キャラクター1話【村に潜むモノ】
アリス待ちなさい ! どこへ行くのです !
? ? ?アリス、よく聞いてくれ。この世界は間違っている。
アリス間違っている…… ?
? ? ?『役割』を押しつけられ、記憶と自由を奪われ続ける。そんな世界が正しいはずがないんだ。
? ? ?何より君が、これ以上思い出を奪われるのを俺は見過ごせないんだ。
アリスだからといって、どうするつもりです。
? ? ?世界の壁を越える。
? ? ?できるはずだ。俺は世界がひとつだけじゃないことを知っている。君がこうして目の前にいることがその証拠だ。
? ? ?■■■君 ! あいつが気づいたわ !急がないと !
? ? ?わかった。すぐに始めよう。アリス、行こう。
アリス駄目です。私にはできません。
? ? ?どうして ! ?
アリス私には騎士としてここを守る『役割』があります。
? ? ?そうか……なら、待っていてくれ。必ずこの状況をなんとかする方法を見つけて戻って来る。
アリス■■■ーっ !
アリスまた……同じ夢……。
アリスどうしても思い出せない……あれは誰なんだ……。
キリトみんな、準備はいいか ?
リンウェルこっちは準備万端だけど……ロウ、本当に大丈夫なの ?
ロウ任せとけって。俺の名演技を見せてやる。
アスナキリト君、他のみんなも配置についたって。
キリトよし、それじゃロウ。頼んだぞ。
ロウお、おう !
ロウう、うわー、もうダメだー。
ロウ狩りはうまくいかねーし、リンウェルはすぐ怒るし生きててもいいことなんかねえー。
キリト…………。
アスナキリト君、だいぶ演技に難がある気がするんだけど。
リンウェルていうか、私がすぐ怒るってなんなのよ !
キリトま、まあ、ロウもがんばってくれてるしもう少し様子を見ようじゃないか。
ロウ俺はもう終わりだー。このまま死んで土になるしかないー。
グリューネあらあら、それは大変だわぁ。
エステルすぐに教会に連れていきましょう。ああ、でも、わたしたちだけではとても運べません。どなたか、手伝ってくれませんか !
アスナエステルは意外と迫真の演技ね。グリューネはいつも通りだけど。
キリトあ、あの素朴さが逆に信憑性があっていいんだよ。
リンウェルだけど、誰も来ないよ。やっぱり怪しまれてるんじゃ……。
アスナあ ! キリト君、リンウェル、あれ見て !
キリト来たか !
ロウつーか、まだなのかよ。いい加減ネタ切れだぜ。
エステルダメですよ、ロウ。ちゃんと演技を続けないと。
グリューネそうよぉ。すべてはロウちゃんの頑張り次第なんだから。
ロウわ、わかったって。うわー ! もうダメだー、この世の終わりだー !
怪しい村人たち…………。
ロウなんだお前ら……じゃなかった。た、助けてくれー !
エステルあの、待ってください !ロウをどこへ連れて行くのですか ?
怪しい村人たち…………。
グリューネあらぁ、どうして何も答えてくれないのかしら ?
リンウェル村の人たちがロウを運んでいくよ !
キリトよし、うまくいったな !
アスナかなりヒヤヒヤしたけどね。それにしても……あんな人たち、この村にいたかしら ?
キリトなんでもいいさ。このまま黒幕のところへ連れてってくれるなら。俺たちも後を追うぞ。
キリトエステル ! グリューネさん !
エステルキリト ! 大変です !
グリューネそこの角を曲がったら行き止まりでロウちゃんの姿が消えちゃったの。
リンウェルええっ ! ? ロウ見失っちゃったの ! ?
アスナやっぱり、尾行に気づいていたのかしら。
キリトいや、もしかしたら……。
アスナキリト君の腕が、壁をすり抜けた…… ! ?
キリトやっぱり、そうだ。この壁は本当は存在しないんだ。ただ俺たちにはそう見えているだけで。
リンウェル村に馴染んじゃうのと同じで私たちに『壁がある』って思い込ませてるんだね。
キリト行こう。ロウの記憶が奪われる前に黒幕の正体を暴くんだ。
ロウおーい、どこまで連れてくんだー。
怪しい村人たち…………。
ロウ答えるわきゃねえか。まあいいや、好きにしてくれ。
ロウん……なんだありゃ、井戸か…… ?
ロウって、おい、待て待て !まさか俺を放り込むつもりじゃ…… !
ロウうわああああ !
ロウいてて……。くそ、乱暴に放り込みやがって……。
ロウにしても、こりゃなんだ…… ! ?どう見ても井戸の底じゃねぇぞ !
魔物Aグルル……。
ロウおわっ ! ? なんだこいつら !
ロウ…… ? 襲ってくるわけじゃねぇのか。俺のことを見てる…… ?
魔物A! ?
魔物Bグアッ ! グアッ !
ロウうぉ ! なんか怒ってんぞ ! ?
キリトロウ ! 無事か !
ロウキリト ! 遅えっての !どうやらこいつらが黒幕っぽいぜ !
リンウェルうわ、なんか気持ち悪い……。
アスナこれが、アリスたちの記憶を奪っていた元凶…… !
エステル皆さんを苦しめて、そのうえ記憶を奪うなんて絶対に許せません !
グリューネ悪い子はお仕置きよぉ。
ロウよっしゃあ ! やってやるぜ !

キャラクター2話【VSガベージイーター】
グリューネ魔物ちゃん、溶けちゃったわねぇ。
リンウェルうわぁ、なんか黒いドロドロになってる……。やっつけた後でも気味悪いね……。
ロウけどよ、これで一件落着だろ。魔物は全部倒したわけだし。
エステルどうでしょう……なんだか簡単すぎるような気もします。
アスナこの魔物が村の人たちから記憶を奪っていたのかしら。でも、何のために……。
アリス食事でしょう。
アスナアリス ! ? どうしてここに……。
アリス村の者たちから聞きました。お前たちが壁の向こう側に消えるのを見たと。
キリトそれより、記憶がこいつらの『食事』っていうのはどういう意味なんだ ? それにどうしてそんなことを知ってるんだ……。
アリス正確には、記憶に付随する負の感情がそれらの好物なのです。
アリス村はその好物を育てるための畑……いえ、牧場といったところでしょうか。
リンウェル牧場って……。
ロウくそ ! 俺たちは家畜じゃねえぞ !
アリス私たちはそれに気づいて、村を解放するために戦いを挑みました。しかし……。
キリト負けたんだな。
アリスええ、その通りです。
アリスそして、私たちだけでは勝てないと悟ったあいつは外の世界に助けを求めに行くことにしたのです。
アスナそれが、わたしとキリト君のシャドウライトね。
アリスおそらく……。そこまでの記憶は取り戻せていません。
キリト記憶が戻った理由はわかるのか ?
アリスその魔物です。お前たちが倒した途端に私の中に記憶が流れ込んできました。
キリトなるほど……。負の感情を栄養源にはしているが記憶自体は消化できないのかもしれないな。
エステルだとしたら、魔物を倒したことで村の人たちの記憶も元に戻るのでしょうか。
アリスそれはないでしょう。現に、私の記憶もまだ完全ではないようです。
アスナということは……まだ魔物がいるってこと ! ?
エステル見てください ! さっきの魔物が !
魔物…………。
グリューネあらあら、わたくしとリンウェルちゃんのそっくりさんだわぁ。
キリト記憶は食えないがこんな風に姿形を模倣する材料にはできるってことか !
リンウェルえぇ……さっきの気持ち悪いのがなんで私になるの~ ! !
ロウしっかりしろリンウェル !ぼやいてる場合じゃねぇぞ !
アスナ相手はやる気まんまんみたいね。
リンウェルむ~…… ! 許さないんだから ! !

キャラクター3話【VSグリューネ?&リンウェル?】
リンウェルうわわ……やっぱり溶けちゃうんだ……。
グリューネ自分がドロドロになっちゃうなんてちょっと嫌ねぇ。
ロウさすがにもう動かねぇか…… ?
アリスいや、違う……まだ終わりではありません。
キリトアリス……何か思いだしたのか ?
アリスくっ…… ! 駄目だ。思い出せない !だが、ひどく胸騒ぎがする。
エステルアリス……。
村人Aうわああああああああっ !
ロウおい、今の悲鳴は ! ?
キリト村に何かあったのか !
村人Aた、助けてくれぇ !
村人Bひいいいいっ !
アスナさっきの魔物が村の人たちを襲ってる !
リンウェルこんなにいっぱいいたの ! ?
アリス村の者に手出しはさせん !お前たち、手を貸してくれ !
ロウああ、もちろんだ !
キリトはああああっ !
キリトよし、また一匹 !アスナ ! そっちはどうだ !
アスナこっちもだいたい片付いたわ。でも……。
リンウェル魔物、まだまだ押し寄せてくるよ !
ロウくそっ、これじゃキリがねぇ !
