けど……。 |
カーリャ・N | いえ、フィリップ様の言い訳は結構です。 |
フィリップ | ひ、ひどいな……。 |
カーリャ・N | 言いたいことは言わせてもらいました。後はフィリップ様とマークがお互いに心の内をさらけ出せばいいことです。 |
カーリャ・N | それと、もう一つ。 |
フィリップ | ま、まだ怒られるのかい…… ? |
カーリャ・N | パーティーのお誘いです。明日『鏡士の日』を記念したパーティーが浮遊島でひらかれます。 |
フィリップ | え ! ? 鏡士の日 ! ?なんだってそんな懐かしい記念日を……。 |
カーリャ・N | フィリップ様を元気づけたいと、マークが頼みに来たんです。小さいミリーナ様もイクス様も、喜んで協力してくれました。 |
フィリップ | そう、なんだ……。マーク……そんなことまで……。 |
カーリャ・N | 絶対に参加して下さい。マークと二人で。あなたにはそうする責任があります。 |
フィリップ | カーリャは僕に厳しいよね……。 |
カーリャ・N | マークは私の後輩ですしあなたはゲフィオン……ミリーナ様の後輩です。 |
カーリャ・N | 後輩の面倒を見るのが先輩というものですからね。 |
救世軍 | お話の最中にすみません !大変です、ビクエ様 ! |
フィリップ | ど、どうしたんだ ? |
救世軍 | つい先程、偵察に出たマーク様との連絡が途絶えてしまったんです ! |
二人 | ! ? |
キャラクター | 8話【記念日8 共闘】 |
フィリップ | 偵察に出たってのはどういうことだ ?僕はこの部屋に閉じ込められていたから状況がわからない。詳しく話してくれ。 |
救世軍 | は、はい。マーク様はビクエ様をこちらに送り届けた後帝国軍の動きで思い出したことがある、と仰って地上に戻って行かれました。 |
救世軍 | 十五分ごとに定期連絡をいただくことになっていたのですが、三度目の連絡を最後に連絡が途絶えてしまったんです。 |
カーリャ・N | マークは一人だったのですか ? |
救世軍 | はい。事態をクラトス様とローエン様に報告したところお二人は、まずビクエ様に報告せよと仰って。 |
フィリップ | ……ということは、僕に指揮を執れということだね。わかった。ブリッジに行こう。ここには魔鏡通信機もないしね。 |
カーリャ・N | 私もお供します。 |
クラトス | フィリップか。状況はわかっているな。 |
フィリップ | ええ、もちろん。マーク一人で偵察に出たということは―― |
マーク | 馬鹿、俺は平気だ!これはいつもの作戦だし、大したことじゃない。それよりお前は―― |
フィリップ | いつもの作戦 ! ?いつもこんな危なっかしいことをしているのかい ! ?だったら尚更放っておけないよ ! |
フィリップ | (そうか、そうだった。『あれ』はいつものやり方だ。馬鹿だな、僕は。あの時は本当に焦っていたんだ) |
フィリップ | (けどマーク。やっぱりきみも馬鹿だよ) |
フィリップ | ――マーク一人で偵察に出たということはかなり危険な任務だったんですね。 |
ローエン | そのようですね。こちらの世界では、危険なときほど鏡精に単独行動させるのがセオリーと聞いています。 |
カーリャ・N | はい。鏡精はマスターが生きている限り死にません。危機に際しては、わざと自害しマスターの心に戻れば瞬時に得られた情報をマスターに届けられます。 |
クラトス | どの世界も戦いにおいては合理性を追求するのだな。 |
カーリャ・N | ご心配なく。鏡精はそういう生き物です。人間が感傷を持つのはわかりますが鏡精が最も恐れるのはマスターの死ですから。 |
フィリップ | …………………。 |
フィリップ | マークは偵察の目的をお二人にも明かしていかなかったんですね。 |
クラトス | ああ。我々がマークの地上再降下に気付いたのはマークからの最初の通信をもらってからだった。 |
ローエン | 普段、報連相のしっかりしているマークさんらしからぬ行動です。何か心当たりがあるのでは ? |
