キャラクター | 1話【苦戦中】 |
ロイド | う〜ん……う〜ん。 |
コレット | ロイド、だいじょぶ ?さっきからずっと「う〜ん」って言ってるよ。 |
ロイド | ……だって、おかしいだろ !やっとリフィル先生のテストが終わったと思ったのに俺だけまたテストってなんだよ ! ? |
コレット | 仕方ないよ、ロイド。合格点に足りなかったら再テストなんだって。 |
ロイド | 今頃、みんなはクレス道場で鍛えてるってのに俺は机の前でずっと勉強かぁ……。 |
コレット | でも再テストってことは、リフィル先生がロイドにもう一度チャンスをくれたってことだよね。もうちょっとだけ勉強、頑張ろ。ね ? |
ロイド | 前向きだな、お前。…………でもやっぱ、ダメだ。いくら読んでも何も頭に入らねえ ! |
クラトス | 苦戦しているようだな、ロイド。 |
ロイド | と、父さん…… ! ?なんでアジトにいるんだ ? |
クラトス | ここへ来たのは救世軍の用事を済ませるためだ。その合間に、リフィルからテストの話を聞いた。 |
ロイド | うっ、そっか……。先生も黙っててくれりゃいいのに。 |
クラトス | お前の成績を教えて欲しいと頼んだのは私だ。勉強が苦手なことは以前から知っていたが……私が想定していた以上だったのでな。 |
ロイド | しょうがないだろ !出来ないものは出来ないんだって。 |
コレット | でもロイド、頑張ってるよ。 |
ロイド | ……本とにらめっこしてるだけだけどな。お前やジーニアスにも付き合わせちまって悪いとは思ってるんだけど……。 |
クラトス | 良き友に恵まれたな、ロイド。 |
ロイド | そんないい話じゃねえって。リフィル先生が俺が逃げないように交代で見張らせてるんだぜ。本なんか何時間眺めてたって一緒なのによ。 |
クラトス | 努力の成果は、すぐに出るものばかりではない。続けていれば少しずつでも向上するはずだ。諦めずに頑張ってみなさい。 |
ロイド | そういうもんなのかな……。まぁ、もうちょっとだけやってみるよ。あの……来てくれてありがとな、父さん。 |
クラトス | 礼ならコレットたちに言えばよい。私はお前の様子を見に来ただけだ。 |
コレット | ……ねえ、ロイド。ちょっと思ったんだけどクラトスさんにロイドの勉強見てもらえないかな ? |
ロイド | えっ ! ? 父さんに…… ? |
コレット | あの、クラトスさんに時間があったらですけど。きっと私なんかよりずっと物知りだし勉強、教えるの上手なんじゃないかなって。 |
クラトス | ……私が、か ? |
コレット | 駄目、ですか ? |
クラトス | いや、駄目というわけではないがリフィルでも手を焼いているのを……。 |
クラトス | ――いや、しかし、一応、親として何もかもリフィルに任せきりというのもよくないな。 |
ロイド | え ! ? 本当に父さんが教えてくれるのか ! ? |
クラトス | ……ああ。一日でどれだけのことを教えられるかはわからないが、全力を尽くそう。……覚悟はいいな、ロイド。 |
ロイド | か、覚悟…… ! ?……なんか、嫌な予感がしてきた。 |
キャラクター | 2話【自分の将来】 |
クラトス | ……ということだ。ここまではわかったか、ロイド ? |
ロイド | うーん、わかったようなわからないような。……いや、やっぱり全然わからねえ。 |
クラトス | そうか……。では、もう一度最初からだ。 |
ロイド | 最初って、このページ全部か ? |
クラトス | いや、そうではない。この本の最初のページからだ。 |
ロイド | そこからかよ ! ?……なぁ、そろそろ休憩にしないか ?もう何時間もぶっ続けで勉強してるぜ。 |
クラトス | まだ一時間しか経っていないはずだが。 |
ロイド | そ、そうなのか…… ?こんなに長く感じるってのに……これから夜まで一日中この調子でやるのかよ。 |
ロイド | ……ハァ。どうせ父さんに教わるんなら剣術の稽古とか、そういうのがよかったんだけどな。 |
クラトス | 今のお前に私が稽古をつける必要はあるまい。それにお前は、もっと戦い以外のことも学んだ方がよいのだ。 |
ロイド | 戦い以外のこと ? |