グリューネあんなにたくさんどこにいたのかしらねぇ。
エステル村の人たちは教会に避難してもらいました。でも、皆さんボロボロです……。
アリスだが生きている。ならば、私は教会を守り抜くだけです。
キリトアリス、あまり無茶をするなよ。
アスナそうよ。ちゃんとわたしたちを頼ってね。
アリス……ふふっ。そうですね。
アリスこうしていると思い出す。お前たちと……いや、別のお前たちか。三人で肩を並べて戦っていた頃のことを。
アリスあの頃はここもまだ村というよりは集落でした。気づけばこの世界に放り出されていた私たちが身を寄せ合って暮らしていたのです。
アリスところが、村が大きくなるうちにいつの間にか記憶を食う魔物の牧場にされていた。
アリス記憶を奪われ、自分が誰かもわからない私たちはひたすら『役割』をこなすことで自分を保ってきた。
アスナアリス……。
アリスキリト、お前はここに来る前の本当の私を知っているのでしょう ?どんな人間でしたか ?
キリト騎士の誇りを持って信念のために戦っていたよ。今の君と同じだ。
キリトそして、アンダーワールドのアリスもアドミニストレータに記憶を奪われていた。
キリト今ならわかる。シャドウライトの俺はこの村を、何より君を救いたかったんだ。
キリト君がふたたび記憶を奪われて弄ばれるそんな世界から救い出したかったんだ。
アリスそうか……そうだったのですか……。
アリスキリト、アスナ……そして皆。下がっていてください。
キリトアリス…… ? 何をするつもりだ。
アリスエンハンス・アーマメント。
キリトそれは、武装完全支配術 ! ?
ロウなんだ、その武装ナントカってのは ! ?
キリトアンダーワールドの、アリスの世界で伝説の武器の力を解放する技だ !だが、それはかなり天命を消費するはずだ。
キリトアリス、君はシャドウライトという存在で完全な状態のアリスじゃない。その身体で使えば相当な負担があるはずだ。
アリスくっ……キリトの言う通りのようです。やっとこの技のことを思い出せたというのに一撃放てるかどうか……。
キリトまさか、記憶解放術まで…… !やめるんだアリス ! そんなものを使ったら君は…… !
リンウェルアリスの剣が…… !
エステル金色の、花びら…… ?
ロウすげぇ……。
アリス村の者たちを……頼みます。リリース・リコレクション !
キリトアリスーーーー ! !
ロウこ、こいつは……。
リンウェルあんなにいた魔物が……全部……。
キリトアリス !
アリス……思ったより堪えますね。
キリトバカ野郎 ! しゃべるな !
エステルアリス ! すぐに治癒術を…… !
アリス無駄です。自分のことはよくわかります。だから、その分を村の者たちに……。
エステルそんな……。
アリスそんなに悲しそうな顔をしないでください。私はシャドウライトとかいうもので本当のアリスではないのでしょう。
キリト本当とか偽物とか関係ない !今、目の前にいるのは君だ !
アリスそうか……私は私か……。
アリス思い出したかったな……元の世界の私は…………お前と、どんな風に……。
リンウェル嘘……アリス……。
ロウくそっ ! なんでだよ…… ! ! こんな、こんなの……っ ! !
グリューネキリトちゃん、みんな……今は村の人たちを守りましょう。それがアリスちゃんの願いでしょう ?
キリトグリューネさんの言う通りだ……。
アスナキリト君……。
キリトこれで終わりとは思えない。アリスが作ってくれた時間を有効に使おう……。

キャラクター4話【VSロウ?&エステル?】
アリスここは……どこだ…… ?
アリスそうか、これが死という感覚か。思ったより苦しくはありませんね。
アリスなんだ、この光は……青い、薔薇…… ?
アリスなぜだろう。不思議と懐かしさを感じる。以前にどこかで……。
アリス私をどこかへ連れて行こうというのですか ?だが、私はもう……。
キリト村の人たちの様子はどうだ ?
エステル治療は一通り終わりました。ですが……。
キリトみんな絶望してる……か。
エステルはい……。
リンウェル無理もないよ、あんな光景を見たら。それに……。
グリューネアリスちゃんのことよね……。
ロウ……ちくしょう。どうしてアリスが…… !
ロウどうして誰かのために必死なやつが死ななきゃならねぇんだ !
リンウェルロウ……。
魔物グルアアアアアアッ !
アスナこの音…… !
キリトくそっ、やはり来たか…… !
リンウェル嘘でしょ……またこんなに魔物が…… !
キリト俺たちを追い詰めて最後の収穫をしようっていうのか !
ロウこのままじゃマズいぜ、キリト。何か手を考えねぇと。
エステル村の人たちは動けません。ここでわたしたちがなんとかしないと…… !
グリューネせめて、どこかに安全な場所はないのかしら。
アスナきっとどこに逃げても同じよ。この世界を思い通りにできるような相手がわたしたちの敵なんだから。
キリト戦うんだ。それしかない。
ロウそう、だよな。いつだって、自分にできることをするしかねぇんだ。
リンウェルアリスが命がけで作ってくれた時間だもの……私たちが諦めるわけにはいかないよね。
エステルそうです。諦めなければ道は切り開けるはずです。
キリト行くぞ、みんな !
ロウなんだ、地震…… ! ?
キリト違う、こんな揺れ方はしない !まさか…… !
リンウェル力が、抜けていく…… !
グリューネあらあら、立っていられないわぁ。
キリト俺たちは間違っていた。黒幕はどこかに潜んでいるんじゃない。この村と世界そのものがヤツなんだ…… !
ロウじゃあ、俺たちは最初から敵の腹の中にいたってことかよ !
エステルいけません……このままでは……。
アスナダメ……力が……入らない……。
キリトここまで、なのか…… ?
魔物グルアアアアッ !
アリス立つのです、キリト。諦めるのはまだ早い。
キリトアリス…… ? だって君は……。
アリスお前やアスナと同じです。
キリトそうか、ワイズマンがアリスのシャドウライトを…… !
アリスそういうことらしいですね。詳しいことはそのワイズマンに聞いてください。今の私が言えることは──
アリスもう一人の私は確かに消滅した。だが、その想いは確かにこの胸にあるということです。
アリス私は人界の騎士アリス・シンセシス・サーティ。悪しき存在から人々を守るのが我が使命。ここから先は一歩たりとも通さん !
キリトアリス…… !
アリスいつまで座りこんでいるつもりです。
キリトそうは言うが、力が入らなくて……。
アリスならば、少しそこで見ていなさい。
アリスリリース・リコレクション !
アリスはああああああああああっ !
魔物グルアアアア…… !
アスナす、すごい……。
グリューネ魔物ちゃんがいなくなっちゃったわぁ。
アリス奴は私たちの精神に干渉する。立てないと思い込まされているだけです。皆、気をしっかり持ちなさい。
ロウそ、そういうことなら……おっしゃあ ! 立てたぞ !
リンウェルこういう時は単純なロウが羨ましいよ……でも、私だって…… !
エステルわたしもまだ諦めてはいません !
キリトやれやれ、俺も負けてられないな。
アスナキリト君……。
キリトアスナ、立てるか ?
アスナええ、大丈夫。わたしも君の横で戦う。
アリスそれでいい。奴を倒すにはお前たちの力が必要ですから。
ロウけどよ、この世界まるごとが黒幕なんだろ ?どうやって戦うんだ ?
アリス奴も追い詰められています。だからこれだけ大がかりな攻勢を仕掛けてきたのでしょう。
キリトつまり、ここからはこっちとあっちで我慢比べってことか。
リンウェル先に音を上げたほうが負けってことだね。
アリスその通りです。
魔物…………。
ロウおいおい、今度は俺の偽物かよ。
エステル自分そっくりな相手と戦うのはあまり気持ちの良いものではありませんね。
アリスそれも奴の心理戦です。逆に言えば、その程度のことしかできないのです。
ロウこの世界の神様ってなぁ、ずいぶん臆病だぜ。
アリスええ、その調子です。では、行きましょう。これが最後の戦いです !

キャラクター5話【VSロウ?&エステル?】
ロウどうだ、ものまね野郎 !本物の拳の強さがわかったか !
アスナでも、まだ魔物たちが残ってるわね。
アリスそれも時間の問題でしょう。確実に奴は追い詰められている。
グリューネもうひと踏ん張りねぇ。お姉さんも頑張るわよぉ。
村人Aお、俺たちも戦うぞ !
エステル皆さん…… !
村人Bこれ以上奪われてたまるか !
村人Cそうだ。自分の大事なもんは自分で守るんだ !
アリス皆、どうして……。
キリトアリスの影響だよ。
アリス私の…… ?
キリトただ漫然と自分の『役割』を果たすのではなく心から村の人たちを守りたいと思って戦っていた。そういうアリスの姿を見たからさ。
アスナアリスは、紛れもなくこの村の騎士だったのよ。
アリスそうか……そう言われると嬉しいものですね。
リンウェルアリス、みんなに声をかけてあげてよ。
エステルええ。戦いに挑む皆さんをアリスが導いてください。
グリューネアリスちゃん、お願いねぇ。
アリスわかりました……。
アリス敵は満身創痍です。勝ち取りましょう。決められた『役割』に縛られない奪われるだけじゃない生き方を。
アリス皆、私に続け !
全員おおーっ !
アリスここは……。
ワイズマンアリスさん、気分はいかがですか ?身体に違和感などはありませんか ?
アリス……問題ありません。記憶もしっかり残っています。
アリスそうだ ! 村の者たちは ! ?
ワイズマンご安心ください。皆さん無事にこちらの世界に具現化されました。シャドウの肉体も問題なく馴染んだようです。
アリスそうですか……よかった。
アリスキリトたちは……。
キリトみんなここにいるよ。
アスナお帰りなさい、アリス。
リンウェルあんまり遅いから心配しちゃったよ !