フィリップ | ……はい。さっきもネヴァンに怒られていたところです。それにマークの行動の理由も想像がついています。 |
クラトス | そうか。では、私がゼロスと共にマークを助けに行くがそれで構わないか ? |
フィリップ | いえ、僕に行かせて下さい。クラトスさんとゼロスさんには僕とネヴァンを運んで欲しいんです。 |
ローエン | マークさんが無断で単独行動を取ったということは敵の目的はフィリップさんだと思われますがそれでも行くと仰いますか ? |
フィリップ | ええ、承知しています。それでも今回は僕に任せて下さい。 |
ローエン | ……どうやら本当にしっかりお灸を据えられたようですね。わかりました。サポートはお任せください。 |
カーリャ・N | フィリップ様、本当に護衛は私だけでいいのですか ? |
フィリップ | ああ。必要な手は打っておいた。念のためにクラトスさんたちには上空で待機してもらっているしローエンさんに全体を把握してもらっている。 |
フィリップ | 恐らく今回の敵の目的はこうだ。まず、編成上必要のない地点――それも救世軍の勢力圏に帝国軍が兵を集めてくる。 |
フィリップ | 当然、僕ら救世軍は偵察に出てくる。帝国軍は救世軍の偵察をわざと誘導して何か大がかりな作戦があることを印象づける。 |
フィリップ | その報告はケリュケイオンの僕にも上がってくる。僕が動けばしめたもの。そうでなくてもケリュケイオンの乗員を捕らえられればまずは目的達成。 |
カーリャ・N | 狙いはケリュケイオンそのものですか。フィリップ様ではなくて。 |
フィリップ | 両方、だと思うんだ。空を飛べる乗り物は帝国だって欲しいはず。それに、自分で言うのも何だけど僕はグラスティンに気に入られているからね。 |
フィリップ | マークが独断で動いているのも、敵の狙いが僕にあることに気付いたんじゃないかな。 |
フィリップ | 今朝しつこく帝国兵が僕とマークを襲ってきたのは思っていたより早く狙いの獲物が飛び込んできたからだと思う。 |
カーリャ・N | なるほど。だからあえて今回はフィリップ様の護衛を私一人に絞ったんですね。 |
帝国兵 | ――何者だ。この辺りは我が帝国軍が……お、お前はビクエか ! ? |
二人 | ! ? |
帝国兵A | ――中々口を割らないな。ケリュケイオンの次の停泊地はどこだ ! |
マーク | 殴ろうが蹴ろうが、お前らに話すことなんかないぜ。 |
帝国兵A | こいつ ! |
帝国兵B | やめろ !下手にこいつを殺してみろ。ビクエのところに逃げられちまう。 |
マーク | (ちっ。こいつら、俺がフィルの鏡精だって知ってやがるのか。どうする。何とか武器を奪って死んじまうか……) |
帝国兵C | おい ! ビクエを捕まえたぞ ! |
帝国兵A・Bとマーク | 何 ! ? |
マーク | フィルにパイセン ! ? |
カーリャ・N | いいざまですね、マーク。捕まって手錠を掛けられているなんて。 |
マーク | そっちこそな ! ?つーか、なんでフィルまで来てるんだ ! ?部屋から出るなって、あれほど言っただろうが ! |
フィリップ | マークだって、僕には無茶をするなとか色々言ってたくせに、クラトスさんたちにも報告しないで偵察に出てるじゃないか。 |
マーク | だからそれは―― |
フィリップ | 敵の狙いが僕だと気付いたんだろう ? それで僕を巻き込まないように敢えて一人で偵察に出た。 |
フィリップ | マーク一人なら、何かあったときに死亡転送で僕の心に戻ってこられる。そのことを知っている僕はマークのためにも安全地帯で待たなくちゃいけない。 |
フィリップ | けどね、その作戦、大失敗だから。 |
マーク | そりゃそうだろ。お前がここに来ちまったんだから ! |
? ? ? | 輝く御名の下、地を這う穢れし魂に裁きの光を雨と降らせん。安息に眠れ、罪深き者よ。ジャッジメント ! |
帝国兵A | な、何だ ! ? |
イクス | ――裂燕迅 ! |
帝国兵A | うわっ ! ? |