クラトス | 今でこそ、この世界は戦乱に満ちているが……帝国との戦いも永遠に続くわけではない。どんな戦いもいつかは終わる。 |
クラトス | その時が来れば、お前も剣を振る以外の生業や人と関わる術を持たねばならないだろう。広い知識を持つに越したことはあるまい。 |
ロイド | なりわい…… ? えっと、つまり……平和になったら戦いより勉強が大事ってことか ? |
クラトス | 簡単に言えば、そういうことだ。 |
ロイド | うーん……でも、それを言うなら父さんだって長い間、戦いを仕事にして生きてきたんだろ。それこそ何千年も前からさ。 |
クラトス | ……だからこそ、私はよく知っているのだ。戦いだけの生き方では得られないものがどれほど多いかということを。 |
ロイド | …………。 |
クラトス | 人には無数の生き方がある。私のような道もあれば、ダイク殿のように持てる技術を活かして人の役に立つ道もあるだろう。 |
ロイド | そっか……。自分で船を作って旅に出るって夢もこの世界で叶えればいいのか……。 |
クラトス | うむ。どの道を選ぶかはお前次第だ。自分がどんな人間になりたいか、よく考えることだな。 |
クラトス | 書物から学び、広い知識を身につけることもいつか自分が本当に望む道を歩むための準備の一つと言えるだろう。 |
ロイド | うっ……そこから、今の勉強につながるわけか。 |
クラトス | そういうことだ。目の前のテストを切り抜ける努力が将来のお前自身を助けることになる。 |
ロイド | しゃーねえ、わかったよ。ドワーフの誓い第十六番、成せばなる ! だな。 |
クラトス | フッ……その意気だ。では、もう一度本を開け。 |
ロイド | おうっ !…………。 |
クラトス | ロイド ? どうした。 |
ロイド | ダ……ダメだ。一行読んだだけで、頭がクラクラしてきた。 |
クラトス | …………。……長い一日になりそうだな。 |
キャラクター | 3話【小休止】 |
ロイド | なぁ、ノイシュ……俺、もう限界だよ。朝からずっと勉強づくしで、ようやく休憩だと思ったら、たった5分だぜ ! 5分 ! |
ノイシュ | クゥーン…… ? |
ロイド | お前はいいよな、勉強する必要なくて。勉強も大事だってのはよくわかったけど……これ以上続けたら、頭が爆発しちまうよ。 |
クラトス | ……ロイド。 |
ロイド | 父さん ! まだ5分経ってないよな…… ! ? |
クラトス | そうではない。……お前に謝りにきたのだ。お前なりに十分頑張っていたというのに無茶をさせ、追い詰めてしまった。 |
ロイド | なんで急にそんな……あ !もしかして今の愚痴、聞いちまったのか ? |
クラトス | いや。最初から、無茶なこととは思っていた。お前に合わせて手を緩めるべきかとも考えたが……私にも、焦りがあったのかもしれんな。 |
ロイド | 焦りって、なんでだ ?テスト受けるのは俺だぞ。 |
クラトス | 元の世界で、お前にはずっとダイク殿という良き父親がいた。今のお前があるのは、少なからず彼の立派な教育があったからだろう。 |
クラトス | だが、今ここにダイク殿はいない。ならば私が彼の代わりに、お前に必要なことを教えなければならないと――私なりに気負っていたのだ。 |
ロイド | ……そんな風に思ってたのか。 |
クラトス | だが、そのためにやり方を間違えてしまった。私の思いなどではなく、お前の気持ちをこそまず考えるべきだったというのに。 |
クラトス | これは私の、父としての経験の浅さゆえの過ちだ。すまない、ロイド。 |
ロイド | 父さん…………。……ははっ、なんか変な感じだな。 |
クラトス | ……ロイド ? |
ロイド | ごめん、笑って。ちょっと可笑しくなっちまったんだ。父さんがダイク親父のこと「良き父親」だの「立派な教育」とかって言うから。 |
ロイド | ……確かに、親父にはたくさん教わったけどさ。俺たち、別にそんな立派な親子なんかじゃなかったぜ。しょっちゅう喧嘩したし、怒鳴り合ったし……。 |
ロイド | 俺も馬鹿やったけど、親父が間違うこともあって。そういうの全部ひっくるめて俺の『親父』だったんだ。良い親父とか、悪い親父とかじゃなくてさ。 |
クラトス | …………。 |