グリューネ元気そうでよかったわぁ。
エステルみんな、アリスが起きるのを待っていたんですよ。
リンウェルロウなんて、もしかして目覚めないんじゃないかって、ずっとオロオロしてたんだから。
ロウし、してねぇよ !
アリスそうですか、心配をかけてしまったようですね。
キリト気にするな。それが仲間ってもんだろ。
アリス仲間……仲間か。あの……村、いや魔物はどうなったのですか ?
キリト消滅はしていない。まあ、二度と人を食い物にはできないさ。
ロウあの野郎、俺たちを食えないとわかった途端に吐き出しやがった。
ワイズマンそこを私がサルベージしたというわけです。その後、あの村は私が凍結しました。キリトさんたっての願いでしたので。
キリトあんなのでも生きてるんだ。俺たちの都合で消滅させてしまうのはエゴだよ。
アリスお前はあれも生き物だと言うのですか。
アスナほんと、キリト君って見境ないわよね。
キリトだ、だって物質のない情報だけの世界に自然発生した貴重な生命体かもしれないんだぞ !
リンウェルへぇ~、キリトって実は学者肌なんだね !
キリトはは……。そ、それよりヤツはどうやってシャドウライトなんて生み出したんだろうな !
アリスそれはキリトが……村のシャドウライトのキリトが何か言っていました。確か、人間が眠っている間に記憶を整理しているとかなんとか……。
キリトなるほど、短期記憶か。
リンウェル短期記憶 ?
キリトリンウェルもちょっと前まで覚えていたけど翌日になるとすっかり忘れてることってあるだろ。
リンウェルえ~と……お買い物の覚え書きとか ?
キリトそれもひとつだな。そうやって忘れてしまった記憶にもその時その時の感情や経験が残っているんだ。
ワイズマンなるほど。確かにそれらの忘れられた記憶を集めれば『その人』と同じ人格は作り出せるかもしれませんね。
ワイズマンしかしそれは、やはり不完全ではあります。
キリトだからシャドウのようなもの、だったんだろう。
アリス忘れられた記憶……。そこから生まれた者たちか。少し、悲しい存在ですね。
ロウだああ ! よくわかんねぇって !何から生まれようが、今ここにいるんだからそれでいいじゃねぇか !
キリトははっ。そうだな。ロウの言う通りだ。俺たちは今、ここにいる。
アリスそういえば、ワイズマンにすくい上げてもらう前に私が見た光、あれもシャドウライトなのでしょうか。青い光が、私を包んで……。
ワイズマン青い、光……ですか。
アリスええ。ワイズマン、何か知っているのですか ?
ワイズマンそれは──
ユージオそれに、僕は運命を信じてる。こうして君たちと出会えたことに意味があるならきっとまた会えるさ。
ワイズマン……いえ、なんでもありません。

キャラクター1話【#01 納涼の祭り】
ワイズマン納涼をテーマとした今回の『祭り』も盛況のまま終えることが出来ました。
ワイズマンこれも、皆さんのご協力のおかげです。
ヴェイグ役に立てたならよかった。このアークに住むアーキタイプたちも喜んでくれただろうか。
ワイズマンええ。ヴェイグさんの『氷』の技は学園都市アークの者たちを充分に涼ませてくれました。
ワイズマンもちろん、ワルターさんも。
ワルターとってつけたように言う必要はない。
ユージオ感謝は素直に受け取るべきだよ、ワルター。
ワルターユージオ……。
ユージオ少なくとも僕は君たちと競えてよかった。
ユージオ神聖術や武装完全支配術とは違う水や氷の技を見られたのはいい経験になったよ。
ユージオ急にこんなところに呼び出されてこの剣の武装完全支配術で君たちと戦ってほしいって言われた時は驚いたけどね。
ユージオしかもここは別の世界だって言うんだから驚くのを通り越して唖然としちゃったよ。
ワイズマンそれについてはお詫びします。ですが、ご安心ください。
ワイズマン元の世界に戻った際には何もかもそのまま。ユージオさんは呼び出される直前の状態に戻ることになります。
ユージオうん、その話は覚えているよ。じゃなきゃ、祭りを手伝えなかったからね。
ユージオ僕にはどうしてもやらなきゃならないことがある。だけど、同時に不安もあったんだ。この【青薔薇の剣】をちゃんと使いこなせるかって。
ユージオこの『祭り』が、その不安を払拭してくれた。異世界の技だって体験できたし。まあ、元の世界に戻れば忘れてしまうんだけど。
ヴェイグそんなことはない。たとえ、ここでのことを覚えていないとしてもその自信は心のどこかに残るはずだ。
ユージオそう、かな……。
ヴェイグだから言わせてくれ。力を恐れれば自分や大事な人を傷つけることになる。自信を持て。お前なら大丈夫だ。
ユージオありがとうヴェイグ。心に刻んでおくよ。
ワルター…………。
ユージオワルター、君からは何か言葉はないのかい ?
ワルターふん。どうせ忘れることだ。意味などない。
ユージオやれやれ、君は最後まで愛想がないね。
ワルターお前はお節介すぎる。そんなことでは足をすくわれるぞ。
ユージオいや、前はこんなじゃなかったと思うんだけどね。『あいつ』の性格がうつったかな ?
ワルターユージオ。お前は助けたい女がいると言っていたな。
ユージオえ……ああ、うん。そうだよ。僕はそのために剣士になった。
ワルターその女が、お前の助けを必要としていなかったとしてもお前は戦えるのか ?
ユージオそれは……難しい質問だね。でも、僕自身がやると決めたことだから。今度はきっと迷わないと思う。
ワルター……そうか。
ユージオそれだけかい ?もっと別れを惜しんでくれてもいいのに。
ワルター馴れ馴れしいのは好かん。お前の覚悟は感じた。それで充分だろう。
ユージオまったく君って人は……。
ワイズマンやはり、すぐに戻られるのですか。
ユージオうん、そのつもりだよ。相棒も待たせてるからね。
ユージオあ、いや、あっちの時間は進んでないんだっけ。うーん、ややこしいな。
ユージオでも、今がいい時機だと思う。
ユージオそれに、僕は運命を信じてる。こうして君たちと出会えたことに意味があるならきっとまた会えるさ。
ワイズマンわかりました。それでは、元の世界へお送りします。
ワイズマンいつかまた運命が交わる時があればお会いしましょう。ユージオさん。

キャラクター2話【#02 幽かな光】
アスナキリト君 ! そっちに行ったよ !
キリト任せろ !
魔物グガアアアアッ !
キリト……ふぅ。全部片付いたかな。
アスナお疲れ様、キリト君。クエスト達成だね。
キリト村の近くに出没するようになった魔物を倒してほしい。依頼者は村長。報酬は1500ガルド。
キリト確かに、MMORPGでありそうなクエストだな。
アスナでしょ。でも、それがこの世界ではどこにでもある現実なのよね。
キリトそして、いつの間にか俺たちもそれが当たり前になってる。
アスナ最初は驚いたわよね。気がついたらまたアインクラッドにいて──
キリトスグやシノンの格好をしたヤツらが現れたんだよな。
アスナリタったら、ヘカート Ⅱ に興味津々だったわね。
キリトライフルのことは知らないみたいだったけど説明したらすぐに玄人並みに扱ってみせたのには驚かされたな。
アスナコレットがユウキの服を着ていたのにも驚いたわ。違う人だとわかっていても思わずハッとしちゃった。
キリト人か……そうなんだよな。みんな俺たちとは違う世界の人間だった。
キリトゲームやフィクションの中にしかないと思っていた剣と魔法の世界が本当に存在していたんだ。正直、ワクワクしたよ。
キリトしかも自分たちもこうして異世界で生きることになるなんて思いもしなかったからな。
アスナキリト君は、元の世界が懐かしくなったりしない ?
キリトそりゃ、たまにはね。
キリトでも、『剣一本で切り拓く世界』ってのも悪くないと思ってるよ。だから俺はここにいるのかもな。
アスナそっか。わたしたちって元のわたしたちが投影された存在【シャドウ】なんだよね。
アスナ元の世界にもう一人、わたしやキリト君がいるなんて今さらだけど変な気分だわ。
キリトアスナこそ、あっちの世界に戻りたいって思ったりはしないのか ?
アスナうーん……思わない、かな。
アスナキリト君が『剣一本で切り拓く世界』に憧れてたみたいに、わたしにもこっちの世界でやりたいことがあったから。
キリトやりたいことって ?
アスナ最初はミリーナたちの力になりたいって気持ち。今は、キリト君の相棒としていつも隣にいてこの世界を冒険したいって思ってる。
アスナそれにわたしも剣と魔法の世界に興味くらいあるのよ。じゃなきゃ、SAOなんてプレイしてないもの。そんなわけで、今じゃ華麗な女剣士 !
キリト自分で華麗って……。
アスナ何か言った ?
キリトい、いや ! さすがはゲームの素人から血盟騎士団の副団長にまで上り詰めた猛者だなーと !
アスナ素直でよろしい。
キリトははは……。そ、それじゃ報酬をもらいに村に戻ろうか。
アスナうん。今夜はご馳走にしようね。
キリトなんだ ! ?