マーク | イクス ! ? |
フィリップ | 手筈通りだね、イクス。 |
イクス | クラトスさんの合図がありましたから。今、手錠を外します ! |
帝国兵B | くそ、いつの間に接近されたんだ。見張りは何をしていた。 |
ミリーナ | 伏せていた兵は全て捕まえたわよ。 |
クラトス | ポイントβ、制圧した。 |
アリス | ポイントγ、もちろん一捻りよ♪ |
エルレイン | こちらはポイントδ。制圧は完了しました。バルバトスはまだ暴れていますが折を見て連れ戻しましょう。 |
ローエン | ――という手筈でございます。フィリップさん。 |
マーク | は…… ? |
フィリップ | お見事です、ローエンさん。 |
帝国兵C | まさか、こちらの兵が全滅したのか…… ? |
カーリャ・N | あとはあなた方だけ。さあ、覚悟なさい。 |
フィリップ | イクス、ミリーナ、ネヴァン……それにマーク。マークを助ける為に、力を貸してくれるね。 |
三人 | はい ! ! |
キャラクター | 9話【記念日9 マーク救出】 |
ローエン | お疲れ様でございました。事後処理はデクスさんの班で行ってもらいます。 |
アイゼン | ケリュケイオンは浮遊島に回す。そっちで合流だ。 |
ローエン | もうすぐ日が暮れますので気を付けてお帰りください。 |
マーク | で、何がどうなってるのか説明してくれるか ? |
フィリップ | ああ。帝国軍はケリュケイオンの拿捕及びビクエ捕獲のための罠を張っていたと、僕は推測した。 |
マーク | 根拠は ? |
フィリップ | この辺りは救世軍の勢力圏であること。帝国の求めるような街も設備も資源もない田舎であること。 |
フィリップ | にもかかわらず投入された兵の数が異常であること。以上のことから、今回の件は何らかの陽動である。 |
マーク | ああ。 |
フィリップ | また、帝国軍は何度も救世軍と遭遇しているのに逃げ回るばかりだった。なのに今朝の偵察では執拗に僕とマークだけを狙ってきた。 |
マーク | そこまでわかってて、なんでノコノコ出てきたんだ ! ? |
フィリップ | マークを助けに来たんだよ。 |
マーク | 俺は、最悪死んでもお前のところに戻れるだろうが。 |
フィリップ | いいや、それはどうかな。マークは忘れてるみたいだね。リーパが目を覚ましたってことを。 |
マーク | ! ? |
イクス | あ、そうか。リーパ……ファントムとフィルさんはマークを共有しているんだっけ。 |
フィリップ | ああ、リーパは最初の過去からの具現化でテストケースだったからね。ちょっと特殊な状態なんだ。 |
フィリップ | だから、もしもマークが心に戻っているときにリーパが鏡精を作ろうとしたらマークは今のマークじゃなくなるよ。 |
マーク | あ、あいつが今更鏡精を作ろうとするとは……。 |
マーク | ………………いや、そうだな。フィルの言う通りだ。すまなかった、フィル。確かに、俺の考えが足りなかった。 |
マーク | イクスたちも、フィルに頼まれて来たんだろう ?悪かったな。 |
イクス | あ、いや、俺たちは別にいいんだけど……。 |
フィリップ | いや、イクス、本当に申し訳なかったよ。今回の件では、何から何まで迷惑を掛けた。 |
フィリップ | それから、マークにも。僕が悪かった。申し訳ありませんでした。 |
マーク | フィル ? どうしたんだ、お前……。 |
フィリップ | 正直に言うよ。僕は焦っていた。イクスやマークやミリーナが前線で戦う中、一人ケリュケイオンに残ることが多かったこと。 |
フィリップ | それにマークの行動を、僕という存在のせいで制限してしまっていること。 |
フィリップ | それでも僕なりにできることをして世界に償いたいと思っていたのに……リーパが目を覚ました。 |
フィリップ | リーパは僕とは違って健康だ。どこにだって行ける。マークの足かせにはならない。僕よりずっとみんなの力になれる……。 |