ロイド | クラトスだって同じだよ。イセリアで会ってからずっと本当に色々あったけど……そんな旅の中で俺に大事なことをたくさん教えてくれた。 |
ロイド | あんたのおかげで、今の俺がいるんだ。だから……焦ったり、謝ったりする必要ないって。今のままで、クラトスは俺の『父さん』なんだから。 |
クラトス | フ……過ちも失敗も、親子であることの欠かせぬ一部分ということか。 |
ロイド | そういう言い方されるとよくわかんねえけどまぁ、多分そういうことだな ! |
クラトス | 教えるつもりが、子に教えられ……私もそうやって、少しずつ父親らしくなってゆけるのかもしれないな。 |
クラトス | ……では、この後はどうする ?改めて、お前自身の望みを聞かせてくれ。このまま勉強を続けるかどうか。 |
ロイド | そうだな……俺は、続けたいよ。確かに勉強はキツかったけど、父さんから教わるのは嫌じゃなかったしさ。 |
ロイド | それに、もう半日も勉強してるんだ。ここまで来たら、やれるとこまでやってみるしかないって気がしてきたぜ ! |
ノイシュ | ウォーン ! |
クラトス | ノイシュもお前のやる気を感じたようだな。よかろう……ならば、手を緩めずに行くぞ。 |
キャラクター | 4話【父子のこれから】 |
ロイド | はぁ〜……。やっと、終わったぜ……。 |
コレット | おめでとう、ロイド !今度こそ合格もらえてよかったね。 |
ロイド | へへ、まさか俺が勉強で認められるなんてな。やっぱりあの日、クラトスにつきっきりで勉強見てもらえたおかげだな ! |
コレット | うん ! そだね、きっと。25点も取れたもんね。 |
ロイド | うっ……点数を言うなよな。最初が10点で、再テストの結果が25点……上がったとはいえ、あれだけ頑張って15点か。 |
クラトス | 大事なのは点数そのものではないぞ、ロイド。 |
ロイド | とっ……父さん ! ?また来てたのか ! ? |
クラトス | このところ救世軍と浮遊島でのやりとりが多くてな。今日も救世軍の用件があったのだがそちらが早く終わったので、様子を見に来た。 |
コレット | クラトスさん。ロイド、合格もらえたんですよ。 |
クラトス | ああ、話は聞こえた。よく頑張ったな、ロイド。 |
ロイド | ……なんか、ごめんな。せっかく勉強見てもらったのに、少ししか点数上がらなくてさ……。 |
クラトス | 何も恥じることはない。苦手分野と承知の上でお前は逃げ出すことも、諦めることもなく努力し乗り越えることを選んだのだ。 |
クラトス | そして、わずかでも確実な向上を見せた。その姿勢は満点だったと言ってよいだろう。 |
ロイド | 父さん……。嬉しいけど、ちょっと甘すぎると思うぜ。 |
クラトス | そんなことはない。だからこそ、リフィルもお前に合格を与えたのだ。たとえ本来の合格点を下回っていてもな。 |
ロイド | えっ、そうだったのか。……ちなみに、本当の合格点って ? |
コレット | えっと、それは……。 |
クラトス | 40点だ。 |
ロイド | げっ ! マジかよ……と、遠いな……。 |
クラトス | 焦ることはない。お前はお前のペースで一歩ずつ進んでいけばいい。最初の一歩は既に踏み出したのだから。 |
ロイド | ……そうだな。あのさ……ありがとう、父さん。 |
クラトス | 礼を言うのは私だ。ありがとう、ロイド。この私を父として認めてくれて。 |
クラトス | これからも、常にお前といられるわけではない。だが私なりに時間をかけて、よりよい父親になれるよう努力していくつもりだ。 |
クラトス | お前も、一度の合格で気を緩めることなく今後も勉強を頑張るのだぞ。 |
ロイド | わ、わかってるよ。やっぱり厳しいな〜。 |
クラトス | それが私なりの教え方ということだ。……必要な時には、またこちらに寄ってお前の勉強を見に来よう。 |
ロイド | 別に、必要じゃなくたっていつでも来てくれていいんだぜ。 |
ロイド | 母さんのこととか、父さん自身のこととか勉強以外でも話したいことはいくらだってあるんだからさ。 |
クラトス | フ……そうだな。またゆっくりと話そう。 |
ロイド | ああ。……待ってるよ、父さん。 |