アスナキリト君、これって…… !
キリトここは……。
ワイズマンキリトさん、アスナさん、お久しぶりです。
キリトワイズマン ! そうか、ここは学園都市アークか。
ワイズマンはい。お二人に用があってお呼びいたしました。
アスナ変なところに連れて来られたわけじゃなくて安心したけど、次からはせめて呼び出す前にひと言ほしいわよ。
ワイズマン申し訳ありません。時間がなかったものですから。
キリト時間がない ? 何かあったのか ?
ワイズマンまずはこちらを。
キリト光の、球…… ? これがどうしたんだ。
アスナこれ、なんだか生きているみたい……。
ワイズマンその通りです。彼らはキリトさんとアスナさんの別時間軸から投射された存在なのです。
キリトこれが俺たちだって ! ?
ワイズマンもちろん本人ではありません。しかしこの場にいるキリトさんたちとも違うしいて言えば『シャドウによく似た存在』です。
キリトつまり、これはワイズマンが作ったわけじゃないと ?
ワイズマンはい。私は彼らを発見、保護しただけです。
アスナねえ、なんだか光が弱まっている気がするんだけど。
ワイズマンその通りです。彼らは物質的な肉体を持たないのでこの世界では不完全かつ不安定なのです。
ワイズマンそのうえ、発見した時にはひどく損傷していました。おそらくは数時間のうちに消滅するでしょう。
アスナそんな……消滅だなんて……。
キリトだから『時間がない』ってことか。それで俺たちに何をしてほしいんだ ?
ワイズマン彼らは何かを強く訴えているようなのですが情報体としてのフォーマットが違いすぎて私にはそれを理解することができません。
ワイズマンしかしお二人であれば、彼らの意志に触れて理解することができるでしょう。多少強引なやり方にはなりますが……。
キリト危険はないのか ?
ワイズマンたくさんの記憶が流れ込んでくるので少し混乱するかもしれませんが落ち着いて考えを整理すれば大丈夫です。
ワイズマン更新が終わった後に、彼らとの同調を始めます。こちらは感情や思念に近いものが流れ込んでくるため少し気分が悪くなるかもしれません。
ワイズマンですが、更新されたお二人の方が記憶も自我も彼らより強い。押し流されることはまずありません。
アスナやっぱりちょっと不安になる言い方ね。
キリトとにかく気をしっかりもって自分を意識しろってことだろう。
ワイズマンその通りです。
キリトそうと決まったらさっさと始めようぜ。こいつらには時間がないんだろう。
ワイズマンでは……。
キリトうっ……これは……。
アスナ思ったよりキツいわね……。
キリトフラクトライト……アンダーワールド……最終負荷実験……。
キリト変な感じだ。今知ったばかりなのに前から知っていたみたいに感じる。
ワイズマン新しく入ったばかりの記憶は忘れやすい。定着するまで少し意識を傾けておいてください。二人で思い出話をするなどしてみるといいでしょう。
キリトわかった。そうするよ。
ワイズマン続いて彼らとの同期をはじめます。
キリトああ、やってくれ。
アスナ覚悟はできてるわ。
ワイズマンでは……。
アスナうっ…… !
キリトこいつは……想像以上に…… !
キリト君は…… !
ワイズマンキリトさん、アスナさん !大丈夫ですか ! ?
アスナえ、ええ……少し目眩がするけど……わたしは大丈夫。
ワイズマンそれで、彼らの意志は読み取れましたか ?
アスナええ……。焦りと悲しみ、それから悔しさ。そして、誰かを救いたいという想い。
キリト俺もアスナと同じだ。でも一瞬だけ、彼女の姿が見えた。
アスナ彼女って ?
キリトアリスだ。もう一人の俺はアリスと一緒にいたんだ。
アスナじゃあ、助けを求めているのはアリス ?
キリトわからない。そこまでは読み取れなかった。
アスナそんな……光が消えていく……。
キリト本当はもっとずっと前に消えるはずだったんだ。だけど最後の力を振り絞ってここまで来た。
アスナキリト君、彼らの想いに応えるつもりなんだね。
キリトああ。これは俺たちがやるべきことだと思う。ワイズマン、力を貸してくれ。
ワイズマンもちろんです。まずは何から始めましょう。
キリト彼らがどこから来たのか、その場所を見つけてくれ。それから……。
ワイズマンそれから ?
キリトパーティメンバーが必要だ。

キャラクター3話【#03 旅立ちと出会い】
ワイズマン皆さん、ようこそお越しくださいました。
ロウ手を貸すとは言ったけどよもうちょっと時間がほしかったぜ。いろいろ準備しようと思ったのに。
リンウェル嘘ばっかり。昼寝してたじゃない。
ロウ寝てたんじゃなくて考えごとしてたんだよ !
グリューネお昼寝、気持ちいいわよねぇ。
エステル今日はお天気もいいですし絶好のお昼寝日和でしたね。
ロウだよな ! あ、いや、だから寝てねえって !まあ、こっちもキリトに聞きたいことがあったからちょうどよかったけどよ。
キリト俺に聞きたいこと ?
ロウまあ……その、後でな。
リンウェルそれで、力を貸してほしいっていったい何をすればいいの ?
キリト正直に言うと何をすればいいのかは行ってみないとわからない。
キリトただ一つ、そこに助けを求める誰かがいる。それだけは確かだ。
グリューネあらあら、それは大変だわぁ。
エステルわかりました ! その人を助けに行きましょう !
ロウで、どんな野郎をぶっ飛ばせばいいんだ ?
リンウェルもう、気が早いってば。とにかく詳しい話を聞かせて。
ロウつまり、そのシャドウみたいなのが助けを求めてきたってわけか。
リンウェルそれって、シャドウだけど間違いなくキリトたちだったんだよね ?
ワイズマン正確にはシャドウによく似た別の存在です。
キリトああ。そっちは仮に【シャドウライト】って呼ぶことにしよう。
アスナ肉体を持たない精神だけの存在。確かにわたしたちには光の球みたいに見えてたわね。
エステルそれで、そのシャドウライトさんたちの住む場所は見つかったんです ?
ワイズマンええ、それはすでに。ただ少しだけ問題がありまして……。
アスナ問題って、わたしたち聞いてないわよ。
ワイズマンキリトさんやアスナさんには身近なことですのでおそらく大丈夫だろうと判断しました。
ワイズマンシャドウライトは精神体ですのでその世界も物質世界ではないということです。
キリトなるほど。シャドウライトたちの世界は仮想現実みたいな世界なんだな。
ロウなんだよ、そのカソーゲンジツって。
エステル自由に行動できる夢の中の世界……と言えば伝わるでしょうか。
アスナそっか、わたしたちがこっちに来た時エステルも『遊戯空間』を体験したのよね。
エステルはい。リタたちとははぐれちゃいましたけど……。
ロウ夢の中の世界ねぇ……いまいちピンとこないけどまあ、行ってみりゃわかるだろ。
リンウェルまったく、行き当たりばったりなんだから……。
グリューネみんなで一緒の夢を見られるなんてなんだか素敵ねぇ。どうやって見るのかしら。
ワイズマンそれは、前回用意した『遊戯空間』が使えるでしょう。
ワイズマンすでにシャドウライトの世界を『遊戯空間』内に格納してあります。
ワイズマン私の力で皆さんの精神をその世界に送り込み自由に活動できるようにします。
キリトやれやれ、相変わらずなんでもありだな。
アスナでも、そのおかげで彼らを助けに行けるよ。
キリトああ。ついでに、なぜ俺たち二人のシャドウライトが存在していたのか……その謎も解かないとな。
ロウそうと決まったらさっさと行こうぜ !そのカソーゲンジツの世界ってやつに !
グリューネ困っている子を助けないとねぇ。
ワイズマンでは、皆さんを送り出します。目を閉じて心を落ち着けてください。
ロウなあ、こういう時の掛け声とかないのか ?
リンウェル急にどうしたの ?
ロウいや、だってよ。こんな静かだと気合いが入らねぇだろ ?キリト、なんかないのか ?
キリト掛け声っていうか……しいて言えば『リンク・スタート』かな。
ロウおお、いいじゃねぇか !それでいこうぜ !
キリトじゃあいくぞ、みんな……『リンク・スタート』 !
全員『リンク・スタート』 !
ワイズマン無事に、シャドウライトの世界とリンクできたようですね。
ワイズマン皆さん、どうかご無事で……。
ワイズマンおや、これは……ユージオさんの青薔薇…… ?
ワイズマン消えてしまいましたか。今の光はいったい……。
キリトここは……。
アスナわたしたちシャドウライトの世界にログインできたのよね ?
ロウへぇ~。なんか、元の世界と変わらないな。肉体がないとか、信じらんねえや。
リンウェルねえ、これって道だよね ?
エステル道があるということはどこかへ続いているのでしょうか。
キリト確かめるには、行ってみるしかないよな。
アスナキリト君ならそう言うと思った。
グリューネうふふ、何があるのかしら。お姉さん、楽しみだわぁ。
リンウェルここは村、だよね ?
グリューネのどかでステキなところねぇ。
アスナほんと、ごく普通の村って感じね。
エステル村の方にお話を聞いてみましょうか。
ロウおーい、誰かいないのかー !ちょっと聞きたいことあるんだけどよー !