マーク | お前……そんなこと気にしてたのか。それで急に新しい薬を開発するだの、戦い方のセオリーを学ぶだの、訳わからないことを……。 |
フィリップ | まあでも、生兵法は怪我の元だね。自分の体力や戦況を見誤って、みんなに迷惑を掛けてしまった。 |
フィリップ | 僕は昔から自分を見て欲しいって思うタイプだったから死ぬ前に何か実感が欲しい、と思ってしまったのかもしれないね。 |
フィリップ | 生きている間に罪滅ぼしができたぞっていう……。 |
ミリーナ | フィルは十分頑張ってくれているわ。これまでだって、私たちの知らないことを教えてくれて……。 |
フィリップ | もうそんなこともできなくなるよ。ミリーナにはゲフィオンの記憶がある。ゲフィオンの知識と僕の知識はほとんど変わらない。 |
フィリップ | 魔鏡術だって、潜在能力ではイクスの方が上だ。 |
イクス | フィルさん、それは―― |
フィリップ | いや、聞いていて欲しい。僕は自分を卑下したいわけじゃない。 |
フィリップ | 確かに潜在能力はイクスの方が上だ。リーパの方が健康で、ミリーナとは知識に差がない。 |
フィリップ | それでも僕はこの世界で最高の鏡士だ。僕にできることはまだ残っている。全てが終わった時に責任をとれる立場なのは、もう僕しかいない。 |
カーリャ・N | それは帝国との戦いを終えた後、ということですね。 |
フィリップ | ああ。誰かが後始末をしなくちゃいけない。それはイクスたちでは無理だ。 |
フィリップ | ここに至る前の事情を知る、責任ある立場の大人が事後処理をしなくちゃいけない。 |
イクス | だったら、必ず責任を取ってください。そのためにも、あなたは生きなくちゃいけない。 |
フィリップ | イクス…… ? |
イクス | 俺はフィルさんと一緒に、生きて世界を守りたい。 |
フィリップ | ! ! |
イクス | 確かにこの世界は嘘だらけかもしれないけどでもそこに真実がない訳じゃない。 |
イクス | 嘘も真実も現も幻も、俺は全てを守りたい…… !その為には、あなたが必要なんです。 |
フィリップ | 僕は生きて世界を守るということはイクスと肩を並べて戦うことだと……漠然とそう思っていた。 |
フィリップ | いや、何なら、イクスを守るために命を捨てる覚悟すらあったよ。けど、それじゃあ駄目なんだよね。今回のことで痛感した。 |
フィリップ | 僕は生きるよ。例え人より期限が短くてもこの戦いの後、混乱するであろう世界を守り責任を取る。それが僕の戦い方なんだ。 |
カーリャ・N | 今度こそ、未来を創ってくれるんですね。 |
フィリップ | ああ、未来のための礎になるよ。その為に残りの人生を捧げる。できるだけ長く、ね。 |
マーク | ……っ。 |
フィリップ | あれ、マーク。泣いてるのかい ? |
マーク | 誰が泣くか、馬鹿野郎。 |
フィリップ | マーク、ありがとう。いつだってマークは僕を助けてくれた。 |
フィリップ | 今回だって、僕が狙われてることに気付いて閉じ込めたんだろう ? まあ、頭を冷やせって意味でもあることはわかってるけど。 |
マーク | ……フン。随分物わかりがいいじゃねぇか。 |
フィリップ | ねえ、マーク。これからも僕に付き合ってくれるかい ?僕がこの世の果ての……その向こうに行くときも。 |
マーク | ! ! |
フィリップ | 僕はもうそのつもりだからもし嫌になったときは、力を使えるうちに言ってくれないと間に合わないよ。 |
マーク | ……ああ。愛想が尽きたときは早めに報告するよ。 |
カーリャ | ミリーナさま、私もずっと……ずーっとミリーナさまと一緒がいいです ! |
ミリーナ | カーリャったら……。ええ、わかったわ。あなたがそう望むなら、約束するわね。 |
イクス | ネヴァン、どんな魔法を使ったんだ ?フィルさんにあんなことを言わせるなんて。 |
カーリャ・N | 私は何も……。強いて言うなら、先輩鏡精の意地でしょうか ? |
イクス | え ? |
カーリャ・N | 冗談です。 |
カーリャ・N | ……きっと、フィリップ様の中には最初からあの答えがあったんだと思います。 |
カーリャ・N | けれどフィリップ様の言う焦りが視界を曇らせていたのではないでしょうか。 |
イクス | そうだな。フィルさんは……本当は結構図太い人だと思うし。 |
カーリャ・N | ええ、それはもう。それがあの方の長所でもあるとカーリャは……あ、いえ、私は思います。 |
キャラクター | 10話【記念日10 感謝を込めて】 |
マーク | 何だかんだで浮遊島に辿りついたらもう朝かよ。今回はきつかったな……。 |
フィリップ | 朝……。あ……それじゃあ……。 |
マーク | さて、それじゃケリュケイオンに戻るか。 |
ミリーナ | あ、待って。その前にマークもフィルも着替えた方がいいわ。 |
マーク | は ? なんで ? |
カーリャ | だ、だってマークもフィルさまも臭いです。 |
マーク | んな訳あるか ! ? |
マーク | ……って、まあ、色々バタバタしてたし確かに汗かいてるわな。戻ったらシャワーでも浴びて着替えるよ。 |
ミリーナ | あら、ここでシャワーを浴びて行きなさいよ。洗濯もしておいてあげるわ。 |
イクス | そ、そうだね。それがいいよ。あ、ついでに食事もしていったら ? |
カーリャ・N | そうしなさい、マーク。その時に、今回どうして敵に捕まったのかその無様な顛末をじっくり聞かせてもらいます。 |
マーク | な、何だよ……。どうするフィル ? それでもいいか ? |
フィリップ | う、うん ! そうしよう ! |
マーク | …… ? |
マーク | ……おい、こいつは一体どういうことだ ?なんで用意されてる着替えがこんななんだよ ! ? |
カーリャ・N | 小さいミリーナ様が具現化してくださったんですよ。もっと喜びなさい、マーク。 |
フィリップ | な、なんだか照れくさいね。 |
マーク | いや、パイセンもフィルも何だってそんな格好を……。 |
マーク | ――あ、まさか。 |
カーリャ | まずいですよ、先輩。バレそうです ! |
カーリャ・N | フィリップ様、マークを隣の部屋に押し込みますよ ! |
フィリップ | う、うん ! |
三人 | それっ ! |
二人 | 鏡士の日、おめでとう ! |
マーク | うおっ ! ? |
カーリャ | ふっふっふ、驚きましたぁ ?これぞサプライズパーティーですよ~ ! |
フィリップ | ふふ、僕もサプライズする側に回れたね。 |
マーク | やっぱりそうか……。中止にしろって言ったのに。 |
イクス | 俺もミリーナも鏡士なんだから鏡士の日を祝ってもいいだろ ? |
ミリーナ | それにこれは、フィルとマークの仲直りの記念でもあるのよ。 |
マーク | 仲直りって……子供かっての。 |
フィリップ | え ? 仲直りできたんだよね ? |
マーク | 別に喧嘩もしてたつもりはねえよ。でも……ありがとな、イクス、ミリーナ、パイセンズ。 |
二人 | その呼び方はやめなさい ! |
エル | ねえねえ、みんなでカンパイするんだって。 |
ソフィ | シェリアがみんなに飲み物を配るって言ってるよ。 |
ミリーナ | そうね、私も飲み物を配るの手伝うわ ! |
ファラ | あ、ミリーナはいいよ、みんなで話してて !今日はミリーナだって主役なんだから ! |
ミリーナ | え ? でも……。 |
エステル | 今日は『鏡士の日』なんですよね ?だから、みんなで相談してここから先はみなさんには思いきり楽しんでもらおうと決めたんです。 |
リタ | そういうこと !だから気にせずにのんびりしてなさい。はい、ドリンク。 |
ミリーナ | ありがとう、みんな。それじゃあ、お言葉に甘えるわ。 |
イクス | うん。本当にありがとう ! |
カイル | マークとフィリップさんも、どうぞ ! |
マーク | ああ、サンキュ。 |
フィリップ | どうもありがとう。 |
ユリウス | 全員に飲み物は行き渡ったな ?では乾杯しようと思うんだが……フィリップ、乾杯の挨拶は任せていいだろうか。 |