グリューネう~ん、誰も来ないわねぇ。
リンウェルロウの大声にも反応しないなんて無人の村なのかな。
キリト仕方ない。村の中を探索してみよう。
? ? ?待ちなさい。許可なくこの村に立ち入ることは許しません。
エステル金色の……騎士 ?
キリトアリス !
アスナやっぱり、ここにいたのね。
グリューネあら、キリトちゃんのお友達 ?
アリスお前……なぜ私の名前を知っているのですか。
キリトアリス ! ? 俺とアスナのことがわからないのか ! ?
アリスお前のことなど知りません。それより、村に近づいた目的を言いなさい。
キリトアリス……彼女もシャドウライトなのか ?だが、どうして俺のことを覚えてないんだ……。
アリス答えないつもりですか。ならば…… !
アスナ待ってアリス ! わたしたちは敵じゃない !
ロウおいおい、どうすんだよ ! ?戦うのか ?
リンウェルわかんないけど、向こうはやる気満々みたいだよ !
アリス我が名はアリス !騎士として民を、村を守る !
キリトくっ…… !
アリスな、なんだこの光は !
アスナキリト君、あれって……。
キリトシャドウライト…… ?いや、どこか違うような……。
リンウェル観察してる場合じゃないでしょ !本当にあの人と戦うの ?
キリトそ、そうだった !
キリトアリス ! 俺たちに戦う意志はない !この通り、武器も手放す !だから話を聞いてくれないか !
アリスむ……敵ではない…… ?魔物が姿を変えているとも思えない……。
アリス……わかりました、一度話を聞きましょう。ついて来なさい。
ロウふぅ、ひやひやしたぜ。
アリスだが、少しでも妙な真似をすれば……斬ります。
ロウわ、わかってるって。大人しくしてます……。
アスナキリト君……アリスは……。
キリト今は、彼女の話を聞こう。考えるのはそれからだ。

キャラクター4話【#04 村での役割】
アリスそれで、お前たちは何者なのです。
キリト俺たちは──
キリト山を越えた向こうの村から来たんだ。あっちは魔物が増えて住めなくなってさ。
キリト年寄りや子供は近くの村に受け入れてもらえたけど俺たち若い連中はいっそ山を越えて新天地を目指そうってことになったんだ。
アスナキリト君、なにそれ。
キリト咄嗟に思いついたにしては悪くないだろ。
アリスそれは大変だったでしょう。大したもてなしもできませんが好きなだけゆっくりしていきなさい。
キリトありがとう。助かるよ。ところでさ、あんた前に俺と会ったことはないか ?
アリスいえ……覚えはありません。
キリトじゃあ『整合騎士』『アドミニストレータ』って言葉に聞き覚えは ?
アリスそれも聞いたことはありません。
キリト『ルーリッド』『セルカ』……『ユージオ』。この名前には ?
アリス知らない……はずですが……なぜか、聞き覚えがあるような気もします……。いったい、それがなんだと言うのです。
キリトすまない。あんたが遠くにいる知り合いにそっくりだったからさ。
アリス私に似た者……。
キリトどうかしたのか ?
アリスいえ、なんでもありません。それより、お前たちはこれからどうするのですか ?
キリトできればしばらく滞在させてもらえるとありがたい。
アリスそれはかまいません。ですが、村に留まるからには『役割』を果たしてもらいます。
キリト『役割』 ?
アリスこの村では誰もが『役割』を持つ。私の場合は村を守る騎士。他にも農夫、鍛冶師、羊飼いといろいろあります。
アリスお前たちも『役割』を見つけてもらいます。それが条件です。
キリト共同生活をするからには助け合おうってことか。まあ、当然の要求だな。
ロウ俺は何がいいかなー。やっぱ拳闘士とか ?
リンウェルそれがどうみんなの役に立つっていうのよ。
アリスいえ、戦える者は大歓迎です。なぜなら──
ロウなんだ、この鐘の音は ! ?
グリューネあらあら、お外がずいぶん賑やかねぇ。
アリス説明する手間が省けましたね。これは魔物の襲撃を知らせる合図です。話はここまで。私には騎士としての役割が……。
エステルわたしもお手伝いします !
リンウェルうん ! 見てるだけなんてできないよ。
ロウおっしゃあ ! やってやろうぜ !
アリスお前たち……。
キリト俺とアスナも言ってみれば剣士ってやつなんだ。だから、手伝わせてくれないか ?
アスナわたしたちけっこう強いのよ。
アリス……助かります。この村を共に守ってください。
キリトああ、任せろ !

キャラクター5話【#05 忘れられた村】
ロウおらぁっ !
ロウ次っ ! どっからでもかかって来い !……って、あれ ?
ロウお、おい逃げんのかよ !なんだよ、やっと温まってきたってのに。
アスナほんと、一斉に帰って行っちゃった。
グリューネおうちに帰る時間になったのかしらぁ ?
リンウェルいや、魔物に門限って……。
エステル皆さん、ケガはありませんか ?
キリト俺は大丈夫だ。
ロウ俺も。
アリス私も問題ありません。ですが、村の者にケガ人が出たようです。
エステルわたしに任せてください。治癒術なら心得ていますから。
アリスそうですか。助かります。
エステルでは、行ってきますね。
アリスお前たちのおかげでいつもより被害は抑えられました。感謝します。
アスナいつもより……って、こんなことがよくあるの ?えーと……アリスさん。
アリスただのアリスでかまいません。もしかすると、お前たちの知り合いだという人物はこの私自身かもしれませんから。
キリト妙なことを言うんだな。自分で自分のことがわからないのか ?
アリス誰かが誰かのことを忘れてしまう──この村では珍しくないことなのです。とくに魔物の襲撃の後ではよく起きる。
アリスだからかもしれません。ここが『忘れられた者たちの村』と呼ばれるのは。
アリス誰が名付けたのか、どうしてそう呼ばれているのか。どちらも覚えている者はいませんが。
ロウなんか気味が悪いな……。
リンウェルちょっとロウ !
アリスいえ、気にすることはありません。私も言われてあらためて奇妙だと思いました。いや、奇妙に思うこと自体を忘れていたのかも……。
キリトなあ、魔物の襲撃は頻繁にあるのか ?
アリスええ。村に良いことがあると決まって起きるのです。
ロウ『村に良いことがあると』って、なんだそりゃ。
アリス理由はわかりません。しかし事実です。昨日はちょうど小麦の収穫をしたところです。
アリス誰かが家を建てた時にはそれを壊し家畜が子を産んだならそれを狙う。魔物とはそういうものではないのですか ?
リンウェル人を襲ったり物を壊したりはするけどそんな狙ったように嫌がらせはしないよ。
グリューネそうねぇ。それじゃイジメっこみたいだわぁ。
キリト嫌がらせが目的…… ?
アスナこれがゲームなら、作った人は相当性格悪いよね。
アリスゲーム ?
キリト作られた世界って意味だよ。
アリスなるほど。神は性格が悪いと言いたいのですか。なかなか恐れ知らずな発言ですね。
アリスそれにしても魔物たちの目的ですか……考えもしませんでした。村を守るだけで精一杯でしたから。
キリト魔物がどこから来るかわかっているのか ?そんなに頻発するならいっそ発生源を叩いた方が……。
アリスそうしたいのは山々ですが、村に戦える者は私しかいません。離れるわけにはいかないのです。
アリス以前は仲間がいた気がするのですが……。
キリト『気がする』 ?
アリスそうだ……こんな話を前にもした気がする。あれは……あいつは……うっ……思い出せない……。
キリトアリス ! 大丈夫か ! ?
アスナ無理に思い出そうとしなくていいわ。ゆっくり、深呼吸して……。
アリス……だ、大丈夫です。慣れているので。
アスナ慣れてるなんて……。
アリス言ったはずです。ここでは『忘れる』ことはよくあることだと。
アリス私は村の被害状況を確認してきます。お前たちはどうするのですか ?
キリトしばらくここで休ませてもらうよ。
アリスそうですか。では、また後で。
アスナ思っていたよりずっとおかしな場所ね。
リンウェル良いことがあると、代わりに魔物に襲われるなんておかしいよ。
グリューネこのままだと困っている子が誰かもわからないわぁ。
キリト確かにその通りだ。魔物をすべて倒せば村は救われるのか。それとも根本的に別の問題なのか……。
ロウしばらくここにいるしかないんじゃねえの。村人たちと同じようにさ。
リンウェルちょっと、そんな簡単に……。
キリトいや、それもありかもな。
キリトあのシャドウライトがかつて村の住人だったのならしばらく滞在してみることで何かが見えてくるかもしれない。
リンウェルえぇ、ここで暮らすの…… ? 大丈夫かな……。
ロウ安心しろって。魔物が来たって俺がとっちめてやるからよ。
リンウェル別にロウに守ってもらわなくても自分の身くらい守れるし。
ロウへいへい、そーですか……。
アスナとにかくわたしたちだけじゃ決められないわ。村人の介抱をしてるエステルにも相談しなくちゃ。
キリトそうだな。エステルを手伝いながらしばらく情報収集をしよう。

キャラクター6話【#06 村での暮らし】
アリスもうすぐ日が暮れますね。
キリト仕事はここまでだな。今日も何ごともなし。村は平穏無事と。
アリスここのところ魔物もずいぶん減りましたから。
キリト襲撃の度にかなりの数を倒したからな。そろそろこの辺りの魔物はいなくなるかもしれないな。
アリスお前たちが来てから村の戦力は充分になりました。そのおかげでしょう。感謝しています。
キリト何言ってるんだ。アリスだって戦っただろ。それに今じゃ俺たちも村の一員なんだ。これはみんなの力さ。
アリスそうか、みんなの力か……。
キリトそれより早く帰ろうぜ。腹減っちゃって……。そうだ、アリスもうちに食べに来ないか ?
アリスいや、しかし……。
キリト昨日、ロウがウサギを狩ってきてくれてさ。それをアスナがシチューにするって。アスナのシチューは絶品だぞ。
アリス絶品、シチュー……。そ、そこまで言うのならお呼ばれしましょう。
キリトああ。それじゃあ、後で家に来てくれ。
アリスええ。また後で。
キリトただいま、アスナ。
アスナおかえりなさいキリト君。今日は早いのね。
キリト魔物が来る様子もないからな。早めに切り上げたんだ。それよりシチューは……。
アスナつまみ食いはだめよ。それにもうひと煮込みしてからが美味しいんだから。
キリト仕方ない、我慢するか……。あ、そうだ。アリスも招待したんだ。
アスナええ ! ? そういうことは早く言ってよ !付け合わせ足りないかも。あとパンも……。キリト君、おつかい行ってきて。
キリト今からか ? 帰って来たばかりなのに……。
アスナあ、そうだ。ついでにエステルのところに差し入れ持っていって。
キリト人使い荒いなぁ副団長様は。
アスナつべこべ言わない ! 大至急行ってくるの !
キリトりょ、了解しました !
キリトえーと、パンにニンジン、ジャガイモ……と。これで全部だな。
ロウお、キリト !
キリトロウ。狩りの成果はどうだった ?
ロウ今日もばっちりだぜ !捌いたら持っていくからよ。
キリトありがとう。アスナが喜ぶよ。
ロウあー……でさ。ちょっと話があんだけど。
キリト今からか ?だけど俺、用事を頼まれてて……。
ロウそんなに長くかからねぇからさ !な ? 少しだけ !
キリト……ハァ。わかったよ。だけどほんとに少しだけだぞ。
ロウさすがキリト !んじゃ、喫茶店で待ってるぜ !
キリト喫茶店で……って、そんなのこの村にあったか ?
キリト仕方ない。さっさと差し入れを済ませてくるか。
エステルはい。治りましたよ。
村人Aありがとうございます !これでまた明日も畑仕事ができます。
エステルよかった。でも、無理をしてはいけませんよ。
村人Aはい ! シスターのお言葉、胸に刻みます !
エステルえ、あの、わたしはシスターでは……。ああ、行ってしまいました。
キリトよお、エステル。すっかりシスターが板についてるじゃないか。
エステルキリト……からかわないでください。わたし、シスターなんてよくわかりませんし……。
キリトそうかな。けっこう様になってると思うけど。なんだかんだ一人で教会を切り盛りしてるわけだし。
エステルそれはここが放置されていたのがしのびなくて。わたしのことよりキリトのご用はなんですか ?
キリトああ、そうだった。ほら、差し入れ。アスナから。
エステルまあ、いつも助かります。なかなか家事の時間がとれなくて。
キリトアスナがあまり働きすぎるなってさ。エステルが身体を壊したら元も子もない。
エステルはい。気をつけます。でも、おかげでアスナの差し入れをいただけるのですから、そこは神様に感謝でしょうか。
キリトはぁ……やっぱりシスターが板についてきてるよ。さて、そろそろロウのところに行くか。
ロウキリト ! 待ってたぜ !
キリトロウ、先に言っておくけどあまり長くは付き合わないからな。こっちは腹ペコなんだ。
ロウわかってるって。グリューネさん、キリトにも牛乳を一杯 !
グリューネは~い。
キリト……グリューネさん、なにやってるんだ。
グリューネ夜からここで働くことにしたのよぉ。キリトちゃんたちが頑張ってるからお姉さんも、なにかみんなの役に立とうと思って。
キリトそれで副業か。しっかりしてるなぁ。
グリューネそれに老後の蓄えは大事だって村のおじいちゃんに教えてもらったのよぉ。
ロウ老後って……グリューネさんはまだまだ若いだろ。
グリューネまあ、ロウちゃんってば。牛乳もう一杯どうかしら ?
ロウもちろんもらうぜ !
グリューネ合わせて140ガルドになるわぁ。
ロウあ、奢りじゃないのね……。
キリトおいロウ。話があったんじゃなかったのか。
ロウお、おお。そうだった。それがさ……。
キリトリンウェルのことか ?
ロウな、なんでわかったんだ ! ?
キリトいや、なんとなく……。
ロウそ、そうか……なら話は早いぜ。俺が相談したいのは、どうやったらあいつとこう、もうちょっと、うまくやれるというか……。
キリト充分うまくやってるじゃないか。お互いあれだけ遠慮なく話せるんだから。
ロウいや、そういうんじゃなくてよ。お前とアスナが仲良くやってるみたいにさ。ほら、リンウェルって俺にだけ厳しいだろ ?
キリトそれはロウが変にちょっかいかけるからだろ。
ロウちょ、ちょっかいなんてかけてねぇよ !
キリト昨日の狩りだって、リンウェルの方ばかり気にしてあやうく獲物を逃がすところだったぞ。
ロウいや、あいつが危なっかしいからさ……。
キリトそれが余計なお世話ってことなんじゃないか。というか、ロウは心配しすぎなんだよ。
キリトリンウェルとは一緒に旅してきたんだろ。だったらそこらの魔物に後れを取るような実力じゃないってわかってるはずだ。
ロウそりゃそうなんだけど、なんかこう気になっちまって。
キリトとにかく、もっとリンウェルのことを頼りにしてやれ。『男は女を守るもの ! 』みたいな考えは嫌われるぞ。
ロウそ、そうなのか…… ? ってそれ、キリトの経験上の話か ?
キリトノーコメント。
キリト俺から一つだけ言えることがあるとすればアスナをか弱い女の子扱いしたやつらはみんな痛い目にあって来たって事だ。
ロウなるほど……。
キリトまあ、参考までにってやつだ。そういえば、前に俺に相談があるって言ってたよな。それってこの話のことなのか ?
ロウああ。あの時は近くにリンウェルがいたからよ本当はアークに戻ってから話すつもりだったんだけど。
キリト…………。
ロウ…………。
二人アーク !
キリトそうだ ! 俺たちアークから来たんだ !
ロウこの村に助けを求めるやつがいるって聞いてそれで来たんだよな ! ?
キリトいつの間にか村の生活に馴染んでいた。それが当たり前のことみたいに……。
ロウキリト、さっさとここを離れないとやばい気がするぜ。
キリト同感だ。まずはみんなにも思い出してもらわないと。
ロウだな。グリューネさん !
グリューネあらあら、お勘定かしら。それじゃ二人合わせて……。
ロウ俺たちこんなことしてる場合じゃねぇって !目的を済ませて、アークに戻らねぇと !
グリューネアーク……。……そういえばそうだったわねぇ。すっかりこの村に骨を埋めるつもりでいたわぁ。
ロウさすがにそりゃあ馴染みすぎだろ……。
キリト次は、アスナたちだ。取り返しがつかなくなる前に行くぞ !

キャラクター7話【#07 失われた目的】
リンウェルあ、アスナも水汲み ?
アスナええ、そうよ。リンウェルは珍しいわね。
リンウェルうん、水汲みはロウの仕事なのに。あいつぜんぜん帰ってこないんだもん。
アスナそういえばキリト君も遅いな。いろいろお使い頼んじゃったせいかな。
リンウェルキリトは優しいよね。ちゃんと手伝ってくれるしアスナのこと尊重してるし。ロウなんていっつも私のこと子供扱いするんだから。
アスナロウなりに気を遣ってるのよ。それにキリト君だって、子供っぽいところあるのよ。
アスナつまみ食いするし何かに没頭したら呼んでも聞こえなくなるし。あと無茶してケガばっかりするの。
リンウェルはぁ……男子ってどうしてそうなんだろ。
アスナほんとにねぇ……。
アリス何やら盛り上がっているのかそうでないのかわからないような会話ですね。
アスナアリス、来てくれたんだ。キリト君から話は聞いてるわ。
アリスすみませんが、世話になります。
アスナ謝らなくていいわよ。いつも村を守ってくれてるお礼。
リンウェルなになに ? 二人は約束があったの ?
アスナ今夜、食事に誘ったの。よかったらリンウェルもどう ?
リンウェルアスナの手料理 ! うん、行く行く !あ、一応ロウも誘ってあげるか。
アスナさてと、そうと決まったらキリト君に早く帰ってきてもらわないと……。
キリトアスナ !
アスナキリト君、遅かったじゃない。もうアリス来ちゃったわよ。
キリトいや、それどころじゃないんだ !俺たちみんなおかしくなってるんだよ !
アスナいったいなんの話 ?
ロウキリト、そんなんじゃダメだ !もっとガツンと言わねえと !
リンウェルロウ、あんたどこ行ってたのよ。今日は水汲み当番だったでしょ。
ロウあれ ? そうだっけ。
リンウェル次忘れたら、罰として一生水汲み当番って言ったよね。
ロウわ、悪かったって ! もう忘れないから !だから一生水汲みは勘弁してくれ !