フィリップ | えっ、僕 ? |
イクス | うん。フィルさんが一番相応しいと思います。このパーティーは、もともと鏡士の日を祝うもの……。 |
イクス | だから、ビクエであるフィルさんに挨拶してもらえたら、俺も嬉しいです。 |
ミリーナ | 私も同じ気持ちよ。フィル、お願いできるかしら ? |
マーク | 大丈夫だって。お前が思う通りのことを話せばいい。 |
フィリップ | ……わかった。そう、だね。ええと、何を言おうか……。 |
フィリップ | …………。 |
ゼロス | あんまり考え過ぎても仕方ないんでねーのフィリップくんよ~。 |
フィリップ | えっ ? |
フィリップ | みんな…… ! |
アイゼン | イクスに誘われたんだ。フィリップのためにパーティーをするから参加してくれないか、と。 |
ガロウズ | ビクエ様のためと言われれば断れないさ。 |
セシリィ | もっと早く教えてくれてれば、準備も手伝ったのに。 |
クラトス | 全員は参加出来なかったし、興味がないと切り捨てる連中もいたが、まだまだこの後も合流してくるだろう。 |
ローエン | 都合の付かなかった人からは差し入れもあずかってきましたよ。後ほど並べさせていただきます。 |
マーク | 意外と人徳があったみたいだな ? |
フィリップ | マークのおかげだね。 |
マーク | そうそう、そいつを忘れないでくれればいいぜ。 |
フィリップ | はは……。 |
フィリップ | ――みんな、今日はこうしてパーティーを開いてくれて本当にありがとう。 |
フィリップ | 今日は『鏡士の日』ということだけど……もう、そんなのはやめにしよう。 |
みんな | えっ ! ? |
マーク | おいおいおい……。今日のパーティーのきっかけを根底から覆すなよ。 |
フィリップ | はは……ごめん。でも鏡士だけに感謝をする日、というのも違うような気がするんだ。 |
フィリップ | 僕たちは、自分の力だけで生きているわけじゃない。鏡士には鏡精の存在が欠かせないと思うし一緒に戦ってくれる仲間も必要だ。 |
フィリップ | だからこそ、今日の日の意味合いを変えたいんだ。当代ビクエとして、この日を鏡士と鏡精、そして近しい誰かとの絆に感謝する仲間の日としよう。 |
フィリップ | 僕はマークだけでなく、イクスや救世軍のみんなそして今の世界で出来た繋がりの全てに感謝したいと思うから。 |
カーリャ | それ、勝手に変えちゃっていいやつなんですか ! ? |
フィリップ | ああ、構わないさ。どうせ覚えている人間も多くないんだしね。 |
カーリャ・N | ふふ……いいんじゃありませんか ?私は、フィリップ様の考えを支持します。 |
フィリップ | うん。ありがとう、ネヴァン。 |
ゼロス | いい雰囲気のところ悪いんだがそろそろ乾杯といこうや。長い演説は人徳無くすしな。 |
フィリップ | ああ、ごめん。そうだね。それじゃあ……。 |
フィリップ | みんなに感謝を。乾杯 ! |
みんな | 乾杯 ! |
カーリャ | ネヴァン先輩~ ! 乾杯です ! |
カーリャ・N | ええ、乾杯。これからも小さいミリーナ様のことをよろしくね。 |
カーリャ | はい、任せてください !全力でお手伝いしますから~ ! |
マーク | はは……すごいな。花束までもらったぜ。フィルに、だってよ。 |
フィリップ | 立派な花束だな……嬉しいよ。みんなにどれだけ感謝してもし足りないな。 |
イクス | ほら見てくれ。すごく立派なケーキだろ。みんなが作ってくれたんだ。 |
ミリーナ | とっても美味しそう。そうだ、食べる前に写真を撮らなきゃ !イクス、ケーキを持ってポーズを決めて。 |
イクス | せっかくだからオートモードにしてミリーナも一緒に入ったらいいんじゃないか ?フィルさんもマークもネヴァンもカーリャもさ。 |
ミリーナ | わかったわ。今、セットするわね。さあ、みんな集まって。 |
みんな | 【鏡士の日】改め【仲間の日】おめでとう ! |