キリトロウ ! お前こそしっかりしろ !
ロウ……はっ ! ? い、いけねえ。ついリンウェルの勢いに押されて……。
アスナもう、二人してどうしちゃったのよ。
グリューネわたくしたちと~っても大事なことを忘れちゃってたのよぉ。
リンウェル大事なことを忘れてる…… ?
ロウ学園都市アーク !この村に来た目的 !
リンウェル……ああっ ! ? そうだ、そうだったよ !
アスナそうよ…… ! わたしたちシャドウライトの助けを求める思念を読み取って、ここに来たんだったわ…… !
ロウふぅ……やっと思い出したか。
キリト俺たち、いつの間にかここでの生活が当たり前のように感じていた。おそらく精神に干渉するような何かがこの村にはあるんだ。
アスナあまり長く居すぎたら、こうやって気づくことすらできなくなるかもしれないわね。
リンウェルねえ、エステルにも話さないと !
ロウおう、急ごうぜ !
アリスちょ、ちょっと、お前たちいったい何の話をしているのです。
キリトアリス、後で必ず説明する !今は俺たちを信じてついてきてくれ。
アリスお前を……キリトを、信じる……。
キリトどうかしたか ?
アリスいえ……。事情はわかりませんが、大事なことなのでしょう。すぐにエステルのところへ向かいましょう。
エステルあら、皆さんお揃いでどうしたんです ?ケガ人ですか ? それともお祈りを ?
アスナエステル、すっかりシスターになっちゃってるわね。
ロウんなこと言ってる場合じゃねぇって !
エステルわかりました。こんなに大勢で来たということはきっと大変な状況なんですね。
エステルでは、順番に話を聞きます。まずはリンウェルから。
リンウェルえ ? 私 ?
エステル神様の前で嘘はつけません。さあ、罪の告白を。
リンウェルえっと……実は、お洗濯に失敗しちゃってロウが気に入ってた服を台無しにしちゃった。
ロウなにぃ ! ? 最近見ねぇと思ったら !あれを仕立屋のおっちゃんに交換してもらうのに毛皮を五枚も渡したんだぞ !
リンウェルごめん。でも、ちゃんと再利用はしたから。……私の手巾に。
ロウ自分のじゃねぇか !
キリト二人ともしっかりしろ !
ロウ……はっ ! ? 危ねぇ、また…… !
リンウェルついエステルの雰囲気に流されちゃって……。
アスナエステルもしっかりして ! あなたはシスターじゃないでしょ。
キリトエステル、俺たち目的があってこの村に来ただろう。シャドウライト、それに助けを求める誰か……。
エステルシャドウ、ライト……。あ……そ、そうでした !わたしったらいつの間にか……。
グリューネよかったわぁ、みんな思い出したのね。それじゃ、お姉さんのお店でお祝いしましょう。
リンウェルいや、グリューネもまた流されちゃってるから。
アリス……どうやら、よほどの事が起きているようですね。キリト、約束通り説明してもらいます。
キリトああ……わかっている。まずは場所を変えよう。他の村人には聞かせたくない。

キャラクター8話【#08 真実を求めて】
ロウ場所を移すって、キリトたちの家じゃねぇか。
キリト他に行くところがないからな。人目を避けるにはここしかない。
アスナキリト君は村人を疑ってるの ?
キリトいや、どちらかと言うと俺たちが村人に与える影響の方を心配してる。
キリトみんなも感じていただろう。自分に課せられた『役割』を務めている時の充実感や幸福感を。
エステルはい。とても心地よかったです。正直、皆さんに目を覚ませと言われた時は少し嫌な気持ちになってしまいました。
アスナわたしも、一瞬だけど『この生活が終わるんだ』ってガッカリしたわ。
グリューネわたくしも、ここの生活がすっごく楽しかったわぁ。
ロウま、まあ、悪い生活じゃなかったよな。り、リンウェルもそう思わねえか ?
リンウェルなにバカなこと言ってるの。もしかして、まだ抜けきってないわけ ?
ロウいや、そういうことじゃねえんだけど……。
キリトここでの生活がわずかな俺たちですらこれだ。長く住んでる村人たちがどういう反応をするか予想がつかない。
リンウェルでも、それならアリスは大丈夫なの ?
アリス私は今のところ不快な気持ちはありません。むしろ村を守るためにお前たちの話を聞かなければならないと感じています。
キリトそこは『役割』の違いか。不幸中の幸いだな。村人の中に協力者がいるのは大きい。
アスナキリト君、これから何をするつもりなの ?
アリスその前に事情を説明してもらいましょう。私に協力させたいのなら。
キリトそうだな。まずはそこから始めよう。
キリトアリス、君には黙っていたけど俺たちは山向こうの村からじゃなくて別の世界からここにやって来たんだ。
アリス別の世界……そんなものがあったのですか。
キリト意外だな。信じてくれるのか。
アリス私を騙そうというのならもう少しましな嘘をつきます。それに、お前たちと今日まで過ごした日々は嘘ではありません。だから信じられると思いました。
キリト村に住んでみようっていうロウの提案は正解だったな。おかげでアリスっていう味方ができた。
ロウだろう ? そこまで考えてたからな !
リンウェルあ、これは嘘だから。
アリスお前たちの目的はなんなのですか。わざわざ外から来たのには理由があるのでしょう。
アスナわたしたち……正確にはわたしとキリト君のシャドウライトが助けを求めてきたのよ。
キリトおそらく、俺たちのシャドウライトはこの村の住人だったはずだ。
アリスだから最初に会った時に「自分を覚えているか」と聞いてきたのですね。
キリトああ。そうだ。何か覚えていることはないか ?
アリス……わかりません。しかし、確かに村の人数が『減っている』のには気づいていました。
キリトどういう意味だ ?
アリスこの村では皆が『役割』を持つことは話したでしょう。私と同じく村を守る剣士という『役割』がいたことだけは間違いないのです。
アリス彼の……いや、彼女かもしれませんがその人物が使っていたと思われる剣が残されていましたから。
アリス共に戦ったその者のことを私は覚えていない。だが、ずっと心に引っかかっていたのです。
キリトその消えてしまった剣士はきっと俺とアスナのシャドウライトだったんだろう。
キリト彼らは俺たちに助けを求めていた。アリス、君にはその具体的な理由がわかるか ?
アリスそれは……。
ロウんなの考えるまでもねぇって !おかしいだろ、この村自体が !
リンウェルそうだね。私もそう思う。
リンウェル人に『役割』を押しつけたり大事な人のことを忘れちゃったり何か理由があるはずだよ。
グリューネ黒幕ちゃんがいるのかしらねぇ。
アスナだとしても目的がわからないわ。
キリト何かの実験か……それともただの愉快犯か。
エステル村の人たちを弄ぶなんて神様が許してもわたしが許しません !
リンウェルエステル、まだちょっとシスターが抜けきってないよ。
アリスこれだけのことをやってのけるのです。それこそ相手はこの世界の『神』かもしれない。
ロウ関係ねえさ。神だろうがなんだろうが悪党はぶっ飛ばす !
リンウェルうん、このままになんてしておけないよ。
キリト心配するなアリス。神だとしてもそいつは全知全能ってわけじゃない。戦う方法はいくらでもあるさ。
アリスそんなこと、どうしてわかるのです。
キリト俺とアスナのシャドウライトはその神とやらの目をかいくぐってやって来たんだ。けっこう隙はあるってことさ。
アリス楽観的ですね。ですが、お前が言うと不思議とやれそうな気がしてきます。
アリスわかりました。私もお前たちに協力しましょう。
キリトありがとうアリス。
キリト明日から調査を始めよう。ただし、なるべくこれまで通りの生活をしている振りをしながらだ。
リンウェルそれって、危なくないかな ?また村に取り込まれちゃうんじゃあ……。
グリューネ二人一緒になってお互いに「めっ」て言い合うのはどうかしらぁ ?
ロウさすがグリューネ姉さん、それだ !あー、リンウェル──
リンウェルじゃあアスナ、一緒にやろう ?
アスナええ、いいわよ。
ロウあぁ……。
キリトと、とにかくみんな慎重に頼む。

キャラクター9話【#09 村の異変】
ロウ村に溶け込みながら聞き込みか。こういうのはあんまりな……。
キリトそうぼやくなよ。他に方法がないんだから。
ロウわかってるよ。やるだけやってみるさ。おーい、おっちゃん、精が出るなぁ !
村人Aおう、ロウか。今年の収穫は終わったけどよ来年に向けて準備しないといけねぇからな。
村人Aお前らこそ、ブラブラしてねぇでちゃんと働けよ。
ロウ働いてるよ !
キリト俺たち見回りをしてるんだ。なあ、村で何か変わったことはないか ?
村人B変わったこと…… ?いや、とくにねぇなあ。いつもと同じだ。
キリトそうか。邪魔して悪かったな。
村人Bいいってことよ。ロウもちゃんと働けよ。甲斐性なしだとリンウェルに見捨てられるぞー。
ロウだから働いてるって !ってか、なんでそこでリンウェルが出てくるんだよ !
キリトまた収穫なしか。村はいたって平和だな。
ロウ平和なのはいいけど、なんでみんなして俺を見ると「まじめに働け」だの「甲斐性をもて」だの言ってくるんだよ !
キリトまあ、それだけみんなに好かれてるってことさ。だけどあまり入れ込みすぎるなよ。また村に取り込まれるからな。
ロウわかってるって。けど、やっぱみんな自分の『役割』のことしか考えてねぇっつーか……。
キリトたぶん、以前の自分を覚えていないからだろうな。
キリト記憶がないから目の前の『役割』に執着するんだ。しかも『役割』をこなせばそれだけで幸福感を得られる。よくできたシステムだよ。
ロウやっぱ黒幕の野郎が考えたのか ?
キリトそうかもしれない。だけど、なおさらその目的がわからない。いったい何のためにこんな手の込んだことを……。
ロウこの鐘は…… !
キリト魔物の襲撃だ ! 急ぐぞロウ !今、村の警備についてるのはアリスひとりだ !
ロウおうよ !
キリトアリス ! 加勢に来たぞ !
アリスキリト、ロウ ! 助かります !
ロウおいおい、なんかめちゃくちゃ多いぞ !
キリトくそっ、かなり駆除したと思ったのにまだこれだけの数がいたのか !
アリス愚痴は後です ! なるべくここで食い止める !
ロウ倒し損ねたやつらはどうすんだ ! ?
キリト村の中にはアスナたちもいる。そっちは任せて大丈夫だ。
ロウとにかく数を減らすしかねぇってことか !いいぜ、やってやる !
ロウはぁっ、さすがにキツかったぜ…… !
アリス村にもかなりの被害が出てしまいました……。
キリトあの数を相手にしたんだ。アリスは精一杯のことをしたよ。
アリスしかし……。
グリューネキリトちゃ〜ん、アリスちゃ〜ん、たいへんよぉ〜。
キリトグリューネさん、どうしたんだ ?
グリューネそれがね……。
キリトエステル !
エステル皆さん、よかった。無事だったんですね。
アリスええ。それで、そっちはいったい何があったのです。
エステルそれが……。
村人Bああああ、俺の羊たちがあああああ !みんな、みんな食われて……あああああっ !
エステル先ほどの魔物の襲撃で、大事な羊たちがすべて死んでしまったそうなんです……。
ロウおい、落ち着けっておっさん !
村人B来るなあああああっ !俺は、俺はもう終わりだ ! うわああああああっ !
ロウうわっ、暴れて手がつけられねえぞ !
アリス落ちつきなさい ! 羊はまた買えばいい !何も終わってなどいません !
キリト仕方ない。多少手荒になるけど取り押さえよう。じゃないと自分で自分を傷つけてしまいそうだ。
ロウ悪いな、おっさん。なるべく痛くないようにするからよ !
村人Bうっ…… !
アリス気を失いましたか……。
グリューネみんなを呼んでよかったわぁ。
エステルこの方の傷を手当てしないと。教会に運んでくれますか ?
アリスええ……わかりました。
キリト傷は塞がったみたいだな。
ロウおっさん、ずいぶん追い詰められてたんだな。自分で自分をこんなに傷つけるなんてよ……。
エステル身体の傷は治せても、心の傷までは治せません。この方が目を覚ましたら、どう声をかければいいのでしょう……。
アリス村のみんなで支えましょう。何も彼が初めてのことではありません。
グリューネあら、じゃあ前はどうしてたのかしら ?
アリスそれは……いや、思い出せない。
アリス以前にも似たようなことがあったはずだ。あれは誰だった ? どうやって対処した ?なぜ私は…… !
キリトアリス !それ以上考えるな !
アリスキリト……。え、ええ……そうですね。すみませんが少し頭を冷やしてきます。彼のことを、頼みます。
グリューネアリスちゃん、心配だわ……。
エステル村の人を守れなかったと感じているのでしょうか。
ロウけどよ、それはアリスのせいじゃねぇだろ。
キリト村とそこに住む人を守ること。それがアリスの『役割』なんだ。どうしても責任を感じてしまうんだろう。
キリト『役割』のおかげで幸福を得ると同時にそれを失う苦しみも生まれるんだ……。
ロウちっ、人を何だと思ってやがる……。
村人Bう……うう……。
エステル目が覚めたみたいです !大丈夫です ? 少しは落ち着きました ?
村人B行かなきゃ……。
エステルえ…… ?
村人Bあそこへ……行かなきゃ……。
エステルあの、待ってください ! どこへ…… !
ロウ行っちまった……。
グリューネ元気になったのかしら ?
キリトいや、そういう風には見えなかったが……。

キャラクター10話【#10 作戦会議】
キリトそれじゃ、各人で得られた情報を共有しよう。
アスナでも、こんな人前で堂々と話していいの ?
リンウェルそうだよ。私たちって内密に調査をしてるんじゃなかったっけ。
キリトこういうのは逆にコソコソしない方が怪しまれないもんさ。
グリューネそうよぉ。だからみんな好きなもの注文してね。
ロウやったぜ、グリューネ姉さんの奢りか !
グリューネもちろんお代はいただくわぁ。
リンウェル二人とも、またこの村に飲まれてないよね…… ?
グリューネ大丈夫よぉ、うふふ。
ロウそうそう。怪しまれないためだって。
リンウェル本当かなぁ……。
アスナはいはい。そこまで。そろそろ情報交換を始めましょ。
キリトまずは俺とロウからだ。
キリト知ってるとは思うが、昼間あった魔物の襲撃でかなりの被害が出た。
エステルケガ人もたくさん出ました。幸い、亡くなった方はいませんでしたが……。
ロウだけど家や畑なんかを失っちまった人は多いぜ。あれじゃ路頭に迷ってもおかしくねぇ……。
リンウェルここのところずっと平和だったから村のみんなの衝撃も大きいよね……。
キリト衝撃が大きいか……。
アスナ何か気になることでもあるの ?
キリト確かアリスが言ってたよな。良いことがあると、決まって後に魔物の襲撃があると。
アスナ今回の襲撃が激しかったのはしばらく村が平和だったからその反動ってこと ?
キリト確証はないけど、そう考えるのが妥当な気がする。
グリューネまるでトマトを育ててるみたいねぇ。
エステルトマト…… ? あのお野菜のトマトです ?
グリューネトマトはね、実をつけたら水をあげないのよぉ。地面がカラカラになるくらい干上がらせるととっても甘くて美味しく育つの。
キリトいや、村人は野菜じゃないんだが……。
リンウェルでも、そういうことかもしれない……。
アスナリンウェル ?
リンウェルねえ、ロウ。これって私たちの世界と少し似てると思わない ?
ロウ俺たちの…… ?……そうか、【領戦王争(スルドブリガ)】か !
キリトどういうことだ ? 詳しく説明してくれ。
リンウェル私たちの世界ではね、星霊術を使えるレナ人がダナ人を……奴隷扱いしてたの。
リンウェルそれは人から星霊力っていう力を搾り取るため。生かさず殺さず、過酷な状況に置いてダナ人から可能な限り効率よく星霊力を奪う。
リンウェルそして星霊力を一番集めたレナ人の領将が王に就くっていう王位争い、【領戦王争】のためにダナ人はずっと虐げられていたの。
アスナひどいわ、そんなの……。
ロウ実際、ひでぇところだよ……。俺たちが生まれた場所は。
リンウェルもしかして、この村もそうやって人から何かを集めようとしてるんじゃないかなって……。
キリト……記憶だ。
キリト村の住人たちから奪われているのは記憶なんだ。
リンウェルそうか……それなら全部説明がつくね。
エステル村の皆さんが様々なことを忘れてしまうのは記憶を奪われていたからなんですね。
ロウしかも、楽しい記憶よりつらい方が好みってか。どこのどいつか知らねぇけど最悪な野郎だぜ。
アスナアリスがこの場にいなくてよかったわね。また理不尽に記憶を奪われていたなんて伝えるのは忍びないわ……。
キリト最初はアドミニストレータ。今度はどこの誰かもわからない相手か……。
ロウそういえばアリスは来ないのか ?
エステル昼間の一件以来、少し気分が悪いそうです。わたしのところに来て治癒術を受けていきました。
グリューネそれは本当に心配ねぇ。
アスナキリト君、昼間の一件って ?
キリトああ、村の人がかなり取り乱して暴れたんだ。
ロウ飼ってた羊を全部魔物に食われちまってよ……。
リンウェル羊飼い……。ねえアスナ、私たちが見たのって何か関係があるのかな。
アスナそうね。今さらだけど、ちょっと変な様子だったわ。
キリトアスナ、いったい何を見たんだ ?
アスナそれがね、羊飼いのおじさんがふらふら歩いてたら他の人たちが来てどこかへ連れて行っちゃったのよ。こう両脇を抱えるみたいにして。
リンウェルみんな無表情で、ちょっと怖かったね。
エステル羊飼いさんは、先ほどわたしのところにも来ました。ちょうどアリスさんと入れ違いくらいでしょうか。
キリトどんな様子だった ?
エステルそれが、すっかり落ち着いていたんです。しかも「明日から畑を耕す」って、可愛がっていた羊のことをすっかり忘れてしまったみたいに……。
アスナねえ、これってもしかして……。
キリトああ、どうやら見えてきたみたいだな。黒幕に通じる道筋が。
キリトというわけで、ロウ。お前にやってもらいたいことがある。
ロウえ ? 俺 ?
to be continued